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[26527] 【ネタ】デュナミストほむほむNマギカ【魔法少女まどか☆マギカ×ウルトラマンネクサス】
Name: ハ月◆7868bb09 ID:65a630c2
Date: 2011/03/16 09:56
*第一〇話の内容をほのめかす描写があります。その点にご注意してお読みください。



プロローグ



 ――――彼女だけでは荷が重すぎたんだ。


 「ワルプルギスの夜」の襲来。
 この日、超弩級の力を秘めた強大な魔女が見滝原に現れた。
 空は暗雲立ちこんで太陽の光が一切遮断され、大地は人の気配は無く、人工の光すらも皆無な廃墟と化した。それはこの世の終わりを思わせるほどに絶望的な光景であった。
 廃墟と化した見滝原の瓦礫を足場に駆ける一人の少女。この惨劇を生んだ魔女に立ち向かう少女の名は暁美ほむら。この街に残された最後の魔法少女。
 だが、「ワルプルギスの夜」は強い。
 一人の魔法少女だけでは絶対に勝つことは出来ない、と魔法少女の間で囁かれているほどの存在は伊達ではなく、向かってくるほむらをいとも容易く吹き飛ばす。
 吹き飛ばされたほむらは、そのまま背後のビルに激突。血を流し痛みで立ち上がるのも困難な状態となるが、それでもほむらは引こうとはしなかった。たった一人で戦いを挑むのがどれだけ無謀なことだとしても諦めず戦おうとする。
 それは全て彼女のたった一人の大切な友達を守るために――――。

「そんな……あんまりだよ」
たった一人で戦うほむらの姿を遠くから眺めるのは、ほむらが守るべき友達――鹿目まどか。
「こんなのってないよ……!」
 ただ見ていることしかできないまどかは嘆き、悲しみの言葉を吐く。
「――――まどか」
 悲しむまどかのそばにいつの間にかそこに居た「魔法の使者」を名乗った謎の存在である白い生き物――――キュゥべえが告げた。
「運命を変えたいかい?」
「え……?」
「この世界の何もかも全て、君が覆してしまえばいい。それを可能にする力が君にはあるんだ」
「本当……に……?」
 この絶望的な状況をただ傍観していることしか出来なかった自分が変えることができる。それはつまりほむらと同じようにあの強大な魔女と戦うことができ、勝つことが出来る。そんなキュゥべえの言葉に耳を傾けるまどか。
「――――っ!」
 その様子を戦闘中にも関わらずまどかとキュゥべえのやり取りに気づいたほむら。
「まどかっ!」
 まどかが契約を結ぼうとするのを止めようと必死に叫ぶ。
 ――――だがその声は届かない。
「もちろんだよ。だから――――」
 満面の笑みでまどかに言った。
「僕と契約して魔法少女になってよ!」
「駄目ぇぇえええーーっ!!」

 そして新たな魔法少女が誕生した。結果的に強大なる魔女は倒された。
 ――――だがそれは、ほむらの望む結末ではなかった。

 こうしてほむらはこれまで繰り返したようにリスタートへの回廊を歩み出した。
 また……繰り返すのね。
 幾度と繰り返しても同じ結末へと至る。一体どれだけ繰り返さなくてはならないのか。
 ――――いや、私は何度だって繰り返す。同じ時間を何度でも廻り、自分が望む未来を叶えるために!
 それがほむらの願いであり、誓い。
 それは彼女との交わした約束を果たすため――――。
 だから戦い続ける。たとえそれが何千、何万回と繰り返すことになろうとも――――。

 ――――――――それでも駄目だったら?

 心の何処かでそんな言葉がよぎる。
 ――――私には運命を変えることは出来ないのか?
 ――――私では彼女を救うことが出来ないのか?
 たった一人の友達すらも守ることが出来ないの?
 ――――――――そんなの認めない。認めたくない、諦めない!
 弱音を吐いたりはするものか。あの頃の弱い私はもういない、私は一人でも戦えるぐらい強くなったのだ。
 それでも足りないというのなら――――だったら私は望む。
 ――――――――力が欲しい。
 こんな絶望だけしか用意されていない運命を打ち破る力が――――。
 大切な友達を守る力を――――。
 まどかとの絆を取り戻す力を――――!

 ――――そして奇跡は起きた。
「え!?」
 回廊を進むほむらに突然の閃光が襲った。
「くっ、……今のは一体――――?」
 これまで何度も渡り歩いた回廊でこんなことは一度も起こらなかった。
 一体何が起きたのかと、ようやく眩しい光に目が慣れるとゆっくりと目を開いた。
「――――なっ!?」
 目を開くとほむらは驚きの声を上げる。
 ほむらの目の前には――――眩い白銀の光を身に纏い、背中に翼を備えた光の巨人が現れたのだ。

「あ、あなたは一体何者なの?」
 言葉が通じるかどうか分からなかったが、何もしないで睨み合いをするよりは何か行動するべきだと考え、警戒をしつつ巨人に声を掛ける。
 しかし巨人からは返事は返ってこない。
『――――』
「えっ――――私に力を貸してくれる、というの?」
 声はしなかったが、確かにほむらは巨人の意思を感じ取った。
 巨人がほむらの前に現れた理由。それは自分を助ける為だという。巨人はほむらの強い意思に引かれてやって来たというのだ。
 自分の為にやって来たという巨人に対してほむらは警戒を解くことはしなかった。 確かに自分は力を求めた。だがあの諸悪の根源のようにまた騙されるかもしれない、と正体不明の存在を相手に二度も心を許すほど浅はかでなかったほむらは巨人を警戒するのは無理もないことだった。

 だが、ほむらは巨人から発する神秘の光に触れて感じ取った。
 この巨人は敵ではない、と。何も根拠など無かった。ただ純粋にそう感じた。
 巨人の胸のY字状の赤い発光体の前に浮かんでいるほむらは巨人の顔へと見上げる。巨人はただほむらを見つめるだけだった。
「――――――――いいわ。あなたを信じる」
 そしてほむらは巨人を信じることにした。
 今のままではこれまでと同じ繰り返しになるだろう。なら信じるしかなかった。
 ――――いや信じたい。この巨人からこれまで見えてこなかった一筋の希望という光を。それにほむらは賭けた。
「だからお願い。あなたの力を貸して」
 ――――まどかを救うために!
 ほむらの言葉に頷く巨人。そして巨人は両腕を広げると再び閃光が――――
『――――』
「えっ」
 先ほどと同じように巨人は何も言葉を発してしない。だがほむらには確かに聞こえた。巨人が自分に語り掛けたのを。ほむらが聞いたその言葉は――――。


 そして私は戻ってきた。運命を変えるために、まどかとの絆を取り戻すために。
 巨人と共に――――。
 巨人は少女の意思によって別の宇宙から次元を超えて現われ、そして今度は少女の願いを叶えるために時空をも越えた。
 時空と次元を行き来するほどの強大な力を持つ光の巨人。
 それは太古より全宇宙の平和を守り続ける伝説の存在。
 その名は――――ウルトラマンノア。





 あとがき
こんにちは。初めての方は初めまして。
以前、Arcadiaで「haduki」という名で投稿していた「ハ月」といいます(読みは「はつき」です)。

本作は「魔法少女まどか☆マギカ」と「ウルトラマンネクサス」のクロスオーバーです。
twitterでフォロワーさんとネクサスとまどかって似てね? という話が事の始まりで。
ゼロのtwitterでの発言で点火。
闇月夜の宴さんの作品で爆発!
といういきさつで書いてみました。一人でも楽しめたらいいな、と思い投稿してみました。

それでは次の話で。

*タイトル名に「ほむら」ではなく「ほむほむ」なのはただ単に響きがいいからです。
ほむほむマジほむほむ



[26527] 第一話 もう誰も死なせない
Name: ハ月◆7868bb09 ID:65a630c2
Date: 2011/03/18 11:40

「君は、一体…………?」
「お前が知る必要はないわ」
 もう話すこと無い、とほむらは手に持つおよそ普通の女子中学生が持つに似合わしくないデザートイーグルの銃口をキュゥべえに向けて引き金を引いた。
 転校前のある日、「この世界」に戻ってきたほむらがまず始めたことは、キュゥべえの殺害だった。これでひとまずはまどかを魔法少女にすることを防いだ。
 だがこれは一時的なことである。今殺したキュゥべえに代わって新たなキュゥべえが現れる。そのことはこれまで繰り返した経験で知っている。
 キュゥべえ。少女に魔法少女になるよう契約を持ちかける白い生き物。これが漫画やアニメなど物語なら愛らしい魔法少女のお供であるマスコットと呼ぶべき存在だろう。
 しかしアレは違う。アレはそんな生易しい存在なのでは断じてない。
 正式名称「インキュベーター」。人格と記憶を共有した同一の分身が複数存在する地球外生命体。
 宇宙の寿命を伸ばすという使命のために、そのためのエネルギーを得るために私たちの運命をドン底に誘引したおよそ人間の価値観が通用しない感情の無い生き物。
 そんな未知の存在を完全に滅ぼす方法など今のところ分からない。そもそもそれが可能なのかどうかも――――。
  それよりも今はあの「ワルプルギスの夜」をどう乗り越えるか。キュゥべえの対策についてはそれからでもいいだろう、と考え――――――――
「今度こそ必ず救ってみせる」
 とりあえず学校に転校するまでまだ時間はある。それまでに策を練ろうとほむらは新たな世界での戦いに臨んだ。


「暁美ほむらです」
 そして転校初日。ほむらはこれまでと同様にかつての頃に比べて簡略化した自己紹介をする。同時に一人の少女を見つめる。
 ――――まどか。今度こそあなたを助けて見せる!
 まどかの姿を見て決意をより強くするほむら。
(な、何でわたしのこと……睨んでるのかな……?)
 そんなほむらの心情など知らず、鋭い目付きで見つめられているまどかは、何故睨まれているのだろうとほむらに怯えているのであった。
 そんなほむらの自己紹介が終わったと同時にHRが終わった後、ほむらはクラスメイトから質問攻めを受ける。だが、ほむらにとってはこれまで繰り返したことと変わらないことだった。
 世界を繰り返すたびにほむらは、何度も何度も何度も同じ人から同じ質問を同じ順番で受け続けていた。今となっては煩わしいとさえ思わない、ただ無感情に聞き流しているのだから。また、この場合は決まって次の行動に移す。
 質問してくるクラスメイトに気分がすぐれないと言って、保健室へ行くとほむらは保健委員のまどかに保健室への案内をお願いして向かった。
 もっともまどかに案内をお願いしながらもほむらが先頭で歩いていることにまどかは戸惑いつつもほむらの後を付いて行く。
 ほむらがまどかを連れているのは、まどかに魔法少女にならないよう遠回しに忠告するためだ。
 保健室へ向かう途中でそのことを硫黄とする前にほむらは思わぬ衝撃を受けることになった。
「あ、あの、ほむらちゃん……?」
「――――ッ!?」
「あっ、ご、ごめんね。初対面で名前で呼んだりして……でも、なんだかこの方がしっくりくるというか…………何だが初めてじゃないような…………」
「…………」
 あの日、弱い自分を捨ててからの世界で初めてのことだった。初対面で「名前」で呼ばれるということは――――――――。
 これまでの世界でもまどかはほむらのことを知っているような反応はあったが、ここまで明確な形で現れたのにほむらは驚きを隠せなかった。同時に心の奥から込み上げてくるものをまどかに悟られないように抑えることができたのが不幸中の幸いだった。
 その後、まどかに大切なものがあるのなら「自分を変えよう」だなんて思わないこと、と忠告しほむらは保健室へと入った。
 ――――――――まだ心は落ち着ついていなかった。


 放課後の帰り道、ほむらは新たに現れたキュゥべえを見つけ出して追いかけていた。
 傷を負わせた上で袋小路に追い詰めた。逃げ切ることはできないだろう、とほむらは冷静にキュゥべえを仕留めようとキュゥべえが逃げた先に向かう。するとそこには守るべき人であるまどかが一緒に居た。
 キュゥべえはほむらから逃げながらもテレパシーで助けを呼んていたのだ。その声に反応したのがまどかであり、その結果、まどかとキュゥべえが接触してしまったのだ。
 キュゥべえは傷ついて弱った自分を優しいまどかなら助けてくれると考えたのだろう、
 ――――相変わらず汚い真似をする、とほむらはキュゥべえに怒りを顕にしながらキュゥべえを抱きかかえたまどかにゆっくりと近づく。
「ほむらちゃんがやったの? ダメだよこんな事!!」
「鹿目まどか。あなたには関係ないわ」
 ――――そう。あなたはこんな奴に関わるべきではない。
「どいて。あなたは傷つけたくないけど、どかないというなら……」
 まどかの前で手荒な真似をしたくないほむらだが、キュゥべえから引き離すためだと実力行使を試みようとするが――――――――
「まどかっ!!」
「なっ!?」
 まどかのクラスメイトで友人の美樹さやかに妨害され逃げられる。
「くッ……!」
 まどかたちの後を追おうとするも、足を止めるほむら。
「相手してる場合じゃないのに!」
 ほむらの周囲の空間が歪む。それは魔法少女の敵である魔女の使い魔の仕業であった。


 無駄に数が多い魔女の使い魔をデザートイーグルとミニミ軽機関銃。おまけにグレネードで一瞬にして一掃すると再びまどかたちの後を追うほむら。
 するとそこには、まどかたちの他に巴マミの姿があった。どうやらまどかたちの方にも使い魔が現れてマミが助けたようだ。
 巴マミ。かつての魔法少女の先輩。
 マミは数年前に家族と一緒に乗った車が交通事故に遭い、その時にマミはキュゥべえと出会い、生き残るために契約し魔法少女になった。
 マミは魔法少女の中では珍しく他者を魔女の脅威から守るという信念を持っていて、かつてのほむらも憧れを抱いていた。
 しかしマミは魔法少女として戦う上での強い不安や孤独を抱き続けていた心の弱い人だった。だから魔法少女の本質を知った時、彼女は――――――――。
 マミと合流した以上は下手に手を出せない。それにマミと一緒なら少なくとも今すぐには魔法少女になることはないだろう、と判断してほむらはこの場から離れることにした。


 マミに助けられた後のまどかたちは、マミから魔法少女のことを説明された。そしてマミの提案で魔女退治を体験することとなった。マミと一緒ならそれほど危険はないだろうが、万が一ということもあるのでほむらはまどかたちを監視していた。またキュゥべえがまどかをそそのかして契約を迫り、まどかが契約してしまうのを止めるためにも。
 ――――――――まどかに契約を迫る度にキュゥべえに殺意を抱いたのはここだけの話である。
 そんな日が続き、マミがある魔女を倒した後のこと――――――――
「あなたにあげるわ。暁美ほむらさん」
 影に隠れて自分たちを監視していたほむらのことに気づいていたマミは、今倒した魔女から手に入れてまだ一回分使えるグリーフシードをほむらに投げ渡す。
「それとも人と分け合うのは不服かしら?」
「あなたの獲物よ。あなただけのものにすればいい」
 そう言ってほむらはマミに投げ返す。
「…………そう。それがあなたの答えね」
 それはつまり協力する気はない、と解釈したマミは顔をしかめる。
「…………一つ、あなたは思い違いをしているようだから言っておくわ。私にとってそれは必要のないものなだけよ」
 それだけ言って、ほむらはその場から離れた。
(とりあえずここまではいい。次からが問題…………)
 まどかたちと別れた後、ほむらは次の展開を想定する。
(次に現れる魔女。その戦いで彼女は高確率で…………命を落とす)
 何度も繰り返したほむらは、この後マミが命を落とすことを知っている。
 余談ではあるが、ほむらがこれまで経験した中でマミが「ワルプルギスの夜」との決戦まで生き残ったことは――――――――皆無だった。
 必ず「ワルプルギスの夜」が現れる前にどこかで命を落としてしまう。
 一番長かったのは「ワルプルギスの夜」との決戦前まで生き残れた「最初の世界」だけだったりする。「ワルプルギスの夜」の前に死ぬということ点では、さやかとまだ現れていない杏子にも当てはまるのだが、さやかと杏子は相打ちで死ぬというパターンが多いのに対し、マミの場合は死ぬ時は大抵が悲惨な最期を迎えるので、とても比べられなかったりするほどで同情せざるをえないほど幸薄い魔法少女である。
 閑話休題。
 とにかくほむらとしては「ワルプルギスの夜」を倒すのにマミの力が必要であった。そのためにもマミを生き残らせる必要がある。
(果たして上手くいくかしら…………)
 そう思いながら左腕に装備した盾からほむらはあるものを取り出す。
 エボルトラスター。
 それはウルトラマンノアから授かった神秘のアイテム。それを強く握りしめる。
(大丈夫。今度は上手く行く)
 今の私は一人ではない――――――――。
 ――――――――そしてその時がやってきた。


 病院でもうじき魔女に孵化しようとしているグリーフシードを発見したマミとまどかが発生した結界に侵入した後をほむらが追う。
 まどかたちに追いついたほむらは、マミに今度の魔女について警告する。
 しかし、マミはそれを聞き入れず、ほむらをリボンによる拘束魔法でほむらを縛り上げた。
 拘束したほむらを置いてマミは魔女のもとへと向かう。まどかもほむらを気にしながらもマミの後を追った。
「くっ」
 マミの拘束を破ろうと力を入れるほむらだが、魔法少女に変身してもほむらの身体能力は一般人よりもやや高い程度しかなく、魔女を拘束するほどの魔法を力づくでは破れない。ほむらには爆弾や銃などといった武器を持っているが、爆弾では拘束するリボンだけでなく自分まで巻き込む。銃では今の状態ではリボンだけを狙って撃つのは困難で、この状況では役に立たない。
 あとはマミ自身が拘束を解除するかだが、それは魔女を倒さない限りは解除しないだろう。だがこれまでの経験でマミがあの魔女を倒した確率は限りなくゼロ。
 マミが死ねば拘束は解けるがそれでは駄目だ。それではまたこれまでと同じ繰り返しになる。それでは意味がない。
 マミを生存させる。それがほむらの決めたことだった。「この世界」に来てから今日まで「ワルプルギスの夜」の対策として考えたのは、今まで実現することが出来なかった三人以上で「ワルプルギスの夜」と戦うこと。
 まどかとさやかの二人を魔法少女にしないことを考えると、マミが生きていることが必要なのだ。
 だが、ここで問題なのがマミが生存している場合、魔法少女の本質を知った時に出る行動が問題になる。
 魔法少女がやがて魔女になるという真実を知った時、マミは自分を含めた魔法少女を殺そうとした。
 そのことを考えるとマミが存続しているとこちらの命に関わるというリスクが生じる。
 ――――――――それでもマミの力が必要だ。
 なによりもマミの死によってまどかの悲しい姿を見たくないから――――。
 そして――――――――彼女はかつて自分の命を救ってくれた人でもある。
 世界を繰り返すことになって初めの頃は、確かに皆を助けようと奮闘したほむらだった。
 だが、結果は散々なものだった。世界を繰り返す内に魔法少女の真実を知って、それを伝えても誰も信用しようとはしなかった。それどころか仲間割れをさせる気か、と責められたこともあった。いつしかほむらは、皆を助けることを諦め、まどかだけを助けることに専念するようになった。
 それが何故、今になってそんな感傷的なことを思うようになったか。
 ――――――――希望の光を見たからだろう。
 ノアとの出会いでほむらは一筋の希望を見出した。
 皆が生き残るという今まで望めなかった僅かな可能性を。
 だからもう一度私は望みを賭ける。
 今の私には皆を守る力があるのだから。
 だから――――――――
「もう誰も死なせない」
 拘束されつつも何とか左腕に装備した盾からエボルトラスターを取り出す。
 ウルトラマンノアから授かった神秘のアイテムを握り締め、鞘から引き抜くとエボルトラスターは光り輝き、そしてほむらは光に包まれた。


「――――え?」
 はっきり言ってマミは油断していた。
 戦う直前にまどかとの会話が影響で気が緩んだ。その自覚はあった。
 でも、それを悔やむことはなかった。ただ惜しむのは折角できた友達と約束したティータイムをするこが出来なかったこと。
 ――――――――ごめんなさい、鹿目さん。
 そしてマミは迫り来る死を静かに受け入れた――――――――。
 ――――――――だが、マミに死が訪れることはなかった。
 マミは、今自分の目の前で起きたことに理解が追いつかず呆然とする。それは自分を喰らおうとした魔女が地面に押し潰されていたのだ。
 ――――――――銀色の大きな腕によって。
 マミは腕の方へと見上げると、その視線の先には、銀色の巨人の姿が映った。
 銀色の巨人・ウルトラマン。
 ほむらがデュナミスト(適能者)となって光の巨人へと変身した姿。
 ――――だが、その姿は「前の世界」で出会ったウルトラマンノアの姿ではなかった。
 ノアと同様に銀色の体ではあるが、背中に備えていた翼が無いことや顔などが若干異なっていた。これはノアとは別の形態であるウルトラマンネクサス・アンファンスと呼ばれる姿だ。
 ウルトラマンネクサスは地面から腕を離すと、今度はその手の先から光の帯のようなものセービングビュートを放ち、あるものを捕らえた。
 捕らえたのは、先程押し潰したピエロの顔を持つ巨大な芋虫を口から出したファンシーなぬいぐるみの姿をした魔女だった。
 それが魔女の本体であり、本体を倒さない限り芋虫は復活する。現に今、再生を始めて動き出そうとしていた。
 そのことを知っていたほむらは魔女の本体を逃がさないよう捕らえたのだ。
 捕まった魔女は必死に逃げ出そうと抵抗するが全く効果がなく、抵抗をする魔女をネクサスは一気に握り潰した。
 こうして魔女はネクサスの圧倒的な力によって倒された。


 マミの危機。巨人の出現などこの短時間で自分の理解を越える衝撃的なことが起きて思考が停止していたが、魔女が倒されたと分かったさやかは、マミに駆け寄った。
 その時、まどかは巨人を見つめていた。
 自分よりも遥かに大きな巨人を見上げながらまどかは――――――――
「――――――――ウルトラマン」
『…………』
 無意識に呼んだその名前にネクサスは反応し、まどかの方に振り返る。
「…………」
『…………』
 互いが互いを見つめ合う中、まどかはこんな印象を持った。
 ――――優しい顔をしている。
 他の人から見ればそんな風には見えないだろうが、まどかにはネクサスをそのように見えた。
 一方、ネクサスは、まどかを見つめ決意を新たにしていた。
(まどか。今度こそこの力であなたとの約束を守る!)
 見つ合う少女と巨人。
 だが、それは長くは続かなかった。
 それは第三者の介入によって妨げられたから――――――――
『――――!?』
 突然の攻撃を受けたネクサス。
 魔女を倒したというのにまだ他にいたのかとウルトラマンネクサスは辺りを見渡す。
 しかし魔女は見当たらなかった、ただし、誰が自分を撃ったのかを発見した。
(…………えっ)
 自分を撃ったのが誰なのかを見てほむらはどうして? と思わずにはいられなかった。
「どうして……?」
 まどかにも理解できなかった。何故、彼女がネクサスに攻撃したのかを――――――――
「そんな…………マミさん……どうして……!?」
 ネクサスを撃ったのは、他でもないネクサスに助けられたマミだった。
「――――――――見つけた」
 そしてマミの口から思わぬ言葉が――――――――
「私の――――両親の仇ッ!!」



[26527] 第二話 奇跡も、魔法も、ヒーローもいるんだよ
Name: ハ月◆7868bb09 ID:65a630c2
Date: 2011/03/27 16:16
「――――うっ」
「マミさん!」
「私は…………?」
 目を覚ましたマミの目にうつったのは、心配そうにこちらを見ているまどかとさやかだった。
 ベッドから上半身を起き上がらせて周りを見渡すとどうやらここは自分の部屋なのだと気づく。
「……私……確か魔女にとどめを刺したと思ったら…………その後どうなったのかしら?」
「あの後のこと、覚えてないんですか?」
「ええ、……っ!」
 マミがその後のことを思い出そうとするも、急に頭が痛み出して頭をおさえる。
「マミさん大丈夫ですか!?」
「ええ、大丈夫よ。ちょっと頭が痛むだけだから」
「まだ横になっててください」
 頭痛を訴えるマミのそばに寄ったまどかがベッドから立ち上がろうとするマミを抑えてベッドへ寝かせる。
「…………あなたたち、私が起きるまで待っていてくれたの?」
「心配でしたし……」
 心配そうにマミを見つめるまどかとさやか。
 記憶が無いというマミだが、あの時巨人に攻撃をしたマミだが、続けて攻撃しようとするマミをまどかとさやかが制止し、その間に巨人は姿を消した。と今度はマミは意識を失ったのでまどかとさやかがマミを家まで運んだのだ。
 そのことを説明しようと思ったが、まどかはそのことを今は言わなかった。
 今はマミさんを安静させるためにもここで言う必要はないと判断したのだ。
「ごめんなさいね、心配掛けちゃって」
 二人に謝罪をしつつマミはチラッと外を見る。
「もう遅いし、あなたたちは帰りなさい」
 すでに日が沈んでいる時間で外はもう暗くなっていた。
「え、でも……」
「マミのことなら僕に任せて」
 マミの元へと駆け寄ったキュゥべえがまどかとさやかに言う。
「キュゥべえが居るから大丈夫よ」
「……じゃあキュゥべえ、あとは頼んだわよ」
 実際キュゥべえに何が出来るか分からないが、マミを一人だけにしないのならそれでも十分だろうと思い、キュゥべえにマミをことを任せることにした。
「じゃあマミさん、また明日」
「ゆっくり休んでくださいね」
「ええ、ありがとう」
 別れの言葉を告げてまどかとさやかは部屋から出て行った。
「ふう……」
「マミ、まだ回復し切っていないならもう少しそのまま休んだらどうだい」
「ええ、そうね。そうするわ」
 マミはもう一度眠りにつくことにした。
 やはりまだ疲れていたのかマミはすぐに眠りについた。部屋の中はマミの小さな寝息だけが聞こえる。
 マミの寝入った様子を見ながらキュゥべえはあることを考えていた。
(…………あれは間違いなくウルトラマン。どうしてこの宇宙にウルトラマンが…………)
 キュゥべえはこの宇宙にウルトラマンが出現したことに内心驚いていた。
 そして――――――――
(それにまどか…………何故君が「ウルトラマン」という言葉を…………)
 少なくともこの星では自分以外では知るはずのないウルトラマンという言葉を発したまどかについて考える。
(これは面倒なことになりそうだね…………)
 己の使命である宇宙の寿命をのばすためのエントロピーを凌駕するエネルギー回収のノルマ達成のためにも今後について思案するキュゥべえだった。
「マミさん大丈夫かな……」
「……」
「ちょっと、まどか聞いてる?」
「えっ、あ、何かな?」
「どうしたの?」
「ちょっと考え事してて」
 マミの部屋から出た帰り道。さやかがマミを心配をしている中、まどかはあることを考えていた。
(一体どういうことなんだろう……?)
 まどかは気になっていた。マミの口にしたあの時の言葉を――――――――
「そう言えばまどか。あの時現れた巨人のことをウルトラマンって言ってたよね?」
「えっ?」
「何その反応は? まさかまどかまで覚えてないって言うんじゃあ……」
「う、うん……」
「はぁ……マミさんといいまどかといい、一体何がどうなってるのよ……」
 溜め息混じりのさやかの問いに答えられる者はいなかった。
「ねえ、さやかちゃん」
「ん? どうしたの」
「マミさんがあの時言ってたことって…………」
 まどかはあの時マミが巨人に叫んだことについてさやかに聞く。
「……うん、おかしいよね。だってマミさんの家族は――――――――」
――――――――生きているはずなのに。


 突然の発砲。
 これに誰よりも驚いたのはネクサスの姿となっているほむらだった。
 撃ったのはマミ。魔女から助けたのにも関わらず攻撃を受けた。
 恩を着せるつもりは全く無いが、助けたにも関わらず攻撃されるとは夢にも思わなかったことからほむらは動揺しながらも今だにこちらにマスケット銃を構えるマミの方を見る。
 ――――――――何故? マミの身に何が起きた。
「――――見つけた。私の――――両親の仇!」
『――――!?』
 再び発砲。
「マミさん!」
「マミさんやめて!」
 さらに撃ち続けようとするマミをまどかとさやかが止めに入る。
「放してっ!」
 まどかとさやかがマミを抑える。魔法少女となっているマミは二人がかりでも抑えきれない。だがその僅かな隙にネクサスはこの場から姿を消した。
 結界の外に出たと同時に変身を解いてネクサスから元の姿に戻ったほむら。
「はぁ……はぁ…………」
 たった一撃で魔女を倒したというのに疲労しているほむら。
 かつてネクサスが別の地球で戦った闇の巨人・ウルティノイドが作り出すダークフィールドというものがあった。その空間に居るだけでウルトラマンの光エネルギーを消費してしまう。そして魔女の結界はそのダークフィールドと同質の効果あるのだ。
 それだけでなく魔女が絶望を撒き散らして交通事故や自殺など人間に影響を与えるようにネクサスの場合は、魔女の怨嗟が聞こえるようになってしまう。それによって結界による疲労だけでなく魔女の呪いの言葉によって精神的にも消耗してしまうのだ。
 魔法少女よりも遥かに強力な力を持つウルトラマンではあるが、それ以上に負担も大きいという弱点があるのだ。
(それよりも気になるのは……)
 ほむらが気になるのはマミのことだった。
 あのままあの場に居続ければマミは自分を攻撃し続けただろう。憎しみの赴くままに。
 そうなれば折角救った命を憎しみでソウルジェムは濁らせ、魔女化していたかもしれない。
 しかもその原因がネクサスになること。ネクサスに向けてマミは「両親の仇」と言った。あれは一体どういうことなのか?
 マミはネクサスに向けて言った。つまりマミはネクサス――――ウルトラマンを事を知っている、それはこの世界にはネクサス、或いはネクサス以外のウルトラマンが存在していることになる。
 だが、今まで繰り返した世界でほむらは一度もウルトラマンが目撃したことはない。
「どういうことなのかしら……?」
 ほむらの問いに答えられる者は居ない。
 ほむらはそっと胸に手を当てる。
 ほむらと一体化したノアの意識は、現在はほむらの内で眠っている。
 「前の世界」から「今の世界」に移動するという次元と時空を連続で渡った影響でノアは大きくエネルギーを消耗した。
 それによりほむらが変身した姿はノアではなくその前身とも言うべきネクサスの姿なのだ。
 本来の力を失い、さらにネクサスにとっては劣悪な魔女の結界で戦う。さらにはマミの言う「両親の仇」であるウルトラマンの存在。
 そんな困難な戦いにほむらは挑まなければならない。
「でも成し遂げてみせる……たとえ私がどうなろうとも…………」
 疲労した体に鞭を打ちながらもほむらはその場を後にした。
 そして翌日、朝早くにほむらはある人物に会いに来ていた。
「話があるわ」
「……」
 ほむらが会いに来た人物は、学校に行こうとした矢先にマンションの前で待ち伏せしていたほむらに少々驚きながらも、マミは話し合いに応じることにした。
 この時、ほむらはこれまでとは異なる一面を見せたマミのことに気を取られていて失念していた。
 まどかの他にキュゥべえに選ばれた魔法少女候補の存在のことを――――――――


 さやかは病院に来ていた。
 上条恭介。
 さやかの幼馴染みで将来有望なヴァイオリニストだったが、ある日事故で指が動かなくなって演奏できなくなり、病院でリハビリ中にあった。
 さやかは毎日恭介のお見舞いに来ている。その際に入手困難なクラシック音楽のCDを持って来ている。
 ここまで恭介に尽くすのは、さやかが恭介に幼馴染み以上の想いを寄せているからである。もっともさやかは周りの人間にはただの幼馴染みだと言い張っているのだが。
 今日も廃盤CDを持ってきてお見舞いに来たさやかだったが、恭介の様子がおかしかった。
 ――――――――治らない、と言われた。
 医者から「諦めろ」と宣告されて絶望した恭介は自暴自棄になって周りを当たり散らすしかなかった。
「魔法でも奇跡でもない限り……!」
 もはや有りもしないものにしか綴れない恭介。
「……あるよ」
 この時、さやかは決心した。
「奇跡も、魔法も、ヒーローもいるんだよ」
 病室の窓の外にはキュゥべえが佇んでいた。


「それで、話って何かしら?」
 昨日、あれからゆっくりと休んで体調が回復したマミは実に喧嘩腰だった。
 そんなマミの態度にほむらは溜息をつく。
「予め言っておくけど私はあなたと争う気はないわ」
「どうかしらね…………」
 ほむらの言葉を信用する気がない様子だった。
「…………そんなにあいつを傷つけたのが気に食わないのかしら」
「普通、自分の友達を傷つけた相手に仲良くしようとは思わないわ」
「…………そうね、確かに自分の友達を傷つけた相手は信じられないわね」
 私もそう思うわ、と内心で呟くが、このままいつまでたっても平行線。時間が立てば悪化するだろうと考えたほむらは本題に移ることにした。
「三週間後、この街に「ワルプルギスの夜」がやって来る。あの魔女を倒すために協力してほしい」
「……」
 マミは困惑していた。てっきり今回もまたまどかを魔法少女にするな、という話だと思っていたからだ。それがまさか共同戦線の申し入れで、しかも相手があの「ワルプルギスの夜」だというのだ。
 そんな予想外の申し入れにマミは戸惑うがそれを表に出さないよう隠しながら思案する。
「…………一ついいかしら?」
「……」
「あなたは鹿目さんたちを魔法少女にしたくないようだけど、あの強大な魔女がやって来ると分かっていてどうして仲間を増やそうとはしないの?」
 マミはもっともな疑問を投げつける。現状ではこの街には二人の魔法少女しかいない。一人の魔法少女では勝てない相手に二人がかりでも勝つのは難しいだろう。
 だからこそ仲間が大勢いれば勝算も生存率も高くなるというのに何故そのようにしないのか不思議だった。
「必要ないわ。私たち三人で「ワルプルギスの夜」を倒せばいいのだから」
「三人?」
「あたしのことだよ」
「ッ!? あ、あなたは……!」
 ほむらとマミの話の中に突然割り込む少女の声。
 その人物は――――――――
「久しぶりだな巴マミ」
「佐倉杏子…………あなたが彼女を呼んだの?」
 マミの問いにほむら無言でうなづく。
 佐倉杏子。
 別の街で魔女と戦っている魔法少女。
 マミと杏子が面識があるのは、かつて縄張りを拡げるために見滝原にやって来た杏子と縄張り争いをしたことがあるからだ。
 その時にマミは自分のためだけに魔法を使う杏子とはウマが合わないと思っていた。
「まさかあなたが協力するだなんて……」
 だから杏子が協力するとは予想外だった。一体どんな手を使って協力を取り付けたのか。
「簡単なことさ。こいつが持っているグリーフシードを貰うことを条件に飲んだのさ」
 たい焼きを食べながら言う杏子。
 ほむらは転校する前に杏子と接触し、「ワルプルギスの夜」と戦うために協力を仰いでいたのだ。自分の持つグリーフシードを引き換えに。
 最初は戸惑った杏子だったが、いずれは倒さなくてはならない魔女を一人で戦わずに済み、その上複数のグリーフシードが手に入るなら悪く無い話だと考えてほむらに協力したのだ。
「何ですって!?」
 グリーフシードは魔女と戦うために必要なものなのにも関わらず、ほむらはそれが必要ないという。そのことにマミは驚きを隠せなかった。
「前にも言ったでしょ。私には必要ないって」
 熱くなるマミに対して涼しげに言うほむら。
「あなた、一体何者なの……?」
「今はそんなことはどうでもいいでしょう。…………それから私からも一ついいかしら?」
「な、何かしら?」
「この間の戦いでのことよ。あなたはあの時、「両親の仇」と言ったけど、あれはどういうことかしら?」
 家族の死んだことについて聞くのは不謹慎なことだが、ほむらにとっては重要なこと。ここで聞いておけばネクサス以外のウルトラマンについて分かるかもしれない。
 それにマミは自分のことを嫌っているので話す可能性は低いので駄目元で聞いているのだ。
 ――――――――だが、マミから予想外の言葉が出る。
「? 何を言っているの? 私の両親は死んでいないわよ」
「…………あなたの家族は交通事故で無くなったはずじゃあ……?」
「さっきから何を言っているのあなたは。私の家族は交通事故に巻き込まれていないし、現に今日の朝電話したのよ」
 食い違う二人。
 何かがおかしい。
 何が違う? 誰が間違っている?
「じゃあどうしてこの街に一人で暮らしているの?」
「この街の魔女を退治するためよ」
 ――――それが魔法少女の使命なのだから。
「…………ならあなたが魔法少女になったきっかけはなに?」
「……それは交通事故に巻き込まれて…………?」
 ――――――――巻き込まれてそれで何を願った?
「私は何を願ったの?」
 その問いに答えられる者――――キュゥべえはこの場には居ない。
「巴マミ」
 ずきり、と頭が痛みだす。
「…………あなた、昨日の魔女との戦いで巨人を見た時、確かに「両親の仇」と言った。それはどういうこと?」
「巨人……ですって…………くっ!」
 巨人という言葉に反応しマミの頭が強く痛み出して両手で頭を抑える。
「巴マミ?」
「おい、どうした?」
「あ、あ、ああ……ああああああああ!」
 マミの頭の中でフラッシュバックが起きる。
 事故によって横転した車の隙間から見えた外の光景を――――――――
 事故によっていくつもの車が赤く燃え上がっている。
 赤く染まっていく地面の上で事故に巻き込まれた人たちの助けを呼ぶ声。傷ついて泣き叫ぶ声。
 そして――――――――その光景を見下ろす銀色の巨人の姿。
「…………そう……私は……見た…………銀色…………巨人の……姿を…………そして…………」
 ――――――――車の外しか見ていない? いいや、見ただろう車の中も。
 車の中は灯りがなければ見えない状態だった。でも外の燃え上がる炎が灯りとなって中を見渡せた。
 両親は無事なのか? 居ない。見当たらない。どこに行ったの?
 探す探す探す探す探す探す探す探す探す探す。
 目をぐるぐる動かして探す。
 車の中はやけに赤かった。外の地面のように赤かった。
 あれ? 車の中ってこんなに赤かったかな? そもそも赤だったかな?
 ――――――――いつまで目を逸らしている。そこに居るだろう。
 塊があった。二つの大きなナニかの塊。赤く染まった布か何かを被ったナニか。
 何だろう? あんなもの車の中にあったかな? それよりも両親はどこに――――――――。
 ――――――――いつまで目を逸らしているつもりだ。もう分かっているだろう。
 嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ。
 気付きたくない気付きたくない気付きたくない気付きたくない気付きたくない気付きたくない気付きたくない気付きたくない気付きたくない気付きたくない気付きたくない気付きたくない気付きたくない気付きたくない気付きたくない気付きたくない。
 理解したくない理解したくない理解したくない理解したくない理解したくない理解したくない理解したくない理解したくない理解したくない理解したくない理解したくない理解したくない理解したくない理解したくない理解したくない理解したくない理解したくない理解したくない理解したくない理解したくない理解したくない理解したくない理解したくない理解したくない――――――――。
 そう、ソレがお前の――――――――――――――――
 アレが両親だったモノだなんて――――――――――――――――!!
「ああああああああああああああああああああああああああ!!!!」
「巴マミ!?」
「何なんだよ!?」
 マミの体が黒い波動を纏い始める。その力は徐々に強くなっていき、そして――――――――
「なっ!?」
「おいおい、何だかマズイんじゃねえか?」
 マミを覆う闇は次第に大きくなり、それは巨大なものとなって形を為した。
 そしてマミは、黒い巨人の姿へと変貌した。
「う、嘘だろ……!?」
「くっ、……あなたは下がっていて!」
 エボルトラスターを取り出して鞘から勢いよく引き抜いた。
 ほむらもまた光の巨人・ウルトラマンネクサスへと変身した。
 杏子の前に光と闇の巨人が対峙する。その光景を見上げる杏子は――――
「…………何で魔法少女がまた変身して巨人になるんだよ……わけわかんねーぜ……」
 目の前の光景に杏子は理解が追いつけずただ思ったことを呟くしかなかった。
『お前は何者だ? 巴マミをどうした!?』
『――――――――ダークファウスト』
「ダークファウスト……?」
 闇の巨人が名乗ったその名は、かつてウルトラマンネクサスが幾度と戦った闇の巨人・ダークファウストと同じ名前でその姿も酷似していてダークファウスト・ツヴァイと呼ぶべき存在であった。
『巴マミはどうした!?』
『巴マミなら我が内で眠っている』
 直感でほむらは理解した。これは敵だと。そしてファウスト・ツヴァイがマミの両親を殺したのだと。
『何故彼女に取り憑いた!?』
『別に誰でもよかったのだ。全てはあの御方を復活させるための仮の器にすぎん』
「あの御方? それは一体誰のこと!?」
『貴様が知る必要は無い。貴様はあの御方の復活のための贄となれ!』
 ファウスト・ツヴァイは問答無用でネクサスに襲い掛かった。
 それに反応してネクサスも襲いかかってくるファウスト・ツヴァイを迎え撃つために構えた。
 ――――――――今ここに新たな光と闇の巨人の戦いが始まる。



[26527] 第三話 こんなあたしでもあんたを助けたい
Name: ハ月◆7868bb09 ID:65a630c2
Date: 2011/04/03 23:28
「ふぅ……」
 人気のない夜の公園でさやかはため息をつく。つい先日キュゥべえと契約を結び魔法少女ととなった。
 初めて魔女を退治した時は、まどかと魔女のくちづけをされた仁美を助けた。マミやほむらがいなくて一人で二人の親友と他の人達を助けられたことはさやかにとってとても誇らしく思い、魔法少女になって良かったと本当に思った。
 その後もさやかは一人で日夜魔女退治に勤しんだ。だが、魔法少女になってまだ日が浅いせいかまだ思うように戦えていなかった。
「ったく、マミさんとは会えないし、キュゥべえもどっかいっちゃうし新人一人で魔女退治やらせるな! って思うわぁ」
 ひとりごとにしては大きめな声で愚痴を言うさやか。
「まあこの程度の相手だったらあたしの敵じゃあ無いけどね!」
 現に今倒した相手は魔女ではなくその使い魔だった。雑魚の相手ぐらい余裕だと強がりを言うが、内心ではたった一人で戦うことが心細いせいか無意識に声を大きく出していた。
「おまけに嫌な奴には合うし……」
 さやかは先日出会った魔法少女の佐倉杏子のことを思い出す。
 まどかと一緒に魔女を探索中に路地裏で見つけた魔女の使い魔を倒そうとしたところを杏子に横やりを入れられて逃がしてしまった。
 杏子が使い魔を逃がしたのは、もっと人を襲わせてグリーフシードを落とすせるように成長した魔女を狩るためだと言う。
 自分の尊敬するマミとは違い、他人のためではなく自分のためだけに力を使う魔法少女にさやかは怒りを顕にした。
 そんな杏子の考えを許せずさやかは戦いを挑んだが、マミと同様にベテランの魔法少女である杏子に為す術も無く圧倒され、おまけに見逃されてしまった。
「今度会って……勝てるかな……」
 前の戦いで敗れたことやそのことにキュゥべえから才能の差だと言われたことを思い出し、ボソッと弱音を吐くさやか。
 こんな時にマミさんがいれば――――――――
「随分と頑張っているみたいね」
「えっ?」
 突然掛けられた声にビクっと反応するさやか。
 声のする方へ見ると暗闇から現れたのは――――――――
「久しぶりね、美樹さん」
「ま、マミさん!?」
 さやかの前に現れたのは今もっとも会いたくて久しぶりに会うマミだった。
「もうどうしたんですか! あれから会えなくて心配したんですよ!」
「ごめんなさいね。心配掛けちゃったみたいで」
 マミと会ってさっきまでの心細さは消えた。
 杏子とは違う他の人のために戦う自分にとって憧れの魔法少女。
「ところであなた、魔法少女になったのね」
「はい。色々と考えて結局こうなりました」
「そう。でも今の戦いはあまり感心しないわね」
「そんなぁ、まだ新人なんですから多めに見てくださいよー」
「なら先輩として色々と教えてあげなくちゃね」
「マミさんが居れば百人力ですよぉ!」
 さやかから見るとマミは微笑んで見えて先ほどとは違いとても安心できた。
「ふふっ、あなたに教えてあげるわ。魔法少女の戦い方というものをね」
 ――――――――そしてあなたが望むなら魔法少女よりもさらに強くなる方法もね。
 が、さやかからでは暗がりでよく見えなかったのだが、マミの顔は歪な笑みをしていた。邪悪なそのマミの表情にさやかが気づくことはなかった。


「――――――――ッ!?」
「おっ、気がついたか?」
「ここは……?」
「あんたの家だよ」
 目覚めた自分に声を掛けた赤い髪の少女――――それが杏子だと認識するのにしばらく時間が掛かるもようやく今の状況を理解できるくらいに頭が働き始めるほむら。
 ちなみに杏子は持参したカップ麺を食べている最中だった。
「私はどのくらい寝ていたの?」
「あんたの言う「ワルプルギスの夜」襲来までまだ二週間はあるぜ」
 つまりあれから大分日が経ったということになる。
 何日も寝ていた自分に呆れながらもベッドから起き上がる。
「おい、無理すんな。まだ回復しきっていないだろ?」
 杏子の言う通りほむらの身体はまだ体調が万全と言えるほど回復しきっていなかった。
 立ち上がるもふらつく身体、それでもほむらは休もうとはしなかった。
「巴マミは?」
「さあな。あれから一度も会っていない。というか正直出くわしたくないな」
 魔女ならともかくあんな巨人と戦う気なんてさらさらないと杏子は言う。
「ただ、あんたと巴マミ以外の魔法少女には会ったが……」
「何ですって!?」
 まさかまどかがッ!? とほむらは最悪な事態を思い浮かべるが――――
「確か、美樹さやかって言っていたか……」
「美樹さやかが……そう、彼女が……」
 まどかでないことに一瞬安著するもさやかが魔法少女になったことを聞いてほむらは頭を悩ました。
 さやかの魔法少女化。それを意味するのはさやかがほぼ間違いなく魔女へと変貌することを意味していた。
 魔法少女から魔女になるのは絶対であり魔女と化した人間は元に戻ることはない。
 その運命から逃れるの方法は魔女となる前に死ぬしかない――――かつての別の時間軸のまどかたちのように。
 また魔女から魔法少女に戻ることは不可能であるとこのシステムを作り出したキュゥべえが断言している。
「なあ……おい……」
 元に戻す方法があるとすれば魔法少女になる契約する際の願いで叶えるぐらいだろう。
 あと他に方法があるとすれば――――――――
(ノアの力なら或いは……)
 可能だとしたら万能とも言うべきノアの力ならとほむらは考えるが、この世界に来たことでノアの力は消耗し、今のネクサスの姿となっている。今のネクサスの力ではそこまでのことをするのは無理だろう。
「おいっ! 人の話を聞けよ!」
「あっ……ごめんなさい。何かしら?」
 思考に没頭していて杏子に呼ばれていたのに気がつかなかった。
「ったくよぉ。頼むぜ」
 ほむらの様子に呆れながら杏子はカップ麺のスープを飲んでから真剣な表情でほむらを見つめた。
「で、いい加減話せよな。あんたとあの巨人について」
 杏子が今ここに居るのは元は「ワルプルギスの夜」を倒すためだ。
 杏子は自分の縄張りにしていた街に突然現れたほむらに「ワルプルギスの夜」を倒すのに協力して欲しい、と言われた。
 突然どこからともかく現れる「ワルプルギスの夜」の出現時間とその位置まで把握しているというほむらの言うことは半信半疑だったが、協力すればほむらが所持する複数のグリーフシードを譲ると言って杏子は少し考えたが、自分一人では勝てないであろう強大な魔女を複数の魔法少女で倒すというリスクが小さい点と一度に複数のグリーフシードが手に入るという見返りが大きいという二つの点から杏子はそれに乗ってこの街にやってきた。
 だがやって来た早々にあんなことになるとは夢にも思わなかったが。
「流石にあんなことがあって何も話さないようじゃあ、あたしはこの件から降りるぞ」
「……分かったわ。でもこれから話すことは信じられないような話になるわ。それでも聞く?」
「あのな、あたしは魔法少女なんて非常識なものになって非常識な魔女なんてものを退治しているんだぜ。その上、巨人同士の戦いなんて非現実的なものまで見たんだ。今更どんな突拍子も無いことを聞いたって驚きはしないし、信じるぜ」
「…………ありがとう」
 信じる。それはほむらにとってとても嬉しい言葉だった。
「おいおい、話を聞くだけで礼を言うなよ」
「ええ、そうね。話すわ。私と巨人のことについて知る限りのことを――――」
 ほむらは話し出す。自分は元は別の時間軸から来たこと。その繰り返す時間の中で銀色の巨人に出会ったことを。
 全てはたった一人の親友を救うために――――――――。
 この時ほむらは気が付かなかった。エボルトラスターが淡い光を放っていたを放っていたことを。それがこの先の彼女たちの運命を左右することにも――――――――。


「マミさん、一体どこに行ったの…………」
 まどかはマミのマンションに向かっていた。本当ならさやかと一緒に魔女退治に付いて行くつもりだったのだが、さやかからマミを探してくれと言われたのだ。
 先日会った魔法少女の杏子のことでまどkはさやかを心配していたのだが、結局まどかはさやかと一緒に居ても魔女退治の邪魔になるだろうと考えてさやかの言うとおりマミを探していた。
 あの日からマミとは会っておらず、もしかしたらマミが帰ってきているかも、とマミのマンションに何度も訪れていたがマミに会うことはなかった。
 そして今日もマミの部屋に訪ねるが相変わらず部屋のドアの鍵は開いたままで最初は勝手に入るのを躊躇していたが今ではもう慣れてしまって勝手知ったるといった感じにドアを開けて入る。
 部屋に入ってリビングを見渡すとテーブルには未だに飲みかけの紅茶が置いたままだった。
「マミさん……」
 変わっていない状態の部屋を見渡して出直そうと帰ろうとしたまどかだったが、ふと、ある部屋を注視する。
「寝室かな……?」
 リビング以外の部屋には入ったことがなく他の部屋に入る気など無かったが、何故か今日に限ってはその部屋が気になって近づいた。
 まどかは特に勘が鋭いわけではない。けれどこの時だけは強く勘が働いた。
 ――――――――あの部屋に入ってはいけない、と。
 中のモノを見てはいけない。知ってはいけない。入れば必ず後悔する、と。
「…………」
 それでもまどかはその部屋にまた近づいた。
 扉のノブに手をかける。手のひらにはいつのまにか汗をかいていたがそんなものを気にならなかった。それよりも何の変哲もない扉のノブがとても重く感じたのが気になった。
「……っ」
 まどかは意を決して扉を開けた。
 そしてその部屋の中には――――――――


「――――つまり、あんたは何度も同じ時間をループしているのか。「ワルプルギスの夜」に勝つために」
 食べ終わったカップ麺をテーブルに置いてほむらから聞かされた話をまとめる杏子。
「正確にはまどかを魔法少女にせず勝つということよ」
「あたしからすればどっちでもいいよ。……とは言ってもあの「ワルプルギスの夜」を一人で倒すなんてとんでもない奴だな」
 一人の魔法少女では勝てないと言われている強大な魔女を倒したというまどかの潜在能力は素直に凄いと感心していた。
 ――――――――見た目はボケーッとしてそうなとろそうな奴なのに。
「何か失礼なことを考えなかったかしら?」
「はっ! い、いや気のせいだろ」
 妙なところで勘が働くなぁ、と多少呆れながら杏子はほむらがまどかに対してどれだけ大事な相手なのかは分かったのだった。
「にしてもキュゥべえの野郎、あたしらにとんでもないことを隠しやがって……!」
 キュゥべえに対して怒りを顕にしていた。
 今度会ったら一度ブッ殺してやると心に決めた杏子だった。
「で、またループして前の時間に戻る最中にあのウルトラマンって巨人に出会ったと」
 他人に語ることなど無いだろうが自分もそれなりに大変な人生を歩んだが、何度もループしたり巨人と出会うは、とお前はお前でかなりとんでもない人生を歩んでいたんだなぁ、と思った。
 また杏子はほむらのことを無表情で冷めた性格をしていて何を考えているのか分からない奴だと思っていたが、本当はただの友達想いの馬鹿な奴だと改めた。
 ほむらは自分の親友のために魔法少女となってその親友を救うために何度も過去に遡りやり直しをし続けている。自分もまた自分の願いによって家族の未来を壊してしまいそれをやり直したいと思ったことがあった。
 だが目の前にいるほむらはやり直すことが出来てもその全てが失敗に終わっている。最良の結果を得られずにだがそれでも諦めずに歩み続けていることに杏子は諦めないほむらの意思の強さは素直に凄いと思った。
 ――――――――他人のためにここまで出来る奴なんて少なくとも自分には出来ないな。
「どうしたの?」
「いいや、何でもない」
 まあこいつはこいつであたしはあたしだ。と思った。
 ――――――――だがそれでもいつかあたしもまた誰かのために何かできるだろうか……。そんなことを考えた杏子だった。
「……んと、じゃあ巴マミについては? あの黒い巨人もウルトラマンじゃないのか?」
「あれは影……」
「影?」
「私にもよく分からないわ。ただあれはウルトラマンと相反する存在なんだと思う」
 ほむらの中で眠るノアから得られた断片的な情報からほむらは闇の巨人をそのように表現する。
 ようは詳しいことは分からないというほむらに杏子はこの話についてはこれ以上は言及しなかったが別の疑問を口にする。
「……でもさ、どうして「ワルプルギスの夜」を倒すのにあたしたちの力が必要なんだ? あのウルトラマンがいれば勝てるんじゃないのか?」
 一撃で魔女を倒せるほどの力を持つウルトラマンなら「ワルプルギスの夜」が相手でもウルトラマンだけでも十分だと杏子は思った。
「……それは無理なのよ。少なくとも今の私一人では勝てない」
「どういうことだ?」
「それは…………ッ!」
 突然、対面する杏子から目をそらして別の方向を見るほむら。まるでそれは何かを見つけたような反応だった。
「どうした?」
「……魔女が現れたわ」
 ほむらの持つエボルトラスターが魔女を探知した。ネクサスへの変身アイテムだけでなくネクサスの敵であるビーストの探知も可能のアイテムは、さらに魔女を探知することもできる。
 魔女とビーストにはある共通点がある。両者は人々に絶望を与える存在であり、その力の本質もまた酷似していた。とある宇宙ではその力のことを「マイナスエネルギー」と呼ばれている。
 そのエネルギーを探知することが出来るエボルトラスターはビーストと同じ反応を持つ魔女にも探知することが可能なのだ。そしてその探知範囲は魔法少女のソウルジェムよりも優れている。
「あなたは魔女の方へ行って」
「それはいいが、あんたは?」
「……私はキュゥべえを探すわ」
「キュゥべえを?」
「あいつなら巴マミがどうしてあの闇の巨人になったか何か知っているかもしれない」
 ほむらはキュゥべえのことを怪しいと考えていた。
マミの変貌をあのキュゥべえが何も知らなかったはずがない。
そして杏子からの話ではまどかたちと会った時にキュゥべえが居なかったのが気になった。
 別の時間軸ではまどかか自分以外の魔法少女と一緒にいるはずのキュゥべえが居ないというのがおかしいと思った。
 今はマミと一緒に居るのかは分からないがキュゥべえと会い問い詰めるべきだと考えた。
「分かった。本当ならキュゥべえはぶっ飛ばしておきたいところだがそっちは任せたぞ」
「ええ。――――それからもし美樹さやかに会ったらくれぐれも刺激しないこと」
「分かってるよ。わざわざ面倒な敵を増やすような真似なんかしやしないさ」
 下手なことをしてソウルジェムを濁らせて魔女化なんてさせるつもりはない、と杏子は魔女の反応のもとへと向かった。
 ――――――――それにしてもあたしってこんなに他人と慣れ合ったりしたっけ?
 ふと、そんなことを思った杏子。
 一人になってからは誰にも頼らずに自分のためだけに生きてきたが、ここまで他者と一緒に居ることはとても珍しく懐かしかった。
(でも悪い気はしないな……)
 何故かひどく懐かしい気分になっていた。まるで前にもあったような感じがするのは果たして気のせいなのか。そんなことを思いながら魔女の反応があった場所がソウルジェムが反応するくらいまで近くなってきた。
 だが辿り着く直前でソウルジェムから魔女の反応が消えた。
「なっ!?」
 反応が消失したということは誰かが倒したのか。
(美樹さやかか?)
 魔女を倒したのはさやかかと思い確認のためにその場所まで向かうが杏子は後悔した。さやかだけかと思いきやさやかの他に予想だにしなかった人物までいて驚く。
「あんたはっ!?」
「美樹さやか…………それに巴マミ!」
「ふふっ」
 マミが居るのを見た杏子は来るんじゃなかった、と舌打ちした。
「久しぶりね佐倉杏子さん」
「ああ、あたしは会いたくなかったがな」
「マミさん、あいつのこと知っているんですか?」
「ええ、以前戦ったことがあるわ」
「おい、そんなことよりそいつから離れろ!」
 マミの側にいるさやかに叫ぶ。
「何でマミさんから離れないといけないのよ」
 だがさやかは杏子の言う通りにすることはなかった。もっとも杏子もさやかが素直にこちらの言うことに従うとは思っていなかったが。
「そいつはお前の思っているような奴じゃねえんだ! そいつは敵なんだよ!」
「はぁ? あんた何言ってるのよ」
「だああ、いいからこっちにこい!」
「誰があんたの言うことなんか聞くか!」
 このままでは埒があかない。かといって強引に連れて行こうにもさやかの隣には自分たちを傍から見て楽しんだ様子のマミがいる。
(メンドクセー。何でこっちはこんな苦労しなきゃなんねえんだ)
 動こうにも動けずにいる杏子。だがここでマミが動き出した。
「美樹さん」
「巴マミ! お前っ!」
さやかの前に出て杏子と対峙する形となった。杏子は槍を構えていつでも動けるようにする。
「彼女は私が相手をするわ」
 そうさやかに言ってさらに一歩前に出てマスケット銃を取り出す。
「ちっ……」
 自分と戦おうとするマミを見てどうするか考える。
「安心しなさい。あなた相手に変身するまでもないわ」
「へっ、それはありがたいね」
 変身しない。つまりあの闇の巨人に変身しないという意味であろうマミの言葉に一〇〇%安心はできないがとりあえずは魔法少女同士の戦いになりそうなので心の中では助かったと思った。
 そんな杏子の心情を知ってか知らずかマミは笑みを浮かべ――――――――
「いくわよ!」
 掛け声と共にマスケット銃を撃ち先に仕掛けた。
「おっとぉ!」
 反射的に弾丸を槍で切り払って反撃とばかりにマミに目掛けて突きを繰り出す。
 当然この程度の攻撃など避けられるだろうと思った。後ろで観ているさやかすらもそう思った。
「――――――――え?」
 だが杏子の槍は、いとも容易くマミの身体を貫いた。


「――――――――な、なにこれ」
 まどかが見たものは、部屋が大量のグリーフシードで埋まっていた。ただのグリーフシードではなくどれもが孵化寸前の状態だった。
「な、なんなの……」
 何故マミの部屋にこんなものが――――。
 訳が分からなかった。どうして? マミさんは一体何を!?
 わけのわからないものを目の当たりにしてまどかが混乱している内に部屋の中に変化が生じた。
 ――――――――部屋の中にあるグリーフシードの一つが孵化したのだ。
「きゃあ!」
 孵化して生まれた魔女は、早速、鹿目まどかという獲物を見つけた。
 「あ、ああ……あああ…………」
 何の力も持たないただの少女にしか過ぎないまどかは魔女と戦うことなどできない。すぐに部屋から逃げ出そうとする。
「あ、開かない! どうしてっ!?」
 部屋の中はすでに魔女の結界が張られ、魔法少女ではないまどかは出られない状態にあった。
「そ、そんな……!?」
 さらに事態は悪化していく。
 孵化した魔女は一体だけかと思えば、また一つグリーフシードが孵化した。
 大きな頭に幾つもの目玉が付いていて胴体にはたくさんの触手を生やしたグロテスクな姿をした魔女がまた一つ、一つと次々に孵化していく。
 そして魔女たちとその使い魔たちはまどかに一歩一歩近づいていく。
(わたし、死んじゃうんだ……)
 まどかは目を瞑って死を覚悟した。
 だがまどかに死が訪れることはなかった。
 まどかを救うために何度でも立ち上がる――――――――彼女が現れたからだ。
「まどかッ!」
 まどかの危機にほむらが結界に侵入して現れた。
「ほむらちゃん!?」
 すでに構えていたミニミ軽機関銃を孵化した魔女たちに向けて全弾発射する。
 さらにほむらは孵化した魔女や使い魔たちだけでなく部屋に存在する全てのグリーフシードを手榴弾で爆破させた。
 しかし爆破して生じた煙の中から生き残っていた一体の魔女が飛び出して逃げようとする。
 それを見逃さなかったほむらは弾切れになった機関銃を捨てて新たな武器を取り出す。それはエボルトラスター以外にもネクサスからデュナミストに与えられる小型の銃・ブラストショット。小型のスペースビーストなら一撃で仕留められる強力な真空衝撃波動弾が発射され魔女に直撃し魔女は分子分解して消えた。
「はぁ……はぁ…………」
「ほ、ほむらちゃん……」
 魔女を倒したほむらはすぐにまどかに駆け寄る。
 また自分が関わって怒られるのでは、と身を固めるが――――――――
「大丈夫っ!? どこも怪我はないっ!?」
 まどかの思ったこととは異なり、自分のことをすごく心配しているほむらの姿だった。
 ――――――――ああ、わたしってひどいや。こんなにも自分のことを想って心配してくれたのに怒られる、だなんて考えちゃうなんて。
 今にも泣きそうな顔をするほむらを見てまどかは自己嫌悪した。
「うん、大丈夫だよ。ほむらちゃんのおかげだよ。ありがとう」
「そう。よかっ、た……」
 安心したのか力が抜けてまどかの前に座り込むほむら。
 そんなほむらの様子を見て心配を掛けてしまったことに謝りたかったが、それ以上にここまで自分のことを想ってくれてるとても嬉しかった。
 お互いに気持ちを落ち着かせて二人は状況を整理する。
「ほむらちゃんどうしてここが?」
「魔女の反応があったのよ。……でもまさかこんなことになっていたなんて…………」
 ほむらもこれには驚愕していた。マミの部屋がまさか魔女の巣となっていたとは夢にも思わなかった。
「こんなの絶対おかしいよ。何で……何でなの。何でマミさんの部屋に魔女が出てくるの……!?」
(……巴マミと一緒に居たキュゥべえがこのことに気づいていないはずがない)
 キュゥべえを探していたほむらだったが見つけることはできず、その代わりに魔女の反応を感知し、しかもその場所がマミのマンションだったことから急いで駆けつけてみれば魔女の結界内にまどかが魔女に襲われていたのだ。
(巴マミがファウストという巨人に変貌したのと、この部屋の惨状。キュゥべえが知らないはずがない)
 そしてこのタイミングで見つからないキュゥべえ。となるとこれは――――――――
「まさか……!?」
「どうしたのほむらちゃん……?」
「美樹さやかが危ないわ!」


「マミさんッ!」
 杏子の槍に貫かれて地面に倒れるマミをさやかが駆け寄る。
「マミさん、しっかりして!」
「…………どういうことだよ」
 杏子はマミの行動に訳が分からなかった。何故わざと攻撃を受けたのか。あれはマミなら避けられる攻撃なのにも関わらずマミは避けずに攻撃を受けた。一体なんのためだ。
「…………一体何を考えているんだ巴マミッ!」
 マミに向け怒気が込めて叫ぶ。
「――――――――ふふっ」
 杏子の叫びに反応したのか起き上がるマミ。貫かれた体の傷はすでに消えていた。
「マミさん大丈夫なんですかっ!?」
 さやかは起き上がったマミの傷口を見ると自分が傷ついた時のようにすでに治っていることに一安心する。
「この程度では魔法少女は死なないのよ。どうせこの体はただの抜け殻に過ぎないのだから」
「え? マミ、さん……?」
 何を言っているの? と不思議そうにマミを見るさやか。
「巴マミ、お前っ!」
 杏子は今からマミが言わんとすることに気づいてそれを止めるために叫ぶ。先程の攻撃を受けたのはこれから話すことに繋がるからだ。
 だが杏子の叫びを無視してマミは続けた。
「いい、美樹さん。魔法少女となった者はその魂をソウルジェムに移される。肉体はただの器に過ぎないのよ」
「マミさん、さっきから何を言って……」
「だから肉体にどんな損傷を受けても今の私のように何も問題はないのよ。例え心臓が破けても、ありったけの血が抜かれようとも魔力で修理すればまた動くようになるのよ。本体であるソウルジェムがある限りね」
「……そ、それってあたしたちゾンビみたいになったってことじゃないですかッ!」
 この間の杏子と戦ったときにさやかが傷つけられた箇所がすぐに治ったことを思い出し、今のマミの傷が綺麗に治っているのを見てマミが言っていることが本当なのだと分かり、それが意味するのが自分たちは人間ではないということに衝撃を受ける。
「戦う上ではとても効率的なことよ。――――あのインキュベーターは実に面白い方法を考えたものだわ」
 マミはここに居ないキュゥべえのやり方を賞賛する。もっともさやかはキュゥべえをインキュベーターと呼ぶことを知らないのでマミの言っている後半部分が理解できなかったが。
「…………マミさんは最初から知ってたんですか?」
「いいえ。少なくともキュゥべえから何も教えてもらっていないわ」
 事実、マミはキュゥべえから何も聞かされていなかった。
 またこことは違うほむらが辿った別の時間軸においてもほむらが真実を告げた以外ではマミが真相に気づくことはなかった。
「ど、どうしてキュゥべえは教えなかったのよ!」
「先に言えば契約しようと思わなくなるからでしょう。違うかしら?」
 必要最低限のことしか話さない。それがキュゥべえのやり方なのだとマミは言う。
 そしてこれが――――――――
「美樹さん…………これがあなたの憧れていた魔法少女の正体よ」
「……っ」
 足の力が抜けて地面にひざをつくさやか。
「そんな…………あ、あたしはこんなの望んでなんてなかった……」
「でもあなたは戦いの運命を受け入れてまで叶えたい願いがあったのでしょう。そしてそれは叶えられた」
 そうだ。確かにその通りだ。自分の願いは叶った。恭介の腕は治ったんだ。
 でも、私の望んだことはこんなことじゃあなかった。
 どうして、どうして、どうしてどうしてどうしてどうしてこんな!
「……な、何でマミさんはそんな平然としていられるんですかっ!? あたしたちゾンビにされちゃったんですよ!」
 ゾンビとなった事実にどうしてこんなにも平然で居られるのかさやかにはマミのことが理解できなかった。そしてマミから返ってくる言葉にも理解できなかった。
「あたしたち? 美樹さん、あなたは勘違いしているわ。私の魂というべきものはちゃんとこの肉体にあるわ」
「えっ……?」
「ただし、この肉体の宿主である巴マミの魂はソウルジェムに入ったままだけどね」
「ま、マミさん……何を、言っているの……?」
「ゾンビになったのはあなたと佐倉杏子だけよ。そして――――――――」
 恐る恐るマミの顔を見る。そしてさやかは見てしまった。
 いつもの優しく微笑んだ笑顔ではなく――――――――歪に哂った顔をしたマミを。
「佐倉杏子の言うとおり。私は――――――――お前たちの敵なのだ!」
 マミの周囲に闇が溢れ、それを纏う。そしてそれは巨大な闇となって、人の形へとなす――――――――
「う、そ…………」
 さやかが目にしたのは、マミが闇の巨人へと変貌していく姿――――ダークファウスト・ツヴァイだった。
『さあ、お前たちに恐怖と絶望を与えてやろう』
 杏子とさやかを見下ろしながらファウスト・ツヴァイは動き出す。
「おい! なにぼさっとしてやがるっ! 早く逃げるぞ!」
「あ……ああ…………」
 さやかに逃げるよう叫ぶがさやかは身動きできずにいた。
 自分の憧れていた人から告げられる衝撃的な事実。そして変貌したその邪悪な姿にさやかの頭は理解に追いつけず何も出来ないくらいに余裕がなかった。
「ちっ、この馬鹿っ!」
 そんなさやかを見捨てずに連れて行こうとさやかを担いでこの場から逃げようとするが――――――――
『逃げようとしても無駄だ』
 魔女の結界と同じく現実世界とは別の空間であるダークフィールドを形成する。
「なっ!?」
 ダークフィールドによってどこが出口なのか分からない杏子はこの場から逃げることができなくなった。
 とにかくファウスト・ツヴァイから離れようと杏子は必死に駆ける。しかしさやかを担ぎながらの上に人間と巨人という大きな体格差もあって距離は離れるどころか狭まる一方でファウスト・ツヴァイに追い詰められるだけであった。
「……あたしを置いて」
「あっ? 何言っていやがる」
 杏子に担がれているさやかが自分を降ろすように言う。
「このままじゃあんたも……」
「うっせえ! あたしはまだ諦めてねえ」
 だが杏子の体は限界に近かった。ペースを落とさずに全力で走っている。それに対してファウスト・ツヴァイはただ歩いていた。その気になればいつでも追い抜けるという自信の表れだろう。
「何であたしなんかを助けようとするのよ……」
「……別に理由なんかないさ。ただ――――」
 ――――――――こんなあたしでもあんたを助けたいと思ったんだ。
 その内心の変化に戸惑う暇もなく杏子はさやかを助けただけの話。
 だがついに――――――――
「くそっ、これまでなのかよ……!」
 杏子は悔しそうに眼前に立つファウスト・ツヴァイを睨む。
 もう終わりだなと杏子の視線はファウスト・ツヴァイからその背後の空間を見つめる。
杏子の見つめる空間が歪んでいるのを見つけたからだ。
 そしてその空間から光が現れた。
『シュワッ!』
『ヌッ!』
 光はファウスト・ツヴァイに激突。ファウスト・ツヴァイはその場から吹っ飛ばされるが空中で態勢を整えて地面に綺麗に着地する。
『懲りずにまたやられに来たか』
 光も地面にゆっくりと降りると輝きが止んでその姿が顕になる。光はウルトラマンネクサスの姿となってファウスト・ツヴァイと対峙する。
『ふっ、いいだろう。今度は逃したりはしない!』
『シュゥゥウワァッ!』
 巨人同士の戦いが再び始まる。


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