事実は小説よりも奇なり
とは よく言ったものだ。
私の今の状況を見るに その程度の表現では済まない気もするが
起こった事は使用が無い。
そう自分を無理やり納得させる、落ち着け 冷静になれ、平常心だ。
そうだ、まずは 現状を把握してみよう。
まず第一に、ここは私が先程までいた場所ではない
周りの風景を見れば一目瞭然だろう
次にここはどこかを考える
・・・ここはラクシアで テラステア大陸北部地域で・・・??
ん?
・・・ダーレスブルグ公国東部にある それなりの広さを誇る森の中・・・!?
??この知識は一体・・・
数メートル先で 非常に浮かれた顔をして飛ぶ妖精を見付けたのは、丁度そんな時だった。
表情にこそ出さなかったが 少々イラッと来たのは仕方のない事だろう。
私は 目の前の妖精に 現状の確認をする事にしたのだった。
「・・・ふう、とりあえず状況は理解した。しかし・・・」
正直 信じられない・・・いや、信じたくない話のオンパレードだ
話を総括するに、ここは異世界で 蛮族や魔物が跋扈する世界
しかも次元の裂け目が完全に閉じてしまっている現状
私には 帰る手段が無い・・・と。
それに次いで、魂のリンク 知識の共有 そして魔力か・・・
話していて分かったのだが、どうも知識の共有はしていても 記憶の共有はしてないらしい
後で詳しく調べてみるらしいが、この分だと 肉体の同調も心配しなくてもよさそうだ、との事。
それにしても この妖精も無茶をした物だ、と思う。
確かに 私の腕時計には ダイヤモンドが使われている
ただし、3、6、9、12の4箇所に 針の先程度のダイヤが使われているだけだ。
正直言って 値段も大した事は無い。
頭の中に有る知識の通りであるならば 指先程度の大きさの宝石が契約には必要なはずだ
4つのダイヤ全部を足しても、ハッキリ言って大きさが全然足りない。
もっとも、契約に関する調整が無いに等しいあの状況で
予定外に共有したのが知識だけで済んだのは 恐らくそのお陰だろう
要するに、宝石の容量不足で それ以上の共有が出来なかった、と言うのが 私の推測だ。
次に私の魔力に付いてだが、正直、ありえない程に多い
恐らく、マナの極端に少ないあの世界にいた為、高山トレーニングの様な効果が出ているのではないか
と言うのが一点。
そして、恐らくこちらの方が影響しているであろうもう一点・・・
「つまり、あなたの魂とリンクした事で、私の魂が引っ張られて 魂の『格』が上がった
そう言う認識でいいんですね・・・『妖精神アステリア』様」
「ええ、その考えで 概ね正しいと思います」
そう言った彼女の顔は、私に対する申し訳なさと、何か決意の様な そんな物が入り混じった
複雑な表情をしていた。
詳しく話すと、本来 人の魂は その強さに従い 15段階に分けられる
当然、最初は1から始まり 鍛える事で 徐々に階位を上げていく事が出来る
鍛えるのが 肉体でも魔力でも 強さに従いその『格』は高まっていくのだ
一般的に その『格』を総じて 『冒険者レベル』と呼ぶらしい。
その中でも、LV6を超える者達はその道のプロと呼ばれ
更に経験を積んでいっても LV7~8辺り
才能がある者でもLV10と言った所だ
LV11以上になるには、才能ある者がそれこそ死に者狂いで鍛え上げる必要があり
最高位であるLV15ともなると それこそ 成れる人物など ほとんど存在しないと言ってもいい
早い話が LV10を越えた人物は それだけで英雄クラスの実力であり
国からいくらでも仕官の話 それも かなり上の役職が宛がわれ 優遇される存在である
それでは、私の冒険者LVはと言うと、目の前の神様曰く、
「現状でLV25 経験を積めば 更に高まる可能性あり」
だそうだ。
魔力に関してのみだが 現状ですでに 人間の限界を超えている
神様の領域に 片足をつっこむ所か 肩まで どっぷりと漬かってる状態だ
しかも 魔法を使う度に呼び出す妖精は 正体は『古代神』(エンシェント・ゴッド)である
『妖精神アステリア』
この世界の神様の最高峰の一人であり 世界中に何十万、何百万の信徒がいる相手だ
本来 彼女を召喚するには、1年の準備期間と 7日間の儀式
更にLV15の神官がその命を捧げて やっとこさ召喚出来る存在である(この一連の流れを『コールゴッド』と呼ぶ)
その力も絶大で 大陸に穴を開けたり 地形を変えたり 島を生み出したりと
開いた口が 塞がらない程の 反則振りである
私が魔法を使った際にも、知識の中にある魔法の行使される速度とは 比べ物にならない位に早かった記憶がある
その点について聞いた所
「アタシがその辺の妖精と同じ能力な訳が無いでしょう」
との事だった。
他のフェアリーテイマーが1回魔法を行使する間に、自分なら5,6回は魔法を行使してみせる
なんて豪語もしている。
その様な存在である彼女が 果たして 本当に自分なんかが契約相手でいいのかと質問をした所
「強引に断りも無く契約し 命を助けてもらったと言うのに 元の世界から引き離すと言う
恩を仇で返す様な真似までしてしまいました。これでもまだ足りない位です」
との返事が返ってきた。
・・・正直言って 心苦しい
実を言えば 契約うんぬんはともかく、元の世界には大する未練は ほとんど無かったりする。
前にも説明した通り、生活の先行きは不安だらけだったし、2年前に両親とは事故で死別している。
親しい友人は何人かいたが、逆に言えばその位しか元の世界へ執着する理由が無かったのだ。
案外 帰る手段が有るのならば執着したかもしれないが、無いとなると完全に吹っ切れたのである。
それに 今の状況を、目の前に広がった冒険の世界を前にして 私は胸の高まりを覚えていた。
私もどうやら御他聞に漏れず、異世界や冒険等に憧れる心を持ち合わせていたらしい。
そんな心の内を彼女に話し、自分達は 文字通り 魂の繋がったパートナーなんだから
お互いに敬語なんて使わずに もっとフランクに行こう、と
どうせなら 唯の契約相手としてではなく、よき友人として 相棒としての関係でいようと
そう彼女に言いながら手を伸ばす。
「さあ 行こう。まずは人のいる所へ案内してくれ
魔力はともかく 体力には余り自信が無いんだ。
鍛え直さないと これから先 冒険なんて出来やしない」
彼女は 最初はキョトンとしていたが、やがて私の手を取り
「任せなさい、相棒!」
と笑顔で答えたのだった。
そう、この日、この場所から、私と彼女の『ラクシア』での冒険が始まったのだ。
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あとがき的な物
こうして文章書いていて思うけど、やっぱり文章書くのって難しいですね
こんな駄文ですが、楽しんでもらえたなら 幸いです。