※危険回避のための諸注意※
本作品はオリジナルのエロ小説です。
俗に言う異世界召喚もの。男主人公の一人称で進んでいきます。
エルフの女主人に飼われたり、獣耳メイドたちなんかに弄ばれます。純粋な人間女性は出てきません。
現段階で主人公は受身的ですが、後からどうなるかはわかりません。
作者のリビドーが赴くままに書いていますので、そのうち攻めにまわるかもしれません。※三話でまわりました。
今のところグロはありません。でもおしっこはあります。うんこはないです。
頑張ってエロく書いてるつもりですが、当方未熟ものですので、物足りないかもしれません。
そのときはどうかご指摘やアドバイスください。参考にして、もっとエロくしたいと思います。
もちろん文章自体に関する指摘やアドバイスもお待ちしております。
それから良いタイトルが思いつきません。誰か俺にネーミングセンスをください。
以上、諸注意でした。以下本文です。
1.
「――あっ、くぅ……」
怖気にも似た快楽の波が、俺の背筋を駆け抜けた。
耐えるように食いしばった歯の隙間から、情けなくも色づいた息が漏れる。
目の前には妖艶な裸の美女。長くまっすぐに伸ばされた金髪の一房が、美しい体のラインに沿って薄桃色の乳首にかかっていた。それが奇妙にいやらしい。
女のしなやかで、この薄暗い座敷牢の中でも白く映える指が、俺のペニスを猛スピードで、それでいて巧みに扱き上げていた。
「ふふ……毎度の事ながら、黒は強情よねえ。耐えているあなたのその瞳、潤んでいてとても綺麗。まるで黒曜石のよう」
「黒」と言うのは、女によって与えられた俺の名前だった。黒髪で黒目という純日本人的な特徴から取った安易な名前。無論、本名は別にあるのだが、この女は何度言っても「黒」としか呼ばない。
楽しげに唇をほころばせながら、女は俺の剥き出しの胸板に、その豊満な乳房ごと身体を預けてきた。勃起した乳首がくりくりと俺の肌に押し付けられる。くすぐったくも気持ち良かった。
その拍子にじゃらと、背後で重々しい音が鳴った。その金属音で俺は自身が後ろ手に手錠をかけられていて、更にそれと壁とが鎖で繋がれていることを思いだし、うんざりした。
女はサディステックな切れ長の目で俺を眺めると、唐突に自身の唇を俺のそれに押し当てた。溜めていたのか相当量の唾液が差し込まれた舌を伝って流し入れられる。唾液の海で絡み合う舌と舌。
俺は反射的に彼女の唾を嚥下し、それが引き金となって体をはねさせていた。
女の手の中でビクンビクンと暴れまわり、大量の精を放つペニス。俺は膝から力が抜け崩れ落ちそうなるが、背後の壁に体重を掛ける事で何とか身体を支えた。
俺の舌を舌で弄びながら、女は悪戯っぽく目を笑わせる。「我慢してたのに、いっぱい出たわね」なんていってる目だった。
女はザーメンを潤滑油代わりにして、柔らかくなったペニスをぐにぐにといじっていた。
ぐちゅねちゅとイヤらしい音が耳朶を打って、屈辱と恥辱と決して僅かではない被虐的な快感を、不本意ながら俺に与えていた。
この女と俺とは結構な付き合いになる……と思う。数えていたわけではないし、日の光すら当たらないこの牢の中では時間の感覚も狂っているので正確なところはわからないが、それでも一、二年になるのではないだろうか。
しかしながら、俺はこの女の名前すら知らない。ただ彼女は俺の「ご主人様」であるらしく、俺は彼女の奴隷らしい。
正直なところ、憲法によって基本的人権が保障されてきた日本人の俺にはまったくもって受け入れがたい現実なのだが、ここには人権なんて言葉すらない。
なにせ、ここは、この世界は、いわゆる一つの異世界っていう奴らしいのだ。それもファンタジー系の。
――ああそうそう、どうでもいいけど、今俺のチンコいじってる「ご主人様」は長い長いエルフ耳をしている。
◇
異世界エロ話
◇
俺がどうやってこの世界に来たのか、なんて理由はまったくわからない。
ただ、大学から自分の部屋に帰ってきたとき、異常に疲れていてすぐにベッドにもぐりこんだのは覚えている。
それからふと鼻に漂ってきた獣臭さにうなされながら目を開いたとき、俺は二足歩行する薄汚れた犬の着ぐるみみたいな奴に引きずられ、何処とも知れぬ場所にいた。
視線をめぐらせて見ればどうやらそれなりの屋敷の中らしく、所々に使用人らしい少女(ただしみんな耳が長かったり、獣耳だったり、尻尾が見え隠れしていた)がいたり、素人目にも高そうな美術品が飾られていたり、赤に金糸で刺繍が施された絨毯が敷かれているのが目に付いた。
一瞬状況が掴めずに呆然とした俺ではあるが、まず夢である事を疑い、床を引きずられる事による痛みでそれを否定し、次に俺を引きずる犬に抗議の声を上げた。
犬は早口で日本語ではない言葉をまくし立てた。まったくもって何を言ってるのかは分からなかったが、言葉と一緒に飛んで気た拳が「黙れ」と言っていた。
後から知った事だが、この犬はRPGなんかでおなじみのコボルトだったらしく、奴隷の売買を生業としているのだとか。そして当然俺は商品だった。
やがて応接間らしいところに通されると、銀色のファーを首からかけた長耳女――つまりは俺の後の「ご主人様」だ――が豪奢なソファに身を沈めて待っていた。コボルトは女の対面のそれに腰を掛ける事もせず、やはり日本語ではない言葉を発した。商談の始まりだった。
はじめ女は乗り気ではなかったようだが、コボルトが俺を女の前に突き出し何事かを言うと、途端に興味深げに俺の顔を撫で回し、じっと観察しはじめた。
俺はと言えばこの異常な状況に怯え、かといって逃げ出すことも出来ずにただ震えているだけだった。
そんな俺を情けないと思う人もいるかも知れないが、よく考えてほしい。気がついたらまったく見知らぬ場所にいて、犬の着ぐるみに引きずられ、耳が異常なまでに長い美女の前に突き出され、俺を置いてけぼりにして日本語じゃない言語で会話をし始めたのだ。
びびってしまっても仕方がないと思う。
コボルトとの会話の末、女は納得したのか指にはめていたきらびやかな指輪を外して渡した。コボルトはそれをしばらく眺め回すと、懐に収め、俺を差し出した。
俺が売られた瞬間だった。
◇
当人の意思とは無関係に、奴隷となった俺がはじめにされたことは身体を洗われる事だった。引きずられて来たから汚れていたのだろう。そして「ご主人様」はそれが気に入らなかったらしい。
獣耳がついた四人の使用人(俗に言うメイドだ)が有無を言わせず俺を無駄にでかい風呂場へ放り込むと、その場であっという間に裸に剥かれて、溜められていた水を俺にぶっ掛ける。そう、お湯じゃない、水だ。
あまりの冷たさに悲鳴を上げ暴れるも、やはり日本語ではない言葉をかけ――そのニュアンスは「じっとしてて!」といったところだろう――俺を抑えつける。
そしてあくまで彼女たちは袖をまくりあげると、泡立てたスポンジで俺の身体を隅から隅まで洗い立てていく。
ここでようやく事態についていけてなかった頭がまともな働きをはじめ、俺に羞恥心を思いださせていた。
だってそうだろう? 正直なところ、このときの俺はまだ女を知らない清い体であり、生で家族以外の女の裸を見たこともなければ、俺の裸を女の子に見られた事もなかったのだ。恥ずかしがらないはずがない。
だがまあ、いくら俺が恥ずかしがったところで、四人のメイド少女たちは洗うのを止めはしなかった。
はじめはうつぶせにされて、背中やら足やら頭やらを乱暴に洗われた。それが終わると俺をひっくり返し、仰向けにする。股間にぶら下がる一物が晒されてしまう事に俺は再度悲鳴をあげ、起き上がろうとしたがまったく無駄な足掻きだった。
というのも、この少女たち異常なまでに力が強い。両足を一人、腕をそれぞれ一人ずつの計三人で抑えられているのだが、微動だにすることも出来なかった。
獣耳のメイドたちは皆一様に俺のペニスを見て、そしてくすりと笑った。俺の息子はこの異常な状況に、情けなくも興奮を示していたのだ。
手の空いている一人――この中では一番小柄で、あどけない顔立ちをした犬耳の少女――が、瞳に淫蕩な輝きを灯して、泡にまみれた手をいきり立ったペニスに伸ばしてきた。
ぬるりとした感触が、亀頭を撫でた。
「あ――」
声が上がる。犬耳のメイドはそんな反応を楽しむように笑みをつくると、親指と人差し指つくった小さな環で、俺のペニスをしごきたてはじめた。
くちゅくちゅと音を立て、一往復、二往復と環が動いた。カリ首が指で強く擦られるたびに、俺は吐息のような声を漏らしていた。そして三往復目で、
「くあ」
小さな呻き声と共に、俺は絶頂を迎えていた。童貞の俺には快楽に耐える術などなく、あっけないほど文字通りの三擦り半。高らかに打ち上げられた白い毒液は、俺のペニスを握っていた少女の顔に命中し、幼い顔を汚していた。
何が起こったのか理解できていないのか、少女はきょとんとし、周りのメイドたちがくすくすと笑う。
そして俺の足を押さえつけていた猫耳のメイドが、ついと身を乗り出して、犬耳少女の顔についたザーメンをぺろりと舐めた。
それでようやく事態を把握したらしい犬耳は、顔についた粘り気の強い精液を指ですくいとると、わざわざ俺の顔の前にそれを突き出した。
まさか俺に――!? などとこの先の展開に恐れをなしていたが、犬耳はいまだ精液のこびりついた顔で淫靡に微笑むと、指についたそれを、ちゅるっと吸った。
その行為のいやらしさに、俺が思わず目を逸らすと、萎えかかっていたペニスが生暖かい物で包まれた。
はっと顔を上げると、石鹸と精液が混じりあって付着していた俺の息子に、足を押さえていた猫耳メイドがむしゃぶりついていた。上目遣いにこちらを見ると、からかうように目を細め、ずずずと音を立てて吸引をはじめた。
本当の猫のようにざらついた舌は鈴口にぐいと差し込まれ、歯は甘噛するように裏筋を責めたて、喉奥で亀頭を刺激してくる。
ぐったりとしていた我が息子は、達したばかりだと言うのにたちまち硬度を取り戻し、俺はと言えば無意識のうちに――未だに仰向けのままなのでわずかにではあるが――腰を上下に動かしていた。
「んぐっ、じゅるぶっ、ぐぅ……んっ」
息苦しいのか眉をしかめる猫耳。だが、その奉仕を止めようとはしない。むしろ積極的に更に奥へと銜えようとしてくる。
犬耳から受けた手コキよりも刺激が強い。しかし、それでもまだ射精をしないのは一度出しているからだろう。おかげでこの気持ち良さを長く楽しむ事が出来る。
このときの俺は自分がどうしてこんな目にあっているのかなんてことはすっかり忘れていた。ただ与えられる快楽を一所懸命にむさぼり続けるだけ。
ふと気付くと、犬耳が俺の唇を吸っていた。俺もまた首を上げ、舌をいれることでそれに答える。俺の口蓋を犬耳の舌がなぞり上げ、そのくすぐったさがペニスに与えられるものとはまた違った気持ち良さとなって俺をとろけさせた。
更には俺の腕を押さえつけていた両脇のメイドたち――黄色い三角耳の何処か気の強そうな少女は狐耳娘だろうか? もう一人は大きな丸い耳。ねずみ耳娘なのだろうか、何処か悪戯好きそうな顔をしている――は、目の前で繰り広げられる情事に興奮したのか、息を荒げ俺の手をそれぞれの濡れた秘所へと導いた。
経験のない俺には女を悦ばせるテクニックなんて持ち合わせてはいない。だが、雄としての本能だろうか、後の性交をよりスムーズにさせるため、俺の指先は自身の意思を離れて動いていた。ぐちゃぐちゃとした水音が風呂場に反響し、二人の少女のあえぎ声もまた響いた。
犬耳も口づけだけでは我慢出来なくなったのだろう。唇をはなし、俺の顔をまたぐとその上でクロッチが濡れて変色したショーツを脱ぎ、ピンク色の割れ目を俺に見せつけた。ねちゃあ、とイヤらしく透明な糸を引いて、濡れそぼった花弁が開いた。
むわあと発情した雌の匂いが俺の鼻腔を満たしたかと思うと、犬耳メイドは俺の口めがけて腰を落とした。ぱさとスカートが俺の顔全体を覆いつくし、視界が奪われ、ふさふさの尻尾が俺の首筋をくすぐる。同時に犬耳自身の匂いも篭り、更に強烈になった。
しかし、それは嫌いな匂いではない。むしろ俺の性欲を増進させ、猫耳にしゃぶられているペニスは更に硬く太くなっていた。猫耳の鼻息が、ペニスの根元をくすぐった。
俺は犬耳の雌汁をわざと大きな音を立ててすすった。普段なら絶対に美味いなどとは感じないだろう奇妙な味のそれも、このときの俺にはものすごく甘美なジュースだった。
「くぅん、きゅうぅん……!」
甘えるような犬耳の声。俺は更に責める。鼻先で勃起したクリトリスを刺激しながら、舌で僅かに発達したびらびらを舐めあげ、時には優しく噛んだ。
犬耳はすぐに腰をグラインドさせ、もっともっととせがむように俺の顔に女を押し付けて来る。
彼女のリクエストに答えながらも、俺の両手は休んでいなかった。
狐耳とねずみ耳の二人から出てきた汁が、俺の掌で湖を作っていた。俺はここで人差し指と中指をまっすぐ伸ばし、熱い肉壷の中に突っ込んでやった。二本指で膣を掻き回しながら、同時に親指はクリトリスの包皮を剥き、撫で付ける様に刺激を送る。我ながら視界が奪われているのに良くできたものだとは、後から思った。
「はぁ……はっ、はっ……」
荒く、艶っぽい息が俺の手の遥か上から聞こえてきた。
彼女たちもまた、自らより深い快楽をむさぼるために、腰を動かし始める。
俺は自らの手で少女たちに悦びを与えられている事に酔っていた。男としてのプライドが満たされていくのを感じる。俺は舌と手の動きを更に早めた。
それが、彼女には面白くなかったのだろう。先からずっと俺の息子を可愛がってくれているのに、すっかり俺に忘れ去られているような格好になってしまった猫耳には。
「おうふっ!?」
突然俺の尻――よりはっきり言ってしまうなら、そこの穴に異物が進入してきた。
細いその感触から察するに、猫耳の指なのだろうそれは、俺の腸壁越しにこりこりとした何かを刺激しはじめた。
――前立腺。
そんな言葉が脳裏をよぎった。
男性のGスポットとも呼ばれるそこは、訓練によっては射精以上の性的快感を得る事が出来るのだと聞く。
が、当然俺はそんな訓練などしたこともないのでそんな快感を得ることは出来ないと思う。……思った、のだが、
「あっ、ひぐ」
体の内側から与えられる未知の感覚と、ペニスに与えられる直接的な快楽の前に、俺はあっけなく二度目の精を放っていた。
「ん、ぐっ……」
猫耳の喉の奥に直接放たれる俺の子種。
それを彼女は苦もなくごくん、ごくん、と飲み干した。
同時に犬耳が「んんんんんっ!」と声にならない叫びをあげ、股間から出てきた生暖かい液体を俺に浴びせた。
その正体がなんなのか、射精の快感で溶けている俺の脳みそでもそれははっきりとわかったのだが、幸いにしてこのときはまったく気にならなかった。――誤解を招くようだが、俺にその手の趣味はないのであしからず。
ぐったりとしながらも犬耳は腰を上げ、俺の顔から退けた。そしてそこで力尽きたのか、やけに緩慢な動作で洗い場の床に倒れこんだ。
続けて腰を押し付けて、俺の指を更に奥へと導きこんだねずみ耳が絶頂を迎えた。甲高い悲鳴にも似た声を上げて、俺の手を下敷きにしてへたり込んだ。
連鎖反応はまだ続く。狐耳もやはりというかすぐにイってしまったようで、しかし声は上げずに、どうしてか歯を食いしばるようにして身体を弓反にした。あわやそのまま後ろに倒れてしまうのではないかと思ったが、彼女はどうにか体勢を立て直すと逆方向に――つまりは俺に向かって――体を倒してきた。
形の良い乳房がちょうど俺の顔の辺りに来たので、せっかくだから立っている乳首に吸いつき、こりと歯を立てた。狐耳は再び電気が走ったように身体をのけぞらせ、うっとりとした表情で目を閉じた。
さて――残るは悪戯っぽく笑って立っている猫耳だけ。
彼女は俺の腰をまたぐように立つと、スカートをまくりあげ、口に銜えた。
白い脚に映える黒いガーターベルトが俺のフェチ心をくすぐる。ショーツは既にない。猫耳のあそこは既に準備ができているとてらてらと光って主張していた。そして彼女の長い尻尾が、揺れて俺を誘った。
俺の単純な雄は、それであっという間に回復した。
おいで、と俺は腕にまとわりつく二人をのけ、半身を起こして手招きする。猫耳は嬉しそうに目を潤ませて、ゆっくりと腰を落とし――、突如響いた冷たい声にその動きを止めた。
はっとして俺と猫耳は声がした方を向く。
するとそこ、つまりは風呂場の入り口には先ほどの長耳の女――くどいようだが、俺の「ご主人様」だ。このときはまったくもってそんなことはわからなかったとしても――が、微笑を浮かべて立っていた。
ぐったりと寝そべっていた三人も慌てたように身体を起こし、直立の姿勢をとった。俺の腰の真上にいた猫耳も同様だ。
俺はまったく事態を把握できず、長耳と今まで身体を交えていた四人とを見比べる。少女たちの表情には、ありありと恐怖が浮かんでいた。
長耳は厳しい口調で何事かを四人へ告げると、踵を返した。
四人は女の姿が見えなくなるとさっきまでの情熱的な姿が幻だったかのように事務的になって、俺の身体を洗いはじめ、あっという間にそれは終わった。
俺は四人に服を着せられながら、再び事態についていけなくなったのを自覚していた。
◇
俺が着せられた服は四人の少女たちと対になっている――つまりは執事風の黒いフォーマルなスーツだった。
着替え終わった俺は、もしかして召使かなんかになれとでも言うのだろうか? などと思いながら、狐耳に連れられてひときわ大きな両開きの扉の前にいた。
狐耳はノックをすると、中から答えが返ってくるのを待って扉を開けた。
狐耳が一礼するのを見て、そうした方がいいのかと俺も慌てて倣った。それが不恰好だったのか、中にいた長耳の女は小さく吹き出した。じろりと俺を睨む狐耳。いや、睨まれても困るんですけど。
そして長耳女が狐耳に声をかける。狐耳は怯えるように身を竦ませ、顔色も可哀想な位に青白くなった。
が、長耳女はそれをなだめるように、優しい声色ではなしかけ、狐耳もほっと安堵の溜息をついていた。
そこでふと、俺はある事に気付いた。
それは彼女たちが交わす言語だった。いくらか冷静になって聞いていると、さっきから何処となく聞き覚えのある単語がちらほらと混じっている気がする。……あれ、これってもしかして、英語じゃね?
俺がかろうじて聞き取れた単語は「マスター」だとか「ヴァージン」だとかという風に聞こえた。……聞き取ったのに奇妙な傾向があるのは気にしない方向で。
しかし、あらためて英語だと認識して見ると、彼女たちの会話も所々ではあるが――やっぱだめだ、聞き取れん。よく考えたら俺は英語が苦手だった。書くのはまだどうにかなるが、リスニングや英会話なんて物はまったくもって無理!
だけども、使われている言語がまったく未知な物ではないという事実は俺に僅かながら安堵を与えていた。なんというか、ここに来てから見た人物がどう見てもコスプレまがいの連中ばかりで、もしかしたら自分はファンタジーな世界に迷い込んでしまったのか? なんて不安を抱いていたからだ。
だが、英語を使って話していると言うことはここは少なくとも地球である。連中が変な格好をしているのは、きっと頭のおかしい金持ちがコスプレ乱交パーティでも開いたのだろう。俺はそれに巻き込まれただけ、と。だとしたら交渉次第で帰れるかもしれない。
――我ながら支離滅裂で珍妙な考えだったとは思うが、当時の俺は本気でそんな風に思っていた。いや、思わなくては俺がどうにかなってしまいそうだったのだ。実際はといえば前述の通り、ファンタジー世界だったわけだが。
やがて話が終わったのか、狐耳は再び一礼し、部屋を出ていった。取り残される俺。
女は妖艶に笑むと、俺に向かって手招きした。
俺は恐る恐る歩み寄る。
そして柔らかそうなソファを指差しす。そこに座れということなのだろう。俺は素直に従った。
女は俺を見ている。品定めをしているようなその目つきが、少し不快だった。
俺は彼女の視線を断ち切るように、意を決して質問をする事にした。
「ふ……ふー、あー、ゆー?」
あなたは誰ですか。
のんきなようだが、まずは相手が何者かを確かめなくては話にならない。
が、女はきょとんとしたように俺を見るだけで、返答をしてはくれなかった。
もしかして、発音がまずすぎたのか!? それとも英語だと俺が思いこんでただけで、やっぱり全然違う言語だったのか!?
そんな不安に頭を抱えていると、ようやく女がゆっくりと口を開いた。
形の良い唇で、たった二語の単語を吐く。
「ユア、マスター」
あなたの主人よ、と。