定石がなぜ定石たり得るのか?それはその手が多くの戦局において好手たり得るからだ。つまりはこういう事だ。テンプレってのはそれが世の人間(ただしオタクに限る)の最大公約数的願望だからテンプレになり得るんだよ!
…と、いう事で俺は今真っ白い空間に浮かんでいます。別に死んだ覚えはないんだけどなぁ。普通に大学行って帰ってきて家のドア開けたらこれだよ!ついでに目の前にはカエサルみたいなトーガ着た白髪で髭もじゃの爺が胡坐かいて浮かんでいる。ヨガファイアー!は出してないけど。爺の癖にオッドアイとか誰得。きんきらだなオイ。
「えーと…神様?」
「うむ、わしはまごう事なき神様じゃ。」
「…転生?」
「話が早いのう。」
うむうむ、と満足そうな爺、もとい神。
「俺、いつ死んだっけ?」
「死んではおらん。と、いうか死んどったらわしの役には立たん。ちょっと用事があっての、異世界の生きた人間が必要なんじゃよ。」
「用事…って何か魔王倒してほしいとか世界救ってほしいとかそんなん?」
「いや、観光したいのじゃ。」
「…観光。俺が?そっちで?」
「いやいや、わしが、お前さんの世界でじゃ。ぶっちゃけ自分の世界を見守るのにも飽きてのう、たまには界外旅行に行きたいんじゃよ。」
なんだこの定年後のサラリーマンみたいな。いや、よく考えたら現役だよ、この爺。大丈夫かその世界。
「もう来てんじゃん。俺が何で必要なん?」
「これは精神体でのう、異世界で受肉するにはその世界の生き物が必要なんじゃよ。別に誰でも良いんじゃが、お前さんはそれなりに好条件での。」
「別にふっつーの大学生だけど?」
「あんまり大富豪だの王族だのに成り代わっても何かと身動きとれんようになるじゃろ?お前さんは若くて健康で、食うに困らん程度に裕福で、成人して一人暮らししとる。深い仲の女子もおらんようじゃし、想い人も今のところ無し。非日常への願望も強い。この国なら食文化も娯楽も発達しとるし、他国の面白そうな情報も簡単に入ってくる。異世界に来ると全知全能という訳にもいかんでのう。」
「なるほど…で、神様が俺に成り代わって、俺はそっちの世界で転生すると。」
「うむ、何でもほしい特典付けちゃるぞ?」
うーん…何か悪魔との契約みたいだな。死後の魂の代わりに今すぐ魂以外の全部よこせってところか。去年の比較宗教論で「異教の神は悪魔として扱われやすい」とか言ってたような。…まぁ俺が死ぬわけじゃないなら別に家族も悲しまないし。彼女居ない歴=年齢だから悲しませようがないし。就職活動とかお先真っ暗だし。…良いんじゃね?来世で勝ち組人生送るってのも。良いんじゃね?チートとかハーレムとか。後ハーレムとか。
「何でも?」
「うむ。」
「何個でも?」
「まぁ良かろ。」
「じゃあ…、銀髪赤目の超美形で剣も魔法も超一流で、ニコぽナデぽ標準装備で女の子にモテモテになりたい!あ、あとついでに家は金持ちで一生健康でついでに未来なんぞも見えちゃったりすると尚可。」
「うぉ、一息に随分言うたのう。銀髪赤目、絶世の美貌、剣・魔法共に超一流の才能、微笑んだり撫でたりすることで魅了可能、女子に慕われ、裕福な生家と一生健康な体、未来視の能力付きじゃな。」
自分の一生と引き換えだ、欲張り過ぎということもないだろ。ほんとはオッドアイもほしかったが爺とお揃いとかマジごめんである。
「うぃ、それでよろしく。」
「うむ、自分の作った世界といえど受肉しとる間はわしも介入できん。お前さんの人生が良きものであるよう祈っとるぞい。ではお互い死んだ頃にな。」
「ぼんぼやーじ!」
特にエフェクトも何もなく、入った時と同じように唐突に白い世界は消え去った。今まさに産道から出されたっぽいのでとりあえず泣いとこう。
「ふぎゃぁぁぁぁ!(物心ついたころに思い出すとかにしとくんだった…!)」
「奥様、元気な女の子でございますよ!」
なん…だと…!?