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[21324] 【習作】とある剣鬼の気功術(とある魔術の禁書目録×鬼哭街 オリ主 微最強モノ)
Name: 雨◆1988f9ea ID:d907a893
Date: 2010/08/20 23:36
前書き

以前少しだけ書き溜めていたものです。

今日やっと決心することができたので投稿させていただきます。

処女作です。

誤字脱字、設定、文章などが酷いことになっていると思われます。

感想、指摘などは随時お待ちしております。



一応念のため世界観や設定について少しだけ書かせていただきます。

世界観としては禁書が中心で、そこに少し鬼哭街が混じっている感じです。幣会は存在します。

時系列は鬼哭街本編の数条年前なのでサイボーグ技術は出てきません。当然鬼哭街本編の登場人物も出てきません。

何人かオリキャラが出てきます。禁書本編のキャラの何人かにはオリ設定が付いています。

以上です。では、始めさせていただきます。



[21324] 序章 
Name: 雨◆1988f9ea ID:d907a893
Date: 2010/08/21 02:05
その日は雨だった。
学園都市、計二百三十万人弱の住人から成る巨大都市であり、面積は東京の三分の一程もある。そんな学園都市の路地裏に一人の男がいた。ただその格好はこの科学信奉といっても過言ではない学園都市には相応しくないものだった。見た目は長身痩躯にして、落ち窪んだ暗い眼差し、削ぎ落としたように窶《やつ》れた頬、一目見れば幽鬼と見紛う男だった。服装は自分の膝ほどの長さがある黒の外套を身に纏い両手には黒の革手袋。この時点ですでに通報されていても可笑しくない、まるで乞食のような格好である。さらに左手に持たれている一本の刀。その道の者なら『倭刀』と見て取るだろう。倭刀とは、硬度に優れ、刺突と斬撃を共にこなす玄人向けの器械である。艶の失せた黒鞘といい、飾り気の無い柄頭といい銘刀の類ではないが、その苛酷な風月を思わせる蒼然の程は……熾烈な使い込みに堪えてきた、業物の証とも取れる。
その男は雨の中傘をさす事も無く、雨に濡れる髪や服を嘆くでもなく、雨を凌げる所を探して彷徨っている風でもなかった。周りのものに意識を向ける事も無く、ただ淡々と目的の所へ向かっていた。
男の足が急に止まる。目的の場所に着いたのだろう。
瞬間、男、卂瞬仭《シン・シュンジン》の持っていた携帯電話が鳴る。

『よう、卂。いきなりだが標的は後十分ほどで御到着だ。近くに三か所ほど隠れるにはいい場所がある。そこのいずれかを使ってくれ』
「・・・・随分人使いが荒いんじゃないか。ここ一週間は休みなしだぞ」
『連中もそれだけ必死ってことさ。何せ実用化には程遠いが、それでも未来性と実用性を見れば喉から手が出る程欲しいだろうさ。このサイボーグ技術ってのは。疑似的ながら不老不死に近づく唯一の方法だろうからな、これは。』
「亡者共が。下らない事を」

サイボーグ技術。ここ数年の間に学園都市で開発、発展をしてきた物の一つである。とは言うものの実用化にはまだ程遠く、学園都市内の技術を用いても最低二十年から五十年、下手すると一世紀かかっても出来るかどうか分からない代物だった。ただそれでも一歩一歩は遅く、少しずつでも、確実に実用化に近づいていた。
そしてここ最近、どうやって嗅ぎつけたのか、学園都市外の人間がこのサイボーグ技術を盗もうと躍起になっていた。その度に学園都市の裏に関る人間が毎回駆り出されていた。その中でも最も駆り出される回数が多い卂はこの一週間、休む事も無く外部の人間への技術漏洩を食い止めていた。

「言いたい事はそれだけか?なら切るぞ。それと新しい、これと同じ型で同じ番号の携帯電話を一台頼む。終わり次第いつもの場所まで回収しに行く」
『わかった。今すぐ用意させよう。じゃ、幸運を祈るぜ』

ピッ、という電子音と共に通話が切られる。

「思ってもいない事を」

そう無感情に呟く。先ほどの電話の相手、土御門《つちみかど》元春《もとはる》に対する呟きである。その呟きの後にはすぐに移動を開始する。先ほど言っていた隠れる場所という所だろう。そしてその隠れ場所というのを発見したのかそこに身を潜める。そのまま卂は雨に打たれながらその場から動く事無く留まり続けていた。





卂が隠れてから八分後、黒塗りのワゴン車が二台現れた。学園都市の技術を外部に持ち出そうとしている連中だろう。だが卂は動かない。敵が何人いて、どんな装備なのかを確かめるためである。

“ガードマンの人数は受け渡し側、受け取り側ともに四人ずつ。要人の方も拳銃位は持っているだろう。だが問題はガードマンの装備だな。サイレンサー付きのP90に懐に拳銃を一丁。それに暗視ゴーグルか。”

そこまで確認して卂は内心で勝利を確信し、ほくそ笑む。ああいう小道具に頼る手相こそ“電磁発勁”の真骨頂だからである。
敵との間合いは約十五メートル。内家拳士ならば一秒も掛からずに零に縮められる距離である。そのまま機を待つ。敵の呼吸までも聴覚で聞き分けられる程にまで氣を巡らし、集中した卂は敵の意識がこちらから逸れた一瞬の隙を見逃す事無く、飛び出した。

「!!!」

敵が卂に気付く。が、もう遅い。卂を認識した時には既に卂の間合いに居たのだから。

「呵ァ!!」

掛け声と共に卂の横隔膜の辺りから電磁パルスが放たれる。
轟雷功《ごうらいこう》。電磁発勁のひとつ。身体の周囲に電磁パレスを放射して電子デバイスを破壊する。だが使い手が身につけた電子機器も例外なく破壊する技である。
轟雷功により暗視ゴーグルを破壊され視界を奪われたガードマン達は立ち処に恐慌状態となった。決定的な隙が出来たのである。当然、プロである卂がその隙を見逃すはずも無く、攻撃を仕掛ける。
手近にいた男の頸動脈を正確に倭刀が切り裂く。断末魔と大量の血を首から噴出させながらその場で息絶える。返す刀で隣に居た男の心臓を突く。即死である。完全に卂の独壇場のまま、ガードマンは全員成す術も無く、物言わぬ屍となった。

「残るは、貴様等だけだ」
「く、来るなぁ!!」

ダンダンガン!!と要人が懐から出した拳銃を乱射する。が、当たらない。小刻みに身を逸らす事でミリ単位で銃弾を避けたのだった。一歩で距離を詰めた卂が要人の首を撥ねる。もう一人の要人の首を左手で掴む。その状態になった時、自らの理解を超えた恐怖が要人を襲う。
もはや形振り構っていられない。この人の形をした死神から生き延びる術を探さなくては!

「やめろ!やめてくれぇ!私は悪くない!!ただ、ただ少し魔が差しただけなんだ!!一億だぞ!この未完成な技術に一億円だ!そんな大金を見せられたら誰だって―!!」
「………言い残す事は、それだけか?」
「わ、分かった!一億の半分、いや六割を出す!だから、だから見逃してくぎゃあああぁぁぁぁああぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」

突如男が叫び声を上げる。
紫電掌《しでんしょう》。特殊な練気によって掌勢に電磁パルスを孕ませ、触れると同時に放射する気功術。その電磁パルスが脳から神経に送られる微弱な電流に干渉し、過剰な電流を与え、中枢神経が焼かれ、地獄の様な激痛と共に死に至らしめる。“電磁発勁”とも呼ばれる、後の戴天流気功術の裏奥義である。卂の得意技にして、三年の時を費やして作り上げた、至高の奥義である。
数秒後、要人は声を上げなくなる。絶命したのだ。
最後に要人が絶命したのを確認し、刀を血振りを終え、鞘に納める。
程無くして二台のワンボックスカーが卂の近くに止まる。中から出てきた七人の男達が手際よく死体と血痕、髪の毛など殺人があった事を認識させない様に処理していく。

「車を清掃業者に偽造するとは、随分と性質の悪い冗談だな」
「文字通り清掃業だからな」

卂と死体処理班の男の一人は、どうやら顔見知りの様だ。
もう用は済んだ、とばかりにきびを返す卂。

「お疲れー、紫電掌の旦那」
「………俺はまだ十六だぞ。旦那はやめろ」
「ハッ!全然見えねぇっつの!どう見ても二十代後半だよ、あんた」

男は鼻で笑って一蹴する。嘲笑を気にする風も無く、卂は闇に紛れる様にしてその場を去った。



[21324] 其之一 窒素装甲 絹旗最愛
Name: 雨◆1988f9ea ID:d907a893
Date: 2010/08/20 23:40
仕事を終えた翌日、実に一週間ぶりのオフを貰った卂。といっても卂自身これと言った趣味が無いので、帰って寝る位しかやる事が無いのだが。
だがやはり久しぶりのオフだからか、いつもの陰鬱な雰囲気は無く、普段よりは若干軽い足取りで寮へと向かっていた。

「おや、卂さんじゃないですか。超久しぶりですね」
「ん?」

独特の口調で話しかけられた卂は自分の脳内に有る人物リストから該当する人物を探し出す。といっても卂自体知り合いが多いとは言えないのですぐに見つかったのだが。

「ああ、絹旗か」
「私の事超分からなかったんですか?」
「少しな」
「そこら辺はもう少しオブラートに超包んでから言った方がいいですよ」
「以後気をつけよう」

卂は少女、絹旗最愛《きぬはた さいあい》の特徴的な口調を前にしても眉一つ動かす事も無く簡素な返答で答える。

「相変わらず超表情を変えずに超短い返答だけですか。台詞、原稿用紙一枚いきますか?」
「・・・・・・何の話だ?」
「いえ、超特に意味は無いですが」
「そうか」

そこで会話が途切れる。この男は会話を途切れさせるのが特技なのだろうか?

「にしても、まだそのロングコートを超着ているんですか。超暑くないんですか?」
「慣れたからな」
「そうですか。やはり卂さんは超卂さんですね」

二人で並びながら歩く。その内卂が多くなり始めた通行人を鬱陶しく感じたのか、急に方向を変え、いかにもスキルアウトの屯していそうな路地裏へと入っていった。当然、絹旗もそれに付いて行く。

「こういう所に居ると、卂さんに会った時の事を思い出しますね」
「確かに、な」

あれは、卂が学園都市に来て半年ほどした頃、未だに科学最先端のこの街に慣れず、道に迷っていた時に道を聞こうと声をかけたのが絹旗だった。

「すまん、道を聞きたいのだが」
「ええ、超良いですよ」

少し変な言葉遣いだな、と思いながらも口には出さず目的地を言う。

「ああ、ここなら超知ってます。ここ行くのにはちょっとした超裏道があるんですよ」
「そうなのか?」
「超そうなんです。良い機会ですから、超特別に道を教えてあげます」
「忝い」

こっちです、と言う絹旗の後ろに付いて行く。
が、学園都市のどこかに居る某不幸旗男の不幸にいつの間にか感染したのか、偶々通りかかった時に三十人程のスキルアウトの集団に出くわし、案の定因縁を吹っ掛けられた。

「おいおい、まさかマジモンのロリコン様ですかぁ?」
「マジキショいな」
「ていうか援交だったらさぁ、そのガキに払う金俺らに渡してくんねぇかな?そっちの方が金も喜ぶでしょ」
「お前良い事言ったな」

大声を上げて笑うスキルアウトの集団を見て絹旗はうんざりした。せっかくのオフで前から気になっていたB級映画を見ていつも通り超つまんなかったですねー。あれは最早C級でしたね、とか思いながら歩いていたら見知らぬ人が道を尋ねてきて気分もいいから裏道も教えてあげますか、等と思って親切心で道案内をしていたら御覧の通りである。

“まったく、超慣れない事をしたからですかね。こういうトラブルは超私のキャラじゃありませんよ”

レベル4の絹旗にとってはレベル0が何人集まっても大した脅威にはならない。このまま好き勝手言われるのも超癪ですし、二、三人位見せしめにボコせばいいですよね、等と考えているとスキルアウト達もいつまでも特に反応しない二人に不信感と苛立ちを感じ、二人を囲むような位置に移動していた。

“こいつら、結構慣れているようですね”

絹旗も構え、いつ来ても迎え撃てるようにする。だが突如予想外の所から声が掛かった。

「俺の首に掴まれ」

先ほど道を尋ねてきた男だった。

「・・・・・・この状況で一体何を言い出しますか。それともこのドサンピン共が言うように超ロリコンなんですか?」
「そうじゃない。俺一人ならこの場の全員を沈めるのは簡単だが、お前が人質にでも取られるとこちらも動き辛くなる。だから俺の首に掴まって俺がお前を抱えた方が動きやすいからそうして欲しいだけだ」
「それは私が超役立たずの超足手まといと言う事を暗に言っているんですか?」
「そうじゃない。子供が闘っている姿を見るのが好きじゃないだけだ」

そう言うや否や即座に絹旗を左手で抱える。一方右手には一刀の倭刀が持たれている。ここに来てからも常に竹刀袋に入れて持ち歩いていた愛刀を絹旗を抱える前に抜いていたのだ。
その倭刀を見てか、スキルアウト達は一瞬怯む。何せこんな所で正真正銘、本物の刀を使用する人間が居るのだ。まさしく異常である。

「ちょっと、超放して下さい!超いらないお世話です!」
「いいから掴まっていろ」

有無を言わせぬ男の迫力に気圧された絹旗は渋々男の言う事を聞く。

「こんの野郎、舐めんじゃねえ!!」

一人の男、恐らくリーダー格の男が叫ぶと同時に他のスキルアウトの面々も各々の武器を取りだしていく。中には拳銃を持っている者もいた。
そんな中、絹旗を左手で抱えた男はそれらの武器に動じることなく悠然とした態度で臨んでいた。

「やれ!」

リーダーが指示を出す。それと同時に飛びかかってくるスキルアウト達。けれども男は飛びかかってくるスキルアウト達の位置を確認し、絹旗の腰を強く抱き、後ろに避けずに逆に突っ込んで行った。
まずはスタンロッドを持ったスキルアウトの足を払い、態勢を崩した瞬間に峰による一閃を脇腹に食らわせ、気絶させる。
次にスタンガンを持って突撃してきたスキルアウトをスタンガンを危うげに躱し、スタンガンを突きだした時の伸びきった態勢になった瞬間を見計らい、顎を柄頭で殴り、気絶させる。
その後男は次々に来るスキルアウト達の攻撃を時に躱し、欺き、払い、確実に急所へとカウンターを入れていく。
だがスキルアウト達も味方がやられる度に新たなる増援を呼び、味方が倒される度に交代だ、とばかりに出てきて、人数が増えていく。だがそんな中でも男は絹旗を左手で抱えながら闘っていた。自分は無数の傷を負って、血を流しているというのに、絹旗は掠り傷一つ無い。それは一重に男が絹旗に攻撃が当たらない様に配慮しているだけなのだが。
そして四時間近くにも及ぶ闘いが終わった時には、軽く百人はいるであろう気絶したスキルアウト達がいた。
一方、男と絹旗は先ほどスキルアウト達と交戦していた所からは離れた路地裏を走っていた。ちなみに絹旗は未だ抱えられたままである。

「ここまで来たらもう大丈夫でしょう。いい加減おろして下さい」
「ああ、すまない」

そこでやっと男は絹旗を地に下ろす。

「まったく、一体超なんですか、あれは。超異常ですよ、異常。どうやればあれだけの時間を逃走しながら闘い続けられるんですか。まさか未だに出てきていないレベル5の第六位ですか、あなたは」
「いや、生憎俺はレベル0の無能力者だ」
「はぁ?なんなんですか、その冗談。超笑えませんよ」

当然だろう。絹旗自身、いくらレベル4といえど、あれだけの人数を前にしたらどうなっていたか、考えるまでも無かった。いくら能力者とはいえ、無限に能力を使い続けられる訳じゃない。故に、能力者にとって一対多数の長期戦は能力の強弱問わずで不利と言える。

「超能力では無かったら一体何だって言うんですか?」
「武術なのだが」
「武術ゥ?」

眉を顰め、疑わしげな顔を男に向ける。

「あれだけの人数を倒していて武術とか、B級映画の超見過ぎなんじゃないんですか?」
「碌にテレビすら見たとこが無いのだが・・・・」
「とにかく!武術だけであれだけの人数を倒すなど超あり得ません!超詳しい説明を超要求します!」
「わかった。だから胸倉を掴まないでくれ」

胸倉を掴んでいる絹旗の手を解きながら徐《おもむろ》に説明を始める。

「武術の体系は大まかに分けて、二つ。膂力、瞬発力を鍛え上げ、型と技法を磨くことに終始する『外家拳法』。呼吸や血流を律することで、経絡を巡る「氣」を鍛え駆使する『内家拳法』。この二つの内、俺が習得したのは『内家拳法』だな」
「成程成程、それなら超納得、出来る訳ありますかー!」

ガーッ、と両腕を上げながら威嚇(?)を男にする絹旗。ハッキリ言って、全然怖くない。

「超なんですか、氣って!今時深夜にやってる超怪しげな通販でも氣がどうのなんて言いませんよ!超胡散臭すぎるでしょう!間違い無く超B級映画的な何かでしょう!設定的に!だがそれがいい!」

もはや捲し立ての域にまで達していた。言いたい事を一通り言い終えたのか、息を切らせながら少しずつ自分をクールダウンさせていく絹旗。

「落ち着いたか?」
「ええ、まあ」

というか原因はあなたの様な気が・・・・、と今さら気付いた絹旗は少し納得できないからか、もやもやしたものが胸の奥から込み上げてきたが、取り敢えず今は心の隅に置いておく事にした。

「で、あなたはその氣っていうのを超証明する方法はあるのですか?」
「一応、あるにはあるが・・・・」

男はそこで言い淀む。何か氣という非科学的なものを証明できない理由でもあるのだろうか?と絹旗は考える。

“まさか、人目があるから出来ないとかいう昔いた超エセ超能力者と同じことを言うんじゃないんでしょうね”

だとしたら先ほどの男の動きが説明できない。今まで色々な裏の仕事を受けてきた絹旗でも、男の動きはおかしな点がいくつもあった。単なる身体能力上昇系能力者では言い表せない様な動き、そして何より振った事を認識できない、正確には気付いたら振り終わっている、なのだが、それでもただ剣速が速いでは説明できない剣筋。長時間に及ぶ戦闘をしても息を乱すどころか汗一つ搔いていないスタミナと何回か攻撃が掠り、当たりもしたが、それを物ともしないタフネスさ。
科学や超能力で説明できない、無数の不可解な点を鑑みるに、氣というのも案外あるのでは、と絹旗は考え始めた。

「なら超聞き方を変えましょう。証明する方法に何か問題があるのですか?」
「・・・・・・・・ああ。俺が氣を証明するとなると、少なくとも内臓にダメージがいき、最悪吐血くらいは覚悟しなくてはならなくなる。氣を証明するにしては、少々荷が勝ちすぎる」

吐血や内臓にダメージがいくと聞いて息を吞む。だとしたら今の男の内臓はボロボロの瀕死状態であり、今ここで話しているだけでいつ倒れてもおかしくない事になる。

「そ、それは超大丈夫なのですか?」
「ん?今は内臓にダメージはいっていない。ある特定の業を使った時にだけそうなるだけだ。それ以外は氣を使ってダメージを受ける事は無い」
「そ、そうですか。流石に一瞬超焦りましたよ」
「言い方が悪かったな。すまない」

今まで無表情だった男の顔が一瞬申し訳なさそうな表情になったが、すぐに先ほどと同じ無表情になった。

「ま、いいです。氣がどうとかもうそんな事は超どうでもよくなりました」
「そうか」
「なので帰らしてもらいます。それでは」
「ああ。悪かったな。色々と」
「いえ。最終的に私も助かったので超特に気にしないでください」

最後に縁があればまた、と言って二人は逆の方向に歩いて行った。二人共ももう二度と会う事は無いだろう、と思っていた。
しかし本当に縁があったのか、その後二人は事あるごとに街中で出会うようになった。何度目かの邂逅の時、絹旗が映画に行こう、と誘い男はそれに応じた。その時になって初めて絹旗は男の名前を知らない事に気付いた。といっても男も絹旗の名前を知らないのだが。

「超今更ですが、あなた、名前はなんて言うんですか?」
「俺か?俺は、卂。卂瞬仭だ」

そして男、卂は最後に

「人呼んで―『紫電掌』だ」

と付け加えた。


おまけ

映画館にて

「え!?卂さんて十五歳だったんですか!?」
「俺を一体何歳だと思っていたんだ」
実年齢を知ってショックを受けた絹旗の図。


おまけ2

上映中にて
「いいですか?こういうのが超A級映画なんですよ」
「成程。そうなのか」
間違った知識を植え付けられた卂の図。


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