プロローグ
宇宙、それは最後のフロンティア…
そんな台詞から始まるアニメを昔見た事がある。
まだ子供だった俺は、その内容についていけず1話だけしか見なかった。
俺?
俺の名はテンカワアキト。
またの名を『闇の王子』。
世間一般には史上最悪のテロリストで通っている。
さらわれた妻を助けるため、そして自分の夢を奪った復讐のため、俺は修羅の道に足を踏み入れた。
そして俺は、コロニーを襲撃し、何万もの人間を殺した。
だが全てを終わらせたその先には、何もなかった。
あの火星の決戦の後、俺は妻に会うことなくその場を去った。
なぜかって?
俺にはそんな資格はないからだ。
昔と今の俺は全ての面で違いすぎている。
昔の俺は夢や希望を持って生きていた。
しかし、今の俺にはそれらを持っていない。
俺にはもう持つ事ができないからだ。
俺は彼女の言う『王子様』にはなれない
ネルガルの秘蔵ドックに戻った俺は何もする気がおきなかった。
目的を失い、毎日を上の空で過ごす日々。
そんな人生に意味なんてあるのか?
俺は自殺を考えた。
でも出来なかった。
ラピスが居たからだ。
もし俺が死ねば、この子は俺の後を追うだろう。
それだけラピスは俺に依存している。
それに俺には責任がある。
ラピスを復讐の道具に使った責任が…
俺のこれからの目的は、ラピスに普通の暮らしをさせる事になった。
だがどうすればいい?
ラピスはMC(マシンチャイルド)だ。
これだけで襲われる可能性は大きい。
俺がラピスを守ればいいのだが、俺はテロリスト。
表舞台にはあまり出る事は出来ない。
それにネルガルが俺をかくまっている事がばれたら、アカツキ達に迷惑をかけてしまう。
結局、今の俺には宇宙を彷徨うことしか出来ない…
「……」
『マスター少し休んでは?』
ユーチャリスのAI『ダッシュ』が俺に話しかけてきた。
「大丈夫だ…」
『そうは見えません。あまり寝てないでしょう』
「いつ、襲撃があるかわからんからな…」
『でもですね~。ラピスのために生きると決めたのですから、体は大事にしないと…』
わかっているが、俺達は狙われる身だ。
『…それにですね………ボソン反応増大!戦艦クラス!!』
早速来た。
「ルリちゃんか…」
妻は…ユリカはまだ退院できていない。
となるとイネスさんか…
「大方、いつもの説得だろう。ラピス、ジャンプフィールドを…」
俺の言葉にラピスは、コクッと頷いた。
『話さないのですか?』
「ああ」
『……ジャンプアウトします』
さて、またいつもと同じ展開か…
『エネルギー増大!グラビティブラスト来ます』
「え?」
衝撃で船体が揺れ、艦が傾く。
「損傷は!?」
『…損傷甚大。戦闘不能です』
「くっ!!」
油断した。
まさかいきなりグラビティブラストを撃ってくるとは…
「アキト、ハッキングを受けてる」
「…ラピス、まかせた」
「わかった」
たとえ、ルリちゃんでもラピスを突破するのは並大抵の事ではない。
しかし、向こうにはもう一人MCが居るらしい。
通信機能は掌握されてしまった。
『お久しぶりです、アキトさん』
モニターにルリちゃんが写る。
「手荒い歓迎だな」
『アキトさんを捕まえるには正攻法では無理と考えましたから』
「…で、今日は何の用だ?初めに言っておくがユリカの所には戻らないぞ」
『はい。戻らなくていいです』
……???
『私のところに戻ってきてください』
「………」
『アキトさんがユリカさんの所へ戻る資格がないのは、今までのアキトさんの話でよ~くわかりました。だったら、それだったら私のところに戻ってきてください』
………えーと、何を言っているだ?
『幸い、ユリカさんとの婚姻届も出してないですし…』
……ルリちゃんがアッチの世界に行ってる間に、
(ラピス、ジャンプは?)
(用意できた。後はアキトのイメージだけ)
よし、今のうちに…
『逃がしませんよ~。アキトさ~ん』
ゾクリッ!!
…いかん。
アレは獲物を見る目だ。
かつてユリカが俺を見る目に似ている。
逃げなくては!!!!
「ダッシュ!!ジャンプ用意!!!」
『!!マスター!?イメージは!!?』
「行くぞ!!ジャンプ!!!!」
そして、純白の戦艦はその世界から消え去った。
「ここは何処だ!ダッシュ!?」
「アキト」
『不明です。ただ水中であることは確かですね』
「水中だと?地球の海か?」
「アキト」
『……そのようです。太平洋のど真ん中』
「やれやれ、消滅は避けられた様だな」
「アキト」
「さっきからどうしたラピス」
「これ見て」
『 西暦1997年 2月15日 21時18分(日本標準時) 』
「………」
「………」
『………どうやら過去にジャンプアウトしたようですね』
「どうやらなしでもそうみたい」
「………………どうすんだよ」
あとがき
Arcadia回復を祈って、変えてみました。