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[26314] 【ネタ/ギアス三次創作】 コードギアス変貌のルルーシュ 暴走のエトランジュ 1話
Name: のーべん◆e3bd37a7 ID:89555681
Date: 2011/03/05 15:06
※この作品は、歌姫様が執筆中の架橋のエトランジュの番外編です。
 勿論、歌姫様からの許可はいただいております。


※内容に関する注意
 タイトルの通りルルとエディのキャラ崩壊が特にひどいです。キャラ崩壊が許せる方向けです。
 騎士団もなんでもぶっ壊せ! という方はどうぞ、本編へ。





ExtraNumber.1「エトランジュ女王覚醒!


 ルルーシュ・ランペルージ。黒の騎士団の指導者ゼロである青年。
 彼はブリタニア帝国打倒の為、ときに非道とも取れる手段を用いてきた。
 そんな彼はあるとき、エリア11―すなわち日本で作られたアニメのDVDを見せられた。 
 悪の帝国に立ち向かう者はどうあるべきか、という資料との名目で。

「宇宙に必要なのは俺たちの熱い勇気だ! それをマイナス思念と呼ぶのなら、滅ぶべきはZ-マスター、お前の方だ!」

「俺のこの手が真っ赤に燃える! お前を倒せと、とどろき叫ぶ!」

「我が名はゼンガー、ゼンガー・ゾンボルト。我こそは、悪を絶つ剣なり!」

 等等。彼にとってはまぎれもなく未知の世界である。
 なにせ彼は復讐のために素顔を覆い隠している男であり、叫ぶよりはまだ高笑いの方が似合う男であるのだから。
 
(これは、なんだ!)

 声をあげたくなるが、一応、資料という名目なので無碍にも出来ない。
 ひたすら彼は見続けた。そう、8時間ほど。

「こんなもの、俺のキャラじゃ……ない」

 見終わった彼は疲れ果てた様子でそう漏らした。
 8時間ノンストップの鑑賞会ともなれば無理も無い。
 さすがに、彼に資料を送った協力者や、彼の指導する黒の騎士団のメンバー達も、「確かにそうだな」とうなずいた。

「お疲れ様です、ルルーシュ様」

 彼を労るように、エトランジュ・ポンティキュラスは言った。
 彼女はルルーシュの協力者であり、また、ブリタニア帝国に支配されている国―マグヌスファミリアの女王である。
 僅か15歳という彼女だが、戦争という惨禍に巻き込まれ、背負わなくともいい重圧を背負わされた悲劇の少女でもある。
 もっとも、気丈な彼女は普段、そのような態度は見せない。

「はあ、エトランジュ様。お気遣いなく」

 ルルーシュはぐったりした様子のまま、エトランジュの労いを受ける。
 と、彼は奇妙な事に気がついた。

「エトランジュ様」
「なんでしょう」
「お顔が、なぜかいきいきとされていらっしゃるようなのですが」
「日本のアニメというものは、非常にクオリティーが高いものですから」

 エトランジュは、最初からこの鑑賞会に参加していた。
 だというのに、なぜか目がキラキラ輝いているのである。

 いや、ルルーシュはそれ以上に重要な事に気がついた。
(登場人物は皆、異様に士気が高かったな。そうか!)
 
 彼は気がついた。彼らのような態度で指揮に臨めば、自軍の士気高揚に大いに役立つと。
 人生、何がアイディアの着想点になるか分かったものではない。

「フ……フフ、フハハハハハハハハ!」

 素晴らしい思いつきに笑いがこみ上げるルルーシュ。
 
 無論、周りの人間はそんなルルーシュの胸中など分かるはずも無い。
 
「ゼ、ゼロ、頭、おかしくなっちまったのか!?」

 そんな風に心配される有様である。

「いや、名案を思いついたのでな」
「は、はあ」
「誰か、他にこのような映像を所持していないか?」

 唐突なルルーシュの質問に、やはり全員頭がおかしくなったのか、と思わざるを得なかった。
 いや、たった一人だけ、とても嬉しそうな表情の人物がいる。
 しかも少女である。

 誰あろう、マグヌスファミリア女王、エトランジュ・アイリス・ポンティキュラスである。
 彼女は目を輝かせながらルルーシュに「ルルーシュ様、ルルーシュ様も、良さが分かるのですね!」と叫んだ。
 
 周囲の人間は非常に驚かされる。普段の彼女は物静かで、本心すら見せないようなことが多々あるのだ。
 その彼女が、年相応に目を輝かせながらルルーシュの手をとっている。ブンブン振っている。

「エ、エトランジュ様?」
「ルルーシュ様もジャパニメーションの良さがわかったのでありましょう!?」

 ジャパニメーションとは、ブリタニア帝国により日本がエリア11となる前の時代、日本で作成されたアニメーションのクオリティーの高さを賞賛して、各国で使用されていた造語である。
 ともかく、鎖国していたはずのマグヌスファミリアで育った彼女がなぜそれを知っているのか。

「ま、まさか」
「なんでしょう?」
「エトランジュ様は、日本のアニメがお好きなのでございましょうか」
「勿論です、勿論ですよ! 私、語学教育の一環で、様々な映像作品を見せて頂きました」
「その中にアニメがあった、と」
「ええ、そうです! 私、とても感動しました! あらゆる分野で自由な表現をしているジャパニメーションに!」

 ルルーシュは、なぜエトランジュが難解な日本語を話す事が出来るか、その理由を理解した。
 確かに、映像作品を言語学習に用いるのは、一般的な方法である。
 しかし、それにしてもである。
 なんだか影響されすぎてやいないだろうか。

「そうですね、ルルーシュ様は黒の騎士団の指導者でありますし、司令官が出てくる『勇者王ガオガイガー』の全話視聴でもしていただきましょう!」

 一人ではしゃぎまくるエトランジュ。その様子を呆然としてみている騎士団やマグヌスの人々。そして腕を振られ続けているルルーシュ。
 中々にシュールな光景である。

「エトランジュ様、全話視聴、とは?」
「ですから、『勇者王ガオガイガー』の1話から49話まで、全てご覧になっていただきます!」
「あの、エトランジュ様がお持ちで?」

 アニメのDVDでさえ、旧時代のものは入手しがたい。ほぼ全てがブリタニアによって接収、或いは破壊されてしまったからである。
 たかがアニメと侮るなかれ。日本はアニメでさえ、容赦なく体制側に反旗を翻すものが多かったのだ。
 その映像に影響を受けないものがいないと言い切れようか。つまりは、反乱を芽吹かせる花粉そのものを摘み取っていったのだ。
 そんなものを一作品丸々所持している人間など、この地上に現在、どれだけいよう。
 まして、ブリタニア人でなければ尚更である。

「ええ、持っています。OVAであるFINALも全巻」
「OVA?」
「番外編とか続編のようなものですよ」
「ならそちらのほうが」
「いいえ、駄目です! 続編だけ見るなど邪道です! 製作者に対する冒涜です! 第一、『勇者王ガオガイガー』はテレビアニメ版の方が面白いのです!」

 物凄い勢いで力説するエトランジュの迫力に押されるルルーシュ。
 普段彼女は物静かで通っているため、この姿にはこの場の全員が驚いている。
 だが、彼女は芯が通った少女なのである。確固たる自分の意見がある。
 言い換えれば、頑固なのであった。

 普段の彼女が物静かに見えるのは、つまらぬことで波風が立たないようにするための処世術であるのだが、国や平和など、譲れないものに関しては彼女はこのような態度を見せる。
 つまり、彼女にとってのジャパニメーションとは、祖国と同じく、譲る事の出来ない事柄なのだ。

 ともかく、ハイテンションで目を輝かせまくるエトランジュの姿など知らない面々は、あっけに取られるだけである。
 
「あ、あの……エトランジュ様。作品の、そう、全話視聴はさせて頂きます」
「本当ですね!?」
「で、ですから、どうか落ち着いていただきたい」

 ルルーシュがやっとのことでそれだけの声を絞り出すと、エトランジュは、恥ずかしさがこみあげてきたのだろう。
 顔を真っ赤にしてしまう。マグヌスの人々でさえ、このように歳相応なエトランジュを最後に見たのはいつだろうか、そう思うほど珍しい姿である。

「わ、私としたことが……。見苦しい姿をお見せてしまいました」
「構いませんよ。貴女の歳であれば、今のように目を輝かせているのが本来の姿なのでしょうから」

 そう言ってフォローするルルーシュ。
 普通ならば、言われた方の女性は多少なりともクラリと来るであろうが、相手が悪かった。
 
「フラグを立てようとしても無駄ですよ」
「は?」
「いえ、こちらの話です」

 よく分からない顔をするルルーシュにエトランジュは上機嫌で「では、また明日」と告げるとスキップをしながら退室していった。

「まさか、エトランジュ様にあのような趣味があるとは……」

 さすがの彼も予想外だったようで、珍しく呆気にとられた表情をしている。
 騎士団の面々も同じ気持ちだったのだが、マグヌスの人々は、「と、とうとうエトランジュ様にスイッチが入ったか……」と諦観していた。
 彼女の趣味は平和だった頃は国民に有名だったのである。最近はブリタニアへの独立戦争という事態のためにアニメに触れることが出来ず、その分もあるかもしれない。
 黒の騎士団の方も、指導者のゼロが認めてしまった以上、自分達でとやかく言うことも出来なかった。

「ルルーシュ。良かったではないか。お前の求めていた映像が容易く入手できるぞ」

 いつもの如くピザを頬張りながら他人事のようにのたまうC.C.に、悪態をつく力すらルルーシュには残っておらず、「そうだな……」とだけ答えると、ゲッソリした表情でそのまま寝室に向かってしまった。

「なんだ、張り合いの無い。――しかし、フフ。面白そうだな、明日の鑑賞会とやら、私も参加するか」




次回予告

 君達に、最新情報を公開しよう! 
 遂にアニメオタクとしての姿を見せたエトランジュ。
 彼女はルルーシュを勇気あるものにしようと画策する。
 ルルーシュは「勇者王ガオガイガー」鑑賞会の果てにどうなるのか――?

 暴走のエトランジュNEXT「昼の囁き、夜の映像

 これが勝利の鍵だ!
 「アニメDVD」








[26314] 暴走のエトランジュ 2話
Name: のーべん◆e3bd37a7 ID:89555681
Date: 2011/03/04 19:07
ExtraNumber.2「昼の囁き、夜の映像

 ――翌日。
 騎士団としての活動を一通り済ませたルルーシュは、午後7時から、と連絡された鑑賞会に赴く事になった。
 昨日と違い、今日の鑑賞者はエトランジュと彼女の従妹のアルカディアと護衛のクライス、そして主賓であるゼロことルルーシュ・ランペルージという、ささやかなものである。
 いや、ここに呼ばれていない者が一人いた。緑の髪の魔女、C.C.である。

「なぜ貴様がここにいる」

 ルルーシュの問いに、C.C.はあいも変わらずピザを口に運びながら「なぜって、面白そうだからな。私は退屈していたのだ」と愉快そうな表情を浮かべた。

「よろしいではありませんか。このような素晴らしい作品は、1人でも多くの方に見ていただきたいのです」

 エトランジュは上機嫌で、多少増えても構わない、という様子である。
 ルルーシュはとっさに、騎士団メンバー全員に上映しかねないと悟り、エトランジュに開始を促した。

「そうですね。長々とした前置きより、本編を楽しむのが一番です」

 そう言って再生ボタンを押す。

 旧時代、西暦であった頃の1997年。冬のホッカイドウ。そこで天海という夫妻がメカライオンから赤子を授かるところから物語は始まる。
 その映像がアバンタイトルとして流れた後、オープニングテーマが始まった。

 ルルーシュ始め、エトランジュとアルカディア以外のそこにいた面々はまたしても呆気にとられた。
 ハードロック調で何度も「ガガガ!」と歌詞に出てくるうえ、サビに入る前に叫ぶのである。
 明らかに熱血系で、普段大人しく見えるエトランジュは一体いつも心の中でどういうテンションでいたのだろうかと、その場の全員が勘繰った。

 そして本編はというと、司令官は主人公ロボットの合体承認の際に「成功率なんてのは単なる目安だ! 後は勇気で補えばいい!」などとのたまっている。
 チェスの手のように全てを計算した上で行動することにしているルルーシュからすれば、まったくもって理解不能な理論だった。
 一応、アニメなので合体は成功する。無論ルルーシュからすれば不満だが。
 主人公ロボが敵ロボを破壊し、コアのようなものを引きずり出し、緑色の妖精のような子供が出てくるところで第1話は終わった。

「やはり、やはり素晴らしい!」

 エトランジュは跳ね回っている。

「最近忙しくて全く見る機会がありませんでしたが、やはりいいものです!」

 そうですよね、と周りに同意を求めるエトランジュ。
 ルルーシュが曖昧に頷こうとした矢先、思わぬ人物が答えた。

「ははは、面白いではないか。続きが気になるぞ、早く2話を見せてくれ」
「どうした!? C.C.!?」
「C.C.様はお気に召したんですね」
「ああ」

 C.C.が興味を引かれていることに驚いたが、肝心のエトランジュは上機嫌なのでこのまま流れるかとルルーシュは安堵していたところ、話を振られた。
 どうやら、この少女、今日はメインゲストの意見を聞かないと満足できないらしい。

「そうですね……あの長官、勇気などで成功率を補えるなどと思っているのでしょうか」
「何を仰いますか! あの場面では逡巡などしているより、勇気のように確率を超えるものが必要だったではありませんか!」

 何か物凄い迫力のエトランジュに後ずさりし、救いをC.C.に視線で求めるルルーシュ。
 しかし彼女は全く救いの手を差し伸べなかった。

「そうだぞ、ルルーシュ。お前が普段両手を広げて演説などしているよりも、勇気の方が仲間をその気にさせるのだぞ」
「そ、そういうものなのか?」
「そういうものだ」

 無論、本音は面白がっているだけに過ぎない。

「そうです、ルルーシュ様! C.C.様の仰るとおりです! 勇気の力は偉大なのです!」
「(ま、マズイ! このままでは余計に退路を失う!)エトランジュ様。と、とにかく続きを――」
「分かりました」

 それから再びアニメがプロジェクターに映し出される。
 ルルーシュ達の前で流れ行く勇者達の戦い。

 アルカディアは元より流されにくい(というよりも自身見せられた事がある)ため、ただ映像として流しているだけであった。
 が、(新たな指揮方法の確立という)本来の目的を思い出したルルーシュだけでなく、C.C.やクライスなども食い入るように見ている。
 この時点で彼らは、確実に第一歩を踏み出したのである。

 ルルーシュは、用意していたメモで彼らの行動の要点を書き留めていく。

(フ、フフ……若干理屈に合わんが、士気高揚のためには間違いなく有効だ。素晴らしい、素晴らしいぞ!)

 理屈に合わないのは、若干ではなく大部分である。念のため。どうやら冷静な彼もあまりに未知な世界であるため、思考回路がショートしてしまったらしい。
 無論、エトランジュはそんなことは分からない。
 むしろ、メモまでとりながら熱心に鑑賞しているルルーシュを見て、感動しているくらいである。

(やはり、やはりルルーシュ様は分かっていただける方だったのですね。私お見せして正解でしたわ!)

 彼女の頭の中ではすでにルルーシュは、熱血漢に置き換えられていた。

(そうです。今までのルルーシュ様は、きっと良心を押さえつけてあのような冷酷な事をなさっていたに違いありません! ですから、このような方法もあると知ってくだされば)
 
 そのための方法論が違う、などと言ってはいけない。彼女はこの方法が最善だと信じきっているのである。
 俗に言う洗脳であるなどとは、彼女は微塵も思っていなかった。

 やがて、プロジェクターに映し出されていた映像が無くなる。

「どうやら……終わったようですね」

 多少の達成感と満足感、そして疲労感を顔に出してルルーシュは言った。
 さて、とルルーシュが腰を上げようとしたのをエトランジュが制する。

「まだですよ、ルルーシュ様」

 そう言ってエトランジュはDVDを入れ替える。
 第2巻。エトランジュが新しく手に持ったパッケージにはそう書いてある。

「まさか、エトランジュ様……今から本当に全部見るおつもりで!?」

 最悪のシナリオが頭をよぎるルルーシュ。
 
「それこそまさか、ですよ。ルルーシュ様。それでは以降の仕事に支障が出てしまいます」
(助かった……)
「どうかされましたか?」

 安堵の表情を浮かべたルルーシュを訝しがるエトランジュ。

「い、いいえ」
「毎日2巻ずつDVDを見ていただくのです。ですから、今日はこの1枚が終わったら解散です」

 ルルーシュは疲労を抱えたまま、ハイテンションな作品を更に2時間見ることとなった。
 マグヌス組は元々分かっていた事なのであまり嫌な顔はせず、C.C.にしてもこの作品がお気に入りにはなったようで、疲れた様子を見せているのはルルーシュだけだった。

「どうしたルルーシュ。この程度でダウンするのか」
「っく、C.C.、貴様、俺をからかうためだけにここに来たのか……」
「何を今更」

 そういって彼女は追加されたピザの味を堪能しながら笑う。

「最も、このアニメそのものも面白いので一石二鳥というものだ」
「…………!」

 ルルーシュは背筋が凍った。C.C.まで毒されたら、日常で自分がこのアニメから逃れる時間がほぼなくなってしまう。
 どうにかしてこの事態を回避するシミュレートを脳内で行うが、どう計算しても演算結果は不可能と出た。
 この魔女が面白いと思い始めた事を止める方法など、あらゆる頭脳を結集しても見つけることは出来まい。

 この状況でエトランジュを頼る事など出来ない。今回の仕掛け人である。
 更にエトランジュがアレである以上、マグヌスの2人にも期待は出来ない。
 意外と彼らも隠しているだけかもしれない、というシナリオが頭をよぎる。やはり却下される。
 C.C.の様子もこれである。八方塞がりだった。

 そして、彼の危惧どおり、この日の鑑賞会が終わってからというもの、彼にとって悪夢といえる日常が始まった。
 昼間はC.C.が自分の顔を見るたび(遭遇率から考えて間違いなくこちらの顔を見るために動いている)あのセリフを言え、などと迫り、夜になれば4時間の鑑賞会だった。
 このような生活が1週間も続く。その結果ルルーシュは、完全にアニメに出ていた人物のテンションで指揮する方法を会得したのである。
 
(これで……あの生活ともおさらばだ。それに、目的は達成した。後は試すだけだ)

 鑑賞会の終わった日、ルルーシュの寝室には彼の狂った高笑いがこだました。


次回予告
 
 君達に、最新情報を公開しよう!
 熱血系を習得したルルーシュは、黒の騎士団の士気高揚のため早速演説を始める。
 黒の騎士団はルルーシュの変貌を受け入れるのか?
 そして、勇気あるものへと変わるのか?
  
 暴走のエトランジュNEXT「滅ぶべき冷血

 これが勝利の鍵だ!
 「ルルーシュの演説」



[26314] 暴走のエトランジュ 3話
Name: のーべん◆e3bd37a7 ID:89555681
Date: 2011/03/05 12:01
 ExtraNumber.3「滅ぶべき冷血

 ルルーシュは新たな指揮方法を会得した翌日、早速試してみる事にした。
 こういう場合は自分に心酔している少数の人間から始めるのが原則である。 
 だが彼は思い切って全員の前でキャラチェンジを披露することにした。
 全軍の前で披露すれば、エトランジュもきっと協力してくれるだろう、という考えからだった。

 そんなわけでエトランジュに会いに行く。
 護衛に聞くと、ちょうど雑務中だ、と言われたのでその場で待とうとした。
 しかし、当のエトランジュがルルーシュが来たと聞くと勢いよく出てきて、何かを期待するような目でルルーシュを見始めた。

「エトランジュ様、その……俺もこれまでの指揮の仕方を改めようと思います」
「ルルーシュ様! それは、あの長官のような指揮をしてくださる、と言う事ですね!?」
「え、ええ。それでお願いしたい事があるのですが」
「なんでしょう」
「全軍の前で俺の方針転換を演説する予定なのですが、その際にエトランジュ様からのお言葉も是非頂きたいのです」

 その方が騎士団も納得するでしょうから、と付け足す。

「まあ! お安い御用です! ルルーシュ様が遂に勇気に目覚めたと言うならば、私はその考えの浸透についても協力は惜しみません!」

 感動の涙を流して跳ね回り、物凄くやる気に満ちた表情を見せるエトランジュ。
 内心、誤りだったか、と思ったがもう遅かった。今更この提案は取り消せそうにも無い。

 そしてその日の昼食が終わり、休憩を取った後、彼は演壇に立った。
 彼の隣にはエトランジュ、そして護衛のクライスがいる。
 彼らはその演壇から、集まった騎士団の面々を見ていた。

 騎士団の面々は困惑した表情を浮かべている。
 何か大きな作戦の準備を進めている様子もなかったのに、いきなりゼロの演説があるとのことで集合をかけられたからである。

 ルルーシュはそんな様子を見ながら、ゼロとして演説を始めた。

「諸君! 俺は今までの俺を捨てる!」

 騎士団がざわめく。唐突な発言である。

「俺の今までの作戦には、非道なものや君達の憎しみを利用したものもあった」

 考えてみれば、演技とはいえ幼女に銃を突きつけて誘拐してみたりしている。
 もっとも、相手が相手なのでなんてことはなかったが。

「だが、これではブリタニア軍と同じだ! 俺が頼るべきは君達の憎しみではなく勇気だったのだ!」

 まるで意味が分からない騎士団。
 いや、確かにブリタニア憎しをモチベーションに戦ってきたことは何度もある。
 しかし、そんなことを言ったら自分達の指導者が一番ブリタニア憎しで動いてきた。
 それよりなにより、何が一番理解できないって、ほうっておいたら気に食わない人間をボロ雑巾とか言い出しそうなゼロが勇気なんて言葉を口にしたことである。
 
「憎しみではなく勇気! 弱きもののために命を懸けるその心、それこそが重要なのだ! 俺はこれから変わるのだ! その証拠に――」

 そう言って、彼は仮面をはずすと投げ捨てた。
 そして自らの素顔をさらけ出し、続けた。

「こんな仮面も捨てる! 君達の勇気の力を借りるには、俺も勇気を見せなければならない! そのためには、こんな仮面など不要なのだ!」

 騎士団は唖然とした。ゼロとしてのアイデンティティこそ(良くも悪くも)あの仮面だったはずである。
 その仮面を捨て、君達の勇気を見せてみろ、などと言われたのである。
 熱血アニメだと歓声が上がったであろうが、いかんせんここは今まで腹の中真っ黒のゼロが率いてきた黒の騎士団である。
 騎士団の様子はまるでエトランジュの本当の姿をみたルルーシュと変わらなかった。
 
 皆でゼロもとうとうおかしくなっちまったのか、等と悲痛の表情を浮かべていた。
 彼の作戦がなければブリタニア打倒など夢のまた夢である。

 そんな変化に疎い(疎いのは女心だけである)ルルーシュではない。
 咄嗟に予定に無い言葉を口にした。

「君達は子供の頃ヒーローに憧れなかったか!?」

 またしても変な事を言い始めるゼロ。
 しかし、騎士団の面々はとりあえず素直に頷く。
 男子だったら余計子供の頃はヒーローに憧れているものである。

「今度は君達がヒーローになる番なのだ! だからこそ、勇気が必要となる!」

 俺達もヒーローになれるのか、と疑問を口にする騎士団。
 ルルーシュはとりあえず食いついてきた事に満足しながら続ける。

「ヒーローに必要なのは特別な力ではない、勇気ある心だ! 奪われた祖国、そこで辛い生活を送る人々を助けようとする心さえあれば、例外なくヒーローなのだ!」

 握り拳で演説するルルーシュ。
 C.C.などはその様子を腹を抱えてみていた。

「ふ、はははははは。いいぞルルーシュ。もっとやれ。しかしルルーシュは、あれで中々乗っているじゃあないか」

 日が落ちるまで勇気云々言い続けた甲斐があった、と満足げにピザを頬張る。

 C.C.はこんな様子だったものの、騎士団員は、俺達もヒーローだ、と盛り上がっていた。
 凄まじいテンションである。
 こんなに暑苦しい騎士団など見られたためしがなかった。

「俺のこの意見にはマグヌスファミリア女王、エトランジュ・アイリス・ポンティキュラス様も賛意を表明しておられる」

 そう言ってエトランジュにマイクを渡し、どうか貴女のお言葉を、とエトランジュに言った。
 その言葉が終わるか終わらないかのうちに、非常に満足げな様子のエトランジュは口を開いた。

「黒の騎士団の皆さん、勇気の力は素晴らしいものです! 熱き血潮が呼び起こされ、皆さんを最も輝かせるのです!」

 こんな言葉から始まり、以降勇者入門として彼女のありがたい言葉(洗脳ともいう)は1時間半にも及んだ。
 異様なテンションのまま聞き続けた騎士団の連中はすっかり(洗脳されて)勇気に目覚めたのである。

 今ここで、ブリタニア帝国へのレジスタンス組織「黒の騎士団」は、全く異なる集団へと姿を変えたのである。


次回予告


 君達に、最新情報を公開しよう!
 ルルーシュとエトランジュによって生まれ変わった黒の騎士団。
 その強さは、ブリタニア軍を圧倒するまでになる。
 そして強さを増した騎士団に興味を抱くスザクは、ルルーシュを訪ね、その変化の理由を探りに行く。

 暴走のエトランジュNEXT「黒の騎士団を追え!

 
 これが勝利の鍵だ!
 「紅月カレン」



 

 



[26314] 暴走のエトランジュ 4話
Name: のーべん◆e3bd37a7 ID:89555681
Date: 2011/03/26 12:25
ExtraNumber.4「黒の騎士団を追え!
 
 騎士団が変化してから3週間ほど過ぎた。
 この間に、騎士団の士気は圧倒的なものを示し、ルルーシュも満足させうる結果を見せていた。

 局地で起きた散発的な戦闘の全てにおいてブリタニア軍を文字通り驚愕させていたのだ。
 騎士団はその高い士気もさることながら、なによりも狂気的な熱気がブリタニア軍を震撼させていたのである。
 ブリタニア軍は、数週間ほど前から自分達の敵が「黒の騎士団」から「得体の知れない何か」に変わったと感じていた。
 装備は同じであるにもかかわらず。
 
 特に、2週間ほど前に2個小隊で攻撃しに行って騎士団が1個小隊で迎撃に出たときときなど、本当にひどかった。
 機体のスピーカーを通して「勇気と共に!」だの「勝利するのは、勇気あるものだ!」といった叫びが聞こえてくるのである。
 それでも戦力は倍、と指令は考えていたが、肝心の操縦兵がその異様な迫力に竦んで半数の戦力に圧倒されたのだ。

 戦闘結果は惨憺たるものだった。
 1機は機体が鹵獲され、1機は降伏。3機が中破し、最後の1機は大破したのだった。
 ブリタニア側が敵に与えた損害は、小破が2機だけ。
 地の利はあちら側にあったとはいえ、倍の戦力を引き連れてこの結果ではどうしようもない。

 帰ってきた操縦兵はすぐに営巣行きとはなったが、誰も彼らを殺そうとは考えなかった。
 戦闘時の映像や操縦兵の証言などから、今までに無い部隊と認識し、その対策に生きた言葉が必要だったのである。
 
 今までの「黒の騎士団」の特徴はなにより狡猾さだった。
 だが、今回は地の利を活かすだけでなく、異様な熱気まで纏い始めたのである。

 これが厄介で、慣れないものに恐怖する習性のある人間は、当然見たことの無いテンションの騎士団にも恐怖しっぱなしだったのである。
 司令部がいかに「あんな姑息なテロ集団」などといっても、前線で戦うものからすれば姑息以上に化け物だった。

 この騎士団の変化はブリタニア軍中に広まった。
 当然、副総督お付の騎士であるスザクの耳にも入る。

(一体どうなっているんだ。ルルが指揮している限りそんなのはありえないはず)

 そのありえないことが現実になっているのである。事実は小説よりも奇なり。
 自分は今、ランスロットのパイロットとしては活動していないから、前線には出られない。
 護衛の騎士といっても、本国にいる間はあまりすることもないので、本国への報告も済んだ事、とユーフェミアと共に日本へと向かった。

 スザクがルルーシュを訪ねに行く、と言うと、ユーフェミアもルルーシュや騎士団の近況も知りたいと言う事で3日分の休暇の許可が出た。
 日本へと戻ってきたスザクは騎士団の拠点がどこにあるのか知らないことに気がついた。
 とりあえずトウキョウにあるだろう、ということで聞き込みを始める。
 すると、トウキョウではなく、割と地理的に近いイバラキであると知った。

(イバラキって、トウホクじゃなかったのか)

 トウキョウに住んでいた頃は、イバラキなど遠い田舎だと思っていたのだが。
 イバラキのツクバ。そこにルルーシュがいる、とのことである。
 騎士団員というものがやけに素直に教えてくれた。

(ツクバって、イバラキだったのか)

 彼の頭の中では田舎のイバラキと最先端の研究がされていたツクバが繋がらないらしい。
 彼はイバラキといえば、「だっぺ」とか「だべよ」という訛りとアンコウなるグロテスクな魚くらいしかないものと思っていた。
 ともかく、騎士団のイバラキ拠点にいく。

 彼が面会の許可を求めた時、ルルーシュは資料整理をしていたのだが、スザク来たるの報告を受けるとすぐ許可を出した。 
 
「通してくれ」

 そう許可を出してすぐ、スザクが部屋に入ってきた。
 
「今日は友人として訪ねてきたんだ」
「そうか、それは嬉しい事だな。で、何か聞きたいことでもあるんじゃないのか?」

 実はルルーシュは、彼が来る事をすでに予想していた。
 旧友の縁だ、なんだのといって探りに来る事を。
 というわけで騎士団や日本の協力者の面々には、こういう者が来たら素直に教えてやってくれ、と触れを出しておいたのだ。
 ただ、単にきてもらうだけではつまらないので、ある策を思いついていた。

「なんで分かったんだ」
「顔に書いてある」
「そうかい? それなら単刀直入に聞かせてもらうよ。騎士団の変化は君の指示によるものなの?」

 友人として訪ねてきてこんなことを質問する辺り、スザクという人間が現れているともとれる。

「当然だ。さすがに指導者の俺自ら指示しなければ、あのような方針転換はありえないからな」

 驚きの表情を見せるスザクにルルーシュは続ける。

「こういってはなんだが、今の我々なら君があの白騎士に乗って出てきても勝てないだろう」
「な、何!?」

 ナイトメアフレームパイロットとしての能力、そして自分の戦力としての有用性は自分自身でかなりのものだと自負していたスザクである。
 これには自尊心が傷つけられる。
 怒りの表情を見せ始めたスザクにルルーシュは言った。

「我々騎士団はすでに勇気あるものとなったのだ。勇気の何たるかも分からない君では、最早かつ手段はあるまい」
「馬鹿な! 勇気が何だ! だったら証拠を見せろ!」

 遂に仮面が剥がれたらしい。ルルーシュとしては好都合である。

「よかろう。ならば模擬戦をしてもらう」
「模擬戦? シミュレーターで?」
「そうだ。無論、機体は同じ条件だ。残念ながら、君の専用機のデータは完全には入ってないからな」
「いいさ、どんな機体だろうと僕が勝ってみせる」

 そこまで聞くとルルーシュは内心ほくそ笑みながら、対戦相手を呼んできた。

「君の相手は彼女だ」

 赤髪の少女、紅月カレン。
 ナイトメアフレーム「紅蓮弐式」のパイロットである。
 この2人、何度も対戦している。

「また君か。悪いけど、僕が勝たせてもらうよ」

 傲岸不遜に言ってのけるスザクの態度にカレンは多少苛立ちながらも、シミュレータへと足を運ぶ。

 模擬戦の映像はモニターできるようになっており、シミュレータで客観的な改善点を見つけ出せるようにするためである。

「では、模擬戦開始!」

 ルルーシュの合図と共に、最初に機体データが表示される。

 両者の機体は共に『Type-05S"暁"』と表示される。
 第7世代に相当する騎士団の主力ナイトメアフレームである。

 戦場データは市街地。程々に建造物と言う障害物が存在する。

 データの読み込みが終わったあと、戦闘が始まった。

 先に仕掛けたのはスザク。ハンドガンで牽制を始める。
 彼は、ハンドガンの回避のために多少距離をとりながら応戦してくると予想していた。
 違った。最初からカレンのパーソナルカラーの赤で染められた暁は、ハンドガンを回避しながら前方に突っ込んできた。
 一瞬対応が遅れる。明らかに自分の頭に入っていた暁の瞬発力と違うからだ。
 旋回能力、推進力、反応速度。機体性能が明らかに量産機のレベルではない。
 ワンオフのカスタム機か、そうでなければ試作機か。

(明らかに性能が同じ機体じゃない、だろ! あのインチキ野郎!)

 そう、彼の直感どおりである。
 ルルーシュは勇気の力を信じ込ませるため、カレンの機体の形状データのみを暁にして、スペックを弐式のものとしたのである。
 ちなみに、カレンにはこのことを言っていない。
 勇気を感知してスペックを上昇させる新システムを導入しただけだ、と誤魔化してある。

 本当のことを言ったら後で恐ろしい目に遭いそうだからである。

「フフ、どうやら優勢のようだな」

 念には念を入れてよかった、とモニターを見ながら呟く。

「ええ流石、カレン様です。勇気の力とはかくもスペック以上の力を引き出せるのです」

 いつの間にやらエトランジュがその姿を見せている。
 ルルーシュが頼みたい事がある、と言って呼んできたのだった。

「そういえばルルーシュ様、私に頼みたい事とは?」
「実は彼をこちら側に引き込もうと考えていまして」

 スザクに基地の位置を教えたりしたのは、全てそのための策であった。
 後はカレンが紅蓮弐式で勝利すれば9割型は成功と言っていい。

「彼が勇気の力に敗北し、その力を知った後、貴女から彼に勇気の素晴らしさを説いていただきたいのです」
「勿論です! なんといってもルルーシュ様のお友達ですから、きっと勇気の素晴らしさを理解していただけますよ!」
「――あ、ありがとうございます」
「ええ、お任せください」

 相変わらず素敵な笑顔を見せるエトランジュに、今更データ入れ替えるというイカサマしています、と本当のことなど言い出せない。
 結局、真実を知るのは彼のみになる。

(知らないほうがいい真実というのも、やはりあるな)

 ルルーシュがそんなことを思っていると、模擬戦が終了した。
 カレン機の勝利である。カレンは勇気の力の素晴らしさを改めて知ったようで、感動の表情を見せている。
 対してスザクは、怒りの表情でルルーシュに「どういうことだ!? まるで機体性能が違ったぞ!」と詰め寄ってきた。

「落ち着くんだスザク。あれこそが勇気の力だ」
「何! どういうことだ!?」
「あれは搭乗者の勇気に反応してスペックが向上する機能を導入した試作データだ。彼女は勇気でそのスペックを最大に引き出したんだよ」
「そんなことが可能なのか?」
「人の心は無限の可能性を持つものだ」
 
 スザクは明らかな違和感を抱いた。
 自分の記憶では、ルルーシュはこんなことは学園祭で強要でもされない限り言わないような性格だったはずだ。

「ルル」
「なんだ」
「君の性格が変わったように感じるんだけど」
「そのことか。俺も勇気の素晴らしさを知ったからな。そのことを騎士団にも伝えたのだ」

 ルルーシュですらここまで勇気の素晴らしさを口にするくらいなら、本当のことなのだろう。
 スザクはそう思い始めた。なにしろ、勇気を感知する機体に負けたのだ。
 自分と相手の差は何より勇気だったと思わざるを得なかった。

「ルル。僕にも勇気というものがどういうものかを教えて欲しい」
「実はスザク。君の中にもすでに勇気はあるはずなんだ」
「なんだって!」
「君はそれに気がついていないだけだ。そして、勇気の何たるかを俺よりよく知っておられる方がいらっしゃる」

 そういってエトランジュに話を振る。
 エトランジュは正に、待ってましたといわんばかりの顔の輝きである。
 
 そしてスザクはルルーシュのその言葉に、彼女をあろうことか、救世主だと思ってしまったのだ。

「よろしいですか? 勇気というものは――」

 そして彼女は、騎士団に話したのと同じように、勇気の素晴らしさをスザクにも話し始めた。
 すでに勇者となったカレンなどは、それを聞いて感動のあまり目を潤ませながら何度も頷いている。

 その話が終わった頃、スザクの顔は清清しい表情を浮かべていた。

「そうか、僕は――。いや、俺は! 今まで俺も仮面をかぶっていたんだ。俺はこれから俺のままで行く! そうしなければ勇者にもなれないから!」

 どうやら間違った結論にたどり着いたようである。
 どういう過程で思考したらそうなるかは、本人のみぞ知る。

「ルル。俺は勇気の何たるかを知りたい! 黒の騎士団に入れてくれ!」
「勿論、歓迎するさ。スザク」

 目的達成である。ただし、想定していた結果と大分違う。
 ここまでひどいとは思わなかった。
 
 そんなルルーシュの心中など知るはずもなく、エトランジュはその様子に満足げに言った。

「昨日までの敵も仲間に出来る。やはり勇気とは素晴らしいものです」
「ああ、素晴らしいものなんだな! ルル!」
「あ、ああ」

 自分の策は成功したが、親友のこの変化を見るにつけ、もうこの手段はとらないほうがいいかも知れない、と思い始めたルルーシュであった。



次回予告


 君達に、最新情報を公開しよう!
 勇気に目覚めたスザク。
 彼は自分の守るべき少女、ユーフェミアに勇気の素晴らしさを伝える。
 ユーフェミアは彼の言葉に共感するのか。
 そして、彼女のとる道とは?


暴走のエトランジュNEXT「桃と白


 これが勝利の鍵だ! 「柩木スザク」
 



[26314] 暴走のエトランジュ 5話
Name: のーべん◆e3bd37a7 ID:89555681
Date: 2011/03/26 12:27
ExtraNumber.5「桃と白

「ルル、やらせてほしいことがあるんだ」

 騎士団入りを宣言したスザクは、ルルーシュにこう切り出した。

「まあ、言ってみてくれ」

 認めはするが、内容によるがな、と付け足す。

「実は、ユフィのところへ戻らせて欲しい」
「何? なんのためにだ」

 スザクが何を考えているのか読めない。
 といっても、洗脳されてからは読もうとする気力すら起きていないのが本音だが。

「ユフィにも勇気の素晴らしさを知ってもらうのさ!」
「なん……だと……」
「まあ!」

 なんとも恐ろしい事となった。
 親友が洗脳されたと思ったら、次の瞬間には親友は異母妹を洗脳したい、と言い出したのである。
 勇気の力の真の恐ろしさをルルーシュは今知った。
 流石にやめさせよう、とした瞬間、先ほどから神々しい笑顔を見せていたエトランジュが、「是非とも知らせてくださいませ!」とけしかけた。
 最早スザクにとってこの少女は、暗き世界に舞い降りたメシアの如しである。
 彼女の承諾は神の啓示と変わりなかった。

「エディもこういっているし、いいだろ!?」

 こうなると半ば脅迫である。認めなかったら隣のエトランジュやら騎士団の面々が怖い。

「あ、ああ。是非とも彼女にも説いてやってくれ」

 是非もなし。最早拒否権など存在しない。
 引きつった顔でそう認めるルルーシュ。

「どうしたルル? 様子が変だぞ」
「いや、どうもしていない」

 今になって仮面を捨てたことを後悔する。
 あれなら顔が引きつろうと外からは分かるまい。
 
「良かったですね、ルルーシュ様。スザク様も勇気を理解される方で」
「ええ」

 冗談ではない、とは面と向かっては言えない。
 自軍の士気高揚に効果がある、と踏んで彼女に教えを乞うたのは、元はといえばルルーシュなのだ。

(甘く見ていた……)

 確かに士気高揚に効果はあったが、副作用がひどい。
 自分の持つギアス能力は絶対遵守であるが、勇気の力とやらは、それ以上なのではないか?
 なにしろ、自分の能力のように眼を合わせる必要がない。
 言葉だけでもいいのである。しかも騎士団の面々を一度に変化させた事から見ても、人数も関係ない。
 自分はそうならなかったことから考えると、万人が影響を受ける代物ではないようだが、それでも凶悪な集団洗脳能力である。

(これが、勇気の力だというのか……)

 周りに味方がいない、というのが何よりも雄弁にその破壊力を物語る。

(どこまで……耐えればいいのか)

 出口の無い迷宮に入り込んでしまったことに深く絶望するも、この状況をどうにかする手立ては無い。

 エトランジュは勿論教祖。カレンやスザクは重症。C.C.はどうだか知らないが(恐らく自分をからかうためだろう)彼女もアテにならない。
 エトランジュのお付は不明だが、彼女に近いだけあって怖い。
 騎士団の面々やスザクなど、自分もその一端を担った。
 そう、何が一番困っているのかといえば、この状況を作り出したのが元はといえば自分なのである。

(ック、あの時あんなことを思いさえしなければ)

 騎士団の圧倒的な士気や戦闘力の代わりに、心落ち着く時間を失った気がする。

(いや、まだ希望があった!)

 ナナリー! そう、聡明なわが妹がいたではないか。彼女なら間違いなく自分の力になってくれる。
 流石ナナリー。わが妹。我が愛しい妹だ。

「フ……フフフフフ、フハハハハハ!」

 いつの間にか高笑いテンションに突入していた。
 当然、エトランジュに不審がられる。

「あの、ルルーシュ様?」
「あ、こ、これは失礼」
「どうかなさったんですか?」

 確かに今の自分はどうかしてる。
 あんたが原因だと言いたいところだが、そんなことはとても言えない。
 代わりに言ってくれる人がいれば、今の自分なら喜んで専用機である『蜃気楼』だろうと差し出すだろう。
 が、現実はごまかす必要がある。

「いえ、スザクの心酔ぶりに、改めて勇気の素晴らしさをですね」
「成る程、そういうことですか。ですが」
「が?」
「その高笑いは、勇気あるものに相応しくありません」
「は?」

 意味が分からない。
 いや、笑い方などまで指図される覚えなど無い。

「ですから、笑うときはもっと爽やかに!」
「こ、こうですか?」

 顔を引きつらせるルルーシュ。何か危ない人にしか見えない。

「違います」
「では、こうですか?」
「そうです! そうです! その爽やかな笑顔です!」

 どうやら勇者というものは笑い方にまで気を払わねばならないようであると知った時、ルルーシュは心底こう思った。

 俺は間違った道を選んだようだ、と。
 もっとも、本来の歴史では彼は騎士団の面々に追われるような事になっているはずなので、それに比べれば大分恵まれているといえる。

「そういえば、スザクは何処へ」
「もう向かったようですわ。ユーフェミア皇女を説得に」
「そ、そうですか」

 きっと、ユーフェミア皇女も理解してくださいます、と上機嫌で語るエトランジュを見て、ユーフェミアの健闘を祈らずにはいられなかった。
 
(彼女に耐え切れるだろうか――いや、無理……だな)

 諦めの中に自分をおしやると、益々むなしさがこみ上げてきた。これは早くナナリーに会いにいかねばなるまい。
 彼はそう決心した。
 いや、会わねばなるまい、というより会いたい。
 会いたいよナナリー! ナナリー! ナナリー!
 今の俺を救ってくれ! 出来るのはお前しかいないんだナナリー! ナn


――


 ところ変わってこちらはユーフェミアの自室である。
 スザクは報告のため、と彼女の部屋へと戻ってきた。
 勿論、実際には勇気の素晴らしさを伝えるためである。

「スザク。様子はどうでした?」
 
 スザクの本意も知らず、ユーフェミアはそう訊ねる。
 が、スザクは恐らく人類の先を行った。
 二歩先を行ったのである。

「実は俺、黒の騎士団に入る事にしたんだ」

 いきなり明かされた事実に驚愕のユーフェミア。
 ブリタニア皇族お付の騎士がそのまま敵の組織に鞍替えするなど前代未聞である。
 正直、まるで意味が分からんぞ、としかいいようがない。
 もっとも、ユーフェミアの目の前にいるのは意味が通るようなことをいう相手ではなかった。
 勇者と化したスザクである。その思考はすでに、人類の二歩先を行くものである。

「ま、待ってください。いきなり、そんなことをいわれても。いえ、それよりです――」
「? なんだい?」
「それならなぜ戻ってきたのですか!? 報告など必要ない、というかそれってわざわざ捕まりに来たも同然では」

 そんな論理的(というか常識的な考え)など、とうにスザクには通用しない。
 繰り返すが、彼はすでに人類の二歩先を行く男なのである。
 
「君にも、黒の騎士団に入ってもらいたい!」
「え、ええ?」

 目を白黒させるユーフェミア。
 お付の騎士が帰ってきたと思ったら鞍替えをカミングアウトし、次の瞬間には自分に騎士団入りを勧め始めた。
 あまりに意味不明な展開に脳の処理能力が追いつかない。
 
「ユフィ、君は日本の皆とも仲良くなりたいんだろ?」
「え、ええ」
「そのためには勇気が必要なんだ!」
「ユ、ユウキ……ですか?」

 ユーフェミアはさっぱり分からない。勇気と日本の人々とどう繋がるというのかがである。
 ともかく、スザクが何か大切な事を教えてくれそうなので話を聞くことにする。
 日本の人々と仲良くする方法があるならば知りたい。 

「あの、日本の方々とその、ユウキと、どのような関係が」
「まず君は、今の地位を捨てるべきなんだ!」
「今の地位……ですか?」

 今の地位。
 エリア11の副総督。
 そして、ブリタニア家すなわち皇族という立場。

「そうだ! 君はこれからブリタニア皇族でも、エリア11副総督なんていう立場でもなくなるんだ!」
「それなら、それなら私はどうなるのですか!?」

 戸惑いながら訊ねるユーフェミア。
 聞く相手が間違っている。
 もっとも、ほかに聞く相手がいないのでは仕方が無い。

「君はそうブリタニアの名前を捨てて、そう、ユーフェミアなんとかになればいいのさ!」
「な、ナントカ!?」
「その辺りは君が自分でつけたい苗字にすればいいさ!」

 むちゃくちゃである。いくらなんでもナントカなどなかろう。
 もっとも、彼にはその辺りを考える事など不可能だった。
 とりあえず勢いで、が基本路線である。

「そ、そういうもの、なんですか」

 こういう相手は勢いに流されたら終わりである。
 そして、ユーフェミアは流された。

「そういうものなんだよ!」
「と、ところで、肝心の勇気と言うものはどういうものなんでしょうか」

 ユーフェミアは自分で考えてみる。
 自分の知識にある勇気。
 何かを思い切ってやってみる事。
 成る程、今の自分の地位を捨てるというのは勇気が必要だ。
 しかし、その先日本の人々と仲良くなるためにも勇気が必要とはどういうことか。
 彼女は聞いてしまった。
 スザクがエトランジュに聞いたのと同じように。

「ユフィ、勇気というのは、誰かのために自分を犠牲にすることでもあるんだ」
「それって自己犠牲というのでは――」
「いや、勇気だ! これも勇気なんだよ!」

 すでに説得になっていない。というか、正論を強引に捻じ曲げている。
 勇気万能説の降臨である。

「この勇気で、日本の皆のために自分がやれることをやろうとする! そういうことなんだ!」
「!! それが、私が今ある地位を捨てることなんですね!」

(え、そういうことなのか? まあいいや)

「そうなんだ! 君が今の地位を捨ててこっちに来て、日本の皆に勇気を持って接すれば、君はきっと彼らとも仲良くなれるのさ!」

 なんだかもう強引な勧誘状態である。
 よくよく聞けば、ブリタニア皇族という地位を捨てる理由になるほどの名演説などではない。
 しかし、流されている状態のユーフェミアでは抗う事など不可能だった。

「君も勇者になるんだ! 俺と、いや、俺たち騎士団の皆と一緒に!」
「分かりました! 私にも踏ん切りがつきましたわ!」
「ああ、やっぱりユフィも分かってくれた! 勇気ってのはなんて素晴らしいんだ!」
「もしかして、人とわかりあうにも勇気が必要なんでしょうか」
「勿論さ! そうして俺は、エディや騎士団の皆、ルルとも分かり合えたんだから!」
「まあ! 私益々勇気というものを深く知りたくなりました!」

 すでに高ぶるテンションに突入したユーフェミアは深く考えずにこんなことを口走った。
 無論、こんなことをいってしまえば待っているのはエトランジュ女王陛下である。
 スザクが自分より勇気を深く理解している人、と彼女に紹介を約束したのだ。

「しかし、ここを出るためにはどうしましょうか」
「それなら俺にいい考えがあるぜ!」

 自信満々のスザク。そんなスザクにつれられてユーフェミアはいつの間にか格納庫に来ていた。

「あの、スザク。どうするつもりですか?」
「ランスロットを使うのさ」

 自分の愛機である白騎士を見上げてそういってのけるスザク。
 彼の専用機であるランスロットは、スザクが騎士団と戦うべからず、というギアスをかけられてから、戦場には出ていなかったのだ。
 それが今再び、魂を吹き込まれる。

「ユフィ、ちょっと我慢していてくれ」

 そういってユフィをランスロットの手に乗せる。

 周りの兵がどうするつもりか、と呼び止める。

「ちょっと散歩に」

 答えたのはユーフェミアだった。
 散歩といってももう帰ってこないが。

「散歩、でありますか?」
「ええ、ここからどういう景色が見えるのか、少し興味が沸きました」

 正直意味不明だが、相手が皇族で副総督とあっては仕方がない。
 ランスロット発進を許す。許してしまう。

 様子がおかしい、と思って追撃部隊を出した時にはすでに遅きに失した。
 逃げられたのである。

 そんなわけで皇女ユーフェミアが逃走、というニュースでブリタニアが騒ぎになっていた頃、当のユーフェミアはというと。

「よろしいですか、ユーフェミア様。勇気というものは――」

 エトランジュからありがたいお言葉を頂いていた。
 余りの素晴らしさに涙を流して感動している。
 そして手を取り合う3人。すでにお互いを「エディ」「ユフィ」「スザク」と愛称で呼び合っている。

「スザク、勇気というものは」
「素晴らしい、だろ!?」
「ええ!」
「これでまた、平和が近づきました!」

 喜ぶ3人。頭を抱えるルルーシュ。

(やはり、こうなってしまった、か……)

 もういい、ナナリー! ナナリー! 早くあの聡明な妹に会いたい!
 ナナリー! ナナリー! 愛しい妹ナナリー!
 早く会いたい会いたい会いたい会いたい!
 ナナリー、ナナリー、ナナリー、ナナリー、ナナリー、ナナリー、ナn(以下省略)

 どこか遠い目をして壊れているルルーシュを見て楽しげな表情を浮かべるC.C.。
 正直騎士団はシャレにならん状況である。指導者まで壊れた。

 黒の騎士団、彼らは一体何処へ向かっているのだろうか。


次回予告

 君たちに、最新情報を公開しよう!
 遂に精神の限界を迎えたルルーシュ。
 彼は自らの最後の希望、ナナリーの下へと足を運ぶ。
 そこで彼が見るものとは?

暴走のエトランジュNEXT「その名は勇気理論

 
 これが勝利の鍵だ! 「C.C.」
 

 



[26314] 暴走のエトランジュ 6話
Name: のーべん◆e3bd37a7 ID:89555681
Date: 2011/03/26 19:52
ExtraNumber.6「その名は勇気理論

 拝啓、皆様いかがお過ごしでしょうか。ルルーシュ・ランページです。
 あれ、違うな、ランペ、なんだっけ。ランペイ……なんかこれはまずい気がする。
 ランペルー。これも違う。ランラン……妙に宗教くさい、違うだろ。
 あ、ランペルージだ。いや、そんなことはもうどうでもいいや、あはは。
 いや、よくない自分の名前だ。
 
 …………失礼。余りに衝撃的な光景にちょっと壊れてしまった。
 
 そう、俺はユーフェミアが洗脳された直後、ナナリーに会いにいった。
 そこまではいい。ようやくナナリーに会えるかと思うと、この暗黒も抜け出せるかと思ったくらいだ。
 しかし、しかしである。
 世の中は甘くなかった。
 いや、そんなことは親に見捨てられたりした過去があるからよく分かってる。問題はそこじゃない。
 
 あのナナリーが、聡明な、愛しい、我が妹までもが、勇者になっていた。
 
 何? まるで意味が分からない?
 
 そうだな、少し説明が必要だろう。
 さっきも言ったとおり、俺はナナリーに会いに行った。
 そのナナリーはC.C.と一緒にいた。ここまでもまだいい。

 だが、ナナリーが俺の顔を見て言った言葉、これが問題だった。

「お兄様、勇気って素晴らしいものですね! 勇気のおかげで、今は私、お兄様のお顔も見ることができます!」

 まて、ナナリー! 何のことだ! まるで意味が分からんぞ!
 
 呆然とする俺を見ながらC.C.がニヤニヤしている。
 まさか、あの女……ナナリーを巻き込んだというのか……!

「C.C.! 貴様、まさかナナリーにまで勇気とか吹き込んだのか!?」
「まあ、お兄様なんてことを! 吹き込まれてなどいませんよ、勇気の素晴らしさを知っただけです」

 力強い様子でそう俺に言うナナリーに、俺はどう反応していいのか分からなかった。
 そんな様子を見ながらC.C.がナナリーに聞かせるためだろう、こんなことをいい始めた。

「ナナリー。実はルルーシュは勇気を広めるだなどといっておきながら、実際はこのように信じていないぞ」
「そんな……! お兄様、勇気を信じていないだなんて!」

 哀れみの表情すら向ける我が妹。
 一体どうしてこうなった。

「まったく、そんなひねくれた精神だから勇気を信じる事もできないのだ」

 侮蔑的な様子で俺に言い放つC.C.。
 お前が人にひねくれているとか言える立場か!
 それよりも――

「なぜナナリーが勇気に目覚めているんだ!」

 とりあえず一番の疑問を叫ぶ。
 先ほどまで疲れていたはずなのに、体中にエネルギーが漲っている。
 怒りの力だろうか。

 答えたのはナナリー本人だった。

「2週間ほど前、C.C.さんが私のところに来たんです――」

 そこから妹の話は始まり、内容はこんなところだ。

 2週間ほど前、ナナリーの言うとおり、C.C.が我が妹の部屋を訪ねた。
 我が妹は流石に聡明で、最初はこの怪しげな女を警戒していたようだ。
 しかし、この女が持ち込んだ映像ソフト。言うまでもないだろう。
 『勇者王ガオガイガー』のDVDボックス。これを我が妹に音声として聞かせたのだ。
 娯楽に飢えていた我が妹は、あろうことか、この作品を素晴らしいと思ってしまった。
 そして、C.C.は恐るべき計画を実行に移す。
 なんと、あの、教祖エトランジュをナナリーの部屋に呼び寄せたのだ。
 
 彼女はこのようなやり取りで洗脳したようだ。

「あなたの目は見えるようになります」
「本当ですか!?」
「ええ。今、あなたは勇気を信じようとできますね?」
「勿論です!」
「ならば、目を開く勇気を持つのです。光をその目に再び入れる勇気を持つのです。病は気からとも申します」
「つまり、私が勇気あるものになれば、私を覆う邪気もはらわれ、目が見えるようになるのですね!」
「その通りです」

 素直なナナリーは、そのまま信じてしまったらしい。
 悪夢だ。まさしく悪夢だ。
 勿論の事、元から盲目になどなっていないナナリーは、その言葉を信じて目が見える、と強く思ったところ、再び見えるようになった。
 後はもう分かるだろう。
 そんな『奇跡』をおこした勇気の力に、すっかり心酔した、というわけだ。
 更に言えば、最近C.C.の姿を見なかった訳も分かった。
 愛しいナナリーの洗脳に時間を費やしていたのだ!
 あの魔女は!

「C.C.、貴様……」
「あらお兄様、C.C.さんは私と勇気が出会うきっかけを作ってくれたんですもの、私の恩人です」
「………………」

 俺は一体どうすればいいんだ! 
 誰か教えてくれ!
 ナナリーまでこんな状況になってしまった!
 救い出す方法はないのか!
 見つけてくれたら『蜃気楼』でもなんでも差し出す!
 俺ができることは何でもするから!
 だからナナリーを、俺を救う方法を誰か!

 誰か! 誰か! 誰か! 誰か! 誰か! ……あれ、めのまえがまっしろに

「お兄様、大丈夫ですか!?」

 突然倒れたルルーシュを抱き起こすナナリー。
 その様子を見てこの状況を作った張本人は一言。

「少し刺激が強すぎたようだな」

 他人事のように言ってのけた彼女のその手には、半分かけたピザがあった。

――

 数分後には、騎士団の拠点内は騒ぎになっていた。
 
 ゼロもといルルーシュが過労で倒れたというニュースが原因である。 
 最近のルルーシュから疲れている様子が見て取れたので、確かに皆心配はしていた。
 ただ、彼も勇者だから、という(無茶な)理由でそのままにしておいたのだ。

「俺たちは、あの人がいないとなんもできないのか……」
「高校生1人倒れただけでこんなに騒ぐなんて……」

 普段何も自分達で考えていなかったことに気がつく騎士団。
 彼らは決心した。ルルーシュがいなくてもなんとかなるよう頑張ろうと。

「そうだ、俺たちは今まで彼1人に仕事を押し付けすぎたんだ!」
「俺たちも頑張ろう! 勇者たるもの、そうすべきだ!」

 そうだ、そうだ、と同調する騎士団。
 意識は変わったが、根っこの部分が変わっていない。
 そう、彼らはどこまでいってもアホの子達なのである。
 
 そんな時、危険人物が現れる。
 スザクである。スザク大先生である。

「皆、ルルが無理をし過ぎないように、俺たちでも頑張ろうぜ!」
「おうよ、スザク先生!」

 なお、先生とは彼の勇気への信仰の余りの深さについた敬称である。
 彼らにとって、かつて日本を捨て、名誉ブリタニア人になったことなど、最早些細な事。
 勇気あるものであれば、問題ないのである。

「さあ、今から書類仕事だ!」

 早速自分達が余りやってこなかった仕事を始める騎士団員。
 また、人事におけるグループ分けなども意見を出し合う。
 今まで人事までほぼ全てルルーシュに任せっきりだったのである。
 それを、責任者を決めて自分達で行う。
 責任者を決めるのも、自分達で議論、である。

「俺たちは1人1人が勇気あるものだ!」
「だったら、1人1人が騎士団員として立派に活動しなきゃな!」
「俺たちはそれが今まで足りなかったんだ、スザク先生!」
「これから変えていけるじゃないか!」
「おうよ、スザク先生!」

 本来の歴史よりはよほどマシになったようである。
 一面では、勇気も捨てたものではない。
 もっとも、これが勇気に当たるかどうかは個人による。
 
「おや、皆様、いつもより張り切っていらっしゃるように見えますね」

 エトランジュがその姿を見せた。
 彼らにとっての神である。唯一神である。

「お、エディ!」
「エトランジュ様だ、エトランジュ様がお姿を見せたぞ!」
「実は、ルルが無理をし過ぎないようにって、俺たちでやれることをやってるんだ!」
「そうしないと、勇者になれないですからな!」

 ハハハ、と笑う騎士団。
 それを見て目を潤ませるエトランジュ。彼らは完全に分かり合えている。
 
「まあ、それは素晴らしい事です!」

 高い士気を戦場だけでなくここでも発揮し、かつてないほどテキパキと仕事をこなす騎士団。
 これが意識の差というものである。
 しかし、ルルーシュに無理をさせたくないなら、勇気連呼もやめたほうがいい、と提案するものは、誰一人いなかった。
 当然である。彼も勇者であると、皆信じきっているのである。
 そして、彼がひたすらに頑張るのもまた、彼が勇者であるからだと思っている騎士団員しかいないので、当然そんな提案はでないのである。
 
「さあ皆、勇者ルルーシュのためにも、もっと頑張ろう!」
「おう!」

 2ヶ月ほど前に騎士団がこのように歌いながら自分達から仕事をする、などと誰かが言ったら笑われていたであろう。
 或いは、ナナリーが、エトランジュが勇気といい続けるなどというものがあったらやはり笑われていただろう。
 だが、現実にそうなっている。事実は小説よりも奇なり。正にその通りである。

「お兄様、皆様、張り切って仕事をしています。これが勇気の素晴らしさの一端です!」

 依然気を失っている兄を看病しながら、ナナリーは眩しい笑顔でそう語りかけた。
 ルルーシュが目を覚ましたとき、またどうなるのだろうか。
 正直C.C.でなくとも興味が尽きないところである。


次回予告

 君たちに、最新情報を公開しよう!
 勇者達は揃った!
 彼らが対話する相手はブリタニア皇帝シャルル。
 その時、ナナリーは、ユーフェミアは何を語るのか。

暴走のエトランジュNEXT「イメージが消える日

 
 これが勝利の鍵だ! 「モニター対話」



[26314] 暴走のエトランジュ 7話
Name: のーべん◆e3bd37a7 ID:89555681
Date: 2011/03/30 18:55
ExtraNumber.7「イメージが消える日

 倒れてから3時間が経過したところで、ようやくルルーシュは目を覚ました。
 辺りを見回すルルーシュ。
 自分の近くにはナナリーしかいない。
 
 ルルーシュ個人としては、きっと気を失う前の数分間は夢だった、そう思いたいものだった。

「ああ、お兄様。ようやくお目覚めですか」
「ナナリーか。どのくらい俺は寝ていたんだ?」
「3時間ほどです」

 そういって微笑みかけるナナリー。
 大丈夫だ。自分の記憶にあるナナリーだ。あの愛しい我が妹だ、と安堵する。
 きっと、疲れすぎて変な夢を見たに違いない。そう思った事ができた。

「そうそう、騎士団の皆様が、お兄様のために張り切ったそうですよ」
「皆が……?」
「ええ。なんでも、今までお兄様お1人に仕事を押し付けすぎていたとかで」

 自分がなんでもやろうとする性格だったのもあるが、確かに思い返してみれば、騎士団は自分の駒以上でも以下でもなかった。
 自分が命令する。騎士団がその命令を実行する。
 それが当然だった。
 だがそれでは、自分の体はもたないということが、今回のことでよく分かった。

「そうか……もう少し、皆を頼ってみても、いいのかもな」

 珍しく優しい目をしながらそう呟いたルルーシュ。
 ナナリーもそれに頷く。

「ええ。皆様勇者なんですから。お兄様はもっと皆様を頼りにされるべきなんです」

 ルルーシュは恐ろしい事を聞いた気がした。
 妹の口から。

「ナナリー。今、なんといった……」
「ですから、お兄様は勇者である皆様を、もっと頼りになさるべきだと」

 馬鹿な、あれは夢ではなかったというのか!
 恐怖の表情を見せるルルーシュ。
 ああ、気を失う前に聞こえていた声。
 見えていた光景。悪夢が蘇る。
 魔女に、教祖によって洗脳された我が妹、ナナリー。
 流石に夢だと思っていたが、夢ではなかったようだ。

「どうなされました? お兄様」
「い、いや。なんでもないよ」

 かろうじて取り繕う。
 事ここに至っては、最早自分では手の施しようなどない。

「と、とりあえず仕事に戻る事にする」
「そうですか。あまり無理はなさらないでください」

 妹のいたわりの言葉も、今はむなしい。
 労ってくれるよりも、勇気なんて信じてません、といってくれた方が、ずっと気が楽になるのだ。
 親の心子知らず。子の心親知らず。そして、兄の心を妹は知らず。

 
 自室を出たルルーシュを待っていたのは、スザク他騎士団員だった。

「よう! ルル! 俺たちにできる仕事は終わらせておいたぜ!」

 そういえば、騎士団の皆が自分のために張り切っていた、とナナリーがいっていたことを思い出す。

「スザク。一体どの仕事を終わらせたんだ?」

 それに答えるのは騎士団員。
 簡単な書類仕事。データの集計。或いは人事の管理方法等等。

 自分達でできることは、自分達でやっておいたと、そういわれた。

「ルルーシュの大将よ! 俺たちは言われるだけの駒じゃないんだ! もっと頼ってくれていいんだぜ!」

 そう笑顔を向ける騎士団員。
 正直、嬉しい。自分には気がつけば仲間がいた。
 孤独な戦いになるはずだったのに。

「ルルーシュの大将のお言葉! 1人1人がヒーローになれるってのは、俺たちは皆勇者になれるって事だってンでしょう!?」
 
 しかし、その仲間達は、いまや自分の犯した致命的な戦略ミスにより、完全に電波をばら撒く存在となっている。
 より問題なのは、自分は彼らの前では紛れもなく『勇者』でなければならないことだ。
 そう、自分がばら撒いた種。正直、ここまで凶悪な作用をもたらすとは思わなかった。

「あ、ああ。そうだ。俺は君たちをもっと頼るべきだった。それも勇気あるもののつとめだな」

 乾いた笑いを浮かべるルルーシュ。
 頼っていいのは嬉しいが、その相手がああなっていると正直引く。

(いや、まて。今まで何をやる気もなかった団員がこうなったのは、勇気の作用であるのは間違いない)

 理由はどうあれ、自分を受け入れてくれる団員達。
 そこには勇者たれという背景があるのは間違いない。

(少しくらいは……勇気というものも、いいのかもしれないな)

 穏やかな笑みを浮かべるルルーシュ。
 どうやら本格的に一歩踏み出したようである。

「ルル! 倒れたって聞いて皆心配したんだぞ!」

 スザクが改めてそう告げる。
 彼も本当に心配してくれていたようである。

「心配をかけたな」
「それよりも皆、今までルルを苦労させすぎた、無理させすぎたって反省してたぞ」
「そうか。俺もこれからはもう少しだけ、皆を頼ってみるよ」
「ああ、そうすればいいさ! なんてたって皆、勇者だからな!」

 訂正。ここまでにはなりたくない。
 固く決意する。ただ、この親友も自分を心配してくれていたのは嬉しいことだが。
 それと、なんだか完全にふっきれた感を全開にしている。
 自分はきっと、ああはならないだろう、とその点では安堵した。

 と、やらなければいけないことを思い出す。
 自分ばかりが安堵しても仕方がない。皆を安堵させなければならない。

 全体放送を使って、自分に何の問題もないこと、皆を頼って無理をしすぎない事を話した。
 
(基地内の空気からいっても、皆安心したようだな)

 そうしてひと段落した頃、ユーフェミアやナナリー、スザクがエトランジュを伴って自分のところへ来た。

「お兄様。やらせて頂きたいことがあります」

 スザクに同じ事を言われた時は、ロクでもない提案をされた気がする。
 だが、今度はナナリーだ。いくら勇気を信仰しているとはいえ、そうそうアホな事は言い出さないだろう。
 そう思った。

「いいだろう。言ってみてくれ」
「お父様とお話させてください」

 え? あの縦ロールと話? 会話になるのか?
 いや、ナナリーはともかく、縦ロールが話になると思えない。

「な、何を話すんだ」
「勇気の素晴らしさを」

 それは無理だ。伝わるはずがない。俺でさえ通用しないのに、あの縦ロールに通用するはずがない。

「いくらなんでも、それは難しいんじゃないか?」

 やんわりと否定する。

「いいえ、やってみなければわかりません」 
 
 どうやら妹の決意は固いようである。
 そういえば、後ろに控えている面々もなんだか凄い迫力だ。
 仕方がない、やらせてみるしかない。

「それも、そうだな。やってみてくれ」

 ルルーシュはハッキングを開始する。
 そういえば最近はその実力を見せ付けていないが、これこそ彼の得意分野である。
 圧倒的な速度で回線を行き来し、プロテクトを解除し、ブリタニア皇帝専用モニターを起動させる。

「いつ見ても、素晴らしい技量です。ルルーシュ様」
「凄い、凄いぜ。ルル」

 皆驚嘆する。流石にこればかりは勇気ではどうにもならないことくらいはしっているのである。
 
 いきなりモニターが起動して驚いた表情を見せているのは、ブリタニア皇帝シャルルその人である。
 雄大な体躯にその縦ロール。威圧感たっぷりの風貌は、皇帝と呼ぶに相応しい。

「何用だ。ルルーシュ!!」

 いきなり怒鳴りつけてくる。
 正直この男の顔を見るどころか、声を聞く事すらいけすかない。

「話があるのは私のほうです。お父様」
「何? ナナリーか?」
「先に言っておきますが、私、もう目が見えるようになりました」

 ほう、と感嘆するシャルル。
 自分のギアスを乗り越えるとは予想していなかったらしい。
 自分の知っているナナリーとは違う、と感じる。

「それで? それを伝えにわざわざこんな姑息な手段をとったのか」

 無論、ハッキングについてである。
 
「そんなことを言うのであれば、家族からの連絡先くらい用意していたらどうですか?」
 
 それとも、死人への連絡先などは持ち合わせていませんか、と不敵に言ってのける。
 これも、勇者となった者が受け取る1つの効果らしい。

「言うようになったよな。本題に入ってもらおうか。ワシも忙しい」
「では、単刀直入に。私の目を覆う邪気をはらったのは、勇気の力です」
「何?」

 疑問符に割ってはいるのはユーフェミア。
 そう、現在行方不明だとブリタニア帝国で騒がれている皇族である。

「私が説明します。お父様」
「ユーフェミア! そんなところにいた――」
「勇気の力でナナリーは、お父様のギアスを乗り越えたのです」

 こんな説明で誰が納得するか。そんなことを思っているのはルルーシュとシャルルだけである。
 そしてシャルルの言葉などまるで無視して話すユーフェミア。
 驚くシャルルだが、後ろに控えている面子の方がよほど恐ろしい事を知らない。

「ユーフェミアァ! ブリタニアを裏切――」
「裏切ったんじゃねえ! 平和な世界を作るために、ユフィは勇気を手にしたんだ! この縦ロール野郎!」

 今度はスザクが割って入る。
 シャルルがマトモに話す機会など、しばらく回ってくるまい。

「いいか!? ユフィはなぁ、日本の皆と仲良くしたい、世界中の皆と仲良くしたい。そのために――」
「スザク。ここからは私が。そのために、勇気が必要だと知った私は、より平和な世の中にするために、ルルーシュのもとにいるのです!」
「平和な世の中だと? 乱しているのは騎――」
「分かっていないようですね、力よりも勇気! それが重要なのです。それに私はブリタニアの方々を裏切ってもいません!」
「身を寄せた時――」
「裏切りではなく、勇気ある行動なのです! そんなことも分からないのですか! ロールケーキのお父様!」

 いくらシャルルといえど、勇者相手に2対1では分が悪い。更に、エトランジュまで控えているのである。
 シャルルが何か口を開きかけると、今度はナナリーが話し始める。
 ロールケーキといわれたことにすら突っ込む事ができない。

「ともかく! ギアスとかいう能力といえど勇気の前では無意味なのです! 全ての人の中にある輝ける力勇気!」
「それに気がついてもないあんたみたいな縦ロール野郎が」
「私達や日本の人々、世界の人々を押さえつけられるなどと思い上がらない事です!」

 シャルルは渋面を作っていたが、いきなりスザクに向かって吠え立てる。

「お情けでなり上がれたナン――」
「だから勇気がわかってねえっつってんだよ! 勇気は誰の胸にも宿ってるって言ってんだろ!」
「だからこそ人々は本質的に平等! 差別などあってはならないとはそういうことなのです!」

 勇気の素晴らしさを伝えるのではなかったのか。
 ルルーシュは内心そう突っ込みたかったが、この面子相手にそんなことする気も起きない。
 なんだかシャルル叩きになっていっている。
 まぁ、不満のたまるというか不満しかないような相手なので仕方あるまい。
 
 そして、エトランジュがとうとう口を開いた。
 今までよく黙っていられたものだ、とルルーシュは感心している。 

「そこのブリタニアンロールさん」
「貴様は――」
「ハッキリ言いましょう。私の祖国はじめ、世界中の方々を力で押さえつけていればいい。弱肉強食こそ真理、だのと思い上がっているようですが」
「何?」
「それは間違いです。スザク様達の仰るとおり、世界は勇気によってこそ平和になれるのです」

 ルルーシュは思う。
 勇気によってこそって、抽象的過ぎて何の説明にもなっていないじゃないかと。
 だが、そのような意見などもはや力を持たない。

「そうさ、縦ロール野郎! 強い奴が弱い奴をいじめるんじゃねえ! 強くても弱くても、誰かのために生きられる!」
「そんな勇気ある世界!」「それこそが」「世界中が求めている事なんです!」

 それなら最初から皆が助け合える世界がいい、といえばいいだけじゃないなんてツッコミは野暮である。
 前提条件に勇気がなければ成立しないのが彼らである。

「それに勇気は必要だというのくぁぁぁぁ!?」
「本当に分かっていませんね! 優しくするには勇気が必要! そういうものなのです!」
「待て、どういうことだ! まるで意味が分からんぞ!」

(お前が言うな、といいたいところだが、今回ばかりは同意しなければならない……)

 ルルーシュが遠い目をする一方で、他の4人は手を取り合いながら、「私達の勇気こそが必要だと証明されました!」と喜んでいる。
 証明も何も、一方的に自分達の意見のターンを続けていただけである。
 もっとも、シャルルのほうはそれまでに色々やりすぎて不平を言える立場でないのかもしれないが。

「もう、切ってもいいか?」
 
 ルルーシュが4人に聞く。
 話を聞いていただけなのに、物凄く疲れた様子である。
 4人が頷く。
 回線を切断する。


 シャルルは閉じたモニターを見て安堵する。

「……いったい、どういうことだったのだ」

 シャルルは生まれて初めて、助かった、という気分を理解する。そしてその日、ブリタニア皇帝は、一晩中うなされていたという。


 次回予告

 君達に、最新情報を公開しよう! (勇気とは何なのだ! 一体何なのだ!)
 遂に、ルルーシュは日本解放の準備に入る! (ワシは、ワシはあのような思考にも繋がると――)

 ええい、うるさい! (済まぬ) 

 その時スザクは、そして騎士団は?

 暴走のエトランジュNEXT「解放序曲

 これが勝利の鍵だ! 「ナナリー・ランペルージ」
 



[26314] 暴走のエトランジュ 8話
Name: のーべん◆e3bd37a7 ID:89555681
Date: 2011/03/30 18:57
ExtraNumber.8「解放序曲

 ルルーシュは考え込んでいた。
 
 場所は自室である。
 
 彼の思考の原因は、このようなものだ。
 騎士団の士気の根底には、勇気の力への絶対的な信頼がある。
 それを維持するためにはどうすればいいか。

 以前カレンとスザクの模擬戦でやったようなデータ入れ替えというインチキは、シミュレータという電子の世界でしかなし得ない事だ。
 さて、どうすればいいか。

 彼は機体性能をあげる、ということがどれだけ困難な事か知っている。
 5%出力をあげることさえ、難しいことなのだ。
 ならば、やはり搭乗者を錯覚させるしかない。

「…………そうか」

 彼は思いついた。機体性能があげられないならば、上がったような錯覚をさせる。
 そのために必要なのは、機体リミッターの制御だった。
 ただし、搭乗者本人の手で解除していけるようならば意味はない。
 こちら側から自軍ナイトメアフレームのOSにアクセスし、外部からのリミッター解放を行うのだ。
 それも、段階的なリミッター解放にしなければならない。0か1かでは、疑われる原因になる。
 あくまで、勇気の高ぶりに応じて出力が上昇する、という様式でなければならない。

 必要なのは、各機の情報である。
 リアルタイムで搭乗者の情報が処理され、自分に送られるようなシステムを開発しなければならない。

 彼は電話機のダイヤルを押す。
 
「ラクシャータ。君と君の技術スタッフに開発協力をして欲しいシステムがある」

 彼は騎士団お抱えの技術者達を呼び寄せる事にした。
 加えて、自分。騎士団の叡知を結集させて、新たなシステムを開発する事になる。


――

 スザクは考え込んでいた。

 場所は格納庫である。
 
 カスタム機『紅蓮』や主力量産機『暁』といったおなじみの顔ぶれの中に、1機だけ場違いなものが混じっている。
 『ランスロット』である。
 ブリタニア軍の実質単体最強戦力であり、戦術レベルの戦闘力を持つまさしく切り札だったのであるが、スザクが離反したことにより、今は騎士団のものとなっている。

 そのスザクは、相棒の白騎士を見て考え込んでいた。

「どうにも、こう、勇者カラーじゃないな」

 つまるところ、自機のパーソナルカラーを塗り替えたいようである。

「いや、白は白であれがあるんだけどな」

 ちなみに、彼は『勇者王ガオガイガー』は全て見終えている。FINALまで。

「腕のところ黒く塗ればあれに近づくかな! まぁ、こっちは騎士だけど、あれも戦士だしな!」

 しかし、そこでスザクはまた考え込む。
 もしあの白き巨人―すごく強い、すごくでかい、すごいロボットのようなカラーリングにしたとして、足りないものがある。
 決定的に足りないものが。大きさもそうだ。あれは101m。こちらは約4.5m。
 これは仕方ない。赤の星の技術で実現化できたものだ。こちらの技術では到底無理なのだと。
 しかし、しかしである。

「なんかこう、連射可能で飛び道具で一撃必殺でコクピットブロック回収できる必殺技とかないのか!」

 これが不満である。ランスロットの飛び道具は青くてゴツい銃である。
 しかしこれではいけない。
 腕に内部装備としてついていて、火の鳥のような形で飛んでいくような飛び道具が欲しい。
 これも赤の星だからできたものなどと夢のないことは言わないであげよう。

「それが無理ならハンマーが欲しいぜ……」

 こちらの案は、装甲を全面金色にして黒を上塗りする。
 そしてスイッチ1つで塗装がはげて中の金色が出せると嬉しい。
 そして、黄金のハンマーが自分の元に届くのだ。
 それは決して、あらゆるものを光にできなくとも良い。出来るとなおさら嬉しいが。

「うん、最高だっゼ!」

 完全に妄想全開である。
 そんな技術どこにもない。
 というか、スイッチ1つで塗装がはげる機能など何の実用性もない。
 
「しかし、俺にはどう改修したらいいかわからないな!」

 清清しいまでの開き直りっぷりでそう言い放つ。

「おう、スザク先生、どうしたよ!」

 その叫びを聞きとめた整備兵が尋ねる。

「いや、実は俺のランスロットをもっとこう、勇者っぽくしたいんだけどな」
「先生のも充分勇者っぽいとは思うぜ?」
「そうか? あ、君ガオガイガーって見たか?」 

 実は騎士団の大半はいまだガオガイガーを見ていない。
 エトランジュとルルーシュの演説によって勇気に目覚めた彼らだが、その原典を未だ見ていないのである。
 普段何も考えていなかったからすぐに信じきってしまった側面がある。

「いや。なんですかい? そのガオガイガーってのは」
「俺たち勇者達が見なければならないものさ!」
「となるとスザク先生はそこからも勇気を学んだので?」
「学んだって程度じゃないさ! エディの言葉と同じくらい知っておかなければいけないもんだ!」

 その言葉に衝撃を受ける整備兵。
 エトランジュの言葉に並ぶほど勇気を知る上で重要なもの。
 しかもそう語ったのは、スザク大先生である。

「先生! そのガオガイガーをぜひとも見せていただきたい!」
「勿論さ! 俺はいつでも鑑賞できるように、エディにコピーさせてもらったからな!」

 胸を張るスザク。
 そんなことをしている暇があれば、ルルーシュの苦労を取り除く手伝いでもしてやればいいのだが。
 よもや、自分のこのノリが彼の頭痛の種だとは思ってもいない彼である。

「ありがとうございます! 仲間たちも呼んで、一緒に見ますよ!」
「そうするべきだな! 本当に!」

 手を取り合う整備兵とスザク。
 しかしスザクはこう付け足すのを忘れなかった。
 
「仕事中に見始めるととまらないから、仕事が終わってから見てくれよ」
「勿論です! ルルーシュの大将に迷惑かけるわけにはいきませんからな」

 その様子に満足するスザク。
 彼は勇者としての自分の務めをまた1つ果たす事ができた、と満足していた。

 しかし、すぐに思い出す。

「あ、そういえば機体改修……いや、あの人がガオガイガー見てからでも遅くはないか」

 少し前、ルルーシュからこんな連絡があった。
 日本解放に向けて、新システムを開発するため、当分はそちらに力を注ぐ、と。
 ならばまだ時間はあるだろう。

 ちなみに、この放送で騎士団は勘違いした。
 自分達が積極的に仕事をするため、安心して新たな準備にとりかかれるようになったのだと。
 実際は自分達にやる気を出させ続けるために新システムの開発にとりかかっているなど、夢にも思っていない。
 
「さて、それじゃシミュレータで特訓でもしてくるか」

 そういって走り出したスザクが、僅か3歩ほどで足を止めた。
 何か思いついたようである。

「そうだ! エディに皆への大鑑賞会を開いてもらおう!」

 名案を思いついたように両手を合わせるスザク。
 それはやってはいけないことである。ルルーシュの精神の平穏のために。
 
 彼は携帯を取り出し、電話帳を呼び出す。
 当然、相手はエトランジュ。

『もしもし?」
「あ、エディ。俺だ、スザクだ」
『何か御用でしょうか?』
「頼みたい事があってね」
『どうぞ』
「まだガオガイガーを見ていない騎士団の皆のために、鑑賞会を主催してもらいたいんだ」
『まぁ! それならお安い御用です! お任せください、スケジュールも調整しておきます!』

 電話越しでも分かる程に喜色を表すエトランジュ。
 スザクには飛び跳ねて喜んでいる姿まで見えるようだ。

「そうか、ありがとう! じゃあな!」
『ええ、ご期待ください!』

 そういって電話を切る。

 その日の夕方。エトランジュからの連絡が騎士団員に入った。
 まだガオガイガーを見ていない人のために、鑑賞会を明日の夜から催すと。
 騎士団員は、ガオガイガーとは何か知らなかったが、それについてもエトランジュからの知らせがある。
 曰く、勇気の何たるかを教えてくれる映像作品であるという事だ。これに食いつかない騎士団員はいない。

 皆、明日以降の仕事のスケジュールを調整し始めたのである。
 エトランジュ曰く鑑賞会は8時からDVDを1日2巻ずつ、約1週間かけて視聴する。
 ちなみに、ルルーシュに行った鑑賞会と同じ日程である。
 
 この時から騎士団のムードはいつも以上に異様な熱気を帯びる。
 毎日毎日凄まじい勢いで仕事を片付けては鑑賞会で盛り上がり、朝食では前日の鑑賞会で盛り上がる。
 そして夜には鑑賞会である。

 ちなみにルルーシュはこの騒ぎを知らない。
 ラクシャータ達とデータのやり取りをしながら、自室でずっと新システムの開発に力を注いでいるからである。
 
「っち、これでは処理が重くなるのか。仕方ない、演算方法を変えるしかない……」

 ため息をつく。
 勇者達の相手をしていないというのにお疲れ気味である。

「これで演算プログラムだけで8個目だぞ……後どのくらい作業すればいいんだ……」

 ナナリーが部屋に入ってきた。
 いつもどおり食事を運んでくる。

「済まないな、ナナリー」
「騎士団の皆さんも頑張っているとはいえ、大切なお体なんですからお気をつけてください」

 ちなみにナナリーは外の騒ぎを知っているが、ルルーシュには報告していない。
 彼女には不満だが、彼はどうやら勇気という言葉をあまり聴きたくないようなので、今この状況を知らせてしまえば、兄が倒れかねないと憂慮しているのである。
 この点、他の信者よりは多少気が利くようである。
 ちなみに、C.C.等には「お兄様は作業中ですので、静かな環境におかせてください」と説得してある。

「そうだな。少し休憩しよう」

 ルルーシュは紅茶に口をつける。
 
「忙裏の小閑は命よりも尊し、か。こうなると意味がよく分かる」

 このところ働き詰めで、体もろくに休ませていない。
 一応、自室には風呂などもとりつけてあるから、生活する分には問題ないが、休み無しはどうにも堪える。
 
 しかし、日本解放戦も近づいている手前、そんなことは言っていられない。

「そうだ、ナナリー。騎士団は最近どうなっている?」

 やる気を出してくれているのはいいが、あのテンションではいささか不安である。

「大丈夫です。皆さん、解放に向けて皆さんなりに努力していらっしゃいます。この前は機体の改修をなさっていました」
「そうか。そうしてくれると俺もありがたい」
「お兄様。お食事の後も休憩して、一度睡眠をとられてはどうですか?」

 妹の提案に、それもそうだな、と頷く。
 こう疲れていては、むしろ効率は悪くなる。
 少しは休養も必要だ。 

「そうだな。そうしよう」

 勇気を信じ始めたとはいえ、流石はナナリーだった。
 空気は読めるし気遣いもできる。
 なりふり構わないエトランジュあたりとは違うというものだ。
 ルルーシュはそう思って喜んだが、彼は分かっていない。
 
 当のナナリーも現在のシステム開発さえ終わればルルーシュ勇者化キャンペーンを始めようとしている事に。
 ちなみに、これはC.C.と2人でやることにしている。
 他の人々はルルーシュが勇者だと信じきっており、それを裏切るような真似はしたくないからである。
 
 システム完成後、日本解放戦が始まる。
 だが、ルルーシュにとってはそれだけではないのだ。
 果たして、彼は勇気から解放されるのか。

 ……
 
 …………

 ………………
 
 多分無理だろうな。うん。
 ていうかエディとか騎士団とかどこに向かってんの?
 作者が知りたい。


 次回予告

 君達に、最新情報を公開しよう!
 遂にやってきた、日本解放の戦い。
 そこで勇者達はどのような戦いを見せるのか。
 そして、ルルーシュの向かう先とは?

 暴走のエトランジュNEXT「黒の勇者たち

 
 これが勝利の鍵だ! 「蜃気楼」
 



[26314] 暴走のエトランジュ 9話
Name: のーべん◆e3bd37a7 ID:89555681
Date: 2011/04/01 18:33
ExtraNumber.9「黒の勇者たち

 黒の騎士団は、今緊張に包まれている。
 ルルーシュからの連絡があったのだ。
 
 "1週間後、日本解放のための戦いを始める"と。

 それは、ルルーシュが戦いのための新システムを完成させた事も同時に彼らに教えていた。
 その新システムのプログラムを各機のOSに落とし込んでいく作業でいまや、技術スタッフは大忙しである。
 とはいえ、忙しいはずの技術スタッフ達は、いまや「勇気の力を知らしめるために!」と苦労を苦労と思わぬほど、作業に精を出している。

 そんな慌しい中を、スザクも走っていた。
 だが、彼は技術スタッフではない。
 彼が走っていく先は、ルルーシュの部屋であった。

 彼にはどうしても見せたいものがあった。
 そう、整備兵の力を借りて改修した、生まれ変わった『ランスロット』の姿を、である。

「ルル!」

 勢い良く扉を開ける。
 その様子に驚いたルルーシュは一瞬フリーズし、すぐさま再起動する。

「あ、ああ。スザク。そんなに慌てた様子でどうしたんだ?」
「ルルに見てもらいたいものがあるのさ! きっと気に入ると思うぜ!」

 ルルーシュにとっては嫌な予感である。
 というか、このテンションのスザクが思いついた事に、嫌な予感以外の何かを感じたことがない。
 そして、その嫌な予感が外れた事もない。何を見せようというのか。
 ロクでもないものに違いない。もっとも、そんなことは口が裂けてもいえないが。

「そうか。それは見せてもらいたいな」
「だろ?」

 何を見せるかいってもいないのに「だろ?」とはいかにもスザクらしい。

 そして、ルルーシュはスザクに連れられて格納庫までやってきた。

(そういえば、ナナリーが機体の改修をしたりしていた、とか言っていたな。その流れか?)

 そう思うルルーシュ。
 ますます嫌な予感に襲われる。

 それを決定的にしたのは、スザクが「エディ!」と叫んだときだった。

 彼女まで出てきた。もう絶対になんかロクな事ではない。

「スザク様。私、期待していたのですよ。この時を」
「見せるなら、ルルと同時にがいいと思ってね」
「私だけ、というのもずるいですからね。流石はスザク様、勇者たるものの行動です」
「エディからそういわれると嬉しいな!」

 全くもって会話についていけないルルーシュ。

「その、スザク。何を見せてくれるんだ?」

 恐る恐る訊ねる。

「言葉で説明するより、見せた方がいいな。あれだよ!」

 スザクが指差した先には、『ランスロット』があった。
 ただし、色が黒くなっている。
 恐らく、ガオガイガーと同じ色にしたかったのだろう。

 黒の騎士団、という組織名ともあっている。
 自分の『蜃気楼』とはかぶっているが。

「どうだい、ルルーシュ! ガオガイガーと同じ塗装だ! 素晴らしいだろう!」
「そうでしょう、ルルーシュ様!」

 エトランジュまで同意を求めてくる。

「ああ、そうだな。勇者としての1つの形だろう」

 適当に褒め称える。
 想像していたよりずっとマシだった。

 ルルーシュはそう思った。
 が、スザクは当然、その程度で終わる男ではなかった。

「そしてルル。もう1つ凄い機能をつけたんだぜ!」
「何?」
「これも見てのお楽しみって奴さ!」

 そういって『ランスロット』に乗り込むスザク。
 なんだかとてつもなく嫌な予感がするルルーシュ。

「さあ、ここからが本番だそうですよ、ルルーシュ様」

 ウキウキした顔でそうはしゃぐエトランジュ。
 どういうものかはスザクから聞いているらしい。
 その期待感全開の顔を見ると、もう嫌な汗しか流れてこない。

「さあ、いくぜ! ルル!」

 そういって機体が起動する。
 その目に光が宿る白騎士改め黒騎士。

 そしてスザクは叫ぶ。

「ゴードンのおっさん、あれをくれ!」
「おうよ!」

 ゴードンのおっさん、とはスザクが仲良くなった整備兵である。

 そのおっさんが返事するとすぐ、巨大なピコハンが『ランスロット』の手元に届いた。

「ゴルディオン! ハン、マアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」

 スザクの叫びと共に、塗装が見る見る剥がれていく。
 そして、黒い塗装の下から現れた金色の装甲。
 そう、スザクが目指したものは金色の破壊神。

 色々と危ない。やってはいけない。いったところでスザクには通用しないが。

 勿論ピコハンも金色である。

「なんて、なんて素晴らしい!」

 エトランジュは涙を流して喜んでいる。
 自分も一応喜んでおく。あわせておかないと後が、というものだ。

「どうだい、ルル! フレームを全面金色に変えて、その上から黒く塗装したんだ!」

 それはいいが、ならなぜ塗装がはげる。

「そして、スイッチ1つで、塗装がはげるような機能を頑張って開発したんだぜ!」

(馬鹿だ、本物の馬鹿だ!)

 そうは思っても口には出せない。

「凄い、じゃないか。スザク。まさか、ここまで再現するなんて」
「これも勇者達の力があってこそさ!」
 
 金色になった『ランスロット』を使って胸を張るスザク。
 この阿呆をどうしたものか、と新たな頭痛が襲う。
 なによりも、この阿呆が騎士団にとっても最強の戦闘力の一角なのだ。
 まともに戦えるのは、カレンの駆る『紅蓮弐式』くらいなものである。

 とりあえず、塗装が剥げたからといって、戦力的なオプションになるわけではない。
 全くの無意味である。本人の自己満足のためとしかいいようがない。
 最早そこは諦めた。

「ところでスザク。そのハンマーの方は、振り回したりできるのか?」
「勿論さ! それだけじゃないんだぜ!」

 流石に原作再現は無理だろう。
 あのアニメでは、重力波を照射する機能がついていたが、そんな技術は勿論実用化されていない。
 目標を分子レベルで粉砕し、光子に変換するなど、夢のまた夢である。
 勇気でどうにかなるものじゃない。

「まぁ、光にする機能はつけらんなかったんだが」

 やはり。

「代わりに、超強力なハドロン砲を搭載したんだ! ジェネレーターも個別に入ってるんだぜ!」

 ピコハンの意味がない。
 だったら最初からハドロン砲を使えばいい。 
 何のために取り回しづらいあのピコハンが必要となるのか。エトランジュはどうにも喜んでいるようだが。
 実用性皆無である。個人のモチベーションがあがるだけだろうか。

「うおおおおおおおおおおおおおおおお! 流石だぜ、スザク先生!」

 振り返ると、周りの騎士団員がやたらと喜んでいる。

「そこまで再現するとは、俺たちでは到底思いもつかない!」
「そんなことを実行するスザク先生!」
「俺たちはそこに痺れる、憧れるゥ!」

 どこに憧れるというのか。
 やったことといえば、無意味な改修を行っただけである。
 が、騎士団員たちは凄まじい熱気を放っている。
 更になんだかスザクを崇拝している感すらある。

(崇拝相手が教祖だけじゃないだと……馬鹿な!)

 これでは益々まずい。
 エトランジュだけでもタチが悪かったというのに、スザクまで崇拝されては手に負えない。

「本当は俺の機体も、勇者的改修したいんだけどよ、俺たちには炎竜やら氷竜だってまだ恐れ多いからよ」
「そこで主人公機をモデルにする、流石だぜスザク先生!」

 ルルーシュはまた聞いてはいけない事を聞いてしまった気がする。

「もしかして、君たちもガオガイガーを見た、のか?」
「おうよ、長官!」

 やっぱりだ! 呼び方まで長官になってる!
 これは間違いない。もう駄目だ、この騎士団員たち。
 誰のせいだ。元はといえば俺のせいだ。余計困る。
 というよりもだからこそ困っている。

(自縄自縛とは、このことだな……)
 
「そういえば、報告し忘れていました」

 エトランジュが思い出したように言う。

「ルルーシュ様がシステム開発に尽力されている間に、騎士団の皆様でガオガイガーを鑑賞したのです」

 輝ける表情でそう語るエトランジュ。
 周りの騎士団員たちは、「あれは勇気の何たるかをまさしく示してくれるものだった!」と叫ぶ。
 そしてエトランジュに感謝の言葉を述べる。
 
 正直自分はあの中に入りたくない。

「まあ、皆さん。その言葉はスザク様にこそ送るべきです。私に鑑賞会を提案したのはスザク様ですから」

(あの、馬鹿! 本当に馬鹿だ! ナナリー程度には空気を読んでくれ!)

 正直しばき倒したい思いに駆られながらも、直前で思いとどまり、騎士団員を代表して、ということでルルーシュがスザクに礼を述べる。

「ありがとうスザク。これで本当の意味で騎士団も勇者となれた。君と、エトランジュ様のおかげだ」
 
 そういって笑いかける。
 無論、本当は蹴っ飛ばしてやりたいくらいである。

「まぁ、ルルーシュ様。もうお互いそんな他人行儀な呼び方は止めましょう」

 お互い勇者なんですから、呼び方も親しみを込めないと、とルル様と呼び始めるエトランジュ。
 なんかおかしいぞ。

「そうだぜルル。俺だってエディって呼んでいるくらいだ、お前もそう呼べよ」

 一緒になってけしかける。

「あ、改めてよろしく。エ、エディ」

 終わった。なんだか知らないが自分はまた1つ終わってしまった気がする。
 だが、周りの騎士団員は喜んでいる。
 ようやく指導者がエトランジュとフランクな関係になった事に歓喜している。

 自分は指導者である以上、この雰囲気を壊すことは出来ない、と諦めるルルーシュ。
 これでは胃に穴が空く日も近そうである。

「フフ、お前もよくやっているようじゃないか。ルルーシュ」

 ルルーシュがふと振り返ると、愛しいナナリーまで洗脳したあの魔女が顔を見せた。

「貴様……」
「しかし、勇気というのは素晴らしい。あんなに精神がひねくれていたルルーシュでも今ではこの通り、清清しい男になったからな」

 意地悪な表情を浮かべながらそんなことを言い始めるC.C.。
 その表情には、この状況で勇気を否定する事など出来ないよな、と書いてある。
 まったくもってその通りだから腹立たしい。

「俺も、昔は非道な事を行ってきたが、本当に勇気を知ってからは」

 言葉に詰まる。
 額に脂汗がにじみ出てきているくらいだ。

「勇者としての自覚で、そんな事出来なくなったんだな!」

 スザクが勝手に続ける。
 ルルーシュはスザクが騎士団に入って初めて、彼に感謝したくなった。
 何も思い浮かばなかったところを勝手に続けてくれたからだ。

「そう、そういうことなのですね!」

 エトランジュも勇気の素晴らしさを改めて目の当たりにし、顔を輝かせて喜んでいる。

「ああ、そう、いうことだな」

 そう答えると、C.C.が舌打ちするのが見えた。
 明らかにスザクに余計な事を、という視線を送っている。

「邪魔したな、私はまたピザでもとってくる」

 口の端についていたピザソースとチーズを舐めとると、そういって身を翻した。

「そういえば、システムの移行は進んでいるのか?」

 ふと思い出す。ここに来たからにはそれを知るのも無意味ではない。
 近くの技術スタッフが答えた。
 
「後2日くらいで終わりますよ! 長官!」
「やけに早いな。大丈夫か?」
「俺たちも勇者ですからね、開発にくらべれば、このくらいやってみせます!」

 なんとも頼もしい言葉だが、やっぱりというかなんというか、勇者である事が根底らしい。
 本当の自分というものが知れ渡ったらどうなるか、不安になるルルーシュであった。
 
 それよりも、このままで日本解放など大丈夫だろうか、そちらの方が不安になるルルーシュでもあった。


 ……
 …………
 ………………

 
 蟹「おい、戦闘しろよ。予告はどうした」
 作「MA☆TTE! 俺にあう落とし込み方がなかったのだ」
 烏「インチキ製作も大概にしろ!」
 
 すいません。本当にすいません。
 スザクネタで枠使いすぎて、予告盛大にぶっこわしました。
 謝れ! スザク!

「俺は勇者にふさわしいことをしただけだ!」

 まて、何の事だスザク! まるで意味が分からんぞ!


 
 次回予告 (今度はちゃんと予告になる予定)

 君達に、最新情報を公開しよう!
 読者は裏切られた! この挽回はどうするのか。
 改めて日本解放戦に突入する。
 果たして日本は、騎士団は!


 暴走のエトランジュNEXT「予定など光の彼方


 これが勝利の鍵だ! 「スザクの自重」

 やっぱりそんなの無理だ!



[26314] 暴走のエトランジュ 10話
Name: のーべん◆e3bd37a7 ID:89555681
Date: 2011/04/19 16:53
ExtraNumber.10「予定など光の彼方

 ルルーシュ達が新システムを完成させてから更に半年が経った。
 なぜ半年も経過したのかというと、新たな戦力を生み出していたからである。
 なにしろ、現在ルルーシュ率いる「黒の騎士団」の主力は、空中である。
 正確には、飛行する艦の艦内である。
 
 新たな騎士団の象徴となりうるであろう、全域展開指令艦『天照』。
 騎士団初の浮遊可能なフラッグシップであり、なおかつ、ミラー粒子をフル活用した技術の数々が搭載されている。
 このミラー粒子、存在しない物質と考えられていたのだが、『蜃気楼』に搭載されている構造拡散相転移砲の液体金属の改良研究中に発見したらしい。
 それはともかく、半年で実用化できるのか、などと細かいところは気にしてはいけない。
 技術部曰く、「勇気の力」だそうである。

 ルルーシュはそれを聞いて、改めてこう思わざるを得なかった。

(もう、本当になんでもアリ、だな)

 この『天照』の最大の特徴は、視界から消える事ができる点である。

 ホログラフィックカムフラージュ。
 所謂光学迷彩に当たるこの技術は、ミラー粒子を『天照』の表面に蒸着させ、光の屈折率を変化させる事で、『天照』の視認を不可能にする技術である。
 ブリタニアにも浮遊艦は存在するが、光学迷彩技術を持ったものなど存在しない。
 ミラー粒子は特質として、電磁波などを透過せず、レーダーの探知音波すら反射しないため、起動すれば、『天照』は消滅する事になる。
 無論、完全に消滅する訳ではないため、接触できればその存在を確認できるが、広大な空中でそれは無理というものだ。

 敵に全く気取られずにKMFを即時展開できる、という意味ではこの世界で初の技術であり、戦略を根幹から改める事ができる。
 ブリタニアに情報が全くないのも大きなアドバンテージである。

 更には、ミラーカタパルトというものも搭載している。
 こちらは撃鉄のいらないカタパルトであり、カプセルに搭載したままKMFを射出する事ができる。

 このような機能を備えた『天照』。
 実は元々、『斑鳩』という名称で開発が進められていたが、このようなことがあったので、それならば、と思い切って改良を加えた経緯がある。

 前置きが長くなったが、ようするに準備ができたので、日本解放の戦いが始めるのだ。

 そのためにルルーシュは、騎士団を鼓舞するために演壇に立つ。
 KMFのパイロット達は、すでにコックピット内で待機しているため、モニターを通して彼の演説を聞く事になる。
 その彼らのKMFは、4機が1つのカプセルに納められて出番を待っている状態だ。
 カタパルトは1つしかないので、それならば1回に複数飛ばした方がいいという考えである。

 モニターにルルーシュが映る。

『諸君、これからの戦いは、諸君の勇気がまさしく試される戦いだ!』

 相も変わらず心にもないことを口にするルルーシュ。
 だが、今更引き返しようもない。なにしろ、原因は自分なのだから。

『俺は多くは言わない。君達勇者を信頼しているからだ!』

 本当は面倒くさいだけなのは、本人の心にだけしまっておくべき事柄である。

 だが、自分達を信頼しているときいて、テンションが上がる騎士団員。
 長官は俺たちを信じてくれている、と口々に士気を高める。

『よぉし! 黒の騎士団、出撃、承認!』

 モニター越しのオーバーアクションするルルーシュの姿に、あの長官と同じ魂を感じる騎士団員。

 自分のカプセルが射出されるたびに、それぞれ魂の叫びをあげながら出撃していった。

 ツクバ上空から僅か10分ほどでトウキョウ上空にたどり着くカプセル。 

 騎士団のKMFが割れたカプセルから飛び出し、眼下にある迷路を目指す。
 
 建造物が林立し、その隙間に溝のように道が存在する。どの道も舗装されている。
 空中から見れば、それは迷路に他ならなかった。

 溝にいくつかの点が見える。
 それがブリタニア軍のKMFだった。
 大半はブリタニアの主力量産機『サザーランド』である。

 最後に射出されたカプセルの高度が地上まで後800m程度となった時、ルルーシュからの通信が入った。

『全軍、これより攻撃を――開始せよ!』

 簡潔明瞭な指令。
 騎士団の勇気を奮い立たせるにはそれで十分だった。

「いっくぜええええええええええええええええええええええええええ!」

 スザクの駆る黒騎士、『ランスロット』は右手にあの巨大な鉄槌をひっさげ、恐るべき速度で降下していく。

 地上にいた『サザーランド』の内、数機が『ランスロット』に気がつく。
 だが、射撃体勢に入った時にはすでにおそかった。
 数機の内の1機目掛け、ランスロットがその鉄槌を振り下ろす。
 いや、振り下ろすだけではなかった。
 地に足をつけるかどうか、といったところで、『ランスロット』は前方に加速し、『サザーランド』を引きずっていったのである。
 直線距離にして5、60mは粉塵が舞い上がる。
 僅かな時間の後、粉塵は止み、視界が開ける。
 直立する『ランスロット』の足元には、『サザーランド』だった残骸が残されるのみ。

 その勇姿に、他の騎士団員も大いに士気を上げる。

「流石スザク先生! 俺たちも負けてらんねーぜ!」

 その賞賛を待たずして、『ランスロット』は移動を始めた。
 倒すべき敵を求めて。

「スザクには負けられないわよ!」

 一方、こちらはカレン機。
 彼女には音声ですでに、スザクが敵機を仕留めたことが分かっていた。
 彼女がまだ自由落下中だったにも関わらずである。

 その彼女の機体も、今までと様子が違う。
 まず、最大の特徴であった輻射波動発生装置がない。あの、鉤爪のようなものが消えているのだ。
 その代わりというように、腰部にハドロン砲が2丁マウントされている。
 さらに、『紅蓮』という名前が示していた通り、全身炎のような赤だった機体カラーも、半身が青に変わっている。
 彼女はこれを『紅蓮』改め『竜神』と呼んでいる。
 いうまでもなく、影響されて改造してしまった結果である。

 その彼女は、眼下の『サザーランド』に狙いを定める。
 さながら、鼠を狙う鷹の如し。

「ダブルガン!」

 マウントされた2丁のハドロン砲を撃ちまくるカレン。
 防壁の展開すらすんでいない『サザーランド』は、完全に獲物である。
 ただの乱射に見えて、確実に本体を打ち抜いていたのは流石の技量であった。
 最初の獲物は、黒煙を巻き上げて沈黙した。

 だが、2機目は流石に防壁を展開して、高速道路に着地した『竜神』を狙って射撃する。
 カレンはそれを巧みに回避すると、そこから反撃の機会すら与えずに一気に懐に飛び込む。
 その手には、マウントのロックを解除したハドロン砲が握られている。

「ダブル……トンファー!」

 慌てて接近戦用の装備を取り出そうとした頃には、狙われた『サザーランド』はハドロン砲改めトンファーで殴りつけられていた。
 材質がどうなっているのか、『サザーランド』の装甲は砕かれ、更に、バランスを崩す。
 そこに追い討ちをかけるように、カレンは、今度は頭部に向かって右のトンファーを振り下ろす。
 続いて左のトンファーで横なぎ、返し。締めに蹴りをくらわす。
 今度は黒煙を巻き上げる事も無く、ただの鉄屑となってその場に崩れ落ちる『サザーランド』。
 見事なやられぶりである。

「ふう、試運転は上々!」

 圧倒的な幕開けであった。

 他の地点でも、彼らに続け、とばかり、熱気を帯びた騎士団の量産機『暁』が次々とブリタニア軍に襲い掛かる。
 
 あちらこちらで、「勇気と共に!」だの「勇気あるものの力を受けてみろ! ブリタニア!」だのと聞こえてくる。

 ブリタニア軍はこの日に備えて訓練していたはずだが、流石に見ると聞くとは大違い。
 目の前で繰り広げられるのはカルト的な叫びをあげながら異様な熱気を纏う鉄の戦士達の群れ、群れ、群れ。

 中には雰囲気にのまれ、防壁展開すら忘れたまま一方的に打ち倒されていく『サザーランド』もいる。
 その多くが新兵であるのは、ある種必然であろう。

 そんな異様な騎士団の中でも、一際異様な機体があった。

 この機体、雰囲気が異様とか、そういうわけではない。
 機体の外観が異様なのだ。

 まず、機体の基本色がエメラルドグリーンである。
 だが、これはまだいい。パーソナルカラーというやつで、色の違いなどいくらでもある。

 異様なのは両肩である。
 右肩には、赤い帽子と黄色い板に文字が挟まれたようなロゴがある。
 ポップな字体で「Pizza Hut」と読める文字は、間違いなく、大規模ピザチェーン店のロゴである。
 そして、左肩には黄色い柑橘類―レモンのマークが入った丸型ペットボトルがペイントされている。
 
 最初、それを発見したブリタニア兵は、シルエットこそ『暁』であるものの、この形容しがたい見た目の機体を、どう判断していいか分からなかった。
 仕草も戦場を歩く、というよりも散歩をしているかのようだったのも大きい。
 
 もっとも、KMFで散歩、などと酔狂な事を行う人間がいるかどうかさえ不明だが。

 ともかく、様子を見よう、とした次の瞬間、その『暁』がバズーカを撃ちこんで来た。
 咄嗟にそれを防壁を展開して防いだその『サザーランド』は、バズーカの爆風に一瞬視界を奪われる。
 視界が開けた瞬間には、防壁の展開領域の内側からハンドガンを撃たれたのである。

「他愛もない。こんなロゴ程度で逡巡するとは、まったく気の抜けたやつらだ」

 その声の主はC.C.。
 スピーカーをONにしていたわけでもないので、その言葉は誰に届く事も無かった。

 もっとも、ルルーシュ辺りに聞かれていたら、「気の抜けているように見えるのは貴様の機体だ」とでもいわれたに違いない。
 
「さて、私も契約だからな。本腰を入れよう」

 そう呟くと、彼女は集中力を高め始めた。戦場で生き残るために。

 カレンを筆頭として、騎士団のKMFが縦横無尽に、それこそブリタニア軍を蹂躙していたのだが、流石にブリタニア軍とてこれでは終われない。

 ある一角から、大勢を盛り返そうとし始める。
 その一角の中心には、紫色の『グロースター』。
 その手には対KMF用の大型ランス。

 エリア11総督、コーネリアの駆る『グロースター』の姿があった。

 彼女は流石というべきか、騎士団の熱気にも怯える事は無く、今も常と変わらない動きで『暁』を1機葬ったところである。

 彼女は自軍に通信を入れる。

「そんなこけおどしに怯えてどうする! 我がブリタニアの国是を忘れてわけではあるまい! 奇襲などという手段をとったテロリスト如きに怯えるというのなら、まず私が相手になってやる!」

 脅迫めいたその叱咤に、ブリタニアの兵達も我を取り戻し、自分たちが未だ有利な状況にあることに気がつく。
 騎士団の倍程度の戦力はあるのだ。
 息を吹き返して反転攻勢に出るブリタニア軍。

 あちこちで、一方的だった戦局が互角の戦闘になる。
 だが、数で劣る騎士団は、このままでは分が悪い事、明白であった。 

 だが、反撃の狼煙を炊いたコーネリアは、いきなり金色の機体に襲われる。

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」

 恐ろしい速度で落下してきたそれは、普通だったら間違いなく回避できなかったであろう。
 彼女は長年戦場にいた故の勘でそれを察知し、ギリギリのところで回避する。

「何者だ!」

 見れば、機体色が違うせいで気がつかなかったが、そのシルエットはかつて自分達の戦力であった『ランスロット』である。

「裏切り者のナンバーズ風情がァ!」

 彼女の罵声にスザクも負けじと吼え返す。

「ナンバーズナンバーズと、あんたの親父もあんたもうっせえ! 今の俺は勇者だ!」
「貴様も訳の分からん事を!」
「わかんねーならあんたは俺に勝てねえ!」

 いつもどおり理不尽な問答を繰り広げるスザク。
 そもそも意味が分かるような言動は、元からできないのがスザクという男である。
 それに勇者補正が加わっている以上、理解をするほうが極めて困難だというものだ。

 付き合ってられない、とばかり少し間合いを取るコーネリア。
 それをスザクは追う。『ランスロット』の加速は凄まじく、チューンナップされたコーネリア機といえど、あっという間に距離が縮まる。
 とはいえ、そんなことはコーネリアも頭に入れている。
 真正面から突っ込んでくる『ランスロット』をしっかりと視界にとらえる。
『ランスロット』が間合いに入る。
『グロースター』は踏み込み、右手の大型ランスを突き出す。
 
 コーネリアは、仕留めたと思った。単純な男、馬鹿な男、そう嘲笑しようとしたほどだ。
 しかし、現実は違った。
 右手の大型ランスが、粉々になっていたのだ。

 何が起こった――。
 歴戦の勇士である彼女も、突然の事態に一瞬戸惑う。
 その一瞬の間に、『ランスロット』はすでに間合いを詰めてくる。

 彼女は理解した。あの巨大な鉄槌を横なぎに払われたのだと。
 その一撃で、ランスは一方的に粉砕されたのだと。

 死を覚悟するコーネリア。

(もうすぐ、あの不恰好な鉄槌に私の機体は砕かれるのだ)

 今までよく生きてこられた、そう思う。
 やはり戦場は戦場なのだ、いつ終わりが来るか分からない。
 いや、本当に終わりは来なかった。

『ランスロット』は、飛翔していた。
 その鉄槌を振りかざし、再び落ちてくる金色の『ランスロット』。

「ハドロニオン! ハン、マアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」

 今度は回避が間に合わない。防壁を展開する。
 強い圧力だった。
 空間に展開された防壁を、光の波が襲う。

「ハドロン砲かッ!」

 ハンマー状にしている意味が分からないが、とにかく出力が大きい。
 通常よりも防壁に出力を回す。

(我慢比べか……? いや)

 防壁を展開したまま、アサルトライフルを取り出す。

 照準を定める。
 コックピットをロック。
 ロックが完了。

 スザクも気がついたようで、出力を上げようとするが、もう遅い。
 無駄に飛翔したのが間違いだった、その判断が死を招いたのだ、とスザクに届く事もないが呟く。

 トリガーを引く。弾が出る。コックピットに飛んでいく。

 届かなかった。

「馬鹿な!」

 見ると、どこから沸いてきたのか、鳥の亜人のような鎧を纏った人間が、宙に浮いている。

(生身で空を飛ぶだと!?)

 理解が追いつかない。
 すると、コーネリアに向かってそれは叫んだ。

「貴様、防壁など展開しながら銃を取り出して心臓部を狙うなどと、戦士としての誇りを持たぬのか!」

 いきなり説教された。戦場で。

「なっ!」
「戦士としての誇りも持たぬ貴様は、今この地が墓標になるのだ!」

 スザクに並んで訳が分からない。
 しかもこちらは情報が全くない。第一、生身で飛行など非常識である。

 一方、スザクは嬉々として呼びかける。

「助かったぜ、J!」
「私の名はO! ソルダートO!」

 彼女の前で意味不明のやり取りが繰り広げられる。

「ありがとうO!」
「後はお前がトドメを刺すだけだ、スザク!」
「分かったぜ!」

 その言葉と共に勇気を高めるスザク。
 ひっそりと遠隔操作でリミッターを外すルルーシュ。

「勇気の力を、受けてみろ! コーネリア!」
「っく、ナンバーズ風情がァ!」

 その間にも、防壁が限界に近づく。

「いっくぞおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」

 その叫びと共に、防壁を突破する『ランスロット』。
 金色の騎士は、一旦攻撃を止める。

 そして左手から、鍵爪のようなものが飛び出す。

「ハーケン、ヘル!」

 コーネリア機のコックピットめがけて飛んでいくハーケン。
 形状が改良されたそれは、搭乗者を傷つけることなく、コックピットを固定する。

「ハーケン、ヘブン!」

 引きずり出されるコックピット。それは、『ランスロット』の左腕部に固定される。

 最後の仕上げ、とばかりに金色の騎士はその鉄槌を振り上げ、スザクが咆哮する。

「『グロースター』よ、粉々に、なぁれえええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!」

 持続的にハドロンを浴びせられ、粉々どころか消滅していく『グロースター』。
 ここに、エリア11を支配してきた戦力の頂点は、消滅する事となった。



次回予告

君たちに、最新情報を公開しよう!
機能を停止したコーネリアの『グロースター』。
最早頼るべきものを失ったブリタニア軍との戦闘は、急速に終結に向かう。
果たして、騎士団にとらわれたコーネリアの運命は?
そして、謎の戦士、ソルダートOとは?

暴走のエトランジュNEXT「勇者来迎」


これが勝利の鍵だ! 「コーネリア」



[26314] 暴走のエトランジュ 11話
Name: のーべん◆e3bd37a7 ID:89555681
Date: 2011/05/22 07:33
ExtraNumber.11「勇者来迎

「これ以上の抵抗はやめろ! お前達の指揮官コーネリアも、俺に敗北した!」

 スザクはスピーカーを通して、コーネリア機を粉砕した事を宣伝した。

 その言葉に衝撃を受けるブリタニア軍。
 だが、声を張り上げたのがスザクだったというのが災いした。

「裏切り者のナンバーズ風情の言う事など信用できるか!」

 とばかり、反撃の力をいっそう強める。
 無理もない、勇者といわれ尊敬されているのは身内だけ。
 未だ日本の各地でもブリタニアでも、裏切り者が彼に押された烙印である。

「助けてやったのに余計な事をするな、バカ!」

 カレンは毒づきながら、『ランスロット』の周囲の『サザーランド』を排除していく。
 
「ジャブ、ジャブ、トドメは黄金のォ、右ストレートォ!」

 などとテンションも高い。
 もっとも、実際はトンファーを2度ほどぶつけ、体勢を崩した後に本命を叩き込んだだけだが。

 スザクの余計な宣伝のせいで、各地でここが正念場、とばかり激戦を繰り広げているが、なぜか『ランスロット』は動かない。
 それもそのはず、さきほどのハドロン照射で、エナジーを使い切ってしまったのだ。

「こんな時に機体を動かせねえなんて、俺も勇者失格か……」

 落ち込むスザクの機体を狙って、1機の『サザーランド』がアサルトライフルを構える。

 だが、『サザーランド』は発砲する前に、どこからか飛んできたハドロンの弾に撃ち抜かれていた。

 舞い降りてきたのは、漆黒のKMF。
 それは、ルルーシュの駆る専用機、『蜃気楼』。
 
 そのルルーシュは、エナジー切れで身動きの取れない『ランスロット』を見て、呆れた様子でスザクに言った。

「大方、最後まであのハンマーでハドロン照射を続けていたんだろう?」
「うっ」
 
 言葉に詰まるスザクに対して、全くバカだな、と呟く。
 これでもある意味ではマトモになったのだから、彼としては信じがたい。
 まぁ、バカといえば、自分の立場を考えずに停戦を呼びかけ、それが相手の反撃を強めた事がこの場では一番だが。

「まぁいい、代わりのフィラーだ、使え」
「た、助かったぜルル」

 感謝の言葉を述べるスザクに、謝るなら最初からアホな事はやってほしくないのだがな、と心の中で毒づく。

「さて、どうするつもりだ? 俺が停戦を呼びかけたなら、もう少しマシになったはずだが」
「停戦呼びかけてこうなるなんて思ってもみなかったぜ」
「お前は裏切り者の名誉ブリタニア人だということを自覚しておくべきだ」
「それともう1つ。あれはなんだ?」

 人間サイズで空を飛んでいるものについてスザクに訊ねる。
 すると、それについて当人(?)から答えが返ってきた。
 ちなみに、姿については見たことがある。

「私の名はO! ソルダートO! 覚えておけ、ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア!」

 声にも聞き覚えがあった。

「お前、扇だな?」
「何を! 私は扇要などではない! 私の名はソルダートO!」
「…………」

(いくらなんでもやったら悪い事くらい分かるだろ! バカ作者!)

 誰も名前まで出していない。
 だが、これ以上何か言っても面倒な事にしかならなさそうなのでほうっておく。
 ついでに、戦闘中でもあるので、これで話を打ち切る。

 まずは周囲の敵を沈黙させるしかないか、と思った矢先、ルルーシュの元に通信が入る。

『ルルーシュ。ようやくきたか。重役出勤とはいいご身分だな』

 C.C.からだった。相変わらずの減らず口だ。

「俺は俺で仕事があった。用件がそれだけなら切るぞ」
『待て、この状況を終わらせるいい手段を思いついた』

 楽しげな笑みと声色でそう告げるC.C.。
 嫌な予感はするが、この際四の五の言っていられない。

「何? とりあえず言ってみろ」
『その前に確認したい事がある。コーネリアは生きているな?』

 その言葉に、ルルーシュは『ランスロット』が持つコックピットブロックに目をやる。
 スザクに確認したところ、中も無事だとの事だった。

『それならば問題ない。借りるぞ』
「借りる、姉上をか?」
『そうだ』

 それだけ言うと、一方的に回線を切るC.C.。結局どういう手段か言わない。
 相変わらず自分勝手な女だ、と悪態をついていると、珍妙な機体がやってきた。
 

「なん……だ、あれ……は」

 ピザハットのロゴと炭酸飲料のロゴが肩にペイントされているエメラルドグリーンの機体を見て唖然とする。
 色々理解の外だったが、ややあって事態を飲み込む。

「あれがC.C.の機体、か。もっとも、他にはあんなものあるまい」

 ピザハットのロゴなんてほかに思いつけない。
 それはともかく、C.C.に策を聞こうとした。はぐらかされる。
 それどころか、「私は機体を降りるからしばらく私とあの機体を守っていろ」と命令された。 
 どこまでも自分勝手だが、今は彼女に従うしかない。

(こうなったら後でピザ代を請求してやる……!)

 そう誓うと、スザクとともに周囲の敵を排除し始めた。

 そんな中、C.C.はどこかから着ぐるみを引っ張り出してくると、コーネリアのいるコックピットブロックに向かった。

 その様子を見ていたルルーシュは嫌な予感がしたが、とりあえず彼女に必要な支援を行うとする。

「スザク、お前はC.C.のサポートに回ってくれ。彼女と一緒に姉上を抑えておいてほしい」
「分かったぜ!」

 そう返事するや否や、とんぼ返りでC.C.のところに向かうスザク。
 ルルーシュも『蜃気楼』をその近くに移動させる。
 この『蜃気楼』は、KMF同士での戦闘では、絶対的な防御能力を持っている。
 多少の時間を1機で稼ぐなど容易い。

「この『蜃気楼』の力、思い知るがいい」

 ルルーシュは悪い笑顔でキーボードを呼び出す。
 火器管制をキーボードで行えるのは、この機体の特徴である。
 
 内蔵火器の一覧が表示される。
 
 構造拡散相転移砲を選択。『蜃気楼』のみが持つ、この世界で唯一の射撃装備。
 その範囲、その火力、共にKMFとしては最強を誇る。
 その代わり、液体金属の反射角計算を手動で行う必要がある、という致命的な欠点があり、現状この装備を運用できるのは、実質ルルーシュのみである。

 その難解極まる反射角の計算を終え、液体金属を発射するルルーシュ。
 1度の砲撃で、13もの敵機の反応がレーダーから消える。
 しかも、味方への損害はゼロ。

 凄まじい殲滅力である。

 その戦闘力に満足しているうちに、C.C.とスザクがコーネリア機のコックピットから出てきた。
 もう1つ。珍妙な生命体が付いていく。
 先ほどの着ぐるみである。出てきたところから見て、着せられているのは1人しかいない。

(姉上……なんと哀れな。あれが、敗軍の将の姿か……)

 どこか間違った感想を抱くルルーシュ。
 C.C.はその着ぐるみをピザハットロゴの自分の機体に乗せる。
 どうやら、あれで停戦勧告を行うらしい。成る程、ある意味では妙案である。

「だが、あの姿では機体の起動さえできまい」

 ただでさえ、KMFのコックピットの居住性とは劣悪なものである。
 まして、着ぐるみなど着ていては操作できるはずもない。
 ルルーシュはそう思って、C.C.機のOSに介入する。
 機体を起動。続いて、通信機能を起動。
 元々は遠隔操作でリミッターをはずす為のプログラムだったりしたのだが。

(こんな使い方をするものではないのだがな)

 モニターは起動させない。
 せめてもの情けである。というか、さすがに姉のあんな姿は見たくない。

「姉上。恐らくC.C.に、停戦の呼びかけをしろ、とでも言われたのでありましょう?」
『ルルーシュ、か。確かに、そ、その通りだが』
「では、ブリタニア軍の通信用の周波数を教えていただきたい。後はこちらで設定しますので」
『……』
「姉上?」

 妙な間が入る。

『まさか、私がこのようなことを……いや、何も言うまい。周波数を教える』

 教えられた周波数をピザ機に転送する。
 これで、ブリタニア軍への回線は開かれた。

 ブリタニア軍の反応がどうなるかを考えると、姉は哀れな立場としか言いようがない。
 もっとも、戦闘が無駄に続く等という事と較べたら仕方がないが。

『ブリタニア軍各機。戦闘を停止しろ』

 コーネリアが着ぐるみを着たまま呼びかける。
 最初、ブリタニア軍は状況が飲み込めなかった。
 着ぐるみがモニターに映ったと思ったら、総督の声で戦闘停止を呼びかけられたのだから、無理もない。 

「コ、コーネリア殿下!?」
「いや、あれはイレヴン共の策略だ! 変声機のようなものでも使っているのだ!」
「そうだ、騙されるな! やつらは卑怯者のテロリスト!」

 頭を回転させて最初に出た結論は状況の否定。当然である。
 コーネリアが着ぐるみ、というより、着ぐるみを着てKMFを操縦する人間など世界のどこにもいない。
 高まる熱気を感じ取るコーネリア。本来なら喜ぶべきだが、現在の立場は止める立場である。

『こんな姿だが、私はコーネリアだ! 戦闘を直ちに中止しろ、停戦だ! 総督命令だ!』

 苛立った様子で叫ぶコーネリア。
 その迫力にブリタニア軍は怯む。
 ついでに、本人じゃないかと思い始める。

「ま、まさか、本当に殿下が……」
『そうだと言っている! それとも私に、これ以上こんなものを着せ続けるつもりか!』

 着ぐるみの雄叫びに震え上がって、次々と抵抗をやめるブリタニア軍。
 中々情けない光景である。
 一番情けないのはコーネリアだが。 

 ちなみに、一番衝撃を受けていたのはギルフォードである。
 着ぐるみ姿で停戦を呼びかけるコーネリアを見ては「コーネリア様……おいたわしい」と呟くのが精一杯だった。
 
 彼の機体は、一足早く戦闘不能になっていたのだ。
 コーネリア機と交戦中の『ランスロット』を狙撃しようとしたところ、後ろから衝撃を受けて体勢を崩し、そのあと戦闘不能に追い込まれたのである。
 最初に体勢を崩したのは、カレン機に殴り飛ばされた『サザーランド』のせいだったのは、彼にとっては知れば益々悲しい事実である。
 その後、襲い掛かってきた『竜神』に、主を援護する事すらなく戦闘不能にされてしまい、彼は不甲斐ない気持ちに襲われていたのだ。
 そこにこのコーネリアである。最早涙を流す以外の術を知らなかったのも無理はない。

 ちなみにカレンの「助けてやった」の発言も、このことが原因である。

 そんなわけで、コーネリアの呼びかけにより完全に戦闘が停止すると、コーネリアは震える声でルルーシュに聞いた。

『もう、いいか?』と。

 ルルーシュは遠い目をして、「ええ、もう、構いません」と姉をその役目から解放した。

 戦闘は終わったのだ。
 
 着ぐるみが降りてくる。
 ルルーシュはC.C.に、「もういいだろう」と言って、姉を着ぐるみからも解放する。
 C.C.は不満げな様子だが、目的は達成した以上、いつまでもあの哀れな姿で晒し続ける気にはなれない。

 姉がその着ぐるみから解放されると、エトランジュが遅れてやってきた。
 彼女はKMFの操縦などできないため、アルカディアが操縦している『暁』の手に乗ったコンテナに入ってやってきたのだ。

 そのエトランジュは、いつものように開口一番勇気とはいかなかった。
 アルカディア共々、苦虫を潰したような表情で、コーネリアの顔を見ている。

 かつて家族を奪われた少女の反応としては、エトランジュの反応はまだ穏やかなものである。
 普通であれば、意味も通らない罵声を浴びせながら、その首を落としている事だろう。

 コーネリアはその冷たい視線を平然と受けながら、エトランジュに言った。

「私が憎い、そのような目をしているな、貴様。さあ、早く私を殺すがいい」

 その言葉に、エトランジュは首を横に振る。

「出来ませんッ……。私には、いえ、私の意思だけで、貴女をどうこうできませんッ!」

 涙とともに吐かれる激しい言葉。
 その様子に、C.C.もルルーシュも、驚きの表情を一瞬浮かべる。
 だが、すぐに理解する。目の前にいるのは、家族の仇敵なのだ。
 そんな事など関係ないスザクだけは、目をまん丸にして驚いているが。

「エディ、どうしたんだい、エディ? そんな憎しみをむき出しに――」
「今は黙っていろ、スザク」

 今回ばかりはスザクを止めるルルーシュ。
 言われた脳筋はキョトンとしているが、なんとなくルルーシュが真面目なので言葉に従う。

「貴様の意思だけで私をどうこうできない? 今の私は囚われの身だ」
「あなたを憎むのは、私だけではないということです! 世界中の方々が、貴女を憎んで! だから、私1人が貴女に復讐したからといって!」

 全く分からない、といった風のコーネリア。
 彼女からすれば、憎い相手を好きに出来る機会が来たのだから、さっさと殺せばいいのに、という思いである。

「残された世界中の方々は、貴女を裁く機会もないまま、貴女に死なれてしまったら、誰を憎めばいいんですかッ!」

 そう、コーネリアが死んだからといって、心が完全に晴れるものでもない。
 まして、自分達が関わる前にコーネリアが死んでしまっては、怒りのやり場もなくなってしまう。
 更に、エトランジュには別の理由もある。

「それに、私は、今の私は、個人的な恨みで、貴女を殺す事は、基準に、勇気ある誓いに背く、ことに」

 今、彼女の行動の基準は、勇者たるべし、なのである。
 それは騎士団も同様だが、それゆえ、彼女は自分自身の憎悪に任せて、コーネリアを殺す事などできなかった。
 スザクはそれを聞いて、学習もせずに「だよな、エディは勇者だもんな!」と言おうとしたところ、口を開いた時点でルルーシュに止められる。

「どうせ殺す事が出来ないなら、コーネリアを私によこせ」
 
 意外な人物が発言する。
 緑の髪の魔女、C.C.である。

 その場の全員が驚いたのは言うまでもない。

「コーネリアは今から私のピザ係だ」

 満足げな表情でそう言い放つC.C.。
 呆気にとられるブリタニア皇族姉弟に勇者達。

「お前は何を言っているんだ?」

 その場の全員を代表してそう聞くルルーシュ。

「フン、元はといえば貴様がピザ代ピザ代うるさいからな。コーネリアにはその資金を稼いでもらう」
「な、私はそんな事させられるくらいなら死んだ方がマシだ!」

 コーネリアが食って掛かるが、それを「貴様には決定権はない。大人しくしていろ」と流す。
 そして、C.C.は、なおも自分の案が名案であるかのように語る。

「勝手にコーネリアに死なれたら、残りの被害者が怒りのやり場に困る、だったか、"エディ"?」
「え、ええ」
「ならば、世界中の人々のために生かしておくのは構わないな?」
「勿論。ですが、なぜピザ係、なのです?」

 久方ぶりにもっともな疑問を呈すエトランジュ。

「コーネリアが死ぬより恥ずかしい事をしていれば、まだ納得の仕様もあろうということだ」
 
 流石に、自決も出来ず、処刑もされず、ピザ代のために生かされるというのは軍人として、究極の恥である。

「しかも、私が勝手にやるのだ。誰もお前達の事を鬼畜だなどと思うまい」

 そして、この名案を通すために、殺し文句を使うC.C.。

「私なりに勇者として考えた結果なのだがな、どうだ?」
「勇、者?」
「そうだ、これもまた勇者としてのありようだ。無駄な殺生はしていない」

 ある意味殺生より鬼畜だろ、とツッコみたくなるルルーシュ。
 スザクなんかは、流石勇者だぜ、と喜んでいるから困る。

 言われた当のエトランジュは、流れる涙も、ほとばしっていた激情も消え、救いを見たようにC.C.を見る。

「そ、そうです! 人をむやみに殺さないのは、勇者としてのあるべき姿です!」

 溌剌とした様子になるエトランジュ。
 そしてコーネリアに対し、「これも1つの罪の償い方です!」とノリノリで言う。
 正直、罪滅ぼしなら慈善事業でもさせた方がずっといいのだが。

 なおもコーネリアは「わ、私は雑用などやらんぞ!」と吼えると、C.C.が嬉々とした表情でコーネリアに対して言葉をかける。

「雑用でも何でもやらせてみせるぞ? 私は」
「なぜそんな自信がある!? 私は他の事ならともかく、絶対にそんな事はしない!」
「なぜかだって? フ、私はC.C.だからな」 

 絶対的な自信を込めて、エリア11元総督に彼女は言い放った。


次回予告

君たちに、最新情報を公開しよう!
ブリタニアの基地の制圧は完了した。
そこで、スザクに向かって来る1人の男とは?
そして、それにスザクはどう対応するのか。

暴走のエトランジュNEXT「理解を超えて


これが勝利の鍵だ!

「ルルーシュの説得」  



[26314] 暴走のエトランジュ 12話
Name: のーべん◆e3bd37a7 ID:89555681
Date: 2011/05/22 07:36
ExtraNumber.12「理解を超えて

 コーネリアがピザ係とされ、その処遇も決まったので、ブリタニアの基地内部にいた人々も次々と捕虜とされて出てきた。
 皆一様に敗戦にショックを受けているような表情で、トボトボ出てくる。
 いや、1人だけ様子が違う。
 眼鏡をかけ、青白い髪の優男だけ、怒りの表情でどこかに向かって走っている。

「スウウウウウウウザクウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウ!」

 ついでに叫んだ。
 拘束すらされていない様子を見るに、その前からランニングしてきているようだ。
 名前を呼ばれたスザクも顔を知っているようである。

「おう、ロイドじゃねーか」

 小手をかざしてのんきに見ている。
 相手の剣幕からして、そんな風にしていられる場合ではないのだが。

「さては、俺とタイマンしたいのか? そんなら、勇気の素晴らしさを思い知らせてやるぜ!」
「柩木。タイマン? とかいったが、それはなんだ」
「それは1対1のガチンコ勝負だぜ!」

 明らかにそれは違うだろう。

「勝負? ならそれはありえんな」

 その指摘をしたのは、コーネリアだった。
 現在、この中でマトモな発言が許されているただ1人の人物である。
 なお、マトモな精神でいえば、C.C.とルルーシュもあてはまるが、この2人は立場上そんなことは言えない。

「な、ありえねえだと!?」

 コーネリアはあまりの馬鹿馬鹿しさにため息をつく。
 技術屋のロイドが、超次元筋肉体のスザクと闘うなど、後10億年彼らが生きていたとしても訪れまい。
 
 そして当のロイドは、近づくや否や、喚き始めた。
 凄い勢いで。

「スザクゥ! なんてことをしてくれたんだァ! 僕の、僕の『ランスロット』を、僕に黙って色塗り替えるだなんて許されることじゃあない!」

 しかも凄い剣幕である。
 ちなみに、『ランスロット』を設計したのは彼である。
 どうやら自分で設計した機体をいじくられたのが気に入らないらしい。

「いいかい? 『ランスロット』はいわば僕の愛する子供なんだ! 最高の芸術なんだ! あの子は白が一番美しい、そうだと分らないのか!? いや、そうだな、君の脳ではあんな金色なんて下品だと、そんなことは分らないか。いや、そんなことじゃない、重要なのは、我が子『ランスロット』に手を加えるのは僕の許可がなければいけないという事だ! 色を塗り替えるどころか、あんな不恰好なハンマーまで持たせるなんて最悪だ! あの子は僕が生み出した、崇高で神聖で気高くて誇り高くて秀麗で華麗で美麗でしなやかかつ強靭で無敵で最強な子なんだ、それを、それを君は! なんということをしてくれたああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」

 息継ぎもなしにまくし立てるロイド。
 普段飄々としているだけに、彼を知る人物は皆、呆気に取られていた。
 そうでなくとも普通に呆気に取られる言動だが。
 
 そして、言われたスザクは、というと。
 キラキラした顔でこういった。

「なんだ、あのハドロニオンハンマーを持たせた金色の『ランスロット』を強靭、無敵、最強だなんて、分ってるじゃねえか! アンタも勇者だったんだな! 見直したぜ!」

 話を理解していなかった。
 というか、都合の言いように解釈していた。
 全部聞き取れなかったにしても、この剣幕で怒鳴られて、ほめられたと解釈できるのは、相当前向きな証拠である。

 今度はロイドが一時停止する。
 そして再起動する。

「な、何を言っているんだ君は! いいかい? 『ランスロット』はいわば――」

 また頭から同じ話を始めようとする。
 
 この状況に頭を痛めたルルーシュは、スザクにロイドの言っていたことをかいつまんで説明する。
 勿論、スザクに分かるようにである。

(いいか、スザク。お前はほめられたんじゃない。)
(な、何だと!?)
(お前の改造した『ランスロット』は、下品な色になった上に不恰好な武器まで持たされている、最悪の改造だ。せめてやるなら私の許可を取れ、そういわれたんだ)

 メラメラと闘志を燃やすスザク。
 未だ独演会を続けているロイドに向かって、声を荒げた。

「おい、ロイド! 何が下品だ! 見てワカンネーのか、『ランスロット』も勇者になって喜んでる事をよ!」

 コチラも訳の分からない事を言い出し始めた。
 ルルーシュは益々頭を抱え、自分が悪手を打ってしまったことに気がつく。

(というか、最近俺はこんなことばかりじゃないか?)

 頭脳が自慢だというのに、その頭脳まで通用しなくなったらどうすればいいのか。
 どうやらルルーシュの頭痛の種はまた増えたようだ。
 
 そんなことも知らず、どうでもいい論戦を始めるロイドとスザク。
 観客達は、最早ツッコむことすら馬鹿馬鹿しいようで、何も言わずに(冷めた視線で)見守っている。

「な、馬鹿なことを! そんな訳ないだろう!」

 もっともだ、ルルーシュはそう思ったが、ロイドもスザク先生同様、格が違う人間であった。

「いいかい、『ランスロット』が喜ぶのは、僕がめでた時、そう、生みの親の僕にめでられた時さ! そんな訳の分らない魔改造で喜ぶわけない!」
「はぁ!?」
「分らないのかい? そう、『ランスロット』は、僕にその装甲をなめられ、プログラムの数列を絶えず眺められ、内部構造を撫でられる事が至福なのだ!」

 何言ってんだコイツ、といった表情を浮かべるその場の面々。
 どう見ても、これではただの変態である。
 優秀な技術者、とだけ見てきたスザクとコーネリアは、2人揃ってドン引きしている。

 流石のスザクも、これは予想外だったようである。
 引きつった顔を浮かべながら、それでもようやくロイドに対する言葉を見つける。

「この変態! この変態!」

 初めてその場の全員の総意を代表するスザク。
 ルルーシュはこの反応に、こんな電波にでも、変態は変態と分るのか、などと妙な感慨を抱いている始末である。
 といっても、お互い論点がずれているため、どうやっても終わりは見えないだろう、とため息をつく。
 勿論の事、当の2人はそんな心の叫びなど聞いていない。

「な、変態だと!? 僕はただ我が子を愛しているだけだ!」
「そんなこと言ってっから生身の人間がよってこねーんじゃねーかよ! 変態!」

 どうにもまともな意見である。
 ルルーシュなんかは、そんなスザクを見て、驚きの表情を見せているくらいである。
 勿論、電波がマトモな事を言っている、といった意味で。

「ぼ、僕が我が子を愛する事とそのことと何の関連があるんだ!」
「大アリだ! そんなメカにハァハァするような変態によってくるような人間なんていねーよ!」
「ハァハァなんてしていない、ただ我が子を眺めて興奮しているだけだ!」
「一緒じゃねえか、オイ! お前みたいなやつにこそ勇気が必要なんだよ! 勇者になれば変態じゃなくなる!」

 訂正。
 やはり電波は電波だった。
 ロイドの変態っぷりもアレだが、先生は先生でやはり意味不明である。
 一体、この手の変態が勇者になったとして、なぜ変態が改善されるというのか。

「その勇者というのがサッパリ分らない、君は何を言っているんだ!」
「勇者ってのは勇気ある者だぜ! そんなことも分らないのかよ変態!」
「勇気というものは概念でしか知らないし、それは変態を直すものでもないだろう。というか僕は変態ではない!」

 自分の設計した機体に愛情を持つのは構わない事だが、舐めてるとか愛でてるとか、そこまでいくとどう見ても変態でしかない。
 やはり、科学者とかその類には、うかがい知れぬ部分があるようだ。
 とはいえ、ルルーシュやコーネリアからすれば、どう考えても変態である。

(む、そういえば、C.C.が何も騒がんな。いつもなら面白がって煽りに出そうなものだが)

 不審に思って辺りを見回すと、すでに彼女の姿は無い。
 さしもの彼女も、どうやら面倒に思って逃げてしまったらしい。
 まったくもって上手く立ち回る女である。

 しかも、そんなC.C.を羨ましがっている間にも、目の前でしょうもない舌戦は繰り広げられているのだ。
 よく見ると、いつの間にやらエトランジュまで混じって、勇気の素晴らしさをロイドに説いている。
 駄目だ、このままでは駄目だ。間違いなく収拾がつかなくなる。

 そう考えたルルーシュは、とうとう、混ざりたくも無い論戦に介入する事にした。
 いつもながらの貧乏くじである。

「ロイド。君に言っておきたいことがある」

 今まで押し黙っていたので、余計に注意をひきつけたらしい。
 エトランジュもスザクもルルーシュを見る。
 もっともこの2人は、何かを期待しているような目だが。

「勇気がどういうものか、君には概念としてはどうでもいいかもしれん」
「勿論。なんといっても、それは僕の研究には無意味だからね」
「それが間違っている。いいか、我々の技術部は、勇気によって新技術を開発した」

 なんとも電波じみた言葉である。
 勇気と技術に本来つながりなんて無い上、うさんくささ全開なのだが、ルルーシュ自身そんな事例を知っている。
 というか、ミラー粒子に関わる技術は(技術部曰く)勇気の産物である。
 
「な、何!? それは本当かぬ!?」
「ああ、本当だ。ミラー粒子とその運用に関する技術を発見したのだ」

 そしてルルーシュは、ミラー粒子の概要について話した。
 ロイドのようなタイプは、手の内を晒し、興味を持たせた方が抱き込みやすいと判断したからである。
 そんな彼の予想通り、終わった頃にはロイドは騎士団に入る事を確約していた。

「素晴らしい、素晴らしい! 出来るだけ早くそれらの技術を僕に見せてくれ!」
「あ、ああ、分った」

 引き気味で返事するルルーシュ。
 説得し終わってから気がついた事だが、電波ばかりのところに変態まで加える意味はあったのか、と悩む。
 一応、優秀な技術者だから、そう強引に自分を納得させる事にしたが。

 ところが、彼以外のところから不満が上がる。
 いつもの通り、厄介ごとを作る事が特技のスザク先生である。

「どういうことだ、ルル! こいつは勇者になったわけでもないのに、なんで入れようとするんだよ!」

 本当に一々面倒くさい。
 ルルーシュは、相変わらずの馬鹿っぷりに頭を痛めつつ、更に厄介な事になりはしないかと危惧をする。
 エトランジュまで騒ぎ始めたら終わりである。

 ビクビクしながらエトランジュの反応を見守る。

「スザク様。ルル様にはきっと、何か深いお考えがあってのことだと思います」
「え、そうなのかい? ルル」

 助かった、そう思うと同時に、スザクの思考回路では、10段階あるうちの1しかないのだろう、とため息をつく。
 それより先になれば、スザクにとってはなんだって深い考えになる。

「確かに彼は技術への興味で騎士団に入る。だがなスザク。騎士団には君やエトランジュ様を始めとして、多くの勇者がいる」
「それは当然だぜ!」

 胸を張る。
 いい加減、頭の中身も他人が胸を張れるようにして欲しい。
 とはいえ、今は馬鹿で結構なのだが。
 というか、結局彼が馬鹿のままで助かっている気がする。

「と、いうことはだ。君たちの影響を受ければ、ゆくゆくは彼も勇者になるだろう、そういうことだ」
「ル、ルルはそこまで考えていたんだな! 流石だぜ!」

 冗談を抜きにして、ルルーシュの考えを讃えるスザク。
 ルルーシュは、この親友の思考回路がどうなっているか、調べたい気分に陥る。
 調べても理解できないだろうが。
 理解したくも無いというのが本音である。
 いや、理解できたらそれこそ終わりのような気がする。
 自分が。

 なんにせよ、いつものように舌先三寸でスザクを騙しおおせたのでよしとする。
 いや、よくよく考えたら変態が変態のまま来るのだ。
 良い訳が無い。良い訳が無いのだが、仕方が無い。
 やってしまった事なのだ。

(って、最近の俺はこんなパターンしかないじゃないか! 本当に!)


次回予告

君たちに、最新情報を公開しよう!
新たな仲間、ロイドが加わった。
しかし、それも原因で、ストレスが加速するルルーシュ。
彼は、地獄からどのように脱出するのか。

暴走のエトランジュNEXT「わたされた衣装(コスチューム)


これが勝利の鍵だ!

「変装セット」 



[26314] 暴走のエトランジュ 13話
Name: のーべん◆e3bd37a7 ID:89555681
Date: 2011/05/22 07:39
ExtraNumber.13「わたされた衣装(コスチューム)




 久しぶりだな、皆、ルルーシュ・ランペルージだ!
 俺の采配によって世界各地のエリアも順当に解放されている。
 今もまた、エトランジュが俺のところに何か報告に来たようだ。

「ルル様、中東にあるエリア18と祖国であるエリア16の解放も完了しました!」
「ならばよし!」

 エリア16といえばエトランジュ教祖の祖国であるマグヌスファミリアである。
 戦争の仕方も知らない彼らにとっては、争いの無い祖国はなによりの幸福だろう。
 善良なマグヌスファミリアの人々が祖国に帰る日が近くなる。
 いいことだ。

 続けてスザクもやってくる。
 まぁ、馬鹿なんだがやろうと思えば今なら1機でエリアの1つや2つは解放できそうな戦闘力なのだ。
 相手にいたらインチキくさいが、今はこちらの戦力である。
 知能が足りない分は作戦を全部こちらで補ってやれば良い。

「ルル! エリア12とエリア15、エリア7の解放が終わったぜ!」

 なんと、3つであった。

「ならばよし! 流石だ、スザク」
「ははは、勇者なんだからこれくらいは誇るほどでもないぜ!」

 最近は「ならばよし!」で返す事が多くなっている気がする。
 まぁ、そうもいいたくなるくらい順調なんだがな。
 ならばよし!

「それとルル様」
「なんでしょう、エトランジュ様」
「コーネリア様が勇者になられました!」

 その言葉とともに、今や名物となったチーズ君着ぐるみの姿で姉上がやってきた。

「ルルーシュ! 私も、私の勇気を父上にぶつけてみせるぞ!」
「ならばよ……んなわけないだろ! ヲイ!」

 ……。
 …………。
 ………………。

 ――なんだ、夢か、ならばよし!
 ……俺にはどうやらもう少し休憩が必要なようだ。

 寝ぼけまぶたを再び閉じようとすると、部屋の扉が開いた。
 碧眼の少女、エトランジュがパタパタと小走りで、顔には喜色を浮かべてやってくる。

 夢で見たような光景である。
 非常によろしくない。いや、エリアの解放報告とかなら喜べるが。
 姉上が勇者になったとか、現実でまで聞きたくない。
 というか、エリアどころか、日本全土の解放すら済んでいない事を思い出す。
 
 となると、姉上のアレか? アレなのか? それは絶対に嫌だ、断固拒否だ。

「ルル様! いい知らせです!」

 またか、と思われてしまうかもしれないがあえて言おう。
 この状態のエトランジュから吉報を受け取った記憶が最近無い。
 思わず身構えそうになる。

「なんでしょうか、エトランジュ様」
「あ、エトランジュじゃなくてエディでどうぞ!」

 訂正を入れられる。そういえば、以前もこんな事があったな。
 しかし、エディ様、って言い方もしっくりこない。

「なんでしょう、エディ」
「チーズ君のおかげで、東北地方に続いて、名古屋を始めとする関西地方も解放されたようです!」

 チーズ君、とは姉上の事だ。
 流石にエトランジュといえど、親の仇の名前を呼ぶ気にはなれないらしい。
 といっても、殺そうと思わないように心の整理をしているだけ立派なものである。
 勇気ある誓いとやらの影響力は凄まじい。
 個人の生き方を左右するとか、立派に宗教みたいだというのは、俺の胸にしまっておく。

 それで、そのチーズ君こと姉上が、日本各地のブリタニア軍基地にいっては停戦勧告をしてまわっているのだった。
 最初の方は「コーネリア殿下がそんな格好をするなどありえない!」と抵抗するものの、中身はホンモノである。
 姉上の怒鳴り声が響くたびに、ブリタニア軍は頭を垂れて降伏するのである。
 その光景は痛快極まりない。
 まぁ、現在では、チーズ君来る、の報だけで降伏する準備を整えているようだが。
 それはそれで、情けない話である。もっとも、無駄な流血が無いのはいい事だ。

「それは確かに良い知らせです」

 貴女が壊れてから初めて、良い知らせとの触れ込みで良い知らせがやってきましたよ、と心の中で続ける。

「ふふ、喜んでいただけて何よりです!」

 相変わらず素敵な笑みである。
 裏表が無いのに、なぜか恐ろしい。
 俺は汚れているのだろうか? 
 いやいや、そんなことはない。彼女の方が訳の分らないものに染まっているじゃないか。
 俺はまっとうな人間だ!

「? どうされました?」
「あ、いえ、なんでもありません」
「ならいいのですが。そういえば、スザク様が呼んでおられましたよ」

 次から次へと疲れる。なんでこの人種は、代わる代わる俺と話をしたがるのだろうか。
 俺にとっては不条理だ。休もうと思ったときに、教祖が来た。
 今回はまともな話だったからこれはいい。だが、その次がスザクだと?
 これでは俺は過労死してしまいそうだ。
 今更だが、仮面を捨ててしまった事を後悔する。
 こういう面倒事なんて、それこそ仮面を被っていればアルフォンスに影武者として押し付けてしまえたのだが。
 どうやら俺の打つ手打つ手が、俺の精神衛生的に悪い方向に進んでいるようだ。
 これではまずい。
 
 睡眠時間が確保できようとなんだろうと、このままだと俺は終わりだ。
 どうすればいいのか、打つ手が無い。
 エトランジュの話だと、スザクは食堂で待っているらしい。

 とにかく、食堂に向かおうとするが、体がダルい。
 今の俺を鏡で見たら、恐らく半眼で前傾姿勢、眼の周りには隈も出来ているだろう。
 そのくらい、自分で疲れていると分る。
 こんな状態でスザクと会ったら、死ぬ、俺は間違いなく死ぬ。
 
「スザクのヤツ、何もこんな時に話なんて、後で締め上げ……アイツを締め上げるなんて無理か……」

 絶望感に襲われる。
 しかも、こんな時は不幸が重なる。トボトボ歩いていたら、眼が合ったのはロイドだった。
 あの変態である。

「あーれー、ルルーシュ様ー。そんな疲れた様子でどうされたんですかー?」
「ロイドか。いや、誰か俺の影武者にでも出来ないかなと思っているところだ」
「んー、影武者ですかー? そんなこともあろうかとー」

 そういってロイドが懐から取り出したのは、なんと、俺の顔そっくりな変装用マスク(カツラ付)と、俺の目の色と同じ色のコンタクトだった。
 オマケに、小型の変声機まである。どうやら、俺なりきりセットらしい。
 なんと素晴らしい。いや、それよりもだ。

「なぜこんなものが作ってある」
「いやー、最近お疲れのようなんでー、そろそろ誰か身代わりにでもするんじゃないかと思いましてねー」
「そ、そうか。助かった」

 まさか、この男に助けられる日が来るとは。人生何があるか本当に分らない。
 しかし、ロイドはロイドであった。ただ単に、俺が可哀想、でこんなものを渡してきたわけではなかった。
 ロイドは、助かった、の一言に即座に反応し、眼を輝かせながら、「それじゃ、『蜃気楼』を僕が思うように好きにやっちゃっていいですかー!」と言ってきた。
 あれはラクシャータの設計した機体で、ラクシャータはロイドを嫌っている。
 そんなことを認めれば、後でそれはそれで面倒になりそうなのだが、目の前でマスクとコンタクトをちらつかせられては、抵抗できない。

「い、いいだろう」
「ありがとうございますぅ! アハハァ、これであの機体も僕のモノ! まずはあのダサいデザインをどーにかしてやるぞー!」

 はしゃいでいるところに、もう1つ頼みごとをする。

「ロイド、それで、俺の代わりに今からスザクに会いに行ってくれないか」
「ヤダ」

 即答された。
 そして、輝かしい笑顔で「だって、今から僕は、『蜃気楼』のあんなトコやこんなトコをいじってくるんですからー!」と残しながら、格納庫の方へ駆け出していった。
 この変態め! 
 こうなれば、犠牲者は俺自ら探さなければ。

 すぐに見つかった。
 しかも、うってつけの人物だ。仮面を被っていた頃にも、俺の影武者として活動していたアルフォンスだ。
 今その役目を復活させても問題あるまい。

「アルフォンス。頼みたい事がある」
「何?」

 呼びかけにこちらを振り向く。

「一時期君に頼んでいた、俺の影武者をまたやってもらいたい」
「な、あれを、また僕に?」

 狼狽している。そういえば、俺に成りきるのは大変だ、とか漏らしていたのを覚えている。
 なんでも、ゼロとしての俺が言いそうな事を言うのは、中々恥ずかしいらしい。失敬な。
 
「でも今は、仮面を被る必要ないから、やろうとしても無理だよ」

 そういわれると思って、俺は先ほどロイドから受け取った変装セット一式を見せる。 
 それを見ると、慌てて俺に背を向けようとするアルフォンス。

「待て!」
「今更そんな事やりたくない!」
「騎士団の活動とお前の精神衛生を天秤にかけてみろ!」

 俺も切羽詰っている。なりふり構っていられないのだ。

「騎士団が大変だとしても、今のあんたの外向けのキャラなんか、なおさらやりたくない!」
「元はといえば、お前の従妹が原因だろうが!」

 その言葉に、一瞬アルフォンスは固まる。
 そして、怒りの表情になる。
 どうやら、地雷を踏んでしまったらしい。
 流石に、女王様に言い過ぎたか。

「僕の前でエディをそんな風に言うなんていい度胸だ。そんな事言うなら、土下座されようが絶対やらない」

 成る程、この反応。

(ははあ、さては……)

 アルフォンスはエトランジュの事がどうやら好きらしい。

「お前、エディの事が好きなのか」

 カマをかけてみる。

「何でその事を!? あんたが気づくなんてありえないから、誰に聞いた!?」

 言ってから、しまった、と口をつぐむアルフォンス。
 どうやら図星らしい。ついでに、相手が相手だけに、想いも封印しているようだ。
 これはいいネタだ。フハハハハハハ!

「引き受けてもらえないなら、その事を皆にバラしてやる!」

 今は女王様云々以前に、勇者達にとっての教祖様である。
 どうなるか分ったものじゃない。

「人が誰を好きになろうと、心の中だけなら勝手だ!」
「ああ、勝手だが、果たして、俺以外もそう思うかな?」
「前から思ってたけど、改めて実感したよ! あんたホントに最低だ!」

 なんといわれても構わない。
 今は、影武者になってもらわなければ、俺が死んでしまうのだ。
 命と比較すれば、影武者の精神衛生など気にしていられない。

「それに、いざとなったらギアスかけてでもやらせるぞ!」
「あんたのギアスは、暴走した時かけられたじゃないか!」
「俺とした事が、忘れてた!」

 疲れすぎて、そんなことまで忘れていたらしい。
 いつの間に俺の記憶力は衰えていたのか。
 というか、疲れすぎだろうか。
 ん、疲れすぎなのか? 
 いやいや、今こうしてアルフォンスを説得してるじゃないか。
 それが出来れば大丈夫?
 大丈夫だ、フハハハハハハハハハ!

 ん、大丈夫か? 俺。まあいい、それより、ギアス暴走なんて迷惑をかけていたことを思い出す。
 いや、こうなってはそんなことはどうでもいい。考慮しない。
 ふ、フハハハ、今はそんな事本当にどうでもいいのだ。
 俺のすべき事はあらゆる智恵を総動員して、アルフォンスを影武者にさせる事なのだ。
 そう、それが成功しなければ俺は終わりなのだ。
 失敗した場合なんて、考えたくも無い。

「分った、分ったよ。自分でギアスかけたことも忘れるほど、切羽詰ってるのか。仕方が無い、引き受けてあげるよ」

 アルフォンスが、本当に仕方が無い、と言った様子で影武者を引き受ける。
 なぜか、哀れなものを見るような視線も混ざっているのは気のせいだ。

 カツラをつけているときにも、ぶつぶつ何か呟いている。
 マスクも被り、コンタクトも入れ終わった後、俺の方を向いて「あんたの服も貸してもらうよ」といわれる。
 そういえば俺の服も必要だ。服を取ってきて、手渡す。

 トイレに着替えに行くアルフォンス。
 1分もしないうちにドアが開き、姿を見せる。
 成る程、完璧に俺にしか見えない。

「で、大体どのくらいの頻度で入れ替わればいいの?」
「3日に1度、といったところだな」

 頻度高い、と悪態をつかれる。
 本当は3時間ごとに入れ替わってもらいたいくらいだ。

「それでルルーシュ。条件がある」
「出来る限りの範囲なら受け入れるぞ」
「僕がエディを好きだって事、誰にもバラさないでくれよ」

 成る程、それなら簡単な事である。
 ちょうどいい交換条件というものだ。

「では早速、食堂にいるスザクに会いに行ってきてくれ」

 見るからに嫌そうな表情を浮かべる俺の顔をしたアルフォンス。

「え? あいつと?」
「気持ちは分るが、そうだ」
「ちょっと待って、僕アイツの相手とか、神根島でこりごりなんだけど!? それに、今アイツあの時よりある意味ひどいよ!?」

 色々抗議されるが、引き受けた仕事だろう、と無理やり行かせる。
 俺には睡眠という立派な仕事が待っているのだ、構っていられる訳ない。

(フ、アルフォンスよ。お前の犠牲は無駄にはしない)
 


次回予告

君たちに、最新情報を公開しよう!
哀れな犠牲者(スケープゴート)に、アルフォンスが選ばれた。
彼は、果たして影武者としての復帰初日を、この勇気ある騎士団の中で乗り切れるのか。


暴走のエトランジュNEXT「とある王族の1日


これが勝利の鍵だ!

「アルフォンス・エリック・ポンティキュラス」



[26314] 暴走のエトランジュ 14話
Name: のーべん◆e3bd37a7 ID:89555681
Date: 2011/05/21 23:02
ExtraNumber.14「とある王族の1日

 …………。
 あ、ああ、ごめん。ぼーっとしてた。
 僕、アルフォンス・エリー・ポンティキュラスは、あの最低腹黒(元)仮面男のせいで、今からスザクって馬鹿と会いに行かなければならない。
 あ、エリーじゃない、メリ、違うや、エロ、いや、これとか絶対嫌だ。
 確かそう、エルリ……な、なんかこれも違うっていうかマズいよね。
 そうそう、アルフォンス・エリック・ポンティキュラスだ。
 うう、憂鬱。憂鬱だ。まったくひどい。
 同情して欲しいよ、まったく。

 なんといっても会いに行く相手が嫌だ。
 柩木スザク。僕がこれまでの人生であった中で、一番の馬鹿、と断言できる。
 なにしろ、神根島。あそこで彼に説教した時、本気で疲れた。

 僕はあの時本気で、彼の頭の構造が気になったくらいだ。
 うん、研究対象ならいいかもしれない。
 そうだ、脳科学者にでも売り渡した方がよさそうだ、ふふふふふふ。
 ああでも、いざ調べたら空洞かもしれない。それはそれで、いい研究体か。
 やっぱり売り飛ばした方がいいのかな。あはははは。

 なんか、僕おかしくなってる?
 ああ、おかしくなるのも無理はないか。だって、神根島よりある意味狂ってるスザクに会いに行くんだから。
 それもこれも、全部あの最低悪役腹黒シスコン(元)仮面(現)勇者もどき男のせいだ。
 挙句、エディを侮辱した上に、僕に暴言まで吐きながらの頼みごとなんて。
 やっぱり、引き受けるんじゃなかった。
 今からバッくれても、って、そんな事したら、僕の想いがバラされる。
 嫌なやつに嫌な事知られたと、改めて僕は後悔する。
  
 しかし、スザクに会うだけでも嫌なのに、僕はあの腹黒男の真似までしなければいけない。
 今までだって恥ずかしい言葉の連続だったのに、今度は勇気とか勇者とか。
 一体中学生か小学生か。ナンセンス、本当にナンセンスだ。
 ヒーローに憧れるお年頃でもあるまいし。

 そんな愚痴を読者の皆にこぼしているうちに、僕は食堂に入ってしまった。
 で、目が合ってしまう。
 誰と目が合ってしまったって?
 勿論、お馬鹿勇者ちゃんだ。

「やあ、ルル。待っていたぜ! 遅かったじゃないか!」

 目を輝かせながらこっちに来る。
 そういえば、神根島で会った時より、ずっと目がキラキラしてる。いや、怖いだけなんだけど。
 欠片も疑いを見せないところを見ると、僕は誰がどう見てもルルーシュに見えるようだ。 
 なんだか、僕があの腹黒男として見られているのかと思うと、やるせない。

「ああ、ちょっと用事があってな。それを済ませてきた」
「そうか、ルルはたくさん仕事があるからな! 俺なんか、修行以外何も割り振られてないぜ!」

 それはそうだ。この馬鹿に書類仕事をさせたら、どうなるか分ったものじゃない。
 誰だって容易に想像できる。
 いや、それより修行って仕事じゃないよね? 
 やっぱりこいつおかしいよ! でも、こんな事でつっこんでいたら、きっと僕の身がもたないのだろう。
 いや、それよりこんなやつが先生とか呼ばれてるこの部隊の方がおかしいよ!
 そうだよ、こんなの絶対おかしいよ!
 
「それで、今日はどういう話なんだ?」

 これはもう、さっさと本題に入って、さっさと話を終わらせて、さっさと自室に帰るのが一番だ。
 それが、僕のためだ。

「ああ、今日はエディの言葉について、ルルと一緒に考えたくてな!」

 エ、エディ。エディだって!?
 エディへの想いバラすぞ、とか脅されてこっち来たら、こっちでもエディの話題ってどういうこと!?
 どれだけ僕をいぢめたいのさ!?

「そ、それで、どの言葉についてなんだ?」
「うん、それがだね――」

 そこから始まる、意味不明の言語。
 いや、日本語の文法と発音で語られていくんだけど、意味がまるで分からない。
 何語だよ!? これ!?
 そもそも、このスザクって本当に日本人? 日本人なの?
 そうか、ルルーシュは毎日こんなのを相手にしてたのか、ちょっとだけ見直した。
 いやいや、そんな場合じゃないよ!? 
 これ、僕ついていけないよ!?

「? どうしたんだい、ルル」
「働きすぎで……頭が痛い。ちょっと休ませてくれないか?」

 頭が痛いのは本当だ。というか、こんな受信機相手の会話とか、やっぱり無理だ!
 僕は、逃げ出す事に決めた。

「頭痛か! それは大変だ! じゃあ、俺が部屋まで送るぜ!」
「その必要は、ない」

 なぜか無駄な気を使ってくれる。
 ついてこられたら、変装だってバレるし、なにより、逃げ出す意味が無い。
 ていうか、お前が原因だよ柩木スザク!

「そうか。お大事にな、ルル」
「ああ、有難う、スザク」

 言葉だけで気遣ってくれればそれでいい、それでいいのだ。
 頭を抱えて自室に向かう僕。
 ああ、1日どころか、1人相手にすることだって難しい。
 分った、分ったよルルーシュ。
 あんたは確かに最低な男だけど、偉大だ、偉大。
 こんなのを相手にし続けるなんて。

 そしてもう1つ分った。柩木スザク。
 あいつも偉大だ。偉大な馬鹿だ。有史以来最高の馬鹿だ。
 これはもう間違いない。

 それにしても、うう、頭が痛い。
 頭痛薬あったかな。
 早く部屋に戻りたい。でも、こんな時こそ不幸は続くもので。

「っゲ」

 僕の視線の先には、チーズ君がいた。
 チーズ君の隣には、お付の騎士殿が、やっぱりというか、金魚のフンみたいにくっついてる。
 中身は言うまでも無くアレだ。
 もう、中身の名前については言いたくない。
 僕にとっては語る価値も無い。
 
 しかし、それは『僕にとっては』だ。
 今の僕は、『ルルーシュ・ランペルージ』として行動している。
 何が困るかといえば、殺したいほど憎い相手なのに、ルルーシュにとってはあれでも姉は姉だ。
 ようするに、あの腹黒男だとバレないように、僕はそれなりに大切に扱わなければならない。
 屈辱だ、屈辱だよ。後で、ルルーシュに追加報酬請求してやらないと、僕の気が納まらない!
 
「ルルーシュ。大丈夫か?」
 
 声をかけられる。本当は声も聞きたくない。だけど、答えないと怪しまれるだろう。
 つくづく嫌な仕事だ。これはボーナスでも要求しないとやってられないよ。

「大丈夫、とはいえませんね」
「そうか、疲れているように見えるしな」
「ええ、今も頭痛が」

 僕は頭を抑える。本当に痛い。なんか、胃も痛くなってきた。
 専属の医師とか、つけてほしい。

「そうか、それは大変だな。――ギル、ルルーシュに頭痛薬と、念のために胃痛薬も渡してやれ」
「はい、コーネリア様」

 その名前を聞いて、一瞬顔を顰めそうになる。我慢だ、我慢。ここでバレたら後でどうなるか、分ったものじゃない。
 
「助かります、姉上。しかしまた、なぜそのようなものを?」

 頭痛薬とか携帯している人なんて、そうそういない。
 まして、中身が中身だけに、そんなもの使う事なんてありえないはずだ。
 
「っフ、私もあのピザ女にこの着ぐるみを着せられてから、いろいろあってな……。こんなものを常備するとは、以前では考えられない事だ」

 着ぐるみなのに、なぜか遠い目に見えるチーズ君。
 気のせいか、更に落ち込んでいるようにも見える。
 ま、僕にとってはずっと落ち込んでもらっていた方がいいけど。
 それと、僕は心の中でC.C.にお礼を言っておく。いい仕事をしたよ、あの人。

「それでは、体は大事にな」

 それだけで、チーズ君は去っていった。
 なんだか助けられてしまった。一番関わりたくないやつに。
 ああでも、柩木とどっちが、といわれると、どっちも嫌だ。
 こんな役目が3日に1回。誰か変装の上手い人とかいなかったっけ……。
 いや、それよりもチーズ君とかやりすごせたじゃないか。
 まっすぐの通路なんだから、遠くに見えたうちに僕のギアスを使えば、見つからずに済んだのに。
 疲れたりしすぎてそんなの忘れてたよ、まったく。

 今度こそ、誰にももう会わなかった。よかった。自室だ。
 ベッドに倒れこむ。ここはなんとも、僕のたどり着いた天国だ。
 寝込めるって事がなんて素晴らしい事か。

 って、落ち着いたら、頭痛とか胃痛とかぶり返してきた。
 懐を探ると、あった。頭痛薬に胃痛薬だ。
 でも、これを渡してきた相手を考えると、使おうかどうか迷う。
 ええい、仕方が無い、この際だ、使ってしまおう。

 水を用意して、胃に流し込む。これが精神的に中々苦痛な作業だった。
 憎んでいる相手からもらったものに助けられるっていうのは、それだけで心が重い。
 うう、こんな気持ちさっさと忘れたい。
 僕はベッドに倒れこんで今度こそ寝込む。

 中々寝付けない。今度は怒りがこみ上げてくる。
 頭痛も胃痛もちょっとずつ治まってきてるけど、まだ完治ってワケじゃない。
 それに加えて怒りまでこみ上げてきたら、寝付けるはずも無かった。

 こうなったら、あの方法で寝付くしかない。
 うう、これ誰かに気がつかれたらどうしよう。

 僕はそう恐れながらも、枕下から愛しのエディの写真を引っ張り出す。
 これ、ルルーシュなんかにバレたら、僕はどんな無茶を押し付けられるのか、怖くて怖くてたまらない。
 でも、こうでもしないと、今日はとても寝られそうにない。

「ふう、お休み、エディ」

 そういって目を閉じる。
 エディのことを思い浮かべると、怒りも自然に収まってくる。
 代わりに、僕の体に、疲れが押し寄せる。これなら寝付けそうだ。
 そう自覚する間にも、僕の思考は白くなっていった。


――


「おーやー、どっかの錬金術師兄弟の弟君みたいな名前の人じゃーなーいですかー」

 思わず振り向く。
 この喋り方、やはりと思ったけど、あの変態科学者だった。
 なんでこの部隊、こんな扱いづらいようなキワモノばかり集めてるんだろう。
 やっぱりルルーシュって、腹黒いだけじゃなくて、きっと変態でもあるんだ。
 困ったものだ。

「ロイド博士か。その呼び方、止めてくれないかな? 色々マズイ、と思うから」
「だーって、アルフォンス・エリック君なんていったら、アルフォンス・エルリ――」
「ストップ! ストーップ! それ以上は駄目!」

 いくらなんでも駄目だよ! それは! せめて○とかいれないと!
 
 首をかしげる伯爵様。いや、かしげる方がおかしいよ! だって、それ以上いったら色々アウトだよ!? これ!

「そーんな慌てる必要ないじゃなーいですかー」
「いや、あるから」
「だーって、もうゴルディオン・ハンマーとか実名でーすしー」
「いや、あれはクロス元だから」

 って、何言ってるんだ僕! なんでこんなメタ発言してるんだ!
 なんか、ホント僕疲れてる! 疲れてるよね!?

「あー、そーれと、君、エトランジュ女王様に、なんだかラーヴなようだねー」
「な、なんでそれを知って……まさか! あの腹黒、約束破ってバラしたのか!?」
「それはアナタが、御自分でいわれてましたよー?」

 な、言った覚えないのに。
 どういうこと……なの? そんな重要な事なら覚えているはず、なのに。

 混乱する僕を前に、変態伯爵様は、レコーダーに記録してあった、動画を再生する。
 そこでは確かに、エディに向かって「僕はエディが好きだ!」とか特攻している僕の姿が記録されている。

「う、嘘だ! こんなの嘘だよ! ていうか、この想いは隠し設定で通そうとしたのに!?」
「もーう、今更そんな事言ってもおーそいですよー?」

 色々、このままだと駄目だ。いやそれよりも、この設定このタイミングで出して大丈夫なの?
 大丈夫な訳ない! 僕のためにも!
 うう、こんなの嘘だ、嘘だ、嘘だー!


――


 ………………。
 なんだ、夢、夢か。
 そうだよね、あんなメタ発言満載の恐ろしい世界が、現実のはずないよ。
 良かった。そう、とても良かった。
 
「って、あああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」

 あの悪夢のせいで、僕は色々暴れまわっていたようだ。
 枕が吹っ飛んでいて、その下にあった、あのエディの写真が、潰れていた。
 それもこれも全部作者のせいだ! 殴り飛ばしたい衝動に駆られて、気がついた。
 作者とか言ってたら、またメタ発言じゃないか!
 ここここうなったら、ストレスの原因のルルーシュに後で理不尽な要求をしないと、僕がやっていけないじゃないか!
 ルルーシュ、覚悟しろよ!





[26314] 暴走のエトランジュ 15話
Name: のーべん◆e3bd37a7 ID:89555681
Date: 2011/07/31 22:27
ExtraNumber.15「大東京演説!(前編)

「おい、あのゼロから演説があるってよ」
「へー、あの解放の立役者様か」

 日本のそこかしこがこのように騒がしい。
 彼らは皆、設置された巨大なモニターの前で、噂の英雄、ゼロの登場をいまかいまか、と待ち構えている。
 変な仮面をかぶり、妙なオーバーアクションをしていた謎の人物といえど、立派に日本解放の英雄である。
 最近は路線変更で、部下の騎士団達の口癖が「勇気」になってきているようでもある。
 なんともヒーローらしくなっていると感じているようだ。

 最初は「勇気」や「勇者」などと聞いても、子供じみた言葉を、と嘲笑していた彼らも、いかなる時でも優しさと芯の強さを持ち続ける彼らを見て、今ではすっかり「勇気」の素晴らしさに気がついている。
 そう、弱きを助け強気をくじき、そして悪に立ち向かうことを恐れなかった騎士団の活躍は、日本人の中で眠っていた勇気も呼び覚ましたのである。
 ぶっちゃけた話、日本中が勇気とか勇者とかに憧れているわけである。
 勿論、ゼロ本人は「勇者」を演じている、ということには彼らは気がついていない。
 
 ちなみに、東京の旧エリア11政庁前は、特等席と言っても差し支えない。
 そこにゼロたちが姿を見せるのだ。生ゼロとゆかいな仲間たちである。

「ところで、ゼロってどんな素顔なんだろーな」
「そりゃマッシブなナイスミドルとかだろ」
「なるほど、勇者って感じだな」
「フ、お前らのイメージはそんなものか。ありきたりすぎる。それでは俺と議論する価値はない」

 ゼロの素顔について意見交換をしているグループもチラホラである。
 騎士団には素顔を公開したルルーシュも、世間一般には相変わらずあの妙ちくりんな仮面のイメージでしかなかった。
 そんなわけで、かねてから白熱している話題でもある。

「そういうお前はどういうイメージなんだよ」
「ボイスチェンジャーを使用した美少女だ。だからこそ、仮面なんか被っているんだろう」
「そうか、ってそれ俺得だな。その通りならマジで胸熱だぜ!」

 まるで脱線した会話を繰り広げる。
 一体日本はいつからこんな電波がはびこるようになったのだろうか。
 一応、美少女というのは当たらずとも遠からず、ともいえるかもしれないが。
 
「いやでも、権謀術策渦巻く裏の世界も知ってるだろうからな」
「成程、腹黒さもあるって言いたいんだな?」
「おうよ」

 というか、腹黒くなければ、間違いなく生きていけないような環境であった。
 中々一般市民も侮れない。

「そうか、腹黒属性まで完備か。俺ならどんとこいだな。どうせならこき使ってくれても――」
「はい、そこまで。既に意味不明だけど」
「だって、超美少女で、黒い笑みで俺をこき使って、俺にだけたまにデレるとか、マジ胸熱! 腹黒ツンデレ最高!」
「もう何も言うな、お前は変態だ」
「フッ、いいイメージだ。お前はどうやら俺と議論する価値がありそうだ」
「ヲイ! お前もなんかおかしいぞ!」
「貴様の貧相なイメージで俺と張り合おうとするな!」

 色々な意味で、日本の一般市民は侮れない。
 ユーフェミアが構想した特区。
 彼女が途中で騎士団に鞍替え(当時は行方不明扱い)したために、白紙に戻されかけた。
 しかし、意外とうまくいっているのを見てつけたコーネリアが、可愛い妹の構想したプラン、ということもあって、続けさせていたのだ。
 その特区において、いわゆる2次元が商業的に見直され、萌えキャラみたいなのも大量復活したわけである。
 結果として、さきほどのような一般市民もいくらか生まれてしまった、というわけである。

 ルルーシュの苦労が増えていること、言うまでもない。
 そのルルーシュは、3日に1度はスザク達から逃げられるようになり、多少は回復しているのだが。
 
「皆さーん! ゼロの準備ができましたー!」

 マイクを通して、女性の声が響く。
 歓声をあげる民衆。皆口々に待ってました、と叫ぶ。
 ちなみに、先程の男性は、これは俺の予想が当たったか、などと期待の表情である。
 それはおかしいと気がつかなければならない。こういう時は、出てくるのは別の人である。
 
「じゃあ皆さんで、ゼロを呼びましょう!」
 
 なぜかヒーローショーのようなノリで呼びかける女性。
 そしてそれに乗る数千人の民衆。
 大の大人まで一斉に「ゼーロー!」と唱和するのはシュールな光景である。
 飛び出てくるゼロことルルーシュ。はしゃぎまくる観衆。
 特に、女性のあげる黄色い声がすごい。まるでアイドル扱いである。
 
 仮面の下の素顔は、というクイズの正解はとんでもない美少年。
 なお、性格については先程の紳士な男性の想像のとおりである。

「今まで隠していたことだが、俺も決心がついた。これが俺の姿だ!」

 相変わらず両手を広げるルルーシュの姿に、拍手と歓声を送る聴衆。
 なお、一部落ち込んでいる人々がいるが、その理由は触れてはいけない。

「馬鹿な……俺のイメージを上回ったというのか……」などとブツブツ呟いているものもいるが、触れてはいけないのだ。

 そう、夢が砕かれただけである。

「我々黒の騎士団がこの日本の開放に果たした役割は大きい。俺は自信をもってそう言える!」

 実際そのとおりなので、やっぱり拍手したりする聴衆。
 中には踊ったりしている人々もいる。
 それにしてもこの日本人達、ノリノリである。

「だが、それは俺の力だけでは到底成し得なかった。騎士団の仲間たちの力だけでも足りなかったろう。ならば、最後のピースとなったものがあるはずだ。それが何か知っているか?」

 ルルーシュの問いに、間髪いれず「それは勇気!」と一斉に答える人々。
 数千人が一斉に心の底から答えたため、地響きが起きる始末である。
 その問いを満足気な表情で受け止めるルルーシュ。
 勿論、心の中では「一般市民まで感染したか」と悲しんでいる。

「そう、その通りだ! 勇気のおかげで騎士団の仲間達は、ただの団員から各々が勇者となった! 自らすべきことを知るまでになった。全ては勇気のおかげ、それは君達も今なら理解できるであろう!」

 いつものようにオーバーアクションで語るルルーシュ。
 こればかりは、仮面ゼロの頃から全く変わっていない。
 そんな様子をC.C.は『天照』艦内から中継で見ながら、いつものようにピザを頬張る。
 体をソファにあずけながら、ピザを食べ続けていたようだ。
 そこらじゅうにピザの箱が散らばっている。

「ほう、ルルーシュのやつ。楽しそうにやっているな。やはりヤツ向きの仕事か」

 誰に向けてとも無くつぶやき続ける。
 
「む」

 はた、と手が止まる。
 部屋にあったピザが無くなってしまったのだ。
 手元にある通信機のスイッチを押し、応答に出た誰かに一言命令する。

「ピザが切れた、もってこい」と。

 通信器の相手から、『今は無理です』と言われるC.C.。
 その答えを聞いたC.C.は極めて不機嫌な様子で「貴様の都合など知ったことか。私がもってこい、といったのだ。拒否権など最初からない」と告げる。

『今、私は地上……です。お……ご主人様もご存知でしょう』
「貴様はピザ係で私が飼い主だ。ご主人様の言葉には2つ返事で承諾するのが仕事だ。理解しているのか、"チーズ君"?」

 それだけ伝えると、返事も待たずに通信を切る。
 通信相手のチーズ君は、結局主人の意向通りにすることに決めた。
 どう不満を述べたところで、相手が相手だけに、意見を覆させることなど不可能である。
 また、彼女が言うことを聞かなければ、ルルーシュが実は勇気を冷めた目で見ている、という事実を公表する、と脅されては選択肢は1つしかない。
 できる限りの便宜を図ってくれている弟に余計な苦労を増やしたくなかった。
 そうでなくとも、現在凄まじい心労を弟は抱えているのである。
 勇者だの勇者だの勇者だの。

 実はそんなルルーシュでも、現在のメンバーなら受け入れてくれるのではないか、と考えたことがあった。
 しかし、彼女は思い当たってしまったのだ。
 それならそれで、弟は勇者たちに四六時中付きまとわれて、勇気の素晴らしさを吹き込まれる生活になりかねないと。
 
 そういうわけで、彼女はせっせとC.C.のピザ係として使われているわけである。
 余談だが、このチーズ君着ぐるみ、ロイドとラクシャータ、セシルが競い合って中身を最新技術の結晶にしてある。
 元々、着ぐるみでは夏場暑かろう、で空調を入れるだけだったはずが、主にロイドとラクシャータが意地の張り合いで様々に改造を施した。
 小型のフロートユニットやらハドロン砲、更には動作を補佐するためのOSなどまで組み込まれた、正真正銘の技術の決勝である。
 更にどういうわけだか、KMFの操縦を補佐するようなシステムまで準備中である。
 もっとも、高い対弾性を誇る表面部分のせいもあり、これ自体人間サイズのKMFのようなものだが。
 ソルダートOとかもいるくらいなので、なぜかいても普通に思われてしまうのが恐ろしい。
 外見がチーズ君なため、市街地で活動していても、そこまでおかしくないのもメリットである。

 なんでも、ロイドやラクシャータは日本のアニメで着ぐるみでありながら機動兵器と変わらないような戦闘力を持つパワードスーツを見て、これだ、と思ったらしい。
 外見はクマだかネズミだかイヌだかよくわからなかったそうだが。 『こちらウルズ7。ネズミなどではない。あれはボ――』
 実際にできてしまったのは、流石は一流の技術者といったところである。
 前述の謎の着ぐるみと共に、2人は着ぐるみ型パワードスーツを新ジャンル「機ぐるみ」とすることに決めたようだ。

 なぜだかネタを詰めすぎたせいで、余談というレベルではないくらいの分量になってしまった。
 神はいっておられる、本来の流れに戻せと。

 と、いうわけで話を戻そう。
 チーズ君は現在地上である。色々な装備が施されているとはいえ、チーズ君はチーズ君である。
 そう無闇に空中にある『天照』にいけるわけがない、と普通なら思うだろう。
 だが、これは技術の粋を集めた機ぐるみ、チーズ君である。飛行程度は実は余裕である。
 コーネリアが気にしているのは時間なのだ。流石に機ぐるみ搭載のフロートユニットでは速度まではあまり出ない。(もっとも、地上では100Km/h程度は余裕だが)
 ルルーシュの演説で自分も登場予定なので、遅くなれば彼を困らせることになる。
 
 コーネリアは色々考えた結果、無茶だが1つの方法を思いついた。
 地上からミラーカタパルトを使用して『天照』に向けて射出、という方法である。
 ピザそのものは『天照』艦内にあるから問題ない。
 機ぐるみとはいえ、ミラーカタパルトからの射出という衝撃に耐えられるかは未知数だが、やるしかない。
 
 コーネリアが『天照』へピザ係の任務として向かう間にも、ルルーシュは演説を続けている。

「諸君! 諸君に聞きたいことがある! 今でもブリタニアは憎かろうが、それでもブリタニア人であろうと、勇気に目覚めていれば受け入れてくれるか!?」

 おーっ、と答える聴衆。
 皆で一斉に拳を天に突き上げている。
 意気衝天とはこのことだろう。凄まじい熱気で、体感気温は恐らく5℃は上昇しているはずである。
 気のせいか、太陽の輝きも増しているようである。
 旧政庁前のため、高層ビル群が存在しないのは、幸運と言ってよかったろう。
 もしあれば、ヒートアイランドもあいまって、恐ろしいことになっていたはずである。
 聴衆はそんな暑さも感じていないようにテンションをあげているが。

「諸君が勇者であるならば、差別をしてはいけない、ということもしっているはずだ! 相手がブリタニア人だからといって、これまでの恨みを晴らすように差別してはならない! そう、人は生まれながらに勇気を持ち、だからこそ平等なのだ! 諸君の感情としては面白からぬものもあるだろうが、これから君たちは、勇気ある誓いの元に生きてもらいたい! それが世界平和の鍵なのだから!」

 人々は口々に「勿論だー!」と答える。
 憎悪の感情などより優先されるのは、やはりお約束らしい。
 ルルーシュは便利といえば便利だな、と思いつつ、これで胃薬がまた増えるか、と複雑な気持ちである。
 
 そのルルーシュの後ろにある旧総督府近くから、チーズ君はミラーカタパルト利用で『天照』へと向けて飛び立った。
 果たしてチーズ君は自分の出番までに間に合うのか!?

 ――後半へ続く。

『それは番組が違う!』



[26314] 暴走のエトランジュ 16話
Name: のーべん◆e3bd37a7 ID:89555681
Date: 2011/07/31 22:29
ExtraNumber.16「大東京演説!!(後編)

 ルルーシュは未だ、東京の旧政庁前で、群集に向けて演説をしている。
 彼は、途中でマイクを渡す予定のコーネリアが現在『天照』にいるとは無論知らない。
 だが、このような場合を想定して、あらかじめ別のプランを用意していたのである。

 3日ほど前、スザクには、もしもの時はチーズ君着ぐるみを着て、みんなの前に出てほしい、と頼んでいた。
 これにスザクは、最初あまり乗り気ではなかった。
 というのも、立派な勇者となったコーネリアには影武者など不要、というのがスザクの意見であったのだ。
 そう思っているのはお前達だけだ、というのはおくびにも出さず、「チーズ君には急用ができるかもしれないし、勇者はいついかなる時も、複数の策をもっておくものだ」とスザクに語った。
 この言葉で、その気になったスザクは、早速予備のチーズ君着ぐるみを着込んだのだ。

 そしてルルーシュは、今から君が姉上の立場になったとして、演説をしてもらいたい。といった。
 難しく考える必要はない、姉上も勇者なのだから、との言葉に、水を得た魚の如く、超理論を展開していったスザクに、流石にルルーシュも驚いた。
 
 こんなにアドリブがきくやつなのか、と。
 しかし、これはこのままコーネリアの言葉としても、1人称が俺だったり、言葉遣いがひどかったりで、とてもそうは思えない。
 予想はしていた事だったので、彼の言葉を全てメモ帳に書きとめた彼は、彼の言葉が終わった後、それを急いで、コーネリア口調に書き換えたのである。
 今日もルルーシュは苦労人。ご苦労なことである。

 ならば、最初からルルーシュが原稿を書けばいい、そう思った読者もいるかもしれない。
 しかし、ここ最近は、勇気続きで苦労していた彼である。
 その場の演説としてアドリブならともかく、演説原稿(ついでにいうと数少ない勇者ではない人物を勇者扱いする)となると、彼は打ち込むだけでダウンしそうだったので、このような手段をとったのだ。

 
 そして、幸か不幸か、この日。
 コーネリアはいなかった。正確に言うと、ピザ係の職務を果たしていた。
 その事に気がついた裏方のスタッフは、急遽スザクを呼び出す。

「先生! 今、チーズ君は出張のようでガス! 先生の出番でガス!」

 その言葉に、喜び勇むスザク。
 また、ルルーシュの役に立てる、勇気の素晴らしさを教えられる、と輝いている。
 まともな人が見れば、「君の考えている事は分ったよ。でも少しは自重した方がいい」などと言われそうな状態である。

「おう! 仲間の穴を埋めるのも、勇者の役目だからな!」

 チーズ君のOSを起動させるスザク。
 ちなみにこのチーズ君。もしもの時のための予備が2体にコーネリアが使用しているものが1体。
 合計3体が現在配備されている。

 ルルーシュの声は、裏の方にも響いてくるし、勿論モニターもしている。

『先の戦い以降、我々には新たな勇者が加わった! それがチーズ君だ!』

 すでにチーズ君は、日本人にあまねく知られているといっていい。
 東京解放に前後して加わった新たな勇者で、その可愛らしい外見に似合わず、各地でブリタニア軍基地を降伏させてきた、謎のヒーローなのである。
 加入時期から、誰か気がついてもいいはずだが。

『諸君、そのチーズ君から、話があるようだ、聴いてやって欲しい!』

 そのルルーシュの言葉に、拍手を送る聴衆。
 今や国民的英雄となったチーズ君、その姿を見るだけで歓喜する。
 そんな日本人を見て、少し悲しい気分になるルルーシュ。
 自分のしたことは、果たして正しかったのだろうか、と。

 ブリタニアの支配から脱却するという意味では成功だが、この様子では、別のものに支配されている気がしないでもない。
 結局は、諦めの境地にたどり着くのだが。

「私がチーズ君だ! 始めに、皆に言っておかねばならない事がある……そう、私の正体は、元エリア11総督、コーネリア・リ・ブリタニアなのだ!」

 いきなり大胆発言をし始めるスザク扮するコーネリア。
 聴衆は揃って、目が点状態になる。
 そして、嫌悪な雰囲気になりかけているにもかかわらず、言葉を続けるスザク。

「確かに、私が埼玉で、そしてこの日本でした事は、未来永劫、許される事ではないだろう。だが、私は黒の騎士団の勇者達に敗れて知ったのだ……」

 沈痛なコーネリアの声で語るチーズ君を、とりあえず黙って見つめる民衆。
 
「そう、勇気こそ、世界を導く言葉であると! 私が今、何を言おうと罪は消えないが、償う事はできる。私は目覚めたのだ、勇気あるものに。勇者として、世界をブリタニアから守り、そして、勇気によって平和をもたらす手助けをしたい!」
 
 そうは言われても、疑わしげな様子を見せる聴衆。
 これまでしてきた事がしてきた事である。
 確かに、そう簡単に許せるものではないし、認められるものでもないのだが、この反応にスザクは焦る。
 彼の脳内では、先ほどの言葉で、日本人が皆、「おー!」とかいって受け入れてくれるものだとなっていたのだ。

 通信でルルーシュに呼びかけるスザク。

『ルル、やばいぜ、何で皆微妙な反応なんだ!? もっとこう、ぐわーってなると思ってたのによ!』
『それだけ姉上のしたことは、日本人にとって、許す事の出来ない事、という事だ』
『なんでだよ! 日本の皆だって勇者になったんだろ!?』

 あまりの馬鹿さ加減に、いつものように頭が痛くなるルルーシュ。
 そんな程度で解決すれば、世界中報復攻撃などおこったりしまい。
 しかし、この親友を馬鹿だなんだといっても、目の前の事態は解決しない。

『ともかく、落ち着け。お前が焦っていてはどうにもならないはずだ』
『そ、そうだな、ルル』

 落ち着きを取り戻すスザク。
 少しは日本人の気持ちを理解しろ、といいたくなったが、彼もまた日本人である。
 本当に、ある意味救いがたい。愚痴も最早無意味なくらいだ。

 取り柄といえば、変に勘ぐる事すら出来ないような馬鹿っぷりで、いくらでも口先でごまかせることくらいだろうか。
 いや、これは自分にとってのメリットで、取り柄ではない。

(どっちにしろ、この場ではスザクに任せるしかないか)

 ため息をつく。
 外に目をやると、スザクは派手なジェスチャーをしながら、語り続けている。
 先ほどの静寂が嘘だったかのように、騒然となっている聴衆に向けて。
 そのほとんどが、いくら騎士団とはいえ、コーネリアを生かしておくのか、というものだ。
 
「私がコーネリア・リ・ブリタニアだと、その認識自体が違うのだ! 今は勇者見習いをしているチーズ君! それ以上でもそれ以下でもない!」

 あまりに強引なこじつけ。
 しかも逆ギレする始末。これでは怒りをあおるだけである。
 ルルーシュは、それは無理があるだろ、とツッコんだ。

 いや、意味が分からない。自分でコーネリアだと名乗っておきながら、チーズ君だから無関係、なんて通用するはずなかろう。

 案の定、聴衆もブーイングを飛ばしている。
 当然だ、こんな程度で解決したら苦労しない。

 この事態に、いきなり、隣で様子を見ていたエトランジュが、表にとび出て行った。
 その姿に、先ほどとは別の意味でざわつく聴衆。
 なにしろ、勇気を広めた聖女として、今や日本中エトランジュの名前を知らぬものはいない。

 事実、聴衆からも、驚きの声が聞こえてくる。

『おお! 聖女、エトランジュ様だ!』
『勇者達の原点、エトランジュ様!』
『あのバカスザクを、大先生に変えたお方!』
『はああああああああああああああ、エトランジュたんマジ可憐、傍に行ってクンカクンカしたいおおおおおおおおおおおおおおおお!』

 驚きの声は、喜びと賞賛の色で占められている。
 エトランジュの人気というのは、今や反ブリタニア勢力の人間にとっては絶対的なもののようだ。

「皆さん、チーズ君は勇者です! つまり、コーネリアではありません!」

 スザクと言っていることが変わらない。
 これでは何の効果もない、と思ったルルーシュだったが。

 教祖様の破壊力は想像を超えていた。

『そ、そうか! あの方は、エトランジュ様にも認められている勇者なんだな!』
『お、俺達、勘違いしていたぜ……コーネリアだから認めないだなんて』
『あれはコーネリアであってコーネリアでない、そう、言うなれば、着ぐるみ勇者チーズ君!』
『そういうことだったのか! さすがエトランジュ様だ!』

(バカな……言っている中身はまったく変わっていないぞ! なぜ受け入れられている!?)

 A:教祖様のお言葉だからです。

 最早、何を言っていいかも分からなくなったルルーシュ。
 散々見慣れてきた光景のはずだが、一般民衆までこのような反応を示すとなると、想定外である。
 ツッコミをどう入れようか迷っている間にも、エトランジュの話は続く。
 
「皆さん、これはコーネリアの声がするチーズ君、それだけのことです!」

(俺なら納得しないぞ! ……俺なら)

 だが、この説明で納得しないのは、あろう事か、この場ではルルーシュだけであった。
 それ以外は一様に、チーズ君を称える歌まで歌っている。
 一応、チーズ君が排斥されるという、最悪のパターンは回避されたが、姉の事を思うと、涙が流れてくる。

 そう、姉は、勇者ではないのだ。
 汚染されていないのだ。
 数少ないまともな人材なのだ。

(俺なら納得しない。いや、まっとうな判断力を持っていれば絶対納得しない! こんなもの、読者が納得できるか!)

 A:教祖様のお言葉は絶対です。

(姉上、お許しください)

 ルルーシュは、心の中で姉に謝罪した。
 明らかに人選ミスである。
 といっても、選んだのが自分なのが始末が悪い。
 なぜスザクなんかに頼んでしまったのだろうか、と後悔する。
 ルルーシュは、後悔先に立たず、という言葉を身をもって知った。

 しかし、とルルーシュは少し振り返って考える。
 他のメンバーに代役を頼んでいたら変わっていたのだろうか、と。
 答えは、否。
 つまりは、戦術的なミスではなく、戦略段階ですでに敗北していたのだ。
 大体、姉以外、全員勇者という環境では代役が誰をやっても同じだったのだ。

 困った事に、エトランジュの説く勇気が、実用性もヘッタクレもないものだったらともかく、一体感を醸し出すシンボルとしては、これ以上ないほどに機能しているのである。
 古の孫子は、「いかにして将軍、或いは国家と同じ目的を兵士にもたせるかが重要だ」と説いたものだが、その側面で言えば、この言葉の右に出るものがない。
 なにしろ、皆が皆、勇気の旗印の下にいるのである。
 自身が黒の騎士団の目標として掲げた、日本解放よりも、なにやら人々の心をつかんでしまったのだ。
 黒の騎士団の総帥"ゼロ"としては、利用しないわけにはいかないのが現状である。

「人が神を支配しようと思ったとき、人はすでに神に支配されている」とは誰の言葉だったか思い出せないが、今の自分は、「勇気を利用しようとしたら、勇気に利用されている」ような状態なのは間違いない。

 もっとも、こうなった以上、この方向でやるしかないのだが。

 外では、エトランジュの言葉に盛り上がっている聴衆達が、しきりに、「ゼーロ、ゼーロ!」と叫んでいる。
 なにやら、自分の出番が来たようだ。

 仮面はいらないので、さっさとステージに上ろうとし、引っ返す。
 胃が痛い。ちょっと待ってくれ、と合図を送る。
 エトランジュは、理解したようで、「ゼロは、もう少しだけ準備しなければいけないことがあるようですので、お待ちください」と呼びかけている。
 それはいいのだが、それに対する反応が「はーい、エトランジュ様ー!」とはどういうことか。
 ヒーローショーのノリである。

 ああ、胃が痛い。

「胃薬を、胃薬と水を持ってきてくれ」

 キョトンとする騎士団員。
 もう一度、催促する。今度は、語気を強めて。

「早く!」
「了解しました! 長官!」

 すぐに、運ばれてきた。
 トレーの上の胃薬と、水の入った紙コップを奪い取るようにして手に取り、すぐさま乱暴に胃薬を流し込む。

「ふう……」

 効果が出るまで待つか、と、パイプ椅子に腰掛ける。
 
「もう効いてきたか、早いな」

 飲んでからわずか1分程度。流石、ラクシャータに自分専用として作らせただけはある。
 そういえば、ラクシャータは元々医療関係が本業だったな、と思い出す。
 いやはや、ある意味で技術力の無駄遣いといってもいい。
 こんなことに技術者を動員できるなど、贅沢というものだろう。

 さて、出よう、と体を動かす。
 
『さあ、みなさんお待ちかね、ゼロの再登場ですよー! 拍手をどうぞー!』

 相変わらずのヒーローショー的なノリである。
 いったいいつからこの国はこんなノリになった。
 以前はもっと、慎ましやかな国民性だったはずだ。やはり、ブリタニアの圧政が変えてしまったのだろうか。
 まがりなりにも、自分の血族がかかわっていると思うと、悲しくなる。 
 
 仮面をしていこうか、と思ったが、その必要がないことに気がつく。
 そういえば、素顔をさらしていたのだった。
 あの仮面、必要がなくなるというのは、寂しい。
 そんな感傷に浸っていたが、やるべきことを思い出し、表に出た。

 相変わらずのノリで迎えてくれる聴衆。
 いったいどうやったらこのテンションを持続できるのだろう。
 勇気ってすごい。いや、これは認めたら終わりだ。でも、凄い。

「では皆さん、ゼロから、重大な発表があるようです!」

 ノリノリのエトランジュ。
 重大発表、といわれるが、ルルーシュ本人が分からない。
 何かあったか、と首をかしげるルルーシュ。
 すると、カンペが見えた。

『本名公開!』

 疲れているのだろう、と眼を離すルルーシュ。
 頭を軽くふった後、もう一度同じ場所を見る。

『本名公開!』

 変わらなかった。
 自身がブリタニア皇族であることをさらけ出すなど、考えてもいなかった。
 ところが、しきりにGOサインを出す裏方。
 やっていいのだろうか。

 といっても、やるしかないのだろう。
 もうなんだか、裏方達やら聴衆のキラキラした瞳が怖い。
 脅迫である。

 しかたがない、と腹をくくって、深呼吸するルルーシュ。

 そこから更に、一拍置く。

「諸君、よく聴いて欲しい。私の、いや、俺の本当の名前は、ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア! つまり、ブリタニア皇族なのだ!」

 驚きに包まれる聴衆。
 英雄ゼロは、実は敵であるブリタニア皇族だったのだから無理もない。
 しかし、彼らは罵声を浴びせる事はなかった。
 ゼロのこれまでの実績が、彼を信頼に足る存在にしていたのだった。

 聴衆は口々に「これからもついていくぜ、ゼロ、いやルルーシュ!」と、ルルーシュを勇気付ける。

 よかった、と認めてくれるのか、とルルーシュが胸をなでおろそうとした刹那、それはやってきた。
 
「ルルーシュ様あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」

 絶叫とともに、ルルーシュの前に飛び込んできた人間がいた。
 一瞬、誰もが硬直する。
 勿論ルルーシュもそうだった。
 ただ、再起動が、彼は誰よりも早かった。
 イレギュラーな事態には弱いはずの彼なのだが。最近は、この手の超常現象に慣れてしまったのかもしれない。

 ルルーシュの目の前にいたのは、ルルーシュにとっても見覚えのある人物だった。
 そう、いつぞや、自分がギアスをかけ、自分を見逃させたあの男だ。

「お前は――」
「ジェレミ――オレンジです! ルルーシュ様!」

 目の前の男は、あの時のハッタリにした言葉を、いつの間にか本名にしていた。



[26314] 暴走のエトランジュ 人物&用語説明
Name: のーべん◆e3bd37a7 ID:89555681
Date: 2011/05/22 07:42
主な人物 基本的に作者の犠牲者です。 

《ルルーシュ・ランペルージ》

 本名はもうちょっと長いけど、そんなのはどうでもいい。
 今作の苦労人。原作でも苦労人。
 胃がやばいです。忘れられがちだが、元を辿ると彼が今作のノリの元凶である。


《エトランジュ・アイリス・ポンティキュラス》
 
 《架橋のエトランジュ》の主人公で悪の帝国に祖国を滅ぼされた人。
 が、そんなことどうでもいいくらい勇気理論で周りを洗脳する。
 今作のキーマン。勇気教の教祖様。一番の理解者は多分スザク。


《アルフォンス・エリック・ポンティキュラス》

 《架橋のエトランジュ》に登場する、オリジナルキャラクター。
 教祖様の従兄で、本編でかつてルルーシュの影武者をしていた経歴もち。
 ルルーシュによって苦労人サイドに巻き込まれ、早くもストレス全開。

《C.C.(しーつー)》

 作者によるあだなはレモン。名前を見ればなぜだか分かると思う。
 ピザを食べながらルルーシュをからかうのが仕事。
 ナナリーを洗脳するという暴挙に出た。ルルーシュは犠牲になったのだ。


《柩木 スザク》

 アホの子。エトランジュ様のお言葉により勇者と化し、もう1人の主人公から(実質的な)主人公に昇格。
 本編に輪をかけて常軌を逸した思考を発揮する。
 天才的なナイトメアフレームの操縦技能の持ち主でもあり、良くも悪くも色々と最強。

 
《ユーフェミア・ナントカ》

 ルルーシュ初恋の人。まぁ、当然のように勇者になりました。
 勇者化の犯人はスザク。命名者もスザク。
 スザクに「ブリタニアの名を捨てたら名前はどうしたら?」と聞いたらこうなった。

 
《ナナリー・ランペルージ》

 ルルーシュの愛する妹。
 聡明な妹。お兄様の本音を知った上でC.C.の勇者化計画に絶賛参加中。
 ナナリー! ナナリー! ナナリー! ナナリー! ナナリー! ナナリー!


《紅月 カレン》

 騎士団のエースパイロットで『紅蓮』の操縦者。現在は『竜神』となった。
 実は今作では未だ殆どセリフがない。4話と10話でちょこっと喋っただけである。
 それでも出てくると妙な存在感を発揮する辺りさすが勇者。


《ソルダートO(おー)》

 誇り高き戦士。ラディアントリッパーと銘打つ2本の個人用MVSを所持。
 生身で飛行し、あまつさえナイトメアフレームを破壊できるなど、並外れた戦闘力を持つ。
 勇気教に対しこちらは戦士の誇り教の信者。推定53万馬力。


《扇 要》

 そ ん な 人 い ま せ ん 。


《ロイド・アスプルンド》

 研究に命をかける伯爵様。
 ここではナイトメア馬鹿に加えて、変態も装備。
 なぜか作者のお気に入りに。中々の万能性。


《コーネリア・リ・ブリタニア》

 元エリア11総督のピザ係。
 C.C.に無理やり着せられたのはチーズ君の着ぐるみです。
 念のため。


《シャルル・ジ・ブリタニア》 

 ブリタニア皇帝にしてルルーシュ達の親父殿。
 原作でトップクラスのダメ人間といわれるも、今作では周りがアレすぎてこの人がノリについていけない側。
 教祖や先生と対話して息子に同情されたという事実が全てを物語る。
 
 
用語

ア行

【アニメDVD】

 基本勇者王ガオガイガーのDVD。
 勇者達の聖典。実はガオガイガーの知識の方が必要とされるのは内緒。


【天照】

 黒の騎士団の母艦。
 ミラー粒子を活かした様々な機能がついている。
 全域展開司令艦というながったらしい肩書きは、勿論どっかから影響を受けました。

 
【イカサマ】

 ルルーシュの特技。
 本作ではもっぱら勇気を信仰させ続けるために行われる。
 そして自分の首を絞め続ける。
 

カ行

【教祖】

 エトランジュのこと。
 勇気教を絶賛布教中であることから。読者様及び作者からはすでに愛称として定着しているはず。
 ただし、作中ではルルーシュの心の中でしかこう呼ばれない。


【黒の騎士団】

 原作でもアホの子。今作ではエトランジュ様により集団洗脳される。
 勇者となったため、指導者思いと化した。
 異様な熱気によりブリタニア軍を恐怖させる。


サ行 

【サザーランド】

 雑魚。
 見事なまでのかませっぷりで、一部で涙を誘う。


【自縄自縛】

 自分で自分を苦しめる行為。
 今作のルルの立場そのもの。


【スザク先生】

 スザクの事。
 勇気をとてもよく理解しているため、騎士団員から贈呈された。
 驕ることなく勇気を広めるその姿は、まさしく勇者である。


【そういうことなんだよ!】

 スザク先生のテンプレ。場合によっては文頭に「勇気って」と来る。
 大抵言葉に詰まってくるとこれで強引に突破。
 なお、元はといえば作者が説明に詰まったのが原因である。


ナ行

【のーべん】

 根源的混沌招来体。
 更新が不定期にも程があったり、実は原作未見だったりと、色々と怪しい。
 真似してはいけない作者の典型。


ハ行

【ハドロニオンハンマー】

 『ランスロット』の新たな必殺技。
 ハドロン砲を持続的に照射できるハンマー。
 本体も頑強。ただし、エネルギーは馬鹿みたいに消費する。


マ行

【まるで意味が分からんぞ!】

 読んで字の如く。


【ミラー粒子】

 【勇者王ガオガイガー】に登場する架空の物質。
 ……のはずだが、勇気の力で騎士団が発見。
 

【模擬戦シミュレータ】

 スザク洗脳で大役を果たす。


ヤ行

【勇気】

 万能。
 ありもしない物質を見つけてきたり、騎士団を改心させたり、多くの人物を洗脳したり。
 その効能は多岐にわたる。ただし、用法・用量はよく守りましょう。


【勇者王ガオガイガー】

 サンライズ製作のロボアニメ。
 熱血。というか勇者&勇者。
 ※内容はこんなに電波じゃありません。


ラ行

【竜神】

 カレンの愛機。名前は【勇者王ガオガイガー】の『超竜神』から。
 『紅蓮』を改修したらこうなった。カラーリングは青と赤。
 ハドロン砲が2つだったりトンファーにもなったり輻射波動発生装置が外付けオプションだったりと色々と違う。


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