※初めに
この作品は突発的に思いついたネタをリハビリも兼ねて書いてみた物です。
シリアス?みたいな感じなので一応注意して下さい。
また、TS要素もほとんど必要ないですが含まれています。
一部口調がおかしかったりするかもしれませんが勘弁を。
鼻で笑う程度の軽い気持ちで見て頂ければいいと思います。
唐突だが、私は所謂転生者というやつだ。
それも原作キャラへのTS転生といった変わり種のものね。
転生して暫くは女の身体に戸惑いもあったけど、10歳にもなる頃にはすっかり順応していたわ。
ああ、結婚して子供までいたのよ?
慣れ……というより順応って恐ろしいわね。
あ、まだ名前を名乗ってなかったわね。
私の名はプレシア。プレシア・テスタロッサ。
かつて大魔導師と呼ばれた二児の母よ……。
初めは同姓同名の別人かなと思ったのよ。
だけど、ミッドチルダとアルセトハイムという地名を聞いたときにやっぱりそうなんだと納得したわ。
ここは、『魔法少女リリカルなのは』の世界なんだとね。
身近にあった魔法の存在も大きかったわね。
でもその時はさほど気にはしなかった。
実感も無かったしね。
だって、原作が始まるまでは何十年もあった訳だし、何より女として子供を作るつもりなんてなかったから原作なんて起きるはずがないと思っていたもの。
けれども、気付けば異性として男に惹かれていたわ。
23になった時、その人と結婚をした。
5年後には長女のアリシアも産まれたわ。
忙しかったけれども幸せな日々だった。
……そう、あの日までは。
原作のプレシアがアリシアを魔導炉の実験事故で失ったのは知っていたわ。
だから、私は違う道を歩もうと女として自覚をした12歳の頃から管理局で働くことにしていたわ。
元男だったのもあるかもしれないけれど魔導戦などの荒事も私に合っていた。
気が付けば執務官になっていた。気が付けば魔導師ランクSS+の大魔導師なんて呼ばれていた。
気が付けば、幼いリンディとクライドが補佐官になっていた。
驚きで思わず、本物ですか、と聞いてしまったのは良い思い出よ。
兎に角、そんなまさしくご都合主義としか思えない事が転々と続いていったの。
……でも、アリシアは死んでしまった。
ある日、仕事から帰ればアリシアを守ろうとしたあの人もろとも殺されていた。
犯人は過去に私が逮捕した犯罪者だった。私を恨んでの犯行だった。
……私は憎んだ。他でもない世界を、よ。
その時悟ったの。どんなに抗おうと運命からは逃れられないと。
原作でアリシアが死んだのも5歳。私たちのアリシアが死んだのも5歳。
それに気付けば狂うしかなかった。
それからの私は変わったと思うわ。
管理局を退職し生物学を一から学んだ。
あの人は肉体の損傷が酷くてどうしようもなかったけど、せめてアリシアだけでも蘇らせようとした。
ジェイル・スカリエッティとも接触をした。
『プレシア』に出来なかったことを私はやろうとし、二十年以上に渡り考え得る限りの可能性を試し、失敗に失敗を重ね漸く一人の子が生まれた。
でも、生まれてきたのはアリシアではなくフェイトだった。
……本音を言えば気付いていた。どんなに優遇されていようが、所詮私は原作を引き起こす駒でしかないのだから。
全ては運命のままに。結局私が行ったのはフェイトを生み出すためでしかなかったのだ。
フェイトはとても優しい子だった。
研究に続く研究でボロボロになっていた私をいつも心配してくれていたわ。
でも私はその優しさ応えることはできなかったわ。
フェイトを愛してしまえばアリシアを忘れてしまうという考えが、いつも私を苛んでいた。
怖かったの。私の心は強くなんてないんだから……。
結果、私の行いは端から見れば原作のプレシアとさほど変わらなくなっていたわ。
流石に鞭打ちなんてしてないけど……。
あの子を意識的に遠ざけ、アリシアの飼い猫であった使い魔であるリニスに全てを任せた。
もしかしたら、まだやり直せるかもしれないと思った。
アリシアの姿と心を胸に留め、フェイトやそれとリニスにフェイトの使い魔のアルフと普通の家族として過ごす……。
……だけど、それは理想でしかなかった。
やり直すにはもう遅すぎた。
私には絶望しか残っていなかったの。
死んだ方がフェイトの為にもなると何度も考えたことがあったわ。
心だけじゃない、身体ももう限界だった。
重度の肺癌よ。
医者の話によれば保って三年。
魔法で進行を遅らすことは出来ても、直すことはもう無理だそうよ。
プロジェクトF.A.T.E.の技術を応用すればもしかしたらとも思ったけど、実行に移す気にはならなかった。
代わりにフェイトが生まれた時からずっと考えていた計画を実行する決心がついたの。
原作よ。
このまま私が死んでしまったらフェイトには何が遺る?
答えは簡単だ、違法実験の被験者という肩書きだけが残ってしまう。
最悪保護という名目で実験場送りにされてしまう事も十分に考えられた。
ではどうすればいい?
この問いに辿り着いた瞬間に、原作しかないと思った。
そうすれば、フェイトはあの子――リンディに保護され、養子として真っ当に生きる事が出来る。
原作を知っているからだけじゃない、出会ったからこそわかるの。
リンディに任せておけば全て上手くいく。
……ならばもう、迷いはないわ。
ジュエルシードが発掘されたのも、その輸送船がどんな航路をとるのかも昔のツテを頼りに調べ上げた。
計画は全て順調。今までの人生が嘘のように思い通りに事が進んだ。
後は、最後の仕上げだけだから。
これから私は死ぬ。
でもそれがどうした。
どのみち医者に宣告された寿命などすでに半年も超過しているわ。
ここまで気力だけでどうにかしてきたけど、もう一週間も保たないでしょうね。
でも間に合った。あと一回、それで自分の心を偽るのも最後だから。
どんな形であれ、やはりこうなったかと思うとつくづく運命を嫌になる。
そして、流されるようにそれに抗おうと出来なかった自分にもね。
だからその最後の前に一つだけ。きっと、『私』がやれなかった事をやろうと思うの。
アリシアだけを想い、アリシアの為にしか生きられなかった私には出来なかったこと。
ささやかで、きっと運命という濁流のなかにはとても影響を与えられないようなモノ。
我が儘なのかも知れないけれど、そんな私の想いを遺して逝こう。
そのために――――
「あの子が……私の影を断ち切れた時に、この映像を。フェイトを頼むわよ、バルディッシュ」
『Yes,Mrs..Take a good journey.』(わかりました、ミセス。よい旅を)
――――ねえフェイト。聞こえている?
最初に言っておくわね。ごめんなさい、フェイト。私はあなたに酷い事をしてしまったわ。
大嫌いなんて言ってごめんなさい。
言い訳にしか聞こえないかもしれないけれど、本当は愛しているわ。
私はあなたに母らしいことなんて何一つ出来なかったけど、あなたは私を母と呼んでくれた。
それがどれだけ嬉しかったか。
あなたは残り少ない私の人生を照らしてくれた。
私は何も応えてあげることは出来なかったけど、それでも感謝しています。
……ねえ、フェイト。あの高町なのはという子とは仲良くやっているかしら?
あなたは遠慮がちだけど、優しい子で、可愛いんだから。もっと自信を持って積極的に生きなさい。
フェイト。ご飯はきちんと食べてる?
あなたは食が細いから。しっかり食べなきゃ身体に悪いわよ。
フェイト。今、楽しい?
あなたの人生には辛いこと、こんなはずじゃなかったことがきっと沢山ある。
だけど、あなたは私と違って真っ直ぐに生きなきゃ駄目よ。
あなたは、私と違って悲しみなんて似合わないから……。
フェイト…………。
あなたともっと話がしたかった。あなたともっと一緒に居たかった。
でもね、フェイト。私の愛しい娘。
私はいつもあなたを見守っているわ。
ううん、私だけじゃない。
アリシアも、リニスも……こっそりと見守っていると思うわ。
だからね、笑っていて、フェイト。
私たちはいつだってそれを願っているから……。
だから……だからね、フェイト。
あなたの未来が、幸福で満ち溢れていますように――――
ふと、マイナーな憑依オリ主の人生がどうなるのか考えてみた。
結果、プレシアの場合全部を書いたってオリキャラばかりの物語で自分の表現力ではナニコレ状態になりそうだったので結末だけサラッと書いてみました。
自分でも妄想を詰め込みすぎた感は否めないですね。
やはりチラシの裏こそ我が住処!
なんか、テンプレに従い別世界でロリ返ったプレシアが想像できたけど、別にそんなことも無かったぜ?!
だって、中身は恐らく八十近くに……ってアレ?急に雷が鳴り始めたんだが……。
まぁ気のせいだろう。そんなことより映画を見に行きたいねぇ、うん。
それでは、ここまでこのような稚文に目を通して頂きありがとうございました。
この調子であっちの作品も更新できればいいなぁ……。
※6/25住処から出ました。