『えっ』
ウィスパーごしに返ったフィリスの声は、続いて『何それ』と続いた。
「――教えてもらったクエスト……『ライカンスロープの境遇』だったかな、話をしてみたらそうなった」
フィリスが反応したのは、彼女が泣き出したあたりの件を話したあたりだ。ということは、少なくともフィリスの場合と私の場合では、彼女の話すクエスト内容が違ったということなのだろう。
『何それ。マジで聞いたことない』
フィリスの声が少しだけ真剣味を帯びた。
『道具屋って言うか、雑貨屋って名前の店だよね。ホビットの』
どうやら場所を間違ったわけでもないらしいので、そうだと告げると、『わかった今から行く、――アウト』と、フィリスはウィスパーを切った。
十数分経った頃、現れたフィリスは、手に串焼き肉の入った木でできた箱のようなものを真っ先に私に差し出した。
遠慮なく一本をもらい口に含むと、匂いで以前フィリスがリアルで持って来た肉に味が似ていることに気付いた。そういえばあの時、「かなり精密に再現できた」と得意がっていたが、……そうか、あれはこの味を再現しようとしたのか。まぁ私はリアルで食べた方が個人的に好みだった気がするが、何せ食べたのが数ヶ月も前の話なので、どうだっただろう。少なくとも今味わっている肉は少し薄味な気がする。
「で、何かわかった?」
フィリスが来る前、少しだけ彼女のことについて聞いておいた。
――まぁ当然というか、彼女から得られる情報だけしかないのだが、それでも手がかりの最初としては十分な情報が手に入ったのではないかと思う。
まず、彼女の父親の遺体がどこにあるのか。
――これは、現在この町の神殿に保管されており、調査のためという名目と、魔を祓うという意味を込めて、管理をしている神官がいるのだとのことだ。
ちなみに母親の方の遺体はすでに、同じ神殿にある墓地に埋葬されており、埋葬される前に火葬されたとのことだ。骨は墓の下にあるが、これをわざわざ掘り起こす意味はないだろう。
次に、彼女の体に生える体毛のうち、抜け毛として抜けたものを少しだけ、彼女の許可を得て貰った。
「これがその体毛?……ふぅん、黒い狼、ねぇ」
そのユーリの体毛や髪は、狼にしては黒いものだった。ちなみにホビットとしての体毛でもここまで黒いものはないらしい。現にフィリスの髪は金に近い橙色で、黒と呼ぶには程遠い。
「アタシもここまで黒い毛が生えるホビットは見たことないね」
まぁユーリ自身、こうなる前はもう少し髪の色が薄かったと言っているので、多分ライカンスロープ現象のせいなのだろう。
さて、と声を出し、すでに空になった木箱をリュックにしまうと、フィリスは「行きますか」と歩き出す。
「どこへ?」
聞いてやると、相変わらず主語を言わぬまま、「決まってるだろ」とフィリスは歩き出した。
到着し、門を開けて中から出て来た人物を見るまで、そこがどこなのかわからなかった。
それでも、出て来た――そして私達をほとんど無視するように通り過ぎた――人物が、前にセーブポイントで見た「咲良」というNPCと同じ、白地に光る刺繍の衣装を着ているのを見て、そこが神殿であり、その人物が神官であるのだとようやく気付く。
だとすれば、ここに来た目的は2つか。
ユーリの父親の遺体と、母親の墓。
「んじゃアタシこっち見てくるから、神官の方に会ってきてくんない?」
フィリスはそう言って、返事も聞かずに墓地へ向かって歩き出した。
仕方なく、私は神殿であろう建物の中へと入る。
数人の、白い衣装の――こちらには刺繍は入っていない。おそらく多少位が低いのだろう――NPCに声をかけ、ユーリの父親の遺体はどうすれば見せてもらえるのかと尋ねてみると、彼は微かに驚いたような顔をし、それでも「高司祭様なら知っているかも」と、自分より位が上なのであろう人物の居場所を簡単に説明してくれた。
「ユーリの父親?」
高司祭と思しき人物に遺体を見せて欲しいと尋ねると、何のことかと言いたそうに、彼は胡散臭そうに私を見つめつつ、白い髭を触った。
掻い摘んで話をしてみると、ようやく思い当たったように、
「……あぁ、イェスタのことか」
そういえば娘がそんな名前だったな、と懐かしそうに目を伏せる。
「――しかし、遺体など見てどうしようと言うのだ?」
再び胡散臭そうに私を見る目は、今度は少しだけ鋭い疑いの色を持って見えた。
まぁ、死んだ人間の遺体を見たい、というのはあまりいい趣味とは言えないだろうし、私が彼の立場であれば、何か魂胆があってのことと邪推もするだろう。気持ちは重々理解できる――多分フィリスは、こうなることを見越してさっさと墓の方へ行ってしまったのだろう、ということも理解できる――し、まぁ確かにある意味「魂胆」があって聞いているのは確かなので、事情を掻い摘んで話すと、高司祭は「ふむ」と何かを考えるように黙り込んだ。
「――見せて頂くことはできますか?」
少しだけ待ってもう一度声をかけてみると、高司祭は私がいたことを忘れていたかのように少し驚いた顔をした。
「……ふむ」
それでも返事は変わらない。どうしようかと迷っているような返答だが、彼の表情はわずかに曇ったままだ。
「何か、見せていただけない事情が?」
もしかすると、遺体を見せてもらうことはできないのかもしれない、と僅かに考えて問いかける。
「――いや、……ん、そうだな。いいだろう。こちらへ」
迷ったような、それでも大丈夫だろうと判断したのか、彼は部屋の奥の扉を押し開いた。
扉を潜り、その先に続く下に向かう階段を下りつつ、高司祭はぽつりぽつりと話し始めた。
「――彼の遺体は非常に不可解でね」
彼の言葉によれば、害があるわけでもないようだが、その遺体には明らかに呪いと呼ばれる類の何かがあるのだと言う。そのため、今遺体を墓地に埋葬すれば、その呪いが何らかの作用を引き起こし、墓地に眠る遺体たちをアンデッドに変えてしまうかもしれない――そんな理由から、イェスタの遺体は埋葬することも出来ないまま、呪いを封じて保管されているのだと言う。
「彼は非常に優秀な狩人でね」
だがその遺体は、一言で言うならば陰惨なほどに損壊していた。
自警団が殺した彼の遺体は、自警団が傷付けたもの以外にも、彼が死ぬに足る傷が最初からあったのだと推測できるのだと言うのだ。
イェスタほど優秀な狩人が殺される程の相手とはどんなモノだったのか。傷を調べた鑑識家は、その傷を獣によるものだと断定した。
ただし、一匹ではなく数匹のだ。
「数匹?」
「――認識できた限りでは3匹だそうだ」
そのうち2匹は恐らく狼か野犬だろうと鑑識家は言ったらしい。だが他の1匹のものであろう傷は、全く違う傷であった。
「……蛇、だと言うんだよ」
狼か野犬と行動を共にする蛇。
いや、もしかすると蛇が首魁で狼あるいは野犬の方が僕である可能性もあるが、どちらにしろ珍しい組み合わせではある。
「――それにしても長いですね」
「……地上にある墓に影響を及ぼさないようにしているんだ」
言いつつ、高司祭は壁を指先でつつつ、となぞる。
途端、壁にある紋様のようなものが青く、部分的には緑に光り出す。
「これは?」
「呪い避けだよ」
なるほど、と納得する。
地上に影響を及ぼすほどの呪いであれば、私達がその影響を受けないとは限らない。それを防衛するのがこの紋様だということなのだろう。
「ちなみに腐ってたりはしませんか」
「……一応、防腐処理はされておるよ」
「さぁ、着いた」
扉の前に辿り着くと、高司祭の額には脂汗が滲んでいた。
暑いせいもあるだろうが、恐らく精神的なものだろう。
――つまり、高司祭がここに私を連れて来ることを躊躇った理由は、それだけその「呪い」が強烈だということなのだろう。
高司祭の喉が一瞬、ごくりと音を立て、続いて扉が軋むような音を立ててゆっくりと押し開かれる。
――だが、思ったほど、何かがあるわけではなかった。
こちらがプレイヤーなので感じないのか、それともこのキャラクターにそう言ったものを感じる能力がないのか。または高司祭が呪いに対して単に怯えているだけなのかはわからない。
押し開かれた部屋の中央を見ると、人間大の、黒い入れ物が置かれているが、恐らくあれにイェスタの遺体が収められているのだろう。
警戒しているわけではないが、高司祭がゆっくりとその箱へと近付くので、私の歩みも自然それに倣ってゆっくりとしたものになる。
そうして、ようやくその箱へと手をかけ、ゆっくりと箱の蓋を開けた。
「――っ」
思わず絶句する。
ところどころモザイクが入っているものの、確かにその遺体は陰惨を極めていた。
「――解説はいるかね?」
「……お願いします」
聞いた方が良いのだろうと判断してそう返すと、皮肉のつもりだったのか、高司祭はやれやれと苦笑を向けた。
「まず、――こことここが、自警団が彼を突いた傷だ」
楕円のような傷。
――形状を見れば、恐らく剣か何かで刺した傷だと判断できる。
「――そして、ここだ。わかるかね?獣が咬んだ跡だ」
言われ、次に示されたのは左足だった。
モザイクがかかって少しだけ見辛くはあるが、言われてみれば、以前アキラが狼型モンスターに咬まれた時のような傷に見える。まぁ私達プレイヤーの傷は、生き残れば時間が経つと消えるのだが。
無言で、同じような傷跡を付けられている別の場所――右肩へと示す指を動かす。これも確かに足同様に獣に咬まれた傷のように見える。
「――そして、ここだ」
最後に示されたのは、右の首筋だった。
4つの小さい傷。それを結ぶような、小さい点が楕円を描くように取り囲む。
「確かに蛇に見えますね」
言いつつ、彼の、もはや生前の風貌を残さない顔へと視線を移す。
果たして彼は、ユーリの元へ戻った時、この状態で生きていたのか。場合によってはすでに事切れ、彼の意思とは別に、何かの理由で体だけが操られて――あるいは呪いが元凶か――町まで戻っただけなのではないだろうか。
彼の顔の傍に、血か土かはわからないが、汚れてしまったカードのようなものが置いてある。
「Happy birthday ,To my dearest daughter」
目は見えなくても文字は習ったことがある。
――何と書いてあるのかもわかる。
「お誕生日おめでとう、我が最愛の娘へ」
このカードが発見された時、ユーリは何を考えたのか。
――所詮ゲームのNPCだ、と考えることはできる。だがそう考えるには、この世界はあまりにも現実味を帯びていた。
「――狼2匹に蛇、ねぇ」
フィリスと合流し、とりあえず得た情報を彼女に伝える。
「父親ってのは、優秀な狩人だったって?」
「少なくとも高司祭はそう言っていたよ」
ふぅん、とフィリスは眉を上げた。
「――だとしたら、たった二匹の狼と蛇程度にやられるっておかしくない?」
優秀が聞いて呆れる、とフィリスが呟く。
――言われるまで気付かなかったが、確かにその通りかもしれないとは思う。
以前アキラと狩った狼型モンスターは、何度かアキラと一緒に咬まれはしたが、あれは確か私が本当に低レベルの、始めたばかりの頃だ。
――確か名前はホワイトファング。
高レベルホワイトファングでも、今のアキラなら倒せる程度のレベルのはずだ。……まぁ、それに負ける程度の「優秀」だったと言うのならそれだけの話だし、他のモンスターだったというのなら話は変わって来るのだが、そうではないとしたらどういうことか。
イェスタは、勝てる相手に負けたということになる。
何かと戦ってすでに風前の灯火だったのか、もしくはやはりホワイトファングではなく、別の、もっと強いモンスターだったのか。
「森って言ったっけ」
フィリスが思い出したように、呟くように言う。
「ん?」
「父親が狩りに行くって出かけた場所」
少しだけ話を思い返す。
「森とは言ってないね。猟に出かけたとしか」
彼女は、どこに出かけたと言うような具体的な場所は何ひとつ言っていなかったように思う。狩りという言葉から、フィリスが勝手に森というイメージを持ったのだろう。
「――だとしたら、……ダンジョンかもね」
ダンジョン。
リラが今、トラストと一緒にレベル上げをしに出かけている場所だ。
「でも蛇なんか出たかなぁ」
うーん、とフィリスは少しだけ思案し、
「ま、考えてもわからないし行ってみる?」
いつものように気楽に、非常に単純な回答を出した。
「ウィスパー、トラスト=レフィル。おーい。まだ中にいる?」
ダンジョンの入り口……この場合廃墟と言うべきか。その目の前で、中にいるであろう青髪の美少女を呼ぶと、フィリスはまるで電話でもしているかのような声で話しかけた。
当然私には相手の声は聞こえず、相槌を打ったりしているフィリスを傍目に周囲を見回す。
まさに廃墟と呼ぶに相応しく、瓦礫がそこら中に転がっている。石畳はところどころ剥がれて下の土が見えてしまっているし、そうでなくともほとんどがひび割れてしまっている。壁も、フィリスが何発か殴ったら崩れ落ちそうなほどにボロボロで、ダンジョン攻略中に建物が壊れて屋根が落ちてきた、と言われてもこの現状を見た後なら多分私は信じるだろう。
ちなみにこのダンジョンは、廃棄された後動物型モンスターが棲み付いたという設定のようで、また、モンスターではない動物も現れることがある場所だ。「優秀」な狩人であれば十分対応することが出来る狩場で、ホワイトファングも、その上位種であるグレイファングも出るらしい。
「は?いやいやちょっと待とうよ」
フィリスが楽しそうにあっはは、と笑った。
どうやらトラストが面白そうな――もちろんフィリス基準で――ことをしているようで、待てと言う台詞とは裏腹に腰のレイピアを抜いた。何かあると推測し、念のため私も杖を構える。
「お前は壁ね。トラストたち出て来たら入り口塞いで」
私が杖を構えたのを確認し、楽しそうに指示を飛ばす。
「戦闘参加してリラの経験に支障は?」
「――ない、多分!」
多分って何だ、と呆れるものの、まぁ唱えろと言うのだからとウィンドウォールの魔法を思い浮かべる。
「『我願う。風よ吹け。荒れ狂い壁と化せ』」
呪文を中断し、入り口を注視していると、中から微かに音が響いていた。何かがこちらに向かっているようで、だんだん音がこちらに近付くのがわかる。
「――来るよ!」
フィリスの言葉から数秒遅れて、廃墟から青い影が飛び出したのが見えた。ブロンドヘアーがその後を追うように入り口を飛び出すのを確認し、唱えていた呪文を思い起こしつつ、私は杖を入り口へとかざす。
「『ウィンドウォール』」
入り口から中へ吹き荒れるイメージ。
それと同時に、がうがう!と獣の唸るような声と、数匹は風に飛ばされたのか、きゃん!と悲鳴のような声が響く。
「うっは、これ何匹くらいいんの」
「えーっと、30匹くらい?」
こともなさそうに呟く青髪の少女は、風に負けじと入り口から這い出ようとする数匹に向け、構えた弓を引き絞る。
弓に番える矢の数は1本だが、その手には何本かの矢が用意されている――のを確認する間もなく、トラストの弓から矢は放たれた。
その矢の穿つ結果を確認するより早く、素早く番えて第2射、第3射と放つ。「ラピッドアロー」と呼ばれるスキルだ。その弓に正確性はあまりない。だがその弓はウィンドウォールの風の力を得て軌道を変え、狙ったかのように這い出ようとする獣の鼻っ面や肩を射抜いて行く。
沸き起こる獣の悲鳴。前列にいた獣は、悲鳴すら上げることなく倒れ伏し、それを乗り越えて進もうとする勇敢な獣にすらも、無慈悲に彼女の矢が雨あられと降り注ぐ。まぁこれだけ大量にいれば、当てる気がなくても当たるだろう。むしろ当たらなかったらそちらの方を奇跡と呼ぶべきだ。
だがそろそろ魔法の効果が切れる、とわかりきった注釈を入れようとした時、獣達はきゃんきゃんと悲鳴を上げ、一目散に逃げ始めた。
それを見てようやくトラストの計算に気付く。
風の壁で進めない上に、そこに矢の攻撃が仕掛けられた獣はどうするか。当然勝ち目がないことは知能のない彼らでも気付くだろう。
――ウィンドウォールが切れるということなど微塵も知らない彼らは、勝ち目がないなら逃げる。命を大事に。ガンガン行こうぜなんてことは絶対にしない。
そこまでを計算に入れた上で、この入り口におびき寄せ、私達と合流すると同時に経験を稼ぐ――システム上パーティと認識されているのはトラストだけなので、リラにはしっかり経験値が入る。
問題なく最良の手段だ。
「お見事」
「ありがと」
フィリスが手を上げると、トラストはそれにぱしん、と控えめに自分の手を合わせてそれに応えた。
「ユーリちゃんの体毛?……言われてみれば確かに」
ドロップアイテムを集めた後、しばらくトラストの作戦を褒め称え、その後私の受けたクエストの話をトラストに聞かせると、体毛の件で彼女は確かに黒い、と反応した。
見せてと言うので、ユーリから貰った彼女の体毛を渡すと、あぁ確かにこんな色だったよね、とすぐにこちらに戻した。
「――ライカンスロープの影響だとするなら、その病原菌とか呪いとかの元凶も同じような色なんじゃないかな」
ふむ、とフィリスが思案する。
「ブラックドッグかな」
かなり昔、フィリスがまだリアルで中学生くらいの時――まぁ私もその頃は高校生だったが――に教えてもらったイギリスの神話……というより伝説か。それを朧気に思い出す。
シャーロックホームズのシリーズに、このブラックドッグをモデルにしたとも言われている犬が登場するほどの有名な伝説で、唸り声だけで兵士を殺したとされている……のだったか。
なるほど、優秀な狩人だったとしても、唸り声だけで殺されては抵抗手段がない。――まぁ、そこまで凶悪な設定のモンスターを、ゲームバランスを考えずに出すほど馬鹿げたゲームではないとは思うが。せいぜい、イェスタでは敵わない程度の強さを持ったモンスターなのだろう。
「ちょっと言いにくいんだけど」
トラストが苦笑する。
ん?と全員の視線がトラストを向くと、彼女は少し困ったような顔をした。
「――今倒したモンスターの中に、ブラックドッグいたよ」
「えっ」
「えっ」
フィリスが驚いたように言うと、トラストがそれに追随するかのように同じ言葉を返す。
「それで、ちなみにそのブラックドッグの毛がコレ」
どうやら何かの素材らしく、毛皮のようなアイテムを取り出す。比べてみると確かに色が全く違うのがわかる。
――どうやらブラックというのは名前だけのようで、厳密には濃い灰色といったところだろうか。比べてみないとわからないが、明らかにユーリの体毛の方が色が濃い。
「あと黒い犬とか狼なんていたっけ?」
首を捻るフィリス。
当然ながら、この場にいる他のメンバーがフィリスの知らない情報を知っているわけがないのだが。