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[2319] Dotage ~妄愛~  (ラブひな) <完結>
Name: Pixy◆78c4e4e5
Date: 2007/09/28 20:47




 ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※


                         <<注意>>


  この作品は、プチ・オカルト或いはなんちゃってオカルトに該当する十八禁仕様の二次作品です。
  よって原作のキャラクターの心を一部改変,破“戒”しております。


  展開上、時系列も歪んでおりますし、倫理も歪んでおります。
  浦島景太郎以外の男性がひなた荘の女性らに触れられる確率は限りなくゼロですが、展開上“触れる”事はあるかもしれ
  ません。飽く迄も“かも”という可能性だけですが……
  無論、言うまでも無く美味しい想いをするのは景太郎ただ一人だけですが、他の存在の指一本、同じ空気も景太郎以外に
  触れさせるのは嫌だと仰られる独占欲の化身の様な方にはオススメしかねます。


  原作にある快活な女性達が性欲に壊れていく事に我慢の出来ない方、
  過分な男尊女卑論を唾棄している方、
  そして浦島景太郎による性的な蹂躙という展開に我慢の出来ない方には後退をお勧めいたします。


  以上の点を黙認できる方のみお進みください。


 ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※










 混濁する理解力。
 現実感があるという気にさせられているだけの画像。
 自分はここにいるというのに、目の前にも存在する自分。
 分裂しているというのに、自分も体験していると感じてしまう錯覚。


 ――そう、自分は夢を見ている――


 普段の自分。
 現実という世界に生きている自分の時ならば嘔吐どころか迷わず死を選ぶであろう光景が眼前で展開されている。
 にも拘らずこれを甘受しているのは、どうせ夢だからと割り切っているのか“慣れた”からだろう。


 初めてではないのだ。


 この――――――淫夢は。




    犯されている。


            輪姦されている。


                    汚されている。


                           蹂躙されている。




 私の眼前で、
 よりにもよって私の目の前で、“私”は多くの男に犯され続けているのだ。


 口の中に肉棒を突き込まれ、おびただしい量の精液を射精され、出したら交代される。

 髪の毛はペニスに巻きつけられて自慰の材料。

 頭や顔に白濁の液をぶちまけるとまた交代されて別のペニスがこちらに向く。

 頬に、首に、胸にペニスが押し付けられ、こすられ、
 乳首は引っ張られ、捻られ、噛みつかれ、歯形を乳輪に残され、ペニスを擦り付けられ、やはり精液でベトベト。

 腋の下も、腕も、太股も、膝の裏も、脹脛、手足の指の間すらペニスがなすりつけられ、
 腹も臍も腰も多くの亀頭がカウパーと精液をなすりつけ、
 肉芽はとっくに皮を剥かれ、噛まれ引っ張られつままれ犬の玩具のよう。

 膣にもアナルも肉棒に満たされ、ドボドボと逆流する精液がどのような扱いを続けてこられたかを物語る。


 そして犯されている私はそれを甘受し、悦に入っているのだ。


 理由も解かる。
 そしてその理由が、私を目の前で嬲られている“私”を心底羨ましいと想わせている。


 私を犯しているのは全員が同一人物。
 全員が愛する男なのだ。



 そう―― 彼だから。
 彼ならばこそ、“こうする”権利がある。他の誰でもない、彼ならば許せるのであるし、彼以外であれば何者も許さざる行為。
 彼だからこうしても良いし、私もこうしてほしい。是非にも。


 ふと眼差しを肉棒に群がられている“私”の太股に向けてみる。
 そこに足の付け根から走る赤い糸。血だ。それも生理時のそれでは無く破瓜による出血。
 犯される度に処女膜が突き破られ、肉棒が引き抜かれてしまう度に処女膜は再生されている。
 何度も処女を奪われ、何度も精液を注がれる。
 何度も痛みをもらえ、その上に精液をもらっている。


 素晴らしいっ!! 流石は夢だ。


 何度も彼による破瓜を感じられ、何度も処女をプレゼントできる。


 羨ましいっ!! 妬ましいっ!!




 何故、私にしてくれないのだ?! 何故、私はここにいるのだ?! 何故、私を嬲り尽くしてくれないのだ?!




 妬み、渇望し、その欲望に心を焼き焦がせていると、やはり“いつもの様”にまた私の意識は“私”に成り代わっていた。


 その安堵感、歓喜………っ!! それは何物にも代え難い多幸感だ。
 “犯してもらえる”のだ。それも“彼”に!!
 満足感、幸福感、絶頂、愉悦、快楽、悦楽。様々な幸せが私を舐めしゃぶり、魂を穢し清めてゆく。
 痛みも苦しみも嫌悪も失望も絶望も孤独も虚無もない。
 在るのは果てし無い絶頂と快楽のみ。


 これだ……これこそが私が求め訴えていた世界だったのだ!!
 私ではない“私”の声が私をそう促し、私もその声を甘受し、確信を深めてゆく。
 そう、今の自分の様を鑑みて……


 何人もの“彼”が童貞を自分にプレゼントしてくれ、私は果てし無く処女を捧げられている。


 嗚呼……また破ってくれた。
 嗚呼……また膣内に出してくれた。
 嗚呼……孕ませてくれるかもしれない。


 喉を鳴らして精液を啜る。
 舌の上で残留精液を転がしてその味と風味を堪能しいる間にも注がれる新しい粘液。
 早く射精せねばカウパーによって苦くなってしまう。
 いや、飲ませたいというのであれば悦んで飲もう。彼の願いを叶える事が私の愉悦快楽なのだから。


 そう、私は彼のもの。彼だけのモノ。
 私の身も心も、
 あらゆる権利、細胞の一片、魂魄の欠片、輪廻の彼方、全てが彼だけのモノ。


 喉を突くゴツゴツした肉棒、
 頬を撫でる亀頭、
 胸を揉みしだき、谷間を蹂躙し、乳首を摘み、噛み、嬲り、弄んでくれているペニスと手、
 ズリズリと処女道を研磨し、襞の全てに精液とカウパーの味を焼付け、
 アナルを押し開き、その奥に直接放尿し、ペニスで栓をして注送し、
 隙間無く私に向けられている鈴口から放出してくれているのは、愛しい彼のあたたかな精液。その白濁としたエキスを私の身を精液の泉に沈めるが如く浴びせ続けてくれている。


 幸せだった。        喩え様も無いくらい。
 幸福だ。          彼の性玩具になれて。




                    私は喘ぎ、


    胸を揉みしだき、


                          腰を振り、


  快楽に絶叫し、


           失禁し、


             発狂寸前の絶頂を何度も何度も迎え続けていた。






 快感にその身を痙攣させている私の周囲には誰もいなくなっていた。
 地面に広がる精液の池の中、私は背中を汚しながら仰向けになって口と膣、そしてアナルから、彼から頂いた精液を逆流させつつ大き過ぎた幸福感と快楽によって体を脱力させ切っている。 


 そんな私のすぐ側に愛しい彼の気配が出現した。
 当然の様に全裸で、股間をいきり立たせながら。


 私はそのペニスにご奉仕をしようと気力を振り絞って身を起こそうとした。




 が、
 ―――その瞬間、私は気がついた。




 “これ”は彼ではない―――と。


 私にとっては凄まじく出来の悪い偽者。
 彼によく似せている“つもり”であろう別人であると。


 如何にどのパーツを似せようと、私の眼を誤魔化す事は出来ない。
 あの大好きな笑顔もどこか濁りきっている。
 あの優しい、そしてどこか困ったような眼差しの愛おしいそれではなく、浮かんでいるのは完璧な作り物だ。


 『許さん……』


 怖気より恐怖より、私の心を荒れ狂ったものは“怒り”。
 あたたかく満たされていた私の心は、噴き上がった灼熱の怒りによって焼き尽くされていた。


 だから、私は―――


 その偽者を―――




                     ―――牙で引き裂いたのだ―――




 魔の存在の断末魔。
 絶叫―――――






 そして……






 「……? もう朝か……」


 全身を汗でびっしょりと濡らし、肌着を貼り付けたまま青山素子はその身を起こした。


 何時もの事であるが夢を見はしたが全く覚えていない。
 ここ一ヶ月もの間、素子は朝目覚めれば全身汗まみれで、尚且つ眩暈と倦怠感。時には嘔吐感まで残したまま一日を送っていた。
 体調不良といえばそこまでであるが、何やら悪い夢を見たという気がするだけで、理由らしい理由は全く気が付かないでいる。


 夕べのは特に酷かったらしく、何時も以上に汗を掻き、全身をずぶ濡れにして眼を覚ます派目に陥っていた。
 シーツなど、失禁したとしか思えないほどなのだ。


 尤も、素子は気付いてはいないし、同じ寮に住まうキツネこと紺野みつね等ならば気が付いたかもしれないが、そのシーツのそれは汗ではなく、紛れも無い愛液の香りがしていたのである。
 となれば淫夢に間違いなかろう。
 素子が憶えていれば、の話ではあったが……


 まぁ、朝稽古をするのでどうせ汚れるのだからと下着を替えたりせず、布団からシーツを引き剥がしてシーツと掛け布団のカバーだけを洗濯籠に放り込み、さっさと稽古着に着替えてそのまま件をてに部屋を後にしようとする。
 何故か彼女は気が付いていない。


 乳首はカチカチに尖っており、クリトリスは皮がめくれ、アナルは飢えた動物のようにパクパクと腸液を滲ませて下着を汚している。
 膣道もヒクつき、熱い男根の到来をよだれを滴らせているではないか。


 それでも気付かない。気付けない。
 自分が何に飢えているのか。




 何を……いや、誰を飢え求め狂っているのか……




 尤も、その対象に秘めていた想いが件の夢によって限界にまで強化され、狂おしいほど高められていたが為に彼女は多淫にならずにすんだ訳であるが―――
 淫夢の中で淫気を喰い殺してしまい、“それ”を身に沈めている等と彼女が思いつくはずもなかった……




 -妄・愛-




 「浦島…先輩?」


 自分の中に燻っていたものを持て余しつつも何とか一日を終えた少女は、日課となっている夜稽古を行っていた。
 愛刀“だった”止水の代わりに使い出した妖刀“ひな”を振り、己と戦い続ける。剣の家に生まれた剣士である彼女にとっては呼吸を行う事のように当然の行為だ。
 だが、何故だか何時より遅くなってしまい、“何とか終わらせる”という納得のいかない終わらせ方となってしまった。
 それでも一応の型をやり終え、律儀に礼まで行って夜稽古を終わらせた少女――青山素子の前に、だらしなく椅子に腰をかけて眠り呆けている男が一人。
 何と言うか、彼女の家の教えから言えば隙だらけにも程があり、死一歩手前の手酷い叱咤激励を受けようが反論の一つも出来るはずも無い恥ずべきその姿。


 “以前の”素子であれば、蔑んだ眼差しの一つも送っていたであろうその無様な姿も、“現在の”彼女から言えば苦笑が浮かぶ程度。
 優柔不断である事と、天性のトラブルメーカーが為に何らかの騒ぎに巻き込まれるのはディフォルトとして諦めているし、生来のお人好しさで誰も放って置く事ができない点も今やプラス要素としか感じない。


 古人曰く。
 惚れてしまえば痘痕も笑窪―――
 昔の人は偉かった。
 感心…とまではいかないものの、その諺を噛み締めさせられている今現在の素子は諺の正しさを思い知っているのだ。


 二十歳を越えているのにも関わらず童顔で、人懐っこい眼鏡顔。
 鍛えている訳でもないのに、退魔剣術という顔を裏世界で知らしめている神鳴流の追撃に耐えられるほどの奇怪な耐久力を持ち、それを良い事に自分らがあれだけ理不尽に扱ったにも関わらず恨んですらいない。
 何だかんだでひなた荘の管理人の仕事もちゃんとやっているし、留学までして自分を見つめなおし、一回りも二回りも良い男となって帰ってきた青年。
 彼の浪人だった時の苦労も自分らの所為だったわけで、今となっては頭を下げるタイミングも掴めない。“今更”という気もするし。


 何だか彼の良い点ばかりが目に付くが、それが“惚れる”という事なのだろう。
 そんな甘ったるい事を考えてしまう素子は我知らず苦笑を浮かべていた。自覚が出来ると理解も早いという事なのだろうか。


 だが、酒の所為で寝入っているのだから用心はしておいた方が良い。一応、顔を寄せて呼吸を窺ってみる。


 ややはだけた浴衣はこの“ひなた荘”のもの。旅館だった頃の名残だ。
 先程、騒ぎから逃走を果たした素子であるから解かる事であるが、何時もの如く酔ったみつねに酒瓶を突っ込まれてこうなったのであろう。
 酒の所為でやや顔を赤らめてはいるが、素子が恐れたような泥酔による昏睡は見られない。
 少し前までの人の良さからの心配では無く、一人の男として心配していた素子は、意外なほど安堵の表情を見せた。
 “愛しの彼”は呼吸すら止まっているのではないかと慌てさせるほど深い眠りの住人と化しているだけであったのだ。


 風呂場近くのソファーである事から、就寝前に入浴しようとしたか、何時もの管理人の仕事である風呂掃除をやってくれようとしたのであろう。
 後者であれば良いが、前者であれば大変である。泥酔中の入浴は命を縮めかねない。
 当然、体を冷やすのも大問題だ。
 何度か身体を揺するも意識は戻らない。
 仕方がなく自分の部屋に連れて行き、布団をかけてやる事にした。


 「まったく……世話を焼かせるのは相変わらずか……
  大学に受かっても前のままとは……」


 等と愚痴る言葉とは裏腹に口元に浮かぶのは笑み。
 その事に気付き、今更ながら赤面してしまう。


 呼吸は間違いなく寝息。
 そう、何時もの寝息だ。
 ガーガーという危ない鼾ではないので安堵する。
 以前は素子本人も彼を軟弱以外の何者でもない唾棄すべき人物と決め付けていたが、その実は力を沈め込んでいるだけでかなりの潜在力を秘めている事を知った。
 単に運が無いだけである。
 その事に気付いた頃には、彼女も余裕を持って“監察”する事ができ出していた。


 持ち前の鈍感さと運の悪さから自分の力に自信を無くしている景太郎。
 考えるより先に思わず行動してしまうそそっかしさはあるが、大半は善意からのもので、失敗という形に“見せてしまう”ものの、結果的には持ち前の雑草精神で丸く治める事が出来る。


 そう――
 単なる“成功”ではなく、“丸く治める”のだ。


 側にいるだけでホッとしてしまう雰囲気や、優しく細やかに気をつけてくれる彼。
 どんなに罵ろうが暴力を振るおうが、何時も笑って許してくれるお人好し。


 虐めというか、サンドバック扱いにしている“なる先輩”にしても、気がつけば頼りにし、その姿を探してしまう。
 つまりはそういう男なのだろう。


 現にストイックだった筈の素子も何時しか……


 「はぁ……」


 深く溜息を付く素子。
 その吐息は何故か熱い。


 自分の身体の熱に驚いた素子は、やっと現状を理解した。


 男――浦島先輩と二人きり。
 “彼”を寝かせているのは自分の布団。
 何故、“彼”の部屋では無く、自分の部屋に連れ込んだのか?


 極自然だった。
 無意識に、何も考えず、何故か流れるように連れ込んでしまったのである。


 自分の行動に気が付いた素子の顔は、一瞬で羞恥の赤に染まった。


 意識の無い男を部屋に引きずり込んだのだ。
 それが何を意味するか、
 そして世間一般の眼から、第三者の眼から見れば一々言葉にするまでもないだろう。


 「……はしたない……」


 と、わざわざ言葉にし、自分の戒めとした。
 尤も、その行動はある意味“救助”と言えなくもない。
 あのまま放置すれば景太郎が風邪をひくのは必至。
 となると管理人業務が滞り、ひなた荘の全員が迷惑を蒙るのだ。


 そう――自分は正しい事をやったのだ。


 等と無理のある自己弁護をしている自分に気付き、素子はただ呆れるばかり。


 それに自分は剣道着のままだ。
 汗を流しに風呂場へと向かった所で見つけたのであるから当然であろう。
 汗臭い道着のまま、男を己の部屋に引きずり込んだのだ。
 素子でなくとも、年頃の女性であれば気にするだろう。


 自己嫌悪のループに軽く陥りつつ、素子は景太郎を管理人室に連れてゆくべく手を伸ばした。


 だが、その手は呟き一つで止められてしまう。
 景太郎の、


 「んん……な…る…」


 という一言で。




 瞬間、素子の意識が凍結する。




 今までの弁護は跡形もなく砕け散り、今の呟きがドッシリの彼女の頭の中に腰を下して図々しくも胡坐を掻いていた。




 そう……正に“あの女”の様に――




 待て。
 待ってくれ浦島……


 “ここ”にいるのは私だ。青山素子なのだ。
 お前の……“貴方”の側におり、容態を気遣っているのも、


 今、貴方への想いで我を失っているのも、“私”なんだ。


 貴方をほったらかしにしている薄情なあの女。なる先ぱ………“成瀬川など”では無く―――





 そこに意識が繋がった瞬間、ガッと鈍い音を立てて素子の頭に血が上った。
 解かっている。
 それは良く解かっている。
 単なる嫉妬だという事も。


 お門違いだという事も。


 だが、素子は生まれて初めて、女としての激しい嫉妬に狂っていた。
 頭から発生した熱は胸の奥に戻り、全身を駆け巡ってまた頭に戻り、どんどん意識の熱量を上げてゆく。
 その嫉妬の熱は彼女を保っていたモノを破壊しつつも枠だけを残して燃え狂っていた。


 確かに元々彼女は、なる……“成瀬川”に対してコンプレックスを持ってはいた。
 何故予備校に通っていたのか解からないほど学力も高く、不器用な自分には無い社交性や明るさ、そして人をひきつける“何か”。
 嫌うほどではないにせよ、自分には無い人間的な魅力に対し、軽い嫉妬にも似た感情を自覚して苦笑したものだ。


 しかし、それでもここまで酷い物ではなかった。


 今の嫉妬は“女”の嫉妬。
 燃え暴れ狂う緑の炎であり、男に対しての“欲の色”である紫すら含んでいるではないか。


 その毒々しい炎に身を焼かれ、素子は発作的に彼を欲した。
 脳裏に一瞬、激しく自分を罵倒する姉の姿が浮かぶが無視。普段であれば呼吸が止まる程硬直してしまう姉の姿だというのに、素子は全く意を返さない。その全意識は愛しい男に注がれたままだ。


 と――その時。
 澱んでいたその眼差しが愛しい男のある一点で凍りついたように停止した。


 はだけられた彼の浴衣の袷。
 グレーのトランクスの股間にあるクロッチの様な部分。
 そこのボタンが糸が緩んだか一つだけ取れかかっており、そこから何かが覗いているではないか。


 「はぁはぁ……」


 途端に息が荒くなった。
 彼女から発せられる気配は飢えと渇き。彷徨った砂漠でオアシスを発見した放浪者のそれ。
 息を荒くしたまま、それでも慎重さを失っていないのか或いは目に見えぬ“何か”を心配しているのか、恐る恐る素子の手が伸ばされてゆく。
 距離にして数十センチだった筈なのに、何十メートルという距離を進むが如く時間が費やされ、ようやく辿り着くにはかなりの時間を要したように感じられる。


 素子は、もさっとした体毛を掻き分け、その雄の器官に生まれて初めて触れた。


 「熱い……っ」


 その肉の熱は彼女の意識を弛緩させ、瞬間的に倫理を腐敗させる。
 くにくにと勝手に手が動き、窮屈なトランクスの中からそれを解放してやった。


 「あ、あああ………」


 蛍光灯の灯りの下。
 黒に近いこげ茶色のそれが素子の眼前に露わとなった。


 「これが……これが浦島の……」


 何の予備知識もない“はず”の素子の手の中、
 ぎこちなくはあるが優しく撫でられるその肉器官は、ムクムクと血液を集束させ、みるみるその凶暴さを少女に見せ付けてゆく。


 「あ、ああ……浦島のが………」


 ごくん…と喉が鳴る。
 息も荒い。
 つい今しがたまで片手にスッポリと隠される大きさだったそれは、素子の想いを酌んだか棍棒のように固くなってゆく。
 確かにその形状は棍棒か擂粉木のようである。


 生娘の素子には全てが初めての光景であったが、不思議と彼女はそれを受け入れきっていた。


 『なる先輩………いえ、成瀬川さん……貴女は知らないのでしょう?』


 撫でていた手を離し、その肉柱を握る。
 無論、竹刀の様にでは無く、愛しい男のモノであるから赤子を愛撫するかのように優しく。


 『浦島の……
  け…“景太郎”のここがこんなに熱いなんて……貴女は“まだ”ご存じないのでしょう……?』


 赤い亀頭に顔を寄せ、頬でもってその熱を味わう。
 火傷しそうな熱。
 ビクビクと脈動する肉柱に景太郎の命の息吹を感じたか、素子の眼が夢の中の彼女と同じ色にドロリと濁った。
 途端にその表情が一変する。
 欠片ほどは残っていた凛とした美少女のそれは完全に剥がれ落ち、一気に発情した雌のそれとなる。


 鈴口から溢れた先走りが前髪を汚すが素子は気が付かない。
 否、気付いたとしても汚れたとは感じまい。


 その肉棒の“臭い”も今の素子には“香り”。
 彼女は、愛しいオスのものを嫌悪する術を完全に見失っていた。


 「あ…ンぅうっっ……はぁ……はふ、はふ……」


 己が鼻穴に鈴口を押し当て、鼻腔いっぱいにその香りを吸い込む。
 眼を瞑り、嗅覚と触覚に集中し、顔全部で持って景太郎を味わってゆく。


 彼女は気付いていない。
 接吻より何よりもこの青年の性器に“御奉仕”する事の方が大切になっている事に。
 清純だった自分が、愛欲と性欲を重視している事に。


 ナメクジでも這わせたかの様に顔を先走りの粘液で濡らす今の素子の目には、




       理性の色は欠片も残っていなかった。






[2319] Re:Dotage ~妄愛<弐>~  (ラブひな)
Name: Pixy◆7fc772f3
Date: 2007/05/06 21:44


 始まりは嘘だった。

 彼は事もあろうにここに来た時、我々に対してこんな嘘を口にしたのだ。


                          自分は“東大生”だと……


 彼の口から出た、最悪の大嘘。
 彼の大学に憧れ、或いは目的とし、勉学に励んでいた私達にとって憎むべき虚言。
 真実の彼は浪人生。
 それも要領がかなり悪く、お世辞にも立派な成績とは言えないロクデナシ。
 実家を追い出される形でひなた荘に転がり込み、そんな大嘘ついて先輩を激怒させ(当時は私もだが)、最悪の第一印象から始まった関係……
 好意的だったのはしのぶ一人。
 キツネさんやカオラには面白がられ、人事のような扱いを伯母であるはるかさんにされ、私には云われの無い虐待を受け、成瀬川には意味も無く殴られて……

 それでも、
 それでも彼は、何時しか私にとって“最も愛おしい存在”という位置にどっかりと根を下していた。

 それはそれでいい。それに関しての文句などあろう筈も無い。

 よくよく考えてみれば、しのぶは当然として、はるかさんも彼を気遣っていたし(おばと言う事になっているが、実は従姉なのだと後で知ってちょっと驚いたが)キツネさんもカオラも本質に気付いたからこそ纏わり付いていたようだ。
 成瀬川や私のように理不尽に虐待していた訳ではない。
 ないというのに……

 ギリリ……

 我知らず歯を噛み鳴らしてしまう。
 理不尽だ。何もかも。
 当時の我々にしても、彼の縁の結びつきにしても……

 今の私ならば浦島を―――
 け、“景太郎”を愛している。そう、心の奥底から。

 口に出せば彼が私のものになってくれるというのであれば、私は喜んで叫んだだろう。
 件の大学の時計塔の上で愛の言葉を絶叫できると言い切れる。
 死ねば彼の心を手に入れられるというのであれば、私は躊躇せずに“ひな”で己の頚部を撥ねられる。
 死より何より彼の心がほしいのだから。

 無論、実際にそんな事は出来ない。
 “恥”とか、“体裁”、“恐怖”等といった下らない理由では無く、果てし無く景太郎先輩の迷惑になるからだ。

 だけど、そこまでできてしまうほどに私は彼を求め訴えていた。
 それだけ彼を、浦島景太郎という男を私は身体で飢え求め狂っていたのだ。

 ――だけど現実は理不尽極まりない。

 初めから好意を向けていたしのぶでは無く、
 何だかんだ言いながらも、影からコッソリ気を使っていたはるかさんでも無く、
 からかいつつも心配をし、助言を与えていたキツネさんでも無く、
 思慕の念には程遠いが少なくとも家族として懐き、あるがままの自分を景太郎先輩に受け止めてもらっているカオラでも無く、
 ずっと大きな包容力で景太郎を包み込んでいたむつみさんでも無く、
 ましてや彼の事を深く深く愛している血の繋がらない妹、可奈子でもない。

 あの女、成瀬川なる。
 景太郎先輩が選んでいるのはあの女……成瀬川だった。
 私より、理不尽に彼を虐げ、私よりきつく当たっていた筈のあの女が……

 「せんぱい……浦島先輩……」

 零れる吐息の呟きはやはり熱い。
 心に溜まるはヘドロより汚らしく粘っこい嫉妬の汚泥。
 眼を閉じて浮かぶのは“あの女”だけに向けられる優しげな彼の顔。
 自分に向けられない、<女>を見る顔。

 心も身体も軋ませている雑念を払うべく、ひなの代わりに重いユス木(※注1)で作った振り棒で素振りを続けたが、一振り毎に彼への思慕の念が腰に深く積もるばかり。
 三千を越えた辺りで耐えられなくなって止めてしまった。
 右手に振り棒を掴んだまま、人気の無い神社の境内に佇む私に声を掛ける者も無く、ただ想いのうねりに心はかき乱されるのみ。

 「私は……景太郎先輩に何を求めているのか……?」

 我知らず呟いたその一言。
 その一言に自分で驚愕してしまう。
 頭に浮かぶのは自分を抱擁してくれる景太郎。
 抱き締めてくれる。接吻くちづけしてくれる。愛撫してくれる。そして……


 かぁ…と頭に血が上った。
 あの晩……景太郎の……その…男そのものを…愛撫した時の事だ。
 どれ一つをとっても正気とは思えず、十人が見れば十人とも『変態』、或いは『淫乱』だと私を称しただろう。
 だが、
 だが、どうしても私はその時の事を嫌悪できなかった。
 寧ろ誇らしかったといえる程に―――

 「ひょっとして私は……景太郎先輩に……」
 抱かれたいのか?
 いや、むしろ犯され……


 ずくんっ

 「く……っ」

 がらん、と音を立てて振り棒が転がった。
 唐突に起こった下腹部の疼きに手を滑らせてしまったのだ。
 腹を押さえて蹲る私であったが、その痛みにも似た疼きの意味はまだその時には理解し切れていなかった。

 「痛……いのか? しかし……?」

 実際に痛む訳ではない。
 痛むように激しく反応しただけなのだが、まだ未通女おぼこである私に解かる訳が無かった。

 「く……っ、
  ………………………浦島、浦島ぁ……景太郎先輩……」

 自分の中で起こった異変に対し、常ならば絶対漏らさない泣き言を、
 情緒が不安定だった事が手伝った、かなり情け無い声を漏らしてしまう。何とも哀れな涙声。不甲斐無いやらはしたないやら……
 そもそも泣き言など剣士を名乗る私にとって恥ずべき行為なである。
 もし姉上のお耳に入っていればただでは済むまい。
 直様己の弱さを受け入れつつその弱い部分を叱咤し、根性を叩き直さねばならないだろう。
 そう、ならないのであるが……

 その時の私は、確かに浦島景太郎という男の腕の中を心から欲していた。

 体内の痛みに似た違和感の正体が、子宮の疼きであり、
 この世にたった一人だけ存在する雄……浦島景太郎の到来を待ち焦がれている愛欲のうねりだと理解できないまま―――




―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
                           -盲・愛-
                           File:弐

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――




 何時もより早めに切り上げ、ひなた荘に戻ってくる素子。
 ちょっと早いかな? くらいは思うだろうが、取り立てて不思議な話でも無い為に誰も気にしたりはしない。
 例え、その足取りが何時もより重そうであろうとも、
 例え、その剣道着が普段より多く湿りを帯びていようとも――だ。

 下半身の滑りを、身体の脂や汗と共に温泉で流し、新しい衣服に着替えて夕食。
 当番はやはりしのぶ……と手伝いの景太郎。
 献立は和洋で、鮭のバター焼き,大根のサラダ,根菜の味噌汁,茄子ピーマン豚肉の甘味噌炒め,白菜と胡瓜の浅漬け,キツネ用なのかアサリの酒蒸しである。
 妙に胸がいっぱいだった素子であるが、『景太郎が手伝っている』というポイントがかなり大きかったか、自分の分は全て(流石に景太郎が作ったもの“だけ”を食べるわけには行かないから)平らげていた。

 さっさと自分の食器をまとめ、台所の流しに片付けに行こうと腰を上げる。
 食堂を出る素子のその視界の端に捉えているのはやはり彼。

 しのぶの料理の腕を褒め、嬉しげにはにかむ彼女に優しげな眼差しを向けている景太郎、
 カオラのツッコミに汁を噴く景太郎、
 なるの言葉に妙に照れ、深読みし過ぎだと理不尽に怒られている景太郎、
 その事でキツネにからかわれている景太郎、


 景太郎、景太郎、景太郎、けいたろ……


 「く……っ」

 シンクに行き、蛇口を一気に捻って熱い湯を茶碗に注ぎ入れた。
 食事の最後にお茶を茶碗に注ぎ入れてこびり付いた飯粒の欠片をふやかして新香で拭うのは禅宗の食事じきじ作法だったか?
 素子もそれに習った作法は心得ている。にも拘らず目一杯音を立てて湯を流してしまったのは心を落ち着かせる為だ。

 ザァアアアアアア………っ!!! と妙に大きく響く水音が意識の高ぶりを押さえ込ませるのに最適だとは言えないが、それでも多少のブレーキにはなる。
 食器から撥ねた湯が着替えたばかりの衣服を濡らす。
 男っぽいシャツも、長めのスカートも、穿き替えたばかりのソックスも……
 だというのに、彼女は濡れている事に気付けないでいた。


 高ぶりは抑えられてはいたが、“飢え”が止まっていないのだ。
 男への……いや、このよでたった一人の景太郎という雄を求めて……
 自覚できていない以上、どうしようもないとも言えるが。

 どくん、どくん、どくん、

 動悸は酷くない。
 だが、鼓動は大きくなる一方。
 彼の笑顔を見、優しげな眼差しを想い、からかわれて困っている顔を想い、

 そして―――
 理不尽な理由で怒られているのに、左程気にしていない彼の心を想い……

 『あの女……
  相手があの女だから……か?』

 悔しさからか我知らず己が胸を握りこむ。
 湯によって濡れた手がシャツに触れ、湯が染みていない部分が素早く吸って白い下着を浮かび上がらせるが当然気にもならない。
 硬いブラの布地とそのワイヤーがあろうと人体を動きを阻害するほどの事などあろう筈も無く、ダイレクトにその胸のやわらかさを素子に伝えていた。

 ぐにゅ…ふにふにふに……

 自分でも解かる程のやわらかさ。
 抵抗が全くない訳では無く、しっかりとした弾力もあり、まだまだ大きくなるであろう希望まで秘めている乳房……
 痺れを伴った快感が硬くしこった乳首から網目状に広がり、腰から這い上がってくるのは鈍い本能。十数年も自覚できなかった愛欲が又も首をもたげようとし始めていた。

 『この手が、この指が、
  胸を揉みしだくこの手の主が景太郎だったら……』

 素子の理性の一部が、
 あの夜のように、景太郎の肉柱を堪能したあの時の様に音を立てて弾けとんだ。

 ぐにっと乱暴に乳首を捻り上げる素子。
 左手の指を噛んで迸りかけた声を押さえ込む。
 頬も赤く染まり、別の何かのスイッチは完全に入っていた。

 右手を忙しげに動かしながら、素子は想像の世界で景太郎と睦み合う。

 いや―――?
 素子から言えば“それ”はそうなのかもしれないが、世間一般ではそうは言わないだろう。

 頭の中に浮かんでいるのは昔の自分。

 偉そうな事を言い放ち、景太郎を傷付け、罵り、誹り、嘲る、汚らわしく愚かで憎むべき自分。
 その愚劣な無礼者に対し、心広く優しくて愛おしい景太郎は、遂に仏の顔を剥がした。
 当然だ。相手は咎人である。いくら自分だとて許される資格など無いのだ。


 景太郎に張り倒される自分。それを夢想し、喝采を送る。
 だけど想像の景太郎は怒りを収めない。当たり前だ。このような奴を許してはいけないのだ。
 忽ち自由を奪われ、裏山の木に縛り付けられてしまう。
 それでも昔の自分は彼を罵る。
 罵倒する。穢す。卑怯者だと“ほざく”。
 素子は、想像の景太郎と共に怒りに燃えた。
 色気の無い剣道着の袷を大きく広げる。悲鳴をあげる自分。ざまあみろ。
 昔の愛刀“止水”でもってサラシを切られ、胸をむき出しにされる。
 それでも文句を言い続ける彼女の口に切り取ったサラシを押し込み、更に長い布の部分で猿轡をかけた。これで騒げまい。
 今よりは少し小さい胸を遠慮なく揉みしだかれ、涙を流し、身体を反らせて嫌がるが自由は戻ってはこない。
 ぐにゃりと強い力で握られた胸の肉が指の間からはみ出し、そのはみ出した肉の先にあった乳首に歯を立てられて引っ張られた。

 『~~~~~~~~~っっ!!』

 痛むからか、羞恥からか、屈辱からか、猿轡の奥から声ならぬ悲鳴が迸る。
 自業自得だ。愚か者め! と素子は許す気が起こらない。
 それよりも胸を愛撫されているのが余計に腹立たしい。
 憎しみからにしても、お仕置きだとしても、愛しくて愛しくて気が狂いそうな相手である景太郎に責めてもらっているのが憎くて羨ましくて妬ましいのだ。

 だが、ふと素子はデジャビュを感じた。

 確か――以前にもこんな事があったような気がする。
 景太郎に抱かれている自分を、
 景太郎に犯されている自分を、
 景太郎に陵辱されている自分を、
 景太郎に精液でもって清められている自分を見、嫉妬していた……そんな気がするのだ。

 奇妙な違和感であり、既視感デジャビュ。そして現実感。
 景太郎に犯される事に不安感は湧かないくせに、
 景太郎に犯される事に不快感は湧かないくせに、
 犯されない事を憤慨している。否、し続けている自分が今も“ここ”に存在している。

 妄想は妄想。
 想像は想像。
 そして夢は夢である。
 自分の根っ子。本能から噴出している“それ”に気付いた時、素子はその想像を己の本能の叫びのままにやり直した。
 景太郎を罵倒し、その愚行によってお仕置きされているの自分は、“今のこの自分”だという設定へと―――

 『~~~~~~~~~っっ!!』

 先程までの夢想の自分のような嬌声が喉から飛び出しかかった。
 やはり指を噛んでそれを耐えるが、それでもかなり腰が重くなって膝から力が抜けた。それほどの快感だったのである。
 強く握られ、引っ張られ、揉みしだかれ、景太郎の望むままに乳房は形を変えた。

 『素子ちゃん。偉そうに俺に説教してたクセに自分はこれなの?
  乳首ビンビンじゃないか。乱暴にされて気持ちいいの? ああ、そうか痛いのがイイんだね?』
 「ち、違う……」

 景太郎に歯で乳首を引っ張られ、罵られている惨めさ。
 そしてそれが……たまらない……

 『何だよ。この恥ずかしいオッパイは。揉んだら揉むだけ乳首が前に突き出てくるじゃないか。
  これでよくも俺の事を覗きだ、変態だって言えたよね』
 「ご、ごめんなさい」
 『謝っても遅いよ!!』
 がじっ

 目の奥で星が弾けた。

 強く噛まれ、乳輪に歯型がつけられたのだ。
 血が滲むか滲まないかのギリギリの絶妙さで、素子の右の乳首の周囲にはキッチリと景太郎の歯の跡が残っていた。
 それが目に入ると、刺激の強さから涙を滲ませていた素子の眼がくにゃりと歪む。

 言うまでもない。“愉悦”にだ。

 『ふん……やっぱり変態だ。俺に胸齧られて悦んでら』
 「う、ううう……」

 涙が滲む。罵られる事による恥ずかしさより、景太郎に対してどこまでも自分を貶められるという悦びに。
 子犬の様な眼差しが景太郎に向けられるが、景太郎は冷たく見下すのみ。
 というより、その眼差しの所為で余計に不快な顔つきとなっていた。

 『こんなに変態だなんて知らなかったな。よっぽど遊んでるんだろ?
  何人の男喰ったの? 何本のチンポ味わったんだ? 百や二百じゃないだろ?』
 「ち、違うっ!!! 私は……っっっ」

 流石にその言葉には強く反抗した。

 自分は処女なのだ。
 そう、指一本触れられていない、成瀬川の様に他の男に眼も向けたりもしていない、
 心身共に景太郎にだけしか女を出していない、景太郎だけしか男を感じていない、まっさらの女なのだ。
 そう心から叫びたかった。信じてほしかった。
 その心の痛みからだろう、突き出ていた乳首は縮み、頭の温度は冷水でも掛けられたかのように下がってしまう。
 口汚く罵られるより、唾棄されるより、処女だと信じてもらえない方が辛かった。
 そして、成瀬川のような女だと思われる方が屈辱だった。

 だから己の全てを賭けてでも、場合によって如何なる命令でも聞いて証明しようと決意した。

 だが次にとった景太郎の行動は、その想いをも蹂躙“してくれた”のだ。

 袴の帯紐。その結び目を器用に空いている左手だけでほどかれた。
 右の手は今だに素子の胸を玩んでいる。
 時々伝わってくる痛みという快感が素子の言葉を邪魔し、再び高まってくる悦楽が素子の動きを封殺していた。

 『ホントに処女かどうか確かめてあげるよ』
 「え……?」

 バサ…と重い音を立てて袴が落ちる。
 残ったのはすっかり滑っている白いショーツと白い足袋。

 「ひ……ンっっっ!!」

 景太郎はそのクロッチの間に指を突き込み、乱暴に膣内をかき回した。
 くちょくちょと湿った音が響き、素子の羞恥に拍車が掛かる。

 『ありゃりゃ……ぐちゃぐちゃじゃないか。ホントに処女なの?
  こりゃ望み薄いかな』

 等言いつつ、景太郎は素子の左足に手をかけるとグイっと押し開き、抱えるように持ち上げて自分の右肩に引っ掛けた。
 大きく広げられた素子の股。
 純潔の守りに就いているものは布一枚。それもかなり頼りない、小さな布切れだ。それも濡れ切っていて貞淑さの守りにつけるかどうかはかなり怪しい。寧ろ進軍を誘ってしまう事だろう。

 『ま、処女かどうか直解かるよ。俺が入れて確かめてみるからね』

 クロッチがずらされ、秘肉が剥き出しにされた。
 薄いピンクのその唇は、期待からか興奮からか紅く色付きを見せ、涎を垂らして今か今かと男の到来を待ち焦がれている。
 これでは処女ではないと疑われても仕方あるまい。

 「あ、あああ……
  あああああああああああ……」
 『ほら、入れるよ』

 ぐち……

 肉が、割られてゆく。

 「ああ、ああああ、あああ………
  あああああああああああああああああああああ…………♪」

 犯…される?
 犯して“いただける”?

 ぐぐぐ……と、ぷりぷりした亀頭が自分の中に姿を消してゆく。
 大きくカサを広げたそれが完全に埋没し、自分の中で唯一肉柱の到来を邪魔している不届きモノに差し掛かった。

 ああ、破る。
 破られる。
 破ってもらえる……

 「……」

 初めての男になってくれる。
 女にしてもらえる。
 私でもって気持ち良くなってもらえる……

 「……い」

 景太郎先輩は初めてなのかもしれない。
 だから要領が得られず、乱暴に扱われるかもしれない。
 痛むかもしれない。
 出血が多いかもしれない。
 一度や二度では済まないかもしれない……

 「も…こ……」

 いや、それがどうだと言うのだ?


 乱暴に犯される?     結構だ。
 痛いかもしれない?    それが初めての証なのだ。甘受できる。
 出血?          女の身なのだ。今更出血等で……
 一度や二度では済まない? 望む所だ。好きなだけ注いでくれ。

 私の愛はその程度では怯まない。
 寧ろ待ち望んでいると言って良い。
 景太郎先輩の、景太郎先輩だけのモノに、
 景太郎先輩を私の主に、
 私は景太郎……様だけのモノに…………

 「と……せん…い」

 とろけてゆく理性。
 砕けてゆく倫理。
 ぐちゃぐちゃと音を立てて混沌化してゆく想いの中、素子の中で何かがパチンとはまり、何か大切なモノが消えうせてゆく。
 破状してゆくモラルに気付けず、ドブ川より濁り切った素子にとっての倫理が代わりにストンと腑に落ちてしまう。

 それはあってはならないインモラル。
 青山という姓を持つものなら、絶対にあってはならない不可逆的な変貌。
 そもそもの組み立て材料から全く違う物への大変化。

 誰しもが理解でき、全く同意してはならない“変質”。
 “以前”の素子が成してはならないそれ。
 即ち―――


 「素子先輩っ!!」

 「のわぁっ!! ………っと、しのぶか?」

 はっと気が付くとそこは先程までいた台所。勢い良く湯を流すシンクの前。
 食器にぶち当たって跳ね返った湯が素子を濡らしている正にあの時。

 「どうかしたのか?」
 「もうっ! どうかしたかじゃないですよぉ!!
  素子先輩こそ、どうかしたんですか?」
 「何?」

 その心配そうな自分を見つめるしのぶの眼差し。
 濡れて佇む素子はそれを背中で受け止め、やっと自分の有様を理解する事が出来た。

 幸いにして皆に背を向けていた為であろう、誰にも気付かれてはいない様で幸いなのだが、今の素子はかなり危険な姿をしていたのである。

 シャツは濡れて肌にピッタリと張り付き、前の袷ボタンは大きく広げられて胸がほぼ剥き出し。尚且つブラは自分でたくし上げてしまったのだろう、カチカチに尖った乳首を曝け出していた。
 スカートの前の部分も捲くり上げられており、白い小さなショーツも前の部分がズリ下げられており、肌に張り付いている艶やかな恥毛を覗かせていた。

 それだけでもかなり恥ずかしい格好であるというのに、素子の手は胸を揉みしだいているではないか。
 流石の素子もこれには慌てた。

 「い、いや、別に大した事では無いぞ? その、なんだ……湯の勢いで目に洗剤が入って……」
 「ええ?! 大丈夫なんですか?!」
 「あ、ああ、だ、大丈夫だ。心配しなくていい」

 案の定、あっさりとしのぶは誤魔化しを受け入れた。
 元々しのぶは同級生や肉親より、このひなた荘の住人の言葉の方を信じる。言い方は悪いが、それを“利用”させてもらった。
 内心、しのぶの優しさに付け込んだ事に土下座して謝りながら、体裁を整えて、食堂を後にする素子。
 その何時もと違う素子の遠ざかってゆく背を、キツネとカオラは殆ど気にせず、なるは疑問に思い、相伴にあずかっているむつみは気が付かず、
 そして、しのぶと共に件の景太郎は心配げな眼差しで見送っていた。




 剣術家である素子は、眼を向けておらずともその眼差しをずっと背に感じ続けている。
 彼の眼差しが途絶える事を悔やみつつ角を曲がり、皆の視界から完全に隠れきった辺りで素子は大きく溜息を吐いた。
 喉奥から迸るような、深く重い溜息。
 その温度は存外に高く、素子が下腹に溜め込んでいる煮え滾る欲望を表わしている。

 壁に背を当てて、力なく天井を仰ぎ見る素子の眼。
 その眼はやはりあの晩と同様に理性の色が消え失せていた。




 あの台所での一件で彼女は自分の中で蠢いているもの。
 強く深く激しく重く熱い欲望を完全に理解し、受け入れてしまったのだ。

 瞼を閉じると目に浮かぶは景太郎と自分の肉の絡み合い。
 口を犯され、縛られ、衣服を奪われ、恥ずかしい格好で純潔を散らされ、身体に景太郎という雄の味を教え込まされてゆく。
 そこにあるのは恋人は夫婦の絡み合いでは無い。どちらかと言えば肉奴隷と主の関係だ。

 「なるほど……」

 と、熱い吐息と共に諦めと悦びをブレンドした声がこぼれた。
 ちょっと考えれば解かった事であるのに、自分は何故かその答を見過ごして―――いや、見てみぬフリを続けていたのだ。

 『そうか……
  そうだったのか………
  私は、景太郎“様”を私だけのモノにしたいのではなく、私を………』

 素子の眼の輝きがドロリと濁った。
 太股を伝い流れるのは自分を濡らした湯ではない。薄白く粘りのある愛液だ。


 『私を彼だけの所有物モノにしてほしかったのだな……』




 青山の姓を持つ凛とした美少女剣士。青山素子。


 彼女は、内に秘めた情欲に堕落したのである。




 ※注1 ユスの木
  ユシギ、イスの木等といわれている物凄く硬くて比重の重い木。
  用途も広く、柵やソロバンの珠、ロクロの芯等に使われている。
  関係ないが、イザナギが黄泉の国から逃亡する際に投げた櫛もこの木でできていたらしい。





[2319] Re[2]:Dotage ~妄愛<参>~  (ラブひな)
Name: Pixy
Date: 2007/04/10 09:00




 変な夢を見た。


 とは言っても、この間まで見ていたような物では無く、もっと奇妙なものだ。
 見た事もないのに不思議と知っているような気がする空間。
 薄赤い霞が掛かっていて、それ以外に見えるのは目の前佇んでいる大きな檻一つ。そしてそれ以外を認識する事が出来ない。そう、足元に地面があるかどうかも。
 その檻の中には何かが蹲っており、ピクリとも動かないで何かを“待っている”。


 そう、夢の中の設定なのか、私は“それ”が何かを待っているという事が理解できていた。
 檻には貝に似たかなり奇妙な形の錠前が付いており、それが薄紅色の内側を見せてぴくぴくと蠢いている。恰も鍵が突き刺さるのを待っているかの如く。
 だが私の手元には鍵“まだ”無い。
 どうしようもない私がどうしたものかと思案している間に中にいる“それ”が面を上げ、私を見、視線が絡んだと思った瞬間に目が覚めた。
 それが今朝の事。


 空には、私を嘲るような大きい月が浮かんでいた。
 その月の光があれの眼の光と似ていたからだろう。だから私はあの夢を思い出したのかもしれない。
 大地を照らす青白い月はあさましい私のあさましい行為を見下ろし、私はそれと解かっていながら月光を浴びつつ自分の身体を撫で続けている。


 獣や虫の動く気配以外を感じない林の中、私は月明りの下でひたすら自分の身体を弄りまわって飢え渇きを誤魔化し続け、ぐぢゃぐぢゃになったクレヴァスを覆い隠す綿の布切れをびしょ濡れにしていた。


 ぬちゃ…と糸を引いているのは、今まで股間を擦っていた私の右手。
 我ながら恥ずかしい音が出るものだと感心してしまった。
 木々の隙間から差し込む月明りの下、私の右手指の間を銀の橋が繋げているのを確認する事が出来る。
 舌で舐めとってみるが美味いという味ではなく、どこか酸味のある何とも形容し難い風味が咥内に残った。
 男はこういう味が好きなのか? 私には理解し難いが……
 尤も、私は景太郎先輩の肉柱から出る汁を美味だと感じた事があるのだから、男女というものはお互いの性器の味が甘露となるしくみなのかもしれない。


 絶頂の余韻が遠ざかったのを感じ、やっと私は両の膝に力を入れて何とか立ち上がる。
 太股を流れ落ちる愛液は既に冷えていた。座り込んでかなり時間も経っているのだから当然か。
 夕食を終わらせ、夜稽古だと偽って外に出た私は、人気の無い裏山に入って袴を脱ぎ、剣道着をはだけて一人自慰行為に励んでいたのだ。
 自慰オナニーとは言っても、胸を揉みしだきショーツの上からひたすら撫で続けるだけ。膣に直接触れるような事はしない。
 “ここ”は彼の、彼だけのモノなのだ。
 彼が楽しむ事以外にモノを入れてはならない。

 そう決意している自分に今更気付き、我知らず笑みが浮かぶ。
 そんな風に思うのは、この歳まで持っている事の自覚が無かった被独占欲の強さ故。自分でも呆れるほど強いものなのだなぁと又も苦笑する。


 奇妙な事に、欲望に身を任せた日から私の夜目は以前より利くようになっている。
 月明りさえあればひなた荘まで小石すら避けて歩む事が出来るのだ。
 やや気だるいものの、景太郎の気配の強いひなた荘が恋しいので、手早く袴を穿いて帯紐を絞めて帰る事にする。彼を思い出したものだから又身体が疼くが我慢我慢。
 紺色の袴の色が股間から濃くなる気がしないでもない。最早重症だな。心情的には“重傷”なのかもしれないが。


 以前であれば私の気配を感じた生き物達が息を潜めていたであろう茂みの小道も、今の私は気配を完全に断って進んでいる。
 木々を踏む音、枝葉をどける音、それすら葉虫達にも感じさせずに進めてしまう。
 剣の腕が上がったような気がして何とも嬉しい。まぁ、比較対象がないから全く当てにならないが。


 程なくしてひなた荘に戻る。
 時間は9時半。
 屋内の気配から察するに、意外にもキツネさんは酒を飲み就寝。カオラもしのぶもこれまた早くも寝入っている。サラも同様か。成瀬川は……寝てるな。
 タマの気配もするが、何となく眠っているのが解かる。


 む……?


 景太郎先輩は何処いずこ


 ………………………………………風呂か。
 起きて“いらっしゃられる”のか……………

 ……………………………………………………………………………うん?


 邪魔者も邪魔“物”もいない。
 起きているのは私と、彼だけ………
 場所は、以前よく彼の騒動の元になっていた何時も入っている露天風呂。
 となると………


 我知らず口元が歪み、赤い舌で唇を舐めまわす。
 着替えを取りに行くのを中止し、私は茂みを進む時以上に辺りに気を配り、細心の注意で持って気配を断ち、着ている物を脱ぎつつ足早に彼の元へと向っていった。


 胸がときめく。     早く彼の肌を見たいと。
 心が足を急がせる。   早く私の肌を見せたいと。


 私は心が急かすままに袴を脱ぎ、着物を脱ぎ、サラシを解き、下着を脱ぎながら露天風呂へと向っていった。
 ポタポタと股から滴る愛液が廊下を濡らすがこの際無視。
 外気に曝した乳首が彼を想ってかズキズキと痛む。
 途中、洗濯機に着ていた物を纏めて放り込み、唯一脱ぎ忘れていた足袋を思い出して毟る様に脱いで放り込んだ。


 逸る心を何とか慰めつつ、やっと辿り着いた彼のいる露天風呂の脱衣場。
 ドキドキと高鳴る胸を押さえつつ、下手に緊張しないよう呼吸を整える。
 その間にも彼に奉仕する為に大きくなったと言っても過言ではない胸。その頂上付近にある乳輪がプツプツと粟立ち、乳首を突き出して喰らってもらおうと自己主張をする。
 風呂場で初体験するのも良いだろう。
 ムリヤリされるのならもっと良い。
 初体験が風呂場で、無理矢理押さえつけられ、後から獣の様に突かれて処女を失う……良いシチュエーションではあるが、心優しい彼が自分を犯しに来るとはとても思えない。残念。
 だが、急がなければ彼の事だ。
 覚悟を決めて混浴するぞっ!! と勇んだ時に限って空振りさせられてしまうだろう。その運の悪さが彼の特長でもあるのだが。

 そんな急いた気持ちのまま急ぎ足で露天に出ようとした正にその直前、私はそれに気がついた。
 旅館だった時代より存在するもの。着ていた物を入れる篭。行李だ。
 このひなた荘で唯一存在する、たった一人の男の衣類。
 そう。他の誰でもない、浦島景太郎の衣類である。
 その脱ぎ置かれている衣服の一番上。おそらく最後に脱がれたであろうモノ。男の下着が、

 彼の下着が乗っていたのだ。


 「はぁ……」


 思わず手に取り、彼自身に触れていた部分を顔に押し当てる。
 くんかくんかと匂いを嗅ぐと、やはり嬉しい彼の残り香が……
 汗、老廃物、そして強く香る精臭……?
 いや、以前に嗅いだ事のある、先走りの粘液の香りだ。
 忘れる筈もない、あの香り。その芳しい香りが布の内側にベットリと残っている。そしてその味もするし。


 興奮している? していらっしゃられる?
 性的に?


 彼の興奮の理由までには気が付かないが、これ(彼女は名も知らないが、カウパー線液)がベットリと付着している事に気付いた瞬間、私の腰がずくんっと重くなった。
 先程までの性的興奮に使命感が加わった。だからこそ理解できる。
 もう無理なのだ。理性があるフリをするのは。少なくとも、“今”の私には。


 もう耐えられない。
 今晩抱いてもらえないのなら、私が抱く。
 犯してもらえないというのであれば、私が犯す。
 もう駄目だ。
 止められない。止める気が更々無い。静止の声を思考が回してくれない。


 私はゆっくりと慎重に音がしないよう戸を動かし、風呂場に眼を向けた。
 外気に押され、むわっと湯気が入りこむが気になろう筈もない。彼の背を確認できたからだ。
 私は狂喜し、足音を消失させ、
 以前の私なら不可能だった見事な足捌きで彼の直脇に近寄り、
 極力、湯に波を立てないよう素早く身体を湯に沈める事に成功した。
 かけ湯を行えなかったのはマナー違反ではあるが、この際無視。
 かけ湯の音に気付いた彼に逃げられてしまうかもしれないのだ。
 だけどせめてここだけはと、湯の中で秘唇を割り広げて指で掻いて中を洗う。いくら最近節操なく濡れるようになってはいても一応はやっておかねばならない。
 神聖な事に使ってもらえるかもしれないからだ。


 「はぁ……」


 唐突に彼は溜息を吐いた。
 お陰で性欲を刺激されて飛び掛りそうになる。なんて愛おしい熱い息を吐くのだろう。
 私がいる事にまだ気付いていない彼は、眼の上に濡れタオルを置いたまま、石を枕にして天を仰いでいる。


 駄目だな……


 現状維持の不可能さを思い知り、私は遂に行動に出た。
 彼を騙す事になるかもしれない。
 嘘を言いはしないが、結果的に嘘になるかもしれない。
 だけどもう無理なのだ。心も身体も限界なのだ。
 だから私は今日動こう。
 あの女に景太郎先輩が穢される前に……


 「溜息など吐いてどうしたのだ? 悩み事か?」


 突然かけられた私の声に、飛び上がらんばかりに驚きかえる景太郎先輩。
 以前なら見苦しい等と“勘違い”をしたであろうそのリアクションも、今現在の私から言えば微笑ましい行動。
 真横に座って全裸で混浴している私に対し、真っ赤になって慌てる彼の様は、愛おしくて堪らないものであった。




 私は今日、そんな彼に全てを捧げる。




―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
                           -盲・愛-
                           File:参

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――




 ここの露天風呂は、正しくひなた荘の名物である。
 以前やっていた旅館の名残で、実は昼間に有料で開放もされていたりもするが、客が訪れる事はまずあるまい。


 神奈川県ひなた市というこの地は温泉地であり、まわりにいくらでも温泉がある。よってちゃんと温泉として経営されている旅館温泉の方に足が向くのは当然だろう。
 それでも掃除は当番制で湯の張替えもきちんとしているし、定期的に管理の業者も入っている。
 つまり、営業をちゃんと行っていないだけで、温泉旅館としての機能はほぼ完全に残っているのだから、加奈子が皆を追い出し、景太郎と二人で経営しようと画策したのは当然だったのかもしれない。
 しかし、そうなってくるとこの露天風呂を使う者はひなた荘の住人である女性たちと管理人を勤める景太郎、それ以外は住人と懇意にしている向かいの乙姫むつみくらい。このような少人数のみ為だけの存在している温泉施設となる。
 そんな豪勢な環境にあって、住人達が風呂好きにならない方がおかしい。


 だからひなた荘の住人は頻繁にこの露天風呂に入る。
 営業できるレベルの環境で、尚且つ泉質も良い。
 だから雨天等の悪い気象状況、或いは掃除中以外は常に湯が張られているここに皆は喜んで入ってくるのだ。


 「ふう……」


 そのひなた荘名物露天風呂に身体を沈めて深く溜息を漏らす男が一人……
 自分以外が全て女性。尚且つほぼ全員が何らかの好意を自分に向けているというハーレム状態の中、全くそれに気付いていない罪深き男。
 祖母の願い…というか“命令”によって女子寮と化した元ひなた旅館、現ひなた荘の管理人を何だかやたらと理不尽に押し付け…いや、任されている不幸なんだか幸福なんだかよく解からない男。
 浦島景太郎、その人であった。


 男子足る者ならばお気付きであろうが、ここは女子寮。尚且つ美女美少女ぞろい。
 健康的な男子なれば当然、不健康な事もやりたくなるもので、当然ながら彼もその一人であるから日々を悶々とすごしている。
 何せ回りは理不尽ぞろい。ウッカリとノックを忘れて部屋に乱入してくる事など日常茶飯事。
 おまけに彼の女運は宜しくないのか、彼がノックを忘れて部屋に乱入する時は決まって女性たちは着替えか艶かしい格好でいたりする。
 一見するとオイシイと言えなくもないが、先に述べたように皆は理不尽だ。特に好意を持っている女性の成瀬川なるや、青山素子などの時には死を覚悟せねばならない。
 キツネこと紺野みつね等は左程怒ったりはしないものの、どういう訳か高確率でその現場になるか素子が居合わせて結局オシオキを喰らうか逃げ回るハメとなる。
 こんな嬉し恥ずかしイベント目白押しの場にいるのだからストレスも溜まる。
 溜まるが発散できない。
 よっぽど留学中の時が発散できたくらいなのだから。いや、女遊びをしていた訳ではないが。


 で、何が言いたいのかというと………………………股間の治まりがつきにくいという事である。


 もう一度息を吐いてチラリと己が股間に眼を向ける景太郎。
 そこにはギチギチに反り返った暴れん棒……
 未だに残るひなた旅館と印刷のあるタオルを水を張った手桶に沈め、ゆるく絞って頭に乗せて頭を冷やす。この場合は股間を冷やせば良いような気もするが、気付いていないのか嫌なのか、彼はそこを冷やしてはいないようだ。その辺が景太郎が景太郎たる所以かもしれない。


 「はぁ……ちくしょう……全然おさまんないや……」


 ならば握ってしごけば良いだろう? と思われるかもしれないが、いくら個室である景太郎の住まう管理人室で“そんな事”をし始めると、超高確率で誰かが乱入してくる。それはここに住みだして思い知っているのだ。
 まだ瀬田と一緒に飛び回っていた時の方が疲労が無いとはどういう事なのであろうか?
 好きな事をしていたからストレスが溜まらなかっただけと言う説もあるが。


 尤も、今回の状態はストレスだけではないのだ。


 景太郎は露天風呂の石を枕にして天を仰ぎ、その顔に絞ったタオルを乗せた。
 冷えたタオルが頭の熱を奪ってくれている様で気持ちが良い。だからと言って股間が治まるわけでもない。それ程異常なのだから。


 景太郎は、ふとさっきの事を頭に思い浮かべた。
 
 夕食後、食器を片付けていた時の事だ。




 「あれ? 素子今からどっか行くんか?」


 というキツネの声。
 何気なく振り返った先に、例の妖刀“ひな”を手に持った素子の剣道着姿があった。
 こんな時間から稽古なのか? 流石は素子ちゃん。がんばってるなぁ……

 等とぼんやりと考えていた次の瞬間、


 ドキンッ!!


 今まで味わった事の無い、物凄い衝撃が景太郎を胸を貫いていた。
 いや、直接何かをされた訳では無いし、景太郎に直接何かをした者がいた訳でもない。
 カオラあたりが何かをした可能性もゼロではないが、少なくともこの時の事には関わっていない。

 単に素子と眼が合っただけなのだから―――


 その黒い瞳に吸い込まれるような気がした。
 と同時に、自分の外枠…本性を必死に覆い隠していたものを喰い千切られたように景太郎は感じた。
 外皮を引き剥かれた者はその痛みを熱さと錯覚する。今の景太郎の心もそうなのだろう。全てをさらけ出されたという痛みが奇妙な熱さに感じられ、その熱が彼を責め苛んでいるのだ。
 それが高揚なのか恥辱なのかは知る由もないが。

 兎も角、流石に不味過ぎると感じた景太郎は、情けなさと切なさが炸裂する行為に誰の目にも触れずに勤しむべく、人気の絶えた露天風呂で事を始める事にしたのである。
 ここならば裸であるし、景太郎が使用しているのを立て札などで知らせておけば“あんまり”人は来ない。それに既に裸である為、誤魔化しもしやすいからだ。それに掃除するのは自分である為、“変なモノが浮いた湯”の始末もできる。情けなさ炸裂で泣きたくなるが、部屋で自家発電に勤しんでいる所を発見されるよかマシである。


 と、そこまでなら良い考えと言えなくもない。
 誤魔化す方法も、その時のセリフも用意し、個別対応のシュミレーションもできているし、万一の時の退路も確保しているのだから。
 しかし、そんな彼の思惑を大きく裏切る現状がここにあった。
 それが何かというと……


 ――気持ちよくない――


 のである。
 景太郎自身、何が何だか良く解からないのであるが、いくら握ってこすろうと、刺激しようと、女性らのあられもない姿を思い浮かべて手に力を入れようと、全然乗れないのだ。
 彼自身、童貞であるし、女体の感触など知る由もないのであるが、身体の方がコレではない、こんなモノではないと訴えかけるように快感を拒否し続けるのだ。 
 これ以上ここにいたらのぼせるのは必至。なれど風呂から上がると、上斜め45°以上の鋭角に反り返って硬直する愚息がこちらを睨む。濡れタオルを頭に乗せて冷やしているのは苦肉の策だ。
 だが、それでも限界はある。


 「何時までも入ってられないよなぁ……」


 股間を静める為にはヌかねばならず、ヌこうにも気分も快感も上がらない。
 快感が無いのならと、オカズになるの淫らな姿を想像するも、それが更なるパワーを与えてしまう。
 同じ轍を踏んで踏んで踏みまくる。流石は景太郎といえる。


 そんな時だった。
 風もないのに微かに揺れる湯を、
 自分のものとは違う、若い女性特有の甘い汗の香りを感じたのは。


 「溜息など吐いてどうしたのだ? 悩み事か?」


 心臓が、
     止まるかと思った……









 ひなた荘の誰もが知る事柄であるが、なると景太郎は両想いである。
 景太郎は縁と要領の悪さで上手く伝えられず、なるは要領の悪さと不器用さで素直になれない。だから二人の仲は進展し切れないのだ。
 景太郎が留学中が管理人代理をしていたのであるが、その間中寂しがっていたのは周知の事実であるし、“帰ってきてくれた”と大喜びしていたのも事実である。

 しかし、そんな二人が愚図愚図している間に、計測時に四位だった素子の景太郎への想いの偏差値は、現在なるを大きく引き離して一位を独走しており、更にその差を広げようとしている事に、異様に目敏い加奈子のいないこの地において、気付ける者は他にいなかった。


 驚愕する景太郎の顔に更なるときめきを感じている素子。
 腰を浮かせて驚いた彼の股間にはいきり立って苦しんでいるお腰の大剣。その見事さ、逞しさに甘い吐息が漏れたほど。
 まぁ、落ち着け。と彼の肩を掴み再度湯に静める。無論、己が肌を隠すような無様な事はしない。
 ぷるんとふるえる白い双球。
 白桃、蜂蜜桃という果実の表現がこれほど似合うものは無いだろう。
 違うのはその頂点にある薄ピンクのポッチ。イクラやサクランボといった言葉が似合う乳首。尤も、このように淫らに起立する食物は在ってはならないが。


 留学中に鍛えられた景太郎を他愛も無く湯に沈める。
 景太郎は景太郎で、情けなさを感じる事すらできない。
 というのも、沈められた眼の先に、月明りの中で映えている若草があったからだ。
 ゆらゆらと湯の中で揺れるそれは、隠される事も無く景太郎に曝せされている。


 ぶふぅおっ!!


 奇怪な音の後、湯がボコンと爆ぜた。 
 それが素子のアンダーヘアである事を理解できた瞬間、景太郎が肺の空気を全て噴出してしまったのだ。
 吐き出した肺は多量の空気を求める。だが、回りには湯しかない。


 余りにも情けなく、且つ彼らしいことであるが……
 彼は―――あっという間に溺れて気を失ってしまったのだった。






 くすくすくす……


 思わず笑みを漏らしてしまった私であるが、不思議と隠す気が起きなかった。
 以前のままの彼。
 ドジさや純情さ、それでいてスケベで愛しい彼のまま……
 彼が留学中に留年してしまい、愚かにも浪人浪人と彼を馬鹿にしていた私がその浪人となり、彼は輝かしい大学生となった。
 そこに隔たりを感じてしまっていたのであるが……


 「貴方は変わっていないのですね……………嗚呼…愛しい貴方のままだ……」


 その事が無性に嬉しく、愛しさが更に高まってくる。
 まぁ……身体の火照りもそうなのだがな……


 後ろ髪を引かれる思いを振り切り、彼の洗濯物を洗濯機に入れ、彼が持ち込んでいた着替えと、湯が滴り落ちる彼を抱きかかえ、私は露天風呂を後にした。


 「ふふ……湯も滴るいい男……だな」


 風邪を引いてはいけないと念の為に彼にバスタオルを巻き、目的の場へと進んでゆく。
 腕に掛かる愛おしい彼の重さに腰の疼きも強くなる。
 太股を伝う汁も量が増え、廊下をべっとりと汚してゆくが始末は後。今は彼との睦み合いの方が大事だ。
 風呂の掃除を一日忘れた湯に入ったところで死にはしない。それに景太郎先輩のエキスが入っているのだから泉質も最高ではないか。
 ……あの女の出汁は勘弁だがな……


 ぺたぺたと廊下を進む私の剥き出しの胸に彼の顔を押し付け、その感触を堪能する。
 たまらない……ああ、たまらない……
 頬を撫で、瞼にキスをし、耳たぶを甘く噛んで顔を味わう。
 肩を舐め、鎖骨のくぼみに溜まった水滴を啜り、男らしい喉仏を口に含んで舌で転がす。
 所謂“お姫様抱っこ”で男である彼を軽々と抱きかかえている素子。いくら鍛えているとは言っても、この膂力は在り過ぎる。
 それでもまだ彼女には余裕があるのか、膝の裏を通してある右手でもって逞しい肉柱を優しく愛撫していた。
 熱い熱いそれは、私が触れる事が嬉しいのか、亀頭を掌で覆うだけでビグビグと激しく反応し、無駄に射精してしまいそうになる。何と御労しい。そんなにも飢えておられたのか。

 もう直、
 もう直解放して差し上げますのでお待ちください。
 幾等でも受け止めましょう。幾等でもお使いしてください。わたしの心は既に貴方のもの。だからこの身体は貴方のものなのですから……
 貴方の、
 貴方だけの、
 貴方だけに快楽を贈る為のもの……
 それが私、青山素子という存在なのですから……


 景太郎先輩の頭や額、頬を私の涎で汚しながら歩みを止めない。
 途中、厳重に強化した<封印>の守りやカオラが新しく仕掛けたのかガードシステムがあったりしたが、“今”の私には足止めにすらならない。
 全てを夢現が如く避け、流し、足捌きだけで板を滑る水の流れのようにするすると進んでゆく。


 実はその<封印>は私が念には念を入れて実家に残る封印のすべも使われている。その為、これを解く言霊キーワードも知っているので実は解く事も容易い。
 だけども解いたりはしない。そんなドジは踏まない。
 解けば気付かれてしまう。知られてしまう可能性が高いから。以前の経験から鑑みれば、気付かれない内に進めた方がずっと良い結果となるだろう。
 太い鎖のついた錠前は触れるだけで外れた。
 再封印に使用された太い注連縄も、泡に身を沈めるが如く<封印>の中に我が身を滑り込ませ、負荷をかけずに<封印>の呪式システムを謀ってその奥へと進んでゆく。


 そう、“ここ”が私の、
 私達にとっての目的の場。


 あまりに強力な祝福が掛かっているが故に封印された館。


 旧ひなた旅館時に『縁結びの宿』として政略結婚にも用いられた恐るべき館。


 ひなた荘、無人別館。
 その部屋に私達はいた。






[2319] Re:Dotage ~妄愛<肆>~  (ラブひな)
Name: Pixy
Date: 2007/04/12 20:05




 熱い。熱い。熱い……
 それは熱を持っている。


 溶ける。溶ける。溶ける……
 自分の身体がどんどん溶かされてゆく。


 それは現か幻か。
 身体が動かないオレは、その熱いモノによって溶かされてゆく。
 だけど別に肉体的に溶けていくんじゃない。俺自身の意思が、抗える力が溶かされてゆくんだ。
 尤も、それは蜂蜜の様に甘くて、痺れがくるほど気持ちいいからどこまで逆らえたか解からないけど……
 だから腕も溶けたように動かせなくなり、
 起き上がろうにも腹が気持ちよくて動かせない。
 逃げ出そうにも足はやわらかい何かに押し潰され、
 声を出そうにも口も熱い何かに塞がれて喉は流し込まれてくる蜜に反応するだけ。
 何時しか首以外の全てがドロドロに溶かされたかのように力が入らなくなっていた。

 やがてその熱は首を這って耳を貪り、
 耳の穴を穿り、
 唇を堪能した後に咥内をとろかし、
 鼻の穴までも貪られた。
 俺の全てはたべられてしまった。そう錯覚できてしまうほどに、俺の全身は熱いモノに包まれていた。


 だけどもその熱いモノは満足していないようで、
 俺が俺でなくなったというのに、最初から又俺を貪り始めた。


 足の指を舐めしゃぶられ、
 脹脛を舐り、
 膝もその裏ごと舐め潰し、
 太股は内側にある大動脈の真上からその熱によってに犯されてゆく。

 やがてその熱は俺の股間に巻き付き、凄まじい快楽に俺を突き落とした。


 嗚呼、喰われてゆくのに、
 嗚呼、俺を奪われてゆくのに、


 何で俺、こんなに嫌じゃないんだろう……?


 その一瞬の違和感。
 認め難い“事実”に気付いた為の違和感によって、俺の意識はやっと戻ってくる事ができた。


 ―――そう、全ては、


 「夢……?」


 だったのだ。




 やれやれ……と、溜息が出る。
 こんな夢を見るのも欲求不満の所為だろうなぁ……さっきも治まんなかったし……
 にしても酷すぎるっ! 何だあの淫夢は?!
 ひょっとして、俺ってば犯され願望でもあるんだろうか? イヤだなぁ……


 あンむ…びちゅ…れろれろれろ……
 んふぁ……おいひ…ちゅっ、ちゅっ



 く……っ
 こ、こんな、夢、見た、のも、欲求…ふ、まんの所為だろ……なぁ……っ
 しばらく、み、皆がいたから、じ、じ、自家、発電…できなかったしぃいい…っ
 うぉ…っ?!


 んむ? ここらいいのかぁ?
 れろれろれろ……ぷはぁ…スンスンスン……いい匂ひらぁ……



 だ、駄目だって、で、出る……
 そんな…こんな気持ちよ過ぎ……
 さっきまで全然だったの……にぃいいいいいいい………っ!!!!


 どぶっ ずびゅっ、ずびゅっ、ずびゅっ、
 ひ、あぁああああ……しゅごいぃいいっ
  掛かるぅ、掛かるぅ、どんどん掛かるぅっ!!
  はぁン…む…もごもごもご……ちゅ~~~……



 余りに気持ちよく、余りに激しくイってしまった所為か、俺の身体は全て出し切った後、体力を使い切ったかの様に動けなくなってしまった。
 そう言えば、最初の頃にあらぬ疑いを掛けられて皆に追いかけられてた時、逃げまくった後はこんな感じたったなぁ……
 よく生きてるものだと感じ入ってしまう。
 まぁ、タマネギが落下してきた時、直撃したのに生きてたからこんなモノなのかもしれないなぁ。


 だけども流石は俺。
 余りの快感に体力を使い切っていた筈の身体は既に回復を見せていた。
 ……寂しい夜を一人送りすぎだが故の回復力なのか……? そう考えたらブルーが入ってしまうのだけど……


 って、等と訳解かんないコト考えてる場合じゃないっ!!
 イキナリ、その…えと……い、イかされた訳なのだから、その原因があるはず。
 俺は未だ甘い余韻に悩まされている身体を起こし、周りを……
 起こし……?
 そう、起こし……え?
 えっ? えっ? えぇえ~~~~~~~と………………?!


 「ンふぁ……あ、起きたのか? けいたろ先ぱ…あむ……ちゅぷ」
 「え、ええとウン。元気だったヨ」


 我ながらマヌケなセリフを言ったもんだ。
 余りの事に焦りまくってたから仕方ないんだけどね。


 だって、この情況が理解できないんだから仕方ないじゃないか!


 何だか小奇麗な一室。多分、ひなた荘の何処かの部屋……だろうと思う。
 見た事あるよーな無いよーな部屋で、ひなた旅館だったころ使われていた客室なんだろう。
 障子が開け放たれてて、眩しいくらいに感じる月明りが部屋を照らしている。
 そしてその部屋には布団が一組敷かれてて、俺は全裸で横たわっていたわけだ。


 ま、そこまではいい(よくないけど…)。
 問題は……


 俺の股の間で嬉しげに俺のナニを舐め清め、
 俺が出したんだろう、白い粘液で顔を汚したまま、
 取りこぼしも許せないのか、俺の腹にまで飛び散っている精液をぺちゃぺちゃと子猫のように舐め取っている女の子。


 「けいたろ……んちゅ~~……ン、ンンン…おいひ……」


 亀頭の鈴口が垂れてくる滴さえ勿体無さげに啜る女の子は、間違いなく知っている顔。


 「ンふ……♪ れろ~~ん……あはぁ…まだ硬いのらな……しゅごいろ……」


 だけど見た事もない顔。
 良く知ってる女の子が、見た事も無いエロい顔で俺のモノに頬ずりしている。
 熱くなっている俺のペニスに伝わるのはやわらかい彼女の頬。そして、俺が顔にかけただろう精液の滑り。
 幸せそうに俺に奉仕しているのは間違いない。


 「も、素子ちゃん!! ナニしてるんだよっ!!!」


 と、焦りまくる俺に対し、


 「んちゅ、んちゅ、んちゅ……ぷはっ んん? ナニらけろ?」 


 素子ちゃんは何でもない事の様に、ホント極普通にそう答えた。




 でもさ、
 喋る時くらい口に咥えるの止めよーよ……




―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
                           -盲・愛-
                           File:肆

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――




 「落ち着いたか?」
 「む、無理だよ!!」


 まぁ、無理も無い。
 彼の上半身はピタリと彼女が抱きついており、プリンの柔らかさとゴムマリの張りとを併せ持つ双球に左の二の腕が挟まれているのだ。
 彼女が呼吸する度にふかふかと柔らかさを伝えてくる上、彼女の吐息は全て景太郎の耳に当たっている。
 自分の出した精液の精臭が混じっている吐息が更にイヤらしさを増し、自分の物がこの口に在った事を思い出さされてそれが又景太郎を高めてゆく。
 射精はしたのであるが彼の股間はずっといきり立ったままであるし、更にそこには素子の太股がある。
 景太郎の下半身は素子の太股に挟まれているのだ。
 当然ながら彼の腰辺りには素子の下半身…それも股間が押し付けられており、少しでも身体を捩ると彼女の若草の感触が伝わってくる上、


 「ン…あ…」


 等と甘い吐息を吐かれるのだから堪ったものではない。




 言うまでも無く、景太郎は逆レイプされかかっていた情況を理解した後、思いっきりタイミングをずらして悲鳴をあげかかった。
 正確に言えば素子が精液の香りを堪能し、舌の上に乗せたエキスを唾液と混ぜて口をゆすいで飲み干し、鼻を通る精臭を堪能する様を呆然として見ていた景太郎にのし掛かった時だ。
 素子がフェラチォをしていた事実に驚いた声、
 それを凌駕するほどの絶叫を上げかかったのだが……


 「う、もが・・・っ」
 「それは流石に失礼だぞ? 浦島」


 彼が叫び声をあげるタイミングを完全掌握している素子は、声が響く直前に彼の口をその手で封じた。
 景太郎の身体に密着でき、肉柱の香りと感触に酔いしれているとはいえそこは青山の姓を持つもの。いくら景太郎が留学中に回避能力を上げているとはいえ、本気で事に掛かっている素子の勢いに勝てるはずもない。


 長らく剣を振りたくり、打ち合い、叩き合い、鍛え続けてきた手であるのに、不思議と白魚のようにほっそりとしている。
 …………いや? 以前の彼女の手より確実に柔らかいではないか。
 だが、その事を知っている筈の景太郎はそれどころではなかった。
 焦りまくってその事に気付けないでいるのだ。
 何故なら彼女は全裸。
 男なら誰しも見惚れるであろう一糸纏わぬ見事な裸身を月明りに照らし出し、愛しい男にさらけ出しているのだから。
 事故で見てしまった事はあっても、故意に見せてもらった事等無い彼である。
 それもこんな極上の美少女の裸なのだ。更に顔は景太郎が吐き出した精液に塗れている。焦らない方がどうかしている。


 「どうかしたのか? それとも私の奉仕が下手過ぎたのか?
  貴方のモノが余りに美味で我を失ってしまったのだ……すまない……」
 「い、いや、その、えっと……き、気持ちよかったよ」
 「本当か?! それは何よりだ」


 心からの安堵を見せて微笑む素子。
 その顔は以前から知る素子のそれであるが、以前の素子の表情ではなかった。
 穢れを知らぬ少女の顔と、嬉々として男汁味わう淫女の顔の両方を見せている今の素子は、景太郎が見た事も無いものであった。
 何かに憑かれている可能性があるが、残念ながら景太郎はその手合いの話には半信半疑である為、そういった可能性は思いも付かない。妖刀ひなに操られた事もあるというのにだ。


 しばらくその淫美な顔に見惚れていた景太郎であったが、それでも何とか途切れそうな理性を振り絞って意識を現世に取り戻す。
 兎に角このままではいけない。
 いつ何時意識が飛び、素子に襲い掛かってしまいかもしれないのだ。その暴挙が成功するとは彼は塵程も思っていない。無論、抵抗“してくれる”という希望的な仮設に基いての話だ。今の素子が嫌がるかどうかは別の話である。
 とりあえず淫蕩な空気によってクラクラする頭を振り、何とか素子に眼を向けた。


 だが、そこには自分を強く求める灼熱の眼差し――


 「く……っ」


 又も意識がぶっ飛びかけた。
 自分はこんなに節操無しだったのか? いや、節操無しは前からだけど、ここまで酷かっただろうか?
 自分はなるの事が…成瀬川なるの事が好きだ。告白もしている。エラい曖昧ではあるが、答えてくれた…んだろう。多分。
 だけど…今の自分は彼女に…素子ちゃんにも深い愛情みたいなものを感じている。
 いや、確かに素子ちゃんの事は嫌いじゃない。
 はっきり言って好きだ。だけど、それは“女として”ではなかった筈。
 筈なんだけど……


 ずくんっ、ずくんっ、ずくんっ、ずくんっ


 股間の脈動が酷い。
 素子の太股に圧迫されれている肉柱の先端からは、素子の顔を汚しまくった程の射精を終えているというのに、未だ止め処も無くカウパーが溢れ出せさ、自分の下腹と素子の太股を汚している。
 彼女はその感触が気に入ったのか、左手で持って己が太ももに付いたその先走りを撫で取って自分の腿に擦り付けていた。彼の匂いをこすりつけて自分にマーキングしているかのように。
 景太郎は自分の股間を落ち着かせるべく、インド式掛け算である40×40の暗算を必至に続けていた為、その素子の淫蕩な行為に気付いてもいない。


 そんな昔と変わらぬ景太郎の様子に、心の飢えが保てなくなった素子は、名残惜しいが景太郎の反応を堪能するのを止め、遂に本題に入る事にした。


 「浦島……いや、景太郎“先輩”」


 語尾にハートマークが見えそうなほど、その声音は甘かった。


 「ひ、ひゃいっ!!」


 対する景太郎の返事がコレ。突然掛けられてた素子の声によって強制的に現世復帰したものだから焦りが大きい。
 冷静さゼロなので色気も何もあったものではない。
 尤も、素子にとっては蜂蜜より甘い声。その眼差しが更に濡れた。


 「こんな離れにつれて来て悪いとは思う。あまつさえ寝ている隙にお前の了承無しに男根を味わせてもらった。
  それは悪いと思うし素直に謝りたいと思う。思うが、非常事態なのだ察してくれ」
 「そ、それは解かったから、そ、その……離してほしいなぁ~~……って」
 「すまんが却下させてもらう。事は急を要するのだ。このままでは私は……お前の側にいられなくなってしまうのだ」


 「…………え?」


 一瞬で景太郎の淫欲が吹っ飛んだ。
 真剣な素子の声。そしてその内容。
 一緒にいられなくなると言う事は、この寮から出て行ってしまうという事なのでは無いのか?
 その事が彼に冷静さを与えているのである。

 今更言うべき事では無いが、景太郎は素子の事が女としてでは無いもののかなりの好意をもっている。
 なるは当然として、カオラやキツネ、しのぶやサラ、むつみに対しても同じ気持ちを持っている。
 それは言ってしまえば家族としての強い気持ちでもって皆を見ているという事なのであるが、自覚が全く無いのが困り物だが女としてもちゃんと好意を持っていたりもする。
 家族として愛し、自覚ゼロとはいえちゃんと女としての愛情を持ってくれている。だからこそ皆もそれを感じ取って景太郎に魅かれているのだろう。

 その景太郎にとって大切な女性ひとの一人である素子が居なくなるという事はあってはならない事なのだ。これが焦らずにいられようか。


 「ちょ、ちょっと素子ちゃん!! それってどういう事なの?!」


 今度こそ完全に意識を取り戻した景太郎は、素子に押さえつけられているにも拘らずがばっと身体を起こし、素子に鼻先が触れ合うほど顔を寄せて問いただした。
 そんな真剣な彼の顔に彼女の眼がトロンとする。
 自分の事にこれだけ真剣になってくれるのだ。思えば以前あった姉上の一件の時にしてもわざわざ京都に一緒に行ってくれた人だ。姉上の強さを知っていたにも拘らずだ。
 その時の彼の、『何でもないよ』という顔を思い出し、素子の顔に朱が走った。


 「あ、いや、その……このままではお前に迷惑を掛けてしまうから……」


 不思議な事に、あれほど悶え狂っていた素子の心に、突如として獣欲と情愛の鬩ぎ合いが発生していた。
 在り得ない話であるのだが、恋心が刺激されて一時的に理性が戻ったのだろう。
 尤も、僅かながら理性を取り戻したお陰で景太郎に襲い掛からない訳であるが……
 そうでなければとっくに景太郎は貪り喰われていたであろう。


 「迷惑って……何を今更! そんなの日常茶飯事じゃないか!!」


 エラい言い様だ。まぁ、間違いではないが。


 「何時だって俺に迷惑かけてきて、何時だって俺を巻き込んで来たじゃないか!!
  だけど俺は気にしちゃいないよ?! 迷惑だけど迷惑だなんて言わせなかったじゃないか!!
  何時だってそうだっただろ?! だから説明ぐらいしてよ!!」


 景太郎もかなりテンパっているのだろう。言語が支離滅裂になっていた。
 無論、それは素子を心底心配しての事。嘘偽りなく彼女の事を想っている、彼の本音の叫びである。
 当然ながら今の素子がそんな真っ直ぐな眼差しを受けて平時でいられよう筈が無い。
 忽ち、心の中の争いはイキナリ和解の道をとり、恋心が獣欲に同意を示し、手を取り合って本来の目的に向って再突進し始める。


 「景太郎…先輩……
  うぅうう……景太郎先輩っ!!
 「え………? う、うわぁっ!!!」


 唐突に素子は景太郎の手を取り、己が胸に押し付けた。
 景太郎もエロガッパと言われていたのは伊達では無い。その感触に理性が飛びかけてしまう。
 先程まで腕に押し付けられていたミルクプリンの感触が掌に移動。
 押せば容易く沈み込む柔らかさと、その形を保てる張りに鼻血が出そうになる。

 ……と、彼のその掌の中央部に何か硬いものの感触が感じられた。


 「……解かるか?」
 「な、何が……?」
 「お前の手の中で硬くなっているものが何なのか…だ」


 殆ど無意識に無言で頷く。
 理性は理解してはいけないと警鐘を鳴らし続けているのだが、男としての本能がそれを敏感に感じ取っている。
 そう、解かってはいる。
 理解してきているのだ。

 微妙に手が動くと、手の中でコリコリと感触を伝えてくるそれ、
 素子の乳首が硬くなっているという事に。


 「ここ二週間ほどかな……? 身体に異変が起こったのは……」


 張り付いたように離せなくなっている景太郎の手に自分の右手を重ね、軽く揉ませてみる。
 ぷにゅ、ぐにゅと他愛もなく形が変わり、素子の吐息が甘くなってゆく。
 反対に景太郎の息は荒らんで行く。


 「……お前を見ると胸が尖るようになり、サラシをするのが苦になっていた。
  お前を見ると腹の奥が……膣の奥が……子宮がざわめきだした。
  一日に何度も下着を代える破目になるほどにな」


 素子は硬直している景太郎の左手を取り、自分の股に導いていった。
 カクカクと歯車の様な硬い動きではあったが、大人しく導かれてゆく男の手。その硬い動きが焦らされているようでたまらない。


 ぬちょ…


 素子本人も驚いたほどに、そこは濡れそぼっていた。
 彼女がそうなのだから、景太郎の驚愕はどれほどのものか。


 「そ、そこが……そんなになって……お前を想うと、お前の、事を、想うと……て、手がそこに……」


 ちゅ、くちゅ、ぬちゅ、ちゅる、


 無意識か、或いは雄としての本能か、
 景太郎の手は素子に促されるまでも無く、僅かづつ動き出していた。
 指が恥丘の若草を通り過ぎ、熱い汁を零すクレヴァスを撫であげる度、
 包まれている皮から顔を覗かせている肉芽の上をかすめる度、
 素子の吐息は甘くとろけてゆく。
 必然的に蜜の量が増え、泥濘の音が景太郎の耳をくすぐった。
 するりと指が襞に沈むと、それだけで素子は強く反応して仰け反る。
 襞は景太郎の指にしっかり絡みつき、出て行こうとすると引き止めてくる。それがまた実際に挿入しているかのように気持ちが良い。


 「わ、私は、私は病に掛かってしまったのだ……ンんっ
  そう、お、お前、お前に、だ……抱いて、犯…犯されないと、心が、私の心が、壊れて、しまう……」


 既に素子の手は景太郎から離れ、布団を掴んで快感に耐えていた。
 景太郎は熱に浮かされたかのように己の本能に任せて素子を愛撫し続けている。
 ふかふかとした素子の乳房の感触は思いのほか気に入ったのか、本来持っている器用さを万遍に駆使して素子の胸を嬲りまわす。
 ひっぱられ、押され、握られ、散々玩ばれた胸はうっすらと赤く色付き、触れてもらっている事に満足の意を示していた。


 「も、素子ちゃん……素子ちゃん……」


 訳が解からない。恐らく完全に理解する事は難しいだろう。
 ただ、解かる事は、素子が抱かれたがっている。
 今自分がそれを行わないと素子が持たないという事、


 そして、自分も本音では素子を抱きたがっているという事だ。


 たらたらと先走りを布団に零しつつ景太郎が情け無い顔を素子に向けた。
 これから凛とした女剣士を犯し穢す男にはとても見えない。
 入れさせてほしいと懇願しているような……実際にそうなのだろう、景太郎は意識的に攻め側に回る事は少ないのだから。
 だが、蓼食う虫も好き好きと言えばそれまでであるが、彼の本質に気付いて心から求め欲している女にとっては微笑ましい限り。
 素子は聖母より優しく、娼婦より淫蕩な微笑でもってその求めに応じた。

 やんわりと景太郎を押して距離をとり、そこがよく見えるように足を広げたのである。

 ―――素子のそれは、紅く色付いて熟れていた。


 「素子ちゃんっ!!!」
 「あは……♪」


 遂に箍が弾けた。
 そして素子がワラッタ。
 女としての勝利を確信したからだろう。
 長く剣に携わっていた生活を送っていたというのに意外にほっそりとしている素子の腕が、自分を押し倒している不埒者の身体を、強くそして愛おしいげに抱き締めた。
 想像より遥かに熱い他人の体温に酔いしれながら―――




 元々、景太郎は情況に流されやすい。


 なるは元より、素子やしのぶ、むつみ、果てはキツネやカオラにしてもだが、実にあっさりとキスしてしまいそうになる。何人かとは実際に行っているし。
 尤も、カオラの場合は赤い月が出ている時であるし、流石にサラは子供過ぎる所為かそんなチャンス(?)は無いが。
 この場の空気、
 この別館の神秘の力、
 そして素子から発せられている香料より甘い香り、
 それぞれが絶妙に混ざり合い、最高のブレンドとなって景太郎の心を煮溶かしていた。
 何だかんだ言っても景太郎とて男の端くれであるし、素子と眼を合わせてから勃起しっぱなしなのだ。流石に理性を保つのも限界に来ていた。


 「あ、ンんんん……け、景太郎せんぱ……ンンン…や、ひ……っ」


 ぐにゃりと潰された胸が指の隙間から溢れ、その柔肉の先端にはサクランボより甘そうな実がなっている。
 かり…と甘噛みすると素子の身体が反り返り、噛んだままその先端を舌で嬲ると痙攣し始めた。
 想像していたよりずっと気持ちのいい行為に素子もめろめろなのだ。
 だからと言って火がついた雄の行動が弱まる訳ではない。
 経験は限りなくゼロに近いものの、なるとそんな事態になりかかった事は何度もある。
 何時も何時もタイミングと運の悪さから失敗していたのであるが、なる以外の女性陣を入れても、邪魔さえ入らなければ上手くいっていたであろうパターンは数知れないのだ。
 ただ、女をその勢いに流しかかる事も多いのもまた事実。僅か二年程で寮の女性陣全身をタラシ込んだのは伊達ではないのである。


 テクニックなどある筈もないが、本やAVで培った知識だけは豊富。
 ぱくっと小さな乳輪ごと口に咥え込み、舌に乳首を乗せて転がす。


 「ンあ、あぁああ……っっ」


 左手は素子の右の胸を揉みしだき、
 乳首をやわらかく摘んで引っ張る。
 ピィンと背が反るのが面白いのか、グニグニと乳首を玩び、突き出たそれを指で曲げたりする。


 「んふっ、んんんっ、ひっ、あぅ…っ」


 刺激が続けられる為、素子は指を噛んで耐えた。
 本当なら快楽に絶叫したいのであるが、邪魔が入らないとも限らない。だからひたすら声を潜めるのであるが、それが逆に快楽を燻されて更に良くなってゆく悪循環。
 尤も、嫌という訳ではないのだが。


 空いている右の手が素子の汗で滑る腹を滑り降りてゆく。
 目指している場所は言わずもがな。焦らしつつ下げてゆく景太郎の手が憎らしい。滑るたびに素子は腰をひくつかせているというのに。


 やがて若草に辿り着いた。
 その柔らかな手触りが気に入ったのか、指に絡めて引いてみたり、撫で回したり。素子の体毛すら玩ぶ景太郎。
 快楽のポイントギリギリにそんな刺激を加えられているのだから堪らない。
 素子は涙眼で自分の胸を玩んでいる景太郎を見下ろす。だが、愛しの彼はそんな視線になど全く気付かず、彼女の身体を玩具のように弄り倒す。
 両の胸を無理矢理寄せて、突き出た乳首二つともを口に含んで甘噛みして引っ張る。
 甘噛みとは言っても、乳首が口から抜けたりしない程度には力が入れられているのでその刺激も強い。
 素子は眼を見開いて背を反らせた。だが、反らせた所為で余計に胸が引っ張られ、強い痒みにも似た痛みと快楽の狭間で悶える事となる。


 景太郎の手はというと、遂に素子が求め狂っていた部分に到達し、ぱくぱくと餌を欲しがっている膣口に触れようとしていた。
 だが、するりと避けて大陰唇の脇に抜ける。
 それはそれで快感なのであるが、人生最大の肩透かしに素子の心は燻される。
 先程まで胸を“玩んでくれていた”左手は、何時の間にか素子のお尻に辿り着き、無駄肉が無い小さなお尻を撫で回す。鍛えられている為か無駄肉の無いそれは芯に硬さを感じる小学生のようなお尻だ。
 胸は大きいくせにお尻は小さい。誰がこんな良い女を作ったのかと天に問い詰めたくなる。
 その臀部と割れ目との段差を堪能した後、その指は白いシュプールに沿って割れ目に滑り込んでゆく。


 「ンあ…っ?!」


 流石にアナルは想定外だったか、じっと眼を瞑って快楽に耐えていた素子は眼を見開いて驚いた。
 別に耐えなくともよいのであるが、景太郎に抱かれている現状をもっと堪能したい為に必死になっているのだ。
 自分の中で最も汚い部分への愛撫。
 自分が景太郎にするのであれば汚くもなんとも――というより悦んでするだろう――無いのであるが、されるのなら別だ。
 彼の指がそこに辿り着く前に身を捩って逃げようとする。
 だが、


 くちゅ…
 「んぁあっ!!!」


 いきなり膣口に指が入った。
 首が仰け反り、反応の強さから景太郎の口から乳首が離れ、ぶるんと玩ばれて赤くなった双球が揺れた。
 景太郎の指が丁度アナルに辿り着いた時に短く絶頂してしまった素子の身体が弛緩している。よってその指は思いのほか簡単に菊門にヌルリと押し入る事が出来た。


 「く……あぁ……っっ
  ああああ………っ ンんっ あ……く…ぉ……」


 連続的な絶頂感に必死に耐える素子。
 前と尻とを串刺しにされ、粘膜越しに指先が触れ合っているのだ。
 素子が括約筋を絞めている所為だろうか、腸内膣内がぐねぐねと動き、自分から快楽を持って来てしまう。


 「う…わぁ……キツキツだ……」


 対して景太郎は左程堪えていない。まぁ、当たり前であるが。
 素子の前も後も指で犯しているだけ。それを初めて行っている男が彼だというだけである。尤も、その事実に思い当たって激しく興奮してはいた。
 何とか指を引き抜こうとするも、強く引き締められていてピクリとも指が動かない。
 後は兎も角、前がコレでは入らないんじゃないかな? 等と思ってしまう程。

 景太郎は実家の近くにあった駄菓子屋の玩具を思い出していた。
 繊維を編んで作った蛇の玩具。
 指サックほどの大きさで、その口の部分に指を入れるとすんなりと飲み込むのであるが、指を抜こうとすると網目がしまって抜けないのだ。
 幼い景太郎は蛇に指が食べられたと泣いたものである。
 今の状況はあの時を彷彿とさせるものだった。
 尤も、目の前にあるのはあんな可愛らしい玩具等では無く、果てし無くいやらしい肉玩具。可愛らしさはなく、淫靡さの方が目立つ。
 もとろん景太郎が素子を玩具の様に扱うわけもないが、どう否定しようと彼女は景太郎専用の肉玩具になりたがっているのだからしょうがない。


 そして、その肉玩具への道は着実に近寄ってきているのだ。


 ちゅく…
 ちゅぽ…



 程なくして、何とか指を引き抜くことが出来た。
 素子は息も絶え絶えで、表情も緩んでいる。
 抜けた理由は絶頂によるもの。絶頂した為に筋肉が弛緩して引き抜く事が出来たというわけだ。素子の身体が異様に感じやすくなっている“お陰”という事だろう。


 素子の身体は景太郎が支えている。
 四肢をピンと伸ばし、ピクピクと痙攣しているのは快楽の大きさか。
 こんな素子を見るのは初めてあるし、理由を言ってくれない素子に歯がゆさも感じている。
 だが、止まれない。
 止まらないのだ。
 素子同様に景太郎の身体の飢えも、心の飢えも、
 素子を愛撫している間に、景太郎の中にあった大切な“何か”。今まで持っていた倫理に対する何かの箍が毟り取られていたのである。
 人格が変わったわけでは無いし、愛しいものは愛しいし、大切にしたいと思っているのも以前のまま。


 違うのは、


 「も、素子ちゃん……そろそろ入れるよ? 入れちゃうよ?」


 肉欲の命令に抗う能力を完全に無くしている事である。

 素子は夢現でそれを耳にし、心底幸せそうな顔をして身体をゆるゆると動かした。
 両の腕を腰の方から太股にまわし、
 足をM字に開いて、
 尻の側から手を当てて、
 両方の三本の指でその濡れそぼった唇をひし形に開いて景太郎に見せてやった。


 自分の大切な場所を。
 この世で景太郎しか味わう事のできない肉の祠を。
 サーモンピンクのその肉襞を。


 柔肉が割られ、皮が引っ張られた事によって包皮からピンっと肉芽が頭を出した。
 外気に触れる事は初めてであるし、人目に触れる事も初めてだ。
 そしてその初めての瞬間に立ち会えたのが景太郎である。
 その光栄な瞬間に気付ける訳もなく、景太郎はこの世で最も淫猥な光景にただ見惚れるのみ。


 そんな景太郎に対し、焦れた素子は、


 「け、景太郎せんぱ…い……ここに、ここの貴方のを……
  ……………………い、入れて……ください…………」


 <入れて>


 女の子が口にする中で何といやらしい言葉なのか。
 それも極上の美少女の口から出た言葉である。
 景太郎は残った理性を自分の意思で毟り取り、待ち望んで泣き出しているそこに猛り狂った肉槍を押し当てた。


 ――入る……――


 そう呟いたのは、素子か景太郎か。
 口は既に自分で押し広げられている。
 入り口は簡単だった。
 粘膜同士が触れ合い、お互いに電気の様な快感を与える。
 それでも止めない止まらない。


 くにゅう…と膣粘膜の間に亀頭が消えてゆくのが素子の目にはっきり映った。
 ずぶずぶと自分のペニスが素子の中に消えてゆくのが景太郎には見えていた。
 膣道の角度からして入りにくいのは仕方の無い話である。素子は景太郎の為に腰を上げて角度を調節した。
 途端、


 ずるっと亀頭が消えた。
 景太郎が強く眼を瞑って快感に耐える。いきなり射精してしまいそうになったからだ。
 先程出したというのに早すぎる。
 初体験。そして相手が素子という事が凄まじいスパイスとなって刺激を強めているのだろう。
 素子は素子で肉を割られてゆく感触に酔っていた。
 入ってくる。異物が入ってくる。それが景太郎のペニス……
 初めてを奪うのが景太郎のものなのだ。
 こんなうれしい事があろうか?


 やがてプリンとした肉の傘が完全に埋没する。
 だがそこで動きがより一層緩慢になってしまった。
 膣内全ての襞による送迎は続くのであるが、行進してくれるはずのペニスが停滞したのであるから悲しみと戸惑いも大きい。
 しかし、自分の奥で何かかぐっと亀頭を押さえ込むのを感触で知った時、素子は自分の内蔵を軽蔑した。


 そう―――処女膜である。


 確かに、初めての証であるし、それを破る権利があるのは世界広しといえど浦島景太郎ただ一人だ。
 今の素子は、自分が処女のままできたのも、剣を学んで強くなる事を求めたのも、全ては景太郎のモノになる為だったのかもしれない。そう思ってしまう程に彼に傾倒している。
 だからこんな不忠が許される訳がない。
 高が粘膜の分際で…と憤慨したものである。
 尤も、どれほど憎んだとて破っていいのは景太郎のみ。張型等で破っておいたとすれば彼を落胆させてしまいかねない。処女を惚れた男に捧げるのは女の誉なのであるし。


 それでも、やはり景太郎は男の端くれ。
 自分の進軍を止めているのが処女膜だと本能が理解し、歓喜していた。
 それは彼女の最初の男になれるという悦びか、あるいは自覚のなかった独占欲か。
 素子に対する想いの中に、グツグツと煮え滾る情欲が注ぎ込まれる。


 素子ちゃんの処女を……
 彼女の処女を?
 …………もらえる?!!
 誰が?
 この、俺が……?!





 頭の片隅、ほんの僅かな意識の欠片が小さく呟いている。


 「初めては、成瀬川だと思ってたんだけどなぁ……」


 と。
 だけど彼の身体も意識も留まりはしなかった。
 素子の肉の中へ、
 彼は進む事にした。


 ぐぐ……
 「あ……♪」
 ぐぐぐ……
 「あぁあ…♪」
 ぐぐぐぅ…………みちっ
 「あはぁ……っ♪」
 ぷつ………っ
 「―――っっ!!!」


 そして、無理矢理ゴムを押し広げるような感触を景太郎に伝え、
 ペニスは、ついに、


 素子の膣の奥に――――――入った。








[2319] Re[2]:Dotage ~妄愛<伍>~  (ラブひな)
Name: Pixy
Date: 2007/04/14 15:57
 処女膜を破った最初の一突き。
 凛とした少女の純潔を奪えたという事と、赤子に握られているような柔らかくもキツイ締まりに童貞が耐えられる訳が無い。
 ましてや相手は極上の美処女であり、自分に対して底知れぬ愛情を叩き付けてくるような娘だ。
 膣粘膜の全てが彼を歓迎し、
 肉頭を舐め、シャフトに絡みつき、肉棒以外の物質は拒絶するかのように締め付けてくる。
 ぬちょぬちょと、
 ぎりぎりと、
 にゅるにゅると、
 全身全霊の力でもって快楽を与えようと奮起する。


 「くぅ……わぁあっっ!!」


 くしゃくしゃに縮こまっていた粘膜。
 少女と女の境界線であり、子供を創造できる力を封印しているとも言える穢れ無き証。
 それをもらった瞬間、青年のペニスは限界に達し、再充填されていたドロドロのザーメンがホースから噴出すような勢いで、無遠慮に処女宮を穢しまくる。


 「ひ……っ あぁああああ!!!」


 汚らしいとされる男の情欲のエキス。
 体内を穢されている“筈”の少女だった。
 が、彼女の叫びは快楽の叫び。
 膣内と子宮を満たすのは人外の量の精液。
 愛おしい男は人間の限界を超えているのか、たたき出されたそれの量は明らかに人間では追従できない液量。
 一般の男性が平均3ccという話がある。しかし、現在の彼の射精量は少なく見積もっても確実に十倍以上はある。二度目でコレであるし、更に粘度が半端ではない。砕いたプリンほどもあるのだ。
 お陰で肉襞の隙間隙間にベットリとへばりついており、ただ一回の射精にて少女の膣内は汚しつくされる結果となっていた。
 無論、彼女がそれを悦ばないはずも無く、膣内を蹂躙して子宮を“清めてくれた”愛すべき精液に感謝こそすれ、嫌がる気持ちは微塵も無い。

 そして処女肉を一瞬で蹂躙した陵辱魔はというと―――

 「だ、だめだ……全然萎えないよぉ……」


 二連続の射精にかかわらず全く萎えない己のペニスに病気なのかと恐怖していた。
 膣内射精という、妊娠の危機をはらんだ行為については全く気が付いていない様子だ。
 元より少女は妊娠もクソもない。孕めば産むだけであるし、孕まなければ孕むまで続けるだけだ。尤も、孕んだからと言って止めるつもりは更々無いが。


 「き、気にするな……萎えないというのであれば、萎えるまですればいいだろう?」


 剣の修業時より息が上がっていたが、持ち前の呼吸法で直に回復力する素子。
 それでも快楽の余韻は大きく、身体の自由は戻っていない。
 だったらこの身体を自由に“使ってくれればいい”。それが素子の本音である。

 「素子ちゃあん……」

 対する男の方が情けなかった。
 しかしそれでも股間の方はケダモノぶりを発揮しており、情け無い主に活を入れたかったのか、ビクビク脈動して膣粘膜の気持ちよさを青年に伝えてきた。

 「あ、う、うう……と、とまらないぃ…っ」

 かくかくとぎこちなくピストンが始まり、
 やがて、じゅぼじゅぼと凄まじく卑猥な音をたてた前後運動へと変わってゆく。

 普通、処女膜が裂けるから出血すると思われ出るのだがさに在らず。
 実は処女膜が裂けただけで出血する事はあまり無いのである。処女膜は粘膜なので、血管や神経は殆ど無いからだ。
 処女の性交が痛みを伴うのは、性行為に使用する部分に快楽を感じる神経が発達していないからで、出血をするのは性交に慣れていない為に強い抵抗をしてしまう膣壁を傷つけるからだ。
 だから、頻繁にオナニーをしている女性や、失神するほど気持ちよく前戯をしてもらえた女性、ローション等をたっぷりと使用してもらった人には痛みや出血は少ないのである。


 だが彼女の、
 素子の場合はどうだろう?
 じゅぼっ、じゅぶっ、と泥濘の音を立てて出入りしている青年の、彼女が心から慕っている男…景太郎のペニスが出入りを続ける膣。
 いたいけなほどに膣口を広げ、口いっぱいに熱い肉柱を頬張るそこに緊張や痛みを感じている様子は全く無い。
 ペニスに伝わった膜を破る感触はかなり分厚かった。
 よく運動をしている女性は処女膜が裂けるというが、少しづつ傷付いては治り、傷付いては治りを繰り替えて分厚くなるケースがある。素子はそれだったようだ。
 にも拘らず、彼女には出血も痛みも無い。


 「あ、んっんっ、く、い、う…ンっっっ
  ひぃ、け、けい、た…ろ、ンンンンンっっっ!!!」
 「素子ちゃん、もと、こ、ちゃんっ!!」

 激しく腰が叩きつけられ、素子の腰を抱き締めた景太郎の肉棒のストロークが増す。
 行為経験がゼロのはずであるが、どういう訳だか途轍もなく上手くいっている。ひょっとしたら相性が抜群に良いのかもしれない。

 ぐじゅ、つぷっ、つぱっ、びぢゅっ、ぶぢゅっ、

 耳を塞ぎたくなるような下品な音。
 しかしこれは、素子の快楽の大きさを物語っている。
 景太郎はペニスに伝わった感触から素子の処女を奪った事を思い知っていた。
 素子はペニスに突き破ってもらえた感触を実際に感じ取っており、侵略蹂躙されている悦楽に溺れきっていた。
 景太郎は突如として精力絶倫となっており、
 素子は景太郎のしてくれる行為全てが快楽となっている。

 その快楽の大きさ故か、二人とも気が付いていない。
 素子の身体が景太郎の身体にとって、
 景太郎の身体が素子の身体にとって、
 いくらなんでも身体の相性が良過ぎる―――という事に。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
                           -盲・愛-
                           File:伍

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
 ぱたぱたと所在無げに布団の上でのたうっていた両の手が、無意識に景太郎の身体を抱き締めた。
 やや爪を立ててしまったが、それは仕方の無い事。強い突きこみが腹を襲ったのだから。
 数式を憶える事等に無駄な時間を掛けていた彼の頭は、こういう事には冴え切っているのか三回目の射精を終える頃には素子の身体に合わせた注挿を見つけ出していた。
 やや下付きで、角度が浅い素子の膣道は、景太郎が少しだけ腰を抱え上げてやるだけであっさりと直通肉道路となり、暴走肉特急である景太郎のペニスを終点まで誘う。

 いや―――?

 「ふ、深い、深いよぉ……け…いたろ、せんぱいぃ……っ!」
 「う、ぐぅっ、キツイっ! キツイ、のにっ! 吸い込まれるぅっ!!」

 ぐじょ、ぐぼっ、ずじゅっ、ぶじゅっ、ずじゅっ、

 部屋には性行為を行っているというより、泥田を歩き回っているような音が響いていた。
 景太郎の人生でこれだけ大きく勃起した自分のモノを見るのは初めてであろう程に、ガチガチに硬化した肉の柱。
 他ならぬ彼が吐き出した精液と、素子の愛液、カウパー等が混じり合った最悪にいやらしいローションがこびり付いているそれは、強い膣圧によって密閉度を上げ、凄まじいまでに下品な音を立ててヴァギナに根元まで突き刺さり、襞を巻き込みながら引きずり出される。
 しかし、その長大なモノが根元まで突き刺さっているという事は、間違いなく子宮内にまで亀頭がもぐり込んでいるという事だ。
 普通、子宮口はそんなに緩んだり、あまつさえ口を開けたりはしない。出来るのなら出産時に子宮口が開くのがじりじりと待ったりはしない。
 これが前述の出産時ならば誘発剤があるのだが、今は獣の交尾より品の無いセックス。更に二人とも初心者で、ついさっき脱童貞奪処女の儀式が行われたばかり。
 にも拘らず、素子の子宮口は最初から大きく口を開けて景太郎のペニスと精液の到来を待ち望んでいたのである。
 素子の体内において景太郎を拒絶していた内臓は処女膜のみ。その不忠の粘膜も既に愛しい人の肉剣によって天誅を受け引き裂かれている。今は懺悔の為であろう、その粘膜の痕が景太郎の肉傘に刺激を与えて快楽を与えていた。

 「はっ、は、はぁっ、は、はぁっ、くぅうう……っ」
 「ん、ンんんっ、ひ、くっ、けい、たろ、せんぱ、いぃいっっ!!」
 どぶっ
 ずびゅっ どぶどぶどぶ……


 また膣内で射精した。
 既に子宮内は精液によって満ち満ちている。
 海月のように力が抜けた素子は、恍惚の表情で四肢を投げ出した。
 景太郎の方は、じゅるりとペニスを抜いて、後ろ手で体を支えるように尻餅をついていた。
 しかしそれは素子の膣が弛緩した事によって抜けたのであり、景太郎のモノが射精によって縮んだわけではない。全体を粘液でベトベトに汚したまま、景太郎の黒々とした肉の柱は未だ隆々と起立していたのである。
 だが、精力は無尽蔵の様であるが、体力は元の景太郎のままだ。今までの寮生活での騒動や、留学時の発掘活動、瀬田による体術特訓等がなければとうに気絶しているであろう。

 荒い息をつきつつ景太郎は、ふと満足そうに横たわる素子に眼を向けた。
 浅く上下する豊かな胸。
 無駄な肉が微塵も無く、ほっそりとした腰。
 その腰から少年のように小さな尻までのなだらかなカーブはまるで陶器の様に滑らかだ。
 全てが美しく、一品の美術品を想像させてくれる。
 だが、美術的な美しさと決定的に違う所があった。
 胸の乳首は突き出たまま、
 呼吸と、時折見せる腹の痙攣に合わせてヴァギナからは夥しい量の精液がフローバックしている。
 尻も確かに美しいが、やや蟹股になった足の付け根からは前述の精液が滴り落ちてり、勿体無いと嘆いているのか、ひくついている肉襞がいやらし過ぎる。
 顔は呆けた締まりの無い顔をしている上、顔のまわりは精液でヌラついており、快楽による涙と涎の後も目立つ。

 決して美術品ではない。
 強いて言えば淫猥なるサバトに使用する禍々しい淫魔像だ。
 
 「ンふ♪ はぁ………」

 幸せそうに微笑んだ素子の手が、ゆるゆると自分の股間に伸びてゆく。
 精液でベトベトに汚されているそこは、処女だった頃の面影を強く残しているくせに、熟練の娼婦のような淫猥さを漂わせている。
 両の手で、ぬらぬらした粘液を膣内でかき回し、手指をベットリと汚してから口元に運んだ。

 ぺちゃ…れろれろれろ……んふ……こくん……


 「あは……景太郎先輩のせいえき……美味しいわぁ……」

 朦朧としている所為か、幼い頃使っていたであろう京言葉で呟く素子。
 その甘えるような声と、幼子のようなどこか舌っ足らずな言い方に景太郎は又もキれた。

 「も、素子ちゃああんっ!!」
 「あン……景太郎先輩、あかんて」

 セリフは拒否だが、顔は悦びに満ち溢れていた。
 膝が布団につくまで大きく股を広げられ、未だ精液を零す膣口に亀頭が押し当てられる。
 素子は口元に手をやって期待に満ちた眼差しで、月光に照らされた結合部を見つめた。

 ぶぢゅ、
 「あぅう…っ」
 「く、おぉおっっ」

 抵抗らしい抵抗も見せずに吸い込まれてゆくペニス。
 抵抗はしないものの、根元まで吸い込んでから膣全体で絡み付いて肉茎を刺激し、悦ばせようとするヴァギナ。
 利害一致したその快楽交換の行為は、理性を剥ぎ取って乱暴な前後運動へと変化する。

 じゅご、じゅぼ、ぢゅっ、ぢゅっ、ぢゅっ、ぶじゅっ、ぶじゅっ、ぐじゅっ、

 「あ、はっ、く、んっんっんっ、あぁあっっ」

 悶える声が止める事ができない。
 景太郎の方は切迫呼吸のまま、素子の小さな膣をぐちゃぐちゃに壊しに掛かっている。
 乱暴にされてはいるが、素子の身体に負担は無く、あるとすれば疲労くらいな物。ぶっちゃければ、景太郎さえ気持ちよければそれでいいのだ。
 先程フローバックで零してしまった為に子宮おなかペコペコなのである。精液というエサを注ぎ込まねば大人しくなるまい。
 素子は両足でがっちりと景太郎の身体を固定し、中に出すまで離さないぞという意思を見せた。
 尤も、そんな事をせずとも今の景太郎は素子に膣内射精以外をするつもりは皆無なのだが。

 どぶっ、ずびゅ、ずびゅ……

 「あ、はぁああああ………っっっ♪」

 胎内に噴出した精液を感じる。
 その性欲の息吹が素子をまたも天国へと導かれる。
 強いアクメによって気が遠くなった素子の身体を、淫獣となった景太郎は貪り続け、素子はそんな彼に深い感謝の念を抱きつつ意識を手放していった……

 手に中には、鍵があった。
 何度も何度も突き込まれ、自分の身体に刻み込んでくれた鍵。
 処女は最初に破った者の痕がずっと残るという。だからこそ私のこの手の中に“鍵”が生まれたのだ。

 私は幸せだ。          喩え様もないほどに。
 私の心は満たされている。    あの女への嫉妬など忘れてしまうほどに。

 だから私はこの幸せを分けてあげようと思う。
 私のこの手の中の鍵を、又しても目の前に出現した檻についている鍵穴に突き刺した。
 開きかけた貝の様な肉色のそこは、やや抵抗はあったものの、檻そのものを振るわせつつもあっさりとその<鍵>を受け入れ、鮮血を滴らせながら檻を空けた。

 いたいた。
 さぁ、一緒に行こうではないか。
 そこに彼がいるぞ。
 ほら、そこに―――

 「も、素子ちゃぁんっ!!」

 私を呼ぶ声にはっと意識が戻る。
 目の前には彼の顔、
 そして私は……

 どぶっ、どぶっどぶっどぶ……っ


 「え……?」

 最初は何だか解からなかった。
 腹の奥に感じる脈動、そして刺激。感触。じわじわと胎内を満たしてゆく生温かいもの……

 だが、次の瞬間、私は雷に打たれたような衝撃を受けた。

 な、何故私は“浦島”とこんな事を…………
                       せ、セックス等を行っているのだ?!


 その疑問に答えるように思い出される痴態の数々。
 死にたくなるほど恥ずかしい行為。浦島の事を想い、自分を慰める日々。そして“この場所”に引きずり込んでの誘惑……

 私は、
 私はどうしてしまったのだ?!

 「素子ちゃん、素子ちゃんっ」
 「ンな……っ?! あっ♪」

 私が混乱している間に浦島は回復したのか、またも注挿を再開する。
 今までの性行為によってほぐされている私の身体は、抵抗の兆しも見せてくれない。
 尚且つ、私を貪っているのが浦島なのだ。
 今日までの想いと過去の想いが絡み合って私の心までもが理性を裏切って抵抗してくれない。

 「う、うら、浦島、浦島ぁ、や、め……う、やンっ」
 「素子ちゃん、素子ちゃん、も、もと、素子、ちゃんっっっ」

 止めてと言いたい。もう許してと言いたい。
 だけど身体がその全ての命令を拒絶して、私の“ほと”は浦島のモノを然も美味そうに咀嚼し、汚らわしい音を立てる。

 ぶじゅ、ぶじゅっ、ぬぢゅ、ぢゅぼっ、ぢゅぼっ、ぢゅぼっ、


 私の耳にひびく泥濘の音。
 それが私が自分を穢す音。

 じゅ、じゅっ、じゅ、じゅっ、じゅ、じゅっ、


 腹から響いてくるのが胎内を汚される音。

 解かっている。私が誘ったのだから。
 解かってはいる。それ程求めたのだから。
 だが、何故いきなりこんな関係になる事を欲したのだ?!

 「素子ちゃあん……っ!」
 「う、浦し…ン…あむ……ふ……」

 私が何か言う前に唇を塞がれた。
 いや……避けようと思えば何時でも避けられた行為だったはず。つまり、私が望んだのだ。

 犯されている、
 穢されている、
 陵辱されている、
 身体の奥底まで蹂躙されている。
 止めてほしいし、許してほしいとは思う。

 だが、
 だが、私は―――

 「うらしま……浦島ぁ……」
 「素子ちゃぁん……ん…む…くちゅ……ぴちゃ…れろ…」

 私は両の腕に力を込め、私の上で腰を動かしている浦島を抱き締めた。
 離れかけた唇を追い、重ね、舌を浦島の口中に突き込み、彼の歯を押し退けて柔らかい舌を追い詰めた。
 表面のざらざらした感触がたまらない。
 左に巻きつこうとすると、左に、右から巻きつかせようとすると右にと彼の舌が避けて私を焦らせる。
 尤も、それはお互いの巻きつかせようとする方向が重なっているだけなのかもしれない。浦島は要領が悪いのであるし。 

 ずずずず………じゅるじゅるじゅる………


 唾液を贈り、送り返してもらう。
 彼の味。彼の口の味だと思えば甘露極まりない。砂漠の放浪者宜しく喉をこくこくと鳴らして飲みすする。
 彼も同様だ。嬉しいぞ。


 そう……私は、
 私は彼の事を欠片ほども嫌だと思えないし、嫌いになれない。
 なる先輩に対して憎悪に似た嫉妬を感じていたのは行き過ぎだと思うが、彼の心を独占しているのには嫉妬の念が絶えない。

 “だから”行為を逸ってしまったのであるし、
 “だから”今やっている事は正しいのだ。
 彼を独占すれば誰かを悲しめてしまう。
 なる先輩が彼を独占し、私の心をこれだけ苦しめたのだから。
 しのぶだってそうであるし、キツネさんも好きだと言っていた。むつみさんはなる先輩の為に一歩引いたと聞くし、加奈子の心は浦島一色。カオラも恋心一歩手前であるから、そこに至れば苦しむ事となるだろう。


 ならば………


 「素子ちゃん、も、もう……っっっ」
 「うらひ…ま……あぅっ」

 ちゅぼっと鈍い音を立てて引き抜かれる肉柱。
 カサの部分にえぐられ、襞が持っていかれそうになる感触がたまらない。気が遠くなる。又も軽い絶頂を迎えてしまったようだ。
 一体今日の私は何度イったのだ?
 
 ぼんやりと横たわる私の口に押し付けられる硬くて熱いもの。
 私は反射的に口を開き、舌を出してそれを迎え入れた。

 「ン、んんんん~~~………っっ」
 「うぉ……っっっ」

 流石にキツイ。
 亀頭の部分で限界だ。
 いくら私の愛液と浦島の精液が潤滑油になっていようと、私の顎の方に無理がある。
 奥まで入れさせてやれなくて申し訳が無い。

 どぶっ


 そんな私の口の中に、生命の息吹が迸る。

 どぶっ、どぶ、どぶ、


 それは凄まじい量で、忽ちの内に舌の上を穢し、

 ずびょ、ずひっ、ずひっ、


 下顎に溜まり、

 びゅ、びゅっ、びゅっ……


 口の中のペニス以外の隙間を全て埋め尽くす。

 これは……
 精液のというものから感じるのは“味”ではないのだなと今更思い知った。
 舌の上にしがみ付き、染みこんでくる感じだ。
 だから苦く感じ、甘くも感じ、しょっぱくもあるのだろう。先走りの粘液は確かに苦かったが……
 しかし、不味くは無い。決して。

 ごく、ごくごくごくん……


 だから飲み込むのも苦にならない。というよりもっと欲しいくらいだ。はっきり言って、これならば飴湯や生姜湯の方が飲みにくい。
 苦労といえば、ペニスを含んだまま飲み込むコツが中々掴めなかった事か。
 それ以外は楽しさすらあった。浦島の精液…それだけで私にはブランドなのだから。

 「あ、あぁあああ……あああああああ……」

 口の中でやっと萎縮してゆく彼のペニス。
 お陰でその全てを口の中に入れられて満足している私の耳を、彼の情け無い声がくすぐった。
 それでも私の頭は彼の手によって掴まれており、口から男根を抜こうとはしない。
 小さくなったペニスは容易に全てを口に入れさせてくれる為、私は嬉々としてそれを味わった。
 当然ながら鼻先が彼の陰毛でくすぐられるまで奥に入れているので、何ともくすぐったく、そこから香ってくる汗の匂いが心を酔わせてくれる。
 私は舌を巻きつけるようにやっと小さくなったそれの全てを舐め清めた。
 すると、彼の腰が妙に緊張し、ビクビクと小さく震えているではないか。
 ふふ……どうかしたのか? 浦島。

 と、私が疑問を口にする間もなく、それは起こる。

 じょぼ、
 じょぼぼぼぼぼぼぼぼ…………


 精液とは違う、ずっと熱い液体が喉奥を打った。
 精液の勢いより弱いのが笑えるが、急に出せれると困る。嫌ではないが。

 ごく、ごっごっごっごっごっごっ………


 味わう暇などありゃしない。
 牛乳の一気飲みの要領で喉奥に流し込まなければ零してしまうのだ。流石にそれは勿体無い。
 特有の臭気も、空気に触れないと殆ど発生しないので、しょっぱさと苦さがある程度。後は複雑さを感じさせる味。だが、やはり不味さは感じず、妙に深く美味い。

 びくんっ、びくっ、びく、びくっ、びく………


 あれ? と思う間もなく私の身体は又も痙攣し、意識が刈り取られるように薄れてゆく。
 やれやれ……何と淫乱になった事か。飲尿だけでイってしまうとはな……

 “あいつ”に文句の一つも………


 まぁ、
 よいか……………………………………………………………………………………………………………………………………






 どれだけの時間が過ぎたのか。
 気が付けば真夜中を過ぎている。組み敷いた時間から考えれば何時間やっていたのだろう?
 素子も景太郎も途轍もない虚脱感の中におり、殆ど身体を動かせず、ただ大きくなっている月の光を浴びたまま横たわっていた。

 ころん…と頭を転がすように景太郎が横を見ると、同じタイミングで素子が頭を転がした。
 眼が合い、お互いが恥ずかしげに苦笑する。

 ナニを今更…だ。
 散々痴態を曝しておきながら初心な表情を見せても意味は無いだろうに。

 嵐のような獣欲が去り、二人の心は普段のものへと戻っている。
 あちらの獣の顔も本来のものであるが、こちらの柔らかな表情も本来のもの。男と女とはそういうものなのだ。

 「ありがとう、浦島………お前のお陰で助かった」
 「そんな……」

 お礼、もしくは侘びを言うのはこちらなのだ。先に素子に言われては立つ瀬が無い。

 「実はな…」

 と素子は景太郎に視線を絡ませ、ほんの僅かだけ苦笑にも似た笑みを浮かべた。

 「呪いの類か、心の病か…まぁ、前者とは思うが、私はそれの所為で性欲を抑制できなくなっているんだ」
 「の、呪いって……」

 イキナリ物騒な話である。
 素子自身、今さっきの絶頂の手前ギリギリに思い付いた事であるし、他に説明の仕様も無い。
 それに、彼はそういったチカラを信じない方ではないが、やたらと曖昧だった。
 例えば幼刀ひなの力を大丈夫だといったり、ひなた荘別館の力を信じて使おうとしたり……これが素子の言葉でなければ、そして先程までの痴態を体験していなければ『気のせい』で終わらせていたかもしれない。
 尤も、彼自身が凄まじい性欲を持てた事を憶えているからこそ素子の言葉が説得力を持てている訳であるし、彼女のヨタ話一歩手前のそれを景太郎に受け入れさせる理由となっている。
 事実、二人が寝そべっている布団は、あまりの精液愛液の量によって風呂にでも浸けたかの様に濡れきって使用不可であるし。

 「まぁ、理由は解からんが止める方法だけは理解している。
  男に抱かれる、或いは陵辱してもらう…だ。
  無論、言うまでもないが、私は見も知らん男に身を任すほど軽くは無いし、御免蒙る。
  これでも女なのだからな」
 「そ、それでオレが……」

 考えてみれば手近にいるのは景太郎と瀬田のみ。
 いや、何よりまともに触れて話ができる男は今のところ親を除けば景太郎しかないのだ。
 瀬田は今またしても海外であるから、消去法に持ってゆくまでもなく景太郎という事となる。

 「こら」

 ビスっ!!


 「あだ―――っ!!」

 素子のデコピンが額に炸裂した。
 余人のそれではない。剣術家として鍛えてある素子の一撃だ。痛くないはずが無い。
 額からモクモクと煙も出ているし。
 景太郎でなければ頭が柘榴になっていたかもしれない。

 「勘違いするなよ? 私は手近にいる男がお前だから誘ったわけではない」
 「へ?」

 鈍感帝王でドジでマヌケ。
 要領が悪くて運も悪い。
 本当は全問正解で東大に受かるような底力を持っており、半年の修業で素子の動きについてこれるほどの身体能力も持っている。だけどコンプレックスからか表に出せる事が滅多に無い。
 だけどそれより何より、

 とても優しく、あたたかいのだ。
 素子は、そしてここの皆は、彼のそこが―――

 「お前がいたからこの想いを受け入れてしまったのだ。
  お前だから抱いてもらう気になったのだ。解かるか?」
 「え、えと……」

 真っ赤になる景太郎。
 ドスケベであるくせに、妙なトコだけ純情な彼は、彼女の肉体を蹂躙したというのにその告白によって真っ赤に照れていた。

 そんな彼の顔に唇を寄せ、

 「どうせ解く方法がつかめねばこのままなのだ。
  間を空ける事によって欲求も強まってしまうから、頻繁に交わらねばならん。
  だから“景太郎先輩”」
 「え、えと……?」

 素子の顔は、
 月光が映えるほど美しく、

 「お前が私を見、欲求が起こるたびに何時でもどこでもどんな時でも私を好きにしてくれ。
  犯し、穢し、蹂躙し、この身体を玩んでくれ」

 淫靡極まりなかった。
 口元に残る残液を赤い舌がペロリとなめとり、
 濡れきった眼で自分を見つめてくる素子に、

 景太郎は、なると同量にまで高まっている素子への愛情と、
 殆ど同量にまで固まってゆく素子への征服欲を確かに感じていた。








 そっと自分の手を月に翳してみる。

 剣士である事を誇っていたその手は、景太郎の精液でベトベトに濡れて汚れきっている。
 だけど素子はその手が、その穢れた手が何だか誇らしかった。


 「今の私が“お前”なのか“私”なのかは解からんが……」


 ベロリとその手を舐め、冷たくなった精液を啜る。
 冷めると味と香りが落ちるが、彼のモノなのでコクは残っている。


 「“成瀬川先輩”に対する憎しみが薄れたのは確かだな……」


 性行為による疲労で深い眠りに陥っている景太郎を布団に残し、素子は全裸のまま縁側に座ってそう呟いた。
 じわじわと膣から染みでたくる精液が縁側を穢すのも気にもせず、嬉しげに、楽しげに月を見ている素子。


 その月が照らし、景太郎にまで伸びている素子の影には、

 何故か翼の様なものが生えていた。

<素子の章 幕>


*************************************************************

  かなり今更ですが、
  初めまして、Pixyと申します。

  まだまだ文章が荒れている新参者ですが、長い眼で見てやってください。

  はっきり言って私は素子好きですので、この先人がどう増えようとも素子が関わります。何せあの娘は可愛いもので……

  ところで質問ですが、
  キツネさんば、『男になれているだけの処女』という説がけっこう多いのですが、どちらが宜しいですか?
  処女ならば景太郎に破られる運命が口を開けて待ってます。そりゃもう、むちゃくちゃに。
  でなければ、ストッパー的な役になるかも……結果は変わりませんがw
  いえ、プロット組みすぎてどれを使えばよいやら……
  あと、サラをどうしまょう? あの年齢のでも書けますしね。ハッキリと彼女の年齢書くとマズいのですがw

  という訳で、悪評が少なければまた投稿させていただきます。
  ここまでのお付き合い、ありがとうございました。



[2319] Re:Dotage ~妄愛 <幕間>~  (エロ無し)
Name: Pixy
Date: 2007/04/17 18:05




 ここには様々なえにしがある――

 その縁はずっと続き、繰り返し繰り返し綴られてゆく。
 様々な悩みと笑い、幸せや別れをも飲み込み、
 同じ円環を成し、ずっと―――

 だけどその輪は変化を見せた。
 我から望んだものではないが、それは確かな変化。
 革新とは程遠く、進化とは方向が違い、それでいて後ずさりでは無い進歩の一種。

 しかし、まだ確固たる姿は見せてはいない。
 それを見せる時、それは即ち円環の変貌の時であるのだから……





 「ううむ……これはどうしたものか……」

 “それ”を見上げつつ首を捻る美女が一人……
 磨けばかなり…いや、ただ立っているだけでもかなり目立つショートカットの妙齢なる美女。
 季節の大半をタートルネックのシャツがTシャツとスラックス、そしてエプロンという姿ですごし、
 トレードマークと言って良い程見慣れた咥え煙草のこの女性。

 名を、浦島はるかという。
 実は景太郎の従姉であるが、彼の祖母である浦島ひなたの養子になったが為に“叔母”という立場となったややこしい肉親である。
 只でさえ美形であるのに、モデル顔負けのプロポーションをもち、八極拳の達人という顔まで持つ彼女は、その発言権の強さも相俟って実質的なひなた荘の支配者でもあった。

 そんな彼女が難しい顔をして、その建物を見つめているのだから誰だって気になろうというもの。

 「はれ? はるか、どーかしたのか?」

 てててと駆け寄ってくるツインテールの外国人美少女。
 背中のランドセルがその年齢を物語っている。
 しかしどう見ても日本人ではないが、かなり日本語は堪能なようだ。男の子っぽいが。

 「サラか」
 「うん」

 はるか預かりの少女、サラ=マクドゥガルである。
 はるかと瀬田、その二人共通の友人で、はるかにとっての親友の愛娘である。
 以前は瀬田とあちこち飛び回っていたのであるが、今は一応腰を落ち着けてこの地で生活し、学校に通っている。
 以前はキワモノ揃いのひなた荘を嫌っていたのであるが、現在はひなた荘一のキワモノであるカオラと仲良く遊んでいるのだから、人の繋がりとは解からないものである。 

 そのサラが学校から帰ってきて直、はるかが目に入ってここに来た訳であるが、当の彼女は声を掛けても振り返りもしない。

 いや――?
 “それ”から眼を離せないでいる…と言った方が良いのかもしれない。

 「? 何見てんだ?」

 はるかの直脇によって来ても彼女は腕を組んだまま。
 サラの問い掛けにも顎をしゃくるだけである。
 何となくむくれながらその顎が示したほうに眼を向けると……

 「げっ?!」

 サラが驚くのも無理は無い。
 眼を丸くしているサラの視線の向こう。
 高台に突き出る形で建てられているその建物。

 それはそこにはあるはずの無いモノ。
 強い力を持っており、その力の強さ故に先々代によって封印され、例によって例の如く景太郎のポカによって封印が解かれた挙句、
 手違いで使用され、なると景太郎の魔力に対する執念の抵抗によって倒壊したはずの建物。

 無人別館がそこに燦然と建っていたからである。




―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
                           -盲・愛-
                           <幕間>

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――




 「ま。
  前に業者が入った時に修理されたんだがな」


 コテン

 はるかの一言にサラは見事にスッ転んだ。
 確かに、知らない内に勝手に直っていたのであれば怪奇現象であるし、只ならぬ謎が潜んでいてもしょうがないのであるが、誰が直したか解かっているのなら慌てる必要も無いだろう。
 やれやれ……驚いて損したと、サラは溜息を吐く。

 「ああ、知らなかったのか?
  倒壊した直後、景太郎となるに片付けを命じ、業者に頼んで瓦礫を撤去してもらったんだ。その時に……な」
 「あ、アホらし……」

 だったら即行じゃねーか。
 離れの横手に来ること等稀なので気が付かなかった。と、サラは肩から力が抜けた。

 しかし……

 「問題は、誰が修理の指示を出したかなんだけどな……」
 「へ?」

 続く言葉にサラは呆けた声を出してはるかを見上げた。

 「私は勿論、景太郎もばーさんもそんな指示を出した憶えが無いと言ってたしな」
 「だったら勝手にやって金取ったってか?」

 はるかは無言で首を横に振る。

 「いや……業者の方も“何故修理したかわからない”んだそうだ。
  だから指示の無い工事だったから料金は殆どいらんとさ……」
 「え……?」

 サラは軽い寒気を憶えた。
 瀬田パパについてあちこち回っていた時も似たような感触を感じた事があるが、今回のはそれに似ている。
 何時も“そういう感触”がある所は瀬田はサラを残し、一人遺跡に突撃していたのであるから、具体的には説明できないのであるが。

 「いや、それより気になっている事がある。
  一体誰なんだ? あの別館を使った奴は……」
 「“使った”?」
 「ああ……」

 もう使用された後。
 何者かが入り、中を使用した後なのだ。
 その証拠に、感じている力は継続中のようで、不思議な波動をはるかは肌で感じている。
 これがその辺りのカップルならばほっといて良いのかもしれない。勝手にくっ付いて幸せになってくれ。って感じだ。

 だが、問題は封印が“解かれていない事”、
 そしてカオラに設置してもらっているガードシステムが起動していないという事だ。
 カオラにガードシステムを設置してもらい、素子に頼んで再封印の護符をつけてもらっている無人別館。
 これらを回避しての侵入は不可能である為、そこらのカップルが入ってこれる訳が無い。

 ニンジャとくの一とか、魔術師と軽業師…等のぶっとびカップルとかなら兎も角も、普通の人間には踏み入る事すら儘なるまい。

 しかし使われている。

 何者かが入り、力を借りたのだろう気配がする。
 縁に介入してもらい、仲を取り持つ不可思議な力。
 ここで泊まるだけで、例え男同士でも上手くいってしまうという、あまりといえば余りに強い力の為にある意味恐れられている霊験あらたか(?)な館。

 なると景太郎。
 幼い時の公約を守り、東大に合格した二人の結び付きの力によって破壊された別館であったが、
 おそらくは業者の無意識に介入して自分を再建させたのだろう、以前より頑丈に頑強に作られている。
 無論、ある程度は祖母が裏で支払っているだろうが、それにしても……なんという力であろうか。

 自力修復したのであれば、回復した力によって景太郎となるを引き離し、加奈子と結ばせるやもしれない。それを危惧したはるかは素子に依頼し、カオラにガードシステムを作ってもらったわけであるが……

 その封じられたはずの“力”を今感じている。
 つまりは誰かが何らかの目的を持ってここを使用し、立ち去っているのだ。
 これは下手をすると由々しき事態になる可能性がある。

 それに………

 「……何だ? この波動は? 私が知っている別館の気配じゃないぞ……」

 いや、全く違う訳ではない。
 “少しだけ”違うという程度だ。
 だが、禍々しくは無いが、彼女が眉を顰めるほど邪まな色がそこはかとなく感じられる。

 泊まる者達を確実に結ぶ、縁結びの宿と言われている。
 そしてその力は必ず成功する事で広く知られてしまい、政略結婚に持ってこいの場として使われてしまったが故の封印だった。

 それが、
 青山という死を意味する名字を持つ素子によって以前より強化されている封印があるままに何者かに使用されている別館。

 訳の解からぬサラを尻目に、何か表現しきれぬ不安を伴った予感がはるかの心を這いずっていた。


 無論―――
 封印を掛けた当の本人が、このような事態に備えて封印を解かなかった事等に、


 はるかが気付く訳もなかった。




 只見守られているだけのひなた荘無人別館。その一室。

 開け放たれている一室の畳の上に敷かれたままの布団が一組。

 激しい性行為の跡を夥しく残したまま、それはそこに朝日を浴びつつ横たわっていた。

 まるで色に飢えた若者の再到来を待ち望んでいるかのように―――




*************************************************************

 どうも数日振りです。Pixyでございます。短くてすみません。

 実はこの幕間だけで今日三度書き直しました。いえね、本編の方がエロじゃなく下劣になりすぎたもので、クッションとして入れたんですよ。
 そしたら何と、辻褄が会わなくなってさあ大変w 結局書き直してこうなりました。
 まだ皆様には訳が解からない展開でしょうけど、何とか動かしてゆきます。

 皆様のご意見、ありがたく承りました。
 独占欲的に言えば処女が良く、キツネさんの色香からすれば非処女。難しいですね(汗)。
 男の人の欲望は良く解かりませんけど、どちらのご意見も肝に銘じなければなりませんね。

 という訳で、
 どーしたのかというのは次の章で。

 あと、お詫びを言わせていただきますが、私は人妻属性を持ってませんからはるかさんは無理です。
 ゴメンナサイ。当然、同様の理由で鶴子さんもムリです。

 因みに文中に出した<死を意味する青山>というのは、
 以前、大漢和辞典で調べたのに、高い志を抱いたまま死んだものの骨は、青みがかって見えるとあり、広い意味で“青山(せいざん)”とは「墓地」とあります。
 良い意味は、<志高く生きた者が死に、その骨が折り重なって出来た山>との事。
 “せいざん”は骨を埋める所という意味が結構あります。だからそう記しました。
 深読みし過ぎと言われればそれまでですが(苦笑)。

 ではまた……






[2319] Re[2]:Dotage ~妄愛<陸>~  (ラブひな)
Name: Pixy
Date: 2007/04/19 20:58


 ―――女子寮、ひなた荘の朝は結構早い。


 とは言っても、別に禅寺じゃないのだから日の出前から全員が起床して読経が始まる訳ではない。
 “一応”の取り決めによって、食事や掃除、洗濯等の仕事が当番制になっているから、朝食の準備に早く起きる寮生がいるというだけだ。
 尤も、前述の通りに“一応”は当番制だったのであるが、その仕事の多くは一人の女子の手に委ねられている。
 その少女の実家が洋食屋を営んでいた所為であろうかかなり料理の腕も良く、本人も面倒見が非常に良かった為、当時女子中学生だったその少女が大半を担わされたという訳なのだ。
 尚且つ、その他の女性に料理を任せるのはちよっと難がある。
 一人の留学女子の料理は下手では無いが非常……いや、“非情”に辛く、食した者にかなりのダメージを与える可能性が高い。
 よしんば上手くいったとしても、やたらバナナを使う可能性もあるし、たこ焼オンパレードの可能性も高い。
 もう一人、東大に通う美女も料理が嫌いでは無いが任せるのにはかなり難があるし。というか皆も止めてほしいと願う。それでも東大合格前よりかは遥かに上手くなってはいる。しかし、寮に住まう者達誰しも、美味いかどうか賭けをして食すようなチャレンジ精神は無い。どうせなら即美味いものを食べたいのである。

 で、結局その当時中学生、現女子高生の少女が一手に任される事となってしまったのだ。


 そしてその女子寮、ひなた荘において最後に起きる者がいる。
 朝食が全て出来上がった後、呼びに行ってやっと起こしてもらうという“だらしなさ”を誇る(?)美女。
 この寮に住んでいないくせに寮長をやったーてたりするはるかを除けば最年長の人物。
 余り知られてはいないが、このひなた荘を旅館から女子寮へと変える事となった原因であるその女性。

 名字のアクセントからか、何かと遊び心に満ち満ちている性格からか、はたまたその切れ長の細い目つきからか、親しい者にキツネと呼ばれているフリーターの女性。


 その名を、紺野みつねという。


 「……あれ……? 今…何時や……?」

 うっすらと眼を開け、手探りで隣に置いてあった筈の腕時計を探り当てて時間を見る。

 早い……エライ早い。彼女にしては早すぎる。

 「何や~? ウチにしては早すぎるやんか……
  こんな時間やったら朝メシもまだやろに……
  こらアカン……」

 何がどう“アカン”のかは知らないが、彼女的に言えば早起きは三文の損なのだろうか?
 もそもそと布団を被って夢の世界に戻ってゆこうとするが、こういう時に限って人は眠りに戻る事が出来ない。
 一度冴えた眼をまどろみに起ち戻すのはかなり難しいのである。

 「む、むむむ……眠れん……」

 眼を瞑ったままではあるが、がばっと布団をどけるキツネ。
 人が眠ろうとしていると言うのに全然眠気が戻ってこないのは結構腹が立つものなのだ。

 いや、原因は解かっている。
 昨日寝すぎたのだ。
 フリーターであるキツネは、バイトの予定さえ入っていなければかなりヒマである。
 はるかに代わって“日向”のカウンターに立たされたりする事もあるが、基本的にはヒマ。何時もなら次の日がヒマな時は休日前のサラリーマン宜しく、結構な時間までカオラと遊んだり、景太郎やなる“で”遊んだりしているのだが、昨日は何時もとはちょっと違う。
 京の銘酒、“月の桂”の逸品が、景太郎と同じく“遊ぶ相手であった”素子のツテから手に入ったのである。
 それも新作…所謂“新酒”である。
 元々口当たりが軽いくせに喉越しからずしんとくる味で、辛口では無いもののけっこう楽しませてくれる酒だ。
 キツネも名は知っていたし、何度か飲ませてもらった事もあったのだが瓶ごと貰ったのは初めてである。それも新作、新しい香りと風味があるとくれば黙っていられない。
 更に数にして二本。
 一本は今までの味で、もう一本が件の新作だ。飲み比べが出来るではないか。
 尚且つタイミング悪いというか最高だというか、むつみが実家から贈ってきたと烏魚子(カラスミ)やら塩ウニやらを持って来たものだからたまらない。肴まで得て彼女はホクホクだ。神が飲めと仰っているのだから飲まねばなるまい。いや飲む。是が非でも。特にはるかさんにばれないように(※絶対に飲まれるから)。
 ここまで説明をして更にその上で言うべき事でもないが、つまりキツネはその勢いで全て飲んでしまったのである。
 無論、キツネが二升で酔い潰れる訳ではないが、酒はツマミによっては悪酔いをするし、すきっ腹に入れれば早回りもする。更に、口当たりは良いが、それは飲み易いというだけでアルコール度が低いという訳ではないのだ。
 そしてキツネは気が付いていなかったが、その新酒は既存のものよりかなり強かったのである。
 どういう飲み方だったかは割愛するが、皆がよくアルコール中毒で死ななかったものだと不思議に思ってしまう飲み方だったとだけ言っておこう。


 ぶっちゃけ、飲み過ぎによる寝過ぎなのだ。
 うら若き女性としては如何なものだろう?


 「う~~~……」

 何とも悔しげに身を起こす。
 寝過ぎであるというだけで、二日酔い等の頭痛は無いようだ。安物の酒ではないのでその可能性も低いが量にもよる。どうやら肝臓の完勝だったらしい。身体に残るのは寝過ぎによるダルさだけ。若さを差し引いても凄まじい話である。

 それでもムッとした表情のまま座り込み、気だるげに頭を掻いてボ~~っとしていたりする。
 彼女としては、折角のバイトの隙間の休みに早起きをするのは大損こいた感じているのだろう。
 暇は嫌いではないが、退屈は好まないキツネ。難儀といえば難儀である。

 まぁ、起きてしまったものは仕方が無い。しかし只で起きるのは彼女の本位では無い。
 折角早く起きたのだから、それなりに遊ぶ事も考えている。

 少し髪を手櫛で直し、パジャマ代わりに羽織っていたワイシャツのボタンを二つほど外しつつ部屋を出る。
 ワイシャツの下は薄いブルーのショーツ一枚。
 男なら鼻血モノの艶姿である。

 そのまま廊下を歩き、目指す部屋……管理人室へと向ってゆく。

 そう、<管理人室>。
 この寮で唯一の男性であり、偉大なる先人であらせられる“お婆ちゃん”から管理人を任されている若者。
 ローニンの末に見事東大に合格し、前々から嫌いではなかったのだが、考古学という進むべき道を見出してから益々好意を抱く対象となった男、浦島景太郎の私室である。

 「眼ぇ覚めた時、ウチが布団ン中におったらどんな顔見してくれるやろな~?」

 考えている事は景太郎にとって碌でもないが……
 尤も、こんな身体を張った悪戯をする彼女であるが、彼女は意外なほど男性遍歴が薄い。
 元来、キツネは男友達が多いだけで『男好き』という訳ではない。
 様々な色気のある仕種から男性遍歴が異常に多いと思われがちであるが、そういう遊び女の性質の人間ではないのである。
 貞淑とまでは言わないが、なるの家庭教師をしていた瀬田に好意を持っていたこともあって男性に対する採点がかなり辛く、その辺のチャラチャラした男等は太刀打ちできないし相手にしないのだ……まぁ、飲み食い用の“サイフ”等に使う事くらいはあるかもしれないが……

 そんな男を見る眼がやたらと厳しく、更に嫌いな男ならば思わせぶりな仕種を見せず歯牙にもかけないキツネであったが、彼女は…見た目はよりかなり景太郎対して好意を持っていた。

 データ的に言えば、加奈子の調査によるラブラブ偏差値が七人中……尤も、その七つ目は温泉亀のタマゴなのだが……五位。
 ぱっと見は低そうであるが、一位のなるを除けば全員が僅差であったし、それは留学から戻った景太郎の顔を見るまでの話である。
 帰って来た景太郎の顔を見、進むべき道を見つけ、夢に向っている景太郎の“男”の顔に全員が惚れ直したのも事実。
 景太郎に対するアプローチが唐突に激しくなっていた事等からして、順位という位置は兎も角として、現在の好意度はかなり上昇していると思われる。
 下手をすると『景太郎なら結婚してもいいかな?』等と考える事が出来るレベルかもしれない。
 加奈子によってラブラブ偏差値を発表された時にも素面で好きだといっているし、骨抜きにされていると口にしているし……

 因みに、当時の偏差値は、

 一位 なる………76
 二位 カオラ……70
 三位 しのぶ……69
 四位 素子………67
 五位 キツネ……65
 六位 サラ………62
 七位 タマゴ……60

 であった。
 しかし、幾らひなた荘に住んでいないといっても、むつみという超大穴を偏差値調査に入れていない所が景太郎の義妹らしく抜けている。

 さて、そんな風に足取り軽く景太郎の部屋へと向うキツネであったが、前述の通り、彼女は彼の事がけっこう好きである。
 今だってからかう為という“口実”を作って彼の寝所を目指しているのだ。多少誤魔化してはいるが、下手をすると無自覚の可能性もあるが間違いなく本気である。
 単に成瀬川なるという高校時代から世話を焼いていた後輩を悲しませてまで男を盗ろうとまで思っていないだけで、もしなるが他の男に眼を向けたままであったならば、自分でもどう動くか予想も出来ない。
 ただ、姉御肌で妙に世話焼きの部分が強いキツネの事、なるが景太郎とくっ付いていなくとも自分の順番はかなり低くしておく事は目に見えている。
 素子,むつみ,しのぶ,カオラと、彼を慕う者はまだまだいるのだから。

 ペタペタと廊下を裸足で歩いていたキツネであったが、ふと朝日の差す窓の外に動くものを見つけ眼を向けてみた。

 「ん? ……あ?」

 と悔しげに指を鳴らす。当てが外れた…という奴だろう。
 彼女の眼の先には、何やら言い合いつつ寮に戻ってくる男女の姿。
 長い髪をポニーに束ねている剣道着姿の少女と、留学から帰って益々人間的に成長した件の気になる男……
 青山素子と浦島景太郎の二人が帰ってくる姿があった。

 手に持っている木刀からして、景太郎が素子の朝の修業に付き合っていたのであろう。
 以前の景太郎のようなローニンと化してしまった素子は、朝に鍛錬,昼に勉強,夕方鍛錬,夜勉強というルーチンを組むようになっている。
 その鍛錬の時において、留学中に瀬田から体術を学んできた景太郎が加わっているのだ。
 元々の不死身体質に加え、本気の素子の動きについてゆける今の景太郎は素子にとっても良い練習相手であるし、景太郎にしても良い運動になる。報酬は素子の家庭教師なので特にデメリットはない。

 「ほれに、モトコにしてみたらエエ事尽くめやしな」

 とニヤリとキツネの口元が歪むほど。
 何となくリードを取りたいのだろうか、なると張り合っているかのような素子のその行動には妙に微笑ましいものを感じてしまう。

 素子が景太郎の事を心底好いている事は以前から気が付いていた。

 今もその気持ちを持て余しているだろう、素子の不器用さになると同様の同情心を持ってしまうのは仕方の無い事だ。
 何せ男女の仲であるし、今の生活によって高まった気持ちだ。下手にその自分の中にある想いを認め、景太郎にそれを告げれば今の関係が壊れてしまうかもしれない。
 確かになるよりかはマシだとは思うが、素子とて上手な方では無い。というか不器用だ。だから今の位置を破棄する事はできないだろうと彼女は踏んでいた。
 
 何せ今現在の二人でさえ、なるが嫉妬して不機嫌になり、景太郎に対して唐突にレバーブローを放つほどなのだ。
 景太郎でなければ二日と生きていられまい。

 「ま、当ては外れたけど、朝からエエからかいのネタもうたという事で……………んん?」

 ニヤつきつつ踵を返して部屋に戻ろうとしていたキツネであったが、二人の動きを見て足が止まった。
 何かを言って素子が答え、景太郎が赤くなる。まぁ、そこまでは良いだろう。
 だが、何らかの言葉に首を傾げた素子が唐突に景太郎の前に立って抱き締めたのを見た時には流石のキツネも声を失った。
 顔が真正面からぶつかっているのが見える。

 『いや? ややモトコの頭が斜めになっとる?
  まさか、キスしとるんか?
  モトコが……?! そんな……』

 それだけでは無かった。

 微笑すら浮かべて顔を離した素子を、今度は景太郎が抱き締めて素子にキスをしていたのである。
 今度はキツネの位置からでも完全に唇を重ねているのが見えていた。間違いなくキスをしていのだ。そしてそれは景太郎から行う激しいもの。距離がある為良く解からないが、何故かキツネは舌を絡ませ合っていると感じていた。

 素子がキスをするのだったらまだ解からないでもない。
 だが、景太郎が、
 景太郎から素子に激しくキスをするとは思いも寄らなかった。

 「けーたろ………」

 無意識にワイシャツの襟をきつく握り締めているキツネは、自分の中の湧いた疑念を持て余したまま、仲睦まじく戻ってくる二人の姿を見つめ続けていた。




―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
                           -盲・愛-
                           File:陸

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――




 「「「「「「「いただきます」」」」」」」


 ひなた荘の面々。そしてご相伴に窺ったむつみを加え、ひなた荘の朝食は始まった。
 今日のメニューは和食寄りで、ひじきが付いているしメインも鰤の照り焼きだ。けれども厚焼き玉子の“芯”がハムだったり、レタスとトマトのサラダが乗っていたりと実に和洋折衷で日本人らしい食事。
 それにほうれん草おひたしや、根菜の味噌汁がついていたりする。
 当然それに付くご飯は炊き立てだ。ごま塩だけでもお代わりが出来るほど美味い。


 「相変わらずしのぶさんのお料理は美味しいですねぇ」
 「そ、そんな……」
 「しのむの朝ごはん、やっぱりウマイっ」
 「デザートは…パイナップルのゼリー? やたっ」
 「むぅ…厚焼き卵が焦げていない。黄金焼きか…又腕を上げたな」
 「あ、景太郎。醤油とって」
 「はいよ」


 と、結構和気藹々の朝食風景だ。
 景太郎が住み始めた最初の頃から言えば奇跡の様に穏やかである。

 あの時は誤解と嘘に対する怒りから敵視されてたっけなぁ……等と今の平和を噛み締めて涙ぐむ景太郎の姿があったりなかったりするが、それは兎も角。

 騒がしいというほどでもないが、決して静かでは無い食事風景であるが、そこに足りないものが二つあった。

 一つは空席。
 いつの間にやらこのひなた荘に住み着いてしまった少女の席。
 初めてやって来た時からこの寮に大騒動を起こし、旅館に戻して他の皆を追い出し、愛しい兄と二人で経営しようと画策していた少女、
 景太郎の義妹、浦島加奈子の席である。
 つい二週間前から実家に戻っており、数日後には帰ってくるとの事。
 やっと会えた兄と一ヶ月近くも離れ離れになるというので一緒に寝てとせがんだ事は先日の様。
 当然、何故か景太郎がなるに殴り飛ばされて事無き(?)を得たが。
 理由は不明であるが、その空白の時間から拠所ない事情があると思われる。でないと景太郎と離れ離れになる理由が無い。

 そしてもう一つ足り無いモノがあった……
 ある女性から“元気”が失われていたのである。
 その女性は、何時も元気良く物を食べ、美味ければ褒め、不味ければ思いっきり言う。
 こう書けば傍若無人であるが、その女性はフォローは忘れない。
 やはり若さからか焦るとフォローにならないセリフをぶちかましてしまう事もあるが、二十歳を僅か超えたばかりであるというのに気配りは大人のそれを持ち、仲が拗れまくる景太郎となるの良き助言者として信頼されている女性。
 
 キツネこと、紺野みつねである。

 何時もであれば、もっと会話に参加し、騒がしいと言わないまでもかなりの言葉を口にしつつモノを口に放り込んでいたはずである。
 無論、作法を知らない訳でもなく、その気になれば何でも出来ると尊敬すらされているキツネであるが、この寮に住む皆の事を家族として受け入れているので食事も会話も楽しんでしまので多少行儀が悪くなってしまうのだ。

 そのキツネの様がおかしい。
 今も言ったが元気が無い。
 何時であれば、行儀の悪い行為とされている“指し箸”すら普通に行ってしまうその手は静かに箸を進め、
 笑みを浮かべ、時には笑いながら物を噛むその口は、ただ黙々と口に押し込まれる食材を噛み締める行為に没頭していた。 

 違う…明らかに何時もの彼女ではない。
 その普段との大きな差異が、妙に彼女を浮かせて目立たせている。

 別に空腹だった……という訳でも無さそうであるし、味に問題があるという訳でも無さそうだ。
 それだけに皆も不安になってしまう。
 カオラですら箸を止め、何だか覇気を無くしているキツネに眼を注いでいるのだから。
 当のキツネはその眼差しにも気付かない様子で、作業のような食事をただただ続けるのみ。

 「あの……キツネさん。どうかしたんですか?」
 
 流石に気不味い空気に耐えられなくなったのだろう、代表のようにしのぶが問いを口にした。

 「……え?」

 少しタイミングをずらしつつも、キツネは顔を上げて問い掛けの主…しのぶに顔を向ける。
 言っている相手に反応したのではなく、声の方向に反応したかのようだった。

 「な、なんや? どないかしたんか?」

 相手がしのぶだという事に今更気付いたキツネは、動揺を無理矢理押し込んで何時もの様に問いかけを問いで返す。
 が、その様子が余計に皆の心に疑念を呼ぶ。
 これだけ皆に見つめられている上、そんなキツネを無言で見つめ続けていたというのに、その無音状態にさえ気付いていない。
 食事中の静寂をあまり由としない彼女にとってこれは珍しい事である。
 
 「どうしたって……ホント、大丈夫なんですか?」
 「な、何がや? うちは別に……」

 おかしいトコやあらへんで? と言いたいところであったのだが、視界の隅に景太郎の自分を心配する顔が入った瞬間、胸の奥から黒雲の様な不快感が湧き出してきて、思わず眉を顰めてしまった。
 思わず眼を逸らすものの、その不快感の何に対するものか、そして誰に対するものかまでは思い至らない。
 当然、訳の解からないしのぶは困惑するが、それもまた気が付かない。

 「なぁ、どないしたんやー? ちょう、今日のキツネ変やで?」

 何時も向日葵のような笑顔を向けてくるカオラですら心配げな表情を関西弁の師であるキツネに向けていた。
 珍しいカオラの口調に、流石のキツネも気付く。
 不快感の理由は解からないのだが、彼女らに心配をかけてはいけない。面倒見のよい彼女は素早くそう悟る事ができた。

 「なんでもあらへんて。心配しなや」

 そう言ってカオラの頭に手を伸ばして優しく撫でる。
 カオラも今一つ納得しきれていなかったが、何時もと同じ柔らかな仕種に一応の納得を見せはする。安心はしていないかもしれないが。

 そう、下手に暗い顔をしていれば、妙に心配性の後輩がやたらと気にしてしまうではないか。
 となると、当然あの景太郎と素子の関係もなるに―――


 ずきんっ


 「う……っ」
 「?! キツネさん?!」

 そんな思いに至った瞬間、今度は素子の顔が視界の隅をかすめていた。
 と、同時に胸の奥が激しく痛んだ。


 いや――?
 正確に言えば器官が痛んだのでは無い。キツネ自身も何となく気が付いてはいる。言ってみれば肉体的な痛みに感じる程の感情の痛み。
 それが何なのか……? まさか……
 

 確かに自分は景太郎の事は好きである。はっきりと口に出来るほど。むしろ大好きといってよい。
 身体を求めて来たら、それはちょっと悩むが……-何でや?-
 身を引くとか言う気持ちは更々無いが、-せやな-あえてなるから奪うという気も更々無い。-なして? 好きやのに?-
 だが、あの時……
 景太郎が素子にキスをされたのを見たとき、
 素子が景太郎にキスをしたのを見てしまったとき、
 確かに胸の奥に何かが突き刺さるのを感じていた。それは……?-嫉妬や嫉妬。うちもけーたろにしてもらいたいんや-

 いや、今の心地いい関係を壊したくは無い。-せやな-
 カオラと遊ぶのもいいし、真面目な二人、しのぶや素子をからかうのも楽しい-モトコ、真面目ちゃうかったやん-
 それにあの二人……
 じれったいにも程があるあの二人、高校時代からタイミングが劣悪に悪いなる。そして、なる並にタイミングが悪く、運も悪い景太郎の仲を取り持ってやらねば、何時まで経ってもあのままだろう。-正直になれへんのやから自業自得やん-

 ―――何かが語り掛けて来る。
 何かが自分に訴えてくる。
 大切な後輩である成瀬川なるに告白したというのに、その想いを裏切っているとしか思えない景太郎に対して感じた筈の憤りが、何故だか方向を捻じ曲げられてゆく。

 そう、
 何でさっき、けーたろに抱き締められとったんはウチとちゃうんや……―――


 「キツネさんってば!!」

 「わぁ―――っ?!……って、し、しのぶ? 一体どない……」
 「どーしたもこーしたもないですよぉっ!! いきなり独り言言い出して……ホント、どうしたんですか?!」
 「へ……?」

 気が付くと自分の思考の海に沈んでいたようだ。
 皆の心配そうな視線が痛い。
 これはいけない。

 「あは、あははは……その…ゴメンゴメン。
  夕べモトコにもろた酒、全部飲んでもてな。ちょっと二日酔い気味なんや」

 二日酔い~? とかなり疑問の色が混じってはいるが、一応の納得できる話を得た皆もほっと胸を撫で下ろした。
 素子が「二升を一気飲みしたんですか? 流石にそれは飲みすぎでは?」と驚きを口にした為、皆も得心が入ったものの流石に二升の酒を一気飲みという話には呆れる。
 無論、本当は分けて飲んではいるし、少々酒気が抜けてから飲まないと味を堪能できない。尚且つ、良い酒は二日酔いし難い事を知らなかった事もあって、ようやくキツネが変だった理由を受け入れる事ができた。

 「ま、そういう事やから心配せんでええわ。
  でもま、一応は大事とって寝とる事にするわ」
 「え? あ、はい。お大事に……」

 あまりこの場にいてはいけない。
 何故かそう直感したキツネは席を立ち、しのぶに食事を残した事に詫びを入れ、自然を装いつつも足早に自室へと戻っていった。
 他の皆もそんなキツネの事を気遣いつつも、二日酔いなのだからと気にせず食事を再開する。
 なるも景太郎も講義があるし、しのぶもカオラも学校があるのだから……

 ただ―――
 素子だけはその背を眼でずっと追い続けていた。






 生理や無いのに下腹が“ずくずく”する。
 痛い……んやなくて、苦しい。
 何か飢え死にしかかっとるような感触。いや、飢え死にしかかった事や無いけどな。
 心臓の動きに合わせるように、下腹から奇妙な疼きが駆け上がってくる。

 「あかん…寝れん……」

 流石に半日以上横ンなっとったから、身体がダルぅてしゃあない。
 今は……と、時計に眼を向ければデジタル文字が十一の文字を見せてくれる。
 言うまでもなくPM。

 酒もとっくに抜けたしなぁ……しのぶには悪い事したな。
 と、ベットの脇に眼を向ければ、そこには一人用の土鍋。
 しのぶが酔い覚まし用に作ってくれたおじやを食べた跡。梅干やらほぐした鮭やらのりの佃煮やら野沢菜やらが添えてあって、それが何とも嬉しい。
 お茶とは別に置かれとる保冷ポットには冷たいレモン水。いたせりつくせりや。

 はぁ……

 と口から出るのは溜息ばっかり。
 その意味も、熱さも理解でけへん。
 眼を瞑ればけーたろの顔が浮かぶ。
 モトコを抱き締め、モトコとキスしとるけーたろ。
 あれだけ離れて見とったのに、浮かんどる映像は間近のそれ。二人がキスしとんのを真横で覗いとるようなもん。

 ずずず……じゅるじゅるじゅる……はぁはぁ…あむぅ……

 あの時には聞えていない筈の湿った音。
 僅かに離れている唇の間で、上下に重なり、時々絡み合っとるのは言うまでも無く舌。
 赤いのとピンクなのが僅かな隙間から見えとる。
 ぐちゃぐちゃと蠢いとる舌の動きはイソギンチャクかナメクジの絡み合いみたいに気色悪い。
 モトコの顎を伝って滴り落ち、剣道着の胸元を汚す唾液もいやらし過ぎる。
 おまけに時々モトコの喉が動く。

 ああ、飲んでんねや……飲ませられ……ううん、飲ましてもうてんねやな……モトコ……
 ……ええなぁ……それ……
 ウチも……ウチも…………………

 ………つつ??!!

 ガバっと身を起こす。
 全身が汗でベトベトや。
 想像しながら半分夢見とったようやな……ヤレヤレ……

 危なかった……いや、ホンマ危なかった。
 もうちょいで、ホンマにもうちょっとんトコで………

 “羨ましい”や思うトコやった……

 『のわ―――っ!!』

 ぶんぶんと手を振って妄想を散らす。
 声に出しそーになったけど、ギリギリ出さんかった自分を褒めたる。

 何や……何やこれはー?!
 あかん、ウチ……ひょっとしたら……ひょっとしたら……
 いや、間違いない、信じられへんけど……ウチ……




 モトコに嫉妬しとる?




 ……今までも嫉妬みたいなんはあった。
 廊下を歩いてて、ふと庭先に視線を向けたら見えてもた、けーたろとなるのいちゃつき。
 加奈子の一件から妙になるが積極的になって、アプローチをかけるようになった。
 だからドコでいちゃつこうと、キスをしようとかまわない。かまわん筈。その筈なんやけど……

 昨日も見た、なるにキスしとった けーたろの唇は、今朝、モトコの唇を塞いどる……
 浮気か? けーたろにしてはやるなぁとも思う。
 天然の……“天性”のではなく、“天然”の……浮気性である けーたろは、なるという一人の女では受け止められへんのやろか…?
 ブランドでしか男を見られん女には解からへんやろけど、けーたろはホンマええ男なんよなぁ……優しいし、ええ奴やし、人の大切なもん気遣えるし……
 顔は……実はけっこう素材ええし……
 あかんなぁ……もう口先でしか けーたろを貶すコトでけへん……
 ほんでも、けーたろもけーたろやなぁ……どうせ浮気すんのやったら、モトコやなしにウチにしといたら後腐れもないのに……逃す気は更々無いけど……
 せやなぁ、その後腐れの無さっちゅーのをアピールしてみたらどないやろか? そしたら けーたろもウチに……

 『だ―――っ!! ウチはナニ考えとんや!!!???』

 最悪……
 何時の間にか けーたろに抱かれる方法を考えよる。
 こりゃあかん…汗流してとっとと寝よ……

 着替えとタオルを持って部屋を出る。
 元々が旅館やから、人気の無い深夜に歩くんは実はけっこー気色悪かったりする。
 夜やから音を立てんよーにコッソリと歩く。まぁ、最低限のマナーやな。
 そんな廊下を歩いて風呂場に着くとちょっとホッとするのは仕方が無い。ウチかて女なんやし。

 さて入るかとシャツのボタンに手をかけたその瞬間。
 ウチの耳に小さく、それでいてハッキリと甘ったるい声が響いてきた。

 「え……?」

 ふと気が付くと風呂場への戸が小さく開いている。
 そこから湯気が脱衣場に零れとる。はっとして見回して見つけた篭ン中、モトコが何時も寝間着にしとる白衣と、それに重なるように入れられとる男物のシャツとトランクス……

 「ま、まさか…………」

 ウチは四つん這いになってジリジリと戸に近寄ってゆく。
 間違いない。あン声は中から聞えて来よんや!
 ワイシャツを着たままやったけど、ウチは戸をじりじりと開けて風呂場に入ってゆく。
 膝がゴツゴツとした岩を感じて痛みを伝えてくるけど気にならへん。
 それよか気になるモンがそこにあるんやから……


 「出したくなった何時でも良いのだぞいいぞ?」
 「素子ちゃん…」


 周りが湯気でもうもうとし、こんだけ湿気とるのにウチの喉はカラカラやった。
 やっとの事で辿り着いた岩の影、
 “あいつら”からそれほど離れとらんそこから 身を隠しつつ頭を上げたウチの目に、


 ――腰まで湯に浸かっとる けーたろの股の間に頭を埋めとるモトコの姿が飛び込んできた――






[2319] Re[3]:Dotage ~妄愛<漆>~  (ラブひな)
Name: Pixy
Date: 2007/04/21 09:36
 以前……とは言っても、ついこの間の事であるが。
 加奈子が、接待試験を名目に皆のラブラブ偏差値を調査した事がある。
 その時、加奈子は得意の変装術を駆使し、女であるむつみを景太郎そっくりに仕立て上げ、その偽景太郎を使って皆の反応を測る事にしたのだ。
 なつみは元々、景太郎に対してかなり好意を持っていたのである程度の物真似は可能である。まぁ、キス魔であるから途中で何時もの騒ぎとなって、建前の試験はパーになったが……

 それは兎も角、その偽景太郎、胸はサラシで押さえ、股間には詰め物をして“男”を形作っていたのであるが……
 股間のブツについては、『兄ならあのくらいはあるでしょう』という加奈子の独断と妄想のサイズだった。

 流石に“アレ”は大げさ過ぎやわ……

 と、キツネは思っていた。


 今日までは………


 ま、まさかマジやったんか……

 そんな呟きすら口に出せないほど、キツネは目の前に行為に心を奪われていた。

 水面に突き出ているのは以外にも無駄毛の無い景太郎の二本の足。
 留学中に鍛えていたのが良く解かるほど、以前より肉が付き、尚且つしなやかになっている。

 その足はプルプルと細かく振るえ、片足が力を失って湯に隠れた。
 と同時に、その太股に挟まれていた頭がよく見えるようになる。

 風呂に入る為にアップに纏められている黒髪。
 左程の距離をとっていないので、その童顔さが目立つ横顔もハッキリと見えている。
 だが、その女性……いや、まだ二十歳に達していない少女の顔は、今行われている性戯に赤く染まっているではないか。

 口にしているのは男の異物。
 黒々と、ゴツゴツと、そして熱い熱い男の性器。
 少女の口にはあまりに大きいそれは、亀頭の部分を隠すので精一杯。

 「浦ひまへんはい……ンん…ちゅっ、ちゅっ……
  すまん……やっふぁり、はふ…これ以上口に入らんのら……れろれろれろ……」
 「う……くっ…い、いいよ、別に…くぅ……っ」

 やっぱり? やっぱりって言うたんか?

 二人声を耳にし、物影から覗いているキツネは衝撃を受けていた。
 “やっぱり”という事は、既に試して事がある…という事であり、今の二人の行為が初めてでは無い事を物語っている。

 この人目の多いひなた荘のドコでそんな事を……

 等と思考が逸れたその時、その男の…景太郎の身体が青竹の撓った。

 「んふぅ……はふはふはふ……その代わり、丁寧に舌で舐め清めてやろう……
  隅から隅までな……ん~…ちゅっ、ちゅっ、ちゅっ♪」

 ニィ…と淫靡極まりない笑みで彼を見上げ、少女は……素子は鈴口付近に優しくも激しい接吻をおくる。
 シャフトをしごく手も止まりはしない。彼を気持ちよくさせる労力は惜しまないのだ。
 左手は袋を揉む。無論、握力は最弱にして。精々この肉袋を撫でる程度。

 「そ、そんなの、何時もの、事じゃ、ないかぁ……っ!!
  う……ぁっっ!!」

 い、何時もの事ぉっっ?!

 やはりそうだったのか?! とキツネは再度ショックを受けた。
 しかし、そうなるとどこで行っているのかという話になってくる。
 景太郎の部屋は論外だ。何せ上のなるの部屋と未だに繋がっているのだ。声どころかそんな気配を立てただけでなるが飛び込んで来るだろう(そして景太郎は宙を舞う)。
 となると、この露天風呂か素子の部屋となる。
 だが露天風呂のリスクは大きい。ここは何時誰が入って来るか解からないのだ。現に今も自分が覗いているし。
 消去法から言えば素子の部屋だ。

 しかし――

 “あの”素子が、あの部屋で、ンな事するんか?
 という疑問が湧いてくる。

 誰もが知る剣道少女、青山素子。
 ここに来た当初はかなり張り詰めた雰囲気があり、中々ここの空気に染まれずにいた。
 堅物で融通の利かない真面目すぎる少女……それが素子への皆の印象だったのだ。

 その素子の部屋。
 フローリングといえば聞えは良いが、畳を剥いだ板張りの部屋。
 戸を開ければ最初に目に入る鎧武者。鴨居にある固い文面の筆文字の額。壁に掛かる掛け軸。そして刀掛け。
 味も素っ気も女っけも感じられない、本当に固くて冷たい部屋だった。
 女の子の部屋というよりは武家屋敷の様だ。
 
 その板間でやっているというのか?
 いや、布団を敷く為に畳が置いてあるスペースもあるが、何故かその上で交わっているイメージが湧いてこない。
 どういう訳かキツネの脳裏に浮かぶ二人の行為は、板間の上で景太郎に組み敷かれて犯されている素子の姿。
 以前見た加奈子の捕縛術によって絡みとられた素子の様に、荒縄で縛られて転がされ、うつ伏せにされて後ろから景太郎に突かれている素子の姿。
 犯されているのに嬉しそうで、冷たい床に押し潰されている胸の先にある乳首も尖りきっている。
 舌を突き出した素子の顔も、床に押し付けられてはいるが、口から滴って床を汚している涎が指し示すように痛みも屈辱も無いようだ。

 『ああ……あぁあああ………
  モ、モトコ………けーたろ…………』

 汗と湿気によってべっとりと肌に張り付いたワイシャツとショーツ。
 その90はある形良く大きなバストの先には固くなった乳首があった。
 何時の間にかキツネは岩場に顎を乗せ、身体を支える必要がなくなった左の手はその胸に、
 右の手は股間に伸び、撫でさすりながら自らを慰め始めていた。

 そのとろけた視線の先にある二人の行為、
 奉仕の激しさを増してゆく素子のいやらしい舌の動きに何時しか彼女の舌は連動し、


 心は既に幻の景太郎のペニスを追っていた。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
                           -盲・愛-
                           File:漆

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
 「……」

 素子は景太郎の股間から一旦顔を離し、ゴクリと唾を飲み込んだ。
 自分が奉仕しているモノを、
 自分を女にしてくれた愛しい人の物を再確認するかのように。
 素子はもう一度、景太郎の足元にうずくまり、最近は竹刀や木刀等より肉柱を握り締めている時間の方が長い手指を馴染んでいるその肉の幹に巻きつけた。

 反り返って中空を睨みつけている景太郎のペニス。
 どうせならこちらを睨んでほしいものであるが、若さからか興奮の為か、物凄い仰角で空を睨み据えている。

 何時もの様に愛おしげな表情で股間に顔を寄せ、その亀頭部に頬ずりを始めた。 
 それも両頬を使っての頬ずり。言うまでも無く、これも愛撫の一環である。

 「うぅ…っ!」

 景太郎の口から漏れる切なげな声。
 それもまた嬉しいもので、シャフトをすり上げるような頬ずりは止む事が無い。

 「も……っ、
  素子、ちゃ……んっっ!」

 その喘ぎ声でやっと現世復帰する。
 いけないいけない。自分は彼を悦ばす存在。自分だけ浸っていてはいけない。
 素子は上目遣いで彼の顔を見上げ、無言の謝罪を行った後に自分の使命を再開させた。

 即ち、この“むくつけきモノ”を御鎮めするという崇高な使命を……

 うわ……うわぁ、うわぁ……
 け、けーたろぉ……


 キツネの目の前に、幻想の景太郎の得物があった。
 さっきまで……いや、今も素子をあのように狂わせている、景太郎の逞しい陰茎。
 
 気の所為かも知れないし、夢の率の方が高かろう。
 だが、今のキツネは素子と同じものを見、同じものを感じ、

 同じ幸せを感じとっていた……

 「……ンん……」

 景太郎が妙に甘い声を漏らす。
 素子と同じタイミング、同じ動作で自分に向いていない肉幹を掴んで無理やりこっち向かせる。
 流石のキツネも“こんなモノ”をまじまじと観察した事は無い。どんなモノか知っていようと、間近に置いて愛撫する対象等ではないのだ。だからどんなものかはハッキリとは知らなかったわけである。
 だが、こうしてみたら結構可愛いと感じてもいる。


 ……いや? キツネの弁を借りるならば“カッコエエ”か?


 先端の鈴口は閉じているが、ここから景太郎のエキスが出ると思えば堪らなくなってしまう。
 次にどうするか? 等の詮索は無用。
 素子とキツネは思考が繋がっているかの如く思考動作を共にしている。つまり、素子は“何時もの如く”はしたなさに酔いながら『あ~ん』と口開けてその先っぽを頬張れば、キツネは幻想のペニスを口にしていた。

 景太郎にキスした事くらいはある。
 単に冗談でやったのであるし、素子も今朝やっていた。しのぶは……どうだろう? いや、しのぶとサラは兎も角としても、景太郎は寮の他の皆全員とキスをしている。
 キス魔…というわけでは無く、生来のドジっぷりにウッカリとそんな感じになってしまうのだ。双方の意思でやってもらっているのは なると素子だけでは無いだろうか? 
 だからキツネは、キスをするという意思の元に迫ってくる唇を避けられないのであるし、その感触も以前のジョークに行ったキスとは比べ物にならない。
 よって至福の今のキスと比べれば火星とスッポン。愛情の度合いがまるで違う。
 その所為だろうか? はたまた何かの性癖に覚醒してしまったのか、キツネは唐突に濃い汗の味も全然OKになっていた。

 「う、うわっ!! くぅうう……っ!」

 その熱の入用に景太郎が切なげな声を漏らす。

 勝ったっ!!

 ……いや、何に? と聞かれたら困るのであるが、景太郎の喘ぐ声が妙に勝った気にさせてくれる。
 女として、自分の性戯を悦んでもらえれば嬉しさを憶えるというもの。
 下手だろうが上手かろうが、舌の使い方を悦ばれたり、相手のポイントを探し出すのが上手くいったりすればそれはそれで嬉しいものなのである。

 だが、それだけ悦んでくれているのであるから、
 “悦ばさせて”くれたのであるなら、お礼くらいはキッチリとしなければなるまい。

 オンナは態度で示すモノ。
 だから素子キツネは、もっとフェラに熱を入れた。
 
 亀頭の先端、尿道に舌を差し込むつもりで舐め穿り、ちゅ~っと音を立てそれでも強くならないように吸う。
 カウパーの苦味が舌の味蕾に乗って脳に伝えてくる。
 ピクピクと、ビクビクと脈動する景太郎のの肉の棒が逞しくて頼もしい。
 ぶっとい血管の浮くそれは、やはり海綿体に血が詰まっている為かとても熱かった。
 そして何より―――ウマい。

 “美味い”でも“旨い”でもOK。気持ち的には両方であるのだから。
 ギンギンにおっ立っている黒光りする肉の幹に走る、膨れた血管のデコボコの部分。
 その部分に舌を這わせて感触を楽しみ、皮をギュッて引っ張っている亀頭の裏側も穿るようにキレイにする。
 ちょっぴりと舌先を痺れさせたのはカスの味か? 
 残っていてくれたのであろうか?
 ちょっと儲けたという気になる素子キツネ

 ざりざりいうカスの歯ざわりを堪能したいところではあるが、メインディシュが迫っているので我慢する。
 こくんと喉に落として胃に吸収してもらう。

 ちゅ、ちゅ~~……ずずず……


 ポタポタ垂れてくるちょっと苦いカウパーも、

 はふ……ン、んん~~~♪
 ふはぁ……はむっ


 湯で洗われてあんまり汗の味がしてくれない陰毛の所も、

 ちゅぽ……もごもごもご……ンっんんん……
 ぷはぁ~……ちゅぽちゅぽ……はむはむ、ん、もごもご……ンん~♪


 そして袋。
 全部が全部、大好きな景太郎のモノ。
 その性器に満面の笑みで持って奉仕すると、彼は腰を引くつかせて気持ちよがってくれる。それはとても嬉しいものだ。

 ん~……んぐんぐんぐ……んっ…んん、あん、んぅ、ぅんむんむむ……


 素子の咽喉奉仕に慣れては来た景太郎ではあるが、慣れてきているというだけで平気なわけが無い。
 その熱烈な愛撫に身を捩って耐える事しか許されないのだ。

 彼女は黒髪をアップにした頭を揺らし、今回も竿の部分まで咥え込もうと努力を続けている。
 しかし、やっぱり無理。京生まれの京育ちである素子は、躾の厳しい剣術家の家系。よって、大口を開けて笑うという“はしたない”行為など許されるはずも無かった。
 大笑い等を出来るようになったのは“こちら”に来てからなのだから。
 よって、さほど大きく口を開けられる筈も無く、カリの大きい景太郎のペニスを喉奥まで引き入れられないのである。

 それでも彼女は努力の徒。引き込めないならと亀頭の半ばまで咥えては出し、また亀頭を咥えこんで舌先でぺろぺろと先端を舐めて奉仕する。
 さすがは尊敬する姉上、鶴子に自分より潜在能力が高いとまで言わしめた少女。惚れた男に対する意気込みでも姉は及ばないだろう。
 豪胆なディープスロートが不可能ならば、微にいり細にいり丁寧に奉仕して悦ばせるのみ。
 確かに素子は益荒男ますらおではないが、大和撫子ではあるのだ。男を起てて悦ばせる事を忘れはしない。

 「れろ…れろれろ……ぷちゅ…ちゅっちゅっ……んん~~♪
  はぁはぁはぁ……くぅん♪」

 カリの部分に舌先をおくりヌメヌメと動かしつつ唾液で湿らせて掃除する。毎日のように穿っているからカス等は無かろうが念の為。
 シャフトの裏側も丁寧に。
 男は用を足した後にペーパーで拭くとかの行為を行わない為、シャフトや袋の裏側が酷く汚れる。
 人によってはウェットテイッシュで拭けば色が変わるほど。
 無論、そんな美味しい役目を消費物に与えるような真似はしない。

 景太郎によって鍛えられた舌使いが、
 景太郎によって経験を積ませてもらっている自前の舌があるのだから。

 すっかり湯の味を舐めとり、自分の唾液とカウパーの味しかしなくなっているペニスに対し、素子は深い愛情を持って奉仕を続ける。
 貴方に奉仕しているからこそ、私はここまで悦ばせてもらっている。
 貴方が教えてくれるからこそ、私はここまで学ぶ事ができているのだと。

 剣に対する修業は疎かにはしてはいないが、姉から見ればまだまだ未熟。だが、性に関する事はかなり飲み込みが早いようだ。
 また亀頭を咥え、頭を上下に動かし、その動きだけで肉柱を一生懸命愛している。
 風呂の中という事もあり、全身が汗で滑っているが気にしなくても良いのが利点だ。何時も後始末が大変なのであるし。

 素子はいつもは後ろに流しているか、ひとまとめにしている髪をアップにしているのだが、それは景太郎が髪を撫でてくれないという難点もありちょっと不満。
 だが、風呂の中で髪を垂らしたままのフェラはやりにくい事この上もない。この場合も痛し痒しという表現でよいのだろうか?
 
 カオラに分けてもらっているバナナで修練を積んでいる素子の舌使いは幹に巻きついたまま撫で回されるような快楽を景太郎に齎し、彼の腰を跳ね上げさせているという優越感を彼女に与えていた。
 尤も、バナナ程度の太さならば喉奥に入れる事が可能になっているので、その練習の成果はまだまだ景太郎には見せられていない。

 普段の練習は、バナナ一本を舌で舐めるだけで食べ尽くすいうもの……

 表面のざらざらした感触だけで快楽を投げつけてくる素子の熱心な奉仕に、景太郎はかなり切羽詰っていた。

 「んぁ…っ!! ん、んんんっっっ!! あ……、ぐ……っっ!!」

 いや、何時イっても良いのだが、何時も何時も彼女に手早くイかせられるのは男としてやっぱり悔しい。陳腐なプライドと言われても仕方が無いが、それでも景太郎は懸命に耐えようと足掻き続けていた。無駄な努力ともいうが……
 何故なら、素子の今の奉仕は手の動きが連動していないのだ。
 それに、さっきの行為にしても、景太郎がイきかけたのを見て止めてあげたに過ぎない。
 だから思い出したかのように手が奉仕を再開し、左手でもって睾丸を優しく転がし、右手でシャフトを扱き始めたら保つ訳が無い。

 それを見計らうように、カリ首を這う素子の舌先の動きが激しくなった。
 血管が浮き出るペニスを手で扱く手が連動する。
 それでも熱い視線は景太郎を見上げたまま。

 景太郎がふと目を落せば、彼女の熱い視線。その眼は愛欲に潤んでおり、かなり色っぽい。
 そして彼女の手指を独占しているのは己の大きなペニス。
 景太郎は美少女剣士の懸命の奉仕に耐えながら、必死に苦手な数学の式を考える。
 先程からの我慢は、少しでも長く素子がくれるフェラの快楽を長く感じようとしている為だ。無駄な努力ではあるが、往生際の悪さが彼の特長である。

 が、

 「ンふう…♪ あ……っ♪」
 ぶびゅっ、ずびゅびゅっ


 流石に限界だった。

 びゅくっ、びゅっ、びゅっ、びゅっ、

 「あ、あっ、ああっっ♪」

 跳ねる様に精液を吐き出す肉柱に素子は嬌声を出す。
 顔を汚し、髪を汚し、胸を汚し、彼女のピンっと立った桜色の乳首に掛かって刺激を与える。
 涎の糸を引かせながら素子は顔を寄せて噴火を続ける鈴口を口中に隠す。

 ぶびゅ、びゅ、びゅ、びゅ……


 散々口の中を汚した精液が下顎の容積に達した時、素子は口をすぼめて尿道に残る精液を器用に吸いだした。

 ずじゅるる……じゅ、じゅじゅるるるるる……


 顎に残っている精液の所為で物凄く濁った音となる。
 吸い込んだ息は鼻から出し、利き酒の要領で鼻を通った精臭を味わう素子。

 その愛しい男の香りをたっぷりと堪能し、やっと口を離す。
 つつ…と粘液の細い橋が未練たらたらに口とペニスを繋いでいたが、やがてはプツンと切れてしまう。
 それすらも勿体無いのか淋しげな眼差しで見つめていた素子であったが、口中に残る精液を思い出し、唾液と混ぜるように口を濯ぎ始めた。

 ぐじゅぐじゅぐじゅと響く音がなんともいやらしい。
 だが、淫猥極まりなく、途轍もなく下品な行為であるのに何故だか景太郎の目には見下げ果てる様な光景に映らなかった。

 その表情が、
 精液を、景太郎の精液にすら熱い想いを向けている素子の表情が余りに幸せそうだった事、余りに敬虔さを感じさせている事が原因だろう。

 喉を鳴らせて飲み下されてゆく精液。
 その、ごくりと音を立てている素子の喉と同じ動きを景太郎の喉は行っていた。

 ――興奮が、収まらないのだ。

 あれだけ出しのに。
 今朝も早朝から素子の膣に三度は出したのに、
 今もフェラで彼女の身体と喉を汚したのに、
 牛の乳のようにどぶどぶ出したのに、

 未だに景太郎のペニスは張り詰めているのだ。
 奇跡云々では無い。
 医学的にも、生物学的にも信じ難い事なのである。

 だが、素子は微塵も動じず、

 「浦島先輩……どんな体位が良いのだ?」

 と、顔の精液を指で拭い、それを舐めながら問い掛けてくるではないか。

 景太郎も、ここ二週間でこの異常さ慣れてしまっているのだろう。

 「……うん。バックがいいかな……」

 と希望を口にし、素子を微笑ませるのだった。


 片足を岩の縁に置き、片足は湯の中。
 見ようによっては犬が縄張りを示す時に片足を上げる行為に似ている。
 どちらにせよ、お世辞にも上品とは言い難い。
 だが素子は嬉々としてそれを行っていた。

 物陰から覗くキツネの目に、期待によって真っ赤に色付いた秘肉の様子が飛び込んでくる。

 『うわ……うわっうわぁ……な、なんや? あのヤらしさは……
  真っ赤ンなって……あないに真っ赤ンなって……
  ポタポタ汁垂らして……わぁ…わぁあ……』

 ぐちょぐちょと股間をかき回す音がする。
 景太郎や素子が行っている音ではない。自分が行っている音だ。

 ワイシャツのボタンは濡れて外しにくくなっていた所為か、全て毟り取られて大きなバストが剥き出し、
 ショーツも肌に張り付いて脱ぐ事が出来ない。
 小さめのヒップに引っかかる程度までズラす事に成功していたのであるが、足を閉じていない為にそこから下ろせなかったのだ。
 最早自分がどんな格好で自慰に耽っているのか自覚が無いのである。

 やや膝立ちになり、カチカチに尖った乳首を抓るように虐め、
 びしょ濡れのショーツに手を突っ込み、皮からむき出しになっているクリトリスごと襞をかき回している。
 ブルーの下着を紺色に見せるほど濡らしているのは湿度や汗だけでないのは明白だ。

 先程から素子が行っていた熱烈なフェラチオは、それを見つめながら自慰を行っていたキツネにも同様の高揚を与え、
 舌使いや汗の味、精臭や精味までも素子と同様の多幸感を感じ取らせていた。

 事実、素子が景太郎に精液を浴びせられた瞬間、キツネは絶頂に導かれている。

 夢想していた景太郎のペニスを舌が追いかけ、
 素子の浴びた精液を幻覚し、
 鼻を抜ける空想の精臭に酔いしれた。

 酒が好きなキツネが初めて酒以外で堪能した液体と言ってよいだろう。

 せやけど……とキツネは思う。
 モトコはあの程度やったけど、ウチやったら喉奥まで届くんやないやろか?
 ウチやったら胸で挟んだりして、もっと悦ばせる事が出来るんやないやろか?


 誤魔化してきた筈の景太郎への想いと、素子に感じている嫉妬が無意識に発露。
 肉欲と、景太郎を欲しがっている心の欲求が理性と倫理を焼き焦がしてゆく。

 ざぶ…ざぶ…とのろのろ立ち上がって素子に歩み寄る景太郎。
 股間の異物は健在だ。
 正に凶器。
 素子の心身を犯す肉凶器。
 問題は、素子がそれを望んでいるという事だが。

 そして……自覚はしていないがキツネも……

 『ああ……入る……入ってく……』

 真っ赤に染まった秘唇に、黒々としたペニスに触れる。
 ぴちょっと濡れたものの触れ合いの音。気の所為かも知れないが、確かに素子に…そしてキツネの耳にそれが届いていた。

 キツネは知らない事であるが、使い込んでいるかのように柔らかく肉柱を受け止める素子の膣はここ二週間程の鍛錬でこうなっている。
 無論、その相手は景太郎のペニスと手指のみ。たまに彼の舌も入るが、それ以外は生理用品にすら侵入を許していない。
 その膣。
 ついこの間まで処女であり、景太郎の肉の味しか知らない膣は、彼の到来を知ると全力で持ってそれを歓迎する。

 くにゅう……


 キツネの耳に、確かに滑る肉が景太郎を咥えこむ音が聞えた。

 ちゅる……


 まるで抵抗なし。
 いや、襞そのものは物凄くきつい。
 びっしりと襞のある素子の若い膣は、表面にたっぷりとざらつきを残している。
 その全てが別の生き物の様にペニスに舐りついて締め上げ、奥に飲み込んでゆく。

 『す、すご……ごっつクる……
  こんな……こんな奥に入って……んぁあああっっっ!!!』

 素子が子宮に亀頭をぶち当てられる快感に顎を上げた瞬間、キツネもまた景太郎に挿入されていた。
 素子の膣が反応したように、キツネの膣も強く景太郎に反応する。

 子宮が疼く。
 膣がうねる。
 景太郎の腰の動きに合わせて、腰が跳ねる。
 突き込まれているのは素子。
 突き込まれているのはキツネ?

 ぐっちょ、ぐっちょ、ぐじゅっ、ぐぶっ、ぶじゅっ、

 「あ、は、ンっ、んんっ、く、イ、う、うらし……ひぃっ」 
 「はぁ、はぁ、はぁっっ! も、素子ちゃ……くぅっっ」

 ……いや、素子だ。
 抱いてもらっているのは“モトコ”なのだ。

 知らずキツネの目に涙が滲んだ。
 今までの人生で、これだけ悔しく悲しい想いをした事があっただろうか?

 景太郎……“けーたろ”はなるに惚れている。そしてなるは景太郎のいない世界など考えられない程、彼に依存している。
 そして素子も景太郎に惚れている。
 いや、あれだけ熱心に奉仕し、あれだけ女の悦びを感じられているのだから、はっきりと愛していると言い切れるだろう。なると違って……

 ぐぢよ、ぐぢっ、ぐぢっ、ぐぢっ、ぢゅっ、ぢゅっ、ずぢゅっ、

 「あ、はぁっ、も、もう、あかんっっ、
  う…うらひま、し、しぇんぱ……うち、うち、もうあかんっっ」
 「素子ちゃ…素子ちゃんっっっ!!」

 スパートに入り、素子が地である関西弁が出た。
 元々、彼女は甘えんぼの所があり、隙が出ればその部分が顔を出す。
 そして景太郎に抱かれているという極楽にいる為、彼女の地は外に出易くなっている。

 当然、絶頂間際ともなれば……

 どぶ…っ

 「ひん…っ!!」
 「くぅ……っ!!」

 第一射。
 膣奥。それも子宮内を精液が叩く。
 慌てるように襞が引き締まり、その隙間隙間を白濁の汁が埋め尽くしてゆく。

 どぶっ、どぶっ、ずびゅっ、びゅ、びゅっ、びゅ……

 「あ、は、く、くぅっっっ
  はぁ~~………」 
 「う、く、ううう………ぜぇぜぇぜぇ……」

 流石に連続二連射だったからか、朝の射精が効いているのか、今回の膣内射精は少なめだった。
 それでも常人の十倍は出ている。
 最初の頃は薄ら寒いものを感じていた景太郎も今は開き直ったかの様に気にならない。いや、気にしない事にしただけかもしれないが。
 脱力仕切った景太郎は、素子の背中に体を重ね、荒い呼吸を吐き続けていた。
 素子は背中に掛かる景太郎の重さにウットリと酔いしれ、肩におかれた手に自分の手を重ね、胎内からじわじわ染みてくる多幸感に味わっている。


 そんな二人がいる露天風呂の岩陰で、キツネは仰向けに転がって一人落ち込んでいた。

 その右手は淫液と汗に汚れ、半脱ぎ状態のショーツは遠慮なくヒップに食い込んで肌を痛めている。
 股間からはダラダラと愛液が零れており、彼女が絶頂に至っている事を物語ってはいる。


 そう絶頂には至った。肉体的には――


 キスをしてもらっていたのは素子であり、
 女として抱いてもらっていたのは素子であり、
 あそこで景太郎と仲睦まじくしているのは素子である。

 さっきまで素子に同調していた快楽は素子のものであり、
 景太郎によって絶頂に導かれていたのは素子である。

 如何に同じ様な快楽を得ようと、
 如何に同じ様な絶頂を得ようと、
 自分に触れていたのは自分の手であり、
 絶頂に導いたのも自分の手指だ。

 素子はなる同様に景太郎に惚れている。
 自分も……自覚はなかったが前以上に景太郎に惚れている。

 ―――抱いてもらいたいと思ってしまう程に……

 だが、素子は景太郎に抱かれ、
 自分はそれを見て彼に抱かれている自分を夢想し、十代の小娘のように自慰に耽っていた……

 「う……うう……けーたろ………」

 いけないっと、強く瞑った眼から涙が滲んだ。
 乱暴に手で拭うも、感情の決壊から溢れ出たそれは容易には止まってはくれない。
 絶頂に至ったというだけで、キツネの心は虚しさに満ち満ち溢れ、高まった高揚感は全てが夢幻である事を伝えるように消え去り、熱が奪い去られた心は冷たく冷えてゆく。


 「ううう……けーたろ……けーたろぉ……」

 石畳に仰向けに転がり、一人童女のように涙するキツネの耳を、

               愛しい男によって心を満たされている素子の幸せそうな声が通り抜けていった。



[2319] Re[4]:Dotage ~妄愛<捌>~  (ラブひな)
Name: Pixy
Date: 2007/04/25 09:06
 「38.5度……」
 「たはは……」
 「たはは…じゃないわよっ!!」

 頭を痛めないように中がジェル状になっているアイスノンを枕にし、ベットに横たわるキツネは同寮の女性の怒声に頭痛を深めた。
 その彼女を怒鳴った親友であり、小学校から続く腐れ縁でもある なるは、様子を見に来ていた はるかに『騒ぐな。相手は病人だぞ』と窘められている。
 自分が怒鳴るのも、自分が怒られるのも当然であるから何も言い返せない。ただ反省するのみ。

 デジタル体温計が示す温度は結構高い。
 ふにゃら~と力無くベットに横たわっている美女というものクるものがあるが、ここは女子寮。
 幸い(?)ここに百合の花を咲かす嗜好持ちはいない為、その姿を見てドキンとする者はいない。
 唯一管理人が男であるが、彼は熱を出して苦しんでいる女性にけしからん行為ができる不届き者では無く、心から彼女の身を案じて洗面器に水を入れて来たり、ポットにレモン水を作ってきたりと甲斐甲斐しい。
 そんな彼にこの寮に住む女性らの眼もあたたかい。彼女らはこんな彼の優しさが大好きなのである。
 
 「それにしても……どうかしたのか? いきなり熱なんか出して」
 「いやぁ……たはははは……」
 「キツネ~……」

 はるかの問い掛けにも曖昧に答えることしか出来ず、普段ヒマワリの笑顔を見せているカオラにこんな心配そうな顔をさせているのには申し訳なく思う。

 が、
 『風呂場で景太郎と素子がセックスしてたのを覗きながらオナニーして身体を冷やしてしまいました』とは流石に言えない。

 「あ、あの……パジャマとかちゃんと着て寝た方が良いですよ?」
 「いやぁ……着とったんやけどなぁ……」

 しのぶも心配げな様子だ。
 無論、言うまでもなくパジャマ代わりにワイシャツを着て寝てはいたのだが、件の行為によってびしょ濡れになってしまい、洗濯籠に下着ごと放り込んでしまったのである。
 それだけならまだマシであるはずだったが、問題は、風呂場にいた時間だ。
 景太郎と素子はあの後、更に場所を変えて二度行為を行っている。変えたとは言っても露天風呂の中であり、湯場を移動したに過ぎない。
 だが、その事によってキツネは場から離れる術を失い、結局その二回が終わり、二人が風呂から出てゆくまで隠れ潜む破目に陥ってしまったのだ。

 その為に汗でずぶ濡れになった身体を冷やして風邪を引いたのだ。
 流石に自業自得と言うだけではないのである。

 「キツネさん。何か欲しいものとかありますか?
  オレ、買ってきますけど……」

 鬼の霍乱…というのは言い過ぎかもしれないが、理由と原因を知らない景太郎はそんなキツネを心底心配していた。


 そして、今のキツネはそんな彼の思いやりが逆に痛かった。


 「別に……別に何も無いで。今は寝さしてくれたらええさかい……」

 と、妙に素っ気無く言ってしまう。
 そんな彼女の態度であるが、景太郎もなるも『よっぽど熱で辛い(のね)んだな』と深読みし、これ以上騒いだりしないほうが良いなと腰を上げた。

 「そうだな……ホレ、景太郎もなるも、大学だろ?
  しのぶもスゥも学校の時間だ。さっさと行く」
 「は、はい……」
 「キツネ~……」

 最後まで未練がましいカオラであったが、はるかに単に寝てれば治るからと諭されて学校へと向う事にする。
 一応、しのぶはキツネのお昼ご飯にと、栄養豊富なトマト雑炊を用意してから寮を後にした。

 はるかもキツネの態度に違和感を覚えつつも店に戻って行き、これでキツネは一人となる。

 「ふぅ……」

 やっと落ち着きを取り戻せた彼女は、一人になってから溜息を吐いた。
 皆のいる前ではできなかった事だ。
 落ち込みを人に曝すのは恥ずかしく思っている事もあるが、何より、景太郎と素子のいる前では見せたくは無かったのである。

 「な~にやっとんやろなぁ……ウチは……」

 ガチャリと額に乗せられている氷嚢の氷が音を立てた。
 たった一人でいると、そんな音すら響いてくるので孤独感も増してくる。

 「……静かや……」

 そして彼女は、

 「……独りなんやなぁ……」

 そんな孤独が嫌いだった。


 思えばなるが住む所を捜していた時、自分は何故ここを勧めたのか?
 独りでいたくないから、気心が知れる彼女を呼び寄せたのではないのか?
 独りが嫌だから、どこに行ったとしても、皆が、家族がいてくれるこの寮に戻ってくる。

 そして―――

 何時しか自分は、
 景太郎が“いてくれる”ここに戻って来るのが嬉しくなっている。

 『あ、キツネさん。おかえりなさい』

 そう言われるのが嬉しくて、戻ってくるのでは?

 『お、けーたろ。ただいま~』

 そう言うのが嬉しくてここにいるのでは?
 そんな気にさえなってくる。

 無論、皆も大切だ。何よりも。
 だが、今の自分の心には確実に景太郎を男として見ている部分がある。
 そしてその部分が彼に近寄ると反応し、ざわめきを齎すのだ。

 だから彼女はそれを誤魔化し、冗談で景太郎を誘惑して見せたりするのである。
 尤も、なるはその仕種の中に本気が混ざっているのを察している節もあるが……
 
 キツネは以前、瀬田に惹かれていた。
 無論、関係があった訳ではないが、確かに彼の眼の輝きに惹かれていた。
 その夢を見る少年のような輝きは同年齢には無かったもの。また、その輝きを持ったままの大人も近くにいなかった。だから彼女は瀬田を一人の男として意識していたのだ。

 だが、そこに後輩で親友のなるが関わって来た。

 彼女の想いを知ると、キツネは自分の想いから一歩だけ退いた。
 これは彼女特有の面倒見の良さからきている。
 彼女の持つ姐御肌の部分がそうさせているのであるが、キツネが一目置いている…尊敬している相手が はるかという事もあって、彼女に似てきてる事も挙げられるだろう。
 何だかんだで付き合いが長いキツネとはるか。似てくるのは当然なのかもしれない。
 惚れた男からも一歩引き、親しい誰かに譲ってしまったりするところも……

 しかし……よりにもよって惚れた男のタイプまで同じでなくとも良いだろうに……

 景太郎と瀬田は異様な程良く似ている。
 東大は三浪の末に合格。
 何だか不死身で、大出血しても何故か生きている。
 夢に猪突猛進。夢を語る時の眼の輝きが本当に綺麗で見惚れてしまう。が、それでいて想ってくれている女性を振り回す。等々……数えていけばきりが無い。
 実際、景太郎は考古学の道に進んでいるし、未だ一歩足りないとは言っても素子に匹敵するほど強くなっている。埋まらないのは瀬田との年齢差からくる経験値くらいでは無いだろうか?

 唯一違うのは女性の影の多さだ。
 景太郎の方が本気で惚れている女の数が多いのである。

 そんな事を考えていると、又虚しくなってきた。

 「ウチも……そん中の一人やしなぁ……」

 口に出してからその言葉の意味に気付き、赤面してしまう。
 元々あった熱による赤ら顔より更に赤く。

 「う……わぁ……な、何認めててんのや?! ウチは……ウチは……っ?!」

 身体を起こしかけたキツネであったが、プシュ~~と蒸気漏れを起こして倒れこむ。
 熱がある時に無理は禁物である。

 想いを口にした以上、“言葉”にしてしまったのだから意味は形として胸に残る。
 それは想像していたより重く、ズジンと地響きを立てて腹の中に居座ってしまう。
 
 否定材料として彼の間の抜けたところを捜すも、結局は思い出を穿り返しているに過ぎないので、想いだけが強まってゆく。悪循環だ。

 「くぅ~~………なっさけなぁ……ウチってこないに脆かったんか……」

 男のあしらいは心得ている“つもりだった”。
 不粋な誘いや、下心のある誘いも、キチンと受け流せる自信があった。
 実際、バイト中に誘われたこともあるし、あからさまに身体の関係を求められた事もあるが、気の無い男に身を任す趣味は持っていない為、その事如くを回避してきたのである。 

 だが、惚れてしまった男。本当の意味で惚れてしまった男に対してはこれだ。
 出来る事といえば精々、玉の輿狙いを装って景太郎にモーションモドキを掛ける事くらいだ。
 自分は玉の輿を狙っているからこそ、彼にこんな誘惑をする事ができる。それは中々良い建て前だと思っていた。

 しかし、本音を自分の口から吐露してしまった以上、今までの様な誤魔化しは出来ない。何せ騙す相手は自分なのだ。裏を自覚してしまった以上、できる訳が無いのである。

 「ふぅ……ヤやなぁ……こないな自分曝すん……なんや十代の小娘みたいやん……」

 布団を口まで引き上げて溜息を吐くキツネ。
 二十歳を僅かに超えた程度で大人になったつもりでいたが、メンタル面はそうは行かない。
 図らずもそれを実践して見せているような物であった。

 夕べの……
 幼い子供のように景太郎を想って泣いていた自分を思い出し、又恥ずかしくなって布団に潜り込んでしまう。
 ガシャガシャと音を立てて氷嚢が床に落ち、濡れタオルが枕に残って湿らせてゆく。
 それでもキツネは今の自分に対する恥ずかしさの方が強かった。

 「ごっつ恥ずい……
  こないに けーたろにメロメロになっとるや思わなんだ……」

 布団の中、つい漏らしてしまう泣き言も、一人でいるからこそと言えよう。


 ―――いや?


 「キツネさんは恥ずかしいのですか? 私はけっこう嬉しく思っているのですが……」

 どびくぅっ

 突然の声に、キツネは布団をふっ飛ばして驚いた。
 慌てふためきつつ横を見れば、そこには、

 床にノートと参考書を広げ、真面目に受験勉強をしている美少女の姿。
 件の惚れた男と肉体関係にある少女、
 青山素子の姿があった。

 「な――っ?!
  なっ、なしてモトコがっ?!」
 「いえ、そう驚かずとも……
  はるかさんに看護を頼まれましたので」

 キツネの睡眠の妨げにならぬよう、気配を消してここで勉強していたという事らしい。

 考えてみれば、景太郎となるは大学。しのぶとカオラは高校。サラも小学校。
 むつみは景太郎らと同じく大学に行っているか、はるかの店を手伝っているかだ。消去法から言えば、新生(素子一人ではあるが)ローニンズの素子しかいないではないか。
 キツネ、大失態である。

 「まぁ、それは兎も角として……」
 「くぅ……っ」

 今一番会いたくない相手の一人である素子と二人きり。気不味いことこの上もない。
 いや、今さっきまで頭の中を占めていた景太郎がいるよりかはマシであるが、彼なら服を着替えると言って目の前で脱ぎ出したら大抵は出て行かせられるだろう。だが、素子は同性なのでそうは行かない。
 追い出す理由が殆ど無いのだ。

 と……?

 「キツネさん」
 「な、何や?」

 そんなキツネに向かって、素子が妙に真面目な顔をし、
 とんでもない爆弾を投げつけてきた。

 「見てましたね?」
 「な、何を……?」

 キツネの心臓が、
         一拍跳ねた。
 
 「夕べの事ですよ。
  “景太郎先輩”との<まぐわい>を覗いていたでしょう?」
 「――――――っ?!」




―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
                           -盲・愛-
                            File:捌

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――




 「……」
 「……」

 何も喋らない、喋れない部屋の中。ただ、柱時計の鳴る音が何所からか小さく聞えてくるのみ。
 その部屋の中で動いているのはキツネの世話をはるかから言い遣っている素子ぐらい。
 肌を剥き出しにしている意外に白いキツネの背中を、素子が温かい湯で濡らしたタオルで拭いているのだ。

 ごしごしと背中を拭いてくれている素子も、黙ってそれをしてもらっているキツネも無言。
 素子の心は兎も角、キツネの方は動揺が大きく喋り出せないのだ。

 素子本人の口から景太郎との肉体関係の事を暴露され、キツネは先の手を断たれている。
 これが普段ならば、キツネの方から関係を問いただし、相手の動揺を誘って追い込むところなのだが、今回は先に心を揺らされているし、景太郎に対する本音の想いも聞かれてしまっている。
 以前の素子なら兎も角、今の素子には前になるに使ったような誤魔化しは効くまい。

 焦りまくった時が止まっていると錯覚するような空気の重さ。
 汗の流れる音すら聞えてきそうな程の沈黙。

 『“景太郎先輩”との<まぐわい>を覗いていたでしょう?』

 等と、こうもあからさまに言われれば流石のキツネも二の句が告げられなかった。
 それも、“この自分に対して”言ったのである。
 はっきりと、景太郎とセックスしている事を肯定しているのだ。
 以前の素子であれば、それこそ顔をトマトの様に赤くして想いを否定するか、怒って追い回すかしたであろう。

 だが、今、後ろで背中を拭いてくれている青山素子はどうだ?

 景太郎に惚れている事を嬉しく想っているとはっきりと口にし、尚且つ彼と寝ている事まで喋っているのだ。
 思わずキツネが『アンタ誰や?』と言いかけてしまいそうになるほどに。

 ―――正に別人のようであった。

 「キツネさん……」

 そんな沈黙を破ったのは素子だ。
 尤も、何の緊張もしていないのであるから当然であろうが。

 「ぴゃっ! な、なんや……?」

 何の心構えもできていなかった為、思わず奇声が飛び出てしまう。
 なると景太郎が勉強中、何をしているのかと暴れてドリルで穴を穿って覗いていた彼女とは思えないほど。

 そんな彼女に対し、素子は聞えないように苦笑する。
 尤も、キツネは背後で鼻先で笑われたような気はしているが。

 「キツネさんも、本気で浦島先輩の事が好きなんですね?」
 「うぐ……っ」

 余りにストレートな言葉に息が詰まってしまう。
 キツネさん“も”――と言っているのは、自分の想いの事か、なるの事か……
 
 良く考えてみると対象範囲が広すぎる。
 しのぶもそうであるし、むつみもそうだ。サラは……違うとは思うが、カオラは間違いなくそうだろう。恋という自覚は無いかもしれないが。
 『そう言うたら、パララケルス島におったニャモとかいう女の子もアヤシイやないか……』

 流石は瀬田の弟子。
 誰も彼も好かせる所など正にそれだ。その部分だけなら既に師を超えているし。

 「……そ、それが、どないしたっちゅーんや?」

 強がって答えてみるも、素子には通じず。というより、開き直って暴露しているではないか。
 口に出してから気付いてしまい、素子の手を振り切って布団を頭から被ってしまう。

 逃げようにも熱で体が自由に動かないときているのだからしょうがないが……まるで小学生か思春期の少女だ。
 キツネ、自爆で大ピンチであった。

 「いえ……只の確認です」

 それでも素子の口調は全く変わりかなかった。

 「何を恥ずかしがっているんです? キツネさん“も”、“景太郎先輩”に抱かれる自分を想像して自分を慰めていたんじゃないですか?」
 「んなっ?! 何で………っっ!!」

 と、飛び起きたキツネであったが、そのセリフは素子の顔を見て止まってしまう。

 素子は、ビックリした顔をして自分を見つめていたからだ。
 どうも大声で驚いていた風では無く、それは、キツネの言葉に対してという感じで、
 その驚きの意味はというと………

 「……まさか……本当に?」

 である。

 キツネ、大自爆だった。
 ぶっちゃけ素子は、そこまで行っているとは思っていなかったのである。
 あの時……
 夕べ、露天風呂での交わりの時、
 景太郎と二回戦に及ぼうとした時に、素子はやっとキツネの気配を感じ取った。
 迂闊っと自分を叱咤したものの、繋がって腰を振り、膣内射精を歓喜していた自分を見られた以上、誤魔化しは利くまい。そう思った素子は、半ばヤケで見せ付けるように行為に没頭したのである。
 まぁ、まさかその所為で風邪を引くとは思わなかったが……

 つまり、素子がキツネに言ったのは“当てずっぽう”だったのである。
 が、鎌を掛けられた形のキツネは混乱の極みであった。
 それもしょうがないだろう。
 何せ景太郎の事を想ってオナニーしてましたと自分から言ってしまった様なものなのだから。
 素子がキツネさん“も”と、自分で『やってます』とバラしているのだが、そちらに気付けないほどキツネは頭に血が上っていた。

 ぼっしゅ~~~……っ

 熱が上がって意識を失ってしまうほどに。

 「わぁっ!! キ、キツネさ――んっ!!」

 それを慌てた素子の声に、
 やっと一矢報いれたと余りに小さな事で安堵してしまうキツネであった。
 自爆による羞恥の熱か、はたまた普段は使っていない頭を使いすぎた事による知恵熱か? それは兎も角としてキツネの熱は急に上がってしまっていた。
 そんなキツネに対して追撃をするつもりなど更々無い素子。いや、元より虐めるつもりも無かったのであるが。
 素子にしてみれば、本当のに、単に『ヤりたい?』と聞きたかっただけなのだ。その入り口でこれだけ慌てられたらどうしようもない。
 真剣な恋心に対しては臆病になってしまうものであるが、その初心さには素子ですら苦笑してしまうほど。
 尤も、ついこの間までの自分はもっと酷かったけであるから、余り人の事は言えないが。

 「さて……どうしよう……?」

 熱で眼を回しているキツネ。
 自分も勉強途中。だが受験勉強は確かに大切であるが、キツネを放って置けるほど薄情ではない。

 それに、景太郎の事をそこまで思っているのであれば、キツネにも聞いてほしい話もあることであるし……

 ふと机に置いてあるキツネの腕時計で時間を確認してみると、彼女が薬を飲んでからそこそこ時間が経っている。
 これならよかろうと、素子は脇においてある丸いお盆から薬の袋を取り、中から小さな砲弾型のカプセルを取り出した。

 エアコンの温度も上げてあるし、はるかから借りた加湿器の水も結構残っている。
 だからといって布団を剥ぐ訳にはいかないと判断した素子は、そのままもそもそと布団の中に頭をいれ、キツネのグレーのショーツに手をかけた。

 「んぁ……」

 意識が朦朧としているにもかかわらず反応を見せるキツネ。
 だが、素子は気にもせずスルスルと下してゆく。
 しかし、その下着の厚い手触りにはて? という顔をした。が、クロッチ部に貼り付けてあるものを見て納得する。

 『ああ、キツネさんにしては情緒が不安定だと思ってたら……』

 同じ女として理解したと言うのが正しいかもしれない。
 
 兎も角、彼女の熱を下げる事が先決だ。
 素子はキツネの左足を持ち上げ、膝を曲げさせて股を開かせる。
 汗を掻き始めている事と、布団に包まれている事、そして“その日”特有の匂いがムッとする程強く漂う。
 尻を割って解熱剤を押し込もうとするが、尖った先端部しか飲み込めず、真ん中まで等とてもとても。キツネのその窄まりは思っていたよりも固い。今の素子から言えば固すぎる。

 仕方ない…
 そう咥内で呟いた素子は、唇をそこに持って行った。

 「あ……」

 キツネの足がびくんっと反応する。
 女が最も敏感な部分。その付近をヌメヌメとした何かが這ったのだ。
 そのゆっくりと。ねっとりと動く感触は、キツネの脳裏に股間を嬲る軟体動物を想像さた。

 「ああ……いややぁ……いややぁ……」
 「ちょ、ちょっと落ち着いてください」

 力は無いモノのじたばたと身を捩るキツネ。
 布団の中という事も相俟って、素子は太股に頭を挟まれて自由に動けなくなってしまう。
 女の太股の挟む力は以外強い。そのまま捻れば頚椎を折れるほどなのだ。

 素子にしてみれば、座薬を入れる為にそこをほぐしているに過ぎないのであるが、朦朧としているキツネにしてみれば異生物に犯されかかっているような物。それは抵抗もするだろう。
 景太郎に抱かれたいと心の底では思っているが、それは相手を景太郎に限定すればの話であり、欲求不満から誰でもいいから抱いてほしいなどとは露ほども思っていない。
 それに正体不明な物に嬲られているのだから当然の抵抗であろう。

 「う~~……」

 これでは看護が遅々として進まないではないか。
 キツネの身も心配であるし、早く心身共に楽にしてあげたい。熱が下がってから落ち着いて話し合いたい事があるのに……

 『仕方が無い……ちょっと早いが……』

 素子は動きを止め、太股に挟まれたまま、布団を少しだけ持ち上げてキツネに話しかけた。

 「キツネさん、キツネさん。
  心配しないでください……貴女を愛撫してくれているのは景太郎先輩ですよ」

 その声が聞こえた瞬間、キツネの足の力は面白いように緩くなった。
 素子は何とか脱出する事に成功する。
 もそもそと布団に入ったまま顔をキツネの耳に寄せ、更に言い聞かせるようにもう一度彼の名を告げた。

 「…………………けーたろ?」
 「え、ええ……“景太郎様”ですよ」

 さわさわと手を伸ばし、キツネの胸に触れる。
 自分より大きく、更に柔らかくて雪のように指がめり込んでゆくのにちよっとだけ嫉妬しながらも、素子は優しくキツネの胸を撫でるように揉み続ける。

 「あはぁ……はぁ……けーたろ……けーたろがウチの胸を……」
 「そうです。
  景太郎様はキツネさんの大きな胸が気に入っているようですよ……何時か私だって…ブツブツ…

 何やら変な声もするが、キツネは気にならない。
 自分の身体を、
 この身体を気持ちよくしてくれて行く手の感触。それが彼の手であるというのだ。
 あの真剣な顔が自分の胸を凝視し、揉みしだいているのを想像しただけで……

 『あ……起ってきた……』

 素子の掌から溢れ出た薄桃に色付いた乳房の先端。
 何時も何時も景太郎によって嬲られている自分のそれより少しだけ紅いそれがゆっくりと突き出て来たではないか。

 彼女も、以前の素子のように夢現の中で彼に抱かれているのかもしれない。

 素子は前の事を思い出して苦笑し、反対の側のまだ立ちきれていない乳首に唇を寄せ、軽く歯を立てて引っ張ってみた。

 「ひっ、あぁああああああ……っ!!」

 反応は覿面である。
 うろたえた素子が慌てて寮内の気配を探ってしまったほど。

 幸いにしてはるかの耳には届いていなかったし、むつみがいたアパートが焼けた所為で近所の家も減っていて聞かれる率は下がっている。
 それでも反応が大き過ぎる。

 冷や汗を拭ってからもう一度キツネに眼を戻すと、彼女は細かく身体を痙攣させているではないか。

 『え? まさかもうイったのか? 幾らなんでも……』

 胸に歯を立てただけでアクメを迎えたというのだろうか? だがキツネは明らかに絶頂を迎えていた。
 ぷつぷつと乳輪は粟立ち、手足は突っ張ったまま。
 汗は雨天から戻ったかのようにキツネの肌を濡らしている。
 股間も緩み、白っぽく濁った涎すらナプキンに染み込ませているではないか。

 昨晩の景太郎を想っての自慰。そしてそれによる絶頂は確かに肉体的には満足できたのかもしれない。
 が、幾ら肉体が満足しようとも、心の飢餓は満たされる事無く、ずっと燻ったままだったのである。
 だから景太郎によって仕込まれている素子の拙い愛撫を、景太郎の愛撫だと錯覚した瞬間、忽ちその飢えは満たされて心が絶頂の雄叫びを上げたのだ。

 何だか物足りない気がしないでもないが、素子は座薬をやっと力が抜けて緩くなった菊門に押し込んだ。

 くにゅう……

 今度は楽々と飲み込んで行く。
 直腸の粘膜吸収はかなり高いので、実際に座薬による解熱剤は効きが早い。
 だからこれで楽になるだろうと、素子が身体を離そうとすると……

 「……抜けない……」

 今度は座薬ごと素子の指をくわえ込んだ菊門が絞まり、素子の指を離してくれなかった。
 くいっくいっと引いてもびくともしない。それでいて痛いほど締め付けている訳ではないのだから始末が悪い。
 要はぴったりと張り付いて吸い込んでいる…そんな感じにジャストフィットされているのだ。

 『無理に引っ張れば腸内を傷つけてしまうやもしれん……』

 それを危惧してしまう。
 浦島を“景太郎先輩”と呼ぶ“今の素子”。
 彼女はアナルも景太郎のものであるから、景太郎以外が傷つける事は許されないと思っている。
 だから同じ相手オトコを愛している、言わば“同志”。その同志であるキツネを、素子は前以上に大切に思い始めていた。

 ならば方法は一つしかない。

 ぺろ…
 「ンあ…っ」

 首筋に舌を這わせ、うなじを経由させて耳たぶに進める。

 れろれろ…にちゅ、にちゅ、
 「あ…んっんっ……ひゃう……」

 耳の穴を穿り、耳紋を辿るように舐め清め、耳たぶの下を軽く舐め、吸う。
 キツネの性感は多いのか、何所を愛撫してもそれなり以上の反応を見せる。

 『流石はキツネさん……かなり場数を踏んでいるのか……』

 と、素子は関心していた。

 例え過去はどうあれ、
 いや、過去をひっくるめてキツネはキツネである。景太郎に出会った時には既に彼女は現在のキツネなのだから。
 だから過去の男性経験がどうとかを素子は問うつもりもないし、景太郎も聞く事は無いだろう。

 それに、景太郎に対してこれだけ初心な恋心を持っているのだから、本気の本気で惚れたのは彼だけなのかもしれない。

 だが……

 ぐぢゅ……ぅ
 「ンひぃい……っ!!」

 素子は親指を涎を垂らし始めていた膣に突き込んだ。
 入れた…とは言っても、奥まで入れるような真似はしない。精々、第一関節程度だ。
 それでも濡れきったそこは、膣内にやってきたモノを美味そうに飲み込み、もぐもぐと咀嚼するように歓迎してくる。
 図らずも素子は、景太郎が素子に感じている挿入の快楽の一端を、キツネの膣によって思い知っていた。

 それがまた、素晴らしい感触なのである。

 ぐちゃぐちゃに濡れている柔らかい襞が指を吸い込み、引っ張ろうとするとその指をか弱過ぎる“反し”が引き留める。
 まるで四方八方から細かい舌で舐め上げられているよう。

 ぬぢゅ…ぷちょ、ぷちょ、ぐぢゅぅ……
 「ンはぁあ……っ ふぅ…っ くっ、んっ♪ あふっ」

 軽く親指を回すと、物凄い反応が返って来る。
 指の腹が粘膜越し感じるものは座薬か指か? そのコリっとした物を摘むようにすると、キツネの腰が跳ねた。

 「んひゃあ……っ」

 その固いものがある処と無い処の段差がイイらしい。
 指の感触から言えば、向こう側にあるのは飲み込まれている人差し指だろう。座薬はもっと奥に進んでしまったようだ。効いてくれるのだろうか?
 そんな事を心配しつつ、粘膜越しにキツネをイジメル。
 親指は第一関節で止めてあるが、人差し指はもっと奥に入れてみる。

 「んひぃっ、んンぅっ あふぅ……っ」

 くにゅう…と粘膜の間の空気が抜ける音が聞えた気がする。
 アナルはあっさりと人差し指を飲み込んだ。

 『やはりここも開発されているのか…? しかし……』

 男慣れしているにしては膣の中の襞の段差が大き過ぎる。

 普通、肉襞は男性経験が多いと低くなってゆく。言うまでもない事であるが、肉のカサに“研磨”されてゆくからだ。
 例えそうでなくとも、玩具などを使った自慰によっても浅くなってゆく。
 性交時に男を喜ばせる為だけでは無く、自分も膣粘膜で快楽を楽しむ為に快楽神経が“せり上がって来る”から…という説だってあるくらいだ。

 だが、キツネのそこはぐぢょぐぢょではあってもきつく、尚且つ異様に狭い。
 感度は物凄く高いのに、ヴァギナは殆ど未発達。
 アナル感度も高いが、指一本が限界。
 これはどういう事であろうか?

 『まぁ、ここがどうあれキツネさんはキツネさんだ』

 と、素子は直気にしなくなった。

 かり……
 「ひ、あぁあああああ……っっ」

 紅く色付いた乳首にもう一度歯を立てると、キツネはそれだけでイってしまう。
 全身をこわばらせ、四肢を突っ張らせ、軽く痙攣をして布団に身を任せ切る。

  ジュルジュルと小さな音がし、素子の右手が生温かく濡れそぼってゆく。

 「え? あ……っ」

 驚いて身を離す素子。
 ちゅぽ…っ と小さな音を立てて、弛緩しているキツネの二つ穴から素子の指が抜けた。
 絶頂による弛緩の隙がつけたのである。
 だが、アクメによる失禁には間に合わなかったようだ。

 「やれやれ……」

 と自分の額の汗を拭う。
 初めてのレズ行為であったが、以前カオラにキスされた時ほどの嫌さも湧かない。
 どちらかと言うと、キツネをイかせられた満足感があった程。

 ふと気が付いて、素子はキツネに突きこんでいた指を見る。
 躊躇いも無く口に入れ、人差し指、親指、と味わった。

 人差し指からは僅かな辛味。
 親指からは僅かな酸味を感じる。だが、不味い訳ではないとも思う。
 感想はそれだけだ。同性の陰部に挿入していた指という嫌悪は片鱗も無い。

 それに、これは慕っている仲間で友達、同じ寮に住まう寮生であり、“同志”であるキツネの味なのだ。
 何を嫌がれというのであろうか?

 「しかし……このまま“景太郎様”に抱かれたら、キツネさんも“中毒”になるまいか?
  いや、それは良いのだが、私の回数が減るのはちょっと……ううむ……」

 仲間が増える事は嬉しいが、自分の割り当てが減るのは悲しすぎる。
 彼女の懸念はそれだけである。

 兎も角、はるかとかが様子を見に来る前にシーツを引き剥がして身体を拭き、布団ごと入れ替えて部屋を換気して……と素子のやらねばなら無い事は多い。

 「それに……」

 これからの作業に溜息を吐きつつ、あれでも薬が効いているのか、幸せそうにまどろむキツネの顔を眺め、

 「“あの話”をキツネさんにしておかねばならんしな……」

 そう苦笑する素子であったが、その素子の顔は苦笑より悦びの度合いの方が大きく現れていた……




蛇足……

 失禁してしまったキツネの布団を誤魔化すには、朝飲んだ薬の所為もあって余りに染みが黄色過ぎた。
 方法に窮した素子は、しのぶの用意したトマト雑炊をぶっかけ、

 「すまん……私のミスで零してしまった」

 と、皆に説明した。
 一応の納得はしてくれたものの、キツネは昼食抜きになった上、全ては素子のドジとなってしまい皆に笑われてしまうし、カオラには、

 「なんや、オネショしたんを湯たんぽ零したって嘘吐いた○び太くんみたいやな」

 等と言われてしまう始末。

 何とも納得の行かない情況であったが、これはどうしようもない。
 確かに漏らしたのはキツネであり、隠蔽したのは素子である。
 だが、結局は彼女のやりすぎであった訳であるし、カオラの弁が余りに真実に近い為、どうにも言い返せない素子であった。



[2319] Re[5]:Dotage ~妄愛<玖>~  (ラブひな)
Name: Pixy
Date: 2007/04/26 03:35




 ジジジ……っていう、静かな音が何か耳に心地いい。


 ぶっちゃけ、灯りの音なんやけど、音楽や車の音と違うてウルサないし、何やホッとする。静かなんが嬉しいいうんもウチにしては変やけどな。ま、偶にはええやん♪

 さっきチラッと見た縁側あるの方。そっちの障子は閉めきって外の明かりを一筋も入れようとしてへん。ま、はっきり言うたら<真っ暗>やね。
 今日は新月やから明るぅないんはホンマなんやけど、外の明るさがまんで入って来んのは単なるインチキ。
 実は暗幕張っとったりする。言うまでもない事やけど、ここに人がおるんがバレたら拙いんが理由。なるとか、はるかさんとか、はるかさんとか、はるかさんとか……

 前は廊下の一部とかが土砂に埋まっとったらしいけど、今はキチンと撤去済み。
 せやけど“危ない”いう理由で入れんよーになっとるって けーたろが言よったなぁ……“ホンマの危ない”理由はモトコに聞いたけど……こんなんばっかやなぁ…ここは……

 一応、部屋ン中には灯りはあるけど、実はコレ、マジモンの行灯。昔使うとったヤツなんやて。
 “ここ”が倒壊した時、ガラクタん中にあったらしんやけど、何でか無事やったって けーたろが言よったな。

 あは……せやけど、まっさかそれをウチが使う事になるや思てもせんかったワ。

 直した時に電気も引いとるみたいやけど、使うたらやっぱマズい。部屋使うたっちゅーんがバレてまうしな。
 ま、こーいうんも風情があってええな。
 ホンマモンは中に油の皿があって、そこに火ぃ点ける芯があるんやけど、それやったらあんま時間持たんさかい、油皿の代わりにランプが入っとったりする。
 そんでもなんかボンヤリした灯りが和紙を通り抜けて薄明るぅに部屋を燈す。

 ……ん~~……ムードあんなぁ……
 あはは……なんやドキドキしてきたわ……

 ウチの今の格好は、浴衣とショーツのみ。
 シルクの黒紐パン。まぁ、勝負下着やね。
 
 閉めきっとる所為か、気分が段々盛り上がって来とる所為か、汗ばんできたワ……
 いやぁ……マジ、ドキドキする。

 真新しいシーツを被せてある布団の上、
 すうすう寝息たてよる男が一人。
 ごっつ人の気ぃ掻き乱しよる憎ったらしいヤツ。
 ウチは なるがおるから引いたいうに、モトコに手ぇつけよってからに……

 せやから、
 せやから止められんようになったいうに……呑気に寝くさりおってからにもぅ……

 ……………………眼鏡とったらエラい可愛い顔しとるやん………
 こんで眼ぇ開けたら何か輝いとるし、洒落っ気が増したんか眼鏡もカッコエエの着けとるさかい、余計にエエ男に見えて…………

 あはは……アカンなぁ、マジにメロメロやん。

 ちゅっ

 あは。キスしてもた。
 へぇ~~……けーたろ、唇やっこいなぁ……
 もっぺんしよっと。

 ちゅっ、ちゅっ

 ん~~……物足りんなぁ……

 んちゅ、れろれろれろ……

 舌入れてみた。
 うっすら歯の間が開いとるけど、噛まれんのヤやから歯茎いじめるだけ。
 それでも何かウレシイ。ドキドキする。
 白い歯の段々を横に舌で撫でてく。表面のツルツルしたとこの舌触りがなんやオモロイ。

 ついでに唾液送ってみる。
 口合わせとるだけで幾らでも湧いてくるさかいかめへんし、どーせ声出しまくるからとモトコにお茶をそこそこ飲んどけ言われとるから水分は補給済み。脱水症状にはならん思うけどな。
 ほー言うたら、何やモトコが『キツネさんは水分をとり過ぎないように』とか言いよったな。何でやろ?

 とろとろ口ン中に流し込んでく唾液。
 唾を吐っ掛ける訳ちゅうんやけど、何や申し訳無い気もする。けーたろが飲ましてくれるんやったら有難く頂戴するけどな。

 「ん……」
 こく…こく…

 飲んどる……飲んでくれよる……
 ウチの、ウチの唾液を飲んでくれよる………


 あんまり嬉しゅうて、ついウッカリけーたろをぎゅ~って抱き締めてしまう。

 ああ、ウチの腕ん中にけーたろがおる。
 ああ、今夜はウチが独り占めや。

 その嬉しさが胸いっぱいに広がってくる。

 あ~あ……こないにベタボレしてどーすんねん。
 まったく、ウチとした事がなぁ……

 すりすり…

 ま、けーたろの頭に頬ずりしながら言うてもナニやけどな。

 ……なると話した時は、二人とも大切な友達いうたのになぁ~~~
 友達にするコトちゃうっちゅーに。
 何時からこないに惚れてもたんやろ……

 「ん…んんん……?」

 あ、起きるんか?
 時間もじゅーぶんやな。そろそろ けーたろにも香が“染みた”やろ。ウチもイッパイイッパイやしな。

 「ん? んんんん? あ、あれ? あれれ?」
 「お♪ オハヨ…ちゅー時間やないけど、まぁ一応…オハヨ、けーたろ♪」

 ウチの胸の中、
 けーたろはやっと眼ぇ覚ましてその眼をパチクリパチクリ。あはは……やっぱカワエエな♪

「んわわっ??!! キ、キツネさんっ?!」

 その顔を真っ赤にしてビックリするけーたろの顔に、

 ウチは不思議な安心感を湧かしてもーた。

 せやかて、ウチの好きなけーたろなんやもん。
 この寮に来た時から見慣れとる、ドジでマヌケで間ぁも要領も悪うて、
 ごっつお人好しで優しゅうて、
 ウチの大好きな けーたろ……

 受験に失敗したいうて逃げて、パララケルス島まで追っかけてら妙にエエ顔になって、
 留年したから留学して、戻って来たらもっとエエ顔ンなって……

 ほんでも、ウチの好きなけーたろの顔もやっぱり持っとってくれて……

 今夜は、逃がさへんで?

 慌てるけーたろを抱き締めたまま、ウチは床の間に置いてある香炉に眼ぇ向けた。

 “これ”の煙の所為でちょっと気分がHigh。ついでに身体も疼きが止まらへん。
 勿論、けーたろもそうなっとる筈。男の方がよう効くらしいしな。
 ぷぷぷ……ウチ、どないされてまうんやろ?

 ほな……この疼き、止めてもらうで? け~たろ♪
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
                           -盲・愛-
                            File:玖

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
 混乱とドタバタと大騒動は何時ものこと。
 それでも“不幸”は来ない。
 確かに迷惑は多々あるし、ウッカリと風呂に行ってしまってスゴイ役得をもらってから大迷惑を蒙るのは何時もの事。
 云われの無い暴力や、疑いの目が無かった訳でもないけど、それもまた“不幸”じゃない。

 何せ女子寮。そして自分は唯一の男。
 女の園に男が一人なので、気苦労は数知れず。
 女同士の気安さで肌を見せていた中にオレが来てしまったのだからしょうがないけどね。

 それでもしのぶちゃんやスゥちゃん、そしてキツネさんの順に段々と歩みよって来てくれて、成瀬川や素子ちゃんとも打ち解けることが出来た。
 和風喫茶日向とはちょっと離れてはいても、むつみさんも加わってからここでの生活は余計に楽しくなってきていた。

 三浪して東大に受かり、大願も成就。
 直後に留年しちゃったけど、勢いで成瀬川に告白。返事をもらえないまま瀬田さんの勧めで留学し、考古学の道に本格的に目覚め、
 加奈子が何時の間にかひなた荘にやってきて、その騒動の紆余曲折の末に成瀬川に好きだと言ってもらえた。
 苦労や気苦労も多いけど正に順風満帆。
 ひょっとしてオレって実はツイてる? そういい気になってしまうほど。

 だけど最近、オレは大変な事をしてしまった。

 素子ちゃんと浮気してしまっているのだ。
 いや、正確にいうと浮気では無いけど、成瀬川に黙って素子ちゃんとセックスしているのはどう考えてみても、どう客観的に見ても浮気以外の何物でもない。


 確かにオレがしている事は治療。もしくは“療養”が近いかもしれない。
 だけど、セックスをしている事実には変わりないんだ。
 ……なんてこった……前に瀬田さんを責めた事があるけど、全然人の事言えないじゃないか……


 事の起こりは二週間くらい前だった。

 何だか素子ちゃんの様子が変だと思ってたら……突然、オレが入ってる露天風呂に現れて誘惑してきたんだ。


 何でも性的欲求が止まらなくなっているのだそうだ。
 現に素子ちゃんは初めての時、し、処女を、その…処女膜を破った時も気持ち良さそうだったし、オレがいつ何時に襲い掛かっても濡れている。
 いや、オレに触れられたり、二人きりになるとそうなるとか言っていた。
 要はオレという存在に身体が反応して迎え入れる準備が一瞬で整うのだとか。
 そうでなくとも、日一日と性的欲求が高まっていき、唐突に爆発してしまうのだという。オレと初めてした時がそうなんだとか。
 下手をすると誰でも良くなってしまう程高まるそうだけど、素子ちゃんはオレ以外の男に抱かれるのは絶対に嫌。触れられるくらいなら切腹するとまで言っていた。勿論、真顔で。

 だからオレは、素子ちゃんのその病気…呪いとか言ってたけど…が進行するのを止めるべく、毎日のように素子ちゃんとしている。

 無論、成瀬川には内緒だ。バレると命にかかわるし、成瀬川がもたない。絶対に泣くし、男性不信になるだろう。それは避けたい。今までだって散々傷つけてきたのだし……

 だけど、問題がもう一つできていた。

 それはオレそのものに…だ。
 素子ちゃんとするようになってからオレは変わっていた。いや……普段の事に変化は無い。まるで無いと言ってもいい。
 しかし、その無さ過ぎるというのが問題なんだ。
 成瀬川に黙って素子ちゃんと寝てるというのに、オレは全く普通の笑顔を成瀬川に向ける事が出来ている。
 彼女を裏切っているのに間違いは無い筈なのに、素子ちゃんと寝る事を少しも変だと思っていないんだ。流石にこれはおかしいとやっと気が付いた。

 もう一つはオレの出す量。
 幾らなんでも多過ぎる。
 大学で出来た友達に聞いても、ネットで調べても、幾らなんでも人外に多すぎるんだ。
 昨日は素子ちゃんと四回やった。
 一昨日は六回だったんだけど、次の日にキツネさんが熱出して倒れたから、素子ちゃんが看護してて回数が少なかったんだ。
 それでもその一回一回、きちんと射精した。
 朝はしなかったけど、夜に風呂場でキッチリやった。
 内わけは顔射1,中出し1,外出し1,もう一回中出し。よくもまぁできたもんだ。
 回数もそうだけど、出せる量が無茶苦茶で、量った事は無いけど一回に100cc以上は確実に出ている。
 下手をすると一日に1Lくらい出している事になる。それは無茶苦茶だ。人間じゃない。

 だから…とは言わないけど、オレはそっちの方が気になっていた。
 今更だけど、酷い人間だよなぁ……

 でも、幾ら悩んでも、考えても答えは出てくれない。
 男用風呂場という、はっきり言ってオレ専用の湯船に浸かりながら頭を捻りあげてもヒントすら出てこない。
 カラッポの頭を捻ったとしても、カラカラカラと空回りの音がするのみ。あぁ…何時もの事か……

 成瀬川に告白し、受け入れてくれてオレは幸せだ。
 だけど、素子ちゃんを抱いている時にも幸せを感じているオレがいる。
 前だったら成瀬川と誰を天秤にかけても成瀬川に傾いたんだけど、今は素子ちゃんを乗せたら吊り合ってしまうだろう。ヘタをすると真ん中の“支点”で折れるかもしれないけど…

 「あ~~あ……これからどうなっちうんだろう……」

 思わずそう呟いて風呂を出、何となく気分で新生日向旅館の浴衣(加奈子が改築した時に用意した物)を着て男風呂を後にする。
 一階にペタペタとスリッパの音を立てつつ降りてゆく途中、

 「浦島先輩」

 と声を掛けられた。

 声だけで解かる、さっきまで悩みの題材だった素子ちゃんだ。
 何だろう? と振り返りかかったその瞬間、


 首筋にビスッと衝撃が走った。


 「あうっ」

 イキナリ意識が反転してゆくオレの耳に、

 「すみません…」

 という素子ちゃんの謝罪が聞こえたような気が…し…………………




 「お♪ オハヨ…ちゅー時間やないけど、まぁ一応…オハヨ、けーたろ♪」

 眼を覚ました景太郎の目の前。
 首筋の痛みも忘れて驚いて離れようとするも景太郎の身体はキツネの身体でガッチリとホールドされていて動けなかった。

 ぷにゅりと景太郎に挟まれてつぶれている大きな胸、
 彼をを掻き抱いている所為だろう、袖が捲くり上がって二の腕がむき出しになっている。
 むっちりとしていて、それでいて無駄な肉も無いしなやかな太股が景太郎の足に巻きつくように挟み込んでいる。
 その太股の付け根には黒いショーツがチラリと覗いているが、流石にそこまでは景太郎の視界には入っていない。

 「キ、キツネさん?! 何が……?!
  一体これは何々ですか――っ?!

 流石にでかい声が口から飛び出す。
 だが、そんな焦りまくる彼の顔も、キツネにとっては愉悦の材料。
 以前のままの可愛らしいリアクションに、彼女の心は跳ねるばかり。
 しかし、流石に大声ばかりでは色気が無い。

 「黙りや♪」
 「むぐ……っ?! ん~~~っ??!!!」

 その口をキツネは己の唇で持って塞いだ。

 「ンんん~~♪ ンンンンン……」

 とろ~~……

 「ん?! んんっ?! んんんん…」

 口の中に入ってくるあたたかい液体。
 何時も素子のを飲み、素子に飲ませている事もあって慣れてしまっている景太郎は、焦りまくってはいるがその行為を甘受し、キツネ唾液を彼女の舌と共に咥内に導きいれ、絡ませ合って飲んでゆく。

 「んむっ?! んふぅ、ふぅ、ふぅ……」

 これにはキツネもちょっと驚いた。
 景太郎が余りに上手いからだ。
 素子と共に培った経験は伊達では無い。忽ち、キツネの舌に巻きつかせて扱き、表面のざらざらした部分を使い、それはそれは器用にキツネの舌の裏を掃除する。
 無論、汚れている訳ではないが、その所作は掃除のそれ。ナメクジ等の軟体動物のようにゆっくりと着実に、隅から隅までを舐め穿ってゆく。
 何時しか景太郎の腕もキツネの背に回り、彼女を抱き締める形になっていた。

 舌を嬲られながらもそれに気付いたキツネの瞼から、つつ…と涙が伝う。
 抱き締められているのが嬉しいのか、自分の舌を愛してくれているのが嬉しいのかは解からないが。

 ぷはぁ……

 と同時に、息継ぎをするように唇を離した。
 未練たらたらに唇の間を銀の糸が繋いでいたが、二人ともその意図を追う様にもう一度唇を合わせた。
 今度は景太郎からだ。
 キツネは嬉しさの余りに気が遠くなってしまう。
 
 景太郎の舌がもう一度キツネのそれに絡められた。
 とろんとしていたキツネであったが、直に嬉しげな表情をして景太郎に合わせて熱心に舌を動し始める。

 唾液を交換し、互いの舌をずりゅずりゅと相手の咥内に送り込む。
 その動きは正に軟体動物。

 ナメクジの語源の一つと言われているものに、<舐めてくじる>というものがある。
 “くじる”とは、“穿る”事で、直訳すると『舐めほじる』様に動くイキモノという事になる。

 正に<舐めてほじる>。
 キツネの唾液を飲み込む…いや、“呑み込む”と同時に、キツネも景太郎の舌を受け止めつつ喉を動かす。
 景太郎の両の腕が、もてあまし気味にキツネの背を掻き抱く。

 強く抱き締めたいのに、もっと深く抱き締めたいのに、
 どうやって抱き締めたらよいか本能が理解できなくて焦っているのだ。

 その、もどかしくも力強い抱擁にキツネの舌の動きも激しくなるばかり。
 どこか女顔で、童顔。それでいて格好良くなっている彼の、その愛しい男の髪に指を絡ませ梳いたりしてみる。
 何の事は無い。キツネも景太郎と同じく、愛しすぎて本能が身体を持て余しているのだ。

 ちゅ、ぢゅる……ちうぅぅ、はむ……
 ぐぢゅ、ぢゅる……ちゅう~~……ンふぅうっ、ちゅぷ、るろ~~……


 「うン…♪ んふふ……はぁ…はむ…うぅん……」
 「あ、キ、ツ……んん…ンむ、は……はぁ…あむ……」

 幾ら飲み込んでも、二人の口の間からは唾液が溢れてしまう。
 決して激しくはないが、異様に熱が篭っており、尚且つ凄まじくねちっこい相互奉仕に、合わせた唇程度の蓋では持たなかったのだろう、その間から溢れた唾液がダラダラと流れて顎を伝い、キツネの大きな胸に滴り落ちて濡らしてゆく。

 二人とも溢れ出た唾液でもって顎を汚しているが全く気にならない。
 景太郎よりキツネの方が如実に浴衣を濡れ汚しているが、当然彼女も気にならない。
 そんな“些細な事”に構っていられないとばかりにキツネは舌を蠢かし続けている。

 正に無我夢中。
 そんな彼女の様子、自分と沿う歳差が無いくせに自分よりはるかに大人びているキツネがそんなになっても自分との接吻くちづけに夢中になっているという事実が景太郎の僅かに残っている理性を煮え滾らせてゆく。

 キツネのめは酔っ払った時のそれ。
 やや濁りの色も混ざってはいるが、幸せそうなとろけた眼差しが至近距離の景太郎には映っている。
 つまり、キツネは自分とのキスに酔いしれているのだ。
 調子に乗りやすいのが景太郎の特徴の一つ。やはり調子に乗って、力が抜けて弛緩し始めている彼女の舌を自分の口の中に引き入れた。

 「んん…む~~~♪」

 濡れた声が漏れる。景太郎に求められたのがよほど嬉しいのだろう。
 その柔らかいキツネの舌を甘噛みし、舌先を嬲りながら強く吸う。
 
 「んんっ?! ンふぅうう……っ ンんん……っっ」

 痛みと称するには余りに些細な感触。痛みに似た感触と言った方がよいだろう。
 その感触と一緒に訪れる息苦しさと快楽、悦楽。
 反抗したいような、そのまま嬲られ続けたいような、それでいてもっと無茶苦茶に、乱暴にされたいような…そんなぐちゃぐちゃ想いが混ざったな幸福感の中、キツネは景太郎の成すがままになっている。

 俺のしたいようにさせ、彼の思いのままにさせ、彼に悦んでもらいたい。
 そんな想いと、思う存分彼に甘えたいという想いも混ざり合い、キツネのその舌吸いは更に熱が入った。

 キツネの甘えるような声。
 重ねられた唇の隙間から漏れる吐息。
 滴り落ちる唾液……

 しっとりとした髪、
 弄りあう手、
 鼻かな侵略してくる匂い。

 その全てが景太郎の心を狂わせてゆく。

 素子を抱いている時のそれ、
 優しくしてあげたいのに、素子の求めに応じてどんどん乱暴になって行く時にそれに似た……

 尻を叩いて後から犯した時のそれ、
 なぜか高校の時の制服に身を包んだ素子を、スカートを捲り上げて森の中で犯した時のそれ、
 男風呂で全裸の素子に奉仕させていた時のそれ、
 無人の台所で、テーブルに乗せて突き込んだ時のそれ、
 トイレで用を足させながら自分のモノに奉仕させていた時のそれ……

 彼女に対しての優しさは、彼女を独占する事だと気付かされ、景太郎は素子を蹂躙するかのように毎日抱いていた。
 そして素子も、それを嬉々として受け入れていた。

 だから、彼の倫理はどんどん蕩けて行ったのだ。

 誰から見ても美人であるキツネ。
 ショートカットが良く似合う、元気で掴みどころは無いが、それでいて優しい彼女。
 なるの事も大好きだが、キツネだって大切な人に間違いは無い。
 その大切な人の髪をぐしゃぐしゃと指で荒らしながらも、愛しさは跳ね上がり続け、髪を乱されているキツネもそれを理解しているのだろう、全く気にせず唾液と舌を味わい続けている。

 舌の感触、
 肌の感触、
 漂って来る芳香、
 甘い声……
 どれ一つをとっても腰から力が抜けるほど素晴らしい。
 
 その全てが混ざり合い、景太郎を泥酔させてゆく。

 理性が、砕ける。

 蹂躙したくなる。

 大好きだからこそ、愛しいからこそ、自分手で犯し尽くしたくなってゆく。

 キツネさんの…全てを……このオレが…………





「ぬぉっ!」
 「わぁっ」

 ギリギリ。
 正にギリギリだった。

 寸での処で景太郎は踏みとどまる事に成功したのである。
 尤も、唇を離されたキツネは物凄く不服そうであったが。

 「何やの? もぅ……けーたろはイケズやなぁ……」
 「イケズって…キツネさぁん……」

 砕け掛かった理性を総動員してキツネの貞操を守ったというのに、等の彼女はそれがお気に召さないらしい。
 半泣きで景太郎が講義するも耳も貸さない。

 「どーしてこんな事するんですか!! 何考えてんです?!」
 「どーしてつて……けーたろとスル為やけど?
  何考えとると聞かれても、けーたろの事としか言えへんし……」

 抗議しても無駄らしい。あけすけに返されてしまう。
 しかし、色事をそうポンポン返してくる様は誰かににしていると感じた。

 そう、つい最近もそれで悩んだのだが…はて?
 ええと……
 『景太郎先輩……』
 頭に電光が走った。
 そう、素子によく似ているのだ。いや、似過ぎている。

 以前のキツネであれば、色事についての冗談を言う時には、どんな大人っぽい意見を口にしても頬を紅く染めていたのだが、今の彼女はこんな暗い部屋の中でも解かるほど落ち着きかえっている。
 何せキツネは酔っ払っている時以外、つまり素面の時ならば下着を見られても赤くなる程なのだ。
 そのキツネがこんな格好で……
 ん? こんな格好……?

「どわぁあっ??!!
 な、何ですか、その恰好は――っ??!!」


 「今頃かいな…」

 泡吹いて慌てふためく景太郎に、キツネも苦笑を見せた。
 ホント相変わらずだ。
 ポイントとタイミングもバッチリズラしてしまうし、女心をイマイチ解かってない。
 それでいて相手のド真ん中を突く困ったヤツ。


 だが、それが良い……


 「何やの…? モトコは良うて、ウチはアカン言うんか?」
 「え…………?」

 キツネの言葉に、景太郎の顔が真っ白になった。ついでに思考も。

 「ウチが知らん思とったんやったら甘いで? ウチにはお見通しや」
 「な…な………っ」

 とは言っても、教えられた情報だったりする。
 それも、素子ご本人からだ。

 景太郎は目に見えて狼狽している。
 なるを裏切っている事実もあるが、なるの親友であるキツネや、潔癖症のしのぶに知られるという事は、彼女らに嫌われるという事である。
 ここでの生活を心底気に入っており、自分の家だとはっきり言えるほどの生活を根底から破壊してしまうほどの事柄なのだ。
 怯えが出ない方がおかしい。

 しかし、そんな景太郎の身上を理解しているキツネは、彼の予想よりはるかに柔らかい口調で語りかけてきた。

 「あんな…別に責めとりゃせんのやで? なるとはまだ寝てへんのやろ? 男やったら悶々してまうもしゃーないしな」
 「……え?」

 あまりのキツネの言葉にカチンと凍りつく景太郎。

 「モトコの事は聞いたで? 言うたら治療やろ? モトコかて見も知らへん野郎に抱かれとーないやろしな。
  けーたろに抱かれるんやったらモトコも本願本望やろし」
 「ええ~と……?」

 なる以外の女との性行為に全然全く気にしていないキツネに、景太郎は面食らってしまう。
 キツネの顔は、何かおかしい事言うたか? と不思議そうであるし。

 だが、キツネはさらに爆弾を投下する。

 「せやから、ウチも抱いてもらお思てな」
 「へ……?」

 しゅるりと解け掛かっていた帯を解く。
 無理矢理合わせていた襟元が、重さに負けて前を大きく広げる。

 その際、襟が一旦胸の先端で止まってから滑り降りたのは、襟の折り返しが乳首に引っかかったからだと気付かされた。
 袷がとけると袷の奥に辛うじて封じられていた大きなバストが剥き出しとなり、浴衣は肩に衣を引っ掛けているレベルにまで落ちてしまう。
 黒いショーツが景太郎の目の前に現れ、キスによって高められたままの股間を色香が直撃した。

 「え…? な、そ、そんな……オレ、オレは……」

 素子の事で脅されているようなものであるし、これ以上成瀬川を裏切れないと景太郎は弱々しい拒否の声を出そうとする。
 しかし、キツネは彼のその気持ちを理解していて、自分の膝を固く掴んでいる彼の右手をそっと取り、自分の股間に導いていった。

 ぬちゅ……


 「え……?」

 その濡れ具合。
 景太郎も素子以外に経験がある訳ではないが、それでもある程度は勉強している。
 その今の景太郎が驚くほど、キツネのそこは愛液によって濡れ滴っていた。

 「いやな……」

 やっと照れるような表情を見せつつ、キツネはゆっくりと立ち上がる。

 景太郎の目の前に、剥き出しのバストの山と、ウエストのへこみ、そして股間の陰影がランプが入った行灯の灯りによって強くなっている。
 それがまた異様に色気があり、景太郎の息が荒くなってゆく。

 「ウチもな、モトコみたいに けーたろの事考えただけでここがこないになってまうようになってもたんや」

 キツネが股間に手を伸ばし、一撫でしてからそれを翳す。
 ボンヤリとした明かりの中、その指と指の間が糸で繋がり、その滑りを景太郎に見せ付けている。

 「……な?
  せやからウチの事も頼むで?」

 キツネは流し目を景太郎に送りつつ、
 その指を紅い舌で舐め、挑発して見せた。

 薄暗い部屋の中で、針の様に細く眼を光らせた彼女は、あだ名の通りにキツネの様であった。


 正に色香でもって男を誑かすキツネの化生、
 それも……
                        発情期の妖狐がそこに――
******************************************************

 毎度お世話になっております。Pixyです。

 今回はちょっと(かなり)理屈っぽくなってしまってすみません。
 物語の展開上、景太郎の情況認識を入れたくてこうしてしまいました。

 全然エッチに書けてませんから、次は猛反省してキツネ×景太郎を書く所存です。

 それではまた……






[2319] Re[6]:Dotage ~妄愛<壱拾>~  (ラブひな)
Name: Pixy◆b660561e
Date: 2007/08/18 16:24


 キツネという生き物がいる――

 一般的なキツネという動物のイメージは大体が同じで、
 狡猾…つまり“ずる賢く”て執念深く、且つイジワルで図々しい…又は“残忍”等だ。

 だが、このように言われているものの、本来のキツネは結構弱い。

 狡猾や執念深さではタヌキに劣るし、更にその上で数で押してくるカラスには絶対に負ける。
 残忍等も当てはまらない。大体、自然界で残忍とか言う方がおかしいのであるし。
 例外的にこのカテゴリーに入れるならばイタチだろう。イタチは飽きるまでネズミを殺し続けるという実験結果もあるくらいなのだから。

 キツネは本来、臆病な生き物だ。
 気配を感じると野兎の様に巣穴に引っ込んでその気配が消えるまで動こうとしないのだから。
 それ故に狡猾扱いされるのだから堪ったものでは無いだろう。

 ただ、慣れてくると人前に姿を現しだす。
 狩られないのが解かり、食べ物をもらえると理解するとそうしてくる。そして、期待した相手からエサをもらえないとずっと追いかけてきたりもする。
 北海道のキタキツネ等が観光客相手にそんな事をしていたりするのであるが、この辺りが図々しいといわれる所以なのだろう。

 言われているよりずっと臆病で、慣れると擦り寄ってくる。
 イヌ属でありながらネコ寄りの習性を持つ動物。
 それがキツネなのである。
 はだけた浴衣から覗くのは以外に白い肌。
 行灯の灯りによって艶かしさが上がっており、普段は健康的だと言われている彼女の裸身が異様にいやらしく見えている。

 いや――

 実際に彼女の身体は男を欲し、その牝の匂いを強めている。
 人間は年中発情している生物だ。
 特に若い雄は救い様が無く、毎日だって盛っている。

 この女は、彼女を知るものからキツネと呼ばれているだけあって、関係を壊す事に臆病なイキモノである。
 それに人見知りするようには見えないが、他人を心から許す事はあまり無い。
 逆に、心から許せば幾らでも踏み込んでくる事を許してしまう。

 彼女は今、目の前の男に対して欲情している。
 息が荒いのも興奮しているからであり、
 乳首が起っているのは刺激を求めているからであり、
 身体が汗ばんでいるのは性的欲求が高まっているからであり、
 股間が濡れ、蜜が滴っているのは雄を欲しているからである。

 「キ、キツネ…さん……」

 目の前の獲物オスは息も絶え絶え。
 理性というぶ厚い壁が今や薄紙。破れるのも剥がれ落ちるのも時間の問題である。
 更に相手が悪い事に、この目の前のキツネは今さっき妖狐となったキツネだ。
 だからキツネの習性に妖しい付加もついてくる。

 「なぁ、けーたろ……当然、ウチも癒してくれるんやろ?」

 見せ付けるように唇をチロリと舐める。
 決して飢え狂った下品な物では無く、エロスと可愛らしさのギリギリのラインで。

 当然ながら彼の股間は爆発寸前だ。何時飛び掛ってきてもおかしくは無い。
 後一押しなのだ。
 その駆け引きすら面白くてたまらない。
 キツネは猫の様に遊んでいた。

 「なぁ、けーたろ……何怖がっとん……?
  ウチに何してもええんやで? けーたろにされなあかん状態なんやし……」
 「で、でも……」

 その一歩前に進み出るのに戸惑いがある。
 しかし、彼は何に対して戸惑っているのか既に解からなくなっている。

 遠慮……する必要は無い。
 罪悪感……誰にだ?

 自分の身体は正直にじたばたと悶えている。
 突き刺せっ! 出させろっ! と訴え続けている。
 だが、彼はどうしても次の行動に出られなかった。

 「ここ、そないにしながら拒否されても説得力無いワ」
 「うう……」

 彼の着ている浴衣の裾から覗くトランクスの前の部分が大きく突き出されている。
 閉じ合わせの部分は既にカウパーでベトベトに濡れており、大きく染みの円を広げていた。

 だが、それでも一歩足らないらしい。

 このキツネはそんなじれったい彼も好きなので別段気にもしていない。
 だが、いい加減限界であるのは確かだ。

 だからこの狡猾なキツネは行動に出た。

 手に持っている帯紐を持ち直して彼の眼の前で膝を付く。
 自分を見つめ続ける彼の視線に悦びを感じつつ、彼女はその帯紐を自分の手に巻きつけ始めた。

 彼の眼に驚愕の色が混じる。

 彼にそんな血走った眼をさせているという事が誇らしかった。
 自分の仕種が相手を…雄を欲情させている。その事が子宮を疼かせる。
 腰が重くなり、襞のざわめきを感じてしまう。

 ウチ、何ていやらしゅうなったんや……


 以前なら唾棄したであろう、はしたなさ過ぎる反応を見せている自分の肉体からだ
 好きだから触れ合いたい…というのなら兎も角、好きだから嬲られたいというのは、幾らなんでもひど過ぎる。

 ……しかし、
 だがしかし、そのいやらしく淫らな反応を景太郎に見せる事ができ、 尚且つ彼をより興奮させていると思えば、この淫乱さがいっそ誇らしくもある。

 だから彼女は彼の箍をもう一つ解除する。

 するすると自分の両の手をわりと強めに巻き絞め、歯で器用に縛りつける。
 それだけでも何やら倒錯的だというのに、その濡れた眼差しを景太郎に送ったまま、彼女はコロンと布団の上に身体を丸めて転がり、愛しい男に対して呟くような声を投げつけたのだった。

 「ほれ……これでもう、ウチは逃げられへん……」

 と――


 頭の中が真っ白になった。

 身体を丸めて転がっている彼女の臀部は剥き出しで、小さな黒い紐パンも丸見え。
 黒い帯紐で結ばれている両の手は握り締められており、如何様な目に合わされようとも拒否できそうにも無かった。
 だが、そんな格好をしているのも、結んだのも彼女だ。
 そして、彼に抱かれねばならないという事も聞いている。


 ぶちり…っ


 景気のいい音がし、彼の頭の中で最後の何かがぶっ千切れた。
 彼女の自由の利かなくなった両の手を掴み、捧げ上げるように上に伸ばさせる。
 剥き出しなったその豊満な胸にかぶりつき、歯を立て、突き出た乳首を噛んで引っ張りだし、元の形に戻らせてたまるかと言わんばかりの勢いで音を立てて吸いまくった。

 「んあっ!! はぁああ……っっっ」

 彼女の腰が跳ね、大きな声が迸る。
 彼にキスされただけで彼女の身体は強く反応するのだ。こんな強い刺激を受けたら堪ったものではない。
 歯形をつけられても痛みは微塵も感じなかったが、快楽にスライドされたその感触は彼女の忍耐を凌駕していた。
 理性を吹き飛ばしている男もこれには焦る。

 ぐにゅう……がぶっ ちゅうちゅうちゅう…

 「んぁあっ ンぐっ、ひ、あぁあああ……っっ!!」

 その声音に悲痛の色は皆無。
 大き過ぎる快楽による苦痛の様なものはあるかもしれないが、実質的な痛みの色は全く無い。

 しかし困ったものである。
 彼に大きな乳房を思いのままに揉みしだかれ、噛まれ、吸われ、握り締められる毎に腰を反らせて涎を垂らし、その快楽故に声を張ってしまうのだ。
 この声の大きさは流石に拙い。
 彼が身も心も掌握している少女とてここまで喘ぎの声は大きくないのだ。
 ケダモノになってはいてもそれは気になっていたのか、彼は自分の帯紐をもどかしそうに解くと、それを彼女の顔に巻きだした。

 「…え? あ、むご……っ?!」

 ――いや、正確に言おう。
 口に巻いたのだ。
 何とこの男は、自分の帯紐を使って彼女に猿轡をかけたのである。

 やや後ずさりをする彼女に、男の欲望は更に強まった。
 これで彼女が怯えの色でも見せていたとしたら止めたかもしれない。紐を解いて土下座して謝ったかもしれない。
 そういう無用な優しさを彼は決して失わないのだから。

 だが、彼女の目にあったのは期待の色。
 惚れた雄に無茶苦茶に犯される事を待ち望み、彼の欲情を心から悦んでいる色のみ。

 流石にその期待に沿わぬ訳には行かないだろう。
 彼は残った理性の欠片を吹き飛ばし、目の前の牝に飛び掛ってしまった。

 その牝といえば、
 圧し掛かってくる彼の体重をダイレクトに受け止め、全身で彼を感じ、心からの悦びに身が爆ぜそうになっている。


 『なんて幸せなんや……』と。




 ここには変わったキツネがいる。

 臆病だけど狡猾で、不器用だけどズルくて、イジワルだけど優しくて、
 孤独が嫌いで群れたがり、
 好きな男に抱かれる事の嬉しさに歓喜の涙を流す変わったキツネ。

 だけどそれはそのキツネが牝だからであり、
 “オンナ”であるのだからしょうがない事。

 ――その晩、その牝狐は求めていた雄を得た。





――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
                           -盲・愛-
                            File:壱拾

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――





 胸を玩ばれたキツネは虚ろな眼で天井の方を眺めている。
 いや、何も見えてはおるまいが。

 無論、景太郎に嬲られているショックで意識が朦朧としている……という訳では無く、
 景太郎に嬲られているという悦びによるアクメを何度も迎えてしまったからだ。

 ハッキリ言って猿轡は暴挙であったが、ある意味慧眼だと言えるだろう。
 何故なら、猿轡を掛けられているのにもかかわらずキツネの声は大きかったからだ。
 帯紐をぐるぐる巻きにして口を塞いでいるのは正解だったろう。口を押さえる程度ではこの声は止められ無かった事は間違いあるまい。
 既にキツネの涎が染み渡って頬にも垂れているがそれどころではない。

 つつつ……れろれろれろ……んちゅう~~……ちゅっちゅっちゅっ

 「んおっ、ンんんっ、んむっ、ンぶぅう~~~っっっ」

 景太郎の唇が嬲り尽くした胸を後にし、舌を肌に這わせ、臍をほじり、キスマークと涎塗れにしながらずりずりと下がってきたのだ。
 キツネは眼を白黒させながら、若鮎のように身体を撓らせた。
 しかし腰は既にガッチリと押さえ込まれているし、太股も割られて間に入られている。
 レイプされるという情況からいえば、抵抗のしようも無い状況だ。
 無論、言うまでも無く和姦であるし、もし仮に尋問されたとしてもキツネは『強姦プレイしとっただけやで?』と嬉しげに極平然と語るだろう。
 キツネから言えば嘘でも何でもないし、仮に強姦だとしても好きな男に迷惑はかけないし、掛けられないのだから。

 やがて黒い布地に舌がたどり着いた。
 キツネの目は期待に濡れ、不粋な布切れに隠された股間を凝視している景太郎の顔を見つめている。
 いくら下着によって隠されていようとも、自分の股座を見つめられているのだ。恥ずかしくない訳が無い。

 だが、その息が詰まりそうな羞恥がまたイイのである。

 くんくんと景太郎が鼻を鳴らす音が腰をひくつかせ、
 はぁ、はぁ…と股間に掛けられる熱い息が甘く身を捩らせる。
 薄暗さの為に見えてはおるまいが、既にキツネの下着は下着としての能力を著しく落としており、単なる濡れた黒い布になっているはず。
 だったらとっとと引き剥がして嬲り潰してほしい。
 ぐちゃぐちゃに壊してほしい。
 そんなマゾめいた期待にキツネは震えていた。

 又、景太郎の方も、キツネが期待に震えているという事に気付いておらず、怯えていると感じているのだろう、身体を震わせている彼女に対してサディフィックな興奮が高まっており、愛しさと独占欲に心を焼き焦がされていた。
 
 腰をひくつかせているキツネの股間。
 感じる甘酸っぱい香りは少女時代からとうに脱皮しているオンナ独特のもの。
 未だ少女である素子以外の若い女との性的接触の無い景太郎は、その香りに狂喜していた。

 がぶぅっ

 「ンぐぅ……っ!!」

 噛まれた……のではない。
 噛みつく勢いで股間が景太郎の口に隠されてしまったのである。

 「ん、こぷぉっ、ぶ、ぶぉふぉ~~~っっっ」

 景太郎は下着ごと下の唇を口の中に入れ、そのままかき回した。
 当然、クロッチ部も口の中である為、すの隙間から舌がもぐりこんで来たり、菊門ギリギリまで舌が攻めて来たりと大変である。
 景太郎の方はキツネの股間を味わいまくるだけなので良いのだが、キツネの方は嬲られいる側なので大変だ。何せ被支配欲的なマゾヒズムの快楽を感じ始めていた矢先の行為だ。愛されて嬲られているという今されている行為は容量を超えるほどの快楽であるから堪らない。
 ぷしゅ、ぷしゅっ、と小刻みに液体が吹き、景太郎の口中を汚してゆく。
 汐吹き…と一般に言われているものがあるが、実はその大半は失禁である。
 大きくイった所為で膣圧によって愛液を噴くという事も無い訳ではないが、その実、単なる失禁だったという例は決して少なくは無い。
 だが、景太郎もキツネ本人も気付いていない事であるが、キツネは確かに“汐吹き”を行っていた。

 キツネは失禁したと勘違いし、顔を真っ赤にして悶えていたが景太郎は気にしていない。というより気付いていない。
 口中に入ってきた美味い液体をすすり、咀嚼し、舌を突き込む様に下着の上からヴァギナを押して次を催促する。
 足を大きく割られている為、クリトリスを覆っていた皮が剥かれて小さく顔を見せていた。その上を下着越しにベロが行き来したものだから堪らない。

 「んっ! ごぉ、ぎぃ、こほぉおっっ!!」

 くぐもった声を上げて腰を跳ね上げるキツネ。
 景太郎は顔に押し付けられた腰を抱え込み、下着越しに感じる唇を押す小さなポッチに歯を立てた。

 「ンぉおっ!! ~~~~~~~~~~~っっっ!!!」


 声にならないキツネの絶叫。
 だが、痛みからくる叫びで無い事には間違いはない。
 眼から涙を滲ませ、頭を左右に振ってよがり狂うキツネ。そんな彼女の痴態を初めて目にしている景太郎の興奮も天井知らずに高まり続けている。

 じゅるじゅると下着に自分のた液を染み込ませ、
 ずずずと吸い出す。
 じゅるじゅると染み込ませ、また吸う。
 キツネのショーツは景太郎と唾液と愛液のカクテルによってベタベタになっていた。

 景太郎によって唾液を送り込まれると感じる股間の生温かさ。
 そして、

 ずずず……じゅるるるる……

 「ひ、ふごぉ、ほごぉ、おおおおお……っっっ」

 そして吸われる羞恥。
 吸っている間も舌が走りまくり、アンダーヘアまで前歯で撫でられて嬲られるのがまたイイ。
 時折、クロッチの隙間から入ってくる舌の熱さもまた格別である。

 初めて景太郎に抱かれる。

 それもこの薄暗い和室で無茶苦茶にされるという情況も強いスパイスだ。
 自由の利かない手。声の出せない口。そして大きくはだけられている浴衣。
 春画にも似た、奇妙に時代めいた性行為にキツネは酔いしれている。

 そんな時、景太郎は口中に広がる鉄錆の味を感じていた。

 流石に勝負下着にナプキンを貼ったりしていなかったが、キツネは丁度生理に入っていた。
 普通は生理日に行為を行ったりしない。女性の方の不快感も大きいが、男の方の嫌悪感もあるからだ。

 女より血慣れしない男は特に径血を嫌悪するという理由がある。
 だが、幾ら不快であろうがキツネはもう限界であったし、嫌悪もクソも景太郎の本能は気にもならない。いや、それどころか血に反応して余計に高まっているではないか。

 動物は普通、共食いを防ぐ為に同種の血に嫌悪を感じるように出来ている。
 無論、生き死にが関わった時等はリミッターが外れる様にはできているが、基本的には同種の血は駄目なのだ。
 が、アドレナリンやドーパミンが出ている時などは別で、逆にその血に酔いしれたり理性を吹き飛ばしたりしてしまう。その傾向が強いのが実は人間で、少量のドーパミンで血を好むようになったりする。
 逆に血の味を感じてドーパミンやアドレナリンを出したりする者もいるが、それは兎も角。

 今、理性を飛ばしている景太郎はキツネの径血によって鮫の様に狂っていた。
 眼鏡を飛ばし、キツネに圧し掛かり、そのいきり立った肉の凶器を求め狂っている肉の筒に差し込もうとした。
 ずり、ずり、と滑って入ろうとしない亀頭。
 当たり前であるがショーツの上なので入らないのだ。
 それすらも気付けないほど、景太郎はおかしくなっていた。

 だが、もたないのはキツネも同じだ。
 入れてほしいのに入って来てくれない。
 伝えようにも口が利けない。
 そのもどかしさも良いが、結合までの間が長引くと脳が焼き切れてしまいそうになる。
 頭の上まで伸ばしていた縛られた(縛った)ままの両手をゆるゆると下げ、未だ下着をこすっている肉の柱を避け、
 クロッチの部分を横にずらし、熱い熱い肉の柱に入り口がのある場所に導いた。

 粘膜と粘膜が触れ合った。
 後は……入れるだけだ。

 その思った瞬間――

 「んンんんっ?!」

 がばっと景太郎に足がつかまれ、さっき以上に大きく広げられる。
 粘膜同士の接触に、牝に飢えたケダモノが更に高ぶってしまったのだろう。
 或いは、てらてら滑りを見せている秘唇が大きく口を広げて雄を待ち望んでいるのに気付いたか、彼はキツネの内臓を貫かんばかりの勢いでその肉の凶器で入り口を掻き探す。

 ドキドキして激しく恥ずかしい乱暴な性行為を仕掛けている景太郎を見る。

 何時も通りだ。

 理性を飛ばしているし、焦りまくって自分を見失っているが、それでも元々のモノは失っていない彼の顔。
 こんな情況で使う言葉ではないが、“真剣”な顔で自分に挑んでくるその顔は、やはり愛しくて堪らない。

 それに彼は素子が唯一心身を許した男。
 幾ら男を見る眼が培われていない彼女であっても、疑り深い分その本質を見極めるのに時間を掛けているだろう。
 だから“あの”男嫌い亀嫌い(?)の素子が身体を許し、心を許しているのだ。

 その彼女が惚れた彼の本質は、如何に理性が吹っ飛んでいようと損なわれるはずも無いのである。

 そして自分も……
 彼に心の奥への侵入すら許してしまっている。

 だからこそ、ここまで身を任せきっているのだ。

 カウパーとキツネの本気汁で亀頭の先をヌラヌラにしながら、ようやく景太郎は、突き入れる“へこみ”を発見した。
 要領の悪い彼の事だ。素子と違う相手である為に上手く角度と位置が合わなかったのだろう。

 ウチに対しての初体験と思たら……けーたろも童貞みたいなもんやな……

 等と下らない事で悦が入ったりもするが、
 その彼女の余裕もそこまでだった。

 キツネの右足をぐいと掴むと、そのまま右足を抱え込むように腰を前に突き出してくる。
 丁度、柱に掴まるようにキツネの足を使い、ついに彼は己の欲望に滾った肉の凶器でもって目の前のオンナを犯死に掛かった。

 ぞぶぅ……っっ


 確かな肉を割る感触を腰に受け、亀頭を膣にもぐりこませてゆく。

「ンご、おぉおおおおおおお………っっっ!!!」

 濡れた声を上げてキツネが悦びを見せた。
 尤も、両手を縛られ、猿轡を掛けられ、犯されて泣いている様にしか見えないが。
 それでもキツネの心は歓喜に満たされ、じりじりと入ってくる彼のパーツを腰を振って強請り続けていた。
 
 だが、景太郎の方はそれどころではない。

 きつい、そして狭い。
 キツネの膣がきつくて狭すぎて中々奥まで入って行かないのだ。

 はっきり言ってしまえば素子の初めての時よりキツイ。

 それでも“固い”という訳では無く、入っては行く。
 初めてとは到底思えないし、キツネの普段の言動からして男性経験が無いとは考えがたい。
 だが、ペニスが貪ろうとしている柔肉は少女のように狭く、処女の様にきつかった。

 単に素子同様、膣内の全てが景太郎を歓迎して押し競状態になっているだけなのかもしれない。
 膣の締め付けやざわつきはそれこそ十人十色。
 素子より狭くてきついが、素子より引き込む力が強い。
 だからと言って処女とも限らない。
 例え処女膜があっても、これでは気付けないし、破っても解かるまい。
 おまけに生理中なので血も出ている。
 更な彼女に問うた所ではぐらかされるか、誤魔化されるのがオチだろう。

 しかし、そんな“些細な事”にかまっている余裕は景太郎には無かった。

 元より彼はキツネが処女だろうが非処女だろうが気にもならないし、今の状況においてや何の関係も無い。
 そんな事より、少女の様に小さな膣粘膜全てにきつく甘く舐めしゃぶられている情況で射精してしまう事を耐えるのに精一杯なのだ。

 入り口より少し奥の方が広く感じられるが、その分、亀頭の先に感じる襞の感触の方がタイレクトに強い。
 だから突き込もうとするのに引き止められてしまう。
 まるで蛇腹のように段のある襞が、強く締め付けて奥に飲み込むべく蠕動しているかのようだ。
 それでいて入り口付近の締め付けの力が強いものだから進むに進めない。

 奥に飲み込みたいのに、もっともっと歓迎したい。
 そのアンビバレンツにヴァギナそのものが苦悩しているかもしれない。
 
 童貞であったら時なら数秒と持つまい。
 下手をすると締め付けられた瞬間に白い液を吐き出しているかもしれない。
 それ程鮮烈に熱く、強い締め付けだったのである。
 
 それでも腰をグラインドさせ、掻き込む様に強引に突き刺してゆく。
 腰の捻りの幅が広い為、時折肉傘がキツネのGスポットの辺りをゴリゴリと刺激する。
 その度に身体が撓り、締め付けが強くなる。かなりランダムなリズムの締め付けであるが、それ故に景太郎の感じている快楽も又ランダムで強弱がつく。
 いや、キツネの膣は最初の締め付けからは決して緩み見せてくれない為、景太郎はいっぱいいっぱいである。
 だから、

 どぶ…っ、

 「うぶぅ…っ!!!」

 びゅくっ、びゅ、

 「む、ぶ、お、ごぉ……」

 流石にもたなかったのだろう、景太郎はまず第一射を行った。
 どぶっ、どぶっ、と物凄い量のザーメンがキツネの肉襞を汚してゆく。
 明らかに自分の体温と違う粘液が膣内を蹂躙してゆく。

 昨日、素子の膣に出したとはとても信じられないほどの量と粘り。そして一ヶ月くらい溜め込んでいたかのように黄色みがかった濃さ。その雄の汚らしい精液がキツネの子宮までの道を穢し尽くしてゆく。

 眼の奥で星が弾け、腰と頭が直結したかのような刺激が、膣から頭頂に駆け抜けていった。
 その刺激の強さと甘さは途轍もないほどで、骨が引き抜かれたような強い脱力感をキツネに与えている。

 射精される事によるオルガスムス。話にしか聞いた事の無いそれをキツネは身体に教え込まされていた。

 しかし、

 ずりゅ……

 「んひぃ……っっ??!!」

 景太郎はまだ

 ずにゅうう……ぶぢゅっ

 「んおぉああっっ」

 の射精で萎える訳が無い“今”の景太郎は、キツネの身体が脱力したのを良い事に、ついにキツネの膣奥に到達していた。
 雛鳥の嘴より柔らかい子宮口をつんつん突き、そのストロークで膣道を蹂躙すべく、突貫工事の強引さでもって肉襞の研磨作業に入ったのである。

 ずぶゅ、ぐぢょっ、ぶぢゅ、ぐぢょっ、ぬぢゅ、ぶぢょっ、ぐぢゅ、ぶぢゅっ、

 「あ…っ、おぉお、こぉっ、ふぃ…っ、ンふぅ……っ!!」

 幾ら締め付けようと今度はそうは行かない。
 膣道は景太郎の精液でドロドロなのだ。
 愛液と混じり合い、そして血とも混ざって世界一淫らでいやらしい泡を生み出してボタボタと結合部から溢れている。
 その他言できぬ淫猥な潤滑油でもってキツネの防衛策と歓迎策は完全に瓦解し、
 只々、愛する男による陵辱行為を受け入れるのみ。

 どぶっ、どぶどぶどぶ……っ
 じゅぽっ、ぐぽっ、ぐぶぢゅっ、ぶぢゅる、ぢゅぼっ、ぐぢょっ、


 恐るべき事に、景太郎は射精しながらピストンを行っていた。
 一度引き抜かれたキツネのヴァギナは、そのきつい膣の圧力でもって精液を吐き出すのであるが、景太郎は彼女をうつ伏せにして、未だ精液を吐いているヴァギナにペニスを突き込んで押し戻す。
 キツネは枕に顔を押し付けてその陵辱に耐えた。
 いや……? 陵辱に耐えるというより、陵辱されるという禁忌の悦びに耐えているのが正しいのかもしれない。

 現に四つん這いで犯されようと、そのまま背面座位に体位を変えられようと抵抗の気配すら無い。

 ぶじゅ、ぶぢゅっ、ぬぢゅ、ぐじゅ、ぢゅ、ぢゅ、ぢゅ、ぶぢゅ、

 「ふぉあっ、ン、ンん、むぅっ、ンぉっ、ンふっ、おぉお…っっっ」

 そこに脱力や諦めによる無抵抗は見えない。
 行灯の灯りに照らされているキツネの汗まみれの裸身。
 歯形とキスマークを強く残す胸と腹。
 腕の自由を奪われ、
 彼の股座に座らされ、
 下着を着けたまま肉柱を突き込まれ、
 猿轡を掛けられ、その猿轡の帯紐から溢れ出た涎をボタボタと滴らせている。
 ペニスを咥えさせられているヴァギナも痛々しいほど口を広げられて、綺麗に生え揃っているヘアまで精液で汚され、血と愛液と精液が混ざり合った薄ピンクの粘液が纏わりついている。

 にも拘らず、キツネは歓喜の中にいた。

 ずびゅ、ずひっ、ずひっ、ずひ……っ


 漂ってくる彼の汗の匂いも、
 腰を動かしながら乳首を引っ張り、玩んでいる彼の手指も、
 肉襞をゴリゴリと擦り、その形を忘れさせまいと教え込んでいるペニスも、
 膣内を汚し、子宮内に侵攻を果たしている精液も、
 その彼の全てが愛しかった。

 「あお……っ!!
  ンふぉ、
  おぉおお……っっっっっっっ!!!」

 何度も何度もアクメを迎えさせられ、
 何度も何度も膣内に出される。

 あかん……っっっ
 幸せすぎて………気持ちよすぎて………死んでまうっっっっっっっっ!!!


 脳の限界を超える様な快楽は、ついに限界を突き破ってしまい、
 キツネが人生最初の絶頂による失神を迎える瞬間、

 彼女は唐突に素子の言葉を思い出していた―――

 「キツネさん。どう足掻いてもがんばっても、景太郎先輩は決して私やキツネさんのものにはなりませんよ?

  でも……………」







 「う………ん………?」

 ようやく気ぃ付いた時も、そこはまだ薄暗い部屋やった。

 うわっちゃあ~~~……失神しとったんかいな。スゴイな、これは。

 ほんでも行灯ン中のランプの油が残っとるみたいやから、そんな時間経ってない筈。
 でも失神。
 イってイってイきまくって気絶。ひょえ~~……人生最高の快楽ってか? 照れるわ。ホンマ。
 ハズいんはハズいんやけど……なんや、その…こうな……うん……わぁ~~~マジにウレシイ。
 どないしたらええんや? ひょえ~~~

 兎に角身体起こそうとして気ぃ付いた。
 手は縛ったまま。
 猿轡もつけたまま。
 ほんでもって、けーたろに抱き締められたまま……

 う、うわっ、うわっ、うわぁ~~っ!!
 ハズっ ごっつハズっっ
 眼ぇ覚めてもオトコの腕ン中?! うっわ~~~~……


 で、でも、でも……




 ごっつウレシイ……




 「はふぅん……へーはほ……」

 ……猿轡付いたままやから、ちっとも締まらん……

 ま、まぁ、何はともあれ口の猿轡を解く。

 撒いて縛っとるだけやから、自由ならん手でもどないかなった。
 手ぇは自分で縛ったさかい、歯で簡単に解けた。
 痕は……ついてないな。良かった良かった。

 あ……でも、胸に歯形とキスマークが残っとるわ。風呂ン時どないしょう? 素子の手ぇ借りて誤魔化すか? 

 ん~~~…ほんでも、なるやしのぶはどないかできても、スゥがなぁ……

 『わっ!! キツネ、何に噛まれたんや?! 歯型残ってんで?!』とか言うん決まっとるし。つまらんトコ目敏いしなぁ……

 ンなアホな事を思いよる内に、けーたろが身じろきし出した。
 あ、起きるんか? 起きるんやな?

 あはは……照れるなぁ……オトコとオンナんなって最初の会話か……
 何から言うたろか~?
 『痛かったで…』とか? そらアカンな。コイツやったら泣いてまうかもしれへん。
 『ごっつ気持ち良かった』 う~ん…なんや淫乱みたいやなぁ……ああ、せやけど淫乱いうんは間違いないか。
 縛られて犯されて悦んどったんやしなぁ……

 ま、フツーに挨拶から入ろか。
 どうせこれからずっとお世話になるンやしな。
 けーたろを傷付けず、尚且つエロエロしてもらう。ちょっとムズい気ぃもせんでもないけど、コイツとずっと一緒におりたいんはマジなんやしな。

 とと…? 起きそうやな。
 ほな…………

 ……ん? あ、ありゃ?

 ………………………………………………………………まだ、けーたろの……




 ウチの中に入ったままや……………




 暗幕越しでも聞えてくる二人の会話。
 キツネに乱暴をはたらいてしまったと謝ろうとする景太郎に、犯してくれてありがとうと先に手を打つキツネ。

 キツネは、自分も素子同様に“けーたろ”に抱かれないとおかしくなってしまうし、他の男に身を任せるのは御免蒙りたい。
 だったら惚れている男の慰み者になりたいと彼に語っている。

 そんな会話を聞きながら、素子は縁側の柱に凭れ、愛液で汚した自分の右手を舐め清めていた。
 襦袢ははだけられ、奇しくも中の二人と同様の乱れた姿。
 違うのは異性の精臭が無い程度だ。

 つい今しがたまで二人の狂態を聴きながら自分を慰めていたのである。
 今日は景太郎とキツネが初めて床を同じにする晩だったので、二人きりにさせてあげた。
 そんな心遣いにキツネも喜んだものだ。

 『まぁ、“次”からは知りませんが……』

 とおまけの言葉を口にした素子に対し、キツネはちょっと驚いた顔を見せたものの、

 『それこそ望むところや』

 と返してきたものである。
 
 それを思い出して小さく笑みが浮かんだ。

 自分は彼を愛している。
 そして皆も彼を愛している。
 だから、今のままの彼の幸せでは、皆の幸せにはなり得ないのだ。




 中での言い合いはまだ続いている。

 キツネは平然と、
 景太郎は必死に、

 だが、時間の問題だろう。
 キツネは景太郎に抱かれねばならない。そうしないと素子のように自分を保てなくなる……と景太郎は思っている。
 症状が素子と同じだからだ。
 それが部屋に立ち込めていた媚香によるものだという事に気付いていないのだから。
 そしてキツネは、淫乱化の原因は一言も漏らしていない。

 この無人別館の後期に使われたのであろう、“夜用”の香。
 政略結婚だろうがなんだろうが、兎も角上手く行ってもらう為に使われていたのだろう、それを素子が地下の倉庫で見つけてしまったのは偶然か天啓か、或いは………

 暗い星空を見上げつつ、何らかの縁によって導かれたであろう自分らの未来を想い、
 素子は、明日は憑き物が落ちたかのような素晴らしい笑顔で朝食の席に着くであろうキツネの顔を想像していた。

 キツネの幸せそうな声が聞える。

 あの露天風呂での行為の中、愛し合っていた景太郎と素子の声を聞きつつ自分を慰めて泣いていたキツネ。

 そして今夜は、素子が二人の行為を聞きながら自分を慰めて、キツネの幸せそうな声を聞いていた。
 なんとも皮肉な話である。

 ただ、素子の顔には笑顔が浮かんでおり、
 自分の様に景太郎に蹂躙されたであろうキツネの事を心から祝福していた。




 「キツネさん。どう足掻いてもがんばっても、景太郎先輩は決して私やキツネさんのものにはなりませんよ?
  でも……


  でも、私“達”が景太郎先輩のモノになる事はできますよ?」





 夜は更け、時は既に二時を越えている。

 ランプの火は消え、ここに人の気配はもう残っていない。

 暗幕も何時の間にか素子によって片付けられ、無人別館は元の静けさを取り戻していた。

 強く精臭の残る一室は、淫獣のなまぐわいの息吹を吸って満足したかの様に静かに佇んでいる。

 獣だろうが、倫理外だろうが、そこに双方向の愛情があるのならば問題は無い。
 幸福になるのなら問題は無い。インモラルだろうがインセストだろうが、それは人間が作った言葉である。
 人の倫理など知った事では無い。
 そう語りかけてくるような雰囲気がそこにはあった。

 今は只、束の間の眠りに付く無人別館。

 その強力な結び付きの力は、未だこの場に残っていた。




 <みつねの章 幕>





***********************************************************

 8/18日、訂正版です。Pixyでございます。

 誤字のご指摘を頂き、訂正させていただきました。ありがとうございます。

 そのままなのは何ですので、ちょっとだけ文章を足しました。
 この時はまだ景太郎もわりと遠慮してたんだ…と、自分で書いたものなのに感慨深かったり……w
 今は優柔不断のレイプ魔ですしね~

 そろそろカオラも本当の意味でヤっちゃう事でしょう。
 つーかします。

 目指せ、後宮っス。

 それではまた……




[2319] Re:Dotage ~妄愛 <幕間 弐>~  (エロ無し)
Name: Pixy
Date: 2007/04/28 22:48
 ひなた荘にも何時しか夏の気配が迫っていた。

 ここの住人のマイペースさは何時もの事で、夏になったらなったで海に出かける算段をするだろうし、秋になったらなったで食べ歩き旅行の計画なんぞ組んだりするだろう。

 ヲイヲイ。私は浪人中なんだぞ? 等とツッコみたい素子であるが、考えてみれば浪人中の景太郎やなる等とワケの解からない理由でうろつきまくっていた訳であるし、景太郎は巻き込んでええのに自分はアカンのか? 等と問われれば何も言い返せなかったりする。

 まぁ、それでも(的外れは多いにしても)気を使う事には天下一品の景太郎と、なるがいる訳であるから左程の苦労はすまい。少なくとも景太郎ほどには。

 兎に角勉強尽くしの毎日であるが、ストレスだけは堪らなくなっているので調子も良い。
 予備校の模試の成績も上がっている為、一浪で東大には入れるかもしれない。まぁ、ダメならもう一度受けるだけだが。

 何せ愛する男は三浪しているにも拘らず諦めずに受験して合格した訳であるし、四浪になりかかっても諦めず来年も受けるとキッパリ言い切った“もののふ”だ。
 あの時の表情と瞳は決して忘れられないものであった。
 まぁ、彼の男になった時から彼の株は落ちる気配も無いので、思い出すたびに底上げが繰り返されていたりする。惚れた者の弱みという事か。

 素子は剣を…止水に代わる現在の愛刀である“ひな”ではなく、素振り用のユスの木刀を手にし、何時もの様にひなた荘の広い物干し台に立っていた。

 鍛錬というのもあるが、息抜きの意味合いが大きい。
 以前は胸にもやもやとした物が溜まり、出口を求めて荒れ狂っていた。そのうっぷんを吹き飛ばす為、荒れた剣を振るっていたものである。

 だが、今は違う。

 惚れた男に抱かれ、その身の全てを捧げ尽くし、眼を見るだけで彼が何を考えているのか理解できるようになった今の素子に焦りの色は全く無い。
 なるに先んじて抱かれ、オンナにしてもらい、彼の童貞を頂いている。
 この間からキツネという“仲間”も得て、時間的肉体的にも余裕もあるので本当の意味で昔の剣に対するひたむきさを取り戻していた。

 素子は今、両の手でしっかり木刀を握り、肩から力を向いて正眼に構えている。

 真の武術は脱力柔軟。腹の内に溜めた気だけを剣先に注ぐだけ。
 無駄な力みは禁物である。
 素子は今、それを体現するかのように静かに佇んでいた。

 ふわりと風が吹き、後ろで結んだ長い髪が揺れる。
 だが、素子は石仏の様に身動き一つしない。
 近所に住むスズメらが寄って来て木刀に止まった。
 木々の枝葉か何かとでも思っているのか、仲間達と羽根繕いをし、何やらチュンチュンと囁きあっている。
 それでも素子は黙って眼を閉じたまま動かないでいた。

 静かな時が過ぎ、ひなた荘の下を走る電車の音や、スズメの鳴き声も風景の一部として溶け込み、素子のその一部と化して無心の世界にいた。

 そして、その終わりも唐突だ。

 すすす…と彼女が静かに木刀を引く。
 スズメはまだ気がつかない。
 それでも素子は剣を引き続けた。

 驚くべき事に、スズメのいる空間位置はそのままであるのに、木刀“だけ”が移動しているのだ。

 移動し続けているのであるからして、やがてはスズメが止まっていた筈の足場が唐突に消失し、木刀に止まっていたスズメの内の一羽がポトリと落ちてしまった。
 流石に床まで落下してしまうほど間は抜けていなかったが、それでも驚いたスズメは慌てて飛び去ってしまう。そして他の仲間も何事かと飛び上がり、その一羽を追う様に飛び去って行く。

 素子はそんなスズメらの気配を追い、悪い事をしたなと苦笑した。

 と……?

 「……お久しぶりです。今日は如何されましたか?」

 唐突にそう呟きつつ後を振り返った。
 するとそこによく見知った顔。そして姿。

 肩に大きな鳥……の姿をした式神“疾風”をのせた巫女装束。
 りぃん……と澄んだ音を立てる二つの鈴を付けた白鞘の剣を持つ凄まじい美女。

 結婚を期に引退したとは言っても、神鳴流の長い歴史で一二を争うほどの剣の使い手。

 「……素子はん……よう修練しとるようどすなぁ……」

 青山素子の実姉。
 神鳴流、最強の剣士。青山鶴子がそこに―――

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
                           -盲・愛-
                           <幕間・弐>

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
 がじぃんっ!!

 とてもではないが木刀の打ち合う音とは思えないほど、金属音ともつかぬ重い音が響き渡った。
 
 横薙ぎから素早く上段へスイッチし、振り下ろしたと同時に掬い上げるフェイント込みの二連。
 無論、フェイントとは言っても当てるつもりで放っているので避ける他無く、下手に受ければ刃が痛む。
 今は珍しく双方ともが木刀という“試合”なので実際には刃が痛んだりしないのであるが、実剣と思って試合う事を言い渡してあるのだから向こうもそのつもりだろう。
 
 それにしても……

 『何と言うたらええのやら……ほんまによう鍛えはって…まぁ……』

 と、鶴子は心底感心していた。

 無表情…とは言わないが、真剣な顔で剣撃を放ってくる妹には以前には目立っていた隙が消失している。
 無論、まだまだ荒削りで、一刀一刀に僅かながら間が空いてしまってはいた。
 一拍。いや半拍ほどの僅かな隙。
 鶴子ほどの使い手から見れば大き過ぎる隙であるが、それでも以前の素子からしてみれば途轍もなく小さな隙であり、大きな進歩だった。

 鶴子が僅かに間合いを空けると、その空間を下薙ぎの一撃が通り過ぎる。
 その大き目の振りに間合いを詰めようとすれば“柄頭”の一撃が繰り出され、慌てて回避すれば横薙ぎが来る。

 千変万化に現れる敵を討つ為にはこちらも臨機応変に構えねばならない。神鳴流という、退魔の剣を使う門派にとっては“現在”においても当たり前の事だ。

 以前の素子の剣は堅苦しく、妙に自分を枠にはめたもので、明らかに鶴子や同門の強者を真似たものであった。それは自分に自身の無い者が陥りやすい事である。憧れが強過ぎて同じ軌跡を追ってしまうのだ。
 だが、それでは同じ様には慣れても超える事はできない。
 自分より潜在能力が高いのに、憧憬や恐れが強すぎてそれがコンプレックスとなって素子の良いところを全て押さえ込んでいた。
 鶴子の結婚によって目標を失い、皆が認めているのに自分に自信が持てない為に跡目から逃げ出してしまった素子。
 前回剣を交えた時もそこが全く治っていなかった。まぁ、あれだけ毛嫌いしていたのに興味…というか好意を持つ男が出来たのだからマシではあるが。
 
 しかし、今の素子は………

 上段からの一撃を避けた鶴子を振り下ろしたまま突きが襲う。
 左足を引いて避けると、身体を沈みこませて軸足を払う足払いが来た。

 へぇ…と感心しながら間合いを空けると、向こうも間合いをとって正眼に構えつつ乱れかかった息を整えている。
 鶴子の“誘い”を読んだのだ。

 流石の鶴子も感心せざるを得ない。
 剣だけの攻撃に頼らず、身体全てを使っての攻撃。そして相手の弐の先を冷静に読んでいる。

 以前の素子の剣撃は、一撃一撃は重いものの振りが甘く、尚且つ直線的過ぎて避けるのも容易い上、避けられれば後の無いような攻撃だったのだ。
 だが、“今”は違う。明らかに違う。

 振りが力強い上に“しなやか”なのだ。

 以前の腕で振るような攻撃では無く、ちゃんと胸筋で振ってきているし、尚且つ風になびく稲穂の様な自然さがあった。
 “苗刀”という大陸から逆輸入された剣の使い方があるが、正にそれに似ている。

 妹の生長を嬉しく思い、
 そして剣者として強くなった者と剣を交えられる悦びを鶴子は感じていた。

 その久しい感情に唇の端を鮫の様に吊り上げ、

 やっと鶴子は自発的な剣を素子に向けた。




 「ま、参りました…」
 「いいえ。アンタもようやりましたわ。ほんま、感心しましたえ?」

 終わってみれば素子の惨敗と言っていいだろう。
 何せ全て避けられた上、一撃で沈んだのだから。

 確かに素子も強くはなっているのであるが、元々の鶴子の剣速が途轍もなく速いのだ。
 だからまだ本気の一撃には追いついていないのが現状である。

 それでも……

 「ほんまに…よう鍛えはって……」
 「あ、姉上?」

 すっと伸ばされた手が素子の頭を撫でる。
 随分久しぶりの抱擁に素子も頬を染めているが、鶴子はやはり素子が可愛くて仕方が無いのだ。
 妹として愛しているからこその愛の鞭であり、獅子の教育だったのであるが、結局はその事によって素子を追い詰めて目標を無くせば折れてしまう娘にしてしまった。
 鶴子はその事をずっと悔やみ、そして心を痛めていた。

 だが、この妹は自分の足で道を見つけ、そして強くなった。
 その事が何よりも嬉しかったのである。

 ………尤も、流石の鶴子の勘をもってしても、素子の進もうとしている道が淫欲と男汁に塗れていようとは思ってもいないのであるが……

 妙に感激してテンションを上げている様で、僅かに目元を潤ませて頭をたしたしと叩くように撫でてくる鶴子。
 それに対し、逆に何だか落ち着かないのが素子である。
 “東大受験に失敗している事は既に伝えてある”が、やはり後ろめたさは完全に払拭しきれていないのだろう。

 それもある。
 それもあるが、何よりも素子が以前から感じていたプレッシャーを余り感じなくなっている事も大きい。

 無論、自分が強くなった等という自惚れは持っていないし、間違っても鶴子が弱くなった等と愚考する訳も無い。
 ただ、何か筆舌し難い何か…隔たりとでも言おうか、“それ”が二人の間から剥がれ落ちているのを感じるのである。

 幾らこんな可愛らしい表情を見せていようと、結婚前の鬼神のような鶴子を忘れられる訳もないし、コンプレックスを取り払えている訳でもない。
 しかし、確かに素子は昔から彼女を慕っているし、尊敬も憧れも持っている。
 そんな慕っている姉を、昔の眼で見ている……そんな感じなのだ。


 素子の大学受験失敗。
 その便は結構時間が経ってから鶴子の元に伝えられていた。
 時間にしてこの間。加奈子襲来の事件の後。もっと正確に言えば、景太郎に抱かれてからである。遅過ぎもイイトコだ。

 だが、遅れた事を実家に帰って説明して詫び、心から神妙に家の皆や同門の者達にも謝り、鶴子本人にその理由を告げた時、意外なほどあっさりと鶴子は浪人になった事を許してくれた。
 これが黙ったままでいたり、嘘をついて大学生などとほざいていたとすれば私利私欲に走って虚言を吐いたと烈火になって怒り狂ったであろう事は想像に難くない。
 無論、告白する事には凄まじい恐怖を感じていた素子であったのだが、景太郎と一緒にいられなくなるという恐怖の方が圧倒的に大きい為、“高が鶴子に謝罪しに行くだけ”という事等、極些細な事であると考える事が出来ていた。

 だからこそ、その決意というか覚悟を見て取れた鶴子はあっさりと素子を許したのだ。
 無論、課題も忘れていない。

 次に会う時には必ず自分を納得させるほど修練を積んでおく事、
 そして成績も上げておく事……
であった。

 そして今、素子は鶴子の“試し”を受け、合格をもらった訳である。
 
 その素子の失敗。
 素子の東大不合格の理由とは……

 等と畏まって言う程の事でも無いが、当然ながらそれは景太郎の留学による虚無感である。

 今の素子なら理解できているが、当時の素子には不可能。
 景太郎が一時実家に帰宅し、家の手伝いをやらされていた時があるが、たった三日でだらけ切り、四日目からは落ち着きをなくし、七日目になるがキレていたのであるが、彼女がキレていなければ自分がそうなっていた事であろう。
 その事を他ならぬ鶴子にだけは話し、そして自分の心にある気持ちを伝えていた。だからこその浪人許可なのだ。

 まぁ、その鶴子の眼力をもってしても、素子がここまで自分を克ち上げているとは思っても見なかった事なのであるが。


 「それで、当の想い人との仲はどうなっとりますのや?」
 「え? あ、あの……景た…“浦島先輩”との事でしたらまだ……」

 ほう…と鶴子の眼がキラリと光った。
 姓では無く名を言いかけたのは…まぁ良いとして、さらりと浦島景太郎が想い人である事を曝している。
 以前よりハッキリと自分の想いを見せている妹に、僅かながら女を感じ取ったのである。

 「相変わらずダメダメどすなぁ……
  惚れた男が別の娘とおんのに追いかけとりますのか? 不器用にもほどありますえ?」

 無論、応援したい気持ちは強い。
 鶴子自身、景太郎を気に入っている事もあるし、何より彼は素子の弱い部分をひっくるめて見つめてくれている。
 これはお互いより添え合える証であるし、夫婦ともなれば生涯支え合って強く幸せに生きられるだろう。
 だから言って、向こうを別れさせる程の外道さは持ち合わせていないが。

 「いえ……そうではないのです」
 「ほう……?」

 妹の真剣な顔と声。
 鶴子は表面上は顔を変えずに心構えだけを真面目モードに変化させた。

 「以前から気になっていたことなのですが、け…浦島先輩と成瀬川先輩。
  この二人の仲は何かしらの“呪式”…いえ、<おまじない>でしょうか? それに守られているようなのです」
 「へぇ…?」

 幼い頃の約束。
 『一緒に東大に行く』その為だけに人生を東大に向けてしまっていた景太郎。そしてむつみ。
 無意識に東大に向かっていた なる。

 偏差値が48だった景太郎は兎も角、異様に成績が良いむつみも彼同様に三浪。
 なるもトップレベルの模試の成績を持っていたのにも拘らず、様々な要因で景太郎と一緒に浪人し、一浪している。
 だが、三人揃って受験した時、三人揃って合格し、尚且つ景太郎の英語の点に至っては満点だった。

 景太郎と肉体関係を持った後であるが、素子は むつみから約束の少女についての話、そして幼い頃、なると景太郎+むつみの三人で東大に合格すると約束した事を聞いていた。
 だからこそ立てた仮説。

 あの三人は、約束によって三人揃っていなかった為に合格できずにおり、三人揃うまで待たされていた。
 だから三人揃った事により合格できた。


 確かに“呪式”ほど強力ではないが、<おまじない>の語源は“呪いまじない”である。それも十数年掛けて蓄積されたものだ。
 何せ景太郎とむつみは憶え続けて再会を願い続けて来たのであるから。

 気付いたのは聡いな事だった。
 受験前の正月に、むつみの厄災を祓う事を依頼された時だ。

 彼女の使った方法は、めぐりあわせの難の中心にいる景太郎を斬魔剣弐の太刀で斬ることだった。
 斬魔剣は、“魔”を“斬”る“剣”技だ。よって“斬った”という手応えがあれば斬れたのに間違いは無いはず。
 そして彼女は手応えを感じ、斬った事を確信した。

 だというのに剣は“弾かれた”のだ。

 奥義である剣が弾かれたという事は、何かに守られているという事。そして手ごたえから禍々しい物では無いと気付いてはいた。
 尤も、“それ”が<おまじない>だと知ったのはついこの間の事であるが……

 そして素子は自分の立てた仮説を鶴子に話した。そして自分が何をしようとしているのかも。

 最初は興味深げに聞いていた鶴子であったが、素子のやろうとしている事を聞いてゆくと段々と呆れた顔になってゆき、仕舞いには、

 「素子はん……あんた、真性のアホどすか? でなければ、正気やおまへん」

 と何とも言えない顔をしてそう言った。

 「いえ……残念ながら正気です。
  私が、
  私“達”が“幸せ”になるにはこの方法が一番効率が良いのです」
 「だからと言うて……」

 景太郎が持っている幸せの観念を作り変える
とは……

 つまり、“約束”の力が働いている限りは、自分と景太郎が将来的に結ばれる…同じ姓になる…事は有り得まい。 
 かと言って、“二人を引き離そうとすれば”以前の無人別館の二の舞となる。
 それに、悲しい別れとなると景太郎は落ち込んで帰ってこれまいし、景太郎に依存し尽くしている今のなるは再起できまい。
 いずれにしても優しい景太郎は なるが傷付くと自分の不手際と思いっきり深く落ち込んで無限ループに陥って回復できないだろう。そこには決して幸せは無い。
 いや、景太郎は自分が幸せになればなるほど なるを傷つけた事を思い出して自分を傷付けてゆく事だろう。良くも悪くも優しすぎる男なのだから。

 よって方法は二つ。
 
 一つは<おまじない>の“核”を見つけて破壊する
 これだけ強力になっているのだから、何らかの形として存在している筈なのだ。だが、三人とも記憶が曖昧なので不可能に近い。

 そしてもう一つの方法……
 景太郎の持っている“幸せになる”という観念を作り変えることだ。
 約束の女の子と一緒にトーダイに行き、幸せになる。その幸せは恐らく子供の思っていることだったから曖昧なものだった筈だ。
 今の景太郎なら、指輪を買った事からも解かる通り、なると結ばれる事を思っているはず。だったらそこに介入し、書き換えるのみ。

 「下手したら……浦島はんをバツイチにするか、了承愛人になるか……やで? 素子」
 「覚悟の上です」

 流石に鶴子も眼を見張った。
 惚れた男と添い遂げる為に、この娘は倫理を捨てかけているのだ。

 元より刃を振るって人外を滅して来た自分達であり、何を今更倫理など…と思わない事もないが、それでも可愛い妹の未来を汚したくは無い。

 いや、汚したくは無かった。

 しかし、

 しゅ…と無造作に素子は剣を取った。
 余りに自然。
 余りに無拍子だったが為、鶴子ですら一瞬、何をされたか解からなかったほど。

 素子は鶴子の持っていた剣を鞘から無造作に抜き払ったのである。

 ブツ……


 剣を回したとしか目に映らなかった。
 そんな自然の流れのように、素子は切り払っていたのだ。

 それは、

 「も、素子はん……?」
 「これが……私の覚悟です」

 素子は自分の長い髪をバッサリと切り落としていた。

 彼の隣を得る為、
 そして彼のオンナとして認識される為、
 素子はあえて、彼に恋している部分を封じている風を装う為、
 その覚悟を鶴子と、そして“呪い”に見せつけたのである。

 素子の決意と、狂おしいほどの想いを知り、鶴子は何も言えなくなった。
 確かに姉として一言言いたいし、神鳴流の者として止めてやりたかった。だが、女としての自分だけはその想いを理解してしまっている。

 自分も女である。
 結婚の時には止める声もあった。
 何故なら結婚と同時に引退を宣言していたからだ。

 神鳴流の剣士としてでは無く、鶴子は一人の女として、妻としての道を選んだのである。
 素子はその道を、それも荊に埋め尽くされている道を選ぼうとしている。
 だが、女の自分が素子を止める言葉を伝えさせてくれなかった。

 神鳴流だろうが、只の女だろうが、真っ直ぐに進みたい道を見つけてくれたらそれで由。
 そう常々思っていた自分もそれに納得の色を見せ始めていた。

 鶴子は諦めて溜息を吐く。

 何も、
 何もこんなところまでウチに似んでも……
と。

 その諦めは了承の証。
 オンナとして進もうとしている妹を見守ってやろうという決意の表れでもあった。

 ま、未通女おぼこやないとアカン言わはる世やおまへんしなぁ……

 等と呟きながら……

 無論、鶴子は素子の肉体に未通女の部分が欠片も残っていない事に気付いていなかったのであるが。






 余談だが、

 鶴子は“今”の景太郎が素子との鍛錬によって斬岩剣を放てるにまでなっている事を聞くと、
 <おまじない>の核を何としても見つけ出して破壊する事を素子に言い渡した上、ちょっとだけ景太郎と なるの破局を画策したという。





 <幕間 了>





***********************************************************

 お世話になっております。Pixyでございます。

 ちょっちクドかったでしょうが、素子の画策の一部を説明いたしました。
 勿論、鶴子に今何をやっているかは語っておりません。マズ過ぎますしw

 うちの素子は、内面的には景太郎専門の淫魔に近いイキモノですから、彼の幸せ優先なってます。だから なると引き離さないんですな。
 逆に、彼を幸せにしてくれるオンナはどんどん入れてしまいます。節操なしに。その代わりに彼を愛していないのならオソロシイコトするでしょうけど。
 
 ちなみにこれは、夕べ投稿しようとした物でした。
 何故か八時ごろ繋いだら入れなかったもので寝たんです。繋げられなかった理由は何だったんでしょう?

 コミックの十三巻辺りの話を弄り倒した結果、素子に髪を切らせてしまいました。
 ショートの彼女も結構好きですので。
 あぁ…でもロング派の人に怒られそうだぁ……ビクビク

 皆様のご意見、ありがたく読ませていただきました。
 確かにいやらしさは人それぞれ。ナニに興奮するかは人によって違いますね。ですから自分のカラーのままで書いてゆきます。
 幸いにして身の回りには様々な属性の人間がおりますからネタには事欠きません。
 友人の一人はショタ系近親ですし、その姉はBL属性ですし、叔父はロリで、学校の先輩は兄コンですし……
 ……近くにロクなのいねぇ………

 さ、さて、次の章は多分、あの二人でしょう。
 理屈っぽく書いてしまう私ですが、広い心で見てやってください。
 それではまた……






[2319] Re[2]:Dotage ~妄愛 <壱拾壱>~  (エロ無し)
Name: Pixy
Date: 2007/04/30 09:26


 人通りの少なくなった旧道の道路脇に佇む道祖神――

 どうって事の無い、極ありふれた光景である。
 しかし、普通に歩けば見落としがちであるが、そういった道祖神の謂れまでは知られていない事が多い。

 例えば、六角形の柱が立っていたり、三猿(見猿,言わ猿,聞か猿)が掘り込まれていたりすれば、そこで昔に庚申祭をやっていた証であるし、地蔵尊があれば、迷い(彷徨い)の道として知られていた可能性がある。
 因みに庚申祭は、庚申の夜には身体に巣食う三匹の虫(三尸という)が出てきて、寿命を決める東岳大帝(天帝という説もある)に宿主の悪事をチクりにいくのを防ぐ為に行われていたものだ。
 地蔵尊の方は言うまでもないだろうが、痛ましい事故や事件があった場所の被害者等の御霊が迷わないようにする為である。無論、その他の理由もあるが。

 そして、“ここ”に置かれているたのは……

 右手に剣、左手に縛縄。
 後背には火炎を背負い、その顔は悪鬼をも震え上がらせる程の凶顔で、あらゆる害悪の侵入を許すまいとその方位を睨み据えている。

 もうお解りであろう。不動明王像だ。

 “ここ”に置かれている物を除いても、相当数の明王像がこの街の周囲に置かれており、街の外を睨みつけてこの街を守り続けていたのである。

 その、“何故か”人目に着きにくい50cmほどの石像の足元に誰かが蹲っていた。
 黒を基調とした衣服を着ており、一見ブラウスにも見えなくもないが、そのスカートの様な前部が大きく開いており、動きやすそうなスパッツを見せている。カジュアル寄りのシックというファションだといえば解かり易いだろうか?
 その上から軽く羽織っている白いジャケットがアクセントになっており、着用者のセンスが窺える。

 尤も、その人物……少女であるが、
 その少女がそんな衣装が汚れるのもかまわず、その場に蹲って何をしているのかというと……

 穴を掘って、何かを取り出しているのだ。

 軍用の折りたたみスコップなんぞ手にし、ざっくざっくと一定のリズムでそんな少女が穴を掘っているのだからそれは目立つはずだ。
 更にこの少女、中々に美少女なのだ。
 年の頃は十代半ばを過ぎたくらいで、やや無表情ではあるが、長めの髪を赤いリボンで纏めている可愛らしさと凛々しさを併せ持つ少女だった。
 こんな少女が余りに不審な行為を行っているというのに、誰も気にも留めていない。
 確かに“ここ”の人通りは無いに等しいし、一日に一人通れば御の字だろう。だが、それでも見えない訳ではないはずなのだ。
 まるで“そこにそんな空間が存在している事を知らないかの様に”、人々はただ通り過ぎて行く。

 それでも少女は周りの様子を完璧に無視し、目的の物を見つけ出したか、そこに手を突っ込んでそれを引きずり出した。

 こきん…
 「…っ?!」

 初めて少女の表情が動いた。
 地上に出された瞬間、それは中ほどから音を立ててへし折れ、地面に転がってしまったのである。

 少女の手に半分だけ残ったもの……

 それは真っ黒に錆びた黒い棒。
 正確にいえば“楔”である。
 余りに長期間地中に埋まっていた所為か、その楔は真っ黒に錆朽ちていたのだ。
 だが、その楔は金属だと思われるが、“赤く”…では無く、“真っ黒”に錆びているとはどういう事なのであろうか?

 兎も角、その折れた楔を丁寧に布で包んで、横に置いてあった唐草模様に風呂敷に手を突っ込んで中から真新しい楔を引き抜いた。

 それは真っ白な楔だった。

 とは言っても白木の楔では無い。
 実はこれ、最新式のもので、
 練りに練った呪式を束ねた符を巻き固め、それをガラス繊維と共に超硬化樹脂で固めた物に特殊強化セラミックのカバーを被せたものである。
 そのセラミックの材料も、あちこちの神山の物をブレンドした特注である。
 開発者の意気込みが感じられる逸品だ。
 技術の無駄使いとゆー気もしないでもないが、作り上げた術者が『これで百年は持つぞ? ヒーハッハッ』と自信満々であったそーなので、モノは良いのだろう。多分。

 そんな話を思い出して溜息を一つ。
 気を取り直してそれを定位置にブスリと突き刺した。
 途端に場の空気が少しだけ和らぎ、締め切った部屋を開け放ったかのようなさわやかさが辺りを洗い上げてゆく。

 作業の成功を感じて少女は安堵し、キチンと石を組んで元のように不動像の足元を綺麗に埋めなおした。

 その場を去り、人の気配や物音が返ってくる所まで辿り着いた時、

 「作業が終わったようだにゃ」

 と家の影から声が聞こえてきた。

 「ええ…これでやっと終わったわ……」
 「じゃあ、帰る事ができるんだにゃ?」
 「ええ……」

 ずっと“あの場”から離れた所で彼女を待っていた黒い耳の大きなネコがそこにいた。
 口は動いていないが、そんな声がネコから出た……様な気がする。

 それに律儀に答える少女であったが、作業中は作法で言葉を発せられなかった為であろう、安堵の為に口も軽い。

 「やっと……」


       無表情だった少女の頬が、

                       薄くピンクに染まった。


 「やっとお兄ちゃんのところに戻れる……」
 「良かったにゃ」
 「ええ…」

 祖母に命じられ、実家に戻って用意をして一週間。
 この街……ひなた市に戻って周辺の楔の打ち直しを始めて一週間。

 その間は“穢れ”を持ち込めないので全く家に…ひなた荘に戻る事ができなかった。
 別に穢れを持ち込んでもかまわないと言えばかまわないのであるが、それで兄に何かあったら堪らない。
 だから念には念を入れての無帰還だったのであるが……

 兄への好意が増量している現在の彼女には麻薬が切れ掛かっているに等しい状態なのである。
 尤も、“家”に帰る前に身体を清めねばならないし、今までの楔全てを清めねばならない。そんなこんなで神社で御祓い済ましておかねばならないから直帰はできないのであるが。

 「でも……お清めが終わればお兄ちゃんの元に飼えることが出来る……」
 「飼ってどーするにゃ」

 なんだか字が違うような気もする。黒猫もツッこんでいるし。

 兎も角、少女、浦島加奈子は、約一ヶ月ぶりに愛しい愛しい兄の元に帰る事が出来るのが嬉しそうであった。




 真っ黒になってへし折れている街への害悪を防いでいた楔。

 力の殆どを使い果たしていた為、加奈子が交換する前に“何か”が街に侵入して来ていたとしてもおかしくはあるまい。

 男として見ている愛しい兄に会える喜びで浮かれている加奈子がその事に気付くのは、


 もっと後の話である―――




―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
                           -盲・愛-
                            File:壱拾壱

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――




 おかしい……


 その違和感に最初に気付いたのはやはり加奈子だった。

 久しぶりに会えた兄。
 優しくてカッコイイ、大好きなお兄ちゃん。

 ずっとがんばってきた彼は、ついに東大に合格。
 紆余曲折の末に留年してしまったが、留学して更にカッコよくなって帰ってきた。
 約束の少女という怨敵と結ばれるのは布団を噛み締めて泣き声を殺し、涙で枕を濡らしつつのたうつほど悔しい話であるが、無論その程度で諦めたりはしない。

 だから義妹というポジションに甘んじつつも虎視眈々と妻の座を狙い続けていたりする。
 法律上、兄妹となってしまえば結婚は無理とされているが、何だかお婆様に頼めばどーにかなってしまえそうな気もするし。それに“そのよーな関係”にったらなったでお婆様も反対すまい。良くも悪くもそーゆー人なのだから。

 そんな風に兄を激愛している加奈子であるからこそ、
 暫く寮を離れていたからこそ気付けた些細な事。


 それは……


 何時もの柔らかい空気の中、
 素子やしのぶに勉強を教えつつお茶を楽しんでいた景太郎に、ひょこひょことキツネがやって来て、

 「なぁなぁ、けーたろ。オモロイ酒が入ったんやけど、一緒に飲まへんか?」

 と、彼の背中に抱きついて耳元でそう問い掛けてきた。
 キツネの行う、何時もの過剰なコミュニケーションであるが、やはり わたわたとしのぶは慌てている。

 「え? ああ、いいですけど……どんなお酒なんですか?」

 いい加減、慣れたのだろうか?
 やや照れた顔をしただけで景太郎がそう問い返す。
 慌てているのは しのぶとなるくらい。カオラとサラはニヤつくのみ。素子は平然としていた。

 以前よりも冷静に質問で返してくる景太郎に、キツネは にししと笑い、

 「わかめ酒」

 と答えた。

「「ぶふふ――――っ!!!」」

 勢いよく茶を噴く なるとしのぶ。
 がは、げへっと咽ているのは気管に入った為であろうか? 直様お互いの背中をドンドン叩いて気道確保をし始めている。

「「ちょ、とょっとキツネ(さん)っ!!!」」

 再起動に成功し、二人して突っ込む様は正にユニゾン。違うのは呼び方くらいだ。
 顔を赤くしているのも同じである。

 「ん? なんや?」

 対してキツネは涼しい顔。
 景太郎の首に自分の腕を巻きつけ、顔の胸を押し付けてウリウリしている。無論、彼の頬で。

「なんや? じゃないわよ!! ナニ言ってんのよ唐突にっ??!!」
「そーですよっ!! ふ、フケツです―――っ!!!」


 なるは独占欲バリバリに、しのぶは眼をくるくる回しつつそう抗議する。無論、音量もでかい。
 近くにいるサラが眼を回すほどに。

 因みに、カオラは「あはは……ワカメ酒~~」とイマイチ解かっていない様子。
 むつみは「あらあら…うふふ……」と微妙。

 当然の様に景太郎の近くにいる加奈子は、あまりの発言に硬直していたのであるが……

 『うん……?』

 と違和感を感じていた。

 まず、素子。
 ヤレヤレと一人静かに茶を啜っているのだが、何だか鼻先で苦笑した気がする。
 確かに件の酒の事が物品ではなく、“行為”である事を知らなければそんな態度の理由も解からぬでもない。
 だが、“鼻先で苦笑している”……

 つまり、何であるかは知ってはいるが、『その程度の事で焦ってどうする?』と言うニュアンスが含まれている様にもとれるのだ。

 そしてそれは普段の、
 加奈子が知っている、“前の素子”であれば知っているにせよ知らないにせよ、そんな行動を見せる訳が無いのである。
 知らないのであれば怪訝な顔をして聞くだろうし、知っているのであれば真っ赤になってキツネに抗議しただろう。

 だが……鼻先で、苦笑……?

 そんな素子は以前にかき集めていたデータにも無かったし、人となりを知っている今でも初めて目にする物である。

 次にキツネであるが、黒いノースリーブのシャツにスラックス。その上にサマージャケットを羽織っているという姿で、相変わらずのセンスであるが……
 景太郎に押し付けている胸の部分。
 チラリと見えたサマージャケットの下、件の胸の部分にポッチがあったのだ。これはノーブラである事を物語っている。
 更にそれだけではなく、チラリと見えただけとは言ってもハッキリと見て取れるほどその乳首は尖っていた。尚且つ位置からしてその尖っている部分を景太郎の頬に擦り付けているではないか。

 加奈子はキツネの行っている余りの破廉恥さに言葉を失ってはいた。
 だが、それでもその嫉妬の大きさゆえに冷静な部分が違和感を叫んでいる。
 自分の知るキツネの行動では無い…と。

 キツネの性格は奔放ではあるが恋愛には結構真面目であり、からかいは多いものの性的なアプローチは殆どしない。精々、“お色気”程度である。
 真剣な恋愛に対して内心は憧れを持っていると思われる彼女は、直接的な性行為に結び付くほどのアプローチはかけられないし、実は恥ずかしがりやの部分も強いため、本気の相手には中々肌を曝せないのである。
 しかし、今行っている行為は間違いなく性的なアプローチであり、性的に興奮している乳首を男の顔に押し付ける等と言った破廉恥な行為を行っている。
 従来のキツネの行動から言えば考え難い行為だ。

 そして、最愛の義兄、浦島景太郎……
 実は彼が一番おかしいのだ。
 キツネの破廉恥なアプローチを受けているというのに、平然として彼女を受け止め、なるとしのぶの抗議を受けているキツネを膝に乗せているではないか。
 確かに、キツネは時々彼の膝に乗ったりもする。
 首にかじりつくようにしたりもする。
 
 今の体勢は、キツネがノーブラである事を除けば左程珍しい光景でもないかもしれない。
 押しの弱い景太郎は、良くこの寮の女性らにイジられているしオモチャにもされている。
 照れたり気苦労も多かろうが、そんな彼女らの仕打ちにも慣れてしまって入るし、左程に嫌がってもいない。
 皆といるのが楽しいのだから。

 だが、加奈子はそんな事を気にはしていまい。
 何に気をとられているのかというと……順番が違うのだ。

 加奈子は見ていた。
 景太郎がキツネを膝に乗せたのを。

 景太郎が自分から積極的にキツネを膝に乗せた事を……





 『あ~~ビックリした……』

 と、内心の呟きを声に出さず、ティーカップや湯のみを洗って台所を後にしている しのぶ。
 エプロンも外し、肩を軽くしてから部屋へと戻る。

 景太郎が不在の時、だらけ切ってソファーで漫画を読みながらポテチを齧っていた彼女であるが、寮に彼がいるのであれば話は別だ。
 別に積極的に働いて自己アピールしている訳ではないが、彼の為に働いているようなものなので楽しく家事に勤しんでいる。
 今日は学校が無いのでキャミソールにミニスカートという出で立ちだ。
 因みに、しのぶはそのスカートが短すぎて直に中が見えてしまう可能性が大きい事に気付いていない。

 先程のキツネの爆弾発言(…と言う程でもないが、しのぶ的にはそう)によって疲れてしまった彼女であるが、根が真面目であるし実家が洋食屋だったというプライド(?)もあったのでキッチリと片付けているのが微笑ましい。
 騒ぎのオチも、「何でコレ一緒に飲んだらあかんのや?」とテーブルの陰から出してきた瓶によって決着が付いている。
 その瓶のラベルに書かれていた名前は『わかめ酒』。“わかめしゅ”と読むらしい、四国に実在する酒である。
 店頭に並び、『わかめ酒?! フケツやうっ!』と言われてから初めて名前の拙さに気が付き、倉庫に仕舞い込まれたという笑い話のような逸話を持つ品だ。

 わざわざそんな曰く付きの酒を手に入れたのも全てからかう為であろう事は容易に想像出来る。
 テーブルの陰から出した事からして確信できるであろう。

 尤も、しのぶとなるが『わかめ酒』なる行為を何故知っているのか? という疑問も無くは無いが、誰も口にしていなかったから都合よくスルーされていたりする。

 ともあれ、そんな働き者のしのぶはそんなに暇である事が好きでは無く、自分の目標となった東大を目指すべく、勉強をしに部屋へと向っていた。
 最初の成績がズンドコだったのに成績を上げて合格した景太郎に励まされ、景太郎から直で教えてもらっている彼女は、元々の頭の良さも相俟って、進学校の中でもそこそこ成績を上げているし。
 万一受かれば彼の…景太郎の後輩だ。
 キャンパスの中、『先輩♪』等と話しかけている自分を夢想し、頬を抑えてイヤンイヤンしてみたり……他人が見たらドン引きだろうが。

 だけども勉学に励む前にお手洗いに行っておこうと気が付いた しのぶは、くるりと向きを変えてトテトテとトイレに向いだした。

 その事が人生の転機になってしまうとも知らずに……





 トイレの前の壁を背にして立っている女性がいた。
 先程、愛しい男をからかいまくっていたキツネである。

 さっきとは打って変わった真面目な顔をして向かいのトイレを見つめ続けていた。
 奥からドアの開く音が聞え、今度は手を洗う音がする。
 ややあってから、トイレから顔を出したのは、何故か急に髪を切ってイメチェンを図った同じ男を想う“同志”である少女、青山素子であった。

 「どやった?」

 その彼女に対しての問い掛けは実に簡素。
 そしてそれに対する答えも。

 「やはり陰性でした」

 と又簡素である。
 何が? という返答も無いのは、何を調べていたか解かっているという事であり、何を聞かれたか解かっているという事。
 つまりは示し合わせての事なのだろう。

 「そっか…」

 と組んでいた腕を解き、安堵のような、残念のような解かり辛い表情を見せるキツネ。
 そして素子はその残念そうな顔に苦笑してしまう。

 「ほな、マジに言よった通り、ウチらは“まだ”できへんのやな?」
 「ええ……かなり“危ない日”でしたし、当日は中だけでした。
  回数にしても六回以上ですし、絶頂回数はその倍は軽くいってます。でも……」
 「傾向は無し…か……」
 「はい…」

 キツネはふぅ…と息を吐いて、頭をガリガリと掻く。
 行儀が良いとは言えないが、それでもキツネの心情が解かるので何も言えない。

 つまり、“デキていない”理由が考え難いのである。

 誘発性排卵…というものがある。
 女性には普通、排卵周期というものがあって、その時に卵子が卵管を通って子宮にやってくる。
 そこに居合わせた精子と結び付き、定着して初めて妊娠する訳であるが……これには排卵日と言うものがあって、生理から計算して予定日の七日から二十二日辺りを危険日として割り出し、その日の性行為を自粛したりするのが所謂オギノ式なのであるが……
 そんな物を無視して卵子が出される事がままある。それが誘発性排卵だ。
 ぶっちゃけて言えば、オルガスムスなどの強い刺激があれば卵子は飛び出てくるのである。だから、安全日だから中出しOK等と言えるのは、精々ドヘタクソな男を相手にする時か、あんまり感じない女性くらいなのだ。
 ましてや素子にしてもキツネにしても、相手は浦島景太郎。
 惚れつくし愛しつくしている唯一の男である。
 触れられ、愛撫され、入れてもらい、射精してもらえる……そのどれ一つをとっても即行でアクメに持ち上げられる攻撃なのだ。
 キツネも“今や”景太郎の愛人状態で、一回寝れば絶頂回数は必ず二桁までいく。
 その彼女はまだまだ日が浅過ぎる為に妊娠の検査は出来ないが、それでも素子は“出来る”。だから“先輩”である素子に先に調べてもらっていたのであるが……

 “やはり”結果は想像していた通りだった。
 それはつまり……

 「ウチらにできたら、相手はおのずと知れてくる。
  そーなったら なると けーたろの仲はほぼ間違いのう壊滅してまう。
  せやから……そう言うんやな?」
 「ええ……
  勿論、まだ仮説の域は出ていないのですが……」

 二人を引き離す可能性がある要因を生ませないように、
 仲を壊す事にならないように、受精出来ていない“かもしれない可能性”が引っ張られたのだ…と素子は思っている。
 尤も、まだ危険日で試している“だけ”であるし、単に運が良かった(悪かった?)だけかもしれない。

 早計というか、度し難いというかであるが……
 何故だか素子はその事柄については確信近いものがあった。

 「ま、でける時はできけるやろ。
  単にあいつの量が多すぎてアレで洗い流されてっただけかもしれへんしな?」
 「え、ええと…それは……」

 無い…とは言い切れなかったりする。
 何せ小さなコップなら溢れ出る程の量を一回一回注がれているのだ。
 定着する前に受精する筈の“そのもの”によって洗い流されているのかもしれない。それに違うと言い切れない。

 「まぁええわ。次はウチが調べるしな。
  まだ時間たってないさかい、ちょ~っと待ってもらわなあかんけど」
 「ええいいですよ。でも、キツネさんは回数は少なめですからねえ……」
 「別にええやん。要はどんだけ“濃い”かなんやし」
 「ええ。まぁ……確かに“濃い”事は“濃い”のですが……」 
 「何や? 文句あるかん?」
 「いえ全く」

 キツネと景太郎の行為は素子とちょっと違う。
 普段は単に甘えまくるだけ。
 それも子猫のようにベッタリと纏わり付いて、すりすりと顔を擦り付けたり、頭を撫でてもらったり、だっこしてもらったりだ。
 兎に角、意外な事にキツネは物凄く甘えるのである。
 だが、事に及ぶとなると今度は逆。虐められて犯されて虐められないと満足でないのだ。
 はっきりと言ってしまえば強姦。陵辱でもいい。
 兎も角、縛られて乱暴に犯されたり、森の中で全裸にされて犯されたり、繋がっているところを鏡で見せられつつ犯されたりする方が“イイ”というのである。
 他ならぬ“景太郎に乱暴される”というシチュがたまらないらしい。他の男なら指一本でも殺意にスライドするのに。
 それが素子に“濃い”と言われている所以である。

 「ああ、ほれと。モトコ、ちゃんと検査に使うた後の持ってきたんか?
  この寮にはあったらあかんモンやさかいな」
 「当たり前です」

 素子は穿いている黒いミニスカートのポケットをぽんぽん叩いた。
 ビニールか何かであろう、がさがさとした音が聞える。

 「ちゃんと包んで持って出てますよ。
  今度、外に出た時に捨ててくるつもりです」
 「だったらええわ。
  モトコはちょっち“ウッカリ属性”持ちやさかいなぁ……」
 「キツネさん……アナタは私を何だと思っているんですか?」

 等と冗談を言いつつ離れて行く二人。
 何故か新館の方に歩いてゆくのだが、何があるのだろう?

 と、首をかしげながら階段から姿を現したのは しのぶである。

 聞こうとした訳ではないが、耳に入ってきた二人の会話。しかしも彼女には理解不能であった。

 兎も角、好意を持っている先輩と、素子先輩が何かがあり、その検査がどうとか言っていたのであるが……それがまたサッパリ解からない。
 いや、言葉をそのまま受け取れば理解は出来る。出来てしまうのだ。
 しかし……素子と景太郎がそんな関係に…? というのが頭の中でカッチリと収まってくれないのである。
 
 素子は確かにカタブツで知られていた。
 最初の頃は男嫌いで、いい加減でウソツキで覗きまでかました(冤罪もあるが)景太郎の事を毛嫌いしていたのだが、結局は優しい景太郎に心を許してしまい、現在ではがっちり好意を持っている事は寮の皆全員が知っている。
 急にイメチェンを図り、言ってはナニであるが真正面から見ると加奈子と区別が付き難いほど、景太郎に対しては柔らかく甘い表情を見せるようになっていた。
 だからと言って、唐突にそんな関係になるというシーンが今一つ頭に浮かばないのだ。
 
 妙な妄想には特化しているくせに、こんな事には頭が回り難いしのぶは、その疑問を抱えたままトイレに入ってゆく。
 ここで何かをやったと素子は言っていたのであるが、こんな場所で何を…と首を回らせて見たその場所。
 所謂、お手洗いの化粧場の前。
 その隅に何やら白っぽい箱があるではないか。

 「? 何だろ。これ……」

 と、しのぶは何気なくその箱を手に取ってみる。
 どうやら空箱で、中身は入っていない。
 当然の彼女は『何の箱だろう…?』と疑問に思い、箱の表の字を読む。


 その字の意味が脳に達した瞬間、


 ……眼が、点になった。


 「え……え……?」

 それは思いもよらなかったもの。

 「え…と……? え……?」

 確かに学校では聞いているし、やたら好奇心旺盛な級友から現物を見せられたこともある。
 だが、“ここ”にあってはならないもの。

 いや、あるはずの無いモノ。

「ええ~~~~~~~っ??!!」

 その箱には、
       妊娠検査薬と書いてあったのである。




 素子、ウッカリ属性発動であった。






[2319] Re[3]:Dotage ~妄愛 <壱拾弐>~  (ラブひな)
Name: Pixy◆7fc772f3
Date: 2007/05/06 15:58




 「どうしよう……」

 元々が旅館であった為か、ここ“ひなた荘”の寮生が住む一部屋一部屋は結構広い。
 何せ皆でワイワイ騒いで飲み食いしている広い台所にしても、元々がレストラン兼調理室である。
 廊下は広いわ、トイレも多いわ、其々の部屋は二部屋続きだわ、露天風呂はあるわ……正にいたせりつくせりだ。
 これでいて家賃もそう高く無いのだから、女子限定の、所謂“女子寮”である事を除けば素晴らしい物件と言えよう。その代わり、玄関まではそこらの神社より長い石段を登らなければならないし、其々の部屋の入り口は襖なので鍵がかからず、一癖も二癖もある寮生の所為でプライベートもクソも無いとゆー欠点が無きにしも非ずであるが……

 只、その欠点に眼を瞑る事が出来るのであれば、その有り余るスペースを自在に使用できるここでは贅沢の極みを味わえるだろう。

 庭は広いわ、滝はあるわ、日本庭園はあるわ、家賃もそんな高くないわ、食事は美味いわ……これ以上何を求めろというのだろうか?
 それでもここに入居しようとする人間はかなり少ない。やっぱりプライベートの無さがネックなのだろうか?

 そんな寮で楽しく生活をしている者の中の、若年層の一人……
 若年…とは言っても、確かに最若年のサラはひなた西小の五年という若さであるが、その次に若い しのぶはM高校一年。次がカオラの雷華校二年。サラ以外は高校生以上である。

 若年層といえば若年層であるが、しのぶはこの寮に住まう人間の食糧事情を一手に取り仕切っており、家事もメインで行っているので扱い…というか、ポジションのレベルは結構高い。

 そんな しのぶであるが、家庭的な事から悩み事は多い。
 両親の不仲もあるが、それはあえて見ない事にしているし、ここでの皆の存在が家族という隙間を埋めてくれているので、そちらの度合いは実は結構低い。

 では、まだ高校一年であるのに東大に向けて勉学に励んでいる事によるストレスか?
 いや、そちらの方も実は悩み事としてのランクは低い。
 勉強を教えてくれる東大の先輩が二人もいるのであるし、一人は教えるのが上手く、もう一人は想い人なので問題は無い。結果が伴わねば申し訳無いという苦労はあるが。

 では何か?

 一つは子供っぽい外見をコンプレックスに持っている事。
 周りに結構発育の良い級友がいたし、寮の皆はナイスバディ集団だ。スレンダーといえば聞えは良いが、単に“無い”というだけで結構なダメージである。
 何せ想い人の周りには皆、ボンッキュッボンッなのだ。それは落ち込むだろう。

 因みに しのぶのバストは現在で75。
 景太郎と初めて出会った時(中一の時で68)からは確かに大きくなってはいるが、サラより上(彼女は61)という程度。
 無い方のグループであるカオラにも3cm負けていたりする。

 だからという訳でもないが、しのぶは勝手に自分を低ランクに配置し、自分は魅力無いなぁ…等と内罰的になってた。無論、そんなものだけで魅力が決定する訳も無いのであるが、女の子的なの気持ちから言えばそういうものなのだ。

 そしてもう一つの悩みは件の想い人の事だ。

 浦島景太郎。それが彼の名前である。
 しのぶらが住まう女子寮、ひなた荘の管理人を任されており、三浪の末に東大に見事合格したというのに入学式に向う途中でイキナリ骨折した挙句に留年したツワモノだ。
 現在、同じ寮に住む、やはり東大生の成瀬川なると恋愛中で、人目が無いところではひたすらいちゃついているバカップル一歩手前の付き合いを行っている。
 嘘か真かは別として、和風喫茶『日向』に部屋を借りている二人の幼馴染である むつみによれば、なるは景太郎にとっての約束の女の子なのだそうだ。

 その景太郎であるが……
 彼は東大受験直後の逃亡中に遺跡発見を二つもこなしている為、日本では無名ではあるが海外では名前が知られており、特に古代カメ文明関係では瀬田に次いで名が知られている。
 まぁ、古代カメ文明自体があまりにマイナーである為に日本でのネームバリューはサッパリであるが……
 それでも しのぶを含めたひなた荘の面々からは内心尊敬に近い感情をもたれており、自分の進みたい道を見つけた後の半年間の留学生活で更に眼の輝きを増して格好良くなった彼は、しのぶにとって単に好意を持っている対象というだけでなく、憧れすらも含んだ男性へと昇華していた。
 
 義妹である可奈子の登場や、その後の大騒動。
 色々な要因もあったが、擦った揉んだの末に何とか なると恋人同士となった訳であるが、加奈子は未だ諦めておらず虎視眈々と彼を狙っているし、他のメンバーもその気配がしている。
 無論、しのぶもそうだ。

 ……いや、諦めきれないというより、吹っ切れていないと表現した方が良いだろう。

 しのぶにとって、景太郎は父親以外で初めて心を許した男性だ。
 辛さや孤独感を感じ取ってくれ、不器用ではあるが優しく接してくれる男。自分にとっての先輩。それが景太郎である。
 男として感じるようになったのは実はかなり最初の方で、実はカオラより早い。
 確かに纏わり付くのはカオラの方が早かったのであるが、彼女の場合は『兄に似ている』という“懐き”からスタートしているので、やはり しのぶが勝る。

 そんな彼女も、内心は二人の中を祝福してはいた。
 二人同時に受かった東大生で、実は幼馴染。一緒に東大に行こうねと幼い時に約束し、十数年の時を経てその約束を成就させた二人……
 そして結ばれたのであるから、その関係その物が憧憬するに値するだろう。

 当然の如く、二人が自分に持っていない全てを兼ね備えていると思い込んでいるしのぶは、“負けている”と一歩ね二歩も想いから退こうとしていたていた。
 いたのではあるが……

 「先輩……」

 最初の出会いが素晴らしく、彼が尊敬に値するものであったならば、その過程で気持ちも萎えてゆけるだろう。
 貼り付けてあった鍍金はいずれ剥がれて行くものなのだから。
 だが、彼は最初の印象が悪く、そこから段々と認められていった人間である。
 つまり、錆の下には輝きが隠されていたのである。となれば錆を落とし、磨けば磨くほど価値は認められてゆくもの。
 今の彼はこの寮にいなくてはならない程、大切な存在へと変貌して見せていたのである。

 そして最初からある程度以上の価値を見出しており、尚且つその想いを高め続けていたしのぶの心は、退こうにも後が何処なのか解からなくなっているのだ。
 実の家族への想いや、思い出は当然ある。
 学校の友人達…例えば太地あき子等への思い出だってちゃんとある。

 だが、寮の皆との、
 景太郎との思い出の方が圧倒的に鮮やかでずっと重いのだ。だからこそその“足枷”から逃れられないのである。

 確かに なるとの関係は認めている。
 全てにおいてパーフェクトのなるは尊敬しているし、憧れてもいる。
 これが他の女…例えば数少ない友人の一人である太地あき子を虐めていたような女であれば、如何な温厚なしのぶとて強引な阻止行動に出た筈だ。
 普段のしのぶからは考えられない程、あの手この手で二人の仲を裂こうとするだろう。
 だからあの二人が付き合う事に依存は無い。

 いや、ここに住まう者であれば誰だった許してしまうかもしれない。
 カオラだって、(ちょっと若すぎるが)サラだって、むつみだって、
 そして…キツネだって、素子だって……

 「せんぱい……」

 しのぶは握り締めていた手を解いた。
 その手の中、
 しのぶの小さな手には余る、白い箱。
 そこに書かれている文字は……

                            ――妊娠検査薬――


 絶望を感じる程ではない。
 彼に失望を感じている訳でもない。

 しのぶはただ、自分が解からなくなっているのだ。

 あの時……
 洗濯物を取ってからトイレに行こうとしたのが悪かったのか、或いはこうなってしまう運命だったのかは知らないが、しのぶは素子とキツネの会話を聞く事もなく聞いてしまっていた。

 二人の会話から察するに、素子とキツネの二人は景太郎と肉体関係にある。
 何時もの思い込みでは無く、ちゃんと状況証拠として整えられてしまう内容の会話。そして空箱という証拠物件……

 推測の穴も多いが、しのぶ的には完全に証拠が固まっていた。

 “それだけ”ならいい。
 “それだけ”ならまだ自分の気持ちを誤魔化す事ができなくもない。

 なるは泣くだろうし、寮内の関係は険悪になるだろう。
 住み心地も悪くなり、下手をすると誰かが出て行ってしまうかもしれない。

 それは嫌だった。
 嫌で嫌で仕方が無かった。

 元来しのぶは寂しがりやであり、別れという物を格別嫌っている。
 だからこの寮に来た当初は引っ込み思案で今以上に内に篭っていたのだ。
 そんな彼女の心を癒してくれたのは他ならぬキツネ、その後背であり親友の なるであり、寮長のはるかやひなた婆さんである。
 だから しのぶはこの寮の皆を家族として受け入れ、家族として接し、心配し、愛しているのだ。

 その筈なのに……
 だからこそ本当なら、景太郎を咎めたりしなければならないのに……

 「先輩……せんぱい……」

 きゅ…っと箱を握りなおす。
 華奢でひ弱なしのぶであるが、料理能力に特化している彼女の握力は意外に強い。

 だが、それでも何故かその箱を握り潰す事ができずにいた。

 「先輩…何で……」

 虚空に吐かれた言葉は悲しいほどか弱く、そして……

 「何で素子先輩やキツネさんは良くて……私には……」

 普段のしのぶからは考えられぬほど、異様な熱が篭っていた―――




 女子高生、前原しのぶ。
 自覚は無いだろうが、彼女はなるに似ていた。

 年上の先輩に恋するところ、
 誇れるものが多いのに、自分に自信を持ちきれないところ、

 そして、

 愛されたい願望が強く、その対象に対する想いを強めて行ってしまうところ……

 違う点は一つ。

 なるは愛されたい願望が強い故、やたらと嫉妬深くやきもち焼きで勝手に仲を深読みし過ぎて自爆してしまう上、依存心が強すぎて対象を見失えば自分を取り戻せないところがある。

 そしてしのぶは……

 愛されたい願望が強いのも同じ。だが、なる程は嫉妬深くはない。
 その代わり、自分もその中に入っていこうとしてしまうのだ。

 二人とも折角手に入れた大切な物を手放す事は出来まい。それが恋する男なら尚更だ。
 だが、想いにあるたった一つの違い。その相違点の差は、性格をもって大きくかけ離れている。

 なるに対してコンプレックスを持っている故に、
 そして家庭的な寂しさ故に、
 しのぶの方が持っていない…と“思っている”ものが多い。

 なると同じ様で違うベクトルの想いを持つ少女。

 求め欲している想いの加速は、意地っ張りでない分、彼女の方がブレーキが利かないのだ。

 「先輩……」

 コトン…と箱が手から落ちた。
 そのてはゆっくりと位置を変え、スカートの中に伸びてゆく。

 「ん……」

 さわさわと慣れない所作で撫で始めた白いショーツのクロッチ部は、

 何時の間にかぬらつきを見せ始めていた…… 




―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
                           -盲・愛-
                            File:壱拾弐

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――




 「は、はぁ、はぁっ、くぅ…っっ」
 「はぁ、はあっ、はぁ、はあっ、はぁ、」

 外から聞えるセミの声が余計に遠くに聞こえる。
 部屋に篭る熱気が遮る訳でもないのに、女の喘ぎ声以外はシャットアウトしているかのように、他の音の介入を許していない。

 板の間の上で絡み合う二人の男女。
 真昼間から激しく、淫靡に、下品に、肉食獣の様に貪り合っている。

 その二人の横にはうつ伏せで気を失っている女性が一人。
 アームバインドと呼ばれている革の袋に両の腕を突っ込み、ベルトで固定されている姿はSM誌のそれ。
 曝されていれば美人顔であろうその顔も、黒いベルトによる目隠しが施されており、白濁とした液体がその革の黒い色を汚している。
 うつ伏せ…とはいっても、正座したまま前に倒れた格好で、そのほぐし尽くされているヴァギナからは愛液とも精液とも付かぬカクテルが滴り落ちていた。

 つい今しがたまでその身体を玩ばれ、余りの陵辱行為の激しさ故に意識を失っているのだ。
 尤も、想い人による陵辱によって絶頂を迎えているだけなのだが。

 そして今は少女の番だった。
 ショートになったその少女の髪を労わる様に撫でる手は優しさに満ち溢れており、とろりとしている少女の眼がその相手への想いを窺い知る事が出来る。

 正面座位で繋がっているその少女は衣服を着用したまま。
 ノースリーブのシャツはブラごと捲り上げられていて、乳首を虐められつつ可愛がられており、
 黒いニーソックスに包まれている両足の右の方にはくしゃくしゃに縮こまったブルーと白のストライプの入ったショーツが引っかかっている。
 ニーソックスと同色のミニスカートも穿いたままで、上下する身体の動きに合わせてチラチラと結合部を見せていた。

 黒々とそそり立つ肉の柱が、一杯に広がった膣にめり込み、そして引き出される。
 白い臀部の向こうに微かに見える薄赤い肉の割れ目に飲み込まれるゴツゴツとした幹、びっしょりは濡れて吐き出されては戻って行く。
 よっぽど肉柱に絡みついているのか、出てくる際に紅い肉襞を引っ張り出して来る。

 じゅぼ、くぢょっ、と下品な音が羞恥によって少女を、満足感によって男の耳を楽しませ、その行為をエスカレートさせてゆく。

 「ふぁ…ンふぅ…ぴちゃぴちゃ…れろぉ…んっんっんっ…」
 「ん…んん…んん~……ずずず…はむはむ…ちゅっ、ちゅっ、ちゅっ」

 顔が間近になった事を感じ、唇を合わせて舌を絡ませ合う。
 口中を行き来させる舌によって唾液を譲り合い、飲ませ合い、味を分かち合う。
 一ヶ月程度の肉の繋がりであるが、二人の睦み合いは長年を共にした者同士の逢瀬の様だ。

 お互いがお互いの感じる部分を知り尽くしており、お互いが求める行為をお互いが相手の為に行っている。
 単に快楽を貪りあうのではなく、お互いを持ちよくさせようという想いが確かにそこには感じられていた。

 男の名は浦島景太郎。
 女の名は青山素子。
 そして転がっている女性の名は紺野みつね…通称キツネである。

 転がされている…とは言っても、別にキツネが蔑ろにされている訳では無い。
 キツネはキツネの快楽と愛情のポジションがある。それに合わせられているだけだ。

 景太郎によって気付かされた性癖であるが、普段は子猫の様に甘えさせてもらい、抱かれる時は壊されるように無茶苦茶にされる事をキツネは好みとしていた。
 実は彼女、被支配欲と被独占欲が異様に強く、景太郎によって蹂躙される事を強く好んでいるのだ。
 だから彼女との睦み合いは常にSM色が付き纏っていた。
 今も絶頂時に捨て置かれているのだが、これは放置プレイの一種。自分はほったらかしにされているのに、その向こうでは愛に溢れる性行為をが成されている……というシチュエーションを堪能しているのである。まぁ、事が終わればそれを口実にして甘えまくるつもりであろうけど。

 くちょ、ちょっ、ぐちょ、ぐぢょっ、くちょ、ぶぢゅっ、


 「んん…ン。ンっ、んっ、んちゅ…はふはふはふ……」
 「はぁはぁ…んぷ…ちゅ、ちゅ、ちゅ…」

 そんなキツネを横に置いて、口を吸い合ってまぐわい続けている二人。
 ラーゲは抱き締め合っての行為である対面座位。
 既に二度ほど身体の中に放っている為なのか、今はかき回すのがメインとでも言わんばかりに、ストロークの長さよりグラインドの広さを重きに置いた腰使いだ。
 童貞を捨てて一ヶ月ほどでこんな事すら出来るようになっている景太郎。こちらの技術ならトップ合格かもしれない。

 熱いキス。
 舌を貪り合うキス。
 唾液を啜り合う、情熱的過ぎるキス。

 久しく会っていなかった恋人同士が交わす抱擁の様に二人の愛撫は激しい。
 腰は繋がり、激しく求め合い、ザーメンを飲み啜り、全身を汗でびしょ濡れにしながら蟹股で腰を捏ねている素子の姿は淫魔の様。
 だが、素子の股間が泥田を歩く様な淫靡すぎる音を立てているというのに、景太郎の唇を吸っているその顔は親に再会できた迷い子のそれ。甘えに甘えた子供の顔だ。

 肉体からだは景太郎の精液を求め狂っているのだが、心は景太郎への愛しさで埋め尽くされている。
 今は大性豪となった景太郎の性欲全てを受け止める為だけに自分を貶めているといっても過言ではなかろう。

 だが唐突に景太郎が身体を離す。

 「ああ…ん…」と悲しげな声を漏らす素子であったが、健気な彼女は大人しくそれに従った。
 だが、景太郎は別に彼女の身体から離れようとした訳では無い。
 単に足の位置を組み直そうとしただけである。

 自分の腰を挟み込んでいた素子の片足を繋がったまま開かせ、その上に自分の足を器用に差し入れる。
 股座を交差させるようにくっつけたその体位、所謂、“松葉崩し”のバリエーションの一つである。

 「んあ…っ はぁあああ……っっ!!」
 
 ずにゅる…と肉柱が膣奥に達すると素子が白い喉を反らせて喘ぎ声を上げた。

 抱き締めあう事はできなくなったのだが、結合が深くなったのである。
 “何時もの様に”異様に柔らかい素子の子宮口がぱっくりと口を広げ、押し込まれてくる亀頭を美味そうに舐めしゃぶる。

 膣口が強く締め、
 膣道の肉襞はざわざわと巻き絞め、
 子宮口が全開になって舐めしゃぶる。

 人の身体とは思えない程、素子の内部全てが嬉々として景太郎を奉仕しているのだ。
 これでまた景太郎はキれた。

 ぐっ、ぐぢょっ、ぐぼ、ぐぢっ、ぢょっ、ぢょっ、ぢょっ、ぢょっ、

 「あっ、はぁっ、ン、ンんっ、んぁっ、ひ、あ、く、ひぃ……っ!!」

 突貫工事の様に激しく腰が突きこまれ、素子の身体が竹の様に撓って跳ねる。
 抱き締められていないの悲しいのだろう、その素子の両の手は景太郎の肩に爪を立ててしがみ付いていたのであるが、その激しさ故に儚くも剥がれ落ち、今は倒れこまないように自分を支えるので精一杯。
 だが、そんな彼女の求めを知らぬ景太郎は、素子が仰向けに倒れかかったのを良い事にストロークを激しくする。

 素子は溢れる涙で顔をぐしゃぐしゃにしてしまった。

 陵辱されるのが嫌なのでもなく、
 物の様に犯されるのが嫌な訳もなく、
 腹が裂けるほど精液を注がれるのがいやな筈も無い。

 単に彼に触れてもらえる面積が少ないのが悲しいのだ。

 「んっ、あ、ひ、うぅっ、く、くぅ……け、けいた、ろ…せんぱ……ンあっ♪」

 アナルから先程注がれた精液を腸液と共に零し、
 荒く吐かれる息はザーメン臭い。
 乳首は吸わせ過ぎた為か赤くなっており、
 恥丘は恥毛ごと精液塗れ。

 それでも、
 それでもまだ素子は景太郎を欲していたのである。

 悲鳴のような素子の喘ぎの後半が悦に変わった。
 何を思ったか素子の身体を引き上げ、立位に変えたのである。

 そのまま壁に押し付けられて腰を突き上げられる素子。
 強引であり、少し背中が痛んだが、それでも歓喜に震えている。
 景太郎に抱き締められているからだ。

 ぐず、ぢょぐ、ぶぢょ、ぶぢゅっ、ずぢょ、ぶぢゅっ、

 「あ、はぁ…っ、んふ…ひん、あはぁ…♪」

 カタカタと鴨居に掛けられている額が揺れる。
 激しさ故に、部屋に置かれてある鎧も微動する。

 鎧はその空虚な眼差しを淫らな部屋の主に送っているのだが、当の本人は見下げられているのが嬉しいのか、涎を胸にまで垂らして喘ぎに喘いでいた。

 どぶっ、

 「は…うぅん……♪」

 そして射精。

 どぶ、どぶ、どぶ……

 「は、はぁああ……ンふぅ……」

 膣内射精という、妊娠の危険がある行為。
 素子の年齢から言って、女の身体に対する思いやりに欠けているとしか思えない。

 ずひ…どぶ…どぶ………

 「あは…うふ………」

 だが、膣内に、膣道に、子宮内に自分の体温とは違う彼の体液を感じた時、
 明らかに膣内より低い筈の精液を熱く感じた時、
 何時も何時も素子の身体は優しい絶頂を迎えている。

 気を失っているキツネにしてもそう。
 愛しい男。
 愛している男の物。所有物として自覚させてもらえる膣内射精は最高の後戯であり褒美なのである。

 ずるずるずると壁を汗で滑りながら景太郎と二人して繋がったまま座り込む。
 座り込んだ衝撃で半ば萎えたペニスがずぐりと更に奥に突き刺さり、甘い地獄から激しい天国へと叩上げられ、素子は声にならない嬌声を上げ、

 あたたかい蜂蜜に沈み込むような気分で、ついに意識を手放したのだった。




 素子だけとセックスしていた時と違い、キツネも交えてから景太郎の明らかに変わっていた。
 別に人間的にどうとか、性格が悪くなったと言うのでは無い。確かにある意味では間違いではないが、少なくとも二人以外の女が気付けない部分で変わっていた。

 それは、罪悪感が薄れていた事である。

 素子との性行為は淫乱化防止の為の予防の為とは言っても浮気である。
 恋人のなるに黙って他の女とセックスしまくっているのだから当然であり、迂闊にも景太郎は全く気付いていないが、彼は避妊の“ひ”の字も行っていない。
 当然ながら妊娠の危険もついて回る。
 その上にキツネという新たな女性まで加わってきたのだ。これで自己嫌悪に陥らねばおかしいだろう。

 だが、彼はキツネを優しく受け入れ、彼女が望むままに彼女を甘えさせ、抱き、時には素子と三人で交わり、陵辱という抱擁でもって愛しんでいた。

 罪悪感が薄れた…のではなく、二人を完全に受け入れた…と言った方が正しいのかもしれない。
 それほど景太郎の表情は軽くなっていたのだから。

 尤も、その理由も事実も当の本人は全く気付いていないのであるが―――




 目指す道と学部の違いからか、受ける講義に差が出始めている景太郎となる。
 まぁ、なるは二年であるし、景太郎は復学してやっと一年になったのだ。ゼミも違うから当然だろう。

 午後の講義にしていた景太郎は素子とキツネの二人が意識を取り戻し、体長を気遣って、大乗である事を確認してから大学へと向かった。
 その際、行ってらっしゃいと二人は景太郎の頬を左右で挟んでキスをして見送ったものだ。

 何せ普段は人目の多いひなた荘。
 学生達が登校している時間であり、可奈子が戻って来ている今は、可奈子が不在の時か就寝中の時でなければ交わる事が出来ないのだ。

 キツネ的に言えば、皆のおる前でされてみたいなぁ……であるが、流石に無理である。
 それでも下着を着用せずに景太郎に纏わり付く事が多い。
 当然、景太郎にはコッソリと伝えていたりするので、ドギマギする彼を見るのも一興である。
 気付かれるかもしれないというギリギリの行為もまた楽しくて堪らないものだ。

 因みに、キツネは確かに景太郎に対してのみマゾになるのであるが、羞恥系の方であって痛みを伴うのはダメである。

 そんな景太郎のオンナとなった二人であるが、
 彼女らは現在、風呂に入って汗を落としていた。

 「あ、ああ~~~……ごっつスッキリした……」
 「…ですね」

 ぐいっと身体の筋を伸ばすキツネ。素子も満たされた顔で薄く微笑を浮かべていた。
 キツネの胸元と太股の内側にはキスマークが付いており、じんじんと甘く痺れている。

 素子の方は外見的には左程の差は無いが、実は行為の激しさからか膣が痺れたままになっていた。
 下着が穿く事も叶わない。布が触れればジリジリと肉体からだが反応し、ざわめき出すのだ。

 尤も、今に始まった事では無く、景太郎と初体験を迎えてからは何度も“これ”を体験しており、この反応は一時間もしない内に回復する事は解かっている。
 だから落ち着いて風呂などに入っているわけだ。
 最初の頃はかなり焦ったものであるが。

 「可奈子がもんて戻って来たさかい、スル暇のうなって無くなってまうんかと心配しよったんやけど……
  案外、どないかなるもんやなぁ……」
 「可奈子さん、学校に行ってませんからねぇ……」

 祖母にくっ付いて旅行を続けていた加奈子は高校に行っていない。
 学校に行かないと学べない事は多いが、行っても学べない事もある。そこらは祖母であるひなたは教えているであろう。可奈子も成績が悪い訳では無いし。

 単に、倫理面での教育が出来ていないだけである。

 因みに兄の後を追う様に東大を受験するようだが、大検を受けるつもりらしい。

 こうやって落ち着いて露天風呂で入浴している二人であるが、実際にはあんまり入りたくなかったりする。

 いや、身体をきれいにする事や汗を落す事には異論は無く、風呂が嫌いな訳でもない。
 ここ…ひなた荘に来てから余計に風呂好きになったほどだ。

 そんな二人が入りたがらない理由はただ一つ。
 景太郎の匂いが薄れる事だけである。

 どういう訳か小学生の時から皆に頼られていたキツネは、頼るという事を余りしていない。
 確かに実家には兄はいるのだが、余りに近い分気恥ずかしさから頼り切った覚えが余り無いのだ。

 そして高校からはひなた荘で住んでいたに訳であるから、実際に男に甘えた件数は存外に低いのである。
 彼は不潔では無かった為、元から彼に対する嫌悪感は薄かったキツネ。
 だから甘えに甘えている相手である景太郎の匂いは何よりも嬉しいものと感じていた。
 そして彼のオンナとなっている現在は、彼の精液の匂いにすら悦びの一端を感じているのだ。

 ……尤も、幾ら彼のオンナになっているとは言っても、精液の匂いに甘美さを感じる時点でおかしいと気付かねばならないのであるが……

 素子の方はもっと如実である。
 何せ、その景太郎の精液に溺れたいという願望があるのだから。

 そんな欲望を流すように、二人はかけ湯をして湯に浸かっている。
 少々、陰部がぴりりとするが、それもまた良し。
 彼が残した感触に酔っていたりもする。

 ともあれ、かなり惜しいのだが精液臭を流して他の者にばれないようにする。
 特になるだ。

 例の件
があるから“仲が壊れる”事は無いだろうが、皆との関係がギクシャクしてしまいかねない。それは望むところでは無いのだ。
 何せ景太郎の心が傷付いてしまうかもしれないのだから。

 だから二人は気をつけていた。
 なるは勘が良いのかピントがズレているのかよく解からない娘なので、逆に用心に用心を重ねねばならない。

 掻き出した精液を嬉しげに啜っていた素子を思い出してキツネは苦笑を浮かべていた。

 『ウチもいつかああなるんやろなぁ……』

 と。
 しかし、そこに嫌悪の色は無い。
 どちらかと言うと楽しみにしている…が近いだろう。 

 景太郎を想い、
 歯型の残る胸を一撫でしつつ、キツネは奇妙な微笑を天に向けていた。

 彼女のそれは表現し難い表情ではあった。
 だが、そこには諦めや開き直りのそれは無く、あるのは只、幸せそうな眼差しだけ。
 そんな眼で、流れされて行く初夏の雲を見つめ続けていた。




 「せやけどなぁ……」
 「はい?」

 胸まで使ってから、キツネは思い出したかのように呟いた。
 口調からすれば別の事のようだ。

 素子は顔を向けずに続きを待った。

 「何や可奈子、元気無いんとちゃうか?」
 「可奈子さんが…ですか?」
 「せや」

 そう言われて首を傾げる素子。
 元々その様な機微に疎い事もあり、可奈子が戻って来てからの事を思い出そうとするも上手くいかない。
 というより、景太郎との仲がバレ無いように余り接していないのであるから当然なのかもしれないが。

 「そう…なのですか?」
 「あんなぁ……」

 素子のどこかピントがズレた答えにキツネは呆れて頭を掻く。
 当初はあれだけ争っていたのに、心身共に満たされている今はこうだ。

 ま、ひなた荘奪回の革命を起こした自分は人の事は言えないのだが……

 「そう言えば……しのぶも何やら元気が無いような気が……」
 「え? んん~……言われてみたら……」

 そう言えば食事とかはちゃんと作ってくれていたのであるが、カオラがおかわりとか求めても上の空だったりする。
 キツネとて少しは気にはしていたのであるが……

 まさか景太郎に縛られて犯されている内に忘れてしまうとは……

 ちょっとは欲望を抑えなあかんなぁ……等と多少は反省なんかをしてみたりする。飽く迄も“多少”。
 
 「……ち~~と気ぃつかうん忘っせとったなぁ……
  用心してヤりまくっとっただけで気遣い忘れるや、ウチらしゅうないコトしてもうたなぁ……」

 反省だけなら猿でもできる。
 キツネは猿さながらに、風呂の岩に手を付いて反省していた。

 そんなキツネの白い尻を一瞥しつつ素子は、

 『……でも、結局は“浦島先輩”とスる事に変わりは無いのだろうな……』

 等と我が身を省みていたりする。

 兎も角、自分らの欲望を優先して周りへの気遣いを忘れていた事実は曲がらない。
 景太郎への想いは強まったままであるが、他の皆も間違いなく大切な仲間であり家族である。キツネはとっとと反省を止め、行動へと身を転じていた。

 「せや。
  可奈子も帰ってきたことやし、しのぶの元気も無いんやったら、ここは一つひなた荘式にやるとしようか」
 「ひなた荘…式ですか?」
 「せや」

 ニカっと笑うキツネであるが、こういった時のキツネの行動は何時も碌な結果にならない事は骨身に染みている素子。
 後頭部を流れている汗は、湯の熱さばかりでは無いだろう。
 早速、びみょ~な予感に見舞われていた。
 
 「な、何をやるつもりなんですか?」
 「あ? 言うまでもないやろ?」

 ゆっくりと素子の前に立ち上がるキツネ。
 スクっと立ち上がると湯辺りをするからだろうが、その慎重さが逆に迫力を伴わせる。
 尤も、こんな事で迫力を出してもしょうがないのであるが。

 素子の前に全てを曝して仁王立ちになったキツネ。
 うら若い女同士とは言っても、オンナとして熟れ始めているキツネの身体は、景太郎に抱かれだしてから色香が増し、淫魔一歩手前の素子ですら頬を染めかねないほど。

 そんな素子の心情を知ってか知らずか、
 仁王立ちのまま、自信たっぷりにキツネは今夜行う事を言い放った。

 「宴会や」

 と…。

『遅れ馳せながら可奈子お帰りなさい宴会』

 とってつけた理屈で飲み会をおっ始めるひなた荘ならではの宴会であるが……
 この夜に何かが終わり、何かが始まってしまう事に、

 今のこの二人が気付く筈もなかった。
*************************************************************


 遅くなりました。Pixyです。
 ヤケで言います。

 皆さ~ん。
 風邪で熱出して寝込んでいるのに、暇だからって『闘え!応○団!』なんかやったちゃダメですよ~?
 身体が動かなくなりますからね~
 お姉さんとのヤクソクだぞ☆

 いや、マジに……おてて痛いの……シクシクシク……

 バカやって寝込んだ私は、今日やっと投稿できました。
 笑ってやってください……(涙)

 感想が別板になってオドロキです。
 読んでくれるか大心配ですが、何とかやっていきます。

 しょーもない理由でカオラはずっと後です。

 言わせたい言葉があるもので……


 いえ、単純な一言なんですけどね。どーも言わせたくて……
 呆れられない事を願いつつ、今回はこの辺で。

 それではまた……



[2319] Re[4]:Dotage ~妄愛 <壱拾参>~  (ラブひな)
Name: Pixy◆7fc772f3
Date: 2007/05/06 21:24


 ひなた荘という元旅館である女子寮には名物がある。

 一つは露天風呂で、寮のものではあるがAM10:00~PM4:00までは一般解放されており、誰でも入る事が出来る。
 尤も、長い石段を登って来なければならない上、食事はおろか飲み物も出ないので来る客は皆無に等しい。

 もう一つは、何故かよく始まる宴会である。
 こちらは誰でも参加…という訳にはいかないが、住民と親しくなれば入る事も出来なくは無い。ただし、ほぼ女性限定である。
 季節の変わり目にはイモ煮会等の宴が町内を巻き込んで催されるので、外部の者はそちらをお勧めする。“怖い事”は少ないし。

 さて……
 そのひなた荘名物である宴会の今日の題材は。

『遅れ馳せながら可奈子お帰りなさい宴会』

 だ。

 景太郎の義妹である可奈子が用事から戻って来て一週間も経つというのに何もなしで悪かった。
 折角愛しいお兄ちゃんの待つここに戻れたのに祝いをしないのはおかしいっ!!

 ……という、ここでしか通用しない理由によって執り行われる事となった宴会。
 全く持ってとってつけたような理由である。
 無論、疑い深い可奈子の事、そのテンションをいぶかしんではいた。

 が、

 『ささ、主賓はVIP席に……』

 と案内されたのは景太郎の隣。
 彼の座る位置にぴったりと可奈子の席であろう座布団がくっつけられていた。
 これを感謝しない可奈子ではない。

 「ありがとうございます……」

 と、今さっきまで心に湧いていた疑念をアッサリと拭い去り、頬を染めつつ風の様に素早く席に着き、ピト…と彼に寄り添った。
 愛しいお兄ちゃんの隣に座れる事が出来るのであるからそれで天国らしい。

 「ち、ちょっとぉっ!!」

 無論、なるは黙っていない。
 可奈子が未だに景太郎を事を諦めていない事は良く知っているのであるし、何より景太郎は何だかんだ言っても可奈子に甘いのだ。
 彼を信じていはいるが、彼の誘惑の弱さも知っている。
 目的を貫こうとした時の意志の強さも知ってはいるが、混乱した時には簡単に懐柔されてしまう事も良く知っている。
 当然、可奈子もそのポイントを知っている筈だ。

 そこを突かれれば、可奈子にもまだチャンスが残っている……かもしれない。
 そりゃあ、なるだって焦るだろう。

 しかし、彼女の阻止行動は意外な人物達によって押し留められてしまった。

 「まーまー なる。ちょっと待ちぃや」
 「そうですよ。ちょっとくらい良いじゃありませんか」

 キツネと素子の二人である。

 「ちょっとくらいって……あのね素子ちゃん……」

 言葉は一見柔らかいが、その実は棘だらけ。
 突き刺すような視線を持ったまま素子に顔を向けるが彼女は涼しい顔。
 流石は男に堕ちてはいても神鳴流の剣士だ。相手の怒気を流している。
 片手に酒が入っているであろう、コップをもったまま笑顔を怒れる成瀬川先輩に向けているでは無いか。

 ……因みに素子は二十歳前だ。

 「なるも落ち着けや。
  ちょっと考えてみぃ? カナコは景太郎と三週間近ぅ離れ離れやったんやで?」
 「浦島先輩が実家に戻ってた時、我々は経った一週間であの有様だったじゃないですか」
 「あん時のなるの自分のやった事、忘っせたとは言わせへんで~?」
 「そ、それは……」

 キツネと素子の共同攻撃によって なるの戦意はしおしおと潰れていってしまう。

 あの時、
 景太郎は折角東大に合格したというのにイキナリ留年てしまい、その事についての説明を求められて実感報告に帰らされていたのだ。
 その時、流石に悪いと実家でアルバイトをしていたのであるが、相変わらず粗忽であった彼はひなた荘に連絡を入れ忘れていたのである。
 お陰でひなた荘の面々は、もう帰ってこないのでは? と不安に駆られた者まで出た始末だ。尤も、そのお陰で自分らの中にある景太郎という存在の大きさを全員が思い知った訳であるが。

 特になるはハロウィンの仮装をしたまま駅まで駆けて行き、景太郎の実家に文句を言いに行きかけたほどなのだ。
 まぁ、他のみんなの便乗しかかってはいたが……

 その時の事を未だ恥じている なるは、キツネの弁に黙らされてしまったのである。

 「私達だってあの有様でしたしねぇ……まぁ、“今の”私達でしたら一週間どころか一日でも危ないのですか……」
 「せやな。けーたろがまたセタに呼ばれてもーたら、多分ウチらも付いてってまうやろな」
 「う~~……」

 否定は出来ない。
 いや、事前に連絡を受けていたなら心が前はできるだろうが、何せ相手はあの瀬田だ。

 『はっはっはっ 景太郎クン。実は手が足りないんだ。是非君の手が借りたい。協力してくれるよね?』

 等と言いつつ唐突に現れ、唐突に連れ去る事くらいはやるだろう。いや、やる。彼ならやる。
 そうなると自分はパニクって何をしでかすやら解かったものではない。

 『ああ……前から はるかさんがロクデナシロクデナシって言ってたけど…こーゆー事だったのね……』

 何だか当人の与り知らぬ所で評価を落としている瀬田。
 以前の様な憧れに近い感情は未だに持ってはいるが、愛情の点では景太郎が圧勝している今のなるの心境からすれば、それは確かに瀬田は単なる障害物と取れるだろう。

 「それに、成瀬川先輩……ちょっと考えてみてください。浦島先輩と一ヶ月も会えない情況を。
  私達が耐えられると思いますか?」
 「う゛……」

 それがトドメだった。
 ブツブツ文句を言いつつも大人しく席に戻ってゆく なる。
 それでも席は景太郎の横なので文句を言う云われは無いのであるが……ま、そこは乙女心だろう。

 何せ、かなり不穏なセリフを二人が洩らしていた事にも気付けないほど焦っているのだから。

 何とか自分を抑えつつコップの酒を空けてゆく なるであるが、よほど隣のいちゃつきが腹立たしいのかそのペースは速い。
 かぱかぱとコップ酒を空けているではないか。
 そんな彼女の無謀行為を景太郎が心配し、それを察知して眉毛を吊り上げてゆく可奈子。

 呆れるほど見飽きた光景であるが、そんな見慣れた物を目にし、密かに安堵していた人物がいる。
 なるを説得しに掛かっていた素子とキツネの二人だ。

 「単純っちゅーか、何ちゅーか……」
 「兎も角、どうにか落ち着いてくれたみたいで良かったです」
 「せやな」

 可奈子は景太郎に対して兄という枠組みを飛び越えた感情を持っている。
 そしてその事は寮の皆はよく理解していた。
 特にずっと加奈子の味方をし、約束の少女として恨まれていたというのに最終的には可奈子のお陰で告白した なるは可奈子の想いも良く解かっている筈だ。

 だからこそ、今の景太郎に対して微妙な恐怖を感じ、あれだけ可奈子を警戒しているに違いない。

 即ち、景太郎の禁忌タブーを超える事への抵抗心の低下。


 そに気付いているからこそ、無意識に可奈子と景太郎との距離を気にしているのだ。

 だからこそ、景太郎を挟んで二人を配置し、いがみ合わせて以前のペースを取り戻させるという、逆治療的な方法に出たのである。
 景太郎には迷惑極まりない話であるが……

 景太郎の所有物を自認する二人は得に気にする事も無く、大岡裁きさながらに可奈子となるに両手を引かれる景太郎の様を肴にして酒を注いだお猪口を舐めていた。
 ただ、この行為そのものが二人の少女の未来を換えてしまうとは気付いていない。
 気遣いと、裏での関係の続行の為の策が皮肉にもその関係を二人の少女に明かしている事に気付いていない。

 一人は自分に対する必要以上の気遣いを見せた、大好きな兄が自分から膝に乗せていた年上のフリーターを疑い、

 もう一人は、信頼して“いた”二人の先輩が、二人して大好きな先輩と寝ている“事実”を、この宴会という場を設けてまで景太郎を気遣っているのを“見せてしまっている”事から確信を深め、嫉妬が篭る眼で当の二人のオンナ……特に素子を睨みつけている。

 無論、素子はその殺気の出所を理解はしてはいいた。
 してはいるが、その理由が解からないのであえて感じなかった事にして愛しい人を見つめ続けている。

 彼へと送る眼差しは決して友愛ではない。優しげな眼差しは確かに男を見ているそれだった。

 嫉妬は女を名探偵に変える。

 素子とキツネの眼差しから景太郎との仲を確信してしまった二人の少女探偵は、どう動いてしまうのだろうか?

 はたして破滅という甘美が口を開けているかもしれないのだが、未来などを気にして恋愛はできまい。
 可奈子としのぶはその想いのまま顔には出さずに心を掻き乱していた。




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                           -盲・愛-
                            File:壱拾参

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 『どういう事なんだろう……?』

 景太郎に擦り寄るように座っている少女が一人……
 つい最近まで義理の妹というポジションに甘んじていただけで満足していた彼女であったが、当の義兄のポカによって女に目覚め、彼を一人の男として見ている自分を完全に自覚し、深すぎる愛を注ぐようになった少女。
 言うまでも無い。浦島可奈子である。

 この寮の倫理観は生真面目半分、いい加減半分であったので、未成年といえど油断は出来ない。いつ酒を飲まされるか解かったものではないのだ。
 現に可奈子も既に酔いが回り始めていたのであるから。

 カオラは飲み気より食い気が大きいので無事であるし、サラもそう。
 むつみは大酒のみで酔わないし、はるかも酒豪だ。

 意外にも結構飲む なるであるが、実はそんなに強くない。
 素子もマイペースだし、キツネは飲ませる側。

 よって、酔いつぶれてはいないが唯一の男である景太郎も酔いが身体に現れ始めていた。

 そんな景太郎の横で、幸せそうに頬を染めつつも可奈子は内心首をかしげている。

 肩にもたれて眠りつつある なるを支えながらコップの酒を進める義兄の右手。
 たはは…と照れつつも嫌がってはいない。

 思わず額に#にも似た怒りマークが浮かびそうになるが、抱き締めている義兄の左腕の体温によって直に鎮静。あたたかさで熱が冷めるというスゴイ化学反応を見せていた。
 スリスリと頬ずりしても嫌がらないのが嬉しいのか、可奈子は大胆にも彼の手を太股に挟み込んだりもする。

 だが、景太郎は苦笑するだけで何も文句は言わない。言ってこない。
 それが又嬉しくて可奈子は自分の頭の重さの全てを彼の腕に預けていた。

 が、それ故に疑問も浮かんでいる。

 義兄のデータは事細かく頭に入っている。
 同じ寮に住まうようになった今の彼女であれば彼の心の動き、一挙手一投足は全て把握できている。そう自負していた。
 していたのであるが……

 今の景太郎はよく解からないのである。

 いや、カッコ悪いとか性格が悪くなったとかではない。
 どちらかと言えば更に男ぶりが上がり、ダンディでありコケティシュで、魅力的且つ蠱惑的で大人っぽくて優しくて深い包容力を感じるナイスガイだと言えよう(※注 可奈子意見です)。

 四回目の受験直後に何故か海外に赴き、何故か貴重な遺跡を二つも発見する偉業を成している。
 身内に揶揄にも負けずにがんばり続けた東大にも合格し、何故か留学も果たし、日本では無名であるが海外考古学会では名を知られているし、
 可奈子はそんな彼の功績を我が事の様に喜んだものである。

 その義兄の、
 愛しいお兄ちゃんが“おかしい”のである。

 確かにカッコ良くなるのもいいだろう。大人っぽくなるのも賛成だ。
 だが、可奈子にとっての彼、加奈子にとっての唯一の男である景太郎は、以前のままでも充分に優しくてカッコイイのだ。
 更に魅力が上がれば余計な女まで誘い入れてしまうかもしれないでは無いか。

 彼に寄りかかって眠っている なるは良いだろう。自分同様、彼に傾倒しているのだから。
 中々自分の気持ちを伝えられなかったヘタレではあるが、彼の事を深く想っているのには賛同できる。だからこそ手を貸したのであるが。

 だが、それとこれとは別問題である。

 今の景太郎は異様に女慣れしている。
 自分のアプローチは既にセックスアピールの域に達しており、太股の付け根に手首を挟んで摺り寄せているのだ。
 ハッキリ言って、人目が無ければそのまま股間に擦り付けているかもしれない。

 瀬田の施したトレーニングと、素子との朝練によって以前より逞しさを増した腕に押し付けているのは自分の胸。
 それは確かにキツネやむつみ等と比べれば多少はささやかかもしれないが、それでも80はあるのだ。
 その胸をむにゅっと押し付けてぐりぐり動かしているというのに余り気にしていないのはどういう事なのか?

 『それはやはり……キツネさんと……』

 性行為を行っており、この程度の事に“慣れている”のだろうか?

 だが、義兄がなるを見限るとは思えない。今の現状から見ても間違いないだろう。
 かと言って、義兄からキツネにアプローチをかける訳が無い。彼はフシダラではないのだから。

 となると、答えはひとつ……

 『キツネさんがお兄ちゃんを誘惑して』

 フシダラな関係になっている―――そう思う方が自然であろう。

 ギン…ッ!!
 と殺気混じりの視線がキツネを射抜く。
 キツネは酔っていたはずの頭が一気に醒め、なんでやねんっと心の中でツッコミを入れた。
 殺気を持たれている理由が解からないのであるから当然と言えよう。

 異様にキツネに対する警戒心を高めた可奈子は、義兄を穢れから守り切れなかった悔しさから歯をギリギリと鳴らした。
 背中をざわざわと駆け上がって行くのは怒りか憤りか嫉妬の念か。
 反対に下腹部…子宮は、きゅんっと奇妙な疼きを彼女に伝えている。

 寝取られたのなら、寝取り返せ……


 恰もそう訴えているかのように。

 行為を行う自分を夢想した恥ずかしさと、先にされたという悔しさから可奈子はうっかりと爪を立ててしまう。
 当然、彼女が掴まっているのは件の愛しい男の腕。
 言うまでも無く、

「ギャ――――っ!!
  痛っ、痛い痛いイタタタタタっっ!!!」

「ああっ?! お、お兄ちゃん、ごめんなさいっ!!」

 景太郎は悲鳴をあげ、
 可奈子は慌てて彼に謝り、
 寝惚けた なるに彼が殴り飛ばされて皆に笑われ、

 何時もの様に飲み会は波乱のままに過ぎてゆく。


 だが、一人だけ静か過ぎるほど静かにしている少女がいた事に気付いた者は少ない。

 俯き加減でモソモソと肴を突きつつ、時折面を上げては景太郎の様子を見、恨みがましい上目遣いで素子を見つめていた少女……
 前原しのぶ。

 その嫉妬の矛先は何故か素子に固定されており、
 ここに来てからゆっくりと明るく前向きになっていた彼女の空気は以前のそれより暗く澱みを見せ、深く濁った“女”の眼差しを素子に注ぎ続けていた。

 そんなしのぶの様子に気付いていたのは素子もそうであったが、もう一人その気配に次鋳物もいる。

 『しのぶ……アンタ……』

 紺野みつねこと、キツネであった。

 素子は本人が強いが為にその殺気にも似た眼差しを受け止められていたのであるが、キツネはそうでは無い為に余計に気になっていたのだ。
 しのぶもキツネにとって大切な仲間。気を使わぬはずが無いのだ。
 そして濁った嫉妬の眼差しの示す意味も、キツネには解かっていた。

 ついこの間までの自分の目なのだから……


 キツネはコップに残っていた酒を呷り、
 結局、こうなるんかなぁ…等と口の中で呟き、溜息を吐きながら腹を括った。




 「ふぅ……」

 酒に火照った身体を横たえ、景太郎は浮かんでいる月に身を曝していた。
 物理的には決してあたたかさは感じないものの、浮いているという表現が似合う観月は妙に心を癒してくれる。
 そしてここ、ひなた荘の屋根の上は、何時も悩んだ時などにいた場所だ。落ち着くのも当然であろう。

 酔いつぶれた なるを部屋に運び、素子に頼んで着替えさせた後、景太郎は一人屋根に出て初夏の月を眺めていた。

 朝に素子、昼にキツネと素子…と散々注いだ為か二人は満足しており誘いは無い。
 景太郎自身はまだまだOKであるが、二人に負担を掛けたくない。
 底なしの性欲魔人となっている今の彼の相手をさせると必ず先に潰してしまうのだから。

 そんな自分の溜息を一つ。
 そして昔を思って溜息をもう一つ。

 念願かなって東大に受かった。
 進みたい道、考古学にも目覚めた。
 なると恋仲になれた。
 そして…かなり変則的ではあるが童貞を捨てる事が出来た。

 浪人二年目でここに来て、皆と出会って二年……本当に、本当に色んな事があった。
 いや本当に。文字に直す事も憚られるほど、様々な出来事があった……

 景太郎自身は全く気付いていないが、彼もかなり成長しており、周りの女性達をバンバン魅かれさせている。だが、生来のコンプレックスと自信の無さからその事を気付かせずにいた。
 無論、今の彼はレッテルすら大きい。東大生であり、考古学会でも名が載っている。おまけに本人のあずかり知らぬ所で神鳴流の達人剣士である鶴子に眼を掛けられていたりするのだ。
 知らぬは当の本人ばかりなり…である。

 「だけど、ホントにオレって全然成長して無いんだなぁ~……」

 と溜息混じりの独り言も出たりする。その癖も治っていない。

 別にそんなに深く悩んでいる訳ではない…と思う。いや、“思ってしまう”。
 なるという最高の恋人を持ちながらも、素子とキツネという最上級の愛人と肌を重ねている自分がいて、キツネは…どうか解からないが、素子は完全に処女であった。その処女をもらって平然と身体の関係を続けているのだ。
 朝、素子を激しく犯すように抱き、昼に優しくなると唇を交わし、夜にキツネが望むままにその肉体からだを犯す。
 ふしだらとかどうとか言う以前に、人として最低である。

 屑っ!! とか、ゴミっ!! 等と女の子たちに罵られても当然の事を普通に行っているのだ。
 おまけにキツネを受け入れてからは、更に箍が外れたかのように“平気”になっているのである。
 呼吸をするように素子を抱いて なるを愛で、キツネを犯しているのを受け入れている自分。そしてそんな自分を怒らねばならないのに今の自分はその怒る理由を見失いかかっているのだ。

 何が悪いんだっけ? と悩まねばならない程なのだから、如何に能天気な彼とて落ち込みもするだろう。
 何せ“そんな自分になってきている”事を自覚しているのだから。

 かと言って、愛情が無い訳ではない。どちらかと言うと前以上に想いが強まっている。
 ただ、なると一対一だった愛情の結び付きの中に素子はキツネの二人が加わっただけ。
 この三人を女として愛しく想っているだけなのだ。それの何が悪いのか?

 変わりゆく精神構造には疑問という攻撃すら効かないのか、彼は何時しか悩む事を忘れ、大の字になって大きな月を眺めながら自分の行いを顧みるだけに努め始めていた。

 と……?

 「何してんの?」
 「え……?」

 人気の無いはずの夜の屋根の上。
 唐突に掛けられた声に驚いて振り返ってみると、そこには見知った顔。
 宴会の時と同じ、浅黄色のノースリーブのシャツに、黒いスパッツ姿。夜風に舞う亜麻色の髪の美女。
 酔いつぶれて眠っている筈の女性、成瀬川なるの姿が―――

 「あ、カナコか。まだ起きてたの?」
 「え……?」

 白明るい月明りによってはっきりと見えており、表情すら見て取れる成瀬川なる……
 兄と暮らしているお陰で心の安らぎを得、以前は不可能に近かった笑顔すら出せるようになり、景太郎に対する想いから なるのその姿を完全に模倣出来るようになっていた“筈”の浦島可奈子は、彼の声に驚いて素を出してしまう。

 「……どうして解かったんですか?」

 すとん、と彼の直横に腰を下し、膝を抱えるように深く座り込んで彼に問う。
 ただ、顔は上げられなかった。

 「ん~……何となく……」

 可奈子の何時もの話し方。
 彼と話す時のみ幾分砕ける丁寧語混じりの標準語での問い掛けを、景太郎は手を伸ばしながらそう答えた。
 伸ばした手の行き先は可愛い義妹の頭の上。
 髪を梳くように優しく優しく撫でてゆく。

 ゆるゆると頭を上げてゆく可奈子の表情は、子猫のように緩んでいた。

 キツネの事とか、なるじゃない事に気付いた理由とか色々と聞きたい事もあったのであるが、この快楽の前には朝露に等しい。

 何時の間にか兄として見る事が出来なくなっていた彼のその手。
 自分の頭を愛撫してくれるその愛しい男の掌に可奈子の手が重なり、自分の頬に導いてゆく。

 そんな風に大胆に甘えてくる義妹の様子に全く気がついていない景太郎。本来は女子高生である筈の可奈子の柔らかい頬の感触を楽しむように撫でてゆく。
 その際、彼は全く無自覚に指先でうなじもついでに撫で、可奈子の息を荒くする。

 「お、お兄ちゃん……酔ってますね?」
 「ん~~~……」

 いやでは無いし、拒否するつもりもないが、緊張した声で可奈子が問うが、景太郎の返事はかなり曖昧。
 “いつもの様に”女の頬にかかる髪を梳き上げ、現れた頬に軽くキスをした。

 びくんっ


 当然強く反応する可奈子の身体。
 彼から送られる自発的なキスに興奮しない訳が無いのである。

 景太郎は景太郎でかなりおかしくなっていた。
 心の奥からはその娘は可奈子だ、妹だと警鐘が鳴り響いているのであるが、以前、5日連続で可奈子の夢を見ても強く自分を戒められた時の倫理観は今の彼には無い。

 例え兄妹だろうが、
 仮に可奈子が実の妹だとしても、愛情を持ってしまった事に変わりは無い。
 単に“たまたま兄妹だっただけ”なのだ。ちっちゃい話である。

 それに……
 それに可奈子は なるとの仲を裂こうとしてこの場に来た訳では無く、キツネとの仲を問い詰めに来ただけだ。
 となると、素子の仮説通りであれば……

 「お、お兄ちゃ……」
 「カナコ」

 ちゅ


 不意打ちの様なキス。
 加奈子の眼が一瞬で大きく開き、情況を理解した瞬間から瞼がゆっくりと閉じられてゆく。
 それでもファーストキスの時の様に緊張でガチガチだ。

 最初のキスは事故だったし、なるを追いかけて行った騒動の時も自発的なキスは無かった。
 だが、今自分の唇に触れているのは紛れも無く兄の唇であり、間違いなく彼から自発的に贈られた初めての接吻くちづけなのだ。

 逃げ出したいような恥ずかしさと、溶けてしまいそうな多幸感の中で加奈子は只ひたすら兄の唇を味わい続けていた。

 「ンん……う…ふぅぅ……」

 ゆるゆると顔を突き出して来る可奈子。
 興奮しての行為であろう、押されてくる形であるが景太郎は気にもせず、意地悪にもちょっとだけ唇を離し、いやいやと悲しそうに追ってくる可奈子の唇を罠に嵌めて撃墜。ちゅっ、啄ばむように触れ、吸う。
 ちゅっ、ちゅっと義妹の唇を吸う景太郎。
 その都度、可奈子の頭に霞が掛かかり、理性が痺れてゆく。

 ……気持ちいい……


 愛しむ柔らかい唇での抱擁。
 夢にまで見た義兄から与えられるキス。
 奪う事に積極的だったはずの可奈子が今、完全に受身に回って兄の愛撫にとろけてゆく。

 呻く様に吐息が洩れ、口がわずかに開く。
 景太郎はすかさず舌を僅かな隙間に忍び込ませる。 

 眼を見開いて驚く可奈子を尻目に、溢れんばかりの唾液を啜り、また流し込んでゆく。
 その官能的過ぎる刺激に強い酒でも呷った様に可奈子の腰が抜けた。

 兄の唾液だ。
 その行為はキス…等と言う可愛らしいものでは無く、唇による貪り。今まで味わっていた抱擁から一気に性的な意味合いの深い前戯へと突入していた。
 甘く、刺激が強いその義兄の味に可奈子は陶酔し、麻薬などの“安っぽい薬”よりも深く脳に浸透し、理性をとろかし素早く中毒化を進行させてゆく。

 味蕾に直接感じる兄の味。微かに感じるのは先程まで飲んでいた酒の味か?
 ざらざらと舌と舌を絡ませあい、舐めとられ知られてゆく自分の味。

 何度も何度も飲み、
 何度も何度も飲まれてゆく。

 人生初めての美酒の如き唾液の味。
 それに酔っている間も無く、景太郎の舌は暴虐の限りを尽くしてゆく。

 唇の裏を撫で、
 歯茎、歯と穿り、
 舌の裏をざりざりと丹念に擦って血管のでこぼこすら知られてしまう。
 咥内全ての粘膜を舐め味わい、口蓋に貼りついて舐めに舐めて唾液を零して義妹の口中を犯してゆく。

 絡められた景太郎の舌は、可奈子が今まで人生で出合った事の無い生物の動き。
 恰も別の生き物の如く口中を貪り、穢し、犯しつくしてゆく。

 完全に獲物となっている可奈子は、景太郎からの気持ち良い略奪行為に身の全てを委ねるのみ。

 初めて受ける悦楽の波は高く強く激しい。
 呼吸もままならず、彼から送り込まれる唾液をじゅるじゅると啜る事だけが許されているかのよう。

 ぶぢゅる…ぢゅるるる……ふ…ンんん……ずず…ぢゅるるる……


 ぼう…としている間に景太郎の唇が離れた。
 時間にしてほんの数分程度だったであろう接吻くちづけだが、甘い蹂躙をされ続けていた可奈子にとっては何時間にも及ぶ行為だと感じられていた事であろう。
 やっと息継ぎが出来たとばかりに、荒く息を吐いていた。

 その際、ボタボタと唾液が零れ落ちて可奈子の胸を汚す。
 なるに変装したままなので上げ底の胸であったが、それでも恥ずかしいのか自分が零した唾液によって透けたブラをゆるゆると手で覆い隠そうとする。

 「カナコ……」
 「……あ」

 だが、景太郎の眼差しに射抜かれてしまった。
 命令された訳でも無いのに手が止まり、ゆっくりと下がる。
 唾液で下着が透けているという事だけが恥ずかしい可奈子は羞恥で顔を赤くしてゆく。
 そんな可愛い妹の姿を見、景太郎は更に大胆な行動に出た。
 
 「きゃ…っ! お、お兄ちゃん……?!」
 「うん…」

 返事になっていない。
 景太郎は可奈子のカツラとマスクを剥がし、シャツをパット入りのブラごと押し上げて本当の胸を外気に曝したのである。

 「は、恥ずかしいです」
 「うん」

 それでも健気に胸を隠そうとしていない可奈子に対し、景太郎の返事に変化は無い。
 剥き出しにした若い胸に、“いつもの様に”愛撫を開始した。

 「んぁあっ?! ンっ!! んむ…ん…んふぅ………」

 流石に声が大きくなりかかるが、そのタイミングを知り尽くしているかのように景太郎の唇が可奈子の口を封じた。
 一瞬、眼を丸くするがそれどころではない。
 激しくも優しいキスで構内を蹂躙されつつ胸が弄られだしたのだ。じっとしている事等出来るはずもない。
 その強い刺激に成長中の乳腺が激しく反応し、痛みにも似た感触を脳に伝えてゆく。
 だが、可奈子にとっての唯一の男性である義兄からの行為なので痛覚神経は頑として受け入れを拒否。代わりに強すぎる快楽だと無理矢理納得させられてしまう。
 
 尾てい骨から電気のような刺激が駆け上がり、腰を震わせ、視界に星が飛ぶ。
 義兄を想って自分を慰めた事は何度もあるので、その義兄からの刺激を受ければ否応もなく受け入れてしまい、快楽神経が強く叫び声を上げる。

 無論、実際には快楽神経等という神経は存在していない。複雑に絡んだ神経が快楽として覚えているだけである。
 それでも可奈子の全身の神経は感覚神経の伝達より早く、兄の行為を快楽悦楽として隅々にまで行き渡らせていた。

 その可奈子の呆けた表情には理性も何も無い。発情期の牝のそれだった。

 だが、景太郎はそんな表情も大好きである。
 可奈子とて大切で大好きな女の子だ。そんな娘が自分の行為によってめろめろになっているのは凄く凄く喜ばしい事なのだ。

 じゅるじゅると濃厚なキスが続き、むにむにゅと胸を蹂躙し続ける。
 前から知る優しい兄の行為とは思えない程、強引でいやらしい手の動きに可奈子は何処までもも堕ちて行く。

 凛とした何時もの可奈子と同じ娘とは思えない程、今の彼女は悶え狂っていた。

 ただキスをされた“だけ”で羞恥の色を浮かべ、
 胸を弄られた“だけ”で身悶えしている。

 可愛い。
 なんて可愛いんだ。カナコ……

 酒の力が本能と感情が直結させたか、理性を飛び越して身体に命令する。
 景太郎は一人の男として義妹を一人の女として捉えて行為をエイカレートさせてしまう。

 唇がうなじを走り、
 喉を反らせればその喉を這った。
 ナメクジの様な痕を残しつつ、その舌は可奈子の身体を這い、つんと突き出た桜色の乳首を甘噛みし、更に吸う。

 「んぁあっ!!」

 ちゅぅうう~と音を立てて吸い、乳首ごと胸を引っ張り、舌先でれろれろと乳首の先を虐めながらわざと跡を残す。

 その初めての刺激に腰が浮き、無意識に逃げようとするも景太郎に隙は無い。
 腰が跳ねるが強引に押さえ込んで腹を、そして臍を穿って舐めてゆく。
 お臍を舌でほじられるという羞恥に、ついに可奈子は顔を覆って泣いてしまった。嫌という気は全く無いが、恥ずかし過ぎるのだ。

 そのまま滑り降りた舌はスパッツの縁に到達し、その布地を湿らせ濡らせ染みをつけながら更に下降して行く。

 「ああ……あああ……あああああ………」

 恐れるような、
 それでいて期待がたっぷりとつまった声が可奈子から漏れる。
 腰はぐにゃぐにゃで力が抜け気っている為に抵抗の使用も無い。
 それを良い事に景太郎の舌は太股の付け根の谷間に到達した。

 「………っっっ!!!」

 声にならない絶叫を上げてしまう。

 ゆるく口を開けたヴァギナに、
 義兄を想い自慰を繰り返した事によって発達している器官に対する想い人の舌の感触である。そうそう耐えられるものではないのだ。

 腰を反らせて身体を痙攣させ、僅かながら失禁して気を遣ってしまう加奈子。

 それでも景太郎は止めてはくれない。
 可奈子を寝かせ、その上に覆いかぶさるようにして可奈子の股間をスパッツ越しに吸い、舐め、唾液を染み込ませてその唾液と共にその味を吸い込んでゆく。

 余りの快感に可奈子は身悶えた。
 手は行き場をなくして彷徨い、目の前の景太郎の腰に抱きついて弄るようにしがみ付く。

 顔を彼の股間に押し付ける形になったがそれどころでは無い。
 69の体位になっている事に気付いているのかいないのか、景太郎はすんすんと匂いをかぎ、漏らした筈の可奈子のそれを啜り、膣穴のある部分を舌先で刺激し続けている。

 “そこ”は景太郎を受け入れる場所である事は加奈子とて知ってはいる。
 ここに義兄のこの中にある物が収まるのだ。事前にチェックしておくのは当然であろう。
 
 腿の内側の肉をむにゅっと掴み、肉亀裂を更に押し広げて義妹の性器を蹂躙し続ける景太郎。
 キれたのか、本性が出てきたのかは定かでは無いが、可奈子にとってはどうでもいい話。
 景太郎と結ばれる事は以前から願ってきた事であるし。

 だが、よく考えてみれば自分がしてもらっているだけではないか。
 こんなにも自分に色々な事をしてくれる義兄に対して恥ずかしいとは想わないのか?!

 自分を叱咤した彼女は、恩返しをすべく目の前にあるジッパーを歯で噛んで引き下ろした。そしてその内部で暴れていた物の戒めを解いてやる。

 途端に噴出す男のリビドー。
 血管すら浮かべてギンギンと男を見せ付けている。

 夢にまで見た彼の性器。
 どれだけ想ったであろう、自分に興奮してくれて勃起してくれている彼のペニス。

 歓喜に瞳を潤ませた可奈子は義兄の昂りを申し訳なく想い、何の躊躇もなく目の前にそれを口に含んだ。

 「はぅん……ンふぅ……」


 咥えた可奈子の方がはしたなく喘いだ。
 舌先で穿るとしょっぱく感じるし、カウパーを啜れば僅かに苦い。
 苦酸っぱい味ですら兄のものだと想うと美味しくて堪らない。

 可奈子も今の今まで知らなかった行為であるが、相互愛撫とは素晴らしいものだったのですね…と彼女は感心していた。
 何せ愛しい男に奉仕が出来、尚且つその奉仕をする事によって兄を喜ばす事ができるので心が身体に快楽を齎すのだ。
 
 じゅず、ぢゅるる・・・・・・はふはふはふ……ちゅるるる……


 意識して次々と唾液を送り込み、カウパーと混ぜて飲み啜る。
 舌でもって亀頭の周囲やカリの裏等も綺麗にする。
 ざりざりとした小さな歯ごたえのある粘ったものも兄の物なので美味だ。ゴーダチーズだと思えてしまうほどに。

 下半身を嬲る兄の舌も激しくなってゆく。
 負けじと加奈子の舌使いも激しさを増す。

 ぢわり…とスパッツに染み広がる愛液を吸われ、
 だらだらと溢れ出るカウパーを飲み啜る。

 嗚呼、何と淫靡で許し難く、
 何と麗しく仲睦まじい兄妹であろう。

 やがて倫理からかけ離れた仲の良い義妹の口の中、

 ぶびゅっ、どぶ、ずびゅっ、


 と凄まじい奔流が押し寄せてきた。
 ついに景太郎が射精したのである。
 本能的に可奈子はそれが命の息吹であり、オンナであれば美味い美味いと咀嚼して味わなければならないものであると直感した。

 ぐぼぉ…ぐぼ、ぐぼ、ごぎゅごぎゅ、ごぎゅっ、


 目に涙を浮かべて無理矢理喉に送り込んでゆく。
 吐く…等とんでもない。義兄がくれたものなのだ。ありがたく頂戴し、悦楽の涙でもって歓喜せねば罰が当たろう。



 それに……


 本当に義兄の精液は美味しかった……



 唇から滴り落ちる残量を舌で舐めとって啜り上げる。
 咥内にとどまる残臭もまた格別で、以前読んだ女性週刊誌に生臭いと書いてあったのだが、そのライターは頭がおかしいのかと思われるほど。
 イカ臭い? お前らは精液を味わった事が無いのか? こんなにも甘く、こんなにも深く味わいのある香りではないか。舌から喉に、喉から鼻に抜けた精液の香りはまた格別。酔い潰れてしまうほど素晴らしい芳香だった。

 味もまた良く、喉に絡みつくような苦甘いトロミのある生命の味は、腹が裂けるまで飲み続けたいと感じたほどだ。

 無論、それは義兄の、
 浦島景太郎の精液であり、ペニスであるからこその話。


 他者の男等、人物を含めて汚物と変わらぬ。

 ぷはぁ……と息を吐いた可奈子の唇をシャボン玉のように泡が張った。精液のあぶくだろう。
 義兄の精液によってそんな物まで浮かべた自分を誇らしく思いつつ身を起こすと、愛する景太郎は良いがまわり切ったのか深い眠りについていた。

 残念……処女を捧げられなかった……

 と落胆するも、この様子であればそう遠い話ではあるまい。
 下半身の熱を奪ってゆく景太郎の唾液と、お腹から熱の広がり感じさせてくれる精液に素晴らしい多幸を感じ、自分を抱き締めて打ち震えている可奈子。

 愛しい者の慰み者となってしまったのと変わり無いというのにも可奈子の心は幸せに満ち溢れていた。

 ふと見ると自分の唾液と精液でベタベタになっている、剥き出しのままのペニス。
 可奈子は自分の仕事と言わんばかりにそれにむしゃぶりつき、舌で舐め清めてゆく。

 ああ……嬉しい……
 ああ……美味しい……


 子宮が疼き、景太郎の精子を求めている。
 膣がうねり、性交を望んでいる。
 だが可奈子はその訴えを棄却し、ただひたすら景太郎に奉仕し続けていた。

 無上の幸せを胎内から感じつつ……




 そんな女の幸せに浸っている少女から少し離れた場所に、別の少女の影があった。

 同じ男を愛する少女。
 想いの深さなら負けないといえる少女。
 そして、歪み始めた加奈子の心にも引けをとらないほどに歪み出している少女……

 「う……うううう……先輩ぃ……」

 兄妹の様子に足が止まり、
 兄妹の睦み合いに腰が抜け、
 兄妹の秘め事に手を股間に伸ばし、自らを慰めてしまった少女。

 可奈子と同様に失禁し、可奈子と同様に絶頂を迎えはした。
 だが、側には誰もいない。
 他者の熱が無い。
 愛しい男の唇も、舌も、指も、ペニスも、精液も無い。

 ゆるい傾斜のひなた荘の屋根。
 その屋根の縁に横たわり、景太郎を想って自分を慰めてしまった少女。
 悲しく寂しい行為による失禁は、たらたらと屋根を伝い、雨樋に流れ込んでゆく。

 例えバレても良かった。
 見つかっても良かった。
 そうすれば自分も加わる事が出来たかもしれなかった。

 だけどその一歩が出なかった。
 先に可奈子によってなされた行為が、少女の足を、勇気を止めてしまったのである。

 「先輩…先輩ぃ……ううう……」

 スカートと下着ごと股間を濡らし、
 両手で顔を隠したまま彼女は泣いた。
 こんな声を漏らしているというのに、可奈子は全く気付かず、景太郎に頬ずりし、その幸福感を維持し続けている。

 少女は泣いた。
 悲しくて、寂しくて、辛くて、孤独で、
 ただ泣いた。泣き続けていた。

 その行為しか彼女には許されていないかのように………




 「あっちゃあ……タイミング悪ぅ~~~」

 物干し台から様子を窺っていた影が一つ。
 悲しみの中に沈み続けている少女と、男に寄り添って幸せに浸り続けている少女に眼を向けていた。

 幸せに浸る少女の気持ちも良く解かる。解かりすぎる。
 自分もこの間思い知ったのだから、

 悲しみに沈む少女の気持ちも解かる。解かりすぎる。
 自分も露天風呂で味わったのだから。

 その女性は深い溜息を吐いた。

 もう他に手は無い。
 泣き続けている少女には自分を知ってもらわねばならない。
 どれだけ恵まれ、どれだけチャンスがあり、どれだけその事に気付けていないか。

 「あ~あ……せやけど……」

 キツネは観月を見上げてもう苦笑する。

 「ウチらの回数、減ってまうがな……かなわんなぁ~~……」

 かかる状況であるにも拘らずやたらと呑気なセリフ。

 だが、彼女は理解していた。

 求めれば救われる。そして“巣食われる”。
 だが拒否する必要は無い。

 彼といられるのだから。
 彼と共に歩めるのなら。
 
 同じ気持ちを持つ少女なのだから……

 一部が欠けたままの月が同じ位置から其々を照らし、
 別々に存在する個々の想いを黙って見つめ続けていた。






[2319] Re[5]:Dotage ~妄愛 <壱拾肆>~  (微エロ)
Name: Pixy◆752cebb3 ID:7fc772f3
Date: 2007/05/09 20:39


 人の声、喧騒、電車の音。
 人間の暮らしの音を遠くに聞き、閉め切った部屋の中で少女は蹲っていた。

 朝を過ぎ、昼の一歩手前。そんな時間であるし、初夏という事もあってか太陽光は明るい。
 にも拘らず障子を閉め切られている所為であろう、この部屋の中は薄暗かった。
 障子の白い紙が太陽の光を外の人の動きごと遮断しているのだろう。

 別に人を受け入れられないのではない。
 現実を受け入れられないのでもない。

 人を知っているから、自分を知っているから、そして現在の情況が現実であるから、彼女は自分の世界に沈み込んでいたのだ。

 余り空気の良く無い家から出、
 引っ込み思案のままではあったが寮の皆のお陰で段々と頭を上げられるようになり、
 人に恋してから初めて踏み出すという事を憶えた。

 その人はとても不器用で、誤解され易く(現に彼女も最初は痴漢だと誤解した)、運が悪くて間が悪い。
 妙に童顔で女々しさの方が目立ち、焦ると何を仕出かしてしまうか解からないという、自分に相通ずるものがあるツイて無い男性だった。

 だけどもその人はとても優しく、挫けても挫けても時間は掛かるけどちゃんと立ち上がる努力家で、思いやりを忘れない男の人だった。
 初めは警戒していた寮の皆も段々と心を許すようになり、今ではいないと不機嫌なる程にまでなっている。

 考えてみれば、最初に懐いたのは褐色の肌の少女、カオラだった。
 人見知りは全然しない彼女であるが、見る眼だけは確かだ。だから最初から彼の本質を見抜いていたのかもしれない。野生の勘という方が正してかもしれないが。

 だが、最初に恋心を持った者はカオラでは無い。

 出会う前から…というのであれば身内では彼の義妹である可奈子の名が挙がるだろうし、それ以外ならば幼馴染である むつみだろう。何せ十五年も前の約束を景太郎同様に憶えており、東大を受験し続けていたのだから(なるも同様に幼馴染であるが、彼女の場合は動機も幼馴染の二人の事も完全に忘れていたのでこの範疇には入らない)。

 今までに色々な事があったが、その気持ちは全く衰えを見せていない。
 全てにおいて負けているとコンプレックスをもっていた 成瀬川先輩にも負けないように努力する事が出来るようになったのも彼という存在がいてくれたお陰であるし、
 県内で一番の進学校である県立校のM高に合格できたのも、留学試験に合格して海外留学を果たした彼に少しでも追いつこうとした結果だ。
 帰国した彼が彼女に勉強を教えてくれるようになった事もあり、成績も徐々にではあるが上がり続けている。

 そんな風に自分に自信を持つ切っ掛けを作ってくれたその男性…浦島景太郎に対しての想いはどんどん強くなってゆき、相手が決まっている現在においてもその気持ちを抑えられないほどにまで高まっている。

 諦めきれないのは自覚している。
 だが、彼の為に吹っ切ろうとしていた。
 していたのに……

 「うう……ン…く……」

 コテン…と身体を前に倒し、うつ伏せになる。
 その小さな唇はボタンが外れたブラウスの裾を咥えて声が出るのを防いでいた。
 大きく捲くれ上がったスカートの中には、普段家事等に使われている健全な指があり、白い子供っぽいショーツの上から性器を掻く様に弄り続けている。

 子供っぽい、どちらかと言えばパンツと呼称した方が良いかも知れない白いショーツ。
 その飾り気の無いコットン生地の下着は既にびしょ濡れになっており、コットン地特有の水気を吸ったふくらみを見せている。如何に濡れているかが解かるというもの。
 75という、この寮において下から二番目のバストサイズである胸がむき出しになっており、少女は刺激によって頭を出している乳首を畳にこすり付けて刺激を高めている。

 「ンんん……んっ、んぁああ……」

 それでももどかしさかったのであろう。
 少女は左手を胸に滑らせ、なだらかな胸を掴むように刺激を送り始めた。

 自慰行為。オナニー。

 人生において三回目のたどたどしい行為。

 一度目はやはりこの部屋。
 好意を持っている男が、恋人以外の女性と性行為に及んでいると知った時。

 二度目は意外な場所。この寮の屋根。
 やはり好意を持っている男が、恋人以外…それも前回とは別の女性、尚且つ義理とはいえ妹と淫らな行為に及んでいた時。

 そして今だ。

 悔しいか? と問われれば、悔しいと答えるだろう。
 寂しいか? と問われれば、寂しいと答えるだろう。
 悲しいか? と問われれば、悲しいと答えるだろう。

 だが、憎いか? と問われれば答えに窮してしまうだろう。

 別に誰も憎くは無いし、恨みも無い。
 殺意に似た嫉妬は持っているかもしれないが、憎くて持っているのではない。

 彼女が苦しんでいる気持ちを言葉にするのならば……

 ずるい

 がそれに相当する。

 誰に対してかと言えば、昨夜彼と仲睦まじく愛撫し合っていた義妹の可奈子や、何時の間にか彼と性交渉を持っていた素子である。
 キツネもそんな関係であると何となく理解はしているのだが、妊娠検査薬を使ったと言っていた素子の忘れ物にして確たる証拠の件の品の空箱がここにあり、可奈子の場合は直視してしまったのだ。
 二人は間違いなく彼…浦島景太郎先輩と、そういう関係であると理解しているからこそ、嫉妬の順位が上がっているのだ。

 無論、景太郎に対してもずるいという想いを持っている。

 ずっと、ずっと前から好きだったのに…
 ずっと前から好意を見せていたのに……

 どうして素子さんとそういう事をしたんですか…?
 可奈子さんとそういう事をしたんですか…?

 どうして……どうして私には……


 嫉妬の無限ループだ。
 女として目覚めた時、こうなってしまうと中々冷静になる事が出来ない。
 これは誰にでも言える事であるが、こうなると自分は冷静なつもりでいて、その焦りや苛立ちを剥き出しにしてしまう。それでいて忠告は受け入れられない。私の気持ちを知らない貴方なんかに言われる筋合いは無い…というやつだ。

 自己弁護しつつ自己防衛しているのだから、その反応は当然だろう。
 最悪になると、『自分は悪くない』と言う答えに行き着いた後、戻って来れなくなる。そうなってからでは遅いのだが、この場合に助言できる者は“心を許していて、尚且つ気持ちが理解できる者”に限られてしまうのだ。だから解決が難しいのである。

 くちょ…くちゅ…くちゅ、くちゅ、くちゅ、


 湿りきった布の音が、切迫呼吸に似た喘ぎに混じる。
 夕べから下着も代えず、
 皆の朝食も作らず、
 只ひたすら自慰を繰り返す少女……前原しのぶ。

 途中、二度ほど誰かか様子を見に来てくれたのであるが、風邪だと誤魔化し、うつるといけないからと入室を拒否した。
 もちろん、その程度で諦める寮の者はいない。今のしのぶにとってはありがた迷惑であろうが、彼女らからしてみれば病気に苦しむ仲間を心配するのは当然の事なのだから。

 キツネの気遣いによって騒ぎは起きなかったが、景太郎が作ってくれたおかゆや、なるが用意してくれた風邪薬は流石に断る事はできない。
 心配そうなカオラたちに嘘をつくのは心が痛んだが、少しでもしのぶは一人になりたかったのだ。

 そう、学校にも行きたくなかった。

 学校で気の置けない友人らと会話するのも嫌だった。会話の端々から自分の醜さが曝されるようでそれが恥ずかしかった。
 だからしのぶは部屋に引き籠もり、湧き上がってくる感情を誤魔化す為、必死になって自分を慰め続けていたのである。

 だが、自慰行為…とりわけ欲望のままに行っていないそれは、達すれば達するほど自己嫌悪が募ってゆくもの。
 嫉妬の無限ループに自己嫌悪の無限ループ。繰り返されて積もり積もるだけのマイナス思考は、しのぶ自身を傷付けるだけで終わろうとしていた。


 だが、そのタイミングで―――


 「精が出るな~ 若い証拠や」

 等と、能天気な声が掛けられれば……

 「え? え?!
  あ、き、きゃあああああ~~~~~っっ!!!

 そりゃあ驚きもするだろう。
 自分以外に誰もいるはずの無い しのぶの部屋に、何時の間にかキツネがおり、胡坐を掻いて彼女のオナニーシーン見物していたのであるから。

 最初はノックをしようとしたのであるが、中から喘ぎ声が聞えてくればそれは出来ない。
 だからコッソリと部屋に入ったのであるが……まさか気付かないまま続けられるとは思っても見なかった……

 無論、しのぶは混乱の極致である。
 身体を隠そうにも、自分が入っている事になっているはずの布団までは遠く、
 半裸の肌は何処を先に隠せばよいやら。

 尚且つ、部屋に篭っている甘酸っぱい匂いはどうする事も出来まい。

 しのぶに出来る事は、まあるくなって蹲る事だけであった。

 「ごっつええトコやったんやろ? スマンなぁ~
  せやけど“今のうち”に言わなアカン事あってん」

 そう慰めるように言うが、しのぶはえずき上げて泣くのみ。
 まぁ、只でさえ恥ずかしがり屋の彼女なのだ。こんなところを見られて冷静でいられようはずが無いのである。

 尤も、“だからこそ”この女性、キツネはこのタイミングで話しかけたのだが。

 「聞かんでええんか? けーたろの事やで?」

 案の定、しのぶのえずきが止まる。
 人で吊り上げるように頭が上がり、寝不足と恥ずかしさで眼を腫らした顔をキツネに向けた。

 朦朧とした反射行為ではない。
 キツネには解かる。話に喰らい付いたのだ。

 そんなしのぶの様子を見、キツネは内心、微笑みを浮かべていた。

 何時もの“してやったり”の笑みではなく“微笑み”だ。

 少なくともこの寮内において、
 この寮内の女達の中において、しのぶの心を理解してやれるのはキツネだけだ。

 恋焦がれる相手が、恋人と別の女と睦み合っている。
 愛しい男が認めた女と共にそういう行為に及んでいたのならここまで落ち込まないだろう。

 あのひとならいい。
 諦めもつく。
 そう割り切れるからだ。

 だが、別の女とそういう関係になっている…そしてそれを目にし、理解してしまえば押さえは利かなくなる。
 ひび割れから零れ落ちた想いはやがて穴を穿ち、どうして自分では無くあの女と…という嫉妬を彩り始める。

 だからこそキツネは“ここ”に来た。
 その辛さを知っているからこそ、
 その寂しさを理解しつくしているからこそ、

 妹分である しのぶを労わる為、

 そして……

 「ま、ちょっち話は長ぅなるけど聞いてもらうで?」

 彼女を“こちら側”に救い出さんが為に。




 ある人は言う。
 幸福は、常に倫理的とは限らない。と―――





―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
                           -盲・愛-
                            File:壱拾肆

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――




 普通、上がったテンションはそう長続きしない。
 
 特に飲み会の次の日等、ガク~…と落ち込んだ経験は無いだろうか?
 そのテンションの上昇下降をエントロピーに例える者もいるくらいなのだから。
 何かに感動する。或いは怒り等によって急激に上げられたテンションは、当然ながら維持も同等のエネルギーを要す。それが無い以上、上げた後はいきなり萎み切ってガス欠状態となる。
 つまりは何かと燃費が悪いものである。
 
 第二要因で正気に返ったことも挙げられるだろう。
 先に述べた飲み会を例に挙げると、頭が冷え切ると夕べの乱痴気騒ぎが思い出されて自己嫌悪に浸ってしまう…がそれに相当する。
 ああ、恥ずかしい。もう二度と酒を飲むまい。等と出来る訳も無い誓いを立てる輩も多い。そういった経験は無いだろうか?

 アルコール摂取による勢いもあったが、心身共に幸せの絶頂を得、愛する者の香りを堪能したまま眠りについた彼女であったが、朝を迎えてみると頭が冷え切って落ち込みを見せてしまっていた。

 朝食は何故か件の愛する人……まぁ、義兄であるが……が作っており、何時もの料理担当の少女は体調を崩して寝込んでいるとの事。
 何だか兄の料理の腕が上がっているのがちょっと悔しいが、兄の為なら…と自分も上げているのでそれは良い。

 ぶーぶー文句を言いながらも実に美味そうに食べる義兄の恋人にも、額に血管が浮かびはするが良しとしよう。
 後のメンバーは喜んで食べているのでこれも良い。

 ……兄が昨夜の事をスッパリと忘れていたのも……ま、まぁ良いとしよう。でないと涙が零れてしまう。

 問題は……
 そう、一番の問題は……

 「お兄ちゃん……凄く慣れてた……」

 という事である。

 天国の時間が昨夜という“過去”となり、頭が冷えてくると否が応でも思い知らされてしまう。

 キスの巧妙さ、
 愛撫のタイミング、
 股間を這い回った舌の使い方。
 そのどれをとってもたどたどしさを感じるものではなかったのである。

 確かに愛情という贔屓目はあるだろう。敬愛という“下駄”もあるだろう。
 だが、滑らかに可奈子の身体を這った手や舌、咥内を蹂躙し尽くしてくれた舌使いは間違いなく自分ではない誰かで培った経験だ。

 「まさか……なるさん……?」

 ……ではないだろう。直感的にそう思った。

 というのも、なると景太郎の仲はまだどこかたどたどしいのだ。
 キスはしまくっているのは知っている。その所為で寮内の空気がどこか重い事も。
 まぁ、それはそうだろう。この寮内には彼を慕っている女性は多い。というか全員だ。
 言うなれば、景太郎はなるの独り占め状態。快く思っている女性はかなり少ないはず。むつみだって心中は解かったものではないのだから。

 ふとテーブルに眼を向けると、そこには亜麻色のウイッグ。
 夕べ、景太郎に詰問するつもりで なるに変装する時に着用していたものだ。

 それを手にとって無意識に撫でる。

 所々ぱりぱりとした感触がある。大切な変装用具の一つではあるが、それは景太郎の精液が乾いたもの。愛しさはあってもそれ以外の感情は持ち合わせていない。
 可奈子はそのタンパクの渇いたものに頬ずりすらしているではないか。
 頬にかかる感触すら愛しく、ほのかに残る兄の香りには酔ってしまいそうになる。

 「お兄ちゃん……」

 すう…と大きく息を吸い込み、兄の残り香を鼻腔一杯に納める。
 すばらしい……更に兄を間近に感じるではないか。

 可奈子は立ったままウイッグに鼻を沈めてクンクンと匂いを追い、義兄の香りを堪能し続ける。
 変装時に着用しているビスチェにも似たインナーのままなので、下着姿と変わりは無い。
 じわり…と太股の付け根が湿り気を見せ、自然に足が内股になる。

 お兄ちゃん、とても上手だった……
 つまりは誰かで経験を積んだという事。
 そしてそれは、なるさん以外の誰か……


 頭に浮かぶのはキツネの顔。
 昼間から酒を飲み、ラリった頭で見当違いの色仕掛け。これがキツネという女性のクオリティだ。

 だが、彼女の事も調べているからこそ解かるのであるが、彼女の過去の男は意外な程少ない。いやさ“居なかった”と言っても良いほど。
 考えてみれば景太郎がここに来る前には、この寮には絶大な権力者が二人いたのだ。

 言うまでも無い。絶対存在である“ひなた”と、支配者である“はるか”の二人である。

 この二人の眼が黒い内は、或いは光っている限り、男と大人の遊ぶなんぞをする隙なんぞある訳が無いのである。
 無論、無断外泊もありえない。
 フリーター一年目の時に景太郎が来て、その後は手近な彼をからかっている訳であるから、少なくともここ二年ほどの間には男の影は無いに等しい。
 あるとすれば景太郎が留学中にどこかで男遊びをしていた事となるが、その半年の間もバイト以外の時は大半をひなた荘で過ごしていたようなのでこれも可能性は薄い。

 実際、男を見る眼が異様に厳しいのか、好みが違うのか、彼女は景太郎にだけ興味を持っていたようなのだ。

 そんなキツネは簡単に景太郎に絡み付いてゆく。
 他の男性におさわりすら厳禁な彼女がだ。

 だからこそ想像も容易である。

 キツネと景太郎が抱き合い、見つめ合い、唇を重ねる……そんなシーンが何の無理も無く簡単に頭に浮かぶ。
 そんな妄想が頭をかすめるだけで拳に力が入ってしまう。
 絶対攻撃力は当然ながら可奈子の方がキツネを圧倒しているのだが、実力行使に出れば兄が悲しむ。そして当然の様に嫌われてしまう。

 あれだけ憎悪していた約束の少女のなるを許しているのは、彼女の優しさを理解しただけでは無く、彼の心が彼女にだけ向いていたからだ。
 自分を押さえられたのである。

 再会した時に持っていた感情は愛しさと親愛だった。
 なるに変装し、想いを吹っ切ろうとして失敗した時には、親愛は情愛に敗北した。
 なると間違えられ、開かずの無人別館で抱き締められた時には、肉親としての想いの大半は情愛に塗り潰されてしまった。

 自分の想いからも逃げようとする なるを追いかけて走り回った事件の時には、確かに親愛を取り戻しはした。

 だが、情愛が消えたわけではなかったのだ。

 そんな時に酔った勢いとはいえ彼に愛撫され、少女としての殻を他ならぬ彼の手指によって毟り取られてしまったのだからどうしようもない。
 只でさえ強かった彼に対する愛しさは、完全にオンナとしてのそれに変わり、今の可奈子は義兄を兄として見る事が出来る部分を完全消失してしまっていたのである。

 義兄として、
 血の繋がらぬ男と女としてか景太郎を見る事が出来なくなってしまったのだ。

 以前ならば『でも、私のお兄ちゃん』と区切りを入れられたのであるが、今はそれも叶わない。思い浮かぶのはせいぜい、『入籍する手間が省けた』くらいだ。

 そんな沸きあがってくる熱を持て余しかかっている可奈子の部屋の戸を、トントン、と誰かが軽くノックする。

 ハッとしてウィッグから顔を上げ、素早く衣装部屋に放り込み、

 「……どうぞ」

 務めて冷静さを装って可奈子はそう答えた。
 その声が聞こえてから、「失礼する」と入って来た者は……

 「モトコさん…?」
 「うむ」

 タンクトップにミニスカート。以前なら絶対に着なかったであろう、露出が多めの色気づいた衣服を着用した少女。
 最近、長い髪をバッサリと切って妙に色気が増した恋敵の一人、武術においてもライバルである同じ寮に住まう女性、青山素子。その人であった。




 衣服を正し、それでもまるで自分を隠すようにクッションを抱えて話を聞いていた しのぶであったが、

 「そ、そんな……信じられません……」

 キツネの話を全て聞き終えて口から出せた言葉はこの一言だった。

 否定の言葉を喰らった当のキツネであったが、彼女は『ま、しゃーないやろな』と別段堪えた風も無く頭を掻く。
 実際、信じられる話ではないのだから。

 「まぁ、フツーはそう言うやろな。
  モトコが呪いや喰ろぅて淫乱になったや言う話、信じる方がどないかしとる事やし」
 「……」

 実にアッサリと肯定するキツネ。
 しのぶの疑わしげな視線はそのままだ。

 以前の、
 以前のしのぶの目。
 ここに来た当初の、引っ込み思案で顔色を窺ってばかりだった目を思い出し、キツネの胸がチクリと痛む。

 キツネはあえて軽めの笑みを浮かべて話を続ける。
 自分ばかりが満たされてもしょうがないからだ。

 「せやけどな、ウチは見とるんや。をな……」
 「あのモトコ…?」
 「せや……けーたろに抱かれ、腰振って悦んどるモトコを、膣内なかに出されてイク顔を……
  麦茶か牛乳みたいに けーたろの精液を喉鳴らして飲むモトコの顔をなぁ……」
 「……っ?!」

 思い出すのは淫猥な顔。
 精液に塗れて心からの至福を、それを満面の笑みで表わす素子の顔を。
 景太郎に貫かれて悦楽,愉悦に狂う女の顔を。
 景太郎の獣欲に心身を明け渡し、性欲に溺れつつも自分を残したままという矛盾した彼女を。

 少なくとも、僅か一ヶ月であそこまで変わる事は普通はありえない。
 そして自分も、引き摺られるように性欲が増している。
 それも犯されないと快楽が遠退くのだ。いくらマゾヒズムの素質があろうと、いくら媚香の力があろうと、性交当日からそうなるのもありえないのである。

 実体験による自覚…理解か?
 それは何よりも真実味を帯び、そして説得力があった。

 だからこそ、半信半疑のしのぶすらその真実を受け入れかかっているのだ。




 「……それを信じろと?」
 「そう言いつつも半ば信じているのだろう? カナコ」
 「……」

 黙りこんでしまう事が、素子の言葉が事実である事を物語っている。

 卓袱台にはお茶が二つ。
 最近、義兄がはまりだしているほうじ茶を可奈子が煎れて出したものであるが、二人とも手がつけられていない。
 可奈子を用心して……ではなく、単に飲む時間すら惜しいというだけ。
 事は重要であり、特に可奈子にとっては重いモノのだから。

 既に素子は自分が景太郎の最初の相手である事を語り終えている。
 無論、可奈子は激昂したが、素子は涼しい顔。余裕がある…という事もあるが、それより何より言わねばならない事があったからだ。

 「まず、私の話を聞いてくれ。文句はその後に聞こう」

 と、理由もちゃんと語った。
 それを聞いた後の言葉が、先の可奈子のセリフである。

 「カナコも解かるだろうが、あいつ以外の男には触れられるのも嫌だ。そうなると“景太郎先輩”に抱いてもらう他はあるまい?」
 「……」
 「そしてまだ件の呪いは解けていない。
  いや、それどころか下手をすると呪いは成就されているやもしれん。
  何せ最低でも三日に一度は景太郎先輩の精液を胎内に納めねば頭が性行為以外の事を考えなくなるのだからな」

 はぁ…と熱い溜息を吐く素子。
 その吐息からして素子が以前の人間と変わってしまっている事が窺い知れる。

 実際、可奈子は呪い云々の件は既に信用している。
 自身もそういった関係には触れている事もあるし、何より祖母に打直しを命じられていたあの楔だ。
 あの楔は鬼門の方位では無い方角の物が真っ黒に錆びていた。
 それはつまり、何かが力押しを行ったという事である。
 確かに長い年月を経てかなり力を無くしていたとはいえ、低級の霊程度では越える事など到底不可能な話なのだ。

 無論、ここには神鳴流系列の神社まであるのだからそれでも力は著しく落とされるだろう。それでも夢魔等のような精神に作用する魔であれば侵入は可能かもしれない。
 それはつまり、歪に力を失った呪いが掛けられている可能性を示している。
 それならば素子が“自我”を失っていないにも拘らず淫乱化しているのも納得できるというものだ。

 何とか冷静な目を取り戻している可奈子の頭はそう判断を下していた。

 しかし、それでもキツネを巻き込んでいる理由が解からない。
 なるに遠慮して陰で行為に及んでいるのなら、キツネが入れるスペースは無いだろうし、景太郎を寝取るつもりでもキツネがいる訳が無いし、可奈子に話す訳も無い。
 となると……?

 「理由は簡単だ。
  ここの寮に施されている“まじない”について聞いてほしかったのだ」
 「“まじない”……ですか?」

 うむ…と素子は頷いて見せた。




 「けーたろと なる。この二人がくっ付くんは昔の約束いうんは解かったな?」

 コクンと頷くしのぶ。
 大体の落ち着きを取り戻してきたようだ。
 素子経由で聞いたむつみの話を聞き、遠い昔に三人で交わした約束。そしてそれの入り口である『三人で東大に行く』の件にはやはり納得はしていなかったのだが……
 まぁ、それも当然だろう。
 しのぶは他の女性陣同様、彼を応援し続けてきた。その彼が三浪した時、彼女は彼の身になって泣いたものである。
 だが、それが“おまじない”とやらの所為だとすると……『三人じゃなかったから』等という下らない理由だとしたら……それは許されざる事なのだから。
 彼の努力を無にするモノがあったというのだから。

 ともあれ、そんな無気力からは脱出したしのぶを見、内心胸を撫で下ろしつつキツネは話を続ける。

 「せやから、二人の間に入ろうとしたら、その“まじない”とやらに邪魔されて上手くいかん言うんや。
  実際、けーたろをデートに誘うたり、キスしようとしたりしたら全部失敗しよるやろ?」

 以前、素子は景太郎にキスをした事があるが、それは妖刀ひなの一件において隙作る為の行為であるし、間を割ろうとしての行為ではない。だからノーカンなのかもしれない。
 それでもそんな事を二人が知る訳も無く、思い当たる事がある しのぶはこくこくと頷いていた。
 そして、ばらした事に気付いて真っ赤になる。
 何時ものしのぶの行動が戻ってきたようだ。

 鼻先で苦笑しつつ、キツネは話を続けた。

 「そん代わり、その後は何でか事故でできてもーたりする。多分、お互いに意図的でないからやろな」
 「はぁ…」

 因みに、しのぶのファーストキスの相手は温泉ガメのたまだったりする。
 その事が頭をかすめてちょっとゲンナリ。

 むつみは唯一景太郎に意識的なキスが出来る女だ。
 それはキスが癖である事と、約束の少女の一人だからでは? と素子は言っていた。
 無論、景太郎にとって、なるにとって、むつみにとっての幸せの定義は違うだろうが、
 幸せにしようとする、結ばせようとするチカラは同じ“まじない”を同時に組んでいたとしたら平等に掛かってくると納得できる。
 だがやはりそれの基点はあの三人の中で、とりわけ景太郎となるの比率が大きいと思われるのだ。

 「つまり、只でさえ想い合うとんのに、おまじないの力が効いとるさかい、ウチらは間には入れんちゅー事なんやな」
 「そ、そんな……」




 「……た、確かに、いくら夜を明かしていないとは言っても“あの”別館の魔力が掛かっていた私達が結ばれていないのは……」

 “先に組まれた”ものが障害となったとすれば納得も行く。
 数千件の男女(同性含む)を結び付けた魔力は伊達では無い筈だ。それを打ち破れたとすれば、“まじない”の力と“夜を明かしていない”という相乗効果があったとしか考えられない。
 
 しかし、この“まじない”も完璧では無い。

 二人の仲を裂こうとせず、単に景太郎という“枠組み”に入るのであれば今度は件の“まじない”が なるに見つからないように働く。
 見つかれば二人の中は<おしまい>だからだ。

 現に素子は“なるに見つかりやすそうな場所”で何度も景太郎と行為を行っている。にも拘らず一度もばれたりしてない。
 それどころか近寄って来ていても何故かUターンする事もある。
 それにここのところはキツネが加わり、三人で行う事もしばしば。キツネは素子より声が大きく、更に余韻までも大きく長い。
 だが、なるは全く気付いた様子が無いし、景太郎も瞬く間にこの異様な関係に慣れていった。

 これらの事から素子は自分の仮説の確信を深めていたのである。

 「初めは核を捜して破壊する事を考えた。だが、それも難しい。
  ちゃんとした呪式ならともかく、十数年にも及ぶ年月によって土地と一体化している“まじない”を捜すのは無理に等しい。
  だから私は、私達は……」
 「お兄ちゃんの“幸せの枠”に入るという手段に出た……?」
 「ああ……」




 「そこで質問や。
  しのぶはどないする?」
 「え……?」




 「“浦島先輩”を自分のモノにする事はほぼ不可能だ。
  仮に成瀬川先輩から奪い取れたとしても、それは彼女を傷付け、ひいては浦島先輩の心を傷つける。
  彼は優しいから、絶対に自分が悪いと落ち込んで行くだろう。
  成瀬川先輩は浦島先輩に依存し切っているから彼と一緒にいなければ捨て鉢になるやもしれん。
  それを見て更に落ち込む事は明白だしな。
  かと言って……」
 「お兄ちゃんを諦める事はできない……」

 可奈子の言葉に素子は頷く。




 「せやな。けーたろがおらん言うだけでウチらは無気力の極み。
  帰ってこんと聞いただけで絶望すら感じてもたしな……」
 「……はい……わ、私、先輩のいない生活なんて……」
 「ああ、言わんでええて。ウチかて同じや」

 自分の言葉で肩が震えて涙が滲む。
 そんな彼女をキツネは後から優しく抱き締めた。

 「キ、キツネさ…ん……?」

 年上の同寮者を見上げるその眼差しに光は無い。
 大げさかもしれないが絶望一歩手前。言うなれば艶やかさを失った黒藍色だ。

 だけど解かる。
 キツネだからこそ理解できる。
 何故ならその目は一週間前の自分の目なのだから。

 「ええか? しのぶ。よう聞きや?」




 「既に浦島先輩は私達にとって空気や水のように無くてはならないものになっている」

 その言葉を可奈子がこくりと頷いて同意する。
 だが、そこにある想いは誰よりも素子は理解できた。
 自分を闇に引きずり落としたのも彼への想いなのだから。




 「“今”のけーたろはどないしたってウチらのモンにはならへん。
  なったとしても、幸せにはならへん。
  何故なら、強引に割り込みかけたら、けーたろの『幸せ』にはなれへんさかいな。
  ヘタしたら皆とバラバラんなってまう。そしたらアウトや。
  皆と笑い合うんが宝モンと思とる けーたろが笑う未来はそこにはないんや」




 「だから、私達がとれる道は一つしかない……そうだろう? カナコ……」

 真っ直ぐに自分の眼を見つめている素子。

 そのひたむきさ、意志の強さは以前の……いや、可奈子が知っている素子のそれより力強く輝き、それでいて歪んでいた。
 しかしそれは理解できる。受け入れられる。
 何よりも、彼女も素子“ら”と想いを同じくする者……同志なのだから。




 針のような眼の光は正にキツネ。
 それも妖気を放つといわれる妖狐のそれだ。

 だが、しのぶは恐ろしくもなんとも無かった。
 彼女が恐れていたのは遠退いてゆく先輩の存在のみ。
 近寄れるなら、側にいられるなら、
 自分も愛してもらえるのら恐れるものなど何があろうか。

 堕ちようと穢れようと変わり果てようと何も問題は無い。
 “たったそれだけの事で”彼と居られるのに何を恐れろと?

 頭も心も“それ”を理解し、受け入れてしまう。
 それが力となり、しのぶの眼が光を取り戻して行く。

 ただ、その眼差しは以前同様に無垢のままのそれなのに、どこか鈍く歪んでいるようにも感じられる。

 しかし、それこそが しのぶの決意でもあった。

 「先輩を私のモノにするんじゃなく……私を……」




 「私を、お兄ちゃんの……」




「「浦島景太郎のモノにする」」




 離れられないのなら付いて行く。
 付いて行けないのなら、連れて行ってもらう。
 連れて行ってもらえないのなら、連れて行ってもらえるモノになる。

 これは堕落ではない。
 昇華なのだ。

 彼と共に在るモノへ。
 彼と共に歩む為のモノへ。

 それは愛する者の所有物という至福への道――




*************************************************************

 遅くなってしまいました。Pixyでございます。
 実は難産でした。ええかなり。
 書いても書いても納得できず、全文打ち直すこと五回ですよ? ハイ。
 可奈子が良い目にあったから、次はしのぶが…と思いましたけど、そーするとしのぶに毒が無さ過ぎます。
 よってこんな風に壊してしまいました。しのぶちゃんファンの方、ゴメンナサイ。

 それと、“可奈子”の誤字、最悪でした。皆様、ホント~~~に申し訳ありませんっ!!

 掲示板に書こうとしましたけど、クッキーっナニ? という壁にぶち当たり断念しました。調べる暇があったらちゃんと直さんかいっ!! という天の啓示を受けて先に修正したのです。この場を借りてもう一度謝罪します。スミマセンでした。

 エロさが足りないのは私のテンションゆえでしょうが、次はかまします。ご勘弁ください。

 それではまた……






[2319] Re[6]:Dotage ~妄愛 <壱拾伍>~  (ラブひな)
Name: Pixy◆f71a799c
Date: 2007/05/12 22:37


 「じ、じゃあ、しのぶちゃんは大丈夫なんですね?!」
 「しつこいって。いける大丈夫言うたやろ?」

 留年していた事もあって、かなり真面目に大学に通い、講義を受けている景太郎。
 景太郎は午後の講義は入れてなかったし、なるは今日の午後の講義は絶対に外せなかった。よって駆け足で戻ってきた訳である。

 そう―――
 しのぶが心配で、本当に駅からここまで全力で駆けて来たのだ。

 無論、言うまでもなく初夏の街を思いっきり走ったのであるから全身汗まみれ。
 シャツから滴り落ちるほど汗だくだ。
 これが“そこらの女”であれば、『汗臭い』だの、『シャワーでも浴びてきてよ!』とか言うだろうが、玄関で景太郎を迎えたのは今や身も心も景太郎のものとなっているキツネである。
 只でさえ彼女はお人好しで知られており、姐御肌の彼女は面倒見も良いのだ。だから他人を気遣って一生懸命な景太郎に対してそんな“くだらない意見”など塵程も思い浮かばない。
 せいぜい、

 「ほれほれ。しのぶが心配やて焦ってもんたんやろ? 汗落として落ち着いたらええわ」

 と気遣うくらい。
 無論、本心だ。
 今更景太郎の汗を“臭い”等と感じる訳が無いし、彼に対して嫌悪を感じる感覚器などキツネの身体には存在していない。尤も、その芳香に酔い痴れたりするかもしれないが。

 「あ、はぁ……
  そ、それでキツネさん。しのぶちゃんの調子が悪かった理由って何なんですか?」

 『アンタや』

 とは口には出さず、そのセリフを飲み込む。
 胸の内を吐露し、キツネによって方向を指針されたしのぶは今、昨夜からの疲労も溜まって眠りについている。
 言葉の使い方としてはどうかと思われるが、腑に落ちた…とでも言おうか、しのぶの胸の内はキツネの言葉によってストンと治まっていたのである。

 自分が求めていた“位置”。
 そして欲望。
 望、願い……形に、言葉に出来なかった様々なモノが図らずもキツネの言葉によって存在していなかったピースを手に入れるように、その全てが しのぶの欠けていた部分にピタリと収まったのである。
 それは快く眠りにつけるだろう。

 ……尤も、果てし無く倫理から程遠いカタチであるが……

 「ま、しのぶも女やさかいな。イロイロあるんや。
  何も聞かんいうんもエチケットなんやで?」
 「は、はぁ……」

 何となくはぐらかされた様な気がしないでもないが、一応は納得の形を見せる景太郎。
 かしげた首の角度が元に戻せない気がしないでもないが、それでもキツネに矛を向けるつもりも理由も謂われも無いので口には出さない。

 無論、その理由はしのぶを心配しての事。
 そんなバカで優しい景太郎に苦笑は浮かぶものの、苛立ちなんぞ欠片も無い。
 キツネは景太郎の顔をぐいと引き寄せ、甘噛みし慣れて感触を知り尽くしている彼のその耳元で、

 「素子はゼミやし、ウチは午後から野暮用あんねん。
  せやから けーたろの相手でけへんさかい、堪忍な」

 と呟いた。
 景太郎も少しだけ残念そうな顔をしたものの、彼女らを性行為中以外で束縛する気は皆無なのでさらりと同意する。
 性欲と精力が異様に強まっている景太郎に申し訳無いとは思うが、“これ”もしのぶの為と、キツネは務めて笑顔を見せ、

 「ほな、ウチは出かけるさかい、しのぶの事頼むな?
  別に熱は無いさかい、濡れタオルとかは用事無いさかい、静かに寝さしたったらええだけや。
  んでも夕飯くらいは聞いたってや?」
 「あ、はい」

 と身体を離しかかる。
 その際、

 「ウチらがおらんいうて、しのぶに手ぇ出したらあかんで?
  まぁ、しのぶと同意の上やったら何してもかめへんけどな」

 と呟く事も忘れない。

 「キ、キツネさぁ~ん!!」
 「あははは……ほなな~~」

 情け無い景太郎の嘆きを背中に受け、キツネは軽やかに青葉の広がる外へと駆けて行く。
 ノースリーブにスラックスというラフなスタイルで……
 何時もバイトに行く時はもうちょっとシャレっ気があるのだからとてもバイトに行く格好とは思えない。が、キツネがそう言うのだからそうなんだろうと景太郎は納得し、石段を降りてゆく彼女に背を向けて「ただいま~」と建物に入っていった。

 キツネの言葉。
 しのぶの事をあえて意識させるような言葉を頭に染み込ませたまま……


 『後はしのぶの度胸やな……上手い事やるんやで? しのぶ』

 タシタシと石段で踏み下りる音を響かせ、ひなた荘を後にするキツネ。
 素子の話は本当ではあるが、自分の話は嘘八百だったりする。

 二人ともいないので景太郎は発散できない。
 だが、意識はしていても しのぶには“まだ”手を出すまい。
 よって悶々と煩悩を高めてゆくのみ。

 後は……
 後のアクションは夜だ。

 実際、景太郎に説明した通り、しのぶは単に眠っているだけなのだ。
 夕べからの気疲れもあった しのぶは、今ぐっすりと眠っている。
 それでも景太郎に反応すれば直様眼を覚ますだろう。若いんだし、三時間も熟睡すれば回復する筈だし、仮に寝ている間に景太郎に悪戯されたとしても彼女は本望だろうし。

 だからキツネにとっての現在の問題は……

 「さ~~てと……夜までどないしょうかなぁ……」

 時計をチラリと見る。
 夕飯まで五時間はあるのだ。

 差し当たっての問題は、この長い時間を何処でどう潰すか……であった。




 ひなた荘の一室。
 同じ本館の南にありながら、あえて景太郎のいる管理人室から離れた場所が可奈子の部屋である。
 無論、可奈子としては義兄の部屋の隣に住まうキツネを叩き出してそこに陣取る事も出来たのであるが、そんな事をすれば間違いなく景太郎に嫌われてしまう。よって自分から進んではなれた場所をとったのだ。

 尤も、皆から離れた場所であるからして声が届きにくく、仮に兄が夜這いに来たとしても都合がよいだろうという妄想もそこはかとあったりもする。

 確かに以前であれば儚い夢で終わっていたであろう。

 ――そう、以前なら……

 ごりごりと乳鉢で乾燥させた葉を丁寧に潰し、クリーム色の粉と混ぜる。
 混ぜ合わせた物を今度はドロリとした液体と混ぜて、ミニコンロの小さな火で焙り始めた。

 その際、換気も忘れない。
 きちんとマスクを着け、業務用のバキュームエアコンで空気を吸出して外に排気。当然ながら風向きを計算して“下”に流れないように気を使う。別にその気化した物にこれといった効能は無いが念の為。

 量が少ない為、直に水分が飛ぶ。しゅわしゅわとあぶくを立てて水気が去った後には茶色の物体が少量。

 使い捨てのビニール手袋を二重に嵌め、それを摘んでみると茶色の塊はあっさりと粉になった。
 指先で丁寧に擦って細かい粉にし、これまた丁寧に油紙に包む。

 その作業を終えると可奈子は頭の上げ、満足気な笑みを浮かべていた。

 ついに……準備が整ったのである。

 「お兄ちゃん……」

 ほぅ…とマスクの下で桃色の吐息を吐きつつ、窓を開け、空気を入れ替えつつバキュームの電源を落す。
 何もしていなかった風を装う為、きちんと後片付けをし、今まで熱心に見つめていた古い書物……『別館八景 夜伽拵エノ書』も丁寧に防虫剤を入れて箱にしまう。

 離れ別館に泊まった者の中には当然ながら完全に納得して泊まった客以外の者もいる。何せ政略結婚にも使われていたくらいなのだから。
 だから双方を納得ずくにして泊まらせる薬の処方もちゃんと残っていたりするのだ。

 可奈子はそれをここの地下倉庫で見つけ出していたのである。

 今作った薬は女には全く効果は無いが、男には効果絶大だ。下手をすると明日は足腰がたたなくなるやも知れない。
 恐ろしい事に、そんな薬の材料はここの裏山で取れる薬草だけで全てが賄えてしまった。
 一見したところ自生している草木であるが、下手をすればそう見えるように薬草を植えたのかもしれない。
 一体、浦島家は過去に何を行っていたのやら……だ。

 過去、京都を火の海にし、神鳴流を壊滅寸前にまで追い込んだ妖刀“ひな”等が封印もされずにしまわれていたくらいなのだから碌でもない事をしていた可能性が高い。

 尤も、可奈子にとってそんな過去の業はありがたいだけ。
 今も残っているであろう、兄の中にあるインセストに対する禁忌を打ち壊す術が手に入ったのであるから感謝しても足りないくらいだ。

 兄に抱かれる。
 女にしてもらえる。
 オンナとして扱ってもらえる。

 その妄念が心を縛り、倫理を熔かし、肉欲を煮え滾らせる。

 “お兄ちゃんとずっと一緒にいたい”
 その少女らしい念もちゃんと残っている。彼に対する愛情が消える訳ではないのだから。

 ただそこに、
 “兄と”セックスしたい。
 “義兄と”まぐわいたい。
 “浦島景太郎に”孕まされたい。
 という情欲が添付されている“だけ”なのだから。

 離れの部屋の中、初夏の陽光を浴びながら微笑む少女。
 胸に抱いた紙の包みは幸せの切符だ。

 頬を染め、甘い吐息を漏らす様は恋する少女のそれである。

 ―――が、彼女がやろうとしている事と、獣欲に染まった目はオンナのそれであった。




―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
                           -盲・愛-
                            File:壱拾伍

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 もう少しすれば夕食の用意をしなければならないだろうという時間になった。
 確かにもう四時だ。買出しもあろうし、下ごしらえもあろう。
 作り始めるのが五時としても、用意は早目がよい。

 そう考えた景太郎は、今さっきまで読んでいた亀神ナムサン・サポェ(古代カメ文明における神様)関連の本をパタンと閉じ、すやすやと眠っていると思われる しのぶの部屋へと足を運んでいた。

 無論、病み上がりであろう少女に食事の用意をさせるほど落ちぶれてはいない。
 しのぶはこの寮に来て最初に慕ってくれた少女だ。
 彼女の存在によってどれだけ癒されてきたか解かったものではないのだ。

 それだけでもないが、(可奈子は兎も角として)妹のように可愛いと思っている しのぶの体調の悪さに気付けなかった自分の不甲斐無さに頭をシバきまくって反省し、彼女の様子を窺ってからメニューを決めようとしたのである。
 もちろん彼女の体調に合わせた栄養にする為だ。
 何せ彼は浦島景太郎。東大受験に全く関係の無いスキルはやたらと豊富なのが特長。料理も女性である なるよりかなり早く上達しているし。

 尤も、景太郎の気遣いは何時も立派なのだが空回りが常である。
 気遣えば気遣うほど、どこか致命的なミスに発展するのは彼の業の深さか運の無さか。
 或いはその事に気付けない彼の愚かさか。

 トントンと控えめにノック。
 そして返事は無い。
 そ~…っと戸を開けて中を覗く。

 ひなた荘の其々の部屋は、元々が旅館の客間の造りをしており大体が二部屋続きだ。
 皆それを好きなようにコーディネイトして使っている。
 だから大体は入って直ぐを居間に、奥の一間を寝室としているのだ。

 上下で繋がったままの景太郎となるの部屋は兎も角、しのぶを始め他の寮生の部屋は当然ながら奥の間が寝室。だから覗いただけでは見えないのだ。

 仕方なく景太郎は小声で一言断りを入れてから足を忍ばせて部屋に入り、奥へと向う。

 しのぶの病状を看るという大義名分はあるが、やっている事は夜這いと変わらない。その事で今まで散々殴られているというのに未だ理解できていないところがとても彼らしい。
 ともあれ、布団の側によって行き、その寝顔を覗き込むと、彼女はすうすうと安らかな寝息を立てて眠っていた。

 彼はホッと胸を撫で下ろした。
 大変な病気だったらどうしようかと思っていたのだから当然の安堵と言えよう。
 キツネのセリフを今一つ信じていないのも彼らしいのだが、彼女の能天気さは身に沁みている。だからつい気にしてしまうのは仕方の無いことなのかもしれない。

 尤も、それだけ他人を心配している景太郎だからこそ寮の皆も心を許しているのだが。

 「う…ん……」

 と可愛い声を出して寝返りをうった。小さな肩が布団からはみ出る。

 あ~あ……しのぶちゃん。高校生になってもやっぱりまだ子供なんだなぁ……

 等とちょっと失礼な事を考えながら布団を掛けてあげようと手を伸ばし、

 「ん…?」

 と、ある事に気が付いて手が止まる。
 布団から出ているのはしのぶの白い肩。
 そう。パジャマ等では無く、地肌が出ているのだ。

 景太郎の鼓動が一瞬高まった。

 頭を振って冷静さを取り戻そうとするも、最近は素子とキツネの二人を同時に相手にしても精力が衰えない彼だ。
 頭に浮かんだ妄想が情欲に点火しようとしている。

 『マズイ…っ!!!』

 二人きりの部屋。
 邪魔者は…まだ帰っていない。

 しのぶの可愛い匂いが篭る密室。

 そして、

 『ウチらがおらんいうて、しのぶに手ぇ出したらあかんで?
  まぁ、しのぶと同意の上やったら何してもかめへんけどな』


 キツネのセリフが頭に響いてきた。

 『しのぶと同意の上やったら何してもかめへんけどな』


 つまり、しのぶから誘ってきたというのなら自分は何をしてもいい。

 どくんっ、どくんっ、どくんっ


 心臓の音がやけに頭に響く。
 頭だけでは無く、股間にも届く。
 そして鼓動にあわせるかのように股間が膨らんでゆく。

 ギリギリと、
 ぎちぎちと、
 脈動する肉柱が押し込んであるジーンズの中で苦しんでいる。

 ここから出せ、と喚いている。

 だが、それでも景太郎はそれに逆らった。

 必死になってそれに耐えた。

 耐える理由も思いつかなくなっていたのだが、それでもまだ耐えていた。

 震える手を伸ばし、理性という最後の糸にしがみ付きつつ、しのぶの布団を掛けなおそうとした。
 その時、

 「く……っっっっっ」

 捲りあげてしまった布団の陰に、一瞬、薄桃色の何かが見えた。
 素子のともキツネのものとも違うそれが……

 ゆっくりと、
 ゆっくりと布団を下げてしまう。

 恐らく景太郎も何をしているのか理解してはおるまい。
 ただ、本能の命ずるまま、
 ヤりたいという欲求のまま、手を下げてゆくのだろう。

 両の胸がさらけ出される。
 事故で見てしまった時と違い、
 間近で、それも自主的に見せてもらっているその柔らかそうな胸は、大きさでは確かに素子らに劣るものの、肌理の細かさでは勝っていた。
 年齢的な差もあるだろうが、元々しのぶの下地はかなり良いのである。

 景太郎にしても、いやこの寮に住まう誰もが しのぶの事を可愛いと思っているのは事実だ。
 単にしのぶがコンプレックスゆえ自分に自信を持っていないだけなのである。

 そんな美少女が景太郎の前に無防備に肌を曝している。

 『しのぶと同意の上やったら何してもかめへんけどな』


 キツネの声が呪詛のように何度も頭に浮かぶ。

 幾らなんでも無防備過ぎる しのぶに対し、景太郎の弱々しい理性がそんなに持つ訳も無い。

 無自覚のまま、少女の身を隠している布団を剥いで行く。

 細い腹、縦長の臍、と目に入るもの全てが景太郎を誘っているかのよう。

 その全てが完全に無警戒に男に前に曝されているのだから堪ったものではない。
 実際、その手で触れていないのがおかしいほど。

 男風呂で流した汗は再排出され、ポタポタと滴り落ちて しのぶの布団を濡らしてゆく。
 少女特有の甘ったるい香りに、飢えた雄の臭いが混ざりつつある。

 我慢しているのか、無理をしているのか、ぷるぷる震える景太郎の腕。

 「う……」

 故意か偶然か、その腕が更に少しだけ上げられた時、彼は喉奥から呻くような声を出してしまった。

 しのぶの下半身を覆うものが無かったのである。
 この娘は全裸で眠っていたのだ。

 白い肌にそこだけ陰りが見える。
 それでいてその陰りはうすく、なだらかな丘に何となく生えている程度だ。
 キツネよりも、いや素子よりも更にうすい、少女らしいそこ。

 まだ何物にも汚されていない、乙女のそこだ。

 景太郎の息がはっきりと乱れを見せている。
 固いデニム地を押し上げているのは鉄の様な肉の柱。

 突き立てろ、突き立てろ、征服しろ、蹂躙しろ、と喚き続けている雄の器官だ。

 しのぶという一匹の牝を前に、景太郎という名の雄は解き放たれようとしていた。

 『しのぶと同意の上やったら何してもかめへんけどな』


 再度響くキツネの声。

 男がいる寮内で、
 何時に部屋に彼が訪れるかもしれない寮内で、全裸で眠る少女……

 これは誘いだ。
 誘っているんだ。
 つまり、オレを………


 かなり得手勝手な妄想であるが、事実間違っていない。

 汗をボタボタ落す景太郎はしのぶの身体を嘗め回すように見つめている。
 そんな彼の横顔を、薄く瞼を開けたしのぶが見つめていたのであるが、彼は気付いてはいなかった。

 しのぶが目覚めたのはほんの数秒前だ。
 景太郎の滴り落ちる汗が胸と腹を打ち、その落ちて冷えた汗の衝撃によって目を覚まされたのである。
 時間にして丁度三時間。短い眠りではあったが、今までには無かった程の深く安らいだ眠りによって体調は改善されていた。
 その素晴らしい眠りからの目覚めは、景太郎による視姦というシチュエーション。
 “受け入れれば”こんなにも素晴らしい世界が広がっていたのかと感動すらしていた。

 自分の身体を……肉体からだを見られている……

 以前なら叫んだり、隠したり、殴り飛ばしたり逃げたりしたであろうが、今のしのぶは違っていた。
 景太郎の熱い視線を全身に浴び、まじまじと股間を見つめられているというのに、悦びしか湧いてこない。

 無論、恥ずかしくない訳ではない。
 相変わらず見られる事は恥ずかしいのであるが、その恥ずかしさが“良い”のである。

 ふわさ…としのぶに掛けられていた夏布団が横に置かれた。

 しのぶの裸身は障子に遮られてはいるが初夏の陽光に映えている。
 全体的に華奢で、どちらかと言えば成長未熟なのかもしれないが、色気が無い訳ではない。

 それにこういう娘は将来化ける。

 その開拓を担えるのが自分なのだと思い知らされている景太郎は既に正常な判断を失っていた。

 しのぶはしのぶで、異様なくらい興奮しており、景太郎の吐息を肌で感じる程に敏感さを増している。
 それは全身の感覚で持って彼を感じようとしている証拠。
 素子の様に修業をしている訳でも無いのに、しのぶは景太郎の気配を完全に見て取っているのだ。

 近寄ってくる気配。
 それも彼の顔。
 眼をはっきりと開けられないのは残念であるが、目隠しされて犯されるようなもの。しのぶはその情況に胸をときめかせていた。

 はぁ…と吐いた景太郎の息がしのぶの左の乳首を直撃する。
 びくんっと少女の身体が反応するが景太郎は気付けていない。

 薄く小さい乳輪の中にぺこんと潜っている小さな蕾。
 やや陥没気味のそこは しのぶは結構気にしていた。

 対して景太郎がそんな物を気にする訳も無く、乳輪ごと胸をぱくりと口に含んだ。

 「……んっ!!」

 ついに声を洩らしてしまう。

 自分は眠っている。そう眠っている。だから何も抵抗できない。されたい放題。
 犯されても穢されても滅茶苦茶に汚されても文句は言えない。
 だって自分は眠っているのだから。
 そう暗示をかけ続けていようと、真なる快感の前には紙切れに等しい。

 れろれろと穿る様に乳首をいたぶる景太郎の舌に身体を反らせて、痙攣する。
 それでも全く気付いていないのか、気にしていないのか、景太郎の嬲りは続く。

 まだ育ち切っていない胸をきゅっと優しく掴み、乳輪の周囲を盛り上がらせる。
 目立った乳輪に軽く指を掛けて、こりこりと乳首を掻く様に撫でていたぶった。

 「はぁはぁはぁ……んんん……っっ」

 涎が垂れ、喘ぎも漏れるがそれでも寝たフリは続けられる。
 しのぶは眼を開けぬままだ。人生初めての性行為を感覚のみで感じ取ろうとしているのだろうか。

 涙すら浮かぶが苦しみや嫌悪ではない。
 初めての性感に、余りの快楽に身体が付いて来れないのだ。

 撫で、摘み、弄り、いたぶり続けると、ついに乳首が顔を見せ始めた。
 それに気付いた彼は、ふにふにと胸を揉みつつ乳首を再度口に含み、舌全体でもって顔を覗かせた乳首を舐めいたぶる。

 「あひ…っっ ンきゅう…っっ んんん……」

 思わず指を噛んで喘ぎを耐えるしのぶ。
 ほっそりとした足は自然に開き、零れ落ちた愛液が尻を這い、じわりと染みを敷布団に広げ始めていた。

 やがて景太郎の口の中、おずおずと乳首は立ち上がった。
 それは初めての性的な自己主張。
 気持ちのよさで乳首を立てるという女の反射だ。

 だが、彼はそれだけでは許せなかったのだろう。

 たった乳首に歯を立てたのだ。

 「んひぃ……っっ!!」

 甘噛みではあるが刺激としては強すぎる。
 しのぶの声は、痛みすら思わせるものだった。
 実際には痛みでは無いのだが、異性によるペッティングなど経験が無い上、胸を使った自慰行為も皆無のしのぶだ。
 胸の感度の自然上昇は乳腺の発達の後から来るケースが多い。性感が未発達なのだからしょうがないだろう。

 きゅ、きゆっと引っ張られた乳首は乳輪ごと前に出っ張り、埋もれていたそれは完全に引っ張り出されてしまった。

 ぴんぴんに立っている乳首。
 それは昨日までの子供らしさとの完全な決別でもある。

 こっそりと薄目をあけ、突き出た左の乳首を眺める しのぶ。

 “こう”なったのは、“こう”してもらえたのは、“こう”してくれたのは愛する先輩の“お陰”。
 感激と感謝の気持ちが入り混じり、愛しい男によって変えられてゆくという、被虐的な快感に酔った。

 作業に慣れたのか、気を良くしたのか、景太郎は今度は右の乳首に取り掛かった。

 ちゅば…
 ぢゅるるるぅ…
 ぢゅ、ぢゅっ、ぢゅちゅぅ…っ


 「ひゃあぁ……っ!! あ、あっ、あ、ひぃンっ!!」

 こちらは歯を立てず、ただ吸うだけ。
 それでも啜りあげる音や舐められる刺激はただ事ではない。しのぶは身を反らせて喘ぎに喘ぐ。
 思い切りがよかったのが幸いしたか、右の乳首は左程の時間も掛からずに引きずり出されてしまった。

 「あ…っ あっ、あっ、あっ、んぁあああ~~……っっ」

 ぴんっと突き出た両の乳首。
 じぃんじぃんと先から胸全体に痺れが広がり、敏感になった乳首は空気の刺激だけで彼女を狂わせてしまう。
 ピクリとでも動けばそれだけで痺れが走る為、ただ身体を引き攣らせて喘ぐ事しかできない しのぶ。

 だが、現在の景太郎がその程度て許してくれる訳が無い。

 折角の初お目見えなのだ。存分に持成すのが礼儀であろう。

 右手の手できゅっきゅっ乳首を弄り、片方は口で嬲る。
 存分に吸い、舌でレロレロと転がし、唇で挟んで引っ張り、乳房ごと口に含んで舐めていたぶり弄って嬲る。

 「あっ、あっ、ああっ、あンっ、ひ、ンひぃっ、
  あ…ふ?! ひ、やぁんっ!! ああああああっっっっ!!」

 ぞくぞくっと腰から強い痺れが駆け上がり、肩甲骨の位置で弾ける。
 脇や胸に達したそれは、乳首で衝突し、また背中から腰へと還り、下半身の…腹の奥でまた弾けた。

 「っ…はぁっ はひぃいいっ!! あ、ひぃやぁあっ あぁああああああ~~~~………っっ!!!」

 ビクッ!! ビクッビク……


 しのぶは声を上げ、若鮎の様に身を反らせて叫んでしまった。

 ぷしゅ…っ


 絶頂と同時に勢い良く失禁してしまい、布団に染みを大きく広げてゆく。
 正確に言えば、行為の間中ずっと愛液と小さな失禁を知り返していたのであるが。
 その事が今のしのぶの快楽の大きさを物語っていた。

 絶頂。
 そう、初絶頂だった。

 自慰行為によっての絶頂など、今のに比べれば子供騙しもいいところ。
 男によって与えられる。
 好いたらしい男性によって与えられる愛撫はここまで違うのかと、しのぶは身体で持って理解させられていた。

 全身の力が抜け切り、指一本動かすのさえ億劫だ。
 はぁはぁと息を吐くも、胸を上下させるその振動が乳首に伝わり、じぃんじぃんと痺れを齎せるので余韻が中々抜けてくれない。
 それでも、

 『よ……良かった……凄く気持ち良かった……あぁ…先輩ぃ……』

 涙すら浮かべて余韻に浸っている。
 やや蟹股気味なのは、下手に足を閉じていれば太股を擦り合わせて自慰を始める切っ掛けになってしまいそうだから。尤も、無意識に広げたものであろうが。

 外見的な変化は殆ど見られないが、それでも喘ぐその様は昨日までの しのぶという“少女”の一部が確実に変わっている事を物語っていた。

 ぐぐ……


 「……え?」

 そんなしのぶの太股が大きく割られた。

 他に誰がいようか。景太郎である。
 景太郎がしのぶの股に身体を割り込ませてきたのだ。

 何時の間に脱いだのか、彼の下半身は剥き出しで、そそり立っている黒々とした肉凶器が普段の彼の印象と違い過ぎで異彩を放っている。
 無論、何をしようとしているか等、考えるまでも無い。

 『ああ……先輩……先輩……私を犯してくれるんですね……?』

 しのぶは眼を潤ませて感激していた。
 キツネの妖しい説得や、己でかけてしまった自己暗示。そして今の景太郎の行為によって組み変えられている思考は、既に奉仕者のそれ。
 彼に対する愛情にプラスし、彼に対する奉仕精神が天井知らずに高まっていた。

 自分の身体を愛する男に捧げられるほまれ
 犯してもらえる名誉。
 それが彼女の心を濁った悦びに満たしているのだ。

 他ならぬ景太郎の手によって絶頂を迎え、脱力して綻んでいるヴァギナ。
 肌色と変わらない色合いだった秘唇も紅くなり、白っぽい涎をこぼして景太郎の来訪を待ち望んでいる。

 くち…


 「あ……♪」

 粘膜が触れ合った。


 そして、


      肉が、




          割られる。


 『ああ……っっ
  あああああ……せ、先輩、来てっ、
  く、ください……先輩の、先輩のを……っっ』

 ついにしのぶは眼を開けた。
 彼女の腰は景太郎の腕によって抱え上げられ、今正にペニスを突き込まれようとしている。

 ゆるゆると頭を挙げ、その濡れた眼差しを粘膜同士が結び付こうとしている接合部分に注いだ。

 見たい……
 見たいのだ。
 是非に見たいのだ。

 自分が景太郎の肉柱によって貫かれる瞬間を。
 膣に押し込まれ、処女膜が裂け、ヴァギナが血を吐いてオンナになる瞬間を。
 生殖器を入れられるという生々しいその時を。

 ぐぢゅ……


 亀頭が潜り込み始める。
 もう直、膜が破られる。

 否っっ!! 処女膜を“破ってもらえる”

 その栄誉が、今、正に………








「お~~い、けーたろ~~
  どこにおんのや~~~~~?
  そろそろメシの仕度せんでええんか~~~?」


 ガタンッ!!

 ひっくり返る二人。
 入りかかっていたペニスはぬるりと抜け、ベトベトのカウパーをしのぶの下腹部に塗りたくるだけに留まってしまった。

 「わ、わわわわわ……っっ
  い、今、今行きま~すっっっ!!

 その声で理性を取り戻した景太郎は、ぎちぎちにおっ立ったままのペニスを無理矢理ジーンズに押し込んで慌ててしのぶの部屋から飛び出していった。

 後に残されたのは、布団を愛液と尿でぐっしょりと濡らし、両の乳首を立てたままの全裸のしのぶ……

 「そ……」

 捨て置かれた…と言っても過言ではあるまい。

 「そんな~~~~っ」


 汚れた布団の上、女の子座りでへたり込んで叫ぶ様は滑稽以外の何者でもなかった。

 「残念やったな? しのぶ」

 と、部屋の戸の影からからかうような、それでいて同情するような不思議な表情をした見知った女性が……
 言うまでも無く、今景太郎に声を投げたキツネである。

 「キ゛ツ゛ネ゛さ゛~~ん゛……」


 恨みがましい……というより、ばっちりと恨んでいる声でしのぶはキツネを睨んだ。
 その激しい眼には流石のキツネも冷や汗を隠せない。
 考えてみれば しのぶはあまり表には出ないが、なると同等の激情さを持つ少女なのだ。
 後一歩というところでお預けともなれば、そりゃあ怒り心頭に達するだろう。

 仕方ないなぁ……内心で溜息を吐き、正論で諌める事にした。

 「あんなぁ、しのぶ……昼にも言うたやろ?
  “呷る”だけで本番は無しやて。
  最初は“ここ”やのうて、“あそこ”やて」
 「う~~……でもぉ……」

 全裸で膨れるしのぶには笑えるものがあるが、一応の釘を刺しておく。
 尤も、あの場合ならば自分とて彼を止められはすまい。
 人の事は言えないのであるが、それを黙って話を続ける。

 「世ン中に絶対やいうんは無いんや。せやから念には念を入れんと……
  しのぶかて、けーたろとずっと一緒におりたいんやろ?」
 「………はい」

 頷く仕種は弱々しいが、頭を縦に振る意味はかなり強く、重い。
 自分は彼と共に行く。
 何時までも何処までも……そう決めたのだから。

 「せやったら我慢せんとな。
  ま、一回かましたら後は大体いける思うで? アカンのやったら直に なるに見つかるさかいな」
 「そ、そうですよね……?」
 「せや。ウチかて二回くらいけーたろとデートしたさかいな~♪」
 「な……っっ??!!
  ホ、ホントですか??!!!」
 「ホンマホンマ。その後、けーたろ誘うて公園行ってな。そこの茂みン中で……」
 「え? ええええ~~??!!

 彼女らは語り合う。
 愛しい男との情事を。激しい交わりを。そんな未来を。

 そして少女は耐えて待つ。
 この夜の情事を。この夜の陵辱を。
 そして彼に行えるであろう、奉仕を……

 真なる絶頂を知った。
 天に堕ちる。天へと堕落するという矛盾した感覚を。

 そしてその夜、少女はまた、堕落という昇華を知る―――




 『お兄ちゃん……私も、何処までも付いて行きますから……』

 手に小袋を握り締めた可奈子が見つめる先、何やら焦りつつ夕食の準備をしている景太郎が。
 彼女はその計画の為の一歩を踏み出した。

 「お兄ちゃん。お手伝いします」


 そしてこの少女も昇華を待つ。


 深く、暗く、粘つく夜は目の前に―――




*************************************************************

 どうも、Pixyでございます。

 う~~~ん……しのぶっちは難しいですね……
 特に文章にした時の難しさったら…もう、タイヘンっス。

 尚且つ、+可奈子ですから……トホ~~っ

 でも、今私が抱えている問題はサラだったりします。

 サラをラストにするか、カオラをラストにするかで大問題。
 っていうか、筋道が変わってしまったりします。なんてこったい。
 
 最後の手段として、ダイス振って決めようかな……(←優柔不断)

 兎も角、次回に続きます。
 ではまた……






[2319] Re[7]:Dotage ~妄愛 <壱拾陸>~  (ラブひな)
Name: Pixy◆e0698e6e
Date: 2007/05/16 15:40


 ぽかんと呑気に天に浮かぶ月を眺めながら、少女は愛しい男性の事を想っていた。

 満月かな? と見てしまうほど円に近いが、まだそうではない。ギリギリで真ん丸では無い歪な月の形が今の自分の心の様で笑ってしまう。

 大好きであるし、愛しているし、ずっと一緒にいたい。
 だけどその為には歪んだ男女関係にならなければならない。
 一ヶ月くらい前の自分であれば、そうしろと言われれば真っ赤になって逃げただろうけど、今の自分は喜んでその中へと飛び込んでゆく。

 抱いてもらえる。
 女の子として、一人の女として接してくれる。
 夕方に身体を弄ってもらったのは夢では無いし、キツネの言う事には伝言も受けてもらえたらしい。
 自分を選らんでほしい…と思わないでもないが、『彼と一緒』というだけでは無く、『皆と一緒』の未来の方がずっと楽しいはずだ。

 だからこうやって彼を待っている今すら楽しくて堪らない。

 本館北を真正面に見据え、左手に池を眺めるこの場所……
 池に面している離れの真ん前。
 新館の上…広い物干し台の影になっているここならば邪魔は入りにくい。
 意外かもしれないが、皆の眼が届かない数少ない場所の一つなのだ。

 壁にもたれ、明るい月の光を眺めつつ溜息を一つ。
 胸に置いた手の下では、夕方に発達させられた乳首がぢんぢんと疼いている。

 元々、陥没気味であった少女の乳首は、彼によって引きずり出されて無理矢理大人のそれにされてしまっている。
 何故かあの後も元に戻らず尖ったままで、外的刺激に慣れていないそこは下着などに擦られて気持ちを萎えさせてくれないのだ。

 高校になって未だ75のそこはジュニアサイズ程度だった為、ラフな時には外していたのであるが、最早ブラの着用は必至。
 乳首に掛かる刺激が強過ぎて、ちゃんとカップに納めていなければ擦れて痛いし奇妙な感度か高まってしまう。

 尤も、今は外している。
 布地どころではない。もっと生々しいもので刺激を受けるのだから意味は無いだろうという判断からだ。

 無意識に太股を擦り合わせる。
 手の行き場が思いつかず、もどかしそうに合わせてしまう。

 イラついてはいないし、焦ってもいない。
 単に待ち遠しいだけ。
 まだかな? まだかな? と気ばかりが先行する。

 これから行おうとしている事は、年齢的な事や倫理的に言うならばかなり拙い。
 だが、そんな“くだらない理由”等はどうだっていいのだ。

 デートの様に待ち合わせ、初恋の人を想うそれと同じ雰囲気で彼を待つ。
 だが、その実は見た目からは想像もできない程淫蕩なもの。
 純潔を捧げる為の待ち合わせであり、その心根は牝奴隷のそれ。無論、根源にあるのは純粋な彼への想いなのだが、自己判断がそもそも歪みきってしまっている彼女は、奴隷身分=幸福であると心に焼き付けている節がある。
 思い込みの激しさでは寮内で一二を争う彼女。彼によって性的絶頂を与えられている今、彼女の歪んだ観念は真実として心が受け止めてしまっていたのであろう。

 さくさく…


 と、草を踏みしめる音が耳に入った。

 『き、来た……』

 心臓が跳ねた。
 汗によってうっすらと身体が湿り気を帯びる。
 股間の湿度が増加した。

 はぁ…と吐息の甘さと熱も上昇し、頬も赤くなってくる。

 『と、兎に角モチツケ…じゃない、落ち着け……』

 すぅ、はぁ、と深呼吸をし、焦りだした頭をどうにかする。
 部分的に成長したとはいえ、根源は変わっていないので結局は土壇場で焦る。そこらは昔のままなのだろう。

 何とか呼吸が整うと、少女は……前原しのぶは、満面の笑みを顔に浮かべて振り返った。

 「き、来てくれたんですね?! 先輩っ♪」






 「おや? しのぶさん?」


 ばたんっ


 見事、ひっくり返ってしまう しのぶ。

 別人。
 愛しの先輩と同じ姓を持つ少女にして、想い人でのライバル……

 「か、可奈子さん?! な、なんでここに?!」

 浦島可奈子その人であった。

 「む。失礼ですね。
  オーナーの一人である私がここに来てはいけなかったと?」

 明らかに不機嫌そうにそう返してくる可奈子。
 だが、その返事によってしのぶは違和感を持った。

 可奈子は良く言えばポーカーフェイス。悪く言えば表情筋が不器用な少女だ。
 表情を作る事はあっても、自然に豊かになる事は殆ど無い。
 今のしのぶの文句でさえ、さらりと返すのが常。
 確かに最近はしのぶの憧れの先輩のお陰(?)で表情はかなり豊かになってはいるが、それでも以前よりはマシと言う程度。
 無論、ゼロではないが、その働く理由は極少数域に限られているのだ。

 とすると……

 びきん…っとしのぶの頭に答がよぎった。

 「…………待ち合わせですか?
  ひょっとして相手は………先輩…ですね?
  先輩に会いに来たんですね?」

 先輩という代名詞がしのぶの口から出された瞬間、ぎくり…と反応してしまう可奈子。言わずともバレバレである。

 義理の兄であり、しのぶと共通の想い人である浦島景太郎は、可奈子にとって唯一の男性だ。
 尤も、例え彼が実の兄だとしてもその想いは止められなかったであろう事は、今のしのぶなら理解が出来る。
 彼女とて社会的モラルと景太郎とどっちをとる? 問われれば躊躇なく景太郎を選べるのだから。

 だから可奈子が何故会いに来たのかは理解できる。
 女として、愛しい男を持つ身として、彼女を応援したいとも思う。
 それに“今のしのぶ”は可奈子を止めるつもりは毛頭無い。自分とて彼と結ばれたいのであるから。

 ただ、

 『何も同日の同時刻に同じ場所で待ち合わせしなくとも~~~……っ!!』

 という事だけがしのぶを泣かせていたりする。

 「な、何を……
  いきなり泣き出して…どうかしたんですか?」
 「い、いいえ~……別に~~~」

 ぐすんと涙を啜り、何故か上目遣いで可奈子を見る。
 どこか恨みがましい眼は可奈子を僅かに動揺させるも、そんな眼で見られる謂れは無いので、キッと強く見据えるのは流石だ。尤も、そんな強い眼差しも“今の”しのぶには対して効果もないが。

 実際、時間も無い。
 それに可奈子を拒否したり出来る訳もない。仕方ないなぁ……等と諦めの入った溜息を吐くしのぶ。最近、ここの皆は溜息が多い。

 しのぶの溜息にまたもカチンとくるが、次の彼女の言葉に可奈子は、

 「……可奈子さんも先輩を“開かずの別館”に連れて行くつもりなんですね?」
 「っっ?!」

 見事に石となって固まってしまった。

 そんなフリーズしてしまった可奈子の様子に、しのぶは内心ガッツポーズをとる。
 彼女がここに来てからずっと、しのぶは負け続けてきたのだから、こんな些細な事であっても勝利を噛み締める事ができてしまうのだ。いや、全然うれしく事実であるが。

 可奈子はというと、珍しく見た目そのままに本当に焦っていた。
 その内容が愛しの彼……しのぶにとっての先輩、可奈子にとっての愛しいお兄ちゃんの事なのだ。
 可奈子の普段は見せない表情の豊かさを全て注ぎ込んでいる相手との事を問われたのであるから焦りも一入である。

 「ああ、責めてませんよー? 可奈子さん“も”って言いしまたよね?
  私だってそのつもりだから“ここ”に来たんですから」
 「な、何故“ここ”の事を……?!」

 しのぶの言葉に覿面にうろたえてしまう可奈子。
 その様子がとても嬉しい しのぶであるが、外見には全く見せないで、内面世界で万歳三唱を挙げていたりする。

 彼女らの言う“ここ”とは、この離れのある場所の事だ。
 ここには、唯一無人別館に続く隠し通路の入り口が存在するのである。

 別館の再建から少しして、何時もの様に散歩兼探険を行っていたカオラとサラがここを発見したのだ。

 業者が何故こんなモノまで作ってしまったかは“やはり”不明であるが、当然の様に彼女ら(特にカオラ)は嬉々としてマップにそれを書き込んでいた。
 だが、別館の魔力の事をはるかに教えられていたサラは彼女にこの事を教え、はるかはカオラにここに入る事をきつく禁じたのである。
 尤もカオラが言われてハイと約束を守る子ではない。
 普通であれば面白がって逆に入ったりするであろうが、はるかの釘の刺し方は完璧だった。

 『もし入ったらお前を嫌いになるぞ? 約束を破ったとしたら当然、景太郎にも素子にもな』

 これには流石のカオラも覿面にうろたえた。

 おしおき程度ならカオラとて余り気には済まいが、ひなた荘と皆との暮らしを何より愛しているカオラにとって、“嫌われる”事は絶望に程近い行為なのだ。
 そしてお気に入りのモトコと、家族以外の異性では唯一好きだと公言している けーたろに嫌われる……それは余りと言えば余りにもキツイ罰である。
 瞬間にカオラは真顔になり、半泣きでこれを承諾したのだった。

 しのぶがその通路を知っているのは、キツネ経由で件のマップを手に入れたからで、可奈子の方は館内を散策しまくっている相棒のクロに教えてもらったからだ。
 “ここ”は“あそこ”に行く最短距離であり、人目に付かずに連れ込める絶好のルートなのだから使わない手は無い。

 因みに、しのぶの方は既に下見を終わらせ、教えられていた通りの異様に汚れている布団に真新しいシーツを掛けて準備までしていたりする。

 呆れというか眼を疑ったというか、可奈子は目の前で喋っている少女が本物のしのぶであろうかといぶかしんでしまった。
 彼女の疑問も当然だろう。何せ可奈子が調べていたしのぶとデータが違い過ぎるのだから。
 以前にあったおどおど感が影を潜め、少女から脱皮したかのような落ちつきの眼で自分を見ているのは誰だ? 自分の揚げ足を取るようにここの事を話す彼女は?

 だが、どう見ても彼女は前原しのぶだ。
 可奈子同様に浦島景太郎を唯一の男として見つめ続けている女子高生だ。

 ふと視線を合わせた時、可奈子はその眼差しの中に潜む光を見て取った。
 強い眼差しの強さ間違いなく強い決意のそれ。
 綺麗に澄んでいるのにどこか歪で、輝きも何か普通のそれと違う。

 そして“ここ”に来た意味を知っている事……

 『ああ、そうなのですね……』

 と、可奈子は納得した。
 彼女もそうなのだと。

 途端に、ふ…と肩から力が抜け、今まで兄にしかまともに見せられていなかった笑みをしのぶに向けた。
 尤も、その笑みもどこか歪んではいたが……

 ちょっと驚いたものの、しのぶもその笑みを受けて微笑みで返した。

 同じ想いを持つもの同士、
 同じ男との関係を持つ者同士の共感とも言えるかもしれない。

 歪な円が齎す月光の下、
 表現し難い不思議な感触を共感し、微笑み合う二人……

 待ち望む彼が来るまで二人はゆっくりとお互いの事を語り合っていた。

 それは歪んだ男女間の事がなければ本当に、


                       本当に微笑ましい光景だったという……




―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
                           -盲・愛-
                            File:壱拾陸

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――




 可奈子が手伝ってくれた夕食の準備は、思いの他手早く進ませる事が出来ていた。
 しのぶの体調は回復していたとキツネかせ皆に伝え、一晩たてばぴんしゃんと復帰する事も伝えられている。

 最も心配していたカオラは勿論、皆も一様に安堵の表情を見せ、景太郎の作った食事に文句をつけつつも美味そうに平らげられた。
 何時もの事なので気にもならないが、苦笑くらいは浮かぶ。

 その後、しのぶの事を心配していた所為で気疲れでもしていたのか、皆は早々に部屋に引き上げて行った。
 妙にフラフラと部屋に向う皆の様子に首を傾げる景太郎に、キツネがそっと耳元に、

 「あんな、けーたろ。
  しのぶが待っとるさかい、八時に離れの裏っ側ンとこ…池の前に行ったってや?
  理由は……言わんでもええやろ?」

 と告げていった。

 流石に景太郎も肝を冷やす。
 今さっき、我を忘れてしのぶを犯しかかったところなのだから当然であろう。

 実際、平静を装ってはいたが、景太郎はその事でかなり自分を心を傷つけていた。
 何せ相手は自分がひなた荘に来た当初から慕ってくれていた少女なのだ。
 留学前にデートし、キスされた事もある。
 それだけ慕ってくれている少女を、事もあろうに高熱を出してうなされ、力尽きて眠っていた(と、景太郎は思い込んでいる)しのぶをレイプしようとしたのだ。

 鬼畜…正に鬼畜の所業。

 景太郎は自分を罵り、罵倒し続けていた。
 皆に相談の一つもすればよいのに、土壇場までそれができないのは相変わらずといったところか。

 そうしておれば、この後に起こる事も防げたかもしれないのに……まぁ、無理だろうけど。

 そんな風にしのぶの件で悶えていた景太郎のシャツを誰かが引っ張った。
 うん? と振り返るとそこには可愛い妹の姿が。
 うっすらと頬を染めた、妙に色っぽい可奈子の姿があった。

 「あ、あの……お兄ちゃん……」
 「な、何?」

 妙に緊張した声に、彼も緊張の度合いを上げてしまう。

 「お話したい事があるので……その……」

 『あ……やっぱりカナコ可愛い……』

 もじもじとする義妹の様子に色気を感じ、腰が唐突に重くなるのを感じた。
 ずっと妹として見てきたのに、接してきたのに、一人の女の子として見ようとしかかっているのをはっきりと自覚してしまう。

 こんなもどかしい気持ちになったのは、五晩続けて可奈子と結婚する夢を見て以来だ。

 等とぼんやりそんな事を考えているうちに、

 「こ、今晩、その……八時に離れの前に来てください……その……お、お待ちしております……

 そこまで言ってから足早に離れて行ってしまった。

 「へ……?」

 しのぶとの約束は八時。
 可奈子との約束も八時。

 「え、えと……?」

 しのぶとの約束は離れの前。
 可奈子との約束も離れの前。

 「ど、どうしよ~~~~~っ?!

 『知らんがな』

 遠くでそんなキツネの呟きが聞こえたような気がした。


 だが、そんなに悲観する事はなかった。
 そんなに悩む必要もなかった。

 何故なら、可奈子が手伝ってくれた食事を食べたのだから。

 味噌汁を啜ったのだから……





 くふぅ……ぐちゅぐちゅ…れろぉ……
 はふはふ……んん……ぷはぁ、

 ンちゅっ、ンちゅっ、ンふぅ~~……はぁ♪
 れろれろ…ちゅぷ…ちゅうちゅう…ンんんん~~~……


 投げ出された両の足。その太股にかかる柔らかい体重がなんとも心地良い。
 熱い吐息が股間に掛かり、熱い唾液がそそり立つペニスの幹を伝い落ちる。
 それすらも舐めとられ、肉柱が渇く事は無い。ビクビクと快楽の痺れが袋から腰までを貫いてゆくのがむず痒くてもどかしくて堪らない。
 少しでも身体を揺すれば、

 「あん…っ」
 「やぁン」

 と股間から声がして余計に痺れが走ってしまう。

 今、彼の太股には二人の少女が取り付いている。
 右足には義妹の可奈子。
 左足には同じ寮にいる娘、しのぶだ。

 皆が皆して肌を曝しており、唯一の男である景太郎も全裸。
 二人の少女はクリーム色のニーソックスだけ着用するというマニアックな出で立ちをしており、景太郎を視覚的にも誘惑し続けていた。

 その所為なのか、部屋に立ち込める香の香りか、はたまた可奈子が景太郎の食事にだけ混ぜた薬のお陰かは解からないが、景太郎のそれはコチコチに固くなって反り返っている。
 二人は、その起立している肉の凶器に対し、舌による熱い奉仕を行っているのだ。

 何処の王侯貴族かと問い詰められてもおかしくない状況下で、景太郎はただ呆然と二人のフェラチオを受け続けている。

 思考回路は完全にショートしており、判断力も低下。今現在行われている事に対する倫理判断力など皆無だ。

 義理の妹と、妹のように接してきた少女の二人。言い換えれば妹二人に性奉仕を受けているという罪深きインセスト行為。それに対する疑問が塵程も浮かんでこない。
 約束の八時まで悶々としながらも待ち続けた景太郎であったが、約束の時間が近寄るにつれ、彼の意識は混濁化して行った。
 言われている時間に二人の少女と会う。その約束は何とか憶えていたのであるが、時計の長針が動くにつれて段々と股間がいきり立ち始め、短針が動くと本能が先走りだした。

 しのぶちゃんと待ち合わせ―――
 カナコと待ち合わせ―――

 という、目的は段々と高まってゆく欲求によって、『女の子と待ち合わせ』という対象性別のみとなり、その約束事も直に<オンナと会う>という本能的欲求に摺り替わっていた。

 今日まで素子と、そしてキツネと一緒に高められていった性的欲求は冷ます方法が無い。
 無論、全く無いと言う訳では無いが、それは女性の膣内に射精する事である。よって素子とキツネ以外では“今のところ”不可能である。
 だが、何時もその熱を冷ましてくれている当の二人が見当たらない。求める相手が見当たらない以上、欲求は高まる一方であった。

 
 後は良く憶えていない。
 息を乱しつつその場に行き、二人の少女の姿を見た時に完全に理性が弾けて二人を抱き締めてキスしまくった。
 その場で犯してしまいかねない勢いだった彼を、二人はやんわりと止め、

 『私達を好きにしていいですから、こちらに来てください』

 と、離れ外壁の一角に彼を誘い、そこに空けた通路の闇に彼を導いて行った。

 後は…正気が戻らぬまま、彼は“ここ”で二人に奉仕されていたのである。
 ここは何処なんだろう……?
 という疑問は僅かに浮かぶ。
 浮かびはする。が、その疑問も湧いては泡の様に消えてしまう。

 んぐ……ンふぅ、ンふぅ、ンふぅ……れろぷちゅ…

 あぁン…お兄ちゃ…ンはぁ…おいひ……ふぅふぅ…はふ…


 小さな口いっぱいに肉傘を頬張るしのぶ。
 亀頭をとられ、その悲しさから袋を口に含み舌で清める可奈子。

 二人の熱心な奉仕が疑問等という些細な事柄を頭から吹き飛ばしてしまうのだ。

 しのぶの舌技はかなりつたない。
 児戯…とは言い過ぎだが、奉仕行為ですら絶頂を迎えられる素子等からすれば確かに下手の部類である。
 無論、今回が初めてのフェラチオ行為であり、レディコミ等の知識すらまともに得ていない少女からすれば当然の事であろう。
 初体験時から何故か卓越した性戯を備えていた素子の方がおかしいのだ。

 だが、その代わりと言っては何であるが、しのぶは素子に勝る部分があった。
 それは……

 はむ……れろぉ~~……ちゅぱちゅぱちゅぱ……


 しのぶは、景太郎のペニスを咥える事が出来るのである。

 口の小ささでは素子と左程変わりは無いし、可奈子のと同じくらいである。
 だが、その口の開き具合が群を抜いており、ぶっとい景太郎の肉傘がすっぽりと彼女の口の中に収まっているのだ。

 しのぶは喉奥に突きこんだペニスを噛まないように気をつけ、その幹やエラの裏側を熱心に小さな舌で舐め続ける。
 時たま、ちゅうぱちゅぱと鈴口を吸ってカウパーを啜るが、そのアドバンテージを許すつもりは無いのだろう、可奈子には譲ろうとしない。

 意外なほど口が大きく開くしのぶは、亀頭を喉まで入れる事が出来るという有利点を最初から所持していたのである。

 尤も、全てが初めてなのでそうそう上手くゆくはずも無い。
 実際にフェラチオを始めた時も、

 「うっうっ……ちゅば、れろれろれろ……変な匂い……
  はふはふ…ちゅ、ちゅ、ちゅっ…に、苦いよぉ…ぷちゅ、ぷちゅ、
  んちゅ…ちゅるちゅる……あふ…く、臭いよぉ…れろびちゅ…」

 と、半泣きであった。
 無論、臭いと言うだけで嫌というわけでは無いし、臭うと言うだけで嫌悪は無い。
 後天的に納豆やクサヤのファンになった者の様に、匂いはダメだが味は好き…から入っているのだから、いずれはこの匂いも好きになるであろう。

 現に苦い苦いと泣きながらも、ちゅうちゅうとカウパーを舐め啜っているのだから。

 んちゅう…はむはむ…はむぅン……んぐんぐ…
 ぷはぁ…おいひ……むぐぅ……ンんん…


 対して可奈子の方は何も問題は無い。
 元々の口の小ささと開き具合から亀頭への奉仕は手渡しているが、その他の部分は全て可奈子が行っていた。
 ひよこ饅頭すら頭の部分を齧りとるのがやっとの可奈子の口であるが、ぐにぐにとした陰嚢の舌触りはお気に召しているようだ。
 元々の好感度…というか、傾倒度は可奈子の方が強かった事もあり、彼の汗の味だろうが精液の味だろうが可奈子の口に合わないものは無い。

 なるが景太郎と東大へ行く約束したのは今から二十年近くも前の話。
 当然というか、当時の彼女は二歳程度。幼すぎて最近まで記憶から消していたのであるが、可奈子は景太郎と出会ってから十数年間、ずっと彼を好きであり続けていた。
 そして再会した時に想いを愛情へと昇華させており、今現在は止める術を完全に無くし去っている。
 長く強力な愛情を持ち続けていた可奈子は、景太郎の身体で嫌いになれるパーツなど存在しないのである。

 「はふ…んちゅ……るろぉ…ちゅぱ…
  ひ、ひのぶふぁん……はぁ…しのぶさん……私も、私もそこを…ちゅば…味あわひぇれくらはい…」

 喋る時すら口から離ししたくないのか、唾液でベトベトになった袋に熱心に接吻くちづけを贈り続けている可奈子。
 周りの温度より低くなるようになっている袋は、可奈子の口中の熱によってだらりと下がっている。よって口に入れ易くなっている。皺の部分の感触がたまらない。

 「んふぅ~~……らめれしゅ~♪
  ちゅ、ちゅ、ちゅ…おいひ……はむぅん♪」
 「ひろいれしゅ…ちゅぱ、ちゅぱ、じゅるるる……」

 あっさりと拒否するしのぶ。
 潤みきったしのぶの眼は、発情期の牝犬を思わせるそれ。
 可奈子の懇願を無視した後、じゅぼじゅぼと態と喉奥まで付き込んで奉仕の激しさを増させる。

 しのぶからしてみればこれはお返しなのだ。

 夕べ可奈子は屋根の上で景太郎の精子を味わっているのだ。言ってみれば“ぬけがけ”。
 相手が素子やキツネならばもっと別の手を使っているだろうが、敗北続きだった可奈子が相手なのでやや意地悪気味だったりする。

 ちゅぱ…とペニスを口から引き出し、頬ずりをするしのぶ。
 そんな自分の下品さに苦笑すら浮かぶ。

 つい先日までは景太郎とキスをする事を想像しただけで真っ赤になっていたと言うのに、今はペニスに嬉々としてキスをしている。
 思いもよらなかった行為であり、しのぶを知る誰もが信じ難い行為である。

 だが、娼婦より下劣になろうとすればする程、
 奴隷という身分に浸ろうとすればする程、
 ペニスの味と香りに慣れれば慣れる程、
 しのぶの心は満たされて行き、景太郎への愛情と依存度は増してゆく。

 景太郎のモノになりたいという被独占欲。
 そして彼と共に在りたいという愛情とが仲良く肩を組んで彼女を天国へと貶めてゆくのだ。

 とろりと愛液が滴り、跨っている景太郎の足を汚している。
 割れ目がほころび、彼の足の肉を軽く挟んで劣情を催す。
 軽く擦るだけでピクリと腰が跳ねてしまう。

 近寄ってくる挿入という瞬間を夢想し、彼女のオンナが高まってゆく。

 どぶ…っ


 「あ、ひゃあ……っ」
 「あはぁ……っ♪」

 勢い良く噴出される粘液。
 喉を突いた噴出に慌てて口を離した為、顔や頭にも掛かってしまう。
 “下”で楽しんでいた可奈子も顔で受け、嬌声をあげて悦んだ。

 どびゅ、どぶっ、ずびゅっ、ずひっずひっ、ずひっ


 「あ、あ、あっ、ひぃんっ」
 「きゃあ、あ、ンんっ、ふひゅう…っ」

 加奈子と共に口で受ける。
 最初に顔射された為に眼が開かないので精液を掛けられる元を辿るように口を開けて出来たての精子を口中で浴びる。
 意外に温度が低いのだが、不思議と体温に以上の熱をそこに感じた。

 ぬちょぬちょとした味わいは余りにも奇怪。
 味がどうとか言うよりは、舌触りがどうと言う感じだ。
 だが、さっきまで味わっていたカウパーの方がよっぽど苦がったので左程の苦労も無く精液を味わった。

 二人とも気が付いていないようであるが、景太郎の射精量は人外である。
 絶対に人ではあり得ない程の大量の精液をぶちまける。

 そんな夥しい精液によって顔を汚されているしのぶは、初めての精液の匂いに酔っていた。

 嫌な臭いであり、想像すらできなかった表現し難い生臭さ。我慢しきれない程ではないにせよ、未知の芳香に戸惑わない筈が無い。

 無い筈なのだが……

 ちゅ…れろれろ…
 ちゅ、ちゅ、ちゅっ


 「あ…はぁ……か、可奈子さ…ん」
 「んふぅ…おいひ……♪」

 自分の顔をベッタリと汚している愛しい人の精液。
 そのドロリとした粘液を、にじり寄ってきた可奈子が舐めとっているのだ。

 「ず、ずるいですっ」

 ムッとした しのぶは、可奈子の頭に掛かっている粘液を啜った。
 髪の毛にからまるそれは、用意に剥がれるものではないのであるが、大量の唾液を含んだ口に頭髪ごと吸い込み、唾液で持って溶かして喉に流し込んでゆく。
 可奈子の香りと景太郎の香りが混じるのでちょっとだけ嫉妬も浮かぶが、夕べほどの炎は無かった。
 当の可奈子にしても、しのぶに景太郎のザーメンが奪われているというのに、しのぶさんなら別に…とでも言わんばかりに甘受し、自分はしのぶの顎から滴る精液を手にとって口に運んで味わっている。

 何と不思議な事か、
 既に夕べ初精飲を行っている可奈子にしても奇妙であるが、しのぶの方も瞬く間に精液に対する葛藤を消失させているではないか。

 ペニスの香り、こびり付いた汗、カウパーの味も匂いも、
 恥垢の風味も全てがお気に入りと化していた。

 旨いっ、美味しいっ、堪らないっっ


 しのぶの心は一瞬にして淫気に塗りつぶされ、味覚にも割り込みが掛けられていた。

 舌の感覚に自信を持っていたしのぶの味覚に、景太郎の味という最高点の絶対風味の記録が焼き付けられていたのである。

 ドロリと濁った眼も、
 肉柱に奉仕して涎を垂らしている口も、
 ペニスに奉仕している間中、尖ったままでいた乳首も、
 顔射された余韻でひくついている腰も、
 精飲するたびに濡れそぼってゆくヴァギナも、
 その幼さを残す肉体からだ全てが唯一の男を歓迎しているのだ。

 やがてお互いがお互いの顔と頭に付着する精液を舐め取ると、せめて後一滴でも…とばかりに唇を合わせた。

 くちゅぷちゅ、ぬぢょ、ぶぢゅ……


 無意識に、である。
 無自覚に、である。
 二人はそっと手を合わせ、指を絡め、起立した乳首を触れ合わせてお互いの舌に残る精液の味を堪能し続けていた。

 合わさった唇の隙間から零れ落ちるのは二人の唾液のカクテル。
 やや大きい可奈子の胸に滴り、その形に添うように胸を這い、太股に滴り落ちてニーソックスに染みを作った。

 僅かに離された唇の間では、紅いナメクジが絡まっている様。
 半眼になった二人は、とろけた視線で相手の顔を見つめ続け、お互いの唾液に残る精液を味わい続けていた。

 義妹と妹のような二人が、
 言うなれば二人の妹が自分の精液を求め合い、与え合う淫靡すぎる光景。
 一匹の雄と化している景太郎の本能が二人の睦み合う姿に激しく反応していた。

 萎えない。
 やはり高が一回の射精程度では萎える兆しなど訪れるはずも無い。

 柔らかく、たっぷりと濡れていて、絡みつくように肉柱を吸い込む素子の膣。
 入り口が異様に狭いくせに安易に入れる事ができ、抜こうにも放そうとしないキツネの膣。

 この目の前の二人はどうだろう?
 この目の前の穴はどうだろう?

 部屋に立ち込める香の香り。
 身体に染み渡っている薬の魔力。
 この二つと“別の要因”が入り混じり、景太郎のブレーキは全く利かなくなっている。

 やおら手を伸ばし、その華奢な肩を掴む。

 やや驚いた顔はするものの、その顔は歓喜。
 先に選ばれたという栄誉に感激していた。

 かといって、選ばれなかった少女が絶望していたかと言うとそうでは無い。

 お互いがお互いの気持ちを心から理解している今は、我が事の様に思えてならない。

 太股に愛液を伝わらせつつ二人の為に場を提供してやり、布団の上を二人の舞台にする。

 主演の二人は見つめあい、唇を貪りあう。
 少女の唇は青年の陰部を堪能していたのであるが彼は一切気にしていない。と言うより理解していない。
 それ程飢えているのだ。
 それほど“したい”のだ。

 解かっている。その飢えが次に向くのは自分だ。
 解かっている。目の前で行われるのは自分もされる事。

 彼女の純潔が凶暴なペニスによって散らされるのを見、官能を高めて待つのも一興。
 恐らく選ばれたのが自分であれば、彼女もそうして待った事であろう。

 たらたらと愛液が滴る。
 セックス……というより、交尾と言った方が良いかもしれない。

 だけどもこれは正しい事なのだ。
 彼とまぐわう事のできない世の中が間違っているのだから。

 四角いシーツの舞台の上、少女は腰を抜かしたかのようにストンと座り込み、彼の腹に舌を這わせてから足をM字に開いて愛する彼をいざなった。

 ギちギちと軋む音が聞えそうなほど反り返る肉茎。
 少女の眼がその光景に喜色に染まる。

 「お、お兄ちゃん……どうぞ……」

 年齢不相応に幼さが残るそこは紅く色付き、兄の到来を待ち望んでいるのだろう、涎を垂らしながら綻びを見せていた。




*************************************************************

 遅くなりましたPixyでございます。
 どーも筆乗り(キー乗りか?)が悪く、中々ここまで持っていけませんでした。
 如何に打つのが早くなろーと、話が出来なきゃ三文とゆー事ですな。イヤハヤ……
 なんでノリが悪いんだーっ!! と悩んでいると、エッチ小説の師である叔父が、

 『戯け者め。お主の心にLOVEが抜けておるわっ!!
  素子に傾倒し過ぎじゃわいっ!!』
(←原文まんま)

 と助言をくださいました。なるほどっ!! 流石はししょーっ!!
 
 兎も角、その叔父ししょーから“ラブひな"を借り、最初から読み直している私です。

 あと最低二回は3(ピー)が続きますのでご容赦ください。
 ではまた……






[2319] Re[8]:Dotage ~妄愛 <壱拾漆>~  (ラブひな)
Name: Pixy◆dcc9f442
Date: 2007/05/19 08:53


 仲が良い兄妹にはよくある事だが、妹が兄に思慕の念を抱き、
 「お兄ちゃんのお嫁さんになる」
 と口にする事がある。

 無論、その多くは子供の戯言という形で記憶の彼方に置いて行かれる事の方が多い。

 が、その想いを持ったまま成長したとしたらどうだろう?
 子供の可愛い夢を微笑ましく“見守ってしまい”、あまつさえ祝福などしていれば無垢な心は周囲の話を鵜呑みにし、兄と結ばれる事こそが幸せへの道だと認識してしまうケースだ。
 そのまま思春期を向かえる前に誰かが諭していれば多少はどうにかなったかもしれないのだが、周りが、或いは極身近な者が傍観に徹し、“見守り続けてしまった”場合、その娘はそのまま思慕の念を確立化してしまう事が多い。
 血の繋がらない兄妹なら尚更で、そのまま育った場合は取り返しの付かないブラコンになる危険性が特に高いのだ。




 「お兄ちゃん……」

 足を広げ、その濡れそぼった場所を兄の目に曝す可奈子。
 無論、そこを人目に曝すのは初めての事である。その相手が愛しい兄である事が嬉しくて堪らない。
 そんな感激もあってか、兄を迎える準備は触れずとも整っており、ひくひくと脈付いているそこは、薄ピンクの鮑だ。

 彼を想い続けて十余年。ずっとこの時を待っていた様な気がする。
 義務教育期間中、級友“だった”者にも諭されたし、実家の者にも諭された。

 『義理とはいえ、妹なのだから』と……

 唯一、祖母だけがそれに関しての文句を一言も言わずにいてくれたのだ(それがブラコンが酷くなっている原因とも言えるが…)。

 ひなた荘に来て兄と再会し、
 想いを断とうとして失敗し、余計に自分の想いの強さを思い知り、
 一度はなるに託そうとはしたのであるが、彼女と唇を交わしている兄を見て余計に想いが強まり、
 そのまま ひなた荘に、兄の側に居ついて今に至っている。

 兄がそこまで執着していた女性は後にも先にも約束の少女と成瀬川なるの二人のみ。
 だから(可奈子なりに)応援もしたし、後押しもしたのだ。

 が、やはり自分の気持ちは変えられない。
 根底からある想いは曲がらない。

 可奈子の心は“ここ”にあったのだから。


 兄のお嫁さんになりたい。

 お兄ちゃんの側にいたい。

 それが駄目なら………兄のモノになりたい。


 ギチギチに固くなっている兄の肉柱。
 あれだけ自分らを精液で汚したというのに、兄のそれは相変わらずケダモノの逞しさを見せ付けてくれている。

 自分らに興奮してくれているのだ。
 女としてこれほど誇らしい事があろうか?

 くちょ…


 「あ…♪」

 亀頭が秘肉の口に触れた。

 先端からはポタポタと先走りが滴り、それが可奈子の皮に埋もれたままの肉芽を直撃して余計に喘がせたりしている。
 何だかんだ言っても可奈子は処女である為まだそこは緊張による固さが抜け切っていない。
 だから亀頭で持って入り口を漁り回っているのだ。

 ぐりぐりと熱くて固くてそれでいてどこか柔らかい兄のペニスで股間を弄り回されている可奈子は息も絶え絶えだ。
 異様に高まっている興奮が、緊張と愛撫との相乗効果で言い様の無い快楽を可奈子の齎している。

 それだけの事で既に二三度は軽いアクメを迎えているのであるが、肝心の挿入に至っていないもどかしさで心が苦しい。
 
 入れて欲しいのに、純潔を捧げたいのに、そのお互いの興奮ゆえ上手い事進んで行ってくれないのだ。

 その悲しげな可奈子の表情に気付いたのは、布団の横で自分の股間を弄りつつ観賞していた しのぶだった。

 可奈子の切なさは自分の切なさだ。その気持ちは何故かよく解かった。
 それに早くしてくれないと自分も持たないだろう。
 景太郎は景太郎で、獣欲が強くなりすぎて何時もの性行為のペースを取り戻せていない。

 さて、どうしたらよいものか……

 そう首を傾げた しのぶであったが、ふとある事に気付いたようだ。
 彼女の背後でピシャリと閉まっている障子。
 部屋に立ち篭めてある香の煙はもう充分三人に沁みている事であろうから構わないだろうと、細く障子を開けた。

 ス……と刃のような細い月明りが可奈子の身体を抜けた。

 その光は丁度可奈子の股間を照らしており、そこでまごついていた亀頭も艶やかにてからせる。
 しのぶは光を遮らないように可奈子の身体を跨いで股間に顔を寄せた。

 月明りの所為で青白くさえ見える可奈子のそこは、亀頭をより黒く映えさせて禍々しさを増した景太郎のペニスに今正に蹂躙されようとしている。
 無論、加奈子にしても しのぶにしても、その侵略は諸手を挙げて賛同する事であり、蹂躙される事も、略奪される事も全てが大歓迎で持って迎える行為だ。

 しのぶは可奈子の白い尻の側から手を回し、そのままぐいっと陰唇を繰り広げた。

 「ああ……っ!!」

 恥ずかしそうに顔を隠す可奈子。
 兄に見られるのならば羞恥すら快感であるが、同性のしのぶにとろとろに蕩けている秘肉を見られる事は羞恥以外の何物でも無い。

 可奈子のそこは、しのぶより幼なさを見せているのだ。
 つまり、

 「可奈子さん、生えてない……」
 「いやぁ…言わないでください……っ」

 であった。

 そんな可愛らしくもいやらしいそこに迫る肉の凶器。
 しのぶの手によって支えられ、もう片手で割り広げられた肉の穴に、それがズブリとめり込んで行く。

 「……ンあぁっ!!」
 「わぁ……」

 その生々しい光景に しのぶが感嘆の声を上げた。
 その小さい口が、
 その小さかった膣が、
 毒々しい雄の生殖器を呑み込んでゆく。

 ずぶずぶずぶ…


 「あ、ああああ、ああああああ……」
 
 とてもじゃないが入りそうに無い太さであるのに、健気にも妹のそれは大きく口を開けてどんどん飲み込んでゆく。

 やがて肉襞の窄まりの様なものに行き当たり、ペニスはそこで一旦停滞する。
 だが、獣欲によって勢いの付いているそれが停滞はしても停止する事は無い。
 無理矢理…と言って良い程強引に腰を進ませてゆく。

 「ん…くぅうう……っっ」

 流石に痛みが勝ったか、可奈子は涙を噛み締め身体をせり上がらせようとする。
 無論、可奈子の意思では無く、身体の反射的行為だ。

 「あ、駄目」

 しのぶはそんな可奈子の身体を押さえ込む。
 今逃げたら後で後悔するのは目に見えているからだ。

 押さえつける程度の事しか出来なかったが、それでも一瞬也ともずり上がりを停止させる事に成功する。
 軽いしのぶの身体であったが、可奈子の身体をその一瞬でも止める事に成功したのであるから、

 ずぐぐ…


 「あ、ひ……っ」

 ずぐぐぐ………びぢっ


 「ンん……っっっっ!!!」

 景太郎にゴムを押し広げるような感触を伝え、そのぶっとい肉の柱は可奈子の腹の奥に捻じ込まれた。

 「あは……」

 妹の膣に呑み込まれてしまった先輩のペニス。
 純潔を兄によって奪われた可奈子の性器。

 全てが収まり切っている訳ではないが、可奈子の子宮には確実に届いている事であろう。

 しのぶは彼女の上から下り、可奈子の背に回って身体をゆっくりと起こしてやる。

 「あ、あぅ…っ!」

 侵入角度が変わった事による傷口を抉る痛みによって吐き出された小さな悲鳴。
 流石にまだ痛むのだろう。
 じぃんじぃんと、ズギズギと、鈍く重く痛みが腰から響いてくる。
 だが、決して嫌だとも止めてとも口にしない。思いも付かない。

 「ほら、可奈子さん。見てください」
 「……え?」
 「ほら、そこ……」

 しのぶの手が可奈子の身体を這い、その視線を導いてゆく。
 彼女の手が向いた先。
 そこには……

 「あ、あああああ……っ」

 可奈子は歓喜の涙を零した。
 そんな彼女を祝福するしのぶもどこか眼が潤んでいる。

 「おめでとうございます」

 だから思わず口から出された祝福の言葉。

 細い月の明りの照らされた可奈子の股間。
 そこを目にした可奈子に、

 愛しい兄の性器が自分に突き刺さっている光景が飛び込んできたのだ。


 大好きなお兄ちゃん。
 この世で唯一の男性。
 その人によってオンナにされた事はどれほどの感動を齎しているのか……それはこの場においてはこの二人にしか解かり得ないかもしれない。

 例え……
 例えどれほど歪な感動であろうとも―――




―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
                           -盲・愛-
                            File:壱拾漆

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――




 大きな感動を胸に、しのぶはその光景に見入っていた。

 みりみりと無理矢理広げられた小さな性器に、黒々としたぶっといペニスが突き刺さっている。
 そして、

 ず、ずり、ず、ずず、ずり、ずり、ずり、


 「く、ひ、あ、痛っ、ンっ、ひぃ、くぅっ」

 ごりごりと動かされ、削られ、裂かれ、可奈子はシーツを掴んで必死に痛みに耐えていた。
 幸いな事にその痛みを与えてくれているのは愛しい兄。しのぶと共通の想い人だ。

 この人であるから、
 この人にされる行為であるから可奈子も拒絶の言葉が出ない、思いもつかないのである。

 月明りに浮かぶ黒い糸は可奈子の血。
 兄によって散らされた純潔の証。
 青白い月光によって紅さより黒さの方が強くされた色彩は、しのぶの目に焼きついてゆく。

 可奈子を支える必要はもう無いので、しのぶは光を遮らない様に反対の位置から間近で拝見している。

 出たり入ったり、出たり入ったり、出たり入ったり、出たり入ったり、出たり入ったり、出たり入ったり、
 出たり入ったり、出たり入ったり、出たり入ったり、出たり入ったり、出たり入ったり、出たり入ったり、

 可奈子を嬲る様に、いたぶる様に、
 処女膣を、処女痕をゴリゴリと研磨し、兄のペニスの形状を焼き付けてゆく。

 最初に濡れそぼっていた膣も今は泉が湧くのを休んでおり、潤滑油になっているのは滴り出ているカウパーのみ。これで痛くないはずが無い。

 そんな苦痛を味わっている可奈子を見つめながら自分を弄り回している しのぶであったが、苦痛に喘ぐ可奈子を見ても怯えの影すら起こっていない。
 ある感情は只一つ、

 『いいなぁ……』

 であった。

 無論、しのぶとて女の子であるし、どちらかと言えば痛がりの方だ。
 カオラの実験につき合わされて散々な目に会っており、実は意外と頑丈である事も知られているが、痛い事が平気では無いし好きな訳では無い。
 
 にも拘らず、しのぶは痛みに苦しむ可奈子を見、羨ましがっている。

 そんなしのぶと可奈子、そして陵辱者の景太郎の鼻を香の香りが通り過ぎてゆく。
 無味無臭という訳ではないが、微香性のこの香は三人の鼻にすっかり馴染み、今だに火が残っているというのにその存在を忘れさせていた。
 
 しのぶは部屋に立ち篭っている香の事を詳しくは知らない。

 キツネから手渡され、そのまま使っているだけだ。
 そのキツネは素子から受け取っており、これまた使用量については聞いていない。
 唯一使用量について知っていそうなのは可奈子だけであるが、その可奈子は部屋の香りを気にもしていなかった為にそのまま吸い込んでいた。

 よってその香の力が媚薬としての効果の方が付加能力である事等知る由も無い。

 どぶっ


 「あ、ひ……っ」

 先ず一撃。
 出される…というよりは、内臓にぶっ掛けられるといった感触が可奈子を襲う。

 どびゅ、どびゅ、どぶっ、どぶっ、どぶっ、


 「ひ、あ、ひ…ぃ……」

 体温より低い筈の精液が、物凄い勢いで子宮口に襲い掛かり、開ききっている筈も無いそこを蹂躙する。

 どぶ、どぶっ、どぶ、どぶ……


 清らかであった子宮内をめちゃめちゃに穢し、満たし、溢れ出し、膣道まで帰ってくる。

 しのぶには、膨れ上がった可奈子の子宮が見えた気がした。

 可奈子は身体をビクビクと痙攣させてこの蹂躙行為を受け入れるのみ。
 無論、嫌では無いし、妊娠できるのならこれほど嬉しい事は無い。
 兄の子を孕み、産み、育てる……正に夢にまで見た未来像なのだから。

 肉柱で栓をしたままの膣であるが、余りの精液の量に隙間から溢れ出てしまう。
 破瓜血と交じり合ってほのかなピンクであるはずのそれも、月明りの元では白っぽい粘液。真の色が見られない事を残念にしのぶは思った。

 射精によってようやく止まってくれた苦痛に可奈子は安堵した。
 彼に対する想いは不動であるが、やはり痛みは別物なのだろう。
 勿論、彼が望むのであれば幾らでもこの身を捧げられるし、幾ら犯されようと文句も思いつかない。

 が、初めての性行為によってゴリゴリと削られる苦痛はやはり辛かったのだ。

 そう身体の力を抜き、しゃくり上げつつも涙を耐えて荒く息を乱したまま深呼吸をした。

 と、そんな可奈子の鼻腔に甘ったるい不思議な香りが侵入してくる。
 嗅いだ事の無いようであり、良く知っているような不思議な香り。
 何処から漂ってくるのかは定かでは無いが、その香りは可奈子の疲弊した身体に沁みこんで来る様にも感じられた。

 ゆるゆると眼を動かした可奈子の目が捉えたのは、しのぶによって透かされた障子の隙間。
 思考力の落ちていた頭であったが、何故か可奈子は直感的に“外”から漂って来る香りだと感じ取っていた。


 その瞬間―――


 ビクッ!!


 「ひっ?!」

 可奈子の身体を途轍もない快楽が突き抜けた。

 ビクンビクンビクンッと後から駆け上がってくる凄まじいオルガスムス。
 昨夜兄によって与えられた快感など問題ではない。数値からして桁が、次元が違い過ぎた。

 激痛という地獄から、絶頂という地獄へと蹴り上げられてしまったのである。

 脳が理解してくれない。
 神経が切り替わってくれない。
 ずっと痛みに耐えていた神経が、突如出現した快楽に付いて行けないのだ。

 傷付いた膣粘膜。血が出ているその部分が景太郎の精液を理解した瞬間、全ての感覚がひっくり返ったのである。
 無論、可奈子もしのぶもそんな事が理解できる筈が無い。


 “後押し”をした香り等に気付ける訳も無い。


 余りに唐突な変貌に息を呑むしのぶの目の前で、可奈子は十年来の淫女が如きはしたなさで快感に喘ぎに喘いでいた。

 しのぶの目の前で兄に犯されて泣いていた少女はもういない。
 そこにいるのは淫らな少女。
 兄と結ばれ、禁忌の悦楽に涎を垂らし、ヴァギナから精液と破瓜血の混じるあぶくを吹いて淫らに酔い痴れる牝がいるだけだ。

 今さっきの初挿入時にはダンボールの蛇腹部分を濡らした程度だった固さの可奈子の膣は、あっという間に肉汁滴る淫らで柔らかな肉襞へと変貌を遂げ、イソギンチャクの触手の様に景太郎のペニスに絡みつき、健気にも一生懸命に兄の肉柱に奉仕し始めている。
 可奈子の肉体からだ全てが兄専用のカスタムメイドであるかのように、処女を突き破られた直後であるというのに、兄の行為全てを快感として身体が受け止めていたのだ。

 そんな妹の痴態を目にした景太郎。
 理解しているのかは甚だ疑問であるが、妹という存在は理解できずとも飢えた牝が誘っている事だけは理解したのだろう。
 今だ血が滲む処女膣を蹂躙せんと、再び腰を動かし始めた。

 ぶぢゃ、ぶぢゅる…


 「は、はぁああ…っ?! ン、んぁあっ、ひぃ…っ」

 ピストン運動をされた可奈子は今だ混乱の中。
 傷口を乱暴に擦られているのに、処女粘膜の痕跡を荒々しく削られているというのに、それを痛みだと感覚が受け止めた瞬間に全て快楽へと塗り替えられてしまう。

 ずにゅ…じゅぼっ、ぐぢゅる…ぢゅぼっ、ずぢゃ、ぐぢゅ、ぶぢゅ、ぶぢゅっ、


 最奥まで吐き込まれ、入り口まで引きずり出される。
 それを何度か繰り返した後に激しく注挿。そしてまたロングストローク……

 性行為に慣れていない快楽中枢を嬲るように、景太郎は可奈子の身体をランダムペースで玩ぶ。

 腰に手を回し、少し引き上げると可奈子の奥に入りやすくなった。
 口を開けて喘ぎに喘ぐ妹の様子は気にも留めず、彼はゴリゴリと肉傘で幼い襞を堪能する。

 子宮口を亀頭の先がこじ開けると可奈子が悲鳴のような嬌声を上げ、引きずり出してエラの部分が肉芽の裏側の位置を削るとまた哭く。

 そうか。こうすればよいのかと解かったのか解かっていないのか、奥まで吐き入れ、入り口まで引きずり出す行為を重点的に行い始めた。

 ず、ぬぅうううう……


 「ひ、あ…っっ」

 眼の奥がチカチカする。
 凄まじい異物感と、内臓に触られているという不思議な感触が可奈子の未発達な性器官を嬲る。
 信じ難い事に、可奈子の子宮口は飢えた雛鳥が如く口を開け、景太郎の出す体液全てを受け止めようと躍起になっている。

 唾液?   美味うましっ!
 汗?    美味うましっ!
 カウパー? 美味うましっ!
 精液?   美味うましっ!

 身体の奥底から湧いてくる歓喜は、全身で彼を味わってその全てを美味だと伝えてくる。

 元々、その身体で持って彼を繋ぎ止めようとした事のある可奈子であったが、いざ抱かれてみれば繋ぎとめられたのは自分だと思い知ってしまう。

 もう離れられない。もとより離れるつもりは無かったが、もうどうしようもない。
 空気が無くなる。水が無くなる。食物が無くなる…と同位に、彼女が存在する為の必要充分条件となってしまったのだ。

 彼から離れると死んでしまう。
 肉体からだも心も、その全てが腐敗し、朽ち果てる。

 喩え様も無いほど必要なのだ。

 この兄が、
 浦島景太郎という男が、
 この世界で唯一の御主人様が……

 どぶ、どぶ、どぐっ、ぶぶぶぶ……


 「ンんんっっ!! は、ぁああああ……っっ」

 又しても凄まじい量の射精。
 彼の陰嚢の容量では絶対に賄えるはずも無い多量のザーメンが、可愛い妹である可奈子の膣内を汚しに汚す。

 何と景太郎、射精しながらピストンを続けるものであるから、ペニスのエラによって掻き出された余剰精液は必然的に襞に擦り込まれ、可奈子の膣に景太郎の味を教え込んでゆく。

 それこそが素晴らしい快感。

 兄によって胎内を満たされ、兄によって兄のモノにされてゆく……

 幼い頃から夢見続けていた兄との暮らしが、非現実さを伴って具現化してゆくのを可奈子は感じていた。
 と同時に、可奈子の思い出の中の自分も、異様な妄想によって歪になり、歪みきった思い出を形作る。

 初めて出会った優しい義兄は、甘いものが苦手だった自分に、これだったら大丈夫でしょ? とペニスを出して幼い自分に咥えさせてくれた。
 わぁ…と喜び勇んでそれを口にし、美味しい美味しいと家族の前でしゃぶり続けている。
 そして家族の皆も、そんな自分を微笑ましく見つめてくれていた。

 ひなた旅館で一緒に露天風呂に入ってくれている義兄。
 大きくなったら一緒にここで暮らそうねと、自分の身体を優しく愛撫してくれている。
 幼い肉体からだであるにも拘らず、景太郎によって開発され尽くした可奈子は濡れに濡れて喘いでいた。

 彼が家を離れる時、今度会ったら一緒に住もう。カナコは僕のペットになるんだ。毎日毎日いっぱい犯してあげるからね。

 そう約束してくれた幸せな契約……


 穢れ切った美しい筈の思い出。
 白濁色の粘液が滴る、幼い自分。
 優しい笑顔で汚し尽くしてくれる大好きなお兄ちゃん……

 そんな存在していない過去を、うっとりと見つめている。

 無論、妄想だ。そんな事実は無い。
 あったとしても文句は無いだろうが、可奈子は美しく大切な思い出を自分の中で歪め、淫猥で汚らわしいパロディへと変化させているにもかかわず、その妄想に見惚れていた。

 ああ…私は昔から心を縛られていたのですね……
 と、再確認する材料のように。


 そこまで全てを委ね切っているというのに、彼の侵攻は門で停止している。
 精液を吐き出すのも、かき回すのも全て子宮口の前だった。

 壊してもいいのに。
 自分を壊す権利はお兄ちゃんが持っているというのに、彼はそこまではしてくれない。

 無論、壊されてしまえばこれから景太郎を満足させられないので問題があるが、全身全霊で持って彼に奉仕したい可奈子は残念で堪らなかった。
 それでも可奈子の子宮内は精液に満たされ尽くし、妊娠は確実であろうと少女を不思議な満足感の中でそう夢想させて一応の満足はしている。

 下手をすると卵管すら逆流し、卵巣すら溺れさせているのでは無いかと錯覚してしまう程の量。
 その凄まじい量の精液を吐き出したペニスは、精液溜まりで亀頭を己が吐き出した精液に浸からせて一時の休息に入っていた。

 ずず……


 「あ♪」

 ずずず……


 「あふ…」

 ずるるるる……ぢゅぼ…っ


 「ンふぅ…っ♪」

 蟹股となった恥ずかしい格好で横たわる可奈子から引きずり出されたぶっといペニス。
 これだけ射精していてもまだまだ固さは失われていない。

 そんな太いブツが引きずり出されたヴァギナは、栓を無くした事によってドロリと物凄い粘度の精液をあふれ出させ、性感触を憶え始めた肉襞をその異様なとろみで刺激し、可奈子の腰を打ち震わせた。

 子宮も無駄に多すぎる精子を受け入れられずにその大半を放出し、膣から噴出させる。
 余りと言えば余りにも勿体無い排出に、可奈子は何とか塞ごうとするのであるが、何せ身体が言う事を聞かない。
 手を動かそうにも筋肉をひくつかせるだけであるし、膣を閉めようにも括約筋を含めた下半身の筋肉が麻痺したかのように力が入ってくれないのだ。
 射精中も連続的にアクメを迎えていた可奈子の身体は、疲労して動けなくなっていたのである。

 「あ…うぅ…」

 何とかしようにもやはりまだ力が入らない。
 息すら整っていないのだ。
 それに下手に動けば動くほど、無駄に筋肉に力が入って余計にザーメンを零れ落としてしまう。

 可奈子は半泣きでただ流れ出すままにするしかなかった。

 と……?

 ぬる…じゅる…じゅるる……


 「え……?」

 唐突にぬるりとした感触が下半身を痺れさせた。
 それは何かを啜る音を立て、自分の身体から何かを吸い出している。

 「ええ……?!」

 慌てて身体を起こそうにもまだいう事を聞いてくれない。
 それでも何とか頭だけが動き、足を広げたままになっている自分の股の間に眼を向ける事に成功した。

 そこには、

 「あ、ら、らめぇ……やめてくらさいぃ……っ」

 可奈子のこんな懇願も無視し、それはそれは嬉しそうに血の混じった精液を啜る、

 「んふ…♪ 可奈子さんと先輩の……美味しい……ちゅ~~……じゅるるるる……はふはふ」
 「い、いやぁ…お兄ちゃんの、とっちゃやぁ……っ」

 しのぶの姿があった。

 じゅる、じゅるじゅるじゅる……ぺちょぺちょ…ぢゅるる……ぴちゃぴちゃ…はぁ、はぁ…


 「や、やぁああ……吸わないれぇ…」
 「はぁ…おいひいよぉ……」

 腰を捻って逃げようとするも、可奈子には何時もの力も勢いも無い。
 そんな状態を良い事に、しのぶは手指で持って可奈子の肉亀裂を割り広げ、奥からフローバックしてくる粘液を啜り、可奈子の性器にこびり付いた血も残留体液も綺麗に舐めとって行く。

 余りに小さい肉芽も皮を剥かれて吸いだされ、
 尿道口も舌先でいびられ、
 アナルに続く浅いクレバスも舌が這いまわり、全てを奪ってゆく。

 自分の恥ずかしい部分を口で愛撫される事も相当恥ずかしいのであるが、それより何より兄の精液が奪われる事の方がもっと嫌だった。
 それは自分のモノなのだ。
 自分がもらったモノなのだ。
 それを奪われる、飲み干されるという情況は、兄の想いが成就した時以上の虚無感を与えていた。

 そんな下劣な略奪者となっている しのぶであったが、彼女自身、何故こんな事ができているのか全く理解できていない。
 確かに彼の精液を美味いと感じている。
 大好きだし言えるし、嫌悪も無い。

 だが、ここまであさましく精液を求める自分が何時生まれたのかが全く解からないのだ。

 漫画等と違って本当の愛液は、本当の本気汁というものは、薄白くて生々しいものでかなり特殊な臭いがする。
 その匂いも十人十色千差万別で、キツイ酸味のある匂いがする者もいれば、甘酸っぱい匂いのする者もいる。可奈子はどちらでもなかったのであるが、初体験を終えた後の可奈子のそこは、異様な程甘い香りがしていた。
 特に膣内射精を受けて快感を得た後は如実にそんな匂いへと変わっていた。

 しのぶはその匂いに魅かれてしまったのである。

 無論、景太郎の精液臭もたまらない。脳が焼け付くほど興奮するし、顔にかけられた時など、余りの気持ちよさに僅かながら失禁してしまったほどなのだ。
 その双方の臭いが混じり合ったカクテルが膣から溢れ出ているというのに、しのぶがどう我慢ができるというのだろうか?

 ちゅぱ、ちゅぱ、ちゅぱ……はふぅ…むぐ…ぢゅるぢゅるぢゅる…


 「やらぁ、やらよぉ……っ」

 可奈子が泣いて懇願しているというのに、しのぶは止める事が出来ない。
 確かに可奈子の鳴き声は心苦しいし、自分もそうされれば辛いだろう。
 だが、そんな彼女の泣き声が、何故だかしのぶを更に興奮させ、とろとろと愛液を滴らせているではないか。

 しのぶはサドではなく、どちらかと言えばマゾである。
 にも拘らず、しのぶは可奈子の泣き声に言い様の無い興奮を高めていた。


 ぐぃ…


 「ふぇ……?」

 そんなはしたなく精液を啜っていたしのぶの尻を何者かが掴み取った。
 驚いて顔を上げるが、考えて見れはこの場にいるのは自分を入れて三人。そのうち一人は自分が虐めているのであるから、残るは一人だ。

 「せ、先輩……?」

 ふー……ふー……


 今だ正気に戻る様子も見せない景太郎が、しのぶの尻を掴んで彼女の圧し掛かろうとしていたのである。

 「あぁ…あああ……」

 しのぶは理解した。

 次は、私なのだと……

 迫ってくる景太郎の腰より早く、しのぶの亀裂を擦る熱いモノ。

 それが愛しい先輩の生殖器であると感じた瞬間、

 ずぶ…


 その熱い熱い頭が、ついにしのぶの中にもぐりこんで来た。




*************************************************************

 朝夕の寒暖さが未だにキツイ今日この頃。如何お過ごしでしょうか?
 Pixyでございます。

 この気候によって家族全員(と言っても、叔父と二人だけですが)が風邪を引いてしまいました。トホ~~~……

 皆様も風邪に気をつけてくださいね。

 感想掲示板を見、ああ、私めの文でも色々思ってくださっているのだネェと感心してたりします。
 ただ、展開が早いと仰られる方もいれば、丁度いいと言ってくださる方もいて、どーすりゃいいのよさ~~っ!! と混乱することもしばしばです。

 いえ……熱暴走しているだけかもしれませんが……

 ですが、丁度良い長さが今だ掴めていないのもまた事実。より一層の精進が必要だと確信しました。

 今回はちょっと短めではありますが、また次回に……






[2319] Re[9]:Dotage ~妄愛 <壱拾捌>~  (ラブひな)
Name: Pixy◆dcc9f442
Date: 2007/05/23 20:37


 思い出というものは美しく残るもの―――
 特に大切な思い出ならば……

 例え恥ずかしい出会いでも、例え他人には笑い話であったとしても、だ。

 前原しのぶという少女の心に残っている彼との出会いも、他人にとっては笑い話であり、しのぶにとっては恥ずかしい話である。
 しかし、当の本人にとっては愛しい先輩との邂逅の記憶。恥ずかしさも浮かぶが、それでも思い出として大切なモノなのである。

 ず、ぬ、ぬ、ぬ、ぬ……


 「あ、はぁ、はぁ、くぅん…」

 入ってくる。ゆっくりと。自分のなかに。

 恥ずかしがり屋だった筈の少女が、
 妄想持ちで、どこか耳年増ではあったが純情で、直に真っ赤になっていた少女が、
 愛しい先輩の義理の妹の股間に顔を押し付けたままの四つん這いの格好で、今、件の先輩に背後位で突かれ様としている。

 ビク、ビクビクビク…ッ


 「あ、ああっ あああ……っ」

 粘膜を抉られる感触に しのぶの身体が細かく震えた。
 前につんのめってしまい、可奈子の股間に鼻先を埋めてしまう。

 「あう…っ ひ…っ!」
 「ンんん……っっ」

 その刺激に可奈子の腰が跳ねた。
 滲む精液で顔を汚すも、当然しのぶは気にならない。

 『そうだった……』

 ごく……喉を鳴らせて唾と一緒に可奈子と景太郎のカクテルを食道に流し込みつつ、しのぶは背後の気配に集中した。
 尻に手が掛けられ、可奈子同様、人目に曝した事のない性器と菊門が外気と景太郎の視線を浴びてヒクつきを強くしている。


 『そうだったんだ……次は、私なんだ……私に入れてもらえるんだ』


 激しい景太郎の息遣いを背後に感じる。
 獣欲に身を焦がしている景太郎同様に、しのぶの頬も期待に赤く染まり、眼もドロリと濁っていた。

 未だ薄ピンクである若い性器も、激しい性的興奮によって紅く色付いて肉柱の侵攻を大歓迎で持って受け入れている。
 太股を伝い落ちるのは見るまでも無く愛液。それも薄白い本気汁。

 突き込まれ、処女をもらってくれて、激しく犯してくれる。
 まるで大人の玩具が如く、性欲処理のペットとして扱ってもらえるであろう至福の時。


 今、正にその瞬間が訪れようとしていた―――


 パチン…と頭の奥で何かが切れたような気がする。

 性的欲求の強さ故か、彼を求める肉慾故か、しのぶの心に掛かる負担はあまりに大きく、純粋だったものが耐え切れずに歪曲してしまう。

 歪曲した想いは捻じ曲がり、とぐろを巻き、獣欲,愛欲をも溶かし込み、原形を留めないオブジェとなる。

 どろどろに、ぐちゃぐちゃになった“それ”から生まれたものは、願望の記憶。
 可奈子と同様、しのぶの心が産み落とした白濁に穢れ切った肉欲の偽記憶だった。


 初めて出会ったのは露天風呂の中。
 新しい管理人となった彼の命令で岩場に腰を下し、はしたなく股間を指で広げて膣の中まで彼に曝した。
 途中、素子先輩が入って来て二人して彼に口で奉仕する。

 彼の受験勉強の助けになるよう、テーブルの下でずっと彼に奉仕し続けていた。
 東大に受かったら犯してあげるからねと言われ、嬉しさのあまり絶頂してしまった。だけと残念ながら不合格。仕方なく来年に持ち越す。

 折角受かったのに本人はその事を気付かず海外逃亡。
 合格を伝える為にパララケルス島まで追いかけて行き、そこで出会ったニャモちゃんと共に身体で合格をお祝いした。

 留学直前に“何でもいう事を聞く券”をもらい、『留学から戻ったら先輩の肉奴隷ペットにしてください』と記入して手渡した。
 彼は、
 『うん。戻ったら しのぶちゃんはオレのペットだ』と言ってくれた美しい思い出……



 『ああ、そうなんだ……私は先輩のペットになれるんだ……』

 歪んだ記憶も全て受け入れ、後からの挿入も全て甘受するしのぶ。


 何故だろう? 大切な思い出を自ら汚しているのに。
 何故だろう? 自分で白濁とした過去に作り変えているのに。

 何故だろう? こんなにも気持ちが良いのは……

 思い出を汚すという行為は、他人にされると凄まじい怒りや憤りを齎す。
 無論、自分で行ったとしても同様の筈だ。そうでなくとも、自己嫌悪に陥ったりする。

 それでも彼女は、
 それでも前原しのぶは、恰も幼児が泥遊びに興じるかの如く、その“大切な思い出”にベタベタと白濁色の粘液を塗りつけて楽しんでいるではないか。
 自分がこの寮に来た理由すら、彼に夜這してほしいかったからなのではと錯覚してしまうほどに。

 身も心も、彼に捧げ切るという悦楽に酔い痴れているのか、
 はたまた単に彼女の本性がマゾヒストなのであるかは別として、しのぶは可奈子同様に、外から漂ってきた甘い香りを嗅いでから精神の歪みが激しさを増していた。

 今も、景太郎の猛り狂うペニスの到来を、涎を可奈子の恥丘に垂らして待ち望んでいるのだ。


 熱い肉の塊が幼いヴァギナを割って奥に入ろうとするも上手く行かない。
 
 しのぶも小さい尻を振って催促するが、当然そんな行動をすれば余計に入らないだろう。
 それでも流石にこれだけ手古摺れば しのぶとて小陰唇が巻き込まれて抵抗が増えている事に気付く事ができた。

 手を後に伸ばし、ぐいっと広げて抵抗を減らす。
 ずりゅずりゅと抉りこんでくるペニスに最大級の悦びを感じつつ、ついでに腰を少し持ち上げて彼の助けをする。

 ずぢゅ…


 「ン、あ…っ」
 「ひぃんっ」

 角度が合った所為だろう。更に奥に突き刺さり、遂に行く手を遮る膜にまで辿り着く事が出来た。

 処女とは言っても淫猥なる少女となった しのぶだ。
 犯して欲しいし汚して欲しいという欲求は、そこらの熟れた人妻すら凌駕する。
 だが、痛みに対する恐れや抵抗力は元のまま。だからであろうか、無意識に身体を前に逃がしてしまい、その柔らかい頬でもって可奈子の股間を擦ってしまった。

 顔が精液と愛液でベットリと汚れるが、それは気にならない。
 どちらかと言うと、可奈子の方がしのぶの手によって剥きだしにされた肉芽を擦られて、強い刺激によって息も絶え絶えになって大変だった。

 無論、膜とは言っても完全に行く手を阻む事は不可能に近い。
 その粘膜とて早く入ってほしいのだから、真面目に純潔を守る仕事なんぞする訳もないし。
 元々膜には小さな穴が開いてたりするものであるが、肉の凶器はそこにぐぢりとめり込んだ。

 「ひ…っ」
 「あぅ…ンっ」

 また身体がずり上がり、可奈子の股間が擦られてしまう。
 尖ったままの しのぶの乳首がクリトリスを擦りあげ、その胸にまで精液を塗り付けてゆく。

 それでも追い詰めるように景太郎が動く。

 ぐにぐにと赤黒い亀頭でもって粘膜が押し広げられ、何物の侵入も許した事の無い膜の奥にカウパーを零してじんわりと汚してゆく。

 「ンン、ンぁああ……っっ」
 「ひ、ひぃん……っっ」

 股間への刺激は去ったが、全身への刺激が発生した。
 ずり上がり続けたしのぶは、遂に可奈子と顔をつき合わせる位置にまで移動してしまったのだ。

 自分に出された精液が付いた胸で自分の胸を刺激され、尖った乳首同士が触れ合って、未だにオルガスムスの余韻が抜け切っていない可奈子の神経を虐めている。
 しかし、そこまでは逃げられたのであるが、しのぶの膝が可奈子の蟹股になっていた足の膝裏に引っかかり移動は止まっている。
 一瞬でも停止すれば捕まるのは必至。
 景太郎はしのぶの尻から手を離し、その腰を抱き締めるようにして思い切り突き込んだ。

 ずりゅ……ぶづん……っ


 「っっっっ!!!」

 見事、しのぶの処女は引き裂かれた。
 可奈子ほど処女膜は硬くは無かったが、その奥の感度は可奈子以下だった。

 つまり、物凄く痛いのだ。

 「いっ……痛……っ
  う、うううう……い、痛い…痛いよぉ……」

 彼のモノになれたのは嬉しいし、初めての相手が愛しい先輩なのは途轍もなく嬉しい。
 止めて欲しくも無いし、もっと自分を使って欲しいという欲望も全く萎えていない。

 だが、痛いのは別問題なのだ。

 そんな涙を零すしのぶを見、可奈子はきゅっと抱き締めてその可愛い耳元に呟いた。

 「大丈夫です。
  大丈夫ですよ。しのぶさん……」
 「か、可奈子さん、可奈子さぁ…ん……」

 ぐす、ぐすっと泣いているしのぶに対し、可奈子は接吻くちづけでもって涙を拭ってやり、柔らかく抱き締めたまま、

 「本当に大丈夫ですから……私もそうでした。
  お兄ちゃんのが直に馴染みますから……」
 「うう……ひっく……」

 と安心するように諭してやった。

 何だかんだ言っても、しのぶは年下なのだ。
 そんな彼女に奇妙な愛しさを感じた可奈子は、彼女にキスをしながら少しでも痛みが和らぐように身体に愛撫し始めていた。

 同時に起こるのは景太郎のピストン。
 痛々しく肉を割られている しのぶのそこを蹂躙せんと侵略を開始したのだ。

 『お兄ちゃん……もう、せっかちなんですから……』

 と、痛みに喘ぐしのぶを抱き締めたまま、可奈子は微笑を浮かべていた。


 これで、しのぶも自分同様に天国に堕ちるのだから………


 永遠に続く、淫獄という名の楽園に




―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
                           -盲・愛-
                            File:壱拾捌

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――




 ずぐ、じゅぐ、ぐず、ずぐ、ぐぬ、ずぐっ、


 「ひっ、くっ、つっ、ううっ、ひぃんっっ」

 犯される様に抱かれる……とはよく聞くが、これは正にそれ。
 初体験が背後位で、尚且つ痛みによって泣いているしのぶに対して何の遠慮もなく腰が振られているのだから。

 それに彼は正常な意識を持っていない。

 しのぶが用意した香と、可奈子が使用した薬物との相乗効果なのだろうか、完全に理性を吹き飛ばして淫獣と化している。

 犯す。種をつける。孕ます。

 その意識に乗っ取られているかのような非道の行為。
 意識がある彼に抱かれるのなら兎も角、彼では無い彼に犯されるというのは最悪の体験である。


 いや……


 最悪の体験の“筈”であった。




 「んっ、んん、くぅん……っ せ、んぱぁ…いぃ……」

 ぢゅぐ、ぢゅぐ、ぬぢゅ、ぐぢゅ、ぶぢゅっ、


 左程の時を待たずして しのぶの痛みの喘ぎが、段々と甘いものへと変わっていった。

 眉間の刻まれていた皺もいつしか消え、目尻が垂れ坂っている。
 股間が奏でる淫靡な音も、泥田に踏み入るようなそれへと変化しており、しのぶの快感の度合いが上がっている事を示していた。

 肉厚の肉キノコのエラは遠慮なく未成熟の膣内を研磨し、肉襞を掻き毟る。
 愛液が滴るほど増しているのも手伝って、ぞぶぞぶと肉柱のカサがキツイ膣を滑らかに行き来し、膣粘膜全面に雄の匂いを刻み付けて行く。

 その淫靡な作業によって掻き出されて太股を滴っているのは愛液と血……そして、濃いクリーム色の精液だった。
 景太郎は、何時の間にか しのぶの締め付けに負けて射精していたのである。射精しつつピストンを行っていたのだ。

 「あ、ひゃ、あふ…ン、うン、ん…っっ」

 可奈子の上で体を前後に揺すり、眼を瞑って景太郎を甘んじて受け入れているしのぶ。

 いや可奈子にしてもそうなのだが、二人はまともな意識を持っていない景太郎に犯されているというのに、嬉々としてそれを受けて入れているではないか。

 意識がどうの、倫理がどうの、愛の言葉をもらって抱かれる…等、二人の脳裏には無かった。
 あるのは、『景太郎に抱かれる』と言う事実。これに尽きる。

 彼のものになる……その強い想いでここに来ている二人が、彼と想い合って抱かれる事に固執したりしないのだ。
 そんな物は後で幾らでも出来る。
 素子の…そしてキツネの言葉によれば、“枠”に入る事が出来たなら、後は景太郎は自分らを女性として、恋人として接してくれるのだ。それからでもいいではないか。
 その時の事を謝る景太郎に対し、『だったらこれからは優しくして…』というシチュエーションすらありえるのだから……

 今大切なのは、景太郎に初めての男になってもらい、オンナしてもらう事。それに尽きるのだ。


 いや……?


 景太郎に処女を奪ってもらい、所有物にさえしてくれればどうだっていいのかもしれない。


 ぐい…っ


 「え……?」

 唐突に景太郎が、可奈子と抱き合っていた しのぶの腰を深く掴み、手前に引いて可奈子と引き剥がした。
 「あ…」と、名残惜しげに手を伸ばす可奈子を無視し、景太郎はしのぶを抱き締めたままどっかりと座り込んだ。

 ずん…っっ


 「ンぁああああっっっ!!」

 背面座位にされてしまった事で、しのぶ自身の体重により今まで以上に奥にまで突き刺されたペニスがズブリと子宮を押し上げる。

 今まで以上の強い圧迫感。そして突き上げられた衝撃がしのぶを襲う。
 が、しのぶの中は既に愛液と精液でたぷたぷになるほど濡れそぼり、柔らかさを増していたので左程の苦痛は無かった。

 無論、起こり得る筈も無い事である―――


 確かに人間には快楽中枢というものはある。そこが無ければ快楽に酔ったり、何かにハマったり、夢中になることも無いのだから。
 だが、快楽を感じる神経そのものは無いのである。

 痛覚神経等の感覚が様々な刺激を受け、慣れてゆく事によって快楽を紡ぎ出すのだ。
 だから初体験…おまけに自慰を含む性体験そのものが少ない しのぶが快感に酔う事などあり得ないのである。

 それでもしのぶは、景太郎に跨らせられ、後からささやかな胸を揉みしだかれ、腰を捻りこまれ、女汁を股間から滴らせて景太郎の陰嚢を濡らし、唾液が零れる唇を景太郎の唇で塞いでもらい、セックスという行為に溺れきっていた。

 可奈子が四つん這いでにじり寄ると、さっきしのぶ本人が透かした障子の隙間から零れる月光によって結合部がはっきりと照らされていたのが目に入る。

 自分は生えていないのに、歳下のしのぶが“そこそこ”生えているのは何だか納得できないものがあるが、それは兎も角として、
 その若草の直下。そこの亀裂が大きく口を広げて兄のぶっといお肉を白っぽい涎を垂らせて食べているのが良く見えた。

 『しのぶさんのが……あぁ…あんなに健気に口を広げて……』

 ぶぢゅ、ぶぢゅ、と物凄い下品な音もしているが、自分もさっきそんな音を立てていたのだろう。
 未だに股間から滴る精液は子宮からのフローバックだ。これだけ出されたのであるから音も凄かったに違いに無い。

 ぬぢょ…と音が更にくぐもった。
 恐らく、可奈子に見られているのを感じ取って更に興奮したのだろう。
 
 可奈子はうっとりと しのぶを陵辱する兄の逞しい肉柱によって急速に開花されてゆく少女の様を眺めた。

 ああ、彼女はついこの間まで純情可憐だったのに。
 ああ、この間までキスですら真っ赤になる少女だったのに。

 そんな彼女は目の前で背面座位で男と交わり、乳首を尖らせ、喘ぎに喘いでいるのだ。
 おまけに処女を失ったのはついさっきの事である。

 初体験直後にアクメを感じられるとは……嗚呼、何と淫乱で汚らわしい少女だろう。

 『そして私も……』

 と、心の中で苦笑しつつ、兄の注挿に合わせて顔を出したり引っ込めたりしている しのぶの肉芽に唇を寄せ、

 ちゅ…れろ~……


 吸い付いて舌で嬲った。

 「ひ、ひぃんっ!!」

 しのぶの腰が撥ね、可奈子の顔に何かがぷしゅっと浴びせられた。
 外的要因にていきなりアクメを迎えたのである。

 「しのぶさんのくせに生意気ですね……」

 等と訳の解からない事を呟き、可奈子はその舌で持って結合部を舐めに舐めた。

 本当ならその肉芽を甘噛みし、舌先で弄り倒して泣き声を響かせたいのであるがそう上手くはいかない。
 何せしのぶは景太郎によって貫かれて腰を揺すられているのだ。下手をすると噛み具合を間違えて傷つけかねないのである。

 『残念です……
  まぁ、ここを本格的に虐めるのは次の機会に取っておきましょう……』

 と、胸の中で呟き、今回は舌だけで虐める事にする。それだけでも楽しいし、のカクテルを味わえるのだから由としよう。

 だが大変なのはしのぶである。
 満願が叶った事によって元々の性格である恥ずかしがりやの部分が戻り始めていた矢先に可奈子のクンニリングスだ。
 今だ景太郎と繋がっている事もあり、その性感はしのぶの許容量を飛び越えていた。

 可奈子がひなた荘に来た当初の頃から比べ、今の彼女に対する気持ちには雲泥の差がある。
 景太郎に対する家族の枠を超えた想いに人としての異質さを感じていたものであるが、いざこういう関係になってみると可奈子の気持ちは痛いほど理解できていた。
 
 だから可奈子に対して強い連帯感、同志の絆を感じている しのぶは、強い絆を持っているからこそ恥ずかしさも強く感じているのだ。

 その羞恥がまたスパイスの様な刺激となってしのぶの悦楽を嬲り、性感を突き上げてゆく。

 どぶっっ!!


 「ひっ、あぁあっ……くぅううっっ!!!」

 何度目かの射精。
 だが、勢いは最初のまま。
 そのホースからぶち撒く様な勢いに、子宮は凄まじい刺激を受けてしまい、しのぶは眼を見開いて歯を食いしばった。

 無論、快感で…だ。

 どぶっ、ぶぶぶぶ、どぶっ、どぶっどぶぶぶ、


 ぶぢゅる、と隙間から精液が逆流し、可奈子を嬉々とさせた。
 嬉しげに吸い付き、お兄ちゃんの液をブランデーの様に舌で転がして味と匂いを堪能する。

 ぺたんと布団の上に座り込んだ可奈子は、精液の味にって軽くアクメを向かえ、シーツにぢわりと染みを広げた。

 どぶ、どぶ、ずびゅ、ずびょ、ずひ、


 「あふ、か、はぁ…ン…ふ……くぅ~~……っっっ!

 しのぶも自分の子宮おなかの許容量を超えた精液を注がれた事によって遂にオルガスムスを向かえ、白目を剥いて意識を飛ばしてしまった。

 がくん…と力を無くして身体を重くしたしのぶ。
 ゆるゆると引き抜かれてゆくペニスは未だに衰えの片鱗も見せてはいないが、しのぶのそこはぱっくりと口を広げて脱力仕切っていた。

 当然ながら凄まじい量の精液が逆流してくる。

 「きゃあ…♪」

 可奈子は嬌声を上げてしのぶのヴァギナに吸い付き、さっきのお代えしとばかりに“お兄ちゃんの精液”を飲み啜った。

 しのぶの悔しげな声が聞こえないのが残念であるが、意識を失っている隙に全ていただいたというシチュもいいかな? 等頭の片隅で思いつつ、指で小陰唇を割り広げ、襞にまで丁寧に舌を這わせ、反対手の指で精液を掻き出して砕いたプリンの様に濃いお兄ちゃんの精液を舐めて飲んで啜って堪能している。

 初めて飲んだ時から気になっていたのであるが、兄のそれ。兄の精液は、量もさる事ながら普通と違いすぎる点があった。

 幾らなんでも美味過ぎる
のである。

 いや、恐らく見知らぬ十人の女性に飲ましたとしても、十人ともから美味いという答が返ってくるだろう。
 何故かそれ程“美味い”のだ。

 無論、可奈子が景太郎以外の精液を啜る事は死んでもありえないであろうから味の証明なんぞする方法など無いのであるが。

 さっきの意趣返しか、膣内を啜る可奈子は容赦が無い。
 ぱくぱくと蠢きつつ口を閉じてゆく膣道を、左右の手指で繰り広げて舌を突き込む。
 フローバックの量が少しでも緩めば、ぴょっこりと顔を見せているクリトリスを甘噛みして刺激し、筋肉を“絞めさせて”搾り出させる。

 舌先にぴりっとくるのは血の味だろう。
 さっきはしのぶ吸われたのだから、取り返したという訳であろうか?

 尤も、可奈子の血液型はB型であるし、しのぶはO型。血液交換は不可能だ。いやそれ以前に、吸血鬼でも無い限り咥内吸収など出切るわけも無いのだが。

 ずず…と下品に啜る音を立てていた可奈子の口の中に、明らかに物体と言える感触を持つ小さなものが入ってきた。
 くみくみとした奇妙な歯ごたえの、微かに血の味がするそれ。

 それが何か直感的に悟った可奈子は、物凄い笑みを浮かべてそれを執拗に咀嚼し、跡形も無くなってからゴクリと唾液ごと喉奥に流し込んだ。
 細い可奈子の喉を滑り、胃に流れて行くその感触。
 その感触を全身で味わっている可奈子の眼は恍惚として鈍く光っており、その身体は奇妙な快楽に細かく震えている。

 じわりと涙も滲むが、その涙の意味は可奈子自身にも理解不能。それほど感情が高まっているのかもしれない。


 可奈子が喰ったもの……


 おそらくは しのぶの処女粘膜の一片……

 可奈子は、しのぶを“呑んだ”という快楽に酔っていたのである。


 そんな風に景太郎に身を預けた しのぶの、膣内に残るお兄ちゃんの精液を堪能していた可奈子であったが、
 その頭の上から零れた小さな呟きを耳にし、訝しげな顔で上を見上げた。

 「足りない……」

 聞き間違えるはずも無い。
 間違えようも無い大切な人の声。

 好いたらしいお兄ちゃんの声だ。

 『意識が戻ったの?』

 等と、顔を精液と愛液混じりにしたまま、見上げていた可奈子。

 その可奈子にぐらりとしのぶが倒れ掛かってきた。

 「あ…」と手を伸ばすが、腰に力を入れられずに押し倒される形になってしまう。
 布団の上なので痛みもないが、その衝撃でしのぶの意識も何とか戻って来た。

 「え……あ、あれ………」
 「あ、気が付きましたか?」

 しのぶを抱き締めたままそう問い掛ける可奈子。
 気が付いたら可奈子に抱き締められて横になっている しのぶは状況把握が出来ない為に呆けてしまう。無理もないが。

 お互いの身体に付着した精液と自分の汗が混ざったもので二人ともぐちょぐちょになってはいるが、不思議と不快感は無い。
 三人分の汗が乾いてゆく匂いも、それに混ざった精臭も、可奈子にとっても しのぶにとっても、全てが好ましいモノへと成り果てている。

 性奴隷の様なものであるが、二人は全く気にもならなかった。それで良いのだと。それが正しいのだと言わんばかりに……

 「え、えと……可奈子さん一体どうなって……」
 「まぁ、何と申しま………んひぃっ?!

 しのぶの質問に、可奈子は下半身から突き上げられた快楽によって答えられなくなった。

 ぎょっとして しのぶが振り返ると、自分らに抱きつかんとする位置にいる景太郎……そして、自分の尻に当たる彼の腹部。

 景太郎は、しのぶと可奈子を重ねたまま、可奈子に挿入していたのである。

 「足りない…足りないんだ……
  しのぶちゃん…カナコ……」

 振り絞るような声を景太郎が洩らす。

 彼に問い返そうと、身体を起こそうとした しのぶの腰を、

 「ん、ぁあああ……っっっ!!

 腰を反らせて快感に狂う可奈子の手が強く抱き止めてしまった。

 「か、可奈子さん?!」
 「んっ、あっ、あっ、く…あぁあ……っっ!!
  お、お兄ちゃぁあんっっっ」


 驚くしのぶの目の前で、可奈子は凄まじいよがり声を上げていた。
 音量そのものはそうでも無いのであるが、その声は腹の更に下から出されており、強い力と淫気に満ち溢れているのだ。

 可奈子は身を捩り、涙と涎で顔をベタベタにし、白目を剥いてよがり狂っていた。

 ぢゅぼっ、ずぢゅっ、ぐぢゅっ、ぐぢょっ、ぶぢゅっ、ぶぢょっ、ずぢょっ、ぬぢゅっ、


 激しすぎる音が下腹の位置に響いてくる。
 触れ合っている下腹部から直接響いてくるようだ。

 腹の中を行き来する景太郎のペニスが蠢く感触すら肌越しに伝わり、しのぶの方もかなりへんな気分になってきた。

 と……

 じゅぼん……
 ずぐぅうううう………


 「え? ンぁああっっっっ?!

 いきなり引き抜かれ、今度はしのぶが突き込まれた。
 ベトベトにこびり付いている可奈子の愛液を潤滑油に、いきなり膣奥に突き込まれたそれは、しのぶに何の遠慮もなく好き勝手に膣内を穿り返して、暴略の限りを尽くしてゆく。

 「んひぃっ、きゃ、あウっ、ひぃっ、ンぁあっ、ふわぁああっっっっ」


 今度はしのぶが可奈子と同様のよがり方をする。
 眼は白目となり、涎と涙をボタボタと可奈子の顔に零して首を振って喘ぎに喘ぐ。

 少女だとか未成年だとか、そういった括りは全く意味を成さない。
 しのぶの様からはセックスの味を知り尽くした淫女のような姿しか見出せなかった。
 ついさっきまで処女だったと言われ、はたして何人が信じるだろう?

 ペニスを突き入れられる快感は膣が慣れてからであるし、精飲をして悦べるのはそれこそもっと後だ。
 膣内の肉襞は全身全霊で彼に奉仕し、滴る愛液は熟練の娼婦ですら眼を見張るほど。

 明らかに彼女らの身体は変貌を遂げているのだ。

 どぶっどぶっどぶっ


 「んぁああああああっっっ♪」


 膣内射精でアクメを迎えた。
 その声の甘さからも、しのぶがセックスに慣れ切った女であるとしか考えられなかった。

 射精しつつ、ぢゅぼっと音を立てて彼女の膣から肉柱を引き抜く。
 しのぶの若い膣は真っ赤に染まって名残惜しげに口を広げたまま。そこにボタボタと精液が掛かる。
 引き抜かれたペニスはまた可奈子の中に突き入れられ、入り口から順に奥まで遠慮なく膣内を精液で汚してゆく。

 「んはぁああっ、あぁああああ……っっっ♪」


 可奈子も嬌声を上げてそれを悦んだ。
 浴びせかけられる精液は何よりの褒美。
 愛の囁きの勝る語らいだ。

 膣内を穢してくださる“聖”液はこの少女らには何より勝る至宝なのだから。

 「足りないよ……全然足りない……」

 だが、快楽に震える二人は兎も角、散々精液をぶち撒いている筈の景太郎の方は今だ完全な絶頂に至っていない。
 体は兎も角、心が飢えたままなのだ。
 それに追従するかのように精巣も人外の能力を発動し、この瞬間にも腎虚でくたばってもおかしくない量の精子を作り続けていた。

 そして肉茎の回復力……いや、まだ一度も萎えてもいないので回復とは言うまい。
 肉茎は散々処女膣を研磨していたというのに海綿体を疲弊させていないのだ。

 ある一定以上ペニスを酷使すると、皮の下の海綿体は断裂したりして二度と使い物にならなくなったりする。
 だから使いすぎには注意が必要なのだが……景太郎のそれは異常な事であるが疲弊の“ひ”の字も無い。まるで一週間ぶりに勃起したかのように健在なのだ。

 彼の身体を蝕む淫気は、彼が本来持っていた異様な程の耐久力と相俟ってその欲求の上限値を突き破っていた。

 ぬろぉ~~……ぬるっ、ぬぷっ、ぶちゅ、ぷぢゅる、


 「ひゃあっ」
 「やぁンっ」

 二人の間にそれを挟み、重ね餅を楽しむ。
 ちゅるちゅるとすべらかに滑るのは精液と二人の愛液のおかげ。
 しのぶの肉芽は景太郎の陰毛によって刺激され、
 可奈子の肉芽は景太郎の陰嚢によってノックされている。
 無論、前後するペニスも二人を虐める材料だ。

 ぬる、ぬぷっ、ぢゅちゃ、ずぢゃっ、ぷぢゅっ、ぶぢゅっ、


 「ひ、や、は、ン、んあっ、やンっ」
 「あぁ、はぁ、ひぃ、んふぅっ、くうんっ」

 腰を合わせれば合わせるほど、
 腰を振れば振るほど、
 抱き締めれば抱き締めるほど、

 間に挟まれた熱いペニスの感触がダイレクトに伝わり、じぃんじぃんと子宮から痺れが拡がってゆく。
 汗と混ぜられてゆく精液の感触もまた堪らない。
 上になっている しのぶのヴァギナから滴り落ちる精液と愛液が更に潤滑油を増してヌルヌル感をアップさせる。

 それだけでも意識を失いかねないほどの快感なのだ。

 これでイったらどうなってしまうんだろう?
 どうされてしまうんだろう?

 恐れにも似た期待感。
 怖気にも似た誘惑に二人は打ち震えていた。

 と……

 ぶびょっ、ずび、ずひっっ


 「ひ、ひゃあっっ」
 「あぁあああっっ」

 先に景太郎が果てた。

 ぶびょっ、ぶびっ、ずびょっ、ずびょっ、
 

 「きゃぁあ……っっ!!!」
 「ん、くぅうう……っっ!!!」

 下腹部の間で脈動し、
 腹にぶち撒けられ、
 胸を這い上がって、
 二人の下顎を叩いた。

 人外の精力を持ってしまった景太郎ならではである。
 全身に精液を浴びせられた形となった二人は、強制的にオルガスムスを迎えさせられて、両足を引き攣らせていた。

 精液を浴びて絶頂を迎える。
 初体験でそれは絶対にありえない。
 にも拘らず、二人は狂気一歩手前まで追い詰められた快楽の余韻に喘いでいた。

 変えられた。
 或いは、“変えてもらった”のだろう。

 だが、塵ほどの後悔も無い。

 淫魔だとか淫乱だとか罵られようが知った事では無い。
 彼と一緒にいられるのなら、
 彼のモノになれるのなら、喜んで変態へと変わろう。
 それが彼女らの本心なのだ。


 ぜぇ、はぁ、と息を乱したままの二人。
 少女と少女の間に精液を挟んだ、淫ら過ぎる肉のサンドイッチ……そんな物を前にして冷静でいられる男などいるものか。

 当然、景太郎もその一人。

 ぞぶ……っ


 「ひゃぁ…っっっ」
 「あ、あぁあああっっっっ」

 どちらとも無く悲鳴が上がる。
 快楽によるものか、快楽の限界によるものかは判断がつかないし、理解も出来ない。

 それ程の獣欲が景太郎の心を焼き焦がしているのだ。

 「足りないよぉ……もっと、もっと……」

 ずぢゅ、ぐっちゅ、ぐぢゅっ、ぶっちゅ、ぶぢゅっ、


 「ひ、あ、あぁああ……う、あ……」
 「ふぁ…も、もぅ……ら、め……」

 果てし無い官能の渦に沈められ、意識すら千切れとんだ二人。

 意識はあるものの理性を無くした淫獣に嬲り潰されているというのに、

 それでもまだ、彼女らは拒否の兆しも浮かべてはいなかった…………




 「はぁ……くぅ……」

 月の位置が変わり、頭上を越えている。
 時間して十二時と言ったところであろうか?

 ゆっくりと身を起こすと、廊下には自分の流した愛液が広がっている。
 カチカチに尖った乳首に襟の折り返しが引っかかり、一旦止まってからはらりと落ちた。
 身に着けているものはその肌襦袢一枚。
 それも着物用では無く、道着の下に着用するものなので短いものだ。
 全裸に肌襦袢だけの少女が、月明りの廊下で何時間も自らを慰めていた様は、傍から見れば如何なものだった事であろう。
 何せずっと弄りつつけていた所為で指がどこかふやけていたくらいのだから。

 部屋の中の悲鳴や喘ぎ声はもう聞こえない。
 覗いてもよかったのであるが、そうすれば障子に影を落としてしまうからそれも出来ず、離れた所で気配を窺う事しかできなかったのだ。

 好いた者同士の睦み合い。
 流石にそれを邪魔する程の野暮な女では無いのだ。

 この、青山素子という少女は……


 景太郎に抱かれた時に彼女が気付いた事であるが、素子の性欲は月齢に比例している。

 いや、彼女の生理の周期も月齢に近いものがあったのであるが、素子は月の満ち欠けに関係があると確信しているのだ。
 実際、満月に近寄れば近寄るほど、彼女に性欲は止め処も無く跳ね上がってゆく。

 まだ二回であるから信憑性にかけるが、月光を浴びて更に確信を深めていた。
 満月の夜だけは自分にしてくれとキツネにも許可をもらっている程に。
 
 今夜もせめて彼の声だけでもとここに来ていたのであるが……やはり性衝動は我慢できなかったようだ。

 汗と横たわっている内に背中まで染みている愛液によって襦袢はベトベトだ。
 個別に洗うのは寮の常であるが、洗濯場にいる率が高いしのぶをこれからはさほど気にしなくていいのだけは助かった。
 何せ家事……とりわけ洗濯場と台所はしのぶとの遭遇率が高いのだから。

 兎も角、部屋に戻って一度休むとするか……
 そう別館を後にしようとした素子の耳に、ススス……と障子が開く音が聞えてきた。

 「うん?」

 と眼を向ければ、そこには人の影。
 いや、認識の必要も無い。
 好いたらしい男なのだから。

 「……モトコちゃん……」
 「う、浦島…先輩?」

 景太郎は全裸だった。
 いきり立ったままで、全く萎えていないペニスを目にして素子の胸が高まった。

 部屋の中には二つ、肉人形が転がっている。

 息も絶え絶えで眼も光を失って虚ろ。
 全身を精液と愛液、唾液と汗によってべっとりと汚し、はしたなく広げられた足の間からは精液を逆流させている。
 それはもう、何人に輪姦陵辱されたのかと思う程に。

 「駄目なんだ…」
 「ど、どうかしたのか? 何が……」

 べたべたと粘液の付いた足で廊下を踏み、素子の下に歩み寄って来た景太郎は、

 「駄目なんだ……全然足りないんだ」
 「だから何が……ンあぁあっっ!!

 いきなり素子の片足を引き上げ、長時間の自慰によって潤み切っているヴァギナにいきり立ったままのペニスを突き刺した。

 ゾブリ…と強い感触を景太郎は確かに感じ、腰を震わせて射精に耐えた。
 早すぎる射精感であるが、この感触は景太郎の身体が求めて已まぬものだったらしく、カサの裏側にまでみっちりと巻きついてくるような襞の奉仕は一瞬にして景太郎を歓喜の海に沈めていた。

 素子の方も同様で、自慰によって景太郎のいない無聊を慰めていた訳であるから、自分の膣内をきつく埋めてくれる彼の肉柱には全身が震えた。
 やや変則な形の対面立位になって繋がる雄と牝。

 だが、お互いの肉と肉が待ち望んだ邂逅を咽び泣いて悦んでいるかのようにきつくきつく絡み合っていた。

 やや斜めに押し入った肉の頭を、ザラリとした感触が攻めてくる。
 素子の膣内なかは他ならぬ景太郎によって開拓されているので、景太郎という開拓者の肉の到来は大歓迎されるのだ。
 そして、景太郎の肉柱も、初めての女である素子の膣粘膜に出会えると再会の感激を全身で表わす。

 どぶっ、どぶっ、どぶぶぶっ、ぶびゅるっ、


 「あはぁ……っ ンふ…くちゅ…はぁ…はふ…」
 「モトコちゃ…ン…ふぁ…くちゅくちゅ……」

 下の口に子種をぶちまけながら、上の口では唾液の交換が忙しい。
 二人を相手にしたというのに、自分を求めてきてくれた景太郎に対し、素子は最大限の悦びを表す為に鍛え上げた括約筋でもって表わした。

 「うわ……っ うわわっっ モ、モトコちゃ……んっっっ」
 「あふぅ……う、うら…し……け、“景太郎”先輩ぃっっっ」

 衰えない性欲。
 暴力的な愛欲。

 満月に程近い、歪に丸い月の下で、陵辱行為に近い営みに没頭しながらも、

 景太郎は、自分らが、
 妹“ら”が淫気に狂った甘い香りが素子から発せられていた事をぼんやりと感じ取っていた。




 月に狂うのは女のさが

 男を狂わせるのも月の魔力。

 ならば月を狂わせるのは………?
 或いは狂った月だと思わせるものは?

 ………それはやはり、さがなのだろう。

 元より狂ったさがなら尚更に……





 <可奈子,可奈子の章 幕>





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 遅くなりました。Pixyでございます。
 エッチさも下降気味、すみませんね。いやマジに。

 エッチな迫力って、本当に難しいですよね。
 画像だったらズッコンズッコンで済みますけど、文ともなると……トホホ~~

 だからちょっとガス抜きにエッチくないのも書いてみようかと思ったり……
 オリジナル書いたら<厨>になりそーですので、やっぱ二次かなぁ……

 さて、次は むつみさんと……誰にしよう(汗)?
 以前にも言いましたが、はるかさんは却下です。
 好きな男いるのに他の男に抱かれるのイヤでしょうしね。私もそーゆーの大NGですから。

 というわけで今回はこの辺で。
 それではまた……






[2319] Re:Dotage ~妄愛~ <幕間 参> (本番ナシ)
Name: Pixy◆dcc9f442
Date: 2007/05/26 14:42


 「ふう……」

 我知らず甘い溜息が零れる。

 全身に残っていた気だるい痺れがようやく遠退き、やっと身体を動かせるまでになった。
 眠っていた…いや、意識を失ってからまだ十分と経っていまい。それでも一時間以上瞼を閉じていたような気もするのだから不思議だ。

 ゆるゆると身を起こした彼女のその姿は言わば半裸。
 高校の夏服を何やらベットリとした粘液で汚し、大きく開けられた前からは胸は剥き出しだ。
 捲くれ上がったスカートの中。薄いブルーのショーツはクロッチ部がずらされており、その周囲もまたベットリと粘液で汚されている。

 雷華に通っていた頃を思い出し、ふ…と奇妙な笑みを浮かべてしまう。
 あの時代にこんな関係になってたらとも考えた事すらあるのだ。

 浪人生に飼われていいように玩ばれる女子高生……良いかもしれない……と。

 高校時代の制服はまだ着れた事は着れたのであるが、前が止まりにくくなっている。
 当時はサラシで締め付けていたし、何よりその時より胸が育っているのだから当然かもしれない。
 だから前を開けたままでのイメージプレイ。結構楽しんでくれたようだ。

 スカートに残る粘液を丁寧に舐め取り、舌で転がしてからゆっくりと喉に流す。
 使った制服は洗わず、舐めるだけ舐めて清め、そのまま押し入れに吊るしておくだけ。
 そうすればいやらしい染みとなってくれるだろう。

 「♪」

 わざわざ自分を“使用してもらった”後に放置してもらい、性玩具の扱いを“してもらった”彼女…青山素子は、全身から精臭を漂わせつつ汗を流しに行こうとする。

 無論、彼の名残を落す事には胸が痛む。
 どうせならずっと彼の匂いの中に浸っていたい。どうせなら一日中、朝から晩まで全裸で彼に奉仕し続けたい。
 そんな事さえ願ってしまう。

 尤も、実際に精臭が取れなければ彼も萎えるだろうし(近寄って生臭い女には流石に引くだろう)、万一なるに関係がバレれたら意味が無い。
 近所で精液の匂いの取れない女という噂でも立てば、自分らは兎も角として彼が迷惑を蒙るだろう。

 性奴隷と言われようが、肉玩具と言われようが、ほぼ事実なので気にもならないが、彼の迷惑になるのだけは勘弁なのだ。

 ふと横を見ると幸せそうに横たわる少女の姿。
 彼の義妹、可奈子である。

 剥ぎ取られているスカート。
 捲り上げられた制服。
 毟り取られている下着。
 股間を白濁で汚しているのは自分と同様。
 そして、その穏やかな表情も。

 好いたらしい男に抱いてもらえる。
 優しく愛撫してもらえる。
 乱暴に“使ってもらえる”。
 精液を注いでもらえる。味わせてもらえる。

 オンナの幸せを堪能したのだから当然なのかもしれない。

 彼女とは髪の色も同じでタイプもどこか似ているので、彼が家庭教師の先生で自分らが教え子の姉妹…というシチュエーションが楽しめた。
 しのぶを入れて三姉妹。更にキツネさんに淫母役をしてもらって親娘丼というのも良いかもしれない。

 等と妄想に耽っていると、可奈子がくしゅん…と可愛いクシャミを洩らす。
 この可奈子の部屋は建物の端にあたり、風通しが良いから風邪を引いてしまうやもしれない。
 一応、そうはならないように可奈子にシーツを掛けてやってから、素子は風呂場へと向った。


 ひなた荘自慢の露天風呂は、その辺の施設を上回るほど広くて泉質もよい。
 ボイラーによって24時間フルタイムで入れるし、今は景太郎もOKだ(無論、なるやカオラとかが居ない時に限られるが)。
 一応ひなた荘は可奈子によってひなた旅館という側面も持ってはいるが、景太郎も本格的な旅館経営をする訳が無いし、彼女も半ば諦めている。
 それにわざわざ長い階段を登ってくる物好きもそういない為、寮生専用という物凄い贅沢を味わえるのだ。

 カオラもしのぶも高校。
 大学生の なるは先に出、景太郎も自分らの相手をしてくれてから講義に出ていった。キツネは今日は日向を手伝いに行っているし、むつみも当然ながら日向にいる(何時大学に行っているのだろう?)。

 だから人目を全く気にせず、素子は太股に精液を伝わらせながら全裸で廊下を歩いていた。
 誰かに見られれば良くても痴女。普通で変態のレッテルが貼られるのは間違いない姿である。
 無論、を行ってもらっているからこその大胆な行動なのだが……

 そんなプチ露出をやりながら風呂場に来た素子は、件の贅沢極まりない露天風呂に入って眼を瞑っている。
 染みて来る温泉の湯を堪能しているのやら、腰からじわじわ登ってくる行為の余韻を堪能しているのかは解からないが、それでも湯の中で脱力し切っている事に間違いは無い。

 無論、作法通りに先に身体を洗っているので最早精臭は無い。残念そうであったが……

 髪が長かった時には頭に巻き上げたりして面倒であったが、ショートにしてからはかなり楽になった。
 これからはずっとショートにしようかとも思ったりもするのだが、彼は…景太郎はロングがお好みっポイので悩みどころだ。

 男性たちは知らないだろうが、素子ほど長くした髪は水を吸った時に異様に重くなる。
 それはもう、特に洗髪中などでは首がごぎんっと音を当てるほどに。
 だから“そこそこ”のロングである女性以外はかなり首や肩がキツかったりするのだ。

 無論、髪を伸ばしてと彼が一言でも言えばロングに戻す所存であることは言うまでも無い。


 と―――


 ぱささ…と軽い羽根の音がし、素子の肩にスズメ大の鳥が舞い降りた。
 素子は左程気にもせず、手桶に張った湯に手ぬぐいを浸け、適度に絞ってから顔を拭く。
 肩にとまった鳥はその動きも気にならないのか、呑気に羽を繕っていた。

 だが、この小鳥は何なのだろう?

 大きさは確かにスズメであるが、その羽毛は金色に近い黄色で、頭部には奇妙な羽根飾りがある。
 きょとんとしたつぶらな瞳から感じられるのは、そこらの野鳥のそれではなく、高い理知さを持つそれ。
 頭部の羽根飾りも相俟って、ぱっと見は鳳凰の様でもある。

 いや、鳳凰をデフォルメし、アメリカのコミックにおいて赤い屋根の犬小屋の上で仰向けに寝そべる犬の上を飛ぶ小鳥のイメージが似合っているか。

 湯の中から右腕を足すと、その小鳥は怯える風も無くその腕に止まった。

 すると、

 ヴァ……ンッ!!

 唐突にその鳥のサイズが変わった。
 いや、サイズというより、比率が変わったというべきか?

 マンガチックな黄色い鳳凰が、金色の鳳凰そのものの姿に戻った……そう言えば解かり易いだろう。

 素子に懐いているのか、その鳥は頭を素子に摺り寄せてくる。
 素子も甘んじてそれを受け、左手で鳥の頭を撫でてやった。

 素子はその鳥を使って自分らが淫らな行為に耽っている時に周囲を哨戒してもらっていたのである。

 無論、普通の鳥であろう筈が無い。

 その鳥の名は<疾風>。
 鶴子が連れて来て素子に貸し与えた式神である。

 まぁ鶴子とて素子の腕が上がったから与えた訳で、決して素子がセックスの見張りに使うなどとは思いもよらなかったであろう。

 この式神疾風をもらった時の事は眼を瞑れば直に思い出せてしまう。

 殺気を撓ませて迫る鶴子。
 あえてそれを受け、流そうとせずに押し競の様に抵抗する素子。

 <鋭>だけでも<剛>だけでもいけない剣術であるが、あえて<柔>の気を使わず<剛>で迎えてみせる妹に、鶴子は心からの悦びを見せていた。

 鶴子の周囲を飛んでいた小鳥が、二人の霊力を受けて大きさを変えた。
 
 疾風は主の霊力によってサイズを変えられる。
 だから二人の余波を受けてサイズが変わってしまったのだ。

 二人の今の“力”の大きさは疾風を見れば解かる。
 鶴子がそそこまで力を発しているのだから当然<疾風>も大きくなるというもの。
 素子は鶴子の期待以上に素子は育っているようだ。

 以前の恐剣者だった頃の血が騒いだか、鶴子は鮫の様な笑みを浮かべ、試しという“名目”で飛び掛っていった。




 空には青い空があり、ポツンと白い雲が浮いている。
 途轍もなく静かで、途轍もなく激しい剣戟があった事が夢幻であったかのように……




―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
                           -盲・愛-
                           <幕間・参>

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――




 「お姉ち……じゃない、素子さん」
 「ン? ああ、気が付いたのか」

 何時まで記憶に浸っていたのか、可奈子に呼びかけられるまでずっと姉の剣の動きをトレースし続けてしまった。
 イメージトレーニングの様なものであるが、姉の記憶と渡り合い続けるのもまた修行の一つである。
 その代わり、湯の中でやたら汗を掻いてしまっているのだが。

 可奈子は素子同様、景太郎の残留体液をかなり勿体無さげに流してゆく。
 胎内のものはやはり素子と同じく、膣から手桶の中に掻き出して啜っている。

 その一般的に言う変態的な様子に、可奈子も既に“こっち側”である事が見て取れた。
 無論、自分らを一般的などとは塵程も思っていない。“それ”を普通に行うのが一般というのには余りに語弊がありすぎるし。

 一通り流した後、 可奈子は湯の中の浅い段を踏みながらゆっくりと湯に入ってゆく。
 カオラの様に全裸で子供飛び込み等を可奈子がする訳も無く、タオルで前を隠して静々と湯に入ってくる。

 その上品さは好感が持てる。
 この上品さと奥ゆかしさが景太郎の獣欲の望むままに下品にも淫乱にも変えられる。素晴らしい事だ。

 岩の上に移動はしているが、大きな鳳凰の姿を曝している疾風にも可奈子は動じない。
 当然、素子が紹介しているし、彼女の相棒は耳で羽ばたいて空を飛ぶ猫。この程度で驚くはずも無い。

 後押しをしてもらった事によるものか、可奈子は人目が無ければ素子の側に良く寄るようになっている。
 だからだろう。可奈子は素子の横に腰をかけた。


 可奈子がここに来た当初のような硬い空気は二人の間にはもう無い。
 穏やかな。本当に仲の良い姉妹の様な穏やかな雰囲気がそこにはあった。

 微かに響いてくるのは夏蝉の声。
 遠くでコトンコトンと鳴っているのは電車が走る音だろう。

 都会という雑踏から離れたひなた市は、本当に居心地の良い場所だと今更ながら噛み締めている。

 「あの…お姉…素子さん」
 「何だ? “可奈ちゃん”」

 可奈子の言い間違えに苦笑しつつ、先程までの呼び方をすると可奈子は真っ赤になって俯いた。

 何せさっきまでは姉妹という設定で景太郎に抱いてもらっていたのだ。

 その時は素子が姉、可奈子が妹という設定だった。
 二人して家庭教師役の景太郎に惚れ、二人で性技を競い合い、その淫靡さに先生の理性が飛んで犯されて処女を散らされた…という流れだ。
 二人ともちゃんと痛がっており、素子なんぞ

 因みに、外道バージョンというものがあり、それは先生の陵辱行為から姉妹がお互いを守る為に自分を差し出すというものだ。
 無論、結果はどちらも犯されるというパターン。妹…或いは姉の目の前でレイプされるという流れである。
 こちらは しのぶと可奈子のペアで行ってたという。

 閑話休題それは兎も角

 「あの……鶴子さんの御用は何だったのですか?」
 「ん? ああ、大した事では無い。
  私に掛けられた呪いについて調査をお頼みしていたのだ。それの調査結果が出たというのでな……」
 「?!」

 事も無げに言う素子であったが、可奈子の方はかなり驚いていた。

 はっきり言って素子が掛けられた<呪い>とやらは異常である。
 淫乱化の呪いというものは無い訳ではないが、素子の場合は“景太郎の精液を異様に欲している”のだ。
 素子自身が『半淫魔化でもしているのだろう』と言っているほどなのであるが、可奈子も前は半信半疑であったが二人して抱かれる様になると当然素子の痴態も目にする事になり、まともにそれを見てしまったのである。

 可奈子自身、景太郎のモノであればなんでも美味しくいただくことができると確信している。
 景太郎に奉仕している時、彼の分泌するものであれば全てを美味しく抱けるわけであるし、昨夜に至っては美味しく飲尿する事が出来た。そしてアナルすらも美味しく奉仕できている。
 足の指の間の汗も旨いし、鼻の頭の脂肪もトンコツ味でたまらない。
 彼の身体で不味いと思うパーツ等、何処を探しても見つからないのだ。

 だが、素子の方は更に違う。

 可奈子同様に彼の分泌するもの全てが美味しいと感じているのは当然であるが、素子の場合は水か食物と同等に彼の物を啜っている。
 つまり、食事と性行為が『≒』に近いのである。
 こんな事、普通はある訳が無い。

 景太郎にしてもそうだ。

 ざっと計算しても、景太郎の一日の射精量は人間のそれではない。馬とてもっと少ないかもしれないのだ。
 どぶどぶと出してもらえるのに異論は無いが、彼の身体の方を心配してしまうのも当然であろう。

 無論、可奈子は医者にも連れて行って調べてもらったのだが、全く異常はみられず。
 疲労すら見られなかった。
 つまり、その回数と量をこなすのが普通だとでも言うのだろうか? これには景太郎を超過大評価していた可奈子も流石に閉口するしかなかった。

 その理由の一端でもつかめたというのだろうか?
 可奈子は素子の次の言葉を待った。
 
 そんな可奈子の詰め寄ってくる様子に苦笑しつつ、素子は口頭のみで教えられた調査結果を口にする。

 「簡単に言えば、“よく解からなかった”だな」
 「え……?」

 余りの答えに可奈子が呆けた。

 彼女が呆然とするのも当然で、神鳴流というのは魔を祓い、邪を断つ退魔剣士の集団である。
 よってそういった手合いに対する捜査能力が高い事でも“裏”では知られているのだ。

 その神鳴流の調査が及ばなかったと言うのは如何なる相手だったのであろうか?
 そんな相手にどうして素子さんが……と様々な思考が可奈子の頭を駆け巡った。

 そんな可奈子の様子に何を考えているのか理解した素子は、

 「ああ、言っておくが…私に術を掛けた人物はとっくに掴んでいるらしいのだ」
 「え……?」
 「それに、その相手は可奈子が思っているような実力者ではない。はっきり言えばズブの素人だったらしい。
  精々、多少のオカルト知識を持つヒッキーという程度らしいな」
 「へ……?」
 「つまり、余りと言えば余りにも素人だったが為、
  呪式が無茶苦茶で何を呼び出したかも解からないし、何を行ったかも不明だと言うんだな…これが……」

 因みに、<返りかやりの風>…術や呪いが破られた際のフィードバックの身代わりすら用意されていなかったらしい。
 ヘタクソな召喚陣の様なものもあったらしいが、呼び出す際の供物も無く、術者を守る陣も無かったそうな。

 その術を行使した本人は衰弱死一歩手前で発見されており、今も病院でウンウン唸っているらしい。

 余りといえば余りの相手に、可奈子も呆然とするしか無い。
 怖いもの知らずといえばそれまでであるが、呪いというものは『人を呪わば穴二つ』という例えがあるように、必ず“仕返し”が付いて回る。素人の大半はそれに抗する手段を用意しきれないので自滅するのだ。
 当然ながらその人物も例外にはなれなかったらしい。

 で、その人物が何者なのかというと、素子の通っている予備校の生徒であり、勝手に素子に横恋慕した男だったらしい。

 ぶっちゃければストーカーで、素子の後をずっとつけていた男だったのであるが、駅からひなた市に入ると必ず見失ってしまい尾行は失敗してしまう。何度も何度も追いかけても着いて行けず、予備校の講師室に忍び込んで住所を調べ、ひなた市へ向おうとするも何時も失敗。
 乗り越したり人ごみに邪魔されたりで、どうやってもひなた市に下りられないのだ。

 行きたいのに行けない。
 会いたいのに会えない。
 振り向いて欲しいのに振り向いてくれない。
 そのどす黒い妄念が溜まれば溜まるほど、ひなた市に張られている結界に阻まれて余計に入れないのであるが、当然彼が知る由も無い。
 更にひなた荘にも結界はあり、ここの寮生に一方的な邪まな想いを持っていたり、害しようとする者は絶対に入る事は出来ないようになっていたりする。
 、他国の犯罪組織やテロリスト等が彼女の情報を得る事も近寄る事も不可能なほどに。

 おまけにその男、素子と歩く景太郎の姿を目にしてしまったらしい。
 怒りと嫉妬に身を焦がしたその男は景太郎を惨殺しようと短絡したまでは良かった(?)のであるが、そこは人智を超えた悪運と不死身さを併せ持つ景太郎だ。
 その悉くが失敗し、余計に男を狂い歪ませる結果となってしまった。
 
 だから最後の手段として、彼は呪いを掛ける事にした。
 対象は当然、(勝手な言い草であるが)自分を玩んだ素子と、自分から素子を奪った“あの男”だ。

 そして自分の持っている範囲の知識だけで呪式を行ったという訳である。

 普通なら絶対に失敗した筈の呪式であるが、只一つだけ強い力を発揮する物を彼は持ち合わせていた。

 それは触媒にするものである。度重なるストーキングのお陰で手に入れた宝物。
 即ち、素子の“髪の毛”だった。

 かなりいい加減な術ではあったが、その髪の毛のお陰で素子には効いたらしい。
 尤も、素子自身が無意識に打ち破ってしまったので、その<返りかやり>によって男は半死半生となってしまったが……

 彼が一人で住んでいた部屋はかなり片付けられてしまっており、地方に住んでいる家族によって部屋にあったであろう“いかがわしい関連書”も処分済み。おまけに本人の記憶もすっ飛んでおり、これ以上の調査も出来ないとの事だった。

 まぁ、鶴子には自分に掛けられた呪いの概要はかなり暈して伝えてあるのでこれ以上を求めるのは我儘だろう。
 流石に半淫魔化して景太郎とするセックスと彼の精液が大好きになりましたとは肉親には言えまい。

 「でも……いいんですか? 
  素子さんの身体はこれ以上酷くなったりは……」

 可奈子が心配しているのは呪いの進行だ。
 今でさえこの有様なのだから、呪いが進めば彼女本物の淫魔になってしまうかもしれないのだから。

 そうなると景太郎以外の男に抱かれても平気になってしまうかもしれない。
 素子はそうなりかかると自害して果てるだろう事は想像に難く無い。
 可奈子はそんな未来を心配しているのだ。

 「ああ、“そっち”の心配は無い。
  私も“あいつ”も、これ以上侵蝕をするつもりは無いからな。
  時間は掛かるが段々と安定していき、いずれ満月時でも我慢できるようになるだろう。
  ま、精々“淫乱”になる程度だろうな」
 「淫乱って……それに、“あいつ”とは?」

 きょとんとした珍しい可奈子のレアな表情に対し、素子は『アレ?』と首を傾げてしまう。
 時間にしてほんの数秒間思考した後、ようやく疑問と違和感に気が付いた。

 「ああ、そうか。可奈子達には“あいつ”の事を教えていなかったな。すまなかった」
 「え? あ、いえその……それは良いのですが……“あいつ”とは?」
 「ふむ…」

 どう説明すればよいやらと腕を組む素子。
 彼女からしてみれば、現在の“あいつ”は殆ど自分と同化しているので自分といっても過言ではない。
 それに、“あいつ”からしてみても自分は“あいつ”にあたるのだ。
 だから説明が難しいのである。

 「うう~~む……まぁ、解かり易く言えば、その呪いによって生み出された私の淫乱な部分。
  私を呪った奴が、自分にとって都合の良い肉奴隷…とでも言えば良いかな? それにしようとしたモノあたる奴だ」
 「な……っっ??!!」

 可奈子の驚愕も当然だろう。

 そうすると素子は心の中に爆弾を抱えている事となる。それが表に出てくれば素子は完全に奴隷化してしま……

 「ん……?」

 と、そこまで思考してから可奈子は気が付いた。
 肉奴隷も何も、今現在の素子は既にそうでは無いか。だというのに、素子は景太郎以外の男には全く興味を持っていない。
 ぶっちゃけ、景太郎専用肉奴隷と言っても過言では無いのだ。

 その矛盾に気が付いた事を様子から察した素子は、説明を続けてやる事にした。

 「言っておくが……私が、私“ら”が呪いを打ち破れたのは“あいつ”が私と同じだからだぞ?」
 「は?」

 夢の中で、自分の目の前で景太郎の群れに輪姦してもらっていた自分。
 何時も途中から羨ましくなって“あいつ”と交代してもらっていた。

 素子を肉奴隷に改造すべく誕生した、根源を素子と同じくする彼女の女の部分の一部。
 <呪式>は手っ取り早く女として開花させるべく、求め訴えていた相手と交わる夢を見せ続けたのであるが、その為に素子と性質が違うだけの“素子”を生み出す結果に終わり、それによって<呪式>は失敗したのだ。

 景太郎を“浦島先輩”と呼ぶ、本来の素子。
 景太郎を“景太郎先輩”または“景太郎様”と呼ぶ、肉欲に狂った肉奴の素子。

 今の素子はその二つから構成されているのである。

 景太郎専用の肉奴である“あいつ”は、素子精神改造の最終工程の段にやって来た紛い物…恐らくは淫魔,夢魔の類が変化したもの…を偽者と直様見破り、怒りに任せて“喰い千切った”のだ。
 結果、肉奴隷の素子は魔の力を吸収し、力を得て確立化したのだという。
 “あいつ”は暫く素子として過ごし、別に素子の身体を乗っ取るつもりは更々無いので素子と同化を進めていったらしい。

 何せ記憶も感情も共用しており、最初の頃は本人が別人である自覚が無かったものだから周りは全く気がついていなかった。
 正確に言えば、別人格ではなく“別性質”。淫気を放ち精を啜る体質なのだから、鶴子か不在だった可奈子ぐらいにしか解からなかった事だろう。

 だから最初の内は肉奴隷であったが故に肉欲が強過ぎ、日中でも欲望を抑えきれずおかしくなっていたというのだ。

 今は同化も進んでおり、月光でも浴びない限り“あいつ”の力が増す事は無いと素子は言う。

 「まぁ、結果オーライ…と言えなくも無いな。
  お陰で私は浦島先輩と良い仲になれたし、離れずに済む算段も立った。
  それに、……」
 「は、はぁ……それならば宜しいんですが……」

 一応の納得を見せ、タオルで汗を拭う加奈子。

 ぬたり…とやたら艶っぽい微笑を浮かべる素子の表情は正に淫魔を思わせるほど魅惑的だ。
 今は兎も角、月夜に素子の身体から立っていた甘い香りは彼女の秘蜜の匂いで、それによって男も女も狂わされるのでは無いか? そんな不安げな未来すら思い浮かぶ。
 そう思うと怖気が立つ反面、芳香に狂わされたお兄ちゃん…景太郎に犯される自分を思ってぞくぞくとした軽い興奮も湧いてくる。

 結局、自分は……自分“ら”は景太郎と共に淫猥な関係を進む道を選択してしまったのだ。
 引き返す道も無ければ、その気も無い淫猥で平和な世界。

 それを数多い未来への道からわざわざ選び抜き、手にとって突き進んでいるのだ。
 だから別に後悔は無い。

 「でも……」
 「む? どうかしたのか?」

 それに、僅かにでも、
 僅かにでも一般的な理性や倫理が残っているならば―――

 「でも、“次”はどうします?
  サラさんにはお兄ちゃんのはまだ入りませんね。壊れてしまいます。となると…」
 「スゥか、むつみさん…だな……
  順当に行けば……」
 「乙姫さん……ですね」
 「だな」

 こんな事を言い出したりはしない。

 可奈子も……
 否、当の素子すら気付いてはいない。

 根源は同じくする存在である“あいつ”は、確かに素子本人同様に景太郎の事を愛しているし、それ以外の男なんぞどうだっていい。
 だが、景太郎の幸福の為ならば周りを巻き込む事も厭わないという部分が異様に強いのだ。

 当然、根っ子が同じであるし、根元から性質が同化しつつある素子もその思考へと歪みを強めてゆく。

 そして、素子の身体から時折立ち上る香りが理性を蕩かしてゆくと読んでいる可奈子であったが、自分らもそれに引き摺られている可能性があるという事を……


 風呂で汗を流している筈なのに、彼女らの肌は湯の温度以外の事でしっとりと汗を滲ませていた。
 乳首は立ち、眼は潤み、じんわりと染み出た愛液は湯に溶けて行く……

 近い将来を思い、
 景太郎を中心とするハーレムを思い、
 そこに展開されるであろう、白濁とした幸せな未来を思い、自然と手は自分の身体を弄り始めていた。




 ひなた荘という女子寮は、
 ゆっくりと個人用の娼館へと形作られてゆこうとしていた。




*************************************************************

 長くなりましてごめんなさい。Pixyでございます。
 ぶっちゃけるのはナニでしたけど、一応の説明とかそろそろ入れないといけないな~~と思ってこんな話を入れてしまいました。

 何ぢゃあ?! この厨めっ!!
 とか怒られたらどーしよー!! と怯えつつもこの話を入れさせていただきます。

 元々、メインヒロインたる素子をエッチくするには薬か呪いしかなく、テクなんぞ景太郎が持ってる訳も無いので<呪い>で半淫魔化という形をとらせていただきました。
 薬は常習性を考えちゃいますしね。何せ催淫剤は覚醒剤の精製過程にできる…なちゅー無駄知識があるもので、安易に使えないんですよ~~

 兎も角、次はむつみと…言いつつ、サラとカオラをどーしよーかと悩んでます。
 年下に教えられるといゆーシチュもありなら、サラにカオラが…というのもありかな~とか思ってたりも……

 それと、景太郎の事ですが……ヤリまくってますけど、今だ悩んでます。
 まぁ、恋人としての本命がいるとゆーのに、愛人らとたっぷりしまくって平然としてるんですもんねw フツーならそんな自分を顧みて自己嫌悪に陥りますわな。
 シている最中は、ンな事すぽーんと頭から抜けてますけど……w 

 あ~でも、その話も書かないといけないな~……

 ま、ともかく続き書きます。
 それではまた……






[2319] Re[2]:Dotage ~妄愛~ <壱拾玖> (ラブひな)
Name: Pixy◆1be2d7bd
Date: 2007/05/29 17:37


 「おじゃましま~す」

 何時もの様に風呂を借りに、夕暮れ時に二人はやって来た。
 一人は妙齢なる美女。三十路に入ったか手前かは不明であるが、咥えタバコが異様に様になっているショートヘヤーの女性。
 もう一人は今挨拶をした女性。二十歳代に入ったくらいの長い髪を揺らせたこれまた美女。

 ここ、ひなた市においても美女美少女揃いで知られ、また物騒さでも知られている女子寮、ひなた荘。
 そのひなた荘の敷地内で営業している和風喫茶『日向』の店長である浦島はるかと、その店に住み込みで働いて東大に通っている女性、乙姫むつみ。その二人であった。

 はるかは、ここひなた荘がひなた旅館だった時代から住み着いてここの露天風呂を使っているし、むつみは温泉が大好きなので何時もここに入りに来るのだ。
 この日も、何時もの様に気軽に風呂を借りに来たのである。

 「あ、はるかさん、むつみさん。いらっしゃい」
 「おう」
 「けーくん、こんばんは~」

 彼女らを向かえたのは、ロビーで女性と話をしていた眼鏡を掛けている青年…ここの管理人であり、唯一在住を許されている男性、浦島景太郎だ。
 その彼の前で楽しげに話をしていた女性は、ここの寮生の一人である紺野みつね。通称キツネだ。
 景太郎の恋人である成瀬川なるがロビーの電話を使っている間、二人して何やら話をしていたようで、先に二人に気付いた景太郎が挨拶をしてきたのである。

 何時ものにこやかな笑顔。
 お人好し過ぎて先の事をやや心配していた はるかであったが、東大に合格して進みたい道を見つけてからは何だか頼もしくなってきて嬉しい限り。
 ……その代わり、彼は自分の昔の男を信頼し師事しているので良いところも悪いところもちゃっかり受け継がれていて別の心配事が増していたりする。

 「……むつみさ~ん…」
 「あ、ゴメンナサイ。浦島君♪」

 けーくんとは景太郎の事で、むつみは幼い頃、よくここに遊びに来ていたらしい。
 というのも彼女の母親はここひなた旅館に勤めていた事があり、その縁で二人は幼馴染なのだ。
 東大合格後に帰郷したむつみに付いて行った時に起こった記憶喪失で、その呼び名を思い出し、時々ウッカリ使ってしまうのである。

 別にそう呼ばれるのがイヤという訳ではないが、幼い頃の失敗等を思い出してしまうし、やっぱり恥ずかしいので一応は止めてもらっている。無論、相手がむつみなので“一応”程度だ。言って聞き入れてくれる人でも無いし、天然ボケが早々簡単に引っ込むとは思えない。

 「はるかさん、今日は遅かったな~~ ウチらもう入ってもたで?」

 景太郎の首に腕を巻きつけてキツネが言う。
 彼女のコミュニケーションは動物の擦り寄りに近い。無論、気に入った人間以外には触れもしないが、それから察するに景太郎の事はかなり気に入っているのだろう。
 少なくともはるかの知っている限りで、ここまでキツネが気を許している異性は皆無である。

 「ああ、客が来てな。
  下の温泉に来た団体客の一部らしいんだが……ったく、大してモノも食わんのに長ったらしく居座りおって……」
 「あははは……お陰で後片付けが長引いてしまいました」
 「え、え~と……」

 少なくとも接客を含む飲食店の経営者のセリフでは無いような気がする。
 景太郎もキツネも後頭部に汗が浮かんだ。

 「ま、兎も角風呂を借りるぞ」
 「あ、はい。ごゆっくりどうぞ」

 何で客が来たというのに怒っているのだろうか?
 理不尽だとは思いつつもそれを口に出すのは憚られるので、暖簾の奥に消えてゆく二人の背を見つめながら景太郎はそのままぐっと喉に流し込んだ。




 『妙だな……』

 景太郎の視線を背中で受け止めながら、はるかは違和感を感じていた。

 いや、景太郎相手にではない。ここ、ひなた荘の空気にだ。

 だが、決して禍々しいものや邪気とかではない。
 はるかは、昔恋人だった男と遺跡を廻って世界を渡り歩いており、何度も怪奇なブツにであった事がある。それに比べればここの空気の異質さは大した事が無いと言えよう。

 しかし、皆目正体が掴めないのも気色の悪い話である。

 何と言うか……空気がねっとりと纏わり付いてくるというか、湿度以上に空気から粘度を感じるというか……
 沼地に浸かっているような錯覚すらあるのだ。

 それを感じるのは はるかだけなのか、或いは他の皆が鈍感なだけなのか解からないが、敵意や害意は無いが余計な世話を焼かれているような感触がはるかは腹立たしかった。

 「フンフ~ン♪」

 相変わらず調子っ外れの鼻歌を歌いながら、むつみはいそいそと服を脱いでゆく。

 やはり彼女にはここの空気も何処吹く風。
 或いは自分が気にしすぎているだけなのか。はたまた、無人別館に起こっている異変の件が頭に残り続けて空気を読み違えさせているのか……
 どちらにせよ、事件として何も起こっていない以上、自分が今出切る事は無い。
 とりあえず敵意も害意も悪意も全く感じられないので静観する事にした。

 溜息をついて自分も服を脱ぎ始め、ふとその呑気な娘に眼を向ける。

 二十代の瑞々しい肌に抜群のプロポーション。天然ボケではあるが、その容貌も優しげで穏やかな美人。妙な母性を感じさせるむつみには大学の男達も釘付けになっているだろう。

 彼女も景太郎が大好きで、なるの為に一歩引いて今の位置にいる聞く。

 何でこんな風に自分らと似ているのだろう。
 なるの不器用さは自分に似ているし、むつみの奇妙な奥ゆかしさはアイツに似ている。

 はるかは、こんな状況下にもかかわらず溜息が出てしまった。

 自分と瀬田とアイツ……

 瀬田の件で何時も頭に浮かぶのは昔の自分達。
 別れた…と周りには言ってはいるが、厳密に言えば“会えなくなった”が近い。
 心の奥ではまだ彼に期待している自分が居り、それに気付く度に自己嫌悪に陥ってしまう。
 嫌いだ嫌いだと口にしつつ、忘れたりできないのもまだ引き摺っているからだろう。

 「ええいっ! くそ……」

 悪態をついて頭を振る。
 それで気持ちがどうにか固まる訳では無いが、誤魔化さねば落ち着けない。

 誤魔化さないと……

 セタの事が頭から離れなくな……………


 「ぐわ~~~~っっっ!!! な、なんで私はあのバカの事なんか考え続けているんだ?!」

 おかしい。おかしい。
 どうしてもおかしい。

 唐突に彼の事ばかりが自分の頭を占める。
 抱かれた事や、初めてデートらしいデートをしてもらった時の事、
 遺跡探査での冒険や、キャンプ中での慌しい行為。
 彼の汗の味。煙草混じりのキスの味。吐息。
 全てが鮮明に蘇っていき、はるかの心を責め苛んでいる。

 はるかは手桶に水を入れ、何度も何度も頭から被った。
 水ごりもかくやといった勢いだ。

 何故唐突に彼の事が頭を占めるのか、
 何故の事しか頭に浮かばなくなったか、
 それに気付く事はなかった。




 唐突に不思議な水ごりを始めた はるかに、

 「すごいですね~ 新しい健康法なんでしょうか」

 と相変わらずのボケっぶりを見せているむつみ。

 既に掛け湯をして湯に浸かっているむつみであったが、実は彼女にも異変は訪れていた。

 「……でも、何ででしょー?」

 いつもの彼女。
 いつものボケ。
 そしていつも持ち歩いている気持ち。
 そこには変化は無い。

 「ここひなた荘に来てからずっと」

 だが、彼女には今までなかった強い変化があった。

 「けーくんに抱き締められてるような気が……」

 湯の温度以外で頬を赤く染めているむつみ。
 彼女は本当に無意識に、
 湯の中に座り込んで太股を擦り合わせていた。

 彼女は今、大好きな景太郎を想う心が、愛している異性の男性へのそれへと変化の兆しを見せ始めていたのである。

 湯の中に漂うは愛しい男への想う女の残り香。
 湯の香りに混じる甘い香りはその想いの匂い。

 それは汚染か進化の兆しか。

 その捉え方も全ては想いを根付かせた己の中―――





―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
                           -盲・愛-
                            File:壱拾玖

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――




 何時もの電車に乗ってひなた荘へと戻る。

 この辺りは温泉街なので、東京から疲れを癒しに通う人間もいる事もあり、混雑…とは行かないまでもそこそこの乗員数である。

 当然ながら席に座れない事もあるが、取り立てて不満がある訳もなく、二人は家路についていた。

 晴れて東大生となり、留年はしたものの海外留学によってそこらの学生よりは英語が堪能になってしまった浦島景太郎。
 そして、彼への想いを遂に吐露してしまい、何だかんだでベタベタに惚れている事を再自覚してやっとこさ付き合い始めている美女、成瀬川なるの二人である。

 そこらのバカップルほどベッタリとはしていないものの、なるの方の景太郎への依存度は存外に高く、彼がいなくなるだけで普段の彼女からは想像もできないくらい取り乱してしまう。

 実際、景太郎も彼女も全く気が付いていないのであるが、幼い頃に結ばれた約束は未だに強く、そして彼女の中にあった二歳の時から持ち続けていたから景太郎への愛されたい願望は再燃させられている。
 だから妙に彼に甘えているのであるが、当の本人である景太郎は全く気が付く気配も無い。そこらはなるの方が上であろう。

 子犬…とまでは行かないが、少女のような可愛らしい恋人関係がそれを指しているとも言える。

 尤も、景太郎の方は少年のような…と行かないのであるが……


 コトンコトン…

 線路を走る車輪の音が懐かしさを伴った哀愁を呼ぶ。

 昔、景太郎がひなた旅館に逗留していた時にはこの音が遠くに聞えていたものである。

 今はその思い出の音を奏でる車両に乗る側。
 成長した…というより、歳をとったという気になってくるのは何故だろう。

 自分の隣で楽しげに大学の話をする恋人に対し、相槌を打ったり笑ったり、時に呆れたりして会話を楽しむ。
 東大に合格するという夢を叶え、ついにキャンパスを潜る事に成功。
 入学式当日に骨折し、そのまま留年コースに進むというポカをかましたのも彼ならではの運の無さかもしれないが、それでも考古学の道に進むという新しい目標もできた事もあって彼の表情に重いものは無い。
 何せ、なるの方が焦った程なのだから。

 彼女は周りが見るほど要領も良くなければ、器用でも無い。
 ルックスも頭も運動神経も良いのであるが、何かに寄り掛かっていないと直に倒れてしまう女性である。
 景太郎とめぐり合い(実際には再会であが…)、様々な騒動に巻き込まれたお陰で妙な男に引っかからずに済んだ訳なのだから。

 そのなるは今、生活が景太郎オンリーになりかかっている。

 “側に居てくれて当たり前”

 そう彼の事を認識している節があるのだ。

 無論、景太郎もそのつもりであるし、彼女を捨てるという想いなど皆無。
 彼にとっての なるは、“付き合ってくれている”“自分の事を好きなってくれた女性”だ。自分の魅力に参った…等とは妄想以外では考えた事も無い。

 彼にしても なるを好きだと言い切れるし、緊張し過ぎて口には出せないが愛しているという想いもちゃんと持っている。

 しかし……

 『モトコちゃんとキツネさん…しのぶちゃんにカナコ……
  オレ、皆の事も……』

 “愛している”のである。
 家族…実際、カナコは義妹であるが…の様に見ていたこの四人。この四人に対しても女として愛しているという想いがしっかりと根付いているのだ。

 童貞を捨ててから毎日、景太郎は彼女らを抱いている。
 只抱くわけではない。レイプ紛いな抱き方をする事もあるし、何時誰に見つかるかも解からない様な場所で激しくする事もある。
 コスチュームプレイやイメージプレイ、SMじみた方法をとったりもする。
 兎も角、景太郎のペニスは一日たりとも乾く日が無いほど、彼女らの身体を(言い方は悪いが)玩んでいるのだ。

 恐ろしい事に、今現在の彼は罪悪感を感じていない。
 事実上、自分の恋人なるへの裏切りであるし、内二人は未成年。おまけに未成年の一人は自分の義妹である。これで罪悪感が浮かばないのは彼にしてはおかし過ぎるのである。

 にも拘らず、彼の心には罪悪という影は無い。
 ただ、相手をする女性が増えた分だけ、その女性たちへの想いが強まってはいた。

 なると同じ様に、
 そして なるに対するそれより激しい情念が景太郎の心に渦巻いている。

 四人に言われ続けていた言葉。

 『皆で愛し合おう』
 『皆とずっと一緒に居よう』
 『そして皆でトーダイへ行って』

『皆で幸せになろう』

 その言葉が頭に、意識に、心に、深い色合いを持って沁み込んでいるのだ。

 全員に対する愛欲も、
 少女らを、妹すら蹂躙する情欲も、
 膣内の全てを犯し尽くす獣欲も、

 既に景太郎の中では愛情なのだと焼き付けられているのかもしれない。

 「でさ、私ったらそのゼミの時にね……」
 「あははは……」

 しかし、楽しげに話す なるに笑顔を見せている景太郎には、

 その溢れかえる肉の欲望を一片たりとも感じられない優しげなものであった。




 「う~~ん……」

 ぺたんと腰を下し、ややはしたないが胡坐を掻いて唸っている少女が一人。
 天才となにやらは紙一重、煙となにやらは高い所が好き…等と言う言葉はあるが、一応は天才の部類に入る小麦色の肌の少女が屋根の上に座り込んで一人唸っていた。

 ふと新館の屋上…物干し台を見上げれば、そこには素子の気配。
 以前のようにびゅんびゅん木刀を振り回しているのではなく、今の素子の剣は必要最小限の動きに変わっている。

 だから気配は感じられても音は殆どしない。
 成長した…といえばそれまでであるが、かなり物足りなさを感じているのも事実である。

 特に、彼女に良く纏わり付いていた少女……カオラ・スゥから言えば……

 「お。どうかしたのか?」
 「んん~? ああ、チビかいな……ちょっとな~……」
 「?」

 ひょいひょいと屋根に上り、カオラの横にこれまたペタンと座り込む相棒。
 カオラよりは焼けていないが、それでも瀬田と旅をしまくって陽に焼けた肌とツインの金髪がトレードマークの少女。
 以前はここの非常識集団を毛嫌いしていた彼女であったが、どういうわけかウマの合った相手が一番非常識といえるカオラ。以来ずっと彼女とコンビで行動しているサラ・マクドゥガルである。

 だからサラが、珍しく静かに座っているカオラに問い掛けるのは当然なのかもしれない。

 「何や最近、寮の中がミョ~になってへんか?」
 「ミョ~…って…何が?」
 「う~む。ガキンチョには難しかったか?」
 「うっせ!」

 とは言うものの、カオラ自身も説明が出来ないのである。
 胸の奥…そしてお腹の奥が奇妙にざわめき、擽られている様な、撫でられている様な妙な感触がする事がたまにある。
 そしてそれは素子を見ている時……いや、正確には素子と景太郎が一緒にいるのを見ているに起こるのだ。

 最初は嫉妬してんのかな~? 等と思ったりもした。

 “けーたろ”は身内以外の異性で始めて大好きになった男であるし、モトコは大のお気に入りだ。
 この二人が一緒に居なくなるというのであれば流石にあわてたであろうが、くっ付くというのであれば問題は無い。筈。

 不思議な事に、なると景太郎が一緒に居る時にはこんな気分になったりしないのだ。
 けーたろ+モトコ このペアがいる時のみ、そんな奇妙な感触を味わってしまうのである。

 更にその感触、戸惑いはかなり大きいのであるが不快感は全く無い。

 何と言うか……二人に挟まれて抱き締められているような……昔、家族に抱っこされていた記憶が浮かぶほどの安心感と多幸感を思い出さされる。
 それ以外の感触…特に不快感は全く無いのである。

 しかし、解からないままで方って置く事はカオラ・スゥという少女には出来ないのだ。
 その事のみが彼女の不快と言えよう。

 「あ~~~っ!! もぅっ、何や解からんっ!!」

 と頭を抱えてそっくり返るカオラに対し、サラは、

 『……あたしは今のオメーが訳解かんねーよ……』

 と呟く事しか出来なかった。




 じゅる……はぁはぁはぁ……んグ…んふぅ……ンんんん……


 「そうですよ。流石は素子先輩」

 下半身はクリーム色のニーソックスのみ。
 上半身は赤い首輪のみ。
 かなり倒錯的な姿でレクチャーしているのは誰あろう前原しのぶだ。

 彼女の目の前には、黒いビスチェに黒いガーターベルト、黒いストッキングという娼婦の様な格好の女性がおり、その女性はギチギチに反り返ったペニスを嬉しげに奉仕し続けていた。

 しのぶが娼婦にレクチャーしているのならそれはそれで驚愕に値するのであるが、その娼婦の正体は同寮生であり、堅物で知られていた女性。
 やや童顔であるし、まだ二十歳前なので少女といっても過言ではなかろうが、赤い舌をれろれろと動かし、肉柱に嬉々として奉仕する様は熟練の娼婦のそれ。まさかこの女性が一ヶ月程前までは処女であったなど誰が信じるだろう。
 当時は長かった髪も今はショート。それがまたきりりとした彼女に似合っていた。

 「顎は上下にだけ動くんじゃないんです。前後にだって動くんです。
  だから、余り口が開かなくても隙間を大きくする事は出来るんです」
 「んふぅ…♪」

 傍から聞けば小娘が何を偉そうに……という感も湧かないでも無いだろう。
 多くの女性がそう思うだろうし、不快に思うのも当然だ。

 だが、この女性は、青山素子はしのぶのそのレクチャーを感謝して受けていた。

 想い人の妹である浦島可奈子は元々口が小さいし、顎の仕組みからしてまだ無理。
 キツネも口に入れる事ができるが、彼女は単純に大きく口が開くだけのでやはり無理。
 思い余ってしのぶに問うて見れば、

 「あ、コツがあるんです」

 と教えてくれる事となった。
 コツも何も、その場で口頭説明すれば良い物を、わざわざ一緒にいてこんな格好でいるという事は3人でする気満々のようだ。
 セックスというより、まぐわい,交尾等と言った言葉が似合う行為をする関係になって数日も経っている しのぶであったが、一対一で抱かれるのは未だに恥ずかしい等と生娘のような事を言う。
 だから他者を交えての行為が落ち着くのだそうだ。

 で、何についてのレクチャーかというと、言うまでもなくオーラセックス……フェラチオである。

 景太郎に抱かれた女達は全員、一人の例外もなく景太郎に奉仕する事を喜びとしている。
 彼が悦んでくれる。自分の奉仕で射精を我慢してくれている。我慢できずに咥内…或いは顔に出してくれた。等、様々な悦びがついて回るからだ。

 相変わらず過去の男性経験の有無が不明であるキツネも、そして数日前まで未通女おぼこであった可奈子やしのぶにしても、景太郎の精液を浴びただけで絶頂を迎える事が出来る。
 だからセックスと同等以上に彼への奉仕は重要視されているのだ。

 素子はこの女たちの中で一番景太郎とセックスを続けている。
 注がれた精液量は他の追従を許さないほどで、危険日も遠慮も関係なく膣内に射精され、毎日のように子宮内を精液で満たしている。
 調教中の肉奴隷とてここまで精液を全身で味わったりはすまい。
 彼女は膣内は元より、頭,顔,胸,腹,背中,腸内,咥内で精液を味わっているし、全身を使って彼に奉仕している。
 髪が長かった時代には、髪の毛をペニスの幹の巻き付けて擦ってあげていたくらいなのだ。

 -全身是、景太郎ヲ悦バセル肉玩具-


 それが“今の”彼女の誇りであった。

 だが、そんな彼女にも一つだけ難点があったのである。
 それは、口が大きく開かなくて自分の咥内で奉仕できないのだ。

 可奈子に聞いても、

 『私だって無理です。
  お兄ちゃんのは素晴らしく逞しいのですから……(ポっ)』

 であるし、キツネに頼っても、

 『へ? 口をパカって開いて、カポッて入れたらええやん』

 等と言われる有様。
 だからその口が開かないから相談してるんでしょーがっ!! と怒鳴りたくなった。

 で、結局しのぶに頼る事と相成ったのである。

 しかし、予想に反して しのぶのレクチャーは的確だった。
 素子は京女であるし、実家は神鳴流の道場なので下品に大口を開けるという無作法は許されていなかった。
 それでも左程口が開かないと言う訳でもなく、亀頭の中ほどを越える事が出来ないという程度。
 だから しのぶは先程の様な手段を素子に伝えたのである。

 因みにしのぶはどういう訳か元々口が大きく開く上、素子の伝えた方法もとれるので口での奉仕には事欠かない。
 舌の使い方にしても、サラはもとよりカオラには何歩も譲ってしまう(カオラは舌でサクランボの茎をハニワの形に出来る)し、本人も下手だと思っていたのであるが、実戦で使用してみればイソギンチャクのような巧みさを持っていた。
 接吻せっぷんというカテゴリーでは大した事は無いかもしれないが、“舐める”という奉仕では隠れた優等生である事を知ったのである。
 それはキツネに<バター犬>と言わしめたほど。

 つまり、事フェラチオに関してのみであるが、しのぶは天性の才能を持ち合わせていたのである。

 ンんん…すはすは…ンごごご……ずずずず……はふはふはふ


 「唾液を飲み込むときには、上あごの裏に押し当てて隙間を作るんです。その方が楽ですから」

 んふぅ……んむ…ぢゅるる…ふひぃ…あふ…れろれろれろ


 「舌の裏がわも使うんです。“そこ”の方が熱くて気持ちいいみたいですよ。
  舌を巻くような感じでそこに……」

 しのぶの言う通りに舌を使い、頬肉さえ使用して肉柱を舐め啜る。
 それが気持ちいいのは彼の太股がぴくぴくと反応している事からも見て取れる。素子はそれが嬉しかった。

 嬉しいからもっと奥に入れてみた。

 「うわ……っ く、も、モトコちゃ…んっっ!!」

 たったそれだけの事であるが、流石に長時間奉仕され続けていた景太郎は限界に達し、ついに蛇口を全開にしてしまう。

 どぶっ


 「んふぅ~~~っっっ♪」

 どぶっ、どぶっ、ずびゅるっ、ずびっ、ずびびっ、


 喉奥を直撃。粘膜にその白濁とした粘液を叩きつける。
 しかし気道には向わず、一直線に食堂へと向う。いや、向わせている。その辺りは“慣れ”なのだろう。
 何せ素子は景太郎の精液を飲み慣れているのだから。

 「んご、んぐっ、ンんっ、んんっ、ンっん、んんん………」

 ビールのCMの様に喉を鳴らして精液を飲む素子。
 唾液と愛液を流しすぎて喉も渇いていたし、愛しい男の精液なのだから殊更美味い。

 美味いという言葉しか浮かば無い。

 いいなぁ……と指を咥えて見つめていた しのぶであったが、素子が口からペニスを引き出して誘ってくれると表情を緩めて飛びついてゆく。
 子宮おなかを空かせた子犬牝奴隷にはミルク精液が必要なのだ。

 れろ~……ちゅぷっ、はふはふ…はぁ…ちゅっちゅっちゅっ……


 激しくも丁寧に、細やかで大胆に幹を滴る精液を舐め啜る しのぶの様子に、素子は強い誇りを感じていた。

 しのぶは、恋人である なるを差し置いて景太郎と男女の関係となった素子に強い嫉妬を覚えていた。
 それと共に、踏み出せずにウジウジして先を越された自分に対して自信を失っていたのである。

 だが、キツネの後押しがあったとは言え景太郎と男女の仲となり、尚且つ先に経験した筈の素子より口奉仕が上である事を知って彼女は自信を取り戻せた。
 その何事もそうであるが、自信は力をつけ、拍車を掛けさせる。しのぶは自分の中にあった口奉仕の才能を見出せた事によって前よりも明るくなったという訳である。

 無論、お世辞にも倫理的とは言い難い。
 肉奴隷、牝犬奴隷の才能があるといわれてどうして喜べようか?

 だが、しのぶは“それ”を誇りとして受け入れた。
 家事以外では何も誇れず縋れなかった彼女は肉奴隷の才能を褒められた事により、そして愛しい想い人に奉仕を褒められた事によって、想い人足る景太郎のペットになる事こそが自分の天職なのだと信じて疑わなくなっているのだ。

 そんな堕ちた天使を見、
 嬉々としてペニスに奉仕する しのぶを見、
 綺麗にした肉柱から口を離し、とろとろになったヴァギナを開きつつ彼に跨るしのぶを見、

 素子は、

 「……良かったな、しのぶ」

 と心から祝福していた。




 「む? サラか。どうかしたのかこんな時間に」
 「あ? ああ、モトコねーちゃんか」

 夜も更けて部屋に戻ろうとしていた素子の前をサラが一人歩いていた。
 素子は夜目も利くので廊下が真っ黒であろうと何者が歩いているのか見て取れるのであるが、サラは格別だ。
 何せホラーというか、オカルトというか、要するに怖い系がまるで駄目なので、夜の廊下を歩く時には電気を全部点けるのだから解かり易いったら無い。

 スモック似たライムグリーンのパジャマで廊下をオドオドと歩いていたのである。

 「どこ行ってたんだ? 今、しのぶの部屋から出てきたみたいだけど……」

 目敏いな…

 と思いはするが、その程度で動揺する彼女ではない。

 「なに…しのぶに部屋でカルピスを飲んでいただけだ。しのぶが寝入ったのでな部屋に戻って来たんだ」
 「はぁ? カルピスぅ~? こんな時間にか? ガキじゃあるまいし……」

 何時もの人を小馬鹿にしたリアクションだが気にはならない。
 気付いていないならそれで由なのだ。

 嘘は言って無いが真実を伝えてもいない。
 引っかかってくれたのだから幸いだ。

 「そう言うサラはこんな時間なのにまだ寝ないのか? もう遅いぞ」
 「ん? あ、ちょっとな……」

 左手を何気なく腹に持っていくサラ。
 腹が痛いのを隠しているようである。

 「ま、兎も角モトコねーちゃんも早く寝ろよ。オヤスミ」
 「それはこちらのセリフだ。全く……おやすみ」

 やや行動が怪しかったが、左程気にする事もなく自室に戻る素子。
 案の定、自室ではカオラが奥の畳の間に寝っ転がっており、くーくーと可愛い寝息を立てていた。
 素子に懐いている彼女は、時折やって来てここで眠るのだ。
 サラがいないのは、今日は別の部屋で休んでいた為であろう。しのぶはさっきまで一緒にいたし、景太郎も同様。となると なるか恐らくはキツネの部屋で寝ているのだろう。

 ふ…と苦笑し、寝間着に着替える為に服を脱いでゆく素子。
 何時もの道着の下は全裸で、太股には膣から零れた精液が伝っていた。
 人には見せられぬ淫靡な姿である。

 だが素子は一切気にせず、太股を指でぬぐって精液を舐め取った後、そのまま生理用ショーツを穿いただけで寝間着を羽織り、カオラに布団を掛けてやって眠りに付いた。
 素子の口から発せられる精臭に気付かず、カオラは素子の体温を間近に感じ、ふにゃふにゃと顔をほころばせていた。




 「う~~~……何か気色悪りぃ……何だろ? 病気かなぁ……」

 トイレに向ったサラは、自分の身体に起こっている異常に戸惑っている。

 痛いか? と問われれば、そんなには…と答えられるし、
 気持ち悪いか? と問われれば、はいと言えるだろう。

 それでも、痛くは無いが痛みに近い不快感が腹の奥から響いて来、蹲るようにしてその不快感に耐えていた。
 便秘…にはなった事は無いが、それに近い圧迫感もあるし、腹の奥がぐねぐねと蠢いている違和感もある。
 それはそれは心細くて気持ちの悪い感触だった。

 だが、暫くトイレに腰をかけていると、

 「ん……?」

 どろり…と何かが出てくる感触がある。
 既に便座に腰を掛けているので失禁したというわけでは無いし、小水が出た感触でも無い。

 サラは戸惑いつつも下を見、

 「げ……っ!!」

 思わず声を上げた。

 何と自分から血が出ているのだ。

 それが何を意味するかは、残念ながら慌てた彼女には理解できない。
 普段はやたら大人じみた発言をするし、男女の機微も掴めるさらではあるが、そういった知識はカオラ以下なのである。

 サラは慌てふためき、誰に相談すればいいのかとパンツも上げずにトイレを駆け回る。

 そんな彼女に助け舟を出すのは、中々戻ってこないサラを心配したキツネであるが……それはもうちょっと後の話だ。


 ともあれ、サラはこの日、お赤飯の日を迎えたのであった。






[2319] Re[3]:Dotage ~妄愛~ <廿> (ラブひな)
Name: Pixy◆1b43f5f3
Date: 2007/06/04 08:49


 景太郎にとって不思議な夜が明けた。

 何が不思議なのかというと、夜に起こった奇怪なドタバタ騒ぎが景太郎にとってのそれに当たる。

 その時の景太郎はしのぶの部屋におり、彼女を抱き締めて眠っていた。
 最近は自分の部屋で眠る事が少なく、素子とキツネの部屋で眠っていたり、可奈子の部屋を使しているのだ。

 で、その時のしのぶの姿はというと、小さな膣からごぽごぽと精液を零し、景太郎によって陥没状態を治してもらった乳首を立たせてまま彼に抱きついて眠っていた。
 因みに彼女が着用していたのは赤い首輪とニーソックスのみ。まるで奴隷の様な出で立ちである。
 尤も、しのぶは“これ”が制服だとのたまわっているのであるが。

 それは兎も角として、景太郎は部屋の外の騒がしさで眼を覚まし、とりあえず服を羽織って様子見に出てみた。

 キツネが走り、なるも走っている。
 ついでに何故かむつみが嬉しそうに走っていた。

 「あ~~ん。やっぱり小さいサイズなんてないよ~~っ」
 「しゃあないなぁ…なるもケツが大きいさかい」
 「オムツみたいになっちゃいますね~」


 場所はトイレのようだ。
 声が良く聞こえないから要領を得ない。
 ハテ? と首をかしげつつ、景太郎は一階トイレに足を運んだ。

 「……う゛~~~……」
 「大丈夫やて。女やったら誰でもそーなるんや」
 「そうですよ~? これでサラちゃんも大人になれますね~」


 事ここに至ってもよく解からない景太郎。デリカシーに欠ける鈍感男は健在である。
 留学中に色々と鍛えられて頼れるようにはなっては来ているが、根っ子の部分は変わっていないという事か。

 彼としては皆を心配しての行動であるが、この場合は配慮に欠け過ぎている。
 尤も、彼の師匠である瀬田もデリカシーが欠けるので同じ行動をとるであろうが。

 「ねぇ、何かあったの?」

 ひょいとトイレを覗き込み、中にいるであろうキツネらに声をかけた。
 

 因みにひなた荘は、一応ひなた旅館として改装はされているが、やはり女子寮は女子寮のままである。
 温泉旅館として開放されている女子寮と言った方が正しいのかもしれない。
 よって、手洗いにしても女性用がメインとなる。

 つまり、

 「覗くなエロガッパ――っ!!」
 ずがっ!!

 「おべぽっ!!」

 なるのフィニッシュブローを顔面で受ける破目に陥ってしまうのであった。

 遠退く意識の中で景太郎が見たモノは、
 もこもこのニットのパンツの様な物を履いて顔を真っ赤にして俯いているサラの姿であった。




 部屋には引き摺って行ってもらったが、そのまま朝まで放置されていた景太郎であったが、そこはそれ不死身の彼である。
 翌朝にはちゃっかりと回復し、最近は日課となっている素子との朝稽古にも顔を出せていた。

 まぁ、昨晩の騒ぎの意味は男である彼が必要としないものであり、外国人にしては平均より身体の小さいサラが使用できるジュニアナプキンが無かった事(しのぶの使っているヤツも無理)と、生理用ショーツが無かった事だ。
 結局は何時もの様に“何故か”持っていた むつみがひょっこりとそれを持って現れ、それで騒動は一応の決着を見た。この辺りは弟妹を七人も抱えているからこその下準備であろう。流石である。

 兎も角、景太郎は蚊帳の外。訳の解からぬまま朝を向かえ、訳の解からぬまま今に至っている。
 稽古に出る時に台所から漂ってくる小豆に匂いに首を傾げはしたが。


 風を切る音も出さずに景太郎を霞める素子の木刀。
 その一撃一撃を当たる寸前を勘で避けている景太郎も、前よりかなり回避力が上がっていた。
 だが、それよりもまだ素子の剣は以前より鋭く、尚且つしなやかさも増している。

 実姉である鶴子が感嘆したほどに、彼女の腕は上がっているのだ。

 だが、どういう訳であろうか?
 その素子の腕に追従すかのように確かに景太郎の剣の腕も上がっているのだ。

 ガシィンッ!!


 とても木刀の音とは思えない程重い音を響かせ、景太郎は素子の剣を受けている。
 無論、素子の方に余裕があるが、それでも受けられているだけで驚異なのだ。
 恐らくこの場に鶴子がいれば、件の<呪い>の事があっても素子との婚姻届を景太郎の前に突きつけるであろう。それ程彼の能力は上がっていた。

 当の景太郎本人はひぃひぃ言いつつの防御であるが、斬岩剣を受け止め、斬空閃に耐え切る事が出来る人間が弱い筈が無い。攻撃の腕前は兎も角として、既に耐久力,持久力においては神鳴流の一般剣士以上になっているのだ(元々が不死身であるし)。

 隙を見据える目も“何故”か持っている事もあり、素子はこの出来の悪い弟子を嬉々として鍛えているのだ。

 とは言うものの、素人に毛の生えた程度の景太郎では五分が限度。
 退魔剣術である神鳴流を相手に五分も持つ方がどうかしているのであるが、五分後には寸止めの突きを喰らって終わっていた。

 やれやれ疲れた~とへたり込む景太郎であるが、息は上がっていない。
 真剣勝負と言って良い程の神鳴流鍛錬を受け、単に疲労してだけ。元々の筋は良いし才能もあった景太郎は、やはり規格外なのだろう。
 たった二年で長年修業を続けてきた素子と打ち合えるのだから。

 その様子に素子は微笑を浮かべていた。

 弟子…とまでは行かないが、彼を鍛えられている今を喜んでいるのだ。

 そんな素子の視線に気付き、ふと頭を上げる。
 以前なら眼を逸らせたであろう彼女も、今は真っ直ぐに彼を見つめる。自分の心に対して嘘や誤魔化しを行う事を破棄したからだ。

 子供の様であり、尚且つ男を見る女の様な真っ直ぐな視線。
 そんな目で見られれば如何な堅物であろうと真っ赤に照れてしまうであろう程に。

 だが、景太郎は別だ。

 上がっていなかった息が途端に荒れ始め、
 優しげな眼差しのまま、ねっとりとした熱が篭ってゆく。

 素子もその視線を受け、腰が急に重くなった。
 ずくんずくんと腹の奥がざわめき、口の中に唾液が溜まりだす。

 木の上から二人を観察していた白い小鳥……身体を小さくした疾風式神が飛び立つ。
 周囲の警戒に出たのだろう。

 何が始まるかは既に心得ているのだから。

 ジジジ……


 とジッパーを下げる音がする。

 ゆっくりと、ねっとりと、焦らすように。

 だが、その音は景太郎のジーンズからでは無く、何と素子の袴からだ。

 素子の袴は改造されており、性行為兼用の袴とでも言えば良いかビサール宜しく下腹部の前から尻に掛けてにチャックがつけられているのだ。

 やや厚めの生地である戦袴と同じ布質であるのは、やはり神鳴流のものだからであろうか。
 だが、その神聖なる戦装束は、今や愛しい男を誘う淫靡なコスチュームの一つに過ぎない。
 赤い袴の向こうにあるのは明らかに汗のものと違う芳香を吸っている白いショーツ。その濡れた布地の誘惑に耐えられるものはいないのでは無いだろうか?

 否、そうではない。
 耐える必要は全く無いのだ。

 何故なら素子は景太郎の所有物であり、性欲解消用の肉。
 彼の為だけに存在しているといっても過言では無い。

 だから彼が興奮したというのであれば、街中であろうと人ごみの中であろうと、彼女は自分を差し出すであろう。
 その証拠に、大切な袴を淫靡に改造しているではないか。

 これで袴を脱ぐまで時間、彼を待たせずに事に及べるのだから。

 素子は手近な気に手を付き、彼に尻を向けた。

 「“景太郎”先輩……どうぞ……」

 言われるまでも無い。
 直様引き下ろされたジーンズのジッパーの奥。
 散々彼女を嬲り尽くしている肉の凶器が息巻いて飛び出してくる。

 モトコちゃんは自分のモノ。
 モトコちゃんも愛している。
 モトコちゃんとこうするのは治療の一環。

 だからモトコちゃんとセックスするのは正しい。

 モトコちゃんに入れて膣内に出すのは正しい。
 モトコちゃんを犯すのは彼女の為。
 何故なら、モトコちゃんは自分に犯されるのが幸せなのだから。
 モトコちゃんも幸せにしてあげたい。

 だから……


 濡れたショーツのクロッチ部は素子の手によってずらされているので既に濡れた亀裂は剥きだしになっている。
 景太郎はちょんちょんと舌先で剥きだしになった亀裂をつつく。
 その度に素子の腰がピクピクと反応するのが堪らない。
 景太郎は両の手で素子の尻を掴み、ぐっと押し開いた。

 「ああ……っ」

 粘膜が外気に触れ、羞恥に声を上げる。
 彼に見られる事を誇りにはしているが、羞恥心は別なのか。或いはその嬌声で彼が昂る事を理解している故の反射行動なのかは知らないが、その艶っぽい声に景太郎のブツは押さえが聞かなくなる程いきり立った。
 手に泥が付いているからか、家内で行うような指での行為はせず、アナルに鼻を押し付け舌で小陰唇を嬲る事に従事する。

 そんな所にも彼の気遣いは残っている。淫獣であるというのに。

 「あ、ふぁあああ……」

 不浄の部分の匂いを嗅がれているかと思うと恥ずかしくて堪らない。
 同時に、そんな匂いすら掌握されてゆく事が嬉しくて堪らない。
 必然的に蜜の量が増え、景太郎の舌の上に溢れ出る白っぽい粘液が彼を更に昂らせた。

 そしてたっぷりと濡れそぼった秘肉にもこれ以上の愛撫の必要性を見出せない。

 景太郎は身体を起こし、反り返った肉柱をそこに押し付け、ぞぶりと突き込んだ。

 「ンぁああああああ………っっっ」

 待ちに待っていた熱い肉の到来。
 歓喜の眼を潤ませ、素子は切ないほど甘い声で吠えた。

 余人ならその声だけで精を漏らしてしまうであろう程の艶の篭った声。
 まさかこんなうら若い娘の喉からほとばしり出たものであろうとは、如何なる色事師でも想像もつくまい。

 肉襞が大好物の肉と、その肉汁たるカウパーに舌鼓を打ち、ぬっちょぷっちょと凄まじい下品な咀嚼音を立てている。
 当の肉柱の持ち主は、余程その下品なまでに貪る様が嬉しいのか、奥の奥まで味わせてやろうとストロークを長くした。

 「あふっ、あぁあっ、ンぁああ……っ、くぅ……んっっ」

 下の口で素晴らしいモノをいただいている素子は眼を瞑り、自分の心身を犯してくれているその肉柱の形状すらも堪能する。

 「あふ、あふっ、ひぃ、うン…っっ あ、はぁ、け、けいたろせ…ンんんっっ!!」

 全てが極楽。
 全てが悦楽。
 自分の身体でもって彼に快楽を与え、彼が喜んでくれるからこそ自分はこんなにも気持ちが良い。

 ああ、何故もっと早く彼の牝にならなかったのか。
 ああ、何故もっと早く彼のモノになっていなかったのか。

 以前の自分。
 彼と出会った当初の、彼に対して失礼極まりない言動を吐きまくっている愚かな自分に唾棄し、
 素子は快楽に酔い痴れ、


 この幸せを寮の皆で分かち合う日に想いを馳せていた。




―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
                           -盲・愛-
                            File:廿

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 やたら腰の辺りに充実感を漂わせた素子と、素子の特訓に付き合ったからであろうかヘロヘロの景太郎がひなた荘に戻ってくると既に朝食の準備は整おうとしていた。

 二人はそのまま男風呂と女風呂に分かれて汗を流し、直様食堂に戻ってくる。
 そのタイミングはまるで示し合わせたかのように同時。
 何だか連れ添った夫婦のよう。

 お陰でなるの眉毛の角度がキツクなってゆく。

 しのぶはそんな二人を見て『いいなぁ…』と呟くものの、よく考えてみると夕べは独占していたのであるからお門違いだと直に気を取り直して味噌汁の仕上げに入った。
 キツネもニシシと笑うのみ。昼に相手をしてもらって、夜は可奈子と3Pできるのだし。
 当然ながら可奈子も無言。今夜彼女は彼と一緒に眠れるのだから。

 この三人は景太郎という想い人を得た事によって急速に大人の落ち着きを持ち始めていた。
 キツネにしても景太郎より一歳年下にしては落ち着きがある方であるが、咄嗟の時の焦り方は少女のそれ。周りの少女こどもらの為に落ち着きを醸し出していたに過ぎないのだ。
 しかし、真の意味で男を知った今ははるかと同じくらいのレベルの落ち着きをそこに見せている。

 だが、同じ寮に住み、同じ空気を吸い、毎日顔を合わしている所為であろうか、他の女性たちはその変化に気付けていない。
 久しぶりに会った人間が変わっていた……というのなら兎も角、変わってゆく毎日の中の一部である寮の人間が早々気付ける訳も無いのだ。

 それに、先に異様な変化に気付ける勘を持っている筈の素子がよりにもよって真っ先に激変し、次いで勘のいいキツネも景太郎一辺倒のオンナに成り果てている。
 これで誰が気付けるというのだろう?

 全員が席に着き、ほこほことしたご飯の湯気がカオラの自制心をぼかし始めた頃、

 「「「「「「「「「いただきます」」」」」」」」」

 と手を合わせた。

 本日は何故か純和食で、塩鮭(甘塩)がメイン。
 白いご飯に茄子と胡瓜の漬物。お汁は根菜。出汁巻き卵にホウレン草のおひたし、ひじき、煮しめまである。
 うら若き女性陣の群れなのに…という気がしないでも無いが、美味い事には違いなく、全員喜んでパクついていた。

 ただ一人景太郎だけが、デザートが牡丹餅だったので首を傾げていたりする。

 言うまでもないが、サラのお祝いを兼ねているのだ。
 無論の事であるが『祝、初潮!!』などいうデリカシーの欠片も無い祝いは流石にやりはしない(景太郎もいるし)。だが、祝ってやりたいのも間違いない。

 しかし朝っぱらから赤飯は辛いし、尚且つ景太郎にだってバレるだろう。いや、バレずとも何時ものパターンで彼のポカによってウッカリと喋らされてサラが恥ずかしい思いをさせられるであろう事は容易に想像できる。そんな期待を裏切らない男なのだし。

 だからしのぶ苦肉の策で、朝食のデザートとして小豆を使った物を出したのである。
 流石に洋食の後に牡丹餅はメニューとして不自然なので、こんな和食にしたという訳だ。尤も、繊維質が豊富なので女性には丁度いいのであるが。

 当のサラは何が変わったという訳でもなく、無言でパクパクと箸を進めていた。
 生理が始まり、女の子としてまた一歩踏み出した。言っては何だがそれだけである。

 現に高校二年であるカオラも既に生理はあるが、小学生のサラ同様に走り回って遊んでいる。
 彼女は例外であるという説もあるが、それは兎も角。

 そんなサラの横で、むつみはニコニコと嬉しそうに鮭を突いていた。
 滅多にい無いという訳では無いが、普段は住み込みで働いている日向で食事をしている彼女が朝からちゃっかりとここにいるというのは珍しい。

 というのも、昨日唐突にはるかが飛び出して行ってしまったからだ。

 「ちょっと旅にでてあの馬鹿を……」

 とか呟いていたのであるが、当然ながらむつみは要領を得ない。
 店はどうするのかと問い掛けると、

 「キツネに任せる」

 とそれだけだった。

「え―――っっ?!」

 キツネが驚愕している間に、はるかは呼んでおいたタクシーに飛び乗って何処かへと旅立ってしまったのである。
 余談だが、可奈子はその後姿を見ながら、

 「流石 はるかおばさん……その行動力はお婆ちゃんにとてもよく似ています」

 と感心したという。

 ともあれ、こうしてキツネは目出度くフリーターから店長代理という職(?)を得たのであった。

 むつみは はるかの留守中は用心の為にひなた荘住まいとなっている。
 この街では左程防犯に気を使わなくとも良いのであるが、そこはむつみの事だ。一人にしておけば珍事件を起こしてしまいかねない。
 東大に合格後は身体が丈夫になっていった むつみであるが、やはり天然は治っていないのである。

 彼女にしても当然の様に皆と共同生活する事に異存も異論も無い。
 好きな人達と一つ屋根の下。それは彼女にとって素晴らしい事なのだ。

 それに、

 つい…と眼を向けると美味しそうにご飯を口に運んでいる景太郎の姿。
 そして反対の方向を向くと、何となく不機嫌そうに食事をしている なる。
 その二人に挟まれるような位置で食卓についている自分。

 我知らず むつみの笑みが深くなってゆく。

 なるの事を思い出した時や、景太郎の事を思い出した時。
 大好きだった二人を思い出し、あの時の約束のままに東大を目指し、すったもんだはあったものの三人同時に合格。
 今は三人で同じキャンパスに入る。

 どういう訳か行きで三人が重なる事は無いのであるが、それでもまた十数年前のように三人で遊べている。

 むつみは、幼馴染の三人が揃っている事、揃って笑えている今が嬉しくて堪らないのだ。



 ―――それに……




 ひなた荘ここにいると、けーくんに抱っこされているような気が……



 「あら……?」

 唐突に意識がふっと遠退き、奇妙な思いが湧き上がった。

 思い浮かぶは昔の事。景太郎と一緒に遊んでいた時のビジョン。

 鮮明でいて曖昧。
 克明でいて虚像。
 ノンフィクションのようでいてフィクションのよう。

 信じられないような、それが真実のような。
 間違っていと確信できるのに、これが正しいと納得も出来てしまう。


 砂場で遊んでいる幼い頃の自分と景太郎。

 楽しげに語り合い、笑い合っている二人。

 何時も遊んで、何時も一緒にいて、大好きだった……ううん、今も大好きなけーくん。

 やがて砂遊びも飽き、別の遊びをしようという事になる。

 するのはお医者さんごっこ。

 患者は自分。
 お医者さんはけーくん。

 私、けーくんの赤ちゃん産みたい……そう言ったらお医者さんはニッコリと笑い。

 『うん。ボクもむーちゃんに赤ちゃん産んで欲しい』

 そう言ってくれた……
 でも、産めるかどうか解からないから、けーくんに調べてもらう事にする。

 ブランコに腰かけて、足を開く。
 でも、けーくんにはよく見えない。

 自分の手でくいっとワレメを広げたけどまだ駄目みたい。

 けーくんは私のため、顔をそこに近付けて……

 そして、

 そして………







 ことんっ

 そのもの音にむつみはハッ意識が戻った。

 見回せば、皆の眼が彼女に向いている。
 手に持った茶碗をいきなり転がしたのであるから驚きもするだろう。
 意外に大きな音を立てたこともあるし。

 「ど、どうしたの むつみさん? ひょっとしてまた……?」

 仮死状態になっていたのか? と なるは心配している。

 昔の二人は立場が逆で、むつみが元気少女、なるが虚弱児だった。
 .景太郎をめぐってのライバルににた間柄であるが、当の二人はお互いが大好きだったので争いも葛藤も無い。
 むつみは大好きな景太郎となるがくっ付けば自分も幸せなので なるに未来のお嫁さんの座を譲ったのである。

 その代わりにどういう訳か、二人の体質も入れ替わっていた。

 なるは過去を思い出した時にむつみにお嫁さんの座を譲ってもらった時に、元気も貰ったと思っている。だからこそ彼女の身を心配しているのだ。
 尤も、今現在のむつみから言えば単なる杞憂なのであるが。

 「え? あ、いいえー
  ちょっと昔の事を思い出してだけですから」
 「そうなの?」
 「ハイ」

 普段、“ぽややん”としている むつみの弁であるが一応の納得は出来る。
 なるとて、彼女が何を言い出したりやりだしたりするか解からない人間であるのは良く見知っているのだから。

 今一つ腑に落ちないのも確かであったが、今日は早めに出ねばならない講義があるので なるは箸を食事に戻した。
 うっかりと“指し箸”をしていた事には気付いていない。きちんとしているようで何処かお行儀が悪い。
 作法を説こうかとしていた素子であったが、自分も時折やってしまうのであえて黙っておいた。

 景太郎はそんな作法も知っているのだが なるの所作に気付いてはおらず、自分にチラチラと視線を送ってくるむつみに意識を取られている。


 景太郎は気付いた。
 次いでキツネも、そしてしのぶも。


 むつみが景太郎を見る目には、明らかな熱が篭り始めているのだ。


 ずくんずくんと脈動を始めている景太郎のブツ。

 皆と楽しく食事をしている台所で、彼の股間はいきり立とうとしていた。

 ここでセックス……いや、“交尾”をした事は何度もある。
 シンクの縁に素子を乗せ、不安定な格好に身体を震わせている素子を何度も突いた。
 テーブルにキツネを縛りつけ、嫌がる(フリ)をする彼女を何度も犯した。
 流石に可奈子としのぶは日が浅い為にまだここは使ってはいないし、しのぶがいる時には下校時なのでカオラもサラいる。だから“まだ”行えまい。
 それでもペッティング程度……とは言っても、明確な性的愛撫である……ならここで何度もしのぶと可奈子に行っている。

 つまり、この台所という日常の場も既に性行為のフィールド内なのだ。

 そのフィールド内で盛りがつきかかっている牝がいる。
 唯一の雄である景太郎が反応しない訳が無いのだ。


 「あ、いっけない。遅れちゃう」

 腕時計を見、思っていたより食事を堪能していたなるは食器をシンクに置いてから台所を飛び出してゆく。
 カオラもそれを見て笑いながら飛び出して行った。因みに食器は片付け忘れている。
 「あ、こらっ」と素子が嗜める前に学校へと向かうカオラ。しのぶも学校がある為、片付けは景太郎らがやる事になっている。寮の分担制はこの辺りが便利なのだ。
 普段はカオラと走ってゆくサラは今日は遅れて席を立ち、学校へ向う準備に入った。やはり…というか、珍しくというか、サラの所作がどこかたどたどしい。生理具の違和感に慣れないのだろう。

 そしてむつみも席を立った。
  
 「あ、むつみ。悪いんやけど、店開けるんちょっとやっといてくれへんか?」
 「ハイ。解かりました-
  それでキツネさんは?」
 「ウチか? ちょっと野暮用や」
 「あ、ハイ-」

 返事をし、チラリと景太郎を見てから台所を後にするむつみ。
 その頬はやはり何処か赤く、その眼差しも何時もの彼女のものではない。

 『“こっち”に来よるな……』

 コリコリと頬を指でかき、やや苦笑しつつそう口の中に言葉を零す。

 むつみは性的な意味では景太郎に左程の強いものを持ってはいなかった。

 彼女の肉体からだは兎も角、精神の方はまだ子供と言って良い。確かにむつみは母親のような包容力を持っており、キツネやはるかとは別の意味でここの皆を見守っている。
 だがそれは皆から見た彼女という位置付けであり、彼女本来の位置付けでも無い。
 事実、景太郎と同年齢であり、何と彼氏いない暦が景太郎と同じ。景太郎同様に見てくれが悪いという訳でもないのであるが、何故か男っ気は父親と弟以外は周辺住民との付き合い以外には全く無かったのである。

 そのむつみが唯一好きな異性として挙げられるのが浦島景太郎という青年なのだ。

 ただ、彼氏いない暦の長さと恋愛経験の無さから、“大好きな男の子けーくん”から“愛する男性浦島君”という心の移り変わりの垣根が高すぎで越えられなかったのである。


 ――しかし、彼女は今越えかかっている。



 だからむつみの中の牝が、景太郎という雄に反応しかかっているのだろう。
 そうキツネは感じ取っていた。

 しのぶは登校して行く。
  夕べが彼女であったから憂いは無い。

 素子は予備校へと向う。
  夕べはしのぶと抱いてもらっているし、先程も森の中で抱いてもらっていた。

 よって……

 「カナコ……」

 と、キツネが声を掛けた。
 その声を待っていたかのように、可奈子もにっこりと微笑んだ。

 皆と生活する内に、
 景太郎らと共に過ごす内に、
 彼に抱かれるようになった後に、
 “同志”と共に抱かれるようになったお陰で出せるようになった自然な笑みを浮かべ……

 「お兄ちゃん……」

 と景太郎の首にしっかりと腕を絡めて熱い吐息を吐いた。

 キツネは時計を見、時間を確認する。
 景太郎がで無ければならない講義は午後だ。ついでに言えばその時間も彼女は既に確認済みであるから何時の電車で出れば良いのかも理解している。

 『時間にして大体二時間……かぁ……
  それやったら結構でけるなぁ……』

 キツネは可奈子に“先方”を任せ、洗い係を受け持って彼女らを部屋へと送り出していった。

 「さ~~て……急いで洗うてウチも交ざらなな♪」

 口から出るのは淫猥な言葉。
 その意味合いも下品極まりない。
 思うのは彼との情交。願いは自分への陵辱。

 それでもその顔は、

 楽しげに食器を洗うキツネの顔は、

 柔らかな若妻のそれにしか見えなかった……






 「くっそぉ……面倒くせぇなぁ……」

 ぶちぶちと愚痴ながら石段を降りてゆくサラ。
 歩き辛いので階段の上り下りも一苦労だ。

 オムツ…とまではいかないが、下着とは別の圧迫感で非常に歩き辛いのである。

 蟹股になりかかっている太股をきゅっと締めると余計に違和感が増す。
 下着をもう一枚余計に穿いているようで気持ち悪いのだ。

 それでも遅刻しないように走らねばならない。それがまた擦れて…と堂々巡り。
 慣れない内は大変なのだ。
 それでもこういう身体の状態になると、否が応でも自分は女なのだと思い知らされてしまう。
 シヨック…と言うほどではないが、こういった現実はけっこう面倒臭く感じてしまうものなのである。

 だがそれより……

 「ったく……何でなんだ?」

 腹の奥がずくんと疼く。

 今まで感じた事も無い感触。
 体内に別の生き物が、例えるなら軟体生物が蠢いているような気色の悪さ。
 それでいて全てを任せ切ってしまいたくなるような奇妙な安堵。
 嫌悪が混じっているのに、“そこ”が良い……正に矛盾しまくった精神がサラの心の中に澱の様に混じり始めていた。

 「何で……
  何であたし、けーたろ何か意識してんだ……」

 うっすらと頬を染めて学校へと歩いてゆくサラ。

 景太郎には恋心なんぞ全く持っていなかったサラであるが、

 まさか恋心より先に、
 異性を愛するより先に、女として開花を始めていた身体が心より先に男を求め出している等と思いつくはずも無かった。




 そして……




 「けーくん……」

 日向の鍵を開けて店に入り、電気をつけて掃除をしていたむつみ。
 テーブルを拭く手は何時しか止まり、彼女は熱い溜息を洩らしていた。

 そこにいるのは以前の彼女ではなく、男を想うオンナのそれ。
 恋に焦がれ、愛に焦燥する女のそれ。

 急激に駆け上った感情の山も、頂上へたどり着くと倒れこむのが常。
 彼女の心は今、頂上に手が掛かっていた。

 感情の山を越え、親愛から情愛への垣根を越えてしまえば後は変貌が始まってしまう。

 恋を知り、手放さずに生き、
 愛を知り、それを手放せずにおり、
 相手の愛情すら巻き込んで抱き締めた手を離せずにいてしまうのなら、
 心がそれを受け入れてしまうのなら、

 後は只、薄暗い天国へと堕ちるだけ――――





*************************************************************

 どうも遅れました。Pixyでございます。

 よくよーく原作を読んでみますと、サラちゃんは景太郎の事が好きですけど、異性として惚れてるんじゃ無いんですよね~~
 だからちょっと、彼女だけややこしくしてみました。

 で、むつみさん。
 彼女は一番大人であり、且つ子供という位置付けです。
 大人の包容力でもって接する癖に、子供の感情で動く人ですからね。

 ああ……素子の影が益々薄くなってしまう……

 でもまぁ、次々回くらいには何とか目立たせられるでしょう。多分……(涙)

 そ、それではまた……






[2319] Re[4]:Dotage ~妄愛~ <廿壱> (ラブひな)
Name: Pixy◆94b616c7
Date: 2007/06/06 09:01


 取り立てて何処が変わった…等と表現はし辛い。
 外見的にも変化は無いし、人の付き合い方も以前同様。
 誰とでも優しく話をしてくれるし、問い掛ければ穏やかに答えてもくれる。
 大学内での人気も相変わらず高く、三浪の後に合格した事等誰も気にもしていない。無論、男性のみであるが。

 もう一人、成瀬川なるという絶大な人気を誇る女性もいるのだが、こちらの方は既に相手がおり、如何なる男性がモーションをかけた所で見向きもされていない。
 無論、その程度で諦められるほどの美人さではない。それ程良い女なのだから。
 おまけにその相手は何処をどう見てもうだつの上がらないヘッポコなので絶対にチャンスがあると信じて疑わない男も多い。
 だが、彼らはいずれ気付かされるだろう。彼女の目にはその男以外が全く入っていない事に……

 なるの事は兎も角として、先に述べた女性はそういった意味でチャンスが多いとされ、様々なアプローチを受けていた。
 車でのデートや飲み会、果ては露骨な交際交渉まで。その手段は様々だ。
 だが、その女性は上手く立ち回っているわけでも無いのに、その全てをきれいにかわしまくっている。

 飲み会だけは何とか誘えるのであるが、彼女は大酒豪なので先に男達の方が潰されてしまうし、露骨な交渉に出ても、
 「私、結婚したい人がいるから駄目ですー」と一刀両断。
 無茶苦茶男泣かせなのである。

 尤も、彼女自身、その結婚の望みは薄いと知っているし、理解もしている。

 自分が譲ったのだから。

 大好きなお友達とずっとお友達出る為に。

 だけど想い出してしまった。
 遠い日に胸の奥に沸いたそれを、異性に対して芽生えたその想いを。
 彼女の心も、身体も、全てが記憶を取り戻していた。

 ――と同時にそれは歪んでいた。

 大好きから愛しさへ、愛しさは強い愛情へと変化する。
 それは感情の成長であるから当然の事。成長なのであるから祝福もされよう。

 だけど彼女のそれは歪んでいた。

 自覚も無しに、ゆっくりと清水が滞るように濁りながら……

 元々が無垢であったが故、
 元々が少女のようであったが故、
 その歪みも濁りも歪過ぎて気付けなかった。

 同じゼミに通う者は言う。

 「乙姫さん? うん何時も通りだよ。

  でもさ、最近何かこう……妙に色っぽいの。何だろ?」

 沖縄の純朴な少女は、穏やかなひなた市で穢れて行く。
 誰にとっても母のように接していた聖母のような彼女は、ゆっくりと濁ってゆく。

 心の変化は身体にも現れる。
 外に滲み出た色気は内面の変化。
 つまり彼女は今初めて“女”へと変わろうとしている。

 ただ、広義で言うところの女であり、“牝”もまたこれに入る。
 ただそれだけなのだ。

 少女から脱皮し、女へと変態するはずだったのに、蛹が破れてみれば女という“蝶”ではなく、“牝”という属性のみ。
 だが成長は成長なのだろう。
 変貌も変質も変化には違いないのだから。

 女性へと成長する前に牝となっただけなのだから。
 そしてその事は彼女にとっての幸せなのかもしれないのだから。






 サラ・マクドゥガルという少女がいる。

 籍に入っていないし、誰も事情を聞かないので解からない事だらけであるが、瀬田 記康が親代わりとなっており、彼が同棲していた女性の娘という事だけは知られている。

 瀬田をパパと呼び、彼にくっ付いてあちこちを旅していた事もあって意外なほど図太く、あらゆる場所…妙にホラーチックな場所以外…で生活が出来る逞しさを持っている少女だ。
 今はひなた荘に腰を据え、ひなた西小学校に通っている。

 外国人ではあるが平均的な歳の少女より身体が小さく、何故かウマが合うカオラと共に走り回り、一昔前なら“お転婆”という括りにいた彼女もお年頃という事か、遂にお赤飯の日を迎えていた。

 尤も、現実主義者である筈のサラ自身は未だに混乱の中にいたりする。

 知識的には学校で学ぶ事であるから理解はしてはいたのであるが、現実的に自分がそんな身体に…子供を産む準備が整いつつある身体になる日が来るとは思ってもいなかったのだ。
 現実は受け入れているのでるが、“受け止め切れていない”のである。無論、自分の肉体的な変化に戸惑っているだけという説もあるのだが。

 それにもう一つ、彼女を混乱させている事がある。

 彼女が生活をするひなた荘には唯一の男、浦島景太郎という青年がいるのだが、どうもここの所彼を妙に意識してしまっているのだ。
 いや、以前から、
 初めて会った時から様々な意味で気にはなっていたのであるが、ここのところの感覚はそれとは全く別物なのである。

 最初は確かに腹立たしい男で、自分と瀬田の間に割り込んでくるムカツクヤツという印象しかなかった。
 しかし、当の瀬田パパの激しい勘違いによってひなた荘に居候をし始め、瀬田が世界を飛び回る際に結局は正式に預けられる事となり、毎日顔を突き合わせているので良い点も解かりだす。
 良い点が解かると懐きだし、カオラと共に行動するようになると彼女と共に纏わり付きだした。

 恋には程遠いが、何時しかサラは景太郎の事を、瀬田に次いで好意を持っている男として見ていたのである。


 そう、恋では無い。
 “恋”ではないのだが……

 景太郎という男を想い、太股をきゅっと締めると奇妙な心地良さを感じる。
 彼の側により、汗の匂いを感じると胸がときめいてくる。
 彼に見られるとその視線を感じて頭に血が上ってくる。
 彼の腕や腰にしがみ付いていた事を思い出すと、急に腰が重くなってくる。

 これがどういう意味を指しているのか、長くファザコンを続けているサラには解からなかった。
 それに今挙げた例ならば誰が聞いても“恋”なのだと思うだろう。

 だが、“違う”のだ。
 それが“恋”では無いという事だけは、サラも理解していた。


 学校に着き、自分の席で頬杖を付いて外の景色を見つめながら溜息をつくサラ。

 ませた仕種であるが妙に彼女に似合っており、見つめる男子らもドキドキだ。サラは元々美少女なのでけっこう人気がある。単に相手にしていないだけだ。
 父親セタが理想であったファザコン娘であるし、その次に好きなのが景太郎だ。現実を知った上で夢を追い続けている二人を見ているサラの男性観(というか男子観?)による採点はかなり辛い。
 ガキっぽさがあれば当然×であるが、無さ過ぎたらそれも×。
 夢が無ければやっぱり×であるし、人の夢を笑う奴もやはり×。それでいてちゃんとした現実観を持っていなければ結局×。
 
 こんな理想なのだから当然学校の男子を相手にする訳が無い。

 それでもモテる。非常に。


 今の彼女は、

 身体が大人になりかかっている今のサラは、

 小学校に通っている少女とは思えない程、
 今だお子様体型であるというのに、

 零れ落ちるほどの奇怪な色気に満ちていたのである―――





―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
                           -盲・愛-
                            File:廿壱

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 むつみという女性の無防備さには寮の皆も困っている。

 いや、これが普通の生活なのであれば左程では無いのであるが、ここは寮であり、尚且つ管理人は男性である。
 にも拘らず、彼女は温泉に入った後、平気で裸のまま出てきたりするのだ。

 バスタオル等を巻く事無く、全裸のまま……確かに彼以外は女性であるから左程の問題も無いと言えなくもないし、この町の犯罪率は日本でも最小といえるから気にせずともよいのかもしれない。
 が、それは彼が留学していた時の話。今彼は留学から戻ってきているのでちょっと問題となる。

 尤も、その陰で全く気にしなくなった女性らが彼に肌を曝しまくっているのだが、それは なる達は与り知らぬ事だ。

 閑話休題それはともかく


 そんな無防備なむつみであるが、実は貞操観念はけっこう固い。

 沖縄生まれでやたらと奔放。
 尚且つ大家族が示す通りに、両親の行為を見てしまう事も多かった。

 幼い頃は“それ”が何をしているのか理解していなかったのであるが、流石に中学,高校へと進む頃には理解できている。
 それでも不潔等とは思っていないし、対応が変わる訳も無い。仲の良い男女が仲良くしているだけであるし、家族が増えてゆくのだから問題も無い。

 だからといって“誰とでも”という観念は皆無だ。

 大学のサークルや、ゼミでの男達の誘いを断りまくっている理由は『結婚したい人がいるから』であるが、それは言うまでもなく浦島景太郎の事を指す。
 再開した時はまだ彼の事を思い出せていなかったのであるが、今は昔交わした約束ごとその溢れる好意までも全て思い出している。

 だから当然、なるの事も大好きなので彼女の為に“けーくん”を譲った…という事も思い出していた。

 無論、その時の事は未だに欠片なりとも行為していないし、大好きな二人が幸せになってくれればそれが自分の幸せなのだと断言できる。 

 しかし、『けーくんのお嫁さんになりたい』という気持ちは衰えを見せていない。


 いや――
 寧ろ彼が留学から戻って男らしさを増し、惚れ直している今は更にその想いが強くなっているといえる。

 それでも……

 そけでも むつみは二人を応援し続けていた。




 そう、
 応援し続けて“いた”。




 「ん~~」

 姿見の前で下着姿を曝している むつみ。
 元々美人であり、胸の大きさに合わせた様にプロポーションが良く、尚且つコーディネイトセンスも良い為、その下着も彼女に良く似合っていた。
 彼女は白を基調とした清潔な物を着用し、どちらかと言うとデザインに拘った物が多い。
 ハーフカップのものや、ストラップレスの物も持っているし、けっこうきわどいものもある。景太郎が留学先の友人から渡されたジョークアイテムの様なきわどい下着もちゃっかりと持っているのだ。

 それでも彼女は色の方は圧倒的に白が多かった。

 そう―――多“かった”

 彼女が寝起きしている和風喫茶『日向』の二階。
 彼女が与えられている部屋で新しい下着を着用し、姿見でチェックしているのは紫色のブラとショーツ。そしてガーターベルトとお揃いのストッキングだ。
 それでけでも何時もの清潔そうなものと違っているというのに、デザイン的にも今着用している下着はおかしかった。

 アンダーカップと聞くだけならマシであるが、その面積は小さく、乳首が剥き出しになっている。
 それでけではない、そのブラは胸を持ち上げている点では確かにブラジャーの機能を有しているであろうが、抉り取ったようなカップは剥きだしにした乳首を目立たせる様に、乳輪の周囲の布地が大きく開いているのだ。

 だがそのブラにはガーターベルトもストッキングと同様の美しいレースが編まれており、使用法は兎も角として上質のものであろうかとが見て取れる。

 ショーツの方にも問題があり、全体がレース地なのは良いが、下半身を守るショーツとして大切な部分であるクロッチ部が無い。
 縦に切り取った形で存在していないのである。

 そんな娼婦のような下着を纏ったむつみであるが、何故か彼女は違和感なくそれを着こなしていた。

 「ちょっと違いますね~」

 一度全て脱ぎ去り、別のを捜す。
 元々おしゃれに気を遣っている方ではないが、それでもはるかよりは下着は多い。
 はるかはシックな物を好む為、思っているよりは有していないのだ。どちらかと言うと景太郎の方が色んな衣服を持っているくらいである。無論、インナーは少ないだろうが。

 今の世の中、通販で買えばどんな恥ずかしい下着でも手に入る。セックスアピールどころか奴隷同然の衣装すら極普通に手に入るのだから。
 彼女もネット通販を利用してこんな下着を購入したのである。

 妖しい黒や情熱の赤。色欲の紫に総レースの白など様々な色彩で彩られている。
 ただ、そのデザイン全てが異様に“誘い”を放っているのだ。

 「ああ、でも、“けーくん”だったら普通のが良いかもしれないわね~」

 それに気付いたのか、手をパチンと合わせて何時もの大人し目のを出して着用する。
 だが、元々のプロポーションと相俟って、その姿は先程のものとはベクトルを変えただけで色っぽさに変わりが無い。

 何故か目元の色気が強まっている彼女の雰囲気が、清楚な筈の白い下着を娼婦のそれに“魅せている”のだ。

 「うんうん。これだったら けーくんも悦んでくれるかな~」

 鏡の前に立ち、想像の中の彼に対してニッコリと微笑んでみせる むつみ。

 以前と変わらぬ笑み。
 以前のままの思考。

 だが、昔のように景太郎の事を“けーくん”と呼び、自分の下着を見つめる彼を想い頬を染めている彼女はどこかが違っている。

 否――違い過ぎる。


 何がどう…と言の葉にするのは難しいのであるが、間違いなく以前の彼女では無い。
 強いて言うのであれば、

 昔の。
 幼い頃のむつみのまま女になっている――

 とでも称すれば良いだろうか?

 「んふふ……」

 むつみは“むつみ”の笑みを浮かべながら上に服を羽織り、バックを片手に試着した下着を脱ぎ散らしたまま部屋を後にした。

 何に微笑んでいるのか。
 何が楽しいのかは知らないが、むつみは初めてひなた荘の温泉に入りに行った日の様な無邪気な笑みを浮かべて階段を下りていった。

 後に残された累々の下着。
 ショーツとは言い難いショーツ。
 そのクロッチにあたる部分には、

 僅かながら汗とは違う湿り気が残されていた。






 ―――愛し合う二人とトーダイにいくとシアワセになれる―――


 というのが景太郎の動力源であった。

 実際、約束の女の子(と、思われる)なると再会し、一緒に東大を合格したのだから、後は一緒に東大に行くのみ――

 で、あるのだが……合格してから一年以上は経つというのに未だに“意識的に一緒に”行けた例が無いのである。

 運命の悪戯か、はたまた悪意か、景太郎となるの仲は順調に進んでいるというのに、最後の詰めだけがどうしても上手く行かないのだ。

 尤も、自分らの想いが通じ合っていると確信している なるは左程焦ってはいない。
 景太郎と可奈子を結び付かせようとしていた無人別館の魔力を打ち破れたという自信もあるし、毎日のように繰り返される甘いスキンシップによってその自信も強まっている。

 焦らずとも良い。
 焦らずとも自分らはシアワセになれる。
 その想いが なるの心にあった。

 だが―――

 なるに行っている甘いスキンシップよりも激しく求め合うスキンシップを別の女性達に行っているとは、流石の彼女も思いもよらなかった。




 はぁ……

 と道を歩きながら溜息を吐いてしまう。
 大学からの帰り道。又してもゼミで帰りが別々になってしまい、そのタイミングの悪さに思わず溜息を吐いてしまったのだ。
 溜息吐くと幸福が遠退いてゆくと言うが、それならばどれだけの幸せが逃げて行ったのであろう。

 いや、別に自分が不幸だとは思っていない。どちらかと言うと幸せの絶頂と言えよう。

 四人の美女美少女らに想われ、抱き、抱擁し、交わる。おまけに全員公認だ。
 自分も彼女らを愛していると断言できるし、強く愛されている事も自覚できる。
 最初は確かに治療行為という大義面分で抱いていた少女も、今は自分の意思で抱いている。いや、単にそういう流れになるのではなく押さえが利かなくなってしまうのだ。それほど自分の中の男が彼女らを求めている。

 問題は、その四人とは別の女性。
 遠い昔に約束を交わした女性の事も、プラトニックに愛しているという事である。

 いや、彼女を抱きたいと想わない筈が無い。下世話な言で結べば、彼女とも“やりたい”だ。だが、同時に彼女を大切にしたいという想いが激しく抵抗を見せるのである。

 無論、四人の女性らを汚したから彼女だけは……等という愚考からの想いでは無い。

 四人は四人であの愛し方が“正しい”のであるし、なるはなるで今の愛し方が正しいのだ。
 その事が解かってしまっているからこそ、彼の…浦島 景太郎の溜息は大きいのである。

 「ああ……まさかオレがこんな悩みを持つようになるなんて……」

 空を仰ぎ見てまた溜息を一つ。

 彼女いない暦二十余年。ほぼ諦めムードの中にいた彼に対して振って湧いたハーレム状態。
 女性たちと結ばれれば結ばれるほど、恋人に対しての後ろめたさは強くなる。それでいて女性らへの愛情も強くなる。

 だからこそ悩んでいるのだ。このままで良いのか? と。

 行為に入れば淫獣そのものである景太郎であるが、本質的なものは全然変わっていない。
 調子に乗りやすいところがあるので、行為をエスカレートさせる事は(多々)あっても、嫌がる行為は決して行わないのである。無論、嫌がる事をされるのが大好きになっているキツネは例外であるが。それは兎も角。

 そんな彼であるから、この事を知ったとすれば なるがどれだけ傷付いてしまうか……それを恐れているのだ。
 しかし今更説明も出来まい。
 『いやぁ、しのぶちゃんや可奈子ともヤっちゃってさ。最近は姉妹プレイも楽しんでるんだよ?』
 等といえば軽蔑されるばかりか怒りに任せて殺されても何の不思議もない。
 それだけなら良いが、最悪、男性不信になったり自殺したりする事も考えられる。

 良くも悪くも思い切りが良過ぎるのだ。成瀬川なるという女は。

 だから話せないで腹の中に溜め込み、景太郎はストレスばかりが強まってゆくのである。

 尤も―――

 「お。浦島先輩。どうかしたのか?」
 「え? あ、モトコちゃん」

 件の四人の一人。
 複数の女性を抱くようになった切っ掛けの青山素子がそこに立っていた。

 尤も、
 彼女らの想いがストレスになっている訳では無く、彼女らへの想いの強さ故に、心に起こる葛藤がストレスになり、そのストレスによって押さえが利かないという事は……

 やはり景太郎は身を持って思い知っているのである。




 この二人が一緒に電車に乗る事は非常に珍しい。
 大体の買い物はひなた市でもできるし、大学は素子が往復している予備校のある路線とは別方向だからだ。

 例の可奈子と結ばれかかった無人別館騒動の様なドタバタ騒ぎの時に新幹線に乗った事もあるのだが、その時には他の皆も一緒だった。
 それに座席についていたのだから、今現在のように密着していた訳ではないのだ。

 そう、何故か今、珍しく電車内は混雑していたのである。

 「あ、ごめん…足踏んだ?」
 「いや?」

 身体を密着するように押し付けられ、車両の墨に追いやられている二人。
 後に押されている時にチラリと目に入ったのであるが、後の車両には観光客らしい一団…それも学生達らしい…が見えた。その所為で何時もより車両が混雑しているのだろう。

 そう言えば今年の浜茶屋はどうするんだろう? 等と別の事を考えてみたりする。
 理由は、素子の吐息を意識しないようにする為だ。

 「別に踏みたいのなら踏んで良いのだぞ? お前に踏みたいのであれば、私は一つでも甘んじて受けよう。
  きっとそれは快感になるのだしな」
 「そ、そんな事しないよっ!! 全く…キツネさんじゃあるまいし……」
 「ははは……キツネさんはそういう意味で私より高みにいるからな。私も何れはそこに到達せねば……」

 ふむ…と力強く頷く素子。
 景太郎は焦って止めるが、当の本人は柔らかく笑うのみ。解かってくれたのやら、解かって無いのやら。

 今の素子の姿はノースリーブと黒のミニ。そして白いニーソックスだ。
 髪を切ってうなじがよく見えるようになっているし、白い太股が眩しくて何時理性がキれてしまうやも知れない。
 それが恐ろしくて話を逸らせていると言うのに、恥ずかしい目にあってしまう筈の当の彼女がどんどんそっちに持って行ってしまうのだ。

 冷や汗を拭き拭き、景太郎は再度話の変更を行使する。

 「そ、そう言えばモトコちゃん。
  今日はどうして街に出てたの? 買い物?」

 景太郎は素子が持っていた紙袋を見、そっちに話を持ってゆく事にした。
 尤も、その紙袋にプリントされている店のロゴマークを知っていれば、その様な愚行は犯さなかったであろうが。

 「うむ。カナコに教えてもらってな。新しい下着を買い求めていたのだ。流石に地元ではこんなものは買えんのでな」
 「……は?」
 「こういうやつだ」

 と、景太郎が止める間もなく、丁寧にテープを剥がして黒いショーツを彼の目の前でぴんっと広げた。

 「うわっ」

 慌てて引ったくり、乱雑に紙袋に押し込む景太郎。
 それもその筈。そのショーツには大切な部分。クロッチの部分が糸の様に細くなっているのだ。
 明らかなセクシーショーツ。それも間違いなく“夜用”だった。

 「モっっっ……モトコちゃぁん……勘弁してよぉ……

 大きくなりかけた声を無理矢理絞り、ボソボソと彼女の耳元でそう懇願する。
 殆ど涙声なのはご愛嬌だ。

 そんな彼の情け無い仕種も、見慣れは今は微笑ましい。
 いや、それどころか愛しくて堪らなかった。

 愛しくて愛しくて、飢えを止められなかった。

 おまけに今、彼は耳元で話す為に密着しているではないか。

 彼の吐息は甘露。
 耳を擽る彼の声は愛撫。
 彼の香りは媚薬。
 彼の気配は素子の理性を貪り喰らう。

 だから巻き起こる飢えをそう簡単には止められはしない。


 素子が意識を外に向けると、電車の直斜め上を飛ぶ疾風の気配。
 彼女り眼差しを受け、疾風はやるべき事を悟り、その大きさを変えて空を舞った。

 ある程度距離を置き、疾風は大きく羽ばたいてその翼から何かを射出する。

 手裏剣のように突き進むそれは疾風の羽根。
 鉄串の様に鋭く、弾丸のように素早いそれは狙い違わず“そこ”に命中し、主の命を完遂させる事に成功した。

 疾風は又も大きさを変え、スズメの様なサイズとなってスピードを緩めた電車の屋根へと下り立ち、主らを見守る任に戻る。
 
 非常に良く出来た式神であった。




 キキキ…ギギィ~~…… ゴトン


 唐突にスピードが緩くなり、電車が止まってしまう。
 何だ何だと騒ぐ乗客に、車内アナウンスがかかり車両事故を告げた。

 何でも進行に差しさわりのある部分らしく、点検の為に一時停車したらしい。

 次の駅はひなた市に入ってからなのでけっこう距離がある為、早々降りて歩く訳にも行かないらしく、乗客は大人しくそのまま待つ事にした。
 幸い、エアコンもかかったままであるし、じっと待つだけで済みそうだったから。

 だが、じっと待てない輩もいない訳ではない。

 さわさわさわ……


 素子の両の手がシャツの上から景太郎の肌を這う。
 留学中に瀬田によって下地を鍛えられ、ここのところ毎日続く素子との鍛錬と、女性らとの激しい肉の交わりによって無駄に肉の出来る隙が無い。
 ゴツゴツ…というのは大げさであるが、以前よりは格段に鍛え上げられている彼の肉体は、素子の飢えを増徴させる。

 「“景太郎”先輩……好きだ……大好きなんだよぉ……」
 「う……も、モトコちゃ……ンんん……」

 トロンとした眼を向けて幼子の様に甘えてくる素子に対し、景太郎は未だ完全な受身。
 己の身体を這い回る彼女の掌をジーンズの中に入れられても硬直したように動けない。

 彼女の事が嫌なのでは無い。決して。
 単にここでは嫌というだけだ。

 既に周囲の乗客の認識範囲外にいる事など知る由もなく、また理解できるはずもなく、
 素子が“それ”を行える事等、当の本人である素子すら自覚が無い

 だが、彼女は行っている。

 二人の周囲の乗客は大柄な人間もいる事もあって四人。
 その全てが二人に背を向けて其々の方法で動くまでの時間を潰していた。

 解からないのだ。彼らは。
 自分らの後に何がいるか、何が行われているか、
 そして“後が在る”という事が。

 素子によって唇を塞がれている景太郎はそれを知らないからこそ耐えていた。

 ここで見つかれば自分は男だから良いが、素子は女の子。こんな事を行っているのがバレればこれから先にどれだけの影を落とすか解かったものではない。
 電車内での淫行……大切な東大の受験すら危ぶまれるではないか。

 だから耐えた。
 耐えようとしていた。

 んふ……ちゅっ、ちゅっ、ちゅっ、
 ちゅぱ。れろん……んっんっんっ…ぢゅるるる……


 だが素子の舌使いは激しくなってゆくばかり。

 素子と景太郎の身長差は僅か3cm程。キスをするのに丁度いい差だ。
 下から向かえるように唇を寄せている素子に対し、景太郎は上を向いてどうにか離そうと試みるが全て失敗。飢えたケダモノに抗える筈も無い。

 その肉に飢えたケダモノ反応し、景太郎の中でもぞわりと何かが蠢いてくる。
 危険な兆候だ。

 「ん…ぷは……モ、モトコちゃ…ん……くちゅ……だ、駄目だ…って……ンんん……」

 避けようにも、止めさせようにも素子は制御不能。
 景太郎が口を僅かに離す度に唾液が糸を引き、零れ落ちる。

 たらたらと零れる二人の唾液。
 絡み合い、混ぜ合い、蕩かし合った熱いカクテル。
 ボタボタと垂れ滴り、素子のノースリーブを濡らして透けさせてゆく。

 「モトコちゃ…モトコちゃ……ん……???!!!

 景太郎は気付いた。
 濡れた素子の衣服の胸の頂点に透けて見えている薄ピンクのものに。

 見る見る理性を蕩かしてゆく景太郎を見、素子は凄まじいまでに淫蕩な笑みを浮かべた。

 「ようやく気が付いたか…?
  言っただろう? 今日は下着を買いに出ていた…と。
  だから私は今、下着を着用していないんだ。

  ほら……」

 素子は力なく引き攣っている景太郎の右の手を掴み、ゆっくりと自分に導いてゆく。
 狭い電車の隅っこで、素子は彼が触りやすい様に右足を上げ、その場に手を触れさせた。

 さわ……


 「ンふ……♪」
 「う……わぁ……っ」

 薄い若草の感触を直接手で感じてしまう。
 触れ合い、撫で、愛撫し続けているその感触を間違えよう筈も無い。
 指先に触れる濡れたやわらかい肉の感触も……

 上に向けられた掌にポタポタと滴る蜜の感触。
 太股を伝い、ニーソックスを汚してゆく白っぽい体液。

 呆然とする景太郎の目の前で、素子はノースリーブのシャツを捲くり上げ、彼と彼の子供の為だけに存在する胸を剥き出しにした。

 そして、

 景太郎の頭に中で、

 何かがぶつりと千切れとんだ。


 甘えた素子の眼差しは何時ものまま。
 彼を待ち望み、ミルクを期待する子猫のよう。

 なれど待ち望むは陵辱の宴。
 迸る彼の肉欲の男汁。

 彼以外の如何なる異性も不可侵である肉の穴はひくつかせ、素子は景太郎の耳元で呟いた。

 「景太郎先輩………














  ………………入れて………………」




 乱雑に引き下ろされたジッパーの奥。
 トランクスをその先端で濡らし、ベトベトにしている肉の狂器。

 グレーのトランクスの中から突き出た赤黒い肉柱は、もはや止まる術を完全に見失っている。

 「あは♪ ンんんん……っっっっ!!

 ぞぶ……っ という音が聞える程、それは泥濘の音を立てて飲み込まれていった。
 白い喉を反らせ、素子は心からの歓喜の声を上げた。

 居所を認識出来ない素子らであるが、そのあまりの声の大きさに乗客もギョッととして見回してしまう。しかし当然、その声の元は解からない。
 女のアノ声である事は、女性客やら男性客やらの一部は理解できたものの、二人を認識する事ができないでいたのだ。

 ぎっぎっぎっぎっぎっぎっぎっ

 あっ、あっ、んぁっ、ふっ、ンんんっ、あ、ふぅ…っ い、いぃン♪

 ぬぢゅっ、ぞぶっ、ずぢゅっ、ぐっぢゅっ、ぶぢゅっ、ずじゅっ、


 止まった電車内で律動する振動が感じられている。

 濡れきった女の声が響く。

 凄まじく淫猥な音も聞える。

 だけど音の出所が解からない。

 耳に確かに響く嬌声。
 気持ち良さげなオンナのアノ声。
 隠そうともしない単発的なアクメを迎えているであろう喘ぎが乗客の耳を貫いてゆく。

 「ママぁ…誰か苦しそうにしてるよぉ?」
 「え、あ、そ、そうね……」

 運よく座席に着けていた親子が気まずい会話を交わす。
 母親は夫思い出しているのか、太股をきゅっと強く閉じている。

 女子高生らも顔を真っ赤にして俯いているが、太股を擦り合わせていた。

 男性客の大半は前かがみ。言わずとも理解できるであろう。
 中学生らしき少年らも皆に倣うように前かがみであるが、その生々しい声は暫く彼らの“オカズ”となろう。

 ぎっ、ぎしっ、ぎっ、ぎしっ、ぎっ、ぎじっ、ぎししっ、

 あ、ああっ、ら、らめぇ、つ、強過ぎ…っ あ、あああああっっ お、お尻らめぇ……っっ

 ぶぢゅ、ぷしっ、ずぢゅる、ぶぢゅっ、ぢゅぶっ、ぶぢゅっ、


 尻、という単語に何人もがギョッとする。
 尻を使っているのか、或いはそこを嬲りながら腰を使っているのか。見えない分、その妄想は跳ね上がってゆく。

 無論、意味が解からない子供らもいるのであるが、その淫蕩な声による想像が見知らぬ格好を補ってしまう。

 主婦やOL、或いは女子大生らは顔を赤く染めたまま俯いてしまっているが、何故かしきりに唇を舐めたりしている。
 むくむくと湧きあがって来る疼きを誤魔化すかのように。

 あ、ああ、く、くるぅ……っ
 い……い、いぐぅ……っっっっ


 見えない女性の身体が反り返り、アクメを迎えた事を乗客全身が感じた。
 つり革に掴まっていた乗客の中には、そのオルガスムスの引き攣りに合わせてしまうかのように爪先立ちになってしまう者もいた。それほど周囲に伝播してしまったのであろう。

 その直後から漂ってくる青臭い香り。

 それは男子中学生らが零してしまった精臭なのか、或いは見えない男女らの行為の結果なのか。それは流石に気付けなかった。

 不思議な事に、これほど淫猥な空気が煮詰まっている車内だというのに痴漢等が起こっていない。
 性的には人生最高の高まりを感じていたかもしれないが、誰しもが決まった相手の事以外が頭に浮かばなかったのである。

 それは夫や妻、恋人や現在進行形の想い人。
 つまりは連れ合いであったり片想いの相手であったり多様であるが、自分が好意を寄せている相手の事だけしか思い浮かばなかったのである。

 交わるのも、愛の言葉を交わすのもその相手。
 無論、全員が全員とも普通の相手では無く、中には兄や姉等の家族に対して肉欲を感じている者もいたのであるが、少なくとも“誰でもいい”という感念は塵程も思い浮かばなかった。

 そして、
 そんな風に乗客全員が絶頂の波を浴びてしまったかのように荒い息を同調させていると、

 え……? ま、まだ力入ら……あうっっっ


 ――え?! 第二ラウンド?!――


 乗客らの驚愕を他所に、淫獣と化した景太郎は素子に後から突き入れて激しく腰を使い始めた。

 ボタボタと垂れ滴る精液が素子のニーソックを再利用不可能なほど汚し、
 後から握り潰すかのように揉みし抱く胸も、景太郎によって乳首を真っ赤に腫れさせている。

 両手の親指が突きこまれて広げられている素子のアヌスが突きこむ毎にきゅっきゅっとその指を締め付けて景太郎を楽しませていた。

 長いストロークで犯しぬかれている素子の膣。

 ずるるる…と引き出される肉柱が肉襞を引きずり出し、
 ずぬぬぬ…と押し込めば小陰唇すら巻き込もうとする。

 その動きのままスピードが増し、先程から精液で溺れている素子の子宮は大きく口を開けて次の汚濁の到来を待ちわびる。
 肉カサというヘラで持って掻き出される精液は素子に足元に水溜りならぬ精液溜まりを生み出し、車内に篭る人間らの体温によって強く香って素子の心を更に煮詰めてゆく。

 誰も気付けない肉の交わり。
 誰も見出せないケダモノの交尾。

 だが、無意識にではあるが素子が認識を阻害させる前から二人を見つめ続け、
 素子の美しさに見惚れていた男らですら、急停車のショックに眼を逸らしてしまったというのに、その衝撃も全く意にかえさずに見つめ続けていた者が居た。

 その人物とは、荒波が炊け狂う海の上で平気で船に乗り、どんな嵐の中でも鼻歌を歌える者。
 大学合格前には良く仮死状態になっていたくせに、妙なところだけが丈夫で、特に海の上ならば如何なる状況でも平然としていられる海人うみんちゅの鏡のような女性。

 『けーくん……スゴイ逞しい……』

 運良く座席に着けて、景太郎と素子を先に発見してどこかで驚かしてからかおうとチャンスを窺っていた、景太郎同様に東大から帰宅中の彼女。
 乙姫むつみであった。

 見つめ続けていた所為で認識を阻害される事もなく、
 立ち測位で繋がり、駅弁で求め合い、背後位で貪り合う二人を観察し続けていた。

 座席に深く座り込む事によって人混みの向こうにいる二人が丁度よく見えてしまい、その距離もドア二枚分。

 黒々とした肉を咥え込む素子の紅い秘肉も、
 ごりごりと肉襞を貪り、二人の作ったカクテルを掻き出す逞しい肉の柱も非常に良く見えてしまった。

 『ああ……モトコさんがあんなに淫らに……
  けーくんのをあんなに健気に……』

 昔のように動悸を激しくなりはぁはぁと息を乱す。
 我知らず自分の胸に当てていたては何時しか強く自分のそれを掴み、指をめり込ませている。
 太股に挟んだ手は、無意識にショーツを撫でていた。




 淫猥な空気に満ち溢れ、其々が其々の想い人を夢想しつつ流されてゆく。

 電車の進行が再開し、其々が己の駅で降りてゆくが、車内の異質の空気を染み込ませた客たちは夢幻から覚める術が無い。
 其々が想い浮かべている相手の元へと足を速めてゆく。

 それから起こるのは喜劇か悲劇か。それは其々のストーリーなので割愛するとして……


 人混みに混じって景太郎らと共にひなた市で電車を下りたむつみは、
 味も素っ気も無い電車のシートに染みを残し、
 景太郎への欲望をその二人の背を見つめながら己の意思で高めて行く。




 「けーくん……私も……………」

 とろりと太股を伝う粘液。

 それがむつみの生涯で初めての“飢え”であった。








[2319] Re[5]:Dotage ~妄愛~ <廿弐> (ラブひな)
Name: Pixy◆188a4db7
Date: 2007/06/10 15:52




 はぁはぁはぁはぁ………


 遠くに聞える荒い息遣い。

 誰の? と疑問に思ったのも最初だけ。

 身体が浮きあがり掛けてまた沈み込む感触を覚え、鈍い手足を二重に知覚した時にそれだと理解が出来た。


 そう、自分の息が荒いのだと―――


 自分が今だ眠っているのは理解できる。
 夢を見ているのも理解できる。

 自分が浅い眠りの中にいるのも解かる。

 ――だけど、この夢が“何か”という事が理解できないのだ


 夢を見ていると理解出来るほどの浅さであり、外の太陽の光も感じられる夢現。
 この時は大概の者は見ている夢を理解できる。

 息は荒んだまま。

 胸の中心がぢぃんぢぃんと痺れている。

 尻の奥がムズムズする。

 夏の昼寝時には結構きわどい夢を見たりするのであるが、正に今がそれ。
 淫夢…とまでは行かないが、いやらしい程度の夢を見ているのだと………思う。

 思う――というのは、“それ”を、いやらしい夢というものを見た事が無いからである。

 生あたたかいゼラチンに身体が沈んでゆくような感触。
 身体中の隙間や穴にそのゼラチンの様なものが染みこんで……入り込んで来る。

 口の中に入ってくるそれは、砂糖等の甘味料とはベクトルが違う甘さを持っている。しかし決して嫌な味では無い。
 だから口を大きく開けて“それ”をもっと喉に流し込む。

 だが、“それ”はまるで生き物のように咥内に停滞し続け、ずりずりと恰も巣作りが如く咥内を這いまわって蹂躙し、更には浸透してゆく。
 しかし嫌悪は無い。寧ろ気持ち良いのだ。

 ヌラヌラと這いずって胸を覆い包むゼラチンもまた、蕩ける感覚を与えてくる。

 今の今まで胸と言う場が気持ち良いという感触を伝える器官だとは思いもよらなかった。
 いや、知識的には“いずれ気持ち良くなる”というのは知ってはいたのであるが、実際にそうなるとは思いも寄らなかったのである。

 幻視している自分の胸に、イソギンチャクの触手の様なものが巻きついてくる。胸の周りからとぐろを巻くようにクルクルと。
 不思議とそれを見ているのも楽しく思う。

 やがて頂点に辿り着くと、その先端が髪の毛ほどの細さとなり、何故か突き出ている薄桃色の乳首を側面からぷつりと貫いた。

 ん…っ


 痛みは皆無。
 いや寧ろ“快感”だった。

 “それ”はズリズリと前後に動き、乳首に開けた穴を均し、広げてゆく。

 嗚呼、流石は夢……こんな凄まじい光景すら気持ちが良いのだから。


 そうやって乳首の穴を擬性交でも行っているかのように嬲っていた触手は途中からブツリと千切れ、貫いている先端と切り口が結び付いて輪の形になった。

 あは……


 それは赤黒いリングピアスとなり、着けられた“彼女”の眼を愉しませた。

 何故だろう?
 こんな目に遭わされて愉しいのは……

 何故だろう?
 こんな物を着けられて誇らしいのは……

 何故だろう?
 愉しめば愉しむ程、誇らしく思えば思う程どんどん胸が高鳴ってゆくのは……

 臍の穴を穿り回り、
 手足の指の間や腋の下、太股を舐めしゃぶられ、尻の穴に侵入されても心地良さが増すばかり。

 どこをどう見ても触手であり、その形はどう見ても   だ。

 だというのに気持ち良い。
 だというのに嬉しくて堪らない。

 両の手をぐいと伸ばされ、足を持ち上げられてM字に開かされる。
 オムツを替えられるような屈辱的な“筈”の格好なのに恥じも何も感じない。期待感が湧いてくるだけ。
 その期待に答えるよう、大きく広げられた股の間にねっとりとゼラチンが纏わり付いて来る。

 だけどもやっぱり抵抗できない。したくない。

 ゼラチンの中で嬲られまくっている自分の股間。

 そのプルプルした透明な何かが蠢き、
 やっと女の匂いをし始めた幼い亀裂をグイと広げた。

 もとより身体は弛緩している。よって年齢相応に硬いそこも思ったより簡単に口を開けた。無論、幼い為にそんなに大きな口では無いが。

 肌色と区別が付きにくい薄い紅色。
 それでも生意気に色付いている。

 ぱくぱくと鯉の様に小陰唇が口を動かしいいるのは不可視の何かが膣内なかを出入りしているから。
 それも感触として腹の奥に伝わっている。

 あは……
 あははは……


 愉しい。
 愉しくて堪らない。

 胸を嬲られた時と同じ感触が股間の一部に集中する。
 余りに小さい為、それとは解からない肉芽を皮から引き摺り出し、目に見えない触手がやはりクルクルと巻きついてくる。

 このパターン。
 さっきと同じパターンだというのなら、
 次は、

 次は………

 ンん…っっ♪


 期待通りだった。

 ブツリと貫かれた感触。
 性器を嬲られる快感。

 腰から駆け上がって全身を焦げ付かせてゆくような ひりつく悦楽。

 自分のからだの一部とは思えない程にピンピンに突き出た淫核を嬲り潰している“何か”は、やはり乳首の時と同様にブツリと千切れて輪になった。
 赤黒いリングピアス。
 乳首とクリトリスに着けられた所有物の証。

 あは…
 あははは……やったぜ……


 湧き上がる歓喜。
 巻き起こる昂揚感。

 凄まじい快楽が全身余す所なくその肉体からだを蝕んでゆく。

 やがて“彼女”はそのゼラチンの中に全身を沈め込んでゆく。


 その肉体ココロは煮え溶け、混じり、広がり、失い、補われ、集まり、やがて元の“ような”形をとって浮かび上がってくる。

 女は変わる。どんどん変わる。
 本人も知らぬ間に、女はどんどん変わってしまう。

 足元のゼラチンに映る自分の裸身。
 何も変わっていないのに、圧倒的に変わってしまった様にも見えてしまう。

 成分も何も変わらないのに、性質のみが変化してしまったような感触すらある。

 “以前”の自分がゼラチンの中から自分を見上げて手を振った。
 だから自分も手を振った。

 幼い自分に別れを告げ、女へとまた一歩歩み出すのだから。





 それが―――

 ただそれが、真っ直ぐに見えていた“それ”とは全く違うものだとしても……





―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
                           -盲・愛-
                            File:廿弐

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――




 「どしたんや? チビ」
 「ん~~ちょっとな……」

 夕食前。
 軽く昼寝をしたつもりであったのだが、サラの寝起きは最悪であった。

 内容はサッパリ覚えていないのであるが、何だかよく解からない夢に魘され、余りといえば余り多量の凄まじい寝汗を掻いてしまっていたのである。
 流石のサラもこれには驚き、初めは『すわオネショか?!』と焦りまくり、そうでないと解かると次に病気を意識した。思わず熱を測ってしまった程。平熱だったが。

 兎も角、温泉で汗を流し、水分をたっぷり補給してからカオラと共に食事の時間を待っている。
 言うまでもなく気が向かないと手伝いはしない。当然カオラは不可。盛り付けは兎も角として、決して料理の味付けが不可な訳ではないが独特の味付けの所為で辛くなり過ぎてしまうのだ。

 何時も元気に走り回っていたというのに、今のサラは携帯ゲームを何となくやっているだけ。そりゃあカオラだって気にするだろう。

 理由の一つは先程の夢であるのだが、もう一つに奇妙なムズムズ感がある。

 はっきり言ってしまえば、股間が疼くのだ。

 初潮を迎えて直、キツネらに教えられたのであるが、生理が始まったからには今まで以上に“そこ”を清潔にしなければいけないとの事だった。
 俗に言う“こしけ”……つまりは“下り物”オリモノが良く出る様になるからだ。
 女性器は男性器と違って奥まった所にあり、内部と距離が短い為に感染症等になりやすい。よって男性より衛生面に気をつけねばならないのである。

 パンダの痣を見せたくない為にずっとスク水着用で入浴していたサラであったが、その所為で余計に蒸れ易く被れ易い。だから気をつけて洗わねばならないのだ。

 「何や大人しいからつまらんなぁ~……
  まだ腹痛いんか~?」
 「そんなんじゃねーってっ!!」

 ニヒヒと笑ってからかうカオラに、サラは真っ赤になって否定する。
 余所見をした所為でカラー液晶の自キャラは巨大な蟹に殴り倒されてしまった。
 遂に貰える報酬が無くなり、そのクエストをクリアする意味が無くってしまう。ああ、クエスト失敗……と肩を落とすサラ。
 同じゲームで既にアイテムを獲り尽しているカオラはドジやなぁ~と笑うのみ。お前と一緒にするなっと言いたくなる。

 カオラに言った通り、生理通では無い。
 
 先に述べた様にサラは体内…いや、“胎内”の疼きが気になって仕方が無いのである。

 圧倒的な“何か”が物足りないのだ。

 空腹ではない。それは解かる。寧ろ食わずとも良いくらい。
 渇望しているのは解かる。それが焦らしているのだから。
 虚無感があるのも感じ取れている。実際に足りていないのだから。

 ただ、何が足らないのかが解からない。それがもどかしくてしょうがないのである。

 ええい…っと苛立ちながらゲーム機の電源を切って、対ショックケースに戻す。
 いい加減モンスターをハントするのに疲れ果てたサラは、良い香りが漂ってくる台所に眼を向けた。

 そこでは厨房担当の少女、しのぶがハツカネズミのように走り回って食事を整えている。
 焦っている訳でもなく、時間が無い訳でもない。単に用意が手早いだけだ。

 他の事柄であればドジっ娘を絵に描いた様な娘であるが、事が家事となれば万能主婦と化す。
 女子高生になったものの、相変わらずちんまりと可愛い しのぶ。将来は可愛い奥さんとなりそうだ。

 そう思うと何故か溜息が出た。

 瀬田パパを慕い、以前は近寄る者を男女問わず敵視していた自分。
 それが如何に子供の行為であったかは今ならよく解かる。

 現にどんなに願おうとは瀬田パパは自分の事を愛娘とは思っても一人の女とは思わないだろう。
 彼の頭に中にいる女は はるかのみ。仮に隙間があったとしてもそこにいるのは自分の母だ。
 異性として入り込む隙間は皆無。

 相変わらずのファザコンではあるが、はるかだったら良いか…と受け入れは終了している。

 では……
 では、その時から持っていた自分の想いは何処へ行ったのだろう?

 例えば しのぶには好きな男がいる。
 このひなた荘の管理人である浦島景太郎だ。

 そして景太郎は なると恋仲である。既にしのぶの入りこむ隙間は無い。
 だというのに彼女は毎日愉しそうに景太郎の世話を焼いていた。

 ついこの間、何故か気になったサラはしのぶに問い掛けている。

 「なぁ、ケータロはなるとくっ付いたろ? しのぶは諦めたのか?」

 と。

 だが彼女はへ? という顔を見せはしたが、直に表情を綻ばせてこう言った。

 「ああ、諦めた…っていうんじゃないの。認めた…かな?
  先輩もなる先輩の事が本当に好きだろうし……
  でも、先輩を想う気持ちはなる先輩に負けて無いわよ? 絶対」

 何処から来る自信なのか?
 いやそれよりも気になったのは、はぐらかされた事だ。

 しのぶが言った言葉は、言い換えれば『認めはしたが諦めてはいない』ともとれるのだから。
 それに“負けていない”とも言っている。

 サラは、事実に裏つげされた確固たる自信をそこに感じたのだ。

 だからこそ良く解からなくなる。
 女になると言う事は、何かを失うって何かを得るという事…そんな事をどこかで聞いたような気がする。

 実際、サラは父という最愛の異性を はるかに譲っている。
 とすれば、自分は何を得るのだろうか?
 それが自分にどう働くのか?

 大人同士の仲を見知ってはいるが、理解し切れていないサラには解かり様も無い事であった。




 サラが思い悩んでいるそんな時、軽快な足取りで素子が帰宅した。
 やや遅れて景太郎も戻ってくる。

 ロビーで読書をしていた可奈子が二人に気付いて笑顔で出迎えた。

 「おかえりなさい。お兄ちゃん、モトコさん」
 「ただいま」
 「うん。カナコ、ただいま」

 読んでいた所にしおりを挟み、ソファーから立って二人に近寄る。
 因みに『足長おじさん』の原訳版。普通の女の子にはお勧めのできない方だ。その横には人間椅子やら陰獣やらちょっと彼女の事を心配してしまうような本が置かれている。無論、面白くない訳ではないのだが……

 兎も角、やっと兄以外にも極普通に笑顔を見せられるようになっていた可奈子であったが、素子の側まで来るとその目元がいきなりジト目になった。

 「……モトコさん……? 何やらお兄ちゃんの(精液の)香りがするんですが……」

 流石は可奈子である。

 「うむ。電車内でな。
  急に電車が止まってしまい…………うむ。うむうむ。
  いやぁ……恐ろしかったぞ」

 何がどう『うむ』なのかは不明であり、言の葉は恐ろしげな体験に近いものがあろうが、語尾に音符かハートマークを感じてしまうから台無しだ。
 要は自慢なのである。

 彼女の背後で『嘘だっ』と、どこぞの村の鉈少女が如く景太郎が吠えているのだが、当然迫力が足りない。
 彼とて自分を抑えきれなかった事を自覚しているのであろう。

 「ズルイです……
  私が読書している隙にモトコさんはそんな羨ましい事を……」

 上目遣いで景太郎を見る可奈子。その目元は演技でなく本物の涙が溜まっていた。
 なるは当然として、素子との仲も、キツネやしのぶとの仲も完全に認めている可奈子であったが、それとこれとは話は別。自分だって兄に犯されたいのだ。

 女になる時、痛いのは最初だけ…と良く聞くが、実際はそうでは無い。
 如何に異物を受け入れる為の器官を備えていようとも、そこの性感が高まらなければ異物感や痛みはずっと続く。
 絶頂を知るまで一年以上掛かったという女性もいるくらいで、十年以上セックスしていても絶頂を知らない女性だっているのだ。
 無論、女性の身体を思いやれない男達にも責任はあるのだけど。

 だが、可奈子らは違う。

 処女を捧げたその日の内にアクメを覚え、
 一ヶ月も経たない内に、快楽神経を鍛え上げられてしまったのである。

 愛撫は元より、挿入、ピストン、グラインド、射精、奉仕等、性行為に関するもので彼女らが快感を得られないものは無いと言って良い。
 素子に至っては、初日に飲尿をして絶頂を迎えているのだ。
 当然ながら後天性のマゾヒストであるキツネもそれでイけるし、景太郎に奉仕する事でオルガスムスを迎えられる可奈子としのぶもそうである。

 この四人は僅かの期間で娼婦より性感度が高くなっているのである。

 ただ、その感度が高まる相手は浦島景太郎を相手にした時のみ。
 彼以外の異性など必要としない心をもった四人への見返りなのかもしれない。

 だからこそ可奈子は、やたらと犯してもらえる素子が羨ましくて堪らないのだ。

 「羨ましいも何も……今晩は可奈子が独占できるのだろう?
 「それは……そうですけど……」

 可奈子の耳元でそう素子が呟いた。
 そう言われると可奈子とて矛を収める他無い。

 やや拗ねた顔を残してはいるものの、今夜の事を考えると腰がずくんっと重くなってゆく。

 素子が小声で呟いたのにも理由がある。
 性行為時以外に露骨な表現をすれば如何な景太郎とて興が乗らないだろうというキツネの弁に則っているのだ。

 何を今更…と言うなかれ。
 彼女らは彼女らなりに、今の位置にいる事に只甘んじている訳ではないのだ。

 愛する雄を得られたからこそ、
 愛する雄のモノに成れたからこそ、
 彼女らは余計に今の位置を守ろうと奮闘しているのである。


 車内でセックスをしてバレていない不可思議さに気付いていないのに、自分を抑えられずに行為に及んでしまった事を例によって自己嫌悪して悶えている景太郎に微笑を向けてから、素子は可奈子の肩にそっと手を置き、

 「今夜はたっぷりと可愛がってもらうといい。
  愛した男の本能を押さえきれなくするのは我らの誉れなのだしな」

 と耳元で呟いてからそのまま風呂へと向っていった。

 ス…と頬に朱を走らせてそれを見送る可奈子。

 彼女の後姿からは電車内で盛っていた牝犬と同一人物とは想像もつくまい。

 素子が着ている服は可奈子がコーディネイトした物。
 ことオシャレに関しては素子はその辺の女子中学生以下だったのだから。

 良く見れば素子はミニスカートなのに妙におしとやか…解かりやすく言えば、しゃなりしゃなりと着物の歩き方をしている。

 はて…? と首をかしげた可奈子であったが、直に手をポンと打ってその意味を理解した。


 素子は、
 しっかりと太股を絞めて歩いていたのである。

 浴場に向ったのも、味わう為であろう。



 ―――丁度……
 丁度、自分らが行為後に何時もやっている事の様に……



 可奈子は相変わらずの転がりかましてくれている愛兄を引き摺って台所へと向っていった。

 もう直自分らの計画のキーパーソン、成瀬川なるが塾のバイトから戻って来る。彼女には“まだ”今の彼は曝せないのだから……

 山から吹き降ろされてくる夏の夕暮れの風が心地良く、頬に付く髪を掻き上げる可奈子の顔は、

 以前では考えられないくらい爽やかな笑顔を見せていた。




 可奈子が台所に消えてから直、石段を登りきった一人の女性の姿。

 柔らかな髪を風に舞わせ、何時も微笑みの耐えない口元に何時もと違う笑みを浮かべている女性。


 乙姫むつみであった。


 笑みの形は変わらない。ひなた荘に住む皆が彼女が来た当初から見ているそれだ。
 だが、明らかな違和感を感じる程、その笑みの雰囲気が違っている。

 母親の柔らかな笑みを湛えていたその口元は、

 男を誘う娼婦の笑みに変わり、唇を舐めている紅い舌はまるで別の生き物のような妖しさ見せていた。




 湯気の立ち込める露天風呂。

 ひなた荘名物の住民専用の贅沢極まりない浴場だ。

 今そこを使用しているのは只一人の少女のみ。言うなれば貸し切り状態である。

 まぁ、どうせ後で皆で入る事になるだろうし、今は汗を流す程度。ざっと湯をかぶって身体を拭いて出るだけだ。


 以前の彼女ならば……



 身体を洗う為に設置されている流し場にしゃがみ込み、股を大きく広げているのは素子である。
 その足の間には手桶が置かれており、その手桶を跨ぐ格好で素子を腰を落としているのだ。

 「ん…」

 艶かしい声が口から漏れた。
 ドキドキと胸が高鳴っているのはその行為に対する期待と、背徳感による興奮。
 変態的行為を行っているという羞恥心が心を擽っているのだろう。

 以前よりは格段に色付きを見せているヴァギナをそっと両の手で広げると、思ったよりも柔らかく口を開けてくれる。
 毎日毎日、惚れた男の肉柱を咥え込み、咀嚼し、射精を促している肉穴だ。
 彼の為だけに存在していると断言できる彼女の性器は、彼の手によって開拓が進んでおり、如何に渇き切っていてもその愛おしい人の肉欲を察知すれば一瞬で潤ってくれる。
 性玩具のような…いや、性玩具そのものの肉体からだとなってしまった素子であるが、彼女は気にするどころか誇らしげだ。

 くちょくちょと膣に浅く指を入れて襞をいじり、下腹に力を入れて促す。
 この時、下手に括約筋に力を入れない。失敗すると失禁してしまう事があるのだから。
 彼のものであれば唾液もカウパーも尿も全てが旨いと感じられるのであるが、流石に自分のものは勘弁だ。尤も、彼の体液が混ざっていれば話は別であるが。

 彼によって皮を剥かれてしまったクリトリスを摘み、
 彼によって性行為が出来るようにされてしまったアナルをいじり、
 自分の膣内なかを貪るペニスを夢想すれば、瞬く間に子宮口が開いてゆく。

 無論、普通はそう簡単に子宮口は開いたりしない。
 今の彼女“ら”ならではである。

 既に掻き出した精液が溜まっている手桶の中に、ボトボトと更に多くの粘液が零れ落ちた。

 車内にけっこう零してしまったが、それでも一般的な成人男子以上の精液は素子の胎内に残っている。
 自分の体液と混じってはいるが、その主成分が景太郎の精液だと思えば嬉しい限り。

 ややクリーム色なのは精液の濃さもあろう。

 毎日毎日いただいているのに、その量は衰えを知らず、下手をすると増えている。
 人間が持つ体内の体液の容量すら遥かに上回り、普通の人間であれば何ccという測り方の射精量も、何lという馬鹿げた数値。明らかに人のそれでは無い。

 だが素子は心配をしていなかった。
 何となく理由に気付いているからだ。

 だから素子はその凄まじい射精量を全く気にする事無く、手桶に溜め込んだそれをうっとりと見つめ、
 その手桶を銘酒が満たされた杯を手にするかのように掲げ、

 ずずず……じゅる、じゅるるる……


 と啜りだしたのである。

 胎内で温めていたのであるから正に人肌。
 ポタージュでも味わうかのようにそれを啜る素子の表情は至福のそれだ。

 咥内を満たしてゆく蕩けるような感触。
 舌の裏まで満たし、口で息を吸って鼻から出し、利き酒の要領で芳香を脳に染み込ませる。
 歯がもって噛み締め、歯茎にすらおすそ分け。上顎の裏にすら舌先で擦り付けて口の中全体に唾液で水増しして満たしてゆく。
 喉にとろりと流れ込んだ時には、余りの旨さ咽てしまいそうになった程。それほど彼に傾倒……いや依存し切っているのだ。

 しかして なるの“それ”とは明らかに違う。

 彼女の想いは愛している男性としての意味合いなのが強いのであるが、素子の場合はそこに狂信者のそれが混ざっているのだ。
 だからそこらのストーカーすら素子の想いには及ばないのである。

 手で触れる必要もなく、
 舌に精液を擦り付けて味蕾に刷り込まれている愛しい男のデータを引きずり出す。それだけでその官能を一気に頂上まで引き上げる事が出来た。
 ……いや? それは『引き上げる』等と言った生易しいものではない。言うなれば『蹴り上げ』だ。

 感度が左程高まっておらずとも、素子は彼の精液を摂取する事によっていきなり絶頂を味わう事が出来るようになっているのである。

 素子はつい一ヶ月ほど前まで性的なものを全くと言って良い程知らない身体だった。
 だが、自慰を覚え、ペニスに香りを知り、セックスを体験し、精液の味を堪能している今、
 電車内で膣内射精をしてもらい、膣内なかに出していただけた精液を掻き出す事で途轍もない快感を味わえるようになっている。


 当の素子にしても、自分は変態だと思う。

 ぷし…
 ぷしゃああああ…………


 「は、はぁあああああああああああ………っっっ」

 雄の汁を啜って失禁する程よがってしまう自分は淫乱等と言う言葉の範疇すら飛び越えているとも思う。

 だが……

 「はぁはぁはぁ……け、景太郎先輩……せんぱいぃ……
  う、“浦島”先輩ぃ………」

 獣という言葉すら及ばぬ肉欲が彼を愛しいと欲し、
 少女から続く、オンナとしての心も彼を愛していると求め狂っている。

 心が穢れれば穢れる程、
 変ずれば変ずる程、
 汚らわしい肉欲の波に呑まれれば呑まれる程、

 堕ちれば堕ちる程、彼以外の男の下へ行く方法を無くしてゆけるのだ。

 だから堕ちたい。底辺に。
 だけど彼と共に在りたい。“皆”と共に。

 幸せを与えてくれたひなた荘の皆と共に、幸せの絶頂へと堕ちて行きたい……


 それが、半淫魔となってまで景太郎を欲している素子の強い願いであった。




 惜しいと思いつつも彼の残臭を湯で流し、頭を通常に切り替えた素子はサッパリとした顔で風呂を後にした。

 ほこほこと湯気が出てはいるが、後でまた本式に入れば良いし、ここの寮生なので時間制限は無い。だから左程気にもせず汗を拭って出て行ったのである。

 直後、素子が淫行に耽っていた場の反対の岩場から人影がひょっこりと現れた。

 普段であれば素子の気配を探れていようが、精液を堪能している時の素子の全神経は味蕾に集中してしまう。
 よって人が入って来ても気付けなかったのである。
 疾風にしても、景太郎と女性らとの“交尾”の見張りが主なので、素子が一人の時の淫時には反応していないのだ。

 その女性はふらふらとした危なっかしい足取りで湯の中を進み、先程まで素子がいた洗い場にゆっくりと歩み寄って来た。

 失禁してしまった跡も綺麗に洗い流されており、軽いアンモニア臭すら感じられない。

 しかし、珍しい事に只一つだけ残されているものがあった。

 手桶である。

 素子は精液を入れた手桶の中に湯を張り、それで身体を流したのだ。
 それは景太郎の匂いを少しでも身体に浴びせたいという欲求からであるが、最近の素子はどこかウッカリ癖があり、使用した後のそのまま手桶を洗い忘れているのである。

 精液はたんぱく質なので、水で洗うなら兎も角、湯で洗うと固まってこびり付いてしまう。
 それが檜の中にしっかりと残っていたのだ。

 その女性はその手桶を手にとって、顔を突っ込みくんくんと鼻を鳴らしていた。

 「………はぁ……」

 酒の香でも堪能するかのような溜息が桶の中に響き、女性は全裸のまま桶を抱え込むように蹲まり、顔を更に押し込んでゆく。

 隅に残った白い粘物を舌を伸ばしてこそげ落す。
 やや硬くなったそれは、湯によって味が損なわれて求めていた香りも風味も感じられまい。
 だが、それでも彼女には味も風味も感じられるのだろうか、皿の隅まで舐めとる子猫のようにぴちゃぴちゃと桶の中を舌で舐め清めてゆく。

 「はぁ、はぁ、はぁ……けーくん……けーくぅん……」

 蹲った事で胸を床でつぶし、
 湯の温度では無い何かで全身を汗で濡らし、
 足の付け根からは幼女が如くおもらしをしつつ、その女は無機物である手桶から愛しい男を夢想し続けていた。

 指もいらない。
 ましてや玩具も要らない。
 彼を想うだけでイく事ができる。

 彼女は、素子とは別のベクトルから既に天国の住人へと堕ちていた。




*************************************************************

 遅くなりましたPixyでございます。
 おまけに短め。申し訳無いです。スミマセン。

 ちょっと我が学び舎でゴタゴタがあってキーを叩けませんでした。ヤレヤレです。
 それでも打ちますけどね。

 クッキーの解除がわかんなくて、今だに感想のお返しが出来ません。これまたゴメンナサイ。
 別板の死種作品をお書きの方がとられた手段は『コレ良いっ!』と思いましたが、やり方がサッパリ(大涙)。
 HTMLの勉強ってやっぱしとかなきゃいけませんね。何事も勉強という事でしょう。嗚呼、人生経験のなさがイタイ。

 それでは、また……



 



[2319] Re[6]:Dotage ~妄愛~ <廿参> (ラブひな)
Name: Pixy◆188a4db7
Date: 2007/06/13 13:29


 どんな美味いものでも毎日食べれば飽きが来るという。

 確かにどんな高級肉でも毎日三食ステーキや焼肉ばかり食っていれば胸焼けもするだろうし、毎日毎日マグロの大トロだけでも辛いものがある。
 ただ、それは心が満たされてゆくからであり、幾ら食べても食い飽き無い人間は心の飢えが持続しているからだと言う精神科医の話もある。

 つまり、毎日毎日高級品ばかり貪り食っている人間は、肉体的には満たされていても心の方は飢餓が続いていて、最悪以前より飢えてゆくというのだ。

 解かる様な気もするし、ピンとこないような気もする話である。

 無論、それは食べ物に限る話ではない。

 ここに、毎日毎日美女美少女の肉体からだを貪り食っている男がいる。
 その“牝達”は嬉々として自分から肉体からだを差し出し、己が肉の処女地を蹂躙させ、その処女宮は余す事無く侵略され尽くして歓喜している。

 彼は毎日毎日飢えた獣の様に彼女らを貪り、己が遺伝子がたっぷりと詰まった汁を胎内にぶちまける日々を送っていた。

 しかしその飢えは止まる事が無い。
 いや、止める事が“できない”。

 その飢えは彼女らを愛するが故の事であり、愛の強さが飢えとなっている。
 三代欲求の一つである肉(性)欲の上限すらぶち抜いて、毎日を熔け爛れるような性行為で埋め尽くしているというのに飽きの気配すら因果の彼方。飽く無き飢えは彼女らへの無限の想いであると語るかのように。

 彼女らもそれが解かっている為、歓喜の中で身体を差し出し、快楽を与え、膣内射精によって比べるものが無い程の多幸感を貰っているのだ。

 女として……いや、牝奴隷として“使ってもらえる”という至福は彼女らのもの。
 彼女らを愛し過ぎるが故に関係を深めて続けてゆく青年は、彼女らの未来を心配しつつも毎日その身体を犯して幸福感を交換していた。


 ――故に、青年の心に住まう獣は飢え狂っていた。


 皆と共に生きたい。
 皆の笑顔が見たい。
 皆を幸せにしてあげたい。

 一般人とは明らかにベクトルが違い、それでいて清い欲望。
 ドス黒いくせに艶やかで優しげで、ドブ泥の様に汚らしくも澄んだ泉より清涼感を感じる。
 飢えた凶獣より禍々しいくせに、数百年を生きた賢者の様に達観している。

 飢餓。
 凄まじい飢餓。
 それでいて強過ぎる愛欲。

 それが青年の心の中にどっしりと腰を下し、尚且つ嵐を起こしている。

 だからこそ未成年の少女にすら淫らな行為を行え、
 愛されている事が解かるからこそ少女らも涙すら流してその陵辱を悦んでいるのだ。




 「? どしたんや? モトコ」
 「あ、いや……」

 何故かカオラが布団に入って来ているのだが、それは何時もの事。
 ジャングルのような自室で寝る事が大半であっても、やはり布団の中は、それも大のお気に入りである素子の側は心地よいのか時々この部屋にやってくるのだ。

 素子にしてもそう邪険にするつもりも無く纏わりつかせているので左程気にはしていない。

 文字通り枕を並べて横になっていたのであるが、何やら微笑ましげな笑みを浮かべていた素子にカオラが気付いて問い掛けたのである。

 「気にするな大した事では無い」
 「ほうか~? 何や嬉そーな顔しとったで?」
 「嬉しそう?」
 「せや」

 然も意外な事を聞かれた顔をして素子がカオラの方を向くと、カオラは枕代わりの自前のクッションにうつ伏せに顎を沈めたままウンウンと頷く。
 そんなに顔に出ていたかと苦笑を洩らし、素子はまた天井に顔を向けた。

 「何でもないさ。本当にな。ただ……」
 「ただ……?」

 「“兄妹”というものは良いものだな……と思ってな……」
 「ふぅん……」

 カオラからしてみれば確かにその通りである。
 実家には家督を継ぐであろう大好きな兄がいるし、(人の事は言えないのであるが)妙な喋り方をする姉もいる。
 国の皆も大好きであるし、愛しいとも思うがやはり兄姉への愛しさや想いは別モノだ。

 カオラは一回だけ会った事があるが、素子にはツルコという物凄い美人の姉がいた。多分、彼女の事を思い出していたのだろう。
 だから唐突な素子の言葉であったが何だか納得ができるような気がしていた。自分も唐突な言動を吐くのであるし。

 ……等と勝手に納得してしまうカオラ。

 しかし、自己完結が異様に早い彼女であるからこそ気付けなかった事であるが、言うまでもなく素子が思っている事はカオラのそれと全くもって方向が違っている。

 薄暗い所為でカオラは見えていなかったのであるが、その薄闇の中で素子は眼を潤ませていた。
 その理由はというと、
 今晩、景太郎を独占できる可奈子の事である。

 どんな事をするのだろう?
 どんな淫らな事をされるのだろう?
 どんな風に泣かされるのだろう?
 どんな嬌声が上がるのだろう?

 その妄想が心の中をうねっていたのだ。

 兄と妹……
 義理ではあるが兄妹だ。
 その肉の結びつきは堪らないものであろう。

 もしあの二人が実の兄妹だとしたら……ああ、でも遠からぬ何れかの日に結局は結ばれていたのかもしれんな……
 同じ血肉を分けた者同士の肉の交わり…か……それもまた……


 そんな愚にも付かない事を想っての言葉だった。


 皆が皆して其々を羨ましがり、皆が皆して其々を祝福し、皆の幸せを願っている。
 捻じ曲がり、歪み切ってはいるがそこにあるのは分け合う幸せ。
 貪り合おうとも、汚し尽くそうとも、穢され尽くそうとも、根底にあるのは双方の愛情。
 一方通行ではない、確かな想い。

 倫理に縛られた者達が成しえない強い愛情が彼女らにはうねり続けている。




 単に……
 単に“そこ”に倫理が介在されていない。
只それだけ……




―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
                           -盲・愛-
                            File:廿参

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――




 「ああ……お兄ちゃん、赦して……」

 薄暗い部屋の中、もじもじと腰を揺すって逃げようとする少女の影。
 その少女は、体操服にブルマという最早ありえない服装で座り込んでいた。

 ご丁寧に胸のゼッケンには<1-B 浦島>等と書かれている。学年兎も角、クラスがBというところに奇妙なリアリティというか拘りが感じられた。

 服装だけでも問題があるというのに、その格好にもまた問題がある。
 彼女の両の手首は黒いソックスを履いている足に白いハンカチで縛り付けられており、足がM字に開いた不自由な格好なのだ。

 そしてその少女に這い寄って来ている男は全裸。
 股間のブツはぎんぎんに反り返っており、これから少女に何をしようとしているかは想像に難くない。

 しかして彼女の弁を受け入れるのならばその男は兄という事となる。
 彼女は兄によって陵辱されようとしているのか。

 はぁはぁはぁ……


 彼女が意識しているように、男はその淫気を持て余している。
 ぽたぽたと鈴口から滴り落ちる先走りがその興奮の度合いを物語っている。

 しかし、少女に逃げる術は無い。

 いや全く無い訳ではないが、この男相手なら使えないし使うつもりは全く無い。

 荒い息がどんどん近寄ってくる。
 粘ついた熱い視線が強く彼女に突き刺さる。
 その熱視線はソックスからゆっくりと這い上がり、太股を蜂の巣にし、やや短めな体操服の隙間から覗く可愛い臍をも残虐に貫き、
 胸の辺りを滅多刺しにして、その可愛らしい顔をぐちゃぐちゃにしていった。。

 だけど……
 だけど物凄くキモチイイ………


 その視線だけでも瀕死の重体。
 煮え滾る欲望に屠殺される快楽に彼女は浸り切っていた。

 彼の吐く吐息が太股にかかるとそれだけで体温が跳ね上がる。
 ぽたりぽたりと滴り落ち、布団に染みがつけばつくほど言い様の無い興奮が腰からぞわりと登ってくる。
 あの反り返った異物をどうされるのかと想っただけで意識が遠退いてしまう。

 ああ……
 こんな、こんなにも……


 ずっとずっと想い続けていた兄。
 その兄によって女にしてもらい、抱いてもらい続けている日々。

 凍てついた日常から抜け出し、愛しい想い人の性玩具となった今では非日常という名の灼熱の極楽が続いていた。

 唇にぐいと押し付けられるペニス。
 熱々のお肉。
 既にこの部屋に二人して入ったとき、散々キスをして二度ほどイかせて貰っている。

 だからこの演技も、

 まるで汚い物を押し付けられて嫌悪と恐怖に怯えるという、今の可奈子から言えば考えられない気持ちも、
 外道の兄の性の捌け口にされる従順な妹。ファーストキスより前に唇を汚されるというシチュエーションも只楽しめるだけ。

 目元に涙すら浮かべて嫌がるフリ。
 普段の彼の本性は優しすぎるほど優しい兄はコレだけで躊躇してしまう。
 だが、性行為中の彼は淫獣そのもの。彼女の真の想いに直に気が付ける。

 どんなに嫌がろうが赦してくれない。
 どんなに懇願しても赦してくれない。

 いや、

 ぷにゅりと柔らかい唇を割られ、歯茎に押し付けられる亀頭。
 先端から滴っているカウパーの味が口中に溢れて舌がとろけそうになる。

 歯の段々を愉しむように口にの中を汚してゆく兄のペニスに、妹は例えようも無い幸福感を身を憶えて悶えていた。

 そのままその小さな身体は押し倒され、彼はぐるりと位置を変えて妹の股の間に顔を寄せた。

 「ンぁ……むぅ…ンんん……んちゅ…」

 小さく驚いて口を僅かに割ってしまい、その隙に先端が咥内に少しだけ入ってくる。
 そうなると“慣れている”彼女は、歯を閉じるような愚行を犯す訳もなくその亀頭を舌先で擽って液を吸う。実に儚い演技だった。

 美味しいものは美味しいのであるし、愛しいものは愛しい。だからフェラチオを嫌がるという在り得ない演技など濡れたテッシュよりも脆く破れ去ってしまうのだろう。
 現に頬に押し当てられている兄の太股が僅かに緊張しているのを感じた時、彼女は今の刺激で快感が与えられた事を誇りに思っている。

 血の繋がりはなかろうが兄妹だ。
 だがその兄へ想い故に口淫によって悦ばれただけで地が溢れ出てしまう。

 兄の方は兄の方で、既にむぁっと湿度を上げていたブルマーに鼻先を押し当ててその芳香を堪能している。
 妹は鼻の音を聞いて瞬間的に顔を真っ赤にした。
 既に全てを捧げつくしている彼女であるが、流石に恥ずかしいものは恥ずかしい。
 特に汗の匂い等を嗅がれると少女らしい羞恥に苛まれてしまう。

 それを感じ取った兄は、そんな妹の仕種の愛おしさを再認識し、その部分に陵辱を開始した。

 じゅる…ぺちゃぴちゃ…ぺちゃぺちゃぺちょぺちょ……
 ずず……じゅるじゅるじゅる……


 「ンんん~~~~っっっ!! 
  んふぁ…っ!! うンむっ、ンっンっンんんんっっっ!!!」

 唾液を染み込ませ、舐めて吸う。
 ベトベトにされたブルマの股間は、兄の唾液と汗と蜜を混じえ、ぷっくりと布地を膨らませた。
 これが冬であればほこほこと湯気でも見えるであろう程に濡れそぼる。
 彼に腹に胸を押し付けている形になっているので、彼女の胸は彼のその腹筋の動きによって刺激されてあっとゆう間に乳首を尖らせてしまう。

 それが解かるのか、彼は余計に腹を擦り付けて乳首に刺激を与え続ける。その圧迫感が堪らない。

 今回のシチュではブラを着用していないので、尖った乳首はぐりぐりとこね回されて体操服のごわごわした生地の感触と相俟ってもどかしくも激しい快楽を伝えてくる。

 下の方はというと、ブルマの縁を兄の舌が這い回り唾液でベトベトにされている。
 時折、思い出したかのようにブルマ越しにクリトリスを歯を立てられて腰を浮かせよがってしまうが、口には猿轡ギャグの代わりに肉傘が押し当てられているのでくぐもった声以上のものにはなってくれない。それはそれで楽しいのだけだが。

 はふはふ……スンスン…ぬゅぢゅ……


 「ンわぁ…ひぃン…っっ」

 荒い息を吹きかけられ、匂いを嗅がれ、縁の隙間から熱い舌が侵入して来る。

 全てを知られてゆくという感激と、牝の臭いが強まっているであろうそこの匂いを嗅がれている恥ずかしさに少女の顔は真っ赤になる。
 されでいてその羞恥が途轍もない快感を齎してくるので涙すら溢れてくる。

 だが、兄は妹を愛しているからこそイジワルでもあった。

 大陰唇近くにまでそのナメクジの様な感触の舌を感じるとス…ッと逃げてしまうのだ。

 「い、いゃあ…ん……」

 腰を振って舌を追いかけるが、兄の舌は太股の内側の汗を舐めとる行為に没頭する。
 泣く泣く諦めて腰の力を抜くとまた襲い掛かってきて彼女を悦ばし、そしてまた期待させてから逃げるのだ。

 既にブルマの股間の部分は唾液と汗と愛液をたっぷりと吸ってぷっくり濡れ膨らんでいる。
 もう少し生地が薄ければ顔を出している肉芽の形すら浮かんでいる事だろう。

 “可哀相な妹”はぐすぐすと涙を浮かべて兄の虐めを悲しんでいた。

 演技だと解かっている筈なのにこの単純バカ優しい兄は胸を痛めてしまい、慌てて彼女を抱き締めて唇を重ねてやる。

 今の今まで自分のペニスを舐めていた妹の唇であるが、そんな事を気にする男ではない。
 妹は…いや、彼と関係を持つ女性全ては彼の生殖器に対して何の嫌悪も衒いも持っていない。愛しい男の一部という観念しか心に持っていないのだ。だから汚い等と言う者がいれば鬼の様に激怒するか、軽蔑の眼差しを浮かべてしまう。

 それと同じで、これだけ自分を愛してくれていた妹の唇に対して彼は何の嫌悪も感じたりはしない。
 例え自分の出したザーメンがベトベトについていようとも、それは彼女らがそれだけ愛してくれた結果なのだ。それを汚いと感じるほど彼は愚かでは無いのである。

 「あむぅ……くちゅくちゅ……ぢゅるるる……ああ…お兄ちゃ……ンふぅ…」
 「ちゅる…れろれろれろ……ずずず…はふはふはふ……」

 ぴたりと隙間なく唇を重ねて舌を絡ませあう。
 少しだけ距離をとればボタボタと唾液が零れ落ち、妹の喉を伝って体操服を濡らしてゆく。
 当然これだけ舌を絡ませ合っているのだから唾液の橋などは極普通に掛かる。

 ツツ~~…と銀の糸が伸び、名残惜しげにプツリと切れる。
 その様子を息を荒げて妹は物悲しげに見つめ続けていた。

 何だか絆が途切れるようで辛いのである。

 だが、妹の辛さに耐えられるほど兄は強くは無い。
 外道兄という設定は何処へやら。兄は優しく妹の身体を抱き締め、彼女の腰を撫でつつ尻の側から器用にブルマの縁ズラし、その肉の凶器をぞぶりと突き立てた。

 「ン……あはぁああああっっっっっっっ

 待ち望んでいた肉の到来に、彼女の嬌声は止まれない。

 全裸の兄に対し、体操服ブルマ姿の妹が対面座位で繋がっている。
 決して人に見せられない行為だ。

 「んあっ、あ、あはぁっ、ンんんん……っ
  お、お兄ちゃぁああんっっ」
 「か、カナコ…っ すごいキツイ…っっ」

 妹である可奈子の入り口はキツネ並にキツイ。
 相変わらずキツネは少女の様にキツイのであるが、一度彼のペニスが奥まで入るとスイッチが切り替わるが如くキツさが緩和される。かと言って締め付けが緩む訳ではないが。

 可奈子のそこも入り口が凄くきついのであるが、それはキツネ同様に受け入れる期待感によるもの。
 一度ぞぶりと入れば今度は膣道全体で締め付けて彼のペニスを味わい出すのだ。

 些か…いやかなり倒錯的ではあるが、可奈子は少しでも兄に喜んでもらおうと菊門に力を込め、筋肉で繋がっている膣をきゅっきゅっと締める。
 ぞぶぞぶと出入りを続けるペニスはそれで肉襞の洗礼を浴びて可奈子の膣を蹂躙しやすくなって行くのだ。

 ぢゅぶっ、ぐぢゅり、ぞぶっ、ぢゅぶっ、ぶぢゅ、ぐぢゅっ、


 「あっ、あっ、はっ、ん、ふ、あひ、ンふぅっ♪」

 どうせなら兄にしがみ付いて肌を密着させた状態で絶頂を迎えたいのであるが、縛られているもどかしい体勢で犯されるというのも堪らないものがある。
 それに兄の方からぎゅっと抱き締めてくれているのもまた良い。

 以前の可奈子は兄に抱きつく事はあっても、抱き締めてくれる事は殆ど無かった。
 だから今の爛れ切った関係は彼女にとって最高なのである。

 スススと布団の上に兄の足が滑り、足を広げて繋がっている可奈子の尻の下を両の足が通り過ぎた。
 あ? と思う間もなく、可奈子は兄に跨る形となり、彼が寝転んだ瞬間、可奈子は騎乗位で更に深く兄の物を咥え込んだ。

 ぐぢゅう…っ

「ンはぁ…っっっ」


 限りなく痛みに近い快感が可奈子の身に降りかかった。
 いや、正確にいえば子宮から伝わってきた…が正しい。

 今までコツコツと子宮を突いていた亀頭が、串刺しにするが如くの勢いで子宮口を押し割ったのである。

 無論、只では済まない。
 何だかんだでやってはいても今だ未成熟な内臓なのだから深刻なダメージを与える事は確実なのである。

 だが、幸い…というか何と言うか、
 可奈子も、可奈子の肉体からだも普通では無い。

 ぐぬ゛ぬ゛……
 ぐぢゅっ、ぬぢゅっ、ずぢゅる、ぶぢゅっ、ぬぢゅ、ぐぢゅっ、


 「あはぁっ、ひぃん、ンんっ、あ、ふ、んふっ、うっ」

 素子同様に子宮口でもって亀頭の先を舐めしゃぶるが如く奉仕ができている。

 彼と関係を深めれば深めるほど、性行為をすればする程、彼女らの身体は自称する肉玩具そのものへと変化をしてゆく。
 無論、誰もが自分の未来に期待は持っても恐怖感は塵程も浮かばない。
 まぁ…どれだけ気持ちよくなれるんだろうとドキドキとしてはいるだろうけど。

 手足の自由が利かない為、可奈子が腰を動かす事はできないのであるが、兄は別。
 下から叩上げるような突き上げを行い、可奈子の華奢な身体を玩ぶ。
 抵抗も隠す事も出来ない可奈子の体操服の上から、処女を捧げてから育ち始めた胸を揉みしだいて乳首を虐めたおす。

 きゅっ、きゅっ、と突き出た乳首をこね回し、摘み、引っ張って可奈子の被虐心を更に高めさせ、太股に力を入れさせては膣の締まりを堪能する。

 まるで名うての竿師の様な女の扱いであるが、彼のテクニックが優れているのは彼女らに対してのみ。
 彼女ら専用にカスタマイズされているテクニックなのだ。だから他の女に早々効くとは思えない……だろう。多分。

 尤も、他の女とそういう関係になったとすれば大変な事になろう。
 彼の射精量は人類を超えているし、射精しつつピストンする事が普通。精力も人類外なのでそこらの女の身体と精神が持つ訳が無い。

 ――このひなた荘の女のみ――

 このひなた荘にて彼との未来を望む女のみが与えられている祝福なのだから……

 イく直前の快感に爛れた声を隠そうともせず、可奈子は息を荒げて自分の下でがんばって腰を突き上げてくれている兄を見た。
 そのドロドロの眼差しは兄の理性を突き崩せるくらいにいやらしい牝犬の目であり、彼女らの求めに応える事を今の身上としている彼の肉柱は、可奈子の膣内なかで一回り膨らんだ。

 「ん……っ はぁああンっっっ」


 その圧迫感にまた嬌声が昇る。
 その歓喜の声に気を良くしたか、彼はぐいっと身を起こしてそのまま乱暴なくらいに崩かけた可奈子の腰を引き上げる。

ズン!

 「あぅっっ!! はぁ……く……
  お、奥、にぃいい……っっ!!」

 もう一度抱えあげられた事による多幸感が加わり、兄のペニスを膣奥どころか子宮内にまで咥え込んだ可奈子はぷしゅっ、と体液を吹いた。
 子宮を衝かれ、熱い肉柱で捏ね回され、神経が焼ききれるような快感に精神が燃え上がる。

 「ひっ、はっ……あ、ああ……っっ お、お兄ちゃ…ん、お兄ちゃんっ、お兄ちゃんっっ」

 背筋を反らせて泣き悶えている可奈子。
 愛しさと嬉しさと快感と悦楽の嵐に意識が掻き回されてはいても彼に対する感触は忘れはしない。
 盲目的な愛であるからこそ、妄信している兄だからこその人では味わえぬ快感。

 その真っ只中で可奈子は打ち震えていた。

 『私、お兄ちゃんに壊されてしまう……』

 自分が心の中で無意識に呟いたその言葉に、迫り来る未来を幻視して可奈子は心が踊った。

 何度も抱かれ、何度イっても彼女らは底なしの快楽を貰っている。
 口先だけで彼に赦しを請うのだが、淫獣と化した状態の彼が聞き入れてくれようも無い事は誰もが理解している。それでも赦してと呟くのは彼の興奮を高めるが為。

 理性を弾き飛ばさせ、ただ自分らを貪って貰いたい発情した牝の本能がそうさせている。

 ぷぢゅっ、ぷぢゅっ、と胎内から響いてくる音がと肉の研磨が可奈子を連続するオーガズムに曝し続け、
 歓喜の涙と汗と涎で顔をどろどろにし、それでも少女の秘肉は兄の肉柱を健気に舐めしゃぶりのを止めようとしない。いや、肉柱を咥えて離す事が出来ない…が正しいか。

 きゅうぅっ……


 身体が自動で奉仕するかの如く、景太郎の肉茎を膣がざわりと締め付けた。

 当然ながら彼女ら全員の性器は彼だけを愛し尽くしている為、自分が彼のペニスに貫かれている今を正確に受け止めると感度を叩上げる事が出来る。
 だから、彼がスパートに入った事を感じただけで、

 『ああ…自分は彼を気持ちよくしてあげられたんだ…』と子宮ごと縮み上がるような快感が腹の奥から噴き上がって来る。

 「うぅっ、くっ、ううううっ、も、もう駄目……っっっ」
 「あぁっ、うっ、お、お兄ち…お兄ちゃ……っっっ?!」

 余りといえば余りに淫靡。
 少女の肉体からだは年齢度外視に己で受け入れた彼専用の肉便器。それを再確認できるだけでそのいやらしさに震えが来る。
 最後の方のストロークで、兄の肉柱が引き戻され、掻き回される膣壁が感じた快感に最後の意識が思考が吹っ飛ぶ。

 だが今夜はよほど張り切っているのか、気を失う間すら与えてくれず、またしても子宮に突き込まれて快感のあまりに脳が悲鳴をあげた。

 「あふぁっ?! あ゛っ、あ゛あ゛あ゛っっっ!!
 も、もうらめぇっ!! やぁあああぁっっ!!」


 突き殺された。

 そう感じた程の刹那。

 子宮への最後の一突きは正に止め。
 その一突きで可奈子の意識は木っ端微塵に砕け散った。

 だがしかし、彼は射精していなかった。

 「あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ…………っ」


 目はひっくり返って白目となり、涎はダラダラと口から溢れている。
 虚無に圧倒的に近い白い閃光に意識を弾き飛ばされている可奈子は、ただ反射的に全身を波打たせて声を洩らすのみ。

 「~~っっ!!」

 オンナの器官を最奥まで汚し抜いたそれは、やっと出番が来た事に歓喜し、支給壁に向けて凄まじい勢いの体液をブチ撒いた。

 どぶっ、どぶっどっどっどっど……っ


 流石に良く我慢した精液は凄まじい。
 ホースの先を潰して出した水の様な勢いで妹の子宮内を穢しに穢す。

 ぶびゅる、ぶぢゅ、ぶ、ぶぶぶ……

 可奈子は愛しい兄によって凡そ人類とは考えられない程の射精を行われて子宮を溺死させ、
 溢れ出たドロドロの粘液は膣道の肉襞の隙間隙間を潰し、
 可憐だった少陰唇からボタボタと垂れ滴らせた。
 
 それでも止まらぬピストンは可奈子の膣内にぐりぐりと精液を擦り付けて自分の所有物の証を更に刻み付けてゆく。

 無論、女たちの中でこれに異論を唱える者はいない。精々もっと刻んでと強請る程度。

 何度も何度も犯されて、与えてもらえる愛しい雄の子種。
 これが真の意味で使われるの日はまだ見えない。

 可奈子は朦朧とした中で、早く兄の子を孕みたいと心から願い、

 ――真珠のような涙を頬に滑らせていた。





 『す、スゲェ……』

 声に出せない感嘆の呟きが口の中に溢れている。
 その心にしか響かない声の主は、薄暗い中から滑るような部屋の中を凝視し続け、二匹のまぐわりに息を呑んでいた。

 押入れの隙間から覗ける余りに激しすぎる肉の交わり。
 “スる”という事がどういう事であるかはとっくに知ってはいたし、学校の保健体育でも学んでいる。無論、授業のは適当に暈された表現であるが。

 “彼女”が覗き始めたのは、ついさっき。
 二匹の激しい交わりが始まった直後。
 トイレに向う途中で喘ぎ声を耳にし、誰の声なのか理解が出来た彼女はビクビクしつつではあるが、何時もの抜け道からこの部屋に入ってきたのである。

 普段ならこんな暗い部屋に来る訳もなく、来ようとも思ったりしない。
 薄暗い廊下の向こうから聞こえてくる悲鳴の様な唸り声に近付ける様な野太さは“以前”の彼女は持ち合わせていないのだ。

 だが、声の主が彼女の知る女性のものと理解が出来、尚且つ“お兄ちゃん…”等という声が聞こえればそれは気になろう。
 相手が“オバケ”とかいう手合いでなければ図太くなれる彼女は、その声に導かれるようにここに来てしまったのである。

 流石に、兄妹でセックスしていたとは思いも寄らなかった事であるが……

 瀬田と共に廻った海外でも本等では見た事はある。
 ムービー系は流石に無かったが、写真などでは身体が繋がったところは見た事がある。

 初めて見た本物のセックス。
 そしてそれは兄妹間での行為だ。

 キンシンソーカン……という言葉が浮かび、可奈子とその兄である景太郎への見方がまた変わってしまった。

 なるという恋人がいるというのに、あの男は妹と交わっている。
 それもかなり歪なシチュエーションでだ。

 その眼差しの向こうでは、ゆるゆると意識を取り戻した可奈子が肉凶器に串刺しにされたまま手足の縛めを解かれていく。
 何か物悲しげにそれを見つめていた可奈子であったが、縛めが解かれた瞬間にその表情は一変する。
 景太郎が彼女の右太股を跨ぎ、左足を抱えて測位で突き込み出したからだ。

 「あっ♪ あぅっ、や、ンっ、あはっ、ひぃんっ、止め…て♪」


 完全な口先だけの拒絶。
 許しを請えば兄を増長させ、余計に興奮させるだろう事を知っての台詞。

 現にその声に反応した景太郎は、残酷なほど可奈子の膣を掻き回していた。

 やや遠いがそれでも押入れの中にまで泥濘の音が聞えてくる。
 ぐぢょぐぢょと、凄まじいまでにいやらしい女の音だ。

 景太郎が出した精液と、可奈子の愛液が混じり合って出来たカフェラテを股の間でぶち撒いて、二人の交尾は激しさを増すばかり。


 しかし、そんな様子を覗いている少女に不思議と憎しみや怒りは浮かばなかった。

 寮の規律とやらを盲目的に守るつもりは更々無いが、それでも淫猥な行為が行われているのだ。更に輪をかけるようにそれは近親相姦。許されざる行為……の“筈”だ。

 だが、それでも不思議な事に嫌悪感は浮かばない。浮かぼうともしない。

 響いてくる可奈子の声。
 唸るように景太郎が声を洩らし、腰をビクビクとヒクつかせる。
 と同時に、肉同士が繋がっている部分から余りの多さにバックフローを起こした精液が溢れ出て可奈子の太股を汚す。
 それにもかまわず可奈子は赤子が抱擁を強請る様に手を伸ばし、兄の胸元を欲した。

 ぎゅ…っと抱き締められる可奈子。
 当然肉柱は可奈子を貫いたまま。
 変形松葉崩しで抱き合う二人は、愛し合っている事を見せつけるように唇を重ね、舌を絡ませ合い、声ならぬ愛の言葉を紡いでいる。

 それは覗いている少女ですら理解が出来るほど。

 そこまで好きだというのか。
 それほど愛おしいのか。
 だからこそそこまで下品なまでに求め合えるのか。

 レンアイという言葉は知っているし、物凄く手近にはるかという不器用な恋愛を続けている女がいる。
 その彼女は何に触発されたか瀬田パパを追って何処かへ行っている。自分の母の事もあり、大人のレンアイは解かった気でいた。

 だが、それでも目の前の“愛”は初めて見る形だった。

 恋人がいるというのに義妹と深い関係を築いている景太郎。倫理的に大問題であるし、決して赦されざる事だ。
 事の筈だ―――

 なのに……

 『なんで……なんで…あたし……』

 こんなに羨ましいんだ?

 心の繋がりが愛だと思っているし、確信している。
 心が繋がるからこそ抱かれたいと思い、関係が進むのだと思っている。
 だから付き合いだしてからキスをして、身を任せる……その手順で進み、愛を築いてゆくものだと話を聞いている。

 しかし……
 彼女の、
 サラ・マクドゥガルの中に別の“理解”が発生していた。

 彼女が知っているオトナのレンアイとは全く別のベクトルでアプローチ。
 決して世間では赦されざる方向の愛情であり、自分が受け入れるとは思えないルートの愛を彼女は見つけ出そうとしていた。

 お互いが得心した肉体関係の後の愛。
 いや、肉体関係そのものが愛なのではないかと思い始めていたのである。

 くち…くちょ……


 「ん……」

 スモックの様なパジャマの裾を口に咥えて声を殺す。
 捲くり上がった事によって薄い胸が露わとなり、今はまだ只単にあるだけに過ぎない乳首も曝されている。

 だがしかし、その乳首は生意気にも頭をもたげ始めており、
 彼女の両の手は、べちょべちょになった“パンツ”のクロッチ部にあてられていた。

 失禁とは違う体液の漏れに焦りを覚えつも、最近、自分のスカートの裾に視線を送っている男子らを思い出し、余計に股間を擦る手の速度が上がる。

 突如として上がった少女らしからぬ色気に、男子生徒はもとより男性教師の一部も彼女に眼を向けているのだ。
 その視線が気になって嫌であったのだが……

 何故か目の前で睦み合っている二人を見ているとそれがそんなに悪いものではないのでは? とも思ってしまう。

 自分に向けられたものが眼差しが情欲でなければ……
 サラの肉体からだではなく、サラという一個の存在を求めたものの眼差しであったとしたら……

 彼女は自分を悦んで差し出していたかもしれない。

 「ん、んん……っ」

 ツツ~~……と太股を体液が伝い落ちた。

 初めてのオナニー。
 初めての愛液。

 その愛液は、
 どこか白っぽい本気の汁で、
 恰もそれは、愛してくれる者を心身が強く強く求めている事を必死に訴えかけているかのようであった。




*************************************************************

 遅くなりました。Pixyでございます。

 さぁ、アブなくなってまいりました。○学生です。大変です。
 一応はそーゆーシーンの時には年齢とか暈してますが、ズバリ書くとマズいんでしょうねぇ……

 でもまぁ、この後もナニする女性が増え訳ですし、どーかなるでしょーね。多分っ

 という訳で、次回はある意味ヤマです。
 それではまた……






[2319] Re[7]:Dotage ~妄愛~ <廿肆> (ラブひな)
Name: Pixy◆188a4db7
Date: 2007/06/16 10:55


 空気はすっかり夏のものが増しており、高い気温と湿った空気が入り混じった風を感じられるようになり、比例して不快指数も増してゆく。

 だが、ここひなた市は都心部から外れている事もあってヒートアイランド現象のあおりは少く、山からの吹き降ろしもあってか左程クーラー様々に生息依存する必要もない。
 ぶっちゃけ、この町は途轍もないほど超低犯罪発生率を誇っているのでそんなに空き巣等を気にせず窓を開けて寝られるのだ。

 女子寮であり、宣伝した割には殆ど知られていない温泉旅館であるひなた荘などその際足るもので、普通ならあり得ない程ここには美女美少女が揃っており、ここに目をつけた暴行魔や下着ドロ等がいないという方がどうかしている。

 実際、ひなた町でもここの住人は、下は小学生で上はフリーターの美女美少女が揃っている事は広く知られている。

 にも拘らず不埒者は来ない。

 いや、来ない事にこした事は無いのであるが、住人の一人である成瀬川なる等は入学当初にミス東大に選ばれたほどの器量であり、当然ながらHPにも写真は掲載されている。
 つまりは全国規模で知られている筈の美女が住んでいる事も知られている筈なのだ。

 しかし“来ない”。

 ストーカー等の犯罪行為を行う者は、それを行っているという自覚が無い分厄介だ。
 それが犯罪である事を知ってはいても、自分が行っているのだと理解ができないのだから。

 だから当然、ひなた荘でも強者で知られている素子に対しても不埒な行為を行おうとする愚か者だっている……筈だ。

 しかし平和である。

 何者も侵入してこない。
 何者であろうと害意のある人間はこの街に入ってくる事が無い。否、できない。

 住民すら知らない古よりの守護によってこの街は守られ、そして平和を約束されている。
 その記憶も記録も知らぬままに……

 そしてその守護の中心的位置、
 要ではないが、尤も守護が強い場にあるのがひなた荘である。

 ここでは何が起ころうと町のものは気にしないし気にならない。
 何かが爆発しようと、銃刀法違反が発生しようと、何時もの事だと割り切られてしまうのだ。

 そう――観光客であってもだ。

 だから気にならないし気にしない。

 どんな卑猥で淫らな行為が行われようと、目の前で行われていない以上誰も気にならない。

 それが円環を約束された館、ひなたなのだから―――




 「まぁ……♪」
 「おおう……スッゲ……」

 その一室、
 間取りは同じであるが、他の部屋よりほんの少しだけ広く感じる管理人室。

 純和風な部屋は浪人時代の参考書や考古学の関連書籍の入った棚が置かれており、どこか文学作家の部屋であるような印象を受ける。
 しかしてこの部屋の主は文学作家では無いし、文学の理解力もそんなには優秀ではない。数学よりは得意であるが。

 兎も角、大の字…とまではいかないが、テーブルの置いておる部屋の方でクッションを枕に床に寝転んでいる男が一人いた。

 名を浦島景太郎。
 ここの管理人で唯一の男である。

 日ごろの疲れが溜まっているのか、はたまた何か別の要因があるのか、彼は静かな寝息を立てて深い眠りについていた。

 深い眠りである事は、今の彼の様子からも解かる。

 窓から入ってくる涼しい風が髪を擽ってゆく。
 元々が温泉旅館なのでその湿度の高さは折り紙つき。しかし山からの吹き降ろしなので温泉の湿度は館に入ってこない。上流の滝からの湿度はあるが、湯気の湿度が無い分かなりマシなのだ。それでも床拭きは欠かせないが。

 その涼しい風によってリラックスし切っている彼…景太郎は、安らかな眠りの中で幸か不幸か自分に何が起こっているのか、何が行われているのか理解が出来ずにいた。

 彼を挟んで座っている二つの影。
 その位置は腰の左右で、二つの影から突き刺さる合計四つの視線が彼の一部分を貫いていた。

 「まぁまぁ……濃い茶色といいますか、黒とでもいいますか……不思議な色ですねー」
 「……先の方はサーモンピンクつーか、薄紅いピンクっつーか……」

 彼は今、チノパンから肉棒を引きずり出され、監察…というか弄り回されていたのである。
 それも自分が良く知る美女美少女の二人に。

 「昔見たのと違いますねー
  ああ、こっちの方は熱いのに、こっちは…冷たい? 不思議ですねー」
 「へぇ……あ、ホントだ……むにむにした変な感触だなぁ…ふぅん……」

 ぐにぐに弄っているとそれは少しづつ硬さを取り戻してゆく。
 手の中で熱を増し、灼熱を伴って膨らんでゆくそれ。
 ここ一ヶ月の間に渇く暇が無い程女を貪り続けている肉の凶器。
 それが彼女らの手の中で正体を曝し始めたのである。

 「わぁ…わぁ……スゴイ……こ、これが…これが入るんですねー……」
 「う…わぁ………」

 溜息すら混じった声で感嘆する二人。

 然もありなん。実際に、小さかった時は長さ五cmにも満たなかったそれが瞬く間に五倍強の長さとなり、太さも倍になっているだろう。
 如意棒…は言い過ぎであるが、何かそんな魔法のアイテムの様に感じるのも男を知らない二人からすれば仕方の無いことなのかもしれない。

 左側に腰を下しているのは乙姫むつみ。
 右側から手を伸ばしているのはサラ・マクドゥガル。

 二人は結託して景太郎で遊んでいた。

 この状況を説明するには、僅かながら時間を戻さねばならない。




 ――それは、二時間ほど前の事であった。




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                           -盲・愛-
                            File:廿肆
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 大学二年ともなると、受けるカリキュラムは固定されてゆく。
 何々をモノにして、何々になるという展望が無い者は兎も角、確固たる未来を見据えている者は入学当初から計画を組んでいたりするものなのだ。
 
 ひなた荘にいる現役東大生である三人は何だかんだで見据えている未来がある。
 なるは教師を目指しているし、むつみは医学部だ。
 一年の留年の後に復学を果たした景太郎は考古学。尤も、こちらの方は日本以外ではカメ文明の遺跡発見等で既に名を知られているし、その道で有名な瀬田の直弟子という肩書きももっている為にかなり未来は固まっていると言って良い。

 だが、逆に未来が固まっていればいるほど、大学で三人が一緒に行動する事が少なくなってしまう。

 現になるは既に朝から講義があって飛び出している。
 景太郎とむつみは本日はとっていない…というか、彼らが受けている教授が不在で単に講義が休みになっただけなのであるが。

 尤も、むつみは日向に住み込みで働いているので、本来であれば暇をしているわけではないのであるが、店長代理のキツネが不在なので一応は店を閉めていた。
 というのも、そろそろ浜茶屋営業の時期なのでキツネはその許可申請に出ているのだ。何だかんだでマメな女性である。

 素子は予備校。夏期試験だそうだ。夏だからこその追い込みで大変なのである。

 当然ながら女子高生のしのぶとカオラも不在。
 可奈子は買い物なのだそうだ。ただ、意味ありげな視線を景太郎に送っていたのであるから、彼に関する買い物であろう事は想像に難くない。

 よって、ひなた荘にいる者は景太郎とむつみ、そして……

 「あ゛~~……暇゛~~~……」

 景太郎の部屋で扇風機に抱きつき、声を出して遊ぶという妙に懐かしい事をしている少女……サラが取り残されていた。

 サラの学校は創立記念日で休みである。
 とは言っても、夏休みギリギリ手前のクソ熱い中外に出てゆく酔狂な趣味も無いし、出てゆく相方もいない。
 休みは嫌いでは無いのに、暇を潰す術が無い為、景太郎をからかって遊ぼうと部屋に押しかけていたのである。

 ただ、その時間が悪くて、彼は風呂掃除に行ってしまったのだ。

 年がら年中湯を湛えている露天風呂。
 朝に夕に掃除をせねば直に湯垢でヌルヌルになってしまう。だからブラシ掛けは欠かせない。それはここに来た初めの方からの景太郎の仕事であった。

 そんな彼が不在の部屋に、何故かサラは残っていた。

 いや、何時もの彼女であれば景太郎に纏わりつくように邪魔をしていたであろうが、今の彼女にはそれが出来なかったのである。


 袖を捲り上げてデッキブラシを掛ける彼。

 湿度も気温もある為に汗が浮かばせ、
 留学中のフィールドワークと瀬田パパによって鍛えられた筋肉を動かして作業をする彼。

 学校の同級生ガキどもより格段に大人であり、それでいて今もまだ夢を追っている途中。
 男性教師らのようなオッサン臭さも無く、かと言ってナンパしまくるアホ男のようなチャラチャラ空気も無い。モテない訳ではないのだが。

 つまり景太郎は、はサラが一番身近に感じている男であり、瀬田パパ以外で初めて気にしている男性でもあるのだ。

 好きなのか? と問われれば好きだと答えられようが、どう好きなのかは説明が出来ない。

 男としても好きであるし、友人としても好きだ。
 遊び相手としても好きであるし、頼れる仲間としても好きだ。
 寮生全員が家族のようなここひなた荘において、家族として好きなのも認めている。

 だが、『恋人同士が言うところの好き』なのかと問われると、どうも返答に困ってしまう。

 初恋なのか? という気がしないでもないが、何せ異性への恋愛は未経験。胸に沸く想いの意味がサッパリ理解できないのだ。

 側によってドキドキするかといえばそんな事も無く、
 唇を見つめてキスを意識するかといえばそんな事も無く、
 抱きついて心拍数や体温が上がるかと問われても一向に変化は無い(元々サラの方が子供体温なので高い)。

 だから恋愛とは関係が無いといえなくも無い。

 しかし、どういう訳かサラは景太郎の汗の香りを嗅ぐと反応してしまうのである。

 それが、その景太郎の汗の匂いが記憶に反応し、一昨日の晩に見た可奈子とのワンシーンに直結してしまうのである。

 ス…と顔が赤くなるサラ。
 しがみ付いている扇風機の台の部分が股間に押し当たり、モーターが回っている振動が彼女を刺激してしまったのだ。
 無意識に腰をぐりぐりと動かせば、痺れにも似た感触が腰から這い上がってくる。

 じ―――んとした痺れで眼が細められ、眼差しがとろける。

 初めて見たセックスが頭に浮かび、扇風機の台の角に強く股間を押し当ててしまう。

 「ん……っっ」

 甘い声が漏れた。

 よがり声というものは、実は頭にデータが無ければ殆どが奇声になる。
 『こういう時にはこういう声が出る』という事を頭で理解しているからこそ、そういう声が出せるのであるが、サラはそんな声を効いた事は今まで無かったのだ。

 いや…………?

 いやあった。
 一度だけあった。

 それも親しい者の中に。




 結局、あの晩の可奈子と景太郎との行為をサラは最後まで見つめてしまっていた。
 凄まじい量の精液で全身をぐちょぐちょにし、それでも健気に腰を動かして兄に快楽を与えようとする様は正に涙を誘う。
 景太郎は変形松葉から背後位にチェンジし、後から散々突いて玩んでから引き抜き、今度はその上の穴を蹂躙に掛かった。

 『あぅう……っ お、お兄ちゃん……っ』

 細くした舌をアナルに突き入れられ、内側を舐められる羞恥。
 それでいてはっきりと襲い掛かる快楽が、可奈子の声を寄り一層蕩けさせていた。

 蕩けるような甘い声――

 というものは、母に話だけは聞いた事はある。
 良くは解からないが、はるかが瀬田パパといる時だけそんな声を出していたという。尤も、具体的には語ってはくれなかったのであるが。

 実際に耳にすると、本当に脳が蕩けてしまったのかと思わせるられた。
 それでいて、幸せであると感心させられる程に、その声は多幸感に満ち溢れている。

 尻を舐める方も舐める方だが、舐められてよがる方もよがる方だ……という見方も無いではないが、不思議とサラはその光景に嫌悪感を感じられなかった。

 兄の左右の人差し指と中指を突き入れられ、その不浄の穴の奥までを景太郎に曝し、腸壁を舌で丁寧に嬲られて悦ぶ義妹。
 精液と愛液のカクテルに塗れた肉柱をその穴に突き入れられ、腸内を犯され歓喜の涙すら浮かべている。

 再使用不可能なほど淫液で汚れつくされた布団の上に座らせられ、目の前で扱かれるペニスに期待の眼差しを送る可奈子。
 やがて耐えられる限界を超えた鈴口は爆ぜ、その粘ついた白濁の液体が可愛らしい顔にぶちまけられる。
 可奈子はうっとりとした顔でその陵辱を受け入れ、失禁すらしながら顔射という恵みを味わった。

 瞼を汚し、
 鼻筋を汚し、
 呆けたように開けられた咥内を満たし、
 顎を伝って喉まで汚し、
 鎖骨のへこみに溜まり、
 精液を掛けられた快感に尖る乳首の先から滴らせ、
 腹をなだらかに這い、
 無毛の恥丘を滑り、
 顔を覗かせている肉芽を嬲った。

 きゆっと自分を抱き締め、咥内の精液に自分の唾液を口を濯ぐように混ぜてそのテイストを味わい、白濁塗れにされた悦楽に酔い痴れる可奈子。
 そんな愛しい義妹を景太郎は抱き締め、己が出した精液がこびり付いているのもかまわず、その唇に自分の唇を押し当てた。
 ギリギリで飲み干された為、景太郎の舌には残味しか感じられなかったであろうが、それでも彼がどれほど可奈子を想っているかは理解が出来る。
 当然、可奈子は零れるような微笑を浮かべて、彼の抱擁に呼応してきつく彼を抱き締めてゆく。

 柔らかな胸と硬い胸に挟まれ、ぐちゃぐちゃと精液が塗り広げられてゆくが気にもならない。
 いきり立った肉柱の狂乱は治まりを見せていたが、心の欲望は限りが無いのだろう。二人はお互いの身体を弄るように抱き合い、布団の上を転げまわっていた。

 淫猥過ぎる上に倫理もクソも無い淫らな関係。
 決して赦されざる穢れきった肉の関係。

 だというのに、押入れの襖の隙間から覗いていたサラの目にも、その二人が肉欲や情欲の更に向こう側で愛し合っている事だけは不思議と理解が出来たのだった。




 ぢんぢんぢんぢんぢん……


 あのシーンが思い出され、サラの疼きは激しくなっている。

 風量を最強の3に設定し、その強い風を抱き締めた胸で味わう。

 はっきり言って寒いと感じる筈なのだが、身体が火照ってゆく速度の方が速かった。

 不安定な格好になった扇風機から伝わってくるモーターの振動は更に強くなり、妙に蒸しているサラの股間を今まで以上に刺激する。

 う゛~~~ん…………


 ビリビリと一定の振動が股間を刺激してくれるが、胸から拡がってゆく強い風がその感覚を阻害する。
 サラは知らない事であるが、心臓の真上を冷やし続ける事は体調を酷く崩してしまう危険もあった。そんな事等知る由もないが、風が快感を阻害しているのならと、極単純な理由で扇風機の後側からしがみ付くように抱え込む事にする。

 「う…あぁ……っ」

 途端に振動が強くなった。

 今さっきまでは羽根が回転している側を抱き締めていたので、羽根の回転振動が固定されていたから伝わってくる刺激は少なかったのであるが、反対側なら話は別。自由になった回転モーメントから来る振動は扇風機自体をも巻き込んで振動数を上げ、その振動を台の角で味わっている股間を直撃しているのだ。

 バイブレーターやローター等の大人の玩具で言えば弱程度の振動であるが、逆にその程度の振動であるからこそ、未発達の性感に丁度良い刺激として伝わってくる。

 サラは股間を更に角に擦り付けてその快楽を貪ろうとする。

 「ん……っっ ンんんん~~……っ
  はぁ……う……っ んん……っ」

 旧式の扇風機の台座の角が濡れ布巾で拭いたかのようにきれいになり、反対にサラの白い下着が汚れてきた。
 押し付ける力が更に強くなり、角を割れ目に突き入れん勢いで、ぐいっと力強く押し付けてしまう。

 「んぁあああっっっっ?!」


 偶然、敏感になっている小さな肉芽に直撃した。

 ぷしっ、ぷし…っ


 同時に少量ではあるが漏らしてしまう。
 潮を吹く…に近いかもしれない。

 が、俗に言う潮吹きは、その大半が勢いのある失禁であり、慣れていない男性は区別が付けられない。稀に本当に愛液を吹くものもいるのであるが。
 サラの方はどちらにも当たるかもしれない。

 何故なら、
 愛液をも漏らしていたからである。

 「あぁ……うわ、うわぁ……」

 軽いアクメではあったが、初めての事。サラの戸惑いは大きかった。

 求めて得た絶頂では無く、偶然に知ってしまった絶頂。
 連れられて行った先で突き落とされた……その感覚に近い。

 だが、落ちた…というより“堕とされた”であり、墜落してゆく感覚より“突き上げられた”という感がある。
 意識がフッと遠ざかるが、同時に縫い付けられたかのように扇風機の振動に括り付けられてもいた。

 サラは今、快楽というものを理解しつつあるのだ。


 初めて見たセックスでの可奈子の絶頂を思い出す。
 下の唇が完全に綻んでおり、涎をボタボタたらして景太郎の肉を貪っていた。

 上の唇は下の唇同様にうっすらと開かれて、やはり下同様に涎をボタボタ垂らして、まるで上と下の口の味覚が直結しているかのよう。
 上下同じく美味い美味いと表現し続けていた。

 幸せそうだった。
 そして気持ち良さそうだった。

 直に男に触られるという事はそんなにも気持ちが良いものなのか?
 今のこれよりもずっと気持ちが良い……それこそサラの想像を超えている。

 今の行為ですら意識が飛んで僅かながら恐怖を感じたのだ。しかし、本当の性行為はもっと気持ち良い事だろう。

 はぁはぁと息が荒くなり、我慢しきれなくなったのか、彼女はパンツをするすると脱いでゆく。

 相変わらず尻にはパンダ模様の痣があり、このお陰で派手な水着もオシャレな小さな下着も着けられない。

 そのサラが、シャワー浴びる時すら腰から下にスクール水着を下ろさないサラが、パンツを脱いでいた。

 「はぁ…はぁ…はぁ…はぁ……」

 ぺたん、と座り込み、足をゆるゆると広げてゆく。

 「う…っ はぁ…はぁ…はぁ…」

 これからしようとしている事は、サラにとっても理解しがたい行為。
 というより、何をしようとしているのかも解かっていない。
 無意識…とまではいかないが、尽きない快楽の興味から派生した“何か”である事は間違いない。

 膝を立てて足を開いた格好。
 要は足をM字に開いているのであるが、それがどれほどいやらしい格好になっているのかも理解できていなかった。

 「ん……」

 くち…とスリットに触れて開いてみる。
 皆から色々とレクチャーを受けているので、初潮後からはしっかりと洗っているので綺麗なものだ。

 しかし、今まで排泄以外で使用した事の無いそこはしっかりと色付きを見せており、普段は肌の色と区別のつかないそこもサーモンピンクの色彩を奏でている。
 生意気にも男を誘っているかのようにひくひくと蠢いてもいた。尤も、奥行きは余りに浅く肉襞も大した事が無い。あるのはキツイ締め付けだけであろう。

 だが、身体の柔らかいサラもそれ以上は前かがみになっても見る事ができない。
 仕方なく景太郎の私物であろう鏡の前に座り込んでから、もう一度足を開く。

 「う…わぁ……」

 真正面から見た自分のそこは、シンプルであったが異様であった。
 というより、何でこんなに複雑なのか理解し難いのだ。

 全てを挟み込む大陰唇に隠れて、小さな小陰唇がサンドイッチのレタスが間にハムを挟んでいるかの様に膣穴を隠している。
 その色付きはまだまだ鮮やかとは言い難いが、それでもサラにとってはハッキリと赤と表現してしまうだろう。
 自分がこんな生々しい物を持っているとは思いも寄らなかった事なのだから。

 くちくちと弄りまわして肉柱をくわえ込んでいた可奈子のような穴を捜す。
 鏡を見ながらの行為である所為か、たどたどしくもどかしい。妙に尿道穴を突いているのは感度の所為か。アナルの窄まりも何故か興味を引いている。

 この時期の少女の身体は、どちらかと言えば排泄器官の方が感度が強い。
 胸は成長中であるから乳腺等の関係で下手に弄ると痛む場合があるし、そうでなければくすぐったいだけ。尤も、幼い頃から擽られ続けていた少女の場合は話は別であるが。
 だから最初から排泄という快感を知っているアナル等が快楽を伝えやすいのである。
 後はクレヴァスの上…つまりは肉芽。クリトリスだ。ただ、そこは神経が成長中なので刺激が強すぎてしまい、下手に弄り続けていると神経が過敏になって将来大変な事になってしまう。

 そしてサラはアナルとクリトリス…の位置をおそるおそる弄り回していた。

 「ンんん……うわ…うわぁ……」

 快楽も大きいが驚きも大きい。
 踏み込んだ水溜りが沼であったかのような驚き、そしてその沼が底なしである事を知ったかのような恐怖がサラを襲う。

 だが、踏み止まれない。

 「んく…ンんっ んっ…んっ…あう……っっ」

 左手の人差し指をお尻の方から手を回してアナルに突きいれ、右手はクリトリスを弄る。
 肉芽の位置がはっきりとしていない為、その周辺に過ぎないのであるが、それでも存外の快感がサラの腰から突き上がる。

 とろとろと膣から白っぽい液体が滴り落ちるがそちらは気になっていない。というより、そのあさましい自分の姿が気になってそれどころでは無い。

 指をお尻の穴に突き入れて股間を弄る自分。
 以前見たエロ本だってこんないやらしい子供の写真はなかった。

 『これじゃあ変態じゃないかっ!!』

 という声が心の奥から響いてくるも、そんな声に罵られることすら気持ちよくて仕方が無い。

 最近は階段を登る時とか後からの視線を感じるようになっている。
 男子等が下からスタートの中を覗いているのだろう。
 サラはそんな男子のスケベさに辟易してはいたのであるが、ならばどうして怒らないのか? とも思う。

 ひょっとして自分は見せているのではないか?
 下着を見せて悦んでいるのではないか?
 下着を見られている事が嬉しいのではないか?

 自分はそんな変態なのでは無いか?

 そんな奇妙な想像を否定する材料もなく、尚且つ何故か否定する気も起こらず、そのような自分を見下す想像すら材料にしてサラはアナルに出し入れする指に中指を追加して腰を突き上げて乱れていた。 

 鏡に映る自分の股間が丸写しとなっている。

 汚らわしい。という言葉がピッタリな程、その少女は乱れに乱れていた。

 弄るような仕種から掻く様な行為となり、掻く行為はついに陰核を摘むという行為をとった。

 びくんっっ


 「…………っっっっっ!!!!」

 声ならぬ絶叫。
 激痛に果てし無く近い快感がサラを貫いた。

 感じた事が無い快楽は痛みに近い。何故なら、体表面には快感を感じる神経が存在しないからだ。
 感覚神経が受けた刺激が脳に届いて初めて何であるのかを振り分ける。
 “熱さ”や“冷たさ”、そして“痛い”等がこれに当たる。
 経験を通じて快感という感覚のブレンド法を脳がものにして感度を高めてゆくのだから。

 だが、サラはいきなり快感を覚え、絶頂を知った。
 という事は、サラの脳には快楽神経の下地が在ったという事である。

 言葉の使い間違いを恐れずに口にするならば、
 『才能があった』
であろう。

 きゅっきゅっと断続的なアナルの締め付けも強まり、この歳では考えられない事であるが二本の指を咥えたまま腸液を漏らしつつ腰を跳ね上げて絶頂に至ろうとしている。
 偶然にも見つけ出され、痙攣するような所作で弄り回されている肉芽も、ゆっくりと皮から頭をもたげようとしていた。

 パタリと身をそっくり返させ、仰向けでよがるサラ。
 畳に後頭部を擦り付け、涙すら浮かべて身を捩っている。

 アナルから滴る腸液が掌から零れて畳を汚し、肉穴から滴り落ちた愛液がそれに追従する。
 体温の上昇と暑さで汗の量が増え、その汗は涎と混じってやはり零れ落ちて畳を汚す。

 余りに卑猥。
 余りに淫らな性行為。
 普段の彼女を知る者は絶句して言葉を失ってしまうだろう。

 それ程、今のサラはいやらしかった。

 「んぁっ、わぁっ、くぅ……あぁああああっっっ!!」


 ガクガクと身体を震わせてスパートを迎える。
 突き入れる指の深さが増し、代わりに陰核を弄る指はもどかしさを増す。
 迫り来る感度にクリトリスをどうすれば良いのか解からなくなったのである。

 視界が白くなり、眼の奥がチカチカし出す。
 息が唐突に浅くなり、停止し、

 そして……


 「あらあら……スゴイですねー」


 脳天気過ぎる、空気を全く読んでいない声が全てを台無しにした。






 「う゛う゛う゛……ぐすぐすぐす……」
 「ホント、ごめんなさいねー」

 絶対に解かってねーだろ?! と殴りつけたい気持ちを抑え、絶頂寸前で声を掛けてきた女性…むつみと共に泣き顔のまま雑巾で畳を拭くサラ。
 余りと言えば余りのタイミングで声を掛けられたサラは、思いっきり漏らしてしまったのである。

 当然ながら管理人室の畳はぐしょぐしょ。
 絶頂を邪魔したむつみと共に拭き掃除をする破目になっていた。

 尤も、既にサラの体液でエラい事になっていたので順番と掃除し方が変わっただけ。恐らく自分独りで掃除をするのなら焦りまくって上手く行かなかった事であろう。

 大体、何時景太郎が戻ってくるかも解からない部屋でオナニーをしていたのである。
 冷静になればどれだけ拙い状況だったか思い知ってしまった。

 それでも……
 それでもサラは頭の片隅で、

 『景太郎に見つかったら……あたし、どうかされちゃてたんだろうか……?
  カナコみたいに……』


 という妙な言葉を呟いてもいたのであるが……

 閑話休題それはさておき





 掃除を終わらせて雑巾などを片付け、ベトベトになった手を洗ってから管理人室に戻って来た二人。
 勝手知ったる景太郎の部屋と言わんばかりに、断りも入れず茶を入れて無言で飲んでいた。

 ずず…
 ず~……


 茶を啜る音だけが二人の間にある。
 それだけ。
 茶請けすらない。


 この事から単に茶を飲む為だけに向かい合っているのではないとサラは感じていた。まぁ…相手がむつみなので解かったものではないが。


 「ねぇ、サラちゃん」

 ホラ来た…と思った。
 このねーちゃんは確かに天然であるし、ドジであるがタダモノでは無い。
 何だか知らない内に寮の皆の心理を理解したりと妙に勘が優れているのだ。
 だからこそ、今の事で何を言われてしまうのだろうかと戦々恐々としてしまう。

 が、

 「けーく…ううん。浦島君をオカズにしないの?」
 「は?」


 かきんっと空気が固まった。

 遠くでカー…カー…と鳴くカラスの声がまたシュールさを彩ってる。

 サラがポカンとしていたのは余りといえば余りにストレートであったが為、思考が停止してしまったからだ。
 やがて染みが広がるように言葉を脳内が受け止め、データバンクから該当する意味を引っ張り出して“理解”という反応を示す。


 -浦島君をオカズにしないの?-

 (けーたろを思って一人エッチしてなかったの?)


 これが、一番意味合いとして該当するものだろう。
 時間にして数秒。そんな事が出来るのだから人間は素晴らしい。

 「な………っっっ??!!
だ、誰がアイツの事なんか想うか―――っっ!!

 反応行動は絶叫。
 素早い否定だった。

 「あらあら。オカズの意味は知ってたんですね-」
 「うぐ……」

 やっぱり一枚上手の様である。

 「でも……じゃあどうやってシてたのかしら?」
 「ど、どうやってって………」

 物凄く不思議そうな顔をしてそう返すむつみ。
 素で疑問に思われたらサラとしてもどう返して良いやら……
 いや、それ以前に普通の少女が『どうやってオナニーしてましたか?』と問われて『それはですねぇ…』等とするりと返せまい。

 スカートの裾を弄って、 モゴモゴと口を動かすだけで反論が湧いてこなかった。

 その隙を突くかのように、むつみの口が開く。

 「因みに私はやっぱり浦島君ですよー
  お風呂場で襲われたり、なるさんに隠れて押入れで……とか、そんなシチュエーションが多いですねー」
「んなっっ?!」

 非常識な面々に慣れていたサラも流石に驚いた。
 むつみはさらりと自分の性癖を零したのである。
 オナニーを覚えてまだ二,三日のサラは、誰かを想ってスる事より、単純に『キモチイイからスる』という意味合いが多い。
 気持ちいいから誰かにしてもらいたい…という思考は無いでもないが、対象が思いつかないのだ。

 『しかし……
  けーたろを想って………スる?』

 それは魅力的なネタではないかと不覚にもサラは思ってしまった。

 「実はですねー
  浦島君は最近、寮の皆さんとエッチしてるみたいなんですよー」
 「え? あ、ああ、それは……」

 知ってる。
 可奈子とシてたし……


 「モトコさんやー キツネさんやー しのぶちゃんやー カナコさん」
 「え゛?」

 続く言葉にサラも驚いた。
 いや、何となく皆の雰囲気が変わったとは思っていたのであるが、まさか景太郎とそーゆー関係になっていたとは思いも寄らない事である。
 キツネは…兎も角として、素子や しのぶがまさか……という感が強い。まぁ、流石に口火を切ったのは素子である等とは想像もできないでろうが。

 「だ、だけどよ、何処でその情報を得たんだ?
  なるの奴が気付いてねーみたいだから、よっぼと上手く隠れてしてるんだろうし……」

 才女のクセに何処か抜けている なる。
 しかして女の勘は相変わらずで、景太郎が自分以外の女性に妙な妄想を持てはその場で殴り飛ばしているのだ。
 だというのにひなた荘内でそんな関係になって彼女にバレていないという事は、物凄く上手に事を進めているという事となる。

 そう、不自然さが欠片もない、極自然な関係で肉体関係に進んでいる程に……

 だからこそサラは納得しかねているのだ。

 「でも、ちゃんと信用できる情報ですよー」
 「だ、誰の?」
 「ええ、それはタマちゃ……ゲフゲフ」
 「は?」


 途中まで言いかけて不自然に咳をして誤魔化すむつみ。
 サラからしてみればよく解からない話である。

 だが、すっかり忘れられている事だが むつみはカメ語が理解できる。

 景太郎を慕っているタマコであるが、むつみに問われれば素直な答えてしまうのだ。
 よって電車内での行為を見た むつみがタマコに問いただすのは当然と言えよう。

 流石の素子も むつみがカメ語を理解できる事など記憶の外だった。

 「とにかく、信用ある情報です」
 「う~~ん……」

 むつみは強引に言い切って誤魔化した。
 ズズイと顔を寄せられてそう言われたサラは、何だかこの話を続けてはいけないという気になり、引っかかりはするものの情報元の事はこれ以上は聞かない事にする。

 「それでですねー サラちゃん」
 「?」

 茶碗を横に置き、ズズイと寄ってくる むつみ。

 何だろう?
 何時ものむつみなのに。
 何時もの笑顔なのに。

 何でこんなに妖しく感じてしまうんだろう?

 「あのですねー
  あの四人だけというのは……ズルイと思いませんかー?」
 「え……?」

 実際に肉体関係にいるのは、なるではなく“あの四人”。

 あの四人だけでは………ズルイ………?

 何が………?




 トクンっとサラの心臓が跳ねた。

 むつみの言葉に引き摺られるように、サラの肉体からだが言葉を受け止め、素直に反応し始めている。

 だがそれは、主に器だけの話。
 心だけは未だに理解し切れていなかった。

 まだ無理なのだろう。
 男をくわえ込むという事を理解するのは……
 肉体関係を結ぶという意味合いを理解するのは……

 それでもサラの胸の高鳴りは、今まで感じ得なかったもの。
 可奈子と景太郎の肉の繋がりを目の当たりにした時と同じであり、圧倒的に違うもの。

 何故なら、むつみの言葉を脳が理解し始めて先に思い浮かんだのは、




 裸で抱き合う自分と景太郎の姿だったのである。







[2319] Re[8]:Dotage ~妄愛~ <廿伍> (ラブひな)
Name: Pixy◆a61b4666
Date: 2007/06/20 10:10


 浦島景太郎という青年を表現するならば、どういった若者と答える事となろう―――

 まず冴えない。
 次に馬鹿で、
 更に鈍感で、
 尚且つエロガッパ。

 最後は兎も角、大体はこう答えるだろう。
 ―――本質を知らぬ者であれば。

 冴えない…というが、眼鏡を外して真面目な顔をすればかなり見栄えは良い。
 というよりは結構男前の部類である。浪人時代は単に心の余裕の無さが顔に出ていただけである。

 馬鹿というのはある意味間違ってはおるまい。
 だが、幼い頃の約束を守る為に邁進し続け、ついにそれを叶えた訳であるし、尚且つその約束は幼い頃に約束を交わした女の事一緒に東大に行くというもの。偏差値がどん底だった彼からしてみれば奇跡である。
 尤も、残り時間僅か五分で英語の試験を満点でクリアしている時点で内包する素養の一部は見て取れるのであるが。

 鈍感…という点は庇い様が無い。
 彼は女子寮の全員に好かれているのに自覚が無かった訳であるし、更に空気が読めないのだ。
 交際経験がゼロ。つまりいくら勇者の素質があっても経験値が無いレベル1という事である。無理もないと言えなくもない。

 エロガッパもどうしようもない。
 何せ浪人時代もなる等の裸エプロンを想像したくらいであるし、偶発的な事故の結果だとしても露天風呂に乱入する破目になったりしている。

 そして現在、
 寮の女性ら四人と爛れた生活を送っているというのに、
 毎日毎日、様々なシチュエーションで抱いているというのに、
 肉柱から女の臭いが途絶える日が無いというのに、
 常軌を逸する射精で、女性らを汚しまくっているというのに、

 彼は少しも性欲が萎えないでいる。

 景太郎が妄想していた世界は、ゆっくりと彼の側に歩み寄って……

 ――いや?

 

 ただ、彼の愛は懐が深いくせに入り口は狭いらしく、寮の女性たち以外の入るべき隙間が無い。
 それが彼女らにとっての救いであり、彼の愛される資格である。

 罠の無い罠。

 その矛盾した言葉が似合うのも彼だ。
 何もない安全牌だからうっかりと近寄ってしまい、気が付けば離れられなくなる。

 だからこそ美女美少女らは知らぬ間に巣に絡め獲られ心を吸い尽くされる悦楽に酔い痴れるのだ。
 認識できない心の糸によって。




 元々、露天風呂の人気もあったひなた旅館。
 であるからして、当然露天風呂は大きい。
 それでも三年近くも風呂掃除を行っている景太郎にとって、左程時間の掛かるものではなかった。

 確かに、最初の頃はヘッポコ過ぎてお話にならなかったのであるが、彼は慣れれば途轍もない腕を披露する。
 管理人としても、皆に茶化されはするが実はかなり信頼されているし、頼られてもいる。

 妹であり、現在彼の恋人の一人である可奈子がずっと彼を信頼しているのも、何だかんだで期待に答えられるからであろう。

 和菓子屋に生まれながら見栄の為とはいえプロレベルのチョコレート製作技術を持ってしまったし、ひなた荘の修繕等も建築屋レベル。
 何だかんだで料理も上手くなっているし、今は剣の腕まで持っている。

 自覚がゼロに近いのであるが、彼は期待に答えられるという素質を持っているのだ。

 ブラシも掛け終わったし、湯の中のゴミも全てとった後に循環率を上げて湯の中の汚れを流す。
 流し場周辺もちゃんと磨き、ボディシャンプー等もチェック済み。自分用を使っている娘は多いが、チェックは怠らない。
 身嗜みに大切な鏡も綺麗にし、曇り止めを塗っておく。
 一応、湯が入れ替わった後に泉質チェック(菌の量や有無を調べる)があるがそれは後。
 こんなややこしい事を彼は一時間ほどで終わらせられるのである。

 こんな事を一日二回行うのだ。
 何と言っても“寮”なのであるから、なる達にしたって分担作業でやっていた事だ。それを初期の印象の悪さから彼に全て押し付けていた。
 しかし、彼が留学していた間は分担作業を復帰させ、その時に彼が荷っていた苦労をやっと思い知ってたりする。
 彼はその苦労を一人で行っていたのだから……

 管理人に復帰した時、彼は当然の様に風呂の掃除もひなた荘内の掃除も再開していたのであるが、やはり二年半の経験が物を言い、女性らの分担作業より手早かったりする。

 フンフン♪と何やら鼻歌を歌いつつ戻ってくるのだから流石であろう。
 夏場での風呂掃除を行ったのだから当然汗だく。
 その汗は二階にある男風呂…というより、景太郎専用風呂…で流す。それがここの“決まり”である。
 まぁ、件の四人の内の誰かだけなら露天風呂でも全然OKなのであるが。

 が、階段に足をかけた瞬間、彼はある事を思い出した。

 「あ、忘れてた……」

 着替えである。
 流石に女の子だらけのここで汗だくのシャツを再使用するのは問題があるのだ。
 まぁ、件の四人の内の誰かだけなら…(以下略)

 やれやれと踵を返し、自室である管理人室の戸を開けた。

 「あ、お疲れ様ですー」
 「わぁっ!!」

 思わず仰け反ってしまう景太郎。
 戸を開けた瞬間、目の前にむつみの顔があったらそりゃあ驚くだろう。

 気を緩め切っていた彼は、心臓をドキドキさせていた。
 素子がいれば『腑抜けたか?!』と叱咤されたかもしれない。

 「む、むつみさん?」
 「ハイ、むつみちゃんですよー」

 相変わらずニコニコと微笑んでいる乙姫むつみ。
 マイペースの化身の様な女性である。

 おまけにひなた荘の隠し通路の事をちゃっかりと記憶しているので神出鬼没なのだから始末が悪い。まぁ、和風喫茶『日向』の二階に住み込みをしているので寮には食事と風呂以外では殆どやって来ないのであるが。

 「驚かさないでくださいよ! マジに心臓が止まりかけたじゃないですか!!」
 「あはは……大げさですよー
  それに、けーく…“浦島君”は不死身だから大丈夫です」
 「納得させられるような、理不尽なような……」

 やれやれトホホと腰を上げて、ニコニコ顔のむつみと共に部屋の中に入ると、そこにはちょこんと座ったサラの姿。

 「あれ? まだいたの?」
 「いちゃ悪いのかよ!!」

 言の葉の使い方がなっていないのは相変わらずだ。
 言葉足らずというものを自覚した方がよいだろう。

 「ご、ごめん! 
  そ、そういう意味じゃなくて、単にこの部屋にいたってつまらないだろう? だからさ……」
 「べ、別に良いだろ……」

 焦って取り繕う景太郎に、サラは赤くなってそっぽを向いた。
 視線を逸らされる理由が思いつかない景太郎は『ああ……傷付けちゃった……オレって……』とまた内罰的になる。
 留学しても人心理解力はヘッポコのままだ。

 「まぁまぁ、浦島君。サラちゃんだって歳なんですし……」

 と、むつみが何気なくサラを庇った。
 言葉の表の意味“だけ”は……

 ボンっと顔を真っ赤にするサラ。
 “独り遊び”の意味は伝わってなかろうが、それでも景太郎にばらされたようなもの。動揺もしようというものだ、

 むつみの方に顔を向けていたのでそれに気付かない景太郎であるが、流石にむつみの微笑みの中に奇妙な色が混ざっているのには気が付いた。

 黒い…というのではない。
 ただ、何と言うか……何かに飢えているような気がしないでもない。

 『何だろう……
  つい最近、この眼を見たような気がするのに……』

 思い出せないのだ。

 「お仕事お疲れ様です、ハイこれをどうぞ」

 そんな彼の内心の疑問を他所に、むつみは後ろ手に隠しておいた黒い液体が氷と共に満たされたグラスをお盆に乗せて差し出した。

 キン…と冷たそうに汗を浮かせているグラス。
 どう見てもアイスコーヒーである。

 「え? あ、ありがとう」

 喉もいい加減渇いていたし、カランと音を立てる氷の音がまた喉を鳴らせてくれる。
 その好意をありがたく頂戴し、手にとって冷たさを堪能しつつ既に突き刺してあるストローから中身を啜った。

 彼好みの甘さで、甘すぎず苦すぎずベストバランス。
 コーヒー豆に詳しい訳ではないが、結構いいものでは無いだろうか? と思わせるほどそれは美味しかった。

 喉越しでの味わいを優先してしまい、口の中での味わいはスルー。
 瞬く間に飲み干してしまい、ずっと見つめていた二人の視線を受けてやや気恥ずかしくなった。

 自覚はなかったがよほど喉が渇いて板のだろう。

 しかし飲み干した直後、そのコーヒー独特の複雑な苦味の中に別の苦味が混ざっている事を彼はやっと気が付いた。
 
 辛さというか、熱さというか、胃袋から食堂を通ってからリバウンドしてくるようなこの感触。
 飲めない訳ではないが、むつみやはるか、キツネからいえば下戸同然の彼でも解かる。
 これは……

 「ひ、ひょっとして……お酒入ってる?」
 「ええ」

 瞬く間に顔を赤くした景太郎の問い掛けに、むつみは素晴らしい笑顔で答えた。

 「私の秘蔵のお酒、“九十九殺し”です。
  ミスター仙人といわれる九十九さんや、その弟さんまで酔い潰す事が出来ると言われている銘酒ですー
  円空寺の和尚さんもビックリという宣伝文句がステキなんですよ」
 「な、なんてマニアックな……」

 たちまちの内に顔を真っ赤にし、へなへなと陸に揚げたクラゲの様にへたり込みんでそのまま意識を失ってしまう景太郎。
 アルコール度数が如何こうではなく、妙に酔いつぶれてしまうのだろう。この酒は。

 「お、おい……けーたろ、大丈夫かよ?」
 「ん~~……でも、これ以外となると、地上最強の生物を酔い潰すといわれてる『真・オーガ殺し』ぐらいしか……」

 物騒な酒もあったものである。

 「あのな……別に酔い潰さなくったって……」

 そう言いかけたサラの顔を、むつみは笑顔で受けた。

 「サラちゃん……
  けーくんに悪戯しちゃうんだから、意識があったら困るじゃない


 サラを堕落させた笑顔で……

 「……そっか。そうだな……」

 サラもむつみの笑顔に直様同意する。
 いや、むつみを恐れて…ではない。

 むつみの言葉を受けた瞬間、彼女の中の“何か”かぞわりと蠢いて同意を示したのだ。

 見事に酔いつぶれている景太郎に眼を向ける。

 そう、可奈子を犯し、しのぶを犯し、キツネを犯し、素子を犯している景太郎だ。

 サラはそんな暴行を行っている景太郎のブツを間近て見たいという欲望を抑えきれなくなっていたのである。

 むつみと共に景太郎を布団の上に寝かせ、胸を高鳴らせてチノパンを脱がせてゆくサラの目は、

 何時の間にか濁り切っており、子供らしい輝きは存在していなかった。





―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
                           -盲・愛-
                            File:廿伍
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 “勃起”という現象は、皆が皆して同じ様に成るものではないという。

 海綿体に血が集って硬くなり“使用”に耐えられるように成る訳で、当然ながら海綿体の形状や弾力、膨張率までが同じになる訳が無い。
 そうであれば、その大きさや形状を己のと比べて悲喜交々の悲喜劇が起こるわけが無いのである。

 女の立場からしてみれば、あまりでかいのは勘弁して欲しいものであるし、大きさより上手さの方がありがたかったりする。
 が、何故か男共は大きさは誇るくせに技術は程は疑問符が付きやがる。ちったぁこっちおんなの身になりやがれと言いたい。

 閑話休題それはさておき

 景太郎が意識を失っているのを良い事に、股間のブツを引き出して弄り回していた二人。

 眠っていても刺激を受ければ起ってしまう様で、景太郎の肉蟲は忽ちの内に棍棒の様に硬くなっていった。

 起っていない時には芋虫のようにプニプニであったが、いざ臨戦態勢となると鬼棍棒。幹の部分からムクムクと太くなってゆき、にゅっと伸びて亀頭部分が膨れ上がると、流石に二人は嬌声を上げた。

 そう、“嬌声”――

 嬉しそうだったのである。

 色が薄かった亀頭部分は艶やかさと赤黒さを湛えた素晴らしい凶器の本性を魅せ、
 幹の部分は、皮が伸びた事によってやや色合いを薄めていた。
 その肉柱の角度は恐怖を感じる程反り返っており、乙女二人の喉をぐびりと鳴らしている。

 “これ”が“男”なのだ。

 鈴口からはトロリと先走りが滴り、
 その根元にある肉袋は、恰も別の生き物のようにぐにゃああ…とゆっくり蠢く。
 幹はびくんびくんと脈動し、血が詰まっている事を否が応でも二人に伝えてくる。

 “これ”が、
 けーくんの、
 けーたろの、
 景太郎の、女を貫く肉凶器なのだ。



 はぁ、はぁ、はぁ……


 荒い吐息は誰のものなのだろう?
 ぬちゃぬちゃと零れ滴った先走りを幹に擦り付けるように撫でているのは誰の手なのだろう?
 片手を己がスカートの中に押し込んでいるのはどちらなのだろう?

 むつみか? サラか?

 いや、二人ともがそれを行っていた。

 景太郎を挟んでのシンメトリー動作。
 幹を撫で擦る。
 余った手は自分の股間を撫でる。
 顔を近付けて匂いやその脈動する器官を観察する。
 思わず顔を見合わせては眼を落す。

 二人は見事なユニゾンでもってそれを行っていた。

 違うのは体勢。
 身体の大きさの違いによる格好だ。
 むつみは大人であるから寝そべるように。サラはまだ身体が小さいからしゃがむ程度。

 そして衣服。
 いや服装はセンスの違いがあるから別として、サラの着衣。
 彼女は先程の失禁の直後なのでパンツを穿いていないのだ。

 スカートの中、サラは直に股間を撫で擦っているのである。

 くちくちくち……


 よって、妙に濡れた音がしているのもサラの側。
 剥き出しの亀裂を弄り回しているのだから当然と言えよう。

 無論、サラだけが濡れている訳では無く、むつみとてぐしょぐしょだ。

 うつ伏せになったむつみのスカートの前部分は、滲み出た蜜でじっとりと濡れており、既にその染みを畳に到着させている。
 そういった“飢え”を知ったのがここ数日内であるというのに、どういう訳かむつみは淫女が如く股を濡らして男に触れ愉しんでいるではないか。

 サラの方は男に対する欲を景太郎へとベクトル修正しているだけなのだが、むつみの方は間違いなく景太郎に欲情している。
 おかしい……と一言で括れない事もないが、彼女は昔から根底で景太郎を求めていた事もあって異常と言うほど不思議ではない。
 尤も、淫欲が上り過ぎている異常はあるが……

 やがて、くんくんと匂いを嗅ぐ行為にも二人は慣れ始め、次に味覚に興味が走った。
 二人は顔を突き合わせるようにペニスの先に舌を伸ばし、段々と顔を寄せてゆく。
 トロンとした眼がその欲情を表わしてはいるが、妙に迂闊なのは地であろう、

 ごちんっ


 「あ痛っ!」
 「あう」

 寄せ過ぎて頭突きをしてしまった。

 ちぇ…と悔しそうに顔を離し、おでこを痛そうに撫でてからもう一度顔を寄せる。


 ごちんっ


 「痛っ!」
 「あう」

 同じ結果である。
 まぁ、当然だろう。同じスピードとタイミングで同じ位置に顔を寄せればそういう結果に成る事は考えるまでもない。
 単純に気付けなかっただけであるが、そこまで焦らなくとも良いだろうという説もある。

 ユニゾンで顔を寄せていた為の失敗である事を、むつみは三度頭をぶつけてから理解した。
 彼女もなるの様に才女であるのだが、何時も何時も思考がどうも妙な転び方をしてしまう。

 その事で寮の皆によくツッコミを受けていたものである。今でもそうであるが。
 
 それでもむつみは己の欲に邁進する心が強く、いてて…とおでこを撫でつつ涙眼で睨むサラに対し、

 「私が先にいただきますから、サラちゃんは“けーくん”とキスしてみたらどうです?」

 と妥協案を差し出してきた。

 「へ? き、きき…キスぅ?
  こ、コイツとぉ??!!
 「ハイ♪」

 サラは景太郎の事はかなり好きであるが、異性への愛にはまだ届いていない。
 よってキスはまだである。
 むつみからしてみれば、上の唇にキスするより先に下の唇へのキスがファーストキスになるのは幾ら何でも……という事なのだろう。

 むつみはキス魔でもあるので、景太郎とは何度もしているし(他の寮生ともしている)、憶えてはいないが、昔はおままごとで散々やっていた気もする。
 案外、大好きな“けーくん”や“なるちゃん”としまくっていたからこそキスが好きになったのかもしれない。

 その真相は兎も角として、
 サラは肉柱を持ったまま悩んでいた。
 悩む程の事もない気もしないでもないが、“今”のサラにとっては切実である。

 ファーストキスを景太郎に贈る…というのも何か癪だ。
 確かに、間違っても彼の事が嫌いではないのであるが、何で今この時に全部プレゼントしてやらねばならないのか?
 キツイ酒を飲んでグースカ寝ている相手にキスをして、ファーストキスを捧げたと言えるのか?
 そう思うと何だかムカムカしてくる。

 「いや…あたしはこっちを先にしたい」

 ぐ…っと撫でていたペニスを掴み、むつみに先んじて顔を寄せていく。
 意趣返し…とは言い難いが、景太郎に仕返しをしたいという気は満々である。

 “お前がこんな事をさせている”
という、大義名分にすらならない理由ではあるが。

 「あらあら…♪」

 しかし、そんな心の動きをむつみは読んでいたのか、左程の驚きもなかった。

 サラは全くの無自覚ではあるが、自分から進んでフェラチオというオーラルセックスに挑もうとしている。
 性に対して異様に興味を持ち、セックスに対しての憧れを心に刻み込んでしまっている彼女は、あらゆる性行為に興味を深めてしまっているのだ。

 はぁ、はぁ、はぁ……はふ…ちゅ……


 花の蕾のように小さい唇が禍々しい肉の塊の上に接近し、うっすらと開いて先走りが滴る鈴口と触れ合った。


 瞬間、サラの腰から細い針が刺し貫かれたような刺激が走る。

 眼が大きく見開かれ、腰がびくんっと跳ねるが唇は離していない。
 理由は解からないし、その刺激の意味も解からない。
 確かに細い何かが腰から…というよりお尻とあそこの間くらい…から突き刺さり、背骨まで貫いて頭頂から抜けていった感触を感じたのである。
 とろりと粘ついた蜜を漏らしてもいるのだがそれは気付いていないようだ。

 「ん~~ サラちゃん、どうかしたの?」
 「ぷは…? い、いや何も……んちゅ…」

 サラの様子に首をかしげた むつみに問い掛けられるまでサラは唇を押し当てたまま離そうとしていなかった。
 更に問い返した後、直にまた唇を押し当てている。
 そこまでペニスに拘っている理由はやはり解からないのであるが。

 「ねぇねぇ、サラちゃん。
  けーくんの、美味しい? 美味しい?」
 「ふぇ…?」

 とんでもない事を聞いてくるものである。むつみらしいと言えなくもないが。
 サラはサラでキスをしているだけなので味を感じてはいなかった。
 言われてみればどうなんだろう…? と舌の先をそっと伸ばし、鈴口を舐めてみた。

 ずきんっと舌先に走る刺激。
 それはしょっぱさか? いや、苦味も感じた。苦しょっぱい? とでも言えば良いのか?
 おまけに妙に生臭い気もする。いや実際にはそんな事は無いのであるが、生理的な嫌悪がサラに“残っていたのかもしれない”。

 そして、サラはその最悪の味が……

 「はふ…け、けっこうイケる……んちゅ…れろれろれろ」

 “何故か”口に合ってしまった。

 ちゅ~…と鈴口からカウパーを啜り、周囲のもれろれろと舐めとる。
 幾らでも溢れ出てくる粘液に笑みすら浮かべてその苦味を堪能し、うっとりと舌を伸ばして幹までもぺろぺろと味わいだす。
 風呂に入る前なので汗がそのまま残っている為、そこはかなり蒸されていて、サラの鼻腔を刺激するが全く気にならない。

 美味い。
 そして旨いのだ。

 普通はこの歳で苦味に対して旨みをあまり感じたりはしない。
 味覚というものは辛味とか酸味とか甘味の一番刺激になりやすいものから受け入れてゆくので、苦味を美味いと受け入れるには素養が無ければ時間が掛かる。受け入れられ無いまま終わる人間もいるそうであるし。
 元々、瀬田パパと共に冒険をし、現地でサバイバル食を食べていたサラは、そこらの同年齢の子以上に苦味を受け入れられる素養があるのかもしれない。

 だが、雄のエキスを啜って旨いと感じるには幾らなんでも早すぎるのである。

 頬ずりをするように幹の上から根元まで舐め下ろし、陰毛の茂みに鼻を埋めてくんかくんかと匂いを嗅ぐ。
 男の汗の強い臭いが鼻を擽り、お世辞にも良い匂いとは言い難い香りを鼻腔いっばいに詰め込んで口から吐き出す。それ程彼の臭いが気に入ったのだ。

 強い酒でも呷ったの様に意識をどろどろにしながら雄の性器をべちゃべちゃと涎を出して味わう少女の様は、なんとも表現し難い淫靡さに満ち溢れていた。
 おまけにその相手は自分の幼馴染であり、大好きな青年。
 見ようによっては寝取られている途中とも取れなくもない光景であるが、それがまた“い”。

 大好きな幼馴染の一人である なると景太郎がセックスをしていたのならここまで興奮しなかっただろう。
 景太郎が自分を選び、身体を求めてきたとしてもここまで興奮しなかっただろう。

 素子と電車内という場でまぐわい続けていた景太郎。
 サラから聞いた可奈子の部屋でレイプごっこをしていたという景太郎。
 そしてキツネ、しのぶ……

 この女性らは景太郎に“シてもらっている”のだ。
 なんとも羨ましい話である。

 むつみは八人姉妹(五番目の“つくも”のみ男)の長女である。
 母も外見が異様に若々しく大学生でも通ってしまうほど。
 実家の方はかなり…とまではいかないが交際がオープンなところだったので、両親のそういうシーンにであった事も少なくは無い。
 単に本人の男性交際暦がゼロなだけである。

 異性関係では景太郎と同じ人生を送っていた むつみではあるが、やはり景太郎同様に興味だけは持っている。
 おまけに自身の経験は無いが目にした事は結構あるので、彼女は“見る”という行為をしている方が余計に感じてしまうらしい。

 彼女の下着は蜜を吸ってふっくらと蒸れているし、ブラの中では乳首がカチカチになってしまっている。
 強すぎる性的興奮が、この目の前の異様さによって煽られているのだ。

 サラは、撫でる事を中断して舐める事に集中している。
 今は肉袋を口に含んでもごもごと舌で味わっているようだ。それ程気に入ったのか、或いは男の汗の味わう事によって瀬田パパとの日々を思い出しているのかもしれない。
 尤も、サラは良い意味で父親離れをしているので瀬田パパを思っての行為では無いだろう。
 兎も角、今のサラはオーラルという性行為に夢中であった。

 むつみはこすこすと手を動かして景太郎の肉柱を扱き出した。
 むぅ~と妙な目でサラが睨むが、気にもしない。舐め難いのだろうか。

 ずくんずくんと掌に感じる脈動は腰から力を奪うほど興奮を高めてくる。

 皮のすぐ下でゴリゴリとした感触があるのは何だろう?
 海綿体部分に深く巻きついている血管なのかしら?
 それともこれが血が詰まった海綿体の感触なのかしら?


 等と冷静に分析している自分がいる。

 けーくん…ああ、けーくん……
 カタイ。カタイよぉ…スゴ~イ……
 先がぴくぴくしてる~…出るの? 出るの?


 等とはしゃいでいる自分もいる。

 むつみにとって景太郎は大好きな男の子“だった”。

 いや、今も大好きであるが、当時とはベクトルが全く違う。
 同じく大好き“だった”なるに譲って自分はそれで幸せで“あった”。

 大好きな子が大好きな子とくっついてシアワセになる。
 だから自分もシアワセになる。

 昔を思い出した むつみにはそれが全てだった。

 だが、景太郎はなると一対一での恋愛をしていない事を知った。
 素子とキツネ、しのぶと可奈子、その四人と肉体関係にあるのだ。

 この四人はちゃんと皆のシアワセを考えているし、誰も泣かせるつもりは無いのはここでの生活を見ていれば解かる。
 ちゃんとなるにも他の娘にも気を使っているのだから。
 そして景太郎もなるとは別のアプローチではあるが、この四人をちゃんと愛している。

 それを知った時、むつみの中に何かが誕生した。

 “それ”は絶えず形を変えながら むつみの心に浸透して行き、気が付けばむつみの心全体にまで効果を及ぼしていたのだ。

 だけど肝心のむつみが“それ”を理解していない。
 理解していないからこそ、どんな事でも出来てしまうのである。

 手の中で景太郎の肉柱がきゅう…と奇妙に緊張した。
 その意味は理解できないむつみであったが、直感が働いたか、彼女はがら空きの亀頭に顔を寄せてゆく。
 しかしその動きは緩慢の一言。よって……

 どぶっ、どぶっどぶっどぶっっ


 「きゃ」
 「んあぁっ?!」

 むつみの顔を白濁の粘液が叩く。
 噴出したそれがサラの頭に降りかかる。

 ずびゅ、ずひ、ずひ、ずひっ、


 「あ、はぁ…あう…」
 「ひゃあ…うわ、うわぁ……」

 眼を瞑ったむつみの顔を汚し、
 サラを頭からどんどん汚してゆく。

 びゅく、びゅくびゅく…………


 「はぁはぁはぁ…あむ…んちゅ…」
 「はぁ、はぁ…ぷはぁ…んむ…」

 二人の唇が同時にそっと亀頭に寄り、自分らを汚した粘液の滴りを舌で追う。

 どろりとしたそれは、
 ぬちゃぬちゃと舌に残るそれは、
 鼻腔を擽る香りのするそれは、
 髪の毛に絡みつくくせに、何だか奇妙な嬉しさをもたらしてくるそれは、

 何だかよく解からない興奮と、味わいを二人に齎せていた。

 気が付けば二人は顔を寄せ合い、お互いの顔についている精液を舐め合いだしている。

 うまい美味い旨いウマイ……なんでこんなに美味しいのだろう?

 雄のエキスだからか?
 愛しいけーくんの出したものだからか?

 しかし、その訳を深く考えられるだけの余裕も冷静さも今の二人には無い。
 少しでも多く精液を舐め取りたい。
 少しでも多くけーくんを味わいたいという欲情に支配されつくしているのだから。

 やがてサラはむつみの顔に付着していたものを綺麗に舐め取り、
 むつみはサラの髪を口に含んでこびり付いた粘液を唾液で熔かす様に舐め啜った。

 全てが終わった時、二人はハァハァと息を荒めてペタリとへたり込んでしまっている。

 後ろ手に手を付いて、天井を仰ぐようにしているのは二人とも。
 同じ格好で同じ様に息を荒げているのもやはりユニゾン。
 気が合っているというより、単にタイミングが合っているだけであるがそれでも偶然にしてはデキが良過ぎでいる。

 だが、確実にむつみの方がアドバンテージが取れるのだ。

 景太郎のいきり立ったままのそれを二人同時に見つめ、“それ”がまだまだ臨戦可能であると理解した二人であったが、むつみの方にだけ全く別の動きが起こっていた。

 『?』と首を傾げるサラの前でいそいそと服を脱ぎ出し、大きいバストを隠していたブラのホックを外す。
 サラが『げ…っ』と声を漏らすほど大きく、張りのあるバストの先端はやはり尖ったまま。オスによる蹂躙を心待ちにしているよう。
 ストッキングごとスカートを脱ぎ捨て、ぺっちょりと肌にくっ付いているショーツを邪魔物を剥ぐ様にこれまた脱ぎ捨てた。

 「う…わぁ……」

 と、サラが感嘆の声を漏らした。
 大きいバストと細い括れ。ヒップ辺りで膨らむがバランスよく曲線が保たれている。
 そこまでは何時も目にする むつみの全裸だ。

 だが、圧倒的に違う点がある。

 性的に興奮し尽くしており、途轍もない色香が彼女から放出されているのだ。

 「サラちゃん……」
 「え……?」

 熱い熱い熱い吐息。
 その吐息が混ざった声にサラは同性であるのに心が蕩けそうになってしまった。

 「それじゃあ、お先に……」

 そんなボ~~っとしているサラに一応のお断りを入れ、

 むつみは、景太郎に跨った




*************************************************************

 遅くなりました、Pixyでございます。

 いやぁ……ちょっち何時も言ってる叔父が入院なんぞしましてね。書けなかったんスよ。
 今も入院中っスけどね。
 外科のナースはぶちゃいくだからイヤン等とホザいてましたから、花の代わりにサラセニアの鉢植えを置いてやりました。反省しろ。

 ですんで、間が開くかも知れませんからご容赦ください。スミマセン。

 あ゛あ゛、それにしてもエッチさが緩んでるなぁ……
 瞑想でもしてエッチさを鍛えようかしら?

 兎に角、エッチさを取り戻す為にダイエットするなり、ムズい格ゲーなりやってストレス溜める事にします。
 という訳で、また次回に。
 ではまた……






[2319] Re[9]:Dotage ~妄愛~ <廿陸> (ラブひな)
Name: Pixy◆9aa9ef22
Date: 2007/06/25 14:33


 セックスの経験は? と問われれば、即座に、

 「えー? 私、男の人と付き合った事もありませんよー?」

 という信じ難い言葉が返ってくる。

 しかし誰がそんな戯言を信じるであろう?
 というより、誰もが信じはすまい。

 それ程に美人なのである。
 その女性は―――

 長い髪をゆったりと纏め、何時も落ち着いた笑みを浮かべてキャンパスを歩いている彼女。
 同年齢の女性たちの中で抜きん出た落ち着きを見せ、それでいて母親の様な包容力を持っている。
 生娘では在り得ない色香を放ち、しなやかな仕種からも年上の男と付き合っていたであろう過去を感じさせる。
 例え風によってスカートを捲り上げられ、下着を見られたとしても左程慌てたりしない大人の余裕。それでいてうっすらと見せる羞恥は男らの羨望の的であろう。

 彼女はそんな“大人の女”の雰囲気を持っているのだ。

 男は誰しもマザコンの気が僅かでもあるので、如何なる男も一発でKO出来るであろう。

 もう一人、大学内でも有名な美女に成瀬川なるという変わった名前の才女がいるが、そのなると件の女性は幼馴染とかで良く二人で歩いている。だから余計に目立つ。

 しかし、モテた事は無いと言う―――

 彼女はもう一人いる幼馴染の青年同様、暗い青春時代を送っていた(らしい)。
 余りにもモテないから恥ずかしいと、バレンタインデーに手作りチョコを作ってあげる相手がいる事をアピールして家族で食べていたのである。
 無論、その事の所為で彼氏がいるんだ…と男共を落胆させて告白のチャンスを自分から潰していたり、
 東大受験を何度も繰り返していたのは“そこ”で彼氏が待っているからなんだと落胆させていたりしていたとしても、マイペースにも程がある彼女が気付く由もない。
 幼馴染の青年の方はかなり素材は良いのであるが、東大受験という呪いの様なキーワードに縛られ、“今”は兎も角、思春期~青年期までの男女交際関係を全てを台無しにしていたのであるから、ある意味マシかもしれないが……

 兎も角、彼女、乙姫むつみには男性経験はおろか異性交際経験も何もかもが完全に欠けている事に間違いは無い。

 いや、“無かった”――




 サラの目の前でくぱぁ…と広げられた肉亀裂。
 糸を引き、ぽたぽたと熱い肉汁を垂らしている大人のそれだ。
 鮮烈さすら感じる紅の色が少女の目に沁みるようだ。

 「うわぁ……な、なんかフマザツな形してんなぁ……」

 当たり前であるが、如何に母と入浴していた記憶があろうと、そんなところまでまじまじと観察した事は無い。
 可奈子のセックスを覗き見してはいるものの、それは飽く迄も“覗き”であり、距離があったので紅く染まった亀裂くらいにしか見えていなかったのだ。

 だが、目の前で知り合いの女性が、
 乙姫むつみという女性が全裸になって景太郎に跨り、ヴァギナを己の指で持って繰り広げていれば否が応でもその部分が目に飛び込んでくる。

 大陰唇の周囲にはまばらに恥毛があり、どちらかと言えば濃い方では無いが愛液でベットリと肌に張り付いて広がって見え、
 その内側の小陰唇はぱくぱくと小さな唇を綻ばせて涎を垂らしている。
 それは“それ”であると視認出来るほどの大きさを持っていた肉芽は、薄皮から顔の覗かせてふるふると振るえており、サラの眼を驚きに見開かせていた。

 何と複雑な形状なのだろうか。

 ペタリと座り込んで、自分のまだ幼さが過分に残る割れ目を広げてみる。

 くちゅりと湿った音を立ててはくれるのであるが、そこはあまりに簡単なつくり。
 幾分、薄桃に染まってはいるが肌の色と左程の差も無く、奥まったところにある膣道がひくつきを見せている程度。


 これでは ――


 これでは、ペニスを迎え入れられないでは無いか。


 理由不明の強い落胆を胸から感じ、サラは座り込んだまま羨望の眼差しをむつみに送った。


 羨ましい……


 その一言のみ噛み締めながら。

 「サラちゃん、見ててね……」

 そんな彼女の気持ちを知ってか知らずか、むつみは景太郎のいきり起つペニスを片手で固定し、
 
 ずぶりと膣で亀頭に噛み付いた。

 「あぅ……っっ」
 「わ…っ」

 苦痛はゼロ。
 異物感はたっぷり。
 敏感な粘膜で味わうそれは、熱く熱く自分の下半身を内側から焙ってくる。


 けーくん、けーくん……


 幼い頃の自分。
 景太郎の事を好きだと簡単に口に出来て、
 簡単にお嫁さんになると言えたあの頃の自分……

 景太郎と同じくらい大好きになったもう一人の大切なお友達に譲ってあげた事は後悔していないのに、
 “していなかった”のに――

 何で、

 何でこの自分は泣いているんだろう………?


 けーくん、けーくぅん……
 行っちゃヤダぁ……ヤダよぉ……
 


 何を泣いてるの?
 けーく…浦島君はどこにも行かないわよ?


 うそだもん……けーくん、皆と一緒に行っちゃうんだもん……


 皆……?


 私を置いて行っちゃうんだもん……




 ああ、そっか………

 やっぱりそうなんだ。

 私は寂しかったんだ……

 なるちゃんにあげちやったから大丈夫だと思ってたけど、“皆”にもあげちゃったから……

 皆もけーくんのものになってるから…だからそれが、
 だからそれが苦しかったんだ………

 だけど大丈夫。うん。もう大丈夫だよ。

 “けーくん”は側にいてくれる。
 もう離れないでいてくれるの。

 だって……




 ぞぶ……


 「ん…く……」
 「わ…わぁ……」

 上下に抜き差ししながらゆっくりと奥へ咥え込んでゆく。
 思っていたより自分には太い肉の頭。
 首まで入れるのがやっとのこと。

 だけど味の面は最高で、下の涎の滴りは増えてゆく。
 ぐっちょぐっちょと捻りこみ、ぐぢゃぐぢゃとそれを食む。
 歯の無い口ではあるが、その代わりに段の高い肉襞はびっしりと生えている。

 それで噛み締め、絞り、撫で、舐め、全体で肉筒を味わいつつ奉仕する。それが作法なのだろう。

 ず…ずずずず………


 入ってくる。入ってくる。

 肉で繋がってゆく。

 まるで元の位置にあったそこに還って来るかのように。

 男は根底では母体回帰を夢見ている。
 だからこそセックスに酔い痴れるとある人は言う。

 そうなると自分の元へと還って来るのを待ち望む女性だっているはずだ。

 むつみはそれなのか?

 いや、還って来るのを待っているのではなく、一緒になるのをずっと待っていた……
 昔のように一塊になれる日を心の奥底で待ち望んでいたのでは無いだろうか?

 だからこそ、



 ぐぐぐ………ぶつっ…


 「あ……っっ はぁああ………っ あ…っ♪」
 「わ……は、入った……」

 やや厚みのあった粘膜を引き裂き、
 性感帯の無いはずの膣奥まで肉の凶器を侵攻させたというのに、




 むつみは、快楽以外の感覚を感じ得なかった。






 だって……
 これで私“も”けーくんのモノなんだから……





―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
                           -盲・愛-
                            File:廿陸
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――




 みっちりと膣道に詰まっている肉の柱。
 抜き差しならぬ…とまではいかないが、キツキツになっているのは確かだ。

 “上”の口で言えば『噛み締めている』がこれに相当するのだろうか?
 それほどむつみの膣内なかは締め付けが強いのだ。

 「うわ……うわうわ……」

 その生々しさにサラは驚きの声を上げるばかり。
 普段の彼女では考えられない程、狼狽している声。
 いや、混乱しているのではなく、感動しているがそれに近い。

 普段の上品さと無邪気さを伴ったむつみの様相では無く、下品さと淫蕩さを発している“今”のむつみは性交を行うのに躊躇も容赦もない。
 だから彼女は、まるで土俵入りの相撲取りのように股を広げて腰を下しているのだ。

 無論、挿入角度というものがあるのでそれなりに身体を倒すなりしなくてはならないのであるが、彼女の身体は景太郎の足に向った向きなので左程の苦労は無い。
 苦労は無いが、処女“だった”というのに騎乗位でおまけに背面である。度胸があるというか思い切りがあるというか、むつみならではと言うべきかなのだろうか?

 「ん…く……」

 何時ものにこやかな顔。
 その顔にはやはり笑顔が浮かんでいるし、心も弾んでいる。

 ただ、その理由が男を股間で食べているから…というのが異様過ぎるだけ。

 ずぢゅ……ぐぐぐ……


 「んはぁ♪ んんん……」

 もっと奥に入った。
 動かなかった理由は、括約筋と繋がっている“前”の筋肉が、“後”の筋肉と連動していた為。
 実に八の字に繋がっている筋肉は比例してしまりを強めたりするのだから。

 腰に力を入れねばならない体位なので尚更強くなったというのが理由だろう。

 だから腰から力を抜けばぞぶりずぶりと奥まで入るのは道理かもしれない。

 ごり…ごりごり……


 「ひゃっ♪ あ、は、く……ンふぅ♪」

 コツを掴められれば後は応用あるのみ。

 力を抜き、突き刺さる凶器をどんどん捻りこんでゆくのみ。

 だがその痛みは尋常では無いはず。
 否、尋常ではない。

 例えとしてはかなり悪いが、肉を割り、臓腑を抉っている様なものなのだから。

 なれど上がるは嬌声ばかり也――

 性感覚ゼロの粘膜は景太郎のブツを受け入れ、穿られ、擦られ、潤みの無い粘膜はとっくに裂けて出血していた。

 「あ、あ……血が……」
 「あら、あらあら……あはは……」

 サラの目の前でぶっとい幹に紅い糸が走ってくる。
 腰を前後に揺すって無理に捻りこんでゆくペニスによって傷付けられた粘膜がついに襞の隙間を潜り抜けて出血を促したのである。

 それをサラに見られ、思わず零れた彼女の声によってそれを知り、理解させられた むつみはその意味に酔う。
 
 出血した……という事は、処女を捧げられたという事であり、自分の初めてを彼にあげる事が出来たという事。
 つまり、彼のモノに“成れた”という事である。

 無論、そういう意味合いで景太郎のモノに成れたのなら、それは全身余す所なく捧げ尽くしている素子の方が“上”であろうが、むつみにとっては“捧げられた”という今の事実が大事なのだからそれはそれで良いのだ。

 きゅっ、きゅうぅうぅ…とリズミカルに締め付ける膣粘膜。
 アリガトウ、アリガトウと肉柱に御礼をしているよう。

 景太郎の事を大好きであるという自覚はあったものの、その心の奥から溢れ出た新たなる感情、
 “愛している”という想いに気付かされた今のむつみは、彼にどうお礼を言って良いやら想像もつかない。

 性交の内容がどう贔屓目に見ても逆レイプであるが、彼女にとっては“貰ってくれた”であるのだから。

 「んん…っ んんんんん……っ」

 景太郎の無駄肉の無い太股に手をつき、腰をすりあげる。

 「んんんんん……っっ」

 そして落す。

 ずぢゅ……ずぐぐぐ……


 またずり上げて、

 ずぢゅ、ずぶぶぶ……


 突き込む。

 彼女の“実際の快楽”は度外視だ。
 
 兎も角景太郎に快楽を差し上げたい。
 射精させてあげたい。
 気持ち良くしてあげたい。

 粘膜を削られ、
 処女痕を研磨され、
 処女宮を明け渡し、
 膣道を嬉々として略奪させている。

 感覚も激痛の方が強い。
 “以前”のむつみであれば、とっくに臨死体験に入っているであろう。

 だが、その痛みが“好い”。

 景太郎と繋がっているという生々しい事実がここにあり、景太郎の子供が手に入る可能性が股の間に突き刺さっている。
 それが後押しをして痛みを痛みとして伝えてこないのだ。

 いや、むつみ本人も激痛を受けているのは間違いないのだが、それが良いとしか感じられていないのである。
 現に、彼女のそこは既に潤いを失いつつある。

 こんなものはむつみが受けるレイプと変わらない。

 ――処女膜は初体験の後をずっと残し続ける。

 だから初体験が乱暴だと、膣内も乱雑に破瓜あけられた痕が残り、最悪、弁の様な肉襞を作る事すらあるのだ。
 無論、女性全員が上級者による初体験を迎えられるはずも無く、その多くは良い思い出の残らない痛い経験として残ってしまう。

 しかし、むつみの場合は特殊過ぎる。

 その“痛み”そのものが抗い難い快楽であり、贈り物であり、幸せの思い出として今正に焼き付いているのだ。

 しかし、それは精神だけの話であり、肉体の方の傷は深くなるだけ。
 景太郎同様にやたら傷を負って直に復活していた彼女だからこそ、不死身一歩手前の彼女だからこそ大出血に至っていないだけなのだ。

 それでも肉体の痛みは様々な反応を見せ始め、身体に負担をゆっくりと掛けてゆく。
 潤いの無い膣は男にもダメージを与えるのだから。

 だが、世界は彼女らに味方しているようだ。




 どぶっ


 「あっ♪」

 ずびゅっ、ずびゅ、ずびゅびゅっ


 「あはっ ああっ、あン♪」

 どぶっ、どぶっ、どぶっ、どぶどぶどぶ……


 「か、は、あ、は……あぁああ………」

 ぞりぞりと、ごりごりと膣を“犯させて”いた むつみの腰が緩慢になり、ついには止まる。
 性交というよりは研磨という乱雑な行為の中に、潤滑油がかなり遅れて補充され、ずるりと滑らかになった。それに合わせて動かしていた肉柱が子宮にぶち当たり、その同年齢のそれより硬い子宮口に精液をぶちまけて汚し尽くす。
 無論、自分の奥の奥まで“汚してくれた”精液を嫌う訳も無く、むつみは涙を浮かべてそれを歓喜した。

 子宮口付近の精液溜まりは既に満タン。
 一度や二度の射精をしても萎えたりしない景太郎のそれはきつい蓋となって精液を逃さない。

 「あは…妊娠しちゃう…♪ けーくんの赤ちゃんができちゃう……あはは……♪」

 全身を紅く染め、妊娠の可能性を悦んでるむつみ。
 そのセリフからも薄々解かるであろうが、今日のむつみはかなり危険な日なのだ。
 あえて膣内で出し、子供を授かりたいと思うのは幼馴染の意地なのか、或いはリードしたいという願望なのか。

 遠い目…というよりは、完全に焦点を失っている眼が空恐ろしい何かを醸し出しているのであるが、ここでそれに気付けるものは存在しない。
 サラとて、その無残な性愛に見惚れているくらいなのだから。

 何れにせよ、むつみも景太郎に膣内射精をしてもらうという快楽の虜になってしまったようである。
 素子や、しのぶ。キツネや可奈子と同様に……


 ず、ず、ずりゅりゅりゅ……


 腰が砕けたかのように力が入らなくなってはいたが、それでも足を踏ん張りがんばって腰を上げた。
 景太郎のペニスが引き抜かれてゆく事に我が身を剥がす様な悲しさを憶えつつも、血と精液によってピンクになった粘液がドロリと零しながら むつみは立ち上がる事に成功する。

 そんな様子をサラは呆然と見守り続けるのみ。
 だが、その足元は失禁と愛液でびしゃびしゃだ。

 「サラちゃん……」
 「ふぇ…?」

 そんなサラにむつみは微笑みを崩さずに歩み寄り、

 「はい…召し上がれ……」

 と、さっきまで肉柱を堪能していた自分のヴァギナをサラの直上で繰り広げた。

 濃い紅に染まった膣穴がサラのすぐ上にあり、蛇口を緩めるかのようにドロリとした粘液がその奥から溢れ出ようとしている。
 サラは、無意識にむつみのそこに喰らい付いた。

 ずず、じゅるるる…じゅるじゅる……


 どろりとした粘液が啜られてゆく音。
 喉を渇きに渇かせた砂漠の放浪者が如く溢れ出る体液を飲み啜り喉越しでその生臭い味を楽しむ。

 「ンむ…ンンンンン……んぐ…っ んっんっんっ……」
 「あは、ああっ、あっあっあっ…くぅン……♪」

 今まで絞めていたのか、サラが吸い始めた途端、むつみのそこから溢れ出る粘液の量は増加し、サラの口中全てを満たし尽くす。
 だがサラも負けてはいない。
 普段、カオラ等と競って食事を食べている彼女は、ハムスターが頬袋に食料を詰め込むように精液を頬に溜めて喉を鳴らして胃袋へと送り込む。
 直接ペニスから啜っている訳でもなく、それ以前に今日の今日まで精液なんぞ飲んだ事の無いサラ。
 おまけに今啜っているのは むつみの破瓜血と景太郎の精液のカクテルだ。知識的にそれが何であるか理解している筈であるし、言い方はかなり悪いが“ばっちいシロモノ”である。

 にも拘らずサラは口を離す気が起きない。
 啜る喉を止められない。
 味わう舌を責められない。

 先程のが初精飲であり、今回に至っては汚れたむつみの膣に対する初クンニリングスだ。
 だがそれでも愉しくて嬉しいと感じてしまう。

 ――サラは、既にコワレテいるのかもしれない……

 喉越しのテイストを、小さなゲップが出るまで味わい、もう精液の残味を感じなくなるとサラはやっと むつみの股間から口を離した。
 つつ…と唾液と粘液の混ざった銀の橋が未練たらしくサラの唇とむつみの下の唇とを繋いでいたが直に切れ、一先ずの行為の終了を伝える。

 かなり強めに吸った所為か、むつみの襞がはみ出しているが二人とも全く気にしていない。
 いやそれ以前の話で、いやらしさを増した性器に、むつみは誇りをサラは羨望を感じていたのだ。

 うふふ……と、むつみは以前と同様であり、以前と全く違う淫蕩な笑みを漏らしてサラに濡れた眼差しを送り、

 「ね……次はサラちゃんですよー」

 と、彼女の手を取り、景太郎の側へと寄せてゆく。

 「え……?
  あ、ああ…そっか……そうだよな……」

 サラは精臭にすっかり酔っているのか反意の影一つ見せない。
 いや、それどころか自分から進んで景太郎に跨ろうとしているではないか。

 ポタポタと生意気にも大量の愛液を垂らして景太郎の腹に小さな水溜りを作りつつ、出した精液によってぬらぬらになったままの肉柱を手にし、自分に導こうとした。

 ああ、可愛いサラちゃんの“そこ”が……

 小さな小さなサラちゃんの“そこ”が……

 けーくんの凶悪なあれで無茶苦茶にされちゃうのね……


 むつみの眼差しがどろりと濁る。
 浮かぶのは陵辱の限りを尽くされたサラの姿。
 全身余す所無く汚しつくされ、股間は前も後も血を流し、口からも鼻の穴からも白濁の粘液を零し、
 瞳は輝きを失って虚ろ。

 そんな幸福の絶頂の中にいるサラを想像しただけで、羨ましさに身が捩れそうだった。

 嗚呼、どうして自分は幼い頃の景太郎に肉奴隷にしてもらわなかったのか?

 嗚呼、せめて沖縄に来た時になると一緒に陵辱してくれれば良かったのに……

 嗚呼、泣いて謝ってもけーくんに余す所無く犯されて意識を失い、人権を奪われて性欲解消の穴にされたらどんなに……
 どんなに幸せだっただろう……

 うらやましいなぁ……サラちゃん……

 こんな時から酷い目に遭わせてもらえるんだから………


 在ってはならない幸せ。
 在ってはならない幸福なビジョン。
 だが今までのむつみでは考えられない程の被虐的な光景が彼女の頭の中を満たし尽くしてゆく。

 自分が幸せなのだからサラも幸せ…というのは、何処をどう考えてもおかしいのだ。
 おかしいのであるが……今のむつみはそんな事すら思いもつかないのである。


 サラの手が添えられ、ワレメに押し当てられる肉柱。
 腰をぐりぐりとねじり、少しでも奥へ、無理にでも奥へと捻り込んで行こうとする。

 嗚呼、無理。
 無理なのよサラちゃん……

 でも、入れるのね?
 無理にでも入れるのよね?
 コワレちゃうのよ? オンナノコをコワしちゃうの……

 もう、けーくんしか相手にしてくれないの。

 そう、素晴らしいの。

 けーくんだけの肉になるの……

 …さぁ…さぁ……さぁ!!


 むつみの目の前で景太郎のペニスという肉の凶器が、幼い性器が裂こうとした正にその瞬間、

「そこまでですっ!!!」

 強い衝撃が二人を吹き飛ばし、性交によって朦朧としていた むつみの意識は一瞬で刈り取られ、サラと共に仲良く折り重なったのであった。






  -緊急対策会議-

 ひなた荘の住人は何時も何かの騒ぎの種を撒く。
 良きにつけ悪しきにつけ、その騒ぎを“どうにかする(※注:“治める”等のように解決に向わないのが常だから)”為の会談は常にもたれているのだ。

 そしてその場所は何時も同じ。
 何故だか不明であるが、皆の生活の場である本館南の屋根裏部屋であった。

 そこに、可奈子を始めとした四人と、ロープで雁字搦めにされている二つの影…むつみとサラの姿。

 蝋燭一本だけの灯りの中であるが、それでも全員の顔が見渡せる。
 可奈子よりやや遅れて帰宅したキツネと共に学校から帰ったばかりの しのぶと、予備校帰りの素子を引き摺るように連れ込みここで顔を突き合わせている。

 「これは……困った事になりました」
 「せやなぁ……むつみは兎も角、サラまでおかしゅうなるやなんてな」

 可奈子によって危機一髪だったサラは何とか膣内裂傷は免れていた。
 だが、本当に危なかったのだ。前に可奈子らが言っていた様に、サラの性器はまだ小さい。そして“今”の景太郎のブツはかなの大きいのだ。
 しのぶらの様に薬の力でドロドロにしていたとしても、まだ指二本分ほどの余裕が無いのだ。
 これで無理に入れたりすれば間違いなく裂けてしまっていたであろう。

 “だから”奇跡的に可奈子が間に合ったのかもしれない。
 そうなるとここでの生活が終焉を迎えるのだから……

 「それは……多分、カナコと浦島先輩の淫気をまともに浴びからでしょう」

 腕を組んで黙って考えていた素子が一応の仮説を口にする。

 幸い、サラは先に気が付いていたから一応の話を聞く事が出来ていた。尤も、直にまた眠らせたのであるが……
  
 素子の台詞は一見すれば可奈子を責めているような意見であるが、客観的に感じた事実を述べたまで。
 そしてそれはここの四人は良く理解している。

 信頼はそこまで積み重ねているのだ。

 「私と景太郎の淫気を吸っていたとすればこれどころじゃない筈ですし、それはむつみさんが喰らったようですしね」

 ちらりと眼をむつみに送れば、何だか幸せそうに気絶している彼女の姿。
 簀巻き状態なのが笑いを誘うが今はそれどころでは無い。

 迂闊でした……と素子が頭を垂れる。

 殆ど気にもしていなかったのであるが、むつみはカメ語が解かる女だ。
 景太郎の冗談か何かだと思っていたのであるが、縛り付けたむつみの話を聞く事によってそれを理解し、素子らは世の不可思議を思い知らされていたりする。
 まぁ、いきなり半淫魔化した自分が居る訳であるから左程の不思議は感じなかったのであるが。
 これは余談だが、今の素子はカメ恐怖症がなくなっているのでタマコの頭を撫でることも出来たりもする。

 「で、でも、どうします? 
  むつみさんは先輩のお部屋で、そ、その…し、しちゃったんでしょう?
  だったら例の別館の件は……」

 あの魔力は効くのか? という事をしのぶは心配しているようだ。
 気が急いているのが丸解かりのM校の制服のままである。

 「ああ、それは全く関係ありませんよ。
  要はあそこで一晩あかせば良いだけですから……
  ただ、それを初夜として魔力の結束力を強めるという策があったんですけどね……」

 可奈子にしても、まさか部屋で直に逆レイプするとは、これっぽっちも思っていなかったのであるが。

 だが、そんな些細な事より大問題なのが、

 「それよりも むつみさんの症状ですよね? これは……」

 と、素子が未だ幸せそうに意識を失っているむつみを見つめる。

 ときおりビクンビクンと痙攣しているのは胎内に残る残留精液が彼女に快感を与えている為。
 幾ら夏場とは言っても、けっこう涼しいひなた市で裸のままでいるというのに身体は火照ったままで乳首も立ちっぱなし。
 漂う香りは濃厚な盛り付いた女の蜜のそれ。

 素子なら解かる。
 いや、“今”の素子だからこそ他の誰よりも理解できる症状だった。

 「今日は月齢にして満月です。ですから今晩は私の番だった訳ですが……
  むつみさんに私と同じ禁断症状が出ているのは……」

 どういう事なのだろうか?

 素子は“こう”ならないように殆ど毎日景太郎とまぐわっている。

 半淫魔化している彼女の身体は景太郎の精気が主食と言えなくもない。だから彼と性行為をする事によって身も心も満たされて生活が可能なのである。
 無論、皆もそれを理解しているから誰も不満を感じる事もないし、訴える事もない。

 “皆で”幸せになる為に、それはそれは頭を使ったローテーションを組んでいるからだ。

 例え朝の修業時に素子と景太郎がどれだけまぐわったとしても、一晩一緒に抱き合って寝るという多幸感の前では嫉妬など霞の様なもの。
 素子にしても押さえ切れない時以外は夜は皆の時間しているのでやはり差別感もない。

 そんな風に文句が出ないのも、前の満月時に素子が一度皆に禁断症状時の自分を曝したからだ。

 意識が完全に食い尽くされ、淫行以外に頭が回らない。
 やる事成す事全てが淫行に繋がっており、自分の快楽は他人の快楽だと“信じ込んで”無関係な人間を巻き込もうとする。

 素子自身は憶えていないのであるが、キツネらのいう事には、はるかや実姉の鶴子。それどころかカオラとしのぶ共通の友人である太地あき子や、果ては なるの義妹であるメイすら巻き込もうとしたそうなのだ。

 要は、都合の良い方向を勝手に組み立てて快楽を貪ろうとした肉欲に付随した本能的行動らしい。

 ――それを むつみが起こしている……

 これは一体どういう事なのであろうか?

 思い当たる点が無い為、皆が皆して首を捻っていた。

 だが、彼女らは知らない事であるが、実はむつみはかなり前から淫気を浴びているのだ。

 大体、むつみは魂が抜けやすかった特異な虚弱体質であったし、幼い心を内包したまま大人になっている部分もある。
 そういう娘はとりわけのだ。

 大人の未通女おぼこほど術や呪いに掛かり易いのは感受性が強いからだそうで、当然ながらむつみは感受性が強かったからかなりあっさりとそれを浴びてしまっていたのだろう。

 尚且つ天然の運の良さと悪さとをむつみは併せ持っている。
 素子と景太郎が使用直後に温泉に入ったり、しのぶと景太郎が使用直後の台所で使コップで飲み物を飲んだり、可奈子と景太郎が座ってシた直後の縁側で昼寝したり、キツネを景太郎が犯す為に使用した直後のクッションに顔を埋めて居眠りしたり…と、淫気が残る所をピンポイントで選んでいるかのよう。
 だから しのぶや可奈子、そしてサラ以上に淫気を浴び、尚且つ訳が解からない内に受け入れてしまっていたのである。

 問題は、むつみが肉体の飢えを全く自覚できていなかった事だ。

 もっと早く、はっきり自覚できていれば何かしらの手はあったであろうが、自覚したのが素子とのまぐわいを目にした時。
 それは余りに遅すぎた。

 だから暴走してサラを巻き込んだのだろう。
 そしてサラもむつみの歪みに巻き込まれ、景太郎への愛情より飢えを優先させてしまったのだろう。

 だが、その理由を彼女らが理解できたとしても遅きに遅し。
 何れにせよ、今はもう打てる手段は一つしかないのだ。

 「仕方ありませんね……」

 素子は溜息を一つ。

 その言葉の意味を知る皆も釣られるように溜息を吐いた。

 「今晩、この二人を巻き込む事にします……
  不本意なのですが……」

 自分と景太郎の二人だけの密事に割り込ませるのが嫌なのか、

 サラという未成年過ぎる少女を巻き込むのが不本意なのか……

 流石に残る三人には計り知得ない事であった。




 「う~~ん……けーくぅん……」

 素子らの悩みなど知る由も無く、

 むつみは えへら~と笑いながら寝言を漏らしていた。

 夢の中で景太郎に調教でもされているのだろう、その乳首を不自然なまでに突き出させ、太股をベットリと汚しながら……

 四人はそんなむつみを見、はぁ……と深く溜息を吐いた。




 兎も角、全ては……

 全ては今夜なのだ――






[2319] Re[10]:Dotage ~妄愛~ <廿漆> (ラブひな)
Name: Pixy◆1f42d88e
Date: 2007/06/29 21:18


 夕食は滞りなく何時もの様に進み、何時もの様に終わった。

 ただ、むつみが席にない事と、サラの様子が変だった事を除けば正に何時も通り。

 ニラたっぷり餃子とか、ニンニク玉(練り潰した大蒜を揚げた物)とか、レバニラとか、妙に精がつくものばかりだったのも夏バテ防止対策と言われればそれまでであるし、

 「これで無駄に元気になった景太郎に襲われたらどうするの?」

 等と言う なるに対して、

 「お兄ちゃんだったら願ったり叶ったりです」

 とか、

 「せ、先輩になら……(ぽっ)」

 とか、

 「ふっふ~ん…けーたろと熱い夜か…ええなぁ…(ニヤリ)」

 とか言う言葉が漏れたとしても、

 「ちょっ、ちょっと!! 
ナニ言ってんのよ!! も―――っっ!!!」

「あ゛―――っっ!! 何でオレが―――っっ!!」

 と、なるが何時もの様に逆ギレして景太郎が代わりとばかりにぶん殴られるのみ。
 景太郎にとっては超迷惑であろうが、何時もの光景だ。

 ただ、その答えた女性陣のセリフが内心そのままである事と、何も答えずに黙々と食事を続けていた三人の女性の内、素子とサラの心は別の場所に飛んでいる事を別とすれば……であるが。

 『あぁ……“景太郎”先輩……』

 という熱い吐息を吐く素子、

 『あたし……しちゃうのかなぁ……』

 と、表面上は戸惑いを見せ、内心は期待に満ち溢れているサラ。

 ひなた荘という場は、外見とは裏腹に段々と溶け爛れた空間へと変貌しつつあった。

 なるとカオラのみがその空気に染まらずにおり、以前のままを保ち続けてはいるのであるが、その内面はどうだか知れたものではない。
 何せ彼女らにしても女であるし、自分にとっての景太郎という存在は男としてかなり意識している。

 なるは既に彼に傾倒し切っているのを自覚してはいるのであるが、カオラの方はかなり微妙だ。

 彼女はブラコンからスタートしているので、その気持ちの移り変わりに気付いていない。
 尚且つ、落ち着いた自分と普段の自分が心の中でハッキリと区分されているので、普段の彼女はそれに気付けないのだ。

 もし、結婚させられるとしたら誰が良い?

 そう問われればカオラは間髪入れずけーたろと言うだろう。
 高校二年。肉体生理状態も大人になりつつある彼女は、景太郎になら抱かれる事を不快に思わない。

 そしてその事に全く気付かず、気付けず、それでいて拙いアプローチだけは続けている。

 無自覚なアプローチは恋の為か、単なる“馴れ”か。

 その事の気付けない少女は女に一歩も踏み出せず元服の時を迎えようとしていた。




 夜が更けた―――

 その時が来た。

 胸の高鳴りを押さえられないまま、その時がやって来た。

 少女は何時もの様に隠し通路に入り、
 何時もより のそのそと移動し、
 何時もと違う場所に到達した。

 そこは見慣れない空間。

 来た事もない場所。

 満月の光が差すその館の一室に、既に一人の女性が横たわっていた。

 夥しい体液と破瓜血を染み込ませた敷布団に純白の敷布をかけ、その上にメインディシュ宜しく横たわっている女性。

 浴衣の様な寝間着を身に纏い、それでいて前を大きく広げて胸も立っている乳首も、腹も、恥毛も、そしてぬらりと艶を見せている肉亀裂をも曝しているその人は乙姫むつみ。
 人目を忍んでここに運ばれ、景太郎がやって来るという言葉を信じて寝そべって待っているのだ。

 そんな彼女の様子にホッとしたような、焦ったような複雑な顔をしつつ、サラは這うように近付いてゆく。

 「なぁ…」

 力なく問う意味は己でも解せず、
 それでも問い掛けを留める術は思いつかず、

 サラはどうしても彼女に言葉でもって問い掛けたい気持ちを抑え切れなかった。

 「なぁ…むつみは…どうしてけーたろとヤったんだ……」

 さり気無い問い掛けのようであり、その実は心の奥から必死に搾り出した言葉。

 誰でもいいっ!! してほしいっ!!!

 という願望は留まりを見せてくれない。
 女であれば無茶苦茶にされたいっという願望をどこかで持つ。しかし、実行に移したいと思うかどうかは別問題なのだ。

 むつみは普段大人しかったくせに動けば過激極まりなかった。
 何せイキナリ景太郎を逆レイプしたのだから。

 サラの方は今は落ち着いている。

 いや、景太郎と“してしまう”可能性を無くす気は更々無いのであるが、あの時の様に直に突き入れたいという気は流石に無くなっていた。

 だから期待はしていても戸惑いは大きくなり続けている。

 そんな自分が怖いから、
 そんな自分が信じられないから、サラは誰かに聞いて欲しかったのだ。

 素子は論外、可奈子もだ。
 二人は堕落するという事を幸福だと認識してしまっている。

 しのぶもキツネも駄目。
 二人とも飼われる事を至福だと自分に焼き付けている。

 だから、
 だからせめて“あの時”から側にいる むつみに聞きたかったのだ。

 どうして彼なのか…と。

 「サラちゃん……」
 「ん…?」

 その顔に月光を浴び、
 淫靡さより神秘さの方を強めたむつみが優しげに言葉を紡ぐ。

 「サラちゃんは、けーくん以外の人に抱き締めてもらいたい……?」
 「え……?」
 「どうなの? ちょっと想像してみて……」

 様々な色男のパターンを生み出し、それに抱かれている自分をはめ込んで見る。
 カッコイイ、頼れる、金持ち、頭いいetc...
 だがどうもしっくりと来ない。

 一番憧れている男を想像して見る。

 そう、瀬田パパだ。
 だが、パパと呼んでいるからこそ、イメージは親子の抱擁以外のものにはなってくれない。

 それに彼の心にはママか はるかがいる。
 いや、それ以前に、彼の心にはこの二人以外の女性像が無いのだ。サラはその事を見た目の年齢より理解しているのだから出来よう筈もない。

 だが……

 だが、不思議な事に、景太郎の場合はしっくりと治まってしまう。

 親子は無論、兄妹としてのイメージも合致しない。
 歳の離れた恋人のような画像となり、自分は頬を染めてその場面に納まっている。
 彼は優しげにサラの頬にキスをし、自分は擽ったそうにそれを受けて微笑んでいる。

 「あ―――

 とサラは声を出した。

 気付いたのだ。むつみが何を言わんとしていたかを。

 サラの脳裏に浮かぶ画像は確かに空想,妄想の類だ。
 だからこそ、自分の想いが画像となって現れてくる。

 サラは、その画像のおける景太郎を、自分の恋人の形に作り上げていた事を今やっと自覚したのである。
 つまり、全くの無自覚ではあったが、サラは景太郎の事を一人の男として接し、一人の男として自分に接して欲しがっていたのだろう。

 「そっか……あたしは……」
 「うん」

 子供らしからぬ苦笑。
 子供らしからぬ濡れた笑み。
 目にせずとも伝わってくる空気でその事を理解した むつみはただ微笑みかけるのみ。

 「あたしは誰でもいいんじゃなくて、けーたろに無茶苦茶にされたがってたんだ……」

 サラは自分の薄い胸をぎゅっと握り締めた。

 未だ発達中の乳腺は、初潮と共に成長を早めて彼女に胸に硬いしこりの痛みを伝えている。
 それでもサラは痛みすら受け入れてその痛みを堪能している。

 これは成長の証。
 これは成長中という証。

 男を咥え込み、堪能させる女の身体の証明。

 それを悟ったサラは歓喜の笑みを表わした。

 むつみには逆光となって見えなかったであろうが、その笑顔は誰も目にした事も無い大人のそれ。
 雄に媚びて生きる牝の“それ”そのものだった。

 淫等だというのではない。
 淫猥だというのでもない。
 淫乱というのは間違いだ。

 何故ならそれが、
 それが彼女という存在の“生態”なのだから……






 サラは今、優しいの空気の中で完全に道を踏み外した




―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
                           -盲・愛-
                            File:廿漆
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 「んふぅ…んちゅ…けいた…ろ……ンんん……」
 「ちゅ、ちゅ、ちゅ、んんんんんん…も、モトコちゃ…ん……」

 隠し通路を通り、初夜に使っている館に入ると素子は何時も以上に情熱的に景太郎に挑んできた。

 景太郎の方も慣れたもので、熊の様にしがみ付いて来る素子の懐の奥に先に飛び込み、最初に強く抱き締めて自分の胸の間で素子の胸を押し潰しつつ接吻くちづけを贈る。
 相手が景太郎であれば乱暴にされるのも由とする素子であったが、それよりは単に激しく求められる方を好む。
 流石にその事を理解している景太郎は、掌を彼女の背中に絡める暇も惜しんで、じっとしているのがもどかしかったと言わんばかりにその細い腰を撫で回していた。

 激しく舌を絡めつつ唾液を交換。
 こくんこくんと喉を鳴らしてお互いのねっとりとした液体を味わい、熱い熱い舌を咥内全てで堪能する。
 肉汁滴るステーキ、大トロ等、表現は様々であるが二人とも超高級料理は食した事が無いのでそんな表現は出てこない。

 しかし食べていたとしても思いつくかどうか……

 前述の表現は、ステーキの方は舌の弾力と肉汁が詰まっているかの様に旨く感じるという事で、大トロの方は舌で蕩けるという意味を指す。大トロの旨みは所謂“サシ”が舌の上でどれだけ蕩けるか…であるからだ。

 だが二人が今感じている快感はそんな物では無い。
 

 二人の舌は全く別の生き物の様で、二人の意識を受け取ったかのようにお互いの喉奥を目指して進行しようとする。
 それを阻害しているのがお互いの舌の感触だ。
 表面のざらざらやぬるぬるした感触、反して舌の裏のヌラリとした感触がお互いの舌を押し留め、絡み合ってもっと感触を貪ろうとする。
 感触を貪れば唾液が溢れ、それを追いかければ感触が離れてしまう。そのジレンマの中でのたうっているのはまるで舌の意思の様。

 ナメクジの絡み合いの様な、或いは交尾のようなその行為から伝わってくる“味”。
 それは二人に絶頂に果てし無く近い快感を齎しているのだ。

 素子にとって、
 否、この世で素子が感ずる事の出来得る、“現時点での”性的オルガスムスに直結する味の頂点。
 それは流石に食物では表現し切れまい。

 何せ、既に彼女の味蕾は

 素子のノースリーブの胸元を、
 景太郎のTシャツの胸元を、
 ボタボタと零れ落ちる唾液のカクテルで濡らし、
 布地を汚し、染みをつけてからやっと二人はトロンとした目で唇を離した。

 素子の唇はかき回された余韻からか唾液のあぶくが付いている。
 下品極まりないが現在の景太郎からしてみればそれすらも魅力的。素子の唇を舌で拭って彼女を照れさせた。

 あれだけ淫猥な行為をしているというのに、逆に軽いキス等では乙女のように照れる。そのギャップが何ともいえない。
 景太郎は顔中にキスの雨を降らせて素子を虐め、愛した。

 「ん、あ、や、ンん、くぅん…う、“浦島”先ぱ…あ、ぅん……」

 呼び方が変わるのは愛情が勝るからか。
 性交に集中すれば“景太郎”と呼ぶくせに、単に睦み合っているだけならば以前の呼び方が出てくる。それもまた堪らない。

 「モトコちゃん…ンんん…」
 「は、あぁ……あふ…んっんっんっ……」

 やがて顔を堪能しきった彼は、再び素子の唇を蹂躙する。
 無論、彼女の唇も彼だけのものなので抵抗はゼロだ。
 流し込まれる唾液は甘露。
 押し入ってくる舌は彼女の咥内の本来の主。何をどう嫌がれと言うのだろう?

 唇を犯しつつ彼の手はついに彼女の胸に触れだした。

 びくんっと一瞬眼が開きかけるが、言うまでもなくそれは強い歓喜の為。刹那の間に閉じられて感触に集中し始めた。

 ぐにゅ、ぐにに…と我が物顔で胸を揉みまくる男の手。
 もしこれが景太郎の手でなければ触れる直前に素子の剣によって四散し、血の飛沫と化していた事であろう。
 だがこの手の持ち主は彼女の主。彼女の胸の所有者だ。快楽こそあれ嫌悪など浮かぶ筈も無い。

 景太郎の手によって揉みほぐされ、以前より大きさを増した乳房は、彼に快楽を与える為の肉の球。
 ぷっくりと突き出た乳首も、彼に吸われ、噛まれる事によってやはり大きくなっていた。
 無論、彼の子を身篭ればそれは乳を与える大切な器官となるのだが、今はまだ彼を悦ばせる為だけの器官。
 以前より赤みと感度を増した乳首も彼の贈り物と言えよう。

 ノースリーブの上から甘噛みされた乳首は既にピンっと突き出ており、唾液が染みた事によってその色を浮き立たせていた。

 れろ…れろれろれろ……ぷちゅ…にちゅ、ちゅ、ちゅ、れろん……


 「や、やぁ、ひんっ、あ、はぁ、ンふぅっ、んっ、んっ、やンっ、あぁ……っっ」

 れろれろと舌先でこねくり回すと、子犬の様な声を漏らして悶える。
 それが堪らない景太郎は、甘噛みして引っ張り、先端だけを舌先で転がしてなおも虐める。

 「ひゃんっっ」

 腰を若鮎の様に反らせて悶えようとするが、その所為で乳首か更に引っ張られ、その強い刺激で一瞬にして軽いアクメを迎えてしまった。

 景太郎としてはかなり不完全燃焼だ。
 まだ右の乳首を噛んだけなのだから。

 彼は彼女をコロンと廊下に押し倒し、ノースリーブを思い切り捲り上げて彼女の胸を月下に曝した。

 ぶるんっとまろび出る白い双球。
 この世で唯一、景太郎只一人が堪能できる柔らかい肉の球だ。

 搗き立ての餅のようなそれに手をかけると、指がズブリとめり込んでゆく。
 驚くべき柔らかさ。
 そして、上を向いても殆ど形を変えない張り。女性の胸としては最高レベルでは無いだろうか?

 「あぁ……っっ ンんん…ふぅ……」

 ぐにぐにと揉みしだくと素子が腰を揺する。
 景太郎という男に跨られ、女の象徴である胸を好い様に玩ばれて快感で悶えている。

 景太郎はその素子の乳房の柔らかさに唾液が滴りそうだった。

 搗き立ての餅の柔らかさがあるというのに、乳首の辺りだけがゴムの様に硬い。
 その周辺を揉みしだくとやはり蕩けた声が素子の口から零れ落ちる。

 景太郎は耳から入ってくる素子の喘ぎに射精してしまいそうになった。

 名残惜しくその柔らかい手触りから手を離し、窮屈だと訴え続けているジーンズのジッパーを引き下ろした。

 ビンッ!! と音がしそうな程張り詰めたそれが、トランクスを押し上げてジッパーの奥から突き出てくる。
 その様子を目にし、素子の目はより一層濡れた。

 硬く大きく腫れた肉のカサに引っかかる布切れトランクスに手間取りながらも何とかそれを引き出す事に成功。
 素子が待ち焦がれた肉の柱がその姿を曝したのだった。

 月の灯りで先端の艶やかさが映える。
 ぬたりとした亀頭の鈴口からはやはり生々しい先走りの香り。

 女を陵辱する愛おしい彼の肉凶器。

 それが今、自分に向いてくれている………っっ!!

 余りの嬉しさに感極まって眼が潤んでしまう。

 景太郎は彼女から発せられる淫気が強まった事を知った。
 初めて彼女とまぐわってから今日まで、何度も浴びたそれだ。
 変な言い方になるが、彼はあらゆる攻撃に慣れるという特殊能力を持っている。だからこそ神鳴流奥義である斬岩剣を“身体で覚える”という無茶な事ができたのだ。

 そして、彼は彼女の淫気にも慣れつつあった。

 無論、“慣れる”とは言っても、抵抗するという意味では無い。
 彼女の“やまい”の事は了解しているし、“治療の為にセックスをする”というのは自分の口実である事を完全に理解もしている。でなければキツネを犯したり、義妹を抱いたり、可愛い後輩を抱いたりはすまい。

 彼は淫気を感じた時、時と場合を鑑みてから、理性を他所に追いやって本能を解放する事を自分の意思で行えるようになって来ているのだ。

 そして今、景太郎は自分の意思で本能へと突き進もうとしていた。
 それは無論、素子の為に……

 ぐにゅ……うぅっっ


 「ひゃン…っ 熱…っ!」

 この二年で確実に大きさを増した素子の胸の間に、そのぶっとい肉の柱が押し入って来た。

 ぎんぎんに反り返ったペニスが、素子の胸元にカウパーを滴らせつつ柔肉に挟まれて上下に動いている。

 やや俯いた素子には、胸の間から現れたり引っ込んだりする赤黒い亀頭の先が見え、突き出る時は僅かにカウパーを素子に飛沫かせてくれた。

 “何時も”は素子が胸で挟んで御奉仕する行為であるが、今は景太郎が堪能している時、
 だから素子は手をだらんと力なく横たわらせてされるがままにしておいた。

 それにこの方がレイプされている様で良い。

 景太郎という男により、何の力も無い只の少女である素子じぶんは攫われて犯される。何とも胸の躍るシチュエーションでは無いか。
 唇を犯され、次に胸を玩ばれる。

 嗚呼、精液をかけられてしまうのだろうか?
 全身を白濁色に染められて帰れない肉体からだにされてしまうのだろうか?
 嗚呼、犯され、子供を孕まされ、産まされて娘共々性玩具されてしまうのだろうか?

 余りにインモラルな想像に心が震え、且つ心が“奮えた”。

 精神のチャンネルは目の前で胸を玩んでいる愛しい想い人を浦島,景太郎と両方の名で呼んでいる。
 つまり、そうされる事すらも愛として受け取っているのだ。

 ずびゅっ、


 「あぁ…っっ♪」

 噴出す白濁の飛沫。
 射精のタイミングを知り尽くしている素子は、鈴口が爆ぜる直前には口を開けていた。

 ずひっ、ずひっ、ずひっっ


 「あ、ンんんっ、んくっ、んん~~~~っっ♪」

 顔、頬、頭をベットリと汚し、口に入って来たそれは下顎の上に溜めてゆく。
 たちまち凄まじい唾液がそれを薄めて顎から滴るが気にもならない。

 ぶびゅっ、ぶぶ…っ、ぶびゅっ、ぶびゅっ、びゅっ、びゅ…っ


 「ほわぁ……おぉおお……」

 口を開けたままなので声が出せない。
 それでも感極まった呻きが出るのは仕方の無いことか。

 胸の谷間に吹き出た精液が心臓に感触を直で伝えたのだ。
 素子からしてみれば心臓に直接精液を掛けてくれたようなもの。快楽でどうかなりそうなくらいなのだから。

 全身が景太郎専用に快楽具となっている彼女の肉体からだは、景太郎がしてくれるあらゆる行為が快感をもたらす。だからこその快楽なのだ。

 人外の射精量によってバストアップはドロドロだ。
 それでも“たった一回”では唾を吐いたようなもの。股間の凶器はメキメキと音を立てそうなほど未だに奮い立っており次の射精を待っている。

 自分から降りた景太郎をもの惜しげに見送り、咥内に残るそれを口を濯ぐ様にしてからコクリコクリとゆっくり飲み込んでゆく。

 喉越しに残る味わいが堪らない。
 舌に絡みつく風味が堪らない。
 歯の隙間から抜ける時の滑りの感触が堪らない。
 甘みと苦味のブレンド比率が堪らない。

 精液とは生命の種。
 愛しい愛しい想い人のエキス。
 何と旨いものなのだろうか?

 こんな美味しいものを下さった彼に濁った眼差しを送ると、彼は息を荒げて自分のスカートの奥を覗き込んでいた。

 無論、彼がまだ物足りない事は理解している。

 こんなにも夢中にさせている自分の肉体からだを誇らしく思いつつ、
 素子は片膝を立て、ニミスカートの奥に潜む黒いショーツのクロッチ部をずらして彼をいざなった。

 「景太郎先輩……ど、どう……ンんわぁああっっ!♪!

 最後まで言う事はできなかった。
 一瞬で突き入れられた肉傘が、肉のフックの部分で襞を撫で上げつつ突き進んでくる。

 そして時折起こる現象。
 既に二人とも慣れてはいたが、満月の晩には必ず素子と景太郎が感じる事が出来る現象……

 ぐぬぬ……ぐぢゅ…ぶつっ


 「ンんんん……っ 痛…っ♪」
 「う……くぉおお……っっ」

 破瓜の痛みと出血。
 そして、処女を奪う感触が景太郎に与えられるのである。

 粘膜を裂かれ、その痛みと共に奥まで突き進まれるという略奪感。
 腰をビクビクと震わせて痛みにうっすらと涙する素子を見て得られる征服感。

 普通では絶対に味わえない精神的快楽が満月の晩のみ二人には与えられていた。

 無論、既に素子の膣は奥の奥まで性感が鍛え上げられているのであるが、景太郎によって再び破られる事により反射的に痛みを口にしているだけ。
 初体験時から痛みの“い”の字も無かった素子が痛む筈もないのである。

 この場合の素子の『痛い』というセリフは、『入った』という言葉の同意語に過ぎない。

 特に今の様に強引に挿入されたりすると歓喜と驚きの入り混じった複雑な想いが湧き出して思わず口にしてしまうのだ。
 言うまでもなく景太郎が喜ぶからであるが。

 その嬌声は当然の如く景太郎の心を焼き、まるで素子を初めて犯すかのように乱雑な腰使いでその襞をずりずりと削り上げてゆく。

 素子はその肉の研磨に身体を反らせて悶えに悶えた。

 肉カサがずぶずぶずぶと襞を撫で上げて突き進んでくるのも良い。
 だが、そのフックがぞぞぞと襞を柔らかく引っ掻いて行くのはもっと良い。

 潤滑油は豊潤だ。
 そしてそのゴツゴツとしたシャフトの先端からも垂れ滴って中を潤してくれる。
 出血してくれた事もあり、血と愛液とカウパーの入り混じったどろどろのカクテルのお陰ですべらかな出入りは続く。

 ずじょ、ぶぢゅり、ぶぢょ、ぶぢゅる、ずぢょ、ぐぢゅる、


 「あ、はぁっ、ンんん、ひ、あぁっ、くぅん…っっ」

 ストロークは長い。
 テンポもわりとスロー。
 その代わり押し上げてくるような快楽は途轍もなく深い。

 膣で解かる。
 景太郎に粘膜を巻きつけているからこそ良く解かる。
 形がハッキリと伝わってくる。

 自分の中を、
 自分の膣内なかを、
 自分の膣内なかの全てを捧げ、蹂躙し、汚し、染め上げ、研磨し、慣らした肉の柱。

 愛しくて愛しくて気が狂いそうだった男の性器。
 自分が何処か拒否していた女の部分を蹂躙し尽くしてくれた肉柱。

 この愛しい男の肉柱によって全身余す所なく捧げられた事を思い起こされ、素子は理性も意識もふっ飛ばして腰を跳させ喘ぎに喘ぐ。

 ぐい……ずんっ


 「ぐ……っ んあぁっ!!」

 素子の隙を突き、景太郎はその華奢な身体をいきなり抱き締めて抱え上げた。
 景太郎より素子の方が背は高いのであるが、彼女の方が華奢であり尚且つ軽い。とても怖い怖い剣士だとは思えない程。

 子猫のように景太郎の胸の中で甘えている彼女にはその怖さの片鱗もなかった。

 景太郎はきゅっと愛しさを込めて素子をもう一度強く抱き締めた後、彼女を抱えたまま立ち上がる。

 ずぬぅう…っ


 「あ、あぁ……っっ」

 正常位から対面座位。間髪入れず駅弁である。
 幾ら軽くとも人一人の重さ。その自重によって素子を貫いていたペニスは更に奥へと突き進み子宮口を嬲り潰す。

 「あ、ああっ、ひぃ、んぁああっっ」

 景太郎が動いてもいないのに断続的に漏れる素子の喘ぎ。

 ぱっくりと口を開けた子宮口が肉傘を受け止めて勝手に動いているのだ。
 その感触が素子の性感を嬲り、粘膜が蠢くリズムそのままに快楽を訴え続けている。

 「あぅっ、あぅっ、くぅん…っっ」

 ぎゅっ、ぎゅっ、ぎゅうう……っっ と喘ぎのリズムと同じ調子が景太郎のブツを絞め上げる。
 肉襞全体がシャフトに巻きつくように下から上へと絞り上げてゆく。
 そんな凄まじい肉奉仕を受ければ、流石に素子専用の男とは言っても直様限界は来るだろう。

 「ぐ……っ」

 どぶっ!


 「んぁっ?!」

 出た。
 子宮の中に。

 度ぶっ、どぶっ、どぶっ、どぶっ、どぶ…っ


 「あ、はぁ…っ んぁ、うン、ふ……」

 人という肉の器。そしてその内臓の中なのだ。容量の限界は早い。
 あっという間に子宮内はドロドロの白濁の粘液によって満たされてしまう。下手をすると卵管を逆流して卵巣を汚しているのでは? と邪推してしまうほどに。

 素子の脳裏に浮かぶのは自分の卵子。
 何時の間にか排卵されていた卵子が、夥しい景太郎の何十億という精子によって輪姦されている様子だ。

 無論、そんな訳があろう筈もないのであるが、素子には卵子すら景太郎の獣欲に汚されているかもしれないという多幸感の方が強かったらしい。

 ずのの…ぶぢゅっ、ぶぢょ、ずりゅりゅ…ぐちゅ、ぐぼっ、


「………っっ?!」

 唐突に起こった痛みに近い快楽に素子は声ならぬ悲鳴を上げた。
 何と景太郎、射精しながら腰を動かし始めたのだ。

 ぬじゅっ、ずぶちゅ、ぶぢょ、ぬ゛ぢゅる、ぷぢょ、ぬ゛ぢゅっ、


「…っっ っ! ……っっっっ!!」

 射精はとまったが、溢れ零れる精液が滑りに滑って膣内を撫でまくる。
 鉄の様に硬いウナギが腹の中で暴れまわっているような感触が素子を襲う。
 しかしてそれは異様な程の快楽であり、苦しかろうが辛かろうが抗いがたく拒否できない。

 今更言うまでもないが<痛みに近い>というだけで苦痛などは全くない。
 痒いところを掻き毟れば痛みが湧くがそれでも掻き続けてしまう様に、その痛みに果てし無く近い快感を心と肉体からだが追い求める。

 身体が揺すられる速度より速くガクガクと痙攣し、命を奪わんとするかの様な勢いで叩きつけられた絶頂が全身の快楽神経を余す所なく破壊し、知性すらも吹き飛ばす。

 ぐるりと眼がひっくり返り、意識が爆発。
 溢れ出る唾液と愛液を止める術も無く、

 びぐっ びぐっびくくっっ


 廃棄直前のダッチワイフより力なくその全てを心身に浴び、

 素子は死の向こう側にもある、深淵のアクメを人の身で知ったのであった。




 ふと気がつくと、男は自分の頭を撫で続けている。

 ゆるゆると首を動かせば、まだ廊下。

 月も殆ど動いていない。

 途轍もなく深く、そしてに飛ばされていたようだ。

 まだ余韻は強かったが、それでも自分の余りの狂態を思い出し、今更ながら照れて真っ赤なる素子。

 そんな素子の、さっきまでの淫乱さとのギャップが愛おしく、そして可愛らしいと感じている景太郎はベットリと己の精液で汚している彼女の胸にも気にする事もなくギュッと抱き締めなおして優しくキスをしてやった。
 くすぐったそうに身を捩るが無論嫌な訳もなく、素子は女の子おとめに戻ったかのように上目遣いではにかんだりする。

 尤も、ぱっと見は初々しいようであるが、景太郎の肉柱は未だビクンビクンといきり立っており、尚且つ素子の膣の中。
 対面座位となって腰を掛けているだけなのだ。

 このまま一晩中、素子の肉体からだを弄んでのが満月の晩の過ごし方なのであるが……

 「浦島先輩……」
 「うん?」

 雄に貫かれたままだというのに慈母が如き優しげな表情を見せる素子。
 景太郎は内心かなりうろたえながらも見た目“だけ”平然と返事を返す。

 「私は、幸せだ……」

 すりすりと頬を彼の胸に擦り付けて喜ぶ少女。
 その顔は長く連れ添った真の意味で仲の良い夫婦。その妻のそれ。
 性交の途中だというのにその欠片も見えない。

 「愛するお前とこうして一緒にいられるのだから。
  女として抱いてもらえるのだから。
  お前に求めてもらえるのだから……」
 「モ、モトコちゃん……」

 ピロートークも初めてではないが、漂う空気は甘さより穏やかさの方が強い。
 今までの行為では無かった空気にやはり戸惑いを見せてしまう。
 幾ら肉体経験を積もうが、女性交際の経験の浅さだけはどうしようもないようだ。

 「だけど、あの晩……
  私が押さえが利かなくなったあの晩、お前に抱いてもらえなければどうなっていと思う?」
 「あの晩って……」

 どの晩? 等と、流石の景太郎でもそんな愚言は零れない。
 というより、以前から妄想男。言われた途端に思い浮かんだのは自分が童貞でなくなった夜の事……素子の処女を奪った晩の事だ。

 流石に初体験の事を思い出したからか景太郎のブツがムクリと反応を示した。

 自分の膣内なかで太くなった景太郎のブツに苦笑しつつも素子は笑みは絶やさない。

 「私にはお前がいてくれた。
  愛しい男であるお前が貫いてくれた。
  愛しているお前が、私を女にしてくれた。
  だからこそ、私は“持った”のだ」
 「あ……う……」

 彼の照れは大きい。
 否定もできないしするつもりも無い、けれども恥ずかしさはかなり大きい。
 こういう時は女の方が露骨であるし、強いものなのだ。

 「だが、もしお前の事を愛し求め狂っているというのに抱かれなければどうなると思う?」

 「え……?
  あ、そ、その…えと……さぁ……?」

 解かるまい。
 解かる筈もなかろう。

 以前の景太郎も なるの事を愛し求めてはいたが、狂ってはいなかった。
 その強い意識は実は なるの方が強い。
 彼女はその強い求めを力尽くで押さえ込んでいるだけなのだが、押さえ込めるだけの理性を持っている。ただ、彼の姿が無ければ紙の様に脆くなるが。

 景太郎が留学前であればそんな強いままであったかもしれないが、再会し、告白し、人目憚らずキスをするようになって絆を深めてからは逆に脆さをも強めていた。

 景太郎の方はというと、なると正式に付き合いだし、素子と経験をし、キツネと、そして可奈子としのぶと肉体関係を結ぶに及んでその度量を深めている。
 受け入れる器が知らず知らずの内に大きくなっているのだ。

 だから入って来る者を全てを抱き締められるようになっている為、逆に求める必要性を失いつつあった。
 それが今の彼の唯一のネックといえばネックである。

 「例えば……」

 素子は景太郎の背後の障子に手をかけ、

 「こんな風に」

 タンっと勢い良く障子を引いた。

 「え……………………………なっっ??!!

 驚愕の余りに眼を皿にした景太郎の視線の向こうには、

 「けーくぅん……」
 「あ…ふ……」

 蛇かナメクジの様に絡み合う二つの影。

 全身をてらてらと汗で滑らせ、

 濁った目でお互いの身体を貪り、

 それでいてお互いが相手をしているのその触れている相手では無く頭浮かべている男の肉体からだ

 月光に照らし出された絡み合う二つの裸像。それは良く見知った二人……


 「むつみさん…サラちゃん……」

 素子と繋がったまま呆然としている景太郎を観客に、月の明かりをスポットライトにして淫靡すぎるレズショーを演じているのは、

 景太郎と素子の交尾によって発せられた淫気に酔い、心を犯された乙姫むつみとサラ・マクドゥガルの二人であった。




*******************************************************




 遅くなりました、Pixyでございます。

 その叔父の入院の付き添いで、未だに泊り込み。
 寝てるベットの横で書いてる(打ってる)モンで、中々進みませんや。
 フツーの二次も書いて気分を変えようかな?

 さて、次は恐らく むつみさんとの仕切り直しとサラです。
 ハッキシ言って、サラの身体は平均より小さ過ぎ。
 原作読み返したら、幼稚園児並じゃないですか。ですから、シたら絶対に障害を残しますよね?
 だから気をつけてるんです。……って、言い訳っポイですが。

 何かしまくるだけなので、ちょっとナニですけど、
 また次に……ではでは……(と言って逃げる)






[2319] Re[11]:Dotage ~妄愛~ <廿捌> (ラブひな)
Name: Pixy◆752cebb3 ID:1f42d88e
Date: 2007/07/05 19:34


 キリキリと胃が痛みを訴えている――
 喉がからからに渇き、唾を飲み込もうにも矢鱈手間取ってしまう。

 それはストレスからくる緊張である事は間違いない。

 しかし、一口にストレスとは言っても、世の中のそれはプレッシャーによるものだけではない。
 嫌な事が多いこの世の中、ストレスといえば多くの人間が思い浮かべるのはマイナス面の話ばかり。良いイメージなどありはしない。

 が、抑圧されたエネルギーからくる“ストレス”は、自分の中にある葛藤から派生するものもあり、他人からしてみれば妬ましい幸福すらもそれに含まれる。

 現に――

 一人の青年が、眼前に控えている肉欲の宴を前にしてストレスに喘いでいるのだから……


 はぁはぁはぁ……ンんん…くぅ…ひんっ
 あ、んふぅ…ぴちゃ…んちゅ、ちゅ、ちゅ…れろぉ……


 全裸の美女が足を大きく開き、その太股の間に美少女を挟んでまだ青く熟れていない肢体を舐りまわしている。
 美少女はぐったりと力なく美女のされるがまま。何故にスク水姿なのかは定かでは無いが、ぴっちりとしたスクール水着の上から胸を撫でまわされるように嬲られ、一人前に乳首を硬く尖らせて快楽を訴えていた。
 水着が濡れているのは美女の唾液と汗。
 股間の濡れ方がひどいのは愛液が滴っているから。
 青年の死角で見えないだろうが、少女の腰の濡れ方が酷いのは美女のびしょ濡れの股間が擦り付けられて愛液を染み込まされているからだ。

 どろりと濁った美女の眼差しは青年に注がれ、
 針の様に細く光る美少女の目は、青年に期待の光を見せている。

 青年は未だに衣服を着用してはいるがジッパーは大きく開けられ、その中から青年の外見からは想像もできないほど凶暴な肉の柱が突き出ている。
 更に、若いくせに淫水焼けを起こして黒々としているその肉柱はねっとりと愛液と精液と、使膣から滲み出た破瓜血が混じりあったカクテルを絡ませ、
 うら若く、そして淫らで、清楚で、淫猥な、ピンク色の若いヴァギナに突き刺さっていた。

 ズリュゥウウ……

 その場にいる全員の耳にそんな幻聴が響く。

 ゆっくりと、
 そして名残惜しげに、
 なるで今生の別れのように切なげな顔でその肉凶器をゆっくりと引き抜いてゆく。

 肉柱に貫かれていた美少女……

 いや――

 美少女がゆっくりと腰を上げて引き抜いているのだ。

 実に辛そうに、
 実に悲しそうに、
 まるで我が身を裂かれるかのように、

 尚且つ凄まじいまでに淫蕩で、男の理性をどろどろに蕩かしてしまう表情で。

 ボトボトボト……どろぉ……

 完全に亀頭が抜け切るより前に、強い膣圧に圧迫された残留体液が逆流して青年のペニスに降りかかって汚す。
 黒々とした肉傘に降りかかる薄ピンクの汚濁液。

 それが目にした女性たち…
 青年に跨って獣すら腰を引かせる淫らな行為に浸り切っていた美少女も、
 幼いという言葉の定義の範疇に入る美少女を舐め嬲っていた美女も、
 そしてを美女の唾液で滑らせている美少女も、


 喉がグビリと音を立てた。


 いやらしいいやらしいいやらしいいやらしいいやらしい……

 そんな事は解かりきっている。

 だけど誇らしさ、妬ましさ、そして羨ましさ、其々違う想いが交差してこの場の空気をどんどん濁して重くしてゆく。

 それでいて目の前の淫ら過ぎる光景に反応して青年は腰を精液カクテルベットリと汚したまま、這いずるように美女美少女が絡んでいる部屋へと近寄っていった。

 期待に眼が輝きだす二人。
 そして、そんな三人を場違いにも微笑ましげな眼差しで見守っている美少女。

 浦島景太郎、
 乙姫むつみ、
 サラ・マクドゥガル、
 そして青山素子ら四人。

 その夜はまだスタート台に立ったばかりなのだ――




―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
                           -盲・愛-
                            File:廿捌
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――




 「けーくん、けーくぅん……」

 ハッハッハッ……と発情期の犬のように息を荒げているのは、景太郎の幼馴染である むつみだ。

 普段の彼女からは考えられない程…というより、全くの別人。
 情欲に溺れ切ったオンナの目が景太郎の肉体からだを這い回る。

 景太郎の方はその眼差しをまとも受け、更に血を滾らせてむつみに挑みかかって行く。

 間に挟まれたサラは、犯そうとする景太郎の淫気と身体、陵辱してもらおうとする むつみの淫気と身体にサンドイッチされる事となり、その感触に声を上げた。

 「あ、あぁああぁあああ……うわ、うわぁあああ……ひ、ひぃいい……
  わぁああ………あっあっあっ………ンむぅ?!」

 不快の色の無い歓声、嬌声。
 背中越しにむにむにと押し潰されるむつみの乳房、
 自分のなだらかな胸を押し潰す景太郎の固い胸、
 それら全てが彼女の感度を蹴り上げるように高めてゆく。

 サラに大きな声を上げようとした口は、景太郎によって塞がれてしまったが、その事によって快楽が突き抜けて最初のアクメを迎えてしまう。
 無論、願ったり叶ったりである。

 『あ、頭が……頭がぁ……』

 弾けた――
 そうサラは感じた。

 男に触れられる事によって得たアクメというものは むつみに嬲られた時のような、或いは自分で慰めていた時のような“もの”とは根本的にという事を体感したからかも知れない。

 それに、男にされた……
 いや、景太郎という雄にしてもらった接吻くちづけ。それがサラの心を沸き立たせているのも一因であろう。

 アメリカの挨拶,スキンシップ等でも、実際に唇を使う事はあまりない。
 よっぽど親密でない限り、家族でも頬を触れ合わせる程度なのだ。尤も、サラは過激なファザコンであったので瀬田パパにしていたかもしれないが。

 それでも流石に性的な意味でのキスは皆無である。
 そういう意味ではこれがサラのファーストキス。興奮もするだろう。

 「ふ…ン…んっんん……はふ…むぅん……」

 唇はまだ重ねられたまま。
 そのサラの様子は、子猫が眼を瞑って抱擁を甘んじているそれ。
 実際に青い果実を貪っている景太郎には見えていないであろうが、股間から精液を垂らしつつ見守っていた素子の位置ならば丸見えだ。
 月光が掠る程度の灯りがあれば闇夜となり得ない“今”の素子の眼を持ってすればこその話。とはいえ、そんなごちゃごちゃとした理由等は当人モトコにはどうでも良いのだろう。ただただその光景に見入り、性的興奮を再燃させている。

 投げ出されるように力なく垂れ下がっていたサラの手がゆるゆると上がって行き、景太郎の首に巻きついた。
 それに答えるかのように、景太郎の腕もゆるゆると動いてゆき、大きくその背を回ってゆく。何故なら、サラ“だけ”を抱き締めるのではなく、むつみごと抱き締める為だ。

 「ああん♪」
 「ンむぅ……」

 むつみはその圧迫感が嬉しいのか嬌声を上げ、サラは不満なのだろうムクれた声を漏らす。

 尤も、むつみから言えばサラの方がズルイ。
 さっきからずっと“愛しのけーくん”にキスをしてもらっているのはサラであるし、直に触れ合っているのもサラなのだ。
 けーくんからの自発的なキスなどまだしてもらった事が無いのだから当然の不満と言えよう。

 しかし、考えてみればそろそろ自分の番になっても良いのでは無いだろうか?
 そう感じたむつみは、後から頬でもってサラの首を横にどかせようとするも、意外なほどサラは強く景太郎の唇にくっ付いている。

 むぅ…と膨れる むつみ。
 そんな彼女に微笑ましさを感じたのだろう、素子は未だ力の入らない身体を這わせてむつみの側に寄って行く。

 「むつみさん……」
 「え……? モトコさ……」

 ちゅ…と優しく、柔らかく唇が重なり、ちょんちょんと触れ小鳥の睦み合いの様に触れ合わせる。
 好きな人間であれば性別問わずキスがしたくなる むつみだ。これは覿面だった。

 ハッキリと言ってしまえば、むつみは素子の事を可愛さ余って憎さ百倍という言葉に近い嫉妬感を持っていたといえる。

 いや、大切で大好きな寮の皆の一人である事に違いはなかったのであるが、男と女の輪の外に置かれた事を自覚してからは生涯初めての嫉妬に心身を焦がしていたのである。
 しかしやはり悪人にはなれない むつみは、それでも景太郎の童貞を“奪った”素子やキツネ、しのぶや可奈子の事を嫌いになれる筈もないし、彼女らに感じている好感度は憎さを百倍にしても追い抜ける筈も無い。
 更に元々の憎しみの数値が一未満なので好感度の方が圧勝してしまう。

 だから“憎しみ”果てし無く近くて、途轍もなく遥か遠い向こうにある嫉妬。
 どうせなら私にも早く声を掛けてくれたら……という念が強い、嫉妬によくにた“拗ね”。

 それを見抜いた素子は、とろとろと唾液を“贈り”つつ、むつみの遅れを補ってやろうとしているのである。

 「んっ、んっ、んん…ンむ…ぷはぁ……んっんっんっ……」

 途中息継ぎはするものの、素子のその甘い唾液に酔い痴れる むつみ。
 酒好きで、はるかやキツネすら凌駕する酒豪である むつみは、途轍もない銘酒を口にした気分を味わっていた。

 喉越しにズシンとくるような衝撃。それでいて咥内に香りを残して心の火照りを誘う。
 良い酒はけっこうキツイ物が多いのであるが、良い酒ほど喉越しを通り抜けてからそのキツサを自覚できる。素子の唾液はするすると呑みやすいのであるが舌に絡みついたまま喉へと滑り落ちようとし、舌の根からストンと胃袋へと逃げ込んで行く。
 思わずそれを追ってしまい、感覚を喉に集中させると次が来るのでまた意識が咥内の舌の上に戻り、そしてまた喉奥に逃してしまう。
 それがまた、もどかしくて堪らないのだ。

 「はぁ……」
 「ン…あんっ」

 唇が離れ、その間を銀の橋がかかる。
 不満げな吐息を漏らし、それが途切れるのを恐れるかのように むつみの唇は対岸を追った。
 だが素子はクスっと微笑を漏らすと、あっさりとむつみ追跡を回避して橋を切る。
 そしてそのまま彼女の背後に回り込み、むつみの左右の太股に手を滑り込ませてクレヴァスをぐにっと左右に開いた。

 「あン……な、何ですかぁ……?」

 むつみのそこは――実はかなり無残に裂けていた。

 多くの男どもは知らないであろうが、女性生殖器はかなりデリケートなので女体に慣れていない…或いは知らない男性による初体験はかなり悲惨な結果で終わる事がある。
 滅多に無い事とはいえ、膣内裂傷による出血死もゼロでは無いのだから。

 特にレイプ等による強引な性交渉を行われた場合、丁寧な愛撫などあろう筈もないので傷はかなり大きくなるのだ。
 膣は、初挿入の男の痕を残すという定説のように、かなり歪に肉厚になったり、奇妙な綻びの形を残したりと、粘膜に痕を残すのである。

 いくら適度に濡れていたとは言ってもそれは焦りから来る適当な感覚。あの時のむつみは普通の思考と感覚を持っていなかった。
 だから(逆レイプではあったが)レイプ同然の急いた行為の所為でかなり手酷く裂けていたのである。

 更にむつみが食事もせずに“ここ”の布団の上に横たわっていたのは、股関節も痛めていて立てなかったからだ。

 素子にとって今のむつみの姿は“ありえたかも知れない自分”の姿でもある。
 だから他人事ではないのだ。

 そんな彼女の想いを知る由もない むつみは、唐突に背後から性器に触れられた意味が解からず戸惑いを見せるのみ。

 そして彼女は、その隙を突かれた――

 ずぬ゛ぅうう……っっ


 「ひゃ…っ あぁぁああああ………っっっ?!」

 唐突に入って来たのだ。
 待ち望んでいた、待ち焦がれていた極太の肉棍棒が。

 「あぁ、ふぁっ、ひゃあっ、あぁああっ、あああああっっっ」

 動かさない。擦らない。
 ただただ入れてくるだけ。
 奥へ奥へと突き進んでくるだけ。

 腰を更を乗せたまま持ち上げてもらい、角度を合わせてもらい、優しく優しくもぐりこんでくる。

 違う。全く違う。全然違う。

 自分で肉柱を入れた時とは全く持って違い過ぎる。

 痛みが無い。
 いや、先程裂けた部分がピリリとした痛みを伝えてくるがそれだけだ。
 痛みを快楽に転化する事もない、ただただ深い快楽と多幸感が泉が如く湧きだしてくるのみ。

 これが、という事なの?!

 むつみは眼を大きく開き、喉を反らして異質の快楽に酔い痴れた。

 肉を裂く…という感触は既にさっき味わっている。
 意識を失っている景太郎の肉体からだを使って体感したのだから。

 だがそれは、言ってしまえば景太郎を使ったオナニーである。
 景太郎という淫具を使った破瓜なのだ。

 あさましいとかどうとかでは無く、“惜しい”。
 余りに惜し過ぎる。
 どうして自分は…と。

 ずのののの……


 「ひ、あ、あぁぁああああ……」

 こんっと子宮口に触れた次の瞬間にはゆっくりと引き抜かれてゆく。

 『ああ……抜かれてしまう……』

 奥からぎゅぎゅっと締まりを強めて引き留めようとするも肉傘にひっかかれるゾクゾク感がそれを邪魔する。
 ゆっくりと下がるので、肉襞の一つ一つの隙間に丁寧なを残して行ってくれるからだ。
 言の葉で感覚的に例えればデコボコ道をゆっくりと車で移動するようなものか? そこまでの振動があるはずもないが、僅かの数センチの移動で性感がそれに値するほどの衝撃を彼女に伝えている。

 ずずず……ずぐぅ…っ


「んあっ?!」


 肉傘が粘膜を引き連れて出口まで戻って来た瞬間、今度は勢い良く奥まで突き入れられた。
 余りの事に眼を向いて驚くむつみ。

 景太郎のオンナとなった素子らにとっては慣れ親しんでいる緩急であるが、今日の今日まで処女であった むつみには強すぎる刺激だ。
 それでいて彼女がそのストロークを受け止められているのは既に景太郎を味わっているからかもしれない。

 ずりゅっ、ぐぢょ、ずののの……ぶぢゅっ、ぐぢゅる…ぐぢゃっ、ずぶちゅっ、ぢゅぼっ、


 「ひ、あ、ンあぁあ…ひんっ、ふわわ……はぅっっ」

 かき回される。かき回される。

 男を知らなかった膣に景太郎自身を叩き込まれてゆく。

 本気の汁を散らせつつ、
 紅い粘膜を引き摺られつつ、
 尿道を緩め、少量づつ失禁しながら、
 ねつみは今度こそ景太郎を肉体からだに刻み込んでゆく……

 「ふふ……」

 素子は素子で、そんなむつみを更に狂わせようと、背後から彼女の胸と肉芽を弄って嬲り潰す。

 指が沈み込むほど柔らかく、そして張りがあり、
 幾らでも指が入りこんでいきそうなのに、やんわりと押し返してくる胸。

 意外に太いが、手触りは何故か柔らかいアンダーを掻き分け、その奥で自己主張を続けていた肉の芽。
 直下の肉洞窟に出入りしてその穢れ無き肉洞穴を汚しに汚されてゆく過程を見下ろしているかのよう。

 コリコリと乳首を弄り、抓るように強く引っ張る。
 むつみのものであるはずの右の乳房は、その主権を素子に明け渡して彼女に嬲られるがままにされていた。
 腋の下から顔を差込み、その乳首を口に咥え、かりっと強めに歯を立てると むつみは腰を跳ねさせて悦を見せる。
 クリトリスの皮を完全に剥き、根元から撫で上げるように嬲り、押し潰してみると むつみはその愉悦に吼いた。

 何をされても快感に直結する。
 景太郎を逆レイプした時と違い、痛みが快感に変ずるのではなく、変換する必要も無いほど伝わってくるのは全て快感だったのだ。

 女の身体とは、恋焦がれた男に嬲られるとここまで快感を味わう事が出来るのかと彼女は今思い知っていた。

 だが、彼女が悦楽の只中で身悶えしている今、現在進行形で一人の少女が混乱の只中に置かれている。

 「ん、くぅ……き、く……っ んぁっ、んむぅ…ん……っっ」

 そう、間に挟まれているサラだ。

 景太郎の咥内の嬲りはまだ続いている。
 唾液をグビリグビリと飲まされ、顔中を唾液カクテルでべとべとにしながら、サラは息継ぎもままならない甘い地獄に必死に耐えていたのだ。
 おまけに腰には景太郎とむつみが行っているピストンの振動が伝わってくる。
 景太郎が腰をむつみに突き込む度に、彼の下腹がサラの股間にびたびたと当たって刺激を続けてくるし、背中でむにゅむにゅと形を変える乳房の感触も彼女をおかしくしてゆく。

 キスも気持ちが良いし、股間を叩く景太郎の下腹の感触も良い。
 だけど彼女の胸には穴が穿かれた様に虚無感が増してゆく。

 実際にしていないから……

 というのが理由である事は、わざわざ言葉にせずとも彼女には解かり切っていた。
 それと同時に、自分がまだ与えてもらえない事も、する訳にはいかない事もまた理解している。

 いや――子供だから、倫理がどうとか言う話では無い。
 そんな物は関係ない。そんな物は犬にでも食わせてやる。

 法だとか、世間がどうとかでは無く、彼女の肉体からだに問題があるのだ。

 ぶっちゃければ、彼女の肉体からだがまだ小さすぎて景太郎のブツがどうしても入らないのである。

 無論、無理をすれば入らない事もないが、それはサラの身体の損傷を意味している。
 彼女の膣を引き裂き、やっと形になってきた膣道を裂いて行くのなら話しは別だ。だが、そんな事を許す輩は誰一人としていない。
 その時は満足できようが、サラの今後未来は台無しになってしまう。最悪、出血死を迎えてしまうだろうし。

 サラは我慢するしかないのである。

 尤も、手が全く無い訳でもないのであるが……


 そんなサラのもどかしさを他所に謝肉祭は続く。

 抉り込まれる肉柱に裂けた粘膜が研磨され、ヒーメンの片鱗すら引き千切ってゆく。
 しなやかで硬く、容赦の無い肉のフックにゴリゴリと嬲られるのは気が狂いそうなほど気持ちが良い。
 肉襞を絡みつけてその肉の味を貪ろうとするも、力強く脈打つ幹はイソギンチャクの触手にも似た感触のそれをアッサリと振り切って膣奥の奥まで陵辱と蹂躙の限りを尽くして行く。

 思い通りならない快楽が更なる快楽を手繰り寄せ、どすっどすっと子宮口を押し破らんと突き込まれてくる。
 犯すぞ、孕ませるぞ、妊娠させるぞ、という気持ちが篭っている気がして むつみは随喜の涙を零してしまう。

 双方同意のセックスであるが、むつみは気持ち的にレイプされている気分を味わっていた。

 無論、景太郎は強姦という行為は嫌悪しているし、むつみも身も知らぬ男にされるのは御免蒙る。
 だけども むつみは女として……いや、“オンナ”として景太郎に強くレイプされたいと願っていた。

 いや……それどころでは無い。

 むつみは、景太郎によって嬲り殺しにされる“幸せ”を願っていたのである。

 愛するが故に愛している男に犯されたい。
 愛するが故に愛している男に汚されたい。
 愛するが故に愛している男に嬲られたい。
 愛するが故に愛している男に殺されたい。

 愛している男に肉の一片残らず貪り喰われ、その身体の隅々まで行き渡って完全に同化したい。

 心にあるのは殉教者のそれ。
 死して神の御許へ行く事を夢見る狂信者のそれ。

 愛する者に木っ端微塵に破壊され、愛する者の記憶に残り続ける……身体に栄養として残るだけでなく、記憶としても根ざせるのだ。

 嗚呼、なんと素晴らしい事だろう、
 なんと誉れな事だろう、

 景太郎に持っていた愛情は凶気という名の加速剤を使用して暴走の一途を辿り、その想いは歪んで濁り続ける。
 歪んだ想いはスタート地点すら湾曲させ、その想いの根本すらも穢しに穢す。

 愛情は愛へと変わったが、その中には愛憎が混じっている。
 愛には違いは無いが、澄み切った狂気が混ざっている。

 景太郎だけを男として見つめ続ける盲愛は、妄想がそのまま具現化した妄愛へと変貌を遂げ、自分の自身の意思で全身の性感神経を焼き切らんと奮起した。

 逝ける。

 天国に逝ける。

 そしてけーくんの心に残り、何時も何時も想ってもらうの……

 もう、なるちゃんも手が届かないの……

 私の全てはけーくんの………


 親友“だったはず”の なるすら引き離し、景太郎の愛を独占する形で肉体から意識を切り飛ばそうとしたまさにその瞬間、

 「駄目ですよ。
  そんな事をすると“浦島”先輩が悲しみます」

 「!!」


 素子の静かな声がむつみの耳を貫いて引き止めた。




 そう、素子には解かっていた。今のむつみの暴走も、その意思方向も。

 それは自分が辿ろうとした道。
 なるに取って代わり、景太郎の全てを独占しようとした狂気の欲望の行き着くところ。
 最悪、景太郎を殺して笑いながら割腹し後を追う未来があったかもしれないのだから。

 「それでは意味が無い。
  浦島先輩が泣いてすごす日々なんかいらない。悲しそうな顔をさせる行動なんかしてはいけない。
  違いますか?」

 極々小さい声。
 例え淫獣化していたとしても、景太郎は気遣いを忘れたりしない。
 暴走して彼女らに襲い掛かったとしても、嫌がってたら何もできないのだ。

 だからこそ彼女にしか聞こえない程度の声で語りかけている。

 「浦島先輩と笑い合える日々。一緒に楽しく暮らせる生活……
  むつみさんも、私“達”もそれを望んでいるのでしょう?」

 ぬ゛ぶっ、ぬ゛ぶっ、と相変わらず淫ら過ぎる鈍い音が腹の奥から恥骨を通して全身に響いてくる。
 ぬぢゅ、ぶぢゅる、と耳を打つのは膣を貪られる祝福の音色。

 だが、むつみの心は一瞬で冷め切っていた。

 のだ。

 自分がここの生活を愛しているという事を。
 皆で笑い合う、真冬でも和気藹々とした暖かい空気を。
 そしてそれの永遠を望んでいた事を。

 景太郎という愛おしい男の事で頭がいっぱいになり、淫気に負け、思考全てが淫猥な意識に乗っ取られ、淫行を実施してしまった事を。

 「わ、私……んふぅ、わ、わた、し、ンっ、んぁあ、くぅん」

 それでも肉体感度は現状のままだ。
 如何に心が冷えようと、如何に冷静さを取り戻そうと、景太郎に明け渡した肉体からだは極上の感度を伝え続ける。

 「ああ、や、やめ……けーく…らめ……っっ
  な…るちゃ…裏ぎ……ひゃぁっ、ひぃんっ!!

 ごりっと亀頭のフックがクリトリスの真裏を抉った。
 むつみのそこは襞が密集しているような感触があり、景太郎にも凄まじい快楽が与えられていたのであるが、むつみにはそれ以上の快楽が襲い掛かっている。
 俗に言うGスポット等の膣内快感ポイントは人によってズレがある。一概に“ココ”という場所にはなく、“ここら辺”という曖昧な位置に存在する事も珍しくないのだ。

 ところが むつみの場合は、膣がその位置をハッキリと相手に教えている。
 感度の高い部分が襞が高く、相手にも強い快楽を与えてくれるのだ。
 だから景太郎は嬉々としてそこを抉り、むつみは涎を迸らせてその快楽に溺れてゆく。

 止めたいのに、
 大切な親友を裏切って身体を重ねているのに、
 それを折角思い出せたのに、
 自分の肉体からだが主を裏切って邪魔をする。

 ぐっちょぐっちょと膣が嘶き、
 ぼたぼたと愛液が迸る。

 腰が跳ねて間に挟んだサラの軽い身体を押し上げ、その股間を景太郎の腹に擦り付けさせている。

 ああ、サラちゃんまで汚してしまった。
 自分の破瓜血と景太郎の精液の混ざった物を啜らせ、あまつさえ景太郎に壊させようとした。

 今なら解かる。
 理解できる。
 あの時の自分は、サラを瞬間的に幸せにし、そしてその行為のあった事実を知らしめてこの寮から追い出させ、独占するつもりだったのだろう。
 傷心の景太郎の心を慰め、癒し、自分に傾倒させようとしていたのではないか?

 かなり内罰的な思考ではあるが、むつみにはそれが真実に思えてならない。

 何せ今さっきまでの自分はそれ程まで景太郎を求め狂っていたのだから……

 腰の突き上げに対して機械的に喘ぎ声を返し、反射的に荒い息を出す。
 乳首も肉芽も素子による刺激も手伝ってびんびんに尖り、擦られる刺激に身体か歓喜の悲鳴を上げている。

 口から零れ落ちる唾液も、
 四人の汗が混じり合ったこの香りも、
 失禁と区別が付かないほど溢れ出る愛液も、

 全てが別の国の出来事のようだった――

 閉じられた瞼からぽろりと頬を伝い落ちる涙。
 それは歓喜によるものではなかった……

 「大丈夫ですよ。むつみさん」

 そんな心を閉じかけた彼女の耳に、またしても素子の優しげな声が響く。

 「“今の”快感に心を投げ渡してください。
  それが良いんです。それが最良なんです」

 むにゅむにゅと両手でもってむつみの胸を揉みしだき、耳たぶに歯を立てつつ素子が語りかけてくる。
 嬲られているようで、慰めてくれているようで、説得しているようで……

 今のむつみには理解出来様もない。

 だが、それでもたった一つだけ彼女の心を貫く言葉が言い渡された。

 「そうすれば皆で幸せになれるんです。
  “成瀬川先輩”や、キツネさん、しのぶ、カナコ、そしてサラたちとずっと……」

 「え………?」

 その言葉に むつみは一瞬で

 沈み込んでいた筈の闇が払拭され、薄紫色の不思議な天国のビジョンが全てを大つい尽くす。

 途端に肉体からだが受けていた快楽が上限値を突き破って精神を貪り喰らう。

 どぶっ


「ひゃあっ?!」

 まず一撃。
 精液の一撃が壁を思い切り叩く。

 眼の奥で星が弾けた。

 どぶっどぶっどぶぶっ


 「ひっ、あっ、わっ、わわわ……」

 あふれてくるあふれてくる。
 大きさが足りない。容積が足りない。中に出される量が余りに多く、襞の隙間隙間を蹂躙して外に出ようと躍起になる。
 それでも膣内一杯にくわえ込んでいる肉柱の太さによってそれが遮られている。

 膣内おなか一杯に精液を溜め込まされ、腹が裂けてしまいそうな
 人外の快楽の波に溺れながら、むつみは喩え様もない多幸感と安堵感に浸り切っていた。

 『そっか……良いんだ……
  これで なるちゃんともシアワセになれるんだ……』

 そして景太郎とも……

 皆でなければシアワセではない。
 皆といられないシアワセはあってはいけない。

 その事を今更ながらやっと感じ入り、むつみは深い安心感の中で一時の休息を得たのであった……






 「うわ……」

 ずるずるずるる……と素子によって むつみの身体が持ち上げられ、景太郎が引き抜かれてゆく。
 ゆっくりと、サラに見せ付けるかのように むつみから抜け出てゆくぶっとい肉柱。

 景太郎の肉棒の太さに合わせ、膣口を蠢かせつつ引き出されてゆく。
 肉柱らしがみ付くように襞が付いて来るのは、何だか口を尖らせているようにも見える。

 くっと一度膣口が口を大きくし、亀頭の部分が抜け出る。直後、その亀頭に滴り落ちる白い粘液は言うまでもなく むつみの胎内に流し込んだ精液だ。

 サラは、はしたなくも喉をグビリと鳴せてしまった。

 そんな彼女のはしたなさを微笑ましそうに見つめていた素子は、むつみを布団の上に横たわらせると、未だ硬いままの景太郎のペニスを握り、精液が付くのもかまわずシュッシュッと擦りあげる。
 びゅくびゅくと尿道に残った残液が鈴口かせ溢れ出てその感触に素子を喜ばせた。

 「ほら、サラもこっちに来てみるが良い」
 「え……?」

 愛おしい男のペニスから眼を離さず、唐突にサラを誘う。
 呼ばれた方が戸惑うほど自然さを感じる素子の所作だ。

 まるで術にでも掛かったかの様に、極自然に従ってしまうサラ。

 気がつくと、彼女は擦られているペニスから数センチの位置にまで顔を寄せていた。

 ぷぅんと漂う香りは景太郎の精液の美味そうな匂い。
 微かな酸臭はむつみの愛液だろうか?

 まるで子猫の様に思わず舌が前に突き出してしまうが、本人には自覚が無いようだ。

 素子は、そんなサラの舌に場を譲る。
 ゆるゆると寄って来たサラの舌は、幹から亀頭までを舐め上げて口に精液と愛液のカクテルを含み、ぐぢゅぐぢゅと口を濯ぐかのように咥内全体で味わった。
 よほど美味かったのだろう。口から大きな泡を出しつつもペニスに吸い付き、その周囲を舐めに舐めて必死になって精液を啜り出す。

 眼差しはドロリと溶け、もはや通常の倫理観は残っておるまい。
 完全に淫気に酔ったオンナのそれだ。

 その様子に素子は完全にサラが堕ちている事を悟った。

 この部屋に入るまではそこまで堕ちているとは思ってはいなかったのであるが、むつみとサラが絡み合っているところを見た時、それは確信に近いレベルで感じてしまったのである。

 それに素子自身は気付いていない様だが、実はもう一つ強い理由がある。

 素子と景太郎に挟まれていた むつみとサラはその間に行き交う淫気をまともに浴びていたのだ。
 おまけに むつみはその淫気を受け入れた訳であるから、まだ踏み込み切っていなかったサラはひとたまりもない。

 今のサラは景太郎を襲う直前のむつみと同等の性欲を内包しているのである。

 むつみの膣内を抉りまわし、削り、引っ掻き、蹂躙した景太郎のペニスには むつみの痕跡すらこびり付いている。
 彼女の処女膜の欠片である僅かな粘膜片もだ。

 サラはその僅かに血の風味のあるそれを口の中の感触で気付き、嬉々として歯を当てた。

 くみくみとした独特の歯触り。
 前歯でくいっと押すと簡単に千切れるがそれがまた良い。
 咥内に含んだ精液と混ぜつつくみくみと噛み続け、むつみの処女膜を完全に液体化するまで噛み潰し、大量に溜まった唾液と共にゴクリと大きな音を立てて飲み込んだ。

 既に むつみの破瓜血も、破瓜血と精液のカクテルも味わっているサラである。今更こんなモノ程度で如何こう言う意識は更々無い。
 単に『美味かった』と思うだけである。

 尤も、そう思ってしまうからこそ壊れているのであるが……

 「サラ」
 「……ん? なに? モトコねーちゃん……」

 びくんびくんと今だいきり立っている肉柱から手を離さず、年齢度外視に異様な色気を醸し出しつつサラは素子の方へと振り返った。

 ああ、もう駄目なのだな……
 もうサラはなのだな……


 奇妙な喪失感と、寂しさの入り混じった感情が湧く。
 それでいて同志が増えた事は何となく嬉しい。

 複雑な心境を持ちつつも顔には出さず、素子はサラに対して“これからの事”を語り始めた。

 「解かっていると思うが、お前はどうする……いや、どうしたい?」
 「どうしたいって……?」

 手が離れない。
 ペニスから離れない。

 いや、離したくない。

 「浦島……“景太郎”先輩としたいか?」
 「うん」

 サラの返答には間髪が無かった。

 素子は知らぬ事ではあるが、サラは既にむつみの言葉によって縛り付けられている。
 男と淫らな事がしたいのではなく、景太郎と淫らな関係になりたい。
 サラはそう信じ込まされているのだ。

 無論、むつみもそうするつもりは無かった。
 単に彼女が言った事が完全に錨となってサラの意識を景太郎に繋ぎ止めているだけ。
 それが淫気によって高められ、景太郎としかセックスで快感を得られないと思い込んでいるだけである。

 だが強すぎる思い込みは時に真実となり得る。

 今のサラは方向を完全に見誤っているのだが、その事までは素子は理解ができない。
 無意識にそう仕向けた むつみが気を失っている事もあって、フォローのし様も無いのである。

 「そうか……だったらもう良いかな……」

 だから素子は方法を示す。
 勘違いであるが示す。

 景太郎の事が大好きではあるが愛してはいないサラを貶めてしまう事に気付かないまま。

 期待に眼を輝かせたサラに微笑みかけながら素子を言葉を続ける。
 サラが景太郎とのセックスのみを愛してしまうかもしれない可能性に気付かぬまま。

 「今のままなら景太郎先輩と交尾はできん。
  だが、この方法を使えば上手くいくと今日中にまぐわう事が出来るやもしれん」
 「ホントか?!」

 勢い込むサラに微笑みで返す。

 通常ではない。
 そして引き返しようも無い。
 サラの様な少女が交尾をするというインモラルさも手伝って、二人の意識は性行為へと完全に傾いていた。

 「先にお前の肉体からだが景太郎先輩の精液を受け入れれば……多分な」




 どろりとした空気を部屋に沁み込ませ、肉の宴は続く。

 扶育を捲り上げたままの素子は顔と胸元、そして股間を精液で汚しつつサラと語り合っている。

 人一倍倫理に五月蝿かった素子はもういない。
 景太郎との愛の前では倫理など羽虫の餌以下なのだ。

 眼を輝かせてセックスへの期待を高めてゆくサラの横で幸せそうに横たわっているむつみ。

 その むつみのどろどろに精液で汚れている性器には、

 どういう訳か無理な性行為によって無残に裂けていた膣粘膜の痕跡は、完全に無くなっていた――




*******************************************************

 遅くなりました。Pixyでございます。
 マウスがコワレますた~~~(涙) 愛用だったのに~~~~~

 お陰でパッドのみで打っているので時間かかってしょうがないっス~~~
 だってマウス高いんだもん……

 前回の感想…というか、ご指摘かな? それをしてくださった方が『○で解かる』に反応してくださってますが、アレは『わかる』で合ってます。
 というか、“ソコ”が覚え込まされているから『すぐに解かる』って意味なんです。ああ、ひょっとして表現ミスかなぁ……

 叔父曰く、『履き慣れた靴だから足入れたら直解かる』。
 先輩曰く、『喰い慣れてるから口に入れたら直解かる』。

 だそーです。深過ぎるわアンタらっっ

 兎も角、次は遂にサラです。
 名前がサラだから表現が難しい彼女です。

 何故って?
 素子ちゃんだと『素子は更に』とか使えますが、『サラは更に』だと何か言い回しがヘンに感じるからですよ。

 アホ話ばかりでスンマセン
 ではまた次回……






[2319] Re[12]:Dotage ~妄愛~ <廿玖> (ラブひな)
Name: Pixy◆752cebb3 ID:335cc20b
Date: 2007/07/11 19:10


 子供というものは好奇心の塊なので、興味を引くものを目の前にすると眼が輝きを見せ始める。

 大人になって行けば行くほど知っている事が増えてゆき、また失望も体感してゆくのでその輝きは徐々に失われてゆく。
 反して子供は知らぬ事の方が多く、また知識を増やそうとする本能からか眼を見開いてその情報を少しでも多く取り込もうとする。だからその瞳の輝きは大切なものであると知れよう。

 これが古代であれば左程の問題も無い事柄――

 特に交尾…子作りについてはそんなに五月蝿くは無い。
 早婚が普通であった古代からしてみれば、現在の結婚年齢は完全に行き遅れなのであるし。

 だが、現在の倫理に照らし合わせると問題は大きくなってくる。

 瞳を輝かせて“その時”を待ち望んでいる少女はまだなのだ。

 サラ・マクドゥガル――

 美女美少女ばかりが住まい、男が一人しかいないというハーレムの様な館の中で最年少の少女である。

 その少女が、いくらスクール水着を着用しているとはいえ足をM字に開き、ついでに胸を剥きだしにして男を待っている。

 乳首は尖り、胸の鼓動にあわせてビクビクと痙攣するかのように小さく震え、その身体は汗と唾液でベトベトだ。
 口元は男の濃い粘液がベットリとこびり付いており、先程までの痴態を想像できてしまう。
 両の手は己の薄い胸を挟むようにして拳を口元に当てており、そんなところだけが妙に年齢相応で可愛らしい。

 だが、目は濁りながら潤み、
 口には薄い笑みが浮かんでいる。

 うるうる潤んでいる眼の意味は情欲。
 濁りは心の現われ。
 彼女は今、男に肉体からだを玩具にされたくて仕方が無いのである。

 そしてそれを許されているのはこの世で唯一、浦島景太郎ただ一人。

 男は彼しかいないから、彼に玩具にしてもらう。
 彼だけが男だから、メチャクチャにしてもらう。

 大好きではあるが愛してはいない。
 果てし無くLOVEに近いLIKE。だけどもサラはもう我慢ができなかった。

 じくじくとスク水の股間を濡らし、サポーターすら着いていないそこはぷっくりとしたヴァギナの形を浮き上がらせている。
 それに興奮しない景太郎であろう筈が無い。
 ギシギシと軋む音が聞えそうなほど反り返った肉の柱。肉凶器。既に数人の処女を奪い、その肉体からだの穴全てを奪い尽くしている恐るべきもの。
 未だ無事なのは なるとカオラの二人のみ。先程、本当の意味で処女を失った むつみも数日後には処女の部分を全てなくしている事であろう。

 そしてその番が、
 順番がついにやって来ようとしているのだ。

 これが胸をときめかせずにいられようか?

 対して景太郎のほうは何時も通りだった。
 

 正確に言えば、処女を奪う時にのみ妙に集中し切る……の方が適切であろう。
 性欲に心を塗りつぶされているだけかもしれないが。

 これが真冬であれば湯気でも立ち昇っているであろうサラの股間。
 そこに顔を寄せてクンクンと鼻を鳴らす。

 「わ……や、やぁ……」

 サラには珍しい、子供らしい悲鳴。
 流石にそんなところの匂いを嗅がれるのは恥ずかしいのだろう。

 だが、そんな彼女らしからぬ可愛らしさに景太郎の股間のブツは余計にいきり立つ。

 むつみとの情交跡をベットリと残した布団の上に這いつくばるようにしてサラの股間に顔をつけ、その幼い牝の香りを堪能する。
 初潮が始まったばかりであり、きついホルモン臭が鼻をつくが気にもならない。
 香りだけではついに我慢しきれなくなったのだろう、景太郎はかぷっと噛み付くように口を当て、ヴァギナの部分をジュルジュルと吸い始めた。

「うわっ、わぁっ、わぁあああっっっ」

 忽ち口から飛び出す嬌声。
 その瞬間を待ち望んでいたのであるから当然であろう。

 男の舌による快楽は想像していた以上に刺激的のようで、サラの身体はビクッビクッと若鮎のように大きく跳ねる。
 だが景太郎も慣れたもので、サラの太股に腕を絡ませ、尻を抱きかかえるようにして噛り付いた。

「わっ、ひぃ……っっ」

 眼が大きく見開かれて涙が溢れる。
 口も開けられ、切迫呼吸へと変わる。
 尤も苦痛などではない。
 余りの快感に肉体からだが付いてきていないだけ。

 ぷしっ、ぷしゃああ……


 「ひ、ヤ、やぁああああ……っっ」

 殆ど蟹股に近い体勢にされ、股間を舐め吸われていたサラの限界は思ったより近かったらしい。
 緩んだ下半身は性欲によって感覚を鈍らせられ、膀胱に溜まった液体をぶち撒いてしまう。

 その黄金の水の染みは素早くスク水に広がって行こうとするものの、景太郎の吸引力の方は更に強かった。
 じるじるじると下品な音を立ててサラの出した液体が舐め啜られて行ってしまう。

 「や、やだっ、やだやだやだぁ…っっ」

 恥ずかしくて顔を隠して身もだえするが止めてはくれない。

 尤も、サラにしても嫌等と口にはしているのであるが止めては欲しいとは思ってもいなかった。
 本音は恥ずかしい目にどんどんあわせてもらいたくて仕方が無いのだ。

 びくんびくんっと痙攣が始まり、それにあわせて噴き出す液体も断続的に途切れたりする。
 それに構わず尿道口の辺りに吸い付いた景太郎は、思い切り吸い、膀胱の上辺りを軽く押したりして刺激を送り排尿を促す。
 涙が溢れるほど恥ずかしく、また景太郎の飲尿という変態行為も辛くて堪らない。

 だが、“それ”が良い。
 実に“い”。


 サラはその怖気にも似た感触に表向き嫌悪しつつ、本音はもっともっとと催促を続ける。
 犯され、汚され、蹂躙される事を望んでしまう“今の”サラにとって、景太郎が行ってくれる如何なる行為も全てが感動へと繋がってしまうのだ。

 こんな世界もあったのか、
 こんな気持ちの良い事もあったのか、
 もっと気持ちの良い世界も在るのだろう。

 やがて一滴残らず景太郎によって飲み干されると、サラの痙攣も止まった。
 軽いアクメに達したのであろう。

 はぁはぁ…と荒い息を吐くサラの身体を見下ろすように全身を眼で嘗め回した後、景太郎はゆっくりとサラの水着の股間の部分を横にずらしてゆく。

 『ああ……見られる…っっっ!!』

 自由の利かない自分の身体を好いようにされるというシチュエーション。
 下半身は力が入らず、抵抗の気力も湧かない。
 このまま犯されてしまうのだろうか?
 初潮が始まったので、妊娠の危険はついてまわる。ひょっとしたら妊娠してしまうかもしれない。
 この歳で子供を孕ませられてしまうのだろうか?
 そんな事を考えただけで、サラの胸は

 このままペニスを入れてもらえるのか?

 と思わず期待してしまったサラであるが、肝心の景太郎は動きを止めていた。
 背後から抱きついていた素子が彼の行動を妨げていたのである。

 「……」

 ぼそぼそと彼の耳元に何かを呟いている素子。
 一瞬だけ驚いたように表情を変えた景太郎であったが、意外とアッサリ彼女のいう事を受け入れたか、コクンと小さく頷いて見せ、自分の右手小指を丹念に舐め始めた。

 ああ、そうだった。
 


 サラはその仕種を見て素子との会話を思い出し、小指を咥えて“準備”をしている景太郎を大人しく待つ。

 やがてふやける寸前まで小指を舐めていた景太郎がその行為をやめ、その指をサラに見せ付けるかのようにゆっくりと股間に持って行った。
 そのとした指先を、サラは張り付いたように眼で追ってしまう。

 ぷつ…


 「わぁ……」

 小指は、サラの幼いヴァギナに入っていった。
 感嘆の声が漏れる。
 感触でも視覚でも解かるが、自分の中に入ってくる異物。その感触は例え様も無いくらい異質だった。
 それでも不快ではないのたろう、太股をピクピクと振るわせつつも足を閉じようとはしない。

 ずず、ずずず……


 「わ、うわっ、うわわ……」

 ゆっくり、本当にゆっくりともぐりこんで来る指。
 年齢相応に細く狭いサラの膣道は、見知らぬ侵入者に対してきゅうきゅうと締め付けという防衛反応をとった。
 無論、それは侵入者を喜ばせるだけ。もっと入って欲しいのかといわんばかりに更に更に奥へと突き進んでゆく。

 「わ、わぁ、ひ…っ うわっ、うわ……っ」

 彼女の声は歓喜とも苦痛とも取れる色を見せている。
 期待している瞬間があるのだから仕方が無いだろう。

 やがて景太郎の指は、くしゃつと縮こまっている粘膜の壁にぶち当たった。
 膣口からの距離にして僅か指一本分もない、余りに浅い到着である。

 「…着いたか? そこを爪の先で傷をつけるんだ」

 遠くに聞えるのは素子の声。
 なんだか腹いっぱいに物を詰め込まれたような感覚を憶えているサラはそれに反応するどころでは無い。

 ぴりっとした刺激が感じた気がしたが、それも定かでは無い。
 痛みもあったかもしれないが、感じる暇も無かった。

 自分の処女膜に小さく開いている穴が広げられた…等と解かる筈もない。

 「…え? あ、あああああっっっ」

 突然、喪失感と寂しさを感じ、サラはまた声を上げた。
 ずるり…一気に指が引き抜かれたのだ。

 つつ…と糸が引き、小指と膣を短く繋いでいたがすぐにぷつりと途切れてしまう。
 それが自分と景太郎との絆のようで何か悲しかった。

 僅かに血のついたその指を景太郎はペロリと舐めてサラを恥ずかしがらせ、ずりずりとサラに這い寄っていきり立ったままの肉柱をその股間に押し付ける。
 再びドキンっと胸を高鳴らせてしまうサラ。

 だが、その幹の素子の手によって握られ、元々の太さも相俟って亀頭の半分も入ってはくれない。

 「だめだぞ? “浦島”先輩。そのまま入れたらサラが壊れてしまう」

 う…という表情をして腰を止める景太郎。
 ここら辺は相変わらず優しい男だ。淫獣のように性欲の権化となっているはずなのに、相手を思いやる心もちゃんと残っている。
 だからこそ彼女らも惚れていのであるが。

 景太郎は素子にペニスを握られたまま腰を動かし始めた。
 当然、亀頭はサラの中に入らない。

 ぷちゅ、ぷちゅっ、と亀頭の先とサラのヴァギナがぶつかり合うだけだ。
 それでも尋常ではない快楽がサラを翻弄していた。

 「あっ、はっ、んっ、うわっ、ひんっ、くぅぅっっ」

 入ろうにも入れない亀頭は乱雑にサラの股間を打つ事となる。
 柔らかくて硬くて熱い肉の頭は小陰唇をぶったり、肉芽を殴ったり、尿道口を突いたりと暴虐の限りを行う。
 それがまた苦しい上に気持ちが良くてサラは息も絶え絶え。

 この歳で嬲られる快楽を憶えているのは将来を心配しないでもないが、どうせサラは未来永劫肉体からだを任せる相手は景太郎に決めている。
 遊び感覚に極めて近い本気の気持ちでサラは景太郎以外の男に興味を失っているのだ。

 遊び感覚に近い…というのは、何かのマニアと同等の感覚が混じっているからである。
 何回も言っているが、サラは景太郎の事が大好きではあるが、まだ異性愛には至っていない。にも拘らずその精神は景太郎を男として求めているのだ。

 飽きが来れば別の事に興味が走るでろう一時期の深いマニア感覚。それでいてサラは他の男へと移る要素を全く持っていない。
 いや、持てないようにされてしまっていた。

 だから景太郎はサラの生涯唯一のセックスフレンドであり“伴侶”という異様な存在になっていたのである。

 びくんっ


 素子の手の中で景太郎の分身が一段跳ねた。
 僅かの交わりの間に景太郎の“間”を完全に習得している素子にとって、景太郎を瞬時にイかせる事は容易である。尤も、今更言うまでもない事であるが、素子の方にしても景太郎が本気で愛撫をすれば数秒と持ちはしないのであるが。

 何時もは彼に長く快楽を与えたいが為にわざと時間を掛けているのだが今回に限ってはそうは行かない。とっとと射精に導かねばもたない。

 手の中に収まるすべての範囲の性感帯に刺激を送りながら扱き上げ、その先端をぴちょぬちょとサラの股間…膣口に当ててもどかしい快楽を送り続けられていた景太郎は、やはりその新鮮すぎる秘肉の感触に持たなかったのだろうか、

 どぶっ、どぶっとぶっ


 と、数度目にも拘らず濃すぎる粘液をその鈴口から勢い良くぶち撒いた。

 ただし――

 「ひ、うわぁっ、あっ!! 熱っ!! ひっ、いぃいいいっっっっ!!!」

 小指によって僅かに口を広げた膣口の中にだ。

 どぶっどぶぶっ、ドぶっ、どぶっどぶっどびゅっ、びゅくっ


 「んっ、ひっ、あ、く、ンぁああっ、わぁあっ!!」

 何せ勢いが尋常では無い。
 そして量が普通では無い。
 尚且つ粘りが人間のそれでは無い。

 熱い…と感じるのは無論、錯覚。精液は体温より低いのだ。
 だが、処女膜を僅かに裂いただけというのに、その粘液は襞すら感じない幼い膣内を嬲りに嬲り、穢しに穢し、ベトベトに雄の臭いを擦り込みながら奥へ奥へと突き進んでゆく。
 ゲル状のそれにより清らかな膣内を犯され穢され蹂躙される。その何とも言えない感触が“熱い”のだ。

 小指の爪先程大きくしただけの筈の僅かの隙間を潜り込み、
 意思があるかのように子宮口に殺到してしまう。
 その門前の精液溜まりを満杯にし、留まり、全てを穢さんと蠢いているかのよう。

 その異世界的な感触に、サラは酔った。

 -頃は好し!-


 を待っていた素子は、ポケットから取り出した小さな袋の口を歯で開け、中から白い物を取り出すと、景太郎のペニスを薄紅く色づいた幼いヴァギナから離した瞬間に“それ”を突き込んだ。

「ンぁ?! わ、わぁああっっっ」

 忽ち腰が跳ね上がるサラ。
 情欲に心を支配されているとはいえ、皆の事を愛している景太郎は驚いて動きを止めた。

 素子が突き込んだのは、生理用品…所謂タンポンである。
 それもジュニアサイズのそれではなく、素子などの年齢が使うそれだ。

 やや太いだろうが、景太郎のペニスに比べればマッチ棒の様なもの。
 使った事等無い素子であったが、意外に手際よくアプリケーターを抜いてサラの膣にソフトタンポンを治めてしまう。
 ソフト…とは言っても吸収性が強い“多い日用”のやつなので、サラの愛液を吸って忽ち太さを変え、サラの股間から逆流してくる精液を押し留めてしまった。

 とは言っても、本来ならばぐっと奥まで入れるはずのそれを単なる栓として浅い位置で使用しているので異物感は強い。
 慣れた大人の女性でも、浅い挿入は異物感や違和感で悩むというのに、サラは完璧な初心者。堪ったものではない。

 「うわ、わぁっ、ひぃいっ、んぁっ、くぅうう……っ」

 当然の如くサラは身を捩って悶えた。
 しかし、どういう訳であろうか、それは妙に艶っぽく、不快さは余り感じられない。
 今だ続く射精に身を捩っている…それが一番しっくり来るのでは無いだろうか?

 事実、サラに苦しさはない。
 そして痛みも無い、異物感すら引いている。

 ただ、ひたすら“熱い”のだ。

 身体の奥…子宮の中からじりじりと焙られてゆく感が広がり、別のモノへと調理されてゆくような気がし、その快楽に身悶えを起こしているのである。

 いや、気のせいでは無いかもしれない……

 現に、精液溜まりを満たしている景太郎の粘液は、恰もゲル状生命体が如く子宮の中に潜り込み、そのやっと作られ始めた子供を育てる筈の聖なる場を淫猥に、汚らわしく別のモノへと清めて行った。

 涎を迸らせて悶え、
 布団を掻いて快楽に酔い、
 乳首を引き攣らせて荒い息を吐き、
 ぷしっぷしっと失禁し、股間を濡らし続けるサラ。

 既にタンポンの吸収力を上回って愛液が零れ出ているのだが、それでも粘度が高い精液はそのまま外へは出られない。

 、サラは自分の膣が精液を吸収しているような気がした。

 そんなサラに微笑みを向けてから、素子は景太郎の首に腕を絡みつかせる。

 「さぁ、“景太郎”先輩。
  サラはもう少し掛かるであろうから、その間は私“達”と愛し合おう。
  それにもっと膣内なかに出したいだろう?」

 耳たぶを噛みつつそう呟いた素子に対し、景太郎は押し倒すという愛の篭った返答でもって答えた。

 無論の事、素子のミニスカートの下はベットリと濡れ汚れ、何時でもインサートは可能だ。

 厚い塊を粘膜に感じ、素子は心底嬉しげな表情で未だ精液が滴る膣に無理矢理ペニスを捻じ込んでもらった幸運に悦びの声を上げた。

 まだ零時にすら程遠い夜。
 男女の汁が滴る淫猥な刻はまだまだ続くのだ。




―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
                           -盲・愛-
                            File:廿玖
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――




 んっ、んんっ、あ、あっ、ふっ、い、ンんっ、あふっ、


 自分のすぐ近くで切迫した声が聞こえている気がする……
 というより、間違いなく聞えてくる。

 うっすらと戻って来た聴覚がそれを真実だと伝え、蘇ってくる身体の感覚が自分と共に動いている“何か”を気付かせる。

 ぬるま湯の中で感覚は抗い難い心地良さがあるというのに、外部からの刺激がそれを許してくれない。
 沈んでいるような、浮きかかっているような不安定な位置で漂っているのは表現し難い心地良さがある。

 しかし浮いてゆくが解かる。。“彼女”はそれが何だか悲しかった。

 むにゅむにゅと自分の胸がやわらかい何かにつぶされる感触も、
 顔の周囲が熱い舌にべろべろと舐められるのも、
 アナルに指が入れられるのも、

 そして、下腹に何かがこすり付けられるのも……

ずの……っ


 「え……ンわぁ…っ?!

 唐突に刺激がリアルになった。
 いやそれどころか凄まじい快感が夢幻の感覚を弾き飛ばし、現実の快楽を叩きつけてきたのだ。

 やっと意識を完全に取り戻した むつみであったが、今現在に何をされているかはまだ理解しきれていない。

 「あ、あぁ…っ、お、起き、ましたか……む、むつみさん……」

 そんな彼女のすぐ目の前にはトロンと眼を潤ませている少女…普段は凛々しい美少女であるが、その実は自分の幼馴染と肉体関係にあり、彼に正式な彼女がいるというのにケダモノの様な肉の交わりを続けている美少女剣士、青山素子であった。

 「え…? え? モ、モトコ…さ、ンんんんっっっ??!!」
 「あは…むつみ、さん……す、すごい顔ですね……」

 ニッと微笑む素子であるが、むつみの方はそれどころではない。
 良く見れば彼女はまだ全裸であり、服を捲り上げた素子に胸を合わせる形で抱き締められている。
 身体をぴったりと重ねた状態でいるだけでも恥ずかしいのであるが、それだけではない。

 二人とも大きく股を広げており、今、むつみのヴァギナにはゴツゴツとしたぶっとい肉柱が突き刺さっているのだ。

 「あ、ああ、は、はぁ……っっ け、けーく…んンンンっっ!!」

 そう、景太郎が意識を失っていた むつみを犯していたのである。

 彼女には見えていないのであるが、足を広げた素子の綻んだ膣からは白っぽい女汁がボタボタと滴っており、素子とむつみのアンダーヘアに挟まれて動かされ、その恥毛よって泡立てられていた。

 ずぢゅ、ぬぢゅ、ぶぢゅっ、ぶぢゅるっ、


 「あ、はぁっ、ひぃっ、んひぃっ!」

 使いこなされた様な滑らかさであるが、膣に物を入れたのは今日が初めて。
 オナニーすらまともにやった事も無く、指を入れるなどは論外だ。
 そんな むつみの膣であるが、昼頃に初めてペニスを突き入れて処女膜を裂いた景太郎の肉柱は、昔から入れ親しんだ伴侶の性器の様。

 大トロの様なとろける味わいを景太郎に伝え、赤ん坊の掌のようにきゅっきゅっと締め付けて快楽を高めてゆく。
 そんな名器さをこの世で唯一味わえるが浦島景太郎その人である。

 しかし、彼の方はそれでころでは無く、秘肉を味わう以前に、余りの快楽に腰の動きが止まってくれない。
 ごりごりと亀頭のカサで肉襞を削りまわり、蜜壷を抉る事に勤しむのみ。
 ボタボタと滴る汗は、自分の“上”に重なっている素子の背に零れ滴り自分にはもらえず、膣道でもってペニスをゆっくりと味わいたいというのに、その自分の名器さ故に景太郎の動きを緩慢にしてくれない。

 尤も、景太郎が今まで抱いた女性全員が何かしらの名器であり、景太郎はそれらを自ら鍛え、そして鍛えてもらっている。
 単にさっきまで処女であった名器を味わってその征服欲に浸っているに過ぎない。

 そんな景太郎に僅かながら膨れる素子。

 むつみの肉体からだに夢中になられているのに嫉妬しているのだろう。

 だが、景太郎はそんな贔屓をする男では無い。

 ぶぢゅ……
 ぬ゛ぐぅ……っ ずぶぢゅっ、


 「あン……」
 「は……ぁあぁっっ♪」

 突然、むつみから引き抜いて素子に突き入れる。
 ぬるぬるしている素子の性器だ。景太郎のペニスは何の抵抗もなく滑り込んでしまう。
 それでいて抜かれようとすると全ての襞がしがみついてくるのだから始末が悪い。男としては腰に電気が走るほど気持ちが良いのであるが。

 抜かれた むつみの方は虚無感が湧き上がって泣きそうになっていた。

 おなかいっぱいに詰め込んでいた肉柱が消えたのであるから空虚になるのも当然であるし、引き抜かれたものは景太郎のペニスなのだ。辛く感じるのもまた当然である。

 ぶぢゅ、ぬぢゅっ、ぶぢゅっ、ぬ゛ぢゅっ、


 乱雑に、そして軽快に腰を使う景太郎。
 流石に初めての女であり、景太郎専用にカスタマイズされ尽している肉体からだを持っているだけはある。
 如何様な角度で突き込まれようとも、肉カサでひっかかれるポイントは全て性感帯。
 井戸のポンプを想像させられるほどに、ぐぼっぐぼっ下品な音をたてつつ愛液がペニスのエラに掻き出されて布団にどんどん零れ落ちる。

 むつみが悔しさを感じるのも当然だろう。彼女の上で素子が多幸感に満ち満ち溢れた素晴らしくいやらしい顔を曝しているのだから。

 だが、その頂上に至る直前に、

 ぬ゛ぢゅ……
 ぐぐ……っ ぶぢゅう…っっ


「あぁ……?!」
「あ…はぁ……っ♪」


 素子の膣口を綻ばせたままにして むつみの膣に差し込んだのだ。

 待ちに待っていた分、これでもかっ! と締め付けを強くしている。

 素子のヴァギナなひくひくと震えつつそのポッカリと開いた穴を塞いでゆく。
 外気に触れて一瞬で冷えたように感じるのはペニスの熱が抜けたから。或いはギリギリの線で途切れたアクメの道を捜しているのか。

 快楽を必死になって追いかけ、目の前のむつみの身体を無意識に掻き抱く。
 足すら絡みつけてむつみに追い縋る様は幼娘のように見えなくもないが、求めているのは父性や母性ではなく雄。引き抜かれた肉の柱を追っての事だ。

 弟妹の多いむつみはそんな素子の行為が可愛くてならない。
 尤も、下腹をズンズン突き上げてくるペニスに力が入らず、犯されるがままになっているので抱き締めてやる事もできないでいる。

 ずぢゅ…
 ぶぢゅっ ぬ゛ぐぐぐ……


 「あぁ……っっ」
「ふぁ…あああっっっ!!!」

 だが、またも むつみの肉穴からそれは引き抜かれ、目の前の女に入れられてしまった。

 飢え求めていた分、素子の喘ぎは大きい。

 むつみを抱き締めた腰を擦り付けるかのように反らせて汗と涎を迸らせる。

 目に薄っすらと浮かぶのは歓喜の涙。
 それほど嬉しいのだ。景太郎に犯されるのが。

 ずぢゅる…っ
 ぶちゅっ ぶぢゅ…っっ


 「え…? あぁ……」
 「ひン…っ♪」

 しかし別れは唐突だ。
 突きこんで数度のピストンの後、素子の膣から引き抜かれてまたも むつみの中。

 ずぐぅ…っっ
 ぬぢゅっっ


 「や、やぁ…っっ」
 「あ、くぅ……っっ!!」

 しかし入れ替えは早かった。やはり数度のピストンの後にむつみから素子の中へ。
 
 ずぐ、ぢゅぐっ、とまたも むつみから素子、そして素子からむつみへと目まぐるしく入れられる。
 最早ピストンという行為は、二人の間を行き来するという行動へとなっていた。

 「んぁああっっ あふっ、ひンっ! あ、は、あぅうっっ!!」
 「ひぃ…っ! くぅ…っ はぁはぁっ、あ、はぁあああっっ!!」

 もう自分が犯されているのか、相手が犯されているのか解からない。
 可奈子としのぶのペア等で3Pをやり込んでいる景太郎は、相手の膣の間を行き来する事に慣れていた。

 性欲と精液の減退を知らない景太郎は、四人の組み合わせで様々な3Pを経験しており、“下付き”や“上付き”のペアであろうと平等に挿入が行えるのだ。

 学業よりかなり優秀であるのはご愛嬌。
 女性らをめろめろにしてその肉体からだを好き放題に出来るスキルの高さは異常だ。
 僅か一二ヶ月の間にそこまで技術を高められたのには誰もが天才という言葉を浮かべたほど。情交の天才というのはあまり声を大きくして自慢できないであろうが……

 兎も角、腰を擦り付けあって快感に咽ぶ様は淫猥や淫乱等といった言葉では一括りに出来ないほどで、普通の男性ならば目にしただけで射精してしまいそうだった。

 当然ながら女が見ていてもアクメへと導かれてしまうだろう。

 現に、横で転がされてそれを見せ付けられているサラは何度もアクメを迎えていたのだから……

 「あ…だめ……っっっ」

 びくっ、びくびくびくっっ


 またイった。
 僅かの間に既に十回は超えている。恐るべき感度の良さ………いや?

 『ああ…出て行かねぇよぉ……
  けーたろのせーえき…ぐにゅぐにゅしてるぅ………』

 膣内に残された精液が、サラの心身をどんどん蝕んでいっているのだ。

 身体を投げ出すように横たわり、ただ腹の奥から拡がってゆく感触に身を任せるのみ。
 じわじわと低温で蝋の様に煮溶かされてゆくような錯覚すらある。それでいて抗い難い…抗えない快楽と幸福感があるのだから始末が悪い。

 更に性質が悪い事に、肉体からだの飢えは残り続けている。

 自分で慰めようにも刺激が強過ぎて自分で触れる事はままならず、ひたすら素子とむつみの狂態を見てその“おこぼれ”をいただくのみ。
 視覚だけでイけるのはたいしたものであるが、それこそが肉体からだの変貌である事にサラは全く気付いてはいない。

 股間を本気汁と失禁した尿でもってドロドロにしているサラの前で、二人の美女美少女は最後の時を迎えようとしていた。

 どぶっっ


 「あぅ…っっ!!」

 先ずは素子。
 膣奥の奥、異様に口を開けて飢え狂っていた子宮の中の壁を叩いてもらった。

 どぶっ、どぶっ


 「はぅ…っ!」

 続いてむつみ。
 まだ少し硬い子宮口の前を完全に穢してもらい、汚された事に感謝したのか口を緩めた子宮の中へと粘液をなだれ込ませる。

 どぶ、どぶっ、どぶっ、ぶしゅっ、


 「あ、あ、ひ、いっっ」
 「ん、ん、んぁ、ふぅ…っ」

 また素子、
 そしてむつみ、

 人外の射精量を誇っている景太郎だから出来る、入れ替え射精。
 二人の膣をドロドロにし、押し付けあっている恥丘の間に付き入れて最後の射精をピストンで持って促した。

 「あっ、あンっ、くぅうう……っっ」
 「やン、あぁああ……っ あは…」

 素子が喘ぎ、むつみがよがる。
 ぐりぐりと、ごしごしと、二人のヘアの間を行き来するペニス。
 縮れている二人のヘアは、景太郎の肉柱を拭う事によってドロドロになって肌に張り付いている。無論、気にするものなどいないのであるが。
 最後の射精によって美女美少女二人の腹は汗の混ざった精液で清められており、ぬちぬちと擦り合わせてその感触を愉しませていた。

 どちらとも無く唇が重ねられ、抱きあったまま身を起こす むつみと素子。

 景太郎と行っているねちっこいディープキスではなく、鳥の啄みの様な軽いもの。
 それでもそれは首から上だけの話で、大きく張り出ている二人の胸は押し合わせられており、乳首同士が擦られている。
 下半身も擦り合わせたままで、捲り上げているだけの素子の衣服は、精液と愛液と汗で汚れきって薄黄色い染みが着いていた。無論、彼女は誇らしげはあるが。

 先程までの気のおかしさは何処へやら。
 むつみの心は落ち着きを取り戻し、性的な意味では無く、何時ものむつみの楽しみ方でキスを堪能していた。

 素子同様、景太郎に事により、自己を確立できたのかもしれない。
 
 つつ…と唇が離れると素子に見えたのは むつみの笑顔。
 心の歪みもあり、性的に赤くなってはいるが、さっきまでの破滅へと向うような仮面が如き笑顔ではなく、彼女の良く知るむつみのそれ。
 なるに景太郎の横の場所を譲った以前のむつみのそれであった。

 「良かった……落ち着けたんですね。おめでとうございます」
 「はぁ…? 良く解かりませんけど……ありがとうございます」

 この場合の祝福は無事に“こっちに側”に来れた事を意味する。
 素子とて既に以前の清らかさは無いのだから。

 当然ながら今一つ解かっていない むつみはハテナマークの大行進。
 それでも礼は言えるのだから“戻った”と称しても間違いではあるまい。

 ゆるゆると身を離すと、二人間に糸が紡がれた。
 景太郎の出した精液と汗が混ざったものだ。
 下半身のべたつきは更に酷い。何せ精液と汗と二人の愛液が混ざったものがヘアによって泡立てられて広がっているのだから。

 むつみは自分の鳩尾から胸までを右手で撫で上げ、ぬちょっと絡みついた粘液を手に掬い取った。
 しばしトロンとした目で眺めていたのであるが、それを口元に運び、

 「ん…ちゅ、ちゅ…れろぉ……
  あは…美味しいですねぇ」

 と実に嬉しそうにそれを舐め始める。

 ――むつみの変貌は終了していた。

 景太郎を犯したときの破滅的なそれではなく、素子らと同じ歪んだ多幸感を分かち合える歪み方。
 決して後戻りをするつもりはないのであるが、その日が来たとしても後ろという位置を完全に見失っている歪みだ。

 そんな風に人生を棒に振ってしまっている むつみを目にし、素子は

 「さて…」

 ふ…と口元をほころばせて景太郎へと眼を向ける。

 今だいきり立ったままの股間をしているのに彼が黙っていたのは息を整えていたからだ。
 精力と精液、そして複数の女性らを犯し続けられる無尽蔵ともいえる体力を持つ彼であるが、流石に呼吸が乱れればそうは続けられない。

 ビクンビクンと跳ねている肉柱に心がとろけかかる素子であったが、コースのメインデッシュはまだ続いてしまうのだ。
 もう少しくらいは我慢をせねばなるまい。

 「さぁ、景太郎先輩……」

 その手を取り、彼を促す。

 「そこにもう一人、可愛いがいるぞ」

 そう――

 景太郎が向くよりも前に、むつみが微笑みかけている視線の先。

 膣内おなかを空かせている子猫サラが一匹……




*******************************************************


 どうも、Pixyでございます。

 まずはお詫びから……

 スンミマセン。サラは次になってしまいました。
 嗚呼…シーンを削り切れなかったですヨ……

 どんな話を書くよりギャグとエロスは難しい……と叔父に良く言われてますが、ホントそーですね。
 何せ表現してたら現実とのギャップに苦しむんですもん。

 皆様も、素子ちゃんのよーな無茶をやっちゃ駄目ですよ~? ……って、フツーやらないか………

 で、では、次でやっと むつみ&サラ編が終わります。
 なるたけ早めに仕上げますのでご容赦ください…いやホントに。

 それではまた……




[2319] Re[13]:Dotage ~妄愛~ <卅> (ラブひな)
Name: Pixy◆047ad565
Date: 2007/07/15 22:12


 ―― 一体誰が想像したであろう?

 淫臭を放ち、どろりとした眼差しで男を誘っているのは、紛れも無く未通女おぼこ
 今だに処女膜を持ちながらも、その奥に精液を注がれた乙女なのだ。

 男を知らないだけではない。
 その年齢も、考えられないくらい低いのだ。

 色気というものは年齢からくると思われている。
 かもし出されるものは経験から滲み出てくると思われている。
 それなりの数の男に抱かれないとそれを出せないと思われている。

 しかし、抱き締めたり抱きしめられたりした事はあっても、深い意味で抱かれた事は無く、
 年齢的に言っても十代に入ったばかり。ぶっちゃけて言えば初潮が来たばかり。
 それだけではなく、恋愛感情すら持っておらず、愛おしい相手を想って己を慰めた事もないのだ。

 つまり、この少女は性的なものに開花していないというのに、性的な意味で男を求めてフェロモンを放っているという事となる。

 それは想像の外側のレベル。
 そんな年齢の少女から凄まじい色気を感じる事があるとは、誘いを受けている青年の頭にも思いも寄らない事であった。

 スク水が胸まで下されて、育ち切っていない薄い胸は剥きだし。
 それでも乳首かカチカチにしこっており、オナニーの経験すらない少女の感度の良さを物語っている。

 股間の部分はずらされているだけであるが、それでも涎を垂らしてひくついている無毛の肉亀裂が何ともいえない。
 完全に脱いでいない理由は少女の尻にある痣が原因であり、それを曝す事が恥ずかしいのと興が冷めるのを防ぐ為、

 一応、少女の名誉の為に言っておくが蒙古班ではない。
 良く解からないパンダの顔の様な模様の痣だ。彼女はこれを人目に曝したくないので常にスク水を着用して入浴していたのである。

 そんなあどけない少女であると言うのに、トロンとした眼を向け、気だるげに身を起こす所作は色気に満ち溢れており、
 本人にその気は皆無であろうが、凄まじいまでのセックスアピールが発せられていた。

 当然、この場に唯一いる男性……浦島景太郎はその誘惑に耐える術が無い。

 いや、“以前”の彼であれば『一時の気の迷いだ!』と一瞬で妄想を振り切れだであろが、現在の彼には無理な話。
 単なる誘惑であるならば兎も角、明確な性行為の求めであり尚且つ彼女の事“も”愛している。
 セックスという行為が港の絆を深めてゆく事を思い知らされている景太郎は既に倫理という錨を無くしているのだ。

 搾れば滴るほどの汗でシャツを濡らし、ジッパーの奥から淫水焼けを起こしている黒々とした肉柱を曝した姿の彼。その様はまるで夜の陵辱魔。
 だが、この場にいる二人の美女美少女や、既に彼が貪り尽くしている二人の少女はその陵辱行為を待ち望んでいた。
 そして、目の前で足を開いて肉体を蹂躙される時を待っている少女……サラにしてもだ。

 年齢的に言えばこれから行われるであろう行為は間違っているし、倫理的にも法律的にも間違っている。
 学校等で習うより前に心に刻まれている“してはいけないコト”であったのだが、既にその足枷からサラは解き放たれている。

 男と交尾をするのは当然の事。
 無理にしないのは頭がおかしい。

 完全に書き換わっている倫理は、そうやってサラを急かしている。

 早く早く早く早く

 入れて欲しい。汚して欲しい。出して欲しい。孕まして欲しい。

 歪み過ぎて遠目で見れば真っ直ぐに見えてしまうほど、彼女の観念はバネの様に捻くれていた。

 その歪みの念に後押しをされ、景太郎の呼吸は整いを見せ、二人の美女美少女を犯しぬいた折の疲労も一気に回復した。
 サラには大きすぎる性器からポタポタとカウパーを垂らしつつ、這いずってサラににじり寄って行く。

 その行動、正に淫獣。

 どれだけ嫌がろうと、どれだけ抗おうと、肉体からだ全てを貪りつくされ、後に残るのは口や尻から精液を逆流させて虚ろの目で転がっている自分……
 サラは、そんな夢のような未来を夢想し、期待に胸を高鳴らせて愛液の分泌を増加させる。

 帰れない。戻れない。戻るつもりも更々無い。
 飢えた牝を自覚したサラは、最早後戻りのできない別のモノへと変貌していた。

 滴り落ちるカウパーの香りが鼻をつき、余計に気が急くサラ。
 どうせならまたフェラチオをして顔中を精液でベトベトにしたいものであるが、飲まされるのもいいかもしれない。
 イマラチオという行為は無理矢理やらされるフェラチオだそうだが、それをさせられるのもまた良いだろう。

 景太郎は相手の嗜好に合わせて抱いてくれる。

 だからキツネや可奈子は本物のレイプ手前の乱暴さで抱かれ、しのぶや素子は奉仕させられたり辱めを受けさせて

 だからサラが陵辱を求めるのなら、景太郎は陵辱行為をしてくれるだろう。
 それも、かなり濃厚に……

 それを期待して、サラは腰をくっと上げて濡れた股間を強調しているのである。

 が、そんな愛おしい陵辱魔が少女の触れるより前に、

 「ちょっと気が早いな。
  まぁ、その気も解かるがな」
 「あらあら……ダメですよ~ サラちゃん」

 二人の美女美少女がサラの身体に絡み付いてきた。

 「え?! は、離して~!!」

 何時に無く女の子口調。
 自分の事をあたしとは言ってはいるが、喋り方はどこか男の子っぽいサラにしては珍しい事だ。

 そんなじたばたと身を捩るサラを見、むつみはクスっと口元を綻ばせる。

 「ダメですって。
  サラちゃん、一つ忘れてますよ~~」
 「な、何がだよぉ」

 サラは半泣きだった。
 それだけ焦っているのであろうが、やはり焦りは禁物。よろしくない。

 「ほら、これだ」
 「え? あ………」

 素子がサラの股間から何かを摘んでみせる。
 それが目に入ると流石のサラも頬を染めて黙ってしまった。

 今だにサラの股間にはタンポンが詰まったままなのである。

 素子はくすくす笑いながらサラの股間に顔を寄せ、舌先で擽るようにねっとりと蜜を吸った紐を口に含み、歯で噛んで引っ張り始めた。

 「あ、ああ……っっ」

 身体を反らせ、爪で布団を掻きながら悶えるサラ。

 抜かれてゆく感覚がクるのか、
 タンポンの表面で膣内を拭われるのがクるのかは定かでは無いし、サラ本人も理解は出来ていまい。
 本来であれば子宮の前まで押し込まれるタンポンは、精液を止める為だけの単なる栓として使用されていた。
 よって浅い位置に刺されていたので抜くのは早い。

 だが、素子は意地の悪そうな顔でニヤリとしつつ、真珠の様に白い歯でもってゆっくりと抜いてゆくのだ。

 ちゅぽ…


 引き抜かれたタンポンは愛液を吸ってぷっくりと膨らんでおり、その先端は僅かに血が滲んでいる。
 それが処女膜を裂いた際に膣奥を傷付けたものか、或いはサラの径血かは不明であるが、素子もむつみも気にもしない。

 栓が抜けた事によってとろりと流れ溢れてきた景太郎の精液。

 だが、その白濁の粘液がサラの尻を伝って布団に滴り落ちる前に、むつみが顔を寄せて尻の方に流れた粘液を舐め上げて飲み啜る。

 「あは……ちょっと酸っぱいですね」
 「やぁン…」

 サラの愛液と混じり合った所為であろうか、景太郎の精液はやや酸味が感じられた。
 尤も、飲めない程でもないし、これはサラの膣奥で温められたホットミルクならぬホットザーメン。不味い等感じさせる味蕾は存在しない。

 ちゅうちゅう、れろれろと吸って舐め、
 舌を尖らせて器用にサラのヴァギナに突き込み、襞にすらなっていない粘膜壁を舌で嬲りまわる。

 ひくひくと身体を痙攣させているのはサラの感度が上がっている証拠。
 こんな小さな少女の肉体からだを弄んでいるという背徳感に塗れており、むつみの官能を高めてくれる。

 不思議な事に精液の味は直に消え、溢れ出てくるのはサラの愛液のみ。

 注ぎこんだ精液の量からしても、バックフローした精液の量が少なすぎるのだ。

 

 睦は気付いておらず、精液が飲み足りないとサラの下腹を押して啜っていたりする程度。
 そんな圧迫感に悶えているサラが目に入ってはいるが、素子の方は不思議とは思ってはいない。

 既に

 どろどろと白っぽい本気汁が舌先に刺激を送り、むつみの味覚を存分に愉しませてくれている。
 素子はそこには混じらず、暇を持て余しているであろう愛おしい男のペニスに舌を這わせて清めてあげていた。

 息を荒げて待てない待てないと肉柱を反り返らせている景太郎。

 ちゅっちゅっと鈴口に接吻くちづけを贈り、むつみの背中を突く。

 あらら…とサラを嬲るのを止められた むつみは、残念そうに銀の糸でヴァギナと自分の唇とを結びながら顔を離し、素子と頷き合ってサラの身体を左右から抱き上げた。

 小柄で軽いサラの身体は、見かけ以上に腕力のある むつみと鍛えてた強さのある素子によって軽々と抱え上げられてしまう。

 「それでは…」
 「いきましょうか~」

 座り込んだ景太郎の上に二人して抱えたサラをゆっくりと下してゆく。
 むつみがサラの割れ目を押し開き、素子が膣の穴を広げて景太郎のペニスに押し当てる。

 「わぁ……熱い……」

 溜息の様な声が漏れた。

 その亀頭が、肉凶器の先が狭い性器に食い込んでゆく。

 先程の狭さから考えてみても、絶対にはいる太さでは無い景太郎のペニス。
 だが、これはどういう事であろうか?

 サラの目に、
 そしてそこに視線を注いでいる素子とむつみ、そして入れようとしている景太郎の目に、ぶっとい肉柱が入ってゆくのが見えている。

 健気にも膣口をいっぱいに大きく広げ、血管が浮いた生殖器をどんどん飲み込んでゆく。
 身体の小ささもあってそんなに奥行きがあろう筈も無く、かなり根元が残っている。

 それでも、

 ぶつり……と何かを貫いた感触が腹の奥からサラに伝わってきた。

 小指の先で少しだけ広げられていた粘膜の壁は、ぶっとい景太郎の肉柱によって引き裂かれ、遂にその奥への侵入を許してしまったのである。

 だがしかし、文字通りの処女地であり、神聖なる筈の子宮口の前は先にザーメンという毒がぶち撒かれており、暴虐者に抗う術は持っていない。
 毒でもって抵抗力を奪い、しかるのち殲滅する。古来の戦法であるし間違いでもない。
 そして、犯されている筈のサラの方も、そのような蹂躙行為を疎ましく思う事もない。

 進行される前から属国であり、国土を荒らされる刻を心待ちにしていたのである。

 だから、幼い性器を陵辱したペニスに対し、サラは口では言い表せない感動を与えられていた。

 「サラ…」
 「サラちゃん…」

 二人が目に涙を浮かべてサラを見つめた。
 痛々しい眼差しではない。

 それは感動の色だ。

 「あたし……」

 身体から二人の手がはなれ、自由となったサラの両手は目の前の男に、
 自分の肉体からだを串刺しにした男の身体に巻きつかせ、できる限りの力でもって抱き締めた。

 「あたし…オンナになったんだ……」

 初潮が来た時より驚きが深く、祝福も感動も大きい。

 セックスができた。
 処女を男に捧げられた。

 自分が女として男の慰み者に日が来るとは想いも寄らなかった。

 しかしこれは現実。

 自分はこれから景太郎のモノ。
 好きなだけ犯され、孕まされ、子供を産まされる日もそう遠くないだろう。

 サラは、腹の奥でぐぢょりと蠢く逞しい肉柱を愛おしく想い、
 女として生まれた事を天に感謝していた。

 ――それが、どれだけ間違った道であるか解かる訳も無く……




―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
                           -盲・愛-
                            File:卅
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 実のところ、サラは当然として可奈子やしのぶと性交渉を結ぶのにも問題がある。
 いや、確かに可奈子は義理とはいえ妹。妹と毎日のように濃密な性行為を行っているというのは問題が無いという訳では無い。だが、そんなは別にどうでも良い。
 多人数と行為を結んでいたとしても、“一般の”倫理には問題があるのだが、左程でもない。

 それより問題なのは三人の年齢なのだ。

 ちょっと前までの一部の都市では結婚可能年齢が十五だった(本当にちょっと前まで)。
 しかし、今は大体が十八。理由も様々であるが、子供の“子供”を家族が支えきれないという理由も大きい。核家族化の所為だと思われるがそれはさておき。

 ともあれ、未成年での性行為は“結婚を前提に”というスタンスでなければならないのが現実である。
 それだって十八歳未満は“一応”ダメである。

 つまり、サラはもとより可奈子もしのぶも十八歳未満。この年齢での性行為は勿論犯罪なのだ。
 尚且つ、この三人の年齢を彼女らに手を出した景太郎は知っているのだから大変である。
 これが法の番人や教育関係者,PTA等の耳に入れば、『未成年だと知っているのにも拘らず淫らな行為を行った』として景太郎は手が後ろに回ってしまうのだ。

 可奈子らから言えば余計なお世話である。
 しのぶにしても、可奈子にしても、恋焦がれていた景太郎に抱いてもらっているのだ。
 そりゃあ、レイプとかSMとかも多いが、それは望んでやってもらっての事。とやかく言われる謂れは無い。
 特に可奈子は長年求め狂っていた兄に妹として接してもらえ、女としても扱ってもらえ、更にはその愛おしい彼の腕の中で眠り、目覚める事が出来るというパラダイスを味わっている。

 これを邪魔するものは彼女らから言えば鬼畜か悪魔であろう。
 例え世間一般的な論理で言えば景太郎の所業の方が鬼畜だとしてもだ。




 実際――

 ぐにゅぅうう……


 「あ、あはぁああ……っっ」

 身体を反らせて悶えるサラ。
 足はカエルの様に力なく投げ出され、それでも両の手は自分を犯している男を掻き抱いている。

 上は中途半端に脱がされ、の部分はズラしただけのスクール水着姿。
 倒錯的というか、一種マニアックな格好で犯されている彼女の顔は、苦痛とも取れる表情を見せていた。

 そう、実際に浦島景太郎という大人の男に犯されているのだから――

 ぢゅるるる……


 突き入れる時と同様に、引きずり出される時もゆっくりと長いストローク。
 素子らとまぐわっている時と違い、処女を破ったばかりのサラの肉体からだを景太郎は優しく丁寧に扱っていた。

 そんな彼の気遣いに微かな嫉妬を感じなくもないが、彼らしい優しさを感じた嬉しさの方が強い。
 だから二人は邪魔をしたりもせずに、目の前でどんどん処女膜を研磨されてゆくサラの姿に強い興奮を覚えて己の身体を弄っていた。

 むつみはとっくに全裸であるが、素子は未だに衣服を着たまま。
 捲り上げられたノースリーブのシャツ。右手を差し入れている所為で捲り上がっているミニスカート。少女と青年の公開交尾を眺めつつそんな姿でオナニーをする様は凄まじいほどいやらしい。

 尚且つ二人の身体は愛液と精液でドロドロで、股間からも精液が逆流しており、はっきり言って正気を疑われそうな姿だ。

 だが、二人にとってその姿は誉れ。
 愛おしい男に清めてもらった証。
 何をどう嫌がれば良いのか検討もつかない。

 実際、膣内からフローバックしてくる白濁液も汗と混じって流れ滴る精液も手に掬い取って美味そうに舐めている。
 二人にとっては美味くて“旨い”ものなのである。

 当然と言うか何と言うか、精液を掻き出す時も膣内に指は入れていない。
 そこは彼“だけ”の使用場所なのだから。

 膣とは何だ? と問われれば、浦島景太郎がペニスを入れて精液を吐き出すところと答えるだろう。
 或いは、彼の子供を送り出すところと答えるかもしれない。
 どちらにせよ自分らは彼だけの為の存在なのだから問題は無いだろう。

 そんな風に股間を撫でるだけのもどかしいオナニーを続ける二人の前で、サラはどんどん景太郎の手によって変えられていった。

 ずぢゅぅうう……ずぢゅる、
 ずぬ゛ぬ゛ぬ゛ぬ゛ぬ゛……ぐぢゅっ、


 「うわ……うわっ、わぁあああ……っ」

 深く深く、ゆっくりと抉り、
 腰を捻って早めに抜く。
 その際に肉カサの上部で未発達の肉芽の裏側を掻く事も忘れない。

 入れる時、抜く時に角度を変え、大きくゆっくり荒々しく小さな蜜壷をかき回す。

 処女膜は研磨され、景太郎の肉柱の形を憶えこまされてゆく。
 肉襞というにはあまりに低く、どちらかと言えば柔肉の“皺”。それをまきつけて膣という内臓から引きずり出されるペニスは正に肉凶器。
 そんな凶器を使ってサラという幼い少女を穢し抜き、犯しまくる景太郎はケダモノだ。

 だが、そんなケダモノに与えられているのは存外な圧迫感。そして快楽。

 見た目以上に筋力膂力のある景太郎にとってもサラの身体は軽いもの。
 サラの足を掴んで彼女の身体“そのもの”を上下させてピストンを行っている。

 大きく広げられた股が痛々しさを感じなくもない。
 大きく割り広げられ、ぶちゅ、ぶちゅ、と愛液を吐きながら膣口いっぱいに肉柱を注挿されている様は健気さ故に涙を誘う。

 サラの身体が平均より小さな事もあって、サラを乗せたまま腰を突きこんでいる景太郎がより大きく見えてしまう。
 大柄の男に穢されている様は官能的の一言であり、背徳に満ち溢れた美しい光景でもある。

 嫌がる少女を犯すのであれば憎しみや怒りも湧こうが、双方が一定以上の好意を持っている所為か、或いは捻じ曲がった肉体関係を普通だとしている素子らの方が変わり過ぎている為なのか、微笑ましくて祝福の気持ちしか浮かんでこない。まぁ、羨ましいと思ってもいるが。

 そんな二人の熱いまなざしを受けているのを知ってか知らずか、サラを嬲る景太郎の熱は上がる一方。

 ぬぢゅる……ぐぐぐ……ずぐっ、

 「んあっ?! あ、くぅうう……んンっっ!!」


 景太郎はサラの左足だけを抱え上げ、股を裂く様に広げて挿入角度を上げた。
 当然ながら突き込まれる肉柱の角度が変わると挿入間も感度も変わる。

 サラは対面測位というアクロバティックな体位で犯され始めた。

 景太郎の肉体からだに慣れている素子でも急な体位変化…それも挿入したままでの変更はキツイ。
 それが処女であったサラの身体なのだから彼女とて堪ったものでは無いだろう。

 だが、彼女はわりと衝撃が少ないらしく、余りの不安定さと腹の奥から響いてくる甘い快楽に酔いつぶれているだけのようだ。

 考えてみれば、爪先で処女膜の隙間を大きくされた上に精液を注ぎ込まれてタンポンで蓋をされて放置されていたサラだ。
 精液の感触に悶えている間中、素子とむつみの絡みを見せ付けられ、一通り出し終わってから件の二人に嬲られつつ初体験を迎えたわけで、良く考えてみるとこれ以上は無いというくらい衝撃的な初体験だったのだ。今更ラーゲ変更で驚かないのも無理は無いかもしれない。
 まぁ、彼女の順応力もあるかもしれないが。

 兎も角、体位を代えまくって幼い肉体からだを思う存分味わっている景太郎。
 外道という言葉でもって表現する事に誰も異論は無い行為である。
 だが前述の通り、彼は相手に欲求に合わせた性行為で抱く。だからこの乱暴で愛の深い“交尾”もサラの強い望みなのだろう。

 現にサラの目は虚ろではあるが気色に富み、全身は愉悦によって力無く、硬質な音でも立てそうなほどに乳首は尖りきり、膣は哀れさを感じられるほどこじ開けられている。
 ずぢゅ、ぬぢゅる、とこの年齢の少女ではあり得ない程の泥濘の音を立てて肉柱の出入りを容認しているその様は交尾中毒者のそれ。

 僅かの時間に彼女はセックスという行為に酔い痴れていた。

 ず、ずぢゅ、ぬぢゅっ、ぶぢょっ、ぷぢゅっ、


 「あは…は、は、はぁ、ン、んん、はぁっ、くふぅっ」

 余りに浅い為にストロークは短め。
 それでいて年齢度外視なピストンでもって激しく犯され始めたサラであったが、力なく指を噛んでその快楽に悶えるのみ。
 痛みなど欠片も無く、またヴァギナも無茶な扱いはされていない。

 いや、行為そのものは無茶なのであるが、“今”のサラのヴァギナにとっては決して無茶等ではないのである。

 どぶっっ


 「は……っっ あっ、ああああっっっ!!

 内壁に叩きつけられたザーメン。

 ぬるく、生臭く、汚らしい雄のエキス。
 その黄色みがかった粘液に潜む精子に卵子が捉えられ、嬲られると子供を孕まされてしまう。

 そう、

 その衝撃にサラの小さな身体は震え、ぷしっぷしっと尿を漏らし、意識が飛んで感触に狂った。

 度ぶっ、どぶっ、どぶどぶどぶどぶどぶ………


 注ぎこまれる。
 精液を溜められてゆく。
 子宮の前は既に穢し尽くされ、子宮内部も限界だ。

 サラの腹は子供さを表わすが如く烏賊腹気味であったが、今は精液が溜まってぷっくりと出ていた。

 ペニスが注挿される度に腹がぽこぽこと盛り上っていたほど小さな身体……
 その幼い肉体からだは遂に男を悦ばせる道具として開花してしまったのである。

 精液を注がれるだけで絶頂に至ってしまうようになったサラ。
 連続で襲い掛かってくるアクメに嬲りつぶされつつ、サラは夢を見ていた。

 幻視しているのは瀬田パパとママ……そしてはるかだ。

 まだ三人は若く、写真で見た大学生くらいの時であろうか。

 三人は裸で絡み合い、愛し合い、求め合い、そして……譲り合っていた……

 ママは はるかに、そして はるかはママに遠慮し、唯一の雄である瀬田パパを譲り合っている。

 二人とも瀬田パパが好きなのに、
 二人とも瀬田パパを愛しているのに、
 雄に選ばれるのは只一人……

 だから はるか愛想を尽かすという“形で”身を引き、瀬田パパはママの元に……

 だけどそれは間違ってる。絶対に間違ってる。

 この件で悪いのは誰をとるかハッキリしなかった瀬田パパであり、自分の気持ちを殺した はるかだ。
 だからママは最後まで はるかを気にし、 瀬田パパに指輪を託し、はるかの元に“届けさせた”のだ。

 幸せになりたいのなら、皆で笑い合いたかったのなら、目の前の関係を続ければ良かったのだ。

 瀬田パパのペニスを愛おしげに頬ずり、舐め、鈴口からカウパーを啜るはるか……
 股間を瀬田パパの太股に擦り付け、自分を高めつつも大きな胸を腕に押し付けて誘惑しているママ……

 取り合っているようで、競い合っているだけの二人。
 友情という名で結ばれ、愛し合っている二人。

 そんな楽しく気持ちのいい関係を壊してまで、瀬田パパはどうして一方を選ぶという世の倫理に任せたのだろう?

 何時も何時も破天荒で何をするか解かったものじゃなく、本人は楽しんでいるであろうが、確実に周りを騒動に巻き込んで迷惑を思い切り掛けているというのに、くだらない所で一般倫理にもっていった瀬田パパ……

 だから解かる。理解できる。受け入れられる。
 モトコの提示した案は丸呑みできてしまう。

 『皆で“浦島”先輩に着いて行くのだ。
  皆で恋人となり、妻となり、愛人となり、奴隷となり、母となろう。
  シアワセになるのだ』


 素晴らしい……
 そして誰も傷付かない。
 しのぶも笑顔。カナコも笑顔。キツネも、むつみも、モトコも、そして自分も笑顔……

 目の前の瀬田パパにママが跨り、腰を振って嬌声を上げている。
 そんなママの背後から はるかが抱きつき、ママの大きな胸を揉みしだいていた。

 唐突にママとはるかの映像がぼやけ、むつみとモトコの形をとった。
 無論、瀬田パパは景太郎へと姿を変えいてる。

 股間から血を流し、景太郎に破瓜の感触を与えてもらった事を歓喜するむつみ。
 それを祝福しているモトコ。
 何時の間にか側に自分がおり、その破瓜の血を嬉しげに舐め啜っていた。

 そこに悲しみの気配は無い。
 全てが幸せそうで、全員が楽しげで嬉しげ。ひなた荘という居心地の良い住処での生活そのままに、セックスの色がついただけの光景だ。

 やがて映像にキツネが混じり、しのぶが絡まり、カナコが奉仕し始めた。
 カオラまで加わり、なるがやってきてにぎやかになった。

 これがあるべき姿なんだ。
 そう、これがシアワセという正しい光景なんだ――


 実感した瞬間、サラの意識は弾け飛んだ。
 景太郎に引き上げられた股間からは逆流した黄色みがかった濃い精液がボタボタと垂れ滴り、砂糖に集る蟻の様にむつみと素子が群がってくる。

 奪い合い、譲り合い、支えあう爛れた関係……

 だけどそれが“ここ”では正しい行為なのだと心に染み込ませながらサラは完全に意識を失ってしまった。

 そんなサラの身体は意識を失ったまま犯され玩ばれ続け、深夜を越えた頃には全身を白濁色に汚し尽くされた三人の美女美少女が汚らしい染みを滲ませた布団に転がされていたのであるが……

 陵辱者である景太郎と同様、
 三人の顔は心から満たされて幸福を噛み締めている妻のそれであった……




 かっちゃ、かっちゃ、かっちゃ、

 背中の鞄の金具の音を響かせ、元気よく石段を駆け上がってくる少女が一人。

 「ただいまー」
 「あ、お帰り。サラちゃん」

 丁度玄関を掃き始めていた なるに明るく挨拶を向けたのはサラである。

 ちょっと前まで様子が変であった事を気にしていた なるであるが、何時の間に笑顔を取り戻したサラに彼女の笑みも深い。
 愛されたい症候群であり、別離を何よりも恐れている なるは、身内として認めている者に対しては無償の優しさを誇っているのだから。

 「今日は早かったわね」
 「ああ。なんつーかガキにかまってられねーからな」
 「まぁ…」

 自分の年齢を無視したようなセリフに笑いも零れる。
 明るく元気な女の子、サラ。
 その元気さが戻ったのは なるにとっても幸いなのだから……


 尤も……


 トットットッと廊下を足早に進み、その辺の部屋に背中に掛けていた鞄を放り込む。
 奥へ奥へと足を向けて行くと、可奈子が私室として使っている部屋があり、サラはその入り口をノックもせずに引き開けた。

「ああ、あっああっっ、お、お兄ちゃぁん……っっ!!
ふ、深っ、深ぃい……っっ!!」


 中では、陵辱行為の真っ最中だった。

 中学の時の制服をベトベトに汚し、顔は元より髪までもベットリと浴びせられ、剥きだしの胸、そして膣やアナルからも精液が滴っている。
 結構な時間犯され続けていたのか、或いは短時間でここまで犯されたのかは学校帰りのサラでは解かりようも無い。
 
 その側らには むつみがやはり精液で汚されて横たわっている。
 後ろ手に縛られた姿であったが、衣装は妙に地味。
 明るい色のサマーセーターに紺色のスカート。その上からPIYOPIYOという文字とヒヨコの絵が入ったエプロンをつけている。
 尤も、セーターは捲り上げられているし、スカートも無残に穢されているのだが。

 大体読めた……

 恐らくは むつみが母親役、可奈子が娘役だろう。
 娘を犯されたくなければ、お前が相手になれ。その代わりに先にイったら娘を犯すぞ…とか何とかやっていたに違いない。
 そう推理したサラであったが、実のところ正解だったりする。

 『お母さん…おかぁさん……』等と迫真の演技の涙声で母親むつみを見守りつつも、内心では早くイけ~早くイけ~と唱え続けてた可奈子。
 我慢するだけで長々と犯してもらえるわけであるからがんばってはいたのであるが、結局あれから毎日のように自分を犯し続けているペニスにかなう訳も無く敗退してしまったむつみ。

 やれやれと溜息を吐いてしまう様な光景である。

 無論、溜息を吐くだけで済むような話では無い。

 そして、サラのそんな溜息は異様に熱い……

 びくんっっ


「や、やぁあああ……っっっ!!」

 相変わらず大きな声を上げて激しくイク可奈子。
 女として羨ましい限りだ。

 どさりと義妹を布団に横たわらせた景太郎は、今頃になってサラに気が付いた。

 そんな生涯唯一のセックスフレンドに呆れつつも、何時も通りのヌケ方なので安堵したりもする。


 なるは気付いていなかったのであるが、サラは変わっていた。

 いや、見た目等はそうでは無いのであるが、学校での態度に落ち着きが混ざったのである。

 ついこの間までは肉体からだに溜まった淫気の所為で学校の男共を惑わしていた彼女であったが、処女で無くなった夜から彼女の淫気は落ち着きを取り戻し、学校や普段での生活に支障の無い様子を取り戻していた。
 だが、それこそが変化なのだ。

 淫気を無くしたのではなく、安定しただけ。
 確かに教師や生徒を含む学校の男共は惹かれるものを無くしたように見えるサラに興味を薄らせたのであるが、家では……景太郎の前では別なのだ。


 するすると下着を下ろしてゆくサラ。
 お尻が見えてしまうような小さな下着……所謂スキャンティだ。
 水色と白のストライプのそれは、良く似合ってはいるのであるが、以前のサラなら絶対に儚かった代物である。

 以前の子供パンツを止めたのは痣が消えたからだ。
 セックスをしまくり、アナルまで開発中の彼女からは、何時の間にかパンダの痣が消えてしまっていたのである。
 飛び上がるように喜んで、下着や水着に以前とは別の意味で気を使い出した事はいうまでも無い。

 そんな彼女が脱ぎ捨てたスキャンティ。
 それは既にうっすらと濡れており、股間から離れる時に糸を引いていた。

 「悪いけどさ、HR中にけーたろの事思い出しちゃってさ……我慢できないんだ」

 景太郎に背を向け、壁に左手をついて右手で、尻の上にかかるスカートの奥に隠れている肉亀裂を割って見せる。

 うっすらと色付いて、景太郎に突かれる事によって色合いを増した肉の谷間が、ほんのりと薄紅色に染まって自分を穢した男を心待ちにしてた。
 その奥の肉洞に景太郎の視線が引きつけられてしまう。

 ぽたり…と滴が畳に垂れた瞬間、サラは自分の肉を割る感触を感じ、嬌声を上げた。

 むつみは意識を失いつつも微笑んでいた。

 譲ってしまった筈の権利はまた自分の手に戻り、それどころか皆で分かち合っている。

 一緒にトーダイに行けると幸せになる……

 一緒に受かったのだから、自分だってシアワセになれるはずなのだ。

 自分のシアワセとは、皆で過ごす生活。即ち“今”だ。

 だから素子の言っていた事は正しい。
 皆でシアワセになる。
 皆で結ばれるのはシアワセ。
 だからこうしているのも正しいのだ。


 激しい喘ぎ声で意識を覚醒しつつある むつみは絶頂による気だるい幸福感の中でその確信を深めていた。

 目の前で後から突かれて犯されているサラ。
 愛おしい義兄に犯されて毎日幸せの余りに涙する可奈子。
 そして自分……

 ああ、幸せだ。
 なんて幸せなんだろう……

 皆で犯され、穢され、蹂躙され、物の様に扱われ、
 それでも皆で笑い合う未来。

 そしてそれはそう遠くない……

 可奈子がピクピクと動き出した。
 自分も身体に力が戻り始めている。

 もう少ししたらこう言うだろう。

 『お願い、“妹”にひどい事しないで』
 『私には何をしてもいいから、娘だけは……』

 と、

 これもまた幸せ。

 いずれ来たる未来、
 歪み切り、穢れ切り、それでいて優しく幸せな日々を……

 ひなた荘という名の後宮となる日を夢見て――




 <むつみ,サラの章 幕>





*******************************************************


 遅くなってしまいました。Pixyでございます。

 うう~~む……エッチなシーンが淡白だぁ……
 もっと濃厚に、特濃に書きたかったのになぁ……

 原作を読み返してみて、サラは景太郎の事は大好きではあるけど愛してはいないだろうし、
 愛す日が来ても自覚はできないだろうし、全くの手遅れになるだろうと判断。

 だからこーゆー展開となってしまいました。

 ハーレム形にするつもりはなく、素子一本で行くつもりだったのになぁ……
 因みにボツにした展開では、素子としのぶが牝犬になって幸せに暮らしてゆく話もありました。
 今の話よか唐突過ぎるのでボツにしましたけどw

 次からラストスパートです。
 がんばって終わらせますし、ちょっとづつ改定も致しますので御容赦を。

 それではまた……






[2319] Re:Dotage ~妄愛~ <幕間 肆> (ラブひな)
Name: Pixy◆b8f053cf
Date: 2007/07/22 04:03


 「ああ、あぁあああ……っっ
  はぁあああああああ――――っっっっ!!!


 びくびくっと若鮎の様に身を反らせ、男の下でその身を痙攣させる。
 片足だけがピンと伸び、指先が引き攣るように交差しているのがその絶頂具合を物語っていた。

 薄暗い寝室で汗まみれになって絡み合う。
 それがお互いの肉体からだを見知った男と女であれば当然のこと。

 中年というにはやや若いが三十路には入っているのは間違いなかろう男と、それよりは多少は若い女。
 お互い脂が乗り切っている歳なので激しさより濃厚さの方が大きい。

 若さが前に走っている時は激しさイコール快感だと思い込んでいる為に乱雑になりがちであるが、それ相応の経験を積むとねっとりとした愛撫が重点的になってくる。
 経験を積んだ男も、挿入というスパート前の快楽より、相手をめろめろにさせる方に快感を見出すようになるのでペッティングが丁寧になり、それが優しさとして若い女性らを惹き付けたりするのだ。

 まぁ、女の場合は若さゆえの暴走による乱暴な性交が好きな手合いもいるので全部が全部と言い切れないが、それは兎も角。

 どさりとベッドに身を沈め、荒くなった息を整える女。
 その上でやはり荒い息を吐いている男であったが、彼女の引き攣りが納まる直前に彼は彼女の胎内にその熱い息吹を吐き出している。
 腰から全身に広がる脱力感は凄まじいが、まさか彼女の上に圧し掛かるわけにもいかないので腰だけで己が上半身を支えて耐えていた。

 はぁはぁ…と呼吸をするのと同じタイミングでその女性の大きな胸もリズミカルに動く。
 男はその生乳を久しぶりに目の当たりにしたのであるが、その形は些かも崩れてはおらず、二十代の張りを保ったまま成熟した柔らかさを増した素晴らしいものであった。
 二人とも未練はタラタラであるのにあえて疎遠にしていたのであるが、こうやって抱いてしまうと男の胸にも妙に独占欲と嫉妬が湧いてきてしまう。

 いや、抱いてみて解かったのであるが、彼女の身体には自分が付けた癖以外のものは無かった。
 つまり、彼女は自分と別れてから男性経験…或いは恋愛経験は無いという事だ。仮に何かあったとしても数にも満たない程度だろう。
 全くもって証拠は無いが、男はそう確信した。する事にした。

 何だかんだで本気で惚れているのだから、自分が関わっていない間に何かがあったとしても受け入れなければならない。
 ならないのであるが、やっぱり悔しいと感じてしまう自分が何だか恥ずかしくもあった。

 「はぁ…はぁ……
  ふぅ………」

 早い。
 もう息が整った。

 『流石は八極拳の達人……呼吸法を心得ているなぁ……』

 愛撫したり、焦らしたり、腰を使ったり、気をやったりと男の方が負担が多い為、そんな風な感心をしてしまう彼――瀬田記康。

 何故か昨日、彼のいるところに完全に切れた訳ではないが、一応“昔の女”である浦島はるかが尋ねて来て、問答無用に押し倒されたのだ。

 その“氣”はまるで飢えた熊か虎。
 獲物を貪るように求められたのには流石の瀬田も驚きを隠せなかった。

 とはいってもそこは惚れた女の事。激しく求められて嬉しくない訳はなかった。
 シャワーすら浴びていない汗の匂いのする身体であろうがお互い全く気にせず唇を重ね、音を立てて舌を絡ませあい、唾液を呑み啜り合い、
 衣服を毟り取るように剥ぎ、前戯もそこそこに交わりをスタートさせたのだった。

 普通のペースに戻れたのは2,3Rほど前の事。
 それまでは交わり、果て、休み、飯を食い、また交わり、果て、と実に忙しなかった。

 ずっと気持ちを隠してはいるが、はるかにとって瀬田は唯一の男だ。
 その気持ちを押し隠せば押し隠すほど、心の奥底でその気持ちは募ってゆく。
 
 更に着けてはいないが指輪を渡された時に瀬田はちゃんと告白もしてくれている。
 表面上は綺麗に隠しきれてはいても、やはりその心の底では熱い想いが再びうねりを見せていた。

 そして、その気持ちが爆発している。

 だから はるかは耐え切れなかった。
 だから全ての伝を総動員して彼の消息を掴み、ここまで追って来たのだ。
 
 『いや、追って来てくれた事は嬉しいんだがね……』

 と、瀬田は薄暗い寝室で自分に向けられている はるか眼差しを感じながら口の中でそう呟く。

 確かに来てくれた事は嬉しい。
 押し倒された時にしても、性的な飢えより自分を想う強いものを感じたし、こっちだって彼女に対する愛おしさは大学時代よか強いのだ。
 若僧だった大学時代より、彼女の事を解かってやれるだろう(と瀬田は思っている)し、散々待たせた上に辛い思いをさせていたのだから今度は如何なる我侭だって聞くつもりである。

 しかし……
 しかしだ。

 『世の中には限度ってものがあるんだけどねぇ…』

 ハハハといつもの様、それでいてどこか煤けた笑いを零しつつ瀬田は はるかを抱き寄せて接吻くちづけを交わす。

 昔のままの可愛らしさで、昔のままに仕種で、
 それでいて昔より艶を増し、昔より自分を求めてくる。

 そんな彼女の期待に答えるべく瀬田はがんばった。本当にがんばった。

 それでもまだこの姫君は“おかわり”を所望する。

 素直になれなかった日々を取り戻そうとしているかのように、その間の飢えを満たすように、

 ひたすら、只ひたすら瀬田オスを求め狂っていたのである。

 景太郎同様の不死身さを持つ瀬田をもってしても、この牝獅子の空腹を満たす事はまだできていないようだ。

 『ハハハ……惚れた弱みもあるけど……キツイねぇ……』

 何となく瀬田はその身を痩せさせている気もするが、それでも彼はがんばって気力を下半身に充填させていた。


 何故だろう?
 瀬田は唐突に遠い地にいる自分の弟子の青年を思い浮かべ、口の中で呟いてしまう。

 『景太郎君……明日は我が身だよ……』

 と……。

 諦め半分、愛しさ半分に義務感というスパイスを少々利かせた想いの中、景太郎に八つ当たり気味の感情を向けながら瀬田は再び官能の渦へと身を沈めていった。 




 だけど瀬田はまだ気付いていない。
 そして はるかも気付けていない。

 再び愛おしい相手をその腕に掻き抱き、幸福に酔い痴れている二人が気付ける訳もない。

 はるかの本心を奥底から引きずり出し、建前という壁を突き破らせるほどにまで気持ちを加速させた“何か”がひなた荘で起こっていたという事を。

 そして、
 はるかが“ここ”に来てしまったが故に、自分の娘のような少女が早過ぎる破瓜の時を迎えてしまった事等……




――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
                           -盲・愛-
                           <幕間・肆>
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――




 「ハッ?!」
 「ん? どうかしたの?」

 大学帰り。
 “一緒に東大へ行く”という願いは今だ叶っていないのであるが、帰り道だけは一緒に慣れる二人。なると景太郎。
 何時もの様に電車に乗り、二人並んで吊り革に掴まって楽しげに話をしていたのであるが、唐突に何かの気配を感じたように景太郎が顔を外へと向けたのだ。

 「い、いや……何か、瀬田さんに言い掛かりをつけられたような……」
 「はぁ…?」

 何気に勘の良い男である。

 女性の気持ちには疎いくせに、妙な勘だけは良いのは相変わらずだ。
 尤も、キツネやはるかの弁を借りれば若かりし頃の瀬田まんまだという事になろうが。

 「何言ってんのよ。
  大体、瀬田さんは発掘調査に出てんでしょ? ドコ行ってるか知らないけど……」
 「え? あ、ああ…オレもドコに行ってるのか知らないけど、国外というのは確かだと思う」

 何時もの事であるが、唐突に出かけ、唐突に戻って騒ぎを大きくしてしまう。それが瀬田クオリティーらしい。

 瀬田に好意を持っているのは相変わらずの なるであるが、男としての愛情は既に景太郎一本だ。
 もし仮に瀬田が唐突に不在になったとしても信頼とは別の意味で心配はしないものの、景太郎が唐突にい無くなると不安で潰れそうになってしまう。

 景太郎への心配はもとより、自分から離れられてしまう事を心底恐れているのだ。
 彼女自身が彼に傾倒し切っている事に全く気付いていないのだから性質が悪い。だからこそ異様に嫉妬深いというのに。

 他の女性らには理解されているのだが、なるの勢田への想いは憧れがメインで、景太郎への想いは恋心と愛情だ。
 なるの初恋は幼い頃の景太郎であるから“惚れ直した”とでも言えば良いだろうか?

 留学から帰った後に全員が惚れ直しているので、そういう意味で言えば なるが一番景太郎を想っているといえなくも無い。


 やがて電車は日向町駅に止まり、二人は路面電車に乗り換える。ここからひなた温泉前ま乗って行けば“我が家”は目の前なのだ。

 『そう言えば……』

 路面電車に乗り、ふとその窓越しから走り去って行く電車が目に入った。
 その時、むつみらが“輪”に入った時の一件を思い出してしまう。

 電車の中で唐突に発情した素子。
 抗おうとすれば抗えたかもしれないが、普段は凛とした素子を泣かせたくなったのも事実。

 二回目は後も突いたし、口で清めもさせた。
 吐き出した精液を乳液でも広げるように胸中に塗り広げ、誤魔化し様も無いくらい男の香りを漂わせたまま家路に着いたあの情事……
 実はむつみに微にいり細にいり見られており、その結果彼女やサラとも情を交わすようになったのである。

 『むつみさんは兎も角、サラちゃんは……なぁ……』

 あんな子供の処女を奪ってしまった…
 あんな子供の膣の中に出してしまった……

 嗚呼、鬼畜…オレは人でなしだ……
等と、景太郎は思ってはいない。

 彼は、

 『はるかさんや瀬田さんにバレたら……死ぬだろうなぁ……

 という事“だけ”が気になっていたのである。

 手を出す前ならば悩みもしたかもしれない。
 サラは明らかに景太郎に対して欲情していた。冷静さを持ったままであれば、その原因を突き止めて彼女を治そうとしたかもしれない。

 だが、景太郎は劣情を纏った愛欲に身を任せ、むつみと交わり、サラを犯した。

 そうなると、
 肉の関係を持つようになると、彼の意識は別へと走り出してしまう。

 もっと気持ちよくしてあげたい。
 もっと愛してあげたい。
 もっともっと幸せにしてあげたい。 

 どこか完全に間違っているが、それでも愛に満ち溢れた想いが心から溢れ出てくるのだ。

 だから依怙エコ贔屓もしない。

 朝は早起きして素子の剣の修業に付き合い、その後林の中で汗を掻いた彼女の肉体からだを味わう。
 帰宅後は可奈子に汗を流してもらったり、キツネと共に入浴してその身体を玩び、
 朝食の準備をしのぶと共に整え、たまに台所で交わる。その際、おかず等に精液が混ざる事もあるがご愛敬だ。誰も気付いていないし。
 まだ“輪”に入って間もないサラとむつみは調教中。意外にもサラの方がアナルに向いている様だ。

 学校や大学でフェロモンを放たなくなった むつみとサラであるが、景太郎と一緒にいれば話は別。壊れた蛇口が如く淫気があふれ出してくる。他の四人に追いつく日も左程遠くないだろう。

 そんな爛れきった日々を送っているにも拘らず、景太郎は彼女らの身体で快楽を得る“だけ”という行為は行っていない。
 意外かもしれないが、彼女らを犯すという行為は彼女らが悦ぶからであって、彼の性欲を開放するだけでは無いのだ。

 景太郎は決して自分“だけ”のモノにはなってはくれない。
 だから逆に、景太郎のモノになればずっと一緒にいられる。彼が自分らを手放す事は決してない。
 だから彼のモノに…所有物になる。

 その歪曲し過ぎた愛が奏でた肉欲の宴の結果が“今”である。

 そして景太郎もその歪みに囚われている。
 それがこの、今現在の彼の“普通さ”なのだ。

 ふと横に眼を戻すと、どこか嬉しげな なるの横顔。
 彼と共にいる事、そして彼同様に未来への目標を持てて、そこへと向かって行ける充実した日々が楽しくてたまらないようだ。

 『ああ……成瀬川も幸せそうだ……嬉しいなぁ……』

 元々、景太郎は彼女の事を愛している。
 だから彼女が嬉しげな顔をしている事、楽しげな顔をしている事、そして彼女が幸せになる事が何よりも嬉しいのだ。

 そうでなければ恋敵である瀬田に告白させようとしたり、二人を本気で応援しようとしたりはすまい。
 それこそが景太郎が景太郎たる所以である。

 しかし、今の彼は……

 むつみとサラまでも肉体関係となり、合計六人の女達と日々愛欲,肉欲に狂っている今の景太郎の倫理観は遂に素子らによって完全に歪められていた――


 『だったら……成瀬川もアレで気持ち良くなったらもっと幸せな顔をするだろうなぁ……』

 性行為から湧きあがって来る多幸感。
 意識が弾け飛び、倫理の意味すら吐き捨ててしまう程の充実感。
 膣内なかに出された時のあの満足そうな顔……

 その気持ちと顔を与えられたらそれはそれは素晴らしいものとなるだろう。

 今の生活は素晴らしい。
 いや、性交渉を省いたとしても、彼女らとの暮らしは捨て難いものだ。

 愛しむ事、愛される事の幸せは、気の置けない相互感情のある彼女らだからこその話。
 他の者では絶対に味わえない幸福感なのだ。

 だからこそ素子は歪み、キツネはその愛欲を見せ付けられて歪み、
 しのぶと可奈子は二人の多幸感を知る事によって愛情が歪み、
 むつみとサラは彼女らの淫気によって持っている気持ちが歪み、
 彼女達の幸せを思い知らされる事によって彼は歪んだ。

 『でも、成瀬川はよく泣くから痛いのとか乱暴なのは駄目だよなぁ……
  すごく優しくしてあげて、凄く時間を掛けていっぱいしてあげたらいいのかなぁ……』

 彼の言う“いっぱい”は、普通人であれば腎虚で死ぬレベルの回数だ。性行為初心者である なるがそれに心が持つどうかはかなりあやしい。
 更に、今の彼の性技能は尋常ではない。セックスというものを知って半年にすら満たないというのに、彼は相手のポイントを触れただけで理解してしまうのである。
 尚且つ射精量は人外ときている。

 このままでは如何なる道を辿ろうと、かわいそうな なるは処女を散らされた挙句に女としての人生を壊されてしまうだろう。

 「そう言えばさ、今年ももうすぐ浜茶屋の時期じゃない?」
 「あ、そうだね。だったら はるかさんも帰ってくるのかな?」
 「さぁ~? 任せっきりにされてるみたいだしね」
 「じゃあ、俺達だけ? それはちょっと辛いかなぁ~~……」
 「あははは……ま、がんばりましょ」

 他愛の無い会話。
 何時もの会話。
 恋人同士の語らい。

 だがその裏では煮詰まった愛情が異臭を放っている。

 “輪”に入らねばその異臭に耐えられない。
 異臭に耐えられねば“輪”に入れない。

 景太郎はそんな なるがとても愛おしく、他の女性達同様に、

 穢し切った彼女の肢体を夢想し、それが なるの為でありシアワセなのだと確信を深めていた。

 「そう言えばさ、憶えてる? 前の浜茶屋の時さ」
 「あ、そう言えばあの時って喧嘩してたんだよね。原因は何だったっけ?」
 「あは…喧嘩だけは憶えてたんだ。まぁ、私も原因は忘れてるんだけどさ」
 「何だよそれ?」

 他愛無い。
 本当に他愛無い普通さ。

 普通であるが故に際立ったものがある。

 それこそが景太郎の歪み。
 余りに普通に見えてしまう歪み尽くした愛情がそこにあるのだから――




 ゆっくりと路面電車が止まり、二人は温泉前に降り立った。

 目の前にあるのは二人の思い出深い家である 温泉旅館兼女子寮、ひなた荘。

 二人は親しげに語り合い、
 楽しげに笑い合って石段を登ってゆく。

 この寮の住人が二人を見つけて『お帰り』と挨拶を送り、二人は『ただいま』と答える。

 そんなシアワセな空間。
 シアワセな人の輪。

 それを紡ぐのが永遠の人の円環を成すのが“ここ”なのだ。


 ひなた荘という館はひなた町…ひなた市を守る結界の要にある。
 ひなた荘があるから、その結界があるから、この街には犯罪らしい犯罪が起きないのだ。

 そして当然、要であるひなた荘の結界の守りは堅い。

 だから要にあるここの寮生が銃刀法違反をどれだけ犯しても、ぼやかされてしまって犯罪として認識されないのである。

 実際、この街から離れた少女らが別地で騒動を起こした時には警察が動いているし、指名手配も行き渡った。
 だというのに、ここに戻れば“そんな事は無かった”と言わんばかりに沈静化している。

 これこそが守護。
 これこそが“ひなた”に住まう者への守り。

 ジンクスとして知られている、強く願い、想いを持ち続けていればその願いはきっと叶うという館“ひなた”。

 そして館の住人の中にあるツアワセを強く願う者が出た。
 その願いはどんどん広がって行き、今や住人の九割近くがそれを望んでいる。

 だから叶う。きっとその望みは叶う。

 “皆で”幸せに暮らす。“皆で”一緒に幸せを分かち合う。
 そしてその幸せは、一人の男の所有物になる事から始まる……そう固く信じられていた。

 事実、彼に犯され、穢され、愛された女性らは想像を超えた多幸感を感じさせられ、その想いを強く強く深めてしまっている。

 だからその想いは何時しか愛奴のそれとなっているのに気付く者が出て来ない。
 第三者が指し示さねば、教え込まさねば理解すらできない。

 しかし、その愉悦を、愛の方向を伝えている者は素子である。

 中途半端な呪いと、それを中途半端に防がれた彼女は半淫魔。
 更に自分が景太郎に抱かれた時に最高の幸せを感じてしまい、加速度的に倫理を崩壊させて歯止めを見失っている。
 流石に天敵である姉には伝えてはいないが、その在り方そのものも既に人の倫理観からかけ離れてしまっているのだ。

 伝導しているのだから歪まない筈が無い。

 だが“それ”を指摘された時にはこの“シアワセな世界”は終焉を迎える。

 皆で愛を求め合い、譲り合い、分かち合い、啜り合う日々は消滅してしまうのだ。

 誰も気付けない。
 理解すらも湾曲されてしまう。

 狂信者達の中に入ったとて、その信心を理解する事は難しい。それどころかその空気によって感化されかねない。それと同じである。

 恋愛は宗教に似ているという。
 先に惚れた方が負け。先に信じた方が負け。という事らしい。

 先に惚れた方は無意識に相手の事を優先し、言っている事を何処か鵜呑みにしてしまう。所謂“原始宗教”の想いにそれはとても良く似ている。

 だが、宗教というものは人を狂わせ易い。特に男女間の想いが絡んでいればそれはひどく濁りを見せる。

 最初から澱んでおり、狂気すら孕んだ愛情からスタートしたその想い。
 伝播した“信心”はそのまま固着され、絶対的なシアワセという物を女性陣の心に生み出している。

 愛されている崇拝されている男は、それに答えられるようその地によって力が与えられていた。

 普通なら身体が弾け飛んでしまうほどの山の霊気。
 それを受けるのは“仮”とはいえこの館と周囲の土地、山の所持者である一人の青年。

 “不死身”という不思議な体質のお陰で身体に注ぎ込まれ続けているそれを全てその身で受け止め、彼を慕い集っている女性達…言わば“巫女”である女性らに深愛を持って答え続けている。

 彼は無限に近い精力を持っているのだ。

 彼は、“ひなた”という地を守護する者へと成りかかっている。
 その代わりに、要を任されている者達は繰り返しの円環の中に居らされてしまう。

 だがそれがどうしたというのだ?

 彼女らと居られる。
 彼と居られる。
 皆と居られる。
 ずっと居られる。愛し続けられる愛され続けられる。

 それ以上の何を望むというのだ?

 そしてそれを否定できる者はここにはいない。
 最初から居ないのだ……


 ある意味無欲に近い、果てし無い強欲を持った者達の狂宴はまだ続く。

 巫女の数か整うまで。
 巫女の全てが己を理解という誤解をその時まで……

 未来にある肉欲と愛欲に穢れ尽くした美しい日々の為に――




*******************************************************


 遅くなりました。Pixyでございます。

 私、ピンチです。
 大ピンチです。

 実は……

 四十という漢数字が、打てないんです(大涙)!!

 二十は『廿』です。
 三十は『卅』。
 で、四十というのは、このに縦一本線を足したような字なんですけどね……無いんですよ。ウチのPCに…… 

 まぁ、打てたとしても其々のHPが対応してなければ意味ありませんがね。それでも悔しいっス。
 だって、このままじゃあ卅玖で限界なんですもん。

 だから手を打ちます。姑息な手を。

 その“手”は次に明かしますが…兎も角、やっとカオラです。
 おこちゃまに見える女子高生です。
 ラストはなるですけど……シーン思いつかないなぁ……なる×景太郎なんて……素子ちゃんと景太郎ならどんなプレイだって思いつくのに……

 兎に角、ラストスパートに入ります。
 最後までがんばります。

 それではまた……






[2319] Re[2]:Dotage ~妄愛~ <卅壱> (ラブひな)
Name: Pixy◆9f428421
Date: 2007/07/30 08:52


 世間の騒がしさは増し、街中で子供らを見る率が上がる。
 量販店等でレジャーグッズコーナーに売り切れの空間が目立ち始め、逆に温泉街はやや客が減少を始める。
 比例して浜辺の人の数は増え、観光客や子供らは増えてきた。

 時は七月末日。
 この特定時期にやたら暑いだけの都会から避難し、水遊びに勤しめる海岸に遊びに来ているのだ。

 ぶっちゃけ、世間は夏休みであった――

 「ハーイ、焼きそば上がりました――っ!!」
 「こっちビール!! 中ジョッキ三つ!!」
 「は~い。お待ちくださ~い」
 「浜茶屋ラーメンまだぁ~?」
 「今行きますっ」
 「ごっそさん。御愛想~」
 「あ、ハイ。お会計は御一緒で宜しいでしょうか?」

 そしてひなた荘の面々は、今年も浜茶屋『日向』に狩り出されていたのである。

 「うぉ~~っっ!! 何やっちゅーねんっ!!
  前ン時よか忙しいやないか!!」
 「い、所謂口コミというヤツでしょうか?」

 下は小学生、上はフリーターという美女美少女らによる料理と給仕。
 その出で立ちは水着にエプロン。
 しのぶの料理によって舌が肥え、そのお陰で手が抜けなくなってしまったお陰でしのぶの料理の腕は更に上がっている。よってこれで客が来ない筈が無いのだ。

 尤も、何故かは不明であるが浜茶屋の料理というものは不味い方が好まれる傾向にある。
 理由は不明なのであるが、何だか粉っぽいカレーや、やたら不衛生な上に焦げたヤキソバ。妙に高いラーメン。味が濃すぎるカキ氷等、ヘンなものばかりが良く出るのだ。
 海の家等の客達は“らしさ”を求めているだけで、極上の味を求めてやって来ている訳では無いのであるし、適当に美味くて雰囲気があって腹を満たせられればそれで良いのかもしれない。美味いに越した事は無いだろうが。

 だが、何だかんだ言ってもひなた荘にて台所係を受け持っている しのぶにはプライドがある。
 最初の時から思っていた事であるが、“それらしさ”が出ていれば良い…というか、そうでなければいけないような風潮もあるのでチープな盛り付けに関しては眼を瞑っていた。無論、味付けの方はしっかりとやっていたが。

 汗を掻いた身体は塩気を求めているので、そこそこ塩気を感じられる味であり、実はそこまで強くない…という、しのぶらしい丁寧さ。
 そんな可愛い少女による味の心遣いがウケているのだ。

 その事がスパイラル的に集客率を上げているのだが、想い人に感化されたか彼女自身は自覚が無い。

 浜茶屋独特のチープな香りと見た目をキープしつつも味は極上。
 尚且つ愛想の良い美女美少女店員(一部例外アリ)が持って来てくれると来れば客も増えるというものだ。
 ……主に男性客であるが。

 ――さて、

 走り回るが如く働いている女性達の中、一人だけ何時ものペースを保っていない者がいた。

 いや、ぱっと見は従来のままのテンションなのであるが、その空気はどこか硬い。
 ずっと一緒にいるというのに皆は気づいていないのだろうか? という話になるだろうが、どっこいそこは家族として付き合っている面々だ。ちゃんと彼女の元気の無さは見て取っている。

 最年長を筆頭に、最年少の少女までもが彼女の異変に気付いていた。
 ただ、その中の一人だけはその理由を解かっていない。
 何故なら、その一人…成瀬川なるも、件の少女と同じ立場にいるからだ。

 愛されているのに身なのレベルに達していない。
 大切に思われているのに、皆のように接してもらっていない。

 なるの方は景太郎と恋人関係という立場なので左程気にもせずにいられる。
 しかし、その少女も彼の事が大好きであり、ちゃんと愛されてもいるのであるが“女”としては接してもらっていない。

 その事が皆との間に薄紙のような壁を感じさせる原因となっている。

 だけど彼女らは助言しない。
 その少女の為にあえて口を噤んでいる。

 彼女らであればそれを指し示す事は簡単だ。自分がオンナであるという本当の意味合いを教えてやれば良いのだから。

 彼女らは黙っている。
 彼女らは彼に任せている。

 何時だってオンナは特別なオトコを待っている。
 何時だって迎えに来てくれるのを待っている。
 自分に差し出してくれる手を待っているのだ。

 だけどもそれは友の手では無く、オトコの手。
 少女は自分という王女を救い出してくる王子を待ってしまうもの。

 彼女は王子様を待つ。
 優しい王子の差し出す手をずっと待っているのだ。

 その王子様とやらが性格の方は兎も角、人格者かどうかはまでは知らないが……




―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
                           -盲・愛-
                            File:卅壱
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――




 ひなた荘に住まう者の中で一際異彩を…いや、異才でも良いが…それを放つ少女がいる。

 何時も笑顔で走り回っており、良く言えば無邪気。悪く言えば天然のトラブルメーカーという能力を遺憾なく発揮しているその少女。
 中学に上がる時期に来日し、同寮のしのぶと同じ中学に通い、やはり同寮の女性であるキツネに懐いてエセ関西弁を話す彼女……

 現在は素子の母校である雷華高に通い、彼女の後輩となっている留学生、カオラ・スゥである。

 キツネ、素子、と年上の女性に懐き続けている彼女であったが、現在はサラとコンビを組んでいるような形でひなた荘を走り回っている彼女であったが、ここ最近は左程騒がしくしていなかった。
 無論、『以前に比べて…』という意味合いであり、一般レベルで見るのならばまだまだ相当に五月蝿い。

 それでも“ひなた荘的”に言えば、格段に大人しくなっているのだ。

 とはいえ、寮の女性達の大半は左程気にしていない。
 その理由が解かっているからだ。

 原因の一つは、サラの落ち着きである。
 ある日を境に、唐突に落ち着きを見せ始め今やパニくった時のしのぶレベルにまで落ちていた。それでも土器を持って走っている事には違いは無いが。
 どこか鈍い なるは気付いてはいないが、サラは妙に大人っさを見せるようになっていたのである。

 コンビを組んでいたカオラだからこそ解かる事……
 サラの“空気”がのだ。

 人は誰しも大人になって行く。
 無論、カオラにしてもそうだし、しのぶやサラもそうだ。

 彼女とて“自国”に“戻る”その日が来る事を理解しているし、その時には皆と離れなければならない事も解かっている。
 だが今は、そんな未来を無視して笑いながら楽しい日々を送っているのだ。

 何だかんだ言ってカオラは……

 いや――
 カオラ“も”寂しがりやである。
 だから必要以上に皆にくっ付いているのだ。

 そんなカオラとサラとの間に、薄紙の様な壁ができてしまった。

 それはサラが成長したといえば聞えは良いが、カオラにとっては距離ができてしまったという事。
 好きな人と接する事が大好きなカオラにとって、それはとても寂しく悲しい事なのである。

 そしてもう一つの原因が……

 「スゥちゃん。コレが新作のバナナフラッペだよ」

 呑気そうな声で浜茶屋の新メニューを彼女の前に差し出す青年。

 東大に合格するという念願が叶ったお陰でやたら心に余裕ができ、留学から戻った後は皆に接する時間を増やしてくれているひなた荘の管理人、浦島景太郎である。

 「お――っ♪」

 と喜んで器を受け取り、しゃくしゃくと大口開けて掻き込む姿に欠片の色気もない。
 喜怒哀楽がむき出しであるカオラのそういう点だけは、見た目まんまに子供なのだ。

 「あははは……
  あかんわ。やっぱカキ氷にチョコソースは合えへんわ。バナナはウマイんやけどな」
 「ありゃ…ダメか……」
 「にゃはは…
  せやっ! ここにソースの効いたタコ焼入れたらどないや?
  バナナたこ焼きフラッペ。イケるかもしれんで?!」
 「「「食えるか――っ!!」」」

 景太郎はおろか、物陰で様子を窺っていた なるやキツネにもツッコミを受ける。
 そんな様が嬉しく、楽しく、カオラはまた声を上げて笑っていた。


 景太郎は優しい。そして楽しい。
 だから大好きだ。

 母国にいる兄に良く似ており、強くなってもやっぱり優しい景太郎。
 初めは兄に似ているから…という理由で懐いていたのであるが、今の気持ちはそれだけでは無い。

 そして彼女自身もその事に気付いている。

 だけど良く解からない。教えても貰っていない。
 キツネは間をすっ飛ばした意見を言うし、素子の意見は手前過ぎる。
 その二人の意見を重視していたカオラは、奥手とは別のベクトルで恋愛感情から遠くにいるのだ。

 が、
 赤い満月が空に浮かぶ時に現れる大人の人格…いや、“性格”ならやや話が変わってくる。
 考え方が歳やや上で、大人の落ち着きをもったカオラとなると、冷静に彼の事を考えられてしまう。

 そんな晩は部屋に篭らず屋根に出て月を見ていたりするのであるが……

 だから寮の空気の変質にも気付いていた。
 大人のカオラの方は気付いていた。
 尤も、それが“何”であるかまでは解かりはしないのであるが。

 それでも平時のカオラはそれに気付いた事を憶えている為、それを探るように歩いていたりもする。

 それでも見つけられない。
 解からない。
 カオラの開発したアヤシイ機械類、センサー類を駆使しても未だに良く解からない。

 それでも探る。原因を捜す。
 笑いながら走り回り、何時もの彼女を見せつつも。

 そうまでして皆に黙って調査している理由。
 
 気づかれないようにしてまで空気の変異を調べている訳は、当然、寮の皆の為だ。

 大切な“ここでの”家族。
 姉では無い姉達、妹ではない妹らの為。

 そして、

 とっくに大人のカオラは彼を男として見ている。
 そして平時のカオラもそう見ている。

 だから“今の”景太郎の優しさで胸が痛む。

 自分に接する時と、なるや素子、キツネ、しのぶや可奈子、そしてむつみやサラに接する時と少しのだから。

 これが なると皆の扱いが違うだけなら話は解かる。
 なるは恋人であるし、他の皆は“家族”だ。接し方が違って当然である。

 だが、カオラはハッキリと肌で感じていた。
 あの景太郎ですら自分との間に薄紙のような壁を作っているという事に……

 それが辛かった。そしてとても悲しかった。

 だからカオラは必死に探っている。
 何時もの自分を皆に見せ、皆に心配をかけないようにしながら。

 少なくとも、“今の皆”に心配されるのはいやだった。

 辛いのだ。
 余計に辛いのだ。

 微かに感じられるほどの薄っぺらい壁。
 あるか無しかも感じられないような壁。だけどそれでいて絶対的な距離。
 それを間に置かれながら皆に接されるのは感じたくも無い孤独感を募らせてくる。

 寂しがりやであるカオラはそれが嫌で嫌でしょうがなかったのだ。

 だというのに……

 ぴとっ


 「にゃ~~~っっ??!!」

 唐突に頬に押し付けられた冷たい感触に、珍しく悲鳴を上げてしまうカオラ。
 押し付けた方も、まさかここまで驚かれるとは思いも寄らなかったのでオロオロしてしまう。

 「え、えと……スゥちゃん?」
 「え? あ? あ、けーたろ……」

 その相変わらずのマヌケ声。
 それでいて柔らかく、染みて来る様な優しい声の主は今の今までカオラが想いに耽っていた相手である当の浦島景太郎その人である。

 実にカオラ好みの謎ドリンク…缶にはサスケと書かれている…片手にそっと忍び寄って脅かしに掛かった彼であったが、まさかここまで驚かれるとは思いも寄らなかった。
 脅かした方が驚いてどーするよ? と物陰からキツネらにツッコミを受けつつ、冷や汗を押し隠してカオらの手を取る景太郎。

 カオラの様子を“自力で”見て取った彼が、自分から動いて様子を見に来たのである。来た当初に比べ何と進歩した事か。
 見守っていた面々も、入寮当初の彼を思い出し、その成長振りに涙していたりする。 

 尤も、『日向』の閉店後、何時もなら浜辺で行う花火に群がる中の筆頭である筈のカオラがボ~~っと海を眺めていたのだ。
 そりゃあ景太郎でなくとも気にするだろう。それでも彼にしては格段の進歩であるが。

 なるも当然ながら気付いてはいたのであるが、キツネらに、

 「まぁまぁ、スゥかて悩みの一つもあるんやから……ま、オトメの悩みっちゅーやっちゃな」
 「スゥちゃんもお年頃ってゆーヤツですかね~」
 「一応、スゥも女子高生なのだからな。あの年頃の悩みもあるだろう」

 等と押し留められてたりする。

 そんなカオラに接触を許された…とゆーか任された…のが景太郎なのである。
 ま、彼とてどこか元気の無いカオラを気にしていたし、何より放っておける訳も無い。キツネらに言われる前に問い掛けてみるつもりだった。

 だからカオラに歩み寄って行く景太郎を見、キツネらはなるを止める側に回ったという訳である。

 何故なるを“止める”のか?
 それは説得方法に当然の如くカオラを“オンナ”にするという方法が含まれている事を確信しているからだ……

 兎も角、カオラ言うところの“けーたろ”は、辺りに人気の無い岩場まで月を見上げながら彼女と連れ立って歩いて行ったのである。




 月は半月手前。
 まだまだ素子も大丈夫な月齢だ。
 だから景太郎はいつもより落ち着いている。

 さくさくと砂を踏む感触も良く、波の音も静か。
 月も明るく雲ひとつ浮いていない。
 辺りに人気の無いことも手伝って雰囲気を盛り上げる事に一役買っていて、ムードも満天だ。

 景太郎は水着にパーカー。
 日も暮れているのでやや冷えてきているのだが、カオラはセパレートの水着のままだ。

 二人の肌と肌との接触面積が増える出で立ちであるが、カオラが気にする訳も無い。
 どちらかというと景太郎の方がドキドキする。まぁ、今の彼がその程度でドキドキする訳もないが。

 ここで肩の一つも抱いてやれば良いものであるが、そんな女慣れした行動は流石に取れない。それが景太郎たる所以と言えなくもないが。

 相手が“自分のオンナ”であればできない事もないのであるが、隣を歩いているのはカオラ・スゥ嬢。寮の仲間であり、大切な家族と言って良い存在。
 可奈子が寮に来るまでの間、しのぶと共に妹の様な位置をキープしていた一人である。
 だから手を付けていない以上、今のカオラは妹として接しているのだ。

 そのカオラの方はというと、そんな穏やかな表情で自分の横を歩いている景太郎を見上げつつ、さっきから湧き上がる不安を隠しきれていなかった。

 ――いや?
 不安感とはニュアンスが違うかもしれない。

 というのも、彼を見るのは不快ではないのだし、手を繋ぎたいとも思っている。
 ずっと彼にはじゃれ付いており、家族を除けばベタベタと遠慮なくくっつける唯一の男だ。
 そんな願望が含まれているというのに不安感などあろう筈は無い。

 ――…というのは語弊があろう。

 男もそうであろうが、女というものは特定の男に対し、ある種の不安感を持ってしまうものである。
 特定…とはいっても、嫌悪している相手に対してのものではない。
 その場合の不安感とは“危機感”を含んでいるのだから全く別物だ。
 夜道で出会う怪しい奴や、雰囲気の悪い場とかで感じるそれとも違う。

 彼女が感じている不安感は、恋愛状態で感じてしまうそれ。
 自分の事を受け入れてくれるだろうかと心配しているそれだった。

 全く無自覚の内に、カオラは景太郎をそう意識してしまっているのだ。

 単純なところで言えば、以前彼女の歯が抜けた時、丁度母国で兄が親知らずを抜いて手紙が書けなかった事があるのだが、カオラは嫌われてしまったのではと不安に感じていた。
 その時、寮の皆にも歯が抜けた事を明かさなかったのであるが、唐突に大人しくなったカオラの様子に『恋をしたのでは?!』と騒ぎが起こったものである。ま、何時もの事だが。

 景太郎は景太郎で、まさか自分に恋をしたのではと焦ったりしてたりする。これまた何時もの妄想だが。

 が、景太郎らはおろか、当の本人すら気付いていなかったのであるが、カオラは歯が抜けた事を隠していたのは羞恥もあるが、景太郎に対してのものには『けーたろにも嫌われてしまう』というニュアンスが含まれていた。
 つまり、その時にはカオラは一定以上の好意を持っており、尚且つ景太郎をオトコとして見始めていたのである。

 事実、ラブラブ偏差値では二位。
 その当時可奈子が作った嫌がらせのようなルール、“景太郎お兄ちゃん人形を殴らないとトイレ使用不可”において、件の人形をボコボコに殴りまくっていたにも関わらず…だ。

 可奈子の採点基準がどんなものであったかは全くの不明であるが、事に景太郎が絡んでいる以上、それはそれは微に入り細にいり好感度調査をした事であろう。
 
 それでいて二位。

 ずっと好意を隠していた(つもり)の なるが一位なのは当然として、普段からラブラブオーラを出していたしのぶを抑えて…だ。
 この時点でも、カオラがどれだけ景太郎に好意を持っていたのかが窺い知れるというもの。

 不安なのだ。

 自分と彼との“距離”を思い知るのが。

 皆と違い、自分にだけ壁を作られているのを自覚させられるのが。

 まるで――
 まるで自分の国の様に……――





 「 ス…ち……スゥちゃ……
  スゥちゃん? どうかしたの?」
 「うにゃ?!」

 気が付けば目の前に自分の顔を覗きこむ景太郎の顔。
 そりゃあ驚きもするだろう。

 尤も、驚いたのは景太郎も同様だ。
 何せひなた荘の管理人となって二年余り。その間にカオラの驚愕など見た事も無いのだ。
 景太郎が東大に合格した時ですら左程の驚きもしていない彼女である。鈍いのか、面の皮が厚いのかは兎も角として、『驚く』という能力が付加されている事を初めて思い知ったと言うのが正直な気持ちであった。

 「ね、ねぇ、ホントどうかしたの?
  今日ずっとへんだよ?」
 「な、何でもないで~~? ウチは何時ものウチやで?」

 下手な誤魔化しだ。

 “以前”の景太郎すら騙すのは難しいだろう。
 何せ心底皆の事を想っている“今の”景太郎。優しさは以前のままである上に、ひたすら なるの事だけを想い考え続けていたそれが皆に等しくばら撒かれているのだから、押し隠した元気の無さ等の差異に異様に目敏くなっている。
 尚且つ、自分が不死身なものだから他者を先に想う癖がついているのだ。

 素直なカオラのヘタクソな嘘などで誤魔化せる相手ではないのである。

 「ねぇ、スゥちゃん」

 ぐっと顔を寄せてくる景太郎。
 何時も何時もくっついて頬ずりまでしている相手であるいうのに、カオラは何故か心臓が跳ねた。
 それが自分だけを見つめてくれている眼差しによるものか、何時になく真面目な顔をしているからか、或いはその双方かは解からないが。

 「オレ、そんなに信用無いかな?」
 「ふぇ…?」

 キョトンとしてしまうカオラ。
 思ってもいなかった事を言われて虚を突かれたのだろう。

 「そりゃまぁ、未だにボンクラだし、
  素子ちゃんに剣を教えてもらってるのに全然だし、考古学の道に進みたいって夢は持てたけど漠然としてるし……」
 「え? えと……」
 「だけど、皆の力になりたいんだ。やっぱオレじゃあダメなのかな?」

 -支離滅裂-

 その単語が一番似合う景太郎の弁であった。

 それでもカオラには何が言いたいかは理解できている。
 目の前にいるのは以前のままの、カオラの良く知る思い込みが激しくお人好しのままの彼だ。

 訳も解かっていない癖に、そのお人よしさ故に力だけは貸そうとする。
 大体はエライ目に遭うのであるが、それでもだ。

 だからこそ皆はその点に呆れつつも心を開いていったのだから。

 「えと、えとなぁ……
  けーたろが何勘違いしとんか知らへんけど、ホンマに何もないんやで?」
 「え? でも昨日からずっと元気なかったじゃないか」

 昨日……?

 そう言われてカオラは首を捻った。

 昨日はというと……この海岸に来た初日であるから、例によってあのボロッちい浜茶屋を修理を業者に頼んで海で皆で遊んでただけで……

 「……あ」

 その時の事を思い上げて、ようやくカオラは得心がいった。

 女性陣が皆脱衣所で水着に着替えていたところに、例によって景太郎が入り口を間違えて乱入。
 なるによって殲滅され、宙を舞った。
 正に何時もの事である。

 が、その何時もの光景の筈の場面に、なるが気付けないでいた途轍もなく大きな差異があったのだ。


 素子が怒っていなかったのである――



 景太郎は迷惑だろうが、カオラは皆に殴られて宙を飛ぶ彼を見るのが大好きなのだ。

 いや、彼が暴力に遭うのを見るのが好きなのではなく、些か乱暴すぎるスキンシップを受け入れている彼を見るのが好きなのだと言う方が正しいのかもしれない。
 理不尽であるし、無茶苦茶だ。
 お人好しであり、懐の大きい景太郎でなければとっくにキれて復讐に走ったり、最低でもひなた荘から出て行ったりするくらいはしている事だろう。
 実際、当初のなるは彼を追い出す為に理不尽な扱いをしていたのだから。

 カオラ自身は気付いていないようであるが、何をやっても受け入れてくれる彼を見られる事が嬉しいのかもしれない。

 だから…という訳ではないだろうが、彼女は皆の差異に気が付いたのであろう。

 以前、景太郎がシャワー室に乱入してしまった時には素子が先頭切って攻撃していたものである。
 だが今回は、彼女らの中で殴った…という攻撃したのは、本気で怒っていた なると、面白いから交じるカオラだけだった。

 何だかんだ言って、殴った後に彼を労わる なるはまぁ良いとして、大きな胸を景太郎に曝しておいて気にもしない素子など理解の範疇外だったのだ。
 良く思い出してみると、可奈子は…彼にトイレにいるところを見られても怒らないので除外するとして、しのぶですら全裸になっていたのに照れてもいない。裸を見られて真っ赤に照れて叫ぶ しのぶを見るのも乙なものだったのに……
 
 それに素子だ――

 肌を見られた己の隙を恥じていたのならまだ解からぬ事もないが、。そういう風にしか見えなかったのである。

 『モトコはウチのもん』とまでのたまわっていたカオラだ。
 その真意は百合レズの話では無いにしても、それほど懐いている相手の差異を嗅ぎ分ける事等そう難しい事では無いのである。

 その疑惑…というか疑問から、カオラは周囲の壁を感じ取ってしまったのだ。

 が、今目の前にいる景太郎からはそんな物は塵程も感じ取る事ができないでいた。

 前のまま――
 兄に似ているという印象のまま行為を高めていった彼のままなのだ。
 留学によって男前さを上げて、可奈子に負けた事で景太郎から逃げた なるをがんばって追いかけて告白して思いを遂げたあの時ままの彼だ。

 悪く言えば諦めの悪いバカであるが、よく言えば真っ直ぐで優しい心を持っている景太郎。
 その性根の匂いを感じ取って懐いた時の香りのまま……

 だが――
 だが、カオラは確かに景太郎に薄紙のような壁を感じていたのである。
 未だにその疑念を払拭できないほどに。

 「な、なんでもあらへんで? ホンマに」

 と誤魔化す。
 無論、景太郎を誤魔化し切れる訳も無い。

 「スゥちゃん」
 「にゃ?!」

 優しく。それでいて強く肩を抱く景太郎。
 唐突な行動にカオラは慌ててしまう。

 そんな彼女の動揺を知ってか知らずか、景太郎は真っ直ぐ彼女の眼を見つめて語り掛ける。

 「オレさ、皆の事、大切に思ってるんだ」
 「ふぇ…?」

 真っ直ぐに。どうしようもなく真っ直ぐに見つめながら心を打ち明ける景太郎。
 見様によっては、聞き様によっては告白とも取れる言葉である。

 カオラは珍しく頬をうっすらと染めて景太郎の真面目な顔を見入っていた。

 「だからさ、その…上手く言えないけど、スゥちゃんが元気ないの見てたら気になってしょうがないんだ」

 やや過保護気味な言葉であるが、カオラとて嬉しくない訳も無い。
 子供的な『好きだ』という告白なら知らない訳ではないが、『大切な女性』としての心配は初めての事。
 
 『大切な人達』“の一人”というニュアンスは、普通の女性なら独占欲が働いてムっとくるものなのだが、カオラ的に言えば全然OK。
 この少女は皆で生活している“今”が極上なのだから。

 だから素子やなる、キツネやサラ、しのぶや可奈子やむつみの集っている今を大切に思ってくれているような言葉は、“普通”とは違うものの嬉しい告白なのである。

 この瞬間、カオラは薄紙の隔たりの事を忘れていた。

 「ホンマに何でもないんやで? ウチもオトメやから、色々考える事もあるんや」
 「ホントに?」
 「ホンマホンマ。
  けーたろ、信じくてくれへんの?」

 ぶるぶるぶる…


 濡れた犬の様に首を振る景太郎。
 その慌て具合に、実は心配を残しているなと気付いてはいたのであるが、その嘘のつけない行動が何時もの景太郎なのでカオラは嬉しくなっていた。

 だから、

 「にゃはははは~~♪」
 「わ、わぁっ!!」

 何時もの様にガシっと景太郎の背中に飛び乗って、首をホールドするようにしがみ付いた。

 「けーたろ、ウチを心配してくれてんのやな~
  やっぱ愛のチカラか~~?」
 「うぐぐぐ……ま、間違いじゃないけど、使い方は間違ってる……」

 体勢的に景太郎の首を絞めていたカオラの腕の力がピタリと止まる。

 彼女はギャグのつもりで言ったのであるが、景太郎はマジに答えたのだ。
 それは虚も突かれよう。とんでもない告白なのだから。

 しかし、景太郎は真面目に答えている。

 彼からしてみれば寮の皆は恋人であり妻であり情婦であり肉奴隷だ。

 完全に捻じ曲がった想いであるが、<大切>という事に変わりは無いし、幸せにしたいという願いも本物である。

 しかしそれはカオラの知らない彼だ。
 成長といえば成長かもしれないが、何時も一緒にいたはずなのに、何時の間にか知らない景太郎になっている。

 以前の景太郎なら、大好きだとは言えても愛しているとは言えない筈。
 ドスケベのくせに照れ屋である景太郎は、なるの事を意識し始め、彼女に告白出来るようになるまで二年近くも月日を浪費している。
 その景太郎が愛などと軽く言える訳も無い事はカオラだって知っているのだ。

 以前のカオラなら気にもしなかったろう。
 『おぉ~~!! けーたろ、やるやん』とか、『何言ってんにゃ-っ!! けーたろのくせに-っ!!』で済まされる程度なのだから。

 だが“今”の、
 今現在の何故か情緒が不安定になっているカオラは別だ。

 そんな些細な事にすら寂しさを感じてしまう。
 皮肉な事であるが、景太郎とのスキンシップによって前と違うという事実を思い知らされた形になっていたのである。


 背中にくっついたカオラの動きが止まった事をいぶかしんだ景太郎が『あれ?』と首を傾げた。
 全く何時もの所作で『どうかしたの?』と首を回らせて見る。

 と……?

 「ん…」
 「スゥちゃ……ンんんっっ??!!」

 いきなり唇を奪われた。

 「ん~~」
 「ンんん? ん?」

 いきなり…とは言ってもそこは景太郎だ。
 以前は兎も角、今の彼は毎日毎日寮の女性達と散々唇を交わし、ゲップが出るほど唾液を飲み合っている。
 単に虚を突かれただけで左程の驚きはない。

 これも“以前”との差異だ。

 景太郎との二回目のキス。
 “大人のスゥ”ではなく、普段の子供っぽいカオラから景太郎に行ったキス。

 だが、その事が心に引っかかってしまったカオラにとって、そのキスは何故だか妙に味気ない。

 時間にしてほんの数秒。
 軽く合わされていただけの唇が離れる。

 景太郎はゆっくりと背中からカオラを降ろし、不安気に自分の顔を見つめているその眼を真っ直ぐに見つめ返した。

 「どうしたの? スゥちゃん」
 「けーたろ……」

 解からない。
 解かりようもない。

 皆のアプローチが変異し、
 好きだから抱いてもらう。好きだから精液を注いでもらう。好きだから所有物になるというシンプル過ぎるものへと変わり果てている為、微妙な女心に関しての鈍感さが増してしまった景太郎は解からなくなっている。
 だから彼女の不安の理由が全く解からない。

 「けーたろ……キス…して」
 「? スゥちゃん?」

 泣きそうな顔。
 見た事も無い………いや? 以前どこかで……と景太郎は首をかしげた。

 左程の時間も掛からず、景太郎はその事を思い出す。

 以前、歯が抜けた時、初めてわんわん泣くカオラを見た。
 兄からの便りが途絶えてしまった事も重なって情緒不安定になり、景太郎の外国に行くという話を聞いて感情を爆発させたあの時の……

 「ウチな、ウチ……仲間はずれイヤや」
 「仲間はずれって…そんなスゥちゃん」

 そんな事をした憶えは無いし、しているつもりも無い。
 だけど自分を見つめる不安げな彼女の顔は確かにそれを感じ取っている顔だ。

 意味は解からないし、理由も解からないが、彼女は間違いなく孤立感を覚えている。それだけは景太郎とて理解できた。

 「仲間はずれになんかしてないよ? スゥちゃんも大切だって言ったろ?」
 「だったら……キスして。
  

 やっぱり解からなかった。
 自分からしてあげる事に意味があるんだろうか? 鈍感さに磨きが掛かっている景太郎にとって謎は深まるばかりである。

 それでも、

 「ン……」
 「?! ………んン……」

 直に接吻くちづけをする事が出来る程彼は鍛えられている。

 軽く啄むような親愛のキス。
 初めてののキス。

 目減りしていた感情も、その事だけで僅かづつ埋まってゆく。

 数秒の触れ合い。

 それでも今の景太郎の愛情が強く篭った接吻くちづけ
 素子らと共に鍛え上げられている技術の賜物と言える、そこらの男共では追従し切れないであろう想いの篭ったキス。

 触れ合い…という言葉の意味そのままの、唇を重ねるだけの行為であったが、それでもカオラが体験した事の無い未知の感動が胸に湧き上がってくる。


 ――と同時に、言い様のない悲しさも湧き上がった。

 うっすらと開けられた瞼から涙が零れ落ちる。
 わんわん泣いた時のと違う、静かで重い寂しさの滴。
 
 カオラは、
 日本に来て、ひなた荘に来て、キツネらと出会い、景太郎と出会い、初めて心から泣いていた。

 例えばカオラの肉親であれば解かったのかもしれない。
 それでもここまで泣いているカオラは見た事が無いだろう。

 泣き声は出ていない。いや、泣き声が
 言うなれば嗚咽に近い泣き方なのであるが、悲しみが強過ぎるだけに声とならないのだ。

 家族が理解できないレベルないのだから、景太郎は勿論の事、素子らとて理解できまい。

 カオラの知る景太郎はこんな事をと出来る男ではない。
 
 留学で鍛えられた…といえばそこまでであろうが、彼女の直感がそうでは無いと訴えている。

 余りに些細な事で以前のカオラであれば気にもしなかったであろうが、今のカオラであるからこそ気付け、本能的に嫌がってしまう事柄……
 ずっと感じてしまった違和感が現実として彼女に襲い掛かり、例え方としてはやや大げさであるが、彼女の心が警鐘を掻き鳴らしているのだ。



 彼は、と……





景太郎の唇が離れて行った。

 そんな彼の眼に飛び込んできたのは、何かを恐れるようなカオラの顔。

 流石に驚いて身体を放すと、彼女はずるずると後ずさりをし、踵を返して駆けて行ってしまった。

 「え……? あ……
  ち、ちょっと! スゥちゃん?!

 慌てて声をかけるも彼女は止まらない。
 ふざけて逃げているのではなく、本気で逃げているのだ。

 元々が卓越した運動神経をもっているカオラの事。追いついてもらう事を前提にして逃げている時と訳が違う。

 カオラの背後に微かに輝くのは涙の滴。

 悲しいのか恐ろしいのかは定かでは無い。
 何故逃げだしてしまったのかもカオラ自身解かっていない。

 それでも駆けずにはいられなかった。
 景太郎から離れずにはいられなかった。

 その気持ちが何であるのか解からないのだから……


 必死で駆けて行くカオラの背。
 一歩どころか全く景太郎の手は間に合わない。

 その勢いに、景太郎が手を伸ばしきるより前に彼女は夜の闇に紛れて行ったのだった。

 「スゥちゃん………」

 只呆然する事しか出来ない景太郎。

 所在無げに伸ばされた手はそのままに、波の音だけしか答えてくれない夜の海岸で、彼は只一人佇む事しかできなかった。












――甚だ余談であるが、

 泣いて飛んで帰って来たカオラを見た なるは、彼女が景太郎によって不埒なコトをされたと勘違い(間違っていないのであるが)し、景太郎を半殺しにしたという。

 彼の不死身さをもってしても、夜が明けるまではピクリとも動けなかったらしい………






[2319] Re[3]:Dotage ~妄愛~ <卅弐> (ラブひな)
Name: Pixy◆c4b219f3
Date: 2007/08/06 16:40


 ひなた荘という集団生活の場で奇妙な綻びが見え始めていた―――

 と聞けばかなり深刻な気がしてくるだろうが、ぱっと見の変化は無い。

 相変わらず宴会好きで、訳の解からない事柄を祝い、酒を飲み、何故かなるに景太郎がぶっ飛ばされる。
 ちびちび飲む者やがぶ飲みする者の違いはあれ、学生時分から何故か飲まされている素子も今は堂々と飲んでいるし(でも未成年)、しのぶや可奈子も極普通に飲んでいる(当然未成年)。
 相変わらずのドタバタ具合で、たま~に訪れるしのぶとカオラ共通の友人である太地あき子もその変化に気付けないでいた。

 それほど大した事は無い……と思われるかもしれない。
 だが、それは確実に進行し、ひなた荘そのものを呑み込んでいたのである。

 にも拘らずその“綻び”は誰にも理解されていなかった。


 何故なら、それを感じ取れる者が皆無だったからである。


 寮内でも人の心の起伏を感じ取れる事で知られている成瀬川なるにしても、妙に勘が良いくせに、肝心なところで徹底的な鈍さを見せてしまう。
 この件に関してもその悪い癖が発動してしまい、何時もの様に自分の男をぶん殴ってじゃれているだけであった。
 その他の女性の大半は完全に加害者側なのでどうしようもない。

 で、その“綻び”とは何なのかというと……ズバリ、人間関係である。

 以前は寮の仲間…というより家族に近い関係であったのに、なるとカオラを除く女性達の今の関係は、ぶっちゃければ棒姉妹。
 愛人仲間というか、奴隷仲間というか、一人の男のモノになって悦びを分かち合っている不思議な関係なのである。

 そこにあるのは爛れた肉欲。
 腐汁が滴る愛欲の日々に浸りきっている牝犬達の姿だった。

 にも拘らず彼女らの痴態は外に全然漏れていない。
 同じ寮に住まうカオラも、そして なるも素子らの狂態を全く気付けずにいたのである。

 特に素子に至っては なるに対して濃密な嫉妬を覚えていた。
 自分が心から惚れた男が彼女意外を見ていない。というより、殆ど女として扱ってくれなかった。
 女としても侮辱であったし、何より心に湧いた初恋という熱に抗う術は持ち合わせていなかった素子は、それ故に自分の中に発生した変化を気付けずにいてしまったのだ。
 だからこそ今の素子があり、今の肉体関係が存在している。

 今の素子は景太郎中毒者であり、景太郎の精液の中毒者だ。
 それも末期。もはや手の施しようが無い。

 後を追従するかのようにキツネもそれに近いものになっており、最低三日に一度は景太郎にレイプされなければ思考能力が下がってしまう。それもレイプというのだからにだ。
 衣服を破かれ、唾を吐き掛けられただけの股間に肉柱を捻じ込まれる……普通ならこの程度で出来るわけも無いのであるが、今のキツネならばそれも可能だ。実際、数秒を待たずに溢れるほど蜜を滴らせているし。

 そして景太郎の義妹である可奈子や、しのぶも“それ”に成りかかっていた。

 普段の味覚は兎も角、しのぶ個人の旨みとして精液の味が加わっている事がそれを指している。
 無論、景太郎のものに限るのであるが、しのぶは景太郎の精液を冷凍してシャーベットとして食べる事が出来るのだ。
 つまりそれほど彼の事を偏愛しているという事である。

 言うまでもなく加奈子もそうだ。
 彼女は兄の臭いだけでイける。
 以前も幸福感を感じていたのであるが、念願叶って兄の女となってからはその想いは更に彼女の心を蝕んでしまっている。
 自慰の必要すらない。イけと言われればイけるのだから。

 むつみは景太郎といる事がそのまま幸福感に直結しているので、実は可奈子に近い。
 しかし、可奈子より耐久力があるので回数をこなす事が出来る。
 ただ、他の女性のような奉仕のテクはかなり低く、どちらかと言うと という能力に特化していた。
 元々むつみの天然の色気はかなりのものだったのであるが、処女を景太郎に捧げてからはまた格段にアップしており、そういう空気になればフェロモンがだだ漏れになってしまう程にまでなっている。
 無論、そんな淫女となってはいても なるの事が大切なのは相変わらずなので彼女には全くバレない様にしていたりする。

 最年少のサラはもっと大変である。何せセックスに溺れているだけなのだから。
 その辺の遊び女のように、男に股を広げてセックスを強請る。初体験時にオルガスムスを知ってしまった所為か、その性交の快楽は彼女の心を深く蝕んでいるのだ。
 違うのは金を取らない事と、出すなら膣内射精を求めるという事、そして相手が景太郎という事である。
 恋愛を知らないサラは、景太郎にしか肉体からだを許す事ができないのに気付いていないのだ。

 誰とでもやりまくりたい。けど“けーたろ”以外に触れられるのは絶対にイヤ。
 そんな矛盾にすら気付けていない。

 はっきり言って、彼女らは壊れてしまっている。

 今のひなた荘は景太郎の後宮だ。

 景太郎に快楽を与える為だけに存在し、景太郎にのみ愛が注がれる。
 見返りに彼女らは景太郎によって愛を注いでもらう。

 それがシアワセであると意識構築されている事を誰も疑問に思っていない。思うつもりもない。

 今の現実を知らぬのは後宮においての后にあたる成瀬川なる。そして、カオラのみ……

 ……だった――

 人間関係の“綻び”とは、カオラの事。
 サラより恋愛感情に疎かった彼女は、景太郎の差異に気付いてしまった。

 見た目は何時もの彼女であったが、心に湧いた疑念は払拭できない。
 自分に簡単にキスが出来る景太郎は、以前の彼では無い。

 “成長した”のではなく、“変貌”した事に気付いてしまったのだ。

 これがカオラならもう少しマシだったかもしれないが、メンタル面でも年齢が下がる普段のカオラでは冷静さを取り戻す事は難しい。

 皆といたいのだが、皆といられない。

 矛盾のスパイラルに陥った彼女は、結局、景太郎に近寄らないという一番手っ取り早い手段に出た。
 その行為によって景太郎は落ち込み、なるはやはり景太郎がカオラを襲ったのではと勘繰り、他の皆は景太郎のアプローチを拒む理由が解からなくて悩む。

 夢の世界の住人と、現実の世界に生きる者達との差異がここに現れてしまった。

 それでも人間関係はギクシャクしつつも時は経つ。
 煮え切らない想いを孕んだまま、今日もまた浜茶屋は開店する。








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                           -盲・愛-
                            File:卅弐
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 浜茶屋『日向』は夏の間の人気スポットだ。

 以前より格段に体力の付いた景太郎としのぶが厨房に立ち、キツネや素子、むつみに なるに可奈子、遊びまわって余り手伝いになってないカオラとサラいう美女美少女達によって給仕が行われているのだからそれは人気も出よう。
 当然ながらそんな彼女らなのだからナンパも多いのであるが、店内はナンパ禁止。下手にしようものなら素子に色んな意味で一刀両断されてしまう。
 景太郎の友人である灰谷など、なるに声をかけた瞬間に吹っ飛ばされたのだから本当に手加減が無いのだ。

 そんな素子であるが、景太郎と両想いになれた事によって以前のような険が取れ、物腰が柔らかくなった上に色気が激増している。

 景太郎に様々な場所で、様々な方法で抱いてもらっている為、肌の艶が異様に増しているのだ。それは男にとってはしゃれにならないだろう。
 元々色気があった むつみやキツネも色気が増しているし、しのぶも可奈子も腰の辺りが充実しており、言い様の無い色気が漂っている。
 サラなど年齢度外視な色気が滲み出ているのだから、子供大好きなな大きいお友達も大変だ。

 当然、男共の視線は以前より強い。

 だから絶対にモノにしてやると意気込んで我先にとアタックを繰り返しはしているのであるがあえなく撃沈。
 その容赦の無さにまた惚れてきてしまうという悪循環を続けてしまっていた。

 自分らは景太郎のモノなのに……バカかあいつらは? と素子らは思っているのだが、売上に貢献してくれているのだから一応は感謝してたりする。
 まぁ、身体に触れでもしたら命の保障はできないが。


 「ありがとうございました~~」

 そしてまた、誑かされた客が帰ってゆく。

 毎日足蹴に通っているのだから好感度が僅かづつでも上がっているだろうと幻想を抱いた男達。
 哀れ過ぎて涙がちょちょ切れそうである。

 何せ彼女らにしてみれば客の顔など¥マークにしか見えていない。
 なるは元々眼があんまり良くないので顔を覚えるのは苦手であるし、他の女性陣は想い人以外はOUT of 眼中である。金を撒いてくれる上客という好感度ならアップしているかもしれないが、名前すら憶えられていないだろう。憶えるつもりもないだろうし。

 夕方となると食材のストックも切れ、店じまいの時間となる。

 夜に出歩く海水浴客などカップル以外はまずいない。
 確かに身体を休めて食事をする場所ではあるが、ではないのだ。アイデア次第で儲かるかもしれないがそんなサイドビジネスをするつもりは更々ない。風営法に引っ掛かりそうだし。

 ともあれ、そういった理由もあって夜の間は浜茶屋としては暇になる。

 食事内容が内容なので、ラーメン等のスープストックを作る以外は左程の仕事は無い。
 そしてそれは しのぶの係なのだ。

 料理の鉄人と化した彼女は厨房に陣取り大きい寸胴で何かをコトコト煮込んでいる。
 ここは彼女の聖域であるから他に人影は無い。

 それ以外の人間はどこにいるのかというと………


 緊急対策会議室
 ひなた荘南館屋根裏部屋とも言う。

 兎も角、ここに住まう者達は何かというと何故かここで会議を開いていた。

 そして今日の議題は……

 「スゥちゃんに不届きなマネをした景太郎をどうするかについて話し合いをしたいと思います」
 「冤罪だぁ――っ!!」

 相変わらず なるに信じてもらっていない景太郎の裁判だった。

 まぁ、確かに状況証拠からいえば景太郎の性犯罪と思えても仕方が無いだろう。

 二人で連れ立ち、怯えるような顔で走って帰ってきたカオラ。
 おまけに何故か口を拭いつつだ。

 客観的に見れば景太郎に押し倒され、唇を犯されたように思えなくもない。
 なるの思い込みの激しさは相変わらずのようで、カオラをレイプし掛けたという疑惑を持ったままなのである。実際には完全な間違いでは無いし。

 「大体、アンタって何時も何時もなんだかんだ理由をつけてお風呂覗きに来るじゃないの。
  ついに馬脚を現したってコトかしら?」
 「違うって!! アレは何時も事故で……」
 「じゃあ、スゥちゃんの事はどう説明するの? アンタに何かされたのは明白じゃないの!!」
 「だ~か~ら~~
  オレにも判んないんだってば!!

 なるとて本気で疑っている訳でもないだろう。
 どうも彼女は勢いで何かをやってしまう癖がある。おまけに途中で気付いても止められない優柔不断さを持った困った性格をしている。何だかんだ言って景太郎と同ベクトルなのだ。

 ぶっちゃければ“じゃれ合い”であろう。

 無論、カオラの事を真剣に心配している事に変わりは無いのであるが、どうも気心が知れた景太郎と話していると素に戻ってしまうのは致し方の無い事である。

 ただ……景太郎からしてみればレイプという行動も愛情表現の一環に過ぎない。
 陵辱も、性行為も全てが同じ“メイク・ラヴ”なのである。

 大人の知性と色気を持ち、それでいて心のあり方は少女のままの なる。
 彼女がその事に気付いたとしたら……彼女は果たして心を保っていられるだろうか?




 そんな二人を全く無視した形で、キツネらは円陣を組んで話し合っていた。

 「どういう事なんでしょうね?」
 「スゥちゃん、今日もご飯を食べてすぐにいなくなってしまいましたしねぇ」

 と首を捻る二人。
 景太郎と連れ立って出て行き、キスをしたと言うのは当の景太郎から聞き及んでいる。
 なら万々歳では無いか。

 だが……

 「お兄ちゃんを怯えていたという理由がさっぱり……」

 解からないのである。

 「キツネさんに心当たりは?」
 「心当たりも何も……どう聞いてもよう解からへんのや。
  けーたろにキスして、キスし返してもーたらけーたうや無い事に気が付いた言うねん。サッパリやわ」
 「うーん……」

 謎は深まってゆくのみ。

 無理やりされたというのなら解からなくも………いや? 良く考えてみるとサッパリだ。

 というより、無理やりされて何が嫌だというのだろう?

 水着のまま押し倒され、布地の上から乳首に歯を立てられて無理矢理立たされる。
 ちゅうちゅうと音を立てて吸われ、乳輪が快感に反応して痒みに似た刺激を伝えて来、自分の中の女が目覚めてしまう。
 それに気付いた彼は狂喜し、足を掴み、がばっと開いて湿りだしたそこにむしゃぶりついてくる。

 悲鳴に近い嬌声が上がった。

 もはや全身の性感帯は目覚めさせられ、抵抗しようにも抵抗できない。力は入れられず、ぱたぱたと腕をもがかせられるのみ。
 そんな哀れな姿にそそられたか、彼はクロッチの上から肉芽に軽く歯を立てる。

 びくん……っっ


 若竹が撓るように激しく腰が跳ねた。
 軽くアクメを迎えてしまい、全身が脱力して力が入らない。
 奉公の筋肉が緩まり、しょろしょろと小さな音を立てて尿が漏れてしまう。その羞恥によって涙が溢れた。
 その態を見た彼はトランクス型の水着を下ろし、いきり立つ分身を外気に曝す。

 全身を嬲られ、唾液塗れにされ、ヒクヒクと痙攣するだけの女に圧し掛かり、彼は躊躇も遠慮もせずにクロッチ部をずらしてズブリと挿入する。

 いい塩梅に艶ののった声が口から漏れ、彼に屈服した事を痴態で持って知らしめた。

 そのまま何度も何度も景太郎の獣欲によって玩ばれ、穴という穴を犯されて、精液を注がれ、魚河岸のマグロのように転がされる……

 女として扱ってもらえず、性欲処理の道具のように扱われてしまう。
 タイミングが良ければ妊娠できるだろう。

 最高では無いか。

 彼に強姦されかかって逃げたとでも?
 彼女は正気か?
 熱中症で正常な思考能力を無くしていたのでは?

 段々と会話が変になってきている。

 彼にしてもらう事を想像してしまい、スイッチが入りかかっているのだ。

 その話し合いはプレイの濃厚さに移行し、どこまで奉仕できるかにまで至った時、流石に拙いと判断した子供大人が溜息を吐いて挙手をした。

 「あのなぁ……今はカオラについての会議の筈だろ?
  けーたろのチンコの話してどーするんだよ」
 「「「「あ……」」」」

 そう言われてやっと我に返る女達。
 比較的景太郎との性行為の回数の浅い むつみですらその中にいた。

 サラはそんな彼女らを見てヤレヤレだぜと肩を竦ませる。
 実は回数に関してはサラはむつみよりやや多い。

 むつみはなるとほぼ同じ時間に講義が終わり、やはり同じ様な時間に帰宅する。
 これは二人が入学してから同じ様な講義を受けていた事もあるが、やはり二人と景太郎は帰宅時間にズレが生じてしまうのだ。
 よって、学校が早く終わる事もあるが、サラは景太郎と接する時間が増える。だから回数も多くなってくるのである。

 実際、セックスを楽しんでいるだけ(の…つもり)であるサラは新しい遊びに夢中だ。

 『あたしはコドモだし、この間したばっかだろ? だから身体を早く慣れさせなきゃ』

 という、訳の解からない理屈を鵜呑みにしている景太郎はその言葉に乗ってサラの幼い肉体からだを、言い方に語弊はあるが“玩んでいる”のである。
 アナルが“使える”ようになるまで後一歩といったところだろう。

 「それはそーやけどなぁ……」
 「何で逃げたか理由が解からない事にはどーしよーも無いわけで」

 場は治まりはしたものの、難問は残っている。
 実際、彼女達からしてみればカオラの行動は常識の範囲外。理解外の話なのである。

 言ってみればカルト教団の信者のそれ。
 こっちの常識が頭にあるので、捨て去ってしまった外の常識が間違いとなった今ではそれが理解できないのである。

 「お兄ちゃんがいきなりSMプレイを始めたとか?」
 「カナコ…それが逃げる理由になると思うのか?」
 「なりませんね……」
 「じゃあじゃあ、キスより先に飲尿させられたとか~」
 「ええ思い出になるやん」
 「そーですね……う~~ん……」

 全くもって異様な会合である。
 自分らは景太郎の行うあらゆるプレイを受け入れられる心を持ってしまっているし、肉体からだもそれを嬉々として受け入れてしまう。だから変態的なプレイの善悪が理解できないのである。

 いや……確かにそれもあろう。

 しかし、一番の問題はこの会合が夜であり、尚且つ満月が近寄っているという事である。
 真昼間であればここまで猥談になりはしなかったであろうが、交尾の時間が迫る今の時間は全ての思考が性行為寄りなのだ。

 でなければ、景太郎とじゃれているとはいえ なるがいる真横でこんな会合はすまい。

 サラは、又も脱線を始めた女達に再度溜息を吐き、なるの様子を窺って彼女が気付いていない事を見取ってから、頭を“こちら側”の女達の円陣の中に入れた。

 「アイツな、自分が成長してるのが理解できてねーんだ」

 「「「「は?」」」」

 唐突なサラの言葉に大マヌケな声を発してしまう。

 「だーかーらー……
  解かんねーかなぁ……カオラはな、自分の成長についていけてねーんだよ」

 景太郎に傾倒している事に気付いていないサラであるが、妙に大人であるところは相変わらずで、実はカオラの態度が何であるかを既に理解していたのである。
 この辺はひなた荘のメンバーから何時も一歩後にいて第三者として見つめていただけはある。
 それでも自分というものに気付けていないのは笑ってしまうが。

 「それって……どういう事なんだ?」

 素子は不思議そうな顔をしてサラに問い返す。
 景太郎に対する想いを完全に受け入れ、元々の色気が上がった事もあるが、満月が近寄っている素子は危険だ。
 女であるサラですらクラっと来る時がある。
 街を歩けばほぼ100%男が振り返って付いて来そうになるのだから。無論、全ての気配を消しているので後をつけられる事はないが。

 「あ、ああ……何てゆーか……
  カオラってさ、けーたろの事が好きだろ?」
 「ん? あ、せやな。可奈子の調べた偏差値でも なるに次いで二位やったし」

 三位だった しのぶに詰め寄られても、『ウチ、けーたろの事好きやもん』とアッサリ認めていたくらいだ。

 「それなんだけどさ、アイツ、けーたろに女として惚れ始めてるみたいなんだ」
 「は?」
 「ああ…」

 キツネは首をかしげ、むつみは納得したと手を打った。
 妙な話であるが、キツネは面白そうなネタにはかなり敏感なくせに、そういった機微には少々疎い。彼女が一番理解し易そうなのにだ。
 反対にむつみの方が異様に聡い。妹達と接している所為か、子供の心境の変化を察し易くなったのかもしれない。

 「つまりスゥちゃんは、子供的な好意が女としての想いになりかかってて戸惑っている…という事なんですね~」
 「そんな時にけーたろが極フツーにキスをしてきたんだ。
  自分が好きになったけーたろと違ってるからビックリしたってトコだろーな」
 「好きになったけーたろって……」

 「ドジで、運が悪くて、ムッツリスケベなくせに照れ屋で恥ずかしがり屋」

 成る程…と三人の得心が行き、可奈子はムっとする。
 可奈子からしてみれば兄は鈍感というだけで他に欠点の無いパーフェクト超人なのだから当然であろう。その鈍感さが何時も騒ぎの元になってたのであるが……

 兎も角、大体の見当はついた。

 カオラは景太郎の変異に気付いたのだ。
 以前のカオラであれば『変わったな~』とか、『成長したやん』で済んでいたモノであったのだが、今のカオラには受け入れ難いものだった。

 何故なら、彼女は景太郎を一人の男としてみてしまっているからだ。

 以前から知る景太郎が唐突に変貌し、ジゴロ宜しく巧みなキスをしてくるのだからその戸惑いも大きかろう。
 景太郎の皮を被った別人と捉えても仕方が無い事かもしれない。


 そして彼女の中の子供の部分がそれを拒絶した。


 だが、
 だが、景太郎はどう変わっても景太郎なのだ。
 どの様に変異しようと変貌しようと景太郎は景太郎なのだ。

 カオラはその事に気付いていないのである。

 「哀れな……」

 という言葉が素子から静かに漏れた。

 その言葉の真意は測りかねるが、何故だか皆はその言葉をストンと胸に落としてしまう。
 それほど納得の行く言葉なのだから。

 変貌し切った者達でしか解からない得心。
 女であり、オンナ。愛人であり牝である彼女らにしか解からない心境であるのだろう。

 「だからアンタわね――っ!!」
 「ちょ、それ、オレの所為じゃな――いっっ!!

 一方的な折檻に近くなった二人のじゃれあいを他所に、女達はカオラを思い、揃って溜息を吐いた。

 その温度は奇妙に熱く、そして重くその場に染み渡ってゆく。

 女達の口から零れたそれは、身体に篭ったオンナとしての想いを如実に表すものであった。




 皆が皆して自分の事で騒いでいるとも知らず、当の本人は屋根の上に寝そべり、ゆっくり太ってゆく月を眺めていた。

 月の見え方は大気の具合によって変わる。
 日本から見える月はどこか遠く、母国の見慣れた月からしてみれば物悲しい限りなのであるが、どういう訳かひなた荘から見る月は母国のものの様に大きい。

 日本は技術大国等とのたまわっているが、カオラの国と比べると貧弱極まりない。
 そんな風に科学文明が異様に発達しているくせに貨幣はいい加減で、レートはまちまち。それでいて異様に国は豊かで、自然と共存しきっている。

 そんな国で生まれ育ったカオラにとって日本という国は、都心部はごみごみし過ぎているし、地方は退屈極まりない極端な国だった。
 確かに物質文明の高さは認められるが、痒い所に手が届かせ過ぎて人間性というものが下落の一途を辿っている。その逆の場の妙に閉鎖的に感じられる。

 母国に比べれば人間的にも技術的にも劣りすぎている。
 国という物の未来を踏まえて見据える気が無いとしか思えない。

 それに、毛色の違うものは直に弾き出されてしまう。外国人であるカオラだからこそ解かった事といえるのだが。
 今は学校のほぼ全員が受け入れてくれているのだが、慣れない内は大変だった。

 同国の人間に対しても…例を上げればカオラの後輩である太地たいちあき子もそうだった。今でこそちょくちょくここひなた荘に訪れ笑顔も見せてくれているのだが、中学当時は陰湿な虐めに遭って大変だったのだ。
 本来なら生徒を守る筈の教師ですら頼りなくて役に立たず、しのぶがいなければ取り返しが付かなくなっていたかもしれない。

 科学が発達したと思い込んでいるバカばっか。


 バカはキライではない。自分だってそうだ。
 というより、大好きな人間は皆バカだ。

 だけど、バカには性質の良いものと悪いものがある。
 そしてこの国の上部は性質の悪いもので構成されているのだ。

 世界征服という珍妙な野望を持ってしまったのも、そういった理由からなのかもしれない。

 日本は決して嫌いではない。
 嫌いではないが、ここの連中に比べるとどうしても一歩引いてしまう。

 逆に言えば、この国の中で一番好きな連中が集っているのがここ<ひなた荘>なのである。


 カオラの日本好きはここから広がっていった。


 キツネにはやや似非気味の関西弁を習い、
 はるかも素子も面白いし、
 しのぶには美味しいゴハンを食べさせてもらい、
 なるも一緒に遊んでくれる。

 景太郎が来て楽しさが増し、
 サラという相方もでき、
 タマコが混ざってライバルと化した。

 スイカねーちゃん事、大ボケむつみが混じり、
 最初は敵だったが可奈子という面白いブラコン娘も入ってきた。

 騒がしさも楽しさも増し、カオラの顔から笑顔が絶える日はない。
 当然の流れであるが、こんな面白い日々がずっと続けばいいのにと切なる願いを持つに至っていた。


 そして――


 「けーたろ……」

 ポツ…とその唇から彼の名が零れる。

 何気ない言葉であったが、その名がズシリと胸に沈みカオラの顔がまた曇った。

 目尻から水晶の滴が伝い、彼女はそれに驚いて慌てて拭い去る。

 泣いている? 

 その事実にカオラは驚いた。
 実際、彼女は殆ど泣かない。母国から来た時も笑顔であったし、どんな嫌いなヤツを前にしても(内心は兎も角)笑顔でいる自信がある。
 ここで泣いたのは兄に嫌われたと勘違いした時や、景太郎に歯を見られた時くらいだ。

 論理的に考えられるカオラである。その涙の意味も瞬時に悟っていた。

 望郷の念等というセンチメンタルなものでは無く、感情が煮えてうねるような切なさから溢れ出た涙。
 それでいて冬の只中のような心寒い感傷から出た涙。

 即ち、

 大好きな家族に嫌われてしまった事に近い心境が心にある。




 はぁ……


 熱い溜息が漏れる。

 溜息を吐くと幸せが逃げる…という言葉があるが、だとすると自分からどれだけのシアワセが逃げて行ってしまった事だろう。
 実際、溢れかえるほどの幸せがここにはあった。

 いや過去形ではない。今だってそうだ。

 大好きな皆がいて、構ってくれて、心配してくれて、一緒にいてくれる……
 不満などあろう筈が無い。

 無い筈だ。

 無い筈なのに……

 「なんで、こないに切ないんやろ……」

 カオラはその胸を痛めていた。

 実は彼女は皆が思っているほど立ち直りが遅かったわけではない。
 景太郎とのキス事件の晩には、ちゃっかりと回復してたりする。

 確かに異様に進歩していた彼の精神には戸惑いを隠せなかったが、あれは自分が、自分が戸惑っただけであり、景太郎の成長に異議は無い。
 まぁ…からかい甲斐は無くなってしまったが……

 逆に、キスを直出来るようになったというのなら、今度はしまくれば良いのである。
 何時でもどこでもキスして~と甘えれば良いのだ。これはこれでGoodでは無いか。

 では、一体全体何に落ち込んでいるというのだろう?


 ふぅ……と、また溜息一つ。

 彼女自身、何を落ち込んでいるのやら、何で景太郎を避けているのかが全く解からないのだ。

 彼とくっ付いているのは嬉しくてたまらない。
 くっ付き具合というか、抱き心地というか、カオラが堪能しているその感触は格別である。

 以前は素子の方が抱き心地がよかったのであるが、今は景太郎が一番だった。


 だけど……何故かできなくなっている。


 行為自体は簡単なのに。

 後から飛び掛って、ネックブリーカーを極めるが如くしがみ付けば良いのだ。それだけだ。
 『チ、チョーク、チョーク!』と苦悶する景太郎の声を耳にし、にゃははと笑えば良いのだ。簡単である。
 簡単であるはずなのに……

 「何ででけへんのやろなぁ……」

 右手を月に翳すように掲げてみる。
 無論、日光ほどの光量は無い為、光が手を透かす事できはしない。

 それでも月光が掌から染み渡ってくるようだ。

 その手をわきわきと動かし、今日は一日景太郎に触れていないという事実を噛み締める。

 触れられなかった。
 直側にいるのに。
 触れたいのに……

 姿を遠くに見、駆け寄ろうとしても足が竦む。
 今すぐにでも背中に飛び乗って抱き心地を堪能したいのに、身体が硬直したように動かなくなる。

 それでいて全力後退は出来るのだから始末が悪い。

 「何々やろなぁ……」

 と溜息がまた一つ。

 これが極普通の少女ならば直に気付くだろう。
 しのぶ等、即行で気付いたものだ。

 だが、彼女は全く理解していない。できていない。

 男を想い、側に寄りたくても妙に臆病になってそれができない。
 触れたいのに手が伸ばせず、気持ちを持て余して逃げてしまう。

 そんな気持ちを世間一般的になんというか……

 知ってはいる。
 後押しもしてきた。
 ふざけてからかった事もある。

 だが、いざ自分に巻き起こってみるとそれを理解する事ができないでいた。


 胸の奥が熱い。

 景太郎を想うと心臓の鼓動が跳ねる。

 笑顔や頭を撫でてくれる感触を思い出すと、手で顔を隠してしまうほど照れてしまう。

 簡単な気持ちの変化だった。
 簡単で単純。当たり前の変化。

 しかし有史以来、難問として知られている心の変化。
 心情の方程式は難解極まりないというのに、答えはいたってシンプル。

 妙な方向に考えすぎてしまうカオラでは余計に解かりかねるだろう。

 見つけ出せれば得心が行くし、納得も出来るかもしれない。
 だけど、だからこそ難しいともいえる。

 なるだってそれを認めるのにどれだけ回りがイライラさせられた事だったか。


 つまり――
 彼女は今、景太郎に対する好意を恋心に変化させてしまっていたのである。




 想いが成就する……という意味で言えば、ひなた荘の中で一番それに近寄れていたのは間違いなく成瀬川なるだったろう。

 東大に合格した。
 進みたいと思う道を見つけられた。
 景太郎に対する想いを認められた。

 後は一緒に東大に行くだけである。

 そう――一緒に行くなのだ。

 だがどういう訳か、たったそれだけの事が上手くいかないでいる。

 時間的なズレ。
 タイミングも悪いし、尚且つ彼女は妙な所で楽天的である。
 だから行けるという気楽さに寄りかかっているのである。

 更に、景太郎と両想いというのも強い。

 愛されたい願望が強い なるは、自分に対する景太郎の強い想いを受けて安心し切っているのだ。
 彼女の心には、別館の呪いすら打ち破って義妹より自分を選んだ彼のその想いを前面に受けている自信があり、“歓び”がある。

 それが楽観という“枷”になっているというのに……

 だが、彼女には“歓び”はあっても“悦び”はまだない。
 彼女として接してもらってはいるのだが、オンナとしてはまだ接してもらっていない。

 想いの成就に一番近寄れて“いた”という過去形なのも、彼女がかなり後方に下がっているからだ。

 なると景太郎に結ばれているものが発動する時、他の女性らの想いも成就する。
 そしてそれはなるより多く、成就となるのだ。


 皆が皆で並んでいる願いの中、現在一番先頭に立っていると言って良い女性……それはやはり素子だろう。


 尤も、幸せの絶頂度から言えば可奈子の方が強い。

 何せずっとずっと恋焦がれていた兄とそういう関係になれた上、望めば何時でも『愛してる』とか、『大好きだ』とか言ってもらえて抱いてくれるのだ。
 一緒に入浴もしてもらえるし、洗いっこも可。赤ちゃんが欲しいと望めば、今の彼なら産ませてくれるだろう。

 はっきり言って最高である。

 それに次いでしのぶ。
 彼女もなる同様に愛されたい願望が強い為、景太郎に愛を求めていたのだから、今の状況を嬉しいと思わない筈が無かった。
 腕を組んでのデート、そしてデート後に大人のデート。甘々の睦み合いから、激しい陵辱プレイも望むままだ。
 一般倫理を兎も角とすれば、彼女の未来は薔薇色であると言えよう。

 そしてむつみ、やっと素子である。次にキツネで最下位はサラだ。

 むつみは大好きなけーくんとラブラブできて嬉しいという想いと、幼い頃叶えられなかったけーくんのお嫁さんの位置に近いところに立てる今が嬉しくてたまらない。しかし、想いは硬いが可奈子ほどの強さは無い。
 キツネは皆で楽しく仲良く一緒にいられる今を堪能しているから緩んでいるし、サラは楽しんでいるだけ。
 だからこの順位なのだ。
 無論、景太郎に対する想いは、サラのベクトル違いは別にして一様に強いのであるが。

 その中でわりと下位に位置する素子であるが、彼を求めるという点では他を大きく引き離している。

 愛欲でいえば可奈子もかなり大きいのであるが、素子のそれには肉欲と生存本能が混ざっているのだ。

 何せ今の素子は景太郎と交わらなければ生きられない。
 よしんば生きられたとしても素子としての自我が破壊されてしまうかもしれないのだ。

 狂愛とか盲愛がそれに当たるだろう。

 以前の可奈子にもそれはあったのであるが、景太郎のモノになれた瞬間にそれは氷解。彼の腕の中でドロドロに溶かされている。
 逆に素子は彼のモノになったからこそ、その狂気が強まってしまったのである。

 今の素子の肉体からだ……
 髪の毛の先から足のつま先までに、景太郎の精液に触れていない部分は無い。

 何せ処女を捧げてから毎日のようにセックスしているのだ。
 景太郎の射精量と性欲が人間のそれを超えている事も手伝い、回数も尋常では無く、景太郎との性行為は既にのべ数百回を超えている。
 膣内に出された量に至っては、彼が人外に達した事もあって百リットルを超えているだろう。
 精飲や腸内射精を入れればしゃれにならない回数だ。

 これも彼女の<呪い>の守りがあるという仮説を裏付けている。でなければ絶対に妊娠している筈なのだ。

 もはや絶対に元の彼女には戻れない。

 そして戻るつもりも無い。
 彼だけの肉玩具。彼のモノ。その悦びが心にあるのだから。
 それがあるからこそ、呪いに打ち克てたのだから……

 その狂愛の強さが平穏を呼べたのだから。


 そんな素子がスタスタと廊下を歩いてゆく。

 手に着替え等を持って歩いているのだから風呂へと向っているのだろう。

 予備校の模試の点が思いの他高かった事もあって、彼女の機嫌はかなり良く、鼻歌まで出ていた。

 朝は景太郎と剣の修業。そして青姦。
 彼に暇があれば昼は勉強を見てもらい、後にセックス。
 夜は満月以外は独り占めはできないのであるが、時々雑ぜてもらえて3~4Pをしてもらう。

 毎日が充実しているのだ。

 精臭が絶対に離れないのであるが、それが“良い”。

 素子の膣から精液の滑りが途絶える日は無い。
 その唇から精臭が途絶える日も無い。
 その手が景太郎のペニスに触れない日も無く、その乳首が景太郎の愛撫に曝されない日も無い。

 そんな日々こそが彼女の幸せなのだ。

 淫乱…それこそが彼女に当てはまる別称だろう。
 ただ、その淫乱さは一人の男のみに絞られている。だからこそ日常生活も可能なのだ。景太郎による陵辱行為が必要な“介護者”ではあるが……

 そんな彼女はショートパンツとタンクトップ姿で部屋を出て歩いてゆく。

 ふと見ると、ロビーの電話をなるが使っており、どこか…口調から実家と思われる…と話をしていた。

 なるの姿は素子同様にラフなもの。ふんわりと石鹸の香りが漂っているのは彼女が入浴を終えたからであろう。

 素子はなると眼があうと、無言で頭を軽く下げてその場を後にした。
 挨拶はきちんとする。それが素子らしい。

 カオラの問題は全然解決はしていないが、二人とも放って置くつもりは無い。
 どうせ明日にはまた浜茶屋『日向』があり、顔を合わせるのだからその時に何らかのアクションをとる。さっきの会議でそう決めたのである。

 素子はそのまま なるの横を通り過ぎてひなた荘名物である露天風呂の入り口に立ち、入る前にチラリとなるの姿を見た。
 こちらの気付いた様子は無い。
 やはり背中を向けたまま話を続けていた。

 納得したかのように暖簾を潜り、脱衣所に入ると、素子は手早く服を脱いで篭に放り込んだ。
 焦っているのか急いているのか素子は衣服たたむ事もせず、手拭い片手に風呂場に飛び込んでゆく。

 皆が揃う事の多い露天風呂であるが、今そこにいたのはキツネ一人。
 優雅に湯を独り占め状態だ。
 おまけに銚子と肴を乗せた桶を湯に浮かべ、舐めるように酒の味を楽しんでいるではないか。実に良いご身分である。

 彼女は素子の姿を見止めると、にひひ…と奇妙な笑みを浮かべ、湯の中から右手を出してくいっくいっと上方を指す。
 素子はそれを見て無言で頷き、手拭いを肩に掛けて助走をつけて風呂場の岩を蹴った。

 正確に言えば足場にして飛んだのである。

 素子の身体能力を持ってすれば他愛もない事だ。
 岩を蹴り、横に生えている木を蹴り、壁を蹴上がって“そこ”に辿り着いた。

 そこには――

 「あふ……くぅん……ちゅ、ちゅ、ちゅ……」
 「ンふ…はふはふ…れろれろ…ちゅぅうう……」

 風呂の椅子に腰をかけた青年を前にし、股間でいきり立つ肉柱に這いつくばるように口で奉仕をする全裸の女が二人……

 「ン…くぅ……っっ
  スゴ…っっ ふ、二人ともスゴイ上手い…っっ」

 「うふふ……けーくんの為だもん」
 「お兄ちゃんが気持ちよくなってくれるから……」

 景太郎にダブルフェラを行っている、むつみと可奈子の二人であった。

 「ふむ……サラはいないようだな」

 そんな光景が展開されているというのに、素子は焦りもしない。というかする訳が無い。
 後宮なのだから当たり前の光景なのだ。精々、出遅れたと思うだけであろう。

 「ン、ンンン……んちゅぅうう……ぷはぁ…
  あぁ、モトコさん……遅かったですね」
 「はぁはぁ…お先にいただいてます。
  サラさんでしたら、今日はお休みです。夕べがサラさんの番でしたから……」
 「あぁ、そうだったな……」

 ローテーションを思い出し、直に納得する素子。
 夜、二人っきりで景太郎と一緒に寝られるようになってから皆の機嫌は殊更良くなっていた。
 特に可奈子は次の日は物凄く機嫌が良い。彼女にしては珍しく鼻歌が出る程なのだ。彼女の相棒であるクロもびっくりである。

 むつみも可奈子も、素子と会話をしてはいるがその眼差しはビクンビクンと脈動しているペニスに向けられたまま。
 ちゃんとなのは流石だ。

 這いつくばるような姿勢なので二人とも腰が高くなって秘部が丸見え。
 うっすらと口を綻ばせてトロトロと蜜を滴らせているのは淫猥極まりない。
 むつみの大きな胸がスノコと身体に挟まれてつぶれているのも中々にそそるものがあるだろう。
 胸の発育が遅い可奈子は密かに悔しがっていたりする。

 尤も、以前は兎も角、今の景太郎は胸の大きさなどどうだって良い。
 小さければそれはそれで楽しめるし、大きければそれはそれで使
 選り好みがなくなっているのだ。

 だからコンプレックスを持っている可奈子や、しのぶの胸にはキスマークや歯形が多くなる。
 こんなにも夢中なんだよと言わんばかりに。

 尤も、その所為で乳首の色が濃くなっているのはご愛嬌だ。
 学校に行っていない可奈子は良いとしても、高校に通っているしのぶはどうするのだろう?


 閑話休題それはさておき


 素子はボディーシャンプーを手に取り、勢い良く泡立てて自分の胸に塗りたくった。

 身体を洗う…という理由もあるが、ここは景太郎専用の男風呂であるからそれだけの理由では無い。

 ぬる……


 「あ、はぁ……っ!! モ、モトコちゃんっっ!!」

 「ふふ……肉棒はとられているからな。
  私は身体を洗う事にしよう」

 クスクスとむつみが笑い、可奈子も小さく微笑む。
 そんな三人の美女美少女の想いを受けつつ、景太郎の身体は敏感に反応してしまう。

 ぽたぽたと滴るカウパー線液の量が増え、可奈子とむつみを狂喜させた。
 カチカチにしこった乳首を押し付けている素子は、景太郎の息が荒くなった事で媚びた笑みを浮かべた。

 太股を伝う泡すら押し流す自分の愛液の量に苦笑しつつ、三人は奉仕を続ける。

 もう直出来る。
 もっと堂々と出来る。
 昼日中に皆で絡み合い、見せ合い、愛し合える日がくる事を確信しつつ……

 三人の脳裏に浮かぶのは、カオラの有られもない姿。
 だらしなく四肢を投げ出し、その褐色の身体を白濁色の体液で汚されて呆然とする少女の光景。

 当然ながら股間からは雄の体液が逆流しており、赤い糸のような破瓜血が混ざっている。
 そしてその体液をその身体に擦り込んで皆で舐め啜るのだ。

 素晴らしい……
 何て素晴らしい未来予想図。

 そしてその未来はゆっくりと確実に迫りつつあった。

 その幸せな未来を想いつつ、三人は景太郎の前に跪いて彼の精液を顔で受け止めた。

 生温かくて香り良いそれが頬を伝う感触に酔い、うっとりとしながら我先にとペニスに舌を絡ませて残留性液を飲み啜る。


 ぞぶりと濡れそぼった膣に肉傘を突き込まれて嬌声を上げる素子を見つめながら自分を慰めて順番を待つ二人。
 勢いがつけば三人同時に攻めてくれるだろう。
 どうせ一回や二回では済まないのだから。


 一人男に犯されて悦ぶはしたない自分達。
 それでいて満ち足りている汚らわしい日々。

 寮全体を一つの後宮とし、未来永劫皆で幸せに暮らしてゆこう。

 その時を思い浮かべた むつみと可奈子の蜜量が激増する。

 くちょくちょという湿った音が、ぐぢゅぐぢゅと膣を突く音に混じって狭い風呂場に響いていた。

 嗚呼、景太郎の精液を全員で分かち合う日。
 その日がとても待ち遠しい………






 電話を終えた なるは、部屋に戻る前に台所に寄った。

 入った途端、ぷうんと香ってくるのはハイターの臭い。
 台所では手早く荒い物を終えた しのぶが布巾を漂白剤に浸けているところだったのである。

 「しのぶちゃん。お疲れ様」
 「いいえ。慣れてますから」

 労いの言葉をニッコリと笑顔で返す。

 他の事は全てなるに負けているしのぶであったが、家事と情事に関しては彼女を凌駕している為、以前より心に余裕がある。
 無論、そんな事に気付けもしない なるは冷蔵庫を開けて中から牛乳を取り出そうとしていた。

 風呂上りに一杯…というヤツだろう。

 『ユっキー印の美味ェ牛乳』の箱に手を伸ばし、そのパックの中身をコップに入れようとして、ふと彼女はその眼を隣に置いてあるポリ容器に止めた。

 100円ショップなどで売っている安っぽいそれ。
 麦茶等を入れる器の奴だ。

 だが、半透明のその容器から透けて見えているのは琥珀色の麦茶ではなく、白い色の液体。
 普段は別に気にも留めない なるであったが、何故だか異様に気になって手にとってみた。

 「ねぇ、しのぶちゃん。これなぁに?」
 「え? あ、ああ、それですか? 美容栄養ドリンクです」

 その問い掛けにしれっと答えた しのぶ。
 左右に振ると意外に粘度が高いのかドロリと移動し、シェイクできない。
 うす黄色い色が混ざっており、栄養ドリンクといわれると成る程そうなのかもと思ってしまう。

 ふむ…と考え込む なる。

 何だか妖しさ大爆発であるが、と聞くとかなり気になってしまう。

 物は試しという気になったのか、

 「ねぇ、ちょっと貰っていい?」

 と しのぶに尋ねてみた。

 「いいですよ。朝絞ったものですから」
 「へぇ? 絞りたてってヤツ? 何だろ……」

 好奇心も混ざったか、安っぽいピンクの蓋を捻って開けてみた。

 と………

 「わっ! 臭っっ!!」

 いきなり顔を背けて鼻をつまむ。
 危うく容器を落しそうになるが、慌てて駆け寄った しのぶによって事無きを得る。

 「えぇ?! 臭いですかぁ?」

 中身を零さない様、丁寧に蓋を閉めつつ、しのぶは呆れるようになるに問い掛けた。
 彼女からしてみれば素晴らしい芳香なのだ。

 

 「い、いえその……生臭いとゆーか、何とゆーか……
  大丈夫なのそれ? 腐っちゃったりしてない?」

 流石に彼女の物を貶す訳にはいかないという事を理解している なるは、一応言葉を選らんで感想を述べる。
 といっても好印象でない事に間違いは無いのであるが。

 「失礼ですよなる先輩。がいいんじゃないですか」
 「そ、そうなのぉ?」

 クサヤ然り、ブルーチーズ然り、乳酸醗酵させたものはけっこうキツイ臭いがする。
 それでもこれらの食材の旨さを知る者にとってはその香りすらも喜ばしいものだ。

 だがこれは全然別物だろう。
 言ってみればのだ。
 その“臭い”は なるの中で、生理的にイヤだと訴えてくるものがあった。

 「悪いけど、コレは止めとくね。こっち牛乳でいいわ」
 「はぁ…慣れたら癖になる味なのに……

 目の前でこくこくとコップに入れた牛乳を飲み干し、シンクで軽く流してから「じゃあね」と台所を後にする なる。
 その背を見送ってから しのぶは容器の蓋を開けて、中に入れておいた液体を口に入れた。

 既にその極小のオタマジャクシ状のモノはお亡くなりなっているだろうが、味はまだ良い。
 舌の上で冷たく冷やしたそれを転がし、唾液と混ぜて温めてから喉奥へと流し込んでゆく。

 ごくん、ごくん、と少しづつ流れ込んでゆくそれの感触はやはり良い。
 喉越しに絡まる点も最高だ。

 「でも、確かに風味は落ちてるなぁ……今度絞りたてを渡してみようかな?
  それとも……なる先輩は……」




 “合わない”のかな?




 容器に鼻を近付け、くんかくんかと精臭を楽しみつつ、しのぶはそんな事を考え続けていた。




*******************************************************


 また遅くなってしました。Pixyでございます。

 ご感想もいただけて、感激しております。いえホントに。
 お陰で文章の見直し回数が増えました。それでも誤字脱字が減らないんですけどね…トホホ…

 さて、前回からちょいと長めに書いてます。
 これが四十という漢数字を打てないから行う打開策。

 “一回の文章量を増やす”でしたw 安直っスね。

 このペースでラストまで突っ走りますので、ご容赦ください。
 更にエロさもPower Upできたら嬉しいんですけどねぇ……上手く行きませんわ。

 お盆までにつつへ気を更新出来たら幸いだと思っております。
 というか、そのつもりでがんばってみるつもりですので、見捨てないでください。お願いします。

 では今回はこの辺で。
 それではまた……






[2319] Re[4]:Dotage ~妄愛~ <卅参> (ラブひな)
Name: Pixy◆95e61621
Date: 2007/08/11 17:35


 乙女が悩もうが、オンナらがもめようが、結局地球は動いている訳であるから朝が来る。

 夜の痴態等どこへやら。
 泥酔者が如く瞳の輝きを濁らせて肉柱を貪っていた素子も安らかな眠りについていたし、淫売もかくやといった態であった むつみも柔らかな眠りについているし、素子らに付着した最愛の人の精液を嬉々として舐めすすっていた可奈子も年齢相応の寝顔を見せていた。

 ただ、素子は朝の鍛錬があるのでそろそろ目覚める筈だ。
 景太郎と性交を果たした日は爽快な目覚めを迎える。そしてまた朝っぱらから犯されるのだ。目覚めも良いに決まっている。

 何せ雨が降ろうが台風が来ようが鍛錬の後に犯されるのだ。
 そこらの女であれば心身共に堪ったものではないだろうが、彼女らなら別。悦びはあっても苦痛は無い。

 というより、されない事には落ち着かないのである。

 当然ながら景太郎も早く起きねばならないのであるが、その日彼を起こす役目は別の者が受け持っていた。


 パチリと定時に眼が覚める少女。

 その際、『あ……』と甘い声が漏れてしまうのだが、それは仕方の無い事であろう。
 昨晩、彼女がその若い肉体からだに受けた陵辱行為は凄まじいの一言に尽き、尚且つ彼女が行った奉仕の濃厚さは想像を超える。
 外見の可愛らしさとは裏腹に、彼女はそこらの商売女より娼技に優れ、更には相手に奉仕する事に悦びを見出しているのだから当然であろう。


 ただ、その淫猥さが一ヶ月程度の性行為の賜物だと理解できる者が果たしているものであろうか……?


 兎も角、その少女は愛おしい男の腕の中で眼を覚ました。

 単なるメイクラブだと説明したとしても誰も信じてはくれないであろう陵辱の痕…手首に残る縄目や、乳首や尻にあった歯形も消え、残るは胎内と胃の中の精液のみ。
 その精液も栓をしてもらっている為、外に漏れたりはしていない。

 そう……熱い熱い肉の栓で……

 「ン…ふぅ……っ」

 腕の中の心地良さは最高であるが、彼女には朝食を作るという仕事がある。名残惜しいがその身を離さねばならないのだ。

 全身が精液塗れで、とっくに布団の精液の染みを深く刻み込んでいる。
 一人寝の時にはその精臭が鼻を擽って腰が痺れてくる難点があるが、何時も大好きな先輩に抱かれているようでその眠りも心地良い。

 だがそれは、一ヶ月少々の間に敷布団を完全に精液漬けにしてしまう程、景太郎とセックスしているという事である。
 彼女の肉体からだは、素子らと同様に処女の部分はもう残っていないのだ。

 ずる、ずるる……とゆっくりと引き抜いてゆく肉柱。
 本当であれば一晩中勃起したままならそのペニスに害があったりするのだが、彼のは全く別物なのだろう。海綿体異常も無く元気に朝立ちを男を誇示しまくっていた。
 そのお陰で女達は早起きができるのだ。

 ただ、素子は兎も角として、キツネはSMプレイ以外を滅多にやらないので起きられても動けない。
 可奈子はプレイの濃厚さからやはり早起きできても腰が立たない。
 むつみはそもそも早起きができないのだし、サラも寝坊さんだ。

 だから素子としのぶ専用の目覚ましと言えよう。


 きゅっ、きゅっ、と膣を引き締めながら抜いてゆくペニス。
 ギリギリに突っ立ったそれにはぶっとい血管が浮いており、逞しい事この上も無い。
 素子らとの性行為によって淫水やけを起こしている為、黒々とてかっているのだが、それがまた女心をそそるのかゴクリと喉を鳴らしてしまう。

 肉カサの部分で肉襞が擦られてしまう為に意識が飛びそうになるが、何とか耐え、ずりずりと引き抜いてゆく。
 夕べかき回された膣道には当然精液がこびり付いている筈。凶暴なエラによって折角の精液が擦り剥がされるのは痛いが、膣粘膜にこびり付いて染み込んだ景太郎の匂いはどうやっても取れやすまい。

 ちゅぽ……


 良い音がし、肉柱が完全に引き抜かれる。
 そんな音がするのは強い締まりの為だ。
 キツネには劣るが、しのぶとてしまりは強いのである。

 しのぶは用意しておいたペットボトルに漏斗をさし入れ、そこに跨って尻から力を抜いた。
 丁度、尿意を耐える要領で引き締めていた筋肉の力が抜け、ヴァギナが綻びを見せ、

 ドロリ…と、やや黄色みがかった濃い粘液が零れ落ちてきた。

 言うまでもない。景太郎の残留精液である。

 孕めと言わんばかりに膣内射精を繰り返してくれる彼の体液。
 一滴たりとも無駄にしたくない。

 ボトリ…ボトリ…と漏斗の中に零れ落ち、その細い先端から滴り落ちる濃いザーメン。
 粘度が高い所為で中々落ちず、漏斗から溢れそうになるたびに しのぶは膣を閉じなければならない。
 おまけにを間違えると逆にヴァギナから溢れ出てしまうから大変だ。

 用意しておいたペットボトルは500mlサイズ。それでも満杯になる恐れがあるのだから、今の景太郎がどれほど規格外であるのかが理解できるだろう。
 それも一回分でこれなのである。

 女が増える度に景太郎の射精可能回数は増え、必然的に相手をする者の嬉しい負担は増えてゆく。
 男風呂で素子とむつみ、そして可奈子を相手に何度も何度も出したのであるが、それでもしのぶが失神するほど膣内なかに出されている。
 誰が見ても絶対に人間では無いのであるが、景太郎の女達は誰一人気にしていない。
 おまけに妙な性癖に目覚めているのだが、それすら気にならない。

 昨晩、何度も何度も注がれたというのに出てくる量は一回分。
 他の精液はまるで姿を消している。
 だが、それでも極普通にしのぶは受け止めていた。

 ボトボト滴る粘液を最後の一滴までボトルに注ぎ入れ、漏斗に残ったものを丁寧に舌で舐めとった。
 朝一番の絞りたてではないし、昨晩の残留物ではが、彼女ら的に言えば自分の膣内で温めたホットミルク。旨さも一入なのだろう。

 景太郎の朝立ちによる目覚め。
 それは女達にとって抗い難い起床なのである。

 食事担当であるしのぶはこれから朝食の用意がある。
 そして浜茶屋で出すものの下ごしらえも。

 だが、それより前にやるべき仕事が彼女にはあった。


 精液を舐めた事によって腰に痺れが走り、軽いアクメを迎えてしまったしのぶ。
 それでも精液と愛液と失禁したものをたっぷりと染み込ませた布団の中で眠り続けている自分の飼い主オトコににじり寄り、

 「先輩、朝ですよ~
  起きてください。モトコ先輩が待ってますよ~」

 景太郎と朝を迎えたものはほぼ必ず朝早く起きられる。
 だからその女は景太郎を起こす役目も与るのだ。

 ひなた荘で当たり前となってしまった朝。

 こうしてまた、歪んだ日常をそれと気付かずに送るのである。




―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
                           -盲・愛-
                            File:卅参
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――




 『ん~~……
  何だろ? やっぱりちょっと違うような……』

 何時もの様に朝を向かえ、何時もの様に食卓を囲む。

 食事の内は皆と一緒にいるカオラも、些か元気は無いもののぱくぱくとゴハンを口に掻き込んでいる。尤も、景太郎の方には眼を向けてはいないのであるが。

 「あう~~……」

 そんなカオラの様子にトホホと落ち込む彼の姿もまた、情けなさ全開の何時もの彼だ。
 素子は上品に、サラは喋りながら。むつみとキツネは楽しげに、可奈子は兄を見つめつつ、しのぶは景太郎の横に座れて嬉しそうだ。
 席はほぼ決まっているのだが、どういう訳かここ最近は誰が景太郎の横に座るかでジャンケンが行われていたりする(因みに なるもやっており、やはり一位。二位は見ての通りしのぶである)。

 ひなた荘の面々が景太郎に惚れている事は周知の事実である。
 (人の事は言えないのであるが)こんなオトコのどこが良いのか皆が皆して景太郎好き。しのぶなどかなり初めの方からラブな空気を飛ばしていたものだ。鈍感でデリカシーのない景太郎は気付きもしていないのであるが。

 実際のところ、当時の景太郎は押しと誘惑にやたら弱かった。だから彼女らの内の誰かが本気でアプローチを掛けるなり、告るなりしていればあっさりと陥落していたかもしれない。
 そのチャンスがあったにもかかわらず、何故か最悪のタイミングで茶々が入って失敗していたのはやはり<まじない>が働いていたのだろう。


 閑話休題それはさておき


 先程から なるが気にしていたのはそんな景太郎ではなかった。
 天然のタイミングの悪さとボケは相変わらずのようで、カオラ以外の全員が景太郎を熱い目で見つめている事に気付いていなかった。
 特に素子は朝の鍛錬の時のイメージプレイ……卑怯な手で勝負に負けた女剣士が隠したの剣士に嬲られるというシチュ……の後なのでまだ身体の火照りが消えきっていない。よってかなりドロリとした視線である。 

 だがなるは、ご飯と味噌汁の味に首をかしげていた。

 いや、カオラを除く他の女らにしてみれば別に変わった味では無い。
 夕べ散々飲ませてもらった味なのであるし。

 無論、なるはそんなものの味など知る由もないし、見た事もない。
 ご飯に混ぜて炊かれていたり、味噌汁の具材である溶き卵に混ざっていたとしてもそれは解からないだろう。

 しのぶにしてみれば好意で行った事。実際、素子らは美味しくいただけているのだし。

 だが、それはまだ処女である女達からしてみれば余計なお世話である。

 望もうと望むまいと、彼女らの中に“それ”が染み込んで行くのだから。

 首を傾げつつも、なるは良く噛んで飲み込む。
 カオラも当然のように喉に流し込んでゆく。

 なるがしのぶの前で嫌な臭いだと称した“それ”。
 ストレートではまだ無理なのだろうと、余計な気を回したしのぶによって食材に混ぜられてしまった“それ”。

 人外の射精量を誇ってしまう景太郎の精液であるが、その射精量を補う“何か”があるのに間違いは無い。
 そしてその体液は彼女らの身体に吸収され、意識ごと変貌させていた。

 “それ”が なるとカオラの身体に僅かづつでも吸収され始めたのである。

 しのぶの余計な節介は、ついに彼女らを蝕み始めたのであった。

 「カオラ…今日も小食みたいだから……コレ……」
 「え? あ……おおきに……」

 夕べの会議を誰からも聞いていない しのぶは、今日もまたカオラの為にバナナジュースを作って手渡す。
 正確にはバナナミルクシェーキであろう、薄く黄色にがかった白い液体。
 グラスの表面に水滴が浮かび冷たくて美味しそうである。

 そして更にしのぶの気遣いがそこにあった。

 しのぶにとって、
 景太郎の女達にとって、一番の栄養剤。
 滋養強壮剤として最高の高たんぱく質の粘液が、牛乳とバナナに混ざって入っているのである。

 今日もまた元気の無いカオラを心配した しのぶは、昨日より多めに なるが嫌がっていた液体を入れてみた。
 ストローから一気に飲み啜るカオラに特別な変化は無い。

 ――いや?

 既に彼女は変化を遂げていたのかもしれない。
 突如として景太郎を男として意識し始め、彼の事ばかり考えているくせに目を合わせられない女心を持ち、今朝も彼を意識し続けてしまっているのであえて無視を決め込んでいるカオラ。

 この不思議なバナナミルクシェーキのレシピはこうだ。
 バナナ一本、ミルク50cc。そして、謎の白い粘液が200ccである。

 ドロリとした粘液は冷たく冷やされており、生娘である女にとって、お世辞にも旨いといえる代物ではない。
 その筈なのに……

 「ウマかった。ごちそうさん」
 「ハイ、お粗末さま」

 やや笑顔を取り戻したカオラがグラスをしのぶに返し、台所から出て行った。
 グラスからは微かに精臭。冷やした事によって香りは和らいでいるのであるが、バナナや牛乳程度で和らぐ味ではない。

 にも拘らず、
 カオラは美味いと称して全て飲み干してしまったのである。

 精液の臭い。
 特に景太郎のものに対しての嫌悪感はゼロである素子達は、その慣れ親しんだ臭いに反応は出来ても気付けはしない。
 だからこそ、夏休みに入ってからこっち、カオラが毎朝のようにしのぶから飲ませてもらっているモノに気付けていないのだ。

 実は根本の原因はしのぶにあったのであるが……
 流石にそれに気付けと言うのには無理があるようだ。




 ひなた荘住民による浜茶屋の営業は大体一週間の予定である。
 その後は例によって はるかの知り合いとやらが後を引き継ぐわけであるが、やはり“如何にも”な連中だったりする。
 客は美女美少女らをあてにしてここに来るわけなのに、接客してくれるのはむくつけきヲヤジども。詐欺だと叫びたいだろう。
 そしてその騙された客らは自分らだけがこんな目にあうのは嫌なので道連れを連れて来たりする。
 罠にかかったような客らは、安い物を頼めばスゴイ怖い目に遭わされそうなのでそこそこの値の物を注文し、浜茶屋は潤う。
 それで数日はモツだろう。後は流石に噂が広がって客足は無くなるだろうが。
 尤も、地元民はそんな事は先刻承知なので引継ぎの日からは来なくなるだろう。

 その日はじりじりと迫り、ついに明日という日を迎えていた。

 接客等はバイトで鍛えているキツネは流石に手馴れたものであるが、どちらかと言えばビーチバーのノリだ。まぁ、ビールもあるのでそれはそれでいいのかもしれない。
 素子は景太郎と肉体関係になってから素直な笑顔が出せるようになっているのだがやはりやや硬い。
 むつみは和風喫茶『日向』で鍛えているのでペースは変わらないし、なるも何だか笑顔慣れしている。
 しのぶは景太郎と共に厨房担当であるが、時折やきそばを満面の笑顔で運んできてくれるので人気も高い。
 実は兄以外の男に対して笑顔を見せる気が更々無い可奈子が一番接客が下手だったりする。まぁ、『無表情萌え~~』なアホ男はどこにでもいる訳で、それはそれで人気だったりするのだが。

 サラも珍しく手伝っており、カオラも何となく手伝っている。

 ただ、サラもカオラも大雑把な点がある為、良く注文の品を間違えてたりする。ま、ご愛嬌であるが。
 それに対して文句をつける客もゼロという訳ではないが、こちらには接客兼用心棒の素子や、何気に強い可奈子もいるので安心だ。

 そんな彼女らの魅力に誑かされた客達はまた明日も来ようと心に誓い、悲惨な目に遭う事が決定していた。




 さて――

 そんな男共の空振りとなる煩悩話はさておき、日も暮れた夜の浜辺でひなた荘の面々は打ち上げを行っていた。

 とは言っても派手派手なものでは無く、そこらの家族サービス宜しく花火セットで遊びつつビールを傾ける程度。
 結構民家から遠いので別に騒いだって文句を言われたりはしないのであるが、下手に派手に騒げば観光客らが寄って来る可能性がある。
 何せ美女美少女ぞろいの面々だ。その輪の中に入ろうとする輩は決して少なくないのだ。
 それでもその控えめさ具合は、ひなた荘でのレベルでしかない。

 「あはははははははは」
 「ぎゃ――っ!! あちちちちっっ!!」

 カオラがドラゴン花火を振り回し、その火の粉を浴びたキツネらが逃げ回る。
 慌てて海に飛び込んだ彼に、ロケット花火か追い撃ちを掛け、面白がったサラがカートンに並ぶジュースの空瓶にロケット花火を突っ込み、

 「いくぜ、全弾発射だぁ! ファイヤ!!
 「ぎゃ~~~~~~」

 連続点火して撃ち込んでみたり、

 「ホレ、定番のネズミ花火やぁ!」
 「ちょ、それ、大きすぎ……キャ――っ!!

 どこで手に入れたのか、キツネによる特大のネズミ花火が放たれたりと大忙しである。

 それでも、打ち上げのテンションに乗せられたカオラが、数日振りに笑顔を見せているので皆も甘んじてこの暴動一歩手前の騒ぎを受け止めていた。

 というのも、景太郎がこの場にいないからである。
 彼がここにいればカオラももっと頑なになってしまう可能性がある為、悪い悪いと思いながら彼女らは景太郎抜きの打ち上げを浜辺で行っていたのである。

 尤も、彼は少し離れた岩場の陰に座って酎ハイを傾けていたし、替わりばんこに女達も一人づつやって来て相手をしている。
 景太郎にしてもカオラの為と言われれば左程の淋しさもない。

 だから今は素子を隣にはべせ、酔っ払いオヤジ宜しくその魅惑の肉体からだを触りながら、久しぶりに見たカオラの笑顔を遠くに眺めていた。

 「ん……は、あぁ……ふぅ……
  う、うら、しま、せんぱ…い……」
 「……ん?」

 むにゅむにゅと好い様に胸を玩ばれている素子。
 何時もは新雪のように指が沈む胸も、水着によって固められているのでそれ程ではない。
 無論、それ程ではないというだけで、そこらの女では追従できないような柔らかさと形を誇っている。

 そして彼はその味を知り尽くしていた。

 「ふぅ…っ ス、スゥの事、心配ですか……? はぁ…ン……」
 「……うん」

 素子も景太郎も真面目に話をしている。
 しかし、手は止まらず素子の身体を這い、股間にゆっくりと入ってくる指も躊躇が無い。
 ギリギリとペニスはいきり立っており、今すぐにでも素子の膣内なかで果てたいと訴え続けている。

 だが、今日はやめておいてくれと言われた。

 言うまでも無く、今の景太郎の精液はほぼ無尽蔵だ。
 ひなた荘の恋人達全員をイかせ、気絶させてもまだ有り余ってしまう。

 だから今、素子の全ての穴を犯しまくったとしても何の疲労も見せないだろう。

 表向きの理由は、『成瀬川先輩にバレます』という事だ。
 それはそれで納得できる理由である。
 以前から素子に言われているように
 景太郎にしても素子らが本当に嫌がる事は出来ない。だから素子の肉体からだを嬲る事で解消しようとしているのである。

 こんな風に景太郎らは性行為を無意識に行えるのであるが、心は別のところにあった。

 言うまでも無く、カオラ・スゥの事である。

 急に余所余所しくなった彼女に、景太郎も胸を痛めているのだ。
 素子らはその理由を、

 『浦島先輩は私の肉体からだを使って童貞を脱しました。
  その心身の成長に気付いたスゥは、変化に戸惑ってしまっているんです』

 と説明していた。
 元々がヌケている彼は、『そうだったのか』とあっさり信じて静観を続けているのだ。

 彼女達の話によれば、もう直落ち着くとの事。もし手間が掛かりそうなら力を貸してもらうからその時まで待って欲しい。そう言われていた。

 が、その手を貸すという日がイキナリ今日になってしまったのである。
 待っててと言われたのが夕べで、手を貸してと言われたのが今日。余りにも早い決断であった。

 それでも手を貸すという事に反論は無いし、カオラの不安を取り払うという事も吝かでは無い。
 だから理由は解からないが射精を堪えてさっきから入れ替わり立ち替わりにやってくる女達の肉体からだを玩んで時を待っているのだ。

 ずにゅ……うっ


 「ンぁああっっ」

 くっと指を噛んで声を耐える。
 奥に突き込まれた景太郎の指が曲がり、腹の部分でクリトリスの裏を撫でたのだ。
 瞬間に眼の奥で星が弾け、腰が浮いてしまう。
 海に入っていないというのにクロッチ部もずくずくに濡れており、彼女の肉体からだも肉柱の到来を訴えている。

 だが今晩はむつみの番であるし、余りに近い場所になるもいる。
 むつみは笑ってズルイです~とかいう程度であろうが、なるに見つかるのは

 おもいっきりフェラチオもしたいし、パイズリもしてあげたい。
 胸に挟んだ時に伝わってくる熱い肉柱の感触もたまらないし、胸の柔肉の間から見え隠れする亀頭の鈴口を見据え、射精の瞬間を待つ時の気持ちも捨て難い。

 顔にかけられた時の多幸感。
 彼のモノにされてゆくという満足感は抗えない幸せを彼女に齎せてくれる。

 一年前の彼女であれば切腹して果てていたであろうはしたない気持ちと行為。

 だが、今現在の素子。
 半淫魔である素子からすれば、好いた男に嬲りつぶされる事は何よりの平穏なのである。

 そして、キツネにもそれは波及しており、しのぶや可奈子にも当然のように伝染していた。
 むつみもサラも間違いなく左程遠くない日に感染するだろう。

 そして、なるも……

 だがまだその兆しは無い。
 兆しが無いのだから、性行為を見せる訳にはいかない。
 下手をすると景太郎を拒絶する原因になりかねない。

 我々の様なオンナは好いたらしい男にレイプされ、穢され、嬲られ、精液をスープの様に飲み啜って悦んでいれば良いのだ。
 成瀬川なるというンナは、その事が理解できいない可哀相な人なのだ。

 精液の味も心地良さも知らない病気の人間なのだ。

 だからこそ素子らもじっと待つ事が出来るのである。

 ひなた荘のオンナで、その多幸感を知らぬものは二人だけとなった。
 そう、後たった二人なのだ。

 だからこそ素子も余計に気を抜かないのである。




 ぷしゅっ、ぷしゅっ、と失禁するかの様に潮が噴き出す。
 素子の肉体からだの性感は景太郎との蜜時によって高められている。そして毎日高められ続けている。
 通り過ぎる際に彼の手が素子の尻を撫でただけでイけるのだ。その敏感さは異様である。

 尚且つ、普段なら触れられてもイく事は無い。イくのは景太郎から性的な物を感じ取った時のみなのだ。

 素子は男にとって都合が良過ぎる女に成り果てていた。
 そして全く後悔していない。逆に悦んでいるぐらいなのである。

 景太郎を喜ばせる事が特化している今の自分の肉体からだ……
 その事が何より誇らしいと感じているのだ。


 ジャブを喰らうように小刻みにアクメを迎えさせられている素子の目に入るのは、カオラの笑顔を遠くに見て淋しげに微笑んでいる景太郎の顔。

 愛おしい人を悲しませているのは他ならぬ彼自身の成長の為。
 そしてその成長についていけていないカオラの所為。

 だったら彼女が、彼女らが出来る事は只一つ――

 『お子様を……交尾という任務を知らないスゥを、問答無用に成長させるのみ』

 それだけであった。




 花火で戯れるカオラを眺めつつ、キツネは物思いに浸っていた。

 カオラとは結構長い付き合いだ。

 何がどうという訳でも無かったのであるが、何故か彼女に懐かれ、ずっと纏わり疲れていた素子よりも接している時間は多い。それだけ構っているという事もあるが。

 実際のところ、景太郎程では無いが、結構イイ迷惑を蒙ってはいたのである。しかし、それでも不快に思った事は少ない。
 それがカオラの人柄といえばそれまでであるが、妙に仕方が無いなぁと寮の皆も許してしまっている。

 人柄…というより、カリスマとでも言えば良いのだろうか? 兎も角、皆に迷惑をかけ慣れていて、尚且つ許してやりたくなる奇怪な雰囲気を持っているのには違いは無い。
 そういう意味で景太郎と似ており、カオラの兄が景太郎と似ているというのも納得できる気がしてくる。

 考えてみれば寮の誰もがカオラの家の事を良く知らない。

 多少なりとも知っているのはやはり景太郎で、僅かとはいえ付き合いの長い素子やキツネより詳しいだろう。

 そのカオラが景太郎から離れていた――

 皆と相談した結果、サラの言う通りに景太郎の“変心”に彼女の気持ちが付いて行っていないのだとキツネも思う。
 景太郎が受験を失敗したと早とちりをした時もしのぶと共に追い駆けて行ったのは彼女であるし、
 可奈子の一件でなるが逃亡した時も、後押しして彼を追いかけさせたのはカオラだ。

 男女の仲という物を理解できていないであろうが、面白がるより景太郎の為に行動していたのには内心驚いたものである。

 そのカオラが景太郎を意識して遠退いていた――

 自分も景太郎への気持ちを自覚しかけて苦しんでいた身だ。その気持ちはよく解かるつもりである。

 だから今度はひなた荘での姉貴分として手助けをしてやりたい。

 カオラは可愛い。
 無邪気で可愛い。
 時折迷惑をかけられるが、それも許容範囲内だ。というか慣れた。

 愛らしく誰にでも好かれるカオラ。
 元気ではしゃぐその様は子供のようで、それでいて身体は着実に大人へとなっている。

 ――つまり、オトコを知らねばならなくなっているのだ。

 無論、相手は景太郎だろう。
 彼以外の男等知ってはいけない。間違いだ。

 だから手を貸してやらねばならない。

 男を知る。
 雄を知る。
 肉柱の味を知る。
 形を肉体からだに憶えこませる。
 精液の味を知る。
 肉体からだ全体で憶えこませる。
 奉仕を覚える。
 肉体からだ全体を使った肉奉仕を覚えこませる。
 景太郎との交尾を日常化させ、彼なしに生きていけなくする。
 
 

 景太郎によって純潔を奪われ、精液で穢れつくした褐色の肌を夢想し、キツネの腰がずんと重くなる。

 大胆にも はるか宜しく黒いビキニに身を包んだキツネの太股が、足の付け根から溢れ出た蜜を伝わらせていた。

 その秘蜜の香りに気付いた しのぶ達は意味ありげに微笑んで理解の意を示す。
 彼女らも同感のようである。

 ねっとりと湿った視線を岩場で素子と戯れているであろう景太郎に向け、熱い溜息を同時に吐いた女性達。

 粘り付く様な夜はまだ始まってもいなかった……




 闘い済んで、日が暮れて…というが、始めたのが夕方なので既にとっぷりと日が暮れている。
 本当であれば背中がズル剥けの大火傷の筈であるが、そこは不死身と知られた景太郎。既に殆ど回復しておりヒリヒリする程度になっていた。

 当のカオラはというと、景太郎の腕の中。
 テンションに任せて数日間彼に接する事ができなかった憂さを晴らすようにはしゃぎまくった所為か、子供の様に眠りこけている。
 何で彼の腕の中なのかというと、しばらく彼女に接していなかったのだから…という訳の解からない理由。

 なるも納得しているのは抱っこしているからだ。
 お姫様だっこなのが気に障らない事もないが、おんぶして胸を押し付けられている彼を見るのも癪である。だからこれはこれで妥協していた。

 まぁ、いくらお姫様抱っことは言っても、くかぁ~…と眠りこけているカオラの顔は緩んでいるので色気も何もあったモンじゃない。
 確かに可愛くはあるが、肝心の色気が無ければ彼も惑わされはすまい。

 と、なるは自分を納得させて…というか誤魔化していた。

 因みにサラも眠っているのであるが、彼女はなるの背中だ。
 素子は荷物を持ち、キツネは酒の残りを持っている。
 酒が入ったから瀬田カーの運転は不可なので歩いてひなた荘に戻っているのだ。

 なると景太郎が肩をあわせて歩いている様は連れ添った夫婦のよう。
 となると、サラとカオラはさしずめ二人の娘といったところか?

 こんな未来になるのかなぁ…等とそんな妄想をなるは浮かべていたりする。

 サラにしてみれば面白くないのであるが、今はカオラだと我慢を続けていた。

 そう、サラはタヌキ寝入りをしていたのである。

 サラとカオラが眠っていれば必然的に景太郎かなるが運ぶ事になる。
 本当であれば素子が背負うのがセオリーであるが、そうならないように素子が荷物を持ち、キツネは千鳥足のフリを続けていた。
 となるとやはり景太郎となるの仕事となる。


 布陣は整った。

 後は一押しをするだけだ。

 頃は由と見たキツネが、徐に酔った口調でなるに声を掛けた。

 「おお、なんや なる~~
  けーたろと夫婦見たいやで~~?」
 「んなっ?! ち、ちょっとキツネ!!」

 それだけで真っ赤になって彼女に噛み付く なる。
 彼女を乗せるのも引っ掛けるのも簡単だ。何せ付き合いが長い為に慣れている。

 背中のサラがなるの声に耳を痛めてたりするがそれはスルー。今は耐えてもらう。

 その隙に気配を消す能力がある…というか、ウッカリ気配を消してしまう女性が一人、つつつと景太郎の横に進み出た。

 「ねぇ、浦島君。
  スゥちゃんどうなの?」
 「え? あ、うん。良く寝てるよ」

 むつみである。
 ひなた荘の中で一番母親的な雰囲気のある彼女。カオラを心配して近寄っても違和感は無い。

 違和感は無いが……

 「ねぇねぇ……スゥちゃんてね、スレンダーだけど出てるトコはでてるよね~」
 「へ? あ、ああ、そうですね」

 ついと言われるがままに下を見てみる。
 腕の中でスヤスヤと眠っているカオラはセパレートの黒い水着を着用していた。
 普段がかなりエキセントリックな行動をし、サラと共に暴れまわっているから良く解からなかったが、前回抱き締めた時から感じていたのであるが、留学に出ている間にちょっと育っているようだ。大人っぽくなったというより、子供から脱皮しかかっているといった塩梅。
 それがまた、景太郎の中の雄を蠢かせる。

 実はカオラのバストはしのぶより三センチほど大きい。
 身長ではしのぶに負けいてるものの、プロポーションは勝ってたりする。

 それに女達との触れ合いで未だに心が燻っている景太郎からしてみれば、今のカオラとて妙な色気を感じており、食指が動いてしまう。

 確かに満月は近いのであるが、別に赤い月は出ていないし、彼女のほっぺにも例の丸いものがあるから子供状態のままだ。
 それでも、それでも何か言い様の無い色気を彼女から感じ取れてしまっている。

 「ねぇねぇ、“けーくん”」

 むつみの声に、

 艶が入った。

 「スゥちゃん、汚したい…?」

 どくんっ


 景太郎の鼓動が、跳ねた。

 気が付いた…というよりは自覚させられた…の方が近い。
 愛しさ半分、色欲半分といったものが鎌首を挙げ、景太郎の中で目を覚ました。

 それを見て取ってむつみは、後ろを歩いている素子に意味ありげな視線を送る。
 素子はその視線を受け、軽く頷いてからキツネに同様の視線を送った。

 キツネは詰め寄っている なるに気取られないようそれを受け、今夜に始まる事を歓喜した。
 自然と笑みが深まるが、なるから見れば何時ものからかいの表情であり、彼女に気付かれる様子は見られない。

 「お♪ 本気で照れとんなぁ~? 実はけーたろとヤりまくっとんとちゃうんか~?」
 「なっっっ?!!」

 その事実が無い事は百も承知で下ネタをぶつける。
 二十歳になるというのに少女の様に初心である なる一気に真っ赤になってしまった。

 背中にサラを乗せている事も忘れてぎゃあぎゃあと騒ぎ立てる なる。
 そんな風になるを引き付けている間に、むつみは景太郎を『日向』にある自分の部屋に誘う。

 幸いにも今晩はむつみの番であるし、これで余計な邪魔は入らない。

 どうせカオラは朝まで
 これでやりたい放題である。

 あの部屋に入れるには本人の意思がいる。
 だからこれはその下準備だ。
 どうせカオラも嫌がりはすまい。だが、万が一ということもある。念には念を入れて悪い事は無いのだ。

 今夜の為にカオラの着替えもちゃんと用意してある。

 しのぶには殆ど知らされていないが、素子らの決議よって今晩中にカオラを汚す事は既に決定事項だった。

 今現在、カオラは例のの最後の要である。
 逆から言えば、カオラさえ堕としてしまえば後はなし崩しなのだ。
 だから気が急いていた事もあって、彼女らは初めてカオラの意思を問う前に行動していた。

 だけど、間違いではない。
 これが正しい道。

 かなり捻じ曲がった大義名分が彼女らの背をぐいぐい押している。

 戻れないから突き進む。
 穢れるという清めの悦びを知ってしまったのだから止まる術を持っていないのだから。

 だから穢す。
 カオラを汚す。
 それが彼女にとっての幸せだと確信しながら……

 その尖兵に選ばれたむつみは、
 ベトベトに汚されたカオラがどう変わるのか、どう変貌してしまうのか……
 その期待に胸を高鳴らせ、パーカーに覆い隠されている白いビキニの股間を先程の素子同様しとどに濡らし、早くも太股に愛液を伝わらせるのだった。




 ぷりぷり怒ったなるは足早に自室に帰ってゆく。

 それを見送ってから日向に向った二人は、そのまま風呂場へと足を運んでいた。

 いくらシャワーで砂を流したとはいえ、はしゃいで走り回ったその身体には砂はこびり付いている。だからそれを温かい湯で流してあげるのである。

 景太郎を前に恥ずかしげも無くパーカーを脱ぎさる むつみ。
 恥ずかしいも何も、普段から肌を見せていたし、景太郎の女になってからは見せていない部分は無くなっている。

 無論、彼女とて羞恥はあるのだが性的な期待を前にしては水に濡れたテッシュより儚い。
 今も眠っているカオラを脱がせるという行為に興奮し、ペニスをいきり立たせている景太郎の股間を見つめて息を乱しているのだし。

 全裸にしてみるとやはりカオラの肌も陽に焼けていた。

 元々日焼けした様な肌の色をしていたカオラであったが、やはり本物の日焼けの色が濃い。
 その境目がくっきりと見えており何とも艶かしい。
 おまけに骨が無いかのように身体がぐんにゃりと脱力しているのだ。お湯をかける事によって立ち昇る汗の香りと相俟って、その興奮に拍車を掛けてくる。

 勿体無い……


 景太郎は、何故かそう思った。

 今まで散々女達の身体を堪能し切っていた彼だ。汗の匂いすら興奮を誘うスパイスである。
 
 おまけに目の前でぐったりとしているのは手付かずの処女、カオラだ。
 その味はまだ知りえない未知のものなのである。

 「ん……」

 べろり…と、ついに我慢し切れなくなった景太郎はカオラの太股に舌を這わせた。

 「……ンん…」

 カオラは僅かに呻いただけ。
 くすぐったさもあるだろうが、その程度で目覚められるほど可奈子の薬はやわでは無い。

 海水のように舌を刺すほどでもない、それでいて強いしょっぱさを感じさせるカオラの汗の味。
 砂を流す為にお湯をかけた事によって味が薄まっているのが悔やまれる。
 そして下手をすると今晩中に処女の汗の味を味わえなくなってしまうのだ。残念で仕方が無い。

 まぁ、それでも美味しくないわけでもないし、汗だってどんどん出てくる筈だ。
 今はタオルで擦るように舌で舐めしゃぶってやるという変質的行為を続ける事にする。

 ぽたりぽたりとカウパー線液が滴り落ち、むつみがゴクンと唾を飲み込む。
 カオラの肉体からだは“けーくん”に任せるとして、自分はそのけーくんを喜ばせてあげようか。

 ご奉仕の精神が大切なのだから。

 と、むつみは柑橘系のボディシャンプーを手に取り、自分の身体に塗りたくって泡立て始めた。

 ソープ嬢宜しくのマットプレイはきちんと練習をくり貸して何度も行っているし、慣れている。
 だから手際だって良いのだ。

 その間に景太郎はカオラの右足を手に取り、足先から口に入れて汗の味を堪能していた。
 指の間や足の裏に残る汗の味。
 久しぶりにはしゃいで走り回った所為か、お湯で流してみてもたっぷりと感じさせてくれている。

 足首から脹脛、膝、膝の裏と順に嘗め回し、太股に差し掛かる頃にはむつみの準備は終わっていた。

 「けーくん♪」

 むにゅっ、と景太郎の背で押し潰されるむつみの胸。
 素子より大きく柔らかい。
 その双球の中心位置には既にしこった乳首があり、こりこりとした感触を背中に伝えてくる。

 さて、では……と胸という肉スポンジでもって彼の身体を洗おうとした瞬間、いきなりガラリと風呂の戸が開いた。

 「お♪ やっとるなぁ」

 一糸纏わぬ姿で現れたキツネである。

 「あれ? キツネさん。どうかしたんですか?
  今晩は私の独り占めのはずでしょう?」

 むつみにしては珍しく拗ねたような顔をしてやんわりと抗議をする。
 キツネはそんな彼女に苦笑しつつ、その裸身を隠す事無く湯船に歩み寄ってかけ湯を行う。

 「ちゃうねん。
  単にスゥを玩具にするけーたろを手伝いに来ただけや。ウチかてむつみの邪魔するほど野暮ちゃうわ」

 等ととんでもない事をのたまうキツネ。
 大切な寮の仲間の筈であるカオラを玩具にするという行為を嬉々として語っている。

 無論、それには訳がある。
 この女達は景太郎を愛するが故に心を歪めており、彼の玩具にされる事は何よりも幸福であると思っている。
 そしてキツネはM女だ。
 景太郎にモノの様に扱われれば扱われるほど快感を感じてしまう。

 だから知らない内に景太郎に嬲られるというシチュエーションは何よりもオイシイ話なのだ。

 「ああ、それなら良いんです」

 そしてむつみの同じ様な属性持ちだ。だから割とアッサリ彼女を受け入れていた。

 「おおきにな。
  スゥを嬲り終わったら連れて帰ったるさかい、二人でヨロシクやってな」
 「はい。ありがとうございます♪」

 仲が良い二人。
 それだからこそ歪みの酷さも窺える。

 だが、それを指摘できる人間はここにいない。
 厳格な指導力を持っている はるかも不在なのだ。おまけに彼女は瀬田に対する気持ちを再燃しているので帰ってくる見込みは薄い。
 だから素子らはやりたい放題に毎日を送っていた。

 むつみ同様に泡立てたボディシャンプーを身体に塗りつけて景太郎に寄って来るキツネ。
 そのキツネに場所を譲ってむつみは左側から背中を洗う事にした。
 当然、キツネは景太郎の右側からだ。

 むにゅむにゅと柔らかく形を変える二人の胸。
 泡でもって摩擦力の落ちている柔肉はその先端を滑らせて彼女達にも言い様の無い快楽を与えていた。

 3Pや4Pにも慣れてしまった彼女らであるが、それでも景太郎と一緒にいるだけで慣れる事の無い幸福感に満たされてゆく。

 麻薬の様に脳を痺れさせ、
 理性をとろかし、
 息を乱させ、
 乳首を起たせ、
 愛液を溢れさせ、景太郎を誘う。

 彼は自分らが飢え狂っている欲望のその全てを満たしてくれ、尚且つ裏切る事の無い愛を与えてれる。

 それを、
 その幸せを
 何の躊躇があろうか。

 用意しておいたマットにカオラを寝かせて足を広げ、太股の内側に舌を這わせる景太郎。
 うつ伏せになっているので股間の凶器が窮屈にしている事だろう。

 それを夢想し、涎をたらしそうになる二人。
 股間の泡は既に己の愛液で流してしまったが、その愛液を擦り付けるようにして景太郎の身体に奉仕を続けている。

 「はぁ、はぁ、はぁ……」
 「ん、んんん……っ はぁ……っっ」

 むつみは恥毛で愛液を泡立たせて擦り付け、キツネは直接塗りこんでいる。
 キツネは景太郎によって永久脱毛してもらっているので陰毛は無くツルツルなのだ。

 その代わりに肉芽の感覚が鋭敏化しており、むつみより感度が高い。
 だからキツネの声が必然的に高くなってゆく。

 「あ、あはぁ…っ あ、あかん、ごっつ……えぇ……っっっ」
 「んふぅ…キ、キツネさん……いやらしいです」

 とろりと眼を濁らせながら股間をこすりつける快感に酔い痴れ、涎を滴らせているキツネ。
 そんな彼女を窘めている むつみにしても涎を垂らしているのだが。

 ちゅる、にゅるる……
 ちゅく、ちゅぷ、ちょごっ、ちよごっ、ちょごっ


 リズミカルに二つの肉亀裂が擦り付けられ、淫ら過ぎる音が風呂場に響く。
 使用しているマットは空気を入れて膨らませるもので、ひなた荘の男風呂で何度も試用しているモノだ。
 買ってきたのはキツネであり、当然彼女が一番乗りで、ソープ嬢宜しく景太郎に奉仕している。
 その想いがあってか、キツネの熱の入り方は尋常では無い。
 正にプロの風俗嬢が如く、景太郎を喜ばせる為だけに腰を振り、淫らな姿をさらし、声を上げる。
 実は尽くすタイプであった彼女は、その奉仕精神を完全開花させて景太郎に尽くし尽くしていた。

 流石にむつみもそこまでに至ってはいない。無論、いつか必ず追いつくつもりではあるが。
 それでもキツネはまだ素子のレベルに達していないのだから、彼女が如何に淫らであるかが理解できよう。

 「…ん……あぁ……

 大分熱が入りだしたそんな時、小さな喘ぎ声が二人の耳に聞え、二人の動きが止まった。
 さっきから無言でカオラの身体を味わっている景太郎の舌が、ついに足の付け根に達しようとしていたのである。

 「お…?」
 「へぇ~……」

 カオラの肌の色は日焼けしたように濃い。
 そして当然海で日焼けした部分はもっと濃い。

 それでもカオラのそこは鮮烈に薄い桃色だった。

 肌の色と比べている為か知らないが、カオラのヴァギナはホワイトピンクと言って良い程愛らしい色をしていたのである。

 「けっこ綺麗やなぁ」
 「ではキツネさんは濃い方なんですか?」
 「失礼やで」

 覗き見る二人がつまらない事を言い合っている間も、景太郎はもくもくとカオラの身体を味わい続けていた。

 ぱくりと胸を口にいれ、しのぶを相手にした時と同じ様に小粒の乳首を甘噛みして引っ張り、舌先で嬲る。
 ぴこんっと突き出た乳首を舌に乗せるようにコロコロと左右に弄るだけで充血したように大きくなり、硬さを増す。
 口を離すと景太郎の唇と唾液の橋が架かり、じんじんとした痺れを眠り続けているカオラに齎せている。
 無論、眠っているままなので身体をひく付かせる以上の事はできず、その陵辱を甘んじて受け続けるのみ。
 本気でセックスをしようとする時には、淫獣化している所為であろうか、何故か無口になってしまう景太郎。彼はそのまま舌を腋の下に這わせてベロベロと汗を丹念に舐め取ってゆく。

 「あぁ……」
 「ええなぁ……」

 その丁寧さ…というか、執拗さに二人は羨ましがっていた。
 M属性を開花させている二人は、どちらかと言うと前戯を少なめにして無理矢理犯される…という方がお好みだ。
 それでも愛されたくない訳では無いので、丁寧な愛撫だって嫌いな筈が無い。
 まぁ、求めればちゃんと景太郎はやってくれるのだが……

 今晩はねっとりと愛撫してもらおうと むつみはコッソリと心に決めていた。

 景太郎の舌使いが段々と激しくなってきた。
 それに合わせるかのように、彼はカオラを抱いてその身を起こし、片膝を付く。
 その膝にカオラを乗せ、荒々しく彼女の唇を嬲りながら右手で彼女の股間を弄りだした。

 くちょ、くちょ、くちくちくち……


 「ん…ん…んぁ……」

 何と、寝惚けてはいるがちゃんと感じているようだ。
 それに濡れているようである。
 一瞬、カオラの掻いた汗かと思ったのだが、がしているのだから間違いは無いだろう。

 うっとりと二人の痴態を見つめていた むつみらであったが、自分らの役目を思い出し、慌てて景太郎に肌を合わせた。

 今度はキツネが背中を洗い、むつみが肉柱を唇で清めだす。

 体勢が体勢なのでむつみの直頭の上にカオラの尻があり、弄られ続けているので時折カオラの愛液が滴り落ち、むつみの髪を汚す。
 しかしそれを不快と感じる筈も無く、これがまた何ともいえない心地良さがあると悦んでいた。

 キツネの方は熱が入り過ぎてしまい、景太郎に奉仕しているのやら、景太郎を使ってオナニーしているのやら解からなくなっている。
 結果的に景太郎が悦べばそれで良いのであるが、自分の部を守れない不甲斐無さに腹が立ってしまう。かと言って止められはしないのであるが。そこらが素子に奉仕で勝てない理由だったりする。
 
 ちゅ、ちゅ、れろれろ……ぬろん…ぴちゃぴちゃ……


 むつみは、しのぶの様に初フェラでいきなり喉に突きこめる才能持ちではないが、下品さでは負けないことを自負している。
 だから舐め方も下品極まりない。

 エラの裏側や裏スジ、陰毛、菊門に続く皺の間などを音を立てて舐めまくり、唾液でもって脂を薄めて飲み啜るのだ。

 ただ、恥垢のこびり付きはまったくない。
 毎日誰かの口でもって清められている肉柱だ。残りようが無い。
 例え残っていたとしても、朝稽古後に素子が味わっているので殆ど恥垢を口に出来る可能性は無い。

 じゅるじゅるじゅる…と音がするのは唾液の音。
 塩味の濃い、愛しい男のこびり付いた汗の味だ。
 その味と香りに睦みは酔い痴れ、眼をとろんとさせて咀嚼を続けた。

 言うまでもなく、奉仕能力でしのぶに劣っている。何せ景太郎の味に酔い痴れて自分の欲望を優先させているからだ。
 しのぶであれば、欲に溺れても部をちゃんと弁えて景太郎を喜ばせる事を優先させている事だろう。

 それでも景太郎側からしてみればキモチイイという事には変わりは無い。
 袋の皺の隙間までねっとりと舌を這わせて舐め清めている舌の感触は途轍もない快感を彼に与えている。
 慣れる事はあっても耐え切れるようになっている訳もなく、左程の時を待たずに景太郎のペニスは最後の時をむつみに伝えて来た。

 びゅくっ、どぶっ、どぶっ、どぶっ、どぶっ


 「ン、ぷ、んんんん………っっっ」

 陰嚢を舐めていた為、発射の瞬間を知る事ができていた むつみは、急いで亀頭の先を唇でふさいだ。
 間一髪零さなかったむつみであるが、何せ相手は淫獣の景太郎だ。出す量が半端では無い。忽ちの内に咥内を満たし、口からあふれ出そうになる。

 「ホレ、むつみ。タッチや」
 「ん……」

 それを見て取ったキツネが顔を寄せ、脈動の間隙を縫ってむつみと交代して唇で精液を受け取った。

 びゅくっ、びゅくっ、びゅくっ、ずひ、ずひひ……


 『んあっ?! ちょっと多いやんけ』

 途轍もない量が咥内を犯す。
 その人外の射精量は何時もの彼のそれではない上、粘度も半端ではない。
 ドロドロとした雄のジェルエキスは飲み慣れているキツネの口すら瞬く間に一杯にしてしまった。

 カオラを汚しているというシチュで興奮しているのか、カオラが“輪”に入りかかっているかは定かでは無いが、因縁を感じさせる程にその精液は濃い。
 無論、味も良い。
 このまま飲み干してしまいたくなるほど。

 「ん~~…」
 「んん……」

 口を押さえた むつみが抗議をし、何とか飲み込むという誘惑にキツネは耐えた。
 その間にむつみはカオラに顔を寄せ、その愛らしい彼女の寝顔に、

 「ん…べろぉ~~……」

 口いっぱいに含んでいた精液を流し掛けたのである。

 ボタボタボタと顔が汚されてゆき、眠ってはいても顔にかかる感触はわかるのか、カオラの顔も微かに歪む。
 だか既に時は遅し。カオラの顔は汚らしいオスのエキスでベトベになっており、その流れは顎をつたって喉をかけ、胸元に達した。

 次に何とかハムスターのように頬を膨らませたキツネが身を起こし、

 「ン…べぇ~~………」

 とカオラの胸に精液を吐いた。
 ドロドロボタボタ身体を汚してゆく白濁の雄のジェル。
 ピンと起ったままの乳首も、ヒクヒク動いているお腹も、今だに洗礼を受けていない肉の亀裂も、そのトロミのある穢れが流れ汚してゆく。

 そんなカオラを景太郎はボンヤリと見つめ続けていた。

 可愛いと思っていたカオラが、
 妹のように接していたカオラが、よりにもよって自分の精液で汚されているのだ。

 妹のように思っていたしのぶを犯し尽くした自分の精液が、
 義妹である可奈子を汚し尽くした自分の精液が、今最後の妹分であるカオラを穢し尽くしてゆく。

 余りに哀れすぎる光景であり、胸が痛む姿であるが、それ以上に景太郎の心が躍っていた。
 理由は解からない。
 ただ、欲望だけでは決して無い。
 何だかよく解からない正体不明の愛情が沸き踊り、景太郎の背を押し続けているのだ。

 そんな彼の心情等知る由も無い二人は、景太郎からカオラを軽い身体を受け取り、

 「さ~て、こっからが本番やで」
 「スゥちゃんも“こっち”にいらっしゃい」

 と、二人の肉体からだ間に挟み、ぬちゃぬちゃと精液を肉体からだでもって塗りこみ始めたのである。

 そう、
 ここからが本番なのだ――




****************************************************


 どうも、Pixyでございます。何とか盆に間に合いました。
 夏休みなのにやる事が多くて中々暇が無くて書けなかったんスけどね…

 あ、忘れない内に……
 暑中お見舞い申し上げます。
 まだまだ暑い日々が続きますが、皆様もお体に気をつけてください。

 今回も文章量アップ中です。でも、何か内容がアメリカン(薄い)……
 もっと精進します。そしてエッチくします。千里の道っていいますけど、遠いですねぇ……

 本中は田舎に行くので書けません。ちょっと遅れる可能性があります。我ながらなんて忙しい学生なんだろう……

 それではまた、お盆開けてからお会いしましょう。




[2319] Re[5]:Dotage ~妄愛~ <卅肆> (ラブひな)
Name: Pixy◆b660561e
Date: 2007/08/17 19:03


 幸せ…幸福感は快楽に直結している。
 そして快楽に関わるから幸せを感じる。

 不思議な無限ループだ。
 おまけに快楽は堕落に直結している事を皆が皆とっくに気付いている。

 それでも人は皆幸せを感じるとそれにしがみ付いて酔い痴れ、快楽に浸ってしまう。

 だが、人の快楽は大抵が脳内麻薬のお陰であるので、オイフェリア効果によって当然の様に快楽中毒となる。

 その幸せを離すまいと脇目も振らなくなり、一直線に突き進んでしまう。
 恋は盲目という言葉が正にそれだ。

 セックス中毒にも二種類あり、一つは確かに性行為での快楽による中毒であるが、もう一つに自分を求めてくれているという幸福感が挙げられる。
 寂しさを僅かでも埋められるのが性行為による儚い幸せという訳だ。

 しかし、性行為そのものに幸福が関わっており、愛おしい者との“交尾”が更なる幸福感を呼び、その人物に穢される事が凄まじい快楽だとすればどうだろう?
 もはやその中毒症状は取り返しのつかないレベルに達している筈だ。

 いや、実際に彼女らの大半は取り返しが付かないで


 例えばこの時期、青年が寮の管理人となって手が増えた為に皆で海岸にある浜茶屋をやるようになった。
 だが、夜は近くの民宿に部屋を予約していたはずである。

 今年はその民宿には泊まらず、わざわざ遠くの寮に戻っているのだ。

 尤も、表向きの理由もちゃんとある。
 その民宿と昵懇である寮長の女性が不在である為に連絡が付かなかったというのだ。
 何となく納得できるような気がしないでもないが、よくよく考えてみると泊まっていた民宿の名も場所も覚えているのだから幾らでも予約を入れる方法はある筈だ。
 そんな与太話を丸々信じていしまうのだから、本当に東大に通っている才女なのかと疑ってしまう。

 まぁ、彼女にしても、民宿では堂々と“交尾”ができないから…等という理由わけが思いつく筈もないだろうが……


 兎も角、彼女らは幾ら遅くなろうとに戻ってくる。

 幾ら疲労していようと更に運動する為に、

 精液の香り漂う寮に、
 精液の味を思い浮かべて喉を鳴らしつつ、

 愛おしい男の香りがある限り、この寮に戻ってくる。

 マーキングしてもらいたくて尻尾を振って、
 マーキングを手伝いたくて股を濡らして……




 「うふふふ……すっごいヌルヌル……」
 「あは…えぇ匂いや……」

 二人の美女が風呂場に敷いたマットの上で向かい合わせに膝を着き、その間に小柄な少女を挟んで身体を擦り合わせている。
 健康そうなその少女の肌は、ヌラヌラと滑る粘液を女二人の肉体からだでもって擦り込まれて、精臭漂う穢れたものと化していた。
 尤も、その女性二人からしてみれば精液の香りも味も甘露水そのものであり、精液に満たされた浴槽があれば我を失って飛び込んでしまうかもしれない。

 無論、元からそうだった訳では無い。

 彼女らはつい一ヶ月ほど前まではここまで歪んだ性癖を持ち合わせてはいなかった。
 言うなれば極普通。
 好きな人とキスをする事、抱擁される事、甘く囁かれる事等を好む性格だったのだ。

 切っ掛けは同寮の少女がついに我慢の限界を超え、ここひなた荘唯一の男性である管理人の青年とまぐわった事だった。
 それから少女は性の虜になったかのように青年を求め、近寄れば精液の臭いがする程毎日のように彼と“交尾”を続け、誘蛾灯に誘われた羽虫の様に彼女らも性誘されてしまったのである。

 元々から青年の事を憎からず思っていたこともあり、彼との性行為は歯止めさえ失えば比較的簡単にのめりこんでしまう。
 ペニスを膣に入れた時の幸福感と充実感。
 膣内なかに出してもらった時の感覚は、他に例えるものも無いほどの多幸感を彼女らに与えてしまい、唇や己が肉体からだを使った奉仕によって彼が悦べばそれだけで凄まじい満足感が得られてしまう。
 その少女と相談し、ローテーションを組んで毎日の様に抱かれる度に彼女らの心身は、その青年に対する中毒症状によってどんどん蝕まれていった。

 その理由が“彼の”精液の香りと“彼の”肉柱による陵辱行為である事は誰もが自覚しており、それを分かち合うという仲間意識が更に彼女らを加速度的に蝕んで行く。

 だから彼女らには躊躇が無い。

 同じ寮に住む少女。
 可愛がっていた妹分的な少女。
 留学所為であり、いずれは自国に戻らねばならないであろうその可愛い少女を精液塗れにし、尚且つその青年と共に陵辱しようとしている。

 おまけに少女は眠ったままだ。
 青年の義妹が持っていた特製の薬を飲まされて朝まで目覚めはすまい。
 その状態の少女を穢す事に誰も異論を持たないのだ。

 その青年にしても、いきり起たせたペニスをしごき、三人に振り掛けたりしているのだから。

 ボタボタと異様に粘度の高い精液を浴びせてもらって女性らは嬌声を上げる。

 気持ち良いからだ。幸せだからだ。

 彼の肉玩具として扱われる事は、彼女らの誉となっているからだ。

 女性の一人が彼のペニスに舌を這わせ、幹を汚している粘液を嬉々として舐め啜る。
 当然ながら尿道には残っている精液もあろうが、彼女はそれをじゅるじゅると音を立てて吸出し、飲み啜った。

 「ん、んん~~♪」

 思ったよりでた事がうれしいのか、その長い髪の女性は嬉しげに目尻を下げる。
 そして精液でヌラ付く少女の顔に唇を寄せ、

 「んふぅ~♪」
 「んん……ンむ……

 口移しで精液を流し込んでいった。

 無論、ドロドロし過ぎている為、一気に飲ませる事はできない。
 喉に絡まるだろうし、下手をすると器官に入って溺れてしまう可能性だってある。
 彼の精液で溺れ死ぬのは本望であるが、本懐を遂げていないのだから“まだ”勘弁して欲しい。

 だから彼女は自分の唾液と混ぜ、ゆっくり、ゆっくりと流し込んでいった。

 「ん…ん……」

 何かを飲み食いしている事が多い彼女は、それと同様に飲み食いしている夢も良く見る。
 よって、左程の時を待たずに流し込まれてくる液体をそれと思ってゴクリ…と喉を鳴らして飲み込んでしまった。

 「んふふ…」

 女の口から笑みが漏れる。

 少女が飲んだのだ。
 精液を。

 薄められているといっても彼の精液を喉を慣らして飲んでいるのだ。


 彼女は知らない事であるのだが、この少女は既に彼の精液を飲み続けている。

 いや、正確に言えばこの少女はそれと知らされず、ジュースとして精液を飲まされ続けていた。

 彼女の身を案じていた厨房担当の少女が、バナナミルクシェーキとして精液を混ぜて飲ませていたのである。

 最初はバナナの味に隠して飲ませ、慣れてくると比率を上げ、そして今朝のは大半が精液になっていたのだが少女は平気で飲み乾してしまった。

 だから彼女は、それとは知らずに精液の味が気に入りだしている。
 いや既に気に入っているのだろう。

 二人ともその事実を知りはしないが、自分らの経緯と現在の嗜好からそうであろうと確信し、
 ショートヘアの女性がこの少女を次の段階に進ませるべく、彼女の背から離れてその青年に這い寄って、その大きな胸でもってペニスに奉仕を始めた。

 「あ、はぁあ……くぅん………
  けーたろの…けーたろの……熱い…熱いわぁ……」

 全身精液塗れ。
 尚且つ肉柱も精液と女の唾液でヌラヌラだ。
 その感触がまた堪らない。

 二つの柔肉でもって挟んでしごく。只これだけなのであるが伝わってくる快感がまた凄い。
 灼熱の鉄棒の如き熱き男のシンボル。それを己の胸に挟ませてくれている。
 そして相手は惚れた男。彼を歓喜に導けるのだ。

 嗚呼……胸が大きくて良かったと嬉しく思える瞬間である。

 彼女は元々、そこまで男に奉仕する女ではなかった。

 しかし、いざ肉奴隷の様に彼に接してみれば、心身を貶めれば貶めるほど心が満たされてゆく事を感じ、心から牝に成って行けば成って行く程、言い様の無い誇らしさが浮かび上がっていた。

 心の奥から彼の玩具になってゆくイコール彼のモノとして一緒にいられる


 その図式を我が身で理解してしまい、尚且つその自虐的な快楽は彼女を虜にしていた。
 だから狂おしいほど惚れた男を己らの肉体からだでもって奉仕する毎日…という今の生活を止められはすまい。

 彼女らにとって、交尾というものは大切な対話であり、自分を大切な行為なのだ。

 当然ながら常識も別の物へと塗りつぶされており、その事を理解してはいるのだが“元”に戻すつもりは更々無い。

 彼の子を孕みたいと心から願い、というのに、孕もう孕もうと膣内射精をせがみ続けている。

 そこらの女どもの様に、妊娠する事に危機感を持ったりはしない。

 -惚れた男の子供を孕む-

 何故に下界の女どもはそれを嫌がるのか彼女らは全く理解できないのだ。

 惚れた男の子供ができるイコールその彼の道具が増えるという事。
 生まれるのは娘である事はのだから、それはつまりその娘を父親を悦ばせる為だけの肉奴隷として教育する事ができるのだ。

 嗚呼、何という哀れな娘達であろう。
 嗚呼、何と幸せな娘達であろう。


 生まれる前どころか受精すらする前から人権は無く、生まれた時から幸せが約束されているのだから。

 そして母乳と同等の精液を飲まされる、父親専用の淫魔奴隷となるであろう。

 嗚呼、何と祝福された未来を持つ娘達であろうか。


 ここのオンナ達にとっては性欲も愛も同意義だが、堕落も高尚も同意義。
 陵辱と愛情も同意義であり、肉奴隷と恋人も同意義だ。

 だから彼女らは不幸なのだ。眼を背けたくなるほど。
 だから彼女らは幸福なのだ。喩え様も無いくらい。

 ひなた荘で姉貴分だったその女は、愛おしい男の肉棍棒をたわわな胸に挟み込み、ぶちゅっ、ぶちゅっ、と汚らしい音を立てて擦りあげている。

 手馴れたものだ。
 散々その肉体からだ使のだから当然であろう。

 「あはぁ……おいひぃ…おいひぃよぉ……けーたろぉ……んちゅ、んちゅ……はぁ…ちゅっちゅっちゅっ」

 嬉しげに、
 幸せそうにペニスに奉仕する。

 相変わらず青年は無言であるが、彼女を愛おしいと思う心の声は雄弁だ。
 淫獣化してはいても彼女らへの愛情は変わらず、柔らかな微笑を浮かべ、そんな彼女の頭を優しく撫でる。

 「あぁ…けーたろ、けーたろぉ……」

 そんな彼を見てその女性は涙を浮かべた。

 嬉しくて嬉しくて堪らない。
 彼の事が好きだったから、愛している事に気付いたから彼にその身を捧げた。
 彼に己が肉体からだのその全てを捧げ尽くし、心はとっくに売り渡している。

 それでも幾らでも彼への想いが湧いてくる。
 後から後から泉が如く湧き出して来る。
 彼はその想いを受け止め、こうやって答えてくれる……

 その事が嬉しくて嬉しくてたまらないのだ。

 誰だって愛している相手から真っ直ぐな想いを返してくれたら嬉しいだろう。
 おまけにその想いの強さは何時だって求めれば味わえる。

 ぶびゅっ、ずびょびょ……っ ぶばっ、


 「きゃ…っ♪」

 凡そ射精とは想像もつかないような音を立てて、精が爆発した。
 童女の様な歓声をあげ、彼女はそれを顔で受ける。

 頭に降りかかり、髪を汚し、頬を叩き、鼻筋にそって滴り、口を満たし、心を満たしてゆく。

 生温かい体液はまだまだ吹き出てくる。

 第一射は特権として自分が味わい、次からは玩ばれている少女へと振りかけてやった。

 びゅくっびゅくっ、と肉柱は強く脈動し、跳ね上げ、マヨネーズを想像させるような粘度の精液を少女に叩きつける。

 「あは、あはは……
  スゥちゃんドロドロ……」

 くすくす笑いつつ嬲っていた女性が頬を滴る精液を舌で舐めとり、彼女の唇に流し込む。
 絞りたて、出したてのそれを少女は反射的に飲み、喉に絡ませる事なくごくりと胃袋へと流し込んで行った。

 女性二人は眼を合わせて微笑み合った。

 もう大丈夫。
 なんだって出来る。

 何でも大丈夫だと確信して……

 それが彼女らの肉体からだだから大丈夫なのであって、この少女の身体がもつのかどうかが別問題だとしてもだ。

 そんな事にすら気付けていない。
 ショートの女性は、この少女より幼い少女が青年と性交をしようとしていた時に気付けたというのに。

 強くなり過ぎた淫気は冷静さを奪う。
 強く高まり過ぎた興奮はブレーキを無くす。

 幸せに酔い、幸福に狂っている彼女らは自分らの様になる事こそが幸せなのだと信じている。
 多幸感で溺死している彼女らには世間で言う倫理は無い。

 堕ちに堕ち、天獄にまで堕落する。
 淫獄にまで駆け登る。

 それこそがシアワセなのだと知ってしまったのだから――




―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
                           -盲・愛-
                            File:卅肆
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――




 むつみは景太郎と素子の交尾を目にしてしまった時、その強烈な淫気をまともに浴び、己の本能から湧き出してくる欲望に狂い、完全に理性と冷静さを失っていた。
 何せ景太郎のペニスを迎え入れる為に膣粘膜を裂傷して悦びの顔を見せていたのであるし、尚且つサラの膣を壊してでも肉柱を入れようとしていたぐらいである。その暴走さ加減も理解できるであろう。

 幸せに直結していると誤解して……

 だからこそ後でキツネらにこっ酷く怒られている。

 「ンなことしてみぃ!! けーたろは自分の所為や思て落ち込みっぱなしになるやろ!!
  ほれに、アンタら傷付けた言うて、もう二度と入れてくれへんようなるやろが?!
  解かっとんか?!」

 流石のむつみも強いショックを受けた。

 子沢山の母の元、弟妹と幸せに生きてきた彼女にとって、子作りに直結しているセックスという行為は大切なものである。
 その行為は景太郎なら許す事が出来るのだが、それをしてもらえ無くなるという事は、人生の九割九分九厘をドブに捨てたようなものだ。

 景太郎のオンナとなって、彼がしたい時に何時でも何処でも股を差し出すというあたたかい未来。
 今一歩でそれを捨て去ってしまうところだったと言われたのだからそれはショックだったろう。

 だからむつみはサラまで巻き込みかかった事を彼女に心から謝罪……いや、“懺悔”した。

 無論、竹を割ったような性格のサラはそれを『済んだ事だし、“終わり良ければ全て良し”さ』とすぐに受け入れてくれた。相変わらず子供らしくない精神をしている。

 そんな事があってから、大好きな“けーくん”が絡んでいれば『心は熱く、頭はクールに』を心がけていた筈のむつみであったが……

 「はい、けーくん……どうぞ……」

 精液と愛液、失禁したのであろう粗相の跡の残るマットの上、
 ぱかぁ…とはしたなく広げた足を、自分の上に乗せて同じ様に足を広げさせたカオラに足に絡めている。

 『まんジュウが二つやなぁ…』

 とキツネがヲヤジ臭い事を言ってキシシ…と笑いながら、これから行われるであろう三人の行為を眺めていた。

 SMプレイが普通のキツネだ。放置プレイにも慣れている。
 当然、“見せ付けられる”のにも……

 だから失禁しているかのように股を濡らしていても景太郎に懇願したりはしない。

 尤も、むつみとカオラを重ねたところで俗に言う毛饅頭という訳にはいかないが。

 睦は確かに“濃い”方であるが、カオラは薄い上に恥毛の色が違う。
 サラに生えてきた時に彼女とカオラを重ねれば毛饅頭重ねとなるだろが。

 因みにキツネは景太郎によって永久脱毛されているので彼女も無理だ。

 さて、
 景太郎はというと、期待に打ち震えている肉柱をコントロールし切れず四苦八苦の様子だ。

 入れたい、入れたいっ、入れたいっ!!

 でもどっちに?!


 相変わらず優柔不断のようで、ここの女性に入れてと言われればすぐにでも入れられるのであるが、こっちに…と導いてもらえなければ散々ぱら悩んでしまう。
 これで一方への想いが劣っていれば話は早いのであるが、皆を同レベルで愛してしまっている究極の優柔不断さを誇る彼の事、

 昔話に出てくる、二つのエサの山を前にしてどちらを食べようと悩み続けた羊の様に、餓死するまで悩んでしまうかもしれない。
 それほど彼はダメダメなのである。

 尤も、そんな彼でも、
 そんな彼だからこそ彼女らは愛おしくて堪らないのだ。

 キツネと二人してクスクス笑ったむつみは、くぱ…っと湿った音を立てて自分の肉亀裂を右手でもって開いて見せた。

 「はい、けーくん……まずは私を使

 ぬちょぬちょに濡れた性器は、最初のセックスの時の後遺症か、膣粘膜に無残な跡を残している。

 開かれたラヴィアの中は粘膜である為、やはり傷などの治りは結構早い。
 ただ、早いことは早いのだが、その所為で歪な形で傷痕が残る事がある。

 だから初体験がレイプだった女性や、ヘタクソな男によって初体験を迎えた膣には裂傷跡のデコボコ等が強く残ったりするのだ。

 しかし、むつみにしてみれば良い思い出以外の何物でもないし、いずれのだから全く気になっていない。

 どちらかと言うと、良い思い出として身に刻み込まれている為に皆に羨ましがられているくらいなのだ。

 それに、その膣粘膜のデコボコによって景太郎に刺激を与えられているので願ったり叶ったりである。

 そんなむつみのヴァギナの上で、静かにひくづいているのがカオラの秘唇だ。

 うっすらと口を綻ばせているカオラのそこは、むつみとキツネに嬲られ続け、景太郎に撫で擦られているので通常のペニスであれば今すぐにでも挿入が可能であろう。

 ただ、淫水焼けをし黒々としている景太郎のそれはどこをどう見ても通常のサイズではない。
 使い込まれた竿師のそれ。
 真珠こそ入れていないが、そのゴツゴツとした硬さも張りもエラの大きさも一級品だ。
 持続時間こそ素人程度であるが、射精量ならば牛馬にすら匹敵する。それも僅か一回の量だけでそれなのだから、彼の人外さが伺えるだろう。

 素子と初体験を果たしてから、その亀頭が膣に触れていない日は無い。
 それほど使い込まれた剛直である。そんな肉凶器がカオラの愛らしいヴァギナを蹂躙するとでもいうのであろうか?

 普通であれば絶対に膣は裂ける。
 大人であるむつみの膣粘膜ですら裂けたのだ。カオラの様な小柄な少女の膣が持つわけが無い

 そう、
 ……


 くちくちくち……


 「あ、ンんん……やぁん……」

 亀頭の先で膣口をいじられるむつみ。
 既に濡れそぼっているところに鈴口から滴っているカウパー線液がこすり付けられているのだから堪らない。

 ちゅく…ちゅ…ちゅく…ちゅ…ちゅく…ちゅく、ちゅく、ちゅく……


 「あ、ン、んん、ひン、や…ん、け、けーく…あんっ」

 亀頭をわずかだけ入れ、抜き、そしてまた入れ、抜く。
 ペニスでもって嬲られのは初めてでは無いが、玩ばれる快楽には気持ちが良すぎてまだ慣れられない。

 それに『使って』と言ったのは自分なので文句も言えないのだ。

 くちゅりくちゅりと亀頭のカサが入り口付近だけを往復し、浅い位置の愛液を掻き出す。
 カウパーの美味さを堪能しているのか、壊れた蛇口が如く愛液が湧き出しているのだから当然か。

 むつみは腰を揺すって深い挿入を求めるも、当の景太郎は入り口付近の絞まりだけを堪能し、肝心の長いストロークでのピストンを行ってはくれない。

 くちくち、くちょくちょと涎を垂らし続ける下の口は口いっぱいに頬張れない不満をむつみに伝え、むつみの心は満たされない想いで痛みを訴える。

 「けーくん、けーくぅん……」

 半泣きで訴えかけ、身体の上にカオラを乗せたまま腰を揺すって彼を求めた。

 と……

 ずぐぅ……っ

 「ん、ひゃぁあ……っ?!」


 唐突に肉柱が奥まで突き込まれた。
 むつみの肉体からだを貫かんとする勢いで。

 素子やキツネには劣るとはいえ、景太郎のペニスを入れられ慣れた膣はその支配者の来訪を歓喜し、むつみの全身に致死量レベルの快楽を叩き付けた。

 「く、あ、はぁああっ!!」

 ぷし、ぷしっ、ぷしゃぁあっ


 眼が大きく見開かれ、断続的なアクメの凄まじさを物語る。
 少量とはいえ、勢い良く失禁してしまった事もそうなのだろう。

 そんなむつみの狂態であるが、キツネにとっては見慣れたもの。
 それに素子や可奈子の乱れように比べれば大した事は無い。

 『あれはホンマに発狂しとるようにしか見えへんしなぁ……』

 等と失礼な事を考えているキツネにしても、羞恥プレイの最中にそれはそれは凄まじい乱れ方をするのだが。

 ずぐぅ、ぶぢゅっ、ぬ゛ぢゅぅ、ぷぢゅっ、ぶぢゅ、ぷちゅる、


 「あ、か、は、あぁ、や…ン、ひ、くぅ…っ うっ、うっ、んんっ、」

 何時もより激しさは無いが、その分執拗にストロークを長くする。
 一気に子宮口まで突き進み、門の中に頭を差し入れてから直様膣道を駆け戻るように出て行ってしまう。
 スピードは無いものの、角度を変え、を加え、蹂躙し尽くしている むつみの膣粘膜全てを嬲るように肉傘で研磨してゆく。

 それがよっぽどイイのだろう。

 むつみの目から光が消え、快楽に濁り切った瞳には何も映しはしない。
 それほど気持ちが良いのだ。意識が飛び散るほどに。

 普通、初体験から僅か一ヶ月程度でペニスの注挿による快楽は訪れない。
 処女粘膜に快楽として刺激を受け止める素養が無いのだから当然であろう。

 素子の様に処女膜が裂けた瞬間すら快楽以外を感じず、膣内射精でオネガスムスを迎えてしまう処女がおかしいのである。

 むつみにしても、殆ど濡れていない膣に騎乗位で景太郎のペニスを突き入れて粘膜を傷つけた初体験を快感として覚えている。
 キツネすらそうだ。彼女の場合は皿マンとしか思えないきつさを誇っているのだが、その肉を割られる感触がたまらないのだ。

 景太郎に惚れた女達……
 彼女らは揃いも揃って景太郎の行為全てを快楽として受け止められる何かがあるのだろう。

 「あは、うぅっ、ひぃン、んっ、あ、はぁっ、あは……」

 やがてその肉凶器の動きは激しさを増してゆく。
 むつみの膣を研磨する行為から、掻き毟る行為へと変化。それに伴って むつみも連続的なアクメから、断続的という感覚を得られて意識を保てるようになる。快楽が途切れないよりはマシだろうが、どう違うかはむつみしか解からないだろう。
 それでも意識が保てるようになった事により、腹の上に乗せているカオラの肉体からだを落っことさない程度に抱き締められる様にはなった。

 おまけに、カオラの体重が腹を圧迫しているので、より強く景太郎のペニスの往復を感じられるという嬉しい副作用もあった(余談だが、その事を羨ましがったキツネによって皆に広がり、サラ等身体の小さな少女を腹に乗せてセックスをするのが流行ったりする)。

 ゆっくりとした注挿より、激しく突かれる方が意識を保てる むつみの体質には疑問が残るが……

 それは兎も角、

 ぐぢゃぐぢゃと膣肉を貪っていたペニスであるが、その動きが唐突に緩慢となる。
 とは言っても、それは当事者の女性だから解かる事であり、傍で見ているキツネでは解かりようも無い程度。

 再び むつみの意識が遠退くがそれでは本末転倒だ。必死の想いで横で自分の股間を撫でて無聊を慰めていたキツネに目配せをすると、何とかそれに気付けた彼女は四つん這いで景太郎に近寄り、

 「ホレ、ちょっとタンマ」

 と彼のペニスを掴んでその注挿に一時停止をかけた。

 そんな彼女に対し、捨て置かれた子犬の様な眼をして動かさせて欲しい想いを伝えてくる景太郎。
 一瞬、我を忘れて『ええよ。好きなだけツっこんだり』と手を離しそうになるが、今はまだむつみとだけするのでは無い事を何とか忘れずにいられた。

 手をびしょ濡れにしている自分の愛液と、むつみの愛液とでかなりの滑りがあるのだが、両の手で根元から竹刀でも握るように掴めば何とか止める事ができている。
 そのまま腰を引っ張り、何とか肉柱を引き抜く事も出来た。

 ちゅぼ…と物凄い泥濘の音がし、景太郎の亀頭が膣から抜け出てゆく様を むつみは物悲しげに見送る。
 我が身を裂かれる想いとはこの事だろう。

 膣も淋しげに口を開け、肉襞をひくつかせて涎を流しつつペニスが遠ざかっている事を嘆いていた。

 「ホレ、本命はこっちや。ちゃんと中で出したり」

 むつみの愛液と景太郎のカウパーによってドロドロになったペニスを、その小さな亀裂に押し当てるキツネ。

 無論、挿入された事の無いそこは口を閉ざしているのだが、下になっているむつみが抱きしてめている手をやわやわと動かし、足が大きく開かれているのを良い事に、肉亀裂を引っ張り広げて景太郎の前に曝し出した。

 「わ、あ……さっすがにキレイやなぁ……まだ薄ピンクやで」

 さっきは完全には開いていなかったそこであったが、今は完全に露出している。
 よって小陰唇すら口を開けさせられて奥まで見えていた。

 「あはは……キツネさんはもう真っ赤ですからねぇ」
 「紅色は黙っとり」

 その可愛らしい膣も、擦り付けられている景太郎のカウパーによってどろどろであるし、カオラ自身の愛液も溢れ出ている。
 思ったより感度が良いのだろう。

 ちゅく……


 膣口にペニスが触れた。

 「ありゃ。もう入れてまうんか? まぁ、しゃーないけど……」

 ぴくんっとカオラの身体が反応する。
 異物を入れられるという事を感じ取っているのか、或いは性的な感触によるものかは解からないが。

 ずぐぐぐ……


 入る。
 入ってゆく。
 ぷりぷりとした肉の頭を愛らしい膣を押し広げてゆく。

 思っていたよりも楽に柔肉が咥え込んでゆく。
 手を添えているキツネもそれには安堵していた。

 それでも添えている手は離さないし、気を急かせて一気に突き込もうとする景太郎に細心の注意を払っている。

 手を添えている理由は、カオラの処女膜を破らない用心の為だ。

 つい景太郎がキレて処女膜を破ってしまったら

 だから手を添えて粘膜を押し破らないようにしているのと、ピストン封じの為である。
 もしピストンしてしまえば、それはセックスになってしまう。

 今は治療しているだけ。
 スバリ、“お薬”を“お注射”するだけなのだ。

 ただ、“お注射”する器具が“おちんぽ”というだけ。

 ぬぐぐぐぐ……


 そんなキツネらの思惑とは裏腹に、景太郎のペニスはどんどん飲み込まれてゆく。

 健気にも口を一杯に広げ、大人の女性でも息を呑む景太郎の肉柱を飲み込んでゆく。

 「ありゃ? スゥって深いんかいな。膜あらへんで?」
 「既にどなたかとヤりまくってるとか……?」
 「ほれは無いなぁ……スゥのそこって処女の匂いしかないで?」
 「そうですねぇ…ちょっと酸味のある処女の味でしたし……」

 となると、激しい運動によって裂けた…という事であろうか。

 素子のように、激しさゆえに分厚くなったのと違い、裂けて無くなったケースは多い。
 おそらくはカオラもそれにあたるのだろう。

 『あ~あ……』と落胆するキツネ。

 彼女はカオラが初体験で出血するのが楽しみでしょうがなかったのだ。
 それは落胆も大きかっただろう。

 『私はどうなる。出血など無かったぞ』と素子が文句を言ってきそうであるが。


 ずぶぅ……
 どぶっ、ずびゅっ、びゅくっ、ずびゅびゅびゅびゅびゅ、


 「……あ……っっ

 「ありゃ、子宮に着く前に出てもた。
  ……あぁ、ほれで良かったんやったっけ……」

 手の中で脈動するペニス。
 ずひ、ずひひっと何かが中を走り抜けてゆく感触が伝わってくる。

 何時もは胸や口、そして肉襞で感じ取っているその感触を掌で受けるのか中々新鮮だ。

 キツネらは気付いていないのであるが、現在の景太郎のペニスの太さは尋常では無い。
 だというのにしのぶはそれを口に入れられて、素子も入れられるようになった。
 そしてカオラのヴァギナもかなり締め付けてはいるが受け入れているではないか。

 その異様さに気付けない女達。
 誰も指摘できないのだから当然であろう。

 そんな極太ペニスを入れられた上、膣内なかに凄まじい量の精液を注ぎこまれたカオラ。
 彼女の下腹を むつみが撫でてみると、何となく精液が暴れまわっている感触が伝わって来るよう。

 どうせあの粘度と勢いだ。子宮に易々と到達し、そこを汚し回ることだろう。
 いや、それが目的だからこそ、こうやって寝込みを犯しているのだ。

 膣内なかに出して一応の満足を見せた景太郎のペニス。
 それを彼の腰ごとゆっくり引っぱって抜き、下で待ち望んでいるむつみの膣へと突き込んだ。

 「あぁああっっ!! あぅンっ!!」


 再びむつみは腰を跳ね上げて喘ぎに喘ぐ。
 それでも彼女の両の手はしっかりと腹の上の少女の股間から離されておらず、ぴったりと膣を閉じて精液の逆流を防いでいた。

 何せボーリングの球を鷲掴みできる握力腕力を持つむつみである。
 その気になればこの程度は軽いものだ。
 指を入れて塞ぐのが一番良いだろうが、そこに物を入れて良いのはこの世で景太郎只一人。
 自分だってタンポンを入れる暇があるのならペニスを入れておきたいのだから。
 カオラだってそうなのだろう。むつみは勝手にそう思って実行に移していた。

 そう、
 カオラだって知らない内に大好きな人に犯されて、それをネタに脅されて肉奴隷にされたり、
 知らない内に大好きな人に妊娠させられたい筈だ。


 だから膣内で精液を吸収したい筈。
 つまりはカオラの為を思えばこその行為であった。

 キツネですら呆れ果ててしまうほど、むつみは景太郎の事で暴走し易い。
 景太郎のオンナになってからそれは如実になっており、以前など比べ物ならない程簡単に暴走してしまう。

 重症の幸福中毒患者である可奈子ですらもう少しマシなくらいだ。
 何を突然やらかすのか突飛過ぎて誰も思いつかないのである。

 何せ むつみは今、自分の肉体からだをオナホールとして景太郎に使わせ、カオラの膣をテッシュ代わりに使用させているのだ
 そんな思いつきや行動を、誰が理解し得るだろう。

 キツネとてむつみと景太郎のセックスにカオラを混ぜているとしか認識していないのだ。

 確かにこの二人は景太郎に肉の道具として使われる事を快楽としている。
 景太郎から直接、大人の玩具として使うぞと言われても尻尾を振って悦んだであろう。

 だがそれは、景太郎のとの間に確かな愛情があるからである。

 何も存在しない虚無的な性欲だけなら虚しいだけなのだ。

 しかし、むつみはそれでも良いのだ。

 景太郎がオナニーしたくなった時、手近にないテッシュの代わりに使用されても股を濡らしてしまうだろう。
 彼が尿意を催した時、便器の代わりに使われても悦に入るだろう。
 実際、既に何度も飲尿させてもらっているほどなのだ。

 むつみはキツネとは別の意味でマゾである。

 虐げられても快楽を得、
 彼の役に立ったと感じられても快楽を得、
 隣に立てば愉悦を得、
 “交尾”させてもらえれば絶頂を得る。

 男にとっての便利な肉玩具。
 それがむつみがオンナになってから変えた自分…己を課した今の自分という存在である。

 だから全ての快楽が景太郎に直結しており、素子に次いで壊れ切っていた。

 ぢゅぶっ、ぢゅぐっ、ぬぢゅっ、ぶぢゅっ、ぢゅぶっ、ぢゅぼっ、


 「や、はぁ、ンんんっ、は、あぁ、ひんっ、くぅん♪」

 むつみの乱れっぷりに感心するキツネの目の前でむつみはよがり狂い、

 どぶっ、ぶぶ、ずびょっ、どぶ、どぶぶ……


 「ンん……あぁ…ん……

 射精する直前、当のキツネによって引き抜かれたドロドロの肉柱は、その滑りすら上回る精液で怪我し尽くされ、その残留体液を滴らせている愛らしい性器に突き込まれ、
 少女は胎内に精液を出され続けている。

 すごい……
 ホンマすごいわぁ……


 キツネはもはや自分を抑える自信が無くなってしまった。

 景太郎の肉柱に触れているだけでも疼きは強いのに、むつみはただピストンされるだけの大人の玩具と化しており、
 カオラは精液を注がれる器と化している。

 だが、カオラはまだ処女である。

 ペニスを入れられようが、下腹がポッコリと盛り上がって見えるほど膣内なかに射精されてようが、
 、入れられている本人の景太郎とセックスしたいという意思のもとで無ければ処女なのである。

 キツネがふと横を見ると、マットの脇にはガラスで出来た器具…大きい注射器に似たものが置かれていた。
 大体何に使うかは見当がついている。

 恐らく、カオラのアナルを景太郎の精液で洗ってやるのだろう。

 唇は犯した。
 精液も飲ませた。
 身体にも精液を擦り込んだ。
 子宮にも精液をご馳走してあげている。
 そしてアナルも……

 ほぉ…


 我知らず、キツネの唇から熱い溜息が零れ落ちた。

 もし自分がそういう事をされたらどれほど幸せなのだろう。
 いや、された事が無い訳では無いし、景太郎の目の前で排泄だってさせられている。今よりももっと道具として使われた事だってある。

 だけど、『キツネさん、キツネさん』と、とても愛おしげな声もかけながら抱きしめもしてくれている。

 陵辱に継ぐ陵辱、
 愛欲に継ぐ愛欲を受け、キツネは溺死寸前の幸福の絶頂を毎日の様に感じさせてもらっているのだ。

 その幸せを可愛い妹分のカオラにも分けてあげられる。

 そしてゆくゆくは……




 どろりとキツネの眼が濁った。

 満月の下で月光を浴びた素子の影には、時々翼のようなものが見えてしまう事がある。
 大体は目の錯覚なのだろう、眼を擦ったりすれば直に見えなくなるのだが、実は最近、キツネの影にも何かが見えるようになってきているのだ。

 それは尻尾。

 満月の月の光を浴びた時、僅かではあるが腰の辺りでぴょこんと跳ねるひも状のものが見える事があるのだ。

 ただ、“それ”に気付いているのは素子只一人。
 当のキツネにもそれを目にした事は無い。

 そしてそれが見える時には、大抵キツネの眼はドロリと濁っている。

 そう、今の彼女のように――


 「キツネさん」

 そんな彼女に対し、むつみが景太郎のペニスを膣で味わいながら声を掛けて来た。
 ふと我に返り、むつみの顔に眼を向けると、彼女は快楽に表情を濡らしつつも優しげな眼差しを向けてくれているではないか。

 「……マジ、ええんか?」

 それで全てが解かっているのか、キツネは悦びを隠そうともせず彼女に問い掛けた。

 「ええ。だって夜はまだ長いんです。
  私は朝までけーくんと一緒にいられれば良い訳ですし……」
 「おおきに」

 ぐったりとし、今さっきまで男を知らなかった膣から精液を零しているカオラの身体を抱き上げてむつみの横に寝かせ、キツネはいそいそとむつみに身体を重ねた。

 ぬぢゅぅう…


 「く……はぁあああ……っっ!!

 途端に突き込まれる熱い肉の柱。
 フックが強い肉凶器。

 待ちに待っていた所為だろう、キツネの性器は優しげにそれを抱き締め、牙を突き立てるかの様に肉襞が纏わりついた。

 景太郎の女達の中、メンバー最強の絞まりを持っているキツネの膣だ。
 幾ら入れ慣れているとはいえ、景太郎の為だけにカスタマイズされた肉の洞は乱暴な程に彼を攻め立てつつ懇願混じりの奉仕をする。

 ぢゅぽ……


 「あぁ…いややぁ……」

 だが、数度の注挿の後に比較的あっさりと引き抜かれてしまう。

 襞が強く引き止めていた所為か、赤い粘膜が引きずり出される様に付いて来てしまう。
 代わりに、

 「あぁあんっ♪」

 腹の下でむつみが喘いだ。

 景太郎はそのまま むつみの肉を割って鋼の硬さを持った雄のシンボルを挿入したのである。

 キツネには劣るものの、きつくて、ずぶりとした滑りが景太郎のペニスを大歓迎する。
 むつみは腰をくねらせてそれを悦び、キツネは羨ましげで拗ねる様な眼差しを彼女に送った。

 内心は申し訳無い気がしているのであるが、自分の欲望には逆らえない。

 景太郎によって女にしてもらい、景太郎によって感度を高められている二人の肉体からだは、景太郎のちんぽに強く反応してしまう。
 肉体からだ…とりわけ性器に刻み込まれている支配者の記憶が彼の到来に反応し、彼女らに最大級の快楽と多幸感を齎す。だからこそ景太郎の女達は全員が景太郎中毒者なのだ。

 むつみが腰を上げ、景太郎の為に挿入角度を調整する。
 これが騎乗位だったら…と少しだけ悔やみも湧く。

 素子やしのぶと同様に、むつみは騎乗位での奉仕が大好きなのだ。
 初体験が騎乗位での逆レイプだったからかもしれないが。

 ともあれ、腰を動かし始めた景太郎のペニスをむつみも腰を動かして受ける。
 強引な挿入でないのなら、自分からも動くと彼も気持ちが良いという事を皆は学んでいるのだ。

 ぬ゛ぢゅる……ぐぢょっ


 「あぁ…ン…」
 「あはぁ…っ♪」

 だが肉柱はむつみから引き抜かれ、キツネの中に。
 肉襞は引き摺り出されたままで、膣道も涎をがして口を開けたままというはしたないにも程があるキツネの性器であるが、好物が入れば忽ちの内に口を噤む。
 きゅっきゅっ、と括約筋を使って強く断続的に締め付け、景太郎の快楽中枢を刺激する。
 キツネの尻を掴んだままだったので、景太郎の下腹がぱんぱんとその柔らかな臀部を叩いてリズミカルな音を奏でた。

 途轍もなく大きいペニスであるが、しのぶですら子宮の奥まで招き入れて根元まで刺さるようになっているのだ。いくら皿マンの様な狭さを持つキツネであってもこのくらいの事は出来る。
 腰を摘んでいる景太郎の両の手の親指が、その尻肉を割ってアナルを露出させる。

 「あ、あああ、あぁ……」

 見られている。
 排出器官を見られている。
 無論、オンナ達の大半はアナルバージン等とっくに景太郎に捧げている。見られる事も、使ってもらう事にも慣れきっている。
 慣れ切ってはいるのだが、やはり羞恥は持っているので恥ずかしさも湧く。

 そしてその恥ずかしいという感覚がまたイイのである。

 キツネを背後位で犯し、むつみを正常位で犯す。

 ごりごりと上下の穴を研磨し、重ねられたオンナの間にどぶどぶと精液を吐いて二人を悦ばせた。

 何時しか意識はすっ飛び、三人は肉欲の限り身体を使い始める。

 身体の間に挟み込むのは景太郎のペニスか、
 細い腰を大胆に振って誘うのはキツネかむつみか、

 オンナはより奥へ、敏感な部分へと、景太郎を誘い、
 景太郎は本能のまま二人を犯す。

 理性の飛んでいたオンナ二人もやはり本能に任せて身体を絡め、転がされているだけでは寒かろうと、カオラの身体に景太郎に放尿させ、精液混じりの小便で彼女の身体を温めようとする。
 だが、その芳ばしい香りにまたも我を忘れ、カオラの身体を舌で舐めに舐める。

 そんな二人の様子に景太郎も獣さを暴走させ、二人がしゃべられなくなる程犯しに犯していった。

 その際、カオラの肉体からだも使ったかもしれないが、意識を完全に本能に売り渡していた三人の記憶には欠片ほども残っておらず、結局カオラは処女のままという事となった。




 景太郎の突き込みを受けながら、幸せに浸り続ける二人。

 世間的に言えば良くて都合の良い愛人で、悪ければ肉奴隷。
 そんな扱いを受けてしまう筈の女たちであるが、彼女らは男の身体の下で、或いは上で、件の男の名を叫び、股を大きく開いて差し出す。

 股間に深々と突き刺さるのは景太郎のオトコのみ。
 それ以外を入れる気は更々無く、入れられたとしてもクスコやタンポンが限界だろう。

 肉柱を激しく出入りさせ、或いは出入りさせてもらい、女心を熱く熱く燃やしてゆく。

 子を成す筈の神聖なる臓器、子宮の中すら彼のモノ。そこに迎え入れられれば、その更なる一体化によっての欲求が彼女らの心を甘く嬲り潰してくれる。

 既に子宮内には景太郎の濃過ぎる精液が注がれ続けて、溢れかえっていた。

 夜も更け、シンデレラも逃走する十二時を過ぎた頃、
 キツネは精液と愛液を滴らせつつ全裸で『日向』を後にした。

 その腕の中にはこれまた精液や異臭のする何かでどろどろのカオラの身体。

 彼女の着替えはちゃんとむつみが用意してあったのであるが、何に使ったのか破れた上に彼女らの小便漬けになっていたので放棄する事となった。

 露出狂宜しく、全裸でぺたぺたとひなた荘に戻って行くキツネは、一度『日向』に振り返って眼を細めた。

 まだ夜明けまでは間がある。

 その間に むつみはどんな目にあうのだろう。

 抱かれ、犯され、嬲られ、穢され、そして愛される。
 今夜の彼女は快楽目白押しだ。

 明日は素子の番であるから、その次の日は自分の番だ。
 一晩中続くであろうSMプレイも良いが、しのぶを見ていると彼女のようなイチャイチャも捨て難い。

 意識を失ったままのカオラの身体を愛おしげに抱き直し、風邪を引かないように風から庇いつつ、足早に寮へと戻って行く。

 腕の中、安らかに眠り続けるカオラの顔は何時もの彼女のそれ。
 だが、乳首は起ったままであるし、膣からは未だに精液が滴っている。

 可愛い瞼をピクピクとさせているのは夢でも見ているからだろう。

 キツネは、

 「けーたろに陵辱してもらえるよーな夢やったらええな」

 と、それこそが良い夢である様に呟いてみせた。


 そして実際、カオラはそんな夢でも見ているのか、ポタポタと愛液を滴らせ始めている。

 キツネは精液を拭く事もせずに部屋へと戻り、心地良い疲労に浸りつつカオラを抱き締めたままベッドに横になった。

 全身から漂うのは景太郎の精臭。
 股間に残る痺れは景太郎が入っていた証。

 キツネが入る眠りは安らかだ。
 そしてむつみの今夜も安らかだ。

 だからカオラも安らかだろう。

 「おやすみ、スゥ」

 ちゅ、とカオラの額に軽く口付けをし、キツネは眠りの地へと旅立っていった。

 夢の中でも景太郎に会える事を期待しつつ……




 カオラは毒牙に掛かった――

 彼女本人の意思も、ムードも何も無く、
 心も身体も汚されて、内も外も白濁に穢されてしまった。

 だが、誰に…となると説明が難しい。

 確かに行為そのものは最悪であったし、列記とした犯罪行為だ。

 獣すら踏鞴を踏むような情交を素子やキツネと行い、しのぶや可奈子といった虐めれば虐めるほど輝きを見せてくれる少女らと肌を触れ合わせ続け、妙にインセストを感じさせる むつみとサラとの交わりによって景太郎の心は鍛えられている。
 誰かの意思云々が関わっている訳でもないのに、性交に対するタブーを見失っているのだ。

 だから意識の無いカオラの性器を汚す事も普通に行え、彼女の身体に放尿する事も極普通に行えるのだ。

 彼のオンナ達全員、淫尿行為ですら嬉々として行える。

 演技を除き、毛ほども嫌がる者はいない。

 その事も判断を曇らせる原因となっていた。

 今の彼は愛し合う者同士の交尾にタブーを持ち合わせていない。

 愛しているからこそ穢し、
 愛しているからこそ犯す。

 そしてそれは、彼女らが心から彼の事を愛しているからこそ行えるのである。

 カオラの気持ちは皆から聞いている。
 カオラも一歩を踏み出したいと心の奥底では渇望しているのだと説明を受けている。

 だからこそ精液を飲ませてあげたのだし、
 だからこそ膣に入れてあげたのだし、
 だからこそ子宮に射精してあげたのだ。

 膣は男の味を知り、
 子宮は子供の素を初めて知った。
 
 本当の意味でそれを受け止めてはいないのであるが、少なくとも景太郎の理解という名の誤解によって、少女の身体にそれを受け止めて味わってしまう素養を与えてしまった。


 だからこそ、キツネの腕の中で寝息を立てているカオラのその膣は蠢きとざわめきを失ってはいない。
 ずっとずっと粘膜同士をこすり付けて蠢いている。

 擦り合わせているのはオトコのエキス。
 咀嚼しているのはオトコの記憶。

 カオラの心にはペニスの到来は残っていない。
 だが、その肉体からだはその肉柱の感触を、その雄の味を忘れられないで悶えているのだ。

 むつみよりキツネより、その悶え苦しむ度合いは強い。

 彼女らとは違い、カオラの恋は叶っていないのだ。

 だからその分、カオラその求める想いは強い。

 強いからこそ、愛している男の味を求め狂っている。

 気持ちは暴走させられ、むつみ同様に淫気でもって狂わされていた。

 キツネとむつみの肉体からだに挟まれ、嬲られ、玩ばれ、景太郎のザーメンという触媒で持って全身余す所無く穢し尽くされていた。

 その心身は男に狂い、本能だけが知っている景太郎への気持ちを素子の様に加速させられ、
 理解できない飢えと苦しみを齎せるだろう。

 その引き金は引かれてしまったのだ。




 それは世の兵器と同様なのである。

 一度トリガーが引かれると、もう取り返しはつかないのだから――




****************************************************


 皆様、そして管理人様。

 残暑お見舞い申し上げます。

 どうも、暑さに喘ぐPixyでございます。
 膣内…もといっ、室内気温が三十八度の日々を送っております私ですが、皆様いかがお過ごしでしょうか?

 暑さの耐え切れず、超絶はしたない格好でキーを叩いている今日この頃……今年暑過ぎます。
 暑いっちゅーか、熱いですね。ったくも~~~……

 ウッカリとカオラを犯しちゃいました。
 モノホンの最低な人たちです。愛情を大勘違いしてます。
 そしてそのままおかしくしていきます。

 カオラも嗜好が歪みます。嗚呼、皆変態や……

 このままラストまで皆も歪み続けてしまうでしょう。嗚呼、カワイソーに。

 では、皆様も暑さに負けずがんばってください。

 それじゃあ、また……




[2319] Re[6]:Dotage ~妄愛~ <卅伍> (ラブひな)
Name: Pixy◆dba01a2e
Date: 2007/08/25 09:26


 チュンチュン…と、呑気そうな雀の声。
 日が出て直ぐだというのに、異常気象か単に夏場だからか、ジリジリ気温も登ってゆく。

 それでもここ、ひなた荘は物凄く近くに滝もあるし、山からの吹き降ろしの風があってかなり涼しいので左程気にはならない。

 都会におけるヒートアイランド現象も何のその。
 鄙びた温泉街であるひなた市ひなた町にある温泉旅館兼女子寮、ひなた荘は今日もまた快適な気候を保っていた。

 それでも気温が上がらない訳も無く、昨今の熱帯気温までは行かずとも夏らしい朝の暑さにまでは上がってゆく。

 ぱちり…

 そんな音が聞えてきそうなほど、はっきりと瞼が開かれる。
 寝起きが良いのは何時もの事であるが、こんな朝早くに目覚める事はそんなにない。

 そこは自分の部屋ではないが見慣れた別の部屋。
 ここひなた荘に来て何度も泊まった事のある部屋。
 中学の頃からお邪魔しているのだから見慣れているのは当然か。

 おまけに、部屋の主は自分を抱き締めて爆睡しているのだ。解からない方がどうかしている。

 「……なんでウチ、キツネの部屋におるんや?」

 訳はわからないが、元より少女は兎も角じっとしていられない性格。
 くか~…と物凄く幸せそうな寝息を立てているキツネの腕からモソモソと脱出を図った。

 案外…というか、何と言うか、しっかと抱き締められていた事と、キツネが全裸であった事とが重なり、しっとりと汗ばんだ肌は摩擦力を高めてくれていて中々に抜け出るの事は難しい。
 それでも、ガッチリと自分の身体をホールドしている腕を解き、抱き枕宜しくしっかと閉めつけてくれている太股からも何とか脱出に成功する。時間そのものは結構掛かってしまったが……

 「やれやれ…」

 汗をぐいと拭ってやっと安堵の表情を浮かべる少女。
 これが管理人室に住まう青年の腕の中というのなら、もっと甘えていたい気もするが。

 「うにゃ……?」

 と、そこまで考えてからはっと気が付く。

 キツネの部屋にある鏡台に映っている自分。
 何時もはしっかりと寝間着を着ている筈の自分の肌が剥き出しなのだ。

 無論、キツネは同じ寮に住み、位置も一緒に風呂にも入っている間柄。
 初潮を迎えた時にも何かと世話になっているのでそんなに恥ずかしさも無い。

 だが、周囲に自分の服が見当たらないと言うのに、自分は全裸。真っ裸なのだ。
 気心の知れた寮の皆に肌を曝す事に恥ずかしさは左程感じはしないのだが、このミステリーがやけに引っかかる。


 引っかかりはするのだが……


 彼女…カオラはじっと鏡の中の自分と見つめ合いながらすっくと立ち上がった。

 その裸身。
 見慣れているはずの自分の肉体からだ
 しのぶより僅かにマシというだけの肉体からだであるが、何故だろう? 今朝改めて見る自分の肉体からだは妙に艶かしい。

 プロポーション的にキツネやむつみの足元にも及ばないし、背も高くて胸も大きい素子にも全然届かない。
 やせっぽちという訳ではないのだが胸も薄く、スレンダーというより子供の体型だと思っていた。

 だが、今鏡に映っている自分の肉体からだは何故だか妙に色気がある。

 前に見た時は何時だったか忘れたが、鏡を使ったスキンケア等した事もない自分の肌であるが、今の自分の肌は妙に艶やかで色っぽい。
 体育会系の様な精神回路をしているくせに何故か理論派でもあるカオラは嬉しさより何より、疑問が起ってしまうのである。

 「……ま、ええか」

 だがその疑問も長続きしなかった。
 元々能天気である彼女の事、早々悩み続けたりはしないのだ。悩みの壷に入った時なら兎も角……

 それに、キレイになったのだから文句があろう筈が無い。

 ウチ、きれい? と青年に…景太郎に聞いてみたいくらいだ。

 「あ……」

 と、小さな声が唇から零れる。
 彼の事を思い出した途端、腰が重くなり胸が高鳴った。

 彼の事を連想的に思い浮かべてしまった時、彼女の脚から力が抜けてしまったのである。

 再びぺたりと座り込んでしまったカオラ。

 景太郎の事は間違いなく『大好き』なのであるが、素子たちとは違う感触の『好き』に未だ戸惑いを持っている。
 夕べもちゃんと接する事ができなかった。
 これで何日になるだろう?
 こんなに長くくっ付いていないのは、彼が留学していた時以来だ。

 だが、今の彼女の身体の反応は今までと全く違う。

 彼の事を想えば想う程、意識すればする程、カオラの腰は重さを増し、下腹の奥が妙な疼きを訴えかけてくる。
 胸の先がチリチリと痛みにも似た痒みを伝えて来、その肌も室温以上に熱を発していた。

 母国は熱い国だった。だからカオラは暑さには殊更強い。
 それでも日本は湿度が高い為、母国より暑苦しい。しかしは天然のエアコンがあって左程苦にならなかったのだ。
 にも拘らず、彼女の肉体からだは熱を放っていた。

 女だから、オンナなればこそ逃れられない、抗えない熱を……

 「喉渇いた……」

 そんな肉体からだの訴えを誤魔化すようにカオラはヨタヨタと腰を上げ、何とかキツネの部屋を後にする事ができた。

 景太郎の事が頭から消えない。
 消えないからこそ渇きが起こる。
 渇けば渇くほど肉体からだの一部が潤ってくる。

 恋愛経験超初心者であるカオラはその渇きも潤いも理解する事ができないでいた。

 腰を上げた瞬間、カオラの小さな尻と絨毯の間につつ~と粘液の糸が引かれたのだ。

 カオラは濡れていた。
 べっとりと愛液を垂らしていた。
 記憶に残っていない夕べの残精すら練り混ぜた本気汁を、彼が触れてもいないというのに早くも垂らしていたのである。

 彼女がもっと注意深ければベッドの中の状況も気付けただろう。
 キツネとカオラが横たわっていたシーツには異様な染みが広がっており、尚且つ糊でも張った様にガビガビになっていたのだ。

 そして立ち去ったカオラの太股には、体液が膣から溢れ出て伝っている。

 そんな異様な状態でいるカオラの背を見送ったキツネは、優しげな笑みを浮かべた後、今度こそ寝たフリを止めて二度目を決め込んだのだった。




 ポタポタと汗と共に残留体液を滴らせて廊下を汚しつつ台所にやって来たカオラ。

 トロ火に落とされたコンロの火が何やら鍋を温めており、朝の食事の用意は進んでいるらしい事がわかる。
 卵も室温にしているのだろう、人数分が殻に汗を掻きつつボゥルに収まっている。卵焼きかオムレツか、はたまた炒り卵かは不明であるが。

 しかし、そこにしのぶの姿は無かった。

 お手洗いにでも立っているのだろう。
 と、カオラは左程気にもせず冷蔵庫を開けて飲み物を探した。

 しのぶのいない事より今の渇きの方が苦痛なのだから。

 麦茶やジュース類もちゃんとあり、1.5リットルの大きめ牛乳パックも二本ある。
 文句を言われる事もないし、料理に使うもの以外は飲んでも怒られない。それでも何を飲もうかとカオラは迷っていた。

 喉が渇いているにも拘らず、妙にどれを飲むのか悩んでしまうところが実にカオラらしい。

 悩みに悩んだ挙句、結局は天神様に頼ろうとしたところで、カオラの目に安っぽい100円ショップのボトルが目に入った。

 『?』と首を傾げつつそれを取り出し、キャップを開けて鼻を近づけるカオラ。
 動物宜しくクンクンと鼻を鳴らし、その中身を匂いで持って確認する。

 「……?? 何やコレ?
  エポキシパテ(注)みたいな匂いするし、何や妙に生々しいし……??」

 だが、何故か顔を離せない。

 香りは最悪ではない。
 いや、間違いなく生理的な嫌悪を持つ臭いなのだが、“今”のカオラにはそれが無い。

 その匂いに反応してか、彼女の渇きはより一層酷くなった。
 もう我慢できない。そんな暇が無い。
 カオラはピンクの唇を容器の縁に近付け、脱水症状の患者が如く震える手でもってその容器を傾けた。

 ぐび…


 小さく喉が鳴り、食堂を通ってその液体が腹に収まってゆく。

 瞬間、カオラの眼が大きく見開かれた。

 『生臭い!! 喉がキしょいっ!! 何やこれ?!』

 心が絶叫し、全力で拒絶した。
 当たり前であるが、冷たく冷やした精液など少女が飲める訳が無いのだ。

 只でさえ精液を美味しく感じるまでには時間がかかるもの。
 セックスに慣れ、雄の匂いに慣れ、行為に対するタブーを感じなくなってからの話だ。
 愛おしい相手の精液であれば、実は慣れるのもかなり早いのであるが、飲み慣れたとしても冷たく冷やしたものはやっぱり不味いのである。

 だが、カオラは唇を離せなかった。
 精飲という行為をやめられなかった。

 『不味い、不味いよぉ……』

 泣きながらそれを飲み啜り、座り込んで喉を鳴らす。

 『もっと……』

 じっとりと股間の具合が酷くなり、飲めば飲むほど渇きが酷くなってゆく。

 何故なら……

 『もっと新鮮なんが欲しいよぉ……』

 今の彼女の肉体からだは新鮮な精液を欲しているのだから……




 精飲している事に気付けず、尚且つ今の行為そのものが自慰に近いものとなっているのにも気付けないカオラ。
 そんなカオラを物陰から、

 『カオラぁ…早く先輩のモノになろうね。
  そうしたら、そうしたら……私達と…私達ずっとずっと一緒に………………』

 と、見守り続けている少女。

 飲み干した器を持ったまま、全裸で泣いている少女は痛々しく、また守ってやりたいと思わせる儚さがあった。

 だが、少女がカオラを見つめ続けていたのは同情や心配していただけではない。

 普段元気に走り回っていた少女が肉の渇望の余りに泣いている姿に、しのぶはそそられており、うっすらと下着を湿らせていたのである。


 同じ男を愛するが故に少女らの歪みは強くなる。

 心の奥底に潜む独占できない苛立ちか、或いは隠し切れない嫉妬からか、他者より堕ちに堕ちてもっと寄り添おうとし、尚且つ他者を貶めようとする。

 人は穢れてゆく事に抵抗を持つが、自分の意思で一度堕ちればどこまでも堕ちて行きたい自虐的な快楽を覚えてしまうもの。
 そして汚濁を浴びた仲間の匂いにも敏感になり、その穢れが薄ければどんどん汚したくなってゆく。

 仲間意識もあるが、穢れ無き者への憧れや嫉妬だってあるのだから。

 以前、この少女は無垢

 無垢であればある程、汚れはどうしても取れなくなり、目立った染みを残してゆく。

 そして自主的に着けた染みの色でもって染め上げている今の自分を顧みて、その情欲でもってカオラを染めてあげようとしているのだ。

 スカートの下、
 愛おしい男の趣味に合わせたか、この少女らしい白地のショーツのクロッチ部はゆっくりと湿り気を広げてゆく。

 今日は満月なのだからモトコ先輩の番……だからガマンガマン……と。




 男を想い、その想いより強い情欲に喘ぎつつ理解できないカオラ。
 しかしてそれが満たされたとしたら……

 今の情欲全てが満たされたとしたら……彼女は………




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                           -盲・愛-
                            File:卅伍
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 いない……
 どこに行ったんだろう……


 真夏の朝。

 山の中を歩く女性の姿が一つ……

 ハイキングにしては時間が早過ぎるし、衣服も軽装過ぎる。
 その女性は水色のワンピースとパンプスで歩いているのだから。

 朝の散歩コースを歩いている姿そのもの。そしてここはそんな人間がいてもおかしくも何とも無い場所なのだ。

 都会より格段に涼しいひなた市であるが、流石に日中は暑くなってくる。
 しかしそれでも朝の空気は涼しさを感じさせてくれるほど低く、山を散策するのに適していた。
 だからこういった女性が歩いていても別に不思議でも何でもない。

 一人で歩いているとは言っても、ひなた市の犯罪発生件数は異様に低く、他の街を大きく引き離しているので危険も無い。
 それに、自覚は無いだろうが彼女の腕っぷしも尋常では無いのだし。

 しかし、別に彼女は散歩の為にここ……ひなた荘の裏山を歩いているわけではなかった。

 成瀬川なる―― それが彼女の名前だ。


 「やっぱりいない……おっかしいわねぇ……」

 首を捻りつつきょろきょろと辺りを見回す。

 それでも捜している影は全く見当たらないし、気配も感じられないでいた。
 尤も、彼女は天然のドン臭さをもっているので余り宛にはできないのだが……

 成瀬川なると言えば東大でも有名な美女である。
 東大きっての才女であり、ミスコンに選ばれてしまうほどの美女。
 更には運動神経も優れており、性格も良いという完璧超人の様な女性である。

 しかしてその実態はと言えば、
 甘えん坊で寂しがりやで愛されたい願望が強い泣き虫な女性であり、メンタル的にも少女から脱皮し切れておらず、独占欲もまた異様に強い女である。

 彼女からしてみれば毎日コツコツやっていれば成績も上がるのだし、運動だって地道に努力を続ければ結果は出せるというものだ。
 無論、それは側の意見であり、それで結果が着いてこられなければどうしようもない話である。

 彼女からしてみれば、同寮のキツネや寮長である はるかの様に男心を理解している方がスゴイのだし、しのぶの様に嬉々として家事を行えて完璧にこなせる方がスゴイのだ。

 特に男心は今だに理解できていないので焦りも強い。

 恋愛オンチ気味で、昔初恋をした相手と十数年の時を超えて再会し、お互いの気持ちを吐き出し合ってやっとこさ付き合いだしたという、妙にロマンチックな恋愛をしている なるであるが、不器用さも相俟って意地ばかり張っていて殆ど上手く気持ちを伝えられないでいる。
 その所為ですぐにやきもちを焼いてしまって殴り飛ばしたりしてしまう日々。

 その相手である青年、浦島景太郎は元より不遇の男であった。

 元々の優しさのお陰か実はコッソリもてていたりしたのであるが、彼に激ラヴしている義妹の暗躍もあったという説もあり、中学~高校時代の交際経験はゼロ。
 無論、浪人時代だって女の影は全然無かった……そうである。

 クソミソに鈍感だった彼は、しのぶを筆頭にしたひなた荘の女性達にモテモテである自覚が無かったのだ。
 確かに最初の頃の関係は劣悪であったが、二年半と言う年月は彼女らの心に変化を与え、ついに愛情へと昇華させていた。

 その中で一番特化した感情を持ってしまったのが なるなのだ。

 現在はお互いの気持ちを伝え合い、暇さえあればキスばかりしている二人であるが、彼に傾倒し切っている なるからしてみればそれでもまだまだ足りていない。

 もっとキスしたいし、語り合いたい。
 抱き締めて欲しいし、その腕の中でまどろみたい……

 恋愛という仲ともなれば、どんどん想いが強まってゆく事は仕方の無い事である。
 ましてや彼女は独占欲が強く、更に嫉妬深い。
 だから彼を自分だけのモノにしたくてしょうがないのである。

 何せひなた荘にはライバルが多い。
 以前ならばここまでライバル視していなかったのであるが、可奈子襲来の一件で皆の想いを知ってしまっているし、尚且つ現在のひなた荘には本物のインセスト希望者である可奈子がいる。
 何だかんだで妹に甘い景太郎がいつ何時実力行使でモノにされるか解かったものではないだ。

 ベッドの中で衣服を乱し、メソメソ泣いている景太郎の横で、同じく衣服を乱し余裕の表情で煙草を吸い、
 「良かったですよ。お兄ちゃん…」等と口にしてニヤリとしている可奈子という、何だか間違った夢を見てしまった事も一度や二度ではないのだから。

 ――そんな彼女が何故にこんな時間にこんなところを歩いているのかと言うと……

 「景太郎もモトコちゃんもいない……
  ホントにここで修業してるのかしら……」

 という事である。

 要は、最近特に親しさを見せている二人の仲を邪推して様子を見に来てしまったのだ。

 キョトキョトと見回し、溜息をついて足を進ませる。
 そしてまた見回して足を動かす……

 こんな単純動作をもう三十分近くも行っていた。

 やがてピタリと足を止め、今度は今までと違った大きな溜息を吐く。

 「私、何やってんだろ……」

 その声にも力は無い。
 尤も、悲観的なマイナスの感情も含まれてはいなかったのであるが。

 自分は景太郎の事が大好きである。
 言葉にした事は無いが、多分、愛しているだろう。

 そして彼の事が好きになればなるほど、離れている時間に苛立ちを感じるようになってしまった。

 だらこそ、中々二人っきりになれない今の環境がうらめしい。
 かと言って、二人きりとなれる環境を築いて寮の皆といられなくなるのは寂し過ぎて辛い。

 ワガママと言われればそれまでであるが、なるは景太郎とイチャつきつつ寮の皆と和気藹々と暮らして行きたいのである。

 皆といたいし、二人きりになりたい。
 そのアンビバレンツに苦しんでいたりするのだ。

 だから嫉妬深さと独占欲に磨きが掛かっており、今も景太郎と素子の仲を疑ってここまで様子を見に来てしまっているのである。

 「……あぁ、ホント私ってダメだなぁ……全然、景太郎やモトコちゃんのコトを信じてないよ……」

 はぁ…と再度溜息。
 愛しさが強くなり、逆に疑心暗鬼に陥っている自分に自己嫌悪している。
 元々が優しい彼女だからこそ、一旦反省に入れば深まってしまう。
 テンションが上がればブレーキが利かなくなり、ローテンションになっても歯止めが利き辛い。
 本当に厄介な女性である。

 腕時計で時間を確認し、再度周りを見渡してから なるはトボトボと来た道を戻っていった。

 その足取りはどこまでも重い――
 なるには、その重い足取りが大切な人達を信じられなかった自分に着けられた枷の所為の様に感じられていた。




 成瀬川なるという女は、ある意味運が悪く、ある意味運が良い女である。

 もし、彼女が今日より前…昨日か一昨日等にここに来る事を思いつき、実行していたならば景太郎と繋がり、愉悦に顔を蕩かせている素子を目らする事ができたであろう。
 或いは獣のように四つん這いになった素子を後から突きまくる景太郎を目にする事ができたかもしれない。
 もし、彼女が今日という日に寮から出ず、そのまま居続けたならカオラという少女の未来は変わっていたかもしれない。

 今の景太郎らの狂態を知るチャンス。
 その唯一のチャンスかもしれないものをふいにしたのだ。

 なるからしてみればそれは彼らの裏切り。
 自分にキス以上の事をしてくれていない景太郎の裏切り知るチャンスを無くしたのだから運が悪いと言えよう。

 だが、その事によって強い精神的なショックを与えられる事がなかったのは幸いといえる。

 偶然という残酷な現実は、なるという女性の未来を狂わせ、カオラと言う少女の心を汚濁で清めてゆく選択肢を齎せた。


 一般的にいうところの浮気心は景太郎には無い。
 全員を愛し、全員から愛されているだけなのだから。

 だから彼を悦ばせる為、彼と悦びを分かち合う為、彼女らは様々なシチュエーションで己が肉体からだを差し出してゆく。

 この日は満月。
 今日に限って素子は、夜まで我慢をし、飢餓の獣が如く肉体からだを喰らい合おうという提案を持ち出していた。

 無論、股間のいきり起ちは治まりはしないのであるが、普段以上に淫気狂った素子を抱くというその案も面白そうだ。
 そう思った彼は、股間から涎を垂らしつつ歩く素子と共に、股間を勃起させたまま戻っていたのである。

 神社側のルートから――


 それは少しでも二人きりで歩きたいという愛欲からくる単なる思い付きであったが、結果的にそれは二人を救い、ひなた荘の面々の関係を守り、


 二人の女を奈落の底という無限極楽へと突き堕とす事となる――




 ぺた、ぺた、ぺた……

 早朝のひなた荘は流石に人気は無い。
 その規模にしては人気の少ない寮であるが、朝は格別人の気配が無いのだ。

 そのひなた荘の廊下を素足で歩く音が響いていた。


 この寮を裸足で歩く人間は結構少ない。
 誰もがちゃんとソックスかストッキング、或いはスリッパで歩いているのだ。

 恐らくは寮長である はるかの言いつけであろう。
 彼女に対し、面と向かって反対できる者などいないし、廊下を裸足で歩きたい等という妙な提案は流石に出なかった。

 それでも何時も彼女は裸足だ。

 国の方では大体裸足であった為、学校に行く時等の様に靴を履かなければならない時以外は裸足を通している。
 はるかも天真爛漫なカオラには早々きつく言うつもりも無かったのか、彼女に関してはずっと黙認し続けていた。

 ――だが、この格好は如何なものだろう?

 カオラは一糸纏わぬ姿……つまり全裸で廊下を歩いているのだ。

 いや、確かにどこか羞恥心が薄いと思われるようなあけすけな行動を見せ、唯一の男である景太郎に対して肌を寄せ合うことも極普通に行っているカオラだ。
 今更全裸で歩いた所で誰も驚きはすまい。実際、むつみなどは風呂に入った後は全裸で歩いていたりするのだし。

 だが、それだけではなかった。

 カオラの眼は虚ろ。
 身体はしっとりと汗ばみ、足取りもどこか千鳥足がかっており、危なっかしい。
 更にその可愛らしい乳首はカチカチに突き出ていて、股間からは失禁しているように白っぽい液体が滴っている。

 考えられない事なのであるが、カオラは今、確実に欲情していた。

 ただ、彼女は“欲情”という状態になった事が無い。
 大好きな異性…景太郎にペタリとくっ付き、そのまま眠ったりしている彼女であるが、性的な意味で抱いてもらった経験など皆無なのだ。

 来日する前から見ても、彼女の人生に男の影は全く無い。
 交際経験すら無いし、性的な意味で興奮などした事も無い。

 そんな心身共に処女だった筈の彼女の身体は明らかな異常を訴えていた。

 喉が渇く。
 心から渇く。
 欲しくて欲しくて堪らないのに、それが何か解からない。

 唯一渇きを潤してくれたものはあったのだが、その味に新鮮さは無く不味い物であった。
 全て飲み干しはしたのだが、その所為で更に肉体からだが飢えと渇きを欲し、彼女は正体の解からない物を求めて寮内を彷徨っていたのである。

 不味くて不味くてしょうがないのに、
 生臭くて気持ち悪くてしょうがないのに、
 薄黄色いところと白くドロっと沈殿したところとに分離した液体が異臭を放っていたのに……

 カオラは口から涎すら垂らし、

 「飲みたい……もっと、もっと飲みたい……」

 と求め狂っていた。

 フラフラと足が縺れつつも行く当てなく彷徨う。

 ポタポタと綻んだヴァギナから愛液を滴らせ、
 息を乱し、
 びくんびくんと乳首を震わせ、

 心の奥底から湧き出している性欲の正体も知らず、カオラは泣きながら廊下を歩いていた。

 「……うう……くぅん……」

 顔の火照りを頬を伝う涙が僅かに冷やす。
 全身も火照りが強まって薄赤く染まっている。

 体温の上昇は熱病の如く。
 女としての反応は淫魔が如く。

 しのぶやサラ等より子供の部分を持ち、素子等より大人の部分を持つカオラであるが、やはりその心身に起きている事は彼女の頭脳をもってしても理解できない。
 飲酒者のそれと同じく、あらゆる判断力が低下し、本能の求めのままに彷徨い続けていた。

 「ん、ンん……………んあ?」

 と、その歩みが停止する。
 ぐんにゃりと力なくその首が動き、階段の上を向いて濁った眼差しを送り続けていた。

 「あ、あぁ……あの匂いやぁ……」

 ぺた、ずる、ぺた、ずる、ぺた……


 普通に階段を登る事ができないのか、四つん這いで這い上がるカオラ。
 突き出された尻も蜜液でヌラヌラとてかりを見せ、年齢にしては未発達に近いラヴィアもヒクつきを見せていた。当の本人は心の苦しさに喘ぎ、飢えに苦しみ、肉欲に身を焼かれ悶えているのだが。

 やがてその褐色の肌が階上の消えた時、

 「ただいま~……」

 と、何だか疲労した なるの声が廊下に響いた。

 「あ、お帰りなさい」

 その声に反応したように、直に台所からしのぶがバケツを持って現れる。
 バケツの縁には雑巾が引っかかっており、中の水はまだ綺麗に澄んでいた。
 これから拭き掃除でもするのだろうか。

 「? 朝ごはんの前に掃除でもするの?」

 当然、なるもその事に気付いたかバケツを持ったしのぶに問い掛ける。

 「あぁ、これですか?
  カオラがちょっと廊下にジュースを零しちゃって……」
 「へぇ…?」

 しのぶが苦笑しつつ廊下を指すと、確かに廊下のあちこちに何やら小さな水溜りができていた。
 だが、わざと水鉄砲で撒いたような跡には疑問が残る。

 尤も、あのカオラの事だと思えば何だか納得できてしまう。

 「実は二階の方にも零してるんですよ。
  だからちょっと掃除してきますから、なる先輩はお鍋見ててくれますか?」
 「ん。OK」

 軽く言うしのぶの頼みを なるもやはり軽く受けた。
 なるは実は不器用で、以前よりはかなりマシではあるが料理も余り得意ではない。だが、得意ではないが嫌いではないのだ。

 だから しのぶのお願いも極自然に受け止めてしまったのである。

 台所に向った彼女を笑顔で見送り、その背が見えなくなってから しのぶは身体を下ろし、

 ぴちゃ…ぺちゃぺちゃ……


 と、這いつくばってその滴っている液体を舐め始めた。

 ミニスカートが捲くれ、水色と白のストライプのショーツが剥き出しになっており、そのクロッチ部はハッキリと湿り気を見せている。
 彼女は滴り落ちているカオラの愛液を味わって興奮しているのだ。

 「あは……カオラの、すごく濃い味がするぅ……
  こんなに、こんなに…先輩が欲しいのね」

 どろりとした眼差しは目の前に零れ滴っている愛液を見つめていながらもそこに意識を向けておらず、彼女は絡み合う愛しい先輩とカオラを幻視していた。

 獣のように雄を求めているのは牝の証拠。
 愛おしい雄と肉欲のままに交尾が出来るのは仲良い証拠。
 つまり、肉欲に狂い、情欲に身を任せ、愛欲のままに肌を重ね続けるのは正しい事なのだ。
 だから仲良しの少女に手を貸す自分の行動は極自然の事であり、倫理を失う淫行というものは義務であり責務であり特権なのだ。

 「あはは……
  あは、あは、うふふふ……れろ…ぺちゃぺちゃ……おいひ……」

 組み敷かれるカオラを思い、
 彼女の肉体からだの全てを奪う先輩を想い、

 しのぶもまた、件の先輩によって開発されてゆく肉体からだを己が手指で弄りながら……
 突き出た乳首を起たせ、股を濡らし、情欲に心を狂わせていた。




 ともすれば座り込んでしまいかねない原因不明の疲労感の中、少女はただ香りに導かれて歩き続けている。

 どこに進んでいるのか、何に向っているのかは問題では無い。

 そこにあるであろうモノ。
 渇きを癒してくれるであろうモノ。
 この熱を冷ましてくれるであろうモノの香りに向って、ただ足を動かしているに過ぎない。

 その香りが一層強まる場所。
 涎が滴り落ちているというのに、気が狂いそうな喉の渇きを訴えている欲望が求めている場所。

 全裸のまま、上下の唇から涎を滴らせてカオラはそこについに到着した。

 ひなた荘第二浴場……要は男風呂。そして唯一の男性である景太郎専用の風呂場である。

 「ふぇ……?」

 とろんとした眼差しで脱衣所に入ってゆく。
 足取りはやはりまだ千鳥足。泥酔者のそれのまま。

 景太郎より長くひなた荘にいるカオラであるが、ここ風呂に入った回数は片手で事足りる。
 下に皆で入る事が出来る露天風呂があるのだし、何よりここの湯船は狭い。
 以前、可奈子によって独裁政権がなされていた時に皆で入ったのがその入浴回数に含まれてしまう程、ここに来た事が無いのである。

 下の露天風呂の比べ、圧倒的に少ない脱衣篭。
 脱衣場のスペースにしても、カオラにとってはウサギ小屋の様なものだった。

 姿見と言うのもおこがましい小さい鏡。
 入浴後に呷るのが礼儀となっている、牛乳の入っている冷蔵庫すらない。

 そんな風呂場。
 皆で来るなら兎も角、一人では絶対に来ないであろう第二浴場の脱衣場の中。
 
 その脱衣場の戸の向う側で動いているもの……

 「………あ」

 磨り硝子の向こう側にいるのは、恐らく間違いないであろう、

 「けーたろ……」

 どろ……と、滴り落ちる蜜の量が増えた。
 事ここに至ってもカオラは欲情しているという自覚が無い。

 その無自覚の意識のまま、足をふらつかせて脱衣場を通り過ぎようとした。

 と……?

 「う……」

 その足がピタリと止まる。

 酷く強い匂い。
 夏の暑さによって流れ出た汗の香りなのだろう、男くさい臭いが腰に痺れを齎せたからだ。

 カオラの身体がびくっと振るえ、その場にへたり込んでしまう。

 何と彼女はその香りだけで軽いアクメを迎えてしまったのである。

 自分の身体に起こった事が理解できていないのか、呆然としながら匂いの元を辿ってしまう。

 いや、辿るとか捜すとかではない。もっと簡単に見つかるものだ。

 「あ……ふぁあ……」

 くぱぁ…と湿った音が聞えてきそうなほど涎を溢れさせている唇を開けてカオラはそれを見つけて悦んだ。

 丁度景太郎の胸の位置くらいの高さ。
 それより下では低すぎるであろうし、それより高ければ屈辱的なのだろう、適度な位置にそれは置かれていた。

 ――それは脱衣篭。

 素子との鍛錬と、夏の暑さによって流れ出た汗をたっぷりと吸い込んで香ばしい匂いを立たせている布地……

 景太郎の脱いだ衣服、そして当然ながら脱いだものの中で一番上に置かれているもの…景太郎のトランクスだ。

 濁り切った瞳をドブ色の艶を見せながらカオラはその布地を手に取り、

 「あは……けーたろ、けーたろの匂いやぁ……」

 顔に押し付けて鼻腔一杯に彼の香りを吸い込んだ。

 すぅ~……はぁ~……
 すぅ~……はぁ~……


 かなり倒錯的な光景。
 股を濡らし、全裸で男の下着の股間部分に鼻を押し付け、その芳しい香りを味わって悦に入る少女……

 艶かしい等といった柔らかい言葉では表現し切れない、おぞましさすら感じられる淫猥さ。
 渇きに渇いた動物が、やっとの思いでオアシスを発見したが如く、男の匂いを狂ったように嗅ぎ続ける。

 「はぁ……すぅはぁ…ンわぁ……けーたろや……スンスン……
  けーたろ…けーたろの匂いやぁ……」

 じわりじわりと発汗が増え、
 とろりとろりと愛液が増す。

 男の股間の匂いに酔うという、フェチズムな快楽の中にいる事すら気付いていない少女であるが、その香りの源が愛おしい男のものである事だけは理解できたのであろう。
 男の名を口にしつつ、舌で股間部分を嘗め回し、布地に吸い込まれているだろう尿臭すら味わいだす。

 僅かな酸味としょっぱさ。
 それすら今のカオラにとっては栄養素の様。

 それがいけなかったのか、或いはその悦楽に力が抜けてしまったのか、カオラの身体から力が更に抜け、前のめりに倒れこんでしまう。
 だが心身が感じている快楽は衰えた訳では無く、それは愛おしさという発火剤を得て更に力を増している。だからカオラは這いつくばったままトランクスに頬擦りし、むず痒さを増した股間に両手を持ってゆく。

 ビリ……ッ!!

 「ひゃ……?!」

 その指先が皮を被ったままの小さな肉芽に触れた瞬間、全身を電気が襲った。
 今まで感じた事の無い刺激。
 自分の股間にこんな刺激を齎す部分がある事等、今の今まで知りもしなかった。
 腰から上を跳ね上がらせ、涎の糸がトランクスと唇の間に伸びる。

 「ふぇ……? な、なんやの……?」

 口の周りを自分の唾液で汚しつつ、ペタリと座り込んでしまったカオラ。
 その股間の肉亀裂は口を綻ばせてヌラヌラとした愛液を上の口同様に垂らし続けている。

 電気刺激というものを受けた事は初めてでは無い。
 今まで自分の部屋で行っている実験や開発中に何度も何度も喰らっているのだ。

 だが、今の腰から弾ける様な電気刺激は初めての感覚である。

 呆然としながら、はしたなく広げられた足の間に眼を落す。

 ぺちょりと濡れそぼったその部分。
 薄い恥毛に僅し切れていない肉の亀裂。
 ひくひくと秘唇を震わせ、何かの到来を待ちわびている。

 「…………」

 無言でその様子を見つめていたカオラであったが、ごくりと唾を飲み込んでからおそるおそる手を伸ばしてゆく。

 びゅっ、と何かが股間から吹き出し、その手を汚す。
 生温かさと異臭がカオラの鼻につくが彼女は気付けもしない。

 何を思ったのだろう、身体の柔らかいカオラはそのまま前かがみになり、両の手でその肉亀裂を広げてみた。

 「わぁ………」

 感嘆の声が彼女の唇から漏れる。
 それもそうだろう。こんな部分をまじまじと見つめた事等無いのだから。

 淡く色付いたそこは薄いピンク。
 肌の色が濃いカオラであるが、底の部分は別なのだろう。周囲の色合いに相反するが如く色が薄く、ともすれば肌色に見えてしまいそう。
 皮を被っている肉芽はまだ顔を覗かせている程度。
 その僅かに下の尿道口は余りに興奮に膀胱を緩ませているのだろう、時折液体を零して彼女の身体の異常さを訴えていた。
 膣口は緩さを増しているのか、涎を垂らしつつぱくぱくと口を動かして何かの催促を続けており、その奥のざわめきはカオラ自身にすら伝わって来そうだ。
 アナルすらもぞもぞと蠢いて飢え狂っている事を訴えている。

 無論、カオラは何時の間にか自分の下半身の穴という穴が精液の味を知っているとは思いも寄らない。

 余りの光景。
 下半身が別の生き物のように蠢いているというショッキングな光景に、カオラは感心しながらも呆然として見つめ続けていた。

 ガラ……


 唐突に戸が開いた。
 後方ではない。前だ。

 それでもギョとしたカオラは慌てて何故か後を振り返ってしまう。
 当然ながら後方には誰もいない。だから焦りを隠せないまま、前にゆっくりと顔を向けてゆく。

 先ず目に入ったモノは二本の足。
 自分より体色は薄いものの、適度に筋肉をつけた男の足。

 次に顔。
 流石に入浴中だったから眼鏡は掛けられていないが、その眼差しは見慣れた男のそれ。

 そして胸。
 留学中に鍛えており、尚且つ最近は剣術娘と鍛えあっている為、かなり締まった筋肉をしている。

 最後に股間。
 見事。正に見事な肉のブツがそこにそそり起っていた。

 「ス、スゥちゃん……?」
 「け、けーたろ……」

 興奮が治まらず苦労していた景太郎の前に、股間を見せびらかすような体勢で全てをさらしているカオラがいる。

 素子の提案を受け入れたのはよかったのだが、その夜への期待が強すぎてギチギチに張り詰めた肉柱に苦しんでいた矢先の事であった。
 カオラは自分のトランクスを床に置き、そのトランクスの前のあわせ部分を彼女の涎でベトベトに汚ししつつ、可愛いヴァギナを広げて自分に向けているではないか。

 「………」
 「………」

 無言。
 お互いに無言だ。

 だが、その距離だけはどんどん縮まってゆく。

 景太郎がゆっくりとカオラに近寄っているのだ。

 『あ、あぁあ……けーたろのが……』

 カオラの眼はペニスに吸い寄せられていた。

 景太郎の朝起ちは見た事がある。
 風呂場で何度か通常の時のを見た事もある。
 そして自分の肌も見せた事もあるし、かなりきわどいところを見せた事だってある。

 しかし今の状況はそのグレードを大きく引き上げていた。

 彼は勃起しており、ゴツゴツとした男の凶器の正体を見せつけているのだし、その肉柱の色合いも、散々寮の女達の処女膜をぶち破り、柔肉を貪り続けている所為であろう淫水焼けを起こして毒々しく黒い。
 自分も恥ずかしい格好どころか、男に飢え狂って誘っている淫猥な格好で股を広げ、その亀裂すら大きく広げているではないか。

 それが何を意味するのかというと……

 「スゥちゃん…」
 「あ……」

 ぐいっとカオラの顔が景太郎の手によって引き寄せられる。

 とは言っても、キスをする為…等ではない。
 そんなロマンチックな事では無いのだ。
 確かに今のカオラにとってある意味ロマンチックだと言えなくも無い。だが、客観的に言えばどう見たってそれはロマンチックと言う言葉からは程遠い。

 カオラの唇は、景太郎の唇では無く、びくんびくんと脈動して牝の柔肉を待ち望む雄の器官に引き寄せられたのである。

 「あ、あああ……ふわぁ……」

 洗ってはいるのだろう、既に汗臭さは消失しており、不快感は無い。

 しかしそれでも普通ならば排泄器官を数センチ…いや、数ミリ先に突きつけられれば誰だって不快に思うだろう。いや、思うはずだ。
 しかし今のカオラの精神は普通では無い。

 鈴口から滴り落ちる粘液…カウパーの匂いが香ばしく、
 僅かに感じる汗の香りも素晴らしい。

 びくっびくっと心臓の鼓動にあわせるが如く脈動するペニスには見惚れてしまうほどの逞しさを感じる。
 陰嚢はぐにゃぁああ…とゆっくり蠢いてまるで別の生き物のよう。

 赤黒くテカりを見せている亀頭の先、
 楊枝程度の穴が見えている鈴口から溢れ出るカウパーの粘りが更に喉を渇かせる。

 ごくり…


 むわっと風呂場からの蒸気が立ち入ってきた脱衣場にカオラの唾を飲み込む音が響いてしまう。
 つまりそれ程カオラは性的に興奮していたのである。

 「あ……あむ…んちゅ…………」

 後は自然の流れ。
 オンナとして当然の行動。

 呼吸の為に空気を吸うが如く、自然の動きでカオラは景太郎の亀頭に唇をあてる。

 びくんっっ


 刹那、カオラは絶頂を迎えていた。

 眼を見開き、ぶしゅぅっと、勢い良く失禁してしまったが、亀頭に歯を立てなかったのは見事である。
 その代わりに景太郎の腰にしがみ付き、肉柱に頬擦りするかのように強く顔を押し当ててしまう。
 
 「ふあ、あぁああ………っっ!!」

 イッた。
 カオラは初めてイッた。

 ペニスに触れる。
 生殖器を生で感じる。
 舌で直接“雄”を味わったと思った瞬間、カオラの中で何かが弾け、一瞬でアクメを迎えてしまったのである。

 精臭、そして味、感触。それらがカオラの口に中で弾け、腰から駆けた電気刺激が脳を貫通し、頭頂から突き抜けていった。
 その強すぎる刺激にカオラの拙い性感が持たなかったのだ。

 童貞の時ならいざ知らず、今の景太郎は淫獣と言っても良い程の性豪だ。
 そして実際に淫獣と呼ばれているのだから、女達の性癖も逸早く気付けるようになっている。

 当然、カオラの眼差しから彼女が何を求めているかも気付く事は容易い。

 自分の腰にしがみ付き、熱い熱い肉の柱に半泣きで頬擦りを続けているカオラ。
 そのカオラが望んでいるもの……
 それとて景太郎は既に読み取ってしまっていたのだ。

 景太郎は滾りを続けている肉柱をぐいと握り、勢い良く扱き始めた。

 「あっ、あっ、あっ、あ……」

 その光景を目にしながら、カオラの口から喘ぎが漏れる。
 本当であれば景太郎の口から漏れたであろう喘ぎの声は、見せ付けられているカオラの口から漏れている。それだけ感度が高まっているのかもしれない。

 景太郎にしてみれば、数ヶ月ぶりの自慰だ。

 何せここのところ、亀頭が乾く暇が無いくらい女と交わりを続けているのだ。
 咥内粘膜、或いは膣粘膜、腸内粘膜等で湿りっぱなし。自慰行為等で精を無駄に吐く暇など一時も無かった。

 そしてその久しぶりだからという妙な納得によって、景太郎は掌に感じている違和感に気付けないでいる。

 大きいのだ。
 彼のモノが以前より。

 硬いのだ。
 以前のモノより確実に。

 ゴツゴツしているのだ。
 真珠でも入れているかのように。

 相変わらず外見はぱっとせず、頼りなさげな景太郎であるが、その部分だけが女を狂わせる凶器と化していた。
 以前のモノをペニスだと普通に称せば、現在の“それ”は極太バイブだ。

 正に性玩具のバイブレーターそのものになっていたのである。

 「う…く……」

 カオラに見せ付けているからか、或いは久しぶりに味わう己が手のしごきによる刺激の為か、景太郎は何時も以上に早く達した。

 肉柱の近くにいたカオラの耳には『ぢゅ…っ』という、狭いところを駆け抜ける粘液の音が聞えた気がする。
 息が掛かるほど近くにいたカオラだからであるが、その位置は亀頭の真正面であったから、

 ずびゅっ、ずびゅっ、ずびゅっ、ずびゅっ、


 「あっ、わぁ、キャっ♪」

 当然、顔全体に粘ついて濃いザーメンを叩きつけられる事となった。

 だがその勢いと香りは待ちに待っていたそれ。
 冷たく不味いザーメンでは無く、生あたたくて喉越しがどろりとして旨い絞りたてだ。

 「あは、あはぁ……ンんん~~……」

 くぱっと口を広げ、噴出すそれを舌を出して受け止める。

 景太郎のペニスの形状も射精の量も既に人外である。
 だから勢いのある精液は瞬く間にカオラの口中を満たしてゆく。
 口の中が満杯になる度にゴクリ…と音を立てて飲み込むカオラ。口を閉じる度に行き場を失った精液が顔にかけられて、愛らしい頬を滑って流れ落ちてゆく。
 胸元の窪にたまり、胸の曲線を流れ、突き出た乳首を撫で、その先端から太股に滴り落ちる。
 ポタポタ…と膝に感じる滴り落ちた精液の感触も、胸を伝う精液の感触もカオラの感度をどんどん高めてゆく。

 喉を通る粘っこさ、絡みつく様な感触、鼻から抜けるような青臭さ。
 それがまた堪らないのだ。

 蜜に魅かれる蝶の様に口を寄せ、直接鈴口から尿道に残っている精液を啜りだすカオラ。
 眼は淫気に濁り、どろりと光を失ってはいるが、表情だけが以前のままの笑顔。だからこそ異様であり、少女にしては淫靡すぎる。

 だが、それがまた愛おしい。

 じょ、じょろろろろろろ……


 「ンん?! んんんんっ?!
  ンんん…んっ、んっ、んっ、んっ……」

 普段とは逆に腰に力を入れて膀胱を開く。
 勃起したままの状態である為、力を抜いたとて尿は出てくれないからだ。

 意外に勢いは良いが、勃起したままなので細いものとなっていた。
 だが、そのお陰がカオラの狭い口中にも溜まりにくくて飲み易いようだ。

 とろりと蕩けた気色のカオラに、景太郎は満足しつつ膀胱内に溜まっていた物を全て放出してゆく。

 カオラの表情は記憶の端に微かに残る素子のそれ。
 初めての性交の時、飲尿させられて嬉しそうにしていた彼女の笑顔。

 それを思い出し、やはりカオラも同じ症状だったのだなと今更ながら納得をして見せた。

 やがて放出は止まってしまい、カオラはモノ惜し気に唇を離してゆく。
 涎と尿と精液によってベトベトになった口から粘つく糸が正直に驕り惜しげに糸を繋いでいる。
 当然、ぷつんと途切れるのであるが、その意図すら唇で受け止め、眼を瞑って咀嚼する。

 その可愛い手もゆるゆると上がってゆき、ベットリと顔から胸から太股からを汚している精液に触れ、全身に塗りこんでゆく。

 身体の火照りはまだ止まっていない。
 膣中から求め訴えている欲望も叫びを止めていない。

 ただ、心を荒れ狂っていた感情だけが治まりを見せていた。

 ぷし、ぷしゅ、ぷしゅるるる……


 思わず失禁してしまう。
 快楽、悦楽が肉体からだの制御力を超えたのだろう。

 余りに淫靡。余りに卑猥。そして淫猥だった。
 だが、これが自分の本性なのだと、なのだとカオラは確信している。

 何せ景太郎から伝わってくる感触全てが快楽だったのだから。

 失禁し、仰向けにひっくり返り、全身をアクメでひくつかせていたカオラを景太郎が優しく抱き上げてやった。

 「けーたろ……」
 「スゥちゃん」

 ああ、やっぱりけーたろはけーたろなんや。
 ウチが変わっただけで、
 ウチが変態になっただけで、けーたろは前のままなんや……


 精液塗れの自分を、
 飲尿すら嬉々として行ってしまう自分を全く気にもせず抱き締めてくれる景太郎に、カオラはまた一つ倫理の壁を壊してゆく。

 乳首の求めは止まらない、
 膣の疼きもとまらない、
 子宮の叫びも止まらない、

 だけど、心にあった蟠りだけはストンと腹に落ちて完全といえる落ち着きを取り戻す事がで来ていた。
 ただ……

 「もう直ご飯だから急いで戻らなきゃいけないから、ここまでだよ」
 「………うん」
 「だけど、まだもうちょっと時間があるみたいだから洗ってあげるね」
 「うん!」

 セリフだけなら初々しい恋人同士の様。
 優しげな雰囲気だけなら正に恋人同士。

 だが、股間にいきり立つ景太郎のブツは肉凶器に相応しく女を貪る事を強請しているし、
 カオラの肉体からだは景太郎に嬲りつぶされる事を求め狂っている。

 景太郎はカオラの身体をやんわりと抱き上げ、全身の精液を流してやるべく今まで入っていた男風呂へと戻って行った。




 確かにカオラは落ち着きを取り戻せてはいる。
 安定だけはしているだろう。

 ただ、原形を留めていないだけで………







 「今日もしのぶのメシはウマイ!! この焼き魚がまたイケル!!」
 「コ、コラ、スゥ! 飯粒飛ばしなや!!」

 風呂から出、景太郎より後に戻って来たカオラは、ケロリと何時ものカオラに戻っていた。

 『き、昨日までのスゥちゃんはなんだったのよ――っ!!』

 等と、なるが内心叫んでいたのであるが、彼女とてカオラに元気が戻った事自体は嬉しいので微塵もその憤りを見せたりはしない。

 景太郎も以前のままカオラに接しているし、誰も気にも留めていないのだ。
 自分だけが憤慨していたらバカみたいなのだから。

 なんだかなぁ…と溜息を吐きつつ、今朝まで憤っていた景太郎と素子の仲という理由も忘れ、なるはやや俯き加減のまま、しのぶが焼いたサンマに箸を伸ばしていった。


 こんな彼女であったから気付けていな事もある。

 例えばしのぶは妙に火照った顔で景太郎とカオラを交互に見つめていたし、素子は何だか拗ねたような顔でカオラを見ている。
 むつみは母親の様な表情でカオラを見つめているし、キツネは何だか苦笑していた。
 変わっていないのは可奈子とサラくらいなものである。

 そしてなるはやはり運が良いのか悪いのか、今日からゼミで泊りがけで奈良まで行くのだ。

 それを聞いた時の素子の目の輝きにも気付けていなかった。
 それがなるの不幸であり、幸運であろう。

 今宵は満月。
 確かに奈良の空に見る月は美しかろう。

 だが、ひなた荘で見る満月は妖しさを伴って美しいのだ。

 滴り落ちそうな赤い月を思い、素子は腰を重くし、月によって変貌するカオラも腰をひくつかせた。


 だからこの二人は笑顔でなるを見送るのだろう。

 「なるやん。土産忘れんといてな?」
 「わかってるって。何が良いかな~?」
 「たこ焼!!」
 「そればっかかいっ!!」
 「ほんなら…バナナ!!」
 「何時もと同じでしょ?!」

 確かに何時もと同じ掛け合いだし、何時もと同じ笑顔だ。

 そんなやり取りをニャハハと笑いながら行っているカオラの表情も以前のままそれ。
 それを我関せずと、食事を続けている素子の表情もだ。

 だが、素子はキャミソールの下に、下着代わりに貼り付けてあるニプレスを乳首が押し上げていたし、
 カオラは下着を穿いていなかった。

 二人の座っている台所の椅子。
 その尻が置かれている部分には既に染みができているくらいなのだから。

 「ごそーさま。
  んじゃ、けーたろっ!!」
 「わ、わぁっ!!」

 ぺちんっと手を合わせて食後の挨拶を終えた瞬間、カオラは景太郎の背に飛び乗ってしがみ付いた。
 今までくっ付けていなかった分を取り戻そうとするが如く。

 見慣れているなるは溜息を吐くばかりである。

 が、彼女は失念していたのであるが、カオラは既に女子高生なのだ。
 しのぶより年上なのだ。
 女子高生に抱き付かれて平気でいられるのか?

 それに、

 「けーたろ、けーたろ、肩車~~」
 「解かった。解かったら食べさせて!!」

 幼女が如く甘えるカオラ。
 これもまた何時もの光景なので なるも気付けない。

 だがカオラは下着を穿いていないのだ。
 その股間の柔らかい肉は薄く口を開いている。
 その部分が景太郎の首にぺちょりと密着させられた。

 「ンん……♪」

 ぴくりと反応を見せる景太郎の女達。
 彼女らにはカオラの吐息が甘い理由が理解できたからだ。

 スリスリと股間を押し付け、その刺激に酔い痴れるカオラ。
 その顔は正に女のそれ、
 オンナとなってしまった少女のそれだ。

 「けーたろ……また、アレ飲ませてな。
  ウチ、アレ気にいったんや」

 その言葉を聞き、なるはカオラが零したというジュースを思い出し、
 誤魔化し切れている事を見て取った しのぶはほくそ笑んだ。

 無論、オンナ達はその言葉の深い意味を理解している。

 『ああ、ついにか……』

 と……

 景太郎は肉亀裂を押し当てて首筋を濡らしているカオラに顔を向け、

 「うん。いっぱいあげるよ」
 「ホンマ?」
 「もちろん」

 と優しい笑顔を向けていた。

 「お兄ちゃん、ズルイ!! 私も!!」
 「先輩、エコ贔屓はいけないと思います!!」

 流石に嫉妬深い可奈子が席を立って文句をいい、しのぶもそれに次いで不満を訴える。

 何時もの光景。
 何時もの風景だ。

 騒ぎに巻き込まれて吹っ飛ぶ景太郎も、
 それを笑っているカオラやキツネも、呆れてみている素子も。

 だが、その眼差しに浮かぶのは期待と欲望。
 彼女らは本当に飲みたがっているし、欲しがっている。

 今夜は素子の番であり、おそらくはカオラも混じるであろう。
 その為に耐えていて不満をこんな形で零しただけ。

 だけど なるは気付けない。
 景太郎との仲が完全に破状しない様、決定的なところに気付く事ができなくされている事に。

 だからゼミの皆と行く必要もない奈良に行ってしまう。
 泊まる必要もないのに泊まってしまう。

 腰の疼きを感じたまま、素子はなるに一瞬だけ視線を送り、<まじない>が終盤に差し掛かった事を狂喜していた。

 もう直、
 もう直、“固着”する。
 シアワセに慣れる時がすぐそこまで迫っている……


 素子は、つつ~…と太股を伝ってゆく愛液を感じながら、その喜びに打ち震えていた。




 (注)エポキシパテ
  言うまでもなく模型などで使用するパテの一種である。
  実は修繕用パテの一つに、ナニな液と酷似する香りを持つモノがある。
  「どーだ。コレがオスの臭いだ」
  と先輩(♀)に顔に押し付けられ、突き飛ばして逃げた昔が懐かしい……




[2319] Re[7]:Dotage ~妄愛~ <卅陸> (ラブひな)
Name: Pixy◆e0698e6e
Date: 2007/09/01 15:28


 「はぁ……いい湯ねぇ」
 「な~んか、オバサンくさいわよ」
 「うっさいっ」

 沈み行く陽も堪能でき、見晴らしも良い露天風呂。
 俗に言うところの岩風呂であるが、最近はこういった露天風呂が全国の温泉街でもないところに点在している。
 日本は湯の国でもある為、温水でない事を気にしなければどこにでも湧いているのだ。

 だから京都や奈良でも当然の如く温泉旅館を謳っている宿がある。

 その中の一つの温泉旅館の露天風呂に楽しそうに浸かっている黄色い声の主達……
 十人弱の女子大生らは、その開放感と心地良さに眼を細めていた。

 見上げればまだまだ濃い緑を残す木々。
 今年の夏は暑かったが、残暑も厳しくなるだろう。
 だが、不思議と風呂に入る事は別なのだから世の中不思議である。

 そんな彼女らの中、飛びぬけた美女が独り、憂いげに溜息を吐いていた。

 その仕種、その色気は他の女性らの追従を許さない。
 元々が美女であるし、尚且つ彼女らの通う大学一の才女だ。
 当然ながらモテモテであり、告白なども一度や二度ではない。

 が、当の本人は付き合っている男がいるという理由でその全てを断り続けている。

 その相手は誰から見てもパッとせず、頼りなさげなイマイチ君だ。
 が、その事を下手に口にする事はできない。
 ウッカリとその事を口にし、彼女の拳によって宙を舞った男もまた数知れないのだから。

 その彼女が憂いげに溜息を吐いている。
 それは誰だって気になるだろう。

 だから同じゼミの女性が問い掛けたのだが……

 「ウン……あいつとね、一晩も離れてるのよ」

 という、砂でも吐きそうな言葉が返ってきた。
 だから今は誰も気にしていない。

 だが、こう聞けば彼と会えない事を憂いでいるデレデレ女にしか聞えないのであるが、実際に彼女が気にしているのは、その一晩で誰かがアプローチを掛けたりしないか…という事である。
 彼女は件の男性にベタベタに惚れている。
 本人無自覚であるが、惚れに惚れて依存し切っている。

 だからこそ彼の事が気になって仕方が無いのだ。

 だったら奈良になど来なければいいのに…という説もあるが、男に感けて成績を落すわけにも、大学の付き合いを無くす訳にも行かない。
 だから彼の事を思いつつも大学の付き合いも大切にしているのだ。
 今回のゼミの集りに男が混ざっていれば様々な理由を並べ立てて寮に残ったかもしれないが。

 はぁ……と溜息がまた一つ。
 秋でもないのに彼女の周囲だけが秋のような空気の憂いが存在していた。

 「……景太郎」

 名を呟くだけで胸の奥が疼く。
 疼きを感じる度にどれだけ自分が彼なしに生きていけなくなっているかを思い知る。

 だけど『何やってんのよ!!しっかりしなさいよ!』と自分を叱咤する昔の自分がいる限り、このつまらない意地を張り続けてしまうのだろう。

 どうせなら、どこへも行けないようにしてくれたらいいのに……
 そして……

 ハッとして頭を振る。
 自分は何を考えていたのだとポコポコ自分の頭を叩く。

 今のは思考はかなり拙かった。
 慌てて手桶に水を入れて乱暴に頭にかけた。

 水冷効果によって文字通り頭は冷えたものの、思考形態が戻ったわけではない。
 彼に抱かれたいという欲望は日に日に強くなってきている。
 これが寮の皆と一緒にいるのなら、もっと安心できたのであるが……

 この一年で気心が知れたとはいえ、この友人ら入る湯も悪くは無いが、やはり家の皆……“寮”の皆と入る湯の安堵感には敵わないのだ。

 たった一晩。
 されど一晩。

 彼女はその一晩の長さを噛み締め、異様に遠く感じる寮の男を想って月を見つめ続けていた。




 奈良の空に見る月も、
 神奈川の空に見る月も変わりは無い。
 精々、大気の具合から見え方が違う程度である。

 しかし、見え方が違うという事により凄まじい差異を生み出す事もある。

 神奈川県日向市ひなた町にある温泉旅館兼女子寮ひなた荘。
 そこから見える月は異様に大きく、また何故か赤みがかっていた。

 大気中のゴミやら何やらの所為でそうなるのであるが、それにしてもこれまた異様にでかい。

 それでも付近住民は気にする事もなく、満月を見上げて夏の月見としゃれ込んで入りする。

 そしてそれだけで終わらない住民がいるのがここ、ひなた荘だった。

 「んちゅ…ンんっ、んぁっ、ンんっんっ、んふぅ…」
 「あむ…くぅん……はふはふ…れろ、ぶちゅ…ずずず…はぁあ……」

 口を吸い合い、唾液を交換し合い、衣服を脱がせ合いつつ廊下を歩く男女。

 建物内の全ての灯りが消され、光源は天空の月のみ。
 だが、何時もながらであるが、遮るものが少ない丘の上のひなた荘。かなり月の灯りは強い。

 唯一関係を知らず、また男を知らない未通女おぼこが寮にいない為か、この二人は堂々とお互いの肉体からだを弄りあって歩いていた。

 時間はまだ宵の口。
 いやそれどころか、日が暮れたというだけで夜というカテゴリーは入っていない。

 そんな中を二人歩いているのだ。

 男の方は女の胸を揉みしだきながら、最近サラシより付けるようになったブラのホックを外し、月光の元にまろび出たピンクの実を玩ぶ。
 女の方はそれだけでめろめろになっているのだが、それでも負けじと男のジーンズの留め金を外し、その奥で隠れている肉凶器をトランクスの上から撫で回す。

 「う、く……」
 「んん……け、景太郎せんぱ……」

 中指と親指に挟まれていた乳首が、その先端を弄繰り回していた人差し指で弾かれたと同時に、男根が硬さと大きさを変貌させた。
 何時でも入れられる硬さと強さと張りがそこにある。

 二人して射精への期待が高まり、眼差しが濡れている事が月影でも理解できた。

 …したい…

 シンプルにして強い欲望がそこにある。

 だが、我慢だ。
 まだ我慢だ。

 二人は下着すらそこらに脱ぎ散らかしつつ、全裸となって歩き続けている。

 男の肉柱はいきり立って反り返り、ビクンビクンと熱い脈動を女の掌に伝えている。彼女が扱くと先端からポタポタとカウパーが滴り落ち、それがまた女の興奮を高め、自制心を萎縮させてゆく。
 女の乳首は男の愛撫によってはしたなく突き出、淫乱さを誇示するかのように肉芽は剥きだしなり、その直下にある男の指がじゅぼじゅぼと出入りしている女穴からは蜜がこれまた滴り落ちている。

 二人して性的欲望を止める術をなくしているのだ。

 それでも性交に及んでいないのは単に場に至っていないから。

 何時もの満月であれば、どこでだって交わるだろう。
 今この場で挿入し、廊下に精液をぶち撒き、それを女に舌で掃除させつつ後ろから突いて犯す事くらい日常茶飯事なのだ。

 だが、今晩は違う。
 この夜はもう一人愛してやらねばならない少女がいるのだから。

 女は朝からずっと耐えていた為、殊更この飢えが辛い。
 だが、あそこまで行けばそれを満たせられる。尚且つ、大願が“固着”するのだ。
 だから必死になって耐えていた。

 ぺたぺたと廊下を歩く音が、べたべたという湿った音になり、
 その足跡が館の奥、離れの方…別館へと消えていった。

 この寮の他の女性らは各々今後の事を想いつつ夢へと旅立っていたり、己が肉体からだを慰めている。


 それはそんな晩。

 どこからか弦楽器の調べが響く、静かな晩。

 そして肉欲と愛欲が充満し、卑猥と淫猥とで成る平穏がついに固着するそんな晩




―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
                           -盲・愛-
                            File:卅陸
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 静かな音色が月下に響いている。

 弦楽器特有の音の伸びがまた良く、月の砂漠を撫でてゆく風をイメージさせる程。

 それを弾いているのは誰あろう、このひなた荘に住まう留学生のカオラ・スゥだ。
 わりと知られていないのであるが、彼女は楽器全般が得意で、特にサックスが上手かったりする。
 だからリュートだろうが、月琴だろうが弾く事は可能なのだ。

 その時の気分…というか、普段の状態の時と大人のモードの時とでは性格やテンションが微妙に違う為、当然ながら使用する楽器も違ってくる。

 黄砂の影響なのか、赤く見える月。
 その月の光によって性格(いや、“性質”か?)が違ってくるというのもナニな話であるが、何となく納得もできてしまうから不思議だ。

 そのカオラであるが、
 普段は天真爛漫さの方が目立つ彼女も、赤い月光の元では落ち着いた雰囲気のある大人モード。
 年齢不相応に無邪気である性格が、今度は年齢不相応な落ち着きをもっている。間は無いのかと問いたい。

 赤い月の見える満月の晩にはこの様に大人の雰囲気をまとい、ひなた荘の屋根の上に立ち、母国の衣装を身に纏って舞を舞ったり楽器を奏でたりしているのだが……

 今の姿は流石に初めての事である。

 腕輪やブレスレット…そしてアンクレットをつけているのは何時もの事。
 楽器…今回はシタール…を持っている事も左程珍しい事では無い。
 イヤリングで耳元を飾っている事も当然珍しくも何とも無い。


 だが、それだけしか身に着けていないのは初めての事である。


 前述のアクセサリーとシタール。
 それだけが彼女が身に着けている全てなのだ。

 高校に入った辺りから少しだけ成長した胸も、
 健康的にしなやかな四肢も、
 子供と大人の中間位置的な不思議な色気を放つ下半身も、そこだけが普段の彼女そのままに薄いヘアすら全て剥きだし。

 そんな姿で、この寮の女達でも今まで見た事もないような嬉しげな表情で舞いながら音楽を奏でているのだ。

 ルナテッイク・ウィッチ…
 月下で舞う魔女。
 狂気をも意味する言葉であるが、それがしっくりとしてしまう程、カオラは異常なのであった。

 くるくると舞い、
 ふわりと飛ぶ。

 音もなく着地し、
 布のように身体を沈める。

 全てが不可思議で異常。それでいて美しく淫靡だ。

 カオラの人生で最高レベルの舞。
 それが理解できていて嬉しいのだろうか、彼女の舞はより一層激しさを増し、より一層淫猥さを増して行く。

 本人は無自覚だ。
 全く理解できていない。

 自然界で牝を求める雄が自己アピールをするのとは逆に、牝が雄を求めて舞っている。
 いや雄は既に手に入ったのであるが、それでも物足りないのか舞い続けている。

 まるで舞が交尾の喜びを齎しているが如く、
 舞そのものが交尾の一環であるが如く、

 牝としてその淫猥な舞を踊り続けている。

 その舞の理由が雄の為だからか、乳首は尖り、股間は潤みを見せている。

 早くしたい。
 子供の種が欲しい。

 その行為の意味も深く考えた事もなかった少女は、今オンナの本能が求めるがままに愛おしい雄を求め身体を突き動かしていた。


 なるを見送った後、カオラは素子に呼ばれてこう聞かれている。

 「なぁ、スゥ。
  浦島の事が好きか?」
 「うんっ!」
 「愛しているか?」
 「アイしてるっちゅーんはよう解からへんけど、物凄く好きやで」
 「ふむ……」

 素子はその返答を聞きながら、真っ直ぐカオラの瞳を見つめて真意を測った。
 愛しているという言葉の意味は良く解かってはいないが、彼女は間違いなく気持ち的に男として景太郎を愛している。
 でなければこんな“眼”はしていない。

 自分らと同じ“眼”だからこそ解かる事なのであるが。

 「そうか…」
 「うん」

 ニコニコと微笑むカオラ。
 彼女自身は全く気付いていないが、彼女の膣もアナルも既に彼の精を受け尽くしている。
 全身にたっぷりと精液を刷り込まれ、注入され、髪までザーメンで洗われていて汚し尽くされている。

 だが、己の意思で抱かれてはいない為、カオラの心はまだ処女のままだ。

 好きでも何でもない。
 ただ景太郎が男だからセックスしている…のサラと違い、間違いなく景太郎だからセックスをしたいと思うだろう。
 いや…? 既に思っている節がある。

 だったら話は早い。

 事を推し進めよう。
 最後の“固着”を今夜行おう。
 今夜は満月なので自分の番であるが、カオラと景太郎とで眠るのも吝かではないのだし。

 「……スゥよ。いい事を教えてやろう」
 「ん? 何や?」

 「とても、
  とてもいい事だ……
  浦島と……“景太郎”先輩とずっと一緒に、
  私達とずっと一緒にシアワセになる良い方法を……


 そう微笑んだ素子の瞳が滑った光を放った気がする。
 だがカオラは全く気にならなかった。

 カオラが求めて已まない想い。
 大好きな皆とずっと一緒にいる…その方法の一端が語られようとしているのだから。

 彼女にしては珍しく、素子の唇が次の言葉を紡ぐのがもどかしく感じる程、カオラは必死になって素子の話に全意識を集中したのだった。


 「けーたろ……」

 口元に笑みが浮かぶ。
 愛おしい彼の事を想い、全身が甘い痺れを感じている。

 朝にもらって精液の味が思い出され、その口に涎が溢れるがこくりこくりと飲み込んで今という刻を我慢する。

 月の動きに合わせて彼女の舞は位置を変え、ゆっくり、ゆっくりとその場へと向かってゆく。

 同時に期待感も膨らみ、ときめきが強まってくる。

 まだかな、
 まだかな、
 もう直だね。
 もう直だね。

 どきどき、わくわくと胸を高鳴らせ、その場へと近寄って行く。

 と同時に段々とその耳に甘い声が聞えてくる。

 男に嬲られて悦ぶ女の声。
 喜びであり歓び、慶びであり悦びの声だ。

 その声は間違いなく愛しい仲間の声。
 その声を上げさせているのは間違いなく愛おしいひと

 「あは……」

 その声を自分も上げるのだろう。
 自分もあのように乱れるのだろう。

 だけど恥ずかしさは不変で、期待感だけが膨らんでゆく。

 以前の瞳の輝きを完全に失い、どろりと濁った眼差しでふわりと屋根から飛び、
 はるかに侵入を禁止されている離れの館の庭にふわりと下り立った。

 そのカオラの眼前。
 開け放たれた少女の部屋の中。

 光源が月光だけという一室で、

 ぐぢゅっ、ずぐっ、ぶぢゅっ、ずぢゅ、ぬぢゅっ、ぶぢゅっ、


 「あっ、あっ、あっ、ンっんんっ、ひ、く、ふぁああ…っっ」

 素子は景太郎とまぐわい続けていた。




 景太郎らは別館までもたなかった――

 素子は今日、まだ一回も景太郎とセックスしていなかったし、
 景太郎は景太郎で、確かにカオラの口の中に射精はしているのであるが本番には至っていない。

 よって素子は飢えていたし、景太郎は不完全燃焼に喘いでいた。
 だから何時もの様に部屋に入ってからけだものの本性を剥き出しにする…という僅かの“間”でも心身が持たなかったのだ。

 服を脱ぎ散らかし、身体を弄りあいつつ何とか渡り廊下に辿り着いた辺りで景太郎は素子の右足をずいと持ち上げた。

 「…んちゅ…ちゅっ、ちゅっ、ちゅっ、はぁあ……」
 「れろ…んぢゅ……れろれろれろ……」

 だが唇は離さない。
 絡み合わせたままの舌も離さない。
 二人して鼻息を乱しながら、景太郎は広げた素子の股間を本格的に弄りだし、素子はその淫猥な行為を甘んじて受け入れている。

 身体の柔らかい素子の足は容易に景太郎の肩に乗った。
 Yの字となった素子の足の間。隠すもの全てを失っている素子の股間の秘密の唇はこの場に至るまで景太郎によってほぐされている為、粘膜を綻ばせて白い本気汁をダラダラと零している。
 そこに景太郎の中指と人差し指がずぶりと突き刺さった。

 「ンんんっっっ!!」
 「んんん…」

 眼を大きく見開いて腰を反らせようとする素子であったが、彼女を抱き支えている景太郎の左腕がそれを許さない。

 素子とまぐわうようになって、
 早朝から神鳴流の鍛錬を行うようになってから、更にしなやかさと逞しさを増した彼の腕。ぱっと見は頼りなげな割に意外と力強い。

 自分を抱いている手から離れられない事、景太郎が離してくれない事が更に素子の官能を増す。

 ぢゅっ、ぢゅっ、ぢゅっ、と泥濘の音を立ててかき回される素子の膣。
 純潔を景太郎に捧げてからこっち、散々景太郎の物を受け入れ、嬲りつくしてもらったそこは彼のものであれば容易に飲み込んでゆく。

 しかし、だからと言って膣粘膜には緩みの兆候も、肉襞の低下の兆しも全く見られない。

 景太郎に使われれば使われるほど膣の具合は良くなってゆき、今では断続的な締め上げも極普通に行えるし、まだ試した事は無いものの、やろうと思えばバナナだって切れそうだ。
 肉襞は、普通は性交回数を重ねれば段々とペニスによって研磨されて低くなってゆくものであるのだが、素子の淫らな襞はその高さを一ミクロンも下げていない。

 その膣の具合の良さ。
 浦島景太郎専用にカスタマイズされている性器は、この世で唯一景太郎のみが味わえる極上のものだ。
 確かにキツネもしのぶ達もそれに追従し、どんどん性器の具合を高めていっているがどうしたって彼女の進歩速度には追いつけない。

 ぐぢょ、ぐちょ、と出入りする指の感触。
 彼に内臓を差し出しているようで、意識を刈り取るほどの肉体的な快楽もあるが、それとは別の心地良さがあって堪らない。

 自分が処女を捧げたのは何時だったか、彼の童貞と交換したのは何時だったか思い出せないが、そこらの男女よりは確実に回数をこなしているだろう。
 だからこそ彼の肉柱によって自分の膣の具合を調節されたのだし、彼のテクニックは自分の肉体からだでもって高められた。

 その“自負”が彼女の余裕をより一層大きくしており、心の“歪み”をも高めている。

 クリトリスの裏側辺りを指の腹で擦られ、意識が飛ぶ。
 何時ものジャブのような連続的なアクメではなく、ボディブローのように深く響いてくる絶頂は、拷問のように彼女の肉体からだを嬲り潰していた。

 ただ、その拷問は終わらせられない。何時までも続けていたいという性質の悪い代物だ。
 半淫魔となった今の彼女の肉体からだは景太郎が行ってくる性的快楽全てが糧。
 キスもペッティングも、当然ながらセックスも、更には虐待や屈辱すら相手が彼であれば全てが悦びに塗り替えられてしまう。

 尤も、そう自分から成ったのだ。素子はその事はきちんと自覚している。

 ぷちゅ…


 感心するほどいやらしい音を立て、景太郎の指が膣から引き抜かれた。
 と同時に、脱力してしまった素子と景太郎の唇が離れて行く。下の口と同様に、上の口もベタベタに涎で汚れきっている。

 眼の焦点が飛び、首の据わらない赤子の様に“ぐんにゃり”としてしまった素子を抱き直そうとするが、それより前に彼女の絶頂の余韻が遠退き、その意識が定まってきた。抱き締めてくれる直前だった事を理解し、かなり残念そうであったのだが。

 口から涎を垂らし、鍛錬では見せる事もない息を乱したまま、愛撫によって火照った顔を景太郎に曝しながら、月明りに見える自分の股間に眼を落とす。

 つつ~…と粘り気のある糸が景太郎の指と自分の膣を繋いでいる。
 位置的に見えてはいないのだが、おそらくはヴァギナももぐもぐと蠢いて挿入していたものとの別離を悲しんでいる事だろう。
 実際、自分の尻を伝っている愛液の感触もあるのだし。

 「はぁ、はぁ、はぁ……」

 聞えるのは自分の荒い息だけ。

 虫の声も聞こえず人影もないひなた荘の渡り廊下で、男と二人全裸で抱き合っているというシチュエーションは、素子の感度を更に蹴り上げて行く。
 今の状況だけで逝ってしまいそうになるのだから。

 そのぐちょぐちょになった素子の股間に灼熱の物体がくっ付けられた。

 「ひゃんっ!!」

 意外な程可愛い悲鳴を上げてしまう素子。
 景太郎も思わず慌ててしまい、差し込もうとしていた腰を引いてしまった。

 「あ……」

 灼熱の温度と感じたのは彼のペニス。
 節くれだった凶悪そうな肉の凶器だ。

 それが入って来ようとしていただけだった事を知った為か、素子の声は無念そうでいて甘い。

 「景太郎先輩……」

 歩きながらのキス、ペッティング。
 耐えられなくなっての膣への直接攻撃。
 そして朝から続く“断色”によってギリギリまで高められている淫気。

 その所為だろう。
 これだけ淫猥で卑猥。淫らでいやらしい求めの眼差しだというのに、

 彼女の顔は幼女の様に幼く愛らしいものだった。

 ぬちゅ…ぞぶぅ……っ


 「あ…♪ う、あひぃいいい………っっっ」

 無論、素子によって淫獣となった景太郎がもつ訳がない。

 無言のまま、一言も喋らず、口を開けていた膣の中に己が肉柱をかなり強引に突き込んでいった。

 散々弄られていた所為でぬるりと入ってゆくが、その膣の絞まりは相変わらず。
 だから泥濘を想像させられるほどの凄まじい淫音がしたのである。

 抵抗も何もなくあっさりと膣奥に飲み込まれてしまう景太郎のペニス。
 鍛えに鍛えられている所為で、子宮口すら彼の巨大な肉傘を飲み込んでしまう。

 秘粘膜全てがペニスの到来を感謝感激してそのまま招き入れてゆく。
 だが反対に出て行こうとするのなら、その粘膜全てが今度は引き止めてくる。

 ぎゅっと吸い上げるように締め付け、肉襞が蠢いて舐め絞るように刺激する。性交時の潤滑油がメインの仕事となっている愛液もその本業を務め様とどろどろ滲み出て肉柱をぬるぬるにしていた。それでも抜けたりしないのだから凄まじい膣の絞まりだ。

 だが、その膣のがんばりを無視するかのように景太郎のペニスは動かなかった。
 いや正確に言えば、“ピストン行為”を行ってくれなかったのである。

 抜かれるのは嫌なくせに、抜き差ししてくれないのも嫌だという我侭な少女は、物欲しげな顔をして景太郎にはしたなくお強請りをしようとした。
 正にその瞬間、

 ぐい…


 「え……?」

 景太郎は見事なバランス感覚で身体を支えている残った素子の左足に手をかけ、その足も自分の肩まで引き上げ、

 ずん…っっっ


 「あぅ…っっ?!」

 そのまま抱き上げられてしまった。

 左右の足をVの字に開いて抱え込んだ様は変形の“達磨転がし”か“駅弁”だ。
 どちらの体位も何度も行っているし、一応48手は全て行っている。
 性行為に目覚めた二人は、関係を持ってからこっちそれはもう勤勉に学び続けていたのだから。

 だが、この体勢での繋がりは初めてであったし、何より、

 ずん、ずぐぅ、ずん、ぶぢゅ、ずん、ぬぢゅっ、


 「あっ、ひっ、んぁ、くぅ、ひゃあっ、ンあぁあ…っっ」

 このように身体を折りたたまれた形で繋がり、そのまま歩かれる等といった経験はやはり無かったのである。

 文字通りの串刺し状態。
 足の位置が違うと当然ながら腰の位置も微妙に変わってくる。
 その所為で肉傘に引っ掻かれる肉ビラの場所も深い上に、今までとは別のところを研磨される形となる。

 それがまた狂いそうになるほど刺激が深くて気持ちが良いのだ。

 ずん、ぶぢゅっ、ずん、ぬ゛ぢゅる、
 ずん、ぐぢゅっ、ずん、ずぢゅっ、


 「あぁ、うぁっ、ひ…っ、うっ、か…は…っ」

 そのまま渡り廊下を歩かれしまう素子。
 両の手もだらんと垂れ下がり、被虐的な肉快楽に痛めつけられて泣きが入る。
 とは言っても苦痛では無く快楽の泣き声。
 モノとして使用され、オンナとして使われ、少女として愛されている今の現状に悶え狂っているのだ。

 何時もの部屋までの僅かな距離。
 その百歩にも満たない僅かな距離が、素子にとっては永遠に感じてしまうほど。

 止めてくれないと狂ってしまいそうだし、止められると頭がおかしくなりそう。
 凄まじい快楽によって混乱の余りに矛盾した思考は止まりを見せられない。

 今現在の素子は“前”の素子と比べれば確かに淫乱である。

 一人の男として接し、肉体からだに触れさせられる相手はこの世で景太郎只一人だけであるが、彼に対してのみとは言っても間違いなく淫乱といえるだけのものが彼女にはあった。

 前に語ったかもしれないが、彼女の心にもちゃんと以前のストイックな素子は残っている。
 その部分が今の彼女に対して「はしたないっ!」とか、「羞恥心は無いのか?!」と叱咤してもいる。

 が、その部分すら淫らな自分を叱咤するだけで性行為は止めようとしないのだ。

 以前の処女だった時代。
 景太郎が二浪していた時代からずっと彼女は彼の事を気にしていた。
 自覚しかかってはいたのであるが、それを振り払って必死に否定し続けいた。
 が、一度気持ちを受け入れ、己の本意を理解してしまった今では彼との淫行に対する罵りは浮かんでこなくなっていたのだ。

 更に自分は、結果論ではあるが敬愛していた成瀬川なる先輩から“寝取った”形をとっている。
 半淫魔化による欲求は別としても、そのタブーを自分から踏み抜いた事が今の精神構造の一旦を荷っているのかもしれない。

 ともあれ素子は、身体をペニスに貫かれ、揺すられ、喘ぎ声を上げながら景太郎に運ばれてゆく。


 今夜使用する事は決定事項だった為に開け放たれて布団も敷かれているその一室。

 素子が純潔を捧げ、
 キツネが景太郎のモノとなり、
 しのぶと可奈子が牝へと変えられ、
 むつみが本性を塗り替え、サラが淫猥に成り下がってしまった部屋。

 皆にとって思い出深く馴染み深い部屋。

 そこにあるのは白いシーツに包まれた敷布団と枕。そして水差しのみ。
 水差しは喉が渇いた時に喉を潤すためのもの。
 女達の方が喘ぎに喘いで喉を乾かせるのだが、いざそうなると景太郎から水分を飲ませてもらうので必要としない。

 布団の方は、ぱっと見は白いシーツに包まれているので清潔そうに見えなくもないが、その中の綿の敷布団は不潔どころでは済まない。
 その敷布団。干されてはいるが一度も洗わず、皆の破瓜血と淫液をたっぷりと吸っており、この真っ白なシーツを掛けてその汚らしい染みを隠しているだけなのだ。

 だが、皆はそれが良いという。

 皆が皆して絡み合った、愛し合った証拠だから良いのだという。

 ひなた荘を管理している景太郎も、当初はいやな顔をしていたものの、今では彼女らと同意見を持っている。
 だからこの精臭が潰えるとは思えない布団に愛着を持っていた。

 どすんっと景太郎はその腰を下した。

 「ふぐぅっ!!」

 素子の乱雑に子宮を突かれ、眼をかっと開き、手足を突っ張らせて叫んだ。無論、快楽でだ。

 足の指を引き攣らせて痙攣していた素子であるが、景太郎はそんな彼女を抱き締めて頭を撫で続けている。
 素子はその所為で感度が上がり、なかなかアクメが抜けてくれないのだから罪作りな男である。まぁ、彼にしてみれば無自覚の行為なので言い掛かりなのだが。

 素子の快楽の呆け方は尋常では無く、顔は汗と涎、そして涙でぐしょぐしょであるし、乳首ははしたなく尖り、乳輪すら泡立つような感覚を伝え続けている。
 腹もビクビクと麻痺を続け、淫らに広げられた足の付け根…性器も愛液でべとべとだ。
 薄い茂みの中ではクリトリスは皮がすっかり剥けて顔を突き出しているし、尿道口からはたらたらと緩い失禁が続いている。
 アナルはアナルで、座った事によって彼女を支える手が空いた景太郎の左手の指が何時の間にやら突き刺さっていた。人差し指と中指の二本指を咥えて括約筋で持ってモグモグと咀嚼しているではないか。

 そのはしたなさ、淫猥さを目の当たりにすれば、彼女が退魔剣術神鳴流の使い手であるとは想像もできまい。

 ず、ずるる……


 「……え? あ、いやぁん……」

 落ち着くのを見計らっていた景太郎がゆっくりと彼女を持ち上げてゆく。
 当然、ペニスは引き抜かれてゆく為、彼女は幼子のようにむずがってそれを嫌がった。自分の性器から肉柱を引き抜かれる事を嫌がる幼子もかなり問題なのだが。

 足を景太郎の背中に絡めて阻止しようとするも、それが行えたのは既に引き抜かれた後。
 できた事といえばしがみ付いて熱い肉柱を自分の下腹と景太郎の下原の間に挟みこむことくらい。

 「ふ…ン…んちゅ、んちゅ、んちゅ、くぅん…」

 素子は景太郎の身体にしがみ付き、甘えに甘えて彼の顔にキスの雨を降らせる。
 愛おしい事は当然であるが、それだからこそ抜かれた事が辛かった。
 満月の晩は凄まじく身体が疼く。入れられないと、犯されないと、射精されないと、精液をくれないと凄まじく辛いのだ。
 かと言って景太郎の以外の男のものなど御免蒙る。そんな物をもらわされるくらいならノコギリで切腹して果てた方がマシである。

 彼が愛おしいから彼に犯されたいのだし、彼が愛おしいから彼の精液が欲しいのだ。
 その想いは何故か満月の晩に爆発してしまう。
 半淫魔が一時的に淫魔へと変貌してしまうのだ。

 尤も、現在の景太郎も尋常ではない。
 オンナが増えれば増える度に精力が増し、何度でも射精できるようになってゆく。

 一回一回の射精量も人外であるが、一人に対して最低でも一晩七回は出せるし、全員を相手にする事だって極普通に出来てしまう。
 この時点で既に人間ではないのだが、素子の神鳴流の者としての彼女の眼と感覚をもってして探りを入れてみても、列記とした人間だとしか感じられない。
 その精液がどうやって作られるのか、そしてどこからそのエネルギーが回ってくるのか未だに不明のままなのである。

 それでも、

 「あぁ…あふ…んむぅん♪」

 立ち上がった景太郎が、素子の顔にペニスを押し付けた。
 無論、待ちに待っていた素子は嬉々としてそれをしゃぶり始める。

 そう――
 それでも誰もそんな些細な事は気にもしなかったのである。

 誰もが皆、彼との交尾を渇望し、膣内なかに出される事を強く欲していた。
 好きだよぉ、大好きだよぉと心が啼き、彼を求めて涙を流す。
 しかし抱かれると心は潤いを取り戻し、犯されれば心が満たされてゆく。

 彼に抱いてもらう事も、彼に奉仕する事も愛おしくて嬉しくてどうにかなってしまいそうなのだ。
 だから奉仕が上手くなっている女達は余計に感動を得られ、皆もそれに追いつこうと努力を続けている。

 しのぶとの特訓によって咥える事すら可能な彼女であるが、口に咥えるのは彼を悦ばせる時であり、味も今一解かり辛い。
 今は肉柱を食べたい欲求の方が強いので、アイスキャンディーを舐めるようにぺろぺろと舐めしゃぶって堪能する方を優先していた。

 「んふふ…♪ んちゅ、んちゅ、れろぉん……はふはふはふ…ぺちょぺちょ……」

 幹をしごき、亀頭のエラの裏側を丁寧に舌で穿る。
 空いた手も肉袋を撫で擦り、自分の唾液を絡めて優しく洗っている。
 時折、肉袋を口に含んで肉柱を扱く訳だが、それをすれば高確率で頭に射精されてしまう。
 いや髪が精液塗れになる事は一向に構わないし、彼が望むのなら悦ぶべき行為だ。しかし、飲む事が出来る精液の量が激減するのは勘弁して欲しいのが本音である。
 だから彼女らは亀頭や幹の対する愛撫の方が圧倒的に多いのだ。

 亀頭の先を嘗め回し、鈴口を舌先でつつくように穿る。
 景太郎の腰がびくびく跳ねのが何ともいえない。

 はっきり言って、彼の身体の中で一番清潔といえる部分がここ…ペニスである。
 毎日毎日、誰かの膣か口によって洗い清められており、一日たりともそれを絶やした事が無い部分だ。

 尤も、愛液と唾液が乾く日が無いと言っても過言ではないそれは、清潔であるがそれ以上に倫理的に不潔極まりない。

 どぶっ、どびゅ、ずびゅ、びゅっびゅっ、びゅっ、びゅっ、びゅっ


 「あは♪ あぶ、んぶぶ…」

 勢い良く噴出すザーメン。
 初めて性交した時より、毎日出している今の方が濃いのはどういう事だろう?
 等とそんな疑問が湧いてしまうほど、景太郎の精液の粘度は高く、尚且つ勢いが凄まじい。無論、ここのオンナ達にとってはどうでもいい事であるが。

 ごぎゅっ、ごぎゅっ、ごぎゅっ、と喉を鳴らして飲み啜る素子。流石にあれだけまぐわっていれば飲み方も堂に入ったものだ。
 何度か口を離して顔にかけるのはわざとだろう。彼女は顔射されるのも気に入っているのだし。

 その奔流が治まっても彼女は唇を離さない。
 びくんびくんと脈動する熱い肉柱には噴き出しはしないが残っているのだから。
 彼のものは一滴たりとも無駄にしたくないし、勿体無い。だから素子は他の女達同様、しちゅっ、ちゅっ、と尿道に残る雄のエキスを音を立てて吸い、咀嚼を続ける。

 咥内にやってくる精液は、舌先で弄くってトロミを堪能してからはで噛み締めて更に味わう。
 くみくみと噛んでいると、何ともいえない歯ざわりがそこから伝わって来、尿意をもよおしたかのように軽く震えてしまう。

 散々味わって自分の唾液によって味がしなくなると、やっと素子は物惜しげに喉へと流し込んでいった。

 食堂を擽る薄まった粘液の感触もまた良い。
 それだけでも幸せを感じられる今の自分。内臓すら景太郎に差し出せたのだと確信できるのが堪らない。

 暫くして唇を離す。とろりと口元から涎混じりの精液が滴るが気にもならない。
 けぷ…と可愛いゲップを出して口の周りを舐める素子。
 胃袋の方は満腹のようだ。

 くすくすと小さく笑いながら、素子は未だに力強いペニスを扱きつつ、その肉柱の先端で自分の乳首を突いて景太郎を挑発する。
 淫獣となってから彼女らの誘惑に耐える能力を低下させている景太郎には堪える筈だ。

 硬く尖っているくせに、押せばぷにょっと位置を変える乳首。
 性器でもその硬さ具合を感じられて、その感触に景太郎も腰をひくつかせてしまう。

 『あぁ…可愛い……可愛いなぁ、景太郎先輩……』

 そんな彼に対しての愛しさが素子の心を擽ってくる。
 大の大人。それも成人男性に対し、可愛いという感想もどうだと言う気がしないでもないが、『何がどう』というのではなく、景太郎の仕種全てが愛おしいのだからしょうがない。

 そんな彼に毎日抱かれている。
 毎日毎日セックスをしている。
 毎日毎日激しく交尾している。

 その事実が素子の腰から肉欲の鎌首を擡げさせ、股間の潤みが再発する。
 肉奉仕をしていた為に跪いていた素子であったが、ぺたんと腰を下して景太郎に背中を見せ、そのまま腰を高く上げて挿入をせがんだ。

 景太郎の肉柱の今の張りと反りを見、正上位や最近のお気に入りである松葉崩しは難しいと判断しての事である。

 無論、彼にしてみても嫌なわけでは無いし、男というものは何故か背後位と騎乗位に妙な思い入れがある生き物だ。
 素子自身の指によってばくりと開かれたそこに入れる事を躊躇する事は無い。

 ぬる…ずにゅぅ…っ


 「かふ…っ あ…んン…っっ♪」

 余りにも濡れていた所為で入り口で滑ってしまったが、やはり性器は何の抵抗もなく優しくペニスを受け入れていった。

 だが抜こうとするとその優しさはどこへやら。括約筋や肉襞が挙って力を増し、追い縋ってしがみ付き、噛み付くようにどんどん肉柱を飲み込んでしまう。

 幾ら淫獣化していようが景太郎は景太郎。その優しさもちゃんと残している。いや、彼女らへの愛情が確立しているので以前より増していると言って良い。
 だから少しでも彼女らを悦ばせようと頑張ってはいるのだ。
 いるのだが…世の中そう上手く行ってはくれないよう。

 彼が頑張れば頑張るほど、彼女らの性器はそれに応えて景太郎に対する肉奉仕を強めてゆく。
 強められれば当然彼はもたないから射精が早くなる。
 早漏気味を申し訳無く思ってまた彼は頑張り、また彼女らは感謝して……と悪循環が酷くなっていっているのだ。

 まぁ、早漏も何も、彼女らの膣の具合も既にシャレにならないレベルに達している。
 素子にしても半淫魔化しているというのは伊達ではない。(そんな事はありえないのだが)景太郎以外を相手にしたとすれば一分と待たずに絞りカスのミイラを作り上げられるのだから。

 不死身体質に淫獣化までしてのけている景太郎だからこそ、ここまでもつのであるが彼が気付く事は無いだろう。


 両の手で素子の胸を掴み、ぐいっぐいっと押し込んでゆく。

 「あ、はぁ、ン♪ ふぅっ、くぅ…っ」

 泥田に足を突っ込むような酷い音がして奥に入るペニスも、抜く時の強い抵抗に音が更に酷くなる。
 それがダイレクトな快感として素子に伝わり、その嬌声が高まってゆく。

 尤も、快感をもっと貪りたければ身体の力を抜いて景太郎の動かしたいようにすれば良いのだが、彼とまぐわっているという現状による快感が強過ぎてそうもいかない。だから締りが良くなって彼の射精も早まってしまうのだ。
 まぁ、これ以上時間を掛けられれば余りの快楽に狂死してしまいかねないのだが。

 尻をはしたなく上げている素子の中を出入りする黒々とした肉柱。
 素子のきめ細かい白い肌の直横をグロテスクなオスの器官が食い込んでいる様は、誰が見ようと美しい物を陵辱し、穢してゆく獣の行為としか映るまい。
 実際、素子は美しい少女であるし、景太郎の性器は言葉で庇いようもない程のモノである。

 しかし、男共の多くが勘違いをしているのだがけだもの…動物界において、雄は牝の許可を得ねば交尾に移る事は出来ないのだ。
 力尽くで女を犯すという行為は獣であれば行ったりしない。人間は動物の一種等と言ってはいても、その実はまったく別物なのである。

 牝の許可なしに己が種を押し付ける行為を行うのは、自然界では昆虫や魚類がそれに相当するだろう。
 したがって、女に性行為を無理強いするのは虫けらに等しいという事だ。


 だから景太郎らの肉の交わりは正しい事と言えよう。


 牝が誘い、雄が応える。
 牝が次代の種を欲し、雄がそれを与えている。

 何の間違いがあろうというのか?

 雄の回りに多くの牝が纏わり付き、其々が雄を求めている。自然界では間々ある事だ。

 ただそこにヒトが決めた倫理が存在しないだけ。

 愛し愛される行為の中に、過去に愚者が定めた倫理が存在しないだけなのだ。

 ぐぢょぐぢょになっている素子の性器。
 出入りするペニスに肉ビラが付いて来て赤い内臓が出てくる様を連想させる。

 バックで繋がっている為、ストロークはかなり長く取れ、尚且つ突き込みも早くする事が出来る。
 抱き締めあえないデメリットもあるが、肉快感でいえば及第点だ。

 それに、性器以外を嬲る事だって可能である。

 柔らかなその胸を揉みしだき、摘み、弄くる。
 硬く尖った乳首をコリコリといたぶり嬲る。
 
 「ンわぁ…っ く、くぅ…ひ、うっ、あン……うぅン…っ」

 前より柔らかさと大きさを増している素子のバスト。
 むつみレベルに達しているそれであるが、依然として垂れる気配もなく、果実の様な瑞々しさを持ち合わせて男を誘う。
 無論、誘いを掛けるのは景太郎只一人。街に出ればそのフェロモンでそこらの男を容易く撃沈してしまうが、有象無象など羽虫も同じ。
 主人であり御主人様、愛人であり恋人の景太郎だけが堪能していれば良いのである。

 もにゅ、むにゅ、と形を変えて景太郎の指の隙間から溢れ出る柔肉。
 そのはみ出た肉の先端に突き出ている乳首も、真っ赤に染まって嬉しそうだ。

 それでも何かが物足りないのか、素子が首を回らすと、直にその唇が塞がれる。
 待ち構えていたように景太郎の唇が素子を襲ったのだ。

 「んむ…ン…うちゅ…はぁ…んっんっん…っ ぷはぁ…けいたろ…せんぱぁい……」

 無論、歓喜してそれを受ける。
 彼からのキスは正に甘露。下手をすると一日中口で繋がっていくなるほど。

 以前の自分ならまったく理解出来なかったであろう、甘いキスの感触。
 処女を捧げてからこっち、毎日のように肉の悦びを景太郎に教えてもらっている素子は、この世がどれだけ快楽に満ちているかを毎日知り、そして毎日驚かされている。

 「ん…ぷはぁ……いやぁ…ん」

 唐突に唇が離され、素子は幼女の如くむずがった。

 だが景太郎はヤりたい事があるので彼女の懇願を無視。
 それに彼は素子の御主人様なのだから全てのお願いを叶える必要は無いのである。

 景太郎は胸を揉みしだいていた手も離し、見事なシュプールを描く腰を撫で下げながら移動させ、その山の頂である柔らかな尻の谷間を割ってアナルを曝け出させた。

 「あ…い、やっ、いやぁ…ン……っ」

 これだけ淫らになってはいても、瞬間的な羞恥には前のままの彼女が現れてくる。
 そのギャップがまた景太郎を燃えさせるのだが、残念ながらまだ彼女はそこには気付けていない。

 素子の羞恥を表わすかのように、恥ずかしげにひくついているアナル。
 そのアナルの両の手の親指かズブリと突き刺さった。

 「く…っ あぁああ…っっ ひぃんっ」

 子供のような悲鳴を上げて素子は身を捩る。
 だが、指は抜けないし、下の口は素子の本能に正直で咥えているペニスを放そうとしない。
 だから身を捩ることしかできなかった素子は、景太郎の行為に待ったを掛けなれない。

 思わず括約筋を閉じて防衛しようとするも、括約筋を閉じれば繋がっている性器も絞まりを強めてしまう。
 彼に奉仕するという点では充分に合格点なのだが、自分が快感を貪れなくなってしまう。

 何と我侭な女であろうか。

 ぽっかりと広げられたアナルには、既に腸液が控えていた。
 腹を下している訳では無く、景太郎の下へ赴く前に彼女は風呂場でここすら洗い清めているのだ。

 景太郎の尻を舐め味わうのであれば、別に彼が洗っておるまいと気にもならない。
 塩味が増して嬉しいだけだ。

 だが、愛おしい彼に対して不潔な自分を見せる事は流石に無理な話なのである。
 尤も、景太郎が目の前で排泄して見せてと頼めば、羞恥に身体を振るわせつつも逆らいはすまいが。

 ぐぢゅっ、ずぐっ、ぶぢゅっ、ずぢゅ、ぬぢゅっ、ぶぢゅっ、


 「あっ、あっ、あっ、ンっんんっ、ひ、く、ふぁああ…っっ」

 肉のざわめきは激しさを増し、突き込んだ亀頭を緩く力強く緩急を掛けて締め上げる。

 だが、絞めれば絞めるほど伝わってくる快感が強まって力が抜ける。
 力が抜けるから更に奥に入れられ、その快楽で締りが良くなる。

 肉の悪循環だ。

 時たま腰を捻り、粘膜の右側や左側を突いて素子を鳴かせる。
 ずずっと引き出し、入り口付近で激しくピストン。そしてまた唐突に子宮を叩く。

 素子の耐える“間”の全てを知り尽くしている景太郎だからこそと言えよう。

 まぁ、だからと言って自分が鍛え上げてしまった素子の具合の良さにそうそうもつ訳もないのであるが。

 どぶ…っ、
 どぶっ、どぶっ、どぶぶぶぶ……


 「あふ…あぁっ、あ、ああっ、ああああ……っ」

 射精。
 弾ける様に飛び散る精液。

 膣内にぶちまけられたそれは、子供の種。
 景太郎と自分との間に子を成す種だ。

 肉襞の隙間隙間全てを埋め尽くし、子宮内を満たし、刷り込まれている彼の匂いを更に強めて行ってくれる。

 白目になり、舌を出して喘ぎ悶えている素子の脳裏に浮かぶのは自分の膣内。
 景太郎の白濁液で子宮が張り裂けそうになっている様。
 行き場を失ったそれは、その全てを蹂躙せんと卵管まで攻め込んで卵巣すら侵略する。

 無論、幻視だ。
 流石にそこまでは至っていない。

 だが、素子が眺めている刹那の夢の中で彼女は景太郎に嬲り潰され、全身の穴という穴から精液を逆流させて転がっていた。

 景太郎に抱かれるのは牝として彼を欲したからであるし、
 景太郎に嬲られる事を求めているのは被虐心からか。
 景太郎の子を産み育てたいというのは愛情からであるし、
 景太郎の娘を産んで彼の肉奴隷にしたいと願うのは淫魔の性であろうか。

 歪み切った愛情は、限度を超えると常人のそれと区別をするのは難しい。
 歪曲の極みであるバネを距離を置いて見れば真っ直ぐの棒に見えるのと同じで、余りに歪めば身近な者では解からなくなる。

 だから鶴子にもここまで歪んでいる事は知られていないのであるし、
 一緒に住んでいる なるにもまだバレていない。

 そんな快楽に酔っていた素子を更なる快楽が襲い掛かった。

 「え……んぁっ!! ひ、いぃいいっっっ!!

 射精を続けていたペニスが唐突に引き抜かれ、開いていたアナルにその精液と愛液によってどろどろになったペニスを捻じ込まれたのである。
 流石に突然の事だったので思わず悲鳴をあげてしまう素子。
 無論、苦痛の…では無く、快楽のそれ。嬌声であるが。

 いきなりアナルを犯されても快楽の声しか漏れず、続いている射精をそのままアナルにされているというのに、愉悦しか感じられない。
 アナルを鍛えた所為で、排泄を行う度に濡れてしまうようになってもいる。

 だが、それが嬉しくてたまらない。

 全身が景太郎を悦ばせる為の道具。
 彼と共に歩む事が出来る条件の一つだ。

 どぶ、どぶ、どぶ……


 「か、はぁ…あ、あああ……」

 びくんっびくんっと断末魔のように痙攣する素子。
 実際、意識が飛び散っているのだ。

 満月の時は肉欲が異様に強まるのは以前から言っているのだが、実は感度も異様に跳ね上がってしまう。
 だから景太郎に抱かれている時に失神してしまう事もザラなのだ。

 景太郎も慣れた物で、例え素子が失神していようと肉柱を出入りさせる事を止めたりはしない。
 その方が彼女が喜ぶ事を理解しているからである。

 涎を枕に垂らし、
 両の腕を脱力させ、
 腰を上げたままの格好で、
 膣とアナルからどろりと精液を逆流させているその姿。

 景太郎の精神に更にやる気を送り込むのに充分である。

 その尻を掴み、ぐいとヴァギナを広げれば精液の滴る量も増えてくる。
 何時の間にやら失禁していたのか、僅かに異臭がするも、今の景太郎には興奮を強めるスパイスに過ぎない。

 息も絶え絶え。
 快楽の海で溺死寸前の素子。

 オンナが六人に増えてしまった事により、景太郎の性欲も人数分増えている。
 その性欲の大半が今日はまだ残っているのだ。

 だからその全てが今の素子に使われようとしていた。

 だが、それでは幾らなんでも素子の肉体からだがもつ訳が無い。

 半淫魔化しているとは言っても、ベースは素子である。
 彼女の体力は元々景太郎より劣っているのだし、景太郎も今や淫獣だ。その差は更に開いていた。

 そんな彼女を救ったもの……

 いや、救った“者”は……

 「けーたろ……♪」

 声に反応し、振り返った彼が見たもの。

 大きな赤い月の光を身に浴び、その裸身を輝かせて縁側に立っていた少女、

 「私にもしてほしいな……良いでしょ?」

 カオラ・スゥ(大人版)であった。






[2319] Re[8]:Dotage ~妄愛~ <卅漆> (ラブひな)
Name: Pixy◆75ee06fa
Date: 2007/09/10 16:16


 初めてのセックスにおいての驚愕は人それぞれである。

 特に快感というものは性別によっていきなり大きく分かれてしまうもので、“初体験”を終え、その快楽に酔い痴れる事が出来るのは大体が男であり、女の初体験は大体において痛みで終わってしまう。

 普通、性行為で快楽を得られるのも入れて出すだけである男が特権の様に早く、女は初の挿入では傷を付けられるだけなので快楽を得られる事はまず無い。

 無論、人それぞれであるが、一年くらい掛けてやっと挿入で快楽を得られるケースだってあるのだ。
 それだけ女は不利と言えなくも無い。

 が、その代わりに初体験時の驚愕は男の比ではない。

 男性の方々も自分の“それ”を見てちょっと考えてみて欲しい。

 “それ”が入る
のである。

 慣れてくれば“それ”が根元までズッポリ入り、尚且つ激しく出入りするのだ。
 他人の器官が自分の中に入り、自分の内臓をごりごりと擦って突き進むのだ。

 それを初めて目の当たりにした時の驚愕は筆舌にし難いものがある。

 前述の通り、女は初体験時には肉体の一部を欠損し、痛みを与えられてしまう。
 そして自分のオンナの能力を知り、オンナの肉体からだという物を自覚させられる。
 だからこそメンタル面での変化は大きかったりするのだ。




 ちゅ、ぬチュッ、くちゅっ、ぬちゅっ、ぷちゅっ、

 「ン…わぁ…ン、んっ、ンん、んっ、んふ…っ ンんん……」

 自分の股間を見下ろし、正直、スゴイと思う。
 下品な音を立てて自分の中を出入りしているのは指だ。
 それも他人の指。
 男の指である。

 “そこ”に指が入る事は知識では知っているし、こうやって快感を貪る事が出来るのも知識では知っている。
 だが、実際にこんな風に“使う”事ができ、尚且つこんなに気持ちが良い事だったとは思いも寄らない事であった。

 つい最近。
 はっきりと言ってしまえば今日の朝。
 自分のそこは快楽を与えてくれる器官だと知った。

 子供を生み出す器官であり、愛おしい男を悦ばせられる器官。
 愛おしい男が気持ちよくなる事ができれば、自分もなんだが気持ち良くなれ、
 自分が気持ち良くなれば男も気持ちが良いという。

 後から抱き締めてくれて、胸を揉みながら膣に指を入れて掻き回してくれている彼。
 その彼の中指が入ってゆく様を見た時、彼女はいたく感動したものである。

 そして膣が異物感になれると入れている指は二本に増え、ついには三本となった。
 ぐぢゃぐぢゃと泥濘の音が酷くなり、乳首がギチギチと音を立てているように尖っている。
 全身に浮かぶ汗も滑りを増し、腰に押し当てられている彼の肉柱の熱をダイレクトに伝えてきてくれる。

 処女である筈なのに自分の膣は彼の指を三本も入れられて、尚且つ根元まで入っている。
 これも一重に彼との相性の良さだと彼女は確信していた。

 無論、彼女は眠っている間に彼のブツを入れられており、膣内射精や直腸射精をされている事を知らない。
 知らないからこそ逆に彼を飢え求め狂っていたのであるが、その事実は誰も口にしていない。

 だからこそ、自分に彼との交尾を勧めてくれた女の弁を鵜呑みにしているのだ。

 『いいか? スゥ。
  もし“景太郎”先輩から受ける行為の全てが気持ち良く、
  尚且つ入れられても痛みが無いというのであれば彼との肉体からだの相性は抜群だという事だ』

 大好きな男と、
 愛おしい男との肉体からだの相性が抜群に良い。

 その事がどれだけ少女の心に悦びを齎せているか……余人には及びも付くまい。

 く…っ


 「ンぁあっ?!」

 突然、青年の指が膣内なかで角度を変えた。
 浅い部分…言ってしまえばクリトリスの裏側あたりを指の腹で掻いたのだ。
 途端に少女の喘ぎ声のオクターブが上がる。

 膣内なかをかき回している掌にぴゅっぴゅっと液体が吐き出されるが、青年はまだ不満のようだ。
 彼が毎日相手をしている少女達はもっと反応が大きい。
 現に、今少女と絡み合っている横には、息も絶え絶えで転がっている女がいるのであるが、彼女は膣内なかと腸内に射精をしただけでこの有様なのだ。

 だから処女膜の無いこの少女とて“こう”なる筈である。

 思い違いも甚だしいのだが、青年はそう固く信じ込んでいた。

 というのも、抱いている女達全員が淫乱である。
 彼に抱かせた事や、彼と女との絡み合いから発生している淫気をまともに浴びた事による弊害であるが、彼にそんな自覚があろう筈もない。

 それに横でぴくんぴくんと絶頂の余韻で痙攣している女は処女を捧げた事で絶頂を得ているのだ。
 今愛撫を続けている少女は、運動によって処女膜を裂いていたし、残るヒーメンの残骸も青年自身のペニスによって裂いている。ピストンこそしていないが膣内射精も行っているのだから大丈夫のはずである。

 等と訳の解からない理屈によって、彼の愛撫はエスカレートして行った。

 くに…くっ、くっ、くっ、


 「あっ、ひっ、くっ、い…っ」

 膣の中で中指に人差し指を絡めて捻る。それだけの行為であるが、少女の身体はびくんっと跳ねた。
 指の動きそのものは大した事はないのであるが、される側からいえば実はけっこうディープなものがある。

 男らは自分の内部で、やたら敏感な内臓の中で異物に“捻れ”が起こる事が想像出来るだろうか?
 撫でられる、引っ掻かれる、太さが変わるという感触が、同じ物体から同時に伝わってくるのだ。尚且つ自分のピンポイントに起こるのだから堪ったものではない。
 この指使いは初心者向きでは無い。特に処女は膣道がまだ“硬くて固い”し、快楽を感じられるキャパシティを膣に持ち合わせていない為に負担も大きい。
 だから児戯の様に簡単なペッティング方ではあるが、初心者の少女にはオススメ出来ない指使いなのである。

 ちゅぽ……


 膣の絞まり具合が良く解かる音を立てて青年の指が引き抜かれた。
 少女の足のダラリと力が抜け、青年の膝に乗ったまま足を投げ出す形となっている。初の性的行為による刺激が強すぎた為の脱力だ。
 息も荒げ、涙すら浮かべているではないか。

 そんな少女を愛おしげに抱きしめ

 『あぁ……スゥちゃんごめんね。やっぱりオレって下手なんだね?
  でも頑張って君をもっともっと気持ちよくしてあげるから……』

 等と青年は決意を更に固めてゆく。
 無論、実際は真逆で、初めての性愛快楽に全身の感覚神経が悲鳴を上げてオーバーヒートしていただけである。

 それでも彼は見当違いの愛情でもって大真面目に勘違いを深めて行く。

 「はぁ、はぁ、はぁ……け、けーたろ……」

 潤んだ眼差しでもって青年を見上げる少女。

 赤い月が出ている為か、その顔つきはどこか大人っぽくなっていた。
 しかし、彼の愛撫によって意識は混濁化し、何時もの彼女なのやら大人バージョンなのやら自分でも解からない様だ。

 彼は少女を強く抱き締め、少しだけその細い身体を持ち上げて抱え直す。

 「あ……」

 その少女の頬がぽっと赤くなった。

 抱え直された少女の股座。
 その間から姿を覗かせているのは力強い男のパーツ……いや、肉の凶器だ。

 うっすらと肉亀裂を綻ばせているのは幼さを残す少女のもの。
 ペニスはその亀裂に沿うようにこすり付けられる。

 「熱…っ! んん…っ!!」

 小さく叫び、少女は身を縮込ませた。

 無論、実際に火傷をするような熱さではないのだが、敏感さを増している粘膜は灼熱の温度を少女に伝えている。

 ぬる、にゅる、ぬる、と滑りをペニスに与えながら擦られ玩ばれる少女の性器。
 青年は、少女の身体を抱き締めたまま固定し、セックス時のピストンの様に腰を捻って擦り続けている。
 スレンダーな少女であり、見た目以上に軽い身体であるからこそ簡単に出来る行為である。

 元々の体格の差もあって、大人化してはいても少女の身体はすっぽりと彼の腕の中に収まり、思いのままに嬲られる。

 だが、その嬲られるというシチュエーションがまた良い
 他の女達同様、好いたらしい男に物として扱われる感触がまた堪らないのだ。

 少女は失禁しているような大量の愛液を青年に足に零しながら、今だ自分の横で意識を混濁化している少女の弁を思い出していた。




 『景太郎先輩を自分のモノにする事には意味が無い。
  何故なら、例えモノにできたとしても、先輩の意思は自由なのだから飛び立たれる可能性が大きいからだ。
  “浦島”先輩は結構勝手だからな』

 せやね。

 『だがな、“先輩をモノにする”のではなく、“先輩のモノ”になるのならどうだ?』

 ……え?

 『あの人は絶対に見捨てないだろうし、見捨てられる人では無い。
  それに皆が皆して浦島先輩のモノになれば皆で同格。
  尚且つ普段は今とまったく変わり無い環境になるだろう。違うか?』

 それは……

 『なぁ、スゥ……


  皆で“景太郎先輩”のモノになろう。

  皆で抱かれ、可愛がってもらって、一杯愛してもらおう。

  そして皆で彼を愛そう。


  そうすれば……』

 そうすれば……………




 くちゅ…ずに……


 「あ……あぁああ……」

 ラヴィアを擦っていたペニスはついに角度を変え、ぐにぐにと膣口を探して潜り込もうとし始めていた。

 背後から支えて後ろから入れる。
 少女の小さな身体からすれば丁度良い角度となるやもしれない。

 既にそこの潤みは万全で、例え茄子でも容易に入ってしまうかもしれないくらいだ。
 尤も、入ろうとしているのは茄子のように細くて短いブツではない。

 ゴツゴツと硬く、ぶっとくて熱くて長い凶器なのだ。

 ぐぬぬ……


 「あぁ…あぁあああ……けーたろの……
  け、けーたろのが………」

 ぐぢゅ…っ


 「ぁあ………っ!!」

 ――自分の膣に、入った。




 皆で彼を愛そう。
 そうすれば……


 そうすれば、ずっと皆と一緒にいられる………





―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
                           -盲・愛-
                            File:卅漆
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――




 「う…あぁ……っっ」

 繋がり方は背面座位。
 カオラも興味はなくとも今時の女子高生だ。知識だけではあるが知っていた。
 だが、それがこんなに気持ちのいい事だったとは思いも寄らない事であった。

 ずぬぅ……


 腹の奥から響いてくるのは亀頭のカサが肉を割ってゆく音。
 使用した事が無い為、びっしりとある肉襞が擦られてゆく感触は初めての事であるが蕩けるように気持ちが良い。いや、気持ちが好い…か?

 既に景太郎の指によってぬらぬらになっている蜜壷は、肉の侵略を待ち望んでいた為に全く抵抗の色を見せようとしない。
 処女だった“筈”だが、痛みというものが全く発生せず、それどころか容易に膣奥にペニスが入り込んでしまう。

 カオラは半ば呆然と、そして半ば感動しながら、自分の生殖器が大きな肉の柱を飲み込んでゆく様を見つめ続けていた。

 『痛くない…全然、痛くない……
  ううん…凄く気持ちいい……死んじゃいそう……っっ』

 ぐぢょり…と膣奥が、子宮口の前にある精液溜まりの場が鳴いた。
 それは肉柱に押し込まれた空気が引っ張られた音。
 子宮の前まで来たペニスがその口に触れる事無く後戻りを始め、引き止めるかのように膣が蠢いてその様な音を生じさせたのだろう。
 或いは、ペニスが帰ってしまう事を嘆いたのか。

 カオラはその快楽を歯を食い縛って耐えた。

 いや、別に耐える必要は無いのであるが、その快楽を耐えねば一瞬で絶頂の波に呑まれてしまうのだ。流石に初体験で数秒と持たずに気絶するのは“もったいない”。

 ぬぢゅる…ぐぢゅう……ぬぢゅる…ぐぢょっ


 軽いカオラの身体を持ち上げ、更に腰を引いて亀頭をギリギリまで抜き、そしてまたゆっくりと突き刺す。
 既に膜の無い事は知っているし、幼い子宮もとっくに精液で穢しまくっている景太郎は、今回は自分の匂いや味を擦り付ける事を楽しむつもりなのか、或いは単にカオラの身体を気遣ってか、ストロークを長く、そして肉カサで撫で回すようにその肉洞を行き来させている。

 淫獣化はしても、そこは浦島景太郎だ。
 相手に対す愛おしさを失ったりはしないのである。
 それにカオラはずっと妹として接してきた少女で、ある意味義妹の可奈子より身近に接していた。

 そんなカオラの肉体からだを貪るのだから優しくもなろう。
 尤も、“今”のカオラがそうされる事を求め、それに応えているだけかもしれないが。

 ぐぢょ、ぬぷ……ずりゅっ、ずりゅっ、ぐぢゅっ、


 「ひ、あぁ…っ?! ンんんっ!! あ、はぁ…っっ」

 突如としてカオラは眼を見開き、激しく喘いでその身体をがくんがくんっと痙攣させる。

 景太郎の腰の使い方が変化したのだ。
 深く出入りさせているだけだった肉柱が、グラインドを起こしてカオラの膣を掻き回したのである。

 ぐぢょ、ぶぢゅ、ぶぢょっ、ぬぷ、ぐぬっ、ぬぢゅ、


 「あっ、ひ、くぅ、うン、ひっ、あ…っ、う、ん~…っっ」

 乱雑に、且つ丁寧にかき回されて淫ら過ぎる音を立てるカオラの性器。
 数日前までは幼児のように愛らしかった彼女の膣も、薄赤く色付いてその淫猥さを主張していた。

 カオラとセックスはこの寮の中で一番縁遠い位置にあった。
 最年少のサラにしたって、普段の行動は子供そのままであるが、家庭環境から女心の機微を理解していたというのに、カオラは知ってはいるが理解はできないという少女。過分に頭が良く、尚且つ調子に乗り易い為に噛み合わない事が多々なのだ。

 普通、女心はそれなりの経験を積むからこそ成長するのであるが、カオラはそんな過程をふっ飛ばして景太郎を求め、肉の快楽を得てしまった。
 それは間違いなくカオラを歪にしてゆくのだが、現在のひなた荘においてそれを指摘できる者はいない。

 以前なら確実な倫理観を持っていた素子が最初に堕落したのであるからしょうがない事と言えなくもないが、全員が堕落してしまうように運命が動いたとしか思えない程、本妻候補である成瀬川なるを除いて皆が皆して淫らな牝犬と化してしまっている。
 そしてそれに悦びや幸せを見出しているのだ。

 素子は身体に振り掛けられた精液を月明りに浮かび上がらせ、景太郎とカオラが絡み合っている横で幸せそうに余韻に浸っているし、
 むつみは大好きな“けーくん”がカオラを犯している様子を想像しながら、“けーくん”のトランクスをオカズにして彼の部屋で自慰に浸っている。“なるちゃん”が上の部屋にいないのでしたい放題なのだ。
 しのぶは可奈子の部屋におり、彼に嬲られる事を想像しつつ姉妹プレイの真っ最中。同じ日に二人して処女を捧げた所為か、その相性は実に良い。
 景太郎に抱かれる夢を見つつ抱き合って眠っているキツネとサラを除けば、皆して淫事に浸り切っているのだ。

 なるはまだ気付いていないのだが、サラとむつみが景太郎に抱かれてから、夜のひなた荘の空気はやたらと澱んでいる。

 その澱みの中で、景太郎は女達を抱き、女達は景太郎に愛されてその倫理を零し続けているのだ。

 そして遂にカオラも……

 「あはっ、ああっ、あっ、あっ、け、けーたろ、けーたろ、けーたろぉっ」

 ぎにゅぅ…っ、と膣が絞まった。
 その絞まりは強く、景太郎のペニスを食い千切ろうとしているかのよう。

 無論、鍛えに鍛えられている景太郎の肉柱はビクともしないのだが、その急な反応は思わず精を漏らしそうになるほど。

 その嬌声の変わり具合を疑問に思ったのか、景太郎はカオラの顔を自分に向かせた。

 と……

 その幼女のように柔らかいほっぺたに丸いものがついている。
 顔の雰囲気も先程より丸さを感じられた。

 ふと脇を見れば、開け放たれた部屋の入り口から差し込み、障子素子の身体をより一層白く見せていた月の光が無いではないか。

 ――そう、何時の間にか月が雲に隠れたのである。

 顔を寄せた事に反応したのだろう、何時もの彼女の甘え方が混じり、景太郎にキスをせがんでカオラはその身を捩った。

 ぶぢょ……っ ぬぢゅぅう……


 「ひやっ?! ンん…ん~…んちゅ、ちゅっ、ちゅっ」

 肉のフックが襞の隙間を抉り、一点的に与えられた快楽に身を縮めてしまうが、それでもキスはしたいので景太郎にもっと顔を寄せる。
 当然ながら景太郎は顔を寄せてその唇を奪う。

 舌を絡め合い、唾液を啜りあい、飲ませ合った。
 あの夜にできなかっ事を取り戻すかのように、貪りあい、譲り合い、捧げ合う。

 今のカオラにはあの時の恐怖の『き』の字も存在していないので、咥咽愛撫も問題なく深く堪能できている。

 何せ景太郎は他人では無いのだ。

 家族なのだ。

 肉親という意味の家族では無く、同じひなた荘に住む者達で結ばれた家族。
 景太郎のオンナとして、恋人として、妻として、牝犬として結ばれた幸せの絆。
 切れる事の無い、淫靡で淫猥で卑猥で汚らわしくて優しく美しい肉の絆。

 それを結んでいるのだ。
 何を怖がれというのだろうか?

 ちゅぱ……と唇がはなれ、銀の橋が名残惜しげに糸を引く。
 その糸が切れようと、見詰め合っている目線は離れようとしない。

 景太郎の眼差しは肉欲に染まり、繋がったままのカオラ膣感触に酔い痴れ、
 カオラの眼差しは他のオンナ達同様にどろりと濁り、自分の膣に突き刺さっている景太郎の肉柱の感触を味わい続けている。

 二人は見詰め合ったまま布団に倒れこみ、再度唇を貪りあって交尾を再会させた。

 何時しか月の雲も切れ、カオラの顔つきはまた大人っぽさを取り戻している。
 それでも快楽に泥酔している無様さに変化はなく、足を景太郎の腰に絡めて必死になってペニスを更に奥へと導いてゆく。

 実は景太郎、正上位は余り行わない。

 勃起時の反り返りが凄すぎる時等は膣道の角度から正上位からの挿入は難しいのである。
 それでも女達は交尾中のキスを求めているので、別の体位で繋がってから、そのまま正上位に変更するという事を行っていたのだ。

 カオラの膣の角度は、ひなた荘の面々の中で一番急であった。

 肉柱の感覚からいえば、するっと入り口から入って、九十度直角に曲がって子宮へと向う…そんな感じである。
 その粘膜の角度がまた凄まじい快楽を景太郎に与えていた。

 どぶ…っっ


 「あ……っ」

 だから、これはもった方である。

 どぶっ、どぶっ、ずびゅっ、ずびゅっ、


 「あっ、あふっ、んぁああっっっ!!」

 擦られる、削られる、引きずり出される、掻き回される、

 そんな感触を与えられつつカオラの膣内なかはどろどろの精液を擦り付けられてゆく。

 痛みは皆無で、
 絶頂が押し寄せてくる。

 これは凄まじいほど肉体からだの相性が良いに他ならない。

 カオラはその悦びに心を焦がし、眼を剥き、涎を垂らし、景太郎のモノになってゆく幸せを噛み締めていた。

 、膣が景太郎の精液を思い出して反応していたとしても、
 、子宮が精液の記憶を思い出して快楽を与えているのだとしても、
 彼女自身が知らないのであれば、今の会合が初めての性交に他ならない。

 肉襞の隙間隙間に景太郎の精液を沁み込ませ、
 だらしなく開いた子宮口が景太郎の精液を飲み干している。
 それが初めての事でないとしても、彼女自身に記憶が無い以上は初体験なのだ。

 だからカオラは初体験で景太郎との肉の相性を確信させられ、彼でなければ快楽を与える事は不可能なのだと思い込んでいる。

 どぶっどぶっ、音を立てて自分の中を満たしてゆく恐るべき粘度のザーメン。
 精液の味も香りも今朝まで知らなかったカオラであったが、生臭くてキツイ匂いのする粘液も、景太郎のものだと思えば兎に角やたらと旨い。

 思えばあの時は舌がどうかしていたのではないか?
 精液を不味いだなんて……

 甘露とは言い難いが、癖になる味。
 絡みつくような喉越しと、コクが深い味わいがまた堪らない。

 どれだけ景太郎の全てを全身が求め欲しているのかというと、

 どぶ、どぶ、どぶ……にゅちゅ、にゅちゅ……


 「あ、ああ、やぁン……」

 にゅるり…と、ザーメンを吐き尽くした景太郎の性器が抜けてゆく時、意識も混濁化しているというのに思わず手で膣を押さえてしまった程である。

 ショ、ショロロロロ………


 その指の間から、別の液体が勢い良く噴出してくる。
 膣内射精によるアクメによって膀胱が緩んだのだろう。
 肉凶器という栓が抜けてしまった事から、カオラの小さな身体では受け止め切れていない精液が逆流してしまい、カオラの指の隙間から彼女自身の尿と共に零れ落ちているのだ。

 「あ、あぁああああああああああ………」

 放尿を見られている恥ずかしさと、その放出を手で押さえてしまっている所為で皮から突き出た肉芽を擦りあげている快感がカオラの心を嬲ってゆく。
 景太郎に見られる恥ずかしさは、全てを知られるという快楽すら伴っているので尚更だろう。

 布団の上に優しく置かれるカオラ。
 失禁も逆流も中々止まらず、足をカエルの様に開いたままの恥ずかしい格好を景太郎に曝し続けていた。

 「ふ、ふふふ……
  スゥ…どうだ? 気持ち好いだろう?」
 「ふぇ……?」

 そんなカオラの側に、やっと気が付いたのか或いはタイミングを計っていたのか、今だ身体に滑りを残す素子が何時の間にか身体を寄せて来ている。

 月光を背に浴びている彼女の艶姿……
 黒髪ロングだった素子の美しかったが、こうやってショートにしている素子もまた異様に色っぽい。

 元々プロポーションが良く、バストサイズも大きかった素子であるが、景太郎と交尾をするようになってから胸のボリュームと柔らかさが増し、腰の周囲に色気が溢れ出している。これが交尾の効果なのだろうか?

 カオラは以前、何かの本で読んだ事があるのだが、この世の多くの女は実は精液のアレルギーを持っており、雄から精を浴びせられるとその精液に過剰反応して色気が増す…とあった。
 だからこそ、女は“オンナ”になるとガラリと雰囲気が変わる…その時はサッパリ解からずキツネに聞いてみたものである。
 まぁ、キツネも適当にはぐらかし、果ては『何時かけーたろに実践してもらい。したら解かる思うわ』等とエラい適当な返答をしていたものだ。

 しかしまさか、今頃になってそんな事を思い出したり、実際に実践する事になろうとは思いも寄らない事であった。

 その色気過剰の素子は何故か普段以上の色気を醸し出しており、景太郎に傾倒している今のカオラですらムラムラときてしまう。
 月明りでもカオラが顔を赤くしているのは解かるものの、景太郎との初めての交わりの余韻によるものか、素子に発情したからなのかは不明である。

 そんなカオラの無い面を知ってか知らずか、素子はやはり淫蕩な笑みを浮かべたまま、

 「ほら、見てみろ」

 と、ゆるゆると両の足を開いて自分の手を尻の側から回して股間に添えた。

 どろぉ……


 「わ…あぁ……」

 その光景に、感嘆の声が漏れてしまう。

 膣粘膜を押し広げるように出て来る黄色みがかった汚濁の粘液。
 カスタードクリームを思わせるものであるが、生憎とそんな甘さは何処にも存在していない。

 清らかな乙女達を汚らわしく、汚らしく、汚し続けている雄のエキス。
 素子らもこれに穢され、慣れさせられ、貶められ、堕落させられ、そして…“昇天”させられている。

 カオラからしてみれば、旨いし癖になる味ではあるが甘みを感じないそれも、景太郎の牝犬としての先輩である素子らにとっては既に甘露であり、無くては生きていけないブツだ。

 素子は愛おしげに掌に出した精液に顔を寄せ、くんくん鼻を鳴らしてうっとりと匂いを嗅ぎ、うっすらと赤く染まった唇を近づけ、

 ずず…ずずずずずず……じゅるじゅるじゅる……


 と、凄まじい下品な音を立てて啜りだした。

 以前ならば呆気にとられてだあろう、清楚な女剣士の変態行為。
 だか今のカオラならそれも理解できる。

 自分の為に景太郎が射精してくれたモノだから、一滴たりとも無駄にしたくないのだ…と。

 「じゅるるる……れろん……ぺろぺろぺろ…
  はぁ……あぁああ……クス…クスクスクス……」

 掌の分を全て啜り上げ、残ったものを舐め取りた素子は、その掌でもって己が胸を撫で擦った。
 僅かに残ったであろう、精液すらも、景太郎の香りが薄れないように擦り付けているのかもしれない。

 思わず零れた笑いも、それを成せている悦びからだろう。

 カオラは、自分の身体を抱き締めてその幸福感に身を委ねている素子を心底羨ましいと感じていた。

 そんなカオラの様子に気付いたのだろう。
 今夜はカオラの歓迎の意味合いもある事を思い出した素子は、景太郎の精液の味と香りに彼女を忘れていた事を恥じつつ、己が高校の大切な後輩でもあるカオラに這い寄り、

 「ほら、少し分けてやろう」

 と、カオラの顔を跨いで指でヴァギナを指し広げた。

 カオラは眼を向いた。

 いや、そんな事をされた事に…ではなく、その目の前に淫靡さにだ。

 素子の性器――
 景太郎に初めてを散らしてもらい、彼の手によって使い込まれ、彼の為だけに存在する場所……
 無論、それ以外の場所も彼のものだ。

 だが、その部分…性器は女にとっての意味合いは深くて強い。

 連れ合いに快楽を齎し、連れ合いの仔をす為のもの……

 破瓜が痛みを与えられてしまうからこそ、好いたらしい男にだけ捧げたい。
 自分を捧げられたからこそ、彼の仔を産みたい。

 その願いを叶えられる器官である。

 尚且つ快楽を交換し合えるのだ。

 温めた蜂蜜のように蕩けた幸せを分かち合え、その快楽の果てに“次代”を“発生”させる事ができ、育む権利も与えてもらえる。
 だからこそ、性器は蔑ろにできないのであるし、連れ合いの為だけの存在として操を守り続けなければならないのだ。

 カオラは素子の淫猥さからその事を教えてもらっていた。

 ああ……自分の“そこ”もこんなにいやらしくなるんだ。

 けーたろに犯してもらって、嬲ってもらって、陵辱してもらって、こんなになるんだ……

 入れられる事と犯される事、膣内なかに出してもらう事ばかり考えて生きられるようになるんだ……

 だって……

 だってそれこそが私の………


 ぼたぼたと素子の肉穴から滴り落ちる精液が顔にかかる。

 景太郎の香りと素子のいやらしい香りが入り混じった淫臭がカオラの鼻腔を擽り、また腰に疼きが舞い戻ってきた。

 無論、一回や二回でセックスが終わるとはこれっぽっちも思っていないが、自分の肉体からだが精液に香りに反応して疼きだすようになっているのが嬉しくて堪らない。

 「ん…ぺろ……
  あは……モトコとけーたろの……美味し…」

 口元を舌で拭い、その粘液を舌の上で転がして堪能する。

 甘露を味わう…というのはこういう事を言うのだろう。発情している所為だろう、素子の味が方が強い為にやや酸味があるがそれだって気にならない。
 素子も大好きな存在なのだ。

 景太郎が雄として一番大好きな存在ならば、素子は牝として一番大好きな存在である。
 だからその二人の淫液が混ざり合った極上のカクテルをどう不味い表現すれば良いのか。
 例え嘘でも不味いとは言えない。実際に美味くて旨いのだから。

 「んン……? ん、ぁああああっっ?!

 唐突にカオラの声が跳ね、嬌声へと変わる。

 二人の行為に又も景太郎は理性を吹き飛ばして淫獣化したのだ。
 いきり起ったままの極太ペニスは再びカオラの膣に突き込まれてしまったのである。

 「おぉ……スゴイな……
  スゥのここがこんなに……」

 カオラと景太郎の繋がりを間近で監察できる素子は、そのカオラの性器の頑張りに感心した。

 素子とセックスをしてから景太郎のペニスはどんどん太さと長さと硬さを増していった。
 今ではそれこそ極太と言うに相応しいサイズで、サラの幼い身体に突き刺さっている事が信じ難いほどだ。

 だが、実際にはサラのまだ未発達な膣は景太郎の肉柱を美味しそうに喰べ、貪り、咀嚼し、精液を飲み干している。
 そしてカオラのそこも、景太郎のぶっとい肉凶器を突き込まれているというのに、健気にも膣口を大きく広げて肉襞の全てが景太郎のペニスを舐めしゃぶって歓迎しているのだ。

 ずにゅぅううぅぅ……


 「あ、く、あぁああ………っっ」

 ゆっくりと、
 そして力強く押し込まれてゆくペニス。
 襞の隙間隙間に擦り付けられたザーメンとカオラの愛液が潤滑油となっており、何の抵抗もなく膣奥にまで突き進む事が出来てしまう。
 カオラの声は違和感から出た声であるが、当然ながら歓喜のと快楽の色合いの方が大半だ。

 素子が身体を跨いでいるというのに腰が跳ね上がり、景太郎に入れてもらえたという幸せと快感を、身体を反らせて証明して見せた。

 「おお……
  良かったな。スゥ」

 と素子からの労いの言葉もあったが、耳にいれられる余裕は無い。

 ぐぢゅ…
 ぬぬぬぬぬぬぬ………コッ


 腹の奥で軽い音がした気がした。
 無論、それは気の所為であり、音などするはずも無い。

 落とした気がする程、膣の奥で止められてしまっただけなのだ。

 『ん?
  ……ああ、子宮口か……』

 素子は“止まった”という状態に首を傾げていたのだが、直に子宮にたどり着いてしまったこと堀解した。

 自分だって、そしてキツネ達にも覚えがあろう、生意気にもペニスの到来を止めさせる自分の内臓……子宮の事を。

 素子の場合は処女膜と子宮口とで二重に非難したものである。
 尤も、今では景太郎のオンナ達全員が子宮内部に入れられるので気にもしていない。が、それでも不満の残る思い出だ。
 カオラとて悲しいに違いない。

 子宮の内部に肉柱を入れ手もらえるのは女の特権であり、子宮内に直接射精してもらえるのも女の特権である。
 それをしてもらえない……それがどれほど辛くて歯痒い事か……素子らは骨身に沁みていた。

 しかし、当たり前と言えば当たり前なのだ。

 例えば膣道の角度とて斜め後方であるし、子宮への角度に至っては膣奥から直角気味に腹の奥に曲がっている。だからこそ初体験はバックが望ましい等と述べる研究家が居るのだ。
 愛した男に獣の交尾が如く後から突かれて処女を捧げる……素子らから言えば別段変わった話でもないし、そういう初体験もいいなぁと呟く程度の話であるが、“一般”の女達から言えば勘弁して欲しい事柄である

 オンナに生まれたのだから、雄の気持ちよさ優先であり、その上で純潔を捧げるのだから初体験が背後位であろうと炬燵がかりであろうと構わない筈である。
 雄が求める快楽の全てを叶えようとするのは当然して常識なのだから。
 全く持って“一般のオンナ”という存在の意識は理解し難いものである。

 ぐぬ…


 「ひ…っ」

 カオラが短く悲鳴を上げた。

 景太郎の腰は止まらない。
 ゆっくりと、力強く、そして強引に推し進める事を止めようとしていない。

 “下界”のオンナどもなら兎も角、ひなた荘ここのオンナ達…つまり自分らは一生を景太郎と共に在る事を選択した存在である。
 彼を愛しすぎるが故に、彼の求める事全てを肉体からだですら叶えようとしてゆく。

 だから……

 ずぶぶぶ……ぞぶっ


 「あ……」

 

 口を開けるはずの無い若すぎる子宮口が、
 子を生し、育む女の臓器である子宮が、

 景太郎という雄にその全てを委ねたのだ。

 「あ、ああ…あぁあああ……」

 ぽろぽろと童女の様に涙を溢れさせる。

 素子に押さえつけられたまま。
 顔の真正面には素子の性器があり、どろりとした景太郎の精液を逆流させている。見ようによってはシックスナインでもするかのようなそんな格好で組み敷かれ、愛おしさを自覚した相手に腹の奥の奥までを犯されてカオラは涙を零していた。

 だが、そこに悲しみも苦痛も見当たらない。
 少女のドブ色に澄んだ瞳にはそんな色彩は見当たらない。

 強すぎる愛欲と淫欲によってどぶ泥のように濁り、そして澄んでいる矛盾し尽くした愛らしい瞳にあるのは歓喜のみ。

 腹の奥の奥まで捧げられた感動がカオラの胸に溢れかえっていたのだから。

 「良かったな……スゥ」
 「うん……
  あ……」

 どぶ、どぶっ、どぶっ、どぶっ、どぶっ、どぶっ


 素子が労いの言葉を掛けた瞬間、カオラの腹の奥で景太郎の息吹が爆ぜた。
 考えられない程の粘度を誇る景太郎のザーメンが子宮内を穢し尽くし、その汚らわしい匂いと味を擦り付け、遺伝子を叩き込んでゆく。

 -幾らなんでも出すのが早すぎる-

 と、素子は呆れたが、自分だって立ち上がる事ができないほど景太郎に飢えているのだから今の彼が早い理由も解からぬでもない。
 
 渇ききった喉を潤そうとすると止まらなくなるように、淫気に飢え切った景太郎のペニスは異様に敏感になっている。
 “普通”なれば連続で交わると一回目より二回目、二回目より三回目と、段々と射精までのタイミングは長くなってゆく。
 景太郎は逆で、どちらかと言うと早まってゆくのだ。尤も、オンナ達も敏感さが増してゆく為に絶頂までの時間が早まってゆくので全然OKなのであるが。

 それに、膣内に出してくれるのは景太郎の精液なので、彼女らは膣内なかに射精されるイコールオルガスムスとなっているので何の問題も無い。

 ずぞぞ……
 ずにゅる……


 「あ、あぁああ……あ……くぅ……」

 どちらかと言うと、抜かれる方が辛い。
 物理的に痛む…というのではなく、心が痛いのだ。

 自分の性器から景太郎のモノが引き抜かれる…それは我が身を裂かれる様な苦痛を齎してゆく。
 景太郎の女を自覚した最初の頃は、彼との交尾の終わりを認める事は難しい。
 何時までも何時までも交わっていたいし、入れたままですごしたいと渇望してしまうのだから。

 ズルリと引き抜かれてゆく景太郎の肉柱には、往生際が悪い肉襞がついてきていた。
 薄赤く染まった若い肉ベロが、黒々としたペニスに纏わりついて引き出される様は、淫靡淫猥卑猥等の言葉に尽きる。

 それを彼女らは愛と呼び、愛おしさ故の事という。

 愛があるからこそ他の女を淫欲に巻き込み、それを正しい事として理解させ、彼の子を生そうとする。
 ヒトというものから物理的にもかけ離れて行ったとしても、愛なのだからしょうがないのだ…と。

 その想いを最初にひなた荘ここにぶち撒いた素子だからこそ、

 ぢゅる…ぢゅるるるる……


 「あ、やぁン…
  モ、モトコ、けーたろのとっちゃ…らめぇ……」
 「ふふふ……ダメだ。
  ぢゅるぢゅるぢゅる…はぁ……スゥよ、独り占めは良くないぞ?」

 カオラを組み敷いたままその股間に顔を寄せ、引き抜かれて広がったヴァギナに躊躇無く吸い付いた素子。
 オーバーフローする精液を、舐め啜っているのだ。

 「ら、らめなのぉ……っっ
  んむん~……ぺちょ、ぬぢゅ、ぢゅるる………」
 「う、わ…っ?! んな?! ち、ちょっと、スゥ?!」
 「んふぅ~…♪」

 だが、元々カオラは妙な所で負けず嫌い。
 負けじと目の前の素子の股間に吸い付き、景太郎の残留物を吸い始めた。

 これに嘆いたのは素子である。
 折角、腹の奥を満たしていたものが吸い出されているのだ。悲しさと悔しさの比重がどんどん大きくなってゆく。

 「おのれスゥ……あっ、んわぁ……っ!!」
 「ふふ……モトコ、凄く敏感……」

 だが、身を起こす前にカオラの舌先がぷっくり顔を出している素子のクリトリスを襲った。
 素子の肉芽は大きさは一般的なものより小さめであるが、その代わりカオラの言う様に凄まじく敏感なのである。
 景太郎との蜜月によって鍛えられた事もあるが、元から快感はクリトリス派なのかもしれない。

 兎も角、焦れば焦るほど、
 悶えれば悶えるほどカオラは調子に乗って素子の性器を嬲りまくる。

 肉芽を吸い、舌先で舐め穿り、
 アナルに右中指を入れ、内部で捻ったり指先を曲げて内部から刺激を送ったり、
 鼻先を小陰唇に押し付け、匂いを嗅ぎながら蜜を垂らし続けている膣口を刺激したりと、やりたい放題だ。

 レズっ気は無いカオラであるが、スキンシップ中毒ではあるようで、元々の手先の器用さも手伝って、景太郎との性交によって鍛えられ敏感さを増している素子の身体は玩具と化している。

 蜜には軽く酸味があり、景太郎の精液が混ざって何とも言えない風味が楽しめている。
 菊門もきゅっきゅっと絞めつけてくるが、肉柱によって調教済みなので指を食い千切るほどのものではない。
 中で曲げた指を、膣道の方に軽く曲げるとそれだけでポイントに直撃するのか素子の反応に悲鳴が混ざる。まぁ、苦痛のものではないが。

 面白い…
 そして楽しい……

 あの固かった剣道娘がこれだけの事で喘ぎに喘ぎ、淫らに腰を振っているのだ。

 セックスとは、交尾とはこんなに気持ちが良かったのか。そしてこんなにも楽しい事だったのか。

 考えてみれば景太郎とセックスを続けていれば妊娠するだろうし、産む事も出来る。
 妊娠中も景太郎に嬲ってもらえるだろうし、娘を産めば自分好みに性教育も出来る。
 親娘して景太郎の肉奴隷になる事だってできるのだ。

 今更ながらであるが、カオラは自分の迂闊さを悟っていた。

 どうして自分はもっと早く景太郎とセックスしていなかったのか。
 どうして自分は景太郎がひなた荘に住む様になって直に薬でも使って暴走させ、犯してもらわなかったのか。

 そうすればもっと早く幸せに成れていたであろうに……

 思考の歪みは過去すら塗りつぶし、彼女の過去も淫猥だったものに変えてしまう。
 だが、それは悦びはあって苦労も苦痛も存在しない美しい過去でもある。

 自分自身の心によって歪み尽くしたその思考。
 過去から抱き続けていた景太郎への想いは完全に歪曲し、願いと望みを己の意思によって穢してしまう。

 -肉奴隷-

 それこそが自分の幸せなのだと確信してしまうほどに。


 「あ……」

 彼女が被虐に心を酔わせている隙に、唇とヴァギナの間に何かが割り込みを掛けてきた。

 黒々とした固くて熱いモノ。
 ぷぅんと匂ってくるのは雄の精臭…そして愛液。
 筋の様なものが浮かび、幹に纏わりついている血管も大動脈のようにぶっとかった。

 カオラが見惚れてるその間に、二本の親指がぐぃっと素子の膣口を割る。

 「あぁ…っっ」

 素子は甘い悲鳴を上げた。

 慣れ親しんだ感触が、
 慣れ親しんだ陵辱が彼女を何時もの様に悶えさせているのだろう。

 大きく広げられた肉の穴。

 奥から滴ってくる黄色みがかった粘液がカオラの鼻先に滴り落ちるが気にもならない。

 こんな間近で、
 こんな超至近距離で、

 このぱっくりと口を開けさせられ、紅く染まった中を曝け出されている膣に、

 ずぶ……っ
 ずぶぶぶぶぶぶぶぶ……


 「あ…っ♪
  あぁあああああっっっっっ!!!

 ぶっとい景太郎の肉凶器が突き刺さってゆくのだ。

 カオラの顔に滴り落ちる体液に、熱い愛液が混ざる。
 景太郎の来訪を心から待ち望んでいた性器が、全身全霊を持って歓待しているのだ。

 ズッちゅ、ズッちゅ、ずっちゅ、ずっちゅ、ずっちゅ、


 「あっ、ああっ、あうっ、あぁっ、あっ、ひっ、うンっ」

 甘い、甘い素子の嬌声が、カオラの股間の方から響いてくる。
 カオラの恥丘に頬をこすりつけながら、素子が喘ぎに喘ぐ。

 そのカオラの目の前では、凄まじい光景が展開され続けている。

 ずぢゅっ!


 滑りの強い音を立て、ぶっとくゴツゴツした黒い肉棍棒が柔肉を切り裂いてもぐり込んでゆく。
 自分の時もそうであったが、信じられないほど膣がひろがって、その太すぎる肉凶器を涎すら垂らして飲み込んでゆく。

 びゅっ、びゅっ、
 ぽた、ぽた……


 膣から溢れ出た素子の愛液が、肉のカサによってかき出されて顔にかかる。
 そして尿道口から噴出した熱い黄金水も。

 汚いとかどうとか考えてしまうより、その大迫力の光景に見惚れてしまう。

 ぢゅぼっ、


 引き出される度に紅い粘膜が付いて来、性器の黒さ故に景太郎のペニスが怪我でもしているかの様に見えてしまう。
 丁度、靴下が裏返るのと同じ様に、肉襞が引きずり出されている……それがまたいやらし過ぎて堪らない。
 素子のクリトリスもぴんぴんに固くなって震えており、女としての慎みや人としての尊厳など何処へやらだ。

 いや、考えてみれば、カオラとてこうする事が正しいと認識してしまった女の一人。

 景太郎に抱かれ、膣内なかにザーメンを出してもらい、幸せに狂いかかった一人なのだ。
 慎みや尊厳などを交尾中に持っている方が間違っている。

 愛情と精液に飢え求め狂う。
 それが正しい女のあり方なのだ

 ちゅっ


 「ひっ!!」

 素子の声が1オクターブ上がった。
 景太郎に胸を揉みしだかれつつ犯される。
 犯されている部分をカオラに見られ、その羞恥という快楽に浸りきっている彼女を更なる快楽が襲いかかったのである。

 「あは……モトコの、カチカチやぁ……」
 「あ、うぅっ、ス、スゥ~……ひゃんっ!!」

 何時の間にか又も月が陰っており、カオラは子供の雰囲気を取り戻していた。

 だからその持ち前の悪戯心から素子の肉芽に吸い付いたのである。
 この追加の刺激には流石の素子も悲鳴を止められない。

 景太郎という最愛の雄に犯してもらっている最中に、カオラという気の置けない相手からのクンニリングス。
 更に景太郎より調子に乗りやすいカオラである。自分のヴァギナを弄って指を精液と愛液でベトベトにしてから素子のひくついているアナルの突き込んだりもした。

 「あぁっ?! ひぃっ!! ま、待って…も、もう……っっっ」
 「んふふ~…♪ あ・か・ん♪」

 がぢっ

 力は入れてはいないが、それでも強めにクリトリスに歯を立てられた。
 カオラの両手の人差し指がアナルにズブリと埋まり、中で指が曲げられてしまう。
 景太郎の両の手が素子の乳首を抓り上げ、その肉凶器の頭が子宮の最奥に突き立った。

 「ひ、ぎぃいいいい……っっっ?!!

 今までで最悪の、最高の快楽が素子の脳内で爆発する。
 星が弾け、視界が真っ赤に染まる。
 顔を反らせ、眼はグルンと白くなり、溢れ出た涎がカオラの股間にボタボタと滴り落ちた。

 じょぼ、じょぼぼぼぼぼぼぼ……


 だが、その陵辱そこまでではなかった。
 子宮内すら蹂躙していた亀頭の先から、熱い液体が噴出したのである。

 「………………っっ!!!」

 最早悲鳴すら上げられない。
 身体が弾け飛ぶような絶頂が素子の意識を完全に刈り取ってしまう。

 膣内放尿は珍しくも何とも無い行為で、素子はおろかサラや可奈子だってしてもらっている。
 だが、流石に子宮内放尿は初めての事である。

 内臓を汚し、病気にする可能性だってある非道だが、大丈夫である。
 だからこそ景太郎も陵辱行為、蹂躙行為を止めないのだし、彼女らもそれらを嬉々として受け入れている。

 ぷしゅっ、しょろろろろろ………


 そして素子も本格的に失禁してしまう。
 真下にあるカオラの顔は、素子の出したものと景太郎が素子の中で出してものとが滴り落ちてびしょ濡れになってしまている。

 しかし、それが良い。


 顔から異臭を放ちつつ、カオラは今だ素子の膣に突き刺さっている景太郎の肉柱を見つめ続けていた。

 びくんっびくんっと蠢いているのは素子の膣内なかに射精しているからだろう。

 全く、素子に聞いた通りである。

 景太郎先輩は私達を妊娠させようとしてくれている。
 私達を孕ませてくれようとしているんだ。


 それを耳にした時はピンとこなかったのだが、今は違う。
 景太郎と初めてセックスをし、膣内なかに出してもらった今なら解かる。

 自分らはそうなるべくしてひなた荘に集ったに違いない……と。


 どさり…と急に素子が重くなった。
 また失神したのだろう。敏感な事だ。

 目の前にある肉亀裂は痛々しく真っ赤に染まっている。無論、快楽でだが。

 そこからズルリズルリと肉柱が抜け出てゆくではないか。

 『ああ……もう少ししたらこの穴からけーたろの汁が出て来るんや……
  モトコのと混ざったんが うちの顔をべとべとにするんや……』

 とろんとした眼でその瞬間を見ようとしているカオラ。
 そこから溢れ出るのは景太郎の黄金水も混ざっているだろう最高のカクテルだ。
 想像するだけで股がびしょ濡れになってしまう。

 『あぁ…滴っとる…出て来るんや……うちの顔がごっつ濡れるんや……
  そんな風に汚されて、また犯されるんや……
  けーたろにめちゃめちゃに犯されて孕まされてまうんや……

  女の子を産まされて、うちの目の前で犯されるんや……』

 カオラの頭には、妙に鮮明な未来予想図が浮かんでいた。
 景太郎の子を孕み、産み、景太郎らと共に育み、そして……父親の性奴隷にする……

 何と幸せな未来だろう。

 人権も何も無く、只々父親の肉欲解消の穴奴隷として一生を過ごすであろう自分の娘。
 そして我が娘らを淫辱の坩堝に突き落とす自分達……

 何と麗しく芳しい家庭であろうか。

 カオラは他の娘達同様にその未来予想に酔い痴れ、
 己が胸を揉みしだいて顔にかかる瞬間を待ち望んでいた。

 『あぁあああ……抜ける…抜けてまう……
  栓が抜けて、うちの顔に……
  そしたらうちは……うちはぁ…………………っっ』

 完全に、
 天国の住人へと堕落する事が――




 ぢゅぽ……







 「ただいま……」

 何だか妙に疲れた声で帰った事を告げる。

 ひなた荘の玄関近くにある露天風呂。
 その露天風呂の隣にある受付にいた一人の女性が、その声に反応して頭を上げた。

 「あ、成瀬川先輩。お帰りなさい」

 素子である。

 何故かは知らないが素子は受付にいて、何やらテキストを広げで勉強していたのだ。

 「はれ? 素子ちゃん。なんでそんなトコで勉強してるの?」

 という なるの質問も当然であろう。

 「はぁ…まぁ、息抜きですか。
  たまに変わった所でスルのも一興かと……」
 「そ、そうなの?」

 納得できるようなできないような答えであるが、それでも一応の納得はしてみた。
 景太郎が留学していた時、受験に失敗して妙に煮詰まった日々を送っていた素子であるが、彼が帰ってきてから…特に最近は凄く元気になり、落ち着いて女性へと変わっている。
 それでも何処かヘンなところは残っているので、気にしていたらきりがないのだ。

 「あ、それで景太郎は? 大学?」
 「え? あ、“浦島”先輩でしたら……」

 と、素子が指を指す方向に眼を向けると、

 ロビーに置いてあるソファーに目深に座り込み、何故かカオラにしがみ付かれたまま転寝をしている景太郎の姿があった。

 まだまだ暑い日が続いているというのに、カオラもベッタリとくっ付いて気持ち良さげに眠っている。

 何だか異様に仲の良い兄弟の構図に見えなくもないが、妙にムッとする光景でもあった。

 「ちょ、ちょっと、あれって……」
 「はぁ……ま、言ってみればスゥの我侭に浦島先輩が振り回されて疲れ果てているって所ですね。
  実際、今の今まで運動してましたから」
 「む~~……」

 以前から景太郎や素子らに聞いていた事であるが、カオラは時々ホームシックに近い状態になるという。
 そして、家から手紙が届かないと不安が増し、深く落ち込んでしまうのだと聞いていた。

 まだ なるはそんなカオラを見た事が無いのであるが、そんなカオラを慰めるのに一番適任なのが彼女の兄に似ている景太郎なのだという。

 「また、スゥちゃは寂しくなっちゃってたってワケ?」
 「まぁ、スゥもオンナですからね」
 「ふぅん……」

 納得し難い部分もあり、尚且つ自分も景太郎にくっ付きたい欲望が強い。
 だが、もとより なるはお人好しなので今だけは我慢してやるかと荷物を持ち直して部屋へと身体を向けた。

 素子は腰を上げ、二階に向う階段に足を掛けた なるの背に、

 「あ、キツネさんとむつみさんは『日向』です。
  カナコとしのぶは…買い物に出てますから」

 と、皆の状況を伝える。

 「うん。ありがとう。お土産は皆揃ってから渡すわね」
 「ありがとうございます」

 なるはそんな素子の気遣いに礼を言い、妙に久しぶりに感じてしまう我が部屋へと向っていった。

 その姿が階上に消えてから素子は腰を下す。

 ぬちゅ…


 「あ…しまった……」

 剥きだし…というか、下半身には何も穿いていない素子の尻が、椅子に溢れ出ていた景太郎のザーメンを感じた。

 「ずっと締めていたつもりだったのだが……やはり量が量だから全てを止めるのは無理か……」

 足を広げ、己が性器を弄って膣から精液を掻き出す。
 どろりと椅子のビニール地に広がった愛おしい雄のエキス。
 素子は跪いて舌でもって舐め清めてゆく。

 「ん…あ、あれ?
  今、成瀬川の声が……帰ってきたのかな?」
 「んにゃ…」

 彼女の声に反応し、景太郎が身を起こすとカオラもまだ寝惚けながらも眼を覚ましてゆく。
 それでも景太郎の身体から離れる気配は無いが。

 「ほら、スゥちゃん。起きて」
 「んにゃ…けーたろ♪ ちゅっ」

 目覚めて直に景太郎の顔を見る事がで来て嬉しいのか、カオラは景太郎の唇にキスをして身体を更に摺り寄せる。

 「ほらほら、起きて起きて。
  見つかったら困るでしょ?」
 「う゛~~~~……」

 景太郎は慣れてしまっているので別に慌てもしなくなっていた。
 それがつまらなくてむくれるカオラであったが、景太郎がちゅっちゅっと頬にキスをしてくれたら現金にも機嫌が直り、彼の身体から身を離した。

 ぬ゛ぢゅる……


 ずっと繋がったまま。
 景太郎のペニスを入れたままだったカオラの膣は、一時間ぶりに彼の性器を吐き出した。

 「わぁ…すっご……うちのここ、どろどろや……」
 「う~ん……朝からずっとしてたからなぁ」

 正確には、早朝に素子と共に3P。
 その後、可奈子とむつみを入れて4P。
 そしてキツネと共に3P、キツネからしのぶに代えてまた3P。
 そしてさっきまでは素子と3Pしていたのである。

 今までしていなかった分を取り戻そうとするように、カオラは景太郎らと交わり続けていたのである。

 因みにサラは今晩景太郎を独り占めできるのであえて関わっていない。

 「あ……んン……あはは…お腹ン中、けーたろのでイッパイやぁ。
  これでニンシンでけるかなぁ……」
 「素子ちゃんの言う通りだったらまだだよ」
 「そっかぁ……残念やなぁ……はよニンシンしたいなぁ……」

 どろりとカオラの太股を景太郎の精液が伝う。
 それを指で拭い、口に運んで咀嚼してからコクリと飲み込んでゆく。
 後から後から泉から湧き出す様にフローバックしてくる精液をカオラは座り込んで口に運ぶ作業を続けていた。
 ひくひくと穴を窄めてゆくカオラの膣であるが、元々の射精量が凄まじいのでカオラの小さな子宮で受け止めきれるわけが無いのだ。

 受付にいる素子は、床にまで零れている精液を這いつくばって舐め啜り続けている。

 カオラも素子も、情欲と愛欲に狂い、その瞳の輝きをドブ色に濁らせてザーメンを味わい続けていた。

 淫猥なる布陣は完成した。

 後は最後の<まじない>の起動を待つのみ。

 もう直、
 そう、もう直なのだ。

 この光景が普通となり、淫辱と淫猥なる幸福が館を満たし、皆が皆して暮らせる日が訪れる。

 だが、気を抜いてはならない。
 最後の鍵は彼女らの中にはまだいないのだから。



 素子は、痴女よりあさましい眼差しを二階にいるであろう女に向け、心から溢れでた想いを口にした。

 「先輩……成瀬川先輩……
  汚らわしくなりましょう……淫乱になりましょう……
  “景太郎”先輩を声を聞くだけで股を濡らし、スープの様に精液を啜り、寝食をとるように交尾をする存在になりましょう。
  景太郎先輩の正妻は貴女なのですから、正妻らしく汚らわしい牝豚になりましょう……

  景太郎先輩を悦ばせる為だけに生きる肉穴になりましょう。

  それが、
  その事が――




 「うちらの幸せなんや」

 カオラが素子の後を次いで想いを口にした。

 その瞳にはもう、以前の無垢さは欠片も残っていない。
 あるのは重くて深い愛欲と情欲。

 皆で生きる快楽と悦楽の日々を求める淫女の滑りにも似た汚らしい輝き。

 肉奴隷としての誇りだ。

 カオラは股間から愛液を零しつつゆらりと立ち上がった素子と視線を合わせて深く頷きあう。

 そして二人は景太郎に眼を向け、柔らかい笑みを浮かべた。

 景太郎もそんな二人に優しい笑みを与え、心から湧きあがって来る愛情をその笑顔に込めていた。




 素子から発生した歪みは、遂にひなた荘の全てを蹂躙し、その存在意義すらも穢し尽くす。

 そして最後の一点、
 まだ何とか清らかさを保てている女が穢される時、“それ”は完全と成る。

 当の本人はまだ穢れが迫りつつある事等知る由も無く、簡単に着替えを済ませてから愛おしい男と寮の仲間に買ってきた土産物を選別していた。

 じゅぶり…とカオラは三本の指を膣に突き入れ、精液を掻き出して己が顔にその汚濁を塗りたくる。
 焦点が全く合っていない眼でカオラは、

 「なるやん……はよこっちい……
  こっちはごっつ気持ちいいでぇ………」

 と、無邪気な笑みを浮かべていた。




 <カオラの章 幕>





*******************************************************


 またまたまた遅くなってしまいました。Pixyでございます。

 やっぱりエッチなシーンが淡白です。申し訳ありません。
 
 男の人が求める淫猥さと、女だから解かる淫猥さって物凄く隔たりがあるもんなんですね……
 貪る側と貰う側の差とでも言いましょうか……今頃気付く私もアホですが……

 カオラは勢いによって目的を忘れ手段を取り違える女の子ってイメージがあったから、こんな展開になってしまいました。
 それでも生かしきれない自分にorzです……チクショウめ。

 終章は極短め。
 言うまでも無く相手は なるやんです。ですけど、ヒロインの中で一番好みじゃないんですよねぇ……だから最後なんですけど。

 兎も角、メインヒロイン“だった”なるやんを<陵辱>します。
 それではまた……






[2319] Re:Dotage ~妄愛~ <卅捌>  (ラブひな)
Name: Pixy◆a9e938a4
Date: 2007/09/25 17:01


 何時の頃だったか忘れたのだけれど、私は自分が食べられてゆく夢を見るようになっていた――

 ……ううん。そうじゃない。

 正確では無いけど、私は大体の日を知っている筈……

 『筈』―― というのは、言うまでもなく自信が無いから。
 ここ数ヶ月だとは思うのだけど、切っ掛けがなんだっかまでは憶えていない。だから『何月何日だった』という完全な日の記憶は無い。

 でもそれは多分、問題じゃない。

 それよりも問題なのは夢の内容。

 食べられる――

 むしゃむしゃと、ヴァリヴァリと、
 足の先からゆっくりと貪り食われてしまうという恐ろしい夢。

 だけど“それ”を自覚できるのはこの夢を見ている時だけ。
 目覚めたらキレイに忘れてるし、夢を見ていたと思いつく事すらできない。

 そんな怖い夢……

 あ。いや、ちょっと違うか。

 食べられるのは確かに怖い。
 流石に痛みは無いけど、食い込む歯や傷口をしゃぶられる舌の感触までちゃんとあるリアルな夢なのだから当然だ。

 だけど、
 だけどそれよりなにより私が怖いのはその夢に対しての私が持っている想い。


 ――私は、
      “彼”に食べられるのを待っている――


 そう、
 食べられるのが恐ろしいのではなく、食べられて悦んでいる自分が恐ろしい――というのが正しいのだ。

 足先から歯を立てられ、食い千切られる“甘美”な感触。
 ごりごりと骨ごと噛み砕かれ、咀嚼され、程好く唾液と混ざり合ってくちゃくちゃという音に変わり、ごぐりと喉を下がってゆく私の肉体パーツ……

 そしてその吐き気を催す様な音を聞きながらうっとりとしている自分。

 下腹に歯を立てられ、下半身を食い千切られ、
 お腹の中を貪られ、
 胸を齧り取られ、もぐもぐと顎が動いて食べられてゆくのを……

 私は、失禁してしまいそうな感動の中で見つめている。

 困る――
 本当に困る。

 何て気持ちの良いんだろう……

 私を食べ、
 食べて食べて食べ尽くしてゆくのは何時も同じヒト。同じ“彼”だ。

 そして何時も最後は同じ、

 首だけになり、身体を食べられた余りの気持ちよさにヘラヘラとした間抜けな笑いを見せている私の首を、彼はを優しげな眼で見下ろし、

 『これでおまえはオレだけのモノになったよ。成瀬川……』

 と言って掲げてキスをしてくれる。


 あ、ああああああああああああああああああああああああああああああああ………………っっ!!


 瞬間、私は想像を絶する絶頂を迎え、幻痛ファントムペインにも似た悦楽の中で意識を失う――

 嗚呼……これは夢……
 余りに気持ちよく、その気持ち良さの為にイってしまう素直な自分を見せつけられる悲しい夢。

 彼のモノになれた事を歓喜し、その被独占欲が満たされる事が凄まじい快楽であり素晴らしい幸福だと自覚させられる恐ろしい夢……

 そして私は、
 私は……

 私は――――









 ハッと目が開くと朝日が感じられた。
 時間にしてギリギリ六時前。早朝という部類だ。

 何か酷い夢を見ていた気もするけど、思い出せない。なんだかこんな日がここのところずっと続いてて、その所為で疲労が溜まっているのか腰から下が重い。
 生理の時のそれに近いけど、別にあんな鈍痛が付いてくるわけじゃなく、単にダルいだけ。それに昼までには回復しるからそんなに気にしていない。

 まだ少し頭がボ~っとしてるけど、眼だけは冴えてしまっているのでこのまま寝ている事もできない。
 よ…っと身体を起こし、パジャマを脱いで着替えようとする。

 「……あ、まただ……」

 ボタンを外すまでもなく気付いてしまい赤面。
 薄手のパジャマだからはっきりと見えてしまう“はしたなさ”。

 尖っているのだ。私の乳首が。

 ここのところずっとこれ。
 何かしらの夢を見ては朝身体がだるく、乳首は尖り、

 「……やだ…こっちも……」

 ショーツはベトベトになっていて使用不能。
 まぁ、そうなるとは思ってたから、コットン地の安物穿いてたんだけど。

 お陰で寝る前はナプキンを貼り付けて寝ている始末。それでも溢れ出てしまう。

 困ったなぁ…介護用の尿取りパットにしようかなぁ……
 等と悩んでしまうほど。

 兎も角、どういう夢かは全然思い出せないんだけど、景太郎が出ていた事だけは何とか思い出せる。
 景太郎の夢を見た日の朝は必ずこうなる。
 つまり、ほぼ一ヶ月毎日景太郎の夢を見てこうなっている。

 だけど、何が漏れているのか最初は解からなくて大変だった。
 何せベタベタして白っぽい粘液が膣から零れ落ちているのだ。今までこんな事は無かったから何かしらの病気になってしまったのかと酷く怯えたものだ。

 『あ~…これな、気にすんなや。
  オンナやったら誰でも漏らすモンやし』

 とキツネが言ってくれなければ病院に駆け込んでいただろう。

 <愛液>

 そして<本気汁>。

 男を求めた女の本能が垂らす、言わば“涎”だとキツネは言っていた。恥ずかしくて一回殴っちゃったけど。

 だってそれは男を求めているという事で、盛りたいと思ってるって事で、

 景太郎と…エッチしたいって…したくてしたくてたまらないと欲求不満になってるって事……

 流石にそんな事は認められない。
 だから殴っちゃったんだけど……

 でも、困った事に私の中にある一部は確かにそれが……

 重くなった腰をおして身体を起こし、念の為にと多い日の夜用ナプキンをショーツに貼り付け、服を着て部屋を出る。
 ダルさを誤魔化しつつ階段を下りた所で聞き慣れた声に反応し、自然と玄関に眼を向けてみると、

 「あ、成瀬川。おはよー」

 笑顔で挨拶してくれる景太郎の顔。

 ずくんっ


 「う…」

 表面上は笑顔のまま。
 だけと内心は背中を汗でびっしょりと濡らしつつ、

 「あ、景太郎。おはよー」

 と返事ができたのには自分でも感心してしまう。

 景太郎を見た瞬間に腰の重さが増し、太股に滑りを感じた。
 早くもショーツに貼り付けてあるナプキンの限界を超えて溢れ出たのだろう。

 「き、今日もモトコちゃんと朝稽古? 朝から…げ、元気ねぇ…」
 「? う、うん。まぁね…今日も一本も取れなかったけどさ……」

 あはは…と力なく笑う景太郎。
 隣でモトコちゃんが何か言ってるし、景太郎の横にいるのも何とか解かるんだけど、それすら目に入らない。

 聞えるのは景太郎の声。
 見えるのは彼の横顔。

 馬鹿面だとか、エロガッパだとか罵ってきたけど、この顔が見られない日々ほど辛い時は無かった。
 留学している間も、毎日とは言わないけど、それに近いスパンで涙で枕を濡らしている。

 心はすっかり彼に頼り切ってて、彼がいないと生きていられない。
 彼と一緒にいたい。

 そうは思うのに口に出す事が出来ない……

 「…でさ、そこで回りこまれちゃって…」
 「バッカね~ モトコちゃんの方が長く修業してるんだから当たり前じゃないの」

 軽口なら幾らでもたたける。
 悪口も言えるし、殴り飛ばす事も出来るのに、何で本心が言えないんだろう……

 「あ。でもさ、木刀を合わせられるくらいにはなったよ」
 「あはは…景太郎にしてはやるじゃない」

 ずっと一緒にいて……


 そう言うだけなのに。

 景太郎なら『うん。いいよ』と言ってくれるのは解かってるのに……

 万一…
 万が一という確率が恐ろしくて仕方が無い。

 あぁ…景太郎……

 景太郎ぉ…………

 あぁあぁあああああ…………




 二歩後を歩く素子にははっきりと見えていた。

 なるの眼差し……景太郎を見つめる眼は熱病者のそれと同じ。
 ぷしゅ、ぷしゅっと潮を吹いて床を汚しながら歩いている なるの姿。

 ミニというには余りにミニ過ぎるスカートの尻の部分も濡れ汚れており、はしたない牝の発情した匂いがぷんぷんとしている。

 そんな彼女の姿を見つめている素子の眼は優しい。

 汚らしいあさましい牝の姿。
 愛おしい男に犯され、嬲られる事を悶々としつつ待っている。

 自分らと同じ“生態”になっている なる。

 正直になった なるの肉体からだを見いだし、わが子との様に祝福しているのだ。

 だが、それでも不満が全く無い訳ではない。

 なるは、そこまで追い詰められているというのにどこか倫理を持ち続けているのだから。

 何故なら、ナプキンで濡れている事を隠しているからだ。

 馬鹿だ…と思う。
 正気か? とも思う。

 自分らは女なのだから、
 自分らは牝犬なのだから、景太郎に向って股を濡らして足を開けばいいのだ。
 入れて、犯してと彼に頼めば腹が裂けるほど精液を注いでもらえるし、気が狂うほどイかしてもらえる。
 物の様に扱ってくれ、尊厳など踏み躙ってくれて嬲ってもらえる。

 それを自分から拒否してどうするんだ?

 毎日毎日、薬を飲ませて暗示をかけ続けているのだが未だにこの有様。
 脳に重大な障害でもあるのでは無いだろうか?

 「……何とかしなければ……な…」

 相変わらず素子の存在に気付けていない なるは、浴場の眼差しを向けつつ景太郎との会話を噛み締めていた。

 ……汗を流しに風呂へと向っているのに全く気付けず、一緒に入浴している事すら気付けないまま………




―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
                           -盲・愛-
                            File:卅捌
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 ぬぢゅぅうう……

 「あぁ……っ あぁああああああっっ!!」

 肉を割り、入りこんでくる灼熱の凶器。
 それに対する嫌悪や抵抗を持つほど落ちぶれてはいないので、強い締め付けは快楽への期待から。
 だから肉を割るという処女特有の性器の固さを彼に与える事も出来るのだから嬉しい限り。一石二鳥と言って良い。

 コ…ッと腹の奥で何かが当たる。

 言うまでも無く子宮口まで一気に到達した彼のペニスだ。
 自分の肉体からだで彼を歓迎しないパーツは存在しないので、その子宮口すら口を綻ばせて亀頭を咥えようと躍起になる。

 ぬぢゅるる……


 「あぁ……」

 だが、無情にも亀頭は後退りを始め、肉襞を掻き毟ってはくれるが子宮からは遠ざかってしまう。
 当然ながら彼女の声には涙が混ざる。

 ぶぢゅっ!!


 「あぁっ!! ンんっ!!」

 次の瞬間、一気に刺し貫かれて子宮内にまで亀頭は侵略してきた。

 無論、普通の女の身体であればその時点で子宮は裂けてしまう。

 だが彼女の身体は、
 彼女“ら”の身体は、既にこの愛おしい相手の肉体からだ同様に人のを凌駕している。

 だからゴムの様にしなやかに愛おしい男のブツを受け入れ、肉ビラで持って舐めしゃぶって歓迎し、尚且つ快楽の海に沈む事が出来るのだ。

 ぶぢゅっ、ずぢゅっ、ぬぢゅっ、ぐぢょっ、ぶぢゅっ、


 「あ゛、あ゛ぁっ、う…ンっ! か…ぁ く、ひぃっ! あ…っ ンぁっ」

 子宮口を叩く…のではなく、子宮壁を叩くピストンに、若い身体は跳ねるように喘えいでいる。

 肉襞がざわめき、肉ビラが蠢き、子宮が締め付ける。
 性器の全てが彼を歓迎し、肉体全てが快楽を与えようと躍起になる。

 待っていたのだから。
 ずっとずっと待っていたのだから。
 彼の事が大好きで大好きで気が狂いそうだったのだから。

 それ彼が抱いてくれているのだから……

 脳神経は余りの多幸感に焼き切れる寸前。
 快楽神経も余りの気持ち良さに焼き切れる寸前。

 お陰で身体を動かす事がままならず、彼の突き込みをただ受け止めるだけ。それとて深すぎる程の快楽なのだが。

 どぶっ、どぶっどぶっどぶっどぶっ、


 「……………っっっっ」

 アクメはガトリングの弾の様に叩きつけられ続けている。
 完全なる絶頂は、何時も何時も射精で齎される。

 子宮内を満たす事等一瞬だ。
 如何に子宮口を締め付けて精液を逃さんとしても、余りといえば余りの量に耐えられる訳も無く、あっという間に逆流してしまう。
 それに、彼は膣内全てに自分のザーメンを擦り付ける事を好むのか、射精しつつ長いストロークでピストンを行う。

 人外の射精量を誇る彼だからこそ出来る技だ。

 ぬ゛ぢゅっ、ぢゅっ、ぶぢゅっ、ぬぢゅるっ、ぶぢゅるっ、ぬ゛ぢゅるっ、


 処女膜を裂いてもらい、研磨され、ヒーメンは欠片も残っていない。
 あったであろう部分も既に肉襞の一部と化し、亀頭のカサを必死に舐って奉仕する。
 襞の隙間隙間に異様に粘度の高いザーメンが擦り付けられ、一生消えない雄の香りを染み付けられて行く。またそれが堪らない。

 射精しつつ、ピストンしつつ、意外に力が強い彼は彼女の身体を持ち上げ、ぐるん…と膝の上に乗せた。

 ぢゅる…っ!!


 「か…は……」

 白目になり、舌を突き出して海老反る。

 対面座位…というか抱き地蔵の体位。抱き抱えられるというプラスの快楽によって頭の中がパチンと弾けた。

 それが彼女が、

 「お、お兄ちゃ……」

 浦島可奈子がギリギリまで憶えていた記憶である。






 「ごめんな、カナコ。やり過ぎた」
 「いいえ…サイコーでした」

 可奈子が意識を取り戻したのは三十分ほど経ってからだ。
 その間、意識の無い可奈子の肉体からだはずっと最愛の兄である景太郎に犯され続けていた。

 敷布団は既にどろどろに穢され尽くしており、たとえ布団クリーニングに出そうと匂いは絶対に取れる事はあるまい。匂いを消すというそんな勿体無い事等する訳もないが。

 無論、可奈子は全く気にしたりしていない。

 自分の肉体からだは兄を悦ばせる為、そして兄の仔を身篭り養う為にあるのだ。
 その兄が自分の肉体からだに夢中になってくれたのだから、誇りこそあれ迷惑など感じる訳が無い。

 今もピッタリと身を寄せて、兄の腕枕という最高の場所を味わっている。
 嗚呼、何という幸せか…罰でも当たりそうだ…と顔も緩みっぱなし。

 景太郎はそんな義妹が可愛いのか、苦笑しつつ優しげにその髪を撫でてやる。
 子猫のように身をよじる可奈子。無論、余りの幸せで…だ。

 だが、やはり不粋という言葉が存在する証拠のように、そんな一時を邪魔する声もあった。


 「ところでカナコ」


 素子である。

 「………………………………………………………………………………………………何ですか?」

 至福の一時を邪魔された少女は、もっそ不機嫌な声でそれに答えた。

 景太郎の右腕を枕にしている可奈子の丁度真反対。景太郎の左腕を枕にしているのは青山素子その人である。

 まだ夜では無く、真昼間の可奈子の部屋。

 キツネは意外にも日向に出ており、むつみとなるは大学だ。
 しのぶとカオラは高校だし、サラも学校。

 残っているのは浪人中の素子と受験勉強中の可奈子、そして今日は出るべき講義が無い為に残っていた景太郎の三人である。

 となると、やるべき事は一つだけだった。

 無駄に変装用の衣装を取り揃えている可奈子であるから、当然の様に雷華の制服もある。
 二人は上だけ制服を着、下は白いソックス以外を身に着けていない。言うまでも無くイメージプレイ直後だ。

 拉致監禁されて陵辱される女子高生という設定で、二人は…素子にとっては久しぶりの…雷華の制服(夏用)に袖を通し、景太郎とのプレイを楽しんだというわけである。

 最初に嫌がる素子が可奈子の目の前でたっぷりと犯され、次に可奈子が言葉で散々嬲られて犯される。
 そういったシチュエーションも大好物だ。
 特に景太郎に犯されて彼のモノにされるという感触は何時まで経っても慣れる事無く気持ちが良い。

 まぁ、愛している相手にされるからであり、景太郎以外の男が触れようものなら意識どころが物理的に首を刈り取るのだろうが、それは兎も角。

 三時間に及ぶプレイもひと段落をつけ、今はピロートークを堪能していたのである。
 ちょっと空気が重く悪くなってしまったのだが……

 「いや、とてもとても重要な話があったから声を掛けたまでだ。
  故意にお前の邪魔をしたかった訳では無いし、浦島先輩がこっちを向いてくれなかったからでもないぞ?」
 「そうですか……
  にしては絶妙なタイミングですね」
 「気の所為だろう」

 バチ…ッ!! と二人の間に物理的に火花が散る。
 当然ながら間に挟まれた景太郎は、寝ている直上で放電が起こっているのでハッキリ言って生きた心地がしない。

 この二人、決して仲が悪い訳ではないのだがよくこうやって衝突する。

 素子は景太郎への奉仕を全身で行える事を誇っているし、可奈子も景太郎への愛の為に自分の全てを放棄している事を誇っている。
 共に景太郎への愛が強大である為、ずっと競い合っているのだ。

 無論、彼に対する“甘え”も含まれている。

 ローテーションは女達で決めているし、就寝時には独占できるというのにこの有様。欲は尽きないという事か。
 まぁ、奪い合いに発展する事が無いのが救いだろう。

 「ま、まぁまぁ、二人とも。お、落ち着こうよ」

 そう言って慌てて取り繕う景太郎。
 この苦労性は生涯変わる事は無さそうだ。

 二人の髪を腕枕にしている手で撫で、交代交代にキスをしてやる。
 それだけで二人は子猫のように大人しくなり、彼に擦り寄って甘えてくる。

 お安い女達と言う無かれ。彼から与えられる愛撫が極上だからこそなのだ。


 身体も摺り寄せて汗の臭いまで堪能し、心が落ち着きかえってからやっと可奈子が口を開いた。

 「で…?」
 「んん~……?」

 素子に問い掛けるも、彼女は景太郎の匂いを堪能中。程好くマタタビに酔っ払った猫のよう。

 ピキっと可奈子の額に血管が浮かぶ。

 「そ・れ・で・?
  ナ・ニ・が・聞・き・た・か・っ・た・の・で・す・か・?」


 スタッカートで区切られた問い掛けが彼女の怒りを大きさを物語る。
 怒気を感じる事には慣れているし、実姉の鶴子に比べれば微風のようであるが、それでも大した怒りのオーラだ。

 景太郎などガクブルしていてブツも縮こまってしまっている。

 それに気付いた可奈子は慌てて怒りを納めて彼のペニスを手で撫で、謝罪の愛撫を行う。

 怒気を感じなければ絶倫な景太郎の事。ぐにぐにと動かしてゆくとあっという間にそそり立って硬さと熱さを取り戻した。

 流石はお兄ちゃん…と可奈子の頬も赤い。

 彼の息が少しだけ荒くなってきたので、すわ六回戦目の始まりかと期待した時、

 「景太郎先輩。すまんが、風呂に行っててくれ」

 と素子が水を注した。
 肉体からだが気分に乗ってきたところなので可奈子のショックも大きい。

 「え? 風呂?」

 景太郎が息を荒げて疑問を述べた。
 熱い息を零す景太郎に素子の肉体からだも疼くが今は必死に我慢し、露天風呂で待っているようにと再度告げる。

 「次は風呂でもてなそう。
  無論、何でもするぞ。Wフェラは当然として、重ね餅だろうが、ワカメ酒だろうがお前が望む事を何だってしてやる。
  だから先に行って待っててくれ」

 何時もしている事であるし、『ワカメ酒は私はできないじゃないですか』と可奈子が呟くが景太郎は気にならない。
 何でもしてやるという素子の言葉だけが強く耳に響いているのだから。

 景太郎は二人をもう一度抱き締めて頭を撫でてから身体を起こし、全裸のまま部屋を後にして行った。

 「じゃあ、待ってるから」

 と言葉を残して。

 後に残っているのは美少女二人。
 抱き締めてもらった心地良さと、これから起こる快楽の渦を期待して腰が重くなって動けないのだ。

 それでも何とか気力を振り絞り、のろのろと身体を起こす。

 「それで……本当に何なんですか?」

 スカートを穿くような不粋な真似は行わない。
 制服を脱ぎつつ可奈子はそう素子に再度問い掛けた。

 「ん? あ、ああ、そうだったな…」

 最近着ける様になった大きなブラを外し、全裸になりつつ言葉を受ける。

 だが、身体を起こした事によってトロリと股間から精液と愛液のカクテルが滴って来、直に手で受けて舐め取ってゆく。
 可奈子も問い掛けはしたものの同様に己の膣内でシェイクした淫猥過ぎるカクテルを舐め取っている。

 一頻り舐めた後、素子は可奈子に眼を戻し、

 「成瀬川先輩の事なんだが…」

 と、やっと本題に入った。

 「なるさんの……事ですか?」
 「ああ…」

 全裸となって手で身体を拭う。
 全身のこびり付いたザーメンは自分達だけの宝物。布地なんかに分けてやる義理など無い。
 背中に着いたモノなどもちゃんとお互いで舐めあうので問題ない。
 これが“現在”のひなた荘内での極普通の光景だ。

 なるの様に性行為が無い方が異様に映ってしまうほどに。

 「もっと薬を使用できないのか?
  未だにくだらない倫理に縛られて肉体からだの欲望を無視し続けているぞ」

 それは素子の見解であり、実際には なるの意識は既に倫理が千切れかかっている。
 だが、素子はそれに気付いていないし、可奈子もその弁を鵜呑みにするしかない。

 だからその話を聞き、可奈子は深い溜息を吐いていた。

 情け無いからだ。なるという女が。

 「はぁ……優柔不断は相変わらずですか……まさかまだ倫理何かに縛られているとは……
  見下げ果てた馬鹿ですね……」
 「全くだ」

 背中側のザーメンを可奈子に舐め取ってもらった後、その彼女から衣装を受け取りそれを着用する。
 スクール水着である。それも昔のデザインの。
 これは、胸元から入った水がクロッチの直上から抜け出る仕組みになっており、女子の間でその部分は排尿時にし易くする為に捲れるようになっていると思われていた奴だ(実際に排尿にしようすると、やや使いにくい)。
 胸元には大きく「もとこ」と書かれていた。

 無論、一緒に入浴する為に身体を隠すよう…という配慮では無く、単にスク水プレイに使う為だ。
 現にサイズが小さく、胸元がはち切れそうである。

 そんな素子の胸を見て羨ましげな溜息を一つ吐きつつ、

 「…でも、困りましたね。
  これ以上強い薬は使用できませんし……」
 「そうなのか?」

 これ以上…という事は相当強いものを使っているという事だ。
 今更ながらその事実を知った素子は驚いて体操服とブルマを着用してゆく可奈子に問い返した。

 「はい。
  今ですら日常の行動が変に…まぁ、私達からすれば“それ”は当たり前の行動ですが…なっています。
  “あの”誘引剤は我が家に古くから伝わる秘薬の一つで、一応法には触れてませんがその強さはヘロイン一歩手前のシロモノです。
  流石に中毒にすると拙いですし、なるさんが壊れるとお兄ちゃんが悲しみます。
  ですから、彼女の体調と体力から鑑みて、あの薬の使用回数の限界は後三回未満。それ以上は責任が持てません」

 “あの”妙に不安定な状態。
 自分の状況を理解できていない呆けた状態は、何時も朝食後くらいには回復している。

 尤も、だからこその心配だと言えよう。

 ちゃんと“正気”に返らないからだ。

 ちゃんと性欲と愛欲に溺れ切らないのだ。呆れた恥さらしである。
 未だ“正気”に返っていないのだから。

 オンナは惚れた男の牝奴隷であり、性欲処理生物である続ける事が誇りであり幸せであるというのに……

 「ふむ…」

 兎も角、そんな なるの事を考えて素子は首を捻った。

 そうなると後二回で畳み掛ける必要があるのだから。
 となると……

 「明晩…いや、明後日くらい…か?」
 「そうです」

 今のなるの身体は、初体験直前の素子の肉体からだと、薬が効いた時のカオラの肉体からだと同じ状況である。

 つまり、なる本人は全く気付いていないのであるが、彼女の肉体からだは飢えの限界に達しているのだ。
 このままでは肉体の欲求と精神のバランスが完全に破壊され、最悪廃人と化してしまう。

 こうなってしまうと時期と方法は一つしかない。

 「…多少、強引な方法となるが…私達のシアワセと成瀬川先輩の未来の為にはやるしかないな」
 「ですね。仕方ありませんね」
 「ああ…仕方が無いな」

 そう、どうなったって仕方が無い――のだ。






 はぁ………

 中々寝付けない寝苦しい夜。
 なるは熱い溜息を吐いていた。

 都心部は兎も角、ここひなた市ひなた町では涼しさも回復し、結構快適に床に就く事が出来るようになっている。
 流石に掛け布団を二枚に…とまでは行かないが、それでも掛け布団をかぶって眠る事が出来るほどまでには涼しさを増していた。

 そんな気候になってきてはいても、なるの息はかなり熱い。

 そして夜着もかなり薄着だ。

 いや、薄着というカテゴリーとはややベクトルが違うだろう。

 今の彼女はパジャマをやめており、かなり粗いニットの薄紫色のシャツに黒いショーツのみ。そんな姿で横になっているのだ。

 粗い目のニット…と言えば聞えは良いが、その実は碌でもないものである。
 バレーボールやテニス等に使うネットほど目が粗いのだ。
 これはつまり、肌を隠すと言う機能がまったく備わっていない事を示している。
 現にその紐と紐の間からは硬く尖った乳首が突き出ているのだから。

 ショーツにしても、完全に夜のデート用…それもディープなもので、性器を覆い隠す部分のみが存在しない黒の紐パンである。
 
 なるはこんな物を着ける女ではなかった筈であるが、彼女は極自然にこれを着用し、凄まじい淫蕩さを感じさせる熱い呼気を繰り返しつつ眠りについていた。

 暑い日の浅い眠りは淫夢を誘うというが、当然の様になるもその淫夢の只中にいる。

 乳首が尖っているだけではなく、剥き出しの性器からじくじくと愛液が溢れ出て、シーツに染みを作っている事からもそれが解かる。

 だが、どんな夢を見ているのか本人も理解できていない。
 見ている本人も、それがどんな夢であるのかさっぱり解からないのである。

 それでも なるはその夢を見ていたかった。

 抗い難い気持ち良さと、幸福感。
 涙が溢れ出るほどの感動と満足感。

 それらに満ち満ち溢れた素晴らしい夢。

 それらが なるの心身を蝕み、穢し続けているのだが気付く訳もない。

 そんな中毒症状がある夢の所為だろう。

 部屋の戸が開いた事に気付けなかったのは――






 ぬちゅぬちゅ…と、聞きなれない音が耳に入ってくる。
 そんな泥濘の音がしているという事までは理解できたのであるが、何故そんな音が聞えているのか…というところまでは思考が及ばない。

 くすくすと小さい笑みが聞え、ぼそぼそと呟く女の声もする。
 人の気配も感じられ、その数は結構多かろう。

 だというのに彼女は、成瀬川なるの意識は覚醒してくれなかった。

 夢の所為もあろう。
 絶対に目覚めたくないと思わせるほどの魅力をもっている中毒性の高い夢の……

 だが、それより何より、ここのところ身体が異様にだるく、途中で目覚める気力も体力も無いという事が大きいのだ。

 何だかこの一ヶ月の間、身体が異様にだるくなって直横になりたくなる。
 着替えは済んでおり、そのまま横になる…というのがここのところの日課となっていた。

 朝も目覚めるとやはり身体が異様にだるい。
 時には見知らぬ下着を着けている事もあるし、顔や髪に変なものが付着していてパリパリしている事も多い。
 朝起きてから結構長い間、乳首が尖りっぱなしで、特定の人物…景太郎が近くにいると一向に治まりを見せてくれない。
 おまけに彼の側にいるだけで愛液が溢れ滴るのだ。

 浦島景太郎に発情している……


 それはキツネに指摘された事であるが、彼女に言われるまでも無く なるはその事を自覚している。

 大学なんか行きたくない。ずっと景太郎の側でいて離れずくっ付いていたい。
 その想いは日々強さを増している。

 だというのに、生来の気性からそれを彼に見せる事ができないのだ。その事が余計に飢えを増長させてスパイラルに陥っているのだがそれに気付けていないのが彼女の不幸と言えよう。

 みし…と気配が近寄ってくる。
 それでも なるは眼を開けられない。

 ざわりと周りを囲まれている。
 それが解かっているというのに夢から離れられない。

 気配がさらに動く。
 体重は感じないが、圧し掛かるように上にある事は解かった。

 怖い。
 そう、怖い。

 だが、その恐ろしさより、今見ている夢を手放す事の方が更に恐ろしかった。

 「あ、んんん……あン♪」

 甘い甘い蕩けた声が下の方から聞こえてくる。

 ぽた、ぽた、と顔に熱い液体が滴り落ちてくるのに、やはり目覚める事ができない。

 ぬちぬちと滑った音が顔の直上から聞こえるが、それでも同じだった。

 「あ、あぁ…あぁああああ……じ、焦らさないで…ください……」

 ……………………?

 聞いた事がある声だと感じた。

 いや間違いなく自分はこの声の主を知っている。

 身体の自由は戻らないし、意識も混濁化したまま。
 それでも何とか瞼だけは動かせるようだ。
 なるは全力で目に力を送り込んで瞼を何とか孤児ある事に成功した。

 と……

 ず、にゅぅうう……


 「はぁあああああ……っ♪」

 頭はボケたままで理解はできない。
 大きく割り広げられた肉の亀裂に、黒々としたぶっといモノが押し込まれてゆく。
 それでも“それ”が何をしている事なのか理解が全くできていない。

 「あぁっ、あっ、ああ、くっ、は、早く…早く、破って……」

 苦痛も拒絶の色の皆無。
 あるのは歓喜と感動のみ。

 切羽詰ったギリギリの声で女は何かを求め、必死にそれを促している。

 『……あれ? この声って………………モトコ…ちゃん?』

 惚けた頭がそんな事に気付いたその瞬間、

 ぶつ…っ


 と、何かを裂く様な音が聞えた気がし、その黒い凶器が更に奥に入って行った。

 「はぁ……っっ あぁああ、あぁぁあああああああああああっっっ」

 凄まじい悲鳴だった。
 尚且つ絶頂と快感以外の意味を全く感じられない。

 ずりずりと乱雑に引き戻されると薄赤いベロの様なものが“それ”に付いて来て、ぐぢょっと押し込まれると中に付いて行く。
 ぶぢゅっ、ぐぢょっ、ぶぢゅっ、ぐぢょっ、とその黒い柱が往復し、一回一回それに付いて来ては押し込まれ、ついて来ては押し込まれ…と実に健気で痛々しい。

 いや、実際にそれには血がまとわりついており、泡と混ざり合ってポタポタとなるの顔に滴り落ちてくる。

 「あぁ、あんっ、あっ、あっ、あうっ、ひぃっ、んんっ…」

 じゅる…ぬ゛ぢゅっ、
 ぐぢゅるる…ぶぢゅっ、

 物凄い音を立てて出入りする。
 ぶっとい肉の柱がそこを割り、掻き毟って抉り出す。

 それに合わせて素子の嬌声も黄色みを増す。

 「ああ…スゴイ声やなぁ…今回は遠慮なしに出しとるな」
 「キツネ顔負けやな」
 「本当だ」
 「うっさいわっ」


 誰かの声が聞こえる。
 気配も。

 だけどそっちには構ってられない。
 目の前の様子から眼が離せない。

 何であるか解からないのに、その出入りする何かが愛おしくて、
 何であるか解からないのに、それを入れられている肉の亀裂が羨ましい。

 何だろう? 何だろう?
 頭が回らなくてもどかしい。

 びくんっ、とそれが震えた。

 ずひっ、ぢゅっ、ぢゅっ…


 と、その中を何かが走りぬける音も聞えた。

 「あぁああっっ!! あは、あぁぁぁぁぁああああああああっっっ!!」

 プシ…
 プシャアアア……ッ


 歓喜の雄叫びが上がり、その接合部から勢い良く液体が吹き出し、なるの顔を汚す。

 びゅくん、びゅくん、びゅくん…と重く脈動を続けていたそれがやがてゆっくりと後退りを始めた。

 それは、内臓を貪っていた肉食獣が腹から頭を出すシーンが なるの頭に思い浮かぶ。
 違うのは獲物。
 襲われ、貪られていた獲物は喰われるのを止められる事の方が苦痛のようだ。

 「ああ…ぬ、抜かれる…
  や、やぁ……出て行っちゃ…やぁ……」

 涙声で懇願する素子の声。
 幼女のようにむずがり、泣いて引き止めているのが妙に可愛らしい。

 だが、そのお願いは無視されて、ずるりずるりと引き抜かれてゆくそれ。

 太股に内側の筋肉に力が入り、きゅっきゅっと引き締められているのが なるの目にも解かる。
 抜かれるのがそれ程いやなのだ。素子は。

 だけど無情にもそれは抜け出てゆく。

 ドロドロと精液と破瓜血のカクテルを滴らせつつ、
 そのカクテルで なるの顔がベトベトに汚しつつ、

 それは素子の膣に大きく穴を残しつつゆっくりと引き抜かれてゆく。

 「また素子さんは処女膜を治したみたいですね~」
 「いいなぁ…あたしも早く出来るようにならないかなぁ…」
 「処女裂かれる痛みって気持ち良かったですからねぇ」

 完全に抜け出た時、切なげな溜息が素子の口から零れ、なるの股間に掛かった。
 そして なるも切なげな溜息が零れる。

 だが素子のものとは違い、感動後の溜息だ。

 理由が解からないが、なるは今の行為に深く感動していたのである。

 「さて、次はうちや」

 ふ…なるのと目の前にあったもの……
 素子の股間が消え、誰か別のものへと交代した。

 無論、他人の股間を凝視した事等無いので なるはそれが誰なのかさっぱり思いつかない。

 一本の陰毛も無くツルツルで、それでいて大陰唇が薄く開いて小陰唇がから顔を覗かせている。
 ぽたぽたと蜜を垂らして男を待つそれは間違いなく淫女のそれ。
 それでもその色は異様な程初々しく、まるで少女のように薄ピンクだ。

 ぴと……


 「あ…♪」

 押し当てられた硬いもの。
 処女膜を何度も引き裂いた愛おしい肉凶器が触れると、キツネの口から甘い声が零れる。

 ずずずずず……


 「あぁ…あはは…あは、あはは……」

 まだ血の色を纏わりつかせ、素子の淫液も乾いていないそれが、何の遠慮もなく突き込まれて行く。
 愛撫も何も無い。四つん這いの女に入れるという行動のみの行い。

 だが、それが良い。

 キツネには愛おしい男による行為全てが快楽なのだ。
 特にレイプと陵辱が大好物。
 惚れた男の物にされるという被独占欲の満足度は尋常では無い。

 それに…

 ぐちちちち………ぶつ…


 「か、
  はぁあああああああああああああああああっっっ!!

 素晴らしい絶叫が上がった。

 前述の通り、キツネは被独占欲が強い。尚且つ被虐心も強いMである。
 愛している男、惚れている男に犯され、処女膜を裂かれると言う快楽は何にも勝る。

 「あ~…キツネ、ええなぁ…」
 「スゥちゃんも私もまだ無理ですしね~」
 「私はもう少しでできるかと…」
 「うん。私も」
 「いいよなぁ~…回数が多い奴は」

 何か言い合っている。
 何か言っている。
 だけどそれは気にならない。
 ぐちゃぐちゃと犯されているキツネの股間から眼が離せない。

 血を流して痛みをその身に受け、再度処女を捧げられ悦びにキツネの腰が妖しく蠢く。

 じゅぼっじゅぼっと本当のレイプの様に、雄が己の快楽を満たす事だけを考えているかのような乱雑な突き込み。
 相手を労わる気持ちが全く無い腰使い。
 女の肉体からだを使っているだけのオナニーの動きと言って良い。

 だが、それがまたキツネは気持ち良いのだ。

 だからこそ、彼もその強姦行為を止めたりしない。
 だからこそ、いつも彼はキツネを思わぬ場所で唐突にレイプする。
 それこそが彼女の悦びなのだから。
 それこそが彼の優しさなのだから。

 ぶぢゅ、ぶぶ、ぶびゅるる……


 また、膣内なかに出した。
 相手の身体に対する労わりを全く見出せない、膣内射精。
 妊娠する危険性を顧みたりしない、彼女の尊厳を無視した陵辱行為。

 「あぁああ………あ…ああ…あぁ…ふぅ……ンん……」

 だが、キツネの声は何処までも甘い。

 孕ませて欲しいのだ。
 彼の子供を身篭りたいのだ。
 そして娘を産み落とし、一緒に奴隷となって一生を送りたいのだ。

 何故だろう?
 なるは再度ザーメンカクテルを浴びせられながらキツネの心情を完璧に理解し尽くせていた。

 素子よりアクメは深かったのだろう。
 キツネはなるの上に座り込んでしまった。
 圧し掛かられた豊満な肢体は不思議と心地良く、口に押し付けられた股間から溢れ出る精液が堪らなく香ばしく、更に舌に美味しい。

 何時しか なるはキツネの淫裂の中に舌を突き入れて精液をなめす吸っていた。

 「ああ、駄目ですよキツネさん。次は私なんですから」

 「あ……」

 しのぶの声が聞こえ、キツネの身体がどかされてしまう。
 もの惜しげに舌で追うも、精液滴る穴は既に口の側に無い。

 代わって顔前に来たのはまた別の性器。
 キツネのまのより赤さが濃く、彼女のものより使い込まれ、それでいて幼い性器。

 何度も何度も愛おしい雄のペニスを貪り、はしたなく涎を垂らしている若いヴァギナ。

 「ま、キツネのもモトコのも“元”に戻せるしな」
 「あはは…私達も頑張って回数を積みましょうね」

 「あぅう…っっ」

 溜息は短め。
 入ってくる異物感。肉を割られてゆく感動。

 尻を振り、アナルをヒクつかせて しのぶは肉柱の感触に一瞬で酔い潰れる。

 ぐぢゅぐぢゅと秘肉が啼いているのは入れなれたペニスを歓待しているから。
 膣粘膜も肉襞も、そして子宮も、彼のカウパーが触れると一瞬で初体験の記憶を思い出して肉柱に奉仕したくて我先にとざわめきをもたらす。

 恰も別の生き物のように。

 ぶぢゅっ、ぶぢゅっ、ぬ゛ぢゅっ、ぐぢゅっ、ぬ゛ぢゅっ、ぶぢゅっ、


 「あ、あはっ、きゃんっ、あぅっ、ンっ、ンンンっっ」

 普通、この年齢の少女の膣は固い。
 外見は女へと変わりつつあってても、内面はそうは行かないのだ。
 だから大半の少女は性交時に弊害が出て来て、セックスの気持ち良さを余り感じる事ができないし、相手も只入れて出すだけの快感しか感じられない。

 女の味は膣が慣れてほぐれてからが凄いのである。

 そしてしのぶは慣れてほぐされていた。

 いや、彼女だけではない。
 この寮の女性は、なる以外の全員がほぐされている。

 だから出入りする肉柱にラヴィアが纏わり付いて引き止め、引きずり出されたペニスに付いて来られるのだ。

 ずにゅぅううう…………


 スムーズに、
 そして深く突き刺さってゆく愛おしい肉凶器。

 雄を喰らっている性器は、その気持ち良さを手放したくない為、必死になって締め付けて離すまいとがんばる。

 にゅぐぐぐぐ……


 虐めのようにゆっくりとなるピストン。
 それでもストロークは長い。

 しのぶの膣道は二段階に締め付けて止めようとするのだか、肉傘に引っかかれる度に意識が飛んで手放してしまう。
 僅か数センチの攻防。それでも皆、必死にペニスを咥え込んで頑張っている。

 だが、相手は心より愛している男。
 手放すまいと頑張れば頑張る程に彼を強く感じ絶頂が早まり、かき回されて泣かされてしまう。

 解かってはいる。
      自分らは決して勝てないという事を。

 解かっている。
      敗北こそが誇りである事も。

 だから皆、勝ち目の無い戦いを堪能し、敗北させられて悦に入る。

 女は惚れた男に侵略され、敗北し、蹂躙されるのがほまれなのだ。


 何故だろう?
 誰かがそう口に出した訳でもないのに、なるにはそう皆が思っている事が理解できてしまう。

 何故だろう?
 それを心底羨ましいと思ってしまうのは。


 だから なるは陵辱行為から眼が離せない。
 いっそ厳かと言えるその行為に感嘆してしまっている。

 だからこそ、
 なるの吐息も熱く、そして甘さを増していっているのだろう――




 犯されるしのぶ。
 膣内なかに出され、そしてやはり なるは顔にかけられる。
 だがその淫祭の終わり見えない。
 可奈子、サラ、むつみ、カオラ。顔は見えずとも、彼女らが目の前で犯されてゆくのだけは理解できた。
 
 やはり全員膣内なかに出され、膣内で精液を堪能し、全身で悦びを表わしてゆく。
 そしてまた素子が、

 「あぁあああ……っ!!」

 キツネが、

 「んあっ! あっ、ああああ……っ!!」

 “また”処女を散らし、なるの顔を汚す。
 そしてまた しのぶがくわえ込み、
 可奈子が、
 サラが、
 むつみが、
 カオラが膣で咀嚼してゆく。

 だけど終わらない。
 まだ終わらない。

 終わってくれない。

 素子がまた破瓜、
 キツネがまたも破瓜……

 何度も何度も破瓜血が降り注ぐ。

 ココロが弾ける。

 羨ましい。うらやましい。ウラヤマシイ……

 何度も何度も大切な初めてを捧げられてウラヤマシイと……

 そして快楽の汁が弾け肉体からだに降り注ぎ、またもっと清めてくれる。


 また一巡して素子が…

 血。


 そしてまたキツネが…

 血。


 しのぶが…

 愛液。


 そしてまた……

 精液。


 そして……

 血。


 愛液。


 精液。


 血。


 愛液。


 精液。




 ……

 …












 身体が重い…
 いつも以上に……

 鉛の様に重く感じる身体を無理矢理起こし、なるは布団から這い出るように部屋を後にした。

 全身がドロドロなのも気にならない。

 布団が妙な染みでがびがび。失禁の匂いも強いがそれすらも気にならない。

 精液で顔を汚したまま、全裸で廊下を歩いている事すらも……

 「おはよ~……」

 「あ、おはようございます」

 台所に行くと、何時もの様にしのぶが朝食の用意を行っていた。
 白いスックスとエプロンのみの姿で。

 だが、なるは気がつかない。
 いや、気付けない。

 「どうかしたんですか? 何だか眠そうですけど…」
 「うん。ちょっと変な夢見てさ…」
 「はぁ…」

 全裸のまま。
 ザーメンで汚れたまま冷蔵庫を開ける。
 何か飲み物は…と探してみるが、目に入ったのは麦茶のポットくらい。
 牛乳が切れているのだろう。

 まぁ、いいかと なるはそれを手に取り、テーブルの上に並べてあるグラスを手にとって注ぎ入れた。

 ドロォ~……


 とんでもない粘度で流れ落ちる、黄色みがかった粘液。
 だがその異様な様子すら全く気にせず、なるはその粘液を入れたグラスを口元に運んだ。

 ごく…


 何の躊躇も無く“それ”を飲む。
 ごぐ、ごぐ、と喉を鳴らし、ゆっくりとではあるが全てを喉奥へと流し込んで行く。

 その様子を見、しのぶはとろりと股間を濡らせていた。

 「ぷはぁ……
  変な味だったけど、けっこういけたわ。何コレ?」
 「あ、はい。健康カルピスです。特製絞りたての……」
 「ふぅん…」

 だから生温かかったのかな? と納得する なる。

 確かに嘘ではないのだ。
 今さっき、しのぶやカオラ、むつみや可奈子の膣内なかから搾り出したものなのだから。

 「まだゴハンまで時間あるわよね? ちょっと汗流してくるね」
 「あ、はい」

 グラスを置き、台所を後にする。
 その後姿をじっと見つめていたしのぶは、空になったグラスを手にとって なるが口を当てていた部分をベロンと舐めた。

 「良かったです……なる先輩が“正気”に返りかかってる……」

 ぐぢゅ…


 膣に浅く指を入れ、指先でそっと開くと奥からまだ精液が溢れ出てくる。
 それを口に運び、ぺちゃぺちゃと舐め取ってゆく。

 「こんなに先輩の精液、美味しいのに……
  それに気付けないなんて可哀相な なる先輩……」

 精液を舐め啜りながら なるに同情して涙ぐむ。

 “それ”が今のしのぶ達の“普通”なのだから。

 ことん…と座り込み、股座を掻き毟って悶え狂う。

 なるはもうすぐ正気に返る。
 もうすぐ“こっち”にやって来る。

 そうなると我慢などしなくて良くなる。
 何時でも何処でも景太郎に犯され放題となるのだ。

 それが彼女の官能を果てし無く高めてゆく。

 「ああ、先輩、先輩……大好きぃい……っっ!!」

 声を上げてオナニーに狂う しのぶ。

 同時刻、可奈子はキツネと淫事に耽り、カオラとサラも男風呂の方で絡み合っていた。
 そして森の中では素子とむつみが木に縛り付けられ、景太郎に犯され続けている。

 淫猥なる地。
 不浄なる楽園、ひなた。

 穢され、歪み、淫蕩さのみで塗りつぶされてゆく館の歯止めは……遂に消失してしまったのである。






[2319] Re[2]:Dotage ~妄愛~ <卅玖>  (ラブひな)
Name: Pixy◆a9e938a4
Date: 2007/09/25 17:20


 「ホンマ……こいつのここってキレイな色しとるなぁ……」
 「毎日毎日いじってますけど、まだまだ薄ピンク。やっぱりけーくんの入れないと駄目かもしれませんね~」
 「私達もまだピンクですけどね」


 ……何だろう?
 何だか人の声が聞こえる……


 「前の穴は新品やからキレイなんやけど、こっちの穴もキレイやなぁ」
 「……今考えてみると、後の処女から捧げたかった気もしますね」
 「あ、それええな。処女膜破られんのがいっちゃん最後。堪らんな」
 「……前から思ってたんですけど、キツネさんて処女だったんですか?」
 「お? こいつ乳首起ってんで。どんな夢見とんやろ」
 「……まぁ、いいんですけどね……」


 誰かに身体を弄繰り回されている気がする。

 だけど……身体が動かない。

 夢……なのかなぁ……


 「あは…どや? 昨日のんより大きい特製浣腸器や」
 「お~…って、思ったより容量が大きいな……成瀬川先輩の尻に全部入るか?」
 「さ~? 入れてみたら解かるんとちゃう? 別に溢れてもええんやし」
 「……それもそうだな」


 何だろう? 何だろう?

 また悪夢なのかな?

 早く起きなきゃいけないと思うのに全然身体が動かない。


 「さて、こっちもローション塗りますか」
 「って言うか、単にけーくんのザーメンですけどね」
 「なぁなぁ、しのぶ…ちょっと飲んでいいか?」
 「もぅ…毎回毎回駄目だよ。これはぁ、なる先輩の身体に擦り込むんだから」
 「ケチだなぁ…あ、じゃあ舐めとるのはOKって事だよな?」
 「あは…サラちゃんも好きですねー」


 早く、早く……


 「なぁ……どうせやったら剃毛せぇへん? けーたろのモンになるんやったら一緒やろ?」
 「テーモウって何? 何するん?」
 「成瀬川先輩の下の毛を剃るって事だ」
 「あはは…カナコやキツネみたいにツルツルにすんかぁ? そらオモロそーやな」
 「あのなぁ…うちは脱毛しただけや。カナコみたいにパイパンとちゃうわ」
 「うう……」
 「オレもまだ生えてねーけどな」


 あぁ……早く起きて……
 このままじゃあ……


 「良いじゃありませんか。お兄ちゃんも喜んでるみたいですし」
 「それは…そうですけど……」
 「とりあえず、うちが使ぅたヤツで毛ぇ抜こか。使いよる内に永久脱毛でけるやつや」
 「ついでに『景太郎専用』って刺青いれませんかー? どうせなっちゃんはけーくん以外の入れたりする訳ないんですし」
 「それはいい考えですが、今日は止めておきましょう。慣れてからでしたら自分で入れるでしょうし」
 「せやな。入れたいんやったら自分かウチらにするか? ウチは何時でもかまへんで?」
 「う~ん……やっぱり止めておきます。どうせなら皆一緒に入れたいですし」
 「あ、あたしも入れるのか?」
 「いやなん?」
 「あ、いや、そーゆー訳じゃねぇけど……」


 動いて、私の身体……っ
 早く……っっ
 早く逃げないと………私は、私は………っっっ


 「ほな始めるか。モトコはそこの穴とそこな。スゥは…」
 「うちアナルー」
 「ホンマ、尻好きやなぁ……
  残りのヤツはこの特製ローションを身体中に塗りたくるんや。ほんで乾く前に……」
 「美味しく頂く…と」
 「せや」


 あぁ……
 あぁああああ……ぬるぬるが……

 ぬるぬるが気持ち良い……ダメぇ……おかしくなる…っっっ

 あぁ…っっ け、景太郎の匂いが…
 景太郎の匂いがぁ………ひぃいいいっっっ


 だ、誰か…誰か助けて……

 おかしくなるぅ……おかしくなっちゃうよぉ……

 あぁ…あああ……き、消えちゃう……

 “私”が消えちゃう……
 
 消えちゃうよぉ……




 けいたろう…

 けいたろぉ…… たすけ……







 「あ……」

 顔にかかる朝日に気付けて、やっと瞼を開けられた。

 慌てて周囲を見回すがやはり何事も無い自分の部屋。つまりは全て夢だったという訳か。

 全身が汗でベットリと濡れており、息も荒い。ここのところ同じ夢を見て慌てて飛び起きるという日が続いており、奇妙な疲労だけが溜まり続けている。
 尚且つ、目覚めればその夢の記憶は全くないのだから始末が悪い。

 「はぁ~~…………
  ……何だろ? ストレスかなぁ……」

 胸に手を当てればまだ動悸が酷い。
 巷では残暑が厳しく、人々はその暑さに喘いでいるというのに、ここひなた荘は別段酷い気温ではなく、相も変わらずダラダラとした空気が漂っている。
 それが嫌という訳もなく、彼女はその居心地の良さを甘受し、浸り切っていた。

 兎も角、汗に濡れたままでは気持ちが悪い。
 時間を見れば七時前。このまま眠れば朝食に間に合わなくなる可能性がある。

 身体を起こし彼女はニット……というには余りに網目が大きいタンクトップを脱ぎ、ショーツも脱ぎ、着替えを取り出してタオルで汗を拭う。

 少し前まではパジャマを愛用していたのであるが、どういうわけか今の彼女は異様な夜着を着用している。 

 特にそのタンクトップ。網目が粗すぎて乳首が突き出るほどだ。ショーツにしても、ヒップラインこそ守られているのだが、大切なところは殆ど布地がなく、どちらかと言うと大切なところ“のみ”透けている夜の付き合い用のそれだ。

 以前の彼女であれば頼まれたって着けたりしない卑猥な夜着。

 それに外出時以外の服もかなり露出度が上がっている。
 尚且つそれに気付けていないのだ。

 ブラのカップで押さえるのが難儀する程、カチカチに乳首が起っていて、
 ショーツを穿く前に拭うのが大変な程、とろとろに淫蜜が滴っていても、彼女は身体の異常に気が付いていない。

 喉の渇きを思い出し、台所に行って冷蔵庫を開ける。
 あるのはどろっとした黄色みがかった白濁の粘液が入った器のみ。
 彼女は迷う事無くそれを手に取り一気に空ける。

 「ん~……こく、こくこくこくこくこく………ぷはぁ」

 唇の回りを舐め、残味を堪能しつつ台所を後にする彼女。

 その変貌は、
 その変わり様は形容すら難しい。

 だがそれは間違ってはいない。
 何故なら、そうなるべくしてそうされているのだから。

 それこそがあるべき姿なのだから。

 「やっと…やっとここまで漕ぎ着けましたね……」
 「そうですねぇ…」
 「……せやな……ホンマ楽しみやで。なる………」





―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
                           -盲・愛-
                            File:卅玖
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 「……おはよ~……」
 「え? あ、な、成瀬川…? ど、どうかしたの?」
 「……ん~~……ちょっとね……」

 明けて次の日の朝食時。
 何時もはもっと早く起きてそれなりに手伝っていた成瀬川なるが最後に食堂にやってきた。
 大学もあるし、ここの副管理人のようなこともやっている。その負担は大きく、彼が留学した直の頃は『あいつ…良く一人でやってたわねぇ…』と感心したものだ。

 だが、それでも学業等による疲労だけならこうまではならないだろう。

 えらくテンションが低い声ではあったが、寝過ごす…というのも間々ある事だ。
 が、彼女の疲れ切った顔を見れば流石に驚きもするだろう。

 ここのところの疲労具合もかなりのものだとは思ってはいたのであるが、今日はまた昨日より酷かった。

 げっそり…という程でもないが、明らかにやつれた顔。
 もっと背筋を伸ばしていた背も前かがみ。
 髪を整える暇も無かったか、或いは気付いていないのか、ややボッサリとして野暮ったくなっている長い髪。

 彼女の底力をよく見知っている景太郎ならではの驚きである。

 ただ…――


 『なる、気ぃ付いてへんみたいやな』
 『ですね…何時もの天然かもしれませんが』

 目配せをして小声で会話をするキツネと可奈子。
 他の面々は気にしていないのか何時も通りだ。

 景太郎にしてもなるの体調にだけしか気を使っていない。

 誰も気にしていない事もあるが、なる自身も全く気付いていないのである。

 彼女の今のその格好……――

 上はキャミソール一枚で、薄い…と称するには余りに薄過ぎる生地だからであろうか、突き出た乳首まではっきりと透けて見えており、
 下はショーツ一枚…それも白の総レース製の紐パンで、隠すという能力を殆ど有していない。
 ぶっちゃければ勝負下着である。

 なるは、そんな格好で食堂に来ているのだ。

 「ホレ、けーたろ。恋人なんやろ? もっと気ぃ使うたらな」
 「あ、うん。
  成瀬川、ホントに大丈夫?」

 キツネに促され、景太郎はなるに顔を寄せた。

 「うん…変な夢見て……ちゅ、ちゅ、んんん…
  ちょっと身体が…はふ…れろれろ…んっく…んちゅ…じゅるる……
  はぁはぁはぁ…だるいだけだから……平気よ」

 極自然に唇を重ね、舌を絡めあう二人。
 誰も気にしていないし、何も言っても来ない。

 気遣いイコール性愛という筈もないのに、二人は当たり前のように抱き締めあい、唇を貪り合っていた。

 そして誰一人として二人の行為……唾液を啜り合い、飲ませ合うという、ディープキスというよりは咥内性交に近い行為を誰一人として気にもしていないのだ。

 まるで、人前でも淫らな行為に耽る事が自然であるかのように……

 「でも、なるやん。顔赤いしココも硬ぅなっとんで?」
 「ンんん……っ だ、大じょ…んぁあっ」

 心配げな顔をして寄って来たカオラが、後からなるの胸を揉みしだきつつ乳首をクリクリと弄る。
 その快楽になるは悶えはするが嫌がりはしていない。

 「熱は…」

 可奈子は朝食を既に食べ終えているので、コップに入った白濁色の粘液を舐め啜っていただけ。
 だから なるの体温を測ってやる余裕があった。

 「ひゃうっ!!」
 「我慢してください。熱が測れないじゃないですか」

 なるの足の間に顔を寄せ、下着越しに舐め啜る可奈子。
 既に潤いがあったのだろう、じゅるじゅると音を立てて淫液が可奈子の喉を潤してゆく。

 只でさえ透けている淫猥な下着だ。なるの愛液を吸ってその秘肉の色すら見せている。

 ぱくりと丘ごと口に含み、ヴァギナに突き込む様にして舌を波立たせる。下から上、上から下へと舐め上げ舐め下げられ、なるは椅子が軋む程身体をそらせて快感に喘いだ。

 「やっぱり何処か悪いんじゃないか? 辛そうだけど……」

 心底心配そうな表情を浮かべ、景太郎はなるを自分の膝の上に抱き寄せる。

 なるはなるで、膝の上にちょこんと少女の様に乗る…のではなく、股を大きく広げてしがみ付く様に抱き付いており、景太郎の労わりを耳に受けてその身を火照らせていた。

 あ、いいなぁ……という声が二,三漏れ聞こえ、ぼんやりとした頭でも なるは優越感を感じてしまう。
 そんななるの心境など知る由もない皆は、席を立って彼女の身体に群がってきた。

 「なる、ホンマにいけるんか? 乳首カチカチやで?」
 「ん、んんっっ へ、平気…っっ」

 キャミソールを捲くり上げ、剥き出しになった乳首にかりっとやや強めに歯を立てるキツネ。

 「やっぱり熱あるんとちゃうん? れろれろ…ちゅうちゅう…ぷはぁ…汗も甘いで?」
 「んん…そ、そう…かも……」

 反対側の乳首をカオラに吸われ、舌先で弄られて涎を垂らしてしまう。

 「なる先輩さん…れろ…ぴちゅ…れろれろれろ…はぁ……
  こっちはちょっとしょっぱいですよ? やっぱり寝てた方が…」

 最早ショーツとしての意味合いを無くしている布切れを剥がし、ぷりぷりとした なるの尻を開き、アナルに舌先を突っ込んで味わって彼女の身体を労わるしのぶ。

 「クリちゃんもカチカチだな。やっぱ寝てた方が良いぜ」
 「そうですね…こんなにびしょ濡れになっていますし」

 サラに肉芽の皮を剥かれ、その指先でもって嬲られ、可奈子にラヴィアをかき回される。

 「ほら、けーくんのおちんちん触っても気持ちよくないでしょ? なっちゃん病気なんですよ」
 「う…ンんん…っ あうっ! あっはぁっ、ひぃいっっ! う、うん、そうかも……あぁっっ!!!」

 むつみはなるの手を景太郎の反り返った肉柱に導かせ、握らせて扱かせる。
 男に性器に触った事も弄った事も奉仕した事もない なるの手だ。その動きはあまりに拙い。

 なるは愛している男の生殖器に触れているのに絶頂を迎えられない恥知らずはあるが、幼馴染であるむつみはそんな なるを見捨てはしない。
 なるはオンナとして劣等生なので、導いてあげなければいけないのだし。

 ギンギンに反り返った景太郎のペニスに素子が顔を寄せ、愛おしげに舌を突き出して奉仕を始めた。

 女達に全身を嬲られつつ、なるは景太郎の肉柱を味わっている素子を羨ましげに見つめ続けている。

 いや、実際になるは素子が羨ましかった。

 両胸をキツネとカオラによっていたぶられ、
 アナルをしのぶによって嬲られ、
 性器をしのぶと可奈子によって玩ばれ、
 むつみによって景太郎のペニスに愛撫させられ、
 素子に奉仕を見せ付けられている。


 何処かおかしい。
 変だ。


 実際、皆の格好も変なのだ。
 何故か下半身が裸で、全員が太股はおろか足首までを股間から溢れ出た淫蜜で濡らしているのだから。

 しかし何故か気にならない。
 気にできないのだ。

 何時しか全裸にされたなるは、朝食を片付けられたテーブルの上に乗せられ、その身体を皆に舐めしゃぶられている。

 それでも思考は矛盾を訴えてくれない。

 精々、調子が悪いと思う程度だ。

 「成瀬川先輩…」

 全員の舌愛撫に喘ぎに喘いでいた なるに、相変わらず景太郎のペニスを堪能していた素子が語りかけた。

 「貴女は絶対に病気なんです」

 え……?
 あ…そう…かも……


 「景太郎先輩をそんなに愛しているのに、その男根に触れても盛れない……
  牝犬としては致命的なんですよ?」

 四人がかりで足をMの字に広げられ、肉の亀裂をぱくりと割られる。
 白っぽい本気汁が溢れている処女穴。未だ到来者もおらず穢れが全く無いはずの若い性器であるそこ。
 しかし肉芽は皮が根元まで捲れ、膣は肉襞がざわめき、本人無自覚の飢え渇きを訴えている。

 それは男を…浦島景太郎のペニスを待ち望む肉体からだの訴えであるが、本人が男を知らぬ未通女おぼこであるが故に何を求めているのか理解できていない。

 「わ…たし…牝犬じゃ……」

 あれ……? 私、何言ってるんだろう……?
 私は、景太郎の     のはずなのに………


 「ほら、そんな戯言を言う。
  貴女の永遠の望みは景太郎先輩専用の汚らわしい牝犬。性奴。穴。そうだった筈ですよ?」

 え………? うん……そう…だった……かなぁ?


 「ち、違………」

 ささやかな。
 飽く迄もささやかな声が抵抗を見せる。
 だが、それは口から出た声のみであり、他の女達の舌で嬲られている肉体からだは悦びに溢れ、どろりどろりといやらしい蜜の量を著しく増加させている。

 「違わない」

 うん…多分そう……
 だって私、私は……景太郎の……


 「違……や…め……」

 途切れ途切れの意識の中から泡の様な言葉が漏れる。
 思考は景太郎への飢えを肯定しているのに、その泡は未だに否定していた。

 心も、肉体も、既に彼への肉欲を求めているのに、その泡のみが否定する。
 嘆かわしい限りだ。
 
 無論、既に身も心も景太郎の愛奴と化している素子がその差異に気付かぬ訳が無い。

 全身全霊で彼を愛し、愛してもらっている彼女からすれば汚らわしい抵抗である。

 確かに自分だって最初の時には否定する気持ちはあったのだが、今では過去の話。
 一年どころか半年すら経っていないというのに、素子の心身は景太郎一色に染め上げられているのだから。

 だから肉体からだの本心を受け入れられない愚か者に対しては憎しみにも似た腹立たしさすら湧く。

 特に成瀬川なるのような、強く強く愛されているというのに答を有耶無耶にして逃げ回っていた優柔不断女には――


 素子は景太郎の手を取ると、

 ずぶ…


 いきなり彼の指を、べとべと濡らされているのを曝け出されている なるの膣に突き入れた。

 「ひぃ……っ!!」

 なるは皆に押さえつけられている腰が海老の様に跳ね上げ、甲高い悲鳴をあげる。

 悲鳴は主に恐怖に直面した時や助けを求めるものである。
 だが、ここに、
 このひなた荘にはそんな彼女を救おうとする者はいない。

 いや――

 救うも何もなるは罪人である。

 重罪人であり、大罪人だ。

 淫欲を受け入れず、淫猥で卑猥で淫乱な汚らわしい自分と対峙する事もできない愚かで臆病で汚らわしく嘘吐きの成瀬川なるがいけないのである。
 
 だから、いくら彼女が身体を火照らせ、乳首を起たせようと、
 素子の手指によって頬にべたべたとカウパーを塗られて眼を潤ませようと、
 淫蜜をテーブルに滴り落として広がらせていようと、皆は不満顔のまま。

 足りない。
 全然足りない。
 景太郎を求める狂気が全く足りていない。

 それが腹立たしくて堪らない。

 ぐるん…

 「きゃ…っ」

 力が入らない身体を、無理矢理恥ずかしい格好に曲げられてしまう。
 これで景太郎が挿入しようと迫っていれば、所謂『達磨転がし』の体位になろうが、彼のモノは素子の舌の先にある。
 景太郎自身がなるに入れようとしない限り、皆は挿入を許しはしないだろう。

 「ほら、何ですか? ここ…指が二本も入っちゃうじゃないですか。前どころか後だって処女のくせに…」
 「ひ…あぁ…っ

 ズブリとアナルに入れられたのは しのぶの指。
 かなり器用であるが、その同年齢の平均的な大きさより小さい手の人差し指と中指の二本は根元まで突き込まれてしまった。
 腹立たしさが強いのか、容赦なく中で指を交差させてなるの腸内をいたぶりまわす。

 「い、いやぁあ…っっ!!」

 なるの悲痛な叫びが響く。
 だが悲鳴は台所より外には届いても館より外には届かない。

 「五月蝿いで? なる。もっとお淑やかにせなあかんやん。
  ここみたいに……」

 かり…


 「痛っ

 それだけ嫌がっているのに乳首はカチカチである。
 なるの痴態全てが見える体勢から、キツネは顔を寄せはしたないそれに歯を立てた。

 当然、痛みからなるも悲鳴を上げてしまうが只それだけ。
 やはり身体は抵抗の意思を捨て去っている。

 「ホンマやで。でもええなぁ…こんだけ大きかったら、けーたろの挟んでしごけるやん。
  うちのおっぱい小さいさかい、まだ挟めんのや」

 れろれろれろ…


 「あ、あ、あふ……ス、スゥちゃん…や、やめ……」

 カオラは逆に舌先で転がすだけ。
 それでも なるにとってのポイントだけを的確に責め続けていた。

 そして御丁寧にもカオラとキツネは左右のいたぶる胸を交代しながら攻め続けるのだ。
 痛みと快楽が左右順繰りに入れ替わる為、なるの胸の性感は混乱の極みにある。

 「こんなにクリトリスを尖らせて…どうせお兄ちゃんに犯される事を考えながら毎日弄繰り回しているんでしょう?
  貴女の頭にあるのはお兄ちゃんとのセックスの事だけ。
  お兄ちゃんに犯される、レイプされる、強姦される、陵辱される、蹂躙される、調教される、そんな妄想ばかり」

 すっかり捲れている包皮を舌先でいたぶり、硬く尖っている小さい肉芽をやはり舌先で嬲り続ける。
 口調は厳しいが、舌使いだけは優しい為にその苦しい快楽も羞恥混じりで余計に悦が入ってしまう。

 「さっきから思うんだけどよ、こっちの穴もクリも結構汚れてんぜ?
  しっかり指やベロで洗ってねぇと最悪かぶれちまうぜ」

 クンニリングの位置を可奈子と交代し、ラヴィアを舐めまくるサラ。
 いや、ラヴィアも大して位置は変わらないのだが、地点が違う為にまた味わいも違うのが良いのだろう。

 最年少の分際であるが、なるの性器に付着していた恥垢を指摘し、言葉でもって耳をも犯す。

 「いやぁ…いやぁああ……あっ、あぁっっ、あ…っ くぅン…ひっ!!

 サラの言葉になるは首を振って嫌がるも身体は動かせない。
 ただ皆の陵辱を受け入れるのみ。

 というより、甘んじて受けているとしか思えない痴態である。

 「うふふふふ……ほらほら、なっちゃん。
  けーくんに犯してもらいたいんでしょう?
  おちんちん入れてもらいたいよねー?」

 足先からずっと舌でもって舐め続けいるのはむつみだ。
 なるの身体中を自分の涎でべとべとにしたいのだろう、実に丁寧で粘質的になるの身体を唾液でもって犯してゆく。

 「あぁ……あぁあああああああ……」

 足先の指がひきつり、何度か身体が跳ねる。
 言葉でもって、舌でもって犯され続けているなるは、無自覚ではあろうけど何度も何度もアクメを体験し続けているのだ。

 犯されるのはキモチイイ。
 犯してもらうのはキモチイイ。
 いたぶられ、嬲られるのはキモチイイ。

 それも自分の大切な仲間達だからこそ……

 本人が全く気付けていない内に 彼女の心には淫らで卑屈で被虐的なモノが植えつけられている。

 それは彼女が奈良から戻って来てから毎晩毎晩続けられていた。

 景太郎といる幸せ、彼と共に人生を歩む幸福、
 皆といる幸せ、皆と共にあり続ける幸福、

 これらは元々彼女が持ち続けている幸福の概念である。

 そこに割り込まれたのだ。

 景太郎のモノになれる幸せ、彼の性欲処理奴隷となって一生を送る幸福、
 皆と犯される幸せ、皆と共に肉奴隷であり続ける幸福、

 彼女の中にいる別の彼女。
 本心から景太郎を飢え求め訴え続けている部分がそれを甘受し、どんどん気持ちを贈り続けている。
 “本能”から気持ちを贈られた彼女は、戸惑いつつもそれを飲み込み、消化し、気持ちを重ね合い続けていた。

 だからこそ、肉体からだは彼女らを全く拒めないのである。

 それでも理性という殻は必死に抵抗をし続けていた。
 彼女の固い倫理観は、罅こそ入っているが今だに健在なのである。

 全員の愛撫に瞳の色を濁らせ、涎をこぼし、喉が嗄れるほど喘ぎ続け、
 肌を赤く火照らせ、全身を皆の唾液で濡らし、乳首を尖らせ、
 腹部に大量に掻いた汗の一部を溜め、股間を嬲られ続けてオンナの悦びに溺れているというのに、心のどこかではこんな事をしてはいけないと何かが訴え続けていた。

 はしたない…
 汚らわしい…


 と、素子らは顔をしかめている。

 どうして牝犬である事を受け入れないのか?
 どうして景太郎のペニスの鞘でありたいと心の奥底から願えないのか?

 素子らはこのオンナの劣等生にほとほと呆れかえっていた。

 尤も、なるは当時三浪生だった景太郎に根気良く勉強を教え続けていた過去がある。
 そして寮の皆もそれを覚えている。

 だから景太郎を愛している同じ仲間として なるを見捨てる事等頭の端にも思いつかなかった。

 その自分の彼女の精神の危機の様子に景太郎も興奮が高まり続けていた。


 この数ヶ月の間に景太郎も凄まじく変貌している。

 素子の肉体からだを使い続け、キツネも入り、しのぶや妹の可奈子、サラやむつみにまで手をつけ、そしてカオラすらも……

 素子を抱いてから今日まで、景太郎の亀頭は女の匂いが途切れた日が無い。
 愛液や唾液、そして破瓜血を吸ってその肉凶器は禍々しさをサイズと共に増大させている。

 だがそれは愛おしい女を幸せにする宝具でもあるのだ。

 膣を刺し貫き、抉り、射精し、女達に快楽を贈る。
 愛している女たちだからこそ、愛してくれているオンナ達だからこそ、景太郎はそのザーメンをくれてやるのだ。

 それが、それこそが彼女達の幸せなのだとのだから。

 だから――

 「成瀬川…」
 「け、けいたろ…? …ンん?!」

 景太郎はテーブルに横たえられ、泣いている なるに顔を寄せ、涙と唾液でベトベトになっている彼女に唇を重ねた。

 「……」

 そんな二人を前にし、きゆっと唇を噛み締める女達。
 言うまでもなく嫉妬である。

 以前から…いや、元から皆はなるに対して少なからず嫉妬を覚えていた。

 何でも出来る才女。
 優しくて人望があり、美女でもてる完璧超人。

 これだけの物を持っているというのに臆病で優柔不断。小学生の時から告白されても二ヶ月もの間返事を濁し続けてキツネに断りを入れさせていた。
 景太郎に告白されても、返事をして関係が壊れる事を怖がってずっと保留し続け、
 その告白劇にしても、逃げまくる なるを景太郎が追い、皆でフォローしてやっとだった。

 そしてやっと素直になって心が結ばれ、想いをぶつけるのかと思いきや、この期に及んでまだ本能を否定する有様……

 抱かれたいと、
 犯されたいと、
 肉体からだを蹂躙されたいと願っているのは明白なのにだ。

 愛している男に穢し尽くされる多幸感は他の何にも喩えられないものである。

 処女膜を破られ、子宮に到達してくれた時の悦び、
 膣内射精をしてもらい、子宮内をザーメンで満たしてくれた時の感動、
 初めて味わった肉柱の感触、カウパーのほろ苦さ、そして濃厚な精液の舌触り、
 思い出すだけでアクメを迎えそうなほどだ。

 それを僅かでも否定している。
 欠片とはいえ嫌がる部分がある。

 キサマは何様のつもりだ?
 こりだけ愛されているというのに……

 怨念に近い嫉妬の怒りが再燃し、其々の指や歯に力が入ってしまう。

 「ンんっっ?! んん~~~~~~~っっっっっ!!」

 くぐもった悲鳴が唇の合わせ目から漏れる。
 それでも景太郎は動じず、なるの口中を犯し続けていた。

 全身を走る滑りを帯びた快楽と、今の差し込むような激痛とが入り混じり、なるの神経は混乱の極みに達していた。
 舌を絡め合い、唾液を啜り合い、飲ませ合っている景太郎の舌を何度もなるは噛んでしまう。

 景太郎の舌からの出血であろう、口の中に血の味が広がってくる。

 だが不快感は無い。全く起きない。
 痛みがあるはずなのに、景太郎の舌は逃げもせず彼女の歯を甘受し、出血しようと彼女の口中を嬲り続ける。
 それがまた なるの快楽を増進させ、意識の混濁化を推し進めてゆく。

 咥内に広がる愛おしい男の味もまた、彼女の心に麻酔をかける一因。
 普段であれば血の味等、嫌悪を誘うものの筈。だが“今”のなるにとっては甘露。倫理も理性も蕩かせて行く蜂蜜酒に等しい。

 「ンんん……じゅるじゅるじゅる…ずずず…ふぅふぅふぅ……
  …あむ…んっんっ…んぢゅ……ぷはぁ…んちゅ…ちゅっちゅっちゅっ…」

 なるのキスに、
 景太郎との咥内愛撫に自然と熱が篭る。

 肉体からだを襲う快楽は慣れぬものであるが、景太郎とのキスは慣れ親しんだ行為だ。
 告白してからこっち、キスは日常茶飯事であり、しない日は無かったくらい。大学のキャンパスでも時々行っていたのだから。

 その様子を見て素子が悶え苦しみ、意識の奥から湧いてきた嫉妬を刺激され、それが原因で淫魔の呪いを受け入れてしまったのだから。
 それが原因でひなた荘が歪んでしまったのだから……

 無論、この場にいる誰もがそんな事等どうでも良いのであるが。

 「へぇ…なるもやっと正直になってきたみたいやな」

 キツネがなるの乳首と唇を唾液の糸で繋ぎながら顔を離す。
 はしたない…というより、ジェリービーンズの様に突き出、真っ赤に染まった乳首は既に乙女のものでる事が信じられないほど変化を遂げている。

 「ここもカチコチやし。うちらの努力の結果やね~」

 同じ様にカオラも口を離す。
 離す間際に舌先で乳首を擽ると、びくんっと なるの身体が震えてしまう。
 散々二人に嬲られた乳房も真っ赤になっており、僅かな刺激でも彼女にアクメを伝えてしまう様になっていた。

 今さっきまではこんないやらしく敏感ではなかったというのに、景太郎とキスをしただけでこの有様なのだ。

 「な…る…成瀬川……」
 「やン…あ……
  あぁ…あっ!! あぁああっっ!! ひ、ぃいっっ!! うぁああっっ!!

 二人に今度は代わって景太郎がその大きなバストを揉みしだく。
 彼の唇が離れた事をむずがった なるであったが、胸に感じた快楽は爆弾だった。
 ぱちんっと音を立てるかのように快楽神経が破裂し、途轍もない快楽でもって彼女の心を破壊し、塗り潰してしまう。

 眼の奥で星が弾け、
 真っ白になって直にまた意識が引き摺り戻される。
 しかし待っているのは又も深すぎる快楽で、そのまま又しても奈落に昇天させられてしまう。

 涎を迸らせ、なるは狂犬が如く喘ぎに喘いでいた。

 「良かったぁ……なる先輩、素直になれたんですね」

 なるのヒップから顔を離し、左右の指を引き抜いて舌で舐め清めつつ しのぶが安どの表情でそう呟いた。

 なるのアナルを嬲っている しのぶであるが、今日の味は何時もよりしょっぱく感じられた。

 無意識に彼女らと本命の景太郎の感触との違いを感じ取って快楽を増加させているのかもしれない。

 その証拠に、

 ずぬぬ……


 「あ…あ゛ぁ゛あ゛あ゛あ゛っっ??!!

 景太郎の指が潜り込むと彼女らですら見た事もないような崩れた表情を見せて悶え狂うのだから。

 「…すっご……やっぱ なるのやつ、こないに淫乱やったんやな……」
 「けーたろの指やからとちゃうの?」
 「せやなぁ…うちらも人の事言えへんし」
 「そうですね…キツネさんなんか、お尻使われた時は最初の挿入で失神したりしてますから……」
 「初アナル捧げた瞬間にイッた小娘に言われとーないわい!!」

 三人のやり取りも馬耳東風。
 景太郎は なるの胸を舐めしゃぶり、甘噛みし、舌先で擽って嬲り続ける。
 右手の二本の指は、しのぶによる日々の調教に解されている なるのアナルにもぐり込んでおり、中で交差させたり交互に動かしたりと好き放題にいたぶりまわす。
 彼の爪はオンナ達の肉体からだを玩ぶようにきちんと爪を切っているので腸内を傷つける可能性も低い。それでも指の腹の方を積極的に使うのは景太郎の優しさからくる気遣いであろう。尤も、その所為でなるが感じている気持ち良さの方が勝って理性が戻ってこれないのであるが。

 「あ゛っあ゛っ、ひぃっっ! あっ、くぅ…っ!! ひっっ?!」

 慣れない快楽と悦楽。
 苦痛一歩手前のギリギリまで迫る快楽によってボロボロにされてゆく なる。
 これが他者であればどうとでも出来るのであるが、自分を陵辱しているのは心を開いている寮の仲間達、そして愛する景太郎なのだ。

 家族にすら見せられない痴態も、彼と彼女達であれば見せる事が出来てしまう。
 僅かの年月、
 たった二年半でここまで心を蹂躙されてしまった事に腹立たしさが浮かばない事もないが、その皆なればこそ自分の全てを見せる事が出来るという事実に激しい多幸感が湧いてくるのもまた事実。

 どんなにいやらしかろうが、どんなに淫乱であろうが、どんな汚らわしくなろろうが皆は自分を見捨てないだろう。
 どんなにあさましく景太郎を求めようとも、それが素なのだと理解してくれているのだから……

 す……と、無根でサラと可奈子がなるの股間から離れると、なるのアナルを嬲っていた景太郎の手、その右手の親指がついにその膣にズブリと突き刺さった。

 「……………………っっっっっ!!!!」

 声にならない全くの可聴外の悲鳴がなるの口から飛び出した。

 苦痛や悲痛の色はやはり皆無。
 無限の絶頂すら感じられるほどの快楽の悲鳴。オルガスムスの大絶叫だ。

 「……っ!!! …………!!! ……………………っっっ!!!!」

 アナルを蹂躙している親指と中指、そして今突きこまれた親指が粘膜越しに再会する。
 その柔肉を嬲りつつもお互いを撫で合い、擦りあって景太郎は“摘む”という感触を膣と腸という粘膜の隔たりで堪能していた。

 堪ったものでは無いのは なるである。

 オナニーすら知らぬ幼子の様な性器を持っている彼女は、自分すら全く知らずにいた陰部の性感帯をピンポイントで責め続けられて気が狂いそうになっているのだから。

 涙を溢れさせ、涎を吹きこぼし、
 乳首から何か白っぽい液体を滴らせ、股間からは愛液と尿を噴いて身体を痙攣させる。
 
 気持ち良過ぎ、快楽が大き過ぎ、彼女の神経が物理的に持たないレベルにまで追い詰められているのだから。

 だが、景太郎にしても、オンナ達にしても手を止めるつもりは全く無い。

 追い詰め、玩び、嬲り、蹂躙し、踏み潰す。

 猫が鼠をいたぶる様に…とよく言われているが、実際にはイタチの方が残酷にいたぶる。そして猫より遥かに残忍だ。

 なるにとっての愛おしい仲間達、そして愛する男は正に血に飢えたイタチの集団である。
 血に飢え、いたぶり、飽きるまで鼠を殺し続ける野獣、イタチ。
 なるを本当に心身ともに愛している皆は、そのイタチ宜しく本当に愛しているからこそ、嬲りつぶす事に躊躇したりしてくれない。

 泣こうが喚こうが、失神しようが狂おうが、
 犯して嬲っていたぶって陵辱して蹂躙して踏み躙って愛し潰してゆく。

 それでもその愛は実は平等で、なるが動け無くなると矛先は別の女性へと移り、同じ様に嬲り犯してゆく事だろう。

 残忍な野獣の群れでありながら、その優先順位は動物界の掟に反して頂点である雄が最高峰にある。
 だから皆して景太郎を愛し、彼への奉仕欲は尽きる事が無い。

 現に、景太郎がなるを残酷なほど愛している間、オンナ達は景太郎のペニスに群がっていた。

 擦り寄っている六つの舌が、景太郎の肉柱に絡みつくように反り返る肉凶器を洗い清め味わっている。


 眼の焦点が完全に吹っ飛び、痙攣するだけの玩具と化してしまったなる。

 可哀相な不出来の肉人形。

 そのなるに向けて、優しい仲間達は洗礼を贈ってやった。

 びゅっ、ずびょっ、ずびゅ、ずびゅっ、どぶっ、どぶっ


 「あ、ひぃぁ……あぁああああああああああああああああああああああ………」

 顔に浴びせられた生温かい粘液。
 心の奥底では待ち望んでいたその香り。

 それを顔で受け取り、既に指一本動かせなくなっていた彼女ではあるが、腰を跳ね上げて悦んでいた。

 だが、贈り物はそれで終わる訳ではない。

 どぶっ、どぶっどぶっ、どぶっ、どぶ、どぶ、どぶ………

 じょ、じょぉおおおお…………


 射精の直後、今度は熱い液体が顔にかけられ始めたのだ。

 「あぁ……ひゃぁ……うふ…あ………
  ん、く…んっんっんっんっ………こくこくこく…」

 なるにそれが何かと理解するような力は残っていなかった。
 意識的な行動もできないし、ただ景太郎の放尿を受け、自分も失禁する事しかできないはずだった。

 が、恐らくは無意識だったであろう。
 小さく口を開き、その熱い液体を口中に入れて咀嚼し、喉を潤していたのは……

 一般的な感情から言ってそれは“汚いもの”であるし、掛けられるという状況は絶対に受け入れられない筈である。
 確かに一昔前であれば<飲尿療法>なるものがあったが、それはそれで覚悟がいるものだった。
 倫理的に言っても、彼女のようなうら若き乙女にできよう筈も無い行為である。

 だが、彼女は飲んでいる。

 うっとりとした表情で舌の上で転がし、咀嚼し、飲み啜っている。

 愛おしい者によって狂わされ、嬲られ、穢され、いたぶられる幸せを心より何より、本能がやっと理解したのだろう。

 そんな堕落の乙女の様子を見、オンナ達は心からの安堵の色を見せていた。

 ああ、やっと正気に返った……
と。

 彼女らから言えば なるは精神異常者である。

 愛おしい男の性玩具となって全身を使って快楽を捧げ、何時でも何処でも求められるがままその肉体からだを差し出す。
 ザーメン等、飲み慣れて当たり前。
 膣内射精など日常茶飯事。
 脱げといわれれば脱ぎ、股を貸せと言われれば足を開く。
 入れろと言われれば眼を気色に潤ませて入れ、動かせと言われれば嬌声を上げて腰を振り、
 しゃぶれと言われれば嬉々としてしゃぶり、飲めと言われれば幸福感の中飲みすする。

 それが自分ら…オンナの姿のはずだ。

 なるはその肉体を見られたと怒っては殴り、いやらしい眼で見たと怒っては殴り、触ったと怒っては殴っている。

 その全てが愛する男による辱めである。悦びこそすれ、怒るのは絶対に精神が病んでいる筈だ。

 愛おしい男に肉体からだを見られれば嬉しいはずであるし、いやらしい眼で見られたのなら誇りである。
 触ってもらえたのなら濡れる筈だ。
 それが愛する男以外、自分の主以外の行為であるというのであれば怒るのも殺意を持つのも当然であり、殺害するのも自然の流れであろう。

 しかし、その相手は愛おしい男、
 自分らが愛し求め飢え訴えている景太郎なのだ。

 自分をどんな目にあわせようとも彼ならば当然許される行為である。

 それが悦べない……

 既に常識と概念が歪に捻じ曲がった素子らから言えば、なるの精神は常軌を逸している。何せ素子らはカウンセラーの必要性すら危ぶんでいたのだから。

 そんな彼女らの眼前で、件の女が景太郎に顔面射精され、顔面放尿され、はしたない格好で意識を混濁化せて快楽に喘いでいる。
 彼女らの輪の中から言えばこれこそが普通。
 これこそが女として当然の事だ。

 どうやら なるは正気に返ったようだ…女達は胸を撫で下ろしていた。

 確かに嫉妬は今だ感じていはいるが、なるは大切な仲間であり肉柱姉妹の一人。
 女として当然の常識にやっと戻って来てくれたのだから嬉しくない訳が無い。

 「良かった……なるさんもやっと正気に返ったみたいですね」
 「そうですね……
  先輩にあれだけ愛されているのに、受け入れられていなかったから、本当に心配しちゃいましたよ~」
 「でも良いわね~…けーくんにあれだけ嬲られて……
  あはは……なっちゃんも気持ち良くておもらししてる」
 「ま、気持ちは解かるけどな」
 「キツネは何時も漏らしてますしな」
 「人の事は言えまい?」
 「モトコもそーやん」
 
 以前の彼女らからしてみれば異常者の集団の会話。
 カルト教団のそれにも似た異質の思念。

 だけど間違いなく親愛に満ち満ちた空気がそこにはあった。


 景太郎は変わらない。

 捻じ曲がり、腐り果て、堕落してはいても彼のまま。

 極普通の空気を持ち、ドジでお人よしで馬鹿正直でエッチな青年のままだ。

 だけど女達に対して持っている愛情は以前のものなど比べ物にならない。

 なるに対する愛は当然として、素子をメスとして愛し、キツネをメスとして愛し、しのぶをメスとして愛し、可奈子をメスとして愛し、サラをメスとして愛し、むつみをメスとして愛している。
 愛おしい。狂おしいほど愛おしい。
 愛おしいからこそ彼女らの求めるがままに犯し、嬲り、陵辱し続けている。

 だから なるだって穢されれば嬉しい筈だ。

 今だってザーメンを美味しそうに舐めている。
 顔に放尿され、うっとりと咀嚼している。

 乳首だってカチカチだし、綺麗に脱毛されたビーナスの丘も溢れ出た愛液でベトベトだし、ラヴィアも綻んで景太郎の到来を待ち望んでいる。

 やっぱり――

 やっぱり成瀬川は可愛いなぁ……


 穢れ尽くした自分の彼女を見、汚液でベトベトになった顔のまま呆けている彼女を見、
 快楽と自我の崩壊によって眼の焦点を完全に失っている なるを見、

 景太郎は彼女に対する愛おしさを更に深めていった。


 ねっとりとした淫猥過ぎる空気が充満する台所。
 朝っぱらから漂う香りはザーメンと愛液と粗相の香り。

 だけど、それでも寮生に不平不満は全く無い。

 精液の滴りは嬉しくてありがたいもの、
 愛液の滴りはいやらしく誇らしいもの、
 粗相をしてしまうのは幸福だから当然だ。

 そんな中だからこそ、景太郎もほのぼのとした感想をなるに感じていた。

 成瀬川なるという才女が、蛙の様に仰向けになり、顔と股間をベトベトに汚して微笑んでいる様を見ながら……




 元々、景太郎は彼女に一目惚れをしていたし、なるも景太郎の事は結構初めの方から心を許している。
 物凄い意地っ張りなところと、寮内で一番臆病な心を持っていた なるだからこそ、景太郎への想いを完全に認めるのに二年以上も掛かってしまったのだ。

 それに二人とも確信は固まっていないのだが幼い頃一緒にトーダイへ行く約束をした相手である。

 本心と本能がお互いを認め合った今は、欲望を隠す必要など無い。

 そして、彼女と景太郎が結び付くのなら、オンナ達も………




 「なぁなぁ、お祝いになるやんの乳首にピアスつけてあげへん?
  似合う思うで?」
 「だ、だめだよぉ、カオラぁ。そうしたら赤ちゃんにオッパイあげられないよ」
 「せめて子供産んでからに…って、あかんか。ずっとけーたろの仔を孕み続けなあかんのやし」
 「やっぱり刺青では? なるさんの肌に便所という字は良く似合うと思いますよ」
 「あはは…なっちゃんの身体のあちこちにけーくん専用って彫られてるの想像してしまいましたー」
 「顔にも入れるか? そりゃ海行ったら目立つよな。何処の肉奴隷だ? ってさ」
 「胸にパイズリ専用、足に足コキ専用、手には手コキ専用……なんだか成瀬川先輩が羨ましいですね」

 ぴたぴたと なるの肉亀裂に肉柱が撫で付けられ、なるは腰を浮かせ、胸を高鳴らせて痛みを期待する。
 他の皆のセリフも耳を擽り、被虐的な快感が全身を舐めしゃぶり続けて気持ち良い。

 景太郎に肉玩具として扱われる……

 そんな事を考えただけでこんなに気持ちいいなんて……

 少し前までは思いも付かなかった事である。

 心の奥底は何か違和感を訴えている。
 チガウチガウと弱々しい信号を送り続けている。

 だけど、その塵の様な違和感に覆いかぶさってくるのは、意識の無いなるの耳元で毎日毎日囁かれ続かれてきた皆の言葉。




 景太郎と一緒にトーダイに行き、シアワセになる。
 そして私達ともずっと一緒にいて、シアワセになる。


 これはなるの願望であり、本心だ。

 だが、世の中に別れはあり、それは現実としてじわじわと近寄ってくる事を悪夢として伝えられ続けていた。

 だからこそ、別離を恐怖しているなるは夢現の中で悪魔…いや、淫魔と契約を交わしていたのである。

 それは全員が交わした契約であり、なるの持っているシアワセの観念。
 そして歪曲させられてしまったシアワセの観念。

 ――景太郎とトーダイへ行き、皆でシアワセになる。
   シアワセとは、“皆で”景太郎の恋人であり、妻であり、愛人であり、愛玩動物であり、性玩具となる事――


 それに、なるの位置付けは“本妻”である。その為に不満もそう浮かんでこず、想像もできないほどあっさりと変革を受け入れてしまっている。

 皆も笑う。
 楽しげに笑い、景太郎に挿入されてゆく自分を祝福してくれている。

 だからこそなるも嬉しくて、胸が張り裂けそうなシアワセを感じている。

 胸の奥から断末魔のような叫びが出た気がしないでもないが、それも気の所為だろう。
 オンナは肉奴隷となり、愛する男の性欲を満たす為に存在する生き物なのだから……

 「なるのオッパイ好きやから、うちも舐めたろ」
 「ほなうちは なるやんのアナル~ しのぶばっか舐めとったから羨ましかったんや」
 「じ、じゃあ、今度は私がなる先輩の乳首に歯形つけていいんですね? 嬉しいです」
 「じゃ、あたしはなるの手でオナニーしようかな」
 「私は…お兄ちゃんのを咥え込んでる結合部を…あぁ…また破瓜血を味わえます」
 「私もサラちゃんと同じ事しますね。なるちゃん、右手借りますよ~」
 「じゃあ、私は…景太郎先輩を手伝うとするか」

 ああ……皆が私を玩具にする……

 ずずず……

 あぁ……景太郎が、景太郎のが入ってくるぅ……

 キモチイイ、キモチイイよぉ……


 涙すら浮かべ、処女膜が押し広げられてゆく痛みを悦んでいる なる。

 犯され、穢され、大好きな友達によって輪姦される。

 大切で大好きな愛しているヒトタチによって輪姦される。

 こんなシアワセが、

 こんな幸福があって良いものだろうか?

 ぐぐぐ……

 いやらしく尖った乳首をキツネとしのぶに嬲られ、

 カオラにアナルに舌を突き込まれ、

 可奈子には肉芽や肉柱に巻き込まれてゆく肉ビラを舐めいたぶられ、

 サラとむつみは仲良くなるの腕を股間に擦り付けてオナニーをしている。

 そして素子は愛おしそうに後から景太郎を抱き締め、肉柱に手を回して挿入してゆく速度と角度を調整しつつ彼にキスを送っている。

 そして景太郎は……

 そんな淫らな皆に愛情が篭った眼差しを送りつつ、丁寧に慎重に自分を犯してくれているのだ。

 幼い日の思い出が鮮やかに蘇る。
 鮮明に蘇ってくる……


 桜の花の舞い“堕ちる”ひなた旅館。

 そこで滞在する身体の弱い自分。

 毎日のように続けられていた むーちゃんとけーくんとのお遊び、おままごとやお医者さんごっこ。

 自分はずっと患者かけーくんの奥さん。

 裸にされ、二人がかりで身体中を舐められてオモラシして喜んでいる自分。

 赤ちゃん役のむーちゃんにオッパイをあげ、けーくんにあそこをずっと弄られ、余りの気持ちよさにやっぱりオモラシをしてしまう。

 毎回オモラシをするから服を着せてもらえず、オモラシをしてしまう原因を調べようとする二人にアソコを調べられ続けたあの日々。

 『なっちゃんはイケナイ子だから、将来シアワセになる為にボクのモノになるんだ』

 と約束させられた。

 『ボクのものになって、毎日毎日エッチな事をして、ボクだけのオモチャになるんだ』 

 という彼の言葉が嬉しくてまたオモラシをしてしまった。


 ああ、そうだった。

 こうなる事が正しくて自然なんだ。


 これが、
 そう、こうなる事こそが……

 ぐぐぅう……






 ぶつ…っ






 「あ……っ
  あぁあああああああああああああああああああああああああああああああ……………っっっっ」

 嗚呼…
 これこそがシアワセのカタチだったんだ……






 一人の女が心身を穢され、
 美しい思い出すらドロドロに汚されてゆく。

 幼き日の想いも捻じ曲げられ、穢しつくされ、

 肉欲に敗北し切っている彼女は、白濁化したその想いこそが真実なのだと悦びを見出してしまっている。

 在り得なかった過去を観て悦び、歓喜し、他の女達と一緒に淫液を滴らせて悶え狂う。

 テーブルに滴った破瓜血混じりの精液に女達が蜜に群がる蟻の様に集り、舐め啜っている。

 なるは不慣れではあるがフェラチオを行って、自分を愛してくれた景太郎のペニスに感謝の奉仕を行っていた。


 口元から精液と破瓜血のカクテルの滴を滴らせ、身体を起こした素子は、ふと館の奥から伝わってくる波動を感じていた。

 別館が、
 魔力を持つ別館が、
 己が力によって事が成就“した”事を歓喜しているようだ。

 これで良い。
 これで良いのだ。

 皆が皆して景太郎と結ばれる状況を作り上げ、なるはその皆に間を裂く気を消失させている。
 そして誰も絶対に邪魔をしない。
 何故なら、縁で結ばれたのは主従関係なのだから。

 裂く事はできずとも、その中に混じる事は出来る。
 間に入る事はできずとも、一緒に交わる事は出来る。

 皆が皆してこの歪な仲を甘受し、皆が皆して悦びに満ち溢れる。
 そうなる様に仕向けたのだから。

 その波動とは別に、素子はひなた荘の前にある砂場の方からも力を感じている。

 そう――“そこ”にあったのだ。
 <まじない>の核は。

 それを見つけたのはカオラを引き込んでから数日後の事。
 何気なく景太郎と青姦を楽しめる場を探していた素子は、何となく入った砂場でその波動を察知し、そこでついに<まじない>“核”発見できたのである。

 だが、見つけ出しは出来たのが時既に遅しで、こっちの<式>が出来てしまった後だったのだ。

 今更“核”を破壊したとて都合の良い事は何一つ無い。だから彼女はそれを放置したままにしてあった。

 <まじない>に便乗した<式>も動き、後は完全に発動させるのみ。

 景太郎となるが『いっしょにトーダイへいく』。それだけである。

 口元を拭い、指に付いた白濁のカクテルを舐めしゃぶって咀嚼する素子。

 景太郎の味が口いっぱいに広がって素子の乳首が尖り、股から淫蜜が滴り落ちてくる。

 どうしてこんな事になったのだろう……という想いが浮かぶ事も時たまあった。

 嫌…という気は更々ないが、もっとマシなやり方があったのでは無いかと思わないでもない。

 だがそれでもこれが最善であるキツネに諭されてココまできたのだ。今更後悔したってどうしようもないしするつもりもない。

 こくん…


 精液を唾液と充分に混ぜてから喉に流し込む。
 唾液と程好く混ぜると喉に引っかからなくなる為、ちょっと物悲しくなるが身体の火照りは咀嚼すればする程心地良い。

 股に手を伸ばせば滴り落ちる蜜も粘つきが酷くなっており、白っぽさと匂いも強くなっている。

 テーブルに眼を戻せば、うつ伏せにされたなるが景太郎に後から突かれ、大きな胸をテーブルに押し潰しながら獣の様に吠えていた。

 ああ…何てシアワセそうなんだ……

 女達はそれぞれ絡み合い、蜜を塗り付けあい、滴り落ちた精液を啜りあっている。
 獣にも劣る麗しい行為が素子の眼を潤ませ、オンナとして本能を剥き出しにできている自分らが如何に恵まれた人間であるという事を天に感謝させていた。

 素子は自分の身体を抱き締め、今の淫猥極まる空気を堪能し、
 身悶えしながら熱い熱い溜息を吐いた。




 時は朝、
 所はひなた荘。

 最後の純潔が消失したこの館は、これから二日の間人の出入りが絶える事となる。

 どうやっても拭い切れない精臭を湛えた後宮へと変わらんが為、
 女達全員が蹂躙され尽くされ、淫液の池に浸るまで……




 <なるの章 幕>





*******************************************************


 大変、遅くなってしまいました。Pixyでございます。

 実は今回の話、この卅玖話ですが…元は“卅捌話”だったんです。
 つまり、余りに短すぎた為、話を二つに割って両方に継ぎ足しをしたんだすな。コレが……

 近辺が詰まんない事で忙しくて、中々加筆できなくて今日になってしまってスミマセンでした。

 書き足りない事もまだ思いつきませんが、これで一応次で終わりです。

 気が付けば全員がクルクルパーに……ホント、あたしってヤツぁ……

 と、兎も角、次は最後の話。エピローグってヤツですね。
 生意気ですか? スミマセン……

 何だかんだで長丁場になりました。ありがとうございます。
 それではラストエピソードで……




[2319] Re:Dotage ~妄愛~ -Epilogue- (ラブひな)
Name: Pixy◆78c4e4e5
Date: 2007/09/28 20:39




 季節は廻る。

 そして輪も廻る。

 緩やかに描かれた円環はなだらかにその軌跡を辿り、そしてまた新たなる輪を描く。

 歪だがその繋がりを生した円は対と結ばれ、

 穢れてはいるが優しさに満ち溢れた輪を生じた。

 堕ちる事は已みはしないが幸せで、

 汚らわしくも愛おしい縁は強く結ばれて行った。

 それは大いなる間違いであり、大いなる歪み。

 なれどそれは皆の願いであり、皆の希望。


 だから間違いではない。


 誤りである事も間違いでは無いのに、道を完全に踏み外しているのに、

 それは“正しい”事なのだ。

 少なくとも、ここ“ひなた荘”では――
 




 あれから数年の時が過ぎた。

 景太郎は考古学の道へと進み、なるは教師の道を歩んでいる。

 素子は神鳴流道場の師範となっており、月に何回かは京都の弟子達の元に出向いている。

 とうとう戻って来なかった はるかは、何故かモルモル王国という国で瀬田と結婚しており、『新婚家庭にいられるかよ』とサラはひなた荘に正式に部屋を借りて生活を続け、和風喫茶『日向』はキツネとむつみが切り回している。

 しのぶとカオラ、そして可奈子も見事に東大生となって勉学に勤しんでいる。

 時は移り、少女は女へと成長し、美女揃いのひなた荘は相変わらずという形を保っていた。

 無論、表面上は……であるが。






―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
                           -盲・愛-
                           -Epilogue-
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 風の音がする。

 山から流れてきた柔らかい春風が、石段に林立している桜の木を撫で、満開の桜の花を舞い上げる。

 春一番の強い風でも何故かここの桜は耐え、その強さ故に花の時期をけっこう長引かせてくれる。

 近隣でも有名な桜の名所ではあるが、中々人が訪れたりしない。
 いや、正確に言えば五年ほど花見に誰も来ないのである。

 “ここ”の住人が招待しない限り――

 ひらひらと風に舞った花弁が部屋に訪れ、そこで横になっていた女性の身体に数枚舞い落ちる。

 まだ昼前。
 世間は春休みという時期。

 妙に暖かいそんな時ではあるが、まだ長袖は必要であるそんな時期。

 その女性は全裸で布団の上に横たわっていた。


 肌を精液でベトベトに汚しながら……


 「……ん……?
  あ、あぁ……転寝をしてしまっていたのか……やれやれ……」

 …落ち着かないのか?
 全く、私とした事が……と苦笑し、素子は身を起こした。

 開け放たれていた窓から入り込んだのだろう、桜の花びらが肌に張り付き、白濁色に染め上げられた肉体からだに斑に張り付いた桜の色で奇妙な模様を描いていた。

 尤もそれは自分に限った事だけでは無い。

 「んん…お兄ちゃ……」
 「けーたろ……」

 同じ様に寝転がり、幸せそうな寝言を漏らしている二人に苦笑し、風邪を引くぞと呟いてみる。
 無論、眼を覚ます訳もないが。

 ここは管理人室の真上…“元”成瀬川なるの部屋だったところだ。

 なるは景太郎に処女を捧げてからは景太郎のいる管理人室で寝床を共にして暮らしている。
 無論、誰かが彼を独り占めしたい時は話は別であるが。

 そして今、このなるの部屋だったところは奇妙な部屋へと変わっていた。

 皆で交尾をする部屋――

 ひなた荘は実質、景太郎専用の後宮なのだから当然である。

 素子の横に転がっている可奈子もカオラも、そして素子自身も全身をザーメンで汚しており、をされている可奈子以外の膣からは精液が滲み出ていた。
 ついさっきまで景太郎と交尾を行っていたのだから。

 ふと枕元に眼を向ければ走り書きでお風呂に入ってきますと文字のあるメモが置いてある。

 文字を見ずとも解かる愛おしい男の物。
 皆が気を失っていたからメモを残したのであろう。

 相変わらず律儀な事だと笑みが漏れてしまう。

 むつみとキツネは今日は店をするつもりらしく朝しか子宮に注いでもらっていない。夜に乱れる気満々である。

 となると、しのぶとサラが風呂に付いて行っているのだろう。


 短くした素子の髪も長さを取り戻し、季節は廻ってまた春になっている。

 なるが輪に加わり、景太郎の精力が更に増進。
 初めの方こそ躊躇を見せていた なるであったが、毎日犯かしてもらったお陰であろう、一ヶ月もしない内に寮の誰よりも下品に、そして変態へと変わっていった。

 一見したところ何の変化も無い なるの肉体からだであるが、景太郎が交尾の誘いを見せたりすればその瞬間にも乳首はゼリービーンズが如く突き出て、クリトリスは完全に包皮から飛び出して小指ほどの大きさにまで膨らむ。
 淫穴からは蛇口を捻ったかのように愛液が滴り落ち、目の焦点も合わなくなる。

 なるは完全に性欲の下僕。景太郎の肉玩具に自分を貶めていた。

 無論、景太郎が望まねば以前のままの彼女であるが、自分らの仲間だけしかいないひなた荘の中にいれば本性は剥き出しだ。

 当然ながら、毎日毎日犯され続けた他の皆の身体も取り返しのつかないほど変わってしまっていた。

 なる同様、表面上の変化はゼロ。家族ですらその変貌に気付けないでいる。

 だが景太郎とセックスできなければ狂死してしまうほど彼女らの身体は変貌を遂げており、多少の我慢は出来るものの、最低でも三日に一度は犯してもらわないて生けない身体へと変わってしまていたのである。

 ただ、なるだけは精神は景太郎に傾倒し切っているくせに肉体は我慢が利くらしく、最長一ヶ月はセックスレスでいられるらしい。
 その為、他の女性達からはバケモノと言われているのだが、それは“我慢が出来る”というだけであって、交尾に対する飢えに関しては素子すら凌駕し、実はひなた荘一だったりする。
 飢餓状態のなるは淫語以外を口に出せなくなるのだから。

 素子は身体に付着している精液を塗り広げつつ、自分に起こった事を思い返していた。




 元々、彼女が受けた呪いは、実はかなり強力だったらしい。

 しかし、紛い也にも素子は妖刀“ひな”の主であり、そのお陰で呪いの類にはかなりの抵抗力があった。
 ひなた町ひなた市、ひなた荘…そこに掛けられている結界の強さもあり、呪いの大半は跳ね返されたわけであるが、それでも襲い掛かってきたのである。

 素子と……景太郎に。

 以前にも語ったように、その所為で素子は半淫魔となってしまったのだが、景太郎はその呪いを直で受けてしまっている。

 男の持つ淫猥なイメージ。
 女達が自分を求め訴え、そして仲良く暮らすハーレム。

 それは現実化し、景太郎を王とした肉欲の帝国がここに築かれていた。

 妄想の具現化――

 それが彼女らに身の起こった事だったのである。

 素子の方は謂れの無い嫉妬の為に淫女の呪いを掛けられたのだが、景太郎の方は倫理を破壊する淫獣化の呪いを受けていたのだ。

 そうなれば素子にも確実に嫌われるだろうし、最悪、景太郎を斬ってくれるだろう。それすら期待した呪いだったのであるが……
 元々景太郎は“ひな”の呪縛すら殆ど効かないような異様に高い抵抗力を持っており、尚且つ何故か不死身体質だ。その所為で呪いの大半を退けた挙句、都合良く術者が破滅した為に完全な精神崩壊を受けていないのである。

 だが、その異様に高められた情欲が治まる訳も無く、元々やたらと妄想癖のあった景太郎はその莫大な妄念を振り撒いてしまい、ぶちまけられた妄念は偶然にも別館の魔力と結び付き、妄想が転写されてしまったのだ。

 だからこそ素子は暴走の歯止めを失い、キツネも自分が抑えられなくなり、しのぶも積極的に彼を求め、可奈子も景太郎の妄想のままに淫猥化してしまっていた。
 勢い付いた景太郎の妄想はむつみをも飲み込み、それによって倫理防壁がなくなった彼はサラも喰らい、開き直ってカオラも喰ってしまったのである。

 ――何の事は無い。

 素子が最初に淫魔化したのではなく、最初に景太郎が淫獣化していたのだ。

 つまり、皆の歯止めが無くなったのは景太郎自身の罪咎であり、今の現状は現実が景太郎の妄想に侵食された結果なのである。


 「ま、どうでも良い事なのだがな」

 素子は股間から精液を滴らせながら腰を上げた。

 彼女らに後悔はまったく無い。
 特に素子は自分から進んで彼を求め狂ったので尚更だ。
 その事実を突き止めた理由も単なる偶然であり、自分から進んで調査した結果ではないのだし。

 遠くから聞える嬌声はサラのものだろうか?
 どうせ露天風呂で可愛がってもらっている事だろう。

 相変わらず景太郎を単なるセックスフレンドの一人と称してはいるが、恥丘に『景太郎専用』と刺青をしてるのだから説得力が無い。
 実際、景太郎以外の雄が触れるのを許していないのだし。

 そんなややこしいままの彼女には苦笑しか浮かばない。

 やや腰がカクンと崩れるが別に気にならない。
 ヤり過ぎて腰に力が入りにくいのと、腹が少々思いだけである。

 脇で寝ている“小さいもの”の様子を見、安らかな寝息を確認してから素子は二人…三人を起こさないよう静かに戸を開け、ぺたぺたと精液と愛液の染みを廊下に残しつつ全裸で景太郎の部屋へと向う。

 無論、景太郎は不在であるし、なるは今はいない。
 別にいたって構いはしないのであるが。

 廊下、そして階段を精液と愛液の混ざったものが汚してゆく。
 どうせ後で皆が這い蹲って舐め清めるだろうから気にもならない。

 階段を下りて廊下を進み、景太郎の匂いが強まってゆく事に胸をときめかせながら部屋へと足を進めて行く。
 肉体からだも心のも景太郎に捧げつくしているのに、こんなところだけは妙に生娘の様になるのが何だか可笑しい。

 苦笑しつつ戸に手をかけ、何度も夜這いで訪れた部屋の戸をがらりと引き開けた。

 その、開けた部屋の中央――

 素晴らしい純白の妙があった。

 素子も、そして寮の皆もここに来て目に入れれば何時だって『ほぉ…』と溜息を漏らすほど美しいもの…

 ウェディングドレスである。

 明後日、なるは“日本で”正式に景太郎のものとなる――

 つまり、結婚するのだ。

 これはなるが身に纏うウエディングドレスなのである。

 「やはり良いものだな……それにこれだけ純白なら……」

 精液の染みは良く残る事だろう……

 式が終われば景太郎と“妻達”で行う乱交パーティだ。
 力果てるまでまぐわいを続ける淫辱の宴。

 今からそれが待ち遠しい。

 妻達…というのは、既に素子らは景太郎と結婚しているからである。
 いや、正確に言えばちょっと違うかもしれない。

 景太郎はカオラの婿養子なっており、皆はカオラ共々妻となっているのだから……


 実はカオラは驚くべき事にモルモル王国の王女だったのだ。
 それを知ったのは瀬田と はるかが結婚したと聞き、皆で押し駆けて行った時の事である。

 その事実を知ったときには流石に驚きを隠せなかったが、よくよく考えてみれば納得できる点も多く、王族だろうが何だろうがカオラはカラなので誰も気にしたりしなかった。
 寧ろその驚きより、その話を聞いた皆は『それを使わない手は無い』という方に話が集中していた。
 
 折角、高い地位を掌握しているのだ。その地位を上手く使わない手は無い。と、皆で頭を突き合わせて相談し、景太郎の意見も聞かず強引にカオラの婿養子にし、カオラは国に一夫多妻を認めさせて皆で結婚する事を決めたのである。

 その時のドタバタは割愛するとして、そうすればずっと皆と一緒にいられる事を認識したカオラの強引に策によって結果的にはクーデターギリギリ手前のその計画は成功し、皆ははれて景太郎と妻となれたのである。

 元々モルモル王国は異様に科学文明が発達しており、尚且つ自然とも完全に調和した不思議な国である。
 貨幣経済も凄まじくいい加減であり、貧富の差も殆ど無いし誰も気にしないのんびりし過ぎた情勢だ。

 そんな国であるし、王族ひっくるめた国民の誰もが面白ければ良いや的な空気を漂わせている事もあり、景太郎がカオラの夫という立場以外の国の権利を放棄しているので誰も文句は言わない。これによって八方丸く収まっていた。

 明後日に行うのは日本においての、
 ここ、ひなた荘においての“正妻”を示す為に他ならない。

 まぁ、世間との繋がり僅かでも残したいという意味合いも少々あるが……

 「……ん?」

 しばし時間を忘れて見惚れていた素子であったが、その鋭敏過ぎる感覚がその声を察知した。

 「もう起きるのか?」

 慌てて部屋を出、二階へと駆け上がる。
 その際、全く足音がしないのは流石と言おうか当然と言おうか。

 熟練の体捌き。
 妻となってから更に磨かれた足運びによって風の様に部屋へと舞い戻り、戸は開けたままなので滑るように部屋に入る事ができた。そしてその瞬間、

 「ふぁ…」

 と、可愛らしい赤子が小さな布団の上でむずがりを見せた。

 「おっと…大丈夫。大丈夫だぞ。
  “まま”はここにいる」

 素子は優しくその赤子を抱き上げ、柔らかな自分の胸にその子を押し当てた。
 頬が埋められ、素子の心音が聞えるとその赤子は忽ち落ち着きを取り戻す。
 やはり母の胸は最高の安らぎを与えてくれるのだろう。

 素子は慈母の微笑を浮かべ、その子を抱いたままザーメンに穢れ尽くした布団に歩み寄って可奈子の股間に手を伸ばした。

 ずにゅぅ……


 「ふあぁああああ……っっ!!」

 突然の感触に可奈子は眼を覚ました。

 その声に驚いてカオラも眼を開ける。

 「…あ、あれ? モトコ?」
 「起きたか」

 だが素子はそれどころではない。
 ずるりずるりと可奈子の膣からそれを引きずり出し、人肌に温まっているそれを赤子の口元へと持って行った。

 「あれ…? その子も起きたん?」
 「ああ。危機一髪だった」

 それは透明な張型。
 白い粘液が詰まっている張型だ。

 中に入っているのは言うまでもなく景太郎の精液。
 そしてこの張型には両方に亀頭があり、片方の亀頭は柔らかいゴムで出来ている。
 素子はゴムの方を赤子の口元へと持って行った。

 ちゅうちゅう…こくこくこく……


 ニプルの代わりにゴムの亀頭に吸い付き、赤子は極自然に精液を啜りだす。

 これは哺乳瓶ならぬ哺乳張型である。
 それも景太郎のペニスの形を取った、この世で一つしかない、この館専用であり、彼女らの娘専用の哺乳瓶なのだ。

 正確に言えばこの赤子は素子が産んだ子供ではない。
 なるが産んだ子供である。

 だが誰が産み落とそうとそれは景太郎の子供であり、自分らの子供。
 そして未来の景太郎の女なのだ。
 だからこうやって皆で大切に育てている。

 今現在は実親である なるが結婚直前の為に実家に戻っている。だから女達は母乳代わりの精液を交代で膣で持って人肌に温めて飲ませてやっているのだ。

 「よぅ飲んどるなぁ…ウマイって解かるんやなぁ……」
 「ああ…この子も女だからな」
 「そっか~…」

 全身を淫液で濡らし、精液を赤子に啜らせつつ極自然の会話をする二人。
 その異様さは筆舌に表わし難い。

 だが、極自然に精液を啜るこの子にしても決して普通の人間では無い。

 赤子ではあるが淫魔なのだ。

 素子は膨らみ始めた自分の腹を優しく撫でつつ、抱いている赤子に頬擦りをした。

 「もうすぐお前の妹が生まれるぞ。
  景太郎は女が増えれば増えるほど ひなたの魔力で精力が増すからな、私達も体力がもたんかもしれん。
  早くお前も育って一緒に楽しもう」

 流石に自分の夫となったのだから彼の名も呼び捨てだ。
 御主人様と言って甘える事もあるが。

 キツネも自分同様妊娠しており、『ひなた荘の関西弁の使い手を増やすんや♪』と楽しそうだ。

 「なぁなぁ、けーたろの性欲ってオンナ増えたらその分比例して増えるんやろ?」
 「ああ」
 「せやったらもっとオンナ増やせへん? アキコとかええやん」

 太田あき子。
 中学の時のカオラの後輩であり、しのぶの同級生だ。
 大学は違うが、今も仲の良い友人である。

 「そう言えば しのぶはニャモを獲り込むとか言ってたな」
 「なるやんも、メイを引っ張り込むとか言うとったで?」
 「ほう?」

 成瀬川メイ。
 再婚した母方連れ子で、なるの義理の妹である。

 大切な友人や家族。
 それすらも肉欲の輪に取り込もうというのか。

 だがそこには意地の悪さは微塵もない。
 そうなる事が彼女らの幸せに繋がるのだという確信があるからの事で、善意から出た行動なのだ。


 破状したままの倫理観。
 肉欲と愛欲に染まり切った日々。

 それこそがここでの幸せであり、普通なのだろう。

 ぐちゃぐちゃに絡まった呪いによって齎された歪み。

 暴走した景太郎の歪み――その欲望から、妄想から生まれた愛が具現化してしまったものであるが、受け入れれば心地良いぬるま湯だ。

 そしてそのぬるま湯から抜け出ようとする愚か者はいない。

 毎日毎日、愛おしい男を肉体からだで奉仕し、
 毎日毎日、スープの様に精液を啜る。
 連れ合いと交尾し、仔を孕み、また交尾し、また仔を孕み、増えた仔と共に交尾してもらう。

 麗しい円環だ。

 なだらかで、おだやかな淫猥の輪。

 精液と愛液の香り漂う幸せの日々。

 「けぷ…」

 素子はザーメンミルクを飲み終えた子を優しく抱き、その背を軽く叩いてゲップをさせる。
 乳吐きならぬ精液吐きを防ぐ為だ。

 その所作は母親のそれ。
 まだ産んでもいないのに、既にもっている母親のそれだ。

 「早く大きくなれよ…そして早く景太郎に処女を捧げような」
 「あ~…」

 額をくっ付け、優しくそう語る素子のその言葉に反応するかのように赤子が笑った。

 「あはは…コイツもわかっとんやな~」
 「当然だろう? 私“達”の娘だぞ」
 「せやな」

 だからカオラも微笑む。

 この子の声に反応してか、可奈子も意識を取り戻し、抱き締めるべく身を起こす。

 春の風が舞い、桜の花弁が舞い込む。

 精液と愛液の香りを舞い上げ、女達の鼻と赤子の鼻を擽り、四人は擽ったそうな笑みを漏らしていた。

 優しい空間。
 穏やかな家族の空気。

 只そこに精液の匂いが絶えないだけ。
 淫臭が絶えないだけである。

 これからも続く円環の輪。

 常に肉欲と情欲の臭いが尽きない幸せな毎日。

 それこそが彼との強い結びつきであり、切れない愛情でもある。

 皆を汚すだけ穢した景太郎の妄想は、それでも強すぎるほどの愛情に満ち満ち溢れていた。

 それが解かっているからこそ、誰もそれを拒絶できなかったのである。

 堕ちれば堕ちるほど、
 穢れれば穢れるほど彼のものになってゆく感が強まるのに、どうやって拒絶できようか。

 彼を愛し過ぎるが故の堕落なのだから、昇天特別でずとも仕方の無い事なのかもしれない……

 季節は春。
 彼が初めてここに来てくれたあの季節。

 廻り廻って桜を咲かせた彼の想いは、淫猥な華をまた狂い咲きさせてゆくことだろう。

 それこそが素子の…皆の幸せへと繋がるのだから……

 これかもずっと――

 「そう言えば、明日くらいに寮の見学者が来るいうとったで?」
 「あぁ…私も聞いたぞ。名前は…」
 「真枝です。真枝絵馬、十五歳です」
 「十五…あぁ、サラと一緒か。だったら……」
 「洗脳してもかめへんやろ?」
 「ですね」

 桜は咲く。
 だが散らされる花もある。

 彼に捧げられるのはそんな日々。

 そしてそれは続いてゆく。

 この穢された館がある限り。ずっと――



 ねぇ、知ってる?
 アイシアウ二人が一緒にトーダイへいくとね……

 女の子は男の子の所有物になれるんだよ。





 盲目の愛にして妄想の愛。

 “妄愛”は世間で言えば単なる歪み。

 だが歪みは……歪んではいても愛おしい想い。

 だからこそ受け入れれば――歪みは、優しく心地良い。




   <終幕>





*******************************************************


 皆様、長々とお目汚ししました。Pixyでございます。

 元々は情欲に狂った素子がどんどん堕ちて行くだけの話にしようとしてたのに、何故かハーレムに……あれ~?

 絡みのシーンも、もっとぐちょぐちょのヌルヌルにしたかったし、もっともっとエッチくしたかったんですが、今の私ではこれが精一杯…ツライですね。

 なるの扱いはかなりナニでしたが、ラブひなにおいての好みの順は、
 素子>可奈子>キツネ>しのぶ>カオラ>むつみ>サラ>なる で、なるがぶっちぎりで最下位です。だからこーなっちゃったんですな。

 素子はすぐにテンパるのが好きでしたし、可奈子は相手が景太郎ならトイレを使用中に見られても悦ぶところが好きでしたw
 キツネさんは普段は大胆に迫るのに、唐突に純情になったりして可愛い女の人で好きでした。
 しのぶちゃんはセックスアピールが足りないクセに直に妄想は高まってゆく危なさが好きでしたしw 
 カオラは人懐っこい微笑と、突然仕種が色っぽくなる点にグッときました。
 むつみさんは狙いすぎててそこがマイナスでしたが、なるよか好きでした。

 こんな女の子の見方してるから叔父に『お前の中身は男だーっ!!』とか言われるんでしょーねぇ……
 実際、ヲッサンくさいって良く言われてるし……
 だから…という訳でもありませんが、素子に淫語連発させて景太郎を逆レイプして処女を散らす話も思いついてましたしね。ヤレヤレ……

 もし今度エッチなの書いたとすれば、たぶんそれはプチ陵辱ものでしょーね。
 悪意ゼロの景太郎に肉奴隷にされる素子の話……ちょっといいかも…等と思ってしまうのは、私にMっ気があるのかもしれませんね~w

 さてと…長々とお付き合いありがとうございました。
 まだまだ乱文怪文で表現が稚拙な私ですが、何とか続けられました。

 ちょっと18禁から遠退いてフツー(18禁以外と言う意味)のも書いてみます。
 赤松センセーがスク○アのゲーム(でゅーぷり…ゲフゲフ)のエロパロ同人(叔父の部屋の本棚にあった)を出しつつフツーの描いていたが如くw

 では、皆様。
 また書けたら18禁でお会いしましょう。


 2007/09/28 “たいがー”なコロシアムをやりながら……





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