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[21737] 【ネタ】マテリアル似の娘(リリカルなのは)
Name: rattu◆50c335cc ID:c73723c0
Date: 2010/09/06 16:05
前書き

これはリリカルなのはのPSP版の設定が入っています
それと私が無限書庫の風景で書いていた物の転載です

以上です 
もしそれでもよろしければお読みください。



[21737] 星光似の娘
Name: rattu◆50c335cc ID:c73723c0
Date: 2010/09/06 16:07

ここはミッドの高町邸。
この日は仕事が無く、静かに休日を満喫しているこの家の主、高町なのはの元に一人の来客が訪れた。

(ピンポーン)
「はーい。どちら様ですか?」
「あ、なのは。私だよ」
「フェイトちゃん?待っててね、今開けるから」

インターホンの音を聞き玄関を開けると、そこにはフェイトの姿があった。
幼馴染の突然の来訪に、少々驚きながらも久しぶりの再会に嬉しさを隠さないなのは。
お互い忙しい身なので、こうして会える時は思う存分に楽しむ。

「はい、フェイトちゃん。お茶」
「ありがとう、なのは」

お茶を飲みゆったりとするフェイト。
なのはと一緒に休日を満喫して、非常に気分が良い様子である。

「今日は家にはなのはだけ?ユーノ達は仕事?」
「うん。ユーノ君とヴィヴィオは無限書庫でお仕事で、あの子は学校。一人で暇してたから丁度よかったよ」

笑顔で話すなのは。せっかくの休日を、一人で過ごす事にならずに済んでよかった、と思うフェイトだった。
この家には、結婚したなのはとユーノ、ヴィヴィオ、そしてなのはとユーノの愛の結晶の娘の四人家族である。

「そっか、そういえばあの子はもう九歳だっけ?」

ふとフェイトがなのはの娘の事が気になり。
なのはに尋ねると、なのはは嬉しそうな顔で答えてくれた。

「うん!もうあっという間に大きくなったって感じだよ。魔法の勉強もすごく真剣に取り組んでるし、そろそろデバイスもあげていいかな?ってユーノ君と話してる」
「へー。何か目標とかあるのかな?」
「一杯勉強して、いろんな人たちの為に魔法を使いたい、その為に早く管理局に入って自分がどれだけ出来るのか試してみたい!て言ってたよ。
私やユーノ君は、魔法とは無縁な普通の女の子としていてほしいと思ったんだけど…、結構頑固で結局私たちが折れちゃった。」

苦笑するなのは。それを聞いてフェイトはやっぱりなのはの娘だな~、と思ったりした。

「まあ、管理局は、大なり小なり危険が有るから、心配はするね」
「うん、だから私達がしっかり教えていかないと駄目!てユーノ君とヴィヴィオと話してたよ…あっ」
「ただいま帰りました」

話してるとドアが開く音が聞こえてきて、すぐ見慣れた我が娘の姿が見える。
どうやら、学校が終わって帰ってきたようだ。

「お帰りなさい。」
「お帰り、それからお邪魔してるよ」
「フェイトさん…!?、いらっしゃいませ、お久しぶりです」

久しぶりに見る母の親友に一瞬驚いた様子を見せるが、すぐ普段の落ち着いた感じに戻る娘
それを見てしっかりしてるなー、と思うフェイト。

「うん、久しぶり。しばらく見ない内に大きくなったね、エリオやキャロ達に見せたら驚くかも」
「エリオ兄さんやキャロ姉さんには、私も会いたいです、最近会っていないので…」

少し寂しそうな瞳でつぶやく娘。
家族ぐるみの付き合いで、小さい頃はよく一緒に遊んでもらったが、今では学校や魔法の勉強なのであまり会えなくなり少し寂しいらしい。
普段は年に似合わず、非常に落ち着いた娘だが、こう言う所は年相応の女の子である。

「ですが、そんな事言っても仕方が有りません。今度会った時に、沢山お話をしたいと思います。 では母さん、宿題をしてきます」
「うん、がんばってね」

そう言って自分の部屋に帰っていく娘。
それを見届けた後、二人で話の続きを始めるなのはとフェイト。

「本当にしっかりしてるね、あの子」
「うん、でももう少し…同年代の友達とか連れてきて、遊んだりして欲しいな、とも思うんだけどね」
「そうなんだ? でもなのは、あの子が大きくなって行く度に思うんだけど…」

そう、生まれた直後からあの子を知っているフェイトは、成長していく彼女を見るたびに思う事がある。
母親譲りの茶色い短めの髪に、青い瞳、そして年齢に不釣り合いな丁寧な言葉遣い。
小さい時はなんとなくとしか思わなかったが、今でははっきりと言える。あの子は…

「…マテリアルのあの子に似てる?」

静かに口を開くなのは。やはり彼女も気づいていた様だ。

「だよね!?なのはもそう思うよね!」
「そりゃあね…忘れるわけないよ。今でもしっかり覚えてる」

そう言いながら、かつての事を思い出すなのは。
闇の書の断片達と戦い、なのはが最後に戦ったのが、今二人が話している彼女である。

「ユーノは何か言ってるの?」
「ユーノ君はあの時見てなかったら、一応話してはあるよ。ヴィヴィオには、あの事件の事は話した事無いから、多分知らないはず。」

なのはは思う。
娘は、あの子生まれ変わりなのだろうか?と。しかし…

『僕はその子の事はよく知らない。でも、今ここに居るこの子は、僕となのはの娘でヴィヴィオの妹。今はそれで良いんじゃないかな?』

愛する人の言葉を思い出す。
あー、この人も自分と同じ事を考えていた。
それだけで、なのはにとっては最大の味方である。

「あの子は、まだ自分が一番したい事を見つけてはいない。大きくなって、色んな物が見えてきて、良い事も、悪い事も、
でも、何があろうと、あの子は私達の娘だから、それだけは、どれだけの事が起きようが、絶対に変わらな。」
「…うん!そうだね」

静かに時間が流れていく、あの子の将来はどうなるかは自分にはわからない。
でもあの子が何をしようか、最後まで見守っていこうと思う。
もし道を踏み外そうとしたら、自分たちが止めよう。
もし辛い事があれば、一緒に側に居て苦しさを分けよう。
それが家族だから。
親友と過ごす休日に、そう心に誓うなのはであった…。





「そういえば…、フェイトちゃんや、はやてちゃんの子供も大きくなった?」
「うん!家はヤンチャだけど、元気で可愛いんだから! はやての所はちょっと気難しいらしいけど」
「…ねえフェイトちゃん」
「何?なのは?」
「フェイトちゃんの所の娘は、髪青くて目が赤いよね?はやてちゃんの所は、髪若干灰色ぽくて目がグリーン系だよね?」
「そうだけど?それがどうかし………あっ!?」
「マテリアルの子達と一緒だよね?」

(強いぞ!凄いぞ!カッコいいー!) (塵芥が!)
なんか聞こえてきてる?幻聴ですか?フェイトさん?

「いや!違う…!!うちの子は…!!!」
「少なくとも、家は見ての通りです」
「いやーー!?  …絶対にさせない…!元気で、しっかりした子に育てる!」
(エリオやキャロに協力してもらわない無理だと思うけど…、フェイトちゃんだし。 後ではやてちゃんにも連絡しよう)

そう思いながらお茶を飲み、のんびり過ごすなのはであった

ちなみにフェイトはしばらく混乱状態が続いたそうな。  まあがんばれ、フェイトさん。




[21737] 雷刃似の娘
Name: rattu◆50c335cc ID:c73723c0
Date: 2010/09/06 16:09

ある午後の昼下がり、フェイト・T・ハラオウンは悩んでいた。それは自分の娘に対してである。
娘自体は問題ないのだ。ユーノと言う、自分の旦那との間に生まれた、愛しい我が子である。
ただ、すくすくと育つ我が子を見ていると、どうしても気になる事がある。

「大きくなっていくうちに、どんどんあの子に似ていっているような…」

そう、娘が『あの子』という子にどんどん似てきているのだ。
最初はそうではなかった、だが時が経ち、娘が大きくなって行く度に、娘の行動と姿が『あの子』に近づいて行くのが解ってくる。
その事を悩んでいると、ふと玄関が開く音が聞こえ、誰か来たのかと思い玄関の方に歩いて行くフェイト。

「ただいま、フェイト」
「ユーノ!?今日はずいぶん早いね」
「うん。今日はそんなにやる事は多くなかったし、昨日まで少し忙しかったから、
司書達が『今日はもうゆっくりしててください』って言ってくれて、お言葉に甘えちゃった」
「そうなんだ、ご飯はどうする?」
「軽く食べてきたから、晩御飯まで良いよ」

意外な夫の早い帰宅に驚くフェイトだが、一人で悩んでいた所に舞い降りた、嬉しいハプニングに頬も緩む。
お茶の用意だけし、それを飲み終えると、ユーノが少し真剣な顔でフェイトに話しかける。

「所で、フェイト?」
「何?ユーノ?」
「何か悩んでる事ある?少し暗い顔してたから…」

どうやらフェイトの不安は、ユーノに気づかれる位に顔に出ていたらしい。
一瞬どうしようか迷ったが、お互いの娘の事なので、ユーノに相談してみる事にした。

「あの子の事なんだけど、少し心配な事があって…」
「あの子の事?友達もいるし、兄弟はエリオとキャロがいるし、大きな病気もないし…これと言って心配な事は思いつかないけど?」
「うん、それらに関しては別に良いんだ、あの子も楽しそうにしてるから、でもその事じゃないんだ」

フェイトの言葉を聞き、少し疑問に思うユーノ。
少なくとも、自分が知る限りは、娘に何か問題があるとは思えない。

「ねえユーノ、闇の書事件の直後に起こった、事件覚えてる?」
「うん。僕はその時、直接かかわってなかったから、詳しい事は後からなのは達に聞いた。昔の皆や、フェイト達を元にした子達も居たんだっけ?」
「それだよ」
「え?」

いきなりそれと言われても、何がそれなのか解らず困惑するユーノ。
フェイトもそれを解っているのか、もう少し解りやすく説明する。

「ユーノは私達の偽物…マテリアルがどんな子だったか、知ってる?」
「ある程度なら、なのはやはやて、クロノとヴォルケンの皆に、聞いた位だけど」
「そっか…じゃあ、どんな姿をしていたかまでは、知らないんだね」

ぶつぶつと小声でつぶやくフェイトに、ユーノにしてみれば一体何なのかよく分からない。
娘の心配事の話をしていたと思えば、いきなり昔の事件の話を出してくる。
フェイトは何が言いたいんだ? と思ってる内に、フェイトは話を続ける。

「マテリアルの子の一人に、私にそっくりの子がいたんだ」
「うん」
「それで…その子……に……てる…だ…」
「ごめんフェイト、よく聴こえないんだけど」

急に小声になるフェイト。
何か言いにくそうにしてると思えば、いきなりユーノの腰に抱きつき、大音量で声で叫ぶ。


「あの子がそのマテリアルの子にどんどん似てきてるんだよーーーーーーー!!!!」


でかい。とにかく声が滅茶苦茶でかい。おまけに何故か『ーーーー』の所でビブラードがきいてるので、余計に耳に来る。
普段は静かなフェイトが、どうやってこんなにでかい声を出せるのか、疑問である。何かガラスにヒビが入ったけど気にしない。
ふと下を見ると、泣いた状態でこちらを見上げるフェイトの顔があり、その所為か結構ひどい顔になっている。
思わず『うぇ…』と言いたくなるが、そこは自分の愛する奥さん。
懸命に堪えます。と言うか泣くほどか?と思うユーノ。

「まあ、とりあえず、泣くのはやめようね?フェイト」
「うん…」

とにかく、一旦フェイトに落ち着いてもらう。そうしないと話が進まない。
しばらく、頭を撫ぜたりして、落ち着いた所で話を再開する。

「えーと…どこまで話したっけ?…あっ、あの子がマテリアルの子に似てきてる所か。そんなに似てるの?フェイト?」
「うん。髪が青くて、少しツリ目な所とかが、マテリアルの子にそっくりなんだ」
「でも、姿が似るのはおかしくないんじゃない?その子の元はフェイトなんだし、あの子はフェイト似だし」
「見た目が似るのは別に良いんだ。ただ…」
「ただ?」
「何となくだけど…性格まで似てきてる気が…」

あー…と納得するユーノ。彼自身は、フェイトのマテリアルとは直接会ってはいないが、皆から話は聞いている為、大体どんな感じの子は知っている。
なのはやシャマル、ザフィーラやはやてと言った人達に聞いた情報を総合すると、フェイトのマテリアルは『アホな子』である。
対して自分たちの娘は…と考えると、思い出される娘との色々な思い出。
魔法学院の入学式の帰りに、はしゃぎすぎて溝にはまって、怪我をして泣きながら帰ってきたり。
『空を飛べるようになりたい!』と言うので、飛行の訓練して、上手く飛べるようになると調子に乗ったのか、勢い余って壁に激突したり。

「元気な事は、凄く良いんだけど…」
「ははは…」

更に思い出される昔の記憶。無限書庫に来た時に、探検していたのか、奥に行き過ぎて遭難し、司書総動員で捜索したり。
休日に、家族全員で釣りに行った時、釣れたのを喜び、はしゃぎ過ぎて川に落ちて流される。
エリオとキャロとルーテシアが、微妙な距離をキープしてる時に『三人で結婚したら良いじゃん』と言い、納得したキャロとルーテシアに、エリオが何処かに連れていかれたり。
極めつけは、学校の授業参観の時に、なりたい職業に『勇者』と大声で言った時は、少し目眩がした。ちなみに理由は『カッコいいから!』
こうして思い出してみると、我が娘ながら、中々の武勇伝の持ち主である。

「確かに、心配になるのは無理もないね。でもね、フェイト?」
「何?」
「あの子も、何時までも子供じゃない。大きくなると、必ず、しっかりした立派な女性になるよ」
「でも…」
「僕達の娘は、そのマテリアルの子じゃない。それに、僕達も居るじゃないか」
「…そうだね!私達の娘なんだし、そんな心配なんかしても、意味ないよね。 ありがとうユーノ!」

すっきりした笑顔で笑うフェイトに、一瞬心を奪われるユーノ。この笑顔に弱いのだ。
どうしたの?と聞いてくるフェイトに、なんて答えようか迷っていると、玄関が開く音が聞こえ…。

「た、だ、い、まーーーーー!!」

フェイトにも負けない位にでかい声が響き、どうやら娘が帰って来た事が解る。
ガラスが割れかけてるのはこの際無視。

「あ、帰ってきたみたいだね。お帰りな…さ…」
「どうしたの?フェ…イ……」
「あ!父さん、帰ってきてたんだ!ただいま!」

しっかりただいまが出来て、非常によろしいが…二人は娘の姿に言葉が詰まる。
とにかく凄く汚れている。手と服には土が、髪には葉っぱと木の枝が付いている。
そして、手にはビニール袋を持っているが、それがなんか動いてる!もぞもぞ動いてる!

「…ねえ?ちょっと聞きたい事が、あるんだけど?」
「何?父さん?」

静かに尋ねるユーノ。
あまり聞きたくないが、袋の中身は確認しなければならない。

「その、動いてる袋の中身は、何かな?」
「あ、これ?見て見て!沢山捕まえたんだよ!」

袋を開けるとそこには…ぎっしりと詰められた、バッタの様な虫が入っていた。
思わず固まるフェイトとユーノ、笑顔の娘。

「母さん!これで作って!」
「…え!?無理無理!出来ない出来ない! と言うか何を作るの!?」

袋を差し出されて、思わず後ずさりして、距離を置くフェイト。
まあもぞもぞ動いてる袋一杯の虫は気持ち悪すぎる。
ユーノも、出来るだけ近付きたくないし、見たくもない。
とは言え、なぜ娘がこんな大量の虫を捕ってきたのかは、聞かなければならない。

「はい、ちょっと待ってね」
「どうしたの?父さん?」
「どうしてそんなに、沢山の虫を捕ってきたか、それから、母さんに何を作ってもらおうか、それを教えてくれるかな?」

優しく言うユーノ。この子だって、何か理由があって虫を捕ってきたんだろうと思う。
厳しく言ってはダメだ!と思っているのだが、正直袋は近付けて来るのはやめてほしい。

「えっとね…、この前塵芥のや…はやてさんの家に遊びに行った時にね、シグナムさんとザフィーラが何か食べてたから、それを見せてもらったんだ
そしたら虫を食べてて、何で虫なんか食べてるの?って聞いてみたら、『これは、主はやての世界にある、イナゴの佃煮と言う食べ物だ。』
て言ってたんだ。それでちょっとだけ食べてみたら、凄く美味しかったんだ!だから、僕も食べたい!と思って、それで母さんに作って貰おうと思ったから
それでイナゴを集めようとしたんだけど、イナゴってどんなのか判らなかったから、だから似たようなのを捕ってきた!」

大変良く言えました。 それを聞いてユーノが、シグナムにザフィーラなんて言う物を食べてるんだ…と思ってしまう。異世界の食文化恐るべし。
とはいえ、ユーノもフェイトも、作り方がわからないからどうしようもない。
それ以前に、こんな大量の虫を触りたくないし、食べたくない。
食べてる人には失礼だが、普通にお肉とか野菜に慣れてる自分たちには、視覚的に食べようと思わない。

「ごめんね。僕もフェイトも、その『イナゴノツクダニ』の作り方わからないんだ。せっかく集めてきたのに、残念だけど…」
「え…、うん、わかった…」

シュン…としながらも、納得してくれた娘に、思わず頭を撫ぜるユーノ。
寂しそうな顔が一瞬で笑顔に変わっていくのを見て、現金ながら可愛い子だと思ってしまう。

「うん、良い子だ。とりあえず汚れてるから、シャワー浴びてきたらどうかな?」
「はーい!」

とてとてとお風呂に向かう娘に。苦笑して見守る

「お疲れ様ユーノ。ごめんね、何も出来なくて…」
「まあ、これ近付けられたら、逃げたくもなるよ」

もぞもぞと動いてる袋を持ち、相変わらず気持ち悪いと思ってしまう。
娘はよくこんなの持てたな、と感心してしまう。

「そ、それどうするの?ユーノ?」
「うーん…」

虫の入っている袋を見て、これの処分を考えるユーノ。

「一々捨てに行くのも面倒だし…そうだ!佃煮にして下さいって書いてはやての家に送っとこう。着払いで」

最後の一言に若干苦笑いするフェイトだが、とりあえず虫袋を処分できるので良しとする。

「それにしても、食べたいから捕ってくる。僕達には無い行動力だよね。元気だなー」

比較的おとなしい二人の子供なのに、-と-がかけられて、プラスにでもなったんだろうか? 乾いた声で笑うユーノ

「ねえユーノ…」
「何?フェイト?」
「…大丈夫だよね?あの子、大きくなったら、しっかりした子になるよね?本当になるよね!?」
「……………勿論だよ!フェイト!」
「何ですぐ答えてくれないのーーーーー!?」

本日一番の大音量で叫ぶフェイト。ガラスが割れた。
大丈夫。大きくなったら、きっとフェイトの様な、綺麗で立派な女性になれる。
多分、…きっと… なれるよね? なってください。
自分たちが、頑張ってあの子の事を育てていこうと、改めて思うユーノであった。






「あ、ユーノ君。あれありがとうな。佃煮にしたら美味しかったわ。」
「…え!?」
そんな会話が無限書庫であったそうな



[21737] 統べる王似の娘
Name: rattu◆50c335cc ID:c73723c0
Date: 2010/09/06 16:10
「それじゃ、あたしは帰るな」
「はい、お疲れ様でした。ヴィータ教導官」

管理局での仕事を終え、自宅へ帰るヴィータ。急いで帰るのには訳があり、本日は珍しく八神家全員が揃うのである。
普段は家族全員が別々の仕事なので、誰か一人いないとか、二人しか揃わないなど、どうしても全員そろわないというのが多かったので、こう言う日はしっかりと集まらなければならない。
機動六課時代から更に家族が増えたので、ご飯時も楽しくなるだろうと楽しみなヴィータ。

「…ーい……ヴ……タ…」
「?」

何処かで、声が聞こえたようだが、周りも見ても特に誰か居るわけじゃない。
気の所為か?と思い、さっさと家に帰ろうとすると…

「ちょ!?待ってってば!ヴィータ!ヴィーーターー!」
「うるせー!誰だ!あたしを呼ぶのは!?」

声は後ろから聞こえてくるので、振り向くと一人の男性が走って来る

「あ、ユーノか」

声の主は無限書庫の司書長、ユーノ・Y(八神)・スクライア。自分達の家族の一人である。
自分の主、八神はやてと結婚して、はれて八神家の一員になった人間である。
まあ、結婚前にも私生活が少々だらしないユーノの為に、はやてがユーノの家に行って家事をしたり、八神家に誘って、ヴォルケン達と一緒にご飯を食べたりしていたし、結婚直前はほぼ同棲状態でもあった。
ちなみに、ユーノが来てから地味に喜んでたのが、ザフィーラである。自分以外に、男が来た事が嬉しいんだろう、肩身狭そうだったし。

「ユーノか。じゃ…ないよ…、呼んでも…気づいて…くれないし…」

走ってきた所為か、随分と息が荒い、ヴィータを見つけて、少し走っただけで息が切れたらしい。
無限書庫で仕事をしている所為か、どうにも体力が年々衰えてきているようなので、八神家に来てからはシグナムやヴィータに付き合って運動などするようにはなった。
それでも、あまり成果は出ていない様で、もっとメニューを増やすべきだろうか?と思うヴィータ。
更に、はやての美味しい手料理を頻繁に食べるようになった所為か、体重がかなり増えて来ているそうな。まあそれでも平均的な男性より細いが。
かつては、自分の攻撃すら防いでいた程の男なのに、今ではこれだと、少々悲しくなってくるヴィータである。

「あー、わりーわりー。お前も帰りか?」
「うん。それで帰りにヴィータを見つけて、どうせなら一緒に帰ろうと思ってね」
「そうだな、じゃあ帰るか」

そう言いながら帰路に着く二人。傍から見れば、似てない兄弟か、ユーノがいけない人に見えてきそうな構図である。
まあ実際何度か、この二人で帰宅中に警察に職務質問された事が何回かあるが、まあ仕方がない。
今回は特に何もなく、二人でお互いの仕事近況を報告したりしながら、歩いて帰り家路に着く。

「ただいまー、はやてー」
「あ、お帰り、ヴィータ」
「ただいま、はやて。今帰ったよ」
「おかえり~♪ユーノ君♪」

…なんやねん、この扱いの差は!?と思うヴィータだが、ユーノが帰ってきた時にはやてがいると、大体こんな感じだと思うと、別に良いかと思ってくる。
そして、二人が帰ってきた事に気付いたのか、ほかの家族も出てくる。

「お帰り、意外と早かったな、二人共」
「お帰りなさい、ヴィータちゃん、ユーノ君」
「二人共!お帰りなさいです!」
「お帰り…二人共」
「ヴィータ!ユーノ!お帰り!」

シグナム、シャマル、リイン、ザフィーラ、アギトと皆ぞくぞくと出てくるのを見て、どうやら皆帰ってきているようだと解る。
そして、皆が出てきて、最後に出てきたのが…

「ん?ヴィータと父さんか、帰ってきたんだな」

もろ小さい頃のはやてと同じ姿の子が出てくる。髪と目の色が違うだけで、他の部分はまさに瓜二つ。
はやてとユーノの子供であり、新たに増えたこの家で一番可愛がられてる娘である。ユーノの遺伝子が全く見当たらないが

「コラ!」(ポカ)
「痛た!」

娘にげんこつを放つはやて。周りは、あーまた始まったな、と言った雰囲気が流れている

「家族が帰ってきたら『お帰りなさい』て言わなあかんやろ!何回言ったら覚えんのや!」
「う…わかっている、ヴィータ、父さん、お帰りなさい」
「よしっ!」

母親に怒られて、シュンとしながらも、しっかり言いなおす娘。
どうにもこの子は口が悪く、性格は少しきつい所はある。
悪い子ではないのだ、だが口の所為で、どうしても悪い子に思われてしまう。
その所為か、はやては娘の躾、特に言葉遣いに関しては非常に厳しく躾ている。
お帰り以外にも、ただいま、いらっしゃいませ、お邪魔します、ありがとうございました、行ってらっしゃい、と言った基本的な所から、
敬語など目上の人との会話などに対してや、あまり人に言ってはいけない言葉などは、しっかり教えている。
とにかく、口の聞き方に関してははやては非常に厳しい、少し厳しいんじゃないか?とユーノが聞くと

『口から出す言葉を、慎重に考えれば、何となく、相手を不愉快にさせない事を考える様にやろ。それに、
会話はコミュニケーションの基本やからな、話し合いで解決できる事でも、言葉が足りんかったら、誤解が起きて喧嘩になるやん、
勿論、言葉だけじゃあかん事もあるけどな。あの子はまだ子供やし、今の内に、しっかり頭に叩き込んどいたら、将来の為にもなるしな』

と、はやて流の躾を聞き、そこまで考えていたのかと感心するユーノ。
実際、自分達もお互いの言葉が足らず、喧嘩になった事は何度もある。
ぶつかりあわないと、伝わらない事もあるが、出来れば穏便に事を済ましたいと思うのは誰でも思う。

「ほんじゃ、皆帰ってきたし、ご飯にしよか?ユーノ君とヴィータは着替えてき、もう準備はおわっとるから」
「「はーい」」

部屋に戻るヴィータとユーノ、久しぶりの全員集合なので、どんな料理かは、非常に楽しみである。
着替えが終わり、食事の場に戻ってテーブルを見ると、丸い入れ物の中に、野菜やら肉やらが沢山入った料理が、これは言うまでもなく

「あ、今日は鍋なんだ」
「マジか!?本当だ!」

そう鍋である。寒い日に、そして家族とわいわいと喋りながら食べる料理としては、非常に素晴らしい料理である。
ちなみに、食材はシャマルとザフィーラが、地球まで降りて買ってきたらしい。
別にミッドでも材料は揃えれるのだが、はやてが、せっかく家族揃うんだから徹底的にこだわりたい、と言うのでシャマルも張り切ってしまったらしい。巻き込まれたザフィーラ哀れ。
まあそれはともかく、久しぶりの家族全員の食事、家の主の心意気それをしっかりと味わおうとしようと思うユーノ。

「皆そろたな?それじゃ皆さん!せーのー!」
『いただきます!』

そして一斉に食べ始める家族八神家一同、あったかくて美味しいお鍋を食べ話も弾む。

「あ、お米も買ってきたから、最後におじや作るからなー」
『はーい!』

まあしっかりした奥さんである。あまり野菜を食べない娘やヴィータ、その二人の小皿に野菜を入れるシャマルやはやて。
大きい姿で鍋と格闘するアギトとリインに、黙々と自分のを食べるシグナムとユーノとザフィーラ。
ちなみに、ザフィーラは人間形態で過ごしており、ユーノが来てから人間形態になる事が多くなったが、やはり女性陣の中で一人だけ男と言うのは色々考えるものがあったのだろう。
ユーノ自身も、やはり自分以外の男がいるのは精神的に安心出来るし、男としか出来ない話も出来る。
所で、ザフィーラがネギを食べているが大丈夫なんだろうか?犬とかにネギは…あ、守護獣か、なら良いやと思うユーノであった。

「やっぱり、家族で集まるって良いな」
「当たり前やん、ユーノ君」

そう言いながら、笑いあうはやてとユーノ。しかしそれとは別に、他の所は少々問題が起こっているようだ。

「む、おたまが…、ヴィータ、おたまを取ってくれ」

どうやら、娘がおたまを探しているが、少し離れた所にあるみたいだ、立って手を伸ばせば捕れそうだが、面倒なのかヴィータに取ってくれと言う娘。
しかしヴィータも、鍋を食べるのに夢中なのか、めんどくさそうにしている。

「えー、もうちょっと頑張れば届くだろ。自分で捕ればいいだろ」

まあそうなるわな、とはやてが苦笑しながらおたまを取ろうと思い、立ち上がろうとしたら…

「良いから早く取れ!ヴィータ!」
「ちぇ、仕方ねー(バキ!)な…?」

仕方なく、おたまを取ろうとした、ヴィータのすぐ近くから、何かが折れたよ様な、はたまた壊れた様な音が聞こえてきた。
その方向に振り向いてみると…、そりゃあもう、何かとんでもない程黒いオーラが見える主の姿があり、間違いなく怒っているのが解る。
隣に座っていたシャマルも、今はザフィーラの所に避難しており、アギトとリインも、シグナムの所に避難して様子を見ている。
皆鍋と会話に夢中になっていた所為か、なぜはやてがこんなに怒っているのか気付いておらず、おそらく気付いているのはユーノだけかもしれない。
そして、はやてがゆっくり立ち上がり、娘を呼ぶ。

「ちょっとこっちおいで…」

低い声で喋るはやてが非常に怖い。正直今まで見た中でも屈指の怖さであり、娘もこんなに怒っている母親ははじめてかもしれない。
もう可哀想になる位に怯えてユーノを見る娘だが、今回は娘の方に非があるため、首を横に振り助け舟を出さないと伝えるユーノ。
それでも、やはり何故母が怒っているか解らない娘。

「えっと、母さん?何で怒って『はよ来る!』はい!」

有無を言わせない母があまりにも怖いので、もう文句は言わずに従う方が賢明と判断したのか、素直に言う事を聞く娘。
自然と正座になってしまっている。
他の皆も、はやてが怒っている理由が解らないため、ユーノの後ろで様子をうかがっており、ザフィーラなんか獣状態に戻っている。

「あの子何かやったかしら?ユーノ君解る?」
「はい。多分ですけど、ヴィータとのやり取りの事で、怒ってるんだと思います」

シャマルの質問に答えるユーノ。ちらっとヴィータを見てみるが、いたった普通にしている。
多分本人も、何を言われたか気づいていないのかもしれない。
そうこうしている内に、はやてと娘の会話が進んでいく、娘はもう気の毒になる位に縮こまっている。

「何で呼ばれたか、知らんねんな?」
「はい…」

娘に確認をとるはやて。わざと言った訳じゃ無いので安心するべきか、無意識に言ってしまった事で残念がるべきか、判断に困る所と言った感じか。
とは言え、娘の言った一言を無視できるほど、この母親は甘くはない。しっかり教えていかなければならない。

「お母さんが怒る直前に、あんたは何をしてた?」
「えっと…ヴィータにおたまを取って、と言いました」

怒っている原因を、直接言わないはやて。
どうやら娘自身に、怒っているポイントを気付かせる様だ。

「そやな、でもお母さんはそれに怒っては無いんや」
「え…?じゃあ何で…」

娘は今一よく分かっていない様である。おそらく、おたまを自分で取らなかった事を、怒られていると思っているのだろう。
別にはやては、それ位で怒ったりする様な母親ではない、実際、しょうがないと思いながら、代わりに取ろうとしたのだから。
ただ、はやてが怒っているポイントは、其処では無い、問題はその直後の事である。

「ヴィータに、おたま取って貰おうとして断られてな?その直後、あんたヴィータになんて言った?」
「えと…、良いから取れって…!………い…言いました…」
「そうやな」

どうやら、何処が母が怒っているポイントなのか娘は気付いた様だ。他の皆も、同じ様に気付いた様で、それじゃ仕方がない、と思っているのか、何も口に出さない。
ただ言われた本人のヴィータだけは、あまり納得していないようだ。確かに取れと言われたが、ヴィータ自身はそれに怒ってはいない。
娘は可愛い妹みたいな物だし、多少のわがままも聞いているヴィータなので、はやてに対してもそこまで怒るものなのか?と言う感じもしている。
そうなのではやてに、あまり怒らない様に言おうとしたら…

「なあはやて?あたしは別に怒って…『言った言葉に問題あるんや!ヴィータは黙っとき!』…はい」

ヴィータの言葉をさえぎるはやて。こうなったら、もう誰が何を言おうと駄目である。
仕方ないので、娘とはやての会話をおとなしく聞く事にした家族全員。鍋ほったらかしで

「何で怒られてるか解ったみたいやな」
「は、はい…」
「普通に取ってって頼むんは、別に良い。でも取れはあかんよな、それじゃ命令や、ヴィータはあんたの召使いやないやろ?家族や、家族に対して…
いや家族じゃなくても、そんな言い方あかんよな?お母さん、そう言うのは何回も言ってきたはずやで?」
「はい…ごめん…なさい…」

容赦ないはやての言葉に、既に泣いている娘がさすがに可哀想に思ったのか、ユーノがはやてに念話を送る。

(はやて、ちょっと良いかな?)
(なに、ユーノ君?)

少々きつめの感じ返してくるはやてに、相当怒っているんだと改めて実感するユーノ。
少し怖いが、せっかくの家族団らんをこんな形で終わらせる訳には行かない。
他の人たちは、はやてにあまりきつく言えないのは解っているので、ここは自分がしっかりしないといけない。やっぱり怖いけど

(もう、それ位で許してあげて、良いんじゃないかな?)
(でもなユーノ君)
(この子は自分が悪い事言ったのに気付いてるし、それに反省もしている、何よりはやても怒りたくなんて無いだろ?)
(そりゃそうやけど…)
(だから僕に任せてくれない?すぐ済むから)

そう言いながら娘に近付いて行くユーノ。はやても、これ以上は怒りたくないので、ユーノに任せることにした。

「父さん?」
「うん。ちょっとこっちにおいで」

そう言いながら娘を手を取り引っ張り、ヴィータの前に娘を連れていき、

「はい。ヴィータに言わなきゃいけない事、一つあるよね?」

娘に優しく伝えるユーノ。大丈夫、この子は良い子だから、きっと言わなきゃいけない事は解っている、だからこれだけで大丈夫と心に思う。
周りを見る娘だが、母は何も言わずに、ヴィータも娘を緊張した感じで見ている、他の皆も何も言わないを知ったのか、娘は意を決した様に一言、

「ヴィータ…その…ごめんなさい」
「あ、いやえーと(ほらヴィータ、何か言ってあげないと)解ってるよ… まあ良いよ、あたしはそんなに怒ってないから
だからもう泣くなって、な? さあ!飯の続きしようぜ!」

とりあえず、問題は終わったので食事を再開するが… やはりあんな事があった所為か、食卓が全体的に暗い。
話も弾まないし、食事も皆あまり喉を通らないらしい。ザフィーラなんかまだ獣形態だし。やはり家の元気印の、ヴィータと娘が落ち込んでいるのが一番の原因だろう。
はやて自身も、少々怒りすぎたと思っているのか、中々口を開かない。なんとか場を盛り上げようと、アギトやシャマルが楽しそうな話を振るのだが
皆「あー」など「そうだね」などと言う返事で、すぐ会話が止まってしまい、リインなんかは今にも泣きそうである。
このままじゃまずいな、と思いながらユーノが解決策を考えていると、一つ良い事を思いついた。

「シャマルさん、場所変わって貰えますか?」
「え!?…あ、良いですよ」

突然のユーノからの提案に驚きながらも、何か考えがあるのだと理解したシャマルは、ユーノの提案を快く受け入れる。
そして娘の手掴んで、はやての隣へと移動する。

「はやてはちょっと横に移動してくれる?ヴィータもこっちに来てはやての隣に座って。はい、じゃあ僕とヴィータの間に座ってね、ザフィーラも人間の姿に戻って」

はやてと自分の間に、ヴィータと娘を置いて食事を再開するユーノ。娘が元気がないのなら、自分達が明るくならないと駄目だと思ったのか
いつも以上にハイテンションに会話を始めるユーノに対し、それに気付いたのか、ヴィータも楽しそうに会話を始めるのだが、肝心の娘がまだ喋らない。
まだはやてが怒っていると思っている所為なのか、はやての方をチラチラ見ながら、様子をうかがっている。そして、振り向いたはやてと目が合い、ビクッとした後

「…何か食べたい物あるか?」
「…!じゃあ豆腐食べたい!」

優しそうな笑顔でそう言った母を見て安心したのか、一気に笑顔になる娘。その瞬間から、部屋から重い空気が一気に無くなった為か、皆話と食事が進んでいく。
娘もヴィータも仲良くしており、はやてとユーノも笑いあいながら食事を進めていく。ザフィーラなんか尻尾をフリフリ、耳をピコピコさせながら食べている。
こうして、家族全員の食事は、色々ありながらも、最後は楽しく終わりを迎えることになった。 そして夜を迎える…



「二人共、もう寝ちゃった?」
「うん。ユーノ君が戻ってくるまで起きてる、て言ってたんやけどな」

そう言いながら、既にベットで寝ている、ヴィータと娘を優しく見守るはやて。食事が終わった後、シャマルの提案で今日は特別に4人で寝ないか?
という事があったので、ユーノとはやてもたまには良いか。と思い一緒に寝ようとしたら、無限書庫から緊急の仕事が入ってしまった。
幸い家ですぐ終わる程度の量だった為、すぐ終わると思っていたのだが、これが意外と時間がかかってしまい、終わった頃にはもう娘とヴィータは眠ってしまっていた。
こんな時間に仕事を伝える奴なんて死ね!と言いはやてにたしなめられつつ、ベッドに入るユーノ。

「なあユーノ君?今日の私、少し言いすぎたかな?」
「夕飯の事?まあ少し怖かったけど、この子の言葉遣いに対して怒るのは、いつもの事だと思うけど?」
「そうなんやけどな、やっぱりどうしても…昔のあの子の事を思い出してもうてな…」

はやての言うあの子とは、おそらくマテリアルの子の事だろう。実際、なのはやフェイトの子供達も、そのマテリアルの子に似てきているらしい。
ただなのは達の子と違って、はやてのマテリアルは王であった為か、こう…かなり性格的に問題があったらしい、はやてが言葉遣いなどを非常に厳しく躾けているのは
恐らく、自分の娘がマテリアルの子にみたいな性格にならない様にする為にやっているのだろう。
なのは達の子も、性格がマテリアルの子と似てきている、と言っていたし。

「大丈夫だよ、はやて」
「ユーノ君?」
「この子には僕やはやて、それにヴォルケンの皆も居る、その時点でマテリアルの子とは違うんだ、はやてが厳しいのも、この子の為にやってるのは、この子だって
無意識で解っているはずだよ、だから、絶対に大丈夫。僕達の大事な娘だろ?」
「…うん、そうやな、ありがとな!ユーノ君」

そう言いながら、布団の中でユーノの手をつなぐはやて。…もしこの場に娘とヴィータがいなければハッスルしていたんだろうが…まあ仕方がない。
二人でヴィータと娘を抱き締め、眠りはじめていくはやて。この人と結ばれて本当によかった。そう思い眠りに落ちる…



次の日、元気な声で「おはよう!」と言う娘の声が響きわたったらしい。



[21737] 中書き
Name: rattu◆50c335cc ID:c73723c0
Date: 2010/09/07 16:37
中書き

読んでくださった皆様、感想ありがとうございます
感想の中にあった意見で ユーノが分裂など三股など言うのがありますが
一応一つ一つの話は独立しているため三股とか言うのではありません
(星光似の娘だとフェイトやはやては名前は出してませんが別の人と結婚しています)
最初の方で書いておくべきだったのかも知れません。すみませんでした。


ここから先に投下するのは上の三つを一纏めにした設定と思ってくれて構いません。
もしよろしければお読みください



[21737] マテ似三人娘と父親の苦労
Name: rattu◆50c335cc ID:c73723c0
Date: 2010/09/07 16:39
「暇だ…」

ある日の昼下がり、外は良い天気にもかかわらず、大きな家で、非常に暇そうにしている青年が一人いる、名はユーノ・スクライア
無限書庫の司書長にして、陰で『無限書庫の土竜』や、『ハーレム野郎』などの、不名誉な異名で一部の局員から呼ばれている男である
前者に対しては、無限書庫が忙しい時代に全く休憩を取らず、書庫から一向に出てこようとしない彼に、局員が呆れて付けた名である
後者に関しては…ユーノが高町なのは、フェイト・T・ハラオウン、八神はやての三人を嫁にもらった為、男性局員が悔しさを込めた異名であるが…
本当は少々違う。実際は、なのはをめぐって、ユーノとフェイトが絶妙の距離をキープしていたのだが、何時まで経っても進展しない
三人にはやてが業を煮やし、なのはにその事を伝えた所

「じゃあ二人と結婚しよう!」

と言う仰天のプランを編み出した。おまけにはやても『それやったら私も入れて~!』と言って、ユーノと結婚しようとする始末、
どうやら、なのはがフェイトを選んだらユーノにアタックをかけ、ユーノを選んだらきっぱり諦めようと思っていたが、まさかのなのはのウルトラCに
このままでは自分だけ置いていかれる!と思っていたはやてだったのだが、少し考えて結果『それやったら自分も混ぜて貰えばいいやん!』
と言う結論に達したらしい、それにどうせなら、ユーノに嫁にもらってもらえば『はやて=ユーノ=なのは=フェイト』と言う綺麗な(?)形式が出来上がるらしい
良いのかそれ!?、とユーノとフェイトが叫んだが、リンディさん曰く『本人達の同意があれば無問題よ♪』と、素晴らしい笑顔で言われる事になる
そうなると、当人達の気持ち次第となるのだが、まずこの提案を出した本人であるなのは、そして、それを解って三人と一緒になろうとしたはやては問題ない
となると残りは、ユーノとフェイトである。なのはの事に関しては問題ない。はやての事も、二人にとっては大事な幼馴染で親友であり、大好きな人である
だからはやての事も大丈夫。後は、二人のお互いの気持ち次第なのだが…

「もし四人で結婚となると、私とユーノも夫婦と言う事になるのかな?」
「まあ…そうなるのかな?フェイトは嫌かな?」
「そんな事無いよ。確かになのはの事でライバルだったけど、それ以外だと、ユーノははやてと一緒で、大事な…大好きな幼馴染だから」
「フェイト…うん、そうだね。僕もそう思う」

特に問題無かったご様子である。そして、一番大きな問題をクリアしたら、その後はトントン拍子に事が進んでいく。
なのはとはやてが中心となり、結婚式や新婚旅行の日程や、家族全員で住む家の建築、名字はどうするか?などどんどん話が出て終わっていく。
特に家に関しては、四家族全員で住む予定なので、随分とでかいのが出来上がってしまった。高町家はなのはとヴィヴィオ
ハラオウン家はフェイトとエリオとキャロとアルフ、八神家はヴォルケン全員、ユーノは一人だけ、寂しいなおい
そんなこんなで結婚式も、まあ大騒ぎもあったが無事終了し、その後の新婚旅行があったのだが、それが凄まじかった。当然四人で行ったのだが
もう初夜が凄い事凄い事。四人が入れ替わり立ち替わり、そりゃもうノンストップでハッスルハッスルが続き、終わる頃には、外が明るくなり始めていた

「お…おはよう…フェイト、はやて」
「「おはよう、ユーノ(君)…」」

朝の挨拶で会う三人だが、三人共ゲッソリしている。まあ休憩なしで頑張ってた上、寝不足なので仕方がない、ちなみになのはは何故か絶好調であった
まあそんなこんなで、皆で住み始めた家なのだが、今は皆仕事が入っている為、家に居るのはユーノだけなのである。全員が揃う事はめったに無いが
一人だけと言うのも珍しい。そんな暇な状態が続いて、本当にどうしようと思っていると、玄関が開く音が聞こえ…

「ただいま帰りました」
「ただいまーー!」
「…ただいま」

3人の女の子の声が聞こえてくる。結婚してから増えた、可愛い新しい家族が、学校から帰ってきたようだ。のっそりと起き上がるユーノ

「おかえりー、三人共、今日は帰りが早いんだね」
「父さん!?帰ってたんだ!ただいま!」
「むっ…父さんか」
「ただいま帰りました、お父さん。今日は学校はお昼までだったんです」

この三人の娘は、ユーノとなのは、フェイト、はやてとの間に出来た子供である。3人共、物の見事に母親に似ている為、ユーノは父親に思われない事が良くある
それでもこの子達は、ユーノにとって目に入れても痛くないほど、自分の可愛い娘達。ただ、3人共同じ年に生まれた為、局の人間達に
『子供作るの良いけど、もう少し考えてください!』と大勢の人に怒られて事がある。まあ教導官、執務官、司令と言った多忙の人達がほぼ同時に
産休取るとなると、現場の人間の色々大変である。ユーノ自身も、仕事中に子供が生まれると連絡が入った瞬間、無許可で転移魔法使って、怒られたりした。
ちなみに娘達は、なのはの娘が三女、フェイトの娘が四女、はやての娘が五女である(キャロが長女、ヴィヴィオが次女になる為)。
娘達は、父が家に居る事に驚いて居るようだが、それでも、普段忙しい父が早くに家に居る事が嬉しいのだろう、三人共ユーノの近くに寄ってくる

「お父さん、今日は仕事は休みなんですか?朝ご飯の時には見えなかったので、仕事だと思っていたのですが?」
「うん。今日はお休みだから、遅くまで寝てたんだ」

丁寧な言葉で話しかけて来るのはなのはの娘。三人の中で一番早く生まれた子で、その落ち着いた性格と面倒見の良さから、三人娘の中のまとめ役も務めている
しかし大人びている所為か、同年代の友達があまり居ない所が、ユーノにとっての心配事である。そう言った所も可愛いのだが

「じゃあ今日は父さんと一緒なんだ!?やったー!」

大きな声で喜んでいるのはフェイトの娘。明るい性格で周りを明るくする、この家一番の元気娘である。ただ少々おバカな所がある所為か
良くちょっとした問題を起こして、母親に怒られたりする事が良くある。そう言った所も可愛いのだが

「珍しい事だな。まあ、別に家に居ても居なくてもどちらでも良いが」

そう言いながらも、ユーノの近くに寄って来るのははやての娘。この家の一番の末っ子。しかし本当は良い子なのだが、本人はあまり素直じゃ無く
その上、少々口が悪い為、他の子達と喧嘩になる事がよくある。そう言った所も可愛いのだが
ちなみにユーノは、この三人の娘にベッタベタである。余りのベタベタっぷりにヴィヴィオが『私はもう要らないんだ!』と言って家出して、家族総出で
捜索したほどのベタベタっぷりである。ちなみに、ユーノは家族全員からものすごく怒られて、その日はヴィヴィオと一緒に寝る事になった。

「お父さん、お昼ご飯はもう食べましたか?食べて無ければ、私達の分のついでに作りますけど?」
「良いのかな?それじゃあお願いするよ、実は朝ごはんも食べて無いからお腹がすいてて…」
「クスッ、それじゃあ作りますから、少しだけ待っててくださいね、お父さん」

そう言って台所に立ち、調理を始める三女。四女と五女が食べたい物を言っているが、華麗にスルーしながら料理を作っていく
そして、出来上がった料理を四人で会話しながら食べて行く。やっぱり娘達と食べるご飯は、美味しいと思うユーノ
ご飯も食べ終わり、後片付けも終わり、さてどうするか?とユーノが思っていると

「父さん父さん!外に遊びに行こ!四人で!」
「はあ?何を言ってるんだ、一人で行って来い、私は行かんからな」
「何だとー!」

と四女と五女が言い争っている。ふと考えると、そう言えば最近外に出ていない上に、子供達とはあまり一緒に過ごしていない。
これは父親として駄目なのでは?そう考えると、今日のこの日は良い機会なのかもしれない。

「お辞めなさい二人共、お父さんは今日はお休みなんだから我慢しなさい」
「そう言う事だ。諦めて一人で遊びに行くんだな」
「うー!」
「良いね、遊びに行こうか。」
「「「えっ!?」」」

予想外の父の言葉に驚いている娘達を尻目に、外出の準備を進めていくユーノ、本当に良いのだろうかと?と思っている三女、
珍しい物を見るような目で見ている五女、父さんと遊べるの!?と目を輝かせている四女、と其々の瞳で父を見る娘達

「あの…本当にいいんですか、お父さん?折角の休日なんですから、家でゆっくりしていた方が…」
「大丈夫だよ。今日はぐっすり寝たし、たまには皆とも出かけないといけないしね。…よし、じゃあどこに行こうか?」
「はーい!僕公園で遊びたい!」

ユーノの手を取って、今にも飛び出して行ってしまいそうな四女を抑えながら、他の二人も一緒に連れて行こうとするユーノ
しかし、まだ父に遊んで貰って良いのか迷っている三女と、一度は行かないと行ってしまった手前、中々素直に一緒に行きたいと言えない五女
折角なんだし四人で行きたいと思っているユーノは、何とかして説得する

「僕はね、皆と一緒に休日を楽しみたいんだ。もし嫌なら仕方がないんだけど…」
「そんな事無いです!その…私も…一緒に…行きたいです…」

大きい声を出した為か、素直に言うのが恥ずかしいのか、声が小さくなって行く三女。しかしはっきり言って貰えたのが嬉しくて、つい頭を撫ぜてしまう
こうして、三女も一緒に行く事になったが、問題は五女である。若干気難しい為、説得には少々時間がかかると思いながら五女の方を見ると…

「私も行く!」
「えー!?なんでだよ!さっき行かないって言ってたじゃん!」
「五月蠅い!気が変わったんだ!ほら行くぞ、父さん!」
「あっ!こら!待てー!僕を置いて行くな!」

何か知らない内に解決して居た様である。まあ少しゴタゴタがあったものの、とりあえず親子四人のお出かけが始まる。
皆で何処に行こうか相談していたが、結局、最初に四女が言っていた公園に来る事になった。周りには人が少なく、子供達も思い切って遊ぶ事が出来る
ユーノも負けじと子供たちについて行くのだが…これが全く子供たちについていけない。ここ数年、余り運動せずにしていた事がこんな所で響いてくる

「えー?父さんもうばてたの?体力無さ過ぎだよ!」
「まったく、運動していないからこうなるんだ」
「お父さん、あまり無理はしないでくださいね?私達は、お父さんと一緒なだけで嬉しいんですから」

娘三人の言葉が物凄く痛い。自分も年を取って、更に運動不足であるとは言え、さすがに子供にここまで言われると、非常に悲しくなってくる
とは言え、自分はもう動けないので、遠くから娘達を見守る事にする。

「こらー!待てってば!」
「はっ!捕まえれる物なら捕まえて見るがいい!」
「待って下さい二人共!それとあまり遠くに行ってはいけませんよ」

楽しそうに遊んでいる娘達を見て頬が緩んでいくユーノ。娘達が元気に、そして良い子に育ってくれて本当に良かったと思っている。
一時期は、娘達が大きくなるにつれ、母親達やヴォルケンの皆が不安そうにしているのが不思議だったが、話を聞いていると、何故不安かが
解ってきた。闇の書事件直後に起きた事件。その事件の中で『マテリアル』と呼ばれる、なのは達を元にして作られた女の子達
大きくなるにつれ、その子達に似て行く娘三人。それを見ていると、将来もしかしたら…と皆で思っていたが…

「大丈夫…あの子達なら、絶対に…」

小さな声でそうつぶやく。確かにマテリアルの子に似ているのかもしれない。でも、娘達はマテリアルの子とは違う。娘達には母が居る、父が居る
兄や姉も居る、そう家族が居る。もし何か起ころうとしても、自分達が居れば大丈夫、あの子達が、間違って人を傷つけようとしたら、自分達が止められる
そして、自分達があの子達の手本になればいい、そう皆と誓ったのである。

「痛!ちょっと!痛いじゃないか!」
「何だと、邪魔をしたのはお前の方だろう」

考え事していると、四女と五女の声が聞こえてくる。何やら喧嘩をしている様だが、この二人が喧嘩をするのはいつもの事であるので、止めようとしないユーノ
そこで何時もの様に三女が止めに入るのだが…

「全く、二人共止めなさい。私達だけ…」
「五月蠅いな!ちょっと黙っててよ!」
「なっ!?…ここには私達だけじゃ無くお父さんや他の人が居るんですよ!だから…」
「黙れ!良い子ちゃんは黙っていろ!」
「っ!二人共、いい加減に…!」
「「だから黙っていろ(てよ)!!」」
「…………(プチ)」

なんだか今日の喧嘩は何時もより白熱している様である。普段は三女が二人を止めるのだが、何故か二人は喧嘩を止めようとしない
仕方ないな…と思いながら、二人を止めようと思い立ち上がるのだが

キュイーン…

何か上の方から妙な音が聞こえてくる。何だと思い上を見上げて見ると…そこには空を飛び、デバイスを展開し、魔力を収縮させている三女の姿が
母親譲りのピンクの魔力光が、どんどん集まって大きくなって行く

「集え、明星…」

発射する気満々。恐らく、言う事の聞かない二人に、完全に切れてしまった様である。だからと言って撃たせる訳にはいかない
周りには少ないとは言え、まだ人がいる。更に三女魔力も、母親譲りでかなり強い物を持っている。これは全力で止めなければならない。
撃たせたりすると色々大変なことになる!主になのは達に怒られる。

「ちょっと待って!?ここでそんなの撃っちゃ駄目じゃないか!二人共反省してるんだしね…ほら、デバイスも納めてね(ほら、二人共!)」
「(え、あ、うん!)えっとごめんね!もう言わないから!」
「私も悪かった!だからやめてくれ!」
「全てを焼き消す焔となれ…!」
『話聞いてないー!?』

完全に頭に血が上っているのか、妹二人だけじゃなくユーノの声まで聞こえていない三女。その間も、どんどん魔力が集まっていき、今ではもう発射直前まで
魔力が溜まっている。これはもう駄目だと判断したユーノが、周りの人に避難を呼びかけようとして周りを見ると、既に周りには人が居ない
恐らく、魔力を収縮し始めた三女を見て皆すばやく逃げたのだろう。非常に訓練されている人達である。苦笑にしながらも周りに人が居ない事を確認したユーノ
後は他の物に被害が出ない様に、結界を張るだけなのだが、三女の方は、もう発射準備が整った様である

「ルシフェリオン…」
「わ、わ、わ!ちょっと待って…!バ、バルニフィカス!」
「本当に撃つつもりか!?エ、エルシニアクロイツ!」
「結界間に合ってー!」

急いで自分のデバイスを起動する四女と五女と結界を張るユーノなのだが、既に発射直前の三女

「ブレイカーーーー!!」

そして、桃色の光が三人に降り注ぎ…そして…



・・・・・・・


「いくら怒っていたって言っても、一般の人が集まる場所で魔法を使っちゃ駄目でしょう!しかもブレイカーを使うなんて!」
「ごめんなさい…お母さん…」
「えっと、ママ?それ位で『なに…ヴィヴィオ?』何でもありません!」

母親であるなのはに、烈火の如く怒られている三女。勿論公園で魔法を使った事を怒られている。
あの後の事だが、ユーノの結界がぎりぎり間に合った為、公園には被害は無かったのだが、その後に騒動を聞きつけた警察に四人が連れて行かれる事になる
幸い、結界のおかげでこれと言った被害も無く、原因も子供同士の喧嘩であった為大事にはならなかったが、喧嘩になった三人と、それを止めれなかったユーノは
警察にこってり怒られる事になる。当然なのは達にも連絡が入り、現在三人は其々の母親に非常に怒られている

「痛かったと言っても、相手はわざとやった訳じゃ無いのに、そんなにきつく言っちゃ駄目でしょ!それにお姉ちゃんが止めてるのに言う事を聞かずに!」
「ごめんなさい!ごめんなさい! エリオ兄ちゃん!キャロ姉ちゃん!助けて!」
「助けて!じゃないでしょ!反省してるの!?」

あちらでは四女がフェイトに怒られている。普段余りきつく怒らないフェイトが、今日は珍しく本気で怒っている。まあ今回ばかりは仕方がない
今日は偶然家に居たエリオとキャロに助けを求めるのだが、四女が悪いのが解っているのか、フェイトが怖いのか解らないが
何も言わずに首を横に振る。そして、二人が怒られているとなると当然五女も…

「わざとやった訳じゃ無くても、相手に痛い思いさせたんは自分やろ!何で素直に『ごめんなさい』ができひんの!」
「い、いや!でも、あいつだって!」
「あの子だって、何や?あんたが謝るか、お姉ちゃんの言う事ちゃんと聞いとけば、お姉ちゃんも怒らんかったや無いんか!?」
「う、う~(シグナム、シャマル、ヴィータ、ザフィーラ、リイン、アギト、母さんを何とか…)」
(出来ません)×6

と言う有様である。特に今回は五女が喧嘩の原因を作った所為か、はやても容赦ない。ヴォルケンも何も言わない。
三人共もう帰ってきてからずっとこの調子である。他の家族も、そろそろ許しても良いんじゃないかと内心では思っているのだが、三人が怖くて
中々言えない様子である。

(ねえ、ユーノパパ?そろそろ止めても良いと思うんだけど、何とかママ達説得できない?私達じゃ言っても駄目だと思うから)
(僕達からも頼みます。そろそろ三人が可哀想に思ってきました。)
(我々では主はやて達には余り強く言えないのでな、任せてもいいか?)

ヴィヴィオ、エリオ、シグナムからの念話で言われるユーノ。ユーノ自身も、そろそろ良いかなと思っていた所なので、立ち上がり、なのは達を説得しようとするが

「えーと、なのは?フェイト?はやて?三人共反省してるんだから、もうその位で…」
「「「ユーノ(君)は黙ってて!!」」」
「はい!ごめんなさい!」

後ろで盛大にずっこけるヴィヴィオ達。だって三人共怖いんだもん!凄く怖いんだもん!こんなの止めれないってば!
そう思うユーノになのはが近づいてくる。どうしたんだろうと思っていると…

「ねえユーノ君?」
「な、何?なのは?」
「今回で悪いのは三人だけど、ユーノ君は近くに居たんだよね?どうして、もっと早く止めれなかったのかな?ユーノ君、お父さんだよね?」

低い声でそう言うなのは。ふと気付くと、フェイトとはやてもユーノを見ている

「私達ね…その事でもユーノ君に聞きたい事が沢山あるんだ…」
「えっと…な、なのは…それは、その…」
「私達四人と…しっかりお話、しようか?ユーノ君?」

そう言いながらなのは、フェイト、はやてに連れて行かれるユーノ。皆に助けを求めるのだが、やはり怖いのか皆目を合わせない
こうして、ユーノの休日は終わりを迎える。今度からは、娘三人と過ごす時はしっかり見張っていないと、と思うユーノであった





[21737] マテ似三人娘の無限書庫見学
Name: rattu◆50c335cc ID:c73723c0
Date: 2010/09/07 16:41
「えーと…副司書長、皆集まったかな?」
「はい。本日出勤の無限書庫司書、全員揃いました」

無重力の空間で固まっている多数の人。無限書庫と呼ばれる場所と、そこに勤務している司書達である
そして、その集まった司書達の前に出ている青年は、この無限書庫の司書長ユーノ・スクライア
普段は、各々が散らばって自分の仕事を行っている無限書庫であるが、本日は珍しく全員が一か所に集まっている
司書が集まる場合は、大体はユーノが司書の皆に報告や確認などをする時に行う。この日もそうでありその内容は…

「えー、先日に皆さんにお伝えしましたが、本日は学院から生徒達が見学にやってきます」

と言う事である。この日はSt.ヒルデ魔法学院から、生徒達が社会見学と言う形で、無限書庫に来る事になっている。この社会見学は
学院で毎年行われている行事で、管理局を含め、学院が選んだ様々な職業を生徒達が自分で選び、直接その目で仕事を確認させ
自分の将来の選択肢を広げるのが目的であり、今回初めて無限書庫がその見学先の一つに選ばれた。その為か、この日の無限書庫は
朝から少々緊迫した空気が漂っている。小さい子供達がやってきて、自分達の仕事を観察され、もしかしたら将来一緒に働く事になるかも知れない
などと色々考えているのだろう。それを見かねたユーノが司書を集め、皆の緊張を解いていく

「はい、じゃあ皆。そろそろ子供達が来るけど、緊張せずに何時もの様に業務に励んでください」
『はい!』

ユーノの話を終えた後、各々の仕事場に戻っていく司書達。それを見送ったユーノも自分の定位置に戻っていく
子供達が来た時に、前に出て少し書庫に関して説明をしなければならないので、ちょっとした予行練習になったのかも知れない
とは言え油断する訳にはいかないので、子供達の前で喋る台詞をもう一回しっかり確認する。司書長と言うそれなりの立場なので
変な所を見せる訳にはいかない。そんなユーノに近づいていく影が一つ

「そうは言っても、一番緊張してるのはアンタの方じゃないのかい?ユーノ」
「アルフ!何を言って!…止めとこう。多分そうだろうし」

そう言いながらユーノの隣にやって来るアルフ。既に長い付き合いな所為か、司書達が気付いていない、細かい所も良く見えているらしい
しかしユーノにしてみれば、子供達の前に出て話をしたり、仕事を見られる事は余り大したことは無い、そう言うのには多少は慣れている
ただ、今回の社会見学は、それらとは明らかに違う要素が一つあり、それがユーノの精神に多大な緊張をもたらしてくる
その一つの要素とは

「まあ仕方ないね。なんせ家の3人娘が来るんだから」

と言う事である。ユーノの娘で家の大家族の三女、四女、五女の三人が、今回の無限書庫見学のメンバーに入って居ると家で娘達が言っていた
しかもそれを聞いたのが、昨日の夕飯を食べてる時だと言う急な話。娘達はユーノは知っていると思っていたらしく、ちょっとした騒動になった
何故ユーノに連絡が行ってないかと言う話だが、ただたんに伝える役の四女が「伝えるの忘れた!」と言っただけの事である、さすがアホの子
まあ、当日にいきなり知らされるよりはマシと判断し、ユーノも怒る事は無かったのだが

「あー、どうしよう、緊張してきた。僕上手くやれるかな?アルフ?」
「知らないよそんなの。それにアンタさっき司書達に何時もの様にって言ってたじゃん」
「自分の子供が来るのに、そんな簡単に割り切れる訳無いよ!」

あまりの緊張感の所為か、逆切れ気味に言うユーノ。頭や理屈ではそう思っていても、実際はそんな簡単に出来る訳が無い
折角娘達が来るのだからカッコいい所を見せたい、カッコ悪い所は見せたくない、と思ってしまうのは父親として仕方がない

「まあ授業参観の逆バージョンとお想いな」
「うわ…そう考えると、あの子達の気持ちが少し解ってきそうだ」

そう言い、頭を抱えているユーノを放って置きながら、自分の定位置に戻っていくアルフ。薄情者と言いたくなるユーノだが
今はそんな事言っている場合ではない。もう少ししたら生徒達がやってくると言うのに、今だユーノはまだ心の準備が出来ていない
こんな事初めてだから優しくして欲しいの、と思うのだが子供達がそんな事に気付いてくれる訳がない、それ以前に子供に気を使われる訳にもいかない
特に何か特別な事をする訳じゃないのだ、普段と変わらず、何時もと同じ様に仕事をこなせばいいのだ、そうすればおのずとカッコよく見える
そう考えて少し心を落ち着かせるユーノ。何をしようと子供達が来るのは事実なのだから、あーだこーだ言ってもしょうがない
もう腹括って行くしかない。そうして居ると後ろから別の司書が声をかけて来る

「司書長。生徒達と引率の先生がお見えになっています。中に入れても宜しいでしょうか?」

どうやら子供達が到着したみたいである。少し早いんじゃないんだろうか?と思い時間を確認すると、既に予定の5分前となっている
一人で悩んでいる内に時間が経過していたのだろう。そうなると皆さまを待たせる訳にはいかないので、すぐさま招き入れる

「もうそんな時間か。解った、入って貰っても大丈夫だよ」
「了解しました」

許可を貰った司書が生徒達を迎えに行くのを見つめ、ユーノは気合を入れなおす。いよいよこの時がやってきた、もう逃げ場はない
まずは生徒達の前に出て挨拶をしなければならない。まずは第一印象が大事。司書長として恥ずかしくない、こう「キリッ!」とした感じで
挨拶をしなければ!と思いながら生徒達の元に向かうのだが…

「はい!皆さん。この方がここ、無限書庫の司書長のユーノ・スクライア司書長です」
『宜しくお願いしまーす!』

…何だこれ?人数多すぎない?とユーノの頭が混乱してくる。ユーノ自身は無限書庫は地味だと自覚しているので、娘達を含めても
せいぜい多くて7,8人位だと思っていたのだが、ざっと見ただけで20人以上いる。そしてその人数の目がユーノに向いているのである
何か喋らないといけないと思っているのだが、予想外の人数に頭が真っ白になってしまった所為なのか、一晩かけて覚えた台詞が完全に頭から抜け出てしまった
幸い生徒達は、まだユーノがテンパっている事には気付いていない様だが、このままでは不味い、と思っているユーノに助け船がでる

(お父さん、落ち着いてください。私達が居ますし何かあればフォローしますから)

父の異変にいち早く気付いた三女が、ユーノに念話を送りユーノを落ち着かせようとする。娘の声を聞いた為かユーノも少し落ち着いてくる
いくらしっかりした三女とは言え、娘に助けられるのは情けないと自分でも思うが、今はそんな事を言っていられるほど余裕がない
もし自分が何かやらかしたら、娘達に何とかして貰おう。そう思うと(父親としてどうかと思うが)気が楽になり、スムーズに言葉が出てくる

「皆さんこんにちは。ご紹介預かりました無限書庫司書長のユーノ・スクライアです。正直こんなに沢山の生徒達が来るとは思っていなかったので
今非常に驚いています。色々解らない所もあると思いますが、今日一日、無限書庫の仕事を思う存分に見て行って下さい」

多少言葉に詰まりそうになりながらも、緊張が解けたおかげで特に大きなミスも無く、自分と書庫の紹介を終える事が出来た
その後先生のお話や生徒達からの質問などを受け答えをしたりし話が進み、本格的な無限書庫見学が始まる
子供達は最初はどうすれば良いか迷っていたが、予め用意していた数人の司書が、子供達を数グループに分けて書庫を周り
仕事を見て行くと言う方法を取る事にした。何かイケメンの司書に女の子達が集まってたり、強面の司書には殆ど近づかなかったりしていたが
まあこれは仕方がない。数グループに分かれて移動する子供たちを見送って、さて自分も仕事に戻ろうとすると後ろから声が聞こえてくる

「ちょっと待ってー!父さ…!」
「黙れこのバカ!」
「バカはやめなさい。口が悪いですよ。でも父さんと呼ぶのはやめましょうね」
「どうしたの三人共?」

後ろを見ると女の子が三人、ユーノの三人娘が近づいてくる。司書が集めたグループに入っていると思っていたのだが、どうやら違うらしい
三人共、届け物などで何度か無限書庫に来ているので、自分達だけで回るのかと考えていたのだが…

「ごほん…、スクライア司書長、私達三名は司書長の仕事を見学して、勉強させて頂こうと思いお願いに来ました」
「仕事を近くで見せてく…貰えないでしょうか?お願いします」
「あ、えっと…お願いします!」

そう言いながら頭を下げる三人娘。ユーノの方はと言うと、本日二度目の混乱に入った。自分の娘達が間近で自分の仕事を観察する
想像しただけで、何か例えようのない恥ずかしさがこみあげてくる。はたしてそんな状態で、まともに仕事ができるのか、正直かなり不安である
出来れば断って、他の子供達と一緒に回って貰いたいのだが、もう案内の司書は全員行ってしまったし、何より必死に頼んでくる娘達の
気持ちを無下にはしたくは無い。父親として、司書長として、この頼みは絶対に受けなければならない!と思うユーノ

「うん、構わないよ。何か聞きたい事があったら遠慮なく言ってね。えっと…高町さん、ハラオウンさん、八神さん」
『はい!ありがとうございます!』

こうして、娘に見守られながら仕事を再開するのだが…

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ピッ、ピッ、ピッ、(じー)×3
パラパラパラ(じー)×3
「司書長、依頼された資料の準備が出来ました」
「解った、後日僕が直接渡しに行くよ」(じー)×3
「えーと、ん?あれ何処に行ったっけ…あ、あったあった」(じー)×3
「…」(じー)×3

すげーやりづらい。見学を許可してからもうずっと3人に見られている。ユーノが検索しようが、他の人と話しててもずーと見つめて来る
特に、自然と出て来る独り言を聞かれると物凄い恥ずかしい。なにこの羞恥プレイ?なのは達ともした事無いのに、やりたくないが
ただ、全部見ているという訳ではなく、たまに検索魔法を含めた魔法のコントロールの質問などをしてくるのだが、殆どは見ているだけである
さすがに、ユーノとしてもこのまま仕事を続けるのはつらい、見てるだけではつまらないだろうし、ユーノの精神もどんどん削られて行く
手元の仕事をキリの良い所で止め、娘達に近づいて行く

「三人共、ちょっと聞きたい事あるんだけど…、良いかな?」

娘達は一体どうしたんだろう?と行った表情だが、とりあえず父の言葉に肯定する

「どうして僕の所で仕事を見ようとしたの?正直、僕の仕事は他の人とやっている事はあまり変わらないし
僕以外の司書の仕事を見た方が、勉強になる物が多いと思うんだ。でも三人共そうはしない。それが気になったんだ」

優しく言いながらも、はっきりと疑問をぶつけるユーノの言葉に、お互い顔を見合っている娘達。どうやら言って良いのかどうか迷ってみたいだ
しばらくお互いの顔を見合っていた三人だが、意を決したのか三人が口を開く

「あの…私達は司書長…いえ、お父さんが、無限書庫でどんな仕事をしているか、一度しっかり見たかったんです」
「母さん達の仕事は結構有名だし、僕達もどんな仕事か母さん達から聞いてるけど、父さんの仕事は、僕達良く知ってない事に気付いたんだ」
「それで、今年のこの行事が良い機会だったから参加したのだ。まあ私達三人が行くと聞いて、着いてきたのが居るみたいがな」

娘達の話を纏めると、今まであまり知らなかった父の仕事を見て見たい!と言う事で、三人は見学先に無限書庫を選んだらしい
ユーノ自身も家に居る時は、娘達の前で仕事の話を殆どした事無い(なのは達の前では愚痴をこぼしたりしているが)し、娘達に聞かれる事は全くなかった
ちなみに、後で引率の先生に聞いたのだが、今回の見学希望の生徒達の数の多さは、最初はユーノの予想していた様に、娘達が参加するまでは3,4人程だったのだが
三人が参加するとなったら、一気に参加希望が増えたと言う事らしい。魔法に関しては学院でもトップレベルの三人が一緒に選んだのを見て
何か凄いのがある所なのか!?と言う話が勝手に出てきて一気に参加希望の生徒が増えたらしい。まあそれはともかく
娘達の言葉をじっくり考えるユーノ。折角娘達が可愛い事を言ってくれるのだ。今の自分が娘達に出来る事を考える。そしてある事を思いつく

「三人共、少し仕事を手伝ってみない?良かったら色々教えてあげられるけど…」
「は、はい!お願いします!」「やったー!さすが父さん!」「まあ、たまには良いだろう」

そうしてユーノと一緒に仕事を始める三人娘。慣れない作業で四苦八苦している娘達にユーノが優しく教えたり、ユーノが探している資料を
三人で探してきたりと微笑ましい光景が映る。その後は三人がユーノの仕事を手伝い、ユーノがそれを教えると言うのが続いた

--------------------------------

「みなさーん、そろそろお昼ご飯ですよー」

引率の先生の声が聞こえてくる。どうやら昼休憩の時間に入ったらしい

「ではお父さん、お昼休みに行ってきます」
「うん、解った。それじゃあ午後でね」

娘達が離れて行くのを見送って、自分も食事に行こうとすると、五女がこちらに向かってくるのが見える。何か忘れものしたのか?と思ったのだが
ユーノの目の前にやってきて為それは違うらしい。五女は何か言いたそうにしてるが、恥ずかしがっている為か中々口には出せない
このままだとお昼時間が無くなると思い、ユーノがどうしたのか聞こうとすると、意を決したのか五女が口を開く

「あーと、父さん。その…えと…午後も…一緒に仕事してもいいか?」
「あ、うん良いよ。午後も三人で仕事手伝ってくれるかな?」

その言葉を聞いて一気に笑顔になる五女。ユーノも楽しいのでこのお願いは大賛成である
許可を貰って安心し、生徒達の元に戻っていく五女を見送り、自分も食事に向かうユーノ

---------------------------------

「お帰り!父さんどうだって?」
「あー、OKだとさ」
「よっしゃ!」
「まあお父さんの事ですから、よほどの事がない限りOKはくれたでしょうが」

戻ってきた五女を迎え、他の生徒と合流し昼ご飯を始める。生徒達が其々のグループを作り午前の見学の話など、色々な話をしながら食事を進める
三人は特に他のグループには加わらず姉妹だけで集まっている。三人共友達が居ない訳ではないが、周りのグループは最初の司書の
グループ分けで出来たグループなので、自然とそうなってしまった。話している事も大体が其々のグループの話である
とはいえ、三人は別に気にしてはいない。父と一緒に仕事ができたの事が、三人にとって一番の勉強になったので全く問題ない

「それにしても、最初の父さんの顔面白かったなー」
「気付いてたのは私達だけだっただろうが、明らかに顔が引きつっていたな。まあ想像していたより人数が多かったのが原因だろうな」
「何かあったらフォローするとは言いましたが…正直どうするかは考えていませんでしたから、問題無く行って非常に良かったです」
「無責任だな…本当に何かあったらどうなってた事やら」

娘達の話もほとんどがユーノとの事になる。今まで知らなかった無限書庫の仕事、検索魔法の難しさ、父との共同作業、お互いの協力など
色々な話が出て来る。食事を終えた後は、生徒達が集まり、午前の見学の時に思った事を雑談みたいな形で話し合う事になった
皆思い思いの感想を言ったり、午後はどう言う事をしたいかなど、当たり障りのない事を言っていたのだが

「何かさ、無限書庫って、地味だよね」

一人の少女の言葉が、場の雰囲気を一気に変える事となる。娘達は最初の方こそ仕方がないと思っていたのだが、検索魔法が面白くない
書庫自体が暗い、何か死体みたいな人がたまに居る、他の所に行った方が良かったかも、などの言葉を聞いていると流石に気分が悪くなってくる
とは言え、感情的になって怒る訳にはいけない。感じる事は人それぞれなのだ、自分の合わない仕事に色々言ってしまうのは仕方がない
そう思い三人共何も言わずにいたのだが、決定的な一言が最初の少女の口からから出て来る

「やっぱ司書長があんなのだし、書庫全体があーなったのかな?」
「何だと!」

その言葉を聞いて、大声を出し立ち上がる五女に驚く生徒達。三女と四女も立ち上がろうとしたのだが、五女が一瞬早く動いてしまったので
タイミングを逃してしまった。五女の方も、無限書庫を酷い言い方されるのは我慢していたのだが、自分の父親の事を出されると流石に
怒りを抑えられるほど大人では無い

「あんなのだと?父さ…スクライア司書長の何処が悪いと言うんだ!言ってみろ!」

大声で迫ってくる五女にビビりまくる少女。今まで何も言っていなかった奴が、いきなり怒って迫って来たらそりゃまあ怖い
とは言えとは言え、それでも正直に答えてしまうのは子供だからだろうか、はっきりと自分の意見を言ってしまう

「だって…司書長自体、あまり活発な感じがしないじゃない。なよっとしてると言うか…頼りなさそうというか
特に、それなりの歳らしいけどあのロン毛何?あれ含め何か良い感じがしないんだけど…他の皆はどう思う?」

そう言いながら、他の人の意見を求める少女。そうすると「眼鏡も変だし」「服装も少しダサくない?」「声も何か高いよね」「へたれっぽい」
などと言う、まあ酷い意見が出て来る。それを言っているのは4、5人ほどだが、よく見ると全員グループ分けで少女と一緒に行動している生徒である
恐らく彼女の友達なのであろう。彼女達は三人が見学で無限書庫を選んだのを知って、何かあるとのか思ってここを選んだのだが
特に何もなかったので後悔していのを言葉に出してしまったのだろう。とは言えそれを五女が解るはずもない

「貴様等…私の父に随分な言葉だな…後悔させてやる…!」

既に完全に切れてしまった五女。はやて譲りの膨大な魔力が生徒達の周りを包み込む。異常に気付いた先生が止めに入ろうとするのだが
あまりの迫力に近付けない。その光景を観察し、いくらなんでも流石にこれは不味い、と思った四女が三女と一緒に止めようとするのだが

「ちょっ!それはやばいって!ねえ一緒にこいつ止め…」
「少々、言葉が過ぎますね…」
「ちょっとー!?」

三女の怒りゲージもブラスター3に突入しているご様子。この前の休日の時にかなり怒っていたが今回はその時の比ではない
流石にユーノをバカにされたのが頭に来ていたのだろう、四女の方も相当怒っていたのだが、二人を見てそんな状況じゃないと思い
二人を止めようとするのだが、力ずくで抑えようにも一人ではどう考えても無理。その為説得でどうにかしようとするのだが
今の二人がそんな事を聞いてくれる訳が無い。殺る気満々の二人と怯える生徒達、説得する四女と言う異様な光景がその場にある

「二人共落ち着いて!怒る気持ちは凄く分かるけど、それはいくらなんでも…!」
「少し黙っていてください。許しはしません…ルシフェ(がしっ)えっ!?」
「吹き飛ばしてやる!この塵芥どもが!エルシニアクロ(がしっ)!?」

四女の説得もむなしく二人がお互いのデバイスを起動させようとした瞬間、後ろから出てきた手が二人の腕を掴む
止めるのは誰だ!と思い後ろを振り返ると、そこには見慣れたサイドテールの女性が二人の腕を掴んでいた

「はいストップ。こんな所でデバイス機動してどうするつもり?」
『ヴィヴィオ(お姉さん)(姉ちゃん)(姉さん)!?』

そこに立っていたのは、三人の姉であり無限書庫司書の一人、高町ヴィヴィオである。思いもよらない人物の登場に、怒りも忘れ驚く三女と五女
驚きながらも、二人を止められる人物が来てくれて安堵する四女。怯えていた生徒達も、ヴィヴィオの登場で二人が止まったのを驚いている
(あの三人のお姉さん!?)(美人…)(おっぱいでかい!)(結婚して下さい!)(いい年みたいだけどサイドテール?)(三人と似て無いな)など
皆好き勝手な事を思っている

「離せ姉さん!こいつ等が…!」
「はいはい。怒りたい気持ちは解らなくも無いけど、魔法を使うのは感心しないな。それじゃただの暴力だよ?」

腕を掴まれながらも、少女達に対して攻撃を止めようとしない五女をたしなめるヴィヴィオ。三女の方はヴィヴィオの登場で冷静になったのか
今は普段の落ち着いた感じに戻っている。とは言え、少女達を許した訳ではないので、まだ油断する訳にはいかない。二人の腕を離し
少し自分に任せてほしい。と娘達に伝える。三女と五女はあまり納得していないが、このままだとさっきと同じ事が起こるかもしれないと言う
四女の言葉により、三女と五女もヴィヴィオに任せる事にした

「えーと、話に関しては途中からなんだけど、見てたから大体の事は解ってる。無限書庫が地味とか暗いとかはね」

ヴィヴィオの言葉に一瞬ビクッとする少女達。自分達が言っていた事を、その現場で働いている人に聞かれたのだ、かなり居心地が悪そうにしている
その様子を見て少し怖がりすぎかな?と苦笑しつつ話を続けるヴィヴィオ

「まあでも、そう思っても仕方ないけどね。実際そう見えるし」

笑いながらあっさりと言うヴィヴィオに、えっ!?と言った表情を浮かべる生徒達(娘達含む)。自分達が言っていた事を、否定せずに肯定してしまったのである
そこで働いている人間が。だったら良いのでないか?と思う少女達と、本当にそれでいいのか!?と言ってくる娘達をなだめつつ話を続ける

「とは言え、あくまでもそう見えるだけで、管理局の中でもかなり重要な場所だし、働いている人達も元気な人も多い。検索魔法が地味と言っても
実際やってみると、武装隊の人たちが使う魔法などと比べても、引けを取らないほど難しい物だし、大変な所なんだよ無限書庫は」

と無限書庫の重要性、仕事の内容、魔法の難しさなどを説明を続けるヴィヴィオ、なのだが、少女達はどうにも納得している様には見えない
それはヴィヴィオも解っているのだろう

「まあどれだけ言っても、納得は出来ないだろうね。とは言え、折角来てもらったのに、無限書庫の事を誤解されたまま帰って貰うのは、少しさびしい」

そう言いながら少女達に近づき、膝を曲げ、少女達と同じ目線になり本題を伝える

「だからさ、午後から無限書庫の仕事、手伝ってみない?」
『…はい!?』

予想外のヴィヴィオの言葉に驚く少女達。娘達は、そうきたか。と言った感じでヴィヴィオを見つめる
困惑している少女達を落ち着かせ、ヴィヴィオは丁寧に話を続ける

「実際どんな仕事か理解するのは、実際にやってみるのが一番だと思うんだ。私も、最初は見てるだけだと簡単だと思っていたけど
実際にやってみると、これが凄く大変だったからね。勿論、私が責任もってしっかり教えるから安心していいよ」

ヴィヴィオにそう言われ、どうしようか相談している少女達。いきなり言われても、でも良い機会だし、難しいと言っても検索魔法位なら自分達でも
皆でやれば大した事ないかな?など色々と言いあっている。そして相談が終わったらしく、最初に地味だと言った少女が、ヴィヴィオの前にやってくる

「それでは、お願いして良いですか?」
「うん、宜しくね。それじゃ私は戻るね。また午後に」

そう言いながら少女達から離れて行くヴィヴィオ。ただ、三女は何故ヴィヴィオがそんな事をしたのか気になり、ヴィヴィオに近づいて行く

「ヴィヴィオお姉さん、どう言うつもりですか?あんな事言って」
「あんな事って…、あの子達にも言った通りだよ。実際にやってみないと、どんな仕事か解らないし、誤解は解いとかなきゃ」
「それは解っていますけど…」
「まあ、無限書庫やパパをバカにされて、怒りたい気持ちは凄く分かるよ。だからと言って力で訴えるのは駄目だけどね」

そう言われて恥ずかしくなる三女。冷静さを失い、危うくデバイスを起動しようとしたのは自分である。その三女の頭を撫ぜるヴィヴィオ
そして笑顔でこう言い放った

「そう、だから教えてあげないと…自分達がバカにしていた仕事が、どれだけ大変かどうかね…フフ」

笑顔だが目は全く笑っていない。そのヴィヴィオがあまりに怖く、すぐさま妹達の所へ逃げ出す三女。あんな姉は見た事無い。そう思う三女
どうやら、ヴィヴィオも相当におかんむりだった様である。大人げないぞヴィヴィオ。少女達は大丈夫かと心配する三女であった

---------------------------------------

「お父さん、今日はありがとうございました」
「楽しかったー!」
「少々疲れたが、まあ有意義な一日であった」
「はは、まあ何とか無事に終わったかな?」

社会見学が終わり、現在自宅への帰路について居るユーノと三人娘とヴィヴィオ。娘達はユーノとの約束通りに、午後もユーノの手伝いに続ける事になったのだが
ユーノ自身は、少し他の所を見て来るのも良いんじゃないか?と娘達にそれとなく言ってみたのだが、皆ユーノの所でやった方がいいと言うので
結局最後までユーノの手伝いをする事になった

「そう言えば、ヴィヴィオも何人かの生徒と一緒に仕事してたみたいだよね」

その言葉に一瞬動きが止まる三人娘。正直気にはなっていたのだが、あの怖いヴィヴィオの顔が思い浮かんでどうにも聞けなかった
その事を知らないユーノは普通に聞いているのだが。恐る恐るヴィヴィオの顔をうかがう三人娘だが、当の本人はいたって普通の顔をしている
心配そうにしている妹達を知ってか知らずか、ユーノの質問に答えるヴィヴィオ

「うん、無限書庫の仕事は、やっぱり直接触れて見ないとどんなのか解りにくいと思ってね。それで色々教えてあげてみたんだけど…
やっぱり初めてだと辛いみたい、皆すぐ疲れちゃった」
「はは、仕方ないね。検索魔法は見た目より相当神経使うからね」

傍から聞くと別段どうという事は無い話なのだが、あのヴィヴィオの顔を見てしまった三女は(本当にそれだけで済んだの!?)と考えが頭に浮かぶ
午後の時間の分が終わり、生徒達が集まった時、ヴィヴィオの手伝いをした少女達を見ると、全員がフラフラになって戻っていたのを見てしまい
怒りなど忘れ同情までしてしまった。しかし次にヴィヴィオは少し嬉しそうな顔でユーノと話す

「でもね、その中でも一人だけ、凄い真面目に頑張っている子が居たんだ。あまり要領は良くないけど…、解らない所は積極的に聞いてきて
終わった後もフラフラになりながら、凄く勉強になりました!って言ってきてね、私も教えてて楽しくて、帰り際に『もし無限書庫の仕事が
気になったら何時でもおいで』って言っちゃった」
「へー、それは良いね。近い内に新しい司書が増えてたりして」
「うん。それが凄い楽しみなんだ。来てくれるかなー」

本当に楽しそうな笑顔のヴィヴィオを見て安心する娘達。それにもしかすると友達が一人増えるかもしれない。そう思うと自分達も嬉しくなってくる
正直、今日の無限書庫見学はどうなるかと思っていたが、ちょっと騒動は起こったものの、ユーノや娘達にとっては十分成功と言っても良かっただろう
しかし、ユーノには少し心配な事がある

「三人共、一つ聞きたい事あるんだけどいいかな?」
「何ですか?お父さん?」
「うん、その、今日の見学を通して、三人は無限書庫をどう思ったかな?って考えてね。正直なのは達の仕事に比べると地味だし
最初の挨拶の時も、僕は念話が来るまでどうしようか本当に焦ってたし、はっきり言ってカッコ悪かったかなって思っ…」

ユーノが言葉を言い終わる前に、四女がユーノの右腕に抱きつき、五女が左手を繋いでくる

「そんな事無いよ!父さんカッコよかったし、お仕事も凄い楽しかったよ!」
「同感だ。父さんが心配している事などない。私達は十分に楽しめた」
「あっ… ええ、今日の見学を通じて、お父さんのお仕事がどれだけ大変で、そして重要か良く分かりました」
「そっか、良かった。ありがとう三人共」

娘達の言葉に安心するユーノ。この言葉を聞けたら、また明日から仕事を頑張れる。そのユーノの後ろにいる三女に近づき、その手を握るヴィヴィオ

「え?ヴィヴィオお姉さん?」
「二人に先を越されちゃったね。私が代わりに慣れると良いんだけど」
「あっ!いえ!その、嬉しいです…」

心を読まれたのが恥ずかしいのか、手を繋ぐのが恥ずかしいのか、真っ赤になりながらも、ヴィヴィオの手を握り返す三女と笑顔のヴィヴィオ
子供達の無限書庫見学が終わり、家に帰る五人。さあ今日の晩御飯は何だろう?皆笑顔で家に帰って行く




[21737] マテ似三人娘の弟予報
Name: rattu◆50c335cc ID:c73723c0
Date: 2010/09/08 15:57

ある日の休日。高町、ハラオウン、八神合同一家の自宅。本日は仕事も無く、自宅にて休日を満喫しているユーノ。
ユーノの他に、同じく休日のシグナムにアギト、他にシャマルとザフィーラも休みなのだが、今は外に出ている。
皆家でのんびりと過ごす時間、なのであるが…、

「三人共、随分落ち着きが無いね」

ユーノの視線の先には、落ち着かない感じでそわそわしている、ユーノの子供の三人娘。掃除をしながら、しきりに時計を確認している三女、
あっちへうろうろ、こっちへうろうろしている四女、本を読んでいるが、全く進まず玄関の方を見ている五女、
其々行動は違いがあるが、三人共非常に落ち着きがない。

「まあ仕方がないだろう。当時の我々もこんな感じだっただろうしな」
「ユーノの旦那は特にひどかったからな」
「お願い…思い出させないで。反省してるから…」

娘達を見ているユーノの元にやってくるシグナムとアギト。アギトの言葉に頭を抱えるユーノ。あの時は仕方が無かったんだ、初めてだったんだ、
だから許して下さい、と言いたくなるユーノ。それを見て流石に可哀想に思ったのか、アギトを止め、シグナムは話を再開する

「それにしても、三人は帰ってくるのが遅いな。時間的にはそろそろ帰ってきてもいい頃なんだが…」

その言葉を聞き、三人娘が一気にシグナムに近寄ってくる。

「そうですよね!お母さん達、帰ってくるのが遅すぎます!」
「あーもう!早く帰ってきてよ!待ちくたびれた!」
「なのは母さんやシャマルはともかく、ザフィーラまでいると言うのに、あの役立たずの犬が…!早く二人を連れてこい!」

三人娘の剣幕に押される烈火の騎士。何か一見情けないが、間近で見るとかなりの迫力なので仕方がない。ビビってるシグナムを放って元の所に戻る娘達。
シグナムのちょっとした一言ですら、今の娘達には爆弾になりかねない程ピリピリしている。まあ仕方がないのかもしれない。
今の彼女達には、早くなのは達が帰って来くる事しか頭に無い。それを苦笑しながら見守っているユーノ達も、娘達程では無いとは言え
内心は早くなのは達に帰ってこないかとやきもきしているしている。なのは達が帰ってきた時の『ある結果』の報告を待っている。その報告とは…

「なあシグナム?なのはさんの赤ちゃん、男の子かな?女の子かな?」

そう。今のなのはのお腹の中には新しい命、合同一家の新しい家族が宿っている。今日なのは達は、お腹の赤ちゃんの性別を確かめる為に
病院に行って、皆はその帰りを待っている所でなのである。性別聞いたら、メールなり通信なりで報告すれば良いと皆で言っていたのだが、
なのはが『直接皆に言いたい』と言う事なので、家族全員なのは達が帰ってくるのを今かと待っている。ちなみになのはの付き添いに
シャマルと、万が一の為にボディーガードとしてザフィーラが一緒に行っている。のだが、三人共予定していた時間より大分帰宅が遅い。
二人が付いてるので何かあるとは思わないが、流石に少々心配になってくる。

「ユーノ?大丈夫だと思うが、一応連絡取っておくか?少々帰宅も遅れているし」
「そうですね。念の為『ただいまー』…その必要は無かったようですね」
「…フッ。そのようだな」

二人で笑いあいながら、帰宅してきたなのは達を迎えに行くユーノとシグナムなのだが、既に娘達が凄い勢いでなのは達の元へ向かって行っている
かなりお預けされていた所為か、皆速く結果が知りたいのだろう、荷物を持っていたザフィーラを吹き飛ばし、なのはの元に向かう。

「ザフィーラ邪魔だ!随分遅かったな。なのは母さん(男の子か!?女の子か!?)」
「お帰りなさい!なのは母さん!(速く!速く!)」
「ごめんね皆。帰りにお買いものしてたんだけど、晩御飯のおかずを探してたら遅くなっちゃって」
「「料理出来ないのにそんな事しなくて良いんだよ!シャマル!」」
「ふ、二人共酷い!」

色々溜まっていたのだろうか、ザフィーラにもシャマルにも容赦がない四女と五女。三女は特に何も言わないが、ただ単に二人を無視しているだけらしい。

「お母さん!どうでしたか!?」

三女も慌てた感じでなのはに尋ねる。三女だけでなく、四女も五女もなのはの周りに集まる。そんな三人を落ち着かせるなのは。
そして、おもむろにVサインをしたと思えば凄い笑顔で、

「男の子だって!」
『おー!』

娘達だけではなく、ユーノやシグナム、アギトからも驚きとも喜びともとれる声が響く。合同一家に次男の誕生が決まった瞬間である。

「良し!私は母さんに連絡してくる!貴様もフェイト母さんに連絡を入れておけ!」
「お前に言われなくても解ってるよ!」

四女と五女が、大急ぎで自分の母親に連絡を入れる為に走って行く。フェイトもはやても、子供の性別を気にしながら仕事に向かったので
この連絡を受け取れば、自分の仕事に集中出来るだろう。ユーノとシグナムは、なのは達の買い物袋を運ぶのを手伝う。
妊婦のなのはに、余り無理はさせてはいけないと言う事で、皆きびきびと動く。三女も弟が出来ると解った為かハイテンションで動く。

「今日の晩御飯は私が作りますから、お母さんはゆっくりしていて下さいね。アギト、手伝ってくれますか?」
「あいよ!任せなお嬢!」

シャマルに頼まない辺りは、非常に解っている三女である。その後、皆で三女の手料理を食べながら夜がふけて行く。

-----------------------------------

「産まれて来るのが弟と決まりましたね」
「ああ。これで家の男性は四人目と言う事だな」

夜もふけた時間。三人娘が一つのベットに集まり談笑をしている。話題は当然産まれてくる弟の事である。
自分達にとって、初めての年下の家族でありエリオ以外の初めての男の子。一応三人は三女、四女、五女と一応は姉と妹と言う事になっているが、
実際は三人の中では、月単位レベルでしか歳が離れていないため、お互いに余り姉と妹と言う意識が無かった為、産まれて来る弟は
完全に自分達より年下、自分達は完全にお姉ちゃんになると思うと(まだ平べったい)胸がはずむ

「弟かー、早く産まれないかなー」
(弟…男の子…どう接すれば良いんでしょうか?)
「弟か、私は姉になるのだな…お姉ちゃん…、フフ」

純粋に弟の誕生を楽しみにしている四女、男の子との接し方が解らず悩む三女、自分より年下ができ姉になると考えニヤニヤする五女。

「大きくなったら、一緒にゲームやスポーツとかしたいなー」
「そんな事ばかりしていたら貴様みたいにアホになるだろう。やはり私と一緒に勉強して、知的な男性を目指してだな…」
「えー!?本ばっかり読んでると、お前みたいに頭でっかちになるじゃん。やっぱり体を鍛えて男らしくならないと!」
「何だと!?」
「二人共落ち着きなさい。ここは料理やお菓子作りなどを教えて、一人でも自炊出来るようにですね…」
「「男らしさの欠片もないから却下」」
「ちょっ!?酷いですよ二人共!」

産まれて来る弟の事ばかりの事ばかりの話で三人娘の一日が終わる。

-----------------------------------

「ただいま。…フフフ」
「お帰りユーノ君。…どうしたの?」
「あ、うん。戻ってくる時に三人の声が聞こえてきてね、赤ちゃんの話ばっかりしてるもんだからね」
「あー、なるほどね。赤ちゃん産まれるのはあの子達は初めてだから仕方ないね」

娘達の話は、部屋に戻ろうとしたユーノに全部聞かれていたらしい。それを聞いたなのはは、苦笑しながらユーノを隣に招く。
なのはの隣に座り、なのはの大きくなったお腹を優しく撫ぜる。新しい家族、始めての息子、あの子達の弟、このお腹の中には色々な思いが
宿っている。こうしていると、あの子達がまだなのは達のお腹にいた頃の思い蘇えってくる。自分の血がつながった子供が産まれる喜び、
はたして自分は、父親としてやっていけるのか?と言う不安、様々な思いが有ったが、今では騒がしいながらも、幸せな時間を過ごしている。

「この子が産まれたら、更に騒がしくなるんだろうね」
「そうだね。ユーノ君含めて、皆内心男の子が良いと思っていただろうし、皆凄い可愛がるだろうなー」

近い内に産まれる新しい家族に楽しみにしつつ、合同一家の一日は過ぎて行く。


その後、大きくなるにつれ、どんどん父親に似て来る弟を可愛がる権利を賭けて、三人娘が頻繁に戦いを繰り広げられる事になるのだが、それは別の話



[21737] マテ似外伝 彼女達の幸せの形
Name: rattu◆50c335cc ID:c73723c0
Date: 2010/09/08 15:58
「「あっ…」」

お昼時の一番忙しい時間が過ぎ、人もまばらな管理局の食堂。今食堂にいるのは、仕事が長引き遅れた昼食を取る人と、仕事に集中し過ぎて、
気付いたら既に時間が過ぎていて、今更昼食に来た人の二通りの人間が、今この場で食事を行っている。そして丁度その二通りに属す二人の人間が
食事に来て鉢合わせになる。それだけだと、お互いに横に避けるだけなのだが、お互いを知っている間柄なので一瞬動きが止まる。その二人とは…

「久しぶりユーノ」
「うん、久しぶり。フェイト」

二人の男女。長い金髪の美しい女性の方の名はフェイト・T・ハラオウン。執務官の仕事が長引き、やっと一区切りがついたので昼食にやってきた。
そして、同じく長い金髪の男性の方の名はユーノ・スクライア。無限書庫の仕事に没頭してしまい、気付いたら昼食の時間を過ぎてしまい、
一食位抜いて良いかな?と思い仕事に戻ろうとしたら、部下の司書に食事を取ってきてください!と言われたので、遅れながら昼食にくることになった。

「ねえ?一緒に食べない?ユーノと少し話したい事もあるから」
「うん、良いよ」

話したい事がある為、二人で食べようと提案してくるフェイト。ユーノ自身も話したい事もあるし、久しぶりに会った幼馴染とも食事がしたいので
この提案は喜んで受け入れる。二人揃って、人がまばらの食堂で座る席を探し、周りに人のいない席を見つけ、そこでお互い向かい合わせになって座る。
食事だけなら特に問題無いのだが、恐らくお互いに話そうとする会話の内容は、余り人に聞かれたくは無いので、周りに人の居ない席で食事を始める。
のだが、お互いに全く会話が無く食事だけが進んで行く。中々切り出しにくい話題の為か、お互いに最初の一言が出てこない。このままどうしようか?
とユーノが内心思っていると、席に着いてから今まで、無言を貫いていたフェイトが口を開く。

「ユーノ、最近なのはとはどうなの?」

フェイトの口から出た言葉は、ユーノの予想していた通りなのはとの事であった。なのはとはどうなのか。既に長い付き合いの二人。
それだけでフェイトが何を聞きたいか理解できる。その為、ユーノも遠まわしな言い方をせずに、簡潔に答える。

「たまに一緒に出かけたり、食事したりと…つまり相変わらずと言う事だよ…、そう言うフェイトは?」
「ユーノと殆ど一緒。出掛けるのも食事も楽しいんだけど…結局そこまで」

そう言い、悲しそうな顔で大きなため息をつくフェイトとユーノ。この二人は現在、なのはをめぐってライバル関係なのである。
しかし、ライバルと言ってもお互い幼馴染であり親友でもある為、お互いに険悪な雰囲気はない。お互いなのはにぶつかって、なのはがどちらかを選んでも
恨みっこ無し!と言う事になっている。しかし当のなのは本人は、その二人の気持ちに全く気付いていない。ご飯を食べようと誘えば同僚も一緒に誘う、
一緒に出かけようと言えば、ヴィヴィオと一緒に三人でお出かけ、それも楽しいのだが、やはり二人きりで過ごしたいと思うのは恋心。
二人がなのはへの気持ちに気付いて既に10年以上。何度駄目なのか、と思いながらもやはり諦めきれない。溜息を吐く二人に一つの影が近づいてくる。

「やっぱりフェイトちゃんとユーノ君や。お昼ご一緒してもええかな?」
「はやて。うん、良いよ。私の隣に座って」

二人と同じ様に仕事が長引き、今お昼やってきたもう一人の幼馴染、八神はやて。フェイトの隣の席に座り二人と一緒に食事を始める。
はやてが来た為か、なのはの話を止めはやてと普通に話しに戻り、食事を再開するフェイトとユーノ。なのだが…

「二人で居るって事は…、やっぱりなのはちゃんの事か?」
「「…」」
「図星みたいやな。それに二人のその顔やと、相変わらず進展なし、かな?」

はやてに事実を突かれて押し黙る二人。はやては二人がなのはを狙っているライバル同士だと知っているし、二人もはやてがそれを知っていると解っている。
その為、今まで何度となく二人はなのはの事ではやてに相談してきた。アリサとすずかは中学時代までならともかく、それ以降は簡単に連絡は取れないし、
シグナムとヴィータは恋愛に疎いし、シャマルのアドバイスは古臭いし、ザフィーラとアルフは犬だし、スバルやティアナには年下に頼るのは
変なプライドが邪魔するしと、結果、頼れる人がはやてしかいないと言う状況になってしまった。はやて本人の気持ちも知らず…

「はは…、何か慣れてきたかもね。…さて、ご飯も終わったし、そろそろ僕は仕事に戻るよ。それじゃあまた、はやて」
「私も戻るね。今日中に終わらせたいのがあるから。じゃあね、はやて」
「うん、ほなまたな」

食事を終え、自分の仕事に戻るフェイトとユーノ。その二人を笑顔で見送った後、食事を続けるはやて。そして、急に真剣な顔になり…

「もう…思い切って決着つけてええよな…?これ以上は…もう限界や…」

はやてが、小さく一言をつぶやく。

-----------------------------------------

「お待たせ、はやてちゃん。待ったかな?」
「大丈夫やよ、なのはちゃん。私も今来た所やから」
「よかった…。でも珍しいね、お昼一緒に食べようなんて」
「まあたまにはな、それに少し話したい事もあるし」

後日、食堂になのはを呼び出したはやて。はやて自身は、かなり決心してなのはを呼んだのだが、なのははそれに気付かず、親友との食事を楽しみにしている。
相変わらずな親友に内心苦々しく思いながらも、まあなのはちゃんだし、と思ってしまうのは、やはり親友として長い付き合いだからであろう。
先日と同じ様に、人がまばらの食堂で、更に周りに人が居ない席を探すはやて。やはり余り人に聞かれたくないの為であるが、やはりなのはは気付いていない。
何処でも良いのでは?と言うなのはの言葉に、話したい事は余り人に聞かれたくない。と言うはやての言葉に納得したのか、なのはも一緒に席を探す。
その後席を見つけ、食事を始める二人。二人で食事しながら話も弾むのだが、はやては中々本題を話さない。なのはも雑談する為に人の居ない席を探したとは
思っていないので、はやてが本題を話し始めるまで待つ。その後、二人共食事を終え、雑談も終わった時、ついにはやてが本題を切り出す。

「なあ、なのはちゃん。私なのはちゃんに言わなあかん事あんのよ」
「それが話したい事?うん。何?はやてちゃん」
「えーと…、フェイトちゃんとユーノ君の事なんやけどな」
「二人の?何の事だろ?」

不思議そうな顔をするなのは。相変わらず、二人の気持ちには全く気付いていない様子である。まあ気付くほど鋭かったら、とっくに二人の決着はついている。

「えっとな、その…二人は…」
「はやてちゃん?」

しかし、いざ言おうとすると戸惑ってしまう。二人で十年以上思い続け戦ってきているのに、はたして自分が勝手に決着をつける事を言ってしまって良いのだろうか?
しかも、なのはに二人の気持ちを伝える事は、はやて自身にも利益がある為、自分の勝手で言ってしまうのは良心がストップをかけて来る
ただ、もうこれ以上ははやては我慢できない。何時までも決着がつかない二人にも、自分の気持ちにも。だから今日ここで絶対に決着をつけなければならない。

「なのはちゃん、フェイトちゃんとユーノ君は…なのはちゃんの事が好きなんや!」
「えっ?そりゃ私も…」
「友人的な意味やない!恋愛的な意味の好きや!」

ついに言ってしまったはやて。言った後やっぱ言わない方が良かったか?と思ってきたが、言ってしまった後などでもうどうしようもないと思い開き直る。
ふと気になりなのはの顔を見て見ると、ぽかーんとした様な、相当な間抜な顔をしている。余りにも予想外な事を言われた為頭が混乱している様だ。
話しかけても反応が無い為、とりあえずなのはが落ち着くまで放っておく。それにしても本当に変な顔である。普段の美しさが全くない。
しばらくすると、やっと落ち着いてきたのか、話を呑み込めたのか、口を開くなのは。

「…それ、本当なの?」
「信じられへんなら、自分で二人に聞いてみるとええよ。まあ付き合い長い人は殆ど知ってるやろうけどな」
「…何時から?」
「私が知ってる限り10年以上は続いとるな」

その後は、なのはの問いかけに答えるはやてと言う構図が続いた。そして休憩時間も終わりが近づき、二人も仕事に戻ろうとするが、
最後にはやてがなのはに一言伝える。

「まあ、結局どうすんのかはなのはちゃん次第やけどな」
「…」

そう言いながら仕事に戻るはやて。その後、仕事に戻ったなのはは様子がおかしかったと同僚は言う。

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自宅に帰り、ヴィヴィオと食事を終えた後、ベットに寝転がり、今日の事を思い出すなのは。

(フェイトちゃんとユーノ君が…私を好き…、しかも十年以上前から…)

はやてからの言葉を思い出す。そんな事、今まで気付いていなかったなのはは、聞いた瞬間、何の事か瞬時に理解できずに固まってしまった。
あんな事を聞いて、改めて二人の事を考える。二人の事は間違いなく好きだが恋愛対象となると少し考える。自分は二人が好きなのかと?
そして思う。二人は好きだ、大好きだ!二人を悲しませたくない!。でも片方を選べばもう片方を悲しませる事になる。それは嫌だと考える。

(二人共好きなのに…選ぶと選ばなかった人が悲しむ…。でもどうすれば?)

悲しませる位なら、今までどうりに接して行こうか?しかし、もうはやてから二人の気持ちを聞いてしまった以上、今までの様に二人と接する事は
恐らく出来ない。それに、そんな中途半端な事をこれからも続けて行く訳にはいかない。だから絶対に答えを出さなければならない。

(でもどちらかを選ぶのは…ん?選ぶ……そうだ!)

何かを思いついたのか一気に立ち上がるなのは。その後大急ぎで誰かと通信を始める。通信が終わった後、すっきりした笑顔で眠りに着くなのは。
既に答えが出た為だろうか、その夜はぐっすりと眠る事が出来たらしい。

-----------------------------------------

「あれ?フェイト?」
「ユーノ!?どうしてここに!?」
「どうしてって…、なのはに言われて」
「ユーノも?」
「僕も、って事は、フェイトもなのはに呼ばれたんだ」

はやてがなのはに二人の気持ちを教えた数日後。これまた先日と同じ、人の少ない管理局の食堂の入り口で鉢合わせするフェイトとユーノ。
お互い予想外の人との遭遇に驚くが、話を聞くと両方なのはに呼ばれたと言う事らしい。普段は自分達から誘うのが殆どなので、
二人共なのはに誘われて楽しみにしていると、ライバルも一緒に誘っていると知り、一体どういう事なのか?と言う考えが二人の頭に浮かぶ。
とは言え、どう考えた所で、なのは本人に聞いてみないと真意は解らないので、二人でなのはを待つ事となる。ちなみに二人共
なのはに誘われたのが嬉しかったのか、待ち合わせの時間より30分ほど速く着いてしまった。恋人と初デートの学生かお前等。
その後なのはが来るまでの約30分。二人は非常に微妙な空気で待つ事となる。会話も無く時間が過ぎて行き、遠くから声が聞こえてくる。

「フェイトちゃーん。ユーノくーん」
「「なのは!」」

待ち人来る。声の主である二人の思い人、高町なのはが笑顔で、そりゃもう物凄い極上な笑顔で此方に向かってくる。その笑顔は
二人に一瞬目眩を起こすほどに美しかった。そんな二人を引っ張って人の居ない奥の席へ向かう。二人を並ばせて座らせ、その前に座り向い合せになる。
なのはに引っ張られて落ち着いたのか、二人は改めて、何故自分達を呼んだのかをなのはに尋ねようととすると、その前になのはが口を開く。

「えーと、遠まわしな言い方はやめて、単刀直入に言わせてもらうね。この前はやてちゃんに、二人が私を好きだと言う事を聞きました」
「「!」」

いきなりのなのはの言葉に驚愕するフェイトとユーノ。先日、はやてからメールで「ごめんな」、と一言書いたメールが二人の元に送られてきた事を思い出す。
当初はどうしたのか?と思っていたがこの事だったのかと今解った。なぜ?と二人は一瞬思うが、何時決着がつくか解らない勝負を、
今まで何も言わずに見守って来てくれたが、もういい加減に決着をつけなければならない。とはやてが判断したと二人はすぐに理解した。

「でも、私は二人から直接聞いていません。だから、二人の気持ちを直接聴かせて?私も答えを言いたいから」

優しい言葉で語りかけて来るなのは。しかし目は真剣そのもので、誤魔化しやはぐらかす事は出来そうにない。ここはもう気持ちを伝えるしかない。
フェイトとユーノはお互いを顔を見てうなずく。長い勝負の終止符を、今日つける時が来たのだ。

「うん。はやての言う通り、私はなのはが好き。ずっと、昔から…」
「僕もだ。フェイトに負けない位に、なのはの事が好きだ」

お互いに、今まで思っていた気持ちをぶちまける。それを聞いたなのはは笑顔で答える。

「うん、ありがとう。二人の気持ち、しっかり聞いたよ。だから私も答えを出すね」

真剣な表情で二人を見つめるなのは。なのはの気持ち、自分を選ぶのか、それとも相手を選ぶのか、フェイトとユーノの心臓の鼓動が速くなる。
例え自分が選ばれなかったとしても、それでも二人を祝福しよう。お互いにライバル宣言をした時フェイトとユーノが決めた事。
二人共、はたして笑顔で『おめでとう』と言えるかどうか心配ではあるが。なのはが言葉を続ける。

「でも、私ね一晩考えたんだ。私は、二人共大好き。だからどちらかを選ぶなんて私には出来ない。だから…」

なのはの言葉を聞き、答えを予想する二人。どちらかを選ぶのは出来ない、と言う言葉から考えると、恐らく自分達二人共選ばれない、
と考えた。二人共、内心自分達のどちらかと思っていた為、両方玉砕はショックではあるが、なのはが決めた事なら仕方がないと納得する。
だが、そんな二人の考えの、はるか斜め上の言葉がなのはの口から飛び出す事になる。

「だから…、皆で結婚しよう!」
「「…………はい?」」

今なんて言った?とフェイトとユーノの頭が混乱してくる。結婚?皆で?なのはは何を言っているんだ?振られたと思っていた二人に
いきなり結婚と言う正反対な単語と、皆で、と言う予想外すぎる言葉で、二人共言葉が全く出てこない。そんな二人を知ってか知らずか、話を続けるなのは。

「そしてもう一人!カモン!はやてちゃん!」
「はいなー!」
「うおう!」
「きゃん!」

なのはの言葉の後にテーブルの下から飛び出て来るはやて。もう一人の幼馴染の突拍子のない登場に、度肝を抜かれるフェイトとユーノ。
そもそも何故はやてがここに居るのかが理解できない。しかもテーブルの下から出て来る辺り、最初から潜んでいたとしか思えない。
それと、なのはに自分達の気持ちを伝えた事を含め、色々聞こうと思い二人がはやてに尋ねようとすると、先にはやての方が口を開く。

「その結婚私も混ぜてー。出来ればユーノ君のお嫁さんとして」
「えー!?」
「落ち着いて、ユーノ君。説明は私がするから」

はやてのいきなりのプロポーズに、もう頭がぶっ壊れる程に混乱してくるユーノ。短い間に色々な事が起き過ぎて、ユーノの頭ではもう整理しきれ無くなった。
それを見てなのはが説明に入る。話によると、はやては昔からユーノが好きだったのだが、ユーノはなのはの事を好きなのを知っている為
今まで何もしてこなかったのだが、何時まで経っても勝負がつかない事にやきもきし、はやて自身の気持ちに決着をつける為になのはに教える事になった。
これでなのはがフェイトを選べば、自分は遠慮なしにユーノにアタックを掛け、ユーノを選べばきっぱりと諦めようと思っていた。
ただなのはから「二人と結婚する!」と言う事を聞いて、一気に考えが代わる。三人が結婚したら、自分だけ取り残されてしまう!
それだけは流石に嫌だと思い、なのはと会話中にどうするか考えていると、一気に名案(?)を思いつく。それは、

「それやったら、その結婚に私も混ぜて!」

郷に入っては郷に従え。お互いの出身国の言葉を思い出す。なのはは二人と一緒になろうとしている。ならば自分もそれに加えて貰えて一緒になれば
4人全員好きな人と一緒になれる!と言う事である。その提案になのはは二つ返事で受け入れ、後は二人にそれを報告しようと言う事になった
それと、はやてがユーノに引き取って貰うと、なのはがフェイトとユーノと、ユーノがなのはとはやてと結婚と言う事になり、
なのはが三人と結婚するよりバランスが良い。と言うはやての(若干自分の欲望が混ざった)意見で、なのはは自分は別に良いと思っていたのだが、
はやてがかなり強く勧めてきたので、ユーノが良いと言うならと言う条件で受け入れた。その為、その答えを聞く為にはやてはこの場に居た。
ちなみにテーブルの下で待っていた事に関しては、最初は普通に呼ばれて二人の前に出る予定だったのだが、夜遅くに話してて変なノリでこうなった。

「と、まーそう言う事です」
「と言う訳でユーノ君、宜しくお願いします。あ、シグナム達は既に了承済みやから安心してえーよ」
「いや!ちょっと待って!?他の人の意見は良かったとしても、法律は良いの!?」

二人の説明で大体の事が解ったユーノだが、だからと言ってあっさりと受け入れる訳にはいかない。勿論はやての事は嫌いではない。
恋愛的な意味はまだユーノ自身解らないが、はやてとならなのは達と一緒にやっていけるかも知れない、とも思っている。
だが本人達が良くても法律が許さないだろう。とユーノが言う。が、なのはとはやては笑顔を絶やさない。

「ところがどっこい!カムヒヤ!リンディさん!」
「はあ~い!」
「まだ人居たの!?」
「義母さん!?」

はやてと同じ様にテーブルの下から飛び出すリンディ(推定年齢50代)。アンタお偉いさんだろ、何やってんだ?と言いたくなるがそこは抑える。

「ユーノ君。貴方が言うには、法律さえ良ければ四人で結婚するのは良いのね?」
「えっ、あ、はい…、でもそれって駄目で…」

リンディの質問に答えるユーノ。例え周りが良くても法律が許されない限り四人で結婚なんて出来る訳無い。と、ユーノは思っていたのだが…

「ふふふ…実はミッドはね…結婚する本人達全員が了承すれば重婚可能なのよ!」
「なっ!?ええー!本当何ですか!?」
「勿論よ。まあ重婚は周りの目もあるから、殆どの場合は本人達の家族の許可も取る事が多いけど。」
「あ、ちなみに私はもう実家には連絡済みでお父さん達から一応許可は貰ってきたよ。ヴィヴィオに聞いてら逆に喜んでたし」
「ハラオウン家もOKよ。エリオやキャロに聞いてみたら二人共『フェイトさんが良ければ』って言ってたし、アルフも同じ事言ってたわ。
クロノも最初は難色を示してたけど、フェイトさんが悲しんだり、独身で過ごす位ならって言ったら『本人に任せる…』って言ってくれたし」

最後のが微妙に脅しに聞こえる上に、なのはの一応許可を貰ったの『一応』の言葉が非常に怖い。とは言え、そう言う事なら話は変わってくる。
なのはとその家族、はやてとヴォルケンの全員、フェイトの家族が了承しているし、ユーノ自身も部族の皆はともかく、はっきりとした
家族は居ないので、自分が良いと思えばもう残っている問題は一つだけとなる。

「こうなると、残っている問題は一つだけだよね?フェイトちゃん、ユーノ君」

フェイトとユーノ。あと残っている二人が、お互いと過ごす事を許可するかが最後の問題である。なのはとはやてとリンディが心配そうな顔で二人を見る。
お互い長い期間ライバルとして過ごしてきたのだ、お互いに微妙な気持ちを持っていてもおかしくない。その三人の心配を他所に、
二人はお互いの顔を見合う。今までなのはの事を考えていたが、お互いの事に関しては余り深く考えていなかった為、改めて話し合ってみる。

「もし四人で結婚となると、私とユーノも夫婦と言う事になるのかな?」
「まあ…そうなるのかな?フェイトは嫌かな?」
「そんな事無いよ。確かになのはの事でライバルだったけど、それ以外だと、ユーノははやてと一緒で、大事な…大好きな幼馴染だから」
「フェイト…うん、そうだね。僕もそう思う」

初めてお互いの気持ちを伝えあう二人。改めて思うと、もしもなのはがいなければ自分達が…と思ったが、なのはがいなければ、
こんな気持ちを持たなかったかもしれない、とも思ってしまう。だがそれは所詮もしもの話。今ここにはなのはと、そしてはやてが居る。
自分達4人で普通とは違う家庭を築いていく。それが今の自分達にとって最高の幸せ。フェイトもユーノも心からそう思っている。

「よっしゃあ!フェイトちゃんとユーノ君もOK!これで条件は全部揃た!」
「いえい!それじゃ私は式場探してくるね!」
「はいな!なのはちゃん!私は新婚旅行先探してくるわ!」
「式も旅行先も、ミッドなら良い所知ってるわよ♪」
「いや、三人共!?ちょっと待って!?」
「それより先にしなきゃいけない事あるでしょ!」

二人の言葉を聞いた瞬間、一気に今後の予定を決め行くなのは達。4人の結婚が決まった為か、嬉々として予定を立てて行こうとするのだが、
今はそんな事をしている場合ではない!とフェイトとユーノが止める。なのは達もそれに気付いたのか、しまった!と言う顔を浮かべる。

「そうやな…まずは先にやらなあかん事あったな…」
「そうだね、一番大事な事かも知れないのに…駄目だね私達」

余りにも落ち込んだ二人を見て、少々言い過ぎたと思うフェイトとユーノだが、自分達にはまずやらなければならない事がある。二人共それを解って…

「「まずは皆で住む家の設計考えないと!」」
「「おー!しー!ごー!とー!!」」

くれていなかった。まあそんなこんなで色んな事があったが、男一人、女三人と言う、何とも傍から見ればうらやましい構図の結婚が決まった。

-----------------------------------------

「それじゃ皆。いってきまーす!」
「いってらっしゃい!なのはママ!フェイトママ!はやてママ!ユーノパパ!」
「ゆっくり楽しんできて下さいね」

それからしばらく経ち。家族全員で住む家を建て、四人での結婚式を終え、最後にしてある意味もっとも重要な行事が残っている。
新婚旅行。結婚したてホヤホヤのラブラブな夫婦が、更に愛を育む(稀に子供も孕んだり成田離婚したりするが)為の旅行である。
当然この旅行も4人で行く事になっている。ちなみに行き先は、皆で話し合った結果、地球の海が見えるホテルに泊まる事になった。
四人共、管理局の中でも忙しい役職に就いている為、一泊二日の短い新婚旅行(帰宅後に一日休み有り)となっているが贅沢は言ってられない。
短い時間だと言うなら、その分濃密な時間を送ればいい。濃密なね。

「なのは?どうしたの?」
「ううん。何でも無い。楽しい旅行にしようと思っただけ」

こうして、楽しい新婚旅行が始まった。 まずは転送装置を使って地球に戻る。一応すずか達に、旅行で一旦帰ってきた事を報告し、
その後電車で1時間ほど揺られた所で駅を降り、予め待っていた送迎のバスに乗り込む。そして更に20分程車でバスで移動してやっと目的地に到着する。

「着いた着いた。ここがはやての選んだ所?」
「そや。山の中にあって緑が豊か。そして少し歩けば海水浴も出来ると言う、素敵な民宿や!」
「民宿亀さん…変わった名前だね」
「とりあえず中に入ろ。まず荷物起きたいし」

なのはの提案に三人も賛成し、部屋のカギを一つ貰い、カギに書かれた番号の部屋に向かう。部屋に入って中を確かめて見ると、
これが中々素晴らしい。まず部屋が結構広い。自分達は四人だが、最大で八人位は眠れそうな広さがある。そして窓の外を眺めて見ると海が見える。
今日は無いが、稀に花火が撃ちあがる時が有り、ここからは絶好の観賞ポイントと従業員の人が言っていた。そしてクローゼットの中には
浴衣も完備されている。お風呂から上がったら着ようかな?と四人は思う。テレビの下には金庫が有る。恐らく出かける時、万が一の為に
ここに入れておいて、カギを持ち歩いておけば大丈夫と言う事だろう。そして極めつけは、何とゲーム機が置いてある!しかもセ○サ○ーン!凄いぜ亀さん!
100円で30分とは流石だぜ!と、部屋の探索も終わり、さてどうしようか?とユーノが思っていると、はやてが近づいてきて一言

「ほんじゃ、海に行こか!」

あまりにも速いはやての言葉にずっこけるユーノ。着いたばかりなのだから、少し休憩してからと思ったが、一泊二日しか時間が無いので
多少無理をしても良いかな?と思いその意見に賛成する。なのはとフェイトもはやての意見に賛成したので、海に行く事が決定する。

「それじゃあ、私達水着に着替えるから、ユーノ君ちょっと出ててもらえるかな?…三人で選び抜いた特別な奴だよ。向こうに着いたら見せてあげる。」

その言葉を聞いて、なんかみなぎってくるユーノ。とりあえず、自分もトイレで水着に着替えた後、民宿の入り口で三人が出て来るのを待つ。
程なくして三人がやってきたので海に向かう。海は民宿から道なりに歩いて20分位と言うらしいので、四人で雑談しながら向かって行く。
そして、道なりに進み坂道を超えると、そこには沢山の人と青い海、海の家やパラソルが所狭しと立っている。早速場所を確保しようとして四人が動く。
ユーノがパラソルを借りに行き、三人が場所を探して、見つけたら念話で連絡と方法を取る。パラソルを借りてすぐ連絡が来たので三人の所へ向かうと…

「どうや!」
「見せてあげるって言ったしね」
「えっと…どうかな?ユーノ?」

そこには(当たり前だが)水着を着た三人が立っていた。三人共色っぽいビキニを身に付けている。こうして見ると、三人共非常にスタイルがよろしい。
なのははかなりバランスのとれた体型をしており、胸も中々の物である、はやても他の二人に比べて小柄な為目立たないが、出る所はしっかり出ている。
フェイトは…ボン!キュッ!ボン!まさにパーフェクトボディー! 他に言う事はありません。 そんな感じで三人に見とれていたのだが、
流石に何も言わないのは三人に失礼なので、とりあえず「三人共凄く似合ってるよ」と当たり障りのない言葉を言っておいた。我ながら他に
気のきいた言葉を思いつかないのかと思ってしまうが、三人共喜んでくれたみたいなので結果オーライと言う事で。

「それじゃ早速泳ぎに行こうか!」
「荷物は全部民宿に置いてるから、思い切って遊べるしね」
「適当に休みを入れてもらえると助かるんだけど…」
「ははは、まあ程々で行くから安心し」

そんな会話をしながら海に向かう四人。その後、海では色々な事をしたし、少し困った事態も起こったりした。海の家の料理がまずいなど話したり、
なのはの水着が流されたり、皆がナンパされたり(ユーノ含む)、はやてが相変わらず胸をもんだり、何故かフェイトが溺れかけたりと、
様々な事が起きたが、とにかく楽しい海水浴となった。その後旅館に帰り、お風呂で体を洗った後は、いよいよ食事である。

「新鮮取れたて!海の幸や!味わって食べるで!」
『おー!』

車エビやヒラメにあわびなど、新鮮な海鮮料理に舌鼓を打ち会話も弾む。そして、美味しい食事も終わりついに夜がやってくる…。


夜。外が完全に暗くなり、お風呂も食事も歯磨きも終わり、新婚旅行の実質ラストにして、最大のイベントの時間が、刻一刻と迫ってきている。
ユーノの心臓は、今にも破裂しかねないほど激しく動いている。今まで女性と経験が無いユーノには、速く来て欲しいのか、まだ来て欲しくないのか、
非常にどっちつかずな感情が渦巻いている。一応無限書庫の資料で調べたり、プライドも何もかも捨てクロノからアドバイスも貰ったが、
実際どんな事が起こるかは、その時になってみなければ解らない。とりあえず落ち着こうと持ってきた本でも読もう思ったら…

「ユーノ君…来て…良いよ」
「!?、うん!解ったよ!?」

ついに来た!そう思い呼びに来たなのはの方を見ると、物凄い真っ赤な顔をしている。それを見て彼女達も物凄く緊張しているんだと思うと
ユーノの気持ちも幾分か楽になる。そして、なのはに言われ部屋に入ると、布団が【二つ】並んでいる。【二組】ではなく【二つ】である。
これはつまり、1×1を二組でやれと言う事か!?と一瞬思うが、確かにいきなり四人全員でなんて上手くいくとは思わないので
これは仕方無いと思う事にした。そして布団を見る限り、完全に三人共準備が出来ている様である。後はユーノが腹をくくるだけだが、

「私達は…もう、覚悟決めたよ」
「だから…ユーノ…」
「速く…な…」
「なのは!フェイト!はやて!」

三人共、来ている浴衣の胸元と腰の所がはだけて、色々チラチラしてるのを見えてしまい、一気に理性が飛んでいき、三人の元へ向かって行くユーノだった。

ちなみにこの部屋ではこんな会話があったそうな。
        ↓

「最初はユーノ君となのはちゃんからやな」
「それは良いけど…二人はどうするの?」
「終わるまで見てるね」
「初めてが見られて!?」


「はい、お疲れの所悪いけど、私の相手お願いな、ユーノ君♪」
「ちょ、はやて、少し休ませて…」
「じゃあ私はフェイトちゃんと、それじゃあ、良い?」
「なのは…うん…」


「ふぅ…、ほんじゃ次はフェイトちゃんとユーノ君やな」
「え!?でも…フェイト?」
「…ユーノなら…良いよ…、でも、男の人とは初めてだから…その…」
「フェイト…うん、優しくするから」
「二人は良し。さあ行くよ!はやてちゃん!」
「よっしゃ!こいや!なのはちゃん!」

-----------------------------------------

チュン チュン
朝の訪れを伝える小鳥の鳴き声が聞こえてくる。その声が聞こえたのかは解らないが、部屋の中で唯一眠っていたユーノが目を覚ます。

「…眠い…」

お目覚め一発目の言葉がこれである。まあ仕方がないのだろうが、とりあえず時間を確認すると、朝ごはんの時間が近づいている為、
とりあえず歯を磨いて顔を洗ってこようと思い、洗面所に向かうと、そこには既に目を覚まし、顔を洗っているフェイトとはやての姿があった。

「お…おはよう…フェイト、はやて」
「「おはよう、ユーノ(君)…」」

二人の顔を見ると、寝不足の所為かかなり酷い顔をしている。まあユーノも似た様なものだが。そして二人の隣で歯を磨きだすユーノ。

「お互い酷い顔やな」
「昨日は頑張りすぎたからね」
「私…まだ痛いんだけど…」

昨夜の事の話の話を始める三人。四人全員が終わるたびに、入れ替わり立ち替わりで始まる為、事が終わった時は既に空が明るくなっていた。
流石にそれだけやると、体力は無い上に寝不足で皆ぼろぼろである。

「あ、ユーノ君、おはよう!もうすぐ朝ごはんだから、皆速く降りてきてね」

…なのは以外は。何で同じ様に夜を明かしたと言うのに、どうしてあんなに元気なのか、本当に不思議にしか思わない三人である。
その後、朝食を食べ終え、帰る準備をする四人。帰りのバスで途中にある海鮮物のお土産屋で、家族や友人達の分のお土産を買って行く。
最後にすずか達に旅行の結果の報告をしミッドに帰る。すずか達が真っ赤になって話していたが、多分聞かない方が良いと思い何も聞かなかったユーノ。
そして、自宅が見え、さあ家に入ろうと思った瞬間、なのはが一足前に出て、三人の方へ向いてこう言い放った。

「フェイトちゃん。はやてちゃん。ユーノ君。私達で…私達皆で、幸せな家庭を築いていこうね!」

極上の笑顔でそう言い放つなのはであった。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「懐かしい夢を見たな…」

とある日の朝。ユーノが目を覚ました瞬間この一言を漏らした。なのは達との新婚旅行の頃の夢を見て、あの頃の事を思い出す。
あれからかなり長い時間が経ち、それまでに色々な事が起こった、誤解や擦れ違いなどで、離婚の危機になった事もあった。
でも、それでもはっきり言える。自分は、いや、自分達は幸せだと。妻達やヴォルケン、エリオやキャロ、ヴィヴィオも居る、そして…

「あー!父さん!おはよー!」
「うん?まだ居たのか、父さん。おはよう」
「おはようございます。お父さん。今日は遅いんですか?」
「うん。今日は特別に遅出だからね。ご飯はいらないって、なのは達に伝えてて貰える?」
「解りました。では私が伝えておきますね」

ユーノが降りてきて、一斉に挨拶をする三人娘。そう、自分の血を分けたこの子達が居る。
これだけ沢山で、強い繋がりがある家族なんだ。幸せ以外なんて言えば良い?これ以上の幸せは望まない。

「皆?忘れ物ない?」
「大丈夫!」
「私は確認済みだ。問題無い」
「私もです。皆大丈夫ですね? では…」
『行ってきます!(お父さん!)(父さん!)』
「うん、行ってらっしゃい。勉強頑張ってね」

娘達を見送り、自分も仕事の準備に取り掛かるユーノ。こうして合同一家の何気なく、そして幸せな一日が始まる…。



[21737] マテ似外伝2 弟が可愛すぎてお姉ちゃんどうにかなっちゃうの
Name: rattu◆50c335cc ID:c73723c0
Date: 2010/09/08 16:00
ある平日の午後。ここ高町、ハラオウン、八神家合同一家の自宅。家族全員が仕事と学校に出かけており、今この家には一人と一匹しか居ない。
一匹は盾の守護獣ザフィーラ。本来はやて達の護衛として一緒に行動しているが、この日ははやてのお願いで家で誰かが帰ってくるまで留守番をしている。
そしてもう一人、ザフィーラのすぐ傍で一緒に過ごしている子供が居る。

「ねえ、ザフィーラ?お母さん達もう帰ってくるかな?」
「まだ少々時間が速いな。もう少し待たねば」

子供の質問に答えるザフィーラ。この子供はなのはとユーノとの間に生まれた第二子、合同一家の次男である。この子が生まれて5年がたつ。
次男がまだ学校に通う年齢では無い為、こうして家の人が全員仕事で出ている時は、こうしてザフィーラか、今はいないがアルフが次男の面倒を見ている。
ヴィヴィオから始まり、三人娘とこの次男、既に子守に関してはベテランの域に達しているザフィーラ。本当に賢い犬…守護獣である。

「ザフィーラもふもふー。でもちょっと臭いよ」
「…気をつけよう」

次男の言葉に少し傷つく。シャマルにシャンプーを頼むか?と真剣に考えるザフィーラ。それでも次男は自分に抱きついて来るので
やはり可愛く思う。ただ、アルフと二匹でいると、必ずアルフの方に行くのはやはり男の子なのかと思ってしまう。少しさみしい。

(それにしても…、やはり似ている。大きくなるにつれ更に…)

自分にじゃれついて来る次男を見て、改めて思うザフィーラ。金色の髪に、男の子でありながら女の子にも見える可愛らしい顔、次男は大きくなるにつれ、
目の色だけは、なのはの色を受け継いでいるが、どんどん父親であるユーノに似てきている。性格に関しては随分甘えん坊になっているが、これはまだ五歳である為と、
初めての男の子と言う事で、皆随分可愛がった所為でこうなった。特に、ある一部の家族はそれはもう随分と可愛がっている。危ない位に。

(それにしても、あの子達が帰ってくる前に母親達の誰か…、いや、この際シャマルやシグナムでも良い。速く誰か帰って来てくれ。私一人では…)

時計を見て時間を確認する。そろそろその一部の家族が帰ってくる時間である。このまま自分一人の状態でその一部の家族が帰ってくるのは
何としても阻止をしたいザフィーラ。自分一人では抑える事が出来ない為、何とか誰かが帰ってくるのを祈る。なのは、フェイト、はやて
と言った母親勢が帰って来てくれるのが良いのだが、もうこの際誰でも良いと思い始めてきた。とにかく自分一人だけと言う最悪の状況だけは
何としても避けたい!と思っているのだが、世の中そう思い道理に事が行かないのが人生。玄関が開く音が聞こえ、大きな声が家に響き渡る。
あー、帰って来てしまった。もうどうなっても知らん。と思い、これから起きる果てしないバトルを思い描く。逃げようと思うザフィーラ。

「ただいま帰りました!」
「ただいまー!!」
「ただいま!ザフィーラ!何処に居る!」

凄い勢いでこちらに向かってる何時もの三人娘。三人共立派に成長している。身体つきも非常に女性らしく、メリハリの利いた身体に、
差はあるものの年相応の身長、相変わらず三人共、色々な意味で見た目も母親に似てきている。その娘達が大急ぎでザフィーラを探している。その目的は…

「お姉ちゃん達、お帰りなさい」
「(どん!)ああ!ただいま。良い子にしてたか?」
「あーもう、服に毛が沢山付いてるじゃないか!これだから毛が生え変わる時期のザフィーラは!」
「こっちに来て下さい。まず毛を取りますから」

ザフィーラをぶっ飛ばし、それを無視しながら一目散に次男の元に集まる三人娘。吹き飛ばされたザフィーラはと言うと、すぐ起き上がり
出かける準備をする。娘達が帰ってきたので、本来の自分の仕事に戻りはやて達の元に向かおうとする。

「…それでは、主はやての元に…」
「母さんの所に戻るのだろ?御苦労だったな」
「後は僕達が見とくから。早く行ったら?」
「はい、毛は取れましたね。あ、帰ってくる時にお醤油買ってきてくださいね」

自分に対する扱いの悪さに、涙が出て来るザフィーラ。幼い頃は、忙しい母親達の代わりに何度も面倒を見て来た。ミルクをあげたり、
お風呂に入れたり、風邪をひいたりした時に病院に連れていったりと、父親であるユーノと一緒に慣れない子育てに頑張った。
だと言うのに扱いが悪い。次男が産まれてからずっとこんな感じの扱い。自分やアルフの背中に乗って楽しそうにしていた頃を思い出し、
内心泣きたくなってくる。とりあえず次男を娘達に任し、はやて達の元へ向かう。この後、三人娘の熾烈な戦いが争いが始まる事を無視しながら…

「ねえ姉ちゃん?ザフィーラ出て行っちゃったよ?」
「お仕事に行っちゃったみたいだね。それじゃあ僕と遊ぼ…げふぉ!?」

ザフィーラが出て行くのを見送り、弟と遊ぼうとし、自分の部屋に連れて行こうとする四女に、三女と五女の突っ込みが入る。次男には見えない様に見事に決まる。

(貴様、抜け駆けとは良い度胸だな)
(頭冷やされたいんですか?ブレイカーくらいたいんですか?)
(良いじゃん。そっちはこの前、なのは母さんと父さんと四人で一緒に寝て、お前は無限書庫で二人で一緒に本読んでたじゃん!僕は最近一緒に居ないんだぞ!)

念話で抗議をしてくる三女と五女と、それに対して自分の言い分を言う四女。この三人は現在、次男が可愛くて可愛くて仕方がないのである。
その所為か、次男と一緒に過ごし時間をかけて、姉妹の間で何度となく戦いが繰り広げている。時には勉強で、時には運動で、時には魔法のガチンコ勝負で、
更にお互いの目を盗んで次男と過ごしたりと、もうかなり酷い争いが、次男が産まれてから続いている。友人達に「ブラコンでしょ?」と言われると
「ブラコンで何が悪い!」と、真顔で言い返す程に弟LOVE!な三人。まあそんな感じで今回も弟をめぐった争いが始まる。

「貴様とて、一週間前一緒に買い物に行っただろうが!」
「あれは母さんとキャロ姉ちゃんも一緒だったし、僕は手も握って無いんだぞ!ノーカンだよ!」

四人で出かけた事を主張する五女に対して、それは無効を訴えるする四女。その後、三人で誰が次男と遊ぶかを言い争っていたのだが、
中々決着がつかず、お互いに引く気が全くない為、三女が決着をつける為ある提案を出す。

「こうなったら…あれを開催するしかない様ですね」

三女のその言葉に、望む所だ!と言った表情で三女を見る。そして大声で三女は叫ぶ。

「ではこれより…第46回!誰が弟と一緒に過ごすか選手権を開催します!」
『おー!』

三女のその言葉に一気に湧き上が四女と五女。後何故か次男。【誰が弟と一緒に過ごすか選手権】。それは次男を賭けて何度も争いを続ける
娘達に、母親達が呆れて「三人でしっかりルールを決めなさい!」と言われ三人で考えた結果、色々な勝負で勝った方が弟と過ごす!
と言う決まりが三人の間で決まった。ちなみに次男はこれに対しては、ただ単にどちらかの姉と遊べる程度にしか考えていない。

「では今回のお題を発表します。お題は…【直接選んで貰う!】」
「「!?」」

三女から出されたお題に驚愕する四女と五女。今まではゲームや料理、スポーツや勉強などの勝敗がはっきりしている物で争っていたのが、
今回は弟に選ばせると言う、初めてのお題を出してきた。だがなんであろうと負けない!と意気込んでいる二人に三女が念話でルールを伝えて来る。

(ルールはあの子に色々アピールをして、最後に誰と一緒に遊びたいか直接選んで貰います。なおお菓子など物で釣るのは失格ですので)
(了解!よし!やるぞ!)
(解った。ふむ、アピールか…)

ルールを聞くが、アピールと言われてもどうするれば良いか悩む四女と五女。その二人放っておいて先に動いたのは三女。

「私達の中で、お料理が一番上手なのは誰ですか?」
「お姉ちゃん!」
「当然ですね。やはり美味しいご飯を作ってあげれないと」

笑顔で答える次男の頭を撫ぜつつ、四女と五女に対して勝ち誇った表情を見せる三女。そう言う風に来たか!と言った表情で三女を見つめる二人。
改めて考えたら、このルールを出したのは三女本人。予め先手を考えていたに違いない。そう来るのならと言った感じで、今度は四女が次男に近づき、

「僕達の中で、一番おっぱい大きいのは誰かな?」
「姉ちゃん!」
「ま、当然だね。やっぱり男の子は、胸が大きい人が好きなのが多いしね」

そう言いながら、自分の豊かな胸に弟の顔を挟み、余裕の表情で二人に視線を送り、それを二人が悔しそうな顔で睨みつける。

「くっ、母親の体のスペックの差がここで出るとは…」

そう言ったのは三女。三女と五女も決してスタイルが悪い訳ではないが、それでも胸の大きさとなると二人は四女に劣る。だからと言って母親の所為にするのは
どうなんよ?そんな姉二人を尻目に次男は嬉しそうな顔で四女に抱きつく。まあ純粋に姉にギュッとして貰えたのが嬉しいだけなのだが、それでも四女は嬉しいのか
更に次男を抱き返す。もう顔がやばい位ににやけている。ぶっちゃけ少し気持ち悪い。まさにヘブン状態!と言う感じ。「姉ちゃん良い匂い…」という言葉で、
もう鼻血出そうなほど興奮する四女。それがムカついたのか、次男と四女を引き離す五女。今度は自分の番と言った感じで次男に語りかける。

「私達の中で、一番頭が良いのは誰だと思う?」
「姉さん!」
「ふ、当然だ。上に立とうとする者、頭がよくなければな」

そう言い、座った後に次男を自分の足の家に乗せる五女。普段次男に良く本を読んであげている、五女は基本的にこの状態で一緒に本を読んでいる。
こうしている時の五女は、四女に負けない位に顔がやばい事になっているが、そんな事は全く気にしない。気にしていたらブラコンなんてやってられない。
このまま勝負を続けるのは癪なので、二人を引き離す三女と四女。その後、お互いに色々お互いのアピールを続け、そろそろ決着を付けようとする三人。
念話で話し合った結果、今日の勝負の景品は【弟と一緒にお風呂に入る】に決定した。何か色々駄目な気がするぞこの三人。まあそれはともかく、
次男に「誰と一緒に入りたい?」と聞く三人だが、予想だにしない答えが次男の口から飛び出す事になる。

「…誰とも入らない!」
『え?』

次男の言葉に、一瞬何を言われたのか解らないと言った表情をする三人。もう一度訪ねるが同じ言葉が返ってくる。

「ど、どうしてですか!?私達と入るのが嫌になったんですか!?」

理由が知りたい為、三女が二人より早く次男に尋ねる。かなり慌てた感じだが。四女と五女にとっても、一緒にお風呂に入れないと言う事は非常にまずい。
普段次男は基本的になのはかユーノと一緒にお風呂に入っているが、たまにその二人以外と入る時があり、その場合の殆どが三人の中の誰かになる。
【誰が弟と一緒に過ごすか選手権】の賞品の約四分の一が一緒にお風呂に入る権利である為、一緒に入れないとなると言う事は三人にとって
死活問題(死ぬのか?)である為、何としても説得をしなければならない。弟の言葉を待つ三人、弟も観念したのか口を開く。

「ボク…もう一人で入れるもん…」
「え?」
「…ボクもう一人でお風呂に入れる!頭も一人で洗える!」

どうやら、次男はもう自分一人で入れる、入りたいと思っているらしい。いきなりどうしたんだと思うが、この位の年の子供だと
色々背伸びしたいのだろうと判断した。とは言え、まだ小さい次男を、一人でお風呂に入れるのは危ないと思い、何とか説得しようと思うのだが、
一人決意した次男の意思を無下にはしたくは無い。でもお風呂は一緒に入りたいとジレンマ。三女と四女がどうしようか迷っている内に、
五女が次男に近づいて行く。どうするんだ?と言った目で五女を見つめる二人だが、それを無視して次男に話しかける五女。

「そうか、頭を洗えるなんて凄いな。私にも見せてほしい物だ」
「凄いでしょ!姉さんにも見せてあげる!」
「本当か?だが見せて貰おうにもお風呂は…」
「じゃあ一緒に入ろ!見せてあげるからか!」
「そうか。じゃあ今日一緒に入って見せてくれるか?」
「うん!良いよ!」

見事機転を利かせて、次男と一緒にお風呂の権利を手に入れた五女。そう言う方法が有ったか!と言った感じで非常に悔しそうな表情で
五女と次男を見る三女と四女。その二人に対して、勝ち誇った笑みを見せる五女。そして念話が伝わってくる。

(この子にとっては、私が一番頭が良いと言うが、まさにその様だな)
(あー!ムカつく!凄い頭に来る!)
(でも仕方が有りません。今回は完全負けましたし。でも、次は負けません…!)
(良いだろう。まあ次も勝たせてもらうがな)

こうして、【第46回!誰が弟と一緒に過ごすか選手権】の勝者は五女の勝利に終わった。これで通算戦績は、三女14勝 四女12勝 五女16勝となる。
ちなみに残り4回はヴィヴィオに持って行かれた。その後、お風呂を上がった後に、次男が凄い可愛かった事を自慢する五女と悔しがる二人の姿があった。
これからも三人娘の次男をめぐった戦いが繰り広げられるだろう。…一番怖いのはこれが普通と思っている次男なのかもしれない。


おまけ


「と言う訳で、もう我はあの子達にとって不要なんだろうかと思ってな」
「うん、解るよザフィーラ。僕の方も次男が産まれてから、娘達が目に見えて構ってこなくなったよ」
「…飲もうか、ユーノ…」
「明日は休みだから、とことん付き合うよ」

がんばれ父親とペット(?)。いつか報われる時が来るかもしれない。



[21737] マテ似三人娘の劇練習
Name: rattu◆50c335cc ID:c73723c0
Date: 2010/09/10 17:34
「ただいまー」
「あ、お帰り、ユーノ君」

何時もの無限書庫での仕事を終え、自宅への帰路を終えたユーノをはやてが出迎える。帰宅しすぐ服を着替え食事を始めるユーノ。
仕事が長引き、帰宅が遅れた所為で家に居る人達は皆既に食事を終っていた為、ユーノ一人で食事をする事になり結構さびしい。

「それにしても、娘達まで来ないとは。何時もはただいまの挨拶くらいはしてくれたのに…」
「あー、あの子等は今ちょっと忙しからな。まあ我慢したって」
「忙しい?」

ただいまの挨拶すら無い娘達に寂しさを覚えていると、はやての言葉を聞いて疑問に思う。普段の娘達は夜には既に学校の宿題を終わらせる為、
この時間だと三人共自分の時間を満喫しているはずなのだが、はやての言葉を聞く限り三人全員が忙しいと言う事なので、どうしたのかと気になって来る。
はやてに何をしているのか尋ねても、はぐらかして教えてくれないので、食事を終えたら娘達の所に行って少し様子を見て見ようと思うユーノ。
はやてと仕事の話などをしながら食事を進め、食べ終わった後に向かおうとすると、シグナムから先に風呂に入ってくれと言われたので、
言われた通りお先に入らせてもらう。風呂好きのシグナムに先に入られると、自分が入るときには少々遅い時間になってしまう。
風呂でじっくり仕事の疲れを癒し、風呂を上がってすぐ娘達の部屋に向かうと、中から何やら声が聞こえて来る。

「魔…今……た…」
「待って…様…」
「ハハハ、愚か者めが!貴様ごとき何ができる!」

何か五女の声だけやたらはっきり聞こえて来るが、それはまあ気にしない事にする。声だけ聞くと何やら遊んでいる様だが、
三人共ごっこ遊びをするほど幼くは無い。何をしてるか更に気になって来たので直接娘達に聞く事にする。

「三人共、ちょっと良いかな?」
「あ!?お父さん!?ちょ、ちょっと待ってて下さい!」(えっと、入れて大丈夫ですよね?)
(良いじゃない?僕は別に気にしないし)
(どうせその内教えるのだ、今知られてからと言って大した事無いだろ)
(それもそうですね)「はい、入って良いですよ、お父さん」
「お邪魔するよー」

娘達の許可を貰い部屋に入ると、そこには本の様な物を持っている三人の姿が有る。無限書庫で働いている所為か、娘達が読んでいる本が気になり見せて貰うと、
何やら文字が沢山書かれている。最初は小説か何かかと思っていたが、よく見ると普通の小説とは少し違う事に気づく。
何やら台詞が沢山書いており、台詞の上に登場人物の名前が書いてある。これは本は本でも…

「台本?」
「そうです」

台本。それはお芝居などで役者の台詞などが書いてある本である。表紙にはタイトルらしきものが書いてあり、さっきの娘達の声は
これらを読んでいたのだろうか?と思うが、とりあえずこの台本をどうしたのかと聞いてみようとすると、先に三女が答えてくれる。

「今度学院でクラス対抗の演劇が有るんです。それで私達は登場人物を演じる事になったんです」
「なるほどね。でも珍しいね、三人共演じる方に出るって」

普段は楽しそうな事には積極的に参加する四女はともかく、何時もはおとなしく、あまり目立つ事は好きではない三女と、めんどくさい事は
適当にはぐらかして、自分は楽な方を取ろうとする五女まで参加するのは珍しいと思ってしまう。

「何かメインの登場人物のイメージが僕達に凄い会ってたらしいから、それで二人も一緒に出る事になったんだ。まあ僕は最初から出るつもりだったけど」

それを聞いて納得するユーノ。三女なら皆に頼まれると中々断りにくい性格だし、五女も他の二人が参加するのと、クラスメイトからの
かなりしつこくお願いされて根負けし、今回の劇に出る事が決まったらしい。そうなると、娘達がどんな演目をしどんな役をするのかが気になる。
まずどんな劇をするか聞いてみると、簡単に説明するととある王国のお姫様が世界を征服する魔王と戦うと言う物らしい。
そして、娘達がどんな役をするのか聞いてみると…

「私は王国の姫の役ですね。一応主人公らしいです。余り目立つ役は好きではないのですが…」

三女の役は主人公のお姫様。優しい性格で落ち着きが有り、芯の強い性格らしく、三女にピッタリな配役である。

「僕はお姫様と一緒に魔王と戦う騎士だって。騎士って何かカッコいいね!」

四女の役は騎士。四女はああ言っているが、台本に少し書かれている騎士の性格は、カッコいいと言うより…、かなり抜けた性格と書かれている、
何となく四女が選ばれた理由が解った気がする。二人の役を聞いて、五女は何をやるのかと聞いてみるが、五女は中々言ってくれない。
言いずらそうと言うよりあまり言いたくない様に見える。他の二人を見て見ると、四女は肩を振るわせ、三女もなにか顔が少しにやけている。
どうしたのだろうか?と思っていると、意を決したのか五女が口を開く。でかい声で。

「魔王役だ!何で皆あんなに勧めて来るんだ!そんなに私に合っていると言うのか!?」
「ブフォ!」

五女の配役につい吹いてしまったユーノ。笑われたのが気に入らないのかユーノを睨む五女。とは言えこれは仕方がない。余りにも配役がピッタリ過ぎる。
二人が笑っているのもこの為だろう。クラスメイトもよくこれを勧めたものだと思う。まあそれはともかく、はやてが言っていた
三人が忙しいと言うのは劇の練習だったと言う事が解った。三人共性格は似ていないが、出来るだけ上手く出来るようにしたいと思っているのは同じ。
だからこうして三人で練習しているのだろう。

「父さん、劇の発表の時は見に来てよね!」
「うん。必ず見に行くよ」

四女と約束をし、その日が来るのを楽しみになるユーノ。その後四女の提案で、練習をユーノに見て貰う事になった。最初は三人共
緊張していた所為か、台詞を間違えたり、自分の場所を間違えたりとミスが多かったが、次第に慣れて来たのかスムーズに進んで行く。

「さあ、立ち去りなさい魔王!あなたの負けです!」
「姫様!何故とどめを刺さないのですか!?」
「おのれ…この塵芥共が…!次はこうはいかん!確実に滅してくれよう!」

三人共気合を入れて熱演している。やはり五女がはまり役過ぎてどうしても笑いがこみ上げて来てしまうのは大変であるが。
そしてふと時計を見ると、かなり遅い時間になっている為そろそろ三人に寝るように促す。

「はいストップ。もう夜も遅いからそろそろ寝ようね」

ユーノの言葉を聞いて時計を確認する娘達。驚いた顔をしている所を見ると相当集中していたらしい。

「思ったより時間が経っていた様ですね。お父さんの言う通りそろそろ寝ましょう。本番までまだ時間はありますし」
「だな。どちらにしろ学園で全体練習もある」
「それじゃ父さん。おやすみ!」

娘達におやすみの挨拶をして部屋を出るユーノ。自分も寝る為に寝室へ戻ろうとすると、同じく寝室に戻ろうとしたはやてと鉢合わせになる。

「あ、ユーノ君。あの子等の所に行ってたん?」
「うん。劇の練習だったんだ。はやては知ってたの?」
「今日帰ってきたら何か部屋から声が聞こえて来ててな、それで確かめたら教えてくれたわ」

可愛かったわと言うはやての言葉にユーノも同じ思いを持つ。三人が一緒になって同じ物に取り込む姿を見ているとそれだけで自分も楽しくなる。
早く本番にならないかなと思いユーノはベットに入り眠りに着く。



[21737] マテ似三人娘の夏の一時 前編
Name: rattu◆50c335cc ID:c73723c0
Date: 2010/09/10 17:35
「あーつーいー」

夏の暑い日にここ高町、ハラオウン、八神合同一家の自宅に大きな声が響き渡る。声の主はこの家の四女。何時もは元気いっぱいの彼女なのだが
ここ最近は暑い日が続いている所為かどうにもだらけた生活を送っている。そんな四女に近づいて行く一つの小さな影。

「全く。何時までそんなだらけて過ごしているんですか?」

そう言ったのは三女。さっきまではおとなしく過ごしていたのだが、あまりにもだらけている四女の姿を見てつい口が出てしまった。
いくら暑いとは言え、折角今は長い休みの最中だと言うのにだらだら過ごすのはもったいないと思いどうしても文句の一つも言ってしまう。

「だって暑いんだもん。クーラーつけて良い?」
「駄目です。余りエアコンに頼り過ぎるのは身体に悪いですし、それに電気代もかかるんですよ?」

三女の言っている理由の為、この家ではエアコンは使わないか、使っても弱めの設定にしているので余り効果が無い。

「だらだらする位なら家事を手伝うか宿題位して(トントン)…やっと起きて来たようですね」

二階から降りて来る足音を聞き溜息を吐く三女。今二階に居るのはまだ寝ていた五女だけ。既にお昼とも言える時間だと言うのに今更起きたらしい。
長期休みを利用して毎晩夜遅くまで起きている所為か、ここ最近は起きて来る時間が随分と遅くなっている五女。流石に何時までも
こんな不規則な生活をさせる訳にはいかないので、ここは一つきつめに言ってやろうと心に決める。

「ふあ~、おはよう…、しかし今日も随分暑いな」
「遅いです。今一体何時だとおも…」

降りて来た五女に説教をしようと喋りながら振り向くが、降りて来た五女の姿を見て一瞬固まってしまう。

「ん?まだ昼前だろう。休日はまだ続くのだからしばらく寝ていても良いだろう」
「そっちじゃありません!いや、間違ってはいないのですが…、と言うかなぜ下着姿なんですか!?」

降りて来た五女の恰好は、服もズボンも何もつけていない下着姿のままであった。うすいグリーンの下着を身に付けそれだけで降りて来た。
流石にそんな恰好のままで居るのは非常にはしたないため、三女も少々声を大きくして五女を叱る。

「ああそっちもか。いや暑くて仕方が無くてな。まあ別にかまわないだろ」
「構います!すぐ服を着て来て下さい!」
「だったら冷房をつけてくれ。そうすれば服も着るが」
「少し位我慢してください!」
「あー、五月蠅い…僕も脱ごうかな?」

服を着るように叱る三女と、それだったら冷房を強めろと言う五女と、五女にならって自分も服を脱ごうかと考える四女。特に三女の声が大きく
まさに隣の家まで聞こえてきそうな大きさである。普段は物静かな三女だが妹二人のだらしなさと、自分も内心感じていたこの暑さの所為なのか、
随分ときつめな言い方になってしまっている。その後しばらく三女と五女の言い合いが続きお互いにかなりヒートアップしているのか、かなり激しくなっており
既に喧嘩と言っても良いほどになっている。四女も暑さに嫌になったのか、五女と同じ様に服を脱いでいる。そんな中一人の男性が三人の居る部屋に顔を出してくる。

「どうしたの?なんだか随分騒がしいけど?」
「あっ、お父さん!」
「あー、お仕事終わったんだ…。お疲れ様~…」
「ああ、おはよう父さん」

やって来た男性は三人の父親のユーノ。この日は無限書庫には行かずに家で仕事をしていた為家に残っていた。そして丁度残っていた仕事を終わらせ
ほっと一息つくと、リビングの方から何やら騒ぎ声が聞こえて来るので心配になり様子を見に来たのだが、随分と怖い顔をしている三女と
下着姿の四女と五女の姿を見てどういう状況なのかと思い一瞬固まってしまう。

「えーと…どう言う状況なのかな?それに二人共なんて格好で…」

とりあえずまずは娘達にどうしたのか事情を聴く事にする。機嫌の悪そうな三女と五女に聞くのは少し怖いが仕方がない。

「聞いてくださいお父さん!この二人は暑いからってこんな格好をして」
「暑いのだから仕方がないだろう!それだったら冷房をつけてくれと言っている!」
「ヴぇー…」

三女と五女の話を聞き大体のことを理解したユーノ。確かに今日は今までに比べるとかなり気温が高い。四女と五女が暑がるのも解る。
三女も解ってはいるのだろうが自分達だけでクーラーを使うのは少しためらっているのだろう。大人達の誰かがいたら良かったのだろうが
生憎自分以外は出払っていたから仕方がない。まずは四女と五女に服を着せる為に話しかける。

「えと、とりあえず二人共服を着ようね。いくらなんでもその格好のままははしたないからね」
「とは言えこの暑さは流石に我慢できんぞ?父さん?」
「や~だ~…あ~つ~い~」

ユーノに言われても服を着るのを渋る五女。四女は既に暑さでまともに喋る気が無い様だ。

「うん。だからクーラーつけて良いよ」
「本当!?」
「ただし、設定は弱めに、しっかり服も着るようにね」
「はーい!」

ユーノの許可を貰い早速クーラーをつける四女。涼しい風がエアコンから流れて来る。暑かった部屋もどんどん涼しくなり四女と五女も快適といった表情をしている。
しかし下着のままで居た為か、慌てて部屋に戻り服を着て来る五女と脱いであった服を着る四女。そんな二人を苦笑して見守るユーノ。三女も疲れた様な表情をしている。

「あれ位の事だったら僕に聞きにくればよかったのに」
「ごめんなさい…。でもお仕事中だったのでそんな事聞くのはどうかと思ってしまって…」

少し申し訳なさそうに答える三女を見て思わず頭を撫ぜてしまう。三女も少し恥ずかしそうにしながらも頭にある手を振り払おうとしない。

「それにしても、最近のこの暑さはどうにかならんのか?」

そう言いながら服を着終えた五女が降りて来て、そのまま四女が座っているソファに腰を掛け、そのまま適当にテレビをつけテレビを見始める。
三女はさっきまでやっていた洗い物の続きを再開し、四女は携帯のゲーム機を始める。三女はともかく、他の二人は折角外の天気が良いと言うのに
家の中でゴロゴロするのは今一感心しない。折角なので外に遊びに行くよう促してみるが…

「三人共若いんだし、もっと外に出て遊ぶのも良いんじゃないかな?」
「いくらなんでも、この暑さで特に目的も無いのに外に出たくありません」
「と言うか、そんな言い方だと父さんは若くないおっさんになるよ?あー、でも父さんの年齢じゃもう若いとは言い難いか?」
「ただでさえ室内勤務の所為で肌が白いと言うのに、少し位日に焼けた方が良いんじゃないのか?もう若くは無いし男なのだ。肌が荒れるとか別に良いだろう」
「・・・」

娘達の有難い(?)お言葉を頂戴し涙が出そうになるユーノ。確かにもう若くもないしお肌の事とかは気にしないが、こうもはっきり言われると
自分が普段どういう感じに思われているか改めて実感してしまう。とは言え、父親としてこのまま言われるだけには行かないので、何とか外に出る方法を考える。

「まあ確かに、ここ最近随分暑い日が続いてるからね。でも家に籠ったままはどうかと思うけど?ちょっと遠出するとか、色々遊べる事が有ると思うんだけどな」

何とか説得しようとするのだが、二人共あまり乗り気な感じがしない。洗い物を終えた三女にも聞いてみるが、これまた渋い表情を返されるだけであった。
その後も色々外に出る様に話をするのだが、三人共良い返事が返ってこない。そろそろ話題が尽きて来てどうしようかとユーノが思っていると、
今まで適当に返事を返してくるだけだった四女が急に起き上がり口を開く。

「だったらさ、父さんが何処かに連れて行ってよ」
「へっ?」

突然の四女の言葉に、間抜けな表情で返事を返すユーノ。

「確かにそれは良いかもしれませんね」
「私も賛成だ。外に出て遊べと最初に言ったのは父さんだからな」

四女の提案に三女と五女も喜んで賛同する。最初は戸惑っていたユーノも娘達が乗り気なのを見て、それも良いかなと?と思い始めて来た。
最近自分もあまり外には出ていない為、これは良い機会なのかも知れない。となると、後は何処に出かけるかなのだが…、これがどうしても思いつかない。

「えーと、皆は何処に遊びに行きたい?」
「それ位自分で考えてよ~、父さん」
「娘とは言え、女性にまかせっきりは男性としてどうかと思いますよ?」
「そんなので良く母さん達を物に出来たものだな」

娘達の愛のこもった言葉に涙が出てきそうになる。ちなみになのはの方からプロポーズをしてきたのは娘達は知らない。
とりあえず思いついた出かける所の候補地を適当に言ってみる事にした。

「ボーリングとかビリヤードとかしようか?たまに行ってみるのも楽しいよ?」
「それって結局室内じゃん。外に出ろって言ったのは父さんじゃん」
「あっ、そうか…、それじゃあ山にピクニックに行くとか」
「この暑い中山登りするつもりか?運動不足の父さんでは倒れるぞ?」
「倒れないよ!? えーと…無限書庫で本を読むとか…」
「室内な上そこは父さん仕事場でしょう。もう少し真面目に考えてください」

何か今日は娘達の自分に対する扱いが酷い。僕何か気に障る事言った?と思ってしまう。この後もいくつか候補案を出したのだが
どれも娘達のが納得する所は出ない。娘達も飽きて来たのか、どうにもやる気が無くなって来ている様だ。折角娘達と出かける良い機会だと言うのに
このままだとその機会が無くなってしまう。何とか良い所をとユーノが一生懸命考えていると…

「むっ…」

五女が何かに反応したので視線の先を見てみると、テレビのとある番組が映し出されていたのだが、どうやら海水浴の名所を紹介している番組らしい。
番組が終わり、ふと娘達の方を見ると三人がユーノをじーと見ている。流石に鈍いユーノにもこれは娘達が何を言いたいかは解る。

「…えーと、何処かに泳ぎに行こうか?」
「いえーい!さすが父さん!」
「流石にこれは気付きますよね」
「気付かなければ母さん達に言いつけていた所だ」
(危なかった…、なのは達に聞かれたらなんて言われたか)

起こりえた恐ろしい未来が回避されたことに安堵する。とにかく何をするかは決めたので、次は場所である。

「海は遠いから日帰りは厳しいですね。プールでも良いですよね?」
「この際泳ぎに行ける場所なら何処でも構わん。プールなら少し前に出来た所が良いんじゃないか?」
「知ってる知ってる!結構大きいし色んなプールとアトラクションもあるから賛成!」

ユーノをほったらかしで話を進めて行く娘達。優秀な子供を持って嬉しいやら悲しいやら複雑な心境のユーノ。

「ねえ他に誰か誘わない?」

そう言ったのは四女。四女が言うには他に休日が重なった家族と一緒に行こうと言う事らしい。折角出かけるのだから、出来るだけ皆と一緒に
出かけたいと言う事らしい。ユーノや他の娘達も賛成なのか何も言わずにうなずく。

「今日の晩御飯に休みが合う人を聞こうか。多分何人かは一緒に来れるとは思うけど」
「うん!」

本当にうれしそうな笑顔で答える四女。他の二人も四女程ではないが楽しそうな顔をしている。ユーノも久しぶりに外に出て泳ぐと考えると
楽しみになって来る。ただ五女にも言われたが運動不足で体力には少し不安はあるが…。とりあえずこの日は四人共家で過ごす事になった。


そして、その日の夜の夕飯時、何人か仕事でまだ帰っていない人はいるが、大体の人がいるので予定を聞くのは問題無い。
食事を続け皆が食べ終わったのを見計らって、他の家族に話しかける。

「えーと、皆ちょっと良いかな?」

ユーノの言葉に娘たち以外の家族がユーノの方を見る。なのはからどうしたの?と聞かれ、皆を見渡しながらプールの事を話す。

「朝に子供達と話して皆でプールに行こうと言う事になったんだ。それでもし休みが合えば皆と一緒にって話になって、それで皆はどうかな?」

ユーノの言葉を聞き、自分の予定を確認する家族達。それに最初に答えたのはなのはであった。

「私はここ最近ずっと暇だよ!」
『だめー!』

なのはの言葉を全員が速攻で却下する。折角遊びに行けるのに却下され少々不機嫌になるなのは。だが他の皆のそう簡単に許可を出す訳がない。
中々納得してくれないなのはにヴィータが少々きつめに注意する。

「お前なー…、もうお腹かなりでかくなってんだから大人しくしてろよな!」
「でも…、少し位運動した方が…」
「なのはちゃん、見てるこっちがハラハラして来るから…、出来ればあたしもやめといて欲しいと思うねんけど」

ヴィータとはやての説得で渋々ながら納得するなのは。ヴィータ達が言うように、新しい子供を妊娠しているなのはのお腹は、現在結構な大きさになっている。
そんな状態で泳ぐのは見ている方としては非常に心臓に悪い。皆なのはには悪いと思っているのだが、今回は何とか辞退をして貰う。
とりあえずなのはは参加しないとなり、他の人の予定を聞いてみるとする。

「アタシは駄目だな。ここしばらくは休みねーや。悪い」
「うーん…、あたしも無理やなー、最近忙しいし。フェイトちゃんにも手伝ってもろとるから、多分フェイトちゃんもあかんと思う」
「リインもはやてちゃんと一緒ですし、アルフも今はハラオウンの所にお泊りに行ってますから無理でしょうね」
ヴィータとはやてとリインとアルフとフェイトは不参加。この三人は最近帰宅も遅い日が多かったからある程度予想できた。
フェイトも帰ってこない日も多いのでこれも無理だろうと思っていた。次は最近あまり忙しくない人達の予定なのだが…

「私は大丈夫です。泳ぐのなんて結構久しぶりかも」
「それじゃあ、僕も参加させて貰っても良いでしょうか?」

エリオとキャロは参加。とりあえず娘達と4人だけで行く事は無くなって安堵するユーノ。

「私もしばらくお休み貰ったし行っちゃおうかしら♪シグナムもお休みよね?一緒に行きましょ」
「勝手に決めるなシャマル。まあ、私は別にかまわんが…、アギトはどうする?」
「勿論行くさ!折角の休日なんだし、しっかり楽しまないとな」

シャマルとシグナムとアギトは参加。シャマルはともかく、シグナムまで参加するのは少し意外だった。てっきり家でデバイスの整備をするから止めておく
と言うと思っていたのだが、理由を聞いてみるとやはりシグナムもこの暑さには少し参っていた様で、良い機会なので参加しようとと思ったらしい。
ユーノや娘達も、参加者が増えて嬉しいのでそれ以上は何も聞かなかった。後家に残っているのはザフィーラだけで参加するか聞いてみると

「我は遠慮しておこう。妊婦を一人で留守番させるのは少々心配だろうからな」
「ごめんねザフィーラ。本当は僕が残るべきなのに」
「お前にはなのはだけじゃなく娘達も居るだろう。我の事は気にしなくて良い」

ザフィーラはなのはの万が一の為に不参加。なのはの事はユーノも少々気になってた為、ザフィーラが残ってくれるとなると安心できる。
少し申し訳ない気がするが、ここはザフィーラに甘えさせてもらう。一応これで今家に居る人の予定は全部確認できた。後は一人今この家に居ない人物だが、

「ヴィヴィオ姉ちゃんは来れるのかな?」
「一応ヴィヴィオは休みだけど、もうすぐ帰って『ただいまー』…来たね」

丁度いいタイミングでヴィヴィオが帰宅する。ヴィヴィオの声が聞こえた瞬間、四女がすぐさまヴィヴィオの元に駆け寄って行く。

「お帰りヴィヴィオ姉ちゃん!姉ちゃんは遊びに行ける?」
「えっ?遊びにって何処に?」

いきなりの四女の言葉に何事かと驚くヴィヴィオ。流石に遊びに行ける?だけでは、ヴィヴィオも何処に遊びに行くのか解らないので答えようがない。
そんな混乱しているヴィヴィオに三女が詳しい事を説明する。ヴィヴィオも説明を聞いて何処に行くか解り喜んで答える。

「良いね、私も行く。こう言う暑い日には丁度いいかも♪」

ヴィヴィオの参加が決定し、これで参加する家族が決まった。ユーノと三人娘、シグナムとシャマルとアギト、エリオとキャロ、そしてヴィヴィオ。
合計10人と意外と多くの人が参加する事となり、中々楽しそうになりそうだとユーノは思う。娘達も沢山の家族と行けるのが楽しみなのか嬉しそうな顔をしている。
日にちは四女が早く行きたいと言うので翌日行く事になった。早速明日の準備をしようと動こうとすると、ふとヴィヴィオが呟いた一言で事情が代わる。

「明日かー、水着は去年ので行こうかな?」

水着と聞いてふと娘達を見るユーノ。水着と言えはこの子達はもう新しい水着は買ったのかという疑問が浮かんできた。念の為に聞いてみる。

「ねえ皆?ちょっと良いかな?」
「なんですかお父さん?」
「皆はもう新しい水着買ったの?」

それを聞いた瞬間娘達の口から「あっ!?」といった言葉が飛び出す。どうやら完全に忘れていたらしい。急いで娘達が集まって相談を始める。

「…去年ので良いよね?」
「流石にそれはどうかと…」
「学校の水着で行くか?」

去年の水着を着ようと言う四女だが、子供の成長の早さは侮れない。なのは達も娘達の服や下着が買ってもしばらくすると着れなくなると言っていたし
どう考えても着れるとは思えない。ただ四女はそれでも泳ぐ為なら無理してでも着てしまう気がする。三女もそれを解っているのか予め釘を打っておく。
五女は学校の指定の水着でと言っている。泳ぐだけならそれで良いのだろうが、折角遊びに行くのにそれでは少々楽しさに欠ける。一部の人には良いだろうが。

「明日、水着買いに行こうね」
『…はい』

結局予定は変更となり、明日は皆で新しい水着を買いに行く事となり、プールは明後日に変更となった。四女が少し寂しそうにしていたが、
ヴィヴィオが「可愛い水着選ぼうね」と行ったら嬉しそうな顔で俯いた。本当に喜怒哀楽が激しい子である。他の二人も納得してるのか
何も言わずに自分の部屋に帰って行く。ユーノ達も明日の為に今日は早めに寝る事にした。

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次の日


「おはよう」
「おはようございます。シグナム」

目を覚ましたシグナムが自室から出て来た所に三女と遭遇する。挨拶をしてリビングに行くと、既に明日プールに行くメンバーが集まっていた。
少々待たせてしまったか?と思ったが、全員まだ朝食を食べ始めたばかりなのを教えて貰い安心する。

「あ、シグナムさん、おはよう。シグナムさんの分ももうすぐできるから少し待ってて下さいね」
「お母さん!食事の準備は私がしますから、大人しく座ってて下さい!」
「でも…少し位は『座ってて下さい!』…はい…」

三女に強く言われて、シュン…としながら自分の席に戻るなのは。自分の娘に言われて引き下がるのは、母親としてどうかと思うがこれが中々迫力がある。
正直貫禄だけなら当時のなのはと互角か、もしかしたらそれ以上かも知れないと思うユーノ。でも口には出さない、二人が怖いから。

「でも水着買いに行くのを付き合う位は良いよね?皆も居るし、買い物位は何時もしてるし」
「それは…(お父さん、どうしましょう?)」

なのはの言葉に迷ったのか、念話でユーノに判断を任せて来た三女。普段は大人っぽいのだが、こう言う所はやはり子供だと思い少し微笑ましく思えてしまう。
今日は皆も居るので何かあっても大丈夫だと判断し、三女に念話で一緒に行っても良いと伝える。三女もそれを伝えなのはもそれを聞いて喜んでいる。
妊娠しているから他の家族に大事にして貰って居る為、あまり外には出れないのが少々ストレスになっているのかもしれない。そう考えると
少し位は外に出ないとなのはにも悪い。そう思いふとなのはの方を見ると、ユーノの方向いて笑いかけている。

(ありがとう、ユーノ君)
(…気付いてたんだ)
(まあね。念話で話してたみたいだけど、一瞬ユーノ君の方を見たしね)

どうやら娘との会話はなのはには気付かれていたらしい。娘に押されているように見えても、そう言う所はやはり負けていない。母は強しと言ったところだろうか。
そうこうしている内に、遅れて来たシグナムも食事を終えている。それを見て早速出かけようと言う四女だが、五女がそれを止める。
どうやら買い物ついでに昼食も取ろうと言う事らしいので、しばらくは家に居て時間を潰すらしい。四女は早く行きたそうにしているが
三女が五女に味方した為大人しく従う事にした。ユーノも丁度いいので自室に戻り読みかけの本を読むことにした。各々も各自で時間を潰す事にする。

「僕達はどうしようか?」
「丁度いいので宿題をしましょう。今の内に少しでも進めておいた方が楽ですからね」
「え~?そんなの後で良いじゃん」
「馬鹿者。毎回そう言って最後の日に後悔してるだろうが。私も手伝ってやるからとっととやるぞ」
「う~」

文句を言いながらも、二人に言われ宿題の続きをやる為に仕方なく二人と部屋に戻る四女。それを見守って苦笑しながら自分の部屋に戻るユーノ。
そうして、しばらく自室で本を読んでいたユーノ。そんなユーノの部屋になのはがやって来た。

「ユーノ君。そろそろ出かけるよ?」
「えっ?もう時間だっけ!?」

なのはの言葉に驚き時計を確認すると、既にお昼前の時間になっていた。どうやら読書に集中し過ぎて時間が経つのを忘れていたらしい。
急いで支度し外に出ると、既に皆準備が完了しユーノを待っていた。

「父さん遅いよ!」
「まったく…、何をしていたのだ。時間位確認しろ」
「多少は余裕を持って来て貰えると嬉しいんですが…」

待っていた娘達にこっぴどく怒られるが仕方ない。特に四女はかなり楽しみにしていた為かなりご立腹のご様子。とにかく謝り倒して何とか許してもらった。
全員準備が終わったので早速出発する。途中財布を忘れた事に気付いたシャマルが家に一旦戻ったり、小さいアギトが犬に咥えられたり、
他所見をしていた四女が電信柱にぶつかって鼻血を出すなど、まあ騒がしい事はあったが無事に目的地に到着する。

「どうする?先に食事にする?それとも水着を選びに行く?」
「先に水着を選びに行かない?昼食には少し早いし」

ヴィヴィオの答えを聞き、一応他の家族に確認した後水着売り場に向かう。水着売り場に到着すると、そこには(当たり前だが)色取り取りの水着が置いてある。
皆で話し合った結果、とりあえず最初は皆自分で適当に探し、決まらないようなら全員で選ぶと言う事にした。そうして各人思い思いに自分の水着を探しに行く。

「私は今年は泳げないかな?この子生まれる頃には涼しくなってるだろうし」
「流石にお腹も目立ってきたし、今年は我慢してね」

ユーノはなのはと一緒に水着を選んでいる。選ぶと言ってもなのはは自分のはいらないし、ユーノは男と言う事もありあまり悩まず水着を決めた。
会計も済まし、このまま二人で待っているのも退屈なので、二人で他の人たちの様子を見て回る事にした。二人で探していると最初に見つけたのは
シグナムとシャマルとアギトのヴォルケンリッター組。少し離れた所から見ているとシャマルとアギトは楽しそうに、シグナムは少し困った様子をしている。
どうしたのかと思い近づいてみると、それに気付いたシグナムが安心したような表情でこちらを見る。

「どうしたのシグナムさん?何か困った様に見えるけど?」
「ああなのは、ユーノ、助けてくれ」
「ちょっとシグナム!?助けては無いんじゃないかしら」

何が有ったのか気になり事情を聞いてみると、どうやらシャマルとアギトがシグナムの水着を選んでる内にエスカレートし、シグナムが少し困っているらしい。
事情を聞いたユーノがシャマルとアギトに注意すると、二人からも言いたい事が有ると言うので一応聞いてみる。

「あのねユーノ君。最初は私達もシグナムに自由に選ばせてたのよ?でもそれだとどうしてもシグナムに似合わないダサ…地味なのばっか選ぶんだから」
「挙句の果てには去年ので良いだろ?とまで言い出すんだから。新しい水着選ぶ為に来たのに、それじゃあ意味無いだろう!」

熱くなったのか、アギトの言葉の最後の方の少々五月蠅かったが大体の事は理解できた。両方の言い分を聞いて、正直どっちの味方に着こうか迷ったが、
今回はシャマル達に味方をする事にした。それを聞いたシグナムが「えっ!?」と声を出すが、シャマル達の言うと通り今日は水着を買いに来たのだから
シグナムには可哀想だが多少我慢してもらう。だがシャマル達にも一応やりすぎない様に注意はしておく。恨めしそうに見ているシグナムを無視し、
他の人達を探しに行くユーノとなのは。後ろからシグナムの声が聞こえてくるが気にしない。三人と別れて少し歩いていると、二人の視界に
長身の男性と小柄の女性の姿が見える。すぐにエリオとキャロである事に気付いたので、二人の元に行って声を掛ける事にした。

「エリオ、キャロ、決まったかい?」
「あ、はい。僕は決まったんですが…」

そう言いながらエリオが振り向いた視線の先には、真剣な顔で水着を吟味しているキャロの姿が有った。エリオの話だと自分のはすぐ決まったのだが
それからずっとキャロの水着選びに付き合っているらしい。エリオとユーノ達の会話が聞こえたのか、キャロが此方を振り向いた。

「あ、ユーノさん、なのはさん」
「どうしたのキャロ?随分悩んでるみたいだけど…」
「はい…、何とか二つまでは絞ったんですが…」

そう言うキャロの手には二つの水着が握られていた。一つは子供向けに見える可愛らしい水着。もう一つはシンプルなデザインで大人っぽい水着。
この二つが今キャロの中で迷っているらしい。ユーノにしてみればどっちも似合いそうで良いと思っている。エリオも同じ事を考えているのだが
キャロにとってはかなり重要な事らしい。どうして男性二人はそんなに悩んでいるかと思っていると、なのはから念話が聞こえて来た。

(多分自分の見た目にあったのを選ぶか、年齢にあった物を選ぶか迷ってるのかもしれない)
((あー…))

それを聞いて納得する二人。正直キャロは見た目が相当若く見える。と言うかぶっちゃけ幼い。キャロもそれを自覚しているのか最近は
「可愛い服選べて良いですよ!」と半ば開き直っている。だがやはり心の中では年齢にあった物を着たいと思っているのだろう。そう思うと少し
悲しくなってくる。とりあえず自分達では力になれそうに無いので、キャロをエリオに任しユーノとなのはは別の人の所に行く事にする。
後は娘達の誰かだと考え歩いていると、何処からともなく声が聞こえて来る。

「なのはママー、ユーノパパー、こっちこっちー」

声のした方向を向いてみると、水着を持ったヴィヴィオが此方に向かってくるのが見える。

「丁度探してたんだ。選んでみたのあるからちょっと見てもらえる?」

ヴィヴィオのお願いに快く応じる二人。早速三人で試着室に向かう。試着室に入る直前にヴィヴィオがユーノの方を向いて一言。

「パパ?覗いちゃ駄目だよ?」
「覗かないよ!」
「ハハハ、ちょっと待っててね」

ヴィヴィオがたちの悪い冗談を言いながら試着室に入って行く。なのはは少し怒っているユーノをなだめる。最近ヴィヴィオはユーノをからかうのがマイブームらしく、
こう言ったちょっとした冗談が良くある。ユーノにしてみれば勘弁してもらいたいのだが、他の皆は楽しそうにしている為誰も止めない。
なのはとユーノがその事で話していると、ヴィヴィオが着替えが終わったらしく中から声が聞こえて来る。そしてカーテンが開くとそこには…

「じゃーん!どう?」
「「…」」

当然そこには水着を着ていたヴィヴィオの姿が有ったのだが…、その姿を見てユーノとなのはが一瞬固まる。ヴィヴィオが着ている水着なのだが、
これがかなりきわどい水着を着ている。どう説明して良いか解りずらいが、一言で言うと布地が少ない。隠す所はちゃんと隠しているのだがそれ以外は紐に近く、
正直目のやり場に非常に困る水着となっている。今までは割と普通の水着を着ていたのに何の心境の変化が有ったんだ?と二人が心配してしまう。

「うーん、ちょっと地味かな?」
「「えー!?」」

ヴィヴィオの衝撃な一言に更に驚く二人。これで地味だと何で満足するんだ?紐か?オール紐か!?ブラジル水着とかそんなんか!?。
あまり個人の事に文句を言う事はしたくは無いが、これ以上の凄い恰好で公然の場に出すのは父親として止めなければならない。
そう思いヴィヴィオに注意しようとすると、突然ヴィヴィオが笑いだした。

「プッ…、あははは!やだなーパパ、ママ、冗談に決まってるじゃない!あはは…!」
「えっ…?冗談?」
「そうだよ。本当はこっち」

お腹を抱えて笑うヴィヴィオを見てポカーンとするユーノ。どうやら二人をからかう為にわざとこんな水着を選んだらしい。身体を張ったものだ。
どうやらなのはも騙された様で、安心したような気が抜けた様な複雑な表情をしている。ちなみに本当の水着は普通ので安心した。

「いくら何でもこんなの着れないよ~。フェイトママじゃあるまいし」

何気に酷い事を言うヴィヴィオに苦笑するが、良く考えると昔のフェイトは、真ソニックを中心に水着にかかわらず中々きわどい格好をしていた事を思い出す。
なのはも微妙な顔を表情をしているのを見て、恐らく同じ事を考えているのだろうと解る。フェイトには悪いがここは何も言わないでおく。

「あ!父さーん!なのは母さーん!」

声のした方向を見ると、大声で此方に向かってくる少女が一人。この声の大きさは言うまでも無く四女である。

「どうしたの?そんなに走ってきて」
「えっとね…、凄く良い水着見つけたから父さん達に見て貰おうと思って!」

それだけの為にユーノ達を探していたらしい。そう思うと本当にこの子が更に可愛く思ってくる。早速その水着を見せてもらう。

「えーと、これ!」
「へー、こ…れ…?」
「「…」」

四女の持ってきた水着を見た瞬間三人が固まる。四女の持ってきた水着は…、まあ解りやすく言うとヴィヴィオが冗談で着た物と負けづ劣らず凄い。
何でこんな物が子供用においてあるのかが解らない程に凄い。これも四女の冗談なのかと一瞬考えるが、四女の顔を見ると素晴らしく可愛い笑顔をしている。
恐らく褒めて!と言った表情であろう。この子はポーカーフェイスが出来る程器用な子ではない。そうなるとやはり本気でこれを選んだのか?
だが出来ればそれはあまり認めたくない。もし本気だと将来色々大変な事になるかもしれない。

「あ!ヴィヴィオ姉ちゃんの水着凄く良いね!僕もそれみたいなのが良いかも」
「えっ!?いやっ、これは違うよ!」
(…)

四女が本気である事が決定。これにはユーノも頭を抱える。まさか四女のセンスがこんなのだったとは思わなかった。

「蛙の子は蛙…(ボソ)」

ふとなのはが呟く。それを聞いて納得してしまった。四女はフェイトの娘、着る物のセンスも受け継いでしまった様である。迷惑な話だ。
とにかくこの水着で行かせる訳には行かないので、なのはと一緒に四女の水着を選ぶ事にする。折角選んだ水着を止められて不機嫌になる四女だが、
二人が一生懸命説得した為、何とか納得してくれた。ヴィヴィオはシグナム達の所に行くと言っていたので、三人で水着探しに行く。
四女の持ってきた水着を元の場所に戻す為に四女について行くと、三女と五女が水着を選んでるのが見えた。

「二人共、良いの見つかった?」
「お父さん!?お母さん!?」

四女が連れて来た父と母の姿を見て驚く三女。まさか二人を連れて来るとは思わなかったようだ。五女の方は此方に気付いた様だが、気にせず水着選びを続ける。
四女も五女の所に向かい一緒に水着を探す。それを見ていると三女が此方に向かってくる。

「あの、お父さんにお母さん。あの娘の水着なんですけど…」
「うん、止めといたよ」
「良かった…。私達では何度言っても聞いてくれなくて困ってたんです」

三女のその言葉を聞いて、他の二人はまともなセンスだと解り安心する二人。あんなのが他に二人いるのは流石に勘弁してもらいたい。
他の二人もまだ水着が決まっていない様なので、なのはと一緒に選ぶ事にした。

「やっぱりこれ位のが良いかな?」
「そうだね。三人共まだ小さいんだし、こう言う可愛いタイプのが似合うだろうし」

なのはと二人で選んだ水着を娘達に見せると、四女は少し物足りなそうな表情をしているが、他の二人は非常に喜んでくれた。
水着も決まったので、早速会計を済まし皆と合流しようとする。

「ねえお父さん。これほんとに駄目?」
「…せめてもう少し大きくなってからね」

四女の服装の趣味は少し何とかしないといけないかもしれない。その後皆で昼食を食べ、買い物を済ませて家に帰る。明日はいよいよプールに行くのだ。
娘達は早く明日にならないかとウズウズしているが、ユーノも久しぶりの大人数で出かけるのは久しぶりの為、内心楽しみにしている。
最後に明日の準備をした荷物の再確認をし、ユーノは眠りに入る…。



[21737] マテ似三人娘の夏の一時 後編
Name: rattu◆50c335cc ID:c73723c0
Date: 2010/09/10 17:36
「おい父さん、起きろ、もう朝だぞ」

心地よく寝ていると、何やら声が聞こえて体が揺れているのを感じる。何事かと目を覚ますと、目の前には自分の体を揺する五女の姿が有った。
どうやら起こしに来てくれたみたいである。だが時計を確認してみると予定の時間より少々早い。それに気付いたのか五女が聞かれる前に答える。

「あいつが随分早く起きてな…、それでついでに私達とシグナム達も起こして回ってるのだ。仕方ないし少々早いが私達も父さん達を起こそうと思ってな」

あいつとは恐らく四女の事で間違いない。楽しみで予定より速く目が覚めてしまったのだろう。本当に解りやすくて可愛い子である。
食事の準備は既にできていると言うので、今の内に着替えをしておく。着替えを終えリビングに行くと、既に皆食事を始めていた。

「お父さん!おはよう!」
「うん、おはよう」

元気いっぱいに挨拶をして来る四女を見て、やっぱり楽しみにしてたんだなと実感する。そんな四女の頭を撫ぜつつ自分の席に座り食事を始めるユーノ。
食事をしている時も早く行こうとウズウズしている四女をなだめつつ、向こうに着いたらどんな事をしようか話し合う。話していると四女だけではなく
三女も五女も落ち着かない感じが見える。やはりこの二人も楽しみにしている様だ。そんな三人を見ていると心が温かくなってくるのを感じる。
今日は皆思いっきり楽しもうと心に誓う。食事を終え、後片付けを済まし、いよいよ出発する。

「それじゃあ行ってくるね、なのは」
「行ってきまーす!」
「行ってらっしゃい。ちゃんとお父さんの言う事聞くのよ」
「はい、暴走しない様にちゃんと見張っておきます」

やっと出発だと知りはしゃいでいる四女を置いておき、なのはとザフィーラに家の留守番を任せる。ザフィーラがいる為あまり心配はしてないが、
念の為何かあったらすぐ連絡を入れる様にザフィーラにお願いし、ザフィーラもそれを聞き黙って俯く。そしてなのは達に見送られ出発する。
皆の姿が見えなくなるまで見届けて、家に入り一息ついたなのはがザフィーラに話しかける。

「ねえザフィーラ?誰も居なくて暇だし、軽めに済ますから魔法の練習しても…」
「駄目だ。ユーノにはもしなのはが何かしようとしたらすぐ連絡してくれと言われているのでな」
「やっぱりそうですよね…。あー、でも暇ー!」

家ではこれからなのはがこの暇な一日をどう過ごすかという戦いが始まる。  まあそんななのはの方は放っておくとして、ユーノ達は楽しく目的地に向かう。
バスの中でそわそわしている娘達をなだめ、ようやく待ちに待ったプールに到着する。

「着きました!」
「つーいーた!」
「さあ、早く行くぞ父さん!」

娘達のテンションも最高潮と言った所である。ちなみにこの日来たプールは、最近オープンしたばかりの大型の市民プールである。

「さ、ユーノ君。あの子達も待ってるんだから、早く行きましょ」

シャマルに促され早速中に入る事にする。お金を払い奥に進み、着替えが終わった後、出口の所で合流する事を伝え更衣室の手前で一旦別れる。

「それにしてもエリオは来ないと思ってたよ。キャロが行くって言ったから来たの?」

女性陣と別れ丁度いい機会なので、少し疑問に思った事をエリオに直接聞いてみる。休日は家で過ごす事が多いエリオなので、今日は参加しないと思っていたので、
参加すると聞いて少し意外に感じた。勿論人数が増えるのは嬉しいのだが、何となく気になってしまったので聞いてみる事にした。

「それも無くは無いんですか…、僕が行かなかったら男性はユーノさんだけになってしまいますから。家族とは言え女性ばかりだと少し周りの
目も気になりますし、ザフィーラは多分行かないと思ってたんで、だから僕も参加しようと思ったんです」

エリオの言葉を聞いて納得する。エリオも小さい頃から女性達に囲まれて育った所為か、そう言う所に敏感になっている。実際ユーノも
エリオが居てくれると大分気が楽になる。こう言う細かい所の気配りが出来る所が彼の良い所なのだろう。まあユーノも自分では気付いていないが
エリオに負けず劣らず気遣いが出来、エリオも逆にそれに助けて貰っている。

「えーと…うん、忘れ物は無いな。エリオはどうだい?」
「僕も大丈夫です。それじゃあ行きましょうか」

着替えも終え、女性陣が先に来る前に待ち合わせ場所に向かう。待たせたりすると少し五月蠅い子がいるので、時間を掛けずに少しでも早く向かうが、
どうやらまだ準備が出来ていないのか、周りを見てもまだ女性陣の姿が見えない。まあ向こうの方が人数も多い上に、女性は準備に時間がかかると言う物。
仕方が無いのでエリオと一緒に女性陣が出て来るのを待つ。思いのほか時間がかかるなと思っていると、すぐ声が聞こえて来る。

「二人共ごめんね。待たせちゃった」

声のする方向を見ると、ヴィヴィオを先頭に水着姿の女性陣の姿が見える。皆自分に合った可愛らしい水着を着こなし、非常に華やかである。

「皆準備遅いよ。僕はすぐ行けたのに」
「貴女は服の下に水着を着ていたからでしょう」
「まあ別にどうでもいいだろ。さっさと行くぞ」

全員揃ったのですぐさまプールの方へ向かう。歩いてる時に周りの人が男女問わずユーノ達の集団を振り返るが、男性陣は中性的な見た目のユーノと、
長身の正統派の美形のエリオ。女性陣もタイプの異なる美女と美少女の集まりとなると、目が行ってしまうのは仕方がない。そんな視線を気にせず進んでいき
プールに到着すると、自分たち以外にも非常に沢山の人達の姿があふれかえっていた。やはりこれだけ暑いと他の人も同じ事を考えるのかもしれない。

「よーし!それじゃあ泳いでく「お待ちなさい」グエ!?」
「泳ぐ前には準備体操をしましょうね。それに一人で行動するのは危険です」
「お前のそれが一番危険だと思うが…」
「ここしか掴める所が無かったんです」

走りだそうとした四女を、彼女の髪を掴んで止める三女。手荒い止め方を見て若干引いている五女を放っておき準備体操を始める三女。
微妙に首が傾きながらも、三女に続いて体操を始める四女を見て、そこまで泳ぎたいのかと突っ込みたくなってしまう。他の皆も三女に続き
準備体操を終わらせ、娘達は一目散にプールに向かって行く。持ってきた荷物はシャマルとアギトが見てくれると言うので、お言葉に甘えて
ヴィヴィオ達と一緒に娘達の後を追う。最初は普通のプールで軽く泳ぎ、その後は流れるプールでゆったりとプカプカ流されて過ごした。
しばらく遊んでいる内に疲れて来たので、一旦戻って休憩しようとするユーノ。子供達やシグナムに体力の無さをいじくられてつつシャマル達の元に戻る。

「あらユーノ君、どうしたの?」
「はは、少し疲れちゃいまして、丁度いいから交代しようと思いまして」
「体力無いな旦那。まあいいや、シャマ姉、行こう!」

アギトに引っ張られて行くシャマルを見送って、荷物の近くに腰を落とす。しばらくボーとしていると、娘達が此方の方に向かってくる。

「随分早いね。なにかあったの?」
「少し喉が渇いたので…、それでお金を取りに来たんです」
「そっか、じゃあこれで買ってきなよ」
「おー!父さんの奢りだ!」

ユーノが娘達にお金を渡す。四女と五女は得をしたと言った風に、三女は少し申し訳なさそうな表情をしているが、折角なので有難く貰っておく事にした。
ユーノと別れ三人で飲み物を買いに行った帰り、この後どうしようかと話し合っていると、五女が何処かを見て小さな声を出す。
他の二人が五女の視線の先を見てみると、遠くで少し解りにくいがシグナムとヴィヴィオ、そしてその二人に話しかけている男性の姿が見える。

「…か……緒…」
「ま…楽……」

何やら話している様だが、距離が離れている所為か良く聴こえない。それにヴィヴィオは困ったような表情をしているし、シグナムは不機嫌な顔している。
三人共なにがあったのか良く分かっていないが、とりあえずヴィヴィオ達の元に向かってみる事にした。

「どうしたんですか?ヴィヴィオ姉さん?シグナム?」

二人に話しかけると、ヴィヴィオも三人に気付き、助かったと言った表情を三人にむける。そしてすぐさま三人に近寄り相手の男性達に話しかける。

「と言う訳で、この妹達と他にも家族と一緒に来ているので一緒には遊べません」

その言葉を聞いて男性達はすごすごと立ち去って行く。それを見送ったヴィヴィオとシグナムが安心した表情をしていたので、あの男性達はなんなのかと聞いてみると、
どうやらナンパだったようだが、断っているのにしつこく言い寄って来てどうしようかと迷っていると、丁度妹達が来たので少し利用させてもらった言う事だ。
その後シグナム達と一緒にユーノの元に戻る娘達。そこには既にシャマル達とエリオ達が合流してお弁当を広げていた。

「お帰りなさい。お昼の準備は出来てるよ」
「良かった。丁度お腹が減っていた所なんだよね」

そう言いながらヴィヴィオがユーノ達の所に走って行き、娘達とシグナムも後に続き食事を始める。

「それにしても三人共戻って来るのが遅かったね。何かあったの?」

ふとユーノが思い出したの様に尋ねる。五女がヴィヴィオとシグナムの方を見ると、言わないで!といった表情でこちらを見返した。
ヴィヴィオ達がナンパにあったと解ると父が取り乱すと思い、適当に流してこの話を切り上げようと思う。

「いや、少し混んでただけで大した事は…」
「ヴィヴィオ姉ちゃん達がナンパされててそれで遅れた」
「へー、…ナンパ!?」
「このどアホが!」ガス!
「あ痛!?」

折角誤魔化そうとしたのに、それに気付いていなかった四女の所為で台無し。ヴィヴィオ達があちゃーといった顔で頭を抱える。
頭を殴られた四女は何故殴られてか理解していないらしく、今は三女に説明されている。

「ナンパって…え!?なにもされなかった!?ヴィヴィオ!」

予想以上に慌てる父を見て少し面白いが、ユーノはそれどころじゃない。

「大丈夫だよ、少し声をかけられただけだから。すぐに諦めたし行ったし、その時にこの子達と合流して戻って来たんだ」
「そっか…、それなら良かった…」
「あれ?確かしつこモガ!」
「貴女は少し黙ってて下さい。余計な火種を生むだけです」

ばれてしまっては仕方無いので、多少真実を隠しながらも何があったかを簡潔に伝え、ユーノもそれを聞いて安心する。その横でまたも何か
余計な事を言いそうな四女の口を押さえる三女。折角ヴィヴィオが穏便に事を済ませようとしているのに、これ以上余計に事を大きくしたくは無い。
そんな事をしていると、シグナムがユーノに対して小さく呟く。

「ふむ、心配なのはヴィヴィオだけか?私も一緒にナンパされたのだがな…」
「え!?あ、いや、心配してましたよ!?」

それを聞いてユーノがヴィヴィオの時とはまた違った意味で焦っている。ユーノは確かにヴィヴィオの事だけでシグナムの事を忘れていたが、
それを誤魔化そうと一生懸命説明しているがシグナムは聞いてくれない…様に見えるが、娘達が別の角度からシグナムを見ると顔が少し笑っているのが見え、
冗談でからかっているのが解ったが、ユーノが頑張っている姿が面白ので何も言わずに見守っている。そうしているとシャマルがボソっと呟く

「二人共モテモテね。…私が一人で待ってる時は誰も声をかけてこなかったのに…」

シャマルの呟きに暗くなる一同。正直何と声をかけて良いか解らない。シャマルも間違いなく美人なのだが…、醸し出す雰囲気が違うのだろうか?
主に若々しさの部分が。とりあえず何か言おうとしたら、横からキャロが喋りだす。

「シャマルさんはまだ良いですよ…。私なんか年相応に見られる事すら無いのに…、お酒すら身分証明出来る物無いと飲めないんですよ?」

キャロの言葉に涙が出てきそうになる。もう自分は成長しないと解り開き直っていたのだが、やはり心のどこかではまだ認めたくない所があるのだろう。
更に暗くなった雰囲気をどうしようかと思っていると、ユーノとヴィヴィオがが何とか場を明るくしようと声を出す。

「ま、まあ人には色々な特徴があるし仕方ないよ!」
「そ、そうだよねパパ!この子達だってナンパされた事無いしお酒も飲めないし!だから大丈夫だよシャマル!キャロ!」

何かかなり酷い事言ってるヴィヴィオ。子供と大人を同列に扱うのはどうかと思うが、だがそれでも効果はあったのか少し笑顔が戻るシャマルとキャロ。
少しこんな慰め方で良いのか疑問に思うが、一応二人共機嫌が戻ったので良しとする。だがそこでまた四女が新たな爆弾を落とす。

「確かにお酒も飲めないしナンパもされた事無いけど、男の子から告白された事はあるよ?僕達」
『えーっ!?』

四女の爆弾発言に娘達以外の人達が大声で驚く。特にユーノの驚き方は半端じゃない。今までそんな事聞いた事が無かったのでかなり混乱している。
だが他の人達(特に女性陣)は興味津々で細かい事を聞こうとする。幾つになっても女性は恋愛事には目が無いらしい。

「で、どんな子?カッコ良かった?OKした?」
「どんな子って言っても…、誰から言ったら良いかな?」
「告白してきた子その子だけじゃないの!?」

予想外の答えに更に驚く。まさか複数の子から告白されてるとは…、だとすると何人から告白されたかが気になって来る。ユーノが何か面白い
動きをしていてエリオがそれをなだめているが、それは気にせず何人から告白されたかを聞いてみる。

「えーと、僕は四人かな?二人は何人だっけ?」
「私は五人です」
「あー、四人だな確か。印象に残らん奴ばかりだったが」

何ともモテモテな娘達に感嘆の声をあげる女性陣。だがユーノとしてはそんな事よりその中でOKしたのかが最重要。父親としてこれは聞いておかなければならない。

「それで!?OKしたの!?」
「していませんよ。…(…そうだ!)今私達には共通の気になる男性がいますから」
「そっか…してないの…、ええ!?」

三女からOKしてないと聞き、安心した直後にまさかのお相手発言。しかも三人同じ相手と聞いて更に倍率ドン!娘も成長しているので、
恋位はしても当たり前だと言うのは頭では解っているのだが、父親としてはどうしても納得が出来ない。相手はどんな子なんだ?学校で知り合ったのか?
どこまで進んでるんだ?と色々な考えが浮かんでくる。そんなもう一杯一杯のユーノに対して、五女が最後の言葉をぶつける。

「あー、早く会いたいな。もうすぐだからな、『弟』は」
「そうか…、弟って言うの…?弟?」
「そうだよ。弟。もうすぐなのは母さんから産まれる」
「私達一言も何処かの男の子とは言ってませんよ?フフフ」

聞こえた単語が理解できず一瞬固まってしまう。そして冷静になって周りを見渡してみると、皆おなかを抱えるなどして笑うのを一生懸命堪えている。
途中で既にユーノ以外に念話でネタばれをしていた様で、三女の提案で皆ユーノの慌てた姿を見る為に黙っていたらしい。それを見て途端に力が抜けるユーノ。

「ごめんなさいねお父さん。少し悪乗りし過ぎたでしょうか?」
「いや、別に良いよ。でも本当に気になる男の子居ないの?」
「おらんよ。どうにも頼りなさそうな奴らで興味も持たん」
「そっか。(ホッ)じゃあ弟が産まれたら皆可愛がってあげようね」
「うん!抱っことか、お出かけとか、凄い楽しみ!」

本当に楽しそうにしている娘達の顔を見ると、さっきまでの事はどうでも良くなってくる。この笑顔を見てると、三人共凄く弟を可愛がってくれると思い、
ユーノも早く生まれないか更に楽しみになって来る。他の皆も同じ事を考えているのか優しそうな表情で娘達の方を見る。 だがこの時は誰も知らなかった。
数ヵ月後、弟を可愛がるために三人が争い、第一回の【誰が弟と一緒に過ごすか選手権】が開催し、それが数年に渡り続く事を…。
だがそれはもう少し未来の話。今は純粋に新しい家族の誕生を待ちわびる事にしよう。


「それにしても、さっきの父さん面白かったなー」
「あれはちょっとからかいすぎじゃ無かったかな?」
「まあそれが面白いんですがね」

昼食を終え、食後の休憩も済まし午後からまた泳ぎだした三人娘とヴィヴィオ、シグナム、アギトの六人。話題は先ほどのユーノの慌てよう。
皆予想以上の反応に今でも少し笑い、ヴィヴィオも少しやり過ぎだと言ってはいるが、顔を見てみると完全に笑っているのが解る。まあ皆がユーノをからかうのは
勿論愛があるのでからかうのであり、ユーノもそれを解っているのできつくは怒らない。そんな話をしていると、ふと四女がヴィヴィオの方を見ているのが
ヴィヴィオ本人が気付く。そしてシグナムとヴィヴィオを交互に見ているので、どうしたのか気になりヴィヴィオがどうしたのか四女に聞いてみる。

「ん?どうしたの?」
「あのさ、どうしてヴィヴィオ姉ちゃんとシグナムってさ?」
「うん。私とシグナムさんが何?」
「どうしてそんなにおっぱい大きいの?」
バシャーン!! 

大きな音を立ててヴィヴィオとシグナムが水の中に沈む。いきなり予想外の言葉を聞き力が抜けてしまう。とりあえず気を持ち直そうと立ち上がり、
いきなり何を言い出すのかと四女に問いかける。

「いきなりどうしたの?そんな事聞いて?」
「僕もおっぱい大きくなりたい!」

元気な声で答える四女の口を押さえる。少し恥ずかしい話題なので小声で話す。

「大きくなりたいって…、どうして?」
「だって男の人っておっぱい大きいのが好きなんでしょ?今日のプールでも姉ちゃん達のおっぱい見てる男の人多かったし」

四女がそう言った瞬間、ヴィヴィオ達の周りの男性達が視線をそらす。やはり彼らもヴィヴィオ達の胸に視線が言っていた様だ。だがそれも仕方がない。
ヴィヴィオやシグナムと言った美女が豊満な胸を持ってると、特殊な性癖を持ってない健康な男性は、自然と目が行ってしまうのは至極当然のこと。
ヴィヴィオもそれを聞いて少し恥ずかしくなって来るが、こう言う場所では仕方がないと開き直る。今は妹が何故胸が大きくなりたいのかを聞くのが先決。
さっきは好きな男の子はいないと言っていたのに、今は男の人はと言っている為、そこがどうしても気になってしまった。

「さっき気になる男の子は居ないって言ってたよね?なのにどうしたの?」
「弟って事は男の子でしょ?だったらおっぱい大きいほうが良いじゃん!僕の全然小さいし…」
「…そう言う事…」

理由を聞いて脱力するヴィヴィオ。確かに産まれて来るのは男の子ではあるが、赤ちゃんにそんな事を気にしてどうすんだと思ってしまう。

「あー、あまり気にしなくても良いと思うよ?男の子と言っても産まれたときは赤ん坊だし、その子が大きくなる頃には皆も大きくなってるよ」
「そうかな?でもおっぱい大きくなってるかな…?」
「えーと、ほら!ママ達は大きいでしょ?だから皆も大きくなるよ!」
「…そっか、そうだよね!大きくなるよね!」
「まあ、キャロ姉さんみたいにはよほどの事が無い限りはならんだろう」

五女の言葉がかなり酷く聴こえるが、とりあえず四女は納得してくれた様子なので良しとする。

「さて、私はそろそろシャマルと交代してくる。行くぞ、アギト」
「あ、まって、シグナムさん。私も一旦戻るから一緒に行く。それじゃ三人共、知らない人について行ったら駄目だからね?」
『はーい』

妹達の元気な返事を聞いてシャマル達の元に戻るヴィヴィオ達三人。娘達は普通に泳いでるのが飽きて来たので、ウォータスライダーなどの
アトラクションを周り始める。少々はしゃぎ過ぎな四女を二人で抑えながらも、三人共楽しくプールを楽しんでいる。一通りアトラクションを周り、
一旦皆の元に戻り休憩しようか話し合っていると、三女がある物を発見する。

「あ…」
「ん?どうした?何か見つけたのか?」
「ええ。あそこを見てください」

三女が指さした方向を二人が見てみると、自分達より小さな女の子が泣きながら立っていた。その子の周りを見ていると家族らしき人も居ないし、
それ以外にも彼女に近づいている人も話しかけてる人も居ないので、恐らく迷子だと三人共理解した。最初は三人共如何しようか迷っていたが、
周りの大人は誰も声を声をかけようとしないのを見て痺れを切らし、自分達が声をかける事にした。

「どうしましたか?」
「えっ…?」
「何か泣いてるみたいだったからさ。大丈夫?」

いきなり知らない人に声をかけられ驚いたのか、最初は中々喋ってくれなかったが、しばらくすると慣れてくれたのか少しずつどうしたのか話し始めてくれた。
どうやら三人の予想通りで迷子になっていたらしく、最初は親を探していたのだが、探しても見つからないのと、見知らぬ場所で一人で居るのが寂しくなり
泣いてしまって今に至るらしい。三人共この子をこのままにしたくは無いと思い、何とか母親を見つけてあげようと考えるが、正直どうしようかは思いつかない。
闇雲に探した所で見つけるのは難しいし、手分けして探そうにもこの子の母親はどんな人なのか解らない為それも出来ない。何か手は無いものかと考えていると、
遠くでトイレから出て来るユーノの姿見えたので、まずは父親に相談してみようと思い、子供と手を繋ぎ一緒にユーノの元に駆けだした。

「お父さん!」
「ん?あっ、どうし…その子は?」
「さっき知り合ってな、詳しく話と…」

娘が連れて来た子供を見て疑問に思っているユーノに娘達が詳しく説明する。大体の事を解りどうしようか考えるユーノ。普通だとプールの監視員など
此処の関係者に迷子の報告をした方が良いのだろうが、娘達は自分たちで見つけよう張り切っている為どうしようか迷ってしまう。この子の親や見つけてあげたいし、
娘達も折角やる気になっているので、それをあっさり終わらせるのは少し可哀想でもある。如何しようかと考えていると、一つ妥協案が思い浮かんだ。

「ねえ、君のお母さんの髪型と着ている水着の色を教えてもらえるかな?」

まずは女の子のお母さんの特徴を聞いておく。こうしておけば、母親を探している時この子が見逃しても自分達が見つけられるかもしれない。
母親の特徴がある程度解り、次は娘達の方に話しかける。娘達は母親を探す気満々らしいが、一応注意をしておかなければならい。

「とりあえずこの子のお母さんを探しに行こうか。でも、プールを1周しても見つからなかったら、係の人の所にこの子を連れて行くよ」
「ええ!どうして!?」

ユーノの言葉に四女が叫び、他の二人も口には出さないものの、納得のいかないと言った表情をしている。娘達が納得しないのは解っていたが、
あまり知らない子を長時間連れて歩く訳にも行かないし、既に両親が係の人に話して待っているのかもしれない。もしそうなら早く係の人に伝えなければならない。
それを教えると娘達はしばらく無言になっていたが、それなら仕方がないと納得してくれた。娘達もバカではない為こう言う所はしっかり聞いてくれる。

「それじゃあ少し一緒にお母さん探そうか?見つからなかったら係のお兄さんに聞いてみようね」
「うん…。ありがとうお姉ちゃん」

笑顔で話しかける四女に女の子も少し笑顔になる。とりあえず一通り歩いてみる事にするが、なにぶん人が多い為探すだけでも一苦労。
これだけいると母親に似た特徴の人が何人かいても仕方がない。実際特徴が一致する人は何人か見つけたが、女の子に聞いてみると違う人と言うのばかり。
そんな調子で歩いていると、プールもうすぐプールを一周する所まで来てしまい、やっぱり係の人に任せるか?と思っていると、何やら
慌てている女性の姿が見えた。姿を見てみると水着と髪型が女の子の母親の物と似ていた為、もしやと思い女の子にその女性を教えてみると、

「ママー!」

大急ぎで走り出して行ったので当たりだったようだ。娘達も女の子の親が見つかって嬉しいのか良い笑顔をしている。女の子の母親に事情を説明し、
何度もお礼を言われ少々照れくさくなってくる。あまり話していると終わるタイミングが掴めなくなりそうなので、少し強引ながら自分達も
シャマルの所に戻ろうとする。最後に娘達が女の子に別れの挨拶をすると…、

「バイバイ!お姉ちゃん達!」

笑顔で、そして元気な声の女の子の姿を見て見つかって本当に良かったと思う。娘達も笑顔で女の子と別れる。

「本当に良かったね。お母さん見つかって」
「まったくです」
「ぎりぎりで見つかったから少々焦ったがな」

楽しそうに話している娘達の姿を見て微笑ましく感じていると。ふと昔の事を思い出し少し笑いだしてしまった。五女が如何したのかと思いユーノに聞いてみる。

「如何した父さん?急に笑い出したりして」
「あー、ちょっと昔の事を思い出してね」
「昔の事?何を思い出したんですか?」
「うん、三人が迷子になって泣いてた事」
『!?』

それを聞いて一斉にユーノの方を見る娘達。それを解っているのか解っていないのか、三人が迷子になった事を喋りだす。三女は可愛いぬいぐるみに夢中になり
そのままはぐれてしまい、迷子センターの呼び出しで迎えに行ったら泣きながらなのはに抱きついていた。昔の三女は今ほど落ち着いた
クールな性格とは少し違っていた為、今にしてみれば本当に貴重な光景だった。

「あの後しばらくなのはの手を離さなかったんだよね。なのは困ってたなー」
「ん…」

四女の方はフェイト達とピクニックに出かけた時、四女が飛んでいる蝶を追いかけている内にどんどんユーノ達から離れてしまい、気付いた時には
お互いに姿が見えないほどに離れてしまっていた。それに気付いたユーノ達が急いで探していると、とてつもなく大きい鳴き声が聞こえて来たので
その場に行ってみたら盛大に泣いている四女の姿があった。昔から元気な子ではあるが、泣く事まで元気とは思わなかった。

「あの小さい体でどうやったらあんな大声出るのか、今でも解らないよ」
「し、仕方ないじゃん!あの時は本当にさびしかったんだからさ!」

五女の時ははやてと買い物に言った時に、子供達が集まる場所で本を読んで待っていたのだが、その時ユーノ達の買い物が長引いてしまい、
不安になった五女がそこを抜けだして探しに行き、戻って来たユーノ達と入れ違いになってしまった。ザフィーラにお願いして匂いで
五女を探して貰いやっと見つける事ができ、五女は声には出して泣いてはいないものの涙がボロボロ流れていた。

「その日から何日かはやてと一緒の布団で寝てたんだよね」
「父さん達がもっと早く戻ってこなかったからだろうが!」

こうして考えると、この子達もあーやって小さい子の世話を出来る程成長したと思い、時間の流れを実感してしまう。

「ほらお父さん!早く行きますよ!」
「もうおいて行こうよ!」
「昔の事を思い出すなら一人で勝手にしていろ」
「あっと、待ってよ三人共」

昔の事を思い出されたのが恥ずかしいのか、顔を赤くしながら先に進む娘達を慌てて追うユーノ。やはりまだまだ子供だと再認識してまた少し笑ってしまう。
その後シャマル達の元に戻ると既に皆が集まっており、時間を確認すると既にかなり時間が経っていた為そろそろ帰宅をしようとする。
娘達はもう少し遊んでいたいと言っていたが、これ以上は帰りが遅くなると説得して納得してもらった。

「あれ?」
「どうしたの?」

ユーノ達と別れ更衣室で着替えをしている女性陣の方だが、四女が何か声を出したのでヴィヴィオがそちらを見ると、自分の着替え入れを
一生懸命探している姿があった。一体どうしたのかと思っていると、四女が泣きそうな顔で此方を向いて一言。

「パンツ忘れた~」
「あちゃー。そう言えば水着を着て来ていたって言ってたね」

如何しようかと悩むヴィヴィオ達。普通なら何も穿かずに行けばいいのだろうが、生憎四女の今日の服装はミニスカート。流石にそれで
ノーパンで帰るのは流石にリスクがでかい。ユーノにもあまり知られたくないし如何しようかと思っていると。三女が四女に何かを投げる。

「はいこれ」
「わっと、…何これ? あ!僕のパンツ!」
「家で水着を着ているのを見て一応入れておいたんですよ。まさか本当に忘れているとは思いませんでしたが」

三女の気遣いで最悪の事態が免れて喜んでいる四女。良く出来た妹で良かったと思うヴィヴィオだが、最初から四女の着替え入れに入れておけば
良かったんじゃない?と思えたが、嬉しそうな四女と、それを見て満足している三女を見て何も言わない事にした。

「えーと、それじゃあ皆忘れ物は無いね。帰ろうか?」
『はーい!』

着替えを終え全員が合流して帰宅を始める、娘達はまだ名残惜しそうにしているが、今度は他の人も一緒に来ようと行ったら喜んでくれた。
帰りのバスに乗ってしばらく揺られていると、娘達が何やらウトウトしている。考えてみると今日はずっと泳ぎっぱなしだった。それが終わり
遊びに集中していたのが切れて疲れが一気に来たのだろう。バスにはまだしばらく乗っているので、ふとユーノがある事を思いつく。

「はい、ちょっとこっちに来て」
「うん…、何ですかお父さん?」

眠い目を擦りながら此方に来た三女を膝の上に載せ、四女と五女を自分の体にもたれかからせる。

「バスはまだしばらく乗ってるし、降りる所に着くまで僕にもたれてて寝て良いよ」
「良いの?父さん」
「うん。疲れてるんだし無理しなくて良いよ」
「そうか…、じゃあそうさせて…ムニャ…」

言いきる前に眠りに落ちてしまった五女。気付けば三女と四女も完全に寝入ってしまっている。やはり相当疲れていたのだろう。あまり泳いでいなかった
自分も正直言うと結構眠い。だが今日は楽しそうな三人の姿を見れたしこの疲れも悪くは無い。そんな事を考えているとヴィヴィオが声をかけて来る。

「ねえパパ?」
「なに?ヴィヴィオ」
「今度は、家族皆で海にでも行きたいね」

優しそうな笑顔でそう言うヴィヴィオ。今日は来れなかった人と一緒に出かけるのは、相当難しいと解っている。だがそれでも何とかして
皆で出かけたいと思う。この子達共約束したのだ。

「そうだね。今度は皆で、新しく生まれる家族と一緒に、ね?」

その答えに笑顔で俯くヴィヴィオ。シャマルやシグナムにアギト、エリオとキャロも満足そうな表情をしている。今年は無理かもしれないけど、
来年は皆で一緒に行こうと心に誓い、この日のお出かけは幕を下ろす。



[21737] マテ似三人娘の拾い物
Name: rattu◆50c335cc ID:c73723c0
Date: 2010/09/12 17:12
「それでは、良いですか?」
「ああ、こっちはこれで十分だ」

ある晴れた日の一日に、高町・ハラオウン・八神合同一家の家の一室。
そこではこの一家の三人娘の内の二人、三女と五女が真剣な表情で向かい合っていた。
この二人が今何をしてるのかと言うと、二人の手にはトランプが握られており、現在は二人でちょっとしたゲームで対決をしている。
特に賭けてる物も無く、普通に遊んでいるだけなのだが、それでも勝負と言う事なのか二人共それなりに真剣である。

「では…、行きます」

お互い準備が出来たので、三女がお互い同時にカードを見せる様に合図を出そうとする。
五女も真剣な顔で三女が合図を出すのを待つ。

「せー…の!はい!」

三女のその言葉で三女と五女が同時にカードをお互いに見せる。
そしてお互いに自分のカードと相手のカードを確認すると…

「私の勝ちですね」
「そのようだな…、あー、これで三連敗か、どうにも調子が悪いな」

結果は三女の勝利に終わったようだ。
だが勝った三女はあまり喜んではおらず、負けた五女もまったく悔しそうにしていない。
どうも二人共あまりこのゲームには御熱心では無い様子。

「ふう。おい、他に暇をつぶせる物は無いのか?」

どうやらトランプに飽きてしまったらしく、三女に何か他に楽しめる物が無いかを聞く五女。
その言葉を聞いて、三女も部屋を探し、部屋から出て何か暇つぶしが出来る物を探しに行くが、結局何も見つからずに部屋に戻る。
五女が何か面白い物があったかを尋ねるが、三女が首を横に振ったのを見てベットに寝転がる。

「暇だ…」
「暇ですね…」

そう小さく呟き、三女も五女の隣に腰を下ろす。
今この家にはこの二人しかおらず、他に誰かを誘おうにも人が居ない。
二人共特にやる事も無く、家でゆっくりしていたのだが、二人だけで過ごしていても何もやる事がなく、当初はゲームやトランプなどで遊んでいたのだが結局それらにも飽きてしまった。
魔法の練習でもするとかあるのだろうが、どうにもこの日はあまり二人共その気が起きないらしい。
二人でベットに横になりボーっとしていると、五女が口を開き三女に話しかける。

「外にでも出るか?」
「そうですね…、しかし何も目的なしに出るのはどうでしょう?」
「別にブラブラ歩くだけで良かろうが、このままここで寝てるよりは有意義だ」

五女の言葉に最初は何処に行こうか考える三女だが、別に時間つぶしなら適当に歩くだけでもいいかと考える。

「では出かける準備でもしましょうか?」
「ああ」

そう言った後、二人共ベットから起き上がり外出の準備をする。
二人共服を着替え、出かける準備も終えて外に出ようかと思うと、家の扉の開く音が聞こえて来た。

「誰か帰ってきたようだな」

誰かは知らないが、帰って来たのなら出かけるのをやめようかと思う二人。
だがそんな風に考えていると、自分達の部屋のドアが開き始める。

「ねえ?二人共いる?」

ドアを開いたのは、三人娘の最後の一人である四女であった。
三人の中で一人だけ出かけていた彼女が帰って来たのは別に良いのだが、部屋に入って来た彼女は何時もの元気な彼女とは違い少し困っている様子に見えた。
他の二人もその様子にすぐ気付き、一体どうしたのかと四女に尋ねる。

「どうしたのですか?随分元気が無い様ですが?」
「何時もはやかましいと言うのに、珍しい事だな」

若干口の悪い五女の言葉に一瞬ムッとする四女だが、今は別に良いやと思い無視する。

「今この家に居るの僕等だけだよね?」

いきなり家に居る人の数を聞いてきて、何かしでかしたのかと勘繰る三女。
普段一家の中で一番元気な四女だが、それが災いしてちょっとトラブルが起きる事が割とある。
四女の様子を見る限り、多分また何かあったのかと思い溜息が出る三女。

「貴様、今度は何をしたんだ?」

五女の方も、三女と同じ様に四女がまた何かしたのかと思っているらしく、あきれた表情で四女に話しかける。

「何かした訳じゃないけど…、ちょっと…」

喋ろうにも口ごもったり小声になったりする四女を見て、二人共案の定何かあったなと確信する。
しばらく二人で四女が何をしたか話すのを待つが、四女の方はどう説明して良いのか中々思いつかないのか、どうにも次の言葉が出てこない。
何時まで経っても続きを言わない四女に、五女がイライラしだした時、四女がいきなり二人の手を掴んでくる。

「もうめんどくさい!二人共とりあえず来て!」
「な!?引っ張るなバカ!」
「まあ、連れてって貰って直接見た方が解りやすいでしょうね」

そのまま二人を引っ張り外に出ようとする四女。
五女はいきなり引っ張られた事に驚き、三女はとりあえず付いて行って直接確かめようと思い、四女にこのまま引っ張って貰う事にした。
家を出た所で玄関のカギを締め、そしてすぐにそのまま四女に引っ張られて行く二人。
しばらく四女に引っ張られて行くと、普通の道からは少し逸れ、人が普段あまり通らないような道を通り、一体どこに行こうとするんだと思い始める二人。
別に二人共怖いと言う事ではないが、一体この子は何処に行くつもりなのかと若干不安にはなってくる。
流石に行き先が気になって来たのか、三女が四女に何処まで行くのかを尋ねる。

「まだ着かないのですか?それにこんな所に来ていたなんて…、母さん達に知られたら怒られますよ?」
「もうすぐ着くよ!それに普段こんな所に来たりしないってば!」

二人を引っ張りながら質問に答え、そのまま奥の方に先に進んで行く四女。
二人共それ以上は何も言わずに、四女に引っ張られて行くと、それから一分ほどで四女が歩みを止める。

「ちょっと待ってて」

そう言いながら、四女が二人から少し離れた所で何やらゴソゴソしだす。

「何をするつもりだ?あいつは」
「さあ?まあすぐ解る事ですし待ってましょう」

お互いに何かをしている四女を見つつ、適当に話しながら四女が戻ってくるのを待つ。
そしてしばらく待っていると、段ボールの様な箱を持って二人の元に戻ってくる。

「これ見つけちゃったんだけど…、どうしよう?」

そう言いながら、箱を二人の方に持って行く四女。
何か変な物でも入っているんじゃないかと、二人が警戒するが、困った顔をしている四女を見て多分悪戯とかではないと判断する。

「では、開けて貰いますか」
「ちっ、仕方がない」

じゃんけんで負けた五女が箱に手をかけ、その蓋を開ける。

「「…」」

その中身を見て固まる二人。
四女もやっぱり驚くよねと言った表情で固まってる二人と箱の中身を見る。
その箱の中には…

「にゃー…」

子供の猫が一匹が入っていた。





「で?何処でこの猫を拾ったんだ?」

それから暫く経ち、とりあえず固まった状態から戻った三女と五女。
色々聞きたい事はあるが、まずはこの子猫を何処で拾ったのかを聞こうとする五女。
四女も一生懸命子猫を見つけた事を思い出す。

「えーと…、先週位に外で遊んでる時にね、何か鳴き声が聞こえて来て…」
「それで探してみたら、こいつが入っていたと?」

だとすると捨て猫か?と五女が考える。
今のご時世でそんな事をする奴が居るとはと思い、少し機嫌が悪くなる。
そんな事を考えていると、四女が話を続ける。

「うん。それで可哀想だったから…、ここに箱ごと持って来て、学院の帰りとかに食べ物と飲み物買ってたんだ」
「どうりで、最近学院帰りで勝手に一人で帰っていると言うのに、家に帰るのが一番遅い訳だ…」

五女の言う通り、最近の四女は二人と一緒に帰らなかったり、一緒に帰ったと思うとすぐに出かけたりしていた。
何時もと違う行動をしている四女を見て、何をしているんだ?と思っていたが、これを見て納得した。
今までは四女一人で頑張って来たのだが、流石に一人で続けるのは辛くなってきたのか、少し悩んだ挙句まずは自分と同じ立場の二人に相談することにした。
五女は何故見つけた時にすぐ自分達に相談しなかったのかと、少し不機嫌になるが、なんだかんだで先に相談してきたから良しとした。
とりあえず今居る三人で、この猫をどうするかを考える。

「しかし、私達が面倒を見ていても、結局お前が一人で世話しているのと大して変わらんぞ?」
「やっぱそうだよね…」

五女の言う通り、このまま自分達が手伝っても何の解決にもならない。
箱に入っていたと言う事は、元々誰かが子猫を飼っていて、それで何故か知らないが捨てたのだろう。
四女の話だと人間にも躊躇い無く寄って来るらしく、人に慣れているらしいが、正直それでは野良で生きて行くのは少し心配。
出来れば誰かに引き取って貰うのが一番良いのだろうが…

「えー!?絶対やだ!」

と、四女が物凄い勢いで否定する。
予想通りの答えが返って来るが、だとすると他の方法を考えなければならなくなる。
一応一つだけ案はあるのだが、正直それを選ぶのは少し迷ってしまう。
とりあえず他に何か案が無いか、さっきからまったく話に参加しない三女の聞いてみる。

「おい、そっちは何か良い考えは無いのか?」
「…」
「ん?」

話しかけても何も返してこない三女に、どうしたのかと思い三女が居た所を見てみるが、そこにはさっきまで居たはずの三女の姿が無かった。
何処に行ったのかと探していると、先程四女が持っていた子猫の入っている箱の方に移動していた。
何をしているのかと二人が三女の方に近づくと…

「…(ちょいちょい)」

三女が何処から持ってきたのか解らない猫じゃらしで子猫と遊んでいた。
普段あまり感情を顔に出さない無表情な三女だが、今の顔は若干にやけており、他の二人も何時もと違う三女の変な顔に若干引いている。
正直話しかけるのは少し嫌だが、話は進めたいので声をかける事にする。

「なにをしているかー!」
「ふぇ!?」

五女の大きな声を聞いて、変な声を出して驚く三女。
何が起きたのか解らないと言った表情で周りを見るが、それを呆れた表情で見つめる二人。

「僕等二人でこの子の事話してるのに、なにしてんの?」
「貴様、話を聞いていなかっただろう」
「えと…、ごめんなさい」

二人に睨まれ、流石のに少し悪いと思っていたのかすぐに謝る三女。
すぐに気を取り直し、三女も子猫の事をどうするか考えるが、やはり中々良い案が思いつかない。

「一つだけ案は無い事は無いのですが…」
「やはりあれしかないか…」

三女の言葉に、五女も自分と同じ考えしか浮かばなかったかと嘆く。

「ねえ?あれって何?」

四女だけ二人の考えが解っていないらしく、二人に質問する。
三女と五女もお互いの顔を見合わせ、同時に自分の考えている案を喋る。

『家で飼う』

二人が思っていた通り、お互いに同じ考えを持っていた。
このまま放っておく訳にはいかない、だが誰かに引き取って貰おうにも四女が猛反対するのでこれも却下。
そうすると選択肢が狭まり、二人共この考えしか浮かばなかった。

「それいいじゃん!そうしようよ!」

四女は大喜びでその案に賛成をするが、そう簡単に行く訳が無いので二人共この案は言いだせなかった。

「お前はそう言うがな…、色々難しいのだぞ?」
「ですね」

二人の言う通り、動物を飼うと言うのは簡単な事ではない。
命を預かると言うのもあるが、食事の用意やトイレの躾、更には病院にも連れて行かなければならないなど、動物を飼うのは色々と大変。
だが、まずそれ以前の問題が一つある。それは…

「母さん達が許可をくれるかだな」

飼った後の事より、まずは子猫を飼う為に、彼女達の両親であるなのは達に許可を貰わなければならない。
だが、ただでさえ家族が多い家だと言うのに、ペットで無いが普段は狼の状態のザフィーラ、たまに子犬状態のアルフも居る。
そう考えると、このままなのは達に子猫を飼って良い?かと聞いても、正直許可を貰えるか不安がある。
とはいえ、三人共他に方法が思い浮かばないし、既に子猫の虜になった三女と四女もこの子を飼いたいと思っている。

「…なんとかなのは母さん達を説得せんとな」

五女の言葉に、三女と四女もうなずく。
そうしてすぐに三人で集まり、自分の母親達を説得する方法を話し合う。
まずは、最初にお互いの母親達を各々で説得すると言う案を出したが、どう考えても三人全員言い勝てないビジョンしか浮かばない為却下。
次はなのは達両親以外の人達に協力を仰ごうと思うが、ヴォルケンははやてに強くは言えないだろうし、エリオ達上の兄弟は母親達の味方にならないが、自分達の味方にもならない中立の立場に居そうなのでこれも却下。
その後幾らか案も出たのだが、どれも上手く行きそうに無いので、中々良い案が決定しない。
三人で更に色々案を考えていると、ふと四女がある提案を出す。

「母さん達四人の内、誰か一人でも味方につけれるかな?」
「ふむ、全員を相手をする前に、まず相手の一人を引き入れるか…」
「簡単ではありませんが、少なくともさっきまでの案よりは現実的かもしれませんね」

四女の案に、残りの二人もその案に賛成する。
となると、次は誰を味方に引き入れるのかであるが、引き入れる様に説得する相手も選ばなければならない。

「ではまず、四人の内誰が一番引き入れにくいかですが」
「なのは母さんだね(だな)」
「…やはりそうですよね…」

一番引き入れにくい人は、満場一致でなのはに決まった。
四人の両親の中で一番しっかりしており、優しいながら厳しい所もあるなのはが一番の難関である。
もし味方になれば心強いのは確かなのだが、流石にそんな分の悪い賭けは遠慮したい。

「では次は一番引き入れやすそうな人ですが、これは二人に絞られますね」
「だな。フェイト母さんと…」
「父さんだね」

引き入れやすそうな人も、迷いなくフェイトとユーノと答える。
母親達三人の中で、比較的子供達に甘く、あまり厳しくないフェイトと、若干押しが弱くあまり娘に強く言わないユーノの二人が引き入れやすそうだと三人は考える。

「そうなると、フェイト母さんと父さんのどちらか一人…、あわよくば両方を味方にしたいですね」
「二人共なのは母さんに弱い所があるが、まあそれでも居てくれた方が助かるな」

五女の言葉が少々酷い感じもするが、別に間違っても居ないので誰も訂正しない。
とりあえず三人で話し合った結果、家に帰った時にフェイトとユーノのどちらか、あるいは両方居た場合はまずなのはとはやてより先に説得し、仲間に引き入れてからなのは達と話し合うと言う事になった。
出来ればはやても引き入れたいのだが、なのは程ではないが説得が難しそうなので見送る事にした。

「さて、作戦も決まったし、早速家に戻るとするか」
「そうですね」

四女が子猫の入った箱を持ち上げ、三人で自宅へと歩きだす。
歩いている途中も、話をどう進めて行くかを考え、出来るだけフェイトとユーノを説得出来る確率を上げようと話し合う。
そうやって歩いていると、あっという間に家についてしまった。
三人共気合を入れなおし、家の中に入ろうとすると、ふと四女がある事を思いつく。

「ねえ?もし母さん達が四人全員家に居たらどうするの?」

その言葉を聞いて動きが止まる三女と五女。
確かにフェイト達を説得する事しか考えていなかった為、四人全員が居た事は考えていなかった。
そしてもしかしたらユーノもフェイトもおらず、なのはやはやてだけが家に居ると言う可能性もある。
何故そんな簡単な事に気付かなかったのかと、三女と五女が頭を抱える。

「どうする?一回戻って作戦を練り直すか?」

五女の言葉に、少し迷いながらも賛成する三女。
正直出来るだけ早く子猫を飼いたいのだが、このまま中の様子が不確かな状態で行くのは三女としては避けたい。
もし断られたらそれで終わりなので、ここは確実に作戦を実行する為一旦子猫を元の場所に戻しに行こうとする。

「戻りましょう。出来れば今日の内に明日の母さん達の予定を確認して、それから行動に移りましょう」
「賛成だ。一か八かの賭けなど出来るだけ避けたいからな」
「でも…、う~」

三女の言葉に賛成する五女だが、四女は今一納得していない様子である。
しかし少しでも子猫を飼える確立を上げる為、今日はなんとか我慢してと三女と五女が説得して、何とか納得させる事が出来た。

「では戻りましょうか」

家から離れ、四女に案内して貰った所に子猫を戻しに戻る三人。
だが、そんな三人の後ろから聞きなれた声が聞こえて来た。

「うん?どうした?三人共?」
『!?』

三人が声のした方を振り返ると、そこには仕事が終わりで帰宅してきたヴィータの姿があった。
咄嗟に四女がヴィータに気付かれる前に子猫が入った箱を隠し、何とかばれずに済んだ。
だが、いきなり現れたヴィータに、三人共慌ててしまう。

「何してんだお前等?家入るんならさっさと入るぞ」

そう言いながらさっさと家に入って行くヴィータ。
三人共このまま子猫を元の所に戻そうと思っていたのだが、今この状態で戻ると間違いなく家族に怪しまれると思い、どうしようかと迷う。
三人各々でどうしようかと考えていると、三女がおもむろに家の方に戻り、玄関の方に歩いて行く。
それを見て、五女が慌てて三女を止める。

「ちょっと待て!?本当に家に入るつもりか!?」
「どうせこのまま戻っても確実に怪しまれるだけです。だったら思い切って攻めるのも一つの手です」
「そうかも知らんが、他に何か方法を考えるとか…」

三女の言う事も一理あるのだが、だからと言ってこのまま無策に突っ込むのは流石にまずいと思う五女。
四女の方は子猫が入った箱を抱えたまま、心配そうな表情で二人を見つめる。

「時間がかかればそれだけ変に思われます。それに…」

自分を止める五女を説得し、ドアノブに手をかける。
そして扉を開ける直前に二人に喋りかける。

「シャマルと一緒に病院に言っている母さんと、仕事から返ってくる時間がバラバラの父さん達がこの時間に四人一緒に居る確率は…相当低いんです。だから決して、分の悪い賭けではありません!」

そう言いながら、ドアノブを引っ張り玄関を開ける三女。
そしてそこには…



「お帰り三人共。玄関の前でどないしてたん?」
「お帰りー。あ、フェイトちゃん、ユーノ君、食器取ってくれるかな?」
「はい、なのは」
「…何でこんな時に限って全員居るんですか!」

三女の予想とは完全に外れており、三人の親であるなのは達四人が全員家に帰って来ており、三女がorzと言った感じで床に手を付く。
他の二人も、まさか本当に四人全員揃っているのは思っていなかったので、内心かなりまずいと焦る。
最悪フェイト達を味方に出来なくても、誰か一人を三人で説得すると言う方法も考えていたのだが、全員居るとなるとそれも難しい。

(どうする!?最悪の状況だぞ!?)
(とりあえず子猫を皆にばれない様に私達の部屋に連れて行って、何とかフェイト母さんと父さんを母さん達から引き離して味方に…)

念話でどうにかしてフェイト達を引き入れるかを話し合う三人。
まずは一旦子猫を自分達の部屋に連れて行こうとし、なのは達にばれない様に部屋に戻ろうとするが…

「ん?ちょっと待ちな三人共。何を持って帰って来たんだい?」
『!?』

部屋に戻ろうとする三人を、何かを感じ取った子犬状態のアルフが止める。

「どうしたん?アルフ?」
「三人が何かを連れて帰って来た様です。持っている箱の中から何やら匂いがします」

はやての質問にいち早く答えたのは、何時もの狼状態の姿のザフィーラであった。
どうやらその嗅覚で、四女が持っている箱の中に生き物が入っているのを解ったようだ。
ザフィーラの言葉を聞き、なのは達の表情が少し険しくなる。

「三人共、その箱の中身、見せてくれるかな?」
『…はい…』

娘達に優しく箱の中身を見せてと頼むなのはだが、娘達には見せないと駄目だよ?と言った静かなプレッシャーを感じる。
そんなプレッシャーに娘達が耐えられるはずもなく、何も言わずに素直に近くに居たヴィータに箱を渡す。
そのままヴィータに箱を貰い、蓋を開けて中を確認するなのは。

「…あららー」
「何が入ってるの?なのは?」

箱の中を見たなのはの様子を見て、フェイト達も中を確認する。
全員多少のリアクションの違いはあるが、皆なのはに似た反応を示す。
その内ヴィヴィオが子猫に興味を持ったのか、箱の中から子猫を取り出し、そのまま抱き抱える。
とりあえず子猫はヴィヴィオに任せ、なのはが娘達にこの子猫をどうしたのかを聞く。

「この子猫どうしたの?」
「えーと…」

なのはの質問に、四女を中心に先程の事を話す三人。

「フー!」
「おおー、いっちょまえに威嚇してる」
「ヴィヴィオ…私の前に猫を置くな…」

そんな娘達の事など放っておき、ヴィヴィオが子猫をザフィーラの近くに持っていったりして遊んでいた。まあそれは別にどうでもいい。
なのはが娘達から詳しい事を聞き、子猫をどうするかを考える。
別になのはも飼うだけなら構わないと思っているのだが、飼うと言う事はこの子猫の命を預かると言う事になるので、そう簡単に許可を出す訳にはいかない。
動物を飼う事がどれだけ大変か、それが解っているのかを娘達に確かめなければならないと思い、少々きつめな言い方で娘達に尋ねるなのは。

「三人共?この子を飼うってことは、この子が死ぬまでずっと面倒を見るってことだよ?悪い事をしないように躾けたり、トイレの掃除もしなきゃいけないし、
病気になったら病院にも連れて行かなきゃいけない。それ以外にやらなきゃいけない事も沢山あるかもしれない。それでもこの子を…」
「飼いたいです!」
「僕も!」

なのはが全部言いきる前に、三女と四女が大きな声で飼いたいと答える。

「躾もちゃんとします、育て方も自分達で調べます」
「だからお願い!なのは母さん!」

今までにないほど真剣な三女と四女を見て、流石のなのはも若干迫力に引いてしまう。
真剣な二人の様子を見て、これなら子猫を飼っても良いかな?と思うなのはだが、ふと五女の方を見る。
先程の二人と違い、何も喋らずずっと二人の近くで大人しくしている。
もし子猫を飼う場合は、三人が世話をするのを条件にしようと思っているのだが、五女の方はあまり子猫の事に興味があるのかが良く解らない。
五女がもし子猫を飼う気が無かったら、許可を出す訳にはいかないので、ちゃんと五女の気持ちを聞こうとするなのは。

「ねえ?二人はああ言ってるけど…」
「解っている、なのは母さん」

何を聞かれる事が解っていたのか、なのはが最後まで言い切る前に五女が言葉を発する。
そして三女と四女、子猫の方を一度見て、なのはに自分の気持ちを伝える。

「私も、この子を飼いたいと思ったから協力したんだ。勿論私も手伝う」
「さっすがー!」

五女の言葉に、二人共非常に喜び、四女は五女に対して思いっきり抱きつく。
抱きつかれてきたのが恥ずかしいのか、四女を引っぺがそうとする五女だが、かなり強く抱きついているのかなかなか外せない。

「…では私も」
「何でお前まで抱きついて来るんだ!?」

じゃれあっている二人が楽しそうに見えたのか、自分も五女に抱きつく三女。
楽しそうにしている娘達の姿を見て、少し微笑ましく思い、自然と笑顔になって行くなのは。

(フェイトちゃん、ユーノ君、はやてちゃん、三人はどう思う?)

他の三人に念話を送り、子猫の事に関しての意見を貰おうとするなのは。
さっきまではなのはが話を進めていたが、当然フェイト達の意見も聞かないといけない。

(私は良いと思うよ。三人共真剣みたいだし)
(僕も賛成。あの子達にも良い経験になるだろうし)
(二人がええっていうんなら私も何も言わんよ。まあ別に駄目とは最初から言う気は無いけど)

三人共特に反対も無いらしくなのはも安心する。
そして今だじゃれてあっている娘達を止め、話の続きをする。

「はい、三人共。ちゃんと話を聞こうね」

なのはの声を聞いて、じゃれあうのをやめ、三人共真剣になのはの方を向く。

「フェイトちゃん達も良いって言ったし、三人がしっかりお世話するって言うなら、飼っても良いよ」
「やったー!」
「ありがとうございます!お母さん!」

なのはから許可を貰い、大喜びする三人。
少し喜びすぎじゃないかと思ってくるなのは達だが、嬉しそうな娘達の姿を見てまあ良いかと思う事にする。

「そう言えばこの子って男の子かな?女の子かな?」

ふとヴィヴィオが子猫の性別が気になる。
娘達にも聞いてみるが、彼女達も良く解っていないらしく首を横に振る。

「そんなんお股を見れば一発やん」

そう言いながらはやてが子猫を抱きあげ、身体を仰向けにして子猫の股の所を確認する。
娘達が真剣な顔ではやての方を見、男の子か女の子、どっちなのかを待つ。
しばらくじっと子猫の股を調べるはやてだが、中々子猫の性別を答えない。
他の家族がどうしたのか?と思っていると、困ったような笑顔を皆の方に向けて喋りだす。

「…後で病気持ってないか病院に連れて行くし、その時にお医者さんに教えてもらお!」

どうやら解らなかったらしい。
仕方ないので性別は後回しにする事にしたが、四女がある事に気付く。

「ねえ!この子の名前決めようよ!」
「ふむ、確かに名前が無いのは面倒だからな」
「可愛い名前を付けてあげないと」

四女の提案に、他の二人もノリノリで乗ってくる。
この子を飼うと決まったのなら、やはりまずは名前を決める事を忘れてはいけない。
これからずっとその名前を呼ぶので、三人共非常に慎重に名前を考える。
一生懸命名前を考えている娘達を見て、なのはが念話でフェイト達に話しかける。

(ねえ二人共?三人がどんな名前付けるか興味無い?)
(ええな、あの子等の名前のセンスはどんなんか気になるし)

はやてもなのはからの念話を聞いて、それも面白そうだと思い、フェイトも何も言わないが顔は笑っており、なのは達と同じでどんな名前を付けるか気になる様だ。
三人共一生懸命子猫の名前を考えており、その姿が可愛くて、他の家族も少し微笑ましくなってくる。
しばらく三人が名前を思いつくまで待っていると、まずは三女が一番最初に思いついたらしく、真っ先にどうかと二人に聞く。

「タマなんてどうでしょう?」
「絶対却下!」
「ダサいにも程があるな」

一生懸命考えたのに、速攻で否定されてて落ち込む三女。
まあたしかに、三女には申し訳ないが、今の世の中に猫にタマと名づける人は正直居ないと思う。

(日本の日曜日の午後六時半を思い出すね)
(昔は最後のじゃんけんに真剣になったもんや)

昔の地球に居た頃の記憶が蘇り、懐かしい気分になるフェイトとはやてだが、なのはの方は娘の名前のセンスに若干落ち込む。
別に物凄く個性的なのは期待していなかったが、まさがタマが出てくるとは予想外だった。
と言うか日本ならともかく、なぜミッドに住んでいるのにタマという名前が出て来たのかが全く解らない。

「はーい!僕も良いの思いついた!」

元気に大声でそう言ったのは四女。
何やら自信満々と言った表情をしているが、正直言うと家族の皆が不安を持っており、どんな名前を言うのかなり怖い。
そんな家族の不安なぞ知る由も無く、大きな声で自分の考えた名前を答える四女。

「ゴッドカイザーなんて良いよね!」
「ド阿呆か貴様はー!」
「そんな名前恥ずかしくて人前で呼べるわけ無いでしょう!」

四女の考えた名前を、三女の時以上に思いっきり却下する。
他の皆も予め凄いのが来るのは予想していたが、予想以上の物が来た所為か、皆笑うのを必死で我慢している。
そんな中、四女の母親であるフェイトだけは、娘の考えた名前に頭を抱える。
この前なのは達に水着や服装のセンスに関して色々言われたが、まさか名前もここまで酷いとは思わなかったらしい。

(フェイトちゃん、大丈夫かな?)
(これに関してはどうにもね…、しばらくそっとしておこうよ)

落ち込んでいるフェイトを心配するなのはを、ユーノが今は置いておこうと言う。
正直今の落ち込んでるフェイトには、何を言っても無駄だろうと判断した為である。
ユーノのその言葉を聞いて、とりあえずフェイトをそっとしておく事にした。

「まったく、二人揃ってもう少しマシな名前を思いつかんのか?」
「面目ありません…」
「じゃあそっちは何か考えたの!?」
「今考えてる所だ」

最後に残っている五女だが、どうにも中々良い名前が浮かんでこない。
三女と四女もあまりまともな名前を出さなかった所為か、何とか自分で良い名前を考えないと思っており、どうにも慎重になってくる。
まともな名前で、出来れば呼びやすいのが良いと思い考えるが、どうしても浮かんでこない。
どうしようかと悩んでいると、ふと子猫の目を見る。

(?…ふむ、青い目か…だとしたら…)

子猫の目を良く見ると、非常にきれいな青い色をしていた。
その目を見て、五女がある事に気付き、母親のはやてにある事を聞く。

「母さん、地球の方で青い宝石で有名な物って何かないか?」
「青い宝石?」

猫の名前を考えていたのに、いきなり青い宝石と聞かれて、どうしたのかと思うはやて。
だが一応聞かれたので、すぐに思いついた青い宝石の名前を言ってみる。

「そやなー、やっぱサファイアが青い宝石に代表格かな?」
「サファイアか…、ふむ…」

サファイアと聞いて、再び何かを考えだす五女。

(サファイア…サファ……サファイ…サフィア……)
「よし!良いのが出来た!」
「本当!?早く言ってよ!」

それから少しだけ考え、良い名前が思い浮かんだのか、嬉しそうな顔の五女。
三女と四女も気になるのか、早く言う様に急かす。
五女の方も、別に出し惜しみするつもりは無いので、さっさと考えた子猫の名前を答える。

「サフィなんてどうだ?悪くは無いと思うが…」

五女の口から出て来た名前を聞き、他の家族からもオー、と言った声が出てくる。
三女や四女のとは違い、中々可愛らしい名前である。

「この子の目が綺麗な青い色でな、それで宝石みたいだと思って宝石の名前から取ろうと思ったんだ」
「あー、だから宝石の名前を聞いて来たんか」
「サファイアだからサフィか、良い名前だね」

五女の説明に納得するはやてと、良い感じの名前で五女を褒めるユーノ。

「それじゃあ、この子の名前はサフィで、皆問題無いよね?」

最後になのはが全員に確認を取るが、勿論皆異存は無いらしく、何も不安の声が上がらない。
どうやら、子猫の名前はサフィで決定の様である。

「よし!今日からよろしくね!サフィ!」
「私達が一生懸命育てますからね」
「躾は厳しく行くからな。覚悟するんだな」
「ニャー」

子猫を抱きあげ嬉しそうにする娘達三人。
猫のサフィ。新しい家族がこの合同一家の仲間入りした瞬間であった。









おまけ

「…なあアルフ」
「なんだい?ザフィーラ?」

今はなのはとザフィーラとアルフしかいない家の中。
まったりと過ごしている中で、ザフィーラがある日に今起こっている事を尋ねる。

「何で私の頭の上にサフィが乗っているんだ?」

ザフィーラの頭の上には、何故かサフィが乗っており、しかもぐっすりと寝ていた。

「さあ?あんたに懐いたんじゃない?」
「…そうか…」
「ザフィーラ、こっち向いて。写真にとって後で皆に見せるから」

その様子をカメラに取ろうとするなのは。
サフィはなのは一家に馴染んだようです。



[21737] マテ似三人娘の暴走
Name: rattu◆50c335cc ID:c73723c0
Date: 2010/10/01 16:48
無重力の暗い空間で働いている無限書庫司書達。
皆何時もの様に自分の仕事を進めている中、一つの小さな影がその司書達の側を通り抜けて行き、それに気付いた一人の司書がその影に挨拶をする。

「あ、アルフ。今日は司書長の手伝いに?」
「ああ、ユーノは向こうで良いんだよな?」

小さな影の正体は、ユーノの手伝いにやって来たアルフであり、丁度ユーノの所に向かおうとしていた所である。
丁度いい具合に挨拶をしてくれた司書に、ユーノの居場所を聞きすぐさま其方の方に向かう。
司書にユーノは何時もの所に居ると聞き、すぐにその場所に向かうアルフだが、その場所にユーノの姿は無かった。

「何処に行ったんだ?」

仕方なくその周辺を探し、近くに居た司書にユーノが何処かに行ったかを聞くが、皆何処に行ったのかは知らないらしく、仕方なく最初の所でユーノが戻ってくるのを待つ事にする。
やる事が無くしばらくボーとしており、中々戻ってこないユーノにイライラし始めたころ、丁度少し疲れた様な顔をしたユーノが戻ってくる。
ユーノは戻ってくると、そこで不機嫌そうな顔をしているアルフを見て、何も悪い事をしていないがまずいと思ってしまう。
そんなユーノを見て、少しきつめの言い方でユーノに話しかけるアルフ。

「随分遅かったね~?折角手伝いに来たって言うのに」

顔は笑っているのだが、目が笑っていないアルフに少々恐怖を感じるユーノ。
ユーノの方も、席を外していたのはそれなりの理由があるのだが、言い訳するのも怖いので素直に謝っておく。

「えと、ごめんアルフ」

そう言ったは良いが、その後アルフから何も言われないので、もしかして自分が思っている以上に起こっているのかと思い、だんだん不安になってくるユーノ。
その後しばらく、お互い無言の状態が続き、ユーノの胃が痛くなり始めた時、アルフが溜息を吐きながら喋りだした。

「まあいいさ、あんたが忙しいのは知ってるからね」

少し呆れながらも、別に怒っている様子の無いアルフをみて安心するユーノ。

「ほら、仕事始めるよ」
「あ、うん。アルフは向こうの方お願い」
「あいよ」

アルフに急かされ、ユーノも戻って来てすぐに仕事を再開する。
手伝いに来てくれたアルフに、今は何処を手伝って欲しいかを指示を出し、自分の分の仕事に手を出す。
それから暫く二人で仕事を続け、何事も無く時間が進んでいく。
このまま今日も何事も起こらず、平和に一日が終わると思っていたアルフだが、持っている通信端末にメールが入る。
他の司書達に迷惑が掛からない様に、ユーノに一言告げて人のいない所に向かう。

「まだ仕事中なのにプライベートメールって、どうしたんだ?」

普段は仕事中には連絡はせず、連絡があるとしても仕事に関しての事が殆どなので、プライベートで来るのは珍しい。
何かがあったのかと思い、どんな内容かを確認する。

「えーと、何々… !?」

内容を確認したアルフが、その送り届けられた内容を見て表情が一気に変わる。
そのまま最後まで内容を読み、そのメールの送り主に返事を送った後に急いでユーノの元に飛んで行く。
幸いユーノはまた何処かに行ってはおらず、先程と同じ所で仕事をしており、すぐさまユーノに近づいて行く。

「ユーノ!」

アルフの大きな声を聞き、声の聞こえた方を振り返ってみると、慌てた様子のアルフを見て何事かと思うユーノ。

「ど、どうしたのアルフ?とりあえず落ち着いて、ね」

まずは慌てている様に見えるアルフを落ち着かせ、冷静になって貰う。

「落ち着いた?アルフ?」
「ああ。悪いねユーノ」
「それで、一体どうしたの?随分慌ててたけど?」

ユーノの言葉が聞いたのか、何とか落ち着いたのか、何時ものアルフに戻りユーノも安心する。
落ち着いたアルフを見て、次は一体何があったのかを聞く。
先程のアルフの慌て様を見て、もしかすると家族の誰かが仕事中に大けがをしたのかと思い、そう考えると急に不安になってくる。
そんなユーノの気持ちに気付く事も無く、アルフが一体何があったのかをユーノに伝える。

「シャマルからメールが来てさ」
「シャマルさんから?なんて内容?」

連絡の主が最近はなのはと一緒に居る為、あまり仕事の方には出ていないシャマルと聞き、ちょっと疑問に思えてくる。
内容は良く解らないが、とりあえずアルフに内容を聞いてみる事にする。

「なのはが産気づいたって」
「あー、なのはが産気づいたんだ。じゃあ準備しようか」

アルフから内容を聞き、なんだと言った感じですぐに仕事を一旦止め、出かける準備を始める。
その様子を見てアルフがあれ?と言った表情でユーノの方を見る。
アルフの予想では、聞いた瞬間大慌てで仕事ほったらかしで、なのはのいる病院に向かうと思っていたのだが、随分と落ち着いた様子をしている。
その様子を見て、ユーノも年をかさね多少の事は動じない程に成長したと思い、アルフも少しユーノへの考えを改めようと思い始めて。
とりあえず自分も病院に向かおうと思い、出かける準備を始めると…

「…なのはが産気づいたー!?」
「今更かい!?」

しばらく準備を進めていると、急に叫び始めてアルフに突っ込まれるユーノ。
どうやらアルフから聞いた内容がすぐには完全に理解できなかったのか、しばらく動きながら準備していて、今やっと内容を全部理解したらしい。
最初のアルフの予想通り反応のユーノを見て、まったく成長していないと思い先程の考えを捨てる。

「だって、まだ予定日はもう少し先…」
「まあ予定はあくまで予定だし、前後することはあるさ。あんたの息子の割にはせっかちな子だね」
「それ関係あるの!?」

慌てているユーノを適当にあしらいつつ、他の家族にも緊急の用件で連絡を送っておくアルフ。
一通りの人達に連絡を送り、まだ混乱しているユーノの代わりに出かける準備を進める。

「まあこれ位で良いかな?さあユーノ、とっととなのはの所に行くよ!」
「あ、うん…。そうだ!アルフ!」
「ああ?なんだい?大した事じゃないなら後回しにするよ」

準備が終わり、さあ出かけようとした所を、何かを思いついたユーノに止められる。
折角良い感じで出れると思っていたアルフだが、呼び止められた所為か少々きつい言い方を返してしまう。
それにを見て少し怖くて引いてしまうユーノだが、どうしても一つ気になる事があり、一応どうするかをアルフに聞く。

「あのさ、子供達には連絡どうしよう?まだこの時間は学園だろうし」

ユーノの心配は、今はまだ学園で授業中の三人娘の事である。
まだ学園で勉強をしている時間なので、授業が終わった頃を見計らって連絡を送ろうかと思ったが、この事を知った後娘達に『どうして連絡をくれなかったの!?』と責められるのは怖い。

「んー。まあ送っても良いんじゃない?流石に授業中に抜けだしはしないだろ」

アルフが少し考えた後、連絡を送っても四女ならともかく、冷静な三女と五女なら暴走もせずに四女を止めると判断する。

「それじゃあ連絡送っとくね。 誰に送っておこうか?」

アルフから許可を貰い、早速娘達に連絡を送る事にする。
三人の内誰に送ろうかと考え、四女だと混乱して暴走するかもと思い四女は選択肢から除外する。
残りは三女と五女だが、この二人なら別にどっちに送っても良いかと思い、適当に目に入った三女の連絡先に連絡を送る。
娘達にも連絡を送り、出る準備も既にアルフが終わらせていたので、すぐになのはの元に向かうユーノ。

「それじゃあ、行ってくるね。皆、後は任せて良いかな?」
「はい。我々に任してください!あ、今度来るときは赤ちゃんの写真見せてくださいね?」

無限書庫を出る直前に司書達声をかけるユーノに、一人の司書が代表として送り出す。
他の司書も、仕事をしながらもアルフとユーノに声援を送る。
それを少し恥ずかしながらも、嬉しく思い受け入れ、二人はなのはの元に向かった。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

ユーノ達が無限書庫を出た時間と同時刻 学院の同じ教室で授業中の娘達三人。
静かに授業を受けている三人の中の一人、三女のポケットの中に入っている通信端末に連絡が入った事を告げる振動が伝わる。
それに気付き、普段は真面目に授業を受けている三女だが、今授業をしている教師の話が非常につまらないの為、ちょっとだけ内容を確認する。

(授業中に連絡とは…… お父さんから?どうしたんでしょう?)

仕事中のはずの父親からの連絡だと知り、一体どうしたのかと思い内容をしっかりと読む。

(えーっと…、なんですって!?」

その内容を理解した瞬間、四女が大きな声を出し席を立つ。
静かな授業中に突然大声を出した三女に皆驚き、教師も一体どうしたのかと言った表情で三女を見る。

「ど、どうしたんですか高町さん?」
「いえ、何でもありません」

教師の質問に顔色一つ変えずに答え、そして席に座る三女。
だが四女と五女だけは、長い付き合いの為か三女の様子が明らかにおかしい事に気付く。

『どうした?随分と珍しい表情をしているではないか』
『授業中だけど 何かあったの?』

三女を心配したのか、四女と五女が念話で三女に話しかける。
顔には全く出ていないが、内心完全にパニックになっていた三女の頭も、二人の声を聞いて冷静さを取り戻す。
自分一人ではどうしようかまったく考えが浮かばないので、二人に先程の連絡の内容を話し、どうしようかを相談しようとする。
四女が暴走しない様に予め釘を打ち、二人に父親から来た連絡の内容を伝える。

『なのは母さんが病院に運ばれて……、もうすぐ赤ちゃんが産まれると言う事らしいです』
『えー!?』
『なんだと!?誰からの連絡だ』
『お父さんです。どうやらシャマルから連絡があったらしく……、今はアルフと一緒に病院に向かってるようです』

三女から内容を聞いた二人は非常に驚いたが、何とか外には出さずに出来た。
すぐに三人共授業そっちのけこの後をどうしようかを話し合う。

『ここを抜けだすと、間違いなく母さん達に怒られますね』
『だが、この機会を逃すと産まれたばかりの赤ちゃんが見れんぞ?』
『授業を取るか、赤ちゃんを取るか……、どっちかだね』

赤ちゃんに会う為には、授業を抜け出し更に母親達の怒りが来る事は明らか。
だが授業が終わるまで待っていると赤ちゃんが生まれてしまう。
どちらを選んでもマイナス面がある為、三人共非常に悩……

『どうせこのつまらない授業を聞くのも苦痛ですし、お母さんに怒られるのもこの際構いませんね。行きましょう』
『だな、私達には弟の方が重要だ』
『賛成!と言う訳で抜けだそうか』

……一切悩む事無く授業を抜け出す事に決めた三人。何か三女がきつい事言っているが気にしない。
そして授業を抜け出す為、一人ずつ立ち上がり教室を出る。

「先生。少し体調が悪いので早退します」
「え?ちょっと…、高町さん!?」

最初は三女が少し強引ながらも、優等生的な感じで外に出る。
普段は真面目な三女がいきなり有無を言わさず出て行ってしまい、教師が混乱をしている所に、今度は四女が立ち上がる。

「先生!先生の授業眠いから保健室で寝てきます!」
「ハラオウンさん!?えと…、確かに私は今年教師になったばっかで…、あ~出て行かないで~!?」

四女は今まで思っていた事を喋って出て行ってしまい、それを聞いた教師が泣きそうになって四女を追おうとする。
しかし次は五女が立ち上がり、教師が今度は何!?と泣きそうな顔で五女を見る。
その教師の顔を見て一瞬引いてしまうが、すぐにある事を思いついたのか、ニヤリと嫌な笑顔を浮かべた後教師に話しかける。

「先生」
「な、何?八神さん?」
「先生の授業は聞くに堪えないほどつまらない物なので、私は帰らせてもらうぞ」
「そこまでひどいの~!?」

五女の止めの言葉を聞き、完全に泣きながら倒れる教師を無視して、さっさと教室から出る五女。
泣いてうずくまっている教師と、出て行く三人娘を唖然と見送る他の生徒達だった。
教室から出た後、すぐに三人共合流し、廊下を走り学園を出る事にする。
幸い教室は色々とカオスな事になっていた為か、誰も追ってこないので三人を邪魔する物はいなかった。

「急ぎましょう。早くしないと産まれてしまいます」

三女の言葉に四女と五女もうなずく。
廊下を走り、階段を下り、早く出ようとすると、目の前に見覚えがあるシスターの姿があった。

「あなた達!何をしているんですか!」
「ちい…!?シスターシャッハか…。面倒な相手だ」

自分達の前に立ちはだかるシャッハの姿を見て、悪役見たいな言葉が出る五女。
三人とシャッハは母親の関係で昔からの顔見知りであり、シグナムやフェイトと組み手をしているのを何度も見ている為、手強い相手と言うのは三人共解っている。
今目の前の事と、これから先の事を考えると出来ればシャッハと戦うのは避けたいが、お堅いシャッハが簡単に通してくれるとは三人とも思わない。
もし戦うとしても、シャッハと自分達の実力では、1対3なら間違いなく勝てるだろうが、戦っている間に他の人が自分達の所に来てしまう。
だがこのままではどうしようもない為、仕方なく三女と五女がデバイスを機動しようとすると、四女が念話で二人に話しかけてくる。

『二人共!……』
『…解りました』
『了解した』

四女からある事を聞き、そのまま速度を落とさず走り続ける三人。
その様子を見て、真正面から三人を止めようとするシャッハ。
そのまま三人とシャッハの距離が縮まり、交錯するまで後数メートルとなった時、四女が他の二人の手を掴む。

「行くよ!シャッハ」

その言葉を聞いた瞬間、四女のデバイスが輝きだす。

「バルニフィカス!」
<ソニックムーブ!>

二人の手を掴んだ後、母親と兄譲りの高速移動で一気にシャッハの横を通り抜ける。
まさか魔法を使ってまでも通り抜けるとは思わなかったので、一瞬驚くシャッハだがそこは歴戦の剣士。

「逃がしません!ヴィンデル…」

すぐさま自分のデバイスを起動して追いかけようとすると……、

「なっ!?」

突然何かに締めつけられる感触を感じ、すぐに何が起こったのかを確認すると、別々の色のバインドが自分の身体と足に巻きついていた。
すぐに娘達の方を見ると、三女と五女がシャッハの方に手を向けており、このバインドが二人の物である事を理解する。
三人の作戦は移動は四女に任せ、その後間違いなく追ってくるシャッハを二人のバインドで縛りと言う物であった。

(油断した!あの子達は小さいとは言えあの四人の娘。同年代で彼女達に勝てる子はいない程の実力!)

何もできず三人が走って行くのを見つめ、改めて才能の遺伝を実感するシャッハ。

(…もう一人産まれて来るんですね確か。またあの子達クラスが入学してくるんでしょうか?)

少し先の未来を楽しみに思い、そして少し不安に思うシャッハだった。
そしてシャッハから逃げだせた三人だが、既に学校の外に出ており、急いで病院に向かっていた。

「僕なのは母さんが行ってる病院知らない!二人は知ってる!?」
「この前私がシャマルと一緒に行った!付いてこい!」
「さっき勝手にシャッハにバインドを使ってしまいましたし、もうこの際どれだけ魔法を使おうが同じでしょう。飛んでいきます!」

三女の半ばやけくその提案に他の二人も頷く。

「ルシフェリオン!」
「バルニフィカス!」
「エルシニアクロイツ!」

其々のデバイスを起動し、瞬時に自分達のBJに身を包み空を飛ぶ三人。
場所を知っている五女を先頭に置き、その少し後ろを二人が付いて行くように飛ぶ。

「ここからだとどれ位かかりますか?」
「私のスピードなら20分程か」
「僕ならもっと早く行けるのに…」

四女が少し不満を口に出すが、自分一人だけ先に行くのは流石に駄目だと思っているので、しっかりと二人の速度に合わせている。

「ん?……あ!?」
「な!?おい!何処に行く!」

三人でそのまま飛んでいると、何かを見つけたのか急に三女が二人から離れ別の方に飛んで行く。
どうしたのかと五女が叫び、三女が飛んで行った場所を見てみると、風船が高い所に引っ掛かっており、それを涙目で見ている少女の姿があった。
そのまま三女が風船の所に飛んでいき、引っかかっていた風船を手に取り、そのまま少女に風船を渡す。
少女は突然飛んできた三女に驚きながらも、三女から風船を手渡され一気に笑顔になる。

「ありがとう!お姉ちゃん!」
「構いませんよ。……そうだ、こうやってっと……。それでは」

今度は飛んで行かない様に、少女の手首に風船に繋いでいる糸を巻きつける。
しっかり巻かれているのを確認し、急いで二人の元に戻る三女。
それをボーっと見送る少女に、席を外していた少女の母親が戻ってくる。

「どうしたの?空なんて見上げて?」

空を見て何もしない娘を見て、どうしたのか心配する母親だが、急に娘が笑顔で振り向きこう言いだした。

「お母さん!私魔導師になる!」

どうやら、ここに一人将来のエース候補が誕生したようである。

「まったく、急いでいるというのにお人よしだなお前は」
「すみません……、どうしても気になってしまって……」
「別に良いよ。僕達はそう言う所が好きなんだし。ね?」
「……ふん。とっとと行くぞ」

四女に話の続きをふられ、若干恥ずかしそうにしながらも病院へと進みだす五女。
それをニヤニヤしながら付いて行く四女と、否定しなかった五女に少し嬉しくなる三女。
そのまま微妙な空気で飛んでいると、急に下の方から何やら悲鳴な様な物が聞こえて来たので、どうしたのかと思い悲鳴の聞こえた方を見てみると。

「な!?おい!急げ!」
「もう行ってます!」

三人が見たのは、子供が好奇心でそうなったか、高いビルの屋上のフェンスを乗り越え足を踏み外し、今にまさに落下を始めている少年の姿があった。
それに気付き、すぐに少年の元に飛ぼうとした五女だが、既に四女が反射的に飛び出していた。
三人の中で最速の四女が向かい、この距離なら確実に間に合うと思い二人共安心するが、ある一つの事だけは心配する。

(この距離……、十分間に合う!)

自分のスピード、子供との距離、地面の高さを確認し、確実に間に合う事を確信した後、しっかり少年を捕まえる。
だがそこまでは良かったのだが、少年を助けて油断したのか、自分の進路上にある柱に気付かずそのままのスピードで派手に激突する。
かなり凄い音がし、少年が助かって安心した見物人もそれを見て一瞬うわ…と声が出てしまう。

「やっぱりしでかしたな」
「彼女が良い事をすると大抵最後にオチが付きますね」

二人が何時もの事と言った感じで四女の酷い落ちを見つめる。
その四女の方はと言うと、物凄い痛いのだがカッコ悪い所は見せられないと思い、必死で我慢していた。
鼻血を出しながら少年に怪我が無いかを尋ね、その四女の顔に若干引きつつ、怪我が無い事を伝える少年。
あまりの痛さに涙が出ている四女だが、本人は気付いていない。

「はい!今度はあんな事しちゃダメだよ!」
「うん……。でもお姉ちゃん大丈夫?」
「大丈夫だよ!?全然痛くないよ!? まあいいや それじゃあね!」

少年に突っ込まれ、あたふたして否定した後、二人の元に戻って行く。
それを見送る少年。

「カッコよかったなー…。鼻血出してたけど。僕も魔導師になれるかな?」

何か変な印象が付いてしまったが、また一人将来のエース候補が誕生した。
その後この少年と四女は再会を果たすのだが、どうしても鼻血の印象が強く残っていた所為か、四女が再度鼻血を出すまで少年は気付かなかったらしい。
そんな事はどうでも良く、微妙にフラフラしながら二人の元に戻った四女。
そして二人の元に戻った瞬間、緊張が解けたのか、一気に涙が出てくる。

「痛かった~……」
「はいはい、治癒魔法掛けてあげますからね」
「時間をかけたくないから飛びながらだがな」

三女が四女に治癒魔法をかけながら、再び病院の方に飛んで行く。
予想外の時間を食い、三人のペースも速くなる。

「それにしても二連続で面倒な事が起こったね」
「まあ流石に三回目は無いでしょう」

三女と四女がさっきまでの事を思い出す。
普段は平和な町中だが、よりにも寄って今日にこんな事が連続で起こると文句の一つも言いたくなってくる。

「そんな油断しているとまた何か起こるぞ」

三女の言葉を聞いた五女が、少し油断している三女に注意をする。

「母さん達の住んでいた世界では、『二度ある事は三度ある』ということわざが……、……本当にある物だなまったく!」

そう言いながら、今度は五女が何処かに飛んで行く。
またか…と二人が思いながら飛んで行った方を見ると、そこには苦しそうに倒れている老婆の姿があった。
周りの人も老婆が苦しんでいると言うのは解っているが、どうすればいいのか慌ててしまい何も出来ていない。
その様子に若干苛立ちを感じながらも、急いで老婆の元に向かう。
老婆の元までやってき、老婆の様態を確認するが、素人の五女に何処が悪いのかは解らない。

「おい!そこのおっさん!携帯位持ってるだろ!救急車を呼べ!」
「お、おっさ!?…わ、解った」
「他に誰か医療の知識を持った奴はいないか!?」
「あの…、私まだ看護学校に通ってますけど一応……」
「それでも構わん!素人の私よりはマシだ!」

自分だけではどうにもできないと悟り、他の人達を使いどうにか老婆を助ける五女。
最初は五女の言葉に若干不機嫌になる周りの人たちだったが、適格の指示と迫力に押され素直に言う事を聞く。
若干名幼女にきつく言われ興奮している変態が居たがまあ気にしない。
その後やって来た救急車に老婆をのせ、少し疲れた顔で二人の元に戻ってくる。

「お疲れ様です。見事な指揮ですね」
「まだ母さんには及ばんさ。昔は無能だったとか自分で言っていたが信じられんな」
「そんな事より!早く行こうよ!」

四女に急かされ、早速病院に向かいだす。
だが三人共、連続に起こるアクシデントの所為か、少しピリピリしていた。

「……流石にもう何も起きませんよね」
「幾らなんでもそれは……無いよね?」

二人共心配になって来たのか、どうにも弱気になっている。
そんな二人を見て、五女も少し微妙な表情で答える。

「もう起らんだろ……、常識的に考え…て……」

そう言いながらふと下の方を見てみると、人がたくさん集まっておりそこには……

「……あーくそ!三人で行ってとっとと終わらせるぞ!」
「はあ……仕方ありませんね……」
「もうやだー!」

そう言いながらも、助ける為に現場に向かう三人であった。




「な、何で今日に限ってこんなに面倒な事が起こるんだ……」

あれからしばらく時間が経つが、何故かそれからもちょっとした事件が沢山起こり、三人が随時それの解決、及び手伝いをした為か、一向に病院に着かない。
どうして今日に限ってこんなに面倒な事が起こるのかと、五女も疑問に思ってくる。

「僕等何か悪い事した?」

少なくとも、勝手に空を飛んだりデバイスでシスターを縛るのは良い事とは言えない。

「神様の悪戯ですか?だと言うならその喧嘩買いますよ?」

何か三女が物騒な事を言っているが、これだけ連続で色々起こっている所為か、殆どキレかかっている。
他の二人も三女程ではないが、かなりうっぷんが溜まっている為、もしこれ以上何か起きたら爆発しかねない。
実際直前のアクシデントでは、鬼気迫る三人の表情を見て子供達が泣いてしまった程である。
幸いそれ以降は何も起こらず、スムーズに進んで行き、なのはのいる病院まであと少しと言う所までやって来た。
何事も無く進み、三人のイライラも少しおさまってくる。

「後どれ位?」
「5分と行った所だろうな」
「あと、少しですね。もうすぐ弟が……」

三女の言葉を聞き、他の二人もワクワクしてきたのか、少し飛ぶスピードも速くなる。
そのまま病院の方に一直線に進んでいると、何やら左の方から光輝く物が視界の端に写った。
今度は何だとその光の方に三人が視線を向けると、遠くから何やら人が二人程此方に向かって飛んで来ていた。

「まてー!大人しく捕まれ!」
「ちっ、大した実力も無い執務官のくせに、しつこさだけは一級品か…」

この二人は現在逃亡中の犯罪魔導師と、それを追う新米執務官であった。
丁度執務官がこの犯罪魔導師の犯行を目撃し、少し戦った後援軍を呼ばれる前に逃げ出したのだが、執務官の方が頭に血が上っていたのか、一人で犯罪者を追いかけていた。

(面倒だがここで始末しておくか?どうせ一人殺した人間が増えた所で今更大差ない……、ん?)

しつこく追いかけて来る執務官が鬱陶しくなり、いっその事殺そうかと思うと、ふと自分の進路上に子供が三人いるのが見えた。
それを見て、これは利用できると思い、三人と少し距離を置いた所に止まり、自分のデバイスを三人の方にむける。
そして自分に向かってくる執務官に、大きな声で警告を促す。

「貴様!これ以上追ってくるようならこのガキ共を撃つぞ!」
「な!?」

その言葉を聞き、何とか犯罪者に近づくのを一度止める執務官。
執務官として見れば、何でこんな所で子供が飛んでいるのかと思うが、今はそれ所ではない。
何とか子供達を助ける方法をがんがえるが、新米の所為か中々良い考えが浮かばない。
その様子を見て、さっさと逃げようとする犯罪者だが、事態が良く解っていない四女が大きな声で文句を言う。

「ちょっとおっさん!僕達急いでるんだから放っておいて!」
「五月蠅い!ガキは黙ってろ!」

そう言いながら、三人に魔法弾を一発牽制で入れる。
執務官が一瞬ヒヤっとするが、外れたのを見てホッとする。
犯罪者の方も、これぐらい脅しておけば子供だし大人しくなるだろうと思っていたので、それ以上は何もしなかった。

「…殺りましょう」
「先に手を出したのは向こうだもんね…」
「ふふふ……塵芥を滅するのは気分が良いな」

だが、彼は運が悪かった。まずは手を出した相手が悪かった。そしてタイミングも完全に悪かった。
彼の犯罪人生の唯一の失敗、それは今このタイミングでこの三人に喧嘩を売った事である。

「基本陣形で行くぞ!最速でこの塵芥を潰す!」
「「了解!」」
「!?」

五女がそう叫んだ瞬間、四女がバルニフィカスを手に持ち、一気に犯罪者との距離を詰める。
五女は逆に距離を取り、三女はその二人の間の位置に陣取る。
二人の手には四女と同じ様に其々のデバイス、ルシフェリオンとエルシニアクロイツが握られていた。
そして、犯罪者に一直線に進んで行く四女が相手を射程圏にとらえ、手に持つバルニフィカスを一気に振り下ろす。

「パイロ…」
「ぬお!?」

いきなり予想以上の速さで距離を詰め、繰り出してきた鋭い一撃を何とか防ぐ。
その後、四女の連続攻撃を受け切り、生まれた隙を突こうとしてデバイスを叩き込もうとする。

「隙あり!」
「シューター!」
「な!?」

デバイスが四女に繰り出される直前、三女の放った魔法弾が犯罪者を襲う。
飛んでくるのを確認し、四女への攻撃を中断して飛んできた魔法弾の回避を優先する。
何とか全弾回避した後、邪魔になるので砲撃で撃ち落とそうとするが……

「ちぃ!あのガキ!撃ち落として……!」
「ドゥームブリンガー!」

今度は三女より遠くに居る五女が、遠距離から魔法を放ち相手の動きを制限する。
また攻撃を邪魔されて、かなりイライラしている所に、体勢を立て直した四女が再度攻撃を仕掛ける。
そして、しばらく四人の戦いが続き、犯罪者の方に焦りの色が見えてくる。

(こ、こいつ等…、ガキの癖になんて…!)

先程から少し戦いを続けるが、犯罪者の方はまったく攻める事が出来ないでいた。
基本的に四女が至近距離で戦い、一撃は軽いが手数で相手を押し、相手に攻撃の隙を与えない。
そして四女の攻撃が途切れ、隙が出来た所を三女の中距離からの攻撃で相手の動きを抑え、一番攻撃を受ける可能性が高い四女をアシストする。
最後に五女が二人と相手の動きを見て、攻撃と援護を使い分けて二人を守る。
犯罪者の方相当の腕利きであり、相手が三人の内一人なら倒せていたであろうが、三人の抜群のコンビネーションに完全に防戦一方である。

「アロンダイト!」

四女の攻撃で体勢が少し崩れた所を狙い、五女が砲撃で追撃をかける。

「くお!?」

その飛んでくる砲撃を、かなり体勢が崩れた状態で無理やりかわし、直撃は免れたが体勢はすぐには立て直せない程に崩れる。
それを見て、三女が相手の動きを止める為拘束魔法をかける。

「ここなら!ルベライト!」
「しまった!足が!」

咄嗟に発動させた為か、相手の片足の身を拘束するだけに至ったが、移動を止める事が出来たので問題無かった。
相手の動きを止めた事を確認し、四女が一気に勝負を仕掛けに掛かる。

「バルニフィカス!フルドライブで行くよ!」

その瞬間、バルニフィカスが形を変える。
自分の身長の数倍の長さを誇る大剣に姿を変え、母親譲りのザンバーフォームの形態になる。
それを両手でしっかり持ち、一気に相手との距離を詰め、止めに移る。

「雷刃……滅殺……」
「ぐう!」

自分に迫ってくる四女を見て、動けないと言うならと、出来うる限り硬い障壁を張り、何とか堪えようとする。
その障壁が何とか間に合い、相手は防御を完全にしたが、そんな事はお構いなしに四女は最大の技を繰り出す。

「極・光・斬!!」
「なめるなガキ!その程度耐えてやる!」
「……集え、明星……、すべてを焼き消す焔となれ……」

一撃にすべてを賭け、思いっきり下の方から相手を切り上げ四女。
その斬撃を障壁で受け止め、その障壁が壊れたら今度は持っているデバイスで防ぐ。
その瞬間足に付いていた拘束魔法が解け、犯罪者の身体が斬撃の衝撃で身体が上へと飛んで行く。

「ルシフェリオン……」

何とか四女からの攻撃を耐え、自分の身体とデバイスを確認する。
デバイスは先程の攻撃を受けて、少々ぼろぼろになっているが、この程度ならまだ戦えると判断した。
四女は決め技を放ち、消耗している今なら攻めるチャンスだと思い、一気に仕留めようとするのだが……

「ガキ共が…、今度はこっちの番…」
「ブレイカー!」
「へ?」

声のした方向を見ると、大きな桃色の閃光が自分に向かってくるのが見える。
それが三女の放った物だと確認し、すぐに回避をしようとするが、既に目の前まで来ていた為、防御すらはる時間も無く直撃を受ける。

「あの子達、あの年でなんて技を…」

三人と犯罪者の戦いを見ていた執務官が、子供達の放つ技を見て驚愕する。
どう見ても子供の三人が、並みの魔導師では使えない様な魔法を使うのを見て、自分の力の無さを実感してしまった。

「おっと、とりあえずあれを食らったらもう戦闘は出来ないな。ちょっと情けないけど、あいつを逮捕した後あの子達にお礼を言わないと」

三女の攻撃が止まったことを確認し、犯罪者を捕まえる為に三女の攻撃が直撃した所に向かって飛ぶ。
予想通り三女の攻撃が止めになっていたのか、気絶していた犯罪者が落下を開始していた。
このままだと地面に激突するので、魔法で相手を拘束しようとする。のだが…

「塵芥ごときが、我らの邪魔をするとどうなるか思い知らせてやる…」

一番遠くに離れ居ていた五女が魔力をチャージしており、既に発射直前まで魔力が溜まっていた。

「あ、巻き込まれたくないから僕も離れないと」
「そこの執務官さん。危険なので距離を取ってください」
「え?…って何あれ!?」

三女から注意を促され、一体何の事かと執務官が振り向くと、そこには明らかに子供がとは思えないほどどでかい魔力を貯めている五女の姿があった。
一体あの魔力をどうするのかすぐには解らなかったが、三女の注意と自分の本能でまずいと感じ、三女の言う通り落下中の犯罪者から急いで離れる。

「吹っ飛べー!エクスカリバー!」

魔力のチャージが完了し、落下している犯罪者にエクスカリバーを発射する五女。
そして見事に犯罪者に当たり、広範囲の爆発が起こる。
三女と四女は爆破範囲が解っているので、余裕を持って範囲外に逃れたが、執務官の方はそんな事を知る訳も無く、予想以上に広い爆破範囲から一生懸命逃げていた。
幸いギリギリの所で逃れる事は出来たが、恐ろしい三人の連続攻撃を見て、唖然とした表情で落下を再開した犯罪者を見る。

「なんてデスコンボだ…」

ボソッと思った事を呟く。
四女が敵を上にあげ、三女が撃ち落とし、五女が止め刺すと言う、酷い連携攻撃である。

「ちい!手間取ったな。急ぐぞ二人共」
「はい!」
「うん!」

犯罪者を撃破した事を確認し、急いで病院に向かうのを再開する三人。
執務官が彼女達には色々言わなければいけない事があるので、追いかけようとするのだが、もう酷いとしか言いようがない程ぼろぼろの犯罪者の回収を優先する。
今まで数々の凶悪な犯行を繰り返してきた男であるが、流石にあの三連発を見ると少し同情してしまう。

「さて、こいつはこれで良いけど、あの子達はどうしよう?」

犯罪者を拘束したはいいが、子供達をどうしようか悩む執務官。
彼女達も追わなければならないし、ボロ雑巾みたいな犯罪者も連れて行かなければならない。
どうしようかと迷っていると、手助けに来た別の執務官が合流する。

「援軍に来ました!大丈夫ですか!?」
「ああ、助かります!犯罪者は捕まえたんですが…」

その援軍に女性の執務官に、先程の事を説明をする。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「着いた!」
「もう!時間かかちゃった!」
「受付で母さんの場所を聞きましょう!」

やっとの事で三人共病院に到着し、急いで他の家族の元に向かう。
受付の人に詳しい所を聞き、階段を上った先には、落ち着かなくソワソワしているユーノと、その近くでベンチでゆったりとしているアルフの姿があった。

「お父さん!」
「え!?何で三人共ここに!?」

父親を見つけ、大急ぎで駆け寄って行く三人娘。
娘達の声を聞きユーノが振り返り、どうして娘達がここに居るのかと驚く。
今はまだ授業中のはずなのに、どうしてここに居るのかを聞きだす。

「三人共まだ学校じゃ無かったの?」
「えっと……、ごめんなさい。抜け出してきました」

それを聞き、アルフがアチャーと行った感じで手を頭に当てる。
ユーノとアルフも、まさか三人共暴走するとは思わなかったので、三人が病院に来るのは予想外であった。
とは言え、折角ここまで急いで来たので、追い返す事には行かない為一緒に待つ事にする。

「まったく、帰ったら皆に怒られるよ?」
「その程度覚悟の上だ」

ユーノの言葉に迷いなく答える五女。
他の二人も同意だと言う風に俯き、ユーノとアルフと一緒に待つ。
そうして皆で待っている間も、ユーノと娘達は落ち着かない感じでソワソワしており、ユーノはそこら辺をウロウロとしている。
その様子を見て、アルフが呆れたと言った表情で話しかける。

「出産を待つのは初めてじゃ無いのに、もう少し落ち着きなよ」
「何度でも慣れないもんだよ。それに久しぶりだし」

そう言いながら、チラッと娘達の方を見るユーノ。
最後に生まれたのは五女であり、それも十年近く前の事だと言う事を思い出し、時間の流れを実感してしまう。

(思えばこの子達もあっという間に成長したなー。色々大変だったけどしっかり育ってくれたし)

今までの娘達との過ごしてきた時間を思い出し、少し懐かしく思えてくるユーノ。
そんな昔の事を思い出しているユーノを放っておき、ソワソワしながら待っている娘達の元に、ある一つの影が近づいて来る。

「ユーノ!アルフ!」
「フェイト?」

近づいて来る影の正体はフェイトであった。
まだこの時間は仕事中のフェイトが来るとは思わなかったので、娘達が来た以上に驚くユーノとアルフ。
娘達の件がある為、まさか仕事ほったらかして来たんじゃないだろうか心配になってくるが、流石にそこは立派な大人なので問題無い。
仕事をさぼったとは思われたくないので、ここに来た理由を説明するフェイト。

「なのはの事は気にはなるけど、ここに来たのは仕事のついで」
「仕事の?この病院に何かあるの?」

フェイトの仕事で来たと聞き、若干不安を覚えるユーノ達。
まさか凶悪犯が病院に隠れているなど、そんな事があったら大変である。
そんなユーノ達の不安に気付いたのか、フェイトが笑いながら病院に来た理由を話す。

「大した事じゃ無いよ。近くでちょっと事件が起きてね、その事件の解決を手伝ってくれた人がこの病院に居るから、詳しい事を聞こうと思って」

その言葉を聞き安心するユーノ達。
今だ出産に頑張っているなのはを筆頭に、他にも多くの患者いるので、危ない人が居るのは勘弁して貰いたい。

「所でその事件って何だったんだい?」

ふとアルフがフェイトの言っていた事件が気になり、どんな内容だったのかを聞いてみる。
幸い周りには身内しかいないので、特に気にせず答えるフェイト。

「うん。逃亡中の指名手配犯が見つかったって連絡があってね、それで追ってる人が一人だけだったみたいだから、近くに居た私が手伝いに行ったんだ」
「なるほどね。で、その指名手配犯はどうしたの?」
「それがね、私が到着した時にはもう倒されててね、しかも倒したのがまだ未確認だけど一般の人らしいんだ」

それを聞き驚くユーノ。
一人とは言え、執務官でも捕まえるのにてこずる相手を、一般の人が捕まえたとは信じられない。

「それで?その一般人ってどんな人なんだい?」
「うーん、私も特徴を聞いただけだからまだはっきりとは解ってないんだけど、聞いた特徴に心当たりがあってね」
「心当たりね、どんな感じ?」
「えっとね、その人の特徴なんだけど……」

アルフにどんな人なのかと聞かれ、その同僚に聞いた特徴を思い出す。
娘達は親の仕事の事なのであまり気にせず、早く弟が生まれないかとじっと待っている。
フェイトはユーノ達と話を続け、一瞬娘達の方を見た後、ユーノ達に聞かれた特徴を話しだす。

「その人はね、三人の女の子だったらしいんだ」
『!?』

フェイトのその言葉を聞き、一瞬だけビクッと身体を震わせる三人娘。
三人共すぐに先程の病院に来る前に戦った事を思い出す。

『ちょ、ちょっと!さっきの母さんが行ってた人って僕達の事!?』
『多分……、逃げてた犯罪者と執務官って言ってましたし、十中八九私達の事かと……』
『だ、だがまだ確定した訳ではないだろう!もしかしたら他に同じ様なのが居たり……』

一気に弟の事が吹き飛び、念話で緊急姉妹会議を始める三人。
そんな三人に気付かず、ユーノが話の続きをフェイトに促す。

「三人とは言え女の子がか……、凄いな。どんな感じだって?」
「えーとね」

ユーノに聞かれ、まず最初に一人、同僚から聞いた特徴を答えるフェイト。

「一人はね、黒っぽいBJを着てて、紫の杖を持ったショートの髪の10歳位の女の子だって」
「10歳位って、そこまで若いって凄いな」

フェイトの言葉を聞き、予想以上に若い子だと知り感心するユーノ。
だが娘達は、それを聞き確実に自分だと解り、ベンチから席を立ち逃げ出そうとする娘達。
それに気付いていないのか、ユーノはのほほんとフェイトと話を続ける。

「次の子がね、最初の子と同じ位の年齢で、青い髪のツインテールで、マントを着たBJで斧みたいなデバイスを持ってたって。後剣に変形したらしいよ」
「ふむふむ、…………ん?」

そこまで説明を聞き、ふとある事がユーノの頭に浮かんできた。
フェイトから聞く特徴が、今の所全部娘達に当てはまる事に気付いた。
もしかしてと思い、一応フェイトに心当たりがある人と言うのを聞いてみようとしたが、フェイトはそのまま説明を続ける。

「もう一人はね、髪が短くてね、羽がはえてて、某司令官にそっくりなんだって」
「あ、あの……、フェイト……?」

話を続けるフェイトを一旦止めようとするが、ユーノがある事に気付く。
フェイトが物凄く怖い。
顔は間違いなく笑顔なのだが、醸し出すオーラがかなり恐ろしく、ユーノもアルフも少々引いてしまう。
間違いなくフェイトは、その三人が誰なのかに気付いている。
ユーノとアルフも、フェイトから聞いた特徴で、その三人が誰であるかは気付いている。
そして娘達はと言うと、ユーノ達から少しだけ離れた所におり、後少しで階段と言う所まで来ていた。

「後、後少しで……」
「階段降りたら、このまま一気に…『ガキン!』うわい!」

後少しと安心した瞬間、三人娘の横を何やら通り過ぎ、それが地面に突き刺さり動きを止める。
飛んできた方を見てみると、フェイトが娘達に背を向けたまま、手だけが此方に向いているのが見えた。
そしてユーノが見たのは、手首のスナップだけで娘達に投げ、そのまま会話を続けるフェイトの姿だった。怖い。
ちなみに、フェイトが投げた物はと言うと……

「バルディッシュー!?」

地面突き刺さっていたのは、フェイトの長年の相棒であるバルディッシュであった。
それを投げる程今のフェイトはやばいと思い、娘達がかなりまずいと言った感情が湧きあがる。
と言うかこんな扱いしたらリニスが泣くぞ。
とりあえず、投げられたバルディッシュに壊れて所が無いか聞いてみる四女。

「えーと、大丈夫?バルディッシュ?」
<……問題ありません>
(痛いんだな)
(痛いんですね)

大丈夫と言いながらも、何か泣きそう雰囲気を醸し出すバルディッシュ。やっぱり痛かったらしい。
だが三人共バルディッシュに気が行っていた為か、後ろから迫るフェイトに気付いていなかった。
ゆっくりと娘達の元に近づき、静かに三人に話しかけるフェイト。

「ねえ……、三人共?」
『はい!?』

フェイトに話しかけられ、変な声を出しながら振り返る三人。
そこには笑顔でありながら、下手なホラー映画より怖いフェイトの姿があった。
普段は三人の母親の中で一番優しく、きつくは怒らないフェイトであるが、今回は何時もとは色々と大きく違いがある。
学校を抜け出す位ならまだしも、勝手に空を飛んだりあまつさえ凶悪犯と一戦交えるなど、執務官として色々我慢できない所が多い。

「私と……、【お話】しようか?」

三人で抱き合いガタガタ震える三人が、助けを求めようとユーノとアルフを見る。
だが二人共こんな怖いフェイトと話しあいたくない為、すぐに顔を横に向き目線をそらす。

「ここだと他の患者さんの迷惑になるから、ちょっと場所を変えようか」
「父さんとアルフの薄情者~!」

三人共フェイトに捕まり、何処かに連れて行かれる。
最後に四女が大声で叫ぶが、聞かなかった事にするユーノとアルフ。
連れて行かれる三人を見送り、姿が見えなくなった後、ふとアルフが一言呟く。

「あの子達……、大丈夫かな?」
「幾ら怒っているとは言え、そこまで酷い事はしないだろうね。………多分」

アルフの心配に、フェイトなら大丈夫と答えるユーノだが、正直さっきの様子を見るとそれも少し自信が無くなる。
しかし、もう連れて行かれてしまったので、フェイトが暴走しない事を祈り、なのはの出産を待つのを続けることにした。
と言うか、先程のやり取りで一瞬なのはの事を忘れていたのは、ユーノとアルフの二人だけの秘密。

「それにしても長いね。なのはは大丈夫なのかい?」
「あまり不安を煽る様な事は言わないでよ、アルフ」

アルフの言葉を聞いて、一気に心配になってくユーノ。
とりあえず何かあったら教えてくれると医者に事前に教えて貰ったので、中から誰かが出て来るまではじっとしておこうと思う二人。
そうして二人でしばらく待っていると、扉が開き中から看護師の女性が出てくる。
もしかしてと思いユーノとアルフが立ち上がると、看護師の女性がニッコリとほほ笑み…

「スクライアさん、お子様が産まれましたよ。元気な男の子です」
「本当ですか!?」
「はい、中の方にどうぞ」
「あたしは他の皆に産まれた事を報告してくるよ」

看護師に促され、なのはと産まれたばかりの息子に会いに行くユーノ。
アルフは他の家族に連絡する為、一旦病院を出る。
はやてを始め、家族の皆に連絡をした後、話を聞ける状況かは解らないが、一応フェイトと娘達にも伝える為、四人を探すため歩きだしたアルフ。
色々あったが、こうしてまた、この一家に家族が一人増えた事になる。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「ほら、急ぎますよ二人共」
「解ってるよー」
「解っているならさっさと歩け。置いて行くぞ」

なのはの出産から一晩明け、娘達は産まれたばかりの弟の元に行く為、現在病院に向かっている所である。
先日は、あの後少しフェイトに怒られて後、家に帰って本格的に怒られる事となった。
まずは最初にフェイト、次に連絡を受けて早めに帰って来たはやてと、最後に病院に居るなのはにモニター越しにと、ジェットストリームアタック的な感じで怒られた。
流石に他の家族が可哀想だと思ったのか、皆がユーノを味方に引き入れ何とか日付が変わる前にはなのは達も怒るのをやめた。
そして、ちゃんと学校を終わらせ、一度家に帰ってからと言う条件で、病院に来ても良いと言う事になった。

「赤ちゃんどんな感じなんだろね?」
「はやてお母さんの話だと、お父さんに似ている様です」
「父さん似か、まあ楽しみだな」

弟が父親であるユーノ似と聞き、少し楽しみになってくる娘達。
そしてしばらく歩いていると、四女がふと放った言葉に、他の二人が大きく反応する。

「赤ちゃん抱っこ出来るかな?」
「ちょっと待て、私が先にだぞ」
「勝手に決めないでください」

弟の抱っこの順番を巡って、歩きながら言いあいになる娘達。
傍から見ればどうでもいい事だろうが、彼女達にとっては大きな問題である。

「もう、こうなったら向こうに着いた時にじゃんけんで決めましょう。それなら文句ありませんね?」
「仕方ないか、また母さん達に怒られるのはやだもんね」
「まったくだ……、二日続けて昨日のあれは勘弁して貰いたい」

結局話し合った結果、じゃんけんで決める事になった。
二人共完全に納得した訳ではないが、昨日の事を思い出し、あまり他の家族に迷惑がかかる事は出来るだけ避けたいと思っている。
そして、そのまま歩き続け、病院まで後少しと言った所まで来ると、いきなり四女が立ち止まる。
もう少しで弟に会えるのに、一体どうしたのかと思うと、ふと上を見上げながら呟く四女。

「ねえ?二人共?」
「何ですか?」

何時もと違う雰囲気の四女を見て、一体どうしたのかと思う二人。
そんな二人の考えてる事など気にせず、四女が満面の笑顔で二人に喋りかける。

「僕達三人……、絶対に良いお姉ちゃんになろうね!」
「……そうですね!」
「当たり前だろうが、馬鹿者」

四女の言葉に、笑顔で答える三女と、ちょっときつい言い方ながらも、笑いながら答える五女。
弟が生まれた日は、彼女達がお姉ちゃんになった日。
これから弟と過ごす時間は色々あるだろうが、間違いなく楽しくやって行けるだろう。若干暴走はするだろうが。
三人でそう約束をし、可愛い弟の元へ向かって行く。
弟との初対面がどうなったかは、また別のお話。



[21737] マテ似三人娘の禁断の姉妹愛  前編
Name: rattu◆50c335cc ID:c73723c0
Date: 2010/11/02 19:10
「ただいまー!」
「お帰りなさい」

元気で大きな声が響いているここ合同一家の自宅。
外で遊んでいた四女が自宅に帰り、大声で帰宅の挨拶をすると、三女がそれに答える。
帰って来た後は、一度家に誰が居るのかを軽く確認し、部屋着に着替える為、自室の方に戻っていく四女と、それを洗濯物を畳みながら見送る三女。
現在この二人と、ここに居ない五女は休日である為、各々が好きに休日を過ごしている。
元気な四女は外に出て身体を動かし、三女は家に残り溜まっていた洗濯物の整理、及び家の掃除をしていた。
そして、今子ここに居ない五女はと言うと……

「ただいま。帰ったぞ」

丁度出かけていた五女が帰宅してくる。
五女の帰宅の挨拶を聞き、三女が玄関まで五女を迎えに行く。

「お帰りなさい。売ってましたか?」
「ああ。ほれ、中身を確認しろ」

近づいてきた三女が五女に何かを尋ねると、五女が手に持っていた袋を三女に手渡し、三女が中身を確認する。
中を見て確認すると、頼んでいた物が入っていたのか、三女の表情が少し柔らかくなるのが解る。

「うん、全部揃ってます。手間取らせてすみませんでした」
「別にかまわんさ、どうせついでだったしな。あのバカは何処かに出かけていたし」

そう言いながら、四女の靴がある事を確認し、部屋の方を見て溜息をつく五女。
さっきまで出かけていた五女はと言うと、何時も食べているお菓子が無くなったので、買いに行こうとすると、三女にお菓子と一緒についでに夕ご飯の材料を買って来てくれと頼まれていたのである。
五女から受け取った材料を三女が冷蔵庫に入れ、五女がテーブルの上に買ってきたお菓子を置き、さて食べようとすると、着替えが終わったのか四女が部屋の方から二人が居るリビングまで降りて来る。

「あ、帰って来てたんだ。お菓子僕にも分けて!」
「匂いで降りて来たのか?犬か貴様は」

降りて来た四女に悪態をつきながらも、特に追い払うと言った事もせず、三女と四女の分の飲み物を取って来る五女。
飲み物の準備も出来、さあ食べようと思うと、ふとある事に気付き、立ち上がって何かを探し始める。
最初はどうしたのかと思いながらも、すぐに見つけるだろうと思い、何も言わずに戻って来るまで待とうとした四女だが、何時まで経っても探して物を探して戻ってこない五女に痺れを切らしたのか、四女がどうしたのかと尋ねる。

「何してんのさ、早く食べようよ!」
「ちょっと待て。食べながら読もうとした本が見つからんのだ」

五女が探している物は、最近見つけた面白い本であり、それを見ながら食べようとしたのだが、どう探してもその本が見つからない。
折角良いのを見つけたと言うのに、読みたい時に見つからない為、五女の機嫌もだんだん悪くなってくる。
流石に不機嫌になって自分の方に色々来るのが嫌なので、洗濯を終え一緒にお菓子を食べようとしていた三女が妥協案を出す。

「見つからないのでしたら、今日は諦めて別の本にしたらどうですか?」

三女の言葉を聞きながらも、そのまま探し続ける五女。
だがしばらく探しても見つからない為か、探す手を止める。

「ふう……、仕方がない、父さんか母さんの部屋で何か適当な本でも取ってくるか」
「あっ、僕も行く!」

本を探すのを諦め、代わりにユーノの部屋に置いてある本を借りる為、両親の部屋に向かう五女。
四女も何か面白い本は無いかと、五女と一緒に本を探す為に五女について行く。
ユーノとはやて、どっちの部屋から先に調べようかと思ったが、とりあえず近くにあるユーノの部屋から探してみる事にした二人。
ユーノの部屋の前まで来て、中に誰も居ないと解っているが、一応ノックをした後に部屋に入る。

「やっぱ本が多いね」
「父さんと母さんは本が好きだからな」

読書家のはやてとユーノの部屋には、何時も沢山の本が置いてある。
その中にある本を適当に見繕い、其々一冊ずつ手に持ち部屋を出ようとすると、四女がある物に気付く。

「あれ?何だろ?」

四女の目に入って来た物は、ユーノの机の上に置かれている、小さな二つの石である。
その二つの石は、片方が赤い色をしており、もう片方は青い色をしていた。

「キレーだな……」

その綺麗な色に四女が惹かれたのか、その二つの石を手に取り近くでじっくりと眺める。
しばらく眺めた後、五女にも見て貰おうと思い五女の居た方を振り向くが、既に部屋を出て行ったのか、その場に五女の姿は見当たらなかった。
仕方ないので石を二つともポケットに入れ、三女と五女のいる部屋へと戻っていく。
手に本を持ち、ポケットに石をいれたまま部屋に戻ると、二人共ゆったりと本を読みながらお菓子を食べていた。

「遅かったですね。何をしてたんですか?」
「ちょっと面白いのを見つけて……、あー!僕も食べる!」

二人がお菓子を食べているのを見て、四女も急いで自分も食べようと二人の元に近づく。
その後は三人で本を読み、時には談笑などをしたりしながらお菓子を食べて時間を過ごす。

「ふう、ごちそうさま」
「美味しかったですね」

そして、お菓子も食べ終え本も読み終わった時、ふと五女が先程の四女の台詞を思い出し、何があったのかを聞く。

「そう言えば、さっき何か言いかけそうになったが、あれはなんだ?」
「え……、あー!そうだそうだ!父さんの部屋でこんなの見つけたんだけど……」

五女に先程の事を聞かれ、お菓子の事で石の事を忘れていた四女も思い出す。
ポケットに入れている二つの石を取り出し、三女と五女にその二つの石を見せる。

「ほう……、綺麗な物だな」

その二つの石の輝きを見て、五女がうっとりとした表情で見つめる。
だが三女は石の方には目もくれず、四女の方を少し険しい顔で振り向く。

「勝手にお父さんの部屋から持ち出して来て……、何か貴重な物だったらどうするんですか」

三女が怒っているのは、四女が勝手にユーノの部屋から持物を持ち出した事である。
別に持ち出す事位ではそれほど強く言うつもりはないが、父親であるユーノは色々と重要な物を調べる為、自宅に貴重な物を持って帰ったりしている事がある。
ユーノ部屋から持ち出したと言う事は、もしかしたら何か大切なものなのかもしれない。
そう考えると、勝手に石を持ち出して来て四女に、少しきつく言ってしまうのは仕方がない事かも知れない。

「でもさ、別に厳重に保管とかされて無かったし、テーブルの上に置きっぱなしだったよ?」
「ふむ、父さんの性格だと何か危険があったら私達の手の届かない所に置くだろうし、むき出しで置いてたと言う事はそれほど危険な物でも無いと言う事ではないか?」
「だからと言って勝手に持ち出すのは……」

四女と五女の二人に同時に言い返され、少し及び腰になる三女。
正直このまま言い負けるのは嫌だが、二人が掛かりで攻められると辛いので、これ以上は何も言わない事にする。
そう思い、ふと二つの石を見る三女だが、三女もその石の美しさに目を奪われる。
そして自分でも気付かず内に、自然とその内の片方の赤い石を手に取り、自分の顔の近くまで持って来てじっくりと眺める。

「それにしても、本当に綺麗ですね……」
「本当だよね。父さんこの石何で持って帰って来たんだろ?加工して母さん達にプレゼントでもするのかな?」

四女も再び青い石を手に取り、三女と同じ様にじっくりと眺める。
こうして見てみると、特に何か魔力を感じると言う事も無く、これと言って特別な何かとは思えない。
先程四女が言った言葉も、あながち間違ってはいないのかもしれないと二人は思う。
しばらく三人で石を眺めていると、五女が二人に話しかける。

「もう良いんじゃないか?もし壊したりしたらまずいし、とっとと父さんの部屋に戻してきた方が良いぞ」
「それもそうですね。ほら、父さんの部屋まで持っていきますよ」

石を見るのにも飽きたのか、五女がそろそろ石を戻そうと提案してくる。
五女の言った通り、例え特殊な力を感じなくても、壊したりすると後が怖い為、三女が石をユーノの所に持って行こうとする。

「はーい。もうちょっと見たいんだけどな」

まだ石を見たり無いのか、少し渋る四女だが、仕方ないので言う事を聞く事にする。
座っている椅子から立ち上がり、ユーノの部屋に行こうとすると、ふと無意識にある行動を起こしてしまう。
持っている石を     上に方に放り投げた。

「って!何してるかお前は!」
「ああっと!!」

五女が大声で石を放り投げた事を叫び、四女もそれに気付き、慌てて投げた石をキャッチしようとする。
しかし慌てている為か、落下を始めた石をどう取るか解らず、取ろうとした瞬間落ちて来た石が手に当たり、三女の方に飛んでいった。

「危ない!」
「え?」

四女の叫びを聞き、三女が振り返ると、自分の方に飛んでくる青い石と迫ってくる四女の姿を確認する。
二人共お互いにかわそうとするが、既に目の前まで来ている為、どうしても完全に回避できそうにない。
それでも出来る限りかわそうとする三女と、石を落とさない様に取ろうとする四女て身体が交錯する瞬間、三女の持っている赤い石と、落下している青い石が、四女が青い石をキャッチするのとまったく同時に激しくぶつかった。

『あっ!』

その瞬間、ぶつかりあった二つの石から強い光が発する。

「え!?」
「何これ!?」
「二人共!」

三人が叫び、光がさらに強くなって行き、既に目も開けれない位の強さになり三人を照らす。
そして光が消えた時には、三人共意識を失い、床に倒れていた。




「ッ……!」

三人が倒れてから少し時間が経ち、三人の内の五女が一番先に目を覚ます。
目を覚ました後、周りの状況を確認し、そして何が起こったのかを出来うる限り早く思い出す。
五女は何故自分が先に目を覚ましたのかと考えるが、恐らく二人程光を発した場所が近くなかった為だったと思う事にする。

「……とりあえず二人をソファーに横にさせるか」

まずは床に寝転がったままの二人を移動させる事にする。
床にそのまま寝かせるのも悪いので、とりあえずそれを最優先事項として行う。
二人をソファーまで連れて行くと、今度は身体に異常が無いかを調べる。
二人の服を少し脱がして、怪我や痣、または魔法的な何かが付着していないかどうかを調べる。
幸い軽く見た所ではこれと行った外傷が無い為、とりあえずは安心する。

「さて……、どうするか?」

やるべき事を一通りの終え、次の行動を考える五女。
念の為二つの石を少し調べてみるが、どうしても何か特別な力を感じる事は出来ない。
何も手がかりが見つからず、手詰まりかと思っていると玄関の方から扉が開く音が聞こえてくる。

「ただいまー」
「三人共居る?おやつ買ってきたよ」

玄関から聞こえて来た声は、三人の父親であるユーノと、三女の母親であるなのはの物だった。
二人が帰った事を知り、急いで二人の元に走っていく五女。
次男を抱いているなのはと、買い物袋を持っているユーノが、急いで此方に向かってくる五女を見て、何があったのかと思い、すぐに緊張した表情になる。

「父さん!なのは母さん!丁度良かった!」
「どうしたの?落ち着いて話して」

真剣な表情で五女に話しかけるなのは。
ユーノ持っていた荷物を床に置き、万が一の事に備える。

「えーと……、何処から説明したらいいのか……、とりあえず着いてきて!」

どうやって説明するのかが中々整理できず、まず二人をソファーの所に連れて行く。
なのは達を寝ている二人の所に連れて行き、なのはが一旦次男をユーノに預け、二人に何か異常が無いか調べる。

「それじゃあ、なのはが調べている内に何があったか、じっくり聞かせてもらえるかな?」
「うん、実は……」

寝ている二人の異常を調べるのをなのはに任し、(次男を抱きながら)何があったのかを聞きだすユーノ。
なのは達が居てくれるようになって落ち着いたのか、事の始まりを最初から説明を始める五女。




「……と、言う事なんだが」

しばらく時間が経ち、一通りの説明を終えた五女。

「えーと、要約すると『ユーノ君の部屋にあったの二つの石を持って来て、それがぶつかって瞬間光が出て、それで三人共気絶』と言う事で良いのかな?」
「そう言う事です、なのは母さん」

三女と四女の身体の確認を終え、ユーノか次男を返して貰った後、隣に座り一緒に話を聞いたなのはが聞いた話を簡単に纏める。
そして五女から話を聞いた後、ユーノの方を振り向き、少し厳しい感じの声色で話しかける。

「ユーノ君?遺跡発掘で見つけてきたり、詳しく調べる為に色々家に持って帰ってくるのは良いけど、子供達の手に届かない所に置いといてって約束したよね?10年くらい前に持って帰って来たロストロギアでエリオが女の子になったりしたって言うのに」
「ご、ごめんなのは。あまり危険な物じゃないから油断してた」
(女の子になったエリオ兄さんか……、少し見てみたいな)

なのはにすごまれ、少々情けなく謝るユーノ。
何やら昔面白い事があったらしく、その事に興味を湧く五女だが、今はそれ所じゃないと考え直す。
まずはまだ目を覚まさない三女と四女についてと、二つの石について尋ねるなのは。

「二人共ずっと眠ったままだけど、この石の所為かな?」
「うん。でも『身体』には何か影響がある訳じゃないから、もう少ししたら目を覚ますよ」
「それなら良かった。……(身体には?)」

ユーノの言葉を聞き、ひとまずは二人の身体が無事であると知り安心する五女。
だが、ユーノが発した『身体には』と言う言葉を聞き、再び嫌な考えが頭に浮かんでくる。
なのはもそれに気付いたのか、次の質問をユーノに投げかける。

「身体は……て事は……」
「あ、精神的な事も大きな心配は無いよ。発狂したり記憶が無くなったり二人の人格が入れ替わったりとかは絶対ないし、日常生活にはまったく支障は無いよ」

それを聞いてやっと本格的に安心する五女。
だがなのははまだ完全には納得していない。
ぶつかったら光が出て気絶する石位なら、ユーノが持って帰って来て詳しく調べるとは思えない。
ロストロギアでは無いにしろ、何か特別な力があり、詳しく鑑定する為持って帰って来たと考える。

「それで、この石ってどんな効果があるの?まさか光を出して気絶するってだけじゃ無いよね」
「まあね、後本当に大した事無いよ?僕も鑑定して詳しい事を知った時少し脱力したし」
「まあそれでも、子供達に起こった事だから、詳しく教えてくれる?」
「解った、あの石は……」

なのはに二つの石の説明を始めようとするユーノ。
その時、今まで眠っていた二人の内、四女に動きが出る。

「う~ん、……あれ?」
「目を覚ましたみたいね」

やっと目を覚ました四女だが、どうやらまだ事態を把握していないのか、ボーっと周りをきょろきょろしている。

「えーと、何があったんだっけ?」

意識は完全に戻っているらしいので、今まであった事を簡単に説明する。
その五女の説明を聞いた直後、凄い勢いでまだ眠っている三女の方に飛んでいく。

「大丈夫なの!?目を覚ますよね!?」
「え?……あ、ああ。父さんの話だと大した事は無いから、すぐに目を覚ますらしい」

何時もの様な天然元気バカな四女と違い、かなり真剣に、そして慌てた様子の四女。
それを見て、若干おかしいと思う五女だが、四女の所為でこうなった為、四女なりに責任を感じてると考えた。
それでも四女の三女に対する心配の仕方が少し度が過ぎている様に見える為、どうしたのかとユーノに聞いてみる。

「父さん。随分と様子がおかしいが、あれも石の影響か?」
「あー、うん。詳しい事は今から言おうと思ってたんだけど……、一度実際目で見た方がいいかもね」

そう言った父親の見ている視線の先には、身体を動かし目を覚まそうとしている三女の姿があった。
眠っていた三人の内最後の一人が目を覚まし、なのはも五女も一安心と行った所である。

「良かった!目を覚ましたんだね!」

そう言いながら、まだ頭がボーっとしている三女に思いっきり抱きつく四女。
いきなりの事態に何事かと慌てる三女だが、すぐに気絶する前の事を思い出し、自分の両親が居るのを確認し状況をある程度理解する。
そして、自分に抱きついている四女を抱きしめ変えし、優しい表情で語りかける。

「大丈夫ですよ。ごめんなさいね、心配させてしまって」
「うん。無事でよかった……」

不安そうにしている四女のを落ち着かせ、美しい姉妹愛が展開される。
だが、その二人の様子を見ている五女が、気持ち悪いと言った表情で二人を見る。
この三姉妹は別に仲は悪くは無い。
間違いなく姉妹仲は良好の関係ではあるのだが、今の三女と四女の様に至近距離で見つめあったりする程ではない。
何か二人の間に怪しい雰囲気が漂い、何やら日本の植物の本で読んだ気がする花が二人の周りに咲き乱れている様な錯覚が起きる。
正直血を半分分けた姉妹が、そんな怪しい雰囲気をしているのを見たくは無いので、目線を逸らすと同時にユーノの方を見る。
それを見たユーノが、何とも言えない表情で一言。

「まあ……、あんな感じになるって事だよ」
「解るかボケー!」

そう言いながら、素晴らし右ストレートをユーノの腹部に叩き込む五女。
なのはの方は次男を抱きながら、怒っている五女、怪しい雰囲気を続けている二人、そしてお腹を押さえて微妙に震えているユーノの姿を見ている。
何も知らずぐっすり寝ている次男を見て、大きなため息を一つつき、倒れてるユーノに話しかけるなのは。

「ユーノ君。夜に皆帰ってくると思うから、その時詳しく説明してくれる?」
「りょ……了解……」

なのはの言葉に、お腹を押さえながら返事をするユーノ。
五女の方もなのはの言う通り、皆が戻って来るまで説明を聞くのを我慢する事にする。
今だ見つめあっている二人から目をそらしながら。



「お互い両想いになる石だとー!?」

五女の叫びが家全体に大きく響き渡る。
なのはの言う通り、家族が全員集まるのを待ち、やっと揃ったので二つの石の説明を始めていた。
幸いにも、この日は珍しく家族全員が早めに帰宅する事となっており、それほど遅い時間にならず集まる事が出来た。
他の家族は帰ってくるなり、怪しい雰囲気の三女と四女を見て物凄い驚いていたが、なのはとユーノから後で説明すると言われ、二人には何も言わずしておいた。
そして最後のはやてが帰って来た時に、すぐさま三女と四女とザフィーラを別の部屋に移し、何があったかの説明を開始する。
そして、二つの石の効力の話になり、ユーノがその説明を終わった後、先程の五女の叫びへとつながる。

「もー、あまり大きな声出しちゃ駄目でしょ。この子も泣いちゃうし、サフィもびっくりして逃げちゃったよ」
「あ、ごめん。なのは母さん」

なのはにたしなめられて、少し反省する五女。
そして、ヴィヴィオが質問の続きをぶつける。

「その石を持って帰って来たのは鑑定する為って解るけど、何でそんな変な効力なの?」

ヴィヴィオが思いついた疑問をユーノに尋ねる。
別にこんな物が無くても、普通に恋人が居れば必要無いんじゃないかと、ヴィヴィオが思う。

「まあ色々使い方があったらしいけど、割と多かったのが政略結婚とかがある時、お互いに別に思い人が居たら後で面倒な事になる可能性があるから、この石で無理やりにでも両想いにしてしまえ。って言うのがあったらしいよ」
「うわー……、酷いねそれ」
「まあ昔の話だし、今の考えと一緒にするのはちょっと違うかもしれないかもね」

ユーノから昔の石の使い方を聞き、嫌そうな顔でヴィヴィオ。
一応アギトが時代の違いとフォローするが、言った本人も正直納得はできていない。
一通りの説明を聞き、話を元に戻す為、キャロがふと浮かんだ疑問を投げかける。

「あのー?あの娘達女の子同士なんですけど、何で効果が出てるんですか?」
「割と古い物だし、整備もされず長い間放置されてたみたいだからね、色々不具合が出てて男性と女性の区別も曖昧になってるみたい」
「随分適当やな……」

キャロの質問に、鑑定して解った結果を教えるユーノと、かなり適当な答えに思わず突っ込んでしまったはやて。

「まあ、大きな心配も無い事だし、慌てる事は無さそうだね」
「いやちょっと待ってくれなのはフェイト母さん!重要な事が一つあるだろ!」

とりあえずは大きな問題が無いとして安心するフェイトに、母親に続いて五女も突っ込む。
明らかに一つ、もっとも重要な事が現在進行形で残っていると言うのに、何で安心してるんだと思ってしまう。
あんな怪しい雰囲気が何時までも続くと、何時最終形態まで行くか気が気でない。
他の両親達も、五女の叫びに考えを改めなおしたのか、真剣な顔で二人の事を考える。

「確かに、私達がしっかり二人が過ちを犯さない様に見張らないと」

真剣に話し合う両親四人の姿を見て一安心する五女。
正直自分一人では、あの二人を止めるのは色々な意味で無理なので、両親達がやる気になってくれるのは非常に助かる。
まずは、二人をどうやって引き離そうかと考えると……

「まだ二人共幼いんやし、あまり進んだ所まで行くのはまずいな」
「そっちじゃねー!」

はやての見当違いの言葉に、実の母親だと言うのに容赦なく突っ込む五女。
いきなりの五女の癇癪(なのは達視点)に、一体何が悪かったんだと言った表情で五女を見る両親四人。
その表情を見て、更に一気に捲し立てる五女。

「まずそれ以前の問題だろうが!何で進んだ所までって吹っ飛んだ所まで行く!後何処が悪かったの?て顔するな!少し考えたら解るだろ!」

激しく言ってくる五女の迫力に押されているのか、四人共少々おっかなびっくりと行った感じで五女を見る。
仕方ないので、四人で五女が何処が悪いのかを言っているのかを考える。
そして、答えが出たのか、なのはが五女の方を向き話しかける。

「ごめんね、何処がいけないのか思いつかないんだけど……」
「なんでだよ!?」

なのはのすまなそうな言葉に、もう親子関係なしに突っ込む五女。
仕方ないので、自分が何処を心配しているのか教える。

「まず女同士って言う時点でおかしいだろ!?普通真っ先にそっちに気付く物じゃないのか!?」

まあまずそこに問題が行くだろう。
恐らく普通に考えれば、世間の大半がまず其方の方を問題が行ってもおかしくない。
だが待ってほしい。
この一家は色んな意味で普通ではない。

「……それって駄目な事なのかな?」
「はあー!?」

フェイトの言葉を聞き、変な声で叫ぶ五女。
まさか普通に駄目なのかと返されるとはまったくの予想外であり、五女はこいつ何言ってんだ?と、母親の一人だと言うのに一瞬思ってしまう。
予想外の言葉に混乱し、一瞬思考回路がショート寸前になるが、何とか持ち直す五女。
色々言いたい事はあるが、とりあえず一般常識(だよね?)に当てはめて話し合いをして見る事にする。

「いや、普通に恋愛って言うのは男女の間での物であって、父さんや母さん達だって……まあ妻が三人居るって言うのは百歩譲って良しとして……?なんだシャマル?」

何でまだ小等部の自分が恋愛の事で話さなならんのだと思いつつ説明をしていると、後ろの方から肩を叩かれ、振り返って見るとシャマルの姿があった。

「はい、これ」
「何だこれ?紙?」
「まあ詳しく読んでみろ、多分驚くから」
「?まあ読んでみるが」

シャマルから何やら紙の様な物を貰う。
いきなりなんだ?と思いつつも、ヴィータから読んでみろと言われたので、素直に紙に書かれている事を確認する五女。
そして暫く経った後、まったく表情を変えない五女に不安を感じたのか、アギトが五女の方に近づくと。

「……なんじゃこりゃー!?!?」
「まあそうなるわな」

渡された紙の内容を理解したのか、彼女が産まれて間違いなく最大音量の叫び声がこだまする。
他の皆もこうなるのを予想していたのか、別に驚く事も無く何時も通りにしていた。
そして暫く混乱した後、何とか頭が正常に戻ったのか、この紙に書かれている事を両親四人にすぐさま尋ねる。

「ちょっと待て!?ここに書かれてるの少しおかしいだろ!?」

五女の言葉を聞き、何処がおかしいの?と言った表情をするなのはとはやて。
そしてまあ仕方ないよね、と行った表情のフェイトとユーノ。
反応が別れている両者に若干違和感を覚えたが、気にせず話を続ける五女。

「この紙に書かれている母さん達の関係……!この際父さんがなのは母さんとはやて母さんと結婚していると言う一夫多妻まあ良しとする!」

正直一夫多妻もどうかと思うが、もう五女にしてみれば見慣れた物なのでそれは無視する。
そして話を続けようとする五女に、フェイトとユーノが驚いた表情で喋る。

「え!?そっちの事じゃないの!?」
「僕もてっきり複数の人と結婚してる事だと思ったのに」
「そっちの方かよ!?良いから私が喋り終えるまで黙っててくれないか!?」

五女に突っ込みと同時に、猛烈に怒られてしまったので、大人しくしている事にしたフェイトとユーノ。
二人が大人しくなったのを見計らって、本題を両親四人に尋ねる五女。

「私が聞きたいのは……、どうしてなのは母さんとフェイト母さんが結婚してますって書かれていると言う事だ!」

五女に取っては初めて知った新事実。
まさか自分の両親二人が同姓で結婚しているとは思っても居なかった。
確かに普段から仲が良いとは思ってはいたが、まさかそこまで行っているとは知らなかった五女。
もう何が何やらと言った感じで、混乱している五女に、母親であるはやてが近づき、優しく頭を撫ぜる。

「そう言えば、三人には私達が結婚した事詳しく教えて無かったな。皆、この際やから教えても別にええよな?」
「そうだね。別に隠しておく事も無いし」
「母さん……」

そう言いながら優しく頭を撫ぜてくれるはやてに安心したのか、少し気分が穏やかになるのを感じる五女。
そして、はやてに自分達の結婚秘話を教えて貰う。

--------------------

【説明中】


【説明終了】

--------------------

「結局母さんが一番の元凶じゃないかー!?」
「だって~、私だけ置いて行かれのん嫌やってんもん!」

すべての説明を聞いた後、結局の所自分の母親のアホみたいな提案でこうなったと知り、実の母関係なく問い詰める。
説明前ははやての優しさに嬉しさを感じたが、さっきの説明で全部台無しになってしまった。

「私達は今まで、ずっと父さんが三人を物にしたとばかり思ってたぞ……」
「ははは、当時はそんな事まったく考えて無かったからね」
「私もユーノも、なのはしか見えて無かったからね」
(惚気んなよこの両親……)

楽しそうに昔の事を思い出しているフェイトとユーノに、心の中で口悪く突っ込む五女。
この話をするのももう疲れて来たので、次の問題に移る事にする。

「はあ……、まあ良い。この際重婚や同性婚はもう良しとする!」
(妥協した……)
「だが!もう一つどうしても譲れない所がある!」

もう半ばやけくそ気味で話を進める五女に、他の家族が少し心配そうな目で見る。
そんな視線も気にせず、五女が話の続きを始める。
同性同士は諦めて良しとするが、もう一つ五女が納得でいない所。それは……

「兄弟で恋愛と言うのはおかしいだろ。普通に考えて」

五女の考えるもう一つの問題、それは二人が兄弟(姉妹)と言う事である。
五女の中では、ある意味同性同士より問題があると思っている。

「流石に姉妹同士って言うのも更に問題……、今度は何だシャマル!」

話を続けようとすると、またもシャマルが五女の肩を叩き振り向かせる。
流石に二回連続でやられると、五女の方も少し不機嫌なのか、かなりきつい感じで言い返してしまう。
シャマルも流石に申し訳なく思っているのか、少し苦笑いしながら五女の方に歩み寄る。
顔の怖い五女を宥め、落ち着いた所を見計らって、ある方向に指を指す。

「はい、向こうの二人を見てね♪」
「?向こうの二人……」

シャマルの指さした方を見てみると、そこには気まずそうな顔で五女から目を逸らすエリオとキャロの姿があった。
五女の方はその二人を見て、一体どういう意味だ?と一瞬考えるが、すぐに内容を理解して頭を抱える。

「……ああもう!何でこの家は色んな意味でまともなのが居ないんだ!?」
(まあそんな事言っても今更だけどな)

もう傍から見て可哀想に思える位に五女が叫ぶ。
それを見てヴィータがふと酷い事を思うが、当然口には出さない。
五女にとって兄と姉に当たるエリオとキャロ。
現在二人は子供はいないのだが、既に夫婦になっている。
だが二人は、元々殆ど兄妹と行って良い関係で育ってきており、先程の五女の問題もある意味まったく問題無かったと言う事になる。
暫く周りの環境に頭を抱え唸っていた五女だが、落ち着いたのか会話を続ける。

「もう良い……、もう何も言わない……」

落ち着いたと言うか、もう何もかもに疲れたと言った表情をしている五女。
それを見て家族全員が申し訳なく思ってくる。
何かこの数時間で五女が少し老けた様な気がするが、まあ多分気のせいであろう。
とりあえず五女の考えていた問題も解決(?)し、次の問題を考える。

「さて、所で父さん、あの石の効力は何時まで続くんだ?まさか一生あのままだと言う事は無いだろうな?」

まずはあの石の持続時間をユーノに尋ねる。
すぐに解けると言うのなら別にかまわないが、もし年単位で掛かると言うのならもしもの事を考えなければならない。
そんな不安を持っている五女だが、ユーノが笑顔で不安を取り除く事を言ってくれる。

「本当は色々儀式をして効力が続く時間を延ばしていたらしいけど、今回のは何も準備せずに偶然起こった事だから、多分長くて一週間前後で戻ると思うよ」
「長くて一週間か、まあそれ位なら我慢も出来るか」

ユーノからの予想の期間を聞き、長くは続かないと知り一応は安心する五女。

「出来るだけ私達も目を光らせておくけど、学校とか目が届かない所があるからね。そこの所はお願いできるかな?」
「まあ仕方がないか。出来うる限りはやるさ」

家族全員が二人を監視する事になり、一応この議題は終了する事になった。
一部家族が手を貸せない状況もあるが、そこは五女自身が何とかしようと考えている。
大体の話が終わり、各自自由にしようと思うと、リインがある事をなのは達に質問する。

「あの~、あの二人は解るんですが、どうしてザフィーラがここには居ないんですか?」

三女と四女は当事者である為、ここに居ないと言うのは理解できるが、ザフィーラまで居ないのはどうしてか解らない。
リインの他にも、アギトやヴィヴィオと言った辺りは、ザフィーラが居ない理由が解っていない様子。
既に話し合いは終わったので、ザフィーラが何処に居るのかを教えるなのは達。

「ああ、ザフィーラ二人の監視。万が一の事があるからな」
「あ、そうですか。だったら納得です」
「万が一があったら、本気で殴り倒してでも止めてって伝えてるから安心だし」
「……ザフィーラに本気で殴られるのはきついな」

はやての説明に、三人が納得する。
しかし、次のなのはの言葉に、両親四人以外が何とも言えない表情をする。
拳での戦いなら、アルフ、ヴィヴィオと一緒に3トップに入るザフィーラに本気で殴られる。
それを考えただけで、一度訓練で本気で殴られた事のある五女が殴られて箇所を無意識に抑える。

(まあ、いくら様子がおかしいとは言え、ザフィーラが居る前で馬鹿な真似もしないだろ、あの二人も)

そう考え、席を立つ五女。
聞きたい事ももう無いので、二人の居る部屋に戻り就寝する準備でもしようとする。

「それじゃあ私はそろそろ寝るから、部屋の方に戻る」
「はい、お休みなさい。明日の学校では宜しくね」
「了解した。お休み、母さん達」

なのは達と別れ、自分の部屋に向かう五女。
ザフィーラの事はどうしようかと考えたが、やはり頼れる者は一人でも多いほうが良いので、二人を見張って貰う為、一緒に居て貰う事にする。
部屋の前まで到着し、中で何が起きていても大丈夫なように、一旦呼吸を整え覚悟を決める。

「ふう……、良し!行くか!」

どうして自分の部屋に入るのにこんな事をしなければならないかと一瞬考えるが、そこは非常事態と言う事で気にしない事にする。
扉を開け中に入ると、そこには既に寝ている三女と四女の姿があったのだが、どうにも様子がおかしい。
そしてふと横を見てみると、そこには人間形態になっているザフィーラの姿があった。
普段緊急時位にしか人間形態にならないザフィーラが、何故人間形態になってるか一瞬疑問に思う五女。
だが、少し考えた後、二人の方を見てみると布団をかぶっておらず、何やらいきなり眠ってしまった様に見える。

「……すまんなザフィーラ。変な物を見させてしまった上面倒な事をさせて」
「いや……、こう言うのは昔主はやて達で何度も見ているから構わん」
(本当におかしいなこの家は……)

何か慣れているザフィーラに、それもどうなんよ?と思いつつそんな家庭で育ってきたんだからもういいやと、五女も諦める。
その後、二人を布団に寝かせて、ザフィーラに二人が起きた後また暴走しない様に見張って貰い、五女は眠りに着く。
次の日にどんな困難が待っているかを考えながら……。




[21737] マテ似三人娘の禁断の姉妹愛  後編
Name: rattu◆50c335cc ID:c73723c0
Date: 2010/11/03 16:18
一夜明けて次の日の日の朝。
既に仕事に出かけている人もいれば、休みなので少し寝坊している人達も一家の家。
その中で、もう明日くんなと思いながら眠りについていた五女が、目覚ましの鳴る少し前に目を覚ます。
もう少し寝ていたいと思いながらも、学校もあるので起きる事にする。
身体を起こした後、周りを見て昨日の事を思い出す。

(……出来れば今日の内に効力が切れていてくれると非常にありがたいのだが)

まだ寝ている三女と四女の方を見て、面倒な事はしたくないので石の効力が無くなっている事を祈る。
だが、まだあれから24時間も経っていないので、正直切れているとは五女自身思っていない。
一つ溜息を吐きながら、ベットから立ち上がり着替えようとすると、部屋の隅に狼の状態で座っているザフィーラの姿を見つけた。
昨夜五女に言われた通り、ずっとここで見張っていてくれていたのだろう。
ぱっと見では解らないが、恐らく一睡もせずに見張っていたであろうから相当眠いはずだと思い、もう大丈夫だとザフィーラに伝える。

「すまないなザフィーラ。後は私が見ているから戻って構わない」
「解った」
「母さんには今日はザフィーラを休ませてくれと言っておく。今日はゆっくり休んでくれ」
「……助かる」

そう言いながら部屋を出て行くザフィーラ。
五女の方も、昨日は自分の方から頼んだのだから、これ位はしないと申し訳ないと思う。
ザフィーラが部屋を出た後、服を着替え、授業に必要な教科書などを鞄に入れ準備完了。
自分の準備が終わった後は、次はまだ眠っている三女と四女の事である。
正直このまま石の効力が切れるまで寝ていて貰いたいのだが、学校もある為そのままに放置しておくわけにもいかない。
二人が羽織っている掛け布団を片手ずつ手に持ち、思いっきり二人から引っぺがす。

「ほら起きんか。もうすぐ学校に行く時間だぞ」

二人の掛け布団を引っぺがすと、二人共少しもぞもぞした後に目を覚ます。
まだ完全に頭が覚醒しきっていないのか、二人共ボーっとした表情で何が起きたのかと周りを見渡す。
そして二人が掛け布団を手に持っている五女を見て、その次に時計を見た後、今度はお互いを見る。
暫く見つめあった後、二人共少しだけ顔が赤くなり、ちょっと照れたように話し始める。

「えへへ、おはよ!」
「ええ、おはようございます」
(やっぱりまだ効力切れてないか……)

嬉しそうな顔でお互いにおはようの挨拶をする二人を見て、予想通り効果が切れて無いのが解り脱力する五女。
まあしかしある程度予想していた事なので、別にあまり落胆はしていない。
その後は二人が着替えてる時に何か起こらない様に見張りつつ、二人が出かける準備が終わった後、朝食を取る為に一階に降りる。

「おはよう。三人共」
「おはよう。今日はヴィヴィオ姉さんが食事当番か」
「うん。今日は私は休みだからね」

一階には、食事当番のヴィヴィオの他に、まで仕事に出ていないはやてと先程部屋から出たザフィーラ、そしてリインの四人が残っていた。
既に朝食の準備が出来ていたので、三人共すぐに朝食を始める。
美味しい朝食を食べつつ、丁度はやてがすぐそこに居るので、五女が先程の事をはやてに伝える。

「母さん、昨日ザフィーラに少し無理を言ってしまってな、出来れば今日は休ませてあげて欲しいんだが」
「うん、解った。ザフィーラ、今日は家でヴィヴィオとゆっくりしとき」
「了解しました」

娘の提案に二つ返事で答え、ザフィーラの方に話しかけるはやて。
はやて自身も、昨夜戻ってこなかったザフィーラの事を考え、この日は休ませておこうと思っていた為丁度良かったと思っている。
そして、家に居る人達が全員食事を終え、各々が出かけようとする。

「それじゃあ私達は学校に行ってくる」
「私達も仕事に行こか。学校では頼むで……(ボソ)」
「……最善は尽くす」

お互いに出かける間際に、はやてが五女に学園での見張りを確認する。
五女の方は、正直まったく気が乗らないのだが、学園では二人を止めれるのは自分しかいない為、全力で頑張る事にする。
はやてとリインと家を出た後、玄関で別れ、こうして五女の激動の一日が始まる事になる。


「♪~」
「ふふ……ご機嫌ですね」
(家を出て早速これか……)

はやて達と別れた後、学園に向かって歩いている三人だが、五女は目の前の光景を見て溜息を吐く。
五女の目の前では三女と四女が仲良く歩いているのだが、別にそれは構わない。
自分も含め、普段は三人で喋りながら登校しているので、傍から見れば仲良く一緒に歩いていると言うのは自分でも解っている。
だが目の前の二人は、会話だけでなく、楽しそうに手を繋いで歩いている。
最初はやめさせようと思ったのだが、これ位だ色々言ってたらこの先更に面倒な事になると思い、手を繋ぐ位なら放置しておこうと心に決める。

(そう言えば、昔初めて学校に行く時、不安で三人で手を繋ぎながら登校した事があったな……)

手を繋いでいる二人を見て、ふと昔の事を思い出す五女。
まあ目の前の状況と昔とでは、手を繋いでいる内容はまったく違うので、正直あまりいい気がしない。
暫く二人を見張りながら歩いていると、学院に到着する。
手をつないだまま学園に入って行く二人を見つめ、勝負はこれからだと気合を入れなおす五女。
何で普段の学校生活でこんな事しなきゃならんのだと一瞬思いながらも、すぐにその考えを頭から取り除く。



「えっと……、八神さん?あの二人どうしたの?」
「……今は何も聞かんでくれ」

一時限目の授業が終わった後の最初の休み時間、次の授業の準備をしている時、横からクラスメイト男の子が話しかけてくる。
彼は五女の隣の席に座っており、クラスメイトの中ではそれなりに話をする程度の仲である。
その彼が何とも言えない表情で、三女と四女の方を指さし五女の方に尋ねて来る。
五女に取っては、出来ればその二人を無視して貰いたかったのだが、やはりそう言う訳には行かないらしい。
他のクラスメイトも、全員ではないが、やはり何人かのクラスメイトは二人の方を変な目で見ている。

「えへへ、暖かいね」
「まったく、あまりベタベタするのはどうかと思いますよ?」

男の子が指を指している先には、三女に後ろから抱きついている四女の姿があった。
普段の四女は、仲の良い相手に抱きついたりする事は結構あるので、それに関しては別に問題は無い。
だが、三女の方は特に意味も無く抱きつかれるのは嫌なので、普段は抱きついてきた四女をすぐに引っぺがすのだが、そんな事をせずに四女を受け入れている。
それ所か、自分の身体に絡みついて来る四女の手を、優しく握ったりと、普段ではありえない行動を取る三女に、クラスメイトも何事かと言った表情で見つめる。
仕方ないので、五女が二人を止める為、席を立ち二人の元に歩いて行く。

「ほらお前等、見てる方が暑苦しいかとっとと離れろ」
「ええ~、良いじゃん別に」
「仕方ないですよ、さ、離れましょ」

五女に注意され、四女が不満の声を出すが、三女にも言われてしまった為大人しく言う事を聞く。
このままで大丈夫なのか?と思い、溜息をつき自分の席に戻っていく五女であった。
そして、学校の授業は進んでいき、外に出て体育をする事になった三人娘のクラス。
体操服に着替え、各々が自由に身体を動かす。

(授業中ならあいつ等も大人しくしているだろう)

そう思いながらも、念の為少し離れた所で二人を見張る五女。
一応二人は別々のグループに分かれている為、特に気にする必要はないはずなのだが、一応と言う事で目を離さないようにする。
特に何事も無く授業は進み、これならこの時間は大丈夫か?と安心していると、離れた所から聞きなれた声が聞こえてくる。

「んぎゃ!?」

何事かと声のした方向を振り返ってみると、何故かそこには地面に頭から突っ込み、えび反り状態の四女の姿があった。
一体どうしたんだ?と五女が四女と一緒に行動していたクラスメイトに尋ねると、飛んで行ったボールを追いかけジャンプして取ろうとすると、着地に失敗してああなった、と言う事らしい。

「まあ、何時も通りのあいつと言う事か」

普段から元気な四女は、たまに張り切り過ぎてこうなってしまう事が多々ある為、五女にしてみれば何時もの事と言った感じである。
大した事無いと考え、すぐに授業に戻ろうとすると、三女が慌てて四女の元に走り出したのが目に入った。

「大丈夫ですか!?」
「うう……、痛い……」

すぐに四女の元に駆け寄った三女。
顔面から落ちた為、四女の顔に傷が付いていないか、自分の顔を四女の顔のすぐ近くまでもっていき確認する。
怪我をした四女を助ける三女の姿は、他のクラスメイトもよく見かけるが、いつも以上に激しく四女の心配をする三女の姿に、やはりどうしたのかと言う視線を向けるクラスメイト達。

「八神さん……、やっぱあの二人って……」
「だから聞かんでくれ。頼むから」

先程の男の子がまた五女の方に話しかけるが、色々喋るのは精神的にも疲れる為、あまり話しかけないで欲しいと頼む。
どうしようかと考えていると、三女が立ち上がり、体育の教師の方を向き、普段では滅多に聞かれたい大きな声で喋りだす。

「先生!私は彼女を連れて保健室に行きます!良いですよね!?」
「え?……あ、ああ……言って良いぞ」

三女の迫力に押されたのか、体育の男性教師が思わず許可を出してしまう。
教師から許可を貰い、四女を抱きかかえて急いで保健室に向かん三女。
その手際の良さに、教師だけでなくクラスメイトも唖然とした表情で、保健室に向かう三女と四女を見つめる。

「すまん先生、私も一緒に行ってくる。一応姉妹だから心配でな」

五女がそう言い放った後、教師が許可を言う前に既に二人の元に走り出す。
一応保健室には先生は居るのだが、たまに居ない時があるので、万が一に二人っきりなると危険なので、二人付いて行く事にした。
幸い、保健室には先生が居た為、四女の傷の手当てをして貰った後、すぐに授業に戻ったので何も起らずに済んだ。
その後の授業と休み時間も、何事も無く進み、ついにお昼休みの時間がやってくる。
三人娘は近くの机を引っ付け、三人一緒にお昼ごはんを食べる事にする。
この三人は何時も一緒にお昼ごはんを食べている為、特に他の人達に怪しまれる事も無く食事を続ける事が出来る。
そして、いざ食べ始めようとする、急に五女の立ち上がった。

「悪い、ちょっとトイレに行ってくる。先に食べておいて良いからな」
「解りました、ゆっくりしてきて下さい」
「行ってらっしゃ~い」

急に尿意を感じた為、食事の前にトイレへと向かう五女。
目を外し、二人だけにするのは少し戸惑ったが、別にトイレから戻ってくるのにそれほど時間もかからない為、別に良いかと思い二人から離れる。
二人から離れ数分、トイレを終え教室まで戻ってくると、先程の隣の男の子が誰かを探しているのか、教室の前でキョロキョロしながら誰かを探していた。
何をしているのかと思いながらも、別に彼に用は無いので無視して教室に入ろうとする五女。
男の子の近くまで歩き、教室に入ろうとすると、男の子が見つけた!と一言言った後五女の方に近づいて行く。

「八神さん、良かった見つかった」
「私か?一体どうした?」

探しているのが自分だと知り、どうしたのか?と思い話を聞いてみる。

「えーとね、あれ見てくれる?」
「あれ?」

そう言いながら、男の子がある方向を指さす。
何があるんだ?と思い、男の子のが指さした方を見てみると……

「はい、あーん」
「ん……、美味しいですね。では私も、はい、あーん」
「あーん。……うん!美味しい!」

指を指した先には、もうなんて言うか色んな意味で凄い光景が繰り広げられていた。
三女と四女が、お互い食べているお弁当を交互に、俗に言うあーんで食べさせあっている姿を見て、五女のついうぇ……、と変な声が出て来てしまう。
周りのクラスメイトも、その異常な光景に引いているのか、二人の半径五メートル位には誰も入ろうとしない。入りたくない。

「その……、頑張ってね、八神さん」
「……応援に感謝させて貰う」

もうすでに悟りきったのか、あえて何も聞かずに声援だけ送る男の子。
五女もその応援に少し励まされたのか、凄い近づきたくないが、二人の元に歩いて行く。
二人のすぐ傍まで近づき、少し怖い顔で二人を見る五女だが、二人共それに気付かずイチャイチャを続ける。
流石にそれには五女もカチンと来たのか、かなり声を荒げて二人に対して注意をする。

「貴様等!馬鹿な事せずぬ普通に食え!」
「別にかまわないと思いますが……、ご飯位仲良く食べれば良いのではないのかと思います」
「そうだよ!別に周りに迷惑かけてる訳じゃないよ!」
「ああ!?」
「「ごめんなさい。普通に食べます」」

五女に怒られながらも、納得がいかないのか言い返す三女と四女。
だが既に半分所か、9割位マジでキレている五女に睨まれ、流石に怖かったのか素直に言う事を聞く二人。
他のクラスメイトも、五女の迫力に恐れたのか、先程とは違う意味で引いている。
その周りの反応に気付かずに、自分も昼食を食べる為お弁当を広げる。
結局、その後はクラス中静かに昼休みを過ごしたと言う。



「また明日ね!三人共!」

この日の授業が全部終わり、やっと下校の時間がやって来た放課後。
すぐには帰らず教室で雑談する生徒もいれば、さっさと家に帰る為皆に別れの挨拶をした後教室を出る生徒となど様々な生徒が居る。

(や、やっと終わった……)

長い長い学校が終わり、力が抜けたのか机に身体を預ける五女。
彼女にしてみれば、今日の授業は入学してから一番長く感じたであろう。
後は家に帰った後、ザフィーラとヴィヴィオが居る家に帰って、ゆっくりするだけである。

「何してんの?早く帰ろうよ」
「体調悪いんでしたら、保健室に行きますか?」
「……いや、良い。教室の入り口で待っててくれ」

五女にそう言われ、大人しく言う事を聞く二人。
二人が離れた後、すぐに机から身体を起し帰宅の準備を進め、忘れ物が無いかを確認する。
そして、準備を終え二人の元へ行こうとすると、隣の席の男の子が五女に声をかける。
どうしたのかと思い、五女が男の子の方を向くと、苦笑いしながら一言語りかける。

「えっと……、お疲れ様。八神さん……」
「……ありがとう。とだけ言っておく」

それだけ言った後、男の子に別れを告げ二人の元に歩いて行く五女。
この日はお互いに、少し仲良くなった気がする。
その後二人と合流し、玄関で靴を履き替え、三人で家へと向かう。

(疲れた……、家に帰ったらゆっくりさせて貰おう)

登校の時と一緒に、手を繋ぎながら下校をしている二人を見て、ひそかにそう思う。
学校では自分だけだったが、家に帰れば他の家族、この日はヴィヴィオとザフィーラが居る為、後は二人に任せようと考える。
そんな事を考えて歩いていると、ふと頬に冷たい何かが当たり、一瞬ビクッとする五女。
何だと思い空を見上げてみると、そこには黒い雲に包まれた空があり、また一つ何かが五女の顔に落ちて来る。

「これは……まずいな。二人共!走るぞ!」
「え!?急になんですか!?」
「空を見てみろ!」
「空?……って空黒!?」

このままだと雨が降ってくると判断し、二人に話しかけた後三人で一気に走り出す。
しかし、三人が走り出した直後、すぐに雨が降り出し、10秒もしない内に大雨へと変わり、三人に降り注いで行く。

「まったく……、今日は雨は降らないと言っていたのに」
「もう最悪!」
「ごちゃごちゃ行っている暇があったら走れ!」

持っている鞄を傘代わりにし、一生懸命走る三人。
だがしかし、そんなので大雨を防げる事など出来る訳も無く、家に着く頃には三人共ずぶ濡れになっていた。

「ただいまー……」
「お帰り。災難だったね。着替え持って来てあげるからシャワー浴びてきたら?」

服が体に張り付き、気持ち悪い状態で家に入ると、ヴィヴィオが三人を出迎えてくれる。
ヴィヴィオと一緒に居たザフィーラからバスタオルを人数分貰い、ヴィヴィオの言う通りシャワーを浴びる事にする。
学校の荷物を適当な場所に置き、脱衣所の方まで歩いていき、服を脱いでシャワーを浴びよとする。
しかし、ふとある事が気になり、三女と四女の方を振り向く。
そこには、下着姿でイチャイチャしている二人の姿があり、二人と一緒に入るのを少し躊躇い始めた。

「……やはり私は後で良い。二人が上がったら教えてくれ」

イチャついている二人を見て、何やら身の危険を感じたのか、二人と入るのを止めようとする五女。
何故だかは解らないが、何も服を着ていない状態で二人の空間に入ると、非常にまずい事が起きそうだと本能が警告する。
だが、二人はそんな五女の言葉に耳をかさず、それ所か二人揃って五女の方へ歩み寄ってくる。

「もう、そんな事言ってると風邪をひきますよ?」
「そうだよ。たまにはさ、三人で一緒にお風呂も良いんじゃないかな?」
「ちょ!近づくな二人共!」

そのまま逃げだそうする五女を、三女と四女が腕を掴んで止める。
何とか振りほどこうと頑張る五女だが、二人がかりで掴まれている所為か、中々振りほどく事は出来ない。
そうしている内に、三女の腕か五女の腕に絡みつき、四女が五女の後ろから抱きつく。

「ほら、三人で一緒に……、ね?」
「そうだよ、楽しもうよ!」

一体三人で何を楽しむのかは知らないが、二人共怪しい目で五女の事を誘う。
そして五女はと言うと、何やら先程から何も言わず、プルプルと震えており、二人共どうしたのかと思う。

「貴様等……」

そして五女が小さく一言呟くと、いつの間にか五女の右手にはエルシニアクロイツが握られており、顔も相当怖い表情をしていた。
二人共五女が何を怒っているのか解らず、一体どうしたのかと思い困惑するが、それでもお互いに五女にしがみつくのをやめない。
そして、ついに堪忍袋の尾が切れたのか、エルシニアクロイツを大きく上にあげる。

「いい加減に……!しろー!」

そして、三人を包む程度の小さな爆発が脱衣所で発生し、大きな音が家の中に響き渡る。

「……ザフィーラ」
「……着替えを取ってくる、三人をソファーに寝かせておいてくれ」
「解った」

脱衣所から聞こえてくる爆発音を聞き、何があったのかを瞬時に理解するヴィヴィオとザフィーラ。
二人共溜息を一つつき、ザフィーラは三人の着替えを取りに行き、ヴィヴィオは爆発で気絶しているであろう三人を救出に向かった。



「うう……、ん?ここは?」
「あ、目覚ました?」
「フェイト母さん?」

脱衣所の爆発から数時間経ち、気絶していた三人の内五女が先に目を覚ます。
まだ完全に頭がはっきりしていない為か、ボーっとして周りを見渡していると、既に帰宅していたフェイトが五女に声をかける。
フェイトの姿を確認した後、他に誰が居るかを確認すると、既にフェイト以外の両親三人と、シャマルとシグナム、リインと言った面子が既に帰宅していた。
時計を見てみると、既に夕食前の時間帯になっており、意外と長く気絶していたんだと解る。
頭もはっきりしてきて、横になっているソファーから立ち上がると、はやてが五女にちょっと顔を怖くしながら話しかける。

「まったく、家の中であんま大きな魔法使ったらあかんやろ?」
「あ……、すまん母さん。体の危機を感じてつい……」
「……ごめん、そんなにあぶなかってんな」

娘が魔法を使った事を少し叱るが、予想外に色々あった事を娘の顔から感じ、つい謝ってしまった。
他の家族も五女のその言葉を聞き、何とも言えない表情で娘達三人の方を見る。

「さて、もうすぐご飯だし、二人を起こそうか」
「家だと私達も居るし、変な行動も取らないだろうしね」

ユーノとなのはがそう言いながら、まだ気絶中の三女と四女を起こす事にする。
幸い今は家族もそれなりの人数も居る為、五女に苦労もかける事も無い。

「はい、二人共起きてね。もうすぐご飯だよ」
「う……ん」
「あうあー」

なのはが二人の身体を揺らし、早く起きるように促す。
二人共まだ少しだるそうにしているが、しつこく体を揺らされた所為か、のっそりとソファーから身体を起こす。
二人共ボーっとしている頭で周りを見渡し、お互いを見た後、どうして寝ていたのかを考えだす。

「何で私達寝てたんでしょう?覚えてますか?」
「さあ?全然覚えて無い」
(?)

話している二人を見て、五女がある事に疑問を持つ。
気絶する前の二人なら、目を覚ました後四女が抱きついたり、三女が四女の手を握ったりとしていたと思うのだが、二人共特に素振りを見せない。
どうにもおかしいと思い、二人に対して色々質問してみる五女。

「二人共、何も覚えていないのか?」
「?何をですか?」

五女の質問に、何を聞いているのかと言った表情で返してくる三女。
四女の方にも一度聞いてみるが、四女の方も三女と同じく、気絶前の事はあまり覚えていない様子。
自分があれだけ苦労したのに、何で張本人二人が覚えていないんだと、若干思いながらも、質問を続ける五女。

「ほれ、石がぶつかった後気を失っただろ?その後の目を覚まして次の日学校を帰るまでの事だ」
「ちょっと待って下さい。……ふむ、少し思い出してきました」
「えーっと、確か目を覚ました後……」

細かい所を教えて貰い、少しずつ思い出して来たのか、ゆっくりと何が記憶の整理をする二人。
そして、しばらくした後全部思い出したのか、三女と四女がお互いに目を合わした瞬間……

「「うわぁ!」」

二人共変な声を出しながら、お互いに一気に距離を取る。
それを見て、既にどうなってるのかは想像できたが、一応ユーノの方を見て説明を求める五女他家族全員。

「多分さっきの爆発で、石の効力もぶっ飛んだじゃないかな?」
「随分適当だなおい……」
「まあ相当昔の物だからね。色々不良な所もあるさ」

かなりあっけらかんと答える父親に、五女もそんなんで良いのかと思ってしまう。
だが、とりあえず二人共元の戻ってくれたので、それに関しては物凄く安心する五女。
しかし、三女と四女は、石の効力が効いている時の記憶の所為で、二人して盛大に悶えており、ちょっと可哀想に思えてくる。
そんな二人の事など気にせず、晩御飯の準備が出来た為、とっとと食事を始める事にするなのは達。

「ほら二人共、ソファーの上でゴロゴロしてないで、ご飯食べるよ」

なのはにそう言われ、お互いに距離を開け、目を合わさない様にしてテーブルの方に歩く。
普段は三人娘のテーブルでの並び順は、三女 四女 五女と言った並びなのだが、この日だけは三女 五女 四女と言う並びになっていたと言う。
結局食事を終え、その後お風呂から上がった後も三女と四女は一言も会話が無かった。

「さて、じゃあそろそろ寝るか」

夜も更け、既に時刻ももう少しで日付が変わる位に差し掛かり、そろそろ就寝時間と言った所である。
しかし、三人娘は今は一緒の部屋で就寝している為、どうにも三女と四女は今一落ち着かない様子をしている。
やはり正気に戻ったとはいえ、すぐにはお互い割り切れるものではないらしい。
五女がどうしようかと思っていると、三女がなのはの方を向いて話しかける。

「あの、お母さん。今日はお母さんと一緒に寝て良いですか?」
「ん?……ああ。うん、良いよ。一緒に寝ようか!」

いきなりの三女のお願いに、一瞬どうしたのかと思うなのはだが、すぐに三女の考えてる事が解り、すぐに良いと答える。
それを聞いて安心する三女だが、なのは自身も最近娘に甘えて貰った事が無い為、この申し出は渡りに船と言った所で存分に甘えて貰おうと思っている。
その様子を見て、今度は四女がフェイトの方に歩いていき、フェイトも微笑みながら四女から出てくるセリフを待つ。

「母さん!今日は僕と一緒に寝よ!」
「はいはい。一緒に寝るのも久しぶりだね」

フェイトの方もなのはと同じく、甘えて来てくれない娘からの提案である為、間髪をいれずに良いと答える。
さて、二人が自分の母親と一緒に寝ると聞き、自分はどうしようかと五女が思っていると、ふと後ろの方から何やら視線を感じる。
振り向きたくないなーと思いつつも、無視をするのも流石に嫌なので、視線の感じる所を振り返ってみる。
そこには、予想通りはやてが五女の方を見ながら、凄く良い笑顔でカモン!と言った感じで五女の方に両手を出すはやての姿があった。
恐らく三人の内二人が自分の母親と一緒に寝ると言いだしたので、今度は自分達の番と思っている。

「……じゃあ私は部屋に戻って寝るとしよう」
「ちょう待てい!」

そんなはやてからの視線を無視して、自分の部屋で寝ようとする五女に、はやてが大きな声で突っ込みを入れる。
流石に関西方面の言葉で喋っている所為か、突っ込みも中々キレがある。

「なんでなん!?普通流れを読んだらここは私と一緒に寝るって言うのがお約束ちゃうん!?」
「いや、別に私は石の影響も何もないし……」

何か本気で怒られているのかと思い、少し驚きながらも理由を説明する五女。
だが、はやての方はそんな事関係なく、折角の母娘の触れ合いが実現すると思っていたのに、まさかの娘の裏切りにあい、力が抜け地面に膝をつく。

「そんな……、折角久しぶりに娘と一緒に寝られると思ったのに、あんまりや……」

地面に伏せながら、物凄く落ち込みながら泣くはやて。
まさかマジ泣きされるとは思わず、五女も流石に少々悪い事をしてしまったかと思い始める。
仕方ないので、今日は他の二人と同じ様に、母親と寝ようとする。

「あー、解った。私も母さんと一緒に寝るから……」
「ほんま!?」

五女がそう言った瞬間、瞬時に泣きやみ良い笑顔で五女の事を抱きしめるはやて。
正直少々鬱陶しく思ったりもしたが、まあ母親の喜んだ顔が見れたので良しとする。

「それじゃ寝ようかな。皆、お休み」

寝るにも良い時間になったので、なのはが三女を連れて自分の寝室に向かう。
フェイトとはやても、自分の娘と一緒に寝室へと歩いて行く。
こうして、三人娘に取って、色んな意味で記憶から消したい一日が終わる。



「……おはよう……」
「……おはようございます」
「朝っぱらから気が滅入る様な挨拶をするな」

一夜明けて次の日。
其々の母親の寝室か起きて来た三人が、朝食を食べる為に同じ部屋に集まる。
三女と四女は、まだお互いに昨日の事を割り切れていないのか、お互いに目を合わそうとしない。

「ほれ、さっさと食事をして学校に行くぞ。今朝は私達しかいないんだ」

この日の朝は、家族全員が仕事の為、朝はこの三人だけである。
三女と四女もこのまま微妙な空気で居たくは無いので、さっさと用意されていた朝食に手を付ける。
会話も殆どなく食事を終え、登校の準備を整え、家に鍵を閉めた後学校へと歩き出す三人。

「あ~、学校行きたくない……」
「私達が昨日してた事……」
「諦めろ。その内皆忘れる」

物凄く落ち込んでいる二人の前を歩く五女。
昨日のたった一日の出来事だが、間違いなくクラスメイト達は覚えている。
出来れば学園を休みたいと思っている二人だが、そんな事で学園を休む訳にもいかないので、諦めて学園に向かう事にする。
その後、学園の間で三女と四女の関係が色々噂になり、それになぜか五女も加えられ、五女が暴れだす事になったのだがそれは別に関係ない事。
これに懲りたのか、二度と怪しい物に手を出さないと心に決めた三人娘であった。


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