さてさて、なにやら大変なことになってしまったZE☆
なんと、俺も嘱託魔導師認定試験を受けることになってしまった。どうするんだよ、本当に・・・。
今更俺が拒否できるような状況でもないから、明日の最終試験の実戦訓練の対策を練ることにしますか。多分、明日もクロノが試験官なんだろうし。
っと、そのまえに、まずは今日の反省会からかな。
「お疲れさん、アリシア。無事に試験に合格できてよかったな」
「本当におめでとう、アリシア」
「うん。ありがとうお兄ちゃん、フェイト。でも、クロノには負けちゃったよ」
「それはしょうがないな。クロノの方が何枚も上手だったんだから。次に模擬戦をするときは、クロノの罠にはまらないようにしないとな?」
「うぅ、次は気を付けるよ」
「ところで、シグレは何かクロノへの対策はあるの?」
「うーん、無いことは無いんだけど・・・。まずは、あのディレイバインドをなんとかしないとな」
「クロノの奴は策士だからねぇ。男なら真正面から向かってくるもんじゃないのかい?」
「アルフの言うこともわかるけど、クロノの戦い方が上手なのは本当だから・・・」
「バインドの対策ってなにかあるの、お兄ちゃん?」
「あのディレイバインドって設置型だから、クロノを上手く動かすことが出来ればなんとかなるはずなんだよ」
「でも、クロノを上手く動かす方法ってあるの、シグレ?」
「それを今考えるんだよ」
「なんだい、まだ何も方法はないってことかい?」
「それを言っちゃあおしめぇよ、アルフ」
「・・・はぁ」
反省会というよりもただ単純にアリシアをねぎらった後、対クロノの作戦会議という流れになったけど、なかなか良い案が思いつかないな。
戦闘の作戦についてはフェイトを頼ってみようと思って、アリシアが試験を受ける時にも相談したんだが、結局高速移動の魔法を教わるだけになったしなぁ。
フェイトって、その場その場の対応とかは上手いんだけど、戦いの全体の流れを読んで行動する、ということに関してはあまり考えていないようなんだよね。
戦術は組み立てられても、戦略は組み立てられない感じだ。あぁ、そういえばStSの時点でも、結局力押しじゃない戦略を組み立てられたのってティアナしかいなかったんだよなぁ・・・。
実際、アリシアに対クロノの攻略法を教えたのって俺だったし。魔法の無駄撃ちをしないで防御と回避に専念して、自分がバインドで捕らえられて、クロノが砲撃魔法を撃とうとした時に反撃に出ろってな。
アリシアは、一応クロノから「Stinger Snipe」や「Stinger Ray」を教わっているんで、これらの魔法を使うことは出来る。しかし、射撃魔法の精度はクロノとはレベルが違いすぎる。だから、ロングレンジでの魔法の撃ち合いになったら、確実にアリシアは負けるだろうと俺は考えた。
では、どうしたのか。まず、アリシアにはフェイトから教えてもらった高速移動の魔法、「Blitz Action」があった。これをシグザールに頼んで少し手を加えた魔法が「Blitz accel」だ。魔法の性能としては、「Blitz Action」が中距離での運用ができるように、具体的にはロングレンジぎりぎりのミドルレンジからクロスレンジの間合いまで一気に詰められるようになったものだ。この「Blitz accel」が手札その1だ。
そして、次にアリシアに覚えてもらったのは「バインド破り」だ。結局、これは術式を組むまでにはいたらなかったが、その性能はクロノ戦でも見せた通り、実戦で充分に役に立つ性能に仕上がっている。これが魔法として完成すれば、今後の戦術や戦略に幅を持たせることができるはずだ。これが、手札その2だ。
あとの二つが、今回の切り札だった。
まず、切り札その1は幻術魔法「Fake Silhouette」だ。原作では、ティアナが使っていた魔法で、その名の通り、魔力で幻影を作り出して、相手を惑わせるものだ。これを、高速移動と組み合わせれば、相手に気づかれないように接近したり、逆に距離をとったりすることができる。ただ、常に展開するにはちょっと厳しい魔法なので、使い時が肝心だ。
そして、もうひとつの切り札が斬撃魔法「Calyburn」と「saber form」だ。この二つをもってワンセットとする。まず、「saber form」についてだが、これはクロスレンジでの戦闘に特化した形態だ。通常形態からの変化として、シグザールが杖から剣へと形が変わる。それに伴い、射撃魔法がほとんど使えなくなるが、魔力刃の部分を飛ばす「Saber Edge」というミドルレンジまで有効な射撃魔法が使えるようになる。イメージとしては、フェイトの「Arc Saber」に近い。
また、手と脚に鎧のようなパーツが付き、装甲性能が上がる。その代償として「Blitz accel」の最大移動距離が落ちるんで、距離をロングレンジまで離されると、この形態では相手を追うことが出来なくなる。ただ、スピードそのものは落ちないから、近接戦闘を行うのならば、この形態の方が有利だ。
そして、「Calyburn」だが、これは「saber form」のときのシグザールに展開されている魔力刃を限界まで強化して、相手に切りかかるというものだ。強化された魔力刃にはバインドブレイクはもちろんバリアブレイクの効果もあるので、この斬撃を止めるには、術者本人の動きを止めるしかない。
以上のアリシアの使える手札を組み合わせた結果が、今日のクロノ戦時のアリシアの動きだ。
本来なら「Calyburn」で伸びた魔力刃で、ミドルレンジぎりぎりのクロスレンジからクロノを斬る予定だったんだが、ちょっとアリシアは踏み込み過ぎたようだった。その結果、クロノのディレイバインドにかかってしまった。
俺が戦うときは、今回「Calyburn」を見せてしまったんで同じような戦法は通じないだろう。クロノの方も警戒してディレイバインドを設置する範囲を広げるだろうしな。
ということは、俺は射撃でなんとかするか、クロノをこっちに近づけさせないといけないわけか。うん。本当にどうしよう。
結局、フェイトたちを交えた作戦会議は結論がでないまま終わり、夜になってしまった。
アリシアとフェイトはもう寝てしまっているが、もはや俺が自分で考えなきゃならないことが分かったんで、特に問題はない。
しかし、射撃でなんとかする・・・か。いや、そうじゃなくて、射撃が攻めの起点となるようにすればいいのか。射撃で相手を動かしてから近接して斬る、とか。
うは、これなんてガンダムだ! そういえば、ガンダムVSガンダムNEXTは生前よくやってたなぁ。なんか、新作は「NEXT」から「EXTREME」になるらしかったけど。
ん、まてよ、これは使えるかもしれんぞ。ちょっとシグザールと相談してみるか。ぶっつけ本番になるが、まぁ何もしないよりはいいだろう。
さぁ、やって参りました対クロノ戦! 儀式魔法は昨日のアリシアがやってたのを思い出しながらなんとかこなしましたよ、ええ。
「いまから実戦訓練の試験を始める。準備はいいか、時雨?」
「あぁ、よろしく頼む」
えっ、なんか真面目じゃないかって? 今はふざけてはいられないからな。だから自分の格好についても疑問を持ってる場合じゃないんだ。
たとえ、今の自分がフェイトばりの危ない格好をしていたとしてもな!
いや、ほんとうにアリシアのバリアジャケットってフェイトと同じような格好なんだよ。違いはあのひらひらしたスカートっぽいものがミニスカートになったぐらいで。
せめてStS時のインパルスフォームくらいにしてくれよ!って思ったね。
「スティンガー!」
ま、今はそんなことを気にしていられる状態じゃない。早速クロノが射撃魔法を撃ってきたし。
・・・さて、これは誘導弾なのか直射なのか。どちらにせよやることは同じだ。ギリギリまで引きつけて、
「シグザール!」
「Blitz accel」
少し横にずれて避けてみる。すると、魔力弾はそのまま真っ直ぐ進んでいった。今のは直射型の「スティンガーレイ」の方だったか。
「はあっ!」
「・・・次はどっちだろうな。シグザール!」
「Blitz accel」
また、さっきと同じくらい横に移動して避けてみる。が、今度は魔力弾はこっちに向かってきた。「スティンガースナイプ」の方だったようだな。・・・これは避けれないか。
「シールド!」
「Round Shield」
避け切れなかった魔力弾を防御魔法で受け止める。
「ふむ。防御魔法の構築はなかなかだな」
とかクロノが言っている気がするが、俺としては失敗したと思った。このラウンドシールド、必要以上に硬く出来上がるんだよな。要するに、必要以上に魔力を消費するんだ。
砲撃魔法はこれでいいかもしれないが、射撃魔法でラウンドシールドを使うのはロスが大きすぎるな。
「スティンガー!」
またクロノから魔力弾が飛んできた。さっきから射撃魔法しか撃っていないように見えるが、その合間にバインドを仕掛けてるんだよなぁ。注意しないと。
さて、今度の魔力弾は若干遅く感じるから、恐らく「スナイプ」の方だろう。・・・ためしに横ではなく上に回避してみようか。
「上だ、シグザール!」
「Blitz accel」
俺の予想通り、この魔力弾は「スナイプ」の方だった。しかし、今度はさっきと移動距離は変わらなかったのに、こちらへ再び誘導するまでの時間が長いようだ。
・・・これくらいでいいだろう。これ以上様子を伺ってると、クロノにこちらの意図を読まれて、誘導弾の方をなかなか撃ってくれなくなるだろう。まだ充分にクロノの攻撃を読みきったとは言えないが、長期戦になれば、素人の俺が不利になる。
とりあえず、もう一度シールドで魔力弾を防いで、クロノの様子を伺う。次にクロノが魔法を撃ってきたときが勝負だ。
「では、これは避けきれるか? はあぁ!」
クロノが、今までよりも大量の魔力弾を撃ち出してきた。・・・なんか弾速がばらばらだ。まずいな。両方同時に撃ってきたのか。
なら、あれを試すのにちょうど良い。どうせ短期で勝負をつける予定だしな。
「いくぞ、シグザール! Blitz Silhouette!」
「All right, master. Blitz Silhouette set up.」
これが、昨日の夜、シグザールと相談してつくってみた新しい魔法その1だ。「Fake Silhouette」を元に、ガンダムF91の「質量のある残像」を再現したものだ。ゲームでは、残像に相手の攻撃の誘導を切る効果があったんで、それが相手の誘導弾にも有効かどうかシグザールに聞いてみたんだ。そしたら「非常に有効です」って返事が返ってきたんで、実装することにした、というわけだ。
なんでも、誘導弾って基本的に目視で誘導させてるんだと。確かに、そんな描写は原作にもあったような気がしてたけど、まさか本当にそうだとは思っていなかっただけに、この情報の収穫は大きかった。
「っ! 昨日とは違う幻術魔法?!」
クロノも驚いているようだし、とりあえずは成功かな。ちなみに、この魔法の欠点は、「Fake Silhouette」とは違って数秒で幻影が消えてしまうのと、幻影が「一番前の自分」の後ろからばら撒かれることと、魔法を維持するためにバリアジャケットの強度を落としていることだ。だから、相手の攻撃魔法に当たってしまうとまずいんだが、
「だが、それでは本体がみえみえだ。スティンガーレイ!」
まぁ、当然俺は対策をしているわけで、「一番前にいる自分」が俺っていうわけじゃあないんだよなぁ。
「・・・! なにっ?!」
この魔法はそもそも「Fake Silhouette」を元にして、「Blitz accel」を同時に発動させたものなんだよね。つまり、本物の俺は、ばら撒かれてはクロノに向かって動いて数秒で消えている「偽者」に紛れているのだ。
さて、では反撃開始だ。
「いくぞ、シグザール。スティンガースナイプ!」
「Stinger Snipe, Stinger Snipe Fake,fire!」
「っくぅ!」
俺と幻影から誘導弾がいっせいに発射される。幻影から撃つ誘導弾はもちろん幻影、つまりフェイクなわけだが、クロノがそれを全部判別するのはさすがに無理だろう。俺自身も瞬間移動を繰り返しながら何度も撃っているんだからな。
「っ!・・・仕方が無い!」
おっ、ようやくクロノが大きく動くな。とりあえず、あの場所から離れてくれればディレイバインドは気にしなくて良いはず。・・・! 右上だ!
「フラッシュスマッシャー!」
「Flash Smasher,fire!」
「くっ! 動きが読まれた?!」
とっさに、右上方向に新作魔法その2を撃ってしまったが、どうやらそっちにクロノが動いていたようだ。・・・直撃したっぽいし俺の勝ち、かな。
「フラッシュスマッシャー」は、無誘導・超弾速・貫通力を重視した魔法だ。威力もかなり高い。この魔法の元ネタは「超電磁砲」つまりレールガンだ。
俺は、本当は「とある魔導師の超電磁砲」にしたかったんだが、これでは長すぎるし、じゃあ、大元の方からとってきて「インデックス」にするのもなんか違う気がしたんで、一晩悩んだ末に、この名前にした。
しかし、いったいさっきのは何だったんだろう? なんか、いきなりクロノの動く先が見えたんだが・・・。
「ストラグルバインド!」
「えっ! ・・・しまった!」
油断した俺の負け・・・か。ま、今の攻撃でまだ相手が動ける時点で俺の負けは決定してたけどな。さすがに「Blitz Silhouette」を発動したまま攻撃魔法を打ち続けるのはまだきついな。その辺は鍛えないとな。
あぁ〜、しかしなんともいえない脱力感がおそってくるなぁ・・・ってこれって魔力を吸い取るバインドじゃあねぇか!
クロノ、お前本気出しすぎだろ!
「これで試験は全て終了だ。それでは、君達の試験の結果を発表する」
「えっ、今言うのか? まだ僕の試験が終わったばかりなんだけど」
それに、まだアリシアの代わってないしな。そういうことならアリシアに代わるか。
「このままでいいよ、お兄ちゃん」
「いや、でも・・・」
「まぁ、アリシアがそういってるんだから、そのままで聞いてくれ」
胸元にあるスピーカーからアリシアが答えたんで、そのまま試験の結果を聞くことになった。このスピーカーって俺もアリシアも使えるんだよね。便利だ。
しかし、このままっていうのも困るんだが。だってバリアジャケットのままだし。あの危ない格好のままだし・・・。
「だが断る。アリシア、チェンジだ!」
「えっ、えっ?! あ・・・」
「・・・もう発表していいか?」
クロノが呆れていたが、それがどうした! 男の沽券の方が大事だ!!
結局、俺達は見事に嘱託魔導師認定試験に合格し、正式にAAAランクの魔導師となった。そんでもって、なんかクロノが、
「それにしても君はすごいな、時雨。まだ魔法に触れて間もないのにあれだけ戦えるなんて。状況判断なんかもいいし、フェイトと良い勝負ができるんじゃないか?」
とかアースラにいるみんなで夕食を食べているときに言ってきた。
やめてよね、そんなことを言ったら、バトルマニアが俺に勝負を挑んでくるじゃない?
「それは本当、クロノ? ねぇ、シグレ、今度一緒に模擬戦しようよ」
「えぇと・・・。アリシアが良いっていったらな」
「うん。いいよ、フェイト。お兄ちゃんもいいよね?」
「・・・マジっすか」
くそっ、クロノ、憶えてろよ! いつかこの恨み晴らしてやるぞ!
てなわけで、俺とフェイトの模擬戦がきまった。マジで勘弁してくださいorz
あとがき
これを書き上げるのに、なぜか4時間かかりました・・・。いまの作者はダウン寸前です。
今回は、アリシアの戦闘能力の説明と、オリ主の戦闘能力のお披露目です。補足として、本文中に駆けなかった設定を書きたいと思います。
まず、オリ主の魔力光ですが、青色です。クロノの魔力光も青だったと思うのですが、クロノのものよりも明るい青となります。
次に、オリ主とクロノの戦いの結果ですが、オリ主は満身創痍、クロノは無傷・・・と見えて、実は最後の一発をとっさのシールドで防ぎ切れなくて喰らっています。なので、オリ主に対する評価が高かったりします。
アリシアとオリ主の戦闘スタイルですが、アリシアは近接よりで、オリ主はフォームによって近接よりか射撃よりかが変わるタイプとなります。なので、アリシアが戦うときはセイバーフォームが多くなると思います。オリ主の時は状況によって変わります。
次回は、オリ主対フェイトとなります。またひとつ、オリ主が新魔法を使う予定です。
追伸:今回、作者はかなり意識が朦朧としてきた中書いたので、オリ主が魔法的な意味でひどいことになっておりました。なので、魔法の名前を変更させていただきました。
ただ、「カリバーン」と「セイバーフォーム」については、原作内の魔法で、そういった英雄の武器の名前の魔法が存在するので、続投させていただきたいと思います。
本当にすみませんでしたm(_ _)m