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[29585] {習作}【MS】ティアナ憑依・魔改造(TS)【モビルスーツ・ショウジョ】
Name: toxic◆037c1b51 ID:ccbe12db
Date: 2011/09/05 18:41
もうそうがばくはつしてかいてしまった。
こうかいもはんせいもしていない。

冒頭がクライマックスで、後から本編を書くっていうアレです。






【MS】ティアナ憑依・魔改造(TS)【モビルスーツ・ショウジョ】



プロローグ 不可能をも砕く戦士。その名は・・・・・・・



















天高く昇り往くゆりかご。
もはや事態は一刻の猶予も許さない。

追いすがる人影・・・・・・閃光を散らしながら大きな機械の羽で空を翔る少女に、
ミッドチルダは希望を託す。



「───狙い撃つ!」


背面から射出されたドラグーンで空中にうじゃうじゃいるガジェットを鴨撃ちにするティアナ。
左右合わせて合計16機の放熱板のようなものが、ガジェットの数をみるみる減らしてゆく。


・・・・この世界では知る者とているまいが、これは現実世界のとあるアニメの面制圧兵器だ。
別にファンネルでもフィンファンネルでも良かったが、
シリーズで言えば、珍しくバッテリー(一部核分裂炉を搭載した機体もあったが)で動くという共通点でドラグーンと名づけられた。
リリカル世界の、・・・・・・・これは言い過ぎかもしれないが、
野球ぼーる並にのろくさい訓練すれば誰でも撃たれてから避けられる欠陥魔法の数々とは訳が違う。

確かにあの変則的な機動は脅威かもしれないが、弾丸なんてものはまっすぐ早く飛べばそれでいいじゃん。とティアナは思う。
照準を合わせられたら最後、光速でせまり回避も許されないレーザー兵器こそ至高だ。
この世界でも、地球ではそういう思想が標準的だった。
ホーミング機能は確かに魅力的かもしれないが、速度が伴わないミサイルにはなんの価値も無い。

管理世界人とは価値観が違うのだろう。
人質を避けて撃つとか用途はいろいろあるらしいが、それなら何のために非殺傷設定があるのだという。
死にはしないのだから人質ごと撃てばいいのだ。ぐだぐだ無駄な事を考えて命を危険にさらさせるよりよっぽどいい。


ミッドの連中は使い方次第だとは言うが、戦闘中にそんなややこしい事はティアナとしては考えたくない。
ただでさえ魔法の演算式で頭がぐちゃぐちゃなのに「戦術」とか「戦略」とかくそ喰らえだ。
そんな事はえらい奴等が考えれば良い。そのための官僚だ。

敵は撃つ。撃てば堕ちる。堕ちたら私の勝ち!!・・・・・・・現場で働く人間はそれくらい単純なほうが良い。

いろいろ悩みながら闘ってるスバル達は本当に頭がいいと思う。
私にはそんな余裕が無いからうらやましい。


結局、非殺傷設定と光速は両立不可能だったがそれでも音速程度の速度は出る。
耐えるか、銃口を見て先読みして避けるしかこの世界の魔導師には対処法は無い。ガジェットも同じだ。
ただ、制御が甘いせいでブレまくる銃口から着弾点を導き出す事は不可能に近い。




────そしてティアナ本人にも実は何処へ飛ぶのかあまりよくわかっていない。・・・・狙い撃つ!(笑)である。

実際の所、大雑把に狙いを付けたらあとは地球産のコンピュータ制御だ。
民間人に当たっても死にはしないと割り切ってるし、建物の崩壊に巻き込まれて死人が出ないように気を使ってはいるのだが。

しかしだからこそ、「面制圧」なのである。
原作ではドラグーン一機一機を精密に制御しそれぞれが人間台風ばりに頑張っていたが、
コーディネーターどころか戦闘機人でもないティアナにはそんなこと出来よう筈もなし。
下手な鉄砲数撃ちゃ当たる。を地でいくティアナだった。

原作とは180度方向性が変わってる。
どうしてこうなった。


魔法をというのはある種質量をともなったエネルギーのようなものである。
それを可能な限り加速させたティアナの魔法は質量をもったレーザーとでも言うべきものだ。

質量をもったレーザーと言うと、イメージはビーム兵器に近い。
そしてそれはAMFでは、コンマ一秒レベルの時間では中和できないようなのだ。
おかげでティアナはその低い魔力保有量に対し、絶大な戦闘力と命令に忠実な戦士として、
ぶっちゃけ反抗的で扱い難い六課より重宝されている。



既に、この年にして総出撃回数は管理局でも相当なものだ。
そしてその全てを成功させ、その全ての死地から生還した。
このティアナ・ランスターは誰もが認めるエースオブエースだ。
どうしてこうなった。



そんな中、ゆりかごに吶喊するティアナ・ランスターは憂鬱だった。
彼女の中の人は元・現実世界地球の工科大学生。例によってTSである。
どうしてこうなった。

彼女がティアナ・ランスターになった日は、元の彼女が兄を失い葬式を挙げたところだ。
その晩、間抜けにも幼いティアナは壷を自分の頭に落してしまったようでかなり危険な状態だったらしい。
もとのティアナは一体どうなったのか、今のティアナにもわからない。
混ざり合って一つになったのかも知れないし、死んでしまったのかもしれない。
唯一ついえる事は、兄の汚名を雪ぎ兄の名誉を貶めた連中を見返してやりたいという強い思いだけは、間違いなく彼女のものだという事。
それだけだった筈なのだ。

決してミッドチルダを代表して、聖王様に物申す親善大使になりたかったわけではないのだ。
何故か知らないが、みんな私の事をやたらと持ち上げるから、ティアナなら・・・・・ティアナなら何とかしてくれる・・・・・・!!
みたいな空気に耐え切れず飛び出してきたら、まさかの最終決戦。


一体全体何故こんな事になったのか・・・・・・・・。
どうしてこうなった。



「ははははははははっ!!やはり、やはり最後に私の前に立ちふさがるのは貴様か!・・・・ティアナ・ランスター!!」


顔芸。

憎憎しげにティアナを睨むこの男はジェイル・スカリエッティ。
無限の欲望と呼ばれた重犯罪者だ。



「エキサイトしてるとこ悪いけど、あんたの狂言回しに付き合ってるヒマは無いんだわ。ヴィヴィオは返してもらうわよ、スカリエッティ。」


モニター越しにスカリエッティは叫ぶ。



「くっ。・・・くくく・・・・・貴様・・・・・・貴様如きに私の娘達が敗れるとは・・・・・・・・」

ドン!!

モニターの内部でスカリエッティが杖を振り回した。



「・・・・・肉体を強化するための付属品として機械を埋め込んだ、私の戦闘機人とは根本的に違う!!」
「貴様のアーマード・デバイスは肉体を機械の付属品に貶める狂気の兵器だ!!この・・・・・・・・・・・・・・・・魔女め!!」


・・・・・・。

────だからなんだっての。

ティアナの正直な心境をいうとこの一言に尽きる。

こっちの地球でも、人口筋肉やモータ等多種多様なアクチュエーターで動く身体補助装置が多数開発されている。
ティアナがアーマード・デバイスを作る時に参考にしたのはこれらだ。

そして地球の科学に基づいて設計されたこれらが最後にぶつかる壁は、人間だ。

戦闘機や戦車。こいつらはもし脳みそだけ搭載して操縦する事が出来たら。
もし人間の感じる不快感や疲労などを無視できたら。
もし軽いGや衝撃で容易く故障する人間と言う部品を排除できたら。

二次大戦からこっち発達してきた人間工学とは、
如何に人間に機械の邪魔をさせないかと言う事を追求する学問だと、ティアナは思ってる。

そもそも、剣術だの槍術だのいう技術は武器に合わせて如何に人体を動かすかと言う技術の総称だ。
なにもおかしな所など無い。

ミッドの連中の価値観がおかしいのだ。


ぶっちゃけミッドの魔導師の持つデバイスという奴の設計思想もおかしい。
幾ら魔法でも、慣性を完全に無視できるわけでも物理法則を対価なしで捻じ曲げられるわけではないのだ。
石を投げたら反動が帰る。無効化するには踏ん張るしかない。魔導師はそれを魔法でやっているだけだ。
ただ、それをするには魔力がいる。そして魔力は幾ら多くても節約するに越した事は無い。

よって手で持って反動を殺せる分は殺したほうがいいし、
中途半端にするくらいなら反動なんて全て消すくらいの対策をしたほうが良いとは思うのだが、
ティアナの知る限り反動中和は完成された魔法との認識らしく、設定をいじってる奴は見たことが無い。

まだシグナムのレヴァンテインやヴィータのグラーフアイゼンはわかる。
「振る」武器だから垂直に持っていたほうが安定するし反動も逃がしやすい。

だがなのはのR・H、クロノのS2Uやデュランダルなどは違う。
砲が前面についてるのに取っ手が付いていない。肩当もない。
R・Hは何処で作られたかわからないとは言うが、高度な文明圏で製作された事は間違いない。
一体何を考えてアレを製作したのか一度親の顔を見てみたい。

まして、他の大概の杖型デバイスを作っているのは管理局である。


槍のように前面に構えて宇宙戦艦ヤマトばりの砲撃を行うなのはの姿は今でもティアナの頭痛の種だ。

あれはアニメだから許されるのだ。
三次元においてアレは駄目だ。脳が理解を拒否する。
・・・・・そんなわけだから、坊主憎けりゃ袈裟までと言う。
頭の固いティアナは相も変わらずなのは達が苦手だった。


これは、ティアナはミッドの連中はと蔑む様に言うが、ティアナもまた同じように地球の価値観を脱しきれていない査証といえる。

ミッド人からしてみれば、これが標準で常識なのである。
そしてさしたる問題が浮上していない以上、別に伝統を変えようとは思わない。
精々、低ランク魔導師用のデバイスにそうした概念を導入すると言った程度だ。
必要は発明の母。必要が無いならわざわざ苦労して新しい事をする事は無い。
なのは達にはそうしたこまごまとした工夫は必要がないものなのだ。

そしてティアナも頭でわかってはいるのだが・・・・・・何年たっても未だに納得がいっていなかった。
つくづく異文化コミュニケーションに向いてない女である。
絶対外国に住んで文化摩擦起こすタイプだね。





「ヴィヴィオを素直に返さないなら、こんな骨董品落すまでよ。あんたもぼこぼこにして、この異変は終わらせる。覚悟は良い?」

冷徹な瞳で見返すティアナ。
疲労のたまる六課生活での一番の癒しである、可愛い可愛いヴィヴィオを誘拐したコイツの罪は重い。
自分だけでなく、隊長陣を引き回して一人100発ずつ最大魔法攻撃を叩き込んでやりたいくらいだ。







「できるか!?貴様如きに・・・・・・・・?人間を止めて心まで機械仕掛けとなった魔女如きに、・・・・・・私の計画が止められるかぁああああああああ!!??」









厳かに答える────機械仕掛けの魔女と呼ばれた少女。



「出来る、出来ないじゃない。・・・・・・・やるのよ。」


















──────COMING SOOON !!!






















あとがき



やっちゃったね。
絶チルのほうも忘れないけど、感想を見てたら脳汁が止まらなくなっちゃった。
文章力は上がらないのにタイピング速度が鬼のように上達してるお!





[29585] 第一話 伝説の始まり。
Name: toxic◆037c1b51 ID:ccbe12db
Date: 2011/09/04 09:48











【MS】ティアナ憑依・魔改造(TS)【モビルスーツ・ショウジョ】


第一話 伝説の始まり。























ここは六課のオフィス。
新人達の引き抜きに始まり多くの事業を慌しく進めているので、未だ閑散としているが、
ここが六課のストライカー達の宿舎ともなる予定だ。

そこで隊長格二人が話し合っている。


「なのは、六課に引き込みたい人材やねんけどな。ちょうどええ子が一人おったわ。結構重宝されてるって話やから、はなから候補入れてへんかったんやけど、他の課でももてあましとったみたいでな。話が回ってきたんや。」

「へぇ、どんな子なの?」

「聞いて驚きや!それが任務達成率は初陣からダントツで100%!本局が認めてる魔導師ランクは空戦Bで、それに反して戦闘力は馬鹿高い。・・・・おまけに私と同じでロスト・ロギア級のデバイスまでもっとる。」


なんとそれは凄い。
もしそれが噂道理ならまさに六課が求める都合の良い最高のソルジャーだ。
予知の妨害のための重要な仲間になってくれるだろう。
ただ・・・・・、

「すごい子だね・・・・でも、そんな子がいたらすごく噂になりそうなものなんだけれど、聞いた事無いね。」

「あー、結構悪名も轟いとるからなぁ・・・・・不思議と人気はめっちゃ高いねんけど。・・・・・・・人質ごと犯人を撃ちまくったり、一人で戦争調停のために両軍の全兵士を叩きのめしたり、犯人の逃走止めるために橋落したり。」

「後はそうやな・・・・・、あれや、ジョークで廃艦で新人魔導師一個中隊と模擬戦した話知っとるやろ?表向きは当然全滅て言われとるけどな、・・・・・・あれなぁ、実は一人を除いて開始10分で全員堕ちたんやけど、ソイツ一人は残って動力部をぶち抜きよったらしいねん。殆ど相打ちやけどな。老朽艦やったしマグレやて言われとるけど、映像見た限りじゃそうは見えんかったなぁ・・・・。」


「そ、それってまさか・・・・・・・もしかしてあの『機械仕掛けの魔女』?」

「正解や!」



・・・・・・・・・。


「だ、大丈夫なの・・・・?あの子すっごく怖いって聞いたけど、他の子と上手くやっていけるのかな・・・・?」

「それをなんとかするのがウチら大人やろが。情けない事言っとるんとちゃう。・・・・それに貴重な戦力や。公式ランクが低いからリミッター付けんでもいいのはどえらい利点やで。頭の固い本局にも今は感謝せなあかんなぁ・・・・・。」


「えー、・・・・・・・それってもう決定事項なの?」

「当然やろ?」



何を言っているんだ?という顔で聞き返すはやて。
六課の最高権力者の決定事項だ。平のなのはは従うしかない。
相談ではなく、単に自分に知らせておきたかっただけなのだろう。
そのまま彼女は行ってしまった。

それにしてもあの『機械仕掛けの魔女』とは・・・・・・。



「うう・・・・・不安だよぅ・・・・。」









なのはは一人愚痴た。














■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■















私、ティアナ・ランスターは自ら一から設計し作り上げた全身着用型のまったく新しいデバイス、
・・・・アーマード・デバイスのウイングガンダム・ゼロカスタムを点検をしながら深く溜息を吐いた。

といっても、次元世界中のあちこちから集めてきたパーツや完成品を、あの手この手で繋ぎ合わせてでっち上げた仮組みボトムズみたいなデバイスだ。
特注なのは装甲ぐらいのものである。

・・・・・ここをケチると一気に死亡率が高くなるし「デザインが悪くなる」からね。


名前に他意はない。ただ空戦適性の無い私が飛ぼうと思ったら翼が必要だっただけだ。
どっかの遺跡に転がってた低級ロストロギアのガーディアンの翼をちょっぱって来た。
これくらいなら危険もないし、保有の許可も簡単に降りる。民間で観賞用に同型をもってる金持ちも多い。
ゼロシステムとかガンダニュウム合金とかそういうものはないが、
デザインはまんまウイングガンダムの羽みたいなのだと思ってくれていい。

ただどちらかというと羽以外の装備や性能の面ではゼロカスタムは、種や種死の機体に近いのだろう。
バッテリー駆動で、ドラグーンと名づけた多角面制圧兵器を搭載しているところもそうだ。
ドラグーンそのものは結構薄っぺらい板みたいな形状をしているので左右8枚ずつ重ねて翼の内側の付け根に搭載しても翼を圧迫する事は無い。
ただ、射出する時ドラグーンを広げると航空力学的にちょっとまずい事になるが、それは一瞬の事なので問題はない。

「ドラグーン」は一つ一つが独立したデバイスのようなもので、全てがインテリジェント・コアを搭載している。
オートマチック型のカートリッジシステムも搭載している。
そして本体に搭載してある右脳・左脳に相当する2つのコアも含めて18機で一つの意志を構成している。

ちょっと多いが地球産のグリッドコンピューティング・プログラムをアレンジしてインストールしたらあっさり18機全部動いた。
ただしインストールするためにはコアのデータ容量も演算速度も足らず、
このプログラムをインストールできるコアを開発しようと思ったら管理世界通貨換算で、開発費に100億かかると言われたのは良い思い出だ。


ちょっとまて、話すAIなんて高度な物が演算できてなんでこんな単純なプログラムが無理なんだ、という疑問をもったあなた。

それは正しい。
実は管理世界で幅を利かせている魔法技術というのはオカルトと科学の雑種のようなもので、
ハード面では科学。ソフト面はオカルトが比較的明るい。
コアの中身はパソコンのように完全に0と1の配線の世界ではなく、実はなぜ演算できているのかよくわからないブラックボックスが結構ある。
まぁ使い魔の魔法とか次元移動の魔法とか、ユニゾンデバイスとか特にロストロギアとか。
そういう「よくわからないがとりあえず動くもの」というのは次元世界では普遍的なものだ。
ってゆーか魔法そのものがある種ロストロギアみたいなものだ。

そんなわけだから地球産のICチップを一機につき5枚程搭載して魔法技術で小型化したハードディスクを2つずつ詰めたらあっさり解決した。



・・・・・・・いかにミッドチルダの純物理学が遅れているかがわかる。

普通は一度にデバイスを二つ三つ使えたら凄い、というレベルなのだ。
管理世界では管理外世界の、しかも魔法技術以外の技術を蔑視する傾向があるのでこういう事になる。
総合的には確かに魔法技術が優れているだろう。だが実際には純科学や純オカルトの方がその道の進んだ位置にいる事は多い。
アルハザードとかいう世界は、実の所オカルトと科学を両方極めた特異な世界だったと言う事なのだろう。

私は前世で工科大学生だったし、憑依してからも地球の本で学びなおしたからこそそれを知る事が出来た。
誰も専門分野以外のことを知ろうとする人間は少ない。

もちろん、ゼロカスタムは地球の技術だけでも魔法技術だけでも完成しなかったが。

そしてドラグーンは全てインテリジェント・デバイスであるからして滅茶苦茶高価なので当然使い捨てではない。

しかし給料の殆どはゼロカスタムの改造や整備に使われているが、
使えば使うほど学習してイイコになり、勝手に照準を付けてくれる便利さはインテリジェント・デバイス特有のものだ。
しかも意志をもつロボットなど男の子の夢である。

こればっかりは魔法技術サイコー!と手放しで絶賛せざるを得ない。



そして顔面はないし、多くの部分が優れた防御魔法であるバリアジャケットで覆われる仕様なので分り難いだろうが、
本体・・・胴体部分のデザインは出来るだけシリーズ中一番好きだったνガンダム準拠にしてある。
白・黒・グレーを貴重にしたシックなデザインだ。
でかい翼がくっついている時点でシックもなにもないかもしれないが。



まそういうわけで、私は気にせず愛機ゼロカスタムを整備していたが・・・・・・・、

「はぁ~~~~。」


やはり深く溜息を吐いた・・・・・・・・。



そもそも私は真面目に任務をこなしているつもりだし、
報告書・始末書もキッチリ書いているというのに・・・・管理局のあちこちの課や隊をたらいまわしにされ、
ついには半ば独立戦力の助っ人要員のような扱われ方をされている。

だいたい私はデバイスマイスターとしての能力が主で、原作のティアナのような技量は無い。
ティアナはとてつもない努力と執念で強くなったが、自分で言っていたようになのは達と比べると凡才のレベルだ。
しかし私には好きでもない事の努力をして其処まで強くなれる自信が無かった。

だから、兄の汚名は原作のティアナとはもっと別のところで晴らそうと思っていたのだが、いつの間にかコレだ。

そんなわけであるからして、前世から機械いじりが好きだった私はデバイスマスターとしての実力には大いに自信があるのだが、
戦闘は殆どデバイスの性能任せのごり押しだ。初期アムロみたいな状態である。しかも成長の余地が無い。
ブライト艦長には叱られるし、シャアが聞いたら激怒するだろう。

多分なのはさんレベルにはゼロカスタムと一緒でも一生勝てないだろう自信がある。


まぁそれについては任務ごとの給料もいいし不満はないが、
何故か私に回ってくるような任務は難しい物が多いし連中何故かこんな時だけ書類仕事が速い。

一日に2~3件仕事が舞い込んでくるなどざらだ。しかも近くにいる時は陸の任務までくる。

私は、自分の魔力はあまり使ってなくて地球産の高温超伝導コイル(といっても90ケルビンくらいだが)
を魔法技術で改良したコンデンサに電力を馬鹿みたいに溜めて使っている。
充電は、都市電源では一ヶ月かけても満タンにはならないので、
静止している時だけ使える私のレアスキルでこっそり大気中の静電気や、宇宙だと宇宙線を変電して充電できる様にしているのだ。
ま、それを使って駆動しているので連戦は苦にならないからいいのだが、
とっ捕まって発電所にされたりモルモットにされたくないので黙っている。・・・・が、不思議と何故連戦できるのか聞かれた事は無い。

こんな時でしか使えない上デバイスの補助無しでは禄に発動すらしない欠陥スキルだが、嵌れば強い。
どんな能力も使いようだとリゾットさんも言っていたが本当だった。


ただ局の連中は私をトラブルシューターか何かだと勘違いしている節がある。
私は本格的に局で勤務しだして1年も経っていない新人であることを忘れているんじゃなかろうか?
別に私は異能生存体とかそんなのではないのだが。



「機動六課か・・・・・・・形は違えど結局関わる事になるとはね。原作の登場人物を避けてきた意味が無いじゃない。」

そう、挙句の果てには厄介払いとばかり新設の機動六課・・・正式名称・古代遺物管理部 機動六課に配属となった。

確かに人質ごと犯人を魔法でぶっ飛ばしたり、
いつまでも停戦交渉に応じない管理外世界の戦場で、両軍の兵士を全員叩きのめして無理やり調停したり、
逃げる凶悪犯がやばい爆弾抱えてたから逃げてる最中橋を落したりしたけれど・・・・・。


全部許可は取ってからやった事だ。私の責任じゃない。
責任者は責任を取るためにいるもんだろ?
私は清廉潔白にやってきた筈なのだ。それを散々こき使って左遷のような真似をして・・・・。



「あ~あ、何かいいこと無いかなぁ~~~。はぁ。」











ティアナは一人愚痴た。













つづく







[29585] 第二話 魔女の実力。
Name: toxic◆037c1b51 ID:ccbe12db
Date: 2011/09/04 17:10









【MS】ティアナ憑依・魔改造(TS)【モビルスーツ・ショウジョ】

第二話 魔女の実力。






















ところで、このティアナ・ランスターが考える限り、管理世界というものと魔法文明というものは案外そう悪いものではない。

確かに、魔導師編重主義や就労年齢の低下、治安が多少悪い等の点で問題点はあるがそれは科学文明だって全体を見れば同じ事。
むしろ問題を分散して小出しに解決してれば大戦などと言う事にならずにすむこの体制は素晴らしい。

現在地球ではアメリカの一極支配が中国の発展で崩れようとしているが、
管理局にはどこぞの宗教組織が多少強い勢力を保持しているのみで現在競合してくるようなヤバイ組織は見当たらない。
そして魔導師編重主義ではあるものの、徹底した能力主義で人種差別や障害差別も表向き見られないのは特筆すべきモラルの高さだ。
まぁ外国どころか異世界。しかもフェレットに変身する奴等や龍を呼ぶ連中もいるのだ。奇抜な頭髪をしている人間も多いし。
人種がどうのこうの言っていたら社会が立ち行かなくなるのは確かかもしれない。

それだけにこの平衡状態を生み出した魔法文明の管理局という組織は、素晴らしい組織だ。
組織が大きくなればまた闇も深くなるのは当然のことで、犠牲者の方には非情に申し訳ないのだがそれは必要悪と言えるかもしれない。
この支配体制を確立し続けている功績に比べれば、納得は出来ないかもしれないが許されるレベルだ。
もちろん、当事者でないからそんな無責任な事が言えるのだけれど。

ただそれほどに、地球の悲惨な戦争の歴史を知るだけに管理局と伝説の三脳の功績には頭が下がる思いだ。


戦争根絶という観念から捉えると、なるほど確かに純科学を発展させ難い状態に置いた現状は理想的だ。



だから其処まで考えての行動かはわからないが、私のゼロカスタムのデータは社会に流さないほうがいいのだろう。

読者の皆様には伝わり難いかもしれないが、
ミッドの人間にとって、いや管理世界の住人にとって純粋に科学のみで生活する世界があるのは知識としては知っているものの、
それは地球人が魔法文明について説明された時のように信じ難いものなのだ。

現在進行形で魔法の世界で便利な生活をしているとわかる。その感覚が。
今私は地球の日本と殆ど同じような快適さで過ごせているが、これらを構成している技術の半分以上は魔法技術なのである。
魔法無しでこれと同じレベルの生活が出来る世界があるなどと、どうして信じられよう?

特に、管理外世界でも地球の科学技術は異常なレベルだ。普通は科学のみでここまでこれないものなのだ。
だからこそ、管理世界では魔法だけが発展しているとも言える。

これは地球人の魔法資質の少なさと、戦争で文明を「衰退」させるどころか「発展」させてきた地球人類のしぶとさの賜物だ。
他の世界では大規模な戦いのたびに、遺跡やらロストロギアやらを残して滅亡したり技術と歴史を失ったりしている。
その中で一際異彩を放つ地球の歴史は、その真逆。
戦争が起きれば、戦争特需に沸き技術開発に磨きがかかる。
一度も途切れることなく、地球開闢からなる自らのルーツを記録している・・・・・・。


管理世界人の感覚からすれば、地球の歴史とはまさにSFなのである。IFの世界だ。
地球人からみた管理世界人の文化に対する驚きとほぼ同じものだと思ってくれて良い。
だからこそ、地球の科学は管理世界ではマイナーも良いところなのだ。

そして地球の科学の発展は凄まじく、下手をするとこのまま1世紀も経てば今の管理局とならガチで戦争すらできるかもしれないレベルだ。


ある意味、地球の持つ純科学力が注目されない気風でよかった言える。
故郷の地球とは違うとはいえ、地球が魔法で火の海になる所なんてみたくない。逆に管理局の崩壊なんかも考えたくも無い。
原作の地球組も其処まで考えているのかいないのか、吹聴して回ったりはしていないようだ・・・・・・。


まあ結局、ドラグーンとゼロウイングが莫大な電力を喰うから充電できる人間が私しかいないと言う時点で発表したって意味ないし、
何故かコレを見たミッド人はゼロカスタムを狂気のデバイスと忌み嫌うから流行らないのだが。

負け惜しみではない。決して無い。


しかも昔設計思想を持ち込んだデバイス会社はどこも絶対売れないよこんなもの、と私を叩き返した。
おかげで私は今でもデバイスマイスターの世界では鼻つまみ者である。
どうしてこうなった。


全身を覆うタイプというのがまず一つ。

しかも体調管理(衛士強化服みたいなもの)から精神制御(テンションを操作するくらい。戦闘中は種割れみたく無表情になる)
さらに照準補助(ティアナは殆どコレにおんぶに抱っこ)と飛行補助(ほぼ自動飛行)に加えてロックオンされたりセンサーに何か引っかかったら勝手に避けてくれる。
そして他のデバイスの制御までやってくれる万能インテリジェント・デバイスであると言うのが二つ目。

そして最後に死んだ状態で発掘されるユニゾン・デバイスのリンク機能部品等を流用するというのが3つ目。

これ等が主に「あ、ヤバそう」と見える原因らしいのだが・・・。
どうしてこうなった。




ゼロシステムがモデルとはいえ、ゼロシステムに比べたらこんなものあってないようなものだ。
・・・・それに、こんなのユニゾン・デバイスも同じようなものじゃん。
あれは違うの?







中の人は殆ど電池で、任務の概要を頭に入れたらあとは敵に大雑把に狙いをつけて撃てばいいだけ。
半ばゲーム感覚だ。

なんて便利で素敵なデバイスなんだろう。(自画自賛)
戦闘センスが壊滅的な私なんかにはぴったりだ。
これだけやってもまだ戦場ではヒヤリとさせられる場面だらけだというのに、
きっと他の戦闘が苦手な魔導師にはバカ受けすると思ったんだがなぁ・・・・・・・・。
どうしてこうなった。












どうしてこうなった。













■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■












画面の中では、巨大な白い羽を広げた、鎧のようなバリアジャケットをした魔導師が一人。18名からなる魔導師部隊を蹂躙している。
その様はまるで地球の神話に出てくる戦乙女の如しだ。

ミッドチルダ式の魔方陣が浮かんでいるし、ベルカの騎士では無いようだが。

16機の放熱板のようなものは彼女のデバイスなのだろう、戦場を高速で縦横無尽に動き回るそれらは無人機とはとても思えない。
そして打ち漏らしも多いが、中々正確な射撃。

おそらく全機彼女が一人で操っているのだ。恐ろしい制御技術である。
加えて両手にもった大きな二丁の拳銃型デバイス。
こちらも中々の腕だ。

砲門は単純に考えて18。一人一門で数えれば確かに十分対応できる。・・・・・・が、これは異常だ。

彼女の魔導師としての資質は決して高くない。戦闘に使えるレアスキルも持っていないようだ(隠してる)。
どれほどの鍛錬を積めばこんな機動が可能になるのか・・・・・・なのはにもそれは途方も無い所業に見えた。



「はやてちゃん、これって・・・・・・・・・!!」

「そう、『機械仕掛けの魔女』の模擬戦映像や。これから戦友になんねんから、よー知っといたほうがええやろ。」

「凄いけど・・・・・悲しい。自分を押し殺した、悲しい力だよ。これは・・・・・・。」

「せやな。・・・・・・その辺もウチに引き込もうって決めた理由や。聞いた話、局の中で完全に孤立しとるらしいし・・・・・・・・仲間ってもんをしらなあかん。この子は。」

「どうしてこうまでこの子は力を求めたんだろう・・・・・・。」

「経歴は有名な話やよ。・・・・・・・名誉の戦死を遂げた筈の、たった一人の肉親の兄は管理局の上役の・・・・・保身に付き合わされて犬死やゆーてぼろかす言われとってん。その汚名を雪ぐために、それとぼろかす言いよった管理局員の風上にも置かれへん屑に、兄の墓の前で謝罪させるために闘っとったんやと。」

「まぁもうそれは済んだ話らしいねんけど・・・・・・その屑、小便漏らしながら墓に土下座して謝っとったらしいで。」


・・・・・・・・・・。


「そ、それもなんか凄いね・・・・・。でも、言い方は悪いけどこの子の復讐は済んだんでしょ?なら、この子はなんでこんな・・・・・。」

「なんかな、カウンセラーの話ではこう燃え尽きたー。みたいな状態らしくて、新たな目的意識が持たれへん様な感じやねんて。いままでそれ一筋で頑張ってきたもんやからそれが無くなると人生の支えが無くなってまう状態やねんて。この子、家族もおれへんし。」

「そうなんだ・・・・。」

「ま、なんとかなるやろ!ウチの隊にはこんなやついっぱいおるし、ぶっちゃけ復讐が叶っただけまだなんぼかマシや。むしろこの子には守ったるもんが必要なのかもしれん。年少組と先会わせてみるのもええかもな。」

「そうだね!それに、私達大人はそのためにいるんだもんね。はやてちゃんも偶には言いこと言うよね!」

「偶に、は余計やな~~~?久しぶりになのはちゃんの、発育の良いあそこを堪能させてもらおか。」

「え!?、ちょ、まって、」




画面に夢中になっていたなのはの腋からすっとはやては手を入れた。
・・・・・・・・このあとどうなったかは「お察しください。」













六課、活動開始まで後僅か・・・・・・・・・。



















つづく







[29585] 第三話 六課の夜明け。
Name: toxic◆037c1b51 ID:ccbe12db
Date: 2011/09/05 07:16










【MS】ティアナ憑依・魔改造(TS)【モビルスーツ・ショウジョ】


第三話 六課の夜明け。


















朝の日差しも心地よい、六課宿舎前。
他のメンバーに先駆けて、六課が正式に設立される直前にティアナ・ランスター一等陸士は召集されていた。






「ティアナ・ランスター一等陸士、本日より機動六課配属となりました!・・・・以後指揮下に入りますが、コレまで通り独立戦力としての活動も継続するよう厳命されております!ご容赦ください。」


「確かに。八神はやて二等陸佐及び機動六課はティアナ・ランスター一等陸士を歓迎します。ようこそ六課へ。といっても正式な設立はまだやけどな。・・・・・・それと、独立戦力の話は聞いとるよ。心配せんでもええで、あんまり無茶なのは断っといたるから。」

「はっ!ありがとうございます!」

いつもの適当でぶっきらぼうな言動とはうって変わってバカ丁寧な口調。
コイツも一応軍隊教育を受けているであろう事がうかがい知れる。



「あーそれとなティアナ、ウチら機動六課は年少組も多い。いくら管理局が軍隊みたいなもんとはいえ、あんまり硬いのも教育によろしくない。アットホームな雰囲気で行ことおもてんねん。せやから、普段はもうちょっと崩して良いで。」



・・・・・・・。


「あ、そう。じゃあ以後そうします。よろしくねはやてさん。」

が、許しをもらった事であっさり崩れる。
一気に溜め語である。・・・・・駄目な奴の空気が流れる。

管理局が彼女をもてあましているのはこういう破天荒で次なにをするかわからない所でもある。
地位や階級などと言うものを軽視する傾向にある日本のゆとり教育の犠牲者、ティアナ。加えてちょっとずれてる。

お偉いさんの額に血管を浮かび上がらせておいて気がつかない事も多い。
八神はやてはそんなことを気にしないタイプだからいいが、
普通崩して良いって言われたからってコンマ一秒の変わり身芸を披露する必要は無い。



「軽!?しかも適応早っ!・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・え、結構おもしろい子やってんね。君。」

「それほどでも。」

はやては目を丸くしている。想像していた人物像とは違いすぎた。
っていうか燃え尽き症候群というよりはただのマダオだ。

さっきまでキビキビしていたのに、八神が仮面をとって良いなどというものだからすでに気だるい雰囲気が漂っている。
その癖立ち振る舞いは背筋はしっかり伸び、スッキリしているのだから男前である。

ただ最低限敬語はキープしているが、どうでもよさげなぶっきらぼうな口調はもはや隠しようが無い。
こんなんだから、幾ら功績を挙げても人生ゲームみたいに色々理由を付けられて階級をいったりきたりするのだ。

上の人間には睨まれて、下の人間や世間の皆様(特に子供)には異様に人気がある。それがこのティアナ・ランスターだった。


駄目だ、コイツ早くなんとかしないと。


「い、いや、まぁ誉めたんやけどな・・・・・・。うーんこれはちょっと対応を考えなおさなあかんな・・・・・・。あ、このツンツン頭はエリオ・モンディアル三等陸士。先に六課の宿舎で預かっとったから、この子に案内頼む事にしたわ。・・・・たのむわな、エリオ。」


はやては、頭痛が痛くなってきたのでとりあえず隣に来ていたエリオに投げた。


「正式な顔合わせはまた後日するから、とりあえず六課の施設だけどんなもんか見て回ってき。途中でキャロに会うたらついでに紹介したって。」

「はいっ!わかりました!」



「そう。よろしく、エリオ。」

「は、はいっエリオ・モンディアルですっ今日からよろしくお願いします。」

「じゃ、案内してくれる?」

「はい!まずこっちです!」

・・・・。

マジでもうあっさりしている。
悪気はないのだろうが別れ際に隊長に挨拶もしない。
スタスタとエリオと六課の宿舎前を歩いていってしまう。


エリオは子供だからいいけど、それは元大人の16歳としてはどうなのよ?










「あかん・・・・・・想定外やねこの子は・・・・・・・。」





この短い時間で子狸はもうたじたじだった。











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「えーっと、これでもう施工がすんでる区画は全部ですね。」

「そうなんだ。これでまだ工事してるところがあるなんて、結構広いのねココ。」

「なんといっても、機動六課の宿舎とオフィスですからね。」


そこ、関係あるんだ。
どう考えても一つの課如きに過剰な施設だと思うんだけどなぁ・・・・



「ま、今日はアリガト。知らないことがあったらまた頼む事にするわ。」


わしわし。
女の子とは思えない強い力でエリオの頭が撫でられた。
一応、自分では卑下しているが機械いじりと称して思い機材を持ちつつ行ったり来たりしてるし、
パーツ漁りと称して単身遺跡に突入したりしているティアナの身体能力は一般人から見れば中々のものだ。
中の人が男の精神であるのも関係しているのだろうか、単純な筋力だけはこのティアナは原作を超えている。
ほかは絞りかすみたいなもので、全ての情熱をゼロカスタムに注いでいるため勝てる要素は一切無いが、逆に言えばゼロカスタムがあれば強い。


「わぷ。ちょっ、やめてくださいよ~。」

そういいながらもイヤではなさそうだ。
こういう所が、子供に人気が出るのだろう。

「あら、ツンツン頭の癖に結構猫っ毛なのね。良い手触り。どうなってるのかしら。」


わしわしぐしゃぐしゃ。

「あ~~~う~~~~~~~。」



・・・・・・・。


二人で和んでいる所に、ある人物がきた。
そう。3期にわたって主人公の座を明け渡そうとせず、意思疎通能力に若干の難があり大人気ないあの人である。



「や、ティアナちゃん。早速六課に馴染んでるみたいだね。」

「あなたは・・・・・・・?」


「高町なのは。階級は一等空尉で、これからあなたの直属の上司になる予定だよ。よろしくね。」

「あなたが・・・・・・。」


別に、知ってはいたがアニメと現実では顔立ちが違うので判別できなかったと言うだけだ。
どういうわけか意外と日系人もミッドにはいるし。

ただ、この特徴的なサイドテールを忘却していた事はコイツの単なる怠慢である。
実の所原作には大して興味が無いのだ。
ゼロカスタムさえあればいい。



「ふふ、子供達と上手くやっていけるか不安だったけどこれなら大丈夫そうね。」

「それと・・・・・・・ねぇティアナ。お願いがあるんだけど、今から私と模擬戦しない?」


───は?


「えっと、高町さんとですか?」

「なのはでいいよ。・・・・・えっとね、これから機動六課が設立されると高ランクの魔導師の保有制限を越えちゃうから、私達隊長陣はリミッターをつけなきゃいけなくなるの。それで、私が全力全開で戦えるのはもう今日ぐらい。後は機動六課解散まで滅多なことじゃリミッターを外す事が出来なくなるんだ。」


私だけ先に呼ばれた理由はそれか・・・・・・ティアナは内心愚痴た。

しかし保有制限とやら、聞きしに勝る本末転倒振りである。
予言の事を知らない人間は大抵良い顔をしないだろう。


「だめかな?」

可愛い顔。

しかしパワハラである。
こう迫られて、紆余曲折あってまた一等陸士に逆戻りした今の私に断る術は無い。
わかっているのだろうか、このなのはさん。
いくら階級に疎いティアナでも、命令無視はできない。
ここは管理局であり、管理局とは自衛隊並に詭弁で言い繕った「軍隊」である。

私に恥をさらせと?
それともあれか。
力の差を見せ付けて、上下関係をハッキリさせようと言うアレだな?



「・・・・・・・わかりました。今からですか?」

毒喰らわば、皿まで。
勝てる見込みは大して無いが、
いいかげん局の理不尽な仕事に、極めつけの六課配属。
イライラしていたティアナは全兵装でこっちも全力全開してやることにした。
目が据わってる。

流石に本当の奥の手を切ったりはしないが。




「うん、ありがとう。もう空間シミュレーターも準備してあるよっ!早速いこっか、ティアナも燃えてきたみたいだし!」

「あ、エリオも来るよね?」

「はいっ!」

何という都合の良い解釈。
別に燃えてなどいない。
ただイラついていただけである。

兄の汚名も晴らしたティアナにもはや管理局にいる理由はあまりない。
ティアナが局で任務を請け負っている理由の大半は、折角つくったゼロカスタムを腐らせないためだ。
ティアナをサポートして闘ってくれる筈の、ゼロカスタムのために戦場に出る。

こちらも見事な本末転倒。・・・・・・・・・この二人、意外と相性が良いかもしれない。





「はぁ・・・・・どうしてこうなった。」







ティアナは小声でぼやいた。









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ティアナは緩やかに螺旋を描く少し大きめの、無骨な腕輪に意識を向ける。

これがゼロカスタムの待機形態だ。
はっきり言って、ティアナはデバイスの待機形態がカードやら宝石やら本やらのデバイスは論外だと思っている。

落す危険もあれば、盗まれる危険もある。あまり大きいと常日頃から持ち歩けない。
ポケットが破れたらどうする?たまたま鞄に入れてて引ったくりにとられたら?

大きな待機形態だとどうしても持ち歩けない場面があるだろう。
小さく出来るなら極限まで小さくすべきだ。


そして風呂に入る時は魔導師といえど大抵デバイスは外す。しかしティアナに言わせればそんな事では駄目だ。
傍に置く、では駄目なのだ。常日頃から「身に着けて」置かないと。

当然バックルも駄目。キーホルダーも駄目。首飾りやチョーカーも駄目。眼鏡も駄目。メダルなんてもってのほか。
指輪だって洗う時に外すかもしれない。だから駄目。

よって、ティアナはゼロカスタムの待機形態を腕輪型にした。
少し大きめだが余裕も持たせてあるから、体を洗う時も指を入れて簡単に洗えるし、
チタンとか使ってるから金属アレルギーとかは問題ないし。

何より浴場で裸のときでも寝ている時でも、遊んでいる時も訓練している時でも違和感無く装着できるのがいい。
その上で、ティアナはゼロカスタムの待機形態である腕輪は徹底的に頑丈にしてある。絶対壊れない。

サイズを勝手に調整してくれる機能もついてる。外そうとしてもゼロカスタムはしがみ付いて絶対外れない。

これだけやってもまだ安心しきれないのがティアナクオリティだが、今の所はこれで我慢している。
本音をいうならレベルEの生体指輪みたく体に癒着させたり、ガイバーみたいに異空間に待機させておきたいようだ。


しかもゼロカスタムには健康管理に始まり目覚まし機能や予定表、計算機、念話で聞ける音楽プレイヤー等便利な機能がたくさんつけてある。
待機状態では戦闘だけでなく生活全般に活躍するゼロカスタム。・・・・・携帯依存症のようなものだ。



ティアナはゼロカスタムに完全に頼り切っていた。



「ゼロカスタム、セットアップ!」


現れ出る、純白の翼。

そしてティアナの制服が格納され、裸になったティアナをゼロカスタムが覆ってゆく。

まず、最新の地球の技術を用いて製作された魔法技術と科学技術のハイブリット・マッスルスーツが全身を覆う。
続けて、それらが一瞬で締め上げるように内臓を圧迫した。
臓器を圧縮することで一時的に内臓の機能を押し上げているのだ。
加えて体温調節とアドレナリン等の監視・調整も行い、電力を消費しつつ戦闘中常に弱い回復魔法を使う。
高度なバイオフィードバックだ。
疲労知らずの連戦を支える機構はここまでしなくてはいけない。

この第一の鎧だけでティアナの身体能力は強力なアシストを得、対G性能も格段に良くなる。
筋肉服が体に密着して血流を一定に保ってくれるからブラックアウトも起き難いのである。

そして、このマッスルスーツがある意味ゼロカスタムの本体である。本当の最後の最後ではこれが最終防衛線だからだ。
この全身をピッチリ覆う、衛士強化服かスニーキングスーツのような筋肉服の胸の部分に、
ゼロカスタムの右脳左脳にあたる二つのデバイスコアを格納した、一つの頑丈な宝石のようなものがついている。


そして更にその上から胴体、腕部、脚部の一部を覆う鎧。

特に、胸部装甲は頑丈に出来てある。
デュアルコア等と言う、複雑奇怪な構造のインテリジェントデバイスを衝撃にさらす訳には行かないのでここは富に分厚い。
衝突した運動エネルギーを熱・電力に変えて逃がす機構も採用済み。

背面には、超伝導を利用して損失ゼロのまま大電力を保持できるバッテリー。
こちらも生命線であるからして、装甲は厚い。加えて緊急加速用のブースターもついているし、
見え難いがドラグーンもココに搭載している。
自然と見た目の重心は上に来る。

そして腰の部分にはMS特有の腰当と股あてが合わさったような装甲。

腹筋や背筋運動を筋肉服の上からさらにアシストする機能も標準装備だ。


腕は二の腕を半ばまで覆う機械の手甲。まんまMSの腕だ。
単純な構造なので、その防御力もさることながら筋肉服の上から更に腕力をサポートし、
空中での姿勢制御や瞬間的な加速のためのブースターとしての役割、拳を使っての武器としての役割も果たす。
一応余裕があったのでカートリッジも搭載しているが、あまり使う事は無い。
アームド・デバイスのようなものと考えれば良い。
左腕にはガンダムなので当然長めの盾が取り付けられている。
盾は状況に応じて向きを変えて、邪魔にはならない。
外す事も出来る。

脚部も膝上までの機械の足。そのままMSの足だと思ってくれて良い。
筋肉服の上から脚力をさらにサポートし、ブースター機能やカートリッジ等機能は腕部と大して変わらない。
しかし腕部よりも巨大で、全体的に腕部の2倍程度の性能を持っている。また本体とは別個にオートバランサーを積んでいる。
これもゼロカスタム本体に制御される半ば独立したアームド・デバイスだ。

さらに現れる二丁の大きな拳銃。
予算が不足しているのでここだけ妥協して、まだただの市販品を使っている。
もちろんコアとプログラムくらいは弄ってあるが。


そして、大きな装甲の下を白黒灰を基調にしたバリアジャケットが覆ってゆく。
原作のティアナのような、ミニスカの黒いワンピースの上から青と白のジャケットを着たような姿に、色彩を変えただけのもの。
それに加えて同じ色彩のMSの装甲の衣装。

それは傍から見れば現代風な騎士甲冑のような印象だ。
シグナム等のそれよりは遥かにごついが。


最後に、一番最初に出現した翼が背面に接続される。
稼働する柔らかい金属とも言うべきこの翼は、翼だけに見えるが実はジェットエンジンのような物を積んでいる。
宇宙空間や水中でも問題なく推進できる謎の推進理論を使っているようだ。
動く詳しい原理は未だ不明だが、とある次元世界の遺跡からは結構良く出土する低級ロストロギアの翼だ。
研究者も多いのでその内なにか分るかもしれないし、分らないかもしれない。

しかし魔力を流せば動くには動くのだが、魔力効率が悪いのでこの翼を実際に運用している人間は少ない。
空戦魔導師なら自前で飛んだほうが良いし、旅客機なら現在のエンジンの方が効率が良い。

基本はこの雄雄しく優雅な外見を利用して元に搭載されていたブサイクなガーディアンからひっぺがして観賞用に販売されるものだ。

電力を魔力に変換する時に多少ロスする上ドラグーンとこの翼に魔力を大量に喰われる事実に頭を悩ませたが、背に腹は変えられない。
ティアナには空戦適性が無かったので仕方なくこの羽をつけた。


これ等を、死んだユニゾン・デバイスからチョッぱったリンク用のシステムで意識に直結させる。
以上でティアナのセットアップは終わりだ。

意外なことに、翼は巨大だが本体のティアナは中々スリムな外見だ。



「ティアナ・ランスター及び、ゼロカスタム。・・・・・・・・出ます!!」



純白の羽を広げて廃墟の訓練場に飛び立つティアナ。
精神制御機能を発動させて、思考は驚くほどクールでクリア。
脈拍や血中アドレナリン数値、血糖値、血圧、呼吸数も同時に統制。

表情や無駄な動作はそぎ落とされ、思考が戦闘に焦点を合わせているのがわかる。
例えるなら、メタルギアソリッド4のナノマシンによる戦闘最適化のようなものだ。
流石にゼロシステムの凶悪な機能には敵わないが、ある意味こちらの方がより使える機能である。




「きたね。ティアナちゃん。・・・・・・・どうしてあなたはそうまでして、自分を殺してしまうの?」

「今のあなたに聞こえてるかは分らない。心に響くかは分らないけど、・・・・・・・・・・・・・・私にできるのはこれだけだから。受け止めてあげる・・・・全力でぶつかってきて!」


高町なのは一等空尉は真剣で真摯な姿勢だ。
思考がクールになった今ならわかる。
この誇り高い女性は、残念なことに戦いに手抜きも妥協も許さないだろう。
しかもこれから部下になる人間を思いやるその心・・・・。
つまり、さらに勝率は下がったことになる。



能面のような無表情で、機械のような平坦な声。しかし熱い魂でティアナもまた答える。


「了解・・・・・・全力で行きます!!」


勝率は低い。たしかにそうだ。
老朽艦を落したのは半ばマグレだし、叩きのめした次元世界の軍隊だって未だ魔法文明が遅れていたからこそだ。
Sランク魔導師の全力など、いままで相対したことなど無かった。

しかしだからこそ、私もまた手を抜くわけには行かない。
私だってこのゼロカスタムに乗っているからには、高町なのはにだって負けたくは無い。
私は強くないけれど、このゼロカスタムは強い!
私の努力の結晶!


「ドラグーン、全機射出!!」


ドラグーンを一瞬で展開すると同時、────なのはが動く!
瞬時にディバイン・シューターを周囲に展開!

その数20。



「いくよ、レイジングハート!」


「迎え撃つ!ゼロカスタム!」









激戦が、始まる。
















つづく






[29585] 第四話 星屑を砕く光。
Name: toxic◆037c1b51 ID:ccbe12db
Date: 2011/09/09 07:32








【MS】ティアナ憑依・魔改造(TS)【モビルスーツ・ショウジョ】



第四話 星屑を砕く光。

















オレンジ色の魔力光と、桃色の魔力光が激しく交差する。


「行けっ!ジャッジメント・レイ!!」

「ディバインシューター、シュート!!」


減るたびに常時補充されるディバインシューター。
高速(ミッドの魔導師基準。ティアナに言わせれば視認できる時点でアウト)
でせまるシューターは近づく傍からドラグーンの放つジャッジメント・レイに撃墜される。
それでも、ティアナの手札を完封しシューターの対応にかかりきりにさせる手腕は実に見事。

さらになのはの周りには常に10以上のシューターが常駐する。
一応、ティアナ対策は万全。それにしても恐ろしい魔力量である。





「くっ、ホントにブラスタービットみたいじゃない・・・・・・一体どんな手品で動いてるのコレ!?」


報告書には、精神活動を戦闘に最適化する狂気じみた機能のほかにドラグーンシステムについても記載されていた。
だが所持を許された家伝の低級ロストロギアで、管理局もその有効性に目をつけ何人かに試させたようだが、
ティアナにしか使えなかったという旨が記載されていたのみで詳しい事はなのはには分らない。


まぁティアナは鎧部分や筋肉服の部分はバリアジャケットだと誤魔化しているが、
羽とドラグーンは隠しようが無いので出鱈目書いたらアッサリ受理されただけなのだが。

実際、対外的にはティアナのゼロカスタムは背中の翼とドラグーンだと思われている。
むしろ、だれが全身デバイスでガッチガチに固めていますなどと考えるものか。
ある意味当然のことである。



だが真実はどうあれ今のなのはには、コレが魔力の消費を殆ど考えずに動かせる劣化ブラスタービットだと分っただけで十分!
数は多いしジャッジメント・レイとかいう魔法は強力だが、一機一機の性能はブラスタービットには若干劣る!



「いくよ!レイジングハート!・・・・・・・エクシードモード!!」

『OK.Exceed Mode.』

なのははレイジングハートをエクシードモードに変形させるとプロテクションを暴走させて周囲に爆風を撒き散らした!
一時的に斜線をそらしてしまうドラグーン。


「く、ドラグーンが!?」

「一気に決める!」


こう着状態から一転、吹き荒れる魔力の暴風!
一時的にドラグーンの包囲を脱したなのはは防御をすて、大量のアクセルシューターの弾幕を仕掛ける。



「アクセルシューター!」

上下左右、逃げ場の無い弾幕の包囲網。
32門のアクセルシューター全てをティアナに殺到させる・・・・・・・が、
ティアナは一瞥しただけで逆に突っ込んできた!


「こんなもの!」

「な!?」


なのはは驚きに声を漏らしながらも、プロテクションEXを発動させてティアナのシールドタックルを受け止める。
自分の身を省みない特攻。確かにこの場では最も有効な手段かもしれないが、表情一つ変えずに弾幕の嵐に飛び込むとは・・・・・!
なのはの背に、嫌な汗が這い降りた。
精神制御機能は精々、集中力を少し上げる程度の機能と報告には上がっていたがやはりこれはそんなものじゃない。
まるで恐怖を感じていない・・・・・?
なのはは、勝つためにここまでの機能を使うティアナの執念を認めると同時、その想いの強さに恐怖を感じた。



「くぅぅぅぅぅぅぅぅっ!!」

「はあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

鬩ぎ合う両者。
交差しあう魔力の応酬の中に、両者は熱い魂を込めて叩きつける!
事ここに至って、なのはも理解し始めていた。
確かに彼女は自分の精神を押さえつけて無理やり戦っている。だが、その魂は本物だと!

だが・・・・・・・。



「答えて、ティアナちゃん。・・・・あなたは、何のために闘ってるの?・・・・何のために、そこまで自分を削って、力を求めたの・・・・・?」

なのはには、最後にそれだけは聞いておきたかった。
復讐を終えてからも、激務といって良い任務をこなし続ける理由・・・・・。
自分を押し殺して闘い続ける理由・・・・。

戦いの最中に不謹慎かもしれない。・・・・・いや、戦いの極限のぶつかり合いの中だからこそ人は嘘をつかない。
なのはは長い「おはなし」の歴史からそれを知っていた。
ジュエルシードの時も、闇の書の時も、・・・・・最後にはぶつかりあって分かり合えた!




「理由・・・・・・・。」

「そんなの、したいからに決まってる。任務だって何だって私がしたいからやってるんだ。やりたく無いことはしない。」




ティアナの呟く様に、漏れた言葉・・・・・・・。
今日の模擬戦で初めて、盾に隠れたティアナの顔が僅かに笑っているように見える。


なのははそれにスッと胸の痞えがとれたように感じられた。
ぶっきらぼうなその口調に、裏腹な優しさと真実を見て取ったからだ。
自分がやりたいから。ただそれだけで任務のため・・・・つまり人々のために、身を削って闘える。

見返りを求めない英雄。・・・・・・この子はなんて優しい子だ、となのはは思った。







「そっか・・・・・・。そっか!じゃあ、難しい話は終わりにしようか。・・・・・・・・・・続きをしよう、ティアナ!!」









なのはもまた、嬉しそうに笑った。












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「くっ、ホントにブラスタービットみたいじゃない・・・・・・一体どんな手品で動いてるのコレ!?」

なのはがぼやいた。

本来ブラスタービットやそれの類の魔導兵器を機動させるには大量の魔力が要る。
それこそ、なのはクラスの魔導師が体を痛めつけて搾り出さないと得られないほどだ。

それなら、他所から持ってくれば良いと言うが事はそう簡単な事ではない。
多くの研究者がそう考え、独自に研究を続けているが外付けのリンカーコアは未だ世に出てはいない。
その研究で最も実用的なものはカートリッジ・システムだ。
それもどの路ある程度強力なリンカーコアの持ち主しか実用的でない上、体にかかる負担も大きい。

それでも魔導師が自前の魔力だけを使って魔法を使ったり、デバイスの起動をするのは理由がある。
魔導師が生成する魔力と言うのはこの世で最も効率良く調整されたエネルギーであり、その効率性に由来する自由度は計り知れない。
もし仮に電力でデバイスを起動させるならば、
魔法を使うたびに振動周期を精密に調整する巨大な変電装置を通さないと発動できないと言えばその効率がわかるだろうか。
カートリッジシステムが体に大きな負担をかけるのは、それを自分の魔力として扱うために一度自分のリンカーコアを通すからだ。

だからこそ、魔力炉などと言うものは大きくなるし人工の魔力で駆動する兵器と言うのは巨大化する。
なのははあの小ささでスターライトブレイカーを撃つのに、
管理局の技術では戦艦クラスまで大きくしないとアルカンシェルを撃てないのはそのためだ。

もし仮に、レリックやジュエルシードを自由に作りだせる程魔法文明が発達すればこの問題は解決するだろうが、
そうなったらなったでどうせまた滅亡するだろう多分それが次元世界のさだめだ。



だが、ティアナは魔力と電力の間には互換性があり魔力-電力間の変電装置は実用化されていることと、
「ユニゾンデバイス」は自前のリンカーコアもどきを搭載しており、
主とユニゾンすることでユニゾンデバイスの魔力も自分の物として使う事が出来る事に注目した。

つまりバッテリーと電力-魔力間変換装置を擬似的なリンカーコアと捉え、
インテリジェント・デバイスをユニゾン・デバイスの代わりに擬似ユニゾンしようという構想だ。


そう、ティアナは強力な催眠魔法で意識を統制し、デバイスと己を一個のものと捉えるならばあるいは、と考えたのだ。

そのために時折驚くほど広範囲の次元世界に手を伸ばしていたことが発覚するベルカの遺跡から出土する、あるもの・・・・・。
「死んだユニゾンデバイス」からユニゾンシステムの基幹部分と思われる部分を使う必要があったが、この問題はあっさり解決した。
未発見の遺跡でたまたま「埋葬」されていたユニゾンデバイスが発見されたからだ。

墓場荒らしどころか、死体にまで手を出すのはティアナもどうかと思ったが、背に腹は変えがたく・・・・・。


・・・・・・・・・・・・・。

ティアナは色々自分に言い訳したり、自己嫌悪に陥ったり開き直ったり、夜に悪夢を見て吐いたりしながら基幹パーツを手に入れた。

しかしこれもユニゾンデバイスなので当然作動原理など分らない。
なので今の所の研究で判明している事実を元に、リンク接続用に改造した基幹部分をそのまま使うことになった。
試行錯誤と実験の末の事とはいえ、コイツも大概優秀な女である。
一応、原作でも頭脳チートではあった。

ただ基幹パーツはメモリーのフォーマットの方法すら分らないので、記憶中枢さえそのままだ。
その内ストーリーに関わってくるかもしれない。


まぁ結果として、ティアナの研究は実を結んだ。
最終的に、ティアナは擬似ユニゾンの為にはマスター側の脳にも特殊な神経回路が必要な事まで解明し、
催眠技術と魔法技術、それと心理学的な措置でそれを為してしまった。・・・・・健康被害は無い。


そのために、このティアナは割りと運動が苦手である。
体力はあるが、ゼロカスタムと繋がっていないときは良く何も無い所でこけるしドジをする。

だがそれだけの代償を支払って、自由自在とはいかずとも限定的にティアナは自分の最大魔力量の何十倍もの魔力を運用することに成功している。
この代価を高いと見るか安いと見るかは意見が分かれるだろう。



・・・・・・。


ドラグーンとディバインシューターの打ち合いが、速くもこう着状態になっていたが、なのはが動いた。
突如その身を覆っていたプロテクションを暴走させ、ドラグーンの射線を無理やり外した!




「アクセルシューター!」


そしてエクシードモードで膨れ上がった魔力でやたらめったらシューターを展開する!

絶体絶命。ティアナの機動力は中々のものだが、これでは上下左右に逃げ場が無い。
後ろに下がったところで、第二陣が来る!ジリ貧だ。
ティアナは大きく広げた翼のせいで被弾面積が大きい。ロストロギアだけあって頑丈だが、羽の内側に貰うと浮力が一時的に落ちる。
だがだからといって敵に後ろを見せれば相手に付け入る隙を与えてしまう・・・・・!


────ならば、前!

ティアナは一瞬だけ迷ってから左手に装備した大型の盾に身を隠し、なのはに突っ込んだ!

しかしティアナの内心は相当てんぱっている。







・・・・ってゆーかヤバイヤバイ!!
今頬を掠めたよ!?何この弾幕!?まじ怖い、超怖い。今までで一番早い!
中途半端に視認できるのが尚更怖い!

精神制御も完璧じゃないのだ。あんまり強くすると状況判断能力まで落ちてしまうから、
恐怖心を取り去るとか完全に緊張しなくなるとかそんな便利な機能はついてない。
脈拍とかは制御してくれるから、動きが鈍くなることはないしある程度ポーカーフェイスは保ってくれるが・・・・・・・。

局の連中は勘違いしてるがそんな便利なものがあったら私がほしいくらいだよ。


まぁ、元々大した選択能力があるわけでもないから基本突撃一択だけどな!!




「くぅぅぅぅぅぅぅぅっ!!」

「はあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」



って言うか、プロテクション再展開速すぎ!さっき暴走させたばっかりですぐに展開できるとは・・・・・・!!
しかも硬い。盾で押してもびくともしない。
この、このっ!



「答えて、ティアナちゃん。・・・・あなたは、何のために闘ってるの?・・・・何のために、そこまで自分を削って、力を求めたの・・・・・?」


「理由・・・・・・・。」

しるか!あと2秒で全ドラグーンが照射準備を終えるってのに話しかけるな!
どいつもこいつもよく魔法なんか使いながら喋れるな!・・・・・計算式で頭がぐちゃぐちゃだから私には真似できねぇ・・・・・・。

大体、何のためにって兄貴の弔い合戦も済んだし、ゼロのために決まってるだろうが。




「そんなの、したいからに決まってる。任務だって何だって私がしたいからやってるんだ。やりたく無いことはしない。」


一応答えるが、こんなもんだろ。今も昔も闘う意味とか、そうたいしたこと考えてない。
どうだっていいだろそんなこと。と思う。

そりゃばかすか人撃ってる手前、私だって悩む事も多いけど戦闘中に敵に人生相談するほどじゃぁ無い。

ほんと、就労年齢低いからかもしれないけど魔導師って奴等はなんでこうセンチなんだ。
敵も見方も闘いながら喋るという超高等技能を修得している。

もしかしてコレが出来なきゃ魔導師失格なのかと思って、必死に訓練したこともあったが、
結局私は連中ほど流暢に喋る事は出来なかった。
マルチタスクとか、そんなもんじゃぁない。もっと恐ろしい何かをを味わったぜ・・・・!!

言いたい事を言うくらいはできるけど、長々と喋り続けることは無理。





「そっか・・・・・・。そっか!じゃあ、難しい話は終わりにしようか。・・・・・・・・・・続きをしよう、ティアナ!!」





なんか、今の出満足してくれたらしい。
可愛い良い笑顔だ。
この笑顔が見られるなら人生相談も悪くないと思うんだが、コレなのはさんだしなぁ・・・・・・・・。

まぁだが、なのはさんに言われるまでも無い。ドラグーンは全機照射準備完了している。


「行け!ジャッジメント・レイ!!」


しかし、ドラグーン全機が高町なのはに向けて魔力砲を撃った瞬間!
なのはの周りが、閃光に包まれてなのは本人は高速で射程を逃れた。



「バリアバースト・ブーストエディション!!」


今度はプロテクションを下方向に暴発させて高速で離脱したということらしい。
原作ではこんな使い方はしていなかったと思うが、
まさか今日の模擬戦で数回使っただけで自由自在にバリアブレイクのコツを掴むとは・・・・。


なんて才能だ・・・・・!千載一遇のチャンスだったのに、逃がしてしまった!



これは長期戦になりそうだ・・・・・。











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「す、すごい・・・・・これがティアナさんの実力・・・・!!あのなのはさんと互角だなんて!!」

「そ、そうやな・・・・・・・。」


あかん。想定外にも程がある。
Sランク魔導師と互角に戦える空戦B-がおってたまるかい!


はやては内心冷や汗かきまくりだ。
はやて自身としては、噂は結局噂だと思っていたし、模擬戦時の映像でもまさか全力のなのはと互角とまでは思わなかった。
老朽艦の件とて、口ではああいったが正直な所運による所が大きいと考えていたのだ。

よって精々、5分か10分持てば良いほうだと思っていた。

ここに、前線で働く人間とデスクワーク中心の人間の差がありありと出ていた。
なのはは噂話はともかくとして模擬戦の映像を見たときから、あの時18人を相手に余裕を十分残して闘っていた事を見抜いていた。
加えて、なのはもちょっとずれてるのでSランク魔導師という称号がどれだけすごいものかあまり理解していない。

ぶっちゃけ、自分と同格の相手なんてこの次元世界にはごろごろいると思っているのだ。
それは間違いではない。間違いではないが・・・・・・・普通そんな奴と一生の内に出会うことが何度あるというのだろうか?
強いものは強いもの同士惹かれあうとは言うが・・・・限度と言うものがある。



「なのはちゃんは闘う星の下に生まれてきてんなぁ・・・・・・。」

実家も戦闘民族だし。
思えば子供の頃からなのはの周りには誂えたかのように強敵だらけだ。

それよりも・・・・・・。



「あかん。今でなのはと同格やったら、隊長がみんなリミッターつけた六課発足の後だれがアイツ止めんねん・・・・・。」

困った。
即戦力と飛びついた相手がこんな地雷だったとは・・・・・・。
やべぇ、ミスった。

もしコイツが言うこと聞かないような状況になったら、敵より先にコイツを止めるために限定解除を使わなきゃならなくなる。
そんなことになったら空戦B-に遅れを取ると言う事態になった隊長も叩かれるし、六課そのものがヤバイ。
トカゲの尻尾にしようにもコイツ、顔が広い。良くも悪くも。

しかも六課には嬉々として叩きに来る奴の心当たりも多すぎる。


そもそも頭の固い本局の査定担当共が悪い!Sランク相当の魔導師を、
デバイスにおんぶに抱っこで本人の技量がまったく伴っていない、
・・・・・むしろ落ちこぼれの訓練生だからってSランク相当の奴を空戦B-にする奴があるかい!
一体コイツどんだけ査定の連中に嫌われとったんや。

はやては、頭の固い査定担当と本局に感謝していた事実を棚上げして罵った。


が、それ以上の懸念事項がある。
なんという爆弾を抱え込んでしまったんや私は・・・・・・・・・。





「あかん・・・・・ホンマに想定外や・・・・・・。」









子狸は胃が痛くなってきた・・・・・・・・・。




















つづく








[29585] 第五話 愛局者。
Name: toxic◆037c1b51 ID:8f43ca3c
Date: 2011/09/08 10:58




【MS】ティアナ憑依・魔改造(TS)【モビルスーツ・ショウジョ】

第五話 愛局者。















あれから、模擬戦の結果がどうなったかと言うと、結局私はなのはさんには勝てなかった。
もうホントに、30分も闘い続けられたのが奇跡。最初の辺いい勝負出来たのがマグレもマグレ。
格の違いってものを思い知ったね。
最初で最後の一斉砲撃のチャンスを逃したが最後、じりじりと追い詰められ一機一機丁寧にドラグーンは機能停止に追いやられていく・・・・・。
あの恐怖は忘れがたい・・・・・。
途中から私には誘導弾が効かないと学習したのだろう、直射に切り替えた魔力弾が早い早い。

結局、年季とくぐった修羅場が違うという事なのだろう。
9歳から戦場で活躍していたという高町なのは・・・・・。
模擬戦中に人生相談を持ちかけてくるメンタルの弱さはいかんともしがたいが、その戦闘経験は恐るべきもの。

30分。・・・・・・一見互角の激戦のように見えたかもしれないが実は全然そんな事は無い。
私は30分間猛攻を仕掛けつつ逃げ続けただけだ。
また一斉砲撃のチャンスが来るかと思ったが、バリアバーストでの緊急回避をも習得したこのなのはに隙は無い。
上下左右から隙間無く砲撃を打ち込んでみたが、エクシードモードでも避ける避ける。しかも十発や二十発のまぐれ当たりではこの要塞は落せない。


で、仕方が無いから最後のドラグーンが落されると同時、バッテリーをオーバードライヴさせてシールド特攻の賭けに出たが、
あえなくバインドで空中固定からスターライト・ブレイカーの凶悪コンボでK.O.だ。

・・・・・・確かにアレはトラウマになる。加えて、ゼロの整備が大変なことになった。
金や予備のパーツはあまり消費しなかったものの、
おそらくは今までの無茶な改造で溜まり溜まっていた微細なゆがみが一気に表面化するという恐ろしい事態になっていたのだ。




・・・・・・六課の設備を借りてゼロカスタムを修理できたのは不幸中の幸いだった。

いままで使う事の出来なかった最新鋭の潤沢な設備につい興奮して、
三徹の末ゼロカスタムをバージョンアップまで漕ぎ着けたのは良い思い出。
もともと構想だけはあったけど、工場の隅の借り物の設備では実現できなかったものが多くあったのだ。
おかげで、即応性は3割り増しで耐久力は2倍になった。
次になのはさんと模擬戦する時は・・・・いやしない方が良いのだが・・・・・もしもする事になったら、もっと良い勝負が出来るだろう。


次は負けない・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・といいな。



しかし、そのゼロが復活した上強化されたのはこの施設のおかげとはいえ、これは流石におかしいとも思う。
六課は何故か一課に過ぎない部署だというのに宿舎、訓練設備、食堂、デバイスサポートと至れり尽くせりだ。
普通こういうものは一つの課で個別で使うものではなく、いくつかの部署で共同で使うものではないだろうか?

いくらこの課の職務が強い危険を伴うものだとはいえ、これは酷い贔屓だ。
まぁ今回に限ってはありがたい話ではあったのだが。
コレだけの設備を得るのにどれだけの人間が上へ下へ走り回ったのか、想像するだに頭が下がる想いだ。

だが予知の妨害・・・・・この事実を知らぬものにとってはまさに鼻持ちなら無いエリートのボンボン共に過ぎないだろう。
できるだけ内部に敵を作りたくない。それが最優先事項だったのは良くわかるが、
それでももうちょっと他のやりようは無かったのだろうかと思ってしまう。
コレ幸いと他の部署からの不満のや怒りの矛先・・・・スケープゴートに使われているのは明白だ。
縦割り人事にも程があるからな。



しかしアレだ。私にも不満もあるといえばある。
私は、ゼロカスタムというデバイスについて六課に・・・・・というか管理局には、
「かつて所持を許された家伝の低級ロストロギアで、兄には適性が無く私にしか使えなかった」というカバーストーリーを報告してある。

加えて、「兄が死去しているために詳しい事が伝えられないまま継承された事」と「故障寸前で騙し騙し使っている事」「改造が施されている事」も。

かつてというのは、実は管理局創立直後のゴタゴタの時に申請されたロストロギアが多いから局も把握出来ていないからだ。
当時はパソコンが全面的に使えるほど余裕が無く、書類仕事が多かったらしくその多くが無限書庫のどこかに適当に放り込まれているのだ。

だからこう言われてしまうと、局は中々言い逃れできないのでロストロギアの所持申請の際は良く使われる裏技である。
加えて、家伝などと言われると歴史が局の創始以前に遡りかねないので所有権を主張するのに便利である。
私の家族関係の事はちょっと調べ難いし。



それに特殊な脳回路を形成している私にしか今の所起動できないのは確かだし、ミッドの連中の科学力ではゼロの中身は理解できまい。
ロストロギアというのもあながち間違いではない。



が、今回はそれが仇となって六課においては普段ゼロの使用が認められなくなってしまった。・・・・・・・どうしてこうなった。



なんでもゼロの戦力は正直なところ大きすぎるので、使用する際は隊長陣に許可を求めなくてはならなくなった・・・と言う事らしいが。
しかも危険度レベル1~5に合わせてドラグーンの使用限度数まで規制される始末。
16機全部使えるような状況とは一体どんな状況なのだろうか。

はやてが管理局本部と掛け合ったらしく、正式に私に示令が降りてきた。
なんでも、私のデバイスによる戦闘能力を擬似的に空戦AAA+ランクと認め以降そのように扱うとの事。


────本当にねーよ、ありえねーよ。空戦B-と空戦AAA+でどんだけ給料違うと思ってんだ。
畜生、査察の連中手のひら返しやがって。どれだけ私は不当に給料しょっ引かれてきたんだよ。
給料が上がるのは良いことだけど、納得いかない。

しかもそれだけでも納得いかないのにリンカーコアに対するリミッターでは私には意味が無いから、
待機形態の上からつけるデバイス拘束具でゼロカスタムにリミッターを付けられたのである。

これが呑めないならゼロカスタムは取り上げになるとまでも言われた。
ふざけんな!って言いたい。

六課辞めたいよもう。



・・・・・っというか八神はやては何故か私の事をかなり嫌っているらしい。
いやこの処置はもう憎んでいるといって過言ではないぞ。
奴は私を殺そうとしているに違いない。

当然上司なのだから私の訓練校の時代の成績を知っている。彼女は。
ならばあの実技成績の私からゼロカスタムを取り上げるなどはっきり言って殺人と同義である。

・・・・・なんとか穏便に抹殺しようとしているのだ。何故かはわからないが理由があるのだろう。
欝だ。

クロスミラージュなどという高価なデバイスを渡すのも、きっとアリバイ工作か何かだろう。
何かヤバイ仕掛けが無いかどうかも調べなくてはいけない。自爆とか。

それかシチリアのマフィアには殺す相手には贈り物を贈る風習があるという。
まさか・・・・・・。


これは本当に戦闘中後ろに気を使わなければならないかもしれん。
流れ弾とか洒落にならんぞ。


・・・・。


考えすぎと言う人はいるかも知れない。
しかし考えても見て欲しい。

ゼロなしで私に一体どうやって任務をこなせと?訓練校の実技の成績はALL D-だ。つまり最低。
コレまで通り外注の任務もあるというのに・・・・・・・。


待機形態でも使えるリンクシステムを作っていて本当に良かった。
はっきり言ってコレは訓練校をなんとか卒業するための苦肉の無駄機能だったのだが、今になって役に立つとは・・・・・。
訓練校じゃゼロカスタムはロストロギア扱いだったから私の力じゃないってことで使用できなかったのだ。

だからつまりどういうシステムかというと、
自動照準や精神統制の縮小版しか使えないが、待機形態でもリンク出来るという、本来特に「必要ない」はずの機能なのである。

だがそのお陰で、恐らく任務はこれまで通り遂行可能。
ゼロといっしょなら、起動できなくても闘える。


しかし逆に言えば、リンクシステムのために脳の神経回路が変になっている私は運動神経がカス以下で、
だからこそこれだけしないと闘えない。何処まで行っても私はゼロカスタム頼り。

待機形態でのリンクシステムを開発中だった、訓練校時代は一貫して徹底した落ちこぼれだったものだ。


私が卒業できたのは何故かやたらと私をヨイショしてくれていた同期と後輩達のおかげである。
なんだか知らないが、困ったこと(特に暴力沙汰)があったらすぐ私の所に厄介ごとを持ち込んでくる困った奴等だった・・・・。
結局最後にはゼロカスタムで強制制圧という展開が多かった血の気が多い連中でも会ったが、
その時ばかりは連中が神の使いにさえ思えた。

・・・・卒業前、彼等は何故か必死に校長に頼みこんで私に追試を受けさせてくれるよう頼んだらしい。
普通そんな要求通るわけがないのだが彼らはいったいなんと言って校長を動かしたのやら。

その直前、紙一重でリンクシステムが完成していたのでなんとか満点で受かる事が出来たが本当に危機一髪だった。
今でも彼等への感謝と疑問は忘れない。



・・・・しかし、本当に厄介な事になったものだ。
本当にゼロが取り上げられそうになったら、私はスカリエッティ側につくかもしれん。
六課ももう辞めるに辞められない状況だし。








どうしてこうなった。












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世の中には上司受けの悪いと言うか何と言うか、本来の性質がどうあれ一部の上司と言う人間に徹底的に嫌われる資質を持つ人間がいる。

ティアナ・ランスターもおそらくそうした資質の持ち主の一人だとはやては思う。


流石に、デバイスにおんぶに抱っこではSランクに手が届く筈もないのはよーくはやて自身が知っている。
それが、何故かティアナの訓練校の実技の成績はブッちぎりでドベ。
歴史に残るドベ。ブービーとの差は目を疑う。


腑に落ちないので校長に問いただした所、やはりというか何というか。
ティアナは訓練校の教官達と非常に折り合いが悪く試験中妨害を受けたり不当に成績を下げられたり色々していたらしい。

ティアナの同級生や後輩達の必死の嘆願で発覚した事実だ。
そこで、校長は単位不足で卒業できなかったティアナの為に、
校長立会いのもと一人卒業試験と称して教導隊の訓練プログラム受けさせた所、あっさり満点でクリアしてしまったらしい。


これには今まで妨害をしてきた連中は肝を潰しただろう。
最終的に厳重注意の後減給処分。最悪首切りと相成ったらしいが、誰一人として容疑を認めなかったと言うのはいい面の皮だ。
よくもまぁそれで教師が務まったものだ。


つまりは書類上の成績はそのまま残ってしまったためにティアナは、ランク認定を受けられ無かったと言うこと。
そして例の改造ロストロギアに頼らなくてもかなりの戦力になると言うことだ。

査察の連中も一体何を考えていたのやら・・・・・。
こんな酷すぎる成績表を信じたのだろうか?高給取りの本部の局員ともあろうものが。度し難い。


「ふぅ・・・・・これでひと段落ついたわ。」

だがようやく安心して戦力の管理が出来るようにはなったし、後でティアナの能力が保有制限に引っかかるとか言われることも無くなる。
連中にとって査察が無能とかそんな事は関係ない。ようは叩ける材料さえあれば良いということなのだから。

それに、不正に働かされるのは良くない。
能力と給料が釣り合っていないにも程があるというものだ。


「六課に所属してから、ランクが上がったわけやから引抜きで睨まれることも無いし。何とか上手い落しどころが見つかって良かった・・・。」

ティアナの扱いは、先に高ランクの魔導師を大勢あちこちから引抜いたせいで相当戦力にリミッターをかけなくてはならない状況だった。
それはティアナには悪いことをしたと思っている。だが予知を成就させないためには必要なことだ。
納得は出来なくても、理解はしてもらいたい。

だが代わりとして急遽シャリオ・フィニーノに高性能のインテリジェント・デバイスを用意してもらった。
管理局で開発中の新デバイスのデータを横流しして貰ってまで作ってもらったのだ。
材料費といい、何といいアチコチに借りは作ったし、随分高い買い物だった。


しかし教導隊訓練プログラムで満点を叩き出した彼女なら、これだけの物があれば十分に闘えるだろう。
それだけの性能は持たせてあるはず。
それにゼロカスタムの限定解除は状況に応じてスムーズに行く様に手配してある。


そして処遇については通常時は陸戦B相当で扱うことでなんとか落ち着いた。
リミッターがかかっているのはティアナではなくデバイスという前代未聞の珍事だが。

4徹目でしばしばする目を擦りながら、はやては愚痴る。
本当に、六課設立には予定外の事が多かった。最近家にも帰れてない。


「明日は六課の正式な設立式やし、今日はちょっとだけ寝とこか・・・・・・・。」


そういって、3秒後にはいびきが聞こえ始めた。

薄暗いオフィスでデスクに突っ伏して寝る10台のうら若き乙女・・・・・・。

書類仕事の壮絶さは筆舌にしがたい。上司と言うのは大変なものである。











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ゼロが使用制限喰らったので、新しいデバイスが支給されてきた。
だがこんなものでゼロの代わりが勤まるか、と小一時間問い詰めたい気分だ。



まぁ確かに、代わりにと支給された「クロスミラージュ」という拳銃型デバイスも、悪くは無いのだ。悪くは・・・・・・・。
高級素材とパーツをふんだんに使ってるし、金がかかってる。パーツ取りには最高だろう。

しかし、何というかこじんまりと纏まった感じと言うか冒険心が足りないと言うか・・・・・有体に言って詰まらない。
どこかで見たような設計だし、シャーリーは自信満々で渡してくれたが正直な話、市販のアップグレード版みたいな印象はいなめない。
開発費を聞いたが、何処にそんな金がかかったのかも理解できない。駄目だこりゃ。


私はもっとこう、インパクトのあるデバイスが欲しかった。
不良神父の十字架銃とまでは言わないが、人間台風の拳銃ぐらいのデザインセンスは欲しい。
加えて性能も万能型の秀才君なのである。私はもっと尖った性能のデバイスを必要としていたのだ。

どおせ凡人が汎用型のデバイスを使っても挙げられる戦果は高が知れてる。
なら、バリバリに特徴をだして一点で勝つ方式のほうが最終的にどちらが優れているかは明白だろう。
わざわざ魔力保有量の少ない魔導師のデバイスに変形機能なんかつける必要は無い。
汎用型を意識して魔力刃だす機能とかマジいらない。
なら最初から銃剣つければいいじゃない。
レヴァンテインなんかモロに剣なのに非殺傷設定って言ったら大丈夫じゃないか。


・・・・これは至近距離では拳銃を撃つよりナイフを振る方が早いなどと本気で考えてる奴のアホ設計だというほかない。
確かに、クロスレンジでのナイフの有用性を私は否定しない。
だが至近距離でも、ナイフを振るより引き金を引く方が早いのは明白。

そもそも拳銃なんてものは近接戦闘用に開発されたものだ。
ナイフが銃より優れているのは弾切れが無いこと、反動が無いこと、音がしないこと。
全部魔導師には関係ない。

本当のナイフや剣型のデバイスはもっと別の運用思想の元に設計されているのだ。
近接戦闘を意識するならもっとベルカ式のデバイスについて勉強すべきである。


これではシャリオ・フィニーノとかいうデバイスマイスターは、
「ミッドチルダ式」の綺麗に纏まった秀才君で、鼻持ちなら無いイイコちゃんだということが判明したのみだ。
マニュアルどおりに設計開発するしか能がない無能である。修理に徹しているべき人間だ。開発にしゃしゃり出てくるべきでは無い。
まだ、スラムのジャンク屋で会った糞餓鬼のほうが遥かに良いデバイスマイスターだった。

・・・・まぁデバイスには罪は無い。これはありがたく貰っておくとして。
だがしかしこのままでは私には使えないことも確かである。



・・・・・・・・・。



よって今大改造して、かつて財政難の折から実現できなかった伝説の銃「パトリオット」を再現している最中だ。
金だけはかかっている様なのでいい素体になるだろう・・・・・。

二丁拳銃だし。

前々から地球よりドラムマガジンの見本も仕入れてある。きっとゼロのデザインともよく合うようになるだろう。
もともとガンダムにはライフルと昔から相場が決まっている。切り詰めてあるとはいえ、あれも元はライフルだ。

しかもドラムマガジンを一丁につき二つ装着する形。
上手くいけば10発20発と言わず、一丁につき100発はカートリッジをロードできるようになる。
おお、なんとこの計画の素晴らしいことか。(自画自賛)
ゼロカスタムの莫大な魔力ならカートリッジなんかいくらでも作れるし、リンク中の私にロード時の負担とか関係ない。

おお、なんだかやる気が出てきたぞ!これならまだまだ闘える!


待機形態もカード型など論外であるからして、しかし腕輪だとまた芸が無いからアンクレットにすることにする。
腕輪が足輪になっただけじゃないかという意見は聞かなかったことにしたやるから、眉間に穴が出来る前にさっさと出て行きたまえ。




ふはは、アレをこうしてこれをこうして・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。






・・・・・・・・。
・・・・・・。
・・・・。














────最早原形をとどめていない。だがクロスミラージュのすすり泣く声が聞こえるような気がするのは、それはきっと気のせいなのである。























つづく














[29585] 第六話 サイボーグ戦鬼。
Name: toxic◆037c1b51 ID:3130fe17
Date: 2011/11/10 20:34
【MS】ティアナ憑依・魔改造(TS)【モビルスーツ・ショウジョ】


第六話 サイボーグ戦鬼。







今日も今日とてガジェットを蜂の巣にするだけの簡単なお仕事が始まります。
今回もゼロカスタムの使用が認められないようなので、渋々ゼロカスタム・待機リンクの状態でヘリから飛び出した。
はやて氏は相変わらず謎の理由で私を窮地に追い込むので辟易している。

実際の処、これはゆゆしき問題でこのままではあまり空を戦術に加える事はできなくなった。
今まで空戦で(空戦適正も無いのに)やってきた私としてみれば今さら陸戦で戦えと言われても無理があるのは明らかだ。
・・・が、やれと言われればやらねばならないのが下っ端のつらいところでもある。

仕方がないので、最近は移動専用の脚部デバイスを急遽でっち上げてその場を凌いでいるのが現状である。
これはスバルのマッハキャリバーではないが、似たような外見をしているデバイスで、
似非科学とゆで理論並の理不尽法則の漫画・ATを参考にしていると言ったら分かりやすいか。
ATといってもむせない方な。

・・・・私が思うに、あのマンガの作者は絶対中卒だろうと思う。


だが発想は面白いとも思った。
特に、気体の流体断面を作用点とみなし推進に利用する理論など、まともな頭の持ち主なら大真面目に展開すること等できまい。
半端に科学を持ち出す物だから、突っ込みどころも半端じゃあないのだ。

・・・・ま、リリカルなのはも似たようなものではあるのでその追及はブーメランとなって帰ってきかねないのだが。
既にその超理論の世界に生きる人間にとっては笑事ぢゃねーのである。

しかし馬鹿と天才は紙一重というが、まさにそのとおり。
あれは馬鹿の主人公に世界が魅せられてゆく様を描いたマンガだと思うが、私は卓越した作画とストーリーで大真面目に馬鹿をやる作者に魅せられた。
まさに精神的フラクタル構造。

そして限定的にその現象を再現できる技能を持っているのが今の私だった。
デバイス制作においてロマンとインスピレーションは大事な要素である、少なくとも私にとっては。


───思いついたら、即制作。

が、モットーである所のティアナさんにとっては、結果として出来上がるものが実用性皆無のイギリス開発局になろうと構うものではなかった。
失敗は成功の元。下手な鉄砲数打ちゃ当たるとも言う。
故に早急に空戦手段を模索しなければならない事情もあいまって、
数ある空戦デバイス案の一つとして私はあっさりこの禁断の着想に手を出してしまった。


・・・・思えば、それが間違いだったのかもしれない。
まーたまたデバイスマイスター界の異端認定を食らった私は狂気の二つ名を冠せられる事となった。


脚部ストレージデバイス:バグラム

私がゼロカスタムを使えない時にしぶしぶ使用する靴型のデバイスだ。
特徴としてはマッハキャリバーのように四輪ではなく二輪であること、また登録してある魔法はたった三つだけである点が挙げられてるだろうか。
また今回、私は本気でこのデバイスを局に売り込むつもりであったためコアにもまったく手をつけていない。
私の作品の中では完全規格流通部品製の異端児だ。

そしてこのデバイスが持つ魔法は、「粘性強化」「摩擦強化」「重量操作」の三つ。

「粘性強化」は文字通り流体の粘性を強化する魔法で、ミッドでも特に使えない魔法の代表格として挙げられる魔法だ。
その気になれば空気をグミ程度の固さにまで粘性を上げる事ができるが、粘性を強化すること〝しか〝できないために空気抵抗を下げて高速飛行を行う等の応用が利かないのである。
また不時着時や衝撃吸収にももっと効率のいい魔法が存在する。
そのためあっさりアーカイブ逝きになったクソ魔法の代表だ。

そして「摩擦強化」。
こちらはあらゆる魔法機械に応用されている優秀な魔法で、この技術はコーナリングやブレーキに大いに活用されている。
しかし魔導師、特に戦闘魔導師があまり使用する事の魔法でもあり人が使うにはあまり実戦的ではないと考えられている。

最後に「重量操作」
物を軽くしたり重くしたりできるかなり便利な魔法だ。
相当古くからある、原始的な構造をもつ魔法でもある。
その分完成度も高い。
運送・運搬等、魔法世界人の生活に最も密接した魔法と呼べるかもしれない。

そしてこのデバイスが効果を及ぼす範囲は、バグラムすぐ足もとに限定されている。


・・・・読んでわかるだろうが、一応説明しておこう。
ようは馬鹿みたいに粘性を上げて質量を重くし、かつ摩擦計数を上昇させた空気の上を走行しようぜという発想のデバイスだ。
当然地面も走れるし、水上も走れる。

理論としては、粘性と質量が上がった空気は水銀のようなものでその状態ならば足場として活用できようという理屈。
しかし粘性が上がったところで流体は流体であるためホイールが空回りする。
そこで摩擦係数を上昇させ、確実に水銀を捉えて走行するという寸法である。

もちろん羽で飛んだほうが効率もいいし速いが、空中をそこそこの速度で移動するという点ではヘリコプターよりも優れた効率を誇る成功作。
どこにでも移動可能である点と、瞬発力、魔力効率においてウイングロードをも遙かに上回っている。

その効率性たるや、僅かでも魔力資質があれば恐らく「飛べる」程。
空に憧れる全ての低ランク魔導師の救世主だ。

さらにコストパフォーマンスもどこかの無駄金使いの専用機フリークより、余程お求めやすいお値段となっております。


自画自賛だが、あらゆる点で画期的なデバイスである。




・・・・であるからこそ、いったい何が悪かったのだかさっぱりわからない。

問題は、ただでさえ空戦適正の無い人間がバグラムを使おうとすると水に浮かべた小さな氷の上をひたすら走れるくらい精密なバランス感覚が必要とされること位なのだが・・・。
そんなものはもっと複雑で難しいバランス制御を普段から行っている空戦魔導師にとって朝飯前のはず。

足を踏み外すと簡単に垂直落下だが、慌てなければ簡単に復帰も可能な筈。

そう造ってある「筈」であった。



・・・それがなぜか厳しい訓練を積んで来た筈の局員共はそろいもそろって墜ちる墜ちる。
なんのために空戦資格のあるやつで実験してるんだかわかりゃしない、
連中ちゃんといいところまで行くのに、一回や二回足を踏み外しただけで騒ぎやがる。

このデバイスはむしろ「足を踏み外す」事が前提だというに、まったく人の話を聞かないから困ったものだ。
慌てず足を下に向けて足場を保てと指示しても、ワーワー騒ぐばかりで頭から墜落してゆくパラノイア達。


───正直、何が何だか分らなかった。


空戦適正があって普段から空を飛んでいる奴らでさえその様なのである。
どいつもこいつも使った後は恐慌状態だったものだ。
二度と使わんと大声で叫ぶ。
使用後の感想を纏める際、嫌味を含めて「なぜ慌てずに復帰できないのか?」と尋ねたところ、

「お前は標高3000mに張られた糸の上を綱渡りしている時に、
それも全力で走っているときに、バランスを崩して落ちたとしても平常心を保てるのだろうな。」

と泣きそうな顔で返された時には愕然としたものであった。

正直な所スカイダイビングというスポーツも地球にはあるし慣れの話だと思うのだが・・・・。
こちらには魔法というパラシュートよりも余程信頼性の高い安全装置もあることだし、じゃんじゃん落ちて慣れてくれれば十分扱えるレベルだろうに。

まったく魔法世界人というのはよくわからん。
普段から生身で飛んでるやつでさえそれなのだから、呆れてしまう。
・・・だからこそ、勝手が違うのかもしれないが。


結局、扱えるのはゼロ内蔵のオートバランサーを使える私と戦闘機人のスバルだけだった。
とはいえ、決してオートバランサーが決定的原因ではない、と思う。
そんなものはバグラムにも積んである。


ようは、度胸と慣れの問題だったのだ。
アイツ等を10回も地球式スカイダイビングを味あわせてやったら糞度胸も付くかと思ったが、結局だれもやろうとしなかった。
根本的に腰ぬけだ、そんなにただのパラシュートは嫌か・・・・・。
優秀な局員ほど魔法に頼り切っている証拠だな、

根性が足りない。


・・・・・まったくたったそれだけなのにどうしてこうなったのか。
異端だの、狂気だの、中二臭い名前で呼びおって。
こんなのスケボーとかスノボー並に簡単なんだぞ・・・・。

それとも、ゼロとリンクしてオートバランサーを使っている私とエリート管理局員の間にはそれほどの差があるとでも言うのだろうか?
あるいはその両方か。
自分にはわからない。

コカ・コーラも日本に入りたての頃は不味い不味いと誰も見向きもしなかったという・・・。
きっと、バグラムそんな感じだと信じたい。


私はクロスミラージュ・パトリオットを乱射しながら考えていた。


どうしてこうなった。











どうしてこうなった。















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「くぅ・・・・実戦だと、予想以上に、〝滑る〝!?・・・・気を抜いたら一気に真っ逆さまだ!」



私、スバル・ナカジマはスイスイと華麗に曲芸走行を魅せる相棒のティアナ・ランスターを横目に、空の恐怖に押しつぶされないよう必死で空を踏みしめていた。
何度も練習したはずなのに、いまだにがくがくと膝が笑う。
それもその筈。なのはさんに抱かれて飛んだ時の安定感はなく、ウイングロードを走る時のようにしっかりした足場もない。
あるのはグニグニと柔らかい、僅かな魔力で固められた頼りない空気だけ。
理屈では弾けることは無いとわかっていても、たとえばそれは木綿糸を差し出して、

「この糸は絶対切れませんからこれにぶら下がってみてください。」

と言うようなものだ。
例えそれが真実切れなくとも、切れそうに見えてしまう。

加えて、粘性が上がった空気は固まりきらずにぬるぬると動く。
さらには元が空気のため風の動きに逆らえず、不規則に移動する足場。
こけると手をつくこともできずに逆立ち状態になって墜落してしまう恐怖。

唯でさえバランス感覚に全神経を集中していないと立っていることすらままならないのに、
その上こんなもので走るなんてまさに狂気の沙汰だ。
何度も「踏み外して」墜落しそうになった時など心臓が止まりそうになった。
私は飛行魔法を使えないし、マッハキャリバーをバグラム仕様に改造したからウイングロードは使えない。
本当に落ちたら落ちるところまで行きかねない。
それが尚更恐怖を誘う。

有効なのは認めるがとてもティアナ見たいにスイスイと空中を走るなんてまともな神経じゃあ出来ない。
条件は同じ筈なのに。
私は機械の体だけれど、心は機械じゃ無いんだって本当の意味で思い知らされた。
これで空を走ると、本能に響く恐怖が襲う。
人は飛ぶための生き物ではないと肉体が警鐘を鳴らすのだ。


今も冷や汗をかきながらガジェットの攻撃を殴り返している。
ちょっとでも気を緩めると足場が滑って足を踏み外してしまうので、攻撃に対処するのが精いっぱいでちっとも反撃に移れていないのだ。
心臓が休まる暇もないし、どうやって心を落ち着ければいいのかなんて全然わからない。


なのはさんやフェイトさんも出来なかったことを、自分にできるものかと心の影がささやく。
心の弱気な部分が私に擦り寄ってきて、もうこんなバカげたことは止めようと諭してくる。
そしてそれはきっと正しい。
私なんかが通るには、高すぎる道なのかもしれない。


それでも私がティアナの発明したバグラム式空中走行魔法を使っているのは、半ば意地。
無理言ってマッハキャリバーを改造してバグラムの魔法式を組み込んでもらった時、シャーリーも無理はしないでと言っていた。
けれど、だけどそれは聞けない願いだった。
それがたとえ他ならぬ自分自身の願いであったとしても、だからこそ絶対に聞けなかった。

せっかくティアナの相棒になれたのに、また一人で戦場に立たせたくなんてなかったから。
戦うティアナは恐怖という感情をどこかに落としてきたようで怖かったけれど、やさしいところもたくさん知っている。
それに、訓練校時代からずっと一緒に訓練してきたのに見向きもされなかったことが悔しかったからでもある。


私はずっとティアナを見てたのに。

ティアナと一緒に任務にあたることが多くなって、私も隊長やみんなに価値を認められるようになったのだと思って安堵した。
ティアナも配属になにも言わなかったし、訓練校時代と違ってちゃんと私とお話ししたりしてくれるようになった。
私がそばにいてもいいんだと、言ってくれたような気がした。
嬉しかった。

だから純粋にティアナが心配でもあったし、ティアナの相棒という地位を手放したくない打算的な所もあったと思う。

でも、私はティアナのことが好きなのは間違いない。
普段のダラダラした所も、恐ろしいほど鋭利な闘う時のティアナも。

恐怖なんて気にしないかのような相棒の姿は、自分なんて必要ないように感じてしまうけど。
でも、それでも一緒に戦いたいんだ。

それしか自分にできることはないし、積み上げてこなかったから。
ティアナの横に立てる自分は、戦う自分しかいないから。


闘いながらチラ、と視界の隅に入る影。
自然と目で追ってしまう。

足場を踏み外す動作すら計算に入れて敵の攻撃をかわすティアナ。
敵を見据えるその精悍な顔つきにドキドキする。
その華麗な舞いに、場違いな嫉妬心と劣等感が心を苛む。
おかしな話だけれど、機械の体を持つ私以上に機械的なティアナに自分のアイデンティティーを奪われていくような気がしていたのかもしれない。

私は、こんなにもこの体が疎ましいのに。
それが同時に拠り所でもある。

最近はもうぐちゃぐちゃになってわからなくなってきた。

ティアナが大好きな自分。
ティアナの才能が妬ましい嫌な自分。


心が痛いよ。


───自分だって、いつかはこの恐怖も克服してもっと自由自在に駈けてやりたい!
いつも自分なんか見向きもせずに飛び出して行ってしまうティアナに、私だってこんなに役立つんだって見返したやりたい!


その一心で、私は空を駆け抜ける。



その考えこそが、自分が相棒として不適格なのだと気付きもせずに。


ただ、ひたすらに。










つづく。










あとがき。

放置しててすいません。
あと、みぢかくてすいません。
リアルで忙しくてやばいので、これからも不定期更新になりますがどうかよろしくお願いします。



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