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[20142] 【ネタ】逆らう風、戦う嵐(Fate/Stay night×仮面ライダーSPIRITS第1話開始前の1号)
Name: 血風連◆e7900104 ID:05fc7a49
Date: 2010/08/31 09:42







「――問おう、あなたが私のマスターか?」
「マスター?おやっさん、いや、立花さんのことか?」




     これは交わるはずのない世界が交わってしまったお話
     それは必然か、それともただの偶然か
     あなたはどちらと信じるか
     どちらでも別にかまいはしない
     どちらを信じようと結果は同じ
     異なる世界の者同士が出会ってしまった
     と、いう結果には変わりないのだから……




~追う者、追われる者~




「キィィィィィィイ!!」
「・・・・・・・・・・」

 それは薄暗い森の中での出来事だった。
 そこは森の中だというのに、生き物の鳴き声は聞こえず虫が奏でる音色すら無く、魔境の様相を呈していた。
 代わりに聞こえてくるのは何かが風を切り裂く音と生物が出すとは思えない奇声、そして機械的な爆音だった。
 その音の正体は二つの影だった。
 だがその影は人の姿に酷似しつつも違う異形の姿、それらが造り出す光景は正に悪夢のようなものであった。
 闇夜に蝙蝠を思わせる巨大で醜悪な翼を広げ空を切って飛ぶ異形と、それを追いかけるバイクに跨り大地を走る赤く巨大な飛蝗を連想させる複眼を持った異形。
 どちらも化け物と呼ぶに何ら遜色はないだろう風体であった。

「              」
「ムゥ!」

 翼ある異形が不可視の攻撃――超音波を複眼の異形に放つ。
 しかし、その攻撃は強化された感覚を持ち、バイクを自らの手足の如く操る複眼の異形には当たらない。
 続けて超音波を何度も放つ翼ある異形で出会ったが、複眼の異形はその全てを難なく避けつつバイクのスピードをどんどん上げていく。
 だが、複眼の異形はただそれを避けるだけで反撃はしていない。
 どうやら複眼の異形は離れた敵を攻撃する手段はないようだ。
 片や遠距離攻撃のできる者、片や離れた敵には攻撃できない者。
 だがしかし、追い詰められているのは超音波を放つ翼ある異形の方だった。
 その証拠に二つの異形の距離は少しずつではあるが確実に縮んでいる。
 翼ある異形のおそらく頭部と思われる部位にある人の顔らしき部分が、人間の表情に例えるなら怒りと焦り、そして恐怖に歪んでいるように見えた。

「ダレダ!ワタシニハナシカケルノハ!!」
「……?」

 突如、翼ある異形が誰もいないはずの虚空を見据えて何事か話し始めた。
 複眼の異形はそれを訝しみながらも、超音波が来ない今こそがこの追走劇を終わらせる好機と捉え「台風」の名を冠する愛機にして友であるバイクのスピードを上げる。

「オォォ……、ナラバワタシハアナタニショクザイノイケニエヲササゲマショウ。ソシテ、ツミビトニハバツヲアタエマショウ。ワタシヲアイシテクレルカタヨ……」
「なにっ!?」

 暗く深い闇夜よりも遙かに黒い何かが渦を巻いて翼ある異形の前に忽然と現れた。
 それはさながら魔法陣のようであった。
 翼ある異形はその中心に迷うことなく飛び込んで行った。
 翼ある異形の身体がその中に完全に消えていった次の瞬間、魔法陣は勢いよく収縮を始めた。

「・・・・逃がさん!!」

 魔法陣はほとんど閉じかかっていたが、それをこじ開けるほどの勢いで複眼の異形は何の躊躇いもなく愛機ごと魔法陣に突っ込んだ。
 複眼の異形の中で熱く燃える使命感が翼ある異形をこのまま逃がすわけにはいかないとバイクのエンジンを唸らせたのだ。
 こうして二匹の化け物は虚空にその姿を消した。




※注意  
 ネタなので「この仮面ライダー1号 強過ぎである」って感じになります。
だが、それがいい。それでいい。




[20142] プロローグ的なもの
Name: 血風連◆e7900104 ID:4329a95a
Date: 2010/08/22 00:28




~飛び込んだ先の世界~




 一瞬視界がホワイトアウトし、ようやく視力が回復した複眼の異形は人間と何ら変わりのない姿になっていた。
 近くに元異形の追っていた翼ある異形の気配はしない。

(・・・・ここは何処だ?)

 当然の疑問が彼の脳裏に浮かぶ。
 だが、それに答えるものはなくその代わりとばかりに誰かの叫ぶ声が彼の聴覚を刺激した。

「――――本気か、7人目のサーヴァント……、おいおい、二人いるだとッ!?」

 硬い金属がぶつかり合う音がした直後、そこから近くはないところに何かが着地する音が聞こえた。
 着地音のする方を元異形が見やると、そこには赤い槍を構えた蒼い衣に蒼い髪をした男がいた。
 男はゆらゆらと立っていたが、決して油断などできない殺気を放っていた。
 元異形は次に金属音のする方を見やった。

「問おう、貴方が私のマスターか?」
「マスター?おやっさん、いや、立花さんのことか?」

 そこにいた銀の鎧を纏った――例えるなら騎士のような少年から突然「マスターか?」などと問われ、元異形は自分の記憶の中にあるマスターに該当する人間の名を出した。
 その名を聞いてか聞かずか、少年は訝しげな表情を元異形に見せた。

「…………?」
「・・・・ム?」
「な、何だよ?あんたら二人は!?」

 槍を持つ男でも目の前の少年のものでもない声を聞き、元異形はその声の主に顔を向けた。
 顔を向ける途中、元異形はここがどうやら古い日本家屋に多くある土蔵の中であると気づいた。

「君は?」
「失礼した。あなたが私のマスターか?」
「え…いや……マスター?」

 元異形の言葉は、金髪の少年の問いに掻き消された。
 先程の声の主たる赤毛の少年は、オウム返しに金髪の少年に問われた言葉を口にする。
 彼の混乱した表情を見て、今の状況を分かっているのは金髪の少年と槍を持つ男だと元異形はアタリを付けた。

「すまない、君に聞きたいことがあるんだが・・・・」
「サーヴァント・セイバー、召還に応じ参上した」

 金髪の少年が何事か宣言した瞬間、赤毛の少年が左手の甲を押さえながら顔を歪めた。
 赤毛の少年の左手の甲には痣のようなものが浮かんでいた。

「……何だ、コレ?」
「それは『令呪』です。貴方がマスターである何よりの証……」
「マス…ター……サーヴァント…?」
「これより我が剣は貴方と共にあり……、貴方の運命は私と共にある。ここに契約は完了した」

 金髪の少年は透き通った凛とした声でそう告げた。
 どうやら元異形の与り知らぬところで状況はどんどん進展していっているようだ。
 ふと、金髪の少年と元異形の目が合った。

「マスター、この男は?」
「いや、知らない……」
「俺か?俺は本郷猛だ」
「貴方には聞いていない!」

 金髪の少年は殺気を隠すこともなく元異形――本郷猛に吠えた。
 少年の殺気に一瞬本郷は気圧された。その殺気は本郷が今まで対峙してきた人間とは異なるものと似通いながらもどこか違っていた。それ故に本郷は一瞬少年に呑まれた。
 だが、それはあくまで一瞬の出来事。本郷は沈着冷静な思考をすぐに取り戻した。

「待ってくれ。俺は気が付いたらなぜかここにいたんだ。君が『マスター』と呼ぶこの少年のことも、ここがどこなのかすらも知らないんだ」
「世迷い言を……。そのバイク、貴方のクラスはライダーか!?」
「ムゥ・・・・」

 本郷は言葉に窮した。
 それは秘匿しているはずの自らの二つ名を呼ばれたからに他ならない。

(この少年、まさか何らかの組織の改造人間か・・・・?)

 本郷の脳裏を「ショッカー」や「GOD機関」「ブラックサタン」といった単語が駆け巡る。
 彼の中で金髪の少年への警戒心が急激に強くなり始めた。
 元々、元異形は翼ある異形――怪人を追いかけていたのだ。
 怪しげな魔法陣に飛び込んだ先が、敵の本拠地である可能性は否定できない。寧ろそうあって然るべきだ。
 本郷が自らの置かれた状況が、かなり危険な状態なのではないかと思い当たったところで金髪の少年の顔に困惑の色が浮かんでいることに気付いた。
 だが、未だ本郷に向けられている殺気がほんの少しも和らいではいない。

「……この感じ、サーヴァントではない……、のですか?」
「あぁ、俺は『サーヴァント』とやらではないし、君と戦うつもりもない」

 先ほどからの金髪の少年の言動を省みて、本郷は彼が戦うべき相手とは「サーヴァント」と呼ばれる者だと推測した。故に、自分は「サーヴァント」と呼ばれる者ではないと表明した。
 それに、ここが本郷の敵のアジトならば目の前の少年が本郷のことを知らぬはずがない。
 両手を上に掲げ戦闘する意思のないことを全身で表現しながら本郷は少年の答えを待った。

(さて……)

 金髪の少年は高速で思考を巡らせる。

(先ほどこちらに槍を向けた男、恐らくランサーは「サーヴァントが二人」と驚いていた。恐らく私とこの男のことでしょう。ならば、この男は私とほぼ同時にここに現れたとみて間違いない。そんなことが出来る者がただの人間などでは決してない……。イレギュラーといったところでしょうか?)

 少年は本郷を、その身体全体を値踏みするかのように見回した。

(……この男が何者にせよ、考え得る危険要素は排除するべきだ)

 少年の思考は纏まった。
 そして、何の躊躇いもなく少年はその両の腕を真一文字に薙いだ。
 こうして本郷はあっけなく死んだ――――



――――はずだった。
 ついさっきまでそこにいたはずの男は、赤毛の少年の傍に彼を庇うように立っていた。

「・・・・ふぅ」

 間一髪だった、と本郷は一瞬だけ先ほどの出来事を思い返す。
 少年の殺気が威圧のための殺気から本当に殺すときの殺気への移行の瞬間を見極めきれず、その場から離れていなければ自分の首と胴体は分かたれていた、と。

(なかなかの実力の持ち主のようだな。それに彼は何も持っているように見えないが、彼が腕を振った時のあの風の揺らぎ・・・・、剣のような武器を持っているに違いない。不可視の武器か・・・・。敵に回すとなると厄介だな)

 冷静に少年の動きと彼の持つ武器を分析しながら本郷は傍らにいる赤毛の少年を見やる。

「大丈夫か?」
「あ、あぁ……。なぁ、本郷さんだっけ?今、何が起きてるんだ?」
「フム、それが俺にもよくわかっていない。詳しい話を聞きたいんだが・・・・」
「マスター、その男から離れてください!その男は危険だ!!」

 金髪の少年は赤毛の少年に必死に嘆願する。
 まるで、彼の味方は赤毛の少年只一人でそれ以外の全ては敵であるかのように。

(彼の言う「マスター」と「サーヴァント」、その意味が言葉通りならば・・・・)

 本郷は少年の口にする言葉の意味を信じて不戦の意思を口にした。

「もう一度言おう。俺に君と戦う意思はない。だが、君がこの少年に手を出すというのなら容赦はしない」
「……そのような言葉が信じられると思いますか?」

 本郷は少年の心の僅かな揺れを見逃さなかった。
 そこに畳みかけるように本郷は赤毛の少年の傍を離れ、金髪の少年に歩み寄った。

「俺は彼に危害を加えるつもりはない。信じてくれないか?」
「なっ!?」

 金髪の少年は困惑した。
 本郷は金髪の少年曰く「マスター」なる少年をいとも簡単に殺せる位置にいながら、何の躊躇いもなく金髪の少年の間合いに入ってきたのだから。

(何故だ?何故マスターを殺せる絶好の機会をこの男はみすみす見逃した!?私たちに懐柔するつもりなのか!?それとも、本当に戦うつもりがない?いや、そんなはずはない……)

 少年は困惑しながらも手に取った武器を構え直した。
 彼の持つ武器は不可視の剣。先ほどは避けられてしまったが、次に振るうのは油断のない必殺の意思を込めた斬撃、しかも不可視故にその剣の間合いがどれほどのものかは本郷にはわかっているはずもない。
 そして、本郷は既に少年の斬撃の届く範囲にまで踏み込んでいた。
 後は、その剣を振るうだけだった。

「もういいだろ。その人は戦う気がないって言ってるんだし」
「なっ!?」

 本郷を斬る機を窺っていた金髪の少年の動きを止めさせたのは本郷ではなく、赤毛の少年の言葉だった。

「なぜ止めるのです、マスター!?」
「アンタたちの事情はよくわかってないけど、今は揉め事なんかしてる場合じゃないんだ。まだ外にいるアイツ、アイツを何とかしなくちゃいけない」

 赤毛の少年は自分の心を奮い立たせる。

(落ち着け、衛宮士郎。アイツは目撃者は消すと言っていた。どういう経緯であの二人がここにいるのかはわからないけど、アイツは俺を含めた三人を間違いなく殺しに来るだろう)

 赤毛の少年――衛宮士郎はあの日の誓いを、決意を思い出す。

(俺は誰かの危機を救う「正義の味方」になるって決めたんだ。なら、やることは決まっている!――――この二人を助けることだ)

 士郎は自分の成すべきことを成すために、今の己にできることを確認する。

(悔しいけど今の俺じゃアイツには敵わない。この二人を護りながら戦うなんて到底無理だ。……だから、まずは二人を逃がす。でも、逃がしただけじゃ駄目だ。アイツは俺のように二人を追いかけて必ず殺そうとするはずだ。何が何でも今ここでアイツを倒さなきゃいけない!だから――――俺はアイツと刺し違える!!まともに戦っても勝てないなら、この命と引き換えにしてでもアイツを倒すッ!!)

 そして士郎は幼き日に憧れ、その跡を継ぐと決めた男を謝罪と覚悟を告げる。

(ゴメン、切嗣(オヤジ)。アンタとの約束護れそうにないよ……。でも、せめて「正義の味方」みたいに……、この二人だけは護って見せる!)

 思えばここにいる二人は士郎がたった今出会ったばかりで名前も何も知らない赤の他人。
 しかし、彼らには今間違いなく命の危機が迫っている。
 衛宮士郎が自らの命を投げ出すにはそれだけあれば十分だ。
 士郎はいつもこの土蔵で行っている「強化」の魔術の鍛錬に使っている鉄パイプを拾い上げ、二人に声をかけた。

「……俺がアイツの注意を引く。その間にアンタたちは逃げろ」
「いや、俺が行こう。君は怪我をしているだろう?ここで大人しく待っているんだ」

 士郎の決意は本郷の一言に一蹴された。

「何言ってんだよ、アンタ!アイツは話が通じるような奴じゃないんだぞ!?」
「そうか・・・・。だが、やるだけやってみるさ」

 士郎の制止の言葉を本郷は軽く流して土蔵の外へと歩き出した。

「あの男の言うように、マスターはここに。この聖杯戦争、必ずや私が勝利に導きます――!」
「な…!?」

 金髪の少年も士郎の言葉を無視して本郷を追いかけるように歩き始めた。

「なんなんだ、二人とも!くそ…!!」

 士郎も二人の後を追って土蔵の外へと駆け出した。
 土蔵に残されたのは本郷の乗っていたバイクだけであった。




~蒼き獣と青き騎士~




 少年は今後の方針を思考した。
 本郷は油断ならない危険人物であるが、それ以上に危険な存在として外に槍を持った蒼髪の男――恐らくサーヴァントがいる。本郷に気を取られている間にその男から不意打ちされて、しかもそれが致命傷になるなどという事態に陥っては笑い話にもならない。故に今は本郷のことは捨て置いて蒼髪の男に集中するべきだ、と少年は自分を納得させた。
 だが、本郷はまだ気を許していい相手ではないと、土蔵の入り口あたりで本郷に追い付いた少年は自分に言い聞かせる意味も含めて一言忠告した。

「……私はまだ貴方を信用したわけではありません」
「今はまだそれでいいさ」

 まだ警戒心を表している少年とは対照的に、本郷は既に少年を警戒していなかった。
 現にこうして彼は本郷に殺気を向けるでも武器を構えるでもなく隣にいる。
 本郷にとって今はそれだけで十分だった。

「それよりも今は彼と話ができるかどうかが問題だ」
「それは無理でしょう。サーヴァント同士が顔を合わせた以上戦闘は避けられない」

 本郷の問題提起は少年の言葉であっさりと却下された。

「ムゥ、なら彼もサーヴァントなのか・・・・。だが、やるだけやらせてくれないか?彼も2対1の状況なら迂闊に手を出そうとはしないはずだ」
「貴方にサーヴァントと闘うことができるほどの力があるとは思えません。そもそも、私は貴方と手を組んだ覚えもありません」
「はっはっは。手厳しいな」

 少年は本郷と槍の男に対する警戒を緩めてはいなかったものの、内心呆れていた。――本郷がサーヴァントとまともに戦えると思っていることに。
 確かに少年自身本郷のことを危険だとは思っているが、それはあくまで本郷の身柄・目的が漠然としているが故の警戒であり、彼を強力な戦闘者として危険視しているわけではない。

(……本当にこの男は何も知らないのですね。マスターも先ほどサーヴァントである私に対して「逃げろ」などと言い出す始末……。一度落ち着いて話し合うのがいいのかもしれません。……ですが、今はあの男――ランサーを討つのが先決だ)

 少年の選択肢には穏便な話し合いなどない。
 サーヴァント同士が出会えばその次に起こるのは殺し合いしかないのだから。

「これからあの男と戦闘になるでしょう。貴方は精々巻き込まれないようにしていなさい」
「待ってくれ。彼はさっき『サーヴァントが二人』と言っていた。ということは、彼は俺のこともサーヴァントだと思っているはずだ。ハッタリには十分だろう」
「……無駄だと思うのですが」

 少年は折れた。
 ほんの気まぐれからとはいえ少年は忠告をしてやったというのに、本郷は耳を貸そうともしない。

(まぁ、私がこの男を護ってやる理由もありません。このような瑣事など捨て置きましょう)

 少年は本郷を無視して外の男と戦う決意をした。
 二人が土蔵の外に出るとやはりそこには槍を持った蒼髪の男がいた。

「おぅ、やっと出てきたな。三人か……。さっきの間にとっとと逃げといた方が良かったか?」

 蒼髪の男は冗談めいた口調そう笑った。
 男の言った「三人」という言葉を聞いて少年と本郷は横目で後ろを見た。
 そこには、土蔵の中にいるはずの赤毛の少年がいた。

(なぜ出てきたのですか、マスター!!)

 思わずそう叫びたかった少年だが、そのような隙を晒せば槍を持った男に絶好の機会を与えてしまうのは自明の理と、少年はその思いを抑え込んだ。
 数秒間の睨みあいを経て状況を動かしたのは、本郷の言葉だった。

「待ってくれ。俺たちは君と戦うつもりはない。話を聞かせてくれないか?」
「おぅ、悪くない提案だな。だが、俺はマスターから他のサーヴァントを偵察して来いって言われてるんでな。それに、敵であるお前らにおいそれとコッチの情報は教えられねぇし……、相手してもらうぜ?」

 蒼髪の男は自分が数的不利であるにも関わらず、寧ろこの状況を楽しんでいるようだった。
 男の返答に本郷は目を細め、その隣でだから言っただろうとばかりに少年は嘆息した。
 少年は本郷から蒼髪の男に視線を移すと、静かに戦いの開幕を告げた。

「……残念ながら貴方はこの場を離脱することはできません。貴方はここで倒れるのですから――!」
「ハッ!武器も持たずによく言う。さっさと武器を構えな。……でないと死ぬぜ?」
「ランサー、貴方は相手の手の内を見極めてからしか攻められないのですか?」
「……上等だッ!!」

 刹那、槍を持った男――ランサーが槍を構え突進してきた。
 その速さはまるで銃より放たれた弾丸のようであった。

「くっ!!」

 それに対し、赤毛の少年は自身の脚力を最大限にまで発揮して本郷と少年を槍から護らんと駆け出した。

(捌いて薙ぎ払う!!)

 金髪の少年は自身が「マスター」と呼ぶ者とランサーを結ぶ直線状に立ち、その槍を弾き迎撃せんと不可視の剣を構えた。
 戦場にて蒼と赤と金が交錯する――――

――――かに思われた。

「む…!?」
「え…!?」
「な…!?」

 三者の行動は彼らの思い描いた結果と三者とも違っていた。
 ランサーの槍は常人には不可避の速度だったにも関わらず何もない空を突き、赤毛の少年の足は前に踏み出されたはずなのにその足は地にすら着かず、金髪の少年の剣はランサーの槍を弾くどころか振われることさえなかった。

「な、何をするのですか!貴方は!?」

 本郷と金髪の少年、そして赤毛の少年は土蔵の上に立っていた。
 正確に言えば二人の少年は本郷の両脇に抱えられていた。

「いや、危ないと思ったから助けたんだが・・・・」
「いらぬ心配です!」

 本郷は何故自分が怒鳴られているのかわかっていなさそうな表情を浮かべながら、ひとまず二人を降ろした。

(しかし、彼のあのスピード・・・・、まるで改造人間のようだ。サーヴァントとは皆あれほどの力を持っているのか?ということは彼もまた・・・・)

 ランサーを見て、金髪の少年を見て本郷はサーヴァントと呼ばれるものの危険性を感じ取っていた。
 一方で、ランサーも本郷の動きを見て感心していた。

(本気で突いたわけじゃねぇが、あの突きをかわすどころか二人も抱えてあそこまで飛び退くたぁ……)

 ランサーは獰猛な笑みを浮かべた。
 戦り甲斐のありそうな奴が見つかった、と言わんばかりの笑いだ。

「へっ……、この聖杯戦争ハズレを引いたと思っていたが、存外悪くない展開だな」
「聖杯戦争・・・・?なんのことだ?」

 土蔵から出る前に金髪の少年も言っていた耳慣れぬ言葉を放ったランサーに本郷は思わず聞き返していた。
 本郷の言葉と赤毛の少年の呆けた表情を見て、ランサーは脱力感を覚えたようだった。

「おいおい、知らねぇはずはねぇだろ?……待てよ?この感じ、サーヴァントじゃねぇな?」
「ムゥ・・・・」

 本郷はハッタリが利かなくなったことを少々残念に思ったが、すぐに思考を切り替えた。

「あぁ、俺はサーヴァントじゃない。だから君と争う理由はないはずだ。武器を収めてくれないか?」
「いや、十分あるんだな、これが」

 そう語るランサーの目は爛々と輝いていた。

「それにお前なかなかの腕を持ってそうじゃねぇか。見逃す気はねぇな!」

 そう言うと、ランサーは本郷にその槍の矛先と禍々しいまでの殺気を向けた。
 彼の顔には根っからの戦闘好きであることを証明するような笑みが貼りついていた。

「……だから言ったでしょう。話し合いなど出来はしないと」

 金髪の少年は本郷に一言そう告げると土蔵の屋根から飛び降りた。
 妙な動きをしたら先にお前を殺す、という意思がひしひしと感じられる視線を本郷に向けながら。
 ランサーは飛び降りてきた少年を一瞥すると、槍の矛先を本郷からその少年へと向け直した。

「どうやらお前は本物のサーヴァントみたいだな?」
「えぇ、確かにこの身はサーヴァント。先ほどは邪魔が入りましたが今度こそ貴方を討ちます。――ランサー、覚悟はよろしいですか?」
「……目撃者の始末は後回しだな。――いいぜ。戦り合おうじゃねぇかッ!!」

 ランサーが鋭く速い突きを繰り出す。
 しかし、その突きは少年の持つ不可視の武器に阻まれた。
 だが、ランサーは特に驚いた様子もなくその顔には不敵な笑みが浮かんでいた。
 少年は槍を突かれたままの勢いで脇へと受け流し、鉄すらも寸断せんばかりの斬撃を放つ。
 ランサーは引き戻した槍で斬撃を受け止めんとするが、その力に耐え切れず後ろへと飛び退いた。
 彼は相変わらず不敵な笑みを浮かべたまま少年へと話しかけた。

「……やっぱりな。不可視の武器とは面白いもん持ってやがる」
「気付いていましたか……」
「武器を構える時間は十分あったろうに何もしないってことは、無手か既に武器を持っているかだろうしな?じゃあ、行くぜッ!!」

 再びランサーと少年が互いの武器をぶつけ合う。
 体格差をものともしない少年の力強い武器捌きも圧巻だが、不可視の武器を捌き切るランサーの槍の扱いもさるものだった。
 二人の剣戟の激しさに赤毛の少年は圧倒されていた。

(…!!あんな小さな身体で大の男と渡り合うなんて……)

 その横で本郷はサーヴァントと呼ばれる者たちの強さに戦慄を覚えつつも先ほど耳にした剣呑な言葉に思考を巡らせていた。

(さっきあの男が言った「目撃者の始末」とは――)

 二人の眼下ではサーヴァントが夜の闇の中に美しく輝く閃光――剣戟による火花を散らせていた。
 そして、幾許かの攻防を経て互いの武器を打ち合って生まれた衝撃に身を任せ両者は後方へと大きく跳んだ。

「……ひとつ訊かせろ。お前の武器、それは剣か?」
「何を今更、既に見当は付いているのでしょう?」
「あぁ、最優と名高い剣使いのサーヴァント・セイバー。まさかこんな所で相見えるとはな……ッ!!」

 本郷はセイバーと呼ばれた金髪の少年とランサーと呼ばれた蒼髪の男の言葉を思い返し、今現在のおおよその状況を推論していた。

(おそらく二人の戦いは「聖杯戦争」と呼ばれるもので「マスター」と「サーヴァント」という組み合わせで参加し、「サーヴァント」にはクラスがあり少なくとも「セイバー」「ランサー」「ライダー」の三人がいる・・・・)

 そこまで考えた本郷の脳裏に嫌な予感が駆け巡った。
 その予感を振り払わんと、そしてより現状について正しい推測を行わんと本郷は傍らの赤毛の少年に問いかけた。

「・・・・ところで、君の名前を教えてくれないか?」
「俺は士郎。衛宮士郎って言ってこの家の人間だ」
「・・・・シロウか」

 本郷は感慨深げに赤毛の少年の名を呟いた。
 本郷の脳裏に一瞬だけ自らの血を分けた弟の顔が浮かんだ。

「では士郎君。君が今わかっていることを何でもいい、教えてくれないか?」
「……俺は学校であのランサーって奴と誰かが戦っているのを見て、そしたらランサーが『目撃者は消す』って俺を殺しに来て……」
「――そうか、そういうことだったのか!!」

 本郷は何故セイバーとランサーがサーヴァントでもマスターでもない本郷に殺気を向けたのか唐突に理解した。
 いや、唐突ではない。何故なら今本郷が理解したことは、先ほどから考えつつもそうであって欲しくないと無意識に己の思考から除外していた答えだったのだから。

「士郎君、君はここを動くな」

 そう言うと本郷は土蔵の屋根から飛び降りた。
 そして、飛び降りたままの勢いで本郷はセイバーとランサーの間に割って入った。
 が、そのとき既に二人は相手を討ち倒さんと駆け出していた。

「本郷さん!?」

 本郷の着地点、そこにセイバーとランサー両者の武器が振るわれた。




~剣と槍の交わりの最中に巻き起こる風~




 突然の闖入者に対してセイバーもランサーも武器を振るう腕を止めることはなかった。
 二人は乱入してきたお前が悪いと言わんばかりに、取るに足らぬ路傍の石を払うかのように武器を軽く振るった。
 両者の考えは奇しくも一致していた。
 こんな奴に気を取られて隙を晒すわけにはいかない、と。
 故に二人の武器は最小限の動きで振るわれた。
 だが、ランサーの槍とセイバーの剣は本郷の命を消し飛ばすことはなく彼の両の腕によってその動きを止められた。

「なっ!?」
「むっ!?」

 セイバーとランサー、二人のサーヴァントは驚愕した。
 本郷は、ランサーの突きに反応しただけでなく二人の人間を抱えて土蔵の上まで飛び上がった。その動きはただの人間には不可能な動き故に二人は本郷を警戒していた。
 だが、警戒していただけであって驚異とは認識していなかった。
 サーヴァントの動きについてこられる等とは想像もしていなかった。
 所詮サーヴァントでもない人間相手なのだからと力を抜いた攻撃だったとはいえ、自分たちの武器を止められるとは思っていなかった。

「――聞きたいことがある」

 沈黙を破ったのは本郷だった。

「――聖杯戦争というのは複数のマスターとサーヴァントが戦うものなのか?」
「あぁ、そうだ」

 ランサーが本郷の問いに答える。

「――その戦いを見てしまった人間は、何の罪もなくても殺されるのか?」
「あぁ、『目撃者は抹殺する』ってのがルールだからな」

 本郷の脳裏から消えない嫌な予感は革新へとその姿を変えていた。

「・・・・士郎君も君の戦いを見てしまったから殺すのか?」
「そうだな。ま、少々事情が変わったみたいだがな」
「・・・・そうか」

 本郷はその表情から窺い知ることはできないが、彼の心は激しい怒りに燃え上がっていた。

「――さっき俺は君たちと戦う意思はないと言った。だが、君たちが無関係な人々を争いに巻き込むと言うのなら……それを見過ごすことなど出来ない!」
「ほぉ……、ならばどうするつもりだ?」
「まずは君たちを止める。事の次第によっては君たちを倒す!!」

 そう叫ぶと、本郷は素早くその場から飛び退いた。
 そして本郷は右手を左に向かって斜め上に伸ばし、腰の横で左手の拳を固く握る 一見不可思議だが力強さと凄みを感じさせる構えをとった。
 すると、本郷の周囲に風が吹き始め彼の腰にはいつの間にか中央に風車を配した機械的なベルトが出現していた。
 本郷の異変を感じ取ったランサーは油断なく槍を構え、セイバーも不可視の剣を構え直した。

「……どうやら本当にただの人間じゃねぇみたいだな?」
「お見せしよう・・・・」

 本郷の周囲を漂っていた風がその勢いを増し、嵐となって吹き荒れる。
 ベルトの中央が激しく回転し、嵐を吸ってさらに回転数を上げる。
 それほどの激しい暴風にも関わらず本郷の声が力強く太く大きく響く。

「ライダー・・・・」

 瞬間、風車から強く眩く輝く虹色の光が放たれる。
 その光の向こうで本郷の右腕が円を描くように左へと動いた。
 本郷の姿は黒のライダースジャケットから生物的なフォルムに変わりつつあった。
 凄まじい光が本郷のベルトから発せられているために断片的にしか確認できないが、確かに本郷の姿は変化し続けている。

「変身!!」

 腰のベルトが一層大きく輝き本郷の姿が一瞬顕わになった。しかし、その姿は本郷のものではなかった。
 その両の腕と脚は鮮やかな銀の輝きを見せ、その全身を取り巻く色は影・闇を連想させる黒で、その胸から腹部にかけては有機的な緑の装甲とも皮膚ともとれる外殻に覆われており、また顔の辺りには複眼を思わせる真っ赤な光源が二つあり、鋭い歯をした銀の顎と昆虫的な二本の触覚が生えている。頭部を覆う外殻もまた緑色であるせいか、それはまるでバッタを摸した仮面を付けているようだった。
 そして、何より目を惹くのは全てを飲み込み燃えさかる火焔のように風にたゆたう真っ赤なマフラー。
 そこにいるのはただの人間などではなく、大いなる力を秘めた一流の戦闘者であった。
 突然の本郷の変異に全ての者が目を見張る中、ランサーが尤もな質問をした。

「……テメェ、なにもんだ?」

 本郷はその問いに力強く答えた。

「――――仮面ライダー」
「そうかい、聞いたことねぇ名だな。まぁ、ただもんじゃあなさそうだな?」

 ランサーは楽しくてたまらないといった表情を浮かべていた。
 その顔は待ち望んでいたおもちゃを与えられた子どものようでもあった。

「セイバー、手出しはするなよ?コイツは俺の獲物だ!!」

 その言葉すら置き去りにするほどの速さでランサーは仮面ライダーへと突進した。
 仮面ライダーは疾風のように迫るランサーの槍の穂先を何と右手の人差し指と中指だけで挟んで止めた。

「ハッ!やるじゃねぇか!じゃあ、少々本気出して行くぜ!!」

 ランサーが仮面ライダーの右手を振り払い、嵐のように連続で突きを繰り出してきた。
 仮面ライダーはランサーの突きを危なげなく右へ左へと捌いていく。
 業を煮やしたのかランサーが少しだけ大きく振りかぶって槍を突いてきた。
 仮面ライダーはその突きを一際大きく右に捌き、守りから攻めへと転じた。

「トォッ!ライダーパンチ!!」
「ぐっ!?」

 ライダーパンチを槍で受け止めたランサーだが、その口からは苦しそうな声が漏れた。
 何とか堪えきったランサーは一旦仮面ライダーとの距離を開けた。

「……双剣使いのアーチャーに最優のサーヴァント・セイバー、それにサーヴァントでもねぇくせに俺と渡り合う奴、か。へっ、こりゃあハズレなんてもんじゃねぇ。大アタリだ!」

 そう言うとランサーは今まで見せたどの構えよりも低く構えて見せた。
 仮面ライダーはその動きに何かを感じ取り半身に構え直した。
 一瞬の睨み合いの後、ランサーが地を蹴り豹の如く走り出した正にその時であった。

「何ィ!?ふざけんなッ!!」
「ム・・・・?」

 ランサーが足を止め突然叫んだ。
 それはこの場にいるセイバー、士郎、そして仮面ライダーでもない誰かに対しての怒りの叫びのようだった。

「クソッタレがあぁっ!!」

 しばしの逡巡の後、ランサーは悔しげな、名残惜しげな、そして何より怒りに満ちた表情で仮面ライダーらを一瞥した後転身、一気に塀に駆け寄るとそれを軽々と飛び越えて夜の闇にその姿を消した。

「待てっ!!」

 セイバーの制止の声はランサーには届かず、夜の静寂に溶けて消えた。
 ランサーの撤退の速さと現在の自身の置かれた状況から追跡を不可能と判断した仮面ライダーは、改めてセイバーに向き直った。
 その時、本郷の超感覚が二つの人影を壁の向こう側に捉えた。

(・・・・一般人?いや、違うな。新手か?)

 人影の正体、目的を探らんとしていた本郷の思考を端から聞こえた金属音が中断させた。
 セイバーは自身の知らぬ力を感じさせた仮面ライダーに対し、不可視の剣を突き付けていた。
 先ほど仮面ライダー=本郷は彼に対して敵対宣言をしたのだ。
 さもありなんと、本郷も戦いの構えをとる。
 仮面ライダー、そしてセイバーは戦闘態勢に入っていた。

「二人とも待ってくれ!」

 両者の緊迫した睨み合いを制したのはまたしても赤毛の少年――衛宮士郎だった。

「マスター、何故止めるのです!貴方も見たでしょう?この男の異形の姿を、その力を!!」
「それを言ったらさっきの君だって十分異常だった。そんなことより何で二人が戦わなくちゃならないんだ?本郷さんはサーヴァントとかいうヤツじゃないんだろ?」
「そうだな、君も武器を収めてくれ。戦うのはお互いの事情を聞いてからでも遅くはないはずだ」
「……わかりました」

 仮面ライダーは士郎の言葉に素直に応じて構えを解き、その姿を元の本郷へと戻した。
 セイバーは本郷のあまりにも無防備な態度と士郎の真剣な眼差しの前に「私は納得できません!」と言わんばかりの憮然とした表情で渋々剣を下ろした。
 士郎が土蔵から降りてくるのを待って、セイバーにランサーの話の真偽を問い質すべく本郷は話しかけた。

「……セイバー君でいいかな?」
「そう呼んでいただいて結構です」
「ではセイバー君、教えてくれ。聖杯戦争とはランサーの言う通りのものなのか?」
「……俺も詳しく知りたい。説明してくれ」

 士郎も本郷に同意した。
 セイバーは瞑想するかのように一瞬目を閉じ、そっと口を開いた。

「では、お話ししましょう。聖杯戦争とは聖杯を求める七人の魔術師――マスターによる殺し合い、聖杯とは所有者のあらゆる願いをかなえる存在、またサーヴァントとはマスターの手足となり戦う下僕……。そして貴方は選ばれたのです。――この儀式に参加するマスターとして……!」
「…聖杯を求めて……殺し合う!?」
「ムウ……」

 セイバーの言葉を聞き、士郎はまだ信じられないといった驚愕の表情を見せた。
 本郷はというとやはりそうかといった風情の仏頂面をしていた。

「……より詳しい話は後にしましょう」

 セイバーが場を制すように腕をスッと突き出し、再び不可視の剣を構えた。
 その視線は塀へ、その向こうへと向かっている。

「外に新手の敵が二人います」

 どうやらセイバーも外の二つの人影に気づいたようだ。
 場を再びの緊張が包み込んだ。
 長い長い1日は、まだ始まったばかりだった。




~あとがき?~




 次の話は展開を無視して内容がアインツベルンの城でのバーサーカー戦まで飛びます。
 尚、仮面ライダー1号・本郷猛がバーサーカーと戦えるのかという点につきましては、『昔、「風のエネルギー」で変身する特撮ヒーローがいたが、おそらく彼は、本当の風だけがエネルギー源ではなかったのだ。実態的風+感覚的風!!相手が発するオーラ風とでもいうのか・・・そいつもおそらくエネルギーになっていたに違いない!!だとすれば、強い怪人を相手にしたときに、より強力なパワーでキックを放っていたのも十分に説明がつく!!』と、ある漫画家の先生も仰っていたので、そういうものだと考えて頂けたらありがたいです。
 もしくはご都合主義的に、「セイバーの召還に巻き込まれた時に、仮面ライダーは大聖杯と繋がって魔力がヤバいことになって、それでサーヴァントにも勝てるようになったんだぜヒャッハー!」などと解釈して頂けたら助かります。



[20142] ヤリタカッタダケー
Name: 血風連◆e7900104 ID:4329a95a
Date: 2010/08/26 12:58
~アインツベルンに訪れる風~




 ここは日本の冬木市と呼ばれる街の郊外にある余人を寄せ付けぬ魔の巣食う森にあるアインツベルンの城。
 その内装は正に絢爛豪華、これぞ高貴なるもの――貴族の住まうに相応しい城といったものだった。
 だが、その玄関から繋がるホールはその美しかった頃の名残すら感じさせぬものになっていた。
 そこには黒き巨人「バーサーカー」と赤い弓兵「アーチャー」の二人の激しい戦いの跡が残るのみであり、極端な言葉を使えば既に「廃墟」となっていた。
 そんな廃墟の中で優雅さと美しさを失わずに立っているこの城の主たる少女――イリヤスフィール・フォン・アインツベルンはひどく不機嫌そうな表情を浮かべて自身の使い魔であるバーサーカーを睨みつけた。

「――ああもう、頭にくる!こんな奴に6回もやられるなんて……!手を抜いたんじゃないでしょうね、バーサーカー!」
「…………」

 イリヤの不満そうな声にバーサーカーは反応せず沈黙を守っていた。
 だが、それはバーサーカーがバーサーカーであり理性を剥奪された故に言葉を発せぬのではなく、彼の中にわずかに残る戦士としての本能が眼前の敵を無視して会話に応じるを良しとはしなかったからである。
 イリヤも当然それに気付いており、主の言葉を蔑ろにする従者を嗜めることなくバーサーカーの視線の先に自分も目をやる。
 そこには赤い男――アーチャーの姿が在った。
 その赤い色の正体は、それが元より身に纏っていた外套の赤なのか、それの内から吹き出した血の赤なのか分からぬほどであった。

「……ふむ。これほど痛めつけられていながらまだ現界出来ているあたり、確かに『手加減』してもらえたのかもしれんな?」

 明らかに満身創痍、人の形をギリギリのところで保っているというのにアーチャーの顔には笑みが浮かんでいた。
 その笑みは脳が限界を越えた痛みを快感に変えたことによる狂人の笑みではなく、自分の力が通じなかった悔しさからくる捨て鉢の笑みでもなく、死の間際にて己の無力さを痛感した自嘲じみた笑みですらなく、自身の恐怖をごまかそうとする強がりの笑みでさえなかった。
 その男が浮かべる笑みが表すのは「勝者の余裕」だった。
 しかしながらその笑みを浮かべるべきは、今現在の状況を鑑みるにバーサーカーであり彼のマスターであるイリヤの筈だ。
 まだまだ余力を残すバーサーカーが敗者で、死にかけのアーチャーが勝者であろうはずがない。
 そう、確かに現状を「聖杯を賭けて殺し合う聖杯戦争」と捉えるならば、どう見ても満身創痍のアーチャーが敗者で、何度か殺されたとはいえ未だそびえ立つバーサーカーが勝者である。
 だが、この状況を別の角度から見ればアーチャーは勝者足りえるのである。
 アーチャーのマスターである凛は彼にバーサーカーの足止めを命じた。
 そして今現在バーサーカーはアーチャーによって完全に足止めを喰らい、凛たちがイリヤらから逃げきってバーサーカーに対抗する作戦を練るには十分な「時間稼ぎ」が為されていた。
 だからこそアーチャーはこうして勝者の余裕を浮かべて笑っているのだろう。
 イリヤにはその笑みが自分を嘲ているように見えて非常に不愉快に思えた。
 彼女が不愉快に感じる事柄はまだある。
 アーチャーの立ち姿だ。
 彼は先にも述べたとおり、両の腕は拳を握ることも曲げることすらできず身に纏っていた外套は千々に破れおびただしい量の血が総身を濡らしていた。
 にも拘わらず、アーチャーは立っていた。
 だが、その立ち姿は最早使い物にならないその脚を強化の魔術によって無理矢理機能させているのではなく、多くの英雄がそうであったように死を前にしても尚堂々とした力強さを感じさせる立ち姿でもない。
――――ただ立っているのだ。
ほとんどの人間がそうしているように、気を張ることもなくただただ立っているだけなのだ。
 その風体は正に死に体、しかし浮かべる笑みは勝利者のソレ、されどその立ち姿は勝者でも敗者でもない極めて、そして余りにも不自然な「普通」の立ち方。
 そこに加えて数多の英霊の中でも対抗できるような存在が皆無と言っていい第五次聖杯戦争中最強のサーヴァント・バーサーカー――その真名ヘラクレス――を素性の知れない一介の英霊・アーチャーは6回も殺したのだ。
 そんなことは許せない、許さないとイリヤは不愉快さと憤りでその身を再び揺らした。
 だが、そんな自身の内面を全く表には出さずにイリヤは優雅な身のこなしを見せ、凛とした声で一言バーサーカーに告げた。

「バーサーカー、とどめを刺しなさい」

 アーチャーはイリヤの言葉を聞いてその顔から笑みを消し、いよいよ覚悟を決め――――ることなどしなかった。
 なぜ彼はそうしなかったのか、そこには彼が英霊になる前後の経験が影響している。
 彼は生前、己が願いと理想――誰も悲しませたくない、そして死に瀕した命全てを救う――の達成を目指し続けたが、やがてどうしても助けられない命、救えない魂があると悟ってしまった。
 アーチャーはその中で十いる人間の内の九を助けるために一を犠牲にする「小数を切り捨てて多数を救う」といった、理想を守るために願いに反する行いを続けた故にその矛盾から彼自身大きく歪んでしまった。
 それは彼の皮膚を黒く染め、その髪から色を失ってしまうほどの歪みだった。
 そして、アーチャーが英霊となった理由、それは「英霊ならば全てを救える」と信じて世界と契約したからだった。
 だが、英霊となった彼の役割は守りたかったはずの人々の殺戮を強要されるものであった。
 その中で人間の醜さと愚かさを見続けた彼は、自身の願いと理想の矛盾・人を救い続けることの無意味さなどから自分に対して激しく絶望し、そして壊れた。
 そんな彼は戦いの中で誇りというものを捨てた。
 少しでも多くの命を確実に救うため常に必勝の策を以てことに当たっていたアーチャーにとって、誇りなどに縛られ冷徹な思考を失い商機を逃すことなど馬鹿げているとしか言いようがないのだ。
 故にアーチャーは彼にとっての「勝利」をより確実なものにするため今の自分の状態を確認する。
 もっともその勝利とは「すこしでも長い時間バーサーカーをこの場に留めておく」ということであり、凛たちのための時間稼ぎでしかないのだが。

(――魔力残量はほぼゼロ、投影など以ての外、強化は対象によるが恐らくできて二、三度。右腕・左腕ともに使用不能、両足はこうして立っていられるのがおかしい程の損傷か……)

 アーチャーは自身の状態を確認して内心苦笑した。
 どう考えてもこれ以上は動けそうにないからだ。
 なのに何故自分は立っていられるのかなどと些細な疑問が浮かんだが、そんなことに気を取られているような余裕は有りはしない。

「■■■■■――――!!」

 現に声とはもはや形容できそうもない爆音を口から漏らしてバーサーカーが斧剣を大きく振り上げアーチャー目掛け突進した。
 それを受けてアーチャーはニヤリ、と不敵な笑みを浮かべた。



――――苦しい時こそニヤリと笑え
 誰の言葉だったのか、彼の摩耗した記憶の中から思い出すこともできないが、アーチャーはその言葉の本質を知っていた。
 戦いとは駆け引きである。
 足運びの揺らぎ、体捌きの非常に微細なところで相手の流れを見切り、次の動きを先読みする。
 また、そこから相手がどのような技の使い手か看破することも重要である。
 故に高度な技の使い手かつ高度な体術を身につけた者同士の攻防はまるで詰将棋のようになる……というのは全くの余談になるので割愛させていただく。
 このように「体」「技」の駆け引きが勝敗を決する鍵になるのだが、時にその二つ以上に重要になってくるのが相手の表情や目、呼吸から相手の心境を探る「心」の駆け引きである。
 その大体三つある要素の中では表情が一番相手に影響を与える。
 目の前の相手が戦いの最中に唐突に笑みを浮かべた時、人はどう感じるだろうか?
「気持ち悪い」という意見もあるだろうが大体は「何か裏がある」と考えるだろう。
 アーチャーはそれを実践したのだ。
 今の彼は発砲手詰まりと言っていい程に追い詰められている。
 だが、その笑みはバーサーカーの動きを止めるには十分だったようだ。
 彼は先ほどまでのバーサーカーとの戦いで宝具を次々と投影し、それを使いこなすだけでなく爆破、他にも宝具の骨子を捻じ曲げ別のモノとして使用するに留まらず、魔法に最も近い魔術と言われる禁忌中の禁忌「固有結界」すら展開して見せた。
 バーサーカー、そしてイリヤはアーチャーの不敵な笑みを見て過敏なまでに警戒を強め攻撃の手を止めた。
 まだ何かあるのかもしれない、と。

(フッ、実に単純な手段だというのに相変わらず効果的だな。いや、単純だからこそか)

 そう思いながらアーチャーはバーサーカーの全身を見やる。
 アーチャーがバーサーカーに勝てない理由も実に単純、純粋な力の差である。
 バーサーカーの逞しい巨体、凶悪なまでに発達した筋肉、そこから繰り出される攻撃は「殴る」「切る」「薙ぐ」といった実に単純なものばかりだ。
 だが、単純だからこそ、その攻撃は何の技術も小細工も必要とせず、純粋な力だけが必要になる。
 そして、バーサーカーの筋力はその単純な攻撃を正に必殺の一撃へと昇華させるには十分過ぎた。
 その単純な力の差を埋められないアーチャーがそれに対抗するためには策を巡らし、持てる技術を使い、小細工を弄する必要があった。
 いま彼が笑ったのも所詮はハッタリで小細工だが、それでも稼げた時間を無駄にするまいとアーチャーは高速で思考を展開させる。

(――両腕は既に使用不能、無理矢理強化して動かせないこともないがあの斧剣を止めることは不可能。よって防御の選択肢は思考より排除、回避に専念する。回避手段は脚を利用した跳躍のみ。だが、脚を無理矢理強化しても動ける距離はせいぜい2メートル足らず、ならば避けるタイミングは斧剣が俺を掠めるかどうかくらい、か。現状で一番確実な手段がこんなものとは我ながら不甲斐ないな。せめて一太刀……などとはいかんものだな)

 考えるまでもなく既に出ていた答えを噛み締め、アーチャーはバーサーカーを見据える。
 十数秒だけ訪れた静寂を打ち破ったのはイリヤの声だった。

「……まんまと騙されたわ。何にもないじゃない」

 アーチャーはその言葉に曖昧な態度で応える。

「――さぁ、どうかな?まだ逆転の一手があるやも知れぬし、罠があるやも知れぬぞ?」

 イリヤはフフンと鼻で笑い、アーチャーの言葉を否定する。

「ハッタリね。本当にそんな隠し玉があるなら、今の状況で自分の手の内をバラすようなことは言わないわ」

 そう断言されながらもアーチャーは相も変わらず彼らしい不敵な笑みを浮かべながら言葉を告げる。

「ならば、試してみるか……?」

 小悪魔的な少女らしい、それでいて妖艶な笑みを浮かべてイリヤはバーサーカーに指示を送る。

「試すまでもないわ。そのままやっちゃえ!バーサーカー!!」
「■■■■■■――――!!!」

 再び黒い巨人が吠え、動き出す。
 その咆哮はアインツベルンの城はおろか大地、空気までも震わせる。
 そして仮にアーチャーにどのような攻撃手段があろうとそれごと纏めて薙ぎ払わんとする勢いでバーサーカーが斧剣を高く掲げ構える。
 アーチャーはそれに対し、自身の保有するスキル「心眼(真)」を用いてバーサーカーの斧剣を躱す最良のタイミングを見極めんとする。
 二人の距離はわずか10メートル足らず、人外の力を持つサーヴァントである彼らにとってこの程度の距離は一瞬で届く。
 そしてバーサーカーが、その身を前に押し出した正にその時である。
 アインツベルンの城の薄暗いホールを照らし出す強烈な閃光と耳を劈く爆音が轟いた。
 その輝きに惑わされることなくバーサーカーは低い唸り声のような音を出し、閃光と爆音の正体を確かめんとその咆哮へと視線を向ける。
 そこにいたのはバイクに跨った東洋人風の男で、光の正体はバイクのヘッドライトであり、音の正体は同じくバイクのエンジン音であった。

「まさか……、もうここまで来たの!?」

 想定外の出来事にイリヤが驚愕の表情を見せる。
 彼女の視線はバイクに乗った男に釘付けになっていた。
 そのバイクに跨った男の顔を見たとき、アーチャーは生前の幼き日の記憶を不意に思い出した。




~赤の弓兵と緑の異形~




 あの日、世界の全てを赤に染めようとするかのように街を覆い、煌々と燃えさかる炎の海の中で少年は自分の無力さを噛み締めていた。
 そこかしこから助けを求める声が聞こえるが、彼にはどうすることもできなかった。
 そして、何時しか少年は周りを火の手に囲まれて自分の死を確信した。
 何しろ目に映る景色は瓦礫と真っ赤な炎だけ、正に地獄絵図といった風景だった。
 誰かが助けてくれる、そんなことはあり得ないと彼は子供心にそう理解した。
 だが、彼には救いの手が差し伸べられた。
 その時に少年に向けられた笑顔と言葉が火災によって家も家族も、そして自分すらも失ってしまった彼の最初の記憶となり、彼の道標となった。
 そして、少年は自分に救いの手を差し伸べてくれた命の恩人のもとで育てられ、少年は彼の後継者になることを心に誓った。
 あの日得た彼の真実と命の恩人の笑顔を道標にして、少年は目の前で苦しむ人がいればそれを助け出し、その身体の動くうちは決して投げ出さないことを誓った。

――――俺は死ぬべき命を救われた
――――だったらこの命は俺と同じような目にあってる他の誰かのために使おう
――――その誰かを窮地から救い出せたときにあの人のように笑えたらそれはどんなにいいことだろう

 それがアーチャーの追い続けた理想だ。
 そして、今彼はあの日見た笑顔と同じものを見ていた。

「スマンな・・・・、シロウ。遅くなった」
「――私は……そのような名ではない…」

 バイクに跨った男――本郷はアーチャーの憮然とした態度と答えを聞きながら右手を左に向かって斜め上に伸ばし、腰の横で左手の拳を固く握る構えをとった。
 彼の周囲を風が吹き荒れ、ベルト中央の風車――タイフーンが風を吸い込み激しく回転し彼の体内で超エネルギーを生み出すダイナモを起動させる。

「ライダー・・・・」

 本郷の声が力強く大きく響く。
 瞬間、風車から強く眩く輝く虹色の光が放たれる。
 その光の向こうで本郷の右腕が円を描くように左へと動かす。
 本郷の姿は人を離れ、人外の異形へと変わっていく。

「・・・・変身」

 刹那、バイクのライトを越える明るさの虹色の光がベルトから爆ぜた。
 光が収まった後、そこには一人の戦士が立っていた。
 だが、その身体にはいたるところに傷があり、血に染まっていた。
 しかし、そこに在るのは月光を背に受けてそびえ立つ猛々しい勇姿、何者も近付けさせぬ偉大な風を身に纏う異形の戦闘者。緑の仮面に真紅のマフラー、黒い身体に緑の外殻、銀に輝く腕と脚、光と風を放つベルトの風車。
 大自然がつかわした正義の戦士「仮面ライダー」がそこにいた。

「敵は強大だな、シロウ・・・・」

 バーサーカーを一度見やり、全身の傷の痛みを感じさせない力強い足取りで仮面ライダーはアーチャーへと歩み寄る。

「だが……、強大な敵だろうと敢然と立ち向かう。・・・・それが正義の味方だからな」

 仮面ライダーはそう言いながらアーチャーの前に跪き、その肩を抱いた。
 その時、唐突に少女の笑い声が響いた。

「あはははっ!なに、その格好は?貴方を警戒してあれだけ準備した私がまるで馬鹿みたいじゃない!!」

 イリヤは笑いの中に憤怒を感じさせる声でそう叫んだ。
 実際、彼女は仮面ライダーの脅威度を高く設定していた。
 サーヴァントでもマスターでもなく、魔術師ですらないその男は戦いに際しては人外の力を発揮する異形の姿へと変わり、サーヴァントと互角に渡り合うのだ。
 そして、仮面ライダーにバーサーカーは一度倒されている。
 「ライダーキック」という只の飛び蹴りにしか見えないのに莫大な威力を秘めた攻撃によってだ。
 バーサーカーは自身の宝具に効果によって一定の威力以下の攻撃を無効化できるが、仮面ライダーはキック1発でバーサーカーを倒してしまったのだから警戒するのは当然と言えよう。
 それに、仮面ライダーには不明な点が多すぎた。
 故にイリヤは仮面ライダーとの初戦では素早く退いて、彼の能力を調べることにした。
 そして、自分の城に衛宮士郎を取り込むに当たってセイバーらと仮面ライダーを引き離すべく、冬木の森に仮面ライダー用の魔術防壁を仕掛けたりしていた。
 だが、当の仮面ライダーは先の戦いで受けた傷が癒えず、その姿は満身創痍でありアーチャーより幾分かマシな程度だった。
 今の仮面ライダーなどバーサーカーにとって鎧袖一触であろう。
 イリヤは自分が仮面ライダーを過大評価していたと自嘲の笑い声をあげたのだった。
 しばらくして、笑うのに満足したのか飽きたのか空しくなったのか、イリヤは笑い声を止めて、仮面ライダーを指さしバーサーカーに命令した。

「バーサーカー、こんなボロボロの二人なんかさっさとやっつけちゃいなさい!!」
「■■■■―――――!!!」

 バーサーカーが咆哮をあげてイリヤの命令に応える。
 仮面ライダーはその姿を見て脳裏に自分と心を同じにする仲間たちを、そして地獄への道連れにしてしまった8人の男たちを思い浮かべていた。

(アイツらならどう戦うのだろうか……)

 思い浮かべる彼らの戦い方はそれこそ8人8様だったが、全員に共通して言えることがある。

――――彼らは決して背中を見せない

 そしてそれは、本郷も同様である。
 バーサーカーの咆哮が止み、その巨腕に握られた斧剣が仮面ライダーとアーチャー目掛け振り下ろされる。
 仮面ライダーはアーチャーを抱え、飛蝗の改造人間として与えられた跳躍力を活かし、その暴力の振るわれた場所から大きく跳び退いた。
 アーチャーと彼の身体から滴る紅い血の軌跡を残しながら。
 バーサーカーが次の一撃を与えんとその血の痕跡を追う。
 だが、その先にいたのは座り込むアーチャーただ一人。
 バーサーカーとイリヤは仮面ライダーが何処に行ったのかと別の血の跡を探す。
 しかし、二人の目が捉えることのできた血痕は全てアーチャーの傍で途切れていた。
 ふと、バーサーカーがあることに気付いた。
 アーチャーの頭より高い位置から彼のすぐ傍に血の雫が滴り落ちてきたことに。
 その血の雫と「狂化」を受けてもなお消えぬ戦士としての直感からバーサーカーが天井を仰ぎ見る。
 それにつられるようにイリヤも視線を天井へと向ける。
 二人の視線の先には薄暗い天井とそこで赤く輝く二つの光点があった。
 瞬間、光点のあった個所が爆発した。
 イリヤは赤い光の余りの速さに目でついていくことはかなわなかったが、それの向かう先はわかっていた。

「ライダァアアキィーーーック!!」

 イリヤの考えどおり、仮面ライダーはバーサーカーへと自身の持つ必殺の技を放っていた。
 その蹴撃は見事にバーサーカーの身体の中心に向かっていたが、バーサーカーは仮面ライダーの速さに対応して左腕で防御を固めていた。
 だが、その威力は天井を蹴ったことにより以前バーサーカーに繰り出した時よりも向上していた。
 故に、ライダーキックはバーサーカーの防御ごと彼を貫く――――



――――かに見えた。

「なにっ!?」

 仮面ライダーが驚愕の声をあげながら跳び退いた。
 前よりも威力の上がっているライダーキックを受けたバーサーカーの左腕は全くの無傷であった。

「アハハハハ!!残念ね、バーサーカーは一度受けた攻撃は二度と効かないわ」
「ムゥ・・・・」

 イリヤが得意げな声でバーサーカーが無傷だった理由を明かした。
 仮面ライダーの脳裏にあの日の夜の記憶が蘇る。
 あの時、彼のライダーキックを受けながらもバーサーカーは平然と立ち上がった。
 しかも、ライダーキックのダメージを全く感じさせない無傷の身体でだ。
 そしてその時イリヤはこう言っていた。

『まさか、バーサーカーを殺すだなんて……。でも、1度殺したくらいじゃバーサーカーは負けないわ』

 余り考えたくない言葉が仮面ライダーの脳裏をよぎる。
 奴は不死身ではないか、と。
 だが、その言葉は他ならぬイリヤによって否定された。

「もう一ついいことを教えてあげるわ。私のバーサーカーは十二回倒さないと死なない」

 バーサーカーの宝具「十二の試練」は神の祝福、あるいは呪いによってヘラクレスに与えられた不死性を表す。
 自身の肉体を屈強な鎧と化し、ランクB以下の攻撃を全て無効化する。加えて、死亡しても自動で蘇生がかかり、そのストックは十一回だ。
 よってバーサーカーは「十二の試練」の名の通り、十二回殺さなければ消滅しない。
 さらに、一度受けたダメージを学習してそれを克服するための耐性を肉体に付加する効果がある。
 この宝具が、ライダーキックが無効化し、また以前にバーサーカーを無傷で再び立ち上がらせたのである。
 イリヤはその事実を仮面ライダーに絶望を与えるために教えた。
 だが、仮面ライダーには絶望ではなく希望が見え始めていた。

(不死身でないのなら倒す術はある・・・・!!)

 仮面ライダーは再び構えた。

「――俺は仲間たちに『技の1号』という二つ名で呼ばれている」
「技の1号……?」

 仮面ライダーの唐突な発言にイリヤは首をかしげた。
 なぜこのタイミングで自分の二つ名などを教えてくるのか、と。
 仮面ライダーは一瞬だけ視線をイリヤに送って言葉を続けた。

「イリヤスフィール、さっきの礼代わりに何故俺が『技の1号』と呼ばれるのか・・・・、その理由を教えよう――!!」

 その言葉を発した直後、仮面ライダーはバーサーカー目掛けて駆け出した。
 バーサーカーはそれを迎撃するも、仮面ライダーは跳躍で攻撃を回避しそのままバーサーカーの巨体を跳び越えその背後に回る。

「トオ!!」

 無防備な背後から攻撃を喰らわせようとした仮面ライダーだったが、拳を少し引いたと同時にバーサーカーの強烈な左の裏拳が彼を襲った。
 すんでのところで直撃は避けられたが、バーサーカーの暴風の如き拳の力の余波を受けて彼は思わずよろめいていた。

(相変わらず、躱した上でこの威力か・・・・)

 バーサーカーとの初戦の時と同じ戦慄を感じつつも、落ち着いて体勢を整える仮面ライダー。
 しかし、バーサーカーは一瞬で仮面ライダーとの間合いを詰めて、容赦のない斬撃を繰り出す。
 辛くも初撃を躱す仮面ライダーだが、反撃の暇も与えぬ怒涛の連撃を前に一度場を仕切り直すべく彼はほんの一瞬の隙をついてバーサーカーとの距離を大きく開けた。

(見た目通りの脅威的な力、そして見た目に反する身軽さとスピードか・・・・)

 相手の実力に舌を巻きながらも仮面ライダーは再度バーサーカーに立ち向かう。
 一気に間合いを詰めてバーサーカーが斧剣を左から右に振りぬいた直後に生まれたわずかな隙をついて、右の拳を叩きこむ。

「トオッ!!トオ!トオ!!」

 二撃、三撃と攻撃を続ける仮面ライダーだったが、その攻撃はバーサーカーには毛ほども効いている様子はない。

「トオオオ!!」

 さっきのパンチやチョップよりも力を込めた膝蹴りを繰り出したが、やはりバーサーカーはダメージを受けていない。
 逆に隙を晒してしまった仮面ライダーはバーサーカーの凶悪な力の籠った左拳での殴打をその全身に受けてしまった。

「グ・・・アアアアアア!!」

 自身が弾丸になったような速さで仮面ライダーは壁へと叩きつけられた。
 鋭い痛みが仮面ライダーの全身を苛む。

「グ・・・・」

 しかし、仮面ライダーは立ち上がる。
 その時、仮面ライダーの叩きつけられた壁の近くにもたれかかっていたアーチャーが、身を起こしながら不意に仮面ライダーに声をかけてきた。

「……見てはおれんな。後は私が引き受けよう。仮面ライダー、貴様は凛たちと合流しろ」
「ナニ・・・・?」

 アーチャーが言い放ったのは、仮面ライダーにとって予想外の言葉だった。
 驚く仮面ライダーに構わずアーチャーは言葉を続ける。

「この場を離脱しろと言っている。この先、凛を手助けできるのがあの未熟な若造と魔力のないセイバーだけでは余りにも心もとない」
「何を言うんだ。そんなボロボロの身体ではバーサーカーを相手には出来るはずがない。お前が離脱しろ」

 仮面ライダーの意見にアーチャーはいつもの笑みを浮かべて応える。

「貴様が奴と戦っている間に回復させてもらったよ。ボロボロなのは寧ろ貴様の方だろう?」
「いや、あのわずかな時間で回復できるのならお前が離脱した方がいいはずだ。」

 二人は互いの主張を変えるつもりなど毛頭なく、当然ながら話は平行線を辿るだけだった。
 そして、二人ともそのことをわかっているのでお互い何も言えず、場には沈黙が流れた。

「まだお話は終わらないの?お二人さん」

 二人の間に訪れた沈黙を破ったのは第三者のイリヤの声だった。

「話し終わるまでは殺さないであげるわ。終わったら言ってね」
「■■■■■■■■――――――――――!!!」

 イリヤの声が氷のように冷たく響いた。
 バーサーカーの声が炎のように空気を歪ませた。

「さて……、敵は見逃してはくれないようだな。行け、仮面ライダー」

 アーチャーがそう言いながら仮面ライダーの一歩前に出る。

「アーチャー、お前が先に行け。俺は後から行く」

 アーチャーを押し退け今度は仮面ライダーが前に出る。

「今の貴様では、ただ死ぬだけだぞ?」

 確かに仮面ライダーは強かった。
 だが、魔術も魔力も行使できない彼がバーサーカーと長時間戦闘を出来る筈がない。
 そして、高速移動の手段がない自分はすぐに追いつかれて殺される。
 そう確信しているアーチャーは、高速で移動できるバイクを持つ仮面ライダーの方が生き残れる確立が高いと判断した。
 そして何より、彼の変えることのできなかった根幹たる理想――死に瀕した全ての命を救う――がこの場で自分以外の者が犠牲になることを認めようとしなかった。
 その想いがアーチャーの身体を突き動かしていた。
 仮面ライダーはそんなアーチャーの忠告に対して穏やかな声で応えた。

「死なないさ・・・・」

 力強い口調で本郷猛――仮面ライダー1号が告げる。

「戦いが終わらない限り、仮面ライダーは死なない」

 その言葉とその背中に、アーチャーはかつて自分が目指したモノの姿を垣間見た。
 そう、そこに在るのはアーチャーが生前目指し続けたモノ――「正義の味方」――の姿だった。
 しばらくして――と言っても極わずかな時間だが、ふと我に返ったアーチャーは苦笑した。
 何を考えているのだ、そんな者などいるはずがない、と。
 だが、同時にこうも考えていた。
 自分がそう感じ取ったのは一瞬の気の迷いだったのかもしれないが、それでも「この男にならそれができるのかもしれない」と思ったことは紛れもない事実だ、と。
 そして、こうも考える。
 魔力が使えずバーサーカーに有効打を与えることのできない仮面ライダーと最早死に体の自分、そのどちらかが凛たちと合流したとしても結局は足手まといにしかならないのではないか、と。
 ならば、この場で出来る限りの抵抗をして凛たちを逃がす時間を少しでも稼ぐのもまた一興ではないか、と。
 しかし、今の彼はさっき言ったように完全な死に体、バーサーカーと戦うことはできない。
 今のアーチャーに出来ること、それは仮面ライダーの身体に強化の魔術を用いて、彼が少しでもまともにバーサーカーと渡り合うことの出来るようにしてやることだ。

「フム、よくも吼えた。ならば、成し遂げて見せろ。手伝いくらいはしてやる」

 アーチャーが言葉と共に仮面ライダーに強化の魔術を掛ける。
 そして、先ほど自分が仮面ライダーから感じ取ったモノは本物だったのか、それとも本当に一瞬の気の迷いだったのか、確かめるために、試すように問うた。

「――――できるか」

 アーチャーの問いに仮面ライダーが答える。

「――――おぉ、アーチャー」

 その答えを聞いてアーチャーは確信する。

(――――あぁ、この人は本物の……)

 しかし、アーチャーはそんなことを考えている素振りを一切見せることなく一言だけ告げて霊体化した。

「――――『技の1号』などと嘯いたのだ。ここで倒れるようなことなどないな?」
「――――大丈夫だ」

 アーチャーの彼らしい皮肉めいた激励を受けて、仮面ライダーはバーサーカーへの反撃の狼煙を上げる。

(バーサーカー・・・・。まずはお前の力、利用させてもらう!!)



~力無き故に手に入れたもの、それは技~




「終わったみたいね。アーチャーは霊体化したんだ。まぁ、逃がす気はないからシロウの後にでもすぐ殺してあげるわ。バーサーカー、とりあえずアイツやっちゃって」

 少女の声に巨兵が応え、歩を前に進める。
 今度は向こうから駆け寄ってきたバーサーカーの台風のような激しい攻撃を高い脚力で躱しつつ、反撃のチャンスを引き込むべく斧剣が外に振られた瞬間にその身をバーサーカーの懐へと踏み込む。
 案の定、バーサーカーの左拳が仮面ライダー目掛けて振るわれる。
 仮面ライダーはその力をまともに喰らって再び壁に叩きつけられた――――



――――かに思えた。
 仮面ライダーの飛んでいった壁は轟音と共に崩れたが、そこに仮面ライダーの姿はなかった。
 次の瞬間、全く別の場所から何かがぶつかったような轟音が響き、その個所が爆ぜる。
 それも一度や二度ではない、何度もだ。
 轟音と轟音が鳴り響く中、突然バーサーカーが防御の姿勢をとろうとした。
 だが、防御が完成する前に仮面ライダーの必殺技がバーサーカーの肉体に凄まじい衝撃を伴って命中した。

「ライダァアアアア稲妻スクリュゥウウキィイイイーーーック!!!」



――――ライダー稲妻キック
 空中で壁などを何度も蹴って威力を高めて放つライダーキックの上位版である。



――――ライダースクリューキック
 身体をドリルのように回転させてキックを繰り出す強力な必殺技である。
 この二つの技を合わせた上にバーサーカーの狂化によってより強化された類まれなる膂力をあえて受けたことによりさらに勢いを増し、脅威的な威力を見せた仮面ライダーの必殺キックは「十二の試練」を突き抜けて見事バーサーカーに致命傷を与えた。
 そして今度は、バーサーカーが技の勢いそのままに壁へと叩きつけられた。

「グフゥッ!!!」

 仮面ライダーがクラッシャーの隙間から吐血し、膝をついた。

(・・・・こちらも無事では済まなかったか)

 バーサーカーの巨体を吹き飛ばすだけの威力を秘めた攻撃は、それを繰り出した仮面ライダーにも大きなダメージを与えていた。
 それに対し、全くの無傷で悠然と立ち上がるバーサーカー。
 イリヤの少女らしい笑い声がホールに響く。

「アハハハハ!すごかったわよ、今のキック!でも、バーサーカーを殺したのはたったの1回だけよ。なのに、貴方はもうボロボロじゃない?もう諦めなさい、仮面ライダー」

 イリヤが述べたのは疑いようもなく間違いようもなく事実だった。
 立ち上がった仮面ライダーの足元はふらつきしっかりと立てるようになるまで少し時間がかかった。
 この決定的な隙をイリヤは勝者の余裕を見せつけんとばかりに見逃した。

「ふふん、ようやくまともに立てたみたいね。じゃあ、死になさい!!」
「■■■■■―――――!!!」

 イリヤの声を聞き、仮面ライダーの命の灯を消し去らんとバーサーカーが猛進した。
 空気を引き裂いてバーサーカーの斧剣が仮面ライダーに迫る。
 それを、仮面ライダーは先刻までのように脚力を活かした回避ではなく、風に揺れる若草のように緩やかな動きでまさに紙一重で避けた。
 だが、バーサーカーの鋭い斬撃のあおりを受けて彼の戦闘服の表面が傷ついていく。
 しかし、それと同時にベルトのタイフーンが回転して仮面ライダーに力を与える。
 すかさず振るわれた二の太刀も同じようにして仮面ライダーは躱した。

(グッ・・・・!まだだ、まだ仕掛けるべきじゃない・・・・!!)

 尚も振るわれ続ける斬撃を仮面ライダーは体表の傷を少しずつ多くしながらもギリギリのタイミングで避け続ける。

「あぁ、もうっ!!いつまで遊んでるのよ、バーサーカー!!次の一撃で殺しなさい!!」

 バーサーカーが遊んでいるはずなどないが、埒の明かない状況に焦れたイリヤの怒声と命令がとぶ。

「■■■■■―――――!!!」

 バーサーカーが先ほどまでよりも強く、そして速い斬撃を繰り出した。
 強い風を受けても平然と揺れている柳の枝をも吹き飛ばさんとする竜巻の如き一撃だった。

(今だっ!!)

 一瞬砂埃が巻き起こり、バーサーカーの周りを覆う。
 その砂埃の中から、バーサーカーのものではない声が響く。

「・・・・お前が斧剣を大きく振り抜くこの瞬間を待っていた」

 砂埃が晴れ、バーサーカーと仮面ライダーの二人の姿が顕わになる。
 何と仮面ライダーは、バーサーカーの斧剣の上に乗っていた。
 その両脚は大きく折り曲げられ、そこに込められた力が爆ぜる瞬間を待ち望んでいるようだった。
 バーサーカーが仮面ライダーを振り落とそうとその右腕を動かすよりも早く、仮面ライダーが跳んだ。

「トオ!ライダァーーーパァンチ!!」

 弾丸よりも速く鋭く強く、仮面ライダーの脚力とパンチ力の乗った必殺技がバーサーカーの顔面で一番防御の弱い個所――目を貫く。



――――ライダーパンチ
 ライダーキックと並ぶ仮面ライダーの必殺技の一つである。
 必殺技の名に恥じぬ威力でバーサーカーの脳髄と頭蓋、頭部そのものを仮面ライダーは打ち砕いた。

「ガッ・・・・ハッ・・・・!!」

 仮面ライダーの苦悶の声が響く。
 彼は地面とそんなに離れていないところから下に向かって全力で跳んだため、受け身も取れず大理石の床に顔面から激突し、派手に転がった。

(――まだだ!ここでもう一撃叩き込む!!)

 度重なるダメージを気にも留めずに、仮面ライダーはボロボロの身体に無理矢理言うことを聞かせてすばやく身を起こし、バーサーカーへと向き直る。
 敵や周りの状況を把握する感覚器官の中枢を破壊されたバーサーカーの巨体は、無防備に立っていた。
 しかし、「十二の試練」の効果によってバーサーカーの頭部は凄まじいまでの勢いで修復を始める。

「いくぞ!!ライダージャンプ、トオッッ!!」

 満身創痍とは思えぬ動きで、仮面ライダーが跳ぶ。
 それと同時にバーサーカーの頭部が再生された。
 だが、バーサーカーが仮面ライダーの姿を視界にとらえる前に彼の頭部を仮面ライダーの両足が挟み込んだ。

「おおおおお!!」

 仮面ライダーが鮮血を撒き散らしながら、裂帛の気合を込めた叫びをあげる。
 その声に応えるように彼の両足の人工筋組織が限界を越えて悲鳴をあげながらも、爆発的な力を発揮する。
 刹那、バーサーカーの巨体が宙に浮いた。

「ライダァアアヘッドクラッシャァアアアーーー!!!」

 仮面ライダーが全身の力を最大限に使って、バーサーカーを持ち上げて空中で回転をする。
 そして、両足に挟み込んだままのバーサーカーの頭を地面目掛けて振り下ろした。
 脳天から地面に突き刺さったバーサーカーからは、骨が折れる音や肉の潰れる音が聞こえ、それを掻き消すように大理石の床が割れる音が大きく響く。



――――ライダーヘッドクラッシャー
 相手の頭部を挟み込んで空中回転して投げ飛ばす大技である。
 その余波で、アインツベルンの城も大きく揺れた。

「キャアッ!?」
「グゥ・・・・ハッ・・・・」

 イリヤの悲鳴に仮面ライダーの呻きが重なる。
 ライダーヘッドクラッシャーは本来相手を空中で投げ飛ばす技であるが、バーサーカーを挟み込んだまま地面へと叩きつけた仮面ライダーは彼自身も同様にその全身を地面に打ち付けた。
 だが、血を流し苦しみながらも仮面ライダーは立ち上がる。
 それと同時に復活したバーサーカーも立ち上がった。

「おおおおお!!」
「■■■■■―――――!!!」

 両者は雄叫びをあげながらぶつかり合う。
 バーサーカーの斧剣が振り下ろされる前に、仮面ライダーがバーサーカーの懐に飛び込んでパンチのラッシュを浴びせる。

「トオ!トオ!!」

 やはり仮面ライダーの拳がバーサーカーにダメージを与えることはない。
 だが、彼のパンチを受けてバーサーカーの巨体が揺らいだ。

「嘘っ!?」

 不動の巨兵が揺れ動いたことに、イリヤが驚愕の声を上げる。
 仮面ライダーがバーサーカーの斬撃の余波でダメージを追いながらも蓄えたエネルギーが、そしてアーチャーが施した強化の魔術が彼の筋力を高め、バーサーカーの巨体を揺るがせるだけのパワーを与えているのだ。

「ライダーパァンチ!!」

 続けて放った仮面ライダーの渾身の一撃が、バーサーカーを一際大きくよろめかせ、数歩後退させる。

「■■■■■―――――!!!」

 直ぐに体勢を立て直したバーサーカーが先の攻撃の礼代わりと言わんばかりに強烈な斬撃を放つ。
 それを大きく後ろに跳躍することで仮面ライダーは回避した。
 だが、その威力たるや凄まじく、大理石の床を砕いて大小様々な瓦礫片を当たり一面に弾き飛ばした。
 仮面ライダーはそれに対して身を守ることはせず、自ら瓦礫群のなかに跳び込み、バーサーカーの握りこぶしほどの大きさの破片をバーサーカーの顔面目掛けて蹴り飛ばした。

「電光ライダーキック!!」



――――電光ライダーキック
 特訓によって編み出した通常のライダーキックの2倍の威力を誇る必殺技である。
 その威力を内包した瓦礫片は、さながら隕石のようにバーサーカーへと飛来した。
 バーサーカーはその瓦礫片で一瞬視界を遮られるものの、それを左手で振り払う。
 再び開けたバーサーカーの視界が最初に捉えたのは、こちらに猛然と迫り来る仮面ライダーの姿であった。
 仮面ライダーは一際大きな破片を踏み台に加速していたのだ。

「ライダァアアーーーチョォオオップ!!」



――――ライダーチョップ
 敵に目掛けて強力な手刀を喰らわせる仮面ライダーの必殺技の一つである。
 咄嗟にそれを左手で受けるバーサーカーであったが、その左腕は胴体と離れ離れに相成った。

「■■■■――――!!!?」

 その痛みにバーサーカーは苦悶の叫びをあげる。
 左腕のあった箇所から溢れ出る血が、その痛みを如実に物語っていた。

「う…嘘よ!!バーサーカーがあんなボロボロの奴に!!」

 ほんの僅かな怯えを含んだ声色で、イリヤが目の前の現実を否定しようと叫んだ。
 ふらつきながらも立ち上がった仮面ライダーはイリヤの方へゆっくりと振り向いた。

「俺がこれまで・・・・」

 振り向きざまに仮面ライダーが静かな声で言葉を発する。

「何体の改造人間――人外を葬ってきたと思う」
「…………!!」

 声無き声をあげて、イリヤの全身がカタカタと震える。
 身体の至る所を走る凍りつくような悪寒が、彼女に今自分が感じているモノが何なのかを教える。
 それは紛れもない恐怖だった。
 そう、イリヤスフィール・フォン・アインツベルンは仮面ライダーに恐怖しているのだ。
 その事実にイリヤはプライドを大きく傷つけられた。
 そして、イリヤはプライドを傷つけられた怒りで恐怖を克服しようとした。
 震える身体を落ち着かせるように自分の肩を強く抱きしめ、イリヤはバーサーカーに必要以上に――恐怖を振り払うように大きな声で命令した。

「バーサーカー、仮面ライダーを確実に殺しなさい!!!」

 叫びと共にイリヤの身体の至る所から光が迸る。
 その光の正体は並みのマスターとは比較にならないほど巨大な魔術刻印だった。
 魔術に関してあまり知識のない仮面ライダーだったが、その光が齎す結果はおおよその推測がついていた。

「■■■■■■■―――――――――!!!!」

 バーサーカーから感じる力、威圧感、その他全てが先ほどまでの彼を上回っているのを仮面ライダーは感じていた。
 だが、仮面ライダーは退かない。
 仮面ライダーがベルトの左脇にあるスイッチを入れる。

「ライダーパワー!!!」

 瞬間、仮面ライダーの発している力がバーサーカーと同じく大きく膨れ上がった。
 イリヤもそれを感じ取ったが、魔術刻印を使ったバーサーカーの前にそんなものは無力だとバーサーカーを止めることなくそのまま突撃させた。


――――ライダーパワー
 仮面ライダーのパワーを一時的に高めるが連続で使用することはできない、謂わば切り札である。
 それによって得た爆発的な力を伴って仮面ライダーはバーサーカーを迎え撃つ。

「■■■■■―――――!!!」
「おおおおおおお!!!」

 躊躇いはなく油断もなく容赦もないバーサーカーの渾身の一撃が仮面ライダーの頭上に振り下ろされる。
 仮面ライダーはその迫りくる暴力を――――



――――真正面から受け止めた。
 そして、その胸元を掴んだ。

「ギリシャ神話の英雄ヘラクレス。お前はこの時代にいるべきではない・・・・!神話の世界に俺が帰してやろう!!」

 そのまま仮面ライダーはバーサーカーの巨体を高々と持ち上げる。
 その身体はとうに限界を迎えていた。
 人工筋肉が悲鳴をあげる。
 人工骨格が軋みをあげる。
 だが、仮面ライダーはその両の脚を地面にめり込ませながらも上半身に力を送り、両の腕を回転させ、バーサーカーを投げ飛ばした。

「ライダ――――きりもみシュ―――――ト!!」

 刹那、冬木市郊外の森に巨大な竜巻が出現した。

「きゃあああああああ!?」

 それはアインツベルンの城の床の破片や壁の瓦礫、天井すらも巻き込んでバーサーカーの巨体を空中へと回転させながら打ち上げる。



――――ライダーきりもみシュート
 敵を頭上に逆さの体勢で持ち上げながらジャンプし、そのまま相手の体を高速回転させて敵の体の周囲に真空状態を作り出し投げ飛ばすライダーキックよりも強力な必殺技である。
 と、本来なら空中で相手を投げ飛ばすのだが、そのジャンプにかかる力をも腕に回した仮面ライダーの放ったその技の威力は凄まじいの一言に尽き、超強力な竜巻を発生させた。
 たくさんの瓦礫や破片を後ろにつれてバーサーカーの巨体が高速回転しながら上昇し、やがて落ちてきた。
 真空状態を作り出すほどの高速回転をさしものバーサーカーの膂力をもってしても止めることはできず、その身体は無防備に地面へと叩きつけられた。
 瞬間、凄まじい衝突音とそれに伴う衝撃波がアインツベルンの城を今までの中で一番大きく揺るがした。
 それに続いて、未だきりもみ回転の収まらぬバーサーカーの身体が巨大なドリルのように床を大きく削り抉る音と、バーサーカーの血と骨と肉と皮とが潰れ砕け千切れ弾け飛ぶ音が響く。



全ての音が止んだ後、辺り一面を静寂と砂埃と血の匂いが包み込んでいた。



~あとがき~





やりたかったネタはやり終えた。
さて、バーサーカーはこのまま倒すべきかそれともセイバーたちに倒させるべきか、それが問題だ。
そして結末はFate ルートかUBWルートか、はてまた HFルートか。
どれを選んでもまとめきる自信がない……ッッ!!
まだ描きかけのSSがあるのに息を抜きすぎたッッ!!


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