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[27421] 【習作】「オートで。」(魔法少女まどか☆マギカ if)
Name: atm◆0b7cf4a5 ID:8fdff826
Date: 2011/04/26 01:21
魔法少女まどか☆マギカのifエンドです。基本シリアス路線で。
どうしてこうなった?の独自解釈と、
どうしてこうならなかった?の願望で出来ています。

やたら説明口調が目立ちますがご容赦を。

知識はアニメのみ。色々間違ってたらごめんなさい。



[27421] prologue
Name: atm◆0b7cf4a5 ID:8fdff826
Date: 2011/04/26 01:20
「数多の世界の運命を束ね、因果の特異点となった君なら。
どんな途方もない望みだろうと、叶えられるだろう」


「…本当だね?」


目の前で成される会話を、ただ呆然と聞き流す。
涙で霞んで、まどか達がよく見えない。
靄がかかったように、意識がはっきりとしない。
先ほど、頭部を強く打ち据えたせいだろうか。
…否、本当は自分でも分かっている。
聞きたくないのだ、まどかの願いを。
認めたくないのだ、この先の絶望を。


「さあ、鹿目まどか。その魂を代価にして。…君は何を願う」


…知っている。この先の展開は、もう知っている。
魔法少女となったまどかは、ワルプルギスの夜を倒すだろう。
だが、それまでだ。
最強の魔女を倒した最強の魔法少女は…そのまま最強の魔女となり。
絶望のうちに死んでいく。
これまで何度も繰り返した。そして、今度も駄目だった。
何がいけなかったのだろう。何が足りなかったのだろう。
私はあと何回、まどかを助けるために、まどかを見捨てなくてはならないのか―


「わたし…
全ての魔女を、生まれる前に消し去りたい。
全ての宇宙、過去と未来の全ての魔女を…」





「オートで。」



[27421] 第11話「最後に残った道しるべ」
Name: atm◆0b7cf4a5 ID:8fdff826
Date: 2011/04/27 05:07


「…えっ?」


どこからか聞こえた、心底驚いたような呟き声。
それが自分のものであると、数秒経ってから気がついた。
…知らない。こんな願いは、知らない。


「…なるほど。浄化しきれなくなったソウルジェムを、自動で消去する機能の追加ということかな?
うん、いい方法なんじゃないかな。その願いなら、後々まどか自身が魔女になることも防げるしね」


「まどか…!? でも、そんな願い…!」


…インキュベーターの目的を考えるなら、そんな願いを叶えてくれるとは思えない。
魔法少女が、魔女へと変わる瞬間に発生するエネルギーの回収。それが彼らの目的。
願いを叶えるのは、あくまでその対価として。
嫌になるほど聞いてきた“契約”という言葉…そう、彼らにも利益があるからこその“契約”だ。
決して慈善事業では、ない。
…そんな彼らが。目的であるエネルギー回収そのものを妨げる願いを、素直に叶えるはずが―


「…多分、大丈夫。
わたし、キュゥべえのことは好きじゃないし、許せないけど…キュゥべえ、嘘は言わないと思うんだ。
そのキュゥべえが『どんな願いでも叶える』って言ったのは、多分、ホントのことで…
願いを聞いて、その内容が嫌だから拒否する…なんてことは、しないと思う。
…違うかな?」


「そうだね…正解だよ、まどか。
正確には、しないというよりできない、かな。僕達に願いの拒否権はない。
可能であれば、それがどんな願いでも叶える。そういう“契約”だからね。
もっとも、実際にはどんな願いでも叶えてあげられるわけじゃない。願う個人の潜在能力に依る上限があるんだ。
願いを叶える為に使われるエネルギーが、後で回収するエネルギーより多かったら意味がないだろう?
短期間の時間遡行ぐらいならともかく。
全宇宙に跨る因果への干渉や、有史以前に遡っての歴史の改竄だなんて…とても個人が叶えうる願いじゃない。
僕達の目的だとか、種族そのものに影響を与えるほどの願い。そんなものを叶えられる人間なんて存在しない。
だから、拒否権なんてものは始めから必要なかったんだ」


願いの上限…それは、確かにそうだろう。
まさしく言葉の通りに“どんな願いでも”叶うのならば。
宇宙のエネルギー問題なんてものは、とっくに解決しているはずだ。
それに加え、魔法少女は普通の人間よりも死に近い。
魔法少女が魔女となれば、本来の何倍、何十倍ものエネルギーを発生させるが…
魔法少女が死ぬことでエネルギーが回収できないというリスクも、多分に孕んでいる。
…以前、キュゥべえが“エネルギー回収ノルマの達成”と口にしていたのを思い出す。
おそらく、最終的にはプラスになるように、願いごとの上限は決められているのだろう。
上限内に収まる願いであれば問題なし。
上限を超える願いを要求した場合に限り、先ほどの説明で煙に巻く。
…いつも通りの、彼らのやり口。


「…そういう意味では、まどか。君のような存在は、僕達にとって誤算だったんだよ。
できればこうなる前に、別の願いを叶えさせておきたかったんだけどね…
君のその膨大な魔力のことも含めて。暁美ほむらの執念を侮っていたということかな。
僕が自分の願いを叶えられるのなら、それこそ過去に戻ってやり直したいくらいさ」


それは、取りようによっては皮肉とも思える言葉。
だが、残念そうな言葉とは裏腹に表情ひとつ変えない目の前の生き物は、そういった婉曲的な表現はしないだろう。
事実のみを淡々と述べる。アレはそういう、合理的な生き物だ。
これまで散々煮え湯を飲まされてきた相手の…おそらくは心からの、後悔の言葉。
…霞がかっていた思考が、段々とクリアになっていくのを感じる。

ずっと、ずっと迷っていた。
希望と絶望を、幾度となく繰り返し。
抜け出す手段すらわからず。ただ徒に、もがいていた。
まどかを助ける。その最初の、気持ち。
今となってはそれだけが、最後に残った道しるべ。


―出口が、見えた。



「だけど、いいのかい?
希望と絶望の相転移…魔法少女が魔女になる際のエネルギー。
その回収が出来なくなるのなら、僕達インキュベーターは人類に干渉しなくなるかもしれないよ。
その結果、君達の文明がどういった進化を辿ることになるのかはわからない。
以前話したように、裸のまま洞穴で暮らす生活に逆戻りするのかもしれないね。
宇宙のエネルギー問題はもとより、人類という種の為を思うのならとてもオススメはできないけれど…
それでも君は、その願いを叶えようというのかい?」


…いつだったか、聞いたことがある。
インキュベーターは遥かな昔から人類に干渉してきたと。
栄華を誇るこの文明は、彼らのもたらした奇跡の上に成り立っていると。
彼らの干渉がなくなることは、すなわち文明が発展する機会が失われる事と同義である。
洞穴暮らしというのも、誇張ではなくありえる話なのだろう。

―干渉が、なくなる? 本当に?


「ありえないわね」


一言で、切って捨てる。
願いの拒否権がない彼らに出来る、唯一の抵抗…別の願いへの誘導。
…だが。彼らの言葉に惑わされるのは、もううんざりだ。
彼らからの干渉がなくなる。そんなこと、あるはずがない。
彼らの目的はエネルギーの回収であるが、そもそもの、大本の目的は“宇宙の寿命を延ばすこと”である。
熱力学の法則に縛られないエネルギーである“知的生命体の感情”を求めて、彼らはこの星へやってきた。
目減りしていく一方である宇宙のエネルギーを確保するために。
彼ら自身が、感情というものを持ち合わせていなかったが故に。
つまり―


「インキュベーターのおかげで人類の現在(イマ)があると言ったわね?
忘れないで欲しいわ。
私達のおかげで、あなた達の未来があるのよ」


人類は、インキュベーターの家畜ではない。
私達と彼らは、あくまで対等な共生関係だ。
魔法少女が魔女へと堕ちないように、というまどかの願いは。
言うなれば。インキュベーター側が暴利を貪っている、不平等な契約内容の是正にすぎない。


「賭けてもいい。あなた達はこの星を訪れる。
そして相も変わらず、奇跡の押し売りをすることでしょうね。
宇宙の為に。ひいては、己の種族の為に。
結局のところ。あなた達には、人類を頼るしか術がないのだから」


「…なるほどね。確かにそうかもしれない。
エントロピーを覆すエネルギー源が、他に見つかっていない以上…
通常の感情エネルギーであっても、魅力的であることになんら変わりはないからね。
もっとも、最終的に見込めるエネルギーの回収量が減るからには、叶えられる願いも小さくなる。
…そのことで多少の影響が出ることは、覚悟しておいて欲しいな」


…意外と、しつこい。本当に、意外なことに。
まどかの願いは、彼らにとってかなり不都合なものであるということだろう。
だが、今更その程度の言葉で揺らごうはずもない。
私も、まどかも。


「…大丈夫。きっと大丈夫。なんとなくだけど…わかるんだ。
キュゥべえに見せてもらった、これまでの魔法少女のみんな。
みんな、誰かのためにがんばってた。希望を信じて、がんばってた。
わたし達は、そんなに強くないから…あなた達に頼ってしまうこともあるけれど。
…でも。夢と希望を叶える魔法少女は。
わたし達は、そんなに弱くもないって…わたしは、みんなを信じたい」


…そう。少しくらい願いの効力が小さくなったからといって、それがなんだというのだろう。
私達が魔法少女となった時の決意を。その思いの強さを忘れなければ…私達は、きっと大丈夫。


「…そして。希望を信じて戦ったみんなには、最後まで笑顔でいて欲しい。
それを邪魔するルールなんて、壊してみせる。変えてみせる。
これがわたしの祈り、わたしの願い…」



「さあ、叶えてよ!インキュベーター!」



まどかのその言葉を切っ掛けに。
視界を覆い尽くさんばかりの、優しい光が、周囲に溢れ―











「最後に残った道しるべ」――――了
________________________







あとがきです。

生物的に(?)人類より数段上の存在であるはずのQBが、
「過去と未来、全ての魔女を消す」というレトリックに気付かないのはおかしくないか?

自分の目的の障害になる願いごとをされたらどうするのか。拒否する?誤魔化す?

どんな願いごとでも叶う…本当に?

最終話のほむらとQBの会話から、魔女化をキャンセルした場合は、そのエネルギーを回収できない。
ならばインキュベーターは地球に来なくなるのでは?
本編では魔獣という存在がいたが、それはあくまで結果論。
洞穴暮らしを覚悟して、ハイリスクな博打を打ってみる?

今回は、そのあたりの疑問から生まれたお話です。



[27421] 第12話「私の、最高の友達」
Name: atm◆0b7cf4a5 ID:8fdff826
Date: 2011/05/05 15:06
「希望を信じて戦ったみんなには、最後まで笑顔でいて欲しい。
それを邪魔するルールなんて、壊してみせる。変えてみせる。
これがわたしの祈り、わたしの願い…」


「さあ、叶えてよ!インキュベーター!」


まどかのその言葉を切っ掛けに。
視界を覆い尽くさんばかりの、優しい光が、周囲に溢れ―




そのまま、小さくなって…消えていった。









「…えっ?」


どういうことだろう。願いは…叶ったのだろうか。
まどかの服装は…今まで何度となく見てきた、魔法少女の衣装へと変化している。
だが、それだけだ。周囲に変化はない。暗雲立ち込める空も、積み上げられた瓦礫の山も。
そして、遠方に見える…最強の“魔女”ワルプルギスも。


「キュゥべえ…あなた、まさか」


この期に及んで、嘘をついていたとでも?


「そんなに睨まないでもらえるかな、ほむら。
願いはちゃんと叶えたよ。いや、今、叶えていると言うべきかな。
まどかの願いは、有史以前から現在まで。更には未来までも対象にしているからね。
少しばかり時間がかかるのは許して欲しいな。
もっとも、まどか自身が改変を行うなら話は違うけど。
…なんなら、その膨大な潜在力でもって、それこそ全能の神にでもなればいい。
この程度の改変どころか、宇宙そのものを思い通りに作り変えることすら、瞬きの内に可能だろう。
どうせ世界を変えるなら。そちらの方がよっぽど効率がいいと、僕は思うんだけどね」


キュゥべえの出力の問題、ということだろうか。願いの成就には幾分時間が必要らしい。
それにしても…まどかが神になる、か。考えただけでも、ぞっとしない。
もしそれが可能なら、きっと全てが上手くいくのだろう。
インキュベーターからの一切の干渉がなく、今と寸分違わぬ発展を遂げた文明。
巴マミや上条恭介は事故に遭わず。美樹さやかが思い悩むこともない。佐倉杏子の家族仲は円満そのもの。
きっと私も…幸せなのだろう。
でも―


「論外ね。
あなた達に翻弄されてばかりの、今の世界は嫌だけど。
神様からの、一方的な無償の愛で成り立つ…そんな歪んだ世界もお断りよ」


神様が皆を幸せにするのなら、誰が神様を幸せにしてあげるのか。…誰が、まどかを。
少数の犠牲を前提とした、幸福。それでは彼らと…インキュベーターと同じだ。
まどかはただの人間でいい。
一緒に笑って、一緒に泣いて。怒って、苦しんで、喜んで。
まどかに幸せにしてもらうだけじゃない。まどかを幸せにするだけでもない。
私は、まどかと幸せになりたいのだ。


「ごめんね…キュゥべえ。わたしも、それはなんだか違う気がするんだ。
わたし、ずっと力が欲しかったの。さやかちゃんに、マミさんに、杏子ちゃん。…それに、ほむらちゃん。
みんなを助けてあげられる力が欲しかった。なんにもできない自分が嫌だった。
困ってるみんなの悩みごとを、魔法の力でなんでも解決!っていうのも…憧れはするけど。
…でも、違うんだ。
わたしが欲しかった力は、強さは…きっと、奇跡や神さまの力なんか、必要じゃなくて…
うーんと…えへ、うまく説明できないや」


「…理解できないなあ。君達はいつもそうだ。
目の前にある単純な答えからは目を背け、あえて困難な道を行く。わけがわからないよ」


いつも通りのキュゥべえの反応。彼らはきっと、これからもそうなんだろう。
私達が、彼らの考えを理解できないのと同様に。
決して交わらない、平行線。
魔女のいない世界では…私たちの関係は、どう変わっているのだろうか。
…今より、多少は改善していれば良いのだが。




…さて、そんなことよりも。
どうやら、差し当たっての問題を解決しなくてはいけないようだ。


「無駄口を叩いている暇があるのなら。さっさと願いを叶えなさい。
このままだと…あいつが。ワルプルギスが、来る」


まどかが契約の際に発した光に、圧されてかどうかは知らないが…
遠くに離れていたワルプルギスが、再び接近を始めていた。
この先には、避難所がある。この街の住人がいる。
行かせるわけにはいかない。


「心外だなぁ、これでも全力でやってるんだよ?
それに、ワルプルギスについては心配要らないよ。
ここで彼女が何をしたところで、意味はない。
どれだけ街を壊そうと、どれだけ人を殺そうと。
全ては“なかったこと”になるんだからね」


「…まどか」


「うん。任せて、ほむらちゃん!」


キュゥべえの言葉を無視して、まどかに呼びかける。
逐一、腹を立てていては時間の無駄だ。


「ワルプルギスを倒そうというのかい?
確かに、今のまどかなら簡単に倒せるとは思うけど…」


「倒すんじゃなくて、止めるんだよ。
もうこれ以上、周りを壊させないように。
この街を守ってきた、マミさんとさやかちゃんのために。
…そしてなにより、ワルプルギスの夜(あのコ)のために」


まどかの願いが叶えば、彼女―ワルプルギスも、救われることだろう。
希望を信じて戦った彼女を…もうひとりの私である、彼女を。
殺さないで済むのなら、きっとそれが一番良い。


「…もうここまできたら、僕から言うことは何もないよ。
まどかの願いが叶え終わるまで…あと10分程度ってところかな?
それまで、君達の気が済むようにすればいい」


「10分くらいか…10分経ったら、あのコはどうなるのかな?
急に…フッて、消えちゃうのかな?」


「さっきも言ったけど、存在自体がなかったことになるのさ。
“消えた”ということに、誰も気づかない。そもそも“存在していた”ことすら、誰も覚えていない。
もっとも、それは僕達だって同じことだけどね。
魔女の存在の上に築かれた、この世界での僕達は。
魔女の存在しない世界の僕達に、上書きされて消えてしまう。
今、こうして話している記憶も、一切残らないだろう。
…暁美ほむら。時間遡行者である、君を除いてね」


まどかとキュゥべえが、こちらを見てくる。
そうか…私だけは、記憶が残るのか。これまでと同様に。


「ほむら。君は時間遡行者となった時点で、因果の環から半分ほど外れた状態になっているんだ。
過去に遡る際、基点となる時間があるだろう?
おそらくは、今回もその時間に飛ばされることになるだろうね」


キュゥべえがなにやら話している横で…まどかが、心配そうに私を見つめてくる。
ああ…そうか。そういえば、まどかには話してしまっていた。
周りと違う時間を生きてきた、私の辛さを。
親友から…まどかから、他人のように見られる辛さを。


「ほむらちゃん…あの、えっと…」


まどかは、少し考え込む様子を見せた後。
不意に、自らのリボンをほどき…こちらへと差し出してきた。


「ごめんね、ほむらちゃん。
わたしの願いのせいで…また、辛い思いをさせることになっちゃって。
さやかちゃんやマミさん、杏子ちゃん…魔法少女のみんなを救うには、この方法しか思いつかなくて。
そしたら…いまの、この世界も消えちゃうことになって…
でもね、ほむらちゃん。この世界での、ほむらちゃんとの思い出も、みんな消えてしまうけど。
わたし達がこの世界で仲良くなったことは、絶対、無意味じゃなかったと思うの。
これは、その証。
親友から他人になっても・・・また、仲良しになれたわたし達が。
確かにここにいたっていう…証だよ」


そう言いながら。少し寂しそうに、弱く笑うまどか。
そんな彼女を見て、ふと、気付く。
この時間軸では…まどかを助けることを優先するあまり、彼女にもきつく接してしまうことが多かった。
彼女には、いつも寂しそうな。苦しそうな顔をさせてしまった。
しかし彼女は、そんな独り善がりな私を見捨てることなく…
ついには、出口のない迷路から、私を救い出してくれた。
…今だって、そう。
もうすぐ、この世界や自分の記憶が消えてしまうというのに。不安にならないわけがないのに。
相も変わらず、私の心配を優先している。

…ああ、まったく。どうしてこの子は、いつもこうなのか。
ばかで、泣き虫で、お人好しで―


「まどか…
やっぱりあなたは、最高の友達よ。
私の、最高の友達」


語りかけながら、差し出されたまどかの手を、両手でそっと包む。
かつての私は、差し伸べられたこの手に救われた。
だから今度は、私が救ってあげたくて…でも、伸ばした手は、どうしても届かなくて。
今また、こうして、差し出された手に救われている。


「…このリボンは、預かっておくことにするわ。
大丈夫。まどかからの大事な預かり物は、必ずまどかに返すから」


これは私の決意表明。まどかが私のことを忘れてしまっても…また、仲良くなってみせる。
次こそは私の手で、彼女を笑顔にしてあげたい。


「私の心配はいいから、あなたは早く、ワルプルギス(あのコ)のところへ行ってあげなさい。
…ほら。いつまでも、そんな情けない顔をしているものではないわ。
今はあなたが、この街を守る正義の魔法使いなのでしょう?」


「…そうだね、うん。それじゃ、行ってくる!
…またね、ほむらちゃん!」


「ええ。また逢いましょう、まどか」


振り返ることなく、ワルプルギスへと飛んでいくまどか。
間を置くことなく、眩い光と轟音におそわれる。
ワルプルギスの周囲を旋回し、自らを囮にしつつ牽制の射撃を撒くことで時間を稼ぐようだ。
並みの魔法少女ならともかく、今のまどかなら心配することもないだろう。

そんな光景をしばらく眺めていると…
不意に、意識が浮遊するような感覚におそわれた。
まるで、過去へと時間を遡る際に感じるような…


「気がついたかい?願いはもう間もなく完了するよ。
まどかの願いにより、この世界は消え、新しい世界が構築されることになる」


瞳を閉じ、今一度確かめる。
交わした言葉は、別れではなく…再会の約束。
ならば…もう、何も怖くない。


「…キュゥべえ。不本意だけどあなたにも言っておくわ。
…また、会いましょう。次はお互い、より良い関係を築けるといいわね」


「そうだね、僕もそう思うよ。
裸で洞穴暮らしをしてるまどか達や、ひとり羞恥に悶える君を見られないのは、とても残念だけど」


「あなた、まだそんなことを…」


それは、取りようによっては皮肉とも思える言葉。
だが目の前の生き物は、そういった婉曲的な表現はしないだろう。
事実のみを淡々と述べる。アレはそういう、合理的な生き物だ。
つまり、



……

――つまり?


「キュゥべえ…あなた、」


「巴マミや鹿目まどか、美樹さやかとの暮らしは実に有意義なものだった。
…暁美ほむら。今度は、君とも良い関係を築きたいものだね」


「ま…待ちなさい!インキュベーター!」


その言葉を最後に。
私の意識は、闇へと沈み――












「私の、最高の友達」――――了




[27421] epilogue「夢の中で逢った、ような……」
Name: atm◆0b7cf4a5 ID:8fdff826
Date: 2011/05/06 09:53


「おっはよー!」


「おはようございます」


「まどか、おっそーい」


息を切らせ、友達との待ち合わせ場所へと駆けていく。
さやかちゃんも仁美ちゃんも既に到着済み。
最近は、変な夢を見るせいか少し遅れ気味…なんとかしないと。


「今日もまどかはかわいいねー…うーん、でもなぁー」


「どうかしたの?さやかちゃん」


「いや、今のリボンもいいけどさ。
たまには、赤色とか、もっと派手なのもどうかなーってね?」


「確かに、そうですわね。
言われてみれば、そのような色もよくお似合いかもしれません」


「あはは。今日の朝、ママにも同じこと言われたよ。
“女は外見で舐められたら終わりだよ?”なんて言ってたけど」


「おお~、まどかママと同じ意見!ついにあたしもデキる女の仲間入りかー!?
しかぁし!こっそりアドバイスをもらって一人だけモテようだなんてけしからーん!
そんなハレンチな娘は…こうだぁーーっ!!」


叫びながら、飛び掛ってくるさやかちゃん。
まずい…このままだといつも通り、抱きつかれくすぐられの展開に…!


「可愛いやつめー!でも男子にモテようなんて許さんぞー!
まどかはあたしの嫁に……っ!?」


背後から抱きついていたさやかちゃんが、突然、弾かれるように飛び退く。
助かったのはいいんだけれど…


「さやかちゃん、どうかした?」


「いや、なんだろう…よくわかんないけど…
急に悪寒がしたというか、殺気を感じたというか」


自分は特に何も感じなかったけれど…
いや、それ以前に、殺気がどんなものかわからないけれど。


「おふたりとも、仲がよろしいのは結構ですけど……あら?」


はしゃぎすぎたわたし達を諌める仁美ちゃん。これも、いつも通りのやりとり。
今更ながら恥ずかしく思い、辺りをそっと窺うが…周囲の人達の目線は別の方向へと注がれていた。

…彼らの目線を辿り。わたしはようやく、その存在に気がついた。
校門の前に、誰かが立っている。
その整った容姿と、腰まで届く艶やかな長髪からか、衆目を集めているようだけど…
本人は、そんな周囲の反応など意に介さず、その凛とした視線は一直線にこちらへと。


「うわぁ、すげえ美じ…ん?」


言いよどむさやかちゃんの視線は、彼女の足元に。
なんだろう?何かを踏みつけているみたい。
白い、うさぎみたいな…ぬいぐるみ…?


「あのコ…」


「私共と同じ制服を着ていらっしゃいますが…まどかさん、お知り合いですか?」


鹿目まどかは彼女とは初対面だ。
一度でも出会ったのならば、彼女のことを忘れるはずがない。

鹿目まどかは彼女とは初対面ではない。
既に出会いは果たされている。…彼女のことを、忘れるはずがない。

会ったことがないのに、会ったことがある。
相反するふたつの確信。
根拠などない、現実感のない、ふわふわとした…



例えるなら、そう――













「夢の中で逢った、ような……」――――了




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