「妹達の訓練、でありますか?」
「ああ、そうだ。現在00001号から9796号までが破壊。樹系図の設計者が算出した方法を疑うわけではないが、もう半数に達するというのに能力者には何の変化も見られない。付け焼き刃にしかならないだろうが、19998号から20000号までに訓練を課し、難度を上げることにした。少しでも能力者の力を引き出すために」
「確かに“私”たちは軍用クローンであり、成長の余地はありますがあまりにも時間的猶予が――」
少女が口を開くが、男は不愉快そうにそれを遮る。
「発言は許可していない。やれ、と言ったんだ。わかるな? 20000号」
「はい。直ちに訓練を開始します、とミサカは――」
「その口調は不愉快だと言ったはずだ」
「はい。申し訳ありません」
少女――妹達 20000号は気にした風もなく頷いた。
◆◆
「そういう事情により、私があなたたちの教官となったミサカ20000号であります」
「待ってください。ミサカたちに優劣はないのであなたである必要性がない、とミサカは不満を隠すことなく――」
と、19998号が口を開いた瞬間。
20000号の眼が怪しく光り、大きな声で信じられないことを口にした。
「口からクソを垂れる前と後にsirと言え! 分かったかウジ虫ども!」
少女の口から出たとは思えない言葉に、2人は困惑を隠せない・・・・・・明らかに間違った方向に突き進んでいる20000号であった。
「・・・・・・あなたは何を言っているのですか、とミサカは――」
「聞こえなかったのか雌豚! sirはどうした! 穴にぶち込まれるしか脳のない雌豚め!」
「・・・・・・sir,Yes,sir」
散々な言われように、不快そうな表情で19998号が小さく命令に従った。
「ふざけるな! 大声出せ!」
「・・・・・・sir,Yes,sir」
「妊娠でもしたか阿婆擦れ! 誰の子だ?」
「・・・・・・」
「答え無し? 魔法使いのババアか! 上出来だ、頭が死ぬほどファックするまでシゴいてやる! 間抜けなアヘ顔晒すまでシゴき倒す!」
鼻先がくっつきそうになる距離で言い捨て、20000号は19998号の隣、19999号の前に移動した。
「貴様の仕事はなんだ、雌豚、簡潔に答えろ」
「・・・・・・殺されることです、サー」
「自殺志願か」
「sir,Yes,sir」
隣でああも言われていれば、無駄口を叩く気もおきず、素直にsirを付け、答えた。
「自殺の顔をしろ」
「sir?」
「死ぬ時の顔だ! アーッ! こうだ、やってみろ!」
「・・・・・・あー」
「ふざけるな! それで死ねるか! 気合いを入れろ!」
ズイと顔が近付いてくる。唾でも掛かりそうな距離だ。
「あーっ」
「迫力なし。アヘ顔と一緒に練習していろ」
「・・・・・・sir,Yes,sir」
――これから2ヶ月近い訓練が19998号と19999号、そして20000号に課せられた。
だが訓練の終了後に彼女たちを待っていたのは実験の中止と治療のであった。
訓練のためにミサカネットワークからも切り離されていた彼女たちは永遠に訪れることのない実験のため、知らぬまま死に物狂いの訓練を続けていた。
「先生。お願いがあります」
「うん? ・・・・・・ああ、そうか、君は20000号だったね。どうかしたのかい?」
「妹達――その中でも19998号と19999号のことで、お願いが」
「とりあえず、聞こうか」
◆◆
「なるほどね。確かに君たち3人は少々特殊だ。だから外の研究施設で上手くやっていけるか不安だと」
「はい。私たちは初対面の相手への挨拶がファックだと思っていますし、口調もお姉様ほどではありませんが粗暴です」
(彼女以上だと思うけど)
初対面でファッキン・ゲコ太と挨拶されたのをカエル顔の医者は思い出した。
それ以外にも、彼女たちには他の妹達以上に常識等に欠落がある。
「ですから此処に彼女たち2人を置いていただきたく」
「ふむ・・・・・・」
などと考える素振りを見せるが、カエル顔の医者は元からそのつもりだった。
こんな彼女たちを外に出すのは、彼女たちにも周りの人間にも危険だ。
「構わないよ」
「! ありがとうございます。では早速彼女たちにも伝えてきます」
「ああ、気をつけてね」
気をつけてね。
妙な送り出しだとカエル顔の医者は笑った。
◆◆
「――!」
3人に与えられた病室の一部屋。
影に隠れながらドアを一気に開け、銃を室内に向けた。
「大人しくしろ! 妙な真似をすれば撃つ!」
――と、そこまで言って視界内に2人の姿がないことに気づく。
「まさか、罠――!」
慌てて周囲を確認するが、不信な点はない。
「――軍曹でしたか、とシスター02は肩の力を抜きます」
肩の力を抜くとは言うが、ベッドの下から現れたミサカには微塵の隙もない。
「相変わらず見事です、とシスター03は軍曹を尊敬の眼差しで見つめます」
同じように隣のベッドの下から現れたミサカが軍曹、20000号を賞賛した。
「喜べウジ虫ども、我々の戦場がこの学園都市に決まった。ロシアや韓国で任務に就いている妹達よりも辛い任務になるが、貴様らにはお似合いだ。どうだ、嬉しいか?」
「sir,Yes,sir!」
「sir,Yes,sir!」
腹から出される大きな声。
2ヶ月前などよりも明らかに軍人然としている。
「よろしい。1130よりブリーフィングを行う、遅れた者はカエルの子を孕め!」
「sir,Yes,sir!」
「sir,Yes,sir!」
「嬉しいか?」
「sir,No,sir!」
「sir,No,sir!」
軍用クローン、妹達。
たった3人の妹達が学園都市の影で暗躍する――!
「軍隊ごっこは他の患者の迷惑になるからやめろーって御坂妹!?」
不幸にもその妹達の部屋に踏み込んだ男。
ガチャッ×3
「待て待て待て! 銃を仕舞え銃を! ってどこを触ってるんですかミサカさん!」
シスター02が不幸な男のボディーチェックを行い、その結果を軍曹へと報告。
「軍曹、短小なマラ以外何もありません!」
女の子への幻想がぶち殺される一言だった。
「・・・・・・ふ、不幸だーっ!」
「この状況で叫ぶその胆力、気に入った。ウチの姉をファックしていいぞ」
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なにやってるんだろう、おれ。