<このWebサイトはアフィリエイト広告を使用しています。> SS投稿掲示板

チラシの裏SS投稿掲示板


[広告]


感想掲示板 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

[26313] 【習作】ストライクウィッチーズ 転生者の日々 〈オリ主転生 原作沿い予定〉
Name: トリックスター◆a98e1cb8 ID:99e4081b
Date: 2011/03/22 22:48
 ストライクウィッチーズの二次小説です。
 オリジナルキャラが主人公で、まだしばらくは原作に入りません。
 転生者ですが、チート的な要素はほとんどありません(しかし、いくらか原作の知識はあります)。
 更新は不規則です。それでもいいという方は、ぜひどうぞ。



 3/3 プロローグ更新
 3/5 プロローグ編集
 3/10 第一話更新
 3/20 第一話修正
 3/21 第二話更新
 3/22 第二話修正



[26313] 【習作】ストライクウィッチーズ 転生者の日々 プロローグ
Name: トリックスター◆a98e1cb8 ID:99e4081b
Date: 2011/03/05 18:59
 転生(てんせい, てんしょう)とは、死後に別の存在として生まれ変わること。肉体・記憶・人格などの同一性が保たれないことから復活と区別される。が、小説などではいくらかの記憶を受け継いでいる、という内容がほとんどであり、どちらかというとその概念のほうが私は好みである。
 しかし、これはあくまで読者としての、第三者としての意見であり、何も自分自身が転生したい、というわけではない。
 それが私、天宮雨音(あまみやあまね)の主張である。
 それなのに・・・。

「まあ、見て。あんなところに子供が」
「かわいそうに・・・」

 いつの間にか、知らない場所に来ていました。
 ・・・・
 ・・・ハッ!どうやら、意識がとんでいたようだ。
 いけない、いけない。
 少し、振り返ってみよう。
 私は確か、はまっている小説の続きを買いに本屋まで出かけ、購入した本を片手に店を出たところで、突っ込んできた一台のトラックにはねられたはず。
 あの時は、ああ死んだな、って思ったけれど。
 これはもしや夢か?

「っ・・・」

 頬をつねってみたけれど、特に変化なし。ジンジン痛む頬は別として。
 そんな私を、通り過ぎていく人たちがジロジロと見てくる。・・・うう、恥かしい。

「ねえ、君」

 突然、後ろから声をかけられた。

「・・・?」

 振り向いた私の目の前には、ブロンドの長い髪を持つ一人の女性が立っていた。
 え、外人さん?!しかも、すごい美人!思わず固まる私を見て、優しく微笑んだ美人さんは、私の目線に合わせるようにしゃがんだ。

「ねえ、君一人なの?お母さんやお父さんは?」

 ・・・はい?
 いや確かに、私は156センチで19歳には見えない童顔だったけれど、そんな5、6歳の子供に聞くような台詞を言われるような年には見えないはずだ。思わず反論しようとして、

「・・・!・・・・!」

 声が出ないことに気づいた。怒鳴るような勢いでしてみても、やはり声は出なかった。

「君、声が・・・出ないの?」

 その私の行動にさすがに気づいたのだろう、美人さんも真剣な表情になって私に尋ねた。
 コクン。
 私が頷くと、美人さんは少し考えるようにうつむいた後、いきなり私を抱えて立ち上がった。
 ええ!?
 予想もしない行動に、私は手足をばたつかせる。そんな私を安心させるように美人さんはほほ笑んだ。

「大丈夫。君を安全なところに連れて行ってあげるから、落ち着いて」

 そう言って頭をなでられる。くすぐったくて、でも温かくて、なぜか涙があふれた。私の涙を拭いながら、でも、と美人さんはつぶやいた。

「こんな小さな女の子を捨てるなんて・・・」

 そのつぶやきに、思わず耳を疑った。
 小さな?え、そんなに小さい?
 困惑した私の視界に、お店のウインドウが入る。
 太陽の光が屈折して鏡のようなそこに写るのは、

「・・・!?(ど、どういうことー!?)」

 美人さんに抱えられた、5、6歳くらいの小さな女の子がいました。

~異世界へようこそ~
(それは、新たな人生)

 next continue… 
 



[26313] 【習作】ストライクウィッチーズ 転生者の日々 第一話
Name: トリックスター◆a98e1cb8 ID:c1c9eff3
Date: 2011/03/20 19:14
 第一話 

「――はい、着いたわよ」

 美人さんの声で私は目を覚ます。どうやら、眠ってしまっていたらしい。意識がはっきりしてくると、先程の光景が再び浮かび上がってきた。なぜ、私は幼児化しているのだろう?しかもよく見てみると、日本人の証である黒髪ではなく、長いブロンドの髪だ。おそらく、瞳の色も茶色ではないのだろう。ということは、退化ではない。これは元の私の身体では無いのかもしれない。

「おーい?起きてるー?」

 気づけば、美人さんが私の顔を覗き込んでいた。思考の海に流されていた私は、驚いて美人さんの腕の中いたことを忘れ、身を離そうとした。

「・・・っ!」
「っとと!セーフ・・・」

 転げ落ちそうな私の身体を慌てて抱え直した美人さんは、軽く私の頬を突いた。

「こら駄目じゃない、いきなり動いちゃ」
「・・・」
「まあ、もう歩けるよね?」

 美人さんがゆっくりと私を地面に下ろしてくれる。小さい足でしっかりと地面を踏み締める私を見て、美人さんがよし、と頷いた。

「それじゃ、行こうか」

 頷いた私の手を取り、歩き出す。周りはどうやら庭らしい。花壇やスコップなどが視界に入った。耳を澄ますと、かすかにだが子供の声も聞こえる。学校だろうか?そんなことを考えていたら、いきなり美人さんが立ち止まった。

「はい、ここよ」
「・・・・」

 白い石造りの壁に、色あせているステンドガラス。建物の頂点には白い十字架。・・・どこからどう見ても、そこは教会だった。ここって言われても・・・。そんな私の横を通り、美人さんは自分の家のように教会の扉を開けた。

「ただいまー!今帰ったよー!」

 美人さんのその声が終わらないうちに、教会のあちこちから5,6人の子供たちが走ってきた。

「おかえりー!」
「おかえりなさい!」
「ただいま。サイモンは?」

 いったん私から手を離した美人さんは、抱きついてきた子供たちの頭を優しく撫でて尋ねた。

「僕ならここですよ、ジュディ」

 教会の奥から、金髪の穏やかそうな男性がやってくる。

「あ、ただいまサイモン」
「お帰りなさい、ジュディ。・・・その子は?」

 美人さんから私に視線を向けた男性は首を傾げる。

「町で見つけたの。おそらく、置いて行かれたのね」

 子供の前ではさすがに捨てられた、とは言えないのか、遠回りな説明をする美人さん。男性もそれで通じたのか、小さくうなずいた。

「そうか・・・。この子はそれを?」
「分からないわ。この子、話せないようなの」

 その言葉にはさすがに表情を変えた男性。私に近づいた男性は、私の視線に合わせるようにしゃがんだ。

「僕は、サイモン。サイモン・F・クロムウェル。こっちは、ジュディス・L・クロウェル。君、自分の名前は分かるかい?文字とか、書ける?」

 フルフル。頭を左右に振ると、サイモンさんは困ったようにジュディスさんを見た。

「困ったね、これじゃこの子をどうやって呼んだらいいんだろう?」
「そうね・・・。あら?・・・そのまま動かないでね」

 私へ近づいたジュディスさんは、私の首の後ろへ腕を回す。パチン、と金属の外れる音がすると同時に、ジュディスさんが私から身体を離した。

「サイモン、これ見て」
「これは、ペンダント?」

 ジュディスさんの手にあるのは、銀色のロケットペンダントだった。多分、私の首に掛かっていたものだろう。ペンダントの裏をジュディスさんが見て、声を上げ、横から見たサイモンさんも目を丸くする。

「サイモン!これ・・・」
「ん?・・・これは・・・!」

 裏に何かあるのだろうか。しばらくして、ジュディスさんが私にペンダントを渡した。

「勝手に見ちゃってごめんなさい。このペンダントの裏、見てみて」

 ペンダントをひっくり返すと、文字が刻印されていた。
 Olivia Eunice Lambert

「オリヴィア・ユーニス・ランバート・・・そう書いてあるわ」
「ランバートというと、最近強盗に襲われた家の名だ。確か、一人娘がいたはず」
「これが本当なら、そのショックで話せなくなったのかも知れないわね」

 なんだろう、この文字を見たら、とても悲しくなってきた。目の奥が熱い。
 二人が私を見てぎょっとする。

「え、どうして泣いてるの!?」
「ショックで記憶は無くても、脳は覚えているのだろうね・・・」

 頬に手をやると、生温かい液体で濡れていた。ああ、泣いてるのか。自覚すると余計に止まらなくなる。服の袖で拭おうとして、ジュディスさんに抱きしめられた。思わず身体が強張る。

「!?」
「思いっきり泣いていいのよ。これから家族になるんだから」
「また君はいきなり・・・。まあ、君が望むならね」

 ジュディスさんとは反対の向きから私を抱きしめるサイモンさん。私を見つめる二人の視線はとても優しくて、身体もなんだか温かい。私は腕を持ち上げ二人の身体に回すと、聞こえないとは分かりつつ、唇を動かした。

『ありがとう』
「・・・え!?」
「今のは・・・」

 身体を離した二人が驚いたように私を見た。

「今、この子の声が聞こえたような・・・」
「僕もだ・・・」

 私は首を傾げる。声は出ていないはずだけど?そう思いつつ、もう一度話してみることにする。

『えっと、聞こえますか?』

 今度は少し大きめに、はっきりと声を出すイメージで。すると、ジュディスさんがとても嬉しそうに私を抱きしめた。

「聞こえてるよ!良かった!」
「というか、君、その格好は・・・」
『え?』

 サイモンさんの言葉の意味がわからない私へ、ジュディスさんが私の頭を指差した。頭?頭に手を伸ばすと、艶やかな髪と、ふわふわな毛の感触が・・・毛?慌てて両手で確認すると、まるで動物のような耳が生えていた。

「そこだけじゃないわよ」

 ジュディスさんがクスクスと笑いながら、今度は私のお尻を指差した。恐る恐る手を後ろにやると、ちょうど尾骨の辺りにフサフサした長い尻尾が生えていた。

『な、何これ・・・』
「動物の耳と尻尾、ということは・・・」
「まさか、ウィッチだったなんてね」

 ウィッチ?魔女?なんで、動物の耳と尻尾が生えたらウィッチなの?脳内がオーバーヒートを起こしそうになる私に、ジュディスさんが告げた。

「ま、それは後でいいか。・・・とにかく、ようこそ!新しい家族へ!」
『今説明してーーー!』

 なんだか、色々と大変なことになりそうです。


(next continue…)



[26313] 【習作】ストライクウィッチーズ 転生者の日々 第二話
Name: トリックスター◆a98e1cb8 ID:c1c9eff3
Date: 2011/03/22 22:47
 1942年7月。

 私、天宮雨音がオリヴィア・ユーニス・ランバートとしてこの世界に転生して、クロムウェル夫妻の養子となって7年。私は14歳になった。
 
 第二の人生を歩むことになったこの世界は、前世の私がいた世界とは大分違っていた。私が今住んでいるこの国はブリタニア連邦というのだが、前世ではイギリスという国名であった。それだけでなく、扶桑皇国(日本)やリベリオン合衆国(アメリカ)、帝政カールスラント(ドイツ)など、各国の国名までが変わっていた。
 
 しかし最も驚くべきは、今は前世でいうと第二次世界大戦が勃発しているはずの時代であるのだが、なんと、その第二次世界大戦どころか、各国での戦争が起こっていないのである。その代わり、異形な侵略者が人類を脅かしている。

 ネウロイ。突如現れたその怪物により、人々は故郷を、国を失い、人類はネウロイを世界共通の敵として、徹底抗戦に打って出た。

 だが残念なことに、ネウロイは瘴気を発しており、通常の人間では近付いただけでも致命傷となる。そのため、対ネウロイ用として、とんでもない兵器が開発された。

 ストライカーユニット。

 言葉だけなら、前世でいう戦闘機のようなイメージを抱くのだが。

『魔力を動力とする魔導エンジンを搭載した魔女専用装備』

―そう、ここは魔力や魔法など、前世では非科学的なものとされていたことが実際に存在する世界であり、しかもこのストライカーユニットを装備できるのは、20歳以下の魔力を持つ少女、ウィッチだけであるという。この時点ですでになんだこの世界、と思うのだが、困ったことに、私自身もそのウィッチである。発覚したのは、私がクロムウェル夫妻に出会った日で、ただ自分の身に起こったことにパニック状態であった。まあさすがに6年経った今では、諦めの境地にいるが。

 しかし、いくら私がウィッチであることを認めていても、ただ一つだけ認められないものがある。それは、

「リヴィ、コレなんかどう?」
『・・・・!!(無理、無理~!!)』

 私ににじり寄る養母さんが持っている、もはやパンツというしかない、一枚の布、ズボンである。

 最悪なことに、この世界の女性は、パンツをズボンとして考えており、扶桑などでは女学校でセーラー服にスクール水着やブルマやパンツが普通であるらしい。

「もう、このズボンも可愛いじゃない。なんで嫌なの?」

 もちろん、私の養母さんも同様であり、20代前半を過ぎているのにもかかわらずスラッと引き締まった下半身には、黒いパン・・ズボンを穿いている。ちなみに、養母さんが持っているのは、ピンクの布地にフリフリのレースが惜しみなくついているズボンである。あまり肌を露出したくない私だが、これは許容範囲外である。首を振って後ろに下がる私になおも近寄る養母さんに、いい加減に私の限界も越えた。私の身体を青白い光が包み、ウィッチの証である使い魔、ソマリの耳と尻尾が現れる。

『お養母さん、もうやめてください』

 話せないはずの私の口から、言葉が発せられる。ウィッチの中には、固有魔法を使うことのできる者もいる。私の固有魔法は振動操作。その応用で、普通なら聞こえないほどかすかに発せられる自分の声の振動を増幅し、聞こえるようにしているのだ。

『フリフリは嫌だって言ったのに』
「えー、そんなに嫌?フリフリが可愛いのになー」

 ブーブー文句を言いつつも、ようやく引き下がる養母さん。このやりとりはほぼ毎日行われるため、周りのみんなは「いつものことか」と見向きもしない。・・・薄情だ。不機嫌に頬を膨らませる私を見て、クスクス笑う養母さん。

「それにしても、つくづく便利よねーその能力」
『?』

 養母さんの言っている意味が掴めず、首を傾げる。

「だって、振動を操作すればいろんなことに使えるじゃない。例えば、わざわざ遠くまで行かなくても話したり」
『私は拡声器ではないです』

 ムッとする私を見てまた一段と笑みを深くした養母さんは、「でも」と私を優しく抱きしめた。

「そのおかげで、リヴィの声が聞けるんだから、感謝してるのよ」
『・・・っ!』

 頬がかあっと熱くなる。この人は、なんで恥ずかしげもなくサラッとそんな言葉を言えるのだろう。大体私が怒ると、こうやって私を宥めるから嫌いになれない。

『わ、分かりましたから、もう離れてください。朝食の準備をしなくてはいけないので』
「はーい」

 あっさりと離れる養母さん。まだ熱い頬に手で扇ぎながら、私はエプロンを身につけキッチンに向かった。

 数十分して出来上がった朝食をテーブルに並べていると、2階に続く階段から3人の子供たちが下りてきた。

「「「リヴィお姉ちゃん、おはよう!」」」
『おはようございます、カレン、リエラ、ラック。ご飯できてますから、顔を洗ってくださいね』
「「「はーい!」」」

 起きたばかりだというのに、元気よく走って行った3人は、親に捨てられたり、戦争で身寄りのなかったりなど、さまざまな事情で独りになった子たち。ここはそんな子たちを助けるため、ジュディス養母さんやサイモン養父さんが設立した孤児院。私はそんな忙しい養母さんたちのために、食事の準備など家事を手伝っている。

 この年齢なら学校などに行くべきなのだろうが、私は前世の記憶があるからか、すでに同年齢の学力を超えているらしい。なぜか教え方も上手いらしく、学校には行かず、子供たちに読み書きなど基本的な勉学を教えている。前世では小学生の家庭教師のアルバイトもしていたが、まさかこんな形で役に立つとは思わなかったけれど。
 
 そんなことを考えているうちに、手や顔を洗ってきたカレン達がまた走って戻ってきた。

『こら、走ってはダメですよ。ほら座って』

 落ち着きのないカレン達をイスに座らせたところで、ようやく一仕事終えたのか、養母さんたちもやってきた。

「あー朝から疲れたー。もうお腹空きすぎで死にそうー」
『おはようございます、養父さん』
「ああ、おはようございます、リヴィ。今日も美味しそうですね」

 優しくほほ笑んだ養父さんは、スッとイスを後ろに下げて養母さんを座らせる。 
 いつも思うのだが、レディーファーストを信条とする紳士な養父さんは、なぜこんな自由奔放な養母さんと結婚したのだろう。本人は「私の一目惚れなんですよ」と言っていたが、まあ確かに良い夫婦だとは思う。

「リヴィ、座らないのですか?」
『あ、はい!』

 いつの間にか座っていた養父さんに言われ、私も慌てて腰を下ろして、耳と尻尾をしまう。全員が席に着いていることを確認した養父さんは、「では」と手を合わせる。

「今日もまた、良い一日でありますように」
「「「「「『いただきます!』」」」」」

 この合図は、昔扶桑に行ったことのある養父さんが、食事の際のこの号令を気に入り、この孤児院では毎朝毎晩行われている。

「うーん!やっぱり、リヴィの作るご飯は美味しいわね!」

 卵焼きを一口食べた養母さんが絶賛する。今朝のメニューは、白ご飯に味噌汁、卵焼きにサラダだ。扶桑文化が大好きな養父さんが、お釜を買って来た時には驚いたが、ブリタニア料理よりは和食が作り慣れている私にとってはありがたかった(作り方については本で学んだ、と養母さんたちには言ってある)。意外に気に入られたため、毎週2,3回は扶桑料理がメニューになる。

「私じゃこう上手くはいかないし・・・」

 そう呟く養母さんに、私と養父さんは苦笑するしかない。じっとするのが苦手な養母さんは、料理など家事がまあ、壊滅的である。以前養母さんが作ったスクランブルエッグを食べた時は、一日寝込んでしまった。私が作るようになるまでは、養父さんが食事を担当していたらしい。回想しつつ味噌汁を飲む。・・・うん、いい出来だ。

 食事を終え、後片付けも終えた私は、今町で食材などの買い物をしている。

「ねえ、あとどれ買うのー?」

 買い物のお供として着いてきたカレンに、買い物リストを渡す。
 
 3人の中で一番年長の6歳であるカレンは頭が良く、すでに読み書きや簡単な計算なら分かるようになっている。線で消されたリストをの中で、唯一残っている文字を目で追ったカレンは、「うえー」と嫌そうに顔を歪める。

「ピーマンとニンジンは嫌だよー」

 そんなカレンに苦笑しながら、私たちは手をつないで目的地まで歩いて行く。

 目的地の市場に着いた私は、並んでいる野菜を見ていく。苦手な野菜は見たくないのか、あまり楽しそうではないカレン。どうしようか悩んでいると、ちょうど近くで出し物が始まったらしく、人だまりができていた。

「リヴィお姉ちゃん、あれ見てきていい?」

 袖を引っ張って聞いてくるカレンに頷いてやると、嬉しそうに駆けて行った。

 しばらくして買い物を終えた私は、市場を出てカレンを探し始める。あまり人が多い中で耳と尻尾を出すのは苦手なため、視線のみでカレンを探していると、突然、向こうから叫び声が聞こえた。私がそこへ向かうと、二人の男性が取っ組み合いをしていた。

「クソっ!」

 片方の男性が懐からナイフを取り出して、もう一人の男性を切りつけた。男性は腕を抑えてうずくまる。そんな男性に向かってナイフを持った腕を振り上げる男性との間に、小さな少女が出てきていた。

「大人が喧嘩して、恥ずかしくないの!?」

 私は青ざめた。その少女はカレンだった。気の強いカレンは、ナイフを持った男性をにらみつけている。

「なんだ、このガキ!」

 血ののぼった男性は、構うことなくカレンに腕を振り上げた。

 ここからじゃ、走っても間に合わない―――!!
 
 私は、魔法を発動する。耳と尻尾が現れたと同時に、地面を思い切り蹴った。

「グハッ!」

 魔法で強化された脚力に、固有魔法で地面を蹴った時の振動を増幅して、通常ではありえないスピードと威力をもった弾丸と化した私の身体は、男性がナイフを振り下ろすよりも速く男性に突撃した。思い切り飛ばされた男性は、近くの柱にぶつかり、そのまま意識を失った。

「お、お姉ちゃん・・・?」
『カレン、無事ですか!?』

 私は強くカレンを抱きしめる。茫然としていたカレンだったが、ようやく私の身体に強くしがみついてきた。

「こ、怖かったよー!!」
『まったく、なんて無茶をしたんですか・・・!帰ったらお説教ですよ!』

 離れないカレンを抱きしめたまま、私は立ち上がる。そして、ようやく私は自分がしたことに気付いた。

『し、しまった・・・。魔法を使っちゃった・・・』

 あれだけ目立たないように魔法を使うことに気をつけていたのに!そう後悔してもすでに遅く、私の周りにたくさんの人たちが集まってきた。

「嬢ちゃん、ウィッチだったんだな!」
「すごいわねー!」
『ど、どうも・・・』

 いたたまれなくなった私は、強化された脚力で急いでその場から離れた。


――それから数日後、私のもとに1人の人物がやってきた。一つの言葉とともに。

「貴女に、軍に入っていただきたいのです。ネウロイから人類を守る、ウィッチとして」

 それが私の、ウィッチとしての人生を左右するターニングポイントだった。

(next continue…)


感想掲示板 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

SS-BBS SCRIPT for CONTRIBUTION --- Scratched by MAI
0.02293586730957