VRRPGモノです。
しかしその皮を被った別物かもしれませんし、少なくとも今のところMMOでは無いです。
レベルとかスキルとか召喚獣とか、面倒くさいのがこちゃこちゃ付いてます。
そして間違いなくゲテモノです。
読むと気分を悪くされるかもしれません。
それでも、読んでいただけるという男気溢れる方は、以下よりどうぞ。
※ 更新は停止しました。
※ そして再開しました。鬱陶しくてすいません。
設定等の修正により、記事[7]<合流への布石/賞金首>から修正が入っています。
<この世界はあなたに優しくない>
<ぬんぐっふ! ぜはぁ…! はぁ……はぁ……>
「……おお! やったか!」
画面の中で、仮想現実におけるアタルのアバター『チュン』が土佐犬モドキを打ち倒す。
棍棒でしこたま殴られた土佐犬モドキがついに倒れ伏し、動かなくなった。
決して格好良い戦いでは無かった。どちらかというと泥臭い、みっともない戦いだ。
だが、アタルはつまらないとは思わなかった。むしろ感動したくらいだ。
画面の中の存在とはいえ、アバターはアタルの思考や身体能力をコピーした、画面の中の自分である。
そのアバターが、土佐犬モドキを倒したのだ。
モドキとは言うが、どう見ても土佐犬である。正式名称は「下級犬」。他にも上級犬とかいそうな匂いがプンプンしてくる名前だ。目にモンスターである証が浮かんでいるらしいが、犬としての身体能力はそのまんまで、人間に対して激しく凶暴になるらしい。
とにかくそのモドキを倒せたと言うのだから、自分の可能性を見たようで嬉しくなる。
へたり込んでいるアバターを見て、「お疲れさま」と思わずつぶやいていた。
『プレイ時間が取れないあなたへ。もう一人の自分の活躍を見てみませんか?これは操作する必要のないVRRPG。誰でもない、あなた自身の物語』
「英雄物語」。
自身とほぼ変わらないアバターが異世界で生活する様を記録し、連続ドラマ風にして観賞できるゲームである。
アバターとの会話も可能なので、もう一人の自分に声援を送ることも可能。ネットに繋げることで他の人のアバターとの多人数プレイも可能だ。
初期能力は、画面の外で見ている人とほぼ同じ。変更点は、性欲や排泄の要不要スイッチがあること、そしてネガティブな感情を鈍くしてあるくらいだ。
自分の分身が英雄となるか乞食となるかは、まさに現在の自分次第。
ちなみに難易度は選択可能であり、アタルが選んだのはハードモードである。
初めて挑んだ者の9割がチュートリアルで死亡すると言う難易度なので、アタルはかなり出来る方だと言うことだろう。
友達が「ハードモードにしなよ! 絶対! そしたら協力プレイもできるし!」と言っていたので、ちょっと無理がある様な気もしたが、アバターに頑張ってもらうことにしたのだ。
難易度が同じ世界のアバター同士でなければ協力プレイは出来ないらしい。
画面の中では、彼のアバターが肩で息をしながらモンスターの死体から素材をはぎ取っている。
これもチュートリアルの一環だ。さすがハードモード。とことんアバターに優しくない。
かなりスプラッタで、アバターの顔色がとても悪くなっている。ガンバレ画面の中のボク。
(画面の中のボクも頑張っているんだ。ボクも頑張ろ)
アタルはパソコンの電源をつけたまま、早朝のバイトに備えて眠りに付いた。
明日起きた時、アバターはどんなことになっているかのと、期待に胸を膨らませながら。
(………死んでないと良いけど。)
セーブはなく、アバターが死んだら打ちこんだデータが全て消えてしまうのだ。
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『………剥ぎ取りに関するチュートリアルは以上です。もう一度聞きますか?』
「……結構です」
『それではナイフは回収させていただきます』
機械音声を聞きながら、チュンはどんよりとため息を吐いた。
正直舐めていた。
土佐犬モドキ強すぎ。
そして内臓キモい上にグロすぎ。黄色とピンクのコラボがヤバい。
スキルによってネガティブな感情を抑制されていなければ速攻で吐いて、もう冒険したくない、と引きこもりになっていただろう。
まぁ引きこもりが生きていける世界では無いので、餓死するのが順当な線だろうか。
チュンに、ゲームの中に居るという感覚は殆どなかった。
最近発展著しいヴァーチャルリアリティシステムのお陰で、体は指の皺や頬の産毛すら再現されている。
血流や、骨の軋み、筋肉の動きまでほぼ全て。
体に触れる衣服の感覚。
鼻孔に突き刺さる血の匂い。
ここまでくればもはや現実そのものである。
現実社会と混同されないようにリアリティを落としてある他のゲームとは違うのだ。
チュンたちアバターが現実に戻る必要はないため、全力で現実に近付けてあるのだろう。
血まみれの自分の手がジーパンに触れないようにしながら音声と共に目の前の空中に表示されている字幕を見る。
『それでは次の項目に移りましょう。次は召喚獣についてです。この世界は治安が悪く、現代人の分身であるアバターが着の身着のままで生き延びられる可能性はそれほど高くありません。そこで、アバターの生存をサポートするために、『召喚獣』を支給しているのです』
空中に立体映像が映し出される。それは小さなフクロウや、子犬、蛇などだ。
『召喚獣は最初、それほど強くはありません。しかし召喚獣との絆を深め、互いに助け合うことで召喚獣とアバターは強くなっていくのです。』
召喚獣の隣に映し出された人型が徐々に筋肉質になり、それに伴い召喚獣と思われる小さな動物たちが大きく禍々しく成長する。
フクロウは怪鳥へ、子犬は三首のケルベロスへ、蛇は上半身が妖艶な女へと変貌していく。
『召喚獣は生涯一匹。何がアバターの召喚獣となるかはランダムです。運が良ければ強力な召喚獣を呼び出せますが、初期状態のアバターでは扱いきれない場合もあります。』
立体映像が動き、大きくなったケルベロスがアバターの体を三つに引き裂く。
いきなりケルベロスを呼び出せちゃったらこうなると。というか普通にグロい。
『また。召喚獣のサポートを得ずに冒険をするという選択肢もありますが、メリットはほぼありません。厳しい旅を覚悟してください。それでは、召喚獣を呼びますか? 召喚獣を取得できるのはここのみです。取り換えることはできません。』
「召喚します」
ここまでビビらされては召喚するしかないではないか。
『承りました。それでは、以下の項目に15ポイント振り分けてください。深く考えず、感じたままにどうぞ。一か所に割り振ることが出来るのは10ポイントまでです』
声と同時に、タイプライターで打つように、空中に文字列が出現していく。
特徴ポイント
15/15
美:5
大:5
硬:5
筋:5
知:5
毛:0
獣:0
機:0
霊:0
振り分けることが出来るのは全部で9項目のようだった。
5つの項目に共通することから、値は5が平均なのかもしれない。
特色を出したければ下4つの項目に値を振り、純粋に能力を高めたければ上5つに振ればいいのだろう。
とりあえずチュンはそう判断した。
「各項目についての説明とかあったりしません?」
『詳しい説明は禁じられております。漢字の意味より推測していただくほかありません』
「なるほど」
と言われても、特に何が好きということもないチュンである。
女性の神秘は普通に好きだが、自分の元となったアタルに覗かれることが分かり切っているので遠慮したい。
それ以外とすれば……敢えて、敢えて言うなれば賭け事が好きだ。
今のチュンという名も自分の名の漢字を麻雀的に読んだだけである。
(これでいいか)
チュンはポイントを割り振った。というか一か所に集中させた。
特徴ポイント
0/15
大:5 → 15
硬:5 → 10
大きくて硬いことはいいことである。
というかぶっちゃけ色々不安なので大きな盾が欲しかったのだ。もしくは壁。
(これでいいか)
右下にあった『OK』という文字に触れる。
『それでは以上の条件でダイスを振らせていただきます』
ポンポンポン、と空中から三つの20面サイコロが飛び出してくる。
それを見て、チュンは友人が「いくら同じデータを使っても、同じ人生を歩ませるのは不可能だよ」と言っていたのを思い出した。
なるほど、最初にこのような運まかせの要素が入れば、のっけから違う物になるだろう。
『ロールスタート』
20面のダイスが3つ、クルクルと回り、徐々に静止していく。
出た目は順に
「6」「6」「6」
であった。
「おお、不吉な。」
『げええええええ!? ま、マジか―――!? まさか本当にあの召喚獣を当てる人が……』
「え、突然何。」
『失礼。取り乱しました。』
取り乱したってレベルじゃないような。すごく気になるんですけど。
『なにはともあれ、無事召喚獣が決定いたしました。良かったですね』
若干の引っ掛かりを覚える機械音声とともに、チュンの手の甲が光り輝き、刺青が彫り込まれる。
『アバター・チュンの召喚獣は、巨人です』
「おお!」
『知能が低く乱暴者で、触れる者は召喚主と言えどもなぎ倒すので取り扱いにはご注意ください。現在のアバター・チュンでは一撃で戦闘不能になることが予想されます』
「ちょっ」
一緒に強くなるんじゃなかったのだろうか。それとも巨人からさらに強くなるのだろうか。
「そこのところどうなのでしょうか」
『強力な召喚獣は、魔力の不足により常時呼び出せないなどのペナルティが生じます。アバターが召喚獣の強さに近づいた時、二人はともに成長できるようになるのです。』
「へ、へぇ……。ちなみに、巨人?さんとどうやって絆を深めれば……」
『名前を呼ぶなどしてはいかがでしょうか。とは言え、絆を深める方法を見つけ出すのもアバターに課せられた試練です』
「そ、そうなんだ……」
チュンは先ほど光っていた手の甲をみる。そこに刻まれた入れ墨は「Hecatoncheir」だった。読み方が分からない。
「ヘカトン……チェアー?」
【グォオオオオオオオオオオ!】
「!?」
何処からともなく怒った唸り声が響いてくる。いや、「何処からともなく」では無く、チュンの右手の甲からだった。
(うぉおお!? 手の甲が盛り上がって……痛い痛い痛い! 皮がミチミチと!)
痛みに悶えていると機械音声が冷静に教えてくれた。
『召喚獣の名はヘカトンケイルです』
「そ、そうなの? へ、ヘカトンケイルっていうんだ! わぁ良い名前! これからよろしくね!」
まくし立てると、右手の甲がピクリと動き、やがて収まっていく。
【グォォォォ……。】
「お、収まった……。」
すっかり元に戻った右手の甲をさすっていると、機械音声が語りかけてくる。
『正確に名を呼ばなければ召喚獣は呼べませんのでお気を付け下さい』
「う、嘘だ! コイツ今絶対出てこようとしてたよ!?」
『とは言え、今のアバターでは指一本まともに呼び出せるかどうか……』
「!?」
『チュートリアルは以上です。良い旅を』
「え、ちょ」
今のところ詳しく……
チュンの声が空しく響き、やがて辺りには何も音がしなくなる。
彼が居るのは森の中の広場。
陣取っていた土佐犬モドキを叩き殺して手に入れた安全地帯である。
チュンは自分の普段着そのまんまな服装と、刺青の掘られた右手と、傍らの地面に転がっている棍棒を順々に見て、最後に空を見上げ、ため息を吐いた。
「もっと説明がほしいです……」
見上げた空は、苛立たしいほどに澄んでいた。
――――――――
中(あたる)→ チュン
<二/土を掘れ>
コピー&ペーストされてアバターとなった人格は、もとの性格に関わらず、割と必死になる。
何故なら、必死にならなければ死ぬからだ。
このRPGの目標は、期間内に名声ポイントと呼ばれるポイントを手に入れることである。
一定値以上にしなければ、アバターは消滅する。
チェックは一月ごとに行われる。最終チェックは一年後。そこまで生き残ればアバターは、消されることのないVR世界へと転送されることになっている。
一ヶ月ごとに必要なポイントが倍になり、最初の月が10ポイント、その次が20ポイント。最終的には累計5120ポイント必要になる。
消滅するのはゲームのキャラでは無く自分なので、アバターからすれば大問題である。
セーブや復活は、超リアル志向のこのゲームには無い。
あるのはゲームっぽい設定と、どこまでも辛い現実だけだ。
よってアバターたちは、良くも悪くも必死になる。ゲームの中に入った直後の戦いで、勝利の味と生の実感をかみしめたことも、彼らの行動を後押しする。
秘境を目指す。
竜を倒す。
発見されていない鉱石を見つけ出し、または新たな技術を創作する。
これらは多くの名声ポイントを得られるが、全てがリアルのこの世界で、ハードモードにてこれら偉業を達成できた者は発売されてから半年経った今でもゼロである。
とはいえ、グランドクエストなる物も一応設定されており、決して容易ではないがそれをきちんとこなしていけば、ちゃんとクリアできるようになっている。
ただ単に、前倒しで5120ポイントを稼ぐことが困難なだけだ。
難易度が下がるノーマルモードやイージーモードであれば、半年たった今ではちらほらとクリア報告が出てきているのだ。
死地において何を成せるか。
自分の底力を試される世界の中で、チュンは一歩を踏み出すのだ。
チュンが最初に行ったのは、自分の能力の確認である。
「ステータス。」
チュンが呟くと、前方の空間に彼の能力のステータス表が展開される。
***************
チュン(18歳 ♂)
レベル1
召喚獣:Hecatoncheir
身体能力(成人男性はおおよそ5~15)
体力:6
筋力:11
敏捷:14
器用:10
魔力:13
感覚:10
所持金:0円
モンスター撃破数:1
名声:0/10
グランドクエスト進行率0%
○スキル(3/6)
ネガティブガード ……… ウジウジしない。
性欲ガード ……… 性欲から解放される。ON/OFF可。(現在ON)
排泄ガード ……… 尿・便の排泄をしなくてもよくなる。ON/OFF可。(現在ON)
***************
バドミントンをしていた影響だろう。ステータスは結構高い。最近は運動していないので体力は低いが。
そしてスキルが地味にありがたかった。
現在所持している物は、
棍棒
剥ぎ取った土佐犬モドキの心臓
地図
である。
心臓はその内腐りそうだった。
地図は歩いた場所が埋められていく親切設計。
地図によるとチュンの居る場所は魔犬の森というらしい。
北西の方角と、南東の方角に街があって、近いのは北西の街の方だ。
それほど遠くはない。北西の街まで距離は10キロほど。
「どうするかなぁ……」
「ワフッ」
視線を向けた先には、広場の外からチュンを見つめる土佐犬モドキがいた。
仲間になりたそうな眼ではない。食べる気満々の目である。
なんとかこっちに近づこうとしているが、見えない壁に遮られて、近づいてこれないようだ。
先ほどは一対一だから勝てたが運の要素も多分に絡んでの勝利であり、さらに言えば決して短時間で勝てた訳では無かった。
もし戦っている内に二匹目が来ていればチュンはあっさりと食い殺されていただろう。
広場は不思議なパワーで立ち入り禁止の安全空間になっているが、森の中に入ればどうなるかは火を見るより明らかである。
しきりに見えない壁に突進していた土佐犬モドキは、やがて諦めたのか森の中に消えていく。
その隙に森に突入だ!とは、いくら頭の出来が良くないチュンでも、思わなかった。
その代わりに穴を掘ることにした。
『アバターは基本的に成長が早い』
と、友達が言っていたのを思い出したのである。穴を掘ってムキムキになるのだ。
牙を突きたてられても内臓に届かないくらいムキムキになるのが目標である。
(それにスキル制度が採用されているんだ。繰り返していれば何か……何か手に入るはず……!)
魔犬を一刀両断出来るようなスキルが手に入ればいいな、という思考のもとで土を掘っては埋める作業をすることにしたのである。
道具は棍棒を採用している。
しかし、殴るにはとても良い道具だったが、掘ることに関してはあまり使えなさそうだ。
やがて疲労して面倒くさいと思い始めたが、ネガティブガードのお陰か投げ出そうとは思わない。
他にやることないしやれるだけやってみるか、というテンションで掘ったり埋めたりしていたところ、棍棒の先端が何かにぶつかった。
「お?」
棍棒を置き、手で土をかき分けると硬い感触が伝わってくる。
(まさか土の下に攻略のアイテムが隠されていようとは!)
歓喜と共に土を払いのけ、埋蔵物を掘り出した。
出てきたのは何と鉄色の――――
「スコ―――ップ! ってアホか!なんで地面の下に土を掘るための道具が埋まってるんだよ!」
とはいえ、これで土を掘り返すスピードは格段に上がった。
鉄色のスコップは土掘り用の先端が丸くカーブを描いている長い柄のシャベルである。その色の通り頑丈な作りのようで、ちょっと無茶なことをしても軋み一つ上げなかった。
「全く…これでスキル出なかったら……棍棒持って犬に突撃してやる……」
チュンはブツブツとつぶやきながらザックザックと土を掘り返していく。
土の表層はそれ程堅くはないが、30センチほど掘り進むと途端に硬い地盤に行き当たる。
スコップがなければとても掘り進めなかっただろう。
鉄色のスコップはその鋭い切っ先ゆえか、さくりと硬い地盤に突き刺さる。
4回突き刺して四角形を周囲から切り離し、最後は梃子の原理で持ちあげることを延々と繰り返していると、またもや切っ先に何かが当たった。
喉が渇き、手が労働に疲れて震えている。腰も痛いし、腕も痛い。
(これを掘り出したら休憩しよう)
そう思いながら掘りだしたのは銀色の――――
「スコ――――ップ! ってもういらんわああああああああ!」
先ほどのスコップと色違いのそれをパーン!と地面に叩きつけ、チュンはその場に寝転んで不貞寝した。
いつの間にか空は茜色に染まっている。まさかここで夜を超すことになろうとは。
「喉乾いた……腹が減った……」
ボヤキながらもチュンの手は止まっていなかった。
現在上半身裸で、汗と泥まみれで作業中である。
地面を掘ることを再開したそのすぐ後、さらに硬い地盤へと突き当たったのだが、そこで銀色のスコップが活躍した。
その切れ味、侮りがたし。
金属みたいに堅い岩盤がスパスパ切れるのだ。掘るのが楽しくなってくる。
いつしか掘っている穴は体が全て埋まるような大きさになっていた。
とは言え無限に体力があるはずもなく、柄を掴んでいる手に力が入らなくなってきた頃、また何かを掘りあてた。
「……なんだ?」
埋まっていた物体は、こんどはスコップでは無かった。
大きな瓶である。
土をどければ、チュンの上半身ほどもある巨大さだ。
持ち上げようとしたが、相当な重量である。
穴の底で、渾身の力を込めて抱き起こし、土を払う。
中に詰まっていたのは乳白色の液体だった。
回して開けるタイプの蓋を疲労で震える指で四苦八苦しながら開けると、嗅いだ事のある匂いがした。
(これ牛乳じゃない?)
牛乳だった。パッと見40リットルはある。
チュンの腹がグゥと鳴った。
「ふ……排泄ガードに感謝をせねばならないようだなぁ!」
今なら、牛乳をいくら飲んでも腹を下すことがない!
チュンは巨大な瓶を傾け、蜜壺を舐めるクマのプーさんみたいな格好になりながら牛乳を飲むのだった。
――――――――――――
「JIS規格では足をかける部分があるものをショベル、無い物をスコップと記されている。東日本地域では、人力で掘るために足をかける部分のあるものがスコップと言い、代表的なものが剣先スコップ・角スコップである」(Wikipediaより)
このssでは東日本地域の方を用いています。