「ウバシャア!!」
デカいムカデが襲ってきたので、オレは素早く手からビームを出して倒した。
最近デカいムカデが頻繁に襲ってくるので、こうして退治しているのだが、そろそろ根源を絶たねェと、いくらオレでも疲れちまうっちゅ~話。
そんなオレの名は“ジャップル・デュマ“、闇の帝王の側近”アブダビ・ニュードバイ“の細胞から産まれた闇の貴公子だ。
手からビームが出せるうえに、跳躍力も常人の5倍という、もうどうしようもなくパーフェクトな男だ。
あまりにパーフェクトすぎて、鳥肌ものだと友達には言われる。
ムカデの死体を足蹴に、デュマは不適な笑みを浮かべた。
「やべぇ、今のオレは最強を通り越して最新だぜ?ヒャハ♪」
と、自慢の髪型を整えていると、突然目の前に空間の歪みが生じ、不気味な円陣が現れた。
「はうあ!!敵かっ!!」
最強を通り越して最新な彼には、突然の出来事など恐れるに足りなかったようだ。
デュマは臆することなく、流れるような動作で円陣へと飛び込んで行った。
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ルイズが平民(サイト)を召喚して笑いを独り占めしている中、灰色髪の薄幸少女は誰にも注目を浴びないまま召喚の儀式を行った。
ただでさえ親しい友人もいないうえに、あの騒動の後では彼女の召喚など気に留める生徒などいるはずもないだろう。
普通の召喚だったとしたら・・・。
「ぎゃああああああああああ!!!」
魔方陣から飛び出してきた「モノ」を見て、少女の思考が一旦停止した。
・・・人間だ。
でもルイズの召喚した平民とは違って・・・、なんだコイツは?
肌に密着したピンクのタイツに、シャチホコみたいな形をした派手な黄金肩パット、そしてそこから垂れる蛍光グリーンのマント。
恐ろしく悪趣味な服装だが、それ以上に目を引いたのはその髪型だった。
確かに自分の使い魔なんて、ニワトリとかそのへんの人畜無害な動物だと思っていたが、まさかトサカのような髪型の人間を召喚してしまうなんて。
ルイズの召喚した平民に引き続き、またもや平民の召喚で他の生徒も反応に困っているようだ。
というか、この奇妙な格好をした人間をみたら普通反応に困る。
「・・・、なにアレ?平民かしら?」
「でも凄い格好してるぜ?」
生徒諸君のそんな感想がチラホラと聞こえ始めた頃、地面に突っ伏していたトサカ男がゆっくりと顔を上げた。
顔は、ルイズの召喚した平民よりも凶悪そうである。
「あぶねぇあぶねぇ、危うく意識がぶっ飛ぶトコだったぜ・・・。」
トサカをフリフリしながら、そう呟くとゆっくり辺りを見回す。
「どこだここは?魔界か?魔界なのか!?・・・、ていうかテメェは何者だ!?」
1人で勝手に驚き、トサカ男は一番近くに立っていた少女を指差した。
あまりの出来事に自体が飲み込めていない少女は、そんなトサカ男を何も言えずに見つめることしかできない。
「あんだテメェ?まさか敵か!!敵なのか!?」
「て・・・、敵じゃありません!私は、ラリカ・ラウクルルゥ・ド・ラ・メイルスティアです!落ち着いて話を聞いてくれませんか?」
危うく勘違いされそうになり、咄嗟に自己紹介をしたラリカだったが、その後の言葉がどうしても浮かんでこない。
もちろん、トサカ男もそんなことで納得するような知的な人間ではないため、すぐに聞き返してくる。
「テメェの名前なんてどうでもいいんだよ!!このオレをこんな場所に瞬間移動させたのはどこのどいつだって聞いてんだよダボが!!」
そんなこと聞いてなかったと思うが、そういうことらしい。
ここでラリカが正直に自分が召喚したと名乗り出てもいいのだが、確実に誤解を生みそうで何も言えない。
「チッ!!ラチがあかねェ、全員ぶっ殺してやる!!」
トサカ男の言動は、あまりに突飛すぎて意味が分からなかった。
だが、そんな言動よりもその後彼が行った行動の方が余計に意味不明だったのは確かだ。
右手をラリカの方に向けて手を広げ
「はぁぁぁ~~~!!」
と大きく叫んだのだ。
もちろん何も起きない。
ラリカが頭にハテナマークを浮かべている間、男も首を傾げながら同じ行動を繰り返していたが、4度目ほどで口を開いた。
「あれ?ビームが出ねぇ・・・。」
「ミス・メイルスティア!早くその使い魔に契約を!!」
そんな時、先生が声を上げた。
ショックが大きすぎて忘れていたが、そういえばまだ儀式が残っていた。
だが、この凶悪そうな顔&格好の狂った男を前に、どうやって儀式をやったものか・・・。
ルイズの方は、使い魔の意識がハッキリしないうちに終わらせたようなので上手くいってたが・・・、コイツは・・・。
自分の右手を眺めながら首を傾げているトサカ男を見やるラリカ。
「ビームが出ねえのは頂けねぇが、キサマ等クズ共を始末するのには・・・。」
蛍光グリーンのマントから、ゆっくりと金槌を取り出すトサカ男。
長さは役30cm弱の普通の金槌だが、ニタニタと笑いながら振り回している姿をみると、それなりに凶悪そうに見える。
トサカ男は1度ペロリと金槌を舐めると、ラリカに向かって走り出した。
「ヒィヤッハァ!!タコ殴りにしてクチャクチャの肉の塊にしてやるぜぇぇ!!」
武器が剣とかではなく、金槌というのがいまいち迫力に欠けるが、明らかな殺意を持って向かってくるトサカ男は恐ろしかった。
ラリカは身の危険を感じ、杖を強く握り締める。
「水の鞭!!」
彼女の唯一の攻撃呪文は、無防備に向かってくるトサカ男に命中した。
「ぎゃあああああああああああ!!!」
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つづく