*まず初めに、謝らなくてはならないことがあります。
前作「魔法じかけの理想郷」ですが、完結する見込みがないので削除させて頂きました。
お読み下さった皆さん、申し訳ありませんでした。これからはこういうことはないようにしますので、どうかお付き合い下さい。
多分自分は、コメディ要素がないと書いていられないタチなのかな、なんて思いました。
今作はそんな感じですので、よろしくお願いします。
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プロローグ
世の中にはサンタクロースと名乗るおっさんが存在する。
常に笑顔で、白のトリミングのある赤い服・赤いナイトキャップ姿で白ヒゲを生やした太りぎみの老人。白い大きな袋にクリスマスプレゼントを入れて肩に担いでいる。
ここ日本では親しみを込めて「サンタさん」などと呼ばれているが、その正体はただの不法侵入者のロリコンじじいだ。サンタクロースの目的はクリスマスの前の夜に良い子の元へプレゼントを贈る、というものだ。だがしかし、俺はサンタクロースの姿なんて見たことはない。
もしも俺がサンタクロースの姿を発見したのなら、トナカイという警察に引きずらせ、パトカーというソリでお帰りいただくだろう。
サンタの存在を信じるのは基本的に幼い子供だけだ。それを信じなくなった子供は「大人になった」などと一般的に評価されるが、俺はそれは誤りだと思う。サンタへの信仰は神、宇宙人のそれに類似している。
神の存在をその目で確かめた人物は今現在この世に存在していない。だけど、多くの人間が神を信じる。
宇宙人の存在をその目で確かめた人物は今現在この世に存在していない。だけど、多くの人間が宇宙人を信じる。
きっとそれは、信じたいからだ。この腐りきった世界で生きていくのは容易なことじゃない。この世界で生きていくのに確かなものなんて何もない。子供にとっての神が恐らくサンタなのだ。
ここまでグダグダと御託を並べてきたが、俺が言いたいことはたったの一つだ。俺はサンタなんて信じやしない。不確定で存在すら疑わしいものを信じる理由はどこにもありはしないのだ。
だが――
「お、お前、本当に……」
俺の前に立っている女は本物のサンタなのかもしれない。
「うちな、本物のサンタなんや」
――そいつは、夜の静寂を壊さぬよう、静かに屋上に降り立った。赤い服に赤いナイトキャップ姿で、白いヒゲこそ生やしてはいないが、サンタのように見えなくもない。
「いや、でも、あのな……」
しかしながら、俺はサンタの存在など信じてはいない。目の前のこいつのことも俺は信じたりしない。
赤い服こそ着ているものの、俺には信じられない根拠があったからだ。下手な関西弁をほざいていることが一つ。もう一つは――
「お前……それ和服じゃん」
そいつの着ている赤い服が、和服だったからだ。