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[17360] 月下流麗(習作、ワンピース・オリジナル路線)
Name: ソリトン◆c040fcc2 ID:5ba0b33f
Date: 2010/03/21 09:56
業火が、舞っていた。

夜だと言うのに、海賊の侵攻を受けた街は昼間のように明るかった。

悲鳴が、響いていた。

家屋は破壊され、草木は燃え尽き、海賊が逃げ惑う人々から容赦無く身ぐるみを剥いでいた。

東の海に位置する、平穏だった街に突如として現れた海賊は、無慈悲にもその平穏を奪い取る。

阿鼻叫喚、地獄絵図。

そんな言葉がピッタリ当て嵌まる状況だった。

まあ、今のこのご時勢には、別段珍しくはない。

二十年前、あの海賊王が処刑されたあの日から、「そういう事」が頻発する時代になってしまったのだから。


「おかあさぁん……………どこぉ………?」


助けを求める少女の声すら虚しい。

まだ十にも満たぬ年頃であろうか、着の身着のまま逃げ出して来た彼女の顔は、泣いていた。

幼さ故に、まだ現実を受け入れ切れないといった風情だった。


「返事してよぉ…………わたしをひとりにしないでよぉ…………」


泣きじゃくる。

ただ、泣きじゃくる。

既に将来の美貌を予感させる顔立ちをくしゃくしゃに歪め、紅蓮に燃える街の中で涙を流す。


「へへへ、おい見ろよ」

「うほぅ、中々の上玉じゃねぇか」


そんな少女に近付く影が二つ。

この街を襲い、火をかけた海賊団の一味だ。

二人共が、鍛え抜かれ並外れた巨体を誇っている。

片方は傷有り三白眼。

また片方はスキンヘッドに眼帯と、世間一般の「海賊」を体現したような存在だった。

そんな彼らの手には、鈍く光る一つの手錠。

野卑な視線の先には、怯えに震えて男達を見つめる少女がいる。


「まだガキだが…………まあいい。女なら、どんなんでも買ってくれる街があるんだ」


ジャラリ、と手錠が音を立てる。

捕獲し、売り飛ばす。

彼らの船長は、別に構わないと言った。

だったら、やる事は一つだろう。

人身売買は金になる。

ましてやこのご時勢、奴隷の素性など一々売手も買手も詮索したりはしないのだ。


「悪ぃな嬢ちゃん。運がなかったと思って、諦めてくれ」


一歩ずつ、男が少女に近寄る。

少女は、動けない。

未だかつて体験した事のない現実に、思考が追い付いていないのだ。

だが、一つだけ。

ただ一つだけ、本能で理解していた事がある。


「い、イヤ………………来ないで…………!」


このままだと、何か恐ろしい事になると。

何も手を打たなければ、逃げ出さなければ、取り返しのつかないほど恐ろしい事になると。

しかし、分かってはいても。

まだ十にも満たない身体では、到底無理な話だった。


「イヤ…………っ! ……………誰かっ………!」


下半身の神経が麻痺したかのように、力が入らない。

自分のものとは思えないほど、身体が言う事を聞かない。

腰が抜ける。足が崩れる。

尻越しに感じる草の感触が、この世の物とは思えぬほどに遠い。


「パパ……………ママ…………っ!」

「へっ、無駄な抵抗はやめな。叫んだって誰も来ねぇよ」


そう、今海賊達の襲撃を受けているこの街は、地理的にも海軍支部から遠く離れた場所にある。

故に海軍が駆け付けたとしても、その頃は既に海賊達は船の上。

酒に酔い、戦利品などを皆で分け合っている―――――


「さあ、大人しく捕ま―――――」


―――――筈であった。


「ぎ、ぎゃああああぁぁぁぁっ!!」


悲鳴を上げたのは、海賊の方。

手錠を持っていた両の腕の、肘から先が無くなっていた。

否、正確には「斬り落とされていた」。


「だ、誰だ!?」


無事な方の海賊が、虚空に向けて吠える。

彼の目に映ったのは、血溜まりと化していく男の足元、そこに転がる両腕、握られた手錠―――――そして、鮮血を反射して一瞬だけ煌めいた「細い長い何か」だった。


「ハッ、テメェらなんぞに話す筋合いはねェよ、このカスが」


淡々と、この場には似つかわしくない程静かな声が聞こえた。

ひどく透き通り、それでいて澄んだ音色。

年の頃は二十を越えるか否か、と言ったところだろう。

炎の中から姿を現した声の主は、その声と同じく一見して性別が判断出来ない。

赤に照らされているというのに、本来の色と美しさを失わない長い黒髪。

周囲に燃える業火よりも尚深い、朱色に輝く瞳。

首筋から覗く肌は絹もかくやという程滑らかで、顔立ちはまるで精巧な人形のような印象を与える。

身に纏うのも恐ろしく高級そうな絹様の衣服で、紅と黒の色調がその人物の美しさを際立たせていた。


「ったく、何で休暇中にこんな事せにゃならんのか……………」


しかしその容貌・声とは裏腹に、俗っぽい言葉を漏らした。

完璧なフォルムを持つ唇から、大きなため息が吐き出される。

切れ長の眼が、いかにも面倒臭そうな雰囲気を醸し出していた。


「まあ、運が悪いのは今に始まった事じゃないか」


言って、茫然自失といった表情で座り込んでいた少女に歩み寄る。


「事のついでだ。助けてやるから、一生感謝しろよ?」


ポン、と少女の頭を軽く叩く。

ビクッ、と震えた少女であったが、どうやらこの人物が自分に害を与える存在ではないと認識したのか、それは一瞬の事だった。


「おねぇ、ちゃん………………?」

「残念。おれは男だ」


ニッ、と犬歯を見せて笑った後、「彼」は海賊の二人組へと向き直る。

一転、「彼」は笑みの種類を変えた。

微かに開いた口がサメを連想させる、取って喰われそうな笑みだった。


「何をしたかは知らねェが、おれ達の邪魔をした以上、テメェを生かしておく訳にはいかねェなぁ!!」

「口が臭いぜ。喧しいから口を開くなよ、この汚らしい低能のサル共が」


口を開けば馬罵雑言の嵐。

麗しい容姿からは想像も出来ない程口の悪い男だった。

案の定、今まで浴びた事のない罵声を浴びせられた海賊達は、


「フザケやがって…………!! おい、いつまで痛がってんだ! やっちまうぞ!!」

「畜生………! 畜生畜生畜生っ!! よくもおれの腕をっ!!」


顔を怒りに染め上げ、青年に飛び掛かる。

無事な方は、その手に剣を握っていた。

決して切れ味が良いとは言えないが、細身の、加えて丸腰の青年を傷付けるには十分な殺傷力を有していた。

今にも襲い掛からんとする二つの暴力。

対し、向けられた青年は、その表情を変える事なく笑みを浮かべている。

凶刃が肉に食い込む刹那――――――青年は、黒手袋に包まれた右腕を振り上げた。

たった、それだけの動作。

一見すると何の意味もない無駄な動きだった―――――それ故に、端から見ていた少女が、思わず息を呑む。

華奢と言っても過言ではない青年の身体では、とても海賊相手に勝つ事は出来ない。

幼いながらにそう判断したのか、少女は目を閉じた。

せめて、この美しい青年が壊される所を見ないようにと。

しかし、しかしだ―――――いつまで待とうと、予想した悲鳴は訪れなかった。

代わりに聞こえたのは、ヒウン、そしてヒュパッという空を裂くように唸る鋭い音。


「………………?」


恐る恐る、目を開ける。

少女の開けた視界に飛び込んで来た光景は、


「やれやれ、やっと静かになりやがったか」


傷一つ負わずに佇んでいる青年と、


「…………………!!」


全身から血を流して倒れている海賊達の姿だった。

まるで鋭利な刃物で斬られたかのように、身体中に無数の裂傷が刻まれている。

ヒクヒクと痙攣している事から、まだ生きてはいるのだろうが―――――幼い少女には、それは理解出来ない事だった。

そんな光景を瞬き一つせずに見つめる青年は、振り上げていた右腕で何かを引っ張るような仕種をする。

ヒウン、と音を立てて、鮮血を滴らせて煌めく細長い物体が彼の手袋に回収された。


糸。


それは、鍛えた人間であろうとも目にする事すら難しい程細い、長大な糸だった。

単純に糸を使って戦闘を行うと言っても、それは並大抵の人間に出来る動作ではない。

言葉で言う程簡単でもない。

張り巡らした糸の一本一本の位置と張力を把握・調整し、それに触れる物と触れない物を認識し、さらにそれを指先で操る。

才能があったとしても、努力しただけでは習得しえない戦闘方法。

美しい華には棘がある、とはよく言ったものだ。

この世にも美しい青年は、油断して近付く敵を、容赦無くかつ気付かれぬ程速く切り刻む程の危険さも合わせ持っていた。


「あー、あー、こちらレナード。支部、聞こえてるか?」

『こちら第九十二支部。レナード少佐ですね、どうされました?』


呆然と青年を見つめる事しか出来ない少女の視線も意に介さず、彼は懐から取り出した電伝虫で通信を始める。


「おい、休暇で来てみりゃ襲撃を受けてるってのはどういうこった!? 確かに海兵は戦ってなんぼだけどよ、たまの休みに何で仕事しなきゃならんのだ!? 情報管理がずさんなんじゃねぇのか!? 何とか言え通信兵!」

「も、申し訳ありません!」


怒りの動機は個人的な事だったが、言ってる事は正しい上に上官に反論する訳にもいかず、名も無き一般兵はとりあえず謝る。


「大体よぉ、いくらおれが本部から出向してきたからって、お前ら頼り過ぎだ! 寄生虫じゃあるまいし、少しは自分で考えて動け! そんなんだから、高々三百万ベリーの賞金首を逃がしたりするんだよ!」

『か、返す言葉もございません!!』


今回の一件で溜まっていたフラストレーションを爆発させたのか、青年はこめかみに青筋を浮かべて電伝虫に怒鳴る。

電伝虫の怯えたような表情が、通信相手の表情を連想させていた。


「……………まあ、運が悪いのは今に始まった事じゃねぇし、今回だけは見逃してやる。でもな、次は・・・・・・・・分かるな?」

『し、承知いたしました、サー!! 即刻、軍艦を手配いたします!!』

「よし、それでいい」


言って、青年は通信を切ると、心ここにあらずといった表情の少女に歩み寄る。

どんなに口が悪かろうと、他者を圧倒するほどの戦闘技能を持っていようと、その眼差しは幼い子供を優しく見守る兄の様な眼だった。


「お嬢ちゃん、もう少し辛抱しときな」


口調は乱暴でも、青年の優しさが見て取れる言葉。

そんな不思議な雰囲気に触発されたのか、


「おにいちゃん・・・・・・・・・・・おなまえは?」


少女は、気付けばこんな言葉を口にしていた。

その言葉を認識した青年は、一瞬だけ驚いたように眼を僅かに見開いた後、


「・・・・・・・・・・レナード。ヴィルヘルム・レナードだ」


その顔に荒々しい笑みを浮かべ、そう言い放った。










数時間後、この東の海のとある島を襲った海賊団は、たった一人の海兵によって壊滅させられる事になる。

九百万ベリーの懸賞金が掛けられた船長は、海軍に捕らえられた時には既に意識は無かったという。

――――――そして、それを討ち取った海兵の名を、レナードという。

海軍本部少佐、「死線<デッドライン>」の異名を取る、ヴィルヘルム・レナードである。








あとがき


どうもはじめまして、そしてお久しぶりの人もいらっしゃるかもしれませんが。

今回、自分の文章力を向上させる為、このサイトに投稿させていただきました。

試験的にではありますが、この作品は私のサイトにも掲載しておりますので、一応ご報告を。

それでは、厳しい指摘でも構いませんので、感想をお待ちしております。



[17360] 第一話
Name: ソリトン◆c040fcc2 ID:5ba0b33f
Date: 2010/03/21 09:55
東の海、海軍第九十二支部。

比較的大きな島にある港街の傍に、その巨大な建造物はあった。

初めてこの場所を訪れた者がいたならば、まずはその外見に気圧される者もいるかもしれない。

外壁を無骨な鋼鉄で固め、その隙間からは無数の砲塔が覗くその建物は、見る者を威圧するには十分だった。

要塞。

これが、この海軍基地を表した的確な表現だった。


「あ、何ですって?」


そんな基地の一室に響く声。

二十前後の男にしては少し高いソレは、補充要員という理由で本部から出向してきた海軍少佐、ヴィルヘルム・レナードの物である。

きっちりと黒いスーツに身を包み、その上には「正義」を背負った純白のコート。

言葉遣いは悪いが、立ち振る舞いだけなら本部少佐というのも頷ける格好だった。

そんな彼が聞き返した相手は、部屋に唯一ある机に座った一人の初老の男。

年齢と経験を感じさせる深い皺が刻まれたその男は、しかし青年の無礼な対応に気を悪くした風も無く、無表情に近い顔つきで言った。


「休暇を与える、と言ったのだ。レナード少佐」


外見通りの、低いしわがれ声。

その言葉の意味を理解したのか、面倒臭そうに顔を歪めていた青年は、今度はその表情を少し怪訝そうに歪め、


「いや、それ自体は凄く嬉しいんでありますが・・・・・・・・何故ワタクシに?」

「この間の埋め合わせだ。アレはこちらの落ち度でもあるのでな・・・・・・・・・・・・どうした」

「いえ、初めて見た海軍の殊勝さに驚いているのであります」


仮にも上官の前だというのに、この物言い。

お前本当に海軍かと問い詰めたくなるような言葉だが、事実彼がこのような救済じみた措置を味わったのは初めてであるから、まあ仕方が無いとも言えるだろう。

内心は相当に嬉しがっているのだが、表面上には目を丸くして驚いている青年の様子しか見えなかった。


「では、レナード少佐。君の休暇期間は三日間だ。ゆっくりと身体を休めるように」

「了解いたしました、中佐」


敬礼一つ、レナードはコートの裾を翻して中佐の部屋を後にした。
















「いざ休暇っていっても・・・・・・・・・・・・どうしたもんかね」


困り物である。何せ考えもしていなかったのである、予定もクソもあったもんじゃない。

このまま自宅でゴロゴロしていてもいいが、まだ十九歳のレナードが取るべき選択肢ではないだろう。

前の休暇が海賊のせいでおじゃんになったのだ、その際の予定を繰り返す事も考えたが、あの島は今復旧作業中。気軽に立ち入れるような場所でもない。

こうしてみると、人間自由にしていいと言われると、途端に何をしていいか分からなくなる物である。

いや、これは人によるかもしれないが。

となると、


「小型艇でも借りて、ブラブラすっか」


そういう事になった。




さて、思い立ったが吉日。

一人乗りの小型艇に乗り、レナードは東の海の北西部を航海していた。

風が、彼の長めの黒髪を靡かせる。

雲は白く、波も正常。天気はこれ以上ないと言っていい位に晴れやかだった。

日差しは絶妙な暖かさで、つい真下の海に飛び込みたくなってしまう。

流石に底も見えないような海に飛び込む趣味は、レナードにはないが。


しかし休暇という事で海に出た割には、レナードには目的は無い。

こういう時、自分くらいの年頃の若者なら、買い物だったり恋人と遊んだりするのだろうが、生憎とレナードにそういった相手はいない。

そういう事に興味が無い訳ではないが、時間が取れないと言った方が正しいか。


「・・・・・・・・・・ん?」


そこまで考えた所で、視界の端に黒い影が映った。

水平線の彼方まで広がる青、そこにぽつねんと浮かぶ小さい―――――船だろう、アレは。

大きさ、帆、形状から判断して恐らくは商船。

それが、


「―――――あ」


どこからともなく飛来した砲弾に、貫かれた。

海を揺らす衝撃、立ち上る黒煙と赤い炎。


「支部、聞こえるか? こちらレナード。大至急、救助船を用意しろ」


こういう時、海兵には迅速な対応が求められる。

躊躇は、人命を危める事になるのだ。

故に、少佐階級のレナードは対応が早かった。

本当ならば自分で救助するのが一番なのだろうが、一人で出来る事などたがが知れている。

ならば、先の襲撃で一から鍛えなおした救助隊に任せるのがこの場では最善策だろう。

それよりも今彼がすべき事は、


「ド畜生が・・・・・・・・・休暇中なんだけど、おれ」


性分という物は悲しいものである。

しかし海軍本部少佐は伊達ではなく、レナードの目は、砲弾が飛んで来た方向を瞬時に逆算していた。

距離的にはそう遠くはない。

大砲の射程などたかが知れているし、目に見えない位置からの狙撃などは常識的に不可能だ。

そう考えつつ、彼は商船を襲った何者かの船を捜している。


―――――していた、のだが。


「オイオイ、おれァ夢でも見てんのか・・・・・・・・・・?」


目を擦る。

が、鍛えられ、眼鏡も必要としないほど優秀な彼の視覚は、目の前の光景が事実である事を律儀に訴えていた。


白い帆の浮かぶ、大きなカモメ。その下に書かれた、「MARINE」の文字。


軍艦だった。


それも、海軍の。



「正気か・・・・・・・・? 何で商船を―――――」


見間違いという事はない。アレは、確かに商船だった。

海賊が乗っていたという可能性はあったにせよ、法と秩序を守るべき海軍がこのような過激な行いをしていい筈がない。

そんな事をするのは、徹底的に滅ぼす必要のある「悪」を相手にした時のみだ。


「何考えてやがる、あの船・・・・・・・・・」


呟きつつ、レナードはその船――――――第十六支部と書かれた軍艦に、舵を向けた。












「ふふん、いい気味だ。私たちに非協力的な態度を取るから、こうなる」


軍艦の上で、第十六支部の司令官・ネズミ大佐は顔を歪めた。


「大体ね、商船に逃げ込めば攻撃されないとでも思ったのか? スパイ君」


チチチ、と独特の笑い方で、ネズミ大佐は嗤う。

今回の一件は、ひとえに目撃者の始末だ。

その者は海軍兵士であったのだが、何を考えたか基地から脱走したのだ。恐らく良心の呵責に押し潰されそうになったのだろう。

しかし、魚人海賊団との繋がり、これを知った外部の者は生かしていく訳にはいかない。

火の無い所に煙は立たない。火種は、消しておくに限るのだ。

正義や愛などという綺麗事では、世の中は渡ってはいけないのだ。


「さて、念の為にもう一度―――――」

「大佐! こちらに接近して来る小船があります!」

「何?」


万が一、あの商船に生き残りがいたら非常に不味い。

そう考え、指示を出そうとした所に部下の声が掛かる。

見れば、確かに一人乗りらしき小型艇がこちらに向かって来るではないか。

状態から見て、明らかにあの商船とは無関係。

となると―――――


「消せ」

「はっ? い、いえ、しかし・・・・・・・・・・・」

「聞こえなかったのか? 消せ」


目撃者は、消す。

そんな単純な思考回路。

確かに「殺す」という行為は後を引かなくていい。

死人は噛み付かないし、喋りもしないのだ。

―――――それが、組織の者でない限りは。

まあ、そんな事など露ほども知らない第十六支部の面々は、上官の命令に従うしかない。


やがて、再び大砲の轟音が轟いた。
















「撃ちやがった・・・・・・・・・・!? 気でも狂ってんのか、テメェら!!」


さて、こちらは驚愕の表情をしつつ悪態をつくレナード。

だが、その両腕には既に黒の皮手袋がある。

一応予想と警戒はしていたようだ。

しっかりと向かって来る砲弾を見据え、その両手を半開き―――――


「っらぁぁぁっ!!」」


足を踏ん張り、思いっきり、左右に薙ぐ。

いくら本部の少佐であろうと、「鉄」の砲弾を切り落とすのは非常に厳しい。

出来るか、と問われれば答えはイエスだが、気軽に、と聞かれればノーだ。

ただ、今回は状況が状況。

撃墜しなければ、こちらが殺られる――――――!


「成功・・・・・・・・・・・・・って、まだあんのかよクソッタレ!!」


見れば第二、第三の砲弾が。しかも時間経過に比例して数が増えている。

殆どは逸れてくれるだろうが、何発かは直撃コース・・・・・・・・・!


「ええい、ままよ!」


叫び、今度は「斬る」ためではなく「落とす」ために糸を振るう。

まだ訓練段階の技だが、ここで使わずしていつ使うッ!


高速で、糸を編み込む。


縦に、横に、ナナメに、前に、後に。


さながら、それは、立体的な構造を持つクモの巣。


準備完了、後は、獲物が罠に掛かるのを待つのみ。


やがて、砲弾がクモの巣に飛来し―――――その全てが糸と接触、爆散した。


「おお、出来た・・・・・・・・・・・・・素敵、そんなおれを愛しちゃう」


って、そんな状況ではない。

すぐさまクモの巣を解いた彼は、懐の電伝虫のモードを「拡声」にすると、


「こちらは海軍本部少佐ヴィルヘルム・レナード! その軍艦、すぐに攻撃を停止せよ!」


と言い放った。








あとがき


少し展開に無理があったか・・・・・・・?


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