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[21966] ザ・ン・ギ・エ・フ!! (ザンギエフ×なのは)
Name: 煮込み鶏肉ハンバーグ◆aa27d688 ID:a701f12e
Date: 2012/08/09 23:54
日は高く、雲ひとつない青空が広がっている。だが、さんさんと照りつける太陽の光も、シベリアの大地に広がる残雪をすべて溶かすことは出来ない。森に生い茂る針葉樹の上にはまだ多くの雪が残っていた。
だが、今、その雪はふるい落とされている。大地が揺れているのだ。何も知らぬ人がこの場にいれば、地震と勘違いするであろう、その揺れは、決して自然が起こしたものではなく、人為的なものであった。その証拠に、何かが叩きつけられるような音が鳴り響いている。しかし、それは人為的といっても、重機などが起こす無粋なものではなく、大軍が踏み鳴らす軍靴のような耳障りなものでもない。どこか、聞くものの心を払うような、そう、まるで協会の鐘のような音であった。聞くものが聞けばであるが。

それも当然であろう。揺れと音の原因を知るものは納得してうなずき、熱心なファンならば喝采の声を上げるだろう。今、ここでは、ロシアの英雄ザンギエフが己の技に磨きをかけるべく、山篭りをしているのであった。

「うぬぅぅぅ」

ザンギエフは二メートルを越える巨体を震わせ、うめきとも取れる声を上げる。二メートルにも及ぶ身長と聞けば、普通は、バランスが悪いひょろっとしたようなスタイルか、横にも同じくらい広がったものを想像するが、ザンギエフはまったく違っていた。鍛えられた鋼の肉体。その表現がこれほどまで似合う体は他にあるだろうか。無駄といえるような脂肪はまったくついておらず、盛り上がった筋肉は彼の力強さを容易に想像させた。いたるところに刻まれている古傷は、彼が歴戦の勇士であることを証明し、頭を飾っているモヒカンは、彼の燃えるようなロシア魂を表現している。

まだ肌寒い空気の中、ザンギエフは一張羅である赤いパンツを纏い、いやそれ以外は纏わず立ち尽くしていた。彼に前には、大の大人でも二人がかりでなければ抱えることが出来ないような太さを持つ丸太が多数、無残な姿をさらして転がっていた。

「うぬぬぬ、これではだめだ、足りないのだ」

ザンギエフは嘆きの声を上げる。彼は行き詰っていた。己が必殺技に限界を感じていた。
そう、必殺技。必ず殺す技と書いて必殺技。
繰り出したからには、相手を必ず殺さなければならない。いや、ザンギエフは格闘家、プロレスラーであるのだから、殺す必要はないが、KOできなければならない。
だが、実際にはどうだろうか?

「ぬぅぅぅ……ふん!」

ザンギエフは近くにあった新しい丸太を抱え、高く跳び上がる。そしてそのまま鋭い回転を加え地面に叩きつける。丸太はその技にこめられた威力を証明するかのように粉々に砕け散る。これが実際の人間であったのならば、頭を破壊され、血まみれになっているのは間違いない。スクリューパイルドライバー。それが、この技の名前であり、ザンギエフの必殺技であった。
しかし、このスクリューパイルドライバーをもってしても必殺とはなりえない。最近の格闘界のレベルは高くなってきており、かつては体力ゲージの三分の一近く奪うことが出来たこの技も、今では六分の一ほどしか減らすことが出来ない。
六分の一。その程度の威力しかない技が必殺技として名乗ることが出来るのだろうか? かつて三分の一の威力を誇っていた時代でも一撃KOには程遠かったというのに。

ザンギエフはその巨体がゆえにすばやい動きが出来ない。体に流れる熱いロシア魂がゆえに、奇怪な飛び道具、ハドウケンを使うことは許されない。それゆえに、すばやい動きをするものや、ハドウケンを使う敵、それに手足を自在にのばしてくる相手に近づくことは容易ではなかった。
だからこそ、彼の必殺技は必殺でなければならなかった。鋼の肉体を頼りに相手の攻撃を耐え、近づき掴んで一撃の下に倒す。
それが出来なければ、ザンギエフはロシアの英雄であり続けることが出来ない。その事実が彼を悩ませていた。

スクリューパイルドライバーは完成された技だ。だからこそ、いかに世紀のプロレスラー、ザンギエフといえど手を加えることは出来ない。同じように、彼の鋼の肉体もこれ以上鍛え上げることは難しい。
ゆえに、今こそスクリューパイルドライバーを越える新たな必殺技を生み出さなければならないのだが、それがいったいどういう技なのか、ザンギエフにはまったく見当もつかなかった。

「ぬぅぅぅ、教えてください、偉大なる指導者。俺はいったいどうすればいいのでしょうか……」

ザンギエフは、敬愛している栄光ある元書記長に問いかける。だが、彼はこの場にいなく、声は届かない。いや、届いたとしても、いくら世界地図を頭に戴いている彼といえど、ザンギエフの悩みに答えを返すことは出来なかったであろう。それほどまでにこれは難しい問題であった。

「ふん……ぬん……ふん!」

何度スクリューパイルドライバーをかけようが、いくら己の肉体をいじめようが答えは出てこない。

「……少し休憩をするか」

結果が出ないことが無尽蔵な体力を誇るザンギエフに疲れを感じさせたのか、まるで、フルマラソンを走りきったようなランナーのような足取りで近くにあった切り株まで歩み寄り、腰を下ろす。

「ぬ?」

そのザンギエフの尻に痛みが走る。何か、針に刺されたような感覚。普段の彼であればその程度の些細なことはまったく気にしないで座り続けたであろう。しかし、己に自信をもてなくなってきていた彼は、そんな小さな問題を気にしてしまった。
腰を浮かせ、手を伸ばし、痛みが走った場所をまさぐる。原因はすぐに見つかった。小石のようなものが彼の尻に刺さっていたのだ。

「ぬう?」

なんだ、石かと思い、それを投げ捨てようとしたザンギエフの目に輝きが映る。小石が光を放っているのだ。眩い、閃光ともいえる輝きに思わず彼は見とれてしまう。それがいけなかった。ザンギエフは知らない、その石がなんと呼ばれているかを。いや、知っていたとしても彼は信じようとはしなかったかもしれない。だが、その石が持つ力は真実のものであった。その石の呼び名は、願いを叶える宝石、ジュエルシード。かつて海を越えた日本の海鳴という街に異界からやってきて、さまざまな現象を起こした不可思議な石。一部は管理局と呼ばれる組織に回収され、残りは大魔導師とともに消えたロストロギアが、今、ザンギエフの手の中にあった。ジュエルシードは純粋な想いに反応し、独自の解釈によってその願いを実現させる。そして、今、石の前には強き想いがあった。

『俺に、新たな力を』

石が放つ輝きは強くなり、ザンギエフを包み込む。そして、閃光がやんだ後には、何も残っていなかった。
ロシアが誇る英雄ザンギエフは今、この世界から姿を消した。


















そこは異界、そう呼ばれるのにふさわしい場所であった。あらゆる物理法則が無視されている。ビルは、木々は天から生え、巨体は何もない下面に立っていた。
その巨体の周りを二つの光が飛び回っている。一つは、その心の強さを表しているかのような、金色の光。そしてもう一つは、やさしく、されどまっすぐな想いを表現している桜色。
二つの光から、何度も閃光が放たれ、巨体にぶつかっているが、巨体は揺るがない。

「どうしよう、フェイトちゃん。何にも通じないよ」
「うん、バリアも張っていないし、バリアジャケットのようなものも纏っていないのに、どうしてだろう……」

二つの光、フェイトとなのはは困惑していた。
二人は闇の書事件以降、久々にそろって任務についていた。通常ならば、AAAランクの魔導師を二人も投入しなければならないような事件はめったに起こらない。いくら仲がいい二人といえど一緒に仕事をすることはあまりなかった。だから、今回は例外中の例外。二人だけではない、混乱した世界のため、通信も念話も通じないが、この世界のどこかに、クロノも八神家の面々もいるはずだった。そろえば世界をも救えるだろうといえるグループが一堂に会している。それも当然といえるだろう。かつてプレシア・テスタロッサとともに失われたと考えられていたジュエルシードが見つかったのだから、しかも発動している状態で。ジュエルシードは数がそろえば、次元震を起こし、いくつもの世界を滅ぼせるだけの力を持つ。だから、発動した場所に近い世界から集められるだけの戦力が投入されたのだ。

だが、転移したとたん世界の混乱に巻き込まれ、離れ離れになってしまう。アースラと連絡を取ることも出来ない。気の弱いものなら、こんな混乱した世界で孤立しようものなら、怯えて何も出来なくなってしまうであろうが、二人は違っていた。自分たちに与えられた役目を果たすべく、混乱の原因となっているだろう、ジュエルシードの捜索に向かったのだ。

そして、それはまもなく見つかった。すでに願いをかなえた後なのか、それは鋼色の肌を持つ人?のようなものにとりついていた。
二人はすぐに、封印をすべく、ジュエルシードの暴走体を弱らせようと魔力攻撃を放つ。だが、誘導弾も、直射弾も、砲撃も、斬撃にも暴走体は動じた様子を見せない。逆に、はげしい攻撃を続けた二人は疲れ果て、息を切らせている。
このままでは、限界が来て力尽きてしまう。二人はそう考えた。だから、その前に大技を放ち決着をつけようと考えた。

しかし、その考えは間違っていた。
もし、二人が、あれがなんと呼ばれるか知っていれば、その肉体が持つ効果を理解していれば、もっと別の戦術を選んだだろう。
あの鋼色に染まった肉体は、アイアンボディ。投げ技以外では一切ののけぞりモーションをとらないハイパーアーマー。そして、それを纏った巨体は、パラレルワールドでは、こう呼ばれるのだ。

メカザンギエフ、と。

メカザンギエフはその肉体を与えられたがゆえに一切の防御姿勢をとることが出来ない。それに、のけぞりモーションがないとはいえ確かにダメージは食らっているのだ。だから、二人は逃げ回りながら、メカザンギエフの体力を削り取るべきだったのだ。だが、攻撃が通じていないと勘違いした二人は足を止め、隙が大きい大技を放つことを選択してしまった。

「行って! なのは!」

フェイトが援護の射撃魔法を放つ。そして、それで相手の意識をそらしている間になのはが大技のチャージを行う。何度も練習したことが伺える完璧なコンビネーション。だが、選択した技が致命的であった。

「エクセリオンバスターA.C.S!」

トリガーワードとともに、なのは体が加速する。エクセリオンバスターA.C.S。別名、高速突撃型エクセリオンバスター。レイジングハートの先にやりの穂先のような魔力刃を灯し、高速で突撃して、相手の防御を破りゼロ距離で砲撃を叩きつける荒業。メカザンギエフの防御を突破できていないと考えたなのはとしては、この技を選んだのはある意味当然の選択であったのかもしれない。

だが、プロレスラーに自ら近づくという行為の意味を彼女は知らなかった。
穂先はメカザンギエフを捕らえ、砲撃は彼を包み込んだ。しかし、体力ゲージを削りきるまでにはいたらなかった。なぜならザンギエフは数ある格闘家の中でも最高の体力を持つのだから。

「きゃ!」

砲撃に耐え切ったメカザンギエフの手がなのはを掴む。そして、その体勢から繰り出されるのは当然!

「ふん!」

必殺技! スクリューパイルドライバー!
あらゆる物理法則が無視されているこの世界でも、この技が回転して落下することを妨げることは許されない。レバーが一回転してパンチボタンが押された後に待っているのは、赤く染まった体力ゲージだけなのだから。

異界がゆえか、スクリューパイルドライバーはいつもより高く舞い上がる。この高さならば防御力を誇る、なのはといえど大きなダメージを負ってしまうことは間違いないだろう。もしかしたら、格闘家でない彼女ならば、気を失ってしまうかもしれない。そしてそんな無防備で頭にひよこを飛ばせていれば、待っている結末は簡単に想像できる。格闘家相手にはありえないピヨりからピヨりへと延々とつながるスクリューの嵐。さもすれば、意識を失いメカザンギエフとなってしまった彼ならば、彼女の命さえ奪ってしまうかもしれない。

だが、そんな悲劇的な結末をなのはの友達であるフェイトが黙ってみているはずがない。

「だめー!!」

落下してくるメカザンギエフとなのはを受け止めようというのだろう。フェイトはその小さな体を下にもぐりこませる。
落下地点に向けられていたメカザンギエフの目と、見上げてくる赤い瞳が絡み合う。それが、レバーが一回転した後には赤く染まったゲージしか残らないという絶対の法則を狂わせる。

フェイトは、きれいな金色の髪に、白い肌を持っている。そう、フェイトはロシア的美少女といえるのだ! そのロシア的美少女が、必死の形相を浮かべ、悲鳴とも取れる叫びを上げている。
それが、メカザンギエフとなってもくすぶっていた彼のロシア魂に火をつけた。
彼が戦っているのは、強くなりたいと願ったのは、ロシアのため、ロシアに生きる人々のため、ロシアをこれから背負っていくであろう子供たちに希望を与えるためだった。
その自分が、ロシア的美少女を泣かせるような行為をしてどうする!

「ぬぉぉぉおぉおおおおお!!」

ザンギエフは雄たけびを上げて、抱えていたなのはをフェイトのほうに放り出す。そして、スクリューの勢いすべてを自らの体に向けた。世界が激しく揺れ、地煙が舞い上がる。
そして、その煙の向こうから、

『KO!!』

そう、決着を告げるコールが、確かに聞こえてきたのだった。
















「ぬう、すまなかった少女たちよ」

とりついていたジュエルシードを封印され、通常時の肌の色に戻ったザンギエフが深々と頭を下げる。ザンギエフは、間違ったことをしたわかったときは潔く謝れる、高潔な精神を持った漢なのだ!

「いえ……」
「まあ、ジュエルシードにとりつかれていてはしかたがないですから……」

二メートルを越える巨体が二人に覆いかぶさらんばかりに頭を下げているのだ。その光景になのはたちは少し恐怖を覚えたのか。少し顔を引きつらせている。

「ぬう、しかし、おぬしらのような年端もいかない少女が、たった二人でこんな奇怪な場所で何をしている? 危ないから早く家に帰りなさい。美少女はロシアの宝なのだから」
「……ロシア、ロシアって国のことだよね?」
「……うん、まあ、フェイトちゃんは金髪できれいだから、その国の人と間違われているのかもね。うーん、どうやら言動から私と同じ世界の人が巻き込まれちゃったみたいだから、ちゃんと事情を話したほうがよさそうだね。全部封印するまで帰れないようだし……」

なのはとフェイトはザンギエフの言動とその巨体に少し引きながら、事情を説明する。それは、何も知らない人が聞けば、妄想と斬って捨てるような内容であったが、ザンギエフは、世の中が奇怪なことであふれかえっていることを知っている。ハドウケンも、自在に伸びる手足も、スモウレスラーの一秒間に百回繰り出される張り手も、アメリカ軍人の奇妙な髪型も知っている。だから、少女たちの話を戯言と笑い飛ばすことはしなかった。先ほどまで、自分自身に起こっていた現象もある。そして、なにより、ロシア的美少女が嘘をつくことなんてありえはしないのだ!

「ぬう、わかった。このザンギエフが何とかしよう。そのジュエルシードというものを集めればいいのだな。安心して任せたまえ、赤きサイクロンの名にかけて全部集めて見せよう。だから、少女たちは早く家に帰りなさい」
「だめだよ、ジュエルシードは危険なんだよ!」
「そうです、一人でなんか危険すぎます」

説明をよく理解していないように伺えるザンギエフを、二人は必死で止める。
そして、その言動をザンギエフは、またロシア的に解釈する。

「うむ、そうだな、全部集め終わるまでは帰れないのだったな。こんな危ない場所に少女二人を置き去りにするのは心苦しい。わかった、二人とも着いてこい。俺の後ろにいれば何の危険もないぞ。赤きサイクロンの戦いぶりに見ほれているといい」
「ええと、そういうことじゃなくて……」
「……なのは、たぶん何を言っても、もうだめだと思う。とりあえず一緒にいてはくれるみたいだから」
「……うん、そうだね。暴走体を発見したら、ザンギエフさんが前に出る前に私たちが全力全開で封印しちゃうしかなさそうだね」

ロシア魂を燃え上がらせているザンギエフを横目で見ながら、なのはとフェイトはうなずきあう。
ザンギエフは、二人を見てなにやら満足そうにうなずいた後、歩き始める。

「わあ、どこに行くんですか」
「そうですよ、どこに暴走体がいるのかもまだわかっていないのに、むやみに歩き回ったら……」

二人は慌ててザンギエフの後を追う。その様子を見て、ザンギエフはほほえましそうに笑う。

「心配するな少女たちよ! 俺は、ザンギエフ。ロシアの英雄。だから、その行く手にはいつも試練が立ちはだかるのだ。それを、乗り越えてこそ、英雄なの……だから……な」
「え、えと?」
「どうしたのですか? ザンギエフさん?」

威勢のいい声を上げたかと思うと突然立ち止まり、なにやら悩み始めたザンギエフを二人が覗き込む。その顔は苦悩に満ちていた。ザンギエフがこんな表情を人前で見せることは珍しい。ましてや、今彼のそばにいるのは守らなければならないロシア的美少女なのだから。だが、彼は思い出してしまったのだ。この世界に飛ばされる前に悩んでいたことを。

もう、彼のスクリューパイルドライバーは必殺技と足りえないことを。

必殺技を持たないプロレスラーである彼が、口に出したような大言壮語を実行できるのだろうか? その思いがザンギエフに苦悶の表情をうかべさせていた。
されど、それでも彼はロシアの英雄。彼自身が口にしたように英雄には試練が付きまとうもの。歩き出して数分、まだ答えの欠片すらつかめないうちに、彼らの前にそれは立ちふさがった。

「あ、本当に」
「さっきまで何の魔力反応もなかったっていうのに……」

黒い豹のような暴走体。その背中には無数の触手が生えており、それを自在に伸ばしてザンギエフたちに襲い掛かってきたのだ。その姿はまるでザンギエフの最大の難敵であるヨガの使い手であるかのようであった。
吐き出される炎に、伸ばされる触手に、アイアンボディを失ったザンギエフは一歩も暴走体に近づくことが出来ない。ただ、防御姿勢をとり、身を固めるだけであった。

「いくよ、フェイトちゃん!」
「うん、なのは!」

そんな彼を尻目に、二人は空を飛びまわり、触手を華麗に交わして、射撃や砲撃で暴走体の体力を削っていく。

「時代は、やっぱりハドウケンなのか……」

繰り広げられる光景に、英雄の口から弱音が漏れる。それはあってはならないこと。それだからだろうか。天は彼に罰を与えようというのだろうか。

「ザンギエフさん!」

なのはの砲撃に吹き飛ばされた暴走体が、ザンギエフの前に着地する。暴走体は体勢を崩している。この好機を見逃すザンギエフではない。

「ぬん!」

二メートルを越す巨体が宙を舞う。
繰り出される技は、フライングボディアタック。彼の巨体を持って相手を押しつぶす豪快な技だ。だが、一回跳ばなければならないがゆえに、繰り出されるまでは一瞬のラグがある。だから、暴走体は防御を間に合わせることが出来た。
しかし、そんなことは関係ないといわんばかりに、ザンギエフは暴走体にその鋼の肉体を叩きつける。それだけではない、そのまま着地姿勢のまま地獄突きを繰り出した。それは一般人が急所に喰らいでもすればそれだけで悶絶しそうな鋭さを持っていた。だが、それも暴走体の防御を崩すことは出来ない。
だが、それでいいのだ。この連携技の目的は相手にダメージを与えることではない、相手の動きを止めること、そして間合いを調整するためであった。

そして、この間合いから、繰り出される技は唯一つ!

「ふん!」

ザンギエフは、暴走体を掴み空高く舞う。そして、そのまま鋭く回転しながら、下へとたたきつけた。

『KO!!』

決着を告げるコールが鳴り響く。

「やったね!」
「ザンギエフさん、すごかったです!」

二人の少女は、初めて見たザンギエフの必殺技に目を丸くして、大はしゃぎする。こんな荒業を使うものは、管理局で働いているなのはとフェイトでも、出会ったことがないのだろう。
その瞳からは、先ほどまでどこか不安そうにザンギエフの事を見ていた光が薄れ、素直な賞賛の心にあふれていた。

だが、その賞賛を受けて、普段なら、勝利の雄たけびを上げているザンギエフの表情はうかなかった。彼は理解していたのだ。
この暴走体を倒したのは自分ではないと。

彼が繰り出した必殺技スクリューパイルドライバー。それは、暴走体の体力ゲージを八分の一ほどしか奪うことは出来なかった。それは、彼が、初めてストリートファイトの世界に入ったときの、大降りのパンチ一発ほどの威力に過ぎない。暴走体は彼の前に来たときはもうすでに瀕死だったのだ。
ザンギエフがやったのは、弱ってピヨっている敵に止めを刺しただけ。そんなことは初めてレバーを握った小学生にも出来ることであった。

「ぬうう……」
「ザンギエフさん……?」
「いったい、どうしたんですか?」

ザンギエフはうなだれる。気力を失ったその巨体は二人にはとても小さく見えた。
彼の前には力を失ったジュエルシードが弱弱しく光を放ち浮かんでいたが、ザンギエフの様子に二人は一時それを封印することを忘れてしまった。
そして、英雄であることを運命付けられたザンギエフに試練は再び舞い降りる。

「ん、すごい魔力……」
「きっと、これが元凶……残りのジュエルシードがすべてあの中に集まってる」

それは巨大な球体であった。そして、あらゆる要素を持っていた。
先ほどの暴走体の触手も、炎も、なのはたちが使った魔法さえも使い、三人に襲い掛かってきた。
その攻撃は激しかった。ハドウケンというよりも、ソニックブームといいたくなるほどのが嵐だった。動き鈍いザンギエフはもとより、空を自在に飛びまわれるなのはとフェイトでさえも防御を固めるしかなかった。

「このままじゃ、埒があかないよ、フェイトちゃん!」
「うん、なのは、わかったよ!」

比較的防御が厚いなのはが盾になり、フェイトがその影から砲撃を放つ。フェイトの砲撃は、なのはのものに勝るとも劣らない。ゆえに、それは一撃必殺の威力がこめられていた。
だが、それを喰らっても、球体は揺るがない。確かに直撃した。バリアのようなものを張った様子もなかった。それなのに、球体は動じた様子を見せない。

「え……」
「まさか……」

二人は、それに心当たりがあった。つい先ほど、それに苦しめられたのだから当然だ。アイアンボディ。投げ技以外では一切ののけぞりモーションをとらないハイパーアーマー。

「……だったら」
「うん」

ならばと、二人は攻撃再開する。アイアンボディを纏うものは防御姿勢を取れない。それゆえに、なのはとフェイトの攻撃は当たれば必ず相手の体力ゲージを減らす。だから、攻撃を続けていればいつか倒すことが出来る。攻撃が通っていないわけではないのだから。
だが、その目論見は簡単に崩れ去る。

「きゃあ!」
「フェイトちゃん!」

防御が厚いなのはは、盾で身を守りながら、その合間に攻撃を続けていたが、高機動型のフェイトはなのはのような戦法を取ることが出来ない。必死に回避行動を取っていたのだが、まるで、今ではもうやることが不可能となっている海賊盤ストⅡ´´(ダッシュダッシュ)のガイルが繰り出す、ソニックブームラッシュのような、嵐の猛攻をかわしきることは出来なかった。
一発あたれば、その後に控えている数十にも及ぶソニックブームが続けて襲い掛かってくる。すべて喰らえば待っているのは死でしかない。だが、彼女にも救いがあった。
ピヨリである。
三発喰らったところで、気を失った彼女は体勢を崩し、落下する。そのおかげでソニックブームの嵐から抜け出すことが出来た。
なのはが落下するその体を受け止め、フェイトを追ってきた誘導型のソニックブームを盾を張って防ぐ。だが、猛攻はとまらない。

目標が一つ減った分、ソニックブームの嵐は激しくなっている。なのはも、防ぎながら、合間に砲撃を放つということは出来なくなり、ただひたすら防御を固めることしか出来なかった。このままでは、待っているのは削りによる死。幾多の´´(ダッシュダッシュ)プレイヤーが味わった敗北しかなかった。

「ぬうう……」

ザンギエフはその様子を歯噛みして見ていることしか出来なかった。
ザンギエフの元にもソニックブームは襲ってきている。だが、それはなのはたちに向かっているものに比べれば小数。しかし、動きの鈍い彼ではそれをかわすことなどは不可能だ。一発でも喰らえばのけぞりモーションが入ってしまう。そうなればその後に続くソニックブームをすべて喰らってしまう。いくら体力が高い彼といえど、七、八発も続けて喰らえばピヨってしまう。
そうなれば、フェイトと違いかばってくれるものがいない彼に待っているのはKOだけだ。
だから、防御姿勢をとることしか出来なかった。ただ、何もせず、ロシア的美少女が撃墜されるのを見ているしか出来なかった。そして、ロシア人ではないとはいえ、あどけない少女がその身を張ってがんばっているのに、手を差し伸べることが出来なかった。

球体は、ザンギエフのことを脅威とみなしていないのか、彼との距離はそこまで離れていない。だが、ほんの少し、一歩分だけ間合いの外にあった。
あと一歩踏み込めれば、とザンギエフは考える。そうすれば掴める。スクリューを喰らわせることが出来る。

だが、それがどうしたというのだ、そうともザンギエフは考える。この球体の体力は、あの豹のような暴走体を大きく上回るだろう。そんな相手に、必殺となりえない技を食らわしたとしてどうなるというのか? スクリューは一度決まるとその反動で、相手との距離が離れてしまう。ピヨってもいない相手に連続で食らわせることなど出来ない。中パンチほどのダメージを単発で与えることに意味などない。
それにそもそも、その間合いをつめることが不可能なのだ。

「ぬぅぅぅ」

ザンギエフは己の不甲斐なさのあまり、唇を噛み切る。それしか出来ない。

「きゃああああああ」

彼が思い悩んでいる間にも、なのははソニックブームの猛攻にさらされていた。彼女が張っていた盾はついに嵐に耐え切れなくなり、破壊されてしまう。反動で大きく吹き飛ばされるなのはとフェイト。
そのおかげが、すぐさまソニックブームが二人に襲い掛かることはなかったが、もうKOは時間の問題だろう。

「ぬ……おおおお」

思わず、かがめていた体を立ち上がらせるが、それはソニックブームの的となる面積を増やす行為でしかない。嵐に耐え切れず、すぐに体をかがめさせられてしまう。

「ぬう、せめて、後一歩後一歩ふみこむことができれば……」

そうすれば、スクリューを喰らわせ、一瞬でもソニックブームの嵐を止めることが出来る。そうなれば、あの二人が逃げる時間くらい稼ぐことが出来るのに。
その想いに反応するかのように、ザンギエフのそばで浮かんでいたジュエルシードが輝きを強める。
アイアンボディを再び、ザンギエフに授けようとしているのだろう。確かに、ハイパーアーマーを纏えば、このソニックブームの嵐にも耐え切ることが出来る。ピヨるよりさきに、一歩踏み込みスクリューを食らわせることが出来る。その後も、体力が尽きるまで、戦い続けることは出来るだろう。

「いらん!」

だが、その誘いをザンギエフははねのける。
アイアンボディを纏っても、勝つことは難しい。
だが、彼はそんな理由で、誘いをはねのけたのではなかった。
彼は、英雄にしてもらいたいのではない、英雄でありたいのだ。強くしてもらいたいわけではない、強くなりたいのだ。
彼が、どんな苦難にもめげず、努力して壁を乗り越え続ける姿こそが、ロシアの民に希望と光を与えることが出来る。そう信じているから。それなのに、与えられた力で、降ってわいた能力で勝ちを得て、何を誇るというのだ。神や得たいの知れないものに祈ることで得た勝利などには一片の価値もない。そんなものにすがるくらいなら、人として最期まで戦い続け、人として出来る最高をロシアの人々に教えたい。

「ぬん!」

だから、ザンギエフは一歩踏み出した。
球体の方向へではなく、横へ。球体と少女たちの間に入り込むように。

「行け! 少女たちよ! ロシアの未来は託した!」

彼の鋼の肉体なら数発はソニックブームに耐えることができる。その間に二人を逃がそうというのだろう。
だが、頑固な少女と、その頑固さに救われた少女は素直にうなずかない。

「ザンギエフさんを置いて逃げることなんて出来ないよ!」

なのはが叫び、ソニックブームを消し去るように砲撃を放つ。

「うん、諦めないで! 三人で力を合わせればきっと勝てるよ!」

フェイトもその手に持つデバイスを振るい、ザンギエフに命中しようとしていたソニックブームを切り払う。

「少女たちよ……」

ザンギエフはの瞳は感涙にあふれていた。
このまっすぐな心を持つ少女たちがいれば、ロシアの未来は明るい。自分の選択は間違っていなかったのだと。
そして、もう一つ。
フェイトの言葉がザンギエフにひらめきを走らせた。

「三人……三……そうか、わかったぞ!」

その瞬間奇跡が起こった。
なのはとフェイトの熱い心と、燃え盛るザンギエフのロシア魂、それに彼の脳裏に走ったひらめきが新たなるゲージを作りだし、それを埋める。

「少女たちよ、一瞬でいい、一瞬だけ、やつに隙を作ってくれ!」
「わかったよ、エクセリオン……」
「うん、トライデント……」

新技を繰り出すには少し遠い、少女たちを守るために遠ざかってしまったのだ。後一歩踏み込む必要がある。だが、それはザンギエフ一人では到底当は出来ない絶望的な距離。しかし、ザンギエフは一人ではないのだ! 少女たちのロシア魂を認めたザンギエフが二人に援護を求める。二人はそれにうなずいて、それぞれのデバイスの先端に魔力を灯す。

「バスター!!」
「スマッシャー!!」

桜色と金色の砲撃がソニックブームの嵐をかき消した。
一瞬できた空白。その空白にザンギエフは踏み込んだ。

「見るがいい、俺の新たな必殺技を!」

ザンギエフの接近に気がついた球体が慌ててソニックブームを放つが、もう遅い。
すでにザンギエフはコマンドを完成させていた。この状態になってからでは遅いのだ。
この状態に陥った格闘家たちは口をそろえてこういう。

『吸い込まれた』

と。

そう、この吸い込みこそが、赤きサイクロンの真骨頂!
無敵モーションがない技ならありとあらゆるものを掴んでみせる!
そして、繰り出されるは本当の必殺技!

ザンギエフは悟った。一回で三分の一しか体力ゲージを奪えないのならば、相手を放さず続けて三回投げればいいのだと。そうすればちょうど一。相手のゲージを完全に奪うことが出来るのだ! (注;実際にはこの技でも三分の一ほどしか奪えません)

今、命名しよう! 
この新必殺技の名前を!

「ファァイナル!」

巨大な球体を掴みザンギエフはそのままバックブリーカーを決める。掴んでしまえれば、ザンギエフに相手の大きさなど関係ない。どれほど巨大であろうと投げることが出来るのだ。

「アトミィィック!!」

そのまま、続けてもう一回。そして、高く跳び上がる。
とどめの一撃は当然!

「バスタァァァ!!!」

いつもより三倍高く跳び、二倍の回転を加えたスクリューパイルドライバーで相手を叩きつける!

これこそが、真! 必殺技!

ファイナルアトミックバスター!

日本語訳、最後の核爆発投げ!

その名が示すとおり、FAB(ファイナルアトミックバスターの略)の威力は絶大であった。
球体はその姿をうすれさせ、霞のように消えていく。それだけではない、FABの余波が、ジュエルシードが作り出していた世界にひびをいれ、崩壊させる。まさしく、最強の必殺技。世界を崩壊させる威力をこめた技である。

『なのは、フェイト、無事か?』

世界が崩壊したためか、物理法則の乱れが戻り、通信が復活したようだ。二人を心配そうに呼びかける声が聞こえてきた。

「あ、クロノ君」
「兄さん、大丈夫だよ」

二人は、やはり、少し不安だったのか、その声が聞こえたことであからさまにほっとしたような表情を浮かべている。
ザンギエフはそれ見て満足そうに、うなずいている。

「うむ、どうやら、もう、何の問題はないようだな。少女たちよ、家に帰るがいい。そして、ゆっくりと休み、夢を見て、輝けるロシアのために、力を蓄えろ! 俺は少女たちが大きくなるまで、ロシアを守り通して見せるぞ!」
「ええと、私、ロシアの人じゃないんですけど……」
「それより、ザンギエフさんは、どうされるのですか? よろしければ、ロシア? までお送りしますけれど」

あきれた表情を浮かべるなのは。それに対して、フェイトはもう慣れたのか、すんなりとかわし、ザンギエフにその後をたずねてきた。
それに対して、ザンギエフは、鷹揚にうなずく。

「うむ、心配いらんぞ、ロシア的美少女よ! 俺が、ロシアの英雄が勝利を挙げたのだ。偉大なる指導者が迎えに来て、祝いのコサックダンスを一緒に踊ってくれるに違いない。だから、少女たちは、余計な気を回さず帰るがいい」
「え、ええと。ここは異世界、次元の違う世界なんだけど……」
「うん、そうだけど、どうやら、ロシア?の人にはそういった常識は通用しないみたい。後で報告しておかないと」

何とか説得して一緒に帰ろうとしている、なのはをフェイトがとめて、上空を指差した。豆粒のような機影。それはだんだんと大きくなっていく。

「ヘリコプター!?」
「うん、でもそれだけじゃないね」

そう、それだけではなかった。ヘリコプターからは、はしごが吊り下げられており、そこには一人の男性が捕まっている。そして、その男性の頭には世界地図が描かれていた。

「おお、偉大なる指導者ゴル○チョフ元書記長!」

ザンギエフは、喜びの声を上げる。そして、先走ったのか、一人でコサックダンスを踊り始めた。

「……フェイトちゃん、もう帰ろうか。なんか私、頭がおかしくなりそう」
「うん、そうだね、帰ってゆっくり休もうか、なのは。ザンギエフさんもありがとうございました」
「うむ、ゆっくり休め、少女たちよ!」

なのはとフェイトはザンギエフに会釈をして、転移陣を作り、そこに身を躍らせる。
二人が去った後、コサックダンスの宴は夜通しで続いていた。



















自壊予告




本当はありえなかった出会いが歴史を変える。
この出会いを見ているものがいたのだ。

「はははははは、すばらしい。すばらしすぎる!」

その者は紙一重で天才であった。いや、こんなことを考えるあたり、もしかしたら紙一重のほうであるかもしれない。
時は過ぎ、少女たちが、もう少女と名乗るのが厳しい年齢になったとき、それは起こった。
少女たちが所属する機動六課と呼ばれる部隊と、紙一重の作り出したものがぶつかり合ったのだ。
本来の歴史であれば、少女たちの部隊が完全とも呼べる勝利を挙げたその戦いは、この歴史では大きな変貌を遂げていた。

「なんで、なんで、喰らってものけぞらないのよ!」
「だめ、エリオ、近づいたら吸い込まれる!」
「助けて、なのはさん、フェイトさん」

上がる悲鳴、そして悲鳴は自分たちが信頼する隊長たちに助けを求める。
だが、二人は呆然と立ち尽くすことしか出来なかった。それほどまでに圧倒的な光景だったのだ。

「ザンギエフさん……」

地平線を埋め尽くすほどのメカザンギエフの群れ。そう、紙一重は、ガジェットの代わりに無数のメカザンギエフを作り上げたのだ!
次々と吸い込まれていく、機動六課のメンバー。突破されていく防衛線。

「うふふふふ、最高だわ!」

眼鏡はそれを見て喜びの声を上げる。それは勝利を確信した笑い。
だが、

「ザンギエフさん……」
「だめだよ、フェイトちゃん諦めたら、ザンギエフさんが教えてくれたじゃない!」

ロシア的美女の涙と、ロシア魂にも似た不屈の心が、奇跡を呼び寄せる。

「ぬう、ここはどこだ? モスクワではないようだが……」

そして、繰り出される新技。

「ゆりかご? ぬう、空中竜巻旋風脚のことか、そんなものつかんで落としてくれるわ!」

エリアルロシアンスラム!

「そうよ、あなたたち虫けらの命なんていくら失われても何の問題もないの!」
「ぬう、許せん。その根性叩きなおしてくれるわ!」

元凶を前にしてザンギエフに新たなゲージが生まれる。

出るか!? ウルトラコンボ!

アルティメットアトミックバスター!!





自壊を楽しみのお待ち下さい。











おわっとけ。













あとがき

ザンギエフへの愛が暴走した。後悔はしていない。
そして´´(ダッシュダッシュ)
知らない人のほうが多いんだろうな。もし知っている人がいたら、作者と同じ世代。要するにおじさんです。
追記:20120808に リリカルなのはSS cafe というサイトに転載いたしました。



[21966] ザ・ン・ギ・エ・フ!!2 ~~メカザンギエフの逆襲~~
Name: 煮込み鶏肉ハンバーグ◆aa27d688 ID:a701f12e
Date: 2011/10/12 13:35
「ヨガ・ファイアー!!!」

限界まで引き絞られた、まるで骨だけのような体から、空間を揺るがすほどの大音量の声が響き渡る。
いや、それだけではない。どうやったのだろうか? 声を発した口から同時にこぶし大の火の球が吐き出された。
何で、口から火が吐けるのか? 火を吐くと同時に言葉を発することなんてできるのか? すでに栄養失調で死んでいてもおかしくないほどやせ細っているのに、何であんなに動き回れるのか? そもそも、あの顔でどうやってあんなに若くて美人なお嫁さんをゲットできたのか?一般人からすれば、この光景は突っ込みどころ満載だろう。

だが、格闘家にとってはそれは常識の範疇でしかない。
今、火の球を吐き出した人物は、夜中にあれば間違いなく逃げ出してしまいそうな、白目がぎらぎらと輝いて怖い怪人はインドを代表する格闘家、ダルシム!
ヨガの秘術を極めた格闘家なのだから!
ヨガの秘術を極めれば火を吐くことなど、若くて美人な嫁さんをゲットすることなど造作もないことなのだ!
ヨガの秘術。それが、今のインドの躍進を支えているといえば、一般人にもそのすごさが分かってもらえるだろうか?
ゆえに、ヨガの秘術がこめられた火の球の威力も創造を絶するものがある。こぶし大の大きさにもかかわらず。それは触れたものを一気に激しい炎に包み込む殺人技なのだ。

一般人にとって放たれれば死を意味する火の球。
だが、火の球を、ヨガの秘術を向けられた人物は怯えなど微塵も見せていなかった。
トレードマークである赤いパンツ。惜しげもなく晒された鍛え上げられた鋼の肉体。その肉体に刻まれている無数の戦傷。そして、彼の激しい闘志をあらわしているかのような、そびえ立つモヒカン!

彼も格闘家なのだ!

彼の名は、ザンギエフ!

ロシアの英雄、赤きサイクロン!

ダルシムにヨガの秘術があるのならば、ザンギエフには燃え上がるロシア魂がある!

「ふんぬぬ~~!!!」

ザンギエフは気合と共に己の手のひらにロシア魂を集め、纏め上げる。
ロシア魂。本来それはロシア人なら誰でも持つ、精神的な、覚悟のようなものに過ぎない。唯の覚悟、心構え程度のものが、数千年にわたり積み上げられてきた、ヨガの秘術に敵うはずがない。普通ならば。

だが、忘れてはならない、ザンギエフは格闘家、ロシアの期待を一心に集める英雄なのだ!
彼のロシア魂には、ロシアに住む数億の人の未来がかかっているのだ!

「ぬん!」

ザンギエフは、火の球に向かって大きく踏み込み、彼の熱きロシア魂によって輝き大きさを増した手のひらを振るう。
数千年積み上げられてきたヨガの秘術とロシア人数億の未来がかかったロシア魂。
まるで惹かれるように溶けあい打ち消されていく。
それはヨガの秘術とロシア魂が互角の力を持っていることを表していた。

「ぬうう! やるなダルシム! わが友(ライバル)よ!」
「ヨガヨガヨガヨガヨガアアア~~!」

当然のように、お互いの健闘をたたえあう二人。二人にとってこれは当たり前のことであった。ザンギエフとダルシム二人が戦うのはこれが初めてではない。幾度も拳を交えたライバルなのだ。
ザンギエフとダルシム。同じ格闘家でありながら、その戦い方はまったく正反対である。鋼の肉体と極めたプロレス技を活かし、接近戦を好むザンギエフ。ヨガの秘術とどこまでも伸びる柔軟な手足を活かし遠距離戦を主体とするダルシム。
その二人の戦いは、近づけるか、それとも突き放されるかに終始していた。
故に、この攻防は互角に見えてザンギエフに軍配が上がっていた。火の球を打ち消すときにザンギエフは一歩踏み込んでいる。あともう一歩踏み込むことが出来れば、彼の間合い。必殺技スクリューパイルドライバーの間合いに入る。
そして、これほど近づいてしまえば、ダルシムの無限に伸びる手足も逆に邪魔にしかならない。当然ダルシムも格闘家であるのだから普通の突きや蹴りも使うことが出来るが、それではザンギエフの鋼の肉体を破ることなど出来はしない。

「……」
「……」

幾度も繰り返した攻防だ。そのことは分かっているはずなのに、ザンギエフは踏み込もうとしない。
知っているからだ。
ヨガの秘奥とまで言われるその秘術を。ヨガ・テレポートを!
数千年積み上げられ、練り上げられたヨガの秘術は、現代科学では到底不可能とされている空間移動を可能とするのだ!
ザンギエフも、初めて見たときは、ロシアの技術力を持ってしても敵うことができない、ヨガの秘奥に驚愕を覚えたものだ。
だが、ザンギエフは絶望に陥ることはなかった。なぜなら知っていたからだ。ロシアもいずれあの技術を手に入れることが出来る、と。

十年ほど前に出会った、熱きロシア魂を持つ少女たち。彼女たちも空間移動のようなことをおこなっていた。
ザンギエフは信じていたのだ。彼女たちが大人になれば、きっとロシアにその技術をもたらしてくれるに違いないと!
そして、確信していた。ザンギエフの役目は、彼女たちが大人になる間でロシアを守りぬくことだと!
助けを求められればどこへだろうが駆けつけ、鍛え上げたこの肉体で彼女たちに立ちはだかる障害を打ち倒すと!

それは覚悟。ロシアの未来を背負った英雄の悲壮なまでの覚悟であった。
ザンギエフが今回、ダルシムと戦っていたのも、いつそのときがきてもいいように己を鍛え上げておくため。鍛え上げるためには、己が一番苦手としている相手と戦うのが一番いい。故にこの大会で初戦の相手にダルシムを指名したのだ。

「……」
「……」

ゆえに、今このときザンギエフとダルシムがにらみ合っていたのは、偶然でも、ましてや奇跡でもない。彼の熱きロシア魂がもたらした必然であった。

『ザンギエフさん……』
「ぬ!」
「!」

にらみ合う二人の下にかすかに声が届いた。

「少女か!」

聞き覚えがある声にザンギエフが誰何の声を上げる。だが、彼の声は届かない。

『諦めちゃ駄目だよ、フェイトちゃん!』
『……うん、そうだよね、いくら相手がザンギエフさんを模したロボットでも諦めたらそれで終わりだものね』
「ぬうう!!」

声だけが届く。声だけしか届かない。はっきりとした状況は分からない。
だが、彼女たちが今窮地に立たされていることは分かる。そして、彼女たちの心がまだ折れていないこと、ロシア魂がまだ燃え盛っていることも分かる。

「ぬう!!! どこだ! 少女たちよ!」

そのことが分かる、分かってしまったから、ザンギエフはじっとしていられない。目の前にダルシムが、対戦相手がいるにもかかわらず、少女たちの姿を求め視線を彷徨わせる。

「……ザンギエフよ」

そんなザンギエフの様子を静かに見守っていたダルシムが口を開く。
ダルシムはヨガの秘術を極めた格闘家。そして、それと同時に世界の平和を願う行者でもあった。世界の平和のために、アメリカのどんなときでも髪型を気にしている軍人と連絡を取り合って秘密結社「シャドルー」の行方を追っているほどなのだから。

「……声の主はこの空間には、この世界にはいない。ザンギエフ、おぬしではどうやってもたどり着くことが出来ないだろう」
「ぬうう! 何を言う! 少女たちには助けが必要なのだ!」

否定しながらも、ザンギエフは困惑していた。目の前にいるのならば己の鋼の肉体と極めたプロレス技を持って、どんな敵でも粉砕してのけることが出来る。だが、この空間にいないといわれてはどうすることも出来ない。

「ぬううううう!」
「そういきり立つな、ザンギエフ。私がそこに送ってやろう。普通では難しいが、向こうに手助けとなるものがある。」
「ぬ!」

ダルシムの言葉にはっとして、顔を上げるザンギエフ。空間を渡ることなど、今のロシアの技術をもってしても不可能だ。だが、ここにはそれを成すことができる人物がいる。
ヨガの秘術を極めた格闘家、ダルシム。ヨガの秘奥を行使できるもの。

「たのむ、すぐ俺をそこにおくってくれ!」

ザンギエフはためらわなかった。
ロシアの未来を救うためならば、彼は地獄にでも赴くことが出来るのだから。

「分かった……」

ダルシムはザンギエフの頼みの頷くと、胸の前で手のひらを合わせ、座禅を組み宙に浮かぶ。
そして目を大きく見開き、下あごが外れそうなほど大きく口をあけると、世界全体にも響き渡るような奇声を上げた!

「ヨガァァァァ!!」

奇声と共に、ザンギエフの大きな肉体がこの世界からまるでもともと存在していなかったかのように消える。
それを確認して、ダルシムは大きく頷く。

「ザンギエフよ、健闘を祈るぞ」

そう祈りながらも、ダルシムはザンギエフが敗れるとなど微塵も考えてかった。ザンギエフはロシアの英雄。格闘家として世界の頂点に立ったことがあるほどの人物なのだ。その彼がそこいらの相手に負けるはずがない。それに彼を打倒する可能性を持ったものは、ほとんどこの大会に参加しているのだから。

「ふむ……しかし、この大会もはずれか……」

ザンギエフを見送ったあとダルシムは、次の対戦場所に向かいながら、呟く。彼が今回の大会に参加したのには理由があった。
最近、まったく動きを見せなくなったシャドルーの行方を追うこと。しかし、今まで格闘大会の裏に必ず潜んでいたシャドルーがこれだけの大きな大会にもかかわらず、影すらない。
まるでシャドルーがこの世界から消えうせてしまったようにダルシムには感じられた。

「……まさかな」

一瞬よぎった嫌な予感を振り払うように、ダルシムは首を振るうと。歩みを速めた。
シャドルーが絡んでいないのなら、それはそれでいい。強敵たちと技を競うことを純粋に楽しもう。そして家で待っている妻と息子に優勝の証を届けようと。
















ザ・ン・ギ・エ・フ!!2

   ~~~メカザンギエフの逆襲~~~~









































その戦場は凄惨たるものであった。
動いている生命体はほとんどいない。砕かれ、飛び散った肉片が、血があたりを真っ赤に染めている。かすかに聞こえるうめき声によりまだ生きているものがいることが確認できるだけだ。それも放っておけば数分で息絶えるだろう。
ミッドチルダの首都を守る、精鋭を集めた魔導師たちの成れの果てであった。
彼らは決して弱くはなかった。当然である、次元世界の屋台骨である第一世界ミッドチルダの首都を守る部隊なのだ。限られた予算の中で出来る限りの装備を与えられ、訓練をおこなってきた。
最近、噂されるようになった、AMF――アンチ・マギリング・フィールド――にも充分対応できるはずであった。

だが、誰がこんな敵を想像しただろうか?
AMF発生装置を持つだけではない。それは、真の意味での鋼の肉体を持っていた。どんな攻撃にものけぞることがなく、歩みを止めない。そして、近づいたものすべてを吸い込み叩きつける最強の投げ技も兼ね備えていた。

「うわわぁぁあぁ!!」

まだ、己の両足で立っていた魔導師が悲鳴のような声を上げながら、近づいてくる敵に魔法を放つ。
それにこめられた魔力は彼の全力であったのだろう。秘められた威力は彼の魔導師ランクを大きくこえ、AAランクにも匹敵していた。AAクラスの魔法といえば、分厚いコンクリートの壁をぶち抜き、一軒家くらいの大きさの建物であれば瓦礫に変えるほどの威力を持つ。個人に対して、いや部隊を相手に使っても必殺といえるものであっただろう。
だが、それがどうしたというのだ?
敵、放たれた魔法が向かった先にいるのは、最強の対魔導師兵器として、異彩スカリエッティが作り上げた量産型メカザンギエフ。
魔法はAMFによって減衰し、威力が弱められた魔法は、アイアンボディに包まれたメカザンギエフを打ち倒すことは出来ない。そして、陸戦魔導師で構成された地上部隊ではメカザンギエフから逃げることも難しい。ただ近づかれて投げられるだけだ。

「ひぃぃぃ、やめろ、近づくな!」

魔導師の懇願もむなしく、彼はメカザンギエフに吸い込まれ、回転と共に地面に叩きつけられる。スクリューパイルドライバー。
この必殺技を喰らって、生き残ることは格闘家でもなければ難しい。魔導師は頭をトマトのように砕かれ息絶える。
魔導師の頭を砕いたメカザンギエフは顔を上げ、あたりを見回す。
見回した先にはもう動く生命体は残っていない。彼と同じメカザンギエフが無数に、三百ほどいるだけだった。
敵の排除を完了したことを確認したメカザンギエフの群れは、目標に向かって進軍を再開する。
だが、メカザンギエフの群れはすぐに進軍の足を止める。

「これ以上は行かせない!」

排除すべき敵がやってきたからだ。
数は四。若い、若すぎる四人組みであった。だが、メサザンギエフは侮らない。入力されたデータからその四人組が何者であるか分かっていたから。
その四人組の名は、それぞれ、ティアナ・ランスター、スバル・ナカジマ、エリオ・モンディアル、キャロ・ル・ルシエであった。後に伝説の部隊とまで言われる機動六課のフォワード陣であった。
だが、その彼らをもってしても、メカザンギエフの群れを前にしては驚愕を隠せない。

「……うわあ、何この数」

彼らはメカザンギエフとの交戦はこれが初めてではない。一度だけだが、交戦しメカザンギエフ相手に勝利したことがある。だが。そのときは相手は一体であったし、その特性を知っている隊長の指示のもと、四人で袋叩きにしただけであった。
今回も前回と同じようにしようとしても、今ここに隊長である、なのはとフェイトはいないし、何よりも数が多すぎる。

「……どうしよう」

相手の力が分かっているだけに絶望がよぎる。
だが、彼女らがここで逃げ出してしまえば、このさきにいる避難民に危害が及ぶかもしれない。踏ん張るしかなかった。

「いい? 私が遠距離から一体ずつしとめるから、スバルとエリオはかく乱に専念! 絶対近づきすぎては駄目よ! キャロは魔力ブーストをお願い!」
「はい!」

リーダーであるティアナの指示によりフォワード陣は動き始める。だが、指示を出したティアナにも、出された三人にもわかっていただろう。それが焼け石に水であると。
一体のメカザンギエフを倒すのに何発の魔力弾が必要だろうか? 三百ものメカザンギエフを倒しきるまでティアナの魔力が持つはずもない。
だが、やらねばならない。耐えていれば、今別の戦線で戦っている隊長陣がきっと駆けつけてくれるはずだから。

「いくわよ……え!?」

しかし、そんな彼女のもくろみは淡くも崩れ去る。
ティアナの存在に気がついた一体のメカザンギエフが彼女に向かい歩み始めたからだ。
キャロに魔力ブーストをしてもらい、なおかつカートリッジをありったけ使っているのにもかかわらず、そのメカザンギエフは倒れない。前回戦ったときの倍はすでに叩き込んでいるのにもかかわらずだ。
なぜならば、彼女は知る由もないが、そのメカザンギエフは特別製だった。動力源にジュエルシードを使い耐久性が数倍にも跳ね上がった、メカザンギエフJS。まるで空を飛びそうな名前のメカザンギエフはティアナの全力の射撃を受けながらも歩みを止めない。
ティアナも後退をして、必死に距離をとっているが、射撃をするために前を見ながら、後退すれば当然足元がおろそかになる。

「きゃあ!」

瓦礫に足をとられ、転んでしまうティアナ。すぐさま身を起こすが、メカザンギエフの姿は彼女の目の前にあった。

「ティアナさん!」
「駄目、エリオ! 吸い込まれる!」

彼女の窮地に気がついたエリオがメカザンギエフに突撃をかけるが、アイアンボディを持つメカザンギエフに対して突撃をおこなうことは、自らの死刑執行書にサインをするようなものであった。

「うわぁぁぁぁ!!」

かつてのなのはと同じように吸い込まれ、空高く抱え上げられるエリオ。
鋭い回転が加えられ、地面に叩きつけられればもはや一環の終わりだ。エリオの華奢な体は粉々に砕け散るだろう。

「させない!」

だが、そうはならなかった。
かつての、なのはと同じように助けが入ったからだ。
黄色の光を放つ双剣を手にした、体の線をあらわにするような、まるで黒いハイレグ水着のようなバリアジャケットを纏った女性、フェイトがメカザンギエフの腕を切り飛ばし、エリオを助け出す。
腕を切り飛ばされたメカザンギエフはバランスを崩し、スクリューの威力を一身に受けて地面へと叩きつけられ、粉々になる。メカザンギエフJSであった痕跡はうっすらと輝きを放つジュエルシードだけであった。

「フェイトさん!」

助けが来たことを喜び、駆け寄るフォワード陣。だが、その顔はすぐに驚愕に変わる。
すでにフェイトはぼろぼろであったからだ。激しい戦闘の中を駆け抜けてきたのだろう。バリアジャケットはすでにぼろぼろで、放たれている魔力の輝きも弱弱しい。
もはや、まともに戦闘をおこなうことなど出来ないのではないか? そう心配するフォワード陣をよそに、フェイトは毅然と立ち、メカザンギエフの群れをにらみつける。

「ザンギエフさん……」

フェイトは共に戦ったことがある友人?を思い出す。なんともいえない、どちらかといえば怪しい人物であったが。彼のうちにこめられた情熱だけは本物であった。
それがこんなふうに汚されている。許せることではない。だが、彼女はメカザンギエフの力のこともよく知っていた。今戦闘をしてきたばかりだ。十を超える群れを何とか撃退した彼女だが、もはや余力はほとんど残っていない。
彼女は、この事件の元凶たるスカリエッティを捕らえなければ成らない。それと同時に、フォワード陣を助け、ミッドチルダの平和を守らなければならない。

「……」

メカザンギエフの群れをにらみ続けるフェイトの瞳の光は消えていない。けれど、方法がない。目の前にいる三百。そしてはやてたちが戦っている五百。
それは、フェイトの決意をもってしても絶望を感じさせるものであった。

「諦めちゃ駄目だよ、フェイトちゃん!」

そんな彼女を叱咤するかのように、桜色の光が放たれる。光は数体のメカザンギエフを飲み込むが、光が消えた後メカザンギエフは何事もなかったかのように歩み続ける。

「……うん、これくらいじゃあ、倒れてくれないよね」
「なのは……」

隣に舞い降りた親友の名を呼ぶ。

「諦めちゃ駄目だよ、フェイトちゃん。時間さえ稼げば、応援が来る。本局の艦隊が、クロノ君たちが着てくれるよ!」
「……うん、そうだよね、いくら相手がザンギエフさんを模したロボットでも諦めたらそれで終わりだものね」

本局の艦隊が来るまで守りぬく。それがどれほどまでに不可能に近いことか彼女たちに分からないはずがない。
だが、彼女たちが諦めたらそこで終わりなのだ。どんなに助けが欲しくても、彼女たち以外にはいないのだ。

「……来るよ、フェイトちゃん」
「うん……これ、全部倒して、ヴィヴィオを助け出して、スカリエッティを捕まえたら、また……」

悲壮なる決意。無力なもののために戦うそのココロのあり方は、きっと、彼が見たらこう称しただろう。
すばらしき、ロシア魂だ、と。
だから、それは必然であった。
メカザンギエフの群れに対するために身構えたフェイトたちの足元にあったジュエルシードが輝きを放つ。

「ハラショーーー!!!!」

そして、その輝きは、英雄を、その魂の輝きにふさわしい英雄を召還した。











































「ふんぬううう!!!」

ザンギエフは怒っていた。
この惨状に。自らを模したロボットが起こしたことに。
そしてなのより、こんなにも熱いロシア魂を持っている少女たちがここまで傷ついているのに、気がつかなかった自分自身に。

「ザンギエフさん!」
「何で、ここに!」

だから、ザンギエフは振り向かない。再開を喜ぶことも、いたわることもしない。まずこの怒りを、ふさわしい相手にぶつけてからだ!

「ふん!」

ザンギエフは一番近くにいたメカザンギエフを吸い込む。アイアンボディも投げ技には効果をしめさない。のけぞり無効であっても投げ技には意味がないのだ!
だが、

「だめ、ザンギエフさん!」

それを見たなのはが悲鳴のような制止の声を上げる。
ザンギエフが何をしようとしているのか、何の技をかけようとしているのか察しが着いたからだろう。
スクリューパイルドライバー。
その技は絶大の威力を秘めているが、かけ終わった後に大きな隙が出来る。一対一なら問題ないだろうが、相手は三百もいるのだ。きっとなのはには、スクリューをかけ終わった後袋叩きにあうザンギエフの姿が幻想できたに違いない。
確かに、普通に考えればその想像は正しいだろう。
投げ技とは一対一で使われる技。多対一で使われることがあるはずがない。
投げ技とは全身を使って相手を投げるため、投げ終わったあとも、投げている最中も隙だらけだ。何より渾身の力を使って投げ飛ばしても倒せるのは一人だけなのだ。そんな技を多対一で選択することなど出来るわけがない。

否!

その、なのはの考えは確かに正しい。だが、それは真の投げ技を知らない一般人によるものだ。
真の投げ技の真骨頂は多対一にある!
鍛え上げられた肉体の力を一点に集中し、投げ飛ばした相手を弾丸と変え、多くの相手をなぎ倒す!
これは、エイリアンの賞金稼ぎの間でも知られている常識であり、地球でも古代中国でその威力を大いに発揮した。
さらに、今、ザンギエフが放とうとしているのは、最強の投げ技スクリューパイルドライバー!!
かつて、古代中国、三国の時代に、蜀の燕人張飛が百万の大軍の足をその技一発で止めたという故事があるほどだ。
そして、その時代から千幾百年。スクリューパイルドライバーはザンギエフの手によって完成した。
その威力が今ここに!

「ふんぬうぅ!!」

いつもより、三倍高く跳躍し、二倍の回転が加えられたスクリューが地面に、メカザンギエフの群れの中心に叩きつけられる。
その瞬間を見ていた、なのは達にはまるで星々が砕け散るさまが見えたかもしれない。それほどの衝撃であった。
舞いあがる土ぼこり。
その奥を見通そうと目を凝らす、なのはたちの耳に

「ハラショー!!!」

ザンギエフの勝利の雄たけびだけが響き渡った。






























「ザンギエフさん!」
「ありがとうございます!」

スクリューの一撃はメカザンギエフの群れをなぎはらった。
喜びの声を上げ、近寄ってくるなのは達をザンギエフはねぎらう。

「いや、違うぞ、少女たちよ。少女たちの熱きロシア魂。それがこの勝利をもたらしたのだ。誇るがいい。そして、ロシアの将来を頼むぞ!」

ザンギエフは美しく成長した、フェイトたちを見下ろし、頷く。このような若者がいる限り、ロシアの将来は安泰だろうと。

「いえ、本当に私たちだけではどうしようもありませんでした……本当にありがとうございます。そして、助けてもらったばかりなのに、こんなことを言うのはおこがましいですが、お願いします! もう一度戦って下さい!」
「はやてたちが大変なんです!」

フェイトたちの懇願。
ザンギエフが、ロシア魂を持つ者の頼みを、ロシア的美少女の頼みを断るはずがない。

「うむ、よかろう。それで敵はどこにいるのだ?」

敵が何者かも尋ねない。ザンギエフの中ではロシア魂を持つ者を苦しめるもの=悪と決まっていた。

「はい、あっち……フェイトちゃん、ザンギエフさんを送ってあげて」

この世界に着たばかりの、そして移動手段がないザンギエフに説明するのは難しいと判断したなのはは、フェイトにザンギエフの輸送を頼む。フェイトはなのはより損耗が激しいが、ザンギエフを運ぶくらいは問題ないと思ったのだろう。

「うん、それはいいけれど……なのははどうするの?」

フェイトは頷きはするが、なのはの様子がおかしいことに気がつき、声をかける。

「私は……私はヴィヴィオを助けに行く」
「無茶だよ! なのは一人でなんて私も行く!」
「駄目だよ、フェイトちゃんは。もう飛ぶのがやっとでしょ。そんな状態だと、もう高高度まで上がっているゆりかごまでたどり着くことすら出来ないよ……」
「でも……!」

ザンギエフを尻目に言い争いをはじめたなのはたちに、ザンギエフは困惑して、激しく状況が移り変わったことにより話についていけなくなって呆然と立ち尽くしているフォワード陣に声をかける。

「どういうことなのだ?」
「え、えと」

ザンギエフに声をかけられた、一番格闘家に近いスバルは驚きながらも言葉をつむぐ。

「え、えと、なのはさんの娘がゆりかごにさらわれちゃっていて……」
「ゆりかごぉ? それはどこにあるのだ?」

スバルは、ザンギエフの問いに無言で空をさす。
指先をおって視線を上げれば、晴れ渡った空に点だけが見えた。

「ぬぅぅぅ。ようは空中竜巻旋風脚か。そんなもの掴んで叩き落としてくれるわ!」
「え、ザンギエフさん!?」
「何を!」

ザンギエフがあげた声に、驚き、言い争いをやめ、なのは達がザンギエフを制止しようとするがすでに彼は技の発動体勢に入っていた。
すでに、衛星軌道に達しようとしているゆりかごに、格闘家に過ぎないザンギエフが何をしようというのか?
衛星軌道にまであがれるのは、魔導師でも数すくないのだ。空も飛べないザンギエフが手を伸ばせば届くような、吸い込めるような距離ではないのだ。
だが、彼女たちは知らない。
かつて、初の有人宇宙飛行を成し遂げたのは、ロシアの前身であるソ連だということを! そして、ザンギエフはロシアの英雄! ロシアの栄光の技が使えるということを!

「ふんぬぬぬ!」

ザンギエフの発声と共にMAXまでためられたゲージが消費される。

そして、放たれるは! 

スーパーコンボ! 

エアリアルロシアンスラム!

まるで時が止まったかのような空間の中で、青い影を残し、ザンギエフの体が飛翔していく。
そして、なのは達が気がついたときは、ザンギエフはゆりかごの船体を掴んでいた。
格闘家の間では投げ技に体の大小は関係ない。どんなに大きさに差があっても掴まれたら投げられるのだ!
そして、必殺投げは投げ抜けはできない!
これは常識である!
故に、ゆりかごも決められたルールに従うしかなかった。

「ふん!!」

先ほどのスクリューに倍するかのような衝撃があたりを包む。
あまりの衝撃に目を閉じたなのはたちが、再び目を開けたときに、視界に入ってきたのは、目を疑うような光景であった。

「ははは、私はもうザンギエフさんのやることには驚かないよ」
「……ロシアって、どんなくになのかな? 本気で調べないと」

彼女たちの目に入ってきたのは、先端部分を地面に突き刺し、倒立しているゆりかごの姿であった。

「……ヴィヴィオを助けにいかないと」

すでに常識で考えることをやめた、なのはは、すぐに自分がやらねば成らぬことを思い出し、ゆりかごに向かって駆け出す。衝撃のわりに船体に破損がないので、中にいるヴィヴィオも無事だと判断したのだろう。

「あ、待って! なのは!」

フェイトもすぐになのはのあとを追おうとするが、消耗が限界に達していたのか、足が思うように動いてくれない。休まなければまともに動くこともできないだろう。

「心配するな、少女よ。あの少女は、このザンギエフが守り通そう!」

そんなフェイトにザンギエフは声をかけると、大きな体を揺らしながらなのはのあとを追い、駆けていった。













































「ぬうう、ここはどこだ? 少女はどこに行ったのだ?」

フェイトになのはを守り通すと宣言したザンギエフであるが、すぐになのはの姿を見失ってしまう。
当然である。今、ゆりかごは倒立しているのだ。通路も普通の状態ではない。空を飛べぬザンギエフには普通に進むことすら困難なのだから。
だが、熱きロシア魂を持つザンギエフはこの程度のことでは諦めない。鍛え上げられた肉体を駆使して何とか、ゆりかごの中心部分であろう方向に向かっていく。
囚われているのなら、一番奥にいるだろうと考えたのだが、その彼の考えはある意味正しく間違っていた。中心は確かに一番守りが厚い。そして、厚いからこそ、臆病でずる賢い者が篭るのだから。

「ぬうう?」
「なんなの! 何が起こったというの!?」

広い空間に出たザンギエフの耳に混乱したような女性の声が聞こえてくる。
その声につられて、近寄ってみると、スカーフを肩にかけた、体のラインがあらわになる銀色のボディスーツを纏った女性が悔しそうに地面を叩いていた。

「あと一歩で、あと一歩で衛星軌道に達せられたのに! そうすれば本局の艦隊にだって勝てたのに!」
「ぬう?」

まったく、何も知らず戦っているザンギエフであるが女性の言動を見れば、なのはたちの敵であることは理解できる。
思えば、なのはの娘の容姿すら知らぬことに気がついたザンギエフは、丁度いいと考え、女性から情報を引き出すことにして、歩み寄る。

「誰!?」

ザンギエフの接近に気がついた女性、クアットロが顔を上げる。もともとザンギエフは格闘家であるから足音を隠すようなことをしていないのだから、それは当然のことであった。

「お、お前は!?」

ザンギエフの姿を捉えたクアットロの目が大きく見開かれる。

「あはははあ、まさかこんなところで原型に出会うとはね。なるほど、確かに納得だわ。この船をゆりかごを落としたののもあなたの仕業かしら?」
「うむ、つかんでおとしてやったわ!」

クアットロの問いに胸を張るザンギエフ。
それを見てクアットロは納得したかのように大きく頷く。

「まさか眉唾ものだと考えていた情報が本当だとはね。まあ、あれだけ強い力を持つものが警戒するだけのことはあるようね。格闘家って言う連中は」
「ぬう? 何を言っているのだ?」

ザンギエフはクアットロの言っていることが理解できずに首をひねる。

「理解する必要はないわ。そうねでもちょっと付き合ってもらってもいいかしら?」
「ぬう?」
「私の新しい力のお披露目にね! はぁぁぁぁ!」

クアットロが大きな声を上げると共に、彼女の体を薄い青白い光が包み込む。
それは魔法の光ではなかった。戦闘機人が使う力の輝きでもない。

それは。

「まさか……サイコパワー!?」

ザンギエフが驚きの声を上げる。
クアットロが纏っていたのはかつて格闘技界の闇に君臨していた格闘家ベガが纏っていた力なのだから。














































「ふははは、無様なものね! それでもロシアの英雄なのかしら!」

クアットロの嘲笑の声が響き渡る。

「ほら、もう一度行くわよ!」

クアットロは青白い輝きで全身を包むと、水泳の飛び込みのように、両手を前で合わせて飛ぶと、落下せずにそのまま横倒しになり、ザンギエフに向かい突進してきた。

サイコクラッシャー。

かつて格闘王とまで言われたベガの必殺技だ。
クアットロの放つサイコクラッシャーは本家のものに匹敵する。いやその身にまとうサイコパワーはこえてすらいるかもしれない。
それほどの威力を持つ技をまともに喰らえば、鋼の肉体を持つザンギエフとてただではすまない。それに加えて、サイコクラッシャーは拘束で飛び回る技、サイコクラッシャーで逃げるベガを追うのにアメリカ軍人はジェット機を使用しなければならなかったほどの速度を持つ。
サイコクラッシャーの行使中はザンギエフとて身を固めて防御に徹するしかないのだ。

「ははは、まるで亀ね。どこがサイクロンなのかしら? 今度から赤い亀に解明するといいわ! その鈍足にお似合いよ!」

手足も出ないザンギエフをクアットロが嘲笑する。
ザンギエフはその嘲笑に耐え、怒りを押さえつけながらクアットロにたずねる。

「それほどのサイコパワーどうやって習得したのだ?」

サイコパワーを使えるものはベガしかいない、そのはずである。

「ええ、取引で教えてもったのよ。次元をわたる技術と引き換えにね。ああ、あとあのロボットメカザンギエフの設計図ももらったわ」
「ぬう! シャドルーがこの世界にまでやってきているというのか!?」
「ええ、そうよ。物分りがいいんで、使ってやってたけれど、もういらないかしら? これほどの力があれば何も必要ないわ!」

嗤うクアットロのサイコパワーが跳ね上がる。
サイコパワーとは憎悪の力。自分に向けられた憎悪を吸収し力に変えたもの。これだけの力を得るのに、クアットロはどれだけの憎悪を受けたのだろうか?
そのことに想いをやるとザンギエフのはらわたは煮えくり返りそうになるが、耐える。

「うふふふ、いつまでそうやって亀になっているのかしら? 援軍を待っているのかしらね? 無駄よ。もし来てもこの私の力の前では意味がないし、それに来ることなどできはしないから。うふふふ、あの女も今頃きっと」
「どういうことだ!」

クアットロが言うあの女がなのはのことを指していることに気がついたザンギエフが疑問の声をぶつける。

「ええ、どうせ知ってもどうしようもないことだから教えてあげるわ。あの女の娘、ヴィヴィオにもサイコパワーを与えてあげるの。与えたついでに洗脳もしたけれどね。サイコパワーに聖王の鎧。敵うものなどいるはずもないわ! 娘に殺されるなんて、あの女どういう気分かしら? まったくいい気味ね」
「ぬぬぬぬう!!!!!!」

ザンギエフの怒りは今にも爆発しそうだ。
しかし、まだだ。
懸命にそれを押さえ込む。

「あらあら、これだけ言ってあげたのに、まだ亀になっているのね。本当にロシアの英雄とか笑っちゃうわ。よほどしょぼい国なのねロシアって言う国は! いいわ削り殺してあげる!」

そういうと、クアットロは再びサイコクラッシャーの体勢に入る。
飛び回るクアットロ。
もはや、彼女を止めることは誰にでも出来ないそう思えた。
だが、彼女は二つの間違いを犯していた。

一つ。

サイコクラッシャーは確かに強い技であるが、すでに研究され尽くされているのだ!
サイコクラッシャーが最強の技であったのはすでに過去のこと。
同じ技だけを連発していて勝てるほど格闘技界は甘くないのだ。
それにもかかわらず、馬鹿の一つ覚えのように同じ技を放ち続けるものを、格闘家はこう言ってさげすむのだ。

電車ベガ、と。

そう、電車。
電車には終着点が必ずある。
それはサイコクラッシャーにも存在する。

「あはははははあ!!!……え?」

言いようにザンギエフを押し捲っていたクアットロが突然動かなくなったザンギエフに困惑する。
そう、クアットロは画面は……壁際に誘い込まれたのだ。
ザンギエフの体はサイコクラッシャーの威力に押されて壁にめり込むがそれだけだ。端という終着点にたどり着いたクアットロはそれ以上先に進むことが出来ない。
そして、めり込んだままサイコクラッシャーの発動が終われば待っているのは大きな隙。

「ハラショー!!」

ザンギエフが雄たけびを上げる。
その雄たけびが、クアットロが犯した二つ目の間違いであった。

クアットロはザンギエフを怒らせた。

怒りが力に代わることはもはや常識である。
それは格闘家の間でも変わらない。
格闘家は、たとえ一方的にやられても、一発逆転を狙い、怒りをためておくのだ!

リベンジゲージ。

格闘家はその怒りのことをそう呼んでいる。
今ザンギエフのゲージはMAX、怒りは頂点に達している!
そしてその状態から放たれるのは!

究極! ウルトラコンボ!

アルティメットアトミックバスター!!

「ふん!」

無防備にザンギエフに掴まれたクアットロはまずスープレックスで叩きつけられる。そして間髪いれずにバック振りーかにつなげられ、その後大きく高く投げ上げられる。

「は!」

ザンギエフはそのあとを追い、自らを空中に飛び上がり、クアットロを抱える。そしてその体勢から放たれるのは!

スクリューパイルドライバー!

地面に叩きつけられたクアットロにはきっと宇宙が崩壊する幻影が見えただろう。

「アイアムナンバーワン!」

ウルトラコンボを叩き込みクアットロを戦闘不能にしたザンギエフはロシア語!で勝利の雄たけびを上げる。
だが、失敗したことにすぐに気がついた。

「むう、やりすぎた、これでは情報が引きだせんではないか……」

どうするべきか、途方にくれているザンギエフの耳に無数の破裂音が届く。
その音に、ザンギエフは聞き覚えがあった。
嫌な予感を押さえつけ、音の聞こえてきたほうに向かったザンギエフの目に入ってきたのは、

「……少女よ、それは踏み入れてはならない、手にしてはならない力だ!」


背に血のような赤で天と印された、漆黒の衣に身を包んだ、なのはの姿があった。













































自壊予告。




瞬獄殺。

それがなのはがヴィヴィオに放った技の名前であった。
なのはは、サイコパワーを身に着けたヴィヴィオを止めるために禁断の力に手を出してしまった。

殺意の波動。

それは格闘技界の中でも禁断とされるもの。
それに身を染めたものは戦いを求めるだけの鬼と化す。
なのはは修羅となり、命が続く限り戦い続ける。もはやもう、もとのなのはは戻ってこないのだ。
そう告げるザンギエフにヴィヴィオは声を上げる。

「違う! なのはママは私が取り戻す!」

ヴィヴィオの熱きロシア魂に心打たれたザンギエフはヴィヴィオの師匠になることを決める。

「いいか、ヴィヴィオ、殺意の波動を持つ者は強いものに引かれて現れる! だから最強を目指すのだ!」

修行に励む二人。
その二人の下に、大会の通知がやってくる。
それもタッグトーナメントであった。

「ぬぬう、いいか、修行の成果を見せるときだ、行くぞ!」

果たして、二人はなのはを取り戻すことが出来るのだろうか?

そして、影で動くシャドルーは?

今二人の友情合体技が炸裂する!

ヴァリアブルコンビネーション!





自壊をお待ちください。







いい加減に終わっとけ。


























あとがき。

続きを書くつもりがなかったけれど、みんなのザンギ愛が集まったおかげで書いてしまったよ!
集まりすぎて、今なら「ザンギエフとスクリューが与えた日本経済に対する影響について」って言うタイトルで小論文がかけそうな気がするよ!


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