《それにしてもネギ君の詠唱速度は早いもんじゃの》
《そうなるように鍛えたからな》
《本気でやると雷の斧なら質は低くなるものの連射できるのは凄いですよね。それでも近衛門殿も異常に早い上、無詠唱で発動できる魔法が多すぎますよ》
《ふぉっふぉ、年の功じゃて。して、この3日間でネギ君が使っとる魔法障壁のようなものもエヴァが教えたのかの》
《完成形には程遠いがな。本当はもっと強度があるが、ぼーやのは密度が薄いからすぐ貫通する》
《掴みだけでもできているだけで私は驚きですよ…。この3日間で最初よりは密度も濃くなってるじゃないですか》
《なるほど、新魔法のようじゃな》
《そんなところだ。そろそろじじぃのところに着きそうだが戦場はどんな場所だ。まさか洞窟だなんて言わないだろうな》
《どこまでいっても地面も壁もない、あるのは空のみじゃよ》
《空間認識能力が試されますね》
《最後の最後も初めての場所か。じじぃの転移魔法が一番有効に使えるだろうな》
《最初は何秒持つかの》
瞬殺宣言だった。
《ここまで来るのにぼーや達の浮遊術はほぼ完璧になっている。せめて1分は持たせて欲しいものだ》
そして、とうとうネギ少年は近衛門のコピーの元に辿り着いたのだった。
わざわざ近衛門のコピーが「ここまで来れたのは褒めてやろう、だがここで終わりだ!」なんていう挑発を言い出して開幕。
様子見するかと思えばコピーが最初から本気で潰しにかかり瞬移で死角に回り込み魔法領域を容易く貫通する魔法の射手の雨を乱射。
少年は早速深手を負いながらも風精囮を出現させ虚空瞬動で移動するが、囮にも移動先にも魔法の射手が同時に着弾し一度目は為すすべなく撃墜。
これが全て魔法の射手なのだから恐ろしいものだ。
いかに少年が高速思考、詠唱ができても攻撃に対処できなければ意味が無い。
《近衛門殿、容赦ないですね……》
《手加減したら意味ないじゃろ》
《これを見ると私の訓練も甘いものだな…。そもそも本当に殺すつもりでいつもやっていないから仕方がないが。しかし5秒も持たんとはな》
《貫通した数が多い上に大体急所狙いですからね……》
《戦争じゃとこんなもんじゃよ。一瞬で復活はせんから少しばかり時間がかかるの》
《お優しい事に精神のダメージを緩和させるために間を置いているんだな。これが昔の私の闇の魔法のスクロールならじわじわ傷めつけて遊ぶだろうが、これはあっさりいくな》
闇の福音の頃だとそんな感じの行動を取るんですか……。
その後意識を一旦現実に戻し、2分、つまり二時間程時間を早送りし、また戻るというここ数日で慣れた行動を繰り返す事になった。
《2度目は開幕から浮遊術で高速移動しつつ風花風障壁を自分の死角に連続発動か。大方威力を見極めるつもりだな》
優しい事にわざわざ魔法の射手を障壁に向けて放つコピー。
しかし、結果はその魔法の射手が継ぎ矢の容量で同じ箇所に放たれており、あっさり貫通し急所に命中するという異常な結果だった。
《確かに風花風障壁は防御力が高いが面ではなく点で突破すれば紙のようなもんじゃよ》
《首筋と心臓、頭にまで撃つとはな……》
ショッキングな映像だった。
一発触れたら即終了のタイプのゲームかという状況である。
《こう何度もすぐにやられるとスクロール内で復活に数時間かかると些か面倒ですね》
現実で数分落ち着くのも何なので小太郎君のスクロールも覗いたが、まだ最後まで到達していないが分身の密度上昇が著しくガンガン攻略中であった。
むしろ分身に実体が出せる小太郎君の方がコピーと当たった場合耐久時間は長いかも知れない。
見られているとも知らず獣化も頻繁に使用している。
ネギ少年の方に戻るとすぐさま部屋から出ていくかというと今回は悩んでいた。
「風花風障壁をあんなに簡単に破られた。一方向に障壁を何重にして守ってもすぐにまた死角から魔法の射手が飛んでくる。せめて急所に直撃するのは防がないと……。そもそもあれは虚空瞬動なのか?厄介な瞬間移動に対応できない限り勝機が見えないな。奴が魔法の射手なら僕もこの長い間に本数も増えた無詠唱魔法の射手で対抗するしかないか」
まもなく強制的にコピーの元へ移動させられ戦闘再開。
《ぼーやも今回は厳しいだろうな》
《まだ全然挫けてませんからどこまで伸びるかですね》
《ほう、ネギ君も魔法の射手で来るかの。じゃが威力がまだまだじゃの》
そら魔法障壁があってないような貫通の仕方をする魔法の射手に簡単に対抗出来るわけがない。
今回も駄目かと思われた矢先。
《ぼーやの奴雷の斧を身体全体に振り回し始めたぞ。連続詠唱のお出ましか》
《面白い事しますね。確かに雷の斧レベルならば近衛門殿の魔法の射手の軌道を少なくとも急所からは反らせられますね》
それでも少年は少なくない数を身体に被弾した。
《斧より鞭に近いのう。ふぉっ、左手にも出して攻撃しおったか》
右手で防御、左手からの雷の斧で防御の隙間から攻撃。
右手の雷の斧の持続効果がきつくなると無詠唱魔法の射手に移行。
しかし攻撃は一切当たらない……。
《複数の魔法をこの年で同時に行使できるとは大したもんじゃな。じゃがもう限界じゃの》
既に急所以外の部分の身体がズタズタになっていたため力尽き、あえなく三度目はこれまでとなった。
その次は防御するのを捨て、回避に専念する事にしたようだが連続の虚空瞬動は近衛門にはタブーである。
《ぼーやも分かってるだろうがどこまで機動力に差があるかの確認のつもりだろうな》
《まだ戦闘経験が甘いから何処に移動するか簡単にわかってしまうの》
《避けていると思わせてやはり誘導ですか。時間は10秒でしたね……》
《これはしばらく試行錯誤が続くだろうな。普通子供相手に最初から本気でかかる相手なんてあまりいないが》
《初見の相手の力を見誤り油断することの愚かさは叩き込まんとな。最初から本気でなくとも後から突然強くなられれば同じことじゃよ》
夜9時頃にコピーとの戦いに突入したネギ少年だったがその7時間後の午前4時頃の小太郎君が追いついた時には、スクロール内時間で21日後、死亡回数も100を超えていた。
何度も試行錯誤を持てる魔法を駆使して実験したネギ少年の結論としては、強力な詠唱魔法で対抗したところで、相手は必ず回避し、攻撃手段が相変わらず無詠唱の魔法の射手のみという速射性の違いからジリ貧にしかならない為、魔法領域の強化と少年自身も同じく魔法の射手の威力を近衛門に近づけ相殺を狙うという事を何度も何度も実戦の中で繰り返すようになったのだった。
螺旋回転を早々に取り入れ、練度を着実に上昇させていった。
死、とはいっても精神空間内であるが、これを繰り返すとその度に徐々に精神力が高まっていくので飛躍的な効果が得られた。
少年の魔法の射手1矢は9月に修行を始めた当時魔力を込めたストレートパンチ一発の威力程度しかなかった。
それも今では、死ぬと移動する部屋の壁に、螺旋回転を加え威力が拡散すること無く罅が一切入れずに綺麗に穴が開くようになった。
それでも近衛門の魔法の射手には届かないが、無詠唱と最も基本的な攻撃魔法の延々とした訓練のお陰で魔分の運用効率が上昇した結果魔法領域の出力も上がってきた。
矢が着弾すると貫通までに一瞬の余裕が発生し、根本的に大分慣れてきたのもあってその瞬間にわずかに虚空瞬動することで何割かの確率で回避もできるようになったのである。
《後十数時間ですね。ところでこのスクロールは一箇所で長時間じっとしていられない理由はやはりできるだけ今持てる力のみで戦えるようにという配慮です……か》
と思ったら近衛門寝てた。
お嬢さんも一旦帰ったし。
結局見守るのは本当に私の役目らしい。
ところで経過時間の割に死亡回数が少なくなっている理由は、ダメージの受け方によって復活までにかかる時間の長短が決まるため大分粘るようになってきた少年はその度に復活までの時間も伸びてきているからである。
成長してきたとは行っても、戦闘で持つ時間はやっと秒の域を脱し、分の階段にようやく足を踏み出した程度だ。
まず今回そもそも勝たせる気はない試練なので、時間が伸びればそれだけでも十分とは言えるだろうが。
それから更に3時間、9日が経過した小太郎君も結果は最初のネギと同じである。
少し違うのは小太郎君の方が野生の勘とでもいうのか反応が良い時があり、また、やはり実体のある分身が出せる上、狗族の生命力の高さから攻撃を受けても撃墜されるまでの時間が始めからやや長い事である。
ようやく朝7時近衛門が起きた。
とりあえず先ともう一度同じ質問をした。
《その通りじゃ。スクロールで数日時間があれば新魔法でも開発できてしまうかもしれんがそれはちと趣旨が違うの。あくまでも戦闘の度に持てる力のみで対処する経験は多い方がええじゃろ。その為にも何度もやり直せておるんじゃからな。これで一箇所におる時間がたっぷりあったら勝てそうになるまでネギ君の場合修行し続けそうじゃろ》
だ、そうだ。
まあ言われてみればそうかもしれない。
ラスボスの一歩手前でセーブして修行し始めたら4日間という時間制限が存在するこの試練の趣旨が削がれるのは間違いない。
《朝になってきてみればまだ3分も持たないか》
お嬢さんもお出ましである。
《近衛門殿の瞬間移動は異常ですからね。先読みができない限り攻撃も当たらないですし。でもネギ少年随分成長しましたよ》
《ふむ、ぼーやの奴じじぃと同じ技術を磨く事にしたのか》
《ふぉっふぉ、これでネギ君は儂の弟子でもあるの》
《何言ってる。努力してるのはぼーや自身だろうに》
お嬢さんは少し嫉妬しているようだ。
《近衛門殿、ここでの空間の経験は肉体が無いですが現実に戻った場合どうなるんですか》
《それは肉体が付いて行かんから劣化するの。それでも経験と記憶はしっかり残っとるから意味はあるぞい》
やはり、ここでの成長がそのまま現実で反映される訳ではないか。
記憶が残るということはやはり魔法開発にはうってつけだろう。
《スクロールに入ればすぐに誰でも強くなれるのならば魔法学校等いらんしな》
《エヴァは厳しいこと言うの》
《現実はいつでも甘くないという事だよ。それにしても後から追いついた小太郎の方が最初は善戦しているな》
《生命力と分身、勘がありますからね》
《長瀬君との修行は効果あったようじゃの》
近衛門も知っていたか。
《彼女もあの年にしては相当な手練ですからね。瞬動術に関してはほぼ完成形と言って良い上、気の扱いもかなりのものです》
《私は直接見たことはないが、体育の時の身のこなしを見る限り、下手な魔法先生より強いだろうな》
《そうじゃな。長瀬君が山奥からわざわざ出てこの学園に入った理由は一般人の生活を学ぶ修行だそうじゃがな》
だから一応は「忍者ではござらんよ」なんて言うのか。
麻帆良学園の外だったらもっと浮いていただろうが、そこは良かったのか逆に修行の場として温いのかもしれないし、どうだろうか。
《昔からたまに忍者が学園に入ってくることもありましたが、入学時点でこれだけ強いのは彼女が初めてでしょうね》
《入ってくるにしてもある程度都会慣れしとる忍者が多かったがの。長瀬君は珍しい例じゃよ》
生きる化石か何かなのだろうか。
そんな話をしながらも刻々と時間が過ぎていく中で、ネギ少年は最近練習していなかった遅延呪文にも手を出し始めた。
どうやら解放しながら同時に高速詠唱を行うつもりらしい。
《頭の回るぼーやはまた遅延呪文をやり始めたか。まあ否定はしないから好きにすればいいがな》
《ふぉっふぉ、あれもこれもとやってはどっちつかずになると思うがの。ネギ君の才能に期待じゃな》
《高速で詠唱が行えますからそこまで必要かというと疑問もありますが一度に発動させれば火力は上がりますね》
《断罪の剣を遅延呪文で貯めておくのは今のぼーやには防御としても利用できるな》
まさに攻撃は最大の防御って、少し違うか。
しかし、高速移動、魔法領域、無詠唱魔法の射手、その他の高速詠唱、更に遅延呪文が並行して使えるのは才能に溢れすぎだと思う。
最初の3つが最終的には完全に無意識でできるようになるのだろうが、まだそこまで熟達していない。
対して、今の近衛門コピーは攻撃を喰らわないという前提のため、高速移動、無詠唱転移魔法及び魔法の射手だけで対処している。
非常にシンプルだがそれ故に強い。
近衛門を完全に倒すならば、どうにかして捕獲するか、一点を爆心地とした広域殲滅魔法で消し飛ばすしかないのではないだろうか。
生半可な広範囲魔法ではどうせ相殺するか防がれるか又は完全に一旦退避されるであろうし難しいだろう。
神経ガスを大量に散布するか強力な爆弾などが良い対処法だと思うが、外道である。
長くなったがネギ少年の時間制限的に最後になった戦いは良くやったと思う。
△▼△▼△▼△▼△▼△▼△
「うわぁっ!!」
「ぐっ……はぁっ……はぁっ……またやられたのか」
もうこの起きた瞬間の激痛も数百回は超えた。
それでも父さんの仇なら負けるわけにはいかない。
もう一度だ。
移動する前にいくつかの魔法は発動しておけるから準備しよう。
まずは浮遊術から……。
―戦いの歌!!―
―魔法領域展開―
―断罪の剣・未完成 術式封印!!―
扉を開ける前に
―ラス・テル・マ・スキル・マギステル―
―来れ 虚空の雷 薙ぎ払え―
さあ行くぞ!
―雷の斧!!!―
奴は予想通り転移、次は今まで通りなら続けて魔法の射手が死角の斜め上か下から飛んでくる筈。
―風精召喚―
マスターの教え通り一箇所に留まらず踵に魔力を貯め虚空瞬動。
上方に移動しながら上下反転で後方視認!!
攻撃は下から!追尾式魔法の射手が来る!
ここで相殺だっ―解放!!―全弾撃破!
続けて―光の17矢!!―
どうせ通ってない!背後の急所の射線上に
―ラス・テル・マ・スキル・マギステル―
―来れ 虚空の雷 薙ぎ払え―
振り返って―雷の斧!!!―
……今度も撃破、次はどっちだ。
移動して離れようにも奴の瞬間移動できる距離は底が知れない。
とにかく―断罪の剣・未完成 術式封印!!―
再度右手に―断罪の剣・未完成!!―
左手で避けられない―ラス・テル・マ・スキル・マギステル―
―雷の精霊199柱!!集い来りて 敵を射て―魔法の射手 連弾・雷の199矢!!―攻撃だっ!行け!!
奴に魔法障壁を張る気がないのは分かってるけど、前方180度に向けて多弾頭で放っても倒せはしない!
どこに反応が…左上かっ!
断罪の剣で吹き飛べっ!
「はぁっ!!」
全力で投げつけるっ!!
……けどやっぱり回避されるか……もっと全然、速度が足りてない。
奴と対等に戦うなら転移魔法がないと駄目だし、雷系最大呪文の千の雷も覚えないと!
まだ、まだ、始まってもいないのに!
△▼△▼△▼△▼△▼△▼△
《今回で終わりでしょうけど集中力が凄いですね》
《ああ、最後の最後で7分経っても未だまともに被弾していない》
《ふぉっふぉ、ここまで来れば合格じゃろうて》
―出力最大!!―
おおっ、かなり高い水準の魔法領域か!
《ぼーやの奴、壁を突破したか》
《こりゃ驚いたわい。あそこまで硬くなるのかの》
既にあちこちに滞空している光球から放たれる無数の魔法の矢を未完成の断罪の剣で吹き飛ばす少年。
同時に魔法の射手で応戦し、相殺しきれず突破してくる矢は魔法領域着弾後、2秒かけて突き進みながら減衰、消滅に至るようになった。
もうすぐ現実に戻ってくるとして、再現が難しくなるというのが惜しいぐらいである。
流石にお嬢さんの雷の暴風を一瞬で霧散させてしまうのと比べるべくもないが、戦闘訓練を本格的に始めて4ヶ月程度の子供が到達するレベルは遥かに超えている。
《このままだと魔力が完全に尽きるまで続く持久戦になるな。小太郎のようにこちらも行動パターンが変わるのか?》
《そうじゃな。もうそろそろじゃろう》
近衛門のコピーの行動のルールは現状の戦法で速攻で倒す事が第一となっている。
当然現状で倒せないと判断すればすぐさま攻撃パターンが変わる訳だ。
近衛門の宣言通りすぐにコピーの様子が変わり、空を埋め尽くす大量の槍が出現した。
少年はそれを見た瞬間の表情はなんともいえなかったが、そろそろ身体も限界に達しそうな所、まもなくそれらが殺到した。
《まともな対抗手段も無くここまで出させたなら良くやったよ、ぼーや》
《ええ、ここでの経験は後で成長につながると思います》
《10分を越すとは儂も思わなんだ。ナギとはスタイルは違うが、片鱗を見たの》
《ああ、ぼーやだけの進むべき道の始まりだな》
さて、小太郎君の方はどうなったかだが……。
実体のある分身2体と共にお互いに攻撃と護衛を補い合うという戦法で善戦していた。
一人が防御に全力を注ぎ、一人が攻撃に、もう一人は両方の補助をしながら視野の確保で死角を潰す。
うまくできていたため、耐久時間は長かったが、攻撃が本体に当たるとなると一気にやられてしまう弱点があった。
異常な威力の魔法の射手を見てやはり彼も気弾一発ずつの威力を上げるようになり、2発なら1矢を越える威力にまで上がった。
結果この地道な気のコントロールのお陰で全身の気での強化も遥かに効率が上昇し、獣化するとその伸びが実にはっきりした。
その水準に達したのはネギ少年の最後の戦いよりも数十分、つまり1日と少し早かった。
しかし先の通り、早々に攻撃パターンが変わった近衛門コピーによりそれもあえなく撃墜されたのだった。
ネギ少年よりも到着は遅くなったが視野の問題を解決できるという点はネギ少年よりも遥かに有利であった。
スクロール内の二人が戦ったら先に近衛門に攻撃手段を変えさせた小太郎君が勝つかと言えば、ネギ少年の魔法領域の頑丈さ、未完成断罪の剣の危険性も考えると、どうなるかはわからない。
何より、今回は終始遠距離戦であり、接近戦のかけらもないので比較が難しいだろう。
△▼△▼△▼△▼△▼△▼△
「うわぁぁっ!!」
最後にあんな攻撃に移ってくるなんて!
「ぐっ……はぁ……はぁっ……あれ!?ここは?」
「ネギ!気がついたのね!」
「ネギ君起きたんやね!」
「ネギ先生!よくご無事で!」
ああ、やっと…やっと戻ってきたのか…。
「うっ…うっ…うっ…」
「ネギどうしていきなり泣き出すのよ」
「いえ…戻ってこれたのが嬉しくて…。凄く…長い間ずっと寝ていた気がします」
「ネギ君な、4日間ずっと寝てたんよ」
あんなに長かったのにたったの4日間!?
マスターの別荘の比じゃない!
「たったの4日間……」
「たったって何よ!ずっと苦しそうにしてるし、汗はかくわ心配してたんだからね!」
そうか、アスナさん達は僕の事をずっと看病してくれてたのか…。
「アスナさん、このかさん、あやかさん、心配させてごめんなさい。寝ている間にご迷惑をおかけしました」
「ネギ先生、そんなにすぐ動かれて大丈夫なのですか?」
「そうやよ、ずっと寝てたんやからゆっくり起きんと身体に悪いえ」
「大丈夫です」
「ネギ…何か雰囲気変わったわね」
ずっと一人で生活してたからかな。
前より精神的に強くなったのはわかる。
「アスナさん、僕は僕のままですよ」
「何だかネギ先生が凛々しくなられましたわ!」
「そうけ?…う~ん…よく見ると顔つきが変わったような気がするなぁ」
「ま、それは良いとして今から寮の食堂でクリスマスパーティやるから行きましょう」
「そうやね!ネギ君の為にクラスの皆も張り切ったんやよ!」
「では早速私がネギ先生のお着替えを…」
「いいんちょ!それぐらいネギなら一人でできるわよ!」
ふふ、この二人は変わらないな。
久しぶりに現実に戻ってきて、起きてみればクリスマスパーティを皆が準備してくれているらしい。
食堂に向かう途中の廊下
「ネギ、さっきたったの4日って言ってたけどまさかエヴァンジェリンさんのアレみたいな感じだったの?」
アスナさんが耳元に頭を寄せながら小声で話しかけてきた。
「確信はないですけど、4日間は僕にとっては数ヶ月間の時間だったと思います」
「数ヶ月!?何よそれ!」
「アスナさん、声が大きいですよ」
「わ、悪かったわね。でもただの夢じゃなかったのね…」
「はい、全部覚えてます。だからアスナさん達に会えて嬉しいです」
「ば、馬鹿ね。同じ部屋に住んでるんだから当たり前じゃない」
…アスナさんは素直じゃないな。
そんな事を話しながら食堂についた。
「「「「ネギ先生復活おめでとう!!!」」」」
「ほらネギ、皆あんたのこと心配してたんだからお礼ぐらい言いなさい」
「はい!皆さん心配かけてごめんなさい!こんな綺麗な飾り付け見たこと無いです、ありがとうございます!」
「硬いことはいいからネギ君の席はこっちだよー!」
「そんなに引っ張らなくて大丈夫ですよっ!」
「恥ずかしがらないくていいよー!」
そうだ、これが2-Aの皆だったな。
クリスマスイブっていうと落ち着いて過ごすものだったと思うけどここでは関係ないみたいだな。
《ぼーや、起きたようだな》
マスターだ!
《マスター、心配かけてごめんなさい》
《気にすることはない、ぼーやの体験の原因は学園長からの試練だからな》
学園長先生の試練!?
じゃあ最初に襲って来たのも学園長先生だったって事なのか。
《じゃあ父さんを封印したっていうのは嘘なんですか!?》
《ああ、そうだ。ぼーやに本気を出させる為の口実だろう》
《そうだったんですか…。でも僕最後の相手を倒すことはできませんでした…》
《当然だよ。あれは姿は異なっても学園長なんだからな。それに元々倒させる気は無かったようだ》
《あの最後の相手は学園長先生だったんですか……》
《私も何度か覗いたが、まあ新型の基本魔法もまだ不完全な状態で良くやったよ。あれでぼーやに新魔法でもじっくり開発する暇があればもう少し健闘できただろうな》
《はい、落ち着いていられる時間が殆ど無かったのはきつかったです》
《それでも戦闘中での地道な工夫と発想は良かったぞ。特に最後の集中力と、魔法領域の完成度は目を見張ったよ。浮遊術も最初と比べると自然になった》
《ありがとうございます!》
《…それと、あの空間だが、学園長もぼーやのじじぃも経験済みだそうだ》
《おじいちゃんが!?》
《小太郎もぼーやと同じ日からやっていたよ。結果はぼーやと同じで最後の相手を倒すことはできなかったがな》
《コタロー君も!?》
そうか、おじいちゃん達もコタロー君も同じことやったのか。
《明日学園長の所に行くと良い。一応試練に耐え切ったご褒美をくれるらしいからな》
ご褒美ってなんだろう…。
《はい、分かりました、マスター》
《今日は楽しむ事だな。それでは通信を切るからな》
う~ん…なんだかずっと騙されてた気がするんだけどな…。
でも、今日は言われたとおり、皆に会うのも久しぶりだし楽しもう。
△▼△▼△▼△▼△▼△▼△
ネギ少年と小太郎君は両者共に288日間の長きに渡る精神空間をリタイアすることなく過ごし切った。
小太郎君は近衛門のコピーを倒すことができなかった事を悔しがっていたが、勝てたら勝てたで近衛門よりも既に強い事になるので流石にそれは無い。
あの空間では肉体的成長は一切しないものの、精神力、反射神経、戦闘技術やこれらの積み重ねの中での勘については飛躍的に伸びたと言える。
スクロール内で全く新しい新技を開発するだけの安全な時間が無かったものの、その場の発想の中での技の昇華は著しいものだった。
ネギ少年と小太郎君は次の日、言われたとおりに学園長の元に向かった。
「ネギ君、コタロー君4日間よく頑張ったの」
「へっ、学園長も乗り切った言うんやから当たり前やで!」
「僕は少し騙された気がしました…。でも途中で挫けそうになっても頑張りました」
「して、二人は凄く強くなったと思っとるかの」
「おう、数倍は強くなった気がするで!」
「僕もそう思います」
「そういうと思っとったが、あのスクロールは精神だけを取り込んどるから、現実で同じ事を再現しようとすると劣化するんじゃよ」
「えー!?そんなアホな!折角あないに強うなったと思うとったのに」
「そうだったんですか……。でも出来事はしっかり覚えてます」
「その通りじゃ。経験と記憶は残っとるからそのイメージに近づくのは修行次第でじゃから努力すればええ」
「意味無かったんやないんか。よっしゃ!それならまた修行や!」
「あのイメージか……忘れないようにしないと」
「しかしネギ君には何も伝えずスクロールに放り込んで悪かったの。恨まれても文句は言えんのじゃが、このプレゼントで我慢してもらえると助かるの」
「おじいちゃんもやったと聞いたのであまり気にしてません。それでこれってニュースでやっていた三次元映像ですか」
「なんで学園長が持っとんのや」
「それは色々秘密があるんじゃよ。大事なのはこの映像の内容じゃ。確かこの辺じゃったの」
「ここ龍宮神社やないか」
「うん、ウルティマホラの時とは少し舞台が違うけど…」
「これはの、今は形だけ行われておるまほら武道会の昔の映像じゃよ」
「おっこの赤毛の奴ネギによう似とるな!」
「え、ナギ・スプリングフィールド!?学園長先生、これって?」
「ネギ君の思った通りじゃよ。これはネギ君の父親が10歳で、まほら武道会に突然参加した時の映像じゃ」
「これがネギの父ちゃんか!」
「これが父さんの小さい時…こんなに強かったんだ……」
「なんやめっちゃ強いな!……でもあの学園長の偽物に比べるとまだ戦えそうやで」
「そりゃそうじゃろう。この大会では地面があるからの。それに色々ルールもあるものじゃから二人が戦った儂の偽物とはそもそもスタイルが違うんじゃよ」
「ウルティマホラみたいなもんなんか」
「近接戦闘がなんだか懐かしいや」
「ナギの話じゃが、当時既に浮遊術は完璧にできおったし使える魔法は少ないものの体術のセンスは誰に教わるでもなくとにかく強かったの」
「父さんはどこまで勝ち残ったんですか」
「最後まで見てのお楽しみじゃよ。全試合揃っとるからじっくり見ていくとええ」
「学園長先生、ありがとうございます!」
「昔はこんな凄い大会あったんやな」
「実は来年の麻帆良祭では当時と同じまほら武道会を開催する予定なんじゃよ」
「本当ですか!?」
「一般人対策はどうするんや」
「それはしっかり対策を用意しとるから気にせんで良いぞ。二人とも出場する気があるならこれからも修行を続けるとええじゃろ」
「当たり前や!ウルティマホラと違うて気を隠さず使えるんなら絶対出場するわ!ネギもそうやろ?」
「うん、僕も絶対に出場するよ!」
「特別企画もあるようじゃから楽しみにしておくといいじゃろ」
ナギ少年が優勝まで行くまでの映像を真剣に見続けていた少年達の目は輝いていた。
その後の少年達にまずは魔法のスクロール内での自分のイメージに追いつくこと、そして目指すは10歳の時のナギ少年を越すという明確な目標ができ、より修行に打ち込むようになったのだった。
△▼△▼△▼△▼△▼△▼△
ネギ先生達の試練も終わり、年末年始となりました。
テレビのニュースではとうとう麻帆良沿線での監視カメラの試験運用が始まったと報道され、試験運用期間の間に犯罪発生率がどれだけ減少するかのサンプルが集められるそうです。
「今年も無事に年末を迎えられましたね」
「そうだナ。私にとても日本での二度目の年末になたヨ」
「去年は年を越してから蕎麦を食べましたが、今年こそ正しく食べられましたね」
「そういえば鈴音さんも葉加瀬さんも去年は年末年始関係なく研究ばっかりでしたね」
「そう言われると、まだまだ研究することは尽きないのだけどナ」
「私も相坂さんが収集した行動プログラムで新型ロボットの新たな可能性を模索したいです」
「あのプログラムに従えば人型に限らず四足歩行でも昆虫の動きも再現できるだろうからネ」
「昆虫の動きはちょっとやめて欲しいです…」
「何言ってるんですか相坂さん!昆虫の動きからはまだまだ学ぶべきところが限り無くあるんですよ!例えばムカデの足の動きが精密に再現できれば新しい自動車ができるかもしれませんし他には…」
なんでムカデとかそういう考えたくないものをいきなり例に上げるんですか!
そんな見た目の乗り物乗りたくないですよ!
…というか折角年末でほっと一息かと思えば結局マッドサイエンティスト化するんですね…。
せめてもの癒しと言えば、日本での年末年始が初めてのネギ先生が初詣やおせち料理にどれぐらい感動するのかというところですが、きっと目を輝かせてくれると思います。
でも、今回の試練を乗り越えてなんだか顔つきが変わってただのかわいいからカッコイイになったと皆言っています。
コミュニティの方の情報もそういう書き込みで盛り上がったりしてますけど凄い内輪にしか役に立たない内容ですね。
連絡網としてもかなり役に立っているみたいでカラオケに行こうとか、近いうちに服を買いに行く予定があるけど誰か一緒に行かないなんていうのを書き込むと同じ寮の部屋でなくてもすぐに伝わるので便利といえば便利です。
長谷川さんは未だに積極的にコミュニティでは情報を出していませんが、自分のブログでは相変わらずのようです。
SNSの制作には協力を得ているので規模が大きくなれば飛躍的に会員が増える事につながると思います。
と、ぼーっと考え事をしていたら鈴音さんと葉加瀬さんの白熱した会話はまだ続いていたみたいです。
「二人共もう後10秒で新年ですよ!」
「おお、そうだナ」
「カウントダウンですね」
6,5,4…
「「「3!2!1!、あけましておめでとう!!」」」
「それにしても皆すっかり携帯の更新にも慣れましたね」
「予想通りだが、大量のあけましておめでとうだネ」
「やってみて思いましたがこれは絶対流行りますね」
「うむ、間違いないヨ。さて、皆で初詣に行くみたいだから用意しようカ」
「はい!」
女子寮の前で皆と合流し、ネギ先生も引っ張って龍宮神社に行き初詣をしました。
綾瀬さんがネギ先生に詳しく参拝の方法とそれにまつわるうんちくを長々と講釈していて、流石神社仏閣マニアだと再認識しました。
去年しつこく追い掛け回されたのも良い思い出です。
次の日去年と同じく朝食堂でおせち料理を食べた後、改めて神社に向かい、おみくじを引いたり絵馬を書いたりというのは伝統通りというのか去年と違いありません。
しかし今年は私に違いがあります!
それは私も着物を着ているということです。
ネギ先生が似合ってますねと褒めてくれて着て来て本当に良かったです!
それを聞いた着物を来ていなかった人達は私達も買っておけば良かった!と騒ぎになり、結局ネギ先生が全員に似合ってますと言う羽目になりました。
龍宮さんに私と鈴音さんは猛烈に安全関連のお守りを進められ、良いようにお金を消費させられたのです。
後で確認しましたが流石に安産祈願は余計ですよ!
語感的に似てますけどそういうことじゃないです!
そして、そこそこに解散となり、予想通りというか昨晩二人が熱く新型の制作について語っていたため工学部に半ば強引に連れていかれ、計算に付き合うこととなりました…。
いつの間にか工学部の直ぐ横に体育館のようなものが出来始めているのですが、どうやらSNS関連の為のもののようです。
見た感じ今月中には容易に完成しそうなあたり、どういう建築技術なのか気になります。
△▼△▼△▼△▼△▼△▼△
1月も今までと変りなく忙しい日々を過ごしたが、試験運用している監視カメラがあるのにもかかわらず電車で犯罪におよぶ不届き者が次々に検挙されたり、一週間毎に犯罪発生率が激減していくのが報道されているのは爽快だたネ。
運用期間はまだあるが、既に人口の密集している東京の路線からも導入したいという話が上がて来ていると雪広から知らされたヨ。
近いうちに個人的な表彰状が渡されるという話もあるらしいが、目立つのは御免だネ。
11月から空港で販売し続けた超包子の肉まんも世界に届けられていて、とうとう来月にアメリカで支店を出す件が実現することになたヨ。
実際国内に店舗数を増やしてもよかたのだが、各空港店からもインターネット販売を行ているから無闇に情報漏えいの確率を上げる必要も無いネ。
《翆坊主、来月アメリカに出店する超包子にまた視察に行こうかと思うのだがどうネ?前銃撃犯はもう一度おびきだすでもしない限り尻尾を掴めないと言ていたが、国外にあえて出てまた似たような事があれば国内組織なのか国外組織なのかも判断できるヨ》
《わざわざ囮になるということですか…》
《鈴音さん危ないですよ!行くなら私もまた付いていきます!》
《サヨが付いていくというなら構いませんが、プロの護衛はしっかり連れていった方が良いですよ》
《それなら丁度龍宮サンがいるネ。この前約束もしたから丁度いいヨ》
《また随分用意周到ですが想定の範囲内ですか。一応確認ですがどこの州ですか》
《ワシントン州だヨ。それがどうかしたのカ》
ワシントン州と言えば、例のOS会社があり、アメリカのアラスカを除外した一番北西の位置で美しい風景が広がっている西海岸の州だヨ。
鈴木サンのモデルになた野球の選手の所属するチームの本拠地でもあるネ。
《いや…都合がいいと思いましてね。アメリカにはジョンソン魔法学校があるのですが、なんとワシントン州にあります。そしてその魔法学校出身の生徒が超鈴音達の一つ下の学年にいます。名前は佐倉愛衣と言いまして案内でも頼むと良いかもしれません。次が重要ですが彼女は探知能力が非常に高いそうです》
確かに都合の良い事だナ…。
無理に連れて行く必要もないが面白そうではあるネ。
地理に詳しいならまずマイナスに働くこともないし英語も話せるカ。
《ふむ、面白そうだナ。適当に部活でも設立してアメリカに行てくるカ。人数は私、さよ、佐倉サン、龍宮サン、あと一人足りないネ》
《わー、なんか確かに面白そうですね!危険がまた一杯そうですけど》
《あと一人だったら春日美空と初等部ですがそのマスターのココネ・ファティマ・ロザでもどうですか。言ってて大分投げやりな感がありますが、ココネの方は微弱な念話を聞き取る能力があります。私が仮契約カードでの通信を拒否したのは実は彼女が原因です》
《こういう時翆坊主の能力はずるいとしか言いようがないナ。しかし美空について触れないのはなんとも失礼だと思うヨ》
《ではコメントを…春日美空はココネを肩車して早く走れます。イタズラ魔法が得意です。超鈴音と同じクラスですから巻き込むのは意外と簡単です》
そんなところだろうと思たヨ。
《キノ、棒読みですよ…》
《ふむ、一足先に部活を設立しておくカ。ネギ坊主達もいずれ部活を設立して魔法世界に行くのだろう?》
《コメントはスルーですか。まあその通りですよ》
《私海外行くの初めてなので楽しみです!》
《さよ、まだ決また訳ではないが、…学園長には多大な貸しがあるからほぼ確実に実現できるネ。早速授業が終わたら交渉開始ネ》
《えっ鈴音さんもう動くんですか!?》
《視察まで時間がないから急がないとナ》
《設立頑張ってください。今回は私もサヨからバックアップを行ないますから観測は遠隔地でも大丈夫です》
《それって私の人格残るんですか?》
《人格には影響ないですよ。サヨが知覚して無くてもこちらで知覚できるようになるだけです。いざとなったら強制的に身体を動かすかもしれませんが》
《さよは海外旅行を愉しめばいいネ。今回は私達の方が先手を打てる状況になるからナ。通信終わりだヨ》
この日授業が終わった瞬間から行動を開始したネ。
まずは隣の席からだヨ。
「美空、私が作る部活に入るネ」
コソコソ話しかけると何か企んでる感じがするナ。
「超りん今なんと?」
「私が作る部活に入るともれなく海外旅行がタダでできるヨ」
「おおっそれはいいな、何処に行くのさ」
フフ、簡単に釣れるものだナ。
「ワシントン州だヨ。西海岸だから期待しておくと良いヨ」
「おっけー、何かよく分かんないけど私はいいよ」
「交渉成立だナ」
次は龍宮サンだな。
「龍宮サン、護衛の依頼だヨ。私が作る部活を隠れ蓑にアメリカまで来月着いてきてもらいたいネ」
「アメリカまでか…。来月とは急にどうしたんだ」
「超包子のアメリカ支店が出店するから視察だヨ。費用は全額負担に報酬は払うから任せるネ」
「本当の狙いはそれではないようだな。護衛のついでにタダで久しぶりに海外に行けるようだしその依頼受けよう」
「話が早くて助かるネ」
次は佐倉サンか。
《翆坊主、佐倉サンは何組で、もしくはもう何処かに移動しているカ》
《ホームルームが長いのでまだ大丈夫なようです。クラスは1-Dですよ》
《情報提供感謝するネ》
《あっという間にサヨを含めて四人は早業ですね》
1-Dは二階だたナ…。
ホームルームが終わたようだネ。
顔がイマイチ分からないが、お料理研究会の後輩がいたから聞けばいいナ。
「超先輩!どうしたんですか?」
「少し聞きたい事があてネ。佐倉愛衣サンはどの子か教えてもらえるカ」
「それならあそこの端の席の赤い髪の毛の子です」
「教えてくれてありがとネ」
そういえば翆坊主の映像で見た事あたナ。
「佐倉愛衣サンだネ。初めまして私は2-Aの超鈴音だ」
「は、初めまして。はい、私が佐倉愛衣です。超先輩が私に何かご用ですか」
「知てもらえているようで光栄だネ。詳しい話は省くが、海外に行く部活を設立するつもりでネ。まず来月アメリカに行く予定なんだヨ。それで私のクラスの情報通から佐倉サンがアメリカに留学していたと聞いて案内を頼みたいと思たネ」
朝倉サンから聞いた事にしておくネ。
「か、海外に行く部活ですか!?私アメリカには詳しいですから構いません!」
海外に行く部活と言た瞬間随分テンション上がたナ。
「協力感謝するネ。海外旅行の費用は全額タダになるから安心するといいヨ。書類の手続きは後になるから携帯のアドレスを教えて欲しいネ」
「全額タダになるんですか!?アドレスは、ちょっと待ってください携帯を……あ、はい、ありました、これです」
「これでいいナ、また後ですぐ連絡すると思うからよろしく頼むネ」
「はい、連絡お待ちしてます!」
もう少し疑われるかと思たのだがタダとか海外に行く部活と聞いただけで釣れるあたり美空と同じようなものカ。
最後は学園長室だナ。
「学園長、失礼するヨ」
「超君か、入って構わんよ。今日は何の用かの。結界は張っておくぞい」
「助かるネ。私の超包子のアメリカ進出の視察とこの前の事件の犯人を炙り出すのを兼ねて部活を設立したいと思うネ」
「随分危ない橋を渡ろうとするものじゃな。一応話を聞くが部員はどうなっとるんじゃ」
「私、さよ、龍宮サン、美空、1-Dの佐倉サンだヨ。できれば美空のマスターも連れていけると助かるネ」
「ふぉっふぉっふぉ、その情報を提供したのはキノ殿かの」
「そうだヨ。丁度ワシントン州に行くから佐倉サンは適任だろう。学園長は許可したくないかもしれないが、これは私に借りを返す良いチャンスだと思うネ」
「ジョンソン魔法学校の事も聞いたのか。ふむ…また危ない目に合わせるのは借りを返せるとは言えないと思うんじゃが、超君には借りが溜まっとるからの…。よし、分かった、部活の内容は外国文化研究とでもするといいじゃろうて」
「フフ、部活の設立の許可感謝するヨ。顧問の先生は葛葉先生が良いと思うネ」
「それはまた適任じゃな。神鳴流には基本的に飛び道具は効かんからの。手配しておこう」
「部活にかかる費用は全て私が負担するから金銭で迷惑をかけることは無いから安心して欲しいネ」
「麻帆良最強頭脳は逞しいの。無事に帰って来ることを祈っとるよ」
「大丈夫ネ。今回は私が先手を打てるからナ。ココネ・ファティマ・ロザは初等部だが手配してもらえると助かるヨ」
「分かっとるよ。シスターシャークティには儂から伝えておこう。春日君はあまり戦力にはならんと思うがの…」
「人数合わせは十分戦力になているヨ」
こういう時本当に貸しを作ておいて良かたと思えるナ。
部活申請用紙を事務室で受け取て埋められる場所は全て埋めたから寮で名前を書いてもらうとしよう。
学校でやると朝倉サンに嗅ぎつけられるからナ。
結局この日中に全員の署名が得られて、すぐ次の日に学園長に提出、ココネも特例で部員追加が認められ、葛葉先生も顧問になてくれたヨ。
そして今は部員全員が学園長室に集合となているネ。
「まさかたったの二日で部活が設立されるとは思わんかったの」
「それは学園長が許可したからでしょう」
「超りん、呼ばれてみればこの人選は何だい」
「美空、この部活の真の目的を教えよう。来月ワシントン州に出店する超包子の視察と危険な犯罪者の燻り出しが目的だヨ」
「そうなのかー。ってなんだよそれ!?」
「まあ落ち着くネ。費用は全てこちらで負担、数日滞在もするから観光もできるし安心するネ。危険になるかどうかも実際には分からないヨ」
「学園長、超先輩は…」
「超君と相坂君は魔法生徒ではないが、裏の事をある理由で知っとるんじゃよ。超君、一応危険性についてしっかり話してもらえんか。ここにいる全員には情報を漏らさせないと約束させよう」
「分かたネ。ここからは秘密で頼むヨ。今回の設立の理由の一つである危険な犯罪者の炙り出しだが、11月に私を庇てさよが銃撃された事が発端ネ」
「超、やはりただのちょっとした事故ではなかったのか」
「龍宮サン、この前は話さなかたがその通りだヨ。美空、面倒そうな顔するナ。特典も沢山あるネ」
「げっ顔に出てたか。相坂さんが銃撃されたなんて…大丈夫なのか」
シスター服でも着て顔隠すといいヨ。
「春日さん、私は大丈夫です」
「この前銃撃されたのは完全に油断していたのが原因ネ。犯人の炙り出しと言ても国外犯かどうかはわからないからただの海外旅行になるかもしれないし、実際に襲われるかもしれないが今回のこのメンバーなら大丈夫だヨ」
「それについては儂から説明しよう。葛葉先生は神鳴流じゃから飛び道具は効かんし、龍宮君はプロ、佐倉君は探知能力に優れている上ジョンソン魔法学校出身、ココネ君は念話の傍受ができるじゃろ」
「学園長せんせー私足手まといじゃありません?」
「春日君はココネ君の従者じゃろ。シスターシャークティからはしっかり使ってやってくれと言われとる」
「その通りでございます…。し、シスターシャークティ…図ったな…」
「学園長、私はジョンソン魔法学校に連絡した方が良いのでしょうか」
「それには及ばんよ。儂の方から佐倉君が行くことをあらかじめ伝えておくから気にせんで良い」
「分かりました、学園長」
「この部活の趣旨は分かてもらえたようだネ。明るい話をすると、出発は2月8土曜日から1週間だヨ。勿論学校は正規の手続で休みネ。泊まる所も雪広グループからの手配で文句無しの場所だから期待するネ」
「マジ!?一週間もいけんの超りん!」
「久しぶりにアメリカに行けます!」
「たまには麻帆良の外で仕事をするのも悪くない」
「もし本当に仕事になたら後で報酬もきちんと払うから任せるネ」
「超鈴音あなた相変わらずですね…。私も顧問として引率はしっかりやります」
「葛葉先生、よろしくお願いするヨ。そしてこれで最後だが今回部活のメンバーに特別な携帯電話を支給するネ」
「おっこれ超りん達が持ってる凄い携帯か」
「海外でも使えるようになているが、本邦初公開の技術があるヨ。皆携帯持てるだけでいいネ」
粒子通信の起動を開始。
《皆聞こえるカ》
《なんですかこれは》
《おおっ凄いよこれ!超りん口動かしてないのに聞こえるけどこれ念話か!?》
《ミソラ、念話じゃない…》
《ココネ、これ念話じゃないの》
《超先輩すごいです!》
《これは私が開発した新技術の通信方法ネ。誰にも傍受されないから情報の安全性は最高峰だヨ。もし単独で危険になても、スイッチを押して起動させておけば身体に当てておくだけで通信ができる優れものネ。圏外は考える必要ないから安心してほしいネ》
《超の発明は全く役に立たないものもあるが、これは便利だな。起動方法はどうするんだ》
背を伸ばす機械とかは確かにギャグだと認めるヨ…。
《起動方法はこの通信が終わたら携帯に表示されるからそれに従て欲しいネ。悪いがこの機能はアメリカから戻てきたらまた使えなくするヨ。まだ万人が利用できる程実用的ではないからナ》
「儂一人だけ何しとるかわからんのじゃが…」
「この携帯の通信方法を試してただけネ。出発まで余り時間はないけど、ここでの話はくれぐれも他言無用だヨ。詳しい連絡はこの携帯で行うからよろしくネ」
これで後は実際にアメリカに飛ぶだけだナ。
《鈴音さん、あの機能教えて良かったんですか》
《一度ぐらい試しておかないとネ。理論は並の科学者では到底理解できないから大丈夫だヨ》
《宝の持ち腐れよりはマシですか》
《翆坊主に前言ったその通りだヨ。使える時に使わないとネ》
《なるほど…なら大丈夫ですね。それにしても異色なメンバーになりましたね》
《面白くなりそうだしいいと思うヨ》
《高音・D・グッドマンが出て来るかと思いましたが出てきませんでしたね》
《今回探知系の能力が必要だからナ。映像で見た高音サンの派手な操影術は普通の街中ではとても使えないヨ》
《あれ脱げるんですよね……》
《あれは無いヨ》