西暦2007年。機界文明《ゾンダー》との戦いに勝利してから2年後、新たなる敵《ソール11遊星主》が現れる。
三重連太陽系の守護プログラムとして造られた彼らは、当時地球上から相次いで発見された《Qパーツ》を強奪し三重連太陽系の復活を目指す。
しかし、その原料は地球が存在する宇宙の暗黒物質であった。
宇宙を構成するこの物質を吸い上げられたことにより始まった宇宙収縮現象を止めるべく、ガッツィー・ギャラクシー・ガード(Gutsy Galaxy Guard)通称GGGはシャッセールのルネ・カーディフ・獅子王を始めとする新たな仲間を加え、再生された三重連太陽系を目指したのであった。
復活した三重連太陽系のレプリ地球においてソール11遊星主と戦った勇者王ガオガイガーと最強勇者ロボ軍団であったが、ピサソールが持つ無限再生の力にかつて無い窮地に立たされるも凄絶弩級ツール<ゴルディオン・クラッシャー>により辛くも勝利した。
しかしパスキューマシンの本体であるピサソールを失った事で再生された三重連太陽系は収縮を開始。
確実に脱出する方法はESウィンドウを使用する空間転移しかないが、激闘を潜り抜けたGGGには僅かに残ったES爆雷で小さなESウィンドウを開くのが精一杯であった。
その為に幼い子供でありGGGの勇気を受け継ぐ天海護と戒道幾巳の二人を地球に向けて送り出したのだった。
しかし、彼らはこの空間からの脱出を決して諦めてはいない、そう彼らの辞書には不可能や諦観という文字は存在しないのだ。
その最後の一瞬、いや死した後でも彼らの勇気を挫くことなど出来はしない。
世界十大頭脳たる獅子王雷牙博士を初めとする、GGG科学班のメンバーは情報の分析を開始、そして遂にこの宇宙から脱出するための一つの回答を得たのであった。
GGGメンバー全員の注目の中、長官大河幸太郎より口火が切られた。
「諸君、我々は今未曾有の危機に晒されている。しかし雷牙博士達の懸命の調査の結果、脱出方法が判明した。では博士、説明をお願いする」
長官より説明を促された世界十大頭脳の一人であり、GGG科学部の誇るスーパーバイザーでもある獅子王雷牙博士が神妙な顔で語り始めた。
「うむ、まずはこの宇宙収縮現象はこの宇宙の中心に向かって空間そのものが縮んでいっておるのはみんなも知っておる通りだ、そして最終的には消滅するのだがその一瞬前にブラックホール化することが判明した」
「ブラックホールだとぉ、まずいじゃねえか」
ブラックホールと聞き参謀である火麻激が、その筋肉質で大柄な体格には似合わない頓狂な声を上げた。
「うむ、しかし今の場合はそれこそが肝心なんじゃよ、普通ブラックホールと聞いて何を思いつくかね?参謀」
雷牙博士の質問の意図が判らないものの火麻参謀は手をあご先にあて、首を傾げつつも口を開いた。
「あん、そうだなぁ光も逃がさない超重力とか、吸い込まれたら終わりだ、とかか」
「ふむ、大体そんなもんだろう、ではホワイトホールというものについては知っておるかね」
「たしか、ブラックホールに吸い込まれたものが出てくる穴がホワイトホールって、まさか!」
今回はなにかに思い当たったらしく驚きと同時に目を剥くが、すぐに理解を示す。
彼はその言動から誤解されがちだがGGGにおいて作戦参謀の立場にあるのは伊達ではないのだ。
「そう、そのまさかじゃ、我々はホワイトホールを通って脱出を試みるという訳だ」
その答えを聞いた全員が長官に注目した。最終的な決定権は彼にある。
視線が向けられたことに気づいた大河長官は力強く語った。
「しかし、現状それしか脱出の手段が無い以上は、なんとしてでもやらなければならん」
その言葉を受けた猿頭寺耕助が、この戦いの中で命を落とした恋人パピヨン・ノワールの形見である可愛らしいリボンをつけた頭を掻きながら説明を始める。
その頬には涙の後が残っていたが、語る言葉に淀みは無い。彼もまた悲しみを力に変えられる男なのだ。
「では、作戦の詳細について説明します。さきほど博士がいった通り我々はホワイトホールを使って脱出を試みる訳ですが、その入口となるブラックホールが発生する頃には次元境界線の崩壊と重力圧で全滅します。
そこで耐えられるギリギリまで収縮現象を観測し限界を迎えたところで、最後の一押しを<ガトリング・ドライバー>の空間圧縮機能を使い超弦圧縮を行い、人工的にブラックホールを発生させます。」
金髪碧眼の青年スタリオン・ホワイトがその後を次ぎ説明を続ける。
「計算上、作り出せるBlack holeの直径は4m~5mでしかアリマセーン。そこで<ディバイディング・ドライバー>を使用して直径の拡大と固定、更にWhite holeへの接続を行いマース」
最後はもう一度、雷牙博士が引き取り話を終えた。
「以上の方法で擬似的なESウィンドウを作るっちゅー乱暴極まりない手じゃな、しかも座標の指定も出来ん以上は何処に飛ばされるかもわからん。
まあ、この宇宙を支えとった暗黒物質はわしらの世界から流入しておったからこちらから暗黒物質が流出するのも暗黒物質が減少しておる世界の公算が高いと言う予測はある。どちらにしろ分の悪い賭けではあるがの」
「分が悪いという事ですが、どの位悪いんでしょうか?」
質問を出したのはメカニックオペレーターの牛山一男だ、腹が決まってしまえば頼りになる男だが少々気弱な面があるために聞いてみたいようだ。質問をされた博士は殊更に軽い調子で答えた。
「成功確率は約7%、成功したとして、更に元の世界へと無事に帰還できる確率は~そうだな30いや20%といった所か」
幸太郎は深く頷くと全員に聞こえるように静かに語りだす。
「今、博士から聞いた通りこの作戦は非常に困難なものとなるだろう、私としてももっと確実な方法があれば良いとは思う。しかし我々には時間が残されておらず、他の方策を採りうる状況に無い、だが我々はこのような困難に幾度も勝利してきた。
今回もまた皆の知恵と勇気を結集すれば必ずやこの状況を打破し元の世界へと帰れると信じている。では、以後本作戦をオペレーション・アリアドネと呼称する」
一旦言葉を切った長官は一息ついて両目を見開くとオーケストラの指揮者よろしく右腕を振り、腹の底から開始の号令をかけた。
「オペレーション・アリアドネ、承認!」
こうなればGGG隊員には一切の迷いは無い、作戦の遂行に全精力を傾けるのが隊員としての矜持なのだ。
ハンガーでは牛山が整備班に激を飛ばしながら額に汗を流し、雷牙博士、猿頭寺、スタリオンは更に解析を進め0.1%でも成功確率を高めんと計算を繰り返す。
そんな最中に凱は自分の最愛の人である、卯都木命の元に居た。
彼女は先の戦いの最中、凱の窮地を救うべくジェネシックマシンの封印を解く為に宇宙空間へとその身を踊らせたのだ。
ゾンダーとの戦いにおいてセミ・エヴォリュダーへと進化していた彼女は幸いにも一命を取り留めてはいたものの未だに意識は回復していなかった、そんな彼女の髪を優しく撫でながら語りかけていた。
「命、俺たちは必ずこの空間から脱出してみせる。だからお前も頑張ってくれ」
凱が救命室から出てくると扉の脇に緑の鎧を着込み、その左腕に赤く輝く宝石Jジュエルを持つ男、キングジェイダーを駆る凱最大のライバルたるソルダートJ002、赤き星のソルダート師団でも最強の名を受けた漢が壁に寄かかって立っていた。
この男がこんな場所に居るのも珍しいが、その鎧は彼方此方が破壊されている。怪我の手当てにでも来たのかとそのまま離れようとしたとき、Jから話しかけてきた。
「作戦内容は聞いた、ガトリング・ドライバーを私に寄越せ。私の疾さならば刻一刻と変化する超弦重力核を確実に捉えることが出来る、そのあと貴様は私が作り出したブラックホールに向かって来れば良い」
その申し出に少なからず驚く凱、この孤高の戦士が協力を申し出てくるのは非常に珍しいのだ、なにやらルネとあったようだがその影響かもしれない。
なんとなく二人が並んでいるところを想像して吹き出しそうになったが寸出でこらえ、笑みを浮かべて答えた。
「ああ、その申し出ありがたく受けさせてもらう」
Jとの共闘を全員に話すと共闘自体は受け入れらたが、オペレーターであるスワン・ホワイト とから質問が出た。
「デモ、そうなるとJアークの操縦はどうするのですカ?」
たしかにジェイアーク級超弩級戦艦には生体メインコンピュータであるトモロ0117が搭載されており、通常状態での航行ならばなんら支障は無い。
しかしながら今回はジェイアーク自体かなりの損傷を受けているばかりかジェイダーが分離してはパワー不足に陥り活動不能になる恐れすらあるが、その指摘にJは返答した
「それならば問題は無い、トモロ、ジェイアークの指揮権限を一時的にルネへと移す。それと同時にパワーリンクを私のJジュエルからルネのGストーンへと移行しろ」
「了解、搭乗者にルネ・カーディフ・獅子王を登録、指揮権限の一時委譲及びパワーリンクの変更を確認、これより本艦の航行はルネ・カーディフ・獅子王に委託されます」
これは通常なら不可能なことである、いかにJジュエルがGストーンを基に作られているとはいえ、その技術は赤の星のものである。
当然のことだが、同じ赤の星の技術で建造されたJアークはGストーンに対応するようには作られていない。
しかし、先のピア・デケムとの戦いにおいてルネのGストーンはJのJジュエルと共鳴したのだ。
これは青の星(地球)でGストーンを分割した際にルネが持つGストーンの固有振動数がJのJジュエルの固有振動数に類似した極めて珍しい例であり、更にあの戦いの最中でJとルネの二人の魂が起こした奇跡でもある。
「よろしく頼むよ、トモロ」
「こちらこそ、獅子の女王<リオン・レーヌ>」
これですべての準備は整った。
巨大戦艦Jアークの船先にジェネシック・ガオガイガーそしてJアークより分離したジェイダーが並んでいる。その姿は2体共に満身創痍だ。
しかしその身に宿る勇気に陰りは無い、準備の整ったツールを装着しようと動き出した時にガオガイガーの隣に並んだジェイダーから通信が入ってきた。
この期に及んで怖気づくなど有り得ない、一瞬の沈黙の後Jは決然と語りかけて来た。
「貴様との結着はまだ着いていないのだからな、こんな所で留まっている訳にはいかん」
あまりに不敵な、すでにこの作戦は成功したとでも言うような口ぶりである。対する凱も同様の笑みを浮かべて答えた。
「ああ、その為にも必ず成功させる、いくぞJ!」
「応っ!」
そこに雷牙博士から通信が入る。
「よいかJ、ブラックホールを作る為に必要な超弦重力核は複数が、この空間を楕円軌道で飛び回っておる。しかしガトリング・ドライバーでブラックホールを作る為には最低でも8個の超弦重力核を同時に起動せねばならん。」
通信ともにジェイダーにポイント座標と時間の情報が転送されてきた。
情報によると8個の超弦重力核が重なるのは64分の1秒間である、まさに刹那の瞬間だ。
「承知」
続いて凱に向かって
「そして凱、ガトリング・ドライバーでブラックホールを制御していられる時間は13秒じゃ、その時間内でディバイディング・ドライバーを使ってホワイトホールへの扉を開かなければならん。出来なければブラックホールは暴走して僕等は一巻の終わりと言う訳だ」
この超演算は超進化人類・エヴォリュダーとなった凱にのみ可能な離れ業だ。
「了解」
そして遂にGGG長官、大河幸太郎の言葉と共にその瞬間が訪れた。
「オペレーション・アリアドネ、発動!」
同時にGGG研究開発部オペレーターであるスワン・ホワイトのカウントダウンが始まる。
力強い言葉と共に二人の勇者が宇宙を翔る。
「クラッッシャー」
「プラズマ」
「「コネクトォ!」」
それぞれの左腕にツールを装着した2体の巨人、まずはガトリング・ドライバーを持つジェイダーがブラックホールを作る為に飛び立った。
「ガトリング・ドライバー!」
虚空へと突き出しガトリング・ドライバーを作動させるJ、一瞬の沈黙の後ツールヘッド部に重力湾曲が発生する、この瞬間にJは実は12個の超弦重力核を同時に捉えていたのだ。
これは264分の1秒という瞬間を見切った神業中の神業であった。
「輝け、我がJジュエルよ!」
傷ついた機体のあちこちから小爆発が起こすのも構わずに全ての力をガトリング・ドライバーに集中させ12の超弦重力核を圧縮し始めると、ついに直径5m程のブラックホールが出現した。
僅かに遅れて飛び立っていたガオガイガーはジェイダーがブラックホールを出現させた直後にディバイディング・ドライバーを突き刺した。
「ディバイディング・ドライバー!」
凱はブラックホールに突き刺したディバイディング・ドライバーによって、直径を50m程に拡大した黒穴に向かって更にディバイディングフィールドとアレスティングフィールドを展開させホワイトホールへと直結させる作業を行なっていた。
しかしその時スタリオンの悲鳴が響き渡った。
「No―、空間が消滅を始めました。我々が脱出の為に作ったBlack hole が原因と思われマース。完全消滅まで後37秒デース」
報告を受けたその瞬間、ブラックホールの向こう側に宇宙が見えた。
ホワイトホールとの接続が成ったのだ。
直後に全員から歓声が上がるがまだ脱出に成功したわけではない。
長官から即座に指示が飛ぶ。
「よし、Jアーク、発艦!」
「全速前進だ、振り落とされんようにどっかに捕まってろぉ!」
「Gパワー全開!トモロ、オーバーロードしても構わないから臨界まで回せ!」
「了解、ウイィィィィ!」
全速で脱出口に向かうJアークだが、傷ついたままではその速度にも限界がある。
事実、スワンの口から無情な叫びが上がる。
「だめデース、このままでは脱出する前に消滅に巻き込まれマース!」
「万事休すか!」
Jアークは全速で進行しているが、わずかに速度が足りない。このままでは間に合わないと思われたその時、ガクンという衝撃があったのち急に速度が上がった。
「なんだ、急に速度が上がった?」
「みんな、外を見てください!」
牛山に言われて外をみた者は全員が息を呑んだ。
それは傷つき、ボロボロな姿でJアークに取り付き必死にバーニアスラスターを噴かす勇者ロボ達であった。
「こんな私たちにだって出来ることは有ります」
「補助ブースターの代わりぐらいは」
「勤めて見せるぜ」
「たとえこの身が砕けようとも」
「皆さんは脱出させます」
「なぜならあたしたちは」
「勇者だから」
「マイク、バリバリーンが無いから役立たずダモンネー」
「チクショウ、おれにも身体があればなぁ」
勇者ロボの決死の努力により速度を増すJアークが遂にブッラクホールの中に飛び込んだ瞬間、ガオガイガーとジェイダーに装着されていた2つのドライバーが限界を迎えて爆散した。
衝撃で弾き飛ばされる両機、このままでは崩壊する宇宙に取り残されるかと思われたその時マイクの腕がそれぞれの腕を捕まえた。
「大丈夫二人とも、マイクこの手は絶対に離さないモンネー」
「助かったぜマイク」
「すまん、恩にきる」
ディバイディング・ドライバーを失ったことでいつこのディバイディングフィールドが崩壊するか予想が付かない状況の中でブラックホール内を突き進むGGG一行であったが遂に出口にたどり着く。
「「やったあ!」」
しかし全員が喜びに沸いた瞬間、空間維持が出来なくなったディバイディングフィールドが崩壊しブラックホールの重力圧が襲い掛かる。
「「うわあぁぁぁぁ!」」
これまでの戦いで傷ついていたマイクの腕がこの圧力に耐えきれずに千切れ飛ぶ、更に間が悪いことに此処まで酷使し続けたJアークのエンジンが限界を向かえて爆発をおこしてしまったのだ、衝撃で吹き飛ばされるガオガイガー、ジェイダーそしてJアーク。
凱が最後に見た光景は吹き飛ばされながらも出口へと吸い込まれてゆく仲間の姿だった。
凱がうっすらと意識を取り戻した場所は何処とも知れない宇宙空間であったが、目の前に見えるのは紛れも無い地球である。
「俺は帰って来たのか、命、みんな」
そこで凱は再び意識を失った、少し後に宇宙を漂うガオガイガーに近づく影がある。
それは鮮やかなトリコロールカラーをした一機の機動兵器であった。
君達に最新情報を公開しよう
収縮する三重連太陽系からの脱出に成功したガオガイガーとGGGであったが、その衝撃により別の場所へと飛ばされてしまう
謎の戦艦に救助された凱
彼らはいったい何者なのか?
次回 勇者王ガオガイガー DESTINY
第2話 異なる世界 にFINAL FUSION承認
これが勝利の鍵だ ZGMF-X56Sインパルス