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[28652] 【ネタ】神の暇つぶしによる俺のテンプレチート異世界記【のような習作】
Name: ぐったり騎士◆606dffd0 ID:07a2cb8c
Date: 2011/09/21 04:31
このSSには下記の成分が入っています。

・このSSは最低系テンプレによる最強チートオリジナルSSです。
・トラック神様異世界転生憑依転移チート能力ハーレム系です。
・一人称です。
・主人公の行き先はオリジナル異世界だったりゼロ魔他作品世界だったりします。
・出オチ感満載の一発ネタです。
・すでにカオスです。
・以上のことに耐性が無い方はきついはずでした。
・なのに書いてる途中でちゃんとしたプロットができていきました。
・完結までのプロットができました。
・でもやっぱりカオスです。超展開も気にせずガンガンいこうぜ。

もう書いている私にもわけがわかりません。
なので感想による批判もばっちこい
ただし石は投げない。

基本的に、「チラシの裏だからこそできるネタ」をコンセプトにしています。
ジャンクフードというより、メッコールのように、好きな人が気に入ってくれればというノリと、作者のよくわからない脳みそがノリノリで書いています。



ではどうぞ。



[28652] トラック!神様!そしてチート能力!
Name: ぐったり騎士◆606dffd0 ID:07a2cb8c
Date: 2011/07/03 06:38
暗闇というのはこういうことをいうのだと、俺はそのとき初めて知った。

例え目を瞑っても、必ず光を感じていたし、深夜であれど人工にしろ自然にしろ、光源はどこにだって存在する。
暗幕で世界を閉ざしても、空気の流れが、匂いが、擬似的な視覚となって周囲を認識させていた。

なのに、今居るここには、それがない。
自分が居ると確かにわかるのに、感覚が一切機能しない。
ついで来るのは恐怖。
肉体の感覚がないのに、精神の感覚は鋭敏に機能しているのか、発狂しそうな幻痛が自己そのものを蝕んだ。
その痛みが肉体のそれであれば、自分は歓喜すらしただろう。

声を出そうにも、その感覚すら生まれない。
もしかしたら認識できないだけで大声を上げているのかもしれないが、聴覚が死んでいる今、それを自覚することはできない。

音がほしい。光がほしい。触感が欲しい。

何か感覚が得られるのなら、痛みでも――


瞬間――ぱぁん、と、何かがはじけるイメージ。

思い出す。最後の瞬間を。
目の前で道路に飛び出す見知らぬ少女。
思わず飛び出した俺。
少女を突き飛ばし安堵する自分を照らす、『光』
視界が真っ白になるほどの、今の自分が望んでいるはずの『光』

『光』

『光』

『光』


「ああああああああああああああああああ!!」

『悲鳴』を上げ、そして世界が裏返った。

視界が戻る――自分に激突するトラックがある

嗅覚が戻る――鉄と錆の香りがある。

聴覚が戻る――大きなクラクションと、少女の悲鳴

味覚が戻る――自らの血か、独特の錆付いた不味さ

触覚が戻――


「ぐあああぎゃあぎぃぃぃぃぃぃぃ!!」

死が戻る。
あの一瞬の痛みが、記憶という形で自分を貫いていく。

そうだ、そうだ、そうだ!
思い出した!思い出したんだ!

自分は、あのとき、トラックに!そして俺は死ん――




「おっと、シリアスはそこまでだ!」

「ぎゃあああああ……あ?」

死の瞬間をフラッシュバック中の俺に、なんだかいろいろと台無しな台詞が聞こえてきた。







「あー、と、ようするに、トラックで俺死んで貴方は神様で暇つぶしに見守ってるから俺に異世界にいけテンプレ乙と」
「よし、説明ありがとう。まあ神様っつっても宗教のそれやあれなんかとはちょっと違うけどな。ただそういうことができるって存在ってだけだ。だから別に敬う必要は無い」
「……どういう存在なんですか貴方は」
「そんな哲学的なことワッシにいわれてもな。お前だって『自分はどういう存在か』って訊かれても人間とか種族的な説明しかできんだろうがよ」
「貴方、神様だったらそのくらいわかるんじゃないんですか?」
「ワッシ自身はワッシのことわかってるよ?でも、哲学なんてもんはお前ら人間の生み出した娯楽だろう。それでワッシのことを説明したところで、神様以上に近い説明にはならんさね。
 ま、無理やりお前の意識にワッシが『どういう存在か』を理解させることはできなくは無いがな」
「じゃあ、それすればいいじゃないですか」
「そしたら、『お前』は『お前』じゃなくなるぞ?ワッシは存在そのものが人間の理解を超えてるんだよ。それを理解できるなら、そりゃもう人じゃない」

わかるようなわからんような。
首をひねりながらもとりあえずどうでもいいという結論に至り、俺は改めて神様?に問う。

「で、俺は具体的にどうすればいいのさ」
「いったろ?ワッシの暇つぶしなんだ。お前の好きな世界に連れて行ってやるよ。その為にお前を殺したんだからな」
「はいはいテンプレ乙。よしお前今何言った」
「その為に殺したと言いました。敬語口調がなくなったあたりお前の本気を感じてワッシ超うれしい」
「きさまああああああああ!」

怒りに任せ殴りかかろうとして――無理でした。
そりゃ自称とはいえ神様なんだしなあ……

「ぜーぜー……死んでるのに息切れとか……納得……いかねえ……」
「ほーい、怒り収まったかー」
「収まって……ねえけど……無理だってことはわかった……もう好きにしろ……」
「まそう悲観スンナよ。ほんとはお前じゃなくて女の子が死ぬはずだったんだ。やったのは本来気づかなかったはずのお前の視界を『ずらした』だけだ。……その後のお前の行動は、おまえ自身のものだよ。ただ、それでお前が代わりに死ぬってわかってただけだ」
「…………そうかい」

なら、まあいいかと思ってしまう当たり、俺も大概かもしれない。
あの子が助かって、この神様の気まぐれと暇つぶしではあるが、新たな世界で自分は生きていける。
結果としては、二人とも助かったのだし。家族友人には申し訳ないけれど。

「んじゃ改めて訊くが、お前はどんな世界に行きたい?そしてどんな形で関わりたい?生まれ変わりでも憑依でも今のそのままのお前でもいいぞ。チート能力がほしけりゃある程度はくれてやる」
「なんでもいいのか?」
「元の世界以外ならな。希望が無いなら、普通に『死』ぬのでもいいぞ」
「ふむ……」

考える。
ある意味で、すばらしいチャンスをもらえたのではないだろうか。
テンプレ乙だがそんなテンプレを愛するネットSS最強チート最低系大好きっ子な俺である。
最低系乙といわれようとハーレムは捨てがたい。

「よし、決まった……俺が望むのは、魔法、モンスターが跋扈するファンタジー世界。今の俺のままでその世界に行きたい。そして欲しい能力は、ニコポ……説明すると笑顔を向けることで異性を」
「あ、ニコポね。おっけー。ポっていっても洗脳じゃなくて、お前の笑顔時の魅力アップみたいな感じがいいんだろ?」
「知ってんのかよ!……ええと、じゃああとはFATEのア」
「アーチャーの無限の剣製ですねわかります」
「だからなんで知ってんだよ!」
「何のために地球の日本のお前を殺したと思ってる。ワッシが日本のソレ系にはまったからさね。それにしてもお前ら本当に好きだな無限の剣製能力」
「うっせ!」

 厨二病はなんだかんだで心の琴線に響くからこそなんだよ。
 そんな俺の心の呟きを見抜いたのかそもそも心なんて筒抜けなのか、この神様がドヤ顔で笑ってるのがむかついた。
 
「それでいいか?」
「あ、あとは言葉だな。言語わからんと始まらない。その世界の言葉をわかるようにしてくれ」
「できるが、やめといたほうがいいぞ?」
「え、なんで」
「言語を理解するってのは、そいつらの文化から思考からそういったものを理解しないと『理解』にならんからだ。挨拶って文化がないのに『おはよう』って言われて理解できんだろ。それを瞬間的に理解させるってことは、お前っていう今の人格が『ずれ』るってことだ。それでいいならいいけどな」
「……じゃあどうしろと」
「安心しろ。言語に対するお前の理解力と記憶力を上げておく。学ぶという経緯をえれば、お前はお前のまま、言葉を覚えていくだろうよ」
「ふむ……じゃ、それで」

俺がそうかえすと、神様は満足げに頷いた。
足元から自分が消えていく感覚に、ああ、転送が始まったのだと理解する。

「では、ワッシはお前がどう活躍するかを見守るとしよう……せいぜいワッシを楽しませれ?」
「アンタのためにやるわけじゃないから、保証はしないぜ?」
「それでいいさね。お前はお前の好きなように必死に生きてりゃそれでいい。それが、大事なことだ」

そういって、にこやかに笑う神様。
なんだかんだで、神様としての威厳を感じずには居られなかった。

「ああ、じゃあま、がんばって生きてみるさ!」

俺は、神様に――それが、こちらにきて初めての笑顔だと思いながら――感謝をこめて別れを告げた――














しばらくして、感謝なんて必要が無かったということを、心の底から理解した。



[28652] ファンタジー異世界での俺の活躍を見てくれよな!
Name: ぐったり騎士◆606dffd0 ID:07a2cb8c
Date: 2011/09/20 03:56
「…………」
「よう、お帰り」
「…………」
「で、どうだったよ第二の人生。ニコポ、チート能力、きゃー!かっこいー!」
「…………殺す」
「えー、なにー?きこえなーい」
「殺す殺す殺す殺せなくても殺す!」

 殺す。
 神野郎に向って宝具の雨あられを触らす俺。
 殺す。
 当然だ。
 殺す。
 まったく神野郎に届かない幾つもの刃。
 でも殺す殺す殺す!!!
 
「ぜーはー、ぜーはー……」
「ワッシがくれた能力で、ワッシがやられるわけなかろうがよ」
「わかってはいた!でもやらずにはいられねえ!!」
「いっただろーに。これは、ワッシの暇つぶしで、シリアスはそこまでだって」
「ああああああああああ!!!そういうことだよなこんちくしょおおお!!!」



 自分が転送されて、目の前にあったのはどこかの洞窟のような場所で、何かの魔法陣の上だった。
 魔力を感じる。
 それが魔力だと理解できるのが、今の自分だった。
 俺は来たのだ。
 魔法とモンスターたちの躍動する、ファンタジー世界に。
 感動を抑えつつ、現状を理解しようとあたりを見回す。
 魔法陣ということは、召還をされたかたちなのだろうか、ときょろきょろとしていると――
 
 モゾゴモゴゾモゾモゾモゾ……と耳に這うような音が足元から聞こえてきた。
 なんだろうと、足元をみると、
 
「げぇ!スライム!?」

 いきなりのモンスターかよ、とアメーバ状にうごめくソレ。
「モゾゴモゴゾゾモゾモジ!」
「ゾモゴゾゾモゾゾモモ!」
「ゾモゴモゾゾゾモゾゾモモ!」
「モゾモズズモジゾゾジズモゾモ!」
「ゾズモゴゾゾモゾゾモズ!」
さらに沢山出てきた。
俺は警戒を強め、そっこうで能力の確認か、と与えられた能力の試運転をしようとする、が。

「モズー!」
「グズジモー」
「モズー!」
「グズジモー」

なぜかわからないが、そのスライムたちは俺に敵意は持っていないようで、俺の周りを囲みはするが近づいてこない。
さらに、これが言語理解能力のせいなのか、徐々に言葉らしきものを理解していく。
といっても、現状ではなんとなくでしかないが。

すると、一匹?だけ異色を放っていたピンク色のスライムが、俺に近づいてくる。

「モズー…」

そして、ゆっくりと俺の手に触手をのばし、案内するかのように優しく引っ張る。
俺はそのあり方に、とりあえず敵ではないのではと思い、そのスライムについていくことにした。





結論から言おう。


この世界は、たしかに魔法!モンスター!なファンタジー世界だった。











モンスターしか居なかった。






人間型とかいなかった。



というかスライム系ばっかりだった。



言語をある程度理解したあたりで、俺を召還したという王族っぽいスライムちゃんに聞いてみた。

「私を召還したものよ。……君は王女なのか?」

「王女?なにそれー?」

俺の口調が違うのは雰囲気重視です。
なお俺もスライムちゃんの言葉もある程度意訳してます。
王女って単語がこの時点では俺は理解してなかったので、あれやこれや説明したうえで訊いてました。

「えと……王族、なんだよな?」

「えらいよー。みんなをまとめてるよー。一番えらいのは私の一個前だよー」

「……前?」

「そだよー。王女ってなーに?オスってなーに?メスってなーに?」

「すまない、一つ聞かせてくれ。……君達はどうやって増えてる?」

「気に入った個体にお願いして一部をもらって、それを自分のとまぜまぜしたあとに分裂するよー。自分とちょっと違うのが生まれるよー。増えるよー」



よし。俺、詰んだ。




「ぎゃっはははははは!ニコポ!ニコポ意味なし!ひー!ひー!ぎゃははははげふっゲフッ………ひゃーはははははは!」
「笑うなていうか神野郎てめえ全部わかっててやりやがったな!」
「あーははっはっはっは……いやだって、ちゃんと約束守ったろうがよ」
「そうだね、確かに魔法があってモンスターいたけどモンスターしかいねえとか予測できるか!」
「条件がそれだけだったんでなあ。正直、後はランダム設定で飛ばした。……いいじゃねえかよ、ほんとだったら条件の『他』は全部ランダムだったのに、気を利かせて『お前がそのままでも生きていける世界』を条件に入れたんだからな」

言われてぞっとする。そうなると、本当は空気がなかったり溶岩だらけの世界だっておかしくなかったってことか。

「わかったか?こっちはちゃんと約束は守ってる。次は気をつけるんだな」
「……次?」
「ああ、次だ。いったろ?これはワッシの暇つぶし。お前にとっちゃあ生存の機会だ。やめるっていうならそれもいいさ。強制はしない」
「…………」
「どしたよ」
「なんで、俺なんだ?」
「偶然って言いたいけどな。お前が面白い奴だからさね」
「面白い?」
「ああ、面白い。……あの世界で、お前はきっちり最後まで本気で生きた。絶望して自殺したり、精神を病んだり、ワッシへの恨みで己をなくしたりすることなく、な。普通、ねーよ」
「……」
「ワッシはお前があの世界にいったあとな、お前の生き様に対して『予見』は使ってないが、『予測』はしてたんだぞ?仮にも神とお前に言ったワッシの『予想』に、あの結末はなかったさね」
「…………」

 言われて、俺はあの世界での自分の最後を振り返る。
 ……ああ、そうだろうなあ。

「だってなあ……あの世界に結婚って文化持ち込んで、スライムちゃんと結婚して添い遂げるとか完全に予想GAY」
「いわないでー!さびしかったのー!それに慣れたらかわいく見えてきちゃったのー」
「ちゃんと夜のお勤めまでするお前マジパネェ。ある程度姿変えられるとしって女性型とらせて白いタンパク質をスライムちゃんの中で放出してソレを元にスライムちゃん分裂、子供できちゃったとかどうなの」
「うっうっうっ……いいもん、スラちゃん愛してるもん……」
「気持ちよかったか?」
「うん、マジで」

 正直あれはすごかった。

「……幸せだったか?」
「ああ」

 即答する。それだけは間違いないから。
 苦労したし、正直辛かったことのほうが多いけど、一生懸命に生き切ったことに後悔なんて無い。

「そういう、お前だからだよ。……さて、どうするよ。次は」
「……なあ、これはできたら、でいいんだが……」
「む?」
「今の『俺』は終わりで良い。俺はちゃんと生きたから。二度目が在るってのが本当はおかしいんだ。……あの俺の愛するスライムたちの世界で生きて死んだ俺は、『死ぬ』べきだ」
「……ほう」
「だけどさ、神さん。『前の俺』にチャンスをくれてやってくれ。せっかく『テンプレ乙』な機会をもらった俺だ。ちゃんと最低系な世界を愉しんだ俺が居ても、いいだろう?今の俺の記憶を、『知識』として前の俺に与えてやって、改めて『次』をやってくれ」
「……やっぱり、面白い奴だよ、お前は」

 優しく俺に笑いかける神。
 そこには、見守り人たる親のような、自愛の笑みで――
 
「言っとくけどすでに神さんの笑顔なんざ信用してねえ。暇つぶしと言い切ったドヤ顔の『イイ』笑顔の貴様を信じている」
「ッチ……」
「それからするなら『慈愛』だ。自愛してどうす……いや、本気で『自愛』で言いやがったな神野郎」
「よーし、願いはきいた。ではさらばだ!」
「ちょ!てめえ、まちやが……」





グッバイ、俺。



[28652] 今度の新しい異世界ではハーレムを目指します!
Name: ぐったり騎士◆606dffd0 ID:07a2cb8c
Date: 2011/07/03 03:21
「そして『俺』がここにいるわけだが神野郎」
「うむ、というわけでどうするよ」
「……不思議なもんだな。一生涯生き切った自分の『記憶』……じゃなくて『記録』を持ってるというのは」
「うむ、というわけでどうするよ」
「ちょっとは余韻とか持てよ!この神!……ええとだな、今度は剣と魔法とモンスターのファンタジー世界。これはこれでいい。だが、ちゃんと地球と同じ人間達がいる世界だ」
「さすがにそこは抑えるか」
「当たり前だ!……それから、エルフやドワーフといった亜人が居る世界でもある。雰囲気は中世ヨーロッパあたり。文化的にもそのくらいで。いわゆるRPG的な世界観だ」
「……わかった。能力は前と同じでいいのか?」
「ああ、それでいいよ。あ、ただ関わり方は今の俺の人格を持ったまま『生まれ変わり』で頼む。そして生まれ変わる先は、エルフだ!」

長命なエルフで生きて、同じエルフ美女やロリ婆なハーフエルフ、普通に人間の少女とラブロマンス。これね!

「いきなり俗っぽくなったのう。前のお前のシリアスッぷりはどうしたよ」
「この話にシリアスはそこまでだ、と言ったのは誰だよ」
「よし、じゃはじめるか」
「訊けよ……」

そして、俺の足元から、自分が消えていく――

「ま、前のお前にも言ったがね。どんな形であろうとお前はお前の好きなように必死に生きてりゃそれでいい。それが、大事なことだ」
「ありがとうよ。……その言葉だけは、言ってるのがたとえ神さんでも、真実だと思うからな」
「なにそれひどい」

神野郎はドヤ顔で笑う。
相変わらず、『いい笑顔』だった。






「…………」
「よう、お帰り」
「…………」
「で、どうだったよ第二の人生。ニコポ、チート能力、きゃー!かっこいー!」
「…………殺す」
「えー、なにー?きこえなーい」
「殺す殺す殺す殺せなくても殺す!」
「なんだよー、ちゃんといわれたとおりの世界だったろー?」
「ああそうだなそうだからこそ余計腹立つわ!」


たしかに、転生先は剣と魔法、モンスターたちがいるファンタジー世界だった。
人間達、亜人もいるし、いわゆる中世ヨーロッパ的な世界だった。
むしろ、文明的には適度に発達していて、水道や風呂などもある快適な世界だともいえる。

だけどな、だけどな。




「オンワアアアアアア!オンワアアアア!」

突如あふれる、光の洪水。
だけどそれはまぶしいものではなく、月明かりの淡い光。
頬に触れる優しい風と草木の香り。

ここは、夜の森の中。

俺は、エルフとして生まれた。


「ギャアアス!ボグワァァァァ!」
「ギャアアス!ボグワァァァァ!」


両親の祝福の鳴き声を聞きながら――

……鳴き…声?



結論から言おう。

俺はエルフだ。





モンスターの。





……水木しげるの妖精画談に出てくる凶悪妖怪な描写のエルフじゃねーか!






「ぎゃっはははははは!エルフ!ひー!ひー!ぎゃははははげふっゲフッ………ひゃーはははははは!」
「笑うなていうか神野郎てめえ全部わかっててやりやがったな!」
「あーははっはっはっは……いやだって、ちゃんと約束守ったろうがよ」
「そうだね、確かにエルフだよね!水木先生マジリスペクト!ニコポとか同じエルフにしか通じねえよ!ていうか人間とか亜人に笑顔向けたら笑顔と認識されずに攻撃されたわ!」
「でもよー、あれはあれで正しいんだぞ?だうたい今のゲームや漫画に出てくるエルフはトールキンとかロードスあたりからの」
「知ってるよ畜生!次だ!『次の俺』は負けねーぞ!」
「えー、もう?ちゃんと今回も『お前は立派に生きた』とかやろうとおもったんだけど?」
「いいよ同じネタは!今回だってちゃんと幸せになったしな!それに、お前の言ったシリアスはそこまで、の意味がわかったわ!」

そうだ、ようやく『わかって』きた。

「いいか、今から予告してやる。『次の俺』は、ずっと俺のターンだ!」
「……へぇ?なら、ワッシも『予測』は今後一切やめよう。そのほうが面白そうだわ……ま、初めの時に一回だけしかしてなかったけどな。明言しておこう」
「……ああ、楽しみはお互い多いほうがいいからな?」

だけど、神様。
次の俺は、きっとお前を楽しませてやらない世界に行く。
きっと、そういう「一回」は必要だろうから。

じゃあ、グッバイ神様。そして俺。



[28652] ゼロの使い魔の世界で俺無双!俺ハーレム!
Name: ぐったり騎士◆606dffd0 ID:b5bb7170
Date: 2011/09/20 03:57
「そして『俺』がここにいるわけだが神野郎」
「うむ、というわけでどうするよ」
「俺を『ゼロの使い魔』の世界に行かせろ!」

そうだ。初めからそうすればよかったのだ。
指定事項以外、全てがランダムになるような危険世界なんかよりすでに確立されている二次元世界へGO!
チート能力で無双するも良し。
ヒロイン達を口説きまくるも良し。
原作知識を生かしていろいろ介入して良い話を方向にもって行くも良し。
才人とルイズカップリングはガチ派な俺としては、ここはタバサやお花畑お姫様、シエスタとおっぱいティファ
さらにジェシカにマチルダ姉さん!でハーレムを狙いたい。
キュルケはおっぱい枠が埋まってるのでいいや。コッパゲとのラブラブ関係いいじゃない。

あ、モンモンも好きだけど、ギーシュがかわいそうだしなあ。



「どうよ!これならどうよ!」

「……ツマラン奴だなぁ」

神さんは、本気でつまらなそうに、冷めた目で俺を見ている。
ざまあみろ!と心の中で思いつつ、俺は
「ざまあみろ!」
と言った。
大事なことだからな。心と体で二度言う・


「……ツマラン奴だなぁ。大事なことなのでワッシも二回言ったぞ」
「うっせ!おまえはお前が楽しむためかもしれんが、俺は俺が楽しむためなんだからな。さあ、無理とは言わせねえぞ?」
「できるよ?できるけど、やめたほうがいいんじゃない?ワッシもつまんないし」
「いいから!できるならさっさと……おっと、あせるべきじゃなかったな。罠はきっとある。……いいか?ゼロの使い魔の世界っていっても、小説版だ。時期は丁度才人が呼び出されたころだ!数百年前・後とかじゃ目も当てられんし。そして場所はトリステイン魔法学院よりちょっと離れた平原だ。……旅人ということにして原作介入……これね!」
「あいよ。能力とかは今までのアレでいいのか?そんで憑依とか転生じゃなくて『来訪』でいいのか?」
「ああ、それでいいよ。……なんだよ、えらく素直だな」
「別に、大差ねーからな」
「?……ま、いいや。くっくっく……こんどこそ、俺のハーレムチート原作ひっかきまわし蹂躙ストーリーが始まるのだ」
「……あー、そうかい。ま、好きにするがいいさ」


そして、俺の足元から、自分が消えていく――


「じゃ、頑張れ。多分頑張っても意味無いけどな」
「あれ?いつもの『どんな形であろうとお前はお前の好きなように~』とかはないのか?」
「『意味が無い』からな。ツマラン世界を選んだもんだ。……あ、今回は特別だ。ギブアップを認めてやる」

え、何ソレ怖い――今までの負け惜しみとかじゃないの?


そんなことを思いながら――俺は『ゼロの使い魔』の世界に向ったのだった。








「…………」
「よう、お帰り。どうだ、面白かったか?」
「……………」
「で、どうだったよ新たな人生。ニコポ、チート能力、きゃー!かっこいー!」
「……どういうことだよ」
「ウェーハッハー。多分、お前が思ってるとおりだと思うぜよ?」
「……見てたんだろ?」
「いや、ワッシは見てねーよ。てか『読めねーよ』」
「……あー、やっぱりかよ」
「そう。そういうこった」
「いやーそうか。はっはっは」
「はっはっは」

ひとしきり二人で笑い合って――

「ちくしょおおおおおおおおおお!はやくいえよおおおおおおおおお!!」

絶叫と共に繰り出されるのは向こうの世界で覚えてきた魔法と無限の剣製な宝具の嵐。
しかし神野郎は涼しい顔で受け流していく。

「だーかーら、詰まんないってワッシは言ったじゃねーかよ」
「いくらなんでもアレな世界だとは読めんわ!」
「『読めん』か。なかなかうまいことを言う」
「そんなつもりじゃねーわ!」


確かに、俺はゼロ魔の世界に行った。
そこはルイズがいてサイトがいてトリステインがあって白い大陸のアルビオンがあった。

俺は、さっそくと魔法学院に行って原作介入しようとした。



だけどな。




「すいません、旅のものなんですが道に迷ってしまって……」



「諸君!決闘だ!」

「お願い。もうやめて」

「下げたくない頭は、下げられねえ」



「えーと……ほーら俺、こんなことできるよ!無限の剣製!」


「ミス・ロビンクル!」

「そう。『土くれ』のフーケ。さすがは『破壊の杖』ね」

「それは単発なんだよ」



「…………あっれー?」


皆俺をスルーすんの。
それに、なんていうか、現実感が無い。
空気を吸っているはずなのに空気を吸っている感覚がなく、
目で景色を見ているはずなのに、見えている感覚が無い。

にもかかわらず、ちゃんと空気を吸って、景色が見えている。
だが、それもサイトやルイズの周りにいればこそ、だ。

そこから離れれば、あるのは「自分は何かをしている」という漠然とした思いだけ。
事実があるのに、現象が起きない。
現象が無いのに、空想だけができる。
空想が、事実になる。

それはまるで、物語を活字として読んでいる、そんな――


「……まさか」

そこからは、俺は実験を開始した。

ルイズたちをストーーキングした。
結果、『場面』が飛んだ。確かに俺の記憶に彼らがどうやってどうした、といった概要は残るのに、明確にその状況を思い返せない。

ギーシュを殴ってみた。
干渉付加。どんなことをしても、建物にゲイ・ボルクうっても、何にも起きない。

ルイズたち――というか、『登場人物』たちから離れて、厨房でつまみ食いをしてみた。
少しは食べることはできた。だが、話がずれるような『大きな変化』は無理。
味はちゃんとしたと思うが、思い出せない。


街に行ってみた。
いろんな『なまえもないひとびと』と会話した。
いや、本当は名前が合ったのかもしれないし、なかったのかもしれない。
だが、思い出せない。

見知らぬ誰かと結婚して、なんとなく「終わった」。

「終わった」のは、ゼロ魔の世界に入って数年後。

なんてことはない。
ゼロ魔の最新刊の話まで世界が進んだその瞬間、ということだ。



「つまり俺は、『ゼロの使い魔』という世界に入った。だが、『ゼロの使い魔』という世界は――」
「そーいうことだ。すでに完成されている、『活字』の世界だ。その世界にお前が入る――なに、普段お前が空想するソレと、何も変わらない。活字なんだから、文字としての事象しか存在しない。お前がそこでみた感覚の全ては、文章からお前が想像したものだ。さらに、文章に存在しない、『場面』とは関係ない場所は、お前の空想の産物だ。そしてどんなに空想したところで、ヤマグチノボルという小説家の書いた、小説版『ゼロの使い魔』という『世界』は、何一つ変わりようが無い。当たり前だろう?もし、『とある男がシチューを食べた』という一文が入っただけでも、それはもう「ゼロの使い魔」という小説ではない、何か別の、ゼロの使い魔のような何か、に摩り替わる。――そうだな、二次創作SSみたいなものだろう」



結局、俺は現実の世界で「ゼロの使い魔」を読み、その世界を空想するという、ただそれだけと同じことを、「ゼロの使い魔」という世界の中でやっただけだった。
そしてその空想も、原作文章にはなり様が無い、ストーリーには関係ないことのみが許された、閉じた世界。
ただ、その中で自分をあてはめ、想像し、生活したのが今回の俺。


「ワッシが、ツマランといった理由もわかるだろうよ?」
「ああ、俺が何をしようと、『ゼロの使い魔』という世界に変化がおきない。早い話が、『俺がなにをしているか』がまったく見えないんだろう?」
「そーいうこった。……で、どうするよ。」
「……今回の俺、ぜんぜん生きて死んだわけじゃないんだよなあ……だからか、いつもの台詞がなかったのは」
「うむ、今回、お前はまったく生き切っていない。ただ、本を読んでいたのと変わらん……だからま、これは『改めて』ってかんじだーよ」

考える。
今回のことを踏まえれば、どの「フィクション」に入っても、同じということだ。
ゲームの世界なら、ある程度は自由は利くかもしれないが、結局ゲームでできる選択肢と、ゲームをしてる感覚があるだけだろう。
じゃあ、やっぱりランダムに気をつけて、詳細を練った世界を自分で想像して――

「……あ」

ひらめいた。
だが、一応確認しておく。

「なあ、神さん」
「なにさね」
「どんな世界でも、いけるんだよな?」
「ああ。前も言ったけど元の世界はダメ。それから、矛盾する世界もダメ」
「矛盾?」
「光があるのに光が無い世界、とか、ゼロの使い魔世界だけど改変可能な世界!とかな。改変できた時点でゼロ魔じゃない、ってのはさっき説明したろ?そういう『矛盾』がなけりゃいい」
「……なら……ゼロの使い魔に限りなく近い……そうだな、長さの単位が『メイル』じゃなくて『メール』という違いがあるだけの、あとは小説版『ゼロの使い魔』に限りなく酷似した設定の世界、というのは可能か?」
「…………ックックック、ようやくか。ああ、可能だ」
「……だが――それだと、俺のチート能力は発動できない。なぜなら、ゼロの使い魔に無限の剣製なんて能力を可能にできる設定が無いから、だな?」
「ッハー!そのとおり!だが、別にそれは問題ないだろ?酷似はしているが『無限の剣製が発動できる世界』にすればいい、と気づいてるんだろ?」
「『すれば』ね。……あー、やっぱりか」


その言葉で、確信した。
つまりは、そういうことなのだ。

これは、茶番でしかない。
俺の、本当にあるべき、終わりの方法の『一つ』は、これで為すことができる。

そしてまあ――なんとなく、そしてこれは勘でしかないのだが、『神野郎』の正体が、判った気がする。
――認めたくないんだけどなぁ。

だけどま、せっかくの『遊べる機会』を貰ったんだ。
そして、俺は遊びだろうと、生きるってことは全うする。
これだけは、変わらない。
神野郎の言うとおり、どんな形でも、全力で生きてやる。
全力で生きて生きて――生ききったら、『終わり』に行こう。

さあ、まずは『終わりの方法の一つ』を達成するとしよう。



「で、さっきの条件の、ゼロ魔に酷似した世界、に行くか?」

神野郎が、鼻をほじりながら聞いてくる。
むかつく。
だが、俺の勘が正しいのなら、むかつくのは当然なのだ。

だからまあ、とりあえず、奴の斜め上に行くとしよう。

「俺の、次に望む世界は――」












生じる鈍痛。
激しいブレーキ音。
手の中にある、暖かく柔らかな感触。


ごろごろと地面を転がって、俺は痛みに耐えていた。

現状を思い出して、すぐに確認するのは、腕の中の存在。

「だ、大丈夫?」
「ふ、ふぇぇぇ………大丈夫……ですぅ……」

小さなリボンをサイドポニーにつけた女の子が、涙目でそういった。
俺は、大きくため息をつくと、少女の手をとって一緒に立ち上がる。

「あ、あのう……大丈夫、でしょうか……」

声をかけてきたのは、小心者そうな男。トラックの運転手らしい。
あの粗暴な運転には似合わない、怯えた顔で、がたがたと震えている。

震えたいのはこちらのほうだというのに。

「……ええ、大丈夫、ですけれど、警察と救急車は呼んでください。この子の診察もひつようでしょうし、貴方も、このまま済ますわけにはいかないのは、わかりますよね?」
とくに脅すつもりは無いのだが、きつい言葉になるのは仕方ないだろう。
運転手は、こちらが無事だとわかり安堵し、「わかりました」と素直に電話をかけ始める。
……悪い人間ではないのだろう。
お互い、大事にならずに良かったと、俺もほっとした。
自分も大事だが、かといって相手の破滅を望んでいるわけでもない。

「おにいちゃん、ありがとー」
「おー、無事でよかったよ。おかあさんに連絡したいから、おうちの電話番号とか、住所とかわかる?」
「うん!ここに書いてあるよ!」

女の子は、胸のポケットにあった、迷子手帳を見せる。
こっちも、一安心だろう。

空を見上げる。
ようやく、自分にも震えが走り始めたが、自分は、生きている。
この子も生きている。
運転手は――まあ、交通違反で取り締まられるだろうけれど、事故にはならなかったのだから、そう大事にはならないだろう。

全てが、よく収まったと思う。



何か、大事なことを忘れている気もするけれど――

さりとて、今日も綺麗な五月晴れ。
そんな日には、明るい話だけがあればいい。

この女の子の笑顔に癒されて、家に帰ったら今日の俺の武勇伝を家族に語って、もしかしたら、後でちょっと表彰されたりするかもしれないと、俗っぽい期待をして。

いつかは、これも笑い話の思い出として語っていく。
そんな一生を、俺は、精一杯生きていこう――



















「これで、満足、だったのか?」
「あー、これでいい。一度くらい、俺が『あの世界』……に限りなく近い世界で、普通に生きていく、そんなことがあっていい。……違うか、ある『べき』だ」
「……本当は、ソレで『お前』が終わっても、いいんじゃないのか?」
「うん、それも考えたんだけどね。それでも、やっぱり『知っている』俺には、その世界は偽りなんだよ」
「だから、ここでの記憶をなくして、事故の直前からつながる自分を、元の世界に限りなく近い世界のあの場面にいかせた、か」
「自己満足でしかないけどさ。きっと、この一回は、必要な一回なんだと、俺は思う」
「……本当に、面白い奴だよ、お前は」
「その台詞も、前までだったら、しみじみと受け止められたんだけどなあ……。俺の勘が当たってると、すっごく悲しくなるんだよな」
「なんだよ、その意味ありげな台詞。ワッシの台詞なんだから、もっとありがたがれや」
「へいよ」

さてさて、『次』はどうするか――

まあ、どうせこれは、こいつの『暇つぶし』
だけど、俺には一生懸命な、『暇つぶし』だ。

なら、全力で遊ぼう。
全力で、終わろう。


「よし、決まった――次は――」



そして、この話は、くだらない終焉へとひた走る。
とまれ、その終焉に向う前に、これだけは言っておかなければならない。

少女を救って、病院で親御さんに感謝されまくって、戸惑いと恥ずかしさで真っ赤になっている、『前』を見て――

じゃあな。グッバイ、『前』の俺






――次回、最終回。


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