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[1891] 基本的に碌な事が起きない (H×H)
Name: くるくる
Date: 2006/04/03 08:13
 背中が痛くて目を覚ますとゴミ山の頂上に寝ていた。
 さらに驚いたことは視界が低くなっていた、ついでに言うと自分が女の子になっていた。いくら夢でもさすがにこれは
「マジ勘弁」

 ゴミ、ゴミゴミゴミゴミゴミ………………
 正直ここまでゴミばっかりだといくら夢でも気が滅入ってくる。一番気になるのはここの臭いだ、生ゴミかどうかよく分からないとにかくいやなにおいだということはわかる。
 地平線の先までゴミだらけ、正直どこぞの魔術使いの固有結界みたいに自分の心象風景なのだろうか?だとすると女になっているのも自分の心の中では女なのだろうか?それこそマジ勘弁だ。
 とりあえず人がいそうなほうに進むことにする。もくもくと火の手が上がっているということは人がいるのか不審火かのどちらかだろう、もっともこれが夢なら火の手が上がろうと自分以外がいるはず無いだろうが……。
「おい、そこの餓鬼止まれ」
 振り返るとそこには映画とかでたまに見る感染症とかを防ぐために全身を覆う防護服を着た人が五人いた。
 これが夢だとするといったいこの人たちにどんな意味があるのだろうか?それともまったく意味の無い支離滅裂な夢なのだろうか?
「オマエどこからここに入ってきた?」
 防護服のリーダー格の人間が話しかけてくる。
 少しやばげな雰囲気に呑まれてしまう。なんというか不思議な威圧感を感じる。このまま黙っていても意味が無いのでコミュニケーションをとってみることにする。
「えっと、気がついたらここにいました」
 その言葉に周りの人間の雰囲気がさらに険しくなる。
「つまり捨てられたのか?それとも自分の意思でここまで来たのか?」
「いや、自分の意思でこんなところに来たくはないし。少なくとも家族に捨てられるような人生は送ったことは無いつもりだけど」
 その言葉に彼らは相談を始める、といってもほんの数秒のことで相談というより確認のようだ。
「つまり、オマエはここに気がついたら居たというわけだな」
「まぁそうなりますね」
「ならオマエは捨てられたゴミとして処理することにする」
 ゴミ!? 夢の中でゴミ扱いって。いったいどんな夢なんだか?
 そんなことを考えているうちに防護服たちはオレを取り囲む。
「痛、痛いって」
 彼らはオレを無理やり押さえつけて縛り始めた。この段階になってようやくこれが夢でなく現実っぽいことに気づく。
「黙れ、おとなしくしろ。おとなしくしていればもう少し丁寧に扱ってやる」
 その言葉にオレは体の力を抜く。
 防護服たちは力を抜いたことに気がついたのか五人で取り押さえていたのを二人にしてさっきよりやさしく縛る。もっとも縛られている時点で優しさの欠片も無いような気がするが。
「さあこっちに来い」
 防護服にそういわれてオレは歩いていった。夢なら早く覚めて欲しい。
 もっともこの感覚は確実に現実だろうけど。ほんとマジ勘弁だ。



[1891] 基本的に碌な事が起きない (H×H)
Name: くるくる
Date: 2006/04/03 08:14
 そういえば自己紹介がまだった。
 古賀信一郎、今年で十九歳。
 オタクというほどではないと思うけどHっちいゲームもするし、それなりに漫画も読む。もっとも双子の姉ほど酷くはないと思う。
 少なくともハンター文字を解読できるほどはまり込んでいるわけないし、忍術の印を組めるほど読み込んだ漫画があるわけではない。ついでに言うなら某召喚ゲームは名前だけしか知らない。ちなみに姉はハンター文字も読めるし火遁豪火球の術の印を一瞬で組めたりする。
 ようするに漫画の世界にトリップして喜ぶわけない、ましてや女になった挙句にハンターハンターの世界に来るなんてもってのほかだ。
 流星街にやってきてゴミとして扱われた挙句にどこかに売られていく状況で喜べるわけが無い。
 これが夢小説とかだったらこのあと幻影旅団とかヒソカとかイルミ・ゾルディックとかに拾われてそのうち念とか覚えてちやほやされながら、らくして楽しく生きて行けるだろうけど少なくとも現実じゃそんなに甘くないことくらいわかっている、あぁわかってるさ。
 もっとも男にちやほやされるのは体が女になったからってマジ勘弁だ。

「お譲ちゃん、大丈夫かい?」
 ぼ~っとしていた私に男性の老人が尋ねてくる。
「あぁ、大丈夫です」
 私の言葉に彼は少しほっとしたようにため息をついた。
 オレのようにはどうやら十代の女の子でそれなりにかわいいらしい。このかわいらしい容姿のおかげでこの老人に親切にしてもらえるのだろう。そう考えるとかわいい女の子は得だなぁ、とか男ってどんな年齢になっても意外とおんなじなんだなぁと思ったりしてしまう。
 ついでに言うならここは流星街。どうもハンター×ハンターの世界っぽい。さっき話しかけてくれた老人に聞いたら流星街と言葉が出たとき我が耳を疑ったものだ。
 早くもこの世界になれてきたのは姉貴の影響だろうか?少なくとも姉貴はいつでもどこか別世界に行ってもいいようにいつも準備しているらしい。出来るものなら今からでも姉貴と変わりたいものだ。
閑話休題。
捨てられた人間としてこの場にいる人間はみなあの防護服に拾われたということになる。ゴミを拾って利用するのは流星街の基本だからって捨てられている人間を拾っていろいろなところに売りつけるのはどうかと思う。
 ちなみにオレ以外にこの場にはさっきの老人と二人の男性一人の女性がいる。
 捨てられて、拾われて、売られていく。そう聞くとろくな想像ができない。予想としては臓器移植用にバラされて売られるのが最有力っぽい、それはさすがにマジ勘弁だ。
 正直このまま手をこまねいている気は無い。隙をついて逃げようとは思っている。だが大型トラックの荷台の部分らしいここは周りが鉄で覆われていて逃げようにもどうしようもない。
 とりあえずどうすることも出来ない、さっき老人(ちなみに名前はまだ聞いていない)から教えてもらったことは、今が1995年ということと、自分がかわいらしい女の子であるということだけだ。もっとも今が何年だとしても原作開始がいつか知らないのであまり情報として役に立っていないが。
 容姿は十代のときの姉貴らしい。日本人らしい黒髪に黒い瞳、肌も黄色人種の肌の色、なんと言うか髪の長い日本人形みたいな感じだと思う。もっともきている服はオレが寝ていたときの青い縦縞のパジャマのままだが。
「おいでろ」
 自分の考えに浸っていると扉が開いた。そこには相変わらずの防護服がいた。
 オレたちは手錠をかけられる、男二人は抵抗するが数人でぼこぼこに(顔とか腕とかはけらずに腹だけを狙っていたのは商品を傷物に見せないようにするためだろう)して手錠をつけた。それを見て女性は悲鳴をあげそうになるのを必死で押さえ、老人も目をそむけている。
「大丈夫か?」
 防護服の一人が聞いてくる。どうやら自分もかなり顔色が悪かったようだ、まぁ当然といえば当然だろう。今までの人生でここまで徹底的に暴力を振るわれているところを見るのは始めてなのだから。正直に言うと今までテレビで見てきたものと一線を帰していた。ドラマのように演じているのでもなく、格闘技のように一対一でもない。これは痛めつけるための暴力でそれを振るわれるほうも見ているほうもその恐ろしさに体を縛られてしまう。
「あぁ、大丈夫だ」
 オレの言葉に俺を拘束していた防護服は少し驚いた気配を感じた。
「その言葉使いはやめたほうがいい。もしお前を買っていく人間がいたときそんな言葉使いをしていると値段が下がってしまう」
 オレはその言葉に少し驚く。正直この防護服にそんな人を心配するような人間だったなんて。でもよくよく考えればこの中に入っている人間は漫画の中の人間ではなくリアルな人間のはずだ個人的な感情を持ち合わせているのは当然だろう。そして彼(もしかしたら彼女)も生活のためにしていることをしているのだ、それにはきちんとルールがありそれを破るとそれなりの罰が与えられる。そう考えるといくつか納得できるし、そしてこの防護服から逃げ出すと彼(もしくは彼女)はそれなりに罰せられるのだろう。
 オレは結局彼らに連れて行かれることになる。正直逃げれるようなものじゃなかったし、彼らはとても慣れているように感じた。多分何度も捨ててある人間たちをどこかに売りにいくのだろう。そして彼らにもそれなりに何か考えていることがあるのだろう。
 などと現実逃避しながらオレは彼らに腕を引かれ連れて行かれることになる。

 がやがや、ざわざわ。
 ひとつ壁の向こうからそんな声が聞こえてくる。
 どうやら少なくとも十数人はいるらしい。
 オレは真っ白いワンピースを着て舞台裏にいた。正直手錠がミスマッチだ。
 ちなみにオレが最後で、この舞台に上がる人間はオークション形式で売られていくらしい。
 さっきまであそこにいた女性が売られていった。値段は二十五万ゼニー。物価的にほとんど変わらないことを考えると人一人の値段ではないような気がする。最もこの世界はあの超現実的な冨樫作品なのだから安く売られていくのもリアルだ。さらに言うなら老人は十万ゼニー、一人目の男は三十万ゼニー、二人目の男は二十一万七千五百ゼニーだった。
「ほら、オマエの出番だ」
 そういって防護服の一人がオレの背中を押す。さっきの人と違い完全にオレの事を商品と見ている。
 オレは無言で頷き舞台に上がっていく。
「さあ本日最後の商品となります」
 舞台に上がるとそこには一人の男、マイクを持っているところから司会と思われる。
 舞台の下には予想よりも遥かに多い、百人近い人間がいた。どうやら十数人と思っていたのはオークションに参加している人数でほかの人間はこの見世物を見に来ただけか、もしくは商品が気に入らなかったのだろう。
「この商品は昨日捨てられたばかりのようで特に傷が見当たりません。またそれなりに従順な性格で反抗的な態度を見せませんが友好的とはいいがたいでしょう。そんな子供を手なずけるのも面白いでしょう。また容姿も優れまたほんの十歳前後ということで将来性もバッチリです。さあ何かいうことはありますか?」
 司会の男がオレにマイクを向けてくる。
 正直、緊張と恐怖で舌が凍りついていた。オレは首を横に振ると。
「おやおや、怖くて喋れないようですね。さあこのかわいらしい子兎をお持ち帰りするのは誰でしょうか?では二十万ゼニーからはじめましょう」
 司会の言葉にすぐに客がとびつく。
「三十万!」
「三十五万!」
「四十万!」
「さあさあ、次の方もういませんか?四十万じゃまだまだお安い値段ですよ」
 司会のその言葉に周りから笑いがおきさらに値が上がっていく。
 そしてついにその値段が止まるときがやってくる。
「百二十五万!」
「おっと百二十五万がでました。さあほかにいませんか?ほかにいないなら23番の男性に決まってしまいますよ」
 最後に値段を言った男は見ただけで吐き気を催すような人間だった。飽食になれ太った腹にパンパンに膨れた顔、さらにその顔にはいやらしい考えに緩んだ笑みを浮かべていた。どうやら早くもオレを犯すことを考えているようでその顔と目が合ったとき寒気が起きた。
 こんな奴に買われるのはマジ勘弁だ。そう思いオレはそいつを思いっきり睨む。するとそいつは「ひっ」と息を呑む。同時に会場が一瞬静寂に包まれる。
 そのときどこかで小さく「ほぉ」と聞こえたような気がした。
「さ、さあさあ他に居ませんか?百二十五万ですよ」
 その司会の言葉にまた会場がざわざわとうるさくなる。
「他に居ないなら……」
「二百万」
 会場に小さくつぶやく声が、しかしなぜか誰にでも聞き取れる声が響くわたる。
 オレがそちらを向くとそこには85のバッチをつけた長身痩躯で黒い髪がやたらつんつんした眼光の鋭い男がいた。それは先ほどの声が聞こえたところからだった。
「に、二百万でました。二百万です、さあ他にいませんか?」
 司会の声に最後に私を買おうとした男が「二百十万」というが、もう一人の男があっさり「三百万」と返した。
 このあとやせた男が百万ずつ上げていくそして………。
「二千二百万!二千二百万ゼニーが出ました。いったいどこにこの少女に価値があるのかそれは本人たちにしかわかりません。さあどうしますか。このまま出ないなら85番の方の御買い上げです。いませんね、では二千二百万ゼニーで85番の方が御買上げです。ちなみにこれはこのオークション歴代二十八位の金額です」
 そういってオレは横から出てきた筋肉ムキムキな男に手錠を引かれ85番の男の下に連れて行かれた。
 周りから拍手と最後までオレを落とそうとした男の視線がまとわりつく。
「それではサインをお願いします」
 筋肉ムキムキの男からの用紙にサインを書き男は懐から小切手らしきものを取り出して男に預ける。正直ハンター文字は読めないがなんとなく何かをしていることはわかった。
「ではこれが手錠の鍵となります。なお返品は受け付けないのであしからず」
 そういって男は去っていく。
「それでは本日のオークションは終了させてもらいます。またのお越しをお待ちしております」
 そういってこのオークションは終わった。
 オレは男を見る。なんとなくその男に見覚えがあったが思い出せない。
 もしかしたら原作で出ていたのかもしれない。
 そんなことを考えながらオレは彼の後を追った。
 何故彼の後を素直に追ったのか。それは多分彼からはどうがんばっても逃げ出せないことがわかっていたからだろう。



[1891] 基本的に碌な事が起きない (H×H)
Name: くるくる
Date: 2006/04/03 19:01
 どこかで見た男はやはりどこかで見ていた。
「俺の名前は病犬。俗に言うマフィアだ」
 あれだ、世に言う原作キャラだ。
 一応まだ原作でヨークシン編は始まっていないみたいだ。
 だって彼死んだでしょ。
「とりあえず黙っていろ」
「あ、あの……」
 オレが何かいおうとしたら病犬はオレの顎を掴み「黙れ」といってオレを突き放した。

 リムジンから見ていた景色がゴミ平原から普通の荒地になる。
 出るまでに二時間それも多分時速百キロは出ているはずだから少なくとも二百キロは進んでいることになる。
 さらにそのまま数時間たつとそこには飛行船場があった。
車のまま飛行船に乗る。そこで病犬に「降りろ」といわれ素直に降りる。
そのままそれなりにいい客室に入れられる。
正直言うとそこはそれなりにいい客室のようだった。さすがに個人の持ち物とかではないようで調度品のひとつのメモ帳にLLK飛行船株式会社とあった。
「おい餓鬼。名前はなんていうんだ?」
「……信一郎・古賀」
「変な名前だな」
 あんたに言われたくないよ。
「まぁいい。死ぬなよ」
 そういって病犬は思いっきりオレの背中を叩いて部屋を去っていった。

 なにをされたのかは何となくわかる。
 今おれの体からまるで忍空の勝身煙みたいなのがぼわぼわと出ている。
 多分無理やり精孔をこじ開けたのだろう。
 ここで原作を知っていなければこのまま慌てて力尽きて死んでいただろうがここは原作を知っている人間あわてず落ち着いて纏をしてみる。
 とりあえず自然体でたってしてみる。
 ………………………
 ………………
 ………
 できん。
 やばいこのままだと死ぬ。
 今度は座禅を組んで(といっても見様見真似だが)落ち着いてみる。
 ………………………
 ………………
 ………
 これも無理。
 とりあえず楽に座ってからだの中の血液が巡回しているイメージをしてみる。
 ………………………
 ………………
 ………
 お、ちょっとどうにかなった、だがすぐに纏が解かれてしまう。
 とにかくこのままやってみよう。

 いま、ものすごく体がだるい。
既に座ることもできずにベッドの上で体を横にしている。
最初ものすごい勢いで出ていたオーラが今ではほんの僅かしか出ていない。多分これが尽きたとき死んでしまうのだろう。
 死。今までどこか非現実的だったものがものすごく身近にいる。確かに主人公補正の無い人間にはものすごく危険な世界だってことがわかっていたのに心のどこかで漫画の世界だから死なないと思い込んでいたのかもしれない。
 いやだ、死にたくない。オレは生きたい。
 死、生、死、生、死、生、死、生。
 ぐるぐると頭の中を駆け巡る。
 あぁ思えば短い一生だったな。まさかこんな異郷の地で死ぬことになるなんて。こんなことなら姉貴と一緒に燃の修行をやってればよかった。
 そう思いながらオレの意識は遠のいていった。

 今日流星街の人身売買オークションで面白いものを見つけた。
 本来ならボスの息子(といっても30代)が来る予定だったが急遽十老頭主催のパーティーがあるために後継者としてついていくことになった。
 もともとオークションの箔をつけるためにゲストとして呼ばれたのだ、参加を一応していたのでここで断ると多少問題となるので代理として自分が行くことになった。
 まあ十老頭候補がくるのと現陰獣が来るのでは多少評価は落ちると思われるが、それでもマフィアの最強の武闘派が護衛の任務ではなくオークションの代理としてきているのだから問題は無いと考えたのだろう。
 俺は壁に寄りかかりオークションを見ていた。
 人を殺す仕事をしているとそれなりに人を見る目はついてくる。強さ弱さだけに限らず人間の器というものも多少わかるようになったつもりだ。
 そして今日ここに集まった人間も売られる人間も屑ばかりだった。
 買う奴らは腐った欲望で濁った目をしていた。
 売られる奴らは養豚所の豚のような目をしていた。
 こんな風景を見る気にはなれず俺は壁に寄りかかったまま目をつぶり眠り始めた。
 眠り始めて三十分ほどあとのことだった。
 一瞬ほんの僅かの威圧感を感じて目を覚ます。
 殺気と言うにはお粗末だがほんの少し漏れただけとしたらかなりの使い手だということがわかる。
 警戒して目を開けるとそこには静まり返った会場と舞台に一人の餓鬼がいた。
 目にオーラを集めてよく診るとそいつは普通の人間よりオーラの量が多かった。
 そいつに念のセンスがあるかはともかく素質はありそうな奴だった。
 その様子に俺は少しの関心と僅かな呟きがもれる。
 こういうのは買っておいて損は無いだろう、これだけ才能のある人間は早々いないしこんなに簡単なところで手に入れることは難しい。
「さ、さあさあ他に居ませんか?百二十五万ですよ」
 一応ここで三千万までなら女を買っていいといわれていた。もちろんあの時は冗談で言っていたのだろう。それでもこの餓鬼は三千万の価値を出してもいい。少なくとも完成した超一流の念能力者なら一ヶ月で一億は軽く飛ぶのだ。それなら多少時間をかけて念能力者を作ったほうが低コストでいい。
 そう考えて俺はこの餓鬼を買った。
 そしてその考えは間違っていないみたいだ。
 今ベッドで胎児のような格好で横になっている餓鬼は既に纏をしている。
 ベッドの上には汗と涎と失禁でびしょびしょな上に纏っているオーラの量はほんの僅かしかない。
 きっとぎりぎりまで纏ができていなかったのだろう。それでも自力で纏をすることができたのだ。
 本来ならほとんどオーラが無くなったときに周をすることでオーラまとわせ擬似的な纏状態にしたうえで解除すると飛躍的に生き残る確立が上がる(それでも一割が五割になる程度だが)。もっともそれも死に掛けるほどオーラを放出したあとのことでできるタイミングはほとんど無い。
 それをせずに本能だけで纏を会得したのだ。
 二千二百万ではお釣りがきそうだ。
 俺はそう思いながら携帯でボスに連絡する。
「えぇボス。今日は面白いものが買えました」
 ほんと面白いことになりそうだ。



[1891] 基本的に碌な事が起きない (H×H)
Name: くるくる
Date: 2006/04/05 19:18
「おい、起きろ」
 オレは病犬に蹴り起こされる。
 気がついたら窓からの景色は既に地上でベッドにはオレの汗と涎とおしっこで汚れていた。マジ勘弁だ。
「起きたなら早くそれに着替えな、今からお前の仕事場に連れて行ってやる」

 気がつけば纏はできていた。というより今となっては何故さっきまでできなかったのかという疑問が出てくる。これで少なくとも衰弱死は免れたわけだが今後どうなっていくのかがわからないのが悲しい。
 オレは病犬から渡されたシャツと短パンに着替えてさっきのリムジンに乗る。
周りはどうも都会らしい、もっともハンター文字が読めないのでどこかはわからない。
 数十分車に揺られついたのはひとつの屋敷だった。
 結局また個室に入れられ「休んでいろ」と一言で放り込まれた。そのあとガチャっと音がしたので鍵を閉められたのだろう。
 とにかく今日は本当に疲れた。こちらに来て数日この先どうなるのだろうか?
 もっとも深刻な考え事より暖かそうなベッドの誘惑に負けてオレは倒れこんだ。

 ボスの部屋に向かう途中に夜叵(ヤカタ)に出会った。
「あらあらお帰りなさい、病犬。早かったわね、何か面白いものでも買ってきた?」
 彼女は真っ黒いドレスに真っ黒いベール。世に言う喪服に近いものを着ている。彼女は異常なまでに黒に執着している。
 そのわりにいつも明るい女である。
「あぁ結構将来有望な念能力者を一人買ってきた」
 その言葉に彼女はさらに愉快そうに言う。
「あらあら、それは女の子かしら。それとも男の子かしら。どちらにしろ可愛らしいほうがいいわ。今から見に行ってみようかしら」
「やめておけ、少し前にオーラを開放させたばかりで疲れているだろう。とにかく眠らせておけ。それよりボスがどこにいるか知らないか?」
 彼女は少し上を見ながら右手の人差し指をあごに当て考え込んでいるようにしている。
「あらあらボスならさっき帰ってきて今は書斎にいるわ。仕事をしているようだけど特に忙しそうじゃないから今会いにいっても大丈夫じゃないかしら」
 俺は彼女に礼を言ってその場を去る。
 彼女はまたあごに人差し指を当て上を見ている。どうやらあの餓鬼を見ているようだ。
 俺はとにかくボスの下へ向かう。
 コンコン
「ボス、病犬です。入ります」
 部屋には一人の男がいた。
 名前はドルバル・グロウフィード。
 年は三十五歳、念能力者では無いがそれでも威圧感を感じる。
これが百を超えるマフィアを参加に治める男の気なのだろう。
「病犬か、今帰ってきたのか。とにかくご苦労だった。何か報告することがあるか?」
 
 病犬の報告はなかなか面白いものだった。
 どうやら彼は女の子を一人買ってきたらしい。
 私はある詩を思い出した。

 『使いの犬が天使をかってくるだろう
  天使を逃がしてはいけない館に住まわせるのがいいだろう
  犬に任せすぎるのはよくない
  天使はいつかあなたを助けるだろう』

 確かノストラードファミリーの組長の娘の占いだったと思う。
 次期老頭候補に恩を売るのと周りに対しての宣伝をかねて送ってきたのだろう。
 あっているのか間違っているのか、それは今後の予言を見て決めればいいだろう。
「病犬、その子供は夜叵に任せる。下がっていいぞ」
 使いの犬が病犬なら天使がその子供だろう、なら夜叵と館をかけているのと住まわせるは世話と考えていいだろう。とりあえず子供のことは夜叵に任せておけばいいだろう。
 そう思い新たな書類に取り掛かる。仕事はまだたくさんあるのだ。

 目を覚ますと目の前には喪服っぽい黒い服を着た美女がいた。
「あらあら、やっと起きたの。おはようお嬢さん。私の名前は夜叵。あなた丸一日眠っていたのよ。あらあら念の総量は多いのね、今後の成長が楽しみだわ。あとでお洋服を準備しておくわ。先にシャワーでも浴びたあとにでも着て頂戴。私は外で待っているわ」
 オレが何か言う前に彼女は部屋を出て行った。
 仕方ないのでシャワーを浴びることにする。この体になってはじめてのシャワー自分の体だというのになぜか無駄に緊張しながら浴びてしまった。
 シャワーを終えて部屋に戻ると彼女の言った洋服はすぐに見つかった、けど着方がわからん。
 オレは彼女に部屋に入ってもらってその服を着せてもらった。
 
 真っ赤なスポーツカーに乗って街中を移動している。
 なにをしに行くのかを聞いてもただ「秘密」としかいわなかった。
 彼女の相変わらずの真っ黒な喪服のような服に真っ赤なスポーツカーはミスマッチのような気がしないでもない。
 ちなみにオレの服は真っ白いドレスのようなワンピースに白いつばの広い帽子を持たされた。
 三十分ほど移動すると豪華なオープンカフェに着いた。
「ねぇ、あそこにいる人見える?」
 彼女は中年男性を指差す。
 オレは無言で頷く。
「それじゃあ、あの人を殺してきて」
「……本気でいってるんですか?」
「あら、失礼ね。冗談でこんな所に来ないしこんなこと言わないわよ」
 数秒の沈黙の後オレは静かに「無理です」といった。
「そう、ならこうしたらやってくれるかしら」

 『死霊館(ハウスオブデビル)』

 夜叵が小さく呟くといつの間にかオレの左手に不思議な器具がついていた。それはオレの左手を完全に伸びきって動かすことができない。
 さらに体も動かすことができなくなっていた。
「あのこれは?」
 このとき既に何かいやな予感がしていた。
 不安を感じるとにかく何かがあると思いしっかり見ようとする。
「あらあら、もう凝のコツはできるようね。まだまだ力も技術も足りないけど特別に見せてあげるわ」
 出てきたのはオレが座っていた座席に重なるように鉄でできた椅子とそれに付属している拘束具がオレを拘束している。
「それじゃあ最後に改めて聞くわ。あの男殺してくれるかしら?」
「……無理です、出来ません」
 彼女は少し残念そうな表情とうれしそうな表情が入り混じった笑顔でいった。
「そう、なら少し素直になってもらいましょうか」
 ぴっ、という音それはどこか間抜けで不思議な音だった。
不思議に思うオレが何かを言う前に彼女はオレの目の前に何かを投げ出した。
それは薄くピンクでちょっと赤いものが混じっているけどどこと無く綺麗だった。
「どうやる気になったかしら?」
 伸ばされた左手から少し小指がすうすうして少し痛い。
 オレは彼女の笑顔を見てそして左手を見る。
 どこかおかしい。
 親指は普通、人差し指も大丈夫、中指薬指いたって変わりない。でも小指が正しくは小指の爪が無い。
 ! 小指の爪が無い。
 痛い、痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!
 何故、どうして、オレの小指の爪が無い。
 気がつけば目から何か暖かいものが溢れている。鼻からも出ている。息苦しい。
「あらあら、涙と鼻水で顔が汚れているわよ」
 そういうと夜叵は取り出したハンカチでオレの顔を拭う。
「どうやる気になってくれたかしら?簡単よ、あの男の頭にこの銃の弾を全部叩き込んでくるだけよ」
 恐怖が体を縛るそれは肉体的恐怖と夜叵に対しての精神的恐怖感、それでもオレには人を殺すことは出来ないと思う。
 オレはその言葉に首を振る。
 夜叵は何も言わずに今度はゆっくりとした動作で薬指を撫でる。
「あらあら、そうですか。ではこの爪、剥きましょうか?それとも割りましょうか?そうだわ、まず針を刺しましょう」
 そういうと彼女はどこからともなく小さな返しのついた針を取り出す。
 オレはゆっくり首を振る。
「さあどうします、殺してきますか?」
 オレは頷くしかなかった。
「まぁ!よかったわ、これ以上あなたに酷い事をするのは心苦しいと思っていたのよ。さあ手を出して治療するわ」
 そういって彼女は鮮やかに指の治療をする。
 彼女は治療しながら使用する銃の説明を始める。オレはそれを何となく理解しながら彼女の話を聞く。
 多分オレはこのあと人を殺すことになるのだろう。
 これが漫画の世界とかはもう関係ない。痛みも苦しみも苦悩も、すべてが真実で私には本当のことでしかない。
 今まで楽しんでみていた漫画。でもこれは現実でもう逃げることは出来ない。
 オレはどこで間違えたのだろう。

 カフェで一休みしながら新聞を読んでいたときのことだった。
 私は今後の予定を考えていた。
 今日の仕事はあとひとつで離婚の相談だけだった。
 しかし数日後の裁判のことを考えると憂鬱になる。
 それはマフィアに関係しているためどこも仕事を請けなかったらしい。それで結局最後に来たのが私のところだった。大学の恩師の紹介だったために断れないものだったが出来れば断りたかった。
 なんでも一般人から政治化になった男が殺し屋に殺され、その殺し屋を雇ったのが別の昔からの政治家家系の女がマフィアに依頼したらしい、それを知った母親が裁判を起こす。
 このような裁判は数十年前から行われてこないらしい。何でも裁判が行われる前に事故がおきて起訴が取り下げられるのが通例らしい。
 この地方以外ではおき得ないことだ、マフィアが支配する街そういわれだして数十年。このようなことがいわれているのはこのような事件がおきても警察が動かない。
 なんでもマフィアを世界規模で治めている十老頭といわれているマフィアの幹部が代々輩出されているかららしい。
 気がつくと目の前に真っ白い帽子と真っ白いドレスを着た少女が立っていた。
「どうしたの、お嬢さん?」
 少女はものすごく驚いた顔を下あと、とても悲しそうな顔をした。
「ごめんなさい」
 少女の呟きを聞いたあと、聞きなれない乾いた音がした。
 それと同時に私は意識を失った。

「よく出来たわね」
 夜叵はそういって血塗れのオレを抱きしめる。
「これからは、私が守ってあげるわ。すべて私に任せてくれればいいわ。今は何も考えなくていいの、私の言うことだけを聞いて生きていなさい」
 彼女はオレを優しく抱きしめてくれた。
「そういえばあなたの名前を決めて無かったわね。……そうね、あなたは今日から雛(ヒナ)と名乗りなさい。名前はあなたの力がついてきたら新しく考えましょう」
 これがオレのヒナとしての始まりだった。



[1891] 基本的に碌な事が起きない (H×H)
Name: くるくる
Date: 2006/04/10 18:25
 豪華な部屋の中でオレは目を覚ました。
 窓からの光で今が夜だということがわかる、隣には美女が寝ていた。ベールをかぶっていたためよくわからなかったが多分夜叵だと思う。
 どうもこの体になって低血圧になったみたいで目覚めてから脳が本格的に活動するまでに多少の時間がかかった。
 隣に女性が寝ていることにはもう驚かない、正直いまそれ以上のことで頭がいっぱいだった。
「……はぁ」
 目を覚まして一番に思い出したこと。それは僕が人を殺してしまったということだった。
 隣には僕に人を殺させた張本人が気持ちよさそうに眠っている。
 正直このままここにいる気は起きない。
「……逃げよう」
 自分に言い聞かせるように呟く。
 正直このまま人殺しを続けたいとは思わない。いまならキルアが殺し屋になりたくないといった気持ちがわかる。主人公はよく暗い過去とかそういう話を聞くけど自分がその立場に近いものになると正直マジ勘弁だ。
 いままで人殺しどころか悪意を持って人を殴ったことすらないのだ正直罪の意識で潰れそうだ。といっても自殺や自首して警察に捕まりたいかというと、もちろんそんなつもりは無い。
 とにかくこのままここにいても自体が改善するはずが無い。
 オレのいまの格好が白い下着だけなのでとにかく自分に合う服を探す。
 周りにはさっきまでオレの着ていたと思われる血まみれ服と夜叵の着ていたと思われる黒い喪服のような服が落ちていた。
 正直血まみれの服をもう一度着るつもりは無いので箪笥を開けてみる。
 そこにはオレには大きな黒いドレスと丁度良さそうな真っ白なドレスの二種類しかなかった。(もっとも細部には違いがあるが)
 オレはドレスの中でもできるだけシンプルで動きやすそうなワンピースを選ぶ。
 正直言うとかなり動きやすい、もっとも油断するとスカートがすぐにめくれそうになる。
 ストッキング(ちなみにこれも白かった)を履こうかどうか悩んだが履くことにする。靴下が無いのでこれを履いておかないと靴擦れを起こしそうな靴しかなかったためだ。
 オレは夜叵を起こさないように静かに部屋をでる。
「おい、こんな夜中になにをしている」
 その言葉にビックっとしてしまう。振り向くとそこには病犬がいた。
「あ、あの、その、えっと」
 オレが言葉に詰まってしまう。
 病犬は何を思ったのか、
「トイレとシャワー室なら部屋にある。大浴場に行きたいなら突き当りの階段を下りてまっすぐ言ったあとに玄関ホールから正面に進んで曲がり角で左だ」
 そういって彼は去ろうとするが一度立ち止まり。
「あまり夜中に出歩くな。あとこれをやる」
 病犬は一振りのナイフを差し出した。
「ベンズナイフには届かんが十分に念のこめられたナイフだ、もし侵入者に会ったり危険を感じたら躊躇無くこいつで刺せ」
 ここに来るときに比べて格段に優しくされているような気がする。
「何でこんなに優しくしてくれるんですか?」
 オレの質問に彼は軽く笑い「仲間を大切にするのはマフィアにとって大事なことだからだ」そういって彼は去っていった。多分また見回りをするのだろう。
 彼の言葉どおりにいくと玄関があったオレは少し彼に対して後ろめいた気持ちになるがオレはその思いを無視してこの屋敷を出て行った。

 俺が見回りを続けていると、とある部屋から夜叵が出てきた。
「夜叵、これでよかったのか?」
 俺の言葉に夜叵はくすくすと笑いながら「これでいいのよ」といった。
「あらあら、心配性ね病犬は。大丈夫よ雛はそのうち戻ってくるわ。だってこの世界は一人で生きていくのは辛すぎるもの」
 そういったあと彼女は「お休みなさい」といって部屋に戻った。
 正直俺にはこの女の考えが解らない、それでもボスが夜叵に任せるというのならなにも言うまい。
 とりあえず俺にはまだ見回りの仕事が残っているのだから。
 俺は雛の安全を多少考えながら見回りを再開した。
 そういえば屍(かばね)はどこにいるんだ、今日はあいつも見回りだと思ったのだが。

 ………これからどうしよう。
 姉貴のよく見ている夢小説のサイトならここは天空闘技場に行くのがセオリーらしい。
 実力とお金と部屋が簡単に手に入りそうだ。
 それと文字の勉強をしないと、正直ハンター文字なんて読めないのだから。
 いろいろ考えているといつの間にか繁華街っぽい場所に出た。
 ここら辺は現実世界とまったく変わらない、いやもしかしたらこっちの世界のほうが科学は進歩しているかもしれない。
 とりあえず今後の展開を考えながら周りをきょろきょろと見回してみる。
「おい知ってるか?」
「なんだよいきなり」
 近くにいた男たちの話し声が聞こえた。とりあえず情報収集になるだろうと聞き耳を立てる。
「この前殺人事件があったじゃんか」
「あぁこの前のカフェで起きた弁護士通り魔殺人事件だろ。まったく世も末だな、まだ十を超えたばかりの子供が銃で撃ち殺したらしいな」
 オレはその言葉に唖然とする。しかしよく考えると当然だ、白昼堂々殺人をしているのだから事件になっていてもおかしくない。
「いやな、それが通り魔事件じゃないらしいんだよ。何でもマフィアの殺し屋が動いているらしいぜ」
「だからか、警察が動いてないのは。でもおかしくないか?結構な額の懸賞金でてるし、テレビで報道されてるぜ」
「なんでもその弁護士意外と人望があったらしくてな、有志の人間やその友人とかが懸賞金をかけたらしいぜ。そのおかげでここら辺にブラックリストハンターが集まってくるらしいぜ」
「何だよそれ。ならここら辺での売り注意したほうがいいな。さすがにハンター相手に袖の下を渡しても意味無いからな」
「まぁ俺ら売人は大体十数万くらいだからそれ以上渡せば意外と見逃してくれるぜ。もっともなかには賄賂渡しても警察に突き出す奴らがいるからな。売りはできるだけよしておいたほうが無難ではあるな」
「まったく商売上がったりだぜ。あ、そうだ今日は俺が飯おごってやるぜ、いい話聞かせてもらったからな」
「そういうなら高級料理でもおごってもらおうかね」
「ばーか、そんなの食わせる金なんかね~よ」
 男たちはそのような会話をしながら去っていった。
 正直、オレにとってとんでもない話だった。
そうオレは人を殺しているのだ、仮に警察が動かないとしてもこの世界にはハンターがいる。
オレは念を覚えて(といっても纏をしているだけなのだが)いるためそこらの普通の人間よりは頑丈で、殴り合いになれば勝てると思う。
 そしてそれはアマチュアのハンターくらいまでならオレでも勝てるものだと思う。
しかしプロのブラックリストハンターには勝てる気はしない。彼らはオレより確実に念の修行もしているはずだし実力経験共に上のはずだ。
 もしプロのハンターに会うことになったら。つかまるならまだしも殺し合いになったら確実に勝てない。
 オレはポーチに入れたナイフを触る。それはひんやりと冷たく研ぎ澄まされた鋭さがある。オレがこの世界にくるまでに見たどの刃物よりも鋭さと恐ろしさがそこにはあった。
 それを握り締めると少し心強くなった。
 オレはベンチから立ち上がり移動することにする。
 それと同時にいまの服装に不安を感じる。オレが事件を起こしたときの服装に類似しているからだ。とにかくオレは裏路地っぽいところを今後の計画を立てながら移動し始めた。

「そこのお嬢さん。どうしたのこんな真夜中に。いまの時間帯は君みたいな女の子が来る時間じゃないよ。お父さんやお母さんはどこにいるのかな」
 先ほどの話を聞いて数時間後、オレは裏路地で軽薄そうな男に声をかけられた。
「あの、いえ別に親とかそういうのは」
 突然のことに驚きわけのわからないことを口走ってしまう。
 しかしそのことが男にオレが保護者のいない少女だということをばらしてしまった。
 突然男の表情が変わる。それは獲物を見つけた肉食獣のような目でオレを見た。
 その目は醜い欲望と黒いサディズムを持ち合わせたものでしばらく前まで自分と同じ性を持つ生き物とは思えなかった。
 男は突然オレの腕を取り連れ去ろうとする。
「お、おい止めろ」
「黙れメスガキ」
 バッシッ
 それは突然の暴行。
痛みはほとんど無い、音の割にあまりにも軽すぎる一撃だった。
それでもオレは体が金縛りにあったように固まってしまった。
人生ではじめて他人に悪意のみで暴力を振るわれた。
もちろん子供のころに親や先生、また姉貴との喧嘩で殴られたり殴りあったりすることはあった。しかしそれには本気の悪意は無くどこか手加減した、もしくはまったく同じ立場のものでしかなかった。
気がつけばさらに薄暗い路地裏に引っ張り込まれた。
「静かにしろよ」
 そういって男はオレの口に何か布のようなものを詰め込む。
 ここに来てようやく硬直がとれる。
 それでも既にオレは男に押さえ込まれなにうまく動くことができない。
「ん~ん~」
 叫ぼうにもどうすることもできない。いくら纏で体が頑丈になってもまだ攻撃の手段を持ってないのだ、いくら体を動かしても十歳前後の少女と成人した男の体型では押さえ込まれればどうすることもできない。
 びりびり
 真っ白なドレスが引き裂かれる、同時に思考すら薄まりかける。
 気がつけば衣服は下着すら剥ぎ取られ生まれたままの姿になっていた。
「ほう、結構きれいな体だな。今日は当たりだぜ」
 自分が少女になって始めて感じた、他人に自分を犯されるという感覚。
よくレイプ事件の記事でレイプされそうになったら抵抗するようにとか叫べばいいとか言う。オレも今までそう思っていた、でも今の状況でどうすればいいのだ。
 オレは呆然とするしかなかった。
 男は「やっとおとなしくなりやがった、まったく手間かけさせやがって」などといっている。
 このままオレは犯されるのか?こんなゲス野郎にこのまま自分を蹂躙されていいのか?
 いやそんなはず無い。そんなことが許されるはず無い。
「いいか、叫べば殴るからな。わかったな」
 オレがおとなしくしているのに気をよくした男は口の中に詰めた布を取り出す。
 そのまま唇を奪われた。
ファーストキス。この体になってはじめてのキス。
だがもうそんなことは関係ない、男の舌がオレの口の中を蹂躙する。
しかしその時オレは、この時男の舌を思いっきり噛んだ。
「ぐばぁ。あがばばば、お、おでのじだが。じだが」
 男が口から血を吐き出しながらのた打ち回る。
 ふん、いい気味だ。
 そのままオレは男の顔を蹴る。
 蹴る。蹴る。蹴る。蹴る。蹴る。蹴る。蹴る。…………………
 顔、頭、腕、足、急所、腹、男を蹴る。蹴って動いて見えたところをまた蹴る。
 何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も………………
 いったいどのくらい蹴り続けただろうか。
「お、おでがいだ、びゅ、びゅるじでぐでぇ」
 男は人間の原形を残してはいるがその顔は既に原形をとどめていない。
「オマエは許してといった子供や女性にどのような態度をとった?許したか止めたか?一度でも止めたなら許してやる」
「……やべだ、やべだごどある。だがらだのぶ。だずげでぐべ」
 一瞬の沈黙が起きる。
 オレは男を虫のように蔑んだ目で見ているのだろう。
 それでも男の目には僅かばかりの希望の光が見えた。
「いやだ、お前は殺す」
 その言葉に男の目の光は消えた。
 オレはさっき落としたポーチを拾い上げナイフを取り出す。
 鞘から抜きその刀身をオレは始めてみた。
 それはいままで持ったことのある刃物とはまったく違っていた。
 それは素人でもわかるほど人を傷つけることを前提にしたような刃物だった。
 無骨で実用本位そのものの印象を受けるナイフを片手に男に近寄る。
 男は既に動けないだろうに必死に後ずさりをしようとする。もっともオレの歩みのほうが断然速く、あっさり男の元に着いた。
 男の悲鳴と許しを請う声が聞こえる。それでもオレは許す気は無い。
 軽く一閃。それだけで男の体を守るようにかざしていた腕が落ちた。
 正直ありえない事態にびっくりした。それでも病犬の言っていたことを思い出す。
 彼は「ベンズナイフほどでは無いが」といった。つまり多少なりとも念がこもっているのだろう。そう考えるとなんだか面白くなってきた。
 さらに一閃、二閃、三閃、四、五、六、七とナイフを走らせる。さすがに胴体は切り落とせなかったが腕や足があっさり切れることに面白さを感じた。骨は多少固い感覚がしただけで簡単に体を解体することができるとは驚いた。
 気がつくとオレは男を解体しつくしていた、多分このままでは男の身元もわからないだろう。
 
 急に肌寒く感じた。
体を見るとオレは裸の上に血まみれでさらに血まみれのナイフを持っていた。
目を凝らしてみると、オーラの量が減ってるような気がする。
いや、多分減っているのだろう。ナイフの刀身には細かい文字のようなものが刻まれており、さらにナイフにもオレのオーラが纏っていた。きっとこのナイフは使用者のオーラを使い自動的に周をするのだろう。
オレはオーラが尽きる前にナイフをしまうことにする。
ナイフを男に裂かれたドレスで拭ってから鞘にしまう。
ナイフを鞘にしまうと同時に急に気持ちが落ち着かなくなる。
今日、オレはまた一人の人間を殺してしまった。
その男は確かに人として最悪の人間だったと思う。
それでもオレは自分の意思でしかも、いたぶりながら殺してしまった。
この手で、この血まみれの手で。
「きゃーーーー!」
 女性の声が裏路地に響き渡った。
 声のするほうを見るとそこには中年程度の女性。
 とっさにオレは女性の反対方へ向かって走り出す。
 とにかく遠くへ逃げる。
 血まみれのまま、裸のまま、オレは裏路地の暗闇の中に消えていった。

 それから数日がたった。
 オレはぼろ布をまとい、ナイフをお守りのようにぎゅっと握り締め裏路地に身を潜めるように座り込んでいた。
 あの時から何度かオレは人を傷つけた。
 最初は食事にありつくためにナイフで人を脅し食事を得た。しかしそのあと警察に追われることになり事態をさらに悪化させることになった。
 今思えば何故他人を傷つけて食事を得ようと考えたのかその思考がわからない。きっと気が動転してたための行動だったのだろう。
 結局その行動が仇となり、さらにその後ホームレスに対してもその手段を使ったために彼らの中に入り込むことすら不可能になった。
 結局オレはホームレスからナイフで脅して食事を得たり、本当にひもじいときは野良犬や野良猫を殺して食べた。
 またいつの間にか手に入れていた真っ黒に薄汚れた布がオレの最初の防寒着になった、その後ゴミ箱やホームレスから奪った衣類を着て生活した。
 気がつけば人を傷つけることに対して罪悪感を持たないようになっていた。

 その日わたしは一人の男を狙うことになる。
 正しくは一人と一匹。
 一匹のほうはこの世界で言うところの魔獣と言われるものだろう、気がつけば使えるようになっていた凝で見ると狸のような生き物だった。
 人間のほうは大きな帽子をかぶり大きな刀を持っていた。
 オレはあの刀が欲しくなった。なぜかといわれるとなぜかわからない。とにかく欲しくなったのだ。
 だから奪おうと思った。だから彼を襲った。

 それはジンさんのところでの修行を終えハンター試験を受けるためにナビゲーターのあとについていっているときに起きた。
 路地裏に入って移動を始めて数分後、突然左側から殺気を感じた。
 とにかく抜刀して防御する。
 そこには真っ白い肌に真っ黒い髪と目の薄汚れたぼろ布を女の子がいた。
 少女の手にはナイフ。
 俺はそのナイフを見て驚いた。そのナイフは異常なまでにオーラがのっていた。
 少なくともこの剣で俺が周をして立ち向かったとしても勝ち目は無いだろう。
「カイトさん。大丈夫ですか?」
 今回俺を連れてきてくれたナビゲーターの鬼火狸が声をかけてきた。
 なぜかその声に少女は驚き一瞬の隙ができた。
 どうやらオーラの量に比べて実戦での経験地が少なそうだった。
 俺はその隙に乗じて刀を鞘に納め。大鎌を具現化する。強化系でない俺にはこのまま刀で戦うよりもっとも威力の高い武器で対応したほうが安全だと判断したからだ。
 少女は俺が具現化した鎌を見ると驚愕の表情を浮かべる。多分彼女は本能的に念を使っていて詳しく知らないのだろう。だから何も無い空間から鎌を出したとき驚いたのだろう。
 その隙に俺は鎌を一閃してナイフをはじく。
 少女を取り押さえようとしたとき、少女はすばやく身を翻しさらに深い路地裏へと逃げていった。
「危なかったですね、カイトさん。あぁ早く行かないと試験始まってしまいますよ。急ぎましょう」
 俺はおざなりに頷きながら鬼火狸のあとを追いかけた。
 彼女は昔の俺に似ていた。このあと試験が終わったら彼女の事を少し探してみよう。
 俺がジンさんに助けられたみたいに、彼女を助けたい。俺はそう考えた。
「とにかく試験をさっさと終わらせて彼女を探しに行くか」
 ジンさんに仕込まれた技術を使えばきっと簡単に見つけられるはずだ。
俺は二週間後試験が終了しだい彼女のことを探した。
その時彼女はある屋敷で幸せそうに黒い服を着た女性と笑いながら話していた。
 彼女には彼女の事情があり、また今が幸せそうなら昔襲った人間なんかに(仮に未遂だとしても)会いたくないだろう。そう考え彼女に会わずにジンさんを探しに出かけた。

 オレは逃げた。とにかく逃げた。
 あの狸は彼のことをカイトといった。
 今考えるとあの帽子には見覚えがある。
 いままで漫画でしか見たことの無い人間で最初は誰かわからなかったが、あの狸はカイトといった。
 きっとあのカイトだ。
 オレはどこか甘い考えでいた。
 ここが漫画の世界だからってきっとやさしい人が助けてくれると思っていた。
 でももう駄目だ。
 彼はプロだ。とても優秀なプロハンターだ。
 きっとオレを殺しに来るだろう。
 あの鎌を見たとき気がついた。オレと彼にはものすごい実力差があることに。
 あの鎌は命を刈り取る。
一撃目を避けられたのは幸運だった。
次はきっと殺される。
 もっと強くならないと殺される。
 どこかに隠れないと殺される。
 でもどこに?
 誰かオレを助けてくれる人はいるのか?
 オレはもう既にくもの糸を自ら切ってしまった。
 この世界でオレを助けてくれる人はもういないのではないだろうか?
 オレはもう犯罪者なのだ。
誰も助けてはくれない。
ほんとにそうだろうか?
誰もオレのことを抱きしめてくれないだろうか?
オレはがたがたと震えながら身を潜めている。
気がつけばオレの最初に纏っていたぼろ布が真っ黒い、それはまさに漆黒という色にふさわしいものになっていた。
オレは知っている。オレを抱きしめてくれる人を、オレを許してくれる人を、オレを助けてくれる人を。
気がつけば俺はある屋敷の前に立っていた。
「あらあら、お帰りなさい。雛」
 そこにはまったく変わっていない、相変わらず喪服のような服を着た夜叵がいた。
 彼女はこんなにも薄汚れたオレを抱きしめ撫でてくれた。
「もうどこに行っていたの?本当に探したのよ。さあとにかくお風呂に入りましょう」
 そういってオレの背中を軽く押して屋敷に入れてくれた。
「オレ、オレ、怖くて、逃げ出して。それでそれで」
「あらあら、もう大丈夫よ。怖い思いをしたのね」
 彼女はもう一度優しく抱きしめ、汚れているオレの額にキスをした。
 自然とオレの目から涙がこぼれる。
「あらあら、もうなかないで。それと女の子がオレなんていっちゃいけないわ」
 そういいながら彼女はお茶目にウインクした。
 オレ、いや私は彼女に抱かれ大声で泣き続けた。



[1891] 作者の妄想と設定。(ネタばれ含む)
Name: くるくる
Date: 2006/04/10 18:26
 これは本作品の蛇足的ものです。

 
 またこれはあくまで作者の妄想以外の何物でもないので、それは違う。とかそこはそうじゃないとか文句は言わないでください。お願いします。


 病犬(やまいぬ)について
 原作キャラです。
 もっともあっさり死にます。
 念能力は強化系。
 多分顎の力をもっとも強化していると思われる。
 あと神経毒に対する防毒効果。

 
 夜叵(やかた)について
 オリキャラ1号
 喪服の美女。(推定二十歳以上二十五歳以下)
 なぞめいた美女です。
 念は具現化系。
 能力名は「死霊館(ハウスオブデビル)」
 実は死霊と資料をかけていたりするけどぶっちゃけいまはどうでもよかったりする。


 ドルバル・グロウフィールドについて
 マフィアのボス。多分三十五前後
 次の空いたいすに座る十老頭候補の一人
 作者の予想だと十老頭はグループ内(地域?)である程度派閥がありその中での長が多数決?で選ればれるタイプと世襲のタイプがある程度混在してると思われる。
 そんでこの人は次の多数決で決める老頭の最有力候補だと思う。
 原作キャラか、オリキャラか(イルミに殺された人たちの誰か)はまだ作者にもわからない(爆)


 屍(かばね)について
 オリキャラ二号
 名前だけしか出てきてません。
 そのうち書きます。


鬼火狸(おにびたぬき)について
凶狸狐のたぬきバージョン。人間のときはタヌキっぽい
以上


カイトについて
原作キャラ
このカイトはかなり妄想です。
まずハンター試験を受けた年からして妄想。
念…多分具現化系
このSSの時には『気狂いピエロ(クレイジースロット)』まだ完成しておらずにそれぞれの武器を任意で具現化できていたが彼の中ではまだまだ威力が足りずに(といっても普通のハンターなら十分だと思われる、きっとジンの元で修行したからだろう)また沢山の武器を具現化できるためにさらに威力が落ちたと考えられる。きっと調子に乗って色々考えすぎたんでしょう。その後それぞれ必殺技とスロットによる武器のランダムセレクトによって威力を引き上げて完成したと思われる。
本作で刀で戦わなかったのは彼が強化系でなかったのとジンから貰ったと思われる武器を傷物にしたくなかったため。

 
最後にあくまでこれは作者の妄想です。本気にしないでください。



[1891] 基本的に碌な事が起きない (H×H)
Name: くるくる
Date: 2006/04/15 15:31
 オレがこの世界に来て一年半が経つ。
 つい先日山間に住むクルタ族が絶滅したというニュースが報道された。
 だんだん原作の始まる時間に近づいていく、それでもオレには関係ない、ここでゆっくり生活するほうがいい。
 朝起きて、食事して、夜叵とお茶をしながら勉強する、昼食をとり、念の修行をしたあとにお風呂に入り、夕食をとった後、夜叵とお茶をして就寝する。
 たまに仕事で人を殺したり、取引の護衛をしたり、ボスの護衛としていろいろな地域に移動したりするが特に事件は起きなかった。
 
 今日はそこまで風が強くなかったが雲がないせいか身を切るような寒さを感じた。
 相変わらずの真っ白いドレスと帽子、そして肩にかけている黒いケープ。
「まだですか病犬さん?」
 彼は携帯の時計を見たあとに「あと十分くらいだ」といったあとに空を見上げた。
「どうした暇なのか?」
「寒いし、暇です」
 彼は「くっくっくっ」と笑ったあとまた空を見ている。
「じゃあ、そろそろいくか」
 そう言って彼は隣のビルへと跳び移る、オレも彼に続く。
 いくつか先のビルにターゲットの居る部屋がある。

 話自体はよく聞くものだった。
 要するにとあるマフィアの会計係の一人が逃げ出した、そいつがハンターを数人雇って逃げているというものだった。
 そのハンターのせいでマフィアの人間が幾人か殺され、また麻薬の取引などの犯罪の記録などを持ち出し組織丸ごと警察に突き出そうとしているのだ。
 このままでは本当に一つの組織が無くなりそうだったのでそのマフィアは上の組織つまりオレ達のボスに頼みその会計係の確保もしくは殺害を依頼してきたのだ。
 
 屋上に着きそこから鍵のかかっていた扉を破壊し進入。
 下の階から屍が囮として侵入しているらしく銃声が聞こえる。
「この調子じゃ十は死んでいるな」
 まぁ屍の十や二十死んだところであまりオレたちには関係ないのでさっさとターゲットを探す。
 病犬は臭いを頼りに目標を探す。オレはそれに続く。
 広めの廊下に一人の男が居た
「止まれ。悪いがこれ以上先に進ませるわけにはいかない」
 目の前にはスーツを着た男。手にはリボルバー形の拳銃を持っている。そして男の体を流れるオーラから念能力者だということがわかる。
「悪いが先に行くぞ雛」
 オレは病犬の言葉に頷く。
「行かせんと言っただろ」
 男は病犬に向かって銃を構える。
 オレはそれと同時に体に纏ったオーラを纏から堅に切り替える。
 男はオレのオーラが切り替わったことに警戒して銃をオレに向けた。その隙に病犬は男の横を一瞬で通り過ぎた。
 男は悔しそうな顔をしたが気にせずにオレの方に銃を向けたままだった。
 オレはナイフを取り出し周をする。
 男も銃にオーラを集める。
 この時点で相手の系統がある程度予想がついた。
 相手は放出系もしくは操作系。
 それ以外の系統の可能性もあるが、もしそうだとしたら効率が悪すぎる。よほど上手く考えられた能力か具現化で何かよほど上手く考えられた特殊な能力で無い限り大して使える能力だとは思えない。
 特質系はまず無いだろう。漫画だったらこの男も特質かもしれないがこの世界に来て特質形の人間にあったことは無い、基本的にありえないから特質系なのだろう。
「喰らえ」
 男の声と同時に発砲。相手が引き金を引こうとした瞬間に体を射線からはずす。
 弾丸はそのまま通り過ぎ後ろの壁に当たる。それと同時にものすごい音が響く。
 ちらりと後ろを見るとそこには大穴の開いた壁があった。
「どうだ俺の『弾ける弾丸(バーストショット』』の威力は。今引くなら許してやる。子供を殺したところで手柄にならんからな」
 相手の男は傲慢に言い放つ。
 もっとも彼はオレに対してやさしさで言っているのだろう。
 子供を殺したくないという気持ちを持ち合わせているのだろう。
 こっちは殺すつもり満点だというのに。
「ねぇ、あなたプロのハンター」
 オレの場違いな質問に少し驚いた顔をする。
「そうだ、俺はプロハンターだ。プロ相手ならお前の上司も許してくれるだろう。早くここを去れ」
「そっかプロなんだ」
 オレはにやりと笑いながら答える。
「実は次のハンター証で十枚目なんだ」
 オレはそう言い放つと同時に男に向かって走り出す。男は急いで銃にオーラを溜める。
 男の持つ銃にオーラが溜まると同時にオレは床を思いっきり蹴り左側の壁に向かって跳び、そのまま壁を数度蹴り反対の壁に跳び移る。
 男にとっては予想外だったのだろう一発目の銃弾同様に後ろの壁にあたり大きな音を立てたのがわかった。男はさらにもう一度引き金を引いた。もっとも闇雲に引いた引き金は見当違いの方向に飛んで言った。
 オレは右の壁を蹴り天井に向かって一度跳び今度は天井を蹴って地面に着地する。
 相手は面食らって体をのけぞらせる。その隙にオレは首に狙いをつけナイフを一閃する。
 もっともさすがに相手もプロのハンターでナイフを紙一重で避ける。
 オレはナイフを振りぬいてしまったため僅かな隙ができる。男はその隙を逃さずにオレに蹴りを入れる。もっともその蹴りは体制を崩していたためと流のタイミングが遅かったためオレを遠く弾き飛ばす以外の効果は無かった。
 もっともそのせいで男との距離ができてしまい相手に弾幕が張られることになってしまう。
 どうやら相手の弾丸自体が念弾らしくリロードの隙が無い。
 そのかわりに連射のため威力が落ちているようでオレの隠れた壁をすべて破壊することができない。
 もっとも僅かずつ壁を削っているようなのでそのうちに壁を突き破り念弾が俺を襲うことになるか、それとも相手のオーラが切れて念弾を打ち出せなくなるかのどちらかだろう。しかし相手がこれだけ撃って来るのだから相手のオーラ切れはまず無いだろう。
 オレは覚悟を決めて着ているケープを脱ぎ軽く一振りする。
 それだけでケープはオレを覆うほどの布になる。
 これはオレが具現化したもので名前を『私を守る黒い闇(ブラックロース)』という。
 形や大きさはある程度自由にできるが色だけはなぜか黒以外変えることはできない。また本来オレは具現化系ではなく変化系でこの念布でメモリをほぼ使用しつくしてしまった。そのためこの能力以外は基礎と応用以外はほとんど使えなくなったようだった。それでもこの念布だけでもできることはそれなりにたくさんある。
 オレは念布で体を軽く覆い周をする。衣服には本来体を寒さや細かいゴミなどから守るという性質がある。オレがこの布にその力があると信じればそれだけで力になる。もちろん修行や才能は大事だ。それでももっとも大事なのは自分の力を信じ相手に打ち勝つイメージを常に無くさない心、それが念の力を強くする。
 大丈夫だ、この程度の念弾ならこの念布で防ぐことくらい簡単にできる。
 念布を盾にして飛び出す。
 相手の反応を気にせずに突っ込む。
「な、なに!」
 一瞬の出来事に相手は驚いたのだろう、弾幕が一瞬止まる。
 オレはそんなこと気にせずに相手に向かって疾走する。
 相手の念弾はオレの念布を貫通することができない。
 男の攻撃がやむ銃に念を込めているのだろう、オレはその隙を逃さずに相手に向かって念布を伸ばす。伸びた念布は相手の銃ごと手を覆う。
 男の驚愕の表情が見える。
 こちらが引っ張ると男はその力に抗おうと自然と相手の手にも力がこもる。その時オレは力を抜き相手のバランスを崩させる。
 そのままオレはすぐに走る。相手のバランスはまだ崩れたままでどこにも力が入っていない。
 念で強化したナイフで首を一閃。
 すぐに相手の血がかからないように体をずらす。
 相手の顔にはいろいろな表情が混在しなにを考えているかわからなかった。
 ただ一つだけ言えることはオレよりこの男のほうが弱かったということただそれだけだ。
 
 死体の血が止まるのを見届け相手に近づく。
 体中に血がついているがそれができるだけつかないように気をつけながら相手の服を探る。
「お、発見発見」
 男の財布を見つける。中には免許証とクレジットカード、レンタルビデオの会員証そしてハンター証があった。
 オレはハンター証だけ抜き取りほかのものを捨てる。
「雛、またやっているのか?」
 気がつけばオレの後ろに見知らぬ男の襟首つかんで引きずってきた病犬が居た。
「あ、病犬さん。プロハンターいました?」
 オレの質問に少し呆れながら「さぁ」と答えた。
「とにかくさっさと降りようぜ、どうやら下のほうも終わったようだ」
 いつの間にか下のほうでの銃声もやんでいた。
 ハンター証を見ながらオレは病犬の後に続く。
 これを集めだしたのにはちょっとした理由があった。

 オレがこの世界に来てちょうど半年が経ったときあるひとつのマフィアが潰された。名前はもう忘れたがそこは結構な武闘派でかなりあくどい事をやっていた。そのマフィアをプロハンターが数十人のチンピラを集めて壊滅させた。
 その組が壊滅したこと自体はボスも周りもそこまで気にはしていなかった。しかしマフィアにも面子というものがある。このまま舐められたままではいけないということでそのハンターを殺すことになった。
 それまで何度も人は殺してきたが念能力者を殺したことは無かった。
 仕事自体はあっさり終わった。
 確かに相手は念能力者だった、多少一般人よりは厄介だったし、はじめて念能力者との殺し合いに戸惑った。
 しかし相手が弱すぎた。自分のことをそれなりに才能があるほうだとは夜叵や病犬から言われて自信を持っていたが苦戦もせずにプロのハンターを殺せたことが逆に戸惑いがあった。
 だから本物かどうかを調べるためにハンター証を探した。そしてその相手はそれを持っていた。
 ハンターサイトにも一応アクセスはできた。のちに調べたところその男はプロになって五年のブラックリストハンターだった。
 逆に仕事でもっとも苦戦したのはアマチュアの念能力者だった。
 相手は強化系でかなり単純な攻撃のみの相手だった。それでもその攻撃に当たったらどんなに防御しても死んでいただろうし当時のオレの攻撃力ではダメージを与えることはできなかった。結局そいつは病犬が噛み付き、動きが鈍くなったところでナイフにすべてのオーラで周をしてようやく攻撃が通じるほどの相手だった。
 結局ハンター証を集めるのは趣味というより現実逃避といった感じで集めだした。
 ハンター証を集めることでこの世界がハンターハンターの世界であることを実感してなんとなくこの世界に現実感を抱かないようにするためだった。
 もっとも完全に人殺しになれたいまは既に完全な趣味のためだけに集めているのかもしれない。

 一階に降りるとそこには床すべてが血の海になっており、また周りにはメイド二つと執事三つそして統一感の無い服装をした大量の男たちの死体があった。
「屍、意外と死んでないね」
「そうだなもっと死んでると思ったんだが」
 そういうオレ達が出口から出るとそこにはメイド服を着た女性が居た。
「ご苦労様です、病犬様、雛様」
「屍、今回結構生き残ったね」
「まぁな、どうやら今回の相手が予想外にヘタレどもでな」
 急に女性の丁寧な口調が変わる。
「そいつがターゲットだな」
「あぁそうだあとは屍に任せていいんだな」
 女性は頷いたあと男に手錠をつけて引っ張っていく。
「それでは失礼します」
 最後にまた丁寧な口調に戻り彼女は男と共に車に乗り去っていった。
「それじゃあオレも帰りますね」
「あぁ、大丈夫だと思うが一応気をつけて帰れよ」
 オレは病犬にそういってその場を去る。
 病犬は最後に後片付けの現場監督としてこの場に残らないといけない。
 そうだ、帰りに夜叵に何か買って帰ろう。
 夜叵はあまり外に出歩かないためお土産を買って帰ると喜ぶ。
 オレは夜叵へのお土産はなにがいいか考えながら帰ることにした。



[1891] 作者の妄想と設定。(ネタばれ含む)その2
Name: くるくる
Date: 2006/04/10 18:44
 雛について
 今作の主人公。多分ヒロイン?女の子。肉体年齢的には十一歳。
 原作についての知識は暇なときに何度もH×Hを読み返すくらいは知っている。
 ただ数年経つと大まかな内容程度になっているだろうと思われる。
 不幸な中でも最悪の事態にはならない程度に運がいい人間。ちなみに第一話で病犬に目をつけられなければ変態に買われて性奴隷にされた挙句に臓器密売業者に下請けされていただろう。それが冨樫クオリティーだと思う。
 念系統は変化系。しかし逃亡生活の中で毛布がほしいと思い続けるうちに『私を守る黒い闇(ブラックロース)』を具現化。そのためにそれ以外の発が使えなくなる。
 ただそれなりに応用力があるために使い心地は悪くない。
 ブラック(黒)とクロース(布)でブラックロース、けっしてブラック、ロースといってはいけません
 応用についてはのちほど作品で説明します。

 屍について そのに
 彼女(?)は操作系能力者。
 雛はその能力や正体を一応知っている。
 今回出てきたメイドは本体ではありません(一応念のために)。

 設定とか正直言うとかなり蛇足です。
 できれば書かないほうがいいのですが、作者の力不足のためにこのようなものを書かせてもらっています。申し訳ない。



[1891] 基本的に碌な事が起きない (H×H)
Name: くるくる
Date: 2006/04/21 23:38
 最近どうも人生がとても楽しい。
「あらあら、どうしたの雛。そんなにニコニコして」
それは夜叵と夜のお茶会をしているときのことだった。
目の前には夜叵、後ろに控えているのは執事姿の屍、そしていつもどおりの白い服に黒い膝掛けのようにした念布『私を守る黒い闇(ブラックロース)』を置いている私。
「うんん、ただ楽しいの、私の生きてきた人生でいま一番楽しいような気がするから」
 ゆったりと流れる幸せな時間。ちなみに夜叵の前でオレというと怒られる。
 もっともこの三年で女の子の言葉使いも結構なれてきたような気がする。
 私の言葉に夜叵はうれしそうに微笑んでいる。
 その後一緒にお茶を楽しんでいると急に夜叵は上を向き右の人差し指をあごに当てた。
「あらあら、こんな夜中に珍しいわね。雛、どうやら侵入者のようね。さあ一仕事しましょうか」
 私は夜叵と一緒に侵入者の撃退に向かう。
 今日も楽しく生きて行きたい。

 侵入してきたのはどうやら普通の人間、数は十二人。多分どこかの鉄砲玉だろう。
「ちくしょう、なんだこの屋敷は?」
「黙れ、うるさいぞこの野郎」
「落ち着け、仲間同士で争っている場合ではない」
 リーダー格の男が周りの男たちを静める。
 夜叵の能力でこの屋敷の中で迷っているようだ。
 高いところから見ると彼らが何故迷っているか理解できないだろう。
 彼らはまっすぐ進んでいるがどれだけ行っても曲がり角が見えず、またどれだけ戻っても長い廊下だけで別の部屋に行くドアすら見つけることができない。
 なぜなら彼らはとある柱の周りをグルグル回っているだけなのだから。
 これは夜叵の念『死霊館(ハウスオブデビル)』の罠の一つで無限廊下。
 夜叵の念能力は建物を具現化している。この家自体は普通の屋敷だがその屋敷をおおうように夜叵が具現化している。
 その中にはいろいろな罠や設備がたくさんある。
 もっともこの男たちの運命はもう決まっている。
 さあ今日の仕事を始めよう。
 
 その少女が現れたのは俺たちがグロウフィールドの屋敷に侵入し、気がつけば異常なまでに長すぎる廊下に疑問を持ち不安を感じ始めたときのことだった。
「ふふふ、こんばんは。こんなところでいったいなにをしてるの?」
 気がつけば俺たちの後ろに十三、四歳くらいの少女が立っていた。
「だ、誰だ貴様?」
 ちくしょうわけがわかんねぇ。
 俺たちは口々にその少女を罵る。
「そんなにみんなで話しかけないで。私は聖徳太子じゃないんだから」
 白い服を着た少女はわけのわからないことを言う。
「てめぇは誰だ。それにここはどこだ、早くオレたちを出せ」
 兄貴がみんなを抑え質問する。兄貴はこういうときに頼りになるぜ。
 しかし少女は兄貴のメンチにも怯むことなく微笑んでいる。
「私の名前は雛よ。ここがどこかあなたたちはちゃんと知っているんじゃないかしら。ここはドルバル・グロウフィールド様の屋敷よ」
「てめぇ、俺たちをなめるのもいい加減にしろ。いいか俺様はぶ、ぶべら」
 兄貴が何か言おうとしたとき少女が消えた。
 それと同時に顔に何か生暖かいものを感じる。
 気がつくと兄貴の頭が無くなっていた。
「あ、兄貴~~~~!」
 周りから「ぶべらぁ」とか「あぐべぇ」などと奇声が聞こえる。
 い、いったいみんなどうしちまったんだ?みんな頭が、頭がねぇぞ。
「これが最後っと」
 みんないったいどうしっ…………

 念布やナイフを使うことなく素手だけで侵入者を殺していく。
 軽く叩くだけで人の頭が爆発するようにはじける。
 スイカをバットでおもいっきり叩いたように人の頭がバラバラになる風景は恐ろしさを超えて既に滑稽でしかない。
「これで最後っと」
 最後の一人の頭をデコピンでふっとばしてすべての侵入者を始末する。
「ご苦労様、雛」
 振り向くとそこには夜叵と屍が居た。
「ご苦労様です、雛様。……あ~ぁまた派手にやっちまって、掃除するほうのみにもなってほしいぜ」
「なにを言っているの屍。どうせ掃除しているときには別の体に居るんでしょ」
 私の言葉に屍は笑っているが特に何も言い返さない。
「それにしても、お前ほんと楽しそうに人を殺せるようになったよな」
「そうね、やっと雛もここまで来たわね」
 二人はとても楽しそうに笑っている。
 特に夜叵は本当に嬉しそうにいった。
 しかし私はその言葉に愕然としながら乾いた笑いを返していた。
 
 私はいま駅前広場のベンチに座っている。
 あのあと二人には散歩をしてくるといって夜の街に飛び出した。
この風景だけはどこも変わらないだのだろうか?
元の世界でもこの世界でも駅前は人が溢れ、みんなどこかへ行こうとせわしなく動いている。
 人が通る、タクシーが客を待っている、待ち合わせをしているのだろう女性が腕時計と時計台を見ながら待ち人が来るのを待っている。
 どこからか路上ライブをやっているのだろうギターと歌が聞こえる。
「はぁ……」
 この世界に来て三年。
 男から女になった。
この世界でオークションの商品になり、マフィアで殺し屋になった。
 最初の一年で抵抗を感じていた殺人という行為もある程度なれた。
 他人の血を見ても何も感じなくなったし、自分の痛みもある程度なれた。
 最初の生理に叫び声をあげ、夜叵と病犬を驚かせ屍は呆れ大声で笑い声を上げた。
 ハンター証を集めるなんて変な趣味もできたし今では十五を超える。
 念もある程度習得した、これでも実力的には一流といっても過言ではないと思う。
 気がつけば人を殺すことに何のためらいも無く、むしろ弱い人間を殺すことに快感を覚えていた。
 自分はいたって普通の人間のつもりだった。しかし気がつけば快楽殺人者になっていた。バトルジャンキーでないのがせめてもの救いだ。
 いったいどのくらいこの場に座っていたのだろうか、気がつけば既に日付は変わり人も格段に少なくなっていた。
「やぁ、こんなところでいったいなにをしてるんだい?」
 そこにはカジュアルな服装をした、長身の美青年が立っていた。
 せっかく人が真剣に悩んでいるのに邪魔されたくないので軽く殺気をこめた念を相手にぶつける。
「へぇ、結構鍛えてあるんだ。まだまだ発展する要素はありそうだね。それにしては切れが悪いけど、何か悩み事でもあるのかい?」
 凝をして彼を見るとそのオーラのめぐりから彼がかなりの実力者であることがわかる。
 多分実力的に私より二、三段上だろう。
 世界はまだまだ広いことを実感する。
「悩みといえば、まぁ悩み事ですけどあなたに相談して解決するような悩み事ではありませんよ」
 私の言葉に彼は楽しそうに笑うが「誰に言っても解決しないとわかっているならボクに話してくれても問題ないだろ」とわけのわからない屁理屈を言ってきた。
 勝てそうならこの場で殺すのだが多分殺し合いになると勝てないだろう。
 このまま付きまとわれるのもいやなので仕方なし私は彼に自分の悩み事を話す。
「実は私、快楽殺人者みたいなんです。それも強がってる人や弱いものに暴力を振るうタイプの人間を殺すことに快感を覚えているみたいで今日も十数人ほど殺したんですけどそれがかなり楽しくて。私っておかしいんでしょうか?」
 私はこの頭のおかしい質問に彼は引くだろうと考えていた。
「別にそんなこと気にする必要は無いんじゃない?どちらにしろ殺すなら相手のことなんて考える必要はないんじゃないかい。それなら楽しんで殺したほうがお得ってもんじゃないかな?まぁボクは無抵抗な人間や弱い人間より強くて頭のいい人間との殺し合いのほうが楽しいけどね。どうだいいまからボクと殺し合わないかい?」
「ぷ、あははは、あはははははは」
 彼の真剣な表情に笑いがこみ上げてくる。こんなに笑ったのはこの世界に来てはじめてではないだろうか?いったいどのくらい笑っただろうかこみ上げてくる涙を指で拭いながら(これも気がつけば女性的なしぐさで)、私は彼のお誘いの言葉に答えた。
「はぁ~、すいません。ふふふ、こんなに笑ったのは久しぶりです。殺し合いですか、すいません遠慮しておきます。私はまだ死にたくないんで」
「そう、残念だよ。まぁ、君はまだまだ強くなりそうだから今度縁があったらまたお誘いするよ」
 もっとも彼は全然残念そうには見えなかった。
「それじゃあ、ボクはこれでまた機会があったら」
 そういって彼は立ち上がりこの場を去っていく。
「はい、ありがとうございます。あの、すいませんあなたのお名前は?」
 彼は私の質問に何も答えず振り返ることなく去っていった。
 よくよく考えたら何も悩みは解決していなかったが胸のつっかえがすっと取れたような気がした。

「はい、ありがとうございます。あの、すいませんがあなたのお名前は?」
 ボクは少女の言葉に答えることなく去っていった。
 今日は化粧もせずに街を歩いていたら一人の少女に出会った。
 どうやらかなりの念能力者のようでちょっと退屈しのぎに殺してみようと考えて近づいた。
 ためらい無く殺気を飛ばすところや体と念両方かなり鍛えられているところを見ると、かなりの実力者のように感じた。
 しかしその殺気を浴びるとどこか歪な感じがした。
 理由を聞くが彼女はいったいなにを悩んでいるのか理解できなかった。
 適当に答えてあげると彼女はどうやら悩みを解決したようでボクは時間も足りないことだし去ることにした。
 彼女はもう少し強くなりそうだ、いまの悩み事もまだ完全に解決していないようだしもうに三年してからでも遅くないだろう。
 ほんと青い果実って言うのはなんておいしそうに見えるんだろう。
「やぁ。ごめん。少し遅れたかな」
 ボクが珍しく化粧をしていないことから周りのみんなは少し驚いていた。
「ヒソカ、ちと遅刻ね」
「よお、てめぇが化粧してないたぁめずらしいこともあるじゃねぇか」
 フェイタンとフィンクスは既に来ていたようだ。
「まぁね、本当は今日マチとデートのはずがすっぽかされたからね」
 僕の言葉にみんな少し笑っている。
「今日はマチ来ないよ。はいヒソカこれが今回の資料」
 そういってシャルナークがプリントを渡す。
「今日の獲物はそれに書かれてるから。後は各自適当に取ってきて」
 この場に居るのはボク、フェイタン、フィンクス、シャルナークにパクノダの五人どうやら団長は来ていないようだ。
「それじゃあ行きましょうか」
 パクノダの言葉に従いみんなで移動することになる。
 資料によるとこの美術館には念能力者の警備員が居るらしい。できれば楽しい殺し合いがしたいものだ。



[1891] 作者の妄想と設定。(ネタばれ含む)その3
Name: くるくる
Date: 2006/04/21 23:39
 夜叵について その2
 能力名『死霊館(ハウスオブデビル)』
 能力および制約
 1、この能力は建築物またそれに付随するものを具現化することができる。
 2、この能力を発動するためにはその土地の持ち主の許可が必要である。
 3、この能力の能力者は具現化した建築物の中に必ずしも居る必要は無い。
4、具現化することができる建築物は必ず一つだけである。
 5、建築物以外(主に罠や拷問器具)を具現化するときは野外(庭は野外に入らない)でなければ無制限に具現化することはできる(ただし三時間以上ほったらかしにしていると消滅する)
 6、庭は建築物に付随する。
 7、この能力者は具現化した建築物の中の状況をすべて知ることができる。
 8、この能力で具現化された建築物は土地所有者が死んだとき解除しなければならない。
 9、この能力で具現化した建築物の罠、もしくは拷問器具の設置は土地所有者の同意が必要である。
 10、この能力の能力者(夜叵)は戦闘時に肉体での直接攻撃ができない。ただし自衛のための最低限の行為はできる。
 ちなみにこの能力はやろうと思えばバイオハ○ードの建物なみの建築物を作ることも不可能ではなかったりする。

 屍について その3
 能力名「屍」
 能力および制約
 1、この能力は他人を操るための能力である。
 2、この能力で操られる人は屍の意思が最優先になる。
 3、この能力で操れる人間は無制限である。
 4、この能力を使うためには必ず次の条件をクリアしないといけない。
 条件い、この能力は人間のみ使用可能である。
 条件ろ、この能力は必ず操られる本人の承諾が必要である。(このとき嘘をついてはいけない)
 条件は、この能力で操るためには操る人間に神字の刺青を特定の八十八の場所に三日かけて書かないといけない。
 条件に、この能力は念能力者には使用できない。ただしこの能力を使ったあとに念を鍛えることは可能である。(ただし系統は必ず操作系である)
 5、一度操られた人間は消して逃れることはできない。
 この能力者は実は既に死亡している。残っているのは彼(もしくは彼女)の意思だけだ。
 また屍は嘘をつくことは無いが真実を言わないときもある。屍本人は常に他人の体を行き来している。
 体をのっとられているときも体の持ち主は意識がある。
しかし無意識レベルで屍の不利になることを発言することができない。
屍の操作している人間は百二十人ほどらしい。
また体の行き来に距離的なものは関係ない。



[1891] 基本的に碌な事が起きない (H×H)
Name: くるくる
Date: 2006/04/29 04:34
  原作までついに一年を切った。
 どうやって調べることができたかというと、実はトンパがホームページを作っていたのだ。トンパのような趣味を持つ人間は基本的に自分のやったことや自分の趣味を他人に公開したがるものだ。
 ちなみに夜叵もトラップと拷問による殺人、私の衣装やその衣装で人を殺しているところの写真を載せたページを作っていたりする。どうもかなり悪趣味だがなぜかかなりの大人気だったりする。
 トンパが毎年数回更新するホームページ、其の名も「ルーキーの墓場」。
 彼がどのようにハンター志望のルーキーを潰したか?またどのような潰し方をしたら楽しめるかを募集したりと結構えげつないページだったりする。
 もともと夜叵の愛好していたページなのだがこの前そこにヒソカのことが書いてあった。
 そのなかで彼はかなりの危険人物との紹介があった。
 ちなみにヒソカ以外のルーキーはほとんどトンパが潰してしまったらしい。その潰し方が詳細に書かれていた。
 
どっかーん
 無駄にどデカイ音に目が覚める。
 多分この音は宝物庫前の吊り天井が落ちた音だ。
「夜叵、起きて夜叵」
 私は隣に寝ている夜叵を起こそうとするがなかなか起きない。
 夜叵が起きないと罠の解除をすべて手動でしないといけない。
 手動ですると無駄に時間がかかってしまう。
「夜叵、侵入者だよ」
「ん~、あらあらまた侵入者なの?今月に入ってもう五人超えるわよ。まったくマフィアの家になにを盗みに来るのかしらね」
 私には何となくなにを盗みに来たのか予想はつくけどその理由を言ってもみんなを納得させることができないので結局黙ったままだ。

 宝物庫前の廊下。そこには昔ながらのトラップ『吊り天井』が落ちている。ちなみにその上を越えようとするともう一度その上の天井が落ちてくるという仕掛けもある。
 落ちた天井の下から血が流れ出ている。
「なぁ、これ今月で何回目だ?」
「今月に入って五回目です病犬さん」
 ちなみにこの罠がはじめて動いたのは今月の初め、つまり今月に入ってはじめて動いたのだ。
 この場に居るのは私と夜叵、病犬、女の屍が一人。ボスは別の屍と部屋で待機している。もっとも今回も侵入者が宝物庫を目指していたと報告したからもう寝なおしているかもしれない。
「それじゃあ天井を上げるわよ」
 夜叵の言葉と同時に天井が上がる。
そこには見た目十七歳ぐらいの少女が潰れていた。
即死だ、頭は割れ内臓が腹から飛び出している。
「はぁ、また掃除が大変そうな死に方して。もうちょっと掃除が楽な死に方をしてほしいよ」
 このかなりひどい言いぐさは屍。確かに掃除するのは彼女たちだが死人に対して言う言葉ではない。
「でも、何でこんなに多いんだ?普通さ泥棒とかこんなところこないだろ」
「ここハンター証が二十近くあるからそれを狙ってとかじゃないかしら?」
 ここの宝物庫はそれぞれの貴重品や高価だが公の場におくことのできないものが飾られている。
 たとえばさっき夜叵がいったように私の集めているハンター証。夜叵の古い拷問器具や用途不明の道具と無駄にひらひらした私の衣装。
 屍の集めている漫画やコミック。
 ボスの刑事物のドラマや映画コレクション。
 ほかの組織から上納された名画や骨董品。
 そして、緋の目。

今月はじめ。
 今日ついにボスが十老頭の末席に加えられた。
 といっても今回の人事(?)は各マフィアのバランスと権力、そして慣例からのものですべてがボス自身の力というわけではない。
 十老頭はいま三つのグループに分けられている。
 詳しくはよくわからないが前回の老頭は小さな(といっても十老頭のなかで)マフィアでパワーバランスのために選ばれていたらしい。
 そして今回ボスが選ばれたのは病犬が陰獣のため新たに老頭に選ばれたのだ。
 もともとボスの前に老頭をやっていた陰獣が殺され、その後新たに陰獣を決めるときに前老頭の系列でもっとも戦闘力のある念能力者が選ばれた。
 念能力者の数が少ないこともあるが戦闘用の念能力者は基本的に少ない。
 一応私は戦闘主体だがどちらかというと防御用の念能力者だし、夜叵は基本的に防衛もしくは尋問用の念能力者、屍は情報収集用の念能力者だ。
 ほかの組にもいくらかは念能力者はいるがやはり総合的に強い戦闘力を持つのは病犬らしい。
 最初私も病犬のことはそこまで強い念能力者だとは思っていなかった。まぁ漫画であっさり殺されたのが原因だ。
 しかし私と病犬が殺し合いをするなら私は五分もしないうちに彼に殺されるだろう。
 とにかく今日ボスが十老頭に選ばれたのだ。
 今日ボスと病犬は就任式がありそのパーティーに行っている。一応屍もついていっているが堅苦しいのはいやだといって意識はこちらの体に入っている。
「それにしてもすごい量の贈り物だな」
 屍が見た方向には大量の贈り物が置いてある。
 これもマフィアの人たちの祝いの品でそれぞれ見栄を張ったものがたくさん送られてきている。
 古美術品、名画、スポーツ用品、高級酒、宝石、etc.etc.
「まあまあ、こんなかわいらしい人形まで」
 本当になにを考えて送ってくるのやら。
「とにかく空けるのは今度にしようよ」
 私の言葉に夜叵と屍は同意したらしい二人とも近くにあったお酒を手にこちらに近づいてくる。
 このあと私は二人に付き合い朝方近くまで飲むことになる。

「いった~」
 二日酔いで少し頭が痛い。
 この体はどうもかなりお酒には強かったのだが昨日はかなり飲んでしまったためか少し二日酔いのようだ。
 周りを見るとそこには夜叵と屍たちが寝ていた。どうも私に張り合って皆飲み続けたようだ。
 屍にいたっては体を代えて参戦し続けたが全部酔いつぶれたようだ。
 どうも送られてきた高級酒は全部飲んでしまったらしく缶ビールもたくさん置いてある。
 時間的に罠の解除は終わっているようだ、ボスがもうすぐ帰ってくるので出迎えに行ったほうがいいだろう。
 そう思って私が廊下に出るとそこには一人の少女が全身を矢に貫かれて壁に貼り付けられていた。
「またなんでこんなところに」
 少女の遺体は血塗れだが結構きれいな状態で残っていた。
 どうやら染めたような金髪どうももともとは黒のようだ生え際が黒い、見開かれた眼の色も黒、顔つきもここら辺では珍しいジャポン顔。
 というより服のセンスとか見る限り元の世界の人間っぽい。どうもこの世界の人間はファッションセンスが結構オリジナルの人間が多い、そうなるとどうしても周りから見ても目立つのだが誰も気にしないようだ。
 しかし彼女の服はどうも、もとの世界のファッションなのだ。
 少女の足元にメモが落ちていた、血まみれになっていたが何とか読めた。それは日本語で書かれたメモだった。
 内容は「緋の目の所在」。
 そこには前の持ち主のところからここに持ってこられた経緯とこの家についての情報が書かれていた。前の持ち主のところは罠や十人近くの念能力者が居たようだ。逆にここの屋敷には罠は無く念能力者もたった四人だけさらに私たちの簡単なプロフィールが書かれていた。
 もしかして彼女もこっちの世界に迷い込んだ人間だろうか?でも確かにこの屋敷はマフィアの屋敷だけど「緋の目」なんて置いてないはず。
「珍しいな、ここの屋敷で罠にかかって死ぬような人間が出るなんて」
 振り向くとそこにはボスが居た、後ろには病犬とボスについていった屍。
「あ、お帰りなさいボス」
 基本的に侵入者は罠が発動する前に私か病犬が殺してしまう。
 昨日はお酒を飲みすぎてみんな夜中に寝込んでしまったから誰も気づかずに罠が発動したのだろう。
「死体はいつも道理処理してくれ」
 そういうとボスはさっさと自分の部屋に帰っていった。
 自分の屋敷に泥棒が入られたのに恐怖感は無いのだろうか?まぁそんなこと考えていたらマフィアのボスなんてやっていられないのだろう。
「わかりました、あとでやっておきます」
 ちなみに「緋の目」は贈られてきた物の中にあるのが発見された。

 その後私と病犬は侵入してくる少女たちを殺した。
 やはり少女で念能力者、そしてジャポン人の容姿。
 「緋の目」を狙ってくる少女たち。
 やっぱりもとの世界から、こっちの世界に来た人たちだろうか?
 確かに自分以外がこの世界に居ない可能性はゼロではない。それにしてもこんなに多くの人間がこの屋敷にやってくるのだろうか?
 …………………
 …………
 ……
 あれか、「緋の目」を集めておいてクラピカに恩を売ろうとして集めるのか?
 五年ぶりに漫画の世界だというのを思い出したような気がする。それにしても何でこの屋敷に来るんだ?そんなに簡単に攻略できるように見えるのか?
 早速、「緋の目」についてネットや情報屋から情報を簡単に集めてみる。
 すると出るわ出るわ「緋の目」の情報。事実かどうかがわからないものから信憑性の高そうなものまで。
 その中でもっとも信憑性が高くて、情報料が安いのがこの屋敷のことだった。
 ほかの所有者は基本的に隠蔽しようとしているらしくあまり詳しい情報が流れない。この屋敷はどうも「緋の目」のことに対してそこまで気にしていないのでこの屋敷にあるという情報が流失しているらしい。
 やはりクローズアップされるのは病犬のことだった。もっとも書かれているのは病犬のことだった。陰獣であるだけでも結構高い情報料が必要になる。ここに居ることだけがばれているがそれ以外の情報は別料金なのだろう。
 夜叵と屍については基本的に情報隠蔽しているため念能力者がこの屋敷に四人居るとかかれるだけであまり情報は載っていない。
 逆に私のことは結構書かれていた。
 「血塗れの美少女」とか「殺戮天使」とか「無垢なる殺戮者」とか、全部夜叵が作っているホームページからの情報らしい。ちょっと恥ずかしい。というより私はネットアイドルのつもりではない。
 私の念については特に書かれていなかった。やはり病犬のことが書かれているだけで普通の泥棒はこの屋敷には入らないし入ったら最後、十老頭の権力を使い血縁関係から友達づきあいにまで及び皆殺しにされてしまう。
 そういうことからこの世界の人間なら入ってこない。
 逆に言うならこの世界の人間で無いなら入ってくるだろう。だって病犬ってあっちの世界じゃ弱いと思われているのだから。正しくは病犬が弱いんじゃなくてウボォーギンが強すぎたのに。
 そういうわけでこの屋敷は今までに無いほどの侵入者が入り込み殺されていくことになる。
 なんだかこの世界が漫画でなく本物だということを改めて知ることになった、もっと気を引き締めねば。

 病犬が倒された、そう聞いたのは私の隣に居たメイドが屍に変わったときだった。
 病犬が倒される。そんなことが起こりえるとは思えなかった。それでも病犬より強い人間はいる、そう考えると私はその人間を殺さないといけないマフィアは決してなめられてはいけない必ず報復しないといけない。
 私は屍の後に続く。
ドアを開けるとそこには一人の少女が居た。
 少女の手には「緋の目」、周りには肉体的に意識を失った屍たち、相手の念能力だろう病犬は死んでないだろうが牢屋のようなものに封じ込められている。
「あなた何者ですか」
 その少女は私が現れたことに驚いたような顔をしていた。
「どうしたのこんなところに、マフィアに捕まっているなら私と一緒に行きましょう」
 どうやら彼女は何か勘違いしているらしい。
「あなたは何者ですか?その手のものを置いて去りなさい。そうすれば今回のことは許してあげます」
 病犬を封じた実力から私じゃ勝てないことがわかっている。それでもこのままなめられたまま帰らせるわけには行かない。
「私?私の名前は夢宮彼方、こっち風に言うならカナタ・ユメミヤかな。悪いけどこれは返せない。あなた知ってるの?この目は人の目だよ。返してあげないと、これを取り返すためにがんばっている人が居るのよ」
 こっち風ね……。
「返す?なにを言っているの。それの所有者は私たちのボスよ。人のものを獲るのは犯罪そのくらいわかっているのでしょ」
「だめよ、これはちゃんとあるべき場所に返さないと」
 どうやらこのまま彼女とは水掛け論にしかならない。
 私はナイフを取り出し構える。
「ねぇ、あなたプロハンター?」
「?いいえ違うわ、今年受けようとは思うけど」
 やっぱり彼女も私と同じでこっちの世界に来た人間なのだろう。
「そう、まぁいいわとにかくそれを返してくれないならあなたを殺して取り返すわ」
「そう、でも私を捕まえることはできないわよ」
 そういって少女は一瞬のうちにカードを取り出した。
「あなたには無理よ」
 少女は「ふっ」と笑い、気がつけば消えていた。
 そこには真っ白いカードが一枚残されていた。



[1891] 基本的に碌な事が起きない (H×H)
Name: くるくる
Date: 2006/05/02 11:47
 ヨークシンドリームオークション!!
 年に一度開催される世界最大の大売り市。
 ………
「お嬢、どうしたんですか?そんな雑誌なんか見て」
 声をかけられたほうを見るとそこには小太りで禿でチビでグラサンで髭の男が居た。
「ん?あ、ゼンジ。別にどうもしてないわ。ゼンジこそ、何か私に用なの?」
「えぇ、もうすぐオークションが始まりますんで会場のほうにお願いします」
 私はゼンジに「わかったわ」と答えてオークション会場に入っていく。

 今年からボスが老頭になったので警備として私もヨークシンに来ることになった。
 去年までは病犬が陰獣として、ボスは参加者としていくため私は行くことは無かったが、今年からは開催者側として警備を強化する必要がある。
 そして私は会場内に入って警備する班に入れられた。
 
「続きましての商品は、こちらになります」
 司会の人間の言葉に合わせて舞台袖から商品が出てくる。
「こちらの商品は、その名も『左腕が右手の左腕』です。」
 そういって出てきたのは肩から切り離され、ホルマリン漬けにされた腕だった。
「よ~く見てください、この腕の左腕なのに手のひらは右腕になっているでしょう」
 それは言葉道理に肘と手のひらが反対向きのものだった。
「それでは五百万から開始します」
「五百五十万」
「五百六十万」
 ………………
 …………
 ……
 自分が生まれて始めての参加したオークションで自分が商品として売られたことを思い出し、少し複雑な気分になる。
 まぁ、もうすでに過去のことだが自分が男だったことに既に違和感を覚え始めているのに気がつく。
 女の子になってすでに四年、気がつけば思考や趣向も大分女の子らしくなってしまった。
 甘いものも好むようになったし、きれいな服や宝石にも興味を持つようになった。そして何より男を見てちょっとHな気分になったりする。
 はじめてそのことに気がついた時は凹んだ。マジでかなり凹んだ。そのことを(もちろん全てではないが)夜叵に相談したとき笑われた。女の子が男の子に興味を抱くのは当然らしい。さすがにここまで来ると開き直るしかなかった。
 体の成長が念能力を習得したためか、かなりゆっくりになってしまった。まだ十二、三歳前後にしか見えないが私だってもう十六歳近い女の子なのだ。さすがに誰かを好きになったりはしてないが男の子については興味もあるのだ。もっとも男だったために多少男についてはある程度は知っているつもりだが。
 そんなことを考えているとすでに『左腕が右手の左腕』の競売も佳境に入っていた。
「七百六十万」
「七百七十万」
「ん~八百万」
「八百万、八百万が出ました。ほかに居ませんか?………ではいないようなので。この商品は八百万で落札です」
司会の男性がそういうと、落札した少女(どう見ても二十代前だ)の隣に居た顔に少しペイントした男性が商品を受け取りに行く。
「ちっ、あのインチキ野郎の娘じゃねぇか」
 隣のゼンジがポツリと呟く。
 少女を見るとかなりの美少女だ。インチキ野郎?あぁノストラード組のネオン。
 ネオンはお宝が手に入ってかなりご満悦のようだ。隣の男は口では「おめでとうございます」といっているが顔を見るとかなり疲れているようだ。
「このまま次の『緋の目』も落とすわよ」
「お嬢様、残りの予算が少なくなっていますので、もう少し考えて参加してください」
 男はそれなりの念能力者だが、体の鍛え方やオーラの力強さを見ると一流と呼ぶにはまだまだだ。
「………あ、あ~~~~~!!」
 突然の私の叫び声に周りの人間がこちらを見る。
 ゼンジも驚くが周りの人間がこちらを見ていることに気がつくと「あぁ~なに見とんじゃ。われ~」と凄み周りの人間の視線を散らす。
 私は彼の足を軽く踏み、凄んでいるのを止めさせる。
「いてて、いったいどうしたんですかお嬢?突然大声なんか出して」
「なんでもないわ。ちょっと思い出しただけ」
 ゼンジは少し不思議そうな顔をするが「そうですか」といってまた回りを見回す。
 
 私が大声を上げた理由。それはこの世界が漫画として書かれていたことを思い出したのだ。
 病犬が死ぬことは知っていた。それはあくまでも私がいないこの世界では無い話だと思っていた。もともと病犬は「自分がいつ死ぬかわからない」と口癖のように言っていたし、病犬は私を後継者にするために私のことを買ったといっていた。
 多分、病犬は死ぬだろう。それはどうしようもないことだ、少なくとも病犬の力で勝てない人間に私が相打ち覚悟で戦っても殺されるのが落ちだろう。
 そして、私が本当に思い出したこと。それはボスが殺されることだ。
 いつかは忘れたが蜘蛛の団長に依頼されたゾルディック家がボスを殺しに来るのだ。
 基本的に十老頭の面々はオークション中、数人が地下オークション会場の最上階で待機している。そのすぐ下の階には十人の陰獣が護衛として待機している。
 漫画のなかではすでに陰獣は全滅していたこともありあっさり侵入できたのだろう。もっとも陰獣がいたとしても全滅させられるだろうが。
 その陰獣より弱い私が彼らを止められるはずが無い。
 会議室では影武者を準備すればいいだろう。もっともボスのプライドがそんなことを許すはず無いが夜叵と協力すれば何とかできるだろう。
 それでも多分ゾルディックのことだから必ずボスの居所を見つけ出し殺しに来るだろう。つまりそれまでに私がゾルディック、もしくはその依頼人の蜘蛛の団長を殺すしかない。
 無理。そんなことは絶対に無理。
 私が努力して彼らに勝とうとするならいったい何年の時間がかかるかわからない。
 一体どうすればいいことやら。
 ………………………
 …………………
 ………………
 …………
 ………
 ……
 よし、この手ならどうにかなる。
 でもそうすると、どうしても原作に関わらないといけない。
 さらに言うなら多分私の命もかなり危険にさらされるだろう。
 それでも私はどうしてもこれを成功させなければならない。
 はぁ、どうやってハンター試験を受ける口実を作ろうか。
 
 オークションも無事に終わった。
 私とゼンジは無事会場から人が退場するのを見送りながらゼンジが買ってきたジュースを飲む。
 ネオンはどうやら『緋の目』を手に入れることはできなかったようだ、彼女は悔しそうに『緋の目』を手に入れた中年の太った女性を睨むが、付き添いの男に連れられて帰っていった。
「ご苦労様、ゼンジ」
「へぇ、ご苦労様ですお嬢」
 そう毎年毎年、事件があったらオークションなんて開催することはできない。
 多分来年の事件が異常事態なのだろう。
 ちなみにかなりいまさらだけどゼンジが私のことをお嬢と呼ぶのは私の戸籍上の父親と母親がボスと夜叵だからだ。ちなみにボスと夜叵が夫婦だと知ったときはかなり驚いた。
 ちなみにゼンジの所属する組はボスの組、グロウフィールド組の直系組織の一つで一番の武闘派の組織である。ゼンジも四大行までこなし凝も一応使える程度の念能力者だ。念能力者の多くはどうも四大行までは習得するが応用まで使えるようになるのは稀のようだ。
 ゼンジの実力は多分ネオンの護衛の男と互角くらいの力を持っていると思う。
 初対面でガンを飛ばされたがそのまま見つめるが殺気混じりにガンを飛ばし返すとビビり手のひらを返したようにこちらの顔色を伺うようになった。
 その後、病犬の紹介を経て彼からお嬢と呼ばれるようになった。ここら辺がマフィアの縦社会の厳しさでもある。
 ゼンジと軽い雑談をしていると彼のスーツから小さな振動音が聞こえる。彼は「失礼しぁす」と言って電話にでる。
「おう、オレだ。お嬢?あぁ居るぞ。あんだって?あぁ。あぁ。なぁに!!マジか。おう、おう。わかった。」
 そういってゼンジは電話を切ると、事情を説明する。
「はぁ!!また『緋の目』」
 私のちょっと女の子らしくない物言いにちょっと驚きながら詳しく説明する。
 誰かに商品を強奪されたらしい。それも被害にあったのはつい先ほど落札された商品。どうやら輸送中に強奪されたらしい、幸いなことにほかの商品も一緒に運んでいたがどうやら『緋の目』以外は奪われていないらしい。
 奪われた商品を取り返すために追跡しているがどうも結構強力な念能力者のため応援が必要らしい。
 私は携帯を取り出すと短縮の8を押す。
「もしもし、私よ。今すぐ来られる?五分?三分できなさい。わかったわ。ゼンジ、私も追うわ、案内頼むわよ」
 オークション会場のビルから出ると白いちょっと型遅れの車に乗った細目の男が待っていた。
 彼の名前はランディ・クガ。散歩をしていたときに彼の乗った車に轢かれそうなった。その後彼が無意識レベルの念能力者だということに気がつきその後多少の手ほどきをしたら見る見る上達した。
「二分二十二秒。まぁまぁかな、雛さん、お待たせいたしました」
 私はゼンジに助手席を勧めて私は後部座席に座る。
「それでどこに行きましょう」
 私はゼンジにナビを任せ、ポーチからカードケースを取り出す。私はどうやら周がかなり得意らしく、念弾の放出を直接行うより周をして物を投げたほうが威力は上のようだ。そのためいつも私は遠距離攻撃用に何枚か白紙の厚紙を常備している。
 気がつくと郊外まで来ていた。
 そこには気絶しているだろうスーツ姿の男たちの中心に、この前屋敷に現れた少女、カナタ・ユメミヤがいた。
「もう、まだ来るの?まったくマフィアってゴキブリみたいに湧いてくるのね」
 失礼な。あなたが『緋の目』を強奪するから取り返しに来ただけなのに。
 彼女は私が車から降りると少し驚いた顔をする。
「久しぶりね、カナタ・ユメミヤ。いいえ、夢宮彼方といったほうがいいかしら?まぁどっちでもいいわ。あなたが奪った『緋の目』を返しなさい」
 彼女は私の言葉にむっとしたような表情を浮かべる。
「あなたが誰か知らないけど。これは本来あるべき場所へ返すべきよ。だから邪魔しないで」
 どうやら彼女は私のことを忘れているらしい。
 それに相変わらず話がかみ合わない。
「それのあるべき場所はその目を買い取った人物のものよ。それがどのような経緯でこの市場に出回ったかは関係ないわ、所有者のはっきりしているものを奪うのは犯罪よ」
「いいえ、違うわ。これはちゃんとしたところに戻すべきなの、お金で売買していいものじゃないわ」
 やっぱり彼女との会話は前回とまったく同じ展開だ。なら今度こそ力ずくで取り返すしかない。
「そう、それならあなたを殺してそれを取り返すわ」
 彼女は私の殺気にすばやく反応しいったん距離をとり、手に持った『緋の目』を地面に置く。
 その後私はその場から離れることを促すように移動する。
 そのときに彼女から『緋の目』が死角になるように移動し、その間にゼンジが静かに『緋の目』を回収しランディのところへ行き先にこの場を去った。どうやら彼女はこのことに気がついていないようだ。どうも彼女はここらの駆け引きをあまり知らないようだ。
 マフィアは縦社会。もっとも大事なのは上のメンツ。下の人間は上の人間のために命を投げ出さないといけない。それができないと上から認めてもらえないし助けてもらえない。私たちは日の当たる社会では上手く生きていけず裏の社会に身を投じたのだ。上の保護なしには生きていけない。
 だから自分がやることをしっかり知っているし。自分の命をときに投げ出さないといけないことを知っている。
「そういえば私からはあなたに名乗っていなかったわね。私の名前は雛。ただの雛よ。短い付き合いになるだろうけどよろしく、夢宮彼方さん」
 私の言葉に多少違和感を感じているようだがそれが何かを理解はしていないようだ。
「えぇ、よろしくね。雛ちゃん」
 彼女がニコリと笑いかけてくる。その一瞬の油断を利用し、彼女から見えないように周をして強化した数枚の厚紙をタイミングをずらして投げる。
 カナタはそれをとっさに交わすが一枚だけ上手くよけられず手でガードする。
 紙は彼女の右手を浅く切る。痛みでためらった瞬間に私は『私を守る黒い闇(ブラックロース)』を広げる。
 カナタも遅れて自分の武器を具現化したようだ。
 カナタは左手の手甲にオーラを纏わせたら形が変わった。
 どうやらアレが彼女の念能力らしい。
「デュエル。ドロー、まずはじめに私は三枚のカードを引く。私は二枚をセット。さらにカードが三枚になるように手札を引く」
 彼女はこちらに聞こえるような大きな声で叫ぶ。
 彼女はカードを右手で引き左手で持つ、そして手甲にセットする。
 私は左手に「私を守る黒い闇」、そして体でうまく隠れるように愛用のナイフを取り出し周をしておく。
 彼女のスタイルはどこかで見た様な気がする。
「カード効果発動。強化レベル1。このカードは私の肉体を強化する。ドロー」
 彼女のオーラの量が一気に増加する。
 わかった。この能力はどこかで見たことがあると思ったら。元の世界で見た遊〇王だ。アレに似ている。
 私はすぐに彼女との距離を詰める。このまま戦闘をせずにいるとどんどんこちらが不利になりかねない。
 しかし彼女は距離を開けるように後ろに飛びながら。
「トラップ発動。泥沼の罠。このカードが発動したとき私の念総量から100が支払われる。このカードの効果によりバトルフィールドは泥沼のように移動が困難になる」
 彼女の発言と同時に足が重たくなる。
 距離を離されてしまう。私はナイフを鞘に戻し、カードケースから厚紙を取り出し周をしてカナタに投げる。
「カード効果発動。矢除けの加護。このカードは私が8枚のカードをドローするまで有効。このカードの効果により私には遠距離攻撃は当たらない」
 なんてでたらめな能力!!
 彼女はカードを引いたあと私のほうを見てにやりと笑う。
「ごめんね、雛ちゃん。今回は私の勝ちのようね。それじゃあバイバイ。カード効果発動。振り出しに戻る。このカードは対象プレイヤー一人が対象。使用者は一人を選択しその人物が最後に目を覚ましたときにいた場所に瞬間移動させる。」
 その言葉と同時に私が寝泊りしているホテルの部屋にいた。
 本当に彼女はとんでもない使い手だ。

 『緋の目』は購買者の元に届いた。しかしその数日後に何者かによって盗まれることになったらしい。



[1891] 作者の妄想と設定。(ネタばれ含む)その4
Name: くるくる
Date: 2006/05/01 18:26
 ゼンジについて
 ボスの組織、グロウフィールド組の直系の組織に属する若頭。
 念は一応使えるが、本当に一応使える程度。
操作系、念能力は「瞳を逸らさない(メンチ)」
 効果、制約
 目を逸らした者の身体能力を低下させる。または恐怖感を与える。
 数秒間相手と見詰め合わないといけない。
 効果は自分にもある。
 効果時間は相手の恐怖感によって変わってくる。
 もちろんこの小説オリジナル。でも武闘派なら念能力くらいは持っているはず。

 ランディ・クガについて
 雛のアッシー。基本的にどこでもついていく。雛に何度も交通違反をもみ消してもらっている。走り屋で毎週土曜日の夜は峠で走っている。
 操作系、念能力は「凶的スピード狂(ラディカルスピード)」
 エンジンのついたものに乗るときに自動的に発動。もともと無意識で念能力を発動させていた。異常なまでにスピードが乗った状態にもかかわらず車内は静止しているかのように車が振動しないため彼はものすごいスピードで公道を走っていた。気がつけばスピード違反で逮捕されていた。
 その後雛に出会い念能力と自分の力について知ることになる。そののちにかなりのスピードマニアになる。
 効果、制約
 エンジンのついたものに乗っているのにまったく動いているような感じがしないほど静かに運転することができる。
 乗っているものは最高のコンディションで走ることができる(ただし燃料切れはきちんと起きる)
 この能力は一度乗ったことのあるものでないと発動できない。またどれだけ強化しても乗り物の強度は決して強くなることは無い。
 とあるアニメのキャラクターのパクリ(性格や能力などはかなり異なる)。ヒントは能力名。

 夢宮彼方(カナタ・ユメミヤ)
 現実からハンター×ハンターの世界に来た人間の一人。
 異常なまでの念の才能を持つ。
あくまでこの世界が漫画の世界で現実ではないと思っているようだ。
この世界で「緋の目」とベンズナイフの収集を趣味としている。
自分のやっていることは悪いことだとは思っていない。
本人はかなり純粋で騙され易い人間、そのため始末に終えない。
特質系、念能力「決闘空間(デュエル)」
効果、制約
カード化した能力をデッキからランダムで呼び出す。
手に持てるカードは三枚まで、手甲(デュエル盤)におけるのも三枚まで。
全てのカードのオーラ消費量が同じのためかなり効率が悪いがそこは才能でカバー。
さらに効果が多いためメモリをかなり消費しているがそれも才能でカバー。
使用したカードはそのまま墓地へと置く。
この能力は必ず効果を発揮したあと相手に伝えないといけない。
手甲の書かれたオーラの総量が0になったとき死亡する。
この能力はもちろん某有名カードゲームのパクリ。



[1891] 基本的に碌な事が起きない (H×H)
Name: くるくる
Date: 2006/05/03 23:56
「……まずい」
 いま私は船の上にいる。
 見渡す限り水平線。遠くにはクジラの形をした結構大きめの島。
 そして私の左手にはランディから貰った酔い止めの薬(かなりまずかった)。
 私は飲み干してからになった空き瓶を海に向かって投げ捨てながらこの船に載るための経緯を思い出した。

 私はこの屋敷で一番立派なドアの前にたち中にいるだろうボスに向かって声をかける。
「ボス、雛です。入ります」
 なかから「入れ」と短く一言。
 中に入るとそこはマフィア物の映画に出てくるような机や調度品が置かれている。どれも一目では高級品とわからないが、すべてそれなりにいいものを使っている。ちなみにすべて夜叵のセンスで決められているのはこの屋敷に住むものの秘密である。
 ボスはこっちを見ずに書類に目を通しながら私に話しかけてきた。
「雛。社会にとってマフィアは必要だと思うか?」
「……ないほうがいいと思います」
 僅かな沈黙の後私は答えた。
 ボスは私の言葉を聞いてもこちらを向かずに私の答えを否定する。
「違うな、社会にマフィアは必要だ。マフィアが無いと人の欲望は際限なく突き進む。どんな法律にも穴が有る、どんなルールにも穴は有る。確実に人の闇が別の人間を喰らう。闇は際限なく進む、行き着く先は暗闇だ。誰もが自分のことしか考えずに自分の欲望だけを得ようとする。それを止めるのがマフィアの仕事だ。カネ、ヤク、モノ。どんなものだって人は欲しがる。この世界はリアルだ。人の思いつくことは必ずどこかで実現される。それを少しでも減らすのがマフィアの仕事だ」
 ………………
「ドルバル、満足した?」
 夜叵のツッコミに多少気まずい沈黙、ちなみに夜叵は最初から応接用のソファーに座っていた。
「ちなみにこれは西映の『仁義無き者たちシリーズ』第二十三弾の未公開収録シーンだ」
 ちょっとうきうきしながら話すボス。
ボスは唐突に持っている映画のまねをしてこのようなことを言う。実際こんなことをしていない時の方が格好いいような気がするのはここだけの秘密だ。
こういうところはいつも思うが少し子供っぽい。
「あ~、ごほん。それで今回読んだのはほかでもない。まずはこれを見てくれ」
 僅かな沈黙の後、ボスが取り出したのはどこにでもある茶封筒だった。
 そこには結構な金額のものと、人的な被害が書かれていた。
「物的被害は金額にして80億ジェニー、人的被害で死者は十人満たないが負傷者なら百数十人を越えている、そのなかには廃人になった人間も含まれている。これはすべてここ半年で出た被害だ。これらすべてをどの組織にも属してない少女がたった一人で行ったことだ。しかもこれはすべて確認されている部分だけだ、推定だが総額で150億ジェニーは超えているだろう」
 物的被害は基本的に盗難、死者はいずれも首を後ろから手刀で一撃、多分死んだ本人は自分になにが起きたかまったく判らないまま死んでいったのだろう。
「少女の名前はカナタ・ユメミヤ。ホテルに泊まったときの宿泊名簿から年齢は17歳。出身地はジャポン、しかしそのような住所は確認できなかったらしい。このプロフィールはすべて偽証だと思われる。友好関係は不明。念能力者らしいが、その能力は誰の証言も違っていた。多分特質系だろうと推測されている。今わかっているのはそれくらいだ」
 ボスの説明を聞きながら資料を改めて読むととんでもない金額だ。
 私はそれなりに勉強しているし、マフィアの経営についてもそれなりに知っているつもりだ。80億はかなりの額だ。もちろん簡単に出せる組もある。しかし個人でこの金額を出すにはかなりの無茶が必要だろう。
「今年この少女がハンター試験を受けるという情報が手に入った。もちろんデマか本当かは判らん。それでも今回、雛にはハンター試験を受けてもらう。目的はこの少女の捕獲だ」
 私はボスの言葉に少し不思議に思った。
「捕獲ですか、殺害ではなく?いったいなんで?」
「そうだ捕獲だ。実は、この少女の姿の入った映像を見た老頭の一人がほしいといっている」
 その後ボスは何も言わなかったが、何となく言いたいことはわかる。
 捕まった少女の運命は決まっているのだから。ボスはマフィアの頭をやっているくせにこういうところがある。もちろん彼はあっさり切り捨てるし、必要なら非情になれる。それでも感性が一般人に近い、まったく何故こんな人がマフィアのボスなんかやっているんだろうか?
「つまり、今年のハンター試験に参加してその少女を捕まえればいいんですね?」
「そういうことだ、あとの詳しいところは夜叵に聞いてくれ」
 そういってボスはまた書類に目を通し始める。
「それじゃ、行きましょうか」
 私はボスの部屋を出たあと夜叵と今後のことについて打ち合わせをした。

 ハンター試験。
 プロハンターになるための試験だ。
 基本的にハンターというのはアマチュアなら誰でも自称できる。
 ある意味ハンターという職業はチンピラやマフィアよりたちが悪い。
 自称ハンターの多くは一般人に毛が生えた程度だ。
 その多くが普通の人間より喧嘩が強かったり、他人には無い特技を持っていたりする。もちろんこれらは無意識レベルの念能力だろう。
 そのなかの人間が念を自ら習得したり、プロハンターまたは念能力者の下で修行することになる。
 しかしその念能力者でもハンター試験に合格するのは容易ではない。何故ならハンターには身体能力だけでなく、知識とそれぞれの専門的な才能が要求されるのだ。
 逆に言うなら優秀な念能力者だからといって優秀なプロハンターになれるわけではない。
 優秀なプロハンターの中には私より戦闘では実力が劣るものもいるし、才能の無いハンターでも私より強い念能力者もいる。
 要するになにが言いたいかというと、ハンターと念能力者というのは同一でないということだ。
 そして念能力者だからといっても簡単にハンター試験を合格することはできない。

 正直いうと、私はハンターに向いていない。
 念能力者としてはまぁ一流といっても過言ではないだろうがハンターとして生きていくには才能が無いといってもいいだろう。
 ちなみに今、私はゴンたちが乗るであろう船に乗っている。
 いまだ原作の主要人物たちには会っていない。というより人が多すぎて会うことができない。多分この船だけでも二百人近い人間が乗っているだろう。もっとも普通の乗客がほとんどでハンター志望の人間は二十人は満たないだろう。
この時点でこの船に乗っているのはスタートとしてはかなり遅れている、ハンターとしても才能が無いか、いずれかの事情で遅れてスタートしたか、もしくは私がわからない理由でこの船を選んだか。もしクラピカに会えることでき仲良くなれたらその理由を聞いてみよう。
 注意深く凝をして周りを見るが今のところは特には念の才能がある人間はいないようだ。
 幸い見た感じ私と同じようにもとの世界からこの世界に来た人間はいない。
 多分どの人たちも直接会場に行くのだろう。
 ちなみに何故私がこの船に乗っているかというと会場の場所を覚えていないからだ。合言葉は覚えているんだけどね、たしか「ステーキ定食、一人前」だったと思う。
 そこで私は確実に試験会場までいけるコースを辿ることにする。それは原作の登場人物と同じコースを辿るのだ。もちろんこの世界が漫画じゃないことはわかっている。それでも漫画の世界にかなり近い世界だとは思う。
 いまだこの船で会うことができないのはこの船が広すぎるせいだ。

「いまから『ビッグホエールアイランド』に到着します。お降りの方は下船の準備をお願いします。なお『ビッグホエールアイランド』以後はドーレ港に向かいますが、大変危険な航路を通りますので、ハンター試験受験の方以外のご利用はおやめください」
 船内アナウンスと共に船が徐々に速度を落としていくのがわかる。
 ちなみに『ビッグホエールアイランド』、通称『くじら島』横文字のほうがかっこよく聞こえるという理由で数年前に本島の政治家が名前を変えたらしいが現地の人々からは相変わらず『くじら島』と呼ばれている。ちなみに『くじら島』では電脳ページでめくっても出てこない。
 室内から出て外を見下ろすとそこには荷物を運び出している人々、船を下りる人々、そして一人の少年。多くの島民からいろいろな餞別や応援の言葉を貰っていた。
 彼らと話していた島民の一人が少年に一人の女性のことを教える。
 そこにはまだ二十代前半だろう女性が立っていた。
 二人は少し会話したあと少年がこちらに向かってやってくる。
「元気でねー!! 絶対立派なハンターになって戻ってくるからー!!」
 多分この少年がゴン。そしてさっき抱き合っていた女性がゴンの育ての親だろう。
 せっかくなので凝をして二人を見る。
 ゴンのほうは当然のことながらかなりの才能を秘めていた。そして驚いたことに彼の育ての親の女性も結構な才能を持っていた。多分オーラの量だけなら最初のころの私より圧倒的に多いのではないだろうか?
 気がつきと周りのハンター志望の男たちがゴンのことを馬鹿にしていた。
 近くにいた船長の「荒れるな…」の一言が少し気になった。

 荒れた。それはもう盛大に荒れた。
 もっとも荒れたのは人ではなく海のほうだったが。
 縦、横、斜め、さらに飛び上がったり空中で三回転したり。
 さすがに三回転したときはビックリした。世の中、やろうと思えば結構いろいろなことができるもんだ。
 そしていま目の前には十数人近い人間がまるでゾンビのように呻いている。事前に酔い止めは呑んでおくもんだね。
 元気そうなのは私と、酔った人間を介抱する少年、ハンモックで寝ている美少年、そしてスーツを着たダンディな男性(読んでいる雑誌はちょっとあれだけど)。
 ちなみに私はいま、『私を守る黒い闇』を座布団代わりに階段に腰をかけていた。正直このゾンビの海に入り込む勇気は持っていない。
 だって白い服は汚れが目立つから。
 さすがにこれ以上強い嵐が着たら少し気持ちが悪くなりかねない、体調調整の神字をお腹に書く。これだけで気持ちがすっと治まる。
 もともと神字とは自分では使えない能力や強化の苦手な具現、操作系の人間が身体強化、能力強化、そして他者への束縛のために考え出されたものらしい。
 屍に言わせると、操作、具現化系の人間が戦闘をすること自体間違えで相手の念能力者とはまず戦わないことが一番大事らしい。
 その割には念能力を使用しない戦いでもっとも強いのは屍だったりするんでたちが悪い。
 気がつけばゾンビたちが移動を始めた。どうやらさっきより強力な嵐が来るらしい幸い私が座っている階段を通ることは無いようだがみんな本当に苦しそうに移動する。
 結局残ったのは私を含めて四人だけだった。

「四人か、意外と残ったな」
 船長が残った人間を集める。
「それじゃあまず、名前でも聞こうか」
「オレはレオリオというものだ」
「オレはゴン」
「私の名はクラピカ」
「雛です」
 それぞれの自己紹介のあと船長がハンターを志望する理由を聞く。
 ゴンはあっさり答えるがクラピカとレオリオが多少渋ったあと答える。
 その後レオリオがクラピカの「品性は買えないよ、レオリオ」という言葉に、「うす汚ねぇクルタ族とかの血を根絶やしにしてやるぜ」という言葉に返す。
 最初は明らかにレオリオのほうがオーラは多かったのだが、クラピカがレオリオの言葉を聞くと急に彼のオーラ量が増大した。「緋の目」状態のクラピカのオーラの量は明らかに私が見てきた才能ある念能力者の中でも飛び出していた。
「出て行っちゃいましたね」
「あぁ、出て行きやがったな」
「面接続けますか?」
「ん、あぁ続……」
 船長が何か言おうとしたとき、ひとりの船員が飛び込んでくる。
「船長、予想以上に風がまいています。このままじゃ船が沈んじまう」
「悪ぃな、嬢ちゃん。面接はまた後でだ」
 船長はそういって船の外に出る。
 ゴンもついて行く。仕方ないので私も『私を守る黒い闇』に防水機能を加えて外に出る。
 遠くにはレオリオとクラピカ。嵐のため何と言っているかは聞き取れない。
「船長、俺も手伝うよ」
 ゴンの言葉に船長は「よし来い」と一言。
「船長、私はすることありますか?」
「女は引っ込んでろ」
 ちょっといまの言葉に傷つく。まぁ船のことなんてまったく判らないしいても邪魔になりかねないのでおとなしくしていよう。
 バキッ
 どこかでマストの一部が折れた。
 それが船員の一人に当たる。
 そのまま彼は海に落ち……。
 最初に反応したのはレオリオだった。正直ありえない判断だった。明らかに敵対している人間を無視して人助けをしようとするのだ。
 多分私だったら敵の気がそれた隙に攻撃をしただろう。そして敵のほうもそれを好機と見て私を攻撃するだろう。
 しかし彼はあっさりと、自分が攻撃されるだろう危険性を無視して船員を助けに行った。
 その後にゴン、クラピカと続く。
 それでももう間に合わない、船員は明らかにみんなの手の届かないところにいる。
 そう思ったとき、誰かが船員の足をつかんだ、ゴンだ。彼は船から飛び出し、明らかにこのままでは彼も助からないところにいる。しかしそれをクラピカとレオリオが掴んだ。
 その後、四人を船員たちが引き上げる。
 気がつけば嵐は通り過ぎていた。
 船員たちはけが人の治療をする人と、それぞれの持ち場に戻る人に分かれた。
 二人は、ゴンを説教。しかし結局ゴンの「つかんでくれたじゃん」の一言でなんともいえない空気になる。
 結局二人は和解、なんて言うか、ちょっといいものを見た気がする。
 その後、ゴンは船長についていった、船の操舵を教わるらしい。
 私は残された二人の元に向かう。
「二人ともご苦労様」
 私はそういって配られていたタオルを二人に渡す。
「ありがとう、えっと……」
「雛よ、呼び捨てでかまわないわ。クラピカさん、レオリオさん。よろしく」
「クラピカだ。私のことは呼び捨てでかまわない」
「俺もレオリオでいい」
 濡れているレオリオを見て少しドキッとする。
 漫画で見たときはそこまでかっこいいとは思わなかったが、何と言うか彼を見ているとちょっとドキドキする。
 ……ま、まさかこれが恋?
 いや、それは、でも、ほら、なんていうか……困る。
 だってそのアレだ、
「どうかしたのか?雛」
 クラピカの言葉に現実に戻ってくる。
「いえ、なんでもないわ、それじゃあ。私は船の中に戻っておくわ」
 そういって私は船内に戻っていった。

「いえ、なんでもないわ、それじゃあ。私は船の中に戻っておくわ」
 そういってヒナは船内に入っていく。
 やはり彼女はかなりの使い手のようだ。ある程度の範囲内に入ってくると突然気配を感じた、またさっきのように離れていく途中にぷっつりと気配が消えた。
 明らかに自分の実力を隠していることが伺える。
「なぁ、クラピカ。ヒナはどうしたんだ、突然帰っていったけど」
 逆にこの男は鈍すぎる。さっきの対峙である程度の実力者ではあるのだが。戦う人間としては失格だ。それでも彼はさっき言ったように金を得ることをだけの人間ではないのは伺える。
「本当に気がつかないのか?」
「だから何のことだよ」
 やはりこの男はかなり鈍いようだ。
「わからないなら、もういい」
 まったくヒナもこんな男に惚れるなんて。
 私も彼女と同じように船内に戻る。
 後ろからレオリオの声が聞こえるが気にせずに私は歩く。
 この船に乗るハンター志望の人間はいずれも一癖も二癖もある人物ばかりだ。
 しかし誰もが気持ちのいい人物のようだ、このようにすがすがしい気持ちになれるのはずいぶん久しぶりだ。



[1891] 作者の妄想と設定。(ネタばれ含む)その5
Name: くるくる
Date: 2006/05/01 18:46
 ランディの酔い止めについて
 実はランディはかなり乗り物に酔いやすい。正しくは自分が運転していないものに乗るのが苦手。
 これも彼の念能力の弊害で他人の操縦するものに対して無意識に気分が悪くなるという制約がかかっている。
 
 神字について
 神字は基本的に力の弱いものが使うと思われがちだが、それは間違い。
 神字を使いこなせて一流というとか言わないとか。
 まぁ実際のところはよくわからん。使えたら便利だとは思う。

 くじら島について
 もちろんこのSSのオリジナル。
 くじら島には政治機関は無く、本島のほうで政治をしている人たちがいる。本作でも言ったが島民にはくじら島で通っている。
 もっとも島民はほとんど気にしていない。
 
 ミトさんについて
 ゴンの育ての親。その念の才能はジンに匹敵する。とか思うと面白いかなと思う。実際はどうでしょうか?多分ゴンの曾祖母はかなりの実力者だった。とかだったらかなり面白くない?



[1891] 雛の(一般人にとっては非日常的な)日常
Name: くるくる
Date: 2006/05/07 12:53
 オレがこの屋敷に帰ってきて三日が経つ。
今、オレは人生最大の選択を強いられている。
それは、目の前の女の子女の子した下着を自らはくかはかないか。
ちなみに一時間かけてはいた。その後女の子女の子したドレスを着るのに三十分かけた。

「あらあら、よく似合っているわ雛。では改めて自己紹介するわね、私の名前は夜叵。あなたの教育係になるわ。あなたには今から念の修行と社会の勉強、そしてマフィアの殺し屋としての心構えを持ってもらうわ」
 今オレの目の前にいるのは黒尽くめ美女。彼女は手によく教師が持つような教鞭。
「それじゃあまず、あなたの知識を調べましょうか」
 そういって彼女は後ろに控えていたメイドさんに促し、オレの目の前にプリントを置く。
「とにかく解いて、時間は全部で一時間よ」
 …………
「あの、夜叵。オレ、字が」
 ばしん
 手に痛みが生じる。
「あらあら、雛いいかしら? 女の子が『オレ』なんて言葉を使っちゃ駄目よ。今度からきちんと『私』もしくわ『あたし』といいなさい」
 オレはとにかく首を縦に振る。痛さでとても声を出すことが出来ない。
 夜叵がまたメイドを促す、そうするとメイドは冷やした濡れタオルを私の手に当ててくれた。
「それで、何かしら雛?」
「私、その、文字が読めないんです」
 夜叵は納得した顔をすると。「あらあら、ならまず字を覚えないといけないわね」といってノートにハンター文字を書き「まずゆっくり字を覚えましょうか?」といって勉強をすることになる。
 ちなみに夜叵の教育法はめちゃくちゃスパルタ教育だった。

「俺の名前は屍だ。操作系の能力者だ、ちなみにこの体の名前はメアリーだ。この屋敷にいる人間はお前と夜叵と病犬、そしてボス以外はすべて俺の体でもあるから、俺に何か用事があるときは『屍』と話しかけてくれば俺が出てくる。それ以外のときに用事があるときは適当に話しかけてくれ、用事はすべてこれらがやる」
 目の前の美少女メイドさんが男言葉を使っていると何と言うかグッと来るものがある。
「まぁ俺のことはどうでもいい、早速だが今からお前に念を教えることになるわけだが。まずは簡単な説明から入るか。俺がお前に教えるのは技源流という流派になる。もともとこれは三源流という流派から枝分かれした流派で、心源流、技源流、体源流の三つに分かれた。技源流とはその名のとおり技を鍛えるための流派になる。もっとも技といっても神字や念能力の応用をメインに考える流派だから心源流や体源流と違いどうしても小手先がメインになる、そのため体を鍛えることがメインの体源流や心から鍛えていく心源流と比べるとどうしても基礎体力がおろそかになりがちになる。しかし上手くはまると二つの流派では追いつけないほどの爆発力と応用力がある。もっともその代わり一人前になるのに最も時間がかかり、また基礎を疎かにしがちになる。まぁそんなことになったら俺が許さんから肝に銘じておけ」
 屍はそのあとも長々と説明をメインとした話を続ける。オレの念修行の一日目は屍の話を聞き続けることであわった。

「病犬だ、今からオマエに殺しの基本を教える。とにかくオマエは俺を殺す気で来い、一発でも当てたら今日は終了だ」
 彼はそれだけいって立っている。
 どうすればいいのか分からないので、彼に殴りかかることにする。
 彼はあっさり避け、そのまま私の横に回り込んで軽く蹴る。
 彼の力の入っていない攻撃でも私は簡単に姿勢を崩してしまった。
「腰がはいていないぞ、そんなもんで人を殺せると思っているのか? ほらさっさと立ち上がって攻撃して来い」
 結局その日は一撃も入れることが出来ずにオレが起き上がれなくなるまで動いたあと放置されてその日は終わった。

 オレは今日のことを振り返りながら、ため息をつく。
 こんな日常を続けていくとオレはどうなってしまうのだろうか。
 隣に眠る夜叵を恨めしく思いながらオレは眠りについた。



[1891] 基本的に碌な事が起きない (H×H)
Name: くるくる
Date: 2006/05/07 12:52
「なぁ、疲れた。なぁ、腹へらねぇか」
「あの、チョコレートならあります」
 愚痴っているレオリオに、なだめるようにヒナが自分のポーチからお菓子を取り出す。ちらりと見えたパッケージはかなりの高級品だとわかるが、そのことにレオリオは気がついていないみたいだ。
「お、悪いな、ヒナ」
「ううん、安物だから気にしないで。ゴン、クラピカ、二人も食べる?」
「本当?オレも食べていいの?」
「うん、いいよ。クラピカはどうする?」
「いや、私は遠慮しておこう」
 彼女は「わかったわ」と答えてゴンとレオリオにチョコレートを分けた。
 後ろを歩いていた二人にゴンは近づいていく。
 彼女はどこか不思議な雰囲気を持っていた。それはどこからどう見ても子供のはずだが、どこか年不相応なところがあった。
さっきのクイズの後、ゴンの「もし本当に大切な二人のうち一人しか助けられない場面に出会ったら、どうする?」という疑問に彼女は「そういう時はとりあえず、敵は殺す。悪党も殺す。誘拐犯も殺す。運がよかったら二人とも生き残るし、運が悪かったら二人とも死ぬ。ただそれだけよ」と言った。
 その後彼女は笑って『冗談よ』といった。ゴンとレオリオはそのとき本当に冗談だと思ったようだが、そのとき彼女の目は本当にそうするだろう事を語っていた。
 彼女は悪い人間でないのは判っていたのだが、それは彼女の一面でしかないのかもしれない。彼女は見かけと内面がかなりアンバランスな人間だ。
「どうしたの、クラピカ?」
 考え事をしているといつの間にか三人は追いついてきたようだ。レオリオも甘いものを食べて元気が出たのか「ほら行こうぜ」といっている、まったく現金な奴だ。
「いやなんでもない。ちょっと考え事をしていただけだ」
 二人の背中を見ながらと一緒に歩いていく。
「おーい、こっちに家があるぞ。多分これじゃないか?」
 
「やっとついたな」
 レオリオの言葉にクラピカが反応する。
「静かだな、我々以外に受験者は来ていないのか?」
 クラピカの言葉を気にせずレオリオはドアをノックする。
「入るぜ」
 キルキルキルキルキルキルキルキルキル、キーーーーール
 怖。予想外にでかい。魔獣、凶狸弧。猫背だが大きさ的には大体2メートル前後狐に似ているがその耳は狐というより丸い耳を伸ばした感じだ。
 魔獣は私たちの横をものすごいスピードで駆け抜けていく。私なら止めることができるが避ける。
「レオリオ、ヒナ。ケガ人を頼む」
「任せとけ」
 ゴンとクラピカが魔獣と女性を追いかける。
 レオリオは男性の応急処置をしながら励ましている。
 私はスカートの下に隠していた大口径の拳銃を取り出し一応警戒をしておく。念能力を使えない人間には脅しとしてはかなりの威圧感があるものだ。
 彼らがナビゲーターなのはさっきここに来る途中に思い出していた。そのことを考えながら改めてこの家を見ると不自然な点が多くあった。
「レオリオ、応急処置は終わった?」
「ああ、できる範囲のことは全てやった。後はこの人の気力しだいだ」
「なら、彼から離れて」
 私は男性に拳銃を向けながら質問する。
「あなた何者?」
 男は慌てながら、
「いったい何のことですか、私たち夫婦は突然現れた魔獣に襲われただけなんです」
「その割には、ストーブから移った火のこげ後はどう見ても数日足ってるし、突然という割にはあの魔獣はどこから侵入したのかしら? もう一度聞くわ、あなたいったい何者かしら?」
 レオリオは途中から私を守るようにナイフを構えて男と距離を置いている。
 ……………………
「お見事です。いや~、申し訳ない。あなたたちを試させてもらいました」
 そういうと男性は凶狸狐に変化して、これまでの経緯を簡単に説明する。
「おーい、トウチャンすぐ来な。面白いもんが見れるよ!!」
 遠くから大きな声が聞こえてくる。
「あちらも終わったようです、行きましょうか」
 凶狸狐に続き私たちも声のしたほうへと行く。
「あの、レオリオ、さっきはありがとう。守ってくれたんだよね」
 私はレオリオの背中を見ながら彼に尋ねた。
 実力的にいうなら私のほうが圧倒的に強い、それでも男の背中に守られるというのは、何と言うかグッと来るものがある。
「別に気にすんな、子供を守るのは大人の役目だからな」
 子供……そうか、私レオリオにとって子供なんだ。
 ちょっとショックだ。
「ねえ、レオリオってどんな女性がタイプなの?」
 私の質問にレオリオは、「そりゃあ、大人の女性だよ。美人で、胸があって、なんっつうかボン!!キュっ!!ボン!!な、感じの美女だな。あと料理ができたり性格がよかったりするとポイント高いな」と答えた。
 いやわかるよ、その気持ち。そっか、そんな女性がタイプなんだ。
 正直言うと私の体の発育はよろしくない、どう贔屓目に見ても十三歳に見えるか見えないか位でしかない。今年で多分十六歳になるはずなのに。
 そういえばレオリオは何歳なんだろう?二十前後?だとすると、実年齢で四歳差、なら大丈夫なはず。
「ねぇ、レオリオは年下の女の子は好きなの?」
「あ、まぁ十八以上なら、別に……ってなにいわせるんだよ」
 十八……十八ならあと二年経てば……いやでも、二年後だったら二十歳以上か?……う~ん、どうしたものか。こうなったら直接聞くしか……。
「ヒナ、ヒナどうした?」
 気がつくとゴンとクラピカたちにも合流していた。
 凶狸狐たちが何か言っていたが、今の私にはどうでもいい内容だった。
 
 どうやらナビゲーターは魔獣凶狸狐だった。
 彼らは、私の知識力、レオリオの医術、ゴンの観察力と身体能力、そしてヒナの推理力のそれぞれの特性をいい、またそれによってハンター試験のナビゲーターとして私たちを連れて行ってくれるらしい。
 それぞれ喜び合う私たちの中でヒナは何か悩んでいるようだ。
 ホテルに着き、明日に備えて各部屋を取り休むことにする。
 ヒナが何か悩んでいるか気になったので聞いてみることにした。
「ヒナどうした、何か気になることでもあるのか?」
 彼女は突然話しかけられ驚いたようだ。
「ねぇ、クラピカ。私ってかわいい?美人?ボン!!キュ!!ボン!!?十八歳ぐらいに見える?」
 しかし彼女は突然私の肩をがくがく振りながらそんなことを尋ねてきた。
「お、落ち着けヒナ。いったいどうしたんだ、突然そんなことを言って」
 彼女は私の言葉に多少落ち着きを取り戻したのか「そう、落ち着いて、落ち着くのよ私」と独り言を言っている。
「それでさっきの質問は……」
 それでも彼女の目はどこか血走っているように見えた。
「あ~まぁ、私から見てヒナはかわいいと思うよ。美人とはまだ言えないけど、あとに三年経てばかなり美しくはなると思う。残念だがまだ、あぁ~そのまぁ体型のほうはこれからに期待だが、あとヒナはどう見ても十三歳前後にしか見えない」
 私の言葉に彼女はかなりガックリしていた。
 理由を聞くとレオリオの女性のタイプを聞き出したらしく完全に自分と正反対の女性がレオリオのタイプだったらしい。
 彼女はまるで世界が終わるような顔をしながらそこまでの経緯を話してくれた。
「つまり、レオリオの理想の女性と今のヒナとではまったく合致していなかったということなのか?」
 その言葉にさらに重くなる沈黙。
 その沈黙に耐え切れずついに私は口を開いてしまった。
「なぁ、ヒナそれはあくまで今はレオリオのタイプの女性ではないだけだから、今後ヒナが成長したりすれば改善されるんじゃないのか。それに、今後レオリオの趣向が変わるかもしれないだろ」
 彼女は私の言葉に目を輝かせた。
「そうよ、そうなのよ。別に無理して私を変えなくても、私の魅力でレオリオを虜にすればいいんだわ。そうよ、そうなのよ」
 そういうと彼女は自分の部屋に戻ろうとする。
「クラピカ、ありがとう。私、がんばるわ」
 そういって彼女はいつもどうりの元気を取り戻し去っていった。
 だが、ヒナとレオリオの年齢差はもうほとんど犯罪じゃないのか?
 私はレオリオを性犯罪者として警察に突き出さなくていいように祈りながら、ハンター試験前日の夜を過ごした。



[1891] 作者の妄想と設定。(ネタばれ含む)その6(もうほとんど感想)
Name: くるくる
Date: 2006/05/04 00:03
 クイズ婆の話について
 めんどくさいので省略。ぶっちゃけ原作とほとんど同じ、むしろ凶狸狐の話も省略でもよかったかも。

 実年齢について
 レオリオ19歳、クラピカ17歳、ゴン12歳、雛16歳(雛は推定)
 こうしてみるとレオリオ×雛は一見大丈夫に見えなくも無いけど、雛は見た目どう見ても十三歳。完全に犯罪だね。

 凶狸狐たちの試験について
 多分明らかにおかしいような所がたくさんある事件現場だったと予想。そうしないと試験にならないと思うから。
 家の中も何かいろいろとあるはず。そんな妄想。

 なぜかクラピカ
 視点がなぜかクラピカに行きやすい、何でだ?書いている本人が一番不思議だったりする。

 レオリオの女性の嗜好
 完全に作者の妄想。でもロリじゃないはず、私はそう信じている。
 あとレオリオはゴンに対しては仲間として信頼し、雛に対しては女の子なんで守らないといけないと思っている。



[1891] 基本的に碌な事が起きない (H×H)
Name: くるくる◆28031fe9
Date: 2007/05/05 14:17
 目の前に一つの定食屋がある。
「どう見てもただの定食屋だよな」
「そうだね、どう見ても定食屋だね」
 この場所がハンター試験会場だということがわかっていても、やはりこの小さな定食屋に、というよりこの街の地下にでかい地下道を作るなんてハンター協会はちょっとどうかしている。
「え、ちょっと待ってよ。ここってハンター試験会場入り口じゃないの?」
「いったい何のことを言ってるんだ、そんなもんこんなところにあるわけ無いだろ」
 お店に入ると一人の少女が定食屋の店主に食って掛かっていた。
「すいません、お客さん、今ちょっと立て込んでまして。それでご注文はどうしましょうか」
 店主の変わりに少女店員が凶狸狐に注文をする。
「ステーキ定食」
「焼き方はどうしましょうか?」
「弱火でじっくり」
「それではこちらにどうぞ」
 私たちは店員についていき別室に移る。
「じゃあ、がんばりなよ。あんたらなら来年も案内してやるぜ」
 そういって凶狸狐は帰っていった。開いたドアからまだ少女が大きな声で何か言っているのが聞こえた。

「いらっしゃい、ご注文は」
 今日でハンター試験受験者の受け入れも最後、ほんの数日で三十万ジェニー、本当にいいアルバイトだ。普通の定食屋のアルバイトと比べると圧倒的においしい、しかし覚えることがたくさんあるのでそれに見合うだけの仕事をしないといけない。
「ステーキ定食」
 店長が今入ってきた少女の言葉に反応する。
 しかし、少女はそれだけでいくつか決められたサインを一つも出さない。
「悪いね、お嬢ちゃん。うちにはステーキ定食なんて置いてないんだ」
「え、ちょっと待ってよ。ここってハンター試験会場入り口じゃないの?」
「はぁ、何のこといってるんだ?そんなもんこんなところにあるわけ無いだろ」
 店長が少女をあしらう。たまにいるのだ、暗号だけ言ってサインを出さない人が。
どうやら正しい暗号は知っているがサインを出さないため、試験会場に行くことはできない。
「すいません、お客さん、今ちょっと立て込んでまして。それでご注文はどうしましょうか」
 入ってきたのは五人組の男女だった。
「ステーキ定食」
 注文してきてのは狐目の男、彼は人差し指を立て右足でトントンと音を立てる。
 人差し指を立てるは全員合格、そしてトントンと右足で音を立てるのは自分がナビゲーターという意味だ。
 ほかにも試験会場に来る途中で合格点を取れなくても惜しかった人がいるときは人差し指と中指を立てておくと五十階でエレベータを止めるという意味だ。そうすることで改めて試験を受けるチャンスを得ることができる。もっともどういう試験があるかは知らないが。
「焼き方はどうしましょう?」
「弱火でじっくり」
「それではこちらにどうぞ」
 私はお客さんをエレベーターのある部屋へ案内する。
 こんな子供が出ているなんてハンター試験って簡単なんだろうか?まぁ簡単なはずが無いか、たぶんこの子供たちもものすごい実力を持っているんだろう。
 私はナビゲーターの人が出てくると、スイッチを入れ部屋を下の階へ送る。
 お店ではまだ少女がわめいていた。

 ステーキは結構いいお肉を使っていた。
 しかもタレが市販のものではなくどうやらオリジナルのものらしい。
 私たちはハンター試験の会場まで到着するのにどれだけの人間が落ちてしまうかをクラピカがみんなに説明している。
「でもさ、なんでみんなはそんなに大変な目にあってまでハンターになりたいのかなぁ?」
 ゴンの頓珍漢な質問に、レオリオとクラピカはそれぞれのハンターに対してのイメージとハンターのあり方をゴンに語る。
 正直言うと、私はあまりハンターにいいイメージを持っていない。
 なにがいけないかと言うと、私の中ではハンターは夢追い人、結局苦労したり泣くのはそのハンターの帰りを待つ家族や恋人なのだ。結局彼らは自分の夢のために自分の家族を犠牲にしているのだ。
もっとも私はそのハンターを少なくとも二十は殺しているわけだ、いまさらながらちょっと罪悪感を覚える。
 そしてついに私たちはハンター試験会場に着いた。
 周りを見回すとそこには数百人を超えるハンター試験受験者。
「結構いるね」
「いったい何人くらいいるんだろうね?」
 ゴンの質問の答えは意外なところから出ていた。
「君たちで四百十人目だよ」
 そこには16番のバッチをつけた小男。
「俺の名前はトンパ。よろしく。君たち新顔だね」
 彼は笑いながら私たちに話しかける。ちなみに私は407、レオリオが408、クラピカが409、ゴンが410だ。
 トンパは自己紹介と、ゴンの質問に答えながら今回の試験を受ける実力者を説明してくれる。
 よく見るとトンパの頬が腫れていた、それはまるで誰かに殴られた跡のようだった。
「トンパさん、顔が少し腫れているみたいですけど、どうかしたんですか?」
 彼は私を見て一瞬おびえるかのような表情をするが、
「いや実は今回の新人はなぜか気が荒い女が多くてね、オレが話しかけるとなぜか殴りかかって来るんだよ」
 ………………
 微妙な沈黙が私たちの間を通り過ぎる。
「レオリオ、クラピカ、ゴン。知らない女の人と話しちゃ駄目よ、きっと意味も無く殴られるわ」
 私の言葉に皆無言で頷く。
「ぎゃぁ~~~~」
 突然の悲鳴にみんなが悲鳴のしたほうを向く。そこには腕が無くなった人と、ピエロがいた。
 彼は何と言うか本当にピエロだった。どうも漫画を見たのが昔だったせいか、ヒソカはかっこいいイメージ(といっても悪役的かっこよさだが)があったが、現実で見るとどうしてもやっぱりピエロだ。ピエロ以外の何者でもない。
 相変わらずトンパがヒソカについて説明しているが、正直そんなもの関係なしに彼にはお近づきしたくないオーラをものすごい勢いで発していた。
「おっと、そうだった。お近づきのしるしだ、のみなよ」
 そういってトンパが持っていた袋から缶ジュースを私たちに渡す。
 「トンパさん、このジュース古くなってるよ、味がヘン」
 その言葉にレオリオとクラピカがジュースを捨てる。せっかくなので私もジュースを開け中身を捨てる。
 ちなみに下剤入りジュースは夜叵の投稿したネタだった。まさか自分が進められる羽目になるとは。

 遠くのチューブの上に一人のジェントルメンが出てきた。どうやら第一試験が始まるようだ。
 結局、元の世界からこの世界の来た人間は誰も接触してこなかった。
 漫画より増えている気がする。周りを『見』るがどうやら数人の女性がこちらを伺っている、誰もが念能力者ではある。しかし念はそれなりだが体運びから体術はそこまで鍛えられてはいない。しかし、この世界に来ている人間はいったい何人になるのだろうか?意外と1000人は実は超えているんではないだろうか?
 そんなことを考えていると少しずつ集団が前に進んでいく。
 私は周りを警戒しながら進んでいく、正直言うと原作を変えられると困る。なぜなら私の計画ではできるだけ原作を変えないようにしないと実行できない。
「どうした、ヒナ。行かないと遅れるぞ」
 クラピカが私に話しかける。それにともない四つの視線が私に向かう、しかしその視線にカナタ・ユメミヤは入っていなかった。どうやら別のところにいるのかたまたまここにいなかったのかわからないがこの場にいればいずれ会うことになるだろう。
 このままここにいても意味が無いので私も走り出す。
 周りに対して警戒しながら私は走り始める。
 正直いまだにカナタがゴンたちに接触してこないことに不思議に思いながら私のハンター試験が始まった。

 走り続けて約四時間、脱落者4人……。
 って、早すぎ。ちなみにどれも女性、多分この世界に来た人間だろう。
 念を覚えると確かにスタミナも上がる、けどそれってあくまでももとのスタミナ量に比例して増えるわけで結局のところ、最初に鍛えてないとどれだけあっても意味無かったりする。要するに100のスタミナを持つ人は二百になるけど、10しか持たない人は20にしかならないってことだと思う。
まぁ念を覚えた後にスタミナを増やすことはできるけど、念を覚えた直後は急にスタミナが増えたような気がして持久力を増やす訓練はあまりしなくなるのは仕方ないと思う。
 しかし、そのなかにカナタはいなかった。正直言うとスタミナ切れしたところで捕まえたかったがどうやらそんなに甘いものではないようだ。
 ちなみに今私はレオリオのトランクを持って入っていたりする。
 そしてついに私たちは長い長い階段に差しかかった。
「レオリオ、大丈夫」
「あぁ、なりふりかまわなければ、まだまだいけるぜ。他人の振りするなら今のうちだぜ、ヒナ、クラピカ」
 この言葉を皮切りにクラピカはレオリオに彼の志望動機を聞くそして自分の目的を語った。それはクルタ族が襲われた経緯と、一族の無念そして彼の決意だった。
 それに対してレオリオの答えはやはり金だった。
 彼は金さえあればなんでもできる。夢も希望もそして人の命さえも金さえあればすべてが手に入れられるといった。
 しかしその言葉はすべて金で解決できる世界に対しての恨みと金を手に入れてそれだけの世界で無いと証明したいといっているように聞こえた。
 結局その後レオリオは照れ隠しか私たちを置いて一気に階段を駆け上がっていった。
 私もレオリオを追いかけようと階段を駆け上がろうとしたとき、
「そういえば、ヒナは何故試験に参加したんだ?」
 突然クラピカが私に話しかけた。

「そういえば、ヒナは何故試験に参加したんだ?」
 私の突然の質問にヒナはこちらを向き驚いた表情をしたあと、少し考え込み意を決して私に語りだした。それは彼女の物語だった。
「私のこの世界での最初の記憶はゴミ山だったわ」
 私は彼女の言葉に声を失う、彼女わたしのほうを少し見たあと続けた。
「そのときの私の年齢は大体10歳ぐらいだと思う。今から五年ほど前の話よ。多分クラピカなら知ってると思うけど、流星街って所に捨てられていたわ。その後私は人身売買のオークションにかけられることになった」
 彼女の言葉はさらに私を驚かせることになる、数十年前からある国際条約で人身売買は取り締まられている。さらに言うならハンターの中にはそういう組織を率先して取り締まるハンターがいる、それほど人身売買は強く取り締まられている。
「私はそこでマフィアに買われたわ、殺し屋になるためにね。私はたまたまその才能があったのか組でも結構優秀な殺し屋なのよ」
 彼女のその笑いは少し自虐的で悲しげだった、しかしその後の発言が私を驚かせることになる。
「今回私がハンター試験に参加した理由、それはカナタ・ユメミヤという人物を捕縛することよ。彼女は「緋の目」を専門に盗んでいる泥棒よ。彼女が裏の世界で名前を知られるようになったのは約半年前から、これまで何度か彼女を捕まえようとしたけど何時も逃がしてしまったわ。その彼女が理由は不明だけどハンター試験を受けることを突き止めたわ。私たちの予想ではハンター証による情報収集の手段を得るためだと考えていたんだけど………」
「目的は私の目というわけか?」
 彼女は頷いたあと。
「その可能性が最も高いわ。多分彼女はどこかであなたがハンター試験を受けることを知って、あなたの瞳を狙ってこの試験を受けているかもしれないわ、気をつけてねクラピカ」
「なぁ、ヒナ。もし私がカナタという人物から「緋の目」を取り返したら私のからそれらを奪い返すか?そして君は私のことを殺すのか?」
 彼女はきょとんとした表情をする、そして私がなにを言いたいのかを察知したのか笑いながら答えた。
「私は無くなったものがどこに行こうが知ったことではないし、私の友達に殺さないといけない知り合いはいないわ。それに今までのことは全部独り言だから、気にしないで」
 そういうと彼女は「レオリオ~、待って~」といいながら走り去っていった。
 私は彼女に小声で感謝の言葉を送った。彼女はそれに手を小さく振って答えた。

ホームページを作りました。といってもまだハンターは書いてないですが。
そのうち時間があったら改訂版を出して意向と思います。
もし時間があるようでしたら遊びにき来てください。



[1891] 作者の妄想と設定。(ネタばれ含む)その7
Name: くるくる
Date: 2006/05/07 13:21
 会場入り口の合言葉について
 もちろんサインなんかこのSS のオリジナル。ついでに言うなら多分試験の途中でいろいろ通過ポイントがあってそこである一定の合格点を取らないと試験会場には入れないはず。もちろん妄想だけど。世の中そんなに甘くないです。もちろん文句を言っていたのは………

トンパ(トンパジュース)について
H×HSSの必ず通らないといけないものもちろん誰も飲まない。そして彼はひどい扱いを受ける。本性を知らなかったらかなり親切な人と思ってしまう。

 試験を受けた人数について
 原作では405人いたが、このSSでは410人。増えたのはトリッパーの参加者。
 ちなみに原作ではレオリオ403、クラピカ404、ゴン405。このSSでは雛407、レオリオ408、クラピカ409、ゴン410です。特に意味は無い。

 マラソンについて
 今まで走ってない人間が八十キロなんてそう簡単に走れると思うなよ!!(元陸上部の怒りの発言)念を覚えたくらいで八十キロを走れるなんてそう簡単にできるはず無いと思う私。ちなみにカナタ嬢以外のトリッパーはここで全滅。だってこれ以上キャラが増えたらメン(ゲフンゲフン)


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