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[32127] 《完結》機動戦士ガンダムSEED Twin SEED Return’s【ネタ作品】
Name: 神無鴇人◆c2099dfd ID:7cb03caa
Date: 2012/03/17 19:01
シン・アスカ&キラ・ヤマトの逆行&共闘ストーリーです。
私、神無鴇人の処女作となります。処女作ゆえに矛盾点やつたない部分も多いと思いますが楽しんでいただけたら幸いです。
ストーリーはSEEDですが運命キャラも登場します。
注)アスランとアスハ家(カガリ含む)に対してかなりアンチ(ヘイト)成分を含んでおりますので苦手な方はご注意を。

元々はにじファンに投稿していましたが規制に引っ掛かって削除する事になりこちら移転しました。

とりあえず全話投稿します。
暇つぶしにでも読んでくれれば幸いです。


なお、この小説はネタ半分シリアス25%ギャグ25%で構成されています。
読む時はネタ作品を読む感覚で読んでください。


こんな人にオススメ!
・アスラン、またはカガリが大嫌い。
・キャラ崩壊した主人公がみたい。
・きれいなフレイが見たい。



[32127] プロローグ 紅の運命と蒼き自由、逆行する
Name: 神無鴇人◆c2099dfd ID:7cb03caa
Date: 2012/03/16 17:16
 C.E.73年、アーモリーワンにおけるG強奪から始まった戦争は遂にメサイアにおける最終決戦を残すのみとなった。
 一進一退の攻防を続けるザフト軍とオーブ軍、だがそれもやがて終わりへと向かっていった。

 メサイア攻防戦の最中、シン・アスカの駆るデスティニーはアスラン・ザラのインフィニットジャスティスと交戦していたが、やがて武器である対艦刀は折られ、そして撃墜された。
「くそったれぇ……」
 恋人であるルナマリア・ホークの乗るインパルスと共に落下するシンのデスティニー、しかしシンの瞳は未だ輝きを失っていなかった。
シンは頭をフル回転させてジャスティスを倒す方法を考える。
今なら自分を撃墜したと思ってるアスランは隙だらけだ、一撃、あと一撃の方法を必死で模索する。
そして見つけた、デスティニーはインパルスのビームサーベルを引き抜き、ジャスティス目掛けて投げ付けた。
アスランが気付いた時には既に遅く、ビームサーベルはジャスティスのコックピットに突き刺さった。
「がは…ぁっ……ば、バカな……シン……」
「へっ……俺の、勝ちだぜ、アスラン」
「何故だシン、何故解らないんだ、議長の作る世界は未来を殺すことに……」
 アスランがシンに訴えようとする。しかしシンはそれを鼻で笑う。
「うだうだウルセェんだよタコ、好き勝手に暴れるだけ暴れて、それで結局根拠も碌にねぇくせに議長の事否定して、それが正義だとか言う野郎の言葉なんて聞きたくもねぇ!」
 シンとてデュランダルの提唱するデスティニープランに疑問はある。しかしそれを否定する根拠がアスランは持っているのか……いや無い、アスランは基本的に主体性に欠けている、故に彼がデスティニープランを否定する理由は『キラ・ヤマトがそれを否定したから』、それだけにすぎない。
結局の所アスランはキラとキラが信じるもの以外信じることが出来ないのだ。
そんな人間の言葉を信じることなんて出来るか?当然答えはNOだ。
「キラァァァァ!」
 アスランの絶叫と共にジャスティスは爆発しアスランは愛機と運命を供にした。



「アスラン!?そんな、まさか…」
 ジャスティスの反応が消え、愕然とするキラ・ヤマト、それが彼に決定的な隙を生み出してしまった。
「もらった!死ね、キラ・ヤマト!!」
「しまった!」
 キラの隙を見逃さず、レイ・ザ・バレルのレジェンドはドラグーンによる攻撃でキラの駆るストライクフリーダムのスーパードラグーンを破壊し、さらにビームサーベルの一撃がフリーダムを襲う。
最早キラに避ける術は無い。キラは硬く目を瞑り、死を覚悟した。
しかし、攻撃は一向に来ない、不思議に思い目を開くとムウ・ラ・フラガの乗るアカツキが目の前で自分を庇っていた。
「む、ムウさん!」
「グ……ハ……マリュー……」
 愛する女の名を呟いた直後、ムウの命は機体の爆発の中に消えた。
その直後ミネルバからタンホイザーが放たれ、アークエンジェル、そしてエターナルを貫き、二つの艦は爆発し、消え去った。
「そ、そんな………ウソだ…………ラクス、ラクスゥーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!」
 キラの絶叫が空しく響く中、レイはフリーダムに止めを刺そうとビームライフルの銃口を向け、引き金を引く。
しかしキラはそれを避けるとレジェンドへ一直線に突っ込む。
「な!?」
「よくもラクスをぉぉぉぉーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
 雄叫びを上げるように叫びながらキラのフリーダムはレジェンドに接近し、そのままレジェンドを真っ二つに切り裂いた。
「ガハァッ!!」
 声を上げる暇も無くレイはレジェンド諸共切り裂かれ、絶命する。
それに目もくれずキラはミネルバをハイマットフルバーストで跡形も無く破壊する。そしてそのままメサイア内部に侵入し、手当たり次第に破壊していく、やがて、メサイアは完全に破壊され、ギルバート・デュランダルもメサイア崩壊と共に死亡したのであった。



 その後、戦闘は両陣営トップの戦死という形で終わり、両軍のほとんどが撤退を開始したのであった。



 しかし、キラにはまだもう一人戦わなければならない相手がいた。その相手をキラは静かに待っていた。



「よし、これで動く事はできるはずだ」
 調整の終わったデスティニーから降りてシンはルナマリアと向かい合った。
「救難信号は出しておいたから、後はこれに乗って味方の艦と合流してくれ」
「うん……シン、本当に行くの?」
 悲しげな表情でルナマリアはシンに訊ねる。
「ああ、決着つけないといけないからな」
「なら、私も……」
「ダメだ、これはあくまで俺とアイツの私闘だから」
 シンは静かにルナマリアを抱き寄せ、デスティニーのコックピットへ連れて行き、一度ハッチを閉める。
「ゴメンな、ルナ……結局俺は誰も守ることが出来なかった、ステラも、レイも、メイリンも……だからせめて、お前は生き残ってくれ」
「シン……約束して、あなたも生きて帰ってきて」
 シンの言葉にルナマリアは涙を浮かべながら言葉を返す。
シンは無言のまま自分とルナマリアのヘルメットを外し、ルナマリアの唇に自らに唇を重ねる。ルナマリアはそれを静かに受け入れ、二人は無言のまま口付けを交わす。
やがて二人は顔を離し、シンはデスティニーのコックピットから降り、インパルスに乗り込む。
「決着をつけるぞ、フリーダム」
 シンを乗せたインパルスはフリーダムへ向けて飛び立つ。
宿敵であるキラ・ヤマトと決着を着けるために。



「来たか……」
 キラは静かに接近してくる機体を静かに見据える。
「またせたな、フリーダム……いや、キラ・ヤマト」
「決着をつけよう、シン・アスカ」
 インパルスはここに来る途中に撃墜されたザクとグフから拝借したビーム突撃銃とテンペストを、Sフリーダムは残った武器であるビームサーベルとビームライフルを構える。
「「うおおぉぉぉぉーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!」」
 二人は雄叫びを上げながら互いに突進していった。



「よくもアスランを!!そのせいでラクスは!!」
「ザケんな!!テメェだって俺の家族や仲間を殺しただろうが!!」
「撃ちたくて撃った訳じゃない!!」
「そんなのが言い訳になるか!!」
 互いに言葉をぶつけ合いながらインパルスとフリーダムは突撃銃とライフルで撃ち合を続ける。
「お前が!俺の家族を殺しさえしなけりゃ!」
「君が、アスランを討たなければ……」

「「こんな事にならずに済んだんだ!!」」

 撃ち合いから斬り合いに切り替え、テンペストとビームサーベルで斬り合い、鍔迫り合いを続ける。
「はぁ、はぁ……へっ、それ以前に戦争なんか起きなきゃ、こんな酷い人生送らずに済んだんだろうにな……」
 シンが皮肉っぽく笑う。それにつられてキラも同じ様に笑う。
「はぁ、はぁ……確かにね、さっさとクルーゼを討っておけばフレイが死ぬ事も無かっただろうし、ジェネシスが使われる事も無かっただろうに……」
「ハハ…………不思議だよな、アンタの事憎くて堪らないのに」
「うん、今なら君の気持ちなんとなく解る気がするよ……いや、本当は解っていたけど、ずっとそれから目を逸らしていた……失う辛さはわかっていたはずなのに……」
 お互いボロボロになりながら、二人は互いを理解し合っていた。
「やり直してぇな……」
「うん、本当にそう思うよ」
「皮肉なもんだな、こんな時になってお互い理解しあえるなんてな」
「本当だよ…………もうお互い機体も限界だし、そろそろ決着つけようか」
「ああ、いくぜ」
 二人はお互いに剣を構え、一気に突進し、互いに剣を振り下ろした。



 その時だった。互いの刃が肉迫したその刹那、二人の周囲は光に包まれた。
そしてその直後二人の姿はこの宇宙から消え去っていた。







「…………いちゃん…………お兄ちゃん!朝だよ、起きて!」
「う……ん…………マユ?」
 気付いてハッとなる。自分はさっきまでフリーダムと闘ってあの時光に包まれて……、でもここにはマユがいて…………
「…………って、マユ!?」
 シンは慌てて飛び起きる。目の前には死んだはずの最愛の妹マユ・アスカの姿があった。
(ここは……間違いない、オーブの俺の家だ)
 シンは慌てて鏡を確認する。
「背が縮んでる……まさか、これって……」



「おーい、キラ、起きろよ」
 呼ばれて気が付いた。目を開けるとそこには見覚えのある顔があった。
「と、トール!?な、なんで」
「何言ってんだよ、そんな事より早くゼミ行かねぇと遅刻しちまうぜ」
 キラは呆然とその場に立ち尽くした。そして気付いた、今自分がいる場所、それはヘリオポリスだという事を。



 時はC.E.71年、二人は時を遡ったのであった。




[32127] 第1話 再会、そして共闘
Name: 神無鴇人◆c2099dfd ID:7cb03caa
Date: 2012/03/16 17:18
 シン・アスカが時を遡ってから約1ヶ月の時が過ぎた。
自分が逆行したと理解したときは思わず泣いて狂喜しそうになってしまった。何が理由でこうなったのかはわからない、だけど自分はやり直すことが出来るのだ、本来ならやり直しの利かない人生をやり直すチャンスを得たのだ。
「やってやる……マユもステラも、今度こそ絶対死なせねぇ……」
 その言葉を誓いにシンは戦争への介入を決意した、まず最初に始めたのは肉体鍛錬だ。今のシンはザフトに入る前の一般人、体力も並程度しかない、いずれMSで戦うにはこの体は余りにも貧弱すぎる、アカデミーでの訓練を基本に徹底的に身体を鍛えた、その結果シンの元々の素養もありトレーニングを開始して3週間ほどでかなり体力が付いた(訓練の途中何故かマユが『自分も一緒にやる』と言い出し、シンとマユの日課に体力トレーニングが追加される事になった)。
そして次に始めたのがM1の飛行ユニットであるシュライクの設計だ。これはオーブ軍の戦力を増強させれば後のオーブ防衛戦でもオーブ本土への被害は多少軽減されると考えての行動である。
ところがこれは思わぬ誤算を引き起こす事となる。
シンが設計したシュライクを学校の自由研究のレポートで出した結果、シンはヘリオポリスへの留学を薦められたのである(本当はレポートを通して『軍の人間の目に留まればいい』と思っていた程度だったが予想外にそれがモルゲンテーレの人間に大いに受け、このような結果となった)。
その結果、モルゲンテーレの子会社に勤めていたシンの両親はモルゲンテーレで働く事となり、シンは家族共々ヘリオポリスへ引っ越す事になったのであった。



 一方でキラ・ヤマトもかつての失敗をやり直すため、これから起きる戦いへの対策を練っていた。
自分には助けたい人間がたくさんいる。トール・ケーニヒ、ハルバートン提督、そしてフレイ・アルスター。
かつて守ることが出来なかった人々を今度こそは守りたい。だからこそキラも自らの運命を変えることを決意していた。
キラのやる事はシンと大差なく、体力作り、そしてMS戦のイメージトレーニングだった。
そして運命の日まで後約二週間に迫った頃、キラはある留学生と出会う事となる。



シンSIDE

 正直な所、ヘリオポリスに留学する事になったのはある意味嬉しい誤算だった。かつてザフトが起こしたG強奪事件、そこから後のフリーダムのパイロット、キラ・ヤマトの戦いが始まったという事はアカデミー時代の授業で聞いた。今なら奴を俺の家族を殺さないように誘導する事も出来るし、奴に代わって俺がストライクのパイロットになる事も出来る。
(とりあえず、アイツに会っておくか……)
 カレッジの学生に尋ねている内にキラ・ヤマトは見つかった。その姿を見て驚いた、ソイツはかつてオーブの慰霊碑で出会ったあの青年だった。
(アイツがキラ・ヤマトだったのか……)
 複雑な心境で俺はキラ・ヤマトに近づき声を掛ける。
「アンタが、キラ・ヤマトか?」
「き、君は、慰霊碑の…………」
 その言葉に俺は目を見開く。コイツは今なんていった?
『慰霊碑の……』そう言ったよな?まさかコイツも?
「……デスティニープラン」
「!!」
 試しに言ってみたが案の定驚いた表情になりやがった。これでもう間違いないな。
「俺はシン・アスカ、デスティニーのパイロットだ。その様子だとアンタも俺と同じらしいな、キラ・ヤマト」
「……そうみたいだね」
 キラも納得したような表情を見せる。さて、これからどうするか……。



キラSIDE

 彼、シン・アスカの姿を見た時、僕は驚きを隠せなかった。しかも彼こそがあのデスティニーのパイロット、しかも僕と同様に未来から来たって話だから更に驚きだ。
「ま、取り敢えずゆっくりと話そうぜ、色々とな」
 シンに促され取り敢えず、お互いの状況を整理する事から始める事になった。
まず目的、これは僕と大体同じ。守れなかった大事な人を守る事。
次にこれまでの行動、聞いた話じゃシンは既にシュライクを設計していたらしい。これは正直ありがたい、オーブ軍の戦力強化は願ったり適ったりだ。
そして最後に今後の行動についてだ。
「君はどうする気なの?」
「取り敢えず、アークエンジェルに乗って、戦争に介入、あとは途中でオーブに戻って軍に入って家族を守る、そんで終戦後に適当な理由つけてステラを保護する。大体こんな所だ。アンタもやる事は俺と大体同じだろ」
「まぁね……」
「……………………手ぇ、組むか?俺と」
「え?」
 彼の口からそんな言葉が出るとは意外だった。アスランに聞いた限りじゃ僕の事をすごく憎んでるって聞いたのに。
「勘違いするなよ、別にアンタの事を許すとかそんなんじゃない、アンタだってアスランを殺した俺を許す気は無いだろ?」
 そりゃそうだ。君がアスランを殺したせいでラクス達は死んだんだから。
「まぁ……ね……でも、組むって意見には賛成かな」
 そう、一人でやるよりも二人でやる方がずっと良いに決まっている。ましてや彼はザフトのトップエースだ。戦ってきた僕だからこそ分かる、彼ほど味方につければ心強いパイロットはいない。
「よし、じゃあ取り敢えず憎しみはひとまず棚上げするって事で……」
「うん」
 共闘を決めた僕達はお互いにその手をガッチリと握り合い、握手を交わした。





[32127] 第2話 始動!!
Name: 神無鴇人◆c2099dfd ID:7cb03caa
Date: 2012/03/16 17:19
シンSIDE

 俺とキラが手を組む事が決まり、俺はキラ達とよくつるむようになった。
サイ・アーガイル、トール・ケーニヒ、ミリアリア・ハウ、カズィ・バスカーグ、皆コーディネイターである俺にも分け隔てなく接してくれる良い奴らだ。
「お兄ちゃん、ミリィお姉ちゃん達が迎えに来てるよ」
「ああ、分かった。すぐ行く」
 マユも皆と仲良くなった。特にミリアリアの奴はマユの事を妹の様に可愛がってくれている。
あいつ等も死なせたくない、今の時代は未来と比べてナチュラルとコーディネイターの差別問題が盛んで、ヘリオポリス内でもアンチコーディネイターの人間が少なくない中で彼らは俺やマユに優しくしてくれる。そんな優しい彼らを守りたいと俺は思った。

 そしていよいよ1月25日、運命の日がやってきた。

 ラボに入ってすぐ、金髪のボーイッシュな女に目が付いた。キラの話ではアイツがカガリ・ユラ・アスハ、理念だけにこだわる無能首長だ。
「シン、睨んでるよ」
「ん……悪い」
 そうだ、ここで変な騒ぎを起こす訳にはいかない。後々支障をきたしかねない。
「それよりキラ、民間人のほうは本当に大丈夫なのか?」
「うん、確か民間人に死者は出なかったはずだよ」
 それを聞いて安心する。油断は出来ないがマユたちの安全はある程度保障されている事が分かり俺は安堵の息を吐く。
「それより君こそ大丈夫なの?相手はザフトなんだよ」
「フン、俺が所属していたのはデュランダル議長政権下のザフトだよ、今のザフトは嫌いだ」
 俺は率直に答える。俺は基本的に今でもデュランダル派だ、ザラ派みたいな差別意識の塊みたいな奴らなんかと一緒になったつもりは無い。
そんな時誰かがラボに入ってくる音が聞こえてきた。誰だ?
「お兄ちゃん、居る?」
 マ、マユ!?な、なんで!?
「あ、お兄ちゃん、携帯忘れてたよ」
 え、携帯?し、しまったぁぁ!!お、俺は何というミスを……
キラも呆れ顔でこちらを見ている。
「ど、どうしよ……」
「……どうするって言ったって、このままマユちゃんも守るしかないよ」
 や、やっぱそうなるか……。
そんな事言ってると突如激しい振動が俺達を襲った。
「来た……!」
「ああ、いよいよだな……!」



キラSIDE

 前回通り一人で格納庫へ向かうカガリを追って僕達は走っていた。
「やっぱり……地球軍の新型機動兵器……お父様の裏切り者ー!」
 これもまた前回通り、なんか懐かしいな。
「何やってんだ!さっさと逃げるぞ」
 シンがカガリを無理矢理立たせてシェルターに連れて行く。
「お、おい、ちょっと待て!」
「やかましい!さっさと乗れバカ!!」
 そう言ってシンはカガリをシェルターに放り込んだ。
まぁ、取り敢えずこれで準備OKだ。
「よし、MS取りに行くぞ」
「OK」
 僕とシンは格納庫へと向かう、しかしそこにあったMSは…………3機?
あれ?一機知らないのが混じってる。
なんか軽量そうで腰にはシュライクに似たウィングが装備されている。
あ、そうか!シンがシュライクを設計したからそれの実用試作型みたいなものか!早くもシンが介入した影響が出ている。
あ、あそこにいるのはマリューさんか、やっぱりこの時は若いなぁ……ってまずい!アスランがナイフを構えてマリューさんに!?止めないと。
「止めろ!!」
「キ、キラ?」
 大声を出しながらマリューさんとアスランの方へ走る。するとアスランは立ち止まり僕を見て驚いている。
「キラ、キラなのか?なぜここ……「オラァ!!」ぶへぁっ!」
 狼狽するアスランにシンの某仮面戦士を髣髴させるキックが入った。
そうこうしている内に僕はマリューさんと共にストライクの中へ、アスランはよろよろとイージスへ、シンは混乱に乗じてもう一機の機体に乗り込んだ。



シンSIDE

 期待に乗り込んですぐさまOSを起動、即座に調整する。
「GAT-X108…………ヴェスティージか、武装は……アーマーシュナイダーだけ、他はまだ未実装か……よし調整完了、いけるぜ!」
 キラの方は……向こうも調整は完了したみたいだ。
『キャアアアア!!』
 さっきの巨乳の女士官の悲鳴が聞こえてきた。
「どうした?」
『大丈夫、コックピット揺らして気絶させただけだよ、初戦闘で戦い慣れしてる所を見られると後々まずいからね』
「なるほどな、サンキュ」
 一言礼を言い俺は外を見る。イージスが逃げて、二機のジンが俺達を攻撃しようとしている。
へっ、ウォーミングアップには丁度いい相手だぜ。
俺は一機のジンに向かってヴェステージの右手でナイフを構え、指をくいくいっと曲げて挑発する。すると思惑通りジンは挑発に乗ってこっちに向かってきやがった。
『シン、近くにマユちゃん達が居る、被害が増えない内に速攻で決めるぞ!』
「任せろ!!」
 俺はこっちに向かって切りかかるジンの斬撃を軽く避け、ナイフで数回切り刻み、止めにコックピットにナイフを突き刺した。
キラの方は両肩にナイフを突き刺し、更にジンを蹴り上げた。蹴り上げられたジンは地面に強かに打ち付けられ、パイロットはボロボロになりながらもコックピットから這い出て逃げていった。
その後、俺達はひとまず一度降りる事となり、マユ達と合流した。





[32127] 第3話 崩壊の大地、再び
Name: 神無鴇人◆c2099dfd ID:7cb03caa
Date: 2012/03/16 17:20
キラSIDE

 サイ達と合流して数時間後、マリューさんが目を覚ました。
「その機体から離れなさい!」
 そう言って銃を取り出そうとするが……
「あ、あれ、無い!?」
「探し物はこれですか?」
 そう言ってシンは銃をぶらぶらと手で弄る。
「か、返して、それ本物よ!!」
 慌ててマリューさんがシンから銃を取り戻そうとする。
シンは弾を抜いてから銃をマリューさんに投げ渡す。う~ん、抜け目無いなぁ。
「わ、私はマリュー・ラミアス。地球連合軍の将校です。申し訳ないけど、あなた達をこのまま解散させるわけにはいかなくなりました」
 やっぱりこうなるか……まぁ、分かっていた事だけど。
「まぁ、ザフトがまた来るって言うなら、追っ払うぐらいはしますよ、死にたくないですし」
「俺もだ、降りかかる火の粉ぐらいは払いますよ、ただ連合に入隊とかは無しだ、民間の協力者か傭兵って事にしてもらう」
「出来ればそうしたいけど、それは私の一存では……」
 マリューさんが気まずそうに話すがシンは懐からあるものを取り出す。それはモルゲンテーレの身分証だった。
「あ、貴方、モルゲンテーレの、それにシン・アスカってまさかあの天才少年!?」
 とことん抜け目無いな、シンは……多分シュライクを設計した時に手に入れたんだね。
その後、結局僕達全員はマリューさんに協力する事になった。



「どれですか?パワーパックって!」
「武器とパワーパックは一体になってるの! このまま装備して!」
 トレーラーの中のストライカーパックを見る、前回はランチャーでコロニーに穴開けてしまったので今回はエールにした。
あと、シンが乗ったヴェスティージは機動性が非常に高く、空中戦が可能で武器はグフのテンペストと同型のビームソードが二本とビームマシンガン、スレイヤーウィップ、バルカン、アーマーシュナイダー、アンチビームシールド、大まかな特性は高機動格闘戦向きというグフのG版みたいな機体だ。
「キラさん、これ、差し入れです」
「ああ、ありがとう……」
 後ろの方からマユちゃんが缶ジュースを持ってやってきた。
嬉しい反面彼女の優しい笑顔を見ると胸が締め付けられる。未来で僕は流れ弾とはいえ、こんな優しい娘を……。
「どうしたんですか?」
「い、いや、なんでもないよ、ジュースありがとう、シンの方は?」
「向こうで準備しています、でも、キラさんもお兄ちゃんもすごいな、こんなの簡単に動かしちゃうなんて」
「あはは……そんな事……ん?」
 上空から爆音、来たかクルーゼ!
上を見上げるとメビウスゼロとシグーが戦っている。
「マユちゃん下がって、マリューさん、あいつの相手をします」
「分かったわ」
「行くよ、シン!」
「おう!」
 僕とシンはすぐさま機体を起動させ、シグーへと突っ込む。
ラウ・ル・クルーゼ……アイツは絶対に討つ!不殺なんて甘い真似は絶対しない!
前世ではそれが原因でアスランはシンに殺され、ラクス達も殺されたんだ。
おかげで自分の甘さを嫌というほど思い知らされた。
だからもう迷わない、戦場に出ればどの道恨まれるんだ。だったらとことんやってやる!大事な人達を守るためならどんな罪だって背負ってやるさ!!
「堕ちろ!!」
 接近して右手のビームサーベルで切りかかる、Sフリーダムと比べるとやっぱり反応が鈍い、機体を真っ二つにしてやるつもりがタイミングが僅かに遅れ、腕一本を切り落とすだけに終わる。すぐさまシンが追撃を加え、右足を切り裂く。
「ちぃっ、分が悪すぎるか……」
 クルーゼはさっさと撤退してしまった。
「くそっ!逃がすか!!」
「シン君、キラ君、もういいわ、戻って!」
「でもああいう奴は今のうちの落としておかないと!」
「こちらの守りを手薄にするわけにはいかないの、悪いけど一旦戻って」
「……仕方ないですね、分かりました」
 苛立ちを隠しつつ僕はシンと共にマリューさんの元に戻った。



 その後、アークエンジェルが現れ僕達はアークエンジェルに着艦した。
一ヶ月半ぶりとはいえ懐かしいなぁ、この頃はまだ温泉はなかったんだよなぁ……。
「ラミアス大尉、ご無事で!」
「バジルール少尉!」
 ナタルさんとマリューさんがお互いの無事を確認したところで僕達の紹介となった。
「この二人のおかげで先の戦闘でジン二機とシグー一機を撃退する事が出来たわ」
「こ、この子供達がですか!?」
「あー、俺達コーディネイターなんですよ、オーブのね」
 シンが説明する、周囲は僕達がコーディネイターだと聞いて少し警戒したがオーブ出身と付け加えられたためかマリューさんの取り成しですぐに警戒を解いてくれた。
それから僕達は艦内の寝室で休む事になった。
「しかし、あのクルーゼを二人がかりとはいえ、ああも圧倒するとはねぇ、俺が見てきたヒヨッコ共はのろくさ歩かせるのにも四苦八苦していたって言うのに」
 寝室に向かう途中、ムウさん(居たんだ……)が声を掛けてきた。
「それは実力云々の問題じゃなく単にOSの問題ですよ、最初に乗ったときに見たけど、アレじゃ歩くだけで精一杯です、そろそろ休みたいんですけどいいですか?」
「ああ、すまなかったな、引き止めて」
 僕は説明を終えると寝室のほうへ向かった。



シンSIDE

 あてがわれた部屋で寝てから何時間か経った頃、俺とキラはマリューさんに呼び出され、目を覚ました。
まぁ、おそらくパイロットを務めて欲しいという依頼だろうなと思いながら俺達は艦長室へと向かった。
「―――――という訳なのよ、こんな事頼むのは本当に恥知らずだって言うのは分かってるんだけど……貴方達しかいないの、お願いできるかしら?」
「まぁ、いいですよ、元々このまま終わってくれるとは思っていないし」
「うん、僕たちも皆を守りたいし」
「ありがとう!本当にありがとう!」
 マリューさんの頼みを俺達は当然快諾した(元々そのつもりだし)。
それから数分もしない内に内線が鳴った。どうやらザフトがまた来たようだ。
フラガのオッサンは機体がまだ直ってない(チッ、使えねぇオッサンだぜ……)、出撃出来るのは俺とキラだけだ。
すぐさま機体に乗り込み出撃準備に入る。
「シン・アスカ、ヴェスティージ、行きます!!」
「キラ・ヤマト、ストライク、行きます!!」
 敵機の数は5機、その内重爆撃装備が4機だ。
「チッ、予想以上に多い!」
「ああ、だがやるしかねぇ!!」
 俺とキラは左右に分かれて敵機に応戦する。
敵機の内、唯一、特化重粒子砲を装備したジンがこっちに向かってきた!だが所詮はジン、特化重粒子砲の破壊力はシールドだけで十分対応できる。
ある程度近づき俺はすぐさまスレイヤーウィップをジンに巻きつけ電撃を喰らわせる。
「グアアアアアアアア!!!!」
 パイロットの悲鳴が聞こえてくる。まぁそれも当然といえば当然か、未来じゃこのエモノはガイアにも効果覿面だったんだ、ジン程度の装甲じゃひとたまりも無いだろう。
そのまま鞭を引き寄せ捕縛したジンを近くに居たもう1機のジンに叩きつける。ジン2機はコロニーの外壁に叩きつけられ1機は爆発しもう1機は機能停止した。
3機目が俺に向かってくるが俺とヴェスティージには全くの無駄。ビームマシンガンで蜂の巣にしてやった。
これで3機撃墜、キラは……ジンを既に片付けてイージス……アスランの相手をしている。
「あの野郎……」
 俺は内心怒りを覚えながらイージスへと突っ込んでいった。



キラSIDE

「キラ! キラ・ヤマト!」
 戦闘中に声を掛けられ振り向いたらそこにはアスランのイージスが居た。
「!?アスランか?」
 アスラン……前は何の疑問も湧かなかったけど君のやってることすごく命取りなんだよ……戦闘中に敵に話しかけるなんて……。
「やはりキラ…キラなのか?何故お前が地球軍に!?」
 さて、今回はどう答えようか?……と思っているとシンのヴェスティージがこっちに向かってきた。
「テメェ!!堕ちろぉ!!」
 シンがビームソードで斬撃を繰り出す。アスランはそれを間一髪で避けようとするが僅かに遅れイージスの右腕は切り裂かれてしまう。
「な、何だ貴様は!?邪魔をするな」
「ウルセェ!!民間のコロニーに攻撃なんかしやがって!!」
「だ、黙れ!元はと言えばお前等地球軍がこんなものを作るから……」
「問答無用!さっさとくたばりやがれ、この凸ハゲがぁ!!!!」
 なんか僕を無視して二人は言い争っている……と、その時コロニー内から大きな音が聞こえてきた。
「マズイ!コロニーが崩れるぞ!!」
 次の瞬間、コロニーは地割れを起こし僕達はなす術無く宇宙空間に吹き飛ばされた。
「結局またこうなってしまったか…………」
 分かってはいたけどやはり辛い、でもここで立ち止まるわけには行かない。
僕は前回同様フレイの乗る救命ポッドを回収し、アークエンジェルへと帰艦した。
またナタルさんと一悶着起きるんだろうなぁ・・・・・・。





[32127] 第4話 墓標へ
Name: 神無鴇人◆c2099dfd ID:7cb03caa
Date: 2012/03/16 17:20
キラSIDE

 マリューさんから救命ポッド保護の許可を得た僕はアークエンジェルに着艦した。
僕より少し遅れてシンが着艦する。しかもさっきの戦闘で撃墜したジン(パイロット付)と切り落としたイージスの右腕を手土産にして。
その後シンはマリューさんに呼び出されブリッジへ向かった。何でも傭兵扱いだから今後の方針について聞く権利があるとの事だ。なんかずるい……。

それはともかく、救命ポッドを開くと中からフレイが出てきた。
「あ、あなたサイの友達の!?」
「う、うん……そうだよ……」
だ、ダメだ目が合わせられない。目を合わすと泣きそうになる……っていうかもうちょっと心の準備しとかないと本当に泣いてしまいそうだ。
その後サイが出てきてフレイはサイにべったり…………で、僕とシンがコーディネイターだって知った途端なんか怖がったような目で見てきた。
「サイ……」
 僕は小声でサイに話しかけた。
「ん?何だ?」
「フレイの事だけど、マユちゃんがコーディネイターって事は黙っておいてくれないかな」
「ああ、分かってる、まぁ、さすがにあんな小さい娘を邪険に扱う事は無いと思うけど、知らずに済ませておいた方がいいからな、他の皆にも伝えとくよ」
「うん、ありがとう」
 これで良し、別にフレイの事を信じてないとかそんなんじゃないけど、万一マユちゃんが邪険に扱われたらシンが本気で切れかねない………シン、これで貸し一つだよ。



シンSIDE

 ブリッジにやってきた俺は今後の方針について艦長達と話し合っていた。
「j艦長、私はアルテミスへの入港を具申します」
「それって確かユーラシア軍の軍事要塞の?」
 確かそこはブリッツに侵入されて破壊されたってキラが言ってたな……。
「確かに今補給もせずに進むのは難しいと思うけど……」
 艦長が難色を示す。
「しかし、ユーラシアは大西洋連邦以上に反コーディネイターの感情が強いって聞くぜ」
 え?それマズイぞ、俺やキラはともかくマユまで巻き込まれる可能性が、最悪人質に取られる可能性も……。
艦長たちはまだ迷ってるみたいだし一言言っておくか。
「あの、ちょっといいですか」
「ん?何だ坊主?」
「アルテミスの傘の事なんですけど、正直役に立たないと思いますよ、モルゲンテーレで見たんですけど、盗まれたブリッツって機体、かなり高性能なステルス持ってるから、もし内部に侵入されたらひとたまりもないじゃないんですか?」
 取り敢えずこれだけ言えば大丈夫だろう。
「マジかよ?」
「はい、資料にも載ってると思いますが」
「だとすると、このまま月へ行くしかないわね」
 よし、アルテミス行きは回避だ。
「しかし、そうなると補給はどうしますか?今ある資材では限界がありますが」
「…………一応手はあるぞ、気は進まんがね」



キラSIDE

「で、ユニウスセブンに行く事になったと……」
「ああ」
 ブリッジからシンと合流して決まった方針について聞いていた。
「正直ありがたいよ、あそこ(アルテミス)には嫌な思いでしかないから」
「そうか、まぁそれまで休んでおけって艦長が言ってたぜ」
「分かった、シンはどうするの?」
「俺も休む、ユニウスセブンに着くまで敵が来なけりゃいいんだがな」
 ……敵か、アスラン達とは戦いたくないんだけど、正直どうなる事か……。



アデスSIDE

 数時間後 ヴェサリウス艦内
 ようやく足つきを捉えたのはヘリオポリスから出て数時間たってからだった。
「……ガモフを保険にしておいて正解でしたね」
「ああ」
 私の言葉にクルーゼ隊長は苦々しい表情で答える。
そりゃあんだけ格好つけて「奴等はアルテミスに行く」って豪語してその予想がはずれりゃあな……。

 数時間前
「奴等の行き先はアルテミスだ!間違いない!!」
「はぁ……しかし、念のためガモフを保険にしたほうがよろしいのでは?」
「フ……任せる、まぁ必要ないと思うが」

「アデス……」
「何か?」
「腹立たしいものだな、馬鹿正直な連中にしてやられそうになったというのは」
「はぁ……」
 いや、アンタ、私の進言聞いてなけりゃ本当にしてやられていたよ……。
「戦闘体制に入る、全機発進準備に入れ!アデス、艦を頼むぞ」



キラSIDE

 警報が鳴ったのはちょうど休憩が終わった時だった。
ったく、アルテミス行きは回避したのに結局戦闘は避けられないなんて……。
「装備はエールでお願いします……キラ・ヤマト、ストライク行きます!」
「シン・アスカ、ヴェスティージ、行きます!」
「ムウ・ラ・フラガ、出る!」
 僕を筆頭に全機出撃する。ムウさんが隠密先行で回りこみ、シンが艦の護衛を担当だ。
敵機はアスラン達4人とジンが2機、他は……クルーゼも出てる!?前世では出てなかったのに。
メビウス・ゼロが隠密先行で回りこむのを見届けると僕はクルーゼに向かって先制射撃を喰らわせる。
「クルーゼ!お前はここで落とす!」
 僕はクルーゼにむけてライフルを連射する。クルーゼはそれを軽々と避ける。流石は仮にもザフトの英雄、反射神経はかなり高い。
「だけどそれだけじゃあ!!」
 僕は撃ちつつ急接近しすれ違いざまに零距離からビームを喰らわせる。
「ぬおぉっ!な、何だと!?」
 コックピットへの直撃は外したが右肩から先を破壊されクルーゼは狼狽する。このまま止めを……。
「ストライクーーーーー!!」
 デュエル!?イザークか!?
デュエルの斬撃を紙一重で回避するがデュエルは更にビームサーベルを振るおうとする。
「喰らえぇぇぇーーーーーー!!!!」
「お前がな!」
「何!?」
 シンのヴェスティージが横からデュエルの両腕を切断し、たまらずイザークは後退する。
シンはそれを追おうとするが後方からバスターの支援射撃を受けて留まる。
そのままイザークはクルーゼ共々撤退していった。
「俺が言えた義理じゃないが、頭冷やせ、クルーゼだけに目が行きすぎだぜ」
 反論できない、確かに僕はクルーゼへの恨みに囚われて奴にしか目が行ってなかった。フレイはまだ生きてるんだ、慌てる必要は無い。
「ゴメン……そっちは?」
「ジンは落とした、ブリッツも撃墜は出来なかったが撤退させる事が出来た、あとはイージスとバスターだけ……」
「キラぁぁぁぁぁぁ!!そいつから離れろ!!!!」
 あ、アスランが突っ込んで来た。しかもイージスの片腕がジンの腕になってる。
「貴様ぁ!!キラから離れろ!!!!」
 アスランは叫びながらシンを攻撃している。
あれ?何だろ?何か違和感と寒気が……特にお尻の辺りに得体の知れない危機感を感じる。取り敢えずアスランはシンに任せて僕はバスターの相手をしよう。



シンSIDE

「待て、キラ!俺と一緒に……」
 アスランの奴が何か叫んでる。何かムカついたので取り敢えずマシンガンを撃った。
つーか、アスランの奴昔からこうだったのか?クルーゼ隊の連中に同情するぜ。
「貴様!貴様がキラを誑かしたのか!!」
「はぁ?何言ってんだアンタは?」
 俺の方へビームサーベルで斬りかかりながら訳の分からない事をほざくアスラン。
正直めっちゃウザイし、言い回しが何かキモイ。
「変な言い回しするな!!ホモかお前は!?」
「うるさい!!貴様がいるからキラは!!」
 だ、ダメだコイツ、頭がイってるとしか思えん、つーかホモ呼ばわりされた事に怒れよ……やっぱコイツはここで殺す。
スレイヤーウィップを使ってライフルを破壊しそのまま胴体に斬撃を喰らわせた。
「ギャアアアア!!痛い、痛い、痛いィィィィ!!!!」
 僅かに早く反応したアスランが後方に退いた為、爆発には至らなかったが十分ダメージはあるようだ。どうやら身体のどこかを傷つけたらしい。
このまま止めを……と思ってるといつの間にかオッサンがナスカ級にダメージ喰らわせてキラもバスターをボロボロにしたため敵艦から退避命令が下ったと同時に俺たちも艦に戻れとの通達があったので俺はアスランをぶっ殺してやりたい衝動を抑え、引き返した。
「命拾いしたな、凸ハゲホモ」
 去り際にそう吐き捨ててやった。キラも何も文句言わなかった。



ニコルSIDE

 すっごく憂鬱な気分だった。
戦闘の結果は散々、僕のブリッツとディアッカのバスターは一応五体満足ではあるけど、あちこちに傷が出来てボロボロ、イザークのデュエルは両腕を奪われ、アスランは顔面に傷を負った。
「くそぉぉぉぉっっ!!ヴェスティージめ!!今度こそ俺が落としてやる!!!!」
「キラ、お前はだまされてるんだあのヴェスティージのパイロットに…………キラ、キラ…………」
 極めつけはこれだ、イザークはさっきからギャアギャア喚くし。アスランは顔を押さえながら何かブツブツと呟いてる。イザークはいつもの事だけど、アスラン正直怖い……。この人と仲良くなったのは間違いだったかもしれない。
「「はぁ~~~~」」
 ん?ディアッカも溜息を吐いてる。目が合うと同情するような視線を向けてくる。
まぁ、この人って普段はグレイトとか訳の分からない事言ってはいるけど基本的にマトモだからな……。
「「はぁ~~~~」」
 また二人同時に溜息、僕は初めてこの人と良い友達になれそうだと思った。



キラSIDE

 変態という名の紳士こと根暗変態仮面ラウ・ル・クルーゼ率いるクルーゼ隊を退けた僕達は遂にユニウスセブンにたどり着いた。
シンと共に作業ポッドの護衛を任された僕は、静かにその凄惨な光景を眺めていた。
連合軍にとって最大の汚点、ザフトにとって全ての悲劇の始まりの証、パトリック・ザラもここで妻を失わなければ狂う事も無かったのだろうか……
「2度目、だな……お互いここに来るのは……」
「うん…………」
 シンの呟きに静かに応える。するとそこでレーダーに反応、前回同様そこには強行偵察型のジンが居た。
急いで僕は近くのポッドにジンが居る事を知らせる。これで何とかやり過ごせれば……。
「じ、ジン!?ど、どこに居るんだよ!?」
 あ!?カズイのバカ!パニックを起こすな、見つかるぞ!!
そう思っていたらジンはこっちに気付いて銃を向けてきた。言わんこっちゃない………
仕方なく僕はジンを撃った。
そして直後に救命ポッドを発見。結局ここでの展開もまた同じか……


シンSIDE

「つくづく君は、落とし物を拾うのが好きなようだな」
 バジルール少尉の呆れたような声に苦笑いするキラを眺めながら俺は救命ポッドが開くのを待つ。
「開けますぜ」
「ハロ、ハロー、ハロ、ラクス、ハロ」
 開いたと同時に脱力系の声が聞こえてきた。
「ありがとう。御苦労様です」
 出た!かつての敵軍総大将、桃夜叉軍神電波教祖ラクス・クライン!!ハロを携えここに参上!!
これからのことを考えると頭が痛くなりそうなので俺はしばらく考えるのを止めた。





[32127] 第5話 先遣隊を死守せよ!!
Name: 神無鴇人◆c2099dfd ID:7cb03caa
Date: 2012/03/16 17:21
シンSIDE

 ここはアークエンジェルの甲板、俺はマユ、ミリアリアと一緒にユニウスセブンに眠る人達に手向けの折り鶴を放った(ちなみにキラはラクスを部屋へ送り届けている)。
「お兄ちゃん……」
 マユが悲しそうな表情で俺の手を握ってくる。俺はその手を強く握り返した。今度こそマユを絶対に守る、その誓いと共に……。



マユSIDE

「嫌よ!絶対嫌!!」
 ユニウスセブンを離れてしばらくして、お兄ちゃん達と一緒に通路を歩いていたら食堂の方から声が聞こえてきた。
何事かと思って見てみるとミリィお姉ちゃんの友達のフレイって人が何か叫んでいる。
「どうした?」
 お兄ちゃんがカズイさんに尋ねるとカズイさんは気まずそうな表情を浮かべた。
「ああ、キラが拾ったさっきの女の子の食事をミリィがフレイに持っていくように言ったらフレイが嫌だって……」
「食事持っていくだけでですか?」
「うん」
 意味不明だと思った、いくらプラントの人だからってそれくらいであんなに拒絶するなんて……。
「絶対嫌!コーディネイターの子のところに行くなんて」
「フレイ!!」
「あ、も、もちろんキラ達は違うわよ、でもコーディネイターってすごく強いって言うし、急に襲い掛かられたりしたら……」
 何それ、何でコーディネイターっていうだけでそんな事言うの?私達コーディネイターは獣とでも言いたいの?
「まぁ、誰が強いんですの?」
 私が苛立っていると不意に後ろからおっとりとした声が聞こえた。
振り向くとそこにはピンク色の長い髪と上品な服を身に纏ったすごく綺麗な女の人が居た。この人がラクス・クライン……。
彼女は敵意剥き出しのフレイさんに優しく接するけど、それでもフレイさん表情は嫌悪に歪んでいた。
「やめてよ、コーディネイターの癖になれなれしくしないで!!」
 その言葉に私の我慢は一瞬で吹き飛んだ。
「いい加減にして!!」
 私の怒鳴り声に皆驚いてその場は一気に静まり返った。
「さっきからコーディネイター、コーディネイターって人の事を獣みたいに、お兄ちゃんが貴女に何かした?キラさんが貴女を襲った事がある?貴女がコーディネイターを嫌うのは勝手だよ、だけどそれでお兄ちゃんたちまで悪く言うのはやめて!!」
「べ、別に私はキラ達の事を言ったわけじゃ……」
「同じよ!今まで貴女の事守ったのはお兄ちゃん達なんだよ!それを踏み躙る様な真似、私は絶対に許さない!!」
 フレイさん……いや、フレイは押し黙って目を背ける。
「それに私だってコーディネイターだよ、貴女は私が怖い?私が獣に見える?」
「そ、それは……」
「コーディネイターだから何?ナチュラルだから何?遺伝子弄っただけで他にどんな違いがあるっていうの!人の事を獣みたいに言って……貴女はブルーコスモスと一緒よ!」
 気が付いたら私は涙を流していた、でもそんな事はどうでもいい、私は感情のままに彼女に怒りをぶつけた。
「ち、違う、私はブルーコスモスなんかじゃ……」
「何処が違うっていうの!?違うって言うなら今すぐ私やラクスさんと握手ぐらいして見せなさいよ!!」
 フレイは耐え切れずに涙を浮かべながら食堂から走り去ってしまった。私は私でもうその場で泣く事しか出来なかった。



キラSIDE

 驚いた、それしか言い様が無かった。マユちゃんがあそこまで怒るなんて……。
シンも驚いた表情だったけど今は泣いてるマユちゃんを抱きしめながら慰めている。
「悪い、俺等部屋に戻るよ、キラ、悪いけど俺とマユの分の食事、後で持ってきてくれ」
「うん、分かった」
 僕が答えるのを聞くとシンは一言「スマン」と言ってマユちゃんと共に自室へ戻っていった。
「ラクスさん、貴女も部屋の方に戻って貰えますか?食事の方はすぐに僕が持って行きますから」
「ええ、ごめんなさい、私がココに来たばかりにこの様な事に……あとであの子、マユさんでしたか?彼女も一緒に来ていただけますか?彼女にも謝りたいので……」
「分かりました」
 ラクスも申し訳無さそうな表情で戻っていった。
…………この時のフレイがアンチコーディネイターなのは分かってはいたけど、やっぱり辛いな…………好きな娘に自分の事否定されるのも、女の子が泣くのを見るのも。



シンSIDE

「落ち着いたか?」
 泣いているマユを落ち着かせた俺はマユの頭を撫でながら訊ねた。
「うん……ごめんね、お兄ちゃん」
 まだ目は赤いもののマユは落ち着きを取り戻していた。それにしてもさっきのマユの反応には正直驚いた。まぁ、マユの経験した『あの事件』の事を考えれば当然と言えば当然だ……それに多分マユが怒らなくても俺が怒鳴ってただろう。

 アレはこの時点から数えて約9ヶ月前の4月1日……そう、エイプリルフールクライシスだ。
プラントが打ち込んだNジャマーの影響で地球は深刻なエネルギー不足が発生し、あちこちで暴動が発生した。
もちろんそれはオーブも例外ではない、その暴動に巻き込まれマユの親友エミ・アヤシロはこの世を去った。
その娘はナチュラルでありながらコーディネイターにも分け隔てなく接し、とても優しい娘でマユにとって唯一無二の親友だった……彼女が死んだ時のマユの悲しみ様は今でも鮮明に覚えている、それほど深い悲しみだった。
故にマユはザフトを嫌っている、そしてエイプリルフールクライシスを起こした原因を作ったブルーコスモスの連中もマユは同じくらい嫌っている。

「シン、ちょっといい?」
 ノックと共にキラが声をかけてきた。
「何だ?」
「ラクスが君とマユちゃんの事呼んでるんだけど、大丈夫かな?」
 ラクスがマユを?
「うん、いいよ」
 マユが答え、俺達3人はラクスの部屋へ向かった。



「先程は本当に申し訳ございません、私がココを出たばかりに……」
 俺達が部屋に着いて開口一番にラクスはマユに謝罪した(普段からこんな風に空気読んでくれればいいのに……)。
「あ、謝らないでください、私は別に……」
 マユが遠慮がちに答える。さすがに有名人の前だけあって緊張しているようだ。
「ま、反省しているんならあまり勝手に出歩かないほうがいい、ココは連合の戦艦だ、サイ達はともかく、コーディネイターを嫌っている連中も結構いるからな」
 とりあえずこれ以上変な真似しないように釘は刺しておこう。
「でも貴方方は優しいですのね」
「は?そ、そうですか?」
「ええ、とっても」
 ちょ、調子が狂う……どうもこの女は苦手だ……。
「マユさん、ありがとう、あの時は庇ってくれて」
「い、いえ、私が怒ったのは貴方を庇ったとかじゃなくて、あの人の態度が許せなかっただけで……」
「それでも、貴女がコーディネイターもナチュラルも同じと言ったあの言葉、すごく嬉しく感じました」
 ……なんか、ここだけ見ていると、コイツが後の敵軍総大将とは思えないな……コイツとデュランダル議長が協力することが出来たら理想的な形で終戦を迎えていたのだろうか?
だとすればそれはどうやったら実現できる?
……いや、止めよう、どの道今は考えるだけ無駄だ、俺もキラも目の前の現実だけで精一杯だからな。
「貴方方の名前を教えていただけませんか?」
「ま、マユ・アスカです」
「僕はキラ・ヤマトです」
「……シン・アスカだ」
「ありがとう、マユ様、キラ様、シン様」
 さ、様付けって止めてくれ、俺はそんな柄じゃねぇよ。
「様は付けなくていいです」
 マユが苦笑いしている。まぁそれは俺とキラも同じだが……。
「はい、マユ」
 ラクスが笑顔で答え、それからしばらく4人で談笑した。その間は戦いの事も忘れて楽しい時間を過ごす事が出来た。

 アラートコードが鳴り響き、戦闘態勢に入ったのは談笑を終えた直後の事だった。



キラSIDE

 遂に来た、この時が……この日を境にフレイの運命は狂ってしまったんだ。今度こそ絶対に先遣隊を守ってみせる!
「キラ!戦闘配備ってどういうこと?先遣隊は?パパの船は?大丈夫よね?やられたりしないよね!?」
「大丈夫、僕達も出るから、先遣隊は必ず守るから、落ち着いて」
 泣きそうな顔ですがるように声をかけてくるフレイを宥めて僕はデッキへと急いだ。

「キラ・ヤマト、ランチャーストライク、行きます!!」
「シン・アスカ、ヴェスティージ、行きます!!」
「ムウ・ラ・フラガ、出る!」
 出撃と同時に先遣隊の艦へ急いで近づこうとするが、イージスに乗るアスランが立ちはだかる。
「キラ!」
「くっ、今は君に構っている暇は無い!」
 振り切ろうとするがアスランはしつこく追い縋って来る。クソ!何か最近アスランが急にウザったく思えてくる!!
そんな時に横から救いの手が来た、シンだ。
「キラ、行け!このバカは俺が相手をする!!」
「ありがとう、シン。後でジュース奢るよ!」
 シンに礼を言って僕はフレイの父さんが乗る艦へ急いだ、敵の艦砲射撃で所々小規模な爆発を起こしている。
「間に合え!間に合えぇぇぇぇぇーーーーーー!!!!」
 集中力を一気に高めて頭をクリアにする。久しぶりのSEED発動だ!
僕はナスカ級と周囲のジンをアグニを連射して瞬く間に沈めた。この時代に戻って初めてのSEED発動だったが上手くいったようだ。
だがまだ敵機は多い、まだ油断は出来ない……
『ザフト軍艦隊に告げる、こちらは地球連合軍所属戦闘艦アークエンジェル、我々は現在プラント最高評議会議長シーゲル・クラインの令嬢ラクス・クラインを保護している…………』
 ナタルさんがザフトに呼びかける声が聞こえてきた、そしてそれはこの戦闘の終わりを意味していた。
やった……守れたんだ…………僕は人質という手段で勝利した事への後味の悪さより、先遣隊を守ることが出来た達成感に安堵していた。



シンSIDE

 終わったか……後味が良いと言えば嘘になるが、とにかく先遣隊は守れたな。
アスランの野郎は落とすことが出来なかった、まぁジンの方は何機か落としたし、今回はアスランの奴が俺を警戒して小手調べみたいな戦いしかしてなかったからな。
「貴様!保護した民間人を盾に取るというのか、卑怯者め!!」
 アスランのバカが何か言ってやがる。
「はっ!中立コロニーにいきなり攻撃を仕掛けてくるような奴に言われたくないね!!」
「クっ…………」
 あ~あ、押し黙っちゃったよ。こんなのが元上司だと思うと本当に気が滅入る。
「彼女とキラは俺が助け出す、必ずな!!」
 アスラン・ヅラは捨てゼリフと共に逃げていった。キラもあんな奴さっさと見限ればいいのに…………。



キラSIDE

 僕達がアークエンジェルに戻った時、周囲の人たちは歓声を上げて僕たちを手厚く出迎えてきた。
「やったな!坊主達!!」
 マードックさんが僕たちの頭をガシガシと乱暴に撫でながら豪快に笑ってた。
「それより、先遣隊の方は被害の方はどうなんですか?」
「ああ、バーナードとパイロット達はやられちまったがアレは俺達が来る前からやられる寸前だったしな、残りの艦も結構ボロボロにされちまったが、他の人員や補給品は殆ど無事なようだ、艦長たちも喜んでいたぞ」
「そうですか、よかった」
 そうしていると先遣隊のほうから一機のシャトルがこちらへ着艦し、中から士官らしき人が降りてきた。
反対の方からはフレイがこっちに走ってきた。
「パパ!パパは!?」
 早く父親に会おうとフレイは士官の人に詰め寄る。しかし士官は気まずそうに目を逸らした。

「アルスター事務次官は…………………殉職なされました」

 その言葉に今までの雰囲気は一瞬にして凍りついた。
そして僕は、暫くの間その言葉の意味を理解する事が出来ず、ただ呆然とすることしか出来なかった。





[32127] 第6話 さよならアスラン~親友との決別~
Name: 神無鴇人◆c2099dfd ID:7cb03caa
Date: 2012/03/16 17:21
キラSIDE

「パパ、パパぁぁぁ!!!!」
 シーツで覆われた父親の遺体に縋りつきながらフレイは号泣していた。
さっきの士官の人が言うにはフレイの父、ジョージ・アルスターは艦から脱出しようとした時に運悪く敵の砲撃によって引き起きた小規模な爆発に巻き込まれて死んだらしい。
何でだ……先遣隊は守ることが出来たのに、結局僕はまたフレイを悲しませてしまった。
「嘘吐き!!」
 フレイが僕とシンに憎悪の目を向けて叫ぶ。
「大丈夫って言ったじゃない!僕達が守るって言ったじゃない!どうしてよ!どうしてもっと早くあいつらをやっつけてくれなかったのよ!!」
 何も言えなかった……僕は目を背ける事しか出来なかった。
「フレイ、キラ達だって必死に…………」
「止めろ……」
 フレイを宥めようとするミリアリアをシンは止める。
「でも……」
「守れなかったのは事実だ……」
 そうだ……どっち道守れなかった僕らは責められて当然だ。
フレイは憎悪の視線を崩さず僕らを睨み続ける。
「アンタ達……自分もコーディネイターだからって、本気で戦ってないんでしょう!!返して……パパを返してよぉ…………」
 フレイは僕達を責めながら、そのまま泣き崩れた。
「ゴメン……」
 僕はただ、それだけしか言えなかった…………。



 暗い気分のまま僕とシンは部屋に戻った。
「無様だな、お互い……」
 自嘲気味にシンが呟いた。僕はそれに無言のまま頷いた。
「歴史を変えるのって意外と難しいもんだね……」
 多分、僕は心のどこかで自分の実力を過信していた。フレイに「本気で戦ってない」と言われても仕方ない……さっきの戦闘だって出撃してすぐにSEEDを発動させていれば…………
「で、どうするんだ?」
「え?」
「ラクスだよ、前世じゃこの後ザフトに返すんだろ?」
 そうだ、すっかり忘れていた。
「艦長達には俺が話しつけておいてやる」
「うん、ありがとう」



シンSIDE

「ラクス・クラインを返還するだと?」
「はい」
 俺がラクスを返すべきという発言を聞いた艦長達は案の定難色を示していた。
「お前さんの気持ちも解るが、さすがにそれは無理だろ」
 フラガのオッサンが俺を宥める様に反論してくるが俺は動じない、この時のために言い訳をキラと二人で考えておいたからな。
「それは分かっています、ですがこのまま彼女をココに置いておくとザフトの連中にそれを利用される可能性があります」
「どういうこと?」
 艦長が尋ねてきた。よし、食い付いてきたぞ。
「いくら彼女がシーゲル・クラインの娘でも、ザフトにとって彼女は単なるアイドルに過ぎません、アイドル一人のために敵の最新鋭戦艦を見逃すと思いますか?」
「そ、それは……」
 艦長は難しい表情で考え込む。
「確かに、クルーゼの奴ならお姫様ごと殺りかねんな……」
「ええ、そうなってしまった場合連合は人質取って、その上道連れにした外道の烙印を押されプラントの連中はより一層反連合の感情が高まるでしょう」
「しかしだからといて彼女を返す理由にはならんぞ」
 バジルール少尉が反論してくるがその反応も想定済みだ。
「いえ、彼女を返せばクルーゼ隊の連中は彼女をプラントに送り返すためにしばらく戦闘が出来ません、その間にこっちは第8艦隊と合流します」
「成る程、敵の戦力を一時的にそぐ事が出来るって訳か」
 オッサンが感心するように呟いた。艦長たちも少し考えて俺の意見に納得してくれたようだ。
「分かったわ、彼女を返還しましょう、その代わりこちらの安全には細心の注意を払う事、いいわね」
「了解」
 艦長からのお許しが出たのを確認した俺は敬礼してその場を後にした。



キラSIDE

 ラクスをデッキに連れてきた僕とシンは出撃準備を整えて発進した。
「こちら地球連合軍、アークエンジェル所属のモビルスーツ、ストライク!ラクス・クラインを同行、引き渡す!ただし、ナスカ級は艦を停止、引取り人はラウ・ル・クルーゼとアスラン・ザラの2名のみ許可する、この条件が破られた場合彼女の命は保障しない」
 よし、これでOKだ。クルーゼとアスランを指名した理由についてはクルーゼは隊長でアスランは現国防委員長の息子だ、これなら連中も迂闊な事は出来ない……と思う。
そう思っているとレーダーに反応、アスラン達が近づいてきたらしい。
「アスラン・ザラとラウ・ル・クルーゼだな」
「そうだ、ラクス嬢を引き取りに来た」
 僕の質問にクルーゼが返答してきた。アスランはというと傷痕のついた顔でずっとシンの方を睨みつけている。
「コックピットを開け、彼女を返還する、くれぐれも変な気は起こすな、迂闊な真似は歌姫ごと撃たれるものと思え……さぁラクス、シグーの方へ」
「はい、色々とありがとうございました、キラ、それにシンも」
 ラクスは僕達に一言礼を言うとシグーの方へ向かっていった。



シンSIDE

 ラクスを返した俺達は奴らがその場を離れるのを待つ。下手に後ろを向いて背後からズドンなんてのは避けたいからな。
それにしてもラウ・ル・クルーゼか……始めて会ったけど伝説通り変な奴だ、キラに聞いた話じゃコイツがレイの言っていた『世界を滅ぼそうとしたもう一人の俺(レイ)』……つまりはあいつの兄みたいな存在か…………。
「キラ!俺と一緒に来い!!」
 俺が考えに耽っていたらアスランの奴が突然声を上げやがった。
「お前が地球軍にいる理由が何処にある!!俺と一緒に来るんだ、キラ!!」
 またアイツは……どうしようもねぇなあのバカ…………。
「悪いけど、僕には君たちザフトが正しいとは思えない、中立のコロニーを何の予告も無しに攻撃して、それでたくさんの民間人を酷い目に遭わせて、それが正しいって言うの?」
 おー、いいぞキラ!もっと言ってやれ!!
「それにあの艦には守りたい仲間がいるんだ、それを裏切る事は出来ない!!」
「しかし!!」
 うわ、まだ食い下がるか……あのバカ本っ当に救えねぇな、救ってやる気も無いけど……。
しかし、これはもう一言言ってやらんと気が済まん。
「馬鹿かお前は?」
「何だと!?」
「仮にも今は敵同士だろうが、そんな人間にこっちに来いって言って『ハイ解りました』とホイホイ着いて行く奴がいるわけねぇだろ……」
「黙れ!!これ以上キラを惑わすな!!」
「俺がいつキラを惑わしたよ?そっちが勝手に勘違いしただけだろうが」
「貴様!!」
 アスランは俺に銃口を向けて撃ってきた。
「うわっ!」
 危ねぇ……間一髪で避けたが今の完全に俺を殺る気だったぞコイツ。
「やめろアスラン!」
「止めないでくださいクルーゼ隊長!!
 クルーゼがアスランを諫めるがアスランは取り合おうとはしない。クルーゼの奴も苦々しい表情を浮かべている。
「貴様がいるからキラは……貴様の存在がキラを狂わせる!!今すぐ消えろ!!俺のキラから離れろ!!!!」
 そう叫びながらアスランは俺に向かってビームサーベルを構えて突っ込んできやがった。
つーか今コイツ「『俺の』キラから離れろ」って言わなかったか!?マジかよ?まさかと思っていたがコイツって…………
「お、お前……まさかとは思っていたが……やっぱりホ……」
「それの何が悪い!!」
 み、認めやがった…………。
「あ、アスラン……き、君は僕にそんな感情を…………」
「こ、こんな人が婚約者だなんて…………」
「世も末だな…………」
 うわ…キラ達もドン引きしちゃってるよ。
「このホモ野郎が!!今すぐ死ね!!!!」
 俺は襲い掛かってくるアスランにビームソードで応戦した。
「黙れ、キラは俺のものだ!!貴様なんかが近づいていい存在じゃない!!!!」
「シン、アスランを撃ってくれ……こんなアスランもう見たくない…………」
 キラ……そうだ、それでいい、その方がいい、こいつはもっと早く見限るべきだったんだ、前世の内から。
「これで終わりだぁぁぁぁ!!!!」
 あ、そう思っているとアスランの奴がMA形態で俺に組み付いてきた。
「甘い!!」
 だが残念、その攻撃の対処法は想定済みだ。
俺はスレイヤーウィップをイージスに巻きつけて電撃を喰らわせてやった。
「グアアアアアアア!!!!」
「グッ……もらった!!」
 イージスを通して流れる電流に耐えながら俺は電流によるダメージで力の緩んだイージスを振りほどき、そのままイージスをマシンガンで蜂の巣にして大破させた。
これでもうイージスは修復不能だろう。アスランの奴も死んだか?
「う……ぐ……ぁ…………」
 ゲ………まだ生きてやがる。
このまま止めを、と思ったがクルーゼが横からイージスを回収して逃げ去っていったので、それを確認した俺達は無言のままその場を離れ、アークエンジェルへと帰還した。



キラSIDE

 アークエンジェルに戻った僕を待っていたのは、皆からの同情だった。
「坊主、あんまり気にするな」
 マードックさん……
「そうだぜ、キラ、世の中あんな奴ばっかりじゃないから、元気出せよ」
 トール…………
他の皆も次々と僕に優しい言葉をかけてくる。ああ、人っていうのはこんなに優しい生き物なんだな…………
僕は今日程誰かの優しさが身に染みた日は無かった。

とりあえず、これだけは言っておこう……さよならアスラン…………君との友情の記憶は忘却の海の底に沈めておくよ。



アデスSIDE

「隊長、本国から査問委員会の召喚状が届いています、貴方とアスランに……」
「分かった……」
 私らの報告に隊長は静かに答えた。
「アデス……」
「はい、何でしょう?」
「私は今日、生まれて初めて敵に同情したよ……」
「胸中、お察しします」
 ちなみに現在、アスラン・ザラは独房内に拘束中である。





[32127] 第7話 低軌道会戦~VSジュール隊~
Name: 神無鴇人◆c2099dfd ID:7cb03caa
Date: 2012/03/16 17:22
シンSIDE

 ラクスを返した後、いよいよあと少しで第8艦隊と合流って時になってイザーク率いる部隊が攻撃を仕掛けてきやがった。
俺はデュエル、キラはブリッツ、オッサンはバスターの相手に大忙しだ。
「落ちろヴェスティージ!!」
「誰が落ちるか!テメェが落ちやがれ!!」
 接近戦に持ち込んで互いに切り結ぶ。イケる!未来ならともかく今のイザークは冷静さに欠ける、これなら!!
「チィッ、接近戦では分が悪いか!」
 距離を取り始めた、射撃戦に切り替えようとしているな、よし今だ!
「逃げる気か?この腰抜け!!」
「にゃんだとおおおお!!!!」
 かかった!俺は突っ込んでくるデュエル目掛けてビームソードを投げつける。
「そんなものが!!」
 当然これは弾かれた。だがな…………
「これでいいんだ!!」
 俺はすぐさまスレイヤーウィップを飛ばして鞭の先端をビームソードの取っ手に巻きつけ、そのままデュエル目がけて振り回す。
「にゃぬぃいいいいい!?」
 イザークが驚愕の声を上げるが俺はそれを無視してそのままデュエルの頭部と右肩から先を切り裂いた。
「イザーク!」
 オッサンと戦っていたディアッカが横から入りデュエルを連れてその場を離れた。
「く、クソぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」
 イザークは悔しそうに叫びながら撤退していった。



キラSIDE

 ブリッツと戦っていた僕はデュエルとバスターが退避したのを確認すると自分も牽制しながら撤退を開始した。
恐らく今戦った3人の中で一番損害が少ないのはブリッツとバスターだろう、彼等はイザークやアスランと違ってかなり冷静だ、僕やムウさんと戦ったときにこっちの間合いに入らないように距離を取りつつ上手く隙を窺っていたのがいい証拠だ。
戦っている最中、ブリッツのパイロット、ニコル・アマルフィはこう言っていた。
『僕をアスランの馬鹿と一緒にしないほうが良いですよ』……と
……彼もどうやらアスランを見限ったようだ。うん、その方が良いよ…………アレはもうダメだ…………。
彼等が撤退したと同時に第8艦隊はその姿を見せた。
次の闘いは低軌道会戦だ、今度こそ守り抜いてみせる!前回のようなヘマはしない!!



シンSIDE

 第8艦隊に合流した俺達を出迎えたハルバートン提督に家族の無事を知らされ、避難民達をランチに収容した後(余談ではあるが以前に俺が落としたジンのパイロット、ミゲル・アイマンは少し前に第8艦隊に引き渡された)、俺とキラは闘いに備えて機体の調整に勤しんでいた。
あの後俺は傭兵として『オーブに戻るまでの艦の護衛』という事でアークエンジェルと契約し、キラはキラで、そのまま軍に志願した。
「それにしてもさ……」
 俺は機体の調整をしながらキラに話しかける
「ん、何?」
「あのハルバートンって人、連合にもああいう良い人がいたんだな」
「うん、あの人は僕が今まで会ったお偉いさん中で一番良い人だと思うよ」
 キラに聞いた通りハルバートン提督は良識ある紳士的な人だった。
「ああいう人が多く居れば連合ももっとマシになるのにな」
「ハハ、それは確かに……」
「所で、サイ達も軍に志願したんだってな」
「うん」
 合流した直後フレイは軍に志願し、それを皮切りにサイ達も軍に志願する事になった。
フレイが軍に志願した理由……それはやはり復讐だろう。かつての俺と同じ様に…………。
ま、考えていても仕方ない、俺とキラは作業を終えてデッキを後にした。
「そういえば、マユちゃんはどうするの?」
「艦に残るってさ、俺と一緒にいた方が安心できるって事で」
 俺はマユにはランチに乗ってオーブに戻って欲しかったんだが……連合にとって俺やキラは是が非でも欲しい人材だ、俺を服従させるためにマユを人質にしようなんて思う奴がいてもおかしくない。マユを守るにはすぐ傍に置いておくしかないんだ。
まぁ、オーブに着くまでの我慢か…………。



キラSIDE

地球に降下を開始した直後、警報音が鳴り響いた。
いよいよこの時が来たんだ。僕とシンはパイロットスーツに着替えるため、ロッカールームに駆け込んだ。
そしてそこには、前回と同じ様に僕のスーツを握るフレイの姿があった。
「貴方…行っちゃったと思ったから…私…みんな残って戦ってるのに…最初に言った私だけ……だから私!…私が…!」
 これも前回と同じだ、僕はどう答えればいい?
「いいんだ、君は行かなくて良い、僕が行くから…………」
 違う、言うべき事はこんな事じゃない。
フレイは僕を復讐の道具として利用している、だけど僕にそれを拒絶する資格なんてあるのか?彼女の父親を守れなかった僕が…………
フレイは僕の顔へ自らの顔を寄せてくる。僕は……
「止せよ」
 不意にシンが声を掛けてきた。それに驚いたのか、フレイは動きを止めた。
「アンタが復讐したいと思うのも解る、アンタの親父を殺したザフトの奴等や守れなかった俺達を憎むのはアンタの自由だ、だから俺はアンタの復讐を否定しない、止めるつもりも無い……だけど、アンタの道具にはなれない」
 シンの言葉にフレイは驚いたように目を見開く。それを気にする事無くシンは言葉を紡ぐ。
「復讐したいなら自分の手でやれ、自分自身で復讐の方法を見つけろ」
 シンの言葉にフレイの体はブルブルと震え、フレイはそのまま逃げるように去っていってしまった。
その場に沈黙だけが残る。
「シン、今のは……」
 沈黙に耐え切れず僕はシンに声を掛けた。
「腹立つか?アイツに説教した事に」
「…………」
「アイツが復讐したいって気持ちは痛いほど解る、俺もそうだったからな、けどな……それで誰かを道具にしていい道理は無いし、そんな方法で復讐しても気は晴れないしお互いの為にならない、俺達に出来る償いはアイツの復讐を止めるか、そうでなければアイツ自身の手による復讐を手伝うか、そのどちらかだけだ……」
 シンの言葉に僕は返す言葉も無かった。前世で僕は流されるままに彼女を受け入れて、それは後々彼女を追い詰める事になってしまった。
「確かにそうかもね……少なくとも前回はそれで彼女を追い詰めてしまったから」
 僕は苦笑いしながらシンの言葉を肯定した。
「そろそろ行くぜ」
「うん」
 僕達はデッキへと向かって走った。



ニコルSIDE

 機体の修理を終え、出撃を十数分後に控えて僕は内心不安を感じていた。
当然理由はストライクとヴェスティージ、というよりそのパイロットだ。
あの機体のパイロットの腕は恐らく僕やイザーク、ディアッカはもちろんアスランをも上回るだろう。
正直な所どちらか1機のみを僕達3人掛かりで相手にしても勝てるかどうか……。
イザークはヴェスティージを倒そうと躍起になっているけどあの状態では彼に連携は期待できそうに無い。
一体どうすれば……
「よう、難しい顔してるな」
 後ろから声を掛けられ、振り向くとそこにはディアッカがいた。最近彼とはよく話すようになった。
「その様子じゃ、ストライクとヴェスティージの事で頭抱えてるって感じだな」
「ええ、そうです……正直勝てると思いますか?」
「まぁ、難しいだろうな……隊長とアスランは査問委員会でイザークはあの有様だ、せいぜい足止めして味方が敵の艦を落とす時間稼ぎって所が関の山だ」
 流石ディアッカ、あのイザークの抑え役だけあってかなり冷静だ。
「でしょうね……とりあえず、今の内に連携の打ち合わせでもしておきますか?倒せる可能性は低くてもどの道相手をしなきゃならないんだし」
「OK、ついでにこの作戦が終わったら訓練のメニューも考えないとな、一から鍛え直すって事で」
 そうして数十分後、僕達は機体に乗り込み、奴等との戦いに出撃した。


キラSIDE

 マリューさんたちに出撃を進言し、僕達は出撃準備に入る。
「フェイズスリーまでに戻れ!高度とタイムは常に注意しろ!」
「「了解」」
 ナタルさんの指示に二人同時に答え、出撃準備に入る。
「キラ・ヤマト、エールストライク、行きます!!」
「シン・アスカ、ヴェスティージ、行きます!!」
「ムウ・ラ・フラガ、出る!」
 出撃とほぼ同時に反応あり、デュエルとバスター。デュエルはシン、バスターは僕の方に向かってくる。
おかしい……ブリッツがいない、メビウスの相手をしているのか?それともミラージュコロイドで隠れているのか?
そう思っているとバスターが遠距離から狙撃してきた。
「させるか!」
 僕はそれを回避してバスターに接近する、ディアッカは射撃の腕は一流だけど格闘戦はそこまで強くない、せいぜい中の上か上の下といった所だ。
あまり長く戦っていられない以上即効で片を付けた方が良い。そう判断した僕は接近戦に持ち込んだ。
「今だ!!」
 その時、不意に後ろからブリッツが現れた。しまった!バスターは囮か!?
前にはライフルを構えたバスター、後ろにはビームサーベルで切りかかるブリッツ。2機の攻撃が同時に僕に襲い掛かる。しかし……
「な!?」
「ウソだろ!?」
 間一髪、僕はバスターのライフルを右手で握って銃口をずらし、ブリッツの斬撃をシールドで防いだ。
そのまま2機を振り解き、僕は隙を見せたバスターを掴んでブリッツに叩きつけ、そのまま地球の方へ叩き落した。
地球の引力に引っ張られた2機はそのまま地球へと落下していった。



シンSIDE

 俺はデュエルを相手にしつつ周囲のジンを次々に落とし、着実に敵の数を減らしていた。
「ヴェスティージぃぃぃぃーーーーーーーー!!」
 イザークが叫びながら俺に突っ込んでくる。しつこい上にうるさい…………噂には聞いていたが本当に感情的だなコイツ、よく隊長になれたもんだ。
「受け取れーーーーー!!!!」
 うわっと!危ねぇ、追加武装のレールガンを撃ってきやがった。
このまま放置しておくと厄介だ、ここで片付けるか。
俺は意識を集中させSEEDを発動させる。事前にキラからコントロールするコツは聞いていたが上手くいったようだ。
「まだまだぁっ!!」
 デュエルは一気に距離を詰めるとビームサーベルによる斬撃を繰り出してきた。俺はそれを回避し、そこを狙ってイザークは再びレールガンを撃とうとするがそうは問屋がおろさない、俺はレールガンの銃口の向きから弾道を読み、それを回避、マシンガンで反撃しレールガンとミサイルポッドを破壊する。
「クソォォッ!!俺を舐めるなーーーーーー!!!!」
 まだ来るのかよ!?コイツ執念深さだけは本当にすごいな。
次の瞬間俺とデュエルの間を何かが横切った。
「アレは……」
 民間人を乗せたシャトルだ!!
ん!?イザークの奴シャトルを狙っているだと!?
「させるかよぉ!!!!」
 俺はすかさずシールドを投げつけデュエルをよろめかせ、その隙に一気に接近、そのまま踵落としを食らわせ地球に叩き落としてやった。
シャトルは……無事逃げられたようだ。それを見て俺は心の底から安堵の息を吐いた。



キラSIDE

 G3機は片付いた、後はハルバートン提督を死なせないようにするだけだ。
メネラオスは……よし、まだ健在だ!!どうやら撤退を開始し始めているようだ。
「キラ・ヤマト!シン・アスカ!フェイズスリー突破だ!早く戻れ!」
「了か……まずい!!」
 ローラシア級がメネラオスに突っ込んでくる。特攻する気か!?
「くそ!遠い、間に合え!!」
 スラスターを全開にしてローラシア級に接近する。この際エンジンがイカれても構わない!!
「間に合えぇぇーーーーーー!!!!!」
 無我夢中でビームライフルを連射する。ビームはエンジン部とブリッジに命中して敵艦は爆発を起こした。
「や、やった……間に合った…………うわっ!」
 急に引力が強くなり、コックピット内の温度も急激に上昇する。
「くっ、もう時間切れか……フリーダムならこうはいかないのに…………」
 ほとんど動けない。しかも前回と違ってアークエンジェルと距離がありすぎる。
こ、これは本気でヤバイかも……。
アークエンジェルが近づいてきてくれているが、でも間に合うのか?
「キラ、摑まれ!!」
 シンのヴェスティージが艦に摑まりながら鞭を伸ばしてくる。僕は残った力を振り絞りそれを摑み、アークエンジェルに引き寄せられ、着艦に成功した。



「メネラオスは離脱できたってよ、何とか…上手くいったな」
 着艦してストライクから降りたと同時にシンが声を掛けてきた。僕ほどではないが彼もかなり体力を消耗しているようだ。
「うん、なんとかね」
 そうだ、僕達はやったんだ、この戦闘でハルバートン提督は死なず、シャトルも無事地球に降下できた。
「やったな」
「ああ……!」
 僕達は互いに笑い合い、ハイタッチを交わした。





[32127] 登場人物紹介 その1
Name: 神無鴇人◆c2099dfd ID:7cb03caa
Date: 2012/03/16 17:23
AAクルー

シン・アスカ (14)
主人公。
キラとの決闘の中、過去に逆行し、自らの悲劇的な運命を変える為に宿敵であるキラ・ヤマトと手を組む。
最近は徐々にキラとの間に友情が芽生え始めている。
本作では家族が全員生きているので精神的に余裕があり、結構冷静。
趣味は読書。

キラ・ヤマト (16)
もう一人の主人公。
シンと共に逆行し、最善の未来を求めて戦う。
シンとの友情を深める一方、同性愛に目覚めたアスランに対しては友情は完全に消え失せ、もはや嫌悪感しか残っていない。
趣味はハッキング。

フレイ・アルスター (15)
父をザフトに殺され、復讐の燃える少女。
復讐のためにキラを利用しようとするがシンに止められる。
復讐の方法を見失った彼女は一体何を求めるのか…………

マユ・アスカ (10)
シンの妹。
ヘリオポリスに引っ越した事がきっかけで、シン達と共にアークエンジェルに乗り込む事になる。
天真爛漫で心優しい性格だが、エイプリルフールクライシスで親友を失っており(オリ設定)、ブルーコスモスやザフトを激しく嫌悪している。

ムウ・ラ・フラガ (28)
アークエンジェルの貴重な戦闘員。しかし全然目立ってないのでほぼ空気扱い。

マリュー・ラミアス (26)
アークエンジェル艦長。ムウ同様目立たない。

ナタル・バジルール (25)
アークエンジェル副長。現在は目立ってないが、いずれ見せ場は作る予定。


ザフト

アスラン・ザラ (16)
キラの親友……だったが彼の隣で戦うシンに嫉妬し、遂にはキラへの感情は同性愛に昇華する。
シンにイージスを破壊され、現在査問委員会に出向中。

ラウ・ル・クルーゼ (25)
クルーゼ隊の隊長。
キラの宿敵でムウの父親のクローン。

ニコル・アマルフィ (15)
クルーゼ隊の一員。
温厚で心優しい性格だが、アスランの事は既に見限っている。
非常に冷静で自分とキラ達の戦闘力の差にいち早く気付いた。
クルーゼ隊の中で最も目立っている。

ディアッカ・エルスマン (17)
クルーゼ隊の一員。
イザークの相方的存在。
冷静で比較的まともなため、最近はニコルと仲がいい。

イザーク・ジュール (17)
クルーゼ隊の一員。
腕は良いのだが、熱くなりやすい性格のせいで毎回シンにボコボコにされる。

フレドリック・アデス
クルーゼ隊副官。
脇役なのにそこそこ目立っている。




[32127] 第8話 アフリカ戦線
Name: 神無鴇人◆c2099dfd ID:7cb03caa
Date: 2012/03/16 17:26
マユSIDE

 医務室で眠るお兄ちゃん達を見ていると私は無力感に襲われてしまう。
お兄ちゃん達はこんなになるまで戦っているのに私は何も出来ない。
私もお兄ちゃん達の力になりたい、私は強くそう思った。



キラSIDE

 目が覚めたらそこは医務室のベッドの上だった。
「おう、起きたか?」
 横から声を掛けられ、振り向くとそこには寝巻き姿のシンの姿があった。
どうやら僕はあの後医務室で診察を受けている最中に眠ってしまったようだ。
「ここは?」
「砂漠だってさ、俺も今さっき起きて聞いた、俺はこれから機体を地上戦用に調整しに行くけど、お前はどうする?」
「僕も行くよ、砂漠じゃいろいろと設定しなきゃいけない事も多いし」
 僕は起き上がるとシンと共に格納庫へと向かった。



 格納庫に着いたら何やら慌ただしく整備士の人たちが動いていた。
見ると以前僕達が撃墜したジンのパーツを組み合わせて機体を組み立てている。
「何やってるんですか?」
「ああ、お前さん達が落としてくれたジンのパーツで機体作ってるんだよ、艦長達が予備の戦力を用意すべきって言ってな、パーツも結構多いし、3機は作れるぞ」
 マードックさんは何やら嬉しそうに話す。整備士としての血が騒いでいるのだろうか?
とりあえず話をそこそこに切り上げて僕達は機体の調整に取り掛かった。
「でも誰が乗るんだ?やっぱりフラガのオッサンかな?」
「う~ん?どうかな?」
 適当に雑談しながら調整を進める。
え~と、接地圧を逃がして摩擦係数は砂の粒状性をマイナス20に設定……と、よし、大体こんなもんか。
「こっち終わったよ、そっちは?」
「ああ、こっちももう終わる」
 お互い準備は完了、後は敵襲に備えるだけだ。
次の相手はバルトフェルドさんか……気を抜けない戦いになりそうだ。



シンSIDE

『総員第一種戦闘配備!繰り返す、総員第一種戦闘配備!』
 調整を終えて数時間ほど経った頃、警報音が鳴り響いた。どうやらザフトらしい。
「俺のスカイグラスパーはまだ出られん、スマンが頼むぞ」
「了解!シン・アスカ、ヴェスティージ、行きます!!」
「キラ・ヤマト、エールストライク、行きます!!」
 砂漠に降り立つと同時に敵影、バクゥだ!
「来た!散開して各個に応戦するぞ」
「分かった」
 機影はバクゥ5機に戦闘ヘリ8機。ヘリはアークエンジェルに任せれば大丈夫だろう、俺はバクゥの相手に集中する。
1機目のバクゥが飛び掛ってくる、俺はそれをバックステップで回避しビームソードで切り裂いた。まず1機撃破だ。
続いて襲い掛かってくる2機目にスレイヤーウィップで捕らえて、こちらに引き寄せコックピットをビームソードで貫いた。
「雑魚が、話にならねぇ」
 俺は余裕でバクゥを2機落とし、キラも既に2機のバクゥを落としている。そんな俺達に対し、3機目のバクゥは勝ち目は無いと見て撤退を開始した。
「ん?」
 突然どこからともなくミサイルがバクゥ目掛けて飛んできて逃げるバクゥを撃った。
「何だ?」
 ミサイルが飛んできた方向を見るとそこには無数のジープが…あれがキラの言っていたレジスタンスか?……って事はあの中にアイツもいるって事か…………。
「クソが…………」
 逃げようとしたバクゥを撃ったレジスタンスの奴等や、これから会うであろうあの無能の事を考え、おれは胸糞悪い気分のままアークエンジェルへと戻った。



 レジスタンスのリーダー、サイーブとか言う髭面のオッサンが出てきて艦長達と何か話している。
正直俺やキラには関係無いからその場に座り込んで適当に聞き流していたら一人の女が俺達の方へやって来た。ご存知無能女王、カガリ・ユラ・アスハだ。
「お前等!何故お前等があんなものに乗っている!?」
 は?何言ってんだアイツは?
俺は急に殴りかかってきたアスハの拳を軽く避け、腕を極めると、関節を捻り上げる。
「グッ…痛っ、何をする」
「あ?こっちの台詞だ、いきなり訳の分からん事言って殴りかかってくるってのはどういう了見だ?テメェ親にどういう教育受けてんだ?ああ!?」
 殺気を出してアスハを睨みつける。
俺の眼光に怯んだのか、アスハは口を噤んだ。
「やめろ!シン・アスカ!!」
 バジルール中尉が止めに入り、俺はアスハを解放する。
「へぶっ!?」
 勢い余ってアスハは顔から砂に突っ込んだ。
「先に殴りかかってきたのはこいつです、まぁ対応が悪かったのは認めますが……俺は艦に戻ってますよ、ここに残ると後々面倒でしょうから」
 それだけ言い残し俺は艦に戻っていった。ああ胸糞悪い…………。



キラSIDE

 間に戻るシンの姿を見ながら僕は肩をすくめる。やりすぎだよ…………。
でもまぁ、非は完全にカガリの方にあるし、誰も文句は言えないか。
え?カガリを庇わないのかって?
まぁ、以前の僕ならシンの行動に怒っていたかもしれないけど、今はそうでもない……。
シンと手を組むようになってから仲間や民間人の人たちを守るために色々と『現実的』に考えるようになったからね。
そうやっている内に昔の僕達ってどんだけ現実見なかったんだろうって思えてきて本気で自己嫌悪に走ってしまった…………。
まぁ、早い話がシンのおかげで僕にも現実を見る目ってのが身に付いたって事さ。
取り敢えずラクスやカガリは馬鹿な真似をしないように教育する予定だ。
そろそろ僕も艦に戻ろう、ここでマリューさん達の話し聞くのも飽きたしね。



 間に戻って20分程たった頃、サイ達が突然ムウさんに呼び出された。
「お、来たか、これから全員シミュレーターするぞ、適正試験だ」
 ああ、なるほど、僕やシンみたいに戦力になる人材を選抜って事か。
でもこの面子じゃ良くてトールだけのような気がするけど。
取り敢えず二つ用意されたシミュレーターで順番に試験が行われた。

まず一番手、カズイ&ミリアリア
 二人ともランクE。
全然駄目、この一言に尽きる。
ミリアリアは出撃して数秒で落とされた。カズイは一秒も持たずに撃墜。
元々この二人はパイロットには向いていないから仕方ないといえば仕方ないけど。
次は二番手、サイ&トール
 サイ、ランクD+、トール、ランクB-。
サイは今ひとつ、まぁカズイ達と比べればマシだけど、戦場に出るとしたら相当の訓練を積む必要がある。
トールは艦の副操舵士を務めるだけあって筋がいい。けど前世じゃアスランに殺されているし……あ、でもイージスはもうシンが壊したし、今のうちから鍛えておけばあるいは…………。
「おおおお!!」
 そう思っていたら次のシミュレーションが開始されたようだが何やら騒がしい。何があったんだ?
「え?嘘…………」
「なんで…………」
 それを見たとき僕もシンも固まってしまった。

フレイ・アルスター ランクA-
マユ・アスカ ランクA-

((なんでだぁぁぁぁーーーーーーー!!!!))

 僕とシンの心の声はこの時見事にハモった。




[32127] 閑話 フレイ&マユ、特訓開始
Name: 神無鴇人◆c2099dfd ID:7cb03caa
Date: 2012/03/16 17:26
フレイSIDE

 MSに乗れる、自分自身の手でパパの敵を討てる。それを知ったとき私は喜びを抑え切れなかった。
適正試験の後、すぐに私はパイロットに志願して今は訓練を受けている。
まずは基礎体力作りのために腕立て伏せ、辛いけど敵を討てる喜びに比べたらこんなものどうって事ない。だけど……
「31、32、33……」
「34、35、36……」
 隣で私と同時にパイロットに志願した少女、マユ・アスカ。
こいつには負けたくない、コーディネイターとはいえこんな小さい娘に負けるなんて絶対嫌!!
「おい、二人共、あんまり無理しなくていいぞ」
「ハァハァ……無理なんか……してないわよ……その娘はどうか知らないけど」
「ハァハァ……私だって……全然……平気だよ、そっちだって息切れしてるくせに」
 減らず口を……絶対負けるもんですか……!



マユSIDE

 絶対に負けたくない……。この人だけには……。
『コーディネイターの癖になれなれしくしないで!!』
 彼女の言った暴言が未だに頭の中に反響している。彼女の言葉でどれだけラクスさんが傷ついた事か……ううん、ラクスさんだけじゃない、お兄ちゃんも、キラさんも……きっとすごく嫌な思いをしたに決まっている。
「おい、二人共、あんまり無理しなくていいぞ」
 お兄ちゃんはこう言ってくれるけど、私はこんな人なんかに絶対に負けない!負けたくない!!
「絶対に……負けるもんか……」



シンSIDE

「もう……」
「だめ……」
 ほぼ同時に限界を向かえ、マユとフレイはその場に倒れこんだ。
俺とキラはそれぞれ二人を抱え、医務室のベッドへと運んだ。
「シン、どうするの?」
「…………」
 答えられない、俺だってマユにはパイロットなんかになってほしくない。
「二人が諦めない限りどうしようもない……」
「やっぱりか……」
 マユとフレイ自身が決めたことだ、艦長達にだってどうすることもできない。
「出来る限り説得はするつもりだ」
「もしそれが出来なかったら」
「俺たちが守るしかないだろうな、二人が死なないように」
「そうだね……」
 そうだ、そのために俺たちは戦っているんだ。
たとえどんなことになってもマユは絶対に守って見せる、盾になってでもな…………。




[32127] 第9話 無知への怒り
Name: 神無鴇人◆c2099dfd ID:7cb03caa
Date: 2012/03/16 17:27
シンSIDE

 特訓開始から一夜明け、現在マユ達はジンの操縦訓練を行っている(OSは既にキラによって改良されている)。
はっきり言って二人共想像以上に非常に筋がいい、成績だけでもザフトの赤服並みだ。
それに加えて覚えも早い、二人は気付いてないかもしれないがお互いにライバル視し合っていい具合に刺激し合い、どんどん操縦に慣れていく。
しかし素直に喜べない……なんでよりによってマユがパイロットに…………。
一応あの後、俺もキラも訓練から目覚めた二人を説得しようと試みたけど…それは無駄な努力だった……。
『私もお兄ちゃんの力になりたいの!お兄ちゃんだけに辛い思いをさせたくないの!!』
 涙を浮かべて訴えてくるマユに俺は結局押し負けて今に至るわけだ。
はぁ~~、我ながら甘いというか情けないというか…………。
「どう?二人の様子は」
 キラが格納庫に入ってきた、長い事OSを弄っていた為、眠そうな顔だ。
「ああ、二人共筋良すぎ……ザフトの赤服も真っ青だ」
 俺がそう言うとキラは苦笑いする。俺と同じ気持ちなんだろうな……。
「なぁ、何やってんだ?」
 どこからともなく能天気なアスハの声が……しかもジンを見て自分も乗りたそうな表情だ……タダでさえ気が滅入ってるってのに……。
「こいつに乗りたいって言うなら無駄だ、さっさと失せろ」
「そう怒るなよ、さっきは殴るつもりは無かったんだ…まぁ、あれははずみというか……」
 ふざけんな、殴られるこっちはたまったもんじゃない。
「はずみで人を理由無しに殴るのかお前は、それにお前、ヘリオポリスで親父がどうとか言ってたが、大方オーブのいい所出の人間だろ、自分がどんだけ不味い事してるか分かってんのか?」
 オーブの、しかも首長の娘がザフト相手にレジスタンス活動、下手すりゃ宣戦布告されるし、連合に無理矢理同盟を組まされるという事もあり得る。
「ああ、大丈夫だサイーブは私の正体を知ってる」
 このバカ……まるで分かってない。
「おいキラ……コイツって昔からこんなに馬鹿だったのか……」
 キラに小声で話しかける。
「…………まぁね、それに気付かなかった僕も僕だけど」
 キラは申し訳無さそうな顔で答える。
まぁキラは元々政治とかには無関係な人間だったから前世で気付かなかったのも無理は無いが…………。
取り敢えずアスハを摘み出そうとした時……
「空が燃えてる?……タッシルの方向だ!」
 アスハの奴は一目散に駆け出していった。



キラSIDE

 タッシルを焼かれた(ただし死人は出てない)レジスタンスの人達は真っ二つに割れていた。
リーダーであるサイーブという人は体勢を立て直し、女子供の安全を確保すべきだと言っているが、血の気の多い連中は報復を唱えている.。
結局カガリを筆頭とした抗戦派の一部が独断で出撃し、僕達はそれを追いかける羽目になった。
「クソッ、あの人達に勝ち目なんて無いのに……キラ・ヤマト、エールストライク、行きます!!」
「シン・アスカ、ヴェスティージ、行きます!!」
 カガリ達の無謀な行動に苛立ちを覚えながら出撃する。
僕達が駆けつけた時、戦場は既に一方的殺戮(ワンサイドゲーム)と化していた。
バクゥの数は7機、ちょっ!?多くない?しかも陣形を組んでこっちに向かってくる。
その時、どこからか砲撃が、スカイグラスパーやアークエンジェルじゃない、まさか……。
「フレイ!」
 フレイのジンがこっちに突っ込んでくる。
無茶だ!昨日今日志願した人間に何とか出来るほど甘い相手じゃない
「フレイ、戻れ!君にはまだ無理だ!!」
「嫌!!あいつ等、絶対逃がさない!!」
 フレイのジンがバズーカを放つがそれは易々とかわされてしまう。
このままじゃ不味い!!僕は急いでフレイを助けに行こうとしたが一機のバクゥに邪魔されてしまう。
「君の相手は私だ!」
 この声、バルトフェルドさんか!?クソ!こんな時に……。
「クソ!邪魔をするな!!」
 僕はライフルを撃ち、バクゥを牽制、それと同時に大きく跳躍し、バルトフェルドさんの背後にいた一機のバクゥを撃ち抜いた。
フレイは……いた!何とか上手く敵の攻撃を回避し続けている。だけどいつまで持つか……。
その時レーダーにまた反応が…。
「マユ!!」
 今度はマユちゃんのジンだ!
「マユちゃん!フレイを連れてここを離れるんだ!」
「分かってます、ナタルさんからもそう言われました」
 よかった、フレイよりずっと冷静だ。
マユちゃんはフレイのジンを掴んでそこから離れようとする。僕とシンも援護に向かおうとするがバルトフェルドさん達の息のあった連携に邪魔されて思ったように前へ進めない。
そう思っていたらフレイ達のジンに二機のバクゥが接近した。
「「まずい!!」」
 もう被害なんて気にしてられない、僕とシンは我武者羅に敵に突っ込み次々に敵を落としていく。
しかし二機のバクゥは二人の目と鼻の先まで接近し、飛び掛った。
「「きゃああぁぁぁぁ!!!!」」
 二人の悲鳴にも似た叫びが響いた。
やられる!そう思った……だけど、その後の光景は僕等の予想を遥かに超えていた。
フレイのジンは飛び掛ってきたバクゥの頭部を両腕で掴むように防ぎ、そのまま巴投げのように腹部に蹴りを叩き込み、マユちゃんのジンは身をかがめてバクゥの懐に入ってショルダースルーのように投げ飛ばしてしまった
とっさの判断でこの行動……もう間違いない、二人の才能はトップエース級だ!!



シンSIDE

 フレイとマユによってひっくり返されたバクゥを破壊し、俺とキラは残りのバクゥへ銃口を向けた。
銃口を向けられたバクゥの部隊は俺達を牽制しつつ撤退していった。
「マユ、大丈夫か?」
「う、うん、なんとか」
「そうか、良かった……」
 マユの声を聞いて俺は安堵の息を吐く。
それにしても、まさかマユとフレイの才能がこれ程だったなんて……何か複雑な気分だぜ。
「マユ、フレイ、先にアークエンジェルに戻っておいてくれ」
「うん、お兄ちゃんは?」
「ちょっとやることがある、すぐに戻るから心配するな、あと、フレイは無断出撃の言い訳考えて置けよ」
「う……分かったわよ……」
 マユとフレイはそれぞれ艦に戻っていった。俺はそれを確認してから機体から降り、レジスタンスの奴等の所に向かった。



 酷い有様だ……レジスタンスにはかなりの数の死者が出ている。その中には俺と同じくらいの年頃の少年もいた。
死者は抗戦派の者だけではない、こいつらを止めに入った奴等も少なからず巻き込まれている。
アスハを筆頭とした抗戦派の奴等が報復を唱えなければこんな無駄な犠牲が出る事もなかったのに…………!!
「クソ、クソッ!!虎め!!許さない、絶対許さないぞ!!!!」
 アスハが耳障りな声で叫んでやがる。分かっているのかここにいる奴等はお前等のせいで犠牲になったんだぞ!!
俺はアスハに近づき胸倉を掴み上げた。
「そんなに死にたいのかよ……」
「何だと!!」
 アスハの奴が俺を睨みつけてくるがそんなのどうだっていい。
俺はそのまま怒りに身を任せてアスハを殴り飛ばした。
「グ……ハッ……!?」
「テメェ、分かってんのか?テメェ等が無謀な真似しなきゃこんな犠牲でなかったんだぞ!!街を焼かれたっていうなら何故生き残った奴等を守ろうとしない!!はっきり言ってやるよ、この戦闘で死んだ奴等を殺したのは虎じゃない、お前達だ!!!!」
 俺の言葉にアスハやレジスタンスの連中は怯み、その場に呆然と立ち竦んでいた。



[32127] 第10話 邂逅、砂漠の虎
Name: 神無鴇人◆c2099dfd ID:7cb03caa
Date: 2012/03/16 17:27
シンSIDE

 アスハの奴と揉めた後、その日は丸一日独房で過ごす羽目になってしまった。
「まったく、やりすぎだよ……はい、これ食事」
 キラが晩飯を運びながら呆れ顔で呟いた。
「悪い……つい、我慢できなくなってな……」
 自嘲気味に呟きながら俺は運ばれてきた飯を口に運んだ。
「で、アスハはどうしてる?」
「一応君の言葉は効いて少しは冷静になったみたいだけど、基本スタンスは変わってないよ、バルトフェルドさんを倒す事に躍起になってる」
「そうか」
 もはや俺の中でアスハへの怒りはそれを通り越して呆れとなっていた。



キラSIDE

 シンの行動に呆れながらも、僕は彼の怒りは最もだと思った。
こう言っちゃなんだけどカガリは自分の行動の意味とそれに伴う責任というものに気付いてない。
レジスタンス活動の理由だって『ザフトのやり口が気に入らなかった』というだけに過ぎない、実際はカガリにそれをとやかく言う資格は無いし、動機としても余りにも薄っぺらいものだ。
結局の所、カガリは理想と現実の区別がつかない子供でしかない。
まぁそれは昔の僕も同じか……。
「なんか、似てるよね僕達って……」
「ん?そうか?」
「うん……僕はラクスの掲げる正義に、シンはデュランダル議長の掲げる正義に心酔して、考える事を放棄していた、それが今では一緒に過去に逆行して自分の頭で考えて、自分の目で現実を見るようになってる……何か、似てると思わない?」
「ハハ、確かにそうかもな……」
 僕とシンは二人揃って小さく笑いをこぼす。
「カガリも変わってほしい……政治家としても、人間としても」
「そうか…俺はアイツ嫌いだし、どうなろうが知ったこっちゃないけど……まぁ、前世みたいにオーブを戦火に晒さないぐらいには成長する事を祈るよ……飯ありがとよ、そろそろ寝るわ、また明日な」
「うん、また明日……」
 僕は使用済みの食器を下げ、独房を後にした。



シンSIDE

 独房での夜から一夜明け、俺とキラはアスハと共にタッシルの街に買出しに来ていた。
俺は別に買出しに行こうなんて思ってなかったが、艦長たちが俺とアスハ(とレジスタンス)の関係を少しでも改善させようと取り計らい、キラは俺がまた揉め事を起こさないよう、監視役を頼まれたらしい。
正直言って無理な話だ。アスハとの関係を改善と言ってもコイツとは意見も反りも合わない、というかお互い合わせる気も無い。
まぁいいか、アスハはほっといて買い物でも楽しむか。あ、マユへの土産も買っておかないと……。
「しかし、平和だなぁ、本当にココは敵の本拠地かよ?」
「フン、平和そうに見えたってそんなもの見せ掛けだ」
 俺の呟きにアスハが反応しやがった、別に俺はお前に話しかけたわけじゃないってのに。
その後もアスハが何かごちゃごちゃと説明していたが俺はのんびりと買い物を楽しんだ。……あ、あのギターかっこいい。

 それから一時間後、俺達3人はオープンカフェで昼飯を取る事になった。
メニューはケバブか……そういえば前にジブラルタルで食ったっけ……ルナやレイは今頃どうしてるだろうか……。
「何ぼんやりしてるんだ?お前も喰えよ、ほら、チリソースかけて……」
「あーいや待ったぁ!ちょっと待ったぁ!ケバブにチリソースなんて何を言ってるんだ!このヨーグルトソースを掛けるのが常識だろうがぁ!」
 ん?何だ?後から急に声をかけられ振り向くと……コイツは……。
「何だお前は?いきなり……」
 お前が殺したがってるアンドリュー・バルトフェルドその人だよ(笑)。
なにやらギャアギャアと言い合っているバカ共を無視して俺はヨーグルトソースをぶっかけてケバブを頬張った。
「あ!お前等ヨーグルトソース使ったな!?」
「お前等?キラもヨーグルトか?」
「まぁね、若い内から刺激物取りすぎていると将来禿げるから……」
 ああ、身近にいい例があるからなアスランとかアスランとかアスランとか……あ、ハイネもいたな……。
「で、こんな所にやってきて、何をしてるんですか?アンドリュー・バルトフェルドさん?」
「な!?コイツが!?」
 アスハの奴が驚いた顔になっている。
まぁ当然といえば当然か。自分の憎む相手が目の前にいればそうもなる。
「ほぉ~、よく分かったねぇ?これでも変装しているつもりなんだが……!!伏せろ!!」
 虎の奴がテーブルを蹴り上げる。
蹴り上げた先から銃声が!?敵襲か!?
「青き清浄な世界のために!!」
 ブルーコスモスの奴らか!?民間人がいるのもお構い無しに!!
「キラ!」
「分かってる!!」
 俺とキラは敵の隙を突いてそれぞれ隠し持っていた銃を撃つ。がむしゃらに撃っていただけの敵と違ってこっちの銃弾は正確に相手の急所に撃ち込まれ、騒ぎが終わったときには襲撃者達は全員地に沈んでいた。



キラSIDE

バルトフェルドさんの屋敷に招待された僕とシンはカガリの着替えが終わるのを待っていた。
「どうかな?コーヒーの味は?」
「ええ、美味しいですよ、といっても普段からインスタントしか飲んでないから、大した感想は言えませんけど」
 適当に雑談しているとドレス姿のカガリが髪の長い女性(たしか、アイシャさんだったっけ)に連れられて入ってきた。
「よく似合ってるねぇ、実に板についてる」
「勝手に言ってろ!!」
 バルトフェルドさんは上機嫌に言うがカガリは物凄く不機嫌そうだ。
「馬子にも衣装だな、折角のドレス姿なんだから減らず口直したらどうだ?」
 ちょっ、シン、そういう事言うと……。
「何だと!!」
 あ~あ、やっぱり……更に不機嫌になっちゃったよ。
「お前、ほんとに砂漠の虎か? 何で人にこんなドレスを着せたりする?これも毎度のお遊びの一つか!」
 バルトフェルドさんに食って掛かるカガリ、でも舌戦じゃ勝てる訳が無く……。
「いい目だねぇ。真っ直ぐで、実にいい目だ」「くっ! ふざけるな!」「君も死んだ方がマシなクチかね?」 と、こうなる訳で……。
「で、そっちの君達はどう思う?MSのパイロットとしては?」
「やっぱりばれてました?それともカマかけただけですか?」
 シンが落ちついた態度で返した。
「う~ん、両方かな?元々さっきの戦闘で君達がパイロットだと感じていたけど……やけにあっさり認めるね?」
「黙ってたってここに約一名引っかかりそうな馬鹿がいますんで」
 うわ、カガリ顔真っ赤だよ、でもゴメン、それ否定できないから。
「ふ、まぁいいさ、それで、どうなったらこの戦争は終わると思う?戦争にはスポーツの試合のような制限時間も得点もない、ならどうやって勝ち負けを決める?」
 バルトフェルドさんが表情を厳しくして質問する……前世では何も答えられなかったけど…………。
「終わり方云々は別として、ナチュラルとコーディネイターの和解、これを成さなきゃ根本的な解決にはなりませんよ、そうでなければどっちかが滅ぶしかない、けどそれで図ったほうへの被害も尋常ではない、そんな形で終戦しても長年にわたって人々の暮らしは苦しくなり、飢餓や貧困等、数多くの問題を残すでしょう…………理想としては、過激派連中を告発して、それをナチュラルとコーディネイターで協力して一掃してしまう事が出来れば手っ取り早いんですけどね」
 実際にその方法でデュランダル議長はナチュラルとコーディネイターの共闘という偉業を成し遂げたんだ。
僕は今でも彼の考えたデスティニープランが正しいとは思っていない、だけど彼の政治的な手腕は本当に凄いと思っている。
「その通りだ、だが現時点でそれを成すのは余りに困難、不可能と言っても良い……」
「ええ、血のバレンタインにエイプリルフール・クライシス、この二つの事件によって両陣営は交戦派が多数増え、ブルーコスモスやザラ派のような過激派が力を付けてしまいましたからね……まぁ、どっちが勝つにしても、どちらかが滅びるという事態は避けるべきだと思います」
「ふむ、では今回の事はどう思う?僕達に逆らっているゲリラ、正直言って勝ち目があると思うか?」
 ある訳無いよ……、でもその言葉にカガリの怒りに火をつけたようだ。
「なんだと…貴様!みんな必死で戦ってるんだ!大事な人や大事なものを守るために必死でな!」
 カガリが立ち上がって叫ぶ、しかし……
「はっ、笑わせんじゃねえよ」
 カガリの叫びはシンの嘲笑によって切り捨てられた。



シンSIDE

「なんだと…貴様!みんな必死で戦ってるんだ!大事な人や大事なものを守るために必死でな!」
「はっ、笑わせんじゃねえよ」
 本当にコイツには失望させられる、だからコイツは嫌いなんだ……
「な……何を……」
「必死で戦ってる?大切なものを守りたい?ふざけんな!!勝ち目の無い戦いやって何の意味がある?タッシルの連中の中には降伏すべきって言ってる奴も多い、そいつ等はもう戦なんてしたくない、する気も無い、それなのにお前等はそれを臆病者の意見として切り捨て、そいつらも巻き込む、降伏すれば死なずに済む命を捨てて、目の前にある平和に目も向けずにな!!」
 俺は感情のままにアスハに本音をぶつける。アスハの奴は一瞬うろたえたがすぐに言い返す。
「そ、そんな平和うわべだけだ!うわべだけの平和に意味なんて無い!!」
「本当にそうか?むしろ支配されてた方がかえって治安がいいかもしれないぜ、バナディーヤの連中見ただろ、現状の生活に不満を持ってる奴なんてほとんどいなかったみたいだぜ、あいつ等にしてみればうわべだけの平和でも自分と自分の家族が安全になるならそっちの方がずっといいって事だ」
 俺の言葉にアスハの動揺はますます酷くなる、そんなに自分の正義が絶対に正しいと思いたいのか……。
「し、支配者は気まぐれだ!一度降伏したって、いつ何をするか分からない!!そんな奴を野放しにしておくわけには…………」
「だったら君達のやる事は無謀なゲリラ活動なんかじゃなくて、支配者の気まぐれに備えて力を蓄えておく事なんじゃないの?」
「そ、それは……」
 キラの言葉が止めとなり、アスハは黙り込んでしまった。
「もう止しませんか?この話、どっちにしたって俺達は兵士であって政治家じゃない……」
 そう、俺達みたいな無骨な人間が出来るのは、より理想的な終戦状況を作るのに貢献する事ぐらいだ……。
「それに俺達は敵同士だ、敵同士でこんな話をしても無意味でしょう」
「ふ……確かにそうだ…………まぁ、今日の君は命の恩人だし、ここは戦場ではない、帰りたまえ、話せて楽しかったよ」
「ええ……コーヒーご馳走様です」
 俺達は静かにその場を後にした。
砂漠の虎、アンドリュー・バルトフェルド……不思議な男だ…………。
「次に会う時は、戦場か…………」



マユSIDE

 はっきり言って今日の私はすこぶる機嫌が悪かった。
せっかくお兄ちゃんと訓練できると思ってたのに、レジスタンスにいたあの金髪の女の人のせいで……なんでお兄ちゃんがあの人といっしょに買い物行かなきゃ行けないの?お兄ちゃんだって興味無さそうな態度だったのに関係改善って事で無理矢理連れて行かれて……。
「艦長達もあんな連中のご機嫌とって何になるんだか」
 フレイが不機嫌そうに呟く、キラさんも連れて行かれたので今日の訓練はいつもよりレベルが低いものになってしまったからだ……。
「本当だよね、あんな風に、いきなりお兄ちゃん達を殴ろうとする人なんか放っとけばいいのに……」
「それ分かるわ、あの金髪、女としての品性ってものが足りないのよ!そのくせ良い子ぶって『自分達は支配者から街を守る正義のレジスタンスだ!』なんて、馬っ鹿じゃないの」
 フレイの言葉に私はウンウンと頷く…………あれ?
「何か今日は妙に気が合うよね、私達」
「そういえばそうね、何でだろ?」
 お兄ちゃん達が帰ってくるまで私達はそんな会話を続けていた。



[32127] オリジナル機体設定
Name: 神無鴇人◆c2099dfd ID:7cb03caa
Date: 2012/03/16 17:28
ヴェスティージガンダム

武装
携帯式ビームマシンガン
電撃鞭、スレイヤーウィップ
頭部バルカン、イーゲルシュテルン
ビームソード、スラッシャー×2
アンチビームシールド
飛行ユニット、シュライク

シュライクの試験実用型として造られた高機動白兵戦型の機体
パイロットはシン・アスカ。

マユ・アスカ専用ジン

武装
重突撃銃
M68キャットゥス500mm無反動砲
バルデュス3連装短距離誘導弾発射筒
重斬刀
ビームライフル(ストライクの予備の物を使用)
ビームソード、スラッシャー(ヴェスティージの予備の物を使用)

マユ専用のジン、カラーリングは白地に赤のライン。
状況に応じた武装の付け替えが可能。
バッテリーパックを改良しており、ノーマルジンの約1.5倍のエネルギー量を持つ。

フレイ・アルスター専用ジン

武装
重突撃銃
M68キャットゥス500mm無反動砲
バルデュス3連装短距離誘導弾発射筒
重斬刀
ビームサーベル(ストライクの予備の物を使用)
改良型特化重粒子砲

フレイ専用のジン、カラーリングはピンク。
状況に応じた武装の付け替えが可能。
バッテリーパックを改良しており、ノーマルジンの約1.5倍のエネルギー量を持つ。
改良型特化重粒子砲はビームライフルの約1.3倍の威力を誇る。



[32127] 第11話 熱砂の激闘
Name: 神無鴇人◆c2099dfd ID:7cb03caa
Date: 2012/03/16 17:28
シンSIDE

 遂に来た、いよいよ砂漠の虎との決戦だ。
出撃命令が来るのを待ちながら俺達4人はミーティングを行っていた。
「いいか、バクゥは主に俺とキラ、が相手をする、マユとフレイはジンオーカーとザウートの相手を頼む」
「うん」
「分かったわ」
 俺の確認に二人は同時に返答する。
「最後に聞くけど、本当に良いの?」
「敵討ちを止める気は無いって言ったのは貴方達でしょ、今更戻る気なんて無いわ」
「私も、もう決めた事だから」
 キラの言葉に二人は強く頷いた。
「分かった、作戦決行まであと20~30分だ、それまでしっかり準備しておこう」
 俺の号令にその場は一度解散となった。



バルトフェルドSIDE

 まったく、本部の連中も碌なのを寄越さない、注文したバクゥは結局間に合わず代わりに持ってきたのはザウート。
それに一番最悪なのが専用のジンと一緒に送られてきた補充員だ、国防委員長、パトリック・ザラの馬鹿息子、アスラン・ザラ(と、その部下数名)……連合から新型MSイージスを奪取するも、ラクス・クライン返還時に独断でヴェスティージと交戦、機体は壊され、何故か同性愛者説まで流れて部隊の仲間全てから見下され、挙句の果てには緑服に降格処分ときたもんだ。
その少年は今、何やら先程までキラキラと変な事を呟いていると思ったら突然ヴェスティージへの恨み言を口にし始める。正直言って余り関わりたくない……。
まったく、厄介なの押し付けてくれちゃって、恨むぞラウ・ル・クルーゼ……



キラSIDE

 出撃前の格納庫で僕はフレイに声をかけた。
「フレイ、できる限りサポートするけど、あまり無理はしないようにね」
「分かってるわよ、貴方こそ死んじゃダメだからね、貴方には私の復讐に付き合ってもらうんだから」
「うん、分かってる」
 それが僕に出来る償いだから……。



シンSIDE

「怖いのか?」
 緊張するマユに俺は声をかけた。
「う、うん、少しだけ……でも大丈夫」
「そうか……安心しろ、マユは俺が絶対守るから」
「うん、ありがとう、お兄ちゃん」
 俺の言葉にマユは少し表情を和らげた。
その時外から爆音と共に警報音が、いよいよ出撃だ。
『総員、第一種戦闘配備!』
 艦内アナウンスと共に俺たちの機体は発進準備に入る。
今回の戦闘はかなりのエネルギーの消費が予想される、俺のヴェスティージとキラのストライクはビームライフルやビームマシンガンではなく、ジンと同じ重突撃銃を装備する。
「マユ、フレイ、敵機の対処法は頭に入れてるな!?」
「当然!」
「こっちもバッチリ!」
 出撃前の最後の確認にマユとフレイはしっかりと頷いた。
「それならOKだ!シン・アスカ、ヴェスティージ、行きます!!」
「キラ・ヤマト、エールストライク、行きます!!」
「マユ・アスカ、ジン、行きます!!」
「フレイ・アルスター、ジン、行きます!!」
「ムウ・ラ・フラガ、出る!!」
 俺を一番手に次々と出撃し、迫り来る敵部隊と相対する。
「来るぞ!皆、気を付けろ!!」
 オッサンの一喝に俺達は気を引き締め、攻撃を開始した。



マユSIDE

 敵機に近づき始めたとき、ザウートがこっちに砲撃を開始した。
「わわっ」
 慌ててそれを回避、直後にお兄ちゃん達に教えられたとおり砲門の向きに気をつけながら近づき、そして……
「近づいて……斬る!!」
 斬りつけたザウートから爆発が起き、ザウートは崩れ落ちる。
やった……倒した……私は、敵を殺した……。
震えそうになる手に力を入れ恐怖心を振り払う。
震えるのは後……今はお兄ちゃん達と一緒に戦う。今はそれに集中しよう。
「次!!」
 私は次の目標を見定め、武器を構えた。



フレイSIDE

 目の前のジンオーカーが蜂の巣になって爆発した。私の手によって……。
「何よ……全然大した事無いじゃないの……」
 思わず笑いがこぼれる、一般兵なのは分かっていたけど相手はコーディネイター、もっと強いと思っていた。
けど私はそれを簡単に倒してしまった。
厳しい訓練を受け、キラとシンに戦い方を徹底的に叩き込まれた成果というのもあるだろう。けど私は倒したんだ、コーディネイターを……。
「やれる……このMSさえあれば……パパの敵を討てる!!」
 見ていてパパ……パパの敵は私がきっと討ってみせるから!!



キラSIDE

 戦況は上々だ、フレイ達も僕達が予想していた以上に撃墜数を稼いでいる。
バクゥの数も結構減ってきた、このままいけば十分勝てる。
しかし問題はレジスタンスだ。
レジスタンスの被害はザフトのそれを上回っていた。にも拘らず彼等は逃げようともせず戦い続けている……正直足手纏いでしかない。
「艦長!レジスタンスに撤退するよう進言してください!!」
『もう進言しているわ、けど向こうは聞こうとしないの!』
 ダメ元でマリューさんに頼んでみたが無理だった……。
仕方ない、このまま戦うしか…………
『キラァァァァーーーーー!!!!』
 え………………………………………………こ、この寒気、体全体に流れる冷や汗、お尻に感じる凄まじい危機感、そして……こ、ここ、この声…………ま、まさか?
『キラ!助けに来たぞ!!俺のキラァァァァーーーーーー!!!!』
 ゲェェ!!アスラン!!部下らしきジン2機を引き連れ、赤いジン(グゥル付き)に乗って出てきた!!
「来るなぁぁぁーーーーー!!」
 僕はアスランのジンに向けて迷わず重突撃銃を発射した。
「ぐぁぁぁぁっ!!キ、キラ……お前はまだあいつ等に騙されて……」
「うるさい!消えろ!!僕にそっち系の趣味は無い!!」
 僕はグゥル諸共アスランのジンを撃ち落し、止めに勢いを付けた跳び蹴りを見舞った。
「ぐへぁぁぁっ!!キ……ラ……だ、だがこれもお前から受けた痛みならむしろ嬉し……」
 こ、コイツ、Mだったのか……というか名前を呼ぶな、こっちを見るな!!気持ち悪いんだよ!!あんなのと親友だったと思うと鳥肌が立つ……僕にとってアスランとの友情の記憶は最早強烈なトラウマに変化していた。
最早彼を討つのに戸惑いは無い、僕は止めを刺すためもう一度重突撃銃を撃ちジンを完璧に破壊した。
しかしその時意外な事が起こった、アスランのジンのコックピット部分が機体から飛び出したのだ。
しまった、脱出装置か……大方パトリック・ザラの指示だろうな、職権濫用も甚だしい……脱出ポッドは味方機に回収されて退避してしまった。次に会ったときは確実に討たないと……。僕は心の底からそう思った。



シンSIDE

 キラがアスラン(ヅラ)の奴を落とした頃、俺は奴の部下2匹を撃墜していた(当然、グゥルはキッチリ奪っておいた)。
そんな時、不意に通信機が何かの音声を拾った。発信源は……アークエンジェル内に置いてある予備のジン!?
『止せ!!素人に扱える物じゃねぇ!!』
 マードックのオッサンの怒声が聞こえてくる。誰かがジンに乗ろうとしているのか?
『機体を遊ばせてる暇は無いだろ!虎は私の手で討ってやるんだ!!』
 アスハの馬鹿か!?あの野郎、余計な真似を!!
アスハの乗ったジンがアークエンジェルから勝手に飛び出しレセップスに向かって走ろうとするがその足取りは覚束ない。
『な、何だこれ?う、上手く動けない……うわぁぁぁ!!』
 あの馬鹿、転びやがった……当たり前だ、MSはMAと違って訓練も無しに乗れるようなものじゃない。マユ達だってそれ相応の訓練を受けて乗れるようになったんだから。
『く、クソ!!』
 あ!あの馬鹿!!そんな状態でバズーカなんて撃つなよ!!どこに飛ぶか分からないだろうが!!…………って、ちょっと待て、アイツが撃った方向って確かマユが…………!?
「ヤバイ!マユ、そこから離れろ!!」
「え?きゃあぁぁぁぁ!!!!」
 アスハの撃ったバズーカがマユのジンに!!しかもそこを狙って敵機が!!
「クソッ!!」
 俺はマユを助けようと急いでマユのジンへと向かう。だが……だが、この距離で間に合うのか?
そんな時、思わぬ人物がマユを助けに入った…………。



フレイSIDE

 あのカガリとかいう女が撃ったバズーカがマユのジンに命中したのを見て、気が付くと私はマユのジンを掴んで敵の攻撃から逃げていた。
自分でもよく分からなかった。味方とはいえ仲の悪い奴、しかもコーディネイターを助けるなんて……。
「フレイ……どうして?」
 マユが安堵と驚愕の入り混じった顔でこっちを見ていた。
「さぁね、自分でもよく分かんないわよ」
「…………ありがとう」
 マユのその言葉を聞いて、私はどこか悪くない気分になった。



キラSIDE

 正直フレイが助けに入ったのは意外だったけど、マユちゃんが無事でよかった…………。
フレイがマユちゃんを助けたと同時に僕とシンはマユちゃんに襲い掛かろうとした敵機を一掃、直後に敵は後退を開始し、レセップスの中からラゴゥが発進した。
遂に来たか……バルトフェルドさん…………。
「シン、ラゴゥは僕が相手をする、君はマユちゃん達が艦に戻るのを援護してくれ」
「ああ、分かった」
 シンが離れるのを見届け、僕は重突撃銃とビームサーベルを構える。
「よぅ、また会ったな少年」
「ええ、こんな形で再会したくはありませんでしたが……」
「…………その様子じゃ、僕の相手は君ということか」
「はい、全力で貴方を落とします」
「ふ、こちらも存分に行かせて貰おう!!」
 ラゴゥがビームキャノンで牽制してくる。僕はそれを回避しつつ重突撃銃で応戦する。
「そこだ!!」
 ある程度近づいた時、ラゴゥがビームサーベルを展開させて得僕に飛び掛ってきた。
「くっ!」
 僕は重突撃銃で迎え撃つ、しかラゴゥは被害無視でこっちに突っ込み、懐に入られてしまう。
「貰ったぞ、少年!!」
「まだだ!!」
 僕はラゴゥの顎をアッパーの要領で打ち上げた。
「ぬおぉっ!!?」
 打ち上げられたラゴゥはひっくり返って背中から地面に激突し、背中のビーム砲の銃身は本体の重さに耐え切れずに壊れる。
僕は間髪入れずにビームサーベルで頭部と足を切り裂き、ラゴゥはそのまま行動を停止した。
「くっ……悔しいが見事だ……止めを刺したまえ」
「…………」
 バルトフェルドさんの言葉に反し、僕はビームサーベルを引いた。
「生憎、勝敗の決した相手に無用な殺生をする趣味は無いんで……それに貴方は和平に必要な人だ、そんな人を殺す事は出来ない、悪いけど捕虜になってもらいますよ」
「…………ふ、どの道僕は敗者だ、従おう」
 僕は行動不能になったラゴゥを担いでアークエンジェルへ帰還した。





[32127] 第12話 変わる者、変わらぬ者~一時の休息~
Name: 神無鴇人◆c2099dfd ID:7cb03caa
Date: 2012/03/16 17:29
キラSIDE

 MSから降りてバルトフェルドさんとアイシャさんを艦長達に任せて、僕はすぐにシン達の様子を見に行った。
案の定シンはカガリの胸倉を掴み上げ、カガリを鋭い目で睨みつけていた。
「す、すまない……あんなに難しいとは思わなかった……わ、わざとやった訳じゃないんだ、二度とこんな失敗はしない」
 カガリが怯えた様子で謝罪の言葉を口にするが、その言葉を聞いて僕も周囲の人達も呆れた表情を浮かべた。
何も分かって無い……カガリは自分がミスをした事を咎められていると思っているようだがそれは違う、MSに乗ったこと自体が間違いだという事にカガリは気付いてないし反省もしてない。
でなければ「二度と『こんな失敗はしない』」なんて言わない、本当に反省しているならこう言うはずだ「もう二度とこんな勝手な真似はしない」と……。
僕がそう思っているとシンがカガリの顔に鉄拳を見舞い、カガリは床に叩きつけられた。
「ブッ!!?」
「分かってないようだから言ってやる…………テメェがMSに乗った事自体が最悪なんだよ!!勝手に軍のMS持ち出して足引っ張った挙句味方を撃つ、それで『二度とこんな失敗はしない』だ?ふざけるな!!!!この害虫野郎が!!」
「そ、それは……ガッ!!!?」
「それは何だ?言ってみろ!!ああ!?」
 シンはカガリの顔を踏みつけながら怒鳴る。正直見ていられないけど誰も止めに入らない、というか皆『ザマぁ見ろ』って感じの顔だ。
まぁ、カガリにはこれくらいの荒療治は必要か……後々一国の主となる以上自分の行動に責任を持つという事の意味を知っておかないといけないし…………。
「わ、私は良かれと思って……」
「あ?」
 言い訳しようとするカガリをシンはより一層目を鋭くして睨みつける。
「まだ自分のやった事の重大さが分かってないようだな……テメェの行動一つで死人が出たかもしれないってのに…………いやもう出たか、前回の戦闘で死んだレジスタンスの奴等が…………それでもまだ分からないか、しょうがねぇ……いっその事ここで死ぬか?理由なんていくらでも後付け出来るしな」
 シンはそう言って殺気を強くしながらナイフを取り出す。
「ひっ……や、やめ…………」
 カガリの顔がより一層恐怖に染まる。シンはそんな事お構い無しにナイフを振り下ろす。
まずい!そう思って僕は止めに入る…………しかし踏みとどまった、シンはカガリの顔の真横の床にナイフを突き立てていた。
「ふん、少しは殺される恐怖ってものが分かったか?次からはもっとよく自分の行動とそれに伴う責任って奴をよく考えるんだな」
 そう言ってシンは去っていった。
「あ……あぁ…………」
 カガリは力なくその場にへたり込んでしまった。
「ん?なんだこの臭い?………あ…………」
 突然異臭が鼻に付き、周囲を見回すとカガリの股間がグショグショに濡れていた。さっきの恐怖で失禁してしまったようだ。
「すいません、誰か女の人連れてきてください」



カガリSIDE

 ……殴られた、あの男に。
私は自分が正しいと思ったことをした、それだけなのに……。
アフメド達は私が殺した?違う!!
今回の事だって私は良かれと思ってやっただけなのに!!
味方を撃ってしまった事は反省している、アレは確かに私のミスだ……だからって何故ここまでされなきゃいけない!!
元はといえばザフトが支配なんてするからいけないんだ!!それさえ無ければ戦いなんてせずに済んだんだ!!
なのにアイツは私の事を何でもかんでも否定して……お前に私の正義の何が分かるというんだシン・アスカ!!!!
「お前に……何が……」
 私のその声は誰の耳にも入る事無く消えていった。



フレイSIDE

 戦闘が終わった後、私とマユは医務室で検診を受けていた。
幸いマユは大した怪我も無く、一時間ほど休めば大丈夫らしい。
「さっきはありがとう」
「べ、別にいいわよ、お礼なんて」
 面と向かってお礼を言われて私は少し気恥ずかしくなって顔を逸らした。
「でも、どうして助けてくれたの?コーディネイターの事嫌いなのに」
 正直今でもよく分からない、私は今でもコーディネイターが嫌いだ、だけど……今日戦ってみて、そんなに恐ろしいものじゃないって思った、それに…………。
「コーディネイターは今でも大嫌いよ…でも、貴女達の事は……嫌いじゃないから……」
 ……マユと初めて話した時は気に食わない奴だと思った、だけど一緒に訓練して、競い合って、一緒に戦って……いつの間にか私のマユへの敵愾心は単なるライバル意識になっていき、気が付けば彼女への嫌悪感は消え去っていた。
そして自分が利用されていると知っても私の復讐に付き合ってくれるキラ、私の復讐心を知っていながらそれを否定せずに訓練に付き合ってくれるシン……パパを守れなかったことはまだ許せないけど…………嫌いになれそうに無い。
「それにさ……言ったじゃない、私はブルーコスモスなんかじゃないって」
「うん、そうだね」
 マユは笑顔を浮かべながら私の方に手を差し出してきた。
「え?何?」
「仲直りの握手、ブルーコスモスじゃないなら出来るでしょ」
「そうね……」
 マユの笑顔につられて私も笑いながら、私は差し出された彼女の手を握った。

 この日、私は初めてコーディネイターと和解する事が出来た。



シンSIDE

 レジスタンスの連中が戦勝祝いで騒いでいる頃、俺とキラは宴会場から離れた場所でのんびりと寛いでいた。正直レジスタンスの役立たず共と一緒に居たくないし……。
「……次は、紅海だっけ?」
「うん…で、その後はカーペンタリアを経由してオーブ……シンはどうするの?一応オーブに戻るまでって言う契約でしょ?」
「まぁな、けどオーブに残っても何をやるべきか正直言って分からない」
 最初は軍に入って家族を守れれば言いぐらいに思っていた、けどキラから俺が前世でプラントに渡った後のオーブの状況を聞いてそれに疑問が湧いた。
前世でオーブは国の最大の資金源であるモルゲンレーテとマスドライバーを自爆させたためにかなりの経済難に陥った。
それをわずか2年で立て直したのがセイラン家だ。
前世では嫌味ったらしいボンボンだと思っていたが、実際はあの親子の内政的手腕はかなりのものだった(軍事や外交はそうでもないが……)事が分かる。
正直言ってオーブなんて見捨てて家族共々(デュランダル政権下の)プラントに移ってしまった方が良いような気さえしてしまう。
「ま、着いてから考えるさ」
 そう言って俺はレジスタンスからちょろまかしてきた酒瓶(低アルコール)に口を付けた。
「あ、ここにいた」
「まったくもう、探したわよ」
 マユとフレイがやって来た、後ろの方からはトール達も来ている。
「よぅ、何こんな所で二人寂しく飲んでんだよ、どうせなら一緒に騒ごうぜ」
 そう言ってトール達は酒(これも低アルコールだ)と食い物を運んで来た。
「どうしたんだよそれ?」
「レジスタンスの所からかっぱらってきた、どうせあいつ等大した事してないし、良いだろ?」
 そう言って全員が俺達の周りに座り込み、それぞれのグラスに酒を注ぐ。
「それじゃ、乾杯するか、シン、乾杯の音頭頼むぜ」
「え!?俺かよ?」
「そりゃそうだ、なんて言ったってお前達4人が主役だし、こん中で一番似合いそうなのお前じゃん」
 似合うのか?俺って……ま、いいか、折角コイツ等が開いてくれた宴会だしな。
「それじゃ、俺達の勝利を祝って…………」
「「「「「「「「乾杯!!」」」」」」」」
 全員の掛け声と共に、俺達8人の宴会は開始された。
この時だけは戦いもこれからの事も、アスランのアホの事も忘れて大いに騒ぎ、宴を楽しんだ。





おまけ

キラSIDE

「きらぁ~~~~(涙)」
 急にサイが泣きついてきた。泣き上戸だったのか……。
「どうしたの?」
「フレイに振られた……『貴方とは親同士の決めた婚約者だったから』って……」
 あ、そのイベント回避できなかったんだ……。
「慰めてくれぇ~~~~」
 僕に抱きつこうとするサイ、だけど……。

 グイッ  はい、間接極めました。

「痛ててててててて!!」
「やめてよね……僕にそっち系の趣味がある訳無いじゃないか……」
「バカ!友達として慰めてくれって意味だよぉ~~」

 …………と、そんなこんなで宴の時間は過ぎていった。





[32127] 第13話 強襲、紅海の鯱
Name: 神無鴇人◆c2099dfd ID:7cb03caa
Date: 2012/03/16 17:29
シンSIDE

 砂漠を発って数日が経ち、現在俺達は紅海を渡っている。
海は青い、空はまぶしく光り輝いている。でも俺の機嫌は悪い。え?何故かって?決まっている、余計なお荷物が付いてきたからだ…………。
アスハの奴は宴の後、艦長に土下座して同行の許可を得たらしい。
とりあえず今は雑用やってるけど、こっそり隙を見てスカイグラスパーのシミュレーションをやろうとしており、一昨日の夜中は格納庫に忍び込んでスカイグラスパーの操縦マニュアルを読んでいる所をマユに見つかってトイレ掃除の刑を貰い、昨日なんか俺達の訓練中に『私にもやらせろ!』なんてほざいて訓練の邪魔をしたし……おかげでマユとフレイが不機嫌になっちまった。
けどまぁ、良い事もあった。マユとフレイが和解した事だ。
今はお互い良きライバルとして二人一緒になって訓練に励んでおり、プライベートでもよく一緒に仲良くつるむ事が多くなった。
そして最後に、昨日敵襲を受けた。襲ってきたのは紅海の鯱の異名を持つモラシム隊だ。
その時はディンを主体とした空中戦を仕掛けてきたが、難なく退ける事が出来た、多分これは様子見、次は恐らく水中戦で仕掛けてくるな……。
「水中戦用の装備はこれだけですか?」
「ああ、砂漠の方で出来る限り仕入れたらしいが、これが限界だったみたいだ」
 マードックのオッサンが申し訳無さそうに言う。
現在ココにある水中戦用の装備は魚雷と水中用のライフルとバズーカが2セットだけ……。
「僕とシンで水中戦をやるしかないか……」
「それしかないか……マユ達に空中戦を担当してもらうしかない」
「まぁ、大丈夫だと思うよ、あの二人結構強くなってるし」
「ああ……」
 心配だけどココはそれしか手が無いか…………ちょっと心許ないがフラガのオッサンのスカイグラスパーもいるし、俺もマユ達の状況に気を配っておくようにしておこう。
「マユ、フレイ、ディンとの戦い方は覚えたか?」
「うん、大丈夫」
「こっちも」
 二人の返事を聞き、準備完了。あとは敵が来るのを待つばかりだ。



モラシムSIDE

「各員戦闘配備!相手はあの足つき、油断はするな!だが失敗は許されんぞ!!」
 連合の新型戦艦を前にして俺は部下達に檄を飛ばす。
ある意味これはチャンスだ。この作戦が成功すればクルーゼ隊の鼻を明かせるからな……。
カーペンタリアから先日到着したザラ国防委員長のバカ息子が増援で来るというがそんな者はアテにならん!
そんな者が来る前にその足つきとやらを水中から一気に喰らい尽くしてくれるわ!!



フレイSIDE

 準備を終えて小一時間ほど経った頃、敵襲を知らせる警報が鳴り響き、私達は急いで出撃準備に入る。
「僕達は水中の敵を片付けるまで援護出来そうにない、二人共あまり無理はしないでくれ」
「分かってるって、そうそう簡単に死んだりしないわよ」
「うん、お兄ちゃん達も気を付けてね」
 心配そうな表情のキラ達に私とマユは余裕の表情で返事をしてコックピットに入る。
グゥルでの空中戦は大分慣れた、ディンの機動性にもついていけるようになったし、マユとの連携もバッチリだ。大丈夫、やれる……。
「フレイ・アルスター、ジン、行きます!!」
「マユ・アスカ、ジン、行きます!!」
「ムウ・ラ・フラガ、出る!!」
 出撃と同時に敵機を発見。ディンが5機。
発見してすぐ敵が先制射撃を撃ってくる。私はそれを避けながら接近し、一定まで近づくと同時に特化重粒子砲でディンを撃ち抜いた。
そして撃墜したと同時に再び距離を取る。いわゆるヒット&アウェイというやつだ。
マユと少佐も同じ要領でディンを一機ずつ撃墜した。
「あと2機!」
 すると突然一機のディンがこっちに向かって突っ込んできた。
「いかん!突撃する気か!?嬢ちゃん避けろ!!」
「言われなくても!!」
 私はグゥルから跳び上がり、ディンを踏み付けるように蹴飛ばした。
「マユ!」
「まかせて!!」
 蹴飛ばされたディンをマユのジンはビームソードで突き刺した。
「いっけぇーーー!!」
 マユは突き刺したディンをもう一機のディン目掛けて投げ飛ばした。
投げつけられたディンは味方同士激突し、爆発を起こし、残骸は海へと落ちていった。
「ひゅ~~、スゲェな嬢ちゃん達、俺も乗りたくなってきたぜ、MSによ」
 少佐が賞賛の声を上げる。
「そうした方がいいと思いますよ、やっぱり今の時代MAよりMSです」
「かもしれないな…よし、次は敵艦を落としにいくぞ、油断はするなよ!」
「「了解」」
 私達は敵艦の方へと向かっていった。



キラSIDE

「やっぱり、ストライクでもやはり水中じゃ上手く動けないか……」
 水中にてゾノとグーンを相手にしなが僕は呟いた。
ここまでは僕とシンで何機か落とし、残り2機(ゾノとグーン各1機ずつ)まで追い込んだけど、ココで問題発生、弾が尽きてしまった……。
「まずいな……これは……」
「うん……一か八かあの手でいってみる?」
 こんな時のために考えておいた連携……いきなりの実践でその上水中……成功率は正直微妙だけど…………。
「それでいくしかないか……」
「やっぱそうだよね……ゾノは僕が引き付ける、シンはグーンの方を……」
「任せろ!」
「よし、いくぞ!」
 合図と共に僕達はそれぞれ敵機を牽制。狙い通りゾノは僕に、グーンはシンに向かってきた。
僕はゾノの攻撃を回避しながら距離を取り、タイミングを計る。
シンの方は……上手くグーンに組み付いたようだ。その時ゾノがこっちに向かって魚雷を撃ってきた。
「今だ!シン!!」
 僕の合図と同時にシンはグーン諸共、僕とゾノの斜線上に入り、ゾノから放たれた魚雷をグーンに命中させた。
やった!同士討ち作戦成功だ!!
「何ぃぃっ!?」
 驚くモラシム、その隙を突いて僕はアーマーシュナイダーを投げつけた。
グーンの爆発によって発生した水泡の中から飛び出してきたナイフを避ける事が出来ず、ナイフはゾノのコックピットに突き刺さり、ゾノは爆散、モラシムごと海の底に沈んでいった。
「上手くいったな!」
「うん、成功するか正直微妙だったけど……何とか上手くいったよ」
 作戦成功を確認し終えた僕達は地上へと戻っていった。



 地上に上がるとフレイたちのジンは先に艦に戻っていた。どうやら彼女達も無事任務を終えたようだ。
「こちらストライク、敵水中部隊の殲滅を完了しました」
『キラ君達ね、悪いけどすぐに戻って!面倒な事になったわ』
 マリューさんが焦った様な声を出した。嫌な予感が……。
「何かあったんですか?」
『カガリ・ユラがスカイグラスパーで無断出撃した、先程ザフトの輸送艦と交戦して撃墜され、行方不明になってしまった』
 ナタルさんがうんざりした様な声で説明した。やっぱりこうなったか…………。
「またアイツかよ!!?」
 シンが怒鳴る。僕だって相手がカガリじゃなければ怒鳴っているだろうなぁ…………。
(とりあえず、カガリには僕の方からもちょっとO・HA・NA・SHIしないといけないかな…………うん、そうしよう、今回ばかりはキッチリ『教育』しないとね…………)
 僕は心に固く誓った。





[32127] 第14話 堕ちてゆく変態、孤立する無能
Name: 神無鴇人◆c2099dfd ID:7cb03caa
Date: 2012/03/16 17:29
シンSIDE

 あ~~、面倒臭い、何が悲しくてあの馬鹿を探さなきゃいけないんだよ……。
あれから3時間ぐらい経ってるけど見つかる気配無し……。
「キラぁ~~本当にどこか覚えてないのか?」
「うん、全然覚えてない……だって前世でもそこら辺の無人島とかを手当たり次第に探してただけだから、一々覚えてられないよ……」
 キラも投げやりになってる…………本音を言うとあんなクソ女、ヅラの奴に押し付けてさっさとオーブに行きたい。けどあいつがいないとオーブに行く理由がなくなるし……。
「本っ当面倒臭ぇ……」
 某忍者漫画のIQ200少年の口癖を呟きながら俺は捜索を続けた。



ニコルSIDE

 カーペンタリアについて早々僕達に下った命令はあの変態の捜索だった。
何でも輸送艦でモラシム隊の援護に向かっている所に地球軍の戦闘機と出くわし輸送艦をやられてどっかに不時着したらしい。
何でこうなる?せっかく今日まで一から訓練し直して、ようやく自分達の腕とコンビネーションに自信が付いてき始めた矢先に…………。
正直言って捜索なんかしたくない、むしろ見殺しにしたい。
だから速攻で拒否した。
しかし…………
「まぁ待て、これを見てくれ……」
 基地の司令官が取り出した一枚の書類、そこに書かれていたものに僕達は驚愕した。
「こ、これは……」
「ぐ、グレイトォ……」
「よく決断してくれた……」
 そして喜んだ。
僕達はすぐさま捜索を開始した、あのホモに天誅を下すために!!



カガリSIDE

 無人島で出会ったこのアスランという男、私は最初はザフトだからという理由から戦い(結局決着は着かず、お互い持っていた銃の弾が尽きるだけに終わっただけだったが)、敵視していたが話してみると思ったより良い奴だった、それに親近感も湧いた。
何でも彼はあのシン・アスカに親友を奪われたらしい。
こいつの話を聞いて私は確信した。やはりあの男は間違っている!!
私はタッシルの人々を守ろうとした、それなのにアイツは私達が戦うこと自体が間違いなどと言う。絶対に違う!!間違っているのはアイツの方だ!!!!
私もアスランも大事な者を守りたいが為に戦っている、しかしあの男はそれを奪い、否定する。
私はアスランとの出会いで自分の正義に自信を持つ事が出来た、なんだか成長する事が出来た気がする……。



NO SIDE

 カガリは自分が成長したなどとほざいているが、誰がどう見てもむしろ悪化である。



キラSIDE

 フレイからカガリ発見の報告が来て僕達はカガリのいる無人島へ向かった……けど、あそこって確かアスランも一緒にいるんだよなぁ……。どう考えても嫌な予感しかしない…………。
とりあえず僕、シン、フレイの三人(マユちゃんは現在機体のエネルギー補充のため艦内待機)で無人島に上陸した。
「お~~い、バカガリ~~出てこ~~い、でないと馬鹿が加速度的に進行するぞ~~~~」
 シン…………どういう呼び方してるの君は?っていうかバカガリって…………(笑)
「早く出てきなさいよ!こっちは急いでんのよ!!」
 フレイも投げやりな感じで呼びかける。
「カガリぃ~~何処に居るの~~色々O・HA・NA・SHIしなきゃいけないんだからさ~~~~」
 とりあえず僕も呼びかけてみた…………………………今にして思えばそれが間違いだった。
「キぃぃラぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
 ギャアアア!!ア、アスラン!!!!やっぱりいたんだ…………いや、落ち着け…………今度こそ奴の息の根を止めるんだ!!
「シン・アスカぁぁぁぁぁぁ!!!!貴様だけは絶対許さん!!!!」
 ラッキー!!アスランの意識がシンの方へ!僕はシンに飛び掛ろうとするアスランに蹴りを入れた!
「ぶげぁ!!?キ、キラ、何故?」
「うるさいよ……僕にそんな趣味は無いって言ったじゃないか」
「目を覚ませキラ!!俺と共に歩んだ日々を思い出すんだ!!!!」
 いつ僕が君と共に歩んだ!?目を覚ますのは君の方だ、このホモが!!
「ちょ、何コイツ?めちゃくちゃ気持ち悪い…………」
 うわぁ……フレイもドン引きしてるよ……まぁ当然の反応だけど…………。
「貴様!!」
 え?急にアスランがフレイを睨み始めた。
「貴様か、貴様が俺のキラを誑かしたのか!!」
「は?」
「貴様らさえいなければキラはぁぁぁぁっっ!!!!」
 アスランがナイフを構えてフレイに!?
「危ない!!」
 考える前に口と体が動き、僕はフレイを庇いながらアスランのナイフをかわした。
「キラ!」
 フレイが驚いたように声を上げる。
「大丈夫……痛っ」
 突然腕に痛みが走った、どうやら腕を少し切ってしまったらしい。
「キ、キラ……なんでそんな女を…………ぶごっ!!?」
「テメェ、いい加減にしろよ……」
 呆然とするアスランにシンの鉄拳が炸裂した。
底冷えするような暗い怒りの表情でシンは2発、3発とアスランを殴る。
「テメェがホモだろうが何だろうが知ったことじゃねぇ、だがなテメェの訳の分からない理屈で俺の仲間を傷つけるような真似は絶対許さねぇ!!今すぐココで死ね!!!!」
 シンはナイフを取り出し、アスランに振り下ろす。
「やめろぉぉぉぉぉーーーーーーーー!!!!」
 しかしココで邪魔が入った、カガリだ!
カガリはシンにタックルをかまして押さえつけようとする。
「逃げろアスラン!!」
 ちょっ!?何やってんの!?というか何言ってるの!?
カガリはシンを押さえつけながらアスランを逃がそうとしている。アスランはそれに従って逃げようとするが、シンがカガリを払いのけアスランを再び殴り倒した。
アスランも反撃しようとするがさっきまでに受けたダメージが災いしてシンに押されてしまう。
「クソ!やめろ!!」
 カガリがシンを止めに入ろうとするが僕とフレイはそれを押さえつけた。
「クソ!離せ、離せぇぇ!!お前達二人共あいつに騙されているんだ!!」
「シン、早く止めを!!」
 訳の分からない事を叫ぶカガリを押さえつけながら僕はシンに止めを促す。
シンは再びナイフを振りかぶり振り下ろそうとする。
しかしそこで突然銃声が鳴り響き、僕達は全員動きを止めた。
誰のだ?僕達は今銃を持ってない、アスラン達もナイフや肉弾戦を仕掛けてきた事から持ってない、もしくは弾が尽きているはずだ。
「あー、悪いけどそこら辺で止めてくれねぇか?」
 突然、銃声のした方から声を掛けられ、振り向くとそこに居たのは……。



ディアッカSIDE

 ったく……訳分かんねぇ…………ようやくあの馬鹿を見つけたと思ったら島にはストライク、ヴェスティージ、鹵獲されたジンがいて、イザーク達を呼ぼうにもアイツ等は今遠くの方を捜索中だ。仕方無しにこっそり島に忍び込んでみたらアスランの奴が敵軍の奴らと乱闘してるし、つーかアスランを助けようとしてるあの金髪の女誰よ?
取り敢えず騒ぎを止めるために俺は上空へ向けて銃を撃った。乱闘していた連中は突然の銃声に驚き、こっちに振り向いた。
「あー、悪いけどそこら辺で止めてくれねぇか?」
「お前は……」
「ディアッカ・エルスマン、バスターのパイロットだ、不本意ながらそいつを連れ戻すよう指示を受けている」
 とりあえず自己紹介と目的を説明する。
「で……そいつを渡してくれねぇか?あんまり事を荒立てたくないんでな」
「断るといったら?」
 茶髪の男が警戒するように訊ねてくる。まぁ、当然の反応だな……。
「こっちには銃がある……だがお前等はナイフしか持ってないが3人……お互い無事じゃすまないだろうなぁ」
「…………」
「出来ればそんな奴放っておきたいが、上からの命令でな、正直な話そんな奴のために無駄な時間を掛けたくないんだ、お互い退いた方が得策だろ?」
 俺の言葉に茶髪の奴は少し考えてから口を開いた。
「分かった……さっさとこの変態を連れて行ってくれ」
「交渉成立だな、ほら来な、アスラン」
「は、離せディアッカ!俺はキラを助けないといけないんだ!!」
 この馬鹿は……まだ何か言ってやがる。
「あ、そうだ……アスラン」
 淡々とした表情で茶髪の奴が懐から何かを取り出してアスランに放り投げた。何だこりゃ?ロボットの鳥?
「ト、トリィじゃないか!?」
「うん、それ返すよ……もういらないから」
 なんかよく分からん会話をしている…………大方、このロボット鳥はアスランが作ってあのキラとかいう茶髪に渡した物って所か?
「ま、待ってくれ、キラ!!なんでこれを俺に返すんだ!?トリィは俺とお前の絆の証じゃないか!!」
 縋るような表情でアスランが叫ぶ。なんか見てて面白い。
「…………君との思い出なんて、僕には忌まわしいだけだ」
「そ、そんな……キラぁぁ……………」
 キラのその言葉が止めとなり、アスランは力なくその場にうな垂れた。
「……じゃあ、俺行くわ…………」
 そう言って俺はアスランを担いで仲間の元へ帰っていった。



キラSIDE

 アスランとの乱闘後、僕達はカガリを連れてアークエンジェルに戻った。
カガリはあの後、艦長達から説教を貰い、シンからの罵声を浴び、最後は僕から再び説教され、今は独房で真っ白に燃え尽きている。
皆は僕のカガリへのO・HA・NA・SHIがもっと物騒なものだと思っていたみたいだけど生憎僕はどこかの魔王(もしくは冥王)ではない、これでもカガリの事は見捨てていないつもりだ。
シンのカガリへの制裁だって本当にやばくなったり不当な理由だったら止めるつもりだし、第一肉親をそう簡単に見捨てられるものじゃない…………まぁ、彼女への対応が淡白になったのは認めるけど…………。
話は変わって、僕は今医務室で先程アスランにやられた腕の治療中だ。フレイも付き添ってくれている。
「ごめんね」
「え?何が?」
 いきなり謝られて少し戸惑ってしまった。
「この怪我、私を庇ったから…………」
「気にする事無いよ、大して深い傷でもないし、それに……」
「それに、何?」
「フレイが殺される方がずっと嫌だから」
 もう彼女が目の前で殺されるのだけは絶対嫌だ、フレイを守れるならこれくらいの怪我どうって事無い。
「…………ありがと」
 そう言ってフレイは僕に顔を近づけてきて…………。
「え…………?」
 頬にキスしてきた。
「フ、フレイ?」
「助けてくれたお礼、ありがたく思いなさいよ」
 フレイはそういうと顔を真っ赤にしながら医務室を後にした。僕は暫くの間その場に固まっている事しか出来なかった。



フレイSIDE

 本当になんであんな事したのか自分でもよく分からない、アイツは、キラのことが嫌いじゃないのは確かだ、けどアイツはパパを守る事が出来なくて、私はそれを許すことが出来ないから軍に入って…………。
でもあの時、私をあの変態のナイフから庇ってくれた時凄くアイツが頼もしく思えて、アイツが腕を怪我してしまったのを見て凄く胸が締め付けられて…………私はキラの事を意識してしまっているのだろうか?分からない…………今度マユやミリィに相談してみよう………………キラの頬にキスした唇を指でなぞりながら私はそんな事を考えていた。



ニコルSIDE

「ここから出せ!!俺はキラを助けに行かないといけないんだ!!」
 独房内で騒ぐアスラン、本当にうるさいしウザイ。
ディアッカの話だとコイツは昔の親友に恋愛感情(同性愛)を抱き、それが原因で見捨てられたらしく、アスラン自身はその親友がヴェスティージのパイロットや地球軍の奴等に洗脳されて奪われたと思い込んでいるらしい。
まぁそんな事、今はどうでもいい。大事なのはこの後のアスランの反応だ。僕は例の書状をアスランに突きつけた。
「アスラン、本部からの異動命令書です」
「何だと!どういう事だ!?」
「どうもこうもありませんよ、今まで貴方はどれだけ失態を重ねてきたと思ってるんですか?それに貴方の異動手続きで足つきに攻撃を仕掛ける予定が繰り下がってしまったし、もう除隊命令が降りても文句は言えない立場なんですよ貴方は……」
 ショックで呆然とするアスラン、しかしそんな事にお構い無しで僕は話を続ける。
「貴方の移動先ですが、ビクトリア近くの前線基地、まぁ早い話が激戦区送りって事ですね」
「ふざけるな!俺にキラから離れろと言うのか!?俺にはキラを助けるという大事な使命が……」
「はいはい、そういう戯言は前線基地で言ってください、もういいから連れて行ってください」
 アスランは周囲の憲兵に拘束され、そのまま連行されていった。
「貴様等ーーーー!!もしキラに何かあってみろ、末代まで貴様らを呪い殺すからなーーーーー!!!!」
 アスランが心底悔しそうな顔で叫んでいるが所詮負け犬の遠吠えだ。
「あばよ、アスラン、お前の事は明日には忘れてやるよ」
「二度と戻ってくるな、このホモが!」
「出来れば前線基地で戦死しといてください」
 僕達は晴々とした気分でアスランを見送った。



[32127] 第15話 オーブ上陸~楽しい休日~
Name: 神無鴇人◆c2099dfd ID:7cb03caa
Date: 2012/03/16 17:30
シンSIDE

遂にオーブに上陸する事が出来た。ジュール隊の奴等がが上陸前に仕掛けてこなかったのは気になるが、とにかく遂に戻ってきたんだ。
上陸直後、アスハの身分が判明し、現在俺は艦長達と一緒にウズミと交渉中だ。交渉の結果、キラがMSのOS提供、俺がオーブ軍の連中に戦術指導する事を条件に艦の修理と補給、ついでに俺個人(傭兵としての報酬代わり)にM1アストレイを一機、さらにアークエンジェルにはさすがに機体そのものとはいかなかったが、代わりにM1の武器弾薬と各種パーツを使用不可になっている3機目のジンに組み込むという形で譲渡させる事に成功した。
何故M1が貰えるかって?決まってるだろ、カガリ(アスハじゃウズミとかぶるのでこれからは名指しだ)の奴がやらかした失態の賠償だ。
「貴様!言うに事欠いてM1を渡せだと!?何様のつもりだ!!」
「カガリ!誰が入ってきて良いと言った!」
ウズミがカガリを諌めるがカガリは俺を睨み続けている。
「へっ……正当な要求だと思うが?」
「何だと!ふざけるな!!人をあれだけ殴っておいて、その上MSを寄越せだと?恥を知らないのか貴様は!!」
どっちが恥知らずだよ……もう怒りを通り越して呆れしか出てこない。
「軍の物を勝手に乗り回して足手纏いになった挙句、フレンドリーファイア起こした奴が何いってやがる殴られたのだって正当な処罰だろうが……お前のやらかした失態のおかげでこっちは予備のジンを一機、修理の為に解体(バラ)す羽目になるし、前回お前が不時着した時だって捜索で燃料無駄遣いしてお前が壊したスカイグラスパーの修理にどれだけの資材を使ったと思ってんだ、それにあの変態を仕留められる絶好のチャンスを邪魔しやがって、テメェがどれだけこっちに迷惑掛けてるかいい加減理解しろ!!」
「グ……だ、だけど……私だって……」
「もういい下がっていろ、そちらの要求は呑む、その代わりこちらの条件の方も抜かりは無いよう頼む」
 ウズミのその言葉で交渉は終了となり、俺達はその場を後にする事となった。
だが、最後に俺は立ち止まり、一言こう言ってやった。
「ウズミ様よ、一応俺もオーブの国民だから言わせて貰います……自分のガキ一人満足に育てられない奴が国なんてデカイ物治められるのかよ?」
「…………」
 ウズミは黙ったままこちらを見ている。心なしか拳がやや震えているようにも見える。少しは俺の言葉が効いたか?
まぁ、どうせこいつは今回の件で責任取って辞任する訳だし、これぐらい言っても別に大丈夫だろう。
「言いたい事はそれだけです、では……」
 そう言って俺は今度こそ部屋を後にした。



ニコルSIDE
 足つきがオーブに入港し、それをオーブ政府に確認したところ、返ってきた返事は『アークエンジェルは既にオーブを発った』というものだった。
「こんな見え透いた嘘、誰が信じるか!馬鹿にしているのか!!」
 イザークが苛立ちながら叫ぶ。
「もちろん僕達だってこんな嘘信じてないですよ、しかし相手が相手です、無理矢理攻め込みでもしたら国際問題になってしまいますよ」
「じゃあどうする?」
 ディアッカ…分かりきった事を聞かないでくださいよ……。
「潜入しましょう、発見できる可能性は低いでしょうが、何もしないよりはマシです」



キラSIDE

 オーブには数日ほど滞在する事になった。
その間僕はOSの作成、シンはオーブの兵相手に訓練だ(これにはマユちゃんとフレイも参加)、その合間に親と面会したりであっという間に滞在最終日を迎えた。
この日は僕達全員に休暇と外出許可が与えられ、レジャー施設で丸一日遊ぶことになった。
とりあえず今はカラオケに来ている。
これがまた皆中々上手く高得点のオンパレードだった。
特にマユちゃんとか店内ベスト5にランクインしたし。



ニコルSIDE

 やっぱり無駄骨だった……モルゲンレーテのセキュリティは想像以上に堅く、足つきの痕跡一つ見つけられなかった。
結局これ以上の捜査は無駄と判断し。どうせ足つきは修理や補給等で発つのは早くても明日までかかるだろうから温泉にでも立ち寄って骨休めしてからこの国を出る事になった。
で、今僕が何をしているかというと、風呂上がりにディアッカ達と牛乳飲もうという話になり、ジャンケンで負けて自販機で牛乳を買っている。
「え〜と、ディアッカがコーヒー牛乳、イザークがフルーツ牛乳だったよな……」
 牛乳を買い終えてイザーク達の待つラウンジに戻ろうとした時不意に誰かとぶつかった。
「あ、すいません、大丈夫ですか?」
「は、はい、こっちこそごめんなさい」
 ぶつかったのは栗色の長い髪をした10歳ぐらいの女の子だった。
(か、可憐だ……)
 全身に電撃が走った。すごく可愛い……一瞬にして思考回路が固まってしまう。
これってアレですよね……一目惚れって奴……。
「マユ〜、早く来なさいよ」
「あ、うん分かった、すいませんでした」
 マユと呼ばれた女の子は一言謝罪して温泉の方へ向かっていった。
またオーブに来よう、今度は休暇で…………僕は心の底からそう思った。



キラSIDE

 僕達は一通り遊び、今は温泉に浸かってのんびりしている。
「はぁ〜〜、極楽とはこの事だなぁ」
「本当だね…………それにしても不思議だよ……前世であれだけ憎み合って殺し合った相手と一緒に戦って、今じゃこんな風に一緒に風呂に入ったりするってさ」
「ああ、そうだな」
 本来なら絶対ありえない事だけど、今僕達はこうして共に戦っている。何でだろう?
「お互い変わったからじゃないか?」
「え?」
「前世で俺は家族を失って我武者羅に力だけを求めて、何も考えることが出来なかった、お前は凄く嫌な奴だった、達磨にされた奴の後の事なんて考えずに無意味に不殺やって、それを免罪符にして好き勝手やってるだけで、その上正義を語ってるクセして『自分は悟ってます』みたいな感じでラクスが正義と叫ぶだけ、何つーか人間って感じがしなかった……」
 人間じゃない…………………そうか……そうだったのか……やっと分かったよ、きっと僕はあの時、フレイがクルーゼに殺されて、僕の手でクルーゼを殺したあの時から……僕の心は死んでいたんだ……だから何も考えられなくなって、人形みたいになってラクスに縋ったんだ…………。
「だとしたら、変わったんじゃなくて元に戻っただけだね、君も僕も……」
「ああ、けどさ、お前今の方がずっと人間味があるよ…………それに今のお前なら仲間だって思える」
「……ありがとう」
 僕は少し笑みを浮かべながら感謝の言葉を口にした。



シンSIDE

 風呂から上がって俺達はオープンカフェで少し早めの晩飯を取っていた。
「所でさ、シン達って傭兵でしょ、オーブに着くまでって契約だったけど、これからどうするの?」
 飯を食いながらフレイが尋ねてきた。
「正直迷ってる、今の情勢じゃオーブだっていつまでも無関係じゃいられないし、ヘタにアスハ家の連中が不干渉を貫き続けているようじゃ、最悪攻め込まれかねない……オーブ軍からはパイロット兼戦闘アドバイザーにならないかって言われてるんだけど……」
「確かにブルーコスモスやザラ派みたいな過激派とかだったら攻め込んできてもおかしくないわね、モルゲンレーテにマスドライバー、理由なんていくらでもあるし」
 フレイが俺の考えに同意する……あれ?フレイってこんなに頭良かったのか?キラとマユも意外そうな顔してるし……。
「ちょっと、アンタ達今結構失礼なこと考えたでしょ?」
「え?いや……その……」
「あのねぇ、私これでも政治家の娘なのよ、政治の勉強だってちゃんとしてるわよ」
 そういえばそうだった……すっかり忘れてたけど……
「ごめん……」
「まぁいいわ、とにかく迷ってるんでしょ、私達と一緒に行くかココに残るか」
「ああ、オーブに残ってオーブ軍の戦力を出来る限り増強するか、このまま傭兵やって連合に少しでも多く貸しを作って体面を良くしておくか……」
 正直悩む、このままオーブに残ってオーブ軍を増強してもオーブ全てを守れる訳じゃない、かと言って連合に行ってもオーブ防衛戦を止めるのは難しいだろう。
「あー、ちょっといいかな?」
 不意に後ろから気楽そうな声で青髪長身の男が声を掛けてきた。
「シン・アスカ君だね、ちょっと君とお話したいんだけどいいかな?」
「アンタは……」
 ユウナ・ロマ・セイラン……コイツとの出会いは俺の選択を決定付けるものだった。



[32127] 第16話 それぞれの道へ
Name: 神無鴇人◆c2099dfd ID:7cb03caa
Date: 2012/03/16 17:32
シンSIDE

 晩飯を終えた後、俺達4人(トール達は先に帰った)はユウナ・ロマ・セイランと近くのベンチに移動して話をしていた。
「あの、私たちまで着いて来て良いんですか?」
「ああ、構わないよ、これから話す事はアスハ家以外には大して重要な話でも無いし」
 フレイが遠慮がちに尋ねるがセイランは気楽に返した。
「で、話ってのは何ですか?」
 俺が本題に移ろうとするとセイランの表情が真剣なものへ変わった。
「まず、話をする前に、君はアスハ家の政治についてどう思う」
「…………正直、気に入りませんね、今まで戦ってきたけどどの戦場も日を増す毎に激しさを増している、正直な所もうオーブも無関係じゃいられない、いや既に巻き込まれているといっても過言じゃない」
 俺達が乗っていたMSが良い証拠だ、口じゃ中立だとか言っておきながら、連合に協力しなけりゃ国の安定を図れない……だったら最初から中立なんて掲げるなって話だ。
「うん、その通りだ、だからこそ君に頼みたい事があるんだ」
「頼みたい事?」
「うん、まぁ順を追って説明しよう、まずこの国の経済や食料問題はどんどん深刻化している、今は技術力だけで何とか賄っているけど、それももう限界に近い……正直な話、これ以上戦争なんかされていたら、たとえ戦火に巻き込まれなくてもこの国は危険な目に遭うんだ……だから連合とザフトにはさっさと和平してもらいたい、それを促すことが出来るのは中立国だ、けどウズミ様は絶対不干渉を貫いている……それにもう一つの問題としてオーブには僕みたいに連合の穏健派と繋がりを持っている人間はいるけどプラントの穏健派と繋がりを持つ人間が少なく、尚且つ穏健派のトップと繋がりを持つ者がいない、というか今は強硬派の方が大半を占めているからね、まぁこれは連合も同じ事だけど……しかし、ココで解決策が浮かんだ」
「それが俺ですか?」
「そう、君はシーゲル・クラインの娘ラクス・クラインをザフトに返還したという実績がある」
 成る程、そういう事か……
「つまり俺にプラント穏健派とのパイプ役になれって事ですか?」
「その通りだ、君ならラクス・クラインに面識があるし、貸しもある、君を通じさえすればこちらもプラントの穏健派トップであるシーゲル・クラインに接触できるってワケさ」
「成る程ね、それでアンタはこの戦争を終わらせた功労者になるって訳か」
「ハハハ……まぁ、そうなりたいっていう権勢欲があるのは否定しないよ、でも現実問題としてオーブの経済が危ないのは本当さ、これで攻め込まれでもしたらオーブが滅びかねない、それだけは断固阻止しなきゃいけないって本気で思ってる」
 嘘は吐いてなさそうだな……目が真剣だし、コイツは腹芸が出来るほど歳喰っていないし……。
「もちろんこれは強制じゃない、じっくり考えてから返事をしてくれ」
 俺はその場で考え込んだ。
「良いんじゃないの?ココに残れば」
 最初に口を開いたのはフレイだった(また意外な奴が真っ先に……)。
「私達は連合、アンタ達はオーブで和平を目指す、それで良いと思うわよ、私はね」
「そうだね、僕達もオーブが滅ぶのは嫌だし……」
 フレイに続いてキラも後押しする。
そうだな……実際ユウナ・ロマの誘いは悪くない話だ、オーブ軍を強化しつつ、オーブ防衛線を防ぐ、これが両方達成できるとすればこれしかないだろう。
「わかった……俺、オーブに残るよ」
「ありがとう、嬉しい限りだよ」
「一つだけ言わせてください、俺はあくまでオーブの人達を戦火に晒したくないだけです、もし貴方が国を焼いて国民を苦しめるような選択をするならその時は躊躇なく貴方を裏切ります」
「肝に銘じておくよ」
 セイランはその言葉と共に俺に手を差し出し、俺はその手を取り、握手を交わした。



キラSIDE

 シンがオーブ残留を決めてから一夜明け、アークエンジェルは今、出港準備に入っている。
シンとマユちゃんには護衛として途中まで同行してもらう事になった。
「次はアラスカだろ、大丈夫なのか?」
 シンが訊ねてくる、前世ではサイクロプスで基地ごと焼き払われて敵味方問わず多数の死者を出した……。
「うん、一応対策は考えているから」
「そうか、まぁ、お前なら大丈夫だと思うが……」
 そんな会話をしていると警報音が鳴り響いた、来たか……僕にとって最も忌まわしい記憶の一つが……。
『総員第一種警報発令、パイロットは各機体へ…………』
 僕達はそれぞれ自分の搭乗機に乗り込み、出撃準備に入る。余談だけどムウさんも今回からジンに搭乗するようになった(ただし、グゥルは2機だけなので艦の上で迎撃だ)。
「キラ・ヤマト、ストライク、行きます!!」
 発進後すぐに敵影を確認、ブリッツ、バスター、デュエルの3機。……あれ?
「おいおい、アスランいないぜ」
「うん、あの変態の事だから真っ先に来ると思ってたんだけど……」
 まぁいいか…………むしろそっちの方がやりやすいし。
僕はアスランのことを頭から消し去って臨戦体勢に入った。



フレイSIDE

 こっちに向かってくるデュエルに先制射撃を撃つ。デュエルは反応すると同時に私へ向かってきた。
私は後退しつつ特化重粒子砲とバズーカで射撃を続ける。
「俺ににそんな攻撃が当たるかぁーー!!」
 デュエルは軽々と私の攻撃を避けてライフルで反撃、バズーカを破壊されてしまう。
「クッ……」
 さすがエース、動きが雑魚なんかとは段違い、悔しいけど実力も機体の性能も向こうが上ね。
「もうちょっと……」
 私は上手く相手の射撃に当たらないようにデュエルをおびき寄せながらアークエンジェルに通信を送り、ある事を指示する。
「来た!今よ撃って!!」
 目的の場所にたどり着き、デュエルが私の目の前でビームライフルを構えたと同時に私は即座に合図を送り、グゥルから跳び上がる。
「なっ!?」
 飛び上がった私の背後からアークエンジェルがゴッドフリートを撃った。
「クッ!」
 デュエルは慌てて回避、だけど……。
「貰い!!マユ、少佐!!」
「おう!!」
「任せて!!」
 アークエンジェルの護衛を担当していたマユと少佐のジンが私と共に一斉にデュエルを狙い撃つ。
「ぬおぉっ!!」
 デュエルはシールドで防いで期待へのダメージを最小限に抑えるが私の狙い通りグゥルは攻撃に耐え切れず爆発を起こした。
「ちぃっ!!」
 グゥルを破壊されたデュエルは地面に着地し、私達3人は上空から銃を連射。上空対地上という圧倒的不利な状況にデュエルは引き下がるしかなかった。



シンSIDE

 俺とキラはブリッツとバスターを相手にする片手間で退いていくデュエルを狙い撃とうとするが、二機にそれを阻まれてしまう。
「おぉっと!やらせねぇぜ!!」
「イザーク、今の内に!」
 ニコルに促されイザークは牽制しながら下がっていく。
「野郎!」
 邪魔が入る以上デュエルの撃墜は難しいと判断し、俺はブリッツに狙いを切り替え、マシンガンを連射する。
ブリッツはすぐにそれを回避して地上に降り、ミラージュコロイドで姿を消した。
姿を消してゆっくり近づきながら殺る気か……。
(落ち着け……仕掛けてくるのを待つんだ……)
 神経を集中させ全方向に注意を払い、ブリッツが姿を現すのを待つ。
「……………………………………………………っ!!」
 来た!!後からだ!!
俺は紙一重でそれを回避、ビームが僅かに腕を掠めるがマシンガンで反撃する。
「ちぃっ!!」
 俺が撃った弾もブリッツを掠めた。俺は一気に間合いを詰めて接近戦に持ち込む。
ビームソードによる斬撃を叩き込もうとするがブリッツはビームサーベルでそれを防ぎ、反撃に転じようとする。
「おっと!」
 チッ、大した反応速度だ、コイツ腕上げてやがる……危うく喰らっちまうところだった……だがまだだ!再び俺はビームソードでブリッツに斬りかかる。
「させない!!」
 ブリッツはさっきと同じ様にビームサーベルで防ごうとする、だが俺に同じ手は通じない!!
「甘い!!」
 サーベルを力任せに押さえつけ、ショルダーからナイフを取り出し、それをブリッツの顔面目掛けて投げつける。
「な、しまった、カメラを!?」
 正確には顔面ではなく眼だ。俺の常識はずれの攻撃にニコルは驚愕の声を上げる。間髪入れずに俺はブリッツの両腕を切り落とし、更に胴体に回し蹴りを喰らわせた。
「うわああああ!!」
 派手に蹴り飛ばされたブリッツはそのまま海の中に落ち、その隙に俺はデュエルを仕留めるため、追撃しているフレイ達の援護に加わった。



ニコルSIDE

 クソ……情けない…………訓練して強くなったと思ってもアイツ等との差は大して縮まらなかった。
ディアッカの方は……ストライクと交戦しているがどんどん距離を詰められている。アレでは落とされるのも時間の問題だ。
イザークは…………ま、まずい!!ヴェスティージが加わって1対4に!!クッ…………こうなったら一か八か…………。
僕は遠隔操作でグゥルをイザークの方へ向かわせると同時に水中から飛び出し、ヴェスティージに体当たりを食らわせ、上空のジン(正確にはそれを乗せているグゥル)にバルカンを乱射する。
「きゃっ!」
「イザーク!今の内にグゥルに!!」
グゥルを破壊された白と赤のカラーリングをしたジンは上空から落下し、地面に着地、その隙に僕はデュエルを自分のグゥルに乗せる。
しかしそこに体勢を立て直したヴェスティージと周囲のジンが攻撃してくる。
(逃げ切れないか……)
 僕は覚悟を決めた……今逃げ延びられる可能性が高いのは両腕を破壊された僕のブリッツよりもボロボロでも五体満足のデュエルだ……ならば今僕がやるべき事は一つだ……。
「うおおおおおおっっっっ!!!!!!!」
 僕はイザークを乗せたグゥルをこの場から引き離すと同時にヴェスティージに飛び掛かり残った武器であるバルカンを乱射する。
「ディアッカ!!イザークを連れてココから離れて!!!!」
 それだけ言って僕は通信を切り、必死にヴェスティージを押さえつけた…………。

 そして十数秒後、ブリッツは完全に機能を停止した。
僕はこの場を離れるデュエルとバスターを見て小さく安堵の息を吐いた後、アークエンジェルに投降した…………。



キラSIDE

 ブリッツのパイロット、ニコル・アマルフィが投降し、戦闘は終了となった。
僕達は一度アークエンジェルに戻り、やがてシンとマユちゃんは護衛任務を終え、オーブに戻る時間が来た。
「あなた達には、本当にお世話になりっぱなしだったわ、何のお礼も出来ずに本当に申し訳ないけど……今まで本当にありがとう……」
 クルーを代表してマリューさんがシン達に感謝の言葉を述べ、シンとマユちゃんは艦の人達と一人一人握手を交わしていく。
「フレイ、絶対に生き残ってよね」
「当たり前よ、アンタとどっちが強いか、まだ決着着いてないんだから」
「うん!」
 そういってフレイとマユちゃんは握手を交わし、再会を約束しあう様に抱きしめ合った。
「じゃあな……まぁ、がんばれよ」
「うん、シンもね……」
 僕もシンと握手を交わす。
「あと、この前君が言った言葉だけど……僕も、今の君なら仲間だって思えるよ」
 僕の言葉にシンは小さく笑みを浮かべ、踵を返してオーブに戻る小型艇へと向かう。
「…………死ぬなよ、相棒(キラ)」
「……ああ」
 背を向けたままシンは呟き、僕はそれに静かに頷いた。




[32127] 第17話 変えるべき歴史
Name: 神無鴇人◆c2099dfd ID:7cb03caa
Date: 2012/03/16 17:33
キラSIDE

 次はアラスカだ……僕にとって変えるべき歴史が待っている……。
そのために、僕はフレイを呼び出した。
「どうしたの?キラ……」
「フレイに、話しておかなきゃいけないことがあるんだ…………」
 正直凄く怖い…………でも言わなきゃいけない…………息を整え、気持ちを落ち着ける。
「僕は…………未来から来たんだ…………」



フレイSIDE

「僕は…………未来から来たんだ…………」
 突然キラは私を呼び出してそう言った。
にわかには信じ難い話だけどキラはこんな冗談言う人間じゃない……。
キラはまるで懺悔するかのように自分のいた未来を大まかに語り始めた。
本来の歴史では前回の戦いでトールが死ぬ筈だった事、アラスカやパナマでの虐殺、オーブ防衛戦でシンの両親やマユを殺してしまった事、そしてこの大戦の終盤に私が死ぬ事も……。
「…………………………」
 私は言葉を発する事が出来なかった。話をするキラの表情は苦しげで、今にも泣きそうで、そして何より凄く悲しい顔をしていた。
「こんな話、信じられるものじゃないのは分かってる、だけど君をクルーゼに連れ去られるわけにはいかないんだ、約束して、もしクルーゼに会ったらすぐに逃げてくれ……」
 そう言ってキラは部屋を出る、私は何を言えばいいのか分からなくてその場に立ち尽くすだけだった。



マユSIDE

 オーブに戻る小型艇の中で私はさっきの戦いの後に出会ったブリッツのパイロットの事を思い出していた。


数時間前

 回収されたブリッツの中から赤いパイロットスーツを着た人が降りてきた。降りてすぐ両手に手錠をかけられ、ヘルメットを外されたその顔は……。
「え?あの人……」
 それは温泉でぶつかったあの人だった……。
「君は……どうしてココに?」
 ブリッツのパイロットも私を見て驚いた表情を浮かべるが、そのまま独房の方へ連行されてしまった。
何がなんだか分からなかった……。だけど、このままじゃいけないと思った……私はオーブに帰る前にマリューさんに頼んで捕虜になったブリッツのパイロット、ニコル・アマルフィとの面会を監視付きで5分だけ許可してもらった。
「あ、君は…………」
「あ、あの、その……こんにちは……」
「こ、こんにちは……いや、そうじゃなくて、何で君みたいな小さい子がこんな所に?」
「それは……私、ヘリオポリスに住んでいたんだけど……その時に起きた戦いに巻き込まれて……」
 私はヘリオポリスからこれまでの経緯を説明した。話す内にニコルさんはどんどん辛そうな顔になっていく。
「あの……どうしたんですか?」
「すいません…………」
 辛そうな表情でニコルさんは頭を下げた。
「任務だって割り切っていたけど……僕達がヘリオポリスに攻め込んだばっかりに、貴女を戦争なんかに巻き込んでしまって…………」
 嗚咽を漏らしながらニコルさんは私に謝る。
確かにこのザフトが攻めてこなければ私達は戦争に巻き込まれる事は無かった……。
だけど私はこの人を責める気にはなれなかった。
この人はザフトだけど悪い人じゃないと思う…………。
「マユ・アスカ、そろそろ時間だ……」
 監視役として入口で待機していたナタルさんが声をかけてきた。
「あ、はい……あの、ニコルさん、戦ってきた人にこんなこと言うのも変かもしれないけど……その……元気でね……」
「はい、マユさんもお元気で……」


 ニコルさん、これからどうなるのかな?
「心配なのか?ブリッツのパイロットが」
 私の気持ちを察してか、お兄ちゃんが声をかけてきた。
「うん」
「大丈夫だよ……艦長達も言ってたけど、政治とかに利用はされるだろうけど、無意味に殺されたりする事は無いさ」
 そういってお兄ちゃんは私の頭を撫でてくれた。少しだけ元気が出た……。
「また、会えると良いな…………」



キラSIDE

 ようやくアラスカにたどり着いた。
しかし……着いたのは良いんだけど、今は艦長達以外全員アークエンジェル内で待機という名の幽閉だ、何をしろとも言われずただそこに居ろってだけの状態が長い事続いている。まぁ、これからのことを頭の中でシミュレーションするのには丁度良いんだけどね。
まずサイクロプスを発見する方法について、前世ではムウさんが見つけたけど、今の歴史は僕とシンの行動によって前世とは違う点が結構あるから今回もムウさんが見つけるとは限らない、最悪の場合戦闘中にわざとコントロールシステムがある施設の近くに落下して偶然を装って見つけるしかない(既に端末の場所は基地のコンピュータにハッキングして確認済みだ)。
最後にアラスカからの脱出方法、これはもう前々から考えている。この作戦なら連合とザフト全員とまでは行かなくても前回よりは多くの人を死なせずに済むはずだ……。
よし、後は時間まで脳内シミュレーションの繰り返しだ。



フレイSIDE

 キラが言った通り、私とフラガ少佐、バジルール中尉に転属命令が来た。
やっぱりキラの言うとおりココは自爆してしまうのだろうか……。
キラは既に対策を考えてるって言ってたけど……どうしても不安になってしまう。
「あ、あの、少佐!」
「ん?どうした嬢ちゃん?」
「ちょっと忘れ物したから、先に行ってて下さい、私もすぐに行きます」
「そうか……あ!いけね、俺も忘れ物があった、一緒に行くわ」
「はい!」
 やっぱり放っておけない……私と少佐は一目散に駆け出した。
待っててキラ、私も貴方と一緒に戦うから、もう貴方だけに辛い思いを抱えさせたりしない!!



ムウSIDE

 クソ!なんてこった!!サイクロプスで基地ごと焼き払うだと?この基地の奴等は正気か!?
「大丈夫か?嬢ちゃん」
「はい、大丈夫です」
 コントロールルームでクルーゼの奴と遭遇し、クルーゼの声を聞いた嬢ちゃんは動揺していた。無理も無い……アルスター事務次官、自分の父親と声がそっくりだったんからな……。
「飛ばすぞ、しっかり掴まってろ!!」
「はい!!」
 格納庫からかっぱらってきた戦闘機に乗って俺達はアークエンジェルへ急いだ。



キラSIDE

「クッ……さすがにストライクだけでこれだけの数を相手するのはきついか……」
 目の前には向かってくるデュエルとバスター、そして多数のジンとディン、味方はほとんど役に立たない、その上ストライクはエネルギーを結構消費した状態……これはさすがにマズイ…………。
「ストライクぅぅぅぅーーーーーー!!!!ニコルの仇ぃぃぃぃぃぃ!!!!!!!」
「落ちろってんだよぉ!!!!」
 デュエルとバスターの息の合った連携が襲い掛かってくる。
デュエルの斬撃にバスターの砲撃、両方とも正確無比な攻撃を繰り出してくる
クッ……最初に戦ったときより格段に腕を上げてるよ、この強さは前世以上かも……。
「だけど……負けるわけにはいかないんだ!!」
 SEEDを発動させて攻撃を紙一重で回避、即座にライフルで反撃してデュエルのミサイルポッドを破壊する。
「まだだぁぁぁぁーーーー!!!!」
 被害無視でイザークは連続して攻撃を仕掛けようとしてくる。
「キラ!!」
 突然どこからかデュエル目掛けて砲撃が飛んできた。この声は……
「フレイ!!どうしてココに!?」
「放っておける訳無いでしょ、仲間なんだから!!」
 フレイ…………ありがとう…………。
「アークエンジェルはアラスカを脱出!全責任は私が取ります!!」
 マリューさんのその一言でアークエンジェルは撤退する事となった。
よし、後はザフトを撤退させるだけだ。
「マリューさん、捕虜の人達にザフトへ呼びかけさせて下さい!!」



イザークSIDE

 戦闘中に突然足つきの奴等が撤退を開始し始めた、どういうつもりだ?
『こちらクルーゼ隊所属ニコル・アマルフィ、連合軍基地はサイクロプスシステムで自爆を謀っている、直ちに撤退してください、繰り返します………』
「ニコル!!お前、生きてたのか!?」
『イザーク?イザークですか!?急いで逃げてください!ココはもうすぐ自爆します!!』
「クッ……全員撤退だ!一旦退くぞ!!」
 基地が自爆する、混乱する頭でそれだけは理解し、俺は仲間に撤退を命じた。
ニコル……無事でいてくれよ…………。



キラSIDE

 やがてアラスカ基地内から凄まじい光と共にサイクロプスが全てを焼き払った。
前世と違って多くの人間が助かったが、逃げ遅れた人や呼びかけを信じなかった人は基地の自爆に巻き込まれた。
「……ゴメン」
 僕は助ける事が出来なかった人達に対して一言謝罪の言葉を口にしてアークエンジェルに帰艦した。
その後、僕達はオーブへ亡命する事になり、アークエンジェルはオーブへと進路を向けた。



「キラ、入っていい?」
 部屋で休んでいるとフレイの声が聞こえてきた。
「うん、いいよ……どうしたの?」
「貴方のいた未来の事、詳しく教えてほしいの」
「え?いいけど……聞いててあんまり良い気分になる話じゃないよ」
 というかこれ言ったら僕嫌われるんじゃ……でもフレイには隠し事とかしたくないし……。
「それでもいいわ、話して」
「うん」
 僕は語った、これから起きる戦いや、2年後に起きた戦争、その戦いでアークエンジェルの皆が死に、僕とシンが殺し合った事も……。
フレイは何も言わずにその話を聞いていた。そして…………
「え?」
 僕を優しく抱きしめた。
「キラ……泣いてもいいのよ……」
「え?何言って…………」
「だってキラ、泣きそうな顔してるじゃない……」
 そうなの?自分じゃそんなつもり無いのに…………あ、あれ、何か…目が熱くなって……。
「あ、あれ何で……悲しくなんかないのに」
 何で僕は泣いてるんだろう?分からない……どうして…………。
「もう一人で抱え込まなくていいのよ……貴方は今、一人じゃないんだから……」
「でも、僕は……君や君のお父さんも……誰も守れなくて………身勝手な正義で人を何人も殺して、終わりかけた戦争まで蒸し返して……」
 僕に人から優しくしてもらえる資格なんて無いのに…………。
「キラはそれを悔やんで必死に償って、やり直そうとしてるんでしょ…………私は許すわ、キラの事を」
「僕は……うっ……くっ……うああああああああああ!!!!」
 もう止らなかった。『僕の事を許す』……その言葉が嬉しくて……救われた気がして……。
僕は前世でフレイを失って以来、数年ぶりに声を上げて泣いた。



フレイSIDE

 可哀想なキラ……辛い思いばかりして、それでも誰かを守るために何も考えられなくなるまで戦い続けて……それでこんなにボロボロになって……。
「守るから……私がキラの心を守るから……」
 子供の様に泣いているキラを抱き締めながら私はそう誓った。





[32127] オリジナル機体紹介 その2
Name: 神無鴇人◆c2099dfd ID:7cb03caa
Date: 2012/03/16 17:33
シン専用M1アストレイ

武装
イーゲルシュテルン
ビームライフル
ビームサーベル
飛行ユニット、シュライク

シン専用機。
基本的な武装は通常のM1と変わりないが、全体的に改良が加えられ、通常のM1を遥かに上回る性能を持つ。
インパルスを髣髴とさせえる赤、青、白のカラーリングが特徴。
傭兵としての報酬代わりとしてシン個人に譲渡され、その後オーブ軍によって改良された。

マユ専用M1アストレイ

武装
イーゲルシュテルン
ビームライフル
ビームサーベル
飛行ユニット、シュライク

オーブ軍がマユ専用に用意したM1アストレイ。
カラーリングはジンと同じ白地に赤のライン。
基本的な性能はシン専用M1と同等。

ムウ専用ジン

武装
重突撃銃
M68キャットゥス500mm無反動砲
バルデュス3連装短距離誘導弾発射筒
ビームライフル(M1アストレイの物を使用)
ビームサーベル(M1アストレイの物を使用)

ムウ専用のジン。
カラーリングは赤紫。
基本的な性能はマユやフレイのジンと同等。





[32127] 第18話 猛特訓!~戦闘教官シン・アスカ二尉~
Name: 神無鴇人◆c2099dfd ID:7cb03caa
Date: 2012/03/16 17:34
シンSIDE

 オーブ軍に入隊した俺は特例として二尉の地位が与えられ(ちなみにマユは准尉)、MS中隊の一つで、主に十代後半のパイロットで組織された『カグツチ隊』の戦闘教官を任されるようになった(教官だから敬語は使うなと上の人間から言われた)。
「こんのぉぉーーーー!!」
「甘い!!」
 襲い掛かってくるアサギのM1を軽くあしらい、俺はそのままコックピットを撃ち抜いた。
『アサギ機撃墜、アサギチーム全滅を確認、シミュレーションを終了します』
 これで少な過ぎる、取り敢えずこれからの訓練は模擬戦がメインで決まりだな。
「うぅ…………また負けた」
「私、逃げるので精一杯で全然反撃できなかった……」
「私なんて一撃で落とされて……この前だってマユちゃんに完敗だったし」
 アサギ、マユラ、ジュリの3人はそろって肩を落とす。
「そんなに落ち込むな、3人とも少しずつではあるけど上達はしてるんだ」
 実際こいつ等、俺がオーブに来たばっかりの時は3人がかりで5分も持たなかったしな……それが今では15~20分にまで延びた。正直言ってコイツ等の成長スピードは俺がカグツチ隊の中では随一だ。
「それに落ち込む暇があるならもっと強くなるために努力しろ!戦時中は自分に優しくしてる暇なんて無いんだ!!」
「「「はい、教官!!」」」
 最近皆から教官と呼ばれ悪く無い気分だったりする…………。
しかし、最近分かった事だがオーブ軍の連中はM1の性能に酔いしれている節がある。確かにスペック的にはストライクダガーやジンを上回っているけど……こんな島国じゃ数で勝負されたら勝ち目は薄いぞ……今はシュライクがあるからまだマシだけど、これでもまだ足りない、水中戦用の機体も必要だ。防衛戦に備えて水中戦用のM1を作るようユウナさんを通して進言しておいたけど、現状でどれぐらい生産できるか…………。大体島国の兵器が陸戦兵器を基礎に作られるってどうかと思うぞ、守る気があるなら最初から空中戦や水中戦を想定しておけよ!!これだからアスハの無能は!!
防衛戦なんて起こらずに済むならそれに越した事は無いけど、たとえ起こったとしても民間人の人達を絶対に犠牲にしない!!
そのためにもオーブ軍は徹底的に鍛え上げてやる!!
「アサギは動きがまだ大振りすぎる、マユラは間合いの取り方が甘い、ジュリは反応速度がまだ遅い、3人ともさっきの戦闘での反省点を踏まえてそこを改善するぞ!」
「「「了解!!」」」



ユウナSIDE

 シン君の進言で簡易型だが水中戦仕様のM1が開発され、少数ではあるが量産化も進み始めた。
まったく彼には感心させられる、やっぱり実際に戦場を経験してきた人は違うって事か。
おかげで僕は軍事に向かないってのがよく分かったけど……まぁ、赤っ恥かく前にそれに気付けたんだ、むしろ幸運だと思わないと。
軍の戦力増強も結構進んできた、シン君の人望も厚いし(アスハ家信者は除く)、事は割と順調に運んでいる。
しかし、ウズミ様は未だに理念にこだわり続けている……参ったなぁ、このままじゃ本当に攻め込まれてしまうよ……。
ようやくクライン派と接触する目処が立ったっていうのに、オーブが滅んじゃ何の意味も無い……。
最低でも民に犠牲者は出さないようにしないと……シン君もそのために頑張ってくれてるわけだし。
そういえば最近カガリを見ないな……演習場にキサカを始めとした士官と一緒に通いつめてるっていう話だけど……何か嫌な予感が……。



ウズミSIDE

「ウズミ様!最近セイラン家は出過ぎた真似が増えています!!早々に手を打つべきです!!」
「分かっておる……そう怒鳴るな……」
 私はキサカの怒鳴り声に顔を顰める。この男、頼りになるのだが熱くなると少しうるさくなってしまう所がある……。
「それにあのシン・アスカとかいう小僧、裏でセイラン家と繋がってるという噂もあります、このまま野放しにしてよろしいのですか?」
 セイラン家か……奴等の言う事も解らん訳ではないが……しかし奴等の考えは理念を捨てる事に他ならない、理念無くして国は無い、オーブがオーブであるためにも理念を捨てる事は絶対にあってはならんのだ!!
「う、ウズミ様!」
 突然士官が部屋に入ってきた。
「どうした?」
「か、カガリ様がシン・アスカ二尉と決闘を……」
 あの馬鹿娘が……。



シンSIDE

 目の前でカガリの馬鹿が仁王立ちしてやがる……。
「シン・アスカ!今すぐ私と決闘しろ!!」
 訓練中に急にしゃしゃり出て何を言い出すかと思えば……あ~あ、皆呆れ顔でこっち見てるよ(カガリの取り巻き士官は除く)。
「このクソ忙しい時に何言ってんだカガリ様は……」
「いくらなんでもKYすぎるわよねぇ……」
「アスハ家も地に落ちたんじゃねぇか?」
「そういえば私達の訓練時間外に演習場でこっそり訓練してたらしいわよ、カガリ様」
 はい、周りから小声が聞こえてきます。アスハの株は大暴落(笑)。
「はぁ~~、お兄ちゃん、私が代わりに闘ろうか?」
「いや、いいよ……ちょっとコイツの腕、見てみたいからな」
 マユが気を遣って言ってくれるが俺はそれを断った。前から一度コイツの実力を確認しようと思っていたし、丁度いい機会だ。



数分後、シミュレーションルーム

 俺とカガリのM1が相対する。ルールは簡単、先に相手を戦闘不能にした方が勝ち。
「貴様にこれ以上デカイ顔はさせないぞ、シン・アスカ!」
「御託はいいからさっさと来てくれませんかね、姫様よ」
「コイツ!!」
 カガリのM1がビームライフルを撃ってくる。
「見え見えだ」
 楽々回避、カガリは続けて二発三発と撃ってくるがどれも全くの無駄。反応は良いが狙いは甘いし予備動作も大きい。
「クソ!!何故当たらない!?」
 ヤケクソ気味にライフルを連射するカガリ、甘かった狙いが余計甘くなる。
狙って撃つからダメなんだよ……。
俺は早撃ちの要領でカガリのM1のライフルを破壊する
「うわっ!?」
「狙うと同時に撃つ……せめてこれくらい出来るようになれ」
「クソッ!なめるなぁぁーーーー!!!!」
 カガリのM1がサーベルで我武者羅に切り掛かってくる。だがこれもダメ、動きが大振りすぎる。
「隙だらけだ」
「な!?うわああああ!!!!」
 一発でコックピットを貫いて瞬殺。俺の勝利となった。
やっぱり大した事無いな……反応速度は悪くないがパイロットに必要な冷静さと操縦技術が決定的に欠けてる……つーか本当に実力があるなら前世でもI.W.S.Pパックを使いこなせているだろうし、大体こいつが生き残れたのって機体の性能が良かったからだろ、ストライクルージュとかアカツキとか……もしコイツがM1やムラサメで出撃したら高確率で死ぬな。
「クソ!!こんな簡単に……なんでお前なんかがこんなに強いんだ!?」
 強くて当たり前だ、こちとら道楽でやってるんじゃない、俺達はこの国に暮らす人達を守るっていう役目があるんだ、弱くて務まるわけが無いだろ。
「用が済んだならさっさと帰ってもらえませんか?こっちも暇じゃないんで……」
 それだけ言って俺はその場を去ろうとしたが……。
「待て!もう一回勝負しろ!!今度は今みたいな小手先だけの戦い方ではなく全力で戦え!!」
 何言ってんだこの馬鹿は……負けたくせに偉そうに、ってかその小手先だけの戦い方に負けたのはどこのどいつだよ?
冗談じゃない、こんな馬鹿の相手してるだけ時間の無駄……待てよ…………。
「アサギ、マユラ、ジュリ」
「「「は、はい」」」
 突然俺に呼ばれ三人は揃って声を上げて返事をした。
「お前等誰か一人カガリ様の相手をしろ」
「「「え!?」」」
「待て!!どういう事だ!?私はお前と戦うと言ったんだぞ!!」
「落ち着いてくださいよカガリ様、コイツ等俺が訓練した奴等なんですよ」
「だから何だと言うんだ!」
 うるせぇな、一々怒鳴るなよ……。
「貴女がコイツ等の誰か一人に勝てれば、俺は貴女の気が済むまで御相手させていただきますよ」
「…………いいだろう」
 俺の提案にカガリは少し考え込み、承諾した。



マユラSIDE

 ジャンケンの結果、私がカガリ様の相手をする事になった。
『シミュレーション、準備開始します』
 うぅ……緊張してきた…………。
「マユラ、落ち着いていけば絶対勝てる相手だ、思いっきりやれ」
「は、はい!!」
 シン君……教官が応援してくれてる、頑張らないと。
「フン、すぐに終わらせてやる!!」
(ム…………)
 カガリ様の物言いに少しカチンと来る。完全に私の事を舐めている。
『スタート!』
 開始と同時にカガリ様が切り掛かってきた。
「っ!」
 危な……何とか回避できたけど……。
「喰らえ!」
 続けざまに斬撃を繰り出すカガリ様……あれ?
「動きが……見える……」
 シン君やマユちゃんのそれと違ってカガリ様の攻撃は動きが大振りで攻撃の軌道が読みやすい。
「これなら!」
 隙を突いてサーベルを繰り出す。私の繰り出した攻撃はカガリ様のM1の左腕を切り落とした。
「なっ!?そんな!?」
 驚いて隙を見せるカガリ様、それを逃さず私はコックピットをビームライフルで狙い撃つ。
「クッ!」
 カガリ様は紙一重でコックピットへの直撃を避ける、しかし完全に回避する事は出来ず機体を損傷してしまう。
カガリ様はそれから何分か粘ったけど最後は機体がボロボロになって機能を停止、私の勝利となった。



シンSIDE

「やったーーーー!!」
「マユラ凄い!」
「圧勝だったじゃない!」
 マユラ達が歓声を上げる。最近俺とマユに負け続きで自信を失いかけてた3人だったが今回のシミュレーションで少しは自信が付いただろう。
「言っただろ、皆上達してるって、良い動きだったぜ」
「はい、ありがとうございます!!」
「え!?ちょっ…………!!?!!???!?!」
 マユラに抱きつかれた……ちょっ……う、嬉しいんだけど、いきなり抱きつかれたりすると……か、顔が真っ赤になっちまう(←年頃の少年なら誰だってそうなる)。
「あ、照れてる教官可愛い!」
「誰か写メ撮って!」
 ちょっ、やめろ、恥ずかしいだろ!
「モテモテだね、お兄ちゃん」
 いやマユ、笑ってないで助けてくれ……あ、でももうちょっとこの状態でもいいかも……。
「シン君、ちょっと知らせたい事が…………ぬおぉっ!?」
 あ、ユウナさん。
「…………………ゴメン、ごゆっくりぃ!!」
「ちょ、逃げないで下さいよ、ネタは良いですから!!」
「いやぁ、ゴメンゴメン、一回やってみたくってさ、それより良い知らせだ」
 良い知らせ?まさか!?
「ようやくクライン派との会談が決まったよ」
「本当ですか!?何時になりますか?」
「明日だ、君も来てほしい」
「分かりました!」
 いよいよ明日か……。
俺は明日の事を思い描きながら気を引き締め…………。
「その写メ私にも送って!」
「あ、ずるい私にも!」
 引き締めたのはこの騒動が終わって数時間ほど経った後だった。





[32127] 第19話 再会、ラクス・クライン
Name: 神無鴇人◆c2099dfd ID:7cb03caa
Date: 2012/03/16 17:34
キラSIDE

 アークエンジェルは今、アラスカを脱出してオーブへと向かっている。
僕は捕虜の人達に今後の事を説明するために独房に来ていた。
「それにしても、捕虜を乗せたまま亡命なんて聞いたことありませんよ、まぁ、おかげでイザーク達を死なせずに済んだから良いんですけど」
 ニコルが苦笑いしながら口を開く。
「それで、オーブに行ったら誰を頼るつもりだ?聞いた話じゃ君達はアスハ家に貸しがあるし、セイラン家にコネもあるっていうけど」
「まだ決まってませんけど……多分セイラン家だと思います、アスハ家にはちょっと嫌な思い出がありますから」
 僕がそういうと皆苦笑いした。
「それにしてもあの娘がお姫様なんてね、良い所出のお嬢様とは思っていたけど」
 アイシャさんが懐かしむように呟く。
「でも良いんですか?僕達ザフトにそんな事話して」
「ああ、大丈夫、彼女の父親のウズミ・ナラ・アスハはその件の責任とって辞任してるから」
 それでもカガリは色々と騒いでるんだろうなぁ~~(←正解)。
明日の昼にはオーブに到着するけど、シンは今頃どうしているだろうか…………。



アサギSIDE

 シン君(訓練時以外は基本的に名前で呼んでいる)から課せられた朝練を終えて、私、マユラ、ジュリとマユちゃんを加えた4人は食堂に集まっていた。
「やっぱりシン君が居ないといつもより訓練の質が落ちるわね」
「うん、やっぱりあの子が相手じゃないとなんか物足りないって感じで」
 私の感想にジュリが同意する。
「私も砂漠でお兄ちゃんとキラさんがカガリ様に買い物に付き合わ(拉致)された時は本当に退屈だったもん、訓練もいまいちだったし」
 マユちゃんが嫌な事を思い出したように呟く。
「やっぱり強い相手が居るからこそ強くなれるのよね……どうしてあんなに強いんだろ?」
 マユラが今更な疑問を口にするが確かに凄く気になる。
「やっぱり天才だからじゃない?」
「う~ん、あの子ってなんか天性の才能というより叩き上げって感じがするのよねぇ……マユちゃんは何か知ってる?」
「ううん、全然…思い出してみればお兄ちゃんって急に天才って呼ばれるようになったから」
 へぇ~~、そうなんだ。じゃあやっぱり天才って事?う~~ん、分かんない。
思えばあの子が軍に来たばかりの時はビックリしたわ……。


数日前、アークエンジェルオーブ上陸直後

「今回貴官等の戦闘指導を任されたシン・アスカです」
 目の前で敬礼する人物を見て私達は顔を見合わせる。その少年はどう見ても十代前半……自分達より年下の子だ。
シン・アスカの名前は天才少年で有名だから知ってはいたけど……。
「まず、皆さんのシミュレーション結果を見てみたけど、ハッキリ言って全然ダメです、今の皆さんの実力じゃ実戦に通用しません」
「待ってください!何でシミュレーション結果だけでそんな事が分かるんですか?」
 開口一番に自分達の実力を否定されたのに怒りを覚えた私は反論した。
「ではこれをご覧ください」
 そう言ってシン君は手元の端末でモニターにグラフを映し出した。
「これは貴官等カグツチ隊の能力を平均化した数値です、次にこれを……」
 モニターに映るグラフの数値が上昇する。
結構高いわね…これ誰の?
「これはアフリカ戦線で初戦闘を経験した直後のフレイ・アルスター軍曹のデータです」
 う、嘘……これが初戦闘?
「オーブの主力機であるM1アストレイの性能は非常に良い、今の貴方達でもジン程度なら互角以上に渡り合えるでしょう、ですがオーブは島国です、数で勝負されたら勝ち目は薄い、つまり互角ではダメなんです、戦術、各パイロットの高い能力が備わって初めてオーブを守ることが出来るんです!よって自分の課す訓練は基礎能力の徹底的な向上と戦術を叩き込むことに重点を置きます」
 その後いくつか細かい説明を受け、私達は個人の実力テストとしてシミュレーションを行う事になった。

「よし、始めるぞ……これから俺は敬語は使わない、かなり厳しい事も言うが覚悟しておいてくれ、まずアサギ・コードウェル、マユラ・ラバッツ、ジュリ・ウー・ニェンの三人」
 シン君はシミュレーターを起動させ、準備に入る。
「いきなり三対一って……絶対私達の事舐めてるわよね……」
 ジュリが小声で話しかけてきた。しかも思いっきり不機嫌な表情で……まぁ、私もそうだけど。
「最初っから本気で行くわよ」
 私の言葉に二人は頷き準備に入る。
『スタート!』
 開始と同時に得意のフォーメーションでシン君のM1を狙い撃……。
「遅い!!」
 え?
「キャアア!!」
『ジュリ機、撃墜』
 シン君のM1は回避しながらジュリ機に急接近し、そのままビームサーベルでジュリのM1を真っ二つに切り裂いてしまった。
「は、速い……」
 私が呆然としているとシン君はライフルで私を撃ってきた。
「!!」
 だけどこれは機体の肩を掠めただけ……いや、ワザと外したんだ。
「驚いている暇なんて無いぞ、ボーっとしてたらタダの的だ」
「クッ!?こんのぉーーーー!!!!」
 私とマユラはライフルを連射して攻撃するがどれも悉く回避されてしまう。
「嘘……全然当たらない……」
 マユラが呆然と呟く。当然だ、私だって驚きを隠せないんだから……。
「呼び動作が大きすぎる、動きが丸分かりだ」
「わあああああああああ!!」
 シン君のM1のライフルがマユラ機のウイングを撃ち抜き、マユラは悲鳴を上げて落下。
「!……いけない!!」
 私はシン君を牽制しながらマユラのM1を抱き止め、着地した。
すぐさま体勢を立て直して反撃に移るが、シン君はいつの間にか私に接近し、私とマユラのM1を瞬く間に切り裂いてしまった。
『アサギチーム全滅を確認、シミュレーションを終了します』
 ま、負けた……完全な敗北だった。

 カグツチ隊全員がシミュレーションを終えた時には全員が意気消沈していた。
結果は全員完敗、自分達が井の中の蛙という事を思い知らされた。
「お前等今まで何学んできたんだ?こんなんでオーブを守れると本気で思ってるのか?」
 シン君の的確で容赦ない言葉が突き刺さる。
「アサギ」
「は、はい!」
「お前は隙が多すぎる、もっとコンパクトに動け」
「はい……」
 うぅ……年下の子に思いっきり説教されちゃった…………。
「だが落下する味方をすぐに助ける判断、アレは良かった」
「え?」
 ほ、褒められた……。他のメンバーも叱責を受けるが褒められるべき所は褒められている。
「全員基本はしっかりしてるんだ、これから徹底的に鍛えるぞ!!覚悟しておけ!!」
 檄を飛ばすシン君を見てビックリしてしまう。
シン君は今までの無愛想な表情ではなく気風の良い笑みを浮かべていた。
しかもさっきまでのギャップの所為で結構可愛く見えて…………って、何考えてんのよ私!?年下相手にときめいちゃったじゃない。
「「「了解!!」」」
 取り敢えず大声で返事して誤魔化した。…………あれ?マユラとジュリも大声で返事して?
「ふ、二人とも……」
「あ……アサギも……」
 あはは……二人とも私と同じってワケ……。
そんな感じに私達とシン君は出会ったのだった。


「でもシン君がいないとやっぱり少し寂しい……」
 マユラが小声で呟いたのを私は聞き逃さなかった。
「え?マユラ、今なんて?」
「な、何でもない!何も言ってないから!」
 慌てて反論してるから余計怪しい……やっぱりマユラってシン君の事を意識してるのかしら?
実際この前も抱きついてたし…………あぁ、あの時の照れてるシン君の顔、可愛かったなぁ……。
あ、あれ?何故か考えがずれちゃう……。



マユSIDE

 アサギさん達とお兄ちゃんの事を話しながら私はキラさんやフレイ達の事を考えていた。
脱出できたから良いものの、味方に殺されかけるなんて…………ブルーコスモスの奴等は人の命を何だと思ってるの!?
お兄ちゃんやユウナさんは皆がココに亡命してくるだろうって言っていたけど…………ニコルさんもアークエンジェルにいるのだろうか?
どうか皆無事でいて…………フレイもキラさんも私の大事な友達だから。



シンSIDE

 俺は今、外交官(セイラン家の子飼い)と共にプラントのクライン邸に来ている(ちなみに俺は名目上、外交官の護衛だ)。
シーゲルとの挨拶もそこそこに俺はラクスと再会した。
「お待ちしてました、シン」
「お久しぶりです……えっと、やっぱりココじゃ敬語の方がいいですか?」
「いえ、前と同じ様にしてください、ココじゃ何ですし、お庭の方でお話しませんか?」
 穏やかに笑いながらラクスは俺を庭へ案内した。
「ハロ、ハロー、ハロ、ラクス、ハロ」
 庭に着いた俺を出向かえたのは前回のピンクと違う白いハロだった。
「前のピンクのはどうしたんですか?」
「ああ、それならこの子ですわよ」
 そう言いながらラクスは白のハロを抱える。
「ピンクちゃんは変態……いえ、アスランが作ったものですので一度は捨てようと思ったのですが……考えてみればピンクちゃんに罪はありませんので、AIをこっちの白ちゃんに移植しましたわ」
「そうか……運がいいなコイツ、キラの奴はアスランから貰った鳥公を突っ返したってのに」
「まぁ……うふふ」
 いや、そこで笑うなよ。
「所で、ヅラの奴とはもう婚約破棄を?」
「当然ですわ♪今頃はビクトリアの激戦地で大変な目に遭っている事でしょう」
 やっぱり破棄してたか、そりゃそうだな……アイドルの婚約者がホモとかシャレにならないし。
それにビクトリアか……あそこって確か連合の奴らが猛威を振るったとかアカデミーで言ってたな、こりゃアスランの奴死ぬかもな。
「まぁ、あの馬鹿の話はここら辺にして、プラントの情勢はどうです?」
「ええ、今は……」
 まずはお互い近況報告だ。
ラクスが言うにはどうやらプラント評議会の方でも強硬派勢力が大半を占めており、ザフトはNJCを開発したとの事だ。
そしてアラスカのサイクロプスで結構な数の人間が死んだ事も……。
「アークエンジェルの人達のおかげで多くの人が助かりましたが……正直言うと、悔しいですわ」
「どうして?」
「だって、近くに信頼できるパイロットの方でもいらっしゃれば、フリーダムを預けてより多くの人の命を救えたでしょうに…………」
 成る程ね。まったくコイツは…………。
「何様だよ?アンタ」



ラクスSIDE

「何様だよ?アンタ」
「え?」
 いきなり諫められて思わず私は間の抜けた返事をしてしまった。
「アンタの考えや志は立派さ…だけどな、そんな真似すればアンタもアンタの周りも無事じゃすまない、アンタは自分の行動で周囲の人にどれだけ迷惑掛けるか考えた事はあるか?」
「それは……」
 考えた事がある……と言えば嘘になってしまいますわ。
「アラスカ攻めは失敗している、もしアンタがフリーダムを使って介入していたら、アンタもシーゲルもスパイ容疑で拘束、最悪死刑だってありえる」
「そ、そんな事は……」
「無いとは言い切れない、アラスカ攻めにはそれだけの意味がある」
 反論できなかった、シンの言葉の一つ一つが納得できるものだったから……。
「アンタは分かってないかもしれないが、一度戦争に深く関わったら最後まで逃げる事は許されない、最後ってのは終戦って訳じゃない、戦後の後処理を含めて全てが片付いて初めて終わるんだ……アンタ、この戦争に最後まで付き合う事が出来るのか?政治も碌に知らない今の状態で」
 シンの言葉が次々と私に突き刺さってくる、確かに私は政治学を深く学んだ事は無い、せいぜい齧った程度の知識があるだけ…………。
「俺も人に説教できるような立派な人生は送ってない、仲間に迷惑を掛けた事もあったし、また同じ事をしてしまうかもしれない、だけど自勝手な正義だけで人を殺すような人間にだけはなりたくない…………それはラクス、アンタにもそうであってほしいと思ってる…………アンタがこの世界を平和にしたいと思うなら、まずは政治を学べ、アンタはあくまで歌姫で政治家の娘なんだ、アンタにしか出来ないやり方だってある、それを見つけて欲しいんだ」
 シンは熱意と優しさを持って私を論する。
彼の言葉に応えるべき、私は本心からそう思った。
「はい」
 私は強く、しっかりと頷いた。
自分が歩む道を新たにもう一つ見つけた………そんな気分だった。



シーゲルSIDE

「連合の方は既に穏健派と連絡が取れています、向こうも前向きに検討しています……」
「うむ……少し時間を貰いたいのだが……」
 オーブからの使者から出された案は確かに悪くないものであった。たしかにその案ならこの戦争を理想的な形で止める事が出来るだろう。
しかし……それは強硬派の者達を切り捨て……いや、裏切る事になる……少なくともパトリックの事は確実に裏切る事になるだろう。
「猶予はどれ程に?」
「いつまでも……という訳にはいきませんが、多少でしたら」
 私の問いに外交官は淡々と答える。
「分かった……一週間以内に返事をしよう」
「ありがとうございます」



シンSIDE

 外交官とシーゲルの会談が終わり、俺はオーブに帰る準備をしていた。
「今日はありがとうございます、久しぶりに有意義なお話が出来ました」
「そう思えてもらえたら、こっちも来た甲斐があるよ、それにしても久しぶりに有意義なって、普段から誰と話してんだ?」
「オーブからのお客様はマルキオ様だけでしたので…………」
 ?……何かラクスが苦々しい顔になった。マルキオってキラが言ってた盲目の導師だよな?
「何か嫌な思い出でも?」
「ええ、シンはSEEDというものを知ってますか?」
「ん、ああ、名前ぐらいは……」
 実際俺もキラも持ってるし……気に喰わんがアスランとカガリの奴も……。
「以前……まだアスランと婚約破棄する前の話なんですが……マルキオ様は『SEEDを持つ者によって世界は導かれる』と……」
 何その電波発言?
「そしてアスランがSEEDを持つ者とも仰りました……でも考えても見てください、マルキオ様の考えが正しいとすればアスランが世界を導くという事に…………」
 うげ…………さ、最悪過ぎる。
「そ、それ……すっげー嫌だ」
「私もです……だからこそあの人の考えに疑問が湧いて…………」
 そりゃそうだろうなぁ…………俺からしてみれば狂戦士(バーサーカー)が世界を導くとは思えないし、SEEDなんて便利な道具でしかない。
「まぁ、あんまり気にするな」
「はい、ありがとうございます」
 そうしている内に迎えの車が来て、俺はそれに乗り込んだ。
「じゃあな、頑張れよ、ラクス」
「はい、シンもお元気で、マユにもよろしくお伝えください」
 優しい笑みを浮かべながら手を振るラクスに見送られ、俺はオーブへの帰路に着いた。



シーゲルSIDE

 私はプラント評議会議長、パトリックの執務室を訪れていた。
「何用だシーゲル?」
 邪魔者でも見るかのようにパトリックは威圧的な視線を送ってくる。
「一つ、聞きたいことがある……もし、血のバレンタインを引き起こした者や連合の過激派連中を燻り出す事が出来れば、お前はそいつらだけを討って満足できるか?」
 僅かな望みを賭け、私はパトリックに問う。
「何を今更、その程度の連中を潰した所でナチュラル共が大人しくしているわけがなかろう」
「和平出来るとは思わんのか?」
「何を馬鹿な事を……和平した所でナチュラル共は我々を妬み、また同じ事を繰り返すだけだ、そういう下劣な連中だろう、ナチュラルというものは」
 やはりか……心の中に諦めと失望の入り混じった感情が生まれるのを感じる。
「用はそれだけか?」
「ああ、邪魔したな」
 最早パトリックにプラントの民を任せる訳にはいかん。私はその場を後にするのと同時にオーブの案を受け入れ、自らの罪を償う事を決意した。





[32127] 登場人物紹介 その2
Name: 神無鴇人◆c2099dfd ID:7cb03caa
Date: 2012/03/16 17:36
シン・アスカ
主人公その1。
傭兵としてアークエンジェルに協力していたが、オーブ上陸後はオーブに残り、軍に入隊。
キラとはかつての宿敵同志だが、共に戦う内に過去の因縁を乗り越え、今では堅い友情で繋がった戦友となる。
現在はオーブ軍二尉としてカグツチ隊の戦闘教官を担当。
マユとフレイにレクチャーした時の経験を活かし、アサギ、マユラ、ジュリを始めとした多くのパイロットを成長させている。

キラ・ヤマト
主人公その2。
アークエンジェル所属のパイロット。
アラスカにて自らの想い人であるフレイに自分が未来から来たことを告白。フレイはそれを知りながらもキラを許し、その傷ついた心はようやく救いを得る。
現在は仲間と共に連合を脱走し、オーブへ向かっている。

フレイ・アルスター
アフリカ戦線にてパイロットとしての適正があることが判明。ザフトへの復讐のためパイロットに志願する。
恐怖心からコーディネイターを激しく嫌悪していたが、戦いの中でコーディネイターへの恐怖心は薄れ、偏見や嫌悪感も無くなり始め、険悪な関係だったマユとも和解する。
アラスカにてキラの過去を知るが、それを知りつつもキラを受け入れ、キラの心を守る事を決意する。
砲撃戦(特に狙撃)が得意。

マユ・アスカ
シンの妹。
シンを助けたいという思いからパイロットに志願する。
当初はブルーコスモスへの嫌悪からフレイとの仲は最悪だったが、戦いを通じて競い合いっている内に嫌悪感はライバル意識に変化し、砂漠での戦いでフレイに助けられた事をきっかけに和解。
以後はフレイと親友になり、コンビで活躍するようになる。
ニコルから想いを寄せられ、その事には気付いてないが、捕虜になった彼を心配している。
現在はシンと共にオーブに残り、軍に入隊。オーブ軍准尉としてシンの補佐を担当し、アサギ達とも仲良くなっている。
格闘戦が得意。

ニコル・アマルフィ
クルーゼ隊の一員。
オーブ近海にてアークエンジェルの出航直後を狙って攻撃するもシンに敗れ、アークエンジェルの捕虜になる。
オーブに潜入した際に偶然出会ったマユに一目惚れし、自分達がヘリオポリスを攻撃したせいでマユを戦争に巻き込んでしまった事を知り、その事に罪の意識を感じている。

アサギ・コードウェル
カグツチ隊の一員でM1三人娘のリーダー格。
教官であるシンを最初の内は軽視していたが圧倒的な実力を目の当たりにしてシンに対する認識を改め、シンのことを意識し始める。
その後シンの指導により実力は大幅に上がり、さらなる成長が期待される。

マユラ・ラバッツ
カグツチ隊の一員。
アサギ同様シンを意識している。
シンの指導により実力は大幅に上がり、シミュレーションではカガリに圧勝する活躍を見せる。

ジュリ・ウー・ニェン
カグツチ隊の一員。
シンとの初戦闘では瞬殺されるものの、現在はシンの指導を受け、着々と実力をつけている。
シンの笑顔に動揺する所を見る限り他の二人と同様シンを意識している節がある。

ムウ・ラ・フラガ
アークエンジェルの戦闘員。
アラスカ脱出時に少しだけ出番があった。

アンドリュー・バルトフェルド
『砂漠の虎』の異名を持つザフト軍の士官。
砂漠でキラに敗れ、愛人のアイシャと共にアークエンジェルの捕虜になる。

ラクス・クライン
シーゲル・クラインの娘でプラントの歌姫。
アラスカでの戦いで自分が何も出来ない事を歯痒く思っていたが、シンに論され、平和のために自分に出来る方法を模索する事を決意する。

アスラン・ザラ
元クルーゼ隊の一員。別名『変態凸ハゲホモ』。
イージスを破壊された責任で緑服に降格。さらにはビクトリアの激戦地に飛ばされてしまう。
キラに恋愛感情(同性愛)を抱いており、キラ限定ではあるがMの兆候も見られる。
キラからは完全に見捨てられているが、アスラン自身はキラがシンと地球軍に騙され、奪われたと思い込んでおり、シンやフレイを激しく憎悪している。

カガリ・ユラ・アスハ
オーブの首長、ウズミの娘。
ザフトへの漠然とした怒りと反感から自分の立場のも理解せずにレジスタンスに参加。バルトフェルドとの決戦後は無理矢理アークエンジェルに同行する。
人間的には善人で正義感は強いのだが現実を全く見ず、視野も狭いため、自分が正しいと信じて疑わず、最早その正義は独善に等しい。
シンに自分の正義を悉く否定され、それが原因で逆恨み同然に苛立ちを募らせ、行く先々で余計な騒動を引き起こしては味方に損失を与えるためアークエンジェル内では害虫同然に見られていた。
オーブ帰還後も懲りずに騒ぎを起こし、一般兵にさえ呆れられる始末。
前述の通りシンとの関係は最悪すら通り越しているため、シンに対しては憎悪に近い感情を抱いている。
自分がいずれ国のトップに経たなければならない人間であるという自覚も薄く、キラも既に(政治家としては)見限りつつある。

イザーク・ジュール
クルーゼ隊の一員。
オーブ近海での戦いでフレイ達にやられかけるがニコルの決死の援護で難を逃れる。
捕虜になったままのニコルの身を心配している。

ディアッカ・エルスマン
クルーゼ隊の一員。イザークの相方的存在。
アラスカでの戦いにて基地の自爆に巻き込まれかけるが、ニコルの呼びかけにより難を逃れる。

ユウナ・ロマ・セイラン
オーブ五大氏族の一つであるセイラン家当主ウナト・エマ・セイランの息子。
政治家としては、軍事と外交は並以下だが内政の手腕は中々のもの。
戦火の拡大とアスハ家の不干渉を貫く姿勢を危険視しており、戦争の早期終結を目指し、プラントとのパイプ役としてラクスに面識のあるシンをオーブ軍に勧誘する。
権勢欲はあるものの国を焼いてはならないという確固たる考えを持ち、アスカ兄妹との関係は良好。

レドニル・キサカ
オーブ軍一佐。カガリのお目付け役。
根っからのアスハ家信者でオーブを正しく導くことが出来るのはアスハ家の人間しかいないと信じており、理念に反対するセイラン家やシンを徹底的に嫌悪している。

ウズミ・ナラ・アスハ
オーブ首長(現在は辞任している)。
オーブの理念に徹底的に拘る確固たる信念の持ち主ではあるが政治家としては二流としかいえない。





[32127] 第20話 オーブ防衛戦・前日
Name: 神無鴇人◆c2099dfd ID:7cb03caa
Date: 2012/03/16 17:37
キラSIDE

 オーブに亡命した僕達はセイラン家を始めとしたオーブ上層部の人達に出迎えられ、広間に案内された。
「よう、無事だったか?」
 広間で待っていたのはシンとマユちゃんだった。
「シン、マユちゃん!」
 僕達はお互いに再会を喜んだ。それから少しした後は当然お互いに情報交換だ。
「そうか……フレイに話したのか」
「まぁね……シンの方はどう?こっちの戦力の方は強化できた?」
「多分な」
 シンが言うには機体の方は早い段階で進言してほぼ問題なしとの事だ。
しかしパイロットの方は……
「カグツチ隊……俺が担当している部隊なんだが、あいつ等はかなり腕を上げたから問題ない、他の部隊もライバル意識燃やして全体的な能力の平均値は上がっている……ただ、問題は…………」
「アスハ家?」
「大正解」
 やっぱりか…………。
軍内にもアスハ家の信奉者は結構いるわけで…………そういった人達がアンチアスハであるシンの事を色々と敵視して『アスハ家の気高い理念を理解できぬ小僧の教えなどが役に立つものか!!』とか言いだして、今やオーブ軍はシンに友好的な勢力と敵対的な勢力に割れてしまっているらしい。
どうやらカガリがシンに決闘挑んでメタクソにされたのが決定的だったらしい。
「別に俺を敵視するのは構わないんだけど、あの連中は足手纏いになりかねない」
 それだけ実力差が開いてしまったって事か…………。
「まぁ、戦力の事は置いといて、連合やザフトとの交渉は?」
「順調だぜ、今の所な……ロゴスの中にも穏健派は居るみたいだし、そいつ等からしてみればこれ以上の戦争は経済的にも政治的にもヤバイから止めて欲しいって話だ」
「ザフトの方は?」
「こっちも順調、というか2時間前までそこに居たからな、シーゲル・クラインは少し迷っていたみたいだけど、現状ではパトリックをどうにかしないと和平は無いからな、こっちの案に乗らざるを得ないって感じらしい」
「だとすると最後の問題は……やっぱり……」
「ああ、これもアスハ家だ」
 だろうね…………不干渉を掲げるアスハ家がこんな事認める訳が無い。
「最悪、政界から退場してもらう必要がある…………悪いな、一応お前にとって縁のある相手だけど」
「いや、構わないよ…………」
 国民の人達を理念の為だけに犠牲にする訳にはいかない…………。
それに今のカガリに国という物はまだ重すぎたんだ……政治から離れた方が彼女のためかもしれない…………。
「ただ、カガリ達の命だけは……」
「分かってるさ」
 カガリ…………ゴメン。



シンSIDE

 キラと話し終え、その日はキラ達と宿舎で寝泊りする事になった。そしてその夜、ユウナさんから電話が掛かってきた。
「もしもし、シン君?僕だけど今いいかな?」
「はい、何ですか?」
「実は良い知らせと悪い知らせ、すごく悪い知らせがあるんだけど、どれから聞きたい?」
 良いのが1つで悪いのが2つか……ちょっと落胆。
「じゃあ悪い知らせとすごく悪い知らせから、デザートは取っておく方なんで」
「分かった…………まず悪い知らせだけど、今日の会議で和平推進案を具申してみたけど、ダメだった……速攻で却下されたよ、理念がどうこう言われてね…………」
「そうですか……」
 まぁ、アスハに端っから期待なんてしてなかったけど、これでアスハ家には(政界から)退場してもらうしかなくなったな。
「で、すごく悪い知らせってのは?」
「うん、これは明日には軍全体に広がる話だけど、連合軍の艦隊がこちらに向かっているって情報が入った、明後日にはこちらに着くらしい、狙いは恐らくマスドライバーとモルゲンレーテだろうね」
 やっぱり来たか……。
「マスドライバーだけ使わせてさっさと宇宙に上がってオーブから離れてもらおうっていう妥協案も出したんだけど…………」
「またアスハに却下されたと?」
「ああ、臆病者は黙っていろってね……これでもう戦いは避けられなくなった、和平前の戦闘は避けたかったけど」
 アスハの野郎、こんな時まで理念理念か……クソッたれが…………。
「いや、面目ない……」
「謝らないでくださいよ、ユウナさんが悪い訳じゃないんだから」
「そう言って貰えると嬉しいよ、避難路や確保シェルターのと準備はキッチリ準備しておく、君は部隊の方をベストコンディションにしておいてくれ」
「了解です」
 決戦は明後日か……。
「次に良い知らせだけど、少し前に両陣営の穏健派から連絡が入った、両方ともOKだってさ」
「本当ですか!?」
 そうだとすれば目的達成まで後もう少しだ!!
「ああ、上手くいけば明後日の戦いの増援も期待できるかもしれない、まぁ高望みは出来ないけどね」
 それでも全然良い、ようやく希望が見えてきたんだ。
「これは絶対に負けられませんね……」
「ああ、お互い頑張ろう」
「はい!ではまた……」
 そう言って俺は電話を切った。
必ず勝ってみせる!そして守るんだ!!オーブの為ではない、この国に暮らす人々を絶対に守るんだ!!



翌日

 俺はキラ、マユ、フレイと共にカグツチ隊の訓練場に来ていた。
明日の戦いに備えて今回は軽い訓練だけだが、それでもやるとやらないじゃ大違いだからな。
今回は俺達が戦ってきたザフト軍の実戦データを基にしたAIとシミュレーションで対戦だ。これで全員に上達したという実感と自信を付けさせる。
一番手はアサギ、マユラ、ジュリの三人だ。
『シミュレーション、準備開始します』
「全員思いっきりやれ!落ち着いていけば絶対に勝てる!!」
「「「了解!!」」」
 三人が威勢良く返事を返す。これなら大丈夫だろう。
「しっかりやれよ、一番成績が良かったチームにはラーメン奢ってやるからな」
 何故かその場の勢いで教官風を吹かしてしまった…………。
「結構似合ってるじゃん」
「へっ、そりゃどうも」
 キラが珍しく茶化し、俺はそれを冗談交じりで返した。



ジュリSIDE

 シン君から檄を飛ばされ、私は少し緊張しながらも準備に入る。
「ねぇ、成績良かったらラーメン奢ってくれるって事は……捉え方によってはデートって事よね…………」
 アサギが小声で話しかけてきた。
あの子ってロウとは違う意味でワイルドな感じがするのよね…………シン君とデート……悪くないかも。
「絶対勝つ……」
 マユラがすっごく小さい声で呟いていた。もう既に臨戦態勢って感じ。
「よ~し、行くわよ!!」
『スタート!』
 開始と同時に多数のジンとシグーが現れ、こちらを攻撃しようとしてくる。
「こんな攻撃!」
 今まで戦ってきたシン君の攻撃と比べると全然遅いし動きも読みやすい。
機体の性能さもあって私はすぐさま反撃に移りこれを撃破した。
「いける!これなら!!」
「うん、絶対勝てる!!」
「一気に決めるわよ!!」
 そこから先は私たち3人の独壇場だった。元々連携が得意だった私達は次々と各個に敵を落とし、最後に残ったシグーは同時攻撃で仕留めた。



キラSIDE

 正直言って驚いた。カグツチ隊の戦闘力は前回上陸したときと比べ見違えるほど成長していた。
特にアサギさん達の成長ぶりには目を見張るものがある。
前世では僕から見てもカガリと同等程度の実力しかなかった彼女達だけど、今では比較にならないほど強くなっている。
「すごいね、彼女達」
「うん、前は1対3でも勝てたけど、今はもうそうじゃないし……お兄ちゃんもアサギさん達の成長速度はすごく良いって言ってたよ」
「やっぱりシンって教え上手よね、私やマユの時も良い教え方してたし」
 シン…君将来は絶対教官になった方が良いよ



マユラSIDE

「じゃあ結果発表だが、一番成績優秀なチームは……アサギ、マユラ、ジュリ、お前達だ」
 よし!!シン君とのデートゲット!!!!
しかし私のそんな喜びも束の間、シン君は表情を厳しくした。
「今日はココまでだ、全員もう知ってると思うが、恐らく明日……連合軍…いや、ブルーコスモスの連中が攻めてくる」
「「「!!」」」
 やっぱり今朝から流れてる噂は本当だった……。
「間違いなく明日は実戦になる筈だ、全員覚悟を決めておくように」
 カグツチ隊の中に不安な空気が流れる、実際私も不安だ。
「落ち着け!!」
 しかしその空気はシン君の一喝で吹き飛んだ。
「いつか戦わなきゃいけないってのは全員覚悟していた事だろ!その為に全員訓練してきたんだろうが!!」
「「「………………」」」
「絶対勝てる……なんて無責任な事は言わない、だけど全員そう簡単にやられるようなやわな腕じゃない、そうだろ?」
「「「はい!!」」」
 シン君の檄に応えるため、私達は大声で返答する。そうだ、私達はオーブを守るため、この戦争を生き抜くために訓練してきたんだ。
「明日に備えて今日はゆっくり休め!俺達カグツチ隊の力、ブルーコスモスの馬鹿共に見せ付けて攻め込んできたことを後悔させてやれ!!!!」
「「「了解!!」」」
 より一層大きな声を出しながら私達はシン君に向かって敬礼した。
やっぱり格好良いな……初めて会った時は生意気な子だと思ってたけど……。
シン君はすごく強くて、その上実直で私達全員をしっかり見て、自分にも他人にも厳しくて、それでいて優しい。
最初はシン君に負けたのが悔しくて我武者羅に訓練していたけど、カガリ様に圧勝して初めて自分が強くなったって実感して………それがすごく嬉しくて思わずシン君に抱きついちゃって、はは……完璧に惚れちゃったわね…………。



シンSIDE

訓練の後、俺はアサギ達と一緒に約束通り近くのラーメン屋まで足を運んだ(何故かキラ達にまで奢る事にもなってしまった……)。
ラーメン屋に入った俺達は適当に近くのテーブル席に座り、店員にそれぞれ注文する。
やがて美味そうな匂いを漂わせながらラーメンが運ばれてきた。
「ねぇシン君」
「ん?何?」
 ラーメンを食ってると隣に座っているマユラが声を掛けてきた。
「シン君って彼女とか居る?」
「ブッ!!?!!!??!?!!??ゲホッ、ゲホッ……な、何を!?」
 いきなりとんでもねー事を聞かれ、俺は思いっきり咽てしまった。
つーか、他の奴らは何故かこっちに興味津々だし…………。
「あはは、ゴメンゴメン……で、結局どうなの?好きな娘居るの?」
「そ、そんな事聞かれても……」
 ……思い浮かんだのはルナとステラ…………でも、ルナの場合、傷の舐め合いって感じだったし、ステラはマユとダブっていたって感じだから…………。
「近いのは昔居たけど……今は特には…………」
「じゃあ今はフリーって事ね…………(よし、チャンスは十分ある!!)」
 それからは誰も追求してこなかった…………???…………何だったんだ一体?



 まぁ、そんなこんなでラーメンを食い終えた俺達は帰路に着いた。
軍港に停泊しているアークエンジェルに寝泊りしているキラ達とは既に別れ、俺とマユはアサギ達と一緒に歩いていた。
「あのさ、シン君」
「何だ?」
 歩きながら突然アサギが声を掛けてきた。
「ありがとね…………今まで色々と教えてくれて」
「別に礼言われるような事じゃねぇよ」
「そんな事無いよ、シン君が指導してくれなきゃ私達弱いままだったし……明日の戦いに自信を持つ事も出来なかっただろうし」
「そ、そうか?」
 なんかそういう風に言われると何だか照れてしまう。
「お兄ちゃん顔真っ赤だよ♪」
 マユがニヤニヤしながらこっちを見てる。
「あはは、やっぱり普段の表情(かお)も良いけど、シン君こっちの顔も似合ってるよ、可愛いし」
 ジュリが笑いながら俺の顔を見る。……可愛いって、なんか微妙に嬉しくない褒め言葉だな。



アサギSIDE

「じゃあ、私達こっちだから、また明日ね」
「ああ、またな」
 やがて分かれ道に入り、私達はシン君達と一度別れた。
「あのさ、アサギ、ジュリ…………アンタ達もシン君の事好きなの?」
 マユラは急に立ち止まって率直に訊ねてきた。やっぱりマユラも……。
「……まぁね、ジュリもでしょ」
「うん」
 やっぱ格好良いしそれに可愛いしね。
「やっぱりね…………でも、負ける気は無いから」
「上等……誰が勝っても恨みっこ無しね」
「望む所よ」
 マユラ達と争いたくは無いけど、こればっかりは譲れないから…………。



NO SIDE

 そして翌日、運命の戦いが始まる。





[32127] 第21話 オーブ防衛戦・死闘~戦乙女達~
Name: 神無鴇人◆c2099dfd ID:7cb03caa
Date: 2012/03/16 17:37
シンSIDE

 遂に来たか……。オーブに迫る連合艦隊をモニターで見ながら俺は作戦会議が終わるのを待っていた。
既に全国民の避難は終了し、取り敢えず国民に犠牲者を出す心配は無い……ユウナさんには感謝しないとな。
今は軍全体で作戦会議中だ、既にユウナさんを通じて俺やキラ達で考えた作戦を進言しておいたが、どうなる事か…………。



キラSIDE

 僕はストライクのコックピット内で出撃準備を整えていた。
「こっちは準備できたよ、フレイは?」
「こっちも大丈夫」
 ストライクルージュに乗ったフレイも準備を完了したようだ。
なぜフレイがストライクルージュに乗っているかというと話は昨日の夜に遡る。


昨夜

 シモンズ主任に連れられて僕達は格納庫へ来ていた。
「あなた達の乗る機体だけど、キラ君はいつも通りストライクに乗るとして、少佐にはシン君が自分のM1を貸すと言っていました、壊すなと伝言付きで」
「ああ、分かった」
 シンからの伝言にムウさんは苦笑いを浮かべる。
「フレイさんには、この機体に乗ってもらおうと思うんだけど」
「これ、ピンクのストライク?」
 ストライクルージュ……しかもシュライク付きだ。
「これはストライクルージュといって、ストライクの予備パーツで作られたストライクの兄弟機よ、それに貴女専用のストライカーパックも用意したわ」
 そういってシモンズ主任はモニターにある物を映した。
それはランチャーと狙撃用ライフルを足し合わせたような大型のライフルだ。
「元々は機動性に難があって廃案になるはずだったんだけど、シン君の考案したシュライクを標準装備にしてその問題点を解消した高機動狙撃型ストライカーパック、『バーストストライカー』よ、火力はランチャーストライクのアグニ以上でその上ある程度連射も利くし、スラスターを改造してるから機動性もエール並よ、それにエネルギー容量も多いし、接近戦用のビームサーベルも装備しているけどどうかしら?」
「最高です!良いんですか?私がこんなに良い機体に乗って」
 フレイ、すっごく喜んでるな……。
しかし本当によく開発したな、シュライク一つあるだけでここまで違うなんて、僕だけじゃなくシンも逆行して本当に良かったと思うよ。


 と、まぁこういう訳である。
フリーダムが無いのは痛いけど今回は前世と比べてオーブ全体の戦力が上がってるし、シュライクによる空中戦や水中戦仕様のM1もある。こっちにも十分勝機はある。ただ問題はアスハ派か……足手纏いにならなきゃ良いんだけど……。



マユSIDE

 私はアークエンジェルの独房でニコルさん達に避難してもらうために状況を説明していた。
「マユさんも戦うんですか?」
「うん、私もオーブを守りたいから」
 ニコルさんの問いかけに私は強く頷きながら応えた。
「そう、ですか…………」
「心配しないで、こう見えても私、お兄ちゃんに色々教えてもらって結構強いんだから」
 心配そうな表情のニコルさんを元気付けるように私は笑って見せる。
『パイロットは各員所定の位置へ……』
「あ、もう時間だ、じゃあまたね、ニコルさん」
「あ、はい……」
 私はニコルさん別れを告げ、格納庫の方へ向かった。



トダカSIDE

会議室内に厳格な空気が流れる中、私はシン・アスカ二尉の考案した作戦の説明に耳を傾けていた。
作戦の内容はこうだ……。

1・まず水中に潜水部隊をこっそりスタンバイ

2・こちらが拒否回答、及びこれ以上近づくと攻撃すると警告した上で相手がこっちに近づいてきたと同時に潜水部隊が一気に攻撃開始!!敵がMSを出す前に潜函を沈めまくる。

3・直後に航空部隊が出撃&攻撃!陸上砲撃部隊が遠距離砲撃!一気呵成に攻め込む!!

 要は敵に何もさせないという事だ。成る程、確かに理に適っている。
数に物を言わされてしまえばかなり不利になる、ここは相手の土俵に乗らずに隙を与えない方が得策だな。
当然ながら過半数がこの作戦に賛成した。
「では、大まかな作戦はシン・アスカ二尉の案を採用という事で、誰か異議のある方は?」
「あるに決まっている!!なんだこの卑怯な作戦は!?」
 進行役の男の言葉にカガリ様が真っ向から反論してきた。
「どこら辺が卑怯なのかな?」
「ふざけるな!これではまるで一方的な虐殺じゃないか!!こんな卑怯な手段絶対認められない!!」
 ユウナ様があからさまな皮肉を込めて訊ね、カガリ様はそれに過敏に反応する。周囲のアスハ派の士官達から「そうだそうだ」といった声が聞こえてくる。
「ですがカガリ様、上陸されてはこちらが非常に不利になるのは事実です、私はこの作戦が最良だと思います」
「何だと!?」
 (一応)アスハ派である私の言葉にカガリ様は驚く。
「トダカ、貴様!!貴様まであの小僧の作戦を肯定するというのか!?貴様は我らと志を共にする者の筈だ、何故このような卑劣な手段を認める!?」
 キサカ一佐は私を睨みつけながら立ち上がる。
「他にオーブを守るために最善の方法があるのですか?少なくともアスカ二尉の戦術は理に適っています、我々がすべき事は誇り高く戦う事ではなくオーブを守ることでしょう」
「ぬぅ……」
 キサカ一佐は黙り込み、苦虫を噛み潰したような顔で再び席に座る。それとほぼ同時に他のアスハ派士官も沈黙する。
「では、会議を続けます」
 その後、正式にアスカ二尉の案の採用が決定した。



「トダカ!貴様どういうつもりだ!?」
 会議が終わってからしばらくしてキサカ一佐が詰め寄ってきた。
「どういうつもりとは?」
「とぼけるな!貴様、我々と同じアスハ派でありながら何故あの小僧を擁護する!?」
「理由は先程も説明した筈です、それにオーブ軍の戦力を強化した功労者に向かって小僧はないでしょう」
 私はあのシン・アスカという少年の事は嫌いではない、確かにあの少年は少々慇懃無礼な所があり、オーブの理念を軽んじてはいるが、基本的には実直な好漢だ。
カガリ様とはまた違った真摯さがあり、尚且つ彼がオーブを…いや、オーブに暮らす人々を守ろうとする意思は本物だ。
確かに国にとって理念は大切だが、そのために守るべき民を犠牲にすることは出来ない。
「我々を裏切る気か?」
「そんなつもりはありません、私はただ彼のことをもっと信頼しても良いと思う、ただそれだけです……そろそろ時間なので持ち場に戻らせていただきます」



フレイSIDE

 ようやく会議が終わり、作戦開始まであと十数分。
キラ達が出した作戦案も通り、準備も整った。あとは出撃を待つだけだ。
私達はシン達カグツチ隊と一緒に控え室で作戦開始時間が来るのを待っていた
「フレイ、機体にはもう慣れた?」
「うん、大体はね」
 シミュレーションで機体の反応速度や操縦性には慣れた。あとは実戦で慣らすしかないわね。
「いいなフレイは、特機に乗れて」
 マユが冗談交じりに声を掛けてくる。
「マユのM1だって十分性能良いでしょ」
「まぁね、でもやっぱり特機って憧れちゃうじゃん」
 まぁ否定は出来ないわね……実際ジンに乗ってた頃は密かにストライクに乗りたいって思っていたし。
『総員第一種戦闘配備!出撃準備に入れ!』
 あ、もう時間だ。
「よし、行くぜ」
 シンの言葉と共に私達は気を引き締めながら機体へ向かう。
「お止めください!!カガリ様!!」
 ん?
「私を出せ!あいつ等だけに任せておけるか!!」
「あの馬鹿……」
 シンが苛立ちながら頭を抱える。アイツ……まだあんな事やってるの?
「止めた方がいいよ、カガリの腕じゃ無理だよ」
 キラの言葉に皆納得した表情になった。もちろん私も……
「あ!おい貴様!!」
「え?」
 カガリはいきなり私を指差してきた。
「ルージュは私が乗るはずの機体だったんだぞ!!今すぐ返せ!!」
 ……この馬鹿は。
「おい、テメェいい加減に……」
 シンがカガリに詰め寄ろうとするがそれより先に私はカガリの顔に平手を見舞っていた。
「痛っ…な、何を!?」
「アンタいい加減にしなさいよ、アンタ今まで勝手な行動してどれだけ周りに迷惑掛けてきたか分かってるの?」
「ま、間違った事はしていない!!私はオーブを守りたいだけ……」
 言い終わる前に私はもう一撃見舞った。今度は拳で……
「グッ!!」
「そうやってアンタは勝手な真似して、今まで事態が好転した事が一度でもあった?アンタがオーブを守りたいって思うことは間違いじゃないわよ、だけどそれは勝手な真似して良い理由にはならないし責任がなくなるわけじゃないわ、ましてや結果が出せなきゃ尚更ね」
「だ、だけど……」
 この期に及んでもまだ言い訳しようとするカガリ。シンがボコボコにしたのも解るわ……。
「じゃあハッキリ言ってあげるわ!あんたの実力じゃ無理!!また味方を殺すだけよ!!アンタみたいに自分の正義しか考えてない馬鹿姫に戦う資格なんか無いわ!!」
 その言葉が止めとなったのか、カガリは黙り込んでしまった。
ってヤバ……もう時間じゃん。
「急ぐぞ!出撃だ!!」
 私達はカガリを放っておいて機体の方へ向かった。



カガリSIDE

 余りの悔しさに黙り込んでしまった。
クソッ!いつまでも昔の事を蒸し返して!!
自分の国を自分の手で守って何が悪い!!私だってあれから努力して訓練したんだ!!自分達が私より強いからって好い気になって何様のつもりだ!!
「クソォォォッッ!!!!」
 私は怒りに任せて壁を殴るしかなかった……。



ニコルSIDE

(これでいいのか?このまま避難してもいいのか?)
 避難経路を歩きながら僕は自問自答していた。
「悩んでいるようだねぇ」
 バルトフェルドさんが後ろから声を掛けてきた。
「君の気持ちも良く分かるよ、けどやっぱりマズイだろうねぇ、ザフトがこの戦いに介入するのは……」
 そんな事は僕でも分かる。だけど……
「けど……僕は……」
「若いねぇ、羨ましい限りだ……おっと、よく考えてみれば君ならどうにかなるかも……」
「え?」
「自分で言うのもなんだけど、僕は名将だ、結構名前も知れている……しかし君はエリートだがあくまでも一パイロットでしかない…ちょっと情報操作すればいくらでも隠蔽できる」
「!!」
 それを聞いた瞬間僕の足は一目散に軍部へ向かっていった。
ありがとうございます……バルトフェルドさん



オルガSIDE

「あ~~、君達」
 出撃直前にアズラエルの野郎の耳障りな声が聞こえてきた。
「モルゲンレーテとマスドライバーは壊さないように、あれは色々利用できますから、あとわざわざ鹵獲したグゥルまで回したんですからその分キッチリ働くように」
 ったく、うるせぇ……そんなの作戦前から耳にタコが出来るほど聞いてんだよ。
さっさと出撃して憂さ晴らしがしてぇぜ……
「お前等も大変だな、あんなのに顎で使われるなんてな……」
 眼鏡で顔黒(ガングロ)の不細工、シャムスとかいう奴が声を掛けてきた。
コイツはたしかブルーコスモスの施設から仲間と一緒に送られてきた奴だったな……。
同情してくれるのはいいが、正直こんなブサメンの男に同情されてもちっとも嬉しくない。
ったく、アズラエルの野郎、さっさと出撃させろ……
「ッ!?」
 突然艦が揺れやがった。何が起きたんだ?
「おい!何が起きた!?」
 アズラエルは狼狽して指揮官に詰め寄る。
「僚艦が3隻撃沈!水中からの攻撃です!かなりの数のMSが攻撃を仕掛けています!!」
「クッ……何やってるお前等!!早く出撃しろ!!」
 さっきまでの余裕を忘れてアズラエルは怒鳴り散らす。本っ当にウゼェ……。



シンSIDE

 いよいよ始まった。水中からの奇襲は上手くいったようだ。
「よし!行くぞ!!」
 俺の号令と共にカグツチ隊は出撃し、同時に攻撃を開始した。
「敵艦がMSを出す前に落としまくれ!!絶対に上陸させるな!!」
 一気呵成に戦艦を狙って撃ちまくる。しかし敵も黙ってやられているわけではない、無事な戦艦や中破した戦艦から強引にMSが射出されてくる。
「!……この反応は!?」
 後方の艦から4機程高速でこっちに向かってくる。
「特機だ!皆気を付けろ!!」
 肉眼で敵機を確認、フォビドゥン、カラミティ(前世と違いレイダーには乗らず、鹵獲したと思われるグゥルに乗っている)、レイダー、そしてグゥル装備のバスターダガーの4機。
「あのバスターダガーは見覚えが無い、気を付けた方がいいよ」
 キラが警戒しながら声を掛けてくる。
「ああ、いくぜ!!」



マユSIDE

「おらぁぁぁーーーー!瞬殺!!」
 黒い鳥みたいな機体、レイダーがこっちに向かってくる。しかも何か変なこと言ってる……。
レイダーは人型に変形し、ワイヤー付きの鉄球を繰り出してくる。
「うわっ!?」
 何とか回避、そのままライフルで反撃する。
「そんなの当たるかよ、下手糞!!」
 レイダーのパイロットは嘲笑いながらすばやくそれを避ける。
「クッ…速い……」
 何とか近づかないと……。
「必殺!!」
 今度は口の部分からビームが!?
「当たるもんか!」
 回避しながら私はライフルを腰部に収納し、ヴェスティージから借りたビームソードとスレイヤーウィップを取り出す……よし準備OK。
「撃滅!!」
 レイダーが鉄球を飛ばしてくる。今だ!!
「いっけぇぇーーーー!!!!」
 鞭の先端をビームソードの取っ手に巻きつけたままレイダー目掛けて振り回す!お兄ちゃんがデュエルと戦ったときに使った戦法だ!!
凄まじい音を立ててビームソードと鉄球がぶつかり、互いに砕け散った。
「!!?……ち、チクショォーーーーー!!!抹殺!!!!」
 レイダーのパイロットは狂乱しながらビーム砲とシールドに装備された銃を乱射する。周りに味方のMSや戦艦があるのに!?
「ちょっ!?味方も巻き込んで!?」
「ウルセェェェェェェーーーーーーーー!!!!!!」
 く、狂ってる……このパイロット絶対狂ってる。
このままじゃマズイと思い、私はライフルで反撃する。しかし火力差に押されてライフルを破壊されてしまう。
「や、ヤバイ……」
「うらぁぁぁぁぁ!!!!」
 続けざまにレイダーはビームを乱射してくる。
「な、何とか近づかないとやられちゃう!」
「必殺「待てぇぇ!!!」ぐぁっ!?」
 後ろから何かが来てレイダーを蹴飛ばしてしまった。
「ぶ、ブリッツ?」
 それは見間違えるはずが無い、グゥルに乗ったブリッツの姿だった。
「大丈夫ですか?マユさん」
「ニコルさん!?どうしてココに?」
「トダカって人に頭下げて頼んだんです、援護させてください!」
「ありがとう!」
 思わぬ助けに私は心から感謝した。
「邪魔すんじゃねぇ!!テメェも滅殺!!」
 怒り心頭にレイダーは私達に襲い掛かってくる。
「行きますよ、マユさん!!」
「うん!!」
 レイダーの射撃を避けながらニコルさんのブリッツがライフルで牽制してレイダーの動きを妨害する。
更に続けて私がスレイヤーウィップをレイダーに巻きつける。
レイダーはそれを振りほどこうとするがその前に私は電撃を見舞い、ブリッツはランサーダートを撃ち込む。
「ギャアアアアア!!!!」
「今だ!!」
「でやぁぁぁぁぁーーーー!!!!」
 私達の攻撃によるダメージで動きを止めたレイダー目掛けて私とニコルさんは一気に接近し、ビームサーベルで胴体を真っ二つに切り裂いた。
「がぁぁっ!!!?」
 直後にレイダーは爆発を起こし、残骸は海に沈んでいった。



フレイSIDE

「うおぉらあぁーーっ!!」
 カラミティの凄まじい砲撃が味方のM1を次々と落としていく。
これ以上はやらせまいと私はロングビームライフルをカラミティに向けた。
「あぁん?何だテメェは?」
「これ以上はやらせない!!」
 同時にビームを放つ。ビームが互いにぶつかり合い相殺する。
即座にカラミティが2射目を放ち、凄まじい火力と広範囲のビームが襲い掛かる。
「なんの!」
 回避しながら私は再びカラミティに狙いを付ける。
「当たれ!!」
 狙いを定めてライフルを3連射。
「うおぉっ!!?」
 よし、1発命中!右腕を破壊した。
「テメェェェーーーーーー!!よくもやってくれたな!!!!」
 カラミティのパイロットは逆上しながら私を落とそうと躍起になり、私目掛けてビームを乱射しまくる。
「そんな大雑把な狙いで!!」
 だが頭に血が昇っているだけ動きが読みやすく、狙いも大雑把になってしまっている。
「そこぉっ!!」
 私は隙をついてライフルを撃った。
「うわぁぁぁぁぁっ!!!」
 カラミティは回避しようとするが私の撃った弾はグゥルを撃ち抜き、飛行能力を持たないカラミティはそのまま海へ落下していった。
ここら辺の海はかなり深いし、重火力の機体じゃ自力で浮かび上げるのはまず無理ね。
「ま、暫く海の底で頭でも冷やしてなさい」
 私は水中部隊にカラミティを任せて他の敵を落としに向かうのだった。



アサギSIDE

「アイツを仕留めるわ!行くわよ、マユラ、ジュリ!!」
 バスターダガーを確認して、私達3人はバスターダガーめがけて一気に突っ込み、ライフルを連射する。
「ちっ……!!」
 バスターダガーは私達が放ったビームを回避して距離を取る。
「落ちろよ!!」
 バスターダガーが反撃に移り、散弾砲を撃ってくる。
「クッ!」
 回避しようとするが予想以上に攻撃範囲が広い、左腕を掠めてしまった。
「アサギ!」
「大丈夫、掠っただけよ」
 落ち着け……ここでパニクったら確実に負ける。
「フォーメーションBで行くわ、皆合わせて!!」
「OK!」
「任せて!」
 私の指示と同時に私達は散開してかく乱戦法に移る。
「チッ…ウザイ戦法取りやがって……」
 クッ…は私たちを落とそうとライフルとガンランチャーを連射してくる。何度か機体をかすめて機体が損傷してしまったけど簡単に直撃を喰らってしまうほど私達は間抜けじゃない。
このまま相手の消耗を誘いつつ、徐々に間合いを詰めていく。
「!?……しまった、ランチャーの弾が」
 動きに動揺が走った!?よし、イケる!!
私はビームサーベルを構えて接近、バスターダガーもビームサーベルで応戦し、私の攻撃を受け止め鍔競り合いに持ち込み、僅かだが動きが止まる。
「今よ!撃って!!」
 合図と同時に背後からマユラとジュリが一斉射撃を繰り出し、バスターダガーは両腕を失った。
「グァァッ!!ふざけんなよ畜生!」
「とどめぇぇーー!!!!」
 私達は止めを刺すため3人全員で斬りかかる。
「や、ヤバイ!!」
 身の危険を察してバスターダガーはグゥルから飛び降り、海中に逃げてしまった。
「逃げられたわね……」
 取り逃がしてしまったものの私達は特機を退けた優越感に浸ったのだった。




[32127] 第22話 オーブ防衛戦・死闘~英雄2人と多数の愚者~
Name: 神無鴇人◆c2099dfd ID:7cb03caa
Date: 2012/03/16 17:38
アズラエルSIDE

 クソッ!!どういう強さしてるんだオーブは!?
「レイダー撃墜、カラミティとバスターダガーは水中に落下、現在サルベージを行っていますが敵の水中部隊に邪魔され、もうしばらくかかるとの事です!」
 あの役立たず共が!!何のために高い金払って強化したと思ってるんだ!!
「アズラエル様!」
「今度は何だ!?」
「北側を攻撃している別働隊が上陸に成功しました」
 は?こっちがこんなに苦戦してるのに北側だけあっさり……。
あそこはたしかジブリールの所から派遣された奴等がいたはず……………まずいぞ、これじゃあの男に借りを作ってしまう…………。



キラSIDE

敵側の特機も残すはフォビドゥンだけとなり、オーブ軍側は勢いに乗って戦況は優勢に進んでいた。
「叩くなら今だ!一気に攻めろ!!」
 シンの言葉と共に一気呵成に攻め立てるオーブ軍、まさに勝利は目前といった感じだ。
しかしそんな優越感も一つの連絡であっという間に覆されてしまう。
『緊急連絡!こちらオーブ北部防衛線、敵に上陸され劣勢、増援を求める!!』
「北側が!?北側って確か……」
 カガリが指揮を執って……。
「あの馬鹿!」
 またか……頭を抑えたくなる衝動を抑え、僕はシンに通信を繋いだ。
「シン、フォビドゥンは僕の方で押さえる、君は北側の援護を!」
「チッ、仕方ないか……手の空いてる奴は俺と一緒に来てくれ、北側の援護に向かう!!キラ、こっちは頼むぞ!!」
「了解、そっちも抜かり無いようにね!」
「任せな!」
 シンはM1(空海中戦両方)を数機引き連れて北側に、僕は単身フォビドゥンへと向かった。

 M1相手に暴れまくるフォビドゥンを威嚇するように僕はビームライフルで牽制する。
「あ?何だよお前?」
「お前の相手は僕だ!!」
 続けざまにライフルを連射する。しかし当然ながらこれはシールドによって曲げられ、弾かれてしまう。
「んなもん効くかよ」
 嘲笑と同時にフォビドゥンが曲がるビームで反撃に移る。
「おっと」
 やはり何だかんだ言ってもコイツは侮れない、だけど……。
「負けるつもりは無い!!」
 相手は射撃戦が自分に絶対有利だと確信している、それなら逆にそこを突けば楽に倒せる。
「喰らえ!!」
 戦闘前に前もってワイヤーを装備しておいたシールドを投擲する。
「馬鹿じゃねーの」
 余裕で避けるフォビドゥン、しかし……
「これで良いんだ!!」
 即座にビームライフルを一発撃つ。標的はフォビドゥンではない、自分で投げたシールドだ。
「な!?………がっ!!」
 僕の撃ったビームはシールドに反射し、軌道を変えてフォビドゥンの背後に命中した。
「お前ぇぇぇ…………」
「油断したな、ビームを曲げるのはそっちの専売特許じゃないのさ」
「死ねぇぇぇぇ!!!!!」
 フォビドゥンのパイロットが激昂しながら襲い掛かってくる。
ココから先は互いに純粋な削り合いだ。僕はさっきの戦法にフェイントを組み合わせながらフォビドゥンをじわじわ追い詰める。
フォビドゥンも反撃してくるが生憎フリーダムのような高機動の機体を駆ってきた僕にとって回避は得意分野だ、徐々に機体の損傷率に差がつき始める。
「貰った!!」
 隙を見つけて一気に接近、片方のシールドを奪った。
「お前、お前、オマエぇぇぇぇ!!!!…………ガッ、……ア……グ………ッ!!!!??!??!??!?!!?」
 突然フォビドゥンのパイロットは奇声を上げ、そのまま逃げてしまった。
話には聞いていたけど、あれが強化人間の禁断症状か……あんまり見ていて気分の良いものじゃないな……。
ブルーコスモスのやり方に嫌悪感を覚えながらも僕は周囲の敵の掃討へ向かった。



スウェンSIDE

 北側への攻撃を担当していた俺は予想外の敵の脆さに色んな意味で驚いていた。
別方面はかなり精強な連中が多い中、ここだけが物凄く脆い……
「何コイツ等?弱すぎにも程ってものがあるでしょ」
 同僚のミューディーが呟く。
全く同感だ、ココまで来ると何かの罠ではないかと感じてしまう。もしくは指揮官が余程の無能のどちらかだが……。



NO SIDE

 その頃オーブ北側の司令部では……
「クソ!何故こうも押される!?」
「だから言ったでしょう、アスカ二尉の作戦に従った方が良いと!」
「黙れ!あんな卑怯な策でオーブの誇りを汚してなるものか!!」
 つくづく無能なカガリであった。


シンSIDE

 俺が着いた時、既に北側の市街地は目茶苦茶になっていた。
地球軍の戦力は特機を除けば俺が戦っていた部隊と大差ない、それがなんでこんなに苦戦してるんだ?
『クソッ、もういい!!私が出る!!これ以上指をくわえて見ていられるか!!』
 …………やっぱりコイツか。
「こちらシン・アスカ、要請を受けそちらを援護しに来ました!」
『何だと!?誰が貴様にそんな事を頼んだ!!』
 ウザイ声が聞こえていたが今は無視だ。
「指示が無いのであれば独自の判断で動かせてもらいます」
『待て……クソッ、誰かアスカ二尉を拘束しろ!越権行為だ!!』
 はぁ?何言ってんだあの馬鹿は?
『アスカ二尉、こちらは気にしなくて良い、そちらの判断で戦ってくれ』
 トダカさんの声が聞こえてきた、やっぱあの人だけはアスハ派でも信用できる。
「了解!!」
 俺は通信越しにギャアギャア喚くカガリを無視して敵陣へ突撃した。



スウェンSIDE

 突然乱入してきた機体によって戦況は変わり始めた。
「ヴェスティージ……」
 かつて連合に協力していたコーディネイターの傭兵にしてオーブに颯爽と現れた天才少年シン・アスカ……。
「ココに来てとんだ大物に出くわしたわね」
「ああ……」
 相手にとって不足は無い…………!!



シンSIDE

 黒い105ダガー(エール装備)がビームサーベルを構えながらこっちに突っ込んできた。こっちもビームソードで応戦しようとするが慌てて引っ込める、地上からデュエルダガーが狙ってきたからだ。
「まずいな……」
 2機同時に相手にしても何とかできる自信はあるけど市街地への被害を抑えることを考えるとな……。
「よし、それなら……」
 俺は連れてきた空中部隊と水中部隊それぞれに合図を送り、黒いダガー相手にマシンガンとビームソードを構える。
「行くぜ!」
 マシンガンを連射しながら一気に接近し、ビームソードを振りかぶる。
黒いダガーは俺の射撃を防ぎながらビームサーベルを構えて迎え撃とうとする。
「貰った!!」
 俺はダガーに切りかかる……ように見せかけて急降下!デュエルダガーに接近する。
「!!?」
 デュエルダガーは慌てて後ろに飛び退くがそれが狙いだ!!
「今だやれ!!」
 合図を送ったM1空中部隊がデュエルダガーに突撃し、海面の方へ押し込む。
「ちょ!?何!!?」
 たじろいだデュエルダガーの足を水中部隊が掴んで水中に引きずり込み、集中砲火を浴びせる。
「ちょ!嫌!!やめ……スウェン助け……イヤアアアアア!!!!」
 デュエルダガーのパイロットの悲鳴に黒いダガーは助けに入ろうとするがそうはさせない!
「お前の相手は俺だぜ、黒いの!!」
「邪魔をするな!コーディネイターが!!」
 お互い接近戦に入り、それぞれの刀身が一瞬肉迫し、直後にお互い距離を取る。
黒いダガーはライフルを構えるが一瞬俺の方が素早くスレイヤーウィップを左腕に巻き付けて左腕ごとライフルを破壊する。
「ちぃ…!」
「距離取ったのは失敗だったな!」
「舐めるな!」
 ビームサーベルで斬りかかって来るが片腕だけでは両腕健在の俺に手数で劣り、黒いダガーはどんどんボロボロになっていく。
「く、クソ……」
 黒いダガーはなおも戦おうとするが、その時突然連合の艦から撤退を伝える信号弾が上がった。
「撤退か………この借りは絶対に返す……」
 黒いダガーは踵を返して撤退していった。



ユウナSIDE

「やぁ、皆ご苦労だったね」
 帰還してきたシン君達に労いの言葉を掛ける。
「取り敢えず今回は勝てましたけど………けど連合はまた来ますよ」
「うん、わかってる、それまでにオーブの問題を解決しないとね……例の計画実行は約3時間後だ、君達にも動いてもらうけど、良いかな?」
 僕の言葉にシン君達は強く頷く。
全ては3時間後、アスハ家との正面対決は近い……。




[32127] 第23話 アスハの終わる日
Name: 神無鴇人◆c2099dfd ID:7cb03caa
Date: 2012/03/16 17:38
キラSIDE

 北側の被害は相当なものだった、倒壊した建物の数なんて数えるのも馬鹿らしい程だ。
そしてこれだけの被害を出した原因はカガリ達アスハ派にある。カガリは決定事項であるシン発案の作戦を無視し、正面決戦にこだわったらしく、その結果市街地でドンパチやらかしてこの有様だ。最早弁護のしようも無い……。
戦闘が終わった直後にカガリは拘束され、独房に収監された。
それでもカガリは「私はオーブの誇りを守ろうとしただけだ!」と叫んでいた。
「はぁ…………」
 思わず溜息をついてしまう。カガリの思いは純粋だという事は分かっている、だけどこればかりには呆れる事しか出来ない。
どんなに誇り高い理念や正義があろうとそれで何も守れなければ意味が無い、実際僕は(誇り高いかどうかは別にして)不殺を掲げ、それが仇になってラクスもアークエンジェルの皆も守れなかった……。
結局、戦争に必要なのは最低限の常識とモラルであって理念や誇りなんてものは枷でしかないのかもしれないな……。
『キラ、こっちはいつでもいいぞ、そっちは?』
 通信機からシンの声が聞こえてきた。
「ああ、準備完了だよ、そっちはどう?上手く行きそう?」
『さぁな、勝敗を決めるのは俺たちじゃなくて国民だしな……まぁ失敗するつもりは無いけどな』
 それだけ強気に言えれば問題ないか。そう思いながら僕は手元の端末を操作した。
今から始まるのは理念と現実の戦い。どっちが勝つことやら…………。



シンSIDE

 俺は今ユウナさんと共に司令部内の会議室にてウズミと対峙している。形式上は先程と次回の戦闘についての話し合いだが俺達の目的はウズミを糾弾する事だ。
「今回の作戦において、我々オーブ軍は被害を最小限に抑えることが出来ました……しかしそれは地形の利を生かした奇襲の成功あってのものです、連合軍も馬鹿ではありません、また戦闘が起こった場合何らかの対策を用意しているでしょう、そうなると戦力の関係上こちらの勝ち目は薄いでしょう……」
 進行役のトダカさんの説明に場の空気は険しくなる。
実際今回は大勝と言える結果だったが次はこうはいかない、俺から見てもあと2~3回追い返せるのが限度だ。
「ですが今回の勝利で相手の士気は下がっている、交渉に持ち込めば連合側にかなり譲渡させることも可能と私は思いますが」
 ウナト・エマ・セイランが口を開く。意訳すれば「今はこっちが有利なんだからここら辺で妥協して戦闘なんかさっさと終わらせろ」って事だ。
「何度も言わせるな!どんな形でも他国の軍に協力する事は絶対あってはならんと言ったはずだ!!」
 ウズミが怒鳴り声を上げる、この期に及んでもまだ理ね……いや、コイツに現実的な解答を求めるだけ無駄か。
「……しかし実際問題として被害は増え続ける一方ですぞ、実際どこかの女性指揮官が作戦を無視したばかりに北部の市街地は壊滅的な被害を受けたというのに……国民達はこのままオーブと共に滅びろと、そう仰るのですか?」
 ウナトさんの明らかな皮肉にウズミを始めとしたアスハ派の連中は顔を顰める。
「最悪の場合モルゲンレーテとマスドライバーを破壊する、そうすれば連合軍も目的を失って退く」
 ダメだコイツ…………。ああクソ、自分がどんどんムカついているのがわかる。
「何を馬鹿な事を、そうしたが最後オーブは最大の資金源を失って失業と貧困が多発するだけです、滅びずに理念を守ってやる代わりに空腹で我慢しろと?」
「理念なくして国は無い!!貴様はオーブの理念を何だと思っている!!?」
「うだうだウルセェよ」
 いい加減限界が来て俺は閉ざしていた口を開いた。
「アンタ理念の為に俺達国民に死ねって、そう言いたいのか?」
「何だと?」
 ウズミが睨みつけてくるがそんなものどうだっていい。
「アンタが言っているのはそういう事だろ、何の妥協もせず、理念だけを見て、その結果国焼いて何人のガキが孤児になって何人の女が未亡人になるか、アンタは考えた事があるのかよ!!」
「グッ……子供に何が……」
「ああ、俺は子供さ、だからこそアンタみたいに命より理念を優先させる人でなしの気持ちなんて解らないし解りたくも無いね!!」
「ぬぅ…………」
 押し黙るウズミに俺は一気に本音で捲くし立てる。
「何が理念だ、人の命犠牲にしなきゃ守れない理念なんか理念でもなんでもない!!ただの自己満足だ!!アンタ達親子はそのクソッタレな理念のために何人殺せば気が済むんだ!!アンタは死んでいった人間はオーブの理念のために死んだと勝手に決め付けているかもしれないがな、俺達は国のために戦ってるんじゃない!!この国に暮らす家族や仲間と一緒に生きる為に戦ってるんだ!!生き残って未来を掴み取りたいから戦ってるんだ!!それなのにアンタの娘は自分が満足したいって理由だけで作戦を無視して兵士を殺し、そしてアンタは自分の満足の為だけに守るべき国民すら犠牲にしようとしている!!それが何故解らないんだ!!!!」
「だ、黙れ!!」
 ウズミがより一層目を鋭くして俺を睨みつけるが俺も睨み返し、会議室内が一触即発の雰囲気に包まれる。
「では、どっちが正しいかは国民の皆さんに決めてもらうとしましょう」
 殺伐とした雰囲気の中、ユウナさんが口を開き、携帯電話に手を掛ける。
「ああ、僕だ……うん、それじゃ、やっちゃって……ニコル君、ご苦労様」
 そう言ってユウナさんは後ろに立っていたオーブ軍の士官服に身を包んだ男に目を向ける。
男の正体は警備兵に変装して俺達の計画に協力してくれたニコルだ。
「首尾はどうだい?」
「はい、バッチリ撮れてます」
 そういってニコルは帽子の中に隠していた小型カメラを取り外した。
「き、貴様等何を!?」
「すぐに分かりますよ、すぐにね……シン君、テレビを」
 ユウナさんの指示に従い、俺はテレビの電源を入れる。

『最悪の場合モルゲンレーテとマスドライバーを破壊する、そうすれば連合軍も目的を失って退く』
『何を馬鹿な事を、そうしたが最後オーブは最大の資金源を失って失業と貧困が多発するだけです、滅びずに理念を守ってやる代わりに空腹で我慢しろと?』
『理念なくして国は無い!!貴様はオーブの理念を何だと思っている!!?』

 それはさっきまでの会話だった。
「こ、これは!?」
 ウズミが驚愕の表情になる。
「見ての通り先程までの映像です、ニコル君が撮影した映像は、僕達の協力者であるキラ・ヤマト君を通してテレビ局に送信され、シェルターや独房を含めたオーブ全域に放送されています」
 ココまでくればもう解ると思うが、俺達の計画はさっきの会議の内容をテレビを介して国民に見せ、ウズミのやり方を国民達に見せ付ける事だ。
あとはこれを見た国民達がどう動くかだが……。



 数分後、司令部に国民達がなだれ込んできた。
「ウズミ・ナラ・アスハを出せーーーー!!!!」
「俺達は理念のための捨て駒じゃない!!!!」
 国民達の怒声がココまで聞こえてくる。結局皆国より自分や家族のほうが大事って事だ。
ふとウズミを見てみたがその顔はただ呆然としていて『オーブの獅子』と呼ばれた時の威厳は完全に消え失せていた。
「そんな、馬鹿な…………」
 ウズミが放心したまま呟く、ってかコイツこの期に及んで自分の理念が国民達に理解されるとでも思ってたのか?
「貴方の、負けです」
 ウナトさんのその言葉にウズミとアスハ派のメンバー達はその場に崩れ落ち、やがてウズミは拘束され、国民達の前で連行された。
そしてそれはアスハ政権の終わりを示していた。



カガリSIDE

オーブのどっかの拘置所

 クソッ、クソッ、クソォォォォォォォっ!!!!!シン・アスカめ!!!!よくもお父様を!!!!!
オーブの理念がただの自己満足だと!?ふざけるな!!!今までこの理念があったからこそオーブはどんな大国にも屈する事無く在り続けたんだ!!!!
それを目茶苦茶にしたばかりかあまつさえお父様まで…………。
「絶対に許さないぞ…………………!!!!!!!」



シンSIDE

 ウズミを連行し終えて司令部に戻った時、司令部内は慌ただしく動いていた。
「何かあったんですか?」
「ああシン君、いい知らせだよ、たった今両陣営の穏健派から連絡が入って会談の目処がついたんだ、しかもクライン派の方からは先遣隊として増援が来る事になったよ」
 よっしゃあ!!アスハ派が片付いた今、邪魔は入らない。これで勝機も見えてきたぜ!!
勝負は明日……絶対に勝つ!!





[32127] オリジナル期待紹介 その3
Name: 神無鴇人◆c2099dfd ID:7cb03caa
Date: 2012/03/16 17:39
アドヴァンスガンダム

武装
鋸(のこぎり)型対艦刀ビームソード、レヴィアブレード
ショットガン兼用高出力ビームライフル、ベルゼブラスター
頭部バルカン、イーゲルシュテルン
電撃鞭、スレイヤーウィップ
アンチビームシールド

フリーダム、ジャスティスと共に作られたNJC搭載機。
『圧倒的な攻撃力で敵を薙ぎ払う』事をコンセプトに作られた接近戦パワー型の機体。
攻撃力と瞬発力を重視しており、パワーはフリーダム、ジャスティスを上回る。
対艦刀を片手で振り回す事が可能で並の機体であれば素手でも多大なダメージを与えられる程のパワーを持つ。
赤と白を基調としたカラーリングが特徴。
パイロットはシン・アスカ。

ヴェスティージガンダム改

武装
携帯式ビームマシンガン
電撃鞭、スレイヤーウィップ
頭部バルカン、イーゲルシュテルン
ビームソード、スラッシャー×2
ビームブーメラン、マイダスメッサー(ソードストライカーのものを使用)
シールド兼用ガトリング
飛行ユニット、シュライク

ヴェスティージの改良型、攻撃力が若干強化され、武装にガトリングとマイダスメッサーが追加された。
カラーリングは赤と白。
パイロットはマユ・アスカ

バーストストライクルージュ

武装
狙撃用超高出力ロングビームライフル
ビームサーベル
頭部バルカン、イーゲルシュテルン
アンチビームシールド
飛行ユニット、シュライク

ストライクルージュにバーストストライカーを装備させたもの。
機動性と高火力を併せ持った高機動狙撃型の機体。
ロングビームライフルはランチャーストライク並みの火力とライフルの連射性能を持ち、ライフルと機体それぞれにバッテリーパックを装備させる事によりエネルギー問題を解消している。
パイロットはフレイ・アルスター。

ブリッツガンダム改

武装
ハンドビームガン×2
ビームサーベル
グレイプニール改
ランサーダート
アンチビームシールド
飛行ユニット、シュライク

ブリッツの改修型。
攻撃力が若干上昇している。
ライフルが連射と速射性能に優れたハンドビームガンに変更、グレイプニールにはビームクロー展開装置が追加され、捕縛と攻撃両方に使用可能になった。
また、シュライク装備により飛行能力を得ている。
パイロットはニコル・アマルフィ。

M1アストレイ水中戦仕様

武装

魚雷ポッド
接近戦用スパイク
フォノンメーザー砲

M1アストレイの水中戦カスタマイズ型。
攻撃力は連合、ザフトの水中戦用の機体に比べるとやや劣るが、その反面機動性に秀でている。





[32127] 第24話 オーブ防衛戦・決着~新勢力樹立へ~
Name: 神無鴇人◆c2099dfd ID:7cb03caa
Date: 2012/03/16 17:40
キラSIDE

 ウズミ・ナラ・アスハの逮捕から数時間が経った夜、クライン派の先遣隊はオーブへの降下を完了した。
先遣隊には特使としてアイリーン・カナーバ議員とラクスも同行していた。
そして…………。
『キラ・ヤマト少尉、シン・アスカ二尉、至急第4格納庫まで…………』
 呼び出された僕達は格納庫へ向かう。
「なぁ、これってやっぱり……」
「うん、多分ね……」
 いよいよフリーダムが!!
「お前は良いよな、俺はあの変態が乗ってた機体だぜ……」
「……御愁傷様」


 しかし僕達の予想は思わぬ形で裏切られることとなった。
「これは……」
 目の前にあるのはフリーダムと…………見知らぬ機体が。
「左がX-10A『フリーダム』、そして右側がX-14A『アドヴァンス』です」
 まさかこう来るとは…………いや、ヴェスティージの存在がある以上ありえない話じゃないか…………。
「これを俺達に?」
 シン……凄く嬉しそうな顔だ。まぁ、気持ちは理解できるけどね。
「はい、お二人の活躍を聞いて、満場一致で可決でしたわ、本当はこの機体以外にも何機か製造されていたのですが、何とか持ち出せたのはこの2機だけで…………」
 ジャスティスは敵側って事か……。
「2機だけでもありがたいよ、ありがとうラクス」
「いえ、今の私にはこれぐらいしか出来る事がありませんので」
 ……という訳で僕達はNJC搭載機をゲットしたのだった。



シンSIDE

 新型機を手に入れた俺達は機体に慣れる為にシミュレーションに勤しんでいた。
キラは元々前世で使っていた機体だから少し慣らせば問題ないので早めに切り上げ、今はカガリのところへ面会に行ってる(多分面会拒否されるか殴りかかられるだけだと思うが)。
ちなみにキラはカガリの事を政治家として見限りはしたがカガリ自身を見捨てたわけじゃない、キラ曰く「思想や視野の狭さはともかく、カガリは善人なんだ」との事だ。まぁ、悪人じゃないのは俺も認めてるしな……。
「ふぅ……大体こんな所か」
 武装の特製は大体覚えた。俺の新しい相棒アドヴァンス、主な武装は鋸(のこぎり)型の大型ビームソード『レヴィアブレード』、ショットガンとライフル両方の特性を兼ね備えた銃『ベルゼブラスター』だ(あとはバルカンなどの基本装備)。
幸いにも基本的な特性はデスティニーに近い所があるから思ったより速く覚える事が出来た。
「さて…………」
 自分の作業を終えて俺は他の特機とそのパイロット達を見る。
ヴェスティージには俺の降任としてマユがパイロットになり、ストライクにはフラガのオッサンだ。
そしてブリッツ、前回の戦いで俺達を援護してくれたニコルはこのまま俺達と共に戦う事になった(マユとやけに仲が良いのは気になるが、それはまた後でゆっくりと聞かせてもらうとしよう)。
あらにヴェスティージとブリッツは戦闘が終わった直後に改修され、それぞれ新しい武装が追加され、ストライクにはI.W.S.P.パックが装備される事になった。
「マユ、ニコル、オッサン、そっちはどうだ?」
「うん、覚えたよ」
「僕も大体は」
「俺も大丈夫……ってか、オッサン言うな!!」
 マユ達も機体の慣らしを終え、準備万端。明日も絶対に勝ってやる!!



アズラエルSIDE

 前回の戦いから一夜明け、再び連合艦隊はオーブへ攻撃を開始しようとしている。
「おい!前回のような無様は晒さないだろうな!?」
「ハッ、既に対空戦と水中戦の準備はしております、しかしそれでもココはオーブの土俵ですので必ず成功するかどうかは……」
 クソッ!腹立たしい!!オーブがココまで戦力を強化しているとは……昨日の夜は昨日の夜で謎の部隊がオーブに降りたとも聞くし……奴等はザフトと組んだのか?
どっちにしても今回で成果を上げなければ本格的に撤退しなきゃならないかもしれない。
クソォ……オーブめ…………。



キラSIDE

 案の定連合艦隊は再び攻めてきた。前世ではこの日オーブは敗退したが今回はそうはさせない、絶対に負けるわけにはいかない。
今回はクライン派の先遣隊や正式にこちらに協力する事になったバルトフェルドさん達もいる。勝てない戦いじゃない。
「全員準備は良いか?」
 シンの言葉に全員頷き、出撃体制に入る。
「ニコル・アマルフィ、ブリッツ、出ます!!」
「ムウ・ラ・フラガ、ストライク、出る!!」
「マユ・アスカ、ヴェスティージ、行きます!!」
「フレイ・アルスター、ストライクルージュ、行きます!!」
「シン・アスカ、アドヴァンス、行きます!!」
「キラ・ヤマト、フリーダム、行きます!!」
 出撃して早々に敵艦隊を肉眼で確認する、数だけで言えば昨日より多い、一点突破の力攻めで来る様だ。
「空戦部隊が接近、迎撃するぞ!!」
 襲い掛かってくる敵の空戦部隊、エール装備のダガーと戦闘機が多数だ。
だけどこっちは空中戦に一日の長オーブ軍、次第に練度の差が明るみになり、連合側は押されてしまう。これで前哨戦はこっちの勝利だ。
この勝利で勢いにのった僕達は一気呵成に攻め込んだ、空母や戦艦を狙って次々に撃ち落していく。
「っ!?」
このまま一気に攻め落とせるかと思ったがそうもいかないようだ。
「水中戦部隊か?」
 昨日戦ったフォビドゥンブルーが水中から狙い撃ってきた。それに乗じて空戦部隊は再び攻撃を開始してくる。
「コイツ等は僕に任せて、キラさん達は本隊を!!」
「俺も残るぜ、コイツ(ストライク)の慣らしにゃ丁度良い相手だ」
「私も、雑魚は任せて」
 ニコルを筆頭にマユちゃんとムウさんがその場に留まって迎撃に専念する。
「すいません、お願いします!」
「頼んだぜ、3人とも死ぬんじゃねぇぞ!!」
 ニコル達に感謝の言葉を口にして僕達は艦隊に向かっていった。



ニコルSIDE

 水中から狙ってくる一機の敵を狙ってグレイプニールを射出する。
「捕った!!」
 すぐさまビームクローを展開して(密着して展開すれば水中でもビームは有効)敵機を破壊する。
「テメェ等、調子に乗ってんじゃねぇぞ!!」
  こっちが水中の相手に専念していると空中からも攻撃を受ける。バスターダガー(もちろんグゥル付き)だ。
水中相手に戦ってる時に来られるとさすがに面倒だな。
「ヴェティージいいいいい!!ミューディーの仇ぃぃぃぃぃ!!!!ぶっ殺してやるぁぁぁぁ!!!!」
 マユさんに襲い掛かろうとするバスターダガー、しかし僕はそれをビームガンを撃って妨害する。
「ニコルさん!」
「コイツは僕が戦(や)ります、少佐とマユさんは周りの敵を!!」
 雑魚を二人に任せ、僕はバスターダガーと向き合い、ビームガンを構える。
「邪魔すんじゃねぇ!!用があんのはテメェじゃねぇんだよぉぉぉ!!!!!」
 絶叫しながらバスターダガーからライフルとランチャーが放たれる。
「舐めるな!!」
 回避しながらビームガンを連射して反撃に移る。
「チィッ!このやろぉぉぉぉぉぉっっ!!!!」
 なりふり構わないといった様相で武装全てを乱射してくる。
まずい!これだけの攻撃じゃ避けきれない。かといって防いでもシールドは確実に壊れる。
「ニコルさん、これを!!」
 マユさんが僕に何かを投げ渡してきた、ってフォビドゥンブルーそのもの!?
「そうか!!」
 一瞬戸惑ったがすぐにそれを盾にしてバスターダガーの攻撃を防ぎながら一気に接近する。
「喰らえ!!」
 ある程度近づいてボロボロになったフォビドゥンブルーを投げつけ、更にランサーダートを撃ち込んだ。
「グアア!!」
「今だ!!マユさん、少佐!!」
 怯んだバスターダガーに僕達は一斉射撃を喰らわせ、ズタボロになったバスターダガーはそのまま海に落下した。
「畜生ぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」
 パイロットの叫び声が響き渡り、バスターダガーは海に沈んでいった。



シンSIDE

 昨日ほどではないにせよ今回の戦況もこちらが優勢だった。フレイやM1隊の手によって次々に連合の戦艦は撃沈され、連合のMS隊は補給路を絶たれ、その力をフルに活かせなくなっていた。
かといってオーブ軍にも被害が無いわけではない、先遣隊の力を借りる事が出来たとはいえ、オーブは所詮島国、今の所連合軍に悟られずにいるが限界は近づいている。
故にオーブ軍は何としてもこの戦いでケリをつけなければならない。
前回戦った特機、フォビドゥンとカラミティを発見し、俺とキラはそいつらに狙いをつける。相手の士気を更に落とす為にだ。
「キラ!!」
「分かってる!!一気に蹴散らす!!」
 俺はフォビドゥン、キラはカラミティに向かって突っ込んでいった。
「何だよお前……」
「お前の相手は俺だ!!」
 レヴィアブレードを構えながら急接近する俺を警戒してか、フォビドゥンは素早くシールドを構える。
キラとの戦いで防御を固めるって事を覚えたのか……。機体に合った良い戦法だ。けどなぁ…………
「高威力の攻撃を一転に集中させれば!!」
 俺はレヴィアブレードでフォビドゥンのシールドを一気に刺し貫き、破壊する。
「なっ!?嘘だろ……」
 接近戦とはいえまさかこうも簡単にシールドを破壊されるとは思ってなかったのだろう、フォビドゥンのパイロットは驚愕の声を上げる(俺自身も予想以上の威力に自分で驚いてしまった)。
「クッ…………」
「逃がすかよぉ!」
 不利を悟って距離を取ろうとするフォビドゥンに俺はベルゼブラスターをショットガンモードにして追い討ちをかける。
「うあああ!ク、クソォッ!!」
 尚も反撃しようともがくフォビドゥン、しかしシールドを片方失った状態ではビームの雨全てを防ぎきる事が出来ず、次第に傷ついていく。
「ち、畜生……」
 ボロボロになったフォビドゥンは海中に逃げるしかなかった。実質撤退だ。
「俺と相性良すぎだろ、この機体」
 撤退したフォビドゥンを眺めながら俺はそんな事を呟いた。



オルガSIDE

 畜生、何なんだよコイツは!?
「コノヤロォォォ――――!!!!」
 武器を全部使って攻撃を仕掛けるが俺が戦う白い機体は全て軽々と避けてしまう。
「甘い!!」
「うおぉっ!?」
 逆に背後に回られ凄まじい火力の砲撃を受けてしまう。
これだけの火力でこのスピードってどんだけ反則なんだよ!?
「オルガ!一旦退け!!」
 シャムスの仲間のスウェンとか言う奴が通信を送ってきた。
「ここまでやられてオメオメ引き下がれってのかよ!?」
「変な意地を張るな、機体もパイロットの腕の違いすぎる、今の戦力じゃこの化け物は倒せん!」
 ……悔しいがコイツの言う通り、陸上や宇宙と違って空中じゃカラミティも本気を出せねぇ…………。
「……チッ、仕方ねぇ」
 クソッ、覚えてやがれ!次は必ずぶっ潰してやる!!



アズラエルSIDE

 畜生が!!いつからオーブ軍はこんな化け物軍隊になったんだよ!?
「アズラエル理事、最早これまでです、撤退しましょう」
「はぁ!?ふざけるなよ!!これじゃこっちのボロ負けじゃないか!!」
「しかし戦力があまりにも減りすぎています!!マスドライバーはここだけではありません、これ以上の戦力低下は非常に問題ですぞ!!」
「ク、クソォォォォ…………」
 覚えていろよオーブめ、この報復は必ずしてやるからな!!!!



キラSIDE

 連合軍が全軍撤退した事により、オーブ軍は歴史的な大勝を挙げ、オーブ全域が大喝采に包まれた。
僕やシン達も軍部に戻った途端、凱旋将軍の様に皆からもみくちゃにされたりして手荒い歓迎を受けた。
「やったな!」
「ああ!!」
 戦勝ムードの中、僕とシンは顔を見合わせて笑い合い、久しぶりにハイタッチを交わしたのだった。


NO SIDE

 防衛戦から数日、連合、ザフトの両陣営の穏健派とオーブによる会談が秘密裏に実施された。
現時点において、各々の経済、財政状況、そして徐々に戦争長期化に伴い高まりつつある反戦感情、それらを踏まえ、彼等は戦争継続を危ぶんでいた。
「では、この案件に異論のある方は挙手を……」
 進行役の男の声に、手を挙げるものは居なかった。
ここに各陣営穏健派による同盟が可決したのであった。



キラSIDE

 会談が終わった翌日、オーブ上層部による全世界に向けての声明が発表された。
主な内容はブルーコスモス過激派とザフト過激派の告発、そして各穏健派とオーブによる第3勢力『和平同盟』の樹立とその目的の発表だ。
和平同盟の目的……それは分かりやすく言えば過激派排除による和平の実現(悪い言い方をすれば過激派に一切合財の責任を押し付けて倒すという事)、つまりは前世でデュランダル議長が対ロゴス同盟を樹立したのと同じ手段だ。
ただ、一つ違う点は名指しで告発したのは連合側はムルタ・アズラエルとロード・ジブリールの二人、ザフトにいたってはパトリック・ザラのみという強硬派の筆頭人物だけだ。
強硬派全てが過激派という訳ではないので、これによって相手側に裏切りを引き起こさせるという算段があるようだ。
戦後についてはまだ完全に決まったわけではないが、最低でも相互不干渉(必要最低限の外交は除く)ぐらいには治めるつもりらしい。
そして最後に、シーゲル・クラインはエイプリルフールクライシスの責任を取って自首し、自ら拘束される道を選んだ。
彼の代理にはアイリーン・カナーバ議員が入る予定。

歴史は確実に僕の知らない方向へと向きを変えていた。





[32127] 外伝 アスラン・ザラ~蘇る記憶~
Name: 神無鴇人◆c2099dfd ID:7cb03caa
Date: 2012/03/16 17:40
アスランSIDE

 一緒に行こうアスラン     ああッ! 蹴散らすぞッ!!

                                願いがあるから人は戦うのかな?

                みんなの願いがもっと近づけばいいのにね

  この裏切り者がぁ!!        よくもアスランを!!そのせいでラクスは!!

 お前の力は……戦場を混乱させるだけだッ!

                       ユウナ・ロマとの事は分かってるつもりだが……

   君は俺が守るよ…………

何故だシン、何故解らないんだ、議長の作る世界は未来を殺すことに

                へっ……俺の、勝ちだぜ、アスラン



「ハァハァハァ…………また……あの夢か…………」
 最近同じ夢をよく見る。自分の記憶に無いはずの戦いの夢。
最後は必ず倒したと思ったあの男、シン・アスカに倒される夢だ。
「クソッ……何度見ても胸糞悪い」
「また随分と不機嫌な寝覚めだな……」
 ドアの方から声を掛けられる。
「シマトか……何の用だ?」
 男の名はシマト・アベ。このビクトリア基地における俺の唯一の友人だ。
ちなみにこいつは男も女も両方イケる口、所謂(いわゆる)両刀遣いで彼氏と彼女が一人ずついる(しかもお互い合意の上だ)。
「ああ、最近ちょっと刺激が欲しくてな、何か良い物ないか?」
「そこの棚の3段目から下のヤツなら好きなの持っていっていい、それより上は俺専用だ」
 俺がそう言うとシマトの奴は棚にあるSMグッズを物色し始める。
「それにしても……」
 シマトは俺専用の三角○○の音声ボタンを押しながら呟く。
『まだ足りないの?まったく、本当に君は卑しいね……アスラン』←音声調整システムで作ったキラの声。
「良い声だなぁ、お前の意中の相手は、一度お相手願いたいぜ」
 コイツ……!!
「貴様、キラは……」
「お前の男だろ……俺は赤の他人から寝取っても、友達から寝取る真似はしないって、いい加減覚えろよ、いつものジョークじゃねぇか」
 その手のジョークは本気で笑えん、ただでさえあのシン・アスカやフレイとかいう女にキラが誑かされているというのに……。
「ああ、それとゲイツとかいう新型のお前専用機が届いたぜ」
 それを先に言え、最近はオーブで連合が負けた影響でただでさえ連合の攻撃が厳しいというのに…………。
キラ…………何故オーブに逃げるんだ?俺の所に来れば父上を通してプラントに移住させてまた一緒に居られるのに…………。



その頃オーブでは……

キラSIDE

「!!」
 急に寒気を感じた……な、何だこの寒気は……。
「どうした?」
「いや、何か寒気が……そういえば、今日だよね、ビクトリア攻防戦って」
「ああ、アスランの奴がそこに居るはずだけど……」
 …………アスランか。
「くたばってくれればありがたいんだがな……」
「うん、僕もそう思う……連合に貸し作りに行ってるサハク家の人、頑張って欲しいな」
 色んな意味で厄介だからね、アスランは…………。



アスランSIDE

 ゲイツを受領してすぐに連合軍は攻撃を仕掛けてきた。
当然俺とシマトも迎撃に移り、連合のMS隊を相手に奮戦する。
だが……
「ハハハハハ!脆い、脆すぎるぞ!!」
 この黒い特機、コイツを始めとした部隊によってにジンやバクゥの部隊は次々に壊滅させられ、俺のゲイツもかなり損傷してしまった。
「それで終わりか?つまらん……もういい、貴様は消えろ」
 黒い特機は俺に銃口を向けてくる。

死ぬのか?俺はココで死ぬのか?


アスラン……逃げて

                           ニコルゥーーーーーーーーー!!!!

アスラァァァァァァァァァンッ!!       キラァァァァァァァァァァッ!!


 何だ?これは…………。


「皮肉なもんだな、こんな時になってお互い理解しあえるなんてな」

 やめろ  ヤメロヤメロヤメロ!!  ナンデオマエガキラニナレナレシク……

「本当だよ…………もうお互い機体も限界だし、そろそろ決着つけようか」

   ソンナヤツトハナサナイデクレ

キラアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!!



 この記憶……そうだ俺はあの時、シンにやられて魂だけの状態になって……それでもキラを守りたくて…………そしてシンとキラの戦いの最中に発生した光の中に飛び込んだんだ…………。
「思い出したぞ……全て」
 頭の中が一気にクリアになる。俺は敵の攻撃を回避しながら接近、黒い機体の片腕を切り落とした。
「何!?」
 驚く敵に俺はすかさず追撃を加え、一気に攻守を逆転する。
「馬鹿な……何だというのだ貴様は!?」
「俺は、SEEDを持つ者だ!!」
 一気呵成に攻め込む俺に黒の特機は徐々に追い詰められていく。
このまま止めを刺そうと思ったが、しかしそれはシマトの声に阻まれた。
『アスラン!基地はもう持たない撤退するぞ!!』
「分かった、運が良かったな黒いの」
 それだけ言って俺は撤退した。


 漸く記憶を取り戻す事が出来た。
待っててくれキラ、カガリ……今度こそ、今度こそ俺が君達を幸せにしてみせる!!
そのためにもシン!お前は必ず俺が討つ!!




[32127] 第25話 デート日和と波乱の予兆
Name: 神無鴇人◆c2099dfd ID:7cb03caa
Date: 2012/03/16 17:41
シンSIDE

 和平同盟樹立後、俺達に待っていたのは多忙な日々だった。
まずは両陣営穏健派の受け入れ、それに加え、こっちに寝返りを希望する者達の援護に向かったりとでそれはもう大忙しだった。
この前はハルバートン提督率いる第8艦隊が捕虜だったミゲル・アイマンと協力し、軍事要塞アルテミスを落とし、それを手土産に同盟軍に参加した。
そして昨日はロドニアを落としたばかりだ。
戦闘中、転属させらていたバジルール中尉(ドミニオンの艦長に就任する予定だった)が部下と共にブルーコスモスの一派を拘束し、降伏してきた。
そしてロドニアが落ちたことにより、ステラを始めとしたエクステンデットたちは同盟軍に保護され、俺達が撃墜して捕虜にしたデュエルダガーのパイロット、ミューディー・ホルクロフト(全治4ヶ月の怪我を負いながらも運良く生きていた)と共にブルーコスモス過激派の非道を証明する貴重な生き証人となり、治療と同時に社会復帰のための教育を受けることになった為、事実上ブルーコスモスから解放されたのだった。
(上記の2件についての詳しい詳細は外伝に書く予定)

 そして今俺達はオーブにてエクステンデット達を養護施設に引き渡している真っ最中だ。
「会わなくて良かったの?」
 俺に気を使ってかキラが話しかけてきた。
「いいんだよ、前世は前世、今は今だ」
 今更ステラに顔見せた所でどうなるって話じゃないし、第一この時代のステラは俺の事を知らない。
「幸せになれよ…………ステラ」
 保護されていくエクステンデット達を眺めながら俺はそう呟いた。



アスランSIDE

 ビクトリアを脱出した俺はクルーゼ隊長……いや、クルーゼと合流しプラントに戻るシャトルに乗っていた。
『新型MSアドヴァンスのパイロットにしてアスハ家の悪政を暴き、和平同盟締結に貢献したオーブの英雄、シン・アスカ!!そして彼の相棒にして新型MSフリーダムを操るは白き疾風の貴公子、キラ・ヤマト!!連合艦隊を圧倒するその姿はまさに圧巻の一言であり…………』
シャトルに乗る前に買った新聞にはそう書かれていた。
「シン……どこまでも救えん奴だ、お前は…………」
 キラを騙し、セイランのような俗物に加担し、挙句の果てにカガリを陥れ、オーブを奪った。
もはや俺の中にシンに対する感情は憎悪と侮蔑、そして殺意しかない。
奴は必ず俺が討つ、そしてキラとカガリをを救い出し、二人と共に世界を平和へ導く。
俺は自前のノートパソコンを開き、操作を開始した。



シンSIDE

 地上での戦いが一段落つき、明日から戦場は本格的に宇宙に移るだろう。
ユウナさんの計らいで俺達カグツチ隊とアークエンジェル組には今日一日休暇が与えられる事になった。
「シン、ちょっといい?」
 出かける準備をしているとキラが訪ねてきた。
「ああ、いいぜ、どうした?」
「ちょっと帽子借りたいんだけど、良いのある?」
「ああ、そこの箪笥に入ってるから好きなの使っていいぞ」
 そう答えて俺は帽子を被り、伊達眼鏡をかける。
なぜこんな格好をするかというと、ウズミを拘束する時にオーブ全域に放送された映像が大々的に報道され、更にはオーブ防衛戦での戦果を週刊誌や新聞とかに俺とキラの写真付きで掲載されたもんだから俺達二人とも一躍有名人となってしまい、今や英雄扱いだ。
おかげで街を歩く度にサインやら握手やらを求められてしまって…………。
「ったく、英雄なんて俺の柄じゃないのにな……キラも前世ではこんな感じだったのか?」
「いや、終戦からユニウスセブンの事件までの2年間は孤児院で隠居していたから」
「十代の若者がその歳で隠居かよ?せめて働け」
「ハハ……これでも反省してるつもりだよ……ところで、シンやマユちゃんは何処に行くの?」
「マユは友達の墓参り(第5話参照)してからニコルを連れて買い物だってさ」
「へぇ~、あの二人が」
 ニコルは他国人だからオーブに詳しくないのでマユがオーブを案内する事になったらしい。
ニコルの奴はマユに惚れてる節があるから結構不安なんだが……まぁアイツなら間違いは犯さないだろう…………マユに相応しいか否かはこれからじっっっっっっっっっっっっっっくり見極めるとして。
「俺の方は詳しく考えてない、アサギ達と適当にぶらつく」
 ま、せいぜいゲーセンとかボーリングって所だな。
「へぇ、三股デート?」
 何でそうなる…………。
「あの三人、シンに脈ありだと思うけど?この前だって『好きな娘いる?』って聞かれてたじゃないか」
 こ、コイツは……自分の色恋沙汰に鈍感な癖して…………。まぁ、俺だって男だし、あいつ等は結構可愛いと思うけど…………って何考えてんだ俺は!!確かにあいつ等とはよくつるむし結構意識しているとは思うけど、それが恋愛かどうかは……あれ、俺今まで恋愛した事あったっけ?
ルナとは吊り橋効果みたいなものだし、ステラにいたってはマユと被ってただけ……。
「そ、そんな事より、お前だってフレイとデートだろうが!」
 そう言った瞬間キラの表情に動揺が走った。
「な、何を言って、ただ映画を見に行くだけで」
「二人きりでだろ、立派なデートだ」
 サイの奴泣いてたな……おかげで俺とトールは3時間近く愚痴られた(ちなみにカズイは既に除隊した)。
「ま、頑張れよ」
 それだけ言って俺は部屋を後にした。



キラSIDE

 待ち合わせ時間の5分ほど前に僕はフレイとの待ち合わせ場所に着いた。それから間も無く準備を済ませたフレイがやって来た。
「ごめん、待った?」
「ううん、僕も今来たところだから……」
 思わず見惚れてしまう。フレイはいつもと違ってカジュアルな服装で軽く化粧もしている所為か、いつにも増してすごく綺麗で……うぅ、すごく緊張する。
「じ、じゃあ行こうか」
「うん」
 フレイは笑みを浮かべながら僕の手を握ってきた。うわ、まずい……顔が真っ赤になってしまう…………。っていうか、よく考えてみれば僕ってデートなんてしたこと無いし…………こんな事で大丈夫なんだろうか?。



マユSIDE

 エミのお墓に花を添えて私は墓標の前で手を合わせ、目を閉じた。
(エミ……私パイロットになったんだよ、今の私を見たらエミは怒るかもしれない…………でもね後悔してないよ、だって守りたいから、この国も、家族も、フレイ達も、皆大好きだから……だから、見守っていてね、エミ…………)
 静かに目を開け、私はニコルさんが待つ出口へ向かおうとする。
するとその時、風が吹いてエミのお墓に供えられた花を揺らした。

エミが微笑みながら手を振っている。私にはそう思えた。

「またね、エミ」
 そう呟いて、私はエミに手を振った。



シンSIDE

 俺は今、アサギ達と一緒にゲーセンに来ていた。
そこで何をやっているかと言うと格ゲーとかシューティングとかじゃなくて……何故かダーツだった。
理由は分からんが三人とも揃ってココのダーツを薦めてきたので少し変に思いながらも俺はそれなりに楽しんでいた。
しかし何だろ?アサギもマユラもジュリも予想以上に強いっていうか……なんか妙に鬼気迫るものが。
『WINNER、シン・アスカ』
 まぁ俺が勝ったけど……。
ちなみに結果は…
1位・俺
2位・マユラ
3位・アサギ
4位・ジュリ
という結果に終わった。
「おめでとうございます、当店では男女でプレイしていただいたお客様には『ご褒美ダーツルーレット』にチャレンジしていただいております、チャレンジいたしますか?」
 ご褒美ルーレット?もしかしてこれが薦めた理由か?
「絶対やった方がいいよ、ねぇ、アサギ!」
「うん、このルーレット最高だし」
「そ、そうかじゃあやるよ」
 えーと、的には面積が広い順に赤、黄色、青、ピンク、白の5色あってこの色に応じて賞品が決まるってわけか。
あれ?けど普通白って大概ハズレだから一番面積が広いはずだよな?
まぁ、ここまで来たらやらない訳にはいかないが……なんか引っかかる。
「よっと」
 ダーツが刺さったのは………………………
「ピンクか」
 え~と、賞品は…………。
俺は賞品の名前が書いているリストを見る。するとそこに書いてあったのは…………

『三人全員とキス』

 ええええええええええええええええEEEEEEEEEEEEEE――――――――――――――――――――――!!!!!!!!?!!??!?!!?!!!?
「ちょっ、ままま、待て!!何これ?何で三人!?何でキス!!??!??」
 混乱する頭で俺はとにかく思ったことを口走るが三人は顔を真っ赤にしたままこっちを見ている。
そ、そりゃマユラ達みたいな美少女達とキスできるのは嬉しいが……って違う違うちが~~う!!。
そ、そうだ!他の賞品は!?

赤・マユラとキス
黄・アサギとキス
青・ジュリとキス
白・ハズレ

 な、何だコレ?思いっきり仕組まれた感があるんですけど…………。
っていうか完全にコレ嵌められているよな!?
「じゃ、じゃあシン君……その……する?」
「へ?」
 マユラが顔を真っ赤にしながら上目遣いで見つめてくる。ちょっ、それ反則…………。
「そうじゃなくて!お、お前等それで良いのか!?いくらゲームだからって俺とキスって、しかも三人とも!!」
「シン君なら、私は全然OKだけど……」
「私も……シン君なら文句無いし……」
「うん……あ、でも出来れば最初にして欲しいな……なんて……」
 マユラ、ジュリ、アサギと三人による連続上目遣いのジェットストリームアタックに俺の理性は甚大なダメージを受ける。
俺の中の悪魔『オラオラオラ!!こんなチャンス見逃してどうすんだよ!!思いっきりやっちまえ!!』
俺の中の天使『彼女達がココまでしてるんだ!!ここまでされて彼女達を裏切るのか!?逃げちゃダメだ!!やるんだ!!』
『『やれ!!キスしろ!!』』
 こんな時に限って天使も悪魔も満場一致だよ……。畜生、もう覚悟決めるしかないじゃないか……。
「わ、分かった三人とも目ぇ閉じろ、順番は俺が決める」
 俺がそう言うと三人は黙ったまま目を閉じた。
「本当に良いのか?俺で……」
「うん……お願いします(というか、それが目的でココに来たんだし)」
 三人を代表してかマユラが返答する。
「ごめん……!」
 小声で謝ってから俺はまず最初にマユラの唇を奪った。
「んん……」
(っ!……うわ、すっげぇ柔らけぇ)
 頭ン中が真っ白になる。キスは前世でルナ相手に何度かしたけど…こ、これはヤバイ。
「んっ……ぷはぁっ」
 数秒間口付けてから唇を離す。
次はアサギ、そしてジュリへと順番に口付けていく。
全員とキスし終えた時には三人ともその場にへたり込んでしまっていた。
「シン君……キス上手過ぎ……」
 マユラのそんな呟きを聞き流しながら俺は理性の回復に時間を費やしていた。


 ようやく落ち着きを取り戻した俺はアサギ、ジュリ、マユラの3人に向かい合って尋問を開始した。
「いや、そのぉ~~まぁ、シン君って一気に有名人になっちゃったから……ライバル増える前に早めに決着付けた方がいいと思って」
「うん、好きな子が誰かに取られるのは嫌だし……」
 アサギとジュリがバツの悪そうな表情で答える。
「っていうか……お前等、本気で俺の事…………」
 3人とも顔を真っ赤にして頷いた。当然それに釣られて俺の顔も真っ赤だ。
「好きな子って……本当に俺で良いのかよ?俺って口悪いし、態度デカイし…………年下だし」
「そ、そんなの関係ないから!っていうかそういう所含めて、私シン君の事が…………」
 マユラが真剣な表情で反論してくる。…………覚悟、決めるしかないか。
「みんなの気持ちはすごく嬉しいよ、3人とも魅力的だし、それに理由はどうあれこんな事した以上、責任だって取るつもりだ、だけど……時間くれないか?色々整理したいし、今みたいな曖昧な感情で返事するのは嫌だから」
 情けない答えかもしれないが今の俺にはこれ以上の言葉が浮かんでこなかった。
「うん、その代わり……」
 そういってマユラ達は一斉に俺に抱きついてきた。
「え?ちょ……」
「「「返事はキッチリ聞かせてね」」」
「…………ああ、ありがとう」
 女にココまでさせた以上、絶対に裏切れないな……。どんな選択をすることになっても、後悔だけはしないようにしないと……。



キラSIDE

 映画を見終えた僕達は近くの公園に来ていた。
僕達の見たのは戦争物と恋愛物を合わせたような映画で、コレがかなり面白く、僕とフレイも完全に見入ってしまった。
「良かったわね、あの映画」
「うん」
 満足気な笑みを浮かべ、フレイはベンチに腰掛ける。
「何か、こんな風に遊んでいると今が戦時中ってことを忘れそうになるわよね……」
「うん、明日からまた宇宙か……何か、ヘリオポリスからオーブに来るまで、色んな事がありすぎて、もう何年も宇宙に上がってないって感じだよ」
 本当に今まで色んな事があった…………未来から逆行して、敵だったシンと一緒に戦って、歴史を変えて…………。
「宇宙での戦いが終わったら、この戦争も終わるのかな?」
「分からない…ただ、負けるわけにはいかない……これだけはハッキリ言えるよ」
「うん……」
 過激派が相手である以上、泥仕合になるのだけは間違いない、民間人を巻き込まないためにも僕達は負けるわけにはいかない。
「あのさ、キラ」
 突然改まった様子でフレイが声を掛けてきた。
「何?」
「私とマユが始めて会ったときのこと覚えてる?」
「え?うん、覚えてるけど」
 というか忘れなれないよアレは。
「私さ、あの時マユにブルーコスモスと同類って言われて否定したけどさ、実際その通りだった……あの時の私はコーディネイターを怖がって、パパが殺された時はコーディネイターなんて皆死ねばいいって、そう思ってた…………」
 遠い目をしながらフレイは言葉を紡ぐ。
「でもさ、今じゃそのコーディネイターと親友になったり、こんな風にデートしたりしてる……なんか不思議じゃない?結局、私が怯えていた意味って何だったんだろう?って感じで」
 明るく振る舞いならフレイは独白を続ける。彼女の雰囲気はまるで戦争前の明るかった頃……いや、あの頃以上に魅力的で、輝いて見えた。
「それでさ、最近になって自分が何をしたくて何をすべきか考えたの……結局私の目的ってやっぱり復讐だから」
「うん、それで結論は出たの?」
「まぁね、やっぱりザフトはパパの敵でもだから嫌い、それにブルーコスモスもザフトと同じくらい嫌い、身勝手だった頃の自分を見てるみたいですごく不快になるわ、だから絶対にそいつらの好き勝手にさせない、相手の皆殺ししか考えて無い奴らに絶対負けない……それが私の目的……パパを奪ったザフトへの復讐と最低だった自分へのケジメなの」
 決意に満ちた表情でフレイはそう言った。
そんな彼女を見ていて、僕は今までに無いほど強い衝動に駆られた。
彼女を守りたい、今目の前にいる最高の女性を命懸けで守りたいという衝動に……。
「え?キラ?」
 無意識の内に僕は彼女を抱き寄せていた。
「出来るよ、フレイなら絶対……フレイは強いから、それに僕がフレイを守るから……」
 自分で言ってて恥ずかしくなるような台詞を言いつつ僕はフレイを抱きしめる。
「うん、ありがとう、キラ」
 フレイがそう言って満面の笑みを浮かべる。
「私も、キラを守るから…………」
 静かにそう呟いて、
フレイは目を閉じ、僕達はお互いに顔を寄せ合い、唇を重ねた。



NO SIDE

 やがて夜になり、シン達も明日の出発に備え就寝に入る。
しかし、この時既に波乱の種は芽吹き始めていた。



カガリSIDE

 面会時間ギリギリに突然キサカから差し入れが届いた。
差し入れの中には折りたたまれた紙が入っていた。どうやらキサカのプライベート端末に届いたメールを丸写しした物らしい。
そのメールには留置所からの脱走方法、脱走に適した時間帯、脱走した後の潜伏先等、様々のものが記載されていた。
あまりに詳しく書かれているそれに一瞬何者かの罠ではないかと思ってしまったが、差出人の名前を見たそんな考えは吹き飛んだ。
「アスラン……」
 私達の理解者は存在した!!
まだ運は私を見放していない…………すぐに私はキサカが買収した看守にキサカに連絡を入れるよう伝え、自分も脱走の準備を開始した。
待っていろシン・アスカ!!私は必ずオーブを貴様の魔の手から救い出し、貴様に然るべき報いを与えてやる!!!!





[32127] 外伝 ナタル・バジルール~軍人として、人として~
Name: 神無鴇人◆c2099dfd ID:7cb03caa
Date: 2012/03/16 17:42
ナタルSIDE

 私、ナタル・バジルールは現在ロドニアに向かう輸送艦に乗っている。
本来なら私は新造艦『ドミニオン』の艦長に就任する予定だったが、先日のオーブ攻防戦において配属予定であったパイロット、クロト・ブエルが戦死し、急遽配備する機体の見直しや補充員の手続き等を行う事になった為、予定が繰り下がってしまい、私は重要研究施設であるロドニアの研究所の防衛部隊の臨時指揮官に任命されたのだった。
「クーデター、か…………」
 私はテレビをつけ、ニュースチャンネルを見る。
映るのはどのチャンネルも同じ、先日のオーブで起きたクーデターだ、そしてそれに伴い発足した新勢力、和平同盟……。
「…………」
 同盟発足から今日までに結構な数の寝返りが発生した。私にもその誘いが来たほどだ。確かに私個人の感情でいえば悪い話ではなかったと思う。
とは言え、私はあくまで連合の軍人、自分で言うのもなんだが私は地球連合の軍人と言う職に誇りを持っている.
馬鹿な選択をしたと自分でもそう思っている、しかし自分の誇りを自分で捨てるような真似はしたくない…………。そしてそれと同時に心のどこかで未だに過激派を含んだ地球連合すべてを信じていたいと思っている自分がいる…………。
この時の私はそう思っていた。それがすぐに崩れる幻想だということも知らずに。



シンSIDE

 現在俺はカグツチ隊と共にロドニアにてこれから起こるであろう戦闘の準備をしている。
何故ロドニアかというと、先のオーブ防衛戦にて俺が撃墜したデュエルダガーのパイロット、ミューディー・ホルクロフト、彼女はブルーコスモスの経営する施設出身で、何かの情報が得られるかもと催眠療法を用いた尋問にかけた結果、彼女の証言でブルーコスモスの強化人間(エクステンデット)育成施設の一つがロドニアにあることが判明したからだ。
(まさかこんなに早くチャンスが来るなんて……)
 多分ロドニアにはステラがいる……たとえいないとしてもブルーコスモスの悪行を暴けば彼女を解放する事が出来るかもしれない、現時点ならステラはまだ戦場に出ている可能性は低いしな。
取り敢えず今は降伏勧告を出しているけど、どうせ連中は攻撃してくるだろうから、それからが本番だな。



ナタルSIDE

 ロドニアの研究所に到着して私が見たものは私が想像していた以上に目を覆いたくなるような事実だった。
子供を被験者とした薬物による人体実験、適性の無い者の処分、どれを取っても余りに残酷すぎる仕打ちだ。
たしかに敵を全滅させるというのも戦争終結の方法の一つだ……だが、ココまでする必要があるのか?
そして追い討ちをかけるかのように同盟軍からの降伏勧告、同盟軍の艦隊を見るたびに私は降伏してしまいたいという考えが浮かんでしまう。
「返答する必要など無い!!さっさと攻撃しろ!!!」
 私の困惑をよそにこの研究所の最高責任者にしてブルーコスモスのナンバー2、ロード・ジブリールが喚きたてる。
所員が応じて防衛部隊が出撃し、戦闘に入るが、同盟軍側はあらかじめ予期していたかのような素早い対応を見せ、瞬く間に追い詰められてしまう。
それもそのはず、この研究所は元々極秘裏の実験を行うために作られた施設のため、戦力自体はそれほど多くはない。
最早この研究所が同盟軍の手に落ちるのは時間の問題だ。
そんな光景を見ながら私はどこか諦めに近い感情を抱いていた。
もうこちら側に抵抗するだけの戦力は無い……だが、これで良いのかもしれない…… これでココにいる被験者の子供達も戦わずに済むのだから…………。
「あのガキどもを出せ!!このまま負ける事など許さん!!!!」
 突然ジブリールがとんでもない事を言い出した。
「何を言っているのですか!!?彼等は訓練も受け終えていない素人も同然なのです!!そんな者たちを出せば無駄死に視するだけです!!!!」
「黙れ!!あのガキどもはコーディネイターを殺すために私が買い取ったものだ!!いわば私の私物も同然!!それにどの道処分する予定だ!!私のものを私が自由に使うことの何が悪い!!!!」
 完全に狂った表情でジブリールは喚き散らす。
なんという事だ……過激派というものココまで腐りきってしまっているものなのか?
私は心のどこかで信じていた、信じようといていた。連合に名を連ねるものを信じていたかった……。
その結果がこれか……。
ラミアス少佐を甘いと評していたが、なんて事は無い、本当に甘かったのは私の方だ。
「この下衆が!!」
 衝動的に私は懐から拳銃を引き抜き、ジブリールの胸板を打ち抜いていた。
「がっ……ぁ、き、さまぁぁ…………」
「貴様の下らん我侭で兵達を犠牲にする事は出来ん」
 静かにそう言い放ち、私は再びジブリールに向けて引き金を引いた。
弾丸はジブリールの額を撃ち抜き、ジブリールは苦悶の表情のまま絶命した。
「研究所、及び防衛部隊全体に通達!速やかに同盟軍に投降せよ!!拒否するものは拘束、最悪の場合射殺されるものと思え!!!!」


 それから十数分後、我々防衛部隊は同盟軍に投降した。
兵の一部は降伏に反対し、徹底抗戦を唱えたが、結局は全員拘束されたのだった。



 同盟軍に降伏が受け入れられた後、私は同盟軍の兵達と共に被験体の子供達が剥離されている部屋に彼らの保護に向かった。
氾濫防止のために部屋はいくつかに分けられており、私たちは手分けして子供達の保護を開始した。
「錯乱して暴れるかもしれません、十分気をつけてください」
「ああ、分かった」
 所員の注意を聞き、私は意を決して部屋に入る。
入った瞬間一人少女が私に飛び掛ってきた。
「グッ……!?」
 子供とは思えない力に一瞬戸惑ってしまい、少女は私の首に手をかけようとする。
慌てて近くにいた憲兵が少女を取り押さえ、私は解放された。
「ゲホッ、ゲホッ……」
 むせながら私は自分に襲い掛かってきた少女、ステラ・ルーシェを見る。
実年齢以上に幼いその顔つきからは怯えしか感じられず、今も私を見て表情を恐怖に染めている。
「来ないでぇぇ!!」
 一歩近づこうとした私にステラは悲鳴にも似た声を上げた。
「イヤ……死ぬの…………怖い…………イヤ、いやぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
 錯乱しながらステラは叫ぶ。
結局私はブルーコスモスの所業を知らない事を良い事に黙認し続けてきた。その結果彼女の様な子供がこんな目に遭い、命を弄ばれている……自分で自分を呪いたい気分だ。
堪らず私はステラを抱きしめた。
「大丈夫だ…………もう戦う必要はない、お前が死ぬ事はないんだ、だから安心しろ」
 私がそう語りかけるとステラは今まで暴れていたのが嘘の様に大人しくなる。
「死なない…………ステラ、死なないの?」
「ああ、もう苦しむ必要も怯える必要もないんだ……」
 ステラは無言のまま安堵の表情を浮かべ、抵抗を止めた。
その後、何とか他の子供達も全て保護する事に成功し、私達はオーブ本国へと連行された。



NO SIDE

 その後、ナタル・バジルールは逮捕され、裁判にかけられる事となるが、後に司法取引により、同盟軍への仕官を条件に釈放、同盟軍二尉としてアークエンジェル副長に復帰する事となる。





[32127] 第26話 史上最低最悪の反逆者~その名は無能女王カガリ・ユラ・アスハ~
Name: 神無鴇人◆c2099dfd ID:7cb03caa
Date: 2012/03/16 17:42
シンSIDE

「カガリの奴が脱走した!?本当ですか!?」
 朝早くにユウナさんから連絡が入り、入った知らせはカガリが拘置所から脱走したという知らせだった。
「ああ、夜明け前にね、MS数機とクサナギ級一隻持って宇宙に逃げられた……見事にやられたよ、かなりの手際の良さだった」
「でもあの馬鹿にそんな器用な真似できますか?」
 カガリが脱走する事は想定していた、しかし元が馬鹿なので脱走してもすぐに捕まると思っていたが(実際にアイツは今まで2~3回程脱走しようとしてその都度看守にとっ捕まって懲罰房行きになっていた)。
「それが彼女のお目付け役であるキサカ二尉(←オーブ防衛戦後降格)の家を家宅捜索したら気になるものが見つかってね、取り敢えずキラ君と一緒に司令部に来て欲しい」
「分かりました」
 疑問を抱きつつも俺はキラに連絡を入れ、司令部へ向かった。



キラSIDE

 キサカさんの部屋から見つかった物……それはある一通のメールだった。
それには脱走方法、脱走に適した時間帯、脱走した後の潜伏先等、様々のものが記載されていた。
そしてそのメールの送り主は…………。
「アスラン!?」
 それはアスラン・ザラからのものだった。
「しかし、パトリック・ザラの息子が何故カガリを脱走させたんだ?」
 ユウナさんが疑問の声を上げる。
確かに変だ、前世ならともかく今のアスランとカガリの接点といえばオーブ上陸前の無人島ぐらいだ。確かに二人はあそこで意気投合していたみたいだったけど、だからといってアスランがカガリを助ける理由としては少し薄い。
「ところで、カガリは結局どうなったんですか?」
「情けない話だけど、夜明け前に脱走した直後、マルキオ導師の許に潜伏して、その後明け方の出港準備にまぎれてクサナギ級一隻とフラガ少佐のストライク、あとM1を何機か奪い、キサカや他のアスハ派の下士官数名を連れて宇宙に逃げてしまったよ、マルキオ導師は既に拘束したけど、彼はカガリ達への協力を否定している『自分は脅されていただけだ』ってね」
 ……最悪だ。
「せめてもの救いは、この前接収したアカツキを奪われずに済んだ事ぐらいだ……とにかく、同盟軍はすぐに宇宙に上がって貰う事になる、頑張ってくれ」
「「了解」」
 僕達はユウナさんに敬礼してから部屋を出て宇宙への発進準備に向かった。



クルーゼSIDE

 ククク……アーーハッハッハッハ!!!!
笑いが止まらん、まさかこんな形で運が巡ってこようとはな。
アスランの様子がおかしいと思い奴の端末をこっそり調べてみたらまさかオーブの姫君の脱走を手引きしていたとは……。
同盟軍などという組織が出来た時は少々焦ったが、まさかこのような展開になるとは、嬉しい誤算だ。
アスランの脱走も時間の問題だろう、その時の騒ぎに乗じて連合にNJCのデータを垂れ流すとするか。



アスランSIDE

 カガリの脱走成功を確認し終えた俺はカガリと合流するため、ジャスティスを奪取し、プラントを脱出した。
『止まれ、アスラン!!』
 突然後方から大声が聞こえてきた。
『アスラン貴様!!ザフトを裏切るとはどういうつもりだ!?』
 イザークとディアッカ……早くも追って来たか……だがこれは、むしろ好都合だ。
「イザーク!ディアッカ!お前達も一緒に来るんだ!!」
「何だと!?」
「お前本気で言っているのかよ?」
「連合もザフトも互いに相手を滅ぼす事しか考えていない!!オーブもシンとセイランに汚された!!このままではこの世界の未来は確実に殺されてしまう!!!だから二人とも一緒に来てくれ!!俺とカガリに力を貸してくれ!!!!」
 これで通じるはずだ、前世でもイザーク達は俺やキラに協力してくれたんだ、今回もきっと同じはず…………。
『ふざけるなぁぁぁーーーーーー!!!!!』
 !?



イザークSIDE

 馬鹿だ馬鹿だと思っていたがココまで馬鹿だったとは……。
今までコイツの馬鹿さ加減に怒りを覚えた事は何度もあるが今回はその比じゃない。
確かに連合とザフトの過激派連中に対して疑問はある、だがそれだけで祖国を裏切り挙句テロ行為に加担しろだと!?
目の前の馬鹿はザフトの誇りだけでなく人としての誇りすら失っている。もう許さん!!コイツは殺す!!
「クズが!!今すぐココでくたばれ!!」
 俺はビームサーベルでアスランに斬りかかり、アスランもビームサーベルを引き抜きそれを防御する。
『何故だ!何故解らないんだ!!このままではどの軍が勝っても世界の未来は破滅へ向かってしまうんだぞ!!それなのに何故!?』
「貴様の妄言など解ってたまるかぁ!!!!」
『クッ……ディアッカ!!冷静なお前なら分かるだろ!!イザークを止め……』
 俺への説得を無理と感じたのか、アスランはディアッカに声をかける。しかしディアッカは返答の代わりにミサイルを発射した。
『ディアッカ……お前もか!?』
「喋ってんじゃねぇよ、耳が腐るだろうが……」
 ディアッカが静かではあるが怒りの籠もった声を出す、俺同様怒り心頭のようだ。
「やるぞディアッカ……」
「ああ、コイツはもう生かしておけねぇ」
 ビームサーベルを構え、再びアスランに斬りかかる。
『やめるんだ二人とも!!お前は今の世界を見て何も感じないのか!?』
「妄想だけで裏切る貴様よりは十分見えとるわ!!!」
 叫びながら斬撃を連続して繰り出す。アスランも応戦しようとするがディアッカの援護のお陰でそれを防がれている。
それに加え、アスランは俺たちに誘いを断られた事に戸惑い動きが鈍い。
このまま落としてくれるわ!!!!
「くたば「待てぇぇぇぇーーーーーー!!!!」」
 止めを刺そうとした直後、突然横からの射撃を受けた。
「ストライク!?」
「アスラン!!助けに来たぞ!!」
「コイツ、あの時の金髪女!?」
 乱入してきたのはストライクと複数のM1、そして一隻の戦艦だった。



アスランSIDE

 カガリ達の活躍により俺は間一髪の所で助かった。
流石にイザーク達でもM1部隊全てが相手では苦戦を強いられ、結果として二人を撒くことに成功した。
「ありがとうカガリ、助かった」
「礼なんていらない、お前のお陰で私はセイランの手から逃れる事が出来たんだからな……何にせよ無事でよかったよ、これでシン・アスカやセイラン家からオーブを取り戻す事が出来る」
 カガリ……随分辛い目に遭ってきたんだな…………。俺がもっと早くにシンを倒せていたら…………。
「アスラン、私はオーブを取り戻したい、力を貸してくれないか?」
「ああ、勿論だ……代わりにカガリも俺に力を貸して欲しい、このままでは父上は地球そのものを破壊しかねない」
 俺は話した、父はナチュラル皆殺ししか考えていない事、そしてジェネシスの存在を。
「本当なのか?本気でパトリック・ザラは地球を?」
「ああ、だからこのままではどの軍が勝っても世界の未来は破滅しかない、世界を正しく導くためにも俺に協力してくれ、頼む!!」
「勿論だ!!一緒に戦おう、アスラン!!」
 俺達は誓った、この世界の未来を守る事を。
待っててくれ、キラ……俺は必ずクルーゼと女狐(フレイ)、そしてシンを討ちお前を救う、そしてお前とカガリを幸せにしてみせる!!



キラSIDE

 僕達が宇宙に上がってすぐに、世界中のテレビ放送がジャックされた。
そして今、テレビに映っているのはカガリとアスランを始めとした脱走兵の面々だった。

『連合もザフトも互いを滅ぼすことしか考えていない!!そして我が祖国オーブは逆賊シン・アスカとユウナ・ロマ・セイランの手によって同盟軍という名の侵略者と化した!!だが、私達はそれを許さない!!!!今のままではたとえどの軍が戦争に勝利しても待っているのは破滅の未来だけだ!!それを止めるために我々『SEED』は彼等を討ち、世界に平和の種子を撒かん事をココに宣言する!!!!』

 何この電波発言?しかもよりによってこの情勢の中テロリストって…………僕自身偉い事言える義理じゃないけどさぁ、これは無いよ……。
アスランの馬鹿が、とんでもない事をしてくれたもんだ……。
これでカガリは名実共に全国指名手配の仲間入り……おまけにクライン派のスパイからの情報でアスランが脱走した隙にNJCのデータが漏洩したって話だし…………。
その事解って無いだろうなぁ、でなきゃこんな真似しないだろうし…………クソッタレが……!!
「責任取れよ……アスラン」






[32127] 第27話 ボアズ大乱戦
Name: 神無鴇人◆c2099dfd ID:7cb03caa
Date: 2012/03/16 17:43
ユウナSIDE

 とんでもない事になってしまったな……
NJCが連合に渡った事により、案の定連合はボアズ攻略に動き始めた。
連合軍はボアズへ侵攻しようとしている、恐らく核攻撃を行うつもりだろう……正直この段階で民間人の人達に抗戦感情を持たれてしまう訳にはいかない……決戦まで余り戦力を動かしたくは無いけど、こうなれば止むを得ない。
アークエンジェル隊には独立遊撃隊として核攻撃を阻止するよう命じ、あとシン君とマユちゃんもカグツチ隊と兼任という形でアークエンジェル隊に参加してもらう事となった。
思っていた以上に事態は複雑な事になりそうだ。



キラSIDE

 ボアズ到着前まであと数時間ほどある為、それまで僕達は自由行動となり、今はシンやフレイ達と食堂で談話中だ。
「それにしても、カガリ……なんでよりによってテロリストに……」
 絶対無いだろうな……自分がテロリストっていう自覚が
「自分の思い通りに行かないからその八つ当たりみたいなもんだろ」
「言えてるわ、あの子って自分の事を正義の味方みたいに思ってる感じだし……」
 シン容赦の無い毒舌にフレイは同意する。まぁ、実際その通りだけど。
「しかし、アスランと組んだとなると厄介ですね、あれでも腕だけは一流ですから、しかもNJC搭載機に乗ってる、正直クーデター派全てよりもアスランの方が厄介だと思いますよ、僕は」
 ニコルが嫌な事を思い出した様に言う。
「うん、本当に厄介だよ……僕にとっては特に」
 同性愛を否定するわけじゃないけどその対象になるのはゴメンだ。しかもカガリと同じ余りにも短絡的な思考と極端な価値観。
「アイツも元凶の一人だ、あのクソハゲが余計な真似した結果が今なんだからな」
 苦虫を噛み潰したような表情でシンが吐き捨て、僕を含めた皆がウンウンと頷く。
「大体なんで私達が侵略者なの?」
 マユちゃんも呆れ顔で呟く。カガリ達は僕たちを侵略者と呼んでいたがどう考えてもそれは当てはまらない。むしろ侵略者はカガリ達の方…………。
「大方自分は正義の味方だから敵は全て悪の侵略者とでも言いたいんじゃないの?この前の防衛戦だって自分と仲の悪いシンが発案した作戦を卑怯な手段って言って拒否したんだから、要するにあの馬鹿は精神年齢が低いのよ、下手すればマユの実年齢よりね」
 凄く的確な評価だ…………。
「はぁ…………でも、もうちょっと僕がフォローしてあげていれば良かったかな?そうすればこんな事にならずに……」
「フォローしたって付け上がるだけよ、ああいうタイプは」
 僕の言葉をフレイが遮る。
「やけにハッキリ言うね」
「アイツってさ、昔の私と同じで世間知らずの箱入り娘だから」
 ああ、成る程。



ムウSIDE

 俺の目の前に金ピカのMSがある、これが俺の新しい専用機『アカツキ』か……。
「しかしスゲェ機体ですなぁ」
「ああ、そうだな……」
 マードックが感嘆の声を上げるが俺はどうにも気が晴れない。
「……なんか元気無いですね少佐」
「まぁな……」
 折角任された記念すべき初の俺専用の特機がよりによってテロリストなんかにパクられて……それでこの金ピカに乗れるようになった訳だが、喜べばいいのか落ち込めばいいのか…………物凄く複雑な気分だ…………。



アスランSIDE

 クソッ!クルーゼめ、まさか俺の脱走にかこつけてNJCを横流しするとは、卑怯者め!!このままでは虐殺が起きるのは火を見るより明らかだ。
「カガリ」
「分かってる、我々はボアズへ向かい核攻撃を阻止する!!」



シンSIDE

 出撃を間近に控え、俺とキラはシミュレーションを切り上げ、出撃準備に入った。
「悪いな、ウォーミングアップに付き合ってもらって」
「構わないよ、それにしてもシン、久しぶりに戦り合ったけど前世より強くなったんじゃない?」
「そうか?」
「うん、昔よりガードが固くなってたし、攻撃もかなり正確になってたよ」
 そういえば、教官やるようになってから防御テクニックとか一から覚えなおしたからな、格闘技の本読んだりして。
「それはそうと、アレ」
 キラが指差した方向には…………。
「へぇ~~、ニコルさんって、ピアノやるんだ」
「はい、今度マユさん達にもお聞かせしたいです」
仲良く話すマユとニコルが…………。
「……シン」
「言うな……」
 3股状態の俺に口出しする権利は無い……ただマユの幸せを祈るだけだ……。
「さてと、そろそろ出撃か……」
「うん、多分アスラン達も出てくるはずだよ」
 だろうな、あいつらの性格からして絶対介入してくるはずだ。
出来れば今の内に潰しておきたいけど、今回はあくまで核攻撃の阻止だからな……。
『総員、第一種戦闘配備』
「時間だ、急ごうぜ」
 俺達は駆け足で自分の機体へと向かった。



カガリSIDE

 私達がボアズに到着した時、既に同盟軍はこの戦いに介入していた。
「反逆者共め、こんな所にぬけぬけと!」
 連合の核諸共私が倒してやる!!



フレイSIDE

 キラの予想通り、カガリ率いる反乱軍は武力介入を開始し、見境無しに攻撃を始めた。
ザフトでさえ私達に攻撃はしてこない(シン曰く『向こうも死にたくないから核防ぐために俺達を利用している』との事)。
「ちょっと!何で私達まで!?私達は核を止めようとしているだけなのに!!」
 問答無用で攻撃してくるM1に向かって私は叫んだ。
「黙れ、逆賊め!!貴様等セイラン家の犬共は我々にとって何を犠牲にしてでも撃つべき怨敵なのだ!!貴様の様な女子供であろうとこのキサカ、容赦せん!!!!」
「最っ低……………」
 …………頭の中で何かが切れる音がした。
M1の放つビームを軽く避け、そのままM1の腕ごとライフルで破壊する。
「おのれ!!」
 すぐさまビームサーベルで反撃に移るキサカのM1。しかし私はそれを回避してキサカのM1に蹴りを入れる。
「ぬおぉっ!?」
 バランスを崩すM1、すかさず私はライフルで狙い撃つ。
「消えろおぉぉぉぉぉ!!!!!」
「うおおぉぉぉっっっ!!カガリ様に栄光あれええぇぇぇーーーー!!!!!!」
 断末魔の雄叫びを残し、キサカは私が放った最大出力のビームに焼き尽くされた。



シンSIDE

 キサカがフレイに倒された頃、俺とキラ、フラガのオッサンはアスランとカガリと相対していた。
「ようやく見つけたぞ!今日こそキラを返してもらう!!」
「シン・アスカ!貴様はココで討つ!!」
 案の定問答無用で襲い掛かってきた。
「キラ、コイツ等は俺達に任せてお前は核を!!」
 アスランの攻撃を受け止めながら叫ぶ。
接近戦向きのアドヴァンスより砲撃戦向きのフリーダムの方が核攻撃部隊の殲滅には適任だ。
キラもアスランの奴には腸(ハラワタ)が煮えくり返っているだろうがココは我慢してもらうほか無い。
「仕方ないね、そっちは任せるよ」
 この場を離れるキラを見届け、俺は再びアスランと向き合う。
「オッサン、俺はアスランと戦う、カガリの方をお願いします」
「だからオッサンって言うなっての、まぁいい、俺もあの嬢ちゃんには用があるからな」
「それじゃ……行くぜ!!」



ムウSIDE

「さ~て、嬢ちゃん、人の物盗んだんだ、お仕置きの時間だぜ」
「子ども扱いするな!!反乱軍の一員が!!」
 そりゃお前の方だろ……俺がツッコミを入れようとしたと同時にカガリの乗るストライクは俺に襲い掛かってきた。
「叩き斬ってやる!!」
 喚きながらビームサーベルを振るうストライク……何だこれ?動きが直線的過ぎるぞ。
「この!このっ!このぉぉっっ!!!」
 おまけにワンパターンで簡単に見切ることが出来る。
おいおい、シンから聞いてはいたが…………反射神経以外全然ダメじゃないか…………。こんなのに俺は機体を奪われたのか?
腹立たしいから取り敢えず一発蹴りを喰らわせてやった。
「クソぉっ!!ならばこれでどうだ!!」
 カガリが距離を取ってライフルを撃ってきた。しかし俺はそれを『ヤタノカガミ』で跳ね返した。
「な!?ビームが!?うわあああああ!!!!」
 反射したビームに右腕と左足を貫かれ、カガリは悔しそうな表情で逃げ去った。
…………あれ?俺ほとんど何もしてないじゃん。



シンSIDE

 互いに向かい合い相対する俺とアスランは無言のまま睨みあう。
「シン……どこまでも救えん男だ、お前は」
「あ?」
 最初に口を開いたのはアスランだ。
「いつまでも過去に囚われ、過去に戻っても何一つ学習しない、それどころかあまつさえキラまで騙して」
「!?」
 コイツ……まさか?
「まさか、アンタも前世の……」
「そうだ!貴様を倒すため、キラやカガリとの幸せな家庭のため、俺は帰ってきた!!」
 どこぞの悪夢が言いそうな台詞を叫びながらアスランは俺に襲い掛かってきた。
「チッ!」
 振り下ろされるビームサーベルをシールドで防ぎ、俺はアスランを睨みつける。
「アンタ、自分が何してんのか分かってんのか?」
「当然だ!!父上を止め、クルーゼを倒し、そして貴様を討ってキラの呪縛を解く!!これ以外に何がある!?」
 やっぱりコイツは…………。
「逆行してもどうしようもない奴っているんだな……救えないのはアンタの方だ、アスラン」
「何!?」
「そんなに親父を止めたいなら何でわざわざザフトを裏切る?軍に留まったって出来る筈だろ」
「言って聞くような人間じゃない!!キラとカガリを助けて世界を平和に導くためにはこれ位しなきゃならないんだ!!」
 この馬鹿は……方法なんて色々あるだろ、パトリックを拉致して内部からザフトを瓦解させるなり、カガリが俺達に手を出さないように説得するなり……。
「アンタがザフトを裏切ったせいでこの有様だ、アンタが脱走した結果がこの核攻撃だ!!アンタ達がやってる事は自分の気に入らない奴を殺すためだけの戦争なんだよ!!気に入らない奴を殺し続けた先の未来に何で平和があるんだよ!!!!あんたのその考えはパトリックやブルーコスモスと同類、いやそれ以下だ!!」
 正直言って邪魔者を皆殺しにする奴の方がまだ理解できる。
「貴様ぁぁーーー!!!!黙って聞いていれば!!!!」
 完全にブチ切れたアスランは俺に再び襲い掛かってきた。

 凄まじい勢いで振るわれるビームサーベル。紙一重で回避する。
「まだだぁっ!!」
 続けて2発、3発とアスランの駆るジャスティスによる連撃が続く。
俺はその軌道を読み一撃一撃を確実に防いでいく。
「貴様如きが俺に敵うと思っているのか!!」
 喚きながら攻撃してくるアスラン……煩い。
「それならさっきからなんで一発も当たってないんだよ?」
「負け惜しみを!!これで終わりだ!!!」
 フィニッシュとばかりにジャスティスの動きが大降りになる。
「今だ!!」
 ビームサーベルを振り上げる一瞬の隙を突いて俺はジャスティスの顔面に正拳突きを叩き込んだ。
「うわっ!?」
 思わぬカウンターによろめくアスラン、当然このチャンスを見逃すわけもなく俺はレヴィアブレードでジャスティスの右腕を叩き斬ってやった。
「クッ……!?おのれっ!!」
 余った左腕でアスランは反撃に移る。だが……
「無駄だ!!」
 ジャスティスの左腕を払いのけ、今度は左足をショットガンで撃ち抜く。
「ば、馬鹿な!?」
 馬鹿はお前だ。勝負を急ぐからそうなるんだよ。
ジャスティスはアドヴァンスやフリーダムと比べてスタンダードな武装が多く、非常にバランスが良い機体だ。
しかし逆に言えば他の2機と比べ攻撃面での決め手に欠けている。
故に攻撃は手数と小回りの良さに依存せざるを得ない。さっきの様にそれさえ防いでしまえばば十分勝機はある。
「アスラン、アンタ昔俺にこう言ったな『戦争はヒーローごっこじゃない』ってな……だったらアンタがやってる事は何だ?」
「何?」
「教えてやる……戦争はヒーローごっこでもヒロインごっこでもないんだぜ!アスラン!!」



アスランSIDE

 馬鹿な、そんな馬鹿な!!俺がシンに押されているだと!?
「クッ!」
 接近戦では分が悪いと判断し、一度距離を取って射撃戦に移行し、ビーム砲を最大出力で連射する。
「甘いんだよ!!」
 だがシンの駆るアドヴァンスはそれを悉く回避、もしくは防いででどんどん距離を詰めてくる。せめてフリーダム並の火力があれば……。
「どうしたよアスラン!!その程度か!?」
 違う、前世の攻撃一辺倒だったシンとはまるで違う。だが、認めてたまるか……シンが俺を超えたなど……
「認めるものかぁぁぁーーーー!!!!」
 SEEDを発動して再びシンに斬りかかる。しかし片腕を失ったジャスティスでは不利は覆らず、攻撃は全て捌かれてしまう。
「クソォォォォーーーーーーーー!!!!!」
 その時だった、クサナギから撤退を告げる照明弾が放たれた。どうやら連合の核攻撃は失敗に終わったようだ。
こうなった以上余計な戦いは避けるべきか……。
屈辱感を覚えながらも俺は撤退せざるを得なかった。



キラSIDE

 ようやく核攻撃が終わり、僕たちも長居は無用とばかりに撤退する。
しかし連合の動きがどうも腑に落ちない。前世ではフォビドゥンやカラミティも参加していたらしいけど今回は姿すら見えなかった。
「それにしてもまさかアスランが前世の記憶を……」
 戦いを終えてシンから聞かされたこの情報には正直驚かされた。
しかし記憶が戻っても僕への同性愛は消えてないか……。
「決戦はヤキン・ドゥーエだな……」
「うん……」
 アスラン……奴は僕の手で討つ、それが曲がりなりにも彼をあんな風にしてしまった僕のけじめだから…………。
カガリをテロリストにしてくれた恨みもあるしね。






[32127] 外伝 ミゲル・アイマン~魔弾復活~
Name: 神無鴇人◆c2099dfd ID:7cb03caa
Date: 2012/03/16 17:43
ミゲルSIDE

 俺の名はミゲル・アイマン、『黄昏の魔弾』の異名を持つザフトのエース……だったが、今となってはもう過去の話だ。
ヘリオポリスで撃墜された俺は連合の新造艦『アークエンジェル』の捕虜となり、今はハルバートン率いる第8艦隊に引き渡され、処遇を待つのみ……最悪終戦まで檻の中って可能性もあるからうんざりする。
このまま魔弾の名も時と共に廃れていって人々の記憶から消え去ってしまうんだろうなぁ。
(何でこうなったんだ?)
 ザフトに居た頃は仲間に囲まれ、異名を持ち、エリート部隊であるクルーゼ隊に配属になって、病弱な弟の治療費も問題無く賄って…………将来を嘱望されていたのに……それが今となってはただの落ちぶれた一兵卒。
ダメだ……どう足掻いても暗い未来しか想像出来ん。
もういっその事一思いにさっさと処遇を決めてくれ…………。

 しかし俺はこの時自分に思わぬ人生の転機が近づいていることを気付いていなかった。



「出ろ」
 憲兵の一人が声をかけてきた。ようやく処遇が決まったか…………。
案内されるままに指揮官であるハルバートン提督の部屋へ案内され、俺はハルバートンと対峙した。
「で、俺の処遇は?」
「その前にこれを見て欲しい」
 そう言ってハルバートンが差し出してきたのは新聞や情報誌などだった。
長い事独房暮らし俺は娑婆の現状が気になり、言われるままに読み始める。
「は?何だこれ?」
 アスハ家失脚に同盟軍樹立?おいおい、どうなってんだよ?いくらなんでも変わりすぎだろ、俺が独房で臭い飯食ってる間に何があったんだ?
「これ本当か?ドッキリとかじゃねぇだろうな?」
「全て事実だよ、他の情報誌も読むかね?」
「……一応見せろ」
 念のため他の情報誌やテレビのニュースを見て調べてみたが全て結果は同じだった。
「マジかよ…………これを俺に見せてどうしようってんだ?」
「うむ……私がブルーコスモスを嫌っている、という事は知っているかね?」
「ああ」
 このオッサンが穏健派ってのは有名だからな。
「そのお陰で我々は過激は連中から根も葉もない言いがかりをつけられてな、遂には昨日アルテミスの部隊から攻撃を受けたよ」
 マジかよ?
「そこまで酷いのか?過激派って?」
「ああ、まさか攻撃までしてくるとは思わなかったが……これで我々には同盟軍に寝返るしか道は無いわけだが……」
「成る程な、それで俺にアルテミスの連中の迎撃に協力しろと、そういう訳か」
「ああ、その通りだ、上手くいったら君は解放しよう、我々とともに同盟軍に参加するならそれでも良いし、プラントに戻りたいのならシャトルを一台手配しよう」
 確かにこの状況じゃ乗らざるを得ない、捕虜になったまま内輪揉めに巻き込まれて死ぬなんざ真っ平御免だからな。
「OK、その条件乗ったぜ」



 提督との交渉を終え、早速出撃準備に入り、俺はロングダガーに登場する。
作戦内容は第8艦隊が保有するブリッツダガー(ブリッツの亜種、予算の関係上第8艦隊には一機のみの保有)が潜入し、アルテミスの傘を破壊して攻め込むというものだった。
『システムオールグリーン、進路クリア、全機発進準備完了』
 さーてと、黄昏の魔弾復活記念だ、派手に暴れてやるぜ!!
「行くぜぇ!!」



NO SIDE

 そこから先は文字通り独壇場であった。
智将ハルバートン率いる第8艦隊による兵の士気と練度の高さ、さらにそれに加えて『黄昏の魔弾』の異名を持つミゲル・アイマンによる獅子奮迅の活躍。
対するアルテミス防衛部隊は『アルテミスの荒鷲(自称)』ことバルザム・アーレンドがハイペリオン2号機を駆り、ミゲルを迎え撃つ。しかし第8艦隊側のMS隊による集中砲火により、エネルギー切れを誘発し、結果瞬く間に劣勢に追いやられ、撤退する事となる。
かくして、アルテミス攻防戦は第8艦隊の大勝利となり、黄昏の魔弾は見事復活を果たしたのでったのであった。

 ミゲル・アイマンはこの後、第8艦隊と共に同盟軍に参加。改修されたレイダーのパイロットとなり、後のヤキンドゥーエ攻防戦において多大な戦果を挙げることとなる。






[32127] 第28話 決戦直前~それぞれの決意~
Name: 神無鴇人◆c2099dfd ID:7cb03caa
Date: 2012/03/16 17:43
NO SIDE

 ボアズでの戦いは結果としてはザフト軍の敗北だった、同盟軍の介入で核攻撃は阻止され、犠牲者も少ないが、ボアズ自体はボロボロ、基地としての機能は最早皆無だった(シン達が相手をしたのはあくまで核部隊のみであり、通常の攻撃部隊はほとんど無視していたため、それに加えザフト側も核弾頭のみに気を取られ、対MS戦の対応が疎かになっていたのが原因と思われる)。
そしてそれは決戦の時が近づいているのを意味していた。



キラSIDE

「いよいよ明日だな…………」
「うん……」
 明日の戦いの準備を終えた頃、シンが声をかけてきた。
第二次ヤキン・ドゥーエ攻防戦……前世では多くの仲間と僕自身の心を失った僕にとって鬼門とも言うべき戦い。だけど……
「前世と同じ結末にするつもりは無いよ、ってかそうならないって信じてるし」
 フレイ、マユちゃん、ニコル、ムウさん、それにカグツチ隊の人達、皆前世以上に強くなっている、きっと明日の決戦も生き残れるはずだ。
「それよりシン、一つ頼みたい事があるんだ」
「ん、何だ?」
「アスランの相手は僕に任せて欲しい」
「いいのか?下手すりゃ貞操の危機だぞ」
「分かってるよ」
 僕だって出来ることならあの変態と関わりたくなんて無いよ、だけど……
「カガリをテロリストにしてくれた借り、まだ返してないからね」
「OK、クルーゼとは俺が戦(や)る、俺も奴には少し言いたいことがあるしな」
「そこら辺は君に任せるよ」
 正直逆行した当初はクルーゼは絶対に討つって思っていたけど、今はフレイを守ることの方が重要だし。まぁ、奴への恨みがなくなったわけじゃないけどね……。



シンSIDE

 キラと明日の事に着いて話し終えた俺は肩慣らしのためにマユラに付き合ってもらいシミュレーションを行っていた。
「悪いな付き合ってもらって」
 三十分程のシミュレーションを終え、自販機でスポーツドリンクを買いながら俺はマユラに声をかけた。
「ううん、私も新しい機体に慣れておこうと思ったし」
 余談ではあるがマユラ達カグツチ隊を始めとしたエース部隊には少数ではあるがムラサメの試作型が配備された。
前世のムラサメと比べると若干性能は劣るがそれでも十分性能は高い。
「アレだけ動かせれば十分だよ」
 ベンチに腰掛けるマユラにスポーツドリンクを手渡す。
「ほら」
「ありがと」
 一言礼を言ってマユラはドリンクを口に運ぶ。
「ん?」
 ふとマユラを見てみると、彼女の手が……。
「マユラ、震えてんのか?」
「う、うん…まぁ……」
 歯切れ悪く返答するマユラ。無理も無いか、大して場数も踏んでないのにいきなり総力戦だからな。
「自信持てよ、お前もアサギもジュリも、俺とあった頃に比べて格段に強くなってるんだ、それに……」
「それに……何?」
「いざとなったら俺が守ってやるよ、ってかまだこの前のケジメとかつけてないのに死なれたら困る」
 自分で言って顔が赤くなってしまう……やばい俺滅茶苦茶恥ずかしい事言ってるし…………。
「あ、ありがとう」
 マユラの顔も真っ赤だ…………な、なんか気まずい……。
「あ、あのさシン君」
「な、何だ?」
「その……出来れば、元気出るお薬欲しいな、そうすれば絶対生き残れそうな気がするから」
「え?」
 元気出るお薬って……?
「ん……」
 マユラは俺の方を向いて目を閉じる。え?何?『元気出るお薬』って、き、キスの事か?
どうする?どうするんだ俺!?
「し、しょうがねぇな…………」
 本能には敵わなかった。
俺はマユラの顔を引き寄せ、そのままキスした。
「ん……シン君…………」
 !?ちょ、マユラ…お前、舌入って!?
「んんっ!!?!???!!」
 こ、これマズイ……僅かに残っている理性が……。
その時扉が開く音が、や、ヤバイこんなとこ誰かに見られたら!?
「「ああぁぁっっーーーーーーーー」」
 え、この声…………。
「ちょっと、マユラずるい!!」
「抜け駆け禁止って言ったじゃない!!」
 アサギ&ジュリ、なんてタイミングの良さ(悪さ)なんだよ。
このままじゃドロドロの展開に……。
「私もする!!」
 は?
「え?ちょっ、待……んんっっーーーー!!?!?」
 アサギにキスされた。
「ズルイ、私も!!」
 こ、今度はジュリに……。
……………………………理性……崩壊。
「んっ!?シン君!?…………んんっっっっっーーーーーーーーーーーーー!!!!!!???!!??!?!?」
 本能の赴くままに俺はジュリの口内にねじ込むように舌を入れ、そのままジュリの舌と絡ませた。
「ん…ぷはぁっ…………シン…君」
 恍惚とした表情でジュリはその場にへたり込んだ。
「……三人とも、俺の部屋……来るか?」
 三人は赤面したまま頷く。
もうこうなったら……三人まとめて面倒見てやる。



キラSIDE

 自室にて事を済ませた後、冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出し、グラスに注いで飲み干す。
「ふぅ……」
 火照った身体に冷たい水が染み渡るのが心地よく感じる。
「私にも良い?」
 ベッドに横たわりながら一糸纏わぬ姿でフレイが声をかけてくる。
「うん、ほら」
「ありがと」
 フレイは水を一口飲み、僕の方にもたれかかってくる。
「いよいよ明日なのね……」
「うん……たぶん次が最後の戦いだ」
 最後にしなくちゃいけない、前世ではこれから2年後、再び全世界を巻き込んだ戦争が起きてしまった。
前世の様な事にならないためにも明日の戦いで決着を付けるんだ。
「キラはこの戦いが終わったらどうするの?」
 戦いが終わったら……そういえば考えてなかったな。
「そうだな……とりあえず復学かな、その後はまだ考えてないけど誰かの命を救う事の出来る仕事に就きたいなって思ってる」
 どんな理由があろうと僕は今まで多くの人を殺してきた、だから償いって意味も含めて今度は誰かの命を救いたいと思う。
「フレイはどうするの?」
「私行く所無いし、パパの遺産は親戚連中が持ってかれて精々4~5年ぐらいの蓄えしか残らないだろうし、いっその事キラやマユ達とオーブで暮らすのも良いかなって、それに……」
 フレイは少し顔を赤らめて……。
「んむっ……」
「キラと一緒に居たいから……なんて」
 悪戯っぽく笑いながら僕にキスしてきた。
やば、また興奮してきた…………。
「あ、キラ?」
「ゴメン、もう一回良いかな」
「うん、良いわ……来て、キラ…………」



イザークSIDE

 明日の準備を終え、俺はブリッジで物思いに耽っていた。
「悩んでんのか?」
 後からディアッカが声をかけてきた。
「ディアッカか、何の用だ?」
「別に用って程の事じゃないが……どうすんだよ?明日は」
「分かりきったことを聞くな」
 俺はザフトの軍人だ、プラントを守るために戦う。過激派など関係ない。
「ニコルが羨ましいぜ、アイツの親も同盟軍に亡命したって話しだし」
「それ以上言ったら殺すぞ」
 まったく、人が考えないようにしてるというのにコイツは……。



マユSIDE

 私は格納庫で明日の為に新しく追加した武器のチェックをしていた。
「しかし、ガトリングをこんな風に使うなんて、凄い発想力ですね、僕には考え付かないや」
 手伝ってくれたニコルさんが感心したように呟く。
「えへへ、この前読んだ昔のマンガを見て閃いちゃって、それよりゴメンね、手伝ってもらっちゃって、ニコルさんも忙しかったんじゃないの?」
「いえ、僕の方の準備は大体終わりましたから」
 ニコルさんは明るく返してくる。
「……いよいよ明日だね」
「はい……きっと生きて帰れますよ、なんとなくそんな気がするんです」
「うん、そうだね」
 ニコルさんの言葉に少し勇気が出た。
(ありがとう、ニコルさん)



ニコルSIDE

 思えば軍に入隊してから色んな事があった。
ヘリオポリス襲撃をきっかけにシンとキラを相手に戦い、自分が井の中の蛙だという事を痛感して、アスランとの決別、逆にそれをきっかけにそれまで仲の悪かったディアッカ、イザークと団結する事が出来た。
そしてマユさんと出会い、同盟軍への参加。
マユさん……初めて心の底から守りたいと思った少女(ひと)。
「安心してください、貴女は必ず僕が守ります」
 マユさんに聞こえないように僕は小さな声で呟いた。



シンSIDE

 ……何でこうなったんだ?
目の前には俺に抱きつくアサギ、マユラ、ジュリの3人、しかも俺を含めて全員裸だ。
「シンくぅん……」
「すごかった……」
「シン君……大好き」
 でもまぁ、後悔はしてないかな……コイツ等凄く可愛かったし、それに俺の事を好きでいてくれるコイツ等のことを大事にしたいし、コイツ等の想いにも答えたいと思う。
いつの間にか俺もコイツ等に惚れてしまったみたいだ。
「何か、これはこれで良い関係かもね」
「うん、やっぱドロドロした関係なんて私達には似合わないし」
 しかも何か丸く収まってるし…………。
苦笑いしながら俺は三人を抱き寄せた。
「え、シン君?」
「お前等全員、俺が絶対守ってやるよ」
 今度こそ守る、俺のことを想ってくれるコイツ等を守って見せる。



NO SIDE

 そして遂に世界の運命を決める戦いが幕を開ける。
戦士達はそれぞれの思いを胸に最終決戦へと身を投じる。






[32127] 登場人物紹介 その3
Name: 神無鴇人◆c2099dfd ID:7cb03caa
Date: 2012/03/16 17:44
和平同盟軍

シン・アスカ
主人公その1。逆行者。同盟軍二尉。
カグツチ隊隊長(教官兼任)。
オーブ防衛戦において多大な戦果を挙げ、『オーブの英雄』の二つ名を得る。
戦闘教官を担当した事を機に自身も一から鍛え直し、その実力は既に前世の自分はおろか、アスランすらも凌駕している。
自分に好意を寄せるアサギ、マユラ、ジュリに対して当初は戸惑っていたものの、徐々に彼女達の想いに惹かれ、最終決戦直前に彼女達と結ばれる。
搭乗機:アドヴァンスガンダム

キラ・ヤマト
主人公その2。逆行者。同盟軍二尉。
連合脱走後、オーブに亡命、その後同盟軍樹立と共に正式に同盟軍の一員となる。
シン同様オーブ防衛戦にて多大な戦火を挙げ、『白き疾風の貴公子』の異名を取る。実の姉であるカガリに対して政治家としても人としても正しく成長して欲しいと心から願っていたが、その思いは裏切られる事となる。
前世におけるシンとの戦いにおいて自分自身の甘さを痛感し、それ以来かつて信条としていた不殺を捨て去っている。
カガリがテロリストになった一因であるアスランに対しては表には出さないものの凄まじい怒りを抱いている。
搭乗機:フリーダムガンダム

フレイ・アルスター
アークエンジェル所属のパイロット。同盟軍三尉。
キラと共にオーブに亡命、その後同盟軍に参加。
ザフトへの復讐とかつての身勝手だった自分へのケジメのため戦い抜くことを決意している。
キラとは次第に惹かれ合い、宇宙に上がる前のデートを経て結ばれる。
搭乗機:バーストストライクルージュ

マユ・アスカ
シンの妹。同盟軍准尉。
家族や故郷、仲間を守るという思いを胸にシン達と共に平和を目指し、最終決戦に臨む。
ニコルから片思いされている。
フレイとは親友兼ライバルで現在までの模擬戦の戦績は4勝4敗7分。
搭乗機:ヴェスティージガンダム改

ニコル・アマルフィ
元クルーゼ隊の一員。同盟軍三尉。
オーブ防衛戦にてマユを助けるためオーブ軍に加勢、そのまま同盟軍に参加する。
マユに好意を寄せ、最終決戦を前にしてマユを絶対に守り抜くことを決意している。
なお、マユに好意を抱いてはいるがあくまでマユ個人に惚れているだけであり、決してロリコンというわけではない。
搭乗機:ブリッツガンダム改

アサギ・コードウェル
カグツチ隊の一員。
オーブでのデートの際にシンに思いを告げ、決戦前にマユラ、ジュリと一緒にシンと結ばれる。
射撃戦が得意。
搭乗機:試作型ムラサメ

マユラ・ラバッツ
カグツチ隊の一員。
三人娘の中では最もシンへの好意が強い。
高機動戦が得意。
搭乗機:試作型ムラサメ

ジュリ・ウー・ニェン
カグツチ隊の一員。
他の二人と比べるとやや存在感が薄い。
格闘戦が得意。
搭乗機:試作型ムラサメ

ムウ・ラ・フラガ
アークエンジェル所属のパイロット。同盟軍三佐。
一時期はストライクのパイロットになるがカガリに機体を奪われるという憂き目に遭ってしまったかわいそうな男。
搭乗機:アカツキ

アンドリュー・バルトフェルド
元ザフト軍の士官。
クライン派の同盟軍参加と伴い自身も同盟軍に参加。
愛人のアイシャと共に再び戦場に出る。
搭乗機:バルトフェルド専用M1アストレイ

ミゲル・アイマン
元クルーゼ隊の一員。
ヘリオポリスでの戦闘でシンに撃墜され、第8艦隊の捕虜になっていたが第8艦隊がアルテミスを攻略する際協力する事を条件に解放される。
その後時代の流れは同盟軍にあると判断し、そのまま同盟軍に参加する。
搭乗機:レイダー(改修型)

ラクス・クライン
シーゲル・クラインの娘でプラントの歌姫。
シンとキラにアドヴァンスとフリーダムを譲り渡した。

トダカ
同盟軍一佐。
実直な性格の軍人で周囲からの人望は非常に厚い。
アスハ派所属だが理念のみに拘らず国民の命を優先して守るものと認識しており、アスハ派内でも数少ない良識を持った人物。
シンの登場をきっかけに真っ二つに割れたオーブ軍の中で理念のみに拘り暴走するアスハ派に疑問を抱き始める。
シンと仲の悪いアスハ派の中で唯一シンの事を認めており、オーブ防衛線ではシンを拘束しようとするカガリを止めた。

ユウナ・ロマ・セイラン
オーブ五大氏族の一つであるセイラン家当主ウナト・エマ・セイランの息子。
戦争の早期終結を目指し、シンと協力し和平同盟軍を樹立する。
現在は防衛線において被害を受けたオーブの復興に努めている。

反乱軍『SEED』

アスラン・ザラ
元クルーゼ隊の一員。逆行者。
ビクトリア攻防戦において前世の記憶を取り戻す。
その際前世の記憶と現在の人格が融合し、両刀遣いになる(対象はキラとカガリ)。
拘束されたカガリを脱走させ、テロリストにした張本人でキラからは本気で恨(憎)まれているが本人はそれに全く気付いていない。
搭乗機:ジャスティスガンダム

カガリ・ユラ・アスハ
SEED総帥。
オーブ防衛戦において理念への固執とシンへの反感から作戦を無視したために多大な被害を出し、その罪により拘束されていたがアスランの手引きにより脱走。反乱軍『SEED』を結成する。
オーブを奪った(と思い込んでいる)シンとセイラン家、そして自分の側近だったキサカを討ったフレイへの憎悪を深めている。
搭乗機:ストライクガンダム

ザフト

ラウ・ル・クルーゼ
クルーゼ隊隊長。
ムウの父、アル・ダ・フラガのクローン。
自らを生み出した世界そのものを憎悪し、世界を破滅させるためNJCの横流しを行った。
搭乗機:プロヴィデンスガンダム

イザーク・ジュール
同盟軍樹立後ジュール隊隊長に就任。
ザフト軍人としてプラントを守るために戦う事を決意しているが、本心ではナチュラル殲滅を掲げる自軍の上層部に疑問を持っており、軍人としての責務と良識の間で苦悩している。
搭乗機:デュエルガンダム

ディアッカ・エルスマン
ジュール隊副官。
イザーク同様軍に留まり、ジュール隊副官として最終決戦に参戦。
しかし内心では同盟軍に参加しているニコルを羨ましく思っている。
搭乗機:バスターガンダム

シマト・アベ
ザフト軍所属のパイロット。
ビクトリア基地での戦いに登場。オリキャラ。
バイセクシャルで基地内にてアスランと唯一友好関係にあった人物。
故郷には彼女と彼氏が一人ずついるらしい。
言動は性癖は変態的だが他人の彼氏や彼女には手を出さない紳士的な一面を持ち、人並みの常識も弁えている。

地球連合

ムルタ・アズラエル
ブルーコスモス盟主。
異常なまでにコーディネイターを憎んでおり、コーディネイター根絶を目論みプラントへの核攻撃を行う。

スウェン・カル・バヤン
ブルーコスモス(ジブリール管理下)の私兵。
ブルーコスモスの経営する孤児院出身で洗脳によりコーディネイターへの憎しみを植えつけられている。
元はアズラエルの支配下だったが、ジブリールに買い取られている(オリ設定)。
高い技量と冷静な判断力を持つ。
搭乗機:専用105ダガー(エール装備)

シャムス・コーザ
ブルーコスモス(ジブリール管理下)の私兵。
スウェン同様ブルーコスモスの経営する孤児院出身。
同僚のミューディーをシンに撃墜され、仇討ちに燃えている。
技量は高いものの感情的になりやすい傾向が強い。
搭乗機:バスターダガー

オルガ・サブナック
生体CPU。
ブルーコスモス(アズラエル管理下)の私兵。
薬物投与によって高い戦闘力を持つが、オーブでの戦いではキラとフレイに煮え湯を飲まされており、彼等への雪辱に燃えている。
生体CPUの中では冷静な部類に入る。
搭乗機:カラミティガンダム

シャニ・アンドラス
生体CPU。
ブルーコスモス(アズラエル管理下)の私兵。
生体CPUの中では最も薬物による精神への影響が酷い。
オーブでの戦いでは一日目にキラ、二日目にシンと戦うという運の無さを見せている。
搭乗機:フォビドゥンガンダム

退場者(まけいぬ)

クロト・ブエル
生体CPU。
ブルーコスモス(アズラエル管理下)の私兵。
オーブでの戦い一日目にてレイダーを駆って大暴れするも、マユとニコルの二人がかりの連携を受けて戦死。
搭乗機:レイダーガンダム

レドニル・キサカ
カガリの側近。
カガリの脱走と同時に自身もカガリにつき従いSEEDに参加、ボアズでの戦いではM1に搭乗してフレイに戦いを挑むが狂信的ともいえるその思想に怒りを覚えたフレイに討たれ、死亡した。
搭乗機:M1アストレイ

ロードジブリール
ブルーコスモスの一員。アズラエルに次ぐ権力を持つ。
ロドニアにて自身が管理する研究所を攻撃され、錯乱してエクステンデットの子供達まで捨て駒として使おうとしたが、その非道がナタルの怒りを買い彼女に射殺される。

ミューディー・ホルクロフト
ブルーコスモス(ジブリール管理下)の私兵。
スウェン同様ブルーコスモスの経営する孤児院出身。
スウェンと共にシンと戦うがM1隊の連携によって水中に引きずり込まれ機体を破壊され、撃墜される。
運良く生き残ったものの全治4ヶ月の重傷を負い、現在はオーブ軍管理化の病院で療養中。
搭乗機:デュエルダガー

ウズミ・ナラ・アスハ
元オーブ首長。
理念に固執しすぎるあまり国民の命を蔑ろにしてしまい、それをシンとユウナに公表され、国民からの信頼を失い逮捕される。
現在は独房にて娘であるカガリがテロリストになってしまった事を知り、そのショックで塞ぎ込んでいる。
その際のストレスで実年齢以上に老け込んでしまったらしい。






[32127] 第29話 ヤキン・ドゥーエ最終決戦・開幕
Name: 神無鴇人◆c2099dfd ID:7cb03caa
Date: 2012/03/16 17:45
シンSIDE

『私達は平和への思いを胸にかつての敵同士という垣根を越え、手を取り合い、共に最後の戦いに望む事になりました、皆さんの中には血のバレンタインやエイプリルフールクライシスで大切な人を失ってしまった方もいるでしょう、本心を言えば私もあの悲しみを忘れる事が出来ません……それを忘れろとは言いません、ですが今だけはその悲しみも憎しみも水に流していただきたい、この世界を、ナチュラルもコーディネイターも関係ない人類すべての平和のために…………』
 ラクスによる兵達への激励が終わり、兵達はラクスに敬礼した後、それぞれ準備に入る。
遂にこの時が来た……全てに決着を付けるこの時が。
今日で全てが変わる、俺の運命、仲間達の運命……そしてこの世界の運命も。
「いよいよですね……」
「ああ」
 出撃を前にして俺、キラ、マユ、フレイ、ニコル、マユラ、アサギ、ジュリの8人は控え室に集まっていた。
「ココまで来たからにはやっぱり全員生きて帰りたいね」
「ちがうだろマユ、生きて帰りたいんじゃない、絶対に皆で生きて帰るんだ」
 俺の言葉に皆頷く。
そうだ、全員で生きて帰る……困難かもしれないが俺はこの仲間達の内、誰一人欠けるのを認めない、皆俺にとって最高の仲間なんだ。
「たぶん今までの戦いの中で最も辛い戦いになると思う、もしかしたら五体満足じゃ済まないかもしれない、だけどきっと生きて帰れる、僕はそう信じます」
 ニコルがそう言って右手を差し出す。
「うん、皆凄く強いんだからきっと大丈夫だよ」
 ニコルの手にマユの手が重ねられる。
「当然、寿命以外で死んで堪るもんですか」
「同感、女の幸せを掴むまで死ねないわ」
 フレイが、アサギが
「せっかくシン君と良い関係になれたんだもん、ココで死んだら一生後悔するわ」
「デートとかだってまだたくさんしたいしね」
 マユラが、ジュリが
「これで全てを終わりにしよう、こんな戦争は僕達の世代で終わらせるために」
「必ず皆で平和を掴むんだ」
 そして最後にキラの手と俺の手が重ねられる。
「よし……行くぜ!!」



アスランSIDE

「遂にこの時が来た!祖国オーブを奪った逆賊の首を獲り、世界に平和の種子を撒く時が!!」
「カガリ様!」「カガリ様!」「カガリ様!」「カガリ様!」「カガリ様!」「カガリ様!」「カガリ様!」「カガリ様!」「カガリ様!」「カガリ様!」「カガリ様!」「カガリ様!」「カガリ様!」
 カガリの演説に兵士達から次々に歓声が上がる。
「我々は負けない!!それは何故か!?」
「「「「「我々は正義だからです!!!!」」」」」
 そうだ、俺達は平和のため、正義のためにこの決戦に赴くんだ。
キラ、カガリ……二人を幸せにするために。
しかしそのために討たなければならない者たちがいる。
「我々には絶対に撃たねばらなない敵が3人いる、一人はオーブ最大の汚点にして卑劣なる売国奴、ユウナ・ロマ・セイラン!!そして我らが同志レドニル・キサカを殺した極悪人、フレイ・アルスター!!そして!!オーブの誇りを汚した史上最悪の逆賊、シン・アスカ!!!!」
「「「「「うおおおおぉぉぉぉぉ!!!!!!」」」」」
 シン……奴だけは絶対に許さん!!たとえ奴が腕を上げていようが絶対に負けない!!それにいざとなればこの日の為に用意した『切り札』もある。
それを使えば絶対に勝てる!!
「奴らを絶対に許すな!打倒、セイラン!!」
「「「「「打倒、セイラン!!」」」」」
「打倒、アルスター!!」
「「「「「打倒、アルスター!!」」」」」
「打倒、シン・アスカ!!!!」
「「「「「打倒、シン・アスカ!!!!」」」」」
 カガリと兵士達の魂の叫び声が格納庫に鳴り響いた。



キラSIDE

「核弾頭は一発も通すな!!ただしザフトは俺達に容赦なく襲い掛かってくるはずだ、油断するな!!あとクライン派のスパイからの報告で聞いたと思うがジェネシスとかいう兵器がいつ撃たれるか分からない、細心の注意を払え!!」
 シンの指示が飛び、次々にMSが発進される。
『キラ、シン!そちらにミーティアを出します、ドッキングを!!』
 ラクスからの通信と共にミーティアが射出され、フリーダムとアドヴァンスは即座にドッキング。よし、準備完了だ!
「よし、行くよシン!!」
「おう!!」
 バーニアを吹かし全速力で戦闘宙域へ突っ込む。
重火力機は核部隊の殲滅、他はその護衛とアシストだ。
「見えた!間違いなく核だ!!」
 絶対に通しはしない!泥沼の戦いは今回だけで十分だ。



ニコルSIDE

 次々にメビウスから放たれる核弾頭をキラ達と共に撃ち落していく。
順調に撃ち落し残りあと僅か、この調子なら残りは砲撃部隊だけで十分いける。
「核なんて撃たせて堪るか!!」
 事実上脱走したとはいえプラントには僕の故郷で友人だっているんだ。絶対にやらせはしない!!
その時突然レーダーからアラートコールが鳴り響いた。何か来たのか?
「連合の特機だ!!」
「こっちからは『SEED』も!」
 シンとマユさんの言葉通り連合の特機部隊とアスラン率いるアホなテロリスト達が迫ってきた。
「やっぱり来ましたか、特機部隊はこっちで対処します、砲撃部隊は核弾頭をお願いします!!」
『はぁぁーっ…!!』
 攻撃してくるフォビドゥンに向かい僕は武器を構えた。



ミゲルSIDE

 アークエンジェルやカグツチ隊の連中、それにニコルの奴も随分活躍してやがる。こりゃあ先輩として負けてられないな!!
「オラオラオラ!!落とされたい奴らから前に出て来な!!」
 改修したレイダーに追加されたウィングビームカッターで近くにいる敵機を落としながら叫ぶ。
「大活躍はそこまでだぜ!!」
 突然声を掛けられ、振り向くとそこにはオレンジに塗装されたゲイツの姿があった。
「ミゲルか、まさか本当に生きていたとはな」
「その声、ハイネか!?」
「ああ、久しぶりだな、個人的には再会を喜びたいが今はお互い敵同士だ、悪いが落とさせてもらうぜ!!」
「上等だ!かかって来な!!」
 久々に手応えのありそうな相手だ、ヘリオポリスでの汚名返上にゃ丁度良い相手だ!!



カガリSIDE

 私達が戦闘宙域に入った時既に反乱軍の奴等もこの戦いに介入していた。
「クソッ!シン・アスカはどこにいる!?」
 他の部隊に核弾頭を任せ私とアスランはシン・アスカを探す。アイツこそがオーブが腐敗した元凶なんだ、アイツさえ倒せばオーブは私の元の姿に戻るはず!!
「カガリ様!危ない!!」
「!?」
 突然、横から衝撃を受ける。次に瞬間赤い光線が私を突き飛ばしたM1を貫いた。
「ぐああああっっ!!!!」
「ニシザワ!?」 私の叫び声も虚しくニシザワのM1は爆散してしまう。
(クソッ!!いったい誰が!?)
 ビームが撃たれた方向を振り向く、そこにはオーブ防衛線において猛威を振るった青い機体カラミティの姿があった。
「チッ、他の奴等はデカイ獲物見つけたってのに俺だけこんな雑魚かよ」
 カラミティのパイロットが心底つまらなそうにぼやく。しかし私の耳にそんな呟きは届かない。
コイツは卑怯にも不意打ちで私を殺そうとして、それを庇ってニシザワは……。
「貴様ぁぁーーーー!!許さないぞ、この卑怯者め!!」
 SEEDを発動させてビームライフルを連射する。
エースパイロットだったアスラン直々(じきじき)に特訓を受けて腕を上げた私の攻撃だ。これは避けられまい!!
「馬鹿かお前?」
 な!?う、嘘だ、今のを全部避けただと!?
「ま、まぐれで避けたぐらいでいい気になるな!!」
 再びライフル連射、しかしまた全部避けられる。
「ば、馬鹿な……」
「やっぱり馬鹿だぜ……まぁいい、取り敢えず死ねよ」
 そ、そんな……こんな所で死ぬ訳には…………。
カラミティからビームが放たれる……しかしその刹那、カラミティの背後からいくつもの光線がカラミティを貫き、破壊した。
「がぁっ!な、何……が?」
 自分の身に何が起こったのか理解する前にカラミティのパイロットの命は機体の爆発に消えた。
「あ、アイツは……」
「君が囮になってくれたおかげで楽にカラミティを仕留める事が出来たよ、カガリ……」
 白に彩られ、青い翼を持ったMS『フリーダム』が私の目の前に降臨した。
しかしその神々しい姿に似合わない冷たい声色に私は恐怖を感じてしまう。
(こ、コイツは本当にあのキラ・ヤマトなのか?)
 キラ・ヤマトと大して話した事は無い、せいぜい何度か説教じみた事を言われたぐらいで、正直な所『シン・アスカの共犯者』、『ただの敵軍幹部』、『シン・アスカに騙された哀れな男でアスランの親友』という印象しかない。
だがコイツのこんな冷たい言葉を聞いたのは初めてだ。私の知る穏やかな雰囲気やアスランの言っていた純粋で優しいキラの姿はそこには無かった。



キラSIDE

 カガリ、君を叱るのは本来僕の役目だった……だけどいつの間にか僕はそれをシンに任せて逃げていた。『自分に偉そうな事を言う資格は無い』って言い訳して……。
だからこそ……もう逃げない!!
「カガリ……君は僕が止める!」
 それが弟である僕の役目だ!!





[32127] 第30話 戦場の姉弟喧嘩~肉親としてのケジメ~
Name: 神無鴇人◆c2099dfd ID:7cb03caa
Date: 2012/03/16 17:48
キラSIDE

「カガリ……今の内に言っておくよ、今すぐ降伏しなよ」
 無駄とは思いながらも一応降伏を勧める。
「ふざけるな!!誰が貴様等なんかに!!この裏切り者が!!」
 カガリが叫ぶ……ってか裏切り者って?
「いつから僕は裏切り者になったのかな?最初から君達に協力していたつもりは無いけど」
「惚けるな!!アスランから聞いたぞ、お前とアスランは子供の頃からの親友だったと!!アスランの親友なら何故こんな真似をする!!」
 ……この期に及んでその話を持ち出すか。大体君達みたいな正義馬鹿の思想なんてアスランの性癖抜きにしても無理だ。
「君達のやり方にどうやって賛同しろと?いい加減自分の罪を認めたらどうだい?」
「私の罪だと?」
「ああ、そうさ……今まで君はその身勝手な正義を振りかざして一体どれだけの命を無駄死にさせてきたと思ってるの?」
「私がいつそんな真似をした!?」
 自覚なしか、分かってはいたけどそれでも腹が立つ……。
「まず砂漠でのレジスタンス活動、自分の立場も理解せずザフトのやり方が気に入らないからとその場の気分だけでレジスタンスに参加、下手をすればオーブがザフトに宣戦布告されたり連合に無理矢理同盟を組まされるという事もあるのに、そして勝ち目の無い戦いを挑んで好き勝手暴れた味方に損害を出す、何様のつもりだよ君は?」
「あれはザフトが支配なんてするのが悪いんだ!!それにアフメドたちは勇敢に戦って死んだ、無駄死になんかじゃない!!」
「君が止めていればそのアフメドって子は死なずに済んだ!!なのに君がやったのは何だ?ただ焚きつけて戦意を煽っただけだ」
「そ、それは……」
 ああ、まずい……自分でもどんどん口調が冷たくなっているのが解る。
「そしてオーブ防衛戦、何で正式決定した作戦を無視したの?」
「そ、それはオーブの誇りをあんな卑怯な手で汚さないために……」
「つまり君は国民の命より誇りの方が大事って事?随分愛国心に溢れてるんだね君は、立派な愛国者だ……ただ人としても政治家としても最低だけど」
「グ、グゥゥ…………」
 悔しそうに唸るカガリ、だけどこの程度じゃ終わらせるつもりはない。
「それにさ、仮に君がオーブの実権握ったとしてそれからどうするの?君についてくるオーブ国民は全体の何%か分かってる?ウズミ・ナラ・アスハのあの醜態、君はテロリストで政治にしても軍事にしても三流以下、防衛戦での君の失態で家族を失ったり家を焼かれた人はどう思う?もうアスハ家は国民殆どに愛想尽かされているんだよ」
「黙れ……」
 カガリが何か言った…………まぁ別にどうでもいいや。
「はっきり言ってあげるよ、君には戦う資格も誰かの命を預かる資格も無い!!」
「だまれぇぇぇーーーーーーーーーーー!!!!!!!!」
 僕の言葉に耐えられなくなったのかカガリは逆上して襲い掛かっていた。
「私は正義のために戦っているんだ!!間違ってなどいない!!!!アスランを裏切った悪党が偉そうな事を言うなぁぁーーーーーー!!!!!」
 ビームサーベルを振り回しながら僕に迫ってくるカガリ。当然ただ振り回しているだけの剣が僕に当たるはずは無く、斬撃は全て空振りに終わる。
「ココまで言っても分からないか……もう呆れを通り越して哀れみすら感じるよ」
「うるさい!!私が間違ってなどいるものか!!間違ってるのはお前達の方だ!!アスハ家は国民から見放されているだと?よくもいけしゃあしゃあとそんな嘘っぱちを!!お前たちがオーブ国民を騙しているだけの癖に!!お前達さえ倒せば国民達は呪縛が解けるんだ!!!!お前達と戦争を続けるクズ共さえ倒せば世界は平和になるんだ!!!!」
 もう無理、限界………………口で言っても解らない馬鹿が…………!!
「死ねぇぇー――――――――!!!!!!!!」
 振り下ろされるストライクのビームサーベル、しかし僕は居合いの要領でストライクのサーベルを右腕ごと切り裂き、破壊した。
「なっ!?」
「いい加減にしろよこのクソガキ!!!!口で言っても解らないなら殴ってでも教えてやるよ君の罪を!!!!」
 正直こんな暴言吐いたのは生まれて初めてだ(憎しみ云々無しで純粋にキレるとここまで粗暴になるんだ、僕って……)。
「さぁ、君の罪を数えろ、カガリぃ!!!!!」
 その身に刻み付けて教えてやる『死の恐怖』って奴を!!!!



カガリSIDE

 クソッ!何が罪を数えろだ!片腕を持っていかれたって今の私にはSEEDの力があるんだ!!そう簡単にやられるものか!!
「舐め……「遅い!!」え?」
 一瞬何が起きたのかも解らず私は後方へ蹴飛ばされた。
「うわっ!?……くっ、ま、まだ……がっ!!??!!?!?!」
 体勢を立て直そうとしたが今度は左足を撃ち抜かれてしまう。
「反撃なんてさせるとでも思ったの?僕がそんな甘い真似するわけ無いじゃないか」
「ひっ……」
 底冷えするような冷たいキラの言葉に思わず恐怖してしまう。
だ、駄目だ……逃げちゃ駄目だ、私が逃げたら誰が正義を…………。
「う、うわあああああああああああああ!!!!!!!!」
 恐怖を振り払うように叫び、ライフルを構える。
「無駄だよ」
 しかし私が引き金を引くよりも早く残った左腕、右足を次々と撃ち抜かれ、ストライクは文字通り達磨になってしまう。
「う……嘘だ………………こんなの嘘だ!!」
 嫌だ、こんなはず無い!!こんなの認めない!!!!正義(わたし)が悪に負ける現実なんて。
「認めるもんかああああああああああああーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!」
 こんな事絶対ありえない!!私が、正義が負けるはず無いんだ!!!!
私は狂乱しながらバルカンを乱射してフリーダムへ突撃した。
だがそれも何の意味を成す事無く頭部を吹き飛ばされるだけに終わった。
「気が済んだ?」
「ひぃぃっ……や、やめろ、来るな、来るなぁぁぁぁ!!!!!!」
 抵抗する手段を失った私には最早叫ぶ以外何も出来なかった。



キラSIDE

 目の前ではカガリが無様に叫んでいる。その様を見ているとさっきまでの怒りが急速に冷めていく。
だけどまだ終わりじゃない。カガリには解らせなきゃいけないんだ自分がやってきた事を。
達磨になったストライクを掴んで近くのデブリに叩きつける。
「がっ!!」
 激しく揺れるコックピット内に激突し、カガリは苦悶の声を上げる。だが一発だけでは終わらない、再び掴み、投げ、更に振り回した。



カガリSIDE

「が……ぐ……」
 痛い、痛い!!もう嫌だ何度も何度もコックピットに叩きつけられて……もう止めて……。
「うぅっ……ぐ…ぐええぇぇぇぇ」
 凄まじい衝撃と揺れに溜まらず嘔吐してしまう。それに加えて既に涙と鼻水が垂れ流しの状態で失禁もしているためコックピット内に胃液とアンモニア臭が入り混じった異臭が蔓延する。
殺される…………私は死ぬのか?フリーダムに、キラに殺されて死ぬのか?
嫌だ!死にたくない!!助けて……助けてアスラン!!!!
「怖いか?苦しいか?」
 え?
「だけど君はこれと同じ苦しみと恐怖をたくさんの人達に味あわせたんだ!!君の身勝手な正義のために!!レジスタンスやオーブの人達、そして今はプラントに暮らす罪の無い人々に!!それが君の罪だ!!」
「私の…………罪?」
「そうだ!!君が砂漠の時だって君が抑え役に回っていれば、防衛戦の時作戦を無視しなければ死なずに済んだ人だって大勢いたし家を失って路頭に迷う人もいなかった!!」
 あ…ああ…………!!
「それが君の罪なんだ」
 こんな恐怖を、こんな思いを私はたくさんの人達に…………。
「うああああああぁぁぁぁぁ!!!!!」
 私が殺した、何人も何十人も…………それが解った時、私は後悔の涙を抑えることが出来なかった。
「カガリ……君は今すぐ償わなきゃいけないんだ、君自身の罪を」
 キラが、フリーダムが静かに私に近づき、腕を振り上げる。
そしてフリーダムの腕が振り下ろされたとき私は意識を失った。



キラSIDE

 ストライクをシールドで殴りつけ、カガリを気絶させたのを確認した僕はストライクを抱えて一旦アークエンジェルへ戻った。
このまま殺して楽にしてあげようかとも思った。だけど……
「…………やっぱり、肉親は殺せないや」
 我ながら甘いと感じてしまう。
いや、むしろ残酷かな。これからカガリは一生罪と向かい合わなければいけない。
安易な死を選ぶ事も許されない、永久にその罪を背負う人生を生きなければならない。
ある意味死ぬより重い罰、ならせめてそれを支えよう、弟として…………。
「さてと……」
 カガリの身柄を引き渡し、僕は再びフリーダムに乗り込む。
「次はあのクズの番だ!!」
 カガリをテロリストにしてくれた報い、受けてもらうぞ、アスラン!!!!






[32127] 第31話 激闘
Name: 神無鴇人◆c2099dfd ID:7cb03caa
Date: 2012/03/16 17:48
NO SIDE

 キラとカガリの戦闘と時を同じくして他のメンバーもそれぞれ特機を相手に奮戦していた。

アサギSIDE

「邪魔をするな!!俺はキラを止めなければならないんだ!!」
「ちょっ、こっちに来ないでよ変態!!!」
 ジャスティスの攻撃を何とか回避しながら連携で反撃する。
「……何でよりによってこんな最悪なのと当たっちゃうのかな、私達って」
「同感、だけどやるしかないわよ」
「そうよね、こいつ放っといたら色々ヤバイし」
 確かに……。コイツ変態だけど強いし、正直シン君やヤマト二尉ぐらいしかまともに相手できそうに無い。となれば私達がやるべき事は……。
「シン君かヤマト二尉の手が空くまで私達でこいつを抑えるわよ!!」



マユSIDE

 目の前で連合軍のバスターダガーが狂乱したかのように暴れまわっている。
そのバスターダガーはオ―ブ防衛線の時と違って追加装甲によってかなり外見がごつくなってまるで移動砲台という感じの姿になっていた。
「ヒャハハハハハハハ、死ね!死ねよコーディネイターが!!!!」
 パイロットの狂った叫び声と共にバスターダガーが全ての武器を連射してくる。
この人、前はもう少しまともだったような気がするけど、どうなってるの?
「ヴェスティージぃぃぃ!!!!」
「くっ!」
 広範囲の攻撃に銃弾が何発か機体を掠めてしまう。だけど、まだ負けたわけじゃない!!
「であああああ!!!!」
 攻撃の隙を突いて近づき、ビームソードを叩き込む!!
「!?」
 しかしバスターダガーはまるで何事もなかったかの様に反撃してきた。
「そんなのが効くかよぉぉ!!!」
「キャ!!」
 ちょ、直撃は防いだけどヴェスティージの左足から先を破壊された。
どうなってるの?確かに手応えを感じたけど……!!
「そ、装甲が……」
 装甲が厚すぎてダメージが殆ど無い。
「テメェの攻撃じゃビクともしないんだよぉ!!!!」
 こ、これまずいかも…………。



ニコルSIDE

 フォビドゥンと戦いながら隙を窺う。あの盾があるかぎり射撃戦はどうしようもなく不利、なら如何にして懐に飛び込めるかが鍵だ。
デュエルのアサルトシュラウドがあれば外部装甲を犠牲にしてどうにかできるけど生憎ブリッツにはそのようなものは無い。
「あの手でいくか……」
 戦いながら周囲の敵艦の残骸を破壊し、爆煙に紛れてミラージュコロイドを展開し、姿を消す。
「!……どこだ?」
 よし、上手い具合に見失ってくれた、視界に入らないように動き回って隙を窺う。
「今だ!!」
 不意を付いてビームガンを発射。しかし……
「ばーか……」
 パイロットの嘲笑と共にフォビドゥンは僕の撃ったビームを避けてビーム砲で反撃してきた。
「ぐぅっ……!!」
 何とか防いだけど、シールドをやられてしまった。
「お前の動きなんて音と気配で分かるんだよ」
 勝ち誇ったように僕を見据えるフォビドゥンのパイロット、それを見ながら僕は…………思わず笑みを浮かべてしまった。
「?……何がおかしいんだ?」
 笑わずにはいられませんよ……………………………全部僕の計算通りだから。
僕は右手に繋いであった『ある物』を一気に引っ張り上げる。
「!!」
 『ある物』……それはMS捕縛用のワイヤーだ。僕はただ単に動き回っていた訳じゃない、これを周囲に張り巡らせるのが本命だ。
引っ張り上げられたワイヤーはフォビドゥンに絡みつき、縛り上げる。
「僕が動き回っていたのがただの目くらましとでも思ったようですが、本命はこっちです!!」
「ちぃっ!!」
 フォビドゥンは慌ててワイヤーを振り解こうとするがそれより先に僕はビームサーベルを構えて一気にフォビドゥンに接近、懐に飛び込んだ。
「く、くそ!!」
「これで終わりだ!!」
 フォビドゥンが大鎌で反撃するがいかにGのパワーでも実剣じゃPS装甲は破れず、なすすべなくビームサーベルの餌食となった。
「が…くはっ…ああっ…」
 ビームサーベルを突き刺したと共にすぐさまフォビドゥンから離れる。それから数秒もしないうちにフォビドゥンは爆発した。



マユSIDE

「ハァハァ……」
 何とか持ち堪えてきたけど、もうスレイヤーウィップもマシンガンもやられて機体が限界に近づいている。
「ヒャハハハハハ、終わりだヴェスティージぃ!!!!」
「クッ!こうなったら……」
 やるしかない、とっておきの『アレ』を……。
チャンスは一回……外してもアウト、通用しなくてもアウト……どっちにして分は悪い、だけど……。
(それぐらいの賭けどうって事無いんだから!!)
 私はお兄ちゃんの、シン・アスカの妹なんだから!!
ガトリングからシールド部分を取り払い、更に銃身の先端、正確にはその側面部分に改造して備え付けられた二つの設置穴にビームソードをそれぞれ取り付け、即席の銃剣を作る。
よし準備OK!!
「くたばれぇぇぇぇ!!!!!」
 バスターダガーから砲撃が放たれる。私はそれを気にせず一気に突っ込む。
「ぐっ……うぅ……」
 何発か命中してしまった、だけどまだ……!!耐えてみせる!!
「しぶといんだよ!!テメェ!!」
 まだ……もう少し……………………………今!!
「当たれぇえええええええーー!!!!!!!!」
 銃剣をドリルのようガトリングを回転ささせてバスターダガーへと突撃。
凄まじい激突音と共にドリルと化した銃剣はバスターダガーの胸を貫いた。
「が……あ……うそ、だろ」
 パイロットの最後の言葉を残してバスターダガーは大爆発を起こした。
「ハァハァ……」
 ゴメンね、ヴェスティージ……こんなにボロボロにしちゃって。
「一旦戻らないと」
 かなりの損傷を追ってしまったヴェスティージの修理のため、私は一度母艦に戻ることにした。



フレイSIDE

「ふぅ、だいぶ落としたけど、あとどれくらいかしら?」
 連合の核部隊をひとまず全滅させ、少しだけ息を吐く。
だけどまだ安心できない。ブルーコスモスの奴らが一回だけの攻撃で終わるはずが無い。
(取り敢えず今は周囲の敵を落とすことに専念しないと…………)
 そう思ったその時だった……………。
「全員退避!!ジェネシスが撃たれる!!」
「え?」
 味方の戦艦からの通信が聞こえたその刹那、ヤキン・ドゥーエの近くに巨大な物体が現れ、そこから放たれた光が連合艦隊を焼き払った。
「こ、これがジェネシス…………」
 話には聞いていたけど、ココまで凄いの?
『我らが勇敢なザフト軍兵士諸君!傲慢なるナチュラルどもの暴挙をこれ以上許してはならない!プラントに向けて放たれた野蛮なる核…これは最早、戦争ではない!虐殺だ!このような行為を平然と行うナチュラルどもを、もはや我々は決して許す事は出来ないッ!この光と共に今日と言う日を我々新たなる人類コーディネーターの輝かしき歴史の始まりの日とするのだ!』
 通信機がパトリック・ザラの演説を拾う。
…………笑わせてんじゃないわよ、傲慢?野蛮?虐殺?あんた達だって同じ様なモンでしょ!!
アンタ達の好き勝手になんかさせない!!私の故郷を、皆との思い出が詰まった地球を撃たせはしない!!!!
「絶対に止めてみせる!!」



アスランSIDE

「あ、ああ……………………………………………………」
 嘘だ……嘘だ嘘だ嘘だ!!
キラ、なぜお前がカガリと戦うんだ?何故カガリをあんな酷い目に遭わせるんだ!?
「何でなんだぁぁあああああ!!!!」
「ちょっ、何なのコイツ?」
 うるさい……黙れ、邪魔をするな!!!!



マユラSIDE

 突然訳の分からないことを口走り始めたと思ったらジャスティスは凄まじい勢いで私達に襲い掛かってきた。
「うわっ!?」
 あまりの鋭い攻撃に対処しきれず右腕と右足を瞬く間に破壊されてしまった。
ちょ!?何よコイツ!?さっきより目茶苦茶強い!!
「じょ、冗談きついわよ!?」
「マユラ!」
「このぉ!!」
 ジュリが私を助けようとジャスティスにそれぞれ襲い掛かる。
「邪魔だぁ!!!!」
「「きゃあぁぁぁあ!!」」
 だけどそんな二人の攻撃も一瞬で返され、機体を損傷してしまう。
「消え失せろぉ!!」
 サーッベルを構えたジャスティスがこっちに突っ込んでくる。
(ココまでなの……)
 私は死を覚悟し、固く目を閉じる。
シン君…………。
「ぐあっ!?」
 え?今の声、ジャスティスのパイロットの……?
何が起きたのか理解できず目を開く、そこにいたのは…………。
「大丈夫か?マユラ」
 アドヴァンス、シン君の姿だった。
(格好良すぎだよ、シン君……)



シンSIDE

 核部隊の第一波を退けた直後にジェネシスが発射され、俺は一度体勢を立て直すために母艦へ戻ろうと思った。
その時近くにジャスティスの反応を見つけたと思ったらアスランの馬鹿がマユラ達を相手に暴走してやがった。
そこからはほぼ反射的にアスランを止めに入り、今に至る訳だが…………。
「女相手に暴走するとは随分落ちぶれたな、アスラン!!」
「シン貴様!!よくも俺の前にのこのこと!!」
 喚き散らすアスランを無視して俺はレーダーを見る。よし、準備は終わったみたいだな…………。
「今日こそ貴様を討ってキラを救う!!貴様さえ倒せばキラの目は覚めるんだ!!!!」
「悪いけど、アンタを殺(や)るのは俺じゃない」
「何だと?」
 もうそろそろ…………来た!!
「待たせたね、シン……」
「無能(カガリ)の後始末は終わったみたいだな、キラ」
「うん、おかげさまでね」
「そうか……じゃ、後は頼むぜ!!」
 ようやく到着したキラに一声かけ、俺は背を向ける。
「アサギ、マユラ、ジュリ、一旦体勢を立て直す、艦に戻るぞ」
「「「了解」」」
 アスランの相手をキラに任せ俺達は一度艦に戻った。
死ぬなよ、キラ…………。
さてと、俺は俺でクルーゼと戦う準備をしないとな。






[32127] 第32話 天下分け目の最終決戦(前編)
Name: 神無鴇人◆c2099dfd ID:7cb03caa
Date: 2012/03/16 17:49
キラSIDE

 一度は治まったはずの怒りが湧き上がってくる。しかもこれはさっき以上だ……。
「キラ、一体どうしてしまったんだ?お前も俺と同じ様に逆行している筈なのに何故シンのような奴に手を貸す!?何故不殺を使わない!?」
 ああ、うるさい……。耳が腐りそうだ……。
「俺と共に戦ったときのあの気高いお前はどこに言ってしまったんだ!?」
 ……………はぁ?
「気高い?」
「ああ、そうだ!!あの時のお前は誰よりも優しく、強く、誇り高く、そして気高かった!!なのに何故だ!?何故今更……」
「笑わせるな!!」
「き……キラ?」
 このクズは…………本気で頭に来る。
「優しい?気高い?ふざけるな!!そんな奇麗事で自分を誤魔化して、自分に酔いしれて……僕は数え切れないほど罪を犯してきたんだ!!その結果誰一人守れなかった!!それのどこが気高いって言うんだ!?」
 無自覚のままに独善を振り撒き、何一つ自分で考えない…………あの時の自分程恥ずべきものは無い。
「それは違う!全てはデュランダルやシンの様に未来を殺そうとする者がいたからだ!!」
「それでも僕達は彼等と話し合うことすら考えなかった、結局僕達も力による支配しか考えていなかったんだ……そして正義を語ることによってその罪から逃げ続けた、自分が罪を犯していると気付く事無く…………だけど僕はシンと一緒に逆行して漸くそれに気付く事が出来た、僕はもう逃げない、自分の罪からも、運命からも!!!!だからこそ絶対に許さない!!正義を語って無自覚のままに悪意を撒き散らし、その挙句カガリをテロリストにしたお前を!!」
「キ…………ラ…………………………」
 僕の言葉にショックを受けたのか、アスランは黙った。
「違う、………………じゃない…………」
 いや、違う。何かうわごとのようにブツブツと呟いている。
そして次の瞬間アスランは突然こちらを睨みながら口を開いた。
「お前はキラじゃない!!」
 は?何を言って?
「俺と共に戦ったキラがそんな言葉を言うはずが無い!!お前はもうキラじゃない!!シンによって作り変えられた偽者だ!!返せ!!俺が愛したあの時のキラを返せぇぇぇぇーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!」
 何を言い出したかと思えば、それが君の答えか…………どこまでも救えない下衆が。
「来いよ……このクズ野郎ぉ!!!!!!!!!」
 ミーティアを切り離し(自動操縦でエターナルに送り返した)、僕は身構える。
このクズ(もはや名前で呼ぶ必要無し)だけは絶対に許さない!!



ムウSIDE

「畜生!何で量産機なんかを相手にしなきゃいけないんだよ!?」
 ジェネシス発射から少しして俺はようやくクルーゼの野郎を見つけた。
しかし…………。
「わざわざ相性の悪い機体と戦うほど私も間抜けではないのでね」
 それだけ言って周囲のジンとゲイツの大群に俺を任せてどっかに行ってしまった。
畜生、何で俺はこんな役回りばっかりなんだよ!?



フレイSIDE

 アークエンジェルで急いで補給を済ませ、私はシン達(メンバーは私を含めシン、マユ、ニコル、バルトフェルドさん、アイシャさんの6人)と共に急いでジェネシスへと向かっていた。
その背後には黒い105ダガーを筆頭とした連合の部隊が追いかけてきている
「こっちだって今はジェネシスをやろうとしているのに!!」
 マユが悲痛な叫び声を上げる、それでも向こうはそんな事お構い無しに攻撃してくる。
「貴様らだけは………貴様ら、だけは!!」
 黒いダガーのパイロットが絞り出すような声を出す。
けどこれ意外と厄介かも、フルチャージでなくてもアレが撃たれる可能性がある以上時間を掛けるわけには…………。
その時レーダーからアラートコール、今度は何?
「イザーク!?」
 そこにはデュエルとバスターを筆頭とした部隊の姿があった。
咄嗟に身構えるがそれを他所にジュール隊はこちらを素通りし、連合の部隊に襲い掛かった。
「援護してくれてるの?」
「かもな、どっちにしたってありがたい限りだ、行くぞ!もうあまり時間が無い!!」
 シンに促され、私達は踵を返してジェネシスへと向かった。



イザークSIDE

「いいのですか?」
 戦闘の中、シホが声を掛けてきた。
「何がだ?」
「彼らを行かせた事です、一応敵ですよ」
 敵か…………。
「俺達の目的は何だ?」
「プラントを守ることです」
 そうだ、だからこそ…………。
「奴らがプラントを滅ぼすと思うか?」
「いえ、全く…………」
「なら問題無い、口を動かす暇があったら戦え!!」
「了解です」
 俺の言葉にシホは僅かに笑みを浮かべて答える。
「おいイザーク、こっち手伝ってくれ!一機逃がしちまった!!」
「何やってる!気合を入れんか!!」



シマトSIDE

 ジェネシス内部への入り口の守りを固めていると敵機の反応があった。アドヴァンス率いる特機部隊か……。
アレに乗ってるのがアスランの言ってたシン・アスカって奴か。雑誌で見たけどなかなかの美少年、結構俺好みだ。
「来たぞ!アドヴァンスだ!!」
 防衛部隊の隊長が喚きたてる。叫ばなくたって分かってるって。
「絶対に通すな!!ココで落とすのだ!!」
 ああ、落としてやるさ。
「お前らの方をな!!」
「!?」
 不意を付き隊長のゲイツに銃口を向け、一気にぶっ放す。
「し、シマト!?お前何を!?」
 同僚が隊長を殺(や)った俺の行動に目を見開いて狼狽する。
「何を?見りゃ分かるだろ、寝返るんだよ!!だって俺スパイだし、地球にゃ俺のハニーとダーリンが居るんだぜ!!」
 それに俺はラクス・クラインファンクラブの一員だからな!!
こっちに来るアドヴァンス達に自分はクライン派だとメッセージを送り、早く行けとジェネシスへの進行を促した。
「僕達も残らせて貰おうか」
 ん?その声…………。
「おお!虎の旦那か!?」
「よぅシマト、久しぶりだねぇ」
 虎の旦那が嬉しそうな声を出す、何を隠そう俺はこの人の後輩なのだ。
「二人とも、おしゃべりしてる暇は無さそうよ」
 アイシャの姉ちゃんも健在か、嬉しい限りだ。
「さ~て、ココから先は通さないぜ!!」



シンSIDE

 シマトとかいう奴のお陰でジェネシス内部に楽に潜入することが出来た俺達は動力炉へとたどり着いた。
入り口を固めるようにマユ達に伝え、俺は動力炉のすぐ傍でミーティアを切り離し、ミーティアに備え付けられた時限式自爆装置を起動させる。
ミーティアを失うのは少し勿体無いがジェネシスを破壊するためなら仕方ない。
「よし、後はギリギリまで持ち堪えて脱出するぞ、向かってくる敵は徹底的に掃討しろ!!」
 マユ達に指示を出し終え、次は敵の方へ通信を向ける。
「こちら同盟軍所属シン・アスカ二尉だ!ジェネシス動力炉に爆破装置を取り付けた、死にたくない奴はさっさと逃げろ!!」



パトリックSIDE

『こちら同盟軍所属シン・アスカ二尉だ!ジェネシス動力炉に爆破装置を取り付けた、死にたくない奴はさっさと逃げろ!!』
 シンと名乗る小僧からの通信に怖気づいた臆病者達がジェネシスから逃げ出して行く。
何をしている!?ザフト兵なら逃げずに奴等を倒さんか!!!!
逃げずに残った者達もいる、しかし瞬く間に奴等に倒されていく。
そして遂には轟音と共にジェネシスはその機能を停止した。
「ば、バカな…………」
 ありえない、ナチュラル共と組むような軟弱な連中に我々の希望とも言えるジェネシスが破壊されたなどありえるはずが無い!!!!
何故だ!?何故なのだ!!?
「議長、ココはお逃げください!貴方さえいればまだ我々は健在なのです、ココで全ての希望を失うよりも、貴方は生き残るべきです!!」
 副官が慌てて私に声をかける。そうだ、ナチュラル共を皆殺しにするまで私は死ねん!!
サトーを筆頭とした腕利きのパイロット達を護衛に付け、私は脱出用のシャトルへと足を向けた。



キラSIDE

「ジェネシスは破壊されたか……おいクズ、いい加減僕達も決着つけないか?と言っても結果なんて見えてるけどね」
 目の前のクズが乗るジャスティスに向けて言い放つ。
ジャスティスは致命的なダメージこそ負っていないがすでに細かい傷があちこちに出来ている。
その上ファトゥムは既に破壊済みだ。
「フン、手も足も出ないって感じ?」
「クッ、貴様のような偽者なんかにぃぃ!!!!」
 アスランはヤケクソ気味に襲い掛かってくる。
「甘いんだよ!!」
 ジャスティスは手数にさえ気を付ければコレと言った特徴が無い。要はそれさえ封じてしまえば戦術の幅が狭まる。
パワーならフリーダムでも互角だし、シールドとサーベルさえ使えば両腕を防ぐのは容易い。
「馬鹿め!かかったな!!」
 !?……ジャスティスの爪先からビームサーベルが!?いつの間に付けたんだ?だけど…………。
「だから甘いんだよ!!」
 サーベルがこっちに届く前にクスィフィアスを撃ち込みジャスティスを引き離す。
空振りと着弾の勢いでジャスティスは間抜けにも宙返りを披露した。
「クソォォォオオオ!!!!!何故だ!?何で偽者のお前なんかに!!」
「解らないなら教えてやるさ……君は今まで自分の正義なんて物、一度も貫いた事が無い…何時だって前世の僕やラクス、パトリックやデュランダルに頼りっぱなし、それが気に入らなくなったらさっさと寝返る、つまり君は主体性に欠けた他人任せの正義しか語ってこなかったんだ、自分の正義を語った事なんて一度も無い」
 僕の言葉にクズはあからさまに表情を歪める。当然か、図星だし……。
「要するに君の覚悟も正義もその程度って事だよ、そんな奴が歴史の勝者になれる訳が無いのさ!!解ったかクズ!!!!」
「黙れえええええええええええええええ!!!!!!!!!!!キラの声でそれ以上喋るなぁぁぁぁああああああああああ!!!!!!」
 叫びながら向かってくるクズに対し、僕はライフルとバラエーナをぶち込み、バルカン以外の全武装を破壊してやった。
「グッ、ガ…………畜生ぉ………………………」
 無様だな、クズ……これで終わりだ。君にはカガリと違って手心を加える理由は無い。
僕はジャスティスのコックピットにライフルを向けた。



シンSIDE

 ジェネシスから脱出した俺達を待っていたのはゲイツ部隊と黒い105ダガーを相手に戦うバルトフェルドさん達の姿だった。
「バルトフェルドさん、大丈夫ですか!?」
「シンか……厄介なのに来られたものだよ、コイツはかなりの強敵だ」
「後は俺がやります、皆は雑魚を!!」
 それだけ言って俺は黒いダガーと向かい合う。
「漸く貴様を殺せる、シン・アスカ……………!!」
 コイツ、オーブ防衛戦で俺と闘った奴か?…………………ん?
襲い掛かってくる105ダガーの斬撃を避けながら違和感に気付いた。コイツ、反応速度が前より上がっている?こんな短期間で…………!?
「アンタ、まさか…自分を強化したのか!?」
「ああ、そうだ……貴様を殺すためだ、俺の体など惜しくは無い!!」
 チッ、性質が悪いぜ。だけど………………。
向かってくる105ダガーの対艦刀をアスランと戦った時と同じ様に捌き、パワーを活かしてアッパーの要領で上方へ殴り飛ばす。
「グッ!?」
「負けられないんだよ!!」
 無防備になった所をレヴィアブレードでぶった切り、真っ二つにしてやった。



スウェンSIDE

「がっ……………ぁ………は」
 一瞬だった、一瞬で俺のダガーは真っ二つにされ、体に凄まじい衝撃と痛みが走り、口から吐き出された血がヘルメットの中を赤く染める。確実に致命傷だ。
「ここ……まで、か…」
 ……まぁどの道、碌(ろく)な死に方など出来ん事は解っていたがな。
「あぁ…星…………だ」
 僅ではあるがバイザーの血の付いていない部分から除くその光景は子供の頃見た見たあの星空と同じくらい綺麗で、少しではあるが楽な気分にさせてくれる。
(もしも生まれ変われるのなら、また星が見たいな)
 声にならない言葉を呟き、俺は意識を手放した。



ニコルSIDE

 シンによって黒い105ダガーが撃墜された頃、僕達の周辺の敵機もほぼ片付いていた。
「だいぶ片付きましたね、これからどうしますか?」
「ヤキンに突入する部隊を護衛するぞ、後もう少しだ皆気を抜くな」
 シンの言葉に全員頷きヤキンの方へ足を向け……………!!?…何か来る!?
「マユさん、危ない!!」
 運良く肉眼で此方を狙う物体を発見し、僕は慌ててマユさんを庇う。
「グッ……うぅ…………」
 し、しまった…………脇腹辺りにモロに…………。
「おやおや、まさかこんな形で君と再会するとはね、ニコル」
 その声は……。
「ク、クルーゼ隊長…………」



シンSIDE

 遂に来やがったか、ラウ・ル・クルーゼ。
「ニコルさん!!」
 マユの声をよそに複数のドラグーンは再び俺達を狙ってくる。
「チィッ、防御を固めろ!!アレは色んな角度から来るぞ!!」
 ドラグーンからの攻撃を防御しながら応戦しつつ、サブモニターでニコルの様子を見る。
まずい、コックピットの破片が脇腹に刺さって出血している。
「マユ、ニコルを連れて艦に戻れ!!フレイとバルトフェルドさん達は予定通りヤキンへ!!コイツは俺が相手をする!!」
「うん!!」
「分かったわ!!」
 マユとフレイを筆頭にバルトフェルドさん達も頷く。
「よし…………行くぞ!!」
 俺の合図と共にそれぞれ一斉に動く。ココが正念場だ!!
俺は絶対に勝つ!!皆も死ぬな!!



キラSIDE

 クズに向けたライフルの引き金を引き絞る。
これでやっとコイツとの因縁も終わりだ…………と思ったその時だった。
「やらせはせんぞぉぉおおおお!!!!!」
「!?」
 突然敵のM1部隊が僕に向かって突撃してきた。
いや、これは突撃なんてものじゃない…特攻だ!!
「イケヤ、ゴウ!?」
 !?…前世でカオスを撃墜した奴等か!?
「ジャスティスは我らの最後の希望、やらせはせん!やらせはせんぞォおぉぉぉーーーーーーーー!!!!!!!!」
「今の内に母艦へ戻れ!例の切り札を使うのだ!!」
「すまない!!」
 言われるままにクズは母艦の方へ逃げていく…………。
「待て!クソッ!!」
 追い駆けようとするがM1部隊は特攻してくるわ僕にしがみついてくるわで…………しかもちょっとやそっと機体を破壊してもお構い無しで来るから性質が悪すぎる。技量が高い奴も何人かいるし……。
この程度の敵を片付けるのは簡単だけどそれでもこの数とこの性質の悪さじゃ1分ちょっとは掛かる。
「クソ!あのクズ何をやらかす気なんだ!?」






[32127] 最終話 天下分け目の最終決戦(後編)
Name: 神無鴇人◆c2099dfd ID:7cb03caa
Date: 2012/03/16 17:49
シンSIDE

「オーブの英雄シン・アスカ……こうやって直接対峙するのは二度目だな」
 意味深な笑みを浮かべ、クルーゼは俺に声をかけてくる。
「ああ、もっともあの時はアスランが騒いだ所為で大して話す事は出来なかったけどな…………」
 コイツがもう一人のレイ……そしてこの泥沼の戦いの引き金となった男。
「…………一つ聞きたい、何故こんな真似を…………こんな泥沼の戦いを引き起こしたんだ?」
「ほぅ?何を言い出すのかと思えば……私がこの事態を引き起こしたと言うのか?何故そう思う?」
「アル・ダ・フラガ」
「!!」
 俺の言葉にクルーゼの顔色が変わる。それは驚愕しながらも狂気を纏うどこか異質なものだった。
「…………これだけ言えば十分だろ」
「ククク……ハハハハハハ!!!!これは驚いた、まさか君の様な何の因縁も無い赤の他人が私の秘密に行き着いているとは…………知っているならば解るだろう、憎いのだよ……私は……私を生み出したこの世界全てが!!」
 クルーゼは狂気を帯びた笑みを浮かべながら叫ぶ。レイと同じ声で……。
「アンタを生み出したのは世界じゃない、アル・ダ・フラガとメンデルの科学者達だ!!世界そのものを憎むのはお門違いだろ!!」
「そうだな、見方を変えればそうとも言える……だが、今更そう思って何になる?最早フラガもユーレンもこの世にはいない!!憎む対象のいない私は何を憎めばいい!?」
「だから滅ぼすのか?」
「ああその通りだ!憎しみしか知らぬ私に他に何をしろというのだね?」
 クルーゼの憎悪を含んだその言葉に俺はどこか共感していた。
「…………少し解るよ、その気持ち……俺も昔大切な人を殺されて、殺した奴を絶対に殺してやるって程憎んだ事があった」
「…………」
俺からの予想外の言葉に クルーゼは呆気に取られたかの様にこちらを見ている。
「……俺はまだマシな方だ……憎む対象が手に届くところに居た、憎しみをぶつける事が出来た」
 だけどクルーゼには本当に憎しみをぶつけたい相手がもう居ないんだ……。
その辛さは俺なんかじゃ計り知れない。
「……フフ…ククク…………ハハハハ!!これは意外だ、まさか君の口からそんな言葉が出るとは、てっきり青臭い台詞を吐いてくれると期待していたのだが」
「ヘッ、そりゃどうも……けどな、それでも俺はアンタを否定する!!アンタがやろうとしているのはただの八つ当たりだ!地球にもプラントにも誰もが今必死に生きようとしているんだ、そんな人達の命を奪う権利なんか誰にも無い!!結局アンタは自分の運命に何一つ抗いもしないただの弱虫野郎だ!!!!だから安易な八つ当たりに走る!!!!」
「…………ククク、本当に厄介な存在だよ、君は……実に腹立たしい、本気で癪に障る……!!!!気が変わった、私自身の手で君を潰したくなったよ!」
 珍しく感情が表に出てやがる……。本気って事か、なら上等だ!!
「来いよ弱虫野郎、アンタは全身全霊で俺が止めてみせる!!!!」
 久しぶりにSEEDを発動する。ココからは俺も本気だ!
「行くぞ、シン・アスカぁ!!」
 互いに武器を構え、俺達は互いに己の意志をぶつけ合う。
ココで終わらせる、クルーゼの怨念も、そしてこの戦いも!!



フレイSIDE

 制圧部隊がヤキンに突入して数分後、入った知らせはパトリック・ザラが逃亡したという情報だった。
「まだ近くにいる筈……」
 あいつをココで逃がすわけにはいかない、必死になって辺りを見回す。
「!?…いた!!」
 この宙域から離れようとする機影をレーダーが捉えた。
一隻の戦艦に過剰とも言える護衛の数、多分アレで間違いない!!
「逃がさない!」
 ココでアイツを倒す!!



パトリックSIDE

 辛くもヤキンから脱出し、我々は先頭宙域からの離脱を行う。
今は耐えるのだ、我々の悲願達成のためにもココで全てを失う訳にはいかんのだ。
「敵MS接近、同盟軍のストライクルージュです!!」
「クッ……たかが敵の一機、さっさと落とせ!!」
「そ、それが護衛機が次々と落とされて……」
 バカな……アドヴァンスやフリーダムならともかくあの機体に乗るのはナチュラルの小娘の筈。
何故ナチュラルが我々の障害となる?我々コーディネイターがたかがナチュラルの小娘一人に劣るとでも言うのか!?
「しかもM1の部隊もどんどんこっちに迫ってきて……」
 おのれ、おのれぇぇぇぇ!!!!!!
「殺せ!サトーでも誰でも良い!!あの忌々しい機体のパイロットを早く殺さんかぁぁぁぁぁーーーー!!!!!!」



フレイSIDE

 M1隊の協力もあり、遂にパトリック・ザラまであと僅かとなった。
「あと少し!」
 ゲイツ舞台の攻撃を掻い潜りながらナスカ級に接近する。
「貴様ぁぁぁぁーーーーーー!!!!!!」
 そんな時に隊長機らしき機体が私の前に立ち塞がる様に現れる。
「クッ……直前になって……」
「貴様らの好きにはさせんぞ、ナチュラル共が!!」
『サトー!!早くそいつを殺せぇぇ!!!!』
 パトリックの狂った声がココまで聞こえてくる。相当焦ってるわね。
「貴様は、貴様らだけは絶対に許さんぞ同盟軍!!」
 恨み言を叫びながらライフルを撃ってくる。
「許せないのはこっちの方よ!!ナチュラル皆殺しなんて考える異常者の癖に!!」
 回避しながらこっちもライフルを連射する。でも相手もかなりの腕前らしく、上手く回避される。
「異常ではない!!貴様達下等なナチュラルなどもはやこの世に不要!!我等の様な絶対種たるコーディネイターこそ世界の支配者にふさわしい!!」
 コイツ……クズだわ。過激派ってココまで狂ってるの?
「笑わせないでよ、アンタ達が本当に優れているなら戦争なんてとっくにアンタ達が勝ってそれで終わりでしょ…なのに何?アンタ達はその下等なナチュラルの小娘一人に落とせずに追い詰められてるくせに」
「黙れぇ!!」
 叫びながらサトーはこっちに向かって一気に接近してくる。
「貴様がいくら射撃に優れていようが近づいてしまえば何の問題も無い!!」
 物凄い形相で私の目の前に迫るサトー。そのままビームクローを振り上げる。
「取った!!死ねぃ!!!!!!」
 そのままサトーはビームクローを振り下ろす。
だけど私はそれをビームサーベルで防ぎ、力任せにサトーのゲイツを弾き飛ばした。
「何っ!?」
「よく勘違いされるんだけど、私は別に接近戦が苦手って訳じゃないのよ!!」
 狙撃型の機体に乗っているし戦い方も射撃メインだから間違えられるのも仕方ないけど、これでも私は模擬戦で接近戦が得意なマユを相手に互角に渡り合えているしキラやシン相手にだってそこそこ戦えている。
接近戦だってキッチリ訓練しているんだから。
「クッ、おのれぇぇ!!」
 目論見を潰されても尚サトーは食い下がり、私に突っ込んでくる。
「これで決める!!」
 こっちもサトー同様全速力で突進、そして相手がビームクローを構えたと同時にビームサーベルを投げつける。
「!?」
 投げつけられたビームサーベルはクローに命中し、その衝撃でサトーの乗るゲイツは仰け反る。
「でやあああああああああああああ!!!!!!!!!!!」
 すれ違いざまにロングビームライフルをゲイツに押し付けるようにして至近距離から最高出力のビームを放った。
「ぐおおおぉぉぉぉっ!!!!!」
 断末魔の叫び声と共にサトーは爆死した。
「…………あとは、アイツだけ」
 私はパトリック・ザラの乗るナスカ級の前まで行き、静かにライフルを構えた。



NO SIDE

 サトーが討たれ、ストライクルージュはパトリックの目の前に迫る。
「馬鹿な……バカなバカなバカな!!バカなああああああああああああああ!!!!夢だ、これは夢だ!!」
 最早パトリックに目の前の現実を受け入れるだけの余裕は無かった。
彼にとってコーディネイターがナチュラルに負けるという事は到底受け入れがたき事実、そしてその事実を目の前にしてパトリックは狂い、現実から逃避するしかなかった。
「これで終わりよ、パトリック・ザラ…………」
 その言葉と共にフレイは引き金を引き絞る。
「な、何とかせんかぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!」
 突然現実に引き戻されたようにパトリック・ザラはストライクルージュに背を向け、走り出す。しかしそれはMSという巨人の前には何の意味も成さない。
ストライクルージュから放たれたビームはナスカ級のブリッジを貫き、パトリックを始めとした過激派メンバーを焼き尽くしたのだった。



フレイSIDE

 やった……遂に…………。
「パパ……仇…………取ったよ」
 思わず泣きそうになるのを必死で堪える。
泣くのは後……全部が終わってからじゃないと…………。
零れそうになる涙を抑えながら私は抵抗を続ける敵の殲滅に向かった。



ハイネSIDE

「ココまでか…………」
 通信によって議長が討たれた事を知り、俺はミゲルの乗るレイダーと距離を取り、武器を収め、投降の合図を送る。
「投降するぜ、頭がやられたんだ、もう意味は無い」
「結局決着は着かなかったか…………」
 結構な時間戦い続け、結局お互いボロボロにはなったが明確な勝敗は付かなかったな。
でもまぁ、いいか……元々上層部の連中に疑問はあったし、地球軍の連中に負けるのはゴメンだが、同盟軍ならプラントがやばい事になる事は無いだろう……。



マリューSIDE

 アークエンジェルは地球軍の戦艦『ドミニオン』と戦っていた。
ドミニオンはもうボロボロでアークエンジェルの勝利ほぼ間違いなかった。
「油断は禁物ですよ、過激派の執念と狂気は尋常ではありません」
「ええ、分かってるわ」
「ヴェスティージとブリッツ、帰投します!ブリッツ被弾あり!」
 被弾したブリッツを支えながらヴェスティージが帰艦してくる。
「整備班! 緊急着艦用ネットを! 医療班は待機!」
 ミリアリアさんからの報告にナタルがすぐさま指示を飛ばす。
「敵の攻撃にも注意して!この隙に攻撃してくるかもしれないわ!!」



NO SIDE

 ドミニオンのブリッジでは追い詰められたアズラエルの顔が屈辱に歪んでいた。
「今だ!!ローエングリン照準!!!!」
 ヴェスティージとブリッツを収容し、隙を見せたアークエンジェルを見てアズラエルが喚き散らす。
当然最早勝ち目など無い事に気付いているクルー達はそんな命令に従うはずも無く戸惑うだけだった。
「もう無理です!!敵艦一隻落としたところでこの戦いには勝てません!!」
 ドミニオンの艦長がクルーを代表して進言する。
彼等はザフト軍と違ってパトリックのような縋る存在も希望を見出す存在も無い。故に彼等は自らの命を優先させる。
「黙れッ! 黙れッッ!! 黙れッッッ!!!僕に逆らうなッ! 僕はアズラエル財閥の総帥、ムルタ・アズラエルなんだぞッ!」
 喚き散らしながら懐から拳銃を引き抜きアズラエルのような人間にとって自分の意にそぐわない意見など裏切りでしかなく、彼の思考は子供のそれでしかない。
「黙るのはお前の方だ!!軍人でもないくせにしゃしゃり出て余計な命令ばっかり出しやがって!!死にたきゃお前一人で死ね!!!!!」
 いくら銃を持っていようが訓練を受けた軍人であるドミニオンの艦長にアズラエルが敵うはずもなく逆に殴り飛ばされてしまう。
「総員退艦!!さっさと逃げろ!!!!」
 艦長の言葉と共にクルー達はブリッジを離れ、アズラエル一人が取り残される。
「く……クソぉ……僕は勝つんだ……僕は勝つんだ!!」
 狂った声を出しながらアズラエルは艦を操作しローエングリンの照準をアークエンジェルに向ける。
「アハハハハハハハハハハハ!!!!死ね、死ね、死ねぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!」
 狂気と共にローエングリンが発射される。
この時のアズラエルはコレでアークエンジェルを仕留めたと確信していた。しかし………………。
「回避!!急いで!!」
 マリューの一喝と共にアークエンジェルは旋回し、ローエングリンによる砲撃を完全に回避する。
「…………あ、ありえない…………な、何故だ………………」
 自分の望んだものと真逆の現実にアズラエルの表情は凍りつく。
「おい……………………何してる、クロト!!シャニ!!オルガ!!!!早くアイツ等を殺せ!!!!」
 直視できない現実にアズラエルは居もしないパイロット達の名を叫ぶ。その光景は皮肉にも彼が仇敵としていたザフト軍トップであるパトリック・ザラと同じものだった。
「ローエングリン、撃てぇぇぇぇ!!!!!」
「うあああああぁぁぁぁぁっーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!」
 アークエンジェルから放たれた凄まじい光にアズラエルは成す術無く飲み込まれたのだった。



キラSIDE

「クソ!あのクズどこに行った!?」
 漸く雑魚を蹴散らしてクズを探していた。
すると突然レーダーが大きな熱源反応を探知した。
「『SEED』の戦艦から……アイツか!?」
「待たせたな!!」
 耳障りな声と共に追加装甲らしきものを装備したジャスティスが現れた。
「今度こそ貴様を葬ってやる!!このフルアーマージャスティスでな!!!!」
 随分安直なネーミングだな……っていうか切り札ってコレ?
「ごつくなっただけで僕に勝てるとでも思ったの?逆行してから頭悪くなったんじゃない?」
「フン!いい気になっていられるのも今の内だけだ!!このフルアーマーパックはいわばミーティアの強化版!!パワーも火力も段違いに上がっているんだからな!!」
 そんな事をほざきながらビーム砲を撃ってくる。成る程、確かに火力はフリーダム並だ。
「この機体さえあれば貴様のような偽者など恐るに足りん!!コレで貴様も終わりだ!!喰らえ!!!!」
 叫びながらジャスティスは接近し、ビームサーベルで斬りかかって来る。
「…………」
 最早喋る気も失せ、僕は無言のままそれを避ける。
「無駄な足掻きを!!」
 二度、三度と連続してビームサーベルを振るうクズ、いい加減ムカついてきたので隙を付いて胴体に蹴りを喰らわせる。
「ぐあっ!?」
 蹴飛ばされ仰け反るジャスティス。体勢を立て直す前に背後に回り、ビームサーベルの一撃を叩き込む。
「ぐおおおおっ!!!………………くそぉっ!貴様なんぞに!!」
 チッ、さすがに振るフルアーマーと言うだけあって装甲が厚いな、機体そのものに大きなダメージは無さそうだ(アスラン本人にはそれなりにあるみたいけど)。
「あのさぁ…………君が今まで僕に勝った例(ためし)があった?」
 現にこのクズは最新型のセイバーに乗っていながら核エンジンとはいえ旧式のフリーダムにボロ負けだったからね。
「黙れぇぇぇ!!!!!」
 叫びながらクズは再び僕に襲い掛かる。
「ん?これは……」
 さっきよりも動きが良くなっている、どうやらSEEDを発動させたようだ。
「ようやくフルパワーか…………来なよ、いい加減君の顔も見飽きた所だ、こっちも本気で殺(や)ってやるよ……かかって来いクズが!!」
 こっちも久しぶりにSEEDを発動する。勝負はこれからだ!!



シンSIDE

 ドラグーンによってあらゆる角度から放たれるビームをかわしながらすかさず俺はベルゼブラスターで反撃し、ドラグーンを3つ破壊する。
「チィッ!流石英雄だ、本当に厄介な奴だよ君は!!」
「そっちこそな、撃墜王は伊達じゃないって事か!!」
 流石レイの兄貴ってだけの事はある。オールレンジ攻撃の精度ならキラと同等以上だ。
再びドラグーンが飛び交い、俺を狙撃してくる。残り8機。
最初に俺を狙ってきたドラグーンをスレイヤーウィップで叩き落す。
「まず1機!!」
 すかさず攻撃してくるドラグーンの射撃を避けて反撃、続けざまに3機落とす。
「私(本体)がいる事を忘れないでもらおうか!!」
 プロヴィデンスが接近し、ビームサーベルが振るわれ、俺はそれをレヴィアブレードで防ぐ。
「貰った!」
 !?残り4機のドラグーンが一斉に俺を狙ってきた!?
「ヤベ!それ寄越せ!!」
 慌ててプロヴィデンスを弾き飛ばし、ベルゼブラスターで左肩を打ち抜き、腕ごとシールドを奪って自前のシールドと両方を駆使して2本のビームを防ぎ、残りは回避。
直後にシールドを両方ともドラグーンに投げつけた。
投げられたシールドは二つともドラグーンに命中。そのままドラグーン諸共爆発した。
「コレで、ラストォ!!!!」
 残り2つとなったドラグーンを片方はベルゼブラスターで撃ち落し、最後の一機をレヴィアブレードで叩き斬った。
「チィッ!おのれ!!」
 最後の足掻きか、クルーゼはビームライフルを撃ちながら俺に突撃してくる。
「はぁああああああ!!!!!」
 雄叫びと共に俺はレヴィアブレードでプロヴィデンスの右腕を斬り落とし、そのまま間髪入れずに頭部、両足と連続してぶった斬り、プロヴィデンスを完全に破壊した。
「グ……ウッ…………私の………負けか………………殺(や)れ」
 観念したのかクルーゼは絞り出すように声を出し、俺に止めを促す。
「…………………」
 俺は静かにレヴィアブレードを振り上げ、達磨となったプロヴィデンスに振り下ろす。
……………………しかし剣の刃はプロヴィデンスに触れる直前に動きを止めた。
「何のつもりだ?」
「アンタがここで死んだって、それが何の断罪になる?結局アンタは世界を掻き回すだけ掻き回した挙句、最後は死んで楽になるってのか?冗談じゃない、それなら生かして刑務所にぶち込んで償わせた方が全然良い」
「フッ……私に生き恥を晒せと?随分残酷な英雄だな」
「何とでも言え、負け犬は勝者に従うのが道理ってもんだろ……それに下手にアンタを殺したらアンタの弟から余計な恨みを買っちまうからな、俺はそんなの御免だ」
 俺のその言葉を聞いてクルーゼの表情が驚愕に変わる。
「何故君がレイを知っている!?」
「…………………そうだな、アンタには教えておくべきだな、俺の正体を」
 そして本来辿る筈だったこの世界の歴史を…………。



クルーゼSIDE

 シン・アスカの口から語られた事実はあまりに荒唐無稽だったが筋の通る話だった。
何より彼の強さ、そしてレイと面識の無い彼がレイの事を知っているという理由にも納得がいく。
「俺は前世で、アンタの弟、レイ・ザ・バレルの同僚で、友達だった…………」
「……………一つ教えて欲しい、君の言うその前世でレイはどうなった?」
「死んだよ、アンタの跡を継いでキラと戦ってな…………」
「そうか…………」
「けどな、レイはアンタと違って前を見ていた……デュランダル議長に縋っていたけど前を向いて世界を変えようとした……戦争まみれのクソッタレな世界を」
 レイが……前を…………。
「アンタも少しは前ぐらい向いてみろ、レイは最後まで諦めなかったのに、兄貴のアンタが勝手に諦めてどうするんだよ」
 今更前を向け、か…………まったく無茶な事を言ってくれる。
腹立たしい、そんな言葉を言えるその強い意志が……そして何より、前を向きたくなってしまった自分自身が凄く悔しくて堪らん。
「私の、負けだな……レイの奴良い友人を持ったものだ」
 まったく、このラウ・ル・クルーゼともあろう者がこんな小僧に当てられるとは…………本当に、私もヤキが回ったものだな……。



キラSIDE

 ジャスティスから放たれる砲撃を避けつつ急接近し、すれ違いざまにビームライフルを撃ち込む。
「畜生ォォォォォォ!!!!何故当たらない!!!?」
 激昂して喚くクズ、本当に無様だ。だからといって同情なんてしないけど。
「安易にパワーだけに頼ったのが間違いだったな、それだけ分厚い装甲じゃ動くのに邪魔になって小回りが利かないだろ」
 要するに選択ミスだ。攻撃力を上げたは良いけどジャスティス最大の長所である小回りの良さを潰してしまった。
マユちゃんが戦ったバスターダガーは元々が砲撃戦向きだったからあの改造は成功と呼ぶに相応しい。
だけどジャスティスの場合最大の長所を潰してしまった、これは致命的な失敗だ。
「く、クソが…………ふ、フフ、ハハハハハハハハハハハ!!!!!」
 何だ?クズの奴急に笑い出した。
「何がおかしい!?」
「俺の切り札がこの程度だと思っているのか?馬鹿め!!貴様に見せてやる、俺の真の切り札をな!!!!」
 サブモニターに映るクズが突然何かを取り出す…………!?。
「そ、それは!?」
 取り出したのは何かの薬品が入った注射器。ま、まさか…………。
「そうだ、エクステンデットにも使われている神経系の特殊薬品だ!!性能がダメなら俺自身を強化してしまえばいいだけの事だ!!」
 そう言ってクズは自らの身体に注射針を打ち込む。
「ぐ……がぁ…………ハハハハハハ!!!!これで貴様も終わりだ偽者め!!!!」
「そこまで墜ちたか……君と言う奴は…………」
「貴様らのような未来を殺す奴らを倒すためだ!!俺の命など惜しくは無い!!貴様等さえ倒せば後はカガリによって世界は正しく導かれる!!!!」
 凄まじい勢いで僕に迫るクズ。
チッ!確かに反応速度がかなり上がっている。負ける気は無いけど流石に厄介かも……。
「終わりだぁぁぁーーーー!!「一人で終わってろ!!!!」!?」
 突如僕とクズの間に割って入るようにアドヴァンスが現れ、ジャスティスを蹴飛ばした。
「!…シン!?クルーゼは?」
「逮捕した、今はアークエンジェルに拘束してる、後は残党の連中とこの馬鹿だけだ!!」



ミゲルSIDE

 ったく、何だってんだよ……頭がやられたってのにザフトも連合もまだ抵抗を続ける奴らが大勢いやがる。しかもコイツ等投降した味方も攻撃してるし…………。
「自軍ながら見苦しいぜ、ここまで往生際が悪いってのはよぉ……つーか、俺も危なくね?」
 ハイネが呆れたような声を出す。
しかし状況悪いのも事実だし……仕方ねぇ……。
「おい、ハイネ」
「ん?」
「良い弁護士つけてやるからコイツ等片付けるの手伝え」
「いいのか?裏切るかもしれないぜ」
「その時はお前殺して相討ちになりゃいい」
 俺が笑って答えるとハイネもニヤリと笑った。
「OK、派手に暴れてやろうじゃねえか!!!!」



イザークSIDE

「貴様等いい加減にしろ!!これ以上終わった戦いを蒸し返すな!!」
「五月蝿い!!ナチュラル共を皆殺しにするまで終わりなど無い!!」
 もうザフトは負けたというのに、ここまで往生際が悪いとは……。
「俺達は負けたんだ!貴様等も誇り高いザフト軍人なら潔くしろ!!」
「黙れ!!軟弱なクライン派や同盟軍に屈した臆病者が!!!!」
 何だと…………。
「貴様…………今何と言った」
 俺が臆病者だと…………軍人としての誇りすらない愚図の分際で俺を臆病者と呼ぶなどと…………。
「貴様等ァァァァァァァァァーーーーーーーーー!!!!!!!良い度胸だ!!!!全員叩き潰してくれるわぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!!!」



ラクスSIDE

 私は今、無理を承知でエターナルからアークエンジェルに移らせてもらい、カガリ・ユラ・アスハの収容された一室に来ていた。
目の前に居る彼女の姿は以前とかけ離れ、髪は乱れ、表情は涙でグシャグシャになって部屋の隅でうずくまっていた。
「カガリさん…………」
「何だ……」
「まだ戦いは続いています、貴女はこのまま何もしないつもりですか?」
「……うるさい」
 カガリさんは力なく首を横に振る。
「今更何をしろって言うんだ!?もうどうにもならない!!いっつもそうだ!!私が何かする度に人が死んでいく!!全部私のせいだ!!!私は疫病神だ!!死神なんだよ!!!!私なんてあの時キラに殺されていた方が良かったん……」
 彼女の言葉を遮るように私は彼女の頬を叩いた。
「顔を上げなさい、カガリ・ユラ・アスハ!!」
 私の言葉にカガリさんはこちらを見上げる。
「私も貴女と同じになっていたかもしれません……私も以前自分の正義に囚われ、周りの事を考えずに自分だけの正義を振り回そうとしたことがあります、幸いその時の私にはそれを実行できるだけの力がなくて、シンがそれを諌めてくれたから過ちを犯す事無く済みました…………」
 もしも、あの時シンがいてくれなければと思うと恐くてたまらない。
何の自覚も無しに独善を振りまいてしまう自分を思い浮かべ、私は嫌悪感を覚えてしまう。
「貴女は確かに罪を犯しました、ですがたとえ遅くても貴女はその罪に気付くことが出来ました」
「う……うぅ…………」
 カガリさんの目から再び涙が溢れ出す。
「泣きたければ好きなだけ泣いて構いません、ですが貴女に本当に罪の意識があるのなら、最後まで見届けなさい、目を背けてはなりません」
「…………モニターを点けてくれ」
 涙に濡れたその瞳が僅かながら決意の光を取り戻したのを確認し、私は静かに頷いてモニターのスイッチを押した。



ニコルSIDE

 応急処置を終えた直後、僕は再び出撃するために格納庫へ向かう。
「に、ニコルさん!?何やってるんですか!?」
 出撃しようとしていたマユさんが僕に気付き、こっちに駆け寄ってくる。
「僕も出ます、痛み止めは打ってるから大丈夫です」
「ダメ!!その身体じゃ無理だよ!!」
 反対された……当然の事だけど…………。
「マユさんも出るんでしょう、それなのに僕一人だけ寝てられませんよ」
「でも…………」
「行かせてください、お願いします」
「…………どうして?どうしてそこまで無茶しようとするの!?死ぬかもしれないんだよ!!死んだらもう終わりなんだよ!!なのにどうして!?」
 マユさんが目尻に涙を浮かべながら声を張り上げる。
ハハ……女の子泣かせるなんて僕って最低だな……だけど、これだけは譲る事は出来ない。
「守りたいからですよ」
「え?」
「マユさんを守りたいから戦うんです、それじゃいけませんか!?」
「え?え?」
 うぅ……顔が真っ赤になる、でももう構わない!
「マユさんが、貴女が好きだから命懸けで守りたいんです!!だから……守らせてください」
「…………ずるいよ…………そんな事言われるとダメって言えなくなっちゃう」
「マユさん…………」
「そのかわり、絶対死なないで、約束だよ!!」
「はい!!」
 マユさんの言葉に強く頷き、僕はマユさんと共に再び出撃した。



シンSIDE

 俺はキラと共にアスランと対峙する。
しかし何だコイツ?ジャスティスは妙にごつくなってるしアスランは目を血走らせてるし。
「何があったんだこの馬鹿は?」
「ヤク中になったんだよ、しかも強化人間に使われる薬でね…………」
 マジかよ?そこまで墜ちたかアスラン。
「殺(や)れそうか?」
「まぁね、ただ一対一(サシ)だと少し時間かかりそうだけど……」
「じゃあ俺とお前で二人掛かりだったら?」
 俺がそう言うとキラは僅かに笑みを浮かべる。
「速攻で決まるね…………久しぶりにやる?連携」
「……OK、やるか!!」
 俺も笑みを浮かべて答える。
「貴様等ぁぁぁぁぁぁ……………………丁度いい、まとめて始末してやる!!!!!」
 ギャンギャン喚くアスラン、元々イッてたから薬使っても大して前と変わらないな。
「フン……アンタを倒して、戦争を終わらせて、それっきりだ……あんたの事は綺麗サッパリ忘れてやるよ、アスラン」
「何だと…………笑わせるな!!貴様等のような下衆と偽者なんかに俺が倒せるとでも思ってるのか!?」
「倒せるさ、君みたいなクズなんてね」
「ほざけぇぇぇぇぇぇぇぇぇーーーーーーーーー!!!!!!!」
 ぶち切れながらアスランは俺達にビーム砲を放つ。
「行くよ、シン!!」
「ああ、遅れるなよキラ!!」
 ビームを回避しながら俺が先行し、レヴィアブレードで突撃する。
「馬鹿め!!」
 素早く反応し、アスランはシールドでそれを防ぎ、レヴィアブレードはシールドに突き刺さるがジャスティスには至らない。
だけどそれは…………。
「読み通りだ!やれ、キラ!!」
 俺の合図と共に俺の背後からキラがハイマット・フルバーストをぶちかまし、俺はそれが当たる直前にジャスティスから離れる。
「な!?(馬鹿な!?下手をすればシンにも直撃だぞ!)」
 レヴィアブレードによって穴の空いたシールドでは到底ハイマット・フルバースト防ぎきれるはずも無く、アスランは直撃を受ける。
「ぐおぉぉぉぉぉっ!!!!」
「まだだぜ!!」
 間髪入れずにベルゼブラスターを撃って動きを封じる。
「喰らえぇぇぇぇぇぇぇーーーーーーーー!!!!!!!!」
 直後に急接近したキラが零距離からビームライフルを撃ち込む。
「グ……ガァァッ……………貴様等ごときに、貴様等ごときにィぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっっ!!!!!!!!!!!」
 最後の足掻きにビーム砲をフルパワーで放ってくる。
当然そんな攻撃は回避し、俺とキラは互いにアスランに最後の一撃を喰らわせるべく、一気に突っ込んで行く。
「「これで最後だぁぁぁぁぁーーーーーーーー!!!!!!!!!」」
 凄まじい衝撃音と共に俺のレヴィアブレードとキラのビームサーベルがクロスするようにアスランの乗るジャスティスを切り裂いた。



アスランSIDE

「ガハッ……………あ………………」
 嘘だ…………何で俺が負けるんだ?
なぁ、キラ……こんなの嘘だろ…………こんな状況だってきっとお前は助けにきてくれるんだろ?
俺を助けてあいつ等を倒してくれるんだろ?そうなんだろ?
「キ……ラ……………………助けてくれ、キラ、きらぁぁぁぁ……………」



シンSIDE

「キ……ラ……………………助けてくれ、キラ、きらぁぁぁぁ……………」
 アスランの最後の言葉と共にジャスティスは核爆発を起こした。
アスラン、アンタ哀れだよ……結局アンタは、最後までキラしか……いや、自分に都合の良いキラしか信じられなかったんだな……。
「シン、アークエンジェルから連絡だ、ザフトと連合が降伏したらしい…………」
「そうか……やっと終わったな…………いや、これから別の意味で大変になるな…………」
「うん、そうだね……だけど…………それでも戦争は終わったんだ」
「そうだな…………さてと、戻ろうぜ皆待ってる」
「うん!!」
 俺達はアークエンジェルへ帰艦する。戦いを終えたという満足感と喜びと共に……。



NO SIDE

 その後、連合、ザフト両軍の降伏は同盟軍により受け入れられ、長きに渡るこの戦い、後にヤキン・ドゥーエ戦役と呼ばれる大戦は遂に終わりを告げた。






[32127] オリジナル機体設定 その4
Name: 神無鴇人◆c2099dfd ID:7cb03caa
Date: 2012/03/16 17:50
フルアーマージャスティス

アスハ派によって開発されたフルアーマーパックを装備したジャスティス。攻撃力とパワーが大幅に上がっており、非常に厚い装甲により、防御力にも優れる。
しかしその反面ジャスティス最大の強みであった小回りの良さを潰してしまい、完成度はお世辞にも高いとは言えない。
開発資金はウズミ・ナラ・アスハの隠し財産の一部を使っている。

武装
アームビームガン
内蔵型ビームサーベル
肩部ビーム砲
腰部ビーム砲
頭部バルカン

イメージ的にはドラゴンボールでトランクスがセルと闘った時に見せたスーパーサイヤ人パワー重視形態。


スウェン専用105ダガー改

基本性能が強化人間(エクステンデット)仕様に強化されている。


バスターダガー改

基本性能が強化人間(エクステンデット)仕様に強化され、追加装甲により防御力が大幅に上がり、より頑丈な移動砲台として高い完成度を誇る。






[32127] 外伝 カガリ・ユラ・アスハ~償い~
Name: 神無鴇人◆c2099dfd ID:7cb03caa
Date: 2012/03/16 17:51
カガリSIDE

 あの戦いから約半年後、私は今処刑場への道を歩いている。
あの後私は正式に逮捕され、裁判にて公開処刑が決まったのだった。
正直言って凄く怖い、だけどコレで少しは償いになると思えば少しは足取りも楽になる。
やがて処刑場に入り、耳を劈(つんざ)く様な罵声の嵐が降りかかる。
多分彼らの中の何割かは私の所為で家族を失った者達だろう…………。
やがて一本の柱の前に着き、私は目隠しをさせられる。
「何か言い残す事はあるか?」
「…………一つ、言わせて欲しい」
 目隠しをされた顔を上げ、私は観客席の方を向く。
「私の愚行のために犠牲になった者達とその遺族に言わせて欲しい…………………本当にすまない…………私が愚かだったために私は数え切れないほどの命を犠牲にしてきた」
 目から涙が溢れてくる。自責の念と死の恐怖が入り混じった嫌な涙だ…………。
「許してくれなんて言わない、ただこれだけは言わせてくれ…………ごめんなさい!!!!!!本当に…………ごめんなさい…………!!!!」
 涙に濡れながら私は力の限り叫んだ。
「もういい、やってくれ……」
「…………構え!!」
 執行人たちの銃を構える音が聞こえる。ああ……これでもう終わるんだな…………。
「撃て!!!!」
 乾いた音と共に胸に鈍い痛みが走り、その直後に私は意識を手放した。



NO SIDE

 カガリ・ユラ・アスハの処刑、それは必然であった。
如何にカガリに自責の念があろうとも彼女は間違いなく罪を犯した。
それにより犠牲になった者達もいた、犠牲者の遺族にとってカガリ・ユラ・アスハという存在は憎悪の対象でしかない。
その憎悪の対象がのうのうと生きているとなれば、それは新たな混乱を呼んでしまう、下手をすれば何らかの凶行に走る可能性さえある。
だからこそカガリの処刑はオーブの平穏のためには必須事項だった。

 そして物語の舞台は5年後、オーブのとある寺に移る。



キラSIDE

 あの大戦から5年、僕はとある寺に来ている。ある人に会うために……。
「久しぶり……だな、キラ」
 寺院の正門の前に僧侶の服を着た彼女は居た。
昔と比べて彼女は大分痩せ、整っていた金髪も今では全て剃り、坊主頭になっていた。
彼女の名前はカリン・ヤヨイ、だけどそれは偽名だ。彼女の本当の名は……。
「うん、久しぶりだねカガリ…………」
 それは僕の姉、カガリ・ユラ・アスハだ。

 あの時、公開処刑されたカガリ、だけどそれは周到に準備された芝居だった(といってもカガリはその事を知らず、本人自身覚悟を決めていたみたいだったけど…………)。
勿論、彼女の処刑を偽装するのにはかなり苦労した。
各方面への説得は勿論の事、根回しや買収など聞こえの悪い事もかなりやった。
でも決め手となったのはウズミ・ナラ・アスハの隠し財産だ。
ウズミ・ナラ・アスハは自らの所有する全ての隠し財産の在り処をカガリの偽装処刑を条件に自供、コレが対価となり、カガリは死を免れたのだった。
そして約3年後に刑期を終えた後カガリは出家し、尼になって今に至る……。



カガリSIDE

「最近どう?ずいぶん様になってきてるけど」
 キラが微笑みながら私に声をかける。5年前では考えられないなと思いながら私も笑みを浮かる。
「まだ修行中さ、私は昔から落ち着きが無いから今でもよく和尚に叱られているよ……あ、でも来月のお払いの儀式には私も参加することになった」
「そう、よかったね」
「ああ」
 キラは私を支えてくれている。だけどいつかは自分ひとりの力で進もうと思う。
私はきっとこれからもずっと死んだ者達への供養のため、私自身の償いのため、生きていくだろう。
きっと私は一生幸せにはなれないし、その資格も無い。
だけどそれで良いと思う……『償いに生きる事』、それが今の私の目標であり充実なのだから…………。






[32127] エピローグ~新しい時代~
Name: 神無鴇人◆c2099dfd ID:7cb03caa
Date: 2012/03/16 17:51
NO SIDE

 ヤキン・ドゥーエ戦役と呼ばれる戦争から10年の時が流れた。
戦役後に待っていたのは多大な事後処理だった。復興、和平交渉、残党の討伐など……様々な問題を抱えながらも時間は進み、やがてその問題もゆっくりと沈静化し、解決へと進んでいった。

終戦直後懸念されていたナチュラル、コーディネイター間の確執もヤキン・ドゥーエ戦役でフレイやムウを始め、ナチュラルでありながら多大な戦果を残した者達の存在をきっかけに両種族の確執も徐々に薄れていった。

それから長い年月を掛け地球、プラント間の交易や交流、留学、あるいは結婚も少しずつ活発になっていった。
なお、両種族間の交流に貢献した政策が前世でキラやラクス達クライン派が否定したプラント評議会議長ギルバートデュランダルが提案したデスティニープランだったのは何とも皮肉な事実である。
しかし、この世界におけるデスティニープランは前世と違い遺伝子検査の義務も強制力も無く、あくまでも職業斡旋やお見合いの一環である。
前述の通りナチュラルでもコーディネイター以上の実績を残した者の存在もあり、『遺伝子=絶対』という構図は崩れているため、選択の自由は保障されているのである。

そして今、地球圏には連合軍もザフトも同盟軍も無い。
C.E.79年、和平条約が締結、地球圏統一連盟が発足したのである。

そして今はC.E.81年。
戦いが終わり、その傷跡も癒え、人々はそれぞれの道を歩き出し、そして今も歩き続けている…………。


サイ・アーガイル
終戦後除隊、高校に復学する。
その後大学を卒業し、モルゲンレーテに就職する。
現在は新しい彼女も出来てそれなりに幸せな様子。

カズイ・バスカーク
終戦後、サイ達と再会。
現在は地元の企業に就職している。彼女は居ない。

トール・ケーニヒ ミリアリア・ハウ
終戦後除隊、高校卒業後、ジャーナリストへの道を歩み始める。
現在も交際を続け、結婚も秒読みに入っている。

ユウナ・ロマ・セイラン
終戦後、オーブ復興に尽力。
新生オーブ代表首長となったロンド・ミナ・サハクと連携し、内政面で活躍している。

ムウ・ラ・フラガ マリュー・ラミアス
終戦直後に結婚。2児を儲ける。
ムウはパイロットを続け、戦闘部隊の指揮官として活躍。
マリューは軍を除隊、主婦になりムウを支え続ける。

ナタル・バジルール
終戦後も軍に留まり、連合軍に復帰。
後に同盟軍時代に知り合った男性士官と結婚、子供の出産を機に前線を退き後方での役職に就き、書類整理などの仕事をこなしている。

アンドリュー・バルトフェルド
終戦から数年後、アイシャとくっつく。
現在も軍に留まり有能な指揮官として活躍。
ムウとは飲み友達の間柄。

ミゲル・アイマン
終戦後プラントに帰還、家族と再会する。
病弱な弟も大分回復し、順風満帆の生活を送る。
ハイネとは今でもライバル関係。

マルキオ導師
アスハ派の生き残りの自供により、アスハ派への協力が露呈し、外患誘発及び国家反逆の罪で逮捕。
投獄後、獄中にて自殺しているのが発見される。

ラクス・クライン
戦争の事後処理を終えた後、政治学を学ぶ傍らでオーブにて孤児院を設立。
現在は政治家として平和維持に尽力している。

トダカ
終戦後も軍に留まる。
アスハ派の生き残りとして軍残留を一部から危険視されるも、実直な姿勢から信頼を取り戻す。

カガリ・ユラ・アスハ
出所後、出家して尼になる。
自分の人生を贖罪に生きる事を誓い、戦争で死んでいった者達を供養し続ける。

ラウ・ル・クルーゼ
終戦後正式に逮捕され投獄。裁判にて終身刑が下る。
しかし彼の存在によりクローン製造の問題点が見直され、クローンの製造禁止法は徹底的に強化される事になる。

イザーク・ジュール
終戦後も軍に留まりジュール隊隊長を務め、地球圏統一連盟発足後も誇り高き軍人として在り続ける。
最近では部下のシホ・ハーネンフースと噂になっているとか……。

ディアッカ・エルスマン
イザーク同様軍に留まり、イザークの片腕として辣腕を振るう。
彼女がいないため度々合コンなどで姿が目撃され、暇さえあれば女をナンパしている。

シマト・アベ
敵軍の残党討伐後、軍を除隊。
地球に移住して恋人達と共にオーブで居酒屋を経営する。
評判もなかなか良く、公私共に充実した日々を送っている。

ミューディー・ホルクロフト
数年かけてブルーコスモスから掛けられた洗脳を解かれ、社会復帰する。
現在は軍とは関係の無い一般人として生活している。

ウズミ・ナラ・アスハ
終戦後出所、その後残った財産で細々と隠居生活を送る。
カガリとは今でもたまに連絡を取っているらしい。

ステラ・ルーシェ スティング・オークレー アウル・ニーダ
再教育後、数年掛けてエクステンデットの禁断症状を克服し、社会復帰。
スティングとアウルは軍に入隊。ステラはラクスの経営する孤児院で働いている。

マユラ・ラバッツ
終戦から5年後、シンへの積極的なアプローチの甲斐あり、正妻の座を得る。
シンとの結婚を機に軍を除隊、それから約1年後、妊娠が発覚。男児を出産する。
現在は主婦として子育てに励む中、二人目の子供を身篭っている。

アサギ・コードウェル ジュリ・ウー・ニェン
シンとマユラの結婚後も関係は変わらず恋人関係は続く。
マユラとほぼ同時期に妊娠が発覚。それを機に除隊し、アサギは女児、ジュリは男児と女児の双子を出産する。
現在はシン達と同居して子育てに励む。

ニコル・アマルフィ
敵軍の残党討伐後、軍を除隊。
一度プラントに帰還し、ピアニストとしてデビュー。
世界を飛び回り、その腕前を披露している。

マユ・アスカ
終戦直後に除隊(戦時中は特例だったため問題無かったが終戦によってそれが解除され、半強制的に除隊となった)。
最終決戦後、ニコルの思いを受け止め、彼と付き合うようになる。
現在はニコルと婚約、彼の妻兼マネージャーとなるべく勉強中。

フレイ・アルスター
敵軍の残党討伐後、軍を除隊。
除隊後高校に復学、大学卒業後キラと結婚する。
その後女児を出産し、キラと共に夫婦生活を送る。

キラ・ヤマト
敵軍の残党討伐後、軍を除隊。
除隊後高校に復学、医大に進学、自分と言う存在のために生じた負債であるクローン達を救うため、遺伝子学とナノマシン治療を学ぶ。
後に仲間と共にクローン専用の延命薬の開発に成功。
現在も人の命を救うための研究を続けている。

シン・アスカ
敵軍の残党討伐後、一度軍を除隊。
高校を卒業後に正式に士官学校に入学。卒業後カグツチ隊の隊長に復帰する。
現在は平和維持のため、野党狩りや治安維持に尽力している。
それと同時に子育てにも奮闘しており、周囲からは子煩悩として有名だったりする。



シンSIDE

「アスカ二佐、こちらバレル小隊、ただいま任務を終えました」
「ああ、ご苦労だったな」
 副官から治安維持任務終了の通信を聞き、俺は一息吐く。
「今日はコレで解散だ、他の奴等にもそう伝えてくれ」
「了解です」
 あれから10年……本当に色々な事があった。
性質の悪い過激派残党狩りに明け暮れたり、久しぶりに新人の教育やったり……。
ああ、あと親しい人達に俺とキラが未来から来たってことを告白したり……。
前世でキラに殺されたマユとニコルがキラを許した時なんてキラの奴マジで泣いてたしな。
「さてと……」
 任務の後処理を終え、身支度を整える。今日はこの後行かなきゃいけないところがある。
「もう行くのか?」
「ああ、待たせるのも悪いしな……それに途中でマユ達と合流しないといけないし」
 身支度を終えた頃、副官が俺に声を掛けてきた。
そいつは2年前地球圏統一連盟軍設立直後に俺の部隊に配属されたレイ・ザ・バレルだ。
クルーゼとの戦いの後、俺はレイと知り合い、親しくなり、上官と部下の関係になった今でも任務以外ではタメ口で話している。
ちなみにレイとクルーゼの寿命はキラの研究のお陰で以前よりかなり長くなった。
そういう事もあってか、レイはキラとも良好な関係になっている。
「そうか、キラにもよろしく言っておいてくれ」
「ああ」
 そう言って俺はに踵を返し、出口へ向かった。



レイSIDE

 この場から去るシンを眺めながら俺も帰宅の支度をする。
俺もラウもアイツとキラに救われた。
アイツのお陰でラウの心は救われ、キラは俺達のクローンとしての呪縛から解き放ってくれた……本当に二人への恩は返しても返しきれない。
「あ、いた!レ~~イ!!」
「ん?ルナマリアか、どうした?」
 同僚のルナマリアが駆け寄ってきた。
…………嫌な予感がする。
「丁度いい所に居たわ、今日皆と飲みに行くからアンタも付き合ってよ」
「…………発案者は?」
「私だけど、それが何か?」
 やっぱりか…………。
「スマン、断る」
 コイツは嫌な事があると必ず仲間を強引に飲みに誘って愚痴る…………。
コイツの愚痴は長いし酔った勢いもあるので付き合う方が生き地獄だ。
しかもコイツは先日妹のメイリンに彼氏が出来て、その上狙ってた男を別の女に持っていかれたらしい……付いて行ったら確実に愚痴と言う名の拷問を受ける事になってしまう。
「なんでよ~~!アンタには妹に先を越されて、何処の馬の骨とも分からない女に狙ってた男を奪われて心に深い傷を負った可哀想な小鹿(バンビ)を慰める優しさは無いの!?」
 貴様の何処が小鹿だ、どちらかと言うと女豹だろ…………とは口が裂けても言えん。
「悪いが俺も今日はデートの予定があるんだ」
 嘘は言っていない、なぜなら俺には民間人の彼女が居て今日は本当にデートの約束があるからだ。
「何よ何よ~~!!レイもメイリンも恋人作って!!何で私には彼氏が居ないのよ~~!!…………せめて隊長が妻子持ちじゃなければ…………こうなったら私も隊長のハーレムに加わって……」
「止めろ、それ以上言うのは危険だ」



キラSIDE

 娘を実家に預けた後、僕はフレイと共にシマトさん(アスランと違って常識人だから割と良い友人関係だったりする)が経営する居酒屋に来ていた。
今日はココでサイ達と久しぶりに会う約束だ。
「あ!キラ、フレイ!久しぶり!!」
 店に入ってすぐに先に来ていたミリアリア達の姿が目に入った。
「皆久しぶり、元気してた?」
「ああ、まぁな」
 それから暫くは昔話や、近況報告をして……それから十数分後。
「よぉ悪い、遅くなっちまった」
「シン、久しぶり!待ってたよ」
 シンとニコル、そしてマユちゃんが到着し、全員集合となった。

 それからは一気に盛り上がった。
フレイはマユちゃんと再会を喜び合い、サイとニコルははこの中で唯一恋人の居ないカズイを慰め、トールとミリアリアは甘い雰囲気を出して、僕とシンは前世を含めた過去を懐かしみ、そして……。

「それじゃあシン、砂漠の時みたいに音頭頼む」
「また俺かよ……ま、いいけどな…………それじゃあ、俺達の再会と平和な新時代を祝して…………」


「「「「「「「「「乾杯!!」」」」」」」」



NO SIDE

 人々は歩いていく、新しい時代を。
ある者は自分達の手で勝ち取り、ある者はそれが来るまで耐え忍んで手に入れた『平和』と言う名の新世界を……。



Twin SEED Return’s  完






[32127] 後書き
Name: 神無鴇人◆c2099dfd ID:7cb03caa
Date: 2012/03/16 17:53
如何だったでしょうか?
矛盾点が多いこんな駄文ですが、少しでも楽しんでいただければ幸いです。
この駄文を読んでくれた方々に深く感謝します。


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