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[28236] 【短編】クロノくんとはやてちゃんのカップリングに悶えようの会
Name: M9◆6baee381 ID:a6f3365c
Date: 2012/01/03 16:31
まさかの2作目投稿。
気が向いたらまた半年くらい後に更新します。

原則として、2期までに公開されていた設定を元にSSを書いています。


クロノ×はやてで今更誕生日記念モノ (初出・確か2011年7~8月くらい)
はや→クロで今更年越モノ      (初出・2012年1月03日)



[28236] 【短編】はや→クロで今更年越しモノ
Name: M9◆6baee381 ID:a6f3365c
Date: 2012/01/03 16:21
※はやてとクロノが原作無視してイチャコラするだけなので苦手な方はご遠慮ください。






 大晦日。一年の最後を締めくくる暮れの一日であり、新年を迎え入れるための明けにもっとも近い一日である。
 節目ともいえるこの日、日本では古来より行われている一つの習慣があった。

「今年の汚れは今年のうちに! 第3回、八神家大掃除を決行するでー!」
「おー、ぱちぱちぱちぱち」

 海鳴市、八神宅のリビングでは、朝も早くから珍しく家族全員が揃って決起集会を行っているところだった。
 中心に立って視線を集めているのは勿論、この家の主である女の子、八神はやて。頭には少女に若干似合わないハチマキなんかを巻き、腕まくりもして気合十分といった出で立ちである。

「新しい年を気持ちよく迎え入れるための準備や。今日は念入りに、徹底的に、埃一つ残さんようみんな気合入れてな!」

 彼女は燃えていた。かつてと違って身体が思うように動くようになってから、今までできなかったことが沢山増え、それに伴いやりたいこともできた。ただでさえ一人で住むには大きすぎる家、大掃除を自分の満足いくようにやりたいというのは、彼女の積年の願いの一つでもあったのだ。

「お、おう……」
「は、はいです……」

 対して年少組であり、あまり掃除に熱意を抱けないヴィータとリインは、そんな主の姿にわりと引き気味であったが、ちゃんと(何故か)ジャージ姿に着替え、一応は掃除をきちんと行う心積もりを抱いている。……それもそのはず、大掃除という単語には酷い目にあっているからだ。
『なあはやて、掃除なんててきとーでいいじゃん。それより遊ぼうぜー』などと末恐ろしいことをのたまったのが2年前の暮れ。あの頃はヴィータもまだ無垢であった。そんな無邪気なことを本気で、無防備にはやての前に晒してしまったのだから。
 結果は火を見るより明らかで、ヴィータは即げんこつを食らい掃除前に「いかに大晦日が大切な一日であるか」という講義を2時間正座して受ける羽目になった。
 更にリインも昨年まったく同じ行為をとり、母親に説教を受けている。子供とはこうして大きくなっていくものなのである。

「シャマルは台所まわり! シグナムとザフィーラはお風呂まわりと換気扇! 子供たちは自室のお片づけと掃除! わたしは部屋を順に掃除していくから、みんなきちんと自分の役割を果たすこと! 3時にはお買い物に行かなあかんから、それまでに全部終わらせる! ええね?」
「了解しました、主はやて」
「頑張りますね」
「御意」
「分かったぜ!」
「はやく終わらせてゆっくりしたいです~」
「ほんなら、皆の検討を祈る。――散開!」

 そうして戦いの火蓋が切って落とされた。






 大掃除が開始される一週間ほど前。
 決戦の日を想像もさせないゆったりでまったりな空気が矢神家のリビングには流れていた。皆がコタツに足を浸かって、食後のテレビに団欒している。ザフィーラはコタツの近くで丸くなっており、その背を枕にしてリインがすぅすぅと可愛らしい寝息を立てていた。

「今年ももう終わりですねー」
「そうだな……今年も皆が無事に過ごせてなによりだ」
「はやてー、みかん剥いてー」
「はいはい。ヴィータもはよみかんの皮くらい剥けるようにならなあかんよ」
「だってあんなに綺麗にスジとれねーんだもん。シグナムはよくそのまま食えるよなー」
「お前が気にしすぎなんだ。らしくないぞ」
「うっせー。なんか口の中がもにょもにょするんだよあれ残すと」

 ふん、と唇を尖らせてそっぽをむくヴィータに、はやてが笑顔でみかんを差し出す。コタツの上には、丸皿に積まれた大量のみかんがどでんと鎮座していて、その数はいつ見ても底をつかない(年末の醍醐味だと言って一定期間で買い込んでくるからだ)。

「ありがとう、はやて!」
「うん」

 受け取ったみかんをさっそく口に運ぶ少女の姿を、はやては微笑ましく見守る。彼女自身歳も若いはずのに、その姿は娘を想う母のような貫禄があった。大人びている、というよりは、本当に母親のような慈愛に満ちているその姿を見て、誰が彼女の年齢を想像できようか。恐ろしいまでに早熟な小学生である。

「ところではやてちゃん」
「んー?」

 ずずぅ、と熱いお茶をすするはやて。そんな姿も絵になっていて不自然に似合う。
 ……うん、自分で言うのもなんだが、今日のお茶も上手く淹れられた。

「初詣には、クロノ君を誘わないんですか?」
「ぶほぉー!」
「ぎゃー! 目がー! 目がー!」
「な、何事ですか!? 敵襲! 敵襲ですか!? 殿中でござりますか!?」

 にっこりと笑顔で口にしたシャマルの一言に、八神家が一瞬にして阿鼻叫喚の地獄絵図に染まる。
 咳き込むはやて、顔を抑えて床を転がるヴィータ、彼女の叫びで飛び起きたリインがさっきまで見ていた年末特番の台詞を寝ぼけて口にするなど、壮々たる有様である。

「げほっ、な、なにゆーてんの、シャマルはもう! きゅ、急やったから驚いたー」
「そ、そんなに焦らなくても……」
「ヴィータ、お前は顔を洗って来い」
「あ、ご、ごめんなーヴィータ。大丈夫やった?」
「うん……」

 目をこすりながら、とぼとぼと洗面所に消えていくヴィータを申し訳なさそうに見送るはやてに、シャマルは不思議そうに首を傾げる。

「まだ誘っていないんですか? 昨年はなのはちゃん達と一緒に行ったのに」
「う、うーん。でもなあ。クロノくん今年は急がしそうやし……」
「誘うだけ誘ってみてはどうです? テスタロッサのこともありますし、もしかしたら暮れの一日は休日をとっているかもしれません」
「ど、どうやろうなあ。でもそれやったらフェイトちゃんと一緒にいくやろーし……」
「この際だから一緒でもいいじゃありませんか。どうせ神社に行けば高町家の方はいらっしゃるんですし、そこで合流すれば」
「あー、そやなー。でもなー」

 なんとも煮え切れずのらりくらりとする主の姿に、二人の従者は不思議そうに顔を見合わせる。ちなみに「あさのどのー!」とさっきまで叫んでいたリインは、またザフィーラ枕に戻って二度寝に入っていた。

「とにかくあの人は多忙なんですから、あまり時間をかけすぎると本当に手遅れになってしまいます。急いだほうがいいですよ」
「う、うん……」

 もじもじと指を絡ませながら、はやてはこくんと小さく頷いた。






 そうして、その翌日。
 朝からはやてはさんざん渋っていたのだが、シャマルとシグナムに強引に背中を押され、結局ここまで来てしまった。
 アースラの執務室。この奥に、用事がある少年が仕事をしているはずだ。

「……ううー」

 部屋の前で右往左往すること10分間、その間「やっぱ今度にしようかなー」と何度思ったことか。しかし逃げたところでシャマル達に見つかれば結局明日も連れてこられるだろうし、もはや後がない。
 ……シャマルとシグナムは、純粋に主を想ってやっているのだ。クロノ・ハラオウンという少年は聡明でリインの製作にも一役買ってくれた協力者で、管理局でははやて達の大先輩にあたる。真面目で融通が利かなくてからかうと絶対に反応を返さずにはいられないというちょっぴりお茶目なはやてにしてみれば絶好のお気に入りともいえる相手で、だからこそ従者二人はそんな主の様子を知っているからこうやってけしかけている。
 実際昨年も一昨年も、はやても何の躊躇もなく気軽に誘っていたのだ。だから今年も誘うに違いないという二人の考えは決して間違いではない。

「……すぅ、はぁ、すぅ、はぁ」

 深呼吸を繰り返し、はやてはようやく息を落ち着かせる。
 どくんどくんと、心臓は煩いくらいに脈打っているけれど、それをなんとか聞かないフリをして。
 はやてはぎゅっと胸元で右手を握り締める。指先の震えはまだ止まらない。それでも。

「……よし」

 気合をいれ、瞼を開き、はやては勇気を出して、部屋の入り口に手をかけた。

「おっはろーん! クロノくん! 愛しのはやてちゃんがやってきましたでー!」

 部屋に入るや否や先程までの華奢で健気な様子を一変させ、弾丸のように突入する。
 部屋の奥では机に向かって大量の書類と向き合っていた少年が、突然の訪問者にげんなりと表情を歪ませた。書類をぱさりと机に置き、ゆるゆると嘆息を吐き出しながらも来訪者を生温かく出迎える。

「……今日も元気だな、はやて」
「そりゃそーや。元気だけがはやてちゃんのとりえやもん」
「結構なことだ。じゃ、僕は忙しいから出て行ってくれないか」

 にべもなく追い返そうとする少年に、はやては変わらぬ笑顔で接近する。椅子に座るクロノにまとわりつくように、そそくさと彼の近くに寄って耳打ちするような仕草をとった。

「やーんクロノくんそう言わんとー。今日はクロノくんに大事なお知らせがあってきたんや。超有力情報やでー聞かないと損するでー?」
「……有力情報?」

 何度も騙されているだろうに、クロノはそんなはやての言葉にぴくりと反応し、彼女のほうに顔を向ける。結果的に顔が触れ合いそうになるほどの至近距離で向かい合う形となり、はやては慌ててくるりと背を向けた。あくまでも彼に変に思われないように、自然な動きで半歩距離をとる。

「ふふーん。知りたい? 知りたい?」
「言いたいからここに来たんだろう。勿体ぶらずにさっさと言え」

 背中に、憮然とした少年の言葉が響く。ここからが正念場だ。
 ぎゅっと瞼を閉じて、はやては強く念じた。それは成功しますように、という願掛けではなく。

(顔にでてませんように……!)

 彼に気付かれませんように、という必死な想いだった。

「じゃじゃーん! 実はくる12月31日の夜、はやてちゃんのスケジュールがあいてまーす! これは超お得な情報! 誘うなら今がチャンスやでー! 年の暮れで年明けな素敵な一日をはやてちゃんと一緒に過ごせるなんて、もうクロノくんはもう! 果報者なんやからー!」

 振り向いた先、少年は難しそうな表情でため息をつき、肩を竦めた。

「そろそろくるんじゃないかと思ってたよ。……僕もそのために急いで書類を片付けていたんだけどね。ちょっと年末まで押しそうなんだ」
「ええぇっ!?」

 少年の申し訳なさそうな一言に、はやては驚愕に目を見開く。
 ……わ、わたしのために、仕事を……!?
 その胸のうちは、きゅんきゅんと感動で打ち震えていた。
 しかしはやての内心をよそに、がっかりさせたと思ったのだろう、クロノはばつが悪そうに頬をかきながら、すまなそうに声を落とした。

「フェイトやなのはも楽しみにしていたから、すまないけど僕の埋め合わせをよろしく頼む」
「う、うん……」

 誘えなかったのは残念だけれど、それ以上の幸福ではやては胸がいっぱいだった。目を潤ませ、しおらしい姿で俯く。・
 ……が、すぐに何かを思い出したように顔を上げ、大仰な態度で肩を震わせた。

「クロノくんのあほー! 甲斐性なしー! 仕事とわたし、どっちが大事やの!?」
「仕事」

 即答だった。

「……けど君達との初詣は、恒例行事だしね。僕もできれば行きたいと思っていたんだけど。すまないな、はやて。みんなと一緒に僕の分まで楽しんできてくれ」
「うわああああん! ぐれてやるー! クロノくんが女の子を泣かせてたって局の子たちに言いふらしたるー!」
「捏造だぞ!?」

 捨て台詞を残して部屋を飛び出していくはやてを呆然と見送り、クロノは椅子の背もたれに身体を預け、小さく息を吐いた。

「……さて、それじゃあ、最後まで頑張ってみるかな」

 一方部屋を出たはやては、扉に背を預け、はぁぁぁあぁ~と一気に力を抜くように息を吐き出した。全身から力が抜け、思わずその場にぺたんとお尻をつけてしまう。

「き、緊張したぁ~」

 顔が真っ赤になっているのが自分でも分かる。火照ったその頬を冷まそうと両手で顔に触れ、そのままじっと動けずにいる。

「…………ああ、もう……なんやの……わたし」

 部屋で起こった一連のことは、思い出せるものの、本当に自分が言ったことだったのか、いまいち実感が持てない。思い出しても、なんだか第三者の気分で上から見つめている気分だ。

「……ええっと……こと、わられたんやった……っけ」

 そうだ。肝心の用事は、失敗に終わっているはずだ。
 しかしこの胸は、そんなことはどうでもいいくらいに張り裂けそうなほどいっぱいだった。
 それは安堵という名の感情で、はやては自分でもそれをどう扱ってよいのかわからず、ただ、矛盾した気持ちを抱えてその場にうずくまることしかできなかった。






 そうして再び大晦日の日。
 無事に大掃除を済ませ、新年用のパジャマや下着、歯ブラシなどの日用品も買い込み、いよいよ暮れの夜を迎える。
 刺身や作ったおせちの余りモノで食事を済ませ、テレビ番組を堪能し、最後に締めくくりである年越しそばを茹でて食べる――八神家は、基本に忠実な大晦日を過ごす家庭だった。
 そして……深夜。除夜の鐘が鳴り、新しい年がきたことを知らせる。

「あけましておめでとうございます」
「あけましておめでとうございます、主はやて」
「今年もみんな一緒で、よろしくお願いしますね、はやてちゃん」

 三人は向かい合い、仰々しく頭を下げあう。家族として、主人と従者として、それは始まりの契約でもある。この日ばかりは「そんなんかたくならんでええよ~」とは言わず、はやても二人を受け入れ、自分も深々と頭を下げる。

「うん。今年もよろしゅうな、みんな」

 そして顔を上げて、互いに微笑みあった。

「今年もヴィータちゃんとリインちゃんは起きていられませんでしたね~」

 頬に手をあてて苦笑するシャマルの視線の先では、こたつで互いに頬をくっつけ、仲良さそうに寝息をたてている二人の娘の姿がある。

「任務では徹夜できるのにな。この日だけは、二人ともはしゃぎ疲れて眠ってしまうのだろう」
「ええことや。子供はよく寝てよく遊ぶのが一番やで」

 かがみこんでそんな二人の頭を撫でるはやて。娘達は母親の手に、同時にくすぐったそうにはにかんだ。

「さて……ほんなら、わたしは神社のほうに行ってくるかな」
「お供しましょう」
「私は子供達を見ていますね。気をつけて行って来てください」

 八神家の初詣は、子供達が寝ていることもあって、毎年元旦の朝に行くようになっている。それとは別に、年明けの夜にも、はやては時には高町家やハラオウン家と合同したりして初詣に行っているのだ。今年も神社に行けば、高町家とフェイトとリンディが待っている手筈になっている。

「そういえば今年はクロノ君は行けないんでしたっけ。残念でしたね」
「んーまあしょうがないよ。クロノくん、忙しいし。もしかしたら明日は行けるかもしれへん言ってたから、そんときにでも一緒に行ければ――」

 そんなとき、ふいに八神家のチャイムが鳴り響いた。三人とも、思わず顔を見合わせる。

「誰やろ? こんな時間に」

 幸い深い眠りについていた子供達は音で起きることはなかったようで、そのことに安心しながらも、こんな時間に訪ねてくる非常識な訪問者に少しだけ肩を怒らせながらはやては玄関へと赴く。

「はーい。こんな夜更けにどちらさ……」
「――こんな夜更けにすまないな。リイン達を起こさなかったか?」

 それは、少女にとって意外すぎる相手だった。

「く、クロノくん!?」
「あけましておめでとう、はやて。今年も元気そうだな」
「へっ……あ、あう……あ、あけましておめでとう……」

 突然のことで対応が追いつかず、思わず素で返事をしてしまい、きょとんと目の前の少年の顔をまじまじと見つめることしか出来ない。クロノはそんなはやてに不思議そうに眉をひそめ、マフラー越しに「はあ」と息を吐き出した。
 と、そこにはやてを追ってきたシグナムも現れ、来客の正体に少女同様驚いた声をあげる。

「どうしたのですか、今日はお仕事だったのでは?」
「ああ、なんとか一段落つけてね。急いで駆けつけたんだ。間に合ってよかったよ」
「そうですか、それはよかった。……では主はやて、私も家でお待ちすることに致します」
「ほぇ? シ、シグナム?」

 ようやく回線が繋がったのか、慌てて振り向くはやてにシグナムは微笑を浮かべ、

「今夜の警護は不要でしょう」

 とだけ答え、二人が出かけるのを静かに見送った。






 夜の街を、二つの影がゆっくりと歩いている。
 街灯や月の光に見守られ、周囲は夜といえど眩しいほどに明るかった。
 そんな中で、はやては自分の中で巻き起こる化学反応に必死で戦っていた。

(きゅ、急やったから全然準備できてへんのに! ど、どうしようどうしよう! わ、わわわたしクロノくんにどんな感じで接してたっけ? ええ、えっと、えっと……ああこんなことになるんやったらお風呂入ったときにもっと念入りに身体洗っておけばよかったー! か、髪なんて全然セットしてへんし、服もお気になやつやなくて家着やし……ま、まあ、下着は買ったばっかのやつやから良かったけど……って、な、なななにゆーとんのわたしっ!?)
「はやて」
「ふぁ、ふぁいっ!?」
「ど、どうした? さっきから無言で……気味が悪いぞ」

 後ずさるクロノの姿に、はっとしたようにはやては顔をあげる。
 やめて。ちゃんとやるから。だから変に思わないで。離れないで。
 膨れ上がったその気持ちが、『八神はやて』を一瞬にして構築する。

「クロノくんが急に押しかけてくるからやろ! もー、女の子の家に来るときはまず電話するのがマナーやでー? そんなんじゃクロノくん、一生彼女さんの一人もできへんよ」
「巨大なお世話だ。今は必要としてない」
「今はってことは、いつかはモテモテのうはうはハーレムを予定しとるんやろ? 今のうちから男を磨いておかんと後悔するでー」

 うへへへと嫌な笑いを浮かべるはやてに、クロノは面倒くさそうに片目を伏せ、肩を竦める。
 そんな「いつもの」様子に、はやては内心ほっと胸をなでおろしていた。
 ……そう、この関係が、わたしとクロノくんの距離感。だから、これでええんや。
 この間隔を維持していれば、彼は自分から離れることがない。なんだかんだで相手をしてくれる。面倒だけどバカな友達として扱ってくれる。世話が焼ける部下で後輩だと接してくれる。
 たとえ、自分が変わっても。
 変わっていなければ、変わっていないフリをしていれば、ずっと彼の傍にいられるのだから。

(……ううう、わたし、なんでこんなキャラでクロノくんと一緒にいたんやろ……)

 そう、それは、彼の一番近くにいた女の子の真似をしたからで。
 これなら無愛想な彼の気を惹けるんじゃないかと軽い気持ちで思ったからで。
 あのときは、自分がこんなに真剣な気持ちを抱くのなんて想像もしていなかったから、本当に冗談のつもりで、からかうだけだった、のに。
 気付けば、この調子が当たり前になっていて――更に、自分の気持ちに気付いてしまったとき、本当の自分を曝け出すのはできなくなってしまっていた。
 そちらのほうが、彼にとって不自然になってしまったから。
 だから、はやては演じ続ける。
 自分の気持ちになんか気付いてもらえなくていい。ただ、一緒にいられるだけで楽しいから。
 それが壊れてしまうのは、なによりも怖かった。

「なークロノくん」
「なんだ」
「来年もまた、こうやって初詣いけるとええなあ」

 だから、ずっと。

「……そうだな」

 『この関係』が、続きますようにと。
 はやては歩きながら、今日神様の前でお願いすることを心の中で呟いていた。


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