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[33345] 【ネタ】マカロニ星蓮荘【ネタ】
Name: yasu◆2f76073d ID:3bb6a9fb
Date: 2012/06/04 02:09
春、それは出会いの季節…。
うららかな四月の陽射しを浴びて、一人の少年が学び舎へと続く道を歩いている。
沖田そうじ15歳。
発育途上のしなやかな体つきと優しげな面立ちが目を引く文句なしの美少年である。
ちょっとワイシャツのボタンを外して華奢な鎖骨のラインを覗かせてやれば、そのスジのお姉様がたがヨダレを垂らしながら寄ってくるだろう。
もっとも本人にはそんな意識は毛頭ないが。
「今日からボクも高校生か…一歩大人に近づいたつもりで学生生活を有意義に過ごさなくっちゃ」
校門を通り抜け、校内の様子や教室へと急ぐ生徒たちに希望に満ちた視線を注ぐそうじ。
そのとき、そうじの視界に奇妙な二人組みが入り込んできた。
一人は20代前半と思われる紅い髪の美女。
女性にしてはずば抜けた長身で、モデルのようにメリハリの効いた体形が服を着ていてもはっきりとわかる。
その服というのがまた文化大革命時の紅衛兵の制服を連想させる独特なもので、スカートにはご丁寧にもド派手な龍の刺繍入り。
帽子に頂く星型の記章には「龍」の一文字が彫られている。
あえてその女性を一言で言い表すなら-
凄く…中国です……。
もう一人は柔らかなウエーブを描くブロンドの髪を持つ女性。
紫を基調としたフリルたっぷりのドレスを着てナイトキャップのような帽子を被り、右手に日傘をさしている。
こちらも10人に聞けば10人とも美人と答えるであろう整った顔の持ち主なのだが、それよりもなによりも10代後半から30代前半なら何歳でも通用しそうな得体の知れなさが先に立ち、はっきり言って胡散臭い。
「なんだろあの人たち、OGかな?」
あまりにも周囲から浮いた二人組の姿に思わず思わず歩みを止め、まじまじと見入ってしまうそうじ。
二人は周囲から注がれる好奇の視線をものともせず、勝手知ったるお山の神社といった風情で堂々と校庭を横切り校舎の中に姿を消した。
怪しすぎる二人を見送ったそうじは予鈴の音で我に帰り、急いで教室に向かうのだった。

「あ~私語は止めるように。私が今日から君たちの担任となる上白沢慧音だ、よろしく」
前かがみになって教壇に両手をついた拍子に、清潔な白のブラウスを押し上げる双丘がたゆんと揺れる。
タイトな黒のスカートに包まれた臀部もむっちりと豊かで、絞り込まれたウエストの細さを際立たせている。
宝具級にエロいボディを保有しながら、淫猥さを微塵も感じさせない凛とした佇まいを見せる美貌の女教師。
その姿に教室内の生徒は男女を問わず魅了された。
約二名を除いて。
「駄目ですよ慧音さん。今どきの若者にはもっとフレンドリーに接しないと」
「硬い挨拶はいーから、ちょっとボタン外して谷間でもチラ見させてあげなさいよけーねちゃ~ん♪」
紅衛兵と年齢不詳だった。
「あれ、あの二人…まさか同じクラス?」
どう見ても学生とは思えない二人が詰襟とセーラー服に混じって着席している光景に、並んでポーズをとるウルトラ兄弟の真ん中にハヌマーンがいるようなミスマッチ感を感じるそうじ。
「え~、それでは自己紹介を…」
怪しさ大爆発な二人をざっくり無視してホームルームを続けようとする慧音。
だが次の瞬間、二人は「時を止める程度の能力」でも使ったかのように教壇前にワープし、慧音が口を挟む間もなく自己紹介を始めていた。
「ハイ注目!私の名前は紅美鈴(ホン・メイリン)、中国でも本味醂でもありません、紅美鈴です!大事なことなので二回言いました。あと落第10回生、25歳です。よろしく!」
「はぁーいみなさぁ~ん(はあと)、私は八雲紫。落第24回生、40歳よぉー♪」
「スゴ、10回に24回…」
呆れるべきか感心すべきか、真剣に悩むそうじ。
だがそれで終わりではなかった。
「それではお近づきのしるしに私たちの隠し芸をお見せするわねぇ~」
「拙い芸ではありますが全力全壊でやらせていただきます!」
言うが早いかどこのデビルリバースですか言いたくなるような構えをとる美鈴と、正眼に構えた日傘をゆっくりと上段に振りかぶる紫。
「ちょ、ちょっと待てお前ら…」
慌てて制止しようとする慧音。
だがちょっとだけ遅かった。
「虹色剛掌波っ!」
前方に向けて勢いよく突き出された両の掌から七色の光線が迸った。
教室を縦断して壁に着弾したビームがド派手な爆発を起こして生徒たちを吹き飛ばす。
「続いて虹色気円斬っ!」
やはり掌から放たれた七色に輝く回転ノコギリ状の弾幕が逃げ惑う生徒たちの間を飛び交い、ズバズバと切り裂いていく。
主に女生徒の制服を。
「はーいご開帳~♪」
紫の開いたスキマからはマーティアルのエルビスドーネと黒い稲妻旅団のバーグラリードッグが飛び出し、ローラーダッシュで疾走しながら銃撃戦を繰り広げる。
「おかーさーんっ!」
「た、助けてくれーっ!」
「逃げれば狙われる、突破するんだ」
「オメガ11イジェークトッ!」
魔女の大釜と化す教室内。
「いいかげんにせんかぁー!」
逆上パワーでワーハクタク化した慧音のロケット頭突きが炸裂した。
天井をヒト型にぶち抜き、青い空に真っ白な飛行機雲をひいてどこまでも上昇していく紫と美鈴。
BGMは「竹取飛翔」だった。
その一部始終を目撃したそうじは虚ろな声で呟くのだった。
「あ、悪夢だ…」

「はあ…あんな人たちがクラスメイトだなんて先が思いやられるよ」
高校生活初日を終え、下宿へと向かうそうじは疲れきっていた。
具体的にいうと、シュヴァインフルト爆撃から帰還したB-17の搭乗員のように。
「それはそうと確かこの辺だよな下宿先…」
手にした案内図と周囲の建物を見比べて自身の現在位置を把握したそうじが視線を前方にもどすと、そこには時の流れが昭和40年代でせき止められたかのような木造二階建てのアパートがあった。
「うわぁ、コレはなんとも…」
「ボロいアパートでしょう?」
「ええ本当に…ってうわあっ!?」
あまりに絶妙な間で問いかけられたためについ相槌をうってしまったそうじがリアクションを返したのは、正確に三秒が経過してからだった。
いつの間にかそうじの背後に一人の女性が立っていた。
年齢は20代後半といったところだろうか。
白黒二色の法衣とゴスロリドレスがフュージョンしたような衣装を着た、とんでもない美人である。
もちろんナイスバディであることは言及するまでもなく確定的に明らか(断定形)。
「貴方が沖田そうじくん?」
「はい、そうですけど貴女は…」
「私は聖白蓮、この星蓮荘の家主ですよ」
「あ、ど…どうも!お世話になります!」
あわててかしこまるそうじの様子がツボにはまったのか、コロコロと鈴を転がすような声で笑う白蓮。
見た目よりも随分と老成した雰囲気と同時に童女のようなあどけなさも感じさせる、なんとも摩訶不思議な女性だった。
「さあ、いつまでもそんなところに立ってないでこちらにどうぞ」
女性はそうじを先導するかっこうでアパートへと歩いていく。
墨痕逞しく「星蓮荘」という文字が書かれた木札が掲げられた木戸を潜ると、一人の女性が白蓮とそうじを出迎えた。
「やあ聖、ちょうど水周りの補修が終わったところだよ」
「あら、もう済んだの?」
「ああ、なんだかんだ言いながらにとりが半日でやってくれたよ。持つべきものは大工仕事の得意な下宿人だね」
「ふふ、じゃあにとりさんにはお夕飯のオカズを一品サービスしなきゃいけませんね」
そう言ってアパートに隣接したお寺の方に歩いていく白蓮。
いや、正確には寺の敷地にアパートが建っているというべきだろう。
女性はそうじに向き直った。
「キミが新しい下宿人だね?ボクは聖からこのアパートの管理を任されているマードゥリー・B・ナズーリンというものだ、ナズと呼んでくれたまえ」
どこかネズミっぽい感じ-といってもドブ鼠に代表される不潔感ではなくハムスター的な癒し系だが-の小柄な女性はそう自己紹介すると、そうじを伴ってアパートに入っていった。
「ごらんの通り年代物だが、建物の保守点検には手を抜いていないつもりだ。住人は…クセの強いのが揃ってるが慣れれば気のいい連中だよ、というかそう願いたい」
そういいながらナズはそうじを二階の一室へと案内する。
「ここがキミの部屋だよ」
ドアが開けられた。
室内には予定調和のごとく美鈴と紫。
美鈴は木人(@:少林寺木人拳)と組み手を行い、紫は固焼き煎餅をかじりながらイスカンダル×ウエイバー本を読みふけっている。
(ゲェ~ッ!あの二人はぁ~っ!)
見えない100トンハンマーで頭を強打されるそうじ。
「どこから入ったんだいキミ達はっ!?!」
小柄な体躯からはちょっと想像できないボリュームで怒声をあげるナズ。
「ああナズーリンさん、もう夕食の時間ですか?」
「わたしスペアリブが食べたいわ、マーマレードで煮込んだやつ」
「いいから出ていきたまえっ!」
有無をいわせず招かれざる二人を部屋から押し出すナズ。
小さな身体なのに大したパワーである。
そしてそうじは-
「あ、悪夢だ…」
衝撃から立ち直るにはもうしばらくかかりそうだった。

「はあ…今日は疲れたなあ、色々と」
隣の寺-白蓮が住職を務める寺で「命連寺」という名前だった-で夕食をご馳走になり、荷物の整理を終えたそうじはそろそろ寝ようと畳の上に布団を敷いていた。
そこにコンコンとノックの音。
「どなた?」
白蓮かナズだろうと思いドアを開けるそうじ。
だが現実は少年に冷たかった。
「こんばんわ」
全人類から抽出した胡散臭さを凝縮して人型に固めたような存在がそこにいた。
「お邪魔していいかしら?」
にっこりと微笑む紫。
「…どうぞ」
ドアを開けてしまった手前、問答無用で閉め出しをくわせるなんてことが出来ない程度にはそうじはお人よしだった。
「それでどんなご用件で…ってなにやってるんですか?!」
溜息をついたそうじが顔をあげると、紫はそうじの布団に潜り込んですやすやと寝息を立てている。
「ちょっと紫さん、起きてください!」
呼べど叫べどノーリアクション。
「お邪魔しまーす」
床下から上に乗ったそうじごと畳を持ち上げるというスタイリッシュな方法で、美鈴まで入ってきた。
「あ~あ、やっぱりこうなっちゃいましたか」
そうじの布団に包まった怪し過ぎる眠り姫を見て苦笑した美鈴は、ひっくり返ったままのそうじに手を差し伸べた。
「すいませんねえ、紫さん気に入った人の布団を奪って寝るのが趣味なんですよ」
「どんな趣味ですか…」
そうじはもう怒る気力もない。
「お詫びといってはなんですが-」
姿勢を正した美鈴はそうじの目の前で正座すると、揃えた両膝を指さして言った。
「今夜は私の膝枕で寝てください」
「えぇえええええええええ!?!」
その日最大の衝撃がそうじを襲う。
「で、でも美鈴さんが…」
「大丈夫です、私はその気になれば立ったままでもぐっすりですから」
「なんですかソレは?」
「紅美鈴、二千の技の17番目。『どんな姿勢でも熟睡できる』です!」
迷いの無い笑顔でサムズアップを決める。
「さあ…」
なおも逡巡するそうじにじわじわとプレッシャーをかけていく美鈴。
「さあっ!」

その夜、張りがあるのに柔らかい美鈴のフトモモの感触とほのかに香る甘い体臭のせいで、そうじは一睡もできませんでしたとさ。



[33345] 【ネタ】マカロニ星蓮荘:燃えよ美鈴【ネタ】
Name: yasu◆2f76073d ID:3bb6a9fb
Date: 2012/06/06 15:11
照りつける太陽のもと、無言で対峙する二人の闘士がいた。
一人は燃えるような赤毛を風に靡かせ、凛々しく聳える長身の女性。
本作品におけるメインヒロイン(多分)、紅美鈴25歳。
石畳の舞台の上で半身に構えた美鈴は、黒のオープンフィンガーグローブを嵌め、丈の短い黒のタンクトップを着ている。
下半身は色々な意味でギリギリな黒のブーメランパンツに黒の編み上げブーツというコンビネーションで、柔らかくバネのある筋肉の表層を適度な脂肪で覆った野生的なヒップラインがバッチリ観賞できる。
画像を表示できないのが残念です。
そんな美鈴と4メートルほどの距離をおいて向かい合うのは、やはり黒のブーメランパンツと黒の編み上げブーツを履いた逞しい成人男性。
全身の筋肉は理想的に鍛え上げられ、ギリシャ彫刻に似た芸術性さえ感じさせる。
だが鋼のような胸鎖乳突筋の上に乗っているのは顔面の三分の二弱を占める複眼と大顎を持つ逆三角形の頭。
そしてワイヤーロープを束ねたような上腕三頭筋に続くのは無数の棘が並んだ腿節とゆるやかに湾曲した鎌状の脛節。
簡潔に言い表すと頭と両手がリアルカマキリなパンツ一丁のマッチョ。
略してパンチョ。
もちろんチャーリー石黒と東京パンチョスとはなんの関係もない。
某地上最強の生物の息子でさえも、コレと出くわしたら即座に背中を丸めて蹲り「護身完成」を宣言するだろう。
石舞台の周囲ではやはり頭と両手がリアルカマキリな僧形の男たちが、あるものは座禅を組み、またあるものは椅子に腰掛けてしわぶきひとつ立てずに対峙する二人に熱い視線を注いでいる。
真っ当な人間ならボイラーに放り込まれた雪だるまのようにSAN値を消耗すること間違いなしの、圧倒的悪夢世界であった。
だが美鈴は動じない。
美麗な顔に研ぎ澄まされた刃物の鋭さを宿し恐ろしいほどの集中力を発揮して、優美にして醜悪な人外の闘士の一挙手一投足を1ミリたりとも見逃すまいと目を凝らしている。
唐突に均衡は破られた。
どこからともなく飛んできた一匹のセマダラコガネが剥き出しになった美鈴の形の良い縦長のヘソに着地し、何を勘違いしたのか敏感な乙女の肉穴に頭を突っ込んだのだ。
「ひうっ!?」
思わず可愛らしい声をあげてしまう美鈴。
そしてほんの何分の一秒か下を向いて、ついで正面にもどされた美鈴の目はカマキリパンチョを、いや、そのぼうっとした輪郭を愕然と見ていた。
信じられない速度で動く相手の両腕と競争するように-追いつけるはずがないと理解していたにもかかわらず-美鈴の両腕も動く。
「カマッ!」
「キリッ!」
不可視の力が真正面からぶつかり合い、密度の低いほうが押し負けた。
「ぐはぁっ!」
官能的とすらいえる衝撃が美鈴の筋肉を貫通し、骨格を揺さぶり、臓物を蹂躙する。
それは肉の交わりを要しないレイプだった。
背筋を弓なりに反らし、優美なベル型の胸を天に向かって突き上げた姿勢で硬直したのち、ゆっくりと美鈴は倒れた
「は…あ……」
半開きの唇から漏れるのは、苦悶の呻きかはたまた愉悦の喘ぎか。
倒れた拍子にタンクトップが際どい位置まで捲くれ上がってしまっているが、露わになった下乳を気にする余裕すらない。
画像を表示できないのが本当に残念です。
「功夫が足りていないな、紅美鈴」
「魔境伝説アクロバンチ」で蘭堂ヒロを演じていた頃の若本則夫ばりの美声でそういい残し、マントを羽織ったカマキリパンチョは悠然と去っていく。
我ら凡俗には「カマッカマッ」という鳴き声としか認識できないが。

んでもってその翌日-
「旅に出るですってえ―――――っ!?!」
穏やかな朝の空気をかき乱す紫の絶叫。
「そんな!私とのことは遊びだったの!?明治17年の上海租界でパンツレスリングに興じたあの日々は何だったの!?」」
「更なる高みを目指すためです、あと過去を捏造しないでください」
泣きながら駄々をこねる紫を振り向きもせず、きりりと引き締まった表情でオリーブ色のマウンテン・リュックサックに替えの下着やらおやつの酢昆布やらを詰めていく美鈴の決意は固い。
「わがままを言ってはいけませんよ」
紫の肩にそっと手を置くそうじ。
「美鈴さんには美鈴さんの人生があるんです」
「ナマ言ってんじゃないわよそうじのクセに!」
日傘をフルーレのように構え、男の子の切ない部位に情け無用のファンデヴーを決める。
「~~~~~~~~~~~~~~~~~ッ!!!」
声も出せずに悶絶するそうじ。
「もういいわ!勝手になさい!」
紫は足元に開いたスキマの中に消える。
「だ、大丈夫そうじくん?いま痛みを和らげる秘孔を…」
ピチューン!
「くぁwせdrftgyふじこlp;@」
「ああっ、間違えた!?!」

んでもって数日後-
「いや助かったよ、なにせウチは絶望的に男手不足だからね」
美鈴が旅立ってから三日目の日曜日、その日そうじは朝からナズーリンを手伝って庭の雑草を刈っていた。
すでに陽は真上に近く、短い休憩を挟みつつもたっぷり働いたそうじはけっこう汗をかいている。
「さて、これで今日の仕事は終わりだ。勤勉な少年には冷たいコーヒーでも奢らないとね」
ナズーリンはそうじをやはり命蓮寺の敷地に建っている喫茶店-その位置はちょうど星蓮荘の反対側になる-へと案内する。
「八点鐘」という店名が記されたプレートが下がる店内には、そうじの知った顔が三人いた。
水兵帽を被った活発そうな黒髪の美少女、村沙水蜜。
頭巾の下から灰色の髪を覗かせた、法衣姿のちょっとお堅い美女、雲居一輪。
そしてカウンターに突っ伏してくだを巻く八雲紫。
「村沙さんのお店ってここだったんですか」
「そ、イカスだろ」
村沙と一輪はともに命蓮寺に住んでいる。
村沙は店長として店を任され、一輪は寺の仕事がないときに村沙の店を手伝っているのだが、それがメイド喫茶ならぬ尼僧喫茶として評判をとり、某巨大掲示板にも専用スレが立っている。
「ところで八点鐘ってどんな意味があるんです?」
「船乗りの勤務は時鐘に従ってるのさ」
村沙はカウンター横の梁に取り付けられた重厚な鋳鉄製の鐘を指差しつつ言った。
今はインテリアとして店内を飾っているその鐘は外国船のものらしく、「H.M.S.ULYSSES」の刻印が入っている。
「当直開始後30分で一点鐘、以後30分に一回ずつ鳴らす回数を増やしていって四時間目で八点鍾。当直交代、コーヒーブレイクってワケ」
ニヤリと笑った村沙は次の瞬間、恐い目つきになった。
「ハッテン場なんて下衆いシャレかましたらケツアンカーだからね」
「言いません言いません」
慌てて両手をバタバタさせるそうじ。
その横では紫がひたすら不貞腐れている。
「いーのよいーのよ私なんて…いっちゃんお水おかわり」
「はいよ、いくらでも飲っとくれ」
差し出されたグラスに銀の水差しで氷水を注ぐ一輪。
八雲紫40歳、水道水で酔っぱらえる安上がりな女であった。

そのころ美鈴は-
「ねーめーりん、アレやってよぉー」
「見たいみたぁーい!」
隣町の公園で子供たちに囲まれていた。
地図を頼りに-南満州鉄道株式会社が1937年に発行した五百万分の一の関東州路線図だった-アインナッシュの森を目指した美鈴だったが、三日三晩歩き続けてスタート地点に戻ってしまった。
まあいいかと星蓮荘から徒歩12分の公園にテントを張って修行をはじめたのだが、いいトシをして一日中カンフーごっこをやってるおねーさんがいると評判になり、気がつけばご近所の坊ちゃんお嬢ちゃんのアイドルになっていた。
「しょうがないですねえ…」
溜息をつきつつ構えをとる。
なんだかんだいっても最後は子供に甘い美鈴であった。
「形意拳十二意拳中…」
ぴたりと静止した美鈴の肉体が、次の瞬間には爆発的な勢いで躍動をはじめた。
「蛇形拳―っ!」
蛇がのたくるような動きで拳を繰り出す美鈴。
下半身まで蛇になっているのは単なるノリだ。
「龍形拳っ!」
昭和57年、近藤貞雄監督の指揮でリーグ優勝した当時の中日ドラゴンズのユニフォームで、ショート後方に上がった打球をヘディングする美鈴。
「燕形拳っ!」
両腕に燕の翼を生やし、地面スレスレを亜音速で飛び回る美鈴。
突風にあおられコロコロと転がる子供たちは-ワンピースの幼女はぱんつまるだしで-キャッキャと喜んでいる。
ついでにヒマだからと斬りかかってきたお侍の多次元屈折剣を10人のちっちゃめーりんに分体してかわし、相手が動揺したところに崩拳を叩き込む。
「すっぽん形拳っ!はーすっぽんすっぽん!」
これはちょっと描写できない。
主に美鈴の名誉のために。
「いーぞーめーりーんっ!」
「カッコイーッ!」
「めーりん!めーりん!」
熱狂する子供たち。
惜しみない賞賛の声にこたえ、ジャングルジムのてっぺんで荒ぶるコブハクチョウのポースを決める。
なんというエンターティナー。
そのとき陽炎の向こうから、ガタイはいいがガラの悪いサングラスの二人組がやって来た。
千葉県警機動警ら隊のユニフォームを着用し、シュアファイアのスピードホルスターにコルトの38スーパーをぶち込んでいる。
不良警官ウルフとジョーであった。
不穏な空気を感じ取り沈黙する子供たち。
美鈴は少年少女を庇って前に出た。
「何か御用ですか?」
「『何か御用ですか?』だってよジョー」
「もちろん御用があるんだよなあウルフ?」
顔を見合わせて下衆い笑いを交わす危ないポリス約二名。
「公園で怪しい中国人がガキ共と一緒にいるなんてトコを目撃したらコレは職質しかないでしょう」
「と、いう訳で…まずは身体検査だなあ!」
ウルフの腕が美鈴の胸に向かって伸ばされた。
手に余るサイズの膨らみをぐわしと掴み、指先が埋まるほどの力で握り締める。

そのとき、ふしぎなことが起こった!

「それじゃあそろそろお暇するよ」
「あ、じゃあボクも」
連れ立って店を出るそうじとナズーリン。
「かーちゃ―――――んっ!」
「お助け―――――――っ!」
全身に生傷をこしらえ半狂乱になったウルフとジョーが、時速96キロで二人の前を駆け抜けていった。
ドーン!ドーン!
続いて昭和29年に公開された某水爆大怪獣映画のオープニングのような音と地響き。
振り返ったそうじは見た。
巨大なその影はまさに地獄の使い。
身長109メートル重さ2トンの魔神。
まさにそんなノリで巨人と化した美鈴が迫ってくる。
放送コードに抵触する部分はかろうじてボロ布でカバーされているが、見ようによっては全裸よりエロい。
画像を(ry
「ななななななななななななななな…」
なんですかアレはと言いたいのだが、パニックに陥った口は機関銃のような速度で「ナ」音を発することしかできない。
「ああ、彼女は感情の高まりが頂点に達すると瞬転-ではなく巨大化する体質なのだよ」
淡々と説明するナズーリン。
「体質で済む問題ですか―――――っ!」
絶叫するそうじ。
目から怪光線、口から火炎、指先からなんだかよくわからない光りモノを飛ばしながらズンズンと近づいてきた美鈴がそうじたちを踏み潰そうとしたそのとき-
足元に開いたスキマが巨大美鈴を飲み込んだ。

「まったく、結局は私の手を煩わせるんだから…」
なし崩し的に紫と美鈴に占拠されてしまったそうじの部屋。
めんどくさそうな口調とは裏腹に、実に楽しそうに美鈴を介抱する紫。
通常サイズに戻ったうえ紫の手でやたら可愛いピンクのパジャマに着替えさせられた美鈴は、そうじの布団の中ですやすやと穏やかな寝息をたてている。
きっと楽しい夢を見て-
「や、やめてください咲夜さん…そ、ソコは、アッ―――――!!!」
-いるわけでもないようだ。



[33345] 【ネタ】マカロニ星蓮荘:要塞教室【ネタ】
Name: yasu◆2f76073d ID:3bb6a9fb
Date: 2012/06/10 21:47
「ちぇすとぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」
帰宅したそうじを必殺の気合とともに出迎えたのは、虎の毛皮をパレオのように腰に巻いた中性的な美少女だった。
第三者的視点では、押し倒されたそうじの男の子の切ない部位の真上にボーイッシュな美少女が馬乗りになっているという、大変うらやましい状況だった。
そうじの喉元に、鈍く輝く槍の穂先が突きつけられてさえいなければ。
「覚悟はいいか八雲紫?」
「え?え?」
状況についていけないそうじ。
「観念したか、では…死ねぇっ!」
大きく振りかぶった槍が突き入れられようとしたそのとき-
「早まるなご主人」
スコーン!
ダウジングのロッドをスケールアップしたような金棒で後頭部をしたたかにどつかれ、少女はバッタリと倒れた。

「本っ当―に、済まんっ!」
見事な土下座だった。
「君の身体から八雲紫の体臭が濃厚にしたものだから、てっきりいつもの幻術だとばかり…」
「ははは…」
夜となく昼となく、紫の過激なスキンシップにさらされているそうじとしては苦笑するしかない。
「その五感を全てに優先させる野獣同然の行動原理を、いいかげん改めてほしいのだがね」
溜息をつくナズーリン。
そうじを田楽刺しにしようとした少女の名は寅丸星。
白蓮の弟子で星蓮荘の本来の管理人である。
ある日、紫と美鈴から溜まりに溜まった家賃を取り立てようとした星は成り行きから二人と決闘することになり、あらゆる意味で規格外な二人に徹底的におちょくられたあげく無残に敗北してしまう。
それ以来、雪辱を期してずっと山篭りを続けていたのだという。
「家賃の取り立てでそこまでしますか」
「なんというか、真面目が行き過ぎて歯止めが効かない性格でね、ご主人は」
感心すべきか呆れるべきか。
寅丸星は決して粗暴な性格ではない。
だが仏法の守護者として世の理不尽と戦うことを自らの使命と定め精進を続けてきた星は、その過剰なまでの正義感から不正な行いを見過ごすことはできない。
ましてや理不尽を力で押し通そうとする輩など目にすれば、それこそ野生の虎のように激しく戦いを挑み、まっとうな戦いはもちろんのことまっとうではない戦いでも、大抵の相手はこなごなに粉砕して縁の下に掃き込んでしまう。
そんな星が黒星を喫した、ごく少数の人類のうちの二人が紫と美鈴である。
星にしてみれば聖のように人間力も含めて格上と認められる相手ならまだしも、ちゃらんぽらんに生きているとしか見えない紫と美鈴に負けっぱなしでいるなど、どうにも我慢ならないのであった。
「…という訳で改めて勝負だ!」
いつの間にか帰宅し、そうじの横になにくわぬ顔をして座っている紫と美鈴に槍を向ける。
「いいでしょう、表に出なさい」
ゆかりん、余裕の表情である。
連れ立って階段を下りていく一同。
「ところでナズさん」
「なんだい?」
「どうして星さんのこと“ご主人”って呼ぶんですか?」
「何も聞かないで…お願いだから……」
東尋坊の突端からいまにもヒモ無しバンジーをかましそうなナズーリンを見て、何も言えないそうじであった。

星蓮荘の裏手、命蓮寺の境内で紫と美鈴、そして星が対峙する。
「今日こそ決着をつけますっ!」
殺る気MAXな星。
「いいでしょう。貴女の全力、魅せてください!」
美鈴は美鈴で「おらワクワクしてきたぞ!」という顔つきでやる気満々だ。
「成敗っ!」
星が駆ける。
「やっておしまいっ!」
美鈴をけしかける紫。
二人は一陣の風に乗って急速に接近していった、生と死が交錯する接点へ向けてっ!。
「そこまで♪」
そこに割り込む聖白蓮。
X字型に交差させた右の手で槍の柄を掴み、左の掌で美鈴の拳を受け止める。
なんというユパ様。
「この勝負、私が預かります」

舞台は命蓮寺の本堂に移り、一輪が入れたお茶を飲んで全員がクールダウンすることにした。
そこで巨大なヒゲオヤジの顔をした薄紫色の雲塊がお茶を運んできたのを見て、そうじは腰を抜かす。
「な、なんですかコレは!?!」
「なにって…雲山だけど?」
さも当然といった表情の一輪。
「いや、だって…これ、雲?」
「だから雲山ですよ」
「うん、雲山だ」
「なんの問題もないね」
当たり前のように相槌をうつ白蓮と星とナズーリン。
「あたしもう崩れそう…」
そうじが世の不条理を身をもって実感したところで、聖が座長となって騒動の顛末が聴取された。
「大体わかりました、そこで提案です」
うんうんと頷きながら右手を上げる。
先刻、聖が出席した町内会で学校荒らしが議題にあがった。
深夜、無人の学校に侵入し、器物損壊や窃盗を行う輩がいるらしい。
そこまで語った白蓮がパンと手を打ち-
「どちらが先に学校荒らしを捕まえるかを競い、これをもって決着としましょう」
「面白いじゃない」
目を細め、唇の端を吊り上げる紫。
「いいでしょう、私はいつ、いかなるとき、誰の挑戦でも受ける!」
炎のオーラをまとい、決然と立ち上がる星。
どこからかイノキボンバイエが聞こえてくるのは気のせいか?

んでもって翌日-
そうじは朝から落ち着かなかった。
紫と美鈴が、一時限目から教室に姿を見せないのだ。
「一体なにをしてるんだろう…」
もう悪い予感しかしない。
そんなこんなで放課後。
そうじは校庭を横切る美鈴を見つけ声をかけようとしたのだが-
「御免ねー、今とりこんでるからー」
山盛りの荷物を積んだ大八車を軽々と引いて走り去る美鈴。
その荷物は何かというと、そうじの知る限り一番近いイメージは毛布で包んだ天体望遠鏡であった。
だが望遠鏡にしては毛布からはみ出した三脚がゴツ過ぎる。
そして残りの積荷の大半を占める大量の木箱には、翼を左右に広げて頭を高くかざした黒い鷲の絵と、MG/08 7.92×57 MM MASCHINEKARABINER INFANTERIE PATRONENの文字が並んでいる。
そうじの胸に、イヤな予感が黒雲のように広がっていった。

んでもってその夜-
体育館の裏手は片側一車線の道路を挟んで小さな公園を持つ神社になっていて、その一角だけ周囲に人家がないうえ街路灯も疎らになっている。
その人目につきにくいポイントを選び、塀を乗り越えて学校の敷地に侵入する影ひとつ。
学校荒らしは「ニクソンはクールだったぜ!」の文字がプリントされたTシャツにブルージーンズを履いた、まだ二十歳まえの若い男であった。
男は周囲を見回して誰もいないことを確認すると、そろりと一歩ふみだした。
「推参―――――っ!」
「うわぁああああ!?」
トタン板の蓋を跳ね除け、花壇に掘った蛸壺に潜んでいた星が飛び出した。
「りゃっ!」
裂ぱくの気合とともに、五尺五寸の朱槍が風を切って繰り出される。
「りゃりゃりゃっ!」
突き、払い、打ち。
星の手の中で、槍はそれ自体がひとつの生命体であるかのように自在に踊る。
毘沙門天の弟子が繰り出す手練の槍術に、学校荒らしごときが太刀打ちできるはずもない。
と思いきや、恐怖にかられた相手が滅茶苦茶に動くせいで威嚇で突いた槍がかえって急所に当たりそうになり、イマイチやり難そうな星。
「かーちゃーんっ!」
星が追撃を躊躇しているうちに、見もふたもなく悲鳴をあげて遁走をはかろうとする学校荒らし。
だが現実は非情である。
バシャッ!
闇を切り裂く一条の光。
強力なサーチライトに照らし出され、思わず動きを止める学校荒らし。
ドキンドキンドキンドキンドキンッ!
その周囲に大口径の銃弾が連続して撃ち込まれ、着弾の衝撃で地面が沸騰する。
それは校舎の屋上に構築された機関銃座から放たれたものだった。
「ほーほっほっほっ!気分はもう戦争っ!」
三脚に据えられたシュパンダウの銃把をしっかと握り、実にイイ笑顔(作画:富士鷹ジュビロ)でバタフライトリガーを押し込む紫。
茶筒を引き伸ばしたような水冷式の銃身を持つドイツ製の重機関銃は、まさにドイツ的な几帳面さで布ベルトで給弾される直径7.92ミリ、弾頭重量12.83グラムの完全被甲弾を毎分450発の速度で発射する。
「何をしている!死にたいのか!」
気がつけば学校荒らしは星に首根っこを掴まれ、弾幕の中を引き摺られていた。
紫はシュパンダウの銃口を小刻みに動かして、掃射をよけつつ走る星が校庭のある一点に向かうように仕向ける。
そしてタイミングを見計らって叫んだ。
「クレイモアッ!」
すかさず待機していた美鈴がMk57電気式点火装置を作動させる。
ちゅど~んっ!
植え込みの陰に設置されたM18A1対人地雷が爆発し、1ポンド半のプラスチック爆薬の爆圧によって、直径1.2ミリのボールベアリング700個が秒速4000フィートに迫る速度で扇形に撒き散らされる。
すべての散弾をかわすことができたのは、追い詰められた星の反射神経が生んだ奇跡以外のなにものでもない。
とつぜん槍を持った美少女に襲われ、機関銃に掃射され、そのうえ指向性地雷の洗礼を受けた学校荒らしは、高く跳躍した星の背中で当然のごとくパニックに陥っていた。
おう、神様、オレがいったい何をしたっていうんだ
オレはただ-

ムシャクシャしたからウサ晴らしに学校の備品をぶち壊したり金目のモノをいただこうとしただけなのに!

うん、まったく同情できない。
「放せ!放せようっ!」
「暴れるな馬鹿!」
学校荒らしが我武者羅に振り回す腕が、偶然にも着地の体勢に入った星の、女の子のビンカンな部分を直撃した。
「へぁ!?」
バランスを崩し、顔から地面に突き刺さる星。
イヤな音をたてた首がイヤな角度に曲がった。
ピクリとも動かない星を一顧だにせず逃走を図る学校荒らし。
まさに外道。
だが十歩もいかないうちに、着剣した56式半自動歩槍を構えた紅衛兵(巨乳)が闇から滲み出るように現れた。
「不許動!」

「オレはよう、チャンスに恵まれないだけで本当はもっとビッグなことがやれる男なんだ。なのにオヤジのヤツ、口を開けば『マジメに働け』っていうばっかりでよう…」
「うんうん、苦労してるんだねえ」
なぜか意気投合している学校荒らしと美鈴。
教室に連行された学校荒らしは圧倒的な暴力に打ちのめされたためかすっかり卑屈になり、紫と美鈴、そして宿直として居残っていた慧音の前で、ひたすら自己憐憫に満ちた言い訳をくっちゃべっている。
慧音は能面のような、紫は露骨に生ゴミを見るような表情を浮かべているが、根が素直な美鈴はすっかり感情移入してしまっていた。
ちなみに星はというと、首がイヤな角度に曲がったまま床の上に寝かされている。
「ところで…」
紫と美鈴をジロリと睨む慧音。
「お前らが破壊した花壇や大穴を開けた校庭の件だが-」
「先生…私……」
「恥ずかしがることはないわ、これは芸術なんだから」
慧音に振られた話を、レズビアンの美術教師とヌードモデルを強要される教え子ごっこでスルーしようとする二人。
「誤魔化すんじゃない!傾注っ!」
そのときなんの前触れもなく明かりが消え、暗闇に包まれた教室にスポットライトが灯る。
「皆様、今宵も東方ロマンス座におこしいただきまことにありがとうございます…」
タキシードを着た美鈴のやたら手馴れたアナウンスが入ると同時に、まばゆい照明の中に浮かび上がったのは慧音であった。
「大変長らくお待たせいたしました、当劇場のナンバー・ワン、コンスタンス・慧音さんです!」
ズンダダダッダッ、ダッダッダン!
ズンダダダッダッ、ダッダッダン!
ミュートの効いたサックスが官能のリズムを刻む。
マルガリータ・レクオーナが作曲し、ベレス・ブラード楽団の演奏で一世を風靡した不朽の 名曲「Taboo」である。
そのとき、慧音の子宮に衝撃疾る。
ズキュ~ンッ!
さらに本人の意思とは無関係に、音楽にあわせて妖しく腰をくねらせはじめる慧音の身体。
「な、体が勝手に…?!」
「こんなこともあろうかとこっそり暗示をかけておいたのよ」
きたないな、さすが紫きたない。
淫靡な旋律に操られるまま、黒いタイトミニに包まれた桃尻を扇情的に揺らすモンローウォークでゆっくりと歩きだす慧音。
黒のピンヒールをコツコツと鳴らし、一歩足を踏み出す度に、前方に向かって攻撃的に突き出した胸先が上下に揺れる。
ぴたり。
教壇の前で足を止め、正面に向き直った慧音の両手がグラビアモデルよりも凹凸の激しい肢体を太腿から尻へ、尻から腰へとゆっくりと上がっていく。
震える指が、豊満な胸とむっちりした臀部の間で鋭く絞り込まれたウエストに回され、細腰を締め付けるタイトミニのホックを外す。
パチンッ!
戒めを解かれたミニスカートが、黒のガーターベルトと同色のニーストッキングに彩られた艶めかしい美脚を滑り落ちた。
清潔な白のブラウスを襟元のボタンまできっちりと留めた上半身、それに対してショーツとストッキングを穿いただけの下半身。
自分がどのように破廉恥な姿をしているかを自覚したとき、慧音の中で強烈な羞恥心が頭をもたげる。
だがそれだけではない。
なんとも形容し難い、ゾクゾクするような高揚感もまた、心の奥底で密かに芽吹いていた。
どんどん膨れ上がっていく得体の知れないパッションに促され、慧音のアクションも過激さを増していく。
ポールダンスのように激しく身体をシェイクさせ、教壇の上に駆け上がる。
ヒップを支点にして旋回し、黒板を背にして大開脚。
急角度で掲げたヒップからフトモモのラインを見せ付けながら、ゆっくりと脚を組む。
そしてブラウスのボタンに指をかけ、ひとつひとつ外していく。
そうじと学校荒らしは息をするのも忘れ、女教師の淫靡なショウを食い入るように見つめている。
ゾクリッ!
物理的な圧力を伴うかのような若い男の視線を感じ、慧音の背筋をえもいえぬ衝動が走り抜けた。
ブラウスの下から現れたのは、レースのフリルが付いたハーフカップブラに窮屈そうに押し込まれたベル型の巨峰乳。
スルリ…ぷるぷるっ。
たわわに実った双球は着衣をはだける動きだけでゆさゆさと揺れ、たっぷりとしたボリュウムを見せつける。
ブラウスを脱ぎ捨て、セクシーな黒の下着姿となった慧音は、あくまで妖しくどこまでも淫らに、黄金率を具現化したようなパーフェクトボディをくねらせる。
「やっ…ダメ、あふぅんっ……」
半開きの唇から零れる声に、あきらかな愉悦が混じる。
その表情は快感に蕩け、普段は凛々しさの中にも暖かさを感じさせる切れ長の目には、淫蕩な鈍い光を宿らせてしまっていた。
辱めの屈辱と、年頃の教え子に痴態を見せつけているみじめさが混ざり合い、心をざわつかせる。
染み一つ無い白磁の肌に羞恥の赤味が乗り、淫蕩な薄桃色に染まっていく。
(ああ、見られてる…私の恥ずかしい姿を…見られている……ッ!!)
羞恥、罪悪感、恐怖、そして歓喜。
様々な感情が渾然一体となり、慧音の精神を未知の領域へと運んでいく。
「ステキよお客さぁぁぁぁぁぁぁぁぁんっ!!」

んでもって翌日-
「さて、首尾は…」
学校にやってきた白蓮が教室の引き戸を開けると-
「お願い死なせて――――――――――っ!」
「早まってはいけませんっ!恥はいっときの恥、人生は長いのですっ!」
天上から吊るしたロープで首吊りを敢行しようとする慧音を必死に止めるそうじ。
「自分を信じてぇーっ!」
「おお――――――っ!」
上海租界で共に死線を潜った朋友のように肩を組み、拳を突き上げる美鈴と学校荒らし。
「やっぱり殺す!絶対殺す!!ナニが何でも殺す!!!」
「ここよここよぉ~♪」
逆上して槍を振り回す星と、モグラ叩きのようにスキマから頭を出し入れして挑発する紫。
それら全てを見届けた白蓮、すこしも慌てず-
「あらあらうふふ」

どっとはらい。



[33345] 【ネタ】マカロニ星蓮荘:涅槃姫雛【ネタ】
Name: yasu◆2f76073d ID:3bb6a9fb
Date: 2012/06/17 20:30
それは一日の授業を終えたそうじが学校から星蓮荘へと帰る途中のことであった。
「今日も大勝利だったわね~♪」
武装親衛隊の黒のスーツに腰までスリットの入ったレザーのタイトミニ、左腕にブランデンブルグ師団の腕章をつけ、右手にはなぜか乗馬鞭といういでたちの紫が愉快そうに笑う。
「クリスマスにはアントワープに一番乗りですよ」
くたびれたM40野戦服のうえにカモフラージュアノラックを羽織り、肩からPPSh-41を吊るした美鈴がラークを吹かしながら相槌をうつ。
(何しに学校に行ってるんですか…)
二人に挟まれた学生服姿のそうじはものすごく居心地が悪い。
「そうじったらさっきからずっとだんまりねえ、ノリが悪いわよ?」
「紫さんが美しすぎて緊張してるんですよ」
紫が強引に会話に参加させようとしたところに美鈴が助け舟(?)を出す。
「あら、本当のことを言っても何も出ないわよ?」
「冗談ですよ」
紫、無言でスキマに手を突っ込む。
「そこになおりなさいっ!」
「ディマケイションッ!」
腰溜めに構えたMG42を連射する紫と、タンバリンを叩きながらインド舞踊っぽいクネクネアクションで銃弾をかわす美鈴。
二人はドタバタと追いかけっこをしながら、時速50マイルで去っていく。
「はあ…」
すっかり癖になってしまった重い溜息をつくそうじ。
そのときであるっ!(ナレーション:政宗一成)
「もし、そこの貴方-」
そうじを呼び止めたのはフリルたっぷりの紅いドレスを着た一人の少女。
最近異常に美女・美少女との遭遇率が高いそうじの目からみても相当の美少女だ。
少女はズンズンとそうじに近づき、無遠慮に顔を寄せる。
サファイアの輝きを放つ大きな蒼い瞳にそうじの姿が映り込む。
真紅のリボンに飾られた明るい青緑の髪からほのかに漂うミントの香り。
息使いを感じるほどの距離で見つめられ、そうじの動悸が早くなる。
ふと視線を下に向ければ、わりと豊かな二つの膨らみがいまにもそうじの胸板と密着しそうだ。
少女はこのうえなく真剣な表情でじっとそうじを見つめ-
「こんな気持ちになったのは初めて…でも思い切って言うわ」
心拍数さらに上昇っ、メンタルバーストの兆候がっ!
「貴方の顔……ものすごく厄いっ!」
ブチ壊しだった、色々と。

「自己紹介がまだだったわね、私は鍵山雛。全国を旅して“厄”を集めているの」
「厄…ですか?」
高橋さん家のトメさんが梅干漬けるのに使ってそうな素焼きの壷を、どこからともなく取り出す雛。
「この壷いっぱいに溜まった厄をイスの大いなる種族が残したアザトース式因果律変換機を使って熱エネルギーに換えることで、エントロピーの減少を補填し宇宙の崩壊を……」
「さようなら!」
キラキラ輝く瞳をあさっての方角に向け熱に浮かされたようにしゃべり続ける雛をその場にのこし、そうじ星蓮荘に向かってスーパーダッシュ。
「どうしてボクの周りには変な女の人しかいないんだろう…」
口を開けば自然と愚痴がこぼれる悩み多き15歳であった。
「おやおや、今日もまた疲れた顔をしているね?」
第三帝国が試作した100トン戦車のイラストがプリントされたエプロンをつけ、竹箒で玄関を掃いていたナズーリンが優しい微笑みで出迎える。
平穏な日常を象徴するその姿が、そうじにはなによりも尊いものに思えた。
「ナズさん…貴女が、貴女だけが救いだっ!」
そうじ、いきなりナズーリンを抱きしめる。
「ちょっ、ちょっと待ってくれっ!まだ心の準備がっ!?」
耳まで真っ赤にしながら微妙に何かを期待するような表情のナズーリン。
そこにドップラー効果を伴って飛来するタイガースカラーの一条の稲妻。
「“私の”ナズーリンになにをするーっ!」
怒り狂った寅でした。
「成敗っ!」
繰り出された槍はそうじの心臓を正確に狙う。
そこに介入する白黒の閃光。
「あらあら、刃傷沙汰は御法度ですよ♪」
超高速で回り込み、密着した状態から柔らかい下腹に聖の掌底が叩き込まれる。
「おふぅ…」
聞きようによっては色っぽくなくもない呻きを漏らして崩れ落ちる星。
「お風呂わいてますよ、それとも先に晩御飯にします?」
「あ、じゃあ先にご飯で」
半開きの口から魂っぽい白いモヤモヤを覗かせた星を引き摺る白蓮の後について命蓮寺にむかうそうじは、こんな毎日もすっかり馴染んじゃったなあと少しだけ自分が嫌いになるのだった。

んでもって翌日-
そうじはいきなりピンチだった。
具体的にいうと、体育館裏でガラの悪い三年生の集団に囲まれていた。
「沖田ぁ、テメー“俺たち”の紫さんと一つ屋根の下で暮らしてるんだってなあ?」
「そのうえ美鈴姐さんに毎晩膝枕してもらってるんだって?」
「許せねえ…」
長ラン+リーゼント+剃り込み+口髭という80年代の学園漫画から抜け出してきたようなツッパリ君に、濃厚な殺気に満ちた口調で詰問されるそうじ。
それだけでも十分恐いのに、その背後でスクラムを組み「少女臭がっ、少女臭がっ、あっががっががっ!」と叫びながら腰をシェイクしている集団が不気味すぎる。
頼みの二人組は慧音に拘束され、教室で補習を受けている。
助けてスーパーピンチクラッシャー!
そのときで(ry
「ほーっほっほっほっ!さっそく厄いわね少年っ!」
とつぜん頭上から降ってくる涼やかな少女の声。
「うわーっ!校舎と校舎のスキマに両手両足突っ張って地上13メートルの高さでバカ笑いしてる女がいるぞおーっ!?」
「あやしさ大爆発だあーっ!!」
あられもないポーズで見得を切る鍵山雛を指差し、じつに当を得たリアクションを見せるツッパリたち。
ちなみに白とピンクのストライプでした(なにが?)。
「『吼えろ鉄拳』の真田広之みたいですねえ」
「古いわね、『紅の豚』くらい出てこないの?」
「それも十分古いですよ」
いつのまにかそうじの背後にババアーン!と現れる紫と美鈴。
「うわっ!ビックリしたっ!?」
「はぁ~いそうじぃ~♪」
「ちょうど補習が終わったところなんですよ」
そんなやりとりをざっくり無視して雛の口上は続く。
「闇あるところ光あり、厄あるところ鍵山ありっ!」
ロム兄さん?
「といやっ!」
跳躍する雛。
「危ないっ!」
すかさず雛の着地地点 に む か っ て 紫を突き飛ばす美鈴。
綺麗にそろったつま先が紫の人中に突き刺さる。
「ぽぉっ!」
顔面を陥没させ、ばったりと倒れた紫に慌てて駆け寄る美鈴。
「しっかりしてください!傷は深いですよ!」
包帯でぐるぐる巻きにした紫にさらに和紙を張り、リチウム、カリウム、ナトリウムetcを加えて作った4尺玉をズドンと打ち上げる。
「たぁ~まやぁ~」
「なにやってるんですか!?」
右手をかざして空を彩る南斗人間花火(嘘)を眺める美鈴に、さすがにこれは黙ってられないと抗議するそうじ。
「いや、さすがに彼女が相手だと紫さんフォローしながら戦うのはキツいんで…」
「え……?」
弩シリアスな顔になった美鈴がゆっくりと向き直る。
厳しい視線の先には不敵な笑みを浮かべた雛。
「ふうん、私と正面きってやりあおうっていうの?貴女は自分を何様だと思っているのかしら?」
「私は何者かって?私は紅美鈴、明治17年の上海で都合87回の決闘に勝利した拳法家だ。その後も腋巫女や普通の魔法使いや七色の人形使いと洗面器で殴りあったり、四季のフラワーマスターと向日葵の種の早食いを競ったこともある。彼女らはみな自信満々で私を打ち負かせると考えていたが、実際にはそのことごとくが私に打ち負かされて草の根っこから苦い汁を吸うはめになったんだ。」
「うわーっ、いきなりスティーブン・ハンターの小説みたいなセリフまわしになったぞぉーっ!?」
「誰それ?」
「S・ハンターを知らない?今すぐ死ね、氏ねじゃなく死ねっ!」
「47人目の-」
「知らない!見てない!読んでない!そんなものは最初から存在しないんだっ!!」
みょんな方向に盛り上がるギャラリーを置き去りにして戦いは始まった。
「大した自信ね、でもこれを受けきれるかしらっ!」
まずは雛のターン!
「ひかぁ~るぅ~ひかる■■~■■~、まわぁ~るぅ~まわる■■~■■~♪」
妖しく発光しながら独楽のように回転する雛。
「はしぃ~るぅ~はしる■■~■■~、うたぁ~うぅ~うたう■■~■■~♪」
美鈴と肩を組んで校舎の壁を地面と平行に走りながら空いているほうの手でマイクを握る雛。
「みぃんなみぃんな■■~■■~、■■~■■~のぉ~、まぁくっ!」
ガカァッ!
大きく両腕を広げた雛の全身から放たれた得体のしれない衝撃波を浴び、美鈴たまらず片膝をつく。
「ぬう、恐るべき技っ!」
そーなのかー。
「止めだっ、カマッ!」
カマキリ拳法の構えから手刀を繰り出す雛。
だがカマキリ拳法なら美鈴の土俵だ。
雛は見た。
美鈴の背後にジョン・L・サリバンのように浮かび上がったカマキリ師匠がにっこり笑ってOKサインを出すのを(どうやって?)。
「キリッ!」
美鈴のカウンターが決まった。
「わぁ―――――っ!?!」
吹っ飛んだ雛はV字開脚のポーズで頭から花壇に突き刺さる。
やっぱり白とピンクのストライプでした(だからなにが?)。
「私の負けね…」
ゆっくりと身を起こした雛はどこか憑き物が落ちたような表情でまず美鈴を、続いてそうじを見てにっこりと笑った。
「では、ごきげんよう」
夕陽に向かって去っていく雛。
藪の中では雛を讃える蟲どもの合唱がいつまでも続くのであった。
エコエコアザラク
エコエコアザラク

おわれ。



[33345] 【ネタ】マカロニ星蓮荘:華の幽香【ネタ】
Name: yasu◆2f76073d ID:3bb6a9fb
Date: 2012/06/27 21:29
それはいつもと何も変わらないと思われたある朝のこと-
「紫さん」
「なによそうじ」
庭で日課のラジオ体操をしていたそうじはやはり日課のゴリラダンスをしていた紫を手招きした。
「コレなんでしょう?」
そこには大人の頭ほどの大きさの、メルキア第24戦略機甲兵団特殊任務班X-1のATの右の肩アーマーのような暗い血の色をした花が咲いていた。
庭のその一角には、昨日までは芽すら出ていなかったはずなのに。
「なんだか不気味ですねえ…」
「引っこ抜いて調べてみましょう」
気味悪げなそうじに対し、ゆかりは明らかに面白がっている。
スキマから取り出したロープの端を花に結び、同じくスキマから取り出した三脚に取り付けた滑車を介して、これもスキマから引っ張り出したオートバイとトラクターを交配させたようなドイツ製の半装軌車の牽引フックにもう一方の端を結びつける。
ほんまスキマはチートやでえ。
「いくわよぉ~」
オペル社製水冷直列4気筒エンジンが唸りをあげる。
「キャ――――――――――ッ!」
「キャ――――――――――ッ!」
「わ――――――――――っ?!」
あがった声は三つ。
最初の一つはケッテンクラートをダッシュさせる紫の景気付けの叫び。
次の一つは引っこ抜かれた花にくっついて地上に飛び出した緑の髪の女性の叫び。
最後のひとつはそれを見たそうじの驚きの叫びだ。
「あら、アンタは風見幽香?」
「そういうアンタは八雲紫!」
目と目が合った瞬間、二人の間に稲妻走る。
双方ぱっと跳び離れるや二尺五寸の越後守包貞を抜く手も見せずに抜刀し、気合一閃踏み込めばたちまち起こる剣戟の響き、いずれ劣らぬ美女二人丁々発止と斬り結ぶ。
チャーンチャンチャンチャンチャンチャンチャカチャンチャンチャンチャカチャンチャンチャンチャカチャンチャンチャンチャカチャンチャン♪
「いよっ!」
手拍子パパン!
「はっ!」
足踏みドン!
さあますます絶好調。
チャーンチャンチャンチャンチャンチャンチャカチャンチャン-
「虹色流星脚っ!」
七色の気を纏った美鈴の飛び蹴りが幽香を吹っ飛ばす。
日課のジョギングから帰ってきた美鈴が、頭のてっぺんに花を生やした女性が紫とチャンバラを繰り広げているのを見て攻撃を躊躇する理由はなにもなかった。
「やったか!?」
だがそれは死亡フラグだっ!
くるくると回転しながら放物線を描く幽香の掌から、眩いばかりの極太ビームが放たれる。
ギョインギョインギョインッ!
白熱光は紫を直撃した。
「よく…焼けました……」
ばったりと倒れる紫。
「わぁー!紫さんが黒焦げアフロにぃーっ!?」
慌てて駆け寄る美鈴とそうじ。
一方、そのまま道路まで飛んでいった幽香はちょうど星蓮荘の前を通りかかったサーカスのトラックの荷台に着地し、体重1,000ポンドの雄のグリズリーと相撲をとりながら国道1号線を北上していった。

んでもって二時間後-
「花の好きな娘だったわ…」
湯気をたてる梅昆布茶の湯飲みを婆臭そうに両手で持ち、紫は語りはじめた。
表情はシリアスだが頭はアンドロ梅田だった。
「あんまり花が好きすぎて、いつしかあの娘は植物は人間の奴隷から脱しなくてはいけないと考えるようになった。そしてある日『四季のフラワーマスター』を名乗り植物が支配する世界の創造を宣言した幽香を、私と白蓮で星蓮荘の地下に封じたの」
それが美鈴がここに来る1年前のことよと紫は言った。
「そんなことが…」
意外な事実に驚く一同。
「それではここで前回の風見幽香による都市破壊の記録映像をお見せしましょう」
紫がスキマから取り出した8ミリ映写機を作動させると、スクリーン代わりの襖に古い映画のようなモノクロ映像が映しだされた。
防衛隊の砲撃をものともせず進撃する幽香。
高圧電流に前進を阻止された幽香が白熱光を放つと、溶けた鉄塔が飴のように捻じ曲がる。
さらに当時のラジオ中継を録音したテープが臨場感を盛り上げる。
『右手を塔にかけました!もの凄い力です、いよいよ最後!さようなら皆さん、さようならっ!』
フィルムの上映が終わり、明かりをつけた紫は宣言した。
「これは間違いなく世界の危機だわ!」
厳しい表情でナズーリンを見る紫。
「ところで白蓮はどこにいるの?」
「聖は町内会の慰安旅行で昨日から四泊五日で下呂温泉だ」
「あのニューババア肝心な時に…」
そういった途端、壁から外れた額縁が紫の脳天めがけて落下する。
「ウギャーッ!?!」
「大艦巨砲主義」と書かれた色紙(聖直筆)を収めた額縁の角に頭頂部を強打され、豚のような悲鳴をあげて倒れる紫。
「これが仏罰というやつかねえ」
額から流れる血で畳にダイイングメッセージを書こうとし、途中で力尽きた紫に向かって合掌するナズーリン。

んでもってその翌日-
いきなり学校は1962年のイギリス映画「人類SOS」に出てくる着ぐるみを思い出させる、根を足のように使って歩く植物の大群に襲われていた。
「今日こそ貴女の最後よ紫ィっ!」
歩く植物が組み体操のように絡み合って作った櫓の上で仁王立ちするのはもちろん風見幽香だ。
「またお前らの関係者か!」
怒りのあまり月も出ていないのにワーハクタク化する慧音。
「先生、今は二人を責めている場合じゃありませんよ」
「むっ、そうだったな。なんとしても生徒たちを守らねば…」
雑草兵-文字通り雑草から産み出された雑兵である-たちは今は校舎を包囲しているだけだが、幽香の命令が下れば一斉になだれ込んでくるだろう。
そこで美鈴が手をあげた。
「相手は植物、ここは火計一択です」
さすが中国。
「でもあんなに沢山どうやって?」
「大丈夫、こんなこともあろうかと学校のプールにガソリンを…」
「バカモノ―――――ッ!」
慧音の頭突きが得意げな紫の顔面に炸裂すると同時に、気化したガソリンが理科実験室のアルコールランプに着火する。
大☆爆☆発!

んでもって二時間後-
「ギャグSSでなかったら即死だったわ…」
重々しく語る紫。
やっぱり頭はアンドロ梅田だった。
「暢気にお茶飲んでる場合ですか!」
星蓮荘に帰宅した三人はまたも復活した風見幽香(アフロ)と雑草兵軍団の襲撃を受けた。
命蓮寺の境内がやけにすっきりしていることから、どうやら雑草兵はその辺の雑草から即席で作れるらしい。
迎え撃つのは聖を除く命蓮寺のメンバーと美鈴と紫、そして荒事は苦手なそうじも白兵戦最強兵器との呼び声も高いシャベルを振り回して奮戦している。
さらには厄気を感じて飛んできた鍵山雛も助っ人として参加していた。
なんというジャンプ方式。
だがいくらそうじ達が奮闘しようと戦いは数だよ兄貴である。
さらに幽香はいくらダメージを受けてもすぐに再生してしまう。
次第に押し込まれていくそうじたち。
「さあ観念なさい紫!貴女たちを始末したら次はこの国を、そして全世界を花で埋め尽くすっ!」
勝ち誇る幽香。
「そうしてレイチェル・カーソンが描いた完全世界が実現するのよ!」
手のひらを太陽にかざし、歌うように叫ぶ幽香。
「『沈黙の春』ってそういう話だった?」
「セガール拳の使い手が春妖精を血祭りにあげていく話ですよ」
違うと思うな。
「なんとかなりませんかナズーリン?」
最後は小さな賢将に泣きつく歪みない星。
「そうだねえ、こういう場合目の前にいる敵は影で本体は別の場所っていうのがありがちなパターンだけど…」
それを聞いた美鈴はハッと後ろを振り向いた。
「そこだ!虹色気円斬っ!」
「ギャアアアアアアアッ!」
1話以来の通常技が命蓮寺の屋根より高く育った巨大向日葵を17分割すると同時に、枯葉色に変色してボロボロと崩れていく幽香の体。
「なんと、本堂横に生えていたマンモス向日葵が本体だったとは!?」
「灯台もと暗しってやつだねえ…」
怪しめよ。

んでもって翌朝-
「いってきまーす」
玄関の引き戸を開けたそうじは足元の地面から風見幽香の生首が生えているのを見て凍りついた。
妙に丸っこい造作の幽香生首はそうじを見上げ、怒っているみたいなで笑っているみたいなよくわからない顔で言った。
「ゆっくりしていってね!」



[33345] 【ネタ】マカロニ星蓮荘:昭和29年のアーカンソー・ステーキハウス【ネタ】
Name: yasu◆2f76073d ID:3bb6a9fb
Date: 2012/07/05 15:55
「14号車、こちら無線係(ディスパッチ)。アール、いまどこにいるの?」
アール・スワガー巡査部長は左手でハンドルを操りながら右手でマイクを掴んだ。
「こちら14号車。現在位置ブルーアイの北12マイル、ルート71を北上中だ」
「よかった、すぐ近くだわ。テンサー-ティー-スリー(緊急事態発生)よ」
時給2ドルで保安官事務所の無線室に詰めているミセス・オーランドーの弾んだ声が無線機から流れる。
「何があったんだ?」
「ハリスのステーキハウスにトム・クロームが押し入ったの、メキシコ人の山賊みたいに武装してね。現在絶賛立て篭もり中よ」
ゴシップ好きでドイツ製の機関銃並みに舌の回る彼女にかかると、どんな深刻な無線連絡もテキサコ・ガソリンのCM顔負けのエンターテイメントになってしまう。
そんな彼女が無線係として重用されているのは、どんなに無線が不調だろうと明瞭に聞き取れるキンキン声の持ち主だからだ。
「了解、直ちに現場に向かう」
アールはアーカンソー州警察の白塗りフォードを迅速にUターンさせると、ハリスの店への最短コースである未舗装の脇道に入った。

途中、道路の真ん中で交尾をしていたアライグマを避けようとしてトウモロコシ畑に突っ込みそうになったものの、アールは5分12秒ジャストで現場に到着してみせた。
ステーキハウスの前にはすでにローガン郡分署の警部補、ビル・コールに加えて保安官助手のレム・トリヴァーとドゥエイン・ペックが到着していた。
そして店の周囲は警察関係者だけではなく、フォートスミス・タイムズレコード紙の事件記者、ダル・コチャック、飲んだくれのジェド・ポージーとその兄で弟と同じくらいろくでなしのラム・ポージー、密造酒造りで刑務所と娑婆を往復しているフレム・グラムリーとその従兄弟でジャッドとボブとウィルの倅の三人のスライデル・グラムリーといった野次馬たち、さらにブルーアイの葬儀会社、ボンヴェリテ・ブラザースの面々に加え、演習場からキャンプ・チャフィーに戻る途中の夜間狙撃実験小隊“ブラック・キャット”の隊員に十重二十重に取り巻かれており、その中にはアールの狩猟仲間でアーカンソー州の検事補を勤めるサム・ヴィンセントもいた。
「サム、こんなところで一体なにを?」
「おう、アール!天の助けだ。頼む、早く何とかしてくれ!」
23人の重犯罪人を電気椅子に送り込んだ偉業の報酬として「電撃サム」の仇名を送られた鬼検事補の顔には、まごうことなき恐怖が刻まれていた。
「コニィさんが、コニィさんがあのくず白人の人質になっておるんだ!ああっ!彼女にもしものことがあったらわしは…」
「サム、サム、サム、頼むから落ち着いてください」
アールは生け捕られたばかりのオランウータンのようにうろたえるサムを抱きかかえ、パトカーの陰に引っ張りこんだ。
「ここでそんなことを大声で言ってはいけない、あなたはもうサリィと結婚してるんですよ!」
コニィ・ロングエイカーはアールとサムの共通の友人であり、その美貌と教養と胆力はアーカンソー州に並ぶもののない女傑である。
そしてサム・ヴィンセントにサリィという妻がいるように、コニィ・ロングエイカーにもランスという夫がいた。
「とにかくここでじっとしていてください、いいですね?」
アールは居並ぶ警察官を掻き分けてビル・コールに近づいた。
「状況は?」
「容疑者はライフルと拳銃で武装し、店の主人とウエイトレス、そして推定4~5人の客を人質にして立て篭もっている。要求は『裏切り者で恥知らずな売女のジョレイン・クロームを今すぐここに連れてこい!』だそうだ」
「それでジョレインはどこにいるんです?」
それに答えたのはレム・トリヴァーだった。
「今頃はカリフォルニアかフロリダか、ひょっとしてキューバかも」
「どういうことだ?」
「駆け落ちしたんスよ、ローガンとこのベイン・オーと」
ベイン・オーはマイク・ローガンの製材所で働く黒人の巨漢で、白人のマダムの間では馬並みの逸物の持ち主として知られていた。
ドゥエイン・ペックがあとを続ける。
「トム・クロームも可哀想に。クロに女房を盗られたとあっちゃあポーク郡はもちろんのこと、ガーランド郡でも陽のあるうちは表通りを歩けねえ」
表情は沈痛だが目が笑っている。
そのとき店内から聞こえたのは食器が割れた音とおよぼしき破壊音、そして一拍遅れて絹を裂くような女性の悲鳴。
反射的に身をかがめ腰の拳銃に手をやったアールの横を、ストレスが血中に科学物質を大量に放出し、正気を失ったもの特有の雄叫びをあげてサム・ヴィンセントが駆け抜けていった。
「このクソ野郎!コニィさんに掠り傷ひとつでもつけてみろ、ヘソからハラワタ引きずり出してケツに-」
アールは猛然と地を蹴ると、牡牛のように突進する地方検事補の腰にブラインドサイドから低いタックルを決める。
そうして地面に転がしたサム・ヴィンセントに後ろ手に手錠をかけ、ネクタイをほどいて猿轡を噛ませると有無を言わせずパトカーの後部座席に放り込んだ。
「一体どうしちまったんですサムは?」
「プリンストン大学を卒業してからイエールの法律大学院(ロースクール)に入り直すような人間には、我々凡俗では想像もつかん苦悩があるのさ」
アールが野次馬の一人で離婚訴訟を専門にしている弁護士、ディック・ターンクィストに肩を竦めてみせたその直後、また鋭い悲鳴があがるとともに一発の銃声が響く。
そして今度はステーキハウスの道路に面した窓が室内で爆弾が爆発したような勢いで吹っ飛び、粉々になった硝子と窓枠の破片とともにトム・クロームその人がロケットのような勢いで飛び出してきた。
背中から地面に着地し、そのままパトカーの手前まで滑走してきた立て篭もり犯を警官隊が取り囲む。
ガチャガチャと安全装置を外す金属音が響き、鈍く輝くリヴォルバーの銃口が砲列を敷くその真ん中で、トム・クロームは目を見開いたまま気絶していた。
「あの~…」
そこにステーキハウスの戸口に現れた人影から遠慮がちな声がかけられる。
「もう出て行ってもいいですか?」
それは紅い髪をした東洋系の、はっとするような美女だった。

「名前は紅美鈴(Hong Meirin)香港生まれ、8歳のときサーカス団の一員として両親とともに渡米。12歳のときに公演中の事故で両親と死別。死因は父親がマチルダという名の体重180ポンドの雄のカンガルーとの試合でコーナーポストに追い詰められてからのカンガルーキックで頚椎損傷。半年後、母親が目の前で射られた矢を歯で受け止める演目の最中にしゃっくりをしたため矢が右目を貫通。15歳のときに座長がポーランド人の熊使いと金庫の現金全てを持ち逃げして一座は解散。以後北米大陸各地を転々として現在に至る-と」
一通りの調書を取り終えたアールは改めて目の前の女性を眺めた。
文句なしに美しい顔立ちに加え、アルベルト・ヴァーガス描くエスクワイア誌のピンナップから抜け出してきたようなおっぱいと脚。
銃と祖父がパンチョ・ビラ討伐から持ち帰った山刀で武装した荒くれ者をキック一発でKOした女性とは思えない。
「あの…私も牢屋に入らなきゃいけないんでしょうか?」
橋の下に捨てられたチワワのような表情でおずおずと尋ねる美鈴。
「あんまりお腹がすいてたんでたまたま目に入ったお店に飛び込んで後先考えずに料理を注文したんですけど、ポケットを確かめたらこれだけしかなくって…」
アールの目の前に差し出された美しい手の平の上にはニッケル(5セント硬貨)が2枚。
アールは差し出された手の平を優しく握って押し戻した。
「そいつはとっておきなさい、チャールズ・ハリスも今日の売り上げのことはきっと気にも留めてないさ」
「ありがとうございますっ!」
右手に持ったマグカップの中の熱いコーヒーを啜ろうとしたところに熱烈なハグを受けたアールは、胸板に感じた柔らかい感触と鼻の中を占拠した若い女性の甘い体臭に一瞬恍惚状態に陥り、タラワ島の珊瑚の浜で日本兵の銃弾を尻に受けて以来絶えてなかったことをした。
すなわちコーヒーをズボンにぶちまけ、派手な悲鳴をあげたのだ。

取調を終えたアールはある懸念の回答を得るため、鑑識班のウォルター・ジェイコブスを尋ねた。
だが結論からいうとジェイコブスの見解はアールの困惑を深めただけだった。
「君が持ち込んだこの弾丸-ハリスの店で見つけたものだったね、調べてみたけど41口径の銅被甲弾で重量は180.2グレイン。間違いなくトム・クロームのコルト・ライトニングから発射されたものだよ」
だが腑に落ちないのは-とジェイコブスはピンセットで摘みあげた弾丸を顔の前に持ってきて続けた。
「こいつの形状は完璧だ、歪みも凹みもない。ふつう冷蔵庫だろうとドアノブだろうと、何かに命中して跳ね返った銃弾は必ず弾頭が変形するし、口径も判別できないほど潰れてしまうものも多いんだがね」
それはアールにとっても謎だった。
現場検証を行い、ジュークボックスの前の床で弾丸を発見したアールは一時間近くかけて周囲を調べたが、跳弾の痕跡はどこにも見つからなかったのだ。
ジェイコブスが銃弾を証拠物件を収める鍵つきの棚に戻し、棚の上にずらりと並んだ水槽の一つからニシキガメの子供をそれが聖遺物であるかのように恭しく取り出したのを見て、アールは内心うんざりとした。
「ところでこれを見てくれ、こいつをどう思う?」
「ああ、すごく可愛いよ。じゃあなにか新しい発見があったら知らせてくれ」
強引に会話を打ち切ったアールの背中に向かって、亀を偏愛する32歳独身の鑑識技官は声を張り上げた。
「パトロール中に傷ついた亀を見つけたら必ず保護してくれ、絶対だぞ!」
亀はともかくこと銃が関係する事象に対しては、アールは絶対に曖昧なままで済ませることはない。
そんなわけで黒人街のママさんの苦情を聞いたり、スピード違反の切符を切ったりといった通常任務の合間を縫って聞き込みのためにアールが訪問したのは事件の当事者のなかで最も冷静な観察眼を持つ人物、コニィ・ロングエイカーの自宅だった。

「そう、あれはいままで生きてきたなかでも最高にエキサイティングな経験だったわ」
コニィ・ロングエイカーは広大な牧草地の真ん中に建てられた瀟洒なコテージのポーチで、アールに冷えた紅茶をすすめながら蒼い瞳を興奮に輝かせながら語った。
「信じられる?テーブルひとつ隔てたところで品の無い貧乏白人(レッドネック)が銃を振り回しているというのに、あの可愛い東洋の娘さんは平然とコンビーフ・オムレツを食べていたのよ」
コニィはひとしきり笑ってから急に真顔になった。
「それがね、あのろくでなしのクロームが可哀想なウエイトレスの頬を張ったのを見て敢然と席を立つと、恐れる様子もなく向かっていったの。なんて勇敢な娘でしょう!でもミス・カンフーが無法者をぶちのめした場面は見てないのよ。あの綺麗なお嬢さんが撃たれるとおもった瞬間、目を瞑って顔を背けてしまったの。そして男の悲鳴とガラスが割れる音で目を開けたらミスタ・クロームが場外ホームランされていたというわけ」
「そうですか」
アールは手帳を閉じて立ち上がった。
トム・クロームは肋骨を4本折る重傷だということだったが、今頃は麻酔も醒めて事情聴取に応じることが出来るだろう。
ちなみに真っ先に質問した美鈴の答えは「無我夢中だったので憶えていない」だった。
礼を述べてロングエイカー邸を立ち去ろうとしたアールを、コニィが呼び止めた。
「あのお嬢さんは今どうしているのかしら?」
「法廷での証言が済むまではこちらに滞在してもらわねばなりません、いろいろ考えた末しばらく私の家で面倒を見ることにしました」
「まあ、アールが家に若い女性を引っ張り込むなんて、ミセス・オーランドーが聞いたらなんと言うかしら!」
「アーカンソー州はじまって以来の大事件と叫ぶでしょうな」
冗談めいた口調で言うコニィに、珍しくアールも軽口を返した。
「うちのことならご心配なく。一体どんな手品を使ったものか、家のもの皆があのお嬢さんを気に入ってしまったんですよ。ジュニィはもちろん、ボブ・リーまで」
「きっと東洋の魔法ね、アジア人を甘く見ないほうがいいわよアール」
「その事は身に沁みてますよコニィさん」
実際美鈴はジュニィとボブ・リーの目の前でアールの命を救ってみせたのだ-少なくとも少年ボブ・リーはそう信じていた。
家に連れ帰った美鈴を妻と息子に引き合わせたその場で突然腰に激痛を感じ、そのまま意識を失ったアールを美鈴は指先ひとつでダウン-もとい、蘇生させたのである。
経絡秘孔を刺激することで気の流れを云々という説明は正直理解できなかったが、このことを機に紅美鈴は少年ボブ・リーの崇拝の対象となり、アールもまたきちんと医師の診断を受けたほうがよいという美鈴の薦めを受け入れ、ロングエイカー邸を訪ねたその日の午後遅く、入院中のトム・クロームへの事情聴取も兼ねてスコット郡立病院の外科医マーク・ハリスを訪ねたのだった。
「これはヤバいな。うん、ヤバい。今すぐどうこうということはないが一寸ヤバい」
どことなくJOJOっぽいポージングでレントゲン写真を掲げながら、朗々と張りのあるテノールでマーク・ハリスは言った。
写真に映し出されたアールの腰骨、その横に小指の先ほどの黒い影が寄り添っている。
「サンディエゴの海軍病院で手術は受けたんですがね、あの当時は毎日輸送船を満杯にした負傷兵が前線から送られてきていたから私一人に手間隙かけていられなかったんですよ」
太平洋の戦いでアールを殺し損ねた砲弾の破片はその後何年もかかって筋肉の中をゆっくりと横断し、脊椎の隙間から神経節をチョンと突いたのだ。
そしてその激痛をたまたまホームステイしていた中国人の娘が指圧で取り除いて見せたと聞いたハリス医師は、疑うどころか真顔で言ったものだった。
「東洋では我々の常識は通用しないさ。私も3年ほどイワクニに駐屯したが色々と凄いモノを見たよ、建物を空に飛ばす尼僧(シスター)とか」
さすがにそれは法螺か幻覚だろうと思ったが、アールはなにも言わなかった。
「とにかくまた痛みださんうちに取り出したほうがいい、この手の手術をやりとげるには私はいささか歳を食いすぎたが、フォートスミスかリトルロックのでかい病院なら若くて腕利きの外科医が見つかるだろう」
「時間が取れたらそうしますよ」

その日の夕方、アールはなんの収穫もなく帰宅した。
自分の体調についてはおおむね把握はできたものの、もう一つの要件であるトム・クロームの事情聴取の方は、当の本人が上半身をギプスでガチガチに固めた状態にもかかわらず、公称40インチのバストを持つ看護婦のエマニュエル・グリーンバーグとともに失踪してしまったのだ。
ベッドに残された書き置きには、熱したフライパンに乗せられたミミズのような字で「神は言っている、一番いいおっぱいを頼む」と書かれていた。
その後二人はモルモン教右派に異端認定されたカルトからさらに分派したとあるコミューンの一員となり、きたるべき全面核戦争を生き延びるための避難所を探す旅を、50年ぶりの寒波に見舞われたグレイシャー国立公園内での集団凍死という形で終えるのだがそれはまた別の話である。
そんなわけでなんともやりきれない思いを胸に抱いて郡庁所在地であるブルーアイの手前にある山の中の一軒家に帰宅したアールにとって、フロントグラス越しに見る一人息子、ボブ・リー・スワガーの姿はこの上ない癒しだった。
納屋の前の庭に停まったパトカーの鼻先で、少年ボブは美鈴とともにお気に入りの日課となった太極拳の演武をしていた。
「今日はここまでにしましょうパダワン」
「はい、マスター・メイリン」
二人は車を降りたアールと合流し、先頭にボブ・リー、右後ろにアール、左後ろに美鈴の逆V字編隊を作ってスワガー家の玄関へと向かう。
「グレイト・ボブ・リーはものになりそうかね?」
「彼は30年に一人の逸材ですよ。集中力が素晴らしいし、どんな小さな動きも見逃さない目を持っています」
若干からかいを含んだアールの問いかけに大真面目に答える美鈴。
その顔は才能ある少年に自分の技を伝えることができる喜びに輝いている。
アールにしても自分の息子が「貧弱な坊や」と呼ばれるよりは、腕白でもいいから逞しく育って欲しい。
その日の夕食はジュニィと美鈴の合作による、トウガラシをたっぷり使ったスパイシーなポテト料理だった。
「本当に美鈴は万能ね、貴女にできないことってあるのかしら?」
「3ケタ以上の足し算引き算をやろうとすると頭が爆発します」
手放しで褒め称えるジュニィに真顔で答える美鈴。
「頭の中にダイナマイト」な美鈴を想像したボブ・リーはすぐにそのイメージを打ち消し、心の中で十字を切って「おゆるしください」と唱える。
そのとき玄関のドアが控えめにノックされた。

やつらがやってくるのが見える。
老牧師の言ったとおりだった。
暴徒の数は50人ほどで、そのすべてが酔っ払い特有のあぶなっかしい歩きぶりを晒している。
アールの家を訪れたのはパーシー・ヘアストンというパプテスト教会の牧師で、その訴えの内容はトム・クロームの境遇に憤慨した白人の集団が、有色人街で不穏な行動を起こそうとしているというものだった。
町の警官はあてには出来なかった。
その日はちょうど下院議員“ボス”ハリー・エサリッジの地方遊説が行われる日で、目ぼしい法執行機関の人員は根こそぎそちらに動員されている。
カラードの町に警官が駆けつけるのは町の何箇所かで火の手があがり、何人かの黒人が吊るされてからになるだろう。
アールの心はいっときヘアストン牧師と向き合ったスワガー家の玄関から、1943年11月23日のベティオ島に跳んでいた。
どこもかしこも炎と煙と壊れた兵器と死体だらけの浜辺で失血死しかけている自分。
日本軍の砲弾が降り注ぐなか、傷ついた自分を救護所まで運んでいく名も知らぬ黒人兵たち。
くそっ、私は彼らに一生分の借りがあるんだ!
道路の真ん中で待ち構えるアールとの距離が25フィートちょっとというところで、暴徒の一団は停止した。
「そこをどきな保安官、クロンボどもが白人にナメた真似をすることは許さねえ。世の中には変えちゃならねえ、破っちゃならねえルールがあるんだ」
「そんなルールはいずれ誰かがやって来てあっさり打ち壊してしまうさ。たまたまそれがこの日で、そのだれかは私というわけだ」
「ジャップ相手にヒーローになったからってなアール、今度はそう上手くはいかねえぞ」
「それはお前たちが白人だからか?お前たちにタコツボの中で地形が変わるほどの砲撃に耐えたり、爆薬を背負って戦車に体当たりするほどのガッツがあるとは私には思えないな」
アールは素早く背広を脱ぎ捨てた。
腰のホルスターには州警察正式のコルト・トルーパー357マグナム、さらにショルダーホルスターと抜き撃ち用のヒップホルスター、そしてベルトの内側、バックルの左手側に計3挺のコルト45オートが撃鉄を起こし、セイフティをロックした状態で収まっている。
「おしゃべりは終わりだ。おとなしく家に帰るか、それともここでちょっとした仕事にとりかかるか、今すぐ決めてもらおう」
先頭の男が顔を歪め、意味をなさない叫びをあげながらズボンに突っ込んだリヴォルバーに手を伸ばす。
アールの右腕が鞭のようにしなって一瞬その形がぼやける。
再び右腕が明瞭な形を取り戻したときには、暴徒のリーダーはやっと銃をズボンから抜いたばかりだというのに、アールのマグナム拳銃は正しく相手の胸板に指向されていた。
そしてそのまま引き金が引き絞られ-
火のような痛みが腰から生まれて全身に広がった。
おう、くそ。
おう、くそ。
こんなときに!
アールは擦れた声を漏らすと拳銃を取り落として片膝をつく。
暴徒の拳銃が火を吹くと同時に、その射線を遮るかたちで美鈴が飛び込んできた。
右足を軸に地面を抉るような急旋回で方向転換すると稲妻のような激しさで暴徒の集団を引き裂き、そのド真ん中で縦横に拳を振るう。
目にも留まらぬ速さで突きと蹴りが繰り出されるたび、大の男がボウリングのピンのように宙返りを打ちながら吹き飛んでいく。
アールは朦朧とした意識の中で地面に転がる金属片を見つめた。
歪みも凹みも無い、完全な弾頭部。
もう疑う余地はない。
美鈴は目の前で発射された銃弾を掴み取ったのだ。
地面に転がる30人以上の負傷者を残し、無法者の集団は敗走した。
意識を失う寸前、心配そうに寄り添う美鈴に向かってアールはかろうじて声を絞り出した。
「君は何者なんだ?」
「きっと信じませんよ」
手術を終え、職務に復帰したアールは方々手を尽くして美鈴の行方を捜したが、その夜を最後に美鈴がスワガー家の面々の前に姿を現すことは二度となかった。

「-ということがあったのよ」
「へ~それは大変でしたね~。よいしょ、よいしょ、田植えも大変だ…」
卓袱台の上に広げたアルバムを前に昔話にふける紫の横では、膝まで泥につかったそうじが―部屋の中で―水田に稲を植えている。
「なによそうじ!真面目に聞きなさいよ!」
「真面目に聞くような話ですか!」
珍しく反論するそうじ。
「その話が本当だとして美鈴さん一体何歳なんですか?」
「ゆかりんわかんな~い(はあと)」
両手を顔の前で組み、小首を傾げて恥らう乙女のポーズ。
「ごまかさないでください!」
そうじのピコピコハンマーが炸裂する。
「ああ!?何するのよそうじのクセに!」
「ボクだっていつまでもやられっぱなしじゃありません!」
激しく打ち合う日傘とピコピコハンマー。
畳の上に投げ出されたアルバムに貼られたセピア色の写真の中では、どこか外国らしいレストランで働くウエイトレス姿の美鈴が困ったような笑顔を浮かべていた。



[33345] 【ネタ】マカロニ星蓮荘:ちょー人のリング【ネタ】
Name: yasu◆2f76073d ID:3bb6a9fb
Date: 2012/07/08 18:58
「プロレスをしましょう」
夕食の席でホッケの煮付けを食べながら、聖白蓮が言った。
「それは素晴らしい!」
打てば響くとばかりに諸手をあげて賛成する寅丸星
背後で毘沙門天の幽波紋(スタンド)が頭を抱えている。
「まてまてまてご主人、イエスマンにも程があるぞ?」
頑張れナズーリン、超頑張れ。
でもチーズのおかずにご飯というのはいかがなものか?
「ああ、今年もアレの季節なのね」
美鈴のオカズに箸を伸ばしながら紫が言う。
「アレ?」
「毎年この時期に商店街で夏祭りのイベントをやるんですよ」
そうじの疑問に、紫の箸を回し受けで捌きながら美鈴が答える。
「そういえば去年河川敷で花火大会をやったときは鉄道橋が落ちちゃったねえ」
きゅうりの酢の物を頬張りながらほがらかに笑う河城にとり。
笑い事ちゃうやろ。
「まあいいんじゃないの、聖が参加すれば人も集まるだろうし」
真アジの刺身を肴に一杯やりながら村沙が賛成を表明する。
その言葉を聞いてネットで散見する格ゲーキャラ風の肌も露わなリングコスチュームを纏った白蓮を想像し、思わず前屈みになるそうじ。
「地域の活性化のためにここは人肌脱ぐべきでしょう」
雲山の体に割り箸を絡ませ、綿飴モドキを作りながら一輪も同意する。
「これで決まりね!」
ポンと掌を打ち合わせて嬉しそうな表情をする白蓮。
「これで頼んでおいた衣装が無駄にならずに済むわ」
「衣装って?」
「自転車屋さんの末っ子さんがちょうど里帰りしてたからお願いしちゃったの♪」
その頃の自転車屋さんの末っ子さんとそのお弟子さん-
「ユウ!いくら毎度の特急仕事だからってこれは一寸無茶だよ!」
「口動かす暇があったら手ェ動かせ!あの女にだけは逆らっちゃいけねェんだッ!」
「そうめんできたよー」

そして夏祭り当日-
「全選手入場っ!」
ロイ・バットが作曲した1978年の英国映画「ワイルド・ギース」の勇壮なメインタイトルに乗って、商店街の真ん中に設けられた特設会場に戦士たちが姿を現す。
「まずは商店街チームの精鋭がやってまいりました!」
「大戦鬼が嵐を呼ぶ!鬼丸飯店看板娘・鬼丸美輝ッ!戦いは筋肉でやるものではない!パンのユエット看板娘・神無月めぐみッ!中の人などいない!スーパーテッコツ堂店員・青鮫ッ!獣王伝説再びッ!遠藤家番犬・敏行!さらに嬉し恥ずかし超豪華スペシャルゲスト、月光将軍ヘルズバニーッ!」
「続いての入場は口八丁手八丁、卑怯未練恥知らず、ネロス帝国モンスター軍団ッ!」
「男はタフでなければならないッ!凱聖ゲルドリング!狼男ですか?いいえ蜘蛛男でした、豪将ブライディ!のびるのびる!暴魂バンコーラ!土下座してからが本当の勝負だッ!雄闘ガマドーン、類似品(仮面ライダー・真)にご注意ください、爆闘士ダムネン!」
「まさか彼らが来てくれるとはッ!『キン肉マン』の裏アイドル、ビッグボディチーム!」
「今度こそ見られるのか?幻の大技、メイプルリーフ・クラッチ!キン肉マン・ビッグボディ!イマイチ印象薄いけどこれでも副将!キャノンボーラー!やっぱり印象薄いけどこれでも中堅、ゴーレムマン!説明不要!僕らのカリスマ、レオパルドン!一度聞いてみたかった!頭のペンチ開いたら脳ミソどーなるんですかぁー!?ペンチマン!」
「そしていよいよ大本命、星蓮荘チームが入場します!」
「先頭はやはりこの人、超人・聖白蓮!続いて影は薄いが地味に強い!毘沙門天の弟子・寅丸星!今宵の道連れアンカーは血に飢えている!これもセーラー戦士と言えなくもない?!村沙水蜜!誰が呼んだかUSC(アルティメット・サディスティック・クリーチャー)、四季のフラワーマスター・風見幽香!中国四千年の奥義が炸裂する!華人小娘・紅美鈴!」
リングを囲んで観衆の声援に応える選手たち。
早速ヘルズバニーにお触りしようとしたダムネンが杵でどつかれている。
「優勝チームに送られる豪華商品はピース電気提供のDVDレコーダー内臓アナログテレビです」
「オマケの超電動アナログマ人形がなんだかとってもサイバーでメタルであとドリルだ!」
「そしてもう一つ、ブーゲンビリア商会日本支社が提供するPSO-1スコープ付きドラグノフ半自動小銃の無稼動実銃を交換パーツとセットでプレゼント!」
「それってパーツ交換したら発射可能なんじゃ…」
「さあ、出場チームが一旦控え室に引き揚げます!」

「で、なんで 超 人 である俺たちが商店街のプロレス興行に出なきゃならないんだ大将?」
「そ、それがよくわからないんだ…聖白蓮にうまく乗せられたような……」
控え室で部下に詰問され、しどろもどろなビッグボディ。
筋肉は立派だがイマイチ覇気が足りない。
「そう責めるなペンチマン、リーダーもそんな生まれたての小鹿みたいにガクブルしてないでしゃんとしてください」
なんて頼りになるんだキャノンボーラー。
印象薄いけど。

「それにしてもよくこれだけ曲者どもを呼び集めたもんよねぇ…」
白蓮の人脈(?)の豊富さに、さすがの紫も感心するやら呆れるやら。
「残念だわ、日程が合わなくて断ってきた人たちにも楽しんでほしかったのに…」
「まだ誰か呼ぶつもりだったんですか?」
「ええ、ネオ・ゲゼルシャフトの皆さんとかデッドプールさんとかロールシャッハさんとか…」
それ以上いけない!
そこに東京ドーム地下闘技場から出張してきた小坊主が顔を出す。
「時間です」

「それではいよいよ試合開始!」
「-と言いたいところですが諸般の事情により先鋒戦から副将戦まではキングクリムゾンされました」
「是非読みたいという方は後日民明書房から出版される完全版にご期待ください!」
リング上はいきなり大将戦。
対峙するゲルドリングと聖白蓮。
「おーっと、いきなり右手を差し出した!何を考えるゲルドリングッ!」
「まずは握手や、聖はん」
「聖ッ!罠ですッ!」
セコンドの星が叫ぶ。
「いけませんよ星、人を見かけで判断しては」
いや人じゃないし。
にっこり笑って右手を伸ばす白蓮。
ゲルドリングの手が、ガシッ!と握った。
差し出された白蓮の右手を素通りして、大胆なリングコスチュームを突き破らんばかりに盛り上がった胸を-
静まり返る大観衆。
実況さえ声を失っている。
「これは何のマネでしょうか?」
「ナニって?握手にきまっとるやろが」
豊満な乳房を鷲掴みにした掌を、餅を捏ねるようにグリグリと動かす。
「そうですか…」
白蓮の手が、たっぷりとしたボリュウムを持つ乳球を弄り続けるゲルドリングの掌に優しく添えられる。
そして菩薩の笑みを浮かべたまま小指を-

ペキン。

-折った。
「くぁw背drftgyふじこlp;@:!!!」
慌てて白蓮を振りほどこうとするゲルドリングにそうはさせじとグラマラスな肢体が絡みつく。
そして実に不健全な体位を連発するグラウンドの攻防に観客総勃ち(誤字じゃないわよ)。
「大家さんって打撃系かと思ってたけど間接技もいけるんですね」
「聖はその昔、40人からの野盗にひとりずつアームロックをかけながら説法を聞かせて全員を改心させたという武勇伝の持ち主だからね」
感心する美鈴に得意げに解説するナズーリン。
「それはちょっと無理があるんじゃ…」
「でも聖だよ?」
「何故だろう…否定しきれない謎の説得力」
コメカミに手を当てて蹲るそうじ。
いや「野盗」という単語がナチュラルに出てくる時点で色々とおかしい。
そして3分後-
「ゲルドリング選手、なにか一言!」
身体の各部位がありえない角度に折り曲げられた状態で担架に乗せられ退場するゲルドリングに、無慈悲なマイクが突きつけられる。
「ギ…ギリギリぷりん……」
「ありがとーございましたぁーっ!」
そしてキングクリムゾン再び-

リング中央に進み出るレオパルドン。
ランドセル形式の砲塔を外し、左腕の銃身にコブラと同じ腕型のカバーを取り付けたレオパルドンは一見ごく普通のマスクマンに見える。
対するはぱっつんぱっつんな白スク水の風見幽香。
「ファイッ!」
ゴングと同時に飛び出す幽香。
レオパルドンも突進する。
「グオゴゴゴッ!」
リング中央で激突する二人、互いに繰り出した拳がクロスカウンターとなって相手の顔面に突き刺さる。
いい一発をもらって後ろにのけぞる幽香だったがすぐさま立ち直ると左手を伸ばし、レオパルドンの首根っこを掴んで右の拳を振りかぶる。
レオパルドンも振りかぶる。
そして二人は鏡合わせのように同じモーション、同じリズムで相手の顔面を-
殴った、殴った、殴った、殴った、殴った、殴った、殴った、殴った、殴った、殴った、殴った、殴った、殴った、殴った、殴った、殴った、殴った、殴った、殴った、殴った、殴った、殴った、殴った、殴った、殴った、殴った、殴った、殴った、殴った、殴った、殴った、殴った、殴った、殴った、殴った、殴った、殴った、殴った、殴った、殴った、殴った、殴った、殴った、殴った、殴った、殴った、殴った、殴った、殴った、殴った、殴った、殴った、殴った、殴った、殴った、殴った、殴った、殴った、殴った、殴った、殴った、殴った、殴った、殴った、殴った、殴った、殴った、殴った、殴った、殴った、殴った、殴った、殴った、殴った、殴った、殴った、殴った、殴った、殴った。
-また殴った。
「両者一歩も譲らないッ!ものすごい殴り合いだぁーっ!!」
「これは…っ!まごうことなき…っ!2002年6月23日のさいたまアリーナ!ドン・フライVS高山喜廣戦の、再現…ッ!!」
12分後-
救護所を訪れた紫は、戦車男と枕を並べて横たわる究極加虐生命体の丹念に破壊された顔を覗き込んだ。
「らしくないことしたわねぇ」
「一度やってみたかったのよ」
幽香は隣に横たわるレオパルドンを見て、滅茶苦茶に変形した顔に微笑み(のようなもの)を浮かべた。
「こんな男と、こんなケンカをね…」
三たびキングクリムゾン-

リング上には星蓮荘チーム先鋒・美鈴と商店街チーム先鋒・青鮫。
(この人…強い!)
戦士の勘が目の前の相手の秘めた実力に警鐘を鳴らす。
いよいよ試合開始というまさにそのとき-
ちゅどどどど~んっ!
リングを中心とした一帯に突如として起こる小爆発。
「おーっと、ここでモンスター軍団の乱入だぁーっ!?」
「ワイらに優勝のメがのうなった以上こんなトコロは用無しじゃい、掻き回すだけ掻き回して金目のモン頂いてトンズラじゃあ~っ!」
「アラホラサッサーッ!」×4
「我々が盛り上げた大会をぶち壊されてなるものか!いくぞお前たちっ!」
「オーケーボスッ!」×4
ビッグボディチームも飛び込んでたちまち夏祭り会場は混乱の坩堝に。
「まことに身勝手で!不届き千万である!いざ、南無三―――――っ!」
「出た、聖の南無三が出たぁっっ!」
「キャーナムサーン!」
「ここはこの正体がグラハム・エイカーのミスター・ブシドーが行こう!」
「いや、本当にグラハム・エイカーじゃないこのミスター・ブシドーのほうが強いぞ!」
「やらないか?」
「ゲェーッ!アベさんがズボンのベルトを―――――っ!?」
「アッ――――――――――!!!」
「お菓子好きかい?」
「収拾がつかなくなってきたところでごきげんようさようなら!」



[33345] 【ネタ】マカロニ星蓮荘:悪魔はふたたび【ネタ】
Name: yasu◆2f76073d ID:3bb6a9fb
Date: 2012/07/14 21:34
真夜中の命蓮寺。
蝋燭の灯りが点る薄暗い本堂に、そうじはひとり佇んでいる。
物音一つしない暗闇は少年を酷く落ち着かない気分にさせた。
ふと上を見上げると、天井一杯に描かれた曼荼羅の中心では全盛期のアーノルド・シュワルツェネッガーさえ凌ぐ聖☆マッスルな肉体を誇示する仏陀が憤怒の形相で絞り染めのTシャツを着たジョニー・デップ似のロン毛にアルゼンチン・バックブリーカーをかまし、その周囲では十二神将が6人対6人に分かれてカバディに興じている。
頭痛を覚えたそうじは右手の親指と人差し指で両のコメカミを揉んだ。
その時である-
「そうじ君…」
そうじはいきなり耳元でささやかれた声に驚愕する。
ふりむくとそこには妖しげな笑みを浮かべた聖白蓮。
そうじが口を開くよりも早く、いきなり抱きついてきた白蓮の唇がそうじの唇に吸い付いた。
そして唇を割って侵入した舌が、驚きのあまり思考停止に陥った少年の、無防備な歯茎をじゅるじゅると音を立ててしゃぶりまわす。
たっぷり10秒ほどその行為を続けてから、白蓮の唇はそっと離れた。
そして再度舌を伸ばせばすぐそうじの唇に届く距離を保ち、たっぷりと艶を含んだ声で問いかける。
「私を見たい?」
そして白蓮は棒立ちのそうじをその場に残して三歩下がり、法衣の襟元に指をかけた。
「見てもいいわ…」
少年の目の前に、法衣の前を肌蹴た妙齢の美女の胸から下腹部までが晒される。
着衣による圧迫から解放され、豊な美乳がゴム鞠のように弾んだ。
そうじの視線をクギ付けにしたまま白蓮は服を脱ぎ、下着を取り去る。
そして一糸纏わぬ姿になった白蓮は輝くばかりの裸身を板の間に横たえ、両手で顔を覆ってそっと言った。
「見てるの?」
そうじの最後の理性が音を立てて蒸発した。
「ふぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!」

パッパッパッパッパッパッパッパッパ―――――――――――――――――ッ!!
健全な思春期の少年の夢想を木っ端微塵に打ち砕くけたたましいラッパの音。
「総員起こーし!総員起こーし!」
「朝だー!夜明けだ!月月火水木金金っ!」
海軍上等整備兵曹陸戦衣を着てめ組の纏を振り回す美鈴と、頭に防空頭巾を被り「麻布十番挺身婦人会」と描かれたタスキを掛けたモンペ姿の紫が大声で叫びながら走り回っている。
「一体何事ですか!?」
思わず大声をあげてしまうそうじ。
一瞬にしてコスチュームチェンジしたクワイ・ガン・ユカリンの腹を、ダース・メーリンのツインブレード・ライトセイバーが貫いたポーズでピタリと固まる二人。
「そうじ!貴方今日が何の日か知らないの!?」
腹に空いた穴からニッスイの魚肉ウインナーをこぼしながら紫が言う。
「何の日ですか!?」
「日曜日よッ!」
胸を張って断言する紫。
そうじは渾身の頭突きで畳をブチ抜くリアクションでもって応える。
「ほらほら、体張ったボケはいいからさっさと支度しなさい」
「そうですよ、はやく着替えないと」
断固とした態度でそうじの寝巻きを脱がせていく紫と美鈴。
「あ、ちょっとまって!そ、ソコは…アッ―――――!?」

命蓮寺の境内には星蓮荘のメンバーがずらりと雁首を揃えていた。
学校指定の水色のジャージを着用したそうじを筆頭に、全員が野外作業に適した活動的な服装をしている。
ベンチに腰かけ、ツナギのジッパーを下ろしてサムズアップをしている若い男についてはスルーということで。
「よーし、全員そろってるね」
いかにも委員長キャラらしくきびきびと点呼をとる一輪。
ビル清掃会社の職員風のクリーム色の作業着といつもの紺の頭巾が妙にマッチしている。
そして短パン姿の一輪の剥き出しのふくらはぎにスリスリしている雲山、お前ちょっとそこ代われ。
「聖は!聖はまだですか!」
「すぐ来るから落ち着きたまえご主人」
黄色いヘルメットとニッカボッカが異様にハマる星を宥めるナズーリン。
「そういやにとりもまだなんだけど」
「にとりは車をとりに行ってるよ」
などと言っている間に聖が来た。
「あらあら、私が一番最後になっちゃったわね」
その姿をひと目見たそうじの顎がガクンと落ちる。
色っぽいを通り越して犯罪的とすら言えるボディに纏うのはぱっつんぱっつんな体操服と紺のブルマ。
シャツを突き破らんばかりに盛り上がった胸に縫い付けられたゼッケンには、ご丁寧にひらがなで「ひじり」と書かれている。
「パーフェクトです聖!」
「見惚れるのもいいがご主人、失血死するまえに鼻血をなんとかしてくれ、頼むから…」
疲れきった表情で、それでも甲斐甲斐しく星の鼻にタオルをあてがうナズーリン。
強く生きてくだせえ。
そこに腹に響くエンジン音と地響きが接近する。
「おまたせ~♪」
操縦手ハッチから頭を突き出したにとりが転がしてきたのはシャーマン戦車をベースにしたえらく物物しい装軌車両だった。
足回りは水平スプリング式サスペンション(HVSS)にゴム製のT84履帯。
一体鋳造の変速機カバーは先の尖ったシャープノーズ型。
車体は前部が鋳造で後部が溶接の“コンポジット・ハル”と呼ばれる形式だ。
饅頭形の鋳造砲塔は後部バスルが拡張された後期型で車長用ハッチはビジョンブロック付きの一方解放型。
M52砲架には榴弾(HE)、対戦車榴弾(HEAT)、発煙弾(WP)を発射可能な95ミリ榴弾砲Mk.1が装備され、ごつい防盾からブリティッシュな香り漂うカウンターウエイト付きの太短い砲身を突き出している。
砲塔上のスタンド型銃架に載せられているのは正式採用以来79年を経ていまだ現役選手という、偉大な“ビッグ50”ことブローニングM2重機関銃だ。
そして車体を跨ぐように装備されたAフレーム形クレーンを筆頭に、ドーザーブレード、パイルバンカー、ウインチ、工具箱、補助発電機、車外通話機、60ミリ迫撃砲、RP-3ロケット弾、投光器、ラウドスピーカー、予備転輪、予備履帯、予備の賽銭箱といった装備品が車体といわず砲塔といわず、これでもかとばかりに取り付けられている。
「なんですかこの『西部新宿戦線異状なし』は!?」
どう見ても戦闘工兵車なビーグルの登場に目を剥くそうじ。
「いやね、最初は普通の軽トラックだったんだけど、あちこち弄り回してるうちに気がついたらこうなってた」
第6機甲師団のエンブレムを縫い付けたB-3フライトジャケットを羽織り、英国空軍の革の飛行帽を被ったにとりがハッチから半身を乗り出しどや顔でのたまう。
「どんな改造したら軽トラックがこうなるんですか…」
溜息をつくそうじ。
なんか今日もろくでもない騒ぎになりそうな予感がする。
「ほらまた悲観的な顔してる!もっと明るいものの見方をして、前途に希望を持たなくっちゃ!」
にっこり笑ってそうじの肩をバシバシと叩くにとり。
もちろん吹き替えは宍戸錠だ。
「それでは全員乗車、出発!」
白蓮の号令とともにわらわらと戦闘工兵車に取り付く一堂。
まるでソビエト赤軍伝統のタンクデサントが甦ったかのような光景だ。
「それじゃミュージック・スタート!」
砲塔横のスピーカーからマイク・カーブ&コングリケイションズが歌う「Burning Bridges」を大音量で流しながら走り出すシャーマンCEVsにとりカスタム。
途中、道路の真ん中でパラリラってる珍走団に榴弾撃ち込んだり、ファミレスの駐車場でダベってる珍走団にM2重機関銃掃射したり、公園の清掃活動してる珍走団に榴弾撃ち込んだりしながら走行するCEVsの車上で操縦手ハッチの横に腰かけたそうじはハッチから頭を突き出したにとり相手に、エンジンの唸りと履帯が立てる騒音に負けないよう声を張り上げて会話していた。
「それで今日は何をやるんですか!」
「こないだの大雨で河川敷の護岸が崩れたろ!堤防の下から前の戦争で放棄された兵器が見つかったんでボランティアで回収作業をすることになったのさ!」
「でもよく紫さんまで参加する気になりましたね!?」
「そりゃ聖の修正喰らって衛星軌道まで打ち上げられるのは御免こうむりたいだろうさ!」
【びゃくれん☆ビンタ】で検索するなよ?絶対するなよ!

「なんなんだコレは…」
作業開始から97分、川底から続々と引き揚げられる兵器群を眺めてそうじは絶句する。
カーチス・ホーク75Aやスコダ38(t)といった第二次世界大戦期の戦闘機や戦車。
ATH-06-STやB・ATM-03といった、アストラギウス銀河文明が生み出した攻撃と機動のための直立一人乗り戦車。
撃震やMig21といった第一世代戦術機。
レブラプターやハンマーロックといったゼンマイ動力の小型ゾイド。
泥の中で酸素から遮断されていたためか錆ひとつないそれらは、燃料を補給してバッテリーを繋げば今すぐにでも動きだしそうだ。
「前の戦争ってどこが相手だったんですか?」
「まあ色々あるんだよこの町は」
追求すると怖い考えになりそうな予感がしながらも尋ねずにはいられないそうじに、ナズーリンは苦笑して肩をすくめるのみだった。
そんななか、機械に目が無いにとりは鼻歌まじりで使えそうなパーツを物色している。
自身の発明に使えそうなものは命蓮寺地下の秘密格納庫に隠匿し、残りはボーダー商事に卸すのだ。
ちなみに専務の藍とはちょくちょく顔を合わせるが、社長は見たことがないし名前も知らない。
「おや?これは…」
にとりは物騒な見てくれの兵器群の中から、棺桶に似た赤と青の二つのカプセルを見つけ出した。
「まさか“素体”とか入ってないよね?」
むせる展開は御免だよなどと言いながら開閉装置を探る。
するとにわかに黒雲が太陽を覆い隠し、一条の稲妻がカプセルを直撃する。
赤いカプセルが大爆発を起こし、爆炎の中から弦楽器を加工したような咆哮とともに真紅の巨体が現れた。
「怪獣だぁーっ!」
驚く一同。
なぜか美鈴の姿が消えているが気にしたら負けだ。
ワイヤー操演のようにふわふわした動きのF-104が飛んできてミサイル攻撃をはじめたが、赤い怪獣がひょっとこのように窄めた口から火炎を吹くと模型飛行機のようにあっさり墜ちていく。
そして今度は青いカプセルが閃光を放った。
「ああっ!もう一つのカプセルからメイド服着た銀髪の怪獣がー!」
「正体はなんなんだぁー(棒)」
メイド怪獣が赤い怪獣をジロリと睨む。
思わず半歩引いてしまう赤い怪獣。
どうも赤い怪獣はメイド怪獣が苦手のようだ。
メイド怪獣が突っかける。
赤い怪獣も受けてたつ。
がっぷり四つに組んだ二頭は組み合ったまま陸上競技場の外壁を破壊してグラウンドに倒れこんだ。
「よし、攻撃!」
スーパーガンを手にした星が先頭に立ち、スパイダーショットを手にしたナズーリンが後に続く。
「さあ、私たちも!」
「え?いや、ちょっと!?」
「こうなったら一連托生だよ少年」
村沙と一輪に両側から腕をとられむりやり連行されるそうじ。
両肘に当たる柔らかな感触も全然うれしくない。
グラウンドの攻防を続けていた二大怪獣は光線銃の掃射を受けてぱっと分かれた。
素早く起き上がった赤い怪獣が距離をとって火炎放射。
だがメイド怪獣の飛ばす白い泡が炎を消し、そればかりか赤い怪獣の着衣を溶かしてしまう。
生まれたままの姿を晒してうろたえる赤い怪獣をメイド怪獣が押し倒す。
「いかん、このままでは…」
「XXX板行きになってしまいますねえ」
「どうすれバインダー!?」
「こうなったら彼女を呼ぶしか…」
脳内CVが舘ひろしなミニスカートの人ですねわかります。
そのとき、百万燭光の輝きとともに紫のグラデーションがかかった光の巨人が現れる。
「あれ?今度は聖の姿が…」
再度泡を飛ばすメイド怪獣。
だが光の巨人が円を描くように両手を振ると泡は朝霞のように掻き消されてしまう。
「マ…ワ…シ…受け……」
「なんと見事な!」
流石に潜ってきた修羅場の数が並じゃない命蓮寺メンバーは、巨人の技量が相当なものであることを一目で見抜く。
そこからはずっと巨人のターン。
ヤクザキックに払い腰、倒れた相手に馬乗りになってのモンゴリアンチョップ。
往年の全日本プロレスが甦ったかのような殺陣である。
そしてトドメの首投げ一閃、メイド怪獣はあっけなく絶命してしまうのだった。
涙目で蹲る赤い怪獣にマントを掛けてやった光の巨人が怪獣をお姫様抱っこして飛び上がる。
美鈴と白蓮が戻ってきたのは、巨人と怪獣が雲の彼方に姿を消した20秒後のことでしたとさ。



[33345] 【ネタ】マカロニ星蓮荘:そうじととら【ネタ】
Name: yasu◆07feb795 ID:a5a60303
Date: 2015/05/11 20:18
今日も今日とて星蓮荘では、八雲紫&紅美鈴の四次元殺法コンビと寅丸星&ナズーリンのモーストデンジャラスコンビの間で、家賃の取り立てという名の戦いのワンダーランドが繰り広げられていた。
「ご主人、もうこのくらいにしないか?」
すでにナズーリンはダンケルクと真珠湾とスターリングラードをハシゴしたくらい疲れ切った顔をしている。
「家賃の滞納なんて昨日今日の話じゃないんだし、もう一週間ほど待ってやったって…」
「何を言っているのですかナズーリン!そういう融和主義的な政策がナチスを増長させたから第二次大戦は起きたんです!」
などと言いつつ、紫が開いたスキマから飛び出した殺人魚フライングキラーを宝棒で打ち払う毘沙門天代理。
「ったく、僕は頭脳労働者なのに!」
などと言いつつ、美鈴が振るう九節鞭を紙一重でかわす小さな賢将。
急所への直撃は避けたものの、亜音速に達した金属製の鞭の先端が小さなお尻から伸びる尻尾の付け根を掠める。
「ひゃぅン!」
そこが敏感ポイントだったのか可愛らしい声をあげてビクンと背筋を弓形に反らし、一瞬の硬直状態に陥るナズーリン。
そしてその隙を見逃す美鈴ではない。
まったりとしているように見えていつの間にか間合いに入られているという達人の動きで背後に回り込み、後ろ襟ぐりをちょいと引っ張って着衣と首の後ろとの間に開いた空間によく冷えたところ天を流し込む。
「~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ッ!?!」
悶絶するナズーリンの方に注意を逸らした星を見て、紫も勝負に出た。
大きく開いたスキマからBT-5(ベーテービャーチ)を引っ張り出すと、石馬戒厳のコスプレをした同志すみぺ-なぜかセットでついてきた-とともに旧ソ連製の快速戦車に飛び乗り星に向かって突撃する。
「木端ミジンコだヒャッハ―――――ッ!」
「ypaaaaaaaaaaaaaaa!」
「危ない!」
それまで手を出しかねて傍観に徹していたそうじがさすがに見ていられないと飛び出すが、なぜか足元に落ちていたマルサンのリモコン式バラゴンを踏んでバランスを崩し、星の胸にトペ・スイシーダ気味に飛び込んだ。
「ご、ごめんなさい!」
結果的に星を押し倒したうえ意外に豊かな胸に顔を密着させてしまうというパーフェクトにお約束な展開をかましたそうじは慌てて立ち上がろうとするが、やみくもに伸ばした手が星の髪飾りを掴んで頭から引っこ抜いてしまう。
「があああああっ!」
とたんに暴れはじめる毘沙門天代理。
バキボキメキビキと音を立てて、寅丸星は変わっていく。
爪が伸びる、牙が伸びる。
筋肉は厚みを増し、ボディラインも人間型からネコ科の大型肉食獣を思わせるものになっていく。
そして変化が完成した星は金色の獣毛に全身を覆われ、顔に歌舞伎の隈取のような模様を浮かび上がらせた大妖怪となっていた。
「あ~、星さん?」
「なんか…大胆なイメチェンね」
金色の化生へと変じた星の、黒目のない半月形の目がギロリと二人を睨みつけた。
「だぁれが星だってェ、あぁ~ん?」
前日にジンを飲み過ぎたようなガラガラ声だった。
「なんか声がブラック魔王みたいですよ紫さん」
「あらあらちがうわよ、ペールゼン大佐よ」
どっちも大塚周夫である。
「わしは“とら”だ!」
ゴオッ!と口から火を吐く星-もとい、とら。
「ハイッ!」
美鈴の両腕が美しい真円の軌道を描いて炎を打ち払う。
「おお、廻し受け!」
「なんと見事な!」
中国四千年の美技に素直に賞賛の声をあげる紫とそうじ。
「ふっ、この程度の攻撃で私を倒せると思ったら――」
ヅドンッ!
とらが放った雷が、ドヤ顔で構えを解いた美鈴を直撃した。
黒焦げアフロと化してばったり倒れる華人小娘。
「ああ、美鈴さん!」
「傷は深いわ、往生しなさい!」
などといいつつ美鈴に駆け寄るそうじと紫を無視し、窓から飛び出したとらは黒煙を引きながら超スピードで飛び去るのだった。

「そうですか、それは困りましたねえ」
両腕を組んでう~んと唸る聖白蓮。
豊満過ぎる胸肉が腕の中でひしゃげて凄い光景になっている。
「一体なにがどうなってるんですか?」
そうじの問いかけに答え、交互に解説を始める聖とナズさん。
その昔、星は手のつけられない暴れ者であった。
そこで聖の相談を受けた毘沙門天はナズーリンにひとつのアイテムを持たせ、白蓮のもとへ遣わした。
「それがご主人の髪飾りだ」
「それには毘沙門天様の法力が込められているの」
そしてその髪飾りに仕込まれた針を星の脳幹に打ち込むことによって、攻撃衝動を抑え込んでいたのだという。
「それはロボトミー手術というのでは…」
そうじのツッコミに尼公は、にっこり笑って言ったものだった。
「いいじゃないですか皆が健やかに暮らせるなら」
なんという本当は怖い命蓮寺。
「とにかく星の封印が解けたからには“これ”を使うしかないわ」
雲山が運んできた木箱から取り出したのは拵えからしておそろしく古い一本の槍。
「これぞ千年前から命蓮寺に伝わる霊槍、<獣の槍>」
「け、獣(けもの)の槍?」
「じゃなくて獣(ケダモノ)の槍、これで星を死なない程度にぶちのめして頂戴」
白蓮の視線と態度は明らかにそうじを指名している。
「な、なぜ僕が!?」
「この槍は18歳以下の童貞で、なおかつ美少年じゃないと使えないの」
なにそのくさったせってい。
「はい、そうじ君♪」
「はいって…え?え!?」
笑顔で手渡された槍をつい受け取ってしまうそうじ。
そうじが槍を握ったそのとき、槍は生き物のようにビクンと震え、同時にぬらりと妖しい光を放つ。
「くぁwせdrftgyふじこ;@:!?!」
人間には発音不能な叫び声をあげながら、そうじの姿が変わっていく。
髪はザワザワと蠢きながら足元に届くほどの長さとなり、目は皿のように見開かれ、口は耳まで裂けるわ犬歯は伸びるわもうわやくちゃ。
さらになんだかよくわからない不可視のエネルギーの暴発によってシャツと靴が吹っ飛び、上半身裸で黒の学生ズボンに裸足という姿は、ある意味槍の使い手として王道なヴィジュアルと言えるかもしれない。
「アイエエエエエエエエエエェっ!」
そうじは天を仰いで一声吠えると屋根より高くジャンプして風のように駆けだした。
「追うわよ!」
「イエス、紫さん!」
紫が開いたスキマから現れたのはゼッケン2番ヒュードロクーペ。
運転席に飛び乗った美鈴がシフトレバーをGの位置に落とすと、屋根に乗った尖塔から超音波怪獣ギャオスの首と翼と尻尾がにょきっ!と生えた。
ちゃんと昼間でも活動できる全身銀色の宇宙ギャオスである。
「スクランブルテイクオフよ!」
「ラジャッ!」
美鈴がアクセルを踏むと、ギャオスは一声“ギャーッ!”と鳴いて年代ものの黒塗りのクーペを空へと運んだ。

山の上の神社へと続く夕暮れの小道を少女が一人歩いている。
青いスカートに緑の髪、ノースリーブのブラウスからちらりと覗く腋が地味にエロい、激しく概視感を覚える少女であった。
「~~~~~♪」
右手に「ボトムズオデッセイ」を入れた<まんだらけ>のビニール袋、左手にレナード・ニモイがガルバトロンの声を演じた「トランスフォーマー・ザ・ムービー」のDVDを入れたTSUTAYAの手提げ袋を持ち、「全人類ノ非想天則」をハミングしながら満面の笑みで歩くその少女の前に、雑木林の中からいきなり槍を持った少年が飛び出してきた。
「ギギギギギ……」
5メートルほどの距離をとって着地した少年が血走った目を少女に向ける。
「あ、ああ……」
ぺたんと尻もちをついて怯えた声をあげる少女。
ちなみに白とブルーのストライプである(なにが?)。
「アダモステ―――――ッ!」
少年は奇声を発しながら少女に向かって突進し――
「い、いやあぁ―――――っ!」
――悲鳴をあげる少女の脇を素通りして猛スピードで去っていった。
「バカバカ意気地なし!襲って欲しかったのに!諏訪子様に言いつけてやるからぁ!」
おまえわなにおいっているんだ?

秋姉妹を乗せた真っ赤な1968年型フィアット500は直列二気筒の空冷エンジンを唸らせ、都心環状を時速54キロでかっとばしていた。
ハンドルを握る秋静葉と助手席に座る秋穣子、その日一日を都内のスーパー銭湯でまったりと過ごし、風呂とエステを存分に楽しんだ姉妹は二人そろって上機嫌だった。
「どこかで美味しい天ぷらが食べたいわねえ」
「私おうどんがいいな~」
「じゃあ間をとって天ぷらうどん!」
「さんせ~い!」
ガオンッ!
宇宙ギャオスが放った超音波メスがフィアットのボディの数学的中心線を正確になぞる。
「お姉ちゃ――――――――――ん!」
「穣子――――――――――――っ!」
綺麗に二等分されたイタリア製の大衆車は穣子を乗せた右半分が本線を、静葉を乗せた左半分が一般道に合流する側道を、奇跡的なバランスを保ちながら走り抜けていった。

「紫さん、なんか周囲の被害がシャレになってないんですが」
超音波メスの流れ弾丸を受け、倍速撮影でゆっくりと倒壊する強力わかもとのネオン塔を横目で見つつヒュードロクーペを運転する美鈴。
「んなこたぁーどーでもいいのよ!」
助手席から身を乗り出した紫は合板製のスケルトンストックがオサレな旧ソ連製の軍用狙撃銃ドラグノフSVDを撃ちまくっている。
二人を乗せた怪奇自動車はそうじを見失った代わりにとらを発見し、東京上空で大空中戦を演じていた。
「チッ、すばしっこいわねまったく!」
悪態をつきながら7.62×54Rの競技用弾薬を装填したマガジンをライフルに叩き込む。
標準的なSVDは4倍率のPSO-1スコープがマウントされているのだが、視界が制限されることを嫌った紫は照準眼鏡を取っ払い、アイアンサイトを用いていた。
「さあ観念しな――」
ちゅど―――――んっ!
照門と照星が重なった直線上にとらの胴体を捕えた紫が引き金を引き絞ろうとしたそのとき、百里基地から緊急発進してきたF-4EJファントムⅡ680号機が発射したレーダー追尾式の空対空ミサイルが、夕焼け空に汚い花火を咲かせた。
「バンガオ――――――――――ッ!」
ラーメン二郎の看板の上に仁王立ちし、稲妻を纏って咆哮するとら。
その前に槍を手にしたそうじがストンと降り立つ。
無言で対峙する二人(?)の間を乾いた風が吹き抜ける。
「ぶえっくし!」
「エマニエル夫人」三部作を上映しているミニシアターから出てきた森近霖之助のくしゃみを合図に、とらとそうじは激突した。
一瞬の交錯ののち、10メートルの距離をとって互いに背中を向けあう少年と妖獣。
ばったりと倒れたのは黄金の妖獣だった。

「オンベイシラマンダヤソワカオンベイシラ――」
白蓮が真言を唱えながら髪飾りを装着すると、とらの身体が金色の輝きを放つ。
光りが消えるとそこにはもとの姿に戻った寅丸星(全裸)。
「これにて一件落着」
ほがらかに宣言する聖☆お姉さん。
その胸を、紫の指がツンツンと突っつく。
「なんでしょう?」
弥勒菩薩像のような微笑みを浮かべながら紫の人差し指を掴んでペキンとへし折る聖白蓮。
声にならない悲鳴をあげて転げまわる紫の代わりに発言する美鈴。
「一件落着はいいんですが…アレどーするんです?」
困惑顔の美鈴が指が指し示す先には槍の先端から稲妻を、サーチライトのようにひん剥かれた両眼からオレンジ色の殺人光線を放ち、口からなんだかよくわからない青白く発光するガス状の放射物を吐きながらモリヤステップで跳びまわる完全にケダモノと化したそうじの姿。
「そうねえ、そうじ君を抑えるには村沙の封印を解けばいいと思うんだけど…でもそれだと今度は村沙が暴走しちゃうから、そうなったら<死者の書>で命蓮を復活させて…」
いーかげんにしてください!


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