終わりというのは、思っていたよりもあっけなく、郵便物でも届くかのような気軽さで訪れるものだと実感する。
同居人の飯でも作ろうかと愛車であるHONDAのバイクを走らせて買い物を終えたその矢先、それは起きた。
買い物に少し時間をかけてしまった為、急いで帰ろうとスピードを上げていたのが災いした。 道路に突然ボールを追いかけてきた少女が飛び出してきたんだ。
とっさにブレーキとアクセルを操り、車体の進行方向を強引にずらした。 しかし、タイヤのグリップが摩擦係数以上の力を受けてしまったために、バイクと俺は横倒しになりながら道路を滑っていく。
バイクと道路が擦れながら火花を散らしていく中、そして夕暮れが徐々に町を染めていく中、一際明るい光を見た。
それは、しぶとく世界を照らし続けたい太陽でも、これからが稼ぎ時だという風俗店のネオンでもない。
低いうなり声をあげながら徐々に迫りくるそれは、おそらく、俺が思っているよりもずっと速くこちらに近づいているはずだ。
勢いが衰えないまま反対車線に滑り込んだ俺を正面から待ち受けていたのは、クラックションを盛大にならし続けるダンプカーだった。
車体と道路に挟まれている俺は動くに動けず、ダンプカーとの相対距離は瞬きするほど近くなる。
「・・・・・・っ」
なんというあっけない終わり方だ。 いや、人の一生なんてそんなものかもしれない。
この町じゃ、生き方も死に場所も、個人が選べるように出来てないのだから。
・・・・・・そうさ。 逆に、今までが激しすぎたんだ。 終わるときはこれくらいぱっとしたものでも、悪くない。
そうだよな、母さん。
ただ、腹を空かせた伝説の狼が心配しないかと、それだけが気がかりだった。
「テリー・・・・・・っ」
視界の全てが白色に染まり、五感と意識は自分の手からすり抜けていった。 痛いと感じる事も、眩しいと思うことも・・・・・・。
その日、サウスタウンからもっとも名の知れた男の血を引く男が消えた。
MUVーLUV MARK OF THE WOLVES 序章 END