いろいろと書いてみたい年頃なんです。
オリジナルキャラが満点でごめんなさい。
昔の創造意欲が戻ってきたと信じてやまない。
「ガイアメモリって知っているかい?」
扉越しに聞こえた聞き慣れない単語に私ははしたないと思いながらも、扉に耳を近づけて聞き入った。
扉の向こう 廊下に居るのはよく来てくださる食品の配達業者さんと……
「っ? 聞いた事がありません。なんなのですか?」
この家を一人で切り盛りして、不自由な私の面倒も見てくれるメイドさん 荻野香澄さんの声。
私なんかよりずっと物知りであろう彼女が知らないモノとなると興味が増していく。
「最近この風都に出回っている魔法の道具の名前さ」
「魔法の道具って……都市伝説の類でしょう?」
香澄さんのあきれたような返事。それでも宅配業者さんは話を続けたし、私も耳を話せずにいた。
「USBメモリみたいな形をしているらしいんだが、なんでもそいつを使えば……」
使えば……に続く言葉。それが私のガイアメモリなる眉唾アイテムを、本気で欲しくなってしまう契機となった。
『超人になれるらしい』
普通の人間を超人にできるのならば、私のこの体も何とか出来てしまうのではないかな?……なんて
こんなガイアメモリの使い方
さぁ! 探しましょう!!……となったのは別にかまわない。問題はどう探すか?である。
熱意と裏腹に襲いかかる困難な状況を前にして、彼女 志野崎美奈穂はため息を突いた。
昨今ではインターネットとそれに伴う通信販売の発達で、部屋に居ながら大抵の物を容易く入手することが可能だ。
それゆえに彼女もその方法から試してみることにした。
「えっと……ガイア……メモリっと……」
一人では滅多に起動しないパソコンを立ち上げ、覚束ない指使いでキーボードを叩く。
これでトップページに『楽●』や『ア●ゾン』の通販サイトが来て、そこから商品を選ぶだけだったならば、この困窮的状況も容易く突破出来たのだろう。
だが残念な事にそんな事には成らなかった。美奈穂が見え難い画面と必死に睨めっこして見ていたサイトは冴えない都市伝説のサイト。
黒の画面に蛍光イエローという健常な瞳にも毒な配色を読み解くと、眉唾マジックアイテムの存在がより信憑性を増していく。
『名前はガイアメモリ』
『少し大きなUSBメモリ』
ここまでは壁越しに聞いた情報の通り。次に読みとれたのは新しいファクター。
『沢山の種類がある』
『種類によって値段も異なるが概ね高価』
『性能にも差異があり、共通する点としては所有者を……』
そこから段落が大きく飛んだ。大事なところで酷いな~とスクロールバーを下げていけば、当然続きが見えてくる。
その内容だけが先ほどの噂話と大きくかけ離れていた。
「っ!? これって……」
液体が垂れるような奇抜なフォント 色は赤=血文字。
『怪人にしてしまう』
ここで驀進していた美奈穂の思考にストップがかかった。
超人と怪人では随分とニュアンスが変わってきてしまうじゃないか。
ここ数年で一番楽しい時間だったというのに、どうしてくれよう。
超人というのはいわゆるアレだ。ウ●トラ●ンでありグ●ッドマ●、宇宙●事だったりゴ●ンジャーだ。
怪人となればアレしかあるまい。端的にいえば『蜘蛛男』であろう。乙女的にも若干の抵抗を感じつつ、その想像図を思い浮かべる。
超人たちも怪人も人間離れしているが、どちらも自分の足で立って自由に歩き回っている。
目が虫の複眼であろうと全てを自由に見る事が出来る。ならば……
「どちらでも構わない……」
どちらでも目的には則している。後はもう少し近づいてから考えれば良いだろう。
そう彼女はそう考えてページのコメント欄を探す。ページの評判は良いとは言えず、コメントは殆ど無かった。
再び覚束ない指使いでコメントを入力。画面もキーボードも殆ど見えない中の入力は困難を極める。
普通ならば一分もかからないだろう入力を十分ほどかけて終える。端的な内容は……
『どうすればガイアメモリは手に入りますか?』
「何やらお疲れのようですが……」
「へっ? そっそんな事無いですよ? ちょっとパソコンで調べ物を」
美奈穂は夕飯までの数時間を見えない画面と格闘して過ごしたのだが、最初のページ以上の情報は得る事が出来なかった。
長時間パソコンの画面とにらめっこするのは普通の人間でも遠慮したいところだが、彼女はまた事情が違う。数倍の疲労は確約済みだ。
二人だけの夕食の席でお嬢様の無茶にメイドである香澄は大きくため息。
「そういう時は私をお呼びください」
「でも香澄さん忙しそうだったから……」
「お嬢様の目では余りにも難事です。どうかご自愛を」
「はぁ~い」
美奈穂は目が悪い。全く見えない訳ではないが、全ての像が歪んで見えてしまう。幼い頃から進行性の奇病らしい。
専用の眼鏡と虫眼鏡の組み合わせを微調整し、何とか画面の文字を読み取っているのだから、時間と体力と精神力が掛かってしまうのは仕方が無い。
「ふ~ごちそうさま! 今日も美味しかったです」
「お粗末さまでした」
そんな食後にありがちな主従の会話を終えて、部屋に戻った美奈穂は先ほどの言葉をさっぱり忘れた様にパソコンの前へ。
まだ未閲覧なサイト≒都市伝説系サイトを見る作業と先ほどのコメントに対する返信を確認する作業。
前者にはこれ以上の情報があるとは思えなかったので、とりあえず返信に期待してブックマークしたページをクリック。
もっともまだ数時間が立っただけなので、そんなに早く返信があるとも考えにくいのだが……
「あった」
よっぽどタイミングが良かったのか、よっぽどページの主が暇なのか?
とにかく読んでみれば内容は以下の通り。
『ガイアメモリはネットや電話での販売、及び大規模な売り込みは一切行っていない』
まぁ、都市伝説のサイトに乗るようなアイテムなのだから当然そうだろう。
『手に入れるには闇のセールスマンと呼ばれる売人と接触するしかない』
『彼らは風都の闇を巡回しながら、メモリを欲する者の元へと現れるだろう』
接触するしかない……しかしこんな風都の外れまで売り込みに来てくれるものだろうか?
普通に考えればそんな可能性はゼロに等しい。となれば中心部まで美奈穂自ら赴かなければならないということ。
優秀なメイドさんにお願いする? まさかそれこそありえない。『ガイアメモリが欲しいです!』なんてあの噂を聞いた本人に言える訳が無いじゃないか。
とりあえず正気を疑われニ・三日は部屋に軟禁されてしまうだろう。
「捜査の基本は足と聞きますけど、この足じゃ……」
もう一つの問題点 不自由な足を見下ろして、彼女はさらなるため息を重ねる。
杖に寄りかかるように、足を引きずるようにしか歩けない足。数年前の事故が両親と一緒に奪って言ったモノ。
ソレに加えて辺りを見る目にも事欠く状況。これで数撃てば当たる理論に基づく捜索は余りにも無謀が過ぎる。
必要なのは確かな情報。少なくて不便な弓で正鵠を射る事が出来るほど確かな情報。そんな上限に心当たりがある筈が……
「あっ! 確か前に……」
美奈穂は風都名物のラーメン 風麺を食べに行った時の事を思い出した。
『ナンセンスです。丼の大きさとラーメンに占める割合が不自然にすぎます』
『え!? そこが良いんじゃないですか! 麺が見えない位に大きなナルト!
ナルトってなんだか風っぽいよね~っていう安直な考えに基づく風都名物の名前は伊達じゃないです!!』
『……ときどきお嬢様がわからなくなりそうです』
屋台に並んで風麺と呼ばれる巨大なナルトとラーメンで構成される食物を食べる香澄と美奈穂。
そこに現れるのは胡散臭い笑みを自然と浮かべる特徴的な髪形の男。
『風麺の素晴らしさがわかるなんて! もしかして通だね!?』
親しみ易い雰囲気とは正反対に女性に対する軽薄な色は感じられない。
『もちろんです!』
男はふと二人をじっくりと眺めて取り出すのは携帯電話。
『っとよく見たから可愛いじゃないの。写メとってブログにUPしていい?』
女性を写真に納めるという行為にもかかわらず、イヤらしさも微塵と感じさせない。
そこには子供じみて居ながら一歩引いた知性を感じる。男性との付き合いがあまり無かった美奈穂にして、『面白い人』であった。
『僕の名前はウォッチャマン! ちょっと風都に詳しくて、友達いわく『情報屋』ってのもやってるのよ~あっ! これ名刺』
「情報屋……あの時の名刺!!」
美奈穂は慌てて机の引き出しをひっくり返す。忘れっぽいが物持ちは良い性格が幸いした。
見つけた名刺に記された電話番号。震える指でスイッチ。数回のコールの後に続くのはあの底抜けに明るい声。
「情報屋としての貴方にお願いしたい事があります」
他愛ない社交辞令の応酬の後、美奈穂がそう口にした時、空気が変わった。
情報屋なんていう一般的ではない職業についているのは飾りでは無いらしい。
ゴクリと唾を飲み込み、告げる依頼内容は想像以上に簡潔極まる。
『ガイアメモリの売人を探しています』
須藤霧彦は札束で重くなったジャケットと本当に僅か ガイアメモリ数本分軽くなった鞄を持って歩いていた。
今日も今日とて積み重ねられる営業成績がこの町の闇を濃くし、彼を栄光の階段へと押し上げていく。
進む道のりに満足しつつ、ふと頬を撫でた風に顔を顰める。
「イヤな風だ」
風の街と呼ばれる彼の愛すべき風都では沢山の種類の風が吹く。
風向や風量、温度や湿度。さまざまな要因が組み合わさり、それを受ける人間に様々な印象を与える。
「バーバー風にでも行こう」
口から零れたのは風向きが悪い日、何時も足を運んでいる理髪店の名前。
表立った職業では無いガイアメモリの売人には細かい就業規則などはない。
どれだけの時間働こうと、どれだけの時間サボろうと評価にはどんな影響も無い。
何時間働こうと結果を出さなければ無能で在り、何時間サボろうと結果を残せば有能なのだ。
よってこれから彼が髪を切りに行こうと何の問題も起こらない。
「ふむ、あの道は景色も良かったし近道だったな」
愛する風都の新たな魅力と新たな道を発見して、上機嫌になりつつ辿り着いたバーバー風の前で、霧彦は不思議な者を見た。
女性が座っている。年の項は十代後半くらいだろうか? 柔らかくウェーブを描く茶系統の髪を腰近くまで伸ばしている。
肌は余り陽を浴びて居ないのだろう陶磁器の白。身につけているのはちょっと子供っぽいポシェットとレモンイエローのワンピース。
そして残りの二つが彼女の第一印象を強力に決定づけていた。傍らには杖。全体重を預ける事が出来るだろう頑強な作り。
愛らしい顔をしているはずなのだが、その大部分を隠しているのはサングラス。
大きなその下には通常の眼鏡≒極厚の特注品が微かに見えていた。
以上の事から推測して目と足に問題があることが推測できる。そんな人物が道に座り込んでいるとなれば、霧彦のような人間とすれば話かけない訳にはいかない。
「やぁ、どうしたんだい? お嬢さん」
「……」
なるべく人受けするように話しかけたつもりが反応の無い事に困惑。
しかも先ほどから彼女が見ているのは霧彦のスカーフ。そしてそこにある赤いワンポイント。
目が悪いというのならば反応が鈍いことは理解できるとしても、なぜスカーフなどを見ているのだろうか?
そんな疑問に答えるように少女は口を開いた。
「もし人違いだったら私は意味の分からない事をお願いしてしまう事になります」
「ふむ……そのお願いとは?」
分厚い黒の上からでも分かる戸惑いの表情。それが男のサガとして彼をときめかせ、続く言葉が一気に冷めさせた。
「ガイアメモリを売ってください」
「っ!?」
思わず霧彦は一歩下がる。こんなあどけない少女にそんな事を真正面から言われるとは思っていなかったから。
そのアクションが人違いだと感じさせたのか、彼女は申し訳なさそうに頭を下げる。
「あれ? 人違いでしたか? 白いスカーフに赤のワンポイントが素敵な人だと聞いていたのですけど」
「いや……しかしどこでそんな事を?」
「風向きの悪い日にバーバー風によく来るって……クスッ♪ 風都の情報に詳しい友人から、とだけ」
もう少し人目を気にする必要性を感じる霧彦に少女は続けた。さっきよりも強い口調。
欲しい物を前にした実に子供らしい熱を持った声。
「で! 売ってくださるんですか!? ガイアメモリを!」
「残念だけどね、お嬢さん? それは大人のちょっと危険な嗜好品なんだ。君みたいな子供には過ぎた代物だよ」
その言葉にカチンと来たのか、少女=女性=志野崎美奈穂は財布から取り出すのは健康保険証。
「失礼な方! 私はこれでもお酒が嗜める立派な淑女です!!」
「……確かに。あまりにも若々しかったので」
投げつけるように渡されたそれを確認して、霧彦は仕事モードへと思考を移行させていく。
たとえ遭遇の仕方が今までにないパターンだろうと、見た目が少女だろうと関係ない。
後はただ……売るだけだ。そう、売るだけのはずだったのだが……
「ここではなんですので、場所を移しましょう」
そう言って訪れたのは近くの神社だった。一般的な地方の神社といえるその場所は広い割に人影は無い。
都市伝説級のアイテムをやり取りするにはちょうどいい場所といえるだろう。
ただ階段の多さに美奈穂が困り果て、霧彦がおんぶして上がるという肉体的にも精神的にも厳しい試練が発生したりしたが……
「こちらがガイアメモリです」
息を整えた遣り手のセールスマンが広げたビジネス鞄にはびっしりと並ぶUSB状のアイテム。
デザインは統一だが、色と表面に印刷された図柄が異なる。
見えない目を凝らすように睨みつけていた美奈穂は直ぐに全てを解読する事を諦めた。
「これを使えば超人になれるんですよね? もしくは怪人?」
「超人?……怪人? 陳腐な言葉ですね。どちらかと言えば神に近い」
何時も使う煽り文句。これを聞いただけで概ねの顧客は更なる熱に浮かされるものだ。
だが目の前の少女は違った。まるで磔にされた聖人を見るような瞳でガイアメモリを見つめる。
「神は……私を自分の足で歩かせてくれますか?」
「え?」
「神は私を自分の瞳で見る自由を与えてくださいますか?」
須藤霧彦はディガルコーポレーション成立時、もっと言えばミュージアムの歴史の中でも、もっともガイアメモリを売った男である。
そんな彼だったが、こんな人物は初めて見た。憎しみや怒り、もしくは超人になる事が目的ですらない。
ただ普通の人のように見て、歩きたいという願い。そんな当たり前を再び味わいたいという嗜好品。
「私の願いはそれだけなんです。これは私の願いを叶えてくれますか?」
「もちろん」
それだけの返答に美奈穂の顔に広がるのは満面の笑顔……からの心配な表情。
子供っぽいポシェットから取り出されたのはありふれた茶封筒から覗く一万円札の束。
「あの……お値段の方はいかほどで? 私っあんまりお金が無くて! これくらいで足りますか?」
それは大した使い道が無いのに妹思いの兄が、彼女のために毎月振り込んでいるいわゆるお小遣い……から内緒で備蓄してきた数年分の隠し財産 ヘソクリ。
こんなに面白い客にならば幾らでも売ってあげたい本心を抑え、やり手の霧彦は封筒の中身を確認して安堵。
「ご安心ください。これだけあれば一般的なメモリならば、どれでもご購入いただけます」
再び開かれたスーツケースと並ぶガイアメモリ。
石畳の階段に腰を降ろした美奈穂にも、見え易いようにしてくれているのだろうが、大きな問題がある。
「じっくりお選びください。決して安い買い物ではない」
「よく見えないんで、どれでも良いです」
「ちょっ!」
全く予想していなかった言葉。選ぶ行程やその先の違いには興味が無く、美奈穂が求めているのはたった一つのくだらない共通点。
「どんなメモリでも超人にはしてくれるんですよね?」
「えぇ、まぁ」
どんなメモリでも彼女の目と足を補う事は出来るだろう。だがそれではあまりにも味気が無さ過ぎる。
故にロマンチストで胡散臭いセールスマンはこんな提案。
「しかしガイアメモリとの出会いは運命の出会い。せめて触れて選ぶというのはいかがですか?
それだけで分かるほど強烈な運命を感じることもあると報告されています」
「はぁ、それなら……」
おずおずと差し出された細い指がなぞるガイアメモリの列。触ってみれば分かる何処にでもあるプラスチック製。
「っ!?」
何かを感じることも無く、ただ過ぎていく指が不意に離れた。沸騰したやかんに触ってしまったかのように。
自分の指先をまず見て、その触っていた先 無数にあるガイアメモリの一つへと目を凝らす美奈穂。
何とか見えたのはそのほの暗い色と頭文字 D。確信を持って告げるのは購入の意思。
「これにします」
「お買い上げ、ありがとうございます」
カバンから取り出されたメモリを美奈穂はおずおずと受け取る。先ほどのような衝撃は無い。
ただプラスチックの質感と僅かな重みがあるだけだった。そして口に出すのは子供じみた衝動。
「これはどうやって使えば良いんですか?」
買ったばかりの玩具で直ぐに遊びたい子供の心。十数年ぶりに感じられる二つの自由への高なり。
「まずは体に生体コネクタを設置します。な~に痛みもかかる時間も一瞬ですよ」
取り出されたのは銃のような形状の機械。一度借り受けたメモリを後ろから装填し、設置場所を問う。
返答は左鎖骨。あどけない女性の僅かな色香に戸惑う事無く引かれる引き金。
肌には二重の□を中心にして根をはるような入れ墨=コネクタ。
「あとはメモリを起動し、生体コネクタへと接続部分を差し込むだけです」
美奈穂は示されたメモリのスイッチを押す。響くのは電子音。それこそ安っぽい外見通りの電子音。
そのはずなのにどこか感じる凄みは何なのだろうか?
『Deinonychus』
美奈穂はまずその言葉の意味がわからずに首を傾げるが、論より証拠である。
差し込まれたメモリは沈み込むようにコネクタを通して体の中へと解けていく。
そして理解できた。Deinonychusという単語が表す全ての事柄が一瞬で。
全身を駆け回る情報。心が、頭が、体が地球の記憶を直接受け取る感覚。
堪らない。今まで感じたどんな喜びにも勝るだろう。駆け巡る力は細くて不便な体を書き換える。
封じられた地球の記憶を体現するのにふさわしい形へと。
「素晴らしい……」
霧彦の呟き。既にそこには目と足が不自由なか弱い女性は居なかった。居るのはガイアメモリが生み出した超人、いや神の姿 ドーパント。
多くのドーパントたちと比較すればかなりスレンダーな部類に入るだろう。
だがか細いのではなく全身で無駄なく動き回る為、引きしまった結果。胸部の膨らみが女性体であることを示す体を覆うのは暗褐色の鱗。
頭は体の割には大きい。大き過ぎるフルフェイスのヘルメットを被っているようにも見えるが、それは大きな凶器 鋭い牙と強力な顎を供えた肉食恐竜の頭部。
頭の後ろと肘から先の一部分には鮮やかな羽毛。四肢の指ともに鋭い爪が並ぶが足の第一指が大きく鎌のように発達している。
Deinonychus ディノニクスとは中生代白亜紀前期に生息していた肉食恐竜。
特徴的なのは15センチにもなる鉤爪と、莫大な運動力を支えるために体を温めていた羽毛。
中型だが知能に優れ、集団で狩りをし大きな獲物をも仕留めていた優秀で凶暴なハンター。
だけどそんな言葉でどれだけ語るよりも、美奈穂は世界中のどんな恐竜学者よりもこの種の事を理解できた。
そしてそんな事は一切関係なく、彼女が感じたのはたった一つのこと。
「綺麗……」
十数年ぶりに見た歪んでない景色と彼女を祝福するような綺麗な黄昏の色。
「■■■■!」
恐竜の口から迸った雄たけびは余りにも小さな喜びを祝福するモノ。
超上の力を得て美奈穂が最初に行った事は走って家まで帰ることだった。
とりあえず沢山原作キャラやら場所やらを出したくて頑張った。
だがやっぱり特撮難しい。キャラがよくわからない感じ満点。
可愛いよ、ミック(なに?