「ティロ・フィナーレ!」
金色の髪を巻いた少女、巴マミは魔女にとどめの一撃を放つ。
「……え?」
放たれた弾丸はたしかに魔女を穿った。
だが、誰が想像しただろうか。
“それが本体ではない”……と。
ティロ・フィナーレによって絡めとられた小さいぬいぐるみのような体が膨張し、大きく広がった口から黒く巨大な蛇が飛び出す。
マミは目前に迫る黒蛇の巨大な顎を呆然とした表情で見ていた。
このとき、マミの思考に過ぎったのはどのようにすればこの窮地を脱することができるのかであった。
思考タイムはわずか、コンマ一秒にも満たない一瞬。
そのわずかな時間で彼女は己の死を悟り、ゆっくりと瞳を閉じた彼女は何もできずに黒蛇に呑み込まれた。
『あーあ、仕方ないか……』
……はずだった。
だが、いつまで経っても終わりは訪れない。
おそるおそると瞳を開けばそこには、顎を開けた黒蛇が宙に浮かんだまま“停止していた”。
否、正確には宙に浮かんだまま“押し止められている”。
「これは……」
一体何が起きたのか。
目の前の光景は一体何なのか。
ありえない。
ありえない。
ありえるはずがない。
マミの思考はそれだけで埋め尽くされる。
「……ま……、どか……さん?」
どうして魔法少女ですらないまどかが“黒蛇を掴んで持ち上げている”ことができるかなど、マミにわかるはずもなかった。
「はい!
マミさん、無事でよかったです」
ぐねぐねと身体をくねらせ、掴まれた手から逃れようとする黒蛇に対し、まどかはその場から揺らぎもしない。
「それ……、どうなって……」
まるで夢を見ているようだと、マミとさやかは思う。
遠目から見ているさやかはともかく、間近で見ているマミは何も小細工なしで巨体を押し止めているそれはなんなのだと、ありえない現実に眩暈すら起こしそうである。
それは魔法少女という自身が常軌を逸した存在でありながらも信じられない異常。
一瞬、まどかがすでにキュウベエと契約したのかと思いもしたが、彼女からは魔法少女特有の波動も感じないため、それを一蹴。
ならばなぜ?
「どうもなってませんよ。
みんなには内緒にしてましたけど、実は私……」
まどかはマミを見ることもなく、手にした黒蛇をぶんぶんと振り回す。
「……すっごく力が強いんです!!」
そう、ただ単純に力が強い。
まどかに生まれつき備わっていた力はただそれだけである。
だが、それだけで十分だった。
圧倒的な力。
一点に特化した力はそれだけで何者も寄せ付けない最強の矛となりうるのだから!
「ぬうん!!
どっせぇぇぃい!」
まどかの上腕二頭筋がボコンと膨れ上がり、筋肉が肥大化し、人間の限界を突破する。
そして、人外の力によってぶんぶんと振り回された黒蛇は遠心力と共に地面に叩きつけられ、破砕音を響かせその身を四散させて消えていく。
今度こそ、正真正銘のとどめの一撃だった。
「……」
「……」
開いた口がふさがらないとは正にこのことだろうと、マミとさやかは初めて知った。
「えへへ……。
驚かせちゃったかな?」
可愛らしく笑顔を浮かべるまどかだったが、その圧倒的な力を見た後では素直に可愛いとは思えない。
むしろ、魔女より怖いと二人は思った。
「え、ええ……。
で、でも、ありがとう。
おかげで助かったわ……」
声が震えているのはご愛嬌である。
それよりも、ここで普通に返答しようと思えるマミがさすがといえた。
「気にしないでください!
さっき言ったじゃないですか。
もう、マミさんは一人じゃありませんよって!」
『……わけがわからないよ』
テレパシーで頭の中に響いたマスコットキャラクターの呟きに激しく同意であった。
あとがき
なんか書きたくなった。
つづきがあるかは反応しだいですかね……?(逃
魔改造しすぎで反応が怖い・・・。