宇宙、いつもは静かな空間は今や激戦と化していた。木星より来たる来訪者エルス、金属生命体である彼らの襲来に人類は一丸となって立ち向かっていったのである。
だがエルスの戦力差は圧倒的だった、数が多く何より学習し模倣されていく彼らの攻勢に人類側は押されていく。命が散っていく。
そして、今もまた――
巨大エルスが切り裂かれ顕になった内部、そこに青と白のガンダムが奮闘していた。彼らと対話するために必要な一手、それが足りない。切っ掛けが掴めぬまま一筋の赤い流星が飛来したのは、そんな時だった。
トランザムモード、赤く輝く連邦軍のMSブレイヴ。その動力、一般機は擬似太陽炉が1基だがグラハム・エーカーが駆るこのブレイヴは2基。その分他のMSよりまだ動ける、既に侵食されているこの身でもまだ!
モニターを見れば遠くグラハムが焦がれたガンダムが映っていた、あれこそが人類側の希望。ならばグラハムがするべき事は一つ。
「未来への水先案内人は、このグラハム・エーカーが引き受けた!」
未来を斬り開くためにグラハムは笑う、それは喜び。誰かの役に立つという事、それがガンダムに乗る少年の為になるならば全く悪くない。もう少年と呼べる年ではないけれど。
侵食されていない右腕でグラハムは操縦桿を押し込む、起動していたトランザムモードがオーバーロードする。2基の擬似太陽炉、破壊力は2倍に達するであろう力が輝いた。
「これは死ではない!」
グラハムから少年に贈る言葉、死ぬために戦う武士道はもう終わった。これは――
「人類が生きるための――!!」
グラハムの脳裏にはそれぞれ関わった人々の顔が浮かぶ、彼らもまた一様に苦笑していた。だからグラハムも笑う、微笑みの形。
これは犬死にでもなく確かな未来の為の飛翔、かつてグラハムは空を求めたのだから。何処までも蒼く広がる自由の空を。
ガンダムとの出会いがその想いを汚し許せぬと戦い、壊し分かりあって……
光が広がった。
巨大エルスの表面に赤い彗星となったグラハム機が流れていく。
続けて凄まじい爆発が起こった。
この日、確かにグラハムは身命を賭け未来への道を斬り開いたのである。
その筈だったのだが。
「一体何なんだよっ、こいつはっ!?」
『私はグラハム・エーカー、君の存在に心奪われた男だ!』
『はあっ!?』
突如IS学園に襲撃してきた赤く輝く機体の発言に、見守っていた対峙する少年に想いを寄せている少女達が絶句する。追記しておくと少年の姉も。
ロボットから衝撃の告白をされた件の少年、白式を纏った織斑一夏は戸惑い手にした刀。雪片弐型で迎撃するが、サイズがあまりにも違うため踏み込めない。
何しろこちらはパワードスーツ、あちらはロボット。土俵に立つことすらままならない、その事に一夏は気付きながら現状ではどうすることも出来なかった。
いま此処に再び空を取り戻すため、熱い乙女座の軍人がISに戦いを挑む!