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[26700] 東方蛇精譚・夜話【東方二次・男オリ主】
Name: 窓◆0bf2c45e ID:6be04712
Date: 2015/01/20 03:24
ぽつぽつ投稿する(基本Sage更新、Hした時だけAgeます)東方プロジェクトの二次創作
のつもりですが二次設定とか独自設定が盛り込まれてますので、実質は三次創作かも。
好色な蛇の妖怪(オリ主)が出ます。

たぶんそんなにエロくない。(作者主観)

時系列は地霊殿が始まる前の晩秋。

俺の嫁がエッチなことされるのが嫌という人。
特に百合じゃないのが嫌だという人はお読みにならないようにお願いします。

小説家になろう、ノクターンノベルズにも投稿を開始しました。
2012/07/20 ノクターン二次投稿終了にともないピクシブに投稿開始。

2012/08/30 誤字脱字の修正が紛らわしいので今後は普通にAge更新します

2015/01/20 ハーメルンにも投稿開始。



[26700] 蛇、幻想郷に至る、の巻
Name: 窓◆0bf2c45e ID:bd863772
Date: 2011/12/20 13:20
目が覚めると、眼前には抜けるような青空が広がっていた。
現代社会においては、まずお目にかかれない、汚染されていない美しい青空。
柔らかな太陽光が降り注ぎ、その心地よさに、ソレは思わず相好を崩す。
背中に感じる大地の柔らかさも。頬をくすぐる草の感触も全てが心地よい。
このまま一眠りしよう。
ついさっき目が覚めたばかりだというに、ソレは意識を飛ばそうとした。

「ちょっと」

なにやら険の篭った声がソレに語りかけて、邪魔をした。
誰だ人の眠りを妨げる奴は。
無視してソレは眠ることにした。声のする方向に背を向けて身を丸める。

「…起きなさいよ、どれだけいぎたないの?」

うるさいなぁと思う。しかし
声の主が不穏なレベルの妖気の放射しはじめた、危険感じたソレは渋々身を起す。
眼前には、見事な金髪の美女だった。やや眠そうな顔をしている。
しかしソレの意識は美しいかんばせに向いていなかった。
視線はまず豊かに張り出した胸部へ自然に向けられ、しかるのち官能的なくびれをした腰部へと移る。
生憎正面からなので臀部は見えないのが残念だった。
さてこのいい乳をした娘は誰だったか?
思案していると、美女が扇子を振り上げソレの頭部目掛けて叩きつけた。

「目が覚めて?」

まったく痛痒を感じていないらしいソレ。
髪の色は普通に黒い、結構な長さで、ぞんざいにひとまとめにして飾り紐でくくっていたが、艶やかな黒髪である。
対比するかのように肌は白い、病的な程に白く、まるで白子のようだった。
細い眦の目は鬼灯のように赤かった、いっそう白子のように見えるが。白子ならばこんな風に日光を浴びればタダではすまない、まぁ人であればの話だが。
容姿は男とも女ともつかない中性的な容貌だったが、眼前の美女に負けず劣らずの美人であった。
体つきは男に見えた、すくなくとも胸板はまな板である。
ただひょろりとした体躯はどこか女性らしい丸みを帯びていおり、男と断言するにはしなやかすぎた。

「…その扇子。スキマか・・・お前だけには“いぎたない”などといわれたくないぞ」

声もまた男にしては高すぎ、女としてはやや低い。やはり性別不詳だ。

「私を堂々とスキマ呼ばわりとはいい度胸ね、相変わらず」

こめかみをぴくぴくさせながら言う美女。
どうやら二人は知り合いらしい。

「そろそろ寝ようと思った所に、いきなり結界内に巨大な妖気が発生したから、何かと思えば…はぁ」
「結界…なんだここはアレか。スキマの箱庭か」
「幻想郷と言いなさい幻想郷と…久しぶりね夜智王」
「実に久しいなスキマ。何百年振りだ?」
「なんでいちいちあんた如きのことを記憶に残しておかないといけないの?・・・まぁここ百年は見なかったけど、あんた何してたの?」

百年単位でこんな話をする所をみると、二人とも人ではないらしい。
今外は西暦で何年だとソレが問うと美女はすぐに返す。

「時期が合うな・・・封印されておったのだ」

頭をぼりぼりと掻きながらソレは言った。

「はぁ?」
「ここに送られてきたということは、外ではすっかり忘れ去られたということか」

立ち上がったソレ、夜智王と呼ばれたモノはぐいと身を伸ばす。

「封印って…あなたクラスの妖怪が?」
「ああ、封印しに来た巫女があまりに別嬪でな。ちょいと捻った後に、取引を持ちかけたのだ」
「…相変わらずなのねアンタ」
「ああ、一晩ワシの相手をしてくれたら、黙って封印されてやろう、ということになってな。くっくっく、実に素敵な一晩だったぞ」

夜智王は実に淫靡な笑顔を浮かべた。相対する女性、八雲紫は心底軽蔑した様子で夜智王を見下す。

「最悪ね」

巫女が純潔を失えば、霊力を失ってしまう。
それを巫女の使命感につけ込んで…
強い妖怪らしいといえばらしい行いだが。
ある意味命を取るよりも酷いことだ。

「ガキのようなことを言うなスキマ。お前こそ男の一人もできたのか?そろそろまた冬眠か?一人寝が寂しいならいつでも閨に侍ってやるぞ」
「お断りよ、毒蛇を布団に入れる趣味は無いわ。悔しかったら藍のように毛皮モフモフになりなさい冷血動物」

しっしと手を払う紫。心底嫌がっている様子だった。

「夏場は冷たくて気持ちよいと評判なのだがなぁカカカ」

紫の言動。
そして夜智王の瞳、縦の裂けた瞳孔、先端が二つに裂けた舌。
どうやら蛇の妖怪のようだ。
幻想郷でも最強の一角に数えられる紫相手に飄々と対する所を見ると、相当の大妖らしい。

「さてスキマの箱庭ははて何百年ぶりだ?・・・少しは変化はあるのか?」
「そんなものは自分で確かめなさい、私は幾つか大事なルールをあんたに告げに来ただけよ、昔とは違うということをね」
「ルール?」

バサリとスキマから紙束が落ちてきた。

「何々…」

そこには幻想郷でのルールが細々書かれていた。
ざっと目を通した夜智王は、キュウと興味深そうに目を細める。

「ふぅん、澱んで腐るばかりかと思ったスキマの箱庭にも、変化はあるのだなぁ」
そう言って紙束を放り捨てる。
「散々な言い様ね」
「退屈でおさらばしたクチだからなワシは」

外の世界の刺激が夜智王にはお好みようだった。

「とにかく、ここに来た以上はルールを守りなさいよ」
「わかっておるよ本気のスキマの仲罰はワシも怖い、でもあんまりワシには関係はないさ。だってワシ人間は食わんし、いや別の意味では食うし襲うけどな」

無論いやらしい方の「食う」である。

「最悪」
「いいではないかー平和で。無理矢理襲うことも無いぞ和姦だ和姦」
「うるさい!あとちゃんと読んだの?あんたクラスの妖怪なら適当な異変をおこさ無きゃダメなのよ!?」

そういえばある程度の妖怪は適度に異変を起せみたいなことが書いてあった気がする。

「ふむ、では手始めに人里から女子や童子でも攫ってくるか?他の阿呆のように食わんから――いたぁ!」

扇子をかなりの妖力を込めて夜智王の頭部に叩き込む紫。
だんだん夜智王と話しているのが苦痛になってきた。
悪い奴ではないのだが、いかんせんこいつは好色すぎる、まぁ蛇のサガなのだが。

「前から気になっていたけど、あんたオス?メス?」
「忘れた、どっちにも化けれるからの」
「やっぱ最悪。ウチの藍に手を出したら承知しないわよ」
「あの九尾の狐か、ああいうカタブツを骨抜きにするのは楽しそうだな、一晩貸してくれんか?」
「死ね!」

思わず紫が本気の妖力を放つ。
避け損ねた夜智王がまっぷったつに裂け、死体がベタンと地面に転がる。
どうみても完膚なきまでに死んでいる。

「あ」
「おいおい、あ、ではないぞ。やめてくれ」

だが、なんでもなかったように二つに裂けた夜智王が見る見るウチにくっつくと、立ち上がる。

「まったく、何をするのだ、いきなり。死んだでわないか」
「再生する程度の能力…蛇らしい厭らしい能力だわ」
「言っておくがな死なないわけではないのだぞ?あんまり死ぬと閻魔や死神がうるさいのだ勘弁してくれ」
「ちなみに幻想郷担当の閻魔は四季映姫よ」
「げ。飛び切りに喧しい奴ではないか、これは迂闊には死ねんな…」

やれやれと夜智王は肩を竦める。

「さてどれだけ口説いてもやらせてくれんスキマの相手も飽いたし、咽喉も渇いた。鬼でも捕まえて旧交を温めるか」

ウワバミなどというように蛇は好色と同時に酒好きである。
御多分にもれず酒好きである夜智王は、同じく種族的に酒好きである鬼を適当に見繕うつもりらしかった。
だが

「居ないわよ鬼」

紫の言葉に驚愕する夜智王。どういうことだと説明を要求する。
鬼達は旧地獄である地底に移り住んだり、あるいはいずこかに去った、と説明する紫。

「今地上にいるのは伊吹萃香だけ」
「伊吹萃香…ああ、山の四天王とか言われていたあのチビ鬼か。少しは育ったか?」

変化は無いわねと紫が言うと、夜智王は深く嘆息する。

「酒は兎も角ああもチンチクリンでは抱く気にならんなぁ」
「あんたの脳みそって、酒と女以外無いの?」
「男は可愛らしい童子、できれば初物に限るな、美女は厭きぬが美男は厭きる。だが女はガキはダメだ。」
「…平和でいいわね」

ともあれ一匹の蛇が幻想郷にやってきた。



[26700] 蛇、旧友との再会に肝を冷やす、の巻
Name: 窓◆0bf2c45e ID:6be04712
Date: 2011/11/28 01:54
「藍、ちょっといい?」
「おかえりなさい紫様、突然飛び出されたので何事かと思いましたが――」
「夜智王が来たわ、あなた人里に出る時は気をつけないさいよ」
「や、夜智王ですって!」
「そうよあの厭らしい蛇よ」
「何処です!すぐに殺しましょう!いやだめだあれは殺せない…封印です封印しましょう」
普段の冷静沈着な様子をかなぐり捨ててわたわたする藍。
「ちょっと落ち着きなさいよ藍。どうしたの?」
「橙が万が一あの蛇に捕まったら…なぜ直ぐにその場で封印されなかったのですか紫様!あの蛇のせいで起きた惨事をお忘れなのですか」
藍の取り乱しようは、あれか例によって式にしている妖猫のせいか。
「落ち着きなさいよ藍。あれは確かに男女見境なしだけど幼女には手は出さないわ」
「100%ではありません!私の記憶する限り23件の例外があります」
ああああ橙が橙が、と藍はひたすらうろたえている。
「そんなに心配なら探しにいきなさいよ…さっきも言ったけどあんた自身も気を…聞いてないし」
一日の半分は寝て過す。
それが紫の習慣である、つまりもう眠いので後は放っておくことにした。
警告はしたし、殺せないという厄介な能力を別にすれば、純粋な妖力では、夜智王と藍はほぼ同クラスだ、なんとかするだろう。
いい加減藍は橙離れが必要だろう。そうでもしないと何時まで経っても橙が成長できない。
「あ、霊夢にも一応警告をしなきゃ」
ああ、自分も人のことは言えないな…
そんなことを考えながら紫は眠りに落ちた。








第一話 



紫と別れた夜智王は、ぷらぷらと歩き始めた。
ここが幻想郷のどこともしれないが、幸い直ぐに道が見つかったので、道為りに進んでいくことにする。
とりあえず枝を倒し、先端が倒れた方へとだ。
「(さてどうするかな?とにかく酒と人肌が恋しい。鬼が居ないとなると山は天狗の巣窟か?)」
天狗はあまり好きではない。天狗は鳥妖とは少し違うのだが、まぁ蛇にしてみれば似たようなものだ。
蛇妖と鳥妖は仲が悪い。これは常識ともいえる。
インド神話のナーガを常食するガルーダのように。あるいは毒蛇をも喰らうゆえに信仰されるマハーマユリ(孔雀王)のように。
蛇にとって鳥は捕食者…天敵なのだ。
(某悪魔を召喚して使役するRPGでも龍系と鳥系の悪魔の合体相性が悪いのもそういう理由である。)
夜智王は蛇妖としてはかなり強い部類なので、木っ端天狗や烏天狗程度ならばどうということはないのだが。
「(人に化けて人里にでも行くか?しかしなぁ遊女はおらんだろうしなぁ)」
商売女は後腐れが無くて良い。
ただここの人里の規模を考えると…たぶん居ないだろう。
「(それに久々だ、うっかり死なれも困るしな)」
蛇妖である自分と交われば、相手は少なからず精気を吸われてしまう。
普段は問題なく制御できるが、長いこと封印されいていた今は、少々自身が無い。
そんなことで人を殺したとあっては紫の制裁が怖い。
「(さてどうする?河に行って河童でも釣るか?)」
それともいっそ地底に下りて鬼でも探すか、しかし地底は日の光が恋しくなる。
ままならぬものだ。
しかしこの道はいったい何処へ続いているのだろうか?
幻想郷の地理などまったく覚えていない夜智王はただ道為りに進んでいるが、辺りの雰囲気がだんだんと寂しくなっていることに、遅まきながら気づく。
道がある以上はこの先には何かがあるはずなのだが…
空を飛べばいいのだろう。出来ないわけではないのだが、好き好んで飛ぶ、ということもない。
「(さて、これはあれか迷子という奴か?)」
まぁ別にいいか。
焦るでも無く、夜智王は道を進んでいく。
何か目的があるわけでもなし。
人と違い空腹で倒れることない。
大抵の妖怪ならば負けることもない。
迷子になろうと困る事はないのだ。
長く生きた妖怪なので、無為に時間を使うことは別段苦痛でもない。
そう思った瞬間
「あら?」
耳に心地よい美声が聞こえた瞬間、背筋に悪寒が走った。
「あらあらあら?」
声と共に、背後に強力な妖気を感じる。
どちらかといえば感覚が鋭い方である自分の背後を、こうも容易く。
しかもこの妖気には覚えがある。
「久しいの幽香」
「なにやら見覚えのある蛇だと思ったわ、やっぱりあんたね夜智王」
振り返ればそこに美女が居た。
風見幽香
昔馴染みの妖怪だった。



夜智王は本能的戦闘態勢に入った。
これは“そういう”女なのだ。
しかし、それをみて幽香がくすりと笑う。
「何あんた?びびってるの?」
何かが彼女の笑いのツボに入ったのか、こらえ切れぬように笑い出す。
昔の幽香しか知らぬ夜智王はぽかーんとバカ面をさらすしかない。
それがまた幽香の笑うを誘ったようで、ばしんばしんと夜智王を叩きながら幽香が笑い続ける。
「のう本気で痛いからやめてくれんか」
「だってあんた、完全に後ろ取られてんのに、戦闘態勢に入るまで何秒掛かってんのよ?ばかじゃない?死ぬの?」
言葉も無い。さすがに百年近く封印されると色々鈍っているのだろう、自分ではイマイチわからんのだが。
「お前さん、随分丸くなったな」
「格下相手に本気を出すほどガキでは無くなったわね」
年月は偉大だ。
しみじみと夜智王は思った。
「いつ幻想郷に来たのよ」
「つい一刻程前だよ、さっそくスキマが注意に来た」
さてどうしたものか?
この女は怖いが美人だし出るところは出てるし、引っ込むべき所は引っ込んでるし、強い妖怪だから多少精気を吸われたって死にやしない。
まさに一晩のお相手にはうってつけなのだが…
前回はそれで酷い目にあった。
大分丸くなったようだが…妖怪ってのはそうそう本質が変わるもんじゃない。
「あんたは相変わらずねぇ?」
考えていることがばればれだ。
コワイコワイ、やはりダメだ。
「私は自分よりよわっちいのに抱かれるのはゴメンよ、雑魚っぽいのがうつるでしょ」
ワシは病気か何かか?と思ったが、口にはしないで置く。
「まぁ良いわ、珍しい花の種が手に入って機嫌がいいから見逃してあげる、さっさと消えないさい」
ふむ、つまりなんだこの先はやはり人里なのか?
聞きたいが。
何がきっかけでこの女のご機嫌が麗しく無くなる可能性もある、ここはさっさと退散しよう。
「まぁなんだ、一人寝が寂しい時と夏の夜の寝苦しい時は呼んでくれ」
それでもセールストークを止められんのは蛇の性、困ったもんである。
「間に合ってるわ」
幸い何もされず幽香とは別れることが出来た。まことに僥倖だった。



幽香と別れて半刻(一時間)も歩いただろうか。
遠目に妙なものが見えた。
「(洋館?はて以前には無かった気がするな…しかし血の様に真っ赤とは良い趣味ではないか)」
興味が沸いた。
夜智王は遠目に見える洋館へと飛んだ。
館の手前十丈(30m)程手前で地面に降りる。
近くで見るとかなり立派な洋館だと解かる、手入れが行き届いている所を見ると誰かが住んでいるのだろう。
こんな人里離れた場所だ、無論只者ではないだろう。
「(西洋渡りの妖かの…さて別嬪ならばいいのだが)」
立派な門扉を見やれば、そこに門番が…寝ていた。




[26700] 蛇、洋館の門前にて門番と戯れる、の巻
Name: 窓◆0bf2c45e ID:6be04712
Date: 2011/11/28 01:54
普通「何故門番が寝ているんだ?」とまともな神経の持ち主ならば思うだろう。
生憎この蛇は「まともな神経の持ち主」ではなかった。
「(ほうほうほう、これは眼福じゃな)」
門扉の横に置かれた長椅子に座り、幸せそうに寝ている門番。
人ではない、妖怪だ。
燃える様な赤い髪、大陸風の顔立ち、美しい少女である。
だが、例によってそれの視線は顔には向いていない。
「(スキマ程ではないが…良いモノをもっておるな)」
人民服のようなチャイナドレスのような不思議な服。
その胸部を押し上げる双丘をまったりと眺める。
半そでからまろびでた二の腕、深いスリットからこぼれる太ももへと視線を移していく。
何か武術の類をするのだろう、引き締まった体は健康的な美に溢れている。
胸もバカみたいにデカイのではなく、引っ込むべき所が引っ込んでいるゆえの巨乳。
「(いいな、まずこの娘にするか)」
するりと、足音もさせずに門番娘の横へと移動し、しゃがみこむ。
下から覗き込むと、まさに絶景であった。
惜しむらくは、これだけの体と露出のある服装にもかかわらず、少々色気に乏しいことか。
幸せそうに眠る姿には艶かしいものがまるでない。
そのうち鼻ちょうちんでもふくらますのではないだろうか?それでは折角の別嬪が台無しだろう。
「(ああ、でもこれは実に堕し甲斐のありそうな女だ)」
美しい紅い髪をちょいとつまみ上げる、普段は隠されているうなじに唇を這わせたら、この女はどんな声で鳴くだろうか。
この健全そうな少女を淫靡な妖婦に変えたらどんなに素敵だろうか。
想像するとゾクゾクとする。
「(しかし、起すには忍びないほどに幸せそうな顔で寝ておるなぁ)」
無理も無い。
こんな小春日和の、風も穏やかな昼下がりだ。
本性が蛇だけあって夜智王も日なたで寝るのは好きである。
ともすれば、女を抱くよりも好きかも知れない。
「(こちらも眠くなってきたの)」
門番の横に腰を降ろすと、夜智王は塀に背中を預け、一眠りすることにした。




どれ程時が経っただろうか。
隣で身じろぎする気配で蛇は目を覚ました。
「ひっ!」
こちらに気が着いたのだろう、素っ頓狂な悲鳴を上げて椅子から飛び上がった少女が身構える。
やはり武術の心得があるのだろう、その構えには隙がない。
「まぁそんなに身構えんでくれんかの」
「ど、どちら様でしょう!紅魔舘に何か御用が!」
この紅い洋館は紅魔舘というのか、そのまんまだな、と蛇は思う。
「ただの通りすがりの妖怪じゃよ、別段この館に用事は無いの」
「え?」
「今ワシは用があるのはそなたよ」
「え?私?」
「おお、ワシは夜智王、夜に智慧の智、王様の王で夜智王じゃ、見ての通り蛇妖じゃよ」
蛇の真意を測りかねた門番少女は目をくるくるさせている。
「名乗ったのじゃ、そなたの名前も教えてくれんかの」
「ホンメイリンです。紅に美しい鈴とかいて紅美鈴です。中国じゃありませんよ?」
なんじゃそれは?と首を傾げつつ蛇はころころと笑った。
「美鈴か綺麗な名前じゃの」
「あ、ありがとうございます」
美鈴はどうやら悪い妖怪ではないらしい、と判断したのか、構えを解くとペコリと頭を下げる。
妙に嬉しそうである。
「立ち話もなんじゃ、ほれ」
ぽんぽんと先刻まで美鈴が座っていたところを叩く。
「は、はぁ」
それ私の椅子です、と内心では思いつつも美鈴は腰を下ろす事にした。
無理矢理押し入る白黒の魔法使い、パパラッチのような烏天狗に比べれば、すこぶる良い人だし、美人だし、名前のことも褒めてくれたし。
すっかり油断しきった美鈴が椅子にストンと腰を下ろす、そのタイミングにきっちり合わせて、蛇が平行移動した。
すっぽりと美鈴を抱きすくめる形になる。
「ひゃぁ!」
「おー美鈴はぬくたいのぉ」
「ななななにをするんですかー!」
「何って、抱っこ?」
「なんで抱っこするんですかー!」
「ワシ蛇だから寒いのは苦手なんじゃよ、すっかり日も落ちてきたし、人肌が恋しかったのだ」
美鈴も女性としては長身な方なのだが、蛇は身の丈六尺(約180cm)はある、すっぽりと美鈴を抱きかかえることができる。
細い腰と胴に手をわまし、柔らかく抱きしめる。
「ふふ、美鈴は本当にぬくいの~」
一方でいきなり抱きかかえられた美鈴は、驚きと羞恥で大パニックに陥っていた。
そこへ
「ひっ!」
服の上からだが、夜智王の手がへそのあたりをさわさわと撫でている。
「やっ、やめてください!」
「うん?気持ち悪いか?」
「そうではないですけど!ひゃっ!」
気持ち悪くは無い、くすぐったいだけだ。
「妙な態勢で寝て居ったから体が凝っておるだろう、ひとつ按摩をしてやろう」
「そ、そんなトコ凝ってません~」
美鈴の耳元に口を寄せた夜智王がささやくよう言う。
耳に掛かる息のくすぐったさに、おもわずビクリと震えてしまう。
「(何…なんか甘い…匂いが)」
酒のような甘ったるい匂いがする、その匂いのせいだろうか、美鈴の肌が紅潮し、まるで酒に酔ったかのように。
「(頭が…ぼ~っとして…なに…コレ)」
「気持ちようなってきたかな?」
とろんとした様子で夜智王に背中を預けてきた美鈴。
夜智王はへその下あたりなどを中心に、あちこちを揉み解す。
それらは一般的に性的な欲求を増進するツボ、と言われている所だ。
「あ…あぁ…ダメですぅ」
夜智王の左手が服越しでも自己主張をする美鈴の乳房にそっと触れた。
同時に右手がスリットの脇から内股へと伸びる。
ごくごく柔らかく夜智王の左手が乳房を揉む。
「よい乳だな」
「あ…や…」
「やめて良いのか?」
左手が蠢く度に乳房がいやらしく形を変える。
マッサージをするように、柔らかく、全体を揉み続ける夜智王。
これはあくまで按摩なのだといわんばかりに、先端の敏感な突起には触れようとしない。
右手は内股を柔らかくなぞりながら、少しずつ上をと伸びていった。
服越しではなく直接肌の上をなぞりながら再び、下腹部を中心にマッサージを始める。
「どうした?なぜ首を振る」
左の乳房ばかりを執拗に揉まれているのがもどかしくてたまらないのだ。
だが、羞恥心がそれを口にすることを躊躇わさせる。美鈴はただ幼子のように涎を誑しながら首をイヤイヤと左右に振るしかできない。
「あ…!」
唐突に夜智王の両の手が美鈴の体から離れる。
「嫌なのだろう?ワシは女子が嫌がる事はせんようにしておるのだ」
ひどい。
こんな風にしておいて――
「お願いです…」
続きを。
そう美鈴の唇が紡ごうとした瞬間。
風を切って何かが飛来した。



[26700] 蛇、襲撃を受ける、の巻
Name: 窓◆0bf2c45e ID:6be04712
Date: 2011/11/28 13:39
それは風の刃だった。
美鈴を担いでからでは回避は間に合わない。
そう判断したのか、美鈴を左腕一本で宙に放り投げる。
「ひゃぁ!」
胴体を両断しようとする風刃を、右腕に妖気を纏わせ防御する。
青白い炎のような燐気を伴った妖気と、風の刃がぶつかる。
果たせず、右腕が肘の辺りで切断され、宙を舞う。
「ちっ」
舌打ちした夜智王は、切断された右腕を左手で掴み、振りかぶって風の刃が飛来した方向へとぶん投げる。
投げる途中で右腕が一匹の蛇へと変じる。
それを確認したあたりで、落ちてきた美鈴をやんわりと受け止め、すとんと地面に下ろす。
「やややや夜智王さん」
「すまんな美鈴、びっくりし…腰が抜けたのか?」
ぺたんと地面に座り込んだ美鈴を夜智王がからかう。
果たして放り投げられたのが原因か、それとも夜智王のマッサージが原因か。
ニヤニヤとする夜智王に対し、美鈴はその右腕を刺しながら、慌てている。
「それどころじゃないですよ!右腕が!」
すっぱりと切り落とされた右腕がグロテクスな断面を晒している。
ただあまり血は出ていない。
「なに気にするな、この程度の傷ならすぐに塞がる」
「そう…なんですか?」
「ワシの特技でな」
「はぁ」
「しかし、いいところで邪魔が入った。これは美鈴に懸想する何者かが妬んでのことかの?」
「そんな人いませんよぉ…悲しいけど」
「ほっほそれは良いコトを聞いた」
悲しげに胸の前で両手の人差し指をつんつんとする美鈴に、夜智王が笑う。
美鈴の頬に軽く口付け、腰の抜けた美鈴を椅子抱き上げて椅子に座らせる。
「では美鈴、続きはいずれ。次は日の落ちた後、閨でな」
次はセックスしよう。そう言われた美鈴は、真っ赤になる。
夜智王の冷たいはずの唇が触れた頬が異常に熱い。
「いいいいいきなりそんな!まずは友達から!とか!」
「セックスフレンドという奴か?」
「ちがいますぅ!」
「はっはっは、美鈴は初心だのぉ、だがそこが気にいった。次は必ずしような!」
「夜智王さんのばかぁ!恥ずかしいこと言わないでくださぁい!」
腰の抜けて動けない美鈴は喚くしかない。
そんな美鈴に手を振りながら夜智王は去って行く。
その姿が木々の向こうに消えるまで散々罵っていた美鈴だが。
その姿が消えたとたんへなへなと椅子に崩れ落ちる。
ぺとんと椅子に横になると、火照った身体に、秋の冷たい大気に冷やされた椅子心地よい。
「…気持ちよかった」
「何が?」
うっとりとする美鈴に誰かが声を掛ける。
美鈴が良く知っている声だ。
紅魔舘のメイド長。十六夜咲夜の、低い怒りの篭った声だった。
「ささささっささくやさん!」
「…門が騒がしいと妖精メイドの報告を受けてきてみれば…あなた、何をしていたの?今あなたの頬にキスをしていった男は何?」
「どどどどどどどこからみてらしたんですかぁ!」
「あなたが宙を舞ったあたりからかしら」
「あ、良かった」
その前の恥ずかしいシーンを見られていなかったことに安堵する美鈴。
しかし心の声が漏れているのは頂けない。
「…なにがよかったのかしらねぇ?あの男、じぃっとあなたのこの胸を!無駄にでかい!肉の塊を!みていたけど!」
やや控えめな胸元の咲夜が、なにやら私情の篭った怒りを向ける。
「やぁ!痛いです!咲夜さん!やめてぇ!」
その後も拷問まがいの咲夜の尋問は続いたが、美鈴はなんとか黙秘を貫くことに成功したそうな。
どっとはらい。







一方で美鈴に別れを告げた夜智王は、投げつけた自身の右腕の下へと向かっていた。
蛇に変じさせた右腕は、すでに襲撃者を捕らえ拘束することに成功している。
相手が誰かは分からんが、とりあえず女であるようだった。
その程度は感覚で分かる。
「…おお、ばかでかい烏がかかったの」
「すぐにこれを解け!このっ変態!」
夜智王の右腕が変じた大蛇に全身を拘束され地面に転がっていた少女。
その背中には見事な黒翼があった。
短めの波打つような髪もまた黒。
蛇に拘束されているせいで、身体の凹凸が強調されいやらしいことこの上ない。
「やはりお主だったか、久しいの文」
「お前に名前呼ばれる筋合いは無い!」
襲撃者の素性を夜智王は知っていた“風を操る”烏天狗の少女、射命丸文であった。



「ひどいのぉ…こーんなに小さい頃は「やちおうさま!やちおうさま!」とよぉ懐いておったのに…年月は残酷じゃ」
つい先刻幽香に遭遇した時とは逆の感傷にひたりながら、動けない文をじろじろと眺める。
「…それは私の人生でも最大の汚点だ、すぐに記憶から消せ」
「ぐるぐる巻きされて何を強がっておるのじゃ?お主は」
「やめろっ!」
ぴろっとこの格好で空を飛ぶのか?とつっこみたくなるような文の短いスカートを捲り中を覗き込む夜智王。
その動きには迷いが無く、おそらく脊髄反射でやっているのだろう。
怒鳴る文が周囲の風を操ろうとするが、それをはばまんと、首筋で待機している蛇が牙をむく。
「やめいやめい、ワシから離れているせいで有る程度その蛇は勝手に動く。怪我ではすまんぞ」
蛇の鱗は特徴的な六角形をしてる…マムシなのだ。
「くそっ…くそっ!」
「泣かんでもいいじゃろうが…」
よほど夜智王にいいようにされるのが悔しいのだろう、文の目に涙が溢れる。
「だいたいな、あんな殺気の篭った風刃を投げつけて置いて、なんの罰もなしに済むと思うほうがおかしい、美鈴に当たったらどうするつもりだったのだ?」
「うるさいっ!」
「童かお前は…まぁいい、天魔に挨拶もせにゃならんし、山まで連れて行け、それでこの件は手打ちにしてやる」
「…」
眦を吊り上げ夜智王を睨み続ける文。普段の文を知る物ならば、そのギャップに驚いただろう。
ただ夜智王にはここまで文に嫌われる“理由”に心当たりがあった。
「まだあの時のことを根に持っているのか?あれは半分はお主の自業自得で、残り半分はお主らの頭領である天魔の暴走ぞ?」
「…ほどけ、つれていってやる」
全身に巻きついていた蛇がずるずると小さくなっていく。
普通の蛇程度のサイズまで縮んだが、文の首に巻きつき離れない。
まるで蛇でできた首輪のようだった。
屈辱に顔をゆがめる文だが、これは途中で夜智王を振り落とさないようかけた保険なのだろう。
「ほれ早く着けばそれだけ、早く済む」
ギリと奥歯をかみ締めた文は、夜智王の腕を掴むと大空へと飛びあがった。

天狗は幻想郷最速の種族である。
あっというまに天空を翔けた文は妖怪の山と呼ばれている場所まで夜智王を運んだ。
「あの神社と湖はなんじゃ?あんなもの山にはなかったであろう?」
「天魔様に聞け」
「つれないのぉ、うぉい!」
急降下した文は、その勢いのまま、山頂近くの立派な屋敷の庭へと夜智王を叩きつけた。
ここが天魔の屋敷らしい。
「着いたぞ、すぐにこの忌々しい蛇を外せ」
「いたたたた、並みの妖怪ならぺちゃんこだぞ、おい」
「早く外せ!」
「わかったわかった。ご苦労だったな」
するりと文の首に巻きついていた蛇が離れ、それはようやく本体の元へと戻ると、しゅうしゅうと音を立てて右腕に戻っていく。
「じゃぁな!」
返事をする暇もなく、文は地面を蹴りいずこかへと飛び去っていった。
「やれやれ…これはなんとかしないとまずそうだの」
とりあえず古馴染みである天狗の長、天魔に挨拶をするため、夜智王は屋敷の中へと向かっていった。








「くそっ!…忌々しい!」
夜智王を天魔の屋敷の庭に放り投げた後。
しばらくは取材の続きをして気分を変えようと思ったものの。
耳に残る夜智王の懐かしい声と、繋いだ手の感触のせいで、まったく集中できなかった。
結局自宅に舞い戻り、表に「新聞作成中、面会お断り」と書いた札をかけて、強く扉を閉める。
こうしておけば天狗の仁義として、よほどの急用でもないかぎりは、誰も家には入ってこない。
全てに腹が立つ。
久方ぶりに帰ってきて早々に紅魔舘の門番と乳繰り合う夜智王にも
夜智王に愛撫され陶然とする門番にも
何よりもそれに嫉妬し、反射的に風を叩きつけ、あげく反撃にあって捕まった自分に。

昔を思い出す。
夜智王は文の母方の祖母の悪友で、よく祖母の家に遊びに来ていた。
天狗としては型破りなことに奔放だった祖母は、若い頃は夜智王と“良い仲”だったらしい。
結婚した後は、そういったコトはなかったらしいが、祖母に懐いていた文は自然夜智王とも仲が良かった。
祖母は「あれは性悪の蛇だから、本気でほれちゃぁダメだよ文、火遊びでやめときな」とまったく適切でない忠告を幼い文にしたものだった。
もっとも文はあくまで夜智王を「優しいおじちゃん」程度の認識でなく、夜智王も幼い文に淫らなことをすることは一切なかった。

歳を経て、祖母が急な病気で亡くなり、文が成長してからも、そんな関係に変化は無かった。
祖母に似て天狗としては少々型破りな性格であった文は、上手く夜智王と付き合えていた。
そんな二人の関係が決定的に壊れる、あんな事件があるまでは。

「ほぉここが文のねぐらか…なんか妙な匂いがするの」
「ひぃ!」
何の気配も無く、背後に出現した夜智王が後から文に抱きついたのだ。
妙な匂い、恐らく新聞の印刷に使うインクの匂いのことだろう。
「お前!どこから!」
「陰行は得意なのだ、蛇だからな。知っておろ?」
「やめろ、放せ!ひっ!」
夜智王を振りほどこうとした文は身を竦める。
ひんやりとした夜智王の両手が文の翼を掴んだからだ。
「ふふ、天狗はここをつかまれると弱いのだ、知っていたか?」
羽を繕うようにゆっくりと夜智王の手が撫でる。
ぞわぞわとした感覚に文が身を竦める。
「やめろ…尾羽に…触れるな…やぁ!」
天狗の服は翼を出す都合上、背中が開いているか、もしくは背中に継ぎ目が入っているいることが多い。
文は前者であった。
大きく露出しているわけではない。
だがわずかな隙間から除く、翼の付け根、丁度人間の肩甲骨に辺りを夜智王が掴む。
翼の付け根は神経が集中しており、敏感であり、傷つきやすい部分である。
そこを掴まれる恐怖と、くすぐったいような感覚に、文はまったく動けなくなる
「尾羽はだめなのだろう?」
「やめろ、やめろ、やめろぉ!」
多少の痛みは覚悟で暴れようとした文から、ひょいと夜智王は離れる。
「なんじゃ、そんなに嫌がらんでもいいだろうに…」
ふて腐れた表情をした夜智王は、文から離れると勝手に家へと上がる。
「こりゃなんじゃ瓦版か?」
「新聞だ…何しに来た!」
「天魔に泊めてくれといったらふざけるなといって追い出されてな。仕方が無いのでここに泊めてもらおうかとおもって」
「ふざけるな!出て行け!」
激昂した文がとっさに風を繰ろうとし…寸前で止める室内で、しかも自宅でそんなことをしたら大変なことになる。
蛇に侵入された時点で文は詰んでいることに気が付く。
「なんもせんよ、わしゃ女子が嫌がる事はせん。それはお前もよぉ知っておるだろ?酒は無いのか?」
「お前に飲ます酒は無い」
「さもしいのぉ…まぁ天魔の屋敷からかっぱらってきたから別にいいがの」
後で怒られる…そんな未来が見えて、文ががくりと膝を付く。
「最悪だ…」
さっそく一人で飲りはじめた蛇は実に旨そうに酒を飲み干す。
しばし、部屋に静寂が落ちた。
夜智王は手酌で酒の飲み続け。
文は黙って夜智王を睨んでいる。
「こうして部屋の中で二人きりになるのはあの時以来じゃな」
びくりと文が震える。忌まわしい記憶が蘇り、震える自分の体を抱きしめ、ぶるぶると首を振る。
「やめろ…」
「丁度今頃の季節だったか、いきなりお主が思いつめた表情で「抱いてくれ」などというから、何事かと思ってわ」

ことの起こりは文の初恋が原因だった。
相手は男ぶりと女癖の悪さで名の知れた大天狗だった。
あちこちで浮名を流しており、性質の悪さから「夜智王以下」と言われていや。
(その頃から夜智王というのは好色の代名詞のようになっていたわけだが)
しかし、そんな悪評も霞むような美男子であり、女をたらすのが上手かった。
烏天狗になったばかりの文が、仕事の都合でその男の部下となったのがまずかった。
初心な天狗娘はあっさり色男に恋をした。
しかし相手は名うての遊び人、到底生娘な小娘である自分など、やさしくはしてくれるが、恋・・・いや遊びの対象ですらない。
思いつめた文が昔馴染みの夜智王に泣きついたのは、自然な流れだったのかもしれない。

しかし
「わしゃ、生娘は抱かんのだ、色々めんどうだし」
そう言って夜智王は断った。
夜智王が生娘を(極力)抱かない信条なのは事実であったし。
まだほんの小娘だった文を抱きたい、とも思わなかったのも事実である。
だが本当は昔馴染みの孫娘である文を大事にしたいだけだった。
ただそれを言うのは照れくさかったらしい。

結果として更に思いつめた文は気鬱の病にかかった。
それだけならば、初恋にまつわる悲喜交々で済んだ。
時間が解決してくれただろう。
それを決定的に悲劇にしてしまったのが、日ごろから文を気に入っていた天魔の暴走だった。
日に日にやつれていく文にとち狂った天魔は、夜智王を襲撃。
こてんぱんにのして拉致監禁したのだ。
しかも七日七晩かけて夜智王を“媚薬漬け”にした天魔は、そこに文を放り込んだ。
結果は言うまでも無い。


「あのバカは見事に忘れているようだがな」
「…」
「ワシも大変だったのだぞ?七日だ七日、七日も特性の媚薬に漬け込まれたせいで、男も女も見境無く誘ってやりたい放題。
おかげスキマに散々懲らしめれた挙句外に放逐されたのだぞ」
「…」
「そんな状況でもなお主の処女を奪わんかったワシは偉いと思うんだがな」
「・・・!うるさいっ!ばか!」
罵倒と共に小さな風の礫を夜智王へと投げつける、直撃を受けた夜智王が「ぐぅ」と低いうめき声をもらす。
「あの天狗はどうした…いまも女を泣かしておるのか?」
「随分前に殺された」
「痴情のもつれじゃろ…しかしいいところにはいった…ぐぅ」
ぐしゃぐしゃになった内蔵の再生が辛いらしく、夜智王は随分苦しそうにしている。
さすがにやりすぎたかと思った文だが。
付き合いが長いのでこの手で蛇が、よく人を騙すことも承知している、じとっっとした視線で睨むに留める。
小芝居は通じないと分かった蛇は苦笑し、身を起す。
「しかも、あの媚薬漬けのせいでかの、吐く息に人を淫らにさせる効果が出たのにはまいったわ」
先刻、美鈴が感じた甘い匂いはそれらしい。
「…最悪です」
「ああ、酒が零れておるではないか!…あああ、もったいない、一番上等なのをかっぱらってきたのに」
「ざまぁです」
「ひどいのぉ…あんなにかわいかった文が、草葉の陰で絢も嘆いておるだろうのぉ」
絢というのは文の祖母のことである。
「勝手に祖母を嘆かせないで下さい」
「…はぁ、酒ものうなったし寝る。すまんが一晩軒先を借りるぞ。さすがに山で野宿するほどワシは図太くないのでな」
梟あたりから化生した鳥妖に襲われてはたまらん。と呟きながら、夜智王は縁側へと消えた。
気が付けば既に日は落ち、月が出るような時間だ。
障子に月明かりに照らされとぐろをまく大蛇の陰が映し出される。
幻想郷に居る蛇妖の中では最強の大蛇、そう言われている夜智王の本性が月明かりに照らし出されているのだ。
文も布団を敷きごろりと横になる。
寝間着に着替えるのは、障子越しに夜智王がいるので躊躇われた。
酷く気恥ずかしい。

どうしてこんなことになってしまったのだろう。
あんなことがなければわたし達はずっと親しい友人でいられたはずなのに。
もしかしたら祖母のように「ちょっと火遊びをする」ような関係になったかもしれないが、あの蛇が起す騒ぎを面白おかしく新聞にしたりもできたはずなのに。
あの時、あまりのショックで呆然としていた文は、ただ夜智王に弄ばれたとだけしか思っていなかった。
あの状況でも彼が自分を傷付けぬように苦しんでいたなど知らなかった。
彼が消えた後にさらに追い討ちをかける事態が有った。
それら全ての怒りや悲しみをその場にいない夜智王に向けることで、自分は誤魔化してきたのだ。
全ての罪はあの蛇のせいだと。
自然と涙が流れ出し枕を濡らす。
夜智王に聞かれぬように、漏れそうになる嗚咽を布団を噛んで隠す。
何時間、そうしていただろうか。
くしゅん、と夜智王かくしゃみをする音と鼻をすする音が聞こえてきた。
勝手に身体が動いた。

布団を抜け出し、縁側へ向かう。
「なんじゃ文。怖い夢でもみたのか?ひどい面だぞ?」
誰のせいだ。
子ども扱いする夜智王を無視すると、つとめて無表情を装い、声に感情を込めず口を開く。
「中に入って下さい、秋とはいえもう夜は冷えます」
「助かるの、ついでに文の懐で温めてくれると最高なんじゃが。いや冗談「いいですよ」は?」
目をぱちくりさせてアホ面をする夜智王。
この二枚目になりきれないあたりが彼が好かれる理由の一つなのかもしれない。
「いやじゃな、耳が遠くなったのかの」
「いいですよ、と言ったのです。どうせ布団は一つしかありませんし」
ぼやっとしている夜智王の手を引っ張ると障子を後ろ手に閉めて、布団へ向かう。
「…えと化生するか?かまんから安心せいよ?」
「そのままでいいですよ、さぁ」
「…じゃぁ失礼して」
文用にしつらえた小さな布団に二人で入る。
無駄に背が高い夜智王には少々小さい、身を丸めながらも、布団に残った文のぬくもりにご満悦の様子だった。
「・・・」
天狗は翼があるため、横向きかうつ伏せで寝る、当然夜智王に背を向けると翼が邪魔なので、夜智王の方を向いて布団に入る。
夜智王はわざわざ女子にそっぽを向いて寝るような性格ではない。
仰向けではせまいのでやはり横向きに寝転がっている。
自然向かい合って寝る格好になった両者の間は三寸(約9cm)も無い。
互いの吐息が掛かるような距離だ。
「ぬくいのぉ、極楽じゃ」
嬉しそうに笑う夜智王に、文は抱きついた。



[26700] 蛇、天狗娘と情を交わす、の巻
Name: 窓◆0bf2c45e ID:6be04712
Date: 2011/12/01 20:48
いきなり抱きついてきた文。
驚くでも無く、夜智王は、そっと抱き返すと、慰めるようにぽんぽんと背中を叩く。
「あまり得意ではないが夢違えの術でも使うか?」
あくまで文が怖い夢でも見て怯え、それゆえに昔馴染みの自分に甘えている。
本気で夜智王はそう思っているようだった。
「私はもうあなたの膝の上ではしゃいでいた頑是無い子供でも、色男に優しくされてのぼせ上がる小娘でもありません」
そう言い、証明するかのように、豊かに育った乳房を、夜智王に押し付ける。
「随分育ったのぉ、あの時はまだ膨らみかけの可愛いおっぱいじゃったが」
生憎乳を押し付けられた程度でどうこうする夜智王では無い。
その感触をしっかり楽しみつつ、拙い文の誘惑にはなびかない。
「っ!」
羞恥で顔を紅く染めた文が、ぐいっと夜智王をとこ押しつけ、上に乗るように押し倒す。
そして決定的な言葉を口にしようとした。
その唇を夜智王の一指し指が塞ぐ。
ぷにゅと文の柔らかい唇の感触を指先で楽しみつつ。夜智王は首を振る。
「ちと落ち着け文。お主は今、この場の雰囲気に毒されて、感情が暴走しておるぞ」
「・・・たぶん結構昔から貴方が好きでした・・・勿論女としてです」

それを自覚したのは祖母が亡くなって数日後、遺品の整理に祖母の家へ訪れた時のことだった。
夜智王が縁側で一人酒を呑んでいた。
声を掛けようとし、果たせなかった。
そこには文の知る、夜智王とはまったく違う男がいた。
夜智王の傍らにはもう一つ杯が置かれていて、祖母の分であることはすぐに分かった。
天狗の葬儀は天狗以外は参加できない。
生前、最も祖母と親好のあった夜智王とて例外ではない。
その代わりなのだろう。
春には桜を、夏には星を、秋には紅葉を、冬には雪を、夜には月を愛でた縁側。
祖母が一番好きだった場所で、夜智王は杯を重ねて、祖母の死を悼んでいた。
あまりに寂しそうな背中が、痛ましかった。
同時に文の胸には、じくりと嫌な痛みが走った。
そんなにも夜智王に想われていた祖母を、妬ましく感じたのだ。
あんなに好きだった祖母に嫉妬する程、夜智王を好きなのだと、初めて自覚した。
あまりの衝撃に、文は立っていられなかった。
「なんじゃ文。どうした?」
文の存在に気が付いていた夜智王は、ぺたりと座り込んだ文の方を振り返り、声をかける。
文は返す言葉がなかった
「大丈夫か顔色が悪いぞ?」
「…」
恐らく祖母の死にショックを受けている。そう夜智王は解釈したのだろう。
ひょいと文を抱き上げると、膝に間に降ろし、ぽんぽんと子供にするように頭を撫でる。
「ワシは無駄に長生きじゃから、親しい者を亡くしたのは初めてではないが、お主はそうではなかろ?
寂しいなら悲しいなら泣くといい。我慢などしないほうがいい。そのうち枯れ果てて、泣けなくなるからの」
ワシみたいにな。そう言い、蛇は黙って杯を干した。
わけの分からない衝動に突き動かされて文は泣き出した。
わぁわぁと声をあげて夜智王の胸にすがって泣きじゃくった。
何も言わず、夜智王は文を抱きしめると、背中をさすって慰めてくれた。
完全に子供扱いされている自分が惨めで悲しく、また文は泣いたのだった。

「でも貴方に恋心を打ち明ける勇気が私にはなかった」
祖母が居なくなって、夜智王はいけないことだと知りながら、容姿や性格の似ていた文に、祖母の面影を重ねた。
文が意識して、祖母のように振舞い、夜智王に相対したせいもあっただろう。
「私は貴方と祖母の関係に憧れていたから」
もし自分の恋心が知れれば、告げてしまえば、奇妙に心地よい、でも危うい関係はあっさりと壊れてしまう。
そう思い悩んだ末、文は自分の初恋を封印した。

「だからあんな性質の悪い男に惚れてしまったのです」
「それワシのせいか?」
「そうです、こうゆう時は何時も男が悪いと、天地開闢以来決まっているのです」
「ワシみたいな性悪に懸想するなと絢が言っておっただろうに」
「あの後・・・結局私あの男に抱かれました、多分貴方に始めてを貰ってもらったほうがずっと良かった」
何があったのか文は口を濁した。
夜智王も聞きはしなかった。
「あれ以来、男の人は苦手、いいえ嫌っていました」
例外は夜智王と親しかった鬼達だった。
元々奔放で知られた祖母に良く似た文を、何かと好色な視線で見るものは多かった。
夜智王が居た間は「あれは夜智王の“紫の君”だから手を出すな、ろくなことにならない」ということでちょっかいを出すものも居なかった。
しかし夜智王が幻想郷を追放された後は、少々事情が変わった。
「最初に気が付いたのは春虎殿でした。ですぐに行動に出ました」
「春虎らしいの・・・」
山の四天王の一人、虎熊童子の息子である春虎は、夜智王と特に親しかった鬼だ。
豪放磊落で、陽気で、酒を好み、嘘や卑怯なことが嫌いで「鬼に横道は無い!」を地で行く、鬼らしい鬼だった。
何より女好きで、人間だろうが天狗だろうが河童だろうが美女を攫うのが趣味のような奴だった。
ただ乱暴は一切しないあたりがその気質のまっすぐさを物語っていた。
人間の里でも「春虎童子が女を攫った、急いで取り返さんと女が情を移すぞ」と言われていた。
当然のように夜智王とは肉体関係があった、勿論女に化生した夜智王とだが、「お前ずっと女でいろよ」とよく言われたものだ。
「おおかた、文は俺の女だから手を出すな、とでも言ったのだろう、見つけ出して礼を言わんとなぁ」
当時の山は鬼が支配していた、春虎以外にも数名の鬼が文を気にかけてくれたお陰で、文は下位の鬼や、他の天狗、妖怪にに襲われることも無かった。
鬼達は、一人また一人と幻想郷を去っていったが、その頃には、文も一端の実力者となっていた。
「今はどこへ行かれたのか、伊吹殿に聞いても「知らん」としか帰ってきませんでしたし」
「まぁ見つけたら春虎らには礼をせんとなぁ」
「夜智王」
文は、何かを懇願するように、涙で潤んだ瞳を夜智王に向ける。
「なんじゃ?」
「私の初恋をぐしゃぐしゃにした償いをしてください」
んな無茶なと思いつつ、夜智王は問い返す。
「・・・どうして欲しい?」
「抱いて・・・ください」
まいったの。と夜智王は思った。
雰囲気に流されて、一時の激情に任せて出た言葉だ。真に受けるのは大人の男のすることではない。
とはいえ、何も分からなかった幼子だった頃ならいざしらず、女の方からこうまで言わせて、否と言うのも如何なものか?
と思う。
「う~ん、また今度にせぬか?」
「私はそんなに魅力がありませんか?」
「いやそんなことはないぞ。ただ外の世界で百年ばかし封印されいたからの、久々で抑えが利かん」
「かまいません」
ワシが構う。と夜智王は言った。
処女こそ奪いはしなかったが、最初の時はそれ以外の事は散々した。
大事にしてきた掌中の珠を自分で汚した、そう夜智王は思っていた。
「だからな、次に文とするときはうんと優しくしてやろうと、そう勝手に決めておった。ワシは嘘は吐くが、約束や誓いごとは破らん」
「そんなの・・・ずるい」
「いいではないか、こうして文とくっついて寝るだけでもぬくいし気持ちよい」
そう言い、夜智王はぎゅうと文を抱きしめる。
それだけで文の胸の鼓動は高鳴る。
まるで数百年前の子供の頃に帰ったような、幸福感を覚える。
幸福感を覚えながらも、文はぽろぽろと泣き始める。
「文?」
「いいです、夜智王が嫌だというなら、私が貴方を襲います」
「・・・はぁ」
冗談でも脅しでもない、文の目は本気だ。
夜智王はわかった降参だ、と言わんばかりに両手を上げる。
「抱いて・・・くれますか?」
「せっかく人が優しくしてやると言っておるのに・・・まったく、覚悟しろよ文。他の男では満足できない体になっても知らんぞ」
「もう手遅れです・・・ひぅ・・・あの時からずっと」
よほど嬉しいのだろう、文がしゃくりをあげながら泣き出す。
「始める前から泣く奴があるか…ほれ一度離れろ、まぁこのままでも気持ち良くはできるがな」
「どうやって?」
「何も女陰に突っ込むだけが男女の交合ではないぞ。互いの精気を交換しあえば、それは立派に情を交わすということだろう」
夜智王は精気を吸うのは普通にできるし、反転して自身の精気を他人に注ぐことも出来ると言う。
「器用なことができるのですね貴方は」
「で、どうする?これなら生娘のままでも気持ちよくなれるぞ?」
往生際の悪い蛇は、そう提案してくる。
そんなに怖いのか、案外に意気地が無い。
「そんなのまっぴらです。ちゃんと抱いてください。お祖母様のように」
妙な対抗心を燃やす文。
「さよか」
観念したのか夜智王は「降参だ」と上げたいた両手で文の顔を掴み、そっと招き寄せる。
「んっ」
二人は口付けをそっと交わした。



軽く触れ合った唇の柔らかな感触が心地よい、数瞬唇を重ね合わせ、互いの唇の感触を存分に味わった二人の口が離れる。
口の端に着いた文の唾液を舐めとり。
「甘いの」と夜智王は言う。
とろんとした表情をした文が、身を起し上着を脱ごうとする。
それをやんわりと夜智王が止める。
「どうして?」
「女が自分から脱いでどうする。そういう時はそれとなく、男に脱がすように仕向けるのだ。その方が男は興奮する」
「…なんでそんなに詳しいのです」
「そりゃ、ワシ女に化生して男を抱くこともあるし、いたっ!咬むな!咬むな!」
文が思い切り夜智王の腕に噛み付いた。
言うまでも無く、それは閨の最中に、デリカシーの無いことを言い放つ夜智王への抗議の実力行使であった。
「…」
「そんな目で見るな、ワシが悪かった」
本気で怯えながら夜智王は、じとぉっと夜智王を睨む文に謝る。
「(興奮すると咬み付く癖は絢そっくりだな…これを言ったらまた咬まれるだろうが)」
天狗に咬まれると、鳥に啄ばまれるようで、正直怖いのである。
そんなこと考えながらも。夜智王はするりと文の上着を剥く。
袷を止めているボタンを、ぷちぷちと手馴れた様子で外していく。
「(・・・恥ずかしい)」
子供のように他人に服を脱がされる羞恥が、文の体を紅潮させる。
「ふふ、そうやって恥ずかしがる女子がな、なんとも言えず男を興奮させるのだ」
「ばか・・・」
ボタンが全て外されると、月明かりの差し込む薄暗い部屋に、文の白い肌が晒される。
存外に洋風文化が浸透しているからか、可愛らしいブラジャーに包まれた乳房が揺れた。
「・・・」
「なんじゃ」
「外すの、上手いのですね」
何の迷いも無くスルリとブラジャーを抜き取った夜智王を文が胡乱な目つきで睨む。
「幕末だったかな、大陸に遊びにいった時か、上海の租界で覚えたのだ」
「・・・」
「咬むなよ」
だいたい野暮は無しにしろ、と言ったのはお前だろう?そう言わんばかりに、夜智王の両手が文の乳房に伸びる。
「っ!…脱がすのではなかったのですか?」
愛でるように蛇の両手が文の乳房の表面を撫でる。
くすぐったい感触に、もれる吐息を抑えながら、文が聞いてくる。
「着たままの方がそそるのだ」
「へん…たいっ!あっ!」
乳房を撫で回していた夜智王の両手が止まり、下から持ちあげるように、乳房をゆっくり揉み始める。
「綺麗な乳だな文」
「やめっ…そんなこと…んんっ!…いわないで、ください」
「柔らかいが、元気な良い乳だ」
ぽよんぽよんと弾力のある文の乳房の感触を夜智王は堪能する。
巧みな乳房への愛撫に、びくん、びくん、と断続的に体を震わせながら、文は疼き始めた股間を夜智王の男根にそっとあてがい、切なげに腰をくねらせ始める。
「ここだけは…熱いんですね……すごく固くなってます、やぁん!」
淫らなことを言う文へ、お仕置きと言わんばかりに、乳首をしごいて鳴かせると、乳房から手を離し、腰を掴んで動きを止める。
夜智王の男根を使った自慰を強制的に中断された文は、身を倒し夜智王の上に倒れこむと、愛撫で火のついた乳房を押し付けてくる。
「どうして止めるんです?」
「あのなぁ…折角愛してやっているのに、自分で慰める奴があるか…まったく」
身を起し胡坐をかくと、文を持ち上げ膝に乗せる。
自然正面に来た文の顔に顔を寄せ、再び口を塞いだ夜智王は、不意打ち気味に半開きの文の唇を割り、舌を口内へと滑り込ませる。
「んうぅ!!…うっ……うぅ~、っあ!やぁ!…何をするんですかぁ」
口内の柔らかい粘膜同士の接触がもたらす、地よさに、文はぐったりと夜智王にしなだれかかる。
とくんとくんと聞こえてくる夜智王の鼓動の音が、なんともいえない安息感をもたらす。
「何って西洋風に言えばディープキスかの」
「口の中まで吸うなんて…変態ですね」
「平安の昔ではあるまいに…現代ではなにも珍しくはないぞ」
そう言い、夜智王は文の顎を持ち上げ、再び口元に顔を寄せる。
やられっぱなしにはされないと、文も舌を伸ばしてくる。
ぺちゃ、くちゃと二人の舌が絡む音が耳に響く。
よほど切ないのか、軽く腰を浮かした文は夜智王の右脚に股間を押し付け、腰をくねらせ始める。
同時に夜智王の胸板に乳房を押し付け、乳首をこすりつけて、熱くなった乳房を慰める。
あまりに淫らな文に呆れつつ、夜智王は両手を文の背中へ伸ばす。
「ぷあっ!・・・やだっ翼は!」
翼をつかまれた文がびくりと震える。
「天狗と情を交わすのに翼を愛撫せんのは、三流のやることよ。気持ちよかろ?」
羽を整えてやるように、優しく夜智王の手が文の翼を愛撫する。
「きもちいい・・・です」
「敏感な愛いな翼じゃな」
光の加減で蒼色にも見える、見事な黒翼を夜智王は満喫する。
「子供の頃は、お祖母様のような、白い翼が良かった」
「絢は白狼天狗じゃったからなぁ、あの翼はいかにも汚しがいのある純白じゃった・・・おい自分で振っておいて不機嫌になるな」
「・・・」
ぶすっとした表情の文に苦笑する。
「文の黒翼も美しいぞ、烏の濡羽色という奴だ。感じやすい可愛いし。しなやかで、手触りも天鵞絨のようだ」
いいように愛撫され翻弄されるている状態が、文の反抗心に火をつける。
すっかり怒張した夜智王の男根にそっと手を伸ばす。
「ひゃぁ!・・・つけねぇ・・・そこは、やっ、あっ!」
その動きに気が付いたのか、敏感な翼の付け根に伸びた、夜智王の手がいやらしく這い回る。
びくびくと文の背が反る度に、翼がばさり、ばさりとのたうつ。
「ひどい・・・わたしにも・・・あなたを愛撫させてください」
「いいではないか、もう少し文の体を堪能させておくれ」
文の首に顔を埋め、首筋を愛撫し始める夜智王。
「・・・」
「ぎゃぁ!咬むな!咬むなといっとろうが!」
丁度眼前にあった夜智王の先端の尖ったの細い耳朶に噛み付いた文が、うーうーと抗議の声をあげる。
「わかった!お主の意見も聞く。だから咬むのはやめい!」
ようやく口を離した文は、自分でつけたくっきりと残る歯型を、愛おしそうに舐める。
「ぺちゃ・・・きもひいいでふか?」
「ああ、文の舌は気持ちよいよ」
ひょいと文を持ち上げた夜智王は、文をひっくり返し後ろ抱きにし、自分の下腹の上に乗せる。

「ほれ、いじってもよいぞ」
「どうせなら口で・・・」
駄目だと夜智王は断言する。
「ここを咬まれては洒落にならん」
再びぶすっとした文は、そそり立つ肉棒をくにくにと両手でいじり始める。
心地よい快楽に身を任せつつ、夜智王は後から文の乳房をつかんで揉み始める。
「あんっ・・・熱くて・・・固いです」
「よかったの」
「そんなに大きくないんですね」
あのなぁ・・・と夜智王は溜息を吐く。確かに夜智王の男根は異常な程に巨大なモノではない。
「まさか春虎あたりと比べておらんだろうな、あれは鬼ぞ?・・・男が一番傷つくようなことを言うな」
「すみません」
お詫びとばかりに、文は男根へ股間を擦り付けるように愛撫を始める。
すべすべの内腿や、下着越しでもぷにぷにとした感触の秘裂が男根を愛撫する。
文の秘部から溢れた愛液が、卑猥な音を立てはじめる。
「はっ・・・あぁ・・・ごめんさい・・・」
愛撫するつもりが、すっかり自分が気持ちよくなってしまった文が、荒く切ない吐息と共に謝罪の言葉を述べる。
「しかしもうびしょびしょだの、ワシはもっと文の身体を味わいたいんじゃが」
ぴらりとスカートを捲ると、既に下着は文の愛液でびしょ濡れになっている。
「もう我慢・・・できません・・・どうせなら・・・はぁ・・・ここを一番・・・愛してください」
「好きにせい、まったく」
許可の出た文は、少し腰を浮かすと、そそり立つ夜智王の肉棒を掴み、下着をずらし露出させた秘裂にあてがう。
くちゅ、と下の唇と亀頭が接触する。
「熱いです…」
「文の手はすべすべで気持ち良いぞ。怖いならワシが動くぞ」
「大丈夫…です」
少しずつ腰を落とし、ゆっくりと文は夜智王の男根を膣内に受け入れていく。
「んっ……はぁ、あぁっ!…くぅ…」
ぬぷっ、ぬちゅという淫らの音と、文のやや苦しそうな声が室内に響く。
「まて」
「あっ!」
ひょいと文の腰を掴んで持ち上げ、交合を邪魔する夜智王に文が抗議の声をあげる。
「もう少しゆっくりにしろ」
妙に結合を急ぐ文を止め。その腰を掴んだまま、夜智王はゆっくりと時折戻しながら、文の膣内に肉棒を埋めていく。
「んあっ!・・・うぅぅぅん!」
ぬちゅ、ぬちゅ、くちゅ、くちゅ
淫猥な結合が文の喘ぎ声に混ざって耳を打つ。
「痛くないか?」
「少し・・・はぁ・・・苦しいですけど・・・平気です・・・んっ!」
ごく浅く抽送を二三度繰り返す。
その度に、文があんっ、ひゃんと悲鳴を上げる。
「よし、嘘では無いようだな」
「ひどい・・・はんっ」
ぐちゅ、とまた少しだけ腰を進める夜智王。
入れた当初はぎちぎちだった文の中も、じょじょにほぐれ、きちきちと柔肉と襞が男根に絡みついてくる。
その快楽に負けず、慈しむように、夜智王は文の中へ侵入していく。
「やちおぅ・・・もう、はぁ・・・へいきです・・・ぎゃくに・・・んっ・・・もどかしい」
挿入と抽送を繰り返しながら、八割まで進んだあたりで、文のもらす声はすっかり甘いものになっていた。
もうゆっくりと進むのは、焦らされるようで我慢ができないらしい。
「そうか・・・では普通に入れるぞ?」
ぐいっと、最後の一突きでに力を入れ、文の最奥まで肉棒を押し進める。
「くっはっ……あふっ…ふぁぁぁっ!……ふぅ、全部…はいりました」
膣内が夜智王の肉棒で一杯になる。
まるで文の中にあつらえたようにぴったりの大きさのそれは、最も奥、子宮の入り口を時折コツンと叩く。
その度、まるで雷に打たれたような、びりっとした痺れと快楽が文の全身を苛む。
「やはりきつきつだの・・・」
「きもちよく・・・ありませんか?」
「そんなことはないぞ?ひだひだが絡み付いて、ワシの一物にだせ、だせと責めてきておる」
「はずかしいこと言わないで下さい・・・」
照れながらも、自分の中で夜智王が快楽を覚えてくれていることに、嬉しさが込み上げてくる。
「うご…かないの…ですか?」
「ん~文の中がワシの一物の形になるまでこうしていたい」
「ばかぁ…そんなの…いやぁ」
夜智王の淫らな言葉に、どくんと下腹がうずく。
「ほれ、いま中がきゅうとワシを絞ったぞ。感じているのだろう?文は言葉で責めれるのが好きか?」
羞恥と怒りから再度伝家の宝刀(噛み付き)を抜こうとする文の口を、素早く夜智王は塞ぐ。
思う存分に文の口内を味わう。
すっかりディープキスに慣らされてしまった文は、うっとりと身を任せるしかできなくなる。
「ふぅ…咬むなと何度言わせるのだ、まったく」
「だって…」
やれやれと首をふると、夜智王は文を床に押し倒す。
むにゅっと押し潰された乳房が卑猥に歪む。
「やっ…こんな格好嫌です」
「そうか?」
尻を高く掲げた、後背位での交わりを文が嫌がる。
夜智王が「なぜだ?」と囁きかける。
「こんな、畜生か衆道のまじわりかた…っ!」
ぺしん。
軽くだが尻を叩かれた文が息を飲む。
「こうせんと、お前はすぐに咬もうとするからの、それに絢はこの交わり方が好きだったぞ」
やけに祖母に対抗心を燃やす文をからかうように夜智王は言う。
しかしそれに食ってかかる余裕は文には無いようだった。
「いやぁ・・・・・やちおう・・・はだがふれてないと・・・やだぁ・・・あぁん!」
懇願する文のまろやかな曲線を描く尻を撫でながら、夜智王はゆっくりと腰をくねらせ始める。
「後抱きだと動かし難いからの」
「じゃぁ・・・まえからぁ・・・はぁぁぁ!」
「だって文は後から入れた方がしっくりする口のようだし」
いやぁぁと文が悲鳴をあげる。
まるで獣の様に交わるのが良い淫乱だ、と言われたようで恥ずかしい。
「最初は楽な方がよいじゃろう?大丈夫じゃ朝までは長い、前からも横からも、何度でもイカせてやるぞ」
「あっ!んんっ!・・・そんな、いきなりぃ!」
夜智王が抽送を開始する。
焦らすようにゆっくりと、入り口近くまで戻しては、一気に最奥まで突き入れる。
ぐちゅ、じゅぼっ、くちゅ、じゅぽ。
淫らな結合をかき消すように文が鳴き声を上げる。
「あぁんんんっ!・・・ひゃぁ!・・・はぁっはぁっ・・・んんっぅぅぅぅぅ!ひぅっ!」
抜き時には喘ぐように長く、入れる際には、悲鳴のように短く嬌声を。
「気持ち良いか文?文の中はとても気持ちよいぞ?」
「はいっ・・・きもちっ・・・ひぃん!・・・やぁぁぁぁ!いいっ!」
散々に焦らされていたせいだろう、文はもはや絶頂する一歩手前にすぐ達してしまう。
「ふぁぁぁぁ、やちおう・・・もうすこし・・・ひゃぁ!ゆっくりぃ・・・ふぁあ!」
ぬるっと奥まで突き入れた夜智王の腰が止まる。
先刻まではわざと中てていなかった子宮口に、ぴったりと先端をあてがう。
そのなんともいえぬ快楽にびくんびくんと文の体が小刻みに震える。
「はぁっ・・・はぁっ・・・やっ!びくんってしないでぇ」
「無理を言うな、文の中がねっとりと絡み付いとるせいだぞ」
「やぁん!」
荒い息を吐き、イクのを必死に堪える文の頭を、愛しそうに夜智王が撫でる。
「あたまなでちゃだめぇ・・・もうこどもじゃ、ないんですぅ」
「可愛いこというな、勝手に一物が動くぞ」
「だめっ!やぁっ!」
じっとしていてもびくびくと動く肉棒の刺激で、文は快楽に震える。
「さぁ文。一度イこうな」
「やだぁ・・・もっと、やちおうをかんじたいぃ・・・」
「朝まで愛してやるといったろ?安心せい」
「ひゃぁ!」
文の背中、翼を愛撫しながら、夜智王は再度腰を降り始める。
今度は焦らすつもりがないのか、勢い良く抽送を繰り返す。
「ひゃぁ!あっ!くふぁ!あんっ!あついぃ!ふかっ!あぁぁん!」
突き入れる度に肉棒の先端が子宮口を押しつぶし、文の尻と夜智王の腰があたるぱんっぱんっという音を立てる。
「ぁぅ!だめっ!イク!いっちゃう!」
絶頂が近いのか、文の膣内が痙攣を始める。
思考が白く溶けて行くような快楽の任せて文は淫らな嬌声を上げつづける。
「いっ!ひゅぅ!もっ!イクぅ!だしてっ!やちおう!わたしのなかに!」
「まだおあずけ」
「やぁ!ひどいっ!あぅっ!イクっ、もうがまんっ!できないぃ!」
「いいぞ、まず一回目じゃ」
「ひ!?ひゃぁぁぁぁ!?イクのっ!もうだめっイク!!やちおうのチンポでイクっ!あんっ!あぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
大きく仰け反り。一際大きな震えとともに嬌声を上げる。
ばちんっ!と弾ける様な感覚が全身を貫き、文は絶頂に達する。
激しく痙攣する膣肉が肉棒を締め上げるが、夜智王のほうは気にせずぐいっと奥まで、文の絶頂に合わせる様に付きいれる。
射精はせずに絶頂に震える膣肉の感触を、好色そうに顔を緩めて堪能する。
「出して出してと文の中が催促しておるぞ」
快楽の余韻に浸るどころか、続く快楽に震えている文をからかう。
「いじわるぅ・・・ひうっ!」
悪態をつく絢を、繋がったまま持ち上げ、とぐるりと向きを変えさせる。
膣内で回転した肉棒に文が悲鳴をあげる。
震える文を抱きしめたまま、夜智王は床にま身を倒す。
ぎゅうと夜智王に抱きつき、ぐったりとした弛緩した文の肢体を優しく抱きしめ返す。
「少し休んだら続きじゃな」
「ばかぁ・・・んっ」
再度二人は口付けを交わすのだった。




[26700] 蛇、山の神社にて、巫女に捕まる、の巻
Name: 窓◆0bf2c45e ID:6be04712
Date: 2011/12/01 23:44
「ひどい・・・やちおう・・・だして」
「だめじゃ・・・孕んだら・・・どうする?」
結局空が白み始めるまで二人は交わり続けた。
散々にイカされ、もう指一本動かすのも億劫な文だが、一度も夜智王が射精してくれないのを責める。
夜智王も大分息が荒いが、さすがに生きることとスルことがほぼイコールの蛇だけあって、相当に我慢強い。
ついでに妙に常識的な処がある。
好色な割には肉の欲には溺れないところは、これの数少ない美点だった。
「ばかぁ・・・いじわるぅ」
「子供か・・・まったく」
「じゃぁかけて、わたしのからだでイッってぇ」
淫らに懇願する文。
自分ばかり快楽を覚えていること。
何より夜智王が自分で達してくれないのが不満らしい。
その痴態に夜智王が顔を顰める。
さすがに堪え難いらしい。
「まったく・・・後悔するなよ」
ひょいと文を抱き上げ、股間に肉棒を通す。
「ひゃぁ!」
当に素っ裸になった文の秘裂と陰核が触れた爆発寸前の肉棒の熱さに震える。
「イクぞ文」
「はい・・・」
返事をしてきゅうと股を閉じて熱い肉棒を挟む。
秘裂とすべすべの内腿の感触を堪能しながら、夜智王の肉棒が文の股座を犯す。
まるで文に男根が生えたかのような淫らな光景であった。
くちゅっ、くちゅっ、と粘膜がこすれ、その度にどくんどくんと肉棒が跳ねる。
「やぁ・・・ぁっ!わたしも・・・いっちゃうぅ!」
「もう・・・出るぞ文」
「だしてぇ・・・からだじゅう・・・やちおうのでベトベトにしてぇ」
後日思い出しただけで顔が真っ赤になるような淫らなことを、快楽でどろどろになった脳は気にせず吐き続ける。
「イく・・・イっちゃう!・・・やちおうは?・・・いっしょに、いっしょに!」
「ああ、一緒にイこう文」
「ふぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「くっぅ!」
文が夜智王の上で背を弓なりに仰け反らせ、後の絶頂を迎えるのと同時に、夜智王の肉棒が精を吐き出す。
「ひゃっ!ぁつぃ!あっぁぁぁぁぁ!」
まるで間欠泉のように噴出しだ大量の精液が、文の髪を、顔を、胸を、腹を汚していく。
「はぁ・・・はぁ、こんなのなかにだされたら・・・しんじゃう」
「しにゃぁせんわ、まぁ孕むかもしれんがな」
夜智王のぼやきを文は聞いていなかった。
幸せそうな表情で気絶している。
「・・・まったく、可愛い奴だ」
その頬に優しく接吻するとくすぐったそうに文が笑う。
おおむね優しくできた。
とりあえず、夜智王はそう思うことにした。







「んっ・・・」
心地よい暖かさに包まれていた文は差し込む日の光のまぶしさで目を覚ました。
ゆっくりと覚醒していく意識とは裏腹に、この心地よさに包まれたまま眠っていたいと体は弛緩したままだ。
「やちおう・・・?」
「おはよう文。後朝の歌でも詠もうか?」
「ばか・・・」
それは結婚の儀式ではないか。
「あなたが着せてくれたのですか?」
精液やら汗やら自分の愛液やらでべたべただった体は清められている。
素っ裸だったはずの格好も、ちゃんと寝間着の肌襦袢を着せられていた。
「もう寒いからの、悪い風に中てられたら大変じゃろう」
「はずかしい・・・夜智王のばか」
気絶していた自分の体を良い様にされたのが、よほど恥ずかしいらしい。
顔を紅潮させつつ、膨れた文はぽかぽかと夜智王の胸を叩く。
「ふふ値千金の可愛い寝顔だったぞ」
「ばかぁ!」
「っ!咬むな!咬むのはやめい!」



「おかしい、普通はああいうと女子は喜ぶものだというのに」
「何か言いましたか?」
「いや、文の作るメシは旨いな」
「褒めても許しませんよ」
日はすっかり高くなり、二人は遅めの朝食をとる。
味噌汁に米をぶちこんだもの、いわゆるおじやである。
「本当に旨いぞ?絢は料理が割と不得手であったからな。似ないで良かったの」
祖母よりも旨いと言われて、文は表情が緩みそうになるのとを必死に抑える。
「・・・今日はどうするのです?残念ですが私は会合があるので一緒にはいけませんが」
「とりあえず山をぶらりとしてから。あちこち挨拶周りかの。そういえば稗田の子今何代目だ?」
「九代目になります」
「もうそんなにたったか。里で何か土産を買って、当代の博麗の巫女に挨拶して・・・幽香は昨日会ったし、そうそう白玉楼の女主人と久闊を叙すとするか」
「・・・・・・」
「なんじゃ膨れて、可愛いのぉ」
女の名前ばかり出てくることが不満でしかたない。
とはいえ、これはこういうモノだった。
何者にも縛れない自由な気質。
それこそが文が夜智王に惹かれる理由でもある。
「夜はどうするのです・・・」
「さてな。時間的には白玉楼で泊めてもらうかの・・・ああスキマが邪魔をしにきそうだな」
紫は白玉楼の女主人・・・西行寺幽々子が、友人というには少々過激な仲である。
よほど夜智王を警戒しているのか、二人でいると決まって紫が、物騒な目をして邪魔をしにくるのだ。
一方で文は、幽々子の美貌と肢体を思い出し、じぃっと険悪な視線で夜智王を睨む。
「・・・貴方は昔から胸のでかい女性が好みでしたね」
「うん?まぁそうだな、別に小さくても良いが、でかいほうが色々できていいじゃろ?」
「死ねばいいのに・・・」
なにやら物騒なことをブツブツと文はこぼしている。
「文、時間は大丈夫なのか?会合とやらがあるのだろう?」
「・・・」
「遅参すると天魔や他の連中が煩いぞ」
「そうですね、幸い天魔様は貴方との一件のせいか私に甘いので、色々と我侭が出来ますが」
その分他の連中が煩いのですよ。と文は嘆息する。
そりゃそうじゃろ、と夜智王は思う。
実力的にはもっと上の地位にいてもおかしくない文が、割とふらふらしてるのは、天魔の罪悪感からくるえこひいきらしい。
「ではまたな文。どうせこの先はずっと幻想郷暮らしだ。また存分にしような」
「ばかっ!」
「ぅぐ!!」
昨日同様、小さな風の礫を受けて悶絶する夜智王。
ふんっ!とそれを置いて文は家をでる。
その顔は喜びと恥ずかしさで真っ赤に染まっていた。








負傷から回復した夜智王は、文の家を出る。
山には鬼はいないそうだから、とりあえず昨日上空から見た神社と湖に向かうことにした。
なんだって妖怪の山にあんなものが出来たのか。
なかなかに面白そうだったからである。
山中を飛ぶように駆ける。
飛ぶのは不得手だが、こういった障害の多い山中を駆けるのは大の得意だった。
ざっと雑木林をぬけると、眼前に立派な鳥居が立っている。
「昨日遠目に見えたあれは御柱であろ・・・さてさて諏訪の神となにか関係のあるのか」
だとしたら早めに退散すべきか。
とりあえず鳥居をくぐり境内に入る。
抑えているのか、居ないのか、とまれ神が居るような威圧感は感じない。
参堂をぽてぽてと歩いていく。
鑓水でちゃんと手を洗い口をすすぐあたり、妙に律儀な蛇である。
社殿を伺うと、なぜか脇がむき出しの巫女が境内の落ち葉を掃いているのが見えた。


「おはよう・・・には少し遅いかな巫女殿」
「こんにちわ。初めてお見かけします方ですね・・・妖怪さんですか?」
さらりとこちらの正体を看破された。
まぁ尖った耳や縦に裂けた瞳孔を隠しもしないのだから無理も無い。
まぁそうだな、と返す。
「何か御用ですか?」
「いや、久方ぶりに幻想郷に戻ってみれば、御山に神社が出来ていたのでな。気になって見に参った」
そうですか。と巫女は朗らかに笑った。
最近越してきたんです。
と、まるで気軽な引越しの様にのたまう。
内心で「いやいやいや」と思いつつ。夜智王は形式通り完璧なお参りをすます。
「参ってからいうのもなんじゃが、どなた様をお祀りなのかな?」
「はい、山の神八坂神奈子様と湖の神洩矢諏訪子様を」
「・・・」
なんちゃらの命ではなく、名前と来た。
これはどうやら顕現されているらしい。
蛇の本能が「危険だ」と告げる。
「それはそれは・・・ではまた」
「待って下さい」
がしっ
触らぬ神に祟りなし、冗談抜きで祟られそうだったので、踵を返した夜智王の腕を、巫女さんが掴む。
がっちり掴んで放さない。
「・・・なにか」
「お二人とも最近お忙しいみたいで、ずっとお留守で・・・暇だったんです。少しお話をしていきましょう」
だが、断る。
そう言いたかった。
だが、なにやら悪い方向にイっちゃった瞳をしている巫女に逆らうのが怖かったのか
「はぁ」
夜智王はそう気の無い返事をするしかなかった。



巫女は東風谷早苗と名乗った。
「へぇ夜智王さんは蛇の妖怪さんですか、じゃぁウチの神様たちはご利益がありますよ!」
今すぐ氏子契約しませんか?
と言わんばかりの勢いに、夜智王は虚ろな目で「そうですな、はははは」と返す。
専ら早苗がグチやら、幻想郷にやってきた経緯、その時の騒動などをまくし立て。
夜智王は心を空にして、相槌を返す。
もう逃げたい。
今、ここの祭神達が帰ってきたら詰む。完璧に詰む。
だが、蛇お得意の口車がこの巫女には通用しない。
無理に逃げると「どうしたんですか?」とあの無邪気な顔と声のまま。
だが娘道明寺の清姫もびっくりの執念で追ってきそうで怖い。
「(心を無にするのじゃ、そして祈るのじゃ、ここの祭神殿達が帰ってこんことを)」
夜智王が悟りを開く寸前。
「ただいまー」
「早苗?誰か来ているのか?」
希望は砕け散った。



[26700] 蛇、ミシャグジ神に苛まれる、の巻
Name: 窓◆0bf2c45e ID:6be04712
Date: 2011/12/06 05:28
事前注意。
無邪気で明るいケロちゃんがお好きな人は読まないようにお願いします。
なんか少しヤンだ感じになってしまいました・・・













「早苗殿、すまないが急用を思い出したので失礼する」
「え?」
そう言い放った夜智王は、早苗の返事を待たず、部屋を出る。
縁側からそのまま外へと逃亡しようとしたが・・・それは失敗だった。
ぱたぱたと縁側を走ってきた幼女と視線が合う。
きょとん。とした表情も可愛らしい幼女だった。
だが
「ひっ!」
蛇に睨まれた蛙のように夜智王は凍りつく。
睨まれているのが蛇であるはずの夜智王であるのがそもそもおかしい。
加えて幼女の被る帽子は大きな目玉が付いており、蛙を連想させた。
身にまとう狩衣のような形をした青い服にも、鳥獣戯画の蛙のような刺繍が施されいる。
あべこべである。
「あー!」
幼女が大声を上げる。
びくっ!と怯えた夜智王は、ようよう正気に返り、逃げ出そうとする。
及び腰になったところへ、砲弾のように幼女が突進した。
「ぐぇっ!」
腹部を強襲された夜智王はつぶれた蛙のような悲鳴をあげ、幼女に押し倒される。
「がはっ!」
倒れた拍子に頭部と腰部を強打し悶絶。
そこに喜色満面で夜智王に抱きついた幼女が追い討ちをかけた。
「夜智王だー!」
ぎりりっ
外見からはまったく想像できない怪力をもって、夜智王を締め上げる。
「ぐぅ!・・・諏訪・・・媛様・・・何を!?ぎゃぁ!」
しゃべろうとして口を開いたところを更に締め上げられた。
ミシミシと背骨が嫌な音を響かせる。
「久しぶりだね!夜智王!百年くらい前に越後の方で封印されたって聞いたけど、いつこっちに来たの!ねぇ!」
夜智王の上で幼女がばたばたと楽しそうに足をばたつかせる。
ただそれはどう見ても夜智王に蹴りをくれているようにしか見えなかった。
蹴られる度に、夜智王がびくんっ!びくんっ!と痙攣する。
「諏訪子様・・・?」
「早苗~だめだよ、こんな性悪の好色蛇を家にあげちゃ。なんにもされなかった?」
「いえ・・・お知り合いなんですか?」
「そうだよー凄く古い知り合い、神奈子よりも昔からのね」
「えぇっ!」
神話の昔からの知り合いだと言われて早苗が驚愕する。
「そんなに強い妖怪さんには見えませんでした・・・」
そんなに古くから生きているとなると相当な大物のはずである。
「昔はね、これも一端の蛇神だったんだよ?でも色々あって零落して妖怪に身を落したってわけ。自分ではクレバーだって思ってる見たいだけど、だっさいよねぇ」
嬉しそうに夜智王を貶す。
夜智王との再会を諏訪子は純粋に喜んでいるようだが、その扱いはかなり酷い。
もはや青息吐息の夜智王は言い返す気力もない。
密着する諏訪子の柔らかな感触も当然感じる余裕はなく、今にも死にそうな表情である。
「あのね、こいつね昔は私の旦那様だったんだよ?」
「ええええ!」
早苗が諏訪子の告白に大声を上げる。
無理も無い。
「ロリコン・・・」
「えーそっちに驚いてるの?あのねぇ早苗、私も昔はもっと大きかったんだよ?背だって早苗くらいはあったんだからね?まぁ胸は早苗みたいにぶよぶよじゃなかったけど」
「ぶよぶよ!?」
あんまりな形容詞に早苗が顔を真っ赤にして「ひどいです諏訪子様!」と抗議する。
さらりと無視し、諏訪子は昔語りを続ける。
「私は神様と同時に国の王様だったからね、あちこちから通ってくる旦那がいたんだ、これもその一人。でもね酷いんだよ?」
ミシミシミシと、アバラが異音を立てる。
諏訪子の両腕に更に力が入った。
ぐぇぇぇぇと夜智王がつぶれた悲鳴を上げる。
あと3mmも絞れば背骨がポキンといきそうな状態である。
「こいつね、私と神奈子がケンカしている最中にね、私を裏切って神奈子についたんだよ!あのぶよんぶよんの乳に騙されてさ!」
「さ、最低・・・」
「ご、ごかい・・・です」
「絶対に許さないんだよ夜智王、そう決めたんだよ」
何か狂気を孕んだ目で諏訪子が、夜智王に囁く。
いつもの無邪気な諏訪子との違いに、ちょっと早苗が引く。
「おい諏訪子、ちゃんと手を洗ってから・・・夜智王、お前何故ここにいる」
新たにもう一人、美女が現れる。
先刻諏訪子が「ぶよんぶよん」とか言った豊満な肢体の美女。
もう一人の祭神、神奈子だった。
「早苗が上げたみたい、でもなんにもされてないってさ」
「そうか、よかった・・・早苗気をつけなさい、こうやって一件無害を装ってくる奴もいるのだから」
どう有害なのかイマイチ理解が追いつかないが、とりあえず注意されたので、しゅんとうな垂れる早苗。
いじけたような口調で、言い訳を始める。
「だってお二人ともお留守で寂しかったんです・・・」
そんな早苗の頭を撫でながら。
それはすまないと思っている、もう少しで用事も終わるから。と神奈子は早苗に謝罪する。
「いい夜智王?早苗に手を出したら許さないよ?こんなじゃすまないからね?岩に縛り付けて、獣に命令してハラワタを啄ばませるからね、再生するから平気だよね、どれくらい耐えられるかな?ねぇ?」
どこのプロメテウスか。
爛々と目を輝かせて、諏訪子が物騒なことを言う。
「諏訪子、そろそろ離れないと孕まされるよ」
「あははは、さすがにこれだけじゃ無理だよ神奈子、えいっ!」
止めとばかりに諏訪子が力を込めると、ベキンと何かおかしな音を発生した。
「あ、ごめんね。折れた?ねぇ折れたよね?」
背骨をへし折られ悶絶する夜智王を、子供の様な残酷さを伴った笑顔で諏訪子は笑う。
「もう・・・お許しくださいませんか・・・ぐっ」
背骨が再生したのか、なんとか持ち直した夜智王が、諏訪子に許しを請う。
倒れ付す夜智王に馬乗りになった諏訪子が、上から黒いモノの混ざった笑みを夜智王に向ける。
その怖さに夜智王の笑顔が引き攣る、
「裏切り者をそんなに簡単に許すと思う?ねぇ夜智王、あなたなら許す?」
「まぁ女子でしたら」
あいかわらずだねーと諏訪子は笑う。
蛇は執念深い生き物なのだ。
そして諏訪子は蛇を従える神である。
無邪気に笑いながらも、なにやらドス黒いオーラが諏訪子の周囲に漏れ出す。
そのオーラにびくっと早苗は驚く。
大蛇薙剣おろちなぎのつるぎを突きつけられた私に選択肢はありませんでした・・・」
大蛇薙、と聞いて早苗は神奈子が大事にしていた巨大な剣のことだと悟った。
十拳剣、天乃羽々切。
建速須佐之男命が八つ股の大蛇を切り伏せた剣だ。
神奈子は血統的には建速須佐之男命の子孫に当たる。
父神、大国主がまだ大己貴命と名乗っていた頃、嫁入り道具として嫁と一緒に強奪してきたらしい。
その嫁、須勢理毘売命は神奈子の母神ではないが、大国主の子供のなかでは、最も軍神としての気質の強かった神奈子が受け継いだらしい。

それは蛇である夜智王にしてみれば堪らないだろう。
日本有数の神剣の一振りであり、その名に宿った言霊から、蛇には甚大な被害を与える。
「ただなぁ、こいつは私も裏切って、色々とこちらの陣容を知った上で、もう一回諏訪子の陣営に付いた」
おかげで随分不利になったのだ。
と神奈子が夜智王を睨む。
「脅したくらいで夜智王をどうこうできると思った神奈子が悪いんだよ、その点私はこれの操縦方法を分かってたからね」
「どうするんですか?」
素朴な疑問を早苗が問う。
素直に返答しようとした諏訪子だが「まて諏訪子」神奈子が制止する。
「早苗にはまだ早い。知らなくて良い」
「・・・はぁ」
釈然としない様子で早苗は小首を傾げる。
言うまでも無く、女の武器を使ったらしい。
「まぁ同じ方法でもう一回こっちに付かせたがな」
「ひどいよねぇ夜智王。同族の私より神奈子を取るんだもん」
諏訪子の視線が豊かな神奈子の胸部に向かう。
なんとなく状況は察していただけただろう。
「とにかく金輪際早苗には近づくなよ蛇、諏訪子に祟り殺されるぞ」
当然私もだ。と神奈子は胡乱な目つきで夜智王を見る。
「神奈子はね、ちょっと過保護なんだ。だから気にせず遊びに来なよ夜智王、たっぷり“可愛がって”あげるから」
イイ笑顔で諏訪子が、つんつんと夜智王を突付く。
二度とココには足を運ぶまい。
そう固く心に決めた夜智王だった。
「早苗。諏訪子も恨み辛みを込めた色々な話があるだろうし、向こうに言っていよう。私からあの蛇に関する注意点もあるしな」
「はい」
さっきまではあれ程に厭わしかった巫女の存在が急に恋しくなる夜智王。
あの娘がいるから、この程度で済んでいる気がしてきた。
「巫女殿・・・」
「あの、諏訪子様、折角の氏子候補さんですから、お手柔らかに」
なにか心配の方向にズレが有る。
「わかったわかった」
気の無い様子で夜智王の前にしゃがみこみ、つんつん、つんつんと夜智王を突付いている諏訪子はひらひらと手を振る。
待っていかないで、ここにいて下さい。
そう言いたげに手を伸ばすが、それも諏訪子に叩き落とされる。
願い虚しく神奈子と早苗が部屋から出て行く。
障子戸がぴしゃりと閉まり、その足音は遠ざかっていった。



二人きりになった部屋。
すっかり早苗達が遠ざかった、と判断したのか、諏訪子がぽつりともらす。
「前にも言ったけど、夜智王に裏切られた時、私すっごく悲しかったんだよ?一度目は仕方ないよ脅されたしね、でもね」
笑顔に暗いものを滲ませ諏訪子は続ける。
「二度目のは許さないよ。もちろん夜智王が色々考えてくれた末だってわかってるよ。でもね私の荒御魂がね許さないの、絶対に、絶対にだよ」
諏訪子は祟る神である。
その荒ぶる魂は、いまだに神代の昔の裏切りを許さないらしい。
「諏訪媛様・・・」
「今は諏訪子だよ?あの戦いで何人の王国の民が死んだか知ってる?お前の裏切りのせいで、皆犬死になっちゃったんだよ?」
自らを慕う民の亡骸を思い出した諏訪子は、涙を滲ませる。
そして突然爆発したのように癇癪を起こした。
「お前なんて最初から味方にしなきゃ良かった!そうすれば!あんなに民が苦しむ前に!私は諦められたのに!」
「貴方様が諦めること・・・民は望んではいなかった・・・だから貴方様は民の望む通りに振舞うしか――ぐぅ」
「うるさいっ!なんでお前にそんなことを言われないといけないの!?お前にはそんなことを言う資格はないよ!」
再び馬乗りになった諏訪子は、夜智王の首を小さな両手で掴む。
そして力を込め容赦なく締め上げた。
「ぐっ」
ギリギリと夜智王の首が絞められていく。
「死んじゃえ!」
「諏訪子」
諏訪子の手を何時の間に現れたのか、神奈子が掴む。
「なにさ」
「そこまでにしておけ」
お前もわかっているのだろう?諭すように言う神奈子の腕を、諏訪子は振り払う。
げほげほと夜智王が咳き込む。
その白い首にはくっきりと諏訪子の手の跡が残っている。
「げほっ・・・助かりました」
「ふんっ!」
「まったく・・・たしか千年も前だったか、そうやって散々これを苛んだだろう。まだ満足しないのか?」
「絶対に許さない!」
「お前なぁ・・・」
戦が長く続き、双方の兵も民も疲れ果て、疲弊していた。
あのまま戦いが拮抗し続ければ共倒れ、そうでなくとも別の国からの侵攻を受けたかもしれない。
夜智王の裏切りは、両者に停戦をもたらす良いきっかけだったのだ。
「その蛇が裏切り者の汚名を来た事で、私に降ったお前を民は悪くは言わなかった」
ついでに私もその後の統治が大変になった・・・と神奈子はぼやいた。
結局夜智王の裏切りは諏訪子を思ってのことだったのだろう。
そう神奈子は推測していた。
しかし
「私はただお二人の色香に迷った・・・ただの性悪の蛇です・・・こうして罰を受けるのも・・・致し方の無いこと」
蛇は、そう言い、力なく笑む。
「ふん、まぁ良い。遥か昔のことだしな。ただし早苗にいやらしいことをしてみろ?死ぬより辛い生き地獄に落してやるぞ」
過去よりも今。
ただただ自分の巫女が可愛い神奈子は、到底神の言葉とも思えない言葉を吐く。
「ご安心を・・・子供は趣味では・・・ございません」
「嘘だぁ、私と寝た時はそんなこと言わなかったのに」
まだ怒りの納まらないのか諏訪子が夜智王をなじる。
「貴方様は・・・見た目程子供では・・・ありますまい?昔よりは幼くなられましたが」
「知ってる?最近はねそういうのロリババァっていうんだよ?」
「諏訪子ババァはやめろババァは」
何か嫌な思い出でも有るのか神奈子は諏訪子を制す。
ぶすっと不機嫌そうに膨れた諏訪子。
動けない夜智王の右手を取る。
「二人で遊ぶから、神奈子は付いてこないで」
「人の迷惑にならん所でやれよ」
ずるずると夜智王を引きずってゆく諏訪子に神奈子は声を掛ける。
やれやれと首を振る。
諏訪子のあの激情は愛情の裏返しだろう。
それ程に諏訪子はあの時夜智王に信を置いていた。
裏切りの真相も正しく理解している、ただ祟り神らしく理性は理解しても、感情は裏切りを許容しないのだ。
ただ神奈子は少しだけ夜智王の存在をありがたく思っていた。
国を乗っ取られた諏訪子の怒りが神奈子にあまり向かないのは、その恨みを一手に夜智王が引き受けているからだからだ。
「しかし、しばらく荒れそうだな・・・今は色々と忙しいというのに、あの蛇め、なんとかしておけよ」
諏訪子の機嫌を取っておいて貰わないと困る。
「しかし早苗が必要以上にあれに興味を持つと困る、あまり留守にしたくないのだが・・・今は経過を見る上で非常に大事な時期だしな・・・」
あれだけ釘を刺したのだから、早苗にはそうそう手を出さないだろうが、勝手に早苗がのぼせ上がる可能性もある。
感受性豊かというか、感化されやすい子だけに心配で仕方が無い。
とにかく自分の巫女に甘い神奈子だった。



[26700] 蛇、ミシャグジ神と共に人里に赴く、の巻
Name: 窓◆0bf2c45e ID:6be04712
Date: 2011/12/06 05:29
「きゃぁぁぁぁぁぁ!?」
妖怪の山に諏訪子の悲鳴が木霊する。
すわ逆ギレした夜智王が反撃に出たのか?
…そんな度胸は無い。
そもそも諏訪子の悲鳴はあれである。
ジェットコースターなどの絶叫マシンに乗ってはしゃいでいるタイプの悲鳴だ。
「すごい、すごーい!」
山中の道なき道を、諏訪子をおぶった夜智王が、転げ落ちる様なスピードで駆け下りてゆく。
山岳スキーと言う物をご存知だろうか?
人工的に調えられたゲレンデではなく、天然の山の斜面を滑り降りるスキーである。
某英国の00ナンバーのスパイもアルプスでやっていた。
あれをスキー板なしでやっているようなものだと思っていただきたい。
しかも駆け抜けるのは妖怪の山である。
スリルは比べるまでもない。
木に激突しそうになったり、段差や崖を飛び越える度、諏訪子が楽しげな悲鳴や笑いを上げる。
その声を聞き付けた山中に住まう妖怪達は何事か!とざわつく。
ただ、声の主が洩矢神社の祭神で、それをおぶっているのが夜智王と知ると、黙ってやり過ごすことを選択する。
賢明な判断だった。
「夜智王ぞ」
「風の噂に相違無く、帰って来たのか」
「洩矢の神と仲が良いのか?」
「共に蛇ぞ、同族よ」
「触らぬ蛇神に祟りなしだ、関わりあいになるな」
「しかり」
山中に畏れを撒き散らしながら、二人は麓目指して駆ける。
「ほら夜智王もっとスピードあげてっ!」
ばしんばしんと夜智王の頭を叩く諏訪子。
馬の尻ではないので止めていただきたい。
「(ワシはひっそりと生きたいのだがなぁ、どうしてこうなった?)」



話は少々遡る、
境内まで引きずられていき、さてどんな“遊び”に付き合わされるのか?
と戦々恐々としていた夜智王に対し。
先程までの激昂はどこへ消えたのか。
諏訪子は満面の笑みを浮かべて夜智王に言った。
「人里に遊びに行こう!」
そして夜智王の背中によじ登った。
連れて行け。ということらしい。
首に回された両腕に、先刻の絞首刑の恐怖が蘇り、冷たい汗が背中を伝うが、断れる状況でもない。
「私は飛ぶのは不得手ですよ」
「ねぇ夜智王」
「なんですか」
「敬語はいらないよ。気持ち悪い、じんましん出そう」
そう言って腕を掻く。
この変わりようは何なのか。
女心と秋の空と言うが、これでは山の天気並みの急変である。
つい先刻、夜智王の首を絞めていたはずなのに。
早く行こう!と急かす様に、諏訪子は夜智王の頭をぐらぐらと揺する。
「…楽しそうだの諏訪子」
「うん!こっちに来て色々あったけど。早苗や神奈子に比べると、私は対して何もしてないからさ」
正直つまんなかったんだよねぇ。
と諏訪子は溜め息を吐く。
「暫くは夜智王“で”遊べると思うとワクワクするよ!」
で、とか言うな。で、とか。
遊ばれる方の夜智王はドキドキである。もちろん心の臓が絞め付けられるような、恐怖由来のドキドキであるが。
「何故に人里よ」
まだ行った事ないんだもん。と諏訪子は何故か頬を膨らませる。
「神奈子がさぁ「お前は見た目が子供なのだ、侮る者や不貞な輩も湧くだろうから、ふらふらするな」とか言うんだよ、ひどいよね?」
「返り討ちにするとでも言い返したのか?」
「そう!そしたら「だからだ」とか言ってさ、酷いよね!何様なんだろうね!?」
神様だろう。
と思ったが、微妙な表情を浮かべ、黙って口を噤む。
神奈子殿も大変だな…と同情を覚える。
毎日この調子の諏訪子と、少々エキセントリックな早苗と暮らしているのだ、さぞ気苦労も多いだろう。
微妙な表情の夜智王が気に食わないのだろう、諏訪子が怖い目で見ている・・・気がした。
「まぁ、幼女好きの変態には気を付けるべきだの」
ご機嫌取りの夜智王の言葉に、えへへと諏訪子が相好を崩す。
「ねぇそれって遠回しに、私が幼女趣味の変態がほいほい寄って来るくらい可愛い、って誉めてるの?」
どうしてそうなる。
夜智王は肯定とも否定ともとれる曖昧な笑みを浮かべ、諏訪子をしっかり背負うと歩き出す。
「待った、そろそろお昼だし、早苗に弁当作ってもらってからにしよ」
「・・・・・・」



「えー諏訪子様ばっかりおでかけずるいです、私も――」
二人で人里に出かける、と聞いた早苗が「私も」と駄々をこねる。
後では神奈子が夜智王に「面倒起こすなよ」と視線で圧力をかけてくる。
胃がしくしくしてきた夜智王は、引き攣った笑みを浮かべるしかない。
何かあれば大蛇薙剣を突きつけてくることは必定。
罪悪感バリバリの諏訪子。
感性の違いすぎる早苗。
常識人だが、こちらに対する必殺の武器を持つ神奈子。
・・・この神社は、完全に夜智王にとっては鬼門だった。
ワシ何故この神社に興味持ったんだろう。
後悔は常に先に立たず。後から着いて来るものである。
「だめだよ早苗?、夜智王と私の逢引なんだから・・・解かるよね?」
逢引・・・つまりデートだから邪魔するな、と諏訪子が怖い笑みを早苗にむける。
そのことがよっぽど衝撃だったのだろう。
小さい頃から蝶よ花よ諏訪子と神奈子にちやほやされたことのしかない早苗には、諏訪子の態度は許容し難い物だったのだ。
優しい母親が、突然男を作って、そっちに夢中になってしまったような。そんな感じだろうか?
あまりの衝撃に、早苗の両の眼に涙が浮かぶ。
そしてきっ!と夜智王を睨むと、八つ当たりを開始する。
「夜智王さんのばかっ!!」
「まて、なぜそうなる」
「こんなに小さい諏訪子様を誑かして!私の可愛い諏訪子様を返して!!」
「・・・(ワシが悪いのか?)」
冷汗が止まらない夜智王は頭を抱え自問自答する。
多分そんなには悪くない。
「早苗、早くお弁当用意してよ」
「すわこさまぁ・・・うぁーん!」
空気など読む気も無い諏訪子が早苗を急かすと、堪え切れずわぁわぁと早苗が泣き出す。
「おい蛇」
早苗を泣かす奴は許さん。
そういわんばかりに立ち上がって怒気を放つ神奈子の周囲に、木柱が召喚される。
「御柱はやめよ神奈子殿、今のはワシは悪くないと思う!話せば解かる!」
犬養毅並の必死さで夜智王は神奈子を説得しようとする。
「黙れ」
問答無用。聞く耳持たず。
泣きながら、早苗も周囲に弾幕ごっこ用の符を取り出している。
これは駄目だ。
「逃げるぞ!」
「きゃぁ!」
そう判断した夜智王は諏訪子を抱える(なぜか嬉しそうな悲鳴を上げた)と一目散に逃げ出した。
「「待てぇぇぇ!」」




「すごかったねぇ!またやろうよ夜智王」
普通に上空に逃げても、生憎夜智王は飛ぶのは不得手、すぐに追いつかれそうだったので、迷わず山中に飛び込んだ。
山中の早駆けならば、逆に自信が有る。
木々に紛れれば、上空からの追尾も難しい。
すっかり追撃者達はこちらの姿を見失ったようだったので、夜智王は歩を緩める。
「鬼ごっこ抜きならばな」
「ふふ。やっぱり夜智王がいると楽しいよ」
「良かったの・・・」
風神とその巫女に追われたこちらは「楽しい」どころではない。
「ねぇ夜智王」
こてんと夜智王の肩に頭を乗せてニマニマしていた諏訪子が、甘い声で囁いてくる。
「なんじゃ」
顔を起こした諏訪子が、まだ自分の手形が残る夜智王の首にそっと触れる。
「痛かったよね。ごめんね」
慰めるように、自分で作った痕を諏訪子が撫でる。
こそばゆい感覚に夜智王は微笑しながら。「いや平気じゃよ」と返す。
だが。
「そう?・・・うふふふ、首輪みたいだね、夜智王は諏訪子の物だって」
何か物騒なことを言っている。
急に黒いオーラを発し始めた諏訪子に「またか!?」と思いつつ、夜智王は笑顔を向ける。
「のぉ―」
「夜智王こっちにきたのは何時?」
暗い炎の燈った眼力だけで夜智王を黙らせ、諏訪子は質問を重ねた。
「き、昨日だ・・・」
唐突に何かと思ったが、恐怖のあまり深く考えず夜智王は答えた。
「・・・だから他の女の匂いがするんだね?」
口調は軽い。
「ただの移り香じゃないね・・・一晩中一緒だったんでしょ?」
可愛らしい声で尋ねる諏訪子だが、その言葉に込めれたドス黒いオーラは尋常ではなかった。
「・・・・・・」
どう答えても、もうダメな気がする。
「・・・まぁいいや」
冷や汗をダラダラと流しながら一言も発することの出来ない夜智王。
その様子を反省している、と取ったのか、諏訪子は不承不承の口調で許す。
「昨日なら、私がここにいるとは知らなかったみたいだしね」
「そ、そうか」
搾り出すように相槌を打つ夜智王に、うん。と諏訪子は愛くるしい笑顔を浮かべ返す。
ただ、夜智王の肩を掴んでいた小さな手が、肉に食い込んでくる。
桜貝のように愛らしいはずの爪が、まるで鉤爪のように。
ギリギリと。
「・・・諏訪子・・・ちと痛いかの?」
「何が?」
いえ、なんでも無いです。
なんじゃろう。
どうしてこんなにコロコロと態度が変わるのだろう。
さっきまであんなに楽しそうに笑っておったではないか。
切実な夜智王の問いに答えてくれるものは居ない。
「こんなに縮んじゃって、夜智王を満足はさせてあげられないから、他の女で性欲の発散するくらいは許すよ」
しかも、なにか話がおかしな方向に転がりつつある。
笑顔を浮かべて振り返り、ご機嫌を取るべきだ。
女の嫉妬にはこれが一番効く。
しかし首が動かない。錆ついたかの様に。
今振り返ったら、そこには夜智王の知らない諏訪子がいそうで。それを見たら立ち直れなさそうで嫌だ。
「諏訪子が正妻だからね。度量の広いところを見せないと」
正妻・・・?
ワシ何時から貴方の夫に返り咲いたんじゃろう?
聞きたいが、聞ける雰囲気でもない。
「でも早苗はダメ・・・ううん、早苗も変な男に引っかかるくらいなら夜智王の方がいいかな」
余所に女を作るよりも早苗の方が良いかな・・・とかブツブツ呟いている諏訪子。
いやいやいや。
それはいくらなんでも酷いだろう。
第一に―
「いや巫女殿に手など出さんよ?神奈―」
子殿が怖いし、そう続けようとした。
その名に諏訪子が過剰反応を示す。
「神奈子だけは、ぜぇぇぇったいに、許さないよ?三度目なんて・・・無いからね?」
「・・・はひ」
どうしてこうなった・・・






その後。
ケロリと何事もなかったように元の調子に戻った諏訪子が「まずは団子が食べたい」と可愛らしいことを言う。
持ち合わせがないぞ?と恐る恐る夜智王が返すと。
「鱗二三枚ひっぺがして道具屋に売ろう」と残酷なことを言った。
確かに夜智王の鱗ならば妖怪避けのお守りに丁度良いだろう。
低級な妖怪ならその残り香だけで近寄らせない効果がある。
だからって生皮剥いで売れ。とほぼ同義のことを言う諏訪子に、内心で夜智王はさめざめと泣く。
拒否権は無い。
「そう言えば夜雀の妖怪が屋台を引いてるらしいんだよね。二人で冷やかしに行こうよ!」
とか何気に酷いことを宣う。
猛禽から化生した鳥妖ならともかく、夜雀程度だど蛇は逆に捕食する側である。
そこに大蛇の夜智王と、ミシャグジを統括する諏訪子が行ったら、泣いて逃げ出すのではないだろうか。
だが、すでに夜雀の屋台で一杯やることは諏訪子の中では決定事項らしい。
繰り返すが夜智王には拒否権は・・・無い。
可哀想な夜雀が今日は屋台を休みにしてねぐらで大人しくしている事を、夜智王は祈る。
そうこうしているうちに、二人は人里へとたどり着いたのだった。















グチの様な後書き。

ここに投稿してることが身内(友人)バレした作者です。
きゃー恥ずかしい><
それにしてもケロちゃんがコントロール不能です。さすが神様。
書いては没原、書いては没原、これ第四稿です^^;
行動をマイルドにすると反比例して言動に狂気が増してゆく・・・
あととりあえずみすちーは逃げて。



[26700] 蛇、ミシャグジ神と人里を堪能す、の巻
Name: 窓◆0bf2c45e ID:6be04712
Date: 2011/12/08 04:49
「楽しかったね!」
「それはよかったの…」
早くも西へと傾きつつある秋の太陽を眺めながら、疲れはてた声で夜智王は首肯した。
人里の団子屋、店の前の椅子に腰掛けた夜智王、その膝の上にちょこんと諏訪子が座っていた。
くたびれた様子で茶をすする夜智王に対し、諏訪子は団子を頬張りながら、嬉しそうに胸に下げたペンダントを弄くっている。
「あまり弄ると欠けるぞ」
「大丈夫だよ」
七宝焼のペンダントである。
蛇に巻き付かれた蛙という、作者は蛙に恨みでもあるかのようなデザインだが、この上無く諏訪子に似合いであった。
結局軍資金 の確保に里で一番の道具屋「霧雨道具店」で鱗を売りにいった時手に入れたものだ。

暫くぶりの幻想郷であったので、当代の店主とは面識がなかったが。
ただ「妖怪避けのお守りを売りに来る蛇」
というのを店主は知っていたようで、快く取引に応じてくれた。
団子たらふくと屋台で一杯。
それと饅頭一包み分と賽銭として幾ばくか。
それで買ってくれと鱗を出した夜智王に店主は難色を示した。
安すぎる。と言うのだ。
ただ夜智王を譲らなかった、永遠に効果の有るお守りではないし、効くのはごく下級な妖怪である。
好奇心旺盛で被害に遭いやすい子供。
狙われ易い女。
あとは山で糧を得る猟師に「気休め」として安く売ってくれ。と…
まして鱗などすぐに生えてくるもの、他に金銭を得る方法も無いのでこうして鱗を売るが、正直それは夜智王の趣味ではなかった。
もっと効果の強い物であればともかく、さっきも行ったように気休め程度の上、消耗品なのだ。
だいたいにして効きすぎるお守りを提供したとなれば、夜智王もただではすまない。
眉間にシワを寄せ、柳眉を吊り上げた紫が
「妖怪と人間の均衡がうんたらかんたら」
と説教に来るに違いない。
しかし店主も譲らない。
正当な対価を払わないのは商売人の矜持が許さないらしい。
押し問答をしていると、物珍しそうにキョロキョロと店内を見物していた諏訪子が、件の七宝焼のペンダントをじっと見ていた。
目敏く店主が「お連れ様がご執心のあれを付けるということでどうでしょう?」と切り出した。
夜智王は二つの返事で承諾した。
「済んだぞ諏訪子、外で待っておれ」
「は~い」
後ろ髪を引かれつつ、諏訪子は先に外に出る。
「可愛くお包みしますか?」
「いらん世話だよ女将」
店主の連れ合いとおぼしき女性の、からかうような笑顔に辟易しつつ、代金と七宝の入った包みを受けとる。
外で待っていた諏訪子に「待たせたな」声を掛け。
ほいと包みを渡す。
「何?」
「店主がおまけをつけてくれた」
包みから転がり出たペンダントに諏訪子が眼を輝かせる。
「いいの!?」
「無論だ」
「えへへへ」
満面の笑みを浮かべ、嬉しそうに美しい七宝焼を眺める諏訪子。
「どれかけてやろうか」
「ちょっと待って」
「っ!」
諏訪子が夜智王の髪を二三本引っこ抜く。
ぶわっと夜智王の全身から冷や汗が吹き出す。
「えへへへ」
笑いながら、ペンダントの紐に夜智王の髪を巻き付けて行く諏訪子。
「紐が切れないおまじないだよ」
「そ、そうか…」
「できた、かけて夜智王」
嬉しそうに言い、ペンダントを夜智王に渡す。
捧げるように恭しく諏訪子の首にペンダントをかける。
「えへへへへ」
顔が緩みっぱなしの諏訪子、その笑顔はとても愛らしい。
しかし、祟り神に髪を取られた夜智王は内心穏やかではいられない。
呪いと書いてまじない。
である。
「(ワシそろそろ怒ってもいいんではないだろうか?)」
人気の無いの所に連れ込み、裸にひん剥いて、ひぃひぃ言わせてやろうか。
邪な感情がもたげる。
しかし
「ありがとね夜智王!」
眩しいまでの笑顔を浮かべる諏訪子に、あっさりと夜智王は毒気を抜かれた。
「(ま、嬉しそうだし、良しとするか)」
そう思うことにした。
どうにも女子供には甘い夜智王であった。



軍資金も得たので、まずは団子屋で団子を買い食い。
その後は商店を冷やかして回る。
可愛らしいワンピースを当てて「似合う?似合う?」とはしゃぐ諏訪子。
寺子屋を覗き見し「お主も通うか?」と言っては叩かれ、教師役の娘の器量に「ほほぅ」と関心しては叩かれる夜智王。
稗田の阿礼乙女を訪ねて、世間話に興じたり。
夜雀の屋台の出現位置を聞いて回り、早々と準備を始めていないかとあちこちを巡ったり。
夜雀にとっては幸いなことに、屋台は見つからなかった。
気が付けばあっという間に時間は過ぎて黄昏時が近づいていた。
休憩とばかりに再度団子屋に赴き、今に至る。
「もー夜智王しゃんとしなよ」
「ワシはもう疲れた」
老人の様に背を丸め、ずずずと茶を啜る夜智王。ひどくジジムサく、折角の美男子が台無しである。
「(しかし、あの七宝、かなり古い良い物だの・・・あの親父食えんな)」
チラリとペンダントに視線を向ける。
恐らく名のある作者の物だが、外の世界では既に失われている事になっているだろう。
道具屋の主人に一杯食わされたのは癪に触るが、諏訪子も喜んでいるし、店主の粋な計らいを素直に褒めるべきか。
「聞いてるの!?次は夜雀の屋台を襲うんだからね!」
冷やかすのではなかったのか?
そうつっこもうとした夜智王の前に、誰かが立つ。
くいと視線を向けると、そこに早苗が居た。
「巫女殿」
「あれ早苗」
恐らく二人を捜してあちこちを駆けずり回ったのだろう。
ボロボロで疲れ果てた様子の早苗、頬には涙の痕も見える。
次の瞬間、ぐしゃりと早苗の表情が崩れ、ぼろぼろと泣き始めた。
何せ往来のど真ん中である、目立つことこの上ない。
「何?愁嘆場?」
「巫女様相手に?幼女と?」
ひそひそと夕飯の買い物に来ていたらしき主婦たちが話し始める。
まずい、このままではまずい。
ひょいと諏訪子を持ち上げ隣に置くと、早苗の手を取り引き寄せる。
「何故に泣くのだ巫女殿、ワシは女子の涙が苦手だ、堪忍してくれ」
「うぇ、ひっく・・・やちおうさんのばかっ!」
またか。
唐突な罵声に夜智王は頭を抱える。
何がどうしていきなりワシは罵られているのか。
「わたしから・・・うぇっ・・・すわこさま、とらないでぇ」
・・・
どうやら仲睦まじく団子を食べている二人を見て、早苗は諏訪子を夜智王に「取られた」と感じたらしい。
「(この年にもなって頑是無い幼児の様なことを言われてもなぁ)」
ぽかぽかと力の入ってない拳で夜智王の胸を叩く早苗。
諏訪子も、どうしたものか?と言う表情で思案している。
「まぁ座れ巫女殿・・・親父団子と茶・・・いや甘酒をくれ」
「へい」
すでに準備万端で用意していた団子屋の親父が、すっと団子と甘酒を持って来る。
さすが幻想郷の団子屋の親父、只者では無い。
「ほれ、食べよ。旨いぞ」
「ひっく!こどもじゃないんですよぉ!ばかにしてぇ・・・もぐ・・・おいひい」
泣きながら団子を頬張る早苗。
とりあえず泣き止んだ。
子供だ、完全に子供である。
「まぁなんだ。別にワシは巫女殿から諏訪子を取ったりはせんからな。安心せい」
「呼び捨て・・・」
じとっっとした目で早苗は夜智王を睨む。
どうしろと言うのだ。
困り果てた夜智王が諏訪子を見る。
やれやれと言わんばかりに諏訪子が首を振る。
バカにされたようで腹立たしいが、ここは諏訪子に任せるほか無い。
「大丈夫だよ早苗。夜智王は私のものだけど、諏訪子は夜智王のものじゃないからね」
「何気に酷いの・・・」
夜智王のぼやきは無視し、早苗の前に立った諏訪子はよしよしとその頭を撫でてやる。
諏訪子の薄い胸に顔を埋めて早苗はべしょべしょとぐずる。
「ほんとですか?」
「本当だよ」
ぽんぽんと早苗の背中を叩いてやる諏訪子。
どうみても姉妹(諏訪子が妹だ)にしか見えない二人だが、諏訪子の表情には母性のようなものが垣間見えた。
まるで母子だの、と夜智王は思った。
「やれやれ、泣く子には敵わんな・・・諏訪子、今日はお開きにしよう、今宵はたっぷりと巫女殿を甘えさせてやれ」
「仕方ないね・・・しばらく用事があって私も神奈子も留守にするから、時々早苗の相手をしてあげてよ夜智王」
ただし夜の相手はまだ早いからね?と物騒なことを言う諏訪子。
それは御免だと言ったろう。神奈子殿に殺される。
「じゃぁまたね」
「ああ、またな」
しゃっくりをあげる早苗を慰めながら諏訪子は去っていった。
「・・・・・・」
一人残された夜智王に、周囲の視線が集まる。
巫女と幼女を巡る謎の三角形、一体どういう状況だったのか意味不明である。
ただ団子屋の親父だけが、酸いも甘いも知り尽くした様なしたり顔で酒を一杯出してくる。
黙って受け取った夜智王はそれを一気に呷ると、多少色を付けた代金を置いて立ち上がる。
「迷惑をかけたな親父」
「いえ」
「馳走になった」
「ありがとうございやした」
ハードボイルドに決めて歩き出す夜智王。
しかし周囲のひそひそ話しと好奇の視線は止む事がなかった。



これ以上人里に留まるとロクなことにはならない。
人の噂も七十五日、あっという間では無いか、冬も近い冬眠している間に消えるはずだ。
まぁ冬眠はしない夜智王だが。
すっかり暗くなった夜道を、当ても無く夜智王は歩く。
さて今宵の床はどうするか。
神社は当面御免だ。
すでに諏訪子とのことは耳の早い天狗には届いているだろうから、文のご機嫌を取っておくべきだろうが・・・神社のある山には向かいたくない。
あと以外にも悋気持ちの文と会うのがちと怖い。
先刻立ち寄った稗田家にでも泊めてもらうか。
しかし当代の阿求は幼すぎて手を出す気にもならない、一人寝は寂しい。
紅魔舘に行って美鈴としっぽり、と思ったが・・・場所が分からない。
文に山まで連れて行ってもらったのが仇になった。
「夜雀の屋台でも探すか」
結局そうなるのか。
と嘆息していると、前方にぼうっと人魂が見えた。
珍しい、亡霊でも迷い出たか。と目を凝らす。
この際亡霊でも女ならば良いかもしれん、一晩語り明かすにはうってつけの相手かもしれぬ。
だが、夜智王の思惑に反し、前方から現れたのは、人魂を伴った一人の少女だった。
可愛らしい少女だ、諏訪子程は幼くないが、女というにはまだまだ程遠い。
おかっぱ髪にカチューシャ。
下は緑色のスカートと白いフリル。
上は白い袖の膨らんだ半そでのシャツで、緑色のチョッキのような物を来ていて、胸元のリボンが可愛らしい。
暗がりに浮かび上がる肌の白さに夜智王は驚く。
あれは・・・人か?亡霊か?
いずれにせよ大小二本の刀を帯刀している。
その歩みには隙が無く、相当に使うことがすぐに分かった。
「(はてあの刀、見覚えがあるな)」
「誰です!」
思案している夜智王に気が付いたのか少女が身構えて誰何の声をあげる。
「夜に人里の外をうろうろするとは・・・さては妖怪!」
「お、鋭いのお主」
「・・・人里近くで何を物色していた!」
何やらおかしな勘違いをしているらしい。
刀の柄に手をかけた少女を見て、夜智王は頬を掻く。
「ワシは人里を襲う――」
なんて考えてもいない、そう続けようとする。
しかし、少々言い方が悪かった。
「襲う」と言った辺りで完全に勘違いした少女が叫ぶ。
「問答無用!」
少女は身を低く沈めると、大地を蹴り夜智王へと肉薄する。
一瞬で二人の距離が縮まる、特殊な歩法を使っているのだろうか、速い。
気合の声を上げながら、少女は鯉口を切る。
刀身が月光を反射し闇夜を切り裂く。
一挙手一刀足、間合いに入った瞬間迷わず抜刀、横薙に夜智王の胴を目掛けて切りつけた。


















後書き。
魔理沙のとーちゃんが何かかっこいいことになった件
早苗がちょっと幼すぎる気がする、反省。
さしものケロちゃんも泣く子には勝てない
そして、辻斬り妖夢登場。なんてベタな・・・

次回はプロット通りならゆゆさまとエッチなことになる・・・はず。
プロットではケロちゃんは病んでなかったのは内緒だ。



[26700] 蛇、襲撃されること再び、の巻(加筆)
Name: 窓◆0bf2c45e ID:6be04712
Date: 2011/12/09 00:07
「っく…ぷはっ…だめ、我慢できない・・・」
「おい幽々子、やめよ」

どうしてこんなことになったのか。
白玉楼の庭師兼剣術指南役の少女、魂魄妖夢は自問自答する。
原因は今、自分の顔を見て笑い転げる主、白玉楼の女主人、西行寺幽々子をたしなめている男。
先刻妖夢が斬りかかった妖怪、夜智王である。



そもそも事の起こりは、用事を言い付かり人里に赴いたことであった。
冥界に有る白玉楼の家人は皆、霊である。
そんな中で半分人間で半分幽霊という特殊な存在の妖夢は、人里に用事がある場合、自然それを担当することになる。
人里のあちこちを回り、最後に夕方に出来上がる物を受け取り帰還する。
極めて簡単なお使いだった。
大過なく用事をこなし、夕方までの待ち時間を「博霊神社で潰そう」そう思ったのが間違いの始まりだった。
人里の東に座す博麗神社。
そこの巫女とは気心の知れた仲である。
相変わらず誰も参拝人のいない神社をスルーし、巫女の住居に回る。
遊びに来ていた白黒の魔法使い共々、二人は縁側に座り熱心に読書していた。
珍しい事もあったものだ。
何かの前触れかと聞くと「失礼ね」という毒舌と共に、外の世界の本が紛れ込んだのだと巫女は言った。
妙な材質の紐で括られた本の束。
一冊手に取るとどうも剣豪小説らしい、中々に面白そうである。
妖夢も縁側に座り、三人並んで外界の本を読みふける。
あまりの面白さに一冊、二冊と続きを読み続け、はっと気がつくと夕方であった。
本に夢中な二人に暇を告げ、慌てて用事を済ましに人里へ向かった。
閉店ギリギリの店に駆け込み、無事に品を受け取ることに成功、胸を撫で下ろし帰路へつく。
小説の内容を反芻しながら、脳裏で刀を振るってみる。
そこで遭遇したのが夜智王だった。

「(あんな小説を読んだせいで気が昂っていたんだ…)」
まともに話も聞かず、一刀のもとに夜智王を切り伏せた。
横薙の一撃を夜智王の腕が防ぐ、だがそれはあっさりと骨ごと切り飛ばされた。
そのせいか剣先がずれ、逆袈裟気味に脇から肩口へと夜智王は両断された。
ずるりと上半身が落ち、どさりと下半身が倒れる。
正直な所妖夢は拍子抜けした。
夜智王がもっと強そうな妖怪に見えたからだ。
最初の一撃も回避されるか防御されるかと思っていた。
まさか一刀で勝負が付くとは重いもしなかった。
「(剣ならばそろそろ半人前を卒業か)」
妙な高揚感が妖夢を包む。
呼吸を整え、血脂を拭おうとして、愛刀に血が全く着いていないことに気付く。
「(妙な妖怪だったのだろうか)」
足元に落ちている腕を拾う、調べれば正体が判るかも知れない。
茨城童子の右腕を切り落とした渡辺綱を気取ったのかも知れない。
それを持ち帰ることにした、それこそが最大の過ちだった。



家路を急ぐ妖夢だったが、ふと後ろから声が聞こえた。
そんな気がした。
びくり、と震える。
半分幽霊の癖に妖夢は存外怖がりだった。
気のせいだ、そう思い込み、自然早足気味に歩き出す。
「!?」
間違いなく誰かが付いてくる。
僅かな足音と「おーい」という声が聞こえてくる。
恐怖から駆け出した(この時点で飛ばなかったあたりで、すでに平静ではなかった)妖夢。
しかしどんどん足音が迫ってくる、自分よりも足が速いのだ。
「おぉぉぉい、まてぇぇぇぇぇい」
「ひぃ!」
木霊する低い声に思わず悲鳴が漏れる。
逃げ切れない、そう悟った妖夢は意を決し迎え撃つことにした。
刀の柄に手を伸ばし、振り返る。
そこに
「ワシの右腕をかえしてくれ~」
「おばけぇぇぇぇぇぇ!」
先刻切り倒し、絶命したはずの妖怪が居た。
言うまでも無く、高い再生能力を持つ夜智王である。
よほど急いでいたのだろう、夜智王は切り落とされた上半身を抱えたまま、とんでもないスピードでこちらに向かってきていた。
斜めに切られた下半身と胴体の半分がである。
妖夢はヘナヘナと崩れ、ぺたんと尻餅をつく。
恐怖のあまり腰が抜けたのだ。
「やっと追いついた。お主魂魄の家のものであろ?ワシの右腕をどうするつもりだ」
「ひっ!いやぁ!」
追いついたからだろう。ようやく夜智王は切り離された上半身を持ち上げると再生を始めた。
そのシュールな光景に妖夢が悲鳴をあげる。
「ほれ右腕を返せ」
「やだぁ!たべないでぇ!」
支離死滅な悲鳴をあげる妖夢。
「あっ!」
「うん?」
ビクリと妖夢が震える。
「あああああああ」
絶望的な表情を浮かべる妖夢。
下半身に走った悪寒、それは・・・
「あー・・・なんかすまん」
夜智王は頭を掻く。
視線の先、妖夢の足元から水溜りが広がって・・・恐怖のあまり失禁したのだ。
「うぇ・・・」
悲しいかな女性というのは排尿を途中で止めることができない生き物である。
羞恥と恐怖と絶望から妖夢はぼろぼろと泣き始めた。



「うぇっ・・・ひっぐ!・・・ぐすっ・・・」
「泣くな泣くな」
手拭を取り出した夜智王はぐずぐずと泣き続ける妖夢を宥めつつ、持ち上げて汚れを拭いてやる。
「うわぁぁぁぁぁぁん!」
見ず知らずの男に漏らした小水の始末をしてもらう、その恥ずかしさと自身の情けなさに妖夢は大声で泣く。
「よしよし、良い子だからな泣くな」
少々可哀想だったのと、やかましかったので、術を使って妖夢を眠らせる。
ふぅと吐息に催眠成分を含ませ吹きかける。
妖夢の頭がくらりと揺れ、すとんと眠りに落ちる。
すやすやと寝息を立てる妖夢から、スカートとパンツを引っぺがし、近くの小川で洗うことにした。
下半身すっぽんぽんという訳にも行かず一張羅の着流しで妖夢をくるむ。
「今日は女難の日だの」
晩秋の夜気に震えながら、全裸で女物の可愛らしいパンツを洗う。
完全に変態である。
小川にいた小豆洗いも同情の視線を向けてくれるが、うっとしいので威嚇して追い払う。
火を起こしてスカートとパンツを乾かす。
その間、全裸である。
全裸で年端も行かない少女のパンツとスカートを乾かす。
もう一度言おう完全に変態である。
「死にたい・・・」
ふんどしくらいは用立ておこう。そんなことを思う。
とりあえず相手の身元は分かっている。
なんとか生乾きになったパンツとスカートを穿かせ、眠りこける妖夢を背負って白玉楼を目指す。
途中で妖夢が目を覚まし、泣いて暴れだしたのには参った。
ほうほうの体で目的地にたどり着いた夜智王を迎えた幽々子だが。
「あら夜智王久しぶり・・・何したの?」
相変わらずの性格だった。
「察しろ幽々子」
「まぁなんでもいいわ」
とりあえず家人を呼んで妖夢の世話を命ずると、自身は夜智王を歓待することにしたのだった。



風呂に放り込まれ、なんとか生き返った妖夢は、複雑な面持ちで廊下を歩く。
よりにもよって幽々子の知り合いに問答無用で斬り、あげく漏らした世話までさせてしまった。
情けなさと、羞恥と、恐怖がない交ぜになり、妖夢を打ちのめす。
風に乗って、楽しそうな幽々子の笑い声が聞こえてくる。
まるで小さな子供のような、はしゃいだ笑い声だった。
妖夢はぎょっとした、あんな風に幽々子が笑うなんて。
妖夢の知る限り滅多に無いことだった。
二人は縁側に座り、妖夢が精魂込めて世話している庭園を肴に、酒を酌み交わしていた。
「あ、お漏らし娘が来たわよ・・・ぷっ・・・くくっ」
妖夢の顔を見たとたん、幽々子は押し殺した笑いをもらした。
ば・れ・て・い・る。
ざぁと妖夢の全身から血の気が引く。
ぐらぐらと揺れる視界、そのまま崩れ落ちそうになる妖夢を、するりと近寄った夜智王が支えた。
申し訳なさそうな表情で「大丈夫か?・・・それとすまんの」
そう言って幽々子を見る。
恐らく幽々子が無理矢理聞き出したのだろう。
夜智王の苦々しい表情がそう物語っていた。
「このたびは・・・とんだごぶれいとごめいわくを・・・」
妖夢の傍らにある人魂共々しおしおと萎れた妖夢は、崩れるように土下座をして夜智王に詫びる。
「気にするな、あの程度でワシは死なんし、脅かしたのもワシだしな」
そう言ってしおしおの妖夢を抱き起こすと、ぽんぽんと背中を叩く。
あんな狼藉を働いた自分をあっさり許す夜智王の度量の広さに、ほっと心が軽くなる。
「っく・・・ダメ・・・また笑い・・・」
「幽々子様ひどい・・・ぐすっ」
ちらちらと妖夢の方を見ては幽々子は噴出すのを堪えている。
「おい幽々子、苛めるな可哀想であろうが」
「だって夜智王・・・その年にもなって・・・お漏らしって」
どんどんと縁側を叩きながら笑い転げる幽々子。
ドSにも程が有る。
「ええいまったく・・・妖夢。ワシへの侘びなど良いから、今日は休め、な?ぐっすり寝て今日の事は忘れろ」
ワシも忘れるから。
憐れみの篭った夜智王の優しさが、逆に辛い。
「それに、あのままだと幽々子が笑い死ぬ。主の為にもそうせよ。少々酷薄な主だがな」
はい・・・悄然とうなだれた妖夢は、夜智王の勧めに従い、フラフラしながら自室へと去る。
堪えきれず爆笑を始めた幽々子の笑い声がその背中に突き刺さるのだった・・・





「はぁ。こんなに笑ったの久々よ」
「まったく」
幽々子がごろりと横たわると、ゆったりとした服装にも係わらず、しっかりと自己主張する豊満な胸がぐにゃりとつぶれる。
絶景だの。と、それを肴にくいと夜智王は杯を干す。
「あんなに苛めて、可哀想であろうが」
「だってねぇ」
やれやれと夜智王は嘆息する。
マイペースなことにかけては幻想郷でも一二を争う幽々子に、言っても無駄と悟ったのだろう。
黙って杯を傾ける。
「咲きかけたのだって?」
「ええ」
一本の桜の木を刺して二人は、言葉少なく語り合う。
「ちと見てみたかった気もするの」
「そう?」
幽々子の問いには答えず、夜智王はまた一杯、杯を干した。
「ふふ、貴方のお酒の呑み方、私は好きよ」
「何を言っとるんだ突然」
「鬼も天狗も酒好きだけど、彼らの飲み方は下品なのだもの」
酒の呑み方に下品も上品もあるまい。そう言い、夜智王は空の幽々子の杯に酒を注いでやる。
くいと舐めるように酒を呑む幽々子。
その仕草が酷く色っぽい。
「鬼はいつも酔っ払っていて、あれじゃ酒の味なんてわからないじゃない?強い酒ばかりだし」
あれらはワシらとは体の作りが違うのだ。と夜智王は答えた。
確かに鬼の飲む酒は、他の者にはキツすぎるが、別段まずくは無い。
夜智王は鬼と酌み交わす酒も嫌いではなかった。
「天狗は、やれ吟醸香がどうのとか、語りが過ぎて嫌なのよ、しつこいのよね」
たしかにあの薀蓄には少々うんざりする。
だが天狗の酒は旨い。
だから夜智王は天狗と共に呑む酒は嫌いでなかった。
つまり酒が好きなのだ。
「さよか」
「その点貴方は良いわ、黙って旨そうに呑むもの」
「この一杯は二度と呑めぬ一杯だからな」
確かにワシはうわばみよ。だからこそ、味わって呑むのは当たり前のことよ。
そう言い夜智王は杯を傾ける。
「一期一会の杯ってこと?」
「利休居士か?ワシはそんな難しいことはわからんよ」
「ふふ・・・ねぇ夜智王」
なんじゃ、と夜智王は胡乱な目で幽々子を見る。
幽々子はしなだれかかるように夜智王の背中に体を預けてきた。
「ちょっとお願いがあるんだけど?」
耳元で囁くように幽々子が言う。
この娘がこんな風にするする「お願い」は大抵ロクなことではない。
「相応の対価をくれるなら考えてやらんこともないぞ」
背中に当たる幽々子の乳房、首に回された二の腕、その柔らかな感触が堪らなく心地よい。
女に振り回されるのは男の甲斐性だ、しかし。
まだこの程度で「踊らされてやる」のは癪だ。
長い付き合いなので、幽々子も分かっている。
艶やかな唇が、条件を提示した。
「今夜一晩お相手するわ・・・もちろん閨も含めてよ」
前払いか。
これは本当にロクでもないな。と夜智王は思った。
しかし、幽々子と一晩寝れるなら、聞いてやるくらいは良いだろう。
珍しく紫の邪魔も無いようだし、さては奴め寝ているな?と夜智王は推測する。
ならばこの好機を逃せば、この極上の女と情を交わせるのは何十年後か分からない。
「何をする?スキマでも攫ってくるか?」
紫が幽々子に特別な感情を向けるように、幽々子もまた紫には特別な感情が有る。
夜智王は幽々子が亡霊になってからの付き合いなので、さほど詳しくは知らない。
女の過去を必要以上に知りたがるような野暮ではない。
九尾を相手にするのは骨だが・・・まぁなんとかなるだろう。
「簡単なことよ」
「もったいぶらんで言え」
そう言って夜智王は酒を口に含んだ。
「妖夢を抱いて欲しいの」
とんでもない「お願い」に夜智王は思い切り噎せた。





「げほっ!ぐぅっ!ごほっ!」
噎せる夜智王の背中をさすりながら「あらあら大丈夫?」と幽々子は暢気に言う。
なんとか咳の治まった夜智王は「大丈夫?はお主の頭のほうだ!」と叫ぶ。
「幽々子、お主気でも違ったか?」
「私は正気よ?」と真顔で言った幽々子は、愛用の扇を取り出して広げると、それで口元を隠し、目を伏せて憂いを含んだ溜息を吐く。
「あの子のことが心配なのよ」
「それとワシが妖夢を抱くことにどんな関係性があるのだ・・・」
夜智王のぼやきを無視した幽々子は、説明を続ける。
「最近はいきなり斬りかかるなんてことはなかったのよ?それなのに貴方に問答無用で斬りかかったのでしょう?」
大方何かに影響されてのことだろうけど。と幽々子は真実を言い当てる。
「不安定なのは仕方あるまい、あれは半人半霊だし」
「そんなことは分かってるわ。でもあの子はもう天涯孤独の身だし、親代わりの私が心配になるのはわかってくれて?」
「・・・」
「このままだと悪い男に、コロリと騙されてしまいそうで」
そう思うと食事もあまり咽喉を通らないのよ・・・と幽々子は再度溜息を吐く。
それは結構大変だの、と夜智王は思った。幽々子の健啖家ぶりは良く知っている。
「だからあの子を抱いて」
あの子も男を知れば、恋を知れば大分落ち着くと思うのよ。私みたいにね。と幽々子は意味深な視線を夜智王に向ける。
そんな訳があるか。そもそもワシが世間一般で言う“悪い男”だろう。
そう夜智王は自慢にもならないことを言う。
「なぁ幽々子、案外何処ぞに思い人がいるやもしれんだろう?妖夢の気持ちも考えよ」
「その思い人が悪い奴だったらどうするのよ?」
「・・・過保護すぎる。お主も天魔も諏訪子も紫もだ。惚れた腫れたで傷ついたら黙って慰めてやれば良いだろうが、可愛いのは分かるが―」
「御託は結構よ夜智王。ようは貴方生娘を抱くのが嫌なだけでしょう?」
それは確かだ。
何を好き好んで生娘など抱かねばならんのか。
「世の中には生娘を抱くのが何より好きな輩もいるのに・・・案外に意気地なしよね」
「そんなのはな、自分の支配欲を満たしたい、三流の所業よ」
「自称“一流”の貴方だから、初めてにはうってつけのよ」
言い返された夜智王は、勘弁してくれ・・・となだれる。
遊郭で馴染みの太夫にもお付きの禿かむろや新造の初めての相手を頼まれた。
生娘の相手なんて面倒である。
どんなに優しくしたって痛がるし、こちらもあまり気持ち良くない。
特に素人娘なんて後々の面倒を考えると絶対に嫌だ。
「別に明日にでもすぐ抱けなんて言わないわ。七日もあれば落せるでしょう?」
きちんと惚れさせてから抱けと言っている。
注文が増えているではないか。
「あのなぁ!」
「それとも何?うちの妖夢はそんなに可愛くないとでも?」
妙な勘違いをした幽々子が怒りを露にする。
ぼぉっと周囲に“蝶”が一匹、二匹と現れる、死を操るという幽々子の能力の発露である。
「やめい!そんなことは言っとらんわ!」
「・・・何が不満なの?」
確かに普通なら喜ぶべきなのだろう。
しかし素直に喜べない事情が夜智王にもあるのだ。
「まぁいいわ。お風呂でも入ってゆっくり検討して頂戴」
拒否は許されないらしい。
諏訪子の祟りが効いているのではないだろうか・・・そう思う夜智王だった。










後書き
妖夢ファンの皆さんすいません。



[26700] 蛇、亡霊娘と情を交わす、の巻
Name: 窓◆0bf2c45e ID:6be04712
Date: 2011/12/09 15:03
「・・・逃げるか」
総檜の広い風呂に浸かり、体の芯まで温まる。
酒を呑んだ後の入浴は褒められた行為ではないが、この蛇には関係ない。
幽々子との一晩は惜しいが、この一件、文の時のように後々まで緒を引く可能性は高い。
よしそうしよう。
そう決めた矢先。ガラリと浴室の扉が空いた。
「失礼♪」
「ぶっ!」
薄物の単姿の幽々子が風呂場に侵入してきた。
「お背中流しましょうか?だ・ん・な・さ・ま♪」
婀娜っぽい仕草の幽々子が伸ばした指が夜智王の唇に触れる。
その手を退けて、夜智王は怒鳴る。
「いらん世話だ!湯女のような真似をして・・・少しは慎みを持たんか!」
「そんなこと貴方だけに言われたくないわ」
何せ前かがみに身を乗り出して夜智王に指を突きつけるている幽々子である。
眼前には胸の谷間が鎮座している、単から僅かに除く肌色が否応なしに夜智王の視線を吸い寄せる。
幽々子がわざと腕で胸を寄せる。
「いやらしい目つき」
「見せ付けておいて何を言っている・・・」
「じゃぁ貴方が私の背中を流してくれる?」
「お断りだ」
「貴方って変に真面目よね」
白けた様子で、手桶をとった幽々子は、湯を汲み被り始める。
「ぬぅ・・・」
「ふふっ」
一杯、二杯、湯が掛かるたび、濡れて張り付いた単が幽々子の肢体を浮き彫りにしていく。
特に豊かな胸の破壊力は半端ではない。
「絶景だというのに、素直に喜べん、くそっ」
「あらそう?」
うっすらと肌色が透けて見えるのが、下手に全裸になるよりも艶かしい。
「何しに来た」
「監視しておかないと逃げそうだったから」
「ちっ、こんな時ばかり女の勘を働かせおって」
「どうやら正解だったみたいね、うふふ。はいちょっとどいて」
広い湯船だというのに、わざわざ夜智王にくっつくように幽々子が侵入してきた。
しどけなく夜智王の胸板に幽々子が寄りかかる。
その柔らかい感触を堪能しつつも、さてどうしたものかと夜智王は思案する。
濡れ髪が張りつくうなじが誘っている。
「お主報酬を無理矢理前払いするつもりか?」
「嫌ねそんな野暮なことしないわ」
嘘だな。
夜智王は断言する。
「ふふ、あんまり煮え切らないようなら、報酬の味見でもどう?とは思ったけど」
ぷつん
夜智王の堪忍袋の緒が切れた。
幽々子にとって不幸なことに、今日一日諏訪子に散々振り回されたせいで夜智王の堪忍袋は既に切れ掛かっていた。
そこに来て幽々子の挑発である。
夜智王はこういうことで試されるのが嫌いなのだ。
「のぉ幽々子」
「何?」
「ワシはな、性悪女に弄ばれるのも、淫乱女に責められるのも嫌いではない」
「何よ、失礼ね」
まるで自分が性悪か淫乱のように言われた幽々子が膨れる。
稚気に溢れる仕草もどこか色っぽい幽々子、だが・・・
今日一日の鬱屈が爆発した夜智王の怒りはその程度では納まらなくなっていた。
小娘・・・・・調子に乗ると痛い目にあうぞ?」
「え?」
千年の時を生きる亡霊も、夜智王にしてみれば小娘でらしい。
ぐいっと乱暴に夜智王は幽々子を抱きよせる。
「きゃっ!ちょっと夜智王、痛い・・・やっ、んぅっ!」
引き寄せた幽々子の顎を上げ唇を無理矢理奪う。
頑なに閉じられた唇も、鼻を摘んで無理矢理開かせると、その口内に夜智王の舌が侵入する。
「むぅっ!?」
とろとろと夜智王の口内から幽々子の口内へと、何かが流れ込んでくる。
嫌がる幽々子だが、夜智王は、吐き出せないように唇を塞ぎ続け、否応無く嚥下させる。
艶っぽい声をあげながら、幽々子がそれを飲み込んでゆく。
「・・・ぷはっ!ちょっといきなり何よ!」
「・・・別に?お主があんまり年上をからかうから、おしおきだ」
唇を離した夜智王は、打って変わって優しく幽々子を抱くと、その肩に顎を乗せて笑う。
ただそれ以上の事はしない。
しかしびくり、と幽々子の体が震える。
「・・・やだ、体が熱い・・・何よ、これ」
「天魔特性の媚薬、それも数百年ワシの体内で熟成させた一品だ、大分薄めてあるから安心せい」
「嘘・・・あの時の騒動の?」
数百年前、文を無理矢理汚した(夜智王の主観だが)自身と天魔への怒り、それに媚薬による狂乱が混ざった夜智王は大蛇の本性を現し、大暴れした。
何せ切ろうが突こうが殴ろうが焼こうが、片端から再生していく。
正面からの殴り合いに限れば夜智王は恐ろしくしぶとい。
幻想郷の最強種である鬼も舌を巻くタフさである。
しかも媚薬の混じった吐息を幻想郷中に吐き散らしたので、そちらの被害も甚大であった。
結局は紫が外界へと放逐することで事なきを得たのだ。
あれから何百年も経っているのに、まだ体内に残っているはずがない、幽々子は驚愕する。
「いずれ天魔に仕返しをする時のために、しっかり残してあるのよ・・・くくく、あの高慢ちきが媚薬に狂う姿を想像するだけで“ぞくぞく”するわい」
まぁ時々吐息に混じって困るのだがな、と夜智王は笑う。
幽々子はそれどころではなかった。
全身が火照り疼く。
夜智王の体が触れている部分だけが妙に熱い。
ただ逆にもどかしい、ただ触れているだけではかえって情欲を煽られるだけだ。
「夜智王・・・こんなのひどい・・・はぁ・・・ずるいじゃ、ない」
「安心しろ幽々子。ワシはそなたの依頼、受ける気はない。だからいやらしいことは一切せんからな」
「この・・・性悪!」
「おおそうよ、ワシは性悪蛇よ。その蛇を誑かそうとしたのだ、失敗した時の“りすく”は計算しておったか?幽々子」
確かに夜智王は女子供に甘い。
黙って思惑に乗せられてやるし、騙されてやる。
ただ、己が譲らぬ一線を越えた相手には容赦しない。
蛇らしく、厭らしく執拗に反撃に出る。
幽々子は少々やり過ぎたのだ。
「どうした幽々子?辛そうだぞ」
大丈夫か?と言って優しく背中をさすってやる。
その手つきはいやらしさなどまったく無く、病人の背をさするような慈愛に満ちたものだ。
だが、それは媚薬に火照る幽々子の体には毒でしかない。
夜智王の指が滑るたび、背筋にぞくぞくと快楽が走る。
「やめてっ!・・・さわらないで・・・んっ!」
「これはすまんかったな」
すっと手を離すと、幽々子を突き放すように浴槽に寄りかからせる。
あっと嫌がるように身をよじる幽々子、切なそうに喘ぐ。
それを眺めてニヤリと厭らしく笑った夜智王は、風呂の湯を掻いて作った波を幽々子に送る。
「あっ・・・いやっ・・・やめなさいよ、夜智王!」
お湯の波が当たる度、幽々子の体にぴりぴりと快感が走る。
「大分湯の中にも溶けておるからな、原液のままなら、今頃気が触れているやもしれんぞ」
ぞくりと幽々子の背筋に戦慄が走る。
恐らくは汗などにも媚薬を混ぜられるのだろう、お湯を介してそれは幽々子の肌に染み込み、湯気として幽々子の体内を蝕んでいく。
それは乳房の先端や秘裂といった女の敏感な部分に媚薬が触れているということだった。
意識したとたん、ずくんとそれらが疼く。
「私が・・・悪かったわ・・・だから・・・あっ!赦して」
「ああ赦そう。だからもう妖夢を抱けなどというなよ」
女を抱く抱かないはワシが決めることだ。
そう言って夜智王は体内から媚薬が漏れないようにする、器用なものである。
しかし既に十分な量の媚薬を吸い込んだ幽々子の体に付いた火は消えない。
承知の上で、夜智王は何もしない。
「風呂は風呂として楽しむのだよ幽々子。ワシは風呂でスルのは好かん」
下品だ。と気取ったことを言う。
ただ幽々子は聞いていなかった。
上気した肌は薄紅色に染まり、はぁはぁと切なげに喘ぐ。
意識は霞み、まともに思考することもできず、ただ疼く体を鎮めて欲しい、そればかり考えている。
「すまんかったな。無理矢理にこんなことをして・・・これに懲りたら女の武器はほどほどにしておけよ」
心底悪そうに夜智王は謝罪する。
そして幽々子を再度抱き寄せると、柔らかな肢体と匂いを貪るように、優しく抱く。
「暖くいな幽々子は、本当に亡霊か?」
「やだ・・・やめて!」
「何もいやらしいことはしておらんだろうに、何を言うのだ」
「焦らすのを・・・やめて・・・よ」
それは無理だ、ワシは焦らすのが専門でな。と蛇らしく笑う。
「どうして欲しい?」
「くぅ・・・・・・もうっ!・・・・抱いて・・・お願い」
「妖夢の件はどうする?」
「そんなのどうでもいいから!・・・・・この性悪っ!」
カカカと笑った夜智王は、再度幽々子の口を塞ぐ。
今度は素直にそれを受け入れる幽々子に、夜智王はまた何かを飲ませる。
「んっ・・・くっ・・・うんっ・・・はぁ」
最後の一滴まで、艶めかしく飲み干した幽々子が、とろんとした表情で「何を・・・?」と囁く。
「解毒剤だ、反省したようだから、すぐに楽になるぞ」
媚薬に酔った女なぞ抱く趣味は無いのだ、そう言いながらも、夜智王は幽々子の乳房に手を伸ばした。
「やっ!」
「折角だから味見はするがな」
「ずる・・・あぁ!」
風呂ではしないのじゃなかったの!と幽々子が抗議する。
解毒剤のお陰で体の自由と思考が戻ってきつつある。
だが巧みな夜智王の愛撫で胸に快感が走る。
「乳揉み程度はするうちには入らん、まったくけしからん乳だ」
「このスケベ・・・あっ・・・・・・やだぁ!右ばっかりいじらないでぇ」
両の乳房に伸びた手だが、左手は質感たっぷりの乳房に添えられただけで、時折思い出したように、くにと揉むばかり。
反対に右手は忙しない。
全体を満遍なく揉んだり、持ち上げて揺らしたり、上のほうを丹念にさすったり、ゆるゆると乳輪を刺激したりと、存分に幽々子の豊かな乳房を弄繰り回す。
右は愛撫に燃え、左は焦らされて疼く。
いずれにせよ、耐えかねるように幽々子の乳房の先端、乳首が尖り始める。
「でかいくせに敏感ないやらしい乳だな、直接弄ったわけでもないのに勃起したぞ?」
「いやぁ・・・恥ずかしいこと言わないでぇ」
よくよく言葉で責めるのが好きな蛇だった、いやいやと首を振る幽々子を無視して、睦言を囁き続ける。
「あっ・・・んっ・・・やめっ!」
軽く両の乳首を交互に弾く度に幽々子が鳴く。
可愛らしい悲鳴が蛇の加虐心を煽る。
「止めて欲しくなど無いくせに、可愛いの幽々子?大人ぶって色気を振り撒くよりずっと良いぞ」
「ばかぁ・・・なにをいってるのよ・・・やぁん!」
「よく伸びるな」
乳房を掴んだ夜智王がぐにゅっと乳房を引っ張る。
「やだぁ・・・おっぱいのばさないでぇ!」
「すまんすまん」
謝罪の言葉にはまったく心が篭っていない。
持ち上げた左右の乳房で拍手をするようにぺちんぺちんと叩いて遊ぶ。
その度に幽々子が可愛らしく喘ぎ声を漏らす。
とっくに媚薬は抜けたが、散々に乳房を弄くられたせいで、改めて身体に火が付いた。
「さて十分に味見もしたし、もう止めるかの」
「いやぁ・・・いじわるしないでぇ」
続きを懇願する幽々子だが、夜智王は首を振る。
「つまらんな。もっと我慢してみせい」
「無理よ・・・お願い、もう妖夢のことは良いからぁ」
「では続きは閨でな、もう少し風呂を堪能しようではないか」
「ばかっ・・・やっ!やだぁ」
幽々子の耳朶を甘噛みしながら、再度幽々子への愛撫を始める。
結局執拗な愛撫は幽々子がのぼせかかるまで続いた。







「あとで・・・おぼえてないさいよ・・・このぉ・・・」
ぐったりと夜智王に身を任せながら幽々子は悪態を吐く。
そんな幽々子を抱き抱えながら、夜智王はくつくつと笑う。
「そうそう、あまり従順では詰まらんぞ幽々子。西行寺の令嬢らしい高慢さをみせてくれ」
その方が落とし甲斐、苛め甲斐があるというものだ。
意地の悪い蛇の言を、風呂と愛撫ですっかりのぼせた幽々子は睨む程度しか返せない。
火照った身体に夜気が心地良い。
幽々子を抱えながら、夜智王は寝室を目指す、幽々子の部屋ではなく、自身にあてがわれた客間だ。
「おお準備が良いな」
行儀悪く足で襖戸を開け閉めし、既に敷かれていた布団に幽々子を横たえる。
「大丈夫か幽々子?あまりにきついなら今日は無理には抱かんぞ?」
冷たい布団が気持ちよいのだろう、のぼせ喘ぐ幽々子をぱたぱたと手扇で扇いでやる。
「ばか・・・言わせないでよっ!」
「聞きたいのだ」
「う゛ぅぅぅ・・・お願い最後までして」
「承った」
「きゃっ!」
わざわざ風呂上がりに着せた肌襦袢の帯を解くと、袷を開いて幽々子を半裸にする。
あえて脱がせない、どうにもこの蛇は女を半裸にしておくのが好きらしい。
重力に負けて潰れながらも、なお盛り上がる双丘に顔を埋める。
「もうっ!胸ばっかりぃ・・・」
「そうは言うがな幽々子?これだけの乳だ、色々せんともったいないだろう?」
「ばかっ!・・・あっ!」
罵倒は気にせず、夜智王は左の乳房を弄くりつつ、右に舌を伸ばした。
桜色の突起を口に含む。
「ふっ・・・あ・・・っ!」
指で弄られる比ではない快楽に、幽々子がぴくっ、ぴくんっっと震える。
顔が真っ赤に染まり、口の端からはだらしなく涎がこぼれていく。
夜智王は口を一度離す。
愛撫が止み、僅かに気を抜いたところを狙い澄まして、左の乳首をきゅぅと掴む。
「あぁっ!」
不意打ちの快楽に幽々子が堪え切れぬように鳴く。
軽く仰け反ったせいで、近づいてきた乳房に夜智王が再度食いつく。
ちゅ・・・ちゅう
赤子の様に乳首を吸いながら、左の乳首をくにゅくにゅと責める。
「はっあっ!・・・や、やちおう・・・んぁ・・・っ!やぁ・・・だ、だめっ!」
びくびくと痙攣が大きくなっていく幽々子、頃合と見たのか、夜智王は左の乳首をきつく摘むと同時に、右の乳首を軽く噛んだ。
「ふぁああぁっ!」
軽く絶頂に達したのだろう。
一度大きく仰け反った幽々子の身体が、弛緩し、はぁっ、はぁと甘く荒く呼吸を乱す。
そんな幽々子の頬にそっと口付ける。くすぐったそうに身をよじるが、夜智王は逃がさぬように耳元に口を寄せ囁きかける。
「胸だけでイクとは、淫乱娘め」
「ば・・・かぁ」
力の無い罵倒に夜智王は満足そうに笑みを浮かべ、寄せた口で耳を愛撫し始める。
「やっ・・・みみ、みみは・・・やめて!」
耳への愛撫に悶える幽々子に、何かロクでもないことを思いついたのか、淫蕩な笑みを浮かべた。
「さて、やはりこれだけはしておかんとな」
「え?・・・・・ひゃぁ!やだぁ何するのよぉ」
女を自分の上に乗せるのは構わないが、女の腹の上に乗る気は無いのか。
妙にフェミニストな所を見せた夜智王は、幽々子を引きこし、うつ伏せ気味に自身の上に寝かす。
ただし丁度胸元が自分の股間に来るようにだ。
すっかり屹立した自身の一物を幽々子の胸の谷間に挟み込む。
「あっ・・・っ!」
絶頂するほどに愛撫され敏感になっている乳房が、挟み込んだ一物の熱さに震える。
「最高に気持ちよいぞ幽々子、生娘の膣よりもな」
「ばかっ!」
紅葉合わせ俗に言うぱいずりという奴である。
どうしていいかわからないらしい幽々子はただ一物の熱さに震え、ちょこんと顔を出した亀頭を凝視している。
「幽々子、そのままで良いから唾を垂らしてくれ」
「へんたい・・・んっ・・・くちゅ・・・」
罵りながらも、くちゅくちゅと口内に唾を溜めた幽々子は、亀頭を舐める寸前まで舌を伸ばし、それを垂らしていく。
「よし、後は両手でぎゅうと乳房を強く挟め、本当は自分で動かした方が気持ち良いのだがな」
「そんなの・・・むりよ・・・はずかしい」
「ふふ、何時まで強がれるかな?」
幽々子の唾を馴染ませるように、ゆっくりと夜智王は腰をくねらせ始めた。
「ふぁ・・・」
挟み込んだ一物が動く度、幽々子の胸にも快感が走る。
「もう少しすべりを良くした方が気持ち良いぞ?」
「・・・」
恥ずかしさに震えながらも、幽々子は再度唾を作り、上下する一物に垂らしていく。
すべりが良くなったのか、最初はゆっくりだった一物の上下が早く、大きくなる。
鼻先まで伸びてくる亀頭に、荒くなった幽々子の吐息がかかる。
「あっ・・・っ!・・・すごい・・・あついぃ」
「舐めても良いのだぞ?」
食い入るように亀頭を見詰める幽々子をからかうように夜智王が揶揄する。
「・・・・・・っ」
最初はイヤイヤと首を振っていた幽々子だが、我慢できなくなったのか、伸びてきた亀頭に舌を伸ばす。
ぺちゃ、ぺちゃと顔を出した亀頭を舐め始める。
「ふぁ・・・ちゅ・・・あぁ・・・ちゅぱっ」
「幽々子の舌は気持ちよいの」
「ねぇ夜智王・・・」
「なんじゃ?」
「私が・・・動くから・・・じっとしてて?」
一心不乱に舐めているようで、どうやらあまり夜智王が快感を覚えていないことに幽々子は気が付いた。
この体位では男が動くのはかなり窮屈なのだ。
しかも夜智王は幽々子の乳房を愛撫するように動いていて、あまり自身が快楽を覚えることに熱心ではなかった。
「なんじゃ、結局ワシの言ったとおりではないか」
「うるさいっ・・・裏側が気持ちいいんだよね・・・」
一度胸を離すと、一物に顔を寄せ、まず亀頭にキスをする。
「ちゅ・・・んっ・・・はむぅ・・・んんっ!」
軽く亀頭全体を口に含み、口内で嘗め回し唾液まみれにする。
「ぷはっ・・・・・・ちゅぅ・・・はぁ」
上から垂れてきた唾を広げるように、舌を伸ばして裏筋を舐めていく。
「ひもひ・・・ひい?」
「ああ、気持ちよいよ」
口ではそういうが表情を変えない夜智王に対抗心を燃やしたのか、竿を噛み付くように口に挟んで上下に舐めしごく。
「ちゅぅ・・・れろっ・・・うちゅ・・・じゅ・・・・・・むぅ!」
「何を怒っておるのだ」
「ばかっ」
唾液まみれにした一物を胸で挟み込むと、思い切り両側から押し付け締め上げる。
「んっ・・・んくっ・・・」
亀頭を含みしゃぶる。口を離し、舌を伸ばして尿道をくりゅくりゅと突付きながら、自身の胸を愛撫するように、むにゅ、むぎゅうと胸で一物を揉みしごく。
「もっと気持ち良さそうな顔しないさいよぉ」
「ん?まぁもう少し固さが抜けぬと無理では無いかな?」
まぁ十分に気持ちよいぞ?
と夜智王は言う、たしかに一物は先刻よりも大きくなっており、ぴくぴくと震えている。
若干不満そうだが、それでも幽々子は、大きく胸を上下に動かし始める。
にゅぷ、ぬりゅと幽々子の唾液にまみれた一物が胸の中で蠢く。
自分で揉みしだき、一物を気持ちよいの所にこすりつけながら、顔を出す亀頭をぺちゃぺちゃと舐める。
「あっ・・・ふぁ・・・なによっ・・・わたしばっかり・・・きもちよくなってる・・・ばかぁ」
「別に良いではないか、そんなにその綺麗な顔に掛けられたいというなら・・・まぁ出しても良いぞ?」
どくんと幽々子の下腹が疼いた。
顔に掛けられたことなんて無い。
どんなことになるのか、恐怖と興奮でどくどくと心臓が高鳴る。
「いいわよ・・・だしても?」
口から心臓が飛び出しそうな程に心拍が上がる、なんとか高慢そうに言ってみるが、生憎蛇には通用しない。
色事の年季が違いすぎるのだ。
「お願いしますは?」
かぁと幽々子の全身が真っ赤に染まる。
だというのに、勝手に幽々子の口が動く。
「ばか・・・お、おねがい・・・か、かけて・・・ください」
羞恥に染まりながらおねだりをする幽々子の痴態に満足したのか、夜智王は喜色満面の笑みを浮かべると、両手を伸ばし幽々子の動きを止めさせる。
「ま、出すのは幽々子の膣中にしよう」
「い、いじわるっ!」
やぁ・・・と名残惜しそうに嫌がる幽々子を一物から引き剥がす。
ばかばか、はずかしかったのに!と暴れる幽々子を抱きしめて黙らせると。
額の髪を書き分けデコに口付ける。
恥ずかしそうに、キスをされた場所を両手で押さえた幽々子に相談を持ちかける。
「さて、前にした時は普通に前からだったか、今宵はどうする?」
「なんでもいいわよ・・・」
ぶすっと膨れた幽々子の頬を啄ばむと、夜智王は幽々子を抱いたまま床に身を投げ出す。
「では幽々子が上だな」
「う、上?」
ああ上だ。と、息を呑む幽々子に対し、断言するように夜智王は言った。






「やだ」
「何故に?」
「・・・怖いから」
「さよか」
自分から上になるくらいの気概がない限りはワシを誘惑するのは無理だぞ。
また蒸し返した夜智王を幽々子が睨む。
可愛らしいその口を吸うと、ゆっくりと幽々子の身を床に横たわらせる。
「んっ・・・やっぱりこっちが良い」
いまさらながらに、恥ずかしそうに身をもじもじさせる幽々子。
気にせず夜智王は片足を抱えて肩に乗せると、するりと幽々子の股間に顔を寄せる。
「・・・お前」
「いちいち言わないで!」
すっかり準備完了になっていた幽々子に呆れると、幽々子が恥ずかしいのか怒鳴る。
ふんと馬鹿にするように笑うと、すっかり濡れぼそった女陰に口を寄せて、陰核に軽く接吻をする。
「ひゃぁっ!」
もっとも敏感な部位を啄ばまれ、びりりと刺激が幽々子の全身を苛む。びくんっと震え、軽く達しかけた幽々子が、悲鳴をあげる。
「もぉ・・・じらさいないでぇ」
「つまらん・・・まぁいいか、夜は長いしな」
「うう゛ぅ・・・」
一晩中この調子かと思うと幽々子は泣きたくなった。前はここまでしつこくなかったのに・・・
そんな幽々子は気にせず、夜智王は幽々子の足を持ち上げ、やや腰を浮かせた状態にする。
「いやよ・・・普通に」
「前とまったく同じではつまらんだろう」
四十八手でいうところの深山という体位であるが、幽々子はそんなことは知らないようだった。
腰を突きつけ、秘所を見せ付けるような格好が恥ずかしいのか、顔を手で覆い隠す。
「ほれ入れるぞ、力を抜け」
「んっ・・・はぁっ・・・」
ぬちゅ
すっかり準備完了の幽々子の秘裂はあっさりと夜智王の一物を受け入れる。
ずぷっ、じゅぷっ、とすんなりと夜智王の一物が幽々子の膣内に侵入していく。
下腹部に差し込まれる熱い男根に、ほぉっと幽々子は熱っぽい吐息を吐く。
「やだ・・・」
「何がだ」
「こんなに・・・するっと入っちゃうなんて・・・淫乱みたいじゃない」
「これは入れやすい体位だからな、ついでに幽々子は前から入れる口だしな」
「ばか・・・」
なんだって二言目にばかというのか、夜智王はぼやく。
もう少し甘い言葉を吐いてくれても罰は当たるまいに。
そんなことを思いつつ、夜智王はゆっくりと抽送を始める。
にゅるにゅると絡みつく幽々子の膣内が、夜智王の一物を離すまいと蠢く。
「やぁ・・・やっぱりいやぁ・・・」
まるで陵辱されているような格好を幽々子は快感を覚えながらも、いやいやと半泣きで首を振って嫌がる。
やれやれ、といった風情の夜智王が腰の動きを止める、入れたままぐいっと幽々子を引っ張りあげる。
「きゃぁ!」
悲鳴をあげる幽々子をしっかり抱きとめると、零れ落ちそうな涙を舐め取る。
安心したように夜智王に抱きつく幽々子。
しかし
「ひゃぁ!」
そのまま夜智王は身を倒した。
前へ倒れる感覚に幽々子は悲鳴をあげて、ぎゅうとより強く夜智王に抱きつく。
押し付けられぐにゃりと潰れた乳房の感触を楽しみながら、夜智王は少し腰を突き出す。
「やぁぁぁぁ!」
最奥まで侵入した一物が、幽々子の子宮口に接吻する。
幽々子の膣内がびくびくと震える。
「おいおい、この程度でイキかけるなよ」
「ばかばかばかぁ!」
結局騎乗位にさせられた幽々子が喚く。
よしよしとその頭を撫でてやったが、ばかにするな!と言わんばかりに払いのけられた。
決心したように身を起こした幽々子が、怒りの篭った目で夜智王を見下ろす。
ただ、さりげなく夜智王が握ってくれた手を、震える手ぎゅっと握り返しながらだが。
「いいわよ・・・私の腰使いで・・・ひぃひぃいわせてやるんだから・・・ひゃぁ!」
皆まで言わせず、夜智王が腰をくねらせる、内部で半回転した一物に抉られ幽々子が黄色い悲鳴をあげる。
こらぁ・・・うごくなぁ・・・と強がる幽々子だが、夜智王は背伸びする子供を見る大人の笑顔をうかべながら、くりゅくりゅと腰を動かすのを止めない。
イクのを堪えるだけで精一杯の幽々子は、とても腰を動かすどころではない。
腰をくねらせるのが精一杯だった。
「気持ち良いぞ幽々子」
「ほんと・・・?・・・わたしの・・・・んっ・・・あ・・・っ、なか・・・きもちいい?」
「ああ、だからそうやって切なげにくねるだけで良いぞ、ほれその乳がぶるんぶるんと震えるだけで眼福だ」
「あなた・・・ほんとに・・・きゃっ!・・・むねがすきよね・・・ふっあぁ・・・」
ああ、でかいのもちいさいのも好きだ。と何の自慢にもならいことを宣たまう。
有限実行と言わんばかりに腹筋だけで身を起こすと、ゆさゆさと揺れる幽々子の乳房に食いつく。
「やぁぁ!・・・やだぁ・・・いまは・・・んんっ!・・・おっぱい・・・いじっちゃ、だ・・・らめぇ!」
無視して、左右の乳首をわざとちゅば、ちゅばと音を立て味わう。
卑猥な音と下と上同時の快楽に、幽々子の呂律が回らなくなる、口の端からつつつと涎が零れ落ち、ぽたぽたと胸に落ちる。
それを舐め取り、実に旨そうに夜智王が嚥下する。
「ばかぁ・・・はじゅかしぃ・・・やめろぉ」
「子供のような口調になってきたぞ幽々子。そろそろ一回イクか?」
「やらぁ・・・もっとぉ」
なにがもっとなのか自分でも分からぬまま、迫り来る絶頂に幽々子が震える。
「よし、イケ」
「イク・・・?いやぁ・・・イっちゃう・・・やちおうのばかぁ・・・もっとぉ・・・もっときもちよさそうにしてぇ」
「安心しろ、たっぷり膣中に出してやる・・・あと二回ばか幽々子がイったらな」
「いやぁ・・・そんなのむりぃ・・・おかひくなっちゃうぅ・・・ぁうっ!」
夜智王が幽々子が掴んでいた手をやんわりと振り解き、幽々子の腰に手を回した。
支えを失い、夜智王にしなだれかかった幽々子の腰が自然と浮く。
止めとばかりに夜智王が腰を降り始める。
ぐぢゅ、ぢゅぶ、ずちゅ、と卑猥な音が結合部から聞こえてくる。
「ひゃぁ・・・やぁ!・・・らめっ・・・ついちゃ!・・・イクっ・・・イっちゃうぅ!」
「いいぞ、存分に気持ち良くなれ」
「いやぁぁぁぁぁ!あっあぁぁぁぁっん!」
ぎゅうと夜智王にしがみつき、絶頂を迎えた幽々子がびくびくと震える。
それ合わせて最奥まで進んだ一物を痙攣する膣肉が「射精しろ」と責め立てる。
しかしぐっと下腹と尻に力を込めて夜智王は射精を堪える。
「あっ・・・ふぁぁぁ・・・ぐすっ・・・やちおうのばか・・・ちろう・・・」
「失礼な」
絶頂の余韻で震える体を止めようと、幽々子が夜智王の肩に噛みつく。
若干昨夜の恐怖が蘇りひやりとする夜智王だが、幸い甘噛みだったので鉄面皮を決め込み、優しく幽々子を撫でてやり誤魔化す。
「噛むのはやめい」
「むちゅ・・・おいひい」
「・・・お主だと本当に食いそうで怖いな」
切り取られては再生しまた切り取られ、片端から食われていく自分を想像し、夜智王は思わず苦い笑いを漏らすのだった・・・












後書き。
妙に可愛くなってしまった・・・うーん。
ワンパターンは良く無いですね。
次の娘さんに頑張っていただきたい所です。
諏訪子様なら虐(誤字にあらず)になるのだが・・・うーん



[26700] 蛇、博麗神社に参拝し、巫女、魔法使いと遭遇す、の巻(冒頭追加)
Name: 窓◆0bf2c45e ID:6be04712
Date: 2011/12/15 17:13

「なんか悔しいわ」

夜智王の腕の中で幽々子が膨れた表情で言った。
情事の後、幽々子の柔らかく、亡霊の癖に暖かい肢体を堪能していた夜智王は、怪訝な声で聞き返した。

「何がだ?」
「貴方とはこれで三回目、今日こそは私が主導権を握るはずだったのよ」
「無理だな、色事の経験値が違いすぎる」
「・・・貴方じゃなければうまくいくのに」

確かに昔よりも幽々子は“上手く”なっていた。
まさか三回目で精を絞り取られるとは・・・夜智王としては少々悔しい。

「大方魂魄の家の者でも食ったのだろうが・・・一緒にされてもなぁ」

ぎくっ、という感じで幽々子は身体を固くする。

「それもその者に好いた相手ができて、そろそろヤろう、という段階になって童貞で悩んでいる所を誘ったのだろう」

私が教えてあげる、とか言って。
女の様な声音で夜智王が言うと、幽々子がまた身体を固くする。
図星らしい。

「童貞坊主ならお主の身体ならどうとでもできるだろうよ」

幽々子の豊満な乳房をつつきながら。
一緒にされてもな、と夜智王は意地悪く幽々子をからかう。

「う゛ぅぅぅ」
「ふふっ、では次は幽々子の好きにさせてやろう。スキマが冬眠したら遊びにくる」

約束と言わんばかりに幽々子のオデコに接吻をする夜智王。
親友に内緒の情事、なんだか背徳的なモノを感じた幽々子の背筋がぞくっと震える。
いけないこれは夜智王の策略だ。
分かっていながらも、夜智王の腕の中の心地よさに、眠くなってくる。

「ばか・・・」
「またそれか」

なぜに罵られねばならないのか、夜智王はぼやくのだった。






「精が出るの」
「夜智王殿」

庭木の手入れを行なっていた妖夢に、夜智王が声を掛けた。
時刻はすでに朝と呼ぶには遅い時間である。
当の昔に起き出し、剣の鍛錬や朝食を済ました妖夢と異なり、夜智王は今ようやく起きたようだった。
寝起きらしい、どこか気だるい雰囲気をかもし出していた。
まさか一晩中、自分の女主人と一緒だった、などとは夢にも思わぬ妖夢は、そう勘違いした。

「もう呑まれるのですか・・・」
「妖夢も呑むか?」

夜智王の傍らには酒器が一式揃えられ、肴も整えられていた。
遅い時間とは言え朝っぱらからである、見た感じ二日酔いの迎い酒という感じでもない。
蛇妖だと聞いたが、本当にウワバミらしい。

「いえ」
「ならば酌をしてくれんかの」

手酌も良いがどうせなら可愛い女子が酌をしてくれたほうが酒も旨い。
可愛いという言葉に、妖夢は顔を紅くさせる。
面と向かって可愛いなどと異性に言われたことなど無いからだ。
あっさりと夜智王の口車に乗った妖夢だが、靴を脱ぎ縁側に上がると、夜智王から少し離れた所にちょこんと正座する。
尻一つ分の距離、警戒しているようだった。
夜智王の持つ杯に零さぬ様、慎重に酒を満たす。
礼を口にした夜智王は、杯を傾け、まず半分ほどを口に含む。
ゆっくりと味わうように嚥下する。
ただ酒を呑んでいるだけなのだが、初心な妖夢には、酷く妖艶に見えた。

「うむ、やはり旨いな」
「・・・味は一緒のはずですが」
「美少女に注いでもらった方が旨いに決まっておろう」
「びっ・・・」

わたわたする妖夢を見て、これは幽々子が心配するのも仕方ないかと、自分でやれ可愛い、美少女と言って置いて、夜智王は内心で苦く笑う。
残り半分を飲み干し、杯を空にする。
肴に出された漬物をひょいと口に放り込み咀嚼する。よく漬かったぬか漬けで、実に旨い。
恐る恐る空の杯に酒を注ぐ妖夢。

「妖夢も食べて良いのだぞ、良い漬かり具合だ」
「いえ、いいです・・・」
「さよか?」

冬枯れを迎えつつある庭園を眺めて、夜智王はゆっくりと杯を重ねる。

「残念です」
「何がだ?」
「もう少し早い季節でしたら紅葉が見ごろでした」
「何もう暫しすれば雪で見事に化粧されるであろ」

そうしたらまたただ酒を呑みに来る。
そういって夜智王は笑う。

「昨晩のことは・・・」
「それは忘れろといったろう?ま、世の中にはワシの様に切った張ったには滅法強い妖もおる、気をつけることだ」
「昨日は・・・神社で、外の世界の小説を読んだせいで・・・つい」

つい、で切り殺されては堪らんな。
カラカラと蛇が笑う。妖夢はしゅるしゅるとしぼんでゆく。

「ワシも茨木のマネをするハメになるとはおもわなんだ、良い経験であったよ」
「・・・恐縮です、もしかしてお知り合いなのですか?」
「ああ、茨木童子とは旧知よ、鬼は伊吹童子を除いて幻想郷から去ったというが、今頃どうしているのか」

鬼と呑む酒は楽しいのだがなぁ、ま、もっとも茨木は鬼には珍しく少々理屈っぽく堅苦しい奴だがな。
そう言って昔を懐かしむように、遠い目をしながら、夜智王は再度杯を傾ける。
妖夢は、一滴も飲んでいなのに、まるで酔ったかのような、ふわふわした感覚を覚えていた。

「とまれ、剣の奥義は鞘のなんとか、と言うだろう。そこを目指して励むことだな」
「・・・はい」

別に抱かずとも、苦い初恋を経験すれば、この少女も一歩大人の階段を登るだろう。
今頃は自室で寝こけている幽々子にはああ言ったが、一晩の礼に応えてやるか。
そんな妖夢にしてみれば非常に酷いことを考えつつも、それをおくびにも出さず、夜智王は杯を傾ける。

「これでおしまいです」
「名残を惜しむ酒もまた格別よの」

くい、と半分だけ呑み、残りをすいと妖夢に差し出す。

「夜智王殿?」
「固い固い、普通に呼べ」

呼び捨てでも構わんぞ。そう言いいながら、妖夢に呑むように勧める。
お近づきの徴にな。と妖しい笑みを浮かべながら。

「はぁ・・では」

半分くらいなら、そう思ったのか、受け取った杯を飲み干す。
何時も呑んでる酒と同じはずなのに、妙に甘く、旨い。そんな気がする。
あ、間接キスだ、と気が付き、さらに顔が赤くなる、

「・・・今日はこの後どうされるのですか?夜智王さん」

誤魔化すように、妖夢は切り出した。
ばればれなのだが、とりあえず夜智王は乗ってやる。

「とりあえず博麗神社に出向いて巫女に挨拶をせんとな。その後はねぐらを確保する」

まさかこの先ずっと女の所を泊まり歩くわけにもいかんし。
艶っぽい言い草に、妖夢の顔が真っ赤になる。

「い、いやらしいのはいけないと思います!」
「そりゃ無理だ、蛇妖とは好色な物だからな」

カカカと笑う。

「妖夢も性悪の蛇に気をつけよ?」
「半人前だって馬鹿にしてますか?」
「ワシに惚れるなよと言っておるのさ、火遊びならば幾らでも付き合ってやるがな」
「・・・えっち」

可愛らしい言い草に夜智王はからからと笑う。
その様子を、遠目にじとぉっと幽々子が見ていた。
あの性悪蛇・・・という感じで。








白玉楼に暇を告げ、夜智王は妖夢に言ったように博麗神社へと向かっていた。
既に時刻は昼である。
あまり見通しの良くない獣道をてれてれと歩く。

「ちっとは整備せんと人には辛かろうに」

昔はもう少し整備された参道だったはずだが。
それだけここも平和ということなのか。
妖怪退治、異変解決の専門家である博麗の巫女の下に、人が頻繁に向かわない程度には。

「それではちと緊張感が足らんなぁ、のスキマ」
「コロス・・・コロス・・・」

夜智王のやや後に、紫が開いたスキマが着いて来る。
そこからは際限なくぶつぶつと呪いの言葉が吐き出されていた。
幽々子との情事がばれているらしく、紫の怨嗟の視線は、そろそろ光線と化して夜智王を焼きそうだった。

「・・・やれやれ。お主も混ざってするか?三人で、ワシは一向に構わんぞ」

寧ろ大歓迎だ。

「さん・・・にん・・・ですって?」

ぱかりとスキマが閉じた、審議に入ったらしい、どうやら案外魅力的な提案だったようだ。
そんなに好きならば堂々と言えばよかろうに、案外紫も晩生だな。
と本人に聞かれたらぎったんぎたんにされそうなことを考える夜智王。
そうこうしているうちに獣道を抜け、朱塗りの鳥居が見えてくる。
鳥居をくぐり、手と口を清め、参堂の端を歩いて社殿に参る。
昨日用立てた賽銭を奉納し、二拝二拍手一拝、会釈し退く。
おおよそ完璧な作法で参拝を済ます。
さて巫女殿に挨拶を、と思った瞬間。
脇が無い、可愛らしい紅白の巫女服を着た少女が飛んできた。
比喩ではなく本当に“飛んで”きた。

「あなた!いま賽銭を入れたわね!」
「・・・まぁ入れたが」
「妖怪のくせに見所があるわね!」

・・・さてどうしたものか。
早苗もだったが、当世の巫女服は脇が無いのが流行らしい。
もう冬も近いのに寒くないのだろうか。と色々見当違いを炸裂させる。
同時に・・・残念。と早苗に比べると薄い胸にちらりと視線をやる。

「お札!?あなたお札で入れたわね!返さないわよ!」
「・・・巫女殿。もしかしてとは思うが、滅多に賽銭が入らんのか?」
「べべべべべべ別にそんなことは無いわよ!」

ああ、無いのか。
まぁあの参道ではな・・・
行きも帰りも怖いでは・・・なぁ。

「ワシは夜智王。一昨日幻想郷に出戻った蛇妖じゃよ、よしなにな巫女殿」
「ああ、あなたが紫の言っていたエロ蛇さん?私は霊夢、博麗霊夢よ。紫ってば嘘つきね、随分と礼儀正しいじゃない」

賽銭も入れてくれたし。と巫女は言う。
色々と可哀想な巫女に、内心でほろりとする夜智王。
たまに賽銭入れに来てやろうと決める。

「そのスキマにせっつかれて異変を起こすやもしれんが、その時はお手柔らかにな巫女殿」
「当分はいいわよ!こないだも神社が倒壊するような異変起きたばかりなんだから!」

それはスキマに言ってくれ、と夜智王は笑う。
あれに突付かれない限りは夜智王も平和に暮らしたい。

「あなたとは気が合いそうね・・・お茶でも飲んでく?」
「ご馳走になろうかの、茶請けもあるし」
「なぁに?漬物、いいわね」

白玉楼で土産に貰った漬物を見せると霊夢は嬉しそうにはしゃぐ。
巫女の住居部分に回り込むと、ガラリと障子戸が開いた。
誰か先客があったか、そう思った夜智王が視線を向ける、
そこにはキャミソールとドロワーズだけを纏った金髪の美少女が、寝ぼけた顔をしていた。
垣間見える部屋の中には寝乱れた寝具・・・そして枕が二つ。

「あ・・・」

カチンと霊夢が凍りつく。

「巫女殿・・・」
「ちちちちち違うのよ!昨日はちょっと遅くなったから泊めただけよ!」
「何故に同じ布団で・・・良いのだ巫女殿」
「ちが、あ、あなた何かエロイ勘違いをしてるわ!誤解よ」

声を張り上げる霊夢を、可哀想な子を見る視線で夜智王はふるふると首を振る。

「巫女殿とて人の子、むらむらするときもあるだろう。だが男を抱くわけにもいかぬしな・・・」
「違うっていってるでしょう!このエロ妖怪!」
「ぐぇ!」

霊夢の取り出した祓え串が夜智王の頭部を強襲した。







「いやー、ごめんごめん」
「やれ酷い目にあったの」
「あんたが悪いのよ夜智王、なんでもすぐエロイことに結びつけて・・・」

寝ぼけから冷めた金髪の美少女。魔法使いである霧雨魔理沙が慌てて止めに入るまで霊夢は夜智王を攻撃しつづけた。
図らずも弾幕ごっこ初体験となった夜智王だったが、なんとかことなきを得た。
まだ霊夢は怒っていたが、逆に随分と打ち解けたようにも見える。

「巫女殿は本当に赤貧なのだな」
「やかましい」

まさか寝具が一式しかないとは・・・しかもあれは薄い夏用の布団。
めっきり冷える季節になった、それはまぁ二人で身を寄せ合って寝るのも無理は無いだろう。
と、いうことにしておく。

「まぁなんだ・・・ワシの賽銭で質に入れた冬布団を取り戻してくれ」
「そうね、とりあえず夏布団を質に入れればしばらくは凌げそうだし」

美少女二人が共寝した布団だ、好事家ならもっと良い値になるだろうが、夜智王は黙っていた。
巫女の使った布団だ、ちと罰当たりである。
案外信心深いのか、この蛇、霊夢には妙に畏まった態度だし、いやらしいことは殆ど考えないし、口にもしない。

「蛇かぁ・・・昔、実家に鱗を売りに来る蛇妖が居たって話があったけど、あれお前か?」
「ああ、ワシだよ。やはり魔理沙は霧雨道具店の娘か」
「勘当されてるけどな」

そう言ってあっけらかんと魔理沙は笑う。
夜智王は惜しいな、と思った。
少々胸は薄いが美しい少女だ。
だが男前すぎて、夜智王の好みからは少々はずれていた。

「(いや、案外閨では淑やかになるやもしれんな・・・だが、このままというのも・・・案外悪くないか?)」

男の子を食うのは大好きなので、似た感覚でやれば楽しいかもしれない。
問題はこの少女・・・恐らくは生娘。めんどくさそうである。

「いたっ、なんじゃ巫女殿」
「なんか邪なものを感じたわ」

そんな漫才を繰り返しながら、三人は人里の南に広がる魔法の森へ向かっていた。
魔理沙は森の中にあるという家に帰るため。
霊夢は森の入り口にある道具屋に外の世界から流れたきた物品を売って生活費の足しにするため
夜智王も魔法の森に用事があるので、荷物持ちを買って出ていた。

「これが昨日妖夢に切りかかられた原因か・・・」

チャンバラ小説らしきタイトルに、げんなりとする夜智王。

「なんだ妖夢の奴、これに感化されて辻斬り復活かよ」
「ばかな娘よねぇ」

けたけたと笑う魔理沙と呆れる霊夢。
まさか胴を両断された、とは言えない夜智王は微妙な笑みを浮かべる。

「お、見えてきたぜ」

なにやら雑多な物品にまみれた一軒家が見えて来た。
外界の物品も扱っているという古道具屋。
香霖堂であった。



[26700] 蛇、森の古道具屋を訪ねる、の巻
Name: 窓◆0bf2c45e ID:6be04712
Date: 2011/12/15 17:39
「おっす香霖!元気か」
「こんにちわ霖乃助さん」
「二人揃ってとは珍しいね、また鍋とか言い出すんじゃないだろうね?」

戸を開け放ち、まっ先に魔理沙が店内に侵入し、店主に声をかける。
一歩遅れた霊夢も、ずいぶんと柔らかい声音で話し掛けた。
魔理沙は売り物の壷にひょいと乗ると、大きな帽子を取って膝に置く。
霊夢は勝手知ったる他人の家、といわんばかりに店の奥に侵入し、茶と煎餅を持って来る、店主に許可は得ていない。
その様子に店主、森近霖乃助は憮然とした表情を浮かべる。

「で、今日はなんだい?」
「商売の話よ・・・夜智王、例の物を」
「はいはい」

店内に入らず、入り口横の信楽焼の狸が気になったのかそれを突付いていた夜智王は、霊夢に呼ばれ店内に入る。
薄暗い店内を見回し、最後に店主を見る。
そんな夜智王を見た霖乃助が、突然立ち上がると、ぱくぱくと口を開き、ついで眼鏡を外し、よく拭くと、再度かけて夜智王を凝視する。
ほ、良い男だな、少々細いがそこがまた良い。そんなことを夜智王は考えている。

「霖乃助さん?」
「あ、いやすまない、知り合いに似ていたのでね・・・いらっしゃい」
「夜智王と言う。見ての通り蛇だよ。よしなにな店主殿、そのうちなんぞ売りに来るやもしれん」
「森近霖乃助です。どうぞ、ご贔屓に」

夜智王と霖乃助が挨拶を終えると、さっそく霊夢は商談に入った。
引き取りには応じた霖乃助だが、支払いを渋る、曰く「まずツケを返せ」
その言に夜智王が「そんなに困窮して」とそっと目頭を押さえると、霊夢は「ばかにして!」と憤慨する。
とまれ霊夢も譲らない、この本は面白いし、妖夢が昨日ここまで読んでいったから、続きを読みたくて必ず買いに来る、と力説する。
言わば即戦力だ。ここにおいてあるガラクタなのか商品なのか分からないものとは違うと。
カモにされそうな妖夢が可哀想なので、一言口を挟もうとした夜智王だったが。
たしか妖夢はまともに給金を貰っていないと言っていた。
ならばここでワシが買ってやれば・・・にぃと口の端が釣りあがる。
魔理沙が「なんかやらしーこと考えてる顔だぜ」と思わず震えるような、いやらしい顔だった。

「何か言ったか?魔理沙」
「いや。大分寒くなったな、と思ってよ。香霖、ストーブはつけないのか?」
「まだ早い。それに燃料がまだ調達できてないんだ」
「紫に頼めばいいじゃないか」
「・・・あまり彼女には頼みたくないんだ、そもそも頼みようも無いし」
「スキマなら簡単に召喚する方法があるぞ」

え?と三人が怪訝な顔をする。

「巫女殿ちょいとこちらへ来てくれるか?」
「何よ」

そう言いつつ、霊夢が夜智王の前に立つ。
その可憐な顎を、ごく自然にくいと持ち上げた夜智王の顔がすっと霊夢の顔に重なる。
寸前。

「ほれ来た」

両者の唇の間を怒りに震える白い繊手が阻む。
紫の腕だ。
ぬるりとスキマから全身を出した紫がこめかみをピクピクさせて夜智王を睨む。

「夜智王・・・あなた死にたいの?」
「過保護よのスキマ」

ドロドロと黒いオーラを放つ紫をからかう夜智王。
一方で霊夢はいきなりキスをされそうになったので、顔が真っ赤に染まっている。
ドクンドクンと心臓の音がうるさい。

「どういう仕組みなんだ?」
「それはな魔理沙――おいスキマ、やめよ痛い痛い!」

夜智王を絞め殺さんとばかりに締め上げてくる紫、密着した身体に当たる乳の感触が気持ちよい。
その事をからかうと、紫はぱっと身体を離し、扇子を振り上げる。
霖乃助が「外で!外で!頼む」と喚いたので、なんとか怒りを抑える。

「ストーブに灯油を頼むスキマ、代はワシにツケておけ」
「・・・霊夢に手を出したら一生スキマに幽閉してやるわ」

小声で物騒な事を言った紫は、ひょいと手を振り・・・それでストーブには灯油が補給されたらしい・・・来た時同様空間にスキマを作り消えた。

「はぁ・・・危なかった・・・彼女とはお知り合いですか?」
「ああ、旧知よ、もう千年は口説いているが、中々にヤラせてくれんイケズだ」
「このぉ・・・エロ蛇!」
「ぐはっ!」

ようやく正気に返った霊夢の一撃が夜智王の腹部を強襲した。



代金を霖乃助から受け取った霊夢は、怒ったまま香霖堂を出て行った。
さっそく買い出しらしい。

「大丈夫か?夜智王」

悶絶する夜智王に魔理沙が声をかける。

「ま、なんとか・・・霊力の乗った良い一撃であった・・・げほっ」
「そっか、香霖。ストーブつけようぜ。お前顔色悪いぜ?」

何とか持ち直した夜智王は、先刻から魔理沙の声音に混じる甘さに。
「店主に懸想しておるな」と勝手に納得する。
ただ異性として意識しているのは確かだ、身内への甘えのようなものも感じる。
とまれ可愛らしい魔理沙にニヤニヤする。もうこの娘を抱こうなどという気は失せていた。

「季節の変わり目で、ちょっと風邪気味なだけさ」

薄暗い店内だから分かりにくいが、霖乃助の表情は確かに青白い。

「ね、熱を見てやろうか!!」

どもりながら、霖乃助に突進した魔理沙が、ごちんと額と額をあわせる。
まったく色気が足りない、殆ど頭突きではないか、と夜智王呆れる。
しかも恥ずかしいのだろう、魔理沙の方が熱を出したように真っ赤である。

「魔理沙、大げさだよ」
「そんなに熱はないみたいだけど、平熱でもないぜ」
「君の方が熱い気がするけど?」

夜智王はもうニヤニヤを隠すの必死だった。
この蛇、自分はもちろん、他人の色恋沙汰も大好きだった。
さぁてどう混乱させるべきか、どうやら店主の方は鈍感男らしいし・・・
懸想する男の病気、これは一大いべんとでは無いか。
恋する乙女としては、是が非でも男を病人にしたてあげて看病してやらねば。
妖しい笑みを浮かべる夜智王。
たまたま夜智王に視線を向けた霖乃助は、その妙な色っぽさに、カっ!と紅潮する。

「顔が赤いぜ・・・やっぱり、今日は臨時休業だぜ香霖」
「いや、これは・・・」

抵抗する霖乃助を引きずり、勝手に母屋に上がり、寝室へと連行してゆく。
夜智王も黙ってついてゆく。
やれ布団だ、水を汲んで来いと大騒ぎする魔理沙を、楽しげに眺める。
すっかり病人にされた霖乃助を世話をする魔理沙。年頃の少女らしく、実に愛らしく、実に生き生きしとしている。
諦めたのか、霖乃助は不気味な沈黙を続ける夜智王を気にしながら、布団に横たわる。

「薬は無いのか?一っ飛び永琳とこいってくるか」
「大袈裟だって」
「香霖は黙ってろ」
「はい…」

妙に力の篭った叱責に縮こまる霖乃助。
平静を装いながらも、夜智王は内心で笑いが止まらない。

「風邪薬ならワシが持っておるぞ」

ひょいと印籠を取りだした夜智王がそれを魔理沙に放る。

「なんだこれ…丸薬か?」
「ああ、良く効くぞ、ただ空きっ腹で飲むのはだめじゃな」
「おし、じゃぁ何か作るか」

腕まくりをする魔理沙、いや半そでなので“フリ”だが。

「いや昼はさっき食べたよ」
「だ、そうだ」

密かに舌打ちする様子に夜智王はニヤニヤする。
ギロリと睨まれたがどこ吹く風である。

「とにかく飲むんだ、えっと水は……の、飲めないなら、く、口移しででで」
「何言ってるんだ魔理沙?君ほんとに大丈夫か?」

顔を白黒赤青と変化させる魔理沙に、霖之助の方が心配する始末であった。

「ほれ吸い飲み」
「あ、ありがとうございます…」

いつまでも薬の飲めないようなので、見かねた夜智王が横になったまま水を飲む容器を掘り出してもってくる。
妙に照れた様子で薬を飲む霖之助に、魔理沙の視線に穏やかでないものが混じる。

「眠くなる薬だ、二刻も寝て汗をかけば、すっかり良くなるだろうて」
「そうですか」

昨夜は考え事をしていたせいでで寝不足だったせいか、すぅと霖之助の意識は遠のいて言った。







どれ程眠っていたのか、はっと目が覚めると、魔理沙はおらず、夜智王が売り物の色とりどりの小さな四角で構成されたサイコロのような物。
つまりルービックキューブで遊んでいた。

「起きたか」

覚醒した霖乃助に、夜智王は声をかける。ついぞ色を揃えられなかったルービックキューブは諦めたのか床に置く。

「もう夜半だ、よく寝ておったな」

魔理沙が作った夕餉が有る、食え。と厨に向かった夜智王が、膳を運んでくる。

「これはまた、随分とキチンとした・・・」
「材料代はワシが出したからな、お陰で素寒貧だ、やれやれ酒でも買おうかと思っていたのに」
「後でお支払いしますよ」
「いらんいらん、野暮はなしだ」

それにワシも食うしな。と言い夜智王は碗を手に取る。

霖乃助が眠ってしまい、手持ち無沙汰になった魔理沙は、やれ掃除でもしようかと落ち着かない。
「病人が寝て居るのだから静かにしろ」と一喝した所、一時しゅんとしたが、直ぐに立ち直ると、外へ飛び出した。
しばしして魔理沙は医者に出してもらったという薬に、仕留めた野兎、茸、他食って旨い薬草の類を取ってきた。
次いで夜智王から金を借り、人里で買ってきた米、味噌などに、新鮮な野菜、魚を買ってくる。
香霖堂にはロクな食材が無かったのだ。
ろくな物を食べていないから病気になるのだ、と言い出し、夕餉の用意を始めたのだ。

「男冥利に尽きるな、霖之助」
「はは、魔理沙は妹のような物ですよ」

阿呆め、と夜智王は思った。
鈍感が悪いとは言わないが、行きすぎればそれは女子を泣かす。
そして女子を泣かす者は夜智王の敵だ。
紫あたりが聞けば「自分のことは棚にあげてなにを」と言うだろう。
ともあれ、夜智王は「少し懲らしめてやるか」と決める。

「ご馳走さまでした」
「お代わりは」
「それは朝にでも」
「そうか、よこせ下げておく」

そう言い膳を受け取り厨に下げにゆく。

「夜智王殿、よろしければ泊まって行かれますか?」

さして広い家ではない、少し声を張り上げれば十分に届く。
戻ってくる足音を聞きながら、霖之助は妙にドキドキしていることに気がつく。
古い記憶が疼く。

森近霖乃助は半人半妖である。
物心付いた時両親は存在せず、人にも妖怪にも受け入れられず、あちこちを彷徨っていた。
ある時、腹を空かせた人食いの妖怪に襲われ命を落しかけた、それを救ってくれた、美しい蛇妖の女性。
彼女に夜智王は良く似ている。
顔や体つきはもちろん違う、ただ纏う雰囲気がそっくりなのだ。
思えば、あの時助けてくれた美しい蛇妖が、霖之助の初恋だったのかもしれない。
その面影を残す夜智王に、霖之助は緊張しているのだ。
幻想郷に霖乃助を連れてきた後、その蛇妖は姿を消した。
人と妖怪が共存する幻想郷は、霖乃助にとっては外の世界よりも生き易い場所だった。
もう何百年前だったか・・・

「生憎酒は無いのですが……」

蛇妖らしく彼女も酒が好きだった、女の癖にぺろりと何合も呑んでしまう。
ついぞ名前は名乗らなかったので、霖乃助は勝手に「みずち様」と呼んでいた。
水蛇、その蛇妖が水を操ったからだった。

「気にするな」
「っ!」

帰ってきた女の声に、霖乃助は凍りつく。
戻って来たのは夜智王ではなかった。
霖之助の記憶の中で美化された「みずち様」がそこにいた。
ぞっとするような美貌の持ち主だった。
艶やかな黒髪。
病的なまでに白い肌。
官能的な肢体。
血のように紅い唇は、やや低めの美声を紡ぎ。
切れ長の紅い瞳と金色の虹彩は、どこか酷薄な印象を受ける。

「夜智王・・・殿?」
「いかにした?霖乃助殿」
「なぜ・・・女の姿に・・・」
「男の家に泊まるのだから当たり前でしょうに、一宿分のお礼をしないと」

そう言って夜智王は霖乃助に近寄る。。
霖乃助は本能的な恐怖に駆られ、後退する。
しかし狭い室内だ、すぐに壁に当たり追い詰められる。

「何をするのです!」
「何って・・・野暮な・・・」

男と女が一つ屋根の下ですることなど一つしかないわ。
そう言い、淫靡な笑みを浮かべた夜智王は、するすると衣服を脱いでいく。
真っ白な裸身が、闇に浮かび上がる。
豊かな乳房に視線がいってしまい、霖乃助は顔を紅潮させ目を瞑る。

「やめっ、服を着て下さい」
「女の方から言わせる気かえ?」

霖乃助に抱きつき、そのうるさい口を、夜智王は自分の唇で黙らせた。
















後書き
魔理霖は俺の乙女心
じゃぁ寝取るなって話ですが・・・



[26700] 蛇、半人半妖の店主を美味しくいただく、の巻
Name: 窓◆0bf2c45e ID:6be04712
Date: 2011/12/16 04:00
甘い口付けを交わした証拠に、つぅと二人の唇の間に唾液が糸を引く。
蕩けた声だ、霖乃助が懐かしい名を呼ぶ。

「み、みずち様?」
「・・・おお、なんだ、あの時の半妖の童か、大きくなったなぁ」

名を呼ばれ始めて気がついたらしい夜智王は、無邪気に言った。
霖乃助は密かにショックを受ける。
てっきり気がついての行為だと思っていたのだ。

「ひどい・・・僕の初恋だったのに」
「それはすまんかったな、だがなぁ、男だろうと女だろうと蛇妖は淫乱だぞえ?」

美化されていたみずち様の姿はガラガラと崩れていく。
だが、現実の肉体は霖乃助に密着し、離れない。
寧ろ「半妖ならたっぷりとデキるな」と嬉しそうである。

「の?・・・初めてであろう?」

赤を通り越し真っ青になっていた霖乃助の顔が羞恥に染まる。
人と妖怪の混血児、という生まれゆえに、霖乃助は男女間のそういったことを、忌避していた。
ただ、そんなことに頓着する蛇ではなかった。

「どうしたい?」

優しくしてやろうか?
淫乱に犯してやろうか?
それとも可愛く抱かれてやろうか?
慈母の様に優しく、売女のように淫乱に、少女のように可憐に、表情と声音を変え囁きかける夜智王。
霖乃助は、どうしていいか分からない。
ただ、本能的な恐怖から

「や、止めてください」

搾り出すように言う。
クスリと笑った夜智王は、ぐいと霖乃助を引っ張ると、その衣服を引っぺがす。
悲鳴をあげて抵抗するが、生憎女に化生しても夜智王の方が膂力が、圧倒的に上だった。
結果、霖乃助も裸にされてしまう。
晩秋の夜気にぶるりと震えながら、とりあえず股間を手で隠す。

「まぁそういうなら無理にはせんが・・・おお寒い寒い、温めておくれや」

そう言って、霖乃助を抱きよせ、布団に引きずり込む。

「ぬくいの」
「・・・・っぅ」

背後から抱きつかれ、霖乃助は背中に当たる双丘の感触に、思わず目を閉じる。
必死に何か別の事を考え気を紛らわせようとする。
そうだ素数だ、こんな時は素数を数えるに限る、お経ならぬ素数を延々と始める霖乃助。

「くすっ」

しかし見透かすように、夜智王はぴったりと身を寄せてくる。
全身の感じる女体の柔らかさに、霖乃助の思考は真っ白に染まってゆく。

「くふふっ・・・ここはしたいと言っておるえ?」
「ひゃぁ!」

すっかり膨らんだ霖乃助の股間に、夜智王のほっそりとした指が伸びる。

「や、やめてください、と言ったじゃないですか!」
「本番はな」
「そんな卑怯な・・・ううっ!」
「のぉ・・・良いではないか、霖乃助の息子はワシとしたいと言っておるのだから」
「それは生理的な反応で・・・」

ゆるゆると一物を弄られる快感に霖乃助は呻く。
女の手はあまりに気持ち良く、理性はどうあれ、肉体は抗い難く、快楽中枢の命ずるまま、一物には血液が送り込まれ、男根を勃起させてゆく。

「逞しい立派な息子殿だ、使わぬなどもったいない・・・」

うっとりとした声で夜智王が囁いてくる。
淫らなセリフにますます霖乃助の思考が溶けてゆく。

「ふふ、手が良いか?それとも口か?胸でするのも良いぞ?」
「やめっ・・・くぅ・・・」
「まぁ全部する。夜は長い、本番無しとなるとワシは寧ろしつこいぞ?」

逃がすまいと霖乃助に足に夜智王のむっちりとした足が絡む。
そして手の動きが、これまではただ触っていただけ、と言わんばかりに淫らなものに変わる。

「ひっ・・・くうっ!」
「我慢せんでよい・・・たっぷりとワシの手に出しておくれ?」

男の気持ち良い所を、当然のように知り尽くした夜智王の手淫は、恐ろしく気持ちよかい。
その上で霖乃助個人の快楽点を探すべく、一物全体を満遍なく愛撫してゆく。
その度に漏れそうになる声を抑えるため、だんだんと霖乃助の吐息が荒くなっていく。

「ここだ・・・霖乃助はここが一番気持ちよいであろ?な?」
「くっ!」

一物の裏側、根元近く右手で竿をこすり上げながら、そこだけはぎゅっと強く力を込める。
その度に霖乃助が堪えきれぬ快楽に、声を漏らす。
左手は睾丸をゆるゆるともみしだく。

「もうパンパンになっておるではないか・・・出しておくれ?ワシの手で射精しよ?な?」

先走りの液が溢れる亀頭を撫で回し、掌をぬるぬるにしてから竿を握り、強くこすり始める。

「やめっ・・・ゆるしっ!・・・あ・・・っ!」
「だ~め」
「ああっ!」

耐え切れなかったのだろう、びくっと震えた霖乃助は精を放つ。
射精の瞬間竿から手を離し、一物を好きに暴れさせながら、先端から迸る精液をしっかりと両手で受け止める。

「あぁ・・・熱ぃ・・・ふふ」
「はぁ・・・はぁ・・・もう・・・やめ」
「一回くらいで何をいっている?」

手で受け止めた精液を衰えた霖乃助の一物に擦り付けるようにして、ぬるぬるとしごく。

「ほら、元気なった・・・素敵だの」

恐怖と羞恥と快楽。
どれに身を委ねることもできず、霖乃助はもう夜智王のされるがままである。
夜智王は邪魔臭いと言わんばかりに布団をのける。

「次は口だ」
「ひっ!」

布団に霖乃助を押し付けるとその上の乗り、しっかりと堪能しろと言いたげに身体を押し付ける。
快楽に溶けた表情で霖乃助の一物に口を寄せる。

「ちゅっ」
「ひぁっ!」

亀頭に接吻し、鈴口を吸うと霖乃助が悲鳴をあげる。
竿をこすり、睾丸を揉みながら、亀頭をぱくりと口に含む。

「はぁっむ!・・・うふっ・・・じゅる・・・ちゅう」
「はっ・・・ふっ・・・くうっ」
「ぷはっ・・・デカマラすぎて顎が外れそうだ・・・ふふっ・・・」

一度口を離し、淫らに舌を伸ばし、裏筋を舐めてゆく。
ぬろぉとねちっこく舐めるたび、ぺちゃり、ぺちゃりと湿った音が響く。
先端が二つに裂けた、標準よりも長い舌が容赦なく一物を責め立てる。

「はぁ・・・まだかぁ?・・・もう出しても・・・いいのだぞ?」

さすがに一度出した直後だけあって、反応が鈍い。
つまらなそうに右手を亀頭に添えてぐりゅぐりゅと弄り霖乃助に悲鳴をあげさせながら。
側面から竿を咥え、上下にしごく。

「んっ・・・じゅぶっ・・・じゅるる・・・ふふっ・・・はむっ・・・ちゅうぅ」

執拗な責めに霖乃助は歯を食いしばって耐えるしかない。

「そんなに・・・ちゅ・・・がまんしちゃ・・・はぁ・・・いやぁ」

わざと可愛らしい口調を使い始める夜智王。その方が霖乃助の快楽と羞恥を煽れそうだったからだ。
自分はそれこそ散々に我慢する癖にとんだ淫乱ぶりである。
そこは棚に上げ、急かすように右手が霖乃助の尻に回る。

「そこはっ!」

菊門に唾液と先走りの液をすりつけ、ぐりぐりと弄り始める。

「やだぁ・・・またおっきくなった・・・あはっ」
「やめっ・・・ひぃ!」

霖乃助の懇願を無視し、今にも指を突っ込み兼ねない勢いで菊門を責め立てる。
もちろん一物への愛撫は口、舌、左手を総動員して継続中である。

「もう・・・たべちゃう・・・たっぷり咽喉奥に出してね?・・・んっ」
「ああぁぁぁ!」

かこっと大きくを口を開け、深く肉棒を咥え込む。
口をすぼめ、凄くよりも強く吸いながら、舌を動かす。

「んふっ・・・ンッ!・・・じゅぶ・・・ぢゅうぅぅぅ!」
「だめです!やめてっ・・・あっ、くぅ!」

悲鳴をあげるように懇願する霖乃助が、再度絶頂に達する。
手淫の比ではない快楽に、大きく身体を仰け反り、びくびくと震える。
口内で膨れあがった一物が、爆発し、大量の精液を夜智王の咽喉にぶちまける。
びくん!びくん!と痙攣する男根を愛おしそうに咥えたまま、叩きつけられた精液を、躊躇いもなく、寧ろ美味しそうに嚥下する。

「んっ・・・フッ・・・こくっ・・・ふぁ・・・こくっ」
「あ・・・くそっ」

白い肌を紅潮させ、自分の精液を飲み下していく夜智王の淫蕩な表情と痴態に霖乃助は興奮を抑えられない。

「ぷはっ・・・あはっ・・・美味しかった・・・」
「もう・・・無理です・・・やめ」
「こんなにしておいて?う・そ・つ・き」

閻魔様に舌を抜かれちゃうわよ。と再び勃起した一物をつんつんとからかうように突付く。
とは言え霖乃助は辛い、勃起はしているがすでに一物は痛みを覚えており、色々と限界が近い。

「辛そうね・・・大丈夫?」
「何を・・・んんっ!」

ついさっき自分の男根を咥えていた口でキスをされた霖乃助がさすがに嫌がる。
気にせず舌を侵入させた夜智王は、唾液と一緒に、十分な精気を霖乃助に送り込んでやる。
まぁたった今搾り取った分なので返す、と言うべきか。
霖乃助は、口から流し込まれる不思議な気と快楽に震える。

「何を・・・」
「精力を分けてあげたの・・・大丈夫朝まで何度でもイカせてあげるからね」
「本当にやめてください!・・・このままじゃ気が狂ってしまう!」

悲鳴をあげる霖乃助、にぃと淫らな笑みを浮かべた夜智王は耳に口を寄せ囁く。

「ワシをイカせた終いにしよう・・・だから最後までしよう?な?」

霖乃助は拒否できなかった。










「それはそうとして・・・胸でもしような」
「そんなズル!」
「なら霖乃助もワシの女陰を愛しておくれ?」

そう言い尻を向けた夜智王は再度霖乃助の上に乗る。
一物を挟み込むように胸を寄せる、自然股間が霖乃助の頭の上に来る。
二つ巴・・・女が上になる69である(ちなみに逆は椋鳥という)
嫌らしい事にまったく陰毛の生えていない股間はすでに準備が出来つつある女陰が丸見えだった。
霖乃助はあまりに淫らな光景に声が出ない。

「さぁてワシの紅葉合わせは絶品ぞ?ワシの気を逸らさねば、前の二の前になるえ?」
「くぅ!」
「熱くて、硬くて、でかい、いい一物だ、ふぅ」

神奈子や幽々子、紫にも負けぬ巨乳である。
柔らかな肉塊に包まれた男根はそれだけでビクリと震える。
露出した亀頭にふぅふぅと息を吹きかけて遊ぶと、ぴくぴくと痙攣する。

「やめっ・・・くすぐったい・・・」
「まったく野暮だの、さっきから止めろだのなんだのと、もっと睦言を囁いておくれ?ワシの乳は柔らかいであろ?」
「ひゃぁ!」

どろどろと妙に粘っこい唾液を垂らし、滑らかにした乳房でくちゅくちゅと一物を責め始める。
左右で互い違いにしたり、強く挟んでこすったり、その度に霖乃助は快楽に震える。
しっかりと顔出した亀頭にキスをしたり、咥えたり、なめしゃぶったり、軽く甘噛みしたりと口も忙しい。
ひぃひぃと悲鳴をあげる霖乃助を誘うように腰をくねらせる。

「のぉ・・・愛してはくれぬのか?」

ぴんっと勃った乳首で一物をこすりながら笑う。
このままではマズいと悟ったのか、霖乃助は震える手を伸ばし、秘裂をなぞり始めるが・・・いかんせん拙い。
淡い快楽に酔いながら、気にせず夜智王は霖乃助の一物への愛撫を再開した。

「ちゅぱっ・・・ふふっ・・・遠慮せんでもワシは生娘ではない、もっと強くしても平気だぞ?」
「すこし・・くっ・・・緩めてから・・・言って下さい!」
「断る・・・ちゅうぅ」
「くぁ!」
「あぁっ!」

強く吸われた霖乃助の指がくちゅりと秘裂に侵入する、さすがに気持ちよかったのか一物から口を離し、夜智王も快楽の声をあげる。

「いいぞえ?・・・もっと何本も入れてぐちゅぐちゅにして?・・・えんりょせんでええ・・あはっ・・・んっ!」

やけくそ気味に霖乃助が指を突っ込み膣口のあたりを激しくいじる。

「ふふっ・・・へたくそ」
「くうぅ!」

悪態をつくと、優しく淫らに再度霖乃助の菊門を愛撫する。

「こうやって、優しく、でも気持ちよくできなきゃ、だめであろ?」

何もワシのように経験豊富な淫らな女ばかりではないのだぞ。
と何の説得力もない説教をかます。

「やめっ!ひぃ!」
「入った入った・・・よい尻穴だ、きゅうきゅう締めてくる」

いっそ男でも味わってみるか。嘯く夜智王に霖乃助は震える。

「だめですっ!出るぅ!」
「出せ出せ、尻の穴いじられながらワシの胸でいけ!」
「ああ゛っ!」

びゅるびゅると三度目でも衰えぬ勢いで射精する一物。
顔や髪に精液を掛かるのも気にせず、振るえる亀頭を丁寧に舐めて清めて、胸の溜まった精気を舌で掬い飲み込む。

「んっ・・・こくっ・・・はは、三度目だというのにぷるぷるの良い子種だ・・・次は膣中にたっぷりおくれ?」
「はぁ・・・少し休ませて・・・下さい」
「それは普通女が言うセリフだ情けない・・・罰としてすぐするぞ」
「ひっ、やめっ!」
「ひぃではないわ・・・で、どうしたい?どんな手が良い?」

前から?後から?抱き合うか?それともやはり上にのるか?

「知りません・・・そんなこと!」
「ならば甲斐性をみせろ、なっ?」

初体験が上位では可哀想であろ?とよく分からない理屈をこねる夜智王。
霖乃助を引きこし、逆に自分は布団に身を投げ出す。
柔らかい笑みを浮かべ、両手を差し出し、さぁと誘う。
酷薄な印象の切れ長の瞳だが、この優しい笑みは目じりが下がり、妙に愛らしい。
その笑みに導かれるように、霖乃助がそっと覆いかぶさってくる。

「・・・えっと」
「大丈夫だ、そのままあてがって良い」

恥ずかしげも無く脚を開き、すっかり口を開けた女陰が、霖乃助を誘う。
はー、はーと息を荒くしながら、霖乃助も震える手で一物を掴み、秘裂へ誘導する。
夜智王はそっと導くように腰を動かして、先端が秘裂に接触するのを手伝ってやる。
くちゅ、っと淫らな音がやけに耳に響く。
感覚が妙に鋭敏になっている、霖乃助にはそう感じられた。

「怖いならゆっくり入れろ、生娘ではないからな、一気に入れても平気だがな?」

そっと霖乃助の首に手を回す。
霖乃助は一物から話した手を布団に着き、覚悟を決める。

「い、入れます・・・くぅ!」
「あはっ!」

霖乃助が腰を進めると、ずぶずぶと肉棒を女陰が飲み込んでいく。
先端を入れただけで、霖乃助は爆発しそうになり、思わず腰を引こうとする。
させじと夜智王の脚が霖乃助の腰に絡み付いて、それを防ぐ。

「ふぐっ・・・熱くて・・・ぬるぬるして・・・だめです、みずち様っ!」
「別に出しても良いぞ?初めてにワシの膣中はきついであろうからな、出しながら腰を振れ」

無茶な、と思いつつ、歯を食いしばり、尻と下腹に力を入れ、更に腰をすすめてゆく。
そんな霖乃助を興奮させるように、夜智王が甘い吐息と喘ぎをあげる。
まるで聴覚を犯されるような感覚に、心臓がばくばくと鼓動を打つ。

「いいぞ・・・霖乃助のチンポが、あっつくてかたいチンポがワシの膣中に入ってきておるよ」
「淫らなことをいわないでっ・・・くぅ」
「ワシの膣中は気持ち良いか?足りぬなら腰を捻ろうか?締めようか?」
「やめてください・・・っ!」

腰を進める度に、何もせずとも膣内の襞が霖乃助の一物を愛撫する。
夜智王の膣中は所謂「ミミズ千匹」という奴なのだが、当の霖乃助にはそんなことを意識する余裕は無い。
今にも爆発しそうな快楽に耐えながら、何とか根元まですっぽり挿入することに成功する。

「よぉ頑張ったなぁ、大抵は途中で爆発してしまうんだが」

夜智王の上に倒れこみ、抱きついてきた霖乃助の頭をよしよしと夜智王は撫でてやる。

「さて、動けるか?」
「無理です・・・こうしているだけで、なかで絡み付いて・・・うあっ!」
「三回も出したのになぁ・・・そんなことでは生娘は抱けんぞ?」
「そんな予定はありません!」

そうかぁ?と夜智王は首を捻る。
もう何年かすれば魔理沙ももっと色っぽくなるし、業を煮やして実力行使に出そうだが・・・
まぁその時に備えて精々ワシが仕込んでやるか。
そして三人でしよう。
そう勝手に決めて、夜智王は尻に力を入れてきゅうと膣口を締めた。

「うわぁ!やめっ・・・みずちさま!?」
「これがタコツボという奴だ・・・根元が弱いから気持ちよいじゃろ?」
「やめっ・・・ゆるしてくださいっ!」
「いやなら腰を振れい情けない。初めてなのだから遠慮なくやれい、ほれ」
「うぁぁ!」

器用に今度は亀頭を締め上げる。
もうヤケクソ、と覚悟したのか、なんとか霖乃助が腰を降り始める。
拙い腰使いを助けてやるように、夜智王を淫らに腰を振る。

「くふっ・・・ゴリゴリしておる・・・もっとぉは・や・くぅ」

まだまだ余裕のある夜智王は、淫らな言葉を吐いては霖乃助を挑発する。
一方の霖乃助はただ荒い息を漏らすばかりで、余裕は無い。

「ほれぇ・・・我慢などするなぁ・・・もっと鳴いておくれ?」
「ぐっ・・・あつっ!」

最奥まで一物を飲み込み、腰をくねらせる。
その癖飲み込んだ根元をぎゅうぎゅうと締め付け、不用意射精できないようにする。
ひどい話である。

「ダメです、もう・・・もうっ!」
「いいぞ?・・・膣中に遠慮なく出せ」

ぎゅうっと締めていた膣口を緩めてやる。

「あっ・・・く・・・ううっ!」

霖乃助が呻くと同時に一物が爆発、どふどふと今まで一番の量を夜智王の膣内に吐き出す。
子宮を叩く精液の熱さに、ぴくんっと軽く絶頂に達する夜智王。
病的に白い肌が薄紅色に染め、はぁっと熱い吐息を吐く。

「ふぁぁ・・・すごいぞ霖乃助ぇ・・・びくびく、どくどくと膣中に出てるぞ・・・あはっ、普通なら孕んでしまうなぁ」
「はぁ・・・そんなことを・・・いわないでください・・・」

夜智王の脚が腰を拘束したままなので、霖乃助は一物を引き抜くことも出来ない。
膣内に溢れる自分の精液の感触が正直気持ち悪いが、ただぐったりと夜智王の身体に身を預けるしかできない。
そんな霖乃助を愛おしそうに撫でる夜智王。

「よしよし、ワシ相手にきっちり腰を振って中に出すとは、童貞としては頑張ったの」

その慈母のような笑みが・・・きゅうと淫靡に歪む。

「さぁ次はワシがもっと気持ちよぅしてやる」
「やめてください、今は敏感で・・・ああっ!」

ぐいっと身を起こすと、余韻に震える霖乃助を押し倒す、繋がったまま器用に霖乃助の上になる夜智王。

「やはり男とするときは茶臼が良いなぁ」

淫蕩な笑みを浮かべ、半勃ちの霖乃助を一物を膣肉で愛撫し始める。
吸い取った分の精気を送り返し、精力を回復させ勃起させる。
ただ、さすがにそろそろ霖乃助の体力の方が限界らしかった。

「やめてっ・・・もう無理です」
「もっと身体を鍛えておけよ霖乃助?一人寝が寂しい時は夜這いにくるからな?」
「ひっ!」

本気で恐怖した霖乃助を苛めるように、手を伸ばし乳首を弄る。
思いも寄らぬ攻撃に霖乃助が呂律の回らぬ悲鳴を漏らす。

「さぁ動くぞ?イキとうなったら遠慮なく出せよ、すぐに勃たせてやるからな」
「やめっ・・・ひぃ!」

悲鳴をあげてばかりの霖乃助がつまらなくて仕方ない。
童貞でも、いや童貞だからこそ、もっと中が熱いだとか、柔らかいだとか、言って欲しいのに。
まぁ少々トウが立って羞恥心が邪魔をしているのだろう。
その羞恥心、溶かしつくしてやろう。
淫らな思考に酔いながら、夜智王は腰を降り始める。
膣壁の気持ちよい所に亀頭を擦り付ける。
くふっっと快楽に喘ぐように笑う。
霖乃助も「ヒダが・・・あっ・・・やっ」と女の様に悲鳴をあげる。
これはこれでまぁ中々に楽しい。

「なかでビクビクしておるぞ?・・・はぁ・・・あはっ・・・出したいのか?先っぽがもう膨らんできたぞ」

腰を振るたびにじゅぶじゅぶと湿った音と、ぱんぱん、と夜智王の豊満な尻が霖乃助の脚に当たる音が響く。

「手がお留守だ、茶臼は両手がいておるのだから、きちんと使え?」

霖乃助の手を取って自分の乳房に導く。
もうされるがままの霖乃助が、ふにゅふにゅと乳房を揉み始める。

「もっと強くぅ・・・そう・・・乳首もいじってぇ?」

ぴりぴりとした快感に身を委ねながら、ぱんぱんに膨らんだ睾丸に手を伸ばし、愛撫する。
それが止めだった、堪えきれず霖乃助が射精する。
宣言通り、射精する片端から精気を送り込んで勃起を維持させる。
イキながら、出しながら、更に腰を振られる霖乃助はもう頭が真っ白になる。
らめぇ!いやぁ!と呂律の回らない子供のような悲鳴をあげながら身体を仰け反らせる。

「もうちょっと、頑張れぇ?」

可愛らしく言ってみる。
そんな感じだが、口以外は容赦が無い。
遠慮なく腰を振る度、ごぷっ、ごぽっと押し出された精液がこぼれ布団を汚してゆく。

「あっ・・・っ・・・あぁ」
「すまんの・・・霖乃助・・・次はもっと頑張れよ?・・・そうしたらワシも優しくシテやるからの?」

荒い吐息を吐き始めた夜智王、絶頂が近いらしい。
激しかった腰使いが、ゆっくりと、淫らなものに変わってゆく。

「もう一回・・・出せそうだ・・・の?」

膣中で一物が膨らんでゆくのが分かる、射精の前兆だ。
爆発寸前の一物を膣奥の最奥までねじ込み、子宮口に押し付ける。
ごりっとした感触と身体を貫く快感に、夜智王にも絶頂が訪れる。

「イクよぉ・・・・・・イッちゃうからねぇ・・・だ・し・てぇ?・・・・・いっしょに・・・いこ?」

甘い睦言に、霖乃助の快楽中枢が焼ききれる。

「ああっ!」

きゅうっと膣肉が収縮し一物を包み込む。
うめき声と共に、たまらず射精した霖乃助の一物が、精液を吐き出す。
さすがに勢いが無いが、子宮内を満たしてゆく熱に夜智王の意識が一瞬飛ぶ。

「あつっぅい!・・・あっ・・・ふぁぁぁっ!」

派手に震えはしないが、小さく全身を痙攣させながら、ゆっくりと夜智王は身体を倒し、霖乃助に抱きつく。

「気持ちよかったぁ・・・またしような?霖乃助」
「みずち・・・さ―」
「・・・気絶しおった・・・それは女がすることなのだがなぁ」

まったくだらしのない・・・と散々責め立てたことは棚に上げ、憤慨する。
シた後の甘い睦言こそ情交の醍醐味だというのに・・・
罰として、すっかり萎えた一物を咥えたまま寝ることにする。
朝勃ちで一発できるかの?くふふと小悪魔のような悪戯な笑みを浮かべる。

「おやすみだ」

頬にそっと接吻すると、気絶したはずの霖乃助が、ぎゅうと夜智王を抱きかかえる。

「おっ♪」

嬉しそうに夜智王も霖乃助を抱き返すと、その暖かさに抱かながられ眠りに落ちていった。




[26700] 蛇、半人半妖の店主と情を交わす、の巻
Name: 窓◆0bf2c45e ID:6be04712
Date: 2011/12/20 13:32
「う…っ」

なんだかひどく淫らな夢を見た。
この歳になって淫夢だなんて。
まどろみと覚醒の間のぼんやりとした意識の中で、霖乃助は自分に向けて苦笑する。
しかも相手は、命の恩人で、初恋の女性。
どうしたことだ、何か欲求不満でも――

ふにゅり。

何か柔らかい物が身体に当たっている気がする。
幻触・・・?
いや、これは・・・

「夢じゃなかった・・・」

だるい。
それが覚醒した霖之助の意識が最初に思ったことだった。
原因は言うまでも無い。
思い出しただけで赤面しそうな一夜の情事。
正直途中からは記憶が曖昧である。
だが、素肌に触れる柔らかい感触が、それは現実だと告げていた。

「おはよう霖乃助」
「うわぁ!?」

声をかけられ完全に目が覚めた霖之助は血相を変えた。
素っ裸のまま霖乃助に抱きついた夜智王が、すりすりと猫の様に頬擦りしている。
いやそれだけでは無い、ぴったりと寄り添った体、胸や脚もだ。

「みずち様・・・いや夜智王殿・・・何を・・・」
「好きにな…呼んでおくれ?」

妙にしおらしく、可愛らしく言う。
誰!?
驚きのあまり、ぱくぱくと口を動かすばかりで、霖之助は言葉が出てこない。

「ワシは“おはよう”と言ったぞ?」
「おはようございます・・・」

とは言え、窓の外はまだ闇に沈んでいる。
冬が近いせいもあるだろう。
それ以上に昨晩は早々に寝た(というか気絶した)せいで、まだ夜明け前だ。

「何をしてるのですか?」
「恥ずかしいことを言わせるな・・・・・・自慰だ・・・」

羞恥に頬を染め、小声でごにょごにょと言葉を濁す。

「な、 なんで、そんな…」
「むぅ」

ぷくぅと頬を膨らました夜智王が、そんなに女に恥ずかしいこと言わせたいのか?このイケズと怒り出す。
意味不明である。

「そのな?霖之助のチンポが朝勃ちしたので、弄っていたら―」
「何をしてるんですか!?貴女は!」
「だってすぐそこにおっきしたチンポあったら…普通弄るだろ?」
「知りませんよそんなこと!」

淫夢の原因はそれか――

「とにかくな、ワシもむらむらしてきてな?切ないから、霖之助の体で自分を慰めておったのだ」

正直、以外だった。
昨晩の調子ならば、霖乃助の身体を勝手に使って・・・その、シてもおかしくない。
なのに、何故?
顔に疑問が出ていたのか、少々バツの悪そうな顔をした夜智王が、そっぽを向く。

「昨日は・・・その・・・すまんかったな」
「何がですか?」
「いやな、ワシも女は久々で、抑えが利かなんだ・・・あんな風に無理矢理してすまんの」

自分を散々責めた女は、どこに消えたのだろう。
昨晩の夜智王は確かに美しかった、それは陰性の、淫靡で妖艶な美しさだった。
今、ごにょごにょと失敗を恥ずかしがるように言い訳している夜智王は、陽気な可愛らしさに溢れている。

「ワシは本当は、あんな肉欲に溺れるような交合は、嫌いなのだ・・・でもあんまり霖乃助がいっぱい出すから」

それは僕のせいだろうか?
いや違うよな?
と霖乃助は自問自答する。

「だから・・・自分で?」
「・・・そうじゃ、だって、霖之助のを上と下の口たっぷり飲んで、一晩抱きついていたのだぞ?」

なのに結局一回しかイっておらんから、欲求不満なのだ。
むしろ先刻よりも興奮してるし、身体が疼いて仕方ない。
つまりサカっておるのだ・・・
そう夜智王は恥ずかしそうに、切実に訴える。

「だから・・・おわびに・・・交尾しよう?」
「何でそうなるのですか!?」

思わず叫ぶ霖乃助。
恥ずかしいのか、顔が見えないように霖乃助に抱きつくと、蚊の鳴くような小声でぶつぶつ文句を言い始める。

「女に言わせるのが好きなのかえ?・・・霖乃助は案外意地悪だの」

顔を羞恥に染め、夜智王は・・・つんつんと霖乃助の胸板を突付く、イケズ・・・とか言いながら。
何だ、この可愛い生き物は?
見た目は妖艶な美女なだけに、ひどく不似合いなのだが、その分、恐ろしく可愛らしい。

「だいたい霖乃助は六回も出したのに、ワシは一回しかイってないのだぞ?・・・計算が合わない・・・ずるいではないか?」
「誰のせいで・・・」
「それはすまんかった、と言っておろう!・・・なぁ良いだろう?今度はちゃんと霖之助も気持ち良いように頑張るからな、な? 」

まるで発情した獣のように、すりすりと全身を擦り付けてくる。
その柔らかな感触と、可愛らしいおねだりで、霖乃助は頭がクラクラしてきただった。
即物的な愚息は既に勃起し始めている。
ただ昨日と違い、それを弄って「準備完了ではないか」みたいなことを夜智王は一切言わない。

「・・・」

昨晩より気持ち良いって・・・発狂するのではないかと霖乃助は危惧する。
ただ、昨晩の誘惑以上に抗いがたいのは事実だった。
昨晩は興奮や羞恥以上に恐怖があった。
結局は肉欲に負けて、流されてあんなことになってしまった。
しかし今は、霖乃助もまた、彼女と睦みあいたいと思っている。
もっとも。「だから交尾しよ?」とか見も蓋も無いことを言うのは勘弁して欲しい。

「なぁ・・・この熱くて固いチンポをワシにおくれ?」

すっかり固くなった一物を愛おしそうに触る。
繊手が触れたことで、ビクンと反応するが、無理矢理しごいたりはしないあたり、本当に昨晩のことを反省しているようだった。
とはいえ、このままだと霖乃助も我慢できそうになかったので。
なるべく「仕方ない」という風情を装い、「わかりました・・・一回だけですよ?」と念を押す。
我が意を得たり、とばかりに満面の笑みを浮かべる夜智王。
その笑顔に、ドクンと霖乃助の心臓が弾む。

「ありがとう!霖乃助!・・・・・・んっ」

目を閉じ唇を霖之助に向け、接吻をねだる。
そっと霖乃助は顔を寄せて、唇を重ねる。
とはいえまったく女性経験の無い霖乃助は、それ以上どうしたらいいかは分からない。
柔らかな夜智王の唇の感触は気持ち良いが、それだけという訳にもいかない。
察したように、つんつんと夜智王の舌が、霖乃助の唇を突付く。
舌を出せ、と言っているらしい。
恐る恐る、唇を開き舌を夜智王の唇に寄せる。
すっと唇が開き、霖乃助の舌を受け入れた夜智王が、舌を絡めてくる。
初々しい恋人達のような、拙い接吻。
それでも受け入れる方は歴戦の猛者だけあって、上手く霖乃助の舌を誘導する。
ぺちゃ、ぺちゃと二人の舌が絡み、唾液が交換される音が立つ。
窒息しそうになるくらい唇を重ねていた二人の口が離れる。
はぁっと夜智王は甘い声を漏らし、霖乃助は酸素を求めて荒く呼吸する。

「うっ・・・んっ・・・霖乃助の唾・・・甘くて美味しいぞ」
「唾に味はありませんよ・・・」
「野暮天・・・」

怒ったのか、眉を寄せた夜智王の足が、器用にくにゅくにゅっと霖乃助の一物をこね回す。

「うわぁ!・・・ちょ、やめっ!」

両腕で霖乃助の頭を拘束して逃げられないようにすると、ぐりぐりと足で一物を苛め出す。
足の裏とは思えないような柔らかい感触と、手に比べるとやや乱暴な指の愛撫に霖乃助の一物がビクビクと痙攣する。

「そこは『あなたのもですよ』とか『君の方が美味しいよ』とか気障ッたく返す処であろうが、このトウヘンボク」
「すみません!・・・だから、うっ!・・・やめて下さい!ああっ!」
「折角の甘い雰囲気が台無しだ!この朴念仁め・・・」

一物から足を離す。溢れ出た先走りの液がにゃちゃっと夜智王の足に纏わりついており、ひどくイヤらしい。

「罰としてお主がキレイにするのだ・・・それで勘弁してやる、次はもっとひどいぞ?」
「ううう・・・はい」

結局の処、主導権は夜智王が握っていることに変化はないのだ。
霖乃助は思い知らされる。
自分の先走りの液、というのはぞっとしないが、仕方なしに霖乃助は夜智王の足を取ると、顔を寄せる。
白く美しい足の指にそっと舌を這わせる。
ぺちゃぺちゃと音を立てながら、霖乃助は夜智王の足を清めていく。
最初はぬるっとした自分のアレが気持ち悪かった。
しかしそれを差し置いても「夜智王の足を舐めている」そのこと事態に、だんだんと興奮してきた霖乃助は一心不乱に足をなめしゃぶる。
夜智王も気持ちよいらしく、霖乃助の舌が這うたびに、小さく喘ぐ。

「霖乃助の熱い舌が・・・く・・・っ!・・・もっとペロペロしておくれ・・・」
「ふ・・・っ・・・気もち・・・はぁ・・・良いのですか?」
「いちいち言わせないと・・・ふぁぁぁ・・・気がすまないのか?・・・言っただろう・・・疼いているのだって・・・このバカ」
「いたっ!」

すっかりキレイになり、今度は霖乃助の唾液でべたべたになってゆく足。
どうにも野暮ったい霖乃助の腕を振り払い、軽く蹴りをくれてやる。

「もう良い・・・まったく」
「す、すみません・・・」
「・・・しおらしいことを言いながら、なんじゃチラチラとワシの乳ばかり見おって・・・ほら、触ってよいのだぞ」

そんなことを言われても、嫌でも目入ってくる、豊満な胸である。
横になっているのに、たいして形も崩れることも無く、ぷるんっと自己主張が激しいことこの上ない。
男ならどうしたって視線がゆくのは仕方ないことだ。
霖乃助の手を取り、そっとその胸に誘導する。
ぺたり、と霖乃助の両手が、左右の乳に触れる。

「すごいです・・・大きくて・・・柔らかくて」

ついでに言えば肌理細やかで、掌に吸い付き離れない。
触っているだけで、興奮してくるような、魔性の乳である。

「ふにゅ・・・まぁ大きさや柔らかさなら・・・スキマや幽々子、神奈子殿には少々負けるがな。ハリはワシの方が上だぞ?」

暗に「だらしない」と言ってるようにも聞こえる言である。
三人が聞いたらヒドイことになりそうだが、確かにやや小ぶり(標準から見れば十分な量だが)なことを差し置いても、夜智王の乳は弾力に富んでいる。
ふざけるように、霖乃助の手ごと、たゆんたゆんと乳を揺らすが、その度に跳ね返ってくる。

「う・・・」
「どうだすごいだろ?ワシに負けんのは幽香と・・・そうそう美鈴もなかなかであった」
「はぁ」

ぽんぽんと女の名前ばかり出てくることと、それらの胸を確認した時の性別について、霖乃助は目を逸らす。
逸らさないと、多分に萎えてしまいそうだからだ。

「ほれ、小娘の膨らみかけの乳とは違うのだ、触っているだけでなくて・・・揉んで良いのだぞ?」
「は、はい・・・」

やわやわと慣れていない手つきで霖乃助の手が、乳を揉み始める。
あまり力は入っていないようだが、揉んでいる霖乃助も、揉まれている夜智王もだんだん息が荒くなってゆく。

「みずち様・・・みずち様・・・すごいです・・・」
「ふぁ・・・あ・・っ!・・・もどかしいの・・・んっ・・・もっと、つよう・・・してもへいきじゃぞ?」
「はい・・・こう・・・ですか?」
「ひゃぁ・・・っ!・・・そう・・・ぎゅうって・・・ふぁ・・・っ!くぁ!」

霖乃助が力を込めると、ぐにゅうっと乳房が淫らに歪む。

「すごいです、ぐにゅぐにゅして・・・」
「いちいち・・・いわなくて・・・っ!・・・はぁ・・・ふぅぁ!」

力を入れる度に姿を変える夜智王の乳房を、霖乃助は夢中になって揉みしだく。

「ばっ・・・ひゃぁ!・・・ひっぱちゃ・・・だめぇ!」
「こんなに伸びるなんて・・・はっ・・・すごい・・・みずち様・・・」

思い切り引っ張られて伸びる乳房を、熱っぽい視線で霖乃助が見詰める。
視線の先にはぷるぷると存在を自己主張する桜色の先端が震えている。

「いいぞ・・・乳首も・・・いじっておくれ」
「はい・・・」

そこが敏感な場所だということは分かっているのだろう、どうしたものかと、二の足を踏む霖乃助の頭を引っ張り胸に押し付ける。

「わっ・・・ぷぁっ!・・・何を・・・?」
「舐めておくれ・・・指では怖いのだろう?・・・優しくぺろぺろ・・・して?」

震える乳首に霖乃助が舌を寄せる、恐る恐るぺろりと舐めると「ひんっ!」と夜智王が甲高い悲鳴をあげる。
それで気持ちよくなっていると分かったのか、乳房の大きさの割には控えめな桜色の突起を責め始める。
ぺしゃ、ぴちゃと湿った音にあわせて夜智王が「あっ・・・ひゃぁ!」と悲鳴をあげる。
はぁ・・・はぁ・・・と荒く呼吸を乱しながら、幼子の時、母の乳房を吸った記憶の無い霖乃助は、妙な気分になってゆく。
幼き日の空虚な思い出を埋めるように、夜智王の乳首を口に含むと、ちゅうちゅうと吸い始めた。

「あっ・・・やだぁ・・・そんなすいかた・・・んっ・・・ぁぁぁっ!」

夜智王の乳房に顔を埋め、搾り出すように乳房をしごきながら、一心不乱に霖乃助は乳首を吸う。
よほどに気持ち良いのか「あっあ゛!あぁぁぁ!」と夜智王も大きく喘ぎながら、びくびくと震える。

「やめよ・・・んぅ!・・・そんな・・・赤子の様にすうては・・・ひゃぁ!・・・だめだぁ・・・」
「んんぅ」
「ふくんだまましゃべるあぁ!」

案外に乳首が弱かったらしく、やめよ、だめだと首を振りながら夜智王は可愛らしく喘ぎ続ける。

「みぎばかり・・・っ・・・すうなぁ!・・・ひだりも・・・ひだりも!」
「ぱぁ・・・はぁはぁ・・・はい・・・んんっ」
「またすって!・・・ばかぁ・・・やめよと・・・いって・・・ふぁぁ!・・・んん゛ぅぅぅっ!」

びくぅっと夜智王が小さく震える。軽く絶頂に達してしまったのだろう。
まさか胸だけでイかせるとは思っていなかったの、かぁぁと顔を紅く染める。

「ええい!」
「うわっ!」

どんっと霖乃助を突き飛ばす。

「ワシの乳をどんなに吸っても母乳はでんぞ!・・・まったく・・・」
「すみません・・・その・・・みずち様の乳首・・・すごく」

おいしくて・・・と消え入りそうな声で言う霖乃助。よほど恥ずかしいのかこちらも顔が真っ赤である。
その様子に満足したのか、夜智王は穏やかな表情を浮かべる。

「・・・ほれ、今度は左右同時に苛めておくれ?」

ぐにゅうと、巨乳を寄せあげ、先端を並べて霖乃助に突き出す。
はぁ・・・と興奮に震えながら、霖乃助がそれに舌を伸ばす。

「ふぁぁ!・・・すうばかりでは・・・だめだぞ・・・なめたり・・・しゃぶったりして・・・ひぅ!・・・そう、上手いぞ・・・」

二つ同時に含み、舌と唇で丹念に愛撫を続ける。
その度に、ちゃぱっ、ちゃぱっ、ちゃぱっと音が響く。

「もっと・・・いやらしく・・・しつこくなめておくれ?そうされると・・・すごく・・・ふぅ・・・んんっ!」

ぬろぉっと言われた通りに霖乃助は乳首に舌を這わせる。
ねちっこい、乳首を這い回る舌の感触に、夜智王の背筋をぞくぞくぞくと快感が走る。

「みずち様・・・噛んだら怒りますか?」
「そっとじゃぞ・・・?・・・ひゃぁぁくっんんっ!」

くにゅうっっとごくごく軽くだが、ゆっくりと霖乃助が乳首に噛み付く。
全身に電気が走るように快感が走り、夜智王は手足をつっぱらせて震える。

「ばかぁ・・・もっとやさしく、ちょっとだけ噛むのだぁ」
「う・・・すみません」
「舐めて癒しておくれ?」
「・・・ちゅう」
「ひゃぁすうなぁぁぁ!ひっぱちゃ!らめっ、ふいながらすったららめぇ!」

乳首を吸引しつつ、ぐにゅうと夜智王の乳房を引っ張る霖乃助。
昨晩のお返しとばかりに、夜智王の懇願を無視して吸引をやめない。

「このぉ!」
「ひっ!」

夜智王の両手が霖乃助の乳房を思い切り抓る。
興奮と夜気の寒さによって十分に勃っていた小さな乳首を思い切り弄られた霖乃助が、悲鳴をあげる。

「はぁ、はぁ・・・このワシがやられっぱなしになると思うなよ?ちゅぅぅぅう!」
「ひっ!そんな・・・やめてください!・・・こういのはしないって!」
「ぷはっ!男を愛撫するのは普通じゃろうが・・・しかえしだ・・・ふぁ!」

やられっぱなしにはならない、とばかりに霖乃助の腕が伸び、乳首をくりくりと指で愛撫し始める。
負けじと夜智王も霖乃助の乳首を責め立てる。
ふたりの喘ぎ声が交互に響く。
ただ負けたのは夜智王の方だった。

「そう・・・指のはらで・・・さっきぽを・・・くりくりって・・・あんっ・・・周りもぎゅうって揉むのだ・・・いいっ!」

要領をつかんだのか、両手で乳房を掴み、四本の指で乳首の周りをこねながら、伸ばした人差し指でくねくねと乳首を弄る。
こりこりとした乳首の感触が楽しいか、霖乃助の指が止まらない。

「そっと・・・くぅ・・・つまんで・・・おくれ?・・・んぅ!」

親指と人差し指でそっと乳首をつまみ伸ばし、しごきあげる。

「すごいですね・・・みずち様の乳首・・・弄ってるだけ・・・出そうです」
「それは霖乃助が・・・早漏なだけだ・・・ひゃぁ!」
「ひどいことを言わないで下さい・・・」
「霖乃助・・・その出そうなチンポ・・・ワシにも愛撫させておくれよぉ」

ワシばかりでは不公平だろう?と答えが出る前に夜智王は霖乃助の股間に手を伸ばし、ガチガチの一物をそっと握る。

「くぅ・・・やっぱり出そうです」
「ちょっと我慢せい・・・・・・それとも一回出した方が楽じゃろうか?・・・よし一回だそうな、ほれ」

胸の谷間を開いて、こいと夜智王が言う。

「どうした、遠慮なく置け、挟んでやるから」
「お腹に乗れと?」
「大丈夫じゃよそれくらい。今度はワシはじっとしておるからな?・・・霖乃助が自分で腰を振れ」
「え?」
「そうすれば自分で有る程度は制御できるであろう?ほらぁ・・・はよぉ」

手で出してしまうぞと、しごくまねをする。
意を決して霖乃助は夜智王に跨ると、胸の谷間に一物を置くが、やはり乗るのは遠慮があるのか、膝立ちである。

「やさしいな霖乃助は・・・ほれご褒美だぞ!」
「う、くうっ!」

ぎゅうと二の腕で胸をぎゅうっと寄せて一物を挟み込む。
柔らかくハリのある乳房に、強く挟まれた一物がびくんびくんと震える。

「あつうて固い霖乃助の“お”ちんぽがワシの胸でびくびくしておるぞ」
「卑猥なことを言うのは・・・うっ!」
「ふふっ・・・霖乃助のおちんぽでワシのおっぱいまんこをぐりぐり犯しておくれ?なぁ?」

夜智王も素肌に触れる一物の熱さと、乳肉を押し返す肉棒の固さに興奮しているようで、とろんとした笑みを浮かべて、わざと卑猥なことを言い立てる。

「くっ・・・ふっ・・・はぁ」
「はぁ・・・いいぞ・・・」

抽送を開始する霖乃助、今にもイキそうだったのでわざと唾などはつけなかった夜智王だが、その滑らかな肌は擦るのをあまり妨げない。
自分の先走りの液で夜智王の谷間をぬるぬるにしながら、ゆっくりと霖乃助は腰を使う。
夜智王もその感触が気持ちよいらしく、抽送にあわせてはぁ、あぁと喘ぎ声を上げ続ける。
すっかりぬるぬるになり、ちゅぽ、ちゅぽと淫ら音を立てながら何度も顔を出す亀頭に、そっと夜智王は舌を伸ばす。

「んん・・・・っ!」

ぺちゃ、と進んできた亀頭を舐め上げる。
新たな刺激に一物が快楽に震える。

「くっ・・・なめるのは!」
「じゃぁ・・・ちゅっ」

今度は亀頭に接吻する。
ぷにゅと柔らかい唇が亀頭を愛撫する。

「同じです!」
「気持ちよいじゃろ?」
「それは・・・くっ・・・そうですが!」

昨晩経験した膣内の快楽にも負けない、胸の間の気持ち良さにもはや自力で腰を止めるのは困難だった。
霖乃助は、なるべく夜智王も気持ち良くなるようにと、拙いながら必死に抽送を繰り返すしかない。
その度、亀頭を舐めたり、接吻したり吸ったりと夜智王の献身的な奉仕は続く。

「ちゅっ・・・なぁ・・・れろぉ・・・もう出していいのだぞ?ちゅう」
「はい・・・もう無理です・・・出します」
「うん・・・飲むか?・・・それともかけたいか?」

ワシは飲みたい・・・と夜智王が囁く。
淫らな睦言に、霖乃助の快楽中枢が一瞬で限界を向かえた。

「またそんなことを・・・うわぁっ!」
「ひゃぁ!・・・ふぁぁぁぁ・・・中でどくんどくんって・・・あっつぅぃ・・・」

ちょうど腰を引いた所、つまり胸の中に大量に精液をぶちまける。
ぶしゃっと勢いあまった分が谷間から噴出すほどの勢いで、びゅくびゅくと霖乃助は射精し続ける。
昨晩以上の量と勢いは、それだけ気持ちよい証拠だった。
一物以外にも、全身が幸福感に満ちた快楽が走り、霖乃助は「あぁぁぁぁぁぁ」と喘ぎながら、それに打ち震える。

「はっ・・・はぁ・・・すみません・・・」
「うんにゃ・・・これはこれで・・・ふふふ、ぬるぬるだぁ」

丹念に両手で掬い上げた精液を、捧げるように持ち上げると、顔に掛けるように零す。
舌を伸ばしそれを受け止めるが、当然口の回りに落ちて、夜智王の顔が精液まみれになる。
流し込んだ分はするりと嚥下してしまう、けして飲みやすい液体ではないが、慣れた様子だった。
顔に掛かった分も舐め取り、もごもごと口で味わった後、くいっと顎を上げてこくんこくん咽喉が精液を飲み込んで行く様を見せ付ける。
昨晩とは違い、からかうような無邪気な笑顔で精液を嚥下する夜智王。
かえって霖乃助は興奮を煽られてしまい、だしたばかりの一物がむくむくと復活してゆく。

「熱くて・・・苦くて・・・しょっぱくて・・・ぷるぷるのあまぁい、せーえきだったぞ」

苦くてしょっぱいのではんかったのか、と霖乃助は内心でつっこむ。

「言葉で苛めて楽しいですか・・・」
「ばか・・・苛めるというのは昨晩みたいのを言うのだ・・・いやらしかったであろ?」

つんつんと元気になっら一物の亀頭を突付く。
たしかに淫らで可愛らしかったのは事実である、何よりも復活した一物がそれを無言で物語っていた。

「・・・ううっ」
「どうする?ワシとしては、ここを霖乃助の舌で舐め舐めしてもらったり、指でずぽずぽして欲しいのだが」

たらたらと愛液を垂れ流す女陰を指しながら夜智王は問う。
ふるふると霖乃助は首を振り拒否を示す。

「無理です・・・もう我慢できません」
「・・・ちぇつまらんのぉ」

次はちゃんと愛してくれよ?とまたすることは決定済みと言い切りながら、夜智王は霖乃助に抱きついた。

「実を言うとな・・・ワシも我慢できんところだった・・・」
「あなたは本当に・・・」
「淫乱ですまんの・・・ちょっと待っておれよ?」

そう言い、四つんばいになり尻を掲げた夜智王は、自分の秘所に指を伸ばす。
ちゅぷっと細い指が秘裂を割り、膣内に侵入する。
ちゅっぽちゅっぽと指を抽送し始める。
突然自慰を始めた夜智王に霖乃助は驚くが、同時にそれに釘付けになる。

「ふふくちゅくちゅととイヤらしい音がしておるな・・・これだけ濡れていれば大丈夫であろ?」
「みずち様」
「ちゃんとおねだりするぞ?・・・ワシのイヤらしいココに・・・霖乃助のおちんちんをおくれ?」
「は、はい・・・」

両手で夜智王のまろやかな尻を掴み、一物を近づけるが、尻に気をとられた事と、後からの挿入だったせいで目測余る。

「あっ」
「ひぃんっ!」

愛液でぬめっていたせいもあったが、一物がぬるりと秘所をすべりって、淫核を抉るような格好になってしまう。

「ふぁぁぁ!・・・ばかものぉ・・・そこはおなごのいちばん・・・びんかんなところだぞ・・・」

いきなり淫核を亀頭で突付かれた夜智王は震えながら喘ぐ。
軽く絶頂に達してしまったのか、指を噛んで、ふぅふぅと快楽の余韻に耐える。

「す、すみません・・・」
「せわがやけるの・・・もう。・・・ここの穴にちゃぁんといれるのだ、ほら霖乃助のちんちんが欲しくてぴくぴくしておろ?」

夜智王の指が自分で秘所を広げて見せる、中の肉がヒクヒクといやらしく蠢いているのが丸見えになり、霖乃助はゴクリと咽喉を鳴らす。
今度は手を添えて、一物を秘所へあてがう。

「くぅ」
「んんっ」

くちゅっと先端と入り口が接触しただけで、二人は快楽に呻く。

「最初は後からな・・・思う存分に突いておくれ・・・ちょっとずつ・・・手を変えて・・・最後は向き合って・・・出すのだ・・・そこまででイってしまうのよ?」
「が、がんばります・・・ふっ・・・っ!」
「はぅんっ!」

ぷちゅっと一物の侵入する、夜智王は悲鳴をあげ、びくんっと身体を奮わせる。
一気にずぶずぶと霖乃助の肉棒が夜智王の秘所を抉ってゆく。

「ん゛ぁあ゛ぁぁぁぁ!・・・はぁぁ・・・りん・・・すけぇ!・・・はっ!・・・ふぁぁぁ」

こつんと最奥の子宮口を亀頭が叩く、そこでまた夜や智王はびくんと背を仰け反らせる、当然膣内も動き、一物を締め上げるので霖乃助もくぅっと声をあげる。

「おくまで・・・はいっておるぞ・・・うごいて・・・うごいておくれぇ」
「ちょっとだけ・・・待ってください、中の肉が絡み付いて・・・もう出そうです」
「りんのすけのそーろぉ・・・むりじゃぁ・・・はいってるだけでは・・・もどかしいぃ」

くねくねと耐え切れないのか、夜智王が腰を使い始めて、抽送をねだる。
ううっ、呻いた霖乃助がヤケ気味に腰を降り始める。

「あ~~っ・・・あはっ・・・いいよぉ・・・りんのすけぇ・・・もっとぉ」
「この・・・いんらんっ!はっ・・・ひぅっ!」

ずぷっ!ずちゅっ!ずぷっ!ずちゅっ!
と挿入しる音と、愛液が立てる湿った音。
ぱんっ!ぱんっ!
と霖乃助の腹が尻に当たる音が響く。

「もっと・・・はやく、あさくついたり・・・あっ・・・はぁん!・・・そう、かんきゅうをつけてぇ」
「うるさいっ・・・くうっ!」

男の気持ちの良い仕方をしってる夜智王が口を挟んでくる。
わずらわしいが、従えば共に快楽が深くなるのは分かっているので、霖乃助は逆らえない。

「りんのすけぇ・・・りんのすけぇ、いいよぉ」

甘く夜智王が霖乃助の名を何度も呼んで喘ぐ。
突かれる度に、その豊満な胸がたぷたぷとゆれ、ぶつかってはぱちんっと音を立てる。
それが気になったのか

「ふっ!」
「ひゃぁ!」

霖乃助は夜智王を引きこし、たぷたぷと揺れる胸を掴み、もにゅもにゅと揉み始める。
夜智王が紅潮し、目じりに涙を浮かべた顔を霖乃助に向ける、舌を伸ばして接吻をねだる。
一端腰を降るのを止め、乳首をくりくりといじりながら、喘ぐ夜智王の口を塞ぐ。

「んんっ・・・ちゅ・・・んぁっ・・・はぁ」
「みずち様気持ちよいですか・・・?」
「いいよぉ・・・りんのすけのちんぽも、ても、したも、いいよぉ」
「うれしいです・・・んっ」

伸びた二人の舌がれろれろと絡み合う、くちゅくちゅと唾が音を立てる。
夜智王が導くように、横向きに身を落すする、霖乃助も接吻を続けたまま、夜智王に身を寄せて、腰を使い始める。

「みずひはま・・・んんっ」「ふぁ・・・ひんのふけぇ・・・」

夜智王はすっかり巧になった霖乃助の胸への愛撫に悶えながら、彼の腰使いにあわせて自分も腰を使う。
時折酸素を求めて二人の口が離れば、二人とも限界が近いのだろう。
はぁー、ふぅーと荒い息が交差する。

「りんのすけぇ・・・もうそろそろ・・・」
「はい、最後は・・・」

繋がったまま、体制を入れ替えて向かい合う。
一物が回転し膣内を抉る快楽と、膣肉が絡みついてくる快楽に、二人はしばし震えて耐える。
気を逸らすように、霖乃助は目の前に来た夜智王の胸をひっぱり、また乳首を吸い始める。

「あ゛っふぁか!ちくびはぁ、らめって・・・ん゛ぁ・・・っ!」
「みずち様の乳首・・・おいしいです・・・」
「ばかぁ・・・はじゅかしいこというなぁ!ひゃぁん!」

霖乃助も堪えきれぬように抽送を始める。
夜智王もまだ出させまいとして、膣口を締めあげる。

「くっ・・・みずちさまっ!しめないで・・・そんなっ」
「まらいっひゃらめのぉ・・・もっとずぽずぼついてぇ」
「逆効果です!・・・くぅ!」

更に真ん中、奥の方まで締められ、腰を使えなくなった霖乃助が呻き、夜智王の身体に抱きついてくる。
自然近づいた二人の舌が絡み合う。
荒く甘く熱い吐息が交じり合い、唾液が何度も交換されする。
夜智王の両腕はぎゅうと霖乃助の背中に回されているが、なんとか隙間にねじ込んだ霖乃助の手はこねこねと胸を愛撫しずける。
すっかり揉み解され、ぐねぐねと変形する乳房が酷くイヤらしい。

「しゅごいよ・・・うごかないのに・・・いっひゃう・・・りんのすけの・・・でっかいちんちんで・・・いかされひゃうぅ!」
「あっ・・・もう、出ます・・みずち様の中に・・・出してしまいます」
「ちょうらい?・・・りんのすけのせーし、あっついせーえき、わしのなかにぃ!」
「みずちさまっ!」
「ひゃぁ!・・・イクっ・・・イッひゃうよりんのすけぇ!」

膣内で膨れ上がった一物が限界まで溜め込んだ精液を一気に射精した。
どくっ!どくっ!どぷっどくっどぷっ!
子宮口に押し付けられていた先端から、間欠泉のように噴出した精液が子宮を満たしていく。
べしゃっと精液に子宮を叩かれながら、夜智王も絶頂を迎える。
背を仰け反らせる一方で膣内は一層一物を締め上げて精液を搾り出す。

「はぁっ・・・とまらないっ・・・くぅ」
「あ゛・・・すごいよ・・・おなか・・・なかが・・・あつい・・・ふぁぁぁぁ」

ぴっちと肉棒で埋まっているはずの膣内から、どろりと溢れ出た精液がこぼれだす。
抱き合い、絶頂の余韻に震える二人。

「みずち様の膣中は・・・どうなってるんです・・・」
「だしすぎだよぉ・・・ワシもこんなの・・・おかしくなりそうだ・・・」

ぬるっと霖乃助が耐えかねたように腰を引いて、一物引きずり出す。
ぬぽんっと音を立てて一物が抜けると、大量の精液が掻き出され、栓を失ってどろどろこぼれだす。

「あっあっ・・・もったいない・・・りんのすけのせーえき、せーえきがこぼれちゃう・・・」

絶頂の余韻でヒクつく一物が、夜智王の淫声にぴくっっと反応する。
まずい。
これ以上淫らなことを言われると、また一物が復活して止まらなくなりそうだ。

「なぁりんの――んっ!?」

既に体力が限界を超えている霖乃助は、黙らせるようにやや強引に夜智王の口を塞ぐ。

「ちゅ・・・っ・・・きもちよかったぞ?」
「もう黙って下さい・・・」

再度、今度は優しく口を塞ぐ。
うっとりとした表情で、夜智王はそれを受け入れた。



[26700] 蛇、棲家に帰還す、の巻
Name: 窓◆0bf2c45e ID:6be04712
Date: 2011/12/30 04:17

雀がうるさい。
気だるい二度目の起床を迎えた霖乃助は、窓から漏れる日光の眩しさに目を顰める。
傍らには相変わらず自分の物ではない体温があって、妙に良い匂いがする。

「おはよう香霖、ごはんにする?お風呂にする?それとも・・・わたし?」
「!」

霖乃助は声にならない悲鳴をあげて布団から転げ出る。

「どうしたんだ?香霖」

零れる金髪、見慣れた笑顔、聞き慣れた口調。
何故か布団の中に全裸の魔理沙が居た。
とはいえ、本物ではないのはすぐに分かった。
こんな悪戯をする人物にもの(妖怪だが)心当たりがある。
霖乃助は顔を紅潮させてその名を叫ぶ。

「みずち様!」
「お、ばれたぜ」

ニヤっと笑った魔理沙の姿が、ぽん、と煙を立てて消える。
変わってそこに夜智王が現れる。
幸いなことに女のままだった。

「げ、幻術?」
「目眩ましよ、疑ってかかればすぐに消えてしまう」

小手先の手妻よの。
と布団にだらしなく寝そべりながら夜智王が言う。
霖之助が泣きたくなった。
密かに想っていた初恋の女性の実像は、淫靡な蛇で、しかも、男にも化生する。
その精神的ショックが彼を打ちのめす。

「安心せい、ワシは男でもあり女でもある、本性が男で女に化けていた訳では無いからな」
「何の慰めにもなりませんよ…」

この蛇の精神構造は一体どうなっているのか。
普通男は男に突っ込まれることに耐えられるはずがない。
想像したことのうすら寒さに霖乃助は身震いする。

「さて、どうする?もう一回くらいするか?」
「なんでそうなるのですか!」
「さっきのも、あまり気持ち良くなかったか?」

あんなに出したくせに…
相手に快楽を与えることに関しては絶大な自信を持つ蛇は、しょんぼりとする。

「いえ・・・そうではなくて・・・」
「ちゃんと、優しくしてやるからな、な?」
「それは普通男のセリフです・・・」
「わかった、霖乃助もあれだな?男らしく主導権を握りたいということなのだな?いいぞ、好きにしろ?」

そう言うと、可憐な少女のようにじぃっと熱っぽい視線を霖乃助に向けてくる。
ドキリと霖乃助の心臓が高鳴る。
そのままだったら、流されていたかもしれない。
しかし
ガチャ
表のドアの開く音が沈黙を破る。

「おーい香霖、元気になったかー」
「!!」

元気な声に霖乃助が青ざめる。
全裸の自分。
寝乱れた布団(自分の精液の痕跡有り)
全裸の夜智王(女)

「魔理沙か、朝から元気だなぁ」

暢気な様子の夜智王に、霖之助は震え上がる。
それどころではない。

「ふ、服を着て下さい!」
「えー」
「えー、じゃなくて!」

三人ですればええじゃろー、とかぶちぶち言っている夜智王と汚れた布団を押し入れに押し込む。
夏蒲団を引っ張り出して敷いたあたりで、魔理沙が返事がなかったので、勝手に母屋に上がり込み(何時ものことだが)寝室へとやって来た。
自分の服までは手が回らなかった霖之助は、布団に飛び込むと、とりあえず病人のフリをして、布団をひっ被る。

「お、おはよう魔理沙」
「おはよう香霖、顔色は良くなった」

これだけ心臓が高鳴れば血の巡りが良くなるのも当たり前である。
ゴマカサナイト・・・

「き!昨日の夕飯美味しかったよ、ありがとう」
「そっか良かった!……でも、なんかだるそうだな」

それは別の原因なので気にしないで欲しい霖之助である。
ガラっと音がして押入れが開く。

「ふぉぅ!」
「なんだ!?」

奇声を上げる霖乃助に魔理沙がびっくりする。
押入れから顔を出したのは男に戻った夜智王だった。

「おはよう魔理沙」
「・・・おはよう」
「だるそうなのは、治りかけの証拠であろう、なんぞ精のつくものでも食わせてやれ、卵とか肝とか」

襖が開いた瞬間は心臓が止まるか思った霖之助だが、男に戻ってしまった夜智王に、ほっとするような、がっかりするような複雑な表情を浮かべる。

「で夜智王はなんで押し入れで寝てたんだ?」

もっともな疑問を魔理沙が口にする。
一晩居候させてもらったのだ。
外の世界では居候は押し入れで寝るのが「とれんど」なのだ、と蛇は嘯く。
魔理沙も「なんか早苗から聞いたことあるぜ青い狸型の式神なんだろ?」と返す。
「ネコ型ロボットだ」と訳の分からないことを夜智王が言い返す。

「ドラ○もんはともかく、朝めしもまだ。後はまかせたぞ、魔理沙」
「よっしゃ、まかせな!」

腕によりをかけるぜ、と腕捲り(半袖なのでフリ)をする。

「ではまたな二人とも」

仲良くやれよ。
と意味深なコトを言い、夜智王は出口に向かう。
すぐに奥から、魔理沙の「こ、香霖!?なんで全裸なんだよ!」という可愛らしい悲鳴が聞こえてくる。
「夜智王と何をしてたんだよ!男同士で!」「違うんだ魔理沙!?それは誤解だ!」「バカ!下隠せ!変態!こーりんの変態!」
言い争いの一拍後、どかーんと派手な音が後ろから響いてくる。
あの有り様では、二人が男女の仲になるのは当分先だな。
くつくつと笑いながら夜智王は香霖堂を後にした。





首尾良く魔法の森での用事を終えた夜智王は、霧の湖を渡って北側に降り立つ。
丁度人里からは西に一刻辺りの位置だった。

「たしか、ここから半里ばかりだったはずだが」

眼前の里山を眺めながら言う。
どうやらねぐらにする場所は既に決めてあるらしかった。
小脇に抱えた“荷物”を抱え直し、山に分け入ろうとする。

「夜智王」
「文か、二日ぶりだな」

上空から声を掛けられたので、顔を上げる。
声を掛けてきたのは文だった。
カメラと取材ノートである文花帳を携帯している所を見ると、新聞のネタを探していて、夜智王を見掛けただろう。
天狗は目が良い。
ひょいと、自然な仕草で夜智王は文のスカートの中を覗こうとする。
当然文は慌ててスカートを押さえて地面に降りる。

「おい隠すなら、そんなに短い洋袴はやめればいいだろう」
「いちいち覗こうとするのを止めて下さい!それより、それはなんです」

夜智王の“荷物”を刺してた文は、険しい表情で睨み付けてくる。

「見ての通り、妖精だ」
「ばかっ!」
「ぐおっ!」

夜智王の鳩尾に文の突き蹴りがめり込む。
吹っ飛ばされて一回転した夜智王。起き上がり「何をするのだ!」と喚く。

「夜智王のバカ!幼女趣味!妖精をお稚児さんにでもする気ですか!あたしがいるのに!」
「まてまてまてまて!誤解を招くようなこと言うな!」
「やっぱりあたしこの蛇に手篭めにされるんだ・・・うわぁぁぁぁぁん!」

虚ろな目をしていた金髪巻き毛の妖精が文のセリフを聞いて、びくっと震えた後、火が着いたように泣き始める。

「お月まで何をいっとるんだ!ちゃんと説明しただろうが!」
「ばかぁ!」
「ふぉぐぅ!」

膝立ちの夜智王の側頭部に文の膝蹴りが炸裂する。
再び吹き飛んび地面を転がる夜智王。
そんな状況でも抱えた妖精を放さず、かつ潰さないように気を使うあたりは流石である。

「光源氏計画ですか!小さいうちから自分好みの女に調教する気ですか!あたしみたいに!」
「うわぁぁぁぁぁん!」
「うるさい!泣きたいのこっちだ!」

夜智王から妖精(ちなみに名前はルナチャイルドと言う)をひったくると、文はそれを風に乗せて投擲した。
いやぁぁぁぁと悲鳴をあげながら飛んでゆく妖精。

「ああっ!何をするんだ!文!」

ちなみに妖精は湖上に氷を張って昼寝していた氷精に激突、二人して溺れるハメになるが。
それどころでは無いのは夜智王である。
文が泣き出したのだ。

「泣くな文・・・ワシは女子の涙が苦手なのは知っておるだろうに」

文を抱き寄せてよしよしと頭を撫でる。
夜智王の胸に顔を埋めてぐずる文。
現金にも夜智王が優しくしてくれたので、割とすぐに泣き止み、夜智王の胸元で涙と鼻水を拭う。

「あの妖精は魔法の森でワシに悪戯をしかけてきた三人組の妖精の一匹だ」
「ひっく・・・光の三妖精ですね・・・良くあることです・・・ぐすっ」
「妖精如きにどうこうされるワシではない、脅かしたら逃げ出したのだが・・・あれだけなぜか木の根に躓いて転んで逃げ遅れたのだ」

ドンくさい話である。
しかもからかい気味に脅かしたら恐怖のあまり気絶してしまったのだ。
そのまま放置するのも可哀想だったので(妖精とはいえ女子だし)抱えて森を出た。
途中気が付いた妖精には「仲間を置いて逃げる連中とは手を切って、しばらくワシの所で女中をせんか」と持ちかけたのだ。

「つまり、そういうことだ。手篭めだの、光源氏だのというのは文の早とちりだぞ!」
「妖精を女中にしても役にたたないじゃないですか。どうせ失敗した所を「お仕置きだ、いやぁ旦那さまぁ」て感じでいやらしいことするつもりだったのでしょう?」
「あんな乳臭いガキに欲情せんわ!」
「・・・ルナチャイルドの件はわかりました・・・ぐず」

しぶしぶといった様子で文は納得する。
そしてぎゅうと強く夜智王を抱きしめる。
乳が当たるふにゅっとした感触に夜智王がにやける。

「おい文、はしたないぞ」

年頃の娘が往来で――と続けようとした。

「……」
「な、なんじゃ!?」

突如じとーっとした目つきになった文に、思わず夜智王は逃げ腰になる。
この目つきは、文が噛み付く前兆である、どうにも噛みつきの恐怖が拭えないらしい夜智王はたじたじだが
文は夜智王を離さないので逃げられない、抱きついたのではなく・・・拘束したのだ。

「男臭い」
「はぁ?そりゃワシ雄だし…」
「他の男の臭いがします……精液の匂いがする」
「!?(お主天狗であろう?なんでそんなに鼻が効くのだ?)」
「男と寝ましたね…女に化けて…」

恨めしそうな、不貞腐れたような、そんな表情で文が睨んでくる。
その表情が余りに可愛かったので、思わず夜智王は文にちゅっと口付ける。

「う~~」
「あはは…」

それはかえって文の怒りを煽った結果になった。
くわっ!と口を開いた文は、思い切り夜智王の肩に噛み付いた。

「いたっ!これ文!いたたた!咬むのはやめい」
「ん~~っ!んん~~っ!」
「いたっ、やめっ、食い千切る気か!?やめて、ワシが悪かったから!」

なんとか文を引き剥がすことに成功したものの。
文はぼろぼろと涙を流し始め、また夜智王は慌てる。

「どうして、そういうことするんですかぁ」
「いや、だって」
「貴方が女を抱くのは我慢しますけど、貴方が男に抱かれるのはいやぁ」

どう違うのか?
生憎恋する少女の乙女心というのは複雑怪奇に千差万別で、夜智王には理解しがたい。

「そんなことを言われてもなぁ・・・どうにも可愛い男子を抱きたい気分になるし、偶には逞しい男にめちゃくちゃにされたくなるのだ」

文もそんな時は無いか?と夜智王は嘯く。
返事代わりに文は思い切り夜智王に噛み付く。
夜智王の絶叫が霧の湖に響き渡った。




「夜智王のばか・・・あほ・・・おたんこなす・・・どてかぼちゃ・・・どすけべ・・・いんらん・・・ちろう」
「言いたい放題だの」

手につけようの無い文を、眠りの術で眠らせおぶったまま夜智王はてこてこと山道を歩く。
半べそを掻きながら寝言で文は延々と夜智王を罵り続けている。
苦い表情を浮かべたまま、夜智王は可愛らしい少女の、可愛らしい悋気を持て余す。

「どうしたものかなぁ・・・おっと」

ともあれ目的地に到着したので文を起こしに掛かる。

「ほれ文。起きろー起きんと乳揉むぞー」
「ばかっ!」
「ぐぅほっ!」

鳩尾に良いのが入り夜智王は地面に崩れ落ちる。
覚醒した文は、きょろきょろと辺りを見回す。
山中・・・妖怪の山ではないが、人里離れた山の中らしかった。

「・・・ここは」
「おう・・・起きたか・・・」

木々に隠れるように、小さな庵がそこに経っていた。
茅葺の一軒家だった。

「貴方の家ですか?昔お祖母様と一緒に来た覚えがあります」
「そうだ、ワシの幻想郷でのねぐらよ、ほれ立ち話もなんだ、入れ」

そう言って鎧戸を開けて縁側から屋内に侵入する。

「さすがに色々痛んでしまっておるなぁ」
「というか・・・なぜこの家は朽ちていないのです?」

腐りかかった寝具を外へ放り捨てる夜智王に文は疑問を投げかける。
小さな庵である。
縁側に八畳ほどの板間、その中央に囲炉裏。寝るスペース用なのだろう畳が二三枚・・・こちらは朽ちていない。
狭い土間は厨らしい。水瓶や竈などが並び、増築したらしい別棟への扉が一つ有る。
鉄鍋が錆びて朽ちるほどの期間放置されているたのに、なぜ建物本体には痛みがないのか?不思議である。

「文、それより風を使って空気を入れ替えてくれんか、ああ囲炉裏の灰は飛ばすなよ」
「バカにして・・・もう子供じゃないって言ってるのに・・・」

ぶつぶつと文句を言いながら、文は澱んだ屋内の空気を外の清涼な空気と入れ替える。

「うむ見事な手並みだな・・・かわりにうすら寒くなったな・・・」

寒いなら開け放った障子戸を閉めればいいものを、縁側の辺りに座って、夜智王は自分の膝をぽんぽんと叩いて文を手招きする。
しかし文は、ぷいっとそっぽを向いてしまう。

「なんじゃ、何をふて腐れておる」
「さっきのことですよ・・・私怒ってるんですからね!・・・ってこらぁ!」

ぬるりと文に近寄った夜智王は、ひょいと文を抱き上げると、くるくる回す。

「さすがに羽が生えてるだけあって文は軽いな」
「そうやって子供扱いしてっ!」

ぽかぽかと夜智王の頭を叩く文。

「ではちゃんと大人扱いするか?」

すぅっと唇を寄せてくる夜智王に文は思い切り頭突きをかます。
ゴツンと良い音がして、夜智王が仰け反る。

「いたいのぉ・・・」
「こんなことじゃ誤魔化されませんよ!あぁぁもぅ!」

ぬくいのーと言いながら文を抱きしめて夜智王は縮こまる。
怒っているのがバカらしくなるくらいに妙な安心感に文は包まれる。
怒りがしおしおと萎れてゆく。
だが悔しい・・・惚れた弱みといってしまえばそれまでだが、理屈抜きで口惜しい。

「・・・もう男と寝ないで下さいね」
「善処しよう」
「ばか・・・」
「これから冬だろう?一人寝は寒くていやなのだ」

言うほどに寒さには弱くないはずだと、文は思っていた。
雪女だって口説いていたし・・・
幼稚な反抗心を誤魔化すように文は渋面を作る。

「ちなみに、この庵が朽ちて居ないのはな、スキマに報酬として貰ったものだからだ、特別製よ」
「そうですか・・・どおりで」

境界を操る能力を持つ紫の名前を聞き、得心が行く。

「まぁ寝具やら鍋やらはダメになっているがな、それで魔法の森まで出向いたのよ」

そう言って夜智王は何処からとも無く壷を取り出す。大きめの花瓶程度の壷である。

「なんです?」
「壺中天という奴を知っているか?昔大陸渡りの仙人から騙し取ったものでな、中が見た目よりずっと広くて、あと物が腐らん」
「へぇ・・・」

魔法の森の大樹の木霊に預けておいたのだ。そういいながら、壷の口に手を突っ込み、寝具やら土瓶やら酒瓶などを次々と取り出してゆく。

「便利だろう?一つ不満を言えば腐らんかわりに酒が熟成しないのが難点でなぁ」

と言って取り出した酒器に酒を注ぐ。

「変な匂い・・・ぶどう酒ですか?」
「そうだ腐った葡萄で作る珍しい西洋渡りのぶどう酒よ。文には特別に一杯進ぜよう」

腐った葡萄?と躊躇しつつ文は酒器を受け取る。
どうしたものかと思っていると夜智王が「口移しが良いか?」とか言ってきたので、ぷいっと顔を背けるとぐいっと飲み干す。

「まずくないですが・・・甘すぎです」
「ワシは好きなのだがなぁ・・・文はもっと辛いのが好きか?」
「そもそも貴方が嫌いな酒って存在するのですか?」
「まぁ無いな」

カカカと愉快そうに笑いながら夜智王は酒を飲み干すと、大事そうにその瓶を仕舞う。

「のぉ文」
「なんですか?」
「あんまり文がぬくいので眠くなって来た、一眠りしてよいか?」
「・・・私は抱き枕じゃありませんよ」
「そうだな、こんなに暖かくて、柔らかい抱き枕なぞないわな」
「ちょっと!」

夜智王は文を抱いたまま、先ほど壷から取り出した布団に潜り込むと、背後から抱きしめていた文をくるりと回して、向かい合うようにする。
先日の晩を思い出し、文は顔が紅潮してくる。
ただ夜智王の方はそういうことをするつもりないらしい。
まぁしっかりと当たる乳房の感触は楽しんでいるのだが。

「・・・やらしいことはしないんですか?」
「して欲しいのか?」

して欲しい、それが正直な所だが、そう答えては夜智王の掌の上で躍らせているようで腹立たしい。
それにこんな日の高い内にコトに及ぶとなると・・・つまり基本的に全裸になるわけで・・・全部見えてしまって恥ずかしい。

「別に!」

精一杯の虚勢を張る文。
お見通し、と言わんばかりにその頭をぽんぽんと撫でる夜智王。

「では夜になってからにしような、その方が文の肌が闇に映えて綺麗だ」
「・・・ばか」
「ははは」

結局その日は一晩中二人は愛し合うのだった。



[26700] 【五万PV御礼】蛇、吸血鬼と情を交わす(前編)【おまけ】
Name: 窓◆0bf2c45e ID:6be04712
Date: 2012/08/30 17:21
ようようクリスマス商戦が終了した作者です、前年比マイナスの敗北で・・・Orz

気を取り直しまして、五万PV感謝御礼のおまけ2
没原稿のエロ部分だけ取り出したので、イミフですね、すみません。
当初の予定では美鈴の乳を揉んでいた夜智王を攻撃したのは文ではなく
咲夜さんでした。
そこから紅魔舘へになる予定だったのです。
没になった理由は、レミリアがうまくツンデレさせられなかったので。
ツンデレって難しいですね、ヤンデレは勝手に病むのに・・・なぜだ。

中途半端な位置で終わっていてすみません。
この後触手プレイでマニアックしぎたので掲載を見送りました。
希望が多ければ・・・掲載します


書き下ろしました^^; → 後編へ続く。

ここまでのあらすじ

紅魔舘に侵入した夜智王と問答になったお嬢様。
夜智王の挑発的な「生娘」発言に食って掛かり「咲夜や美鈴と一緒にするな」と返しド壷に嵌ります。
味方であるはずの咲夜まで「まぁお嬢様、ではこのエロ蛇の対処は「経験豊富」なお嬢様にお任せしてよろしいですか?」
とか言い出すしまつ。
どんなに壊しても壊れない夜智王をすっかり気に入ったフランも役に立たず。
レミリアは夜智王と一夜を共にすることになるのだが・・・







明々と燃える暖炉の炎が、広い室内に、頼りなげな灯りを投げ掛けている。
とはいえ、夜の種族、吸血鬼であるレミリアには、暗闇は親しむ物。
断じて恐怖の対象ではない。
だが、豪奢なベッドの上で彼女は抑えられない震えに襲われていた。
咲夜が用意した夜着が、常とは違うものだからだ。そう自分に言い聞かせる。
いつものネグリジェではない、肌が透けて見えてしまうような紗製のキャミソールはひどく頼りない。

「お嬢、片意地を張るのはやめんか?」

レミリアを膝に乗せた夜智王は、ぽんと彼女の肩に手を乗せる。
びくんとレミリアが反応する。

「触られただけでこの様ではないか、無理をするな」

そう言いながら、緊張でガチガチのレミリアの肩を労るように揉み始める。
しかし

「子供扱いは止めなさい!」

高すぎるプライドは夜智王の気遣いを拒絶、レミリアは夜智王の手を邪険に払う。

「私はもう五百年生きてるのよ?バカにしないで」
「いや、別にバカにはしておらんがなぁ」

何歳であろうと、レミリア・スカーレットという吸血鬼を“幼い”、と感じるのは数倍は長生きしている夜智王にとっては当たり前のことだった。
長寿な妖にとっては、精神年齢こそがその生き物の年齢といっても差し支えが無い。
そこにいくと、悲しいかなレミリアはまだまだ子供っぽい所が多々あるのだ。
やれやれ、とこぼしながら、夜智王はレミリアの薄い、乳房と呼ぶのは少々苦しい胸に手を当てる。
びくっとレミリアが反応し、体を固くする。
もう言っても無駄と判断したのか、夜智王は言い募るをやめる。
愛撫と呼ぶのもおこがましい、優しいマッサージを開始する。

「あっ……う、上手いじゃない」
「こんなのは愛撫の内には入らんぞ、ただ按摩しているだけだ」
「ま、マッサージが上手い、って言ったのよ!」

なんと強情な…
呆れ果てた夜智王は、黙って薄い胸へのマッサージを続ける。
夜着越しに、円を描くように手を動かしたり。
すっぽり掌に収まる小さな胸をごくごく軽く揉む。
レミリアが痛がらないように、幼い乳房の奥の固い芯を丹念に揉みほぐしてやる。
その手付きには常ならば混じる、いやらしい動きは全く無い。

「ふっ……くぅ……はっ……ふぅぁ!」

それでもレミリアの幼い肢体には刺激が強いのだろう。
レミリアは喘ぎ声を漏らさぬよう、手で必死に口を抑えるが。
絶え間ない胸への刺激に、小刻みに体の端々が痙攣し、はぁ、と熱い吐息を漏らす。

「ほれお嬢の、かわいいおっぱいが大分柔らかくなってきだぞ」
「なかなかの奉仕よ…つ、続けなさい」
「……はいはい」
「ちょっと!」

いかにもバカにしたような夜智王の返事にレミリアが食って掛かる。

「お嬢はどうにも色気が足らんな、まぁ可愛らしくはあるが」
「だからばかに――ひゃぁ!」

首筋に軽く接吻をする。
そのまま顔を上に移動させ、髪を掻き分けて普段は隠されているレミリアの耳を露出させる。
吸血鬼らしく尖った耳朶の先端を啄ばみ、はむはむと唇で愛撫する。
耳を噛まれたことなど、当然無いレミリア。
妙な感触と、意外なまでの心地よさに、くぅぅと可愛い声を漏らす。
きゅうっと目を厭らしく細めた夜智王は、一度耳から口を離し、そのままレミリアの耳元で囁き始める。

「やはり尖っている分敏感だの、ふぅ」

ふぅっと息を吹きかけると、ぞくぞくっとレミリアの背筋に震えが走る。

「や、やめなさい、なんで耳を…ひぅっ!」
「ひもひよひだろ?」

再び耳を挟んだ夜智王は、そのまましゃべる。
そのもぞもぞした感覚にレミリアがぷるぷると震える。
感じやすい可愛らしい身体だと夜智王は、再び目を細め、耳への愛撫を開始する。

「ふっ…ぁ…いやっ!」

耳をまるごと口に含んだ夜智王の爬虫類の様な細い舌が、耳の穴にぬるっと侵入する。
その感触にレミリアは堪らず悲鳴を上げた。

「やめな…うぁ!…やめっ…ふぁ!…きたなっ!」

ぺしゃぺしゃといやらしい音が、直接鼓膜を叩く。
頭を振って振りほどこうにも、耳の中に侵入されているため、下手をすれば鼓膜等を痛めそうで、実行する勇気が出ない。
泣きそうになったレミリアに、夜智王は、ちゅぽっとわざと音を立てて舌を引き抜く。

「はぁ・・・はぁ・・・」
「お嬢の耳は極上の水飴だな、どんなに舐めても飽きが来ないぞ」
「この変態…汚らわしい!」
「しょっちゅう咲夜の膝に甘えながら、耳掻きしてもらっているのだろう?耳垢ひとつ無くて綺麗なものだ」
「お前の舌が汚らわしいと言ったのよ!」
「さて右ばかりでは不公平だな」
「やめなさっ……ひ・・っ・・・あ!」

敏感な耳の中を、粘膜が擦ると、耳掻きをしてもらうような、性的な物とは異なる気持ち良さが全身を蕩かして行く。

「ふふっ、大分いやらしい気分になってきたか?お嬢」
「誰が、この程度で…!」
「ならばさっきからそんなに股をもじもじさせている?うん?小用か?」
「なっ・・・う~~ちょっと寒いだけよっ!」

どう返そうと恥ずかしいため、レミリアは夜智王を睨むしか出来ない。
ただその程度で怯む夜智王ではない、というか女に睨まれるのは慣れている。

「さて、大分お嬢も気分が出てきたようだし・・・そろそろ本番といこうか」
「ほ、本番!?」

ここまでは前戯ですら無いという事実に、レミリアはびくっと震える。

「ふふ」

ぱちんと指慣らすと、どこからともなく小さな壷を夜智王は取り出す。
壷に指を入れ、中身を掻き出す。

「な、何よそれ!」
「ただの軟膏だ、身体に害になる物はなにも入ってないぞ?」

丹砂(水銀)だとかはな。そんなことを言いながら左手でレミリアの夜着の前を開き、胸元を露出させる。。
いやらしいことに胸元のリボンを解くと簡単に脱げるようになっている夜着だ。
こんなものを用意した咲夜を恨めしく思う。
たぶん、先刻バカにしたことに対するささやかな意趣返しなのだろう。

「ひゃっ!つめたっ!」
「おっとすまんな、大丈夫すぐにぬくたくなるぞ」

ひやっとした軟膏をレミリアの胸に、丹念に伸ばしてゆく。

「やだっ・・・何これ・・・あったかい・・・ふぁっ!」

軟膏を塗られた部分がぽかぽかと熱を持ち始める。
そこを夜智王の手が擦るたび、じん、じんと心地よい感触が走る。

「気持ち良い・・・わよ?・・・うまいじゃない」

精一杯の虚勢を張るレミリア。夜智王はもういちいち取り合うのよやめることにしたのか、普通に返す。

「だろう?これは按摩用の軟膏とは、真っ赤な嘘でな。これは乳をほぐす専用の丹薬・・・仙人のクスリだ」
「ひぃ!やめてっ!そんなの塗らないで!」
「安心しろ、基本的には血の巡りを良くするものだ、唐辛子とかが主成分だぞ?」

気になるなら後でパチュリーにでも調べてもらうと良い。
やめて!と懇願するレミリアを無視した夜智王は、彼女の胸の再度薬を塗り込み始める。
若いというよりは幼い肌は、見る間に軟膏を吸いこんでゆくため、何度も何度も夜智王は軟膏を取り出して塗りたくる。
最初は嫌がって暴れていたレミリアだが、巧みな夜智王の胸への愛撫が、薬の効果もあってだんだんと快楽へと変わってゆく。
はぁはぁ、と熱く甘い息を、悩ましげに吐きながら、レミリアはどんどん熱くなってゆく胸の感覚に悶える。

「お嬢の肌は若いの。すぐに軟膏が染みこんで追いつかん、ほれ追加だ」
「やだっ!あっつい!おっぱいあっついよぉ!」

それは効いている証拠だ、と構わず夜智王はまた軟膏をレミリアの胸に落すと、塗りこみはじめる。

「やめて!やめなさい!・・・もう、もうやめてぇ!」
「気持ち良いだろう?そんなに怖がらんでも大丈夫だ、普通の反応なのだからな」
「やだぁ。こんなの普通じゃないわよぉ」
「ほれ、可愛く膨れてきたぞ?これなら乳と呼んでも差し支えは無いな」

流れ込んだ血流とリンパ液によって、控えめだったレミリアの胸がぱんぱんに膨れていた。
ふにゅふにゅと夜智王が膨れた乳房を弄ぶ。
密かにコンプレックスだった幼い肢体。
しかし急激な乳房の増大にレミリアは逆に恐怖を覚える。

「なんで?なんでわたしのむねが・・・」
「これは、乳を膨らます効果があるのだ」

言い忘れたすまんのと、一寸たりとも反省していない様子で、夜智王はまた軟膏に手を伸ばす。

「やめて!これ以上おっぱいおおきくしないでぇ!」
「まぁ十分に立派な乳になったしやめるか」

むにゅむにゅと乳房をいやらしく揉み始める。

「どうせワシが揉めばもっと大きくなるしな」
「いやぁ」

羞恥のあまりぼろぼろと涙がこぼれ始めるレミリア。

「何も泣くことはないだろう・・・一月ばかし毎晩ワシが愛撫してやれば、あっという間に咲夜くらいの乳にしてやるぞ?」
「やだっ!そんなのおかしい!」

やや小さめの胸を忠実なメイド長が気にして、色々と涙ぐましい努力をしていることをレミリアは知っていた。
それなのに、そんなに簡単に胸が育つはずが無い。

「これはな、昔仙人に習った房中術なのだ、半年あれば美鈴・・・はちと無理だな、パチュリーくらいにはなるぞ?」
「ばかぁ!なによそれぇ!」
「良いではないかぁ、小さい乳も可愛いが、大きい方は色々出来て気持ち良いぞ?」

ふよんふよんと、夜智王はレミリアの膨れた乳房で遊ぶ。
くにゅっと膨らみを強めに揉んで、も固い芯はすっかりほぐされており、レミリアに痛みを与えることは無い。

「あぁぁ・・・おっぱい・・・気持ち良いぉ・・・」
「だろう?ふにゅふにゅの可愛いおっぱいだぞ?揉んでいるだけで一物にぴんとくる、良いおっぱいだぞ・・・レミィ」
「あっ!ふぁぁぁぁ」

親しげにレミリアを呼びながら、優しく乳首をしごく。
そのまるで魔力でも持っているような声音と、乳首への刺激にレミリアの快楽中枢が悲鳴をあげる。
絶頂寸前まで昇りつめたレミリアが全身をぷるぷると震わせて嬌声を上げた。

「まだイくには早いぞ?レミィ」
「なまえでよぶなぁ・・・ひゃぁぁぁ!」
「敏感な可愛いおっぱいだの。揉んでも摘んでも捏ねても気持ち良いのか」
「やめろ!いやらしいこというなぁ!」

くつくつと夜智王は笑う。頑ななレミリアを弄ぶのが愉しくて仕方が無いのだ。
その方が堕落させ甲斐があるというものだ。

「レミィは自分のおっぱいで自慰をしたことはあるか?」
「あるわけないでしょ!ばかぁ!ばかぁ!」
「そうか無いのか?ほれ手を貸せ」

小さなレミリアの手を取ると自身の胸に触らせる。

「ほれぷよんぷよんだぞ?すごいだろう?自分で気持ち良くなるように揉んでみよ」

そう言って夜智王は手を離す。
右手をレミリアの尻に、左手を腹に伸ばすと、さわさわと愛撫を始める。

「ひゃぁ!」
「ふふ可愛らしい尻だ、すべすべで柔らかい、ここにも軟膏を塗ろうか?ぱんぱんになるぞ」
「ふざけるなぁ!」
「そうか?まぁ乳にくらべるとここは大分女らしいのぉ」

尻と臍のあたりとさわさわとなでわまし続ける夜智王。
気持ち良い、夜智王の手が気持ち良い、だが弄くり倒された胸への愛撫に比べると物足りない。
焦らすように、夜智王はわざと緩く尻を撫で回し続ける。

「(いや・・・だめよ・・・だめ・・・)」

必死に自制する。
しかし、掌が吸い付いたように自分の乳房から離れない。
放置された乳房はどくんどくんと脈打つように熱く疼く。
触れた掌の部分だけが、ちりちりと疼痛のように淡い快楽を発生させている。

「ひぁ・・・っ!・・・いやぁ・・・てがかってに・・・」

手が勝手に胸を揉みはじめる。

「やだぁ!てがかってにうごいちゃうよぉ・・・あぁ・・・ふぅ・・・きもちいいよぉ!」

最初はおずおずと全体を撫で回す、それで我慢が限界を迎えた、下から小さな掌で包み揉みしだく。

「すごいよぉ・・・おっぱいが・・・ふにゅふにゅしてる・・・こんなの・・・あたしのおっぱいじゃないよぉ」
「あまり強く揉むなよ、大分ほぐしたがまだまだ成長中なのだからな」

忠告を無視するように、レミリアは自分の胸を鷲掴みにしてぐにゅっと変形させる。

「強情だのぉ・・・ほれ乳首が触って欲しいとぴくぴくしておるぞ、そーっと優しく触ってみると良い」

恐る恐る右の乳首を親指と人差し指で摘む。

「ひゃぁ!」

雷に打たれたように、痛みにも似た心地よさが、乳首から全身に走る。
あまりの気持ち良さにレミリアは悲鳴を抑えられない。
その悲鳴を聞いた夜智王は哂うのが、悔しくて仕方ない。

「どうやらレミィは乳首が弱いようだな?」
「ばかっ・・・そんなことないわよ・・・ふぁぁ!」

こんなのなんとも無いと言わんばかりに両の乳首を人差し指でこね回し、また悲鳴をあげる。

「もっと優しく弄ってやれと言っておるだろうが・・・こんなに腫れて可哀想に、ワシが慰めてやろう」
「何を?ひゃっ」

レミリアを持ち上げて向きをひっくり返す、向かい合った夜智王はレミリアの乳首に唇を寄せる。
恐怖を覚えたレミリアだが、また強情を張ってそれを抑える。
そっと乳首に接吻をすると、はむっと唇で挟む。
喘ぎを漏らさぬようにレミリアは指を噛んで快感を堪える。
可愛らしい乳首を丹念に唇で愛撫する度、レミリアは苦しげに吐息を吐き続ける。
一度乳首から口を離した夜智王にレミリアはしたり顔を向ける。

「気持ち良くなんて・・・なかったわよ」
「それはすまんかったな、では本気でしよう」
「え?」

乳首を口に収めると、ちゅうちゅうといやらしい音を立てて吸引する。

「やぁ!・・・すっちゃだめっ!・・・ばかっ!・・・ひゃぁ!・・・やめて、すわないで!あっ」

騒ぎ立てるレミリアの口に夜智王は指を伸ばす。
反射的にそれに牙を立てたレミリアは溢れ出た血液を舐め回す。

「ふっ・・・ひゃぁ!・・・ううんっ・・こくっ・・・・はぁ・・・あまい・・・ひゅぅ!」

極上の甘露のような夜智王の血液にレミリアは酔う。

「ワシばかり吸うては不公平だからの」
「なにこれ・・・身体が熱いわよ・・・あんたの血・・・どうなってるの?」
「体内に媚毒を仕込んであるのでな・・・なにちょっと血の巡りが良くなるだけだ」
「うそよ・・・そんなじゃないわ・・・おなかがじんじんすうよぉ」

おなか、というのが子宮と膣のことだと夜智王は察していたが。
ニヤっと哂う夜智王に、レミリアの顔が羞恥と悔しさからくる怒りで真っ赤になる。

「そこは血の管の集まってる所だからしかたあるまい」
「へ、へいきだもん!・・・ふ・・・っ・・・ぅぅ・・・ああっ!」

乳首を夜智王に吸わせながら、それでも疼く乳房を、レミリアは荒く揉む。
胸は気持ち良い、だが全身の疼きを納めるには程遠く、切ない。

「だからあまり乱暴にするなといっておるだろ・・・さて今度は左の乳首を頂こう」
「ひゃぁ!」

口に含み、軽く吸いながら、伸ばした舌で乳輪をぬるぬると舐め回す。

「なめっ・・・いやっ・・・」

レミリアの反応を楽しむように、一度口を離すとと、今度は舌先で乳首をぺろぺろと舐める。

「したさき・・・きゃっ・・・あっ・・・」
「レミィの乳首は甘いぞ?」
「はずかしことを・・・ひゃぁ!」

再びきゅうっと吸い付いて、こんどは乳房を引っ張るようだ。

「やめて・・・おっぱいのびちゃう・・・いやぁ」

ちゅぽっと口を離すと、右の乳首に移る。
かりっっとごくごく軽く噛む。

「はっ!・・・だめっ・・・かんじゃ!」

くにゅくにゅと二三度噛み、左も同じように噛み付く。
その度レミリアの幼い胸がぴくぴくと痙攣する。

「もうやだぁ・・・おっぱいいじめないでぇ」
「今晩は一晩中レミィのおっぱいを弄り倒す予定なのだが」
「そんなのだめぇ!おかしくなったうよぉ!」
「狂え狂え、その方が気持ちよいぞ?さぁぱんぱんに膨れるまでレミィのおっぱいを大きくするぞ」
「やめてぇ・・・せつないのぉ!・・・おなかがじゅんって・・・もうおっぱいだけじゃだめなのぉ」
「生娘のクセにいやらしいのぉレミィは」
「しょじょじゃないもん!・・・わたししょじょじゃないんだからぁ!!」

ここまで言い募る所を見ると、どうも嘘ではないようだが・・・その一回だけだろうな。
と夜智王は予想する。
それでは夜智王にしてみれば生娘と対して変わらない。
それに・・・吸血鬼の再生能力を考えると・・・膜も再生しているのではないか?という懸念もある。
つるつるの股座からは愛液が溢れ、下着を濡らしては居る。

「・・・そんなにここを弄って欲しいのか?」

下腹・・・子宮のあたりをつん、と指で突付と、レミリアがひゃあっ!と嬌声を上げる。
ぐにぐにと腹の上から子宮と膣を愛撫してやると、秘裂からどぷっと愛液がさらに染み出し、下着をびしゃびしゃにする。

「もっとぉ・・・ちょくせついじってぇ・・・もうむりよぉ・・・」
「つまらん。もっと強情をはっておくれレミィ・・・そんなに簡単に雌になられては面白くないぞ」

そう言い、また乳首をくりくりと弄り始める夜智王。

「やめてぇ!ちくびやめてぇ!ひゃぁぁ!」
「おっといかん。あんまりレミィが可愛いからだな」

すっかり勃起した肉棒がレミリアの尻ぺたんと当たる。
尻に押し付けられた熱さにレミリアは悲鳴をあげた。

「おしりにあっついのが!おかしいよぉ!わたしのからだ、おかしくなっちゃたぁ!おしりきもちいいよぉ!」
「うーん、少々やりすぎたか・・・とはいえ突っ込むには小さすぎる女陰だし」
「やだぁ・・・いれてぇ!もうだめ、おっぱいだめぇ!」

幼く、経験の少ない身体は、どれだけよがり狂おうとも、乳房だけで絶頂に達する事はできないらしい。

「じゃぁ止めるか、しばらく我慢していればおさまるであろ?」
「ばかぁ!ばかぁ!むりにきまってるじゃない!せきにんとってよぉ!わたしをおかしくしたせきにんとれぇ!」
「うーむ、まぁ頑張って乳でイカせてやるから我慢しろ」
「やぁぁぁぁ!」













[26700] 【五万PV御礼】蛇、吸血鬼と情を交わす(後編)【おまけ】
Name: 窓◆0bf2c45e ID:6be04712
Date: 2012/08/30 17:23
わぁわぁと憚ることなく泣き出したレミリア。
子供だの。と夜智王は思う。
よしよしと頭を撫でてみたが、邪険に振り払われた。
このプライドの高さが良い、これが何の抵抗も無く自分の前に身を投げ出す時を想像するだけでゾクゾクする。

「では一つ確かめてみるか?」
「ふぇ?・・・やぁ!」

紐で結ぶ型の下穿きを、結び目を解いて引っぺがす。

「う・・・あ・・・」
「べしょべしょだの」

じっとりと湿った可愛らしい下着をレミリアに見せ付ける。

「ばかっ!みせるなぁ!」

はずかしいよぉ・・・とレミリアは両手で顔を隠す。
クククと咽喉の奥で笑いながら、レミリアの耳下に口を寄せる。

「随分と脱がしやすい下穿きだな・・・こんないやらしいのをいつも穿いているのか?」

レミィはいやらしい娘だ。と夜智王は囁きかける。
顔を覆ったままレミリアは首を左右に激しくふって否定する。

「ちがうもん!これは咲夜が!」
「ふぅん・・・先刻の一件、結構怒っておるな?とんだ意趣返しだの、カカカ」
「う~~」
「ははは、ではレミィをさっさとイかせて、傷心の咲夜を慰めに行くとするか」

もうレミィにバカにされんよう、ワシが優しくあれの初めてを貰ってやろう。
そう嘯く。
反射的にレミリアは叫んだ。

「だめっ!」

自分でも何がだめなのか良く分かってはいない。
可愛いメイド長がこの蛇の毒牙にかかるのが嫌なのか。
あるいは・・・

「うん?何が駄目なのだ?言ってみ?」
「うるさい!ばか!!」
「本当にレミィは可愛いのぉ」
「あっ!」

レミリアの膝を立たせ股を割る。
それでも閉じたままの秘裂を優しく指で擦る。
くちゅくちゅと、溢れ出た愛液がいやらしい音を立てる。

「やっ・・ふ・・・っ・・・あんっ!」
「大洪水だの」
「やだぁ・・・そんなこというなぁ」

ようやく疼く秘裂を愛撫され、甘い、官能に蕩けた吐息を漏らすレミリア。
そっと下の唇に夜智王の指を添える。
充血しすっかり膨らんだそれをくにゅくにゅと弄ると、レミリアは甘い喘ぎ声を上げる。。

「うぁ・・・すごい・・・きもちいいよぉ」
「ぴっちりと閉じとる癖にいやらしい娘だなレミィは」
「うるさいっ!だれのせいだと――あっ!」

問題なしとみたのか、夜智王は、つぷ、と中指を秘裂に埋め込む。

「あ・・・っ・・・ゆび・・・はいってるぅ」

愛液でぬるぬるのせいか、中指はあっさりと奥まで到達する。
なんの障害もなしに。

「ふむ真であったか・・・てっきりレミィの虚勢だとおもっていたのだが」
「ばかぁ・・・だから――ひゃぁ!やだ、くにくにしないで!なかいじっちゃだめぇ!」

少し動かしただけなのだが、指一本ですらキチキチと締め上げる膣肉には十分な刺激らしい。

「さて、レミィの初めてを頂いた果報者はどこのどいつだ?」
「あんたには・・・・関係ないでしょう?ゆびとめないでぇ・・・もどかしいよぉ・・・ばかぁ」
「動かすなとか動かせとか、レミィは難しいことを言うなぁ・・・ほれ白状せい、でないとこのままだぞ?」
「うう゛う~!・・・私が初めて自分で吸血した子よ・・・」
「ふぅん?今のレミィくらいの歳格好だったか?」
「そうよぉ・・・うそじゃないからぁ・・・うごかしてぇ・・・ああっ!?」

懇願するレミリアを無視し、夜智王はにゅるっと指を抜いてしまう。

「ばかぁ!うそつきぃ!」
「抜かんとは言っておらんだろうが・・・察するに初めての吸血に酔ってレミィを、同じく血を吸われて暴走したその小僧が襲った、という所か」
「う、う~~」
「図星だな・・・それ以来、男と交わったことは無し・・・やはりワシのを突っ込むにはレミィの女陰は経験不足だの」
「だいじょうぶだから!だからさいごまでしようよぉ」
「いや無理だろう・・・指でがまんせい」

やだぁ、とレミリアは泣きながら我がままを言う。

「だいたい・・・あんたはどうするのよぉ・・・そんなになってるのに・・・」

背中に当たる一物はすでにガチガチになっているのがレミリアにも分かる。

「いやだから咲夜を」
「それはだめぇ!」

えーと夜智王は子供のような不満を漏らす。

「とはいえなぁ・・・レミィの手やら胸で出すのは・・・ちと無理だしなぁ」

手淫はレミリアの経験が足りないし、胸は大分膨らんだとは言えやはり小さすぎる。

「お・・・おくちは?」

自分から提案するのが恥ずかしいのだろう、小声でごにょごにょと言う。

「それは無いな・・・ほれ」

夜智王が指をレミリアの口に寄せるとレミリアは何の躊躇もなく咬み付き、流れ出る血をコクコクと嚥下し始める。

「んっ・・・ふぁぁ・・・やだぁ・・・こくっ・・・んんっ・・・からだがあつくなるのに・・・ちゅう・・・とまらないよぉ」
「この様だろう?絶対に一物に咬み付いてくるわ・・・変態趣味のあるものならともかくワシは嫌だ」
「・・・かまないもん」
「それは嘘だな」
「しないもん!ばかにして!あっ・・・んんっ」

指を寄せるとまた咬み付くレミリア。説得力ゼロである。

「さて・・・では気がすすまんが、あれをするか」
「なに・・・?」
「安心せい、レミィが痛くないよう、ワシの方で大きさを調節すれば良いだけのことだ」
「え?」

ぽしゅっと小さな煙と共に夜智王は一匹の大蛇に変じる。

「やぁ!・・・何を・・・やだ、やめて!」

素早く獲物を締め上げる蛇の様にレミリアの肢体に大蛇が巻きつく。
とは言え本当に締めるわけではない、抵抗できない程度に拘束するだけだ。
勿論膨らんだ胸をとぐろを巻くように絞り、秘裂には頭を寄せしゅーしゅーと舌を這わす。

「やだぁ!きもちわるいよ!やめてぇ!」
「失敬な・・・こういうのが良いというのもいるのだぞ?」
「まさか・・・そのままはいるつもり!?」

一物よりも太い蛇の頭が体内に侵入するのを想像しレミリアは青ざめる。
慌てたように蛇が否定する。

「それではさっきより酷いではないか・・・蛇にもちゃんと一物はあるぞ?」
「もっとやだぁ!」
「それでも人の時よりは細いから痛くないぞ?」
「いたくてもいいよぉ・・・ふつうにしてよぉ!」
「ワシの本性は蛇だから一緒なんだがなぁ」
「いっしょじゃないよぉ!ばかぁ!やちおうのばかぁ!」
「すぐに気持ち良くなるから、最初だけ我慢せい、レミィは少しわがままが過ぎるぞ」
「やだぁ!たすけてぇ!さくやぁ!」

次の瞬間。
蛇は三つに切断された上で、ナイフで床に磔にされていた。
泣きじゃくるレミリアを抱いた咲夜が剣呑な瞳で壁に飾られていたサーベルを構えている。

「さくやぁ!こわかったよぉ」

ぎゅうと咲夜に抱きつくレミリア。
むにゅっと大きくなった乳房が咲夜に押し付けられる。
その感触に、咲夜は平静を装いながらも、どくどくと心臓が高鳴る。

「も、もう大丈夫でございますよ!お嬢様」
「さっきは、ごめん・・・」

ぐずぐずと泣きながら咲夜に謝罪するレミリア。
しかし、全裸のレミリアにぴったりと抱きつかれているから、咲夜は妙にそわそわして落ち着きが無い。

「いえ、その・・・あぁ・・・」
「なんじゃ咲夜、覗いておったのか?過保護だなぁ」

三つに割断されても屁でもない夜智王はびくびくと跳ねながらのんびりと声をかける。

「貴様がお嬢様に危害を加えないか警戒していただけだ!」
「・・・さっきからレミリアの胸に視線が向いとるぞ」
「ばばばばっばばばばばかなことうぇいうなぁ!」

噛んだ。

「・・・やれやれ」

ぽんっと煙を立てて蛇は人に化生する。

「・・・だれ?」
「夜智王だ」
「分割されて縮んだの?」

そこには十歳ばかしの美少年が居た。
白い肌や赤い瞳、確かに夜智王と共通の特徴が有る。

「夜智王七変化の一つ、童形よ。どうにもレミィのような子供を抱かねばならん時や、こーゆーのが好きな女子や、あと男に抱かれる時に使う」
「・・・変態」
「まぁ変態だな」
「そういう意味じゃないわ!アブノーマルって意味よ!」
「カカカ!まぁとまれこのサイズなら、ほれ?レミィの穴に丁度良いだろう、続きをするか」
「ばかぁ!最初からそうしてよぉ!こわかったんだからぁ!」
「軽い冗談だったんだがなぁ」

性質の悪い冗談である。
とまれレミリアと同年代程度の容姿になった夜智王は、咲夜からレミリアを奪い取ると、ベッドに戻る。
しっしと追い払われた咲夜は、しぶしぶ引き下がるが。
廊下には出たが、わずかに開けて置いた隙間から中を覗き見ようとする。

「デバガメは関心せんなぁ」
「ひっ!」

唐突に夜智王が背後から抱きついてきて、咲夜は悲鳴を上げる。

「分身!?」

そういえば三つに割った内の二つが消えていた。
くっついた上で人に化生したのか、妙に小技の多い蛇である。

「どちらかというと分裂、かのぉ?まぁ問題は無い、ほれ咲夜、レミィの痴態をみてお主の身体も随分火照っておるな?うん?」
「なにを!言って!」
「うん?じゃあなんだこの手の湿り気は?自分で慰めっておっただろう?」

右手を取った夜智王がぺろりと咲夜の細い指を舐める。

「いやらしい味がするぞ?」
「ちちちちがいます!」
「安心せい、お主の可愛い乳もしっかり膨らませてやるぞ?なんなら一月ばかし通おうか?あっという間に美鈴・・・は無理だな文ぐらいにはしてやろう」
「ばばばばばばばかな!わたしはべつにそんなにちいさくないし!」

ついと、確かにさほど小さくない胸元に目をやる。

「・・・詰め物か?それとも“こるせっと”で無理矢理締めておるかの?まぁどちらにせよワシに掛かればあっというまだぞ、ほれいこう、さぁやろう」
「いやぁ!」

いやいやと言いながらも、必要以上に抵抗しない咲夜であった・・・






「さて・・・監視も排除しましたし、存分に乱れて下さいね、レミィお嬢様」

ベッドに横たわったレミリアに、すっかり縮んだ夜智王が覆いかぶさるように身を寄せる。

「なんで口調まで変わってるのよぉ」
「この夜智王の七変化はそれだけ完璧、なのですよ」
「う・・・ううう」
「もう少しご奉仕が必要ですか?諧謔が効きすぎてお嬢様の胸の高鳴りは納まってしまいましたか?」

すっかり小さくなった夜智王の両手が、そっとレミリアの胸に伸びる。
ぱしっとその手をレミリアは払いのける、

「もうおっぱいはやめてっていってるでしょう!」
「可愛く膨らんだお嬢様のおっぱいを弄れないのは残念です・・・では」
「ふ・・・ぁ・・・っ!」

レミリアの足を片方抱え、相応に小さくなった一物をレミリアの秘裂にあてがう。
つぷっと軽く先端を秘裂に差込むが、そこで止め、亀頭ですりすりと秘裂を擦り始める夜智王、見る間に亀頭はレミリアの愛液でぬるぬるになっていゆく。

「やっ・・・いりぐち・・・こすっちゃやぁ・・・ちりちりするのぉ!」
「くちゅくちゅといやらしい音がしてますよ?聞こえますか?」
「ばかぁ!お前がやってるんだろう!」
「レミィ様・・・夜智王と呼んでくさいな、でないと挿入ませんよ?」
「ふぃ・・・ばか・・・いじるわるぅ」
「折角一晩情を交わすのです・・・もっと雰囲気を出しましょう?ねぇレミィ様」
「・・・いれてぇ・・・もうがまんできないのぉ・・・おくまでいれてよやちおぅ」

眦に大粒の涙を浮かべながら、レミリアは淫らな懇願をする。
傍目には幼い恋人同士の、早熟すぎる交合に見えるが、共に人外であるわけだから、とりあえず問題ない。
くすっと哂うと、顔を寄せてレミリアの涙を舐め取り、オデコに軽く接吻する。
くすぐったい感触にレミリアはぶるっと震える。

「かしこまりました、では失礼して」
「く・・・ぅ・・・んっ!・・・はぁぁ!」

ずぶっと腰を進めて、半分くらいまで一物をレミリアの膣内に押し込む。
そこでわざと止める。

「ふぁ!・・・やだ、そここすらないで!やめて、やぁ、きもちいい、おかしくなっちゃう!」
「ここがお嬢様の気持ちの良いところですからね・・・ちなみに僕も凄く気持ち良いですよ?」

腰を小刻みに動かしてGスポットを亀頭とカリ首でこする度レミリアが悲鳴を上げる。
大人のままでは狭い膣内もこのサイズならぴったりなのか、殆ど抵抗は無い。

「ばかっ!やめてぇ・・・おくが!おくがじんじんするのぉ!なんとかしてぇ!」
「せっかちだなぁ、男を入れるのは二回目なのでしょう?もっとほぐさないと」
「もういいよぉ・・・さんざんいじられたからへいきなの!だからおくまでいれてぇ!」
「いやらしい娘ですね、レミィ様は」
「やらしぃこじゃないもん!やちおうがいけないんだ!やちおうがわたしをいやらしくしてるんだもん!」

小さくなり、口調が丁寧になっても言葉で執拗に攻める性格はまったく変わらない夜智王は、レミリアの反応は愉しくて仕方が無い。
一方でレミリアは経験不足から散々に弄ばれても絶頂に達することができなかったが、逆に膣内に肉棒を受け入れただけで今にも絶頂に達そうとしていた。
それを見越して、夜智王は腰を止めて焦らしているらしかった。

「さぁゆっくり奥までいきますよ、ふぅっと息を抜くと気持ち良いですよ?」
「はぁ・・・ふっ・・・ふぁぁぁぁ!」

ずにゅりとレミリアの最奥まで夜智王の一物が進み、ぴったりと膣内が肉棒で一杯になる。
夜智王の一物も根元まで埋まっており、非常に具合の良い長さであった。

「おく・・・おくまではいったぁ・・・きもちいぃ」
「根元までぱっくり飲み込んで・・・しかも中の肉がきゅうきゅう締めてきますよ?本当に二回目ですか?」
「ばかぁ!」
「もうさっきからばかぁ!しか罵りの言葉がないんですね?レミィ様は本当に苛めがいのある可愛い方だ」
「ひゃぁ!ばかッ・・・いきなり・・・ひぃ!・・・うごくなぁ!」
「すみません、あんまり気持ちが良いので腰が勝手に」
「うそだっ!・・・ふぁ!・・・おくをつついちゃだめ!・・・なかにはいっちゃう!・・・やだぁ!ぬかないでぇ!」

子宮口を犯すようにぐりぐりとねじ込んだ後は、ぐいっと一気に抜ける寸前まで腰を引く。
レミリアの反応を楽しむように夜智王は腰を使う。

「どっちなのです?」
「ふつうにしてよぉ・・・にかいめなのに・・・こんなのむりぃ」
「すみません。ちょっと調子に乗りすぎました。レミィ様は可愛すぎるのがいけないのですよ?」
「・・・ばかぁ・・・ゆるさないんだから・・・あとでぎったんぎたんにしてやるぅ」

勘弁してください。と言いつつ、ようやく優しく抽送を開始する夜智王。
やや単調だが、レミリアにはそれくらいで丁度良いらしく、膣壁を擦られ、うっとりとした様子ではぁ・・・と悩ましい吐息を漏らす。

「あ・・・っ!・・・やだ・・・おしっこでそう!・・・とめてっ・・・やちおうとめてぇ」
「大丈夫ですよ・・・ふぅ・・・それは漏れそうなんじゃなくて・・・そろそろイキそうなんです」
「うそっ・・・やぁ・・・ふぁ!・・・もれちゃう!・・・やだっ・・・なんか・・・くるよ・・・ふわふわするぅ!」
「実を言うと、僕もあんまり余裕が有りません。だから小さい身体は嫌なんですけど・・・いっぱい子宮に出してあげますよ」
「やぁ!・・・なかだめ・・・いや!とんじゃうよ・・・イク?・・・イっちゃうの?」

ぎゅうっとシーツを握り、中はダメと言いながら、レミリアの両脚が夜智王の腰に絡みつく。
震える体を抑えたい一心なのだろう。
びくびくと背を弓なりに仰け反らせながら、レミリアは恍惚した表情で喘ぎ声を上げ続ける。

「やぁ!もれちゃう!とんじゃうよ!やだぁこわいよぉ!」
「怖いなら抱きついてくださいレミィ様・・・く・・・一緒にイキましょう?」

シーツから手を放し、レミリアは夜智王にしがみつく。
ぷるぷると震え、目をぎゅうっと瞑り、その瞬間に備える。
夜智王も常比べると余裕の無い腰使いで、荒く息を吐きながら、抽送のスピードが上がる。

「レミィ様の中・・・気持ち良いですよ、いまにも出そうです」
「だめっ!・・・なんかきちゃうの!・・・やっぱりもれちゃう・・・やだ・・・ふわぁ!・・・やっ!あぁぁぁ!」

奥まで進んだ一物が子宮口をくにゅっとつぶした瞬間、レミリアは絶頂に達した。
ぎゅうと膣肉が収縮し夜智王の一物を絞り上げる。

「くっ!」

しかも、絶頂に達し視界も意識も真っ白になったレミリアは、本能的に夜智王の肩に噛み付いて牙を立てる。
その、ぞくりとした感覚と、痙攣する膣肉に締め上げもあって、夜智王もあっさり射精してしまう。
どくんと一物が震え、先端かどぶっっと、幼い子宮の中へ子供らしからぬ射精量で精液を叩きつける。

「ふ~!んん~!」

その感触に、レミリアは噛み付きて声を抑えながらも、口の端から唾液と血液をぼたぼたとこぼしてゆく。

「んん~!う゛~~~!」
「出てますよ・・・レミィ様の中に・・・ちょっと血を吸うのやめてくださいよ」
「ぷぁ・・・こく・・・んっ・・・やちおうのちぃ、おしいよぉ・・・おなかがおなかがね・・・・あったかいよぉ・・・あっ・・・やぁぁ」
「おやおや」

よほどに気持ちよかったのだろう・・・緩んだ尿道から黄色い液体が漏れ始める。

「あっ・・・やだぁ・・・うわぁぁぁぁん!」
「はいはい、大丈夫ですよ」
「だからやめてっていったのに!もれちゃうっていったのにぃ!」
「まぁ良くあることです。世の中にはイクと同時にいつも漏らすって女性もいますからね」
「そんなのやだぁぁぁぁ!」

別にあんたのことじゃないよ。
そう思いながら、泣きじゃくるレミリアを慰め、身体を清め終わるころには。
イったことと、泣きつかれてレミリアは眠ってしまっていた。

「・・・漏らした寝具で寝るのか?・・・やれやれ」

毛布を掴み、レミリアを抱き上げると、部屋に置かれている豪奢なソファに向かう。
あれならば下手な煎餅布団より寝心地は良いだろう。
ごろりと横になり、子供らしく体温の高いレミリアを抱き、その温もりを存分に味わいながら、夜智王は眠りに落ちて言った



[26700] 【小夜曲一万U記念】蛇、メイド長と乳繰り合う、の巻【おまけ】
Name: 窓◆0bf2c45e ID:4325365c
Date: 2012/08/30 17:25
ノクターンノベルでの1万ユニーク御礼品を転載します。
おまけ2で捕まえた咲夜さんとにゃんにゃんするお話。






「はぁ…」

紅魔館のメイド長、十六夜咲夜は悩ましげな溜息を吐いた。
一日の職務を終えた彼女は床に着いていた。
だがベッドに横たわり、目を瞑っても、最近彼女を悩ませている、ある事柄のせいで、眠れない。
別段に妖精メイドが使えないとか、門番が機能していないからとか、主の妹様が暴れて館を破壊する、といったことではない。
それは、常日頃から咲夜を悩ます頭痛の種ではあったが、色気すら感じるような嘆息を吐く理由には至らない。

「あぁ…お嬢様」

咲夜の悩み、それは愛して止まない主人。
レミリア・スカーレットのことだ。
最近、レミリアは“綺麗になった”
多分に幼さない所のある彼女だが、最近はちょっとした仕草、ふとした表情が、ドキッとする程色っぽく、艶めいて見えるのだ。

原因など分かっている、あの憎たらしい蛇のせいだ。
三日と開けず紅魔館に訪れる夜智王。
美鈴をからかい、フランと戯れ、パチュリーと小難しい議論を戦わせ
…そしてレミリアと床を共にする。今夜のように。
ごうごうと咲夜の胸中に嫉妬の炎を燃えあがる。
そして蛇の腕の中で喘ぐレミリアを想像してしまい、咲夜の体がじくじくと疼く。

「はぁ…お嬢様ぁ」

自然、胸と股間に手が伸びる。
そして思い出してしまう、夜智王に散々この胸を弄ばれたあの夜を…





「夜智王様」
「様はいらんと言ったはずだぞ?」
「あの…本当にするんですか?」

咲夜の部屋まで行くのめんどくさい。
と言い放ち客間に入りこんだ夜智王に、どくんどくんと心臓が今にも爆発しそうな咲夜が聞く。

「咲夜が嫌ならせんぞ?」
「案外に紳士なのですね」
「カカカ。それはお主の勘違いだよ咲夜。最後の一線は越えないが、それ以外はするぞ?」
「え…」
「これは主の情事を覗き見る、悪い女中頭への、おしおき、なのだからな」
「ひっ!」

にぃ、と嗜虐的な笑みを浮かべる蛇、その目が爛と妖しい光を帯びる。
まともにその目を見てしまった咲夜、その意識がくらりと眩む。

「な、何を…」
「暗示だ、時を弄ろうとするなよ、酷い目にあうぞ」
「ひ、ひどいです…こんなのは、嫌」
「乱暴なことはせんから安心せい。たっぷりと気持ち良ぉしてやるからな」
「や、やぁ…」

ベッドに腰を下ろし、膝の間に咲夜を置いた夜智王は、咲夜の服に手を伸ばす。
襟を結ぶリボンをしゅるりと外し、シャツのボタンを上から三つばかし外す。
はらりとシャツがはだけ、咲夜の胸元が露になる。

「綺麗な鎖骨だな」
「鎖骨に…綺麗も何を、ないで…しょう」
「バカをいうな、男はな案外に鎖骨が好きなのだぞ?舐めて良いか?まぁダメといっても舐めるがな」

胸元に顔を寄せ、咲夜の鎖骨をなぞるように舌を這わす夜智王。
ぴくっ、っと小さく咲夜の体が奮える。

「あ…っ…くすぐったい…です」

咲夜の腰のエプロンを解きながら、夜智王は咲夜の首筋に唇を這わす。
咲夜が初めてだからか、常に比べると、優しい、言い換えればあまりいやらしくない愛撫だった。
それでも咲夜には十分な刺激なのだろう。
はーっ、ふぅー、と咲夜の息はすでに荒い。

「良い匂いがするな、薔薇か?レミリアと揃いの匂いだ…風呂に精油でも落としたのか?」
「やだ…匂いなんて…嗅がないで下さい…恥ずかしい…」
「レミリアはやや乳臭かったがな」
「お嬢様を…バカにするのは、許しませんよ…」

首筋、耳への丹念な愛撫に、頬を赤く染め、眦をとろんとさせながらも、咲夜は夜智王に怒る。
見上げた忠心か、それともこれは愛か、と内心で夜智王はニヤつく。
上手く唆して三人でするのも楽しいかもしれん、といやらしい想像を脳内にめぐらす。
その事はおくびにも出さず、殊勝な表情を浮かべて、咲夜に謝罪をする。

「すまんすまん。レミリアの幼い娘の乳臭さも悪くないが、やはりワシは咲夜のような女の良い匂いが好きだぞ」
「あっ!」

上着の横から手をつっこみ、下のシャツのボタンを全て外してゆく。
袷を開き、上から覗き込めば、そこに可憐な乳房が、窮屈そうにブラジャーに包まれていた。

「…詰め物か」

かぁぁぁ、と咲夜が茹蛸のように真っ赤になる、胸元の辺りまで赤くして、ぎゅぅっと恥ずかしそうに目を瞑る。
溢れ出た涙をぺろりと舐めた夜智王は、服の上から背中のホックを器用に外し、するりと手馴れた様子でブラジャーを抜き取る。
ポロリと詰め物が零れる。
床に落ちそうになったそれを掬い上げ、とりあえず夜智王は顔を寄せる。

「な、何、匂いを嗅ごうとしてるんですか!」
「いや、良い匂いがしそうだったのでな」
「やだっ!やめてください!」

咲夜が夜智王の手からパッドを奪い取り、慌ててスカートのポケットにしまう。

「ははは、すまんすまん。さて、では咲夜の胸、ぷっくりと膨らましにかかるか」
「そんなに簡単に膨らむなら苦労はありませんよ…」
「大丈夫、ワシに任せておけ…さて、まずは脱ごうな」
「は、恥ずかしいです、自分で…あ、だめぇ」

咲夜の懇願を無視し、まずズカートを緩めて脱がす。

「……」
「じぃっと下着を見ないでくださいっ!」
「うーん。やはり幻想郷では派手な下着は売っておらんのか?」

コットン製らしき純白の“普通”のショーツを見て、如何にも残念そうに夜智王はうな垂れる。
咲夜あたりならば、レースで透け透けの黒下着あたりを穿いていてくれるかと、密かに期待していただけに、余計だった。
そんな夜智王に、当然咲夜は憤慨する。

「有っても穿きません!」
「生娘が無理していやらしい下着を穿いていると、ひどく興奮するんだがなぁ、河童と天狗に相談して自前で用意するか、ぷれぜんとするぞ」
「要りません!」
「まぁどうせ脱がすしよいか…せめてレミリアと同じように紐ならばなぁ」
「怒りますよ、もうっ!」
「すまんすまん、さて上着を脱がすぞ、ばんざいせい」

お仕着せらしき黒のメイド服を脱がされ、咲夜ははだけたシャツとショーツ、そして靴下だけの格好にされてしまう。

「あの…」
「なんだ?」
「なんで全部、特に靴下は何故脱がさないんですか?」

にこりと笑うばかりで夜智王は答えない。
もちろん全裸より、ちょっと着てるほうが好きだからである。
いちいち説明はせず、先刻レミリアに塗りこんだ時のように、また謎の容器をどこからともなく取り出す。

「生で確認したが、咲夜の乳は気にするほど小さく無いではないか」
「おためごかしは結構です…美鈴の胸にご執心だったくせに」

着痩せする性質なのだろう、引っ込むべきところが十分に引っ込んでいる咲夜の肢体はけして貧乳ではない。
ただお仕着せの衣装のデザインもあいまって、控えめに見えるのだ。
白皙の肌が薄紅色に染まる様は美しいな。
そう咲夜の耳元で夜智王が囁く。
耳にかかる息の熱さと、甘い匂いにぞくりと咲夜の肌が泡立つ。

「おべっかではないぞ?乳は大きさだけが全てではない…ほれ十分に柔らかくて、すべすべの良い乳ではないか」
「あ…っ!や…ぁ…っ」

左右の乳房に手を伸ばすと、そっと包み込み、優しく、ふにゅり、ふにゅりと揉みはじめる。
乳房を全体を丹念に揉み解される度、咲夜が、はっ、ふっ、と甘く喘ぐ。

「うん、やはり良い乳だ、ぬくたいし、敏感だし、掌にすっぽりと収まるのも具合が良い」
「やっ…掌で…乳く…が…っ!」

敏感な桜色の先端を掌で転がされ、びくびくと咲夜が震える。
小ぶりな乳房は繊細でわずかな愛撫にも敏感に反応を返す。

「少し撫でただけで、こんなに気持ち良くなって、愛撫のし甲斐があるな」
「っ…ひぅ!…いっ」

びくっ!
びくん!
夜智王が咲夜の乳房を褒め、愛撫する度に、小さく背を仰け反らせ咲夜が体を奮わせる。

「や、やちおうさぁん…きもちいいんです…むねが、こんなの、は、はじめて…」
「仙人仕込みの房中術だ、元が柔らかいからな、もう少しだが膨らんできたぞ」
「あ…あぁ…うそ…」

震える咲夜の脚を持ち上げて、横抱きにした夜智王が、その胸に顔を寄せる。

「やっ!だめです!」

舌を伸ばした夜智王に、何をするのか察した咲夜が胸を掻き抱くように覆いガードする。

「どうしてだめなのだ?」
「い、今舐められたら…」
「うん?イッてしまいそうなのか?」
「ど、どうして!」

無理も無い、咲夜の呼吸は荒く、肌は紅潮し、瞳は潤んでいる。
控え目にだが、女陰から秘蜜も零れ始めていた。

「大丈夫だ、ちゃんと加減しているから、このくらいでイクことはない」
「う、うそ!」
「薬を使うと舐めれなくなってしまうからな、さぁ手を退けろ」
「やです…」
「そうか…では舐めるのは我慢するか…ほれもう舐めんから手を退けろ」

再び咲夜を後ろ抱きにした夜智王は、いよいよ、例の軟膏を取り出した。

「お嬢様に使ったのとは…容れ物が違いますね」
「こちらは酒精で薄め伸ばした物だ」

薄めた物か…内心で咲夜はほっとする。
プライドの高いレミリアが懇願する程に「狂う」軟膏である。
性の経験値が同程度でも、体が未成熟なレミリアでああなのだ。
胸こそ小さいが、体の成熟具合は十分な咲夜、あんなものを塗られたらどうなってしまうのか。
不安とわずかな期待に胸が高鳴る。

「最初は冷たいぞ」
「はい……きゃっ!つめっ!」

びくんっ!
殆ど液体に近い軟膏が胸に垂らされ、その冷たさに咲夜が震える。
つつつつ、と軟膏を掛け流しながら、夜智王は右手でそれを咲夜の胸に塗りこんでゆく。

「ふぁっ!」

先ほど舐められなかったお返し、とばかりにすっかり勃った乳首をきゅぅっと夜智王が絞る。
目をぎゅっと瞑り、背中を震わせた咲夜。

「ひ、ひどいです…いきなりぃ…」

相当に気持ち良かったらしい。夜智王が乳首から指を離し、乳房を撫で回す作業に入っても、余韻を堪えるように、小刻みに震えている。

「う…っ。ふぅ…っ!や…あっつぅぃ!」
「効いてきたな、もう少し追加しよう」
「だめっ!もう…じゅうぶ、ひぅ!」

熱を帯び始めた胸に冷たい軟膏は落ちると一瞬は心地よい、だがそれはすぐに焼けるよう熱さに変わり、咲夜を責め苛む。

「は、はやす…ぎっ。や、やちおう…さん!?」
「もう分かっているとは思うが。この薬は酒精で薄めると、効き目が早く、強くなるのだ」
「そ、そんな!」
「しかも、疼くばかりで、絶頂まで時間がかかると良いこと尽くめよ。うん、大分膨らんできたぞ」
「や、いやぁ…ばかぁ…」

恥ずかしさと、気持ち良さと、快楽への恐怖に、咲夜の眼にが浮かでいた涙は決壊し零れ落ちる。
ぺろりと舌を伸ばして咲夜の涙を舐め取りながら、丹念に夜智王は愛撫を続ける。

「はぁ…っ!ふぁ…ぁんっ!…やぁ…きもちいぃ」
「それは良かった、ほれ咲夜も自分で触ってみろ」

咲夜の手を取り自身の胸を触らせる。
ふぁぁぁぁ、と咲夜が感嘆の声を漏らす、毎晩嘆きの嘆息と共に手を当てる胸とは、大きさも感触も、何もかもが違う。

「咲夜は自分の胸で自慰はせんのか?」
「し、しませんよ…なにを」
「それはいかんなぁ、やらしい気分で乳を揉まねば性徴はせんぞ」
「う、うそです、そんなの俗説です」

そうか?と言い。胸から離れない咲夜の手に自身の手を重ねた夜智王。
くにゅりくにゅり、といやらしく咲夜に指導するように胸を揉ませる。

「あっ…やだっ…」
「気持ち良いだろう?密かに胸だけでイキそうなのはワシのせいにしとるようだが…違うぞ?」
「う、うそです…きもちよくなんて…ひっ、うっ!」
「ほれ、左右から寄せてみ、谷間ができるぞ?」
「うっ、あっ…いいっ、きもちいいです」
「さきっちょが触って欲しくてぴくぴくしておるな、ワシが慰めてやろう」
「あっ、だめです、ちくびだ―ひゃぁ!…きゅぅぅぅ!」

咲夜に自分の胸を揉ませながら、ひくつく先端をしごくと、咲夜が妙な悲鳴を上げる、よほどに気持ちよかったのだろう。

「今、少ししイったな」
「いってません!…やぁ、ぐりぐりしないでぇ!はぁぁ…ふあぁぁぁ、いい、いいですぅ」
「見ろ、ぱんぱんに膨らんだぞ」

ぽよんぽよん、とすっかりCカップくらいになった昨夜の乳房を弄ぶ夜智王。
乳房が揺れる度に、ひぅ!ひゃぁ!と咲夜が嬌声を上げる。

「さてさすがに今宵はこれ以上は膨らまんかなぁ」

そう夜智王がぼやく。
やっと終わる。
そうぼやけた頭で咲夜は安堵する。

「さて、では追加だな」
「やっ!やめ…ひぅ!あっつい!あっついです、やめてぇ…あぁぁ、こぼれてる、こぼれてます、もうとめて、やちおうさぁん」

膨らんだ咲夜の乳房をデコレーションするように、とろとろと容器から軟膏を流し続ける夜智王。
アルコールで薄められ緩いせいと、夜智王が乳房に塗りこまないので、軟膏は咲夜の体を伝い、重力に従って“下”へ流れてゆく。

「だ…め…おへそまできてます…あ、あそこに…やちおうさま、おねがいです、とめて、とめてぇ!」
「う~んどうしたのだ?それよりも見ろ咲夜、すっかり膨らんだから、いやらしく化粧出来たぞ」
「そ、そんなばあいじゃ…ひぅ!」

妖しい秘薬が咲夜の可愛らしい茂みを濡らし、秘芯へと到達する直前、夜智王がそっと咲夜を寝台に横たわらせる。
落下を止めた薬は、左右に流れ、咲夜の腹を伝ってゆく。

「あ、あ、あ…おなかに…おなかじゅう、べとべとに…やだぁ、やめてくださぃ」

右手で胸を、左手は臍を中心に咲夜の腹に塗る込んでゆく夜智王。
実に愉しげで、意地の悪い笑みを浮かべている。

「下の口に流れては困るのだろう?大丈夫だ乳は膨らむが他には影響が無い、咲夜のこのほっそりとした体はこのままだ」
「あついのぉ…おなかじゅうがぁ…おかしくなっちゃいます…やちおうさまぁ」
「様はやめよと言っただろう?二人きりなのだから、遠慮なく呼び捨てにせい」
「おねがい…やめてください…このままじゃぁ」

本当に気が触れてしまう。
ぼろぼろと涙を流しながら、咲夜が懇願する。

「わかったわかった」
「ひぅ!やっ…くぅ…なめっ…あっ…んん!」

塗りこんだ軟膏を舐め取るように、咲夜の腹部を丹念に夜智王が舐め始める。

「んっ…ワシの唾液が解毒剤なのだ」
「どくってひった!いまどくって!ふぁ…ぁっ!」

夜智王の舌が這うと、じくじくとくすぶるような熱を伴った疼きは消える。変わって痺れるような快楽が咲夜の全身に走る。
がくがくと体を痙攣させる咲夜を労わるように、夜智王は優しく舌を使い続ける。

「あ…ぅ…あっ!おへそ、やぁ!きもちいい!」
「んっ」

ちゅっ
音を立ててヘソを吸うと、激しく咲夜が反応する。

「やっ!すちゃらめぇ!」
「んん?」

ちゅうぅぅぅ!
懇願を聞き入れず、より強く吸い付く。

「だめっ!らめらっへっ!おへそらめぇ!」
「ふむ。咲夜はへそが弱点か」
「らめ…もう、いっちゃいますから…すっちゃだめぇ、なめるのやらぁ」

いやいやと激しく首をふる咲夜が可哀想になったのか、ようやく夜智王が舌を引っ込める。

「まぁあらかた清めたし、良いかな」

自分の唾液でべとべとになった咲夜を、取り出した布で清め、持ち上げ後ろ抱きにする。
ぷるぷると震える乳房に両手を伸ばす。
優しく握ると、ぴくん!と咲夜が反応する。

「んっ!…あぁ…おっぱい…いいれふぅ…もっと、もんれぇ」

すっかり呂律が回らなくなった咲夜を抱きしめ、優しく胸のへの愛撫を再開する。
はぁ…ふぅ…と咲夜が悩ましげな声を漏らしながら、甘く喘ぐ。
掌に吸い付いてくる乳房を、掴み、捏ね回す。
膨らんだ乳房は、まるでゼリー製のように柔らかく、その感触が心地よい。
ぐにゅっと強めに握ると、指の間に柔肉が盛り上がり、淫靡な光景を作り出す。

「ふぁぁ。それいいれす…もっとぉ」
「ちょっと乱暴にされた方が良いのか…案外に咲夜はまぞひすとだな」
「やっ!まぞひゃないれすぅ!いひわるいわないれぇ!」
「ん~?本当か?それ」
「きゃぁぁ!やっ!いっ!」

いきなり乳首を摘まれ、ぐにぐにと揉むように愛撫された咲夜が悲鳴を上げる。
全身をつっぱらせ、掴んだ夜智王の体に、爪を立てる。

「んっ…くぅ!…ちくびっ…しごいちゃ!…はっひぅ!…やっ、ふっ、あっ、だめぇ!やめっ、さきっぽくにくにしないで!のばしちゃだめぇぇぇ!」

膨らまさせた乳を堪能するように弄る夜智王に、咲夜は翻弄される。

「やっ!おっぱいでいっちゃう!…やだっ!いんらんみたいで、やなの!ひぅ!やさしくしてくださぃ」

右の乳首を苛めながら、左の乳房を揉み始める。
左右から、種類の違う快楽が襲い掛かり、咲夜がぶるぶると震えだす。
限界が近いようだった。

「イってもいいのだぞ?」

きゅうっ!
人差し指と中指で両の乳首をコリコリと弄りつつ。掌で乳房をぎゅうっと絞る。

「やだぁ!…ひぐっ!…いやですぅ!…いじわるぅ…ぐすっ…優しくしてくれるって…いったのにぃ…ぐすっ…あっ!」

すいっと夜智王が乳房から手を放した。

「ちと苛めすぎたなすまんすまん」
「ひ…っ…う…はぁ…ふぁ」
「どうする咲夜?もう少し優しくして、乳でイったら止めるか?」
「え…やめちゃ…そんな」
「相当に辛そうだしなぁ…生娘に少々刺激が過ぎた。朝まで添い寝してやろう、それだけでも結構気持ち良いのだぞ?」
「むりです…おなかが、じくじく…うずいて、もう…おっぱいいじめないでください」
「うん?全部やめるか?」
「そんなのむりです……はずかしい…いわせないでください…あたし、はじめてなのに…」

ぎゅっと目を瞑り、羞恥に耐えながら、最後の一声を言おうとして、果たせない。
恥ずかしすぎるのだろう。
そんな咲夜を労わるように抱きしめ、優しく撫でてやりながら、その耳元で夜智王は囁く。

「ワシで良いのか?心に決めた男などはおらんのか?」
「いいんです…おねがいです…ただ…優しくしてください。あんなおかしくなっちゃうみたいなのは…いやです。」

わかった。と言った夜智王の指が、そっと咲夜の唇に触れる。

「良いか?」
「はい」

目を閉じた咲夜が顔を夜智王の方に向ける。
震える唇に夜智王の唇が重なった。






唇の感触を味わうように接吻し、一度離す。
とろん、とした表情の咲夜の、艶やかな唇に、再度唇を重ねる。

「んっ…うんっ…ちゅ…んん?…ふぁ…こくっ…あっ…ぷぁ!…やぁつば、やめて」
「ちょっした痛み止めだ、我慢して飲め」
「ん…っ…んんっ…こく、こくんっ…あ、あまいです…からだが、ぴりぴりします」
「それで破瓜の痛みが和らぐ、薬が効いているうちに挿入れるぞ、覚悟はいいな?」
「はひ…」

すでに漏れ出した秘蜜でぐしょぐしょのショーツを脱がして放り捨てると、夜智王は薬のせいでやや舌っ足らずになった咲夜を、寝台にうつ伏せ寝かせる。

「なんでうしろ…ひゃぁ!」

ひょいと腰を持ち上げ、尻を突き出させる。
後ろから交わるつもりらしかったが、獣のような格好に咲夜がふるふると首をふる。

「やぁ…まへからしてくらはいぃ…こんなぁ」
「こちらの方が加減しやすいからな、我慢しろ、痛いよりよいだろう」
「うぅ…」
「最後はちゃんと前からイカせてやるからな」
「はひ…」

ちゅ、っと軽く咲夜の唇を啄ばみ、悩ましい曲線を描く尻に手を当てる。

「ふぁぁ…おひり…おひりまできもちいいれす…」

さわさわと撫で回した後、くにくにと揉み始める。
破瓜の痛みを少しでも和らげようと、緩やかな快楽を咲夜に与え続けながら、しとどに濡れぼそる秘裂に、一物をあてがう。

「ふぃ!」

亀頭が湿った花弁と接触し、くちゅ、といやらしい音を立てる。
まったく弄られていなかった女陰に、初めて触れる男の体、その熱さと、痺れるような快楽に咲夜が嬌声を抑えられない。

「ゆっくりするからな、我慢せず痛いときは言え」
「だいじょうぶです…だから…くちゅくちゅしないで…それだけ…でぇ」
「わかった」
「……っ!…ふっ…くぅぅ」

つぷ、つぷぷぷ
あふれ出す愛液を潤滑液にして、咲夜の体内へと夜智王の一物が侵入してゆく。

「ふぁ…っ…あっついです…ひぅっ!」
「大丈夫か?」
「へいき…っ…です…おおきすぎて…くるしいですけど…いたくありません」
「まだ入り口しかはいっとらんからな…そろっと痛むぞ」

コツン、と一物の先端に固い感触来る。

「ひっ!いっ!…う゛~」

ビリッ!と全身に走った痛みに咲夜が背を仰け反らせ、痛みを堪えるように、反射的に目前のシーツを口に咥える。

「ふぅ~!ふぁっ!」

僅かに腰を引いた夜智王が、きゅっと尻を掴む。

「一気に行くぞ、我慢しろ」
「はひ……ぐっ!ふ゛ぁぁぁぁ!」

ブツン、と何かが切れたような感触と激痛。
耐え切れず咲夜の、ぎゅうっと瞑られた眦から涙が零れ落ちる。
処女膜を破いた夜智王は、一度腰を引き完全に一物を引き抜く。

「よぉ頑張ったな」

ふぅ~ふぅ~と産気づいた妊婦のように荒く呼吸する咲夜を抱きしめ、よしよしと頭を撫でてやる。

「なんで…ぬいちゃ…」
「前からするのだろう?奥まで入れるのはもう少し慣らしてからな」
「やっ…きたないです!」
「平気だ」

咲夜の秘所に顔を寄せ、破瓜の証である鮮血を癒すように夜智王は舐め始める。
いまだぴりぴりと痛む女陰に、夜智王の舌が触れるたび、その痛みが不思議と和らいでゆく。

「あっ…やっ…だ、だめです…したいれちゃ、きたな…ふぁあぁっ!」

くにくにと大陰唇を愛撫しつつ、ぺしゃぺしゃと音を立てて夜智王の舌が膣口を慰撫する。
とろとろと流れ出る秘蜜を、旨そうにすする夜智王に、咲夜が真っ赤になり、顔を両手で覆い首を振る。

「やぁ、はずかしい…ひぅ…ああっ、いいです、きもちいいです」
「ここも舐めるぞ?」

散々にほぐされ、ぷっくりと顔を出した秘芯…陰核に夜智王の舌が伸びる。

「あ…ひゃぁ!いっ!だめです…そこだめっ!いっちゃう!」

もっとも繊細な女性器への僅かな粘膜の接触。
ツンととがった夜智王の舌が優しく触れただけで咲夜がよがり、悲鳴を上げる。

「敏感な真珠だな」
「はぁ、はぁ…やらしいこといわないでください…夜智王さん…もう平気です…痛くありません」
「そうか、では今度は奥までいくぞ」
「は…い」

仰向けに寝かせられた咲夜が恥ずかしそうに顔を背ける。

「いまさら照れるな…」
「む、無理です」

どうしていいのかわからずもじもじする咲夜の膝を抱え股を開かせる。
かぁ、さらに咲夜が紅潮する。
構わず、夜智王は二度目の挿入を開始した。

「ふっと」
「ふぁぁぁぁ!」
「痛いか?」
「きもち…いい…です」
「そうか、では奥まで挿入れるぞ」
「はい…あぁっ、あぁあぁぁぁ!…ふぁ、あっついです!…おっきぃ…あぁぁあっ!」

まだまだ固いが、それでも咲夜の襞肉は従順に夜智王の一物を受け入れ、飲み込んでゆく。

「やだぁ…わたし…あっんっ!…はじめてなのにぃ」
「ワシがほぐしたのだ、別に咲夜が淫乱なわけではないぞ?」

淫乱、と夜智王が囁くと、どくんと咲夜の心臓が高鳴り、びくっと膣内が痙攣する。

「はぁ…おくまで、きてます…」
「きゅうきゅうと良く締める肉壷だな、並みの男ならあっというなに射精しておろう」
「やぁ!またいじわるぅ」
「…褒めたんだがなぁ」

最奥まで挿入した夜智王は、腕を突き出してくる咲夜をそっと抱きしめる。

「夜智王さんのが、ふぁ…どくんどくんって、してます」
「咲夜のもにゅるにゅると蠢いておるぞ」
「きもちいい…ですか?」
「ああ、気持ち良いぞ」
「う、うごかないんですか?」
「もう少し咲夜のここが慣れてからかのぉ」
「そ、そんなぁ」

夜智王が自分を気遣ってくれているのは分かる。
だが咲夜はふるふると首を振る。
まだ時折痛むものの、膣肉が動き、一物が震える度、全身に快楽が広がっていく。
気持ち良い、気持ち良すぎて、これが当分続いたら気が触れてしまう。
いっそ激しく突かれ、もっと激しい快楽に溺れた方がマシだ。
だが、それを自分から口にするのは、あまり恥ずかしい。

「このまま、咲夜のここがワシの形になるまで、朝までこうでもワシは良いぞ」

すべてお見通しと言わんばかりに、にぃと邪悪な笑みを浮かべた夜智王が甘く囁く。

「むりです…そんなの」
「大丈夫だ、接して漏らさずは房中術の基本中の基本だからな、萎えたりもせんぞ?」
「ひどいです…優しくしてって、ひっく、いったのに…」
「優しくしてるではないか?」
「いじわるしないでください、い、いかせてください…」

蚊の鳴くような声での咲夜の懇願。

「なんだって?」
「いじわるぅ」
「はっはっは、すまんすまん、咲夜があんまり可愛いからつい虐めてしまった」

羞恥の余り溢れだした涙を舐めとり、ちゅっとおでこに接吻する。

「名残惜しいが女子の涙には敵わん」

そう嘯き、夜智王の腰がゆっくりと抽送を開始する。

「うっ…ふぅ…あっ!…はぁぁ」
「力を抜け、そんなに力むと辛いばかりだぞ?」
「むり…あっ…くぅ」

辛そうに咲夜が呻く。快楽よりも苦痛が大きいのだ。

「やれやれ」
「あぁ」

無理だな、と判断した夜智王は腰を引いて一物を抜き取ってしまう。
咲夜が抗議の声を漏らす。

「夜智王さん…いじわるぅ」
「まだ無理だよ咲夜、痛いを思いをする必要はないさ」
「でもぉ」
「指と口でイかせてやるからな」
「あっ!…ひぅ!」






「はぁ…ふぁ…っ!」

結局その夜は。夜智王の指と舌に丹念に愛撫され、あっさりと咲夜は果てしまった。
ごめんなさい、と謝る咲夜に夜智王は笑いかけ、優しく抱きしめてくれた。
ガチガチの男根をなんとかしてあげたい、と訴えた咲夜に、夜智王は悪戯っぽい笑みを浮かべ「ではその膨らんだ乳で出すか」と言った。
本来なら豊満な乳房でする物と思っていた咲夜だが、夜智王は首を振った。
嘘ではない、という証拠に、咲夜の乳ズリと口の奉仕で夜智王は精をたっぷりと吐き出した。

思い出すだけで、恥ずかしく、興奮してしまう。
自然、自分を慰める行為もエスカレートしてゆく。
右手はもどかしく乳房を嬲り、膣内に滑り込む指が一本増える。

「ふっ…あぁ…はぁ…いくぅ…いっちゃうのぉ…だめぇ…」

ぎゅうっと乳首をつねると全身に痺れが走る。

「あっ!やっ、いっ!…くぅぅ」

それが引き金となり、咲夜は肢体を震わせ達する。

「はぁ…はぁ…また、しちゃった…もう」

余韻に震えながらも、どこか物足りない自慰への虚しさに、また咲夜は悩まし溜息を吐くのだった。




[26700] 蛇、妖怪の賢者、鬼と宴す、の巻
Name: 窓◆0bf2c45e ID:6be04712
Date: 2012/01/04 04:45

「冷えると思えば風花か」

夜智王が幻想郷にやってきて早一月が経とうとしていた。
山中の庵で、珍しく一人だった夜智王は、ふわふわと舞い降りる雪を、古風な名で呼んだ。
囲炉裏に薪をくべて少し火を強くする。
その上で障子戸を開け放ち、風花を肴に杯を重ねる。
その風花で何かを思い出したのか。
何かを思いついたのかのように、壺中天に手を突っ込む。

「はて、たしかこの辺に・・・おおあったあった」

取り出されたのは琵琶だった。
平安の昔に使われた楽琵琶、ただ飾り気のない質素な物だ。
べん、べんと酒を呑みながら、調弦する。
半刻程そうしていただろうか、満足のいく音になったのか、夜智王は琵琶を鳴らし始めた。
浄、浄と琵琶の音色が山中に響く。
本職の楽師顔負けの腕前であった。
酒器をもう一つ取り出すと、酒を注ぎ傍らに置く、自分の杯を干し、琵琶を鳴らす。

「懐かしいわね」
「そうだな紫」

唐突に現れた紫(彼女の出現は大抵唐突だが)が声をかけてくる、珍しく夜智王は「スキマ」ではなく「紫」と彼女を呼んだ。

「一杯いただいて良いかしら」
「ああ、自家製のどぶろくですまんがな」
「かまわないわ」

紫に酌をし、夜智王は琵琶を鳴らし続ける。

「なんという曲だったかしら」
「流泉だ、今の世では秘曲と言われてしまっているがな」
「そう、そうだったわね・・・やっぱりあなたちょっと下手ね」
「おいおい平安でも一二を争う楽師だった男と比べられても困るぞ」
「そうね・・・でもあの時の宴は楽しかったわ」

あの時もこんな風に風花が舞っていた。
もう千年も昔の、人と妖の距離が近かった頃の、懐かしい思い出。
それに二人は浸る。

「あの時はワシは女に化生しておったが、あの男はついぞなびいてくれなんだ」
「あなたはそればっかりね」
「だがあれはよい男だったからな」
「そうね」

昔を懐かしむように紫も杯を重ねる。
二人にしては(紫が一方的に夜智王を厄介者をみているのだが)珍しく穏やかな時が流れていた。

「それで、何用だ?」

急な紫の来訪。
まさか琵琶の音が懐かった、というわけでは無いだろう。
それだけならば、別にスキマ越しに感傷に耽ることも彼女には可能だからだ。
そもそも紫はそろそろ恒例の「冬眠」の時期だ。

「それは――」「厄介ごとだよ」

紫が答えるよりも早く、別の声が割り込んだ。
いつの間にかささやかな宴に参加者が増えていた。

「伊吹童子か」
「あら萃香、来たの」

小さな体に似合わぬ立派な二本角。
四肢に繋がる鎖と重石
幻想郷で唯一の鬼、伊吹萃香だった。

「懐かしい音がしたんでな・・・おい、あたしにも酒」
「・・・ま、よかろ」

無限に酒を湧かせる瓢箪をもっているくせに・・・と思いつつ、客人に酒を振舞わないのは無粋だ。
無粋や野暮を嫌う夜智王は、萃香愛用の巨大な杯に酒を注ぐ。
かけつけ一杯、とばかりに萃香はそれを一気に飲み干す。

「へぇ結構いけるな」
「たまにはドブロクもよかろ?」
「水みたいにいくらでも飲めそうだ」

どばぁ、と萃香が酒を杯に注ぐ。

「おい、やめよ!」

あわてて夜智王は酒壷を取り返し、抱え込む。
鬼の酒に比べれば水のように軽いドブロクである。
あっという間に飲み干されてしまう。
けちけちすんなぁ!と萃香が夜智王から酒瓶を取替えさんと踊りかかる。

「・・・話続けても良いかしら?」

ぎゃーぎゃーと酒壷を奪い合う二人に、呆れた様子で紫が話かける。

「厄介ごとだそうだが、ちと待て」

なんとか酒を死守した夜智王は、変わりに水瓶を持って来て萃香に渡す。
彼女の瓢箪は水を注げは、それで酒になるからだ。
とまれ夜智王と萃香はぐいぐいと酒を呑みながら、紫の話に耳を傾ける。

「あなた最近神社には行った?」
「いや、最近はどうにも欝でな、寒いし、家に篭ってばかりよ」
「あなたが欝?はっ!」
「お前にそんな感情があったのか?」

ひどいのぉ・・・と夜智王はぶつぶつと文句を言う。
古馴染みの彼女らは容赦がない。

「もっぱらの原因は文と諏訪子だ・・・あの二人の悋気のせいで、最近は女日照りよ」
「ああ・・・」「そういうことか、お前にしちゃ珍しいよな」

ねぐらを確保した夜智王はふらふらとあちこちに出向いては、酒を酌み交わしたり、女を口説いたり、抱いたり、殴られたりしていたのだが。
まず御山近辺の妖怪が誘いに乗らなくなった。
天狗の中でも実力者である文の悋気からくる八つ当たりと、諏訪子の怨みを買うことを恐れたのだろう。

「河童を一匹釣って食ったのだが・・・ワシが夜智王だと知れるといきなり泣き出してな・・・あまりに泣くので暗示をかけて記憶を誤魔化して帰したんだが」
「ざまぁみろ、と言ってあげるわ」
「ご愁傷様だな」
「・・・紅魔館もなぁ、美鈴は妙に警戒してがーどが堅くなったので未遂で終わってしまったし・・・レミリアを抱いたのだが、これがまずかった、いや味はなかなかだったのが」

咲夜以下、レミリアに遠慮してるのか、誰も誘いには乗ってこないのだ。
フランドールは幼すぎてそんな気にはならない。

「まったくたまったもんではない」
「でも射命丸とはヤりまくってるんだろう?」

当たり前だ!と夜智王は毒づいた。
女日照りの原因なのだから、責任は取ってもらわないといけない。
・・・それが文の狙いだとはわかっているのだが。

「ついでにいうと、懇願・・・というか脅迫されて諏訪子も二三度抱いた」
「最悪」

紫は諏訪子の幼い容姿を思い出し、侮蔑の篭った視線を夜智王に向ける。

「しかたなかろう!あのままだとワシがやばいことになりそうだったのだ!」
「というか、そのうち山がミシャクジ様と天狗の痴話喧嘩でヤバイことになりそうだな」

萃香は酒を呑みながら、良い感じに酔った調子でそんなことをいう。
のんびりしているのは、その程度の喧嘩のとばっちりでは、萃香には害が無いからだろう。
さすがに最強種である鬼だ。
ただ、誰よりも幻想郷を愛する紫は違う。
柳眉を寄せて、妖怪の山上空で繰り広げられる文と諏訪子の決戦を想像する。
弾幕ごっこのうちは良いが、なにせ痴話喧嘩である。
何かの拍子に本気になることもあるだろう。

「それは困るわね」
「安心しろ、何故か知らんがあの二人は妙に仲が良いのだ・・・浮気・・・まぁワシの主観では浮気ではないのだが・・・すると二人で、嬉々として折檻にくるのだ・・・」

それもあって夜智王の女日照りは続いていた。
あの二人を恐れない人物は数名いるのだが・・・

「幽々子はダメよ」

これである。

「知っておるわ、ワシが白玉楼に行くと必ずお前か九尾が邪魔にくる・・・おかげで妖夢を誑かす悪い男のフリしかできん」
「フリぃ?お前悪い奴だろ?」
「あれは幽々子に頼まれてやっているのだ」
「最近の妖夢はもう完全にあなたの虜よね。最低」
「だからワザとだと言っておるだろうが!・・・ここからが大変なのだ、妖夢を傷つけぬよう、細心注意を払って苦い初恋を経験させねばならんのだぞ・・・まったく面倒な」

下手を打てば幽々子のおしおきが待っているだろう。
死を操る彼女の能力は夜智王にとってもひどく厄介な物だ。

「はははは!あの夜智王蛇が女で苦労してるぞ!こいつは傑作だ、あははははは!」
「やかましいぞ!伊吹童子!この酔っ払い!」
「どうにもならなくなったら、あたしが相手をしてやろうか!?あはははは!」

たしかに萃香ならば文も諏訪子も怖くは無いだろう。
だが・・・

「幼女は諏訪子とレミィだけで十分だ」

そうか。と萃香は淡々と返した。
あいにく彼女はあまりそういったことに興味が無いのだろう。

「というか吸血鬼のお嬢様は抱いてるのね?最悪」
「うまくやればレミィ込みで三人、四人という状況に持ち込むのを狙っている」

まぁ傲岸不遜なレミリアをひぃひぃ言わせるのが愉しいがな。
と蛇はきゅうと目を細める。

「死になさいよ、この性悪」
「せっかく良い女がいるのに!!なんとかして情を交わそうとするのは当たり前であろう?だから紫、やろう」
「スキマに幽閉してあげましょうか?」
「つれないことをいうな」

紫の手をとって手の甲に口付けしようとする夜智王。
その手を振り払い夜智王の頭部に拳骨を落とす。
ぎゃーぎゃーと二人はいがみ合い始める。

「話がそれてるぞ?」

萃香の突っ込みで我に返った紫がコホンと咳払いをし、居住まいを正す。

「先日、博麗神社の近くに間欠泉が沸いたの」
「ほぉ、良いな。温泉に入りに行こうではないか、当然混浴で、いたっ!」

紫の扇子が夜智王の頭部を強打する。
黙って聞けと夜智王を睨み、紫は話を続ける。

「それだけならね・・・問題は間欠泉と一緒に地底から地霊が吹き出してきたことよ」
「ふぅん・・・それで?」
「色々と協議の結果、霊夢を地底に赴かせることにしたわ」
「地霊が湧くのは異変ということか」
「そうよ、地上から私や萃香が霊夢をサポートするわ」

なんとなく夜智王は話の流れから、自分の役割を察した。
地上の妖怪は地底には足を踏み入れられない・・・らしい。
だが、自分は別だ。
そのことを紫は承知している。

「でワシの役割か囮か?それとも撹乱か?」
「あなたはいるだけで騒動を巻き起こす性悪蛇でしょう。ただぶらり旧地獄の旅、夢気分、で行ってくれればそれで良いわ」

つまり両方ということである。
霊夢が地底に赴けば一日かそこらで異変は解決する。
ただ今回ばかりは異変の黒幕の意図が見えないため、念には念を入れて、紫は夜智王を地底に投入するつもりだった。
夜智王も何匹か鬼が居るらしいと言われている地底には興味がある。
この話を受けることにした。

「わかった、いつからいく?」
「霊夢を明日説得して、明後日には赴かせるから、貴方は今日にでも」
「急だな・・・」
「報酬は弾むわよ?外の世界の品で必要なものがあるなら――」
「報酬は決まっておろうが・・・お主だ紫」
「え?」

夜智王の言葉に、紫の表情が凍りつく。
夜智王は畳み掛ける。

「忘れたとは言わせんぞ。前回の時、お主九尾を生贄して逃げただろう?今回は絶対にお主の番だ」
「・・・・・・」

引きつった笑みを浮かべ、目を逸らす紫。
完全に記憶の彼方へ葬っていたしい。
やけに藍が夜智王を嫌うのは・・・ああそういえばそんなこともあったわ・・・あはははは。

「だめだなぁ紫、約束は守らないと」

萃香が剣呑な声で言う。
基本的に鬼という種族は、嘘や約束を破ることが嫌いな種族なのだ。
まずいまずいまずい。
夜智王だけならいざしらず、萃香と二人同時に相手取るのは紫にとってもかなりきつい。

「わかったわ、無事帰ってきたら――」「前払いだ」

そうしないと踏み倒されることを夜智王は知っていた。
紫も踏み倒す気だった。

「諦めろ紫。いいじゃないか夜智王は幻想郷一の床上手だろう?痛くはしないぞ?」
「別に私は生娘じゃないわよ!」
「そうだったのか?古い付き合いだけど、お前に男が居た所見たこと無いが」
「女同士が良いなら女に化生するぞ」
「私は別に同性愛者じゃないわよ!」
「そうなのか?ワシはてっきり・・・」
「うるさぁぁぁい!」

結局紫が折れた。
面倒な借りは早めに清算するべきだ。と思うことにしたらしい。
萃香は「邪魔しちゃ悪いな」と行って暇を告げる。
夜智王は「早く育てよ!」と無茶な注文を出して萃香を見送った。

「では、まぁとりあえず風呂にでも入るか」

もちろん一緒にである。

「・・・その後は?」
「お主とはひーふー、三回目の情交だな、千年振りくらいか?」
「うぅぅぅぅぅ」
「ほれ風呂だ風呂」

そういうことになった。



[26700] 蛇、風呂にて妖怪の賢者と戯れる、の巻
Name: 窓◆0bf2c45e ID:6be04712
Date: 2012/02/21 03:40
「冬の寒さは堪らんが、風呂だけは格別よ、そうおもわんか?」
「そうね」

夜智王の庵の風呂は、半露天である。
脱衣所から風呂場に入ると、前方の壁が無く、里山の景色を堪能できるようになっている。
質素な庵に比べて随分凝った造りで、大岩をくりぬいた浴槽が見事な物で、大人が三人は入れる大きさはあるのだろうか?
普段は地下水脈から汲み上げた水を貯めて、妖術で沸かしているの、だが今日は一味違う。
浴槽は乳白色の湯で満たされていた、紫がスキマを使って外界の温泉を取り寄せたのだ。
湯煙の中に美女が二人、白磁のような肌をほんのりと紅く染めて、湯に浸かっていた。
金髪美女は紫、黒髪美女は夜智王の変化だ。
共に普段は流している長い髪を結い上げており、覗くうなじと、後れ毛が艶かしい。

「時に紫、まだ脱がんのか?」
「脱がないわよ」

沐浴用の麻製の湯帷子を纏い、きっちりと肩まで浸かる紫に、半身浴で惜しげもなく胸を晒した夜智王が言う。

「ヒトが気を使って女に化けたのに、無粋だぞ」
「天狗にでも隠し撮りされたら嫌なのよ」
「そんな度胸のある天狗なぞおるのか?」
「う・る・さ・い」
「・・・・・・まぁいいがな」

目を細めた夜智王は、ちらと紫の艶姿を盗み見る。別に堂々とガン見しても良いのだが、盗み見たほうが風情がある。
僅かに透ける肌色。
布が張り付いて、浮き彫りになった紫の肢体の凹凸。
良いな。と夜智王はうっとりとした様子で嘆息する
ともすれば、着ている方が全裸よりも劣情を誘う、と言うことを紫は分かっていないのだ。
彼女の肢体を肴に、夜智王は浮かべた桶から徳利を取り、杯を満たして、くいと一杯飲み干す。

「ん~うまいなぁ、冬枯れの森の侘しさ。舞う風花の風情。そして何より極上の湯煙美人。最高の肴ぞ」
「人を肴にしないで頂戴」

ツンケンした様子もまた良い。
もっとも、この蛇にしてみれば、女のどんな仕草も「良い」になるのだが。

「固いことを言うな・・・ほれ紫も呑め・・・よし。しかし地底か、元は地獄だったな」
「そうよ、地上に居場所を無くした妖怪達が移り住んだ場所……本来は相互不可侵の約束になっているのだけど」
「間欠泉に怨霊か…灼熱地獄が一枚噛んでいるのだろうが…ま、解決は巫女殿に任せよう」

旧知の鬼でも探してふらふらすれば良いのだろう?と夜智王は紫に問う。
紫も夜智王に過剰な期待はしていないので、それで構わないと返した。
本来ならば、地上の妖怪が地底に侵入するのはマズイのだが、この蛇は例外である。

「そのまま帰ってこなくて結構よ」
「酷いことを言うな。そんなことをしたら地上の女子が何人悲しむことか」

私は嬉しくってよ。と紫はツンとした様子で言い返した。
夜智王は、不満そうな表情で「えー」と抗議する。

「そんなにイケズなことばかり言うなら、ワシにも考えがあるぞ?」
「何を…きゃぁ!?」
「紫の身体は柔らかいのぉ」

まるで瞬間移動のように、夜智王が紫の背後に回り込み、後ろから抱きついていた。
脇の下から腕を回し、胸を掴み。
細い腰に脚を絡めて拘束する。

「やめっ!放しなさい!」
「嫌だ」
「あっ!」

湯帷子が張り付く紫の豊かな乳房を、夜智王が揉み始める。

「ほほ、ふよんふよんだの」

優しく乳房を揉まれ、紫が堪らずぴくんっ!と体を小さく痙攣させてしまう。
何気ない手つきだというのに、夜智王は女の官能を刺激するのはお手の物だろう、紫が反応してしまうのも無理のないことであった。

「やめなさいよ、風呂ではしないのではなかったの!?」

じたばたと暴れる紫だが、子泣き爺のように背中に張り付いた夜智王は放れない。
紫が動くたび、揉まれる紫の乳と、紫の背中に当たる夜智王の乳が暴れる。
女同士が乳繰りあう、真に眼福な光景、いや絶景である。

「これは女同士のすきんしっぷだろう?」
「ひ・・・っ・・・ゅ!」

紫の肩のあたりに顔を埋めて、自分の手で寄席あげた紫の乳を凝視しつつ、紫の甘い香りを胸いっぱいに吸い込む。
やりたい放題である。

「やめなさいよ・・・っ!」

やや遠慮の無い動きに夜智王の手つきが変わる。
くにゅくにゅと紫の乳房が、形を変える。

「紫の乳は相変わらずデカイな、というか少し垂れたか?」
「し、死にたいの!?」
「寝てばかりおるからだぞ?そこをいくとワシの乳は弾力が違うぞ?ほれほれ」

ぎゅうぎゅうと背中に自分の乳房を押し付けてくる夜智王、に紫の堪忍袋の緒がぶつり、と切れる。

「本当にぶっ、きゃぁ!」

怒気を顕にしようとした紫、その意識の隙を突いて湯帷子を夜智王はずるりと剥く。
ぼろり、と見事な双乳がこぼれ出る。
悲鳴をあげた紫が手を回すより早く、夜智王はその乳房を掴む。

「うぅむ、やはり生だと迫力が違うな」
「やぁ、あっ!…ふぁぁ」

いやらしく乳を揉みし抱いた夜智王の手技に、耐えきれず紫の口から色っぽい喘ぎが漏れる。
乳を掴んで、全体を捏ね回しながら、夜智王は紫のうなじに口をよせると、啄み始める。

「やめっ、やめて夜智王、そこは!」
「知っておるぞ、紫はここを愛撫されるのが好きだものな」
「やだっ!吸うな!痕がついちゃう!」

紫の制止を無視し、首の真後ろにキスマークを残す。
まるで所有印を付けられた様で、紫の顔が羞恥と屈辱で紅潮する。
しかし、身体は意思に反して、否応がなく夜智王の愛撫に反応し、快楽に溶けてゆく。

「なぁ紫」
「な、何よ!」

唐突に愛撫を止め、紫と向かいあった夜智王がやけに真剣な表情で紫を見詰める。
内心でドキリとしながらも、拘束を解かれた紫は、腕で胸をガードする。
いつの間にか湯帷子は剥ぎ取られていた。

「お主、大丈夫か?」
「何がよ!」
「疲れておらんか?体ではなくて…心がだぞ」

労るような、心配するような、聞いたこともない夜智王の声音に、どきりと紫の心臓が高鳴る。

「別に、何も…」
「嘘だな、普段のお主ならば、何があろうと、取引だろうと、鬼がおろうと、ワシに抱かれるのを承諾せん」

それこそ可愛い式を生贄にしてでも、紫は夜智王と交わるのを嫌がる。

「何が言いたいのよ・・・」
「お主がワシに抱かれることを承知するのは、何かあって、お主が誰かに甘えたい時、弱っている時だ」
「そんなのことないわ!たまたま、ちょっと欲求不満だったり!あんたがあんまり可哀想だからお情けで抱かれてやったのよ!」

はぁ、と夜智王は重い溜息を吐いた。

「なぁ紫・・・ワシはお主のことが心配なのだ。皆はお主をやれ妖怪の賢者だとか、境界を操る大妖と言うがな」

ワシはお主が案外に傷つきやすい心をもった、ただの少女の八雲紫だと知っておるよ。
まじめくさった声で夜智王はそう言い切った。
どくんどくんと紫の心臓が高鳴り始める、いったいこの蛇は何をいっているのか、理解できない、したくない。

「お主が冬眠するようになった時はな、結構真剣に焦ったぞ?代々の巫女殿が儚くなると、密かに落ち込むことは知っておったが、あれには参った」
「……」
「置いて逝かれるのは、生き汚く長く生きる者の宿命だがな・・・ワシはお主の心が壊れてしまうのを見るのは、嫌なのだ」

紫にも覚えがあった。
身は滅びずとも、長い生に耐えきれず心が死んでしまう妖怪も居る。
往々にしてそういう妖怪は強い力を持ってるものだ。
肉体的な要因で死ににくい、ということなのだが。精神までもが強くあるとは限らない。
力弱くとも、ふてぶてしく生きる妖怪も居るというのは、皮肉な話だ。
神代の昔から生きる夜智王、それも好んで他者と交わるこの蛇は、どれだけの死を看取って来たのだろうか。

「お主とは長い付き合いだ。お主を喪うのが嫌なのだよワシは」
「あ、あなたに心配されなくたって、平気よ」

うわずった声で紫は強がる。
その顔は、まるで愛の告白のようなことを言う夜智王の言に、真っ赤になっていた。
頬が異常に熱い。湯中りしたわけではない。
内心で紫は、必死に自分に「落ち着け、冷静になれ」と言い聞かせる。

「(蛇の策略よ、こうやって甘い言葉を吐いて、人を騙すんだかた!落ち着くのよ紫。なんだっけそうKOOLになるのよ!)」
「九尾を使うようになったり、幽々子と仲良くしているから、大丈夫だとは思うのだがな」
「そ、そうよ!だからにあんたに」

心配されなくても大丈夫よ!と続けようとし。
どこか寂しそうな表情を浮かべた夜智王に、紫は言葉が紡げなかった。

「だがな、二人にまるきり甘えることはできまい?」
「う…」

それはそうだ。
藍に対してふざけて甘えるフリはできても、あくまで紫が主人であり、対等の関係ではない。
幽々子はほぼ対等の友人である。やはり威厳も虚栄も捨て去って甘えたり、弱音を吐くことなど出来ない。
まして紫は彼女に負い目が有る。

「なぁ紫、だからワシの腕の中では意地を張らずに。ただの可愛い八雲紫でいておくれ」
「何を…ばかな…別に、私は」
「演技でも良いのだ、ワシを安心させてくれ」
「う…あ…」

だから夜智王と交わるのは嫌なのだ。
この蛇が本気で情交を要求するのは、だいたいこんな時だ。
前は幽々子が死んだ時だった、その前は月と戦争してコテンパンにされた時だっただろうか。
紫が参っている時ばかり。
今回は、この蛇が幻想郷に長くよりつかなくなって、五百年近く。その間、誰かに素の自分で寄りかかったことなど、あっただろうか?
先代の博霊の巫女が死んで、そう長い時が経った、とも言えない。
厭らしい、性悪な蛇め。
女が弱っている時に付け込むなんて最低。
そう内心で悪態を吐く。
だが、夜智王に抱かれて眠るあの安心感も。
我を忘れて快楽に狂うのも。
嫌ではないのだ。正気に帰った後、恐怖するほどの心地好さに身を委ねると、不安や痛みや悲しみが、僅かに和らぐのだ。
この蛇にかかれば、どんな妖婦もただの少女に帰ってしまう。だから、紫は夜智王に抱かれるのが大嫌いなのだ。

「いいわよ。怖がりでヘタレの貴方のために。うんと甘えてあげる、感謝しなさいよ」

声の震えを必死に隠しながら、傲慢に紫は言う。
そういうことにしておく。

「紫は優しいな」
「う…」

感謝を返すように、夜智王が紫の頬に口づけをする。
幼い恋人達がするような、何気ない接吻。
反射的に夜智王の唇が触れた所を手で押さえる、首まで肌を紅潮させる紫。
ばればれの強がりを、夜智王は黙って受け入れると、そっと紫を抱き、豊満な胸に顔を埋める。
ひゃぁ!と小さく悲鳴を上げながらも、上ずった声で紫は怒鳴る。

「あんたが、あ、甘えてどうするのよ!」
「紫の胸が魅力的すぎるにがいけない。ふかふかだぞ」
「どうせ、幽々子あたりにも同じこと言ったくせに…きゃ!」

ふてくされたような紫のセリフに対し、胸元、谷間辺りに、ちゅっと接吻する。

「幽々子には幽々子の、紫には紫の、それぞれの良さがあるぞ」
「胸に向かって喋るな!」
「すまんすまん……そろそろあがるか、湯中りしそうに真っ赤だぞ」
「これは……もうっ!」

羞恥と怒りを込めて、紫は思いきり夜智王を突き飛ばした。
ばっしゃーん、と派手な水音を立てて夜智王が水没してゆく。
脱兎のごとく逃げ出した紫は、脱衣所に駆け込み、バシンと扉を閉めると、乾いた布を纏いながら、ずるずると、扉にもたれながら崩れ落ち、ぺちんと尻餅をついてしまうのだった。

「あのスケベ蛇・・・ばか」

そんなことを言いながらも、この後の情事を考えると、紫は胸の高鳴りが押さえられないのだった。















後書き。
妖艶なゆかりんが書けなくて七転八倒したあげくいつもの調子に・・・(;;
もうそっち系はえーりんに託すか無いのか・・・
精進します。
あと前回忘れたんで、すっかり遅くなりましたが、あけましておめでとうございます。
本年もどうぞよしなに。
皆様にワンパターンと呆れられ無いように精進したい所存です。



[26700] 蛇、妖怪の賢者と情を交わす、の巻(前編)
Name: 窓◆0bf2c45e ID:4325365c
Date: 2012/02/28 03:55
「あ…ふ…っ!…あぁ、奥まできてる…やぁ…あたってるっ…ぅぁ!」
「ふぅ…きちきちだぞ紫?まるで生娘のように締め付けて来ておる」

ちゃんと使っているのか?
耳元に口を寄せ、意地の悪い笑みを浮かべた夜智王が囁く。

「やぁ…いじわる、んっ!いわないでぇ」

ぱちぱちと音を立てて燃える囲炉裏火と、上品な置行灯が、薄暗く部屋を照らす中、二人は身体を寄せ合い、交じり合う。
ゆっくりと紫の膣内を肉棒で味わうように夜智王が腰を振る。
紫は喘ぎ声を押し殺し、悩ましげな吐息を吐きだす。
耐え難い快楽に、小娘の様に喘ぐことも。娼婦のように嬌声を上げることも。
紫の矜持が許さない。
結果としてひどく妖艶になった紫の仕草に夜智王は目を細める。
艶っぽい女は嫌いではない、むしろ大好きな夜智王だったが、今宵の趣向とは違う。
だから己の腕の中で素直になってくれ、と言わんばかりに紫を責めたて始める。

「やっ…んっ!…だめ、つきながら、おっぱいいじらないで…やぁ!ちくびはもっとだめ・・・や・・・めてぇ」

乳房を丹念に揉みしだかれ、乳首をしごかれる度、「やめて」「だめ」と囁く紫の声は甘い。
既に二度も絶頂に達した身体はひどく敏感になっており、夜智王の肌が触れるだけで、痺れるような快感を覚えるようになっていた。
敏感な胸の突起を巧みに愛撫されれば、その比ではない快楽に、否応なしに反応してしまう。

「いやだいやだ、ばかり言うな紫」

腰を止め紫を抱擁した夜智王は、その耳元に口を寄せて囁く。
吹きかかる息の熱さと、優しく己の名を囁かれ、紫の身体がズクンと疼く。

「久しぶりなのよ…手加減…してって、いったじゃない」
「その割りにはきゅうきゅうと絞めてくるではないか?子種を出せ出せと催促しておるぞ?」
「やだぁ、やらしいこといわないで」
「言わせているのは、紫の肉壺だろう」
「ちがうわよぉ…やぁ、なかでびくびくしてるぅ…やめてぇ」
「無理を言うな、紫のひだひだが勝手に動いているからだろうが?」

中はとろとろの柔肉の癖に、生娘のように締め付けてく肉壷だった。
生娘の固い膣肉と違い、ねっとりと絡み付いてくる、並の男ならあっという間に果てる名器だった。
さしもの夜智王も、常に比べて余裕が見え無い。
紫を悦ばせるため、気を引き締めると、夜智王は再び腰を降り抽送を再開する。

「やっ…もうちょっとやす、ふぁぁんっ!」

ぬちゅ
じゅぶぶ
ぬちゅ

卑猥な音が結合部が奏でる。

「あんっ…おく、おく、つついちゃだめぇ、びくびくしないでぇ!」
「くっ…ふっ…きついの、紫、少し力を抜け」
「むりよぉ…わざとおとたてないで!やぁいりぐち、いりぐちばっかりこすっちゃだめぇ!」
「いかん、今にも爆発しそうだぞ、くぅ…」
「やっ、まって、いまだされたらなかにでちゃう、ぬいてぇ、ぬいてぇ、やぁぁぁおくにはいってきちゃだめぇ」

荒々しく夜智王が責めるため、なんとか押し殺していた喘ぎを抑えられなくなり、紫は嬌声を上げ始める。
その声に応える様に、夜智王の亀頭が最奥を突く、その度、びくん、びくん、と紫は背を仰け反らせ、快感に震える。
その様子に満足したのか、常に比べ、夜智王の息が荒い。

「散々・・・紫が愛してくれたせいで、今にも射精しそうだ・・・お礼にたっぷり注いでやろう」
「だめぇだめよぉ、なかにだされたら、くるっちゃう、おかしくなっちゃうぅ、いやっ、ぐりぐりしないで!きもちいいの!おくぐりぐりされるのだめなの!」

奥まで突っ込み、腰をひねって一物をねじる。
子宮の入り口を激しく愛撫された紫が叫び、潤んだ瞳から涙が溢れ出す。

「やっ!なかで、ふくらんでる、だめ、なかにだしちゃだめ!」
「無理だ、紫の乳と股でたっぷり苛められたからな、ワシも我慢できん…」
「あなたがかってにしたんじゃないぃ、ひとのせいにしないでよぉ」
「あんなに一生懸命だったくせに何を言う、忘れたならば思い出させてやるぞ」

ぐいっと横たわる紫を引きこし、正常位から対面座位に手を変える。
体に力の入らない紫は、しなだれかかるように夜智王に抱きつくと、抗議の意を込めてその背に爪を立てる。
大した痛みは無いのだろう夜智王は気にせず、胸板に押し付けられ潰れる紫の豊乳をきゅぅっと掴む。

「やだ、やめて、おっぱいやめてぇ」
「このたぷたぷの乳で挟んでくれたのだろうが」

乳房を重そうに持ち上げ、先端の突起を寄せると、二つ纏めて舌で弾く。

「あっ!やぁっ!」










風呂を出て、男に戻った夜智王は、いつもの着流し、紫は肌襦袢一枚の姿になっていた。
夜智王の腕の中で、しどけなく彼に寄りかかる紫の着衣は随分と乱れており、裾から除く脚、はだけた胸元を、僅かな明かりが扇情的に照らし出す。
互いの体温を感じながら、互いの体を悪戯をするように軽く愛撫しながら、世間話に興じる。

「そうか、月人に一杯食わせたか!カカカ、愉快だなぁ・・・しかし残念だ、ワシもその祭り是非参加したかった」
「幽々子が・・・月から持ってきた酒が呑みたいだけでしょう?・・・そんなに行きたいなら送ってあげるわよ」
「片道だけだろう?」
「もちろん」
「どうしてそんなに意地悪なことばかり言うのだ?」
「意地悪?・・・さっきから散々焦らしてるのは・・・貴方の方じゃない」

夜智王が用意した酒精の強い蒸留酒に酔った訳でもないのに、紫の白い肌は上気していた。
戯れるように夜智王が首筋や、指先へ口付ける度、口移しで酒を飲ませる度、少しずつ少しずつ紫の体を快楽が蝕んでゆく。
夜智王お得意の精気の交換だった。

「久方ぶりだし、紫にもたっぷりと気持ち良くなってもらいたくてな」

確かに心地よい。それ以上にじれったい、体の奥に着いた火は埋み火のように燃えている、だが熾火のように燃え上がらない。
ただちくちくと疼くばかりだ。

「本当に貴方は性悪の蛇よ・・・やぁ・・・やめてっ・・・あとが!」

袷に片手を突っ込み乳房を撫で、もう一方は裾を割って内股を擦りながら、紫の綺麗な鎖骨に口付けし、強く吸う夜智王。
嫌がりながらも、夜智王の愛撫された部位だけは、一時疼きから開放され、痺れるような快楽がそこから全身に走る。

「はぁ・・・ばか・・・洋服が着れないじゃない・・・」

しっかりとキスマークが残り、紫が好んで着る洋服が、これでは着れそうにない。

「あの色っぽい洋装か・・・しばしワシ専用にしておけ」
「い~やっ!」

子供の様な言い草に、夜智王がくすりと笑う。紫の心がきちんと解れた、そう判断しての笑みだった。

「紫は可愛いな」
「誰にだってそう言うくせに」
「なんじゃ妬いておるのか?」
「ばか言わないで、なんであたしが」
「可愛いから可愛いと言って何が悪い。おべんちゃらではないぞ?」

グラスを干し床に投げた夜智王がそっと紫の両頬に手を添える。

「んっ」

目を閉じた紫の唇を味わうように、唇を重ねる。
ちゅ、と小さな音。

「ちょ!んっ。やめっ!は…っ!」

悪戯するように、何度も何度も紫の唇を啄む。
その度、精気が吸われ、注がれ、紫を翻弄する。

「もぉ……ふざけないで」
「良いではないか。紫の唇の感触が心地好いのだ」
「あなたは本当にキスが好きよね…」
「昔の方が楽しかったがな。背徳的で」

平安の昔ならば、キス・・・口吸いはちょっとした変態行為であり、まして舌を入れる、舐め合うというのは、完全に特殊性癖であった。
まぁ、その頃から夜智王はこれを好んでするいやらしい蛇だったのだが。

「あなたって、本当にドSよね」
「なんじゃて?」
「サディストだって言ってるのよ」
「どこぞの花妖と一緒にするな。ワシはただ女子が乱れるのが好きなだけだぞ」

嗜虐的な笑みを恍惚として浮かべる様が美しい幽香を思いだし、夜智王は抗議する。
いや一緒一緒。

「一緒よ…案外お似合いなんじゃない、あなた達」
「他の女の話なぞ今はするな」

無粋なことを言う罰だ、と嘯き夜智王は紫の首筋に口を寄せる。

「やぁ、首筋はやめてよ…明日霊夢の所にいくのよ…」

首筋にキスの雨を降らして愛撫する夜智王に、紫が甘い声で懇願する。
見えるような所に痕をつけられては困る。

「では見えないところにつけるか」
「つけるのやめて…あぁっ…んん」

そっと紫を寝具に寝そべらせ、しゅるりと手慣れた様子で肌襦袢の帯を解く。
乱れていた袷が開かれ、淡い明かりの元に紫の紅潮した肌が晒される。

「寒くはないか?」
「平気よ」
「ワシはちと寒い。だから紫の熱を分けておくれや」
「うそばっかり…ふ…っ…あぁ」

疼くほどに熱を持った乳房に、夜智王の手が触れる、ひんやりとしたその手が心地よい。

「大きいことは大きいが、美しいの紫の乳は」
「ん・・・っ・・・何よ・・・さっきは垂れたとか・・・言ったくせに」
「柔らかさは・・・やや幽々子の勝ち、弾力はワシの勝ち、だが大きさ、柔らかさ、ハリ、肉付きの総合では紫の勝ちか」
「ばかぁ!くらべるなぁ!」

くくく、と笑った蛇は紫の乳房を下から救い上げるように持ち上げ、左右に力を込めて寄せる。
形成された蠱惑的な谷間に顔を埋めた夜智王は、胸元に唇を這わせると、わざと音を立てて吸い付き始める。

「や…っ…ばかっ!…やめ…あ…ふわぁ!」

染み一つ無い紫の肌に、次々とキスマークが付けられる。
まるで烙印のように。
弱々しく夜智王の頭を押し退けようとして果たせず、夜智王の唇が触れた場所が、まるで焼きごてを押し当てられたように熱い。

「さて九尾がこれを見たら何と言うかな?」

かぁぁ、と紫が頬を羞恥に染める。

「そう言うこと言うの、やめてよぉ」
「あんまりにも紫が可愛くての、ついついからかいたくなるのだ」
「もぉぉ!」

やられっぱなしにはなるまいと、紫の手が夜智王の股間に伸びる、させじと夜智王はその腕を掴む。

「何をするのだ。じっとしておれ」
「やめ、ゆび、なめないで、やぁ!」

紫の手を取り、人差し指から順番に口に含み、丁寧に舐め、しゃぶり、吸う。
指に絡み付くいやらしい舌の動きに堪えきれず、紫が「はぁぁ」と甘く喘ぐ。

「もぉ、焦らさないでぇ」
「どうして欲しいのだ?言っておくれ」
「いやよ。恥ずかしい…あっ、やめて、汚い!」
「汚くなぞないわ」

女主人に傅く奴隷のように、紫の足に口付けした夜智王が、つつつと舌を這わす。

「もぉ・・・お願いよ、胸が熱いの、疼いて仕方ないのよ・・・」

耐え切れず紫は、自分の手で乳房をこね始める、しかしまったく満足できないのだろう、妖しく身をくねらせ夜智王を誘う。

「だから、どうして欲しいのか、言ってくれねば分からんぞ?」
「意地悪わかってるくせに・・・お願い夜智王・・・・揉んで」
「あい分かった」

豊かな紫の乳房に手を伸ばし、ぐにぃっ、と夜智王しては珍しく、強く紫の乳房を揉む潰す。

「あぁ・・・っ!・・・気持ち・・・良いわ・・・もっと、して」

紫の懇願に応えるように、まるでうどんの生地でも捏ねる様に、ぐにゅぐにゅと力強く揉み続ける。
疼いて仕方なかった胸を、思い切り愛撫され、紫が悦楽に満ちた笑みを浮かべ、快楽に満ちた嬌声を上げ続ける。

「あっ・・・んっ・・・いいっ!・・・やだぁ、おっぱいぐにぐにされて、気持ち良い・・・なんて」
「まったく、淫乱な乳だ、でかすぎて鈍いせいか、乱暴にされないと気持ち良くないのだろう?」
「ちがうわよぉ・・・ふぁぁぁ!・・・・あなたが、んんっ!じらすからいけないんじゃない・・・酷いこと言わないで」
「苛められるのが気持ち良いのだろう?お主こそとんだ“まぞひすと”だな」
「いやぁ・・・まぞじゃな―あっ、きもちいい!それいいのぉ!」

ぐにゅうっと夜智王が両の乳房を掴んで、絞りながら引っ張ると、よほどに気持ち良いのだろう。
紫がイヤイヤと赤子がするように、よがり狂う。

「少しは収まったか?ワシはあんまり乱暴なのは好きではないから・・・もう少し優しく愛撫するぞ」
「やっ!・・・だめぇ・・・いいけど・・・じらさないでぇ!・・・ぴりぴりするの、やさしく撫でないでぇ!」

乳房全体を労わる様に撫で回す夜智王に紫が、もっとしてくれ、とおねだりする。

「紫の肌は気持ちよいのぉ、すべすべで、吸い付くようで、乳もふよふゆとしておるし、ずっとこうしていたいな」
「やめてぇ・・・おかしくなっちゃうからぁ!じらすのやめてぇ!」

別に焦らしておらんがなぁ、と夜智王は意地の悪い笑みを浮かべる。
あまりに紫が喚くので、唇を重ね合わせて、軽く吸う。

「やっ・・・うんっ・・・ちゅ!」
「ん~、ひひのぉ」
「やぁ・・・しらぁ」

 ぺちゃ・・・ちゅう・・・くちゅ・・・ぺしゃ・・・

二人の舌と唇が絡み合う度、淫らな音が響く。
恍惚とした表情を浮かべた紫から、夜智王が顔を離すと、二人の間に唾液が糸を引く。
べとべとになった紫の口の周りを、夜智王が舐めて清める。

「はぁ・・・やだ・・・くすぐったい」
「どうして女子の唾液というのは、こんなにも甘いんだろうなぁ?」
「しらないっ!」

ちっとも言うことを聞いてくれない、つまり甘えさせてくれない夜智王に、紫がふて腐れてそっぽを向く。
ミステリアスで、妖艶な美女がする、幼い仕草は、ひどく可愛らしく、もっと見たいと、逆に男の欲情を煽るばかりだった。

「安心しろ、このぴんと勃った乳首を弄ってやるからな」
「そこは・・・はぁ・・・やさしくして・・・いきなりつよくしちゃいや・・・」
「注文が多いのぉ。では一つ面白いことをしてやろうか?」
「なぁに?・・・・・んっ!・・・あんっ!」

乳首を掌の中心で覆うように、夜智王の手が優しく紫の乳房を掴む。
きゅっと軽く握られ、紫が可愛らしい嬌声を上げる

「ふぁ・・・きもち―ひゃぁ!な、なに!?きゃっ!・・・なめっ!?」

何をされるのだろうと思えば、ただ乳を揉むだけ
そう思っていた途端、掌で押し潰されていた筈の乳首が、突然“舐められた”。

「やっ!・・・あ・・・っ!ちくびっ・・・なんで?・・・ふぁぁ!」
「面白いだろう?掌にな口を作ってみたのだ。揉みながら乳首を愛撫してやれるし便利だろう?」
「いやぁ!へんなことしないでぇ・・・ひぅ!」
「気持ちよかろ?」

焦らすように緩く乳を揉みしだく一方で、掌の口は激しく乳首を愛撫する。
右に吸わせ、左に舐めさせる。
空いた本来の口を、また胸元に這わせ、時折痕をつけるためにに強く吸う。

「ひぅ…っ……やめて、やちおう。こんなの…ふぁ…くぅ…いいのぉ、おかしくなっちゃう」

まるで複数人に嬲られているような異常な快楽。
一つ一つの行為が優しい物でなければ、恐怖さえ覚えただろう。
紫の瞳に、わずかな怯えを見て取った夜智王は、苦笑いを浮かべて、手を止める。

「なんだ、怖いのか?すまんすまん、調子にのり過ぎたな」

敏感にそれを覚ったのか、夜智王は手を話す。
掌の口がくちゅ、と名残惜しげな音を立てて乳首を離すと、最後の刺激に、紫はびくんっ、と大きく肢体を痙攣させる。
夜智王は紫の眦にうっすらと浮かんだ涙を舐めとりながら、体を引き起こし抱き寄せ、優しく抱擁する。
妙な安心感に包まれながら、紫は息を整え、ぎゅっと夜智王の腕をつねる。

「はぁ…はぁ…久しぶりなのよ…ちょっと手加減して」
「すまんすまん、で、気持ち良かったか?」

反省の色の見えない夜智王に、紫が逆上する。

「いちいち聞かないでよ!……わかってるくせに…この性悪!ドS!変態!色情魔!」
「そんなに誉めるな 、照れる」
「誉めてないわよ!」

カカカと夜智王は笑うと、言葉ではなく行動で謝意を示す。
優しく唇を重ねる、蕩けるような口付けに、紫はうっとりと目を閉じる。
ちゅ、と可愛らしい音と共に唇が離れ、目を開けた紫は、少し拗ねた声で夜智王を詰る。

「もう…すぐにキスして誤魔化すんだから…」
「さて、では二人で一緒に気持ち良くなろう。快楽に耽ってサボるなよ?」
「だったら手加減しなさいよ…どう…するの?」
「花鳥風月とあるがどれにする?」
「何よそれ…じゃぁ花」
「花か、普通だな」
「普通で良いのよ、この性悪!」
「ふふ、さて花だな、ようするに素股だ」

ええっ!と紫が思わず声を挙げる。

「紫のこのすべすべの太股で挟んで気持ち良くしてくれ、ワシはワレメを擦ってよがらせてやるからな」
「やぁ…っ、太股撫で…ない…で」

内股を撫で回された紫がびくんっ、と震える。

「もうびしょびしょだな」
「あんなにされたんだもの…あたりまえでしょう」

私が特別淫乱なわけじゃない。と紫が言外に主張するが、意に介さず、夜智王はさわさわと紫の内股をいやらしい手付きで撫で続ける。
神経と血管の集まる敏感な付け根を愛撫されると、くすぐったいような心地よさを感じてしまうのだろう、紫の肢体が淫らにくねる。
美しいな、と嘯きながら夜智王は紫の痴態を堪能しつつ、次の段階へ進む頃合いと判断する。

「前からにするか?後ろからがよいか?」
「どっちでもいいわよ…だから優しくして」
「では後ろからかな」

横たわる紫を抱き上げ、柱にしがみ付かせる。
当然、とばかりにこちらに向いた紫の尻を、まず撫でる。

「むしゃぶりつきたくなるような白桃だな」
「や…あ、なめちゃ、いやぁ」
「では揉むか」
「あっ…ふっ…は…ぁ…もうぉ、んんっ!」

白桃を撫で、揉みながら、夜智王は一物を紫の股座へと挿入する。
熱い肉棒が秘裂をなぞる様に、紫の股の間を犯す、エラが秘裂を軽くえぐりながら、ゆっくりと前へ進む。

「ふぁ・・・う、もうぉ・・・ひぅっ!」

焦らすような動きに抗議しようとした瞬間、カリ首が、すっかり膨らみ包皮を割って剥き出しになっていた秘芯を擦る。
最も敏感な紅い真珠への熱烈な接吻に、じんっとくる快楽に紫が可愛い悲鳴を上げる。

「はぁ・・・はぁ・・・夜智王・・・」
「ほれ、ちゃんと挟まんと、紫だけ気持ち良くてイってしまうぞ?」
「ば・・・かぁ」

溢れ出した秘蜜を潤滑剤に夜智王は熱心に秘裂と秘芯を愛撫する。
紫の背にのしかかる様に密着し、尻と乳を愛撫することも怠らない。
秘裂のぷにぷにとした感触は心地よいが、さすがに気をやる程の物ではない、このままでは性感帯を愛撫され続ければ、紫だけイってしまうのは明白、時間の問題だった。
それでは堪らない、羞恥に頬を真っ赤にし、目をぎゅぅっと瞑った紫が、股を閉じ、一物を締め上げる。

「ふ・・・ぁ・・・きもち・・・いい?」
「ああ、良いぞ、紫のむっちりした腿に挟まれてワシのが悲鳴をあげておる、ほれ」
「びくびくしちゃ、いやぁ」

一物が痙攣すると密着する女陰も当然刺激され、快楽に打ち震える。
さらにどぷっと溢れた秘蜜が紫の太腿を伝い落ちてゆく。

「はぁ・・・いかん、これは出そうだ」
「いいわよ・・・イって?わたしの股で」
「ああ、紫、お主もな」
「え?・・・きゃ!・・・やっ!」

腰の動きを短く速い物に変えた夜智王の先端が、激しく秘芯を擦る。

「だめぇ、いっちゃうの、はげしいのっ、そこは、やぁ!やめて!だめ、だめよ!」

熱烈な秘芯への亀頭の接吻に、がくがくと紫の体が震えだす。
女性の一番な敏感な器官をしごかれ、痺れるような甘い痛みが全身を責め苛む。
本能的に紫は股をよりきつく締めた、夜智王の一物を止めようとするが、生憎自身の秘蜜と先走りの液でぬめる内股では、その動きは阻めない。

「くっ・・・きついなぁ紫」
「やっ・・・いっちゃう、いっちゃうの!だめぇ!あっんっ、くぅぅぅ!」

必死に声を押し殺すが、秘芯を執拗に嬲られ、絶頂を迎える紫。
背を弓なりにしならせ、四肢ががくがくと震える。

「っ!」

一拍遅れて我慢を止めた夜智王は、股の間から一物を引き抜き、崩れ落ちる紫の尻と背中に精をぶちまける。
びくん、びくんと遠慮なく暴れる一物から、そのたび白濁液の塊が吐き出され、びしゃり、びしゃり、と紫の肢体を汚してゆく。

「ひぅ・・・やぁ・・・あっついぃ」
「はぁ・・・ふぅ」
「わざわざ、かけたでしょう・・・もう、変態」
「綺麗にするから許せ」
「けっこうよ、やめて」

自分の口で清めようとする夜智王を全力で紫は阻む。
絶頂の余韻に浸る体を舐められるのは勘弁して欲しいところだった。

「つまらん・・・」

ふてくされつつ、手ぬぐいを引き寄せて精液を拭い取る。
優しい仕草で体を清められ、うっとりとした溜息を紫は吐く。

「んっ・・・あぁ・・・ありがとう」
「次は絶対に舌で清めるぞ」
「あなた・・・自分の精を舐めるの?」
「平気だぞ?」
「変態」

じとぉとした目つきで夜智王を睨む紫。
気にせず紫をひっくり返し仰向けにする。

「さて、次はその乳で気持ち良くなろうな」
「あんっ・・・もうっ!」

乳房の谷間に顔を埋め、ぺしゃぺしゃと舐め始める。
妙に粘性の強い唾液をとろとろと吐いてべとべとにしてゆく。
夜智王の舌に敏感に反応しながら、紫は夜智王が何をする気なのかを悟った。

「ふ・・・ぁ・・・また挟ませるきでしょう・・・」
「ご明察だ」

紫の乳房を左右から寄せあげ谷間を密着させる、唾液でぬめるそこへ、まったく衰えていない一物を挿し込んだ。



[26700] 蛇、妖怪の賢者と情を交わす、の巻(後編)
Name: 窓◆0bf2c45e ID:4325365c
Date: 2012/02/28 04:39
「っ!」

胸の谷間に一物を突っ込まれた紫が声を漏らす。
焼けた鉄棒のようなソレが、ゆっくりと谷間を犯してゆくと、絶頂を迎え鋭敏になった乳房は、嫌でも反応してしまう。
乳を肉棒で犯され快楽に震えてしまう自分に、紫は消えて無くなりたい、と益体も無いことを考えてします。

「あっ、だめぇ…おっぱい、やめてぇ」

自分だけ快楽を得るつもりなど毛頭無い夜智王であるから、乳房を弄ぶように、愛撫することを怠らない。
むしろ、乳房をもにゅもにゅと揉みつつ、上下に降ったり、引っ張ったり、一物でつついたり、と紫を気持ち良くするのに余念が無い。

「こら…っ…あそぶ、っ!…なぁ…」

ああ、まずい…
悦楽に狂う体に引きずられ、徐々に麻痺してゆく紫の理性が危険を訴える。
紫にとって男女の交わりは、自分が主導権を握って楽しむものであって、身も心も男に委ねて快楽に溺れるものではない。
だから紫は夜智王と体を重ねるのが嫌なのだ。
このままでは、胸で二度目の絶頂に導かれるまで、さほど時間はかからないだろう。

「や、夜智王…」
「なんだ?」
「わ、たしが…してあげる…」

はぁはぁと、荒い呼吸を繰り返しつつ、恥ずかしそうに訴える。
とにかく夜智王の好き勝手にさせてはいけない。と判断したのだろう。
そんな紫の思惑を知ってか知らずか、一瞬の思案も無く夜智王は紫の上から降りて寝具に腰を下ろし、紫を抱き寄せる。

「ふふ、どういう風の吹き回しだ?」
「夜智王も、気持ち良くなってちょうだい…だから…」

紫の繊手が夜智王の一物に伸び、竿を掴むと、緩やかに擦り始める。
一度精を思い切り出したくせに、紫の手の中の肉棒は熱く、硬い。
時折ぴくっ、と反応する一物を丹念にしごくと、さらにそれは硬く、大きく、反り返る。

「あんなに出したのに…すけべね、もうこんなにガチガチにして」
「あまり誉めるな照れるぞ」
「誉めてないわよ…」

抱きしめる夜智王の腕を振りほどき、紫は顔を一物に寄せる。
屹立する剛直を両手でしごきつつ、震える唇を先端…亀頭に近づける。

「はぁ…んっ…ちゅっ」

ためらいがちに亀頭に接吻する度、ちゅ、と可愛らしい音が響く。

「うん、これはたまらんな」
「もっと、気持ち良さそうにしてよ…」
「なら、もう少し大胆にして欲しい所だな」
「いじわる…んっ」

ちゅぱっ
音を立てて裏筋から責め始める。

「あむ…んっ…ちゅ…れるっ…ふぁ!」

一度先端に向けて昇り、その後は筋にそって棹に舌が這う。
滑る感触と、舌の温かさに、夜智王の表情が緩む。

「なかなか上手いな紫、遠慮せんでええ、口に含んで良いのだぞ?」
「…はぁ、ん、むぁっ!…ふっ…じゅぷ…ん゛っ!んぐっ…んふっ」

言われるままに亀頭を口に含み、口内で丹念に愛撫する。
紫が口を蠢かせ、首を振る度に、じゅぽっ、ぐぷっ、と淫らな音が響く。

「いいぞ、もうちょっと奥まで含んで、お留守のお手手でふぐりを弄ってみ?」
「ん゛っ…むぅ…ふぁ…」

ちゅぽっ、じゅぷっ、ちゅぽっ、じゅぷっ
時折荒い息継ぎをしながら、頭を上下に振り、一物を半ばまで飲み込む。
含んだ口内で舌を竿に這わせ、ぱんぱんに膨らんだだ睾丸をきゅむきゅむと揉みしだく。
熱心な口淫に、気持ちよさげに目じりを波立たせ、背筋に走るぞくっとした感触を愉しむ夜智王。
一度精を吐き出したからか、まだまだ余裕があるようで、慈しむ様に紫の頭を撫で、時折悪戯するように、つんと腰を使って喉奥を犯す。
堪らず口を離した紫が憤慨する。

「ぷはっ!…はぁ!ふぅ!もうっ、ばかっ!」
「ははは、旨いか?ワシの一物は?」
「噛み千切るわよ…」

そう言い、脅かすように竿をぎゅっ!と握ると、びくんっ!と一物が怯える様に震える。

「直ぐに生えてくるがなぁ。それより紫、その乳を使わないのは嘘だろう?挟んで気持ち良くしておくれ?」
「ひぃひぃ言わせてあげるわ、覚悟しなさい」
「おう、望むところだ」

むにゅっと左右の乳房で押し包むように、一物を挟む。
紫の奉仕で先刻よりも容量を増した一物は、圧倒的な巨乳を物ともせず先端が顔を出す。

「あぁ、たまらんなぁ」
「ん…っ、ちゅぅ、ふぁぁ」

むぎゅむぎゅと一物を挟んで圧力を掛けつつ、鈴口に吸い亀頭を責める。

「ふぅ…柔かいくせに、きゅうきゅうと締めてくるな、紫の乳まんこは」
「むうっ!」

いやらしい事を囁く夜智王に怒ったのか、軽く亀頭に噛み付く紫。
さすがにぴくりと夜智王も体を痙攣させ、顔を顰める。

「んっ、ふっ、ふぁ!ちゅっ、じゅるっ、むぅ~」

先端を舐めしゃぶり、咥えて唇でしごきながら、押し付け挟む乳房を上下左右に振りたて竿を責め立てる。
強烈な責めに、びくんびくんと一物が痙攣を始める。

「くっ、そろそろワシも我慢がきつくなってきたな…っ」
「ん゛っ、いいわふぁよ、こののまま…んんっらひなひゃいっ、ちゅぅ!んん゛っ!」
「こ、こら、舌を入れるな、それは反則だぞ…くっ」

くりゅくりゅと尖らせた舌で尿道口を犯された夜智王が呻く。
ようやく主導権を奪還した紫は、そのまま容赦なく夜智王を責め続ける。

くぷっ、くちゅ、ちゅぅ、ちゅぅぅぅ!

びくびくと断続的に痙攣する一物を、強く吸い刺激する、いつ射精してもおかしくない状態だが、夜智王は口とは裏腹にまだ我慢が出来るらしかった。
業を煮やした紫は、止め、とばかりに追い討ちをかける。

「らひて?こののまま…ふぁ、らひてぇやひほう、おくひに、んっ、ちょうらぁい」

淫らな懇願を口にしつつも、紫の表情には余裕が無い。
熱い肉棒が乳房に擦れると堪らなく気持ち良い、自分で挟み振り立てるだけで胸か全身に快楽が広がって行くのだ。

「では、一緒にな」
「ふぇ?ひゃぁ!」

夜智王の手が伸び、紫の乳首を摘まむ。

「んっ…やぁ…ちゅる…ひくびらめぇ」
「一緒に気持ち良くなろうな、ほれ、コリコリとしておるぞ?」
「らめっ…んんっ、ちゅぱ、んはぁ!しごいちゃだめよぉ」
「なんだ?余裕がないのぉ紫。お主しゃぶりながら感じておったのか?」

淫乱め、と夜智王が笑う。
そんな挑発には構っていられない、とばかりに紫は懸命に夜智王を責める。
きしっ、と夜智王の表情が歪む。さすがに余裕が無くなってきたようだった。

「ふふ、ワシも負けていられんな」
「ふぁぁ!んっ、ふぁかぁ、やぁ」

むんず、と紫の乳房を掴み、また掌に口を作って乳首をしゃぶらせる。
揉みながら乳首を舐められるという異常な攻撃に、耐えきれず紫の動きが止まる。
畳み掛けるように、ぎゅうっと搾り、腰を振って乳房を犯す。

「やぁ、だめ、ひぅっ、なめないで!きゃぁ!かむなぁぁ!」
「ふぅ…そろそろ射精そうだぞ紫、準備はいいか?」
「あっ、いや、おっぱいでイッちゃうぅ!」
「遠慮無くイケばいいさ、くぅっ!」
「むぅぅ…ちゅば、ふぅ、むぁ…ひぅっ!」

負けじと再度口を使い始める紫、絶頂の前兆である、小さな波を耐えつつ、夜智王を先にイカせようとする。

「そんなにワシの精が欲しいのか?いやらしいな紫は」
「むぅ~~!」

怒りを込めてか、かりっ、と紫が亀頭を甘咬みする、それがよほどに気持ち良かったのか、夜智王が珍しく表情を歪め限界に達する。

「っ!射精すぞ紫!」

お返しとばかりに、こちらも乳首を思い切りしごきながら、夜智王は精を放つ。

「うっ!ぅっ~~~!!」

軽めの絶頂を迎えた紫の口内に精がぶちまけられる。
どくんどくんと律動する男根が紫の口内を犯し、先端からは水鉄砲のように勢い良く吐き出された精液が紫の喉を打つ。

「ふぁ!…んっ…こくっ…ふぅ…んんっ!…こく…」

延々と吐き出される白濁液を懸命に飲み下す紫。
普通なら生臭いはずのソレが、妙に甘く感じられる。
とはいえ、ひどく飲み下しにくい粘液であることに変わりはない。
わざとやっている、そうとしか考えられない量の精を夜智王は吐き出し続け、耐えきれず紫が口を離す。

「むぅ!…ぷはぁ!」

口内に収まり切らず、飲み込む切れなかった精が、つつっと口の端から零れ落ちる。
注ぎ先を失った白濁液は、先端から間欠泉のようにびしゃびしゃと放たれ、紫の顔や髪を汚し、胸の谷間に小さな池を作る。

「ひぅ…はぁ…んっ、こくっ」

噎せかえるような牡の匂いに酔いながら、紫は身を起こすと喉を反らし、残った子種を飲み下す。

「零すとは行儀が悪いな」

乳房から一物を引き抜き、溜まった精液が零れぬように、きゅっと紫の胸を寄せる夜智王。

「んっ…こくっ…はぁ…こんなの全部なんて…むりよぉ」
「ワシはこの程度なら容易いぞ?」
「あっ…やぁ」

先刻の宣言通り、紫の顔や髪にかかった精液を舐め取り始める夜智王。
胸の谷間の池、自身の精を躊躇いも無く啜ると、紫の顎を引いて、口を寄せる。

「やだっ…んんっ!…はっ…うむっ!…こくっ…はぁ…ちゅる…ふぁぁぁ」

唾液と混ぜた精液を紫の口へと流し込み、飲み込ませる。
その後も夜智王は口を離さず、二人は互いの舌を絡め合い、互いの口内を味わうように熱い接吻を続ける。
そっと紫を押し倒し、やわやわと乳房を愛撫する夜智王。
再び一物に手を伸ばす紫。
たっぷり五分以上、熱烈な口付けを交わしながら互いの体を愛撫し続け、ようやく二人の口は離れる。
交じり合った唾液がつつぅ、と二人の間に糸を引く。
とろん、とすっかり蕩けきった紫の表情が、夜智王には愛しくてたまらないか、相好を淫らに崩し、囁きかける。

挿入いれるぞ?」
「…っ」
「返事はどうした?」
「恥ずかしいこと…いわせないで」

何を今更、と恥らう紫をからかいつつ、夜智王はその肢体を抱き寄せ、膝を割って腰を進める。
くちゅり、秘裂に口付けた亀頭が音を立てる。
「ひぅ!」と、熱い塊を秘所に押し付けられた紫が、息を呑むような悲鳴を上げる。

「もうぐしょぐしょではないか、ん?」

先端を少し侵入させ、秘裂を縦になぞる様に亀頭で愛撫する夜智王、その度いやらしい音が響き、紫がきゅぅっと目と口を閉じて、快楽に震える。

「もう…いじわるしない…で。い、いれて…」
「ふふ、随分素直になったな。ではご褒美だぞ」
「あっ!…ふぁ!…くぅぅぅぅ!」

一気に侵入してきた肉棒に紫が堪え切れない喘ぎ声を上げた。







「思い出したか?」
「あっ…ふぁぁ!…いいの、おっぱい、やさしいの、気持ちいいのぉ」

紫を再度寝具に押し倒し、いかに熱烈に奉仕してくれたのか囁きかける。
やわやわと、軽く握る程度の強さで、優しく乳房を愛撫されると、紫の全身がぷるぷると震え。
自然膣の締め付けが強まり、内部の一物を責める。
くす、と意地悪そうな嗜虐心溢れる笑みを浮かべ、その責めを楽しむ夜智王。

「ふふ、そんなに締めて良いのか?膣内に注いでしまうぞ」
「やっ、だめよ、なかはだめぇ!」
「無理だな。ほれ射精すぞ」

乳房から手を離し、紫をかき抱くようにして、ぐいと最奥まで腰を押し込み、あっさりと夜智王は精を解き放つ。
膣肉が絡み付き精液を絞り出すのに任せ、どふどふと子宮内へと白濁液を注ぎ込む。

「あっ!ひぅっ…あぁ、でちゃってる、おくに、やっ!まだでるの?だめよぉ、ぬいてぇ」
「お断りだ、紫の柔肉が絞るから出るのだぞ?」

こんな風にな、と言い、つんつんと子宮をつつく。

「やぁ、だめぇ、だしながら、ついちゃだめぇ!」
「あぁ、やはり紫の膣内は気持ち良いの、何発でも抜かずに出せそうだ」
「だめよぉ、そんなことされたら、おかしくなっちゃう!くるっちゃうぅ!」
「いいではないか、今宵は抜かず三発と洒落こもう」
「ひゃぁ!ひぅっっ!」

半ばまで、射精後も衰えぬ剛直を引き抜き、夜智王は手を変える。
紫を横臥させ、夜智王自身は体を捻って紫の後ろに回る。
膣内で一物が半回転し、襞を抉られた紫が悲鳴をあげる。

「ば、ばか、いきなりひど、ふぁぁぁっ!」

抗議の声は、再度奥まで挿入された快楽にかき消される。

「やっ、うしろは…だめ…やぁ」

前からの挿入よりも、気持ち良い。
膣と一物が一体化したように、ぴっちりと吸い付き合い、挿入されているだけで、ぴくりとも夜智王は動かないのに、このままイってしまいそうな快感。
ふるふると勝手に震える全身を抑えようとすると、自然と膣肉も締まり、より快楽が増してしまう。
どうすることも出来ず、紫はただ夜智王に抱かれ、子犬ように震えることしかできない。

「ほれ、尻を上げろ」
「いやっ!こんなかっこいやぁ!」

腰をままの抱えた夜智王が膝立ちになる。
四つん這いで尻を高々とつき出す、屈辱的な、獣のポーズを取らされ、泣き叫ぶように嫌がりながら、紫はいやいやと首横に降る。

「なんだ、お主まで獣の様で嫌だとぬかすのか?」
「あ、たりまえよぅ…はぁ…やだぁ…こんなかっこなのに…きもちいいよぉ」
「ふふ、紫は後ろから挿入れた方が良い口だからな」
「そんなの嘘よぉ」
「良いではないか九尾もそうだった、主従お揃いだぞ」

そう言いながら、たぷんとぶら下がる二つの果実に夜智王は手を伸ばす。

「まるで牛の乳だな、ほれ」
「やぁ、しぼっちゃだめぇ、もうイっちゃうから、おっぱいつよくしないでぇ、んっ、し、しぼっちゃ、だめよぉ…」

牛の乳搾りのように、根本から先端に向かって搾り、最後に乳首をきゅうと摘まむ。
それを繰り返す度、紫が乱れ狂い、よがり声を上げる。

「母乳は出んのか?」
「んっ!ばかっ!でるわけ、ひぅっ!ちくびだめなの、くりくりしちゃだめなのぉ!」
「残念だな…では紫が孕んで乳が出るようになるまで、たっぷりと注いでやるからな」

まるで慈悲を込めるように、優しい声で夜智王が囁く。
歪んだ愛の告白とも取れる言葉に、紫が総毛立つ。

「うそ…じょうだんは」
「嘘でも冗談でもないぞ?ワシの子を孕んでおくれ」
「やっ、んっ、あっ、いいっ、こんなかっこ、いやなのに、きもちいいのぉ」

紫の尻を揉みながら、ぱんっぱんっ、と紫の尻肉に当たる音が響く程に大きく腰を降る夜智王。
入り口ギリギリから子宮口までを擦られた紫が、あんっ、いやぁ、と甘い喘ぎ声を上げる。

「やちおう、もういっちゃうの、だから、あんっ、ゆっくりに、ひぃぁ!ひねっちゃだめぇ!」

絶頂の訪れに怯えるように、媚びた声で懇願する紫、それを無視して夜智王は腰を捻り、突き入れる角度を変え責め立てる。

「すまんが、ワシもそろそろ限界だ、今度は、一緒にいこうな?」
「だめぇ…あんっ!あぁ…っ!またなかに、あぁんっ!だしちゃだめぇ!」
「ほら二発目だぞ、っ!」

紫が逃げないよう、腰をしっかり掴み、子宮口に亀頭を押し付け、夜智王は精を解き放つ。

「いっ…くぅっ!いやぁ…っっ!あっぁぁぁぁ!」

ぐりっ、と強く子宮口を抉られた紫も四肢をつっぱらせ、背を仰け反らせ、絶頂に震える。
爆発した肉棒の先端がそんな紫の最奥へ、精液を注ぎ込む。

「でてるぅ、どくどくって、やめてぇ、ほんとに、にんしんしちゃう」
「あぁ、まったく紫の肉壺は魔性の穴だなぁ、気を抜くと直ぐにイッてしまうわ」

紫の膣肉が絶頂と同時に、きゅうと収縮し男根を絞る。
抵抗せず絞られるまま、どくんどくんと一物は膨張と収縮を繰り返し、精液を吐き出し続ける。
勢い良く吹き出した粘塊がべしゃっと子宮壁を叩く。
絶頂直後の敏感な子宮内を精液に凌辱された紫が、びくびくと震える。

「わ、わたし、また、いっちゃ、しきゅう、せーえきでおかされて、いっちゃうの、あぁぁ、だめぇぇ」

余韻に浸ることも許されず、ひぅっ!と悲鳴を上げ、再度絶頂に達した紫は、全身をガクガクと痙攣させ、崩れ落ちる。
そんな紫をひょいと抱き上げ、後ろ抱きにし、強く抱き締める。
絶頂の波に翻弄される紫は、ぐったりと夜智王に身をあずけるしか術が無い。
過剰な快楽の波の怯えながら、夜智王の腕の中の安心感に、紫は溺れる。離れたくない、ずっといつまでもこの腕に抱かれていたい、そんな考えが脳裏によぎる。
そんな紫の膣内で、あっさりと絶頂の締め付けに屈した男根が、びくんと暴れ、また射精する。
体の一番深い所を満たされていく、奇妙な充足感に、紫の理性が蕩けてゆく。

「ふぁ…あったかいの、おなかに、やちおうのせーしが、しきゅういっぱい、もう…だしすぎよぉ」
「あんなに絞められては堪らんよ」
「もぉぬいて?はいってるだけで、ぴりぴり、ぴりぴりするの、おかしくなっちゃぅ」
「栓をしておかんと漏れてしまうだろう?ちゃんと孕むまでこのままだ」
「ほんとににんしんしちゃうわ、そんなの、だめよぉ」
「何故駄目だ?ワシは紫との間に子がいても良い、むしろ紫の子が欲しい」
「じょうだんで、そんなこといわないでぇ」
「本気だぞ、こんなことで冗談は言わん」
「うそばっかり、だれにだって、そういうじゃない!可愛い、愛しい、おまえが一番だ。って…」
「まったく信用が無いなワシは」

半泣きの紫が言うとおりだけに。夜智王は苦笑いするしかない、普段の行いがアレだけに、仕方がないことであった。
零れ落ちる紫の涙を嘗めとり、頬に接吻をする。

「百万の言葉を重ねてもお主が信用せんなら、行動で示す他なかろうな?」

紫の首筋に口づけを繰り返しながら、右手で乳房を、左手で秘芯を優しく愛撫しつつ、腰をくねらせ始める。

「あっ…やめて、うごいちゃだめぇ」
「ワシの子を孕んでおくれ紫、愛しておるぞ」
「なかに、だしたいだけなんでしょう…だまされないんだから…あっ、やぁ、やさしく、しないでぇ」

慈しむように、だが容赦無く紫を夜智王は犯す。
本気か冗談か、何度も愛の睦言を耳元で囁きながら……






[26700] 蛇と九尾の狐、の巻
Name: 窓◆0bf2c45e ID:4325365c
Date: 2012/03/12 12:40
「すっかり膨らんだの」
「だめよ、あなた…お腹、触り方が、やらしい…」

明らかに妊娠している、そう分かる、膨らんだ下腹部を、さわさわと夜智王の手が撫で回す。
母子を慈しむ父親の手つきでは、無い。
臍の回りを愛撫され、もう産み月も間近といった風情の紫が、艶めいた声をもらす。

「おお、いま動いたぞ?元気な赤子だな」
「やっ、だめ、おっぱい何するの!?」
「こちらもいっそう膨らんだの、うん?張っておるぞ、揉みほぐしてやろう」

妊娠し、一回りも二回りも大きくなった乳房、服の上からでもはっきりと分かるそれを、夜智王の手が包む。

「ふふ、さっぱり手に収まりきらんようになったのぉ」
「あっ、やっ、だめぇ…そんなに、もんだらぁ」
「もんだら、なんだ?」
「ふぁ、おねがい、あなた、だめよ」

優しく乳房全体を揉みほぐされ、紫の顔が見る間に紅潮し、瞳が潤む。
恥じらうように快楽に耐える妊婦。
なんとも言えぬ、背徳的な情景であった。

「おやおや、なにやら湿って来たぞ?」
「だからだめ、って…母乳がでちゃうのよぉ」
「それはいかん、どうりで張っておるわけだ…辛かろう?」

今、楽にしてやるぞ。
労るような真摯な表情を一変させ、嗜虐的な笑みをうかべた夜智王が袷を開いて、紫の乳房を露にする。
ぼろり、と巨乳がまろび出る、すっかり尖った先端の突起からは、乳白色の液体が染み出していた。
直に乳房に触れ、優しく搾るように揉む。
ひぅっ、と紫が呻き、ぴゅっ、と吹き出した母乳が夜智王の顔にかかる。
舌をぞろりと伸ばし、それを舐めとる蛇の目が、きゅうと歪む。
旨いぞ、と大して旨くもない母乳を極上の甘露のように誉めそやしながら、蛇が口が乳首に吸い付く。

「んっ!だめぇ、すっちゃだめよぉ、そんなやらしいすいかた、やめてぇ」

いやらしい手つきで搾乳され、母乳を吸われる。
そんな変態的な行為に、紫はいやいやと首を降る。
しかしその腕は夜智王に絡み付き、離なさない。
そんな、口とは裏腹に甘えてくる紫の乳房を、左右均等に吸い続ける夜智王。

「んっ…だ、めぇ…おっぱい…すわれて、イ、イっちゃうぅ」
「イっていいぞ?」
「だめよぉ、だめったら…あ…」




「っ!」

微睡みをすっとばし、紫の意識は急速に覚醒した。
原因は言うまでもなく、淫夢である。
ひどい夢だった

「紫は寝顔も可愛いな」

枕を紫に提供しているからか、手枕で横臥している夜智王。
淫夢の原因が添い寝していた。
目を覚ました紫の頬に夜智王が接吻し、抱き寄せ、紫の柔らかな肢体を堪能する。
常ならば嫌がる紫だが、放心状態の彼女はされるがままだった。

「(夢……最悪……)」

ひどい夢だった、妊娠し、この性悪蛇を甘えた声で「あなた」などと呼んでいた、夢の中の自分を思いだし、怖気おぞけが走る。
昨夜、ねちねちと夜智王に責められ、気絶するように眠りに落ちたことを、ぼんやりと思い出す。
無防備な寝姿を見られた、なんとも言えない恥ずかしさが、紫を赤面させる。

「こらっ!」

乳房に伸びてきた夜智王の手の感触に我に帰り、その手の甲を思いきりつねる。

「何してるのよ」
「いまさら照れんでもよいだろう?昨夜はあんなに」

皆まで言わせず、紫は夜智王をぐいっと押し退けると、床に放ったままの単を引き寄せ、さっと身に纏う。

「もう十分に報酬は払ったわよね?」
「つまらんことを言うな、これで三度目、平安の昔なら夫婦と成る所だぞ?」

後朝の歌でも一首歌いだしそうな夜智王、その目は悪戯小僧のように輝いている。
紫をからかうのが楽しくて仕方ないらしかった。

「なぁ紫、片意地を張らんで、もう一戦しようではないか」
「まっぴらごめんよ!こら、どきなさい!」

上半身を起こし、身を整える紫の太股にぽすん、と夜智王は頭を乗せる。
極上の膝枕に頬ずりをしながら、愛しそうに、紫の下腹部に手を当てる。

「っ!」

夢の内容を思い起こさせるような行為に、紫は顔を首まで真っ赤にし、ばしばしと夜智王の頭を叩く。

「何をしてるのよ!」
「紫がちゃぁんと孕むように念を送ってるだけだぞ?」

馬鹿。と紫が呟く。

「そんなに簡単に妊娠するわけないでしょう!」

妖怪はその力、長い寿命の代償として、極端に繁殖率が低い。
力を持たぬ人間が地に満ちていったとのは対照的にだ。
それは入ってしまえば自然の摂理であり、人と妖、その天秤を維持する物なのかもしれない。
大妖と称される紫、夜智王とて例外ではなく、むしろその傾向は卑称な妖怪よりも強い。
実際、あちこちで浮き名を流す夜智王が、妖怪相手は勿論、人との間に子を成したという話を聞かないのが、何よりの証拠だった。
つまり、紫と夜智王が一晩交わった程度で、子が出来ることは無いのだ。

「あれだけ出せばなんとかなると思うがなぁ」
「馬鹿…」
「うっかり地底で命を落としても、紫がワシの子を孕んでいてくれれば、心残りは無いのだがなぁ」
「え、縁起でもないことを言わないでよ!」

さらりと死亡フラグを立てる夜智王に、紫が声を荒げる。

「あなたを殺すなんて…」
「分からんぞ?灼熱地獄の炎で焼かれ続ければ、いつかはワシも再生しきれず命落とすだろうさ」
「そんなことは…」
「ワシは害することの禁じられた巫女殿ではないし。お主ら女子のする命名決闘法も段幕ごっこも、ワシら男共にはあまり合わん」

いざ戦うとなれば、それは殺し合いよ。
そう淡々と夜智王は言う。

「だからちゃんと孕めよ?」
「馬鹿…ふざけないでよ」
「ふざけてなどおらんぞ?」
「そんな天狗でもミシャグジ神でもいいじゃない」
「文には子種をやったこともないし、これからもやらんよ」

何故?と問う紫に、夜智王は自嘲的な笑みを浮かべて言葉を続ける。

「蛇の子など孕めば、狭量な天狗共が煩いだろう?産まれてくる子にしても合の子、魔縁、鵺と罵られることになる」
「それでもあの娘は良いのではなくて?あなたと添い遂げられるなら」
「楽しそうに新聞を作ってる文がワシは好きなのだよ、あれからそれを取り上げるようなことはしたくない」

紫は、押し黙る。
この蛇が妙に憎めないのはこういう所だ。
だが、それと自分が妊娠するのは別問題である。

「ミシャクジ様は?」
「それも無しだな、まぁ諏訪子は神だから、あれがその気になれば子は出来るかもしれんが、まそれはなかろうよ」
「なんでよ」
「信仰の不足で、昔より随分弱くなっている。神が子を産むということはたまを別けるということだ。今の諏訪子には無理さ、下手をすれば消滅する」
「…吸血鬼は?」
「レミリアは、まだ子を産むような体ではないだろうが」
「そうね…」

他の女の話などやめよ、といって夜智王はすりすりと紫の太腿を撫でる。

「触り方がいやらしいのよ!もうっ」
「だって紫の膝枕が気持ちよすぎるのだ。もう地底のことなど放っておいて、ずぅっとこうしていたい」
「どこに顔を寄せてるのよ!ばかっ!」

股座に顔を埋めようとした夜智王の頭をばしんばしんと紫が叩く。

「さすがにちと痛いぞ紫」
「あんたがいけないんでしょう!」
「わかったわかった、もういやらしいことはせんから、もう一眠りしよう、朝と呼ぶにはまだ早い時間だ」
「もうっ!」

夜智王が紫を抱き寄せたまま横になり、あっと今に意識を手放し、寝息を立て始める。
逞しいというには夜智王の体は細すぎたが、それでもその腕に収まり、胸に抱かれると、妙な安心感が全身を包む。
元々一日の半分は眠って過ごす紫である、睡魔には弱い。

「ばか…」

何度目かの幼稚な罵りを呟きつつ、眠りに落ちていったのだった。







「本当に可愛い寝顔だな」

すっかり太陽も昇りきったあたりで夜智王は目を覚ます。
腕の内の紫は、すやすやと眠っている。
夜智王と相対する時は常に険しい目も、小憎たらしいことばかり言う口も、今はただ愛らしい寝顔となっている。

「のぉ九尾、何もせんから、その殺気を向けるのはやめんか?」

紫の寝顔を愛でつつ、暢気な声で夜智王はそう言った。
全身の毛が逆立つような強烈な殺気が、夜智王にのみ向けられている。
発しているのは、言うまでも無く紫の忠実な式、九尾の妖孤、八雲藍であった。
染み出すように、部屋の片隅に現れた藍は、険しい表情で夜智王を睨んでいる。

「…さっさと地底に向かえ」
「合意の上での情交だぞ。紫とて女子だ、ただただ男に甘えたい時もあるのさ、察してやれ」
「うるさい、八つ裂きにされたくなければ、今すぐ紫様から腕をどけろ」
「やれやれ。なぁ九尾?お主がワシを憎く思うのは―」
「うるさい!」
「はぁ…まったく」

取り付く島もない藍に、ぼりぼりと頭を掻き、寝具から這い出した夜智王は、一張羅の着流しを纏い、まずは寝覚めの一杯と、杯に酒を満たし干す。
空になった杯を再度酒で満たし、ついと藍に向ける。

「呑むか?」

殺意のあまり、狐の本性を露にし、獣の目で睨む藍。
言うまでも無く、否であった。

「さよか」

自分で杯を空にし、夜智王は立ち上がる。

「では紫によしなにな」

すやすやと眠る紫の番を頼むと、背後に痛烈な視線を感じつつ夜智王は我が家を後にする。
我がことながら、嫌われたな、と苦笑いを浮かべる。
紫の式になったばかりの藍とは、別に仲は悪くなかったのだ。

「紫が悪いのだ」

厄介事の報酬に紫との交わりを要求した時。
紫はよほどに嫌だったのだろう、藍に後を任せて逃げ出したのだ。
健気な式は、さすがは狐、夜智王ですら見抜け程完璧に紫に化けて、その身を差し出した。
別に紫はそこまでしろとは言っていなかっただが、なんとかなるだろう、という楽観が藍にもあったようだった。
なにせ彼女はかの傾国「白面金毛九尾の狐」の娘だ、蛇の一匹や二匹と思うのも無理は無い。
ただ、少々相手が悪かった。

「まさか、玉藻の娘のくせに、生娘だとはなぁ」

紫だと思って散々に愛したので、少々刺激が強すぎた。
変化が解けて正体を現した藍に慌てた夜智王は、やむなしと彼女に暗示をかけて忘れさせようとした。
これがまずかった。
元々、完璧に紫になりきる為に自己暗示をかけていた藍の術と、夜智王の術が絡んだ結果。
藍には「無理矢理夜智王に乱暴された」そんな記憶が残ってしまったのだ。
以来、すっかり嫌われ、憎まれている。
自身とは縁の薄かった母親と仲の良かったという夜智王を、藍は密かに慕っていた、それだけに憎悪も深まる。
文の時と同じパターンだった。

「いずれなんとかせんとなぁ」

そんな事を思いながら、夜智王はまず間欠泉が沸いたという博霊神社へと飛んだ。



[26700] 蛇、地底に赴く、の巻
Name: 窓◆0bf2c45e ID:4325365c
Date: 2012/05/31 04:50
「やぁ巫女殿、魔理沙」

てこてこと雪化粧された参道を登ってきた夜智王は、境内で何やらおしゃべりしているいつもの二人に声をかけた。
霊夢は相変わらず脇がむき出しの可愛い巫女服に、寒さ対策らしい襟巻き。
正直、寒いのにその脇はいいのか?と思わないでもない。
一方魔理沙は完全装備、上着も長袖、薄紫色のケープが良く似合っている。

「あら夜智王さん、いらっしゃい」

これといった感慨も無く霊夢は夜智王に挨拶を返す。
来る度に賽銭を奉じ、土産を忘れない「上客」ではあるが、それはセクハラ行動及び発言の慰謝料、とでも考えているらしく、態度はつれない。

一方で魔理沙は夜智王を認めると「ひっ!」と可愛い悲鳴を上げる。
何事?と怪訝な表情の霊夢の後ろに回り、夜智王の視線から逃れるように隠れ、怯えていた。
ぷるぷると小動物の様に震える魔理沙、常と違う彼女の様子に霊夢は夜智王と何かあった、と敏感に悟る。

「ちょっと魔理沙、何よ、ひっつかないでちょうだい、鬱陶しい」
「つ、つれないこというなよ、あたしとお前の仲だろ」
「どんな仲よ。まぁ暖かくていいけど」

そんな魔理沙をよそに、夜智王は賽銭を奉じ、参拝をすます。
お札を放り込んだ夜智王に、きらん!と霊夢の目が光る。
「これで綿入れが質屋から買い戻せるわね」とか呟いている所をみるに、相変わらず家計は火の車らしい。

「夜智王さん、魔理沙に何をしたの?」
「うん、ちとおしおきをな」

霊夢の問いに、差し入れだよと里で買ってきた饅頭を渡しつつ、夜智王はことの次第を語り出す。
きっかけは紅魔館の地下に住む魔法使い、パチュリー・ノーレッジの依頼だった。
彼女の図書館から無断で本を持ち出して返さない、一般的には「盗難」と呼ばれる行為を繰り返す魔理沙を懲らしめたい。
その手伝いを依頼された夜智王は快諾し、無事その勤めを果たした結果が、この小動物・魔理沙らしい。

「何したのよ……」
「それはワシと魔理沙とパチュリーのひ・み・つ、じゃ」

にぃっと厭らしい笑みを浮かべる夜智王に、霊夢も黙るしかない。
下手に聞き出すと、後ろでびくびくしている魔理沙の精神が崩壊しそうだったからだ。

「なぁ、中々に素敵な一夜であったな?魔理沙」
「ひぅ!やだ、やめて、思い出させないでぇ!」
「これに懲りたら、ちゃんと許可をもらって本を借りることだな」

折角の忠告も、霊夢にしがみつきぷるぷると震える魔理沙の耳には、届いていないようだった。

「あ、あたしは帰るぜ!」

夜智王のばか!すけべ!と捨て台詞を吐きながら、魔理沙は箒に跨がり飛び出す。
天狗顔負け速度であっというまに見えなくなった。

「なにかいやらしいことしたんでしょう?あんまりおイタがすぎると、私も容赦しませんよ」

半目で霊夢が夜智王を睨む。

「おお怖いな巫女殿。今回はお仕置きだったから少々過激だったが、ワシは基本的に女子が嫌がることはせんぞ?」
「……む」

確かにそうだ、この蛇は妙に紳士的な所が有る。
特に霊夢に対してはそうだった。
からかうようなことはあるが、本気でいやらしいこと(胸やら尻を触ったり)や、口説くようなマネは一切しない。

「(なんか……すっきりしないわね)」

蒸したての饅頭を頬張りつつ、霊夢は難しい顔をする。
余計な心労が無く、ほっとするような、逆に女として意識されていないのが悔しいような、複雑な気分に襲われる。

「しかし、二人で何の相談しておったのだ?胸が小さくて悩んでおるならワシが膨らませてやるぞ、いて」

いやらしく手をワキワキさせセクハラ発言をする蛇の眉間に、霊夢の投じた退魔の針がぶすっ、と突き刺さる。

「次は目に突き刺しますよ」
「怖いのぉ」と嘯きつつ夜智王はあっさり針を抜き取る、並の妖怪ならただでは済まない巫女の針も、この蛇には大した痛手ではないらかった。

「妖精並にしぶといのに、妖精程簡単には参らないし……嫌になっちゃうわね」
「ワシは間欠泉の見物が目的だったんじゃが、近いからとわざわざ参拝に来た、貴重な客に対する態度ではないと思うぞ?」

その饅頭も旨かろ?と夜智王は聞く。たしかに饅頭は旨い、肉汁はたっぷりだし、白菜や筍の食感も良い。
だが、それとこれとはまた別の問題であった。
そもそも参拝客が少ない最大の要因は夜智王のように妖怪共がたむろするからである。

「あの間欠泉を上手く使えば人寄せになると思わない?」
「そうさな、巫女殿がお望みとあらば、敷地内にちょっとした温泉をつくっても良いぞ」

化け土竜あたりに穴を掘らせ、天狗か河童に土管でも作らせて、湯を引く、知り合い連中に声を掛ければすぐだ。
と夜智王が音頭を取れば、なんとでもなると宣う。

「……なかなか魅力的な案ね」
「神社の境内から道を整備すれば、ついでに参拝し賽銭を落とす者もあるであろう。問題はここに至るまでが、里人にはちと厳しいがな」

まったく整備されていない参道を見やり蛇が苦笑する。

「ついでに、そこの整備もお願いできるかしら」

霊夢も薄々感ずいてはいるのだ、普通の里人には、あの見通しの悪い参道を通ってくるのは難しいことに。

「さすがにそれはワシの領分ではないよ巫女殿。本来ここは妖怪退治がご利益の神社だ、あまり流行っても困る」
「ケチ」
「巫女殿だけには言われたくないセリフであるな」

カカカと蛇が笑う。

「ではまぁ源泉としてどの程度使えるか見て参るかな……詳しい話はまた後日な巫女殿」
「あら、珍しく早く退散なのね」
「ワシがおっては魔理沙が戻って来づらいであろ?」
「その気遣いを別の方向に生かしなさいよ」
「ははは。では巫女殿、乳の相談は何時でも受け付けるぞ」
「……やっぱり退治しよう」

怒った霊夢がお札を取り出したので、夜智王はからかうのをやめて遁走を開始する。
幸い霊夢は追っかけて来なかったので、上空へと舞い上がり間欠泉が吹き出している場所へと向かう。

「これは、まるきり地獄谷だな」

間欠泉が吹き出したという場所までやってきた夜智王は、立ち込める硫黄臭に顔をしかめながら、そう呟いた。
ぼこぼこと噴出す熱水。
人体には有害な毒の風。
なによりも、辺りを浮遊する怨霊たち。

夜智王に気がついたのか、一匹、また一匹と怨霊たちが近寄ってくる。

オォォォォォォォォ

陰々と、言葉にもならぬ、怨念の声、鬼哭が響く。

「そういえば幻想郷には寺が無かったな、供養に来る坊主もおらんのか」

哀れなことだな、と死してなお生前の業から逃れられぬ怨霊達を、夜智王は憐憫の篭った表情で見る。
それが癇に触ったのか、単に生者が妬ましいのか、どろりとした気を撒き散らし、怨霊達が夜智王を取り囲む。
憑り殺そうとしているのか?
無数の怨霊に囲まれながらも、夜智王は慌てることもなく、小首をひねる。

「はて、こうだったかな」

密教僧のように印を組み、ぼそりと真言を唱える。

「のうまくさんだ かかか びさまえい そわか」

蠢いていた怨霊達がぴたりと動きを止める。
畳み掛けるように、再度同じ真言を唱える。

「のうまくさんだ かかか びさまえい そわか」

幾つかの怨霊が、ぱぁ、と光を放って消える。
そうでない怨霊も、落ち着いたのか、真言を嫌ったのか、さぁと潮が引くように夜智王から離れてゆく。

「やれ、紫が心配するわけだな」

怨霊の厄介な所は生者に憑依することにある。
人間ならば、除霊すればよい。
だが、その有り様が精神に依存する妖怪にとっては、それは「死」を意味する。

「まったく、なんだって放棄されたはずの旧地獄と繋がっただけで、怨霊が湧くのだ?」

なぁ?とその場に現れた人物に夜智王は丁寧に問いかけた。



「説明をしてもらえるか?小町」

夜智王に問われた緋色の髪を左右に結った少女。
死神、三途川の船頭、小野塚小町は、肩を竦めて返した。
怨霊が散ったのは、彼女の登場を察知してことらしい。

「なんだ、だんまりか?知らんのか?まぁ、別に構わんがな、異変の解決は巫女殿にお任せすればよいのだし……とまぁ野暮な話はここまでにして」

久しいな小町、相変わらず素敵な乳だな、揉ませろ、と親しげにセクハラ発言を投げ、笑みを向ける。
相変わらずだなお前は、と肉饅頭のように盛り上がった豊かな胸をガードする、このバカは本当に揉みにくるからだ。

「憑依されかかった直後に呑気な奴だ」
「憑依などされんよ、地蔵様のご加護があるからな」

夜智王の唱えていたのは地蔵菩薩の真言。
六道を彷徨う遍く衆生を救済するため、既に悟りを得て如来になる資格を持ちながらも、菩薩として現世にとどまりつづける、ありがたいお方である。
一方で、閻魔天の本地仏であるともされる。
閻魔として、三途の川で獄卒に子供を責めるように命じながら、地蔵として子供を助ける、おいおいマッチポンプではないか、と言いたくなるような、そんなお茶目な所もあたっり、なかったりする。
そんなことを思い出し、小町は元は地蔵だったという、上司の顔を思い出す。
いきなり、ここへ向えと命じられた時は何かと思ったが……

「地蔵様の加護ね……まったく信心などかけらもない妖怪まで救済されるなんて、懐の深い方だな」
「ああ、まったくな。ありがたく涙がちょちょ切れそうだ。で、じぞ……ではなくて、映姫殿はどうだ?相変わらずか?」
「相変わらずだ、よく説教を食らう」
「それはお主がサボるからだろう」
「五月蝿いよバカ蛇。何しに来たか知らんが、さっさとこんな所はおさらばしようじゃないか」
「そうもいかん、これからこの間欠泉を遡って地底に遊びに行くのだ」
「旧地獄に“遊び”に行くってのが、お前らしいというか、何というか……」

呆れても物も言えない、とばかりに小町が絶句する。

「時に小町は地底……旧地獄の地理には詳しいか?」
「なんだい、そんなもの聞いてどうするんだい?」
「遊びに行く先の地理を調べるのは旅の基本だろう?まぁ未知の土地、というのはそれはそれで乙だがな」

どっちだよ。とぼやきつつも、小町はかつての職場を現状を語りだしてくれた。

「そんなには詳しくないがね。まずは旧都、昔獄卒達が住んでた辺りだな。あそこは、今の幻想郷のしきたりに馴染めない連中が占拠してるよ」

好き放題に暴れ、人を取って食いたい、そんな連中は紫の定めた幻想郷のルールに不満を持ち、幻想郷を去った。その移転先が折り良く経営のスリム化で放棄された旧地獄だったらしい。
他にも、妖怪にすら嫌われるような、土蜘蛛などの妖怪も地底を居としているらしい。と続ける。

「なんとも素敵な話だな」

愉しそうに喉をならして嗤う夜智王に、小町は「どこがだよ」とつっこみを入れる。

「あと地底の管理自体は、旧灼熱地獄を蓋するように『地霊殿』とかいう建物があって、そこに住んでいるサトリに任せてるそうだ」
「ほうサトリ、まだ生き残りがいたのか」
「古明地さとり、とかいう娘だったかな」
「娘?美人か?」

何よりもそれが肝要、とばかりにそれを問う夜智王に、さぁと小町は肩を竦める。
生憎面識は無い。

「では、まぁ自分の目で確かめてみるか」
「・・・・・・サトリに心を読まれるは平気なのか、お前は」
「何も疚しいことが無いからな、むしろ言葉にせずともこちらの心を知ってもらえるなど、好都合ではないか」

言葉を尽くして口説くものもちろん良いがな。
ようするに、どんな妖怪だろうと、女子であるなら、それが夜智王にとっては、情愛の対象らしい。
もはや言葉も無い、とばかりに小町はばんざいする。お手上げ、という奴だった。

「……まったく、精々気をつけてくるこったな。そうそう四季様から伝言「後で説教にいくので覚悟をしておくように」だとさ」
「……しばらく地底に避難しておくか」
「あそこは旧地獄、つまり元々こっちの管轄下にあった場所だぞ?」

どうしたものか、と思案しつつ太陽をみやれば、良い時間であった。
そろそろ地底に赴かないと、囮としての役目が果たせそうにない。

「まぁ、映姫殿の事は後で考えるか……ではな小町、次はもっと色っぽい話をしような」
「いや、結構だ」
「けちけちするな。一度だけで良いから、な?」
「せめて、顔をみて言えよ、この助兵衛」

胸に笑顔を向けてくる夜智王。

「小町の乳が美しいからいけないのだぞ?」
「さっさと行けよ」
「よく考えておいてくれよ?」

そう勝手に言い捨てて、ずるりと蛇身へと変じた夜智王は、するりと間欠泉に飛び込んだ。
かつては土着の神であった夜智王は、蛇神の例に漏れず水と山の神。
水脈を伝って移動する程度の力は今も残っているらしい。

「四季様に告げ口しとくか」

そんなことを小町は呟くのだった。










「やれ、なかなかに難儀であった」

久方ぶりの水脈渡りのせいか、地下から吹き出してくる流れに逆らっていたせいか、少々迷子になりつつも、なんとか夜智王は地底へとたどり着いていた。
出口に選んだ井戸からずるりと這い上がり、人に化生する。
地下だというのに雪が降るのか、と感心しつつ辺りを見回してみるが、何処とも知れぬ場所であった。
しかし

「うん、懐かしいにおいがするではないか」

風に乗ってかぎ慣れた匂いが漂ってくる。
鬼の匂いだ。
その匂いに釣られるように、ふらふらと夜智王は歩き始める。

「これは地獄時代の名残か」

一本の街道の両脇に立ち並ぶ建物。
かつての地獄街道を夜智王は歩いてゆく。
匂いの源に近づくに連れ、濃厚な酒精、焼けた肉等の匂いが混じり始め、更には笑い声も聞こえ来る。
どうやら鬼達が集まって宴会でもしているらしい。
案の定だった、広場に大勢の鬼が集まり騒いでいる。
懐かしい情景に夜智王が目を細める。

「おい、貴様何者だ!」
「地上の匂い……何故に地上の妖怪が地底に来た!」

誰何の声。
気がつくと夜智王は数名の鬼に囲まれていた。

「約定を知らぬわけでもあるまい、すぐに地上に戻れ、今なら許してやろう」
「おい、まてこの匂い、こいつ八雲紫の手の者だぞ」
「何……?彼奴の式か?」

ざわざわと場が騒がしくなる。
鬼は嘘と約束を破ることを嫌う者が多い。
地上と地底の相互不可侵。その約定を破って侵入してきた夜智王に、強い殺意が向けられる。
そんな鬼達に対し、身構えるでもなく、夜智王は深く嘆息した。

「酷いのぉ、どいつもこいつも一度ならず情を交わした仲だというのに……つれない話だ」
「何を……ってお主!夜智王ではないか!」
「ようやく気がついたか冬虎」

別のざわめきが鬼達に広がって行く。
「夜智王だと?」「あの蛇か」「何をしに来た」「どうでも良いわ、酒だ酒!酒を持って来い!」

「夜智王!久しいなぁ!」

ざわめきを掻き分け、一匹の鬼が飛び出してくる。
身の丈九尺は有る筋骨隆々の美丈夫、癖っ毛の頭部からは見事な一本角が飛び出している。

「おお春虎か」
「本当に夜智王だな!おい男はやめろ、女になれ!とびきりの美女に化けて酌をしてくれや!」

夜智王を持ち上げてぶんぶんと振り回す春虎。よほどに再会が嬉しいらしい。

「酌は結構だが、どうせなら童子に化けろ」「いや女童の方が良い」「馬鹿を言うな、女だ女」

鬼たちが自分の性癖にあわせてあれに化けろこれに化けろと口々に言い募り始める。

「落ち着け落ち着け、皆叶えてやるからな、春虎下ろせ」
「おい、美女だぞ美女」
「わかったわかった」

そう言った夜智王は、ぼすんと煙を立て分裂し、化ける。
老若男女、あわせて八体。いずれも可愛らしく、美しく、妖しげな雰囲気を備えた別嬪ばかりだった。
鬼達が歓声を上げる。
銘々自分の好みの夜智王を囲うと、宴を再開する。

「お、おい、まて俺の分の夜智王を連れて行くな!」

美女に化けた夜智王をかっ攫われた春虎が怒鳴る、が。

「まぁまて春虎、お前には礼をせんといかん、とりあえずワシで我慢せい」

中性的な姿の夜智王がそんな春虎を嗜める。

「……よくわからんが、それが済んだら女に化けろよ」
「わかったわかった、お主好みの、十七くらいの美少女に化けてやるよ」
「二言は無いな!絶対だぞ!」
「いや、そのままでいいよ夜智王、私はお前に酌をして欲しい」
「何ィ!」

どこのどいつだ邪魔をするのは!
怒り心頭で振り返った春虎の表情が凍りつく。

「ゆ、勇儀……姐さん」

おおよそ、頭の上がらない相手の登場に、春虎の威勢がしおしおと、青菜に塩の勢いで萎れて行く。

「おう久しいな星熊の」
「ああ、久しぶりだね夜智王蛇……なんだい妙な顔して」
「お主、なんでジャージを着とるのだ?」

長い金髪に、額からは見事な一本角、そして何より夜智王の目を引くのは豊かで美事な双乳。
だが、山の四天王が一人、星熊勇儀はなぜか外界の学生が着る体操服……ジャージを着ていた。









後書き
長らく間が開きまして、申し開きのしようも無い作者でございます。
皆様いかがお過ごしでしたでしょうか?
実は春先から眼病を患いまして、一時は常時目に鈍痛が走り、当然PCのモニタなど眺める余裕も無く。
現在は大分回復しましたが、仕事でもPCやらPOSの画面を見る関係上、どうにもプライベートではPCを使う余裕の無い日々が続いておりました。
今後も以前のペースは難しいですが、ぼちぼちと投稿を再開していきた所存です。
どうぞよろしくお願いいたします。



[26700] 蛇、鬼と宴す、の巻
Name: 窓◆0bf2c45e ID:4325365c
Date: 2012/07/08 22:05
宴が再開されあちこちからは、陽気な鬼達の笑い声が聞こえてくる。

「いつまでメソメソしてるんだい春虎、ぶん殴るよ」

ぶちぶちと泣き言を繰り返す春虎を勇儀が脅す。
言い返したくとも言い返せない春虎は、ただ項垂れるばかりであった。

「ひでぇよ勇儀姐さん……」
「そんなに蛇女がいいなら、あそこに四匹もいるだろう」
「あれは夜智王が鱗を変化させた傀儡。そんなのでは嫌だ」
「相変わらず目が良いな春虎は」
「じゃぁ諦めな」
「…………」

広場に面した大陸風の三層の楼閣。
恐らくは妓楼だろうが、そこが勇儀のねぐららしい「ついてきな」とも言わずそちらに向かう。
夜智王は、その尻に釣られるように、ほいほいとついていくが、逡巡の末春虎が「やはり女が良い!」そう言い捨て宴に戻っていく。
余程に勇儀が怖いのか?
脱兎の如く逃げてゆく春虎に、「まったく……」と勇儀は苦々しい表情を作り。
他方夜智王「ははは、変わらんなぁ」と愉快そうに笑う。

「……」
「……」

春虎が去り、少し両者の間に横たわる空気が変化する。
無言で二人は楼閣を最上階へと登ってゆく。
旧都が一望できる一室が整えられており、そこで勇儀は酒を呑んでいたのだろう。
そこには何やら可愛らしい生き物達が居た。
幻想郷のあちこちで見かける妖精のような大きさの生き物。
妙にデフォルメされた動物や虫のような外観、ただ小ぶりの角が、彼らが子鬼であることを示していた。
それに夜智王は興味を示す。

「おお、なんだ?この愛らしい生き物は?」

勇儀の帰還を歓迎しようとしていた、それら、愛らしい小鬼達はひょいと顔を出した夜智王…大妖おおものである蛇に驚いたのか。
わっと!蜘蛛の子散らすように逃げ出す。
コロコロと丸いこい、蜥蜴のような竜のような小鬼を捕まえた夜智王が、ひょいと抱えあげる。
短い手足をわちわちと降り、円らな瞳に涙を浮かべて「いやーん」と鳴く。

「小鬼か?えらく可愛いな?うん?ここか?ここがよいのか?」

柔らかな腹の辺りを、さわさわといやらしい手つきで夜智王が撫で回す。
ぴゅいー!と奇声をあげた小鬼だが、恐らく生まれて初めて覚えた「性的な快楽」にすぐに全身が真っ赤に染まる。

「さてはお主メスだな?よしならば――」
「ふんっ!」

調子に乗る夜智王の首筋に勇儀の手刀が叩き込まれる。
ボキッ!と乾いた音がし、うめき声もあげることもできず、どさりと夜智王が崩れ落ちた。
その腕から逃れ、勇儀の豊満な胸に飛びついた小鬼がぴーぴーと泣く。

「ゆうぎさまー、こわかったー!」
「よしよし、大丈夫か?」

他の子鬼達も勇儀の体に隠れるように、その足やら背にしがみついて震える。
赤子を見守る慈母の様な表情で勇儀は彼らを安心するように、と慰める。

「おいおい星熊や、いきなり何をするのだ?首が飛ぶかと思うたぞ?」

頸椎をへし折られた癖に何事もなかったように、息を吹き替えした夜智王が首を擦る。
ゴキゴキと首を鳴らして正常な位置に収める、相変わらずの生命力であった。

「飛ばす気だったんだよ、この好色蛇め」
「なんじゃ、この小鬼らは、あれか?お主の愛玩動物ペットか?」

鬼は案外に進んだ技術を持っている、水を吸って酒に変える「酒虫」のように、この子鬼のような“使役鬼”を創ったのだろう。

「こいつらはあたしの子分だよ」
「ふぅん……さよか」

何やら含みのある言い方をする夜智王。怯える子鬼達に「なんもせんぞ?」と笑顔を浮かべ手招きするか、一匹として寄っては来ない。

「お前ら、こいつは危ない蛇だ、階下したに行ってな」

はーい、と声を揃え、小鬼達は逃げるように去っていく。

「ひどいなぁ、懐炉がわりに一匹欲しかったというのに」
「やかましい」

片膝を立て、脇息にもたれ掛かった勇儀が不機嫌そうに言う。
対面に座した夜智王に、勇儀は巨大な大皿のようなサイズの盃に突きだす。
酌をしろということらしい、酒瓶の上に置かれていた柄杓を使って、巨大な盃に並々と注ぐと、勇儀はぐいと豪快に飲み干し、また盃を突きだした。

「ワシには酌してくれんのか?」
「なんであたしがお前に酌をせにゃならんのだい?」

胡乱な目付きで勇儀は夜智王を睨む。
ひどいのぉ、と呟きつつ酒を再度注ぐ。
自分の分としては、懐から杯を取り出して、注ぐ。

「どうだ、綺麗な青であろう?」

青空色の杯を見せびらかすが勇儀の反応は冷たい。

「そうだな、だが小さすぎる」
「そういう問題ではないだろう……べねちあんぐらす、というのだぞ?舶来品だ」
「ようするに瑠璃杯だろう?」
「やれやれ自慢し甲斐の無い奴だ」

並々と注いだ酒を、一口味わうように飲み、夜智王は相好を崩した。

「かぁぁ!辛いなぁ!旨いが、強くて辛い、いかにも鬼の酒だ」
「酒ってのは辛いもんだろう」
「甘い酒も良いものだぞ?」
「そんなのは女子供の酒だ」

お主、女だろう?と思った夜智王だが、懸命にもそれは口にしなかった。
酒瓶を覗き込むと、普通このサイズなら一匹で十分なはずの酒虫、鬼の酒製造鬼が四匹も悠々と泳いでいる。
どうも!と言わんばかりに愛嬌のある顔を夜智王に向けてくる。

「多すぎだろう……」
「そうか?普通だろう?」
「女子といちゃいちゃしながら、もちろん閨でな?飲むには、べたべたに甘い方が雰囲気が出てよいのだぞ」

へらり、と好色そうな笑みを浮かべ、遊郭での思い出話しを始める夜智王。
それを聞き流し、勇儀は険しい視線を向ける。

「蛇。お前、何をしに地底ここにきた」
「なんだ……珍しくお主から誘うてくれたのは尋問のためか」

残念だなぁ、と夜智王がしょげる。
実の所、夜智王と勇儀の仲はあまり良くない。勇儀が一方的に夜智王を嫌い、無視する仲であった。

「吐け、蛇」

刺すような視線を向ける勇儀。へらりとした表情でそれを受け流し、夜智王は空になった杯に酒を注ぎながらおどけた口調で答えを返す。

「遊びだよ遊び。遊びに来たのだよ。お主ら鬼達が少なからず地底に移り住んだと聞いたのでな」
「嘘だな」

夜智王の返答を、勇儀は即座に切って捨てた。

「嘘などではないぞ?」
「そうだな、確かにお前は遊びに来たんだろうさ、だが別の目的もあるんだろう?」

真実を素直に告げることで、本当の目的を隠す。

「蛇らしい、厭らしいやり口だ」
「勘繰りすぎだよ、星熊や。春虎に文の件で礼も言いたかったし、お主らと飲む酒は実に愉しい」
「文?ああ、お前の若紫か」
「そんなつもりはなかったのだがなぁ」
「嘘を吐け」
「嘘では無いよ、まぁ豪放磊落を地でゆくお主には解らんか」
「喧嘩売ってんのかい?」
「いや、男というのは案外に繊細なのだぞ?」

ふん、と勇儀は鼻を鳴らして盃を干す。
黙って夜智王は酌をする。

「時に茨木はここに居るのか?」
「知らん。あたしはあんまりあいつは好きじゃない」
「はは。“力の星熊童子”は“知恵の茨木童子”にようやり込められておったからな」
「五月蝿い!……そういえばお前は仲が良かったね、茨木とは」

まぁ京の都の頃から知り合いだからなぁ。と夜智王は言って酒杯を干す。

「あれは頭が良いが、その分理詰めで追い詰めると、あっさりと陥落する」

だまくらかして、あの肢体を何度も堪能させてもらったものよ。
と実に悪い笑顔で夜智王は嘯く。

「あたしはお前のそーゆー処が嫌いなんだよ」

真っ向からの闘争を好まず、嘘を吐き、策を巡らせ、他者を騙し陥れる。
夜智王の性格は、おおよそ鬼、特に勇儀の好みとは真逆であった。

「ワシはお主のそういう、はっきりした所が好きだな」
「だからなんだ?」
「あとその乳も」
「引きちぎるよ?」

まったくデレる様子の無い勇儀に夜智王は、はぁ、と嘆息する。
昔から彼女はこの調子であまり夜智王とは接点が無かった。

「怖いのぉ。そうさな、ワシに勝ったら教えてやろう」
「いい度胸だ、バラバラにしてやるよ」

ゴキゴキと勇儀の拳が鳴る。

「まてまて、力比べでは試すまでもなく、お主の勝ちだろう?これでやろうではないか」

揶揄うような口調で夜智王は酒瓶を指差した。








「あれ姐さん、どうしたんで?」

酒宴の会場に現れた勇儀と夜智王に、騒いでいた鬼の一匹が声をかける。
愉快そうな笑い声に交じり、夜智王の分身と鬼達が戯れる嬌声が響く。
それが気に入らないのか、勇儀の通った鼻梁に皺が寄る。

「ありったけの酒を集めな」
「は?」
「おう秋葉の、ワシと星熊とで飲み比べをする、ということになったのよ」
「おいおい、そりゃぁ……おもしろそうだな!」

さっそく秋葉と呼ばれた鬼が声を掛けると、物見高い鬼達は毛氈の上に対面で座す二人を囲むように集まってくる。
自然、どちらが勝つかで博打が始まった。

「俺は姐さんに賭ける」
「まぁここは姐さんに賭けるのが手堅いよなぁ」
「ああ、夜智王もうわばみではあるが……勇儀姐さんはザルどころかワクだからな」

さぁ張った張ったと胴元役の鬼が声を張り上げるが、圧倒的に勇儀に賭ける者ばかりであった。
その様子に「ふふん」と勇儀が挑発的な笑みを浮かべて、夜智王を嘲笑う。
夜智王は肩を竦めるばかりである。

「おいおい、これじゃ賭けが成立せんぞ?」
「なら俺は夜智王に賭けよう」

夜智王(幼女)に酌をさせ、静かに酒を飲んでいた一匹の鬼がそう言う。

「また斑だ」
「分の悪い方に賭けるの好きだよなぁあいつ」

金髪と漆黒の髪が斑模様の鬼は、何と言われようと気にする気もないのだろう、ニヒルな笑みを浮かべて、酒を飲んでいる。

「おう斑や、ワシに賭けてくれた礼だ、それお持ち帰りしてよいぞ」

幼女の分身を差してそんなことを夜智王が言う、斑は黙って盃を掲げて返事をする。
一方で

「お、持ち帰り……だと?」
「例え賭けで損しても……いやむしろ端銭で夜智王を抱けるということか?」
「いや、持ち帰りとなれば、誰にも邪魔されず……」

夜智王の爆弾発言に鬼達がざわめく。

「やっぱり俺も夜智王に……」
「あ、この野郎!抜け駆けか!」

鼻の下を伸ばした鬼の一匹が夜智王(少女)を引き寄せつつそんなことを言うと、あちこちから怒号が響く。

「そっちの娘は俺が狙ってたのに!」
「うわっ!ばか!やめろ!」

たちまち、己の好みの夜智王を巡って取っ組み合いの喧嘩が始まる。
何せ鬼の喧嘩である、大地が揺れ、肉を打つ鈍い音、酒器が乱れ飛び、吹き飛ばされた鬼がぶつかり建物が破壊される轟音。

「あ、俺は鷹の字が勝つ方に賭ける」
「俺は愛宕にするかな」

賭け好きの鬼達が、今度はその乱闘の勝利者で一儲けしようと、和気あいあいと賭けに興じ始める。
スケールのでかいばか騒ぎを、楽しそうに夜智王は眺める。

「ふふ、実に懐かしく、楽しいな、のぉ星熊や」
「まぁ、そうだな悪くない雰囲気ではあるよ」

これから飲み比べするのというのに、二人とも酒を酌み交わしながら、乱痴気騒ぎを楽しそうに眺める。
そんななか、勇儀の胸をすけべぇそうに、ちらちら見ながら一匹の鬼が酌をしながら「と、時に姐さん、姐さんに賭けるとご褒美は?」などとほざく。
一瞬、沈黙が訪れ一同ごくり、と息を呑み、勇儀の肢体にいやらしい視線が集まる。
だが
「ああん?」と勇儀が睨み付けると、皆一様にしおしおと萎れて行く。

「ご褒美があるならワシお主に賭けるぞ」
「賭けの当事者が何をほざいてるんだい!このド助平!だいたい、なんで私の飲み比べするのか忘れたのか!」
「勝ったら勇儀を抱けるのではなかったか?」
「縊り殺すよ!?」

アホな事を言う夜智王に勇儀が思わず怒鳴ると、どっと座に笑いが満ちる。

「まったく夜智王は相変わらずだなぁ」
「勇儀姐さん相手にようやるわー」

ようやく賭けが成立したのか、どんどんと酒瓶が集めらてくる。

「えー、では不肖この陸奥が審判を勤めさせていただきます」
「さっさと始めな」
「はぁ、では」

そして酒豪二人の飲み比べが始まった。








後書き。
当方では茨木童子はあの人、という設定です。
頭は良いんだけどチョロ可愛い感じで、良く蛇に騙されて泣いていました。みたいな。



[26700] 蛇と鬼と飲み比べ、の巻
Name: 窓◆0bf2c45e ID:4325365c
Date: 2012/07/16 04:25

「さすがに、鬼の酒はキクなぁ」
「なら降参したら、ろーなんらい」
「お主こそ、呂律が怪しくなってきたではないかぁ」
「……どっちも大概ですよ」

夜が明けてもなお、両者一歩も譲らず夜智王と勇儀の飲み比べは続いていた。
あれ程騒がしかった広場も、気が付けば随分と静かになっていた。
見物の鬼達は、乱闘の末倒れる者。
二人に釣られて大いに痛飲し、そのまま寝てしまう者。
ちゃっかりと夜智王の分身としけこむ者。
ただ審判役の陸奥だけが、ろくに酒も呑まず律儀に二人に酌をし続けている。

「たらたらと呑むにゃ蛇」
「味わってのまねば損であろが」

酌をされるとぐいっと一気に飲み干す勇儀。対照的に夜智王はゆっくりと味わうように杯を空にする。
いずれにせよ、いかな鬼といえど若干“引く”ような量を二人は飲み込んでいた。

「はいはい喧嘩しないでくださいね」

酒瓶を持ち上げ、僅かに残った酒を夜智王と勇儀に酌をする。
それでその瓶は空になった。
さっさと勇儀は飲み干し、夜智王は杯に零れてきた酒虫を「うん?お主美人だな?ワシの所にこんか?」と口説き始める。
どうやら相当に酔っているらしかった。

「おーい、寝てないで次の瓶もってこいやー」

声を掛けられた鬼が、うつ伏せのままふるふると手を振る。

「おい、まさか……」
「もーねーぞー、旧都中の酒、すっからけつだ」
「おい陸奥、次!!」

ざわっと陸奥の背筋に悪寒が走る。

「さ、酒が切れました、姐さん」
「あんらって?」
「酒が……もう無いそうです」
「ないぃ?」
「ですので勝負は引き分けということで……ひっ!」

ふざけんなぁ!と叫んだ勇儀は陸奥を締め上げて振り回す。
ぎゃぁぁぁぁ!と悲鳴を上げ陸奥は目を回す。

「最後の一杯が、名残惜しいが、それ故にまた格別よなぁ」

ぐいっと夜智王が杯を干す。
勇儀は陸奥を放り捨て、ぎろりと夜智王を睨む。
目を回した陸奥を哀れに思ってか、夜智王はまた一枚鱗を美女に変化させて陸奥を介抱させる。

「ないものは仕方あるまいなぁ?」

その時だった、夜智王の杯でぴちぴちしていた酒虫がふるふると震えだす。

「おいおい無理をするでないよ」

いいえ!と言いたげにドヤ顔を決めた酒虫の体からジワリと酒が染み出し、夜智王の杯を満たす。

「これは実に旨そうだなぁ」

のんびりとそう言い、感謝の接吻を酒虫にする夜智王。
照れくさそうに酒虫がふるふると鰭を振るわせる。
言うまでも無いが、この酒虫、雌らしい。

「では、頂くとするか」
「待ちな!」

勝手に一杯多く呑もうとする夜智王に勇儀が飛び掛る。
酒器が飛び、酒虫も飛ぶ。

「うわぁ……」

地面に叩き付けれそうになった酒虫を、なんとか復活した陸奥が受け止めながら、感嘆の声を漏らす。

飛び掛ってきた勇儀を難なく受け止めた夜智王は、その体を抱きしめながら、勇儀の唇を奪っていた。

「んっ……こくっ……ふぁ……やっ……んんんっ!」

艶っぽい声を勇儀が漏らす。
彼女の唇を割った夜智王は、口内に含んでいた酒を口移しで飲ましているのだ。
明らかに含んでいる量よりも多い酒が延々と勇儀の口内へと注ぎ込まれる。

「やめっ……ちゅ……うんっ……こくっ……ふぁぁ」

極上の甘露のような酒が注がれ、否応なしに飲み込む度、勇儀の体から力が抜けてゆく。
がくがくと膝が笑い、崩れ落ちそうになる体を必死に叱咤するが、言うことを聞いてくれない。
しっかりと夜智王が抱きとめているせいで崩れ落ちることは無かったが、ようやく夜智王が口を離す頃には、すっかり勇儀は脱力しきっていた。

「はぁ……はぁ……蛇、貴様ぁ」
「懐かしい味であろう?」
「この脱力と……痺れは、はぁ…くぅ」

恨み言を吐く勇儀を一旦無視し、夜智王は陸奥に話しかける。

「陸奥や」
「なんです?」
「一杯だが、星熊が多く呑んだ。よって勝負は星熊の勝ち。で良いかな?」
「……試合に負けて、勝負に勝った、という感じですな」
「ははは、そうだな」
「では。呑み比べは勇儀姐さんの勝ち。ということで」
「おう、審判ご苦労であったな」

勇儀はお持ち帰りさせてもらうぞ。と言って夜智王は広場を去ってゆく。

「さて陸奥様。こちらも楽しみましょうか?」
「え……?」
「ろくろく飲みもせずに審判してくれたお礼ですわ」
「や、それは、賄賂でしょ?困る……ちょっと乳押し付けないで、あっ!」
「ワシはお主のような誠実な男が大好物なのだ……知っておったか?」
「やめ、そこ握っちゃらめぇ!」
「こんなに固くして、ふふふ」

いやぁぁぁぁぁ!と陸奥の悲鳴が旧都にこだまするのであった。










「ほれ水だ」

楼閣に戻り、適当な部屋の寝床に勇儀を寝かせた夜智王は、よく冷えた水を含むとまた口移しで勇儀に飲ます。

「や……めぇ、ろぉ」
「飲まねば辛いばかりだぞ?何せあれは鬼毒酒だ」

鬼にとって毒となる酒。
それを夜智王は体内に飼っていた。

「ひきょう……ものぉ」
「あのまま続けても勝負はつかんし。勝ちを譲ろうにもそなたは諾とは言わんだろう?」

ならば、これしか手はなかったのさ。と夜智王は悪い笑顔で言う。

「だが実に楽しい一時であったよ」
「ちくしょう」
「ははは。お主が勝ったのに悔しそうにするなや星熊。さてワシがここに来た切っ掛けから話すとするかぁ」
「な…に?」
「別に聞かれて困る訳でも無いしな」

そう言って、自分も水を飲みながら夜智王は地底に赴いた理由を話し始めた。







「……」
「と、まぁそんなわけだ」
「スキマの思惑に、まんまと乗せられた」

悔しそうに勇儀が吐き捨てる。
早くも回復し始めた勇儀は随分としかっりとした口調でぶちぶちと紫の悪口を吐き始める。

「まぁそうだな。鬼達はほぼ戦闘不能。これで巫女殿も色々とやりやすかろうて」
「博麗の巫女……当代はどうだい?」
「ああ、実に可愛らしいぞ。やや乳は小さ目だがな」
「そんな話は聞いて無いよ!」

ぶんっ!と勇儀の拳が夜智王を襲うが、ひょいと蛇は避ける。
まだまだ回復しきってはいないようだった。

「特に脇がな」
「強いのか聞いてるんだよ!」
「ははは。すまんすまん、そうさな……強いな多分歴代最強ではないか?」
「へぇ……」
「そろそろここらに辿りつくだろう、どうだ?一戦挑んで見るか?」

まだ勇儀が本調子でないことを承知で夜智王は唆す。

「……酒をくれ、このさいお前の持ってる甘いのでも構わん」

むくりと起き上がった勇儀が盃を突き出す。

「ほぉ」
「この程度の毒だ、酒で洗い流す」
「はっはっは。実に星熊らしいな!」

夜智王はお気に入りの甘い酒を取り出し酌をする。
ぐいっとそれを煽った勇儀は立ち上がる。

「ほら案内しな」
「しかしお主との会話は色気が足らんなぁ」

やれやれといった風情で夜智王は肩を竦める。

空を見やれば、紅白の巫女と白黒の魔法使いがこちらに向かっているのが見えた。



[26700] 蛇と白黒魔法使いのトラウマ、の巻
Name: 窓◆0bf2c45e ID:4325365c
Date: 2012/08/25 04:31
「さっきのなかなか手強かったな」
「そう?」

旧都の街並みを見下ろしつつ、霊夢と魔理沙は仲良く並んで飛ぶ。

「ああ中々の初見殺しだったと思うぜ?」
「妬ましい妬ましいってうるさかったのは確かね。あら?」

へらっとした面で手を降る夜智王が霊夢の視界に入った。
隣には背の高い、頭部に見事な一本角を生やした女が居る。

「夜智王さんじゃない」
『ありゃ?』
「どうしたのよ」

通信機となった陰陽玉から萃香が妙な声を聞こえてくる。

『隣の女、ありゃぁ勇儀だ』
「知り合い?」
『ああ、あたしと同じ鬼だよ、手強いよ霊夢、気を付けな』

了承を意を返そうとした霊夢だが、すっとその目が半目になる。

「ちょっと魔理沙」

またぞろぷるぷる震え始めた魔理沙が霊夢の背中に張り付いていた、飛びにくいことこの上ない。

「な、なんで夜智王がここにいるんだよぉ」
「知らないわよ、ちょっと!離しなさいよ!どこ触って!くすぐったい!」

このままでは墜落する、そう判断した霊夢は、魔理沙ともつれ合うように地面に降下、夜智王達が居る辺りに着地する。
出迎えた夜智王は笑顔で二人に話しかけてくる。

「やぁ巫女殿に魔理沙、遠路遙々ご苦労だな」

呑むか?と駆けつけ三杯とばかりに杯を差し出す。

「結構です。それよりも本当に魔理沙に何をしたんですか?」

鬱陶しいんですけど。と酷い事を言う霊夢。
そんな霊夢の背中に隠れ、魔理沙は小動物の様に震えている。

「知りたいか?」
「別にどうでもいいです。ただなんとかしてくださいね」

そう言い魔理沙を引き剥がし、ぺいっと夜智王の方に放る。
ひぃっ!と悲鳴をあげる魔理沙、足をとられて転びそうになるのををすかさず夜智王は受け止める。

「や、やだ!離して!」
「何もせんよ魔理沙、そう怯えんでくれ」

悲しくなってしまう。と夜智王は心底楽しそうな声で言う。
地上では魔理沙のサポート要員……パチュリーとアリスが「何をしたの?」「別に?」と険悪な空気を醸し始め、霊夢は勇儀と段幕ごっこをおっ始めたので、誰も魔理沙を助ける者はない。
ぱたぱたと力なく暴れる魔理沙を逃がさぬよう夜智王は彼女を抱き締める。

「やぁだ、離せぇ」
「素敵な一夜だったというのに、魔理沙もあんなに気持ち良さそうにしておったではないか?ん?」
「やめろ!思い出させるなぁ!」
「忘れといわれてもなぁ?」

くすくすと笑う夜智王。
いけないと分かっているのだが、あまりに愛らしい魔理沙を見ていると、ついつい苛めたくなってしまう。
魔理沙が夜智王を怖がるようになった一件、身から出た錆とはいえ、少々やりすぎたかな?と思わないでもない。
話は数日前に遡る。







「派手にやられたな」

紅魔館地下大図書館。
倒れた書架、床に散乱する書物を眺めて夜智王はそんなことを言う。
現状復帰に異界から召喚された小悪魔達がぱたぱたと飛び回っていた。
別に地震があったわけではない。
長椅子にぐったりと寝そべり、頭の上に氷嚢を乗せた少女。
ここの主たる魔女、パチュリー・ノーレッジと魔理沙の段幕ごっこによって生じた被害だった。
“借りる”と称して物を無断で持って行き返さない。
世間一般では「窃盗」と呼ばれる犯罪なのだが。
独特の価値観と収集癖を持つ魔理沙が良くやる「悪癖」であった。

「で?ワシに頼みとはなんだ?」
「本を……取り返してきて……こほっ」

息も絶え絶えにしゃべり、時折空咳をするパチュリー、ごく自然に夜智王は彼女を引き起こすと背中をさすってやる。

「大丈夫か?」

ひゅーひゅーと細く喘ぐ吐息、喘息患者特有の症状である。
魔法使いの宿命とでも言おうか、魔法の実験で有毒な物質を扱うため、彼女は体が弱い。

「あり……がとう、大分楽になった……」
「まったく魔理沙にも困ったものだな。なんなら少しお仕置きしてやろうか?」

軽い気持ちで夜智王は言う。

「お願いしよう……かしら」
「おいおい、本気か?ワシの“お仕置き”だぞ?」
「本当に痛い目に会う前に、一度、思い知れば……いいのよ」

あなたなら、上手くやるでしょう?と何やら含みのある言い方をするパチュリー。

「ふふ、お主は健気だなぁ」
「うるさいわよ」

半目になってこちらを睨むパチュリー、その頬に唐突に夜智王は軽く接吻した。
突然のことにパチュリーの顔が真っ赤になる。

「なっ!なにを!」
「うん?いやパチュリーが可愛らしかったので、ついな」
「か、かわっ!?かわわわ!!」
「興奮するな、身体に障るぞ」

どぅどぅと興奮するパチュリーをなだめる。
むきゅーと興奮のしすぎで目を回すパチュリー。

「ま、あの手癖の悪さはワシも少々腹に据えかねておったし、丁度良かろう」

そういうことになった。







「(あれ……?なんであたしは寝てるんだ?)」

微睡みの淵で魔理沙は小首を傾げる。

「(しかも……ここはあたしの家じゃ……ない?)」

ベッドの感触も、鼻孔を刺激する空気も、住み慣れた我が家とは違う。
必死に薄ぼんやりとした記憶を探り出す。

「(そうだ、本を借りようと思って紅魔館に行って……)」

そう、あの引きこもりのパチュリーを、夜智王が連れ出しているのを目撃したのだ。
嫌がるパチュリーをお姫様抱っこして、にこにこ顔の夜智王が霧の湖の方に向かっていったのだ。
「たまには日の光を浴びんと健康に悪いぞ」とか言っていた気がする。
そうだ、間違いない。
「しめたチャンスだぜ」と魔理沙はさっそく図書館に忍び込んだ。
いつもは妨害してくるパチュリーも居ないわけだし、借り放題……だったはずなのに。
そこでぷつりと記憶は途切れていた。

「そろそろ起きろ魔理沙や。でないとちゅーしてしまうぞー」
「ひぃ!?」

つんつんと何者かが頬をつついた。その感触と、キスをする、という脅しに急速に魔理沙の意識は覚醒する。
慌てて身を起こそうとするが、果たせない。
ひどく体が重く、頭がじんじんと痛む。

「おはよう魔理沙。可愛い、というにはちと間抜けな寝顔だったぞ?」

声の主。夜智王は魔理沙の口から溢れた涎を拭ってそれをぺろりと舐める。
その行為に、魔理沙は恥ずかしさから真っ赤になる。

「や、夜智王?なんで?ていうか人の唾、なめっ!?」
「しかしあっさり引っ掛かったのぉ」
「ほ、引っ掛かった?」
「本を盗む、頭の金色な鼠退治をパチュリーに頼まれてな」

頭の金色の鼠、というのが自分だと察した魔理沙が抗議の声をあげる。

「あ、あれは借りてるだけだぞ!」
「無断で借りて、返さないのはな、窃盗というのだよ」
「だってお前らにしてみれば、むにゅ!」

人間一人の寿命なんてあっという間、あたしが死んだら取り返しにこい。
そう続けようとした魔理沙の口を、夜智王の指が阻む。
ぷにぷにと柔らかな唇の感触を楽しむようにしながらも、ふっと夜智王は寂しげな笑顔を浮かべて魔理沙を見つめる。

「お主は酷いことを言うな、魔理沙」
「な、何を……」
「人と親しむ妖怪の気持ちが、そなたに解るか?」
「……なにを」

魔理沙にしてみれば「あたしより先に死ぬなよ」という一種の好意的表現なのかもしれない。
だが、それは言われた方にしてみれば、特に長命の者にとって、酷く残酷な言葉であった。
長く生きて精々百年。
どれだけ愛そうとも、必ず人は妖を置いて先に逝く。
その短さは蜉蝣にも似て儚く。それゆえに眩しいほどの光を放つ。
闇夜に映える花火にようだ、と夜智王は人の一生を思う。
その光の強さ、死に向かって懸命に駆けていく熱に。
触れれば壊れてしまうような脆さ、儚さに、どうしようもなく妖は魅了されてしまう。
儚いがゆえに愛しく切ない。づすることもできないジレンマ。
喪失を恐れ人から距離を置く者が多い中、夜智王は好んで人と交わり、情を交わす。
当然の帰結として、幾度も消失を味わい続ける。

「あ……う……」

気がつけば儚くなっていた者もいる。
その腕の内で看取った者もいる。
愛せば愛すほど、その別離は夜智王の心にヤスリをかけ、傷付け、磨耗させていく。

「ワシは人を食わんがな。時折衝動に駆られることがあるよ。この愛しい人間を喪う前に、この手で殺めて食ってしまおうか……とな」

本能の赴くままに人を食らう低級な妖怪と違い、ある程度の力を持つ妖怪にとって「喰う」というのは歪んだ、だが最大の愛情表現なのだ。
それ程に夜智王は人が愛しい。
泥寧の闇の底に住まう妖怪は、どうしようもなく人の放つ光に惹かれ、その身を焼かれ続ける。
透明な狂気を瞳に宿した、寂しげな微笑。
それに魔理沙は圧倒される。
短い付き合いだが、どうしようもなくスケベで、カラカラと良く笑う、陽気な、変わった妖怪。そんな夜智王の印象とはまったく違う。
好んで人と交わるこの妖怪はどれ程の別離を繰り返してきたのだろうか?
金色の光彩のに魔理沙を写しながら、どこも見ていない瞳。その最奥に宿る闇の深さに魔理沙は恐怖した。

「あ……う……」
「だからな魔理沙や。悲しいことを言わんでくれ」

人間同士ならばな構わんよ?自分より先に死ぬな、という魔理沙なりの好意の表現なのだろう?と夜智王は続ける。
一日でも良い、自分よりも長生きしてくれ、自分を遺して逝かないで欲しい。
それは親しい相手への、孤独な愛情表現であろう。

「だがな、ワシらが目を逸らしとる、だが心の底では怯え続けとる、別れを思い出させることは言わんでおくれや」

淡々と、だが静かに慟哭するような悲しみに満ちた声で、夜智王は魔理沙に懇願した。
到底「否」と言える訳もなく、がくがくと震えるように魔理沙は首を縦に振り承諾の意を示す。

「わ、わかったよ……気を付ける」
「よし、いい子だ」

ぽんぽんと夜智王は魔理沙の頭を軽く叩く。

「まぁ、悪い子だった魔理沙へのお仕置きはするがな」
「……え?」
「安心せい痛くは無いぞ、むしろ気持ち良すぎて気が狂うかもしれんがな」
「……嘘」
「嘘ではないぞ?」

先刻までの悲しげな雰囲気は塵程も残らぬ、屈託の無い笑顔であっけらかんと言う夜智王に、さっと魔理沙の顔が青ざめる。
この蛇のする「お仕置き」など、当然いやらしいことに決まっている。

「いや……やだ!あたし、初めて……」
「あー安心せい、無理矢理処女を奪ったりせんから」
「ほ、ほんと?」
「ああ、約束する、処女はおろか、唇も乳も一切手出しはせんよ」

ほっと安堵する魔理沙だが、では一体何をされるのか?
急速に不安が沸き上がる。

「な、なにする気だよぉ」
「まぁ手始めに、着せ替えごっこかな」
「ひっ、やだ、はずかしい」
「ダメだ、言ったろう?お・し・お・きだと」

やだやだぁ!と悲鳴をあげて半泣きになる魔理沙。
そんな魔理沙に、嗜虐心に満ちた笑顔を向ける夜智王。
ぱんぱんと手を叩くとドアが開き、パチュリーと小悪魔が入ってくる。

「どう首尾は」
「上々だ」
「そう、さすがね」
「ぱ、パチュリー!いやパチュリーさん!た、助けてくれ!」
「嫌よ」

にべもないパチュリーであった。無理もないが……

「さて小悪魔や、魔理沙の着替え任せたぞ、ワシは準備があるでな」
「は~い」

すみませんねぇ魔理沙さん、と心底申し訳なさそうに小悪魔が魔理沙を脱がし始める。
抵抗しようにも体が思うように動かない魔理沙は為す術もなく素っ裸にひんむかれ、夜智王が用意したらしい衣装に着替えさせられる。

「うむ。よぉ似合っておるぞ。可愛い可愛い」
「ひっく!……はずかしいよぉ……みるなぁ!ばか!すけべ!」
「しかし最初からジャージにブルマーとは、小悪魔、お主中々に通だな」
「お褒めに預かり恐縮ですぅ」

外界の現実からは絶滅した「ブルマ」を履かせた体操着スタイル。
少し小さめのサイズを用意したせいか、ぴっちぴちで、体の線がもろわかり、でいやらしいことこの上ない。

「胸は小さめですけど、魔理沙さんはスタイルが良いですよねぇ」
「うむ眼福だの」

くびれた腰から突き出した尻の曲線をじっとりと夜智王が視姦する。
そのいやらしい視線に、魔理沙はたまらず悲鳴を上げる。
ままならぬ体を懸命に動け!と命じて視線から逃れようとするが、かえって悩ましい動きになり、見るものを楽しませるばかりである。

「見るなよぉ!ばかぁ!」
「小悪魔、上着の裾をちとめくれ、ヘソチラだ」
「かしこまりました~」
「や、やめろ……あ、やめてぇ」

ぺろりと裾から捲り上げられ、可愛らしい臍が覗く。

「うむ、よいのぉよいのぉ、可愛いぞ魔理沙」

ぱしゃり、と夜智王が取り出したカメラで魔理沙の恥ずかしい格好を撮る。

「写真!?写真だめ、とっちゃだめ……」
「何を言っとる、記念撮影は大事だ、なぁパチュリー」
「そうね、脅しの材料になるし」
「ひ、ひぃ!」
「よーし小悪魔、ひっくり返せ、次は後ろから撮るぞ」
「はーい」
「やだ、やだぁぁぁ!」
「うむ良い尻だ、魔理沙は安産型だな」

夜智王はぱしゃぱしゃとシャッターを切りまくった。







「も、もぉ許してぇ」

体操服に始まり、チャイナドレス、ナース服、セーラー服、メイド服、巫女服(脇巫女仕様)、スク水、ビキニ、バニー、エプロン、と取っ替え引っ替えにコスチュームプレイ&セクシーポーズでの撮影を繰り返され、魔理沙の心はすでにボロボロだった。
だというのに、止めとばかりに最後の衣装に着替えさせられる。
セクシーランジェリーであった。
肌が透けて見える紗製のキャミソール、随所のレースやリボンなど一見可愛らしく見えるが、胸元のリボンで留めるタイプで前は大胆に開いており、可愛らしいヘソが覗いている。
ブラジャーは清楚な純白、これまた縁取りのフリルや胸元のリボンが愛らしい。
しかし肝心のカップが薄い生地の上に大胆なデザインで、桜色の先端こそ隠していたが、薄い膨らみを覆うにはあまりに頼りない。
普段のドロワーズと違い、穿かされたショーツはこれまた白。
ワンポイントの赤いリボンが可愛いらしいが、布地がやたら小さく辛うじて秘所を隠しているいるものの、前は下腹部の大半、後ろも尻がほとんど丸出しだった。
おまけに紐パンである。
一見すれば可愛らしいが、実のところおそろしくいやらしい下着姿にされてしまった魔理沙は、半べそかきながら、はずかしそうに身をくねらせる。
その仕草が愛らしさといやらしさを、一層煽っていることに彼女の理解は追い付いていないようだった。

「本当はガータートストッキングもと思ったが……むしろ生足の方がそそるな、健康的なエロさがある。可愛いぞ、魔理沙」

そう言って、夜智王は魔理沙の足を取ると、ちゅと接吻する。

「ひっ!やめ……っ!……なめっ、やめろ、なめるなぁ」

ぺろり、ぺろりと足の指を舐められ、そこから電流のようにこそばゆさと不可思議な感覚が魔理沙の体を走る。

「やだ、なんかぞくぞくするよ。やめてよぉ」
「なんじゃ魔理沙はおこちゃまだの、快楽が怖いのか?」
「やっ!やぁぁぁ」

脚を這い上がるように夜智王の舌が舐めあげる。
膝小僧に接吻の雨を降らされ、魔理沙が悶え転がる。
性に不馴れな、まるきり生娘まるだしな様子に夜智王がにぃ、と笑う。

「お主霖之助を想って自慰などせんのか?ん?」
「そ、そんなこと、しないよぉ!」

羞恥に染まる白い肌を愛でつつ、夜智王は「それはいかんなぁ」としたり顔で言う。

「乙女の時は短いのだ。もっと色気を身に付けて、積極的に誘惑せんとあの鈍感は落とせんぞ?」
「香霖とは、そんな、関係……ゃあっ!やだ、お尻なでちゃだめっ!うぅぅぅ、やっ、くすぐったい!みみ!やめろ、息を……ふぁぁぁぁ」

ふぅと夜智王が魔理沙の耳に息を吹き掛ける。全身に走る快楽にも似たこそばゆさに魔理沙が体を震わせ愛らしい声を漏らす。

「なんじゃ、嫌だ、恥ずかしいといいながら、ずいぶんと艶めいた声で鳴くなぁ?うん?」

実に愉しそうに夜智王が魔理沙に囁きかけながら、むき出しの魔理沙の胴に指を伸ばす。
体の正中線にそって胸元から下へ指を這わして行く。

「あっ……ふぁぁ……やだぁ」

薄い胸の膨らみの縁を指が這う。
確かに乳房には触れてはいないのだが、ただ肌をなぞられているだけだというのに、魔理沙の口からは快楽の混じった切ない声が漏れる。

「そろそろ効果が出る頃なのだがな」
「こう……か?」
「パチュリーとワシが共同開発した特製薬だ。永遠亭の月の賢者殿も「問題なく効果を発揮する、人体に害はない」と太鼓判をおしてくれたそうだから安心せい」
「ひぇ……や、やだやだ!なにするきだよぉ!」

ひぃ!と突然魔理沙が悲鳴をあげる。
どくん、と心臓が脈打ち、全身の血の気が下腹部に集まるような感覚に恐怖する。

「あ、あつい……なにこれ、お、おなかが……いやだ、こわいよぉ」
「すぐに楽になるから安心せい」

恐怖と謎の感覚に震える魔理沙を労るように、手を握ってやると反射的に魔理沙は握り返す。
爪が食い込む程に夜智王の手を握りしめ、悶え狂わんばかりの感覚に耐える。

「あ、あ、なんか……へん、きちゃう、なんか……でてきちゃうよぉ!」

まるで絶頂でも迎えたかのように、背を弓なりに反らせ全身を痙攣させた魔理沙が悲鳴をあげる。
震えが終わり、ぐったりとベッドに身を投げ出した魔理沙は、はぁ…はぁ…と荒い呼吸を繰り返し、なにやらもぞもぞと脚を動かしている。

「ふむ、どうやら問題なく効いたようだな」
「やち……はぁ……なにしたんだよぉ……ふぅ……なんか苦しい……え?え?きゃぁ!」

苦しげに喘ぐ魔理沙の股間を夜智王が指差すと、可愛らしい悲鳴が漏れる。
小さな下着からはみ出した物。
先刻から感じていた股間の違和感の正体、それは……

「おう、これはまた立派なモノが生えたな」
「な、なに、これ?」
「何ってナニだよ。ちんぽだちんぽ」

わざと卑猥な言い方をして、夜智王はつんつんと魔理沙の股間に生えた一物をつつく。

「や、やめ!つついちゃだめ。やめてぇ!」

男性器で感じる未知の感覚、淡い快楽にびくびくと魔理沙が痙攣する、無視して夜智王は魔理沙に生えた男根を玩ぶ。

「ははは、敏感なちんぽだなぁ、ほれむくむくと大きくなり始めたぞ?」

本来なら秘裂があるべき魔理沙の股間はすっかり男の物と化しており、睾丸まで備わっていた。
弄られあっさりと半勃ちになった魔理沙の肉棒に、女の様にほっそりとした夜智王の指が絡み付く。

「もっと可愛いのが生えるかと思っておったが、いやはや中々に立派なちんぽではないか」

根本をくにくにと弄りながら、先端から裏筋にそってつつつと指を這わす。
当然のように魔理沙が悲鳴をあげる。

「ひっ……やぁ……ううっ!やめ、やめてぇ!」
「泣かんでもいいだろう……気持ちよかろ?」

そういって紐をほどいて下着を取り、可愛らしい“おいなりさん”を機能を確かめるように揉みしだく。
奇妙な「男の快楽」に魔理沙は頭が真っ白になり、くらくらとしてくる。

「やだ、こわいよぉ、こんなのへんだよぉ」

ぼろぼろと涙をこぼしはじめた魔理沙。
さすがに少し可哀想になったのか、夜智王の手が離れる。

「反省したか?」
「したよぉ……だから」
「もうあんなことは言わんな?」
「言わない、言わないから」

とってぇ、と魔理沙は懇願する。
よしよし、と泣きじゃくる魔理沙の頬に接吻し、こぼれ落ちる涙を舐めとる。

「よし、ではお仕置きも住んだし、いい子の魔理沙にご褒美をあげねばな」

にぃ、と夜智王の顔が嗜虐に歪む。

「やだ!やだよぉ、やめてよぉ!」
「そうは言ってもな魔理沙や。これは出すものを出さねば消えんぞ?」

この玉袋につまっとる精液を全部吐き出さんとなぁ、とまたつんつんと睾丸を弄る。

「う、嘘!」
「嘘でも冗談でもない、しかもこのまま放置すると、お主の身体に定着してしまうぞ?」
「や、やだぁ!ばかばかばかぁ!なにが「害はない」だよぉ!嘘つきぃ!」
「まぁ元々お仕置き用だからな、仕方あるまい?」
「ひどいよ、ひっく!もうお嫁にいけないよぉ……うぇぇん」
「そうしたらワシが貰ってやるよ、あとお主なら婿に欲しいという奴も多いのではないか?」
「そんなのやぁだぁ!こーりんのおよめさんになるのぉ!うわぁぁぁぁぁん!」

恥も外聞も無く泣き喚き始める魔理沙は、ばたばたと手足を降って暴れ始める。
ショックの余り幼児退行した魔理沙に、さしもの夜智王も苦笑するしかなかった。



散々に泣き喚き、暴れ疲れた魔理沙はぐったりとした様子でベッドに身を投げ出し、ぐずぐずと嗚咽をあげる。

「さて、気は済んだか?」
「もういいよ、煮るなる焼くなり好きにしろよ……ぐすっ」
「ふて腐れても魔理沙は可愛いなぁ」

よしよしと頭を撫でて魔理沙を慰めるが、すっかりやさぐれてしまった魔理沙は反応しない。

「おやおや、どうせなのだ楽しんだ方が徳だぞ?」
「うるさい、なんだよ男の癖に男のアレ嬉しそうに弄りやがって、この節操無し!腐れホモ!」
「どこでそんな悪い言葉を覚えたのだ?まったく……確かにワシは両刀だがなぁ」

カカカと笑う夜智王。

「まぁ安心せい。そう言うと思ってちゃんと準備がしてある」
「え?」

何をさせるのか、不安にびくりと魔理沙が震える。

「小悪魔、どうだ?」
「はい、上々です」

陽気な声で小悪魔が答える。
紅茶片手に魔理沙の痴態を眺め、時折冷笑していたはずのパチュリーの様子がおかしい。
上気した頬は紅色に染まり、とろんとした目は潤み、愛らしい唇からは悩ましげな吐息が漏れる。

「や、夜智王……あなた、私に……何を……」
「その茶に一服盛って置いた。魔理沙は男にイカさせるのは嫌だそうだ、パチュリーや協力してやれ」
「え……?」「い、嫌よ!」

夜智王の言葉に魔理沙はぽかん、とし、パチュリーは叫ぶ。

「そんなことを言っても体は素直だの、そなたの視線はさっきから魔理沙のちんぽに釘付けではないか?ん?」
「や、やだ……パチュリー、見ないで、恥ずかしいよぉ」
「ま、魔理沙……バカ!」

魔理沙のその仕草が一層にパチュリーを刺激してしまう。

「ふふ、さぁて楽しい時間になりそうだな」
「夜智王さま、私も混ざっていいですよね?」
「四人で乱交か、それは実にいいな」

夜智王と小悪魔(実は淫魔)のくすくすと淫靡な忍び笑いを漏らす。
魔法使い二人はサバトの生贄の子羊の様にぷるぷると震える他術が無かった。
















次回はふたなり魔理沙Xパチュリーを中心とした百合ん百合ん展開になります。
ふたなり、百合、が苦手な方は御気を付けください。
資料用にショタ系のBL本とか男の娘物の本を買った所を同僚(アイマスとイナイレをこよなく愛す淑女)に目撃され色々大変でした。



[26700] 蛇、クピドの真似事をする、の巻
Name: 窓◆0bf2c45e ID:4325365c
Date: 2012/09/03 02:56
一服盛られ、ふらふらとするパチュリーを抱え上げて、夜智王はベッドへ移動する。

「後で……覚えてなさいよ……」
「無論、こんな楽しい催しを忘れるわけなかろうが」

カカカ、と愉快そうに笑い、パチュリーの怒りなど意に介さず、蛇はその上着のボタンに手を伸ばす。

「さ、ご開帳と参ろうか」
「やぁ……ひぅっ!」

パチュリーの首筋を唇で愛撫しつつ、魔理沙に見せつけるように、少しずつパチュリーの服を脱がしてゆく。
夜智王の唇から流れ込む淫らな気に身悶えながら、それでもパチュリーは気丈に振る舞い、声を漏らすまいとする。

「う、あ……ひぅ」

薄暗い蝋燭の明かりの中、透けるような白皙の肌が少しずつ露になってゆく。
必死に声を抑え、身じろぎするパチュリーの仕草はその意に反して、酷く男の官能を刺激する物となってしまっており。
扇情的なストリップショーに、すっかり萎えていた魔理沙の一物がむくむく元気を取り戻し始める。

「ふぇ……ひぅぅ……」

慣れることのない感覚に妙な声を上げてしまう魔理沙。

「どうです魔理沙さん?パチュリーさまってエッチな身体をしてらっしゃるでしょ?」

夜智王の淫気に当てられ、淫魔の本能が絶賛暴走中の小悪魔が、魔理沙を抱き起こし、後ろから抱きつくと、耳元で囁く。

「や、やめ……みみ、くすぐったい……」
「痩せてらっしゃるから、余計におっぱいが大きく見えるんです、ほら」

夜智王が上着を脱がしきると、ぷるんと乳房が揺れる。
可愛らしいブラジャーに包まれた胸は美鈴程ではないが結構なボリュームがあり、窮屈そうに下着に押し込められていた。
不摂生が祟ってか、痩身のパチュリーだけあって余計に大きく見える。

「見ろパチュリー、お主の乳で魔理沙が興奮しておるぞ?」

夜智王の言葉通り魔理沙の一物は童貞小僧よろしく素直反応を示す。その様子に涙目のパチュリーが恨めし気な視線を向ける。
だが上気し潤む瞳はひどく愛らしく、かえって魔理沙の股間を刺激するばかりであった。
ぴくりぴくりと勝手に一物が反応する申し訳なさと、恥ずかしさとに、魔理沙は消えてなくなりたくなる。

「魔理沙の……変態……最低よ……」
「ち、ちがう……これは、勝手に……や、もぉやだぁ……」

女の身体を見て興奮する一物に魔理沙も涙をぽろぽろと零す。

「あら夜智王様、私が背中に当ててるおっぱいのこともお忘れなく」
「おっと、これはすまんかったな」

うふふふと愉しそう笑いながら、小悪魔がむにゅむにゅと魔理沙の背中に乳房を押し付ける。
小柄な癖に小悪魔も相当な一品の持ち主であるから、その感触が魔理沙の脳裏をちりちりと焼く。
夜智王も負けじとパチュリーの双乳に手を伸ばし、優しくこねくり始める。

「あっ……くっ、うぅ~」
「う、うわ……ぁっ」

ダイナミックにふにょんふにょんと形を変え、いやらしく揺れる乳鞠に魔理沙が思わず生唾を飲みこんでしまう。

「ふふ、魔理沙さんのおちんちんすっかりガチガチですね。いやらしい形……女の子なのに」
「やっ、やめろ、こあ!あぁっ!!」

パチュリーの乳房ですっかり怒張しきった肉棒と亀頭に小悪魔の指が触れる、小さく柔らかい女の子の手指に包まれ、魔理沙はあまりの気持ち良さに、悲鳴をあげて全身を小さく痙攣させる。

「触っただけ軽くイッちゃったんですか?」
「ち、ちがっ……ひぅ!こ、こあ、くっ!やめろって、はなせぇ、ふにゅぅ!!」

先端から溢れだした先走りの液を亀頭にぬるぬると刷り込まれ魔理沙が気の抜けたような声を上げる。

「敏感ですねぇ、まぁチェリーなんだから仕方ないです」
「おいおい小悪魔、あんまりやり過ぎるなよ?」

パチュリーの乳房を愛撫しつつ、背中に舌を伸ばしていた夜智王が暴走気味の小悪魔を諫める。
お前が言うな!とはこの事だろう。

「さぁて魔理沙、いよいよ生乳だぞ?」

器用にブラのホックを夜智王が口で外すと下着に詰まっていた柔肉が解き放たれぶるんと揺れる。

「ふ、ふあぁぁ、す、すご……」
「や、やめ、魔理沙……そんな目で、みないで……」

息を飲む魔理沙の情欲の籠った視線から、逃れるようにパチュリーが身を捩る、だが夜智王に捕まり果たせず、ふるふると解き放たれた乳房が揺れるばかりであった。

「またおっきくなった、魔理沙さんはおっぱいが好きなんですねぇ、ふふふ」
「いいではないか、おっぱいはいいぞぉ、夢と希望と愛が詰まっておるからな」

生乳を掴んだ夜智王がくにくにと優しく先端の突起を責める。
むくむくと大きくなった乳首に魔理沙の視線が吸い寄せられる。

「だ、だめ……夜智王……そこは、やめてぇ」
「ほぉ、そうかパチュリーは乳首が弱点か」

小悪魔に目配せをし、了承の視線を受け取った夜智王はパチュリーを抱えて魔理沙に寄せる。
小悪魔も魔理沙をパチュリーに寄せる。

「さ、どうぞ魔理沙さん」
「遠慮はせんでええぞ?」

ひょい、とパチュリーの乳房を持ち上げ、桜色の先端を魔理沙の眼前に付き出す。

「や、やめて……だめ」

嫌々と首を降るパチュリー。
魔理沙は熱に浮かされたように、魅惑的な双乳から目が離せなかった。
熱病患者が水を求めるように、無意識に顔が乳房に近づいてゆく。

「だめ!だめよ魔理沙!」

パチュリーの悲鳴に、すんでの所で理性を取り戻したのか、ぎゅっと目をつぶり、思い止まる魔理沙。
二匹の淫獣は詰まらなそうに口を尖らせる。

「あらら」
「やれやれ強情だのぉ、小悪魔」
「はい」
「一回果てれば理性も溶けるだろう、やるぞ」
「はぁい、かしこまりましたぁ」
「や、やめっ……!」
「きゃっ!……や、やだ!」

小悪魔がベッドに押し倒した魔理沙の上に、上下逆の格好でパチュリーを乗せる。
下着を取り払われたパチュリーの女陰が、そそり起つ魔理沙の男根が、互いの秘処を眼前に置かれ、二人の頬が一層羞恥に染まる。

「いっただきま~す」

満面の笑みを浮かべた小悪魔が魔理沙の肉棒をパクリとくわえる。

「んっ……うふ……ちゅぅ…ちゅぅ…おいひぃれふ……」
「あっ……あ、やめ、すっちゃだめぇ!……だめ、だめなの、あたし、あたし女なのぃ……やぁ、きもちいいよぉ、おかしいよぉ……ふぁぁ、なめちゃやだぁぁ、そここすっちゃやだぁ!」

小悪魔がリズミカルに頭を降って肉棒をしゃぶり、喉奥で亀頭を愛撫する度、魔理沙が制止の懇願と抑制できない快楽に淫らな悲鳴を上げる。
ここが弱点とみたのか裏筋を舌と指で丹念に責め始める小悪魔に魔理沙は翻弄される。

「はぁ……はぁ……んっ!……うぅ~……ふぁ、はぁ、夜智っ!やめ、な、さい……きゅぅ!」

小悪魔が無邪気な笑みを浮かべ、実に愉しげに小さな唇で献身的に魔理沙の一物が愛撫する。
じゅぼじゅぼと淫らな音に合わせて、唾液でべとべとの肉棒が小悪魔の口内を出入りする。
その淫靡な光景を見せ付けられるパチュリーの吐息も自然荒くなる。
しかもゆるゆると夜智王が尻をこねくり回しながら、女陰を愛撫してくる。
花弁への優しいキス程度の軽い愛撫にも関わらず、全身に堪えがたい快楽の波が広がり、その口からは抑えた喘ぎが漏れ出てしまう。

「ちゅぅぅ~んっ!……ふぁぁ、夜智王様ってば精気を流すなんてお器用なんですねぇ」

強く吸引してちゅぽん!と一物から口を離した小悪魔が尊敬の眼差しを夜智王に向ける。

「パチュリーはこうでもせんとあっさり気絶しそうでな」
「だったら……やめて、ちょうだい……くぅ!」

触れた箇所から、熱いのに全身が総毛立つようなぞわぞわとした感覚が走る。
夜智王が流し込む精気がパチュリーの身体に活力と快楽を与えていた。

「もうパチュリーさまったら、お体を気遣ってくれてるのに……もっと素直に快楽に身を委ねましょうよ」

気持ち良いですよ?とにっと笑った小悪魔が主の唇を奪う。
こちらは淫魔らしく、精気を奪う。夜智王からパチュリーを伝って小悪魔へと流れる精気のパイプにされ、一瞬パチュリーの視界が真っ白に染まる。

「んんっ!……ちゅ……んぁ……ぷはっ!こあ、やめなさ、むぅ!」
「魔理沙さんのおちんちん……ちゅぅ、ん~っ!……たっぷり吸ったお口でキスです、くらくらきませんか?」
「ば、ばか、何を……ああっ!やめなさい……乳首はぁ……」
「お前ら……やめろよぉ……」

小悪魔の口淫から解放されたものの、今度は自分のアレの上で主従が濃厚な絡みを始めた上に、眼前のパチュリーの秘処はすっかり潤み、見ているだけで股間を疼かせる。
加えて、パチュリーの抑え気味の喘ぎ声が魔理沙の耳に木霊し、視覚と聴覚を犯され魔理沙は煩悶する。

「魔理沙もパチュリーを気持ち良くしてやるか?」

ほれここを舐めると良いと、蛇が誘惑してくる。

「お願い……ぁあ!魔理沙……やめて……」
「やれやれ、二人ともなかなかに頑張るのぉ」
「ちゅぱっ……ですねぇ」

パチュリーの乳首から口を離した小悪魔も呆れ気味の口調で言う。

「そろそろイカせるか」
「どうしましょう?」
「魔理沙のチンポは……そうだな紅葉合わせと尺八で」
「パイズリフェラですね?パチュリーさまのおっぱいも使っていいですか?」
「二人紅葉合わせか、それは破壊力が有るな」
「や、やだ」「や、やめろよぉ」

のんびりと相談をする淫蛇と淫魔に、魔法使い二人は悲鳴を上げる。
必死の制止の懇願も、聞き入れらず再び淫らな行為が再開される。

「は~い魔理沙さん、ダブルパイズリですよ~?私とパチュリーさまのおっぱいまんこに挿入してくださぁい」

うふふ、と目を淫靡に輝かせた小悪魔は、パチュリーの乳首に自分の乳首を接吻させ、四つの乳房で淫らな穴を作る。

「ああっ!……やめなさい、こあ……ちくびは、だ、め……ぇ」
「はぁ……うふふ、パチュリーさまの乳首、こりこりして、気持ち良いですよぉ」
「いいのぉ」

羨ましそうにいいながら、夜智王指と舌がパチュリーの女陰へと向かう。
くにくにと外側の陰唇を愛撫しつつ広げ、膣口を露出させる。
桜色の内部は秘蜜で潤み、溢れだしたそれはゆっくりと内腿を伝い落ちていく。
血管と神経が集中し肌が薄い敏感な内腿へと舌を伸ばし、愛液を舐めとりながら秘処へと舌を這わす。
パチュリーへの愛撫の開始に合わせて、小悪魔は魔理沙の一物を乳房の間へと挿入させる。
再びパチュリーと濃厚な接吻をしたっぷりと分泌させた唾液を谷間に落とし潤滑剤にする。
とろとろと先走りを吐き出し続けている魔理沙の男根はゆっくりと乳房に飲み込まれてゆく。

「ひあぁぁぁぁっ!こ、これだめっ!……ひぅっ!あそこが、あそこがぁ!」
「あぁ……すごい、魔理沙の、あっついぃ!やぁやめて夜智王、そこ、だめぇ」

四つの乳房が作り出す乳圧と、極上の柔らかさ、唾液で滑る谷間の感触に魔理沙が堪えきれず悲鳴をあげ、背をのけ反らせてなんとか快楽を受け止めるが、その身体はびくびくと大きく痙攣し続ける。
突き出され顔を出した亀頭にすかさず小悪魔が接吻の雨を降らせ、舌を伸ばして鈴口を愛撫する。
一方パチュリーも小悪魔の乳首に擦られる自身のそれと、谷間に犯す魔理沙の肉棒の熱さに喘ぐ。
散々に夜智王が注いで来た淫らな精気で昂った身体には、乳房を犯す熱が悦楽であった。
しかも女の敏感な部分を夜智王が、パチュリーの快楽の波を完璧に読んで愛撫してくる。

「ふぁ……だめぇ……やぁ……なかに、舌、したぁ」
「やめて、やめて、やめてぇ……あそこが、あそこが爆発しちゃうよ、んぁああんっ!なんか来る、でちゃう、おしっこでちゃうよぉ!」

込み上げる射精感、未知の感覚に魔理沙が狂ったように喚く。
しかしやめて、と懇願する言葉とはうらはらに、その腰は勝手に動き、上下運動を繰り返し快楽を貪る。

「んっ……むぅっ……んっんっんっ!」

激しく突き上げてくる魔理沙の一物を巧みに受け止め、小悪魔は片時も肉棒を離さずに先端を愛撫し続ける。
さすがに挟み続けるが難しかったらしく、それは主に押し付ける。
快楽に翻弄されるパチュリーに代わって、その乳房を掴み一物に強弱をつけて刺激してやる。
時折ひくつく桜色の先端を苛めるのも忘れない。

「だ、だめ……もぉ……」

乳房と女陰を同時に責められ、パチュリーも急激に限界が近づく。

「そろそろだな、小悪魔、やれ」

ひくひくと痙攣する膣肉からパチュリーの限界が近いことを見てとった夜智王がスパートを命じる。
とっくに魔理沙は限界を越えていて、ただ自分が女であるという、本能が射精を堪えているだけの状態であった。
夜智王の命を受けた小悪魔は往生際の悪い一物に止めを刺すべく行動を開始する。

「ぢゅ、ぢゅぅぅぅぅぅぅう!」
「ひっ、ひぁぁぁぁぁ!」

強く吸引しながら、パンパンに膨らんだ陰曩をぎゅっと掴み、ぐにゅぐにゅと揉みしだく。
強烈な攻撃に魔理沙は視界が真っ白に染まる程の強烈な快楽に襲われる。
全身の血が股間に集まり感覚が抜けていく。

「やるなぁ」

小悪魔に負けじと夜智王も包皮を割って赤い真珠、女の一物とも言うべき器官、陰核を露出させそこに吸い付く。
最も敏感で繊細な器官を優しくだが容赦なく責め立てる。
吸いながら舌先で転がし、指で膣口と陰唇を擦る。

「あぁ……はぁ!……いっ、やぁ、あぁぁぁ」
「や……やだぁ……で、でちゃう、もぉもぉ、がまん……んんんっ!!ひっ、ふぁぁぁぁぁぁぁっ!」

全身をガクガクと震わせ、思い切り背を弓なりに反らせたた魔理沙が絶頂に達する。
ドクリと膨らんだ一物から間欠泉のように白濁液が噴出す。

「んっ!……んんっ!……うぐっ……ふぁっ!」

何とか受け止めようとした小悪魔だが、あまりの勢いに耐え切れず口を離す。
抑えを失った先端はびくびくと暴れながら、膨張と収縮をくりかえしながら、白濁液を吐き出し続ける。
勢い良く飛び出したそれらが小悪魔とパチュリーに降り注ぎ、淫らな化粧を施してゆく。

「むきゅ……ひっ…あ、あぁん!」

顔に叩きつけられた粘塊の熱さと濃厚な匂いに、パチュリーの理性が飛び素直に絶頂に受け入れる。
ずるずると崩れ落ちるように魔理沙の身体の上に倒れこみ、その肢体にしがみついて、絶頂の波に耐える。
魔理沙はその柔らかさと熱に絶頂後の敏感な身体を刺激され、一向に衰えない一物から更に精を吐き出す。

「あは、あははは、すごいです……んっ、こくっ……甘くて濃くて、やだ、私までイっちゃいそうです……」

勢い良く飛んできた白濁液をぶっかけられた小悪魔が淫らに笑い、陶然とした表情で付着したそれを一心不乱に舐め始める。

「そりゃ催淫成分の塊だからな旨いだろうさ。あまり含みすぎるとお主も余裕がなくなるぞ?」
「むりですぅ」
「さよか」

ふるふると震えていたパチュリーの、正気が溶け快楽に酔った瞳に、吐き出され、掛けられた白濁液が映る。
ごくり、とパチュリーの咽が鳴るのを聞いた夜智王がにぃと笑う。
指でぷるぷるとゼリーのように震える濃厚液を掬い取る。

「ほれ、旨いぞ?」

鼻先に突き出され、むんと甘いむせ返るような匂いがパチュリーの鼻腔を刺激する。
耐え切れずパチュリーは夜智王の指を咥えてしまう。

「ちゅ……んちゅ……こくっ……ふにゅぅぅ」

精液に良く似てはいるが、生臭いそれとは違い、一種の媚薬である白濁液の味に妙な声がパチュリーの口から漏れ出す。
マタタビに酔った猫のようだな、と夜智王はふにゃふにゃになったパチュリーを見てカラカラと笑う。

「はぁ、はぁ、はぁ……なんで、ぜんぜんおさまらないよぉ……夜智王のうそつきぃ」

一方密着するパチュリーの柔らかさ、匂いに包まれている魔理沙は、泣きたくなる。
アレだけ出したというに一向に男根が衰える様子もなく、びくびくと痙攣を続けている。
ドクンドクンと脈打つ肉棒の音が、まるで耳の横にあるように魔理沙を責め苛む。

「さて?」
「ひぅっ!」

睾丸に伸びた夜智王の手がくにくにと確かめるように蠢く。
あまりの気持ち良さと、男の手でそうなっている嫌悪感、背徳感に魔理沙の瞳からまたじわぁと涙を溢れさせる。

「ふむ三分の一程は出たかな?」
「あ、あれで!?」

少なくとも後二回はあんな思いをしなければこれは消えない、そう言われた魔理沙が悲鳴を上げる。

「大丈夫だ、男のこれが一番精を吐くのは女と交合した時。中々に濃厚な奉仕ではあったが、前戯はしょせん前戯……本番はもっと気持ち良いぞ」
「やだぁ、そんなの……おかしいよぉ、きがくるっちゃうよぉ」
「嘘を吐け、本当はもうパチュリーのそこに突っ込みたくて仕方ない癖に」
「ま、り…さ?」
「そ、そんなこと、な……い、んんっ!?」

否定しようとする魔理沙の肉棒を、唐突にパチュリーが掴む。
絶頂後の敏感な一物を柔らかな少女の手で握られ、魔理沙が息を呑む。

「ぱ、パチュ……なにを……だ、めぇ」
「ごめんなさい……魔理沙……」

夜智王にお仕置きを頼んだ事、それが過ちだった。

「だいじょぶよ……私が責任を取るから……んっ、ちゅ」
「あっパチュリー……だめだって……あう、気持ち、いいよぉ」

口と指を使ってパチュリーが魔理沙の肉棒に愛撫を始める。
小悪魔や夜智王に比べれば拙いが、嗜虐的とも言える先刻の責めとは違い、いきり立つ男根を慰撫するような、献身的な愛撫に魔理沙は戸惑う。
刺激は少ないはずなのに、心の底から沸き上がってくるような心地よい快楽。
懸命に愛撫をしてくれるパチュリーがたまらなく愛しい。

「パチュリー、いいよぉ……すごく気持ちいい」
「れる……ん、ほんと?」

嬉しそうに、くすぐったそうにはにかんだパチュリーが一層献身的な奉仕を始める。
小さな両手でしっかり肉棒をホールドすると、可憐な唇を一杯に広げて肉棒を飲み込む。
ゆっくりと、歯を立てぬよう慎重に亀頭と棹を口内粘膜と舌で慰撫する。

「ぱ、ちぇ……すごい、あったくて、やわらかくて、き、もちいいよぉ……だめぇそこだめぇ」

亀頭の根本、エラの辺りをなめしゃぶられた魔理沙が蕩けるような喘ぎ声をあげる。

「パチュリー、裏側の筋、そうそれだ、脈打っとる管をゆっくり擦ってやれ」
「やち……よけいなこと……ひゃぁ!あぁぁぁあ、らめそこらめ、きもちいいの、こしがぁぁぁ」

ガクガクと腰が痙攣する程の快美感に魔理沙が悲鳴をあげる。

「ふふ、気持ちよかろ?」
「いいのぉ……パチュリーのおくちもてもすごくいいよぉ」
「情の篭った愛撫だ、当たり前よ」
「じょう?……あんっ、ぱちぇ、ちょっとやすませて、だめだよ、でちゃう、このままじゃパチェリーのおくちにだしちゃうよぉ」
「んっ……じゅる……ちゅ……ぱぁ、はぁ、はぁ……いいわよ、へぇきだから……あむっ……んんっ」
「だ、だめぇ!」

時折夜智王が助言し、パチェリーも要領を得たのか、段々と巧みになってゆく口淫に魔理沙が悶える。

「肉欲を貪るような性交と違って、愛情の篭った情交は気持ちよかろう?まったく世話の焼ける連中よ」
「あ、い?」
「さよう愛よ。ほれパチュリーにばかり奉仕させんで魔理沙も返してやれ」

一回休みな、と魔理沙の肉棒から離れるのを嫌がるパチュリーを引きはがしベッドに横たえ、逆にぐったりしている魔理沙を引き起こす。

「や、やちぉ……ど、どうすればいいんだよぉ」
「魔理沙が今したいことをすれば良い」

頑張れ、とばかりに魔理沙の頬に接吻し、にやにやするばかりの蛇。
そんなこと言われても……と途方にくれる魔理沙は助けを求めるようにパチュリーを見る。
自然、豊かな膨らみが視界に入り、そこから目が離せなくなる。

「やだ魔理沙……そんなにじっとみちゃ……だめ」

痩せっぽっちの癖に胸ばかり大きな身体に劣等感でもあるのか、腕で乳房を隠し、もじもじと肢体をくねらせ恥じらうパチュリー。
その仕草に魔理沙の心臓がドクン!と跳ねる。

「(か、かわいぃぃ!)」

恥じらう女の子程可愛い物はない。
沸き上がるパチュリーへの愛しさに身を委ね、魔理沙は彼女に抱きついた。

「むきゅ……魔理沙?……あぅ……」

突然のことに驚きながらも、触れ合う肢体の柔らかさと暖かさ、心地よさに甘い声が漏れる。

「パチュリー、パチュリー、どうしよう……気持ち良いよ、ぎゅってしてるだけで、胸がどきどきするよぉ」
「魔理沙……かわいい」

ふるふると震える魔理沙を抱き締め返す。
初々しい恋人達の様な抱擁を、満足そうに眺めていた夜智王が腰を上げる。

「後はお互い心の赴くままにな、変に遠慮するなよ」

見つめ合う二人の顔が近づき、自然と唇が重なる。
最初は戸惑うな軽いキス、だが何度も繰り返し、互いの吐息が交じるにつれ段々と大胆になってゆく。
すっかり二人の世界に入ってしまった二人を、物欲しそうに小悪魔が指をくわえて見つめる。

「あぁ……お二人とも気持ち良さそうです」

いいなぁ、とすっかり蚊帳の外の小悪魔が不満の篭ったつぶやきを漏らす。
昂った身体をもて余しているのか、乳房と秘裂に手が延び、自分で慰めようとする。

「ほれ小悪魔、野暮はいかんぞ」
「だぁって夜智王さまぁ」

ひょいと小悪魔を抱き上げ夜智王がベッドから離れる。
よほどに切ないのか、すりすりと身体を擦り付けてくる小悪魔に夜智王は苦笑する。

「発情期の猫かお主は……ほれ愛し合う二人の交わりを邪魔するような無粋な真似はワシが許さんぞ」

お邪魔虫は退散じゃ、と言い、聞こえないのは承知で魔理沙達に「頑張れよ」と告げて扉へ向かう。

「夜智王さまぁ」
「安心せい、たっぷりと可愛がってやるから」

そう言い、ちゅっと小悪魔の頬に口付けると「あぁん!」と小悪魔が嬉しそうな悲鳴をあげる。

「なんでしたらもう二、三人仲魔を呼びましょうか?」
「野暮ったいことを言うな」
「あっ……やんっ、おしり、だめですぅ」

妙な気を回す小悪魔の尻をむにむにと揉みしだきながら夜智王は部屋を出た。





[26700] 【番外編】魔法使いと魔女、秘密の夜、の巻
Name: 窓◆0bf2c45e ID:aec463a4
Date: 2013/02/25 22:01

長い接吻の後、ようやく二人の唇が離れる。
呼気を忘れるほどの夢中のキスに、共に息が荒い。
はぁはぁと喘ぐように深呼吸しながら、蕩けた表情で見つめ合う二人の少女。
ふいに魔理沙は夜智王がしていたのを真似るように、パチュリーの首筋に顔を埋め、その可憐な唇と舌で愛撫を始める。
首筋から鎖骨へと、拙いながらも愛情に満ちた懸命な奉仕。
ふぁぁとパチュリーの唇が戦慄くように歓喜の吐息を漏らす。
その愛らしい声に一層興奮した魔理沙の視線が、豊かな胸へと吸い寄せられる。

「いい……か?」

躊躇いがちに問う魔理沙に、パチュリーはむしろ懇願するようにこくりと首肯した。
身を起こした魔理沙の両手がたわわな乳房へと延び、その小さな手には収まらぬ肉鞠をむにゅりとつかむ。

「すごい……パチュリーの、や、柔らかいな」

すべすべとした肌の上を滑るように魔理沙の手が乳房を愛撫する。
控えめに揉みしだき、敏感な先端には触れぬように気をつけながらも乳房全体に手を這わせば、柔らかな乳房はふにゅふにゅとその形を淫らに変える。
官能を煽る魔女の乳房に、我を忘れたように魔理沙の手が蠢く、その度パチュリーは控えめに喘ぎ漏らし、堪えきれぬように歓喜の声をあげる。
けして巧みといえぬ魔理沙の愛撫も、絶頂を迎えたばかりの身にはむしろ程好い快楽をもたらし、じょじょに身体を昂らせてゆく。

「おっぱいってこんなに形を変えるものなんだな……」
「なに、んっ……いってるのよ……」

かなしいかな魔理沙の胸は年頃の少女としてはいささか控え目なサイズである。
自分の乳房とはあまりに違うパチュリーの豊乳を、妬むでもなく、素直に感嘆し魔理沙はすごいと呟く。

「胸ばかり大きくて……っく!……みっともないわ」
「そんなことないぜ、パチュリーのおっぱい、すごくキレイだ」

ぽふんと谷間に顔を埋め柔らかな感触を堪能する。
妙なくすぐったさにパチュリーが身をよじるとふるふると乳房が揺れ魔理沙の頬を柔らかな感触が襲う。
堪えかねたようにぶるりと身を震わせた魔理沙は舌を伸ばすと、乳房の上に這わせ始める。
粘膜が触れる絶妙な心地よさに、びくんとパチュリーが痙攣し、快楽を我慢するためか、ぎゅっと魔理沙を抱き締める。
つつ、と乳房の谷間から丘を登り、舌は薄紅色の頂きへと近づいていく。
先刻はパチュリーの制止で思いとどまった帰魔理沙だが、今度は躊躇せず、ぷっくりと膨れた先端を舌でぺろりと舐める。

「あんっ!」

弱い所を責められ、甲高い喘ぎがパチュリーの口から漏れる。
一層官能を刺激された魔理沙は乳首を口に含むと、口内で飴でもしゃぶるかのように、舌を踊らせ乳首を愛撫し始める。

「やっ、だめ、だめ魔理沙、そこはぁ」

甘い声で懇願し、いやいやと首を降りながらも、魔理沙の頭を離すまいとするように掻き抱くパチュリー。
拙い愛撫である、だが子供のように己の乳房に吸い付く魔理沙へがひたすらに愛らしい。
その感情が一層パチュリーの肢体を昂らせていく。

「んっ!……あんっ!」

快楽の波に会わせてびくりとパチュリーの肢体が跳ね、背をのけ反らせながら、官能的な喘ぎを漏らす。
耳を犯すその響きに魔理沙も興奮を募らせてゆく。

「んっ、ちゅぅ」
「ああっ!」

赤子のように魔理沙がパチュリーの乳首を吸い始める。
ちゅうちゅうと出るはずもない母乳を求めるように、何度も乳首を吸い、なぶり、舌で転がしてはまた吸う。

「やっ!だめよ、まりさ……ほんとに、だめぇ!」
「んんっ、ぢゅぅ、んん~!!」
「ひやぁ!」

乳首をこんな風に吸われたことは無かったのか、悩ましい声でパチュリーが制止するが、それを無視し魔理沙は乳首を吸ったままそのままぐいと乳房を引っ張る
一層甲高い歓声をあげるパチュリー。
魔理沙はぐにゅと延びた乳房を掴むと、まるで乳を搾り取るように、乳房をしごく。

「だめ、だめなの……そんなにされたらぁ!」
「ちゅ~~っぱぁ!」
「あっ……」

乳首へ愛撫で絶頂寸前に追い詰められたパチュリー。
唐突に魔理沙が口を乳首から離す。

「ま、まりさ?」
「こっちばかりじゃ不公平だよな?」
「や、やぁ」

戸惑うようなパチュリーの問いに、魔理沙はまるで夜智王が乗り移ったかのような、少し意地悪そうな笑みを浮かべ答え、弱々しい制止を無視し反対側の乳首に唇を寄せる。

「やぁ……すっちゃだめ、やだ、まりさ、やめてぇ」
「パチュリー……かわいいよ、んっ、ちゅぅ」
「あっ!やぁっ!」

やさしいキスをし、そのまま先端の突起を口に含むと、また赤子のように吸い始める魔理沙。

「だ……めぇ、っ!……はぁぁ、んくっ、まりさぁ!」

ぎゅっとシーツを掴み、全身をつっぱらせて快楽に耐えるパチュリー、このままでは乳首を吸われて絶頂してしまう。その恐怖に打ち震える。
なんとかしなくては、そう考えながら身をくねらせる。

「あつっ……!」
「ひぅ!」

ふいにパチュリーの内腿が魔理沙のアレに触れた。
火傷しそうな程に熱くなった剛直が柔らかな股肉に愛撫されビクリ!と激しく痙攣する。
夢中で乳首を吸っていた魔理沙も思わず悲鳴をあげて身を跳ねさせる。
一瞬だが責めから解放されたパチュリーはさっと手を伸ばし、きゅっと急所を掴む。

「ぱ、ぱちぇ、だ、だめ……」
「私ばっかりじゃ……不公平よね?」

若干座った瞳でパチェリーは魔理沙を見つめると、そのまま押し倒す。
攻守交代とばかりに魔理沙の胸に顔を寄せる。

「魔理沙ったらいやらしいわね、触てもいないのに……」
「だ、だって……ひやぁ!」

ぷっくりと膨らんだ先端にパチュリーの唇が触れる。
ちゅっと湿った音と共に一度離れた唇がうすく開き、桜色の突起を挟み込む。

「あっ……やっ……だめ、やめて、こすっちゃ、ひぅ!!」

かりっと先端を甘噛みされた魔理沙が悲鳴をあげてびくりと身体を痙攣させる。

「やめて、やめてぇ」
「私がそう言ったとき、魔理沙はどうしたかしら?」
「ごめん、あやまるからぁ」
「だぁめ」

魔理沙が反抗せぬようしっかりと逸物を握ったままパチュリーはまだ芯の残る未成熟な乳房をゆっくりと愛撫する。

「ふぃ……おっぱい、きもちいいよぉ……」
「今にも爆発しそうね?魔理沙ったら、おっぱい弄られてイキそうだなんて……やらしい」
「だって、だってぇ」

元よりパチェリーの肢体を貪る快楽ですっかり元気になっていた逸物はびくりびくりと痙攣し、今にも精を吐き出しそうな有り様だった。
だらだらと溢れる先走りの液が剛直とパチュリーに手をぬるぬるにしてゆく。

「これじゃ挿入れた途端にイキそうね」
「ひぅ……」

恥ずかしいやら情けないやらで、魔理沙は両手で顔を覆うといやいやと首を振る。

「……私もこんな大きいのは怖いし、一度抜いてからね」
「え……?l
「魔理沙の大好きなおっぱいでイカせてあげる」
「え、え?」
「遠慮しなくていいのよ……きて」

横たわったパチュリーがきゅっと胸を寄せる、その谷間に挿入れろ、ということらしい。
はー、はー、と荒い呼吸を繰り返す魔理沙はパチュリーにまたがると、びくびくと暴れる肉棒を掴み先端をそっと谷間の入り口にあてがう。
ちょんと、わずかに触れただけのだというのに、あまりの乳房の柔らかさと心地よさに、思わずうっと呻く。
可愛らしい魔理沙の様子にくすりと微笑するパチュリー。
それが魔理沙にはひどく意地悪く見えた。
復讐と気を紛らわせるためか、乳房に手を伸ばしもにゅっとつかむとむにゅむにゅと揉み始める。

「やんっ……わたしはいいから、んっ……」
「こういうの魔乳っていうだよな、ほんとに……中毒になりだぜ……」
「やぁ……まりさぁ……まりさもきもちよくなってくれなきゃ……」
「わかったよ……くっ、ふっ、にゅうううう!!」
「あっ……あつっ!」

先走りが潤滑液になるのか、剛直はずぶずぶと乳房へと吸い込まれてゆく。
あまりの気持ち良さに、魔理沙はぎゅうぎゅうとパチュリーの乳房を強く掴む。
その刺激と焼け串のように熱い肉棒が乳肉を犯す快楽にパチュリーもまた強い快楽を覚えていた。

「だ、だめだっ……きもちよすぎて……おかしくなるぅ」
「あんっ……ぬいちゃだめぇ」
「ひっ……うっ……ぱちぇ、だめぇ!」

腰を引いて肉棒を抜こうとする魔理沙だが、させじとパチュリーは腕に力を込めてより乳圧をあげながら、乳房を左右でずらして男根を刺激する。
柔らかな肉に挟まれ擦られ、すでに限界などとっくに越していた魔理沙の肉棒がぐっと一度膨らみ、次の瞬間爆発する。

「ひあぁっ!ぐっ、ふっ、やだぁ!とま、とまんないよぉ!」
「いやっ、おっぱい、ひうっ、おかされてるぅ」

乳房の中にどふどふと精を吐き出しながら、びくんびくんと剛直が大暴れする。
弓なりに背をのけ反らせ必死に快楽を受け流そうとする魔理沙だが、勝手に暴れる肉棒の動きがさらなる快楽を全身にもたらし、視界を思考を真っ白に染める。
一方でパチュリーも胸の中で痙攣する剛直に乳房を犯される快感に打ち震える。
一向に止まる気配の無い射精は、ついに谷間から溢れだしびしゃりびしゃりとパチュリーの顔へと襲いかかる。

「あっ……っ!」

その熱と感触、精液らしからぬ芳香、催淫剤をぶっかけられパチュリーもまたびくりと身を震わせ絶頂に達する。

「はぁ……はぁ……ぱちぇ……」
「はっ……んっ……まりさ……」

息も絶え絶えの二人の視線が熱っぽく絡む。

「ふふっ……もうドロドロ……出しすぎよ」
「いうなよぉ……」

胸から顔まで白濁液まみれになったパチュリーが淫らに笑いながら、それを掬い取りぺろりと舐める。

「んっ……こくっ……本物じゃないからかしら、飲み難いけど、甘いわね……んっ」
「やめ、やめろよぉ」
「そういえば、媚薬だったわね、いったばかりなに……へんな気分、はぁ……」

熱に浮かされたように白濁液を救っては飲み下し、乳房を自慰するように肌に塗りつけていくパチュリー。
サバトの魔女のような淫らな光景に魔理沙が情けない声を漏らす。
あれだけ精を放ったばかりの男根が再び固くなり始めた。
もじもじする魔理沙にパチュリーがくすりと笑う。

「もう、魔理沙ったら……えっち」
「誰のせいだよぉ……あっ、やめっ!」
「ちゅ……きれいにしなきゃね……ん……れるっ」

魔理沙を押し倒すと、股間に顔を埋め、すっかり勃起した肉棒を舌で清め始めるパチュリー。

「ひんっ……やぁっ……もう、もういいよぉ……やめっっ!!」

魔理沙が声をあげまいと歯を食い縛るが、変わって溢れる悩ましげな吐息がひどく淫らであった。

「ちゅ……んっ……ふふ、すっかり元気になったわね」
「は、はずかしいこというなよぉ……パチュリーが舐めるからだろぉ……」
「なんだかもったいないわ、このままにしておかない?」
「や、やだぞ!!」
「残念……」

おそらく媚薬に酔っているのだろう、パチュリーの言動が妖しい。
危機感を覚えた魔理沙は、葛藤を振り払うようにぶんぶんと頭を降ると、パチュリーを寝台に押し倒す。
誘うように震える唇を奪い、吐息と唾液を絡ませながら、乳房に手を伸ばしてむにむにと揉みしだく。

「んっ……ちゅ……あ……っ…ぺちゃ…うくっ!」
「ふー、っ!……ちゅる……んんっ……ひゅぅ」

呼吸困難に陥り、ようやく二人の唇が離れる。
ぜぇぜぇと荒い呼気を繰り返しながら、魔理沙はただ空気求めて喘ぐ様すら淫靡なパチュリーをじっと見つめる。

「いい、よな?」
「んっ……もぉ、恥ずかしいこといわせるの、すきなの?」

潤んだ瞳で見つめ返しながら、こくりと、パチュリーが恥じらうように首肯する。
一層息を荒くしながら魔理沙はパチュリーの脚を割って開く。
魔女の秘所はしとどに濡れ、溢れた密がたらたらと内腿を伝い寝台に染みを広げている。
痛い程に怒張した剛直を握り、先端を秘唇へと向ける。

「い、いくぜ?い、痛かったら、ちゃんと言えよ?」
「大丈夫よ、きて魔理沙」

囁くようにパチュリーが返す。
覚悟を決めて魔理沙は腰を進めるが……

「あ、あれ?」
「やんっ……あっ、ふぁ、やぁ……まりさ……じらさないでぇ」

にゅるんと先端が滑り挿入し損ねる。
入り口を熱い亀頭に愛撫されパチュリーが甘い喘ぎをあげる。
その声に脳の快楽中枢を焼かれた魔理沙が再度挿入を試み、やはり果たせずつるりと先端が滑る。
パチュリーがまた甘い声を漏らし、魔理沙は焦る。
焦れば焦るほどに失敗し、パチュリーが甘えた声で「いじわるぅ」と抗議を漏らす。

「ち、ちがっ!ひぅ!」

当たり前だが先端が得る、秘蜜のにゅるにゅるとした感触と陰唇のぷにぷにとした刺激は極上であった。
びくんと激しく痙攣した男根に魔理沙が情けない声を漏らす。
一旦腰を引こうとしたが、離すまいとばかりにパチュリーの脚が腰をホールドしているのでそれもできない。

「ぱ、パチュリー、ちょ、ちょっとほどいて」
「い・や。それより、はやくぅ」

だ、だめだ完全に正気を失ってる。
魔理沙は泣きそうになる。それを見てくすりと魔女が意地悪そうに笑った。

「ふふふ」
「い、意地悪すんなよぉ」
「意地悪は魔理沙の方じゃない?ん……こんなに熱い肉棒を押し付けるばっかりでぇ……いれてくれないなんて」
「や、やめろぉ……こ、こすりつけないでぇ」

しっかりと魔理沙をホールドしつつ、腰を蠢かせ女陰に密着した棹を刺激する。
敏感な裏側を秘唇に愛撫されて魔理沙が悲鳴をあげる。
ぎゅっとパチュリーにしがみつき絶頂してしまいそうな快楽を耐える。
愛しげに魔理沙を抱き返しながら、パチュリーは慈愛に満ちた、だがどこか嗜虐的な笑みを浮かべる。

「お・し・お・き、だったものね?」
「ひっ、ふぐっ!……も、もうとらない!とらないからぁ!」
「ほんとうに?」
「やめっ!ほんとだよぉ!やくそくするからぁ!」
「ふふふ」

ようやくパチュリーの腰が動きを止める。

「はぁ!はぁ!ぱちゅえぇ……」

恨みがましい表情で魔理沙が呻く。

「もう童貞さんは世話が焼けるわ」

くすりと笑ったパチュリーはすっと股間に手を伸ばすと、陰唇をくぱりと広げて見せる。
とぷん、と蜜が溢れ出て、蜜壺の奥が顔を覗かせる。
まともに女の秘奥を見てしまった魔理沙は息を飲む。

「ば、ばかっ!やめろよ!」
「ふふ、なんで魔理沙が恥ずかしがるのよ」
「う、ううううう、だってぇ」
「ほら、ここよ。もう焦らさないで」

促されるまま、自分で触るのは躊躇われる男根を握り、慎重に女陰にあてがう。
くちゅり、と淫らな音がして亀頭と陰唇が接吻をする。
びくり、と身を震わせながら、目を瞑り歯を食いしばって強烈な快楽に耐える魔理沙。
一瞬でも気を抜けばあっというまに果ててしまいそうな、粘膜同士の接触。
ぐっ、ふぅ、と喘ぎながら、ゆっくりと腰を進める。

「んっ……ふふ、すごいわ……まりさの」
「ん、きゅ……やめて、ぱちぇ、いうなぁ」

淫らがましいことを漏らすパチェリーはまだ余裕があるようだが、魔理沙はそうでもないらしい。
つぷつぷと狭い蜜壺を掻き分ける度、腰から全身に電流のような快感が広がっていく。
びくん、びくんと全身を痙攣させながら、ふあっ、ひうっ、と悲鳴のような喘ぎをあげる。

「まるで犯されてみたよ」
「うる……さいっ!」
「あんっ!」
「きつっ!……うぁ!くぅぅ!」

パチェリーのからかうような物言いに、逆上気味に魔理沙は思いきり腰を押し込んだ。
ずんっ、と一気に最奥まで進んだ先端が子宮口にこつんと当たる。
甘い歓声でパチェリーがなく。
それまででも十分にきゅうきゅうと肉棒に絡み付いていた柔肉が、最奥まで男を向かい入れたとたん、さらにぎゅうと絞まる。
耐えがたいまでも締め付けとぷにぷにとした奥の口がもたらす先端への快楽に、魔理沙はびくん!と背を弓なりに反らせて、そのままずるりと崩れ落ちる。
しなだれかかってくる魔理沙を受け止め、離すまいとパチェリーはぎゅっと抱き締める。
魔理沙もパチェリーに抱きつき、全身に走る快楽に耐える。

「ぱちぇ……ぱちぇ……ちょっと、まってぇ」
「まりさ……かわいい……ふふっ」
「き!……ひぃ!」

ふっと息を吐いて締め付けを緩ませ、すぐにきゅっと絞める。
蠢する柔肉に責められた魔理沙が悲鳴をあげる。
刹那、ばちんと脳裏に電光が走り、視界が白く染まる。
失神寸前に追い込まれた意識は、ついで爆発した剛直の震えで正気に戻らされる。

「あっ!やぁ!でてる、ひぃ!やだぁ!きもちいいよぉ!」
「んっ……あぁ、すごい、ふわっ!しきゅう、びちゃびちゃって、せーえきにたたかれてる、やぁ……おかしくなっちゃう……」
「うそっ、とまんないよ、やぁ!くるっちゃう、へんになっちゃうぅ」

ぎゅっと抱き締め愛ながら、最大級の快楽にうち震える二人の少女達。
もっと搾り取ろうと、どくんどくんと膨張と収縮を繰り返しながら精を吐き出す男根を、蜜壺が締め上げる。
絞められる度に、一旦止まりかけた射精感が込み上げ、堪らず剛直は爆発し、新たに精を吐き出す。

「あ、あ、だめ、わたしも、いっちゃう……んっ、くっ、しきゅう、しきゅう、せいしにおかされて、いっちゃうぅぅぅ!」

とうとう魔女にも限界が訪れ、ぎゅっと愛しい少女を抱き締め、うずく乳房と乳首を押し付けながら、大きく背をのぞけらせて絶頂に達する。

「あ、んんっ!」「ふぁ!ひぅぅ!」

絶頂に至った膣肉が、ぎゅううぅと絞まり男根を責める。止めの攻撃に、もはや歯を食い縛ることもできず、ふやけた口の端からたらたらと涎をこぼしながら、魔理沙も最後の絶頂を迎える。

「はっ、ひっ、も、もぉ、やぁ」
「はぁ……すごい、いっぱい、にんしんしちゃう……」

ようやく女陰の締め付けがなくなり、ずるりと男根が溢れ落ちる。
入れたり絞められるのとちがう種の快楽にぶるりと魔理沙が身を震わせ、どぶんと最後の精を剛直が吐き出す。
冷えた夜気のせいか剛直がらはふわりと湯気が上がる。
栓が抜けたことで、それまでも溢れだしていた精が一気に吐き出される。
とぷんとぷん、と溢れ出続ける精と蜜の混合液が寝具にいやらしい染みを広げていく。

「あぁ……ざんねん、なくなっちゃった……」

しゅるしゅると萎んだ男根が、魔法の作用であった証左を示すよう、煙のように消えてしまう。
媚薬に酔った魔女は心底残念そうに呟く。
魔法使いの少女の方は、耐えがたい快楽に気を失っており、言い返す事もできなかった。

「ふふふ、魔理沙ったらかわいいわ……また、しましょうね」

気を失った魔理沙の唇に軽く接吻しながら、そう囁く。
毛布を引き寄せて愛しい魔法使いが風邪を引かぬようきゅっと抱き締めると魔女の意識もまた眠りへと落ちていった。



[26700] 蛇、白黒魔法使いを誘惑す、の巻
Name: 窓◆0bf2c45e ID:b20dbb99
Date: 2013/02/17 13:10
「こっちくんなよぉ!」
「そんなに邪険にせんでもよかろうが」

本当に何をしたのかしら?
にことの次第を説明したが、何故か弾幕ごっこをすることなったので、ルールを勇儀に説明しながら、箒をぶんぶんと振り回して夜智王を近づけまいと威嚇する魔理沙を見て霊夢は思った。

「れ、れぇむぅ!見てないで助けてくれよぉ!」

半泣きの魔理沙が助けを求めてくるが霊夢は無視した。
なんというか、傍目にはいちゃいちゃしてるようにしか見えず、少し苛立ちを覚える。
代わって魔理沙を助けたのは勇儀だった。
スパン!と夜智王の後頭部を張り飛ばす。

「やめろ、話が進まんだろうが、この好色蛇め」

とまぁ、しごくまともなつっこみだったが、いかんせん鬼の腕力でそれをやられた夜智王はたまったものではない。
ぐき、と何やら異音が夜智王の首から響き、地に倒れ伏す。
そのままぴくりとも動かない。

「お、おい?夜智王?大丈夫か」

よせばいいのに……霊夢が止める暇もなく、案外にお人好しの魔理沙が夜智王に話しかける。
返事がない。

「まり……」「ひやぁぁぁぁ!」「ばか……」

よろよろと夜智王に歩み寄った魔理沙が捕まった。

「や、やぁ!離せ!はなせよぉ!」
「魔理沙はやさしいのぉ、感謝の接吻をしてもいいか?」
「だめ!ぜったいだめぇ!」

魔理沙の可愛らしい悲鳴が地底に響き渡った。







弾幕ごっこを始めた霊夢と勇儀を見物するべく、夜智王は路傍の石に腰掛けた。
無論、魔理沙は捕まえたままである。

「は、はなせよぉ!」
「そんなに嫌がらんでもいいだろう。こんな所でいやらしいことなどせんよ」

なんとか逃げようとばたばたしていた魔理沙を膝の上に乗せる。
細い腰にスルリと腕を回し拘束すると、トレードマークの三角帽子を取り自分の頭に乗せ、顎をちょいと魔理沙の頭に乗せる。
ふわりと、年若い少女の柔らかな匂いが、夜智王の鼻孔を刺激した。

「魔理沙は良い匂いがするな」
「か、嗅ぐなよぉ……」

すっぽりと夜智王の腕の内に納められてしまった魔理沙は、弱々しく抗議する。
子供じゃあるまいし、異性の膝の上に座らせひどく気恥ずかしい。

「へ、変な所さわんなよ!」
「変な所、とは何処だ?具体的に言ってくれんとワシの主観で判断するが?」

ニヤニヤと笑いながら、魔理沙にいやらしいこと言わせようとする夜智王。
顔を真っ赤にした魔理沙が意地悪ぅ、馬鹿ぁ、助平ぇと夜智王を弱々しく罵倒する。

「あの夜もそうであったが、ほんに魔理沙は可愛いのぉ」
「あ、あの時の話はやめろよぉ」

通信機の人形を通してアリスやにとりに聞かれてしまいそうになり魔理沙が慌てる。
とはいえ既に手遅れの様で、地上では
「ねぇ、あの夜って、どういうことなのかしら?」
「あなたには関係無いわアリス」
「私の目を見て話なさいよパチュリー」
と、既に空気は一触即発である。

「なんじゃアリス。仲間外れにされて拗ねておるのか?」

火に油を注ぐように、夜智王がアリスをからかう。

『夜智王……月の明るい晩ばかりじゃないわよ……』

返答は底冷えする声音。
暗に闇討ちを示唆するアリス。
意に介さず夜智王はくつくつと笑う。

「夜這いは大歓迎だぞ?」

今度は返事が無かった、むろん呑気な夜智王に閉口したわけではない。

『や、夜智王さん。だめです、謝って、はやく、あわ、あわわわ』

と傍に居るにとりが震える声で進言する程に、無言の殺意を募らせているからである。
ただ、今はその場にいない夜智王よりも糾弾すべき人物が側に居る。
上海人形が抜刀する金属音に続き、パチュリーがお得意の多彩なスペルカードを次々とキャストする声が聞こえてくる。
耳をつんざく爆音、何かが壊れる耳障りな騒音。
巻き込まれたにとりがあげる「ひゅいー!」という奇妙な悲鳴が通信人形から響いてくる。

「やかましいな」

人形を壺中天に放り込んで黙らせる、夜智王はあらためて魔理沙に「それで?気持ち良かったのだろう?」と問う。

「な、何の話ぜよ!?」

動揺のあまり土佐弁になるほど魔理沙の心臓が跳ねる。
それに対して夜智王はぁと嘆息して勝手に話し始める。




「む」
「どうされました?」
「扉の外に誰かいるな」
「え!」

魔理沙とパチュリーを残して部屋を出ようとした夜智王は、扉の外に気配を感じ取った。
今回の企みをレミリアに知られると、色々とうるさそうだったので、霊夢に賽銭を貢ぎ神社で宴会を催してもらい、上手く紅魔館からは人払いをしたはずだったのだ。
念には念をいれて扉には結界を張って音の遮断と、無理矢理押し入られないようしていたのが効を奏したようだった。

「小悪魔、とりあえず服を着ろ」
「えー」
「万が一レミリアだったら少々面倒だ」
「う。それもそうですね……」

結界のせいで、こちらからも外にいるのが誰かも良くは判らない。
不満そうだった小悪魔も、さすがにお嬢様が居るとなるとまずいと、いそいそと服を着込む。
それを待って夜智王は外に向けて強烈な気配を放つ、わざとこれから夜智王が出てくる、と外の者に知らせたのだ、一拍の後扉を開ける。
さっと外に出た夜智王は小悪魔を抱えたまま、後ろ手で扉を閉めると、また結界を張る。

「何をしとるのだ?ん?」

扉の外には、不意打ちの気に当てられ腰を抜かした美鈴と、立てた膝に顔を突っ込み小さく丸まったガード姿勢でぷるぷると震える少女が居た。
両手掴む可愛らしい帽子からこぼれる髪は金糸のような金髪。
枯れ枝に宝石の生えたような、少々変わった羽がピンと立ってこちらを威嚇している。

「(そういえばレミィもあんな格好をしておったな)」

姉妹ゆえか、それともスカーレット家に伝わる防御の奥義なのか。
少女……レミリアの妹フランドールをひょいと夜智王は抱き上げる。
びくりと震え、一層身を縮こませるフランをあやすように優しく夜智王は話しかけた。

「何を怯えておるのだフラン」
「だって、夜智王、怒ってる?」

先日、少々お痛が過ぎたフランをこっぴどく叱ったせいか?
基本的には夜智王になついているフランだが、同時に怒らすと非常に怖い存在と思われているようだった。
安心するようにフランをあやしてやりながら、優しい声で話しかける。

「別に?」
「ほんと?おしりぶたない?」
「ああ、本当だ」

恐る恐る顔を上げたフランの頬に接吻してやつと、くすぐったそうにし、ふわりと笑みを浮かべる。

「博麗神社の宴会はどうしたのだ?」
「フランはお留守番だって、あいつが」

ぶーと唇を尖らせてフランドールは言った。
そういえば今宵は満月、この愛らしい外見からは想像もできない、フランドール抱える狂気が最も強まる時期だ。
いささか妹に対して過保護なレミリアはそれを心配して宴には連れて行かなかったのだろう。
しかし生意気な盛りのフランは姉の心妹知らず、毒を込めてレミリアを「あいつ」などと呼び捨た。

「フランや」
「なぁに?」
「汚い言葉を使ってはいかんぞ」
「ぶー」
「ぶーではない、そういった言葉はフランの心も汚くする。そういうものだと覚えておけ」
「難しいこといわれてもわかんないよ……それより夜智王、パチュリーの部屋で何してたの?」
「それは、もう少しフランが大人になったら教えてやる」
「フラン子供じゃないよ?」

不満そうに唇を尖らせるフランドール。そんなふてくされた表情もひどく愛らしい少女であった。

「時に美鈴も留守番か?」
「うん、美鈴は元々お留守番だよ?」
「……」
「やめてください!その哀れな者を見るみたいな目は!」

床につっぷした美鈴がわっと泣き始める。
その様子に苦笑しつつ、夜智王は小悪魔に目配せする。
フランドールの登場で、どうやら今宵は夜智王と情夜を過ごすのは無理そうと残念そうにしていた小悪魔だが、夜智王のアイコンタクトをすぐさま理解する。
にやりと、二匹の淫獣が笑みを交わす。

「ではな小悪魔、ワシはこれからフランと月夜の散歩と洒落込むから、後は任すぞ」
「はい、お任せください夜智王様」
「よぉく仕込んでおいてくれ」
「かしこまりました」

お散歩ー!と嬉しそうにはしゃぐフランをよそに、不穏な空気を感じ取った美鈴がひっと短い悲鳴を上げる。
逃げたいが、腰が抜けたままである。

「まぁ大変美鈴さん、お部屋までお送りしますわ」
「え、いや、平気ですから」
「遠慮なさらないで」
「遠慮じゃなくてですね……ちょ、どこを触ってるんですかぁ!」
「うふふふふ、相変わらず素敵なおっぱいですわね」
「い、いや、助けて……って夜智王さんも妹さまもいなーい!」
「さぁ行きましょう」
「いーやぁぁぁぁぁぁ!」

美鈴の切羽詰った悲鳴が虚しく響き渡った。



「と、そんな訳でなぁ、結局小悪魔とはできずじまいよ」

しぶる霊夢にお賽銭を貢いで宴会を催してもらうという、それなりに手間のかかった計略だったが、そうそう思う通りにはコトは運ばないものである。
魔理沙達の所にフランが乱入しないよう、フランを連れて夜空の散歩と洒落こむことになったのだ。
小悪魔とはできなかったし、勝手にフランを館から連れ出したとレミリアの癇癪は食らうしと散々な目にあったわ、と夜智王はぼやく。
それだけに、魔理沙とパチュリーが上手くいったのかが気になる、無論下世話な興味も有るから、囁くように魔理沙の耳元に口を寄せて重ねて訪ねた。

「で?」
「だ、だれが言うか!」
「ふぅん?ま、聞かずともだいたいは推し測れるがなぁ」

パチュリーの肢体は溺れるようであったろう?と夜智王が囁くと、あの夜、己の腕の中で恥じらいながらも、薬のせいで乱れていたパチュリーの姿を思いだし、魔理沙の体が内からカっと熱くなる。
瞼の裏に焼き付いてしまった、薄暗闇に浮かび上がる白い肢体。それを振り払うようにぶんぶんと魔理沙は首を降り、半泣きの様相で声を絞り出す。

「し、知るかよぉ」
「秘するほどにめくるめく一夜であったか、そうかそうか」

何を言おうと暖簾に腕押し、勝手に夜智王は納得してしまう。

「人の話を……ひやぁ!や、やだ、変なとこ触んなぁ!」

弱々しく抗議しようとした魔理沙の尻をつるりと夜智王は撫でた。

「ずいぶんとまろみが増したな?」
「な、なにを」

動揺し上ずった声をあげる魔理沙、その胸をちょんと夜智王がつついた。

「ひやぁ!」
「ふむ」
「きゅぅ!……やっ、やめて、んっ、やぁ、さ、さきは、そこはつついちゃだめ、やだ……夜智王やだぁ!」

つんつんと悪戯をくりかえす度、可愛らしい声で魔理沙がやめてと懇願する。
いよいよ魔理沙が泣きそうになった辺りで夜智王は手を止めると、ふっと笑う。

「やちぉ……ばかぁ!ひどい、こんな――」
「魔理沙……お主自慰を覚えたな」
「――!!」

どうも図星らしく、羞恥心で魔理沙の白い肌が薄紅色に染まる。
よほどに恥ずかしいのだろう、ぎゅっとつぶった魔理沙の目からじわりと涙が溢れてくる。
それをぺろりとなめとり、魔理沙の耳元に唇を寄せ、夜智王はそっと囁きかける。

「随分と芯がほぐれたではないか?」

夜智王が幻想郷にやってきたばかりのころ、軽いセクハラで魔理沙の乳を触ったことがあったが、その時に比べてやけに柔らかさが増していた。
それぐらいせっせと揉んだ、ということだろう。まぁ相当に強烈な初体験であったわけだし、無理も無い。

「綻びかけの青い蕾の風情だな、今の魔理沙は。とても愛らしいぞ」
「やらしいこというなぁ!」
「いやらしいのは魔理沙であろう?うん?あれから毎夜のようにシタのだろう?」
「ひぅっ」
「別に恥ずかしがらんでもいいではないか、年頃の娘なら誰でも通る道だ」
「う、うるさいやい!乙女のセンサイなココロがお前にわかるか!ばか!すけべ!いんらん!」
「ふふ、若いうちに揉むのは大事だぞ、大きく育てるためにはな」
「……そ、そうなのか!?」
「そうだ思春期の乳腺の発達に乳の大きさは左右されるそうだからな、せっせと刺激するのは大事なことだぞ」

霖之助を誘惑するためにもな。と夜智王が笑いながら囁きかける。
想い人の名を出された魔理沙の脳裏がちりっと音を立てた。

「こ、こーりんは関係ないぞ!」

パチュリーとの一夜を、自然己と霖之助に置き換えてしまい、そのあまりに甘い想像を振り払うように魔理沙は声を荒げた。

「またそのような強情をはりおって」

頑なな理性を溶かそうと、夜智王は乙女心を煽り続ける。

「あの朴念仁を堕すにはそんなことではダメだぞ?朱鷺の妖怪娘、慧音殿や咲夜とも仲が良いと聞くし、恋敵がいないわけではないのだぞ?……巫女殿辺りも伏兵っぽいしな」
「う……ううう……」

ダメだ、こいつの口車にのっちゃいけない。
アダムとイブを楽園から追放させるに至った蛇の誘惑だ。
しっかりしろ魔理沙、と必死に自分を鼓舞する。
だが

「なんならワシが手伝ってやろうか?」
「う……ぇ?」
「霖之助と無事結ばれるところまで、きっちりお膳立てして導いてやるぞ?」

想像してむるといい、霖之助の腕に抱かれるところを。
蛇の囁きが魔理沙の思考をマヒさせてゆく。

「え……や、だめ……」
「遠慮せんでええのだぞ?一言“是”といえばいいのだ」

あ、だめだ。あたしおちちゃう……
魔理沙の唇が決定的な言葉を紡ごうと戦慄く。
それを見て取り、笑みを浮かべる夜智王だが、唐突に飛来した何かが頭部に皆中、破滅的な音が発して夜智王の細い首がひん曲がる。
悲鳴もあげることもできず夜智王は崩れ落ちた。

「魔理沙あんた何やってるのよ」

そこに現れたのは、少しは抵抗しなさいよ、と呆れた様子で言う霊夢であった。
飛来した何かは霊夢が投擲した陰陽玉だったのだ。
その横にはスペルカード戦の決着が着いたのだろう、勇儀の姿も有る。
勇儀は夜智王を一瞥したが、興味無さげに視線を戻す。

「れぇむぅ!」

窮地を脱っした魔理沙は転がるように霊夢に駆け寄り、ひしと抱きつくと、その薄い胸に顔をうずめ、めそめそ泣き始める。

「ちょっと!どこ触ってんのよ!くすぐったいって!」
「こわっ、こわかったよぉ、ぐすっ、ありがとうれぇむぅ」
「……うっとうしいわねぇ」

と憎まれ口を叩きつつも、泣きじゃくる魔理沙をあやすように背中をさすってやる霊夢。
仲睦まじい二人の様子に勇儀が口を挟んだ。

「なんだお前らそういう仲なのか?」
「違います」
「れいむあいしてるよぉ」
「だそうだが?」
「……何言ってるのあんたは」

仲睦まじい二人を余所に、地面に伏した夜智王の意識は回復する気配も無い。そうとう良い所に入ったのだろう。
また一方では

『やはり最大の敵は霊夢なのね……』

自力で壺中天から這い出した通信用の人形から呪詛のごとき声が漏れる。
霊夢にすがり付く魔理沙を見たアリスの放つ殺意に、にとりが震え上がる。
ただうまいことに矛先が逸れたパチュリーはほっと安堵の息を漏らすのだった。

「酷いな巫女殿、首が千切れるかと思ったぞ?」

ようやく復活してきた夜智王が首を据え直しながらぼやく。

「どうせすぐ、くっつくくせに」
「だからといって気軽に首を飛ばされてはかなわんな」

なぁ魔理沙と親しげに話しかけるが、魔理沙はぎゅっと霊夢にしがみつきぷるぷると震えるばかりである。

「なんとも仲睦まじいな」
「やめてください!だいたい夜智王さんのせいでしょう!」

またぞろ二人は爛れた仲だとか言い出しそうな夜智王に、霊夢が顔を真っ赤にして食って掛かる。

「魔理沙もいつまでくっついてるのよ!次はあんたの番でしょ!」
「や、やぁ」

しがみつく魔理沙を振りほどき、ぺいっと勇儀に押し付ける。
ふらふらの千鳥足の魔理沙はこんどはひしと勇儀に抱きつく。

「お前、大丈夫か?」
「ちょ、ちょっとまってくれ……」
「あ、ああ、まぁ構わんよ。あたしも少し休みたい」
「ふぅん、その様子だと……」

勇儀の物言いに、夜智王がなにやら含みのある笑みを向ける。

「ああ、そうだよあたしの負けだよ!うっとおしい蛇だねあんたは」

不機嫌そうに勇儀は答えた。かっかっかと蛇は笑い「さすがは巫女殿だな」と霊夢を誉めそやす。
だが、霊夢も渋い顔である。

「まぁ……あっちも本気じゃなかったみたいだけど」

勇儀は手に大盃を持ったまま、それを一滴もこぼすこと無く段幕ごっこに興じていた。
とんだハンディキャップマッチだったのだ。

「ちょいと体調が悪くてねぇ……うまく寸止めできなくて博麗の巫女を殺めたらコトだろ?」

なぁスキマと勇儀は通信機の陰陽玉に話しかけるが、あまり折り合いの良くない紫から返事は無い。

『殴り合いなら勇儀の圧勝だったろうけどなぁ』
「ちょっと萃香!?鬼と肉弾戦なんて私はごめんよ!」

代わって答えた萃香の言葉に、霊夢がもっともな抗議な声をあげる。

「そうだぞ伊吹童子、こんな華奢な巫女殿が殴り合いなどしてみろ、ぺしゃんと潰されてしまうわ」

そう言いながら、夜智王が霊夢の後ろに回り込み、その細い腰に腕を回してきゅうと抱き締める。
不意打ちの抱擁に、思わず「きゃぁ!」と悲鳴をあげる霊夢、可愛らしい反応に夜智王が相好を崩す。

「ほんに巫女殿は華奢だの」
「な、なななな」

何をしてるんです!と叫びたいが、舌がもつれ声にならない霊夢。顔を恥じらいに染めながらぷるぷると戦慄く。
調子にのった夜智王の手先がやらしく蠢く。
ひぅ!っと息を飲んだ霊夢は首筋まで真っ赤になる。

「恥じらう巫女殿もあ」

皆まで言わせず、霊夢は霊力をたっぷり乗せた肘鉄を夜智王の腹にぶちこんだ。
強烈な一撃にうめき声も漏らさず夜智王は腹部を押さえて地面に崩れ落ちる。
びくんびくんと断続的に痙攣する夜智王に、思わず萃香も勇儀も黙りこむ。

「もうっ!夜智王さんのすけべ!」

一人顔が真っ赤のままの霊夢がばしばしと愛用のお祓い棒で夜智王を叩く。
よほどに肘鉄が堪えたのか、夜智王は一言も発さず、叩かれる度にびくんびくんと痙攣するばかりであった。

「いけるんじゃないか?殴り合いでも」
『あたしもそんな気がするぞ』
「何いってんのよ!無理に決まってるでしょ!」

説得力に欠ける霊夢の絶叫が響いた。



「そろそろ、や、やれるぜ?」
「大丈夫なのかい、あんた」

何とか持ち直した魔理沙がそう宣言するが、勇儀は疑わしげに問うた。
少しでも夜智王から離れたい魔理沙は、がくがくと首を縦に振って承諾の意を示すが、肝心の足腰に力が入っていない。
あまり期待できそうにないな、と顔にでた勇儀に夜智王が笑いながら話しかける。

「気を抜くなや星熊の、それは魅魔の弟子だぞ」
「へぇ……」

きゅぅっと勇儀の表情が喜悦に歪む。
最強の悪霊と称される魅魔も弟子ならば、それなりに楽しませてくれるそうだ、そう勇儀は愉しげに笑う。
一方魔理沙は夜智王の口から出た師匠の名前に、また動揺する。

「や、夜智王は師匠と知り合いなのか?」
「まぁ、そうだな……控えめに言って“爛れた仲”だ、詳しく聞きたいか?」
「い、いい!」

ぶんぶんと魔理沙が首を振る。

「ふふ、あれはいい女だからな。一緒に悪さしたり、酒を飲んだり……」
「わー!わー!言わなくていい!」

まぁ言わずとも知れた関係であるらしい。

「よし、とにかく始めよう!」
「ああ、わかったよ」

逃げるように魔理沙は箒を飛ばして上空へと舞い上がる。
勇儀もそれを追っていく。
頭上に弾幕の花が咲き乱れ始めた。



[26700] 蛇と鬼娘、の巻
Name: 窓◆0bf2c45e ID:48367c21
Date: 2013/06/10 12:02
「ああ、負けた負けた!」

ばたりと地面に大の字に倒れ込んだ勇儀は、悔しげに叫ぶ。
だが口調とはうらはらに、表情は晴れ晴れとしており、実に愉し気であった。
魔理沙との段幕ごっこも、終始余裕を見せたまま勇儀の負けた。
霊夢も魔理沙も若干納得しがたい様子ではあったが、さっさと異変を解決したい霊夢と、一刻も早く一歩でも遠くに夜智王から離れたい魔理沙、二人は仲良く飛び去っていった。

「弾幕ごっこか、どうして中々面白い事を考えたもんだね」
「ワシにはよう分からんよ」

その場に残っていた夜智王が返す。

「それより星熊の、雪が降る寒いのに地べたなんぞ寝転がるなや」

そう言い、夜智王はひょいと勇儀を姫抱きに抱えあげる。

「お、おい!何をするんだ!」
「何って……女子が体を冷やしては良くないからの」
「余計なお世話だよ」

風邪なんて引くもんかい!と若干動揺した口調で勇儀が言う。

「鬼の撹乱という言葉もあるしなぁ」
「いいから!離せ!下ろせよ!」
「無理をするな、動き回ったせいで毒が回って、体がの自由が効かんはずだ」
「っ!」

どうやら図星らしい。
口より先に手が出るはずの勇儀が大人しくしているのはそういう訳らしかった。

「多少薄めたがあれは正真正銘の神便鬼毒酒だ、いかにお主と言えど、鬼である以上は無理はできんだろ」

そう言いながら夜智王は、姫抱きにしているのに、形の崩れる気配の無い豊かな双丘に視線を向ける。

「お、おい!」
「なんだ?」
「ど、どこ見てるんだよ!」

ただでさえ「お姫様抱っこ」という羞恥プレイをされているというのに、このエロ蛇ときたら堂々とガン見してくるのだ。
無論勇儀の肢体にいやらしい視線を向ける者は少なくない。
だが、いかんせん相手が悪いので、チラチラの覗くのが精々で、夜智王のように無遠慮な視線を向ける者は少ない。
その少数の者達とて、即座に勇儀は制裁を加えるか、気の弱い者なら失禁しそうな蔑みの視線で黙らせる。
だが今は毒が体に回り言うことを聞かないので、それが出来ない。
まじまじと肢体を視姦される慣れない感覚に、恥ずかしいのだろう勇儀は顔を紅潮させる。

「前々から思っておうたが……」
「なんだよ!」
「お主、存外に可愛いな」
「っ!」

何をいってるんだ!と激しく動揺した勇儀が返すと、夜智王の笑みがきゅうと意地悪な物に変わる。

「普段の凛としたそなたも良いが、そうやって恥ずかしそうにしておると……うん、やはり可愛らしいな」
「う、うるさい!」

“可愛い”などと言われたことはろくに無いのだろう。
勇儀はゆでダコのように首まで真っ赤になる。

「(いきなり何を言い出してるんだこいつは!!)」

きっ!と精一杯の対抗策として夜智王を睨むが、生憎蛇はその程度では怯まない。

「おべんちゃらは結構だよ!あたしのどこが可愛いっていうのさ!目ん玉腐ってるんじゃないのか!」

勇儀の毒舌に、くすりと夜智王は笑って返す。

「先刻の魔理沙を気遣う態度といい、子分の愛嬌のある小鬼達」

ぎくりと夜智王の言葉に勇儀が反応する。

「そなた、可愛らしいモノが好きだろう、実は」

往々にしてヒトは自分に無いモノに憧れるものである。
そこは人間も妖怪もそう大差は無く。
むしろ妖怪の方がその傾向は強いのかもしれない。
山の四天王の一人、怪力乱神の星熊童子などと持ち上げられ、女々しい振る舞いの出来ぬ勇儀もまた例外ではないのだろう。
図星だったのだろう。
よりにもよってこの蛇に隠していた性癖、弱味を知られた勇儀の瞳にじわりと涙がにじみ出す。

「泣かんでもいいではないか、そなたも女子なのだから愛らしいモノを好いて何がいけない」
「う、うるさいよ!」
「ふふ」

のぉ勇儀や、と夜智王は名前で話しかける。
こいつが普段名前で呼ばない女を名前で呼ぶのは、ろくでもないことを考えている時だ。
その事を知っている勇儀の背筋に悪寒が走る。

「そなたが愛らしいモノに憧れる最大の理由は……春虎の事を好いておるからだろう?」

かぁぁ、と勇儀の全身が真っ赤に染まる。

「な、何を言ってるんだい!?あ、あたしは別に!」
「隠しても無駄だ、ワシにはわかる」

やけに春虎にきつく当たるのは「好きな相手に素直になれない」古典的な少女漫画のヒロインというか。

「あまり“つんでれ”が過ぎると損をするぞ?」
「なんだよ“つんでれ”って!!」

夜智王を嫌うのも、無論夜智王の性格が勇儀の好む性情と大きく違うからというのもあるが。

「そなた、あれだけワシに妬心を向けておいて、気がつかれぬ思うたか?」
「っ!」
「別に照れる必要はなかろ?あれは男でも惚れるような好い漢だ、精悍で、まっすぐで、だが優しい、女ならば憧れるのは当たり前よ」
「う、うううう……」
「そなた好みの鬼らしい鬼の好漢だ、ただ……」

あれの好みからは、いささかそなたは外れておるなぁ
夜智王の意地の悪い囁きに、勇儀は悔しそうな表情をし、顔を背ける。
春虎の好みは「可愛らしい女子」である。
背が低く、華奢で、どこかフワフワした印象を与える、乙女と呼ぶのがしっくりする少女。
丁度魔理沙あたりが春虎の好みに合致するだろうか。
それは到底勇儀には当てはまらない。
(何せ身長も腕力も立場も全て勇儀が上なのだ)
じわりと悲しい感情が浮かんでくるのを抑えられず、泣き顔をこの蛇に見られるのは情けなく、惨めで勇儀は顔を背けた。
夜智王の推測するとおり、勇儀は隠れ少女趣味、可愛らしい物が好きである。
自身が下手な男よりも男らしいと周囲に誉め称えられるせいか、山の四天王の一人として、女らしい所など見せられないせいか?
勇儀の「可愛いモノ」への憧れは人一倍強い。
愛くるしい外見の小鬼達を子分にしていたりするのも、外の世界から流れた来た女物の衣服などを積極的に着てみたりするのも、そういった性情の発露であった。

「なぁ勇儀や」
「な、なんだよ!」

するりと絡み付いくるような夜智王の声音が耳朶を打つ。

「やはりそなたは可愛いな」
「うるさい、ばかぁ!」
「そうやって好いた男を想うておる様はとても愛しいよ……なぁ勇儀、想いを遂げたくはないか?」
「な、何をいって……」
「素直になれば良いのだよ、山の四天王でもなく、怪力乱神の星熊童子でもなく、ただの女子の勇儀になって春虎に想いを告げればよいのさ……今のそなたは鬼毒酒のせいで弱っておる、今こそ絶好の機会ぞ?」
「あ……う……」
「ほれ、遠慮をするな、頑なな心を解け、意地など捨ててしまえ」

韻々と抑揚の無い夜智王の囁きが勇儀の耳を犯す。

「怖がる必要など無い、春虎はそんなに度量の小さな男ではないのは知っておろう?」
「やだ……やめろ……」
「なんならワシが理由を作ってやろう。媚薬に酔うか?それとも介添えが必要か?」
「い、いらない!」
「ふふ、ほれ噂をすれば影よ、春虎がやってきたぞ?」
「ひぅ!」

可愛らしく身を縮こませる勇儀。
言葉違わず、そこへ春虎が駆けてくる。

「ゆ、勇儀姐さん、どうしたんです?」
「な、なんでもないよ!」

精神が肉体を凌駕したのだろう、麻痺しているはずの勇儀の正拳が春虎の鳩尾に突き刺さる。
ぐぇ!と蛙の潰れたような呻き声をあげ、腹部を押さえた春虎が膝をつく。
あーあーこれは重症だな、と照れ隠しに手が出る勇儀を呆れた様子で夜智王は見やる。
自分で殴ったくせに若干おろおろしている勇儀は実に可愛らしい。
自分にそれが向けられないのはいささか残念だが、同時に丁度良いと内心でほくそ笑む。
約束なので春虎と閨を共にするのはやぶさかではない、だが怖いのは文の焼きもちだった。
あれは夜智王が男と寝ると確実に焼きもちを爆発させてとんでもないことをやらかす。
諏訪子に密告したり、噛み付いたり……
そんな文もたまらなく可愛いのだが、泣かれるのは困る夜智王だった。
女子の涙が何より苦手な夜智王である、まして色々と後ろめたい過去のある文を泣かせたくない。

「(春虎には悪いが、この二人をくっつければ万事上手くいくな……)」

ひでぇよ姐さん……と呻いている春虎が少々可哀想だが、勇儀程の器量良しと恋人になれるのだ、羨ましい話ではないか。

「春虎」
「なんだ夜智王?」
「代わってくれ、お主の方が力持ちであろ」
「や、夜智王!」

やめてくれ!と無言で勇儀が訴えてくるが夜智王は取り合わない。

「そりゃ構わんが、姐さんはどうしたんだ?」
「細かいことは気にするな、ほれ」
「あ、ああ……」

気の抜けた返事を返す春虎に勇儀を渡す。

「失礼しやすよ姐さん」

ひょい、と軽々と春虎は勇儀を抱え上げた。
ボンッ!と赤くなりプシュー!と勇儀が湯気を吹き出す。

「うわ!姐さんえらく熱がありますぜ?風邪ですか?顔も赤いし汗もかいてるみたいだし、おぐっ!」
「う、うるさい!」

がつん!と勇儀の頭突きが春虎の顎をかち上げる。

「あ、危ないから暴れないでくださいよ……」

ぐらぐらと揺れながらも、春虎は勇儀を落とさぬようしっかり抱き締める。
ひうっ!と小さく悲鳴をもらし勇儀が縮こまる。

「勇儀のねぐらは知っておるか?l
「ああ、分かる」
「寝かしつけておけばすぐに治るだろう、後は頼んだぞ」
「おい、夜智王、お前はどこに行くんだよ」
「ん?地底ここの主に挨拶をしてくるつもりだが?」
「ああ、さとり殿にか……あまり酷いことをするなよ」
「なんじゃそりゃぁ」
「いかにもお前好みの女子だからな……虐めるなよ?」
「その口調だと、お主ふられたな?」
「野暮なこというなよ!」

ばつが悪そうに喚く春虎、それを見ながら「う~」と勇儀が小さく唸る。
くつくつと笑いながら夜智王はそんな勇儀の耳元に口を寄せぼそりと囁いた。

「ではな星熊の、頑張れよ?」
「覚えてろよ夜智王……」

意味深な二人のやり取りに首を傾げる春虎。

「ところで夜智王、約束忘れてないよな?」
「わかっておるさ、しばらくは逗留する予定だから機会はいくらでもあるさ。あまりがっつくのはみっともないぞ春虎」
「お前は自分の価値が解ってない!ずっと女でいりゃいいのによぉ」
「ほれ、まずは星熊の看病が先であろ」

そう言って夜智王は二人を送りだした。
後ろ髪惹かれる様子で去っていく春虎と、こちらに「いー!」と威嚇する勇儀がじょじょに遠ざかっていく。

「さて、では参るかのぉ」

どこかで酒を調達せんとなぁ、と思いながらぽてぽてと夜智王は地獄街道を歩き出す。
その調子では地霊殿に着く頃には、とっくに霊夢も魔理沙も先に進んでいるだろう。
急ぐ理由もない、とばかりに夜智王はのんびりと地霊殿へと向かうのだった。












お久しぶりです。
すっかり本編が空いてしまって申し訳ない限りです。
また眼痛がぶり返したりとかもあったわけですが
最大の理由は勇儀の性格設定で散々悩んだ、のが理由です。
結果として某黄薔薇さまのような性格になったわけですが。
次回は地霊殿に到着してさとりと対面、のシーン。
の前に気がつけば20万PVということでそちらのお礼を投下したいと思っています。
予定では華仙とにゃんにゃんします、娘々とにゃんにゃん
……すみません。



[26700] 蛇、隻腕の仙人と再会する、の巻
Name: 窓◆0bf2c45e ID:d9b97569
Date: 2014/01/13 05:24

地霊殿へと向かう地獄街道をてれてれと歩きながら夜智王は「さて今頃勇儀と春虎はしっぽりやっているだろうか?今度二人纏めてからかってやらねばなぁ。」
そんな質悪いことを考えてにやにやとしていた。
他人の色恋沙汰も大好きな蛇であった。

ふいに思い出したように口を開く。

「茨木童子は知らぬ……か、ばれておらんようだぞ?」

なぁ茨木……いや今は茨華仙か?
そう誰かにつぶやき、夜智王はくつくつと思いだし笑いをした。







話はやや遡る。
すっかり秋も深まり、朝夕はとみに冷え込むようになった頃だった。
家でのんびりと拾ってきた外界の本(むろんエロ本)を読んでいた夜智王は、ふいに顔をあげるといそいそとエロ本を仕舞いこむ。
誰かが己の縄張りに入ったことに気がついたらしい。

「夜智王さんいますか!」

スパン!と縁側の障子戸を開けてやってきたのは守矢神社の風祝、東風谷早苗であった。
そろそろ寒いのではないか?と心配になるいつもの脇巫女装束に、今日はなにやら風呂敷を背負っていた。
唐草模様の風呂敷を江戸時代の旅人よろしく首に回して肩に担いでいるのだが、これが妙に可愛らしく、よく似合っていた。

「早苗殿、そこは玄関ではないぞ?」
「そんなことより夜智王さん、二三日泊めてください!」

は?何を世迷い言を。と夜智王はしぶい顔をする。
ふぅ、と重い溜息を吐くと「よいか早苗殿?」と切り出した。

「ワシのような輩の所に、年頃の娘が転がり込むなど、飢えた獣の鼻先に肉塊をぶらさげるようなものだぞ?」
「?」

小首を傾げる様も中々に可愛らしい。
どうやら理解していないようだった。
バックに諏訪子と神奈子が控えているせいだろう、この娘は夜智王が自分にちょっかいを出すなど微塵も思っていないらしい。
高慢ちきともとれる態度、鼻をきゅぅと摘んで「いひゃいひゃい」と可愛く鳴かせてやりたい気分になる。
だができない。
早苗に変なちょっかいを加えると、おそらく軽い接吻(額なり頬程度でも)しただけで神奈子が大蛇薙を抜いて斬り殺しにくるのが容易に想像できるからだ。
くわばらくわばら、と本来ならば神奈子にとっても苦い思い出のあるであろう、雷避けの呪文をつぶやきつつ、早苗を招き入れることにした。

「とりあえず立ち話もなんだ、茶を淹れるのでな、座って待たれよ」

きょろきょろと珍しそうに夜智王の塒を眺める早苗に、家探しをさせぬように釘を指して、夜智王は茶器をとりだして湯を沸かす。

「いつも思いますけど、夜智王さんのおうちは雰囲気がありますね」
「ボロいだけだぞ」
「いえ、バス遠足でいった白川郷の旧家みたいな感じです」

世界遺産ですよ!と早苗は息を巻く、いちいち仕草の可愛らしい少女である。

「ほれ、熱いので気をつけてな」
「頂きます……ハーブティーですか?これはたしか……」
「カミツレだよ」

いわゆるカモミールティーである。

「葡萄酒と一緒に飲むと中々面白いだ、バビロンの昔から薬草として飲まれとる」

まぁ薬効はないらしいがなと夜智王は言う。
ほぉほぉと聞きながら早苗は躊躇わず口をつける。

「美味しいです、ティーバッグのとは大分違いますね」
「さよか?茶請けに洒落たものはないが、柿でも食うか?」
「いいんですか?」
「構わんさ、こういう時の為に用意しておるのだからな」

厨から保存瓶を持ってきた夜智王が中で液体に浸かっていた柿を取り出す。

「少し渋いかもしれんぞ」
「大丈夫です」

瓶の蓋を外すとふわりと酒精の匂いが漂う。
一つ柿を取り出し、くるりと皮を向いて切り分け早苗に供する。

「いただきます」

小動物のようにシャリシャリと柿を食べ始めた早苗を眺めつつ、夜智王は柿酒の出来を確かめる様に一杯くみだしてちびちびと飲み始める。

「おいひいでふよひゃひひょうひゃん」
「食べながらしゃべるでないよ行儀の悪い……それで、何があったのだ」
「んっ……神奈子様と諏訪子様が大喧嘩中なんです、もう家の中の雰囲気が悪くて、私も仲裁しようと頑張ったんですがお二人とも聞く耳も持たずで」

トサカに来たので家出してやりました、不良少女です!と宣言し早苗はドヤ!と胸を張る。
いばるな、あと乳を見せつけるな揉みたくなる、と思いつつ、夜智王はやれやれと苦笑する。

「原因は」
「今朝の朝食が原因なんです、神奈子様が当番だったんですけど」
「なんだ兵糧丸でも出して諏訪子がちゃぶ台でもひっくり返したか?」
「違いますよ!ちゃんとした和風の朝ごはんでした!ごはんに卵焼きに焼き魚におみおつけに、あとおひたしですね」
「わかった、腐った豆など食えるか!と諏訪子がキレたのだろう?」
「水戸の人にケンカ売ってるんですが!?やめてください!」

茶化さないで聞いてください!と早苗が憤慨する。
激おこぷんぷん丸状態の早苗も中々可愛らしい。

「私が一番先に食べ終わったんです、一番少食ですので」
「それで?」
「私が『ごちそうさまでした』って言ったら諏訪子様が『はいお粗末さま』って言っちゃたんです、そしたら神奈子様が『作ったのは私だ』って……」

そのまま戦争に突入です……と早苗がうなだれる。
どこの嫁と姑だ、と夜智王は内心でツッコミを入れた。

「良くわかった」
「え?泊めてくれるんですか?あ、夜智王さんのお家に立派なお風呂が有るって聞いたんですけどさっそく借りても良いですか?」
「今からワシが二人を説教してくるから早苗殿も一緒に帰ろうな」
「えー、お風呂ー」

つまらなさそうに早苗がぶーたれる。

「だいたい、何故ワシの所だ?博麗神社でもよかろう?」
「霊夢さんあんまり相手してくれないんですもん……」

要するに早苗は二人がケンカにかまけて自分にかまってくれないのがつまらないのだろう。
そんなかまってちゃんを置いておく余裕は無い。

「だめだ」
「えー!夜智王さんのけちー!」
「ケチではない」
「じゃぁお風呂だけ!二時間だけでいいですからぁ!」

大方諏訪子あたりが早苗に自慢したのだろう、早苗も食い下がって譲らない。
仕方ない、と夜智王はそこだけ妥協した。
やった!と歓声を上げ早苗は風呂敷を掴むと風呂場へ向かう。
あの中身はどうやら着替えと入浴セットだったらしい。
ウチは銭湯か?入浴料として乳の一つも揉んでやろうか!
と思いつつ、神奈子が怖いでそれもできない夜智王は、飲み残しのカモミールティーを飲み干し心を落ち着けるのだった。







「今日は厄日だの」

早苗が居ないこと事に気がついた二人はすっかり喧嘩を止めていた。
「二人が反省するまで家出します」という書き置きをみつけた神奈子がおろおろし。諏訪子が「ほっとけば?」とそんな神奈子に呆れているところへ、ひょっこり夜智王が早苗を伴ってやってきた。
風呂あがりのしっとりした早苗を見て神奈子が即着火した。
悪乗り気味に諏訪子も混ざって二人で弾幕、いやあれはもはや幕ではなく壁であろう、が飛んでくる。
ボコボコにされて吹っ飛んだ夜智王は這々の体で神社から逃げ出す。
匿って貰おうと文に所に寄った、そこでも一悶着あった。
笑い話としてコトの経緯を話したら、いきなり文のヤキモチが爆発した。

「早苗さんにまで毒牙に掛ける気ですか!やっぱり若い娘が良いんですか!?」

待て!落ち付け!と言ったが聞き入れられず噛み付かれた。
なんとか引き剥がしたが、夜智王に弾幕をぶつけながら文も包囲網に参加してきた。

ボロボロの身体を引きずり妖怪の山を逃げ惑い、ふと周囲を見渡せばすっかり道を見失っていた。。
しかも

「なんじゃ?遁甲陣か」

仙人、あるいは修行中の道士が使う、人避けの結界陣だ。
はて行者でも隠棲しておるのだろうか?
周囲に仕掛けられた道を惑わす仕掛けだな、と分析する。
興味の湧いたのと、追手から逃げるために、夜智王はするりと陣に潜り込む。

「ふぅん、中々入り組んでおるな」

昔知り合いの仙人に習ったことのあるのでなんとかなるが、でなければ侵入は難しいだろう。
例外はスキマ、あとは距離を操る小町辺りもイケルだろうか。
一定の作法に則り、するすると夜智王は陣図を攻略してゆく。
僅かな隙間に忍び込む蛇のように、深く深く。

「誰だ!」

後少しで陣を抜けるだろうか、といった所で厳しい誰何の声が突き刺さる。
おそらくこの陣を引いた仙道が夜智王の侵入に気づいたのだろう。
ついと夜智王は声の主に視線を向ける。
大陸風っぽい衣服を身に纏い、やや短めの桃色の頭髪を2つお団子にしていた。
片腕が何故か包帯でぐるぐる巻になっており、ひどく痛々しく見える。
声でわかっていたが女である。
きゅぅと夜智王の視線が道服を押し上げる胸部、いや乳房に向かう。

「(うむ、いいな、実に良い乳だ)」

たっぷりとした量といい柔らかそうに揺れる様といい、実にうまそうな巨乳であった。

「おい、貴様聞いてい……ひっ!」

何故か声の主が怯えたような短い悲鳴を漏らした。

「(はてこの乳、どこかで見た、いや存分に揉みしだいた記憶があるな)」

そうだ、この乳は。

「お主、茨木か」
「ち、ちがうわ!」

お前なんて知らない!怯えたように叫ぶ仙姑の顔にようやく焦点を合わす。
絶妙な曲線を描く頬、紅を引いているわけでもないのに鮮やかな赤で彩られた唇、紅い瞳、少し垂れ気味の眦が色っぽい印象を与える。
間違いない、山の四天王の一人、茨木童子だ。
片腕が包帯なのも合点いった、あの鬼は渡辺綱に片腕を切り落とされ以来隻腕である。

「嘘を吐くとは鬼らしくもない」
「きゃぁ!」

するりと、電光石火で茨木童子の背後に回った夜智王はきゅっと彼女を抱きしめる。
細い腰を左腕を回して捕まえ、右手でシニョンキャップへと掛ける。

「だ、だめ!とらないで!」
「どうしてだ?ん?」

聞き入れず夜智王はひょいとシニョンキャップを取る、そこにあったのは、わずかに根本だけが残る短い角だった。

「いつ見ても痛ましいなそなたの角は」
「や、やめて夜智王だめ!ひぅ!」

ちゅっとその角に夜智王が口づけするとびくりと茨木童子は身を震わせた。

「相変わらず角が弱いのだな」
「いや、やめて、そこだけはだめなの!あっ!」

再度角に口付けし、こんどはぺろりと舐める。
痛ましい角の疵痕を癒すかのように、ぺろりぺろりと夜智王は舌を這わす。
その度びくびくと茨木童子は身を痙攣させ、色っぽい喘ぎ声を漏らす。
ガクガクと膝の笑い始めた彼女を支えるように腹部に腕を回せば、むにゅりと心地良い感触と質量が腕に当たる。
この抱き心地、官能的な喘ぎ声、間違いなく茨木童子である。

「やめて……やちおぉ」
「すまんすまん、久しぶりにそなたに逢って、ちと興奮しすぎたな」

ひょいと崩れ落ちる寸前の茨木童子を身体を姫抱きにして夜智王は、茨木童子の庵らしき大陸風の家屋に勝手に侵入する。

「ちゃんと褥でしよう」
「ばか!何いってるのよ!」
「ダメか?」
「当たり前よぉぉぉぉ!」

茨木童子の悲鳴が妖怪の山に木霊した。







「よりにもよってあの蛇にばれるなんて……」

茨木童子、今は茨華仙と号する仙姑、茨木華扇は憂いの濃い嘆息を漏らす。
関係を迫る夜智王をなんとか追い返した翌日、冷静になってはたと気がついた。
どこぞの宴会で、酒好きの夜智王と、かつての仲間、伊吹童子こと伊吹萃香がばったりあったらどうなるかを。
この二人は妙に仲が良い。
当然酒を酌み交わし、四方山話に花を咲かせるだろう、その場で夜智王がぽろりと華扇の話をしたら……
華扇は故あって己が仙人をしていることを、かつての仲間に知られたくないのだ。
そうなる前に夜智王に口止めを頼まなくてならない、夜智王は女の頼み事を無碍にするような性格ではないし。
案外に義理堅い所があるので、約束の類はきっちり守る、華扇の事が蛇の口から漏れることは無くなる。
だが、あの性悪から「ただ」で約束をとりつけるのは、結果的にかえって高くつくことを、経験上華扇は良く解っていた。
そして、弱みを夜智王に握られるのも嫌だ。
一日思い悩んだ末、華扇は寝込みを襲って「口止め料」の押し売りをすることにした。
安い女の様で嫌だが、どうせそのうち言いくるめられて一夜を共にすることになるのだ、こちらが主導権を握っているほうが幾ばくかマシというものである。
そう自分に言い聞かせながら、重い足取りで華扇は夜智王の庵へと歩を進める。
明後日には朔に入るだろうか、華扇は闇に沈む山中を気配を消して夜智王の庵を目指す。
すると闇の中にぽつん灯りが見えてきた。
しまった、まだ寝ていなかったのか、華扇は日を改めようかと悩んだが、あまり猶予も無い。
夜智王は縁側にいるようだった。
呼吸すら押し殺し、慎重に庵に忍び寄ると、木立に身を隠しながら夜智王を盗み見る。
頼りない下弦の月の光の下、夜智王は酒を呑んでいた。いつものことだ、しかし――
傍らに用意された酒器は二組、夜智王はそこにいない誰かと静かに酒を酌み交わしていた。
その表情を見て、華扇は己の間の悪さを呪った。






「華扇?よぉ来たの、少々物悲しい月見酒だが、一杯付き合わんか?」

木立の間の闇から現れた華扇を見て、珍しい客人の訪れに夜智王は愉しげに声をかけた。
しかし華扇は返す言葉に詰まる。

「夜智王……あなた……」
「どうした?辛気臭い面をして、美人が台無しではないか」

陽気な口調、変わらぬ笑みに纏わり付く翳。
一度ならず見た光景だった。
喪失の悲しみに、慟哭することすらできず、空虚な笑みを浮かべる夜智王の姿は見る者の心を抉る。

「あなたは本当に変わらないわね」

はぁ、と嘆息し夜智王の隣に座った華扇は、ぐいと無理やりその頭をひっぱり、己の膝に乗せる。
少々面食らった様子の夜智王の頭を、まるで幼子をあやすように、そっと撫でる。
ずるい男だ、普段はあんなに憎らしいのに、こうやって時々無防備になるその姿は、女の母性を酷く刺激する。

「誰か死んだのね」
「さて」
「吐けば少し楽になるわよ、こら」

ふとももを撫で回そうとした夜智王の手の甲をぎゅっとつねる。
痛い痛い、と大げさに痛がる夜智王は、寂しげに見える笑みのまま、ぽつりぽつり零し始めた。

「長崎の出島にあった遊郭に馴染みの花魁がおってな」

今から二百年近く昔の話である。

「笹雪というてなぁ。苦界に生きとるのが何かの冗談のような、明るく、愛らしい女子だったよ」

その花魁が死ぬ間際に「あなたの子供です」と託した娘が、今朝死んだ。

「あなたの娘」
「であれば良かったがな」

己の罪を告白するように、夜智王は苦い声で話を続ける。

「笹雪が瘡毒(梅毒)に罹ったのに気が付いたのは一年ぶりに遊びに行った時だった」

上海租界で一年程遊んだ帰りに寄った時だった。

「当時は不治の病でな、一度罹ればいずれ、鼻が欠け、四肢が腐り落ち、脳に毒が回って狂い死ぬ」

いけない、と知りつつ夜智王は笹雪に己の血で作った薬を飲ませた。
尋常ならざる生命力も持つ夜智王の血である、大抵の病は癒える。
しかし

「わかっていた、それがあの娘の寿命を大きく縮めることはな」

古い蛇の血は人間にはやはり劇毒なのだ、それでも夜智王は愛した女が梅毒で惨めに死んでゆくのを見たくなかった。

「エゴ、という奴だな」

血を与えた夜の逢瀬を最後に夜智王は笹雪の元へ通うのを止めた。
風の噂に笹雪が倒れた、と聞き「ああ寿命が来たか」と知り夜智王は「いっそ攫って、食ってしまおうか」そんな気持ちで会いにいった。
笹雪は変わらず美しかった、しかしその顔にははっきりと死相が浮かんでいた。
不義理をした男を責めることも無く、笹雪は夜の相手を出来ぬことをしきりに詫びた。
その時託されたのが生まれたばかりの一人娘だった。
わたしとあなたの娘です、そう笑って言う笹雪に蛇はただ笑みを返すしかなかった。
一目で分かった、赤子が人にあらざるモノだと。この子を産み落とすために笹雪は命を賭したのだと。
金髪に碧眼の娘を黙って蛇が受け取ると、安心したのか?眠るように穏やかに笹雪は逝った。
夜智王の血の影響なのか?娘は二親が人間であるにも関わらず「半妖」として生まれ落ちた、生まれついての生成り。
人の世では生きれぬ娘の為、越後の片田舎に隠れ住むようにしながら、夜智王は娘を育てることにした。
そこまで聞いて華扇は呆れた様子ではぁと嘆息する。

「あなた、本当に光源氏のまね事が好きなのね」
「どちらかというと「マイ・フェア・レディ」だったがな」

瞬く間に時は流れ、娘は美しく育ち、夜智王に恋をした。
多少は抵抗した夜智王も最後には折れ、愛しあうようになった。
その後、維新の動乱が日ノ本全土を巻き込み、戦乱を避けるため夜智王は娘を幻想郷に避難させた、それが長い別れとなった。
夜智王は外界で封印され、百年の時が流れたのだ。
秋口に幻想郷に戻って後、それとなく行方を探していたのだった。

「ようやく先日見つけた時には、しわくちゃの媼になっておってな……散々叱られたよ、色々と苦労もしたらしい」

だが度量の大きな伴侶を得て、子にも恵まれ、孫や曾孫に囲まれて娘は幸せそうだった。

「心の深い所まで他人を入れすぎるのよあなたは……」
「そうか?」
「前にも言ったわよね……もう少し距離を適切に保ちなさいって、ほとんどの者はあなたより先に逝くわよ?」

情が深いのはこの蛇の数少ない美点だが、それゆえに別れの度に夜智王の心は深い傷を負う。
精神が主体である妖怪にとって、心が深く傷つくことは酷く危険なことである。

「慣れたよ。その証拠に涙一筋流れやせん」

ばか、と華扇はつぶやき、そっと夜智王の頭を抱きしめる。
それは既に夜智王の心が壊れ始めている証拠なのだ。

「なんだ、慰めてくれるのか?」

先日はあんなに嫌がったくせに、と夜智王は笑う。

「こんな時、黙ってあんたを慰めてやれるは私くらいでしょう?」
「それもそうだな」

夜智王は苦笑した。
華扇と夜智王の関係は、奇しくも華扇の言った「適切な距離」を保ったものだ。
男女の仲では有る、閨を共にし、情を交わしたことはけして少なくない。
だが、互いに愛し合うという程に深い関係ではない、無論肉体関係だけの爛れた関係でもない。
恋人というには遠く、友人と呼ぶに近しい。
だから華扇は他の女を想って傷ついた夜智王を、なんのわだかまりも無く抱きしめてやれる。
そんな華扇ゆえに、夜智王もまた気兼ねなくその胸に甘えることができる。

「こうやってあなたに恩を売れるしね」

本心なのだろう、おどけた口調のわりに真剣な目で華扇は言う。

「酷いのぉ」

いささか傷ついたのだろうか?拗ねた口調でそう言いながらも「恩に着るよ」と零した夜智王は、華扇をそっと押し倒した。












「おはよう華扇」

昨日はありがとうな。なんのてらいもなく夜智王は感謝の言葉を紡ぐ。
微睡みから抜けだしたばかりの華扇は、はぁと溜息を吐いた。

「……我ながら、ちょっと都合の良い女すぎる気がするわ」

いささか自己嫌悪の混じった声で華扇は嘆く。
普段が普段だけに、この蛇が弱みを見せると妙に甘くなってしまうのだ。
ああやって嘆く夜智王を慰めてやったのは何度目だろう?
数えようとして華扇は止めた、意味の無いことだ。
夜智王は華扇だからああやって慰めを求めるのだから。

「そんなことはないさ、そなた佳い女だよ」
「あなたにかかれば、大抵の女は「可愛い」か「佳い女」でしょうが」
「そなたは特別佳い女さ」
「はいはい、ありがと」

愛しているわけではない、だがこの蛇が弱さを見せてくれるこの関係が、こそばゆく、また密かに誇らしい。
華扇は照れ隠しのようにそっぽを向いて、赤くなった顔を見せないようにする。
さすがに夜智王もそんな気分ではなかったのか、昨夜は抱き合って一夜過ごしただけである。
だから気が付かなかった、すっかり夜智王の表情からは暗い翳は消え、いつもの「意地悪な」笑みが浮かべられていることに。

「礼をせんとな」
「ああ……じゃぁお願いがあるのだけど、私が茨木童子だってこと、内緒にしておいて欲しいのよ」

特に萃香とか昔の仲間には、と華扇は続ける。

「わかった」
「……理由は聞かないの?」
「佳い女には秘密があるのだ」
「ばか……」
「……しかしその程度では足らんな」

ぎく、と華扇の表情が強張る。

「じゅ、十分よ?」
「遠慮するな」
「嫌がってるのよ!」
「悲しいことを言わんでくれや」
「ちょ、こら!やっ……んっ……ふぁぁ…」

ぎゅっと華扇を抱きしめると、夜着の袷を開き、まろびでた豊かな丘にそっと触れる。
昨夜の余韻の残る躰は敏感で男の愛撫に素直に反応を返す。
肢体を震せる華扇を労わる様に、ゆっくりと、撫でるように乳房を愛撫する。

「昔より少し小さくなったな、仙人修行のせいで痩せたからか?」
「何を、言ってるのよ……やめ…て……胸…はぁ」
「しかしそのぶんハリがある、これは堪らんなぁ」
「やぁ、やちおう、やめてぇ」
「房中術の修行とまいろうか、華仙殿♪」

愉しげに言いながら、夜智王が華扇の胸元に顔を寄せてくる。

「調子に……乗るなっ!」

ばしん!といい音を立てて華扇の平手打ちが夜智王の額を強打する。
ずるり、と夜智王が崩れ落ち、ぼすんと華扇の胸元に顔を落とすと、びくびくと体を痙攣させる。

「なんふぁ、ほれは、へひふうひのふふぁ?(なんじゃ、これは、蛇封じの符か?)」
「しゃ、しゃべるな!く、ひぅっ!くす、くぐったい!」

夜智王の言うとおり、その額には符が一枚貼られている、こんなこともあろう、と華扇が用意しておいた蛇封じの符である。
胸元でもにょもにょとしゃべくる夜智王を、なんとか引き剥がした華扇は、荒い息を整えつつ、着衣の乱れを直す。

「まったく!油断も隙もない」
「おーい、華扇さんや、剥がしてくれ」
「嫌よ」

ばっさりと切って捨てた華扇は動けない夜智王を無視し、昨夜脱ぎ捨てた衣服を抱えると浴場へと向かう。

「お風呂借りて帰るわ」
「わしは純粋にそなたにお礼をしたかったのだけだというに……」
「いりません」

べー、と子供のような真似し、華扇は居間を出る。

「じゃ、またね、夜智王」
「またな、華扇」

一矢報いた華扇の晴れ晴れとした笑みに、後で仕返しをしてやるぞという不敵な笑みを返す夜智王だった。










ご無沙汰しております。
作者でございます。
原稿が遅れた原因の六割は艦これなのですが、残り三割が
精神的にキツイ事情でありましてまったく原稿が進みませんでした。
当初の予定ではえっちぃシーンも予定していたのですが
現在精神的にちょっとそっち系を書ける状況になく。
とはいえこれ以上空けるのも申し訳なく、書き終えていた部分に若干書き足して
所謂朝チュンの状態で投稿させて頂きます。
申し訳ない限りです。
おいおいリハビリを続けて、なんとか復帰できたら、と思っています。



[26700] 子鬼の昔語り、の巻
Name: 窓◆0bf2c45e ID:e809a602
Date: 2015/01/02 05:51

一眠りしてからにするかの。
華扇とのほろ苦い一夜を思い出し、ふと人肌が恋しくなった。
普通の蛇やどこぞのスキマ妖怪と違い、冬眠の習慣は無い夜智王だが、冬の冷気は不思議と眠気を誘う。
強い鬼の酒を一晩中痛飲したこともあって、いささか足元が覚束ない。
しかし一人寝は寂しい、どうしたものかと思案していると、望楼に人影を見つける。

「一人酒とは寂しいな」
「……」

一飛で望楼へと跳躍すると、人影……一匹の女郎蜘蛛に話しかける。
見知った顔ではない。
剛毛に覆われた蜘蛛そのままの下半と美しい女の上半身。
アンバランスな組み合わせはともすればグロテクスさを強調する。
この女郎蜘蛛が地底に追われたのは人型を完全に取れぬせいだったのかもしれない。

「名の有る蛇の君のお見受け致します……卑賤の身に何か」

硬い声音、夜智王はさて、と思案する。

「そんな大袈裟な身分ではないさ、ワシは夜智王、ただの蛇だよ」
「……」
「ここはそなたの棲み家か?一晩の宿を探しておってな」
「お戯れを……」
「うん?」
「貴方様なら他に相手をする女は幾らでもいらっしゃいますでしょう」
「まぁそんなに警戒してくれるな、一杯付き合って、ついでに軒先を貸してもらえればそれでかまわんのさ」

夜智王はどうにも、こういう女に弱かった。
別段急ぐ必要もない。
紫からの依頼は鬼達を大人しくさせておいた分で十分だろう。
迷惑そうな様子の少女に構わずその横に腰を下ろした。







博麗神社の一室。
霊夢のサポートとして集まった八雲紫、伊吹萃香、射命丸文、そして紫の式の藍。

「あいつは相変わらずだなぁ」

紫が開いたスキマの間に少女を口説いている夜智王が映る。
萃香は藍が用意した稲荷寿司をもきゅもきゅと頬張りながら呆れた口調で言う。
紫は地霊殿に突入した霊夢の補助に忙しいらしく、そのセリフを無視する。
一方で文と藍は見るからに不機嫌だ。
キシシ、と内心で萃香は笑う。

「(射命丸がこんなに悋気持ちとは意外だな……九尾は何か有ったクチか?チビの頃は夜智王しゃま夜智王しゃまと懐いていたのに)」

しかし紫の機嫌があまりよろしくないのは何故だ?
さすがに一晩床を共にした直後に他の女を口説かれれば機嫌も悪くなるのか?
萃香は思案する。
ああ、そうか、と得心した。

「金髪だな」

萃香のつぶやきに紫がピクンと反応した。
視線を萃香に向けると睨《ね》めつけてくる。
やはり図星か、と萃香はくつくつと笑う。

「伊吹殿さっきから何がそんなに可笑しいのです」

不審な様子の萃香に文が怒りを押し殺した声音で問うてくる。
ガキだな、と萃香は断じた。

「射命丸も九尾も意地を張ってると損するぞ……もっと自分の気持ちに素直になるこったな」
「どういう意味ですか」
「夜智王のことだよ」
「あの蛇がなんだというのです」

藍が自分は関係無いとばかりに声を張るが、それは到底「関係無い」態度ではない。
ぐいっと盃の酒を飲み干して萃香はやけに真面目そうな表情で二人に忠告する。

「あれに恋するってことはさ、底なし沼に足を突っ込むてことさ」
「……」
「だけどな、あたしらみたいな女にとって恋に溺れるってことは、つまり地獄の釜の蓋を開けるってことさ」
「何を言って……」
「良いから聞けよ……男と向こうをはって生きなきゃならない女にとって、恋心っては地獄だよ、まぁ今のお前らにはわからんかもな」

すっかり酔いも覚めた様子で語る萃香は、その幼い外観に反し、ひどく老成し、ひどく疲れた表情をしていた。

「あたしは山の四天王の一人、紫は妖怪の賢者、わかるか?その意味が」

文も藍も返答に詰まる。
勇儀の奴が夜智王を忌み嫌うのは、本能的なものだ、一見して幼女にしか見えない萃香以上に勇儀は鬼の四天王として一目置かれている。
と萃香は勝手に解釈していた。

「射命丸」
「なんでしょう」
「今はお前、気楽な立場だけど、太郎坊の爺さんあたりが引退すれば嫌でも上の役目が振られてくるじゃないか?」

ぎくり、と文は身を強ばらせる。萃香のいうことはあながち間違いではない。
文は天魔のお気に入りだ、それゆえ我侭が許され今は遊軍的な立ち位置にいる。
逆に言えば天魔は自分の側近として文を常に側に置きたいと思ってもいるのだ。
夜智王の一件で文に負い目があるので遠慮しているが、それがいつまでも続くか分からない。

「そうすればお前、天狗の社会で夜智王と付き合い続けるのは難しいぞ?」
「そんなのこと、あなたに言われなくても解っています!」
「なら、いいけどな……九尾も、早めに仲直りしておけよ、後できっと後悔するぞ」

そう言って萃香は紫に視線を向ける。紫は霊夢に何やら話しかけており、完全に無視を決め込む。
藍は主人と夜智王の間に何があったのか、とざわりと心乱される。

「昔……まだ都が飛鳥に有った頃だな、夜智王が人間の女の子供を拾ってきたことがあった」

こ汚いガキだったよ、見るからにまずそうだった、なにせ目が完全に死んでいた。
萃香は懐かしそうに遠くを見るように過去に思いを馳せる。
口汚く罵りながらも、その口調には慈愛が溢れていた。

「よっぽど酷い目に有っただろうな、夜智王を含めて誰にも懐かなかった」

それでも夜智王は人里の外れのボロ屋でその少女を育て始めた。

「少しずつだけどそのガキは夜智王に心を開きはじめた」

白濁した金剛石の原石をゆっくりと丹念に研磨するように、夜智王は少女を磨きあげた。
気がつけば小汚いガキは、白皙の美貌を持つ美少女になっていた。
ようやく自分に懐いた少女を夜智王は掌中の珠のように慈しみ育て始めた。

あの夜智王が父親のまね事を始めたというので皆物見高く見物に言った。
当時からモテた夜智王と擬似夫婦が出来ると幾人かの女達が押しかけたが、ついぞその子供はそういった女達には懐かなかった。

「不思議とあたしと紫には懐いていたよ、たぶんこの髪のせいだろうね」

渡来人の血を引いていたせいだからか、最初は藁束かと思っていた少女の髪は美しい金髪だったのだ。
その金髪もまた少女が他者に心を閉ざした原因だったのだろう。
少女は紫と萃香を「姉様」と呼び慕ったのだ。

「……その子はどうなったんですか?」
「死んだよ、流行病でぽっくり逝った」

人間だからな、と萃香はあっさりした口調で言う。

「萃香」

紫が冷たい声で止めろ、と警告する。
構わず萃香は続けた。

「夜智王の心の一部をごっそり抉り取って地獄へ落ちて逝ったよ……人間が怖い生き物だって、あたしは初めて知ったよ」

そう名前はユキと言ったか。
古い記憶を思い出す。
名は体を表すというがその通りだった。雪の様に儚く、そして容易く命を奪う苛烈さを秘めた少女だった。

苦い思い出を噛みしめるように萃香は杯に注いだ酒を飲み干す。
紫も苦虫を噛み潰したような表情だ。

「っ!」

我慢の限界だったのだろう、文が部屋を飛び出した、直接夜智王に聞きに行くつもりなのかもしれない。
残された藍も「失礼します」と断り部屋を退出する。

「お節介ね」
「先達として一言助言してやろうと思ってな」
「良く言うわ……」
「はは、お見通しか、というかあの馬鹿どうしたんだ一体?」

変わらない、と萃香は夜智王を評したが、それは嘘だった。
萃香の目には今の夜智王はかつてとは比べられないほどに弱って見えた。
あの精強な蛇妖は一体どこに消えたのか。
原因は分かっている、妖怪とは精神に依存する生き物である。
あの己の心にヤスリ掛けるような生き方を止めない生き物が弱るのは必然だろう。

「知らないわよあんな馬鹿のことなんて……さっさと野垂れ死ねばいいのよ、忌々しい」
「ツンデレが過ぎると損するぞ紫」
「なによツンデレって」
「お前みたいな女のことだそうだ」

もっと気楽に付き合えよあの蛇とは、あたしみたいにな。
そう言って萃香は稲荷寿司を口に放り込む。

「あの馬鹿は便利なんだ、あたしだって女なんだからたまには男に甘えたい時もある」

あいつなら丁度いいのさ、だから死なれちゃ困る。
そう独白し萃香は酒を干す。
夜智王の救いになれない自分が少し恨めしかった。









お久しぶりの作者です。
ほぼ一年ぶりですね、ほんとに申し訳ないです。
昨年末に倒れた家人の件はなんとかこんとかやっているのですが
趣味のTRPGでコンベンションの主催やったり
友人の冬コミ原稿のお手伝いしたり。
微妙にこっちまで手がでない。
しかも何やらワケあり気な萃香の過去話に浮気しちゃったりして
もうgdgdでした。(本編完結後に、古代編と合わせて酒呑童子編として陽の目をみせてあげたいです・・・)
はい、いいわけです。

一応、この後さとりとの邂逅で地霊殿が終わり、プロット通りならば
起承転結でいうところの転の章に突入します。
する、はず。



[26700] 蛇、さとりの少女に出会う、の巻(文章追加)
Name: 窓◆0bf2c45e ID:80b5bdfe
Date: 2015/01/20 03:26
「うーむ、どうしたものかのぉ」

てこてこと地獄街道を歩いていた夜智王の眼前に、立派な殿舎、地霊殿が見えてきた。
しかし、蜘蛛の少女の所で一刻ばかり仮寝をした結果(どうなったかは読者諸氏の想像にお任せする)
とうに日は暮れ、辺りには闇の帳が落ちている。
初対面の相手を訪れるのには、到底適した時間はではない。

「まぁ、よいか」

まったく良くはないのだが、そう脳天気に決め付けて夜智王は地霊殿へと向かう。
途中、するりと一匹の蛇へと変化し、誰にも見咎められること無く、殿舎へと侵入する。

「(随分と獣臭いな、ここは焦熱地獄跡という話だったのだが)」

実際あちこちに鳥獣の気配を感じる。
まるで不喜処地獄、六大地獄の二番目等活地獄に属する小地獄、鳥獣を苛めたり殺生した罪人が堕ちる地獄のようだった。
獣臭い匂いを避け、ふわりと鼻孔くすぐる良い香り、端的言ってしまえば女の匂いをたどって蛇は殿舎の奥へと奥へと進んでいく。
そうこうしていると、前方に灯りの漏れる部屋があるではないか。
僅かな隙間に蛇頭をつっこみ中を伺う。

「(ほぉ……これはこれは)」

灯台の薄明かりで一人の少女が読書をしていた。
胸元に第三の瞳が見て取れる、サトリである。
小柄な身体相応の幼気な容姿、だがひどく老成した、というよりは濃い憂いを帯びた雰囲気が、少女を大人びて魅せる。
春虎の言う通り、いかにも夜智王好みの少女ではないか。
にゅるん、と室内に侵入した蛇はするすると少女の前に這いよる。
つい、と蛇に視線を向けた少女は、眉一つ動かす。

「誰?」
「お初にお目にかかる、地霊殿の主、古明地さとり殿。ワシは夜智王、見て通りの蛇妖だ」

そう言い、夜智王はいつもの青年の姿に返事、恭しく礼をする。
キザたらしい夜智王の挨拶を、少女は無感動な様子で受け止める。

「いやはや、さとり殿が、こんなに愛らしい方だと知っていれば、鬼共など無視していの一番に挨拶に伺ったのだが」

胡散臭い、それがさとりが抱いた夜智王の第一印象だった。
誰が好き好んでサトリの化け物に会いに来るというのか。
ほぼ本能的に第三の瞳で“見た”
夜智王の心を見た刹那。
ぽんっ!とさとりは赤面し、ふぇ!?と可愛らしい声を上げて狼狽を露わにした。

「どうなされた?お顔が赤いぞ?すっかり冷える季節になったし、悪い風にでも中ったのではないかな?」

いけない、この蛇めが温めてしんぜましょうか?
などと言いながらも、夜智王の頭の内ではまったく違う絵が描かれたいた。

「やっ、やめて!」
「これは失礼、さすがに不躾であったな」
「そうじゃなくて!やめて!変なことを考えるのはやめて!」

この蛇は口では美麗字句を連ねつつ“わざ”と頭のなかで不埒な絵を描いていたのだ。
最初は、外側から見て取れた、さとりの胸を想像してみた。むろん一糸まとわぬ姿でだ。
最初のさとりの反応から、ほぼ大きさは合った、と見たのだろう、あとは形をお椀、釣り鐘、皿、砲弾と変えてみながらつついてみたりして、さとりをからかう。

「あっ、や、やだ、やめて……」

想像の中でそっと抱擁し、接吻し、軽く胸を愛撫する。
耳元に唇を寄せ、甘い声音で愛を囁く。
ごくごく柔らかな笑みを浮かべつつ、心の声でさとりを攻め落とそうとする。
読心能力をもつサトリにしてみれば、それは、実際にそうされているのと変わりのないことである。
男に言い寄られたことなどないのだろう。
赤面し、狼狽し、身悶えるさとり、じわりと眦に真珠のような涙が浮かぶ。

「ああ、すまん、あまりにさとり殿が愛らしかったので、ついからかいたくなってしまってた、泣かんでおくれ」

よほどに女の涙が苦手なのだろう、慌てて謝ってくる夜智王。
困惑と後ろめたさ、謝意がさとりに伝わってくる。
やっと精神的なセクハラから解放されたさとりは、じとぉっと彼女にしては随分感情的な表情で夜智王を睨めつけてくる。

「……あなたは、いやらしい人ね」
「それはまぁ、蛇だからな」

屈託なく蛇は笑う。
妙な人、とさとりは思った、思考と言動にほとんど裏表がない。
その気になれば、表層思考は制御できるだろうに。
心を読まれるのが、怖くはないか、嫌ではないのだろうか?

「心が伝わる、なかなかに素敵だとワシは思うがな」

まるでさとりの思考を読んだかのように夜智王は返事をする。

「百万の言葉を重ねても伝わらぬこともある。押し殺した心を悟れず後悔したこともあった」

蛇の心に浮かんだ慚愧の念。
さとりは、ついと目を背けた。
この蛇の心は猛毒だ、妖怪の癖にあんなに他者を心の奥底まで入れ、喪う度傷つき、それでも悲しい程に他者を欲している。
心を読んでいると、それが自分にまで伝わって来てしまう。

「……あなた、女誑し」
「ああ、何人も泣かせてしまった」
「そういう意味じゃないけど……」

まったくどうかしている、つい先程有ったばかりの怪しい男だというのに、この可哀想な蛇を慰めてやりたい。
そんな気持ちがさとりを支配していた。
逡巡の末、そっと夜智王を手招きする。
何事かと首をかしげた夜智王がさとりの前へとやってくる、手をとりぐいと引き寄せる。
幼子をあやす母親のように夜智王の頭を胸で抱きしめ、優しく撫でる。

「さとり殿はお優しいのだな」
「貴方の悲しい気持ちに感応してしまっただけよ。いやらしい蛇さん」
「少し気恥ずかしいのぉ、これは」

いい格好しいな所のある夜智王にしてみれば、赤裸々に己の過去の後悔を見られあげく。
小柄なさとりに抱きしめられ、慰められるというのはかなり情けない物がある。

「……いやらしい事を考えてる」
「おっと、いかんいかん」

ぐい、と夜智王を押しのけると、胸元を腕で隠し、じとぉっとさとりは夜智王を睨む。

「人の胸を想像するの、やめて」
「はは、すまん、つい……な?」

布越しに感じたさとりの乳房の感触から、ついつい先ほどの想像を補完してしまったのは好色蛇の性《さが》だったのだろう。

「いや、もう少し我慢するべきだったな」
「えっち……ばか……きらい、あっちへいって」
「ワシはすっかりさとり殿が好きになってしまったよ」
「変なこと言わないで……いや、あっちへいって、変な想像しないで!」
「乳がダメというから尻にしたのだが……」
「ばかー!」

さとりの可愛らしい罵倒が夜の地霊殿に響くのだった。







「さとり様?何事ですか?」

騒ぎを聞き付けたのだろうか、一人の老女がひょっこりと部屋に現れた。
視力が衰えているのか、定まらぬ視線をさとり、ついで夜智王に向け。

「まぁ」

と嬉しそうな声をあげる。

「ち、違うわ!」

老女の思考を読んだのだろう、さとりが慌てた声で否定する。

「何が違いましょうか、こんな夜更けに殿方が通って参りますのは、夜這いか求婚かに決まっていますわ」

おお、そう来たか……ま、言われてみれば。と得心する夜智王。
さとりは「否定しなさいよ!」と可愛らしい悲鳴をあげる。
老女はまぁまぁまぁ、と嬉しそうに夜智王に近づくと、じっとこちらを見上げてきた。

「そなた蛇か?」
「そういう貴方様は、ヤチの蛇王様であらせられますか?」

一瞬夜智王は瞳を見開き、すぐに苦笑を浮かべる。

「また古い名を知っておるのだな」
「あなた様の末裔すえ の眷属でございますから。白鱗姫はくりんきでございます、どうぞ白姫しらひめとお呼びくださいまし」
「今は夜智王と名乗っておるよ、こっ恥ずかしいので蛇王はやめてくれ」
「あらあら、では夜智王様、いかがでしょう?私のさとり様は」
「実に愛らしい、持って帰りたいくらいだ」
「っ!」

持って帰ってどうするつもりなのか?
見えてしまったのだろう。
さとりのただでさえ蒸気していた顔が、いよいよ真っ赤に染まり、今にも頭から湯気を吹き出しそうになる。
ほほほ、とその様子を見て、白姫は楽しそうに笑う。
老いてなお、社交的で言動に艶めいたものが見えるのは、さすがに蛇らしい、といえば蛇らしい。

「このばばとしたことが、とんだ野暮を、お邪魔虫でした」
「ち、ちがっ!違うわ!白姫の誤解よ!」

なんとか正気に返ったさとりが慌てたように否定する。

「さとり様」
「な、何?」
「婆は嬉しいのですよ、ようやくさとり様の魅力に気がついて通う殿方がいらっしゃたんですから」

さとり様もまんざらではなさそうでございますし、と実に白姫は嬉しそうだ。
顔を真っ赤にし、「違うわ!」「何をいっているの!」と否定するさとりだが、白姫はまったく取り合わない。

「ましてそれがヤチの蛇王様なら、私の可愛いさとり様の旦那様として申し分ございません。まぁ、こうしてはいられません、早速祝言の準備をしませんと」
「白姫、お願い人の話を聞いて!?」
「かわいいかわいいさとり様、大丈夫ですわ、万事この婆にお任せください」

お燐!?お空!?と誰かを呼びつけ、白姫は嫌がるさとりをガン無視して話を進めていく。
大阪のおばちゃんのようなバイタリティに夜智王も成り行きに任せた方が無難だな、と諦念の心持ちであった。

「うにゅ?白姫かあさん呼んだ?」
「白姫かあさん、こんな時間に何なの、今日は色々あったから寝むいんだけど……」

背中に黒翼を生やした長身の少女と、頭に猫耳の赤毛の少女。
いずれも愛らしい美少女がやってきた。
黒翼の方がお空、猫耳がお燐というらしい。

ふむ、惜しいな、と夜智王は内心で残念がる。
黒翼の少女の豊かな胸部も、容姿もいかにも夜智王好みだったが、一つは天敵たる鳥妖であること。
何より、白痴とまでは言わないが、がんぜない幼女のような、ひらたくいえばバカっぽい感じがいかにも残念だった。
ああいう手合いに手を出すと、大抵ろくなことにならない。
しかも、内に強い神性を帯びている、あれはヤタガラスではないだろうか?
そんなことを考えていると、ぱっとさとりが夜智王の視線に割り込んでくる。

「見ないで」

精一杯の虚勢であろうか、夜智王を睨み付けてくる。
どうやら、二人の少女はさとりにとってとても大事な存在らしい。
そんな少女達でいやらしい想像をするな、ということらしい。
やきもちかの?とくつくつと夜智王は笑った。

「そんなんじゃないわ……」
「まぁそういうことにしておこう」
「違うし……」
「さぁ、さとり様、まずは湯浴みを、それからお召し替えですわ」
「やだ、白姫、ほんとにちょっと、待って……」

いやいやと首を振るさとりを、白姫は有無を言わせず引きずっていく。
いやぁぁぁ、とさとりのか細い悲鳴が尾を引いて遠ざかっていく。

「まるで野分だな」
「白姫かあさんの、おかん台風だねー、ああなったら誰も止められないよ」

黒翼の少女は他人事のように言う。
ついと夜智王に視線を向ける。

「空だよ!みんなはお空って呼ぶの」
「夜智王だ、みての通り、蛇だ」

お空は地獄烏だよ!と元気に返事を返してくる。
愛らしいが、やはり、いかんせん容姿と釣り合っておらんな、と夜智王内心でしきりに残念がる。

「私は火焔猫燐、どうぞお燐とお呼びください夜智王様」

さとり様の準備が整うまでのお相手を勤めます。
どこか慇懃な様子でお燐は、ちょいスカートをつまみ上げて礼をする。
ふむ、警戒しておるのか、主思いなのだな。と夜智王はお燐を見やる。

「酒肴の準備を致します、庭でも眺めてお待ちください」

にこりと笑顔で返したお燐は、夜智王に興味津々なお空をひっぱって一旦下がる。

「ちょっと、待っててね~」

ぺこりと頭を下げて退出するお燐と、腕をぶんぶん降るお空。少女二人に手をひらひらさせて見送る。

「しかし、妙な事になったな……」

どうしたものか、と夜智王は首をひねるのだった。








すぐに準備が整った、と言われ夜智王は別室へ通された。
一膳、簡単な肴と酒が用意されている。
急でしたので、とお燐が畏まるが、気にするなと夜智王は返した。

「ねぇ夜智王様……だっけ?」

お燐が酌をしてくれるので、礼を言ってまず一杯飲み干す。
おぬしらも飲むか?と問うた所、お空が何やら聞きたいらしい。

「様はいらんぞ」
「ふぅん?じゃぁ夜智王さん、本当にさとり様とケッコンするの?」
「こら、お空」

お燐が嗜めるが、お空の方は気にせず、目を輝かせて夜智王の返事を待っている。

「さとり殿の事は好ましいと思うが、いささか祝言を挙げるのは急だろう」

ワシは構わんが、さとり殿が可哀想だ。

「だが、まぁ今宵は白姫に付き合うしかなさそうだな」

実に嬉しそうだったからな、水を差しては少々不憫というものだ。

「白姫かあさんも随分興奮していましたから、それが無難でしょうか」

よろしくお願いします。とお燐は言って、空になった夜智王の杯に酒を満たす。
夜智王が手をつけないので肴を勝手にツマミながら、夜智王

「ねぇ、夜智王はさとり様に心読まれても平気なの?」
「まぁ、さほどに困ることは無いな。もともとワシは隠し事が下手だ、あまり変わらんよ」
「へぇ、夜智王って変な妖怪だね」
「お空!」

いたっ!いたいよぉ!とお空が悲鳴を上げる、どうやら夜智王には見えないようにお空の尻をつねっているらしい。
その様子に夜智王はくつくつと愉快そうに笑いながら、また一杯酒を干す。
一方でお燐は、恐ろしく肝の座った妖怪だ、と夜智王を評した。
豪胆で知られる、旧都の鬼でさえさとりに積極的に相対する者はいないというのに……

「夜智王様、本当は地底に何をしにいらっしゃったのですか?」

お燐のばかぁ!と喚くお空をそっちのけで、探るように問う。

「遊びに来ただけだよ、まぁスキマに一つ仕事を頼まれたのもあるがな」

それより地上に間欠泉が湧きでたのは、やはりお主らのしわざか?と逆に夜智王は問う。
はい、とお燐は返し、事の顛末を語り始めた。








短くてすみません。
もうしばらく地霊殿が続きます。

追記、さすがに短すぎたので、追加致しました。



[26700] 蛇、さとりの少女、新婚初夜、の巻
Name: 窓◆0bf2c45e ID:a4c65324
Date: 2015/10/18 05:48
白姫に引きずられ湯殿に放り込まれたさとりは、頭の天辺から足の指の爪先までぴかぴかに磨きあげられ。
もはや聞き入れられないと悟ったのか、ぐったりとした様子で白姫のされるがままになっていた。

「やはり御髪はもっと伸ばしておくべきでしたねぇ」

濡れ髪を乾いた布を何枚も使って水気を取る。
短目に揃えられたさとりの髪を櫛けずりながら、白姫はそんなことを言う。

「ねぇ白姫」
「わかっておりますよ、夜智王様が夜這いにも求婚に来たことでないことくらい、婆は承知してございます」

白姫の心を読んだのか?さとりは黙り込む。

「年甲斐もなくはしゃぐ婆に合わせて下さって、お優しい方……ですからさとり様」
「いや」

わざわざサトリの化け物に会いにくる物好きなどそうは居ない、得がたい好機であると説く白姫だが、さとりはにべもなく拒否の言葉を吐く。

「婆に孫を抱かせてくれるとお約束は反故でございますか」
「う……」
「子の生めない婆に幼い頃のさとり様はそう約束してくださったに……婆はそれだけを楽しみに生きて着たのにきたのに!」

ううっ、感極まったように泣き出す白姫。
嘘泣きではなかった、ただいささか自分に酔っているというか、自己暗示気味に泣き出したのがさとりには分かる。
分かるが……

「助けてこいし……」

こうなると手のつけられない白姫。
そんな白姫のあしらいが上手かった妹に助けを求めるさとりだった……









「ヤチ様?」

たっぷりと半刻経った頃。
すでに時刻は深更、地上ならば冷たい夜気が忍び寄ってくる所だが、地霊殿は直下の灼熱地獄の“余熱”で暖かいくらいである。
冬中ここで過ごしたいのぉ、などと思いながら手酌で飲っていた夜智王のもとに白姫が帰ってきた。

「まぁまぁ、二人とも」
「疲れているのだろう、勘弁してやれ」

夜智王の膝を枕にお空とお燐が寝ている。
呆れた様子で二人をたたき起こそうする白姫を夜智王は止める。

「お空はともかく、お燐を上手に手懐けましたわね」
「火車には、わしの“穢れ”が心地よいのだろうさ」

並の月人ならば視認することすら厭うだろう、夜智王の纏う死穢は永く生きた証だ。
蛇の強い生命力は、穢れを呑み込み死を遠退ける、しかしそれゆえにその身が纏う死穢は強くなる。
火車のお燐にしてみれば、夜智王は生きている死体のように魅力的であるはずだ。

「その調子でさとり様もよろしくお願いいたしますわ」
「のぉ白姫、あまり主をいじめるものではないぞ」
「あら、人聞きの悪いおっしゃりようですこと」

ころころと白姫は笑う。

「年頃の娘をからかうのは母親の特権ですわ」
「ひどいのぉ」
「だってさとり様があんまりにもかわいいのですもの」

わからんでもないがなぁ、と半泣きで赤面するさとりを思い返せば、とても愛らしく、ついついそんなさとりが見たくていじわるしたくなる。

「(ま、それだけでもないか……)」
「にゃ……はうっ!ややや夜智王様!?ひっ!とんだ不調法を」

話し声で目を覚めたのだろう。お燐が慌てて飛び起き、夜智王は思考を中断する。

「気にするな、可愛らしい寝顔だったぞ」

お空が起きるから静かにな、とお燐の頭を撫でながらさとす。

「か、かわいい……にゃにをいってるんですかぁ」

ふにゃ、とした表情になったお燐だが、横でにやにやする白姫に気がつき、ううううと唸る。

「さて、すまんがお空を頼むl」

お燐にそっと膝からおろしたお空を託す。
幸せそうな寝顔の地獄烏は起きる気配もない。
待ちかねたように「こちらへ」先導する白姫、夜智王はではまたな、とお燐に笑いかけて部屋を去っていく。

「……さとり様、いいなぁ」

さとりが聞いたら泣きそうなことを思うお燐であった。









「こちらです」

よろしなに、と声をかける白姫。
どうしたものか、と思いつつ夜智王は寝室に入ると、紗で囲われた寝所に布団お化けが一匹居るのが見えた。
さとりだろう、逃げ場のない彼女なりの、最後の抵抗だろうか。
くつくつと笑う夜智王。室内にはふわりと甘い香りが立ち込めている、媚香の類いだろうか?
雰囲気はあるが、さとりが可哀想なので夜智王は香炉を部屋の外へと追い出し、緩やかに上下している布団お化けに近寄る。

「さとり殿?」

返事が無い。

「かわいそうに」

そっと布団を剥がすと、せっかくの化粧を涙で崩した、だが愛らしいさとりの寝顔が現れる。
半刻白姫に弄り倒された疲労もあったのだろう、布団をかぶって恐怖に震えながら半べそかいているうちに眠りに落ちてしまったのだろう。
よしよしと幼子をあやすように頭を撫でてやると、くすぐったそうにさとりは身をよじる。

「白姫の気持ちもわからんでもないがなぁ」

起きているときの憂いの濃い無表情とは対照的な無垢な寝顔。
例え羞恥に染まる赤面でもいい、半べその泣き顔でもいい。
この少女の心を動かし破顔させるためならばなんでもする。
吾が愛し子と慈しんだ少女ならば、なおさらだろう。

「こんな格好では寝違えてしまうぞ?」

乱れた髪を整えるようにさとりの頭を撫でる。
くしゃり、とさとりの寝顔が歪む。

「おや」

酢でも飲んだような顔、嫌な夢でもみているのだろうか?

「夢違えが必要かな?」









「わぁ!」

さとり様きれい!と歓声を上げたお空がさとりに駆け寄った。
袿に裳を身に纏い、薄絹のベールで顔を隠したさとりが、白姫の先導で現れる。

「本当におきれいですさとり様」
「あ、ありがとうお燐」

落ち着いた口調とうらはらにお燐の目もまたキラキラと輝きを帯びていた。
妖であろうが人のであろうが、年頃の少女だということだろう。
一方のさとりは、誉めそやされるのも恥ずかしいのだろう。
ベールからかいまみえる顔は、薄化粧をしているにも関わらず、あざかやな朱色に染まっていた。
まとわりついて衣装に触ろうとするお空の耳をつかんで止めた白姫が「いかがですか?」と得意げな表情を夜智王に投げかけてくる。

「実に愛らしい、三国一の花嫁姿だな」
「まぁ夜智王様、そんな月並みな」
「だが、言葉に出さずともさとり殿には通じるであろう?」

夜智王はそう言ってさとりに笑みを向ける、ぼんっ!と首筋まで真っ赤になったさとりがさっとお燐の後ろに隠れる。

「まぁまぁまぁ」

わが意を得たり、と喜色満面で白姫は顔をほころばせると。

「さて、ではおじゃま虫は退散いたしますね」

待って。
そうさとりは言おうとした。
しかし、声が出ない。
眼前に夜智王の顔が有る。近い。
更に近づく。
金縛りにあったように身体が動かない。
どうして?
パニックになるさとり、そんなさとりを夜智王を抱き寄せ、唇が--





「さとり殿?さとり殿?大丈夫か?」
「やち……おう?」
「怖い夢を見られたかな?」

夢?
そうだ、先刻の光景は夢だ。

「夢違えが必要かな?」
「平気……」

心配そうな表情の夜智王こそが悪夢の原因である。
自分の格好を思い出したさとりは布団をもそもそと羽織、きゅっと夜智王を睨む。

「もう眠くは無いかな?」
「そうね、あまり」

では、と夜智王は酒器を差し出した。

「さとり殿も一杯やらぬか?」

自分の隣の円座をぽんぽんと叩いて座るように促す。

「……」

その円座をひっぱって少し離れた所に腰を下ろすさとり。
布団を引きずってみっともないことこの上ない。それでもぎゅっとしっかり布団を握って防御を固める。
まるで穿山甲だな、と思いつつ夜智王はまず自分の酒器を満たす。

「そんなに離れては酌ができんなぁ」

仕方ない。と言わんばかりの微笑を浮かべ、夜智王がさとりの隣へ移動する。
ずるずると衣装を引きずりながらさとりが逃げる。
夜智王が追う。
逃げる、追う、逃げる、追う、逃げる、追う。

「さとり殿」
「やだ、こっちこないで」

ぷるぷると震えるさとりは、いやいやと首を振る。

「わしはおかしなことをしようとは思っておらんぞ?」

心を読めばわかるはずだ、だが。

「……」

さとりは今にも泣き出しそうだ。

「そういえば第三の眼はどうされた」

先ほどの寝姿を垣間見た時に感じた違和感。
さとりの胸元にはその力の源たる第三の眼が無い。

「白姫が……必要無いからって」

この怯えようはそのせいか、と夜智王は合点がいった。

「まぁ、確かに最中の男の考えていることなどは単純だからな。心など読まずとも顔を見れば分かるが」

かぁぁ、とさとりが首筋まで真っ赤に染まる。
想像してしまったのだろう。円座でばしばしと夜智王を殴り始める。

「ばか!えっち!きらい!」
「すまん、すまん、ほれさとり殿落ち着かれよ」

サトリにしてみれば、相対する者の心の声が見えないのは、五感を塞がれたに等しいのだろう。
情緒不安定になるのもしかたがないことだった。
夜智王は涙目で暴れるさとりの腕をそっと掴むと、手を取り握る。

「や……ぁ!」
「ほれ、掌に意識を向けられよ」
「あ?……え?」

手のひらから、じんわりと暖かな感情が伝わってくる。

「何、これ」
「こうして直に触れていれば、ある程度心は伝わるであろ」

片腕でさとりを抱き寄せ、幼子をあやすようによしよしと頭を撫でる。

「良く、知っているのね」
「まぁ無駄に長生きしておるのでな」

懐かしむような、セピア色の感情とともに、薄ぼんやりと、女の姿が見えた。
恐らくかつて夜智王が会ったことのあるサトリ、それもただならぬ関係だったのだろう。
さとりは、胸の奥にもやっとした感情を覚えた。
この色は知っている、やきもち、という奴だ。
嫉妬という程に強くはないが、ひどく、面白くない。

「どうされた可愛い顔をされて」

ぶすっとむくれた顔になったさとりを夜智王がからかう。

「別に」
「やきもちかな?」
「違うわ」
「まぁではそういうことにしておこう」

ひょい、と夜智王はさとりを抱き上げる。
きゃぁ、と可愛らしい悲鳴をあげたさとりはとっさに夜智王にしがみついた。
男としては細めだが、それでも小柄なさとりにしてみれば逞しい男の胸に抱かれ、どくんどくんと心臓が高鳴る。

「や、夜智王、やだ」
「さとり殿は軽いな、好き嫌いが多いのではないか?」

偏食はいかんぞ?と酒ばかりの蛇が言う。

「……えっちなことしないの?」

重ねあわせた手から伝わってくる感情によこしまなモノが無い。

「それは三日夜目にしようかと思うが、どうかな?」
「っ!」

ぎゅっと瞳をつぶり顔を真っ赤にしたさとりがばしばしと夜智王を叩く。

「痛い痛い!……ほんにさとり殿は幼子の様に無垢で、とても愛らしいな」
「恥ずかしい事言うのやめて」
「ふふ、さて今宵は添い寝で我慢しておこうかな

ここは暖かくて良い。夜智王はぱたぱたと暴れるさとりを抱きかかえ寝所に向かう。

「冬の間はここに居候したいのぉ」
「だめよ……」
「一冬あればさとり殿の頑なな心も溶かせるだろうしなぁ」

明日の朝になったら絶対に追い出す。
さとりはそう決める。
だが、今晩だけは、この寒がりな蛇を温めてあげてもあげよう。
きゅっと重ねた手を握り返す。

「ほんにさとり殿は優しい良い女子だな」
「追い出されたくなかった、もう黙って」

あなたの考えていることは全部わかるんだから、そう言わんばかりにさとりは手に力を込める。
まいったなぁ、という顔をした夜智王は不意打ち気味にさとりの頬に接吻をした。

「おやすみ、さとり殿」
「っ~~~」

おやすみなさい夜智王。
消え入りそうな小声でさとりはそう呟くのだった。

































一つの布団で身を寄せ合い、手を握り合って眠る夜智王とさとり。
穏やかな寝顔で夢を見るを二人。

僅かに差し込む月明かりだけの室内。
少女が一人。何の感情もこもっていない瞳で、二人の寝顔を覗きこむような至近距離でじっと見つめている。
胸元には瞳を閉じた「第三の眼」
さとりの妹、古明地こいし。
他者の気配に敏感な夜智王にも気づかせず、少女はずっとその部屋に居た。

寒気すら感じるような、奇妙な光景。
唐突にこいしは軽やかな足取りで部屋を去る。

「変な人」

言うまでもなく夜智王のことだろう。

どう“変”なのか、それはこいしにしか解らない。
まぁ別にいいけど、とこいしは断じた。
お姉ちゃんにも優しくしてくれてるし、そんなに悪い人じゃない。

だが
どこかで“見た”ことある気がする。
どこだったかなぁ?
だがこいしはそれ以上深く考えることはなかった。
それよりも今は地上の方に興味が有る。
博麗の巫女、白黒の魔法使い、山の神、弾幕ごっこ。
こいしの心はそちらに向き、夜智王のことなどどうでも良かったのだ。

















とりあえず生きております。
なるべくお早めに続きも。
頑張ります。
閑話を挟んで地霊殿編は終了。
一応プロット上は起承転結の転の章に入ります。



[26700] 蛇と温泉、の巻
Name: 窓◆0bf2c45e ID:8ff6cb18
Date: 2015/10/26 13:21
ぱらぱらと地獄の経営スリム化の為灼熱地獄を放棄した際の資料をめくりながら、幻想郷の閻魔、四季映姫ヤマザナドゥは思考を巡らす。

「(夜智王、旧地獄……何かあったはず。)」

自分が関わった案件ではないからだろう、引っ掛かるが、はっきりしない。

「(どうしたものか)」

逡巡。
映姫は部下の冥官を呼び出し、小町を連れてくるように命じた。
とにかく、一度夜智王に会いに……いや説教をしにいこう。
対面すれば、わかるはずだ、白黒つけるのは得意なのである。









「はっ!」

ゆめ……?
ひどく淫らな夢を見た気がした。
いやらしい性悪の蛇妖が訪ねてきて――

「おはよう、さとり殿。良い夢は見られたかな?」

夢ではなかった。
眼前の性悪蛇の微笑のさとりは凍りつく。
いつから起きていたのだろう、無防備な寝顔や寝言を見られて聞かれたのではないだろうか。
気だるい微睡みは一瞬で覚め、恥ずかしさのあまりさとりは、布団に潜り込んで顔を隠す。

「夢じゃなかったんだ……」
「どんな夢だったのかな?」

しっかりと握りあったままの手のひらからは、からからかうような意地悪な思念が伝わってくる。
ぱしぱしっと力無く夜智王を叩くさとり。

「はは、そんなに照れんでもよかろうに」

一晩手を握りあって寝ただけ。
年頃の男女が過ごす一夜としては、奥手も良いところだ。

「……何かした?」
「すっぽりと掌に収まりそうな大きさだった」
「っ!」

胸のことだろうか?そうに違いない。
ひどい。
半泣きでさとりは夜智王をばしばしと叩く。

「冗談だ冗談。痛い痛いぞさとり殿」
「ばかっ!えっち!」

他愛もないやりとり。
死ぬほど恥ずかしいけれど、けして嫌ではない。
奇妙な感覚だった。

「む」
「夜智王?」

夜智王の表情が曇る。

「うーむ幻想郷の閻魔殿がワシを探しているらしいな」

旧都に残してきた分身が捕まった。

「四季殿か、悪い娘ではないのだが、いささか説教がくどいのがなぁ」

きゅ、と心臓が締め付けられた。
他の女を語る夜智王の心の色。
自分に向けられていない暖かな感情。
ひどく、気に入らない。

「おや、さとり殿、やきもちかな?」
「ちがうわ」

頬つつく夜智王につん、とすました声音で返す。

「それは残念。名残惜しいが、ここに居ては迷惑をかける」

暇乞いの言葉。
だめ、といいそうになり、喉をつまらせた。

「次は夜這いに来ても良いかな?」
「だ、だめよ、ちゃんと昼間のうちに来て」
「来るな、とは言わぬのかな?」
「いじわる……」
「長逗留の準備をしてくる、三日夜の餅の準備を、白姫に言付けておくれや」
「っ!」

強ばるさとりの手を開き小指に小指をかける。
指切り。

「約束よ」
「ああ、約束だ」

そう言って、夜智王はさとりの唇を奪った。









「逃げられましたか」

小町がぐずぐずしているから。
地霊殿にやってきた四季映姫は、そう言って部下を睨む。
旧都で鬼共相手に、暖簾に腕押しの説教していた四季様のせいだと思うんですけどねぇ。
そう三途の川の渡守が考えているのがわかる。

「古明地さとり」
「はい、なんでしょうか、閻魔様」
「あの蛇は修羅神仏さえもたぶらかす性悪蛇です……あなたも気をつけない」

その修羅神“仏”に閻魔様は含まれているのかしら?
少なくとも映姫は夜智王のことを言うほど嫌っては居ないようだ。

「大丈夫です。わかりますから」

だって心が読めるのだから、そう言いたげに、さとりは無感動な口調で応える。

「わかっていません」

映姫の説教は長くなりそうだ。
まぁいいか、その分夜智王が逃げる時間が稼げる。

「(閻魔様相手にこんなことを考えてる……)」

少し、楽しい。
映姫にバレないように、さとりはこっそりと表情をほころばせた。











地霊騒ぎが収まって数日後。

「はぁ……いい湯、ん~お酒がおいしい!」

温泉に肩まで浸かり、そう呟いた霊夢は、杯を満たした酒を干す。
近づく冬の夜気が火照った頬を心地よく撫でる。
有言実行、夜智王が「できたぞ巫女殿」といって案内したのは、神社の敷地の外れ。
以前は手入れのされていない荒れ地だったはずの場所に、温泉宿が出現していた。

お披露目の宴と称してあちこちに招待状を送ったそうで、続々と見物がやってくる。
言うまでもないが皆人外ばかりだ。

「いい、あんたらが使って良いのは日が落ちてからよ!破ったら退治よ退治!」

そういってお祓い棒を振り回す霊夢を見て夜智王はカラカラと笑っていた。

ちなみに「もちろん混浴だ」とのたまい、女衆の悲鳴と怒号、男どもからは歓声を上げて褒め称えられた夜智王だが。
まとめて紫のスキマで退場となった。当然の措置だ。

そんなわけで広さ三十畳くらいはあるだろう露天風呂にいるのは皆女ばかりである。
まさに地上の出現した楽園だ。
(馬鹿騒ぎに参加しなかった唯一の男子、霖之助は内湯を独り占めしている、あちらも総ひのきの豪勢なものだ。)

今後の管理は夜智王の旧知だというアカナメの老夫婦がやってくれるそうで、日中は人間に化けて里人の利用にも対応してくれるとのこと。
霊夢としては頬が緩みっぱなしで酒がうまい。

「しかし、本当に温泉つくっっちゃうんだもんなぁ」

おのれぇスキマぁ!と最後までスキマの縁に手を引っ掛けて抵抗していた夜智王の恨みがましい声を思い出し、ぷっと吹き出してしまう。

「これくらい、あの蛇には造作もないことさ」

何故か霊夢の隣で半身浴を楽しんでいる神奈子が答えた。
ぐぅ、とたわわな胸を惜しげも無く晒す神奈子に霊夢がしぶ顔をする。

「妖怪に身を落としたそうだが、あれの水に関わる権能はこの程度朝飯前だろう」

建物や温泉の整備は鬼どもと河童どもが手伝ったそうだしな。
顔が広いのも、あれらしい。
隨分と夜智王のことを良く知っているのね、と霊夢は思ったが、藪蛇そうなので黙っていることにした。

「そうなの」
「ああ、昔、諏訪子側に奴が居た時は、どうやっても川向うに攻めることが出来なかった……奴のせいでな」
「ふぅん」

私にも一杯くれ、と神奈子が言うので酒器を渡す。酌はその隣の早苗がした。

「あの、神奈子様」
「なんだ早苗」
「夜智王さんは、その頃は神様だったのですよね」

目をキラキラさせ、興味津々といった風情の早苗。

「ああ、まつろわぬ神の一柱だったが、親父殿とは知り合いらしかったがな」

それ以上語ることはない、とばかりに神奈子は酒を干す。
何故か魔理沙と妖夢も居て小声で「やっぱりあいつの正体は……」「それよりも……」と議論している。
何の集まりよあれ。








また別の一角には諏訪子、レミリア、文が集まっていた。
ひどく空気が不穏である。
言うまでもなく原因は夜智王である。

「いつもウチの夜智王がお世話になってるみたいね」

諏訪子の口撃。

「ウチの下僕が迷惑かけてないかしら」

レミリアが嘲笑で迎え撃つ。

「まぁまぁ、ここで弾幕ごっこはまずいですよ、霊夢さんがキレます」

文がどこか余裕のある態度で二人を仲裁する。
ぷるん、とどう足掻いても二人が揺らすことのできない部位を、これ見よがしに揺らす文。
ぎしり、と空気が軋む。

「そんなにぶよぶよじゃ感度がイマイチなんじゃないかしらねぇ」

いつも散々胸を責められては泣いているレミリアが、お負け惜しみ抜きで文を見下す。
文の笑顔が凍る。
手ぬぐいを巻いて、谷間に挟さんで見せつける。

「これ、とっても好きなんですよ夜智王は」

どうせ夜智王にいじめれてるばっかりなんでしょう?と言わんばかりの文の挑発。

「やだやだ、低レベルな争い」
「はぁ?」
「なんですって?」

終止余裕の笑顔の諏訪子が呆れた口調で肩をすくめて首を振る。

「わたしは、夜智王が蛇の本性の時にスルのが一番好き」

くすっと淫蕩な笑顔を浮かべ、とんでもないことを諏訪子が言う。
ひっ、とレミリアと文が息を飲む。
蛇体の夜智王がどんな風に自分を愛撫してくれるのか、想像するに悍ましい情交を二人に耳打ちで解説する諏訪子。

上級者すぎる。

恐れおののく二人を諏訪子は優しげな笑顔で見下す。

「蛇の交尾って時間がかかるのよねぇ、わたし一人だとちょっと疲れちゃうし、早苗もうるさいから……まぁよろしく」

正妻の寛容と貫禄?を示す諏訪子。
文とレミリアはぐぬぬと歯噛みするしかなった。









「あそこ大丈夫かしらねぇ」

一触即発っぽい雰囲気の一角を指して幽々子がのんびりと言う。
大丈夫でしょう、どこか気だるげな紫が返す。
そろそろ冬眠の季節だというのに、今回の騒ぎだ。
しかも今年からは夜智王がいるのだ。

「はぁ……不安だわ」
「ねぇ紫」
「なぁに」
「あなた、なんでそんなに夜智王のこと嫌うの?」
「……」
「悪いところをさっぴいても、夜智王ってかなりいい男よ?」

無邪気な親友の問いに紫は酢でも飲んだような微妙な表情になる。

「あいつの好きな種類の女ってなんだかわかる?」

金髪巨乳でしょ?と幽々子が紫の乳をつつく。

「やめて」

幽々子の手の甲をつねって止めさせる。

「違うわ、あいつはね、不幸な女が好きなのよ」

私は別に不幸じゃない。そう言いたげな口調だ。

「えー、別に私は不幸じゃないけど?」
「あいつに目をつけられてる時点で不幸なの。あいつに関わったら不幸になるわ。あいつに惚れたら、それこそ不幸よ……この話は終わり」

そう言って紫はそっぽを向いた。
聞く耳持たぬ、という態度にゆゆこはあらまぁ、と呆れる。
この態度こそ紫が夜智王の事を憎からず思っている証拠でしかない。

「ツンデレが過ぎると損するわよ」
「ツンデレじゃないわ、あなたまでやめてよ」
「まぁ紫がそう思っているなら、そういうことにしておきますか」

そう言って楽しそうに亡霊の姫は笑った。









「阿求先生を連れてきたぜ」
「あの、なんの集まりですか?」

慧音に連れられて湯治にやって来た阿求を魔理沙が謎の集まりに引っ張って来た。
魔理沙と早苗と妖夢、呆れた様子の霊夢、楽しげにそれを眺めている神奈子。
阿求が怪訝に思うのも無理も無い。

「なぁ阿求先生、夜智王のことなんだけどな」

びくん、と阿求が反応した。
努めて冷静に「夜智王さんが、どうしました?」と返す。

「あいつの正体知ってるか?」
「蛇でしょう?」
「それはわかっています。でも断じてただの蛇ではありませんよね」

ご自分ではそう自称してらっしゃいますが「お前のようなただの蛇が居るか!」という奴です。
早苗が何やら息を巻く。

「零落した神だったそうですが、私も詳しくは知りませんよ」
「やっぱり、八岐之大蛇だろ。夜智王って名前もアナグラムなんだよ」
「さすがにそれはないのでは……たしかに日ノ本で一番有名な蛇の妖怪……もう神の領域ですけど、あれは」
「私は、夜刀神が怪しいと思っています。ヤチというのは東言葉で水郷地帯を示す言葉、別名をヤトといいます、夜智王さんは水蛇だといいますし」
「角生えてないじゃん」
「隠しているだけですよ」

喧々諤々、魔理沙と早苗が議論する。
なかなか興味深い考察だ。

「神奈子様、本当は何か知っていらっしゃるのでしょう、ヒントを下さいヒント」
「知らんよ」

そっけない神奈子の返答にぶーと早苗が抗議する。

「夜智王さんの正体を知って、どうするんです?」
「私は純粋に興味が有ります」

はぁ。
妖夢さんは?

「あ、あの、私はですね、夜智王さんをおと、いえ倒す、いえ斬る、いえ……なんでもありません」

ぶくぶく、と妖夢が沈んでいく。
かわいそうに……阿求は妖夢に哀れみの視線を向ける。夜智王に恋しているのが丸わかりだ。

「私はあいつの弱点が知りたいんだ、何か対策を考えないと……」
「弱点なら簡単ですよ」
「え?」
「あの人は女子供、特に泣いてると弱いんです」
「いや、それは、解決にならないというか、ヤニは?」
「平気だよ」
「蛇のくせに」
「あれが駄目だと廓遊びが出来んのでな」
「……」

誰?といきなり現れた美女に一同首を傾げる。

「八岐之大蛇と来たか、では可愛い奇稲田姫は攫っていっても良いのかな?」
「夜智王さん」

阿求の言葉に、ひぃっと魔理沙が飛び跳ねた。
霊夢に方に逃げようとするのをさっと女に化生した夜智王が捕まえる。

「ひどいなぁ魔理沙は、わしは女子を食ったりはせんぞ?まぁ別の意味ではともかく」
「や、やだっ、はなせよ、なんでお前女に」
「混浴は禁止だそうだからな、女子ならば問題ないであろう?」

どうやってスキマから逃れてきたのか、いけしゃあしゃあと夜智王(女)は言う。

「さて誰から攫って――ごふっ」

夜智王の額に霊夢の放った御札が突き刺さる。

「ぬぅおぉぉ額が割れるように痛い!」

のたうち回る夜智王、拘束を逃れた魔理沙がとりあえず一番近くに居た阿求を盾にする。

「夜智王さん、すぐに出て行かないと、次は本気で行きますよ」
「はぁ、洒落を理解してくれんのぉ巫女殿は……わかったわかった、では内湯で霖之助としっぽり温泉を愉しむとしよう」
「だめぇ!それはだめぇ!}

魔理沙が叫ぶ。

「ちゃんと男に戻るから安心しろ?」
「ほんとか?」
「ああ、まぁ霖之助の後ろの初めてを頂くのも、まぁ悪くなかろう」
「いやぁぁぁぁ!」

からかっているだけだろうに、魔理沙の悲鳴が木霊する。

「やちおう……またおとことするきですか……」

背後に虚ろな目をした文が立っていた。

「いや、文、冗談だぞ?」
「嘘です……嘘です……」
「まて、話せば分かる」

コワイ。
鬼気せまる文。
総毛立つとはこのことか。

「痴話げんかは他所でやってちょうだい。公共の迷惑よ」

呆れた口調の紫がスキマを開き、夜智王と夜智王に噛みつかんとする文を落とす。

「まったく……」
「ねぇ紫、それやきもち?」
「違うわ」

ともあれ、博麗神社の近くに出来た温泉は(男女の仕切りは設けれ混浴は廃止された)里人にも好評をもって迎えられた。
多少人里からは離れていたが、博麗神社の近くで悪さをする妖怪も無かろうということで、昼間は里人が、夜は人外が。
上手く住み分けされて利用されているようだった。
当初の思惑と違い、それほど博麗神社に参拝して行く者は居なかったが、心配性の者が妖怪退治のご利益を求めて立ち寄ることもあり、賽銭も増えたそうな。

なお夜智王は出禁が言い渡され。
「わしが作ったのに!」と憤慨したとか、しないとか。

こうして幻想郷の秋は終わり、本格的な冬が訪れるたのだった。



[26700] 蛇、迷いの竹林に赴き、旧知に再会す、の巻
Name: 窓◆0bf2c45e ID:eec3f7fb
Date: 2016/01/08 00:14
「ん、これは迷ったかな?」

前後左右、見渡しても視界を占めるのは竹、竹、竹。
緑が八にその他が二、という風情の竹林の真ん中で、足を止めた夜智王は焦った風でもなく、ぽつりと呟いた。
ここは「迷いの竹林」
その名が示す通り、よほどに慣れたものでも無い限り道に迷うという、幻想郷でも屈指の難所である。
むろんそれは常人の話であって、妖怪である夜智王は空を駆ければそれで済むだけのことなのだが。
ふらりふらりと夜智王は竹林の中をうろつく。

本人は気にした風ではないが、竹林はざわついていた。
争いごとを厭う穏健派とはいえ、夜智王は「大妖怪」に分類される蛇妖である。
そんな物にテリトリー内を徘徊されれば、住人達が怯えるのも無理もない話であった。

「おい」
「ん?」

そんな夜智王を咎める者があった。
薄紅色の洋装に身を包み、頭部からは兎耳を生やした少女である。

「なんだてゐか……実に久しいな何百年振りだ?」

少女の名は因幡てゐ、見た目こそ幼いが、神話の昔から生きている幻想郷でも最年長の妖怪の一人、かの因幡の白兎。
幻想郷の兎(含む妖怪)を束ねる大親分である。

「熊みたいにうろうろすんのはやめておくれよ夜智王」

なんの用だよ?ここはあたしの縄張りだぞ。とじろりとてゐは夜智王を睨みつける。

「まぁまずは再会を祝して一献だ」
「あいかわらずだな、お前は……ちょっと先に拓けた場所があるよ」

てゐの案内で竹藪が拓けた、夜になれば月を眺めるのに都合の良さそうな広場に出る。
丁度いい具合の石が並んでおり、二人は向かいあって腰を下ろす。
夜智王は酒杯を二つ取りだし、一つをてゐに渡して酌をする。
手酌で自分の杯を満たすと「再会に」と乾杯をして一気に干す。

「うまい、いい酒だな」
「であろう?薩摩の芋焼酎だ」
「ふぅん?……んっんっ……ぷはぁ!おかわり!」
「おう、いい飲みっぷりだなぁ」

嬉しそうに夜智王は突き出された杯に酒を注ぐ。
蛇と兎、奇妙な取り合わせのささやかな酒宴が始まった。







「すっかり大事になったな」
「いいじゃないか楽しくて」

最初は二人だけだった酒席は気がつけば、騒ぎを聞き付けたてゐ配下の妖怪兎が一匹、二匹と増え。
玉兎……迷いの竹林にある月人の住まい「永遠亭」に住んでいる、月の兎も参加してのちょっとした宴会になったのだ。
愉快などんちゃん騒ぎが続き、妖怪兎も玉兎もすっかり酔い潰れて眠るなか、最初から呑んでいるはずの二人は変わらず酒を酌み交わし続けていた。

「う、や……やめ、う~ん……」

夜智王とてゐに散々セクハラされた玉兎が、夢でもセクハラされているのか?何やら寝苦しそうである。
そんな玉兎に膝枕を貸してやながら、時おり頭をなでてやっているてゐは「そういえば」と思い出したように夜智王に問うた。

「結局何しにきたんだっけ?」
「稗田の阿礼乙女、阿求が寝込んでな」
「ああ、あの娘か、良く有ることだね」

ウチの師匠がウキウキして往診に行ったよ。と意地悪そうに兎は笑う。

「尻に薬を突っ込まれたと愚痴を溢しておったぞ?」
「割りとサドっ気があるからなあの人も」

求聞史記(阿求の書いた幻想郷の紳士録的なモノ)に書かれた際の記述を、根にもっていたらしい。

「月の賢者殿も、存外に大人気無いな」

いい年をして……と夜智王が嘯くと「お前が言うな」とてゐがつっこみ、夜智王も「お主もな」と返す。
一瞬黙りこみ顔を見合わせ、次の刹那二人でカカ大笑する。

「あー可笑しい……それで?」
「ああ、大分元気になったのでな、何か精のつくものでも食わせてやろうと思うてな」
「兎鍋か」

阿求の好物である兎肉、兎鍋、それは二人共通の知人である阿求の前世、稗田阿礼の好物でもあった。

「ま、そういうことよ」
「九代目はいくつだ?」
「十と少しだな」
「……あと二十年も生きやしないんだな」

ひどく老成した、外見ににつかわしくない声音でゐのは言った。

「そうだな」

夜智王はなんでもないこと、当たり前のことように素っ気なく返す。
神代の昔から生きる二人の間に、重苦しい沈黙が落ちる。

「いいよ」
「良いのか?」

ここに棲む兎達は言わばてゐの眷属である。

「あいつなら、好きな物くらい腹一杯食わせてやってもいいかな」

老い先短い人生なんだからさ、とてゐは皮肉っぽい口調でいいながら、優しい笑みを浮かべた。
夜智王はあえて礼は言わず、黙っててゐの杯に酒を注ぐ。
ぐい、とそれを干した後、ややうろんげな瞳でていは夜智王を睨んで釘を刺す。

「ただし夜智王、お前はウチの子分達には手ぇだすんじゃないよ?」
「鈴仙は?」
「ダメにきまってるだろうが」
「おぬしは?」
「断る」
「ケチ臭いのぉ」

それが別れの言葉になった。
夜智王はひらひらと後ろ手に手を振りながら竹林へと消えていく。
てゐは黙ってそれを見送った後、はたと気がついた。

「あいつ……迷ってたんじゃなかったっけ?」









「いかん、格好つけんで道案内を頼むべきだったな」

まぁなんとかなるだろう。
いよいよとなれば飛んで脱出すれば良い。
暢気な夜智王の眼前に一軒家が現れた。

「うん?」

庵と呼ぶには若干苦しいあばら小屋である。

「おう、これはいいな」

夜も深まり冷えてきた、夜露と夜気をしのぐのに使うには丁度良い。
夜智王はそう決めて小屋に足を向ける。
無論誰かの住処だとは考えもしない。
だが

「誰だ!」

縁側から屋内にあがろうとした蛇に鋭い誰何の声が飛んできた。
おや?と聞き覚えのある声に夜智王は首を傾げる。
はて、この声は誰であったか。
思案しているとガラリと雨戸が開く。
そこから現れた一人の美少女に「ほぉ」と夜智王は感嘆の声をあげた。
白磁のように白い肌、色素の薄い髪、赤い瞳。
細い頤、切れ長の眦、通った鼻梁。
ひどく美しい少女であった。
警戒していたのだろう、つり上げられた瞳が夜智王を認め、はっと見開かれる。
ぽぉっと右手に灯されていた炎をくしゃりと握りつぶす。

「夜智王……」
「今宵は懐かしい顔にばかり合うのぉ……久しいな妹紅。相変わらずそなたは美しいな」
「当たり前だろう馬鹿蛇」

面と向かっての賞賛を少女……藤原妹紅は素っ気なく返す。
不老不死である彼女が「変わる」ことは無いのだ。

「ワシは外面だけを美しいと言っとるのではないぞ?」
「はいはい、ありがとさん。お前も変わらないな」

やや呆れた様子から見るに、二人はそれなりに親しい仲であるようだった。

「ここは妹紅の住処か?」
「そうだよ……なんだよその表情《かおは」
「辺鄙な所に、物好きだと思ってな」
「余計なお世話だよ!お前こそ、その“辺鄙”な所になんの用だよ?」
「それはな……」

かくかくしかじか、と夜智王は事情を説明する。

「そういうことか……」
「すっかり迷ってしまってのぉ、もう遅いし、一晩泊めてくれんかの?」
「泊まるだけか?」
「先刻まで兎達と宴会しておったので、妹紅とはまた明日呑むとしよう」
「あたしと呑むのは確定事項なのか」
「土間の隅で良いから貸してくれんかの」
「……まぁ、いいか」

いつまでも立ち話をなんだしね、と呟き妹紅は夜智王を家にあげる。
独り暮らしの女子の家である、わくわくしながら室内を見渡した夜智王は思わずもらした。

「なんじゃこれは」
「なんだよ、ボロくて悪かったね」
「そうではなくて……畳は?」
「無いよ」
「……そなた寝具は?」
「無い」
「なんと……」

ガランとした屋内には家財道具の類いは見当たらず、ひどく殺風景で、人が住んでいるようには見えなかった。
わずかに着替えが納めてあるとおぼしき長持ちがぽつんと片隅に無造作に置かれていた。

「なんだよ」
「……これでは冷えて眠れん」

使われた形跡のない囲炉裏に火を入れ、壺中天から毛皮の敷物や寝具を取り出してせっせと夜智王は寝床の準備を始める。
その様子をぼぉと妹紅は壁にもたれて眺めている。

「まぁこんな所か」
「ちゃんと持って帰れよ」
「何か言ったか?」
「……はぁ」

聞こえていないわけがないというのに、愁いの濃い嘆息をする妹紅。
どうせこの蛇のことだ敷物も寝具も置いていくつもりだろう。
お節介が煩わしい、だが、嫌ではない。
感情などとうに枯れ果てたと思っていたのに何故だろう。
思い浮かぶのは人里で寺子屋を営む、お節介な友人の顔。

物思いは唐突に中断された。
ぐい、と夜智王が妹紅を抱き寄せたからだ。

「なんだよ」
「寒くて敵わんのでな、少し熱を分けてくれ」

やめろよ、と思いながらも妹紅は夜智王を振り払えなかった。

「お前、相変わらずだな」
「そなたは変わったな、慧音殿のおかげかな?」
「そう、かもな」
「今のそなたの方がわしは好きだな、とても、愛らしい」

誰にだってそう言うくせに、そう思いながらも、妹紅は夜智王の腕に抱かれる心地よさについつい身を委ねてしまった。
最初の出会いは最悪だった。
自分が一番荒れていた頃、手当たり次第に妖怪を殺して回っていた頃。
完全に正気を失った夜智王と戦い、破れ、乱暴された。

「初めて会った時の事、覚えているか?」
「忘れるわけなかろう……正直、忘れてしまいたいがな。妹紅のおかげで正気に戻れた、今でも感謝しておるよ」

二度目の出会いも最悪だった。
生きることに疲れはて、心が死にかけていた頃、場末の女郎屋でただ腐れ落ちていく寸前、夜智王に救われた。
人里離れた山奥で、暗示を掛けられて、夫婦として数年過ごした。
妹紅としては、忘却してしまいたい過去である。当時の自分を思い出すと、頭を抱えてごろごろと悶転がる事が偶に有るくらいだ。
今、こうして自分が在るのは、あの数年のおかげなのは事実だ。

視線が絡む、そっと夜智王が妹紅の細いおとがいに触れる。
くい、と上を向かされ、妹紅は「こいつ本当に口吸が好きだな」と呆れる。
呆れながらも作法として目を閉じて、唇を夜智王に向ける。
夜智王の唇と妹紅の唇が触れる、寸前。
ガラリと、誰何も泣く戸が開けられた。

「妹紅、居る?」

無礼な闖入者、長い黒髪の美少女は、次の瞬間が表情を凍りつかせた。












あけましておめでとうございます。
旧年中は、長く休載が続き申し訳ありませんでした。
一応お話も折り返し地点にたどり着きましたので、今年は、頑張りたい所存です。



[26700] 蛇と蓬莱人の少女と月の姫、の巻
Name: 窓◆0bf2c45e ID:2ef6f7e4
Date: 2016/03/16 07:21
「(お腹が空いた……)」

死とは何人にも平等に訪れる“安らぎ”なのだと。
そうを悟ったのは、蓬莱の薬を飲み、老いることも、死ぬこともなくなって、しばらくのことであった。
最初の頃辛かったのは空腹、餓えだった。
餓死しても死ぬことはない、だが生き返ったところで腹がふくれるわけでもない。

「うっ、うぇ……(なんで、なんでこんな辛い思いをしなきゃならないの?)」

餓えに負け、野草や木の実を知識もなく食い、毒に中り「いっそ死んだ方がまし」そう思う程に苦しむこともあった。

ある時、親切にしてくれた夫婦が有った。
子供が出来ないのだ、と道端で倒れていた妹紅を保護し。
私たちの子にならないか?と言って貰えた時、嬉しくて妹紅は声をあげて泣いた。
しかし

「いやっ!やめてっ!いや、いやぁぁぁぁ!」

彼らの生業は盗人であった。
人買いに売り飛ばされ、変態男に買われ、凌辱の果てに殺された。
生き返り、絶望のあまり発作的に自ら命を絶っても、果たせず、何度も何度も繰り返すうち、妹紅の心は壊れていった。

山野に隠れ、獣のように生きる。
冬になって食べ物がなくなると、遊女の真似事をし春をひさぐことにも慣れた。

惨めな生活は、ある老陰陽師に出会うまで続いた。

「わしの弟子にならんか?」

異形のモノに親しむ陰陽師は妹紅を気味悪がることもなく、生きる術として様々な陰陽の業を、惜しみ無く伝授してくれた。
師としては厳しかったが、普段の生活では孫のように妹紅を慈しんだ。
すっかり他人という生き物を信用出来なくなっていた妹紅も、少しずつ老人に心を開いていった。
不死の身になって約三百年目。
手にしたささやかな安息。
しかし、その安息が永遠に続く事は無かった。
妖怪退治に出掛け、返り討ちに会い老陰陽師は返らぬ人となった。
悲しみよりも怒りが妹紅の心を支配した。
元より素質があったのだろう、老陰陽師の仇を討つのを皮切りに、片っ端から妖怪を殺戮するうち、妹紅の力は増していく。
妖怪退治の謝礼は食うために貰ったが、ただ殺すために、妖怪を殺す、荒れた日々が続いた。

夜智王との最初の出会いは、もはや並の妖怪では相手にならない程、妹紅が強くなった頃。
三百年近く経った頃だった。



「あ、あな!なに、して!」

顔を真っ赤にした黒髪の少女が、身を寄せ合う二人を指ま
差し、金魚のように口をぱくぱくさせる。

「見てわからないのか?」

妙に勝ち誇った様子で妹紅はそう言うと、少女に見せつけるように夜智王の首に腕を回し、しなだれかかる。

「とりっ!?とりっ!?」

言語中枢が麻痺してしまったのか、まともにしゃべれない黒髪の少女。

「(はて、どこかで見たことがある気がするが)」

絹糸のように美しい、艶やかな長い黒髪。
ふっくらとした頬、ぱっちりとした目元。
和風の上着とスカートはリボンやレースで飾られているにもかかわらず、少女の纏う雰囲気のせいか?まるで十二単のようにも見える。
一度あったら忘れない、印象的な美少女である。

「知り合いか妹紅?」

夜智王の問いに、妹紅はわざとらしく、耳元に唇を寄せ、囁くように耳打ちする。
ひどく艶めいたやり取り。
ますます黒髪の少女の白い肌が羞恥に紅く染まっていく。

「……なよ竹のかぐや姫」

蓬莱山輝夜。
月人の姫でありながら、蓬莱の薬を飲んだ罪で地上に落とされた不死の少女。
道理で見覚えがあるはずだ。

「そなた月に帰ったのではなかったのか?」

のんびりした調子で夜智王が問う。

「夜智王、お前あいつと知り合いなのか?」
「都がまだ飛鳥に会った頃だったか?名だたる貴公子を五人も袖にした美姫がいると聞いてな」

いったいどんな美女かと、心踊らせながら夜智王は竹取の翁の邸宅に忍び込んだ。

「あ、あなた、あの時の蛇さん?」
「人の姿で会うのは初めてだったな。さよ、久しいな、なよたけの姫」
「それで、夜這いでもかけたのか?」
「いや、どんな妖しい姫かと心踊らせて行ったのだがな」

随分と愛らしい少女だったので、少しがっかりした。
蛇の姿のまま、幾晩か、おしゃべりだけの逢瀬を重ねたのだ。

「がっかりって何よ!失礼ね!!」

憤慨する輝夜、妹紅がぷっと思わず吹き出す。
きっ!と射殺しそうな視線を妹紅に向ける輝夜。
一触即発の事態に夜智王が割って入ってとりなす。

「そう怒らんでくれ、なよたけの姫、そなたは美しく、愛嬌のある、可愛らしい女子だ」

月から追放された姫は話し上手だった、古い蛇は他愛もないおしゃべりを楽しんだことを良く覚えていた。

「ただわしはもっとこう……妖しい美貌の、艶めいた美女が居ると期待していたのでなぁ」

つい、と夜智王の視線が輝夜の控えめな胸に向けられる。
視線に気がついた輝夜がさっと胸を腕で隠す。

「悪かったわね!胸のおっきな妖艶な美女じゃなくて!」
「いや、そのけしてそなたの体つきは悪くないと思うぞ」

胸は控えめだが、別段幼児体型なわけではない。
くびれた腰、まろやかな曲線を描く女らしい体型だと蛇は力説をする。

「なんで知ってるのよ!」
「見ればだいたい解る」
「いやらしい事言わないで!」

むきー!と輝夜が地団駄を踏む。
千年以上昔、同じ会話をしたことを思い出し、夜智王はからから笑う。
翻弄される輝夜が可笑しいのだろう、妹紅も夜智王に抱きつき必死に笑いを堪えている。

「ちょっと妹紅、笑い過ぎじゃないかしら!?人の事笑えるような体じゃないでしょう」
「ふん」
「なによ、その顔」
「確かにあたしの乳は、慧音や永琳ほど、たわわに実っちゃいないけどな」

薄い上着越しに薄い胸を夜智王に押し付ける。

「こいつにしっかり開発されてるからな、未通《おぼこ娘のお前の硬い乳とは違うんだよ」

ふにゃり、と確かに見た目よりも柔らかな肉が歪むのが解る。
夜智王の顔もふにゃりとだらしなく歪む。
それがまたひどく輝夜には腹立たしい。

「おぼっ、誰がおぼこ娘よ!」
「お前、違うのか?」
「うっ……ぐ、ぐぐぐ」

言い合う少女二人。
どうどう、と夜智王が割って入る。

「そなたら、仲が悪いのか?」
「そうでもないさ、殺し合う程度には仲がいいよ」
「なんじゃぁそりゃ」
「とにかく輝夜、邪魔だから今日は遠慮してくれ」
「い、嫌よ!」

何故か輝夜が反対側から蛇に抱きつく。

「おい」
「私だって、それなりでしょう?」
「いやいや、これは極楽だなぁ」

両側から美少女に挟まれ夜智王がからからと楽しそうに笑う。
そんな夜智王を挟んで、妹紅と輝夜の視線がかちあい、火花を散らす。

「無理するなよ輝夜、ぷるぷる震えてるぞ」
「あなたこそ妹紅、口元がひきつっていてよ」
「これこれ、喧嘩はやめよ」
「ねぇ蛇さん」
「ん?」
「あなた、あの夜、私を連れて逃げるてくれるって言ったじゃない、忘れて?」
「忘れてはいないが、そなたが拒否したのであろう?残される翁と媼に迷惑を掛けたくないとな」
「もう……二人共いないわ、あの時の求婚はまだ有効?」
「おい夜智王、あたしの初めて、無理矢理奪った時の事、忘れてないよな?」

ぬぅ、これはまずい、と夜智王は笑顔を引きつらせた。
別段、二人共夜智王のことを本気で好いているわけでもないし、深く愛してるわけでもない。
ただ、互いに張り合って、譲りたくない、負けたく無い相手なのだ。
はて、どうしたものか。
据え膳食わぬは男の恥、だが、男であるが故の矜持プライドというものがある。

「二人とも、落ち着いけ、ほれ息を大きく吸って、ゆっくり吐くのだ」
「私は落ち着いてるわ。蛇さんなら、いいもの……蛇さんは私なんて、嫌?」
「おい夜智王」
「妹紅は黙っていて。たしかに胸はそんなにないけど、一生懸命、頑張るから、ね?」
「ぐぬ……」

上目使いに涙目で輝夜が迫る。
女の武器の使い方は一流だ。

「いいぜ、いつものやり方で、どっちが夜智王と寝るか決めよう」
「下品な言い方しないでよ!……いいわ、こてんぱんにしてあげる」
「お、おいおい、何を始める気だ」
「「殺し合い」」

二人の少女は異口同音に言い放ち、外に飛び出した。
おい、待て、と制止するが、竹林の上空に弾幕の花が咲いた。











「え?」
「こ、ここは……」

ざばっと水音がして二人は意識を取り戻した。

良くわからない意地の張り合いから殺し合いが始まり、いつも通り決着はつかず。
相打ちのような格好で二人共死んだはずだった。
共に蓬来の薬を飲んだ蓬莱人だ、本当の意味で死んだわけではないが、一度死んで息を吹き返したわけだが。
妙に暖かいのは、なぜだ?

「お風呂?」

大岩を穿って作らた凝った趣向の岩風呂。
満たされた温水が心地良い。

「おう、少し頭は冷えたか?」
「夜智王」
「って、ちょっと待っては、裸!」

慌てて身体を背け、蛇から隠した輝夜がざぶんと湯に肩まで浸かる、だが透明な湯に、白皙の肌が薄紅色に染まっていく様子は隠せなかった。

「さっきまで何をするつもりだったのだ姫?食事の用意もしとるから、ゆっくり浸かって、温まるようにな」

頭はともかく身体を冷やすのはだめだ、そう言って夜智王は屋内に戻っていく。
はぁっと安堵の息を吐く輝夜を、妹紅がくすくすと笑う。

「何よ」
「別に」
「殺すわよ」
「やめとけ、たぶんここは夜智王の領域だ、荒事はご法度だぞ」

ぐぅっと身体を伸ばし、妹紅は風呂を堪能する。
普段は水浴びで済ましているが、風呂は良い。

「いい湯だな」
「それは、確かね……ねぇ妹紅、あなた、蛇さんとどういう関係なの?」
「色々あって、何年か一緒に暮らしてた……お前こそ、随分と仲が良かったみたいだな」
「色んな公達が言いよって来たけど……蛇さんは、そうね、私の本質に近い所を好きって言ってくれたから」
「女たらしは変わらないな」

そうね、と輝夜は返しつつ、思わず隠す気のない妹紅の肢体に凝視してしまう。
別段裸は普段の殺し合いで服が破れて見たことは有る。体型は自分とそう変わらない。
だが、じぃっと見つめると、確かに自分よりも、なんというかいやらしい体な気がする。
男を知っているから?

「おい、変な目で見ないでくれ、気持ち悪い」
「痛かった?」
「は?」
「やっぱり最初は痛いんでしょう?あと、私達ってほら傷が治るわけでしょ?どう、どうなるのよ……」

何年生きようと、心は年頃の少女なのだ、興味津々といった様子で輝夜が聞いてくる。

「お前とこんな話をする日がくるなんてなぁ」

隔世の感を覚えつつ、にやりと笑った妹紅は輝夜にそっと耳打ちする。
ぽんっと輝夜が首まで羞恥に染まって真っ赤になる。

「そんなんであいつを誘惑しても無駄じゃないか?」
「し、信じられない……」
「何が信じられんのだ?」
「ひっ!」

音もなく現れた夜智王に吃驚したのか、跳び跳ねるように妹紅を盾にして輝夜が身を隠す。

「何を言ったのだ妹紅」
「女同士の話だ、秘密に決まってるだろう?」
「やれやれ、まぁいいか……せっかくだから乾杯しよう」
「何で裸なのよ!ちょっと待って!せめて湯帷子!!」
「ここはわしの風呂だぞ?」

きゃーきゃーと騒ぐ輝夜を無視し、夜智王は風呂に入る。

「結局呑むのか」
「少し試したい酒があってな、感想を聞きたい」

そう言い、夜智王は妹紅の杯に酒を注ぐ。
注がれた酒が見る間に凍っていく。

「みぞれみたいだな」
「さよ、氷結酒とか、みぞれ酒というらしい、夏場の方がいいかもしれんが、風呂に入りながらも良さそうでな、溶けん内に呑ってくれ」

妹紅がくい、と杯を傾けて一息に干す。
ほぉっと白い息を吐き出す。

「ああ……いいな、氷菓子みたいだ、おかわり」
「わ、私も」

興味がわいたのか、夜智王の裸から目を背けつつ輝夜も杯を受け取り、上品に一口呑む。

「素敵、良いわ、これ」
「気に入ってくれたようで何よりだ」
「おかわり」
「あたしも頼む」
「これ、どうやって作るのかしら?」
「ゆっくりと、本来は酒が凍ってしまう温度よりも低く酒を冷やすのだ、こうして注ぐとみぞれ状になる、洋風に言えば酒のしゃぁべっと、だな」

冷却の術を細かく制御できなければ作るのは難しいだろうな。と夜智王。

「難しそうね」
「月の賢者殿に相談するのだな」

そんなとりとめないの話をしつつ、一杯また一杯と杯を重ねて行く。

「あのね、へびさん、わたし、うれしかったのよ」
「うん?」
「あのとき、いっしょににげよう、っていってくれて、すごくうれしかった」
「そうか」
「でも、おじいさんたちに、めいわくかけたくないから、はい、っていえなかった、あなたが、それをわかってくれて、それも、すごくうれしかった」
「姫、フラついとるが大丈夫か?」
「うん?らいじょうぶ」

大丈夫ではなさそうだなぁ、と夜智王は苦笑いする。
全身を真っ赤にした輝夜は、すでに妹紅にすがりつくようにして状態を支えている有り様だ。
妹紅の方は大分迷惑そうだが、邪険に振り払わないあたり、たしかにそんなに仲が悪いわけではないようだ、と夜智王は納得した。

「おい輝夜、飲み過ぎだ、あとのぼせてないか?」
「へいきよ」
「いや、だめだろ、もう上がって水でも飲んで寝てろ」
「いやっ!」
「なんでだよ」
「あらひいなくなったら、ふらひでやらひいことするんれひょ!」

あたしもっ!
と酔っぱらいが喚く。

「おい夜智王、めんどくさいから、お前抱いてやれよ」
「嫌だよ、酔った勢いでなど、姫はどうせ未通だろ?」

初めてはちゃんとした、と言いかけて夜智王はばつがわるそうに妹紅を見る。

「気にすんなよ」
「すまん」
「いいって、どうせ膜も元に戻っちまうからな、要は慣れだよ」

そう言い、妹紅は夜智王との昔を思い出し始めた。



[26700] 蛇と蓬莱人の少女の過去、の巻
Name: 窓◆0bf2c45e ID:538f868b
Date: 2017/08/11 05:28
実の所。
初めて夜智王と遭った時のことを良く覚えては居ないのだ。

寒村の依頼。

山中の洞窟で氷漬けになっていた大蛇。

警告に現れた眷属と思しき蛇を殺した事で、激昂した夜智王と戦い、敗れた。

不死の蓬莱人と、尋常ならざる生命力をもつ蛇。

大蛇と人、自力の差、先に体力が尽きたのは妹紅だった。

そこからの記憶は曖昧で。

地中の洞穴に引きずり込まれた所……そこで記憶は途切れている。












人里離れた山間の一軒家に、美しい夫婦が住み着いたのは、戦国の世がそろそろ終わろうかという頃だった。
夫は蛇妖の夜智王。
妻は藤原妹紅、蓬莱の薬を飲み、死ねなくなった少女。
不死の身となり、千年近い時が流れ、心が死に、生ける屍に成りかけていた妹紅。
不憫に思ったのか?それとも過去の償いか?あるいは好色な性ゆえか……
蛇は妹紅に暗示をかけ、夫婦として暮らし始めたのだ。

「痛っ」

ぶすり、思い切り指に突き刺した針の痛みに妹紅は顔を歪めた。
はぁ、と憂いを吐き出し、慣れた手つきで指先に布を巻きつけ血止めする。
お世辞にも少女には「針子の才能が有る」とは言えなかった、いささか不器用な上、既に夜も更け、灯りは囲炉裏の炎と、燈台の揺らめくそれだけ。
日中でも不如意な手先だけに、こうして指を穴だらけにするのも道理であった。

「……」

今日は夫が居ない。
月に数度、山中で採れた山菜や竹で編んだ籠などを売り、山では手に入らいない物を買う為に里に出向いているのだ。
寒がりの夫の為に綿入れをこしらえてやろう、そう思い立ったのは昨年の秋のことだった。
夫に知られればろくなことにならないので、里に出向いている間にすすめてきたわけだが……
秋が過ぎ、冬が終わり、春がやってきて、ようやく服の形になってきた。
しかし、ひどい出来だ。
縫い目は不揃いだし、心なしか形も歪んでいる気もする。
もう、今年の冬用に仕立て直した方がいいかもしれない。
そう思った時だった。

「おおい、帰ったぞ、お前、開けてくれ」

夫が帰ってきた。慌てて櫃に針道具と綿入れを押し込み、深呼吸をして息を整えてから戸のつっかえ棒をはずす

「ただいま」
「おかえり、お前さま」
「何も無かったか?」
「無い」

笑顔で問う夫に、ぶっきらぼうに妻は返す。
籠一杯の山菜は米や味噌、そして酒に変り、夫はそれを笑顔で取り出して、ほれ大量だ、と自慢する。

「やはり孟宗がよい値で売れたなぁ、旬の内にもう一度行って来るとしよう」

一方の妻は苦い顔でる。

「泊まって来いと言ったろう」

近くの町とは言うが、何里も先。
恐ろしく健脚の夫でも帰宅はいつも深夜になる。
後の時代には戦国時代と呼ばれた頃である、治安など無いに等しい。
夜盗、野武士、獣、挙げればきりが無い。
もっとも、蛇妖の夜智王は、そのどれよりも危険な生き物であるが、妹紅はそれを知らない。

「危ないのは、そなた一人ここに残すことの方だろう?」
「私は、平気だ」
「何より、わしがそなたと離れていると寂しいからな」
「なっ!」

直接的な夫の物言いに、妻が真っ赤になる。
新婚でもあるまいに、気恥ずかしい、止めて欲しい。

「それより、何を櫃に隠したのだ?」
「なっ!なんでもない!」

夫の帰宅に慌てて隠したモノ。
よくよく見れば布の端が櫃からはみ出していた。
櫃に覆いかぶさり隠す、もう手遅れだが、そうせざるをえない乙女心。
そんな妻をひょいと抱き上げ、手を取る夫。

「針はわしがやると、いつも言っておろうに」

白魚のような、綺麗な指には血の滲んだ包帯。
嫌になるくらい察しの良い夫が恨めしい。

「すぐ、治る」
「そういう問題ではなかろう」
「こ、こら、何を」

包帯を解き、夫の唇が妻の傷口にそっと接吻する。

「っ!」

ぴりっと、雷に打たれたような感覚が指先から全身に走る。

「や、やめろ」
「こうすると、早く治るだろう?」
「けだもの、じゃ、ないんだぞ、っ!」

慰撫するように妻の指先を、夫は接吻し、舌で舐めて、口に含もうとした。

「いいかげんに……しろっ!」

どんっ、っと妻が夫を突き飛ばす。
眦に涙を浮かべ、手を守るように背を向けて、拒否の体勢。
まるでハリネズミである。

「ひどいなぁ、半日もそなたと離れていた寂しさを埋めようとしただけだろう」
「なぜ指を舐める必要がある」
「じゃぁ、何ならいいのだ?乳とか尻とか足のほうが良かったか?」

後ろから抱き付いてきた夫に抱きすくめられ、ひうっっと妻は息を飲む。
春先の夜気で冷えた体だというのに、妻の体は火が着いたように真っ赤になり、かっかと熱を持ち始める。

「どれも良くない!放せ!」

夫を振りほどき、まったく、この男は!と憤慨する。
妻ははぁと嘆息して、妙に体をもじもじさせつつ、どこか怒った口調で言い放つ。

「お前さまは何もしなくていい!……そうだな膝枕してやるから、おとなしく――」

妻が言い切る前に、夫がわが意を得たり、とばかりに顔面から妻の太ももに飛び込む。

「逆だ!嗅ぐな!舐めるな!ひうっ!」

ぐきっ!と危険な音と共に夫の顔の向きを矯正する妻。
ぎゃぁ!と悲鳴が聞こえたが気にしない、この程度でどうこうなる夫でもない。

「痛いな……折れるかと思ったぞ」
「だまれ」
「はい」
「まったく……ご苦労だったな、お前さま」

呆れながらも、夫をねぎらう為にそっとその頭をなでる。
質素な生活だというのに、少しも艶を失わない夫の髪は絹糸のような手触りで、撫でている方も心地好い。
こんな辺鄙な所で隠れ住むような器量ではないのだ、この夫は。
つい先ほど、深々と太い針を突き刺した指には、もう傷など残っていない。
もっと大きな傷でも同じだ、異常に怪我の治りが早い、それだけではない、髪も爪も伸びない、まるで時の止まったような体。
夫は、そんな自分の為に、こうやって……

ちゅ

「あっ、何を」
「何やら、つまらんことを考えておろう?」

身を起こした夫が妻を抱き寄せて接吻する。
逃げようにも、しっかり抱きすくめられ、果たせない。

「考えてなんか、ない」
「嘘だな」
「つまらないことじゃ、ない……」
「考え違いだぞ、そなた。わしはそなたを独り占めしたから、他の男の目に触れさせたくなくて、こうして山で生きているのだからな」

何せそなたは、とても可愛らしい女子だからな。
嘘か、真か、そう言って夫は笑った。
















「妹紅、妹紅、起きろ」
「おまえさま?……」

あれ?風呂?

「あ?かぐやは?」
「母屋に寝かして来た。大丈夫か?ちゃんと声もかけたし、そなたも返事しておったろう」
「ちょっと、わたしも、のぼせたみたいだ」
「ほれ水だ、ゆっくりな」

夜智王が手渡した杯を受け取り、良く冷えた清水を飲み下す。
ほぉっと深く吐息が吐き出される。
夜智王との過去。
忌まわしい陵辱と淫蕩の記憶と、幸せな生活の記憶。

「そろそろ、そなたもあがれ。のぼせて死んだら姫に笑われるぞ」

そう言って夜智王はひょいっと妹紅を抱き上げる。
普段の妹紅だったら、怒っただろう。
だが、懐かしい思い出に浸ったせいか、黙って夜智王に身を委ねる。
長い永い生の中で、幸せだった、ほんの一時。

「寝ながら百面相をしていたが、どんな夢を見ていたのだ?」

女の寝顔を眺めるのが好き、これがこの蛇の数多い悪癖の一つだ。
冷たい声音で妹紅が反撃にでる。

「お前と初めて会った時の夢だった」

う、と夜智王が呻く。

「あの時は、その……なんだ…」

夜智王が情けない顔で、へどもどと言い訳を口にする。

「なぁ“お前さま”」
「……なんだ?」

懐かしい呼び方に、性悪蛇が優しい夫に戻る。
「なんで、あんなことを?」と問おうとし、妹紅はその言葉を飲み込んだ。

訪ねて、何の意味がある?

数年夫婦として過ごし、心を取り戻し始めた妹紅の暗示は段々と解けていった。
蓬莱人であるがゆえか、あるいは最初からそういう暗示だったのか。
戸惑いながらも、あまりに幸せな日々に妹紅は、何も知らない妻を演じ続けた。

夜智王は気がついていたはずだ。

御伽噺として幻想郷の話をしたのは、いずれくる別れの後、異形や異能のモノが生き難くなった時代に、妹紅が困らぬ為だったのだろうか。

夜智王が家を空けたある日。
妹紅は、妹紅に親を殺された妖怪に襲われ、死んだ。
無論、不死の呪いは彼女に永劫の生を強いる。
何かが、妹紅の中で、ぷつりと切れた音がした。
帰宅し、惨状に息を呑む夜智王に妹紅は、暗示の解けた“ふり”をした。
怒りのままに自分に暗示をかけて弄んだ!となじり、夜智王を打ち倒し、その場を逃げるように去った。

問うて、どうする?

哀れみか
償いか
どちらも、嫌だ。

「なんでもない」
「今宵の妹紅は意地が悪いな」
「自業自得だ」

自分でできると、服を着せようとする夜智王から襦袢をひったっくて羽織る。
逃げるように風呂場から母屋へと、乱暴に戸を開けて侵入する。

「あら妹紅さん、お久しぶり」
「永琳」
「うちの姫がお邪魔をしてしまったみたいで、ごめんなさいね」

白皙の肌を朱に染め、ぐったりと寝ている輝夜を、ゆるゆると団扇で扇いでやっている銀髪の女性。
永遠亭の薬師、月の賢者、表立って動くことは滅多にないが、幻想郷でも指折りの実力者。
八意永琳。
何故ここに?思わず立ちすくんだ妹紅の後ろからひょっこり夜智王が顔出す。

「月の賢者殿、姫は大丈夫かな?」

もう大丈夫そうね、と永琳は扇ぐの止める。
そして何やら含みのある笑顔を夜智王に向けた。

「“蛇王”殿、私は今はただの薬師です、ですからどうぞ永琳とお呼びになって」

そう申し上げたわよね?と永琳はにこりと笑う。
夜智王も笑みで返す。
湯で火照ったはずの身体がぶるりと震えるほどの寒さを妹紅は覚える。

「貴方こそ、わしを蛇王などと曰う、民も國もとうにない……この身はただの蛇よ」

貴方ほどの“知恵者”が解らぬはずはなかろう?

「あらやだ、ただの蛇?」
「左様」
「ふふ」
「はっは」

互いに冗談が過ぎる、とばかりにコロコロと笑う。

知り合いなのか?それも相当古い知り合い?
妹紅は、妙にどろどろとした夜智王と永琳のやり取り(共に笑顔だというのに、ひどく不穏だった)にぶるりと震える。

「まぁ、そういうことにしておきましょうか……」

ひょい、と意識の無い輝夜を軽々と永琳は抱えた。

「どうぞ永遠亭にも遊びにいらして『夜智王殿』姫が迷惑をおかけしたお詫びをします」
「さして迷惑ではなかったが……姫によしなにな『八意殿』」
「ええ、では、また」
「ではまたな」

空々しい笑みのまま、別れの挨拶を交わす。

「……はぁ」

永琳が去り、ようやく室内の緊張が解ける。妹紅は思わず大きく息を吐く、そんな妹紅に夜智王が苦笑を向けた。

「やれ、まいったまいった“こわい”お方だ」
「どういう関係なんだよ」
「うん?なんだやきもちか?」
「ちがう」

会うたのは実のところ初めてだ、ただ「色々と」噂には聞いていたのでな。と夜智王は言葉尻を濁した。

「のぼせた姫を連れて母屋にきたら、あの笑顔で八意殿が待っていたのだ。肝が冷えたぞ」
「それは……怖いな」

普段は穏やかで、以外に茶目っ気のある永琳だが、この幻想郷で敵に回してはいけない人物の筆頭。
まして輝夜が絡めばなおのことだある。

「すっかり湯冷めしてしまったし、妹紅。暖めておくれや」

そう言い、夜智王は妹紅を抱きしめる。

「な、なんでそうなる、こら、離せ」
「妹紅は暖いな」

どくん、どくん、と心の臓が跳ねる音が耳に響く。

「こら、やめろ、やちおう!」

口から吐き出される拒否の言葉とは裏腹に、肢体から力が抜けていく。
夜智王の腕が妹紅の柳のような腰へと回され、しっかりと抱きしめる。
きゅっと妹紅は胸が締め付けられるような感触に支配される。
無造作に女を抱きしめる蛇、ただそれだけのことが、孤独な蓬莱人にとってどれ程の喜びか。

「……するのか?」
「いや、今宵はもう休もう、そなたも疲れておろう?」

ほっとしたような、がっかりしたような。複雑な感情は妹紅の胸に去来する。

「そなたが「どうしても」と言うのなら――」
「だまれ、燃やすぞ」
「火事は困るな」

まったく困った様子のない笑みを浮かべ、夜智王は妹紅の身体を離すと、そっと手をとって寝具へと招く。
もはや抵抗する体力も気力も失い、ふらふらと妹紅は寝具へともぐりこんだ。

「おやすみ、良い夢をな」
「お前も寝ろ」

一日に何度も無防備な寝顔を眺められるのはごめんだ、そんな思いで妹紅は身体ごと顔を背けた。
しかし、いつ振りかわからない暖かく柔らかな寝具の魔力が、急速に妹紅の意識を奪う。

「(ま……たまには……いい……か)」


















随分とご無沙汰しております作者です。
生きてました。

色々と事情はあるのですが個人的なものですので割愛

なんとか完結まで頑張りたい所存です。

なおしばらく暗い話が続きますので、おまけの方でいちゃいちゃする予定で執筆中です。

PS コミケに行かれる方は熱中症や事故などお気をつけください(8/11)



[26700] メモ。的な物
Name: 窓◆0bf2c45e ID:6be04712
Date: 2016/01/10 16:35
登場人物に関する注釈。
(原作からの乖離点など)
随時追加。


八雲紫
あまりうさんくさくない。
二次設定ではありがちな巨乳。
本作ではミステリアスな美女なイメージで。
・・・今のところいけてない。
夜智王は色々と面倒を起こすやっかいな奴という認識。

八雲藍
ありがちな橙が可愛くて可愛くてしかたないらんしゃま。
夜智王は大嫌い。
玉藻前の娘という独自設定有り。

風見幽香
アルティメットサディスティッククリーチャー
ではない。
求聞史記の記述通り、歳を経て比較的穏やかになっている。
夜智王はバカなスケベ蛇。ただどれだけコテンパンにしても懲りずに口説いてくるので
面白い奴だな、とは思っている。


紅美鈴
二次設定では定番の巨乳さん。
そして居眠り門番。
本作においては初心な女の子という設定。


十六夜咲夜
二次設定では鉄板のPAD長。
今のところそのくらい


射命丸文
現在最大級の独自設定が投下されているのはおわかりの通り。
烏から天狗になった(らしい)→両親共に天狗
千年以上生きており、約千年くらい前に幻想郷に移住。

約千歳、生まれも幻想郷。
あとは本文の通りである。
ちなみに乳は限りなくDに近いC。
限りなく正解に近いという奴ですね(おっぱい占い的に)
ちなみに原作絵には無いが、二次界隈では良く見かける大きな翼持ち。


東風谷早苗
諏訪子曰く「ぶよぶよ」つまりさなぱいを標準装備の模様。
だいたい二次設定ではありがちな性格・・・だと思われる。
ちなみに作者は某動画サイトのアドン丸様の書く早苗さんが好きですw


洩矢諏訪子
これまた独自設定が大目。
ミシャグジ様→蛇神だろ常考(作者は伝奇物を読んで育った物なので^^;)
諏訪子のカエルっぽいイメージは、戦の敗者である諏訪子が「蛇に弱い」という意味でカエルの役割を背負わされた、という解釈
本作では諏訪子は全体的に蛇的なイメージになります。
執念深く、嫉妬深い。
この時点で病みやすいのは必然だったのか・・・
ケロちゃんに祟られる位愛されている蛇。祟りデレ、新しい!(マテ


八坂神奈子
名前の元ネタは奥さんの方なんでしょうが。
神奈子さまは建御名方命になってしまっています。
諏訪子曰く「ぶよんぶよん」という素敵なおっぱいの持ち主。
ヤマタノオロチ退治後天乃羽々切は行方不明になっているというのが通説。
作中では大国主がスセリ媛共々スサノオから強奪してきました。(実際は生太刀を奪ったらしいですが)
という設定。それを軍神であり風神である神奈子が継承しています。
(スサノオは暴風神という側面もあるので、そうみると神奈子はスサノオの後継に相応しい神格を備えていますね)


魂魄妖夢
辻斬り妖夢。
まさかの萃夢想妖夢。
まぁたまたま小説を読んでいたせいですがw
原作でもコロコロと性格が変わるのは感化されやすいせい
という二次設定を採用してます。


西行寺幽々子
辞書登録しないと変換のしようがないゆゆさま。
んなことはどうでもいい。
色っぽい美人さん、というイメージで設定しています。もちろんゆゆぱいは標準装備。
亡霊なのにエッチできるのか?って
こまけぇことは(以下略)


博霊霊夢
脇巫女さん。
おっぱいは薄め。ただそんなには薄くないBくらい?
とりあえず貧乏で賽銭に飢えている。
あの暢気でつかみ所のない感じが・・・正直出せてない。


霧雨魔理沙
男前な魔法使い。
おっぱいは薄め、それなりにはあるかろうじてCくらいを想定
香霖LOVEな辺りが原作以上かも。
魔理霖は俺の乙女心
でも男前なので色んな女の子から愛されてる・・・有る意味夜智王のライバル的存在
になるか?


森近霖乃助
幼少時、たまたま女になっていた夜智王に救われた経験あり。
香霖堂を横におきながら書いてるので・・・そんなに乖離は無い。と思いたい。
助けてもらったのは外の世界でのこと。
博霊大結界が出来る前に夜智王が幻想郷に連れてきた、なんてのは独自設定です。


伊吹萃香
だいたい原作通り?


オリキャラ

夜智王
古い蛇。
好色。
性別不詳。


白狼天狗。
文の祖母。
奔放な性格。

春虎
鬼。
夜智王の旧知
好色。



大体の時系列(本作における)

神代の昔
諏訪大戦。
蛇、両陣営をふらふらし、諏訪子に深く恨まれる。

遥かに昔
蛇、神の座から零落し妖怪に身を落す。
気にせずフラフラと過す。

大昔
蛇、幻想郷と外を出たり入ったり。
基本的に外が戦などで荒れると幻想郷でのんべんだらりんと過す。
文の祖母、絢らと他愛も無い悪さをする。

千三百年程前
都にて蓬莱山輝夜と知り合う。


千年くらい前
文誕生。
その二百年後くらいに絢永眠。

文。三百歳前後の頃夜智王と悶着を起こし、夜智王を恨むようになる。
媚薬に浮かされた夜智王、異変を起こし、紫によって外界へ放逐される。

放逐直後
荒れ狂う夜智王の退治にやってきた藤原妹紅と戦う。

四、五百年程前
生きること疲れ、心の壊れかけた状態の妹紅と蛇、再会。
数年ただの人間の夫婦として生活する。
その後妹紅は幻想郷へ移住。

数百年程前
妖怪拡張計画により、蛇、幻想郷に帰るも、数年で去る。
互いに避けた為蛇と文の接触は無し。

以降百年から五十年に一度程度の頻度で蛇は幻想郷を訪れるか定住はせず短期間(数日から一月)で去るを繰り返す。

幕末~明治維新の頃。
蛇、大陸に渡る。
上海の租界などに入り浸り西洋文化に慣れ親しむ。

百年程前。
色々あって蛇、封印される。
その直後、博麗大結界が成立。

現代(緋想天は終了している、地霊殿はまだ)
晩秋、蛇、幻想郷入りする。



[26700] 【二万PV御礼】それはあったかもしれない世界【おまけ】
Name: 窓◆0bf2c45e ID:6be04712
Date: 2012/08/30 17:26
タイトルの通りでございます。
感謝の気持ちを込めてほぼエロシーンのみ。

ま、内容は没原稿のリサイクルなので申し訳ないことです・・・
これが改稿の結果「人里を堪能す」になりました。
誰得?という内容ですが、没原稿な上、あくあでおまけ。ということで一つご寛恕を。
ちなみにおぜうさまとのエロシーンの没原もありますので、五万あたりまでいったらおまけ2ということで投下します。
没ネタがロリキャラばかりだって?・・・仕様です。

試験的に地の文とセリフの間に改行を入れました。






蛇、ミシャグジ神に陵辱される、の巻



「諏訪媛様?」
「諏訪子でいいよ、後敬語、媚びてるみたいで気持ち悪いからやめて」
「…逃げたり、せんから、これはずしてくれんかの?」

両手両足を鉄製の輪で拘束された夜智王が笑顔を浮かべ気さくに話しかける。

「駄目」

にべもなく諏訪子はそれを却下する。

「はい…」

ずるずると引きずられていく夜智王、諏訪子が神社の裏手の山へと入っていくので、あちこちがぶつかって痛い。

「着いたよ」

斜面に小さな洞穴が開いていた。
諏訪子はそれを指差し笑う。

「…」
「諏訪子の秘密基地だよ」

良いでしょ~と諏訪子が小さな子供のような無邪気な声で言う。
夜智王はそれどころではなかった。
脳裏に浮かぶのは「監禁」の二文字である。

「えへへ」

何故そんなに嬉しそうに笑う。
諏訪子の心意が分からず、夜智王は内心でガタガタ震える。
乱暴に洞穴に放り投げられた夜智王がどすっと壁にぶつかる。

「ぐっ」

ごつごつとした岩壁に背を打たれ、一瞬息が詰まる。
洞穴の広さは三畳程であった。
床には簀が敷かれその上に何処から持ってきたのか古畳が置かれており、案外快適である。

「なんか落ち着くよね」
「そうだな…」

本性が蛇なので、確かに地中のこんな空間はどこかほっとするものがある。
ただ、それどころではない。

「ねぇ夜智王」
「なんじゃ?」
「えっちなこと…しよ?」

身動きの取れぬ夜智王の腹の上に乗った諏訪子は、問答無用で夜智王の唇を奪った。
諏訪子の舌が夜智王の唇を割り、口内に侵入する。
口を開くことを拒む夜智王の歯列と歯茎を楽しそうに舐める。
ちゅぱっ、ちゅぱっ、と唾液の立てる音が狭い洞穴に響く。

「ん~ちゅ!んはっ♪すごい濃い精気……昨日も一晩中女と一緒だったんだね」

楽しそうな声にも暗い感情が見え隠れする諏訪子。
かなりの精気を奪い取られた夜智王は、四肢が自由に動かない。

「やめっ、んんっ!」

再度諏訪子が夜智王の唇を奪う。
接触と同時に大量の精気を吸いとられ、夜智王は気が遠くなる。
並の精気しか持たぬ者なら、ショック死してもおかしくない。
存分に夜智王の唇を貪る諏訪子。

「んっ・・・はっ・・・あはっ、んちゅっ・・・ぷあっ!うふふ」

口を離し、夜智王の口の端から溢れ落ちる唾液を愛しそうに舐め取った諏訪子が、艶然とした笑みを見せる。
幼い容姿だけに、一層妖しげであった。

「その女から吸いとった分、ぜぇんぶ私が貰うよ」

抵抗する力を失った夜智王の口内を、陶然した表情で諏訪子は存分に味わう。
舌の絡み合う湿った音と、諏訪子の切なげな吐息が洞穴を満たしていく。

「す…わ……こ」
「これだけあれば、小一時間は保つかなぁ?」
「なに…を?」

夜智王の問いを無視し、諏訪子は衣服を脱いでいく。
惜しげも無く晒された凹凸の無い少女の肢体。
幼女趣味の者でも無ければ、欲情を覚えるような色気は無い。
だが俗っぽさをまったくに感じさせない諏訪子の裸体は美しかった。
その肢体が、どくんと震える。
少しずつ、少しずつ、諏訪子の幼い体が成長してゆく。
四肢が伸び、体が女性らしい、丸く柔らかな曲線を作り出していく。

「ふふ、なんとか昔と同じくらいまで戻ったね」

夜智王から吸い取った精気を使い、幼い体を成長させたのだった。
信仰の衰えからくる力の減衰によって、幼体化する前の諏訪子の本来の肉体に。
先刻早苗に言ったように、豊満な体つきではなかった。
だが、均整の取れた体は美しく、見るものを魅了する。
その身体を淫らにくねらせ、諏訪子は再び夜智王の腹の上に乗る。

「これならえっち…できるね」
「や…め」
「うふふ、夜智王を犯すみたいでこーふんするよ。心臓がドクドクしてる」

そう良い、諏訪子は確認させるように夜智王の衣服を脱がすと、肌を合わせるように抱きつく。
本能的に失った精気を回復しようと、夜智王が精気を吸い返す。
させじと諏訪子も精気を吸うので、二人の間を、精気が循環し、肉欲によるものとは別種の快楽が生まれる。
諏訪子の白い肌が紅色の染まる、身体を夜智王にすりつけ、何度もの何度も唇を吸う。

「ふぁぁ・・・すごいよ夜智王?キスしてるだけで・・・イっちゃいそうだよぉ」

夜智王の胸に頬擦りしながら、諏訪子が切ない声を漏らす。
一方の夜智王はそれどころではない、意識を保つだけで精一杯で、指一本自由にできない。

「やめ・・・よ、ワシは・・・こんな」

搾り出すように呻く。
こんな風に、ただ肉欲と快楽を貪るだけの交わりは、夜智王の望むものではない。

「悔しい?気取り屋の蛇さん?悔しいでしょ?うふふ、これは罰なんだからね、いいように私に弄ばれなさいよ」
「やぁ・・・」

まるで女のような呻きを漏らす夜智王。
諏訪子がそそり立つ夜智王の一物に触れたのだ。

「どんなに口で嫌がっても・・・ここの蛇はもう鎌首をもたげてるよ?ふふ・・・すごく辛そう、すぐに楽にしてあげるね?」
「ひっ!あっああ・・・っ!」

ちゅぅ、と諏訪子の柔らかい唇が夜智王の亀頭に接吻する。
れろれろと舌で鈴口を舐めまわしながら、細い指で竿をこすり始める。

「んっ・・・ちゅぱっ・・・あはっ・・・んんぅ・・・はぁ」

楽しそうに一物を舐め続ける諏訪子、一方で夜智王は一物から直接精気を吸い取られ、また諏訪子の口内から吸い取る快感を必死に堪える。
歯を食いしばり、声をあげぬように悶える姿が、いっそう諏訪子の加虐心を呷る。

「生意気」

随分と育った胸を左右から寄せあげ谷間を作ると、それで夜智王の一物を挟む。
包み込むような快楽は出させないが、敏感な裏側を谷間の奥にこすりつけるようにして一物を苛め始める。
成長してもなお小柄な諏訪子には十分な長さの肉棒は、谷間からひょこりと亀頭がはみ出ている。
それを口に含み、存分の味わいながら、諏訪子の胸が夜智王の一物をくにゅくにゅと愛撫する。

「んっ・・・ふうっ・・・じゅっ・・・じゅるる・・・ん・・・っ」
「くっ・・・ひぁ・・・やめっ・・・ああっ!」
「ふふ・・・もうびくびくしてるよ?我慢しないで出しなよ、全部吸い取ってあげるからぁ・・・はむっ」
「く・・・ぅっ!」
「いいよ、出して?諏訪子の胸にぶちまけて?」

昨夜はあれほどに耐えた夜智王があっけなく射精する。
ドクンと大きく痙攣した男根から、どふどふと大量の白濁液が噴出し、諏訪子の胸と顔を汚してゆく。

「あはっ・・・出た出た・・・んっ・・・じゅる・・・んんっ・・・ごくっ・・・ぷぁ!おいし」

淫蕩な笑みを浮かべ、精液を舐め取り、嚥下する諏訪子。

「ゆるし・・・」
「駄目だよ。夜智王だって気持ちいいでしょう?肉体的にはご褒美なんだから、次はちゃんと膣内にだしてね」
「こんな・・・いやだ」
「ふふふ、そうだ」

何か楽しいことを思いついたように、諏訪子が満面の笑みを浮かべる。

「んっ・・・」
「や、やめっ」

舌を伸ばし、胸に残る精液を舐め取り、それを口に含んだまま、諏訪子の顔が夜智王の顔へ近づいてゆく。
何をするつもりか察した夜智王は身を捻り嫌がるが、赦さず諏訪子はそのまま夜智王の唇に口付ける。

「ん゛~!!」
「・・・んっ。ねぇ夜智王?おしいでしょう?どうせ女に化生したら黙って飲む淫乱なんだもの平気だよね?」
「も、もう・・・ゆるし・・・んんっ!!」

赦さず再び同じ事をする諏訪子。
自分の精液を飲まされるという衝撃に、夜智王の瞳から光が消えていく。
ただうわ言の様に、許しを懇願し続ける。

「あはは。おしおきだっていったよね?・・・最後までしようね私の愛しい旦那様」

ぼやけた視界に諏訪子の愛らしい顔が迫る。
ああ、綺麗だな。と霞む頭で夜智王はそんなことを思うのだった。








「あはっ・・・あんなにだしたのに・・・まだおっきいね・・・全部入らないや」

押し倒した夜智王に跨る格好で繋がった諏訪子は、愛おしそうに腹部を撫でる。
根元まで飲み込めないの残念と零しながら、ゆっくりと腰を降り始める。
じゅぶ、ずちゅ
結合部の立てる湿った音、慄くように夜智王の上げるうめき声、そして淫靡な諏訪子の喘ぎ声が奏でる淫靡な合奏が響く。

「こらぁ・・・すこしは・・・うごけ!・・・マグロだぞ」

諏訪子の罵りに既に夜智王は反応すらしない。
諏訪子はつまらないと思うと同時に、あの夜智王を完全に支配下においていることに、背徳的な喜びを得る。
いかなる権威にもまつろわず、飄然と生きる蛇。
それが今、自分の下でただ呻いている。
どうしようもなく憎く、そして愛しい蛇、人形のような夜智王など夜智王ではないのに、それでも支配したい、束縛したい。
背反する感情が作り出す、昏い喜びに諏訪子は震える。

「あはっ・・・夜智王の熱くて、固いのが、私の中で・・・ビクビクしてる・・・はぁぁぁ」

剛直が膣肉を犯す度に、諏訪子も限界が近づいていた。
膝立ちでくねらせていた腰を止め、爪先立ちになる。

「ひゅっ!」
「もう・・・我慢しなくていいよ?」

不安定な姿勢だが、股を閉じるように力をいれるには好都合だった。
一物を膣肉に絞られた夜智王は悲鳴をあげる。
限界が近いと見た諏訪子は、甘く囁きかけると、締めたまま腰を大きく降り始める。

「あ・・・っ!・・・あぁあぁ・・・」
「出して?・・・夜智王ぉ・・・一緒にイコ?ねぇ」

はぁ、ふぅと甘い吐息を漏らしながら、諏訪子がねだる。
その淫靡な顔と声が決定打だった。
大きく一物が痙攣する、諏訪子は一番奥まで一物を受け入れ、亀頭を子宮口で愛撫する。

「あ・・・・っ!・・・・ふぁ、あぁぁぁぁ!」
「あつぅ・・いぃ・・・・・ひゃぁ!」

背を弓なりに反らせた夜智王の身体が痙攣し、先刻以上に大量の精が放たれる。
勢い良く子宮に叩きつけられた精液の熱さと快楽に、諏訪子も絶頂を迎える。
ガクガクと震える体、そして収縮した膣肉が、一物をより締め上げ射精を促す。

「ひぃ!・・・あっ!」
「すごい・・・ふあっ!・・・イキながら・・・あはっ・・・でてるぅ」

快楽に伴う虚脱に耐え切れず夜智王の胸に身を投げ出し、しがみつくように抱きつく諏訪子。
その中に、夜智王は射精しながら絶頂に達し、さらに精を吐き出してく。

「はぁ・・・おなか・・・いっぱいに・・・すごい」

子宮内を満たしていく精液に、うっとりと諏訪子が吐息を漏らす。
すっかり出し終え、さすがに萎えていく夜智王の男根がずるりと諏訪子の膣から抜ける。
その感覚にぶるっと身震いした諏訪子の膣内から、あふれ出た白濁液がどろどろとこぼれていく。

「こんなにだされたら妊娠しちゃうよ・・・うふっ」

こぼすまいと、尻を高く掲げ身をくねらす諏訪子。
おかしなことに気が付く。
身体が熱い、まるで熱病に冒されたかのように全身が熱を持ち、特に膣内が疼く。
あれ?おかしいなぁ・・・と熱に浮かされた思考がぼやけ始める。

「・・・なに?・・・なにしたの?」
「何もしておらんよ・・・ただワシの意識が朦朧としたせいで、普段は抑えとる毒が漏れただけだ」

え?と諏訪子は怪訝な顔を浮かべる。
さっきまで、あんなにもぼんやりとしていた夜智王の様子が、いつもの様にもどっている。
逆に身体の自由が利かなくなった諏訪子をひょいと持ち上げると、優しく腹を撫でる。

「やだっ・・・こぼれちゃうよぉ」
「孕まれてもこまるのでな、全部掻き出してやる」

慎重に、傷付けないように諏訪子の女陰を指で開くと、右手を小さな蛇に変じさせそれを膣内に侵入させる。

「いやぁ!きもちわるいぃ!」

嘘だった、ひやりとした蛇の感触が火照る身体に気持ちよく、何よりも媚薬に疼く中が堪らなく気持ち良い。
だが蛇に中を犯されて喘ぐのは諏訪子の矜持が赦さない。

「やだぁ・・・やちおぅ・・・こんなのやだぁ」

散々に苛められた仕返しなのか、冷めた目で夜智王は黙々と諏訪子の中から精液を掻き出す作業に専念する。

「まぁ、こんな所か・・・ふぅ」

頼むから孕むなよと思いつつ、ずるりと精液にまみれた蛇を右手に戻す。
自分の精液なの気持ち悪いのか、取り出した手拭で丹念に拭う。

「あぁ・・・ねぇやちおう、からだぁ・・・あつぅぃ・・・なんとかしてよぉ」
「無理だ、散々に精気を絞られたからな、まったくスル気にならん」
「なによぉ・・・あんなにぜつりんのくせにぃ」
「ワシはな共に肌を合わせて情を交わすのは好きだ、だがなあんな風に交わるのは好かん」
「いっしょだよぉ・・・ばかぁ」

よほど切ないのだろう、くねくねと身をくねらす諏訪子はなんとも淫らである。
しかし、本当にピクリともこない夜智王はただ、自分の着ていた着流しで諏訪子をくるむだけだ。

「女子が、身体を冷やすのは良くないからな」
「やぁ・・・いいにおい・・・だけど・・・よけいにせつないよぉ」

さよか、と言い。ひょいと諏訪子を抱きすくめる。

「あっ!やめろぉ!」

諏訪子を抱き上げると、吸い取られた精気を取り返し始める。
媚薬に浮かされた諏訪子は抗うことも出来ず精気を吸われていく。
成長していた肢体がだんだんと縮んでゆく。

「ばかぁ・・・やちおうのばかぁ」
「のぉ諏訪子。こんな交わりではなく、もっと楽しく睦み会おうではないか」
「やだぁ・・・こんなからだじゃ・・・だめだよぉ」

どうやら昔よりも小さくなった体は、密かに諏訪子のコンプレックスらしかった。
しかも相手はかつての自分をしる男である。
余計に惨めな気分になる。

「いいではないか、いったであろう。肉の交わりだけが男女の愛し合いかたではないのだから」
「ひゃぁ!」

すっかりペタンコになった諏訪子の胸を、優しく揉み始める夜智王。

「やだよぉ・・・ぐすっ・・・こんな胸じゃぁ」
「愛らしい乳房だぞ?手に吸い付くようにすべすべで、敏感で、すっぽり手に納まるのも趣きがあっていいな」
「やだぁやだぁ!もっとおおきんもん!わたしのほんとのおっぱいもっとおおきんだからぁ!」

はいはい。と激情を露にする諏訪子を慰めるように胸を愛撫し、可愛らしい耳朶に咬み付く。
媚薬に冒され、全身が性感帯になっている諏訪子は、それだけでひぃひぃと喘ぎ声を上げる。

「ひゃぁ・・・ばかぁ・・・ろりこん、ぺどぉ」

可愛らしい諏訪子の喘ぎに興奮したのか、それとも言うように、一方的な肉欲によらない、自分が諏訪子を愛撫している状態が気持ちよいのか?
すっかり萎えていたはずの夜智王の一物が復活し、諏訪子の股間の間から生える。
先刻よりも大きく勃起した一物見て、諏訪子が罵る。

「諏訪子の痴態にすっかり大きくなったわ、愚息めが」
「なんだよぉ・・・あんなにわたしが・・・きもちよくしてやったときより・・・おおきくしてぇ!」

甘く切なげに喘ぎながら、諏訪子は夜智王を罵るのをやめない。

「あんなのは陵辱と一緒だ、真の悦びとは程遠いからの」
「ばかぁ!ばかぁ!」

もう子供の様に罵るしかできない諏訪子。
その様子が堪らなく夜智王には愛おしく見えた。

「ひゃぁ!」
「うん。気持ちよいぞ?」

一物をぴったりと諏訪子の股間に押し付けると、その熱さに諏訪子が震える。
胸ばかり愛撫され、焦燥に燃え上がる股間を、たまらずそれにこすりつけ始める。

「はぁ・・・ふぁ・・・っ!・・・やちおう?きもちいい?ちいさいからでも・・・きもちいい?」
「ああ、気持ちよいぞ」
「もっとよがってよ・・・んんっ・・・さっきみたいに・・・ひゃぁ!・・・わたしばっかりずるいよぉ」
「ならもっと頑張れ・・・おっと!」

股をきつく閉じ、これでもかとばかりに、内股と秘裂で一物を愛撫しはじめる。
敏感な一物の裏側を、柔らかくすべすねの内股が、漏れ出したぬるぬるの愛液を潤滑剤にを責め立てる。

「はっ・・・ふっ・・・んんっ・・・やぁぁ」
「くっ・・・やるの・・・諏訪子」

一物に擦り付けられる秘裂と包皮越し陰核が諏訪子の気を昂ぶらせてゆく。
一方で、容姿こそ幼いが、十分に経験のある諏訪子の素股奉仕に夜智王は呻く。

「ばかっ!・・・へんたい!・・・ようじょのまたでイケっ!・・・しねっ!ひゃあぅ!」
「おっといかん、少し抉ったか」

すき放題に夜智王を罵る諏訪子におしおきとばかりに、タイミング良く腰を動かした夜智王の先端がぐにゅり、とぴったりと閉じた幼い秘裂を抉る。

「はっ・・・はっ・・・ばかっ!やぁ!」
「もっと甘い言葉を吐いておくれ諏訪子」
「やぁ・・・あつい・・・おっきいよぉ!」
「きちきちの癖に・・・くっ・・・ぬるぬると飲み込みおって」
「やらしいこというなぁ!」

幼い秘裂を割り、肉棒が諏訪子の膣内に侵入してゆく。
先ほどとは違い、恐ろしく狭い。

「ふぁ・・・やちおう・・・きもちいい?」
「ああ、先ほどよりもずっと良いぞ」
「こんなわたしでも・・・愛してくれる?」
「今愛し合っているだろう」
「・・・もっと気持ちよくなってくれなきゃ・・・やだよ」

狭く小さい膣では抽送による快楽は得にくいと考えたのか、諏訪子はくねくねと腰を動かし、存分に夜智王の一物を愛撫し始める。
一方で納まりきらない部分に小さな手を伸ばし、懸命にしごく。

「ぐっ・・・これはたまらんの」
「ほんと?・・・ひゃぁ!」

返事代わりに、一物をびくびくと震わせる。

「あっああ・・・中でまだおっきくなるよ・・・こわれそう」
「いかんの、三回目だけあって我慢がきかん」

口調こそ平然としてるが、夜智王も大分余裕が無いらしい。
やや息を荒げながら、優しく胸を愛撫することで懸命に気を紛らわせている。
それに喘ぎながらも、諏訪子も懸命に一物を愛撫し返す。
確かに先刻、一方的に嬲ったときよりも、気持ちが良い。
どこか虚しさと後ろ暗さが残った悦びよりも、ずっと。

「ごめん・・・はぁ・・・ううんっ・・・もう・・・げんかいだよぉ」
「ワシもだ・・・諏訪子・・・最後は」
「いっしょにぃ・・・ひゃぁ!」

胸への愛撫を止め、諏訪子の腰を掴んだ夜智王が、浅くだが腰を降り始める。
すっかりほぐれた諏訪子の膣がにゅるにゅると全力で一物を愛撫する。

「ひゃっ!あっ!んっ!ふぁ!」
「くっ!はっ!」
「だめぇ!」
「出すぞ!」

びくん!と諏訪子の身体が痙攣する、幼い肢体を一杯につっぱらさせ、絶頂に達する。
同時に限界に達した夜智王は、絡みついてくる膣肉の締め付けに耐えながら、中から引き抜くと、思い切り諏訪子の身体に精液をぶちまけた。

「ひゃぁ!・・・あっ!やぁ・・・あついよぉ・・・」
「はぁ・・・はぁ・・・」

身体に降り注いだ精液の熱さに喘ぎながら、諏訪子は悦楽に震える。
一方こんな幼い体に翻弄された自身が少々情けないのか、夜智王は息を荒げつつ、意地悪するように、自分の精液を諏訪子の肌にすりこんでいく。

「ぬるぬるぅ・・・ばか、へんたい」
「気持ち・・・よかろ?んっ」

二人は、その日初めて優しく口付けを交わした。



[26700] 【小夜曲お気に入り300件突破記念】ゆかりんとゆりゆりソープごっこ【これはひどいタイトル】
Name: 窓◆0bf2c45e ID:4325365c
Date: 2012/08/30 17:28
ノクターンノベルズ、お気に入り300件突破御礼おまけです
本編じゃなくてすみません、ちょっと年度末で忙しいです申し訳ない。
今回、百合編です。苦手な方はごめんなさい。

お風呂からのイフ編(というか没原稿)です





「紫?」

戸が引かれ、夜智王が入ってくる。
声がわずかに低い、男に戻っているのだろう。
紫は表情を繕うとして、果たせなかった。

「なんじゃうずくまって、腹でも痛いのか?l」
「み、見なでい!見るなぁ!」
「…なんて顔をしとるんだ、お主は」

常に何かを見透かしているような、余裕のある「うさんくさい」と陰口を叩かれる笑みを浮かべ損ねた紫の顔を見て、夜智王は薄く笑う。
羞恥と狼狽で紅潮し、初な少女のような可愛らしい笑みだった。

「その顔、ワシ以外には見せるなよ」
「や、夜智王、や、やだ」

からかうように言いながら、紫を抱き上げ、膝を割る。

「っ!何を」
「ナニに決まっておろうが」
「やだ、いきなりなんて無理よ、やめて」
「すまんがワシも無理だ、そんな顔をされては我慢できん」
「嘘っ」

嘘では無い、と言外に主張するように、夜智王はすっかり怒張した一物を、紫の女陰に擦り付け始める。

「あつっ…やぁ、やめてってば、ひぅっ!」
「嫌というわりには…ふっ…ここは随分悦んでいるぞ?」
「はっ…ぁ…だめ…そこは…や!ぁよぉ」
「相変わらず…ふふ…紅い真珠が弱点か?」

秘芯を亀頭がつつくたび、紫の口から甘い声が漏れる。
久方ぶりの紫との情交がよほどに興奮するのか、夜智王もこの蛇には珍しく、随分と息が荒い。

「やだぁ、音が、やらしい音、やめてよぉ」

秘処から滲み出してきた、蜜がくちゅくちゅといやらしい音を奏で始める。

「挿入れるぞ」
「嫌よ、あっ…っ!」







「酷い…あんな夜鷹みたいなの」

絶頂の余韻に浸りながら、夜智王に抱かれた紫が、ぎゅうと夜智王の腕をつねる。

「お主が悪い、すっぱだかであんな顔をされて辛抱できるわけなかろう」
「何よ、それ…」
「やはり紫の身体は良いな、最高だったぞ」

我慢できずに、思いきり精を出してしもうたわ。とこの蛇にとって最大の賛辞を送る。

「まず謝りなさいよ、強姦魔」
「ははは、お主もよがっておっただろう?おあいこだ」
「この性悪蛇…あんっ」

鋭敏になった体を労るように、優しく紫の体を愛撫し始める。
豊満な胸を揉むではなく、ねっとりと撫で回しはじめる。
ぬるま湯に浸かっているような、淡い快感に紫が甘く喘ぐ。

「のぉ紫」
「はぁ…何よぉ」
「実は先刻から、殺気を感じるのだが…心当たりはあるか?」

首の後ろにちりちりとくる鋭い殺気。
夜智王に言われて、紫も気がつく、この気配は良く知っている。

「やだ…藍ね」
「やはり九尾か」
「やっぁ、うなじなめちゃやだっていってるじゃない!」
「式の躾がなっとらんからお仕置きだ」
「もうっ!主の情事を覗き見なんて、悪い子だわ」
「そなたが心配なのだろうよ、勘弁してやれ」

紫の首筋に顔を埋め、乳房をまったりと堪能しながら夜智王は苦笑する。
心地の良い愛撫に身を委ねながら、可愛い式に視られているという、背徳的な快楽に思わず紫はぞくりと震えてしまう。

「昔は…仲…良かったわよねぇ?」
「ワシは玉藻と旧知だったからな、良くあれの話をせがまれたものだ」

気を反らすためか?
何時からあんなに藍は、何故夜智王を嫌うようになったのだろうか?
と、ぼぉっとした頭で紫は思案する。

「あれがワシを毛嫌いするようになったのは、お主のせいだが…ま、それはどうでも良い」
「気になるんだけど…ひゃぁ!」

紫を姫抱きに抱えあげ、母屋に向かう夜智王。

「さて、ワシは視られて興奮する質ではない」
「…わたしもよ」

うん?本当か?と紫をからかい、また腕をつねられながら、夜智王は提案する。

「九尾の目の届かぬ所でするか」
「どこよ」

寝てばかりの紫、自覚に欠ける霊夢に代わって、結界の面倒を見ている藍である。
幻想郷内で彼女の「目の届かない所」というのは、あまりない。

「簡単よ。外界の、ホテルでしよう」
「はぁ!?」

夜智王の戯れ言に紫は思わず叫んでしまうのだった。








「ふんふふんふ~ん♪」

鼻唄を歌いながら夜智王は風呂場を検分する、シャワーを捻ったり、バスマットをつついたりと楽しそうである。
一方で紫は呆然としていた。
気がついたら外界に来ていて、いつの間にかホテルの一室を取っていて、今そのバスルームに居る。
郊外のカップルホテルである。
洒落た感じに内装は整っており、場末のラブホテルのような、いかにもな雰囲気ではない。
ただ風呂は広い、二人で入るのが前提なのだろう。
訳が分からない。
どうしてこうなった!?と自問する。

「夜智王、あなた百年は封印されていたって言ってなかった?」

手慣れた様子で部屋を取った夜智王に、紫が疑問を投げ掛ける。
うん?と服を脱いでいた夜智王が小首をかしげる。

「おるだろう?禁域に土足で踏み込む阿呆な人間が、時たまとり憑いて現世を堪能しておったからな…知識も記憶もちゃんとあるのだ」

頭部をとんとんとつつきつつ、カカカと蛇が笑う。
当世の流行りを知らんなどワシには耐えがたいからな。と嘯く夜智王に、紫は呆れて物も言えない。

「あと何故また女に成っているのよ…」
「紫の肉壺の具合が良すぎるからだ」
「なっ!」
「お主のアソコは、出雲大社の注連縄より太いワシの理性が千切れる程の一品。どうにも挿入たくなる魔性の穴だからな、だからアレの無い女で、まずは紫の身体を堪能する」

淫らな空想に耽っているのか、きゅうっと目を細目、妖しく笑う夜智王。
紫の背筋に悪寒が走る。
いったい何をされてしまうのか、いっそ普通に交合する方が楽かもしれない、そんな思いに紫は囚われる。

「それよりも、ほれ~紫もぬぎぬぎしような~」

そんな紫にお構いなしに、ショーツ一枚になった夜智王が紫を脱がしにかかる。
ホテルを取る際に変装したので、今の紫はキャリアウーマンのようなスーツ姿である。
タイトなスカートのファスナーが下ろされ、ぽとっと床に落ちる。

「ちょ、自分でできるわ―あっ!こらぁ」

黒のパンストに包まれ、きゅっと引き締まった紫の美尻を、夜智王の細い指が撫で回す。
びくんっと震えた紫に構わず、左手で尻を撫でたり揉んだりと愛撫しつつ、右手でシャツのボタンを外してゆく。

「夜智王ぉ、恥ずかしいから、自分で―いやぁ、んっ!」

シャツのボタンが外されると、窮屈そうに押し込められていた巨乳が弾けるように顔を出す。
黒い豪奢なブラジャーに包まれてなお自己主張の激しい乳房を、さわさわと夜智王が撫で回し、紫が甘い喘ぎをもらす。

「夜智王、やめて、ふぁ…うぅぅ」
「いいではないか、紫の体を堪能させておくれや。洋風下着姿の紫は艶っぽくてとても良いぞ」
「やだ、すけべぇ、もう…ひぅ!」

フロントホックが外されると、押し込められていた乳房がぶるんと弾けてブラジャーから飛び出す。
露出した乳をむにむにと弄り、紫を喘がせながら、ブラジャーを取り払った夜智王。
わざとらしく、鼻を寄せる。

「匂い嗅ぐない、ばかっ、変態!くぅ、んんっ!やぁ…乳首止めて…くにくにしないでぇっ!」
「気持ち良い癖に何をいっているのか…さて後は下だな、なぁ紫」
「はぁ、はぁ…なぁに?…やらしいのはだめよ」
「パンスト破って良いか?」

黒いパンティストッキングに、爪をかけて息を荒くした夜智王が聞いてくる。
ぞくっ!とした紫は激しく頭を振って、それを嫌がる。

「良いわけないでしょ…やっ!お尻だめ、やめてっ!」

引き締まった白桃の割れ目に手を入れて、菊門をくにくにと刺激しはじめる蛇、なんとも言いがたい刺激による心地よさと、排泄器官を愛撫される羞恥に、紫はいやいやと首を振る。

「パンストとは破るためにあるのだぞ、ダメだ我慢できん、破る」
「やっ!だめぇ!」

しゅっ、と夜智王が指を走り、ピィーとパンストを切り裂く。
あっ、やっ、と悲鳴を上げる紫だが、体には力が入らず、その身は夜智王に預けたままになっている。
くっついてきた夜智王が触れた所から大量の精気を流し込んで来ているせいだった。
すでに一度激しい交わりで絶頂に導かれている体だ、否応無く快楽に堕ちてゆく。

「なんだ、嫌だ嫌だといいながら、ここはもう湿ってきてるではないか」

破いたパンストから現れた、上とそろいのデザインのショーツに夜智王が手を伸ばす。
夜智王の言うように、すでに紫の秘裂から染み出した愛液で、ショーツは湿り気を帯びていた。

「それは、あなたのせいでしょう…あっ…ふっ…ぅ…」
「どんどんと愛液が溢れて来ておるぞ?」
「ば…かぁ…」

下着越しに、花弁をくにゅくにゅと弄れば、下着はさらに濡れてゆく。
陰核のあたりを優しく擦ってやると、きゃぁ!と紫が悲鳴を上げ、背を軽く仰け反らせる。
へなへなと、完全に力が抜けて崩れ落ちる紫を抱きとめ、破けたパンストとショーツを脱がす。
もはや抵抗してこない紫を備え付けのバスマットへ横たわらせる。

「よし、では洗いっこしような?ほれ良い香りだぞ」
「冷たっ!…やぁ、なんでそこから洗うのよぉ」

当たり前だ、と言いながら、紫の双乳にボディソープ、とみせかけてローションをたっぷりと落とし、両手で塗りこみはじめる夜智王。
当然石鹸ではないので泡立つこともなく、乳房がぬるぬるになってゆく。

「はぁ…あっ!」
「気持ち良いのだろう?我慢せんで喘いでよいのだぞ」
「ちょっと、かけすぎ…やぁ乳首だめぇ!」

ぬるんぬるんの乳首をやや強めにしごく。
とっくに勃って、びんびんになっていた乳首は、きゅきゅと弄るたび紫が甘く鳴く。
夜智王もかなり興奮しているらしく、はぁはぁ、と息が荒い。
ようやく乳房が手を離し、今度は腹部へローションを塗り始める。

「ふぁ…おへそ、くすぐったいわ…やめっ!下はっ!」

腹部から、下の繁みへ向かって滑って行く夜智王の手を握って止めようする

「いいから洗わせておくれ…紫の身体は柔らかくて、すべすべで、きれいだのぉ」
「やだっ、頬擦りしないで、くすぐったい!やぁん!」

脇腹に頬擦りされ、力の抜けた紫の腕を振りほどき、夜智王の指先が股に滑り込む。

「もう、びしょびしょではないか」
「誰の…くっ…せいよぉ」
「まぁワシのせいだな」

悪びれもせず、優しく女陰を擦り始める。

「ふっ…ぅ…あぁ」
「くちゅくちゅとやらしい音がしておるぞ」
「ばかぁ…は…ぁ…っ!」
「はぁ…きれいだなぁ…紫」

妖艶な美貌を淫蕩に染めた夜智王。
自分の体にもローションをどろどろとかけると、そっと紫に寄り添う。

「やっ夜智王!」
「ふぁぁ、紫の体は柔らかいのぉ」

切なそうに喘ぎ声を上げながら、のし掛かった夜智王の肢体が紫に絡み付く。
豊満な二つの女体が淫らに交じり合い、ローションの滑りが薄明かりに照らされ、妖しく光る。

「やぁ!胸があたって…あ…ふぁぁ」
「乳首が擦れて…気持ちよかろう?」

乳房が四つ、むにゅむにゅと絡み合う。
比べると若干小さめの夜智王の乳が、柔らかな紫の乳房を潰す。
ぐにゅっと歪む紫の乳房、夜智王が前後に動く度、乳房同士が反発しあい、ぶるんぶるんと弾ける。
その度、紫が甘く、夜智王が悩まし気に喘ぎ、快楽に体をぴくぴくと痙攣させる。
敏感な先端同士を口付けさせると、二人共がいっそう甲高い喘ぎ声を上げバスルームに残響する。

「な、なめちゃだめ」
「んっ…れる…ちゅ~」
「あとはだめだって…いってるじゃない…っ!」

紫の胸に顔を埋め、その肌に舌を這わせながら、夜智王は胸をぐいと押し付け、紫の太股を挟み、秘所を擦り付け始める。
常ならば余裕の有る夜智王だが、千年ぶりの紫との情交にひどく興奮しているらしく、その顔は淫楽に蕩けきっていた。

「あ…っ、はぁ…こんなの駄目よ夜智王…女同士でなんて」
「いいではないか…たまには女同士で交わるのも愉しいぞ?さぁ背中も綺麗にしような」

ひょい、と紫をひっくり返し、背中にローションを垂らす。
火照った体に降って来た冷たい感触に、びくりと紫が体を震わせる。

「だめぇ、くびすじはだめって…すっちゃだめ、あとがぁ」

弾力のある乳房をスポンジに紫の背中をぬめらせながら、首筋やうなじに唇を寄せては舐め、接吻する。
髪で隠れる位置に、烙印のように、キスマークをつける度、紫が嫌がるのが愉しくて仕方ないらしい。

「紫の桃は…うまそうだなぁ」
「やだぁ、お尻はぁ、あんっ!」

体を返し、紫の尻を掴み揉みながら、背中に体を擦りつけはじめる。

「やだっ!やめてぇ、なめちゃいやぁ!」

白桃の割れ目を押し広げ、露になった菊門に夜智王が口を寄せる。

「いいではないか…ここも綺麗にしよう?」
「口でしないで!いやよ、きたないわ」
「大丈夫だ、紫の体に汚い所など無い」
「いやったらいやぁ!」
「ワガママばかりだなぁ」
「あなたが変態っぽいことばかりするからでしょう!」

恥辱に震える紫の痴態に、ぞくりと夜智王の理性が泡立つ。

「はぁぁぁ無理だよ紫、一回で良いから、イカせておくれ?」

お主も気持ち良くするから。なぁ?そう囁きかけて喘ぐ紫の唇を奪う。

「んっ…うぅん!」
「ふぁ…ちゅ!じゅる、んんっ!」

柔らかな唇が二つ重なり、舌が絡み合う。
異常なほどに甘い夜智王の唾液が紫に流し込まれ、否応なく飲み下すと、体が更に熱を持ち、淫らに疼く。

「ふぁ…あ、あなた、びやくを…」
「きもちよぉなろうな?一緒に」
「やっ…あっ、きゅぅ!」

二人の下の唇同士が甘く湿った口付けを交わす。
全身を愛撫され、また愛撫しながら、昂りとろとろになった花弁同士の接触に、たまらず紫が甘い悲鳴を漏らし、びくっ、と強く体を震わせる。
にゅるにゅるとローションと秘蜜で滑る貝合わせが、時おりくちゅ、といやらしい音を響かせる。

「ふぁ…っ…やぁ…あっ!」
「ふ…っ…くはぁ…たまらん…きもちよいぞ」
「やだ…いわないで…はぁ…ふぅ…っ…あんっ!」
「紫のぽちゃぽちゃの…下の唇が…」
「いうな、っ!」

微妙に接吻をずらし、互いの唇が互いの秘裂を擦るようにする、陰唇も秘裂も共に気持ちが良く、いっそう秘奥から愛液が溢れだし、より交合の快楽を高めてゆく。

「だめぇ…もうっ…っ、ふぅぅぁ!」
「いきそうなのか?…ワシもだよ紫、いこう?一緒にな」
「や…っ…だ…めぇ」
「がまんするな…きもちよいのだろう?…ワシは気持ちよいぞ」
「いやよ…こんなの…おんな…どうしでぇ」
「あぁ…そんな顔をするな…ワシも我慢が…」

快楽に染まりながらも、それを必死に堪える紫の愛らしい表情に、夜智王の昂りが一層増す。
ぎゅうと紫を抱くと、喘ぐ唇を塞ぎ、舌を絡ませながら、腰の動きを激しくし始める。

「ふぅ!…ちゅ…んんっ!…うぅ~!」
「んっ…ぢゅぅ…ん~っ、はぁ」

充血し、露になった秘芯同士が擦れあう。
最も敏感な器官同士の接触は、これまでのゆるやかな快楽の波と違い、電流の様に全身を痺れさせる。
ぽろぽろと涙を溢しながら、いやいやと首を降る紫。
それでも舌は勝手に侵入してきた夜智王の舌と絡み合い睦合う。

「だめ…もう…いっちゃう…やちおう…やめてぇ」
「いやだ…いっしょにいこう…な?…ワシももう」
「いやぁ…いっちゃう、だめっ、ひぅ!あ、ぁぁぁぁぁ~っ!」
「ふぁぁぁ!紫ぃ…」

ほぼ同時に、二人は絶頂に達する、夜智王に抱かれている体をぎゅうと縮こませながら、全身をびくびくと痙攣させてながら絶頂に達する紫。
強く閉じられた瞳からはらはらと涙が流れ落ちる。
必死に閉じようとするが果たせず口からは甘い叫び漏れだす。
夜智王は紫をより強く抱きながら、小さく全身を震わせながら、果てるように脱力してゆく。
絶頂に震える紫の表情に満足そうに笑みを浮かべ、こぼれ落ちる紫の涙を舐めとる。

「はぁ…もぅ…ばかぁ」
「ふぅ…よかったぞ、紫」
「すこし…やすませて…んっ!」

夜智王がシャワーの蛇口を捻り、紫のローションまみれの体に掛け流す。

「やっ…あんっ」

絶頂直後の鋭敏な感覚が、熱いシャワーの水流に反応してしまう。

「あっ…もう…いじわる」

わざと乳房や秘処にシャワーを当ててくる夜智王に紫がいじけたような顔をして、弱々しく腕をつねる。

「そんな顔をするなと言っているだろう、お主誘っているのか?」
「違うわよっ!ばか!すけべ!」
「ははは」

一層強く腕をつねる紫だが、痛みには滅法強い夜智王である、むしろ可愛らしい紫の態度に満足そうな笑みを浮かべる。
すっかりローションを落とし終え、シャワーを止めた夜智王は、ひょいと紫を抱き上げて、ベッドへ向かう。


「続きはベッドでな」
「もう…女同士は嫌よ」
「わかった、わかった、ちゃんとチンポを使おうな」
「ばかぁ」



[26700] 【長期休載のお詫び】蛇、天人娘と酒盛りす、の巻
Name: 窓◆0bf2c45e ID:4325365c
Date: 2012/08/30 17:29
長く開いたお詫びも兼ねておまけを投稿します。
友人との与太話で東方の同人誌を出そうかみたいな話になったさいに
原作のつもりでいくつか書いた話を弄ったものです。
結局それ以上話は進まなかったのですが^^;

蛇、天人娘と酒盛りす、の巻(前編)





「何よ、あんなに邪険にしなくてもいいじゃない」

ぶちぶちと文句を垂れながら、少女は空を行く。
空飛ぶ大岩に腰かけた少女、名を比那名居天子という。
天人である。

「本気で嫌がらなくたっていいじゃない……」

暇を持て余し、異変を起こした時ならいざ知らず、間欠泉が湧いた、と聞いてちょっと遊びに行っただけ。
だと言うのに巫女を筆頭に皆、蜚蠊でも見たような扱いに、密かに天子は傷付いていた。
ぶちぶちと文句を垂れつつ、何気なく髪を手で梳く。
じゃりとした感触に表情を歪める。
段幕ごっこで巻き上がった砂埃が付着しているのだ。

「やだなぁもぅ……あれ?」

ふと地上を見ると山中から湯気が上がっている。

「あんなところに家?なんだろう?」

興味を引かれた彼女は一軒の庵へと降下してゆく。
まず、湯気の源を確認する、庵に隣接する半露天風呂がそれであった。

「へぇ~地上の物にしちゃ風情があるじゃない」

大岩をくりぬいた立派な浴槽から、ほかほかと湯気が上がっている。

「ちょうど良いわ」

弾幕ごっこで汗もかいたし、髪も埃っぽい、どこかで水浴びでもしよう。
そう思っていた矢先だったのだ。
主の許可を得ようと言う発想は無いらしく、天子はぽいぽいと服を脱ぎ捨てると浴槽に飛び込む。

「あ~ちょうどいい湯加減だわぁ、気持ちい~!」

ぐ~と伸びをすれば、惜し気もなく裸身が晒す。
生憎胸はさほど大きく無い、正確にはか、なり残念な大きさ、しかし均整のとれた肢体は、若い牝鹿を連想させる健康的な美しさに溢れていた。
鼻歌を歌いながら髪を梳いて砂埃を落とす。

「お酒の一杯もあれば完璧なのに~♪」
「呑むか?」
「え?あるの、ちょうだい……ひいっ!」

全く気配を感じさせず一人の男が天子の後ろで座って居た。
庵の主なのだろう、風呂に入りに来たのか当然全裸、手には酒器が一式。

「きゃぁ!ちょっと何見てんのよ!」

慌てて胸と恥部を手で隠す天子、男の視線から逃げるように背を向け、体を縮ませる。

「人様の家の風呂を無断使用しとるくせに何をいっておる」

まぁいいがな。そう男は笑い、ざぶりと風呂に入る。

「呑まんのか?遠慮はいらんぞ?」
「うぅ~~何よ何よ何よ!私の体を見て無反応なわけ?逆に失礼よっ!」
「ワシは風呂場では欲情せん性質なのさ、浴場だけにな」

カカカと下らない冗談を言って男が笑う。

「ワシは夜智王、ご覧のとおりの蛇だ、お主は?」
「……」
「だんまりか?まぁ神社を倒壊させたと噂の天人殿であることは知っとるがな。ほれやらしいことはせんから、出会いを記念して一杯呑もう」
「嫌よ!ばか!すけべっ!」

そう言って天子は風呂を飛び出すと服を拾い隣接する脱衣所へと逃げていった。
おやおやと蛇は楽しそうにその後ろ(と形の良い尻を)見送り、また一杯盃を干した。





「おや天女殿、まだおったのか?」
「私の裸見て、ただで済むと思ってるわけ?罰としてお酒とご馳走を用意しなさい!」
「酒はともかくこんなあばら屋でご馳走は無理ぞ?味噌でも舐めるか?」
「しみったれた話ね!まぁ良いわ、お酒!ほら早く!」
「ははは、いかにも天人らしい高慢ちきだの、まぁそんな女子もワシは嫌いではないがな」

先日香霖堂で買った旧式(氷を入れて冷やす型)の冷蔵庫から麦酒の瓶を出し、壺中天からジョッキを取り出し天子に渡す。

「上手い具合に冷えておるぞ、風呂上がりはこれに限る」

黄金色の液体が泡を立てながら酒杯に注がれる。

「何これ?泡?面白い!」
「ほれ乾杯だ」
「乾杯!」

ころころと良く表情の変わる娘だな、可愛らしい、そう蛇は思う。
炭酸の刺激にビックリしている様はどこかあどけなくも見える。

「くぅ~冷た~い、にが~い、でもこのしゅわしゅわがおいし~」
「それは良かった、いまいち受けが良くなくての」

幻想郷では麦酒を製造している物がおらず、これは夜智王の手製だった。
幾人かに呑ませたがあまり評判が芳しく無い。
夏になれば評価も変わろう、その時は天狗と河童を誘って、大量生産し一儲けしようか。などと考えているのだった。

「でもあんまり強くないのね」
「その分沢山呑める、ほれもう一杯」
「そっか、それもそうね」



「らいたいひろいとおもふぁない?みんなひててんひのことひゃけんいして!」
「そうだのぉ天子はこんなに可愛いのにのぉ」

完全に呂律が回っていない天子が何度目になるのかわからない愚痴を吐き、ぐいっ!とまた酒をあおる。
空になったジョッキにとぽとぽと夜智王は酒を注いでやる。
酒精ではなく、炭酸に酔っているらしく、天子はへべれけになっていた。
夜智王の膝の上に座り、くてんと背を預けている有り様である。

「ひぅ……やひおうはやふぁひいね」
「おお何故に泣く?天子。ワシは女子の涙が弱点じゃ、泣かんでおくれや」
「らって……」

急に涙声になり始めた天子がぽつぽつと語り出す。
それは天界でのことらしかった。



偶然だった、男達が集まり酒を呑んでい近くを通りがかったのは。
漏れ聞こえてきたのは、聞くのが不快になるような、女の品定めのだった。
あちらの娘がどうの、こちらの娘はどうの。
暇を持て余す天人がする、どうでもよい話。
下世話な内容に顔をしかめ、その場を離れようとした、その時、不意に天子の名前が出た。

比那名居の総領娘はどうか?

一瞬の沈黙後、男達は大笑いを始める。
嘲りを含んだ、嫌な笑いであった。

「それはあり得ぬ」
「おこぼれで天人になった小娘ぞ」
「それにしても不良すぎる」
「せめもう少し器量が良ければなぁ」
「器量は悪くはないさ、だがあの貧相な体では」

耳を疑うような言葉の数々と嘲笑が響く。
ぐらりと地面が揺れた、いや天子がそう感じただけであり、実際はあまりの精神的な衝撃に天子がよろめいたのだ。
弾けるように天子は走ってその場を去る。
自室に閉じ籠り、寝具を被っても、男たちの嫌な笑い声が耳にこびりついて離れない。
耐えかねたように天子は天界を飛び出し、地上へと降りたのだ。




「嫌な事を思い出せてしまったな」

えぐえぐと幼子のようにぐずる天子を抱きよせ、背中をさする。
酔っぱらってタガがはずれているのか?泣きじゃくりはじめた、天子をあやす。

「そう泣くな。天子は十分過ぎるほどに可愛いぞ」
「ほんろ……?」
「本当だ、まぁ乳は控えめだがな」
「ひどいよ、ひにしてるのに……」

天子はおためごかしを言う男は好きか?
そう問う夜智王に、ふるふると天子は首を振る。

「乳の大きさで女の器量が決まるわけではあるまい」
「……やひおうははどっひがふき?」
「でかい方が好きだ」
「ばかっ!」

即答した夜智王を天子が思いきり殴りはじめる。

「痛い痛い、やめておくれや」
「おっぱひなんれ、たらのにふのからまりひゃない!」
「悲しい事を言うで無いよ天子、女子の乳にはな、男の夢が詰まっておるのだぞ」
「わるかったふぁね!ふまってなふって!」







「ん?」

ふと天子が目を覚ますと、秋の太陽は既に落ち、外は闇の帳が落ちていた。
ぱちぱちと音を立てて燃える囲炉裏の炎と、部屋の隅に置かれた、灯籠の淡い明かりだけが辺りを照らしている。

「(あたし、いつのまに眠って……なんだかあったかい……)って!?」
「目が覚めたか天女殿」
「や、夜智王……」

身を包み込む、幼子の頃父親の膝の上で眠った時にも似た、心地好い温もり。
酔って、泣いて、怒って、疲れ果てた天子は、夜智王の膝の上、その胸に背中を預けて眠ってしまっていたのだ。
粗末だが清潔な毛布が掛けられており、屋内に忍び込んでくる冷たい夜気から天子を保護していた。
この程度の寒さで天人が風邪を引くことは無い、だが女が体を冷やすと良くない、という夜智王の配慮だった。

「(あたし……なんで……あ、ああああああぁぁ!!)」

酔っていたとはいえ、晒した醜態を一気に思い出した天子の全身から血の気が引く。
次いで叫びだしそうな程の恥ずかしさに、首まで真っ赤に染まった天子は、そんな様を見られまいと、ぐいっと毛布を引っ張り顔隠す。

「段幕ごっこで疲れたのであろ?布団を敷こうか?」
「う……あ……えと……」
「どうした?」

泣き疲れて寝てしまったことを知っていながら、わざと夜智王はそんなことを言った。
気遣いが優しさが、身に染みる。
天子には分かっていた、夜智王は確かに優しい、だがその優しさには、下心がある、女を「その気にさせる」嫌らしい優しさなのだ。
しかし、心の隙にするりと忍び込んでくる“それ”に抗うのはひどく難しかった。

「夜智王」
「なんだ?」
「あたしのこと可愛いって言ったよね?」
「ああ、天子は可愛い、お世辞ではないぞ?」
「おっぱい小さいよ?」
「乳の大小で女の器量が決まるわけではないよ。天子を笑った男共、モテぬ男の戯れ言など気にするな」
「うん、ありがと……でも、夜智王はおっぱいの大きい、艶っぽい女の方が好きでしょ」
「そうだな」
「……少しはおべっかも使おうよ」
「ふふ、すまんな、これも性分よ。そんなに乳のサイズが気になるのか?」
「ふぇ?」

天子の胸を、ごく自然に夜智王の両手が包む、突然のことに天子がすっとんきょうな悲鳴を上げる。

「やぁっ」

殆ど起伏の無い天子の胸を、すっぽりと包んだ夜智王の手が、やわやわとマッサージし始める。
優しげなその動きに、天子が堪え切れず、甘い声をあげる。
心地よさに、はぁぁと熱い吐息が漏れる。

「敏感な可愛い乳ではないか、ん?」
「だめっ、て……動かすな、ひぅっ!」
「小さなおっぱいには希望が詰まっておるのだぞ?可愛い女子の可愛いおっぱいを育てる楽しみは、また格別でなぁ」

きゅうっと夜智王の手が嫌らしく天子の胸を揉みしだく。
びくん!と天子の体が痙攣する。

「ふぁっ!……だめ、やらしいのだめ、やめてぇ」
「可愛い声でそんな事を言われても説得力が無いぞ?」
「あっ……やめっ!はずかしいよぉ」

すっかり涙腺が弛んでいるせいか、ぽろぽろと泣き出す天子。
夜智王は手を止めると、そんな天子の涙を拭ってやり、なでなでと、童にするように頭を撫でてやる。

「の?小さい乳でも気持ち良いだろ?」
「やちおうのすけべ……」
「男の膝の上でそんなことを言っても説得力は無いぞ」
「……お尻になんかかたいのが当たってる」
「天子があんまり可愛く喘ぐから、愚息が元気になってしまったわ」

ははは、と悪びれもせず夜智王は笑う。

「あたしに、欲情してるの?」

男達に嘲笑されたのがよほどに堪えたのか、天子はか細い声で夜智王に問う。
恥ずかしいのだろう、顔を見られたくないのか、体をずらして、夜智王の胸に顔を埋めてしまう。
なんともいえず愛らしい様子だったが、意地悪をするように夜智王は、くいと天子の顔を上に向けさせる。
潤んだ瞳で天子は夜智王を見つめてくる。

「身体は正直だぞ?」
「あたしを……抱きたい?」
「ああ、天子が諾と言うならな」
「い……良い」

つっかえがちに、了承の返事を返そうとする天子の唇を、指で押さえ夜智王は黙らせた。

「そんなに簡単に男に体を委ねてはだめだぞ、天子。世の中には初な女を騙すのが得意な悪い男が多いのだからな」

その筆頭のくせに、いけしゃあしゃあと夜智王は説教をする。

「……いや」
「何が?」
「あたしが可愛いっていうなら、あたしを抱いて証明してよ、夜智王」

頭にこびりついた、男達の嘲笑を忘れさせて頂戴?
そう掠れた声で、だが傲慢な口調で呟いて、天子は夜智王を見やる。
その瞳に宿った力強さが、夜智王には惹かれた。

「承ろう」
「気持ち良くしてくれなかったら、承知しないんだからね、こんなボロ屋、すぐに潰しちゃうんだから」
「それは困るな」

強がるような天子のセリフを塞ぐように、夜智王は天子の唇を啄ばんだ。



[26700] 【↑の続き】蛇、天人娘と情を交わす、の巻
Name: 窓◆0bf2c45e ID:4325365c
Date: 2012/08/30 17:30
「んっ……ん~……ふえ?」

季節感の無い、常春の天界では感じられない、晩秋の冷気が少女の頬をなぜる。
それは、懐かしい感触、かつて常人ただびとであった頃を少女に思い出させた。

「あっつ……ぃ?」

清々しい冷気が火照る顔を心地よく冷やす。
何故こんなにも体が熱を持っており、また気だるいのか?
寝惚けた頭を捻る。
粗末な寝具の感触もまたおかしい、それは普段少女が使う、上等の布を使った物とは、比べるべきもない。
しかし不思議と嫌ではない。

「(おひさまのにおいだぁ……)」

そして何より、隣に居る誰か、その人肌の妙に心地よい温もり。
まどろみの淵で天人の少女……天子はその感触にくすぐったそうに身をよじった。

「(なんだっけぇ……えっとぉ……あ。あああああぁ!)」

昨晩の秘め事が次々と脳裏をよぎる。
当然の様に自分の醜態、痴態もである。

「(うわぁぁぁぁぁ、私ってば、なにやってるのよぉぉ!)」

ざぁっと全身の血の気が引く、だが青ざめた頬は、すぐさま押さえがたい羞恥によって朱に染め直された。
あまりの恥ずかしさに脳内でごろごろと悶え転がる少女。



「天子の胸は可愛いぞ」

接吻の後。そう言いながら、蛇は丹念に天子の未成熟な膨らみを愛撫しはじめた。
コンプレックスである“やや控え目”な胸を散々に弄られ、天子は乱れに乱れた。
思い出すのも恥ずかしい、甘えた声で鳴いて、夜智王にすがりついた。

「(ううう、私のばか……)」

男と夜を共にするのは初めてではない。
遠い昔、まだヒトであった頃、幼馴染みの男の子と、初めて同士の不器用な交歓を数度経験している。
それ以来の久方ぶりの情交、それに加えて夜智王の手練手管が巧みだったとはいえ、あの恥態は酷すぎる。
昨夜の自分を脳内で何度も張り倒す、たがやってしまったことは消えるはずもない。

「(し、しかも……)」

何度も絶頂に達し、気絶するように眠りに落ちてしまった。
つまり――

「のぉ?さっきから何を百面相しておるのだ?」
「や、やちおう……?」

目を開け、恐る恐る声をかける。
とっくに目が覚めていたのか、閨を共にした蛇妖が返事を返す。

「おはよう天子、まぁまだ夜は明けておらんがな」
「お、おはよう……」
「天子の寝顔、愛らしかったぞ?」
「は、恥ずかしいこと言わないでよぉ!」

抱き合って眠っていたので、無防備な天子の寝顔を夜智王は見放題だったらしい。
恥ずかしそうに天子は顔を逸らそうとするが、夜智王は天子を抱き寄せてそれを阻む。
むーむーと可愛らしく唸りながら、夜智王の胸に顔を埋めて隠すことで羞恥を誤魔化す。

「素敵な一夜であったぞ、ん?」

恥らう天子が可愛くてしかたないのだろう。優しく天子の寝乱れた髪を梳いてやりながら夜智王は、甘い声で囁きかける。

「天子は良くなかったか?」
「……それは……まぁ、悪くなかったというか、まぁまぁというか……」
「素直でないな、昨夜はあんなにも甘えた声で鳴いてくれたというのに」
「は、はずかしこと言うなぁ!!もうっ!ばか!えっち!」

昨夜の情事を思い出せるような、淫らな夜智王の物言いを、どんどんと天子は頭突きを夜智王の胸板に叩きつけ、黙らせようとする。
しかし「痛い、痛い」とちっとも痛そうにない口調で言う夜智王は、愉快そうに笑うばかりだ。
ぐいと天子を抱き寄せ仰向けに寝転がり、天子を自分の上に乗せると、その尻に手を伸ばす。

「やぁ、なにしてんのよぉ!」
「旨そうな桃があるのでな」
「もー!夜智王のすけべ!」
「はは、何を今更」

はぁ、と悩ましく天子が息を吐く。
火照る体に、どこかひんやりとした夜智王の体が触れると、たまらなく心地好い。
まだ昨夜の愛撫の余韻が残る乳房を、無意識に夜智王に押し付けてしまい、ちりちりとした淡い快楽に、艶めいた嘆息がまた漏れる。

「やん、あたってるよ……」
「わざとだ」
「すけべ……」

天子の腹部に押し当てられた夜智王の逸物。
びんびんにいきり立ったそれの熱が、天子の快楽を煽る。
それが怖くなった天子は、身を浮かして肉棒をから離れる。
不自然な姿勢と、尻を撫でられる感触にぷるぷると震えながら、天子は恐る恐るの口調で夜智王に問うた。

「……ねぇ」
「なんだ?」
「……夜智王は……その、だ、だして……ないけど」

先刻気がついた事実。
昨晩の交わりで、一度も夜智王は精を放っていない。
挿入いれた途端に天子が立て続けに絶頂に達し、そのまま果ててしまったからだ。
男とはそんなでも良い物なのだろうか?そうではないはずだ。

「ああ、心配せんでも、天子のなか・・はとてもに良かったぞ?」

天子がそちらの心配していないことを承知の上で、にやにやと意地悪そうな笑みを浮かべ蛇は囁く。

「そ、そんなこと聞いていないし!」

真っ赤の顔を、さらなる羞恥で朱に染めた天子が、噛み付くように言い返す。
予想通りの反応に満足しつつ、夜智王が愉快そうに笑う。

「ははは、接して漏らさずは房中術の基本中の基本。たっぷりワシの中で練った気をくれてやるつもりだったのだがなぁ」

当然、気を“吸われて”いる天子が先に果てるのも仕方の無いことよ。と夜智王は天子が悪く無いと言う。

「だが、まさに“蛇の生殺し”よの」

カカカと下らない冗談を言って笑う。

「……それで、いいの?」
「まぁ昨晩は傷心の天子を慰めるのが目的だったからな、ワシの愉しみは二の次でよかろ」

にっ、と一見は屈託のない笑みを浮かべる夜智王。
天子は言葉に詰まってしまう。

「もちろん、これからもう一戦するのはやぶさかではないぞ?うん?」
「うぇ……」

到底「嫌」と言える状況では無い。
だが昨夜ねちっこい夜智王の愛撫と責めを考えると「夜智王が愉しむ」という行為はどれ程のなのか?
いったい何をされるのか?
それを想像すると、恐怖がまず先に立つ。
怖いのだが……

「嫌か?」
「い、いいよ……?」
「ほぉ言質は取ったぞ?」
「変態的なのはやだよ!鞭で叩くとか、ローソクとか」
「ははは、なんだ興味が有るのか?」
「無いよ!有るわけないでしょ!」
「ふぅん……えすえむごっこが良いか、そうかそうか」
「ひ、人の話を聞きなさいよぉ!」

憤慨する天子を無視し、掛け布を跳ね飛ばし、身起こした夜智王が天子を引き寄せる。
昨夜のまま、一糸纏わぬ天子は恥ずかしくて仕方が無い。
ぎゅっと目を瞑り震える天子の瞳を、どこからか取り出した布で巻いて隠す。

「ひっ、やぁ!何?何してんのよぉ!」
「目隠し位なら、痛くは無いし初心者には丁度よかろ?なんなら腕も縛るか?」
「やだ!ばかっ!……やぁ!」

勝手に解こうとする天子を強く抱きしめて阻む。
急に強く抱擁された天子の体温が急上昇し、心臓がドクンと鼓動を大きくする。

「ふふん。興奮しておるのか?心の臓がドクドクと鳴いておるぞ?」

抱いた天子の耳と首筋をゆるゆると唇で愛撫し始める。

「あっ……やだぁ、やだよぉ、んっ!……やちおう、いじわるしないでぇ」
「なんだ怖いのか?」
「こわっ……こわくなんてないわよっ!……あ、んっ」
「ほれ、怖いなら遠慮無くワシに抱きついてこい」

囁かれる夜智王の蠱惑的な声と睦言、肌に触れる熱、舌や唇の感触、上等の美酒のように甘くくらくらする不思議な夜智王の体臭。
視覚を封じられ、他の感覚が敏感になっているせいだろう、それら全てが天子の官能を疼かせる。
昨夜の情事の余韻が残る身体は、すぐさま火が付き、みっともないほどに、より強い刺激を求める。
それが、ひどく天子には恐ろしかった。
まるで自分の身体では無いようで。
それを許容しようとしている牝の本能を理性が拒絶する。
ごまかすように、促されるままに夜智王の身体に抱きつけば、ちりちりと疼き始めた胸がぐにゅりとつぶれ、淡い快楽が体を満たす。

「ふふ、天子の身体は抱いているだけで良いな、とても佳いぞ」
「ふぁ……やぁ、やちおうのばかぁ、すけべぇ」

夜智王の股間の剛直が熱と硬さを増し、密着する天子の腹部を犯す。
男の欲望の象徴である熱に、天子は耐え難い快楽を覚えてしまう。

「あっついよぉ、やちおうの……やだぁ、うごこさないでぇ」
「天子の女陰を割りたくて仕方ないのだろう、なにせおあずけが長かったからなぁ」
「こんなの……はいらないよぉ」

昨夜よりも強く怒張した肉棒は、逆に恐怖を誘う。
ふるふると首を振り怖がる天子。
そのわななく唇を啄み、安心感を与えながら夜智王は笑う。

「では一度出すか?膣中に注げんのは残念だが、天子が苦しい思いをするよりもよかろうて」
「だ、出すって……」
「昨夜は散々ワシが天子にご奉仕したのだ、今度は天子が返す番であろ?」
「う……あ……そうだけどぉ……うまくできないよ?」

生娘でこそ無いが天子の男性経験は、まだ人間であったころ、幼馴染の少年との幼い情交のみ。
当然だが、男性を喜ばす手練手管など持っていない。

「ふふ、それがかえって良いやもな、ほれまずは手で」

震える天子の手を取り、そっと自身の分身へと導く。

「ねぇ、めかくし、とって。ほんとにうまく、できないよ?」
「いや、下手に見えるよりいいさ。指先の感覚に集中するのだ」
「ひぅ!」

天子の繊手が剛直に触れる、焼ける様な熱にびくっと天子が震えるが、構わず夜智王天子に肉棒を握らせる。

「ふふ、天子の手が触れただけで心地好いぞ。手淫はしたことはあるか?」
「は、はじめてにきまってるじゃない!きのう、せつめい、したでしょ!」
「そうか、では天子の手の処女はワシが頂いたということだな」
「な、なによそれぇ」
「どうだ?ワシの愚息は、天子の初めてを奪ったのと比較して?」

恥ずかしい事を言わせようとする夜智王に、ふるふると天子が首を振って拒否するが、許さんとばかりに夜智王は天子へ愛撫をして責める。
くりくりと乳首を弄られた天子が甲高い嬌声を上げて身を捩る。
発狂しそうな快楽に理性が悲鳴を上げる。

「ほれ、言うのだ?それとも一度イクか?胸を苛められてイクのが天子のお好みか?」
「はぁ……やぁ……んっ……だめぇ」
「ふふ、すっかり芯までほぐれたな?小さいのは確かだが、ほんに敏感な良い胸だぞ?」
「ふぅ……おっぱぃ……いいのぉ……おかしくなっちゃうよぉ……やめてぇ……ふぁ……んんっ!」

不意打ち気味に、夜智王が天子の口を塞ぐ。
天子の唇を貪った後、薄く開かれた天子の唇を割って、夜智王の舌が天子の口内を犯す。
つんつんと天子の舌をつついて促し、おずおずと動きだした天子の舌に、夜智王の舌が絡みつく。
甘い吐息と唾液が交わる度、天子の頬が上気し、表情がとろんとしてゆく。
当然手は留守となるが、構わず夜智王は天子といやらしい接吻を続ける。

「ちゅ……んっ……はぁ……やちぉ」

長い接吻の後、ようやく夜智王が顔を引くと、二人の間に唾液がいやらしい橋を作る。

「天子の唇は桃の味がする、甘くて旨い、いくらでも吸っていたいのぉ」

薄く笑った夜智王はそんな感想を漏らし、軽い接吻で天子の唇を奪い涎を舐めとる。

「ふぇ……なんか……からだが、あっついよぉ」

これまでも身体は火照っていた、だが接吻の最中から、どんどん体温があがり、まるで熱病に罹った様に身体が熱い。

「なに……したの?……こんなの、へんだよぉ」
「ワシの体内にある媚毒を、今散々飲ませた唾液に混ぜた」

天子の表情からさっと血の気が引いてゆく。
いったいどんな影響が有るのか、今は酩酊感と、発熱、疼痛があるだけだ、このまま夜智王と交わり続ければ、一層その“媚毒”とやらを摂取することになるのか。
想像するだけで、恐ろしい。

「なに、それぇ、ばかばかばかぁ」

力無くぱたぱたと天子が暴れる。
可愛いのぉ、と嘯いて夜智王はそんな天子のおでこに接吻をする。

「怒った顔も可愛いな」
「おこらせてるのはあんたでしょ……ばかぁ……いじわるぅ!」
「既に一夜を交わしたと言うのに、やたら遠慮するお主が悪いのだぞ、うん?すっかりお手々はお留守だしなぁ」

ひょいと天子を抱き上げ、ひっくり返すと後ろ抱きの格好で抱きなおす。

「やっ!やっ!お、おしりに……かたいのびくびくって……やぁ、だめぇ!……うぅ……やぁ……きもちいいよぉ……」
「天子の尻肉は良いなぁ?ここは乳と違って解さんでも柔らかい。そのくせ弾力がある。ほれ、ワシの愚息も喜んでおるぞ」

尻の割れ目を割って、押し付けられた夜智王の剛直が、ぴくんぴくんと動く。
本能的それを押し出そうとした天子の白桃のような尻肉が果たせず、ぎゅうと剛直を挟む。

「あんっ!……だめぇ……うごかさないでぇ……こすっちゃだめぇ」

天子の尻肉の感触を楽しむように、夜智王が腰を使う。
焼け串のように熱い怒張に、ちりちりとうずく菊門が刺激され。
排泄器官を責められ快楽を覚える背徳感が、かえって天子の官能を刺激する。
だが、それでも足りなかった。
媚薬に浮かされた体は、さらなる快楽を求めて、天子に焦燥感を募らせてゆく。

「や、やちぉ……おっぱい、あついよ、ちりちりするのぉ……おかしくなっちゃうよぉ……なんとかしてぇ」

先端の突起……乳首が「いじってくれ」と言わんばかりに、つんと勃ってしまっている。
いっそ自分で弄りたい程だったが、後ろ抱きに夜智王が拘束しているため、それも叶わない。
羞恥心をかなぐり捨て、天子は夜智王に懇願する他、術がなかった。

「天子はやらしい娘だな」
「やちおうのせいでしょ!ばか!いじわる!どえす!なんとかしなさいよぉ!」

半泣きで天子が叫ぶが、それは夜智王の嗜虐心を煽るばかりだった。

「わかったわかった」

さわさわと、おざなりに夜智王が、天子の薄い胸を愛撫し始める。

「やぁ……もっと……まじめにぃ」

気持良くなる直前に力を抜く、絶妙に外した夜智王の焦らしに、天子が甘い悲鳴をあげる。
朧気な快楽はかえって焦燥を募らせる。
僅かに満たされる疼きも、緩やかな愛撫によって昂り「もっともっと」と言わんばかりに、より大きな疼きとなって天子を苛む。

「まったく天子の胸は敏感でいやらしいな」

下手にでかいだけの乳よりずっとよいぞ。
と心底愛おしいそうに天子の胸を誉めそやす。

「はぁ……んんっ……やちお……いじわる、やだぁ、もっとぉ」
「もっとなんだ?」
「やぁ!はずかしいこと……ふぁ!……いわせないでぇ!きのうみたいに、やさしくしてよぉ」
「そういうわりには、ワシに虐めれる度、天子の心の臓はどくんどくんと言っておるではないか」
「そ、それはぁ……ひぅっ!……おねがい、いじわるしないでぇ、もっとつよくしてぇ」
「もっと強く乳を苛めて欲しいのか?」
「いじめてぇ、おっぱい、もっとつよく、ちくびもちょくせつさわって、いじめてよぉ」
「まったく、天子はいやらしく、可愛いな」

夜智王の言葉責めに、羞恥に染まりながらも、興奮を募らせてゆく天子。
はぁはぁと喘ぐ彼女を寝具にそっと押し倒し、薄紅色に染まった白皙の肌に舌を伸ばす。
吸い付くような感触を楽しみながら、天子の胸の最も敏感な突起へと舌を這わしてゆく。

「くぅ……く、くすぐったいよぉ」
「ほんに愛いらしい胸だ。敏感で、すっぽり男の掌に収まって、ほれふにふにとやらかい。見る目の無い男共に感謝せねばな」

まだ未開発の、それゆえに育て甲斐、仕込み甲斐のある、淡い膨らみを舐め、つつき、摘まみ、揉みしだき、存分に弄ぶ。
それでもまだ足りないのか、天子は甘い喘ぎを切なそうに漏らしながらも、いやいやと首を降る。

「もっとつよくしていいよぉ……ほんとに、おかしくなっちゃう……ねぇやちおぉ」
「これ以上は痛いぞ?」
「いたくても……いいよ……んんっ!」

乳輪をなぞるように舐めながら、きゅっと少し強めに夜智王が胸を掴む。

「これくらいか?」
「もっとぉ……さきっぽも……じらさないでぇ。そこがいちばん、ちりちりするのぉ」
「痛いくらいが良いとはなぁ。天子は変態マゾか?」
「ちがうもん!てんしまぞじゃないもん!やちおうが……ふぁぁ!」

ぐにゅっと夜智王の手が天子の胸を絞り、懇願するように震える乳首を、甘噛みすると天子が甲高い喘ぎを漏らした。

「いいよぉ……いまくらい……ひぅ!」

唇で乳首をやや乱暴にしごいてやるたび、あんっ!やぁ!と嬉しそうに天子が声を上げる。

「やはりそうだな、天子は苛められるのが好きなのだろ?」
「ちがうもん!やちおうがいじわるなだけだもん!あんっ!」

ぎゅっと乳房を絞りながら、乳首を咥えた夜智王が、ちゅうちゅうと音を立てて、乳首を吸う。

「ひゃ……ぁ!……すっちゃ!……だめぇ!おっぱいのびちゃうよぉ!」

吸引したまま乳房を引っ張ると、初めての刺激に肢体を仰け反らせて天子が大きく痙攣する。

「ほほふぁひひはひもひひょふぁほうふぁ」
「しゃべっちゃ……やっ!あっ…・・・ひぅ!……いっ!……だ、だめ…いっ…あっ!」

甘い喘ぎと吐息を吐き出し、一層大きく天子の体が仰け反り、次いで力を失いぐったりと寝台に身を投げる。
乳首から口を離した夜智王は、くすりと意地悪な笑みを浮かべると、涙と涎でぐずぐずの天子の顔を舌で清めてやる。

「イったな」

耳元で囁かれた天子が、羞恥に顔を歪め、ぽかぽかと力なく夜智王の胸元を叩く。

「いじわるぅ!やちおうのばかぁ……やさしくしてよぉ」
「それは昨晩たっぷりしたろう?」

今度はワシを愉しませてくれや、と夜智王が蠱惑的な声で囁く。
耳に触れる吐息すら心地良い、天子の意思とは裏腹に体は快楽の海へと深く、深く溺れていくようだった。
恐ろしいのに、天子の胸の奥を、抑えがたい感情で塗りつぶされてゆく。

「それに天子。そなた昨晩より快楽に覚えておろう?」

認めたくない事実を指摘された天子が「ひぅ」と息を飲む。

「いいではないか、ワシは普段は優しいが“する”時は結構女子に意地悪だし、相性ばっちりだぞ」
「やだぁ、そんなのやだよぉ」
「ふふ、口ではなんとでもいえるが、体は素直だな?ほれ、びしょびしょだぞ?」

天子の秘裂から溢れでる蜜で、股間はしとどに濡れていた。
それを指摘された、天子の顔がくしゃりと歪み、ぽろぽろと大粒の涙が零れ始める。

「ひどいよぉ……やちおうのばかぁ、いじわるぅ……ひっく!うぇ……ひぅ……」
「泣かんでも良いだろう。ワシの愛撫で天子が気持よくなった証だぞ」

絶頂後でまだ敏感な体を、やわやわと夜智王は愛撫する。
絶妙な快美感に天子は打ち震える。

「だって、だってぇ……はずかしいんだよ?だからぁ」
「ワシと天子の秘め事だろう?何を思い悩み、恥ずかしがる必要がある、」
「ひめ……ごと?」

陰々と響く、蠱惑的な夜智王の声が、催眠術のように天子の意識を朧にしてゆく。

「そうだ、ワシは閨での秘事を誰かに言い触らすような下衆ではないぞ?一夜の情事ゆめだ、溺れれば良い」
「ゆ……め?」
「そうだ、夢だよ、天子は悪い蛇に誑かされただけだ」
「だよ……ね?てんしは……」
「そうだ、天子は何も悪くない」


だから、ほれ“素直になれ”


そう夜智王が囁くと、天子の理性が溶け落ちた。







「あっ……やぁ……もぉ、やちぉ、あかちゃんみたいだよぉ……おっぱい、そんなに、んっ!すきぃ?」
「ああ、好きだな、言ったろう?小さな乳を大きくするのが好きだと」

寝具の上で二人の男女が淫らに交わる。
夜智王は、膝の上に乗せた天子の胸を強く愛撫してやる。
芯からほぐれ、ぷっくりと膨らんだ可愛らしい天子の乳房が、ぐにぐにといやらしく形を変える。
天子は、愛撫に喘ぎながらも、拙い手技で夜智王の肉棒を責める。
自分の愛液でべとべとにした剛直をにゅるにゅると上下にしごきあげる。

「てんしのおっぱい……おおきくなる?……ひぅ!やぁ、すっちゃだめぇ!!てんしおちちでないよぉ!」

よほどに気持ちが良いのか、ちゅうちゅうとわざとらしく夜智王が音を立てて吸う度に天子が嬌声をあげる。

「天子は吸われるのが好きなのだな」
「そんなんじゃ……あ、んっ、かむの、だめぇ!」

くりくりと乳首を甘噛みされると、強烈な刺激に天子がびくびくと小刻みに痙攣する。
赤く歯形の付いた乳首を労るようにぺろりと舐め、夜智王は一度胸から顔を離す。
荒く肩で呼吸する天子の耳元に顔を寄せると、喜悦を含んだ声で囁きかける。

「やはり痛いのが良いのだな」
「またいじわるぅ……てんしまぞじゃないもん……ひぅ!」

耳朶に噛み付かれた天子が黄色い悲鳴を上げる。

「みみぃ……いやぁ……かまないでぇ……なめちゃだめぇ」

ふるふると震える天子。その耳を存分に弄び満足したのか、ようやく夜智王が口を離す。

「少なくともワシを満足させる程度にはマゾだな」
「もぉ……どっちでもいいよぉ……やちおうのばかぁ」

拗ねたように天子は言うと、反撃とばかりに思い切り夜智王の肉棒をしごき始める。
負けじと夜智王もゆるやかに天子の胸を撫で回す。

「はやくだしてよぉ……ふぁぁ……しろいの、せーえきだして、ちっさくしてぇ、もう……はぁ……てんしがまんできないよぉ」

すっかり「恥ずかしい」とは言わなくなった天子だが、まだ怒張しきった剛直を受け入れるのは怖いらしかった。
上気した頬、甘く熱く荒い呼吸、すっかり発情した様子で、懸命に夜智王の男根を愛撫する。
しかし、びくんびくんと断続的に震えてこそいるが、夜智王の肉棒はまだまだ余裕らしく、一向に精を吐き出す気配は無い。

「やちぉ……」
「そんなに頑張らんでも、このままでも平気ではないか?」

しとどに濡れた天子の女陰へ、夜智王の指が触れる。

「ひぅ!あっ!……はぁぁ……だめぇ、いま、さわっちゃ、やっ!……くぅぅん!」

紅く染まった陰唇をなぞってやると、切なそう喘ぎを天子があげる。
視覚が封じられているせいか、触覚が鋭敏になっているのだろう、触れられただけで、まるで挿入れたかのように、天子が喘甲高い喘ぎ声をあげる。

「んっ……だめっ……やっ、あ……んぅ!」
「何がだめ、だ。もうここは我慢ならんと言っておるぞ?別に一度抜かんでも挿入はいるのではないか?」
「やだっ!こわいの!……あっ、やっ、ゆび、いれ、きゅぅぅん!」

天子の懇願を無視し、つぷり、つぷりと、何の抵抗もしない秘裂へ、ゆっくり指が挿入れてゆく。

「ほれ、もうとろとろだ、このまま手を全て飲むのではないか?」
「やっ……ふぁっ!……そんなの、むりだよ」
「冗談だよ、そんなに嬉しそうにするな」
「うれしそうに、んっ……くぅ、してない、やぁ!そこ、こすっちゃだめぇ!」
「もっとして欲しいのだな、わかったぞ」

一本から二本に増えた指が、膣中の敏感な部分をぐりぐりと弄り、その度天子がひぃひぃと喘ぐ。
鋭敏になった感覚のせいで、体内を弄られている感触が、はっきりと分かる。
淫らな水音もまるで耳元で鳴っているかのように感じられる。
むせかえるような、発情した自分の体臭に溺れそうになる。

「大丈夫そうだな」

指を抜いた夜智王が天子の上に覆い被さってくる。

「やだっ、むりだよ、ばか!やちおうのばか!いじわる!いじめっこ!どえす!」

恐怖をごまかすように、ぐいぐいと夜智王を押し退け、口汚く罵る天子。

「いきなり突っ込んだりはせん、そう怖がるな」

そう言い、目隠しを取る。
ようやく暗闇から脱した天子の視界に、優しげな笑みを浮かべた夜智王が写る。
それが内心のいやらしさと意地悪な加虐性癖を隠す笑顔だと、分かっているのに天子はどうしようもなく、その笑顔に魅了される。
頬を紅く染め、媚びた表情を作り、眼を涙で潤ませて、甘えた声で夜智王に懇願する。

「ゆっくり……だよ?……むりやりはやだよ」
「そう怯えるな、大丈夫だといったろう?」
「ひっ!」

夜智王が腰を進めると、濡れぼそった秘裂に亀頭が触れ、ちゅく、と淫らな音を立てる。
指とは比べ物にならない、粘膜同士の接触がもたらす快楽に、びくんと大きく震えた天子は、ぎゅっと目と口を閉じて、男根の侵入に耐える。

「力を抜け、かえって苦しいぞ?」
「む………りぃ」

労るように、焦らすように、ずりゅずりゅと先端で秘裂を愛撫しながら、ゆっくりと先端を天子の膣内へ侵入させてゆく。

「は、はぁ……くぅ……だめ、だめぇ……やっぱりだめ、やめて、やちぉ」
「無理矢理突っ込んだりせんと言ったろう?」
「ふぇ?」

すっぽりと亀頭が埋まった辺りで夜智王が侵入をやめる。

「あっついよぉ、やちぉの……やけどしちゃいそうだよぉ」
「天子のここも熱いぞ?おあいこだ」

極々浅く抽送を開始する。
前後だけでなく、上下左右に肉棒の先端を使って、ぐりぐりと天子の膣口を弄くり始める。

「あ……んっ!……あんっ!や、やちおぉ……」

当初は女陰への愛撫に喜悦を含んだ喘ぎを天子が漏らす。
だが、徐々にそれは変化し始める。

「(やだ……おくのほぉが……うううう)」

膣内の最も鋭敏な部分や、最奥しきゅうがずくずくと疼く。
丹念な入り口への愛撫に昂た密壺が、否応なしに男の訪れを求め始めたのだ。

「あ……あんっ……いっ……ああぁ」

なのにソコには一向に刺激が訪れない。
もう少し、ほんの少し奥まで突いてくれればいいのに。
先刻指で苛めてくれた場所を、先端のエラで擦って欲しいのに。

「や、やち……あぁ……もう、だいじょぶ……ふぁ!……もちょっとおくまでぇ」

顔を紅潮させた天子が潤んだ瞳を向けて必死に訴えるが、夜智王は応えず、入り口の愛撫ばかりを続ける。
優しい笑み、しかし瞳は底意地の悪い光を孕みながら“嗤って”いた。

「いじわるぅ」
「何がだ?」
「(や、やだぁ……こしが、かってにぃ……こわいのにぃ!)」

耐えかねたように天子の腰が、肉棒をより深く飲み込もうと天子の意思に反し蠢く。

「おっと」
「あんっ!」

さっと夜智王が腰を引いて、肉棒が先に進まないように妨害する。

「やぁ……やちおぉ」
「怖い怖いと言いながら、腰を使いおって」

悪い子だなぁ、と愉しそうに蛇が囁いてくる。

「だって、だってぇ……いじわるしないでよぉ、おくのほうが、うずうずして、じんじんするのぉ」
「我慢せい、もう少しで慣らしてからだ」
「がまんできないぃ……んっ……もうちょっと……やぁ!いじわるぅ」
「わがままだのぉ」

呆れ果てた様子でそう言った夜智王が動きを止める。

「……本当に良いのか?」
「うん……もぉじらさないでぇ」
「どうして欲しい?ん?言ってみるといい?」

揶揄うような口調で夜智王が問う。
恐怖よりも快楽が勝ったのか、震える唇で天子が淫らな言葉を紡ぐ。

「お、おくまでちょうだい……」
「何を?」

畳み掛けるように、夜智王が問う。

「ふ……ふとくて、あっついの……やちおうの、ち…・・・つっこんで、ぐ、ぐりぐりして……てんしの……なか、かきまぜて、いじめてぇ!」
「いやらしい娘だな」

だが、よく言えたな、ご褒美だ。
そう囁き、夜智王は腰を一気に進めた。

「ふぁ!んっ……あっつくて……はぁぁ……かたいのぉ……やちおうのが、あたしのなかにはいってるよぉ」
「するりと挿入ったな」

怖がっていたわりには、散々に焦らされたせいだろう、あっさりと男根を飲み込んだ。
先端が膣中の奥、子宮口と接吻を果たすと、びくん!と大きく天子が震え、弓なりに体を仰け反らせ、ようやく満たされた快楽を受け止める。
そこまではぬるりと肉棒を飲み込んだ柔肉が一気に締り、逃がさないとばかりに蠢く。

「えらく淫らに動いておるぞ?」
「あんっ……だってあんなにいじめられたらぁ……あんっ!おくに、あたったてるよぉ、ぐにぐにしちゃだめぇ」
「天子の中の口は最高に気持ち良いぞ?さきっぽをきちきちと締めてくるくせに、とろとろに柔らかい」
「だめっ!そんなについたらぁぁ」
「ここを苛めて欲しかったのだろう?安心せい、まだ出さんから、一度イッてしまえ」

子宮内を犯すような強さで、ぐりぐりと亀頭が奥を突く。

「いいのぉ……きのちいいのぉ……おくに、おくにはいっちゃいそうなのにぃ…きもちいいよぉ!」
「さよか、ではもっとぐりぐりしてやろう」
「んっ……だめぇ……また、またいっちゃうよ…やちおう、て、てにぎってぇ」

胸を苛めようとしていた夜智王だが、伸ばされた天子の手を取ると、ぎゅうっと天子が握り返す。

「は、んんっ!いく、いっちゃうの、や、やちおうも、いっしょにぃ」
「んーワシまだ平気なのだがなぁ」
「やぁ!やだぁ!いっしょにいってぇ!あっつくて、しろい、せーえき、だしてぇ!」

しかたないのぉ。と笑った夜智王が、ぐいっと腰を進める。
先端が子宮内へとめり込む。

「あっ!やぁ!だめぇ、なかに、なにかはいってるぅ!いっ、あっ!やっ、んんっ!!」

頂戴、頂戴と、天子が懇願してくる。あまりに可愛らしいその様子に、ちとやりすぎたな、と思いつつ、夜智王は天子の願いをかなえてやることにする。

「まぁ、いいか……ほれ、出すぞ」

必死に絶頂を迎えまいと耐える天子の子宮内に、あっさりと夜智王は精を吐き出した。
間欠泉のような勢いで、一晩中溜め込まれた精が放たれ、子宮の壁にびしゃりと叩きつけられる。

「っ!!!」

子宮の中に熱湯を注ぎこまれたような刺激に、全身を痙攣させ天子が絶頂を迎える。
爪が食い込むほどに夜智王の手を強く握り締めその快楽に耐える。

「やっ!まだ、でてるぅ!ああんっ!」
「天子が締めておるからだぞ?」

痙攣し、収縮し肉棒から精を絞りとる膣肉の感触を楽しみながら、鼻歌交じりに夜智王は延々と精を吐き出し続ける。

「やぁ、こんなにだされたらぁ、あかちゃん、ひぅ!できちゃうよぉ」
「孕め、孕め。乳もでかくなるし、存分に吸ってやるぞ」
「やぁ、へんたい、やちおのばかぁ!」

ようやく射精が止まり、内部を責められるのが終わり、ぐったりと天子が寝台に身を投げ出す。

「こらこら、一休みは早いぞ?まだまったく腰をふっとらんのだから、このまま抜かず三発とまいろうか?」
「や……あぁ、ちょっとやすませてぇ」
「なに、体の頑丈な天人殿なら平気だろう」

嬉しそうに「だめぇ」と鳴く天子を抱き寄せ、夜智王は腰を使い始めた。











「夜智王の意地悪ぅ……」

灯り取りの窓から日の光が差し込む。
時刻はすっかり昼である。
前から後ろから、散々に責められ、蜜壺を突かれ、天子は喘ぎ、乱れに乱れて、何度も絶頂を迎えた。
夜智王もたっぷりと天子の膣中を味わい、大量の精をその最奥にぶちまけた。
限界を向かえた天子が、再度気絶するように意識を手放し、夜智王の腕の中で眠りに落ちる。
夜智王の手を握り締め離さない天子に微笑しつつ。
器用に片手で、体液で汚れた天子の体を清める。
涙で腫れた顔に絞った手拭いを置いて冷やし、乱れた髪を手櫛で鋤いてやっていると、天子が寝言で夜智王の悪態を吐き始める。
どうやら夢でも見ているらしい。

「てんし……まぞじゃないもん……ばかぁ」

可愛らしい寝言に「どんな夢をみておるのだ」と苦笑しつつ、夜智王は引き寄せた壺中天から銀色の香炉を取り出す。

「まぞじゃないよぉ」
「わかった、わかった…まぁ天人は体が頑丈な分“鈍い”のだろうな」
「やちおうのちろー」

おいおい、と思いながらも、準備の出来た香炉に、練香を放り込むと、何やら妖しい薫りが香炉から立ち上ぼり、部屋を満たして行く。
ぴくり、と反応した天子だが、二三度鼻をぐずらせたのち、香の効果なのか、すぅと深い眠りに落ちて行く。
責め立てられ憔悴しきった表情が、和らぎ、すやすやと健やかな寝顔に変わる。

「(ちと、やりすぎたな……ワシとしたことが……)」

天子の痴態が可愛らしかったとはいえ、素人娘には少々過ぎる責めだったな。
そんなことを考え、自嘲気味な苦笑を浮かべている夜智王の耳に、トントンと扉を叩く音が響いた。
戸口の外に誰かの気配がある。

「開いとるぞ」

すっと、目を細め、返事を返すと、扉が引かれ、女が一人入って来た。
フリルの付いた羽衣、と悩ましげな肢体が目についた。

「(丁度良い、よりはややでかいが、でかすぎない、うむ絶妙。つんと澄ました感じが、ワシ好みだな)」

幾重にも重ねられたフリフリが邪魔くさいが、それでも女の胸部を押し上げる、豊かな膨らみが目を引く。
そんな夜智王の視線を遮るように。
帽子を取り胸元に当て、慇懃に女が礼をする。

「お初にお目にかかります夜智王蛇殿。私は龍神様のお使いをしております。永江衣玖と申します」
「ああ……話には聞いておるよ。天子のお目付け役をやらされとるようだな」

夜智王だ、敬語はいらんよ。と返すが、衣玖は慇懃な態度を崩すことなく「ええ、まぁ……私も夜智王殿のお噂は聞いておりますよ」と微苦笑で返す。

「で何用だ?」
「この度は総領娘様がご迷惑を……かけてはいないようですね?」

眠る天子を見て衣玖は敏感に状況を察したらしく、どうしたものか、という顔をする。

「そうだな、ワシは寂しがり屋で甘えん坊な、傷心の天子を、慰めるフリをして、だまくらかして喰っただけだ」

迷惑ではないなぁ。と偽悪的な態度で夜智王は嘯く。

「寂しがり屋の、甘えん坊……ですか?」

突拍子もない夜智王の言に、表情を取り繕うに失敗した衣玖が酢でも飲んだような、微妙な表情で問う。
夜智王は無視して、慈しむように天子の頭を撫でる。
くすぐったそうに身をよじった天子が、ふわりと、無邪気な笑顔を浮かべ、それを見た衣玖は、言葉を失う。
傲岸不遜にして有頂天変な天人の少女は、そこに居ない。

「(これが夜智王蛇……幻想郷一の“女誑し”ですか)」

背中に冷たいものが伝う。
そんな衣玖を無視し、蛇は大仰な仕草で自説を唱え始める。

「それにな、女子の迷惑を掛けられるのは、男の甲斐性であろ?まして天子のような可愛い娘ならば、むしろ歓迎してしかるべきというものよ」
「……さすがは夜智王殿。噂以上の大物でいらっしゃいますね」
「はは、世辞はやめい、こそばゆいぞ?……さて衣玖殿や、そなたとも親交を深めたいのは山々なのだが……今は取り込み中でな?これからワシは天子といちゃいちゃしながら一眠りせんといかんのだ」

だからまた後日改めて、ああ無論夜も更けてから訪ねてきてくれるかな?
と衣玖の豊かな胸に向かって夜智王が笑顔を向ける。
逆に笑顔を凍り付かせた衣玖は、恐る恐る夜智王に訪ねる。

「では一つだけ……夜智王殿……この香は何です?」

衣玖がのこのこと夜智王の許に訪れた理由。
それは夜智王が焚き染め始めたこの香だった。
明らかに尋常の香ではない。
好きでお目付け役をしているわけではないが、天子が妖しげな香の虜になるのを見過ごす訳にもいかない。

「ああ、そなた存外天子の事を大事に思うておるのだな?」
「……」
「安心せい、ただの安眠の香だよ」
「嘘ですね?」
「嘘ではないよ。“悪い夢”を喰ってくれる香さ」

敏感に悪い夢、というのが何かを衣玖は察した。

「ワシとしたことが天子があまりに可愛かったので、少々やり過ぎた。正気に帰った後発狂しそうで怖い」
「無かったことにする……忘却の香ですか?」
「そんなもったいないことをするものか。昨夜の醜態をうすぼんやりとさせる程度のものだ。名にかけて、誓っても良いぞ」

なんと傲慢な、衣玖は内心で吐き捨てる。
散々に弄んだ癖に、親切ごかしてそれを無かったことにするなど、男のエゴそのもではないか。
だが同時に、それが天子の為であろう、とも思う。
この蛇が「やりすぎた」というのは、相当のことだろう。
プライドの高い天人の少女が果たして耐えられるか?

「……嘘では無いようですね」

零落したとはいえ元は神。それが誓う、というのだから、真実なのだろう。

「さぁこれ以上は野暮だぞ衣玖殿。また今度な」

爛と夜智王の金色の光彩が妖しい光を放つ。

「これは失礼を致しました」

再び慇懃な態度の鎧を纏い、丁寧に退去の礼をしながらも。
まっぴらごめんです。そう内心で呟き、早々に衣玖は退散を決め込む。
二度とあの蛇に関わらないよう、そう天子に言い聞かせなければ。

「とばっちりはごめんですよ……」

そう呟かざるを得なかった。

























あとがき。
お詫びをかねたおまけなのに一月も空いちゃって誠に申し訳ないです
元の原稿が雑だったのと、やはり暫く書いてなかったせいか、どうにも良い文章が書けませんでした。
天子が可愛く書けなくて悶絶しまくりでした^^;
次回は地霊殿編の続きを鋭意執筆中ですのでそちらになるかと。
あと魔理沙おしおき編もどこかで投下したい次第です。
あまりお待たせせずに投下したいです。本当に……
あとノクターンノベルの方も二次創作がOUTになるそうで。
東方がなろう公式の二次OKリストに載らないと撤退になりそうです。



[26700] 東方蛇精譚・零れ話 御阿礼の子と蛇
Name: 窓◆0bf2c45e ID:b20dbb99
Date: 2013/02/27 06:17
幻想郷の人里。稗田邸。
九代目阿礼乙女、稗田阿求は物思いに耽っていた。
原因は昨日訪ねてきた一匹の蛇だった。

「はぁ…」

物憂げな吐息を漏らす。

「どうしよう…胸が苦しい」

久方ぶりに幻想郷戻ってきた夜智王。
六代目以来の邂逅である。
一度見聞きしたことを忘れない、求聞持の能力を使い、幻想郷の歴史を綴る…幻想郷縁起を編纂する。
それが阿礼乙女の役目である。
その為に特別な秘術を使い、彼女は能力と記憶を持ったまま転生する。
とは言え、全ての記憶を持って転生する訳ではない。
ただ、一匹の蛇に関してはそうではなかった。
阿礼の頃からの知り合いであった。
彼が日ノ本の歴史を綴る際に、いくつもの古い知識を教えてもらったのも、かの蛇だった。
もっとも、かなり明け透けな夜智王の語る歴史は、史書として編纂するには敵さず、大分脚色しなくてはならなかったが…

「三代目がいけないのです…」

過去の自分を罵る。
三代目の犯した過ちこそが、今阿求を悩ます原因だった。

二度の転生を経て、彼女は弱っていたのだろう。
転生の弊害で若死するという運命。
わずかな人生も縁起の編纂と、転生の儀式の準備に費やされる乾いた日々。
十代半ばにして三代目は生きることに疲れ果てていた。
丁度幻想郷にやってきた夜智王に、三代目は泣き付いた。
蛇は黙って彼女を慰め…ごく自然な流れで二人は一夜を共にした。

「はぁ…」

能力故に、能力など無くとも、忘れ得ぬ夜。
それが阿求を悩ませる。
意識の奥底に沈んでいた記憶が、夜智王に再会したことで蘇ったのだ。

「どうしましょう…この年齢で性欲を持て余すなんて…」

あの性悪蛇のせいだ。

「せめて、もう少し大人の身体であれば…」

いやいやいや、何を考えているのか。
はぁ、ともう一度悩ましい溜め息を吐く。
八つ当たりするように、求聞史記の夜智王の項目を悪意に満ちた文章で綴って行く。
三代目が綴った縁起の彼の項とは逆に…

「これを見たら怒鳴りこんでくるでしょうか…」

抗議には来るだろう、苦笑気味に。
そして慰謝料として酒をたかるだろう。

「慰めて貰おうかな…」

三代目の時のように泣き付けば、彼は拒まないだろう。
別にいやらしいことはしなくても良いのだ。
ただ、妙に包容力のある彼の腕の中で愚痴を言わせて欲しい。
七代目と八代目の分も合わせて。

うん。そうしよう。
そう決める阿求であった。




三代目阿礼乙女阿未記ス蛇妖ノ事

名ヲ夜智王
其性有情ニシテ人ニ親シキ蛇
色ヲ好ミ、酒ヲ愛ス、オカシキ蛇
努々気ヲ許ス事無カレ


九代目阿礼乙女、阿求記す。

好色なる蛇。名を夜智王と称す。

人間友好度、高
危険度、極高

幻想郷で最も恐ろしい蛇妖。
再生する程度の能力を持つ他、小手先の妖術を使い、水蛇であるためか水を操る事もある。
詳細は不明なれど、零落した神であるとも言われ、長い時を生きている。
そんなことや、彼の能力としてはどうでもよいことで。
彼の危険性はその色を好むこと、人をたぶらかすことにある。
老若男女自在に変化するため、誰にとっても危険。
話術、詐術を用いて巧みに人を惑わす。
命の危機は無いが、貞操は勿論道徳観念も破壊される怖れ有り。
遭遇した際には、酒を飲ませると良い。
ただしどんなに誘われて自分が飲んではいけない。
その能力ゆえ、通常の手段では退治するのは不可能に近い。
彼の蛇への最大の対処は逃げることである。







「(熱は、落ち着いたみたいですね……)」

布団から出した手を額に乗せた阿求は、幾分下がった気のする体温に、ほっと安堵のする。
季節の変わり目に寝込むのは珍しいことでもないが、今回はかなり熱が出てしまい、家人は大いに慌てた。
上に下に大騒ぎの末、迷いの竹林から薬師の八意永琳が呼ばれ、まぁ熱は下がったのだが。

「坐薬かしら?」

と謎の呟きと共に妙にいい笑顔を浮かべた彼女は、ひっくり返した阿求の尻に謎の薬を突っ込んだ。
恥ずかしさのあまり、いっそそのまま死にたくなった阿求であった。

「はぁ……」

寝込むのは慣れているが、好きではない。
まんじりともせず横臥していると、普段は意識しないこと。
己の宿命、そう遠くもない将来のこと……つまり「死」を意識してしまうからだ。
ふるふると首を振り、嫌な想像を振り払う。

「(誰か見舞いにでも来てくれれば気が紛れるのですが……)」

こんな夜更けに見舞いが来るはずもなく、気を紛らわせるべく、何か楽しい事を考えようとする。

昼間見舞いに来てくれた慧音の話を自然と思い出された。
寺子屋に見知らぬ子供がおり、それが人外と気がついた慧音が、捕まえてみればそれが子供に化けた夜智王だった、というのだ。
何をしに来たと問い詰めた所。

「慧音殿の乳を眺めに」

と堂々のセクハラ宣言、当然怒り心頭に達した慧音の頭突きは夜智王が気絶するまで続けたらしい。
生真面目な性格の慧音はぷりぷりと怒っていたが、横の妹紅が「あいかわらずだな、あの蛇は」と微妙な笑みを浮かべていた。

「(知り合いなんでしょうか?)」

それにしても、慧音の怒りっぷりと、相変わらずの夜智王に、くすりと阿求の顔に笑みが浮かぶ。
夜智王は騒動を撒き散らすが、起こす騒ぎはいたって平和な物だ。
くすりと笑いながら、喉の乾きを覚えた阿求は身を起こし枕元に置かれた水を飲む。
乾いた喉に、冬の夜気に冷えた水が心地よく滑り落ちてゆく。
ほっと一息吐くと、今度は汗に塗れた寝巻きと体が酷く不快であることに気が付く。
あいにく替えは用意されていないので、せめてと水桶とともに置かれていた手ぬぐいで体を拭うことにした。

「……はぁ」

袷を緩めるとつい己の胸元に視線が行く、思わず悩ましげな嘆息が漏れる。
まだ幼い体ゆえ仕方ないことだろうが、あまりに平らな胸板であった。
先刻話に出た慧音あたりと比べると、一層悲しくなる。

「(ちゃんと膨らむのでしょうか、心なしか標準以下な気がします……)」

女として生を受けたのは初めてではない。
薄ぼんやりとした記憶を紐解いても、此度の体はいささか発育不良な気がしてならない。

「むぅ……」

思わず両手を胸に当て唸る。

「なんじゃまだ乳の大きさを気にする歳でもなかろうに」
「それはそうですが……っ!?」

思わず返事をしてから、阿求は息を飲み、恐る恐る背後を振り返る。

「どうした?」
「きゃぁ!」

なんでもないことのように小首を傾げる夜智王に、可愛い悲鳴を上げ阿求は慌てて布団を被る。

「夜智王さん!?な、なななんで!?」

布団ごしのくぐもった悲鳴が部屋に響く。

「おう、寝込んだと聞いて見舞いに来たが、思ったより元気なようだな」
「い、いきなり入ってこないで下さい!」
「てっきり寝ておると思ったのでな」
「寝てる私に何をする気ですかっ!?」

すぽん、と布団から首だけ出した阿求が必死な様子で抗議する。
その珍妙な格好の可愛さに夜智王はクスリと笑いを漏らした。

「なんもせんよ」

布団に生えた阿求の頭に手を伸ばし、寝乱れた髪を整え、いいこいいこと、子供にするように頭を撫でる。

「う、嘘です!」

頭を撫でられ、幾分動揺した声で阿求は言い返すが、その顔は羞恥に染まり、表情には抑えがたい喜びの感情が含まれていた。

「信用が無いの、ワシは」

カカカと自分のことであるのに、気にした風もなく蛇は愉快そうに笑った。

「どれ」
「ひゃ!」

するりと阿求のおでこに夜智王の手が伸び、おかっぱ髪の前髪を上げるとこつんと額同士を接触させ熱を計る。

「な、ちょ、や」

かぁぁ、と恥ずかしさから阿求の顔が紅潮してゆく。

「ふむ、まだ幾分熱が有るようだな」

それはあなたの顔が近いからです!と怒鳴りたい阿求であったが、実際には舌が縺れ言葉にならない。
ばくんばくんと心臓が脈打つ音が耳の奥に直接響いてくる。

「動悸も激しいようだし、大丈夫か?」

するりと伸びた夜智王の手が優しく阿求の背中をさする。

「だ、わた、あせ、くさ」
「うん?」

だから近いです!と阿求は叫びたかった。
寝込んで三日、着替えの度に体は清めてもらっているが、汗臭いはずだ。
そんな自分に近寄られるのはひどく恥ずかしい。

「ああ、そういうことか」

合点がいったのか、優しい笑みを浮かべた夜智王は「気にするな」と言いながら、ひょいと阿求の被っている布団をひっぺがした。

「ひゃぁああああ!な、なにをするんですかぁ!」
「寝汗に濡れて気持ち悪いのであろう?」

ワシが拭いてやろう、と阿求を抱き寄せる。

「い、いいです!」
「遠慮せんでええぞ?」
「い、嫌がってるんです!」
「嫌がらんでもよいではないか、そのままではまた具合が悪くなるぞ」
「や、やぁ……」

弱々しく抵抗する阿求に構わず、夜智王は慣れた様子で帯をほどき、阿求をつるりと剥いてしまう。
さっと取り出したバスタオルで幼い裸身をくるむ。

「寒くはないか?ちょっと待っておれよ」
「え?」

スパンと障子戸が開いて、そこから大きな盥が侵入してくる。
大人ならともかく阿求のような小柄な子供ならすっぽりと入る大きさだった。
盥には手足が生えており、しずしずと歩いて寝室へと入ってくる「ご苦労」と夜智王が労いの言葉をかけると、どこか嬉しそうに手をばたばたさせる。

「(つくもがみ?)」

盥に満たされていた水に夜智王は手がつけると、ほかほかと湯気を上げ始める、どうやら夜智王は阿求に湯編みをさせようとしているらしい。

「よしいい塩梅だ」

抱き抱えていた阿求のバスタオルをひっぺがすと、ひょいと盥湯に入れる。

「ふぁ……」
「熱くはないか?」
「だ、だいじょうぶです」
「そうか」

腰まで阿求を湯に浸けると、夜智王は手桶を取りだし湯をすくい、肩から湯をかけてやる。
久々の湯編みの心地好さに、阿求は「ほぉっ」とか「はぁぁ」と中々に悩ましげな吐息を漏らす。

「気持ちよかろ?」
「ふにゅ……はい」

夜智王が術を使っているからだろう、盥の湯は冷める気配もなく、骨の髄まで湯が染み込むような快感に阿求はうっとりとしてしまい……そこではっと我に帰ると、己が素っ裸で夜智王に湯編みを手伝ってもらっていることを思い出す。

「や、ややややちおうさん!」
「なんだ?」
「じ、じぶんでできますから!」
「病人が遠慮するな」
「ですから遠慮してるのではなくて!」
「病人にやらしいことなどせんわ、見損なうなよ」
「それは……確かにそうですけど……」
「それとも何か?そんなに阿求はワシを意識しておるのか?」
「う!……うぅぅぅぅ……」
「お主がその気ならワシもやぶさかではないぞ?ん?」

ず、ずるいぃ!と内心で阿求は叫んだが、もはやどうすることもできない、観念して、というよりは捨て鉢な気分で夜智王に身を委ねることにした。

「よしよし、ようやく素直になったな」
「やちおうさんのいけず……」
「阿求が可愛いからつい苛めてしまうのだ」

そう言い夜智王はぼとりと湯の中に何かを落とす。
あっという間に湯に溶けたそれは香の類なのか、ふわりと柑橘類の香りが湯気と共に立ち上る。

「柚子湯……ですか?」
「体が暖まるぞ、何も危険なものは入っておらんから安心せい」

こころなしか粘り気を帯びた湯を掬って阿求の体にかけてやりながら夜智王はそう答えた。
半身浴だというのに少しも寒さを感じないのもこの薬のお陰か?と心地好さに身を任せながら阿求はぼんやりと思考する。

「どれ寝たきりで体が凝っておろう」

もはや反論する気力も無いのか、阿求はほにゃとした表情で湯を堪能している。
しばらく寝込んでいたせいで強ばった肩を丁寧揉みほぐし始める。
その手つきにいやらしいものは無く、労りに満ちてはいたが、時おりに阿求はびくりと身を痙攣させ「っん!」とか「ふぁ」と悩ましげな吐息が漏らす。
精神年齢と外見のギャップゆえ、その艶めいたその様子は酷く蠱惑的であり背徳的でもあった。

「なんなら豊胸マッサージもするか?」
「文さんに言いつけますよ」
「……怖いことをいうでないよ」

文に噛みつかれる恐怖を思いだした夜智王がぶるりと震える。
その様子に阿求はくすくすと笑いを漏らさざるを得なかった。



しばしの後、すっかり体の芯まで暖まり、ふにゃふにゃになった阿求を湯からあげると、丁寧に水気をバスタオルで拭き取り、新しい寝巻きに着替えさせる。
下着まで着せてもらい、もう阿求は死にそうな程に恥ずかしい。
しかも

「な、なんですかこれ?」
「パジャマという洋風の寝巻きだ、うんよぉ似合っておるぞ」
「丈がぴったりなんですが……」
「阿求の為にと用意したものだからな」

絹製らしいパジャマの着心地は確かに良いのだが、着なれない洋装に阿求はもじもじとしている。
その可愛らしい様子に夜智王は相好を崩し、可愛い可愛いと誉めそやす。
さらに恥ずかしくなった阿求は、いつの間にか用意されていた新しい寝具に潜りこむ。
布団を顔の半分近くまでひっぱり、恥ずかしさをごまかす。
風呂以外の理由でも熱くなった体を、新しい寝具の冷たさが適度に冷ましてくれる。

「そうそう、見舞いを持ってきたのだ、食べるか?」
「柿……ですか?」
「昔から柿が赤くなると医者が青くなると言うだろう?」
「そうですね」

身を起こした阿求に「体を冷やすなよ」と綿入れをかけてから、つるりと柿の皮を剥き、食べやすい大きさに切り分ける夜智王。

「おいしそうです」
「旨いし甘いぞ、佐渡の柿だ」
「佐渡?外界のですか?」
「ああ「おけさ柿」というらしい」

結構値がはったぞ、おかげですっからかんだ、と夜智王はぼやく。

「どうやって手に入れたのですか……」
「そこは“蛇の道は蛇”よ」

くつくつと夜智王は笑う、どうやらこの蛇は大結界をすり抜ける術を持っているらしい。

「ほどほどにしないと怒られますよ」
「ま、いまさらだな。それに食せば阿求も同罪ぞ?」
「……ずるい言い方ですね」

ぶす、と阿求はむくれる。
しかし寝込んで以来重湯程度しか食していないせいか、柿はひどく旨そうで、ふわりと漂ってくる甘い香りだけで胃がきゅうきゅうしてくる、到底その誘惑には抗えそうにない。
皮を剥き終え、食べやすい大きさに切り分ける夜智王、皿におかれた一欠片に阿求の手がのびる、だが。

「あっ……」

ひょいと夜智王がそれを拾い上げ、満面の笑みを浮かべながら阿求の口許に寄せる。

「ほれ、あーん」
「じ、自分で食べれます!」

どこか嗜虐的な物を感じさせる笑みで、当たり前のように恥ずかしいことを要求する夜智王に、阿求が真っ赤になって抗議する。

「あーん?」

無視して夜智王は同じこと繰り返す。
再度抗議しようとすると、捨てられた子犬のような、寂しそうな表情を浮かべる夜智王。

「阿求は意地悪だな」
「なっ、なんでそうなるんですか!?」
「ワシがこうやって人と戯れるのが好きと、阿求は知っているのに、ワシが嫌と言われれば無理強いできないと知っておるのに……」

ぶちぶちと夜智王が文句を垂れる。

「う……」
「ワシは今日はこうやって手ずから阿求に柿を食わせたくて見舞いにきたのに、ひどいではないか」

まるで阿求が悪いような言い方であった。
断固として自分が悪いわけではないのは阿求も分かっているが、寂しげな夜智王の様子に、なんとも言えない罪悪感を抱いてしまう。

「阿求がそうやって意地悪するならワシも意地悪するぞ」
「えっ、ちょっと、きゃぁ!」

さっと阿求を抱き寄せると、ぐいと顔を寄せてくる。

「口移しで食べさせてしまうからな?」
「ま、まってください!」
「嫌だ」

そう言って、夜智王は顔を近寄らせてくる。
口移しなどと言いながら、その口には柿は含まれておらず、ただ少し意地悪そうに吊り上げっている。
このままでは接吻されてしまう。
きゅっと阿求が目を瞑る。
しかし

「誰が見てるわけでもないのだ、ワシに甘えても良いのだぞ?」
「え?」

唇ではなく、頬にそっと接吻した夜智王はそう囁きかけてきた。

「夜智王さん?」
「お主は忘れてしまったかもしれんがな、昔ワシに泣きついてきた三代目のこと、ワシは忘れておらんのさ」

二人きりの時は、ただの阿求で良いではないか。
そう蛇が囁く。
稗田の当主でもなく。
阿礼乙女でもなく。
ただの女子として。
どくん、と心臓が高鳴る。
誤魔化すように阿求は声をあげる。

「あ、あの時のことは……忘れて下さい……」
「嫌だ」
「もうっ意地悪!夜智王の馬鹿!」

思わず呼び捨てにする、昔のように。
なのに嬉しそうに蛇は笑った。

「そう怒鳴るな、あまり興奮すると体に毒だぞ」

誰のせいですか!と憤慨する阿求。

「ほれ、あーん?」
「う……」

観念したかのように、きゅっと目を瞑り、しぶしぶ口を開く。
恐ろしく間抜けな表情をしている気がするが、目を開けている勇気は無い。

「ん……はむ……こくっ」

つるりと柿は阿求の口の中に滑り込んだ。
芳醇な甘味が口一杯に広がる、種もなく、食べやすい大きさに切られているうえ、とろけるように柔らかいのでほとんど咀嚼する必要もなく、喉を滑り落ちていく。
かすかに酒の風味がするのは渋抜きに使われた焼酎の名残だろうか。

「おいしいです」
「であろう?ほれもう一欠け」

餌付けされてるみたい……と思わざる得ない阿求であった。










「わ、わたしは何てことを……」

翌朝、すっかり元気になった阿求だが、昨夜のことを思い返す度にぽんっと顔が赤くなり体温が上がる。
風呂の世話をしてもらい、素っ裸は見られる。
過去の恥ずかしい思いでは持ち出される。
あげく、赤子のように「あーん」させられる。
穴がなくとも掘って埋まりたい気分である。

「夢なら良かったのに……」

生憎夢ではなかった。
その証拠に枕元には、幾つかの丸々と太った柿。
それと「体に良いから寝酒にでもしろ」と夜智王手製の柿酒が残されていた。

「おはようございます阿求さま、お加減はいかがですか?」
「ひぅっ!」

真っ赤になっている所に家人がやって来た。
おもわず妙な声をあげて布団をひっかぶる阿求。
家人はすわ熱がぶり返した!と慌て、再度呼ばれた永琳によって(何となく事情を察していたにもかかわらず)坐薬をいれられるはめになる阿求であった。






















ピクシブの投稿テストだったものを加筆して投稿します。



[26700] 【番外編】宵闇小妖と蛇・前編【そーなのかーの日】
Name: 窓◆0bf2c45e ID:b20dbb99
Date: 2013/03/08 04:50
「ひっく!ひどいよ……ひどいよやちおー……うぇ、む、むりやりぃ……ひさしぶりだったにぃ……」
「あー、ルーミアや、誤解されそうな言い方は止めんかの?」

夜智王のセリフを無視し、金髪の幼女がびぇぇぇぇぇん!と火の付いたように泣き出した。
慌てた夜智王は彼女を抱え上げると、よしよしと赤子をあやすように慰める。
別段、無理矢理彼女を夜智王が手篭めにしたわけではない。
幼女……ルーミアの「食餌場面」に夜智王が偶然出くわし、それを邪魔したからだ。
ルーミアは、愛くるしい少女(とうよりは幼女だが)の外見とは裏腹に「人喰い」の妖である。
もっぱら「食べても良い人間」つまり外界から幻想郷に迷い込んだ人間を襲っては食らっている。

「どーして?ひっく!……やちおーのばかー!うぇぇぇぇん、るーみあのごはんー!」
「すまんかったよ、そう泣くな」

周囲を暗闇にする程度の力しか無いルーミアと夜智王では格が違う。
本能的に力の差を嗅ぎ別けているルーミアにできるのは、こうして泣き喚くことだけだ。

「これで……ひっく、にかいめだし。なんで?いつもやちおーは、るーみあのごはん、じゃまするのー?」

久しぶりの食べても良い人間だったのにー!ルーミアは泣き叫び続ける。
ばたばたと手足を振って暴れるルーミアを、夜智王は抱きしめよしよしと頭を撫でる。

「そんなこと言われてもなぁ、ワシは『助けて』と人に頼まれて無視できる性分ではないのだ」

お主も知っておろう?と夜智王は問うと「う~」とルーミアが唸る。
うっかり大蜘蛛の巣に引っ掛かってぴーぴー泣いていたルーミアを、夜智王が助けたのが二人の出会いだったからだ。
激しく泣くのは収まったが、ぐずぐずと泣きながら、きゅっと夜智王に抱きついたルーミアが「おなかすいたよぉ」と悲しそうに言う。

「ミスティアの屋台で何か食べるか?ワシが奢ってやるぞ」
「うなぎ食べてもまんぷくになるけど、おなかすいたままだもん」

幼い、矛盾した表現に夜智王は苦笑する。
言わんとすることは分かる、どれだけ空腹を満たそうとも、人食い妖怪は人を食わぬ限りその「飢え」が本質的に満たされることは無い。
なんとも難儀な話だった。

「ワシの指でもしゃぶっておくか?」
「いいの?たべちゃうよ?」
「指一本くらい、どうということは無いわ」
「……どうせなら腕一本くらいちょーだい?」
「図々しい奴だな。さっきまでぴーぴーと泣いておったくせに」

呆れた様子で夜智王は、ほれ、と腕を差し出す。
わぁ、と目を輝かせ、口の端から涎を溢しながらルーミアは、がぶりと夜智王の腕にむしゃぶりついた。








「もーむりー」

地面に寝そべり、ぷっくりと膨れた腹部をさすりながら、けぷっとおくびをもらす。
左手にはすっかり骨となった夜智王の腕を大事そうに抱えており、どうもおやつにでもするつもりらしい。
犬か、と苦笑せざるを得ない夜智王であった。

「さて」
「ん?なにするだー?」

ひょいとルーミアを抱き上げた夜智王はてこてこと歩き出す。

「前々から気になっていたのだがなルーミアや」
「?」
「お主、ちと臭いぞ」
「そーなのかー?」
「人事のように言うでないよ」

歯を磨く習慣などないのだろう、たった今夜智王の腕を完食したルーミアの口周りと口内からは肉と血の匂いが酷い。
よくよくみれば可愛らしいワンピースにも血らしき染みがあり、かすかに腐肉のような匂いもする。
それがどうした?とばかりに小首をかしげるルーミアを連れて夜智王は塒に戻る。

「ここがやちおーのねぐらか?」
「そうだよ」
「へー」
「さて、まずはほれ」

水瓶から柄杓で掬った水をルーミアに渡す。

「んっ……ぷっはぁ!うまい!おかわり!」

飲み干した……

「違う、口をすすぐのだ、ほれこうやって」

真似せいと、実演してみせると、ルーミアは素直に夜智王に倣って口を濯ぐ。

「よし、ほれ口を開けろ」

ひょいと指を口の端に掛けてむにゅりと引っ張る。

「むぃー!ふぁにひゅるらー!」

多少犬歯が鋭いが、他は至って普通の歯が並ぶルーミアの口内をまじまじと夜智王は眺める。
別段汚くはないが、やはり歯の隙間に筋肉のような物が挟まっている、これが口臭の原因だろう。
ちゃっと歯ブラシを取り出すと器用に片手で歯磨き粉を付けてルーミアを口内に突っ込む。

「むぃー!」
「少し我慢せい、すっとして気持よくなるから」
「むぃー!むぃー!」

どうやら歯磨き粉の薄荷臭が嫌らしい、涙目になったルーミアが間の抜けた泣き声をあげて抗議する。
じっとルーミアの瞳を覗き込み、暴れないよう金縛りの術をかけ、夜智王は丁寧にブラッシングを続ける。

「ふぃ……やひおー、やらー、むぃー」

だらだらと口の箸から歯磨き粉の混じった涎を溢しながらルーミアは泣く。
金縛りにあっているのに暴れようとしているせいだろう、顔が赤く染まっていく。

「やぁ……ふぁ……やらぁ……むぃ……ふぃ……」

喘ぐように泣くせいで(じわりと滲んだ涙のせいもあって)まるでいけないことをしているような風情である。
だが気にせず夜智王は丹念にルーミアの歯を磨く。

「むぃ……むぃ……」
「ま、こんな物か、ほれ口を漱げ」

金縛りを解き、水を含ませる。

「うぇぇ」
「おい、こら」

よほどに嫌だったのだろう、すぐさまルーミアは水を吐き出す。
ワンピースがべしょりと濡れる。
そして

「むぃぃ!!」

ガブリ
怒りの声と共にルーミアが夜智王の腕の思いきり噛みつく。
ギャー!と間抜けな夜智王の悲鳴が山野に谺した。










「やちおーのばかー!あほー!ばかー!」
「ほれ暴れるな」

額にキョンシーよろしく「噛む事を禁ず」と書かれたお札を貼られたルーミアがじたばたと暴れながら、ぽかぽかと夜智王を殴る。
汚れた服を脱がして洗濯しようとした夜智王だが、あまりに暴れるので果たせずいた。

「ほれ染みになるから良い子にせんか」
「やだー!あほばかー!」
「やれやれ……」

いっそまた金縛りか眠りの術でもかけるか、と夜智王が思案していると、ガラリと障子戸が開く音がした。
誰か来たらしい。

「おう文か、どうした?」
「何を……してるのですか……夜智王?」

はた目には暴れる幼女を押さえつけて裸に剥こうとしているようにしか見えない。
すぅっと文表情から感情が消えていく。

「おいおい文、勘違いするなワシは――」
「てんぐー!きけー!やちおーがひどいんだー!るーみあのくちにぼーつっこんで、ごしごしして、やだっていったのにーむりやり、しろいにがいえきのませ――むぃぎゅ!?」

誤解を招きかねないルーミアの爆弾発言が飛び出す。
反射的に夜智王は手でルーミアの口を塞ぐ「むぃーむぃー」と嫌がるルーミア。
だが夜智王はそれどころでない。

「文、誤解だ、今のは――」
「ふぃ……」

くしゃりと文の表情が歪む。
ぼろぼろと溢れる涙を恥も外聞もなく流し始める。
いかん、と宥めようとする夜智王だが、文の口から衝撃的な一言が発せられる。

「ひっく!諏訪子殿に……ぐすっ、報告してきます」
「まて!」
「知りません!夜智王の馬鹿!光源氏!」

うわぁぁん!と泣きながら文は翼を大きくはためかせると、光のような早さで飛んでいってしまう。
幻想郷最速の天狗に到底追い付けるはずもない、絶望的な表情を浮かべ夜智王はがくりと崩れ落ちる。

「?」

何事だったのだろう?という感じで事の元凶が小首を傾げる。

「やちお、どした?」
「どした?ではないわ……」

文と諏訪子の誤解を解き、機嫌を直してもらうまでの苦労を考え夜智王は頭を抱える。

「はぁ……まぁなるようにしかなるまい」
「?」
「とりあえず風呂にでもはいるか」
「ふろ?」
「そう風呂だ、ほれいくぞ」
「むぃ?」

ルーミアを小脇に抱えると夜智王は風呂場に向かった。




























毎月七日はルーミアの日なのだそうです。
うまいこと考えるものですな。
なお続きは来月七日を目指して鋭意執筆中です



[26700] 【番外編】宵闇小妖と蛇・後編
Name: 窓◆0bf2c45e ID:fcb97624
Date: 2013/05/16 19:49
「おお!ろてんぶろだー!」
「走るな、転ぶぞ」
「むいにゅ?ぎゃん!」

素っ裸にのルーミアは露天風呂に興奮したのか?両手を広げると、凹凸の無いボディを惜しげもなく晒して駆け出そうとした。
夜智王の助言も虚しく、ステーン!とすっ転び後頭部を強打する。
ごつん、と良い音が響き、くわっと見開かれたルーミアのつぶらな瞳にじわりと涙が滲む。
刹那ぐしゃりと表情が歪み、びゃぁぁぁぁぁ!と大声で泣き出すルーミア、よほどに痛かったのだろう。

「やじおー!あだまいだいー!」
「よしよし」

びゃぁびゃぁと泣きながら、助け起こしてくれた夜智王に抱きつくルーミア。
そっと頭をさすってやるが幸いたんこぶすらない、小なりとはいえさすがに妖怪である。

「まずは身体を洗ってからな」
「あらう?」
「左様、それが風呂の作法だぞ、守らんから痛い思いをするのだ」
「そーなのかー……そーゆーことはもっとはやくいえよー」
「すまんすまん、ほれ洗ってやるから、こっちへこい」
「うぃ」

こくんと素直に首肯するルーミアを座らせ、まずは石鹸溶かした湯をぶっかけてヘチマのスポンジで擦ってやる。

「おーぬるぬるだぞ?」
「泡がたたん、ということはないのだな……」

風呂に入る習慣があるとも思えないルーミアだが、水浴びくらいはするのだろう。
汚れが酷く石鹸が泡立ちもしない、ということはなかった。
湯を掛けて石鹸を流しざっと汚れを落とす。
今度は外界で買ったボディソープを使ってルーミアの幼い肢体を手で洗い始める。
その手の趣味の人間なら鼻血ではすまない状況だろうが、生憎夜智王はそういう趣味はないのでピクリともこない、淡々と作業を続ける。

「ふわふわだ、なんだこれ?」
「石鹸だよ」
「あわあわだぞー、でもなんかくさいぞ」
「香草の匂いだよ、良い香りではないか?」
「くさいー」

といいながらも泡がおもしろいのかはしゃぐルーミア。

「お主は本当に子供だのぉ」
「?」

何が言いたいのだ?と首をかしげるルーミア、それに苦笑で返した夜智王は湯を掛けて泡を流してやると、えへへへとルーミアが笑顔になる。
どうしたのか?と夜智王が尋ねると、なんか気持ち良いと答えた。
ぽんぽんとルーミアの頭を撫でてやるといっそう嬉しそうに、くすぐったそうにルーミアが笑う。

「難儀な話だな」
「?」
「なんでもないよ」

こんな無邪気な笑顔を浮かべる子供だというに、人を喰わねば飢えに苛まれないといけない。
一体何の業なのか、と詮のないことを夜智王は思う。

「やちお?」
「よし、ほれ体が冷えたろう風呂に入ろうぞ」
「うぃ」

ざぶりと浴槽に飛び込んだルーミア、広い浴槽が珍しいのか、ざぶざぶと湯を掻き分けて浴槽内を歩き回り始める。

「温泉だけど臭くないな?」
「組み上げた地下水を暖めておるだけだからな、硫黄臭くはないさ」
「いおー?」
「あの腐った玉子のような臭いの話だ」
「そーなのかー」

転ぶなよ、と夜智王が注意を促そうとした刹那であった。

「ふにゃ!」

水苔に足でも滑らせたのだろう、ばしゃん!と派手な水音をたててルーミアがすっころんだ。

「あーあー」
「むぃ!ごふっ、ぎゃ!やちお!うぇ、たすけ」

ばしゃばしゃとルーミアがもがく、パニックを起こしているのか溺れかけている。
さして深い訳でもないのだが、と思いつつ夜智王はひょいとルーミアを抱き上げて水の中から助け出す。

「うぇ、ごほっ、ぶじゃー、うぇー」
「じっとしておらんからだぞ」

飲み込んだ水をげーげーと吐き出すルーミアの背中を擦ってやる。
よほどに怖かったのか、がしりと夜智王にしがみついたルーミアはぷるぷると震えていた。

「死ぬかとおもった……」
「お主カナヅチか?」
「ルーミアはトンカチじゃないぞ」
「泳げんのか?と聞いておるのだよ」

さぁ?と小首を傾げるルーミア。
どうやらまともに泳いだ事は無いらしい。
苦笑した夜智王はルーミアを抱き抱えるたまま、ゆっくりと湯に体を沈める。
目をぎゅっと瞑り恐怖に耐えるルーミアに笑いかけてやる。

「吸血鬼でもあるまいし、そんなに怖がらんでも、ほれワシが抱いておるから、力を抜け」
「やだ」

しっかりと夜智王にしがみつくルーミアに「凹凸の無い幼児体型を押し付けられてもあまり嬉しくはないのだがなぁ」と苦笑する。
同じような体型でもレミリアや諏訪子であれば精神年齢が高いので色々と楽しみようもあるのだが……

「(ふむ、レミィは吸血鬼、ということは水は苦手なはずだな)」

流水を渡れない、という吸血鬼の弱点を思い出す。
地下水脈から組み上げた水を途中で沸かし、浴槽に注ぎ、それを近くの小川にでも流してやる。
風水の見立てを利用すれば、立派に水脈の一部となる……つまり「流れる水」だ。
うまくだまくらかしてそんな風呂に誘い込んだらどうなるだろうか?
レミリアは力の強い吸血鬼だから溺れるということはないだろうが……

「(いや、あの「かりちゅま」ぶりなら……)」

小川に突き落とされたレミリアが半泣きで「たちゅけてちゃくやー!」と溺れている光景を想像してしまい、思わず吹き出す。

「(試してみる価値はあるな……)」
「や夜智王?」
「なんだ?」
「い、意地悪な顔してるぞ?」

離す気か?と半べそのルーミアの背中を、ぽんぽんと叩いて安心させてやった。











「へくちっ!」
「お嬢様お寒いですか?」

可愛らしくくしゃみをしたレミリアに(内心ではその愛らしさに鼻血をたらしながら)咲夜が心配そうに声をかけた。
暖炉の火を強くしましょうか?
何か羽織るものをお持ちしましょうか?
暖かい飲み物……ホットミルクでも、と甲斐甲斐しく愛しいお嬢様の世話を焼き始める。

「大袈裟よ咲夜。ちょっと寒気を感じただけ……紅茶に少しブランデーでも入れてちょうだい、それで十分よ」
「お嬢様がそうおっしゃるのでしたら……」

若干残念そうに呟きながら、咲夜はお茶の準備を始める。

「大方あの蛇あたりが噂でもしてるのよ……今度来た時にとっちめてやるんだから……」

とレミリアは小さく呟くのだった。











「寝てしまったか……」

こくりこくりと船をこいでいたルーミアが、夜智王にしがみついたまま眠りに落ちてしまう。
すっかり体も暖まったし髪を洗ってやろうと思っていたのだが、すらかな寝顔を見ると、無理に起こすのは可哀想になってくる。

「(まぁ、妙な封もされておるし、止めておくか)」

ルーミアの金髪を飾る、可愛らしい赤いリボン。
よくよく見れば、それは封印の札の一種らしかった。
取るに足らない小妖の何を封じているのか?
気にはなったが、何の準備も無しに封印を解除する程、夜智王は迂闊な性格ではなかった。

「(これは博麗の巫女の封印か?ふむ……)」

封を解いたら美女に化けたりしてな。
と希望の混じった憶測をしつつ、くいと杯を干す。

「ま、そう都合良くはいかんか」
「何が?」
「!」

突如背後に生じた獰猛な気に、きゅっと睾丸が縮み上がる。
ぎりぎりぎりと油の切れたブリキ人形のように振り向けば、果たしてそこに諏訪子がしゃがんでいた。

「す、すわ!」
「楽しそうだねぇ夜智王、なんかいいことあった?」
「あ、愛らしい諏訪子が、訪ねてきてくれて、うれしい……ぞ?」
「……幼女を侍らせて入浴か、いいご身分だね」

さらりとおべっかが無視される。
慌てて弁解しようと口を開く、が―

「言っておくがな!こんなのに悪戯するほど、わしゃ女には困っておらんぞ!」

へぇ、と養豚場の豚でもみるような目付きで諏訪子は夜智王を見下ろす。

「困ってないんだ」
「(し、しまったー!)」

見事な墓穴を掘る蛇。

「まぁ、そうだよね、わたしの旦那様はいい男だもんね」

楽しげに言う諏訪子、顔は笑顔だ、目も笑っている。
だが、表現しがたい「圧力」が夜智王を襲う。
びくん!と眠っているはずのルーミアが震え、ぎゅっと夜智王にしがみついてくる、怯えているのだ。

「諏訪子、気を静め――」
「あたしも入っていい?」
「あ、ああ……ちょっと待てルーミアを寝かしてくるから」

いいよ、まってるね。と笑顔で諏訪子は許可する。
いそいそと母屋に戻り、適当に寝巻きを着せたルーミアを布団に放り込む。

「ふかふかだぞ……」

普段はまともな寝具など使わないのだろう、柔な寝具の感触と暖かさに、ふにゃりとルーミアの表情緩む。
平和そうな寝姿が正直恨めしい、これの言葉足らずの一言で今夜智王は窮地に追い込まれているというもに。

「まったく……」

とはいえ、大の字になって、大口を開けて口の端から涎を滴ながら寝ている姿は、憎みきれない愛嬌にあふれていた。
結局の所普段の行いが悪いゆえの窮地だ、八つ当たりするのはみっともない。
そう自分に言い聞かせ、夜智王は風呂場に戻ることにした。
このまま遁走したい所だが、背中に突き刺さるような視線がそれを許さなかった。
母屋と湯屋の間、脱衣所の引戸が僅かに開いている。
そこからチョコンと顔を覗かせた諏訪子が、じっと夜智王の方を見ているのだ。
正直ちょっと、いや、かなり怖い。

「諏訪子」
「なぁに?」
「逃げたりせんから」
「ほんとに?」
「理由が無いからの……ほれ行こう」

素っ裸になった諏訪子をひょいと抱き上げると、相好を崩した諏訪子がぎゅっと抱きついてくる。
柔らかな肢体の感触が心地好い。

「あれ?そっち?」

脱衣所には三つ出入り口があった、一つは母屋へ、一つは露天浴場へ、そのどちらでもない戸をへと夜智王が進む。

「露天も悪くないが、そろそろ寒いしな」

そう言って戸を開けると、一畳程の空間を隔ててまた戸がある。

「?」

小首を傾げる諏訪子に構わず、夜智王はその戸を引いた瞬間、むわっと熱気と湯気が吹き出してくる。
わぷっと顔をしかめる諏訪子だが、それは不意打ちに驚いただけで、異常に熱いわけでもないし、けして不快なものではなかった。

「蒸し風呂?」
「古式ゆかしい蒸し湯よ」

後ろ手に戸を閉め、パチンと指を鳴らして吊るしてある洋燈に火を灯せば、橙色の柔らかな明りがぼんやりと浴室内を照らす。
広さは四畳半程だろうか。
壁際に石製のベンチが配されていた、背もたれの上の部分に溝が設けられており、そこに樋で隣室(おそらくそこで湯を沸かしているのだろう)から湯が送られて来ている。
溝から溢れた湯はそのままベンチを伝い、浅く掘られた床に貯まる。
適度に排水されているのだろう、ベンチに座り、かけ湯や足湯を楽しんでも良いし、ゆったりと脚を伸ばして半身浴をするくらいのが深さである。
江戸時代に流行った戸棚風呂という奴である。

「本格的だね」
「昨日完成したばかりでな」

個人の家に設けるには凝りすぎの風呂にやや呆れ気味の諏訪子に対し、夜智王は子供のようにわくわくした口調である。

「好きに入ると良い」

そう言って諏訪子を下ろし、夜智王は作り付けの棚からグラスを取り出す。
壁に埋め込まれた蛇口を捻りグラスを洗うと、ちょこんとベンチに腰かけていた諏訪子に渡し、隣に腰を下ろす。
いつのまにやら用意していた魔法瓶の蓋を開け、中身をグラスに注ぐ。
言うまでもなく酒である。
ふわりと芳香が立ち上る。

「ぶどう酒?」
「上手いぞ?」

乾杯と、諏訪子のグラスに自身のグラスを重ねれば、チンと澄んだ音が浴室に反響する。
くい、とグラスを傾ける蛇。
恐る恐る、小さな手ゆえに両手で抱えたグラスに口をつける諏訪子。

「んっ……おいし」
「であろ?信州で作っているぶどう酒だ」
「へぇ、そうなんだ」

地元の酒と言うものはその土地の者にとってひどく旨く感じる物であるが、わざわざ夜智王が用意してくれたのかと思うと妙に嬉くなってしまう。
頬を紅く染めながら、こくこくと子供のような仕草でグラスを空にする諏訪子。
その愛らしさを肴に夜智王も二杯目を干す。

「二人でお風呂か、懐かしいね……」
「そうだな」

諏訪の地は温泉が多い。
付き人の目を盗んでは、こっそり二人きりで山奥の秘湯に遊びにいく。
神であり、王である諏訪子と無邪気に戯れるためのお忍び小旅行。
それが、王国内にあっては並ぶものの無い諏訪子にとって、ひどく貴重な、楽しい時間であった。
帰ってくる度に、付き人の少女に説教を食らったのも、遠い昔の懐かしい思い出であった。

「ねぇ夜智王?」
「なんだ?」
「ほんとのところ、何をしたの?」

ルーミアのことだろう、と察した夜智王は歯を磨いてやっただけだ、と苦笑いを浮かべて説明する。

「棒ってのは歯ブラシで、白い苦いのは歯磨き粉か」
「そういうことだ」
「じゃぁ、わたしもして」

そう言った諏訪子が「んっ」と目を瞑り顔を向ける。
どうみても歯磨きをねだる所作ではない。
さて?と一瞬思案の後、夜智王はその身を童子に変化させる。いささか身長差がありすぎてしずらい接吻も、この形ならば容易い。
諏訪子の頬に手を寄せた、そっと唇を重ねた。
まず軽い接吻。
互いの唇の感触を味わうように吐息を交わし。
自然と開いた唇がより深く交わる。
するりと諏訪子の口内に侵入した夜智王の舌が歯列をなぞる。
とんだ歯磨きもあったものである。

「んっ……あ、っ、ちゅ……んんっ」

たっぷりと五分程熱い口付けを交わし、ようやく二人の唇が離れる。

「お風呂ではえっちなことしないって言ってたのに」

すっかり全身を紅潮させた諏訪子が、そっと先刻まで夜智王の唇の余韻をなぞるように、人差し指で己の唇に触れる 。
咎めるような口調すら、ひどく艶かしい。

「誘ったのはそなたの方だぞ」
「あっ……やだぁ……っ!」

諏訪子を後ろ抱きに抱き寄せ、幼い胸に手を添える。
ほとんど膨らみなどないが、ぷにぷにと柔らかい胸を愛撫する。
押し殺した諏訪子のあえぎが漏れる。
我慢するな、とばかりに桜色の蕾を刺激する。

「やん!やっぱり、やっ……いいっ……やちおう、ろりこん?ひぅ!」

責めるような物言いを咎めるように、軽く乳首をつまむ。
びくん!と大きく身を痙攣させる諏訪子が甲高い声をあげる。

「やだぁ……つよく、しちゃ、ふぁぁ!」
「諏訪子がこんな形になってしまったのが悪いのだぞ?」

どんな姿でも諏訪子が愛らしいのがいけない。
と蛇は嘯く。
幼女が好きなのではない、お前が愛しいのだ。と

「うそ……ばっかり、っ!」
「嘘ではないさ、諏訪子だからこうして交わりたい、気持ち良くなって欲しいのだ」
「ばか……おべっか、いっても、んんっ!やっ、だめぇ!そこはぁ!」
「相変わらず背中が弱いのだな」

もにゅもにゅとやさしく胸を愛撫しつつ、そっと首筋から背中に唇を這わすと、諏訪子が嬌声を上げる。

「誘ったのは諏訪子だし、これはただの豊胸マッサージだからな」

ちゃんと育ってワシを楽しませてくれよ。と夜智王が笑う。

「……ばかぁ」














「諏訪子さまが帰ってきません……」

ぶすぅっと可愛らしい顔を膨らませて早苗が言う。
突然やって来て諏訪子に泣きついた文。
どうやらまた夜智王が浮気したらしい。
文が泣きつかれるまで眠るまであやしていた諏訪子は「ちょっと出掛けてくるね」と怖い笑顔で出掛けて言ってしまった。
そしてすっかり夜も更けたと言うのに帰ってくる気配はない。

「迎えにいってきます」
「やめなさない早苗」

立ち上がり飛び出そうとした早苗を神奈子が制止する。

「神奈子様?」

天狗の新聞を眺めながら、神奈子は不満そうな早苗に忠告する。

「あの蛇には関わらないように、いつも言っているよね?早苗」

ろくな目にあわないから。と神奈子は諭す。

「だって、諏訪子様が」
「はぁ……経験者の私が言うんだから聞きなさい……あれはね底無し沼だよ、一度深みに嵌まれば二度と抜け出せない」

その結果がそこの天狗の娘であり、諏訪子だよ。
と淡々と神奈子は言う。

「う~」
「うなってもだめ」

まったく、あの蛇め。
可愛い巫女を悩ませる夜智王に神奈子は毒づく。
今度あったら腹いせに三枚に下ろしてやる。
とぶっそうな事を考える神奈子であった。




























後書き
気がつけば二ヶ月空いてしまいました。すみません

05/16 誤字脱字直し、微修正



[26700] 【零れ話】蛇、さとりの少女、三日夜の餅、の巻(前編)
Name: 窓◆0bf2c45e ID:8ff6cb18
Date: 2015/10/31 01:02
蛇、さとりの少女、三日夜の餅、の巻


古びた鏡台が一つ。
よく手入れのされた鏡には曇り一つなく、一人の少女の唇を映し出していた。
紅差し指がすぅ、と下の唇をなぞるり、
上等の艶紅が少女の唇を艶やかに染める。

私は何をしているんだろう?
少女……古明地さとりは自問する。
鏡台も化粧道具も白姫に「必要になる日が来ます」と昔押し付けられたもの。
ずっと仕舞い込んでいた鏡台を引っ張りだし、うろ覚えの化粧をしようとし……紅だけ指して止める。
夜智王。
彼が地霊殿に通うようになって隨分経つ。

初心な少女が夜智王に惹かるのにさほど時間はかからなかった。
心が読めるがゆえだろう。
嘘偽りのない言葉も、おどけたようにわざとらしく吐かれる嘘も、笑顔に隠された本心も。
男慣れはおろか人慣れすらしていないさとりがころりと転ぶのも無理もない。

自分はなんて簡単な女なのだろう。
さとり自身、理解はしている。

奥手な少女を決心させたのは、かわいらしいやきもちであった。
時折夜智王の心に見える女の影。
お燐やお空も夜智王に心惹かれている。
自分のペット達は皆可愛らしい、特に夜智王はお空のような胸の大きな娘が好きだ。
思わず自分のまだ未発達な胸に手を当てる。

華奢だった肢体はふっくらと丸みを帯びはじめていた。
せっせと白姫が食べさせるせいもある。
しかし多少膨らんだ所で、身近な所ではお空やお燐はもちろん、夜智王の心の裡に時おり見える女達には敵わない。

自分はなんて安っぽい女なのだろう。

でも。負けたくない。
決心を込めて上の唇に紅を差した。












「やぁ、いい湯だった」

せっかく作った温泉は出入り禁止になり、紫が周囲に夜智王だけに効く蛇避けの結界を張ったため、近寄ることもできない。
女と酒の次くらいには風呂好きの夜智王にしてみれば「骨折り損のくたびれ儲け」という奴だ。
地霊殿内には立派な湯殿があり、地熱のおかげでいつでも風呂には入れる。
床暖房もあるので、寒いのは嫌いと公言している蛇としては「ずっとここに棲みたい」良い所だった。

もっとも主であるさとりにしてみればずっとこんなに要られたら堪らない。
定期的に追い返しているが、気が付くとまたやって来ている。
そうこうしているうちに一晩を共にしてしまい、今に至る。

「さとり殿も一緒ならなお楽しかったのだがなぁ」
「恥ずかしいから、嫌」

夜智王の心を読んださとりが身構える、なにか意地悪なことをする思考を読み取ったのだろう。

「もっと恥ずかしいこともしたとおもうのだがなぁ?」

ぼんっ、とさとりの顔が湯気を吹いた。
酒宴の席、酔っ払ったお空がべったりと夜智王に抱きついて離れなくなった。
じゃぁ私もとばかりにお燐も離れない。
口では「これこれ」といいつつもまんざらではない夜智王に……さとりはやきもちを焼いたのだ。
こっちを見てにやにやしながら「(このままだと二人に先を越されそうですよ)」と、白姫が煽るからいけないのだ。
さとりも酔っていたのだろう、勢いで夜智王の宿泊を許可し。
なんだか良く覚えていないが、気がついたら朝で、裸で、隣で夜智王がにこにこしながら自分の寝顔を眺めていた。
最悪の初夜だった。

「なにも、恥ずかしいことなんて、してない」
「ふむ、まぁたしかに」

男女の営みは自然の摂理だなとか白々しいことを考えながらにやにやと夜智王が笑う。

「わたしにいじわるするの、そんなに楽しい?」

じっとさとりは上目遣いに夜智王を見やった。
いつもそうだ、この蛇は自分が心を読めることを逆手に取って、意地悪してくる。
やさしくて、意地悪で、そのくせ心の奥底で哭いている人。
ずるい、するい、ずるい。
じわっとさとりの瞳から涙が溢れてくる。
泣き出しそうなさとりに、夜智王は慌てて、すまんすまんと謝る。

「な、泣かんでもよかろう」

わしは女子の涙が苦手なのだ、と夜智王も泣きそうだ。

「いじわる禁止」

言っても聞かないとは思うが釘を差しておく。

「相わかった」

さとり殿は女の武器の使い方が上手いな、と褒められたがまったく嬉しくない。
そっと夜智王の指がさとりの唇に触れた。
紅をさした唇だ。

「変?」
「いや、どうしてなかなか、艶っぽい」

嘘ではないだろう、でも夜智王の心は「可愛らしいな」という気持ちしか見えない。
まだまだ子供扱いだ。それが悔しい。

「だが、少しはみ出しておるぞ」
「う」

言葉に詰まるさとり、ちゅっとその唇を夜智王がついばんだ。
びくん、と唇から雷に打たれたような、甘い痺れが伝わってくる。

「あ、夜智王、だめ」

さとりの制止を無視して夜智王の唇がさとりの首筋に埋められる。
喉から胸元へと接吻の雨と、時おり舌で舐められる。
第三の眼を通してこれから夜智王が何をしようとしているのがわかる、それと実際の行為が重なり、思考と肢体を両方を犯されるような感覚に襲われる。
最初の夜は心は読めなかった、二日目の夜のことは何も覚えてない。
相手の心を読みながら交わる異常な快楽にさとりは打ち震えた。

さらに下へと夜智王の視線が動く、襦袢の袷が開かれ、さとりの胸元が灯台の薄明かりの元露になる。

まだ青い、膨らみかけの果実。
まだ硬い芯をほぐすように、夜智王の手が慎重に乳房を愛撫し始める。
手のひらにすっぽりと収まる膨らみを、ふにふにと優しく揉みほぐし、芽を出した先端の蕾を唇で含むと舌先で転がす。

「あっ……やっ……やちおぅ」

切れ切れの甘い吐息に混じり、可愛らしいあえぎ声をさとりが漏らす。

「だめ、おっぱい……やぁ……」

丹念な愛撫で柔らかくなってきた乳房に、少し力が篭もる。
まだ硬い芯が痛みを覚えない、ぎりぎりの所まできゅっと夜智王の指が食い込み、控えめな膨らみが卑猥な形に変わる。
ぎゅっと目をつぶって快楽に耐えても夜智王の思考から自分が今どんな状態なのか分かってしまう。

「だめ、すっちゃだめ、おっぱいなんて、でない…から…やだ、ばかぁ」

右の乳房に食いついた夜智王が、わざと音を立てて乳首を吸う。
ちゅぱ。ちゅぷ、と淫猥な水音とさとりの泣き声が混ざる。
嫌といいながらも、さとりの声は甘い。
強い快楽に耐えるため夜智王の抱きついて、せめてもの抵抗とばかりにその肌に爪を立てる。

「痛いなさとり殿」
「知らない……夜智王のばか」

ようやく乳房への愛撫をやめて笑う夜智王、荒く呼吸を整えるさとりは、すでに身体に力が入らない、は夜智王に体重をあずけながらも、精一杯の虚勢を張る。

「さとり殿はとても敏感で、とても可愛いな」

誰と比較しているのか、そんなことを考えてしまうさとり。
思わずむぅっと顔がふくれっ面になるのを抑えられない、

「そしてやきもちやきだ」
「うっ……」
「今なら、まだ引き返せると思うぞ」

夜智王に関する記憶を封じて、夜智王がもう地底にこなければ、もうこんな気持ちにならなくて済む。
そんな思考が読み取れた。

「そんなの、いやよ」

またいじわる、じわりと涙が溢れてくる、いやいやと首を降る。

「あなたを独り占めできなくてもいいの、私が寂しい時と慰めに来て。

あなたが辛い時は、私があなたを慰めてあげるから。
たしかに嫉妬心を抱くのは辛い。あれはとても汚い感情で、さとりは他人のそれを見るのは大嫌いだ。
それでもこうして夜智王が地底に尋ねてきてくれて、笑って、騒いで、やきもちを焼くのが、さとりは嫌ではないのだ。
孤独なさとりの少女にとって、心を読まれて気にしないこの蛇の存在はそれだけ大きくなってしまっているのだから。

「さとり殿はやさしいな」

さとりの言いたいことがわかるのか、夜智王はふわっと笑い、そしてきゅっとすぐに意地悪そうな笑みを作った。

「では、もう遠慮はせんぞ」
「ひゃ!やだ、だめよ夜智王」

あぁっ!
さとりは思わず嬌声をあげた。
夜智王の指が股間へと向かい、下着越しに秘所に触れる。
すでにうっすらと湿っていたそこをやさしく愛撫しはじめる。
空いた手は再び乳房を包む。
そして夜智王の唇が想像もしない所に触れた。
第三の眼、その瞼に接吻する。

「だめ、やめて、へ、へんな気持ちになっちゃうから」

さとりの懇願を無視して夜智王の唇と舌が、ともすればグロテスクな第三の眼を愛撫する。
びくっ、びくん!とさとりの肢体が痙攣する。
未知の快楽が立て続けにさとりを襲う。
別段第三の眼は敏感な器官ではない。
自らが厭う能力、その源、それを好いた男が愛してくれているという、嫌悪と歓喜が入り雑じった至上の快楽。
むろん秘所への巧みな愛撫のせいもあるのだろう、先刻まで愛撫で昂ぶった肢体は一気に限界を迎える。

「だめ……ひゃぁ!ばか、やちおうのいじわる、やぁっ!」

びくんっ!大きく背中を弓なりに反らせるさとり。
寝具をつかんで快楽に耐えていたさとりの手を、そっと夜智王の手が握る。

「っ~~~~!」

暖かな感触に包まれながらさとりは、声を圧し殺して絶頂へと達した。

「はぁ……はぁ……っ!」

また第三の眼に顔を近づけてきた夜智王をぐいっとおしのけ、第三の眼を隠そうように、ぐるんとうつぶせになったさとりはめそめそ泣き出した。

「やめてって……いったのに……やだっていったのに!」

ひっくひっくとしゃくりをあげるさとり。
恥ずかしかった、でも実のところ泣くほどではない、半分は嘘泣きだ。

「ああ、すまんすまん、さとり殿、泣かんでおくれや」
「禁止だから、もう夜智王はぜったにここにさわっちゃだめだから!」

約束して!と強く訴える。
後にしょっちゅう破られる約束だが、とりあえずその時夜智王は誠心誠意、わかった、金輪際しないから。と約束してくれた。

「……さとり」
「?」
「さとりって呼んでくれたら許してあげる」

皆呼び捨てなのに、自分だけ、こんな関係になったにも、他人行儀な。

「あと愛してるって言って」
「案外にさとり殿はめんどくさい所があるのだなぁ」
「そうよ」
「だが、まぁそういうところもかわいい」

そっとさとりの耳元に唇をよせ、夜智王はささやくように名前と愛を言葉にした。
ようやく機嫌を直したのか?さとりがむくりと起き上がる。
じとっと据わった目つきで夜智王を睨む。

「じっとして」
「うん?」
「眼を瞑って」
「ふむ?」

素直に言うことを聴く夜智王、何をさとりがしようとしているのかはわかっているようだ。
構わずさとりは自分か夜智王に接吻した。

「んっ……ちゅっ……ぷはっ……やんっ、んっ、れる……」

夜智王が伸ばしてきた舌を受け入れて絡める。
初めてのやらしい接吻。

たっぷりと唾液を交歓して、ようやく口を離す。

「だめ」

伸ばしてきた夜智王の手をぱしっと叩いて払う。
まだ怒っているんだという意思表明。

「わし、あんまり女子にシてもらうのは好きではないのだ」
「知らない」

腹立たしことにまだ屹立していない肉棒に手を伸ばす。
やや呆れた風の夜智王だが、どうすればいいかは、彼の心を読めばわかる。
頬を紅色に染めながらもさとりは先端へと口を近づける。

「んっ……ちゅ」

ぴくん、と股間の蛇が頭をもたげた。
舌を伸ばして唾液を垂らし、それを潤滑剤代わりに肉棒をしごく。
にゅぷにゅぷと数回しごくとあっという間に剛直が鎌首をもたげた。

「無理せんでもいいのだぞ?」
「こんなに大きくしてるくせに」
「鬼はもっとでかくて太いぞ、わしのなど可愛いものよ」

笑いながら、そう言って頭を撫でてくる夜智王、どこまでも子供扱い。
半ば意地になってさとりは口を開いた。

「あむっ……ちゅっ……!

熱い!亀頭の先端を含み可憐な唇でしごきながら、舌でおずおずと舐めてみる。
到底「可愛い大きさ」とは思えない竿を両手で握りこみ、少し力入れてくにくにと弄る。

「……ッ!」

とくん、と心臓が跳ねる。夜智王が快楽を覚えてくれているのがわかったからだ。

「ちゅぷ、ちゅぷ…んっ…ちゅぷっ」

さとりが控えめに口を上下気に振ると唾液が淫らな音を立てる。
伝ってきたそれを使って尿道をこすってやるとぴくんぴくんと男根が脈を打つ。
グロテスクなそれが妙に可愛らしく思える。

「こう?」

一度口を放し、舌を亀頭から裏筋へと這わす。

「れろっ……ちゅ……れぇっろっ……うふ、夜智王のかわいい」
「さとりはもっと可愛いぞ」

手持ち無沙汰なのか、そう言ってさとりの頭を撫でる。他に手を伸ばそうとしたので軽く噛み付いて牽制する。

「……じっとしてて」
「はい……」

「んっ……あっむっ!……んっ、ちゅく、ちゅ、ふぁ……れろっ、ちゅぷ、はぁ、はぁ……んっ、はむっ……ちゅ、きもひひぃ?」

聞かずともわかるが、上目遣いに問う。

「さとりがおもったよりやらしい娘だったので泣きそうだ」

嘘ばっかり。

れろっ……あぁむっ!ちゅぷちゅぷ……んっんっ……んぅはぁ

にゅぷ、にゅぷ、くにゅ、ぴちゃぴちゃ

少しずつ深く、大きく口に含み、零れ落ちる唾液を「自分のモノだ」とマーキングするように肉棒にこすりこむ。

淫らな音とさとりの切れ切れの吐息の音だけが部屋に響く。

くちゅっ、ちゅぷ、ちゅぷっ!……ぺしゃ、ぺしゃ、れるっ
しゅっ、しゅっ、じゅぷ、にゅぷ、じゅぷっ

口内粘膜で亀頭を柔らかく包みながらこすり、鈴口と裏筋を集中的に舌で口撃。
可憐な指は根本をきっちり抑えながら竿を丹念にしごく。
小さな口で全てを呑み込めないならばと、懸命考えたのだろう、執拗なさとりの口淫が続く。

「そんなに一生懸命されると出てしまうのだがな」

一心不乱に肉棒に奉仕してくれるさとりその愛おしさが伝わってくる。
唯一許可された、頭なでなでをずっとしてくれている。
言うほどに限界が近いわけではないのはわかっている。

「ちゅむ、ちゅっ、ちゅぷちゅぷ……んっ、らしてひい……れろっ、ほらはひゃふ……」

脅かすように睾丸をきゅっと握ってくにゅくにゅと弄る。

「くちゅ……ふぁっ……んっ、ちゅ、ちゅぱ、ちゅぱっ、ちゅぱっ!」

もう少し!一層激しく攻撃するさとり、夢中になった隙を蛇は見逃さなかった。

「んっ、んぅっ!ぷはっ!」

きゅっと鼻を摘む。反射的に口を開いてしまったさとりをひょいっと抱き上げた。

「ひゃぁっ!」

下腹部に当たる剛直の熱にびくっと身体が震える。

「や、やちおう、やだっ」

じたばたするさとりを抱きしめながら夜智王の指がぐしょぐしょになった秘所に触れる。

「さとりは悪い子だな」

くちゅ
淫らな音とさとりの高い嬌声が重なった。

「咥えているだけでこんなにするなんて、淫らな悪い娘だ」
「あっ、やぁ……だめ、ゆび、だめぇ」

ちゅぷん、細い指が陰裂を割って膣口へと侵入する。

「やっ……あんっ……ふぁ!」

じゅぷ、じゅぷ、にゅる、にゅる。
愛液の立てる水音のなんといやらしいことか。
用を成さなくなった下着を夜智王がするりと脱がす。
そっと持ち帰ろうとしたので、ぽかぽかと叩いて止めさせるさとり。

「もうっ!」
「はは、すまんすまん、ついな」

せっかくの甘いやかな雰囲気がぶちこわしだ。
寝具へとさとりを押し倒し、ちゅっとおでこに接吻する。

「とても一生懸命で可愛いご奉仕だったよ」
「ほんと?」
「こんなことでわしは嘘は言わんさ」
「きもちよかった?」
「見ればわかろう」
「っ……」

口での奉仕が終わっても剛直は鎌首をもたげたままだ。

「どうせならば一緒に気持良くなったほうがよかろう?」
「そんなこと言って、どうせ、私ばっかりなかされるんだわ」
「男が獣のように声を上げても気持ち悪いだけだろう」

そっと夜智王が亀頭を陰裂にとあてがった。
びくっとさとりの身体が痙攣する。
緊張をほぐすようにさとりの唇を奪う、ついさっきまで自分のアレを頬張っていたわけだが、気にしたふうもない。
濃厚な接吻と、入り口を焦らすように先端でこすり、さとりの身体のこわばりをほぐし、淫らな気持ちを昂ぶらせていく。

ぐちゅ

「んっ!」

一気に夜智王は腰をすすめてさとりの膣内に肉棒を挿入させた。



[26700] 【零れ話】蛇、さとりの少女、三日夜の餅、の巻(後編)
Name: 窓◆0bf2c45e ID:aec463a4
Date: 2015/12/31 21:35
濡れぼそる秘裂が素直にを亀頭を飲み込んでいく。
体内に侵入してくる熱にさとりの口から甘い声と吐息が漏れる。
しかし、半ばまで挿入したあたりで、ぴっちり閉じた膣肉が侵入を拒みはじめた。
無理矢理押しこんだりはせず夜智王は一度腰を引く。

「や、やちお、やぁっ!……いじわる、しないで……」

切なげに喘ぐさとりに「別に意地悪しているわけではないのぞ?」と夜智王は困り顔だ。
まだ男を受けれることに慣れてないさとりの蜜壺。
傷つけないようにと、気を使って浅く抽送を繰り返して、少しずつほぐしてやる算段なのだ。
だが、膣口ばかり攻められているさとりにしてみれば、強い快楽を覚えながらも、絶頂には至れないような。
そんな風に焦らせれているように感じるらしい、だが

「んっ!」
「痛いか?」
「へ、へいき」

痩せ我慢には見えない。
だが小柄なさとりの身体が、成人男性を受け入れきれないのは物の道理というもの。
反応を確かめるように交合を深めると、さとりは苦しげに呻く。

「や……ぬいちゃ、だめ」

制止を聞き入れず夜智王は肉棒を引き抜く。

「やめておこうか?」
「それは……だめ」
「では、もうちっと力を抜いて……あと、こんなに脚を閉じられては挿れ難いのぉ」
「ひゃんっ」

内腿の皮膚の薄く血管や神経が集まる敏感な所を撫でられ、びくっとさとりの肢体が跳ねる。

「あっ……だめ、こすりつけないで……」

蜜壺からあふれた愛液をぬるぬると刷り込まれる淡い快感、もどかしさに脚をもじもじさせるさとり
それでも恥ずかしいのか脚はぴっちりと閉じらたままだ。

「ほーれ、いい子だ、恥ずかしがらんでいい」
「ど、どうすれば、いいの?」

次の瞬間、かっ、とさとりの顔面が沸騰した。

「い、いやっ」

ふるふると首を振る。
どうしたらいいのか、夜智王の思考を見てしまったのだろう。
膝を曲げ抱えるようにして、大きく脚を開く。
頭の天辺かお尻まで恥ずかしい所を全てさらす格好。
自分で用を足せずに親に抱えてもらっている幼児のような格好だ。

「そんなかっこ、やぁよぉ……はずかしいの……だめ」
「慣れんうちはこの手の格好が一番良いのだぞ?」
「しらない、やちおうのばかっ!えっちなこと考えるのやめてっ!」

夜智王の思考、正常位で交わる二人の映像が脳に流れ込んでくる。
はしたない表情、はしたない声、だというのに幸せそうによがり狂う自分の想像。
まるで本当に夜智王と激しく交わっているかのような感覚に襲われる。
優しい夜智王の愛撫が与えくるもどかしい肢体への快感、脳を焼くような強烈な感覚への快感。
おかしく、なってしまいそうだ。

「恥ずかしがる必要なぞないさ」

体重をかけないように気をつけながら、さとりに覆いかぶさるように身体を重ね、耳元で囁く。

「ほれ、わしにはさとりの可愛い顔しか見えんのだからな」
「う、うぅ~~」

ついばむような接吻。
耳朶を舌が這う、甘噛みされる。
ぎゅっと瞳を閉じ、漏れそうになる喘ぎを必死に堪えるさとり、その熱い吐息が夜智王の肌に心地よく触れる。

「あうっ!」

さとりの緊張をほぐそうと、夜智王の手が指が唇が舌が、さとりの敏感な所に優しく触れる。
うぶな肢体に快楽を教えこむように、唇、耳、首筋、鎖骨、胸元、脇、臍、秘所、太もも、足の指先まで。

「やちぉ……やぁ、おかしく、なる……よぉ」

閉じた視界は真っ暗だというのに、瞼の裏には夜智王の思考、激しく交わる二人が映る。

「夜智王」

さとりの全身が桜色に染まった頃。
思い瞼をようやく開けたさとりが、切れ切れに夜智王の名を呼ぶ。

「うん?どうした」
「 ……んっ」

さとりが腕を広げる、抱擁を求めているのだろうか?
愛撫に蕩かされて弛緩した肢体を抱き寄せる。

「さとり?」

ぎゅっと、さとりが夜智王を抱き締めた、よしよし、と赤子をあやすように頭を撫でる。

「さとりは優しいな」

恥ずかしいのだろう、顔を赤くしながらも慈母のように夜智王を抱擁し続けるさとり。
上手く言葉には出来無い、ただ、さとりはこの優しくて悲しい蛇を抱きしめて上げたかったのだ。
笑顔に隠された夜智王の心の奥底の傷。
少しでもそれを癒やしてあげたい。
言わずとも夜智王は察してくれたようだ。

「わしは大雑把な性格だから、そんなに心配せんでも大丈夫さ」
「嘘」
「さとりにはかなわんなぁ」

からからと夜智王は笑う。

「はずかしいから……じぶんでは……いや」

唇を噛み締め、さとりが目を伏せる。
無言で夜智王はさとりの脚に手を伸ばしそっと押し広げる。

「膝を曲げてな、立てた方が楽だぞ」
「した……みちゃ、だめ…よ…」
「しかし、間違って尻に挿れたらまずいしなぁ」
「っ!」
「冗談だ……泣かんでもよかろう、それなりに気持ち良いものだぞ」
「かみついても……いい?」
「わしが悪かった」

さとりの脅しに夜智王が真顔になる。
悔しいが、夜智王を脅すにはこれが一番効く。

「んっ……だいじょうぶ、おくまで……きて」
「ちょっとだけ辛抱をな」

秘裂に触れる熱い剛直の感触。
異物が体内に侵入しているのにもかかわらず、さとりの肢体には甘い痺れが走る。
男女の交わりもたらす無上の快楽。
夜智王に「手……」とか細い声で囁くと、夜智王がさとりの手をきゅっと握りしめてくれる。
とくんとくん、と思っていたより早い夜智王の心臓の鼓動と、さとりへの暖かな感情が伝わってくる。

「苦しくはないか?」

蜜壺の中ほどまで亀頭が進んだあたりで夜智王が問う。
ふるふるとさとりは頭を振って否定する。

「そうか」

どうしたのだろう?夜智王は隨分とさとりの事を気遣っているようだった。
常ならば夜智王の思考を見ようとしたかもしれない。
夜智王が今何を考えているのか、知りたくない。
めんどくさい女だと思われていないのだろうか?
夜智王は快楽を覚えてくれているのだろうか?
怖い。
恐怖から目を背けるように、甘い快楽に思考を蕩けさせ、触れ合う肌越しに伝わってくる、夜智王の優しい感情に溺れる。

「やぁ……恥ずか……しぃ」

夜智王が「もう少しな」とさとりの太腿を割ってさらに開脚させる。
つい、視線を下に向け、結合部を見てしまった、さとりは頬を羞恥に染める。

「やちおう?」

夜智王がさとりに覆いかぶさるように体を重ねてくる。
さとりに体重をかけないよう、隨分苦しげな姿勢だ。

「ちと、我慢をな」
「え?」

ぐい、と夜智王が腰を進める。
ぎちり、と硬くさとりの膣肉が、夜智王の侵入を拒む。
痛みを意識するよりも早く、ぶつっと、何かがちぎれるような嫌な感触がさとりを襲う。

「え?」

びくん!と腰から全身へ、さとりの身体に震えと痛みが走った。
状況を把握できずキョトンとした表情のさとり、だが激痛に身体は硬く強張る。

「いっ!」

さとりが声にならない悲鳴を上げて、反射的に夜智王の抱きついた。
それは助けを求めるというよりは、痛む女に構わず最奥まで男根を進める男を拒む動きだった。

「や、やちぉ」
「よぉ頑張ったな」

よしよしと、泣き叫んだり、暴れたりもせず、破瓜の痛みに耐えたさとりを誉めるように頭を撫で、頬に接吻する。

「痛い」

無表情にさとりは言う。

「なんで?」
「前の晩は途中でさとりが気を失ってしまったのだが、覚えているか?」
「う」

言葉に詰まるさとり、何も覚えてない。
だろうな、と夜智王は苦笑いを浮かべる。

「わしゃ、気を失った女子を犯すように見えるか?」

ふるふるとさとりが首を降る。
つまり、まだ、さとりは処女《おとめのままだったのだ。
痛いと聞いていた破瓜の儀式は、良くわからないままに夜智王が済ませてくれた。
そう勘違いしていたのだ。
かぁぁぁとさとりの顔が羞恥でゆでダコのように真っ赤になる。
先刻、積極的に夜智王の肉棒へした奉仕を思い出してしまったのだ。

「ばかぁ」

ポロポロとさとりの眼から真珠のような涙が零れ落ちる。

「すまんなぁ、だが勘違いしている方が身構えん分、痛くないかと思ってな」
「痛かった」
「まぁそれはさとりの体を守るためだから」

普通はもっと痛いのだぞ?と夜智王はおどけて言う。
ぶすっとさとりの頬が膨れる。
良く知っているのだ、この蛇は。

「さて、どうする?抜くか?」
「え?」
「痛いであろう?」

だめ、とさとりは否定した。
確かにじんじんとお腹は痛いし、垂れたきた血の感触も、匂いも気持ち悪い。
だが。

「夜智王」
「ん?どうした」
「ちゃんときもち……いい?」
「言わずともわかろう?」

わからないから聞いているのに、いじわる……さとりはむくれる。
夜智王の思考はさとりへの優しさと気遣いばかりで、夜智王がどう思っているかはまったく見えてこない。

「心配せんでも大丈夫だよ、心通わせた男女は、こうして抱き合っているだけでも、とても気持ち良いものだ」
「こころ…かよわせた…」
「さよう、古代の天竺の愛の経典というのもに書かれとる、千年以上の歴史を持つ、頑然とした事実よ」
「夜智王が言うと……すごく嘘っぽいわ」
「ひどいのぉ」

ぎりぎりと硬い膣肉が「てめぇ動くなよ」とばかりに男性器を締め上げているのだ。
到底気持良くなんて無いはず。

「さとりは優しいいい子だな」

夜智王の顔が近づく、そっとさとりは目を瞑る。
唇同士が重なるだけなのに、不思議と心地良い。
痛み止めだよ。と夜智王がに何かぴりっとした液体を飲ませてくる。
少し怖かったが、飲み下すと、少し頭がぼぉっとするが、若干痛みが和らいだ気がする。

「夜智王は……接吻、好きよね」
「そりゃぁ、わしは蛇だからな」
「なにそれ」

蛇身には手も指もないであろう?と夜智王は言う。

「女子を愛するのに使えるのは口と舌、あとは身体と、アレだけだからな」

夜智王が見せてくる蛇の交尾の映像。
二匹の蛇がこつんと接吻。
雄と思しき方がそのままちゅっちゅちゅっちゅと雌の接吻の雨を降らせている。

「いきなりつっこむような、品の無いことをわしらはせんのでな。気の長いのは一刻は続けるぞ」

その後挿入いれるまで数時間。
さらに射精するまで十時間。
出した後もからみ合ったまま離れない。
蛇の交尾は一日がかりなのだ。
夜智王がやたらと前戯を長引かせるのも、挿入後なかなか達しないのも、そういった蛇の性質ゆえなのだろう。

「ちろうなの?」
「ちがう」

断じて違う。
真剣な表情で言う夜智王にさとりは思わずぷっと笑ってしまう。

「大分身体の力が抜けたな……少しだけ我慢をできるか?」

動くのだろうか?わずか怖さを覚えながらも、さとりはコクンと首肯する。
さとりをしっかりと抱きしめると、夜智王は身体を転がして仰向けに寝転んだ。
しっかりと夜智王に抱きついていたさとりだが、それでも動いた瞬間、じくりと痛みが走り顔をしかめる。
ぎゅっと夜智王に抱きついて痛みに耐え……次の瞬間自分が夜智王に馬乗りになっていることに気が付いた。

「や、やちおうっ!」
「うん?痛いか?」
「ちがっ……やだ、こんなかっこ」

はずかしい……と真っ赤な顔を夜智王の胸に埋めて隠すさとり。

「さとりは、どんな手なら恥ずかしくないのだ?」
「そうじゃなくて……おもく……ない?」

意外なさとりの心配に、くつくつと夜智王は意地悪そうに笑う。

「笑い事じゃないわ」
「羽のように軽いから、心配せんでも大丈夫だ。むしろちゃんと食べているのかさとりは?」
「むぅ」

夜智王の好きな乳デカ女はさぞ重いのだろう。
ぶすぅっとさとりがむくれた顔で睨む。

「軽いと言われて不機嫌になるのも珍しいの」
「知らない、夜智王のばか」
「ふふ、さとりは恥ずかしいかもしれんが、こちらの方が色々出来るでな」
「ひぅっ!」

つつつ、とさとりの背筋を夜智王の指先が這うと、まるで羽毛で撫でられているようだ。
ぞくりと、むず痒いような感覚が全身に伝播していく。
気持ち良い、ただ背中を撫でられているだけなのに。
自分がひどく淫らな女になってしまったようで、さとりの胸はどくどくと早鐘を打つ。

「やっ……おしり、やめて」
「上等の大福餅みたいに、すべすで柔らかい。いい尻だ」
「だめ……んっ……やっ……だ、めっ!」

背中から腰、腰から臀部へ。
夜智王の掌がさとりの可愛い尻を撫で回しはじめる。
きゅんっと子宮が疼く、すぐ近くの尻への刺激が響いてくるのだ。

もどかしい。
少しずつ少しずつ夜智王に高められたさとりの快楽の閾値が、もっと強い刺激を求め始めていた。

「っ!」

太腿を撫で上げて再度尻へと到達した夜智王の手が、ぐにゅっと尻肉を鷲掴みにした。

「やちっ……あっ、いっ……やんっ、だめっ、だめぇ」

可愛らしい双丘をしっかりと掴み、乳房をこねくり回す要領で強く揉みしだかれる。

「だめっ……おな、おなかが、じんじんするの、やちおぅ、やめて……ひぅ、いじわる、やぁ」

尻への強い愛撫が蜜壺を刺激する度、硬かった肉壷は愛液で満たされ、徐々に柔らかく蠢き始める。
こうなってくると夜智王は手しか動かしてくれないのがますますもどかしい。

「や、やちぉ、うごい、て?だいじょおぶだから」
「それは次の夜にな」
「いじ、わるっ、んっ……きゅぅ……わたし、やらしいこになっちゃった、ぐすっ……やちおうのせい、ばか、ばかぁ」

恥ずかしいという意思に反して、さとりの腰が勝手に蠢き始めた。
肉棒をぎゅっと締め付けて動かないようにしながら、肢体を陰こすりつけるようにする。
乳房や陰核への刺激に肢体がびくびくと跳ねる。
初めての交わりなのに、なんて自分はいやらしいのだろう。
全部夜智王がいけないのだ、優しく導いてくれるでもなく、焦らしてばかりで、ひどい、いじわる、ばかばかばかと心の中で罵る。
みっともない喘ぎ声を漏らさないようにするため、強い快楽に耐えるため。
そして恨めしい気持ちを込めて、夜智王の肩口にかぷっと噛みつく。

「う~……ふっ……は、ふぅ……んんぅ!」
「痛い痛い、勘弁しておくれや」

ちっとも痛くないのだろう、夜智王は笑ってそっとさとりの頭を撫でる。

「さとりがこんなにやらしい娘だったとはな」
「やちぉ、すきなの、だからへいきなの、いじわるしないでぇ」
「痛い時は言うのだぞ」

うん、と健気に応えるさとりを抱いたまま上体を起こす。
ひぅ、とさとりが声を漏らした。
対面座位になり、結合が深かまる。
それまでは控えめに子宮口に触れていた亀頭が、ぐにゅっと最奥を突き上げてきた。

「やちぉ、だめ、あしに、ちから、ひゃんっ!」

既に体に力が入らないのだろう、がくがくと脚を震わせるさとり。
そんなさとりの尻を抱えながら、つん、つん、と奥を叩く。

「だめ、おく、だめなの、あたま、まっしろに、やっ、こわい、やちお、らめっ」
「怖がらんでも平気だ、ほれ」

ぎゅっとさとりを強く抱き締めてやる。
夜智王の首にかじりつくよう抱きつき、びくびくとさとりは肢体を痙攣させる。絶頂が近いのだろう。

「やちお、いい、いいの、やちぉも、いい?」
「ああ、ほれ、わしのもさとりの膣内で震えているであろ?」
「うん、もっと、もっときもちよくなって、あらひのなかで、ひゃんっ!おく、おくらめっ、やぁ、なんかふわふわ、ふわふわするの」
「しかし、さとり、そんなにしっかり抱きつかれると外にだせんのだがな」
「いじわる、しないれ、なかに、なかにちょうらい、やちぉの」
「さとりは、本当に愛らしいな……ぞ」
「っ!」

ぼそり、と耳元で夜智王が愛の言葉を囁いた、同時に最奥を突く。
限界に達したさとりがぎゅっと肢体を強張らせ絶頂に達する。
同時に夜智王もさとりの子宮に精を吐き出す。

「ぁっ!やちぉ、あついの、はいってる、くぅ、びくんびくんっれ、やらっ、またっ、またいちゃっっ!」

子宮内に流れ込む大量の精液の感触に再びさとりが達する。
背を弓なりに反らして堪えがたい快楽を受け止め、肢体を打ち震わせる。

「はぁ……はぁ……やちぉ」
「うん?」
「ちゅーして」

求められるままに夜智王はさとりの唇を奪う。

「すき」
「わしもだよ」

嘘偽りの無い言葉、だが、自分が夜智王のたったひとりにも、一番にもなれないことをさとりは理解していた。
ただ、今この一時だけは、夜智王は自分だけのものだ。
それでいい。
辛い時も悲しい時も笑う。
泣き方を忘れてしまったこの蛇を慰めてあげられるのは自分だけなのだから。

「さとり?寝てしまったのか?」

精魂尽き果てて眠ってしまったさとりの頭を、夜智王はそっと撫でた。










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