転生(てんせい, てんしょう)とは、死後に別の存在として生まれ変わること。肉体・記憶・人格などの同一性が保たれないことから復活と区別される。が、小説などではいくらかの記憶を受け継いでいる、という内容がほとんどであり、どちらかというとその概念のほうが私は好みである。
しかし、これはあくまで読者としての、第三者としての意見であり、何も自分自身が転生したい、というわけではない。
それが私、天宮雨音(あまみやあまね)の主張である。
それなのに・・・。
「まあ、見て。あんなところに子供が」
「かわいそうに・・・」
いつの間にか、知らない場所に来ていました。
・・・・
・・・ハッ!どうやら、意識がとんでいたようだ。
いけない、いけない。
少し、振り返ってみよう。
私は確か、はまっている小説の続きを買いに本屋まで出かけ、購入した本を片手に店を出たところで、突っ込んできた一台のトラックにはねられたはず。
あの時は、ああ死んだな、って思ったけれど。
これはもしや夢か?
「っ・・・」
頬をつねってみたけれど、特に変化なし。ジンジン痛む頬は別として。
そんな私を、通り過ぎていく人たちがジロジロと見てくる。・・・うう、恥かしい。
「ねえ、君」
突然、後ろから声をかけられた。
「・・・?」
振り向いた私の目の前には、ブロンドの長い髪を持つ一人の女性が立っていた。
え、外人さん?!しかも、すごい美人!思わず固まる私を見て、優しく微笑んだ美人さんは、私の目線に合わせるようにしゃがんだ。
「ねえ、君一人なの?お母さんやお父さんは?」
・・・はい?
いや確かに、私は156センチで19歳には見えない童顔だったけれど、そんな5、6歳の子供に聞くような台詞を言われるような年には見えないはずだ。思わず反論しようとして、
「・・・!・・・・!」
声が出ないことに気づいた。怒鳴るような勢いでしてみても、やはり声は出なかった。
「君、声が・・・出ないの?」
その私の行動にさすがに気づいたのだろう、美人さんも真剣な表情になって私に尋ねた。
コクン。
私が頷くと、美人さんは少し考えるようにうつむいた後、いきなり私を抱えて立ち上がった。
ええ!?
予想もしない行動に、私は手足をばたつかせる。そんな私を安心させるように美人さんはほほ笑んだ。
「大丈夫。君を安全なところに連れて行ってあげるから、落ち着いて」
そう言って頭をなでられる。くすぐったくて、でも温かくて、なぜか涙があふれた。私の涙を拭いながら、でも、と美人さんはつぶやいた。
「こんな小さな女の子を捨てるなんて・・・」
そのつぶやきに、思わず耳を疑った。
小さな?え、そんなに小さい?
困惑した私の視界に、お店のウインドウが入る。
太陽の光が屈折して鏡のようなそこに写るのは、
「・・・!?(ど、どういうことー!?)」
美人さんに抱えられた、5、6歳くらいの小さな女の子がいました。
~異世界へようこそ~
(それは、新たな人生)
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