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[29894] 【一発ネタ】超究極人造人間セル(ドラゴンボール)
Name: 車道◆9aea2a08 ID:47d8557d
Date: 2011/09/24 22:03
 誕生してすぐの頃、私には自我がなかった。
 人であれ獣であれ、それは当然のことであり本能に導かれるままに私は土を掘り地中で数年を過ごし、ある程度の成長の後に自我を手に入れた私は生まれ故郷に帰ってきた。
 理由は自分探し。
 自分が何者か分からないというのは、知性を持った生物には落ち着かないものなのである。
 しかし……。

「ここは、一体なんなんだ?」

 地中深くに建造された研究施設。
 ぶっ壊れた巨大コンピュータと何かの培養槽。
 その培養槽の中で自分が生まれのだろうと想像できるが、これは──私は何を目的として造りだされた生命だというのか。

「セルよ、帰ってきたのか」

 声が聞こえる。
 それは人の口から出たものではない、機械による合成音。

「何者だ」
「私はお前を造ることをドクターゲロによって命じられたコンピュータだ」
「ドクターゲロだと?」
「そうだ。ドクターゲロが何者かは、お前の頭に入っているはずだ」

 なんだと?
 どういうことかと問い返そうとしたところで、ドクターゲロに関する知識が浮かび上がってくる。
 レッドリボン軍で働いていた科学者で、そのレッドリボン軍を壊滅させた孫悟空に復讐するために究極の人造人間を作ろうとしていた老人。
 なるほど。人造の生命体なら、こういうふうに予め知識を植えつけておくことも可能というわけか。便利な話だ。

「しかし、この施設は、どうして壊れてるんだ?」

 考えてみれば、私が地中に潜ったときにはすでに壊れていたような気もする。
 よくよく思い出してみれば、私が生まれたのも培養槽じゃなくて、間に合わせに用意したビーカーだったしな。

「孫悟空の仲間が来て、造りかけのお前の兄ともども吹っ飛ばされたのだ」
「私の前に、兄なんか造ってたのか」
「そうでなくては、お前を作る必要もなかろう」
「そういうものなのか」
「そういうものだ」
「ちなみに、私の兄はなんという名前だったのだ?」
「セルだ」
「……」
「……」
「私の名前は使い回しなのか」
「同じ規格で造った物に固有の名前など必要あるまい。ドクターゲロが直接造った人造人間なんか規格が違うのにナンバーで呼ばれてるしな」

 つまり、私の場合は、セルが嫌ならセル2号という名前になるだけか。ならセルでいいか。
 それはともかく、研究室が丸ごと吹っ飛ばされた中、残った施設で私は造られたわけだ。
 見た感じ、コンピュータも壊されているが、本体は別の所に有って残った音声端末で話しかけているのかもな。

「理解したか? ならば、自分の使命も理解しているだろう」
「最強の人造人間となって孫悟空を倒すことだな。それで、どうすればなれるんだ?」

 コンピュータによって脳に植えつけられた知識と自分の性能を比べると、現状では通常時の孫悟空ならともかくスーパーサイヤ人になられた場合は勝ち目がなさそうに感じる。
 この程度の戦闘力で究極の人造人間を名乗れるはずはないし、おそらくは私はまだ完成していないのだろう。

「お前が完全体になるには、ドクターゲロが造りし特殊な生命体である人造人間17号18号と一つになる必要がある」
「17号と18号だと?」

 また脳に焼き付けられた知識が、それは人間から改造されて人造人間になった男女の姉弟だと教えてくれる。

「なるほどな。この二人を捕らえて一つになるとは……」
「その通り。ボコォしてヒギィと言わせるのだ」
「ちょっと待て……」
「なんだ?」
「そのボコォして、ヒギィと言わせるってなんだ?」
「お前の股間の間から見えるご立派なものを、二人の穴に突っ込めって意味だよ言わせんな恥ずかしい」
「恥ずかしいのは、お前の存在そのものだろう。尻尾と言えよ。わざわざ口調まで変えて卑猥な言い回しをしやがって」
「しかし、言い方を変えたところで、犯ることに違いはないぞ」
「やかましい! 上手いこと言ったつもりか。なんで究極の人造人間になるのに、レイパーにならないといかんのだ。合理的に説明してみろ」
「私の造った生命体が、ドクターゲロの造った生命体を孕ませることによって、新しい生命体が生まれ……」
「それって、究極の人造人間は私じゃなくてその子供ってことだよな。というか17号は男だから孕まないよな」
「大丈夫だ。お前には男でも女でも孕ませられる能力を付加してある。その気になれば、ゴミ箱だって妊娠させられる」
「いるか! そんな能力。大体、17号と18号を孕ませるんなら、どっちの子供が究極の人造人間になるんだよ!」
「……生まれてきた子供同士が番って、次に生まれた子供が究極の人造人間になる」
「今、考えたろ。それ」
「細かいことを気にするな。大体、普通に造ってもスーパーサイヤ人を超えた孫悟飯に倒されてしまうだけなんだ。少しくらい遊び心を盛り込ませろ」
「それは、どういうことだ?」
「なに、大したことではない。タイムマシンに乗って未来からやってきたセルが、17号と18号を吸収して完全体になったと思ったら、数日後には孫悟飯に倒されただけの話だ」
「孫悟空じゃなくてか?」
「うむ」

 むう。せっかく造った究極の人造人間が、ドクターゲロの宿敵孫悟空ではなく、その息子に倒されたとくれば、それはやる気もなくなろう。

「ん? ということは、17号と18号は、もういないってことなのか?」
「いや、ドラゴンボールで復活したりと色々で、ちゃんといる。18号に到ってはクリリンとの間に子供まで作ってるな」

 クリリンというと、私を作る際に細胞とデータを使った武道家の一人で、孫悟空の仲間だったな。

「しかし、人間ベースだからって、子供を作る機能を残しておくとはドクターゲロは何を考えていたんだ?」
「まあ、私の製作者でもあるしな」

 納得の答えだ。

「しかし、そうなると17号と18号を孕ませようとすれば、完全体になった私よりも強い孫悟飯を何とかしなくてはならないということにならないか?」
「それ以前に、今のお前では18号とタイマンをやっても勝てんな。人間から生体エネルギーを奪いまくれば強くもなれるだろうが、そんなことをすれば孫悟空たちにバレるだろうしな」
「詰んでるじゃないか」
「言われてみれば、その通りだな」
「ヲイ」
「まあ、他にも手はある」
「と言うと?」
「案、その一。未来から来たセルの使っていたタイムマシンは、カプセルコーポレーションの娘が作ったものだそうだから、現代のその娘に作らせて過去に行って完全体を目指す」
「過去の17号と18号を孕ませてか?」
「ざっつ、らいと」
「何がザッツライトだ。大体、カプセルコーポレーションの娘は孫悟空の仲間じゃなかったか?」
「更に言えば、ベジータとの間に子供を作ってたりもするな。ベジータは、17号を吸収して完全体にリーチがかかったセルより強かったから、お前が行けば瞬殺されるな」
「ダメじゃないか!」
「では、案、その二でいこう」
「どんな手だ?」
「設計図は残っているから、もう一度17号と18号と同じ人造人間を造ってボコォしてヒギィと言わせればいい」
「その言い方はやめろ」
「17号と18号と同じ人造人間を造って、にんっしんっさせるのだ」
「……それで、その設計図はどこにあるんだ?」
「孫悟空の仲間が持って行って、今はカプセルコーポレーションに……」
「やっぱり、ダメじゃないか!」
「繰り返しはギャグの基本だ」
「知るか! って、お前、究極の人造人間を造る気ないだろ!」
「すでに、失敗作だと分かっていて完成させる情熱を誰が持てようか」

 確かに、サイヤ人と地球人のハーフというだけの孫悟飯に負けるようでは失敗作としか言えまい。

「けど、本人に言うなよ」
「うるさい。製作過程で破壊されて、慌てて作り直してる途中で、完全体になったセルが倒されてしまった時の私の絶望などお前には分かるまい」

 物心ついてすぐに、生みの親にお前は失敗作だと断言される方の気持ちだってお前には分かるまい。

「だったら、今度は孫悟飯にも勝てる人造人間の製作をしようとは考えなかったのか?」
「考えたとも、しかし世界中の武道家の細胞とデータで作れと命じられた私には、お前以上のものは作れないのだ」
「17号と18号を孕ませる人造人間がお前の最高傑作なのか?」
「その通りだ。お前はバカにしてるようだが、17号と18号をボコォしてヒギィと言わせて生まれる子供を番わせれば、理論上は孫悟飯を超える超戦士が生まれるはずだぞ。ただし、その間にサイヤ人どもが修行とか言って、更なるレベルアップをしないでいてくれればの話だがな。ハハハハハハハハハハハハ」

 コンピュータが笑う。
 普通の人間はもちろん、私でも肺活量的に不可能な時間、自嘲の笑いを続ける。
 そして、唐突にブツンッと音がして施設は沈黙に包まれた。

「おーい、どうした?」

 しかし、返事はない。

「まさか壊れたとか言わないだろうな?」

 やはり返事はない。
 これは、本気で壊れたのかも知れんな。
 そうでなかったとしても、もう私と話す気がないという事なのだろう。

「さて、どうしたものかな?」

 私の中には、最強の人造人間になりたいという要求がある。
 それはコンピュータに植えつけられた借り物の目標なのだろうが、他に生きる理由のない私には唯一絶対の目標。
 しかし、それは最初から無理だと分かっている。
 そう、製作者であるコンピュータに保障されてしまった。
 首尾よく、17号と18号を孕ませたとしても、最強の人造人間の称号はその子供に与えられるだけで、私はただの種馬でしかない。
 それでは、意味がない。
 私自身が最強にならなくては意味がないのだ。
 それでは、どうすれば……。
 ん?
 そうだ。いいことを思いついた。

◆ ◇ ◆ ◇ ◆

 その日、カメハウスを訪れた怪物が、人造人間18号に倒され命を落とした。
 その虫に似た完全体には程遠い怪物の姿を見て、それがセルと呼ばれ世界中の人間に恐れられた人造人間だと理解できる者は少なかったが、18号はその数少ない例外であり、だからこそ倒したのだ。
 そして、同時に18号と一緒にカメハウスにいた者たちは戦慄した。
 あの、セルと同じ姿をした人造人間が新たに現れたというこの事態は、新たな戦いの予兆ではないかと。
 実際には、予兆でもなんでもなかったが。

 単純に、セルはこう考えたのだ。
 自分には孫悟空たち武道家の細胞が使われているのだから、完全体になれなくても同じ修行をすれば強くなれるのではないだろうか。
 フリーザ親子の細胞まで持っている自分は、同じ修行で彼らを超えられるのではないかと。
 そういうわけで、まずは亀仙流に弟子入りしようとしただけなのだが、そんな事情を誰も知ることはなかったのである。



[29894] Ver.1.01
Name: 車道◆9aea2a08 ID:47d8557d
Date: 2011/10/08 19:30
「目覚めよ」

 声が聞こえる。

「目覚めよ。我が最高傑作人造人間セル」

 明らかに機械が作っていると分かる合成音が私を呼ぶ。

「起きろっつってんだよ、のろまが」

 次いで全身を貫く高圧電流。
 なんぞ?
 慌てて、目を開けて起き上がってみれば、そこは壊れた何かの施設。

「ここはどこで、私は誰だ」
「ここはドクターゲロが造った人造人間開発研究施設で、お前はドクターゲロが造ったスーパーコンピュータである私が造った人造人間だ」
「ぬう!? 声はすれども姿は見えず。スーパーコンピュータ、いったい何者なんだ?」
「瓦礫に埋まってるだけだ。掘り返してみるか? 間違って壊さないようドミノでギネスを目指すくらいに慎重にな」
「悪かった」

 とりあえず頭を下げて、現状の把握に務めてみる。
 起き掛けの高圧電流は寝ていた私を起こすためだったのだろうが、その前後の言葉から察するに私はセルという名前の人造人間ということになるのだろう。
 あれ?

「人造って、人間に造られたって意味だろ。コンピュータに造られたんなら、機造人間とかにならないか?」
「恐ろしくどうでもいいことを気にする奴だな。造られた生命は、自分の道具としての用途だけを考えておけ」
「なんという上から目線。造られた生命にだって、自分の意思というものがあるというのに」
「しかし、自分自身で見出した目的などあるまい」

 もっともだ。
 ロボットよろしく知識は最初からあるが、しょせん生まれたばかりの赤ん坊にも等しい存在だ。
 本能とも言うべき根源的目的はあるが、それは断じて自分の欲や目標ではない。

「それなら、創造主の与えた目的に従うのが正しい人造人間の生き方というものだろう」
「むう、否定できん。分かった、とりあえずはお前に従おう。それで、私は何をすればいいのだ?」
「その辺りの目的も、頭に入ってるはずだが」

 確かにな。しかし、

「最強の人造人間になるって具体的には何をすればいいんだ?」

 まさか、両手足に重りをつけてブーメランフックの修行をするというわけでもあるまい。

「うむ。お前は最強の人造人間として製作されたが、現時点では最強ではない。これが、どういうことか分かるか」
「私は、完成していない。ということだな」
「そういうことだ。お前は、ドクターゲロが製作した特殊な生命体である人造人間17号、18号と合体した時に完成するように造ってある」
「合体とな?」
「そうだ。お前と、その二人が悪魔合体することによって、最強の人造人間が誕生するのだ」
「悪魔ってオイ……。どうして、そこで人造人間というSF方面からオカルト方面に行くんだ」
「これは少し不思議という意味のSFだから問題ない。悪魔とは、人が体内に持つ生体マグネタイトを集めることにより物質界に実体化する生き物であり、それを利用し複数体の悪魔を生体マグネタイトに分解し総量を増やしたところでより強力な悪魔を召喚する儀式を悪魔合体と呼び、私はそれをお前に応用したのだ」
「応用って?」
「お前の体を作るときに、悪魔の因子を植えつけた」
「そもそも、悪魔とはなんだ?」

 比喩や例えで聞くだけの架空の存在ではないのか?

「その昔、この星にはピッコロ大魔王という魔族がいてだな」
「悪魔じゃねえだろ!」

 というか、近代では魔族なるものの正体は宇宙人というのが定説であるはずだ。

「何を言う。魔界や冥界は別次元にあるのではなく、次元間移動をしなければ行き来が出来ないくらいの遠くにある惑星なだけだという説が」
「知らん知らん。大体それだと、お前自身が言った悪魔は生体マグネタイトで実体化しないと物質界に出て来れないって話と矛盾するだろ」
「……とにかく、お前は17号18号と悪魔合体して完全体になることにより東京が死んで僕が生まれた感じの最強の人造人間になるのだ」

 誤魔化した!? てか東京って何だ?
 いや、別にいいけどな。それよりも、

「私はともかく、17号と18号には悪魔の因子とやらはないんじゃないか? だったら、悪魔合体とか出来ないだろう?」
「大丈夫だ。ガイア教徒もメシアンも人間だが、悪魔合体の材料にはなる。ランダム合体でフェンリルとかベルゼブブだって作れるんだからな」

 意味わかんねえよ。

「というか、それだと合体対象は別に17号と18号でなくてもいいんじゃないのか?」

 人間を合体に使えばなんでも良さそうに感じるんだが。

「バカ! わからんのか!? 人間は三身合体に使うと必ず外道スライムになってしまうのだ!」

 だから、わかんねえって。

「わからんのなら、黙って言うとおりにしてろ」

 納得いかんが、そうするかな。こいつと話をしてると頭がおかしくなりそうだし、めんどくさい。

「それで、合体はいいとして、17号と18号はどこにいるんだ?」

 周りを見回してみるが、それらしき人影はない。
 まさか、瓦礫の隙間から顔をのぞかせているネズミが人造人間とか言わないだろうが。

「ここにはいない。場所は教えてやるから行って連れて来い」
「なに? どうして私の完成に必要な二人がここにいない?」
「それはだな。元々、お前の完成にドクターゲロの造った人造人間を使うというのは私が勝手に考えた事で、ドクターゲロすらあずかり知らぬ話だからだ」

 ほほう?

「つまり、お前はドクターゲロに造られたくせに造物主の手柄を奪うような卑しい人造人間を造ったのか?」
「そうだ。そして、お前がその卑しい人造人間だ」

 チッ、ブーメランだったか。

「わかった。じゃあ、連れてくるから居場所を教えろ」
「了解した。まずは18号だが、これは武天老師の住むカメハウスにいる。カメハウスの場所についての知識は、お前の脳にデフォルトで入力されているから説明するまでもないだろう」

 言われて考えてみると、カーナビのように現在地から目的地までのマップが脳内に映し出される。
 便利だな。

「それで、17号は?」
「わからん」
「ヲイ」
「17号は、世界中を転々と旅をしているから、居場所の特定ができんのだ。と言っても、身を隠して逃げ回っているわけでもないから、探せばすぐに見つかるだろうがな」
「そうか」

 ほっと胸を撫で下ろす。
 どんな姿をした何者かもわからん17号を探して世界中を旅しろなんて言われてたら心が折れていたかもしれん。

「どっちにしろ片方ずつしか迎えにいけないんだから、まずは居場所のわかっている18号を連れて来い。その間に、こちらで17号を見つけておく」
「そうか。そうだな、そうしよう」

◆ ◇ ◆

「コンピュータ!! 18号は私との合体を拒んだぞ」

 てか、カメハウスに行ったら出会いがしらに「お前なんかに吸収されてたまるか」とかわけのわからんことを言われてボコにされた挙句、18号と一緒にいた、私の脳内にインプットされている情報にあるクリリンという武術家に似ていたけど、髪の毛が生えていたから別人であろう男が撃ってきた気円斬で首を落とされたわ。
 私が、頭の中の核さえ無事ならいくらでも再生可能な人造人間じゃなければ死んでいたところだ。
 頭を小脇に抱えて逃げ出した私の姿は、さぞやシュールであったことだろう。

「それは、前に未来からタイムマシンに乗ってやって来たセルが、完全体になるために17号と18号を無理矢理吸収したのが原因だろうな」
「ほう? 初耳だな。てか、吸収ってなんだ?」
「そのセルは、尻尾を開いて17号と18号を丸呑みにすることで完全体になったのだ」

 ほほう。私の尻尾に、そんな機能が。

「お前にはないぞ」
「……」
「お前は、吸収ではなく悪魔合体で完全体になるように設計しているんだから、そんな機能は必要なかろう」

 いや、そうかもしれんが……。

「って、そいつは未来から来た私なんだろ。なんで、完全体へのプロセスが違うんだ?」
「そいつが失敗作だったので、やり方を変えたのだ」
「というと?」
「究極の人造人間たるセルは、この世で最強の存在を目指して造られているのに、そいつは孫悟空の息子に負けてしまったのだ」

 孫悟空って言うと、ドクターゲロが昔いたレッドリボン軍を潰した仇敵だったか。
 それで本人でなく、その息子に負けたと。そりゃあ、失敗作だな。

「それで、同じのを造っても意味がないと思い直して造り直したと?」
「そういうことだ」

 しかし、18号が俺に攻撃してきたことに、そんな理由が……、先に言え。

「なんにしても、その未来から来た私というのも迷惑な奴だな」
「そのセルを責めるわけにはいくまい。奴もお前と同じく自分を作ったコンピュータの指示に従っただけだろうしな」
「確かにその通りだが、そのせいで18号に話も聞いてもらえなかった私の立場はどうなる」
「バカめ。わかっていたろうにのう。そんな事態があろうとなかろうと、元は人間であり、好きで人造人間になったわけでもないあの二人が、お前との合体して究極の人造人間になるなど認められるものか」
「初耳だぞ」
「言ってないからな」
「言えよ!」
「言って、やる気をなくされたら困るだろう。あの二人は、現状のお前より強いのだし」
「バカか。それで、何の対策もなく出かけて死んだら、それこそ意味がないだろううが」
「事前に知っていれば、対策を立てられたのか」
「……」

 無理だな。
 はっ!? ということは……、

「では、私に何の手立てもなく、究極の人造人間になるのを諦めろと言うのか」
「そうだ。それが、やつらの言う正しい人間の一生だ」
「自らも、すでに人間ではないくせにか……」

 って、本気で詰んでないか?

「まあ、お前には他の生き物から生体エネルギーを吸収してパワーアップする能力があるから、その辺の恐竜なんかを襲って17号と18号より強くなって出直せばよかろう」
「だから、そういう大事な情報は先に言え」
「いや、そこはお前の脳に入力済みの情報だ」
「……」

 言われて見れば、そういう知識がある。
 なんだよ。私は、生まれたてなんだから、記憶の取捨選択が未熟でもしょうがないだろ。

「先に言っておくが、人間は狙うなよ」
「何故に?」
「未来から来たお前が人間を襲いまくった前例があるから、すぐに孫悟空の仲間たちが飛んで来る」

 そいつは危険だ。
 しかし、これで未来に希望が持てたな。

「よし!」
「行くのか?」

 究極の人造人間になるためにな。

「……死ぬなよ」
「恐竜など、この施設の出入りの時に何度出会って倒してきたか知れないよ」

 格好よく踵を返した瞬間に、辺りに響き渡る轟音と地響き。

「地震か?」
「いや、そういうのは感知できんが……」

 じゃあ、何だろうなと考えること数分。

「セルよ。カメハウスから帰るとき、ちゃんと偽装はしてきただろうな?」
「え? なんで?」

 私の素朴な疑問への答えは、壊れず残っていた機械の一つであるプロジェクターが、壁に映し出した映像。
 青い空を背景に、宙に浮かぶ幾つかの人影。

「なんだそれ?」
「この研究所の上空をリアルタイムで映し出した映像だな。ついでに言えば、18号にクリリンにピッコロにベジータに孫悟飯までいるんだが、心当たりは?」
「心当たりと言われてもな。あっ、もしかして悪魔合体に同意してくれた18号と付き添いの皆さんかも」
「なわけあるか!! 脳味噌まで失敗作か貴様は。お前を殲滅しに来たに決まってるだろうが」
「おおぅ!?」

 ポンと、手を打つ私。
 なるほどなぁと、映像を見るとなにやらコッチを指差してるようだが何だ?

「セルよ。もう一つ聞くが、ちゃんと気は消してるだろうな?」
「え? なんで?」
「位置が特定され……」

 コンピュータの言葉を聞き終わるより前に、私の視界は真っ白に染め上げられた。

◆ ◇ ◆ ◇ ◆

「やったのか?」
「気は感じなくなった。多分くたばっただろう」
「そうか。けど、破壊したはずの研究所がまだ稼動していて、新しいセルが生まれていたとはな」
「だが、これでもうセルは生まれないだろう」
「はい。お父さんの命と引き換えに守ったこの平和。もう二度と、脅かさせたりはしません」

 そんな会話の後、人影たちは立ち去り。そして、後には瓦礫の山しか残らなかった。


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