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[28567] 【ネタ・三次創作】Muv-Luv チート救援部隊への就職【再構成再投稿】
Name: 風鳴刹影◆c2bc412c ID:830f4c3d
Date: 2011/08/25 22:06
 就職氷河期を迎えた現代地球……。

 あぶれた若者を有効に利用する為、神様は滅びの危機に瀕した世界へと彼らを派遣する“異世界救援部隊派遣会社”を設立した。

 そしてまた、滅びに向かう世界を救うため、主人公達が(事後承諾で)派遣される。



 ※注:このSSは、このサイトのMuv-Luv版で連載中の

“ 【マブラヴ・ACFA・オリ主・ネタ】ちーとはじめました”←本SSで使用されている物量チートシステムの元ネタ様

 を読んで、

『オレも物量チートがしたい!』

 と、設定等(チートシステム等)をお借りした三次創作です。

 設定等(チートシステム等)の使用を許可してくださっているちーたー氏に感謝。

 なろうでも同時掲載


 キーワード R15 マブラヴ オルタネイティブ 再構成再投稿 物量チートシステム フロム脳保管 違和感は脳内補正 ネクスト MS 有澤グレ



[28567] 内定です、異世界に行ってください#1
Name: 風鳴刹影◆c2bc412c ID:830f4c3d
Date: 2011/06/26 18:31
“ぶつりょうとちーとのおとぎばなし”はじめます







第一話



 最初は軽い気持ちだった。

 昨今の就職難で疲れていた俺は、気晴らしにゲーセン(と言う名の銀玉撃ち屋)に向う途中で、

「すみませ~ん。アンケートをお願いします」

 何気ない街頭アンケートに出会った。

 普段ならそのまま素通りするんだが、何の気まぐれか俺はそのアンケートに答えた。答えてしまった。

 ……今思えば、もうちょっとアンケートの内容を読むべきだったな。

 そして次の瞬間、俺は……。







『アナタは、異世界救援部隊の内定を受けました』

「……は?」

 気がつくと、真っ白に塗り固められた……部屋にいた。

 そして目の前には、意味不明な文字が書かれた窓が浮いている。左右に頭を動かすと、窓はそれに追従して来る。何だコレは?

 それに……

「ココは一体どこなんだ!?」

「家に帰してくれ!」

「ママ! ママァ!!」

「おかしいな、この状況がググれない! 答えてくれよググ先生!!」

 今気づいたが、周りには錯乱しかけている人が無数にいる。で、そいつらも顔の前に俺と同じ様に不思議な窓を浮かべていた。

 ……なんだろ、ちょっと前にやってたアニメ――某コイルのメガネの世界みたいだなと思った。ったく、どこのチート技術者が完成させたんだ? 完成したんなら早く一般販売を……、

「って、なにさらっと現実逃避してんだよ?」

 ふぅ。

「よ~し、落ち着け俺。深呼吸して素数を数えるんだ0、1、2、3……」

 周囲の雰囲気に流されるな。心理学の授業で習った地下鉄火災の例を思い出せ! 人間は周囲のじょ……。

 ボカッ!

「イデ!」

 お、落ち着けねぇ! 錯乱したバカが、誰かとぶつかる事も考えずに右往左往している。おかげで、後頭部に一発いいモノを貰っちまっ……、

「テメェ、何しやがる!」

「ワァァァ!」

 って、乱闘!?

「……とにかく、コイツらの中にいたら危険だ」

 状況が分からなくて錯乱し、更に乱闘が発生……。とてもじゃないが、正気を保って行動なんか出来ない……と言うより、錯乱しているアイツラから身の安全を確保したいのが本音だ。

 俺は、とにかくこの人混みから脱出して壁際にまで退避した。

 幸いな事に、大多数の錯乱しているヤツ等は部屋の中心に居て、少数の比較的冷静なヤツ等は壁際に退避していた。

 俺は、手ごろな所に腰を落ち着ける。

「ふぅ、これでゆっくり落ち着け……」

「む? イツキか?」

 すると突然、毛先にクセのあるショートボブな髪型にした小柄な……女の子っぽくない口調の女の子が、俺に話しかけてきた。

 ……はて? 俺にこんな可愛い女の子の知り合いがいたっけ?

「確かに俺はイツキって名前だけど……え~と、誰でしたっけ?」

「み、水無月アスナじゃ! 中学まで一緒じゃたじゃろ!?」

「……あぁ、そう言えばそんなヤツがいたような、いなかったような……」

 なにぶん色々と……名前と顔を覚えるのが苦手でな。10年近く同級生をやっていた級友の名前すらまともに覚えられない始末だ。社会人(一応)に成るまで接点がなかったのなら、なおさら思い出せな……あ、

「あ~、アスナか。そう言えば居たなぁ……」

 幼馴染と言うかなんと言うか……そんな関係のヤツだ。住んでいたのが田舎だったから、保育園から中学までずっと一緒だったな。うんうん、ちょっと妙な口調で周りから浮いていたのが印象的だったからちゃんと思いだせたよ。

 ……さっきの可愛いは取り下げておくか。

 まぁ、幼馴染って事で少しは意識した事はあったけど……、

「はぁ、なんでオマエがココに? てか、ココ何処だよ?」

「わ、ワタシに分かるわけあるか! 少なくとも、10分以上前からずっとこんな感じゃったのはたしかじゃな」

 10分以上前……って言うと、少なくとも俺が気が付く前から? あの騒ぎの中でずっと? ありえないだろ……、

「まったく、一体なんだってんだ?」

 これじゃ、壁際にいるのは冷静なヤツ等じゃなくて、色々と諦めて疲れたヤツ等になるじゃないか。

 俺は改めて周りを見渡してみたが、何処にも出口の類は見当たらない。

 そもそも、この白い壁や床もどういう素材でできているのかまったく判らん。継ぎ目の類もなければ、シミ一つ見当たらない。まるで、白い空間その物に線を引いて壁や床にしたみたいだ。

「ヒントは、この窓に書かれた『アナタは、異世界救援部隊の内定を受けました』って言うフザケタ文章だけか」

 脱出ゲームだったら、かなりの難易度だな。俺はそう思いつつ、空中に浮かぶ不思議な窓をコツンと叩いた。すると、

『はぁ~い! 皆、おっまたせ~!!

 定数になるまで説明を始められないから、結構な時間待った人も居たかしら?』

 うぉ!? 突然だが、窓の中にSDキャラにデフォルメされた女性が現れた。アスナの方の窓にも、俺と同じ様にSDキャラにデフォルメされた女性が出現している。

『う~ん。とりあえず、今冷静に私の話を聞いてくれている人達には10,000ポイントね』

 そして、また訳の分からないモノが――ポイントとか言うのが増えた。

「はぁ、ありがとうございます」

 まあ、何のポイントかは知らないが、あげると言うから貰っておこう。俺は、借金以外は貰う主義だしね。

『少々短絡的だけど、素直でよろしい。もう10,000ポイントあげておくわ』

 そして、また10,000ポイントを貰った。しっかし、一体なんのポイントだ? 貯めると可愛い女の子と素敵な一夜を過ごせ……グハ!?

「ア、アスナ?」

「……想像力が豊かなのは結構だじゃが、そう言う事は口から駄々漏れさせて良いものではないぞ?」

 そう言ってアスナは、俺の鳩尾に突き刺した拳を退ける。だが、その眼は少々冷たい物に……。

 いや、俺は言ってないんだが……。もしかして喋ってたのか?

『はいはい、夫婦漫才はそれ位にしなさい。話が進まないでしょ?』

「いや、夫婦じゃ……」

『さて、静かに私の説明を聞いている君たち。この窓の文は読んだかしら?』

 って、聞いてないし……。

 女性はと言うと、『アナタは、異世界救援部隊の内定を受けました』と書かれた別の窓を出していた。

「読んだには読んだが……、どんなふざけた内定書だ?」

 異世界救援部隊って、どこの二次だよ? ビックリか? ビックリなのか?

『まずは……そうね。詳しい説明をする前に少し聞くけど、二次創作は知ってる?』

「まぁ、知っているっちゃ知っているが……」

 原作(一次創作物)を下書きにして、自分なりのアレンジを咥えたモノ……それが二次創作だったな。だからそれに何の関係が、

『ふむふむ。

 じゃぁ、ファンフィクションなんかの二次創作で使われてるチートオリ主の神様テンプレって言うのは知ってるかしら?

 あ、よかったら、そっちの女の子にも教えてあげて欲しいんだけど?』

 FFの神様テンプレ? チートオリ主って言うと、え~と……、

「神様に誤って殺された――または暇つぶしに拉致られたりしたオリ主が、神様部屋に連れて行かれて色々なチート能力を貰って、フィクションの世界に強制介入させられる……って言うヤツか?」

『ええ、私の言いたい事は概ねそれで合ってるわ。

 そうね、私の代わりに説明してくれたから、君にもう10,000ポイントあげましょう』

 またポイントか。いや、本当にこのポイントを貯めると何か嬉しい事が……ゲフンゲフン!

「(じ~)……」

「ん、ん……。で、それがこの状況とどう関係しているって言うんだ?」

『だ~か~ら、今がその神様テンプレなのよ!』

「……は?」

 いや、それは無いだろ?

「すまんが、カメラはどこかのう? それと看板を持ったスタッフは……」

「ああそうだな。おい、お約束の看板を持ったスタッフは何処だ? それからカメラは……」

『ドッキリじゃないから! マジだから!!』

 いや、マジって言われても……ねぇ? 俺は、アスナと顔を合わせながら互いに思っている事が同じである事を確認した。それを見た女の人は、一つ深いため息をつくと、

『じゃあ、こうすれば信じるかしら?』

 そう言うや否や、俺達の周り――俺達の様に説明をちゃんと聞いていた人の周りに青いサークルが表れた。

「一体これがなんだって……うぉ!?」

 そのサークルを調べようと立ち上がると、いきなり体が浮き上がりクルクルと回転してしまった。

「い、イツキ!? っと、なんじゃこれは!!?」

『そのサークルの中だけ、極所的な無重力状態にさせてもらったわ。どう? これで信じてもらえたかしら?』

 そう言いながら、俺の回転に合わせて女性の映った窓がついて来る。確かに、部屋の中心で説明を聞いていないヤツ等は普通に立っているが、俺達の様に青いサークルの中にいるヤツ等は宙に浮いている。極所無重力って……、

「ドンだけ金をかけた……」

『だ~か~ら、ビックリじゃないって言ってるでしょ?

 なら、アナタを鳥にでも変えてあげようかしら? 自分の力で空を飛べば、イヤでも現実だって……』

「いや、それ何処のギャルゲーから持ってきた? タイトルが思いだせんが……」

 たしか、異世界召喚系で魔法はカードで使うヤツだった気が……、

 フニュ。

「ん? なんだこのやけに軟らかくて白い……」

「キャー!!」

 フランベ!

 やけに軟らかくて白いモノの正体を探ろうとしたら、いきなり頭に強力な――蹴りを喰らった。そして、そのままサークルの外に飛ばされて地面とぶつかる。

「い~つ~きぃ~!」

「あ、アスナさん?」

 いったい何が? てか、なぜ怒ってる?

「フン! 何も分かっておらんようじゃな……?」

『あらあら。

 それで……私の言った事、少しは信じてくれたかしら?』

「まぁ、ワタシは信じよう」

「即答だね~」

『うんうん。素直に信じてくれたアナタには、お姉さんから+10,000ポイントあげるわね。

 ……で、そっちの君は?』

 あ~もう、信じればいいんだろ? とりあえず話を進めてくれ。俺がそう言うと、窓の中の女性はハァと肩をわざとらしくすくめて見せた。なんだろ、妙にムカつく……。

『それじゃ次の説明に移るけど、この状況を見て何かを思い出さない?』

 この状況? ……閉鎖された密室に無数の人間が、

「クソッたれ!」

「やりやがったな!」

 殴り合っている。で、訳の分からない女の人が映るモニターが……、

「あぁ、バトルロワ……」

『ちっがーう! なんで殺し合い学生のお話が出てくるのよ? まったく違うでしょ?? さっきの話とまったく関係ないでしょ???

 ったく、どうしてそうなるのかしら……』

 いや、アイツらあのまま放っておくとマジで死ぬぞ?

『大丈夫よ。ココは、そんな事にならない様になってるから』

 いや、訳が分からんから……。

『じゃあ、もう一度聞くわよ?

 この白い部屋と、空中に浮かぶモニター、贈呈されるポイント! 君なら、この状況に心当たりがあるんじゃない?』

 う~ん、そんな事言われてもなぁ……。あ、

『コレだけヒントを出して分からない様なら、ポイントを削っちゃおうかしら?』

「い、いや、その必要ないから。

 もしかして……前に読んだ事があるマブラヴ二次SS――“ちーとはじめました”でオリ主のグラーバグ1が一番最初にやって来た“白い部屋”か?」

 他にも、リアルタイムシミュレーション系のシステムを使ったチートでも似たようなシュチュからスタートしてたな。

『……正解。はぁ、コレだけ言わないと分からないなんて……。

 まぁ、全員が全員知っている訳ないって分かってたけど……』

 どうやら正解らしい。しかし、コレだけ人数を集めるなんて……話の流れからして、この面子でチート部隊を使ったバトロワでも始めるのか? 物量無双の軍隊同士のぶつかり合い……殆どの連中が策略も何も関係無い戦いをやりそうだな。

 あ、いや……救援部隊って言うんだから、バトロワじゃなくて普通に何処か危機に瀕している世界に援軍を連れて駆けつけるのか?

 ツンツン、

「……ん?」

「のうイツキ。その“ちーとはじめました”とは、いったいどう言うお話なのじゃ?」

『あ、それじゃそっちの説明もよろしく!』

「おいおい……」

 アンタが説明してくれるんじゃないのかよ?

 ……はぁ。俺は、アスナに“ちーとはじめました”――物量チートシステムを手にしたオリ主(グラーバグ1)が、無数の無人ロボット軍団と巨大移動要塞部隊を使用してBETAによって滅びそうになっているマヴラブ・オルタネイティブの世界で大活劇を行う……と、色々と掻い摘 んであらましを教えてやった。

「ほ~。それで、ワタシ達もその様な事ができるのか?」

『あら? こっちの娘は飲み込みが早いわね。そっちの男の子と大違い……10,000ポイントをあげるわ』

 お~い、色々と長ったらしい説明とかをしてやった俺にはポイントはないのかよ? もしあのチートシステムを使うんだったら、ココでのポイントはかなり重要に……、

『あ、さっきのマイナスとクイズの正解を合わせてチャラにしたから無しよ』

 そんなのありかよ!?

『さ~て、話をちゃっちゃと進めるわよ? じゃないと、あっと言う間に制限時間に成っちゃうからね』

 そう言って彼女は、部屋の一面を指差す。そこには『残り時間、23時間24分06秒』と、デジタルな表示が浮かんでいた。

 なるほど、確かに時間は有限の様だ。残り時間が無くなると、準備が出来ていなくとも強制的に出発させられるんだろう。

『ピンポーン! 正解よ。……報酬はないけど』

 チッ、無いのか……。

「……あ~、じゃあ二つほど質問良いか?

 まず、俺達が派遣される世界は何処だ?

 そんで……例えば、あそこで気絶しているヤツ見たいに何も出来ずにタイムアップした場合はどうなるんだ?」

『う~ん、良い質問ね。

 先ずは最初の質問の答えから。アナタ達に行ってもらう世界だけど――マブラヴ・オルタネイティブの世界になるわ』

 オイオイ、マジかよ!? ……って、よくよく考えてみるとチートを貰って救援に駆けつけるのに、あの世界クラスの事が起こっていないのが変だな。

 それに、戦う相手がBETAなのはまだ救いようがある。これがR-TYPEの世界で敵がバイドなら、自分が人間であり続ける事は最速諦めなければならない。バイド汚染で、敵さんの仲間入りする事になるんだから……。

「マヴラブ・オルタ……スミカが触手で酷い目に合わされた世界じゃな? うむ、女の敵を跡形も無く消し飛ばせばいいのじゃな??」

 アスナさん、色々と間違っていて間違ってないけど……お姉さんのお話しは未だ終わってないよ?

『それでもう一つの質問ね。一応だけど……、救済処置として“お手軽介入セット(救援措置)”って言うセット内容で始めてもらう事になるわ。

 ちなみにそのセットの内容だけど、

 生産プラント(動力炉付き)

 初期資材としてクレート5,000t

 輸送トレーラー10tクラス(10台)

 撃震215ブロック

 コレだけを持って、10月22日の国連軍横浜基地90番格納庫内に放りだすから』

「な、なかなか素敵なツアーになりそうなパックだな」

 うん、確実にそれら全部を香月博士に没収されて尋問タイム……。上手くすれば、白銀と一緒に訓練兵からやっていくルートになるのか?

『これは過去、生産プラントと撃震だけを持ってあの世界に介入。そして、みごと世界を救ってみせた猛者の記録(データ)を参考にしたお手軽パックよ。

 チャレンジャーな人は、是非このパックで挑戦してみてね♪』

 ヤダよ。誰がそんな縛りプレイをしなきゃ……、

「あ、じゃぁオレそれで」

『よし、売った! お手軽介入セット(救援措置)、お一人様ごあんな~い♪』

 って、いたぁぁぁ!

 オレ達の隣に(いつの間にか)いた一人がそのセットを購入。その直後、そいつの像が揺らいだかと思うと、一瞬で跡形もなく消えてしまった。

 猛者だ。猛者が逝った……。

「なんじゃろ。ワタシもみょ~にそのセット内容でやってみたく……」

「止めろ! そんな縛りプレイ紛いな事を進んでやるんじゃない!!

 ……もう少しまともな選択がちゃんとあるから、そっちの方を選びなさい。ね?」

 オレが嗜めると、アスナはムスッと顔を膨らまして引き下がる。だが、周囲にいた何人かは、

『あ、コレでいいや』

 的なノリで“お手軽介入セット(救援措置)”を購入して行った。

 ああ、この手のヤツは出切るヤツがやるから出切るってのに……。

『……さ~て、コレで考えなしのバカ(チャレンジャー)が一掃出来たわね(ボソ)』

 お~い、この神様(?)すっごい黒い事をさらっと言ったよね? 言ったよね??

 周りに視線を送ってみるが、誰もその事に気づいていない。お、オレだけに聞こえるように言ったのか? そう思うと、女性はニヤリと笑って見せた。ハハハ……、

「のう、さっきイツキから神様テンプレについて教えてもらったが……、ワタシたちは死んでしまったのか? それとも連れて来られたのか?」

 すると、アスナがそんな事知らないとばかりに質問を飛ばす。

 あ、それはオレも気になるところなんだが……、

「あ、アナタ達は死んでないわよ?

 そっちの君は、あのアンケート――もとい契約書を書き終わった瞬間にこっちに飛んでもらったわ。

 はいコレ、あなたの字ね? コレ、あなたの名前に、各種個人情報。そして、拇印……」

 そう言って見せられるアンケート――の名を借りた契約書を示す女性って、

「俺は山田西南か!?」

「あ、このネタ分かってくれた?」

 天地無用GXPで主人公がGPの案内人さんから最初にやられた事だ。……まさか、ここで家族からのビデオメッセージの閲覧タイ ムとかじゃないよな?

「もちろんあるわよ?」

 あるのかよ! ……内容は省かせてもらうが、要約するとしっかり働いて来いだそうだ。何処に行くかは分からない様だがね。 まぁ、億近い金と道楽息子がトレードできたのだ。神様印とか色々な力で特に気にしない事にしたのだろう……。

「とても感動的なビデオメッセージだったわね(笑)」

「そうですね~(棒読み)。俺、帰ります。駅はどっちですか?」

「そんなの無いから(笑)」

 はぁ……。きっと、数日中に彼らの頭の中から俺の存在は忘れ去られるのだろう。そう、キレイさっぱりに……。

「そう言えば……一ヶ月くらい前からイツキのご両親、みょうに羽振りが良くなっていた様じゃが……そう言う理由じゃったのか。

 お、先週じゃったか『家の建て直しを行うから、それが終わるまで家族で京都旅行に行って来る』とか言っていおったな」

 ク、既に忘れられていたか!

「そ、そう言えばアスナもアンケート(雇用契約書)を書いたのか?」

「う、うむ……。いや、正直に言うと酒に酔って橋の上を歩いていた所までは覚えているのじゃが……」

 ああ、落ちたな。たぶんその橋から落ちたんだな。そんで、落着する前に回収されたと……。しかし、今気がついたが何でスーツ姿なんだコイツ?

『……で、アナタにもちゃ~んとコレを書いてもらったから、そこんとこは安心してね♪

 生憎とビデオメッセージはまだ作ってないけど……』

「い、いや、別に結構じゃ!」

 と、なにやら漫才のような事をしている二人。

 あ~、すまんがそろそろ話を進めてくれ。じゃないと時間がなくなるからさ。そう言ってデジタル時計を確認すると、残り時間が23時間02分になっていた。

『まったく、レディー同士の楽しい会話に水を差すなんて……またポイントを減点しようかしら?』

「するな! アンタ、解説者だろ? 話を進めろよ!」

 じゃないと、読者の皆もいい加減飽き飽きしちゃうよ?

 ん? なんか今変な電波を受信したような気がしたが……気のせいだな。うん。

『冗談よ。じょ~だん。

 そうだったわね、あんまり解説してなかたからすっかり忘れてたわ。

 それじゃ……って、殆ど説明は終わってたわね。あ~、それじゃ君の知っている“ちーとはじめました”との大きな使用変更点を説明しよう!

 まず、この状況を見てどう思ったかしら?』

 どうって……。部屋の真ん中で血まみれになって恐慌状態になり、やっと収集が付いた屍累々なこのじょ……、

『だ~か~ら、そこじゃないって言ってるでしょ!

 私が言いたいのは、人数よ!

 ……コレで分からない様なら、またポイントを減算するからね?』

 おいおい、どういう横暴だよそれ? はぁ、まあ人数って言うヒントを貰ったからそこから考えるか。

 たしかグラーバグ1は、たった一人でこの神様部屋に居たな。だが、俺達は複数人数で神様部屋に居ると……。ん? なんで複数人数を同時にやってるんだ? 効率的?? いや、複数になったら混乱した瞬間あの部屋の真ん中で起きている惨状の……。なら何故???

「……もしや、複数で介入可能。と言う答えではあるまいな?」

『ピンポーン! って、彼女の方が答えちゃったの? じゃあ、特典の10,000ポイントはアナタにあげるわね』

 おいおいおい! なに俺のポイントゲットチャンスを奪ってるの!?

「う、うむ、すまん……」

『はいはい、喧嘩しない喧嘩しない』

 そう言う事は、アソコで殴り合っているヤツ等に言ってやれ!

『あ、アレは放って置いていいのよ。

 それじゃ、変更点の説明に入るわね? ちょっと前からやってたんだけど、派遣する人を複数――正確にはチームを組んで行く事ができるようにしたわ。

 そうした理由だけど……』

「一人だと失敗が多いから?」

『そうなのよ~。初っ端でコケル人もいれば、最後の最後でピチュンと死んじゃったりして……。結局、呼び出した人達とかが勝手に成功させちゃったりするのよね~。

 でも、コレも一応失敗のカウントなの。

 だ、か、ら、一つの世界に派遣する人を複数人数で構成したチームにも出来るようにしたって訳。これなら、一人が落ちても残った人が目標を達成してくれるでしょ?』

 なるほど、納得のいく答えだな。しかし、複数で行くメリットってそれだけ? むしろ即興のチームで命懸けの作業を行うって……どこぞの漫画であったアトラクション――鏖(みなごろし)の魔女――の第一問の時みたいになるだけじゃないのか?

『たしかに即興のチーム色々とは厳しいわね。下手したら共倒れしちゃうかも? 皆はチームを組む時、慎重にメンバーを選んでね??

 で、もちろんメリットはさっき言った事だけじゃないわ。

 メリットその一、初期のメンバーが豪勢にできる!』

「いや、それ普通だろ? メンバーが増えれば初期に連れて行けるメンバーも増えるだろうし。オレTUEEE系でも、五人で介入して○○レンジャ~とか名乗ったり……」

 戦隊モノは楽しそうだな。香月博士も、アクロバットに合体する巨大ロボを見て開いた口が塞がらなくなるだろう。

 ん? 待てよ……オレTUEE系の人と、複数人数を連れて行く人は混同できるのか?

『ええ、もちろんそれもできるわ。

 ココでのポイントの管理は、個々人で行ってるからね』

「ココで……って事は、向こうに行ったら合計して管理すると?」

『ピンポーン! だから安心してオレTUEEな人と、仲間を連れて行く人でチームを組めるわ』

 なるほど、

『で、チームを組んだ者同士でのポイントの譲渡、コレができる様になってるわ。

 これでポイントが若干足りない! とか、余ってるけどもう使い道が……なんて事になっても大丈夫よ?』

 なるほどね~。

『って、聞いてる?』

「もちろん聞いてる。だから、早く作業画面を出してくれ!」

 残り時間がもう22時間46分になっちまったんだよ!

『せっかちさんね~。まだ22時間も有るのに……。それじゃ皆、作業を開始してね~。

 あ、システムは“ちーとはじめました”とほぼ同じ。品目は各自の知識によるから……、お品書きがちょっと違う程度かしら? まぁ、質問があったら直ぐに答えてあげるから安心しなさい。

 あ、チームの定員は五人までだからね~』

 女性がそう言うや否や、別枠の窓――チートシステムの窓が空中にポップした。



[28567] 内定です、異世界に行ってください#2
Name: 風鳴刹影◆c2bc412c ID:830f4c3d
Date: 2011/06/26 18:41
 第二話



 作業開始が宣言されてから十数分が経過した。

 今の状況はと言うと、彼女の説明を聞いていた何人かがチームを組む為に歩き回ったりしている。だが、殆どの人は一人で行くみたいで、単独でポツポツと床に座っている。たま~に近づいたり離れたり……そんで自然とチームに成ったりもしたりしていた。

 俺か? 俺は、最初に腰掛けた壁際から動いていない。独りで行くつもりだからね。

 さて、俺もそろそろ作業を……ん?

「あの~、アスナさん。この手はなんですか?」

 ギューっと俺の服の袖を掴むアスナ。心なしか上目使いな気もする。

「い、いや……イツキがあまりにも心配だからな。一緒に行ってもいいかもかなぁと……」

 いや、どう言う頼み方なの? って、そんなに不安げに服の裾を引っ張らない!

「はぁ、分かった。一緒に来てもいい……」

「うむ、そうでなくてわな!」

 おい~、何その変わり身? やっぱ止めようか? って、だから服の裾を引っ張るな!

「で、どうすればいいのだ?」

 そう言ってアスナは窓をツンツンと突く。

 そこからなのか!? とりあえず、アスナにこのチートシステムの基本を教えたやった。後は、自分なりにやってくれるだろう。

 はぁ。さて、俺はどうするかな……。

「オルタの世界、なんだよな……」

 タケル達が、ボロボロに成りながら地球のBETAの親玉を倒し人類に希望をもたらす。だけど、タケルは全部を失って、誰からも忘れ去られて……だったな。

「あの“めでたしめでたし”、変えられるか?」

 選択によっては、十分にやれるかもしれない。

『あら? あのエピローグが不満?』

「……いや、アレはアレでいいんだ」

 だが、あの世界に――全部忘れて平和な世界で笑って暮らすってのは、あいつらがあの世界で天寿を全うしてからでもかまわないだろ?

『……なるほどね~。

 そうね、色々間魅して君に20,000ポイントボーナスしちゃいましょう(うんうん、この子がタケルちゃん応援派で良かったわ♪ 私が担当した人、なんだかんだでタケルちゃんアンチに成っちゃうのが多かったのよね~。この子は期待できるかしら?)』

『臭さ絶好t(ボカ!)『五月蝿い!』』

 な、なんだ今のは? ……何もなかった。うん、風の精霊なんて何処にも居なかった。

 ん~、にしても20,000ポイントってかなりの大盤振る舞いだな? え~と、これでオレの今の持ち点は150,000ポイントか。アスナは……たしか130,000ポイントだったな?

「のう、イツキはどうするのじゃ? 自分の強化か、部隊を連れて行くのか……」

 ポイントを確認していると、アスナが話しかけてきた。まぁ、チームを組むのだから相談もしなきゃならんな。

「俺か? 俺は……」

 そう言って窓を確認する。ま、俺が選択する項目は、最初っから決まっている。

「初期スタートは部隊(仲間)を連れて行くぞ? 一人じゃ、まずまともに戦えないからな」

 平和な日本で暮らし、何の訓練も積んでない俺たちだけじゃ、ハイヴを潰すどころかその前のBETAの間引作戦だけで死亡フラグが乱立するだろう。それこそR-TYPEシリーズの初見殺し並みにフラグが乱立する……。あ、R戦闘機を持ち込めばフォースと波動砲で楽勝……って、ダメだダメだ! 今度はBETAより凶悪なバイドが地球で暴れちまう。

 どんなオワタな世界だよそれ?

 そんな事したらマブラヴ・オワタネイティブになっちゃうよ!?

 純夏ちゃんが脳みそのまま飛び跳ねちゃうよ!? 怖すぎるよ! 白銀に治癒不可能なトラウマ植えつけちゃうよ!!

「な、何を独りで身悶えているのじゃイツキ? キモイぞ?」

 ひ、ひでぇな。

「ハァハァ……。まぁ、ちょっとした妄想だ。

 それと、自身の強化なら後々の戦闘でのLvUPで十分に出来るからな。俺は、ここで無理をしてオレTUEEE! をやる気はない」

「ふ~ん……」

 不死は色々と魅力的だが、確実に悪手。BETAに捕まって永遠の脳髄化フラグが立つ……快楽地獄かぁ。それはそ……ゲフンゲフン! それか、夕呼先生の色々な実験台にされて精神崩壊するかだな。

 さて、項目を選択……する前に、

「お~い、ちょっと確認していいか?

 自身の搭乗機についてなんだが……、ネクストACの操縦に必要なAMS適性やインプラントなどの手術も、この“自身の強化”って言う項目に含まれるのか?」

 一応ざっと見た限りでは、自身の強化の項目には不死化とか一回コンテニュー権とかが並んでいる。だが、今俺がした質問の項目は見つからない。ただ単に俺が見落としているだけかも知れないが……。

 俺の質問に、窓の中の女の人は目をパチクリさせた。

『……いい発見ね。

 そうね~、その答えは“ちーとはじめました”で、グラーバグ1が高効率教育センターで行った体験型教育プログラムを思い出せば分かるわよ?』

 ? 体験型教育プログラム……ってアレか? 頭にUSBぶっ刺して、WW2や湾岸戦争の歩兵戦とか各種乗り物(人型ロボットも含む)を乗りこなしたり、経営陣の訓練を受けたりと言う……ん? USB? うん、確かアレは耳の裏にUSB端子があって、それに接続していたな。となると、神様印のインプラントがされるわけなのか?

『ええ、そう。

 それから、君は乗る機体に対して最適化されるわ。……ここまで言えば、十分理解できると思うんだけど?』

「……つまり、俺は戦術機だけではなくネクストにも乗れると」

 インプラントをされているって事はそう言う事だろうな。最適化の適応範囲ってヤツで、AMS適性がなくても最初にネクストを搭乗機に選択すれば乗れるようになるんだろう。

 女性はにっこり笑うと、

『よく出来ました♪

 ちなみにこの選択は、どっちでもできるグレーゾーン的なモノね。他にも、乗ろうと思えば特別な適性が必要なスーパーロボットも乗り回せるわよ?』

 なるほどね~。まぁ、今回はそれは置いておこう。

『でも、その選択には当然として自身強化としてのコストがかかるわ。

 モノによって割合が変わるけど……。ネクストACなら――それプラス、自由なアセンブルを行った機体でだと、ここで入手した全ポイントの三割(今だと45,000ポイント)になるわね。

 もちろん、これは君自身の強化……も含めるけど、大多数は君のネクストの費用よ。戦術機ならタダでプレゼントなんだけど……』

 戦術機ならタダでプレゼントか……。安いわけではないが、後々の事を考えるとこの選択は吉と出ると思われる。大出力のコジマ・ジェネレーターにより、戦術機をはるかに凌駕した物理装甲に対レーザー装甲の実装。コジマ技術により人型での音速航行を可能にした――オーバーブーストおよびプライマルアーマー。時速700kmオーバーの瞬間加速能力――クイックブースト。国家解体戦争を成し遂げた兵器と言うネームバリューも後押ししてくれる。

 ん? ちょっと待てよ、

「自由にアセンブルできる機体でだと三割? なら、それ以外の選択もあるのか??」

『あら、ちゃんと気がついたのね?

 ACfAの初期ストレイド四機種からスタートするなら、ポイントは一割(今だと15,000ポイント)で構わないわ』

 初期四機種が一割か……。なるほど、参考にさせてもらおう。

「ところで……アスナはどうするんだ?」

 コイツの守備範囲が分からんからな。どんな作品から誰を引っ張ってくる気なのか……、

「ん? あ~、イツキが仲間を連れて行くのじゃろう? ならワタシは、自身強化で行こうと思っておるのじゃ」

 ナンデスト?

「え~と、不死化とかはあんまりお勧めできな……」

「違う違う。

 自身強化と言っても、それを取るわけじゃない。フィクションキャラのスキルとか装備を持って行くと言っておるのじゃ!

 ちょーどその説明をしてもらってな。候補を幾つか上げた所なんじゃが……」

 へーそんな事も出来るのか、どれどれ?

 サムス・パワードスーツ――ただし、性能はアザーエムの初期状態。これで五割の消費か(ダメージを軽減するバリアスーツや、強力なプラズマビームなども撃てるフル装備状態は、十割の消費ね)。

 アルター能力――モノにもよるが、殆どのキャラのアルター能力が五割以下の消費で習得可能ね。カズマのシェルブリット(最終形態)なんかは十割か……。

 無限の剣製――ただし、一切の贋作データ無し。これで二割か……(英霊エミヤシロウと同等の能力だと、十割ね)。

 魔法技能――要選択で二割から十割? よく分からないが、何かを選択する必要のある大雑把なモノだな……。あ、無限の剣製も魔法技能(魔術だったか?)に含まれるから二割なのか。

「オマエの守備範囲が分からんな……。

 てかアルター能力や魔法技能って、オマエ生身でBETAと戦う気なのか?」

 サムス・スーツはまだ分かる。鳥人族の超テクノロジーの塊であるスーツなら、BETA相手に十分に戦えるだろう。スーパービームなら反応炉も吹き飛ばせそうだし、スクリューアタックならBETAに取り付かれずに進攻できるだろう。溶岩の高温にだって耐えられるスーツの防御力なら、レーザーにだって十分に耐えられるだろう。

 アルター能力も、絶影(初期)などなら戦車級を相手取るには十分な力がある。スーパーピンチクラッシャーは……まぁ、アレだな。シェルブリット(最終形態)なら、力押しでハイヴを陥落させる事も……。

 魔法系もそれなりに――ネギま! の千の雷や、スレイヤーズのドラゴスレイプみたいな対大群魔法ならそれなりに期待は出来るな。

 だが、アルターにせよ魔法にせよ、生身でBETAと戦うつもりなのかアスナは? 高確率でマミるか、ミンチになるぞ?

「距離さえ取れば問題はないじゃろ。現に歩兵もBETAと戦っておるしな。

 で、この魔法技能じゃが、どの作品の魔法を使うかでポイントの消費が変わるようじゃ。あ、それと習熟具合も消費量に影響するのう」

「まぁ、そう言われればそうだが……。で、アスナはどうする気なんだ?

 やっぱパワードスーツか?」

 まぁ、フル装備状態なら、単独でもハイヴを陥落させられそうなチート武装だからな。原作でも単独でスペースパイレーツの惑星要塞を陥落させているし……。あ、ハイヴを水攻めして、グラビティスーツの効果で反応炉まで楽々到達するのも悪くないな。BETAは水中に対応した進化をしてないし……。

「だが、かなりの量の水を投入する穴堀機が必要になるな……」

 ドリルが必要になるよなぁ……グレンラガンか?

「う~む。パワードスーツも悪くないのじゃが、魔法とか言うのも使ってみたいと前々から思っておってな……。

 無限の剣製で……あ、コイツは銃火器の製造に変更も可能だそうじゃ。で、延々と後方から銃火器無双を……」

「ま、まぁ、ゆっくり考えてくれ。俺は俺の作業を進めるから」

「うむ、ではもう少し悩んでみる事にするか……」

 アスナに期待するのは止めておこう。戦力として使えれば御の字と言う事で……。

「ま、仮決めシステムってのが有るみたいだから、ある程度候補が決まったら話し合えばいいな」

 今までは、決定したら一つ前の選択に戻って……に10,000ポイント必要だったようだが、チームを組んで活動する様になったために仕様を一部変更したらしい。

 さて、俺はどうするか……グラーバグ1は、横浜基地の横に出現したんだよな? で、戦闘に……。似たような作品で、国境無き軍隊は横浜基地から少し離れた場所に基地を置いたけど……やっぱり戦闘に突入してたな。

「半可な放し方じゃ、横浜基地とドンパチする羽目になるんだよな……」

 できればそんな事したくないんだけど……。なら、海上にメガフロートを作ってみるか? 太平洋上なら、そのまま横浜港に接岸するのも良いし……。いや、日本海にして、佐渡ヶ島からBETAの死骸を採集しまくるか? う~む。でも、どちらにしても横浜基地か帝国軍と戦う事になりそうだな……。

「タケルに協力するには、香月博士と交渉する必要があるんだよなぁ……やっぱ、有利な交渉材料が必要になるよな?」

 う~ん、戦力位しか用意できないんだよな。もうちょっと有利になるようなモノはないか? 技術……は、即物的な交渉材料としてはインパクトがなぁ。

「……とりあえず、連れて行くメンバーを決めるか」

 悩んでいたって時間の無駄だからな。

 先ず一人目は……砲撃戦担当で――有澤重工社長、有澤隆文と雷電は鉄板だな。彼は小規模とはいえ一企業の社長をしていた。是非、その榴弾技術と経営手腕をあの世界でも生かして欲しいと俺は思っている。

「後は、近距離戦担当で真改のスプリットムーンかな?」

 1,000発マシンガンのモーターコブラにACの看板兵器――ムーンライトを装備し、さらに追加ブースターでワープしてくるというインファイト型だ。狭いカーパルス内で張り付いてくるから恐ろしく苦戦した経験がある。コントローラ無しだから出来る常時後ろ張り付きは、今思い出しても恐ろしかった。

 出来れば癒し系でダン・モロを連れて行きたいな……。でも、コストが割に合わない。

 これが宇宙世紀に飛ばされ、成層圏でブルーデステニー二号機と戦い、三号機と共にアンサラーを落としたスーパーなダン・モロなら喜んで連れて行きたいのだが……。生憎と彼は、通常兵力程度ならどうにかなる程度のリンクスであった。

「ネクストACからなら、この二人か?」

 だが、なんか男ばっかりだ。女の子が欲しいな……リンクスで女性って言うと少佐にリリウム。あとは……、

「メイか?」

 メイ・グリンフィールド。新旧混合のGAマンを主体に、支援メインで構成されたメリーゲートを駆る女性リンクス。ゲームでは最大三回も支援機として選択可能なキャラなんだよな……。ダンよりも使えるし、一応候補にあげておくか。

「……ん? 待てよ、パイロットを選ぶと機体が付属して来るんだよな?

 お~い、もしかして艦長とかを呼ぶと、そいつが乗っていた戦艦ないしが付属してくるのか?」

『おお!? また鋭い指摘だねぇ~君。

 その質問の答えだけど、パイロットと同じように――艦長を選択すればその人が登場していた船が付属させる事ができるわ。例えば、ブライトさんだと、ホワイトベースやアーガマとか……ね?

 あ、だけど、他のクルーは付属しないから……例えばタシロ提督を呼んでヱルトリウムを習得しても、ちゃんと動かせるように成るには相当な人員を用意する必要があるわね』

 なるほど、人員が必要か……。

「……そいつは、このモブ兵士(洗脳済み一個大隊――600人、10,000ポイント)か、こっちの自動歩兵(一個小隊――50機+生産ライン、10,000ポイント)を選べばいい、かな?」

 思案の結果、警備員兼作業者として自動歩兵――ザ・サードに登場する2mから4m程度の戦闘用アンドロイド。ただし、コイツは原作と違って培養脳ではなく量子コンピュータに神様印のAIを装備――を採用する事にした。機械ゆえに生身の兵隊より強力だし、洗脳にポイントを払う必要もない。現地で好きなだけプラントから量産できるから人員面で色々と役に立ちそうだ。

「そういや、出現する時間はどこなんだ?」

 一応確認してみたが、スタート日時は2001年10月22日……ちょうどタケルがあの世界にやってくる日だな。

 ちなみに、この出現時間の変更も可能との事だ。

『ただし、2001年10月22日を基準に一ヶ月前に戻るたびにコストが10,000xチームの人数分のポイントが必要になるわ。二人なら20,000で、五人なら50,000ポイントね』

 正直に言って、五人でだと恐ろしく割に合わない選択だな。出現場所も0~10,000ポイントで決定する必要があるから……うは、それも含めると恐ろしい初期コストになるぞ?

「う~ん、小惑星帯のハイヴを潰して地球に向かうってのもアリだと思ったんだが……」

 10月22日に出現して、下手にちんたらしていたら桜花作戦始まっちまっている可能性すらある。

 う~む、終焉の銀河からやってきたαナンバーズみたいに小惑星帯に後方支援基地を立ち上げて、ハイヴをサーチ・アンド・デストロイ。G元素を手土産に香月博士と交渉したかったんだがなぁ……。あ、だけど、広大な小惑星帯でハイヴをサーチ・アンド・デストロイする時間を考えると、恐ろしく非現実的な選択か? マクロス系技術でフォールドでもしないとやってられんかもしれん。

「一応、BETAの支配地域と言う区切りなのか。コストがかからないって言う点だけは魅力的なんだが……」

 だが、出現した宙域にBETAのハイヴが在ると言う確証は無い。難しい選択……あ、

「たしか、土星の衛星――タイタンだったかにハイヴが在るって言っていたよな? あそこに……」

『タイタン? メタンの海でバカンスでもするの?』

 は? ……え~、タイタンの情報(ウィキ程度の情報)を教えてもらった。月よりもデカイ衛星で、メタンの雨の降る大気があると……。で、火がつくと燃え上がる危険性が有るとか無いとか……。

「……タイタンでBETAの採掘は無理そうだな」

 サムスのパワードスーツとかなら何とかなりそうな気がするが……、やっぱりBETAの死骸が回収しづらいな。やっぱり地球上のどこかに基地を建てるか? 比較的ハイヴの近い場所にして……。いや、待てよ?

「たしか、火星の衛星は小さいんだよな?」

 たしか、小惑星が火星の引力に捕まって……とか言ってたか? だったら、自力での脱出もできるかもしれない。大きめの宇宙戦艦とかを基地にして、衛星の周りを……。そう言えば、火星の衛星ってハイヴが建造されてたっけ?

『それは、行って見てのお楽しみね。

 私が答えられるのは、基本的にこのシステムについてだけで、現地の事はあまり教えられないのよ』

 ムムム、意地悪だな……。う~む、どうするかな? 火星の衛星にハイヴが無かったら……、

「……待てよ? ハイヴ着陸ユニットがアレで、終焉だとバサラが……だったな。他でもハイヴ着陸ユニットがやって来たり……」

 やれるか? やれるのか??

「……クレート(資材)もポイントである程度購入可能か?」

 プラントの成長に加算されないクレートの購入(5,000t)、10,000ポイント。ただし、購入するたびに必要になるポイントが二倍に成る……。試しに三度購入してみたら、それだけで70,000ポイントも消費してしまった。最速、5,000tだけあれば初期資材として十分なのだ。後はハイヴからBETAを収集すればいい。

「よし、なら初期の資材は問題ないとして、実際にそれを決行して失敗した場合のプランBは……」

 とにかく一杯の窓を出現させプランの試行錯誤を行っていく。

 お、恒星間光速移動技術も取れるのか……。あのSSだとコマンダーレベル10あたりで選択可能な項目だったが、この準備部屋だとそう言う制限がないようだ。多少ポイントが割り増しになっているのが痛いが……。

「使える船で手ごろなヤツは……。宇宙、または低重力下での戦闘経験のある……。大気圏突入能力のあるヤツで……。

 マクロス系技術……は使えるか? 使えるな。他に使えそうなモノは……。

 クソ! ポイントが足りない上に行き当たりばったりなプランニングだな……」

 チラリと時計を確認すると、既に残り時間が06時間26分に成っていた。いつの間に!?

「アスナの方はもう決まったか?」

 たしか、自身の強化を……、

『僕と契約し(ry』

 ガガガガガ!

 俺は、その白い悪魔のいる窓を別の窓で覆い隠した。更にその危険な窓をゴミ箱へと投入する。更にそのゴミ箱を別のゴミ箱に……。よし、

「う、うむ、なかなかに危ないところじゃった。

 あ~、ワタシの方は決まったぞ?

 魔法技能(リリなの系)と汎用デバイスに魔導師ランクAじゃ。

 無限の剣製は……ワタシではネタ程度でしか使えないしのう。サムス・スーツもモーフボールの事を考えると……」

 ああ、あのナゾの球体化ね。どういう風にしてしまっているのか分からないけど、明らかにあのボールのサイズは小さすぎるよね? 換気ダクトの中を転がれる位小さいんだよ?

「魔砲少女か、でも何でリリなのなんだ? ネギま! の魔法でも……」

「あっちは、難しい論理構成にラテン語や古代ルーン語での詠唱がたいへんなのじゃ。それに比べて、リリなのの魔法は武器としては使いやすい……と、考えての」

 なるほど、まあリリなのの魔法は質量兵器の代わりみたいな位置づけだからな。低レベル同士での単純な早撃ちなら、リリなののデータ式のほうが(おそらく)早いし強い。それに、あの世界の魔法は『高度に発展した科学の産物』的なものも含めているからな。下手な超常現象よりとっつきやすいだろう。

 あ、でも高レベルになると……ネギま! の方に軍配が上がるかな? あの世界、ドンドン強さのインフラが進んでるしね。ネギみたいに千の雷を無詠唱でぶっ放せるようになれば、歩く災害クラスに……。いや、何処かの誰かが映画版なのはのSLB(スターライトブレイカー)は水爆クラスの破壊力があるとか試算したヤツがいたな。ソレを考えると、う~ん……。

「とりあえず、ワタシの方は四割のポイントの消費で終わっりそうじゃ。イツキの方はどうなのじゃ?」

「とりあえず、こういうプランで行こうと考えているんだが……ポイントがな」

「ふむふむ……と成ると、ワタシも別のものに変えたほうが……」

「いや、アスナに戦力としての価値を期待してないから」

「な!?」

 すまんな。だが、その残り六割のポイント(90,000/150,000ポイント)は……、

「すまんイツキ、もう三割ほど貰っていくぞ?」

 そう言って、また窓に向かいなおすアスナ。う~む、これで譲渡されるポイントが45,000に減ってしまったのか……。

「ま、さっさと決めるか……」







 残り、00時間14分……、

「やっと決まった」

 時間的にヤバイが、何とかオレ達の部隊を編成できた。

 内容はと言うと、

 先ず、アスナが魔法技能(リリなの系)と汎用デバイスに魔導師ランク:AA。チート・エミュレーター――理論構成とかを無視して、他作品の技等をミッド式魔法として再現できるようになるプラグだ。

 まぁ、個人での戦闘能力はバカにできない様になったみたいだから、施設内とかの戦闘で頑張ってもらおう。下手にBETAの支配地域で飛んだら、光線級の餌食になるからね。

 俺は、

 先ず基地として、アナハイムエレクトロニクスの航宙作業艦ラビアンローズを選択した。

 出現地点は火星の衛星軌道上……。火星の衛星で反映していると思われるBETAハイヴを駆逐して、香月博士との交渉材料としてG元素を手土産にするつもりだ。そのため、宇宙空間での戦闘ができる面子……ガンダム系を初期メンバーに加える事にした。宇宙戦艦も豊富だし、シリーズも多いので使えるキャラは沢山居る。AC系よりも連れて来れるキャラが豊富なのが嬉しいね。選定に困るけど……。

「参謀としても高性能なカティ・マネキン大佐と、ウラル級大型宇宙輸送艦を宇宙での拠点にするか」

 ウラル級大型宇宙輸送艦――00セカンドシーズンの最後で、反アロウズとしてマネキン大佐が指揮を取った大型航宙母艦だ。左右に計六つのコンテナを装備し、最大で96機のMSを格納できる。武装がレールガンとミサイルだけと言うのが心もとないが、ラビアンローズと一緒に拠点として使用する分には悪くないだろう。

 っと、それから彼女の夫……最強の死亡フラグブレイカー事、不死身のコーラサワーにジンクスⅢだな。意外とエース級パイロットなんだよなコーラサワーって……。

 GN粒子かミノフスキー粒子かで悩んだが、西暦を舞台にしている00なら、マヴラブの舞台となっている20世紀頃の世界情勢も理解が早いだろう。

 この他に、ナタル・バジルール少佐と大気圏に突入可能なAA級二番艦ドミニオン。コイツは、連合軍が開発したGの運営母体にして対MS戦を考慮された戦艦――アークエンジェル級、その二番艦だ。

 武装はウラル級よりもはるかに豊富で、陽電子破城砲・ローエングリンを始め225cm連装高エネルギー収束火線砲・ゴットフリート、110cm単装リニアカノン・バリアントと言った非常に強力な火器が揃っている。

 また、防御兵装として、75mm対空自動バルカン砲塔システム・イーゲルシュテルンを各所に配置し、艦橋後方ミサイル発射管の対空防御ミサイル・ヘルダートや艦尾大型ミサイル発射管――全24門から艦対艦ミサイル・スレッジハマーや対空防御ミサイル・コリントス、大気圏内用ミサイル・ウォンバットに対空榴散弾頭ミサイルなどを吐き出してくれる。両舷に4門ずつ設置されている多目的射出機には、アンチビーム爆雷やフレア弾などといった物まで完備されているなど痒い所にも手が行き届いている仕様だ。

 そして、最大の特徴である対ビーム装甲――ラミネート装甲を全面に採用している。

 この装甲は、ビームの熱量と運動量を吸収して防御するという物で、廃熱さえ十分に行えればビームを完全に防御できるという優れもの。コレなら光線族種の凶悪なレーザーも十分に防いでくれるだろう。

 一応ドミニオンは、種死の時のAAと同等の能力になるように――大気圏からの単独離脱能力などの改修をポイントで行っておいた。

 ACfAの世界からは、メイ・グリンフィールドとメリーゲートを。社長とかは、ポイントの都合で後で召喚する事にした。それに、最初は宇宙だからね。陸戦主体のAC……それもタンク型の雷電は相性が悪いだろうと言う判断からだ。

 あ、それから俺の搭乗機だが……時間がなかったので初期ストレイド四機種から、オーメルサイエンス社製パーツを使用したタイプ・ランセルを選択した。実際にゲームでもコイツを初期機体にしたしね。名称は、ストレイドからジャベリンに変更した。

 で、このタイプ・ランセルは、四機種の中ではかなりバランスの取れた中量機体だ。腕部にライフルとレーザーブレイド、背中にはミサイルポッドとチュエーンガンを装備している。そして、この機体だけが初期からアサルトアーマーを装備しているのだ。

「戦車級対策として、アサルトアーマーは是非とも外せない武装だからな」

 後は、撃震とACノーマル・ソーラーウィンドなどの製造ラインを購入。

 時間は、ポイントの都合上一ヶ月だけ早い9月に出現する事にした。もうちょっと戻ればTEの最後辺りに介入できたかもしれないな。

「ま、それは仕方ないか……(てか、いきなりソレだと俺達が死ぬな)。

 技術も取れるだけ取ったし、もう大丈夫だな?」

『時間一杯まで粘ったわね~。まともに作業してるの、もうあんた達くらいよ?』

 マジか?

「……まぁ、ここでやれるだけの事はやったしな。問題はないだろ?」

 そう、やれる事は全部やった。後は出撃するのみ! ポチッとな、

『そう。それじゃ、がんばってね~』

 そして俺達は、光に包まれ地獄へと旅立った。



 ………
 ……
 …



『……3、2、1、0!

 ふぅ、時間切れね。あそこで伸びている子達は、救済パック指定で……よし、作業終了!

 あ~もう、この不況のご時世、使えそうな若者の就職先として異世界救援隊派遣会社を設立しようって言う主の御心は分からなくもないけどさぁ……ワタシ達の苦労も考えて欲しいわよねぇ』



[28567] 第XX30次異世界救援隊 初期報告書
Name: 風鳴刹影◆c2bc412c ID:830f4c3d
Date: 2011/06/26 18:44




 第XX30次異世界救援隊司令官、如月イツキ 水無月アスナ着任

 派遣メンバー

 如月イツキ。搭乗機、ACネクスト=ジャベリン

 水無月アスナ。ミッド式魔導士ランクAA(チート・エミュレーター使用)

 メイ・グリンフィールド。搭乗機、ACネクスト=メリーゲート

 ナタル・バジルール。搭乗機、強襲機動特装艦AA級二番艦=ドミニオン

 パトリック・コーラサワー(パトリック・マネキン)。搭乗機、ジンクスⅢ

 カティ・マネキン。搭乗機、ウラル級大型宇宙輸送艦

 自動歩兵、50機

 拠点、航宙作業艦ラビアンローズ

 出現地点、火星衛星軌道上

 出現日時、2001年09月22日



 各種レベル:1



 所持ポイント:0

 所持クレート:0t(5,000t)



 保有技術:

 :XM3-OS

 :高効率生産技術

 :ACブースターの改良プラン

 :クイックブースター機能の改良プラン

 :4系ACの宇宙戦闘への適応化

 :第四世代戦術機基礎理論(暫定)

 :AL(アンチ・レーザー)弾頭の改良

 :対小型種用近距離防護火器開発

 :無人防衛システム開発

 :発展型無人防衛システム

 :改良型対Gジェルの開発

 :次世代型低負荷AMS基礎理論

 :次世代型低負荷AMSの開発

 :コジマ粒子無害化基礎理論

 :コジマ粒子中和装置初期型 Lv1

 (初期ジェネレーターのKP値とPA値が50%に減少)

 :OTM(オーバー・テクノロジー・オブ・マクロス)

  重力制御システム・初期型

  フォールド航法・初期型

  フォールド通信・初期型

  PPBS(ピンポイントバリアシステム)・初期型(手動制御)

  全方位バリアシステム・初期型

  etce......

 (超時空要塞マクロス時代初期程度の技術レベル)

 :ミッド式魔法理論・基礎

 (リリなの無印時代程度の理論)






[28567] 最初の勤務地は火星圏#1
Name: 風鳴刹影◆c2bc412c ID:830f4c3d
Date: 2011/06/27 20:30
 第三話



 地球時間2001年09月22日 早朝 火星衛星軌道上自軍基地・ラビアンローズ



 目を覚ますと、俺は――ネクストのコックピットの中に居た。

 愛機を触って見ると、その内部構造や動かし方が自然と頭の中で反芻される。搭乗した機体に最適化されると言うのは……なるほど、なかなかに面白い体験だ。

『凄い凄い! オモキモイ! 今まで触った事もないモノの動かし方が手に取るようにわかるぞ!!』

 って、アスナ!? ……う~む、衛士強化服(訓練兵用)ってやっぱりエロイな。てか、何で正規兵用の強化服じゃないんだ? てか、なんで強化服? ナニカの機体のコックピット内みたいだけど……。あ、戦術機なら無料でプレゼントって言っていたから、適当な戦術機を貰っていたのかな? ……紫の武御雷とかだったら、日本帝国にバレル前に廃棄処分する必要があるな。

『司令? そろそろよろしいか?』

「っと、すみませんマネキン大佐にバジルール少佐。

 この救援部隊の司令に就任した如月イツキです」

『同じく、水無月アスナじゃ』

『カティ・マネキン……階級は大佐でよろしいので?』

「あ~、現状は以前所属していた組織での階級でお願いします。

 後で人事部を設立して、この救援部隊内の階級を整理させますから……」

『……了解しました』

『こちらドミニオン艦長、ナタル・バジルール。階級は少佐です』

『リンクス=メイ・グリンフィールドよ。よろしくね?』

『俺は地球連邦のエース、不死身のコーラサワー様だ! よろしく頼むぜ大将!!』

 元気が有っていいね~炭酸水は……。あ、俺は大将じゃなくて司令だからね?

『あのバカが……。如月司令、少々人選を間違ったのでは?』

「ハハハ……そんな事はありませんよ?

 それじゃマネキン大佐、現状の報告を頼みます」

『了解した。現在我々は、火星の衛星軌道上の拠点――ラビアンローズにて待機中。

 ウラル及びドミニオンは、ラビアンローズに接舷中。MS、ACネクスト、戦術機(TSF)に輸送トラックは既にドミニオンへの搭載が完了している。

 また、数分前に火星の衛星――フォボスとランデブーした。その際、フォボス上にBETAとハイヴと思われるモニュメントを確認。データ解析の結果からフェイズⅢ相当と推測される』

 うむ、ちゃんと選択した場所に出れたようだな。ついでに最初に危惧していたハイヴの有無も解決した。これで、火星に一々下りてBETAの死骸を採掘しなくても、当面の資源(クレート)が楽に確保できるな。

「運がいいな……。

 よし、当初の予定どうりこのままフォボスのハイヴを攻めて資源(クレート)の調達を行うぞ」

『了解した。……如月指令、その前に一つ質問をしてもよろしいか?

 フォボスのハイヴ、今回の攻撃で陥落させるのですか?』

「ん? ……いや、さすがにそれは難しいと考えてるぞ?

 現在の俺達の戦力、ジンクスⅢが一機にネクストが二機、戦術機が一機に戦艦が二隻。しかもネクストと戦術機に乗っているパイロットはズブのド素人。メイにいたっては、低重力下での戦闘は初めてだ。そんな状況で、まともにハイヴを攻められるとは考えられない」

 別に俺は、このメンバーを過小評価しているわけじゃない。

 おそらくだが――光線族種の出現していないフェイズⅢハイヴ程度なら、今のメンバーでも多少無理をすれば反応炉だけは破壊できるだろう。例えば……ローエングリンでメインシャフトに続く穴を開け、ジンクスⅢでGNフィールドを張りつつ大広間(メインホール)の反応炉まで大量のS11を運んでドカン! とかね。だが、そんなムチャをさせる訳にはいかない。

 せっかく誰にも邪魔されない採掘場だよ? BETAが無限に湧くんだよ? 一回で潰したらもったいないじゃないか。

 今回の目的は、

 一つ目に、俺たち実働部隊の四名が対BETA戦の経験を詰む事。

 二つ目に、資源として利用可能なBETAの死骸を回収してクレートを入手する。

 三つ目に……可能であればだが、ハイヴ・モニュメントの破壊は行っておきたいと考えているけどね。

 ま、三つ目は無理にしなくていいな。

『……結構。チートなどと言う物を手にして浮かれているのではと思っていたが、しっかりと現実を理解しているようだな。

 ラビアンローズ、移動開始! 相対速度をフォボスと同期させろ!!

 ……如月指令、自動歩兵達の量産を要請する。さすがに50体だけでは、ラビアンローズやウラルなどの艦船を操舵できない』

 りょ、了解! 俺は、コックピット内になぜか有ったノートPC(普段使っていた私物)から目録を呼び出し、プラントに自動歩兵の生産を命令。即座に一個大隊(600体)ほど増産させた。最初に物資を買えたのが良かったな。だが、今項目を確認してもそれは無い。おそらくだが、コマンダーレベルが上がれば購入できるようになるのだろう。

 ……買わないがな。

 それにしても、このPCってやっぱり俺のだよな? 壁紙がいつも俺の使っていたヤツだし、ショートカットとかのアイコンも……。

『パトリック、ルーキー共に宇宙での戦闘を教導して来い!

 この中では、貴様が唯一宇宙での戦闘経験がある先輩なのだからな!!』

『ハイ、大佐! よ~しオマエら、先ずはシミュレーターで訓練するぞ!! オレについて来い!!』

 なんとも頼もしい事で……。

『司令、フォボスとの再ランデブーまでは約一日の猶予があるようだ。

 作戦も練らねばならんだろう……。それまでの間、パトリックにジックリと扱いて貰って下さい。

 では、如月司令に水無月司令。私とナタル少佐は、これより物資確保作戦のプランニングに入ります。監視などは自動歩兵達に行わせますので、ごゆっくり訓練に勤しんでください』

「りょ、了解した」

『う、うむ……。分かった』







 いや~ネクストを動かすって結構疲れるね。たとえシミュレイターでもさ。

 ま、AMSのおかげで宇宙遊泳をしているような感覚でやれるから良いか。

『そんなちっぽけな機体で……いったいどんなインチキしてんだ?』

 いや、インチキって言うほどの物じゃないと思うぞ? 確かにネクストは、実弾防御に定評のあるPAはずっと張りっ放しにできるし(GNフィールドは限界時間アリ)、アサルトアーマーなんて奥の手もある。だが、GN粒子みたいに慣性制御はできないし――ソルディオス・オービットが浮いているのはコジマの力だとかいうヤツがいるが、詳しくは不明。ECM効果なんていうモノもないし、更に言うとトランザムなんていう三倍化ブースト機能も……、

『AMSを使った直接制御だから、即応性は間接制御のそっちよりも早いのよ。

 それにしても、無重力ってホント厄介ね……』

 そう言ってメリーゲートは、各部のブースターを吹かしながら姿勢を制御する。数時間のシミュレーター訓練を終えた俺達は、今はラビアンローズ内での実機演習へと移っていた。

「確かに、宇宙遊泳ってのは初体験だからな……よっと!」

 そう言って次の足場――作業アームに飛び乗った。

 俺達が今行っているのは、ラビアンローズから延びた作業用アームを足場にしての障害物競走。とにかく確実に完走する事と言われていたが、チート能力故か既にメイやコーラサワーを置き去りにして5週目を走り終えていた。次は、クイックブーストやオーバーブーストも使ってみるかな?

『い、イツキ~、待ってくれ~!』

 あ~、アスナか。アイツの乗っている機体、足の遅い戦術機――撃震(215ブロック・宇宙対応型)だ。試験品か、神様のサービス改造品なのか? ま、ラプターとか武御雷とかの下手な機体じゃなくてホント良かったよ。

「アスナ、無理について来ようとするな。

 こっち(ネクスト)の移動速度とそっち(戦術機)の移動速度には、かなりの開きがあるんだからな」

『ムー!』

 いや、剥れられても困るんだが……って、コーラサワーもニヤニヤするな!

『いや~熱いっすねお二人さん。でも、今は訓練に集中して欲しいッスね~』

「……こちらジャベリン、了解した。

 これよりクイックブーストとオーバーブーストを併用した走行訓練に移行する。コーラサワー、もしもの時はフォローを頼むぞ?」

『了解したぜ大将さん。あ~だが、ムチャな時は直ぐに止めてくれよ?』

 大丈夫だ。問題ない。

 たとえそのジンクスⅢをスクラップにしたとしても、直ぐにプラントから生産してやるから。……お前は、出撃するたびに機体をスクラップにしていたからな。予備の擬似GNドライブも生産しておいたし、訓練で多少ムチャをしても問題ないぞ?

『大将ー! いったい何処に行く気だ!?』

「……すまん。加減を間違えた。回収を頼む」



 ………
 ……
 …



 それから数時間、宇宙空間での各種機動訓練をこなして行った。

 そして俺は、苦労の甲斐有ってか無重力状態下での二段QBやOB中QBを併用した三次元機動ができる様になった。メイの方も慣れ始めてきたのか、最後の方はクイックブーストを使用した走行を行っていたな。

 アスナ? う~ん、それなりにメニューをこなしていたね。悪くはないが、やっぱりただの撃震では宇宙戦は無理っぽいみたいだ。ココはジンクスⅢにでも乗り換えてもらうべきかな?

『やっぱり、魔法少女は魔砲少女らしくせねばのう!』

 俺が考えている最中、突如としてアスナが撃震の管制ユニットを解放して外に飛び出した。自殺……ではなく、バリアジャケットを纏って飛び回りこっちの方に手を振っている。

『ひ、人が生身で!?』

「あ~コーラサワー。アイツはちゃんと宇宙服みたいなのを着てるぞ? ち~と分かりづらいが……」

 バリアジャケットは、術者を様々な環境から守ってくれるからな。多少の無酸素状態でも、アスナ位のランクがあれば活動は可能らしい(アスナ談)。

 まぁ、さすがにほぼ絶対零度に真空と言う環境の宇宙じゃ、バリアジャケットの維持が大変なんだろう。宇宙遊泳を楽しんでいたアスナは、顔を青くしながら直ぐに撃震のコックピットの中に退避して行った。

『ゼェ、ゼェ! さ、酸素がやばかったわ!!』

 ……酸素ボンベが必要みたいだな。

「……てか、何でバリアジャケットのデザインが紅白の羽織袴――巫女装束なんだ? もうちょっと魔法少女を意識した洋風の衣装にしてだな……ブツブツ」

『へ~、なるほどなるほど……って、時間か。

 よ~し、今日の訓練は一先ず終わりにするぞ!』

 っと、もうそんなに時間が経過していたのか……。

 フォボスとの再ランデブーまでもう少し。後は、マネキン大佐とバジルール少佐のプランニングが終わればいよいよだな……。







 2001年09月24日 夜 火星衛星軌道上自軍基地・ラビアンローズ



 フォボスと再ランデブーして、既に丸1日の時間が経過していた。

 なんでも、フォボスの地表の精密調査を行う必要があるとか……。その為、昨日からコーラサワーがジンクスⅢで飛び回っていた。GNドライブ[τ]がプラントでいくらでも増産できるから、結構なムチャができるんだよね。

 それで調査の結果分かった事だが、フォボスにはこの前確認できたフェイズⅢのハイヴ――フォボス01以外確認できなかったそうだ。もしかしたらフェイズⅠ~Ⅱクラスのハイヴが隠れているかもしれないが、おそらくコイツが唯一のフォボスのハイヴであり……オリジナルだろう。

「……コレは推測ですが、このハイヴは地球などの天体に向けて発射されたハイヴ着陸ユニットが、偶然フォボスに着弾して出来たのではないかと思われます」

 まぁ、そういう推測になるか。フォボスそのものも結構小さいし(端から端まで最大でも30km以下)、フェイズⅣのハイヴが数個で全域をカバーできるから最初っから狙っていなかった可能性もあるな。炭素は沢山含んでいるらしいが……こんな小さい衛星よりも、BETAはもっと大きな――地球みたいな環境の惑星を狙うよなぁ。

「ま、どういう理由にしたってこっちとしては好都合だな……」

 詮索しても始まらない。目の前にフェイズⅢのハイヴと言う採掘場が在ると言う事実だけ在れば、今はそれだけで十分だ。

「以上で作戦の説明を終了する。何か質問は?」

「あ~っと、ワタシは?」

 そう言ってアスナが拱手をする。そう言えば、実戦配備メンバーの中にアスナが含まれていなかったな。

「水無月副指令には、今回は後方での勤務に徹してもらう事にした。

 現状の戦術機――撃震では、十分に宇宙での戦闘は望めない。また、魔法とか言う技術に関しては、宇宙空間では使用者にかなりの負担を強いるそうだな? 残念だが、その様な不安定な戦力をこの作戦に参加させられない……という私とナタル少佐の見解からだ。

 ……心配するな。水無月副指令には、地球に下りてから思う存分暴れてもらう。それまで十分に司令として部隊を操作する技術を磨いてもらう」

 そう言われシブシブ引き下がるアスナ。

 だからサムス・スーツを選択しておけばよかったのに……。初期装備でもそれなりにやれる筈だぞ?

「よし、作戦開始は明日の早朝0800時だ。各員、準備を開始しろ!」



[28567] 最初の勤務地は火星圏#2
Name: 風鳴刹影◆c2bc412c ID:830f4c3d
Date: 2011/06/29 20:31
 第四話



 2001年09月25日 朝 火星圏衛星軌道上



 カシャ、

 時計の表記が0800時に変わった。

『……時間だ。

 これより我々は、フォボス01ハイヴへ進攻。第一次資源確保作戦を開始する』

『ラビアンローズより出航許可確認。

 ドミニオン及びウラルは、これよりフォボスへと向けて移動を開始する。微速後退、艦首回頭後ラビアンローズから離脱する』

 ゆっくりとラビアンローズから離脱する二隻の宇宙戦艦。向かうのは、併走して火星を回っているフォボス。

 今回用意した戦力だが、俺のジャベリンとメイのメリーゲート、コーラサワーのジンクスⅢに自動歩兵たちが搭乗したジンクスⅢと陽風(ソーラーウィンド)が一個機甲中隊(12機)ずつウラルに搭載。これを、それぞれが一個機甲小隊(4機)引き連れて行動する手はずに成っている。コレは、俺とアスナが安心してコマンダーレベルを上げられるようにと言うマネキン大佐達からの発案だ。

 ……まぁ、それのレベルを上げないとMSやACと言った兵器の生産ラインが手に入らないからね。アスナもウラルの管制室(ブリッジ)からジンクスⅢ達に命令を送るんだとか……。

『先行中のドミニオンより後続のウラルへ。

 司令の予想通り、光線族種は確認できません。現在は、フォボス01ハイヴのモニュメントを有視界内に捕らえた所だ。

 船底には無数のBETAが溢れている。まるでハーメルンの笛吹きのようだな』

『こちらウラル、了解した。

 ドミニオンはそのまま先行し、予定射撃ポイントまで接近せよ。現時点では、フォボスのBETAに光線級は居ないようだからな。安心して進軍しろ。

 ……もう直ぐこちらも予定ポイントに到着するな。レーダー、作戦開始予定ポイント周囲にBETAは?』

『作戦開始予定ポイント上、BETAの反応は確認できません。ドミニオンがしっかりと囮として機能しているようです。

 両戦艦が作戦開始ポイントに到着まで、後30カウント』

『上出来だ。MS部隊及びAC部隊、発進準備!』

 了解了解~っと!

「コジマ・ジェネレーター、アイドリングから戦闘機動へ。

 AMS同調開始……同調率50%、60%……90%を超過。

 兵装チェック……オールグリーン。ジャベリン、いつでも行けるぞ?」

『……よし。各機、準備が完了しだい順次発進せよ!

 それからパトリック、決して空を飛ぶなよ?』

『分かってますって大佐!』

 そして、物資確保作戦が始まった。







『一番乗りは、ワタシの部隊じゃ!』

 元気のいいアスナの声に従い、自動歩兵が操縦するジンクスⅢ一個機甲小隊がフォボスに着陸する。そして、GNランスを構えつつ四方を確認、

『周囲の安全……クリアじゃ! いつでも降りて来て構わんぞ!』

『うっしゃ! パトリック・コーラサワー様のおとーりだぁー!!』

 続いてコーラサワー率いるジンクスⅢ部隊が、フォボスへと降りて行く。うん、不時着はしなかったな。流石にそんなヘマはしないか。

「よし、俺達も行くぞメイ?」

『こちらメリーゲート、了解したわ』

 そして最後に、俺たちAC部隊と補給物資を搭載したトラック部隊がフォボスへと降下する。レーダーで確認したが、周囲にはBETAの影は無い。着地地点もハイヴまで約10kmの地点と……降下予定ポイントの誤差範囲内だ。

「こちらジャベリン。全機無事にフォボスへの降下を完了した。周囲に敵影は確認できない」

『よし、作戦をフェイズⅡに移行。

 ウラルよりドミニオンへ。貴艦は直ちにその空域から離脱し、我々と合流せよ』

『了解した。これより当艦は現宙域を離脱する!』

 そして、ドミニオンがフォボスより離脱。すると、今までドミニオンを追いかけていたBETAたちが一斉に反転し、こちらに向かって突撃を開始する。

「先頭は……やっぱ突撃級か!」

 モース硬度15を誇る外殻を前面に押し出し、最高時速170km/hで突撃してくると言うおなじみのBETA。しっかし、フォボスの様な低重力下でよくその速度で走ってられるな? 確かアイツらは、馬みたいな平たい足だった筈……もしかして足の裏にスパイクにでも付けているのか? ありえるな。地球のBETAとの違いも調べてみるか。

『コイツら、バカみたいに突進して来るな? そんなんじゃ、この不死身のコーラサワー様を落とせやしないんだよ!』

 勝手に先行したコーラサワーが、GNランスでBETAの群れへと突撃して次々と突撃級を葬り去っていく。彼の部下――ジンクスⅢ達は、必死にそれを追いかけつつフォローを行っていた。

「って、そんなに高度を取って攻撃するな!」

『っと、すいません大将』

 う~ん、やっぱり人選ミスったか? お~い炭酸水、もう少し後ろにさ……ッ!

「って、よそ見している暇は無かったな!」

 クイックブースト! 瞬時にその場から飛び退き、要撃級が振り下ろした前腕を回避。お返しに、ライフル――RF-R100の弾丸をお見舞いしてやる。放たれたライフル弾は、要撃級の軟らかい肉を貫いて絶命させた。

「先ず、一つ!」

 そう言って自分を奮い立たせる。自機の周囲には、コーラサワーを追わなかったBETA達が取り囲んでいた。

 いや~怖いね。ホント怖い。チート貰おうと怖いものは怖いんだよ! ……どこぞのスモールソルジャーが、

『怖いか? 怖いのが普通だ』

 って言ってたけど凄く同感だね。けど、

「01陽風部隊散開! エレメンを組んで自機周囲のBETAを殲滅しろ!!」

 部下の陽風部隊に指示を飛ばす。背面武装、CG-R500起動。AMBAC解放。レーダーに表示されたもっとも敵(BETA)が居ない面に向かって短距離オーバーブースト。瞬時に亜音速域に達し、周囲を取り囲んでいた要撃級の横をすり抜ける。そして即座にクイックターンで要撃級達の背面を取った。

 怖いなら、怖くないようにすればいい。簡単な答えだ。そして、そうする為の道具が、そうできる武器が俺たちには在るんだよ!

「喰らいやがれ!」

 ガガガガ!

 チェーンガンとライフルの銃口を要撃級達に向け順次撃破して行く。もちろん、要撃級や突撃級の攻撃を受けないように移動しつつだ。だがしかし、移動するたびにフォボスの外へと飛び立ちそうになってしまう。低重力下での戦闘がこんなにやり辛いとは……。

 っと、戦車級!? 赤アリみたいなヤツ等だな。ACは戦術機より小さいんだよ! こっそり取り付けるとでも思ったのか? ……とりあえず、戦車級の群れに散布ミサイル――MP-O200を打ち込んで吹き飛ばした。ふむ、小型種には十分有効だな。そ~れもう一発!



 ………
 ……
 …



 その後、作戦エリア内にドミニオンが到着。BETAの死骸を満載したトラックが、ドミニオンに搭載したプラントへと移動を開始した。これで作戦はフェイズⅢへ。後は、撤退するまでの間ココを死守すればいいだけだ。

「最低でも、プラントレベルを一個は上げられるほどのクレートを生産したいが……」

『こちらメリーゲート。要塞級が三体ほど見えるわ。

 そっちの方が近いから、そっちで対処してくれない? こっちは、バカの支援で忙しいから……』

 あ~、メイは先行しているコーラサワーを後方から支援しているのか。そんでコーラサワーはと言うと、予定作戦エリアのラインギリギリまで突出して無双していた。あれじゃ資源――BETAの死骸が確保できんぞ?

『コーラサワー、前に出すぎだバカモノ! もっと後方で戦わなければ、十分に物資が確保できないだろう?!!』

『りょ、了解っす大佐!』

「あ~……要塞級の件は了解した。こっちで素早く対処する。

 アスナ、しっかりとトラックを護衛しろよ?」

『分かっておる!』

 いい返事だ。

 俺は、進攻してくるBETA達を葬りつつ要塞級へと近づいて行く。
 某神々の黄昏でも、ボスの取り巻きってのは残しておくと色々と厄介だからな。極力だが、弾を消費しない様にレーザーブレイドを使用した白兵戦で周囲の雑魚を殲滅して行っている。突撃級はまだマシだが、旋回能力の高い要撃級がちと厄介だ。

「ハァハァ……、しっかしデカイな。全高が66mだっけか?」

 平均的な二脚ACの全高が約10m……対比すると約6倍の身長差になる。まぁ、こっちは戦術機の半分位の大きさなんだ。簡単に攻撃が当たるかよ!

 弱点は……三胴構造各部の結合部。あそこだな? 接近すると溶解液付きの触手が襲ってくるので、弱点と思われる場所にミサイルを打ち込んでやった。が……やはり、一筋縄ではいかない様だ。

 16発のミサイルは全て要塞級に着弾。だが、要塞級を落とすにはまだ不十分なようだ。それから更に二回、ミサイルを弱点に撃ち込んでやっと要塞級の一匹がその場に崩れ落ちた。意外とタフ……ではなく、MP-O200から発射されるミサイルが十分に弱点に着弾しない様だ。

 試しに武器をライフルに切り替え、もう一体の要塞級へと照準を合わせる。こんどは数発弱点に命中しただけで要塞級が崩れ落ちた。まだ死んでいないが、これならレーザーブレードで始末できる。

「やっぱり、ダメージの収束率か……」

 要塞級には、散布ミサイルでの広域攻撃よりもライフルを使用した点での攻撃が有効のようだな。残り一匹は、レーザーブレードだけで片付けるて見るか? シミュレイターじゃ出来たが、実戦でどれだけ出来るか……。

「01陽風部隊、援護しろ!」







 アナザーサイド



 ウラル艦橋



「しかし、凄いものだな……ルーキーとはとても思えん」

 マネキンは、少し呆れたようにモニターを見ている。そこには、無数のBETAを相手に大立ち回りを演じているネクスト=ジャベリンの姿が映し出されていた。

 既に作戦開始から三時間近くが経過。作戦エリア内には無数のBETAの死骸が転がり、それをトラックがせっせとドミニオンへと輸送している。

「だが、アレは機体の性能が優れているから……だな。機体の性能に振り回されていないのが幸いか?」

「05ジンクスⅢ部隊、トラックにBETAが接近しておる。すぐに迎撃するのじゃ!

 03陽風部隊、メリーゲート隊の補給を支援じゃ!

 って、コーラサワー! 左翼から大隊規模のBETAが抜けてきておるぞ? しっかりとカバーせんか!!

 右翼は……イツキが奮闘してくれているようじゃな。うむ」

『こちっらドミニオン。

 クレート生産量が予定の1,000tを超過、このまま作戦を継続しますか?』

「そうだな……」

 そう言って考えるマネキン。既にパイロット達は、四時間も連続で戦闘を続行している。ルーキーもそろそろ限界だろうと考え……、

「水無月副指令。ドミニオンのプラントに陽風とジンクスⅢを一個機甲中隊ずつ、パイロットの自動歩兵と共に生産命令を。それから輸送トラックの増産もだ」

「う、うむ。了解した」

 マネキンの指示に従い、アスナはプラントに生産の指示を出す。司令が複数居ると言うのは、このような状況では有利だ。もし戦闘に集中しているルーキーのイツキに指示を願い出たとすれば、集中を切らしてそのまま要撃級や突撃級の攻撃を受けていたかもしれない。

「ウラルより前線の各機へ。

 交代要員として陽風とジンクスⅢを一個機甲中隊ずつ向かわせる。一旦後退して休息に入れ!」

『了解しました大佐!』

『こちらジャベリン、了解した。

 これより帰還……ク!? 突然湧いた? 生産の影響か?? にしては……クソ! 数が多すぎるぞ!!? 生産したのは二個中隊じゃかかったのか?』

『大隊規模だと!? いつの間に?

 クッ!? ドミニオン、艦砲射撃を許可する! 至急ジャベリンを援護しろ!!』

『こちらドミニオン、了解した!

 バリアント、ゴットフリート照準! 目標、ジャベリン前方のBETA集団! ……味方に当たるなよ? ってぇ!!』

 ゴウ!

 ……それから更に約4時間、救援部隊はフォボス上で戦闘を行い合計約5,000tのクレートを生産。十分な資源が確保できたと判断し、第一次資源確保作戦は終了した。



 アナザーサイドエンド







 2001年09月25日 経過報告



 如月イツキ:チートリンクス

 ファイターレベル:1→3

NEW!LVUP報酬として10,000ポイントが計上されます。x2

NEW!スキルポイントを2点入手しました。スキルを習得してください。

 コマンダーレベル:1→2

NEW!LVUP報酬として10,000ポイントが計上されます。

NEW!新しい技術、生産ラインが購入可能になりました。

NEW!新しい施設が利用可能になりました。



 水無月アスナ:ミッド式チート魔導師ランクAA

 コマンダーレベル:1→4

NEW!LVUP報酬として10,000ポイントが計上されます。x3

NEW!新しい技術、生産ラインが購入可能になりました。

NEW!新しい施設が利用可能になりました。



 プラントレベル:1→2

NEW!LVUP報酬として10,000ポイントが計上されます。

NEW!生産に必要なクレート量が5%減少しました。



 現在の所持ポイント:0→70,000

 現在の所持クレート:5,468t(+1,640t)






[28567] まず、働けるようになろう#1
Name: 風鳴刹影◆c2bc412c ID:830f4c3d
Date: 2011/06/30 20:19
 第五話



 2001年09月26日 早朝 自軍基地ラビアンローズ



「あ”~酷い目にあった……」

 俺はそう思いながら――周りから見たら駄々漏れ――朝食を採るためにPXへと向かった。

 さて、無事(?)に資源の確保を終えた俺たちだが……。マネキン大佐達は、作戦中に増えた人員(自動歩兵)とMSとACの整理を行っている。事後処理と言うやつだ。

 ちなみに、作戦終了時に艦に収容しきれなかった機体は、自力でフォボスから離脱してラビアンローズへと帰還した。

 現在は、ラビアンローズを含めた艦船はフォボスを離脱して火星の衛星軌道のもっとも外側をゆっくりと航行し続けている。いきなりハイヴ着陸ユニットとかが飛んで来たら、いくらチート迎撃装置つけていても迎撃が間に合わないかもしれないからね。念の為だ。

 で、俺やメイと言った実働部隊のメンバーは、昨日の戦闘での報告書を纏めて休憩に入っている。艦長達も、もう少ししたら自動歩兵たちと交代して休憩に入るだろう。

 PXの購買機に醤油ラーメンを注文し、適当に空いている――ガランガランだが――席に腰を下ろした。

「昨日は散々だったわね? ココ、良いかしら?」

 メイ?

「ああ……。いきなり大隊規模のBETAに囲まれたからな……生きているのが今でも不思議だ」

 なんであんなに一杯湧いたんだ? ただ単に、BETAの地下進攻とプラントによる生産の影響――プラントで無人機(今回の場合は自動歩兵かな?)を生産すると、同等規模のBETAが出現する――が、たまたま偶然に一致したからか……。いや、だが単純にそう判断していいものか……。

「一応、念を入れておくか……」

 複数人数で介入……と言う仕様から、俺の知っているチートシステムには無かった何か――俺たちに不利益になる仕様がある可能性が十分になるはずだ。あ”~あの女の人、メリットだけ教えてデメリットの説明をしないで行きやがったなぁ。軽いのはいいけど、ちゃんと全部説明してくれよ!

『え? だって、聞かなかったじゃん?』

 ……今、すさまじ~く嫌な空耳が聞こえた気がしたが、気のせいだろう。

「メイも気を付けたほうがいいぞ? 俺みたいに、いきなり大隊規模のBETAに囲まれるかもしれないからなぁ」

「ええ、分かったわ。

 ……でも、ソレより先にもうちょっと広い場所で生活がしたいわね。こんな密閉空間じゃ息が詰まっちゃうわ」

 う~ん、確かに……。なるべく早く地球に行ける様にするか、大規模な居住区画を造ったほうがいいな。







 朝食を終えた俺は、新しく設置した高効率教育センター内のデザインルーム(開発室)で急造の輸送艦を設計している。俺達のコマンダーレベルがまだ低いため、宇宙関連の生産ライン(宇宙戦艦系)が購入できず……。結果としてだが、最初に連れてきたウラルとドミニオンの部品から自力で製作する必要が出て来たのだ。

「え~と、ウラルが装備しているコンテナに……適当な艦橋とエンジンブロック……ドミニオンのが流用できるか? いや、やっぱ規格が同じウラルのを……ブツブツ」

 大学ロボコンレベルの物しか作った事がない俺が、急増でも宇宙船の設計が行えているのは、ひとえにココのシステムのサポートと優秀な作業員――自動歩兵達のおかげだろう。流石神様印!

「自衛用武装として、イーゲルシュテインを搭載……よし、これでいいかな?」

 そして、一個戦術機甲大隊(36機)の積載力を持つ輸送船――ヨルムンガンド級(アスナ命名)が完成した。形状的には、AEUや人革盟が使用していたヴァージニア級やライホゥ級といった輸送船に似ている。試作機を自動歩兵たちが運用してみたが、有人でも問題無いと言う報告が帰ってきた。宇宙関連の生産ラインが解禁するまでは、コイツで当面の間我慢するか。

「ふむ……技術者の卵と言うのは、まんざら嘘でもなかったようだな?」

「一応、21世紀基準の工科系大学を卒業しましたからね。成績は下から数えた方が早かったんですが、ここのシステムのサポートもあればコレくらい――完成品を組み合わせるくらいなら何とかできますよ」

 それでもかなり難しいんだけどね。とりあえず、ヨルムンガンド級を増産するために必要な部品をプラントに……ん?

「コイツは……」

 俺は、プラントの生産項目にヨルムンガンド級航宙輸送艦の文字がNEW! のポップ付きで出現しているのを発見した。

「……よく分からないが、プラントで生産できるならプラントで生産させよう」

 その後、プラントから3隻――試作機も含めて四隻のヨルムンガンド級航宙輸送艦がラビアンローズに追従する事となった。ラビアンローズも、より多くの艦船を接続出来るように増築、拡張を命令する。クレートが足りなくなったら、もう一度フォボスに物資を補給しに行けばいいな。

「にしても、なんで生産ラインが追加されているんだ?」







 25日の物資補給作戦でそれぞれレベルが上がった俺達。アスナの方がコマンダーレベルの上がりが良いのがアレだが、まあ細かい事は言わないで置こう。

 入手できた総ポイント数は、計70,000ポイント。

 LvUPで解禁された技術や施設、各種武器の製造ラインには――新しいモノには“NEW!”のポップが浮かんでいた。分かりやすいな。

「技術関連は……今のところ1,000ポイントから4,000ポイントで購入できるモノだけか。

 武装の生産ラインも、今のところは10,000ポイント以下で購入できる物だけだな」

 もっとも、解禁されているのは大気圏内での運営を主目的においた物ばかりだけど……。

「結構ある……ん? 習得するスキルを選択してください?」

 そう隅っこで表示されていたポップをクリックする。すると、習得可能スキル一覧と言うのが表示された。スキルって自動習得じゃないのか?

「なんじゃイツキ、知らなかったのか?」

「……アスナは知っていたのか?」

「うむ。エミュレートを行うのにスキルポイントを消費すると説明をしてもらったからのう」

 あ~もう! だからちゃんと説明をしてくれよなぁ……軽いノリで進めるだけじゃなくてさ!!

「ハァ……仕方ない。もう後の祭りだからな」

 気を取り直して前を向こう。さて、どれを取るかな?

 防弾スキルに対化学物質スキル、スタミナ系にV.A.T.Uの強化……。

「ニュータイプ能力に……へぇ、SEEDも発動できるようになるのか」

 種割れいいねぇ。でも、説明文を読む限りじゃ脳にかなりの負担を強いるみたいだし……。

「とりあえずニュータイプにアンチ・ケミカルを習得しておくか」

 ニュータイプの能力で勘が良くなるし、アンチ・ケミカルでコジマ汚染にも耐性が付くみたいだしね。コジマ汚染に耐性が付くのは喜ばしい事だ。俺の寿命の延長にも繋がるからね。

「ワタシも戦っておれば……ブツブツ」

「あとは、ポイントの使い道か……」

 技術と武器の製造ラインに、後は不足している人員か? う~ん、戦闘に関しては生産可能になった無人機でカバーできるし……ココは後方を増強するべきかな?

 とりあえずアスナ達との話し合い、種の世界からオーブの姦し三人娘――アサギ・コードウェル、マユラ・ラバッツ、ジュリ・ウー・ニェンとM1アストレイの製造ラインを収得した。一応はモルゲンレーテの技術者だし、ドミニオンの専属防衛任務を任せて置くのもいいな。

 アスナは、

『キラを呼んでストフリ無双をしてもらった方がいい!』

 って言っていたけどね……。もちろん強力すぎるって理由で却下したけど。

 いや、本音を言うと武と被る危険性が在るんだよ色々と……。それに、ストフリ無双なんてされたら俺達なんて居なくていいじゃんか……。

 で、M1を見たマネキン大佐とコーラサワーが、

『ガンダム!?』

 と驚いたが、マネキン大佐に種の世界の事情を説明して納得してもらった。種と00じゃ、ガンダムの立ち位置が逆だもんね。もっとも、フラッグやイナクトの様な量産機でしかないM1アストレイの性能では、GNドライブ搭載機のジンクスⅢに対してまったく歯が立たない事が分かったけど……。あ~、M1の製造ライン分のポイント無駄にしちまったな。

『外見だけのコケオドシだなガンダム!』

『『『キャー!?』』』

「お~いオマエら、シミュレーターも程ほどにしておけよ?」

 彼女達には技術部に回ってもらうつもりだが……やっぱり専門家も呼ぶべきか? 00の世界からビリー・カタギリかエイフマン教授……いっそCB(ソレスタルビーイング)からヴィスティ親子を呼んでみるか? アイツラ、GNドライブ搭載機のスペシャリストだし……。

「う~ん、まだ時間はあるしソレは今のところ保留にしておくか」

 あ、AC用の技術者で天才アーキテクトのアブマーシュを呼んでおこう。fAの世界でホワイトグリントを開発した技術者だからな。てか、ACで名前のある技術者ってこいつと社長位しか居ないんじゃないか? AC系の開発は自力で……になるのか。

 それから技術は、“地中振動監視技術の改良”に“発展型地中振動監視技術”を購入する事にした。フォボスにも母艦級が居るかもしれないし、今後の資源調達作戦を安全に行いたいからな。

「残りは、60,000ポイントか……」

「如月司令! 僭越ですが、この体験型教育プログラムと言うモノを購入するのがよろしいかと思われます。司令は正規の訓練を受けていないようですので、一週間ほどジックリと時間をかけて訓練をされてはいかがでしょうか?」

 ナタル少佐? あ~確かにそうだな。俺自身、ちゃんとした訓練を受けていないのは問題だ。そして何よりピップボーイが欲しい!! スキル習得の仕様から、常に身に着けていられるピップボーイの様な端末が必要になったからな。一々ノートパソコンを開かないとスキルを習得できないのは、もしもの時に色々とマズイ。

 アスナの方は、スマフォが端末みたいだから持ち運びが楽そうだけど……。

 と言うことで、俺は10,000ポイントを支払い体験型教育プログラムを購入した。

 ただし、一週間もの間ココを留守にするわけにもいかないので三日程度にしたけどね。

「では如月司令。司令が訓練を行ってる間、我々は水無月副指令と共に第二次資源調達作戦を行っておきます」







 2001年09月27日 高効率教育センター、体験型教育プログラム内



「で、体験型教育プログラムをこなす事にしたんだが……」

「そこの貴様! 誰が喋って良いと言った?」

「サーイエッサー! 言っておりませんムルメルティア軍曹!!」

「ハートマ軍曹と呼べ! ランニング5週でもして来い!!」

「サ、サーイエッサー!」

 な、なんか違う。なぜ軍曹が武装神姫のムルメルティア(等身大)なんだ!? 俺以外のメンバーも武装神姫のフォートブラッグやゼルノグラード達だったり……なんかのいじめかコレ!!?

「声が小さい! ワッカもげたか?」

「「サーイエッサー!!!!!!!!」」

 い、いや。向こうのチームは薄幸の美少女のような天使――まかでみぃなミカエルさんが担当している。あの容姿から、あの罵声やスプラッタな暴力が飛び出ていると言う事実は、ある意味PTSDを発症しかねないレベルのモノだ。天使さん達ガンバレ!

 で、さらにその向こうでは、どこぞの某高校生軍人の少年がラグビー部を鍛え直している。あれもキツそうだ。……ハハハ、これは一体どういうカオスなんだ?

「あれらに比べれば、まだまだこちらの軍曹の方がマシなのかもしれない」

 と、不覚にも思ってしまった。丸太を背負って何日も走らされたり、いきなり手足を引き千切られるような事も無いしね……。

 それから地獄のような訓練が続いた。

 各種対人戦を基礎から徹底的に身体に叩き込まれ、各種武器の扱いを習得し、歴史上の様々な戦場を体験する事となった。なったのだが、やはり変だ。

「何故俺は、ロシアの密林でシャゴホッドと戦っているんだ? あ~蛇が美味いZE!」

「スネーク! お願いだから戦闘に集中して!!」

「何故俺は、テロリストに占領された海洋プラントに潜入している? って、そこを触るな大統領!」

「雷電、気をしっかりもつんだ! いや、そっちの気に目覚めるんじゃない!!」

「何故俺は、ストーム1とか名乗って異性人の戦艦に単身で突入するハメになっている?」

「ストーム1だ! ストーム1が戦って……あ、ピチュッた」

 ……まさかゲームの内容を疑似体験する羽目になるとは思わなかった。

 一通り人間単体で出来ることを体験した俺は、その後は戦術機やAC等の機体に搭乗しての戦闘訓練を行う事にした。したんだけど……、

「何故俺はバイドと戦っているんだ?

 って、止めろ! 俺をエンジェルパックに積めようとしないでくれ!! 四肢切断はイヤダァァァ!!!

 って、B系列はもっとらめぇぇぇ! ……カエル、チキュウニ、カエルルルルルゥゥ?」

「苦戦してい……」

「苦戦はしているが、尻は貸さなくて良いからな!!」

「搭乗機がフラジールって、AMSから光がー!!」

「貴様には水底がおにあいだ」

「とっつきオンリーでカーパルス占領ミッションなんてやってられるか! クソー!!」

「若い、若すぎる……」

 あぁ、強い機体で戦いたい……。

 それから内政関係の訓練も積んだのだが……、

「市長! 財政が破綻しました。市民が暴動を起こしております!!」

「えーい! 税率の見直しは!? 他のところから借りられないのか!? あー居住区画をぶっ潰せ!!」

「閣下! 住民が城から逃げ出し、敵兵が城内まで攻め込んでおります!!」

「さっさと追加の兵士を兵舎から呼んで来い! クソ、俺が行く! アアアアア!!?」

「司令! 戦線が瓦解、BETAが司令本部に進入してきました!!」

「守備隊はどうしたんだ! って、ギャァァァァ!!」

 もうダメポ……。



 ………
 ……
 …



「なかなか立派な経歴書に成ったではないか?

 私としても、ここまで酷い生徒を受け持ったのは初めてだったよ」

 そう言いながら、俺の真っ赤な履歴書を畳むムルメルティア・ハートマ軍曹。彼女は、どこか遠くを見つめているような気がするが気にしてはいけない。どうも彼女は、こちら側でのアドバイザーも兼任していたらしい。こちらでの約75年間(休み休みだが)――外の時間で約三日間の長い間もお付き合いいただいた俺だけの教官だ。今では親愛すら感じている。

「だが、これで貴様も一人前の兵士だ。私としては、もう少し時間をかけてジックリと仕上げたかったのだが……あの世界での戦いが待っているのだろ? 頑張って貴様の戦いを戦い抜いて来い!」

「サーイエッサー! ありがとうございますムルメルティア軍曹!!」

 あ~感動的だ! 軍曹が一人前の兵士だと言ってくれている。

 そして、大人になった証が……、

「それじゃあな」

 と言って立ち去ろうとする軍曹。え?

「ちょ、ちょっとまったぁぁぁ! 軍曹、何かを忘れておりませんか!?」

「ん? あぁ、ピップボーイか? コレだけ成績の悪い貴様にあげるとでも?」

 そう言って、真っ赤な履歴書をチラつかせる軍曹、

「グ!? そ、そこをなんとかお願いします!」

「ネクストに搭乗しているのに必要なのか?」

「要ります! 是非お願いします!!」

「しかたないなぁ……」

 多少意地悪はされたが、ピップボーイを受け取る事に成功した。だけどさ、AMSのスーツと干渉するからって、

「ククク、ナノマシンで腕の表面に直接機器を作るぞ。さぁ、私の注射器(パイルバンカー)を潔く受けろ!」

 なにそのでっかい注射器? MODでも当てたの?? いや、この場合はMADか???

「ふふふ、これが仕様だ! 逝くぞ!!」

「ゲイブン!?」

 あぁ、これでピップボーイと、各種レベルアップボーナスやポイントがゲットできるのか……。BETAの処理作業も頼まれてたからクレートも溜まってるだろうし。あ、軍曹もうちょっと優しく、優しくぅぅぅ!



[28567] まず、働けるようになろう#2
Name: 風鳴刹影◆c2bc412c ID:830f4c3d
Date: 2011/07/01 20:26
 第六話



 2001年10月01日 昼過ぎ ラビアンローズ内、高効率教育センター



「あ~まだ痛い……」

 注射をされた場所を摩りつつ、俺はベッドから起き上がり身体を伸ばした。

 あの地獄の様な訓練からついに開放されたのだ。あ~シャバの空気が美味いZE!

「そういや、どれだけ訓練の成果が出ているんだ?」

 試しに身体を動かしてみると……うん、向こうでの訓練の結果がかなり反映されているみたいだ。身体つきが少し良くなってるみたいだし、反射速度も悪くない。どういう原理かは知らないが、仮想現実での訓練結果が反映されているみたいだ。

 ちなみに、何で訓練があんな内容だったのかを調べてみると、複数の体験型教育訓練の項目が……。

 そして、説明書きの最後の方に訓練の内容――リアル系、ゲーム系、ファンタジー系中心ですと言う注意書きがされていた。こんな所にこんな地雷があったのか……。

「よし、アイツにはこのホラー系集中体験コース(2,000ポイント)でもやらせるか?」

 きっとゾンビ犬がウヨウヨ居る洋館や、石村とか言う宇宙船の中を工具片手にさ迷ったりするんだろう。なかなか面白そうな事になりそうだな……。

 だが、これだけでは十分な訓練にならない。やはり普通にファンタジー系中心をやらせよう。

「にしても、体験型教育訓練を二つ買う羽目になるとは……」

 複数人数の介入では、それぞれ方向性が違うとコストがそれだけ掛かるって事なのか。5人で介入したヤツ等はそれだけで大変そうだな。しかも、それぞれが個性と言うか自己主張が強かったりしたら……、

「スーパーオリ主大戦勃発ってか? 色々と笑えんぞ??」

 某サーバントの能力を持った5人が、救援部隊の主権を争って戦争……。いや、BETAの撃破数なりを競えば平和的だな。それはそれで、BETAと国連軍が可哀そうになる物語になるんだろうけど……。

 ん?

「あ、あの……如月司令ですか? 今日からこの救援部隊に配属される事になった片瀬志摩です!」

 そう言ってペコリとお辞儀をするお団子でツインテールな女の子……アスナが呼んだのか? まぁ、彼女はプログラム関連に強いからな。アストロボールじゃ、コース内を浮遊する全障害物の軌道を予測するプログラムを一晩で組んじゃうし……。お、宇宙船(オーバビスマシン)のケイティも有るのか? ふむ、色々と活躍できそうだな。

 ……あれ? 確か俺の記憶だと本科生になってた時の姿ってツインテールじゃなくて片方に纏めていただけだったような……ま、まぁいいか。

「ああ、如月イツキだ。よろしく頼みます片瀬志摩さん。

 っと、それから……」

「ビリー・カタギリです。

 初めまして如月司令。GNドライブ関係で、水無月副指令に呼ばれてしまいました」

 なるほどね。そう思いつつカタギリと握手を交わす……が、

 ズイ!

「ところで、折り入ってお願いがありまして……リーサ・クジョウを呼ぶ事は出来ますか?」

 ズイズイ!

「彼女は有能な戦術予報士ですし、マネキン大佐の負担も軽減できます。またCBの航宙母艦なら……」

 耳元で要望を囁くカタギリ。その目は、白く光ったメガネの所為で確かめる事ができない。

「か、考えておくよ」

「よろしくたのみます如月司令」

 ハハハ……。そう言えば他の皆はどうしたんだ? 確か二度目の物資調達作戦を行うとか言っていたけど……、

「ああ、副指令達でしたら、今はフォボスのハイヴでBETA狩りを楽しんでいる頃ですね。

 彼女達が帰還するまで、我々開発チームはMSの改良や武装の製作等を任されています」

「私は、フォールド航法を使えるように……今は理論の勉強中です」

 なるほど、確かにフォールド航法は一度も使用した事が無かったからな。跳んだ先が太陽の眼の前とか、別の星系とかだったら洒落にならん。よし、後でアスナに礼を言っておくか。

「っと、そうだ。司令もどうです? 今はジュリさん達の要望で、M1アストレイにGNドライブを装備させる作業を行っていますが……」

 なるほど、ただ単に留守番しているのも芸がないな……勉強も兼ねて参加させてもらおう。







「……とりあえず装備できたな?」

「ええ、本当にとりあえずだね」

 そう言う俺たちの目の前には、既存のバックパックを取り外しGNドライブを搭載したバックパックに換装したM1アストレイが立っていた。

 装備しているビーム兵器だが、従来どうりにバッテリーからのエネルギー供給式にしている。擬似GNドライブじゃ、粒子残量を気にして戦わなきゃいけないからね。GN粒子を少しでも慣性制御と航行能力に割く為に取られた仕様だ。

「ま、コレでジンクスⅢの性能に追いつければ御の字だな。

 ……だがこれじゃ、GNフラッグ同様にバランスが悪いんじゃないか? やっぱりGNドライブを中心にして組み直さなきゃダメだろうし」

「う~ん……それだったら、ジンクスⅢに乗ってもらった方が良いね」

「やっぱりそうなっちゃいますかカタギリさん?」

 ジュリ達もかなり奮闘したが、GNドライブを推進機関と取り変える事がやっとだった。

「う~ん、GNドライブ非搭載機のフラッグにGNドライブを取り付けた経験から言うと、これ以上の改良には限界が有るね。

 ジンクスⅢの様に、GNドライブを最初から搭載するよう設計した機体の方が安定性が高いし、GNフィールドなんかのオプションも取り付けやすい。……ジンクスⅢも対BETA戦を意識して改修するべきだな。武装やオプションを選択できるようにしなおして、トランザムも……」

 そう言って思案を巡らせるカタギリ。う~む、こうやって仕事をしているとまともなんだけどなぁ……。

「あの、水無月副指令から頼まれていた撃震の改良ですが……」

 そう言ってジュリが、俺に申し訳なさそうに言い始めた。

「まずは、戦術機について使用されている技術や構造の解析を行いました。

 この時代の科学技術で、アレだけの物を作れたと言う事には感心出来ますが……アレを改良するよりもM1アストレイかジンクスⅢ、それかACノーマル・陽風に乗り換えてもらった方が良い位の性能です。本当に改良を加えるんですか?」

「ああ、もう直ぐ地球に向かうからな。

 あちらさんにこちらの技術レベルを提示するのに、第一世代機の撃震の改良機で高い戦闘能力を示したいんだ。

 最悪、外装だけ撃震にするって言うのも……」

「それじゃハリボテですよ。

 とりあえず、やれるだけやってみますね?」

 頼むと言って、引き続きアスナの機体の改良を任せた。

 さて、フォールドの方は……、

「私のほうも、フォールド航法の理論はたぶん理解できました。

 後は、実機で色々と実験を行って齟齬の解消と安全性を……やっぱり、独学じゃ色々と間違えちゃったりしますからね」

 なるほど、確かにそうだな。O.T.M関連で強そうな人をマクロスから連れてくるか? あ~、でもマクロスで使えそうな技術者って……あ、

「ルカが居たな。でも大丈夫かな?」

 購入に必要なポイントが少し高いけど……まぁ、フォールド航法がちゃんと出来る様になるんなら安い方か。

 ポチッとな、

「ナナセさーん(泣き)!」

 ああ、やっぱりか……。君はナナセさんにゾッコンだったからね。とりあえず、被服関連で強そうな人も欲しかったから――プラントで生産できる服がジャージやフォーマルスール、後はシンプルな下着類くらいしかないんだよ――来てもらうか。

「え? ナナセさんは被服科じゃなくて美術科で……あ!」

 いざ購入しようとして、ルカの指摘に指が止まる。そっか、美術科だったのか。そう言えば、彼女はデッサンはしていたけど衣服を作っているシーンはなかったね。ステージ衣装とかもフォログラムだったし……。

「な、ナナセさぁん……(泣き)」

 う~ん、言わなきゃよかったねルカ君。とりあえずルカ君には、後でナナセさんを呼ぶと約束して志摩さんと一緒にO.T.M関連の研究開発について貰った。彼からしたら40年くらい前の技術だけど、何とかなるだろう。

「な、なんでこんな古い技術を……。これ、第一次星間戦争時の理論と装置ですか? いくら僕がLAIの技術開発部特別顧問でも、こんなに古いのを僕達の時代にまで追いつけろだなんて……」

「う~ん、私達の重力制御技術と色々と違うからなんとも言えないけど、そんなに古いの?」

 ……ちょっと不安だな。ま、大丈夫だろう。たぶん。

 それから彼の搭乗機――RVF-25は、生産ラインがまだ購入できないので倉庫へ。ゴースト三機も同じく……熱核バースト反応タービンやEXギアの解析はしておきたいな。ま、彼らに暇が出来たらやってもらうか。

 フォールドブースターがプラントで量産できれば楽だったんだが……。追加武装のスーパーパックやパワードパックも無く、コイツが最初から装備していたイージスパックの保守部品ラインだけが登録されている。ただし、重要な部品であるフォールドクォーツはプラントで製造できないみたいだ。しかもこの宇宙にヴァジュラが居るかは分からない。つまり、一度ロストしたら二度とVF-25は作れなくなると……。代用品としてこのフォールドカーボンとか言うのは使えないの? え、純度が足りない?

 とりあえず……O.T.Mのフォールド航法等の実験艦としてヨルムンガンド級を数隻回してあげた。コンテナだけで中身がカラッポだから、フォールド装置や動力炉の増設と言った改修には苦労しないだろう。フォールド航法が、マクロス7時代にまで発展すれば良いんだが……。いや、せめて片道だけでも地球に安全に行ければ御の字かな? どちらにせよ、再来月――11月11日までに地球に行けるようになれば良いんだ、うん。

 MS、戦術機、フォールドと来て次は……ACだな。

 アブマーシュには、ノーマル用のパーツとしてフロート脚部――クレスト社製フロート脚部のCR-LN85の様なモノをスケッチして製作を頼んで置いた。さすがに通常の二脚よりも、フォボスの様な低重力下ではフロート脚部の様な動作の方が良いと考えたからだ。

「……動作試験の映像を見る限り、宇宙空間で十分に使えそうだな。

 前衛部隊だけじゃなく、ラビアンローズの守備隊にも装備させるか」

 ピップボーイ(モドキ)で脚部パーツの製造ラインを生産……と思ったら、プラントの生産項目に既に追加されていた。

 う~む。どういう基準かは分からないが、こちらで製作した物は自動的にプラントの生産ラインに登録される仕様の様だ。しかも、改修を加えた前と加えた後で別々に生産項目が出来ていた。まぁ、色々と開発作業に嬉しい仕様だな。

 ピ、ピ、ピ!

 軽快にキーボードを叩いて命令を出す。それにしても空中モニターとキーボードって便利だね~。ノートを持ち歩くより楽だけど……コレは、色々とね、

「はぁ……ん? またレベルが上がってる?」

 確認してみると、コマンダーレベルでもファイターレベルでもなく……クリエイターレベルと言うのがレベル3に上がっていた。

「クリエイター……製作って事か?」

 おそらくそうなんだろう。その効果も、技術習得時の消費ポイント10%軽減とか言う物……。

「……技術系チート用のレベルだな。アラスカにでも行って開発無双でもするか?」

 それはそれで悪くなかったな。でも、アメリカやソ連が五月蝿いんだよね。あ、VF-0(エンジンの仕様から大気圏内機なので購入可能)でも持ち込んで、

『解析できるもんならやってみろ!』

 って、置いてくのも良いな。機体を独占するために戦争になりそうだけど……。







 アナザーサイド



 同時刻 マーズ・ルナ01(フォボス) 資源調達部隊



 BETAと無人機が蠢くフォボス、その地表近くを一隻の黒い宇宙船艦が飛行していた。

『右翼前線に展開中の無人AC部隊に通達。コレより水無月副指令による狙撃を行う! 各機は、予定ポイント上に要塞級を縛り付けろ!!

 ……水無月副指令、いつでもどうぞ』

『うむ、了解じゃ!』

 そう言って、ドミニオンの上方装甲版に立つアスナは、デバイスに長距離砲撃魔法用のバレルを展開させ構えていた。狙うのは、右翼の前線部隊を苦しめる要塞級の群れ。魔力のチャージと共に、照準のレティクルを合わせて行く。そして、

『バスター・シュート!』

 カチ!

 真紅の閃光が――MSのビームライフル並みのビームが要塞級に向かって一直線に伸びる。が、

『う、おしい!』

 僅かに照準がズレ、要塞級の片足を全て打ち抜くだけに留まった。だが、それだけでも前線で戦っている部隊にとっては十分な援護射撃だ。倒れてまともに動けなくなった要塞級を、無人AC部隊が解体して行く。

『おお、少しは役に……』

『水無月副指令、敵はまだ来ています! 早く第二射を!!』

『う、うむ、了解した!』

 ナタル小佐に叱咤され、アスナはいそいそと次のターゲット――要塞級に照準を合わせ砲撃魔法を撃ち込んで行いった。

 なぜアスナが戦っているのか? その答えは、前回の作戦後イツキがファイターレベルの上昇でスキル――ニュータイプを習得した事に起因する。

 イツキがスキルを習得した後、コーラサワーと行った模擬戦で見違えるような空間認識能力の向上が確認された。その理由を知ったマネキンは、今後の戦闘の激化に対処できるようアスナのファイターレベルを上げさせるため、ウラルの上方甲板から砲撃魔法による支援を行わせる事にしたのだ。

 また彼女は、アスナにもイツキが体験型教育プログラムを終了しだい受けさせるつもりだ。コレは、兵器の生産ラインなどに関連するコマンダーレベルに偏りがでないよう――もしもの時、このレベルが低いままではポイントで新しい兵器の製造ラインが確保できないと言う事態を防ぐ為だ。

『……水無月副指令、まだ行けますか?』

『も、もう少し行けるかのう?』

 そう言って砲撃魔法を要塞級に撃ちこむが、アスナの表情には疲労の色が濃い。それを見たナタル小佐は、自動歩兵達にアスナを下げさせるように命令した。アスナをドミニオンの上方甲板で戦わせたのは、魔力切れで動けなくなった際に直ぐ救助できるようにと言う配慮からだ。

『お疲れ様です水無月副指令』

『う~む、もう少し行けると思ったのじゃが……』

 そう言いながら、アスナは自動歩兵達に連れられてドミニオン内の休憩室へと歩いていく。バリアジャケットは既に解除し、デバイスも待機状態のカードに変化している。

『今回が初戦です。無理はせずに一歩一歩前進して行けばよろしいでしょう。

 ……アイツには、一歩引いて戦ってもらいたいのだが……』

 そう言いながら見つめるモニターには、

『ウラウラウラ! 弱すぎるぜ!!』

 BETA相手にジンクスで無双しているコーラサワーが映っていた。粒子残量も危なくなっているし、そろそろ帰艦させて説教をくれてやろうか? いや、一度マネキン大佐に上申して矯正してもらうべきか? と、ナタル小佐は頭を押さえながら真剣に考えてし……、

『コーラサワー機被弾! 要塞級の攻撃により大破状態!!

 ……パイロットはピンピンしてます』

『大佐~! 助けてくださ~い!!』

『さっさとアノバカを帰艦させろ!』



 アナザーサイドエンド







 2001年09月31日 経過報告


 如月イツキ:チートリンクス

 NEW!体験型教育プログラム、各演習のクリアボーナスとして合計20,000ポイントが計上されます。

 ファイターレベル:3

NEW!スキルポイントを消費し以下のスキルを習得しました!

NEW!アンチ・ケミカル Lv1

NEW!ニュータイプ Lv1

 コマンダーレベル:2→7

NEW!LVUP報酬として10,000ポイントが計上されます。x5

NEW!新しい技術、生産ラインが購入可能になりました。

NEW!新しい施設が利用可能になりました。

 クリエイターレベル:1→3

NEW!LVUP報酬として10,000ポイントが計上されます。x2

NEW!技術習得時の消費ポイントが10%軽減されます。

 スキル:

・アンチ・ケミカル Lv1

:化学物質に対する耐性がつきました。物質の種類は問いません。

:生存のための医薬品は適応外となります。

:軽度のコジマ汚染を克服しました。

※注意、コジマ粒子を銃口から直接浴びないでください。死にます。

・ニュータイプ Lv1

:空間認識能力が向上しました。

:あなたは、敵の動きがそれなりの的中率で予想できます。

※注意、肉体の反応速度を上回る動作ができるわけではありません。

  ※脳波操縦デバイスの使用を推奨します。

 所有アイテム:

・ピップボーイ



 水無月アスナ:ミッド式チート魔導師ランクAA→AAA

 ファイターレベル:1→3

NEW!LVUP報酬として10,000ポイントが計上されます。

NEW!スキルポイントを2点入手しました。スキルを習得してください。

NEW!スキルポイントを消費し、魔力量をAAからAAAに上昇。

  NEW!スキルポイントを消費し、以下のモノをエミュレートしました。

NEW!R9-A アローヘッド 武装

 コマンダーレベル:4→5

NEW!LVUP報酬として10,000ポイントが計上されます。

NEW!新しい技術、生産ラインが購入可能になりました。

NEW!新しい施設が利用可能になりました。

 エミュレーター:

・R9-A アローヘッド 武装

:スタンダードフォース

:スタンダード波動砲



 プラントレベル:2→3

NEW!LVUP報酬として10,000ポイントが計上されます。

NEW!生産に必要なクレート量が10%減少しました。



 保有技術:

NEW!:地中振動監視技術の改良

NEW!:発展型地中振動監視技術



 購入アイテム:

 NEW!:体験型教育プログラム(ゲーム系)

 ※各種訓練項目のクリア特典として、ピップボーイが如月イツキに贈呈されました。



 現在の所持ポイント:70,000→165,000

 現在の所持クレート:5,468t(+1,640t)→24,657t






[28567] まず、働けるようになろう#3
Name: 風鳴刹影◆c2bc412c ID:830f4c3d
Date: 2011/07/03 21:15
 第七話



 2001年10月02日 火星衛星軌道上ラビアンローズ



「如月司令、水無月副指令達がフォボスから帰還したようです」

 お、帰ってきたか。生産できたクレートは……お、20,000t以上ってことはプラントも……うん、レベルが上がっているな。クレートの消費量が10%減少したのは嬉しいが、5%ずつの減少って少し小刻みすぎじゃないか? いや、まだLv3だしこんなもんか。

「イツキ~、大漁じゃぞ!」

「ああ、確かに大りょ……ッ!?」

 フヨフヨフヨ……。

 俺の目の前に、四本のコントロールロッドを生やした琥珀色の球体が浮いていた。

「来るな”ー! 来るな”ー!!」

 いや~、体が覚えているというか一種のトラウマと言うか……。ソレを見た瞬間、俺は後ろに飛び退き錯乱したように来るな来るなと連呼していた。まぁ、錯乱した俺を、アスナがフォースショットや砲撃魔法(非殺傷設定)で強引に気絶させて鎮圧したけどね。

 それにしても、たかがフォースを模したデバイスを見ただけでああも取り乱してしまうとは……。やはり、体験型教育訓練でR戦闘機に乗ってバイドと戦ったのが原因か? ……あれ? R戦闘機に乗って戦ったのは覚えてるけど、どう戦ってどうなったのかがまったく思い出せない。

 ハハハ……、アレ? アレ? オレハ、ドウシタノカナ??

「ハハハ……」

 俺のやけに乾いた笑い声が、ラビアンローズのメディカルルーム内に響いた。ソレを聞いた人は、

「精神科医を呼んだほうがいいかもな」

 と、思ったのだとか。



 ………
 ……
 …



 さてと、第二次資源調達作戦を終えたアスナだが……。

 一日ジックリと休養を取った後、地獄の体験型教育プログラム(ファンタジー系)に取り組んでもらっている。俺でアレだったんだから、アスナだとどんなタノシイ訓練を経験してくるのかな? カナ?

「ククク、訓練の様子をモニターできればよかったんだが……」

 内容によっては、後々アスナをいじる材料に出来るんだけどねぇ。そう思いつつパソコンを操作するが、なかなか体験型教育プログラムにハッキング――もとい、モニタリングが出来ない。う~ん、無理かぁ。

「き、鬼畜です如月さん」

「うん、鬼畜だね~」

 鬼畜とは酷いな~片瀬さんに園宮可憐さん。って、二人ともそんなに引かなくても……。まぁいいけど。

「そう言えば、フォールドの方は……ルカ君は大丈夫?

 なんか、さっき見かけたときかなりやつれてたみたいだけど……」

「だ、大丈夫だと思います。

 ……なんか、ナナセさんに来て貰うか来て貰わないかで悩んでいたみたいですけど」

 あ~うん。まぁ、最終判断は彼に任せるか。一応呼ぶって事は約束はしたしね。

 そうそう、二度の資源調達作戦で俺達の救援部隊も大幅に増設された。

 具体的には、ジンクスⅢが四個機甲連隊(432機)に陽風が六個連隊(648機)。運営母艦としてヨルムンガンド級航宙輸送艦が28隻――その内の四隻はフォールド航行の実験のため太陽系内をフォールド中。コレ等に加え、ウラルとドミニオンがラビアンローズに追従している。

 はっきり言おう、ラビアンローズじゃコレだけの艦船を抱え込めない。

「ラビアンローズの拡張を早急に行うか、スペースコロニーとかの開発を行うべきだな」

 ラビアンローズの拡張工事は直ぐにでも行えるだろう。だが、あまり大きくなりすぎると身動きが取れなくなってしまう。もう一隻ラビアンローズを建造したくとも、今のプラントには保守部品の生産ラインしかない。コレをかき集めて一からラビアンローズを建造するか?

「いや、待てよ?」

 俺は、ピップボーイのキーボードを叩きポイントで購入可能な項目を確認する。もしかしたら、ポイントでラビアンローズを直接購入できるのではないか? と考えたからだ。だがしかし、生憎と拠点として利用できる大型航宙施設のポイント販売はまだ行われていなかった。一部の艦船はポイントで購入可能になってるんだが、コマンダーレベルが10を超えないと大型航宙施設のポイント販売は解禁しないのか?

 ……アスナが訓練から戻ってくれば、もしかしたらコマンダーレベルが10を超えるているかもしれないな。

「ま、ソレまでの間は簡易の係留ドックでも作って対処するか」

 ギガ・ベースやランドクラブとかの地上用の移動要塞は有るんだけどね……。宇宙じゃ、ほんと役に立たない施設だよ。

 まぁ、代わりに面白い項目を見つけたから良しとするか。

 GAグループ製ACパーツ製造ライン、50,000ポイント。

 オーメルグループ製ACパーツ製造ライン、50,000ポイント。

 インテリオルグループ製ACパーツ製造ライン、50,000ポイント。

 ※上記三つの製造ライン習得後、ボーナスとしてラインアーク製ACパーツ製造ライン習得。

 ショップは無いって言われていたが、どうやらACのアセンブルがしたければポイントを消費してパーツの製造ラインを購入しろ! と言う仕様の様だ。ネクストのパーツ……特に今は武装関連が欲しいが、一律50,000ポイントと言うのはけっこう高い。まぁ、ACの性能とLvUP毎で入手できているポイントの量から考えるとこれ位するのかな?

「まぁ、全部を直ぐに買わなくてもいいな。

 それよりも……」

 ピ!

 航宙特殊作業船(スペースコロニー開発キット)、50,000ポイント。

 もう一つ見つけた面白いモノ。コイツは他の居住可能な惑星に移るためのモノではなく、宇宙空間に大規模の住人を収容できる――一ヶ月で約一千万人規模が居住可能なスペースコロニーが一機建築できるキットのようだ。開発に必要なプラントに警備戦力、人員(自動歩兵)等も付属してくる。しかも、コレ一機でスペースコロニーが一機ではなく、後から資材を送れば幾らでも作ってくれると言う優れもの。

 本来なら超光速恒星系間移動技術と言う技術の習得が必要になるようなのだが、O.T.Mを習得しておいたお陰で購入可能になったと言う訳だ。

 もちろん、超光速恒星系間移民船と言う項目も有ったが……、

「ククク、俺は宇宙船艦ヤマトで満足は出来んのさ。

 大規模移民船団マクロスを建造してやろう!! ポチッとな……」

 と言うわけで、航宙特殊作業船を購入する事にした。

 レベルが上がれば、ポイントでマクロスのフロンティア級移民船団等を購入できるかもしれない。だが、それじゃ面白くないな。せっかくの物量チートとO.T.Mなんだから、自分達でマクロス船団を建築してみたくなったのだ。

『む、ムチャクチャです。僕達だけで、一から星間移民船団を作るなんて……』

 と、何処かの天才少年が呟いた気がしたが空耳だろう。

 そして、大型の四角い箱の姿をした航宙特殊作業艦が俺の指示に従ってラビアンローズから離脱していく。あんな船が――本来なら、完成まで数年は必要になるスペースコロニー建造工事を僅か一ヶ月で完了させると言うのだから驚きだ。

「どんなチートだよ。笑いが止まらないぜ!」

 ……もっとも、その一ヶ月のうちにコロニーの製造ラインがはるかに安い価格で購入できるようになり、一日もあればプラントで建造できるようになってしまうのだが……ココではまだ先の話だ。

 Tell.Tell...Pi!

『如月司令、先ほどの艦船は一体……?』

「あ、ナタル少佐。

 アレはスペースコロニーの建造を行う特殊作業船です。一ヶ月後ですが、もう少し高い天井で過ごせるようになりますよ」

『……もう直ぐ地球に行かれるのでは?』

「部隊全部を地球に下ろす事は出来ませんからね。

 コロニーは、宇宙で活動する人たちの生活基盤になってもらうんですよ」

 その後、マネキン大佐からも同じような質問が飛んできたので同じように答えた。う~む、一々個別に説明するのも大変だし掲示板でも作るか? でも、機密とかアレだし……。

 それから、AC関連の購入が他に比べて少なかったので50,000ポイント消費し、“GAグループ製ACパーツ製造ライン”を購入する事にした。

 てかメイに、

『GAグループのパーツが手に入るんですか? だったらGAのパーツを優先してください!』

 って強請られたんだ。まぁ、GAは実弾系が主体の企業グループで、それなりに傘下の企業が多いから選択できるパーツが豊富になるだろう。……となると、“インテリオルグループ製ACパーツ製造ライン”は一番最後がいいかな? あそこは企業が少ないし……コジマ兵器とかレーザーブレードとかある意味魅力的なパーツが多いんだけど……。

「とりあえず、ジャベリンの武装を変更するか……」

 今のライフル、威力が足りないんだよ。BFFの良いライフルにでも……あ、ミサイルの代わりにグレネードランチャーを装備してみるかな?







 2001年10月06日 お昼 ラビアンローズPX



 お腹の空くお昼時。俺が美味しい味噌ラーメンを啜っていると、

「イ~ツ~キ~」

「ん?」

 なにやら地獄の底から聞こえて来た様な声がした。で、振り向いてみると……、

「ア、アスナさん?」

 凄まじく重い空気を背負った阿修羅――いや、アスナが立っていた。体験型教育プログラムが終わったんだな。だけど、何故そんなにも重い空気を背負ってるの? てか、眼が死んでるみたいに……いや、コレはヤンデレな眼……、

「え~と、どったの?」

「オヌシは、楽しい訓練じゃったと言ったな?」

「あ、ああ。俺はそれなりに楽しんだが……」

 まぁ、魔改造されたSOM破壊ミッション――SOMとネクストとの大きさの比率が見直されて砲撃が異常な上、ACfAのOP並みの艦載AC(全機⑨)と戦闘ヘリ付き。さらにそいつらの武装が全部コジマ兵装で、対空砲はパルスレーザーだったな――は、結構キツかったけど……。

「ほう……」

 そう呟くアスナノ目が、恐ろしく冷たかった。

 ……え~と、なんでも機動六課の様な場所で地獄の様な教導を受けたそうだ。

 それで、最終的に卒業試験と称し……ブチギレたシャントット博士に、数百体もの光の精霊を引き連れた星の巫女様――通称“連邦の白い悪魔と黒い悪魔”の無詠唱古代魔法とホーリーの弾幕に相手したり……。他には、リナのドゴスレイプにゼフェル先生のロードオブバーミニオンやメテオストームなどなど。〆には、なのはさん三名――StSなのはさん(ブラスト3使用)、映画版なのはさん、色違いなのはさん(星光の破壊者)から全力全開のSLB(スターライトブレイカー)を何度も受けたりして……。

 俺が知らないヤツもいたが、とにかくとんでもない魔改造ボスラッシュの三日間だったらしい。

「わ、分かった! 分かったからこのフォースを解いてくれ!!」

「凄いでしょ? シャーリーさんがフォースとデバイスをもっと強く、もっと使いやすく、もっと暴力的にしてくれたんだよ??」

 そう言ってアスナは、アンカーフォースで俺の両手両足をグイグイと締め付けて拘束している。いやーシャーリーさん。いくら使いやすくしてくれたって言ってもさ、複数のフォースを同時制御できるようにするって反則じゃない? フォース四つって、どれだけガードしまくりのR戦闘機だ??

「このフォースは、ブラスタービットと同列のデバイスじゃからのう。

 さぁて、イツキにはワタシがどれだけ凄くなったのか身をもて知ってもらう必要がある。そうは思わんか?」

「い、いや、思は……」

「そうかそうか! 思うか!!

 よし、善は急げじゃ! さっそく訓練スペースに向かうのじゃ!!」

 そのままアスナによって連行されていく俺。ちなみにPXにいた他の人たちは、

「頑張って来い!」

「え~と、こういう時は“骨は拾ってやる”って言うんだっけ?」

「そうね。とりあえず頑張ってきなさい」

 などと激励を送ってくれた。ちくしょー!

「ワタシがこの三日間体験した恐怖、その一部でも構わん! その身をもって知れい!!」

「や、止めろアスナ! は、話せばわかる!!」

「ちょっとO☆HA☆NA☆SIしようか?」

 それ、キャラがちが……、

「ア”ー!」

 そして俺は、アスナの真紅の魔力光に何度も曝されズタボロにされた。

 しかしアスナよ、体験型教育プログラムの景品かは知らないが、いいMS少女、ダ、ZE……。

 ……その後、アスナの凄まじい砲撃魔法の影響で軌道がズレたラビアンローズを制御するのに片瀬さん達が奮闘したとか……。まぁ、その間気絶していた俺には関係ない話だな。







 2001年10月10日 火星衛星軌道上



 俺たちがこの世界に介入して、既に20日が経過した。フォボスへの攻撃を開始してからだと既に17日――そろそろフォボスでも光線族種が出てくる頃だな。

 本当だったら、航空兵器を使用しない戦闘を主体にして光線族種の出現を制限したかったんだけどね。一番最初の資源確保作戦でドミニオンによる艦砲砲撃に、ちょくちょくコーラサワー等によって行われた飛行状態からの攻撃により出現する可能性がほぼ確定したと言って良い。

 ま、光線族種のレーザーは、各機にラミネート装甲製のシールドを装備させればある程度耐えてくれるだろう。ジンクスⅢにはGNフィールドもあるし、いざと言うときの切り札――カタギリがトランザムを使用可能にしてくれたしね。

 だいぶ地球に行くための準備が出来てきたし、面倒な光線族種も出て来るんならフォボスのハイヴには退場してもらおう。だがその前に対処しなきゃいけない事が少し出来てしまったが……。

『ローエングリン、ってー!』

 ドミニオンから陽電子破城砲――ローエングリンの閃光が飛来したハイヴ着陸ユニットへと突き刺さり四散させる。

『ハイブ着陸ユニットA、轟沈!』

 ハイヴ着陸が飛来してくるようになった。まぁ、予定どうりって言えば予定どうりなんだが……。着陸ユニット目標が、フォボスではなく俺たちのラビアンローズってどういう事だよ? フォボスに向かえよ! フォボスに!! フェイズⅠ位なら楽々解体してやるからさぁ。そんでG元素貢げよ!! 

『ローエングリン第二射用意! 急げ!!

 ゴッドフリート及びバリアント照準! 目標、ハイヴ着陸ユニットB……ってぇ!!

 飛来してくる破片は、イーゲルシュテイン及びヘルダートで対応しろ! 巨大な破片には、スレッジハマーを使用しろ!!

 ッ!? AC部隊何をしている! なんとしてもココで全て破壊するんだ!!』

『ローエングリン、再チャージ完了! 第二射、撃てます!!』

『よし、艦首回頭、ローエングリンの射線上にハイヴ着陸ユニットCを捕らえろ!』

『っ! 回頭間に合いません!! ハイヴ着陸ユニットC、ラビアンローズへと向かって行きます!!』

 さすがのドミニオンも、疲労が溜まっているのか対処が間に合っていない。

『クッ!? そのまま回頭を続けろ! 背面からローエングリンを撃ち込むんだ!!』

「ジャベリンよりドミニオンへ。破片はこちらで対処する。遠慮なく撃ち込んでくれ!」

 そして、メイ達と共にドミニオンが破壊したハイヴ着陸ユニットの破片を破壊していく。グレネードランチャーを装備しておいて正解だったな。さて次は……、

 ゴウ!

 すると、四機のスタンダードフォースからの弾幕が破片を弾き、アスナの強力な砲撃魔法が次々と破片を撃ち落していった。

『フフフ、コレが訓練の成果じゃ!』

 そう言ってアスナが、パウ級の上方甲板から胸を張ってVサインを送ってくる。

「確かに凄いが……アスナ! 撃つなら撃つと事前に警告しろ!! 友軍誤射(フレンドリーファイア)したいのか?」

『う、すまん……』

 そう言ってシュンとなるアスナ。と、一緒にケイティでついて来た片瀬さんが無言の圧力をかけて来る。

「はぁ……ジャベリンよりアスナへ、引き続き破片への砲撃を続けろ。

 次からは気をつけろよ?」

『う、うむ!』

 それから全ての破片を破壊し、俺達はドミニオンと合流した。

 そして、ヨルムンガンド級からドミニオンへと補給物資を搬入していく。連日連夜……ではないが、ハイヴ着陸ユニットを迎撃するために大量の弾薬を消費し続けているため、補給物資をピストン輸送しているのだ。

「お疲れ様ですナタル艦長」

「は! 微力ながら助力させていただいております。それで、補給物資ですが……」

 そう言って状況説明を始めるナタル少佐。なるほど……。過度なローエングリンの使用で、エンジン周りや砲その物に損傷が出始めたか。本来なら整備の為にラビアンローズへと帰還すべきだったが、今ドミニオンがこの宙域を離れるとラビアンローズの守りが薄くなる。だが、これ以上の連続戦闘は……と言うヤツか、

「分かりました。

 幸いな事に、補給物資の中にローエングリン用のパーツを二門分用意してきたので直ぐにでも修理作業に取り掛からせます」

 しかし、さすがにドミニオン一隻ではこれ以上の防衛は難しい。幸いな事に今回連れてきた艦船の中には、開発室が製作したローエングリンゲート級――ヨルムンガンド級航宙輸送艦を改修し、ローエングリンを一門装備した砲台型航宙艦を四隻連れてきている。FCSのプログラムの最終調整がまだ済んでいないから不安もあるが、そこはプログラミングチートな片瀬さんが何とかしてくれる。

 キラを呼んで、どっちが凄いか競争させてみたいな……。

「これで少しですが、ドミニオンの負担が軽減できると思われます」

 だが、これだけじゃドミニオンの――ナタル艦長の負担は減らせない。交代の人員が必要になるな。それに、カバーするべき宙域が広すぎる。ローエングリンゲート級を増産するのは良いが、やはり指揮をとる旗艦が必要だ。……そうだな。ドミニオンをパーツからもう一隻組み立てさせるか?

「……そうだな。、対MS戦を削って、搭載できる機体を減らし砲撃戦を主体においた……」

 ドミニオンの改造案に思案を巡らせながら、俺は帰りの艦の中でパソコンを操作し続けた。







 2001年10月10日 経過報告



  如月イツキ:チートリンクス

 ファイターレベル:3→4

NEW!LVUP報酬として10,000ポイントが計上されます。

NEW!スキルポイントを1点入手しました。スキルを習得してください。

NEW!スキルポイントを消費し以下のスキルを習得しました!

NEW!ニュータイプ Lv1→Lv2

 コマンダーレベル:7

 クリエイターレベル:3→4

NEW!LVUP報酬として10,000ポイントが計上されます。

NEW!技術習得時の消費ポイントが15%軽減されます。

 スキル:

・アンチ・ケミカル Lv1

:化学物質に対する耐性がつきました。物質の種類は問いません。

:生存のための医薬品は適応外となります。

:軽度のコジマ汚染を克服しました。

※注意、コジマ粒子を銃口から直接浴びないでください。死にます。

・ニュータイプ Lv2

:空間認識能力が向上しました。

:あなたは、敵の動きがかなりの的中率で予想できます。

※注意、肉体の反応速度を上回る動作ができるわけではありません。

  ※脳波操縦デバイスの使用を推奨します。

 所有アイテム:

・ピップボーイ



 水無月アスナ:ミッド式チート魔導師ランクAAA→S

 NEW!体験型教育プログラム、各演習のクリアボーナスとして合計20,000ポイントが計上されます。

 NEW!体験型教育プログラムで多くの戦闘を経験した結果、魔力量がAAAからSにランクアップしました。

 ファイターレベル:3→4

NEW!LVUP報酬として10,000ポイントが計上されます。

NEW!スキルポイントを1点入手しました。スキルを習得してください。

  NEW!スキルポイントを消費し、以下のモノをエミュレートしました。

NEW!ドースシステム ⊿ウェポン(デルタ、アルバトロス、ケルベロス)

 コマンダーレベル:5→10

NEW!LVUP報酬として10,000ポイントが計上されます。x5

NEW!新しい技術、生産ラインが購入可能になりました。

NEW!新しい施設が利用可能になりました。

NEW!艦船及び航宙施設の生産ラインが一部解禁されました。

 エミュレーター:

・R9-A アローヘッド 武装

:スタンダードフォース(&アンカーフォース)

:スタンダード波動砲

・ドースシステム ⊿ウェポン(デルタ、アルバトロス、ケルベロス)

:ニュークリアカタストロフィー

:ネガティブコリドー

:ヒステリックドーン

※広域殲滅魔法

 所有アイテム:

・ラストダンサー(カートリッジシステム搭載型デバイス)

・カーテンコール(アーマードデバイス)



 プラントレベル:3

・生産に必要なクレート量が10%減少。



 購入アイテム:

 NEW!:体験型教育プログラム(ファンタジー系)

 ※各種訓練項目のクリア特典として、デバイスが量産品からワンオフ品――ラストダンサーにグレードアップしました!

 ※シャーリーのおかげで、アンカーフォースが使用可能になりました。また、彼女の魔改造により複数のフォースデバイスを同時使用できるようになりました。

 ※シャーリーより、アーマードデバイス――カーテンコールをプレゼントされました。

 NEW!航宙特殊作業船(スペースコロニー開発キット)

 NEW!GAグループ製ACパーツ製造ライン



 現在の所持ポイント:165,000→160,000

 現在の所持クレート:24,657t→27,443t






[28567] 兎と狐と蛇#1
Name: 風鳴刹影◆c2bc412c ID:830f4c3d
Date: 2011/07/05 23:21
 第八話



 2001年10月13日 火星衛星軌道上ラビアンローズ



 俺達の基地、ラビアンローズ目掛けBETAのハイヴ着陸ユニットが飛んで来るようになり約一週間が経過した。

 その間俺達は、RG(ローエングリンゲート)級を次々と増産して防衛網を二重三重と厚くして行き、ハイヴ着陸ユニットの脅威からラビアンローズを守りきった。また、より高い安全を確保する為、マーズ・ルナ02(ダイモス)を盾代わりにしてラビアンローズ以下随行艦隊を隠している。

 コレ等の作業のおかげでナタルさんとドミニオンにも余裕ができ、現在は艦隊指揮をマネキン大佐のウラルと交代しラビアンローズにて補修を受けている。

 いや~、日計ニ~三個のハイヴ着陸ユニットが飛んでくるもんだから、その間防衛ラインを死守していたドミニオンはボロボロ。ラビアンローズに接岸したドミニオンは、エンジンブロックや各部の装甲版を取り外されたりと、艦の保守点検と言うより最速フルメンテの様相だ。

 まぁ、チート生産のおかげで物資を気にせず予備のパーツを使用できるからね。ニ、三日もあれば新品同様にまで回復するだろう。

 防衛艦隊を建造したおかげでクレートの減りが早いが、我々には延々とBETAの死骸を提供してくれるフォボスのハイヴがある。またフォボスでBETAを狩れば良い。

「だが、いつまでもこんな状況じゃ……詰むよなぁ」

 そう言って俺はキーボードを叩き、自軍の部隊ををナタル少佐の基地の前まで押し上げた。

「クッ!? バンカーラッシュとは、つくづくイヤらしい戦術ですな!」

「ついでに工場もどうです? ドンドン兵士を追加し……」

「……なら、意趣返しとして航空部隊と言うのはどうでしょう?」

 すると、別働隊としてやってきた航空機が俺の工場とバンカーを破壊していく。

「な!? ど……」

「どうして、ですか? BETAもそうですが、何度も何度も同じような手を喰らえば敵も考えるようにもなります」

 歩兵と航空機部隊からの挟み撃ちに合った俺の部隊はあえなく撃滅。そのままナタル少佐の部隊が怒涛の巻き返しで勝利を手にした。う~ん、次からは別の戦法で行ってみるか……って、いや、ただ遊んでいたわけじゃないぞ? 物量チートシステムを使用した戦略を習熟しようとシミュレイタールームに行ったら、たまたま息抜きでやって来ていたナタル少佐が、

『単純なAI相手では、あまり良い訓練にならない。よろしければ、如月司令にお相手願いたいのだが……』

 と、一緒に訓練――途中からレクリエーションみたいになったが、それだけだ。

「……ところで如月司令、例の特殊物資補給作戦……決行するのですか?」

「あれかぁ……」

 例の特殊物資補給作戦、それは物量チートのデメリット――無人機を生産すると、同等規模のBETAが出現する性質を逆に利用して、無人機を生産→BETA湧き→BETAをクレートへ→無人機生産→BEAT湧き……と言う一種のループで延々とクレートを製造する。ま、一種のバグ技紛いの物資生産作戦だ。

 昨日までは、このループを完成させる為にランドクラブ級AF(実弾主体)を建造し、フォボスへと降下させようと考えていた。そう、考えていたんだ。

「……ダメだな。

 二日前、無人部隊主体で行った第四次資源調達作戦を行ったんだが、そこでフォボスのBETAに光線族種が出現したのが確認されちまった。

 いや、レーザーはラミネート装甲で何とかなる。だが、一々レーザーから艦を守ってフォボスと行き来するのはリスクが高くなる」

 せっかく生産したクレートだって、輸送中に撃墜されたら元も子もないしな。

 せめて、命令権の無い下位のハイヴを建造してくれればそいつを残してやったんだけどね。何故かフォボスのハイヴはオリジナルだけなんだ。まったく、せっかく生産ライン10,000ポイントも支払ってを購入したランドクラブ(建造完了)が無駄になってしまったではないか……。

「まぁ、フォボスのオリジナルを潰す時にでも使えばいいか」

 結論として、これ以上フォボスのオリジナルハイヴを生かしておいてもこちらにはメリットはない。BETAの死骸とかを置いてもらって、さっさとご退場してもらおう。

「フォールド航法の目処ももう直ぐ立つらしいし、地球に行く前の最後の……ま、収穫祭だな」

 ルカ君や志摩さん達O.T.M解析チームの努力のおかげで、俺達はもう直ぐ火星圏から地球圏まで安全にかつ客観時間数時間でフォールド可能になるとレポートが上がっている。間違っても冥王星付近に飛び出すような事はないし、12月31日を超過しているなどと言う事も無くなった。

 それから、一部の航宙施設や諜報部がアスナのコマンダーレベルが10に上がった事でポイントで購入可能となった。ポイントなどの使い道を一任されている身としては、直ぐにでもこの諜報部を購入して置きたいのだが……いかんせんラビアンローズの艦内が狭すぎる。人よりも自動歩兵が邪魔すぎるのだ。

「てか、二個旅団(12,000体)って作りすぎだって……(ボソ)」

「いえ、各部署で必要でしたので……」

 色々な部署で必要になるからと生産して行ったら、最終的にこの数にまで膨れ上がってしまった。さすがに全部がラビアンローズに居る訳ではないが――各艦の操舵、MSやACの整備などを行っている。今は機体に搭乗している固体は基本居ない。全機無人機だ。

 さすがにコレで諜報部を呼び出すとなると――どれだけの人員が増えるのか皆目見当がつかない為、彼らの生活スペース……いや、コイツはポイントでもう一機ラビアンローズを購入すれば何とかなるだろう――実際、10,000ポイントを支払えば購入可能だ。だが、呼べば呼んだで食糧などが恐ろしい量必要になる。そんな事になったら……、

「いくら物量チートだからって、資材(クレート)が無限にある訳じゃないからなぁ。

 予定していたバグ技物資補給も、光線族種の出現でダメになったし……ん?」

 待てよ? よくよく考えたら、地球に行ったら香月博士との交渉になるんだよな? でも、こちらの事を信用してもらうにはそれ相応のモノ――武は11月11日に起こる佐渡ヶ島ハイヴからのBETA進攻と言う未来情報で自分がループしている事を証明した。

 じゃあ、俺達は?

 確かに強力な技術力――戦術機よりも強力な戦力であるMSやACと言った機動兵器。スペースコロニーやO.T.Mのフォールド航法技術と言った、第四計画を脅かす事が可能な技術もあるな。だが、俺がしたいのは第四計画の援護――シロガネタケルがこの世界で本来迎える結末の改ざんだ。初っ端から悪印象を与えては、最悪彼女がシロガネタケルの思考を誘導して俺たちと敵対させる事態にも成りかねない。

 それに、当初予定していたG元素を交渉材料として持ち出すのも……フェイズⅢ程度のハイヴ一個じゃちょ~と寂しいよね。いや、正直に言って通信機越しに彼女を説得しきれる話術が俺には無いんだよ。

 うん、ならば……、

「……よし、諜報部隊を至急地球に送り込むぞ」

 説得できるだけのモノを見せればいいだけだな。

「それは、どの様な判断ででしょうか如月司令?」

「地球の日本帝国、そこにこの世界で唯一異世界と言うモノを認識している科学者が居る。資料に眼を通していれば分かると思うが、香月夕呼博士だ。

 彼女との今後の交渉を有利に進めるべく……フォールド通信を使用したフォボス01ハイヴ陥落作戦を見てもらう。それも、なるべく生放送でな」

 もっとも、配信する映像はそのままと言うわけには行かないが……。さすがに隠すべき技術――アスナのミッド式魔法などが映っているシーンはカットすべきだ。それに、映像からでもある程度の技術推測と解析も出来る。どれだけのモノを見せるかは、編集を行う中継班に任せるか。

 ナタル少佐は、俺の説明を聞いてしばし考えた後、

「さ、さすがに生放送と言うのはどうかと……。

 ハイヴ攻略戦のさい、どの様なイレギュラーがあるか分かりません。僅かな失敗でも、今後の交渉に影響が出ると思われます。

 また、隠すべき多くの情報が彼女の手に渡ってしまい、我々との交渉に利用できる材料を失う危険性があります。

 ……それから、O.T.Mの研究開発の進捗具合から、リアルタイムでの観戦は難しいかと……」

 あ”~、時差の事をすっかり忘れていた。たしか、フォールドを行うと主観時間の240倍客観時間が経過する……うらしま太郎現象と呼ばれるものが起きるんだよな。

 ……ん? 待てよ。フォールドクォーツを使用したフォールド通信機なら、地球火星間をタイムラグ無しで楽々繋げられるよな? ルカ君のメサイアバルキリーとゴーストには、フォールドクォーツを使用した対バジュラ戦用に新型のフォールド通信機が……、

『だ、ダメです! この子達は司令のオモ……いえ、バラさせたりなんてさせません!!

 地球とのリアルタイム通信でしたら、こちらで直ぐにでも可能にして見せます。ですから、シモン達に手を出さないでください!』

「あ、ああ分かった。

 ……だが、このシミュレイタールームにいない君が、どうやってこの会話に参加できたんだ? そこの所を詳しく聞き……(ブツン!)オイ!? ……逃げたか」

 一体どうやって会話に割り込んだんだ? 俗に言うご都合主義ってヤツか? あ~メタ過ぎるZE。

「ハァ……。とりあえず地球とのリアルタイム通信は何とかなるみたいだな」

「……その様ですね。

 では如月司令、至急フォボス01ハイヴの陥落作戦の草案作成、及び地球へと派遣する部隊の用意を行います。また、ハイヴ攻略戦はリアルタイムではなく録画映像を渡す事でよろしいですね? アスナ副指令にもその様に話を通しておきます」

 ナタル少佐は、俺に有無を言わせずにそう言うと敬礼してシミュレイタールームを後にした。

 俺、司令官してるよね? アスナの方が司令官ぽい事(部隊の全体指揮とか各物資の適切な配分、その他面倒な書類仕事などの裏方)を俺の代わりにしてくれてるけど……俺、司令官だよね?



 ………
 ……
 …



 よし、気分を入れ替えてお買い物だ。

 “情報関連人材セット”を50,000ポイント消費して購入。初期としてはかなりの出費になるが、複数人での活動でポイントが入りやすくなっているからな。50,000ポイントくらいまた直ぐに溜まるだろう。

「さて……」

 俺は、部屋の隅にぽつんと置かれている段ボールに近づくとソレを無造作に持ち上げる。

「ようこそスネーク……いや、ビック・ボス。司令の如月イツキだ」

 そこには、隻眼の老人が隠れていた。なんと言うか気まずそうな顔だな。彼は佇まいを治すと、

「……着任の挨拶に来た。俺の事はスネークと呼んでくれ。

 ここのボスはアンタだ。ボスが二人いたら面倒だろ?」

「確かにな……」

 着任の挨拶と言うか、普通にスニーキングしてたけどな。そしてスネークと握手を交わし、あまり見たくもない突っ込みどころ満載のメンバーの名簿を渡される。

「FOX他、精鋭部隊がアンタの命令を待っているぞ?」

 FOXって、世界一使えない精鋭部隊なんじゃないか? たかがダンボールに隠れただけで侵入者を見逃しちゃうし……、007とかナルトとかいないの?

「ああ、ボンドのヤツは新作のゴールデアイに出演するから来れないそうだ。ナルト……ああ、あの忍者か。アイツだったら、党首の暗殺容疑で牢屋の中だそうだ」

 なんかアレな理由だなぁ。そんなのいいからこっちに来てくれよ。

「はぁ、仕方ないな。

 で、どんなメンバーなん(パラパラ)……ん? ライフサイズ・インターセプタードール部隊??」

 え~と、ライフサイズなホイホイさんやコンバットさんの部隊……ね(間違っても2mを超える様なアレではない。赤ん坊程度の大きさのモノだ)。なんだろ、親切丁寧なメイドさん達が、迷子の敵対諜報員さんをオタクな天国へと連れて逝ってくれるのだろうか? え、兎と狐のぬいぐるみを着ているヤツもいるだって??

 パタン!

「……よし、横浜基地にはライフサイズ・インターセプタードール部隊を侵入させろ。第一接触目標は、この横浜基地の社霞だ。

 彼女は、香月博士と親しい間柄だ。彼女をクッションにして、香月博士との交渉の席を用意して欲しい」

 接触するのは兎ホイホイさんが適任だな。可愛いし、うまくやればそれほど警戒されないだろう。

「……了解した。

 他の部隊員は、各国へと侵入して情報収集を行う。それでいいか?」

「ああ、それで頼む」







 アナザーサイド



 2001年10月16日 早朝 地球衛星軌道上


 真っ暗な宇宙に無数の小さな光点が現れ、そこから小さな――大気圏への突入を行う為に改修を施された――ヨルムンガンド級特務輸送艦が次々と出現して行く。

「ヨルムンガンド級特務艦隊、デフォールド完了。出現地点との誤差、許容範囲内……いえ、数隻ですが出現地点が大きくズレ大気圏近くに出現しました。

 大気圏近くに出現した艦は、そのまま大気圏突入シークエンスを慣行。それ以外の艦は、GN粒子の散布を開始。ステルス状態を維持しつつ予定降下ポイントへと移動中。現在、周辺の宙域に監視衛星の類は確認されません。引き続き索敵を継続」

 艦の操舵を任されている自動歩兵たちが、火星圏のラビアンローズにフォールド通信を入れる。

『こちら火星圏ラビアンローズ、了解した。幸運を祈る』

 そして、GN粒子によりレーダーに察知されなくなったヨルムンガンド級特務艦は、GNフィールドを発生させつつ各国へと散らばっていった。



 ………
 ……
 …



 日も暮れた日本の――国連軍横浜基地。その外壁に恐ろしく小さな人影たちが忍び寄った。

 その人影は……何と言うか動物っぽかった。いや、動物のような着ぐるみを着たホイホイさん――ホイホイ兎達とコンバット狐達だ。

 巡回の兵士が通り過ぎるのを確認すると、エレメンを組んだコンバット狐達が基地を取り囲む外壁にすぐさま取り付く。そして片方が手を組み、もう片方のコンバット狐を外壁の上まで一息に放り投げた。

「目標進入経路、クリア」

 元々ミリタリー色の強いコンバットさん故か、楽々と外壁の頂上に手をかけ壁の向こう側の安全を確認する。そして、向こう側の安全を確認すると持ってきたロープを下ろし後続のホイホイさん部隊を基地内部へと侵入させて行った

「……欠員なし。

 これより横浜基地内部への進入経路を探索する。各員、この基地の兵士に見つからぬよう十分に留意しろ。散れ!」

 赤いコンバット狐の命令に従い、インターセプタードール達は横浜基地内部へと散らばって行く。その後、小さな体を利用して基地の建築物の内部へと侵入できる場所――ダクトなどを探し出し、基地の内部へと侵入して行った。

「ふぁ~、今日も平和だなぁ」

「だな。そう言えばさっき兎を見かけたぞ? いまどき珍しいよなぁ」

「それ本当か? よし、もし見つけたら捕まえておばちゃんに料理してもらおう」

「さすがに夜じゃ捕まえられないって。罠でも仕掛けるか?」

 基地を警備していた兵士達の頭の中は、どこまでも平和だった。

 そして、そんな腑抜けた兵士達を他所に横浜基地にダクトから侵入した兎ホイホイさん達は、一路横浜基地の地下施設へと向かって前進し続ける。途中、ダクト内に設置された赤外線センサー等のトラップもあったが、彼女達はそれらを確実に解除しつつ横浜基地の最深部へと迫っていた。

 もちろん、横浜基地の最深部を目指しているのは基地内部に侵入したホイホイさん達だけではない。

「掘削のピッチを上げろ! なんとしても、今日中に基地内部に侵入した先行働隊と合流するのだ!!」

 と、熱い激を飛ばすコンバットさん。その周りには、安全第一と書かれたヘルメットを被ったホイホイさんたちがせっせせっせと高周波ドリルやプラズマレーザーで穴を掘り続けていた。彼女達は、内部へと侵入して言った部隊が持ち込めなかった物資を届ける――いわば補給部隊。そして、今彼女達が掘っているトンネルはその機材を運び込む為の補給路なのだ。穴の径はそれほど大きくない――ホイホイさんたちが横に二列並べる程度だが、既にその深さは200m以上に達しており、掘り進めた距離だけなら1km近くに達していた。予定では、もう直ぐ横浜基地の地下施設にぶち当たる筈、

「指揮官どの! 横浜基地内部に潜入した部隊よりレーザー通信を受信しました!!」

「よし……掘削予定進路を右に1度修正! もう直ぐ目的地だ!! 気合を入れろ野郎共!!」

 ココに野郎は一人も居ないのだが……ホイホイさん達は掘削のピッチを上げたのだった。







 2001年10月17日 夜 横浜基地地下施設シリンダールーム



 国連軍横浜基地の地下、脳髄が納められたシリンダーが照らすほの暗い部屋。その部屋のもう一人の主――銀色の髪を二つに結い兎の耳に見えるカチューシャをつけた少女は、シリンダーに納められた半身……ではなく、目の前に突然現れた兎の着ぐるみを着た不思議な小人を見つめていた。

「……」

「……」

 向かい合う二人(?)は無言……いや、兎の着ぐるみの方は『お話しましょう』と言うプラカードと通信機の様な物を持っている。少女――社霞はそのコードの行き先を眼で追うが、それはカバーの外された換気ダクトの中へと続いておりその先をうかがい知る事はできない。だが、その換気ダクトの入り口にももう一人(?)この兎の着ぐるみを着た小人が居た。

 ただし、その小人は銃と思われる物を携えているが……。

 霞がソレを確認すると、一目散にダクトとシリンダーの間に割って入った。

 この人を殺させない。そんな感情から来た行動だったが、銃を携えた兎はソレを構える事もなく床に置いている。

 この人の暗殺が目的でない? そう思いつつ、霞は彼女達へのリーディングを試みるが……一切の感情が読み取れない。不思議に思いよくよく彼女達を観察してみると、その理由が直ぐに分かった。

 機械なのだ。彼女達は……。

 とにかく、直ぐに自分やこの人を傷つけるつもりは無いと霞は判断し――だが、銃を持っている相手に背中を向けるわけにも行かない。彼女は、仕方なく自分がもっとも信頼している“聖母”にプロジェクションで現状を知らせ続けた。

 そして数分後、

「社、助けに来たわよ?」

 白衣を着た魔女と、その部下である戦乙女たちが完全武装でシリンダールームに突入してきた。そして、それぞれが手に持ったライフルの銃口を兎の着ぐるみに向けた。

 ソレに対し、兎の着ぐるみを着た小人――ホイホイさんはと言うと、

「捕虜としての扱いを希望します」

 と言いつつ白旗を掲げ、ダクト内に居たもう一体は彼女達に捕まる前にその場から撤退して行った。







 2001年10月17日 経過報告



 購入アイテム:

 NEW!諜報部部隊セット

 NEW!インテリオルグループ製ACパーツ製造ライン

 etse...



 現在の所持ポイント:160,000→10,000

 現在の所持クレート:27,443t→30,654t






[28567] 兎と狐と蛇#2
Name: 風鳴刹影◆c2bc412c ID:030c7e8f
Date: 2011/08/25 22:09
 第九話



 2001年10月18日 早朝 国連軍横浜基地



 国連軍横浜基地……国連の対BETA極東戦線の重要拠点にして、BETAから奪取したハイヴの真上に建築された唯一の基地。

 そして、オルタネイティブ計画のひとつがここで進行している等と世界的に見ても重要な拠点なのだが……、

「オイ! そっちに一匹行ったぞ!!」

「クソ! 俺を足場にしやがった!!」

「逃がすな! 追え追え!!」

 そこに勤める兵士達は、朝から可愛らしい兎や狐と追いかけっこしていた。彼らは、別に遊んでいるわけではない。無作法にも、この基地に無断で侵入した曲者を捕まえる為に基地内を駆けずり回っているだけだ。

 だが、追いかけているのが必死の形相をしたむさ苦しい兵士と言うのはあまり絵にならない。もっとも、女性の兵士はと言うと、

「ねぇ、捕まえたらモフモフしていいのかな?」

「あ~、捕まえて連れて来いって指示だから……連れて行くまでの間ならいいんじゃないか? 拘束しておいたって事にして……」

「なら、念入りにボディチェックをした方がいいぞ? スタンガンやナイフを隠し持ってたからな……」

 なんと言うか、別の意味で兎と狐を追いかけていた。

 だがしかし、彼らがどれだけ追いかけようと兎と狐――ホイホイさんとコンバットさんは捕まる事はない。彼女達も、熱意と行動なら男の兵士達に負けないような動作でホイホイさん達を捕まえようとしているのだが――可愛いモノを全力でモフモフしたいと言うアレな理由からだが――ホイホイさん達の連携と身体能力の高さに翻弄され、結局のところ捕獲にはいたっていなかった。

 そして、この追いかけっこは昨日の夜から今日のお昼まで続いており、その過程で鹵獲されたのは――地下のシリンダールームで捕らえられた一体のみ。

 もちろんダクト内へと果敢にも進入していった兵士達もいたが、その殆どが未だに帰還していない。通信も途絶し、おそらく捕虜にされたと推測されている。また、数少ないダクトからの生存者からの証言では、

『ダ、ダクトは地獄だ』

 だった。

 ちなみに、横浜基地が自前で用意していた防衛装置は彼らの工作により完全に沈黙させられていた。その代わりに、彼らによってクレイモア地雷(コショウ弾などを使用した非殺傷仕様)や赤外線センサーで作動する帯電床といった数々のトラップが設置され、さらに各種鈍器を装備した無数のインターセプタードール(通常サイズ)達によるラッシュなどが行われていた。

『こ、工具さえあればかつるのに……』

 と、訳の分からない事をぼやいたヤツが居たが、そいつは+と-のドライバーを持たされダクトの中へと放り込まれた。その後、その兵士は帰還していない。

『ディバイディング・ドラ……って、無理だよコレじゃ!』

 などという声がダクト内から聞こえた気がしたが、おそらく気のせいだろう。

 帰還した兵士達からの報告から察するに、ダクト内は完全に彼らのテリトリーと化している事が窺える。彼らを排除するには、ダクトを外側から破壊するのが楽なのだが……ソレを行うには施設内の壁や天井を一度取り払う必要がある。予算的にも、機密保持の観点からも――彼らの活動範囲が地下施設にも食い込んでいる為――それは見送る事になった。

 まぁ、機密云々で言えばどんな手を使ってでも彼らを廃除すべきなのだが……実質的な被害がまだ出ていないため、もう少しこの状況を利用できればと彼女は考えていた。

「……でも、報告を見る限りあんまり効果はなさそうね。

 この子達が、もう少し私の迷惑にならない範囲で破壊工作でもしてくれれば良かったんだけど……」

 そう言って彼女――香月夕呼は、シリンダールームに運び込んだ簡易デスクの上で大人しく座っているホイホイさんを突っついた。そんなホイホイさんはと言うと、突っつかれる度に困ったような表情で兎耳をピコピコさせる。

 そして、ソレを見ていた銀髪の黒兎もまた、そんなホイホイさんを興味津々と目を輝かせながら――ついでに兎耳カチューシャをピコピコさせながら見ていた。

 ちなみにこのホイホイさんだが、一度着ぐるみを脱がされボディーチェックを受け危険物などを持っていない事が確認されている。解体はされていない。一度内部構造を解析する為に解体しようとしたが、

『すみません。下手に解体しようとすると、保守機能が働いて内部の回路やメモリーが焼き切られる仕様になっています』

 と言うホイホイさんからの親切な警告に従い、一時的にソレは見送られる事となった。

 一科学者としては、是非ともこのロボットの細部にいたるまで――特にこのロボットに搭載されているAIやソレを制御している電子機器を分析したいのだが……肝心の“予備”が手に入らない事には解析を始められない。

「にしても……なんで他の固体はあんなに逃げ回るのに、コイツだけ妙に大人しいのかしら?」

 この固体だけが妙に大人しいのは、元々私達に捕虜として渡す積もりだったのでは? そう思いつつ、夕呼はもう一つの気になるモノ――ホイホイさんが持ってきた通信機を手に取った。この通信機だが――既に一度バラして確認してみたが、極普通に出回っているモノに有線の通信ケーブルが繋がれているだけと言う、いわば受話器だった。

「……で、肝心のケーブルはダクトの中って訳ね。ピアティフ、調査の方は?」

「はい。先ほど小型の探査ローバーをダクト内に侵入させましたが……」

 ピアティフは、申し訳なさそうに報告を読み上げる。内容は、ケーブルの通っている場所がダクトに開けられた横穴から基地の外――地中に伸びている事が確認でき、更にその終点を確認する為100mほど真っ直ぐの道を進む事に成功した。だが、

「……そこで待ち伏せしていたコイツラに撃退されたと。

 この写真を見る限り、人間は行かない方がいいわね」

 報告書に添えられていた写真には、大型のライフル――恐らく対物ライフルと思われる物を構え100mの一本道で待ち伏せをしている狐が映っていた。100mの距離を対物ライフルの狙撃を避けつつ人一人通れる程度の道を進むのは、奇跡でも起きない限り物理的に不可能だ。

 この事態を進行させるには、この通信機を使用するか……あるいは完全に無視するかだろう。

 夕呼は、相手の思惑どうりに成っている事に内心腹を立て……実際、完全に無視しようかと考えた。だが、コレを送りつけてきた存在に興味を持ってしまった。コレ――ホイホイさんにではない。このホイホイさんが隠し持っていた――タイトルに『極めて近く限りなく遠い世界より』と書かれたCD-ROM。それに入っていた戦術機用OS――XM3だ。

「(プログラムの癖は、私と社の物に酷似してるわね。

 それにこのOS、使用するCPU(ハード)は私の研究成果を使う事を前提に組んである。

 ありえない。

 そんな物を作れる人物なんて、私か研究に携わっている社くらいしか……いえ、あのCPUの事をよく理解しているのは私……私が構築したプログラム? ソレこそありえないわ!

 ……でも)だからこそ興味が出て来たのよねぇ」

 ありえな事などありえない。鬼が出るか蛇が出るか分からないが、一度コレを送りつけてきたバカと話してみるのも悪くない。ほんの気分転換程度の気持ちでだが、夕呼はシリンダールームから人払いを行い通信機のスイッチを入れた。



 アナザーサイドエンド







 2001年10月19日 早朝 火星衛星軌道上ラビアンローズ



『如月司令。地球から司令宛の通信……香月博士からの通信が入りました』

「んぁ? もうか?」

 通信機を使うまでもう少し時間を置くと思ったんだけど、予想より早かったな。

「……分かった。ちょっと待って貰ってくれ。直ぐに顔を洗って支度をしてくる」

 いやはや、まさかこんな時間に通信を入れてくるとは思っても見なかったよ。まぁ、多忙な博士だからこんな時間にしかフリーな時間を作れないんだろうけど……。

 ……よし、変なところはないな? 身支度手早くを終え、通信をこちらに回すように命令する。

『やっとお出ましね。私を待たせるなんていい度胸してるじゃない?』

 う、かなり怒っていらっしゃいますね。

「お待たせしてすいません。大事な作戦の前でしたの十分な睡眠を取っていたんですよ。

 では改めて……。初めまして夕呼先生……いや、こちらの世界では香月博士でしたね?」

 そう確認しつつ、俺は通信機の向こう側を想像する。地球に送り込んだ諜報部隊からの情報によると、基本的に俺の知っていた事前情報との差異は見られない。細かな違いは、時間をかけてジックリ調べていけばいいだろう。

『……ええ、確かに私は香月夕呼よ? 国連軍横浜基地の副指令にして科学者……だけど、先生になった覚えはないわ』

「ついでに言うと、俺は博士の生徒でもない……。博士の生徒さんは、もう少ししたらやって来ると思いますよ?」

 そう言いつつ、俺はスネークたちから送られてきた情報を頭の中で反芻していた。

 俺達チート救援部隊が派遣されるのは、当然ながらマヴラブ・オルタネイティブの世界なのだが……。必ずしもこの世界にやってくる武が二度目だとは限らないと言うのが、歴代の救援部隊の失敗談(1,000ポイント)から分かったのだ。

 ちなみに、現在分かっているのは単独で介入すると二度目または三度目以降の武に当たる確率が高くなり(ほぼ確定かな?)、MAXの5名で介入すると一週目――つまりアンリミの武を担当する確率が高くなってしまう様だ。今更ながら、五人で介入しなくてよかったと俺は思っている。なぜかって? 色々と不足している一週目の武が簡単に死んじゃうんだよ。

 ちなみに、一人での介入でも武の出現している時間がずれていたり――主に三週目以降の武だ。さらに武がなぜかアラスカに出現し、そこに居るのを知らずにほったらかしにしてしまうなどと初動で躓く事もあった。今のところ、コレ等の事は起こっていないようだが……10月22日にやって来ないと言う可能性もある。注意は必要だな。

 と、俺が思っていると、

『……つまらない会話をする為に態々こんな事をしたって言うんなら、もう切るけど?』

「あー! ちょ、ちょっと待った!!

 切らないで? 切らないでよね??」

 考え事をしていたのは俺にも責任はあるが、流石にココで切られると色々と無駄になる。だから切らないでくれ!

『……五月蝿いわねぇ。そんなに騒がなくても聞こえてるわよ?

 で、アンタは――アンタ達は一体ナニ? こんなモノを送りつけて、それでいて顔も出さずに無線機だけの会話ってのも無粋じゃないの??』

 伝わってくる声音は、少々怒気が強いモノだ。かなり怒ってるよ。

「確かに、無線機で声だけと言うのは少々無作法でしたね。謝罪します。

 そして、もしよろしければ声だけでなく映像付きで会話をしませんか?」

『……ええ、別に構わないわ。でもこの通信、防諜とか大丈夫なの?』

「その点は問題ありません。この時代の地球の技術では、我々の通信を傍受する事は……それこそその部屋に忍び込まなければ出来ないでしょうね」

 流石に、フォールド通信を盗聴できるような科学力は今の地球にはない。唯一心配になる通信ケーブルも、ホイホイさん達が警備してくれている。横から通信を覗かれる事はないだろう。

『ふ~ん……まぁいいわ。それで、どうやって顔を付き合わせて会話するつもり? このケーブルを適当なモニターに繋げればいいのかしら??』

「あ、それには及びません」

 そう言って俺は、地球の横浜基地在住のホイホイさん部隊に映写機(プロジェクター)を搬入するよう指示を出した。一旦通信が切れるが、直ぐに回復して互いの映像が映し出される。ちなみに、香月博士を撮影しているのは捕虜になったホイホイさん。眼がカメラって便利だよね~。

「あ、ちゃんと映っていますか?」

『ええ、映ってるわ。

 それで、アンタは一体何者? いい加減名前を教えてくれないかしら?』

「あ、そう言えば自己紹介がまだでしたね。すいません。

 自分は如月イツキ。この世界に派遣された救援部隊の司令――いや、どちらかと言うとスポンサーか? まぁ、司令って事にして置いてください。そう言う役職をやっている者です」

『救援部隊? エイプリルフールは半年以上前に終わってるけど……』

「やはり嘘っぽく聞こえちゃいましたか……」

 まぁ、無理もないな。いきなりやって来て『自分達はあなた達を助けに来ました』って言われても、そう簡単に信じきれるわけがない。

「……あ、そうだ。こちらからのお土産には興味を持っていただけましたか?」

『お土産? ……それって、このCD-ROMの事かしら??』

 そう言って香月博士は、『極めて近く限りなく遠い世界』と書かれた一枚のCD-ROMを取り出して見せた。どうやらちゃんと届いてくれたらしい。中身を確認せずに棄てられる危険性もあったが、香月博士の様子からしてソレはない様だ。

『確かに興味のあるモノね……この戦術機用OS、一体誰がプログラミングしたのかしら?』

「なるほど、ソレのプログラマーが気になると……。聡明な博士なら、もう大体の見当がついていると思いますが?」

『それでも確信を得たいわ。

 それに、アンタがさっき口走った“この時代の地球”と“この世界に派遣された”……。いえ、このCD-ROMのタイトルに書かれてる“極めて近く限りなく遠い世界”って言うのが気になるわね。できれば、直に顔を付き合わせながらお話がしたかったんだけど……』

 あ~リーディングを使って頭の中を覗きたいのね。う~ん、

「ソレはちょっと難しいですね。

 いや、出来ないわけではないんですが……今我々が居る場所が問題なんですよ」

 そう言いながら俺は、自室から出て廊下を進みラビアンローズ01に増設した艦船ドックが見える展望スペースへと移動した。今なら、フォボス01ハイヴの攻略を行う為の部隊の整備を行っているから丁度いいと思ったんだよね。

 ちなみに、通信機器(モニターやカメラ等)はオルガコーポレーション製HHMZ-Da15Y型――ホームヘルパー・アンドロイドさんがしっかりと運んでくれている。流石移民船対応のカスタムタイプ。低重力下での作業はお手の物だな。あ、ちなみにこの娘はロット番号HHCZ035――星も名前の一部な船に乗っているディジーさんではない。純粋にプラントの製造ラインで新たに製造した量産型だ。……自動歩兵が余りに無骨すぎるんだよ。いくら戦闘用だからってさぁ。

 って、いけないいけない。思考が脱線しているな。

「まあ、見てもらえば分かりますが……我々は今宇宙に居ます。それも地球圏ではなく、火星圏です。

 そして、先ほどの質問ですが……そのOSを組み上げたのは香月博士。……いや、正確には今年の11月以降の香月夕子博士とアナタの大切な黒兎です」

 モニター越しの表情からは分かりづらいが、香月博士は俺の言った事に押し黙ている。驚いているのか、それとも……。だが、ココで話を切るわけにもいかない。

「我々は、救援部隊の名の通り部隊を引き連れてこの世界にやってきました。

 証拠は……今この窓の外で整備を行っている宇宙艦隊を見ていただければと」

『……トリックだって私が言えば、ソレを否定する材料は有るのかしら?』

 痛いところを突くなぁ。確かにCGなどで作ったトリックとかなら十分にありえる。

「確かに、モニター越しではソレを否定しきれる材料は提示しきれない……」

『それに、百歩譲って火星圏から通信してきているとして、なんでタイムラグがないの? ソレこそありえ……』

「ああ、ソレですか。

 ソレは、我々が保有している技術――フォールド通信と言うものを使用しているからです。

 詳しい事は機密に付き省かせていただきますが、簡単に説明すると空間を折りたたんで別々の空間を入れ替えるモノ……と想像してください」

 俺がそう言うと、香月博士は険しい顔で何かを考え始めた。そして、

『そのフォールドって言うのは、宇宙船の航行にも応用できるのかしら?』

「……もちろん可能です。いえ、すでに実用化しています。ココから彼女達を地球に送り込むのにも使用しましたしね」

 ソレを言うと、更に博士の顔が険しくなって行く。う~ん、マズイな。

「勘違いされているようですが、我々が接触して交渉の席を設けているのは今のところ香月博士、アナタだけです。博士が危惧するような……第五計画派とは接触していません。

 我々が博士を最初の接触相手として選んだのは、博士がこの世界で唯一別の世界の認識……因果量子論を唱えた人である事。そして、我々は第五計画ではなく第四計画に協力したいと考えているからです」

『ふ~ん……、千歩譲って今まで言った事が全部本当だとしましょう。

 で、そのフォールドとかって言う技術があるのに、なんで第五計画に賛同しないのかしら?』

「あぁ、そんなのは簡単な理由ですよ。

 第五計画が、G弾を――五次元効果爆弾を使用した焦土戦であり、脱出計画がその焦土戦を承認させる為の“おまけ”でしかないからです。そんなのに俺は同意する事は出来ないね」

 10億人中10万人の救出。その程度しか今の人類には出来ないと分かっていても、おまけ程度で組まれた作戦に賛同は出来ない。それに俺達なら……、

『ふ~ん、分かったわ。

 で、あんた達はどこまで私達の事を知っているの?』

「……そちらの事情については、ここに来る前に少しばかりですが――あくまで基本知識程度としてそちらの情報を知る事が出来ました。

 我々が知っているのは、その横浜基地がBETAハイヴの真上にそのまま建築されたものである事。

 そこには、唯一BETAの捕虜となり生存した少女が――脳髄の状態で匿われている事。

 その脳髄の少女――カガミスミカが、香月博士が行っている第四計画――因果量子論を利用した異世界間並列演算型量子コンピューター――生体反応ゼロの生物的根拠ゼロの00ユニットの最重要適合者である事。

 そして、その00ユニットは第三計画で培われたリーディングとプロジェクション能力を使用した対BETA諜報員である事……」

『……ほぼ全て知っているってわけね? もしアンタが私の前に居たら、その顔を吹き飛ばしていたでしょうね。

 まったく、こんな通信機越しじゃなかったらもっと詳しく調べられたって言うのに……。そこまで知ってるんなら、あの娘の事も分かってるのかしら?』

 あの娘と言うと……社霞の事だな。

「確かに、彼女の事も事前の情報で分かっていました。ですが、ソレが直接横浜基地に足を運ばなかった理由ではありません。

 我々の出現する位置ですが……ココに来る前の段階である程度任意に設定する事が出来ました。やろうと思えば、横浜基地のすぐ横に突然我々の基地を出現させる事もです。ですが、それですと横浜基地から我々の基地に対して戦力が送られてくる事は確定します。他の場所でも恐らく現地の軍から戦力が送られてきたでしょう。そうなると、自分達も自主性を存続させるために戦力を出さなければいけなくなります。

 この後の展開は……分かりやすいですよね?」

 確実に戦闘になる。

 そして、救援にやってきたのにまったく反対の事をしてしまうと言う結果に成ってしまうだろう。いや、十中八九相手側の軍隊を壊滅させている。そんなんじゃ本末転倒だ。AL4を支援したいのに、逆に失墜させかねない事態になる。まぁ、夕呼先生の手腕ならそんな事態を回避させるべくどんな大立ち回りでもやってのけるだろう。だが、そんな余計な労力を彼女に払わせるわけにはいかない。

「……そこで考え付いたのが、他の軍勢から一切の干渉を受けない宇宙……それも地球圏ではなく火星圏というわけです。地球圏だと、対ハイヴ着陸ユニット用の迎撃装置と戦う必要が出てきちゃいますからね。

 もっとも、この選択でもこの会話のような問題がでてしまいましたが……」

『そうね……。

 それで、アンタ達はどうやって私に協力してくれるのかしら? 流石に火星にいたんじゃどうにもならないんじゃない??』

「その点は心配ありません。

 来月までにこの火星圏から地球圏に部隊の一部を移動させる予定です。その時は、博士が喜ぶようなお土産が用意できていると思いますが……」

『お土産? 一体どんなモノかしら?? このOSみたいに、未来の技術とかかしら??』

 う~ん、技術の提供は考えているんだけど……今回はソレじゃないんだよね。

「現在、我々は火星の衛星――フォボスに建造されているBETAハイヴの攻略を計画しています。その戦闘映像及び……」

『備蓄されているG元素?』

 香月博士の言葉に、俺はニヤリと笑って返した。

「理解が早くて助かります。

 あと、戦闘の映像はコチラで一度編集した物になりますが……ソレを見た上でもう一度我々と交渉をしてくれませんか?」

『……分かったわ。

 で、交渉って言う位なんだからそっちの要求を予め教えなさい。そうじゃないと、こっちでも用意できるか分からないでしょ? まぁ、大体は想像できるけど……』

「たぶん、博士が想像しているのとほぼ違いはないと思います。

 我々の救援部隊が地球に行ったとき、迎撃されないように手を打っておいて欲しい事。我々の立場の保障。それから地球での活動拠点として……できればですが、日本に我々の活動拠点を設置できるようにして欲しい。

 ……とりあえず、コレくらいですね」

『あら、それだけでいいの?

 まぁ、それくらいなら何とかしてみるわ。ちゃんとG元素を渡してくれたらね』

 分かっていますとも。 

『それで……え~と、アンタ達の救援部隊の名前を聞いていなかったわね。なんて素敵な名前なのかしら? 色々と話を通さなきゃいけない場所も出てくるかもしれないし、教えて欲しいんだけど……』

 あ~名前……。ヤバイ、まったく決めてなかった。マネキン大佐やナタル少佐からも散々言われていたが、地球に行くまでに考えておくから! で、先送りにしていたからなぁ……。

 う~ん、この世界の日本は外国――特にアメリカが嫌いだから英語表記の組織名って言うのもアレか? やっぱり漢字表記の方がいいのか? と、俺が考えていると、

『はぁ……。ちょっと期待しちゃったけど、アンタ以外とバカの部類なのね? 組織の名前なんてね、パッと思いついて覚えやすければそれでいいのよ』

 まあ、名前なんてそう言うモンなんだろうけどね。なら……そうだな。スパロボにあったディバインクルセイダーズって名乗ってみるか? あの世界で、異星人からの侵略に対して立ち上がった抵抗組織。ビアン総帥がこの世界を見たら、ブチギレたあげくDC立ち上げてアメリカとかに宣戦布告しかねないな。それ位この世界の人類は団結できていない。

『……ディバインクルセイダーズ――神の十字軍ね、なかなかご大層な名前じゃない。

 スパロボって言うのが良く分からないけど……』

 へー、そう言う意味があったんだ。AA級戦艦であるドミニオンを使うんだし、悪くないネーミングだな。あれ? だとするとなのはさんの魔砲名称は神の~になるのか? うん、そこからなのはさんの悪魔や魔王、冥王と呼ばれるフラグが立ってたんだな。うん、納得のネーミングだ。

「そうだな、俺たちの組織の呼称はディバインクルセイダーズ、略称はDC……。いや、先頭にこの世界の敬称を入れてALDCだな。そう呼んでください」

『分かったわ。ALDCね?

 それじゃお土産、楽しみにさせてもらうわよ?』

 ご期待に答えさせてもらいますよ。

 ……そう言えば、なんで俺の考えていた事が分かったんだ? え、独り言で駄々漏れだったって?? マジか……。

「はぁ……。とりあえず、マネキン大佐達に予定を繰り上げる必要が出来たと報告する必要があるな」

 まったく、面倒な……。



[28567] ALDC「死骸の徴収に来ました~♪」BETA『帰れ!』#1
Name: 風鳴刹影◆c2bc412c ID:030c7e8f
Date: 2011/08/26 00:33
 第十話



 2001年10月20日 某時 フォボス01ハイヴ攻略作戦 ウラル艦橋



 香月博士との会談を終えた俺は、本来22日に予定していたフォボス01ハイヴ攻略作戦を二日繰上げて実施する事にした。

 博士を待たせるのも悪いだろうし――ハイヴ攻略+記録映像の編集をしないといけないから、本来の予定だと博士に映像を渡せるようになるのが24日位になる。これだと一週間近くも待ってもらう事になるので、準備は不完全だが作戦を決行する事にした。

 もっとも、準備が完了していなかったのはハイヴ内部へと突入を行う機動兵器部隊(MS、ACノーマル、ネクスト、戦術機)だけだ。フォボスの地表を掃討する為の艦隊――ローエングリンゲート級などの砲撃艦はすでに製造が完了している。それに、機動兵器も今までに製造していた分があるから、ソレを再編成すれば事足りるだろう。

 出来れば、予め無人機を生産しておいてフォボスのハイヴを溢れさせておきたかったんだけどね……。ほら、ここ一ヶ月の間に資源確保でかなりの間引きしちゃったじゃん? フェイズⅢ程度だともうスッカラカンなんじゃないかな?

「如月司令、偵察中のミッドナイト隊より入電。繋ぎます」

『こちらミッドナイトリーダー、ルカ・アンジェローニィ。

 先行偵察機部隊、フォボス重光線級のレーザー射程圏内に侵入しました。フォボス地表、活動するBETAの反応はまったく見られません。どうしますか?』

「やっぱあれだけ間引いたら、外で働くヤツ等が皆無になっちまったのか……。

 先行偵察機部隊は、フォボスに降下せずその場で待機。予定を変更し、ミサイルではなくランドクラブ級AFを先に降下させる。

 ドミニオン以下ローエングリンを装備した艦は、予定道理ハイヴ・モニュメントの破壊を行え。囮はランドクラブ以下機動兵器部隊が担当する」

「如月司令、ミサイルはどうされますか?」

「モニュメントの破壊後、ハイヴ内から大量のBETAが噴出すると思われる。ミサイルには、その時に活躍してもらう。

 マネキン大佐、作戦を開始してください」

「本来、それは司令がするべきなのでは……(ボソ)。了解しました。

 ウラルより本作戦に参加する全MS、戦術機、ACノーマル及びネクスト各機へ。コレよりフォボス01ハイヴ攻略作戦を開始する!

 まずはランドクラブの強制揚陸からだ。微速前進! フォボス01ハイヴへ移動を開始せよ!!」

 無線からの了解と言う返答と共に、ゆっくりと前進を始める全長約1kmの鉄塊。リンクスの様な先天的才能を持った一個人ではなく、多数の凡人により制御され安定した運営を行なう事を目的とした数百メートルから数キロの規模を誇る機動要塞――アームズフォート。ランドクラブは、その中で最も多く量産されプレイヤーの前に出現した……いわばやられ役である。ぶっちゃけ、トッツキで軽く叩くと吹き飛んじゃう紙装甲だったりする。

「……ま、ココはゲームじゃないんだからとっつき一発で落ちる事は無いがな」

 そう言いながら俺は、外付けブースターでフォボスに向けて突っ込んでいくランドクラブを見送った。

「それじゃ、俺も出撃するか……。後は任せたぞアスナ?

 ……っと、それからマネキン大佐。ランドクラブ、壊しても構わないんで思いっきり戦わせてください。アレ、地球でも使うんで」

「うむ、了解じゃイツキ。しっかりとワシが活躍できる場を作ってくるんじゃぞ?」

「地球でと言う事は……なるほど、早々に壊さぬよう最前線で囮に従事させます」

 じゃ、後は頼んだと俺は言うと、ウラルのブリッジを後にした。

 ただ、

『新造の機動要塞を“使い捨てにして構わない”と言える司令が異常なのか、それともこの職場が異常なのか……』

 と、マネキン大佐がぼやいていた気がした。







 ドミニオン格納庫



「機動兵器部隊、全機発進用意! 海兵隊の出撃だ。気を引き締めて行くぞ!」

「やっと出撃か! 新型機の性能、BETA共に見せ付けてやるぜ!!」

「コーラサワー、張り切るのはいいがお前はドミニオンの護衛だぞ? ま、ジンクスⅢがⅣに改良されたから張り切るのも分かるが……」

 そう言って俺は、改修されたジンクスⅢ――ジンクスⅣを見上げた。

 ちなみにこのジンクスⅣ、ポイントで製造ラインを購入したわけではない。ウチの開発部の面々(カタギリさんとかが)今のジンクスⅢを改造して出来上がった物だ。

 そのため、映画版00で登場したジンクスⅣとは若干仕様が異なっている。

 武装の選択の幅を持たせるというコンセプトはそのままだが、GNドライブの設置位置が胴体ではなくケルディムガンダムの様に腰の後ろに装着されている。そしてⅣの背中の部分には、SEEDのストライクガンダムやザク・ウォーリアの様な武装換装システム用のコネクターが取り付けられていた。

 姦し三人娘が、ストライクのストライカーパックシステムをジンクスに導入できないかとアレコレ頑張った結果……と言うべきだな。装備は、ザクのウィザードを参考にしてるみたいだけどね。

 用意できた装備だが、専用のGNドライブとGNキャノンを追加装備する砲撃戦用のガナーパック。GNバスターソードやカタールと言った追加の近接格闘武装が豊富なソードパック。航続距離と速度を伸ばす為に大型ブースター兼ミサイルポッドを装備するブレイズパック等々……。

 カタギリは、

『態々こんな風にしなくても、全部各部にハードポイントを付けて交換できる様にできるのに……』

 と、困ったようにしていたのは余談だ。まぁ、補給物資を詰め込んだコンテナパック――陸ガンとかアウトフレームを参考に――を背負えるようになったのは悪くないと思うぞ?

 もっとも、コレ等の改修は武装換装システムを取り付けるのが目的ではない。ガナーパック等の一部の背面武装には、本体の物とは別に試験的にGNドライブを取り付けられている。コレは、稼働時間が限定されているGNドライブτを装備したMSを――エネルギー切れしたストライクの様にストライカーパックを空中換装させる事で補給を行なうと言う……いわばテストモデルなのだ。オリジナルのGNドライブが作れればこんな事しなくていいんだけどね。

 さて、俺の愛機は……フムフム。ちゃんとオーダー道理にアセンブルを弄ってくれたみたいだな。

「如月、ジャベリンのアセンブルと調整の方だが……オマエさんのオーダー道理に仕上げておいた。

 だが、本当にこんなアセンブルで大丈夫なのか? 今からでも別のパーツでアセンブルし直す事も……」

 そう言ってアブマーシュは、俺を心配してくれる。確かに汎用性重視のランセル素体からかなり弄ったが……、

「大丈夫だ。問題ない。

 ……それに、もしもの時は一旦下がるさ」

 そう言って俺は、もう一度――ずいぶんと様変わりしたジャベリンを見上げた。

 AC系列だからかは知らないが、アセンブルを変更――特にコア・パーツを変更しようと機体の名称が同じであれば適応性は失われない仕様の様だ。

 なので、コアパーツはランセルからラトナのコアに変更させた。コイツは、軽量級でありながらそこそこな物理装甲と高いEN防御を持つと言う一種の良作。デザインに癖も少ないのがなお良い。

 今回はこのコアに、旧サンシャインの重腕と重ニ脚をチョイス。武装は、背中にはGAのガトリングキャノンにインテリオルのハイレーザーキャノン――アクルックス(通称、少佐砲)を装備し、腕部には有澤グレの糠平とインテリオルのレーザーブレイド――エルタニン(通称、少佐ブレ)を装備している。格闘戦が不向きなGA製重量アームだが、BETA相手ならそれほど気にする事もない。

 ジェネレーターも、最凶出力を誇るアギュロスに変えさせてもらった。これでEN値を心配する必要もない! ……いや、単純にNE値の管理が下手だからコレを選択したんだけどね。あとKP値が多いって言うのもある。

 あ~……かなり重くなり(積載ギリギリかな?)機動性も犠牲にしたが、火力は申し分ない。それに機動性云々はネクストで比べたもので、戦術機から見ればまだ十分に驚異的な機動性――通常ブーストで300kmオーバーだし、OBを使用すれば700kmを超える。

「……不知火と同等の速度で、この重苦しい鉄の塊は戦えるんだ。心配はないさ」

「そこまで言うのなら、もう何も言わないが……」

『待機中の各員に通達! ランドクラブがフォボスへ着地します。各員は搭乗機にて待機。すぐにでも出撃できるようにしてください。繰り返します……』

 ちょっと長く話しちまったみたいだな。俺はアブマーシュに格納庫から退避する様に言うと、ジャベリンのコックピットに乗り込み最終確認作業を開始した。

 今回の作戦だが、地表のBETAを超長距離仕様のハイマニューバミサイルによる爆撃により殲滅。それに平行させてACやMS、AFと言った機動兵器部隊をフォボスに強制揚陸させる。そして、強制揚陸部隊とランドクラブでフォボスの地表に前線基地を建造する。

 ココまでが、フェイズⅠといったところだな。もっとも、フォボスの地表にBETAがまったくいなかったから現地での基地を兼任させるランドクラブを先に降下させる事にしたけどね。

 ちなみに、この強襲揚陸部隊は無人機オンリーではなく――俺やメイ、ポイントで新たに呼び出した有澤社長やローディ先生といったリンクス達が参加している。なぜ無人機だけにやらせないのかと言うと……システムの仕様で無人機は有人機が近くにいると本来の性能以上の力を発揮する――それこそ本来のスペックを超えた結果を生んでくれるのだ。

 ちなみに、片瀬さんが試しに神様印のAIプログラムをばらしてみたところ、解析及び理解不可能なサブルーチンプログラムが幾つか見つかったとか……。

 ま、余談は置いておいて、俺達有人機が近くに居れば無人機の効率は上がってくれるのだ。それに、俺(とアスナ)は実際に戦闘をしないとチートシステムのレベルが上がらないからね。

『ジャベリン、何をもたもたしている? 他の面々は既に出撃しているぞ? 貴様
もさっさと出撃しろ!』

 って、もう出撃のオーダーが来ていたか? ナタルさんに言われるまで分からなかったよ。ま、おかげでジャベリンのチェックは完了したけど……、

「こちらジャベリン、了解した。カタパルトへ移動する」

『……ジャベリン、カタパルトへ移動。

 換装システム起動。VOB、ジャベリンへ接続……完了。進路クリア。

 タイミングをジャベリンへ』

「了~解。

 ジャベリン、如月イツキ、出撃するぞ!」

 そして俺は、VOBでフォボスへと向かってで突き進んだ。



 ………
 ……
 …



 ドミニオンからフォボスまでの数分間――VOBを使用しての超音速移動だったが、俺はフォボスからのレーザー照射を回避しつつ接敵を続けた。

 途中、無人ACを満載したヨルムンガンド級を何隻も追い越したが、こいつらもフォボスからのレーザー照射を受けている様で、ラミネートシールドを装備したACノーマル達がレーザーの対応に追われていた。レーザーが飛んでくる理由は、フォボスの地表に先ほどと違ってBETAの集団が出現しているから。既に地表に強制着陸を果たしていたランドクラブが、ソレを迎撃しようと出現したBETAとの交戦を開始していたのだ。

 俺たちに飛んでくるレーザーは、こちらの存在に気づいたBETAの一部が照射してきているにすぎない。ま、数そのものが少ないから避けるのには苦労はしないがな。

『VOB、使用限界。パージします』

 フォボスの直前でVOBから切り離されたジャベリンは、俺の指示に従ってOBを起動。すでに地上で戦闘を開始しているメイ達の元へと飛んでいった。現地では既に戦闘が始まっているようで、三機のネクストが対大規模のBETAと壮絶な戦闘を繰り広げていた。

 ランドクラブは……、着陸の衝撃で地面が陥没。ACの発進口である下部コンテナまで地面に埋まっている為、現在必死に地面から本体を引き抜く作業を行いながら近づいてくるBETAにミサイルと6連拡散砲の雨を降らせている。それでも懐にもぐってきたBETAには……各所に設置されている機銃で対応しているようだ。

「こちらジャベリン。今作戦領域に到達した。

 ……出遅た。すまない」

『こちらメリーゲート。それほど遅れてないわ。

 ま、あんまり遅れてくるようだったらワタシ達だけで片付けるところだったけどね?』

『こちら有澤重工、ネクスト=雷電だ。

 砲撃は任せてもらおう。全てを焼き尽くす……それだけだ』

『頼もしいセリフだな雷電。……フォードバックだ。ジャベリン、老兵には構わず好きに暴れてくれ。その方がオマエさんもやりやすいだろ?』

「ああ、遅れてきた分暴れさせてもらうさ!」

 俺はそう言うと、ガトリングキャノンと糠平の砲口をBETAの群れに向けて突撃していった。

 BETAの規模は一個大隊程度だが オペレーターから少しずつ増えていると報告が来ている。だが俺は、本来のBETAの物量からすると物足りなく感じていた。

「ま、それも地下に行けば飽きるほど出迎えてくれるだろうからいいか」

『ヨルムンガンド級強襲揚陸艦、これよりフォボスへの着陸を行ないます。

 ランドクラブならびに各リンクスは、強襲揚陸艦の着陸及び部隊の展開が済むまで周辺のBETAの殲滅を行なってください。

 揚陸部隊の展開が完了しだい、ドミニオンとRG級よりローエングリンによるハイヴモニュメントへの砲撃を行います』

了解了~解! 群がる小型種を糠平の爆発で纏めて吹き飛ばし、要撃級といった大型種にはガトリングキャノンの弾丸を浴びせる。そして、ある程度BETAの群れの中に突き進んで周囲を囲まれたところで……、

「消し飛べ!」

 AA(アサルトアーマー)による範囲殲滅を行なう。BETAの主な攻撃手段が近接格闘ってのがいいよね。本当だったら当てづらいAAに、自分達から勝手に飛び込んできてくれるんだからさ。

 ほかのリンクス達も、おのおのが装備している強力な火器でBETAを手早く片付けていった。まぁ、主にBETAを片付けたのは社長とローディ先生だけどね。ランドクラブ? アイツはやっと足と胴体を引き抜いて、中に搭載していたノーマル部隊を吐き出したところだよ。

 さて、

「トラック部隊、BETAの死骸の回収とプラントの積み下ろし作業を急げ! ローエングリンが来るぞ!!」

 ランドクラブから急いでプラントとトラック部隊を出撃させ、BETAの死骸の回収作業を開始させた。本格的な戦闘が始まったら、ランドクラブはモニュメント付近まで突っ込んでもらうように指示を出しておいたからね。もしもの事があって、プラント内で保管しているクレートを全ロスする様なことは避けたいのだ――もっとも、ランドクラブに搭載してきたプラントには一割程度のクレートしか保管させていないけどね。大部分のクレートは、ラビアンローズにあるプラントの中だ。

『強制揚陸部隊、展開完了しました。いつでも戦闘を開始可能です』

『こちらドミニオン。現在はフォボスの裏側で待機している。司令の指示があれば、いつでもローエングリンは発射可能だ』

「ランドクラブも重要な積荷の荷下ろしが完了した。いつでも突撃させられるから、始めてくれ」

 俺のGOサインの後、数分してローエングリンを装備した艦隊が俺達の頭上に現れる。オレ達はと言うと、門から湧いてくるBETA(特に光線族種)を狩っていた。ローエングリン発射直前で撃ち落されでもしたら大惨事だからね。

『各艦、ローエングリン照準! 目標、フォボス01ハイヴ・モニュメント!!

 ……ってー!』

 そして、ナタル少佐の号令と共に百近い陽電子ビームの雨がハイヴモニュメントに向かって殺到した。

 ジェネシスやレクイエムの砲撃に比べればショボイ物だが、その閃光はハイヴ・モニュメントを消し飛ばすには十分すぎる威力だった。

「しかし、アレは吹き飛んだというより蒸発したと表現した方がいいのか?」

 凄乃皇も真っ青になる様な陽電子ビームによる砲撃が止んだ時、ハイヴモニュメントの立っていた場所には、モニュメントの代わりに巨大なクレーターが存在していた。

 幸いな事にフォボスは吹き飛んでいない。

 多少の亀裂は入ったかもしれないが……ま、ハイヴ内部は無事だろう。

『フォボス01ハイヴ・モニュメントの消滅を確認! 各艦、第二射用意……ッ! ハイヴ内よりBETAが噴出してきます!!』

「数は?」

『……既に三千を超過! 更に数を増やしています!!』

 三千を超過か……いや、これでこそ遣り甲斐があるっていうもんだな!

「……って、ちょっと待て! 何だよそりゃ!?」

 いざハイヴから溢れてきたBTEAを迎撃しようとして……。その様相に、オレは思わず突っ込んでしまった。数が多いのには納得がいく。チートシステムで無人機を沢山作ったからね。だが、なんであんなに沢山の――突撃級の進軍と誤認しそうな量の要塞級の大群が突っ込んで来るんだよ?

「……どうなってんだありゃ?」

 そう言いつつ、タゲーッティングとトリガーを引き絞る作業は休めない。現在地はハイヴから約10km程度しか離れていない。つまり、BETAの全力疾走で数分の距離だ。周囲に空いている門からも噴出している様なので、周囲を要塞級で囲まれるのも時間の問題だろう。

『理由は分かりかねますが……、要塞級の群れが突撃級の進軍の様にして迫って来ているのだけは確かです。

 数は……通常時の突撃級とほぼ同数でしょうか?』

 大して役に立たない様な情報だが、とりあえずそれだけの規模で要塞級が突っ込んで来ている事だけは分かった。

 だがなぜだ? もしだが、このチートシステムでBETA側に出現するBETAをBETAが自由に選択可能だったら(……ややこしいな)――オレだったら要塞級よりも重光線級といった飛び道具を持っているBETAをワンサカ出現させる。

 レーザーの弾幕で人類オワタだ。

 え、燃費が悪い? 余分な光線族種は使い棄てればいい。死んだらバラして戦車級や闘士級とかに作り変えればいいんだよ。

「いや、待てよ。もしかして要塞級を改良したのか?」

 可能性としては十分ありうるな。または、改良はしていなくても何かしらの作戦を行っている可能性もある。だが、ソレを悠著に確かめている時間もなさそうだ。

「クッ! 流石に手数が足りないな……ジャベリンより後方の各艦へ。支援砲撃を要請する! 派手にぶっ放せ!!」

『こちらウラルより前線各員へ、ミサイルによる支援砲撃を行う。当たるなよ?
 全ミサイルポッド艦、砲撃開始!』

 ナタル艦長の伝令で、ミサイルポッド艦――コンテナ部分を全てミサイルポッドに変更したヨルムンガンド級――の発射口が一斉に火を噴いた。無論、通常のミサイル攻撃などBETAの正確無比なレーザー攻撃の前に撃墜される。だから人類は、重金属雲を使ってBETAのレーザーを無力化してきて来たのだ。

 だがそれは、通常の……ただ真っ直ぐ進むしか出来ない現代地球のミサイルではない。コイツは、高度な三次元機動で回避を行なう機動兵器に喰らい付くために進化してきた――マクロス名物、直角に曲がるミサイルだ。

 フォボス上に湧き出たBETAの中から、無数のレーザーが上空から飛来してくるハイマニューバミサイルに殺到した。劇中じゃヴァルキリーのレーザーやガンポッドで簡単に撃ち落されていたが、それでも全てのミサイルが撃墜されていたわけではない。乱数回避を行なっているかのような軌跡を描きながら、フォボスの地表で蠢くBETAに確実に到達し次々と火柱を上げていく。

 信じられるか? あの数千(数万か?)のミサイルの軌道、全部ルカ君たちが……正確には片瀬さんほぼ一人で、しかも手動で軌道プログラムの微調整をしてるんだぜ? 単純な軌道プログラムじゃレーザーで簡単に撃ち落されるからってさ……。

 いやはや、ステルヴィアの……オーバビスマシン乗りは(ある意味)化け物だな。いくらキーボードのタイピングで宇宙船を操縦するって言ったって、あそこまでできるものなのか? あ、いや、その作業速度にタメを張っている園宮さんにルカ君も最速とんでも人間の部類だな。うん。

「あ~なんだろ、キラとこいらをマジで競わせたくなってきたな」

『? キラ・ヤマトがどうされましたか司令?』

「……いや、なんでもないですよバジルール少佐」



 ………
 ……
 …



 宇宙から見たフォボスの地表は、さながら地獄絵図だ。

 全長約1kmの巨大な陸蟹を中心に、それに群がる無数の要塞級。それを押し止めるようにして――いつの間にか建造していた工場の様な建物から無数に湧いて出てくるACノーマルの陽風。

 そして、

『匹夫共が、その程度でこの雷電を止められると思ったか?』

 フォボスの地表を重厚な戦車が――いや、ネクスト雷電がその巨大なロマンの詰まった主砲――老神の砲口をBETAの群れの中に照準する。もちろん光線級等からレーザー照射が始まるが……ラミネート装甲製対レーザーシールドを装備したACノーマル――陽風たちが雷電をレーザーの嵐から防御した。

 その陽風達もまた、背面に装備した二門の折りたたみ式グレネードキャノン――雄琴の砲口をBETAの群れに一斉に向けた。

『各機一斉射撃! 砲塔が焼き切れるまで、BETAに有澤の榴弾を食らわせろ!!』

 一個師団――108機216門(+雷電)の有澤グレが、ハイヴ・モニュメント跡から突っ込んでくるBETAの群れに向かい殺到。幾つかはレーザーに撃ち落されるが、爆発したグレネードの飛礫がBETAに突き刺さり多くの血飛沫を上げさせた。

 また、グレネードの爆風に煽られながらも生き残ったBETAは、爆発の勢いに乗ってフォボスから離脱して行った。あのまま飛んで行くと、フォボスの衛星にでもなるんだろうか?

 ……無駄な事を考えるよりもさっさと撃ち落すか。無人機部隊には、宇宙に飛び散ったBETAの回収も命令しておくか。

『前線各機へ、ハイヴ内部からのBETAの噴出が停滞しています。おそらく、内部のBEATの殆どを出し尽くしたと思われます』

「こちらジャベリン、了解した。

 陣地の設置具合はどうだ?」

『ウラルよりジャベリンへ。

 陣地の設置は、ランドクラブの損傷が予想よりも軽微であった為に中止。代わりにプラントをランドクラブ内に移動させ、以後ランドクラブを陣地として機能させると変更が出されました』

 了解了解~。予定と少し違うが、前線基地は確保できたな。あとは……、

「ジャベリンよりウラルへ。

 出番だアスナ」

 この作戦のジョーカーを、手元に引き寄せるだけだ。







 アナザーサイド



 ウラル艦橋



 グレネード、GNキャノン、ミサイル、ハイレーザー、ライフル弾……。

 持てる火力全てを動員し、フォボスのハイヴから噴出したBETAを次々と蹂躙していくMSにAC達。だが、そこにTSF――戦術歩行戦闘機の姿は無かった。

 戦術歩行戦闘機――通称、戦術機に搭乗する衛士(パイロット)は、このALDCではアスナしかいないからだ。

 無人機は? と言う声も聞こえてきたが、宇宙戦に対応しているとは言えその性能から――過去数度行われた資源調達作戦で試験的に導入された――やすやすとBETAに撃墜されてしまった。XM3を導入してはいるが、やはり撃震では荷が重かった様だ。

 その結果、TSFはクレートの無駄遣いと言う事で既に生産を取りやめられている。

 一応、アスナの撃震と予備パーツなどで数機だけだが保管はしている。MSやACの開発が中心の開発室メンバーであるため、誰もTSF(戦術機)の開発に手をつけていない。なので、イツキの開発研究材料――と言う名の体の良いオモチャとして好き勝手に弄繰り回されていた。

 そして、件の戦術機の衛士はと言うと……、

「う~、皆暴れまわっておるのぉ……」

 恨めしそうな声でそう言いつつ、キーボードで各所の無人機へと指示を出していた。音声での命令だけでは、圧倒的に指示を飛ばす先が多すぎるからだ。

 ちなみに、同じように指示を出しているのはディジーさん達――すこし前までは自動歩兵だったが、あまりにも無骨すぎた為に総入れ替えが行なわれた。

「水無月副指令、もう直ぐハイヴ内部への突入になります。ソレまでもう暫く辛抱を……。

 如月司令らには、副指令が十二分に活躍できる獲物は残して置くよう命令しておきます」

「う~む。ワタシの撃震、そんなに不安かのう? イツキが改造してくれたから十分に戦えるとは思うんじゃが……」

「確かに、カタログスペックでは驚異的……ですので、水無月副指令の撃震は今回の作戦の要としてココで待機してもらっているのです。副指令には、一番の大物を狩らせて差し上げま……」

『ッ!? ランドクラブ付近のニ時方向よりBETAの地下進攻確認! 防衛ラインの内側です!!』

「規模は?」

『出現した規模は大隊規模! 周囲を防衛している各機は至急BETAの殲滅を行ってください!! 繰り返します……』

『嫌な場所に湧くなぁ……。

 ジャベイリンよりウラルへ。丁度手が空いたところだ。場所も近いし援護に向かうぞ?』

『こちらメリーゲート、ジャベリンの支援につくわ』

 そして、息の合った攻撃で次々とBETAを殲滅していく二人。そんな二人を、

「……」

 アスナはどこかほの暗い眼で見つめていた。

 見つめ続けていた……。

「……水無月副指令、少々早いですがもう出撃して大丈夫かと……」

「うむ、では行って来る。後は任せたぞ?」

 そう言ってアスナは、眼をほの暗くさせながらウラルの艦橋を後にした。

 フォボス地上の安全が完全に確保されたわけではないが――このままアスナのフラストレーションが溜まっていき、どの様な魔法がココで使用されるかと考えた結果からの出撃要請だった。

「(まだ、生身で宇宙遊泳などするハメなどにはなりたくないからな……)」

 ソレがマネキン大佐の本心だった……。

『ジャベリンよりウラルへ。

 出番だアスナ』

「……如月司令、もう少し早く出撃オーダーをお願いします」

 そして、アスナが艦橋を後にしてすぐイツキからの出撃オーダーが来たのはご愛嬌だろう。


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