暗いな......
俺ァ死ンだ、のか......?
そうだ......天井のクソ野郎に撃たれて......
ここは、地獄?
いや、チゲェ。この感触はーーーッ!!
ガバッ!!
「......どォいう、ことだ?」
起きた彼の目に写ったのは、殺風景な自分の部屋だった。
物語は、始まる。
全ての罪が無くなった彼はどうするのか。
彼自身にも、まだ、分からない。
「どォいうことだ!?」
一方通行は部屋の中で叫ぶ。
彼は困惑していた。
確かに、自分は八月三十一日に、打ち止めと言う少女を助けるため、死んだ筈だ。
それがどうして傷一つ無く生きていているのか?
しかも、何故今日の日付が四月一日になっているのか。
「クソ!ワケわかンねェ!」
一方通行は苛立ちを部屋の隅にあったゴミ箱にぶつける。
ゴミ箱は一方通行に蹴られ、粉々に粉砕された。
「チッ、落ち着け、まずは情報を……」
ゴミ箱を破壊した事で少しは落ち着いたのか、一方通行は情報を得るため、玄関へと向かった。
三日後
「やっぱりか……」
夜の街を歩きながら、一方通行は納得した。
三日間、徹底的に情報を探った結果、どうやらタイムスリップというものをしてしまったらしい。
いや、
(あくまで推測だが、時間のベクトルを操作したのか……?)
だが、一方通行はそんなことができるワケないよなと、思考を中断する。
そんなことが出来れば、今頃自分は絶対能力者(レベル6)だ。
「よお、君ちょっと俺たちと遊ばない?」
なにやら下品な声が聞こえ、チラッと一方通行は視線を動かす。
どうやらどこかの女子が不良達に絡まれてるらしい。
自分には関係無いなと思いつつ、歩き出そうとした瞬間、
「ーーーッ」
茶色の髪が目に入った。
不良達は五人いて、囲んでいるため顔は見えてないが、それでも、それが誰かは一方通行には分かった。
「……チッ」
間をタップリ開けて舌打ちし、一方通行は歩き始めた。
「ハァー……」
美琴は壁に寄りかかりながら大きくため息を吐く。
美琴にとって周りの不良達はザコ。
正直言ってハエにたかられているようなものである。
だからこそうざったいのであるが。
(まぁ、適当に能力で追っ払えばいいか)
美琴はそんなことを思考しながら腕を組んで目を閉じる。
不良達が何か言っているが無視。
が、
「あぁ?なんだテメェ?」
ふと、耳に入った不良の苛立った声。
なんだと思いつつ目を開けると、こちらに向かって1人の少年が歩いていた。
白い髪というのは珍しいが、ソレ以外は普通に見える少年は、ゆっくりとこちらに歩いて来る。
まるで、不良達など眼中に入ってないが如くの行動だった。
不良に怒鳴られても、彼はそちらを向きもしない。
ただ真っ直ぐに、美琴の方へやって来る。
その態度が気にいらなかったのか、不良がポケットに手をつっこみながら、彼の前に立つ。
恐らくガンつけするつもりだったのだろう。
だが、
ドンッ!
「はっ?」
彼は弾き飛ばされた。
巨体の不良は変な声をあげる。
何故か、不良の方が体も大きく、彼は対したスピードじゃないのに、だ。
そしてそのまま横に倒れた不良など無視し、ただ歩く。
不良達の顔に冷や汗が伝った。
美琴も直感的に感じる。
……コイツは強い、と
だが美琴は焦らない。
彼女はこの学園都市の第三位なのだから。
不良達はとうとう五メートルまで近づいたのを見て、一人が殴りかかった。
「おらぁ!!」
拳が彼の顔面に吸い込まれー、
グシャ!っと音がした。
しかし、
「ギャァァァァァ!?」
悲鳴をあげたのは殴った方だった。
汚いコンクリートの地面をゴロゴロ手を抑えて転がる。
「おい!?」
「チッ!能力者か!」
不良達は警戒しながら、各々の武器を取り出す。
特殊警棒、スタンガン、ジャックナイフ、そして拳銃。
五人の男は武器を彼に向ける、
が、
トンッ、彼が軽く地面を踏んだ瞬間、ゴバッ!っと彼を中心に地面が砕けた。
破片が散弾のように囲んでいた不良達に命中する。
「グボッ!?」
「がァ!?」
「……」
地面に倒れ伏す男達を見ながら、彼はチラッと美琴の方を見る。
その紅い目を睨みかえす。
だが、それを無視したのか、彼はそのままどこかへと行こうとする。
「はぁ?ちょ、あんた」
「……」
美琴は呼びかけるのだが……
「おーい?聞いてる?」
「……」
勝手に助けたつもりになってどこかに行こうとするその姿に、美琴はついに切れた。
「聞いてんのかあああああああ!?」
完璧に無視して歩いて行く少年の背中に前髪から放たれた雷撃が飛ぶ。
当たっても精々気を失う程度の電撃。
それが背中に当たった瞬間、弾かれた。
「!?」
とっさに美琴は体を横に動かしてかわす。
もといた場所を、反射された電撃が通り過ぎた。
こんな現象は、始めてであり、美琴は目を見開く。
どこかに行こうとしていた彼は、ふと立ち止まり、美琴の方に体を向ける。
周りが暗闇なだけに、少年の白い髪はよく目立った。
美琴は思わずツバを飲み込み、尋ねる。
「アンタ、何者?」
美琴のこの質問に、彼は少し躊躇う素振りを見せた後、言った。
「……一方通行(アクセラレータ)」
ただ一言、この学園都市最強の名を。
ただそれだけ言い、一方通行は去って行った。
これが、この世界での二人の出会いである。
帰り道、一方通行は自分の行動に苛ついていた。
何故、あそこで不良達をボコしたのか。
何故、放っておかなかったのか。
「チッ、今更善人気取りかよクソが」
答えは、すでに出ていた。
ピピピッ、と携帯のノーマルな着信音が聞こえる。
一方通行はズボンのポケットに手をつっこみ、黒い携帯を取り出した。
着信者は、研究所。
彼は、明日があの実験の始まりだったことを思い出した。
後書き
なんか文章繋がってない所は見逃してくれると嬉しいです。