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[26403] 【完結】魔法少女まどか☆マッスル(まどか魔改造)(微アフター追加)【チラ裏から・ネタ】
Name: 士泉◆f9d97fda ID:d9325683
Date: 2012/02/07 21:58
※いろいろとネタです。
 まどかは原作まどかじゃなきゃいやだという人はごーばっく!
 まどかマギカ三話までのネタバレあり注意
 
 感想が結構きていたので、ちょこっと連載してみますw


サブタイに意味はあんまりありませんw



ちょこちょこリハビリがてらに更新しようかとw



[26403] 1%目 躍動する肉体
Name: 士泉◆f9d97fda ID:d9325683
Date: 2011/03/08 15:22



「ティロ・フィナーレ!」
金色の髪を巻いた少女、巴マミは魔女にとどめの一撃を放つ。

「……え?」
放たれた弾丸はたしかに魔女を穿った。
だが、誰が想像しただろうか。

“それが本体ではない”……と。

ティロ・フィナーレによって絡めとられた小さいぬいぐるみのような体が膨張し、大きく広がった口から黒く巨大な蛇が飛び出す。
マミは目前に迫る黒蛇の巨大な顎を呆然とした表情で見ていた。

このとき、マミの思考に過ぎったのはどのようにすればこの窮地を脱することができるのかであった。
思考タイムはわずか、コンマ一秒にも満たない一瞬。
そのわずかな時間で彼女は己の死を悟り、ゆっくりと瞳を閉じた彼女は何もできずに黒蛇に呑み込まれた。

『あーあ、仕方ないか……』

……はずだった。

だが、いつまで経っても終わりは訪れない。
おそるおそると瞳を開けばそこには、顎を開けた黒蛇が宙に浮かんだまま“停止していた”。
否、正確には宙に浮かんだまま“押し止められている”。

「これは……」
一体何が起きたのか。
目の前の光景は一体何なのか。

ありえない。
ありえない。
ありえるはずがない。
マミの思考はそれだけで埋め尽くされる。

「……ま……、どか……さん?」
どうして魔法少女ですらないまどかが“黒蛇を掴んで持ち上げている”ことができるかなど、マミにわかるはずもなかった。

「はい!
マミさん、無事でよかったです」
ぐねぐねと身体をくねらせ、掴まれた手から逃れようとする黒蛇に対し、まどかはその場から揺らぎもしない。

「それ……、どうなって……」
まるで夢を見ているようだと、マミとさやかは思う。
遠目から見ているさやかはともかく、間近で見ているマミは何も小細工なしで巨体を押し止めているそれはなんなのだと、ありえない現実に眩暈すら起こしそうである。

それは魔法少女という自身が常軌を逸した存在でありながらも信じられない異常。
一瞬、まどかがすでにキュウベエと契約したのかと思いもしたが、彼女からは魔法少女特有の波動も感じないため、それを一蹴。
ならばなぜ?

「どうもなってませんよ。
みんなには内緒にしてましたけど、実は私……」
まどかはマミを見ることもなく、手にした黒蛇をぶんぶんと振り回す。

「……すっごく力が強いんです!!」
そう、ただ単純に力が強い。
まどかに生まれつき備わっていた力はただそれだけである。

だが、それだけで十分だった。
圧倒的な力。
一点に特化した力はそれだけで何者も寄せ付けない最強の矛となりうるのだから!

「ぬうん!!
どっせぇぇぃい!」
まどかの上腕二頭筋がボコンと膨れ上がり、筋肉が肥大化し、人間の限界を突破する。
そして、人外の力によってぶんぶんと振り回された黒蛇は遠心力と共に地面に叩きつけられ、破砕音を響かせその身を四散させて消えていく。
今度こそ、正真正銘のとどめの一撃だった。

「……」
「……」
開いた口がふさがらないとは正にこのことだろうと、マミとさやかは初めて知った。

「えへへ……。
驚かせちゃったかな?」
可愛らしく笑顔を浮かべるまどかだったが、その圧倒的な力を見た後では素直に可愛いとは思えない。
むしろ、魔女より怖いと二人は思った。

「え、ええ……。
で、でも、ありがとう。
おかげで助かったわ……」
声が震えているのはご愛嬌である。
それよりも、ここで普通に返答しようと思えるマミがさすがといえた。

「気にしないでください!
さっき言ったじゃないですか。
もう、マミさんは一人じゃありませんよって!」

『……わけがわからないよ』
テレパシーで頭の中に響いたマスコットキャラクターの呟きに激しく同意であった。





あとがき
なんか書きたくなった。
つづきがあるかは反応しだいですかね……?(逃
魔改造しすぎで反応が怖い・・・。



[26403] 2%目 まどか30%
Name: 士泉◆f9d97fda ID:d9325683
Date: 2011/03/08 23:43
まどか、マミ、さやかの三人はこのとき、完全に油断をしていた。
まどかは対魔女戦における知識や経験がないがゆえに。
マミとさやかはまどかのあまりのマッスルぶりに呆然としてたがゆえに。

三人の意識が逸れている間に、四散していた黒蛇……、魔女・シャルロッテの欠片がうごめき出す。

そう、まだ魔女は死んでいなかった。
いつものマミなら気づいていただろう。
だが、今のマミは平常ではなかった。

それこそ、“展開していた魔法を全て解いてしまうほどに”。

「あ……!
マミさん、危ない!!」
一番初めに気づいたのはさやかだった。

さやかだけは距離が離れていたことでマミとまどかの足元に転がっていた魔女の欠片が蠢き、再び一つになって襲いかかろうとしていたのに気がつけた。

「くっ……!?」
「マミさん!」
マミはまどかを。
まどかはマミを。
互いに互いを庇おうと動き出すが、それはあまりに遅く、奇襲に対応し切れていない。

「いやあああああ!!」
さやかの絶叫が響き渡る。
もうだめだと、誰もがあきらめそうになったとき、再び奇跡……否、遅れて役者が揃った。

『油断がすぎるわね』

再生を終え、マミとまどかに喰いつこうとした黒蛇は突然全身を連鎖爆発によって崩れ落ちた。

「覚えておきなさい。
この手の魔女は本体を叩かない限り、いつまでも終わらないわよ」
ストンと、軽やかにまどかのそばに降り立った美しい黒髪をたなびかせた少女……ほむらは手にした手榴弾のピンを引き抜き、椅子の上に乗った本体を振り向きもせずに吹き飛ばし、今度こそ魔女の統べる空間を崩壊させるのだった。

「ふう……。
ぎりぎりだったわね」
言葉通り、ほむらが間に合ったのは紙一重といえた。
マミに拘束された戒めが解け、駆けつけてみればそこには二人を襲おうとした魔女がいて考えるまもなく介入したのだ。

それよりも、ほむらには気になっていることがあった。
そう、それは今ここにマミが生き残っていることだ。
巴マミはこの戦いにおいて“死んでいなければ”おかしい。

拘束が解かれた瞬間、“歴史どおり”マミが死んだと思って駆けつけてみればマミはまだ生きていた。
ならばなぜ拘束が解けたのか。

彼女には知る由もないが、拘束が解けたのはマミが一瞬とはいえ死を受け入れたことと、まどかのありえない姿を見て思考を放棄(当然である)したという偶然が重なったからだ。

そんなことがわかるはずもないほむらは何かイレギュラーが起きたと予想をつけているが、まさか自分の敬愛するまどかが“マッスル化”したからだとは想像の埒外であった。

「ほむらちゃんありがとう!
……でも、どうしてむこう向いているの?」
……というよりも、ほむらは気づかない振りをして現実逃避しまくっていた。
魔女を吹っ飛ばした瞬間にちらっと見えたまどかの“たくましい筋肉”などただの見間違いである。
ありえない。
ありえないったらありえない。

まどか可愛い。
まどかたんはぁはぁ。
だからうちのまどかたんがこんなに逞しいはずがない。

思いっくそ自己暗示100%である。
二階堂平方・心の一方も真っ青になるほどの自己暗示っぷりであり、今の彼女になら某剣客漫画の鵜堂さんにもきっと勝てるであろう。
ぶっちゃけ、思い込みで現実を見ないようにする気満々である。

「礼には及ばないわ」
表面上は冷静に、しかしまどかには一度も視線を向けずに去っていく。
そんな態度を一貫して崩さないクールビューティなほむらの思いはたった一つであった。

……帰ったら泣こう。

「ほむらちゃーん!
ありがとーー!!」
その背に向かって可愛らしい声を上げて腕を振って見送るまどか。

振るっている腕の影が“妙に筋骨隆々で異様にぶっとい”なんてありえない。
ありえ……ない……んだよぅ……。

「どこで間違えたんだろ……」
泣いてない。
泣いてなんてないもん!
必死に自分に言い聞かせながらほむらは静かに涙を流し続けた。

『本当にわけがわからないよ』
テレパシーで届いた諸悪の根源の呟きに今だけは心から同意したいほむらであった。




あとがき
ほむほむほむほむ



[26403] 3%目 筋肉戦隊マッスル5
Name: 士泉◆f9d97fda ID:d9325683
Date: 2011/03/09 02:07

「ふわー……、つっかれたぁ……」
ほむらがどこかに立ち去ったあと、まどかは気の抜けた声を出してへなへなと座り込む。

「まどか!
大丈夫!?」
あんなマッスリーな肉体を持っていて大丈夫もくそもないが、そのあたりはお約束というやつである。

「うん、大丈夫だよ。
ありがとう、さやかちゃん」
にっこりと微笑むまどかであったが、笑顔と逞しい上腕二頭筋が見事なまでにつりあっていない。

「それにしても、まどかのそれって……」
若干びびりながらも、まどかの腕を指差して聞けるさやかは中々の猛者である。
普通は聞く度胸などない。

事実、マミは今も現実逃避をして会話に参加しようとしていないのだから。
言い換えれば、さやかの全力で地雷を踏み抜くことができる程度の能力が発動したとでも言うべきなのだろうが。

「あ、これ?
ごめんね……、気持ち悪いよね。
今元に戻すから……」
まどかは腕に意識を集中させるとぼこぼこと筋肉が波打ちながら不気味な音を立ててしぼんで元の少女らしい腕に戻っていく。
それはさながら身体の中でエイリアンが暴れているようですらある。

さやかとマミは思う。
筋肉気持ち悪っ!!
……と。

余談だが、今後の人生において彼女らの恋する相手がみんな細身であったのはこの光景のせいであったのかは定かではない。

「あはは……。
変なところ見られちゃったな……」
いつものように自信がなさそうなか弱い笑みを浮かべるまどかであるが、そんなありえないことをしておいて変なところで済ませるあたりが図々しいにもほどがある。

「今まで黙ってたけど、これが私の力。
身体の任意の箇所の筋肉を操作できる能力、“筋肉操作”だよ」
戸○呂かよ。
さやかは口に出さなかった自分を内心で盛大に褒め称えた。

「それって、魔法とは関係ないんだよね?」
まだキュウベエと契約していないことを知っているさやかは問う。

「うん、これは私が最初から持っていた力だよ。
ある意味、契約前から魔法少女みたいなものなのかも」
あははと、小さく笑うまどか。

さやかとマミは全力で魔法少女なめんなと突っ込みたかったが、そんなこと怖くて言えるはずもない。
たしかに不思議ですごい能力だけど、これが魔法だったら全国の魔法少女に憧れる子供の夢がゲシュタルト崩壊である。

「いつからそんなことができるようになってたの?」
会話の持っていき方が少々強引だったかもしれないとさやかは思うが、これ以上戯言を聞き続けるのは精神が死んでしまいそうであるし、なにより好奇心が全力全開で聞けと囁いて突貫させる。

やはり彼女は地雷メーカーであるに違いない。
これが別の作品だったら今頃ひき肉であること間違いなしだ。

「この力はね……、気がついたときには使えてたの……」
ふっと、空を見上げまどかが独白する。
本当は隠しておきたい能力であったが、見られてしまったのなら話してしまおうと生まれて初めて自分の過去を語り始めた。

「初めてこの力を使ったのはまだ私が5歳のとき。
川で子猫が溺れてて、助けたいと思ったそのときに私は……」
ごくりと知らず知らずにマミとさやかは息を呑んでいた。

「……川を“割ってたの”」

「はい?」
「はい?」
このとき、マミとさやかの心は完全に一つになっていた。

「意味わかんないよね。
私も驚いたもん。
気づいたら腕がものすごく太くなってて、その力で川の水を真っ二つに割っちゃってたなんて……」

うつむき、今にも泣きそうなまどかであったが、話の内容がありえなさ過ぎてそんなものは全然気にならない。
本当に意味がわからない。
というよりも、むしろ理解したくない。

二人は思う。
驚いたもんじゃすまねーし。

なにより、想像してみてほしい。
可愛らしい5歳ほどの幼女の腕にどでかい丸太のような腕がついてる姿を。
例えるならば、某霊能探偵の敵役だった筋肉な弟さんの腕だけ幼女に移植したイメージである。

もはやシュールを通り越してホラーである。
マミとさやかが同じ想像をして顔を引きつらせてしまうのも無理はない。
ここで平常心を保てるやつがいるなら見てみたい。

「そのときに……、偶然通りかかった男の子がね。
私のことを見て化け物って言って逃げていったの。
それで私は思ったんだ。
この力は使ったらだめなんだって……」

このとき、さやかは親友としてまどかを気遣うべきなのだろうが、彼女はまったく逆のことを考えていた。

目撃者の方ご愁傷様です。
きっと目撃者の人はトラウマになったに違いない。
未だに忘れられないのだろうと、同情にも似た気持ちを抱いていたが、すぐに私には関係ない人だしどうでもいいかと割り切ったあたりが実にいい性格をしていた。

だが、さやかは知らなかった。
幼少時のまどかを見たというのが、彼女の想い人である“上條恭介”その人であることを……。



『きゅっぷい』
どこかの白いナマモノはかわいこぶっても全力で誰にも相手をされていなかった。




あとがき
わけのわからない伏線張っときました☆



[26403] 4%目 新たなる戦士
Name: 士泉◆f9d97fda ID:d9325683
Date: 2011/03/09 22:42



「な、なんにせよ、これからは一緒に戦ってくれるのよね?」
いろいろと突っ込みどころ満載であったが、まどかが強力な力を有し、戦力になる以上は割り切ろうとマミは微笑む。

正直、状況適応能力パネエ。
さやかは本気で思ったが、お前もお前で中々負けていないということに気づいていないのはきっと幸せなことだろう。

もしかしたらまどかのマッスルパワーに刺激され、すべての人間の中に備わるマッスル力が芽生え始めているのかもしれない。
女子力の強化とかと同じように。

「はい!
本当はこの力を使うのは怖かったけど、マミさんもさやかちゃんも受け入れてくれたから……。
私がんばるね!」
涙すらにじませ、心の底から嬉しそうなまどか。

嬉しそうなのはいい。
それはいいんだが、さやかとマミは一つだけ言いたかった。

『受け入れてねーから』×2

『さやかさん、世界はいつだってこんなことばかりね。
ふふ……』

『その一言に集約できるマミさんってやっぱパネエっす』
マミとさやかのみのテレパシーでの会話。

『そうかしら?
だって、私もう寂しくないもの。
一人じゃないってすばらしいわね』
さきほどからずっと浮かべているマミの笑みはさやかにはやけくそにしか見えない。

簡単に言えば、もうどうにでもな~れとでもいうべきであろうか。
私はもう一人じゃないのよ。
もう一人で戦わなくてもいいのよ。

自己暗示乙。

たとえパートナーがマッスルでもまどかさんはまどかさんですもの!
……思い込みの偉大さを知った今日この頃であった。

やはり魔法少女というのはどこか思考が似かよるのか、ほむらもマミも思い込みによって精神の安定を図っていた。
きっと仕方ないとはこういうときのために使う言葉なのだろう。
日本語って便利なんですね。

冷静そうに見えてもマミの思考は混乱したままであった。

さやかはさやかで多くは突っ込まない。
誰だって自分のみが可愛いのである。





その頃、某病室では……。

「どうして動かないんだ!」
一人の少年……、上條恭介が事故によってまともに動かせない腕を見て憤っていた。

「もうバイオリンはできないのかな……」
何度試みてもまともに動かない腕を放り出し、天井を見上げて過去を回想する。

それはまだ今よりもずっと幼い頃の出来事。
恭介にはかつてあこがれた人がいた。

川に溺れていた猫を助けようと走って駆け寄ろうとしたとき、見知らぬ少女が“たくましい筋肉を有した腕”で川を割っていたのだ。

そして、モーゼのように割れた水の間を走って猫は逃げていった。
それはまさしく神の所業。

思わず彼は化け物と言ってしまったが、あれは今考えれば照れ隠しのようなものだったのだ。
恭介はあんな風になってみたいと思った。
誰かを助けられるような力を身につけたいと思っていたのに、どうして忘れていたんだろう。

それは間違いなくトラウマを忘れるために本人の無意識による防衛反応であるが、思い出というものは美化されるものであり、劣化した記憶はとても都合の良いものになっていた。

本人は気づいていないが、憧れたというのも全部錯覚である。
恐怖心がいろいろと重なって上書きされただけであった。

身もふたもない言い方ではあるが、人が恐怖に屈服するのと同じようなものであった。
もう回想シーンからして突っ込みどころ満載なのだから、いまさら小さいことを気にしたら負けである。

事実、その間違いだらけの記憶を証明するかのように、彼が実際に見たまどかの上腕の太さはほとんど巨大な丸太に近い太さであったが、思い出の中の記憶ではせいぜいシュワちゃんレベルになっている。

それでも十分不気味であるが、人外でないだけマシなのだろう。

「僕にあれくらいの筋肉があったのなら!!
くそ!」
なぜその結論に至ったのか、小一時間議論を交わしたいところであったが、今彼の近くに突っ込み役がいないことが酷く悔やまれた。

「上條くん……」

「……先生?」
気がつけば、扉のそばには恭介の主治医が立っていた。

「悪いと思ったが、キミの覚悟は聞かせてもらった。
キミが望むのなら腕を動かせるようにさせることができるのかもしれない」
あまりにも突然の医師の言葉に恭介は絶句する。

「ほ、ほんとですか!?」
我を取り戻すと同時に噛み付くように医師に詰め寄る。

「ああ、だけどこれにはリスクがある。
腕は間違いなく動かせるようにはきっとなる。
けれど、もしかしたらキミの身体が元の体格とは変わってしまう可能性もあるんだ。
それでもキミは……」

「愚問です。
もしも確実に腕が動かせるようになるのならば!」
恭介の瞳をじっと見つめ返した医師はゆっくりと頷き、水筒のような筒を取り出す。

「これは“ドーピングコンソメスープ”というものだ。
覚悟があれば受け取るといい」
マッスルに憧れた医師の努力の結晶。
後に彼はこの薬を以ってとある世界プロジェクに携わることになるのだが、今はどうでもいい話であった。

そして、恭介は…………。







あとがき
QB「わけがわからないよ」
俺にもわからないw




[26403] 5%目 好敵筋肉
Name: 士泉◆f9d97fda ID:d9325683
Date: 2011/03/10 14:30
5%目 好敵筋肉


今日はまどかたちは魔女退治にやってきていた。
言ってみれば今回がはじめてのコンビでの魔女退治であり、まどかは魔女たちを相手に筋肉を振るっていた。

結果を一つだけ言うならば、マミのソウルジェムに穢れは一切ない。
その一言に尽きる。

「魔女ってこんなに脆いんですね」
まどかの無邪気な声が魔女よりも怖いと思うさやかとマミであった。


同時刻。

「へえ、あいつやるじゃん」
ビルの上から一連の戦闘を見ていた赤髪の少女……杏子はまどかの見事な、芸術ともいえるほどに昇華された上腕二頭筋を見て呟く。

「……けどさ」
お前はナンバー1じゃねえ。
杏子は猛獣のような気配を纏い、ビルの上から飛び降りる。

「うっらあああぁぁ!
邪魔するぜぇ!」
上空から飛び降りたにも関わらず、ほとんど着地音すら立てずに立っている少女。
まどかも、マミも、さやかも彼女がどんな存在であるかはすぐにわかった。

「あなた、私の獲物を横取りに来たのかしら?」
少しばかり物騒な物言いで戦意を滲ませるが、マミは口調を崩さずに問う。

「わりぃけどさ。
巴マミ、フヌケちまったあんたには用はないんだよ」
にぃと好戦的な笑みを浮かべた杏子はまどかの方に向き直る。

「あたしが用があんのはあんただ。
鹿目まどか!!」
びしぃっと指をさされて宣戦布告。

「え?
え……、ええ!?」
急な展開についていけずにおろおろと戸惑うまどか。
一見するとか弱い少女が気の強い少女に絡まれてあたふたしてほほえましい光景であるが、事実はそんな生易しいものではない。
彼女はこの中で最も高い戦闘能力を持っているのである。
それこそ、まどかを倒したいのなら一個師団でも投入しなければ戦いにすらならない。

口にこそ出さないが、マミとさやかはこいつ死んだなと、早速冥福を祈るほどであった。

「あんたさ……」
口元に好戦的な笑みを見て皆はごくりと息を飲む。
緊張感が張り詰める中、ためをもって再び口を開く。

「……いい筋肉してんじゃん」

……また変なのが現れた。
マミとさやかの心は一つであった。
そして、誰も気がついていないが、いつもどおりまどかのストーキングをしていたほむらも同様に心を一つにしていた。

「あ、ありがとう……」
誰よりも戦闘能力が高いくせにおどおどするのは相変わらずで、この場における主導権は杏子といってもいい。

「あたしの名前は佐倉杏子だ。
もうわかってっと思うけど、あたしもマミと同じ魔法少女だ」
緊張感の欠片もなく、懐からブロック栄養食を取り出し、がりがりと噛み砕いていく。
常になにかしら口にしていないと落ち着かないらしい。

「それで、私になんの用が……」

「そう焦んなって。
……食うかい?」
まどかの質問を遮り、手にしたブロック栄養食を差し出す。
箱には“プロテインメイト”と書かれていて、略してプロメは今世界中のマッスルたちに愛されている大人気のヒット商品であった。

「ありがとう」
その姿を見ていた傍観者三人はそれ以上筋肉つけてどうすんだよと思うが、やっぱり怖くて口に出せなかった。

「さてと、腹ごしらえも済んだことだし、殺りあおうぜ!」

「危険だからやめなさい!」
槍を構え、攻撃態勢に移ろうとした杏子を止めたのはマミであった。
何が危険かは言うまでもない。
彼女たちはまどかが怪我をするなどと微塵も思っていないし、逆にまどかを傷つけられる相手がいたら見てみたいと思うほどである。

「そんなの関係ねえんだよ!!」
静止を振り切り、猛烈な踏み込みでまどかに紅い槍を振るう。

「ぬるいよ」
振るわれた槍はいつの間にか膨れ上がった筋肉によってせき止められ、まどかの腕には傷一本ついていなかった。

「こんなものならいくらやっても無駄だからやめてくれないかな?」
マッスルにしては比較的平和主義のまどかは親切のつもりで忠告をする。
事実、この程度の攻撃ならば20%も必要ないのでだから。

「はっ……、やっぱこのままじゃ無理か。
見せてやるよ。
あたしがキュウベエと契約して得た力をさ!
はああああぁぁぁ!!」
瞬間、杏子の身体から強烈な波動が湧き上がる。

「まさか!?」
それはまどかにとって慣れ親しんだ波動。

「筋力の強化ができるのがあんただけと思うなよ!!」
大気が震えとともに、彼女の肉体がぼこぼこと肥大し、筋肉が波打っていく。

「そう……、それが杏子ちゃんの魔法少女としての力なんだね」
まどかもまた、筋肉のギアを入れ替えていた。
肉体が、筋肉が、本能がこのままでは負けると警告してるのだ。

「それなら、私もそれ相応の力を魅せないと失礼だよね。
……50%」
ドンっと、大気が爆ぜる。
まるでまどかを中心にした爆心地ができたかのように足元はひび割れている。

杏子は笑う。
これがあたしの求めていた聖戦だと。

「……第二ラウンドだ。
いくぜ!」
そして、人外の戦いが始まった。

筋肉は筋肉に引き寄せられる。
魔性が魔性を呼ぶように、運命は放ってはおかない。
ゆえに、優れた肉体を持つものは己が宿業を切り開くために戦う運命を課せられる。

そう、これは必然の戦い。
新たなる時代の幕開けに等しいのかもしれない。

天が叫ぶ。
地が唸る。
今ここに……。
筋肉の時代……来たる! 


今……、歴史が動こうとしていた。


『……もうわけがわからないんだよ』
感情がないはずのキュウベエの声が疲れているのは気のせいなのか。
それは誰にもわからなかった。

わけがわからないのも誰にもわからなかった。




あとがき
杏子ファンごめん
マジごめん。
ほんとごめんorz

ちなみに、好敵筋肉と書いてライバルと読むw

ダイ大ネタはついこの間にまた全巻読んでたから導入してみたw
後悔はないw(わかる人少ないかもだけどw



[26403] 6%目 まどか50%
Name: 士泉◆f9d97fda ID:d9325683
Date: 2011/03/11 00:10


「杏子ちゃんはさ……、勘違いしてるよ」

「ああ?」
こいつ、雰囲気が変わりやがった!
杏子はいつしかまどかの纏う空気が変わっていることに気がつく。

そう、まどかは己の潜在能力を解放すれば解放するほど“神に”近づくのだ。
神に愛された才能。
彼女たちは知る由もないが、元来筋肉操作は神に近づく……否、筋肉神・戸○呂になるためのものでしかない。

100%を超えた100%。
そのありえない次元を超えた瞬間、新たなる神の座は作られる。
だが、未だかつて本気を出したことのないまどかは己の運命をまだ理解していない。

ゆえに、まだ彼女は最強足りえないのだ。
人が強くなるためにはライバルが必要である。
しかし、本来なら並びたてる者がいないはずの彼女の下に杏子という存在が現れた。

最強へのステップアップの鍵であるライバル。
今、この瞬間に成長するかの鍵はすべて杏子が握っていると過言ではないことをまどかはまだ気がついていなかった。

もしも、二人の出会いがステップアップのためだということにマミたちが気づいていたらきっと発狂していたに違いない。
気づけないというのはある意味幸せなのかもしれない。

「筋肉はね。
魔法で手に入れるものなんかじゃないんだよ」

「はっ!
そんな綺麗ごと言ってるうちはてめえは甘ちゃんなんだよ」
バカにしたように余裕の口調であったが、よく見れば杏子の指先は震えていた。

あたしが怖がっているだって?!
ありえない。
あたしは強い肉体を手に入れたんだ。
こいつだって潰してやれるんだと、内心で渦巻く不安をぬぐおうとする。

「筋肉は信仰なんだよ。
私がそれを教えてあげる」
瞬間、まどかの四肢の服が吹き飛び、筋肉という筋肉が大きく隆起する。

惜しむらくはここに突込みができる人材がいなかったことだろう。
もしいたのなら、お前の筋肉だって先天性ジャンとでも突っ込んでいたであろうことは想像に難くない。

「こいつはやべえかな……」
逆鱗に触れちまったのかもしれない。
杏子はもしかしたら自分は決して触れてはいけないものに触れてしまったのかもしれないと、いまさらながら思っていた。

「けどさ、おもしろいじゃん。
ここまで嘗めた口聞かれてあたしも黙ってはいられねえんだよ!
はああぁ!」
杏子の右腕部が膨れ上がる。

「破岩弾っんん!!」
瞬間、杏子はコンクリートを拳で抉り、力任せにコンクリートの飛礫をまどかに飛ばす。

「こんなの!
……いない!?
まさか目くらまし!?」
飛礫を拳で消し飛ばし、前を見据えようとして、まどかは杏子を見失う。
当りを見回し、遅れること一秒、ようやく先ほどの飛礫が囮であったことに気づく。

それは時間にしてわずか一秒。
しかし、その一秒こそが致命的な隙を作り出していた。

「気づくのがおせえええ!!
ビッグバンインパクトォォォ!!」
いつの間にかまどかの背に回りこんでいた杏子の渾身の一撃。
“全身に張り巡らされていた全ての筋肉を右腕に集約”し、全ての力を叩きつけた。

戦闘経験の差が明らかであった。
ポテンシャルは言うまでもなくまどかが上であろう。

だが、まどかには戦闘の経験がほとんどない。
最近まで己の力をセーブし、かつ能力を使えば相手になる敵がいない状態であったのだ。
それでは経験になるはずがない。

反対に、杏子は魔法少女として幾たびの戦闘を超えてきている自負と経験が蓄積されているがゆえに、状況判断を誤らず、かつ最適に動くための下地ができていた。
ゆえに、この差こそが戦闘における推移の真相であった。

「きゃああああ!!」
悲鳴と共に数メートル先まで吹っ飛ばされるまどか。
声は可愛らしいが、吹っ飛んでいったのは筋骨隆々のボディービルダーも裸で逃げ出す人型兵器である。

ぶっちゃけ、まともに見てるのが辛い。

「はあ、はあっ……。
どうだあたしのビッグバンインパクトは!」
荒い息を吐き出す腕だけが異様を通り越してホラーなほどに太い姿で胸を張る。

一点集約のせいで全身がマッスルではないので、角度によってはただの少女に見えるのだが、全身像を見ればまるで少女の腕にテポドンが搭載されているのかと見紛うほどであり、心底不気味だった。

見る人が見れば北○鮮の新兵器とでも疑ってもおかしくはなかった。

「このまま終わりじゃないんだろ?」

「当然」
ビルにはりつけにされたまどかは笑った。
経験で負けているのならパワーで上回ればいい。
思考をさらに上のものにシフトさせた。

そして、手加減してごめんと、筋肉を躍動させた反動で磔から逃れて地に足をつけるのだった。




一方、置き去りにされていたマミとさやかは……。

「わーい、怪獣大決戦だぁ」
幼児退行していた。

「ちょ、マ、マミさん!
幼児退行してる場合じゃないですよ!
まどかが本気出したらここら辺一帯が吹き飛んじゃいます!
早く避難しないと!」

とても必死である。
逃げないと物理的に必(らず)死(ぬ)になるがゆえに。

そして、とある町の一角で筋肉大戦が開始されるのであった。
相変わらずカオスである。



『僕と契約して魔法少女になってくれれば……』
『それで勝てるんだったら苦労しないわよ』
さやかは魔法少女への憧れをとっくに捨て去っていた。





あとがき
なあ、知ってるか?
これでもまだ50%なんだぜ……。




[26403] 7%目 マッスル同盟
Name: 士泉◆f9d97fda ID:d9325683
Date: 2011/03/13 22:34


「上條くん、すっかり馴染んだようだね」

「はい!
先生のおかげですっかり動けるようになりました!」
とある病室では、ほんの数十分も前には自力ではほとんど動けなかった少年がベッドから降り、ストレッチなどをして身体を元気よく動かしていた。

「本当によかった。
効果には自信はあったが、なにせ症例が少ないから少し不安もあったからね」
医師は微笑み、自分の研究が間違えていなかったことを悟る。
あのとき、至朗田という男に出会っていなければ私はこの患者を救うことができなかった。

ありがとう至朗田。
キミのおかげで一人の少年の笑顔を取り戻すことができた。
今キミがどうなっているかわからないけど、また会ってお礼を言いたいよ。

医師は過去に思いを馳せて一人の男を思い、感極まったことで瞳から涙が一筋こぼしていた。

「先生……、本当にありがとうございます」
上條は先生に大きく頭を下げ、心よりお礼を言う。

「先生のおかげでこんなに立派な身体になれて、また日常生活に戻ることもできるようになれます。
音楽もできるようになりました。
本当に、本当にありがとうございます」
上條の瞳からも涙が溢れ出し、何度も何度も礼をのべた。

「お礼はもう十分もらったよ。
それよりもキミは早く元気な姿を見せてあげるといい。
さやかちゃんと言ったかな。
いつもキミを見舞ってくれていたあの女の子にその元気になった姿を見せてあげるんだ!」
医師はにこりと笑って上條を促した。

「はい!
早速、さやかに僕が元気になったところを見せに行ってきます!」
上條は病室を出て元気に走り出した。
久しぶりに自分の足で走れる。

それがどんなにすばらしいことなんだろうか。
しかも、以前とは比べ物にならない身体能力。
すばらしい。
すばらしすぎるぞ僕の肉体!
さやかもきっと喜んでくれるはずだ!

胸を弾ませて走る恭介。
微妙に悦が入ってるあたりがとても気持ちが悪かった。



引き寄せられるように街中を走り、見つけたものは惨状であった。

「争いはやめるんだ!」
戦いの惨状を見た恭介は大きな声を上げる。
本来ならば手を出す気はなかったが、そこにはさやかがいて今にも巻き込まれそうであったのだ。

ここで助けなかったら男じゃないと意気込んでいた。
ちなみに、恭介の目ではまどかがあのまどかであることを認識できていない。

さすがに50%解放以上では顔は変わらなくても体格の差異が激しすぎるのだろう。

「その声は恭介?!」
聞き覚えのある声にさやかが声のほうへと振り向く。

「さやか!
助けに来たぞ!」
ありがとう恭介。
本当にありがとう恭介!
けど、どうして恭介がここにいるんだろうと、感謝すると同時に思い……。

「ムキムキだーーーーーーーーーー!!!」
絶叫した。

「しかも、上半身太っ!!
下半身細っ!!」
突っ込みどころはそこではないといいたいところだが、今のさやかにそんな余裕はない。

ちなみに、本来のドーピングコンソメスープならば顔が膨張し、目が血走ってしまうのが難点であったが、それは医師の研究の成果で解消されているため、めっちゃムキムキでも顔だけは上條恭介そのままである。

アンバランスすぎて気持ち悪さは限界突破であった。

「ははは……、まだ筋肉が馴染んでなくてね。
恥ずかしいところ見せちゃったかな」
照れくさそうに頬をかくが、問題はそれじゃないし、そんなものはどうでもいい。

そもそもなんで動けるの?
しかもその筋肉何よ。
まどか?
まどかなの?
嘘よ。
嘘といってよバーニィ。

今回だけは完全にまどかは関係ないのだが、今までの状況から考えると無理もなかった。

「あ、ああ……」
ふるふると震えながら恭介を指差すさやか。

「どうしたんだいさやか……って、ああそうだよね。
まだどうして動けるかを教えてないもんね。
実は、僕の主治医の先生が研究していた薬があって、そのおかげでこんなに健康な肉体を手に入れることができたんだ!
かっこいいだろ?」
実に嬉しそうに笑う恭介の姿にさやかは己の恋心が音を立てて崩れていくのを感じていた。

「詳しいことはあとにしよう。
今はここから逃げよう。
今の僕じゃあのマッスル力にはちょっと対抗できそうにない」
悔しそうにうつむく恭介。

さやかは思う。
マッスル力って何さ。
理解しちゃってるの?
そもそも今の僕じゃってことはもっと進化しちゃうの?
あんな風になっちゃうの?

この場における唯一の普通の人間であるさやかはあまりの意味不明な現実についに気絶してしまった。
きっと精神の防衛反応だろうが、目覚めたときに再び始まる悪夢を思うと不憫で仕方がなかった。

「くそ!
さやか!
しっかりするんだ!さやか!!」
怒りで筋力が膨張する。
さやかの気絶による怒りによって筋力が最大限まで解放される。
これならやつらを倒せると、待っていてくれさやかと恭介はさやかを安全なところに下ろしてまどかたちに向き合う。

「ちくしょう!
よくも!
よくも僕のさやかをやってくれたな!
お前ら絶対に許さない!」
突っ込みどころ満載である。

誰のせいで気絶したのかをまったく自覚していないあたりがかなり性質が悪かった。

「お前らが争いを止めずに、みんなを傷つけてでも戦うってんなら!
それが正しいことだって言うなら!
その幻想(筋肉)をぶち壊す!!」

ここでキャラが違うと突っ込める人は誰もいない。
おかげでさらに舞台は混迷を極めることになる。
もとい、加速した。

そう、偶然にもその場にそろった三人のマッスル。

天然。
魔法。
薬物。

それぞれが違う方法で手に入れたマッスル力は一体何を生み出すのか。

今はまだ誰にもわからなかった。


『そんなのわかりたくないよ』
宇宙契約淫獣はいつもどおり誰からも相手をされていなかったが、マミは優雅にお茶を飲みながら実はキュウベエは最後の良心なのかもしれないと認識を新たにするのであった。

余談ではあるが、ほむらはとっくの昔に逃げ出して現実逃避をしている。
地鳴りが止んだらまた来ようと、一人喫茶店でアフタヌーンティーを楽しんでいるあたりがさすがであり、とても賢い選択だった。







あとがき
これを神回だというんだったら、その幻想をぶちk(ry
正直白状すれば、この回を早く公開したくて仕方がなかったwwww

戦隊モノまであと二人w
天然、魔法、薬物ときたらあと二つは・・・。


地震すごかったですね。
自分のところは震度5強~6弱くらいあってマジで死ぬかと思いました。
ですが、東北のほうはもっとひどかったと思うとこの程度で嘆くのは失礼なのかもしれませんね。
今回、震災に遭われた方の無事を心からお祈りいたします。

そして、無事に難を逃れた方はご無事で本当によかったです。

つらつらと書かせていただきましたが、私にできるのは募金程度かもしれませんが、皆様も復興のためわずかでもいいのでご協力できるようにがんばりましょう。

お目汚し、失礼いたしました。



[26403] 8%目 進化する筋肉
Name: 士泉◆f9d97fda ID:d9325683
Date: 2011/03/14 15:45

彼女はとても負けず嫌いだった。

何も負けたくないから何でもやった。
運動も、勉強も、知識も、容姿も……。

負けると思ったときはさらに努力して彼女は勝ってきた。
今、彼女は二つ欲しいものがあった。

一つは憧れの彼。
友達の好きな人だけど、いつの間にか好きになってしまった。

奪い取りたい。
あくまでもフェアな条件で奪うために容姿をあげるためにはなんでもやった。
後は実行するだけであり、それよりも二つ目の願いのほうが重要だった。

二つ目は身体能力。
過去に見た光景が忘れられない。
そう思うようになったきっかけは数年前のこと。

親友の少女が工事現場で落ちてきた鉄骨をまるでそよ風に巻かれた木の葉のように振り払っていた光景だった。

ショックだった。
内心では何もできない。
とりえのない少女だと思っていた友達が実は誰よりも優れた身体能力を持ち、隠していたことがたまらなく悔しかったのだ。

きっと裏では私を見下していたのだと思い込み、逆恨みをしたのも時間の問題だった。

それゆえに彼女は己が肉体を鍛えだした。
逆に見下すという矮小な願いのために。

だが、願いは矮小でも、彼女の鍛錬は並ではない。
ありとあらゆる近代トレーニングを取り入れ、腕立てや腹筋のような基礎トレーニングは慣れてくれば毎日100ずつ増やしていき、今では毎日の基礎トレーニングは最低1万回を越えている。

それは飽くなき探求と執念だった。
その執念を燃やすことによって数年で彼女の肉体は世界屈指にまで進化していた。

幸いなことに彼女の細胞は特殊なものであり、常人よりも細胞が作り変えやすい体質だったのだ。
そして、幸運だったのは筋肉の質。
普通ならば筋肉というのは膨張し、固まっていくものだったが、彼女の筋肉は見た目はまったく変わらないというのに、筋肉の繊維ミクロ単位での強度を鍛えられるという世にも珍しいものだった。

見た目が変わらないが、その身に蓄えている筋力は常人とは比較するのとはバカらしいほどのもの。
その特性にあえて名付けるなら、“インナーマッスラー”。
この名こそが相応しい。

ある意味、すべてのマッスルの天敵でもあり、冒涜的ともいうべき存在。
そんな悪夢のような身体能力を体現せしものこそが……。




その頃……。

三人のマッスルはそれぞれの様子を伺っていた。

動けない。
それが三人の下した結論だった。

状況は完全に三竦みとなっている。
まどかが本気を出せば一蹴できるとは思うが、今この場において50%以上の力は出せない。

なぜなら、まどかの60%以上の力は周囲に多大な影響を与えてしまうからだ。
その場に気絶したさやかとマミを巻き込んでしまう以上はこのまま戦うしかなく、このままの状態では一対一ならともかくとして、二対一では勝てないのだ。

それならば、まどかは恭介に事情を話して自分はさやかの友達だといえばいいことだったが、彼女のマッスルとしてのプライドが邪魔をしていた。

自分こそが真のマッスル。
真のマッスルならばこの程度の窮地を乗り越えられないわけがないと、わけのわからない義憤に駆られていた。

実に狂っている。

他の二人も同様だった。
杏子も己が最強だという信念ゆえに共闘はありえない。
恭介もまた、ようやく手に入れた理想的な筋肉を得ておいて誰かに頼るなんて恥ずかしい真似はできないと思っていた。

何かきっかけがなければ動けない状態となった三人はタイミングを見計らう。

そして、きっかけは訪れた。
さきほどの杏子の一撃によって吹き飛ばされていた小石が三人の中心に音を立てて落下する。

それが合図だった。

三人は疾走する。

まどかは己が矜持を。
杏子はプライドを。
恭介は怒りを。

それぞれはそれぞれの思いを筋肉にこめてナックルを繰り出した。

ぶつかり合った人外の衝撃がソニックブームすら伴いあたりに伝播する。
誰が勝者なのか。

しかし、誰も倒れはしなかった。
それどころか、三人は誰もその場を動けなかった。

「あらあら、少々手荒い歓迎ですわね」
中心点から響く声。

いつの間にか介入していた誰かは三点同時に繰り出される打撃を己の身体のみで受け止めていたのだ。
それも無傷で!

「一体どういうことだってんだ!」
杏子が叫ぶ。

「なっ!?僕の筋肉が通じない!?」
恭介は動揺する。

そう、驚くのは無理はない。
止めた人物は一見すればただの少女でしかない。
彼らのように見た目からマッスルではないのだ。
それゆえの驚愕。

ただの少女に鍛え抜かれた筋肉が通用しないというありえない出来事に止まっていた。

「……どうして」
だが、まどかだけは別のことで驚いていた。

「どうして……、どうしてここにいるの!
仁美ちゃん!!」

まどかが驚いた真の理由……三人の攻撃を受け止めた人物。
それこそが、志筑 仁美その人だったからであった。

これもまた必然。
マッスルはマッスルに引き寄せられるのは世の必定の常なのだから……。



「さやかさん……。
お願いだから起きてよ……。
お願いだから一人にしないで!」
半端に意識が強いおかげで気絶できないマミは気絶するさやかを必死で揺り動かすことしかできなかった。




あとがき
これを予想していた人はさすがにいないよね?
まあ、たまには見た目普通なマッスルがいたっていいじゃないかw

天然、魔法、薬物、鍛錬。
あともう一人w





[26403] 9%目 四人の戦士
Name: 士泉◆f9d97fda ID:d9325683
Date: 2011/03/15 15:24
「仁美ちゃん!?
どうして仁美ちゃんがここに!?」
まどかの混乱は頂点に達していた。

本来のまどかなら、能力発動中は己の筋肉の自負によってそうそう動揺することはないのだが、自分の絶対の一撃を軽々と防がれたことと、マッスルが一堂に会していることで臨界を突破してしまったらしい。

「どうしてというのなら簡単ですよ。
私も引き寄せられてきたんですから」
にこりと優雅に微笑む仁美。

一見すればただのお嬢様にしか見えないが、その身一つでマッスルの攻撃を受け止めている光景を見れば間違いなく見とれることはできない。

マミは思う。
引き寄せられるって何?
どういうこと?

もしかして、まだ他のが来るの?
もうやだよ。
助けてよ。
さやかさんずるい!
私だって気絶したいのに!

こんなことなら魔法少女になって気絶しにくい身体なんて手に入れなければよかった。
マミは心の底から、かつ本気でキュウベエを恨んだ。

魔法少女の本質を知って恨まれるならまだしも、キュウベエからしてみればとばっちりもいいとこであった。

「上條さんもそうなんでしょう?」

「あ、うん」
怒りに染まっていた恭介の感情が戸惑いに変わっている。
毒気を抜かれてしまったとでも言うべきだろうか。

「上條さんがどうしてそのような素敵な筋肉を纏っていらっしゃるかはわかりませんが、退院おめでとうございます」
こんな状況だというのに、仁美の所作に一切の乱れがなく、育ちの良さが伺える。

「ありがとう」
恭介は恭介で美人であるということと、筋肉への理解があることで好感度は急上昇中である。

「おい、てめえ」

「はい?」
正反対に最も激しい反応を示したのは杏子であった。
杏子はあらゆる意味で仁美が気に入らなかった。

貧乏育ちだった杏子は育ちのよさが伺えることで嫉妬につながり、なにより仁美のような細身な体で己の信じる一撃が防ぐ動作もなく受け止められたのが酷く屈辱的で許せなかった。

「今のはどんな手品だ。
どうやってあたしらの攻撃を防いだ?」

「ああ、あなたは勘違いしていらっしゃるのね。
私は別に何もしておりませんわ」
にこりともせず、ただ事実を告げる。
それこそが、火種になることを知りながら。

「ふざけんじゃ……、なんだこれ……」
激昂し、仁美の腕を捻り上げようとした杏子は呆然と呟いた。

腕を掴んだまではいい。
だが、なんだこの硬さは!
まるで硬度の高い金属を限界まで凝縮したような密度と重量!

ありえない。
これがただの腕一本の重さであるとするならばこいつの体重は一体何百キロあるっていうのだ。

杏子は戦慄する。
一見少女のような姿であってもこいつは同類だと。
マッスルの一角を担うものに間違いない。

「ご理解いただけました?」

「ああ、悪かったな。
あたしはあんたを見た目で判断するところだった。
無礼をお詫びするよ」
それは杏子にしては珍しい謝罪であった。

敬意というのだろうか。
杏子はその並ならぬ鋼の意思によって肉体を作り上げたのだと察し、尊敬に値すると判断したからだった。
それこそ、敵であることが惜しいほどに。

「いえ、誤解が解けたようでなによりです。
それで、どうしますか?」
私に敵対するのかと目が言っている。

「はっ!
んなの当然……」

「するに決まってんだろ!」
「するに決まってますわよね」
呟きは同時。

二人はまどかと恭介を無視して拳を繰り出す。
拳と拳がぶつかり合う。

それは信念と信念のぶつかり合い。

魔法VS鍛錬。
言い換えれば、信仰VS努力でもいい。

どちらが勝つかは意地次第。
さきほどは一点集中していなかったため、大きな威力を持っていない一撃だったため通じなかった。

ゆえに、杏子に手抜きはなかった。
防御を捨て、腕に筋力をすべて集中させる。

仁美は……。
「インナーマッスルって知っていますか?」
微笑んでいた。

「ああん?」
余裕の態度が気に入らないと、さらに力をこめるが、均衡は変わらない。

「インナーマッスルを限界まで鍛えることを繰り返し続けたらどうなると思います?」
ふふ……と、見るものをひきつける笑みを浮かべる。
やっていることはドン引きだが。

「止まらないんですよ。
成長――――――というか、進化?
細胞と繊維が増え続けるんですよ!!」
全身の力を張り巡らし、細胞が、繊維の一本一本が強化される。

「な、なにぃ!?」
拳が押し返される。
悪夢のような光景に杏子は恐怖する。

負けられない。
あたしは強くなきゃいけないのに!
どうして!

『それは仮初の力でしかないから』
どこかから頭の中に声が響く。

『けどさ、あたしにはこれしかないんだよ。
だからさ……』

「負けても負けを認めてなんてやらねえええええ!!」
テレパシーではなく、肉声で叫ぶ。

「見事です」
仁美は杏子を認めた。
その意思を、筋肉への信仰を。

「我が勝利―――――――」
それゆえに、敬意を持って渾身の力で杏子を吹き飛ばしていた。

「魂と共に―――――――――――!!!」
そして、吹き飛ばした身体を“追い抜き”、渾身の一撃で地面にめり込むほどの一撃を振り下ろして杏子を叩き潰すのだった。

ここに一つの決着が終了した。

戦況は新たな様相を見せようとしていた。




『ねえ、マミ……』
「なあに、キュウベエ」
『魔法ってなんだろうね?』










あとがき
ネタがわかる人がいるのだろうか。

関東は放射能問題があるので、皆さんも気をつけてください。
東京、埼玉、神奈川、茨城あたりのガイガーカウンターが朝から急上昇し始めているので、お互いに対策は忘れないようにしましょう。
特に茨城は福島に近いのでお住まいの方はより気をつけてください。

お目汚し、失礼いたしました。



[26403] 10%目 まどか70%
Name: 士泉◆f9d97fda ID:d9325683
Date: 2011/03/16 22:37
「やるね、仁美ちゃん」
地面にめり込み、気絶した杏子を見てまどかは笑う。

とても関係ないが、このとき完全に戦いの舞台から魔法少女の存在が消えてしまったけれど、きっとタイトル負けしていないって信じている。

「ふふふ・・・…、これも全てはあなたと戦うためですわ」
上品に微笑んでいるが、全身から噴出す闘気は隠せていない。

「いい闘気だね。
じゃあ、殺りあおうか」
発音は同じでも使っている漢字が果てしなく物騒である。
さやかが気絶していなかったらお前ら友達じゃなかったのかよと突っ込んでいたに違いない。

「ちょっと待てよ」
だが、二人の戦いに水を差す存在がいた。

「お前ら勝手に始めようとすんじゃねえ。
志筑さん、悪いんだけどこいつは俺に任せてくれないかな」
まださやかがまどかたちのせいで気絶したと勘違いしている恭介は仁美を遮るように前を出て制する。

「でも、私も“彼女”と戦うためにきたのですけど……」
困ったわというように仁美は演技する。

さすがというべきなのか、仁美はまだ一度も目の前に立つマッスル状態のまどかを“まどか”と呼んでいない。

それもこれもすべて恭介が気づいていないからこそであり、恩を売って取り入ろうとする気が満々である。
汚いさすが仁美きたない。

「わるい。
ここは引けないんだ。
借りはあとでいくらでも返すから」
この言葉が聞きたかったと、仁美は内心で笑う。
どうやらマッスルでも恭介のことは嫌いにはならないらしい。

見た目こそ普通でも同じマッスルである仁美にとってみれば所詮は同じ穴の狢ということであろう。

「わかりましたわ。
ご無事を祈ります」
微笑み、恭介から距離をとる。
そのようなことを言っておきながら彼女はまどかが恭介“ごとき”に負けるとはまったく思っていなかった。

仁美は自分がマッスルになったからこそ、まどかの潜在マッスル力が桁外れであることに気づいている。
まだまどかが半分の力しか出していないことをとっくに見抜いていた。

「ありがとう。
……お前が何者かは知らないけど、さやかを巻き込んだことを後悔させてやる!
はあぁぁ!!」
筋力に力を込め、まどかへと疾走する。

「……どうしようかな」
対するまどかは、どうやって倒すかを考えるほどに余裕があった。

いまさら自分がまどかであることを明かしたところで信じてもらえるとは思っていない。
ゆえに、倒す以外の選択肢はないのだが、せっかく治ったばかりのさやかの、親友の思い人を半端に傷つけてしまうのもよくはない。
ならば取れる方法は一つしかなかった。

「……70%」
筋肉が膨張する。
その間にも恭介の拳がすぐそこまで迫っていた。

「もらっ……」
恭介は己の拳が確実に当たったと思った。

「邪魔」
「そげぶぅっ!」
まどかは無造作に腕を横なぎに振りぬく。
気づけば恭介は変な言葉を残してまどかの目の前から消えていた。

その腕を見切れたのは仁美だけだった。

「終わったよ。
仁美ちゃん」

そう、まどかが選択したのは圧倒的な力をもって叩き潰す。
要は、格の差を見せ付けたのである。

それもこれもマミが空気を読んで気絶したさやかを担いで遠くに避難したからであった。
本来なら、70%の力を出してしまえばマッスル以外はその影響を大きく受けて下手をすれば人格破綻すら冒しかねないのだ。

それゆえに、まどかはマミたちが離れたのを狙って筋肉の出力を上げたのだった。
尤も、マミが離れたのは空気を読んだわけではなく、ただ単純に危険を感じたからに過ぎない。
それに、まどかは70%では影響を大きく受けて人格破綻を起こしてしまうと思っているが、真実は間近でまどかのマッスルボディを見てしまえば現実逃避をするか、気絶する以外に自分を保てないからに過ぎない。

決して、戸○呂のように生命を吸われたりするわけではない。
本人が気づいていないのはいいことなのか、悪いことなのか。
なんにせよ、知らぬが仏というものに間違いなかった。

「え?
え……?
ええっ……?」
第三者として離れて見ていたマミはまったく意味がわからない。
瞬間移動?
終わったってなによ。
勝手にキングクリムゾンしないでよ。
視聴者泣かせなステルス戦いしないでお願い。

さっきまで幼児退行していたくせにとても偉そうである。

「お見事ですわ。
まどかさん」
仁美は微笑み、空から恭介が降ってきた恭介を受け止めた。

「ナイスキャッチ」
どうでもいいが、中身はどうあれ、そんな細身で上空に打ち上げられて落ちてきた筋骨隆々な巨体を軽々と受け止めないで欲しいとマミは心から思う。

「目にも止まらない速さで腕を振りぬき、空に打ち上げて気絶させる。
圧倒的な筋力差がなければ・・・…、いえ、あなた以外にはそうそうできない技ですわね」
所詮は偽者のマッスルではこの程度が限度だ。
やはりまどかこそが好敵筋肉に相応しいと、目指した甲斐があったものだと仁美は内心で拍手喝采した。

あなた以外とか、普通に誰もできねえよ。
お願いだから異次元で会話しないで私のライフポイントはもうゼロよ!
マミはバーサーカーソウルの直撃を食らったようにひざを突いていた。

「ほめすぎだよ。
こんなの仁美ちゃんにだってできるはずだよ」
にこりと、マッスルなまどかは微笑む。
本当に不気味でアンバランスな笑みであった。

「さ、お互い“準備運動”は終わりましたし、本番と行きましょうか」
これで準備運動かよ。
酷く突っ込みたい。
だが、それでもマミは必死で耐え続けていた。
ここで突っ込んだらきっと負けよ。

私だけは常識を保ちたいのよ。
もはや信念といっても過言ではない。
実に無駄な信念である。

それにしても、魔法少女であるくせに一番常識人なのはどうしてだろう。
きっと、魔法なんて筋肉に比べたらしょぼいんだね、きっと。
マミはそっと遠くを見つめながら儚く笑みをこぼすのだった。

「うん!」
まどかと仁美は向き合う。
その姿はまるで友人同士が今から遊びに行くように見えるほど穏やかだった。



『もうこの戦いは誰も止められないね。
これはきっと宿命っていうやつなんだろうね』
「キュウベエ……、お願いだから置いていかないで……」
唯一常識的なことを言っていたはずの、最後の良心だとすら思っていたキュウベエでさえマッスルに汚染され始めたことを悟ったマミは本気で涙を流すのだった。










あとがき
さよならQB



仕方ないとはいえ、震災の関係で魔法少女まどか☆マギカの放送休止……。
マッスルゥ……。
もう笑えないよ……もとい、更新するのキツイっす><
ぶっちゃけると、ある程度いったら先がわからないとどう続きを書けばいいのかがわからない。
いまさら、原作沿いもくそもないって突っ込みは禁止ですよw

なにより、モチベーションが一気に落ちたっす。
福島の原発もどんどんやばくなって、ついに水道水に放射性物質検出とかもうね・・・。

お目汚し失礼いたしました。



[26403] 11%目 マッスル神
Name: 士泉◆f9d97fda ID:d9325683
Date: 2011/03/21 13:10
今回は構成を再考していたせいで時間がかかりました。
11話がしばらくないということで、“無理やり”オリジナル展開に持っていきますw
はいそこ!元々原形とどめていないとかいわない!!





11%目 マッスル神




闘気と闘気がぶつかり合う。

にらみ合ったままでありながら、まどか70%と仁美の周囲は歪んで見えるほどであった。
いつぶつかり合うのか、どんな結果をもたらすのか。

友人関係でありながらライバル。
杏子や恭介のような紛い物の筋肉ではない、真なるマッスルを前にまどかは心が躍るのを隠せない。

闘いたい。
闘いたい。
己の力を試してみたい。
二人の心は重なっていた。

だが、その思いが果たされようとしたとき、“空間が歪んだ”

「これはまさか!?」
いち早く異変に気がついたのはマミだった。

「一体何が!?」
まどかたちとは違い、超常現象に慣れていない仁美は戸惑う。
お前の存在がすでに超常の存在だという突っ込みはしてはいけない。
いけないったらいけない。

「まどかさん!
魔女の空間に呑まれます!」
マミは叫んだ。

「……こんな規模ありえない」
よくある漫画の解説キャラクターのようにマミは呟く。

「マミさん……。
下がっていてください。
とんでもないのがきます」
とっさにマミを後ろに庇うまどか。
マミはまどかの70%を間近で見て気が狂いそうになったが、幼少時の楽しい経験を思い出すことで何とか気を取り戻す。
あと少しでマッスルに汚染されるところだったと、別の部分で戦慄していた。

尤も、ある意味ここで汚染されていたほうがよっぽど幸せであったのではないのかと思いもするが、それはまた別のお話である。

「まどかさん。
今は停戦いたしましょうか。
これは一人じゃ厳しそうですので……」
仁美もまた、持ち前のマッスル力で何かとんでもない存在が目の前に顕現しようとしていることに気づいていた。

「……きます」
まどかが呟いた瞬間、異質な空間の中で大爆発を起こしたような衝撃が巻き起こり、すべてを吹き飛ばす。

吹き飛ばされずに耐えられたのはまどかと仁美の二人だけ。
気絶していた恭介たちはもちろんのこと、マミもQBも空間の奥へと吹き飛んでいる。

二人は好都合だと思った。
この程度の衝撃すら耐えられない連中などただの足手まといでしかない。
これは選別だ。
戦う資格を持つのは立っていられる者だけなのだと、まどかと仁美は“目の前に”立っている人物へと視線を向けた。

「……いいねぇ。
実にいい目だ。
それでこそ、俺が呼ばれた甲斐があるというものだ」

いつの間にそこにいたのか。
気がつけば目の前に立っていたサングラスをかけ、すらりとした……だが決してひ弱くは見えない細く鍛えられた体躯を持つ男は笑う。

まどかと仁美はまるで自分が地獄に迷い込んでしまったかのような錯覚すら感じていた。

ありえない。
ありえない。
これはなんだ。
こんなものがあっていいはずがない。

こんな圧倒的なマッスル力があっていいはずがない!

「自分よりも強い者がいることが不思議と言った顔をしているな」
男の言葉にぎくりと二人は身体をこわばらせる。

「身の程知らずなお前たちに手っ取り早く教えてやるとしようか。
これが最強というものだ」
瞬間、全身が果てしない波動にうちのめされる。

ぼこん、ぼこんと男の筋肉という筋肉が膨れ上がる。
まどかの筋肉操作など比にもならない圧倒的なまでの筋力。

「これが……」

ごくりと息を飲んだ二人に冷や水をかぶせるように男は口をひらく。

「勘違いをするな。
これで70%だ」
お前ら二人などこれで十分だと、お前の70%とは格が違うのだと思い知らせているようであった。

「あなたは一体……」
戦慄に身を震わせながらまどかが問う。

「俺は戸愚……いや、この場合はマッスル神といっておくべきか。
まあ、人は俺を“ワルプルギスの夜”と呼ぶがね」

強すぎる力の後には何も残らない。
強すぎる力は畏怖を与え、人々は天災にも似た彼の存在を“神”と……。
マッスル神と呼ぶのだった。




「超展開――――――――――――!?」
『ついにワルプルギスの夜が来てしまった!』
「というか、ワルプルギスの夜ってそんなのなの!?」
『さやか!
早く僕と契約を……って気絶してるから無理だね』
「無理以前に焼け石に水だからっ!!」
いい加減突っ込み疲れそうなマミであった。










あとがき
このSSの裏主人公ってきっとマミさんだと思うんだ。
そして、“彼”が登場です。
五人目は神でしたwwwwwwwwww


ネタはあるから書くのに問題はないし、いつも30分で一話作ってるから時間も問題ない。
だけど・・・、まさか11話が放送されないとは思ってなかったから、この後の展開をどうしようかマジで、いや本気でガチで迷ってるんだ。
このままじゃマッスルエンドになってしまう。
それじゃもはやまどか☆マギカじゃなくなって・・・・・・・あれ?

というわけで、完全オリジナル展開でぶっちぎります。
そのせいでちょっと更新に時間かかりましたw



[26403] 12%目 ワルプルギスの筋肉
Name: 士泉◆f9d97fda ID:d9325683
Date: 2011/03/29 13:42
それは正しく神の具現だった。

まどかたちは知る由もなかったが、ワルプルギスの夜を呼ぶにはある隠された条件があった。
それは四つのマッスルの存在。

それぞれカテゴリーの違うマッスルがその場に揃い、闘うことによってマッスルたちは神と闘う資格を得る。
本来ならば一人になるまで神は出てこないのだが、まどかと仁美の力が拮抗していたからであった。

要はそれだけ二人のマッスル力が桁違いだということだろう。

天然、魔法、薬物、鍛錬……そして神。
四つの触媒を持って神を呼び出し、五つのマッスルが五芒星を描いたときワルプルギスの夜の空間は完全に姿を現すのである。

これは神の選別の儀式。
マッスル神に挑み、その頂に到達した者こそが次代の神となるのである。

空間はいうなれば闘技場。
客席には誰もいないが、古代のコロッセオを髣髴させる空間だった。
ぶっちゃければ、暗黒○術会編のあれである。
彼にとって見ればそれが一番思い入れが深く、空間として形にしやすいからであった。

そして、ここでいつ五芒星を描いたんだよなどと突っ込んではいけない。
そんなものはただの様式美でしかないのだ。

マッスルには不可能はない。
それが答えでもういいじゃないか。
マッスルは条理も常識も吹っ飛ばすからそれでいいのだ。


「まどかさん……」
「マミさん、ここは……」
吹き飛ばされ、少し離れた位置からまどかに声をかけるマミにまどかは声を重ねる。

「あなたに任せて私たちは逃げるわね」
ものっそい良い笑顔だった。
まどかが最後まで言葉を言うまでもなく、すでにマミは背を向けて全力で逃走している。
ワルプルギスの空間がどこまであるのかはわからないが、マミは全力で逃げた。
わき目も振らず逃げた。

ちなみに、律儀にさやかとキュウベエも抱えて逃げている辺りが彼女の人の良さを表していた。

「……逃げるのはやっ!?」
まどかは好都合だと思ったが、とても複雑だった。

「まどかさん……。
ここは共闘といきましょう。
あんなのを街に出したら大変なことになってしまいますわ」
仁美の言葉にまどかは頷き、マッスル神に向かってポージンg……ではなく、構えを取る。

「仮にも俺を呼んだ力を見せてみろ」
首をこきこき鳴らしてマッスル神は笑う。

その笑みはまるで獲物を見つけた獣のようで、二人は冷や汗が吹き出るのを止められなかった。




その頃……。

「まさかこんなに早くワルプルギスの夜が現れるなんて……。
でも、今まで見てきたのと全然違う。
どういうことなの……」
魔女の出現を察知し、魔女空間の中に飛び込んできた久しぶりに登場するほむらは呟く。

ほむらの呟きはとても今更だった。
そもそもまどかたちがマッスル化している時点でいろんな意味で違いすぎるうえに、マミに言わせれば、この程度で驚けるなんてうらやましいわとでも言うに違いない。

だけど、ほむらには何かがひっかかるのだ。
違いすぎるのもそうであるし、そうでもないといえる。
わけがわからない感覚だが、ここで介入しないという答えもないというのもまたたしかであった。

「これは……」
魔女の空間に飛び込み、見えたのはありえない光景だった。

中世の闘技場を思わせるコロッセオの中ではありえないほどの殺気と強者のオーラを放つ存在がいる。
その相手というのが魔女ですらないまどか……でいいんだよね?

あまりにも自分の知るまどかと違いすぎてほむらは首をひねる。
あれは筋骨隆々の体にまどかの頭を乗せただけだという冗談のほうがよっぽど信じられるが、とりあえずはまどかだと思っておくことにした。

そして、問題はもう一人の存在だった。
ほむらは大した関わりはなかった。
だが、まどかの友達としてその存在はよく知っている。
彼女のおかげで以前のループでは大変なことになったこともあったのだから覚えてないほうがおかしい。

「どうして志筑さんが……」

ありえない。
何がありえないというのかは言うまでもなく、ここにいるということであるが、それ以上にあんな細身なのにどうしてまどかやあんな筋肉の化け物と張り合えているのだろうか。

インナーマッスルの存在を知らないほむらは自分の常識ががらがらと崩れていった音を聴いた気がした。
尤も、インナーマッスルを知っていてもあんな常識外のインナーマッスルなど普通はありえないので常識が崩れているのも決して間違いなどではないのだが。

それに、どうして上條恭介がここにいるのだろう。
あれってたぶん上條恭介だよね?

ほむらは自分の記憶が信じられなくなりつつある。
何度のループでもほとんど関わりがないので記憶があいまいなのである。

しかし、病人だと聞いているうえに、あんなにもマッスルではないはずだ。
いったいどういうことだろうか。

それにまだ異常は終わらない。
なぜか佐倉杏子が倒れている。

倒れているだけならまだいい。
きっと負けたのだろうと思うだけである。

だが、どうして。
どうしてあんなに異様にど太い腕を搭載しているのだろう。
彼女の魔法は槍に関するもので、決して筋肉ではなかったはずだ。

「もう……、どうでもよくなりそう」
ぶっちゃけ、ほむらは帰りたくなった。


「うるぅああああ!!!」
コロッセオの中心から聞こえてくる野太い声。
それだけで帰りたくなる。

どうして拳を地面に叩きつけるだけで局所的な地殻津波が起きるのだろう。
隕石?
隕石なの?

「もう心が折れそう……」
まだ何もしとらんがな。
残念ながら突っ込みはない。
もはやその程度で反応するほどマミの突っ込みは安くはないのだ。





『ワルプルギスの夜、それは神の降臨なんだ。
四種のマッスルが揃うことによって……』
「もう私には味方はいないのね……」
キュウベエの汚染された解説を聞き流しマミは空間のすみっこでひざを抱えて泣き続けるしかできないのだった。








あとがき
ほむほむ




[26403] 13%目 神々の筋肉
Name: 士泉◆f9d97fda ID:d9325683
Date: 2011/03/23 14:11

まどかと仁美は攻め手を見つけられないでいた。
圧倒的な圧力……もとい、肉圧。

その膨れ上がる筋肉は芸術とでもいうべきなのだろうか。
もしも敵として合間見えたのではなければ二人はきっと見とれていたに違いないと思う。

当然だが、そんなものは一般人の感性ではないため、マミやほむらには永遠に理解できない。

「来ないのかね?
……ならば俺から行かせてもらおうとするかねっ!!」
ぼこりと、マッスル神の右上腕部が膨れ上がり、体重を乗せた拳がまどかと仁美に向かって振り下ろされる。

どちらが狙いなんだと、見切る必要すらない。
当たる以前にその風圧と圧力にぞくりと背筋が粟立ち、二人は弾かれるように飛びのく。

そして、振り下ろされた拳は地面を叩き割り、礫となって飛びのいた二人に向かって散弾となって襲い掛かる。

以前に杏子が使った破岩弾などとは比べものにならない。
ただ無作為に拳を振り下ろし、地面を抉っただけだというのに、指向性をもって放った杏子の散弾よりも数段上だとはいかなる冗談であろうか。

「そんなにぼうっとしたままでいいのかね?」
今度こそ、まどかは冷や汗すら出ないほどに驚愕した。

全身のあらゆる器官が警告を上げる。

全力で飛びのけ!
四肢の全てを使って獣のように力をこめる。

「ああああああっ!!」

咆哮と共に転がるように飛びのき、僅かに遅れて拳が通り過ぎ、彼女の腹部を摩擦によって“焦がしていた”。

そこでようやく自分の背後にマッスル神が迫っていたことを知る。
なんという速さ!
なんという筋力!

礫を弾き飛ばし、わずかにマッスル神から視線が逸れた一秒にも満たない時間で回り込んでいたというのか。
それはあまりにも圧倒的な能力。

「いい反応だ。
それでこそだ。
ではこれはどうだ?」

追撃は止まらない。
体勢を崩し、まどかには攻撃を避けるすべはない。
ならば取れる方法は一つしかない。

「マッスルガード!!」
体を丸めて、顔の前に膨張した腕の筋肉で壁を作る。


『名前負け―――――――――――――――――――――!?』
『あれはマッスルガード!?
発達した上腕を顔面の前に構えることによって……』
『キュウベエ黙れ』

どこかでマミっぽい人が突っ込んで、キレていた気もするが、気にしてはいけない。
マッスルガードといえばマッスルガードなのだ。
ただのピーカブースタイルじゃんなどと突っ込んではいけないのだ。


「ぬうぅん!!」
マッスル神の容赦のない一撃。
盛り上がった筋肉を持って拳をたたきつける。

ただそれだけの動作が必殺となりうる一撃をまどか筋力を強化した腕で受け止める。

「ぎぐぅぅう!!」
なんという威力か。

全身の骨と筋肉がきしむほどの圧力。
完全に威力を殺しきれずにまどかの身体はおもしろいように吹っ飛ばされた。

「ようやく隙を見せましたわね」
まどかがふっとばされる瞬間、そんな言葉が聞こえた。

「食らいなさい!」
小柄な仁美はマッスル神の影から出てくるようにして、全身のばねを使ってアッパーカットのように打ち上げる。

『スマッシュ―――――――!?』
またもマミの絶叫。
すでに解説員と化している気がするが、気にしたら負けだ。

そう、仁美はずっとチャンスをうかがっていたのだ。
まどかがやられそうになっているのを好機と見て、隠れて一撃を叩き込む隙を狙っていた。
汚いさすが仁美きたない。

「ふふふ……、千堂さんのウィニングショットのお味はどうです?」
その一撃はやはり並ではない。
いくら小柄といってもインナーマッスルによって常識外の筋力を持ってもたらされた無防備での一撃はさすがの彼の身体をもってしても宙に浮かぶほどであった。

だが、裏を返せばそれだけである。
常人ならばらばらになってもおかしくないほどの仁美の膂力を持ってして、僅かに宙を浮かす程度の結果でしかない。

「軽いねぇ……」
こきこきと首を鳴らして仁美へと対峙するマッスル神。

「うそ……」
呆然とこぼす。
勝てない。
仁美は悟った。

今のは自分にとって最高で最善の一撃だった。
だというのに、余裕すら見せている。

これは無理だ。
生物としての格が違うと思い知らされた。

「あ、ああ……」
仁美は無意識に後ろへと後ずさり、その腕は僅かに震えている。

「心が折れたか。
残念だ。
お前は退場だ」
無慈悲なまでに圧倒的で暴力的な一撃が振り下ろされた。






『なにこのシリアス展開!?』
『マミ、だからキミは空気が読めないって言われるんだよ』
『キュウベエにダメだしされたっ!?』
マミは今日も元気だった。


「ほむら、現実を向くのよ……。
あれが現実なのよ……ほむらふぁいとー」
ぶつぶつと呟き、自己暗示を必死に掛けるほむら。
ほむらはほむらで目の前で展開される非常識を受け入れるのにはまだまだ時間がかかりそうであった。

マミと合流して精神の均衡を保つのか、それともいろいろと諦めて戦闘に参加するのか。
ほむらの運命はどちらにしても進退窮まっているのだった。






あとがき
さすがに圧倒的。
もうちょい戦闘続きます。


書いてて思った没ネタ
没シーン↓

「心が折れたか。
残念だ。
お前は退場だ」

「私の心はずっと前から折れてるわよ!!
もうお願いだからやめたげてよぉ!」
それはマミの魂の咆哮だった。

……だからどうした。
世界は無慈悲だった。


ふと思ったんだが、この汚ぶt…もといSSはその他版に移すべきなのだろうか。
それとも、完結してから移したほうがいいのか。
教えてエロい人!w



[26403] 14%目 まどか80%
Name: 士泉◆f9d97fda ID:d9325683
Date: 2011/03/24 18:42


僅かの間、まどかは間違いなく気を失っていた。
かつてない衝撃に脳を揺さぶられ、落ちていたが、それは決して恥ずかしいことではない。
むしろ、気を失っても原型をとどめ、ほとんど傷という傷を負っていないのがありえないのだから。

「うぅ……、仁美ちゃん……」
まどかは身を起こし、目の前の光景に絶句しそうになった。

目の前では“あの”仁美が恐怖に慄き、今にもマッスル神によって殴殺されそうになっているのだ。
たとえ敵対していたとはいえ、まどかにとって仁美は大事な友達であり、好敵筋肉。

その彼女が目の前で失われるなど許せるはずがない!

「うわあああああ!!!
80%ォォォォッ!!」
筋肉が倍化し、進化する。
80%はまどかがまどかでいられる限界ぎりぎりのフォーム。

これ以上の筋力操作はまどか自身どうなるかはわからない。
ゆえに、これで決めなければならなかった。

「はぁっ!!」
足の筋力を叩きつけるようにして、ロケットのごとき速度でマッスル神へと飛び、全力で拳をたたきつける。

「何っ!?」
突然の不意打ちにマッスル神は吹き飛ばされ、地面を数回バウンドする。
まどかの手はそこで止まらなかった。

「はああああぁぁぁ!!
どらららららら!」
とてもいまさらで突っ込むのすら無駄であるが、女性とは思えない声で地面に転がったマッスル神の全身を叩き潰す勢いで拳を振るう。
そのあまりの圧力に地面がへこみ、クレーターと化していく。

「……これがまどかさんの本気」
仁美はまどかの底力に戦慄する。

自分はこんな規格外の人間に戦いを挑もうとしていたなんて。
己の修行不足を思い知らされた気がした。

「もう、私では戦いに介入はできませんわね……」
まるでフリーザ戦のときのピッコロのように、魔人ブウ戦のべジータのようにまどかの戦いを見守る。

「……あなたがNO1よ、まどか」
いろいろ突っ込みどころが満載な展開だが、とりあえず三つ巴の戦いはいつの間にか一対一へともつれ込んでいた。

「なんでいつの間にか少年漫画展開!?
マミわかんないっ!!」
そろそろ錯乱してやばそうなのもいるが、そのあたりはスルーである。

キュウベエすら反応していないのだから、真実、今の彼女の相手は誰もいない。
実に損な役回りであった。

「ふぅ……、はぁっ、はぁっ!」
荒く息を吐き、まどかは一旦距離をとる。
これでもダメなら打つ手がない。

「……ここまでやられたのは奴以来か」

「やっぱり……」
当然、この程度で終わるはずもなかった。
クレーターの中から立ち上がってくる人影。
掛けられていたサングラスを失い、何よりも先ほどまでその威容を誇っていた筋肉の鎧が解かれて細身の姿になっていた。

「なに……あれ……」
まどかにはそれが弱体ではないことがわかっていた。
たとえるのならばまるで、臨界を迎えそうになってる危険物のような感覚。

悪寒が止まらない。

「見せてやろう。
神の力をな……」
にやりとぞっとするほど暗い笑みを浮かべるマッスル神。

「これが……」

そして……。

「……100%だ」

絶望の扉が開かれた。






「ねえ、キュウベエって食べられるの?」
『うん、食べられなくはないよ。
僕もたまに自分を食べてるし』
「あ、そうなんだ……」
マミはドブ川の水のような濁った目で現実逃避に勤しむ。

「暁美さんもこっち来ればいいのに……」
だが、犠牲者という名のお仲間に誘うあたりがまだまだ余裕がありそうだった。



「こっちはこっちで絶望的な戦いに身を投じている気がしてならないわね……」
マミを見ていろいろと悩むのはいいが、そうしているうちにもまどかがピンチになっているのに気づいてないあたりが無意識に現実逃避をしているのかもしれなかった。


だが、このとき誰も気が付いていなかった。
誰もが予想しない思わぬ伏兵が目覚めようとしている。

「…………」
その名も美樹さやか!
そう、彼女もまた必死に戦っていたのだ!
このわけのわからない現実で自分の精神と!

安全なところに寝かせられ、誰も見ていないのをいいことに薄目を開けて事態の把握を図り、気を失っている振りを続けようと決めた。
一瞬、マミがこっちを見て縋っているように見えたが気にしない。
気にしないったら、気にしない!

「変ね……、さやかさんが起きていた気がしたけど……」
必死に仲間を探すマミの勘はハンパなく精度が高かった。

ここで気づかれないようにスルーするあたりが汚いさすがさやか汚い。
そんなのマミの壊れっぷりを見てたら当然だなんて突っ込んではいけない。
みんな必死なんだから!









あとがき
ほむほむ迷う。
さやか逃げる。
そして、このナレーター?はどこまで行く気なんだろうってたまに思うww

次回作はさやか魔改造とか、マミ魔改造とかマッスル以外でやってみようかな・・・。



[26403] 15%目 筋肉量
Name: 士泉◆f9d97fda ID:d9325683
Date: 2011/03/25 21:58

「……100%だ」
どくんと、マッスル神の全身が脈打つ。

どくんどくんどくん……と。
鼓動が鳴るたびに絶望感が増していく。

このまま見ていてはいけない。
このまま見守っていたら間違いなく殺される。

それは予感ではなく、確信。
まどかはせりあがる恐怖を押し殺し、マッスル神へと飛び掛る。

「うわあああああぁぁ!!」
気合を入れた声というにはあまりにも恐怖に引きつった声だった。

「くらええええぇぇ!!」
ぼこんと、まどかの右上腕部が二倍以上に膨れ上がり、倍増されたパワーは躊躇なくマッスル神へとたたきつけられる。

「……ふむ。
久々だから加減ができるかがわからんな」

「あ、ああ……」
まどかの絶望感を伴った声が響く。

そう、絶望だった。
渾身の掛け値なしの本気の本気での一撃。
初めて命を奪う気で放った一撃であったというのに、まどかの拳は寸前で100%へと姿を変えていたマッスル神の片手で軽々と受け止められていたのだ。

全身を筋肉の鎧、否……要塞ともいっていいほどに堅牢な筋肉をまとい、今までわずかとはいえあったはずの人間らしさも欠如しているようにも見える体型になっている。

「ふ……」
マッスル神が笑い、受け止めた彼女の拳を握り締める。

「きゃあああああぁ!!」
筋力操作をしているまどかにしては珍しい少女らしい苦痛の声。

拳が砕かれていた。
ビルを殴り、倒壊させても傷一つつかないはずの鋼鉄の拳がいともたやすく砕かれた。

ありえないと、一連の光景を見ていた誰もが思う。
どうしてこのような化け物が呼び出されてしまったのだと、絶望感が漂う。

あの圧倒的な力を持つまどかすら敵わない奴にどうすれば対抗できるのだと、なまじ力を持っている彼女たちは膝を折っていた。

「私はもっと前から諦めてるからもういいわよ」
『マミ、僕は空気を読めといったはずだよ』
「ごめん、キュウベエ」

そんな空気を読めない会話をしてる時点でもう少し余裕あるんじゃね?
などと思わなくもないが、本当に絶望的な状況なのだ。

「さきほどまでの勢いはどうした?
まさか拳を砕かれた程度で戦意喪失などとはあるまいに」

「誰がっ!」
右が砕かれたなら左だってあると、大地をけり、常人には視認することすらできない速度で突っ込む。

「それでいい」
どこかうれしそうにマッスル神は笑う。
まるでいたぶる動物を見るような目で。

「うあぁああああぁ!!」
左の拳を繰り出し、拳を握れない右はひじを使い、隙を与えぬように蹴りすらも使って抵抗する隙を与えない連続攻撃。

「その程度か」
だが、すべては無駄だった。
マッスル神はまるで子供に殴られたかのような痛痒すら感じさせぬ表情と声で攻撃の嵐の中、無造作にまどかの首を掴んで持ち上げた。

「うぐ……、がは……」
苦しそうにうめき、拘束を外そうと必死にもがくが、びくともしない。


『これがワルプルギスの夜だよ。
容赦のない破壊の権化……。
くっ……まどかでさえ通用しないなんて!』
「あのキュウベエ、あなた感情なかったんじゃなかったっけ?」

一週回って大人しくなったのか、マミの突っ込みのキレは格段に落ちていた。
むしろ、ここでワルプルギスの夜っていつもこんなの!?
とか、突っ込むのがマミの役目だというのに、やはり孤軍奮闘の立場は心身ともに弱ってしまうらしかった。

当然、さやかは寝てる振りである。
誰が好んでこんな人外魔境に迷い込んでやるもんかと狸寝入りを続けていた。


「まだ力を隠しているな」
戦闘をしていない第三者たちの漫才をよそにマッスル神とまどかの戦いは一方的な展開が続いている。

「な……んで……」

「本気を出すのに抵抗があるのか?
それとも……」
すぐに殺してしまわない程度にマッスル神は握力を調整する。
彼の望みは決して圧倒的で一方的な惨殺などではないからだ。

拮抗した戦いをしたいという願いを昇華し、神に至ったのが彼の本質であるがゆえにそのまま終わらせるなんてことがありえるはずがない。

「……もしかしてお前まだ自分が死なないとでも思っているのか?」

ぞくりと背筋があわ立つ。
まどかは異質な能力こそ持ってはいたが、かつて彼女の命の危機を思わせた者は誰もいなかった。

そのまどかの今まで働くことのなかった危機感が警告を鳴らしている。

「あ……、ああ……」
瞳から涙がこぼれる。
初めて何かを怖いと思った。
誰も自分には勝てないのだという自信が微塵に砕け散る。

「無様だな。
やはり、“奴”と同じく誰かを犠牲にしなくては目覚めないのかもしれんな。
お前が本気を出さないのなら、そいつ辺りを殺してみせようか?」
マッスル神はへたり込んでいる仁美を指差す。

「う……、うわああああ!!」
まどかの頭が真っ赤に凶暴な色に染まる。
どこにそんな力があったのか、マッスル神の手を強引に外し、左の拳をたたきつける。

「良い怒りだ。
……だが足りんな」
それでも足りなかった。

「もっと怒って見せろ。
それとも、誰かを殺さないとわからないか?」
マッスル神は地面をけり、神速でまどかを振り切り、仁美の前に立つ。

「え?」
そして、仁美は無防備にマッスル神の拳を身に受けて吹き飛ばされるのだった。





「う……、なんか体がだるいわね」
『ああ、それ?
早く結界を張らないと死ぬよ』
「どういうこと?」
マミが小首をかしげる。

『ワルプルギスの夜の本気は弱い魂の吸収なんだ。
よく見るとわかるけど、僕も秒単位で吸われて死んで生き返ってを繰り返しているくらいだからね』
「は?」
マミは呆然とつぶやき、よーくキュウベエを見るとキュウベエの体が数秒に一回透けては映ってを繰り返している。

「ま、まさか……」
『うん、そのまさかだよ』
にっこりとキュウベエが笑う。
急いで結界を張って難を脱したマミは笑顔の獣を捻りつぶしてやりたいと心から思うのだった。

そして、忘れ去られていた狸寝入りのさやかであったが、彼女は彼女でかろうじて永遠の眠りにつくのを逃れることに成功してた。
当然、今度こそ狸寝入りではなくびくびくと身体を震わせながら天国のおばあちゃんとレスリングしちゃうくらいにガチで気を失っているのはきっとマミを見捨てた天罰なのかもしれない。
何度も起きては気絶してを繰り返すさやかも十分被害者であることは間違いなかった。








あとがき
すまん。
今回はきっと微妙だと思うんだ。
彼の最強っぷりを見せようと思ったらギャグをいれにくかった。
しかも、仁美の配役がなんというくわb(ry




[26403] 16%目 覚醒の筋肉
Name: 士泉◆f9d97fda ID:d9325683
Date: 2011/03/26 18:44


どごんと爆音を立てて仁美が殴られ、吹き飛ばされるのを見た。
なすすべもなく、軽々と、まるで人形を殴り飛ばすかのような気軽さで仁美が飛んでいく。

現実感の伴わない光景。
だが、間違いなく現実。

「あれでは死んだかな」
マッスル神があからさま挑発の言葉を吐き、まどかを見やる。

「あ、ああ……うあああああああ!!!」
獣の咆哮。

まどかは自分が許せなかった。
なぜ黙ってみていた。
友人を見捨ててしまったのか。
自分の力は何のためにあったのだ。

頭の中で響いている。
何かがささやく。

力を解放しろ。
すべてを解き放ち、暴力を衝動のまま解き放て!

まどかはこのとき、生まれて初めて本当に本気の殺意というものを得たのかもしれない。
同時に、これこそがまどかの恐れていた感情。

「そうだ。
怒れ。
怒りをぶつけてみろ」

「があああああぁぁ!!」
拳が砕かれているのにも関わらず、衝動のままマッスル神に全力の右ストレートを叩き込む。
それは今までとは比べ物にならない。

マッスル神にあたったその余波で周囲のものが吹き飛ぶくらいである。
かくいうマミとキュウベエもその余波に吹き飛ばされ、パンチラしたり潰れたり、石が頭上に落ちてきてぐおーぐおーと悶絶するさやかがいたりといろいろあったがすごくどうでもいい。

「まだ足りんな。
友を失う恐怖でも足りんのなら徹底的に痛めつけてみるのもありかもしれんな」
限界をはるかに超えた一撃にもマッスル神は僅かに体が揺らぐだけで、まるで痛みを感じることなくまどかに語りかける。

「ああああああ!!」
恐怖を振り払うために逆手で拳を叩きつけようとして、軽く払われ、がら空きになったまどかの腹部にマッスル神の拳が突き刺さる。

「ごふっぅ!!」
たったの一撃。
それだけでまどかの口からは夥しいほどの血がこぼれる。

そして、追撃の一撃がまどかの頭部に振り下ろされようとした瞬間……。

「まどか!!」

……時が停止した。

全てがモノクロになり、何も動かない世界の中でたった一人だけ動く姿……暁美ほむらがいた。
誰がどう見ても絶体絶命の危機を救うべく、ほむらは寸前で時間を停止し、まどかをマッスル神から引き離す。
時間停止中に筋肉で重くなったまどかを動かすのはとても大変だったが、ほむらは必死でがんばった。
視覚的にも、感触的にも、これはまどかの体なんだと言い聞かせて。

きっとマミあたりなら、うんそれ無理とかいってきっとあきらめていたに違いないが、ほむらは必死にがんばったのだ。
実に健気である。

「ぬ……、消えた……。
いや、この現象は……」
時は動き出し、マッスル神は己の拳が突然空を切るのに驚きを覚えるが、過去の経験からどこかで味わったことのあるものだと直感する。

ちなみに、このときほむらは何十と銃弾をマッスル神に撃ち込んでいたが、当然現代の重火器類が通用するわけもないので、詳細は割愛させてもらう。

「え?
何が……、まさかほむらちゃん?」
まどかは確実に自分が死んだと思った。
しかし、今死なずにマッスル神とは別の場所に移動させられ、生きている。

この現象を引き起こせるのは一人しかいない。
彼女は“それを知っていた”。

「時間操作能力か!
小ざかしい!」
マッスル神は過去の幾多もの戦闘経験によっていくつかの可能性を割り出し、時間の遅滞、もしくは停止だと気づく。

この経験こそが彼の力を支える骨子でもあり、最強足らしめる要素であった。
過去に似たような能力をもった存在と戦ったことがある。
その経験から導き、最適解を瞬時に出してマッスル神は邪魔なほむらを屠るために動く。

その速さは正に神速。
視認などできない。

そう、たしかにほむらの持つ時間操作能力は最強に近い能力の一つであろう。
だが、最強ではない。
あくまでも最強に近い能力でしかなく、欠点は時間を操作するには術者の認識が必要とされるのである。

マッスル神が導いた答えもそれだった。
どれほどほむらの反応速度が速かろうと、人間である限り脳髄からの指示や視認してからの反応ではマッスル神の超スピードの前では無意味。

ここが限定された魔女空間ではなく、外界であったのなら逃げることなど容易かったであろうが、ここは違う。
ここは彼の空間。
どこにも逃げ場はない。

それ以上に、ほむらには逃げるなどという選択肢はない。
どれほどに絶望的な力の差があろうと。

「くぅっ!」
時間停止を駆使し、ほむらはかろうじてよけ続けていた。
マッスル神が消えたと思った瞬間に時間停止を繰り返しているが、パターンが読まれ始めているのか、何度かマッスル神の拳がかすっている。

ただかすっただけで、ほむらの腕は赤黒くあざになっており、下手をしたら皹くらいは入っているのかもしれない。
なぶり殺しと変わらないほどの公開処刑。
結果のわかりきった詰め将棋。

己の持つ攻撃手段では傷一つつけられないとわかりきってるのに逃げられない理由は……。

「まどか!
今のうちに逃げて!
私がひきつ……きゃあ!」
時間停止が破られるのは時間の問題。
端から見れば何が起きているのかもわからないが、唯一つこのままではほむらが死ぬという歴然とした事実。

どうしてこんな絶望的な戦いに身を投じることができるのか。
どうして戦えるのか。
どうして私を庇うんだろうか。

“いつだってそうだった”。
ずっと私は守られていた。

だから力がほしいと思ったのに。
力を手に入れたのに。
今立たなかったらいつ力を使うんだ。

「うあああああああああああぁぁぁ!!」
咆哮。
それは恐怖じゃなかった。

何かを吹っ切ったような声。
まどかはほむらの前に立ち、マッスル神と正面から向き合う。

その目は第二ラウンドだと語る。
ここからが本番だ。
今面白いものを見せてやるから待っていろと、にらみつける。

対するマッスル神も何をするのか楽しみなのか、立ち止まって攻撃をやめる。

「ほむらちゃん、ありがとう。
もう大丈夫だから」

「まどか?」
もうまともに動かない片腕を抱え、神経をすり減らし憔悴した表情でほむらはつぶやく。

「私に任せてほしい。
今度は私が助けるから!」

「そんなの無理よ!
さっきだって……!」

「まだ使ってない力がある。
それを解放すればもしかしたら……」
言い募るほむらを制し、まどかは言う。

「まだそれ以上の力があるっていうの?」
さきほどまでのまどかの化け物っぷりを十分に見ていたほむらは信じがたいという表情を浮かべる。
なんとなくまどかならありそうかもと少しでも思ってしまうのはやはりマッスル効果であるのは間違いない。

「だけど、これを使っちゃったら私もどうなるかわからないの」

「そんな……」

「ほむらちゃん……。
もしさ、私が怪物みたいになって元に戻れなくなっちゃっても友達でいてくれるかな?」
80%を解放しているまどかはどう見てももう化け物であるが、それを突っ込むのは無粋というものだ。

「待って!
まだ方法はあるかもしれないわ!
きっと何とかなるから!」
いやな予感が止まらなかった。
ここで行かせてはいけないとほむらの本能が止めろとずっと警告している。

これ以上、人間離れさせてはいけない。
きっと耐えられない。
自分が。

「ごめんね。
ほむらちゃん……。
もうこれしかないんだ」
まどかはほむらの頚動脈を優しく締めて意識を落とす。

「……まど……か、どう……も、と……だちだか……」
最後の力を振り絞り、ほむらは言葉を伝えた。
どんな姿になってもまどかは友達だと。
だからきっと帰ってきてと、薄れ行く意識でまどかを見送った。

今の……80%の姿でも正視できたのだから、きっと大丈夫と己を必死に言い聞かせて……。

「ありがとう、ほむらちゃん。
あんまり一緒に遊べなかったけど、それでも私はほむらちゃんが大好きだよ」
ずっとほむらがまどかを見守ってくれたことは知っていた。
自分に危険がないようにしてくれていたのを知っていた。

だから、あまり能力を使わずに済んだ。
なんでほむらがここまで影ながら助けようとしてくれたのかはわからない。
だけど、理由なんてもうどうだっていい。

私は覚えている。
全てを思い出している。
何度も、何度も繰り返された時間の中でほむらが命を投げ打ち、守ろうとしてきたことを。

だからこそ、力を求め、そして得た。
そう、このまどかの力は全ての次元のまどかの想いによって作られた。

ほむらを助けたいと願う心から生まれた力なのだ。
その力がほむらを守るために使われて何の不満があろうか。

今こそ、真の力を解放するべきなのだ。

私がほむらちゃんを助けたいと思う気持ちに偽りなんてないのだから……。

偽りのない願いが形になる。
ほむらが本当に救いたかったものが何であるかも知らずに……。

「……100%」

世界が鼓動した。




『今、まどかの筋肉はエントロピーを凌駕した!』
「キュウベエ、あなたは本当に遠いところに行ってしまったのね……」
生暖かくキュウベエを見守るマミの目はまるで菩薩のように優しかった。
人はそれを諦念と呼ぶが、この世界において彼女の役割はそんなものである。








あとがき
ムリヤリwww
ほむらがはじめて活躍したんじゃね?
時間操作については適当ですwww

ちなみに、杏子と上條くんの生死についてですが、彼らは無意識にマッスルバリアーを張っているので大丈夫です。
マッスルに不可能はありません!
生きてるんです!
魂の搾取なんかにマッスルバリアーは負けません!!




[26403] 17%目 まどか100%
Name: 士泉◆f9d97fda ID:d9325683
Date: 2011/03/27 13:19


心が驚くほど落ち着いていた。
100%の壁。

過去にどれだけ試しても届かなかった。
否、届かせようともしなかった。

怖かったから。
自分がどうなってしまうのかがわからなかった。

全力を出す機会などないと心のどこかで思っていたから、全力を出してもいいと思える相手に出会うことなどないと思ったから力をずっとセーブし続けていた。

だけど、もう怖くない。
私は本当に強い人を知ったから。
本当に強いというのは力があるからでも、魔法があるからでも、筋肉があるからじゃない。

心が強い。

それを教えてくれたのはほむらちゃんだった。
何度も戦って、傷ついて、約束のためにがんばってきた。
自分を犠牲にしてでも私を助けてくれた。

今度は私が助ける。
すべての問題を解決し、今度こそ幸せな結末を迎えたい。

まどかは心から願い、自分の固まっていた心を解放していく。
怒りを、暴力を求めるのでは決してたどり着けない境地。

100%の力。
己のすべてを一つの力という形にするのはイメージ。

考えてみれば、まどかは今まで己の力の“本質”に気がついていなかった。
まどかの力はまどかのイメージによって左右される。

彼女は勘違いしているが、別にまどかの能力はただの筋肉操作というわけではないのだ。
元々は無色透明だった、他世界のまどかたちの祈りが幼い頃のまどかの“強さのイメージ”……ぶっちゃけると、キン○マンの影響によって発揮する力の方向性が定まったのである。

それゆえに、イメージ次第で能力は変わりうるのだ。
尤も、もはや筋肉というカテゴリーから抜け出るのはマッスル時空的に無理なのだが。

しかし、逆を言えば筋力操作という意味ではいくらでも応用は利く。
その応用パターンは偶然だが、集まってきたライバル杏子の筋肉の一点集約や、仁美のインナーマッスルという内部に筋力を凝縮し、密度を保つ方法。
上條は……とにかく、いろいろと学んだのである。

「もう迷わない」
元に戻れなくなってもかまわない。

まどかはイメージを形作る。

今までのような見せ掛けだけの、筋肉の鎧を纏うのでは意味がない。
必要なときに必要なだけ筋肉を最大限に発揮でき、そして操作できる自分が自分らしく振舞える最高の姿!!

「それこそが……」

筋骨隆々で膨れ上がっていたまどかの体が縮み、ぼこぼこと筋肉が蠕動する。

「私の100%!!」

かっと、まどかは目を見開く。
100%の解放……否、進化。

「……それが貴様の本気か。
くくく……おもしろい!
はははは!」
予想もしなかった100%の形に、同じ系統の能力者でありながら達する形がここまで違うのは喜劇じみているとマッスル神は大声で笑った。

なぜなら、そこにいるのは小柄で、どこにでもいそうな少女の姿であり、鹿目まどかの素の姿そのままだったのだから。
100%の異形を想像していた者ほどこの驚きは大きいだろう。

なおかつ、傷も全て再生してる辺りがチートにもほどがあった。
もう一つ、とてもどうでもいい余談ではあるが、今のまどかはパンツ一丁である。
80%を超えたあたりで服などとっくに木っ端微塵である。

だからといって、そんなものを気にするほど今のまどかに余裕などなく、惜しげもなく堂々とちっぱいを見せ付けている。
マッスル神はマッスル神でロリコンではないし、そもそもこいつ女性に興味あんのかとか小一時間問いただしたいくらいのストイックなマッスルなので気にすることはなかった。

「本当におもしろそうだ!」
マッスル神の目には凶暴な光が宿っていた。
これこそが己が求めていた者だと。

彼にはわかっていたのだ。
見た目など何も意味はない。
今、目の前にいるのは先ほどまで戦っていた者とはまったくの別人であり、その身に秘めたマッスルエネルギーは下手をすれば己すら凌駕しかねないのだと確かに感じ取っていた。


「ねえちょっと!
まどかさん元の姿に戻っちゃったわよ!
どうして!?」
マミの混乱は絶好調だった。
いろいろとメーターが振り切れた彼女は100%の進化でどんな化け物が出てくるかとワクテカしながら待っていたというのに、出てきたのは元の姿のまどかである。
それが混乱しないわけがなく、驚きのあまりキュウベエに尋ねていた。
わかるわけがないというのに。

『マミ、キミは感じないのかい?
あのまどかの中に秘められた桁違いのマッスルパワーを。
先ほどまでとは比べ物になんかならない。
こんなエネルギーが存在するなんて!』

「そんなもの感じたくないわよ」
自分で聞いておきながらまともに答えが返ってくると辛辣になるあたりが微妙に性質が悪いマミであった。



今の、100%のまどかは全ての経験の集大成だった。
ほむらの信念を持って誰にも引かない強い心。
仁美の見た目など関係ない強い肉体。
杏子の繊細で部分的な筋肉操作。

それらの良いところを束ね合わせ、振るうために最適な自分。
それこそがいつもの自分。
鹿目まどかだった。

「試させてもらおうか!」
マッスル神が右こぶしを振るい、まどかが迎撃するために同じく右こぶしをあわせる。

大人対子供の構図。
今のまどかの姿と比べればまるで大木と枯れ枝ほどの差がある悪夢じみた光景。
誰もがその無謀な末路の結果を最悪なものと想像したであろう。

だが、結果は違う。
今までならば一方的に吹き飛ばされていたはずのまどかは微動だにしない。
完全な互角。

力対力で100%のマッスル神に拮抗しているのだ。
このような細腕のどこにそんな無尽蔵なパワーが秘められているのか。

「驚くのはこれからだよ。
はあああぁぁ!」
まどかがぎりぎりと鬩ぎあっている腕に力をこめると、腕がぼこんと“大きく”膨れ上がる。

「なに……?」
わずかに押されだす腕にマッスル神は驚く。

「一点集中――――!!!
せりゃあああ!!」
瞬間、マッスル神が“浮き”、慣性の法則のままに吹き飛び闘技場の壁へと激突し、今度は逆に不敵な笑みをマッスル神へと返すのだった。



「はいいいいいいぃぃぃい?!」
マミの絶叫が響き渡る。
その表情はまるで初めてルフィに攻撃が効かないとわかったエネルのようですらあり、せっかくの美人な容貌が台無しであった。

『ありえない!
インナーマッスルの部分的な強化なんて!?
まさかまどかは法則を変えたのか!?』

「いい加減目を覚ましてよキュウベエ!?
そもそもあの体型であのパワーっておかしいでしょ!?」
ぜはーぜはーと、息切れしながら突っ込む。
このままだと最後まで常識を保ちそうだからマミの精神力は人外なものである。

『マミ、それがマッスル力なんだよ』
なぜか無表情のはずのキュウベエがドヤ顔に見えたマミはむかついて『ティロ・フィナーレ』をぶち込んでおくのだった。

当然すぐに再生してマミの神経を逆なでするのはお約束である。







あとがき
この100%の姿はきっと誰もが予想外・・・のはず。
これがまどかの答えであり、杏子と仁美を出したのはそのためでしたw
上條は・・・オチ?(おい




[26403] 18%目 筋肉の行く末
Name: 士泉◆f9d97fda ID:d9325683
Date: 2011/03/28 08:13

「おもしろい……」
砂煙が舞い、崩れた壁の中からマッスル神の笑みをこらえたくぐもった声が聞こえてくる。

当然、まどかもこの程度で殺れたとは思っていないため驚きはない。

「こんなにも血が騒ぐのは久しぶり……、いや初めてだろうな」
マッスル神の独白。
ゆっくりと起き上がり、歩みよる中で彼の脳裏には過去の戦いが思い起こされている。

過去、最も血が騒いだ戦いは“奴”との戦いだった。
互いの勝利がチームの勝利を賭けた死闘。

だが、それはある意味では純粋な戦いとは言えなかった。
立っていた土俵が違う。
肉体と肉体での勝負ではありえなかった。

ゆえに、不満足な部分もあった。
しかし、今は違う。
互いの体躯に違いはあれど、純然たる肉体のみでの戦い。

小細工の入る余地のない肉体の競い合い。
それが血が騒がぬわけがない。

「はははははは!!!」
高笑うマッスル神。

「さあ、続きといこうか」
「うん!」
まどかは真正面からマッスル神の視線を受け入れ、構えなおす。

もう小細工など必要ない。
必要なのは互いの持てる肉体への信念と信仰。

「うおおおおお!!」
「やあああああ!!」
マッスル神とまどかの掛け声が重なる。

奇しくも二人のファーストアタックは右拳を固めたストレート。
二人の拳は互いの頬に突き刺さるが、吹き飛ぶこともなく次の攻撃へと移行する。

見た目からして、純然たるリーチの差があったが、まどかは持ち前の身軽さと小さな体躯を利用し、飛ぶようにして拳を叩きつける。

マッスル神はリーチの長さを利用して近づけないようにして拳を振るうが、身軽さゆえに避けられるならば自分が食らう瞬間にあわせればいいと戦闘経験から答えを導くことでカウンターを併用した戦闘スタイルへと変える。

「うおおおおお!」
「はあああああ!」

どごん、どごんと、肉を穿ち、破壊する音が鳴り響き、血と汗が飛び散り、壮絶さを増す。
一撃、一撃がぶつかり合い、衝撃波を作り出すほどのそれは空恐ろしいものがあった。

ちなみに、マミのスカートはめくれっぱなしである。
気絶しているさやかとほむらのスカートもめくれっぱなしであるが、すごくどうでもよかった。

二人の戦いはその場からほとんど動くことなく行われている。
互いの意地にかけて一歩も引かない戦い。
互いに刻まれていく傷。

マッスル神も、まどかも二人とも傷だらけであり、さやかあたりの常識を持った者が見れば卒倒しているほどに酷い。

まどかはなまじ少女の姿のため痛々しさが半端なものではない。

裏を返せば、その程度の傷しか負ってないのだ。
二人の両の拳に秘められたパワーは一撃一撃がビルを軽々と倒壊させるほどのものなのだ。

それを百にとどくほど打ち合い、そのほとんどを身に受けておきながら原型をとどめておける二人が規格外すぎるのである。

「これだ。
俺はこれを求めていた」

「私はこんなのは求めていなかったけどねっ!!」
マッスル神の軽口の前にも手は一切休めない。

「そこまでの力を持っておきながらどうして戦いを求めない?」
マッスル神には不思議だった。

己に匹敵する力というのは世界すら左右しかねない力をもっているのと同義だというのに、初めからこの少女は戦いというものをどこか忌避していたように見えた。
それが彼にとっては不可解であった。

「あなたと一緒にしないで!!
私はただ普通に生きて、普通に友達と楽しい日常を暮らしたかっただけなんだからっ!!」
今まで以上の力を拳に込めてマッスル神の顔面に叩きつけ、頭部を揺らす。

「私はもう無理して誰かを助けようなんて思わない!
非日常なんてものは求めない!
そんなものより大切なことを友達が!!
ほむらちゃんが教えてくれたから!!」

右、左、右、左と、秒間数十発もの打撃を隙だらけになったマッスル神の腹部へと叩き込む。

「もう私は迷わない!
揺るがない!
だから、絶対に負けてなんてやらないんだから!!」

魂の咆哮。

「どんな姿になろうと私は私!!
鹿目まどかなんだってほむらちゃんが教えてくれたんだから!!」

完全に己の殻を破ったまどかの魂のこもった渾身の一撃が突き刺さり、マッスル神は初めてひざを突いた。

「見事だ。
その信念、尊敬に値する」
ふっと、遠き日の思い出を回想し、マッスル神は笑う。

「ならば、今度は俺が何を求めたのかを教えてやろう。
お前のように選ばなかった者の、力だけを求めた者の末路を見せてやるよ」
ゆらりと再び立ち上がり、マッスル神はまどかを見下ろす。

見せてみろ。
お前が正しいのならば乗り越えて見せろ。
マッスル神の目は語る。

「……120%」
マッスル神の、力を求め続けた男の信念と狂気はついに限界を突破させた。





「さらに上限あった―――――!?」
『ねえマミ、なんか今のどっかのゴールキーパーが吹っ飛んだみたいな言い方だったね』
「キュウベエなんで知ってるの!?」
すごくどうでもいい外野である。




「ねえ……、もしかしなくても私って忘れられてない?」
マッスル神に吹っ飛ばされ、どこかの壁に突き刺さった仁美さんのライフポイントは真っ赤に点滅していていろいろピンチであった。







あとがき
仁美哀れ。
次回は限界を超えた戦いですw(まだ上あんのかよw

エピローグ入れて、あと二回で完結です。
20回というキリのいいところで終わりですおw

今回は調整回のため短い。スマン。



[26403] 19%目 限界を超えた先の決着
Name: 士泉◆f9d97fda ID:d9325683
Date: 2011/03/28 17:03

「……120%」
マッスル神の筋肉がさらに蠕動し、巨大に膨れ上がっていく。

「それ以上の力は!!」
まどかにもその変貌がどのような意味を持っているかがわかっていた。
彼はこの戦いに命を捨てる覚悟なのだと、限界を超えた先にあるのは自滅。

一時的に強力な力を得たところで長くは続かない。
一種のドーピングのようなものでしかない。

「この身がどうなろうといまさらかまわん。
貴様に勝てるのならばな!」
全身を筋肉が蠢く。

先ほどの100%とは比較にならないほどの圧力。
互角だった力の均衡は間違いなくマッスル神に傾いている。

「きゃあ!」
まどかは見えない弾丸に弾かれ、苦痛の声を漏らす。

「これは!?」
見えない弾丸の正体がわからず、体を固めてガードする。
わずかな腕の隙間から前方を覗き見たまどかはマッスル神が“空気を指で弾いていた”のを見た。

指弾!?
本来は硬いものを弾いて行う技を空気で代用し、弾いてくるなどまどかには想像すらつかなかった。

やはり長期戦になればなるほど戦闘経験の差は著しい。
まどかにもやろうと思えばできることも、圧倒的に強者との戦闘経験がない彼女には思いつきもしないのだ。

「よそ見していていいのか?」
ガードを固め、戦況の打破を考えようとしていたまどかはいつの間にか至近距離までマッスル神に近づかれているのに気がつく。

指弾に気をとられている間に無防備に接近を許すなどなんという不覚。
その思考すらマッスル神からすれば油断も甚だしい。

「しまっ……がふうっ!!」
腹部を殴打され、血を吐き出しながら、たたらを踏む。
ひざを突かなかった自分をほめてやりたいとすらまどかは思う。
思えば、これが100%状態になってからの初めての有効打だったのかもしれない。

なんどか体勢を立て直し、目をむければそこには拳が迫っている。

「くっ!」
持ち前の身軽さを利用しての回避。
頬にかすり、皮膚が裂けて血が噴出す。
その程度の傷などいまさら気にならない。

すでに全身はぼろぼろ。
痣になっていないところなどないほどに殴られた。

多少の傷など気にしたところで意味はない!
これこそが好機!

下手に追い討ちをしようとして勝負を急いだのが運のつきだと、逆境を利用する。
マッスル神の伸ばしきった腕をまどかは“駆け上がった”。

「何ぃ!?」

「えりゃああああ!!」
駆け上がった勢いのまま、全力で、さらに足の筋力を強化して顔面を蹴り飛ばす。
普段、上半身を支えている足の筋力は腕の数倍。
その力を利用できないかと彼女は考えた。

殴っても効かないのなら、蹴るしかない!
単純明快だが、わかりやすく有効な答え。
それがまどかの出した答え。

しかし、まどかには根本的な格闘技能というものが存在しない。
殴るというだけなら、持ち前の筋力を駆使してタイミングよく当てればそれだけで必殺なりうる。
尤も、同格相手ならばその殴打の拙さは致命的であり、マッスル神にも付け入られる隙となってしまった。
逆に、まどかに最適な体の動かし方という知識が備わっていたならばもっと違った結果があったのかもしれない。

それゆえに、彼女は蹴りを確実に当てるために動かなければならなかった。
普通にやっても当てられない。

「もういっちょぉ!!!
これでどうだあああああぁぁぁ!」
ならば限界まで引き付けたうえで蹴り飛ばす!
蹴りによって上半身が揺らいだマッスル神を追い、重力に任せるまま思いっきり逆の蹴り足を振りぬく。

「があああああぁぁ!!」
これにはさすがのタフネスを誇るマッスル神もたまらない。
上半身を崩されたところで、さらに必殺の威力をこめた蹴り。

無防備なところへの二連撃は確実にマッスル神へとダメージを与え、地面をバウンドするように跳ね飛ばした。

「はぁはぁ……。
これでダメなら……」
もう余力なんてわずかしかない。
お願いだから立ってくれるな。

そう、まどかは残り少ないエネルギーのほとんどを必殺の蹴りに込めたのだ。
だからこその威力であり、切り札。
もはやこれを上回る手は存在し得ない。

「見事だ。
肉を切らせて骨を絶つ。
覚悟してもそうできることではない。
女だてらに見事なものだ」

悪夢だった。
マッスル神はゆっくりと起き上がる。

万事休すと、まどかの思考によぎる。
余力なんてものは存在しない。
それでも負けるもんかと構えなおす。

「お前を見てると“あいつ”を思い出す。
その気の強さはそっくりだ」
マッスル神はまどかと正面でにらみ合う。

「なんでもう終わったなんて思っているの?
私はまだやれるよ!」
強がりなのが見え見えだった。

手足は震え、かろうじて立っているようにしか見えない。
けれど、戦意だけは失わない。

「本当にそっくりだ」
敬意を持って、マッスル神は拳を振り下ろす。
これが決着だ。
まどかはそう語る拳の前に目を閉じた。

ごめんね、ほむらちゃん。

がんばったけど、私の負けかな。
悔しいな……。
ぽろりと一筋の涙が零れ、終わりを待つ。

「ん……、え?」
いつまで経っても終わりは来ない。
いくらダメージがあるとはいえ、真正面から拳を打たれてこんなに遅いなんてありえない。

まどかは目を開けると、そこには拳を振り下ろしたまま寸前で止まっているマッスル神がいた。

「俺の勝ちだ」
そう告げたマッスル神の表情は穏やかだった。

「どう……して……」
何がなんだかわからない。
どうして自分は殺されないのか。
ここまでの戦いで彼が容赦などないことはわかっている。
それならば、なぜなのか。

「意味などない。
ただ単純に敬意を表したくなったのさ」
彼が思いとどまったのはただそれだけのこと。
過去を夢想し、“彼女”を思い出したことがきっかけだったのかもしれないが、彼には敬意を表するだけの強さがまどかにはあった。

「マッスル神さん……」
呆けたような表情。
間違いなく、敵に向ける表情ではない。

「そんな顔をするな。
俺はお前の敵でしかない。
だがな、お前は俺の好敵手だ。
初めて戦いに満足した。
こんな充実した戦いは俺が人間であったとき以来だ。
その礼とでも思えばい……ぐっ!
ぐうううぅぅ!!」

ふっと、マッスル神は笑い、拳を下ろそうとしたとき、マッスル神が突如苦しみだし、全身の筋肉という筋肉に亀裂が走る。

「マッスル神さん!?」

「限界を超えたツケというやつだ。
気にするな」
全身を襲う苦痛の中でもマッスル神は穏やかだった。

「あなたはなぜそんなにも力を欲したんですか!?」
まどかにはわからない。
同じだけの力を持ちながら、力に呑まれるということを。

「……ただの意地だ」

「え?」

「だからこそ、貴様には神の座はくれてやらん。
最強の座は俺のものだ。
修行して出直してくるがいい」
にやりと、泣く子が見たら卒倒しそうなほど凄みのある笑顔を見せる。

過去に起きた悲劇の復讐のために力を求めた。
その先に何もないことを、“奴”と“彼女”に教えてもらった。

だけど、それでも今ここで戦いを求めているのはただの意地でしかない。
どんな間違いがあったとしても歩んできた道に後悔はなかったんだと証明したいだけの意地でしかない。
最強であるのはそれゆえでしかない。

「はい!」
まどかは力強く返事をする。
たしかに彼は敵だった。
だが、敵であると同時に尊敬できる相手だとわかった。

「さらばだ」
マッスル神が差し出した手を握り返し、まどかは笑顔を浮かべる。

そして、マッスル神は自壊するかのように粒子となって空間ごと消えるのであった。

「敵わないなぁ……」
まどかの浮かべる笑みはどこか清清しく、とても可愛らしいものであった。





「なんで少年漫画的展開――――――!?」
『マミ、感動的な戦いだったね。
互いの意地と意地のぶつかり合い。
もうエネルギー回収なんてどうでもよくなっちゃったよ』
「意味わかんないけど、なんかさらっと大事なこと言った―――――――!?」
最後までマミはマミだった。

ちなみに、ほむらとさやかは80%まどかに笑顔で追いかけられる夢を見ながら悪夢にうなされていて現状を把握すらしていなかった。

「お願い助けて……」
そして、壁にめり込んだままの仁美は人知れず泣き続けていた。







あとがき
決着です。
実にさわやかなマッスル神でしたw
思い出したのは当然あの人ですw

今回は一挙に二話分更新です。
最後まで突っ走ります!
次回、最終回です。
※最終話の掲載の際にチラ裏からその他板に移動しますので、次回更新はその他の方でお願いします。




[26403] エピローグ 結末はマッスルと共に
Name: 士泉◆f9d97fda ID:d9325683
Date: 2011/03/29 13:42
「ほむらちゃん……、ほむらちゃん……」
ほむらは身体をゆすられる感覚で目を覚ます。

「まどか……」
一番聞きたかった声。
一番に見たかった顔。

まどかが筋肉ムキムキになってる夢を見た気がする。
傷だらけではあるが、素の姿と変わらない様子を見て、夢でよかったと思う。
ほむらは覚醒しきっていない頭で考えているが、残念ながらそれは夢ではない。

「身体には異常がなさそうでよかった。
巻き込まないように気絶させたけど、加減間違えていたらどうしようかと思っちゃった」
まどかはてへっと笑う。
てへじゃねえよ。
しゃれにならないことをカミングアウトすんなと突っ込みたい。

「そうだ!
まどか!
ワルプルギスの夜は!?」
ようやく頭が覚醒し、先ほどまでのことをすべて思い出す。
同時に、マッスルが現実だと思い出して絶望もしたが。

「満足して帰っちゃったよ。
なんかね、互角の戦いがしたかっただけみたい。
私も少しくらいはその気持ちはわかるんだ」
わかるのかよ。
ほむらは突っ込みをなんとか飲み込む。

「じゃあ、まどかはアレに勝ったの?」
アレとはずいぶんな言い方ではあるが、いろんな意味で間違えてないと思える当たりが不思議である。

「ううん、ギリギリで負けちゃった。
けどね、あの人は見逃してくれた。
だからこそ、次は勝つよ!
この100%の力で!」
拳を握り締めて、空に掲げる。
振り上げた瞬間、なぜか上空の雲が真っ二つに割れた気がしたが、それに気づかなかったほむらは果たしてよかったのか。

忘れているが、まどかの今の姿はパンツ一丁である。
パンツ一丁で拳を掲げる少女。
とてもシュールである。

「この100%の力で……?」
それよりもほむらは何か聞き捨てならないことを聞いた気がした。
これだけは聞いておかなきゃならないと本能が聞き返していた。

「あ、うん。
ほむらちゃんには気絶させる前に言ったと思うけど、やっぱり100%の状態から戻れなくなっちゃたんだ。
だから今の私は常にパワー100%状態なんだ。
その証拠にほら」

まどかは無造作にそこらへんに停車している乗用車(2t)を片手で軽々と持ち上げる。
ほらじゃねえよ。
そんなどう反応していいかわからないことを軽々やるんじゃねえよ。

そんな細腕のどこにそんなパワーあるんだよ。
質量保存の法則とかどうなってんだよ。
軽々しく常識突破すんなよ。

ほむらは自分も常識外の魔法少女であるも忘れて、内心で突っ込まないで我慢できる自分を褒め称える。
それより、マッパなのもどうにかしよう。

まどかの裸……あ、ちょっと鼻血でそうかも。
かなりじっと観察して心のアルバムに録画しまくったけど、ばれてないよね。
うん、きっとばれてない。
ばれてないといいなぁ。

人外の力を得たせいで羞恥心もどっかにいってしまったんではなかろうか。
これでは先が思いやられる……と思いもしたが、仮にそうでも世界中の男が襲いかかろうとどうにかできるわけでもないし、心配するだけ無用と考え直した。
すごく自分のことは棚に上げていた。

「まどか、これ着て」
自分の制服の上着を脱ぎ、まどかにかぶせる。
そのせいでほむらも若干薄着になってしまったが、そのあたりは新しく魔法で出して何とかしていた。

「ありがとうほむらちゃん!」
人外のパワーを得てしまったけど、やっぱりまどかかわいい。
まどか最高とか思ってるあたり、この人ってきっと百合っ気があるんだろうなと思わせる瞬間であった。

「でも、まどかが無事でよかった」
まどかの姿がマッスルで固定されなくて本当によかった。
気持ちはわかるが、そこは涙が出るほど喜ぶなと突っ込みたい。

「ワルプルギスの夜も撃退したということは後は私がやることは一つだけね」
ほむらはまどかから視線をはずし、背後に振り向く。

「キュウベエ……いえ、インキュベーター!
これであなたの企みも終わりよ。
まどかはもう魔法少女になんてならない」

『うん、そうだね』
目的を達せることが不可能と告げられてもキュウベエの声に変化はない。
近くにいたマミはこいつ今更なに言ってんだと首をかしげる。
この期に及んで魔法少女なんて何の役にもたたねえよ。

マミの心は酷くやさぐれていた。

「あなたたちの企みが無駄だとわかったのなら、早く自分の星に帰りなさい!
そして、二度とこの星に現れないようにしなさい!」

『うん、そうすることにするよ』

「は?」
まさかこんなにあっさりと言葉が返ってくるとは思わなかったとほむらは呆ける。

『僕のエネルギー回収ノルマはもう達成したからね。
だから、僕はまどかの筋肉がエントロピーを凌駕したって言ってたじゃないか』

「それフラグだったの――――!?」
最後まで突っ込み役をご苦労様なマミである。
もはや彼女のキャラは定着したといっていい。

「え?
ええ?
ど、どういうこと?」

『いやあ、マッスル力ってすごいよね。
まどかたちマッスルの戦いのおかげで向こう数十億年まかなえるほどのエネルギーが生み出されるとは思ってもみなかったよ。
これでいくつもの星が救われるよ。
ありがとうまどか!」

キュウベエが笑顔を浮かべる。

その反応は三者三様であった。

事情を知らないマミとまどかは星に帰れとか何それ?
電波?
電波なの?

首を傾げて、こいつら電波ちゃんだったのとか思っている。
とても失礼な奴らである。

マミは正真正銘知らない。
まどかは他世界のまどかの記憶を思い出せばわかるのだろうが、膨大な量過ぎて頭がパンクしないように普段から逐一情報を取り出せるわけではないためわからないのである。
記憶の検索をかけて心当たりを探しているが、しばらく時間がかかりそうだった。

「う、うん……、こちらこそ?」
それゆえに事情がわからずに返事を返すことしかできない。
マミはマミでもうどうにでもなーれと、いつもどおり思考を放棄している。
すでにそのプロセスはかなり最適化されていた。

マミいわく、諦めているのは慣れているから……だそうである。
実に不憫であった。

「じゃあ、もう魔法少女は生まれないのね?」

『うん、もう必要ないからね。
これからは魔法少女なんかよりも効率よくエネルギーが生み出せるマッスルについて研究することにするよ。
僕の故郷のみんなもそうすることで一致したからね』

何これ。
何この展開。
マッスルって何?
私の苦労っていったいなんだったの?

最初からマッスルに頼っていればよかったの?
ほむらは複雑すぎてひざを突く。

「うれしいのに複雑すぎるわ……」
すごく同情できる瞬間である。
マミがあなたは私の仲間になってくれそうねと、目を光らせていたが、それはどうでもいい話である。

『それじゃ、僕は行くよ。
今残っている魔法少女についてはキミたちに任せるからよろしくね』
キュウベエはそれだけを言い残して今度こそ完全に消え去っていた。
無責任このうえなかった。

どこまで本当のことを言っていたのかはわからないが、なぜか信用できる気がしたのは常識を砕いて踏み割ってきたまどかの影響だろうか。
ほむらは小さくため息を吐く。

「今度こそ、本当に終わったのね」
ほむらが涙を一筋こぼす。
予想外の終わり方だったけど、終わってみれば誰も失っていない。

マミも生きている。
さやかも魔法少女にならず生きている。
上條もマッスルになったが、怪我から復帰している。
杏子も気絶してるが、一応生きている。
仁美もなんとか大丈夫そうだ。

それ以上に、まどかが魔法少女にならず、楽しそうに笑っている。

マッスルになっているが、生きている。
マッスルになっているが、生きている。
なぜ二回言うのかという突っ込みは無粋だ。

それが何の不満があろうか。
ほむらは肩の力が抜けた。

ようやく、長い迷路から抜けられた気がした。
気が遠くなるほど時間を繰り返した気もするし、短い時間だったのかもしれない。

だけど、ようやく終わったんだ。

「本当に終わったんだ!」
クールな彼女にしては珍しくガッツポーズをとる。

「ほむらちゃん!」
記憶を検索し終え、ようやくほむらの喜びの意味を理解したまどかはほむらに抱きつく。

「ぐええっ!」

「全部ほむらちゃんのおかげだよ!
私ほむらちゃんに話したいことがいっぱい……あれ?」
何も反応がないことを怪訝に思い、腕の中のほむらを見てみれば、そこには泡を吹いて真っ青な顔をしたほむらがいる。

「いやあああああ!!
ほむらちゃん起きて――――!!」

「ま……どか……、お願いだ……ら……力加減だけは覚えて……がふっ……」
魔法少女じゃなかったら絶対死んでるって……。
抱きつかれるのはうれしいけど……、生命の危機が……。
ほむらは彼岸に旅立ちそうなのを必死で堪え、ゆっくりと意識を落としていく。

「きゃあああ!
救急車!
救急車呼んでーーー!」
魔法少女に救急車が有効かどうかは知らないが、どうやらまだまだまどかたちの騒動は終わらないようである。


全てが終わり、平和になっても彼女たちが生きている限り物語は終わらない。

そこに絆がある限り、きっと約束はいつまでも果たされるのだから!




“マ”法少女 まどか☆マッスル <了>







おまけ


ただ、彼女たちは知らなかった。
そして、今後も知ることはないだろう。
まどかの祈りのエネルギーの余剰分が世界中に広がり、マッスルたちが無視できないほどに増えていることを。

これもまたマッスルの為せるエピソードかもしれない。

「なあ、あたしたちってすっかり忘れ去られているよな」
杏子は限界まで酷使したせいで動かせない身体で寝転びながら、傍らに転がっている恭介に話かける。

「そうだね、所詮はモブの宿命って奴かな……。
せっかくマッスルになったのに……」

「誰も認めなくてもあたしが認めてやんよ。
お前はナイスマッスルだ」
敗者であっても、同じマッスル同士、分かり合うものがあったらしい。

「ありがとう。
キミも素敵なマッスルだよ。
ぜひ、名前を聞かせてくれないか」

「佐倉杏子だ」
「僕は上條恭介。
よかったら僕と……」

なぜかマッスル同士でフラグが経っていたが、とてもどうでもよかった。
完全に裏話である。



『漁夫の利!?』
『漁夫の利!?』
ついでにどこかで誰かの声が二つほど重なったが、それもどうでもいい話である。


本当に完!








あとがき
これにて終了です。
ご愛読ありがとうございました。
まさかのアニメの11話以降の配信停止でどうなるかと思いましたが、なんとか形にできました。
きれいにまとめられたかは少々というか、かなり自信がありませんが、少しでも楽しめたならば幸いです。

また気が向いたら番外編とかも書こうと思います。
もしかしたら他の作品も投稿するかもしれませんが、そのときはよろしくお願いいたします。
それではまた会う日まで。
※ ブログは定期的に更新しますので、よければ覗いてみてください。

ちなみに、さやかと仁美についてはどうでもいいのでスルーです(おい
後で思い出したマミさんあたりがみんなをがんばって回収しましたw



[26403] 【リハビリ】微アフターストーリー <マッスラブ>
Name: 士泉◆abb720c2 ID:d9325683
Date: 2012/02/07 22:00
微アフターストーリー 『マッスラブ』




「さやかさん……、私は上條さんをお慕いしておりますわ」
それはあまりにもはっきりとした宣戦布告だった。

仁美が仁美である為にも決して避けられない、友達として抜けがけなどできないという正々堂々と戦うための儀式。
さあ、勝負ですと言わんばかりの宣誓である。

「……あ、そうなんだ。
がんばってね!」
さやかはものっそい素敵な笑顔だった。
見ていて眩しくなるほどにどうでもよさそうである。

「え?
私が上條さんをお慕いしているのですよ?」
反論はないのですかと、その顔にはわかり易いほどに書かれている。

「大丈夫!
仁美なら美人だし、何よりもいろんな意味でお似合いだよ!
自信持ちなって!」
バンバンと背中を叩き、激励するさやかに困惑を隠せない。
思っていた展開とちがいすぎると、仁美が戸惑うのも無理はない。

少し前までのさやかなら間違いなくヤンデレモードになったであろうが、今のさやかは違う。
もう弱い自分なんていないんだと言わんばかりのブランニューさやかなのである。

「あの……、さやかさんも上條くんが好きだったのでは……」

「あはは!
何その冗談!
そんなのありえないって!
仁美ったら冗談うまいんだから!」
口では笑っていても、目は全く笑っていない。

これ以上過去の過ち……、黒歴史に突っ込むなとヒットマンのように目をぎらつかせるさやか。
もはや彼女にとっては幼馴染であったことですら消し去りたい事実なのである。

「そ、そうですか……」
「用がそれだけならあたしもう行くね。
恭介のことよろしくねっ!」

清々しい笑顔で立ち去ろうとするさやかであったが、そうは問屋が下ろさない。
噂をすれば影とでもいうべきか、立ち去ろうとしたさやかに覆いかぶさるようにして妙に横幅の広い影が現れる。

「あ、さやか!
こんなとこでどうしたんだい?」
声だけ聞けば実に爽やかである。
声だけ聞けば。

「き、恭介……」
声がひきつるのを隠しきれていない。

「向こう側見たまま固まってるけど、どうしたんだい?」
振り向きたくない。
むしろ視界に入れたくないのだが、そんなのはお構いなしにさやかの前に回り込む恭介。
かなりうざかった。

気分は、さやかは逃げ出した。
しかし回り込まれたという感じである。

「今日はどうしたの?
これからどこか行くの?」
こうなったら早く会話をそらして逃げるしかない。
さやかは腹をくくるのがとても早かった。

ダテにまどかと一緒に行動できていた猛者ではない。
覚悟だけはマミクラスとも言ってもいい。

「うん、実は杏子に筋トレに行かないかって誘われててね」
頬をわずかに赤く染めながら呟く姿はとてもキモい。
想像してみてほしい。
ボディービルダーすらも子供に見える筋肉の鎧をまとった巨大な筋肉男が初な少女のように頬を染めているのである。

たまたま周囲に通りがかって直視してしまった耐性の無い一般人の皆様は激しい吐き気に襲われ、なかには路上に嘔吐するものすらいた。

この程度のことで吐けるなんて羨ましいな。
さやかは遠い目で現実逃避をする。

誰でもいいから助けてください。
さやかは心の底から祈った。

『それがキミの望みかい?』
頭の中に突如響き渡るどこかで聞いたことのある声。

「まさか!?」
星に帰ったはずじゃあと、声のする方へと振り向いてみれば……。

『きゅっぷい!
久しぶりだね、美樹さやか。
僕もようやくマッスル力を理解できるようになってきたんだよ』
そこには以前見た可愛らしい小動物の姿はなく、白い全身タイツに身を包んだ筋骨隆々な謎の生命体がルビーのような真っ赤な瞳を光らせていた。

「世界なんて滅んでしまえ」
さやかは生涯で最高とも言える笑顔で怨嗟と共に今度こそ気絶という最強の切り札をきった。
もうどうにでもなーれ。
奇しくも、この瞬間にさやかはマミと対抗できるほどの現実逃避マスターへと進化する。
だからどうしたと突っ込んではいけない。
彼女も必死なのである。

とにもかくにも、目が覚めたらこの悪夢から目覚めているなら魔法少女の契約してもいいのにと、思いながら……。


だが、さやかは知らない。
マッスル力を理解した今のQBに願ったところでなれるのは魔法少女ではなく、マッスルでしかないことを……。







あとがき
久々なので、軽いリハビリです。
ギャグ少なめでお送りいたしましたw
ちょっとシリアスすぎたかもしれませんね。
すみません。

やっぱりスルーされる仁美と恭介。
これも世界の選択ですw


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