篠ノ之束は天才である。
頭にウサギ耳、青と白を基調した服に身を包んだ彼女の目の前には開発したマルチフォーム・スーツが……
「マスター、徹夜でしょ? 疲れてない? ボクに出来る事なら何でもするよ」
手のひらサイズの少女が居た。青い髪のツインテール、黒と赤の武装を纏いさながら黒い戦乙女と言ったところか。
(あれぇー? ISを作るつもりだったんだけど、何故か女の子を作っちゃったー!?
……何故だろう、このボクっ娘の声を聞くと背中が暖かい感じがするよ)
それは例えるならパートナーの関係、砲撃を放つ魔法少女と支える少年の様な。あながち間違いでもない、声的に。
これが世界で最初に開発されたIS、否、IS神姫。その一号機であるアルトアイネスと束、運命の出会いだった。
それから世界は劇的に変わる。
束が開発したマルチフォーム・スーツ、コアに少女を設定しダイブする形で動くそれは初めは誰も信用しなかった。覆されたのは、たった一機のIS神姫。
〈白騎士〉によって。
『行くぞ千冬、弟君を安心させるためにも早く終わらせるんだ』
「言われる迄もない!」
手にした刀、雪片で幾つにも迫るミサイルをなぎ払った。織斑千冬とストラーフ、世界最強コンビの始まりはここから。
以後、世界は認める。コアの中の神姫に認められなければ動かない不安定な“兵器”の存在を。
ぶっちゃけて言えば男でも女でも誰でも動かせるのだが、今のところ女性にしか反応しない。
けれど。
『マスター? 本当に良かったの、彼を巻き込んで。ボクは知らないよー?』
「いっくんなら使いこなせる、といいなぁ。まぁ心配しなくても私の全てをインストールした娘だから大丈夫!」
とある一室で束はアルトアイネスにそう言うが、はっきり言ってアルトアイネスはそう思わない。何せあの翠の髪の少女だ、性格が色々と危ない気がする。だから祈った、幼馴染みの少年の行く末を。
世界で一番最初にIS神姫を動かせる男、そのニュースが流れたのはそれから後のこと。
かくて運命は交わる、インフィニット・ストラトスと武装神姫が融合した兵器IS神姫。
「何で俺がこんな目にぃぃぃ!?」
『私のマスターになるのなら、これ位はしなさいな!』
ファースト幼馴染みの姉に似た声の少女に叱咤され一夏は回避行動をする、彼の目の前には涙目で攻撃してくる試験官。
「あのあの、おっきいの行きます!」
『撃て撃て、撃っちゃえー!』
「げっ! ちょ待……」
試験官から放たれた機関銃の連射、それを一夏は。
直後、試験会場に爆発音が響いた。
彼の未来は何処へ行くのだろうか。