僕が現実逃避もできずに、助けを求める間にも、女装大会は開催され、スムーズに進行されていった。
1人、1人、順番にステージに上がり、女装姿を披露しながら、簡単な質問に答えるといった感じ大会は進んでいった。
流石に此処までくれば、僕も覚悟が…もとい、諦めが付いてきた。
確かに、末代まで語り継がれそうな女装を僕はしているが、他の出場者達も女装をしているのだ。
つまり僕達は皆、末代まで恥を語り継がれる同盟!
僕は1人ではない!赤信号皆で渡れば怖くない!状態になるように自分に自己暗示したのだ。
そうやって、何とか心を落ち着かせてから挑んだ女装大会。
1人…また1人と順番とステージに上がって行き、順調に女装大会は進んでいる。
僕の順番はなんと一番最後となっていた。
一番初めよりはまだマシだったが、一番最後というのもまた嫌な順番である。
ちなみに、僕の前がルルーシュ。更にルルーシュの前がスザク。リヴァルは一番最初という順番となった。
ステージ脇から、ステージに出場者達が上がって行く度に、大勢の笑い声が此処まで聞こえてくる。
そんな中でスザクがステージに上がると、どよめきと今まで以上の笑い声が上がるのであった。
無理も無い。
きっと会場はスザクの腹筋と、真夏のトロピカルサンデーの姿に驚愕しているのであろう。
あの腹筋と偽おぱーいは観客の度肝を抜くには十分すぎる破壊力を持っている。
それにしても姉さんも恐ろしい物を作ったものだ。
あの偽チチは実に見事なものであった。
男であるスザクの胸がふくよかなナイスおっぱい!に変化したのだ。
流石は僕が崇拝する日本人の技術。何と見事なものよ。
この調子で、萌え方面でドンドンとその技術を磨いていって欲しいものよ。
そして何時の日か、あの幻となってしまったブイバータンオルタバージョンのフィギアをもう一度作ってくれる事を切に願う。
マジで。
日本の萌え技術の将来をを考えたいたら、係員がルルーシュへステージに上がるように指示が来ていた。
だが、ルルーシュはその場から動こうとせずに唯立ちすくみ、動く気配が無い。
そんな姿を見て、係員は焦った様に、ステージに上がるように合図を送る。
それでもルルーシュは動く事は無かった。
「ルルーシュ?」
立ち竦んだままのルルーシュを不振に思った僕は、ウェディングドレスのスカートを引きずりながらルルーシュに近づく。
ええい。何と動きにくい格好なんだ。
世の中の花嫁さん達は大変だ。
「………アクア」
僕の方を振り向いたルルーシュは私テンパってますと、言わんばかりの眼つきで僕を見てきた。
こいつ相当テンパってやがる。
開催当初は僕と同じく悟りを開いたと思ったが、直前になって俗世の身に戻ってしまったのか。
なんと嘆かわしい事だ。
これだからシスコンは役に立たん。
仕方が無い。
少し話しをして緊張というか、解してはいけない何かまで解してやろう。
「アクア…俺は…この大会を辞退する!」
僕がルルーシュに話しかけようとした矢先に、逆にルルーシュから話を切り出されてしまった。
しかもとんでもない爆弾発言付きで。
手前、いきなり何てこと言うんだよ!
これじゃ僕のルルーシュ優勝大作戦がパーになっちゃうじゃねえかよ!
ルルーシュにだったら姉さんのくくくくくく唇の端っこのそのまた端っこ位だったら許してやると、覚悟を決めたのに。
姉さんの唇を何処ぞの馬の骨にくれてやるなんて、このアクア・アッシュフォードが許さん!
これは何としてでも、ルルーシュを説得して考え直させなければいけない。
姉さんの唇の未来はこの僕の手に掛かっている。
失敗は許されんぞ!アクア!
「ルルーシュ。
此処まで来て今更何を言ってるんだい。
もう、君の出番は目の前まできているんだよ?」
僕は駄々っ子をあやす様な心境でルルーシュに話しかける。
アクアお兄さんと呼んでもらってもおかしくない心境である。
「だが…こんな末代まで語り継がれるような恥を晒した姿を見せるなんて…俺には耐えられない!」
「既に男女逆転祭りで披露してるんでしょ?
それにその格好似合ってるよ?」
僕が萌えてしまう位に。
「アクア!お前は我慢できるのか!?
こんな末代のそのまた末代の末っ子位にまで語り継がれてしまうレベルの恥を晒しまくる自分を!?」
言葉遣いまでおかしくなって来て居やがる。
こいつはマジでテンパってやがるぜ。
「ルルーシュ…。
君の気持ちは良くわかるよ」
ルルーシュの肩に手を置き、語りだす。
いかにも僕は君の理解者だと言わんばかりの口調で。
「ああ!解ってくれるか!?
アクア!お前なら解ってくれると信じていたぞ!俺は!」
ルルーシュは地獄の底で蜘蛛の糸を見つけた如く、救われたと言わんばかりの目で僕を見つめながら、ルルーシュの肩に置いている僕の手を握ってきた。
かなり萌えてしまった。
頼むから僕の萌え心自重してくれ。
「でもね…ルルーシュ。
この大会の趣旨を憶えているかい?」
「この大会の趣旨…?」
「ああ、この大会の趣旨だ」
僕の言葉に訝しげな顔をするルルーシュ。
そんなルルーシュに僕は更に同じ問いかけをする。
「大会の趣旨など…お前の歓迎会という名目だろう?
女装大会な歓迎会というのもおかしな話だが」
「そう…この大会の趣旨は僕の歓迎会なんだよ」
「それがどうかしたのか?」
先ほどから訝しげな顔をするルルーシュの言葉に頷きながら僕は話を続ける。
ルルーシュの目を真摯に見つめながら。
シスコンのルルーシュの心を掴むための言葉を。
「この大会は姉さんが僕の為にしてくれてる事なんだよ」
僕の言葉にルルーシュは目を見開くのだった。
そう。
この大会は姉さんのお祭り魂から始まった大会だ。
それは確かな事である。
しかし其処には僕に対する思いやりも入っているのも確かな事なのだ。
姉が弟に何かをしてやりたい。
そんなシンプルな感情が姉さんにはあったはずだ。多分。
そしてそれ以上に姉さんは数年ぶりに再開した僕との間に思い出が欲しかったのだろう。きっと。
正直、姉さんとの数年ぶりの思い出が,、女装大会何てマジ勘弁して欲しい所だが、姉さんの気持ちは僕にとって素直に嬉しい物である。
思わず息を荒げる位に嬉恥かしい物である。
ハァハァ…姉さん…ハァハァ…姉ェさぁん!
何て思ってしまったら、人間として終わりではあるが、ついつい心の中では息を荒げてしまう年頃である。
最近の僕は自分でも終わってると思う。
でもい終わりたくは無いと思う年頃でもある。
僕の心は複雑だ。
「ルルーシュ。
確かにこの大会はかなりおかしいとは僕も思う。
ああ、思うとも。思わずにはいられない。
だけど…この大会は姉さんが僕の為に開いてくれたものでもあるんだ。
僕に免じて、此処は素直に出てくれないか?」
シスコンの心をくすぐる僕のトークに、ルルーシュは暫し考えるように顔を伏せる。
そしてその伏せた顔を上げた時には、その顔には諦めと覚悟が入り混じったような表情をしていた。
「まったく…仕方が無いな。
幼馴染切っての頼みだ。
此処はお前の顔に免じてやってやるよ」
計画通り。
僕の顔面が無表情でなければ、新世界の神のような表情をしていただろう。
ふ、ルルーシュなど唯のシスコンよ。
常に姉と弟の男女の関係に対してインモラルに悩み続ける僕の敵ではないわァァァ!
だっはははは!と心の中で自分でも死にたくなってる勝ち鬨。
そんな僕を見てルルーシュが一言。
「しかしお前も存外に…。
こういうのは何て言うのかな?そう、確か…シスコン。
そうだ、シスコンというんだよな。
お前も随分とシスコンなものだ」
その一言は僕の意識を停止させるには充分過ぎる破壊力を持っていた。
……え?
ルルーシュさん?
貴方今何て言ったの??
この僕がシスコン?
ルルーシュと同じシスコン??
シスコン。
シスターコンプレックス。
この僕がシスコン!?
シスターコンプレックス!?
ルルーシュにシスコンと言われてしまった!?
シスコンにシスコンだと言われてしまった!?
シスターコンプレックスにシスターコンプレックスと言われてしまった!?
ぷぷぷぷぷじゃけるなーーー!
ルルーシュ!僕はシスコンなんかじゃねェェェェェ!
皆だってあるだろう!?年の近い姉や妹にドキドキしちゃう年頃が!?僕もそれだァァァ!
唯、姉に対して萌えてしまい、少しインモラルな考えを起こしてしまう、極一般的な弟だ!
断じて!断じてシスコンな訳が無ェェェェェ!シスコンな訳が無ェェェェェェ!
大事な事なので二回言っちゃうくらいシスコンじゃ無ェェェェェェェ!
「ああ…そういえば俺の出番だったな。
どれ、覚悟を決めて行って来るか」
「ルルーシュ!
ちょっと話し合おう!僕の話を…!」
「ふふふ…これも姉思いの友人の為だな」
「いや、だから!
ちょっと僕の話を!!」
「じゃあな、舞台で待ってるぞ!」
「ルルーシュゥゥゥゥ!
僕の話をォォォォ!?」
そして颯爽と舞台へと旅立って逝く義兄さま。
そして取り残される灰と化した僕。
最早ジョー・ブブキすらもびっくりの真っ白具合だ。
どうして僕の周りの奴らは、こんなにも人の話というか、僕の話を聞かない奴が多いのだろう?
爺さんといい、姉さんといい、ジノといい、ルルーシュといい。
僕の周りの人間は、僕の言葉にフィルターをかけ、脳までに言葉を伝わらない様にする機能でも備わっているのだろうか。
人体の神秘だ。
僕が真面目に人体の神秘に付いて考えていた時、舞台から大きな歓声とどよめきが上がるのが聞こえた。
どうやらルルーシュが舞台へと上がったらしい。
とりあえず、色々と問題というか言いたい事はできたが、ルルーシュを舞台へと上げると言う初期の目標は果たせたようだ。
よくやった、僕。今夜は勝利のお赤飯だ。
……勝利の栄光を僕に。
「アクアさん!
出番が直ぐですので、準備お願いします!」
女装大会準備員の言葉に勝利の余韻に酔いしれる僕に現実を知らされる。
………女装の恥辱を……僕に。
とても贈られたくない余韻だ。
久しぶりに心に隙間風が吹くのを感じた瞬間だった。
そして今僕はステージに立っている。
ああ、立っているんだ。立ってしまってるんだ。
断じて勃っている方ではない。
全てを悟った賢者の瞳とかした僕の前には、観客となっている大勢の生徒達。
正直リストカットしたい心を抑えるので一杯一杯です。
僕的には心が…
( ゚∀゚)o彡゜オッパイ!オッパイ!
の方がいいのに。
嗚呼…二次元の世界にルパンダイブしたい。
ジョブジュ長岡さん達の世界に旅立ちたい年頃です。
「はい!
今回のナイトオブセブン歓迎会における女装大会の締めを飾るのは…
ご存知!我らが生徒会長、ミレイ・アッシュフォード会長の弟であり、皇帝直属の騎士団。
ナイトオブラウンズの一人であるアクア・アッシュフォード氏であります!」
壇上の進行役がノリノリの口調で僕の事を説明する。
その言葉に対してまた湧き上がる観客達。
全然嬉しくねえ。
ああ、まったくもって嬉しくねえ。
「アクア君は会長と何年か振りに再開したばかりとの事。
久しぶりに再開したお姉さんにどう感じましたか?」
「いきなりで…凄く驚きましたよ」
本当にあのおっぱいには驚いた。
あのおっぱいは世界を狙える。
そんな可能性を感じさせられました。
「二人は再会した時、お互いに涙を流しながら抱き合っていましたね。
私も周りで見ていましたが、あの光景には思わず涙腺が緩んでしまいましたよ!」
ふぐぁ!?
僕の最近のトラウマを抉ってきやがった!
姉さんに興奮して愚息フルチャージ事件…。
あまりにも葬り去りたい過去。
僕の黒歴史だ!!
黒歴史過ぎる!黒歴史にも程があるってもんだ!!
だれか月光蝶を降らせてくれ!!
僕の黒歴史を文明ごと滅ぼしてくれ!!
「恥ずかしいので…その事には触れないで下さい」
本当にお願いしますから。
自殺しちゃうくらい恥ずかしいので。
顔を俯きながら、恥ずかしげに僕は言葉を出す。
きっと僕の顔はいつもの無表情ではなく、頬を赤く染めているだろう。
それぐらいに恥ずかしさにも程があるくらいに恥ずかしい事件だったのだ。
切腹モンの恥辱ぶりである。
ハラキーリでカイシャー-クしてもおかしくないのだ。
「おっとぉ!アクア君のうっすらと染めたこの頬!
遺憾ながら私、ちょいとグッと来るものがありますよぉぉ!
流石はナイトオブセブン!皇帝直属は伊達ではありません!破壊力抜群です!
憎いぞぉぉぉ!ナイトオブセブン!!」
司会さんがかなりエキサイトしてる。
どこら辺が流石やねん。
皇帝直属マジ関係あらへんわ。
思わず関西弁で突っ込みを入れるほどだよ。
そんなこんなで女装姿を晒したまま僕に対するインタビューという名前の公開レイプは続く。
僕は虚ろなレイプ目でその恥辱に耐えるのだった。
そんな今の僕の心情をエロゲ風に表すとするなら、これしかないだろう。
らめぇぇぇ!壊れちゃう!それ以上したら壊れちゃうゥゥゥゥゥ!
アクアの大事な所がこわれちゃうよォォォォォォ!
僕の心が。
「はい!皆さん大変お待たせしました!
これより、結果発表を致します!」
遂にこの大会も終わりが見えてきた。
姉さんがノリノリな声で結果発表の始まりを告げる。
その言葉に観客と化している生徒達は熱狂を持って歓声を上げてきた。
うん。皆死ねば良いと思うね。
ステージの上には僕達出場者達が並び、結果を待ちわびている。
ちなみにその中の幾人かは目に光りを宿さないレイプ目だ。
ちなみに僕もレイプ目だ。
女装をしたレイプ目集団…。
はたから見ると実にヤバイ光景だと思う。
そんな中でも生き生きと目を輝かせている一部の連中の未来が心配だ。
君たちの未来に栄光を。
「今回の大会で、出場者のパートナーを含めた全生徒達!
そして先生方の皆さんにも、投票していただき真にありがとうございます!
弟の歓迎会の為に、皆がこんなにも協力してくれた事に、ミレイさんは実に感動しておりますよぉ!」
姉さんが目元を抑えるような演技をしながら、司会を続ける。
なんか姉さんがノリノリだ。
しかも何気に司会上手いし。
案外、将来アナウンサーや司会者とか向いているのかもしれない。
もしそうなったら、是非とも芸能人のアイドルや女子アナさん達を紹介してほしい!
そして将来は芸能人の嫁さんをGET!!
うーん…夢が広がるって…いや、待て!
アクアよーく考えて見ろ!
姉さんが女子アナとして活躍している頃には、僕はラウンズをとっくに脱退している。
うん。脱退してるったら、絶対脱退しているんだ!きっと脱退してる!
そして優雅な自宅警備員な生活をしているはず!
僕は信じている!
だがそれがまずいかもしれない。
ニートの鑑である僕。
そんなニートな僕に女子アナさん達は、振り向いてくれるだろうか!?
今ならまだいい。
ラウンズは世界最大の武力国家、ブリタニア帝国の頂点である皇帝直属の騎士団。
腐っても皇帝直属。女装してても皇帝直属。男に狙われてても皇帝直属。
女子アナさん達とも釣り合いは取れてるはずだ。
だが、ニートの場合はどうだ!?
未だかつて、女子アナを嫁としたニートは居るだろうか!?
こんなRPGの村人が、ヒロインのお姫様を手に入れたような話しが未だかつてあるだろうか!?
んな事出来るはずが無えぇぇぇぇ!
もしやった奴がいるなら、僕は全力でそいつを殺す!
開発途中の僕専用KMFを駆ってでも殺す!
というかニートじゃ女子アナどころか、一般人とも結婚できねえじゃん!?
ニートのままでは嫁ができない。
だがラウンズのままならば、まだ可能性があるかもしれない。
自由を選ぶのか。
それとも愛を選ぶのか。
な…なんという究極の選択。
僕は今人生の岐路に立たされている!?
どうなのだろう。
僕は今までニートの生活に恋焦がれてきた。
特に軍人なんてくそ危なすぎる職業に就いてからは更にその気持ちに加速がかかっている。
それは確かだ。
うん。確かすぎる。
確かすぎるったら確かすぎる。
しかしよくよく考えて見たら、ニートでは萌え系美少女との出会いが無いではないか!?
今僕はラウンズの立場に居るおかげで、ラウンズであるアーニャタンやノネットさん。それにモニカお姉さまにドラテアの姐さん。
ブリタニア帝国における憧れの存在の彼女たちとも仲間となれた。
更には世界の憧れとも言える、ブリタニア皇族であるコーネリア殿下や、ユーフェミア殿下とも知り合えたのである。
これはニートをしていたら確実になかった出会いだ。
冷静に考えて見たら…僕は今とても美味しい状況なのではないだろうか?
世界最大最強の軍事国家の、皇帝直属最強の騎士団の団員。
これだけ聞けば何?その厨二病はw
現実みなくちゃwww
って感じだが、本当に僕はナイトオブラウンズの一人なのだ。
今だに自分で信じられんが。
このナイトオブセブンの立場を上手く利用できれば、憧れの…か、か、かかかかか彼女が出来るのではないだろうか!?
そして嬉し恥ずかしのイチャラブストーリーを繰り広げる事ができるのでないだろうか!?!?
甘い甘いすいぃーとな恋ができちゃうのではないのだろうか!??!
銃弾が飛び交い、KMFが縦横無尽に蹂躙する戦場。
そんな戦場に紛れ込んだ一輪の花のような女兵士。
しかし彼女は今まさに、命を狙われているのだ。
それは戦場での宿命。
生と死が交じり合う戦場では日常的な行為。
彼女は物心が付いた時には既に戦場に居た。
幼い彼女の玩具の代わりは無骨な銃であった。
彼女は人の命を奪う事に長けていた。
人殺しとしての才能があったのだ。
戦場の主役が、重火器からKMFと代わっても彼女の才能は偉観なく発揮された。
彼女は本当の親を知らない。
戦場を駆ける傭兵達が彼女の家族。
しかし心が通い合ったとはとても言えないものであった。
傭兵達は彼女を家族だと思い、接している。
だが、彼女の方から彼等を遠ざけたのだ。
それは、彼女の心にある思いがあったからだ。
自分達は傭兵。
駆け抜ける毎日は戦場。
自分達には常に生と死の狭間の中にいる。
そんな日常を送る自分達に大切な人を作って何になるのだろうか?
今まで何人もの仲間を見送ってきた。
自分は疲れたのだ。
大切な人を送る事を。
そして怖いのだ。大切な人を作り、自分が死んだ時に大切な人を悲しませるのを。
だから彼女は一人で生きる。
一人で戦場を生きて、一人で戦場で死ぬ。
そう、ずっとそう思ってきた。
あの日…彼と出会うまでは。
彼女が所属する傭兵団は一つの国に雇われていた。
彼等の傭兵としての実力は、非常に高いものがあった、
彼等がいる戦場では敗北は無い。
そんな風評すら流れている事もあった。
事実、国に雇われてから幾度も無く戦場へと赴いたが、彼らは敗北する事は無かった。
連勝を重ねる内に、国の守護神のように扱われるようになり、戦場を渡り歩く彼等にも一つの居場所ができたような気もしていた。
だが、安寧は続く事はなかった。
彼等と敵対している国家。
敵は連敗している今の状況を何とかしようと、援軍を要請したのだ。
援軍とは言っても、大軍の要請ではない。
ごく小規模の人員とKMFであった。
だが、その援軍こそは最強の援軍。
戦場で最も敵に回してはいけない者達であった。
敵国。
軍事超大国ブリタニア神聖帝国における最強のKMFライダー達。
個にして群を圧倒する者達。
個にして軍を成す者達。
戦場の死神達。
ナイトオブラウンズの参戦である。
彼ら傭兵達は、ラウンズ達と戦場で戦う事になる。
そして彼らは負けた。
守護神と呼ばれた彼等の卓越した実力を持ってしても、ブリタニア帝国の最強の剣にして最強の盾であるラウンズには歯が立たなかったのだ。
それは少女も同じ事であった。
四肢を潰された自らのKMFのコクピットの中で、自らを倒した相手を見上げる。
戦場の死神のKMFを。
その死神は自らにアサルトライフルの銃口を突きつけていた。
自らの命を絶つことになる、銃口を見て諦めたように顔を俯く少女。
戦場では正義も悪も無い。
ただ強い者が弱い者を蹂躙するだけの事。
故に、勝者となった敵が敗者となった自分を殺すだけの事。
幼き頃から戦場で育った彼女。
今まで多くの命を奪ってきた彼女。
今度は自分が奪われる番。
ただそれだけの事。
もう直ぐ自分は死ぬ。瞼を閉じる。
『…投降しろ』
だが自分に振ってきたのは銃弾ではなく、オープンチャンネルで投降を呼びかける言葉であった。
その言葉に思わず目を見開き、KMFを見てしまう。
「何を…言ってるの?」
思わず呟く。
『投降しろと言っている』
呟いた言葉は、オープンチャンネルを通して彼にも伝わったらしい。
彼はもう一度投降を促してきた。
そしてその言葉は激しく私のプライドを逆撫でした。
戦場で情けは無用。
いらぬ情けは己を…否、仲間をも危険に晒す。
だから自分は敵対してきた相手を全て殺してきた。
命乞いをしてきても、情け容赦なく殺してきたのだ。
そして今度は自分が殺される番。
それなのに、敵は自分に情けをかけてきた。
それは幼い頃から戦場を故郷とした彼女の誇りを激しく逆撫でしたのだ。
「いらん情けをかけるな…!
私はいつでも死ぬ覚悟はできている!
貴様の下らん偽善に私を付き合わせるな…!
さあ、殺せ!殺すがいい!」
相手のKMFを睨みつけながら唾を飛ばす勢いで吼える。
そう、自分はいつだって死ぬ覚悟は出来ているのだ。
故に、奴の下らん偽善には付き合ってはられん。
『偽善か…。
確かに僕の行動は君にとって…偽善となるんだろうな
だが、何と言われようと君を殺す訳にはいかない。
僕がそう決めたんだ』
そう、言葉を発すると彼は私のKMFのコクピットブロックを捥ぎ取るように引きちぎる。
そのまま自分は敵の拠点地まで連れて行かれる事となったのだ。
拠点に着き、コクピットの扉を無理やりこじ開けられ、コクピットから出た私を出迎えたのは銃を構えた幾人もの軍人。
その中心に立っている人物は私も知っている者だった。
皇帝直属の騎士団。
ナイトオブラウンズの中において、第七席を与えられた者。
ナイトオブセブン、アクア・アッシュフォード。
私を負かせた者。
そして私に情けをかけた者であった。
「おい、偽善者…何故こんな情けをかけた?」
私の言葉に周囲の人間は騒然とする。
当然だ、ナイトオブセブンに侮蔑の言葉を吐いたのだ。
「貴様!アッシュフォード卿に向かって、何たる口の言葉を!」
「別にいい」
一人の軍人が激昂して、拳を振り上げようとするのを止めたのは、当のナイトオブセブンであった。
「僕は君を殺したくないと思ったから此処に連れてきた。
ただ…それだけの事さ」(キリッ
「他の者達は皆殺しにしているというのに…!
貴様は本当の偽善者だ!」
「偽善者か。
ああ、その通りだよ。
僕は唯の偽善者だよ。
偽善者は他の者は殺したが、君は殺したくないと思ったから…君を此処に連れてきた
本当にそれだけなんだよ」キリッ
何だ…?こいつは?
私の言葉を唯淡々と認めるナイトオブセブンに困惑する。
見ると、周りの兵士達にも困惑の雰囲気が見えた。
「君を捕虜として扱う。
条約に従った扱いをさせてもらうから、安心してくれ。
そこの君等、彼女を連れて行ってくれ。
くれぐれも丁重にな」
「イ、イエス・マイロード!」
当の本人は当惑する周りを気にも留めずに、唯淡々と周りの兵士に命令をする。
その言葉に兵士も戸惑い気味の返答を返し、私の移送を始めるのであった。
案内された部屋には必要最低限の物がそろっているだけの、殺風景な部屋だった。
部屋の中で唯一人考える。
いったい、彼は何なのだろうか?
戦場で彼と戦ったときは、圧倒的な力を見せ付けて、私に格の差を見せ付けた。
だが私に止めを刺さずに、逆に助ける行動を取っている。
しかも助けた理由は殺したくなかったから…だ。
戦場の死神達とは、とても思えない台詞である。
気まぐれで自分を助けたのであろうか?
それとも自分を抱く為に助けた?
あの無表情な淡々とした様子から、彼の心情を知るには私には難しすぎる。
そしてそれから彼は毎日の様に私の元へとやってきた。
「やあ、気分はどうだい?」
「最悪だ」
「何か不備な事でもあったのかな?」
「偽善者の顔を見たから最悪なんだ」
「そうか…それは失礼したね」
私の皮肉に対して、表情も変えずに、淡々と謝罪めいた言葉を紡いでぐる。
敵側の捕虜からこんな舐められた口調を聞かれて、何ら怒張めいた反応もしない。
普通なら、拳の一つでも飛んでくるものだ。
だが彼は私に対して何ら物理的な暴力や、性的な暴行もしてこない。
彼は私の仲間を情け容赦無く、殺していった。
それなのに私だけは情けを掛け、殺さなかったのだ。
最初は、性的欲求を満たす為に私を捕らえたのかと思っていたが、数日経っても私に手を出そうという気配すらない。
それ所か、独房にすら入れられていないのだ。
幾ら、ブリタニア帝国との間に捕虜条約が結ばれているとは言っても、所詮口約束以下の決まり事である。
「何故私を助けたの?」
此処に来て何度となく尋ねた質問。
それに対しての彼の答えは何時も同じであった。
「ただ君を殺したくないと思ったからだよ」(キリッ(キリッ
最初の頃はこの言葉は兵士としての私を侮辱している。
そう思い、この言葉を聞く度に心が激昂していた。
しかし今は何故か心が暖まるのを感じる。
最初は煩わしく思っていた彼の来訪を私は楽しみにしてる事に気づいた。
そんな毎日が続いたある日。
一人の招かざる者が私の部屋にやってきた。
「お前か。
あいつが熱を上げている女と言うのは
…ククク。どんな女かと思えば…野蛮な雌猿か」
オレンジの色を基調とした外套。
その外套はブリタニア帝国において、12人しか羽織る事が許されていない外套である。
突如として遣って来た招かれざる客。
ナイトオブテン。
ブリタニアの吸血鬼。
ルキアーノ・ブラッドリーだった。
「クククク。
お前の様な雌猿に興奮するとは…。
あいつもまだまだ餓鬼だな。
だが餓鬼同士という意味ではお似合いかもな。
あーははははっはは!」
私を一瞥した後、言いたい事だけを言ってルキアーノは、天を仰ぎ見ながら笑っていた。
気分が悪い。
この男は唯そこに居るだけで、血の匂いを辺りに撒き散らす
数々の戦場を駆け抜けてきて、踊るように多くの血を吸ってきた吸血鬼。
アクア・アッシュフォードとルキアーノ・ブラッドリーは同じ戦場の死神ではあるが、アクア・アッシュフォードが騎士だとしたら、目の前の男は唯の殺人狂だ。
そう確信させる何かが目の前の男から溢れ出ていた。
「ククク……。
おい女ぁ。
お前に一つ質問をする。
答えろ」
一通り笑い通すと目の前の男は顔を手で覆いながら、話をしてきた。
質問?何を聞いてくるつもりだ。
「貴様は…戦場をどう思う?」
「どう…とは?」
「聞いたとおりの事だ。
貴様は戦場をどう思っている?」
戸惑う私に、追い討ちを掛けるように男は質問を重ねる。
戦場。
私が故郷としている懐かしき場所。
アクア・アッシュフォードに負けるまでは、私も戦場を駆け抜けていた。
そんな戦場を私はどう思うのか。
その問いには一つの答えしかない。
「命の…」
ポツリと呟く様に言葉を発する。
「命のやり取りだ。
命を奪い…命を奪われる。
それが戦場だ」
これが私の答え。
いつも私が奪ってきた命。
そしていつか私も誰かに奪われる命。
命を奪い奪われる。
それが私にとっての戦場であった。
「ククククククク………」
私の答えにルキアーノ・ブラッドリーは顔を俯かせながら笑っていた。
その表情は見えないが、笑いを堪えきれないのは見て取れた。
そして俯かせていた顔を上げた時、ルキアーノ・ブラッドリーの顔には狂笑が張り付いていた。
「あっっはっははハハハハァ!!!
そうだぁ女ァァ!!
その通りだよ!オンナァァァ!」
両の手を大きく広げながら言葉を続ける。
「戦場は命の奪い合い!
命を奪い奪われるのが戦場!
女ぁ!お前は正しい!実に正しいぞォォォ!」
狂わしいばかりの笑顔を振り向きながら、私の答えを肯定する。
「凡夫のお前達にとってはなぁ」
だがその言葉が私の言葉を否定した。
「戦場とは…命の奪い合いではない。
俺にとっての戦場とは…命の搾取。
命を奪い奪い奪いつくす。
俺の…遊び場よ」
戦場とは自らの娯楽場。
暇つぶしに過ぎない。
唯其れだけの事。
目の前の男にとって、私が今まで生きてきた世界はただの娯楽場だったのだ。
それは幼い頃から戦場と共に生きてきた私の誇りを汚すものであった。
目の前の男は私にとっていてはいけない存在だ。
この男が言う言葉は私の全てを否定する。
殺意を込めて目の前の男を睨みつける。
「何だ女…その目は。
気に食わん、実に気に食わんぞ」
ルキアーノ・ブラッドリーは呟くと私に向かって猛然と襲い掛かってきた。
それに対応しようとしたが、腕を捕まれ、足を払われ、床に組み伏せられてしまった。
床に倒された私の上に、ルキアーノが覆いかぶさってくる。
私の顔の直ぐ目の前に、男の顔がある。
「どいてくれない?
不愉快よ」
「この状況でその言葉がいえるのか。
なるほど、大したものだ。
あの小僧が入れ込むのも解る気がしてきたな」
私の言葉に何処かおもしろそうに笑う。
にやけた面。
男の手が私の服に手を掛けようとする。
全てが気に食わない。
「ブリタニアの吸血鬼には常識というものはないようね。
軍のトップが堂々と条約を破ろうとしている」
「知っているか?
捕虜条約なんて物は唯存在しているだけだ。
そんなものでは俺を止められない。
俺は唯、俺がしたいがままに行動する。
それを止める事は誰にも出来ない」
「そんなあなたを止めれる人が着たみたいよ」
「何だと?」
私の視線がルキアーノの背後へと向けられる。
その視線に釣られてルキアーノが後を振り向くと。
そこにはルキアーノ・ブラッドリーの同僚であるアクア・アッシュフォードの姿があった。
「何をしているのかな?
ブラッドリー卿」
いつもと同じ無表情で何を考えているかわからない。
でも彼の瞳に確かな怒りを感じたのは私の勘違いだろうか。
「何、少しこの捕虜を尋問しようかと思ってな」
悪びれもなくルキアーノが答える。
女を押し倒して置きながら言う言葉ではないと、私は場違いに思った。
「彼女に対する尋問は既に終わっています。
そして何よりも貴方の今の行動はとても尋問には見えない」(キリッ
「女に対する尋問はこういったことが一番なんだよ。
これだけ入れ込んでいるんだ。
お前も散々やってきたんだろ?」
「それは僕と彼女に対する侮辱となる
これ以上何かを言うならば、私は貴方に決闘を申し込まなければならない」
ルキアーノ・ブラッドリーの下種な言葉に、アクア・アッシュフォードは顔色一つ変えずに自らがはめている手袋に手を掛ける。
表情では判断できないが、この行動を起こさせるほどに彼が怒りの感情を抱いているのがわかる。
しかし、何故アクア・アッシュフォードはこれ程までに激怒しているのだろうか。
私にはその理由が解らなかった。
「ふっ…。
おぼっちゃまが…其処こまで怒る事も無かろうに。
まあいい。
この場は退散する事にしようか」
私の上からルキアーノは退き、部屋の外へと出る為に移動する。
その表情と態度には何処にも悪びれた様子が伺えない。
そして部屋を出ようと扉をくぐる前で、振り返りこちらを見てきた。
「女、また会おうではないか。
今度は邪魔者抜きでな」
にやけながら言う言葉の返答は一つしかない。
「ええ、是非会いたいわ」
「な!?」(ビクキリッ
「ほう」
私の言葉にアクア・アッシュフォードとルキアーノ・ブラッドリーは驚きの声を上げる。
だが私の次の発現を聞けば驚く事ではない。
「今度あったら一発殴らせてもらう」
私の言葉にルキアーノ・ブラッドリーは一度大きく瞬きをしてから私を凝視してきた。
アクア・アッシュフォードも無表情な顔の中に呆気に取られたような雰囲気を漂わせている。
私はそんなに可笑しな事をいっただろうか?
「クククク。
ならば是非とももう一度会わないとなァ」
面白そうに笑うとルキアーノ・ブラッドリーは部屋から出て行く。
一瞬の静寂と共に、気が抜けたのか体の力が抜ける。
溜息を付いて、気を落ち着かせようとしていると、アクア・アッシュフォードが私に声を掛けてきた。
アクア・アッシュフォードの無表情の中にはどこか申し訳なさげな雰囲気を感じる。
「すまなかった。
ルキアーノが無礼な真似をして」
「何故貴方が謝る?
貴方は私を助けてくれた
逆に礼を言わなくてはならない」
そう、アクア・アッシュフォードは間違いなく私を助けてくれた。
それなのに彼が私に謝る理由が解らないのだ。
「それは確かにそうだが…。
ルキアーノは僕の同僚でもある。
彼の行動を諌められななかったのは僕の責任でもある」
アクア・アッシュフォードは無表情ながらも真摯な態度で私に謝罪をしてくる。
いくら同僚と言えど、相手の行動を完璧に把握する事など不可能だ。
まして、アクア・アッシュフォードは私を助けてくれたのだ。
私がアクア・アッシュフォードに感謝をする事はあれ、向うから謝罪されるいわれは無い。
「そう、なら勝手に謝罪していなさい」
それならば本人の気が済むまで謝罪させればいいのだ。
私の言葉にアクア・アッシュフォードは一度瞼を閉じてから、下を向いて再び謝罪の言葉を出す。
そんな彼に向かって、私は次の言葉を紡いだ。
「私も勝手に貴方に感謝する。
ありがとう、貴方のおかげで助かったわ」
そして私もだ。
勝手に感謝してやる。
この男が嫌になるくらいに。
「…………」
常に無表情な男が私の言葉に呆気に取られた表情を見せる。
この男と知り合い、毎日のように顔を付き合わせているが、こんな表情を見るのは初めてだ。
というか、無表情な顔以外を見ること事態が始めての経験だ。
「何よ?
その顔は」
「いや…その…なんと言うか…」
「貴方のそんな顔…初めて見たわ
そんな表情もできるんじゃない。
たまには表情を変えないと。
じゃないとせっかくの可愛い顔が台無しだ。
どうせなら笑顔なんてどうだ。
とてもいい表情になると思うぞ?」
私も無表情とよく言われるが、この男は私以上の無表情振りだ。
これでは表情筋が衰えてしまうぞ。
そして何よりもこの男の魅力が半減してしまう。
別に私はこの男の笑顔が見たかったから言ってみた訳では決して無い。
決して無いんだ。
アクア・アッシュフォードは私の言葉に更に呆気にとられたような表情をとる。
「…………くくくく……ははははははは!」
そしてその後顔を笑い顔に変えて、笑い始めた。
何がおもしろかったのかは知らないが、そうとうツボにはまったようだ。
アクア・アッシュフォードの目じりには涙すらでている。
その笑顔はともていいものであった。
この男がこんな顔をしていると気分がよい。
それは私がこの男の表情を出していると実感できているからだろうか。
とにかく何だか私の気分がいいのは確かだ。
「何だ。
笑えているじゃないか。
やはり、いい顔をしているぞ」
「はははははは!
ははは、…なら君も笑った方がいいと思うよ」
目じりの涙を拭いながら言ってきた言葉に私は首を傾げる。
私が笑うと何故いいのだろうか?
「何?
何故だ?」
「その方が…とても魅力的だからさ」
「………は?」
今この男は何と言った?
「とても可愛いと言ったんだよ」
その言葉を理解できた時私の顔が火照るのを感じた。
「な!?
わ、私は傭兵だ!?
そんな私にかわいいだなんて!?」
「傭兵だろうが兵士だろうが、君が可愛い事にはかわりないよ」
笑顔を浮かべたまま、アクア・アッシュフォードは私の容姿をか、可愛いと褒めてくる。
顔の火照りが止まらない。
アクア・アッシュフォードを見ると、その顔は楽しいと言う感情を表に出して、笑顔を浮かべている。
私は顔を火照らせて困っていると言うのに、私を困らせた張本人は楽しんでいるのだ。
何だか腹が立ってきた。
「う、うるさい!そんな事言うなら、お前だって可愛い顔をしているじゃないか!」
「な!?男に可愛いって褒め言葉じゃないよ!?」
その言葉はアクア・アッシュフォードにとって、カウンターとなりうる言葉だったのであろう。
私の言葉にアクア・アッシュフォードは顔を真っ赤にして反論してきた。
いつもの無表情な姿はどこにもない。
だけどこっちの方がいいと私は思う。
「うるさい!お前の方が可愛い!」
「いや!君の方が絶対に可愛い!」
「お前だ!」
「君だ!」
「お前ったら、お前なんだ!」
「君って言ったら君なんだよ!」
小学生のような言い争いは止まる事が無い。
そのまま私達の不毛な言い争いは暫し続けられるのであった。
「もういい…わかったよ」
暫し続けられた私達の言い争いを終わらせたのはアクア・アッシュフォードの声であった。
「君は可愛いし……ぼ、僕も可愛い。
それで終わりにしようじゃないか」
「いささか納得できないが…まあいいだろう」
私もかわいいと言う意見は納得できないが、その提案を全面的に受け入れる。
そして溜息を吐いてから、冷静に今の状況を思い浮かべる。
私達が今までしていた言い争いは、どちらの方が可愛いかというもの。
そして私達はお互いの意見を譲らずに、熱い言い争いへと発展したのである。
今思えば、なんとも馬鹿げた言い争いであったものだ。
今思えばじゃなくて、最初に気づけと自分に言い聞かせてやりたい。
というか、私は馬鹿か?
「ふふふ」
自分の行動に後悔していると、笑い声が聞こえてきた。
確かめるまでもなく、その笑いの発祥源は目の前の男である。
思わず睨みつけるように凝視する。
「ふふふ…ああ、ごめん
でも…あはは」
私の視線に気付いたアクア・アッシュフォードは、謝りながらもまだ笑っていた。
なんだか腹が立ってきた。
「何がそんなに可笑しい」
自分でも答えが解りきっている事を質問する。
何が可笑しいか。
そんな事は決まっている。
「ははは…だって、まさか君があんな言い争いをするなんてね…。
なんだか面白くて」
「そんな事いうなら、お前の方だってそうだろ!
いつも無表情なお前が嘘のようだったぞ!」
「……僕らしくないか。
確かに…そうだね」
私の言葉にアクア・アッシュフォードは今気付いたとばかりの表情を浮かべながら頷く。
こいつは気付いていなかったのか。
呆れた私の視線を受けたアクア・アッシュフォードは一つ頷きながらまたもや爆弾発言を放ってきた。
「じゃあ、僕達はお互いに珍しい所。
ある意味素顔を引き出せる仲なんだね。
……何だか、嬉しいな」
本当に嬉しそうな笑顔でこの発言。
何だその表現は。
そして何だその本当に嬉しそうな笑顔は。
お互いの素顔を引き出せる仲。
その言い方はまるで私達が特別な仲。
こ、恋人のような言い方に聞こえてしまったのは私だけだろうか。
頬に熱が溜まるのを感じる。
でも、これは恥ずかしくて高潮させているのではない。
いきなり変な事を言い出した、目の前の男に怒りを感じて、頬を赤くしているのだ。
断じて、恥ずかしい訳ではない。そう、恥ずかしい訳ではない。
大事な事なので、二回言った。
「な、何をいってるんだ!
お前は!?」
「アクア」
「は?」
「アクア・アッシュフォード」
自分自身を指差しながら、自己紹介を繰り返すアクア・アッシュフォード。
というか、そんなの知ってるわ。
「……お前の名前なんて知っているぞ」
私の言葉に一つ頷く、アクア・アッシュフォード。
何がしたいんだ。
「それだよ。
お前じゃなくて、アクアと呼んで欲しいな」
「な!?」
「僕と君はお互いに素顔を引き出せる仲じゃないか。
お前なんて他人行事じゃ寂しくてね」
「わ、私とお前は、敵同士なのだぞ!?」
「そうだね。
でも今は君は捕虜で、僕は君の身柄を預かる身。
だったら、呼び名位僕が決める権利があっていいんじゃないかな?」
「ぐぎぎぎぎぎぎ…!」
思わぬ反撃に思わず歯軋りをしてしまう。
頬の火照りが留まる所を知らない。
目の前の男を睨み付けるが、睨み付かれた当の本人は何処吹く風、そんな言葉が似合うような笑顔だ。
アクア・アッシュフォード。
ブリタニア帝国最強の騎士団の一員、ナイトオブセブンにして、私の傭兵団―――家族達の仇の一人。
憎い敵。憎い仇。憎むべき相手。私にとって許されざる者。
私の脳裏には家族たちの姿が思い浮かぶ。
いつも共にいた彼ら。
その彼らを殺したアクア・アッシュフォード。
でも…今は私の友人の一人かもしれない相手。
相反した私の思い。
私はどうしたいのだろうか。
最早自分の気持ちが解らない。
「…………駄目…かな?」
目の前の男は少し諦めたように、悲しいように、でも仕方がないと言う気持ちが溢れた苦笑いを浮かべる。
その笑顔。
先ほどまでの笑顔とはまるで違う笑顔。
私は見たくないと思った。
何故かは自分でも解らない。
でも、私は見たくないと思ったのだ。
だから自分でも知らず知らずに、思わず私の口から出た、次の言葉を聞いても驚きはなかった。
「すまなかったね、変なことを言って。
君の言う通り僕と君は元は敵同士。
今言った事は忘れ「おい!」て…?」
「………………私だけがお前の名前を呼ぶなんて、不公平だ。
だから、お前も私の名前で呼べ。
いいな、アクア」
目の前の男―――アクアを見ることができない。
視線を外しながらも、でも、しっかりとした口調で私は告げる。
告げれたはずだ。
それから少し無言の時間があった。
外していた視線をちらっと戻して、アクアの顔を見る。
そこには私が見たかった笑顔があった。
少し前に浮かべていたすまなさそうな笑顔ではない。
心の奥底から浮かべるような満面な笑顔。
私の心が嬉しくなる笑顔を浮かべていた。
「ああ、ありがとう―――」
アクアが私の名前を呼ぶ。
私もアクアの名前を呼ぶ。
お互いの名前を呼び合っただけ。
ただそれだけの事。
でも、きっと私達は今日の事を忘れる事はないだろう。
何故かそんな予感がした。
…………何て、甘い甘い甘いすいぃぃーとな恋ができちゃうのかもしれない!
おいぃぃぃぃぃぃぃ!何だ!今の素晴らしすぎる妄想は!
ぐっほう!自分の妄想に吐血しちゃいたい位素晴らしかったぜ!
そうだ、僕は戦場の華たるナイトオブラウンズ!
もしかしたら、こんな出会いがあるのではないか!
ちょめっす!ちょめっす!
何だかテンションみなぎってキターーーー!
思考回路がヤバイ所に一直線な気がするがノープロブレム!
後半すごい強引な展開にも程がある気もするがノープロブレム!
とってもノープロブレム!
落ち着け、アクア!そのみなぎる気持ちはあふれんばかりに理解できるが、ここは先ず冷静に考えるんだ!
そうだ、悲しいがラウンズは今の状況では直ぐに辞められそうにはない。
物凄く悲しい事実だが。
だったら、辞めるまでに少しは美味しい思いをしてもいいんじゃないだろうか?
ぐふ。
ぐふふふふ。
やっぱりテンションみなぎりまくってキターーーー!
明日から僕は積極的に女性捕虜の尋問をするぜ!
むしろ今日からだ!
ブリタニアの兵士諸君!捕虜尋問は僕に任せろ!但し、女性専門でw
そう、戦場で芽生える一つの愛。
命を掛けた愛の行方。
僕達の未来は如何に…。
次回!コードギアス 反逆のお家再興記 超番外編。
君と僕の出会い。
が、始まります!
皆さん、こうご期待「優勝はアクア・アッシュフォード選手です!!」……………を??
…………僕が優勝って何?
繰り広げていた素敵な脳内妄想をシャットダウンして、現実へ舞い戻る。
そこは舞台上。
僕はふりふりなウェディングドレスを纏い、舞台の上に立っている。
眼下には沢山の生徒達、彼等から万雷の拍手が鳴り響く。
「おめでとう!アクア!
本当におめでとうゥ!アクアァ!」
そして横には、満面の笑顔を浮かべながらも力強い拍手で僕を祝福している和服大和撫子なルルーシュ。
萌え。
「おめでとう!アクア」
「畜生!アクアに負けちまったか!」
そして同じく祝福してくる真夏のトロピカルビギニサンデーなスザクと、謎の生命体Xなリヴァル。
二人にイラッ☆
「ナイトオブセブン歓迎会である、今女装大会の優勝者は、最優勝候補のルルーシュ選手を抑え、見事アクア・アッシュフォード選手が優勝を果たしました!
準優勝たるルルーシュ選手との投票差は僅か2票!
この僅差が今大会のレベルを表しています!
本当におめでとう!アクア!」
そしてノリノリな姉さんの声。
それが全てを思い出させてしまった。
って、ハァァァァァァァ!?
そういえば僕の歓迎会が何故か女装大会な上に、その上僕自身が出場させられている身分だったーーー!!
妄想ダイブしていて、すっかり忘れていたーーー!!
しかも何か優勝してるし!?
嘘だと言ってよ!ブーニィ!
「優勝おめでとう!
よくやった!本当によくやったぞ!アクア!
お前は偉い!お前は凄い!まじパネえ!
オールハイルアクアァァァ!!」
現実を否定したい僕を追い詰める和服大和ガールなルルーシュの喝采。
死ねばいいのに。
うるせえよ!ルルーシュ!
つか、お前キャラ変わりまくってるぞ!
何か普段のお前が信じられない位の喜びようだぞ!?
正しく狂気乱舞。
さよなら、今までのルルーシュ。
そしてこんにちわ、新しいルルーシュ、って感じだ。
つか、何で僕が優勝してんだよ!?
優勝はルルーシュに譲るはずだったのに!?
やばい。
やばいやばい。
やばい!やばい!やばい!
やばすぎるゥゥゥゥ!
天地崩壊する位やばすぎるゥゥゥゥ!
天地創造する位やばすぎるゥゥゥゥ!
とにかくやばすぎるゥゥゥゥ!
何が言いたいか解らなくなる位やばすぎるゥゥゥゥ!
何回やばすぎるって言ってるのか解らない位やばすぎるぅぅぅぅぅ!
僕は一人ひたすらてんぱる!
だって、そうだろ!?
この女装大会の優勝者には賞品として…。
「はい!それでは優勝者のアクア選手にはこの優勝トロフィーを!」
何時の間にか姉さんはステージ上に上がって来ていた。
そして僕に優勝トロフィーを渡してきた。
優勝トロフィーを受け取りながらも、呆然とする僕。
逃げたい。地の果てまで逃げ去りたい。
ちなみに優勝トロフィーには、第一回 アッシュフォード学園女装大会優勝者へ!君が一番星☆
なんて言葉が刻まれていた。
このトロフィー…凄まじくいらねえ。
何か地面に叩き付けたくなって来た。
って、そんな事より別の賞品が問題なんだよ!
地面にトロフィーを叩き付けたくなる衝動を抑えながら、目の前にいる姉さんの顔を見つめる。
ま、まさかねーー?冗談だよね?
だって僕達姉弟なんだよ?
そんなある意味カインとアベルな関係の僕達なんだよ?
そんな僕達がアダムとイブちっくな事なんてしないよね?
具体的に言うとキキキキキキキキ、キスなんてしないよね?
そんな事したら、僕達畜生街道まっしぐらになっちゃうよね!?
淫盛らるの特盛りになっちゃうよねェ!?
そこら辺わかってるよねェ!?姉さん!?
わかってくれるよねェェ!?姉さん!?
姉さんに僕は涙目の懇願の視線を向ける。
その視線には僕の今の全ての思いが詰まっている。
そんな僕の視線を受けて、姉さんは微笑みながら一つ頷いてきた。
まるでそれは、大丈夫!お姉ちゃんに全てを任せなさい!と言わんばかりの行動だ。
いや、事実その意味なのだろう。
ね…姉さん!
自分を理解してくれている、目の前の血を分けた家族へと目を向ける。
そうだ。
姉さんはいつだって僕の事を思ってくれていた。
爺さんの陰謀によって引き離された事もあったが、小さい頃から僕は姉さんと一緒に過ごしてきたんだ。
姉さんはお調子者で、お祭り大好きな困った人ではあったが、いつも僕を大切にしてくれた。
そんな姉さんだから僕は姉さんの事が大好きだったんだ。
僕は姉さんを見る。
僕の白い髪とは違う、金色のセミロングな髪。
僕と同じ青い瞳。
僕と血を分けた人。
僕を解ってくれている人。
「そして私の熱いキッスをプレゼントしちゃいます!」
姉さァァァァァァァァァん!?
え!?ちょ!?
姉さん!?
あれ!?おかしくね!?
この展開だったら、私とアクアは姉弟なので、キスはなしです!とかってなるんじゃね!?
さっきまでの僕の回想台無しじゃね!?
姉さんの発言に沸き立つ観客達。
それは歓声でもあり、悲鳴でもありよくわからん声たちであった。
つーか、え゛!?
マジでするの!?
マジマジでするの!?
姉と弟なんて…ソフ論ならとても許してくれないよ!
せっかく苦労して作ったのに販売中止なんだよ!?それでもいいのかい姉さァァん!?
って、毎度の事ながら僕の頭が混乱してきたァァァ!
やっぱり嘘だと言ってよ!ブーニィ!?
混乱する僕を置いてけぼりに展開は進む。
なんと姉さんが僕の頬に手を添えてきたのだ。
小さくて、細い姉さんの指。
それが僕の頬に当たる。
ド…ドキドキなんかしてないんだからね!?本当なんだからね!?
ツンデレ風に自分の心を誤魔化す。
そんな僕に姉さんは一言。
「アクア…恥ずかしいから目をつぶって…。
こういう時は目をつぶるのが…ルールなんだよ?」
頬を染めながら放たれたこの一言。
その一言で僕の何かが壊れた。
……そうだ。
論理感がなんだ!ソフ論が何ぼのもんじゃァァァァァ!
この作品に登場している人物は全て18歳以上です。
なんて言葉で、どう考えても18歳未満のキャラクターを攻略対象として認めている機関じゃねえか!
そんないい加減な奴等が僕達を止めることなんて出来ない!
ああ…脳裏に天の声が聞こえてくる…。
なに?アクア。
論理感が働いて、姉とのキスに恐れを抱いている?
アクア、それは逆に考えるんだ。
「論理感なんてくそくらえ、別に姉とキスをしてもいいんだよ。
とゆーかその続きもしていいんだよ!」
と考えるんだ。
脳裏に浮かぶのは誇り高きイングランドの貴族。
ですよね!ブースター卿!
僕は今凄まじき援軍を得た!
これで我が軍は100年は戦える!
覚悟はできた!
僕はこれより、新たなる世界―――新世界へと赴く!
それは誰にも理解されない世界なのかもしれない。
それは冷たく、辛く、険しく、過酷な世界なのかもしれない。
だけど僕はこの道を進むと決めたのだ。
姉さんと一緒に!
僕は姉さんを見る。
僕の白い髪とは違う、金色のセミロングな髪。
僕と同じ青い瞳。
僕と血を分けた人。
僕を解ってくれている人。
僕の…大切な姉さん。
僕の…初めてのキスの相手となる人。
先ほどまであんなに騒がしかった、周りの騒音が全く聞こえない。
まるでこの世界に居るのは僕と姉さんだけのような錯覚を覚える。
瞼を閉じる姉さんに合わせるように、僕も瞼を閉じる。
僕の視界が閉じられ、姉さんの表情が解らなくなるが、脳裏では姉さんの顔が焼きついている。
さあ!いざ行かん!我等が未だ見ぬ最果ての地―――姉萌えへ!
そして僕と姉さんの唇が合わさる…事無く、何故か頬に軽く柔らかな衝撃が走った。
…はれ?
思わず閉じていた瞼を開き、視界を取り戻す。
そこには、悪戯が成功した事を喜んでいる子供のような表情をする姉さん。
…はれれ?
「ふふふ…。
アークーア、もしかして唇にかと思った?
ざーんねん!お姉ちゃんの唇はそんなに安くはないんだよ!」
そして会心の笑みを浮かべながらこんな事を口走ってきた。
………はれれれれ?
今の姉さんの発言。
そして頬にあった、軽い衝撃。
それらの情報を考えると、どうやら姉さんに頬にキスをされたようだ。
唇にではなく頬のようだ。
………な、なーんだ。
姉さんに一杯食わされたな。
思わず、してなくてもいい覚悟までしちゃったよ。
あの覚悟はあれだな。
思わず、こく雰囲気に流されてしちゃった覚悟だな。
うん、そうだよ。きっとそうだよ。絶対にそうだよ。大切なことだから3回言っちゃうくらい大事な事だな。
冷静に考えてみれば、姉さんと一緒に畜生道まっしぐらへの道を僕が選ぶはずが無い。
何が、いざ行かん!新世界へ!だよ。
はははははは、ぼ、僕の唇はアーニャタンやナナリー達へと捧げるものなんだから!
間違っても、ね、姉さんじゃないんだよ!?
改めて再確認した僕。
危ない所だった。
危うく、二度と戻って来れない奈落への道。
畜生道を駆け抜ける所だった。
姉さん…!貴女の魅力は凄まじいものがあったが、このアクア・アッシュフォードは見事にあなたの一撃を耐え切って見せた!
よくやったぞ!僕!かっこいいぞ!僕!まじパネエぞ!僕!
でも…姉さんの唇の感触…柔らかかったなぁ。
思わず姉さんに口付けられた頬に手を当てて、そんな事を考える。
あの唇の感触が…僕の頬じゃなくて…口だったら…。
思わず自分の唇に手を当てて、そんな事を考える…って、ええええ゛!?
おいいいいいい!!
何を考えてるんだ!?
何を考えすぎているんだ!?僕は!?
何があの唇が僕の口にだったら…だよ!?
何だ!?僕は心の奥底では姉さんとの禁断の愛を望んでいたのか!?
嫌ァァァァァ!とっても嫌ァァァァァ!
僕は至って、ノーマルなんだよ!?
それが何だ!?最近の僕は!?
ホモに悩んだり姉萌えに悩んだり…まともじゃねえ!まともじゃねえ!
このままじゃ本当にホモで近親相姦者なまっとう過ぎないロードに一直線だ!
嫌ァァァァァ!とっても嫌ァァァァァ!すっごく嫌ァァァァァァ!
負のスパライラルへと一直線な僕。
そんな僕を見て姉さんは一言。
「ふふふ…残念だったね。
でも…これからの展開次第では、お姉ちゃんの唇を本当にアクアに捧げちゃうかもよ?」
………………………に、人間たまには道を誤ってもいいかもしれないね。