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[29474] 【習作未満】絶チル転生、勘違い。【TS】(パロネタ多数・フロム脳注意!!)
Name: toxic◆037c1b51 ID:ccbe12db
Date: 2011/08/31 16:32
勢いだけで書いた。後悔も反省もしていない。

画面をスクロールしたらマジで地雷原だぜ?

あんたにその覚悟はあるかい?







絶チル憑依、勘違い。

一話 勘違いモノにでてくる原作キャラは大体通知表に人の話をよく聞きましょうと書かれている←ここテストでます。















































わたしこと、東郷鈴は転生者でTS。すなわち前世で男だった者である。中身は脂ぎった30台後半のオッサンで、多分死因は急性アル中だ。
年甲斐も無く一気呑みなんてするから悪かった。
せっかくの忘年会がぶち壊しだ。同僚には悪いことをしたと思う。
それはそうと、


「・・・・どうしてこうなった。」


「わからん。本当に一体全体どうした事だこれは・・・・。」



この爬虫類のような気持ち悪い目つきをしたイカにも悪役幹部といった風情の青年は、私と同じで転生者でTSある。名前は村田恭介。
前世では女子大生だったらしい。

顔立ちはそれなりに整ってはいるが、いかんせんその目つきとスカリエッティばりの顔芸。ついでに言うとぶっきらぼうな口調と神に見放されたかのごときその魔の悪さ、そして元女故の少々なよっとした動きが全てをぶち壊しにしている。

はじめあった時ぶっちゃけ私もキモイと思った。コイツも私と同じ転生者でなかったら、担当官といえど夜道に気をつけなければならなかっただろう。それくらい、生理的に受け付けないレベルの男だ。コイツは。

まぁ付き合ってみれば、良い所もそれを補って余りある愛嬌のある男(女?)なのだが、第一印象は最悪なのは間違いない。
初見でコイツの本質を見ぬくことのできるヤツがいたら私はソイツに処女を捧げてやってもいい。
それくらい、コイツは初心者キラーだ。

そのせいか、目を剥くほど有能な男なのだがB.A.B.E.L.内では毛虫のように嫌われている。
前の世界では友達百人できるかなという小学一年生に与えられる最高難度の任務を見事こなそうかと言うほどの社交性あふれる女だったらしいのだが(それはそれで気持ち悪い)、こっちに来てからは小中高と孤立しっぱなしで、両親や兄弟にも敬遠される聞くも涙語るも涙といった風情だ。

口調も、中学ごろまで女口調でオカマ状態だったらしいのだが必死で直したらしい。
効果があったかは疑わしいが。


「・・・そう気を落とすな。キョウ。次またチルドレンとの合同訓練があるじゃないか。こんどこそ友達の一人もできるって。ほら、あの何だっけ、皆本とかいう担当官。話してみたけど結構気さくだし、初対面の、しかもエスパーの私を本気で心配してくれるような優しい男だからさ、ほらお前の事もきっと分かってくれるって、な?」


「本当?うう・・・・私が努力するたびド壺にはまってる気がするんだよな。こないだコーヒー入れにいった時だって、すれ違った時目が合ったんだけどあれ、絶対殺気でてたって。僕そんな嫌われる事したかな・・・?」


それはほんとうに疑問だ。B.A.B.E.L.に入ってからコイツとペアを組んで半年程になるが、コイツは本当に善良な男だ。少なくとも私のそこそこ長い人生の中で一番。
だから、あんなチルドレンのようなおっかない(しかもうざい)エスパーにもあれほど優しく出来る人間がなぜコイツをそれほどまでに嫌う・・・いや、憎むのか。
容姿やしぐさではない。

なにか深刻な誤解でもあるのだろう。


「大丈夫大丈夫。その内きっと何とかなるって、ほら諦めるな、前を見ろ。すくなくとも私一人はお前の見方だよ。」

「うううう・・・・うん、ありがとう・・・ぐすっ。転生してからこっち、こんなに優しくしてくれたのは鈴だけだよ。・・・・・うん、今度こそ、今度こそ・・・・。」


思わず顔を上げる。目から汗が溢れそうだったから。その姿があまりにも憐れで・・・・。




────おお、神よ。天おわします神よ。今日も今日とて、無駄と知りつつ祈ります。もしも貴方が見ているのなら、この憐れな魂にどうか救いあれ。










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この僕、皆本 光一はB.A.B.E.L.でチルドレンの担当官をするようになって多くの犯罪者やテロリストを見てきたと思う。
それ以前からも、この回り過ぎる頭のせいで多くの嫌な人間と向き合ってきた。



───だが、村田恭介程の邪悪を僕は知らない。





彼は兵部や普通の人々なんか目じゃない、正真正銘の悪だ!

同情も共感もできない純粋な邪悪。
そんな奴がこの世に存在することを始めて知った。

局長も何故あんなヤツをB.A.B.E.L.にいつまでも在籍させているんだ。局長の人柄は知ってる。やむにやまれぬ事情があって手出しできないのだろうが・・・・これじゃ鈴ちゃんが救われない。

下手に村田の奴が有能だから質が悪い。

合同訓練では最強の筈のチルドレンすら、村田の指揮下にある9歳の鈴ちゃんに勝つことが出来ない・・・・・。


「くそっ!!」


ドンッ!!

無意味に壁を殴る。八つ当たりしたって鈴ちゃんの境遇はなにも変わらないっていうのに!



「皆本・・・・私、私・・・・もっと強くなりたい!私・・・嫌だよこんなの。こんなに胸がざわざわするの、嫌なんだ・・・。」

「薫・・・・。」


僕たちに出来ることは無いのか!?


















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さて、合同演習当日である。

先に言っておくが私、東郷鈴は実はバトルマニアである。

これも先に言い訳しておくが、私も前世では男だった。男だったからには、男の子だったのである。
男の子だったからには・・・・そう。剣と魔法、超能力に憧れ、一度はかめはめ波をうって見たいと思うのは当然の事と言えるだろう。

前世では喧嘩もしたことのない私だか、こちらにきて、ESPを発現してからはもうバリバリの武闘派である。
リアル聖闘士やリアルサイヤ人が出来るとなれば、バトルマニアにならない日本男児はいないだろう。間違いない。私が保証する。

キョウはこの手の荒事に関わると殆どポンコツなので仮説本部に立てこもらせて出てこさせない。
出てきてもたたき返すだけだが、前世で女だったとはいえ、情けない男だ。



「・・・・・・敵影、捕捉。固体名 明石 薫。相手はまだこちらに気付いていません。単独行動が気がかりですが、今なら奇襲可能です。指示を恭介様。」


とりあえず、一応バベルも軍隊は軍隊なので対外的には口調もそれっぽく通している。


『明石 薫と交戦を許可する。死力を尽くして闘いたまえ。』


キョウは基本荒事の最中はこんな風にそれっぽい言い回しで丸投げの指示しか出さない。
どうせこういうときはポンコツなのだから無駄なことは言うなと念を押してあるからだ。
あの時ばかりは頑なにウンとは言わなかったが、
絶交すると言えば泣いて謝ってきた。私以外友達のいないこいつに友情をたてにするのは心苦しかったが、これは譲れなかった。

なにせ勤勉な無能程恐ろしいモノはない。コイツに指示を任せるとちょっと危なくなったらやれ撤退しろやれ避難しろとガタガタ五月蠅い。

“あの”チルドレン相手に多少の無茶なくして勝つことなど出来ないのは分かりきってることだろうに。あの敗北主義者め。
キョウの事は大好きだし親友だと思っているが、この臆病なところだけはいただけない。
目つきとか以外で苦手なところといえばそれだけなのに、残念なことだ。過保護すぎるのも考え物だ。


『了解。明石 薫を落します。吉報をお待ちください恭介様。』


本部に伺いを立てるのも、マニュアルに従ってるだけで本当は煩わしくてしょうがない。

だがもう心配ない。ここからは、闘争の時間だ。私を縛る枷はもう何もない・・・・!


────獲物を前に舌なめずりとは三流の仕事とはよく言ったものだ。




猛獣以上に恐ろしい獲物をまえに思考はクールでクリア、体は熱く煮えたぎって、ハートは恐ろしい程震えている。

「薫・・・・ああ、薫ぅ。最高だよ、お前は。私の全てを受け止めてくれるのは、お前だ。お前だけだ。早く闘ろう!わくわくするよな、お前も!」







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私、明石 薫はESP能力者で日本に立った三人のLv7の特務エスパー。

そしてチーム、ザ チルドレンの一人だ。
対外的にはザ チルドレンはB.A.B.E.L.最強のエスパー部隊で通っているが、実際は違う。

コードネーム、ザ サーヴァント───東郷鈴。

彼女が本当のB.A.B.E.L.最強。複合能力者とはいえ、彼女はLv6。超度で勝り、数で勝り、年齢すらこちらが上だ。
私たちには皆本という最強の参謀もついてる。
けれど・・・・勝てない。

理由は分かってる。

私たちは、小さな頃からこの強力すぎる力に振り回されえて決して幸福とはいえない幼少期を過ごしてきた(小4はまだ幼少期とかいったらぶっ飛ばす)が、鈴ほどじゃない。

鈴は、いつも怖いほど無表情だ。誰にたいしても敬語で、心を開かない。
大人から見れば、理想的なイイコのエスパーと言える行動を演じている。
自分たちみたいに命令に背いたり、無茶なことはしない。
むしろ自己主張が希薄で、犬みたいに従順だ。(実は凄く自己主張激しいです)

特に、命令には何があっても逆らわない。(命令する村田本人が既に傀儡政治だから)

いつも見かける時は、ESP訓練室やトレーニングルーム。前見た時はAチームの人たちとESPリミッターをつけて格闘訓練までしてた。
無表情ながら、鬼気迫る迫力にB.A.B.E.L.最強のAチームのおっさんも困惑しながら相手をしてた。

なにせ、鈴は強い。Aチームのリーダーのおっさんも本気で相手をしなきゃいけないほどだって愚痴ってた。それもESP無しで、だ。

相手を誉めるとかそんな雰囲気でもなかった。ただ単純に鈴の事が心底怖かったといった感じだった。

それを責めることは私には出来ない。私も───彼女のことが怖い。


鈴は強い。この間だって、私たちが普通の人々に軍用ECMで捕まったとき、
ECM下でも作戦行動可能だからって村田の糞野郎に無理やり投入が決められたらしい。(鈴が恭介に無理やり申請させました。)

ニヤニヤ哂いながら「往け。」の一言で死地に叩き出されたというのに、
彼女は泣き言の一つも漏らさないで笑みさえ浮かべて私たちの救出作戦を了承してくれたという。(もう村田はヤケになってます)

局長は、もしも一言でいいから鈴がぽつりと弱音を吐きさえしてくれれば、それを言質に出動を取りやめさせたって言ってた。
でも、鈴は私たちの無事だけを祈って、笑って死地に飛び込んだという・・・。
いっつも馬鹿やってる局長のあんな顔始めてみた・・・・局長も、苦しいんだ。無力な自分が悔しいんだ・・・。

顔面を殴られて鼻血が噴出しても、歯が抜けても、骨を折られても、銃で撃たれても鈴は止まらない。(バトルマニアですから)


鈴は強い。でもそれは間違った強さだ。まだ9歳で、私たちの一つ下なのに殴られる事より、銃で撃たれるより恐ろしい事を知っているんだ。

だから、闘う。闘えてしまう。





────私は皆本に救われた。だから今度は私の番なんだ!

私が、鈴を止める!鈴を助けるんだ!
















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「うーん、また僕の知らないところで誤解が進行してるような気がする・・・・勘弁してよ・・・・。」






つづく。



[29474] 二話 勘違いモノの感応能力者は対外ポンコツ。
Name: toxic◆037c1b51 ID:ccbe12db
Date: 2011/09/01 00:36













絶チル憑依、勘違い。

二話 勘違いモノの感応能力者は対外ポンコツ。
























さて、いきなりだが私、東郷鈴は大ピンチに陥っている。


不自然に単独行動している明石 薫に脳筋よろしく奇襲をかました私だったが、案の定罠だった。

言い訳させてもらえば、
まぁ基本的にB.A.B.E.L.に在籍している者で皆本のオツムの出来具合をしらない奴はいない。
だから当然、チルドレンあいてに戦術を駆使しようとするのは私から言わせてもらうと無駄なのだ。
こういう場合私に唯一とれる戦法は、キョウの奴に通信で意味深な事を言わせてかく乱したり、
奇襲をかけたり罠を仕掛けたりしていかにも戦術を駆使してますよ。と匂わせておいて実際は猪突するぐらいしかない。


ま、未だそれで勝率10割をキープしているのだから、こと戦いに関しては私も天才と呼ばれる類なのだろう。

それに昔の人はいった。「天才を騙すのは簡単だ。馬鹿を騙すのは難しい。ブタを騙すのは不可能だ。」

私の戦術なんて将棋で言えば王将で敵陣に切り込むような愚かな捨て身戦法だというのに、
皆本はいろいろ頭を悩ませてくれているのだろう。有難いことだ。

それに、基本的にチルドレンの実働部隊の三人も対外頭がいい。
一番馬鹿とされる明石 薫でさえ、私が10才の時にあれほど物事を整然と捉えられただろうか?

家庭内に不和を持つ子供は、早熟で大人を時にひやりとさせるぐらい大人びている事があるというが、
彼等も苦労してきたのだろう。

いつもキョウのことが気がかりとはいえ、人生今が楽しくてしょうがない私とは大違いだ。
高潔な彼女らとは比べることもおこがましいのだろう。



「ぐ・・・・かはっ!」




しかし流石だ。テレポートで大量の瓦礫を突如頭上に出現させそちらの対応にリソースをとられた一瞬で明石 薫が動きを封じる。

単純だが、言うは安し行うは難しだ。本気で動く私の速度に合わせてくるとは子供とはとても思えない。
なにせ私は短時間とはいえ電磁加速で自由自在に空中を滑空するのだ。

加えて、私の慣性を無効化する念動力で対Gはまったく問題にならないので不規則に加速する私を捕捉するのは不可能に近い。
また、限定的だがも私の超能力の一つ念動力の応用能力、斥力操作も大きい。
発現時は相当弱かったので必死で鍛えたが、空気圧を完全に無視できるというのは非常に有難い。

おかげで今では、前世で35ぐらいの時嵌った「アーマードコア」というゲームの機動を完全再現して戦果を挙げている。


そして私は超度6。あいてが超度7とはいえ、加速した私を面制圧で封じることは出来ない。

だというのに、薫たちが見事合わせてみせたのはサイコメトリーの姿が見えない事と無関係ではないだろう。
あの皆本がまたあたらしいエスパーの運用戦術を思いついたらしい。有能な敵は憎らしいことこの上ない。


────下手をすると、初黒星になりかねん。


負けたくない!──意地があるんだよ、男の子にはぁ!!



「っ!・・・・恭介様、TRANS-AMを使います。許可を!」


『・・・・・許可する。3秒で終わらせたまえ。』



「了解!・・・・トランザム!」



しかし、TRANS-AMってなんなんだろうな。キョウが言うにはガンダムらしいんだが、私は知らない。
私見では赤くなって性能が3倍というとシャア専用ザクしか思いつかない。

私のこれは実際には1.3倍という所も特によく似ている。

しかし開発者のキョウにはコレはトランザムだといって強硬に押し切られた。

これがジェネレーションギャップというものか・・・・・。














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「トランザム!・・・・・あ゛あ゛あああああぁぁぁぁ゛!!」








捉えた!という喜びも束の間。鈴はいきなり出力を上げて私の拘束を振り切った。
これは、超度6なんてものじゃない!私たちと同等・・・いやそれ以上!



・・・・そこからの展開は、ぼんやりとしか覚えてない。

突然、鈴の顔が目の前にあったと思ったら、意識が暗くなっていく・・・・。




───また負けた。

だというのに私の胸に去来するのは、燃えるような悔しさではなく諦めにも似た虚無感。

トランザムっていうのが何なのか分かんないけど、あれが良くない物だって言うことだけは、良くわかった。
また村田って奴が何かしたんだろう。あの時の鈴の様子は尋常じゃなかった。
悲鳴を上げて、汗が噴出して、骨を折られても変わらなかった無表情が歯を食いしばるように歪んでた。

そして何より、・・・・鈴は泣いてた。赤い光に包まれながら、鈴は泣いてたんだ!。

超度6と超度7の壁は厚い。そこには普通の手段では超えられない絶対の壁がある。

それをいとも容易く飛び越えてきたのだ。まともな手段じゃないのは馬鹿の私でも容易に想像がつく。


「くそぉぉぉぉ!!・・なにが超度7だ!なにが特務エスパーだ!・・・・・泣いてる鈴ちゃん一人助けられないなんて・・・・・、こんな力に何の意味があるんだよぉ・・・・。」

「薫・・・・。」


皆本光一は、慟哭する明石 薫にかける言葉が見つからなかった。
なぜなら彼もまた、自分の無力に絶望し、静かに慟哭をあげていたから。

それは、皆本自身気付かないうちに目から零れ落ちていく。


「泣かないで、皆本さん。きっと方法はあるわ、探せば必ず見つかる。・・・・必ず鈴ちゃんは助ける。そう誓ったでしょ?」

三宮 紫穂は、世界最高のサイコメトリーだ。だがその彼女をもってしても、村田恭介という悪鬼の心を暴く事は出来ない。

「村田って人が何を考えているのかは私にも読めない・・・・。恐ろしいほどの邪気と憎悪が渦巻いていて、思考が塗りつぶされてるから。・・・・でも、最近になって分かったこともある。彼は見た目程超然とした悪じゃない。強い孤独と疎外感・・・・彼にも、邪悪に落ちる何かがあったのよ。」


「トラウマを暴くっていうのはいい気分じゃないけど、あの人相手なら遠慮はいらないわよね、もう一度彼の背後を洗って見ましょう。今すぐ。それとも何、鈴ちゃんに同情してる自分可愛そうって、ここで泣いてるの?・・・そんな情けない人だったっけ?貴方たち。」


「そうやで、泣いてるだけじゃなにも変わらへん。自分から手をさしの伸ばさなって、教えてくれたのは皆本はんやんか。なんとか手考えてみよ。それにお天道様が見とる。あんな奴長生きできるわけあらへんて!」


「葵・・・・紫穂・・・・・・・ああ、そうだよな。こんな所で泣いてる場合じゃない。」


皆本光一は顔を上げる。その目には最早涙は無い。
そこにあるのは超然とした決意。燃え盛る覚悟の炎だ。


「・・・・・薫!君はここで療養に専念しててくれ。模擬戦なんかじゃ君に一番負担が行くからな。休むのも仕事うちだ。葵くんも、今日はもうテレポートの使いすぎで動けないだろう。君も待機だ。」


「紫穂、僕はこれから、僕の研究室のパソコンからB.A.B.E.L.のデータベースにクラックしてやる。もうまともな手段で調べられる範囲は調べたからね。手伝ってくれるかい。」


「ふふ、当然よ。微力を尽くすわ。」


最早、その足取りも軽い。男子三日会わざれば刮目して見よ。覚悟を決めた男の背中は巨きい。











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TRANS-AM 通称トランザム。

その正体は何のことは無い。ようは唯の電池である。

私の首に取り付けられている継ぎ目の無い金属製のごつい首輪。ニードレスの神父がしてたやつを思い浮かべてくれるといい。
大体そんな感じだ。MURATAと銘もほってある。

対外的にはESPリミッターと紹介されているが実際は違う。いや確かにリミッター機能もついているのだが、

これはキョウが独自の研究で開発した常温超伝導ナノコイルを12基直列に配置し、カーボンナノチューブ、
インパラヘン王国産レアメタルとチタン-モリブデンの複合合金で覆った特別製の首輪。
キョウに初めてもらったプレゼントであり、思い出の品でもある。とても軽い。

ようは着用者に放電することの出来るビリビリ首輪だ。
もちろん電気を操る超度6の私以外の人間が装着すると、感電死を通り越して消し炭にになる程の威力で、
キョウ曰く、世界で始めて自然界の雷の威力に迫った工業製品だという。

誕生日プレゼントだったのだが、キョウもいい仕事をする。
レアメタルの変電装置で私がもっとも操りやすい波長に電流を調整できるのが一番画期的な点だ。

つまり、電力を一時的に生命エネルギー、サイキックパワーに変換できるのだ。

しかも副作用は、精々疲労が酷いというだけで、費用対効果で考えると無いといって過言ではない。
(キョウは心配性で5秒以上の使用を許したことは無いが)

使用者は私に限られるが、そこも専用機って感じでロマンを感じる。


ただ、私が考えるところ問題点も3つ程ある。

まずデザインは気に入らない。そこも村田監修だ。
無くて七癖とも言うし、まあ許容範囲だが、もっと他に無かったのだろうか。

ゴスロリっぽくて良くない?とは村田の談だが、風紀に関わるのだろう。B.A.B.E.L.でいい目で見られたことは無い。


二つ目は、キョウが首輪の変電装置の設定をリモコンで自由に変えられるという点だ。
最も会わない波長の電流にされるといくら私でも操りきれない。つまり本当にただの電気首輪とかすのだ。

わたしがしょっちゅうはめを外すのが悪いのだろうが、キョウの奴も事あるごとにお仕置きと称してビリビリとやる。
前世の事とはいえ、男は女に頭があがらないという査証だろう。前世の女房に尻にしかれる感覚に良く似ている。

ラムちゃんと諸星あたる、幻想殺しと超電磁砲。なんのことですか?


・・・・三つ目は、コレが一番問題なのだがTRANS-AMは起動させると私に最適化した電流を流す。
その流された感覚が、その・・・・、

ストレッチで限界ぎりぎりまで肉を伸ばした時のような痛気持ちよさと、
同じ姿勢でずっと座ってた後たまに足とかくるビリビリってくるあの感覚と、
足の裏と手のひらと脇腹と内股を同時に擽られた時のようなえも言われない感覚と、
全身を愛撫されているような(されたこと無いけど)エロイ感覚が同時に襲うのだ。


お蔭様で実験の時とか私の涙腺はいつも大崩壊。必死で歯を食いしばってもどおしても声が出てしまう。

今日模擬線で初めて実戦運用したが、薫に泣き顔を見られなかっただろうか?恥ずかしい・・・・・。








すぐに気絶させたし、大丈夫だよな?・・・・な?











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「僕も主人公なんだけどなー。僕の主観これで終わり?」








つづく









あとがき



村田も結構暴走気味です。
鈴と出会う前から小中高大学とボッチだった経歴は伊達じゃありません。
結局、似た者同士ということです。



[29474] 第三話 勘違いものでは、組織の上層部は深読みしすぎの連中が多い。
Name: toxic◆037c1b51 ID:ccbe12db
Date: 2011/09/01 00:36












絶チル憑依、勘違い。

第三話 勘違いものでは、組織の上層部は深読みしすぎの連中が多い。
























────某所、空港






「村田様、持ち物の点検が終了いたしました。どうぞ、こちらです。」

「そうか有難う、・・・鈴。」

「ハイ、恭介様。」


いつものやり取りだ。キョウは実は昔、筋ジストロフィーを・・・いや今も患っている。
そもそも研究者を志したきっかけがそれらしいのだ。
ある程度研究は結実し、症状の進行は止められたらしいし根治ももう目前らしいのだが、
未だに虚弱体質で筋肉が少ないのは変わらない。

いつか、人一倍元気に動く私がうらやましいと零したこともあった。(人一倍どころの騒ぎではないが。)

雷を生み出す超能力因子を持った私のDNAのおかげで、研究は飛躍的に進んだらしいが、まだまだ彼は病人だ。


だから、ノートパソコンより重いものは基本的に私が持つ。
キョウの体は20まで治療を続けていても自重を支えるので精一杯だ。

だがむしろ、同じ病を知る人間からすれば、20になる患者が車椅子にのらず自分の足で立っている事に驚愕するだろう。

これはノーベル賞ものの偉業だ。


しかもキョウは筋ジストロフィーの治療薬で特許をキッチリとっているが、それは金のためじゃない。
キョウは同じ病や同レベルの難病の子供たちを集めて保護する医院を運営してる。

そう、同レベルの患者。

筋ジストロフィーだけでなくて、他の難病の子の闘いにも終止符を打とうというのだ。キョウは。
そして実際に成果を挙げている。

そのための資金として、特許料を取っている。
しかもどこかの医薬品会社に所属して特許をとったわけではない。完全に個人の施設と資金でここまでたどり着いたのだ。
だから、全体から見ればキョウの取り分はビビたる物で、薬が世に行き渡らないなんてことにもならない。

そうでなければばキョウにとって特許なんて髪の毛一本の価値すらないのだ。

私はキョウのこういうところを心底に尊敬している。
前世でも、医大生だったらしいが、どうしてこうまで人に献身的になれるのか・・・・・。

闘うしか能のない私なんかじゃ足元に及ばないと、つくづく思う。


けれど、周囲の人はそんなキョウの献身を嘲笑うかのようにキョウに冷たい。

それでも一生懸命説得したら、姉さんや親父は分かってくれた。



だからこそ、この先もずっと私だけはキョウの見方でありたいと、人に尽くすキョウに尽くしてやりたいと思ってる。

絶対に、この友情は間違いなんかじゃないって信じてるから。
















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「村田様、持ち物の点検が終了いたしました。どうぞ、こちらです。」

「そうか有難う、・・・鈴。」

「ハイ、恭介様。」




やっと僕の主観が来た。・・・・僕だってこのSSの主人公なのに三話でようやく出番って酷くないかな。

まぁメタるのはこのくらいにして、僕はいつものようにこの小さな親友に大きなバッグを持ってもらっていた。

実は昔は遠慮して、遠出するときは荷物を最小限に抑えようとがんばっていたけど、
そうしたらそうしたで鈴はトレーニングだっていって鞄に鉄板とかいれたりするもんだから、
今はもう遠慮しないで研究資料とか一式入れてもらってる。

思えば、僕にそういう変な遠慮をするなって意味だったんだろうが最初は意味が通じなくて困ったものだった。
男として生活して長いけど、やっぱりこういう男同士の友情っていう感覚がわからなくて区労する事も多い。
ましてや前世で中の人が30後半のオッサンだとしても、鈴ちゃんは見た目9歳の美幼女だから。
ちょっとくすぐったいって事もあるんだけどね。

まぁそれ以前に僕は友達が殆どいないんだけどさ。それでも、まぁ鈴だけってわけじゃないんだけどそれはまたこんど。


それにしても、ハァ・・・・・。B.A.B.E.L.に帰るの億劫だなぁ・・・・。

エスパーを保護するって言う組織の理念は素敵だし、湯水のように研究資金も出してくれる。

でもエスパーだけじゃなくて僕も保護してほしいもんだよ・・・・。
局長もあんまり僕にいい感情もってないみたいだし、組織ぐるみのパワーハラスメントだよこれは。


なんか僕のパソコンに進入した形跡すらあるからね。


サイコメトリージャマー・・・・サイコメトリーの最も嫌う思念波で、
思考をプロテクトする僕の発明品だ。
そんなものまで使って頭のなかの研究データすら守らないといけないなんて・・・嫌な職場だよ。



結局、僕がB.A.B.E.L.にいる理由って鈴ちゃんがB.A.B.E.L.所属の特務エスパーだからって理由だけなんだよね。

鈴ちゃんと初めて出会った場所だっていうのもあるし。

鈴ちゃんと離れたくはないけど、B.A.B.E.L.にも帰りたくない・・・・・。


成り行きで始めた医院のほうが、まだ懐いてくれる子がちらほらいるんだよね・・・・。

大道寺のおじさんもスポンサーになってくれるってガハガハいいながら肩を叩いてくれたしね。

最初の辺はあのオッサンもなんか深刻な勘違いをしてたみたいだけど、
鈴の姉さんの主治医として真摯に向き合えばちゃんと理解してくれた。

ほんっっっっっっとうに貴重な理解者の一人だ。

今では婿に来ないかなんて冗談が飛び出す程だ。鈴の姉さんの目が怖くなるからやめてほしいが。

もう本格的にこっちに専念したい気分だよ・・・・。


・・・・どーしたもんかなぁ。














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「うわ、何あの人あんな大きい荷物女の子に持たせて。しかも様付け呼ばせるなんて何処の変態よ。」

「召使、とかそんなかんじなのかな?それにしたって時代錯誤だよね。気分悪ーい。」


彼女らは空港の受付嬢。彼女らの言葉は彼らに届くことは無い。
だが、およそ一般人の意見を代弁しているといっていいだろう。

みんなも障害者の親を介護する子供がいたりしたら、邪推することがあるかもしれない。
偏見イクナイ。気をつけようね。

彼らに幸あれ。








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「なんて事だ・・・・・こんな事が、こんな事があっていいと言うのか!?」


ダァン!!

今日も皆本の拳が壁に突き刺さる。さて、今日は彼はどんな勘違いに至ったのだろうか?


「何てことだ・・・・彼が子供を集めて人体実験を繰り返してるなんて・・・。しかも、それが政府公認だから局長も手が出せないだなんて・・・・・。」

「しかもコレ・・・・・なんて事、最重要患者リストの中にどうしてこの子 の 女市 さん が い る の !?」

「人質ってことだ・・・鈴ちゃんが常に結果を出し続けないと、この子がどうなるかわからないってことなんだろう。」

「そんな!?どうして・・・・、どうしてこんな酷いことができるの・・・・・? 」


B.A.B.E.L.のセキュリティーレベルの高い情報をクラックしていくうちに、

局長が調べ上げたと思わしき恐るべき事実がそこには羅列してあった。
それによると鈴は大道寺財閥の妾腹の子で、お母さんはとおに死んでいて、
屋敷で召使のようにこき扱われていたらしい。
もともと認知されていなかったらしいが、ESPに目覚めて本当に放逐されてB.A.B.E.L.にきたらしい、

資料にはそう書いてある。

ご丁寧に得意の金の力で戸籍までいじって、名前さえ奪い「東郷」鈴にして。


けれど、それだけじゃない。もっとこの資料にはもっとセキュリティの高い裏の裏があった。局長は、もうどうにもならないと見て封印してしまっていたようだ。

・・・・・鈴ちゃんは難病にかかった姉さんがいた。
姉妹仲は良くなかった、いやそれどころか鈴は彼女に虐待されてたらしい。


だがその姉さんを村田に優先的に治療させるために、鈴 ちゃ ん は売 ら れ た。

ESPが発現したからB.A.B.E.L.に来たんじゃない、その前から鈴ちゃんはエスパーだった。




・・・・そう、   村 田 が い る か ら B. A. B. E. L. に 来 た 。



恥知らずにもこの大道寺という男はさんざん召使として利用してきた鈴ちゃんを交渉のカードにしたんだ!

読めば、鈴ちゃんのDNAをつかった村田の研究成果がある。

文字通り鈴ちゃんは汚い大人たちに、骨までしゃぶりつくされようとしてるんだ・・・・。

読み進めていくうちに、局長の必死であがいた形跡が読み取れる。
だがそのことごとくが潰されてる。


そして・・・・悪いことにこれで終わりじゃない。


村田は、スポンサーでもない財閥ごときに尻尾を振るような男ではなかった。

彼は姉さんを無菌室といって村田医院の最深部ブロックに入院させた。・・・・・資料では完全無菌室とあるが、
そんなことを鵜呑みにする奴はこのB.A.B.E.L.にはいないだろう。

無菌室の壁がこれほど頑丈な必要はない。太陽光を取り入れる天窓さえないのは流石におかしい。

そしてただの医院の警備システムがこれほど厳重な必要も無い。これは下手をするとB.A.B.E.L.並のセキュリティだ。

そしてこの医院には無菌室は他の病棟にある。最深部にある意味が無い。


これは牢だ。だれも逃げ出せない、助け出せない牢獄だ。


大道寺本家でさえ手出しが出来なくなったようで、再三の引渡し要求が拒否されてる。

しかも、彼女が無菌室に入ったあたりから、大道寺財閥から村田医院に大量の不審な金が流れてる。

娘を人質にとられて揺すられてるんだ。


なんて巧妙な手口!



そんな場所に、卑劣な男に姉さんを人質に取られて、鈴ちゃんは必死に頑張ってるんだ。

それも、昔自分を苛めてた姉のために・・・・!

だれにも助けももとめられず・・・・。


「こんなことって無いよ・・・・・!」

「酷い、酷すぎるわ・・・・。」








─────勿論、大よそ勘違いである。










■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■






...trrrrrrrrrrr....trrrrrrrrrr ガチャッ。

「はいもしもし。こちらは村田恭介様の番号です、現在出払っておりますのでご用件があれば私が・・・・って姉さん!?。もう話せるまで回復したんだ!?」

『ふふ、優秀なお医者様のおかげね。私、こんなに体が軽いの久しぶりよ。今ならまた昔みたいに貴方にお稽古付けてあげられそう。』

「ふふ、完治が楽しみだね。でもそれは3年後までお預けだよ。・・・あっそうそう。姉さんには負けてばっかりだったけど、私だって強くなったんだよ。・・・・そうだ!こんど病室で上達した演武を見せてあげるよ。」

『あらあら、・・・そういえばお父様が貴方に会いたがってたわよ。また昔みたいにあなたにお世話してほしいって泣いてたわ。あなたって昔から家事が好きな変な子だったわね。まったくお手伝いさん泣かせよね。』

「うん、それは否定しないけどさ。今はその経験がキョウのお世話に役立ってるし、人生何があるかわからないもんだよ。でも姉さんも体が治ったら花嫁修業はしておいたほうがいいと思うよ。結局大道寺は弟が継ぐんだしさ。」

『あら花嫁っていったら、あなたは言いお嫁さんになりそうね。ちょっと喧嘩っ早いところがなければ、貴方程大和撫子の名がふさわしい女の子はいないと思うわ。』

「よしてよ。こんなの誰も貰ってくれる奴なんていないさ。・・・うーん、親父といえばこないだキョウが愚痴ってたよ。親父が娘を家に帰してくれって電話でうるさいって。アレ発作みたいなものだからどうにもなんないかもしれないけど、一応姉さんから言っといてよ、親父って私の言うことは聞かないし私には何してもいいみたいなところがあるからさ。」

『そうね。娘離れできない父親を持つとお互い大変ね。でも父さんったら甘えたがりなのよ、なのにふたりも一辺に家から娘が二人もいなくなっちゃったもんだから寂しいのね、きっと。あなたって昔から大人だったじゃない。幾らいたずらされても怒らないし、しっかりしてた。だから父さんも私もついつい甘えちゃうのよ、貴方に。』


「うん、・・・・うん。あ、そろそろ切るね。訓練の時間だから。」

『あら、そうなの。もっと色々話したいこともあったのに。・・・まぁ仕方ないわね。それじゃ、バイバイ。』

「ばいばい。」


































────真の真相はえてしてこんなものである。







つづく






[29474] 第四話 基本的に、勘違いってギャグだからみんな軽く見てね。(上)
Name: toxic◆037c1b51 ID:ccbe12db
Date: 2011/09/01 00:36


















絶チル転生、勘違い。

第四話 基本的に、勘違いってギャグだからみんな軽く見てね。(上)


































「えーっとこれから装備の説明をするけど・・・・コレ鈴ちゃん本気?」

「本気も本気。こういうこともあろうかと、前々から作ってあったんだろ?今使わずにいつ使うんだ?」

まったく、本番前に弱気になるなよ。昨日から同じこといってるぞ、キョウ。



「僕のセリフ取らないでよ。・・・・ふぅ、言っても聞かないんだろうね君は。・・・じゃあ説明するよ。君のお待ちかねのVOBからだ。」


  背面装備:VOB-ヴァンガード・オーバード・ブースト-

  君の要求どおり、簡単に言っても難しく言ってもミサイルに体をくくり付けて飛ばす狂った兵装だ。
  君の普段使う電磁加速「オーバード・ブースト!」・・・オーバード・ブーストより早い常時時速2000kmの化け物だ。
  まぁ君のオーバードブーストは成長過程だから、成人ごろにはVOB超えてるかもしれないけどね。
  
  廃棄予定の小型ミサイルを4発国から譲り受けて作ったものだから、随分安く済んだよ。
  
  あ、それと、安全面には十全に配慮して作ってあるから、「推力をデチューンした奴」を今度有澤重工のほうで、
  自衛隊や米軍とかの特殊部隊向けに売り出したいらしいんだ。
  行き成りきてライセンスを売ってくれって。・・・・一体どこから嗅ぎ付けたんだろうね?
  しかも自家用ジェットの代わりにも使いたいなんて、変わってるよねあの人。
  
  まあ情報もとは十中八九大道寺さんだろうけど。

  しかし、有澤社長も兵器会社なんてやってるから嫌な人かと思ったけど、いい人だったね。
  最初は警戒されたけど、いい友達になれたし、鈴ちゃんの同類(バトルマニア)だしね。
  目と目で分かり合うとかどこのバーチャファイターだよ・・・・・・。妬けちゃうね。
  
  で、親友の鈴ちゃんには重要機密の新兵器もジャンジャン回してくれるって言ってたよ。
  
  それにしてもまったくいきなり無茶なこと頼んで・・・・自分から新兵器のテスターになりたいなんて。
  笑ってうなずいてくれたけど、初対面であんな失礼なこともうしちゃ駄目だよ。幼女の皮の面目躍如だね、まったく。
  斥力操作と慣性無効化で身の安全が保障されてる君じゃなきゃ、こんなこと許さないんだからね。

  ま、でもそういうわけだから今回の作戦で性能が実証されればVOBは大量生産されることになってるんだ。
  VOBのノウハウも蓄積されて、もっといい品が簡単に手に入るようになるかもね。
  本当に緊急の救助とか、人質えを取って立てこもってる現場に突入したりとか、使い方は色々あるから、需要は高いだろう。

  あ、わき道にそれたね・・・・・。
  
  えーっと、それと全身装備アタッチメントとして君の要望どおりロボっぽい鎧も作ってある。
  これは僕の趣味が優先されてる。ザクタイプだ。B.A.B.E.L.の制服とも合うように色は白が基調だけどね。
  まぁ君の言っていたホワイト・グリントとやらに見えなくも無いだろう。

  小型推進装置を随所に付けてあって、全部思念波で動かせるようになってる。
  推進剤は僕の開発したヘリウム-イオン電子活性型の・・・・ってわかってないね、その顔は。
  これがどれだけ画期的な発明なのか!
  
  はいはい、ばかになんてしてませんよー、拗ねない拗ねない。
  
  
  でも、下手な電子制御だと電磁誘導で壊れるのが目に見えてるから、この鎧自体はかなり単純な構造だけどね。

  そんなわけで制御構造はインパラなんたらとか言う国にあったレアメタルの石造のを参考にしてある。
  科学的じゃないけど、ただの電子制御より即応性はずっと上だ。
  文字通り君の手足のように動くだろう。軽いから負担も少ない。

  ただし、インパラのレアメタルをふんだんに使った超高級品だ。・・・かなり頑丈だけど、壊さないようにしてくれよ。

  で、この推進システムを併用すればば、君の弱点だった航続能力がぐっと増す。
  計算だと12時間ちょいはいけるね。
  
  どちらかというと、体を守るためではなくて、VOBを体につけるためのものでもあるし、レアメタルが高いから露出が多い。
  
  防御力はあまり期待しないでくれ。ただ、流体力学にのっとって、空中で操作しやすい線形構造をとっている。
  風圧なんかはぐっと楽になるだろう。
  
  君の斥力操作があれば必要ないかもしれないがESPパワーは節約するに越したことはないからね。

  腰の格納領域には、例の“アレ”が入ってる。作戦の要だ。二発あるけど、上手く使ってくれ。
 
  それと、VOB使用中は電磁制御能力を決して使っちゃ駄目だ。VOBは使い捨てだから電子制御盤が電磁誘導で焼ききれる。
  EMP対策は十全にとったつもりだけど、君の出力じゃ関係ないからね。


  で、次が有澤の改造AKBが二丁。弾倉が8個。
  全部麻酔弾だ。基本いくら当てても死ぬ心配は無い。存分にうちまくってくれ。


  最後に、僕の新発明Pip-Boyだ。


「ぴっぷぼーい?」

「前世で僕が嵌ってた外国のゲームのアイテムさ。Fallout3っていうんだけど、知らない?」

「しらない。」


  まぁいいや。じゃ、説明するよ。

  腕部装備:Pip-Boy 
  腕に付けるものだからPip-Boyの名前を借りてるけど、まぁ別物だと思ってくれればいいよ。
  君は元から知らないんだから、今更だけどね。
  
  で、機能なんだけど・・・・こいつは両腕に付ける事で、君の射撃技能を補助してくれる画期的なツールだ。
  君は射撃も上手いことは良く知ってるけど、流石に二丁拳銃ならぬ二丁ライフルじゃ弾をばら撒くぐらいしか出来ないだろ?
  でもこれを付ければPip-Boyは君の思念を感知して、念波で直接接触してる皮膚からダイレクトに手と腕に命令を出す。
  で、自動で照準を60パーセントまで付けてくれるから、
  君は残りの40パーセントを補えばいいってわけだ。

  サイコメトリーの研究が思わぬ所で役に立ったよ。紫穂君が似たような事をしていたからね。

  内部にはECMの部品を流用した君にもっとも相性のいい念波を出す装置と、念波を読み取るセンサ類。
  バランス感覚を補うためのジャイロ計測器、君の体調をモニタできる機能も付けてある。
  
  で、それらに加えて高度な演算装置がEMP防壁とレアメタル-チタン-カーボンナノチューブ外殻でぐるぐる巻きにされてる状態だ。
  
  バッテリーは君の首輪の常温超伝導ナノコイルと同じものを使ってるから、一度の充電で5年は持つ。

  液晶パネルは付けても君の発生させるEMPで焼き切れてしまうから、
  生憎君自身はどこでも自分の健康管理が出来るというわけじゃないけど、僕には24時間君の全てを知ることが可能だ。
  (実は考えてることとかもチョッとだけ判る)
  
  あと首輪と同じで万が一敵につかまった時、はずされないように取る方法は私しか知らない。
  レアメタルを添加したチタン合金は常識外の強さだ。切断される心配も無い。
 
  ああ、それとこれも首輪と同じで、基本チタンだから錆びないし体洗う時も器具使えば簡単に出来るようになってるから、
  お風呂の時も心配しないでね。

  

  ってゆーかはっきり言ってこれが完成した時は、僕は自分で自分を天才だと思ったね。
  皆本なんか目じゃないよ。
  
  皆もっと僕のこと誉めてよね。

  今更だけど、医学・工学両方精通してるぼくって相当な万能博士だと思うんだ。
  だから、B.A.B.E.L.のみんなも僕をもっと重用してくれるべきだと思うんだよ!


「・・・・キョウってさ実は前世ドラえもんだったりしない?」

今乗ってるヘリの操縦席に放り込んである、完全無人操作AIロボットとか完全にオーバーテクノロジーだ。
完全に人型じゃなくて、ほとんどダンボール箱みたいなのがまたシュールな笑いを誘う。

・・・・・・有り得ないだろ。常識的に考えて。



「失礼な、あんなデブじゃなかったよ。僕は」

「ま、それはいいんだけどさ。コレ、デザインもうちょっとどうにかならなかった?デジャブを感じるんだけど。」

「なんと、デジャブだなんて君はプレゴグにも目覚めたのかい?羨ましい。」

「違うわ!この鉄塊みたいな無骨なデザインはどうにかならなかったのかって聞いてるんだよ。皮肉が通じないなぁもう。」


これじゃまるで手錠だ。しかも超極悪囚が付ける奴!
こんなのばっか作ってるからコイツの評判悪いんじゃないか?実は。


「えぇ・・・可愛くないかい?コレ。この曲線美は僕が流水研磨機で夜なべして削りだした一品だよ?それにみてよこの模様。日本刀みたいなこの美しい色と模様を出すのは苦労するんだよ?これが。首輪とおそろいで統一感もあるじゃないか。」

「夜なべって・・・・キョウがいいって言うならつけるけど・・・・・・・・・ね、似合う?これ。」

流石に、そんな思いの込められた品ならデザインがどうのこうのでつっぱねるわけにもいかない。
それに付けてみると確かに、模様と色は綺麗だ・・・けどキョウのいうような曲線美は・・・・やっぱり分からないや。



キョウの言うことに、基本的に間違いはない。今日が可愛いっていうのなら多分そうなんだろうと思う。
ちょっと自分には分からないけど、女の子になってまだ9年だし、まだまだ修行が足りないんだろう。



でもとっても軽いし、付け心地もいい。とてもじゃないが見た目鉄塊の腕輪が嵌ってるようには思えない。
目を閉じたら付けてる事も忘れそうだ。
これは、物理的に軽いんじゃなくて、このPip-Boyが人間工学を基につくられてて、私の腕にピッタリ合ってるからだ。

これほどのもの、私の体を知り尽くしてるキョウにしか作れないだろう。

すごい。


「うん、似合う似合う。下手なコスプレよりファンタジィだ。元がいいと違うねやっぱり。B.A.B.E.L.の制服ともよくあってるよぅ。ほら、記念写真とろう。」


面と向かって誉められると、ちょっと照れる。



「・・・・・作戦前に何言ってるんだか・・・ばか。・・・うん。いいよ撮ろう。」


「じゃ、早速・・・・・・ほら笑って、3.2.1.・・・はい、チーズ。」


  にっ。




パシャッ!

ちょっと眩しかった、半目になっちゃったかも。


「・・・ね、いまどき古臭いカメラだよね・・・・キョウの。どうしたのそれ」

「ああ、これはね・・・こっちの家族から、唯一貰ったプレゼントなんだよ。捨てるついでだったんだとは思うけど、修理して今でも使ってるんだ・・・・未練だね、コレは。」


「あ・・・ごめん。」

「・・・・いいよ、そんなの。それより、これの現像には時間と手間がかかるんだ。バットに現像液つけて濯いだり干したりめんどくさいんだよ、けど結構楽しい。・・・後で一緒にやろう。だから・・・・絶対写真を見に帰ってこなきゃ駄目だよ。死んだりしたら許さないからね。鈴。」


・・・・・・当然だ。生憎こんなところでケチなテロリスト共にくれてやるほど、安い命は持ちあわてない。
絶対に帰ってくる。





「わかった。現像するの楽しみにしてるよ・・・・・往ってくる!」

「ああ、・・・・往け!」


背中に、VOBを装備する。


ヘリから直接VOBを起動すると、ヘリがバックブラストで酷いことになるのでまずはノーロープバンジー。
髪が風で大きくはためく。


































「VOB スタンバイ-セットアップ。」

「VOB システムオールグリーン。




               



               ・・・・特務エスパー、ザ サーヴァント。出ます!!」







《・・・・ザザッ・・・了解、作戦名オペレーション・テトラポッド、始動。・・・御武運を祈ります。》











ドドドドドドドドドド......................................ゴオオオオォォォォォオオオ・・・・・・・!!



















06:30   合 衆 国  大 統 領 妻 子 救 出 作 戦 -オペレーションテトラポッド- 始 動  。





06:31────B.A.B.E.L.特務エスパー、コードネーム・ザ サーヴァント。海上輸送ヘリより射出完了。















■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■














《 ・・・・特務エスパー、ザ サーヴァント。出ます!!》



「了解、作戦名オペレーション・テトラポッド、始動。・・・御武運を祈ります。」







───朝焼けの中、東郷鈴とそれを乗せた死出の船が白煙を挙げて空を渡る。

美しく赤く焼ける空が、まるで今は地獄の釜の炎のように見える。


さしずめ、渡し守はあの男か・・・・・。



「どうして、鈴ちゃんを往かせたんですか・・・・・桐壺局長。」

「それが最も勝率の高い作戦だったからだよ、皆本クン。君ほどの頭脳の持ち主なら分かっているだろう。戦術的にも、政治的にもこれがベストな選択なんだ。・・・・納得したまえ。」


「それでも・・・・鈴ちゃんはまだ9歳なんですよ!?それをミサイルにくくり付けてハリネズミの空母に突撃させるなんて・・・・・。」

VOB・・・・あれは狂気の兵器だ。開発コンセプトは効率のいい兵士の輸送手段だが、
設計思想は旧日本軍の回天や桜花、震洋と大差ない。自爆する前に兵士を投下するというだけだ。
帰還の手段はまったく考えられてない、特攻兵器。

ただ違いは、戦場にたどり着いた兵士が自爆して敵を殺すか、死ぬまで銃を振り回して殺すかの違いだけ。









(NEXTの場合は、単身敵陣に切り込んでも脱出・帰還は容易ですが、
歩兵ではまさに敵陣にボッチの状態で孤軍奮闘しなければなりません。
大抵のエスパーソルジャーでも大差ないでしょう。
性質上、少人数作戦に向いた兵装ですし皆本の言ってることは一面では間違いではありません。
ただし、どんな発明品も使い方を誤ら無ければ、平和利用できるのも確かでしょう。

しかし村田には軍事センスは皆無なので、人質をとって立てこもってる現場にVOBで突入することはまず有り得ません。
今回の作戦はドンピシャで救出作戦ですが、例外だと思ってください。

普通人質はまず間違いなく死にます。

今回皆本は幼女をミサイルに括り付けて飛ばすという狂気の沙汰に、普段の冷静さを欠いています。半ば錯乱してます。

村田並のいい人ですからねー。皆さん生温く見守ってあげてください。)








今回鈴ちゃんが装備しているのは麻酔弾だけど、この作戦は噂によると村田と繋がりのある兵器会社の製品テストでもあるらしい。

VOBなんて狂った兵装を考え付くんだ、まともな会社ではないだろうが。


最近やたらと鈴ちゃんには新兵器が回されると思っていたけど、そんな裏があったなんて・・・・・。

どいつもこいつも狂ってやがる!!


「黙りたまえ!!皆本クン!!・・・・・代案も出さずに吼えるだけの立場は楽なものだネ!?そうまでいうなら、別の作戦を考えてみせたまえ、今すぐ!!・・・・・気に入らないが、実に!気に入らないが!!、村田クンのプランが最も“安全”だと判断したからこそ、この作戦を了承したのだ。邪魔をするだけなら司令室から出て行きたまえ!」


「ぐっ・・・・・・。」

「君は若いとはいえもう大人だ。そしてB.A.B.E.L.の局員の一人として責任ある立場だ。ワシは恨まれ役になってやる気はないヨ。どうにか自分で折り合いを付けたまえ。・・・・それに鈴ちゃんはやる気だヨ。自分の身より人質になった前大統領の妻子の無事を心から案じている・・・・私たちよりもよっぽど彼女のほうが大人だ。・・・・ワシは自分で自分が情けない・・・・うぅ・・・。」


日本の領海ギリギリに不気味に静止するコメリカの巨大航空空母、艦名-スピリットオブマザーウィル-。

本来巨大である空母をさらに巨大と言い直すのだから、如何にそれが巨大かが窺い知れよう。


しかし例の一件でいま日本とコメリカの関係は冷え切ってる。そんなところにいられては両軍とも睨み合って行動を起こせない。




しかも、連中のいう「自由」を勝ち取るために決起した、たった四人の「対テロ特殊部隊デッドセル」
とやらはロシアの私兵部隊と合流して、他所様の船であるはずのSOMを完璧に制御して見せている。

先行投入されたアメリカ海軍特殊部隊SEALsは見事に海の藻屑となった。

本当は大統領を誘拐したかったようだが、そちらは失敗し次善の策として大統領妻子を誘拐したようだ。
バベルの諜報部は彼らが彼女たちの遺伝子を元に何かをしようとしているという情報を入手したが、それが何かはまだ分かっていない。


公的には、彼らが要求してるのは現金300億ドル。

呑まなければ日本と缶国、仲国等ににニュークリアミサイルを発射すると宣告してきている。


脅しではない。
あの艦には本当にニュークリア兵器が搭載されており、実際にそれが可能だ。


彼らが占拠したSOM-スピリットオブマザーウィル-は大戦の経験から、
各ブロックごとにテレポートキャンセラーと空母のニュークリア燃料炉の莫大な電力で稼動するECMを搭載している。

ECMにはESPを発動できる特定の念波域が設定されているが、閾値は狭くそれを特定するのは不可能に近い。
そして合衆国の超能力兵士がつけている念波調整機は、静脈認証だから奪っても本人以外使えない。



最重要軍事機密のためと、詳細な構造どころか念波域の情報さえ明かそうとしないコメリカ政府には反吐が出る!
大統領の妻子とこちらの特務エスパーの命がかかっているというのに!!



そして航空空母といえど、作戦しだいでエスパーの助けがあれば容易く落すことができることも、最早この世界では常識だ。
だからこそ大戦末期、日本の優秀なエスパーソルジャーを落すために大量の対空砲と近接信管ミサイル、
山のような機関砲を搭載し、そしてその全てをコンピューターで同時に制御できる化け物を作り出した。

結局終戦に間に合わず、「公式には」初陣はベトノム戦争だとされている。

そして「公式には」老朽化し、既に駆逐艦の的として海中に没した・・・・ということになっている。



しかし実際には戦後60年近くたつというのに、今も改修と改良を続けられ、大型化を繰り返し、最早当時の面影すらない。
しかも信じがたいことにあの巨体で強力なステルス迷彩と光学迷彩を搭載し、普通は肉眼でも発見するのが難しいほどだという。

あれはもともと改造が前提の特殊なブロック構造で建造され、

各ブロックごとに改修すれば老朽化知らずの非常にエコな空母なのだそうだ。




脱皮するかのように装甲を脱ぎ捨て、
新陳代謝するかのごとく、その時代の最も進んだ最新兵器が優先的にまわされるのがあの空母だ。




試作段階の最新型のレーザー兵器さえ山のように搭載されているらしい。

───一秒あたりの弾幕がどれほどの量か考えたくも無い。

そして、結果として、ベトノム・イロク・丁鮮等で数多の二つ名を持つエスパーを撃墜し、

コメリカ軍はその存在を否認しているが、ついたあだ名はそのまま「エスパーキラー」

安直だと思うが、その戦果と衛星写真の威容を見れば、なるほどそれ以外の渾名は思いつかない。

惜しむらくは、航空空母というわりに機銃でハリネズミにしてしまったせいで艦載機はほとんど搭載できなくなっていることか。
本末転倒だと思うが、おかげで反乱に抵抗した一部のコメリカ兵が最後っ屁とばかり貴重な艦載機は全て破壊してくれている。
加えて、ステルス迷彩は相変わらずだが、
少数のテレポーターの空間歪曲能力を利用していたと思われる光学迷彩は使えなくなっている。

ただ、最後まで抵抗した兵がどうなったかは、甲板のミンチをみればわかる。
カモメがたかっているが、その真っ赤な血まで全て啄ばむことは出来まい。

もしこの作戦が公式のものなら、甲板の彼は二階級特進どころの騒ぎではないだろう。
それだけに、彼もまた不憫ではある。

だがそれに輪をかけてあんな化け物に若干九歳の身で挑まなくてはいけない鈴ちゃんが可愛そうだ。

いくら彼女がECMの殆ど効かない特異体だからって、・・・・
本来きっとそれは神様があのこに自由を授けるためにくれた能力のはずなのに。

たった一人であんな化け物と闘わなくてはいけなくなるなんて!


こんなことになるんならそんな能力なんて無いほうが良かった!



こんなことは、あの三人には決して言うことは出来ない・・・・・・!。

  



「くそう・・・・くそぉ・・・・・・・・。」


「祈れ、皆本。この日の本を守る八百万の神に。最早我らに出来ることはそれだけなのだヨ・・・・・・・・」








































つづく






あとがき


日本以外の国名が変なのは仕様です。
それと、今回いろんな勢力が判明しましたが、別にクロスオーバーではないしこれ以上転生者は増えないと思います。多分。
彼らは一発ネタでコレ以降進行に関わってくることはほぼ無いと思われます。

パロディだ。と思ってください。

っていうかもう絶チル関係ないね、もうね。

あと掲示板の皆さんはいろいろ心配してくださっているようですが、
自分欝展開きらいなんで、救われない欝展開は無い。とここで読者の皆様に誓います。
あと作品とキャラクターに愛の無いアンチ野郎も大きらいなので、皆本たちも必ず陽の目を見ます。

それも誓います。


長いので、ちょっとキリが悪いんですが次回に続きます。



[29474] 第四話 基本的に、勘違いってギャグだからみんな軽く見てね。(中)
Name: toxic◆037c1b51 ID:ccbe12db
Date: 2011/09/01 00:35











絶チル転生、勘違い。

第四話 基本的に、勘違いってギャグだからみんな軽く見てね。(中)

























「ヒャッホーーーーーーーーーーーッ!」


VOBサイコーーーーーーーーー!!!

いやー有澤さんが自家用ジェットの代わりにしたいってい言うのもこりゃ判るわ。これは気持ちいい。
慣性無効化能力を持たないノーマルの有澤社長だと、あんまり速度はだせ無いだろうけど、
風圧とかはアイアンマンみたいな全身強化服で何とかなるだろう。

加えて村田印の安全保障。あの心配性が太鼓判を押したんだ、ジェットコースターより安全なのは確定的に明らか。



「ん~~そろそろ見えてきたな、推進剤も少なくなってきたし・・・・もうチョッと接敵してからパージするか。」



既に私の周囲には弾幕がビュンビュン飛んでるが、当てられない止まらない。

すぴりっとおぶまざーうぃる、なんて名前にするからこんなことになる。まさかとは思ったが思ったが、VOB付けてたらホントに当たらない。

まぁ成層圏スレスレから垂直落下してくる小型ミサイルを誰が打ち落とせるものか、見てみたいものだが(笑)。








「ん~~まさかぶつける訳にもいかないしなぁ・・・・・・。」










人質に大統領妻子と無力化されたコメリカ兵が取られてる。流石に見殺しにするわけにはいかないからなぁ。

幸い、キョウに船体の大まかな構造を写真から推測してもらって、本職の軍人にどこのブロックにいそうか推測してもらった。
(しつこい様だが、村田恭介に戦闘センスは皆無。加えて言うなら悪巧みの才能も皆無。)

派遣されてきたのはコメリカの軍人なのだが、殆ど丸裸にされたSOMの図面をみて冷や汗をかいてた。






それと、こんな子供である私にに(不謹慎だが)栄誉ある任務をまかせていただけるなど望外の喜びだったのだが、
同時に出番を奪われた軍人に文句の一つも言われる覚悟はしていた。

それもコメリカの大統領の妻と息子を救出する作戦に外国の部隊しか出撃できないなんて、相当腹に据えかねているだろう。

私も、日本の総理大臣や、ましては天皇陛下の救出に、
外国の部隊の餓鬼しか使うことが出来ない等と言う事態にもしもなってしまったら腹がねじ切れているだろう。

だというのに、このお方は苦虫を噛み潰したような表情をするだけでなにも言わないでいてくれた。

そのあと、自分が不機嫌な顔をしていたことに気付いたのか、

「ふがいない大人ですまない。本当にすまない。・・・・許してくれ。」

と頭まで下げてきた。




・・・・・感動した。
これほど誇り高い軍人を私ははじめて見た。こんな人間がいるのはフィクションの中だけだと思っていた。

この方は例え他国の軍人(正確には違うが)で、しかも子供でその上で女である私に対しても、自分と対等の人間と捉えてくれた。
そして任務に赴く兵士に対しての、最低限の礼儀を失したことに気付き、それを心から恥じたのだ。
そう、彼の高潔な精神は自らの表情一つ、誤魔化す事をよしとしなかった!



そしてそれを素直に謝罪する。




昨今の日本人よりもよほど詫び寂びと武士道精神を理解している深いお方だった。

そんな人間に対し、笑って許す以外に私にできることが何があるだろう。
それ以外の行動は、転じて私の恥となるだろう事は疑いようがない。




彼と出会えた事は私にとって、今回の任務を遂行する上で、どんな勲章や賞賛よりも最も得がたい報酬だった事だろう!

そこからの私は終始ご機嫌だった。人質の命がかかっているのに不謹慎だろう!とまたキョウにビリビリで怒られてしまったが、
それでも私の機嫌は終始良かった。

(実はこの男は前世から幾ら怒られても懲りない子供だった。
どつかれて泣いても、飴ちゃんあげるどころか三歩あるけば忘れてしまうトンでもなく能天気な男なので、
電撃くらいしかコイツに反省を促すことが出来ないという事情がある。
最近電撃にも慣れてきたようで村田も頭を抱えているようだ。ただし、後に描写するが今回のビリビリは別件である)


コメリカの将兵さんとの会議はスムーズにいったとは言えなかった。
例え作戦会議でも、彼と積極的にお話したいとおもって質問ばかりしていたが、
30分も関係ない質問までしていると、話が進まないといってまたキョウがビリビリで怒ったので流石に黙った。
私も流石にちょっと不謹慎だとは思ったし、迷惑だっただろう。でも謝ったらちゃんと許してくれた。
本当に心の広い方だ。


で、その方の推測によると、人質になったコメリカ兵は外円ブロックの左右どちらかの船の腹辺りにいるらしい。
腹の辺りに二機のニュークリア燃料炉が併設されているので、そこに対する攻撃の盾にするために、
自分ならここに人質を配置すると言っていた。



SOMに乗っていた人員はあんまり多いから大部分は殺されているだろうが、
人質になりうる将官や科学者等が一つのブロックに集められているだろうとのこと。

二つに分けていないと思われるのは、ロシアの傭兵部隊と合流したからといって、
SOMを動かすために大量の人員が必要なのは変わらないからだそうだ。

人質は、分散させたほうが効果的だけど、このギリギリの人数じゃ監視に回せる人員はほぼいないだろう、と。



考えてみれば、当然だ。領海スレスレで動かないのも、多分動きたくても動けないんだろう。
だから停止しながら脅すためにこんなところを選んだ。


ただ、歴戦の軍人といえど、あの巨大な空母のどこに大統領夫妻が監禁されているかまではわからないと言う。


・・・・だから、作戦としては優先順位が逆になってしまうがまず将官たちがいるブロックを特定し、救出。

そこで人質にされた将官達が不屈の闘志で情報を集め、
ホリウッド映画よろしく大統領妻子の監禁場所を特定している事に賭けるという作戦を採る事になった。





───いいね。悪くない、いや・・・・最高だ!


この男はコメリカを愛しコメリカ軍を愛し、信仰している。

必ず人質の将官が大統領妻子の居場所を特定し、
諦めることなく虎視眈々と一瞬のチャンスを逃さぬように、その牙を研いでいるだろうと信じている。

分の悪い賭けは好きじゃないが、この男がこうまで信頼するコメリカ軍将兵が惰弱なわけが無い!
100%確実に、大統領妻子の情報を入手しているだろう。

ならば、後は実行に移すのみ。

キョウがまたギャーギャーうるさかったが、なんとか納得してくれた。
こと私の戦闘における直感はプレゴグ並だ。
いや、もしかすると本気で限定的な予知能力に目覚めているのかもしれない。
今まで私のこういう直感が外れたことが無いのを知っているからだろう、しぶしぶ黙った。

確かにこんな作戦ともいえない作戦、狂気の沙汰だろう。
だが、目の前のこの男も大統領の妻子の命がかかってるなかで平然とこの作戦を言ってのけた。

それに、この作戦を聞いた時脳裏にビビっと閃光が走ったようなあの感覚がした。
間違いない。この作戦は成功する。
















「VOB、パージ!ザ サーヴァント、突入します!!」



VOBを海に命中するように設定し、切り離す。












「PA(プライマル・アーマー)展開!・・・・やあああぁぁぁぁあああああああああああああ!!!」








───説明しよう!東郷鈴は複合能力者であるが、厳しい訓練によって合成能力並みの応用能力をいくつか発現することに成功した!
今はまだ登場していないが、シャドウ・オブ・ザ・チルドレンのティム・トイや、
いまはまだ裏切っていないがP.A.N.D.R.Aの九具津 隆のように、アニメや漫画、
ゲームへの憧れや執着が超能力に影響する事は多々ある!(・・・・ということにしといて!)

そして東郷鈴のアーマード・コアへの思いは彼らに勝るとも劣らない!

結果、その一つとして電磁制御能力と斥力操作能力を合成発動させることに成功し、
東郷鈴は自分の周囲に強固な電磁気の障壁を展開することに成功したのである!

詳しい原理は各自勝手に妄想してね!───





ドゴオォォォォォォン!!!



VOBが海中に没すると同時、私もPAを展開してSOM。-通称カーチャン、姉歯、まさおビル-のどてっ腹に突っ込んだ。





































・・・・・・あの軍人さんには悪いが、一つだけ告白しておかなきゃならないことがある。




実のところ、人命がかかってるし軍人さんのおかげで志気は高いけど、

このSOMという名前とキョウの解析のせいで・・・・・・・今回の私は緊張感が皆無に近い状態だ。

だってゲームと現実を混同するのはいけないとは思うが
何しろ殆ど今のところこいつの性能は足の無い姉歯そのものだ。

それが動力炉付近に突入されでもしたらどうなるかは言わずともわかる。


私の任務は現時点において、人質を犯人から救出するのではなく崩れ落ちる姉歯から救出する任務に変更された(笑)。





すぐに ばらばらに なるだろう 。

もうあちこちが誘爆したか、老朽化した部分とか手抜き工事の部分が崩壊している音が聞こえる。





流石に60年も軍役について、しかも無茶な拡張工事してればこうなるだろう(笑)。
俺だってわかる、誰だってわかる。



・・・・いや、嘘ついた。私はキョウに言われなきゃ分からなかっただろう、馬鹿だから。


だが、頭のいい奴でも、時に人間と言うのは面白いもので、耳障りのいい事実、
都合のいい現実だけを選択してそれ以外に耳を貸さないことがある。
多分薄々わかっててほっといた奴も多いんだろう。

コイツの華々しすぎる戦果と、経済的で美味し過ぎる開発理念。金回りのいい改造サイクルに多くの人間の目が眩んだのだ。


多分ホントの報告してももみ消されたり、姉歯よろしく資材の誤魔化しとかも横行してたんだろうなー。

その名のとおりマジで姉歯wwwwww。


























・・・・・・・・・ただ、心残りがある。

こんなものに膨大な税金を取られていたコメリカ国民と、誇り高い軍人さんにはこの事実はあまりにあまりで・・・・・・・






・・・・・・ついに伝えられなかった。この事実を。








空港をでる間際、悩みながらあまり不憫でにあの軍人さんを見つめていたが、
私の様子が変なのを純粋に心配してくれたあの純粋な目を私は見つめ返すことが出来なかった・・・・・。

目尻に涙が浮かんでいたのを彼に悟られなかっただろうか・・・・・・。










───これは、私の罪だ。


あの時あの誇り高い軍人さんに事実を伝えることを選択しなかった私の罪。

きっとあの嘘を嫌う軍人さんは私のした事を怒るだろう。そして、祖国の情けなさをひとしきり嘆いた後で、私の過ちを許すのだろう。

だけど、これ以上のコメリカの醜態を世界に見せ付けるような事になったら、彼はもう立ち直れないかもしれない。

それよりは、私が単騎でSOMを落したという偽りの栄誉を受け取ったほうがまだマシというものだ。





だから、この事実はキョウと私で墓の中まで持っていこうと二人で話し合って決めた。


あの誇り高い軍人さんの、心を傷付けないように・・・・・。



ドォン!     


                 ドゴォ!      


   



    ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・・・・・・
















早っ!?  

予想より遥かに酷い!


・・・・・皮はなんとか持ってるようだが、中身はもう本気で酷いもんだ。テロリスト共は戦闘どころじゃない。






「マーカーに反応なし!右側ははずれっ!、ニュークリア燃料炉をぶち抜きつつ左側へ向かう!」





・・・・・・・・もう私の涙腺は結界寸前だった。



こんなのって、こんなのってないよ!!











「なんでお前たちはこんな、こんな事をしたんだ!?酷すぎるだろうがぁぁぁぁぁああああああああ!!」














────突入から一分、まだ東郷鈴は一発も撃っていない。



テロリストは崩落する姉歯から、逃げ惑うばかりで鈴が通り過ぎても何も出来ないでいた。─────

















■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■





そのころの村田。



「ぷー、なんだよ鈴ちゃんったら。あんなコメリカ野郎にでれでれしちゃってさ。軍人にしちゃ、そりゃあ線の細いイケメンだったけど鈴ちゃんてあんなのがいいのかな・・・・・・・・・・・・・・・・あー!だめだめ!中身は男なんだから!私は前世からBLだけは許せないんだ!GLはいいけど!」


「くそぅ・・・・・なにさなにさ、そりゃあ僕は目つき悪いかも知れないけどさ、そんなに顔も悪くないしさぁ・・・・・・・。いや別に鈴ちゃんが好きとかそう言うんじゃなくてね?」


「うぅーーーー、でも八つ当たりでびりびりしちゃったのは悪かったよね。鈴ちゃん怒らないからついついやっちゃうけど、良くないよね・・・・。」


「っていうか!なんで僕はこんなことばっかり考えてるんだ!?・・・・・・そりゃあ鈴ちゃんは可愛くて料理が上手くて家事が大好きでちょっと喧嘩っ早いとこはあるけど、普段はまさにお嬢様って感じでおしとやかで、女だった身からすれば嫉妬するほどだけど・・・・・・。」





「うがーーーーーー!!違う!僕は違う!僕はロリコンじゃないんだ!皆本とは違うんだよーーーーーーーーー!!!!」


「あ、でも鈴ちゃんって中身は30過ぎだし・・・・・・・ってそれでも駄目だって!それ以前に僕は鈴ちゃんの事が好きでも何でもなくて・・・・・・・・。」

















村田のビリビリは8割が嫉妬です(笑)。
鈴にやたらと拘束具みたいな発明品を渡すのは、
天才・村田の狂ったファッションセンスと無意識の独占欲がジョグレスしてフュージョンした結果。


それがどういう結果をまねくのかは・・・・・・またそのうつ語られる事になるだろう。



















つづく







[29474] 第四話 基本的に、勘違いってギャグだからみんな軽く見てね。(中②)
Name: toxic◆037c1b51 ID:ccbe12db
Date: 2011/09/01 00:35














絶チル転生、勘違い。

第四話 基本的に、勘違いってギャグだからみんな軽く見てね。(中②)



















あはははははははははは、あはははははははははは!

まるで鴨打ちだ!Pip-Boyすげぇ!

ニュータイプにでもなったみたいに、バカスカあたる!

あはは、流石にテロリストも左側の人質がいる場所は死守しようと、崩れ往く姉歯の中で孤軍奮闘中だ。
軍人さんの推測は当たってたらしい。マーカーも反応してる。

ただし、中央にあるニュークリア燃料炉をぶっとばしたから、注水装置と冷却装置が壊れて現在絶賛メルト☆ダウン中。

おかげで一時的に動力炉の電圧が上がりまくってECMもつられて大好評暴走中なんだwwwwww。
テロリスト共に加担するエスパーもESPが使えなくなってるらしくて、混乱に拍車がかかってる。無理も無い。
ECC(ESPキャンセラーキャンセラー)能力を持つ私でさえちょっと影響があるほどだ。



フンフンフン、~め~ると、融けてしまい~そう~~♪



メルトダウンさまさまだ。おかげでほら、こんなにも仕事が易い。


「うわぁぁぁあぁぁあああ!?」

「くそぉ、なんでテレポート出来ない!?」

「ロビーーン!?くそ、またやれた。二丁ライフルなんて中二臭いまねしてる癖に、なんてピンポイント射撃だ!?」



テロリストの悲鳴で今日もメシが上手い。


もうテロリスト共はテロリストやめて的に転職したほうがいいんじゃないかなwwwww?

幼女の的になるだけの簡単なお仕事です(`・ω・´)キリッ



あと中二臭いとか言った奴は股間に蹴り入れときました。




それにしても、改造AKBの調子もいい。改造麻酔弾にいたっては防弾チョッキの上から軽く突き刺さる威力だ。
村田印の即効麻酔もあいまって、当てるだけで完全に動きを封じる麻酔弾は実弾より凶悪だ。

レアメタル合金の鎧の推進剤機能も上手く作動してる。本当にキョウはいい仕事をするなぁ。
突入してから5分、ずっと浮遊しながら高速で移動してる。

こうまで楽勝だと遊び心もでてくるな・・・・・。




ふっふっふっふ・・・・・




ルパン式、跳躍瓦礫のぼり~!!

説明しよう!!ルパン式、跳躍瓦礫のぼりとは、

崩落する建築物の瓦礫を足場に瓦礫から瓦礫へ飛び移って危機を逃れるルパン御得意の超人芸だ!


エスパーになったらやってみたい事の一つだったんだが、夢が叶った!

なかなか機会がなかったんだよな~~!

キョウの作ってくれた鎧のおかげでやる意味は皆無だけどな!



「ほっぷ、すてっぷ、大じゃ~んぷ!!」







───────ガツンッッ!!









「アイタッ!?・・・・・・・・・・・・・・・・・・痛ぁぁぁぁい。」



うわ、遊んでてPA解除してたら飛んできた瓦礫が頭に当たっちゃった・・・・凄い血が出てる・・・・。

うわわ、よくみたらバベルの制服が埃とすす、それと私の頭からだらだら垂れてくる血で凄い事になってるよ。
ちょっと焦げてるし。

洗濯と裁縫が大変そうだな、こりゃぁ。









「う~~~、・・・・・・まじめにやろっか・・・・・。」







うぐぅっ、ちょっと反省・・・・・。

私はほら、ちょっと調子乗りやすいというか天狗になりやすいというか、そういうとこがあるからね。


前世からこれが原因でじぃちゃんとばぁちゃんによくどつかれてた。
両親は私に甘甘ですごく増長させてたから、バランスを取る意味合いもあったんだろう。

でも私って結構・・・いやかなり懲りないほうらしくて、拳を振り上げるじぃちゃんが疲れた顔してたの良く覚えてるなぁ・・・・。


死んだのも調子にのって一気呑みしたからだし、馬鹿は死んでも直らないって本当だったんだなぁ。身をもって知った。


今世では、甘やかすのは親父で、叱るのは姉さんと家政婦さんの役目だった。

妾腹の私でも何一つ文句も言わずに親父は引き取ってくれた。

死んだこっちの母さんの姓を名乗る事を選んだ後でも、何一つ変わらず暖かい家族だった。



バベルに来てからはキョウがビリビリで叱ってくれているんだけど、作戦中はいないのが当たり前なんだから。気をつけないと・・・・。






・・・・思えば私って本当にキョウに頼りっぱなしなんだよな・・・・、いっつも無茶苦茶いったり調子に乗って苦労かけてる。

今気付いたけど。私ってもしかして、いやもしかしなくてもザ チルドレンの三人娘とあんまり大差ない・・・・・・!?





あわわわ・・・・・やばい、嫌われては無いと思うけど、良い様には思ってないよね絶対!?

キョウに嫌われたら、一体誰が私の新兵器を用意するというんだ!?







この任務終わったら、なんか埋め合わせ考えなきゃな。



あ。・・・そうだ、



でもまずは、「いつも私に優しくお仕置きしくれてありがとう」ってちゃんと目を合わせて言おう。

それで、「これからも私にお仕置きしてください」ってちゃんと頼もう。

それが礼儀というものだろう。




いつもは気恥ずかしくて目を合わせてお礼なんて言えないし。言う時はぶっきらぼうな言い方になっちゃうから。

前世のじっちゃんは男なんてそんなもんでええって言ってたけど、今は女の子なんだからそうも言ってられないよね。



誰かを叱るっていうのは、本当にその誰かを思ってないと出来ない事だって前世のばぁちゃんも言ってた。

普通叱ってばっかりいると嫌われるもの。



私が調子に乗って痛い目見ないように、嫌われてもいいからいつも私の事考えて叱ってくれてるキョウには、

本当に感謝しなきゃいけないんだね・・・。



ふふふ。



っとそれより今は任務任務。お礼を言うのは帰ってから。






怪我した頭部はエスパーの生命線だから・・・・作戦中変な影響でないといいんだけど・・・・・。








































────それにしてもこの東郷鈴、天然である。











■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
















「なんだ!?今度は何が起こっている!?」


「ひどい揺れだ、この超巨大空母が揺れるなんて・・・・・・沈むのか?」

「くそ、くそぉ、こんな事なら80年もののワインもったいぶらずに開けときゃよかった・・・・・。」

「ひ、ひぃぃぃ、神よ・・・神よおられぬのですか!?ああ、神よ・・・・・・・」


「合衆国は俺たちを見捨てたって事か・・・・。非公式艦だからなぁ、骨所か名前さえ残らず地獄逝きだぁね。・・・・」


「うわぁぁぁぁぁ、うわぁぁぁあああああああああああああ!?」

「もうだめだ!もうだめなんだぁぁぁぁ!!いひ。・・・・・・いひひひひひひひひひひひひひひひ!?」




俺の名は、トム・ソーダフロート。
コメリカ合衆国少佐だ。

SOM、通称ESPキラーの艦長だ。・・・・・いや、だったという方が、正しいだろうな。
この艦は公式にはいない事になっているから、そうじて乗員の階級は低い。
だから俺もみたいな少佐どまりでも艦長の椅子を回してもらった。
正直、いままで華々しい戦果を挙げてきたのはこの艦と乗員たちだけで、俺は何もしていなかったに等しい。

無能で、テロリスト共にコメリカ最強の不沈艦をむざむざくれてやった、・・・・・情けない艦長だ。


何故か、奴らは合衆国最高機密の筈のEMCの効かない念波領域の存在を知っていた。
SOMは対エスパー戦に特化した戦艦(もとは空母だが、もはや戦艦と言っていいだろう)
の弱点であるエスパーの圧倒的少なさを突いてきたわけだ。

なにしろ、この艦は個人に戦力を集中させすぎるエスパーの存在に危機感をもったコメリカ軍産複合体が、
総力を挙げて60年もの膨大な時間をかけて建造してきた開発コンセプトからして本当のESPキラーなんだからな。

とうぜんエスパーに頼らないで戦えることを実証するため、目視による発見を(なにしろ本当にでかいから隠し場所にこまる)
阻むための200人程の、低レベルテレポーターしかここにはエスパーはいなかったのだ。
光学迷彩は彼らの能力を元にニュークリア燃料炉の電力で増幅して発動する装置らしい。
いずれは、これすら完全無人化に成功してみせると、艦載研究所の研究者達は息巻いていたな・・・・・。



・・・・・テレポーター達はさぞや肩身が狭かっただろう。

テロ公の連中はあまつさえこの複雑極まるSOMの構造と操縦を、あらかじめ知っていたかのごとく振舞ってやがるとなると、
裏切りモノは彼らの内だれか・・・・・いやもしかすると全員かもな。


この艦には、志気をあげる為に適性検査でESPに偏見がある者、
特に強い恨みや遺恨があるものを選んで集められたと言う話だから、
行き場の無い弱い立場の低レベルエスパーには生き地獄のようなものだったのかもしれない。
そのために、この艦には通常空母級には採用されているテレポーターによる人員・物資輸送システムが導入されてないのだ。
だから、この艦ではテレポーターの役割は本当に増幅装置のある部屋にカンヅメにして艦を隠させるくらいしかないのだ。


実際、負傷による人員の交代が多すぎるとは思っていたんだがなぁ・・・・・・。


「目をそらしていたツケか・・・・・・取立てが早すぎるぞまったく・・・・・。」


ははは、戦闘にださない筈のテレポーターが負傷?

訓練だってやらせてないのに・・・・・・。



おかしいどころではない。本当に俺はなにをしてたんだか・・・・・。


どうせなら、任期の切れるあと一ヶ月を待ってほしかったものだ・・・・。








───!?




  どごおおおおおおおぉぉぉぉぉおおおおおんんん!!!!!




「────特務エスパー、ザ サーヴァント!救助に参りました。人質の皆さん、無事ですか!?」



ニッポンのエスパー・ソルジャーか!?・・・・・・・・・・・・・こんな子供が!?

プライマリ・スクールに通う私の娘より幼いじゃないか!?





「お、おい、助けに来てくれたのか!?」


「やったコレで助かる。おうちに帰れる!」




「わ、私たち・・・・・ほんとに助かったのよね」





「や、やったわ。希望を捨てずにがんばってきた私たちをイエス様は見捨ててなかったのね!」





「はは、これで80年もののワインの封をきれるな・・・・・・」











     !?



───情けない!情けないぞ貴様ら!・・・・・この娘は特務エスパー。

貴様らがあれほど嫌っていた、無慈悲に打ち落としてきたESP能力者だ!

気付け!──あのぼろぼろの姿に!・・・・自らの血にまみれ埃にまみれ、焦げた服から炎の匂いを匂わせる壮絶な姿に何故気付かない!?

あんな子供が、ぼろぼろになってまで任務を遂行しているのだ。仮にも軍人がそれでどうする、大人がそれでどうするのだ!?

希望を捨てずに頑張ってきた?ふざけるな!ただ座して助けを待っていただけではないか!


こういう時、・・・・大人がまずするべき事は、子の労をねぎらい、怪我を心配する事じゃないのか!?

次々と仲間を拷問されて殺されていく恐怖、食事も与えられない極限状態だったとはいえ、これは酷すぎる。




誇り高きコメリカはここまで駄目になってしまっていたのか・・・・・・?


「ま、まって下さい!みなさん、押さないで・・・・・・・聞きたい事が、聞かなきゃいけないことがあるんです!?・・・・・・大丈夫、大丈夫です。皆ちゃんと助けますから!落ち着いて!。」







なんということだ。なんという醜態!・・・・・・・もう見てられん!





俺は大きく息を吸った。


スゥゥゥゥゥ・・・・・・・・・・・・・・・、










「静まれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇえええええい!!!」







           





俺たちが捉えられているSOM第2052号ブロックが怒声によって静寂に包まれた。

あたりはSOMが崩落する轟音に包まれていると言うのに、騒いでいた人間が黙るだけで随分違うものだ。








「・・・・・・・・私はこのSOMの艦長、トム・ソーダフロート少佐だ。救助に来てくれて有難う。怪我は大丈夫なのかね?」


「えっ・・・・あ、ハイ。見た目よりずっと浅いです。ESPの使用にも問題ありません。十分作戦行動続行可能です!」








ザ サーヴァントと名乗った少女は目を丸くして驚いた。気遣われる事がそんなに驚くべき事とは・・・・世は末期だ。

それにしてもザ サーヴァント(奴隷)とは酷いコード・ネームもあったものだ。

俺ならばふふ・・・そうだな・・ザ アークエンジェル(識天使)とでも名づけただろうに。

この白い鎧を身にまとった少女の名は。

(ザ サーヴァントの名前は、コードネームに頭を悩ませていた村田が鈴のメイドばりの働きをみて、
ザ メイドにしようとしたところ鈴が猛反対したので、二転三転して、メイドの繋がりからこの名前に落ち着いた。
鈴はFATEのサーヴァントをイメージしているようでそこそこ気に入ってる。つまりザ サーヴァント(召使)というわけです。)


「ああ、そうかね。それはよかった、本当に。・・・して、聞きたい事があるといっていたね?私に答えられる事なら、何でも答えよう。それが軍事機密であろうが、この状況で誰にも文句は言わせんよ。それと、人質は妻子以外ではここに居るので全部だ。」



そういう私の質問に、予想もしない返事が返ってきた。



「それなら、大統領の妻子の監禁されている場所を知っていませんか?」



「何とかして、情報を集めていてはいませんか!?」


「私たち日本とコメリカの諜報力では見つけられなかったんです。でもコメリカと日本はあなたたちも見捨てず一緒に救助する方針でしたから・・・・300億ドルの支払いなんて、払えるわけないしミサイルの発射期限は刻一刻と近づいてきてて・・・・・だから、」



「コメリカ・日本両政府は皆さんが奴らから情報を集めて、既に妻子の居場所を掴んでいるという一発逆転の可能性に賭けたんです。既に多くのコメリカ兵を失ってしまっていますがそれでも妻子と将兵、・・・・その両方を救うために。」





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・?、





「ま、まて、君はまさか一人で来たのか?別働隊は?こういうとき頼りになるはずのシールズ部隊はどうした!?」



「別働隊はいません。私は単独でVOB・・・分かりやすく言うとミサイルに乗って単騎で突入してきました!シールズ部隊は・・・・先行して突入し、殉死されました!」


「す、するとこの艦の惨状は君が一人で・・・・・・!?」


「はい、ネオ・クリア燃料炉を破壊した直後から崩壊が始まりました。おそらく大量に備え付けられている重火器類に誘爆しているものと思われます!」



そ、それならまだ納得できない事もないか・・・・・!?

単騎でこの艦の心臓を突くなど、今まで遭遇したどんなエスパー成し遂げた事はなかったんだが・・・・・・。
おそらく、テロリスト共はこの艦の性能を活かしきれなかったんだな!そうに違いない!?
他所様の船だ!そう簡単に使いこなせるわけがない!

加えて、この子が相当優秀なエスパーだったんだろう!

ははは、そうか、そうだよな・・・・我々の最強艦が、そう簡単に沈むわけがないものな!






ふぅ、・・・・おそらく、政府が我々も見捨てようとしなかったというのは、この子に伝えられた方便だろう。
確かに子供には、これくらいのカバーストーリーが必要だろう。

むしろ本命は後者。我々の誰かが、妻子の情報を掴んでいるという方。
元は軍人とはいえ、傭兵は傭兵。士気やモラルは低い事が多い。人質の目の前で機密事項を話すなどよくある事だ。

だが、今回は・・・・・・。




「・・・・残念だが、連中の錬度は目を剥くほど高い。見張りの誰も、ヒントになるような事すら口走らなかったし、それどころかまともな受け答えも一切出来なかった。そもそも見張り連中には妻子の情報は知らされていなかったんだと思う。連中は無力化したとはいえ、軍人あいてに片時たりとも油断はしてくれなかったんだ。・・・・すまない。」



最も、この有様の我々にここまでの警戒が必要だったかは実に疑わしいものがあるがね?

くくく、なんというざまだ・・・・・。




「ぼ、僕がしってるんだな!」







!?




「カール上等兵!下手な嘘はやめろ!この場での虚言は万死に値するぞ!?」



カール上等兵。なぜかこのコメリカ最強艦SOMに搭乗を許された無能のデブだ。
今回の騒ぎでも真っ先に降伏した情けない男だ。

まさか、こんなところで虚言を言い放つほど惰弱な精神をしているとは・・・・・!



「ち、違うんだな!本当なんだな!・・・・・僕は軍に入隊する前はそれなりに名の通ったハムだったんだな。ぼ、僕は無能で、デブで機械いじりしか脳の無い屑だけど、一番最初に奴らに降伏した情けない男だけど、・・・・・・でも本当なんだな。この連中の無線を真空管ポータブルラジオで傍受してたんだな、し、信じて欲しいんだな!?」





「ほ、本当ですか!?・・・・や、やったぁ!これで大統領の奥さんと息子さんも助けられます!ありがとうございます。」


「し、信じてくれるんだな!?」




・・・・・・?、狂ったにしては、冷静だ。話も理路整然としすぎている・・・・・・。

まさか、まさかとは思うが、この男・・・・・・本気でやり遂げたのか!?




「聞かせてもらおうか・・・・・この艦の対電子戦性能は君もよく知るところだろう。どうやって傍受したというんだ!?」


「そ、それはこの僕のこのポータブルでなんだな。バッテリーは最新の燃料電池を使ってるけど、他は真空管と単純な回路でできた骨董品なんだな。でも僕が特別に手を加えた特別なラジオなんだな。」

「玄人の手で扱えばこの艦の頭でっかちのコンピューターなんかよりよっぽど役に立つんだな。音質は最悪だったけど、人間が聞く分には何の問題もないし、連中もこの艦の電子戦装備に流石にちょっとは油断して、ロシア語の簡単な暗号しかつかってなかったから、簡単に解読できたんだな。」


「それによれば、連中はこの艦の船首付近にある3番目に防御の硬いB-32国賓警護ブロックに、ボスと一緒に妻子を閉じ込めているんだな。ボスはLv6のエスパーで、コメリカ・・・・いや世界最強の超能兵士ビッグボスのクローンらしいんだな!気をつけるんだな!。」

「ぼ、僕は変な記憶力だけはいいから、このヘンテコ艦の地図を全部覚えてるんだな!B-32室まで案内できるんだな!連れて行って欲しいんだな!こ、ここ何日か飲まず喰わずだったから、きっとちょっとは体重も減ってるんだな!きっと抱えてても飛べるんだな!?だ、大丈夫。弾除けぐらいにはなるんだな!」





な、なんと・・・・・・。私の目は節穴以下だったようだな・・・・。
こんな男がまだこの艦にはいたのだ!

これほど有能な男を、勇気ある漢を閑職に回していたとは・・・・・・・・・。くっ、今からでもやり直したい。

時間をさかのぼることが出来たなら、私はテレポーターに対する虐待を見てみぬフリをし、
この男の本質を見抜けず、馬鹿にしていた過去の自分を力いっぱいぶん殴っているだろう。

だが全てはもはや過去の事だ、悔やんでも悔やみきれぬが、前を向かねば!



「そ、そんなに詳細な情報が・・・・・ありがとうございますっ!」



みればカール上等兵の突き出した腹(ここ数日の断食とストレスで多少ましになってるが)に、少女が抱きついている。



「あ、ご、ごめんなさい・・・・・服に血が・・・・・」

「き、気にする事ないんだな、軍服なんて汚れてなんぼなんだな!」



ふはは、カール上等兵の奴、顔が茹で上げた海老のように染まってやがる。
幼女とはいえあの不細工のデブが女性に抱きつかれるなど、人生初だろうな!

あの少女も、よくやるものだ。本当に純粋でいいこなんだろうな・・・・。
私の娘など、最近は珠に帰る事ができればパンツは分けて洗濯機に入れろ等とぬかすと言うのに!!








「・・・・和むのはそこまでにしようか。・・・・ザ サーヴァント、君には今すぐにでも大統領妻子のもとへ向かってもらいたい。この崩落に巻き込まれかねないのは確かだし、ヤケになったテロ公共に撃ち殺されているかもしれん!見張りはあらかた片付けてくれたようだから、我々だけでも脱出は可能だ!・・・カール上等兵!貴様はザ サーヴァントと共に往け!男を上げて来い!」


「あ、そうだったんだな!ぼ、僕でも役に立てるんだな!・・・・・カール上等兵、確かにその命令、受領しました!なんだな!」


「え、え、でも・・・・・危険ですよ!カールさんノーマルですよね!?これから行く先にはレベル6のボスがいるんですよ!?貴方が自分で言ってたじゃないですか!」
(足手まといを必死に返そうとしてる。オールド・キングはゴミクズ(`・ω・´)キリッ・・・・なんて嫌な奴。)


「大丈夫なんだな!僕だって軍人なんだな!君みたいな子供を一人でボスの所にいかせるなんて出来ないんだな!」
(純粋に鈴の事を心配している。鈴のためには弾除けになる覚悟すら決めている。あら、なんていい男。)


「これは命令だ。ザ サーヴァント。君は別の命令系統にいるかもしれんが、カールは私の部下だ。私には逆らえん。この私の顔を立てて連れて行ってやってくれないか?なに、足手まといにはならんだろう!この男はこのコメリカ最強のSOMで一番勇気ある漢なのだからな!」


「お、お願いなんだな!」


「・・・・・・わかりました。こちらこそ、お願いします!それと、一緒に来るんならもう弾除けになるだなんて言わないで下さいよ、程度が知れます。私、絶対貴方を見捨てる気なんてありませんから!」


「わ、わかったんだな!」


「それじゃ、失礼します。・・・・・・よっと。」

「うわわ・・・・・・っ!?」



────はははははははははっ!・・・・・・・今日はこの子には驚かされてばかりだな!!!

9歳くらいの女の子にお姫様抱っこされている大の男(それも不細工のデブ)を見る事になるとは!

早すぎる今世紀最大のジョークだ!!!



「ちょ、背中とかでいいんだな、この持ち方は駄目なんだな!?」

「いいですけど・・・・・背面からは推進剤が噴出しますから、焼けちゃいますよ?・・・・それでもいいならおんぶにしますけど。」


「はははは、焼きブタになりたくなければ諦めたまえ!カール上等兵。・・・・・今日ここに愛用の一眼レフが無い事を心から無念に思うよ!無事に帰ったら、貴様の好きなものを幾らでも食わせてやるし、バカ高い酒を浴びる程飲ませてやる!せいぜい気張って往ってこい!」



「ちょっそんなぁ~~~~」


「いきますよ!・・・・喋ると舌を噛みます!」






崩落するの艦の中、二人の戦士が往く。

彼らに任せて置けば、大統領の妻と子は必ず無事だろう。

なんの根拠もないが俺はそう思う。


若い世代の風が来たようだ。・・・・・・さて、老兵は裏方仕事を片付けるとするか。





「・・・・・・いいか、貴様ら!先ほどはよくも醜態を晒してくれたな!?同じコメリカ軍人として俺は貴様らを恥に思うぞ!」


反論するものは居ない。落ち着いて、先ほどの醜態を理解してしまったのだろう。

いいことだ。


「我々は多くの同士を失い、わが生涯を共にしてきた艦もまた沈まんとしている。・・・・だが!艦と共に殉じる事は私が許さん!単身救助に来てくれたザ サーヴァントに申し訳が立たん!。」


「いいか!?家に帰るまでが遠足だ!一人も迷子にはなるなよ!全員生きて帰るのだ。テロ公共から武器は奪ったか?救命ボートの位置は頭に叩き込んであるだろうな!?おやつは300円までだ!はぐれた者は便所掃除一週間を言い渡す!・・・・・諸君、往くぞ!!!」






「YEAHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHH!!!」

























つづく









あとがき

[95]配管◆b0ba89efさん
>>ニュークリア燃料→ネオ・クリア燃料。

サーセンッしたぁぁぁぁぁああああああああああ!?
いや、ホント、オーバードブーストの時といい、滝壺氏の時といい、読者の皆さんには苦労かけます。主に誤字探し的な意味で。

ただニュークリアという単語は出しすぎて、もう修正するの無理なので、

第四話 基本的に、勘違いってギャグだからみんな軽く見てね。(中②)
以降、ネオ・クリアで通すということでお願いします(汗)




・・・・あと余談ですが、このあとデブで不細工なカール上等兵には、この後空前絶後のモテ期が到来します。

この任務を終えた彼の背中にはハードボイルドなオーラが立ち昇っていることでしょう。

ただし、カール上等兵は今回の強烈な体験でロリに目覚めてしまっているので、
彼を落す合法ロリの登場には5年の歳月を待たなくてはなりません。


これはまさに椎名隆志的ギャグ世界観だと思うんですが、どうでしょう?



「喋ると舌を噛みます!」
名探偵ホームズのあの人ですねぇ~~。
思えば、あのアニメのせいで私の理想とする女性像が確立してしまった気がします。
あんないい女めったにいやしませんけどね。

このセリフが出したかったんでよね。それだけじゃないですけど。

ではでは。




[29474] 第四話 基本的に、勘違いってギャグだからみんな軽く見てね。(中③)
Name: toxic◆037c1b51 ID:ccbe12db
Date: 2011/09/01 00:34













絶チル転生、勘違い。

第四話 基本的に、勘違いってギャグだからみんな軽く見てね。(中③)




























「こ、ここがB-32ブロック。テロリストのボスがいるブロックなんだな。・・・・・強固なセキュリティと直撃でもバンカーバスターにも耐えられるシュルター構造で、このブロックだけ射出して脱出することも考えて設計された要人警護室なんだな。ぼ、僕の知る限りこのヘンテコ艦のほかのブロックみたいに、手抜き工事はされてない貴重なブロックなんだな。」


「手抜き工事って・・・・あなた、知ってたんですか。」


「あたりまえなんだな。疑いもしない他の奴らのオツムがちょっとお目出度いだけなんだな。」

「違いありません。・・・・ふふ、この事は他言無用ですよ?コメリカの面子に関わりますからね。」


「わかってるんだな。・・・・・それで、B-32まで来たけどこのブロックに立てこもられたら厄介なんだな。ハッキングするから、扉の前でとまって欲しいんだな。」


この男、機械弄りが得意だといっていたがそんな事も出来るのか。

・・・・・けど、そのご自慢のハッキングの腕を披露してもらうのはまた後になりそうだ。
私の電子の目には、既に扉の目の前に仕掛けられたセムテックスが見えている。

バンカーバスターでも壊れないとか言ってたし、大丈夫だろう。




「いいえ、とまりません。────扉の前はトラップのフルコースです。


      




       ・・・捕まってて!


   

    ───オーバード・ブースト全開!!プライマル・アーマー最大出力!!


 




             こ の ま ま ブ チ 抜 き ま す ! ! 」















「ええーーーーーーーーーーーっ!!?イキナリーーー!?心の準備がまだなんだなーーーーー!!!!」










ぎゃーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・!!














うるさい!舌かむって言ってるでしょ!




ごめんなひゃいっ









・・・・・・・・・・・・・・・・、













ドゴオオオオオォォォォォォォォオオオオオオオオオンンッッッ!!!


















■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■




























ドゴオオオオオォォォォォォォォオオオオオオオオオンンッッッ!!!







・・・・・・・・・・・来たか!!



「・・・・・くくく、たった一人のエスパーが私の計画を台無しにしてくれた聞いたが、こんな小娘とはな・・・・・・・。」


デブを抱えた幼女とは・・・・・なかなかシュールで笑える絵だ。
こんなふざけた連中に私の計画の最後が潰されるとは・・・・・・・!!




「カールさん、降りてください。・・・・・どうやら人質も無事です。それに非戦闘員に攻撃を加えるような男ではなさそうです。巻き込まれないように、下がっていて。」


見た目よりよく頭が回る・・・・。
それに「目」がいいようだ。
この暗がりで私や人質を正確に認知している。

これは侮れんかもしれんな・・・・・。


「非戦闘員って・・・僕は軍人なんだな!?闘えるんだな!?」

「いいえ、今の貴方は数日の監禁と絶食で衰弱状態にあります。ただの病人です。Lv6のエスパー同士の戦闘にノーマルの貴方が小銃一つで割り込もうなどと、冷静ではない証です。・・・・・お願いです。下がっていてください」






「わ、わかったんだな・・・・・気をつけるんだな。あいてはおそらくサイコキノ。それ以外の能力は無いはずなんだな。」




デブは十分離れたようだな・・・・・・。
ふっ・・・だがしかしあの目、負け犬の目ではない。戦線を離脱しつつも虎視眈々とこちらの隙を窺っている。
ソーダフロート以外に、これほどの勇者がこの艦にいるとは思わなかった。

彼とは別の形で友人として出会いたかった。・・・・・が、今となっては最早関係ない。


ノーマル如きに私とこの小娘の決闘は汚せない!!

今は邪魔をせねばそれでいい・・・・・・・!!





「茶番は終わりか?」



まるで学芸会だな。
敵が攻撃を待っているとでも思っているのだろうか。

今回は、私だから問答無用でデブを殺すような真似はしなかったが、
戦場ではあんな荷物は弾除けにしかならんぞ?








・・・・・?、空気が変わった・・・・・?



「・・・・・侮りは、死を招きますよ。・・・・・私はこれでも、非公式ながらB.A.B.E.L.最強のエスパー・・・・ザ サーヴァント。


   




 ────── あ な た が ボ ス で す か ? 」





───!?

っく、・・・・・・・・・・・たいした気迫だ!

わかってはいたが、ただの小娘では無いらしい。

ならば、こう答えよう!私は・・・・・







「違う!・・・・私は、ビッグボスを超える者!・・・・・・・・ソリッド・スネーク!!。」



裏の界隈でこの名をしらぬ者はいない・・・・・。
ゴシップにもなっている。一般人でも名前を知っているものは多いだろう。

こんな狂った名声など私の求めるものではないが、今の私の名を答えるならば・・・・やはり
ソリッド・スネークが妥当だろう。

蛇は共食いをするものだ。





「な・・・・バカな、スネークは二年前、タンカーと一緒に沈んだはず!・・・お前が、スネークの筈がない!」




「ほう・・・・博識だな、デブのカールとやら・・・・それはコメリカ政府のトップシークレットだった筈だが?・・・・度を過ぎたパソコン遊びは身を滅ぼすぞ?」




「だが・・・・・・誤解されては叶わん、冥土の土産に説明しておいてやろう。・・・・・・・」



───私は、36年前・・・・コメリカ合衆国政府主導による、
  「恐るべき子供たち計画」によって生まれた三人のビッグ・ボスのクローン体の一人・・・・
  
  ───ソリダス・スネーク。

  

  「ソリッド・スネーク」という名は意気込みとして名乗っているに過ぎん・・・・・。

  親父を超え、優先遺伝を受け継いだ兄弟を倒し、幾度となくコメリカ合衆国の予想の上をいった忌々しき兄弟・・・・・・
  
  ───ソリッド・スネークを殺した男としてのな!!


  もののついでだ、今日の私はお喋りなのでな。
  何のことやらわからないといった顔をしている貴様・・・・そう貴様だ。

  そこの餓鬼。お前のために、ビックボスと、その息子たちの話をしてやろう。



  まぁいきなり核心を話すと、だ。
 
  世界最強のESP・ソルジャーと名高かったビッグ・ボスだが、
  意外と伝説の知名度に比してその能力は知っているものは少ない。

  このあたりがこの話の焦点だ。

  が、その理由を私が今わかりやすく教えてやろう・・・・・

  ・・・・世界中の戦場で、数多の戦功を挙げたビッグ・ボスのESPはLv3のプレゴグだった!!
  そしてそれは・・・・多少常人より勘が良くなるだけの、弱い予知能力に過ぎん・・・。
  今思えば・・・下手をすると本気でただの直感の類だったのかもしれん。








「そ・・・・そんなばかな!・・・・ビッグボスはLv7のエスパーを何人も落してるのは有名な公式記録なんだな!ありえないんだな!・・・・奴の能力は最低Lv7がボーダーライン!・・・・そんな能力じゃ、他にもあの有り得ない戦果は説明が付けられないんだな!?」







  話は最後まで聞けと、ママに教わらなかったか?デブ。
  最も、この話は最後まで聞こうが聞くまいが結論は変わらないが・・・・・。

  そう、有り得ない。だがあの男はその有り得ないと言う言葉をいとも容易く覆した。
  奴は普通の人間よりも多少勘が良くなるだけの能力を駆使し、通常兵器のみで名だたる高Lvのネームドを落してきた!
  ──文字通りの化け物だ。

  

  ははは、そういえばソリッド・スネークもまた、不可能を可能にする男などと呼ばれていたな。

  ・・・・奴とリキッドは、性格や体格・・・・そして戦闘スタイルなど、親父とは割とかけ離れた形質を獲得したクローン体だ。
  その点においては、私が最もビッグボスに忠実なコピーだと評されたよ・・・・・。

  ───、あくまでその一点においてはな!

  



  ソリッドとリキッドは、お互い似ても似つかぬ人物だ。顔はほぼ同じと言っていいほど似ていたが、それだけ。
  だが、ある意味忠実に親父の血を受け継いでいたのはあの二人だった・・・・・・。

  
  Lv3の予知能力。・・・・・最強を最強たらしめていたのは、そんなものではない。
  
  超能力では測れぬ、もっと深遠な何かがビッグボスとソリッドスネークにはあった・・・・・。

  
  だが、無知な研究者はビッグボスの忠実なクローン体でありながらLv6のサイコキノを発現した私を失敗作と罵った!

  私は、最強の兵士を作り出す計画から外され、別の計画に組み込まれた・・・・・。

  彼らより、優れたエスパーであり、優れた戦士である筈の私が!!




  そして紆余曲折あり、第43代コメリカ大統領に就任してからは奴らの目論見を無視し続けてやった。

  当然、奴らには追われ、地下に潜伏する身となったわけだが。

  だが生殖能力を奪われ、歴史に自分の功績を残す事も叶わんなどと、どうして認められる!?



  子を為す事が適わないなら、せめて、自分の名を遺したい!

  ─────歴史のイントロンにはなりたくない。いつまでも記憶の中のエクソンでいたい!!



  そのためにこの蜂起を決意した!!


  
  世界を愛国者達の呪縛から解き放つためにな!!



































  と、まぁ大体・・・・・・、こんなものだ。だいぶ略してあるがね。

  
  



  ・・・・・・・・・・・・・・・・ふふふ、ふはははははははははは!

  しかし、まぁこうまでコケにされるといっそ清清しいものだな・・・・・。


  オセロットとオルガは裏切り、雷電は取り逃がし、ロビエト人共はまるで役に立たん。
  
  デッドセルは軒並み倒れ、フォーチュンはただの人形・・・・・。
  
  ソリッド・スネークは始末したが、それさえ奴らの手のひらの上・・・・・。

  


  そのうえ新型ネオ・クリア爆弾などは存在せず、こんなオンボロ艦だけを押し付けられた・・・・・。

  



  唯一、奴らのシナリオと違うのはお前だろうな!ザ サーヴァント!・・・・・いや東郷鈴!

  
  

  お前の事は知っていたよ。
  
  できれば我々の仲間にしたかった。


  ・・・・?何を不思議そうな顔をしているのかね?

  裏の界隈では有名なのだよお前の名は。知らなかったのか?・・・・・その戦果、その境遇も含めてな。

  まぁ最早、叶わん話なのだが。

  



  だがまさかこれほど短時間でこのSOMを落されるとは予想外だった。
 
  驚いたよ。
  
  SOMの誇る戦果は伊達ではない。

  この船は確かに、お前がやったように無茶苦茶でも着艦されれば容易くハリネズミのような艦砲に誘爆する欠陥空母だ。
  
  だが、逆に言えば近づけさせないためにこれほどの艦砲が存在するのだ。

  これまでネームド共は近づく事も出来ずに蜂の巣になっていったものだが・・・・・くくく。


  はーはっはっはっはっははははははは!!!


  中々痛快だった!これほど見事な奇襲は歴史上類を見ないだろう。

  ・・・・おかげで、この大統領妻子も殺さずにすむ。




  ・・・・・うん?勘違いするなよ?奴らの計画では、こいつらはまぁ、なんだ。
  政治的に邪魔だから我々の燻り出しにかこつけて始末してしまおうという腹だったんだよ。

  この女、元ロビエトのスパイでね。
  しかも元王室の王位継承権持ちだ。
  知ってるやつはあまりおらんがロビエトにはいまだに王党派とよばれる強い勢力のテロリスト共がいる。
  そいつらの旗印に使われては適わんということだ。

  で、・・・・ハニートラップを仕掛けたまではいいが、間抜けにもコイツそのまま本気になってしまったらしい。


  まぁ、よくある話だ。


  だがもともと生かして返すつもりはなかったとはいえ、このままヤツらにいい顔させておくのも腹立たしい。

  何とかして生かす道を考え、万が一の確立を承知でこの部屋ごと射出しようか迷っていた所だ。


  くくっ、だがこの艦がこれほど早く合法的に沈んでくれるなら、話は別だ。

  いくらでもやりようはあるというものだ。

  だが・・・・・、





「東郷鈴!偉大なる軍人の血を引く少女よ!・・・・・お互い、敵として出会ってしまったからには後には引けんよなぁ・・・・・」



「当然です。・・・・・共感も同情もしてあげます。だけど、貴方は血を流しすぎた・・・・・・許す事は出来ません。」


「はっいらんよそんな物は・・・・・・。貴様まだまだ青臭いな・・・っと、いや、まさに餓鬼だったな。・・・・お前と話をしていると何故か同年代の大人と話しているような気分になる。」



「誉め言葉として受け取っておきます。・・・・・・・それで、あなたにはまだ喋っていない事があります。あなたは、どうやってこの妻子を保護するつもりだったのですか?・・・・・私にはここから助け出す事は出来ても、彼らに安全を保障する力はない。」






「くっ、この私を前にして勝った後の算段か?そういう台詞は私に勝ってから言うものだ。・・・・・・・・が、しかしもののついでだ。教えてやろう。なに、簡単な事だ。ここから助け出した後は誰にも渡さずそのままホワイトハウスに連れ込めばいい。・・・・・・・救助隊だとかSPだとかいう連中が来ても耳を貸すな。今代の大統領もまた、私には及ばぬながら傑物だ。直接妻と子供をヤツに引き渡せば後は自分で何とかするだろう。」














「さぁ、話し込んでしまったな。・・・・・・楽しいお喋りの時間は終わりだ。名残惜しいがね。」






───シャン!

───シャン!


ソリダスは双振りの日本刀・・・・・民主刀と共和刀を引き抜いて構えた。





「はい。・・・・私も、あなたとは別の形で出会いたかった・・・・・・・!」




───ジャキ!

───ジャキ!


東郷鈴も二丁の改造AKBを構える。






















最早二人に言葉はない。ただ、力で語るのみ



一秒が一時間に思えるほどの重圧、筋肉の僅かな動き一つが隙となりうる、常人には理解不能のキリングフィールド。





                  










             ────死闘が始まる。



















つづく








あとがき


すまんっす。今回も複線はちりばめてあるけど、基本シリアスですね。
っていうか鈴がバトルすると、戦闘だけは勘違いにさせるのが難しい・・・・。

ほかはいろいろ落しまくるので、そのへんは勘弁してつくだせぇ。

姉歯編は、まだ続きます。もう少しお付き合いください。


あと、こんなのソリダスじゃないって言う人もいるかもしれないけど、平行世界のソリダス・・・・IFのソリダスだと思って下さいね。

愛国者達は、・・・・・・まぁそんなに話に絡んでくる事はないでしょう。



  



[29474] 第四話 基本的に、勘違いってギャグだからみんな軽く見てね。(下)・9/1更に改修
Name: toxic◆037c1b51 ID:ccbe12db
Date: 2011/09/02 00:20
絶チル転生、勘違い。

第四話 基本的に、勘違いってギャグだからみんな軽く見てね。(下)


































───ゴォオオオ!!



・・・・・・このソリダスという男、早い!この私の機動についてくるとは・・・・・・・!!
いままでこれほど早い使い手にはあったことが無かった。
これは、まさか・・・・・。

「クイック・ブースト!?」

「はっ!・・・ソニック・アサルトが貴様の専売特許だとでも思っていたのか?・・・サイコキノにはこういう使い方もあるのだよ!!覚えておきたまえ!!」

私の電子の「目」には、ソリダスの背面からESPパワーで圧縮された圧縮空気の電子流ヴィジョンがよく見える。
プラズマ化するまで圧縮は出来ていないようだが、推進剤としては十分だ。
つまり・・・。

「ジェット推進の真似事と言うわけですね。・・・・・ただポロペラを回すだけより、圧縮された空気を使ったほうが推力が大きいのは当然・・・・。」

サイコキノ発現当初からLv6だったソリダス。
・・・・・出力は大して上がらなかったようだが、小手先を伸ばしてきたか!!


「本当によく頭の回る娘だ!だが分かったところでどうにもならん!」

!?

さらに早く!?


ソリダスの姿がぶれるっ!

────ガッ!!ドガガガガガガガガガガガガガガガガガガッッ!!


──一息に17撃!
ソリダスの得意技。
回転を続けるコマのような勢いでの連続攻撃。
まさに長きに渡る戦闘経験が作り出した「業」だ。
その早すぎる剣筋、本人さえ知覚してはいまい。

だが辛うじて凌いだ!なんという早さだ・・・・・。
慣性制御と電磁制御で神経回路内の電気抵抗を0にしている私でなければ反応できなかっただろう・・・・・。



「凌いだか!・・・・・だがいっそ一思いに死ねばいいものを!」

「思えば貴様も憐れなヤツだ・・・・・・・私も多くの少年兵を殺し、また育ててきたが・・・・貴様ほど悲惨な奴はそうはおらん。」


・・・・?、何を言っている?・・・・・私が狂っているとでも言いたいのか?
確かに私は戦闘狂だが・・・・・・・。



「貴方に憐れまれる謂れはありません。・・・・・貴方は何を言っているのですか?」

問答してる内にっ!
改造AKB、銃剣モード!!

───ジャキン!ジャキン!

回転しつつ飛び出す有澤の銃剣。
重層セラミックスの骨格にチタンを蒸着させ、それをカーボン粉末と焼結させた特別製だ。
ようは、滅多なことでは刃毀れもしない超合金銃剣!!




「ふ・・・・自分が苦しんでいる事にも気付けないとは・・・・。雷電とはまた違った意味でお前も目をそらしているのだな。」

・・・だから、さっきからこの男は何を言っているのだろう。
意味不明なことばっか言いやがって。・・・・・コイツも人生色々あったのはわかるけど、・・・・・くどいぞ!
戦場に言葉は不要っ!
・・・・・?
こいつの目・・・・・、なんか変だ。・・・なんだ?変なふうに歪んでる・・・・・・!!
────!
そうか、やっと分かった。コイツ、





・・・・・・・・・・私を見ていない。私に重ねて、別の誰かを見てるんだ・・・。

なんてことだ!
───────今の私はお前だけ、お前しか見えないのに、こいつは私を見ていない・・・・・。

そんなのずるいっ!
そんなの駄目だっ!
お前も私だけを見ろよっ!私の真ん中を見ろ!・・・・餓鬼だからって色眼鏡かけて見てるんじゃねぇっ!!

───もっと純粋に、真摯に、戦いを愉しめよッッッ!!

ガァン!   
           ギィン!

一秒の内に、銃剣と日本刀が交差し、AKBから弾幕が放たれる。
撃ち、身を伏せ、刀が振るわれ、体回転させつつ攻撃を続ける両者。

恐怖に負け、距離をとったほうが負ける───
両者ともに一流の戦士。そんな事は百も承知!

至近距離でつかず離れず、火花を散らす両者はまるでダンスを踊っているかのよう。

鈴の強みは電磁加速を用いた機動のトルクと瞬発力。

加えて、神経内部の電気抵抗が0に近い彼女は理論上光速に近い思考スピードと反射神経を得られる。
まさに閃光の如き速さは、Lv7のテレポーターでさえ捉える事は出来ないだろう。

対してソリダス。
彼の強みはまさにその永きにわたる膨大な戦闘経験。
正邪の路を共に踏破し、邪道搦め手当たり前。
そんな戦場で培った膨大な教訓は、裏打ちされた直感と言う形でソリダスに答える。
鈴の機動を常人には不可能な正確さで先読みし、かろうじて剣を合わせる。
ソリダスのそれはまさに予知に匹敵する正確さ!

───この瞬間、ソリダスは親兄弟を確かに凌駕していた!!


だが、先に隙を見せたのは──ソリダス!

強化服のサポートがあるとはいえ、老体にはこの人知を超えた超機動はこらえたか。
はたまた何か深遠な目的があるとでもいうのだろうか?

───バババババッ!!

本来の用途ではないが、麻酔弾でソリダスの着込んだ強化服の上から強い衝撃が走った!。

たたらを踏む彼の足元にめがけて追撃の一撃!!


そこからさらにピンポイントで左右含めて40発!、正確に打ち込まれたソリダスの腹部装甲が紫電の悲鳴を上げる。



「グゥッ!?・・・ガハァッ!!・・・・・貴様ァ、逃げているだけでは何も変わらんぞッ!自由が欲しければ、闘うしかないのだっ!スネークも、リキッドもこの私も、そのために闘ってきた!」

「誰かの助けを待っっているだけでは、救いは訪れん!神は自らを助くものを救うのだっ!」

ソリダスは鈴に語りかける。
それは鈴の身を案じる、この非情の男にあまりにも似つかわしくない言葉だった。
だが、その36年の壮絶な人生経験から来る言葉には不思議と重みがあった。

だが、戦闘に夢中で視野狭窄に陥っている鈴にはその言葉は届かない。
彼に仮に過ちがあったとすれば、それは戦闘中ではなく戦闘開始前に説得を試みるべきであったという事。

・・・・それでも、互いの価値観や意見の相違から戦闘には発展しただろうが、
それでもこの茶番劇よりかは幾らかマシだっただろう。


鈴は思う。
───何を言ってるんだ!?・・・何なんだよっ・・・・何なんだよお前っ!
救いとか、助けとか自由とか今は関係ないだろ!?

せっかく心置きなく闘えると思ったのにっ!

────お前となら、ギリギリの所で殺しあえると思ったのにっ!!
こんなの全然愉しくないぞッッッ!!?



「だから、あなたは、何をいってるんですか!?戦闘中におしゃべりとは余裕ですね!?」

そうだよ!キョウも時々私のエサを用意してくれるけど・・・・・作られた戦場じゃ物足りない!雑魚じゃ心が躍らないっ!
私の敵は私が決める。私の戦場は私が選ぶ!。

闘う事でしか、自分を表現できないけれど、私は政府や誰かの道具じゃない。いつも自分の意思で闘ってきたっ!

これが私の自由っ!ここは私が選んだ戦場、お前は私が見込んだ強敵!!その筈だろ!?

鈴の思考がヒートアップする。戸惑いが怒りになり、怒りが理性を狂わせていく。


狂った理性はさらなる高速機動を肉体に要求しようとした・・・その時!


──!?

ソリダスが動いた!
───だが、意図が分からない!

・・・・・鈴は急停止して様子を伺う。ソリダスの両手を最大限警戒しつつ。


・・・・・・・・????


だが何も起こらない。
───ソリダスは確かに私に手をかざして何かをしている。
変な念波がでてるのは分かるけど、コイツは・・・・・・何をしている?。

鈴は光速の思考で相手の攻撃を割り出そうとする。
確かに彼女は未だ戦闘経験においては乏しい所がある。

だがこと戦闘においては予知並の精度を発揮する彼女の感と、光速の神経回路が合わさった時。
それは敵の罠や目論見を容易く食い破る「知恵の槍」と化す!

・・・・が、戦闘中に相手が明らかに的外れな行動をしている場合それはその限りではない。
そしてコレは明らかに攻撃ではない。テレパスやそれに類する攻撃でもなさそうだ。

・・・・まさか戦場でふざけてるんじゃないだろうな?

とりあえず、鈴は隙だらけなので弾が切れた左のAKBの銃身部分をもち、台尻ですれ違いざまぶん殴った!



「───ぐはぁ!!・・・・・洗脳がここまで酷いとはな。人生最後の善行のつもりだったが、貴様を救うにはもはや・・・・殺すしか方法がないらしい・・・・。私の奥の手、Lv6のヒュプノキャンセラーが通じないとは・・・・・。」

「これほどの悪意にも屈さず、己の意思を保ち続けるその誇り!───驚嘆に値する・・・・・・!」

鈴はどこか冷めてきた頭で思う。
・・・洗脳とか、誇りとか、コイツは何を言ってる。もはやここまで来ると理解不能の領域だ

・・・・まさか私が洗脳されて誰かの言いなりになって
無理やりこの戦場に立たされているとか勘違いしてるんじゃないだろうなぁ?・・・コイツ。

・・・・目を見れば分かるだろ!?
・・・拳を交えれば通じるだろ!?
お前は戦士ではなかったのか!?

こんな侮辱は初めてだ・・・・・・!!!



・・・・。

戦闘中の狭窄した思考で、鈴はソリダスの言動をそう受け止めた。

実際有澤社長とは拳を交えれば理解しあうことが出来たし、
この感覚はは自分の姉や家政婦さん等、
強者であるなら大体の人間が使うことが出来る限定テレパスのようなものだ。
ソリダスとて、本来ならば拳で分かり合えただろう。

ただ、ソリダスの場合先入観が強くて今回は使えない。
まさかしくじれば命まで奪われる裏の諜報組織がどこもかしこもそろって誤情報を流すとは考えがたい。

ソリダスが、裏の人間だけがもつ芸術的な手腕を重く信じたからこそのすれ違いであった。

だが鈴もいいかげん我慢の限界である。
無理もない。村田に散々「おあずけ」を喰らってようやくようやく手に入った戦場だというのに、強敵の筈の男はこの様。

飢えた熊が入っている檻の前に旨そうな肉を置いておいていざ檻を解き放って熊が肉にかぶりつくと、
それは実は肉の匂いがするスポンジだった・・・・彼女の心境はまさにそれに近い。

・・・・・そして、ここまでコケにされて、冷静でいられるほど鈴は人間が出来ていない。
ソリダスの話に何か他の意味があるのか、理解しようと必死で頭を回してみるが、バカになっている鈴にはやはり理解できない。

ただ、一つだけわかってる事はある。




────コイツ、私のコト舐めくさってやがるっっっ!!

ソリダスは、洗脳された戦士如きに本気を出したりはしない。
それは油断しているというわけでも全力をだしていないというわけでもない。

ただ、心構えがどうしても萎えてしまうのだ。
ましてそれが女子供であればなおさら。
戦場には少年兵もいる。彼らに対して油断すれば容易く命を亡くす。
故にそれは戦場をなめているのではない。

洗脳などと言う惰弱な手段をとった背後の人間を舐めているのだ。
だが、どちらにせよ鈴にとっては同じこと。



「──いきます!・・・・・まともに戦う気がないならそのまま死ねっ!!貴方はただその程度の男だったというだけだ!!!」

鈴の思考が怒りに塗りつぶされていく。
噛み合わない会話、交わらない思考。理解できない言動。
心が苦しい。・・・・なんて見込み外れ。

ここまでの事件を起こしたコイツほどの男が、なんて器量の小さいっ!!



「やあああぁぁぁぁぁぁぁああああああああっ!!」

「ぬうううぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぁぁあああああああああああああ!!!」

ガァン!!  

         ギギギギギィ!!


一瞬の内に交わされる閃光ごとき攻防。
ソリダスは二本の刀で器用に弾丸を切り払いつつ、接敵!

対する鈴はつかず、離れず絶妙な位置をキープすることを念頭に、刀の射程権ギリギリから撃ちまくる。



・・・・・・だんだん調子が戻ってきたかのような、錯覚。

───そうそうその調子。
静かにしてればちょっとは────




「いいかげん目を覚まさんかぁ!!貴様はいい様に操られているのだぞ!!何故それが分からん!?」

───!

・・・・・・・あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!

イライラするっ!!
うるさいっ!しつこいっ!コイツほんとにここに何しに来たんだ!?
くそぉ、ちょっとは戦いに集中しろ!



「黙れっ!黙れぇぇぇぇぇぇぇ!!」

そうだ!黙って闘え!・・・・・精神攻撃のつもりか!?



「図星を指されて錯乱したか?そうだ、その調子だ!呪縛を振り切れ!!人になるんだ!そうなったお前にこそ、倒す価値があるっ!!」

「自由を目指すのだ。己を縛る影を断ち切ってこそ人は自由になれる!!」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・、ぶちっ。

鈴の脳内で何かが切れる音がした。
神聖な、決闘を、ここまで汚すとは・・・・・この男、戦士の風上にも置けん!!!!



「やめろっ!・・・・それ以上ほざくなァッ!!その口をっ切り落としてやるぅっ!・・・・・ヤアアアアァァァアアアアアァアアアッッッ!!!」


「───くぅっこれでも駄目か!・・・・・これはもう、本格的に・・・・殺すしか無いか・・・・・!?」

しかして、未だソリダスを討つには届かない。
思考がさらに加速して、怒りが視界を紅くさせる錯覚。

───まだ戯言を抜かすか!?最早その根性だけは驚嘆に値するな!!
こんな詰まらん男が何故ボスなんだ!?



「お前は一体、何なんだぁぁぁああああああああ!?」

「ぐっ!くそっ!・・・人助けなどと、なれない事はするものではないな。・・・・・・・こいっ受け止めてやるっ!!」






ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!


崩落してゆく船。


その中で、二対の修羅が跳ぶ。幾度も交差する白と黒。

噛み合わない歯車達は悲鳴を上げて崩れゆくのみ・・・・・・・・・・・。


戦いは戦いを呼び、憎悪は憎悪を招く。

ならば、誤解は誤解を呼び、虚像は真実へと変わってゆくというのか。


人は永遠に分かり合うことが出来ないのだろうか?すれ違い続けるだけが、人生だとはあまりにも哀しい・・・・。




だが生きていれば、誤解を解く道もあるだろう・・・・・・どうか皆さんその日を信じて彼らを見守っていてあげてください(笑)。













■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■



















カール、・・・・・・・カール・オヤツハ・ソレニツケテーモ上等兵は、ぶつかり合う二人のエスパー・ソルジャーを前に呆然としていた。
覚悟はしていたつもりだった。・・・・だがそれ以上に衝撃的だったというだけだ。

むしろただのノーマルなら腰を抜かして一目散に逃げ出す。
念力と暴力の嵐の中で尚も戦意を失わないだけ彼の精神は強靭だといえるだろう。

せめて、大統領妻子の盾にならんと、二人の前に仁王立ちするその姿は、

下らない意地と薄っぺらなプライドに裏づけされた黄金のオーラさえ感じさせる。


コメリカ兵だから。・・・・ただそれだけの理由で、彼は例え一時の肉の盾にしかなれずとも念力の嵐に身を晒す。

体は震え、身はちじこまり、異常なほど汗が出てる。顔はみっともなく歪み、目尻には涙さえ浮かべて鼻水を垂らしている。
しかもちょっとちびってやがる。


・・・・・・・だが逃げない。逃げ出さない。一歩も引かない。
瓦礫が飛んで来ても、目と鼻の先を二人が高速で駆け抜けても、微動だにしない。
すべて受け止める覚悟の構えだ。



───彼はまさに漢だった。コメリカ魂の体現といっていいだろう。




「ねぇ、兵隊さん。・・・・・どっちが勝つの?・・・あのニッポンの女の子、ボロボロだよ、痛そうだよ。あんなので闘って大丈夫なの?」

「勿論、女の子が勝つんだな。・・・・・そのために彼女はここに来たんだな。君達を助けるためにボロボロになって闘ってるんだな。信じてやるんだな。・・・・・・それが今の僕達にできる全てなんだな。」

「兵隊さん・・・・・。」



現れては消え、消えては現れる二人。あれでテレポーターで無いのだと言うのだから、一流のエスパーソルジャーとは恐ろしい。
彼らの目には残像がぼんやりと見えているに過ぎない。
だがどちらが優勢かはハッキリしている。鈴が若干押しているが、・・・・疲労が酷い。
当たり前だ。ここまで彼女は一人で闘ってきた。加えて彼女は少女だ。大の男の持久力にかなうべくもない。





───やめろっ!・・・・それ以上ほざくなァッ!!その口をっ切り落としてやるっ!
・・・・・ヤアアアアァァァアアアアアァアアアッッッ!!!───




「鈴ちゃん・・・・・・。」


カールは、ソリダスの指摘に苦しむ東郷鈴をみて、直感的にソリダスの言っていることが正しいことに気付いていた。
あれほど、戦闘中でさえあまり声をあららげない礼儀正しい彼女が、身を振り乱しながら口汚く罵っている。
あまりにも異常な姿だった。

彼は、若干九歳の彼女に・・・・・・この世の地獄で、世界の悪意を一身に受け止めているかのような少女に頼らなくては、
生き延びる事が出来ない己に・・・・・そうまでして生き延びたいと思ってしまった己を恥じた。



「頑張れ・・・・・・。」

「頑張れ・・・・・、頑張って生き延びるんだな・・・・生きて、勝って、生きて幸せにならなきゃいけないんだな。その権利が、その義務が君にはあるんだな・・・・洗脳もいつか解いて、悪人もぶちのめして、心から笑えるを日を作るんだな・・・・。」


そのためには、いかなる労をも惜しまない。己の命すら投げ出さん程の覚悟が彼にはあった。
その覚悟は、恐怖以外の涙となって彼の頬を伝う・・・・・・。
見栄えはしなかったが、それはこの世のどんな涙より高潔な涙だった・・・・・・。

───悪鬼羅刹でさえ、彼の涙を嘲笑うことは出来まい。


「兵隊さん・・・・・・・。」





現合衆国大統領マイケル・ウィルソンの息子、マイケル・ウィルソン・Jr.にこの時まだ、鋼鉄の狼はいない。
そしてそれを扱うための大統領魂もいまだその心臓に搭載してはいなかった。
彼が合衆国の守護神とさえ呼ばれるようになるのは未だ遠き未来。

だが、現在若干7歳を数えるだけの彼にそれを求めるのは酷であろう・・・・・・。


・・・・・・だが、高潔な少年は無力を悔いた。

与えられるだけの生活に満足し、ただ漫然と過ごすだけの己を強く恥じた。


そして痛々しい少女の勇士をその瞳に焼付け───誇り高き合衆国上等兵の涙の意味をその心臓に刻みつけた。

それは今はまだ小さな熱でしかない。たかだか7歳ポッチの安い決意で救われるほどコメリカは軽くない。


だが・・・・・たしかに火種は宿ったのだ。
それは恋といっていい。

彼は力に、誇りある力に───その象徴たる東郷鈴に恋をした。

いつか、彼は父に似てとびっきりのいい男になって、すこぶるつきのいい妻を娶るだろう。




───だが彼にとって、永遠の女性はこの東郷鈴なのだった。

多くの出会いと別れを繰り返し、輝きを増していく彼のその魂の炎の中に、
永遠のヒーローにしてヒロインの少女として、思い出の彼女は住み続けることとなる。




彼の大統領魂は、テロに屈しない鋼の精神は、今まさにこの時、芽吹いたのだ!!









「頑張れ・・・・・・!鈴ちゃんっ・・・・・そんな奴に負けるなーーー!!!」


















■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■









───そんな奴に負けるなーーー!!!





怒りが一周し、どんどん気分がブルーになっていく・・・・・・・。
言い訳ではないが、彼女から闘争を取り上げるということは砂漠を歩く旅人から水を奪うという外道の所業に他ならない。

戦闘に、意義が見えなくなってだんだん動きが鈍ってきていた鈴・・・・・・・。
戦闘中だというのに、強敵認定した男が木偶の坊だと知って欝になっていた時・・・・・・・、

──いっそもうこのまま死んじゃおっかなーって・・・・・そんな事を考えてた時に、



────その声は響いた。

それは鈴にとって救いの声であり、強烈な叱責の声でもあった。

鈴は思い出した。

そもそも、戦いは鈴の目的であって、この多くの人間が関わって、死んでいった作戦の目的はこの妻子を助ける事だ。

鈴がこんな所で死ぬという事は、彼ら英霊の働きに対し最上級の無礼で返すという事に他ならない。

なんという、なんという愚かな失態・・・・・・!!
ようやく奮えを取り戻した私の心が、まともな戦闘が出来ない欝状態から作戦遂行モードに移った。

同時に、ソリダスに対する押さえ切れないマグマのような怒りが沸々と湧き出してくる。

これほどの怒り・・・・・・今まで前世以来、私は一度も覚えた事は無い!!
ムシャクシャする・・・・・・・・もう何でもいいからぶっ潰したい気分だ・・・・・・!!

───ようは、グズ(鈴主観)のソリダスに八つ当たりがしたいという事だッッッッッ!!!!。


彼女の怒りが、突沸するかのごとく突如煮えたぎる。
今までが奇跡の平衡状態だったのだ!!



「てぇぇぇぇぇぇえええええぇぇやぁぁあああああああああああ!!」




「ぬぅ・・・・・・!!?いきなり動きが良くなった・・・・・!?・・・・・・本当に声援で強くなったヒーローには、初めて出会うぞ!東郷鈴っ!」

「その人を思う心があれば、必ずお前の心を縛る鎖は解き放たれる!・・・・いまこそ自由になれ!!・・・東郷鈴!!」




無視無視無視。

何かいってるけど、私の耳にはもう届かない。
耳なんて貸さない!
聞こえない聞こえない。聞こえないから気にならない。はい自己暗示完了。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・やっぱ無理!!

いい加減私だって怒ったぞ!?わかってるのか!?お前!?
バトルマニアだとはいえ、普段温厚な私だって怒ることぐらいあるんだ!!

もうキレた!ぷっつんしました!!



───鈴は、ついにキレた。
昨今の切れやすい若者から見れば、随分持ったほうだろう。



「あははっ・・・・・何だか体が軽い・・・・!こんなの初めて・・・、──── も う な に も 怖 く な い ! !」

心の奮えが、鈴のESPパワーを復活させる!!

ラッシュラッシュラッシュラーーーーーーーーーーーーーシュ!!
銃剣乱舞!電磁加速で弾切れのライフルをへし曲がるまでソリダスに叩きつける!
───ソリダスの動きをラーニングした鈴が、回転を始める!!
恐るべき才能・・・・!ソリダスが戦場において膨大な試行錯誤の末編み出した「業」を、
鈴は一度答えを見ただけで模倣して見せた!!

まさにESP戦闘の申し子!!

           ドガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガッッッッッ!!



「ぬがぁぁぁぁぁぁあああああああっ!!」

鈴はこの一瞬を見逃さない!!
相手に隙が出来る!!・・・・・・・ここだ!



「───トランザム!!」

首輪から紫電が駆け抜け、体は暴走してあふれ出した私のESPパワーで赤く発光する。
いつものように、体中をえもいわれぬビリビリ感と優しく愛撫されるようなエロイ感覚が迸った。
一時的にESPパワーがLv7級となり、彼女の行動の自由度をぐっと押し上げる。

長くは持たない。鈴は気合を入れた。
ともかく・・・・ここからだ!!・・・・・・一世一代の大技を決めてやる!!

ソリダスの周囲の空気に過剰な電磁負荷がかかる!!




「こ、これは・・・・・・!?」

周囲に、電気で出来た輪のようなものが多数出現し、ソリダスを縛る。
トランザムシステムで強化されてる鈴の特性の錠前!そう簡単に敗れはしない!

名づけて・・・・・、



「サイキック・エレクトリック・バインド!」

キョウはリリカルなのはとかいってたけど、魔法少女はサリーちゃん以降鈴には分からない。
つくづくジェネレーションギャップとは恐ろしい・・・・・。




だが捉えられながらも、ソリダスは嘯く。

「ふ・・・・何をするかと思えば猪口才な・・・・Lv6のサイコキノを封じながら、まともな攻撃が出来るものか。次の貴様の攻撃を耐え抜いた時が、貴様の最後だ。・・・・・つまらん終わり方だったな。・・・・そのドーピング、そう長くは持たんのだろう?」

そしてこのドヤ顔である。
・・・・・。
鈴の怒りのボルテージが上がっていく!!
─── 何 故 そ の 冷 静 な 判 断 力 を 真 面 目 に 使 わ な い ! ?
鈴は錯乱した!



──あーーーーーーーーーーーーーーっ!もうっ、なんなん?なんなんアイツ!?信じられへん!!命がけでこの私のことバカにしとるっっっ!!!───



・・・・・・。
・・・。
・・・・・ふぅ。
私こそ冷静に、冷静に・・・・・・・。

鈴は心を落ち着けようと、光速思考内で深呼吸のイメージを行った。
なんどもなんども肺を上下させるイメージ・・・・・。
通常世界では0.000001秒も経っていない。
鈴は自己暗示をより強固なものにしようと、自分に語りかけた。

───怒ってたらソリダスの思う壺だ。うん。あれは精神攻撃。そう、精神攻撃。そう思えば腹は・・・・




・・・・・・・・・・・・立つわボケェ!!
無理だった。
が、若干理性を取り戻した頭で鈴は考え始めた。
この間0.001秒を切っている。
無駄な超高等技術である。


鈴はおもむろにAKBを捨て、両腰の格納領域に仕舞ってあった、有澤謹製グレネード・ランチャーを二丁取り出した。

大きすぎてとても鎧の腰のポケットに入っていたとは思えない。
きっとやっぱり村田はドラえもんだったんだ。鈴はそう思う事にした。




「───は?・・・・・・・・・な、何だそれは!?まさか・・・・・ばかでかいグレネードランチャーだとぉ!?」

「まて、そんなものをこの密室で使えばどうなるか分かっているのか!?人質を巻き込むぞ!?」


───いまさら慌ててもおそいわい。
いい顔だ。もっと驚け。
さんざん私をコケにした事を後悔するんだな。────

これまでの鬱憤を晴らすかのごとく鈴はイイ笑顔だ。







・・・・・・まぁそろそろソリダスの末路が見えてきたから説明しようか。これは有澤重工特性グレネード×2。
───弾丸内部は独特の窪みをもった大量のセムテックスと接触信管で、一発で旅客機が落ちる威力過剰欠陥兵器!!

ただでさえでかいのに、その上外殻を削れるだけ削ってこれでもかとセムテックスが詰めてある!
加えてコイツはその独特の成型によってモンロー効果で爆風に指向性を与えられるという凶悪なグレだ!!
つまり、爆風は一方に向くから余波は鈴のESPで十分対処可能!!
人質は巻き込まない!!
さらにィ・・・・・・・・、





「受けてみて!!これが私の全力全開!!」

────耐えられるもんなら耐えて見やがれ!!!!
グレネードの黒い銃身が灼熱で紅く発光しだす。



加えて、鼻につくイオン臭・・・・・・・蚊が鳴るような嫌な音・・・・・・・・・・。
これで嫌な予感がしない人間はいないだろう。

崩れ往く薄暗い艦内で、発光した鉄の塊に照らされた鈴の冷淡な美貌は相当なホラーだ。
人間の原初の恐怖を喚起させるが如き光景・・・・。

──ああ、明日この子は肉屋に並べられるのね・・・・。
そんな風に子豚を睥睨する目付きに、その道のものならゾクゾクしたことだろう。



─────ブウゥゥゥゥゥウゥゥゥウゥゥゥゥウゥゥゥゥゥゥゥゥゥウウウンン。

ああ、灼熱する銃身が一部融け始めた。
明らかに設計限界を超えている。
鈴のパワーではトランザムを用いてもまだ届かぬ境地であった筈・・・・。



「サイキックゥゥゥ・・・・・・・・・・・・・・・・・・マスドライバァァァァァアアアアアアアアアアア!!!!!」

収束する光!迸る雷光!
桃色の光は星屑さえ砕く怒りの証!!

・・・・破壊の神が光臨する!
何を隠そう、
これが後の有澤重工最終兵器-老神-OIGAMIのモデルとなった絶対砲撃である!!

────後は説明しなくても分かる!!
鈴の電磁制御と、有澤製特性グレネードランチャーの頑丈さ、加えて村田印のナノコイルバッテリーがこの銃にも二個ずつ搭載されている!
そこにさらにトランザム時の強力なESPで斥力操作を使う!

それら全ての力を集約した結果弾丸は音速を遥かに超え、第一宇宙速度に迫ったのだ!!

まさしくマスドライバー!!

既に質量兵器だから別にグレじゃなくても良かった様な気もするけど、念には念をいれて、だ!!
コレくらいしないともう鈴の気がすまなかった!




──トランザムの光と混ざって、桜色になった閃光がソリダスを襲う!
その異様な音はとても少女が手で持てる銃身から漏れ出した音とは思えないッッ!!
それは銃撃の音と言うよりは、隕石が大気で燃える音。
地獄より魔王が迫り出してくる破滅の音色ッッ!!




ドッゴオオオオオォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ...........................................!!!!

───ソリダスは目を見開いた。
最悪の状況に、目を閉じずむしろ最大限開こうとするのは真の戦士の証。
諦めず、恐怖に負けず、どんな絶望的状況でも最後まで挑む高貴なる瀬に真の賜物!
・・・・・だがもうどうにも成らないのはお分かりいただけよう。



「グレネードから、光が溢れる・・・・・・・・うぎゃぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」

まるで流星のごとくソリダスは飛ぶ。
SOMの艦首部分から飛び出して行く彼は、ともすればSOMの主砲の弾丸のように見えたことだろう。
実にコメリカンで小粋なジョークの効いた最高の光景だ。










────ソリダス は そらの かなたへ きえさった。


────キラーン☆ 




















・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・・・。

・・・・・。









・・・・・戦いは終わった。
彼がもう少し、裏の諜報員よりも自分の拳が見た光景を信じたなら、
こうも間抜けな終わり方をせずに済んだだろうに・・・・・。
いやだからこそ、ギャグノリで命を繋いだと思えばそう悪くないかもしれない・・・・?

・・・・・・そんなことはないか。



鈴は荒い息を吐きながら、何とか体を支える。
もしもこの鎧が電気回路による制御だったなら、ソリダスとの戦いで二合と持たずショートしていただろう。

鈴はいたわるように鎧を撫でた。
電力の過負荷で、バチバチと放電している白い鎧は塗装部分だけ剥がれて一件ボロボロに見える。

実際には、塗装が剥げた以外の被害は皆無なのだが、
それは、激戦で半ば破壊されたロボットヒーローのような、壮絶な勇士であった。

───それを、マイケル・ウィルソン・Jr.はキラキラとした目でみていた。
砲撃であいた穴から差し込む、朝日に照らされた彼女を。


鈴は荒い息を吐きながら、ぎこちなく方膝をつく。
効果音をつけるなら、ドシーン!!とか響きそうだ。

全身が激痛に苛まれている為、そんなところまでロボ臭い。





────ぜーはー、ぜーはー・・・・・・・。
あー、疲れた・・・・・・。

肉体的によりも、精神的に疲れたよ・・・・・コレは。

ソリダスも・・・・・・・・まぁ、死にはしないだろう。最後のほうなんかもうギャグノリだったし・・・・・・・。

それよりも・・・・・・。



「は、はぁ、はぁ・・・・・ご無事、でしたか、奥様、ご子息様・・・・・・。この艦はすぐに沈没、します。話はきいて、いたでしょう?貴方達を、これから・・・・・・・ホワイトハウスに、直行しなくてはなりません!」

鈴は荒い息のまま話し続ける。
このボロ船がいつまでも浮かんでいるとは思えない。
さっさと出発しないと。




「・・・・・・ふぅ、奥様とカール上等兵は、タラップを下ろしますのでこれに、つかまって、下さい。」

そういって、村田印の白い鎧(喧々諤々でまだ名前が決まってない)の脇腹の部分から、
単分子ワイヤとそれに三角の金具がついたものを引きずり出す。
この三角の部分に足を引っ掛け、よく握ってぶら下がるのだ。・・・モビルスーツに搭乗するときとか降りてくるあれだ。


マイケル・ウィルソン・Jr.はそんな鈴をもう本格的にロボットかなにかだと思い始めたようだ。
眼が異様にキラキラと輝いている。
今の今まで監禁されていたとは思えない図太さだ。
まぁこのくらいでないと、大統領魂など手に入れること叶わぬのやもしれないが。


と、一方で鈴は村田の作った機能に困惑していた・・・。
これも明らかに体積と容積が釣り合ってない。
鈴の貧相なオツムでは考えるだけ無駄な理論が働いているのだろう。
鈴はそう思うことで心の平衡を保った。

そうでないとやってられない。



「ご子息はこちらへ・・・・・よっと。」

「うわわ、お姉ちゃん!?」


・・・・・・・・・・・・マイケル・ウィルソン・Jr.はもう、
ヒーローショーに出演するお兄さんに握手してもらった後、
抱き上げてもらったかのようなはしゃぎよう。

そしてヒーローショーと大きく違う点は、これがまぎれも無く現実であるという点だ。
これが少年の深層心理に大きな影響を与えた事は言うまでもない。


────明らかに体積と容積がつりあわない装備格納庫。
小さな機体で非常識なまでの馬力。
異常なスピード。
無茶苦茶な威力の砲撃。
あきらかに、鋼鉄の狼の設計思想はここにルーツがある。


ま、なにはともあれ。
そういってまたお姫様抱っこだ。
カール上等兵はでかすぎてギャグにしかならなかったが、美少年のご子息ならそこそこ絵になる。

まあどうせ大の大人を二人ぶらさげて飛ぶ幼女というシュールな絵になるのは間違いないが・・・・・。


「さ、早く。・・・・先ほどの砲撃で艦首が吹き飛び船に致命傷を、与えてしまった、ようです。皮だけは持っていましたがそれも、コレまでの・・・・・・・ようです。穴もすぐふさがって、しまいます。・・・・・よくつかまっててください。」




「────わかったわ。ありがとう。・・・・・早く出して頂戴。・・・ふふ、ホワイトハウスについたら最高のおもてなしをしてあげるわ。疲れてるだろうけど、もうちょっと頑張って、楽しみにしててね。」

気丈にも、大統領夫人は微笑んで言う。
彼女も、長い監禁生活で疲労しているがそんなことはおくびにも出さない。
自分以上にボロボロになって助けに来てくれた鈴の手前、大人の意地として幾らなんでも弱音を吐くわけにはいかない。



「わかり、ました。それは楽し、み・・・です。・・・・・・カール上等兵も、早く掴まって。・・・・・こんどは舌噛まないで下さいね?・・・・あははっ。」

B-32室突撃の際、案の定舌を噛んだカールをのことを口にする。
すこしでも、場を明るくするために。

といっても、当のマイケル・ウィルソン・Jr.はキラキラと輝く眼で彼女の腕に納まっている以上、
彼女の考えすぎかもしれないが。


「わ、わかったんだな、別にわ、笑わなくたっていいんだな・・・・・・」

カール上等兵もそれが分っているのか、のってきてくれた。
あたりが柔らかい笑いに包まれる。
大統領妻子とちがってコイツには数日間水さえ与えられていないというのに、
大概タフな野郎である。

そういえば、鯨や駱駝などは脂肪を分解した時に発生する水を貴重な体液として活用するという。
まさか、この男・・・・・・・・。

・・・・・・・・まぁ、どうでもいいことである。




「むふふー、・・・・・それじゃ、ぜー、はぁ・・・・行きます、よ。






      オーバード・ブースト巡航モード!スタンバイ・・・・ナビゲートシステム起動!日本近海からホワイトハウスへ!
      ESPパワー限定供給開始・・・・・・・、追加装備パージ!。


      あ、それと、言い忘れていましたが、・・・・・・。
      ・・・・はぁ、はー、皆さん捨てられるものは全て捨ててできるだけ身軽になってください。
      これから9時間の長旅に、なりますの、で、カール上等兵は衰弱してるし特に・・・・・気を引き締めて。

      なにかすこしの食べ物でもあればよかったんですが・・・・・・・。
      申し訳、ないです。
      頑張って耐えてください。


      それでは、───良いフライトを!!






             特務エスパー ザ サーヴァント コレより大統領妻子の護送任務につきます!
 


              システムオールグリーン!オーバードブースト起動!!



             ザ サーヴァント 出ます!!  」                  




そういって、自分の空けた大穴から斥力操作とブースターをつかいカタパルトに乗っているかのように飛び立つ。
大空へ羽ばたく彼女はまさに───ス ー パ ー ロ ボ ッ ト ! !





















─────マイケル・ウィルソン・Jr.はもう言葉も出ない。

だれも得るものの無かったと思われたこの事件。
結局、この話は坊やの一人勝ちという事であった・・・・・・・・。






             ゴォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!














   

07:40 スピリット・オブ・マザーウィル 撃沈。

永遠にも思われた長い時間は、その実、精々一時間ほどだった。


生還は絶望的と思われたザ サーヴァントは 任務終了後、五体満足だったどころか

直接ホワイトハウスまで大統領妻子を送迎するほどの壮健さで軍関係者諸氏を驚かせた。



それより、約九時間後。大量の戦闘機部隊、及びESPソルジャーを振り切り、ホワイトハウスに到着。

元NINNJA部隊の現大統領マイケル・ウィルソンが出撃の準備を終え、部下に必死に押し留められている所に墜落するように着陸。

そのまま地面の上で泥のように眠ってしまう。


その後一週間ほどの歓待を受けた後、帰国。


他の特務エスパーに知られるわけには行かないので、

小規模になってしまったがB.A.B.E.L.でもザ サーヴァントのためささやかなパーティーが開かれた。

いかに最低の村田主任でも、素直に生還を喜んでいたし、皆本さんや桐壺さんなどその場で泣き崩れかねないほどだった。

そのまま桐壺局長がザ サーヴァントに抱きつこうとしたが、

基本的に犬のように従順なザ サーヴァントは避けるという事をしない。

だから女性職員に寸でで止められ総スカンを食らっていた。まるで漫才だ。

パーティーは終始暖かい雰囲気だった。

この時ばかりはザ サーヴァントの、いつもの無表情もほころんでいたと思うのは自分の願望だろうか───



────B.A.B.E.L.所属オペレーター、飯井杏 記す。







































────ここに、一つの戦いがが終わった。




東郷鈴は、単独でSOMを撃沈しテロリストのボス──ソリダスを倒し、あまつさえ五体満足で全ての人質を救い出し帰還した。
そして、艦内で暴走した無線の音声を優秀(笑)なバベル職員が傍受し、
ソリダスと鈴の会話を聞いていた・・・・・。
それが全てだ。裏の世界には激震が走ったことだろう。


SOM自体が非公式の艦なので、カールともども正式に表彰される事はなかったが、
カールと鈴には莫大な報奨金がコメリカ政府から支払われる事になり、
加えてコメリカの重要文化財の全てを自由にいつでも閲覧できる権利が与えられた。


ただ、鈴としては帰ってから村田に例の「お礼」と「お願い」をキチンといえただけで満足だったようだ。
最も、そうとう恥ずかしかったようで言い終えた後顔を真っ赤にして逃げ出してしまったようだが。



大統領妻子は、今回の事件など一切なかったかのように、日常に戻った。

いや、マイケル・ウィルソン・Jrは───その胸に芽生えはじめた大統領魂を鍛えるべく、武道に勉強に遊びにと、
コレまで以上に邁進しているそうだ。

彼が、鋼鉄の狼を駆る資格を手にするのも、そう遠くない未来かもしれない。






最後に、あの人は──────







「え、へぇあ? あれ、・・・・・あ、鈴ちゃんって中身30後半のオッサンだし、前世がHENNTAIってやつだったのかな?あれあれ?」

「あ、ほら風俗とかの女王様~~ってやつ。・・・・・僕風俗行ったこと無いけど。え?え?」

「え~っと整理しよう。私は鈴ちゃんに、二人きりの所で、いつもビリビリで八つ当たりしてたことに謝ろうとしたら、逆にお礼を言われてた。何を(略。」

「って、ポルナレフしてる場合じゃなくて・・・・・、え?なに?鈴ちゃんはお仕置きされるのが好きな人だったって言う事?」

「今までビリビリ感じてたの・・・・・・・?」

「え?鈴ちゃん・・・・・それって・・・・・・・、プシュゥ~~~~~~(鼻時の噴出す音。)」




村田はよからぬ想像をして、自らの血に沈んだ。

ただでさえ虚弱体質なので、すぐに気を失ってしまい救急車で搬送された。
バベルの局員にも、いくら村田でも救急車を呼ぶくらいの優しさはあったようだ。

基本的に善良な集団である。

そして件の彼は搬送先の医師によると、うなされながらもとってもイイ笑顔だったという・・・・・・・・。


だが、こんな事があった後でも、村田と鈴の距離は大して変わらなかった。
今まで以上にビリビリ首輪が活躍するようになったし、いつも鈴に振り回されっぱなしの彼も少しは手綱を握れるようになった。

だが大よそにおいては多少、村田が鈴に遠慮がなくなったというだけで、
へたれな村田はなにを行動に移す事も出来ないという分かりきった事実が再確認されただけである。


───鈴にとっては最初から0だった距離がさらに近づこうと、特に代わり映えしないし。
相変わらず、親友の村田とバカをやることと、彼をサポートすることを考えている。

















────、







「う、・・・・・ぐぅぅ、こ、ここは・・・・・・・・・・・。」



おっとあの人を忘れていましたね。最後とか言ったが、スマン。ありゃあ嘘だった。
───スターライト・ブレ・・・・・イヤイヤ、今の無し。


・・・・サイキック・マスドライバーで吹っ飛ばされた割には全身煤けている程度で元気そうだ。

ギャグの力は偉大だ。
なにせどれだけ美神が横島に折檻しても一コマ過ぎれば服だってもとどうりになるんだし。

 

         ドシーン!!、ドシーン!!



           ギャアッギャアッ!!


         ガァアアアアアアアアアア!!


       グェッグェッ!グェッ!!



謎の泣き声、巨大な足音。

気候からして、ソリダスは熱帯-亜熱帯地方に流れ着いたのは間違いない。だが・・・・・・・・・・・・・?
巨大なフン、足跡。
人のいる気配は無いが、林は常に大きく揺れている。

遠目にはテンプレートは活火山。溶岩吹いてるけど、・・・・大丈夫なのか?・・・・・・アレ。


そして極めつけはあの巨大なシルエット・・・・・・!!



「恐竜・・・・・・・いや、ドラゴン!?こ、ここは一体・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・どこなんだァァアアアアアアアア!!!???」



生きるために、闘う。

名誉のためでなく、名を残すためでなく、自由のためでもない。

ただひたすらに、食うために!生き残るために!!

原初の闘争がここにはある!!



狩れモンスター共を!

喰え!奴らの肉を!!


最強のハンターは君だ!!





メタルギア・ソリダス ~モンハンG編~




────始まります。(嘘)

















つづく。









あとがき


誤字修正はもうちょっとだけ待ってください。
修正よりあふれ出す脳汁を書き留めるほうを優先したいので、許してつかぁさい。

姉歯編はもう少しだけ外伝と言う形続きます。ご愛読ありがとうございました!



8/31修正完了しました。

大分臭みは抜けたと思います。
これでもまだ駄目だという美食家の皆様は、・・・・・私の力不足です。諦めてください。



9/1更に修正しました。



[29474] 【外伝】勘違いものって戦闘の方が書きやすいって聞いたけど、実は全然そんな事は無かったぜ!【小ネタ集】
Name: toxic◆037c1b51 ID:ccbe12db
Date: 2011/09/01 00:47











絶チル転生、勘違い。

【外伝】勘違いものって戦闘の方が書きやすいって聞いたけど、実は全然そんな事は無かったぜ!【小ネタ集】



















■恭介と京介(弱勘違い)









「村田恭介、やっぱり君P.A.N.D.R.Aに来る気はないのかい?」

事故防止のためテレポート避けを施されたB.A.B.E.L.の研究室内に突如現れた銀髪の青年。
普通そんな事になったらうろたえるものだが、
男に村田恭介と呼ばれた男は、既になれているのか驚いた様子も無い。



「なんども言わせるなよ・・・・・僕はテロに加担する気はないよ。いや君のやってる事が間違っているとは言わないが。・・・・・・それに、僕は信じてる。エスパーとノーマルはきっと分かり合える。いや、それ以前にこのままいけば地球人類全員がESPに覚醒する日もそう遠くないと思うよ。僕は。」



銀髪の男の名は兵部京介。
彼と村田のが出会ったきっかけは、なりゆきで重病のエスパー患者を共同で治療に当たった所からだ。
ブラックジャックとDrキリコが共同で手術をしている所を想像してもらえるとありがたい。
それ以来、彼と村田は何度も山場を共にしてきた。
共に無力を悔いた事も多かったが、それよりは共に喜びを分かち合った経験のほうが多かった。

村田は、彼がB.A.B.E.L.の地下500Mに幽閉されている筈の史上最悪のエスパー犯罪者だと知っていたが、
彼の人となりを知っている身ともなれば通報する気は起きなかったし、彼も義理堅い男(元女)で、社会のルールには五月蝿いが、
親友をB.A.B.E.L.に突き出すほど、B.A.B.E.L.に義理も無い身だ。



「ふーん。・・・・・まぁ勧誘はまたの機会に出直すよ。ま、僕は君のおかげでこの世には生かすべきノーマルもいるって思えるようになったんだ。ノーマル社会をひっくり返した後も君と少数のノーマルだけは生かしておいてやるつもりだよ、僕は。・・・皆本は殺すけどね。」


「ありがたくて涙が出るね。さ、もう行った行った。研究の邪魔だよ。」

「なんだよ、邪険にするなよ。友達じゃないか。・・・・ははーん、そろそろ鈴ちゃんが訓練から帰ってくるから君、焦ってるんだな?・・・鈴ちゃんの料理おいしいもんねぇ?」

そのとおり。
彼は決まって鈴が訓練を終えて村田の研究室に食事を作りに来た所に狙って現れるのだ。
監獄で出される食事もまずい事は無いが、一度彼女の料理に味を占めるとそうもいかない。
週一くらいはこの男、テレポートでここに来る。・・・・飯目当てで。

「・・・・分かってるんなら、早く行け!!お前にやる飯はない!」

「ははは、妬くなよ。男の嫉妬はみっともないぞ。鈴ちゃん僕には良く懐いてるからねぇ・・・ふふふ。僕の花嫁はもう決まってるけど、鈴ちゃんは二号さんでもいいかな?」

「な、・・・・お前本気か!?」

「本気さ。・・・容姿端麗、家事万能、しかも下手な料理人以上のあの腕前。お世話好きで面倒見もいい。ちょっとバトルマニアなのは何だけど、エサさえあげてれば性格もかなりおとなしいし。・・・なによりあの子が調子乗ってドジってる所は最高に可愛いからね。思い出しただけで抱きつきたくなるよ。」

「ははは、最高の優良物件じゃないか。何、僕は二人一緒に面倒見るくらいの甲斐性はあるさ。安心して結婚式には見送りにきてくれよ。ははは!」
(・・・鈴ちゃんが僕に懐いてるのは親戚の叔父さんが偶に家に来た、みたいな感じなんだけどねぇ・・・こいつもからかうと面白いよな、大概。)



「な、黙れ!黙れっーーーーーー!鈴はお前にはあげないぞーー!?」



声を荒らげる村田。
内心チェシャ猫のように笑っているロリコン兵部にいいように振り回されるのがこの男達の日常だ。
鈴にもあっちへこっちへ振り回されている事を考えると最早コイツの宿命だろう。
そういう星の元に生まれついたのだコイツは。



ガチャッ


「キョウー、訓練終わった・・・・ってキョウスケも来てたんですか?・・・あらかじめ言ってくれればもっと手の込んだもの出すっていつも言ってるのに・・・・。」



帰ってきた件の少女、東郷鈴。
キョウと二人だけのだけの時はフランクは喋り方だが、第三者がいると途端に猫をかぶる。
もはや癖である。

今更説明するまでも無いが、前世で30後半のオッサンだった人間で、この話の二人の主人公の一人である。
どちらかというと鈴が準主人公で村田が主人公なのだが、その内キラとシンみたくなるのは想像に難くない。

今は体のほうに大分引っ張られて女の子らしい言動も目立つようになってきた、フロム脳である。


「ははっ。鈴の料理は何だっておいしいのさ。いつもこのヘタレ男にだしてる普段通りのもので、僕にとっては千金の価値がある。村田は果報者だ。・・・・まったく富の偏在は許すべきじゃないね。・・・・僕の所にきなよ、最高の食材と調理器具がそろってるぜ。」



「またまたお上手です。誉めても献立は変わりませんよ?あなたの嫌いなピーマンも出します。」

そういいつつも、上機嫌な鈴。普段村田はツンデレで素直に誉めてくれないだけに、生来のお調子者もあいまって誉め殺しには弱い。
兵部京介の目論見は成功し、本日の献立は豪勢なものになる事は間違いない。
安い女である。


「う・・・ピーマンはやめて欲しいな・・・・。」

目論見は成功し、容易く旨い晩御飯を手にしたが、
ピーマンだけはやはり嫌いな京介。
子供っぽい所が多々ある彼の最も顕著な部分とも言える。
引き取ってきた子供の手前、無理に食べる事もあるようだが基本は残す。

「ってそうじゃなくて、・・・勧誘してるんだよ。君に遊んで欲しくてたまらない子供達が待ちわびてるよ。君がアジトに居たのは7日ぐらいだったけど、その時の快適な生活が忘れられない奴も大勢居る。エスパーって奴は生活無能力者が多くてね。また君に来て欲しがってるよ・・・・・・・特に、普通に家事とかできる子達が。結局しわ寄せはまともな奴のとこに行くからねぇ・・・。」



「う・・・・そ、それは・・・・・うーん。確かにお世話しがいのある方たちでした・・・・。それに調理器具と最高の食材・・・・。」


「ね?・・・それに君が来てくれたらそこの堅物も一緒に来てくれると思うんだよ。・・・P.A.N.D.R.Aは君たちを歓迎するよ。」
(あはは、こんな提案で本気で揺れてる。ほんとにこの子はいい子だなぁ・・・・僕だったらただ働きさせてあげるからP.A.N.D.R.Aに来いとか言われたらぶち切れてるけど。)


「な!?駄目だー!鈴!行くんじゃないっ!」

「決めるのは鈴ちゃんさ。君はちょっと黙ってようね。」

そういってサイコキノで村田の口をふさぐ京介。
むーむー唸っているが、鈴は既に思考の渦に嵌っていて聞こえていない。
京介は集中状態になるように軽いヒュプノをかけたようだ。鈴は強催眠には強いが弱催眠には弱い。





・・・・・・・、

「うぅーん・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」

「むぅ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」

「いや、やっぱり・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・でも・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」



ヒュプノにかけられたとはいえ、それは選択肢をどうこうするものではない。
考えるように強制されているが、選択はあくまで自由意志である。だというのにこの東郷鈴。本気で悩んでいる。
それほどにP.A.N.D.R.Aでの生活はやりがいがあったらしい。
目が輝いていた。


が、結論は出た様だ。


「・・・・・やっぱり駄目です。恭介様が一緒で無いならやっぱりP.A.N.D.R.Aにはいけません。B.A.B.E.L.よりマシですけど、あそこも恭介様には厳しい目を向ける人が多かったですから。・・・ノーマルがマイノリティとなるP.A.N.D.R.AはB.A.B.E.L.より危険です。・・・・だから、本当に名残惜しいですが・・・お断りさせてもらいます。」



「うーん、そこなんだよねぇ・・・・・なんで村田君こんなに嫌われてるんだろうね?・・・老いも若きも男も女も、富めるものも貧しきものも。・・・・ノーマルもエスパーも。わけ隔てなく区別無く。まさに聖人だ。・・・これほどの名医が嫌われる原因ってなんなんだろうね?」

兵部京介も大概天然なので、周りの勘違いに気付いていない。
確かに彼は初対面時に「気持ち悪い目をした奴だな。」とは思ったが・・・・人間80年も生きていたら、
顔なんてのがその人間の本質とは何の関係もないことには気付く。
そうは言っても村田の目つきはそれでは済まされない何かがあるが・・・・この兵部京介はそう深刻には捉えなかった。

何度も言うが、こいつも相当な天然なのである。
最も、今回はそのある意味純粋な感性のおかげで村田の真実に踏み込めたと言う事なのだが。

だからこそ、いくらノーマルでもP.A.N.D.R.Aのエスパーがこうまで嫌う理由を見出せない。


「・・・・僕はP.A.N.D.R.Aのメンバーの大半を子供の頃から知ってるつもりだけど、こればっかりは彼らが何を考えているのか判らないね。言っても表面上は頷くけど、納得はしてないみたいだし。・・・・・あ、でも実際に治療に関わった子は違うんだけどねぇ・・・・・。」



そういって京介は村田を離した。

「ぷはっ!・・・・・ぜー、ぜー、ぜー。・・・・・そういうなら、あいつらの頭の中をちょっと覗いて見てくれよ、B.A.B.E.L.のも含めて。もう僕にはさっぱりなんだ!」



村田も、自分が何か深刻な勘違いの渦に巻き込まれている事ぐらいは自覚している。
ただし、それが何なのか理解する事が出来ない程度にはコイツもド低能で天然である。



「それなんだけどねぇ・・・・君の作ったサイコメトリ・ジャマーっていうのがあったじゃないか。あの耳元でぶんぶん五月蝿い奴。あれ僕とは相当相性悪かったみたいだ。僕の体がもう薬で持たせてるだけのオンボロだって知ってるだろ?・・・・どうもアレのせいで僕の精神感応能力の中枢がバカになったみたいでね。」


ある意味では、兵部京介と村田の作ったサイコメトリ・ジャマーの相性は最高だったといえよう。
憎悪や執念、慟哭や憤怒。・・・・・悪意や殺意。大抵のサイコメトラーは、ジャマーの発生させる念波をそう捉えてしまうのだから。
兵部はそういった感情に慣れきっていたからこそ、精々耳元で五月蝿い程度にしか感じなかったというだけなのではあるのだが。


「・・・・本当に極たまにしか使えなくなっちゃったんだよ、アレ。限定的には使えるけど、・・・器物とか、体調限定だ。心はあまり見えなくなった。・・・・だから君の嫌われる原因もわからないんだ。・・・・・スマン。」


それは予知の進行の上で必要な場面や感情が最高に昂ぶった場面でしか使う事が出来ないということである


「なんなんだそれは・・・・結局自業自得と言うわけか・・・・いや、顔を上げてくれ。こちらこそ、能力を使えなくするような事をして・・・・すまなかった。」


村田もまた頭を下げた。
なんだかんだ言って、この二人もまた親友なのである。
治療の方針や、安楽死の問題などでいがみ合う事もあるが、
お互いの事を本気で心配しあうぐらいには、信頼しあっている。

「いや。いいんだよ、そんなことは。ただ別のサイコメトラーを連れて来ようにも、みんな君を怖がってついてこないし、治療に関わった子でも君の心まで読もうとは考えられないみたいだね。───あの音そんなに嫌だったのかな?・・・・・・君の内面を知らなきゃ、何が誤解なのかも分からない。鈴ちゃんは元来サイコメトリーが効かない体質だし・・・・そういやジャマーは鈴ちゃんの体質の研究から生まれたんだっけ?」

「この子も大概、異常だし特別だよね。・・・・彼女の遺伝子が裏で狙われてるのもよくわかる。軍事的にはチルドレンよりも魅力的だろうし、性格も従順だしね。まだクローンとかの段階には入ってないみたいだけど、・・・・気をつけたほうがいい。」


そういって話を閉めた京介。
長話になってしまったので、
先に小声で断ってから調理場・・・・・といっても理科の実験室のようなものだが・・・に立つ鈴を険しい目で見た。


楽しそうに包丁を振るう彼女。
大道寺財閥や、世界最高の頭脳とまで称されるHENNTAI・村田、最近では有澤重工もか・・・・・。
そして、当然P.A.N.D.R.Aも。

多くの後ろ盾があるから、彼女はああしてB.A.B.E.L.に所属していても笑っていられる。


そうでなければ、B.A.B.E.L.内部に潜伏する普通の人々に、裏の組織──例えばブラックファントムなんかに売り飛ばされてしまうだろう。
B.A.B.E.L.は基本的に善良な人間の組織だけに・・・・甘い。

皆本も桐壺も、他の奴らも重要な局面で非情さにかける場合が多い。
だれかが犠牲になっても、モラルに従う・・・・これほどの信念があればまた話は別なのだが、
非情もモラルもどちらも選べないという優柔不断さが、最も唾棄すべき弱さだ。


いつもそうだというわけではないが、基本的に組織の運営理念が甘いのである。
彼らでは東郷鈴は守れない。


普通の人々は組織がでかいだけに、収入源もおおいが支出もまた多い。
考え無しに兵器や施設をバカスカ使う少々理性的でない側面もあって、裏の経済の重要な市場とまで化している。
常に財政的に逼迫されている彼らは、人攫いや暴力団との癒着、麻薬の売買等あらゆる犯罪行為に及んでいる。

彼らはエスパーが自分のあずかり知らない所で、どれほどの拷問にかけられ実験動物にされ臓腑を切り裂かれようと、
知ったことではない平気で言い放つだろう。


───東郷鈴は強い。それこそ、この年にして兵部京介に匹敵・・・・あるいは凌駕するほど。
末恐ろしい才能だ。10年後、20年後の彼女はどれほど強い戦士になっているか・・・・・
兵部もまた一人の兵士として戦場に立った身としては興味がある。


だが、戦場に身を置くようになって日が浅いという致命的な弱点もある。
ぶっちゃけた話、村田を人質にとって脅せばおそらく自ら命を絶たせることすら容易いだろう。
(裏の世界では、村田はむしろ悪役というイメージが先行しているので、そんな事をする奴はいまいが。)



愛国者達、普通の人々、ブラックファントム・・・・・その他の雑多な組織、これらは、同じ組織とも違う組織とも言う事が出来ない。

それぞれの考え、それぞれの理念のもとに行動する犯罪者集団や営利的集団。

だが、彼らが社会に潜むエスパーへの悪意が顕在化した存在なのは間違いない。


そして問題なことに、彼らは人生の酸いも甘いも噛み分けた、海千山千の大人たちの集まりなのである。


普通の人々は、人海戦術で。

愛国者達は情報統制で。

ブラックファントムは洗脳で。


それぞれ鈴を追い詰めるだろう。

戦いの直感には驚くほど鋭い彼女だが、策謀には疎い。
どうしてもB.A.B.E.L.に居ては相応の危険が付きまとう。

特に、政府の下部組織であるB.A.B.E.L.では、そのエスパーにしか出来ない仕事が回ってきて、
それに人命がかかっている場合、エスパーを使わざるを得ない。

保護と活用の板ばさみ・・・・・・。


その政府そのものに普通の人々、ブラックファントム、愛国者達は潜んでいかねないのだ。
SOMの事件も非情に危険なものだったと聞いている。
彼らが関与していなかったとする証拠はどこにもないのだ・・・・・。


出来れば村田だけでなく、鈴にはP.A.N.D.R.Aにきて欲しいとそう兵部京介は強く思っている。


───B.A.B.E.L.は危険だ。
だが突然抜けさせるのもまた下策。
入局した当初は大道寺財閥が、彼女を保護するのにメリットの方が多いと考え彼女をB.A.B.E.L.に入れたのだ。

今となっては諸事情でデメリットの方が多いのだが、下手に抜けさせる事も出来ない。
隙を見せればピラニアのように群がってくるのが裏の人間だ。

下手をすると骨の髄までしゃぶられて、気付いたら道端に捨てられているような事になりかねない。


だからこそ、村田も針のむしろに座りながらも鈴に張り付いて離れないのだ。
個人的に一緒にいたいという感情も強いだろうが、
なんだかんだと言って彼女は幼い。村田は彼女を守ろうとする使命感のようなものを感じているようだ。

っと、まぁこれは考えすぎかもしれない。
ここまで話しておいてそれは無いだろうと思うかもしれないが、
最悪の事態はいつでも想定していて損は無い。

それに、もう料理が出来たようだ。



「出来ましたっ!」

「お、いつもながら早いね。これで手抜きじゃないんだからいつも驚くよ。」

「へへへ、鮮度に関係ないものは作り置きしてますし、超能力も使ってますから。電機で焼くと素早く均等に熱が入るんですよ!それに料理はスピードです!お腹をすかせた人を待たせるわけにはいきませんからね!」


初耳だ。P.A.N.D.R.Aの料理担当は、料理は愛情とかいってとんでもなく時間をかけるものだが、
それは個人個人でなにか信念の違いがあるのだろう。
個人的には早いほうがありがたいが。


「へ~、そういえば葉が振動波で似たような事してたっけ。あいつは料理へたくそだけど。カップめん作るのは得意なんだよな、アイツ。」

「それは料理とは言わないだろう・・・・・・・」

「料理さ。みんながみんな鈴ちゃんや皆本みたいに料理や家事が上手いわけではないんだ。君もそうだろ?」

「それは・・・・僕は筋肉が無くて鍋とかもてないから・・・・・、」

「言い訳乙。どうせ直ったって出来ないさ。・・・・違うかい?」

「うぐぅ。」


カチャ、カチャ。

鈴は男二人の下らない話を尻目に、会議用のボロの折りたたみテーブルにクロスをかけた簡素な食卓に、
それなりに手の込んだ料理を並べていく。
それは極上のいい香りを漂わせ、無駄に綺麗に盛り付けられた料理はこの短時間で作られたとは思えない謎の美しさを放っている。
正直な話、フランス料理の高級レストラン並である。しかも味もそれに準拠で健康にまで気を使ってあるときた。

たまたま今日は洋食だったので、中央にはどこから見つけて来たのか大きな骨董品の蝋燭台まで置いてある。
その一角だけ切り取れば、それはまさに高級レストラン。
和食の時は和食の時で装飾まで考える。本当に村田は果報者である。

実は鈴は、前世で食品会社の開発部門に居たから世界中の調理法や食材の知識に詳しく、
加えて手先が器用で凝り性なものだからそれは一種趣味のようなものなのである。

そう、それはどこぞのお母さんがキャラクター弁当を毎朝せっせと作るようなものである。

皆本にも通じるものがあるのは間違いない。
その内勘違いしあいながらも意気投合する事も間違いない。


どうでもいいが、周りは片づけてあるとはいえ、研究室兼実験室。
超不自然である。


「並べ終わりましたよ。それじゃっ席について手を合わせてください。」

「はーい。」

「わかったよ。」



「「「いただきます」」」




天然も天然どおしだと正確に分かり合えるのだろう・・・・、
有澤社長や、現大統領も天然だ。


暗い話、嫌な話は数あれど、

なんだかんだと、皆笑顔で夜は更けてゆく・・・・・・・・・・。














つづく






あとがき


もうね、日常の編のほうが、自分にはあっていると心底思いました。

もう戦闘はスキップしていこうかな・・・・・・・。





[29474] 【外伝】チルドレンと鈴の日常(上)【小ネタ集】②
Name: toxic◆037c1b51 ID:ccbe12db
Date: 2011/09/01 02:47



絶チル転生、勘違い。

【外伝】チルドレンと鈴の日常(上)【小ネタ集】②













■サーヴァント&チルドレン








ある日の事である。

朝六時という早朝。
今日も今日とて鈴は自主トレに励んでいた。
打倒!ESP無しでAチーム!!


・・・・本人はスポ根ノリである。

今世ではそんな暇もないほど、家事に任務にトレーニングにと日々邁進し、
充実した毎日を送っている鈴だが、

前世では結構な漫画読みだった。


あんなこといいな、できたらいいな、と寝転がりながら漫画でも読みつつ燻る毎日。
ジャンプ系の戦闘モノ以外にも、キャプテン翼やエースをねらえ!等は彼の青春のバイブルであった。
ちなみに帰宅部。


正直、死ぬほど忙しいが今の自分のほうが前世よりずっと充実してて楽しいと鈴は思っている。
まるで特務エスパーなんて漫画の主人公になったみたいだ!と、何時までたってもこの娘は能天気さんなのである。

その内過労で倒れかねないが、脳内麻薬ドバドバで今はそんな事関係ないとばかりエネルギーが有り余ってる。
きっと結婚してもいつまでも新婚さん気分の抜けない・・・そんなタイプだ。



・・・そしてスポ根であるからにはコーチ役がいるのは歴史の必然といえよう。

つまりコーチは村田。・・・・だがこの時間は寝ている。
無理に起こすのもなんだし、村田には村田の仕事がある。
いつも付き合ってもらっているわけではないのだが、・・・・・やはり近くに友達がいるとやる気が違うのものだ。


特に、村田に竹刀片手にジャージ姿で「鬼コーチ役」をやらせると目つきも相まって非情にリアルだ。
何のメリットもないと思われた目つきを見事に有効活用した稀有な例だといえる。

そんなわけで、鈴はよく村田に鬼コーチをせがんでいる。
まぁ村田も楽しんでいるので否やは無い。



─────「あと、腕立て伏せ100回だーー!」「はいっ!コーチ!!」

・・・本人達はごっこ遊びだが、暑苦しいやつらである。




皆もジムに行くときは誰かを一緒に誘ってみよう。効果があるよ。(作者が実証済み)



まぁそんなわけで、今日も早起きしては鈴はダンベルを振る。

ゴルゴ13よろしく体の内側の筋肉を重点的に鍛える捻り運動である。
銃器を扱う事が多い鈴には必須の訓練だ。

下手をすると筋を痛めるので、集中して行う。

継続は力なり。

鈴はこのトレーニングを風邪の時さえサボった事は無い。





だが今日は眠い目をこすりつつ、鈴の元へ来る小さな影があった。
その影の持ち主は、普段からトレーニングルームを使う事など無かったし、この早朝ジムで訓練している奴は珍しい。

・・・が鈴はどうでもいいので無視していたら、話しかけられた。






「なぁ、鈴。えっと・・・・・・・・」

「・・・なんですか?明石先輩。」



小さな影は薫だった。

───薫は今まで鈴のために村田をなんとかするとか、
局長を説得するとかそんな事ばっかりで、
鈴ちゃん本人が孤独の淵にある事に気付いていなかったことにようやく気付いていた。

実の所それは、普段無表情で(よくみれば非情に多彩な表情なのだが、訓練中に百面相する奴はいまい)
近寄りがたい雰囲気を出している鈴を無意識に避けていたともとれる。


幾ら大人びていようと、小学生は小学生。加えて対人関係が貧相なチルドレン達。

複雑な事情で、担当官の皆本も腫れ物を扱うかのように手を出しあぐねている鈴に、積極的に話しかける事は無かった。
強い押しが売りの薫も、この少女はぶっちゃけ苦手だったのだ。



「えーっと、ほらあれだ!私達今日休みなんだよ!そんでお前さそって一緒に遊ぼうって話になってさ!出来たら訓練終わったらみんなで、ほら私達もあんまししらねーけど、ボーリングとかゲーセンとか映画とか。あとなんか食いにいこうぜ!ハンバーガーでもケーキでも!保護者はついて来るけど別にいいだろ?」



訓練終わったらって、薫はコイツの訓練がどれだけあるのか知っているのだろうか。
正直の話、

────一日に30時間のトレーニングという、矛盾ッッッッ!!それをひたすらトレーニングの密度を上げることで補うッッ!!

・・・・を地で行きかねない鈴である。
まぁだが鈴も子供のお誘いくらい、トレーニングを切り上げて付き合うくらいの広い心は持ち合わせている。



「遊び・・・・・?」



───だめか!?

不思議そうに聞き返す鈴に薫は猛烈な不安を抱いた。
まくし立ててみたが、反応が微弱でいまいち手ごたえが無い。

───改めてみると神秘的な顔だなー。とか現実逃避までする情けなさ。

この女、実にヘタレである。


実の所、鈴はB.A.B.E.L.に来てから・・・・というか3歳くらいから姉といっしょに格闘の訓練をしたり、
お手伝いさんの手伝いという本末転倒なことをしていたりと、それが趣味といってしまえばそれで終わりだが、
遊びを遊びとして遊ぶということをここ6年程していなかったので、新鮮だったというだけなのだ。




「わかりました。恭介様に今日の予定を伺ってみます。その結果しだいでよろしければ。」



ぶっちゃけ村田は二つ返事でOKするとは思っているが、B.A.B.E.L.内なので一応伺いは立てる。
おおよそ、谷崎という男が作ったマニュアルをたまたま拾って真に受けたがゆえの行動である。
基本的に様付けで呼ぶとかもそうだが、谷崎の理想とする女性の妄想が駄々漏れの内容だった。


今はワイルド・キャットに覚醒してしまったが、ナオミという前例もいるだけに鈴は自分がおかしいのではなく、
他の女性エスパーが型破りなのだと思っている。


・・・・・・・・・谷崎の罪は重い。


彼はその立派な装飾のゴツイマニュアルを、正式なB.A.B.E.L.所属の女性エスパーのためのマニュアルだと硬く信じ込んでるし、

・・・"誰が見ても"───確かにそれはB.A.B.E.L.の正式なマニュアルだと思ったことだろう。
それは彼の給料による自費出版だが、その給料はどこから出ているかというと国民の血税である。


・・・・下らない税金の使用法にも程があるというものだ。



「え、えーっと、それでいいよ。ははは。じゃあ許可が下りたら電話で知らせてよ。携帯はもってるでしょ?」

「了解しました。先輩。」



内心ホッとしている薫だが、あの村田が素直にOKするか不安にも思っていた。
っていうか伺いを立てるとか自分らやったことねーよ。とかその厳しい処遇に憤ってもいたが、
実は先輩と言う響きにときめいてもいた。顔には出さなかったが。

薫もお年頃と言うやつであった。
後輩とか先輩とかそういうノリにあこがれることもある。

この娘もたいがい漫画読みだった。

実はお調子者同士相性はいいと思うのだが、薫は澄ました顔の鈴がやはりちょっとまだ苦手だった。


「じ、じゃ、私はこれで。じゃーな!」







そそくさと逃げるように薫はその場を去る。

この後チルドレンの三人は担当官の皆本を交えて作戦会議に精を出す事になった。












■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■




『許可が下りました。先輩。』


七時の事である。
いつものように、渋る村田の毛布を引っぺがし、顔を洗わせ歯を磨かせ朝食を作り朝のコーヒーを煎れてやって、
ようやく稼動し始めた頭の村田にきけば予想通り二つ返事でOKされた。

基本的に村田は鈴がどこで何をしているのか、首輪と腕輪で詳細に知ることが出来る・・・・・が、
鈴に嫌われたら嫌なので、その機能を使った事は一度もない。
せいぜい、鈴のもってる携帯のGPS機能で位置の確認くらいである。

意味のない高機能に、ヘタレの村田だった。

鈴はこの機能の説明を受けた時から24時間監視ぐらいは覚悟しているというのに。
まぁ元女の村田が私の私生活など見ても面白くはなかろうという思いからでもあったが、


・・・・実は村田も見たくてしょうがないのはご愛嬌。

変な意味も少しはあるが、基本は天然の鈴が普段何をしているのかという単純な好奇心である事は明記しておく。


ま、ようは村田は普段鈴がどこでなにをしてるか殆ど知らないのだ。
ヘタレだから聞けないし。

そして鈴は、村田が自分の事は何でも知ってるという前提で話をする事が多いので、
二人の間でもすれ違いが多いのはこのためでもある。

故に、村田は遊びに行ってもいいかと聞かれても「うーん、いいんじゃない?」としか言いようがない。
基本的にトレーニングのプランを立ててるのは村田じゃなくて鈴だ。



とはいえ、さっきの今で、即断即決すぎると思うが。



「─────え、ホントに!!?」


『・・・・?、はい。』



薫は村田が許可を出した事に本気で驚いた。偶にみれば鬼のように厳しい顔で鈴のトレーニングを見張っている彼の事だ。
片手の竹刀で一体何をするつもりだったのか・・・・・・・・・・。
あんなもので叩かれたら、私でも痛いではすまない。
(コスプレのようなものです。床を叩いて音を出すくらいです。)

薫は皆本にキツク言われていたから歯を食い縛って我慢したが、本気で叩こうとしていたら飛び掛っていたと思う。
そんなイメージの村田であるから、
薫は容易く休日など作る訳がないと思っていた。とはいえ、これで第一段階はクリアである。
上記の裏事情を知らない彼女からしてみれば、これが最も大きな賭けだった。
実に不毛なドキドキ感である。

鈴はなんのことやらといった風情なのがまた救われない。



「えーっと、じゃあさじゃあさ、行きたい所ってどっかある?何でもいいよ。皆本がつれていってくれるって!」

『特にありません。強いて言えば、先輩方が普段どのように"遊ぶ"という事をなさっているのか興味があります。』



──ロボットみたいな奴だな。薫はそう思った。
こないだ映画でみた、生まれたばかりの女性型ロボットと反応が似ていた。
おそらく遊ぶという事を本気で知らないのだろう事は容易に察しがついたが、
これほど機械的で冷淡な受け答えをする鈴の精神状態にぞっとした。


このあたり、鈴は谷崎の思う理想の女性を演じているのではなく、
マニュアルに記載された規則を杓子定規に守っているだけなのが伺える。
このマニュアルには「こういうときこうするべきだ」という規律しか載っていないので、こういうことになる。
決して谷崎がこういうロボット・・・綾波系の少女が好きというわけではない。

残念ながら、谷崎にとってはもっと柔らかい女性が好みなのである。鈴も高ポイントではあるのだが。

・・・・心底どうでもよかったですね。



「あ、ははは・・・・じゃあさ、皆本達とも話し合ってもう大体のルートは決めてあるんだ。それでもいい?」

『はい。問題ありません。』

「じゃ、いまから本部の玄関口で8時に待ち合わせ!すぐ来いよ!」

『はい。了解しました。明石先輩』



ガチャ。



・・・。












電話を終えた薫。
どうにも、腑に落ちない嫌な感覚を覚えている。
それでも、一応は気丈にも笑顔で報告するのは流石の強さと言える。


「紫穂ーー、葵ーー、皆本ーー!鈴ちゃんこれるってさーー!」

「ホンマか!」

「そう、よかったわね。」

「そうか。本当に良かった・・・作戦会議が無駄にならずに済んだな。」


だが薫には一つ気がかりな事があった。
三人もまた、固唾を呑んで見守っていたが、鈴は小声な方だし電話の内容は聞こえていない。
勇気をもって聞いてみる。


「なぁ、・・けど、鈴にどこいきたいかって聞いたら、逆に"遊ぶ"って事を知りたいって言われたんだ・・・・。どう思う?」


薫の声も、知らず低くなる。
それは遊びを知らないというだけじゃない。
もっと異常で冷たいなにかが背後にあるような響きだった。
どんな悲惨な境遇のエスパーでも、もともと家族の居たものならば大抵一般常識ぐらいは持っているものだ。
幼いながらも、直感的にそれを察していた。

それが、鈴は生まれてこの方遊ぶという事を知らない・・・・家族が"いる"にもかかわらず。
───それは狂気すら感じる、氷の世界の風のように、4人には感じられた。


「な、なんやそれ・・・・あいつの親そんな酷い奴やったんか・・・!?」



皆本と紫穂は思わず目を伏せた。
局長のパソコンをクラッキングしてデータを落したはいいが、その境遇の悲惨さに、二人には言い出せずにいた。
結局、あの日の事は二人だけの秘密にしよう、と二人で決めた。

紫穂にとっては嬉しくない初めての「二人だけの秘密」だった。

が、明らかに様子がおかしくなった二人を、薫ろ葵は見咎めた。


「な、なんだよ!その反応!皆本、紫穂!お前らなんか知ってたのか!?」

「そうや!なにを隠しとってん、言うてみ!」


ことここに至って二人は観念した。
二人の様子が、黙秘を許すような生半可なものではないという理由もあるが、
もともと二人に隠し続けているという事実が、二人の心の重石になっていたということもある。

二人は、大分迷ったが・・・・最終的にあの日局長のパソコンから垣間見た事実を二人に話した。




・・・・・・・。



しばらくして、

三人のいた部屋は、冷たく、深い沈黙に包まれた・・・・・・・・。





「なんやのん、それ・・・・・・!!」


「酷い!酷すぎる・・・・・・!!」


二人は泣いていた。
目尻から悲しい粒がぽろぽろと流れて堕ちる。


「葵、薫。気持ちはわかるが・・・泣いてる場合じゃない。・・・・僕達が泣いても鈴は救われない。・・・今日は最高の一日にしてやろうじゃないか!」



その言葉に勇気付けられ、二人は顔を上げた。

───皆本といっしょなら何とかなる。

そんな意味のない、根拠もない気持ちが二人の・・・・いや三人の心を熱くする。
冷え切った部屋の空気も、心なしか暖かくなった気がする。



「せやな。・・・・遊びに関してはウチらは大先輩や!たっぷり教えたろ!」

「そうね。テレビゲームとか、トランプとか普段家でやるようなものもいいかも。」


少女達は、楽しげに今日の予定を話し合った。
悲しい気持ちを振り払うように。
大きすぎる闇に飲まれないように。


笑い声をあげる。

悪意の声を、笑い飛ばす。
それが、それのみが、悲劇に立ち向かうための闘い方。
彼らのファイティングポーズ。


おもむろに、薫は手を突き上げた。


「よーし、そうと決まれば、今日は遊ぶぞーーーーー!!」

「「「おーーーーーーーーーー!!」」」



三人もそれに続く。







─────勘違い・すれ違いは数あれど、双方にとって楽しい休日になる事は間違いなさそうだった。




つづく。






外伝というか、日常編。
ほのぼのとした勘違いを目指します。




[29474] 【外伝】チルドレンと鈴の日常(中)【小ネタ集】②9/2続き投下
Name: toxic◆037c1b51 ID:ccbe12db
Date: 2011/09/03 01:03
絶チル転生、勘違い。

【外伝】チルドレンと鈴の日常(中)【小ネタ集】②










■休日










待ち合わせの8時の10分前には鈴はもう待ち合わせ場所にいた。
心なしか、そわそわしてるようにも見える。
鈴も楽しみにしていてくれたのだろうか、・・・・・独りよがりの感情じゃなければいいのだけれど。
薫はそうおもった。



「鈴ー!おまたせー。早いなー。」

「先輩達こそ。そんなに急いで来られなくても良かったのですけど。」

「それだけ皆楽しみやっちゅうことや!今日は遊ぶでーー!」

「そうだよ。普段頑張ってるんだから、こういうときには羽を伸ばさないと。」



・・・・・が、薫には一つ既に気がかりな事があった。
この女、これから女所帯とはいえ遊びに行くというのに・・・・野暮ったいジャージ姿できやがったのである。
これは由々しき問題であるのだが、・・・・もう大体薫は理由に察しが着いていた。

が、一応聞いてみる。


「で、さ。鈴ちゃん・・・・その服ジャージ以外に他になかったの?」

「・・・私、ジャージ以外の服は制服以外持っていません。」


やっぱり。
特務エスパーとしての給料も出ているだろうにジャージしか持ってないとはどういうことか・・・・幼い薫にもわかる。
薫はますます村田への疑念を濃くした・・・・・が、顔には出さない。

───今日は楽しい一日にすると決めたのだから!


「じゃ、じゃあさ!予定は変わるけど、今日はこれからショッピングにしようぜ!まずは服買いに!」

「・・・・ジャージ、駄目ですか?」

何故だか、鈴は心底残念そうな顔をしている。

「駄目にきまってんじゃん!女の子はもっと可愛い服着ないとさ!」


「そうですか・・・・私、実はあまり持ち合わせがないんです。先輩達はどこか安い所を知っていませんか?」

「え・・・持ち合わせがないって、鈴ちゃんいっつも訓練ばっかしてるじゃん。そりゃ私達には小遣いくらいしか回ってこないけど、・・・・・何に使ってんの?」

「殆ど、村田医院の方へ寄付させて貰っています。」



・・・・・寄付て。

そんなんおかしいやん。
葵はそう思った。

大阪弁なのは関係があるのかないのか、チルドレンの中で一番金銭感覚に優れたテレポーターの葵は、
自ら働いて得た特務エスパーとしての報酬すら取り上げるとは村田主任とはどれほどの外道なのかと身震いした。

別に、葵は金に汚いわけではない。
ただ、普通の感性として任務の報酬としての給金に価値を見出してはいる。
それは人々の命と財産を守る私達に向けられる畏怖と賞賛。
それと同じくらい、自分の功績を誇る一つの基準だ。

・・・ただ働きというのはつらい物だ。
それでは働くためのモチベーションを得られない。
報酬はある意味、既に社会人であるチルドレンに確固たる足場を作るための一つの要素でもある。

普通人に利用されているのではなく、自分達のために働いている。
そう思っているからこそ、葵や他の特務エスパー達は任務に真剣になれる。

だが鈴は?

あの主任が目を光らせているから、鈴の周りにはあまり人が近寄れない。
(普通の人々を警戒しているだけです。裏が取れれば特に何もしていません。)

つまり、賞賛も報酬も・・・・彼女の支えにはなりえない。

皆本と紫穂に聞いた話では、ささいな人の優しさすら彼女には有り得なかったという。
今日は、彼女の家の事は決して口に出すなと厳命されているが、あまりにも怖い現実だ。
こんなことが許されていいのだろうか。

そして、尚も疑問に思う。・・・・ならば鈴のあの、鬼気迫る気迫は一体何なのだろう、と。
訓練でも任務でも、彼女は危ういほど真剣だ。
常に抜き身の刀のような雰囲気をあたりに纏っている。
彼女は一体何のため、誰のためにあんなに頑張っているのだろうか?


「そんなん全然気にせんでええって!今日は皆本サンが何でも買うてくれるって言うとったし!」

「ああ、そんな事は気にしないでくれ。今日は多めに降ろしてきたし財布には余裕があるよ。(局長もスポンサーを申し出てくれたし)」

「え、あの・・・・・ご迷惑では・・・・・・。」

「いいの。Lv7のサイコメトラーの私が言うんだから間違いないわ。皆本さんはこれっぽっちも迷惑には思ってないわ。詰まらない事は気にしないでついていらっしゃい。」


既に、薫たちは鈴に何を着せたら似合うか想像しながら歩き出していた。


「じゃ!まずはブティックに出発進行ーーーー!!」










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『ザザッ・・・・・局長。こちらAチーム。5人が動きました。予定を変更し、まずは服飾店に向かうようです・・・オーバー。』


「うむ。すでに近くの服飾店をピックアップしている。半分は先回りして警護したまえ。」

『了解』


B.A.B.E.L.の指令本部で、いつものように暗躍する二つの影。
今更ながら、税金とは一体何なのか考えさせられる光景だ。


「うまくいくといいですね。局長。」

「うむ。あの子達は国の宝だからネ。皆、明るく笑っていて貰わねば・・・・・・。」


桐壺はそうしめた。
それは本心からの言葉だ。
期せずして強力な能力を得、望まぬ不幸に晒されてきたエスパー達。
彼らには、今まで彼らが受けて来た苦しみの何倍も幸せになって貰わねば。
そう思う。




「・・・・・で、なんで君はここに居るのかネ。村田クン。」

また村田印のよからぬ発明品でも使ったのだろう。
警備レベル5の司令室にいつの間にか村田はいた。


「あんたらがこそこそ良くわからんことをしてたからだ。・・・・どうやら本当にただの警護のようだね。僕はもう行く。せいぜいしっかり守ってくれよ、僕の鈴を。」

「ふん、安心しろ。貴様なぞに言われんでも警備は万端だ。さっさと仕事に戻りたまえ。」

「・・・・・だといいけどね。」


憎まれ口を叩く両者。

利己的で変質的な愛だとはいえ、桐壺も村田が本気で鈴を心配している事だけは認めている。
たとえそれが研究対象・・・つまり貴重なモルモットに向ける類のものであったとしても。

そこには村田なりの愛があるのだろう。
なにせ家族も友人も彼の執着の対象にはならず、この世界には己以外不要とでも言わんばかりの凄まじい経歴を持つ彼の事だ。
一人の人間に興味を向け続けている事が奇跡とさえ言える。

天才・村田。・・・・いまのこの世界では並び立つものがいないとさえ言われる最強の頭脳。
その圧倒的な能力に裏打ちされた孤独は彼を歪めてしまったのだろう。

一歩間違えば皆本も今頃ああなっていたのだろうか・・・・・・・。



プシュッ!

シャコン!


空圧式のドアから警備室を出て行く村田。

その背を見ながら、思えば、B.A.B.E.L.に来た当初から比べて村田も丸くなったものだと桐壺は思う。
当初はこうして顔をつき合わせて会話する時でさえ、その目はあらぬ方向を向いていたのだから。
我々にはまるで興味がないといわんばかりの神経を逆なでする態度だった。

それがこちらをみて会話できるようになっただけ・・・・・大きな進歩というものだ。


「彼もまた、東郷鈴の純粋な心に救われているのかも知れんな・・・・・・・。」




彼が変わった原因といえば、それぐらいしか思いつかない。
思えば彼女もけなげなものだ。


────駄目です。私は恭介様の傍を離れる事は出来ません。そんな事をしたら、また恭介様は一人になってしまいます。────

(この時点では、恭介はまさにボッチでした。)


彼女に主任をどうにかして変えようという話を持ちかけた時、彼女から言われた言葉だ。
ストックホルム症候群の類かと思ったが、医師兼カウンセラーの賢貴クンの話ではそういう兆候は見られないという。

肉体的には慢性的に強い疲労がたまっているものの、むしろ経歴に比して彼女は精神的には異様なほど健康なのだという。
どういうことなのか聞いてみても、精神感応系に強い耐性のある彼女にサイコメトリーは効かない。
だが、賢貴クンは別にサイコメトリーを抜きにしても、非情に優秀な医師だ。彼の診断には重みがある。

しかし賢貴本人も困惑しているらしく、実に要領を得ない返事しかかえってこなかった
「例えるなら、ストレスも一週回って平衡状態になったみたいな、そんな感じだ。・・・・そんな例聞いたことないけどな。」とは賢貴クンの談だ。



姉が人質に取られているとも、首輪に爆弾が仕込んであるとも言わない。
(X線写真と化学検知器で常温超伝導ナノコイルをセムテックスと誤認しています。似た成分の樹脂は使用しているのでそれで誤作動したようです)

いつだってそんな不安を口に出した事すらない。
彼女はどんな目にあっても人を信じてる。
いくら村田でも姉はちゃんと治療されていて、
そう酷い事はされないだろうと信じてるし、

───首輪の爆弾のスイッチだって押さないだろうと信じてるのだ。

事実、村田は鈴のけなげな心に少しは心が打たれたようで、治療自体は真面目にやっているという・・・・・。


彼女は強い。誰よりも心が強いのだろう。
その強い心で、村田の心すら動かした。

その恐ろしく澄んだ心を垣間見れば、この世の悪意の泥の中でなんと美しい蓮が咲いたのだろうかと、・・・・寒気すら覚えた。

彼女は、あの村田恭介にすら心から心配し力に成りたいと思っているのだから。
ついには、孤独に凍えた彼の魂すら打ち溶かしてしまうのだろう。・・・・・だが・・・・・・。


「けれど、これじゃ鈴ちゃんが先に潰れてしまいます・・・・。なにか手立てを考えないと・・・・・・。」

「そうだネ。柏木クン。・・・・だからこそ、我々に今できることを全力でやろう。まずは・・・・・・今日という日を最高の一日とするため、微力を尽くそうじゃないか!」




司令室の二人は、衛星モニターに映る5人の姿を見守る。

願わくは、彼女にとっても今日と言う一日が最高の思い出になりますように─────。





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「・・・・・・で、これなんかどーよ!?」

「いや、これがいいんじゃない?」

「やっぱこういうんが似合うって!!」


「あはは・・・・、落ち着きなよ三人とも。鈴ちゃんが眼を白黒させてるじゃないか。」


ひっきりなしにブティック内を引き回す三人。
その凄まじいパワーに鈴はたじたじだ。だいぶ肉体に馴染んできているとはいえ中身30後半の元男。
彼女らのテンションの高さにはついていけない。

とりあえず、ゴスロリ系は断固拒否したがそれ以外の服は問答無用で着せ替え人形にされる。



「うーん、鈴はさぁ何ていうか清楚っていうかお嬢様っていうか。こういうワンピースみたいなのが似合うと思うんだよね。」

「あら、わたしはダメージジーンズみたいなパンクなファッションもいいと思うわ。小さく纏まってないで、ちょっとくらい冒険してみてもいいんじゃないかしら?」

「お嬢様て・・・・ホンマそうやけど、それは薫の好みやろ。手ぇわきわきさせるんやない!ほんまに薫はオヤジやな・・・・・・。」


それにしても、と鈴は思う。
折角秘蔵の「ジャージコレクション」(!?)の中からいい奴を一着選び抜いてきたというのに、真っ向から否定されるとは。
やはり前世の頃から思っていたが私にはファッションセンスというものが致命的に欠けているらしい。
危うくキョウにゴスロリを着せられそうになって慌てて逃げ出してきたというのに、・・・・着せ替え人形は疲れる。

いや、楽しくないというわけではないのだが。
それに財布の中身は本当にスッカラカンなので、服を買ってくれるというのは素直にありがたい。


なにせ村田医院は慢性的に火の車。
支払能力のない患者や治る見込みの一切ない患者、
危険な高レベルエスパーの患者でも問答無用で全て受け入れるものだから幾ら金があっても足りないし、幾ら病棟があっても足りない。
医師は、村田の理想に(あくまで理想だけに)賛同してくれた世界中の有志が半端でなく大勢いるものだから十分なのだが、
人件費や薬剤費、最新の設備費用等に金は常に入用である。

それに政府高官や財界の有力者の子供や本人も多く入院しているだけに、警備は相当厳重なものが求められる。
もちろん、そういう上流階級にいる人間は村田の黒い噂もよく耳にしている。何せ村田は世界有数の有名人だ。・・・・本人に自覚はないが。

それでも、村田医院の持つ奇跡のような実績と運営理念に一抹の望みを賭けて悲壮な覚悟で村田医院を訪ねてくる人間は後を絶たないし、
村田医院の激務に耐えうるお人よしの医者共は、どこからとも無く世界中から支払能力のない重症患者を見つけては拾ってくる。
わざわざそれ専門のチームまで作っているらしい。

・・・・・・それを悪いとはいえないのが、村田と鈴のまた悲しい所だ。

故に、鈴の実家を含めて政界・財界のコネや援助もまた膨大なものなのだが、出て行く金もまた凄まじい。
国連・民間からの寄付金、P.A.N.D.R.Aやマフィア・暴力団(比較的善良な)等の非正規組織の援助まで受けてまだ足りない。
病棟が足りないから四六時中拡張工事をしているし、看護士や薬剤師など、NPOやNGOの有志を常時募っている有様だ。

加えていうなら、村田医院は金銭の横領や賄賂、不正のないおそらく世界で一番クリーンな組織である。
その運営効率は100%。村田医院に入る金はその全てが患者のために使われる。

それでも金がない。・・・・・これだけで如何に医療と言うものが金食い虫か分っていただけよう。

そんなものだから、有澤重工が新兵器の実験がてら警備を受け持ってくれただけで大分違うものだった。
(といってもほぼ安全テストの済んだものだ。有澤社長の純粋な好意であることは間違いない。)
それに対抗してか、オーメルやインテリオル、アルブレヒト、ローゼンタール等の日系でない企業も名乗りを上げてくれている。


そして村田も鈴も、B.A.B.E.L.の研究費をちょろまかすとかそんな事考えも出来ない善良な人間だから、
二人の給料や村田の取得した膨大な特許料・・・その殆どが村田医院の運営費用の足しにされているのである。


鈴の場合は、村田に秘密で匿名で給料のほぼ全てを寄付している。
鈴のような子供に大金を持たせるわけにはいかないので、B.A.B.E.L.からの給料は大半親元へ行くのだが、
彼の親父も理解のある人物である。
コメリカからの莫大な報奨金(と言っても一時の事なので焼け石に水だが)
も含めて一言二言で快く金の振込みを済ませてくれている。


・・・・・もちろん鈴も自分用の小遣いや生活費くらいは残してある。

が、それは常人の想像を絶する赤貧生活であるのは間違いない。
特務エスパーが三ヶ月以上働いて、それでもB.A.B.E.L.に来て以来新しいジャージコレクションが増えていないと言えば、
それも想像できるだろうか?
薄々村田も感ずいてはいるのだが、まさか鈴がそんなどこぞの修行僧のような苦行を己に課しているとは夢にも思わない村田である。

まぁ言っておくなら鈴はワーカホリック且つバトルマニアなので現状そう大して不満は持っていないのだが。
人の趣向など千差万別である。


・・・食事事情が貧相でないのは、兵部が偶に彼らを監視して注意しているからにすぎない。
村田も三食作ってもらっている手前食費くらいは出さねばと言う思いもあるのだが。

・・・あのロリコンは老い先短いというのに、彼が死んだら村田と鈴はどうなるのだろうか?



ゴスロリを(無理に買って)着せられそうになって逃げ出してきたのは、だいたいそういう背景もある。
殆ど使う事はないとはいえ、村田の権力なら5分で服ぐらい用意できる。
朝の待ち合わせにも十分間に合っただろう。
が、何度もいうがそんな無駄な金は使うわけにはいかないのである。



「あ!以外やなぁ・・・・このブティック和服も売っとるんや。懐かしいなぁ・・・・ウチ京都生まれで晴れの時(祝いの日)はなんか着とった覚えがあるわ。京都じゃ、どこの家でも一着はあるもんやねんな。コレ。」

「へー、簡単に着付けられるように色々工夫してあるのね。通気性もそこそこ。」

「そんなのどうでもイイから取り合えず着せてみようぜ!可愛いし!」


「あー、じゃコレそこの試着室で着てみてくれるかい?ごめんな、こいつらこうなったらもう止められないから。」

申し訳なさそうに皆本はいうが、本気で嫌がっているようなら直に止めてやるつもりだった。
けれども、何だかんだいって鈴もどこか楽しげな雰囲気だったので、様子を見る事にしている。


「あ・・・・はい。分りました。試着してきます。」

「あ、ひとりで着付けとか大丈夫かい?一応僕も手伝えるけど・・・・。」

「え、と・・・出来ません。・・・・・よろしくお願いします。」


ジト眼で見つめる三人。


「・・・・なんで出来るんだよ、皆本。」

「そうね、変ねぇ・・・・たしか和服って男性と女性でだいぶ着かたが違うみたいだけど?」

「ってゆうかそれ以前に!堂々と女の子の着替え覗こうとしなや!」

「あのねぇ・・・・僕が女性ものの着付けも出来るのは近所の婆さんに無理やり仕込まれたからであって、覗きも何も鈴ちゃんはまだ9歳でしょーが!!」


皆本の理論的な反論!
9歳は守備範囲外だって。当たり前だね!
こいつには前科が山ほどあるけど!


「聞いた?鈴ちゃん。・・・・皆本さんああいってるけど、実は10歳の私達にいつも欲情してるのよ?・・・・あなたも気をつけた方がいいわ。」

「え゛・・・・・・・・・・・・・。」

「皆本フケツーー!。」

「・・・・てぇ出されたら何時でも言いや。皆本さん東京湾の底にテレポートさしたるから。」


いつのまにか皆本をダシに仲良くなっている4人。
こうなると男一人対女四人の構図となり、皆本の不利。
皆本はイヤな予感にちょっと焦り始めた。

そして鈴は、転生してからはじめて感じる貞操の危機に別に意味で焦っていた。ちょっと本気で。
ソース(情報源)がLv7のサイコメトラーだし!

・・・・尚、村田の時でも感じるべきですが、元女子医大生というフィルターがかかっているので感じられません。
どうせ村田は自分からは手の出せないヘタレですから安全パイですけどね!


「悪質なデマを流すんじゃなーーーーーーーーーい!!!!いや鈴ちゃんも信じないで!!嘘だから!冗談だから!!」


「あ・・・はい。わかってます。・・・でも万が一と言う事がありますから、店員の方に着付けは頼みますね。」

「鈴ちゃん!?」

「あはは、振られたなー!皆本!」

「無様ね。」

「そもそも子ども扱いばっかするからこないなんねん。反省し。」


表情はあまり変わらないが、鈴もノリノリである。
本気で慌てふためく皆本を前に、心なしか笑顔だ。


規律やモラルにうるさく武士道・騎士道的な精神を尊ぶ鈴は、
命令や目上の人間には従順で、組織や個人に対する忠誠心も高い。情にも篤く習性は犬に近い物があるようだ。
野生の狼や、又はドーベルマンやラブラドール等の軍用犬を思い浮かべてくれるといい感じだ。

だが対して精神的には攻撃的で苛烈。忍耐強く、危機を楽しみ狩を嗜好する。
そして狙った獲物をどこまでも追い掛け回す執拗さは大型の猫科の動物に近い。

その見事なしなやかな筋肉のつき方といい、
牙を剥き出しにする野生のトラや雌ライオン、ヒョウ等の姿を思い浮かべてもらえるとありがたい。

・・・・ようは潜在的にSなのである。


そして試着室からカーテンで胴を隠しつつ、顔だけぴょこんと出して止めの一撃。


「・・・・・覗かないで下さいねっ。」

「覗くかっっ!!!」


───シャッ!!


皆本は顔を赤くしながら無理やり試着室のカーテンを閉めた。
それにしても、この鈴。女暦たかだか9年の癖に中々わかっていらっしゃる。
この皆本、今日は中々苦労させられそうである・・・・・・。



「まったくもう・・・・・・・・・。」


















つづく



あとがき

これからだんだん更新速度が遅くなります。
時間が無くなって来るんで・・・・・。

ぶつ切りにだけはならないように気をつけます。



[29474] 【外伝】チルドレンと鈴の日常(中②)【小ネタ集】②
Name: toxic◆037c1b51 ID:ccbe12db
Date: 2011/09/03 07:22


注:(作中では鈴の眼は青色と言う事になっています。鈴は純日本人ですが、日本人の遺伝子にも極稀に青色の眼を作る遺伝子が紛れています。
室町時代くらいの文献には青色の眼をした人間の記述が現存します。劣性遺伝でしかも茶のほうが病気耐性が高いので現在は淘汰されていますが、
いまでも極々稀に青の劣性遺伝を持つ両親同士の奇跡的な組み合わせで、青色の眼をした日本人が生まれる事はあるそうです。
感想欄で叩かれそうなので先に言っときます。)












絶チル転生、勘違い。

【外伝】チルドレンと鈴の日常(中②)【小ネタ集】②







■3人組みのチルドレンが4人になったらバランス悪いかと思ったが、幽遊白書とH×Hと烈火の炎読んで考え直した。(勘違いほぼなし)















鈴は静かに、試着室からでてきた。
店員もノリノリで、薄く化粧までサービスしてくれていた。
生まれて始めての化粧である。
ただ、注目されて4人にがん見されているのが恥ずかしいのか、少し俯き気味で顔は桜色に染まっている。
だが、なにも恥らうことは無い・・・・・鈴が己を恥じ入るなら世の女性の大半は鏡を見ることが出来ないであろう。
それ程に、ジャージなどと言う(状況によってそれもアリだと作者は思うが!)野暮ったい蛹を脱ぎ捨て羽化した鈴は「幻想的」だった。


「ど、どど・・・どうですか?」


緊張のあまり噛み噛みである。
だが4人はそんな事に気を回す余裕はない。


「わ、すげぇ・・・・・・・・・・。」

「ほんまコレは凄いな・・・・・。凄いというか・・・・綺麗や・・・・。」

「素敵・・・・。なんていうか、妖怪のお姫様って感じ・・・・・・。」


「・・・・・・・・・・・・・・(声もでない)。」



雪原を写したように白い肌に、深い洞窟の暗闇を流し込んだような黒髪。
どこか茫洋とした、焦点の合っていない浮世離れした空色の瞳。

見るものをゾクリとさせるその目付きは鬼か化生かはたまた妖精か。
その眼で射抜かれると、自分はどこか幻想の世界に迷い込んだかのような錯覚すら覚える。

そして足音も立てず歩き、身じろぎもしないその仕草は生気というものを感じさせない。
吹けば飛びそうな弱弱しいゆったりとした動きは容易く手折ってしまえそうな百合の如く。
飼い犬が主人に伺いを立てるようなその振る舞いは、思わず手折って持ち帰って仕舞いたくなる様な暗い衝動に駆られる。


そのくせ、健康的で桜色に染まった肌と肉感的で躍動感溢れる肉体美は着物の上からでも全力で野生を主張をしている。
今にも飛び掛ってきそうなその迫力は肉食の大型動物を前にした畏怖を思い起こさせるものだ。


相反する、どこかアンバランスで危うい感じのする彼女の容姿だが、そこがまた見るものを引き付ける。
この世のものならぬ幽玄の美は、形は違えどまさに大和撫子というほか無い。


(ネタ晴らしすると、その目付きは焦点を合わせず常に視界全体で物を見る拳法の基本を鈴は常時行えるように昇華させているが故。
そして動きは武術の極みにいるが故の完全な重心移動。
日常から一瞬で戦闘状態に移れる凶悪なそれ等は常人には精々「茫洋な眼差し」「ゆっくり動いた」としか映らない絶技です。)


その身を包む和服もまた見事。チルドレンの審美眼とファッションセンスは中々優れたものがあるらしい。

ただし和服といえど、これは着物と浴衣の合い半ば。
着易さ、動きやすさと現代風を念頭に置かれたコレは正式に和服と呼んでいいものか判断に迷うが。

ただミニスカートの着物などと言うイロモノも、
鈴が着ればこれもまた新しい形の日本文化として広く受け入れる事が出来そうなのは不思議なものだ。


解説するなら、これは静かな鈴の容姿とは対照的に鮮烈な朱色に染め上げられた単(ひとえ)の衣。
その色彩は紅葉の山々と言うよりは猛々しく燃える焔の如く、
そして裾から胸にかけて体を一周し螺旋を描くように走る一筋の白いラインは、雄雄しく荒れる海原の白波の如く。
鈴の幼い活力をのびのびと表現している。

金糸で彩られた白に近い薄緑の帯は落ち着いた雰囲気で、これもまた鈴の持つ雰囲気にマッチしている。
帯としては少々長い方で、腰の後ろで結んだ残りが足元にまで垂れる仕様である。
帯など詳しいわけが無いチルドレンに代わって店員が選んだものだ。

そして高下駄。
普通は男性が履くものだが、鈴は歯が一つの天狗のような高下駄を履物に選んだ。それも特別背の高い物を。
といっても常識的な範囲だが。15センチくらいである。
イメージするならもののけ姫で胡散臭い坊主が履いているアレだ。

それは鈴が文字通りの背伸びをしたいという事で、遊びからだったのだが意外と似合っているのでそのままになった。
女性用に小さく可愛らしく作られているが、なにせ常に竹馬に乗っているようなものだ。履く人間は選んでしまう。
店側も展示用として遊び心で置いていたようで、見事履きこなしてあまつさえ足音も無く歩いて見せた様には呆然としていた。
鈴の鍛え抜かれた天性のバランス感覚ならコレを履いていても問題なく戦闘すら可能だ。
ただ多少は不安定になるのはしょうがない。


最後に、皆本が選んだシンプルな簪。
朱色に染め抜かれた漆作りの簪は、先端からぶら下がる飾りを自由に選べる仕様だ。
チルドレンが選んだ、ちりめんで作られたパンダのぬいぐるみは一つのアクセントになって全体にポップでファンシーな印象を与えている。
結ったセミロングの髪は、後姿から見えるうなじが実に色っぽい。

それに加えて、村田印の曲線美(笑)の首輪と腕輪である。
全体として、まるで漫画やアニメから飛び出してきたかのような奇抜な服装になってしまったがコスプレ臭さは一切ない。
まるで生まれた時から着こなしているかのような貫禄を感じさせる不思議な雰囲気だ。

こういう服装の文化があると言われてしまえば、10人中9人は信じてしまいかねない。


「・・・・、ほへー。ミニスカの着物があるなんて良い時代になったなーー。」

手をわきわきさせて今にも飛び掛りそうな薫。

「ちょっと、鼻息が荒いわよ薫。何考えてるの、やめなさい。」

「それにしてもよー似合とんなぁーー。・・・・・・これは可愛えわ。」


「・・・・・・・・・・・・。(見蕩れてる)」


薫はほとばしるパトスを抑えきれず叫んだ。


「記念写真とろう!記念写真!!こんなの後に残しとかなきゃ勿体無いって!!」



薫は強硬に主張する。
こうなった薫を止める事は不可能だし、皆本達も止めるつもりは無い。

たまには自分の欲望に忠実になるのもいいものだ、と言い訳はだれに向けられたものなのか・・・・・・。


「ええっ!?ちょ、それは流石に恥ずかしいですって!」




無言で近づく四つの影・・・・・。




「え、え?先輩方?皆本様?・・・・・・・・・・・・・・顔、怖いですよ?」


「お客様、当店ではお客様方の要望に答えまして、写真館を備えさせていただいております。記念写真を撮られますか?」


ヌッと場面に割り込む店員。
なんというタイミング!この店員もノリノリである。
それにしても、どうしてこうも漫画やアニメ、小説の「店員」という奴等は逸材が多いのだろうか!
作者も友人に一人ほしいぞこんな奴!


「お願いします。」

「たのむで綺麗に取ったってや。」

「カメラマンは私がやるわ。Lv7のサイコメトリを用いれば最高の写真が取れるわよ。・・・・・皆本さん?」
「そんなら、私のテレポート使うたら着せ替え自由自在やで!!」
「えーと、えーと、・・・・・私だってほら、サイコキノで特撮みたいな撮影だっていろいろ出来るよ!?」


一瞬の迷い。




「よし、わかった。─────ザ チルドレン解禁!!」


皆本はあっさりGOサインを出した。
ポケットからケータイを取り出しチルドレンのリミッターを解除するのに0.3秒。こいつも漢である。



「えーーーーーーーーっ!?こんな事に解禁って!?せめて貴方は反対してくださいよ、皆本様!?」


「では、こちらへどうぞ。」

「え!?スルー!?」

鈴は眼を丸くして驚いた。
この店員、この少女達がかの有名なバベルの特務エスパーだと知っても眉一つ動かさない。見たところノーマルなのに。
プロ根性ここに極まれり、だ。
若干口の先端がによによ動いているのは気のせいに違いない。


「わかった。いくで。」
「おう!」
「出来たらカメラは人の手で使い込んだ年代物がいいのだけれど・・・・・・。」

「お前等写真館を壊さないように注意しろよ・・・・・、いつものオチみたいに。」

一応年長者らしく、皆本は注意するがアッサリ解禁指令をだした今のコイツには説得力と言うものが無い。



「それでしたら、店長が学生時代に大枚叩いて買ったという骨董品の一眼レフがございますわ。店長は手の怪我でその道を引退していますが、訳をお話すれば快く貸してくれると思います。気をつけて扱ってくださいね?」

「わかったわ。」

「そんな大事なものを・・・・、ほんと壊さないでくれよ・・・・・・。」
「わかってるわよ、心配性ね皆本さんは。」



「もしもし、店長・・・・・・はい・・・・・・はい・・・・それでですね・・・・あのカメラを・・・・・・・・はい・・・・。」

おもむろに内線にかけだす店員。
まさに即断即決。






「え、え?・・・・・・え?」


鈴はトントン拍子に進んでいく事態におろおろするばかりで対応できない。
皆本まで悪乗りしだすとは想定外だ。
よっぽどの事でなければ目上の人間には従う習性をもつ鈴である。
先輩エスパーとその現場運用主任・・・・・つまりこの4人に対しては逆らうという選択肢も逃げるという選択肢も鈴には無い。
皆本がその小賢しい頭でもっともらしい理由をつければ、その場で全裸にさせる事すら可能な従順さである。

であるからして鈴が、自由に村田印の首輪リミッターを外す権限があるといっても、こうなると超能力で逃げる事も出来ない。
加えて場を穏便にすませる話術などこの天然にあるわけも無い。

最早ただ流されるだけである。




「許可が下りました。それに、店長が近所の商店街の写真仲間を集めて最高のスタッフを用意してくれるそうです。すぐに準備は終えますので20分ほどお待ちください。」


あ、この女こっそり携帯で鈴の写真を店長に送信していたようだ!
なんという抜け目の無さ。


「そりゃあいい、よろしく頼むよ。」

「写真は取れても、セットまではどうにもならないからね。頼もしいわ。」

「えー、セットなんて私一人居ればいいじゃん!」
「こういうのは専門家にしかわからない事があるの!薫ちゃんにそこまで芸術的センスがあるとは思えないわ。」

































・・・・。

5分経過した。
鈴や他の3人は普通に待っているが、一人薫だけは宙に浮かんでいったりきたり。
落ち着きが無い。





「ぷー、・・・・20分も待つの退屈だな・・・・・・。えいっ!」

「わひゃっ!?」


鈴は薫に後ろから胸を揉まれた!
接近には容易に気が付くが薫は先輩なので逆らえない!
厳しい上下社会の日本企業で荒波に揉まれた、前世から続く呪い・・・・・・パブロフの犬である。



「うわ、見た目より大きい!しかもトレーニングばっかりしてるから筋肉ガチガチかと思ったら体中ふわふわだ!?ナニコレナニコレ!?」


もみもみもみもみもみもみもみもみもみもみもみもみもみもみもみもみもみもみ。

胸といわず尻といわず、鈴が無抵抗なのを良いことに揉みまくる!

質のいい筋肉とは、自然と柔らかくなるものである、ましてや鈴のそれは一級品。極上の手触りだ。
そして鈴は身じろぎはするが、無理に体を自分で押さえつけている。・・・・その危険性に彼女は気付いているのだろうか?
このクローズドラインにいる敵を生身でも即死させる事の出来る軍隊技の数々・・・・そして彼女の身体能力。

条件反射で技にかけかねないのを必死でこらえている真実を知れば薫は縮み上がるだろう。
・・・・・・・・無知とは素晴らしいものである。

そして薫は完全に自分を見失っているぞ。

め が ぐるぐる だ !


「あ、あ、あ、・・・・・・・ひゃんっ!?・・・」

「うわ、なんだろ・・・・・なんだろコレ。私の中からヤバイ何かが・・・・・・・・。」


いいながらも手は動かし続ける。
足・・・・いや全身とサイコキノを精密に用いて同時に複数箇所をもみ続けるその「業」は恐ろしい巧夫だ。
ってゆーか小学生時代編のコイツって精密制御したら暴走するんじゃなかったっけ?


「こ、ここがえーんか!?ここがええのんか!?」


ぐりぐり。


「ひゃ、あっ、あんっ!・・・だめ、だめれす先輩・・・・・・きゃぅっ!・・・・・・うにゃ!?」

「あ、ああああああっ!・・・・・・・・うあぁっ!?・・・・・うにゅっ・・・・・・・」

「ひんっ!?・・・・・・・・・ああ、やめてぇ・・・・・うああ。」」



ところで、
鈴は慣性制御と電磁操作で自分の神経回路内の電気抵抗を0にする特異な技術を持っている。
それはすなわち、自分の超能力で自分の神経回路及びその細胞組織に干渉しているということである。
成長期の体によく馴染むよう、繰り返し行われた自己改造は鈴の神経組織の発達を著しく促した。
鈴の神経密度は常人のそれの倍である。加えて元男だ。


つまり何が言いたいかというと、鈴は「すごく我慢強い」がすごく敏感なのである。


「あ、ああっ、・・・・・・ひゃあんっ!・・・・あっ!?・・・・・・あっ!・・・・・・」

「ああああああっ!」

「ほれほれ、こんなものとちゃうぞー!もっといくぞー!?うりゃりゃりゃりゃ!」


むにむにぐりぐり。





「・・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・。」

顔を赤くして見入る三人。
いつもなら直に止めに入るものの、

今日はもうちょっとこのままでもいいかなー。なんて考えてしまっていた。
半分思考がフリーズしている。
薫と鈴の痴態に葵は手で顔を隠しているが、指の隙間からバッチリ見ている。


どうでもいいが皆本、お前はヤバいぞ・・・・・・?




「み、てないで、・・・・・たすけ・・・・・ひゃあぁん!・・・・・・・・あぅ。」


耳まで赤くなった鈴。
後ろからもみしだく薫には、うっすらと汗をかいた鈴のうなじが見える・・・・・・・。
いくらゴツイとはいえ、ファッション性も考えられた首輪はそこまで大きくは無い。
鼻を埋めれば鈴の香りがする。

むせかえる甘い匂いが薫の理性を狂わせた・・・・・・。



「・・・・・もう、しんぼうたまらーん!!こんなに可愛い鈴が悪いんやーーっ!えいッ!」


「うわわわわわ!?お止めください~~~~~!?」



秘儀!!サイキック・悪代官ごっこ~~!!
薫は帯をほどいて端を持ち、鈴を念動力で空中で回転させる。
ある意味薫の積年の夢が叶った形だ。

・・・・お前は横島か。


「い~や~~~~~~。」


ただ、念動力で無理やり回転する鈴も実は結構余裕なのかも知れない。

薫のスキンシップを女の子の標準だと勘違いしかねない状況だが、
なんだかんだでイヤではなさそうだ。

鈴にとってはませた子供がじゃれてきてるくらいの認識だし、
体が敏感なのも自分のせいだ。

それに一応、薫は鈴のバベルに来てからの「初めてのお友達」で、実はその強大な念動力は鈴の憧れだ。
つまりはある意味「憧れの先輩」と言うことだ。

その彼女とのスキンシップが嫌な筈も無い。
それが多少過激であることには物申したい心境だろうが・・・・・。



「いいかげんにしろ!!」
「せや!流石にちょっと引くで!」
「いいかげん鈴ちゃん泣いちゃうわよ。」

ゴチンッ!


ようやくハッと気が付き止めに入った三人。

「あいたぁ~~~~~!!?なにすんだよ皆本!・・・・・・・・・・・・・・・・お前らも見てたじゃん!?皆本達だけ良い子ぶるのはずるいぞ!?」

正論。


「そ、それはだなぁ・・・・・・・。」
「い、いやそれはなんちゅうか、あれや・・・・・・。」
「別に他意はなかったというか・・・・。」


確かにそのとうりである!
薫が正しい。
さしもの皆本達も言い返すことが出来ない。
ばつが悪そうに眼をそらす三人。

が、ちょうど良いタイミングで鈴がむくりと起き上がった。



「お、終わりですか?・・・・・・・・・。」


「はぁ、はぁ・・・・・こ、腰が抜けました・・・・・・・・・・・・・・た、立てません・・・・・・・。」




完全に毟り取られた帯に崩れた着物、上気した頬にうっすら汗をかいた鈴。
荒い息を吐く様は事後の如く。
そして焦点の合わない瞳はこのときばかりは陵辱の後を思わせる。
普段はコレはどうなのよ、と思わんばかりの首輪と腕輪も似合う似合う。まったく違和感が無い。

腰が抜けて立てないらしく、その場で上半身だけをうつ伏せの状態から斜めに起こした状態だ。
・・・・・むわりと立ち込めるその色気は、とても9歳とは思えないいじらしさ。


そしてこれが最も重要なのだが、
見えそうで・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・見えない!!

ああ、なんで!?どうして!?
こんな人間がいるからロリに走る奴が出てくるのである!だれか責任者呼んで来い!







「・・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・。」




パシャッ!

パシャッ!


デジカメを押したのは、皆本。だが彼はこの一瞬で自分の力不足を悟った。

とりあえず、皆本は持ってたデジカメを紫穂に渡した。
そして紫穂は最高のアングルで鈴を激写し続ける。
手のブレなど、押さえる必要も無い。
静かに、そして力強くカメラを持つその手は今精密機械をも凌駕するスター・プラチナもびっくりな大活躍をしていた。





「え、ちょ、何を。」

撮られる側はたまったものではない。


パシャッ!

パシャッ!



「や、やめて・・・・・ぃやぁ・・・・。」



パシャッ!

パシャッ!

パシャッ!

パシャッ!

パシャッ!

「・・・・・・・・。」
なり続ける音。・・・・・鈴はもう諦めたようだ。


パシャッ!

パシャッ!

パシャッ!

パシャッ!

パシャッ!

パシャッ!

パシャッ!




・・・・・・・・・・。
・・・・・・・。
・・・・。









静かに、紫穂のシャッターを押す音が響き続ける・・・・・・・・・・・。

















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某所で相変わらず税金について考えさせられるあの組織が、活発に活動していた・・・・・・・。





「商店街の写真仲間だとぉ!?全員今すぐ身元を洗え!」

「危険物など持っていないか、厳重にチェックをお願いします!」


「人手が足りん!エスパーチームも動員しろ!・・・・・・怪しい奴は蟻一匹通すなよ!!?」

「了解!バベル内のエスパーチーム新たに3組、出動を要請します!」



慌しく指示を出す二人。
悪ふざけに過ぎる傾向はあるものの、二人とも非情に優秀な人間だ・・・・・。
しかしAチームはうっかり近寄りすぎると鈴が気付くので、隠し撮りは出来ない。
衛星写真では建物の内部は覗けない・・・・・・。

つまり彼等は皆本達のようにオイシイ思いは出来ないのである。





・・・・皆本達がのんきに遊んでいる裏では彼等の涙ぐましい努力があった事を、読者の皆様には忘れないでいただきたい。(笑)


















つづく















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