世界を救った勇者の住む国、グランバニア。
その国の一室でひとつの命が終わりを迎えようとしていた。
「お父さん!!死んじゃ嫌だ!!お父さん!!」
「パパ!!嫌だよパパぁ!!」
「あなた・・・。」
そこには魔王との戦いで傷付き、決して解けない呪いを掛けられてしまったグランバニア王、リュカとその家族の姿があった。
「そんな顔をしないでくれお前達・・・。僕は幸せだった。父さんと母さんの仇も取れたし、ミルドラースを倒して世界を救うことも出来た・・・。もうこの世界に闇は無い。ゴホッゴホッ・・・お前達二人はもう僕が居なくても立派に生きていける。二人とも、母さんの事を・・・頼んだよ・・・?」
「お父さん?!」
「ボロンゴ、ピエール、いるかい?」
「グルルルル・・・。」
「此処に。」
「二人とはもう10何年も共に旅をしてきたけど、僕の旅はそろそろ終着点みたいだ。先に逝かせてもらうよ?もし生まれ変わってもまた友達になれるといいね・・・。」
「ガオゥ!!」
「我が主はリュカ様のみ!また相見えることを心待ちにしております!」
「それじゃ皆、先に父さんと母さんの処に行く・・・よ・・・。」
「お父さーーーん!!」
僕の人生、何不自由の無い・・・とは言えないけれど、充実してとても楽しい、すばらしい人生だったと胸を張って言える。
けれども、もし・・・もしひとつだけ願いが叶うとしたら・・・、もう一度父さんに逢いたかったな・・・。
薄れ行く意識の中で最後にそう思った。
そして意識は途切れた。
そして物語は動き出す。
彼の思いを乗せて。
『ドラゴンクエストⅤ -刻を越えて-』
ガタン!!
「痛っ!?」
あれ?何だ?何故僕は床に転がっている?
僕は床、隣にはベット。痛いってことはベットから落ちたっていうことかな?
おかしい、僕は確か死んだはずだ。ミルドラースの呪いによって。
何故?なぜ??ナゼ???
辺りを見回してみると見慣れない部屋模様。あと少し揺れてるみたいだ。
何故僕は此処にいる?此処は何処だ??
それよりも何故
僕の背が縮んでいる???
そう一人で自問自答を繰り返していると、そばにあったドアの向こうから
「リュカ!どうした!寝ぼけてベットから落ちたのか?」
と、懐かしい声が聞こえてきた。
間違いではないか?しかし間違えることの無い懐かしい声。
「父・・・さん」
僕の思考はまだ追いつかない。