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[34197] 【習作】初音ミクを召喚したから聖杯戦争に参加します(Fate/stay night)
Name: 黄桜◆485a52b7 ID:5b439066
Date: 2014/07/20 19:26

「フヒヒ。今回の模試もオール90点越え確実だお。でゅふふふふw」


どこかでぶつけたのか、最近出来た腕のアザをボリボリ掻きながら俺はほくそ笑む。

学歴がいかに大事か分かってる俺は、いままで勉強に手を抜いた事は無い。

転生してからずっと学年ベスト10以内の位置だ。

もっとも、例え人生をやり直そうが所詮凡人は凡人。秀才止まりである事はいうまでもないだろう。

転生して17年……、いやもうすぐ18年になる。

そろそろ聖杯戦争の時期だろうか? ま、俺には関係無いんだけどね。

転生特典詐欺をくらった俺は、一般人としての幸せを追求する事に決めたのだ。

ここ冬木市に転校して来るまで、俺はこの世界がどの作品なのかも分からなかった。

最初は「リリカルなのは」かと思ったよ。死ぬ直前の現代と変わんなかったし。

必死に鳴海市を探した小学生時代はいい思い出。

フェイトたんとティアナたんのどっちを嫁にしようかいつも苦悩してたな。

意外とエグイ世界だと分かった時は、おもわず乾いた笑いをあげてしまった。

だって本気でエグイもん。

エグイよね?

世界観もエグけりゃ登場人物もエグイ。

血と精液とメンヘラに塗れてるというか……いや、セイバーたんの魅力は理解してるんだよ?

でも──うん、やっぱセイバーリリィたんでないなら俺にはまったく関係無いな。

リリィたんなら命くらい賭けるけどね? まあ嘘だけどww 

実際に死んでみたら自分の命が一番大事です。というか、死んだ経験があるからこそ大事な事がわかりますた(キリッ

まあどっちみち、関わる気ゼロの俺には本気で関係無い話だ。

この17年、魔術のマの字すら触れる機会も無かったわけだし、本気で関係無い。

転生したっていっても、現代日本だから前世の生活とほとんど変わりもない。

逆に前世と全く変わらない世界に拍子抜け。いや勿論、裏側はすんごいヤバイ事は知ってるんだけども。

まあ一般ピーポーの俺としては、きっとこれからも何も変わらないんだろう。

危ないとこに近づくつもりはないしね。

とりあえず、テストの出来が良かった以上、点数至上主義の教育ママはこれでいつも通りの小遣いをくれるはずだ。

そこそこでかい建築屋を営む父親は、やはりそこそこでかい収入を得ている。

前世の記憶を持つ俺は、当たり前の様に成績優秀だ。

「いい点取るから小遣い奮発してくれカーチャン」と交渉。それ以来、予習復習は欠かしていません。

バイト? 働いたら負けでござるよ。

小学校の時の小遣いは月一万、中学で二万円。

現在の高校生ではなんと、月三万というアホな小遣いをもらっているのだ。

しかもお年玉が計50万オーバー。(ゼネコンの上役から、下は従業員達の総額まで)

建築屋を継ぐつもりのないヒキコモリ予備軍なのにこの世界は優しい。高二の時点で年収90万とか、フホホホホ。

神様にそこそこ裕福な家庭を望んだのは無駄じゃなかったな。それだけが唯一の救いか。

中学三年の段階で俺の部屋はPC関係余裕という状況。

しかし、前世の俺をオタヒッキーに追い込んだニ○ニ○動画が無かったのは残念過ぎた。

あまりの絶望に死のうかと思った。

でも大丈夫。無いなら作ればいいじゃない、と気付くのに時間は掛からなかった。

まさに必要は発明の母。○コ○コ動画が無くて泣きながらのた打ち回った絶望は、俺に不屈の心を与えてくれた。

ド素人が二年の月日を掛けて再現。名称はニヨニヨ動画。もろパクリです。

ニヨニヨ立ち上げてまだ半年。しかもまだまだ前世のクオリティには遠く及ばず。

でも構わない。俺はこのニヨニヨと一緒に成長していくのだ、一生を掛けてな。

世界の裏側で活動してる人達は何が楽しいんだろうね?

この科学全盛の時代に魔術が使えた所で所詮マイナーじゃん。

魔法に到達したからなんなのさ? 

殺人機関を運営する前にサイトの一つでも運営しろっつーの。

魔術の練習する暇があるなら動画を作れ。

そうすりゃ世界がハジマルって、なんで解んないのかね? 頭は良くてもきっとバカなんだろうなw

まあいいけどさ。

まじつ師の皆さんは頑張ってマホー使いになって下さいww

俺は頑張って和製ジョブズ目指すよ、誰よりも早くスマホ作っちゃうからwwww

ボーカロイドはワシが育てる(キリッ






……………と思っていた時期がたしかにありますた。


「ようおまえら、わりと遠くまで走ったじゃねえか」


ギャアアアアアアアアアアアアア!!

え? なんで? なんで俺の目の前にランサーのアニキがおるの?

しかもおまえ”ら”ってどういう事? 君達が走り込んできたんですけど!?

いやたしかに俺、穂群原学園に入学したよ?

親の事業拡大の為の引っ越しじゃあ、ガキの俺に選択肢ねーし。

しかも近場に高校ねーんだもん。穂群原学園以外を選ぶと、一番近い学校で電車で1時間よ? 神の悪意を感じたさ。

でもまあ3年間通学に苦労するよりも、二年生の一月下旬から二月中旬までの僅かな期間気を付ければいいだけだろ?

どうせ魔術なんて使えない一般人なんだから。

”ライダーの鮮血神殿と、キャスターの魔力集めにさえ気を付けてればいいんじゃね? 腐れ神父の教会には半径2キロ圏内に近づかない”

そう思った俺は悪くない。現在の状況も俺に過失は一切ない。

だって、だってさ……、ここ学校の廊下じゃないのよ? 新都でもないし衛宮邸ですらない。

どこにでもある住宅街の路地なんだよ?

モブキャラの三枝さん達とカラオケした帰りなんだぜ? おかしいだろ。(三枝さん達はいません。俺に送られるくらいなら一人で帰った方がマシだそうです)


「でもま、運がなかったな」


それなのに……、なんで槍持った青タイツがいるのよ?

俺の足元でへたり込んでる同級生はどういう事なの。

ヤベエ……転生者の運命力甘く見てた。

つか、どこまで逃げてんだよ衛宮ェ。

原作主人公が校舎から出てどうすんだよ。わりと遠くまでどころじゃねえ、メチャメチャ走ってるよ衛宮君。

穂群原学園からここまでゆうに3キロはあんぞ。遠坂さんもフォローが大変じゃないのコレ?

登場人物が原作ブレイクとか反則だろ。なんで俺を巻き込む。

転生オリ主はどうやっても転生オリ主という事か?

トラックに跳ねられて死んだら、来世では絶対に平穏になれないとでもいうつもりか?


「死人に口無しってな。じゃ……」

「待っちくりよ!」

「……あ?」


いやだ! 俺は関係無い! 聖杯戦争とかマジどうでもいい!

社会不適合者(魔術師)達は勝手に世界の裏で細々と生きてくれ!

俺は未来知識チートでIT王になるんだ!

副業は造型師! 完璧な一本スジパンツを生み出す義務が俺にはある!

俺が死んだら、生まれてくるボーカロイド達の全米ツアーはどうなっちゃうの!?

こんな所で捨てていいほど、俺の命は安くねえ!!


「コ、コスプレかお? い、いけないんだお! レイヤーにもルールはあるお! 年二回の有明で我慢するお!」

「……はあ?」


よ、よし、釣れた。

意味不明の言葉で誤魔化せ。

俺が一般人である事をアピールしつつ、さりげなく無関係を装う。これしかない。

クールだ。クールになれ。


「の、野々宮……?」


バカヤロウッ!!

足下のオレンジ頭が俺の名前出しやがった。

このクサレ正義の味方が! 俺とテメエは無関係だろうが!

目の前の死神はなぜか俺まで関係者扱いしてんだぞ!?

誤解(神秘を知ってるという事実)を解く為に頑張ってるのに、俺の名前を口にしたら台無しでしょーがぁ!?


「に、逃げろ、野々宮……」


黙れよぉぉぉぉぉぉぉ!!


「……チッ、どうやらさらに一人巻きこんじまったのか。後味悪いぜ」


おおおう!? アニキが構えを取りましたYO!?

ヤベヤベヤベヤベヤベヤベヤベ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ!!


「おお落ち着けお、ボキみたいな小市民は殺す価値もありませんとゆーか殺したら税金払う奴が一人減るんだお?」


喋れ。とにかく口を動かせ!


「一寸の虫にも五分の魂だお虫けらみたいなボクちゃんでもきっといなくなったら国力低下がマジマッハ」

「…………」


時間を稼げ。ヒロイン候補の赤い悪魔と、戦闘力だけは一級品のバカアーチャーがもうすぐ来るはず。

それまで時間を稼ぐんだ。おおう、俺超冴えてる。


「オタク殺しダメ絶対!親は許しても世界がきっとアングリィ!ゲイ・ボルグも避けてくれるに違いんす」

「あ? 今なんつった?」


ギャアァァァァァァァァ!!


「ゲイボールがどうかしたかお? ゲイを否定するつもりはない、でもゲイボールだけは勘弁お!」

「…………」


ランサーからの威圧感がハンパじゃねえ!! マジで死んじまう!!


「尻だけは守るんだお!ゴールデンボールは世界で一等愉快な奇跡なんだお!」

「の、野々宮……?」


ヤ、ヤベエ!! もう何言ってんだか自分でもわからん!!

このままじゃプスッっと心臓射抜かれちゃうぞ!?

まだなの!? 過去の自分をぬっ殺そうとしてるバカはどうしたのよ!?

並行世界の自分を殺せば俺も死ねるんじゃね?とか超理論を展開してるアホはどこいったのよ!?


 ──我が骨子は捻じれ狂う──


さして大きな声じゃなかった。

しかし、それは世界にその存在を知らしめる様に轟く。

ズガンと、爆音が世界に鳴り響いた。


「うあ……あ……あ……」


キンキンと鳴る耳鳴りを抱え、尻もちをついた眼前が煙で覆われている。

即死に直結する筈の絶対の脅威が、人の世に在ってはならぬ”異常”の圧力が、緩まった。

”我が骨子は捻じれ狂う”なんつー、バリバリ厨二な台詞にこれ程安堵する日がこようとは……。

ギ、ギリギリセーフ。ちゃんと来たよ、アーチャーの奴。

ごめんな、バカアーチャーなんて言って。もう絶対に言わないからそこのクサレタイツをぬっ殺してください。


「オイオイ、こんな所まで追ってきたのかよ」

「キサマを追えというのが、我がマスターの指示だったのでね」


エエェェェ!? ランサーさん無傷なんすけど!?

槍を担いだランサーが、余裕たっぷりの態度でそこに居た。かすり傷一つ無い。

そんなアホな。

俺には何が何だかわからなかった。ランサーだって俺と衛宮士郎に意識を向けていたはずだ。

なのに、あの意識の外側から放たれた不意打ちにどうやって反応したんだよ!?

つーかもっとよく狙え! 不意打ちしても当てられないとか馬鹿なの? 

それしか取り柄がないくせに……クソッ! やっぱりバカアーチャーはバカアーチャでしかないというのか。


「あ~あ、マスターに命じられたのは偵察だったんだけどな?」

「残念だが、逃がすつもりは無い」

「いやいや構わんぜ。逃げようとしたけど逃げられなかった。なら、この状況もしかたねえよな?」


ランサーの顔が獰猛に歪んだのがハッキリと見えた。

そういやコイツ、言峰綺礼に全サーヴァントと軽く手合わせして来いとか命令されてんだっけ?

しかも全力出すな的な令呪の縛りありで。

オイオイもしかしてこの腐れランサー……、下手すると俺と衛宮士郎を餌にした可能性があんぞ。

どうする? このまま英霊同士の戦闘に巻き込まれたらミンチ確定っぽいんだけど……。

コッソリ逃げ出しても、きっとランサーは見逃してくれませんよね?

落ち着け、そうだ先ずは落ち着こうよ俺。

ションベンちびりそうな状況ではあるが、ここで思考を放棄すれば間違いなく死ぬ。選択をミスっても死ぬ。

頑張れ俺。

一瞬前まで即死の状況からバカアーチャーの登場で生への道が開けた筈だ。

たとえ違っててもそう信じろ、心に理想と希望を描け。

なぜなら──

ボーカロイド達の未来はこの瞬間俺の双肩に掛かっているのだから!

うおぉぉぉぉぉぉ!! 俺に力を!! MIKUたん!!


「クソみたいなマスターに縛られちまったが、俺の魂は俺の物なんでな」

「……チッ、戦闘狂か」


バカアーチャーとタイツランサーがアホな事言い合ってるうちに状況を整理。

記憶の彼方に行っちまった情報を呼び起こす。

いくぜ、燃えろ俺の脳細胞ぉぉぉぉぉぉ──お? ピコーンと思いだしました。結構すぐ思い出すもんだな。

 ”ランサー=槍使い・超速い・矢避けの加護”

因果を逆転させて、出せば必ず心臓に命中する必殺技とかありましたね。

 ”アーチャー=元は衛宮士郎・才能無し・弓うめえ”

無限の剣製とかいう、駄々っ子みたいに武器を投げまくるチートスキルありました。

……アレ?

ランサーっの矢避けの加護ってパッシブスキルか?

矢が当たんねえのに、弓兵(アーチャー)に存在価値ってあるの?

投擲スキルである以上、下手すると無限の剣製も決定打にはならないんじゃね?


「衛宮くぅぅぅん!!」


馬鹿なの? 死ぬの?

でも諦めない。ニ○ニ○動画を愛した俺の想像力は無限大。

俺は足元の、目を爛々と輝かせながら英霊同士の戦いに魅入るオレンジ頭の頬を張った。


「イテッ、イテッ、イテッ、痛ぇーよ! なんだよ野々宮!」


おっと、少し張り過ぎたか。

頭から結構流れてた衛宮の血が周囲に飛び散る。俺の手も(衛宮の)血まみれだ。


「俺が今から言う言葉を繰り返しなさいよぉぉぉぉ!!」

「は?」

「は?じゃないと思われぇぇぇぇ!! いいから言WISH!!」


俺も大分混乱してるな。

でも頭はまわるぜ。

状況を考えて、アーチャーの主人にしてヒロイン候補の遠坂凛は間に合わないと思われる。

また、来た所で英霊相手に戦力にはならない。

バカアーチャーは相性の差でランサーに負ける可能性が高い。

あんな青い全身タイツを戦闘服に出来る精神力も無視できねえ。きっと基礎能力でもランサーの方が上なんだろう。

アーチャーの負け=俺あぼん。

なら援軍を呼べばいい。

そう、魔法陣はないが、ここにはマスターたる衛宮士郎本人が居る。

なら召喚してもらおうじゃないの。原作通りにさあ。


「素に銀と鉄!」

「そ、素に銀と鉄!」

「礎に石……岩だっけ……? い、いや、やっぱ石!」

「は?」


ヤベェェェェェェェェェ!! 呪文知らねえぇぇぇぇぇぇぇ!!

つーかたとえ知ってたとしても何年経ってると思ってんだよぉぉぉぉぉ!! 


「未だに憶えてる様なら病院を連れてくるレベル」

「お、おい野々宮、おまえ何言ってんだ……?」


チラリと見たアーチャーとランサーの戦闘は──、はい、よく見えませんけどずっとランサーのターンみたいですね。

バカアーチャーは防戦一方のようです。


「ふざけんなし! こんなところで死ねるわけないっちゅーの!」


困惑しながら見詰めてくるオレンジ頭に、俺はチップを全賭けした。


「いけるいける! 主人公なら舞台装置いらねーって! 呪文もいらねーって! ホラいくぞ!!」


このアホ主人公はなにポカンとした馬鹿面晒してやがんだ、もっと熱くなれよ!


「素に銀と鉄!」

「そ、素に銀と鉄!」

「以下中略!」

「以下中略!」

「天秤の守り手よ―――!」

「天秤の守り手よ―――!」

「助けてくださいィィィィ!!」

「助けてくださいィィィィ!!」


冬木の中心(よりだいぶ外れてる場所)で叫んだ俺と衛宮。

その瞬間、ヴンッと衛宮を中心に広がった光の魔法陣。

キ、キ、キタァァァァァァァァァァ!!

さすが腐っても主人公! 補正パネェェェェェェェェェ!!


「な、なんだコレ……ッ!」


当然我らが主人公様は困惑しっぱなしだが、そんな事は今の状況に何の意味も無い。

正ヒロインとも呼べる存在が、現界する。

魔法陣からゆっくりと衛宮の目の前に現れる騎士。

青いドレスに白銀の鎧を纏ったブロンドの髪の少女。


「む?」

「なんだと!? サーヴァントを召喚したってのか!」


召喚時の静謐な空気は、英雄同士の決闘すら中断させた。


「問おう、貴方が私のマスターか?」


強さと、美しさと、気高さを兼ね揃えた声。

あまりに圧倒的な存在感に、主人公である衛宮志郎は息を呑んでいた。

俺もまた、呼吸を忘れて目の前の存在に心を奪われていた。

俺はセイバーたんが大好きだ。Fate /stay nightの中で一番好きなキャラだと胸を張って言える。

だが、そういう事じゃない。

セイバーたんへの気持ちの大きさは全く変わっていない。ただ、セイバーたんを含めた色々な事象の価値が、俺の中で急速に色褪せただけなのだ。


「喚んでくれてありがとー!」


俺の目の前に、天使が舞い降りた。


「あなたが私のマスターですね!」
 

溢れる。

とめどなく零れる。

俺の想いが。俺の愛が。

両の目から怒涛のように流れるこの涙は、きっと真実の愛。


「マスターの想いに応えて、サーヴァントシンガー、馳せ参じました!」


左上腕部に刻まれた赤色の「01」。

くるぶしまで届く青緑のツインテールに黒のヘッドセット。

グレーの襟付きノースリーブの上着に、その美しい緑髪と同色のネクタイ。

黒色のミニスカートとハイソックスが、幼さと色気という矛盾を見事に調和している。

ささやかな胸は、貧乳こそ正義なのだと世界に叫んでいるかのようだ。


「……あ……ぐっ……」

「?」


どうすればいい?

どうすればこの想いを、感動を言葉にする事ができる?


「ここに契約は完了した。我が剣は、貴方と共にあり」


だまれ駄騎士。無駄に凛々しい声を出すな。

隅っこで駄マスターと乳繰り合っていろ。


「……ミ……グッ……」

「どうしたんですか、マスター? おなか痛いんですか?」

「貴方の運命は私と共にある」


だまれと言っただろう!! 

天使の声に被せるんじゃねえよ!! この役立たずの無駄飯食らいが!!


「……ミク……ミク……」

「!?」


駄目だ。言葉が出てこない。

でも、もういい……。

嗚咽しか出てこないのならば、言葉など不要。


「はい、そうです。わたしの真名は初音──」


目の前の、天使の微笑みを浮かべる彼女に、行動で示せばいいだけだ。


「ミィィィィィィクゥゥゥゥゥゥたーーーーーーーん!!」

「キャーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」


涙でグシャグシャであろう俺は、その顔を彼女のちっぱいへと突撃させた。

はて、なぜミクたんはこんなに全身をバタつかせるのだろう?

そんなに何度も俺の頭を叩かないでほしい。意識が飛びそうなほど痛いんだけど?

初音ミクの温もりを(主に顔で)感じながら、俺こと『野々宮一平』は聖杯戦争への参戦を決意する。

必ず受肉させて俺の嫁になってもらうぜ! 

ミクたんは俺の嫁だ! 

俺の嫁だ! 

俺の嫁なのだ!

大事な事だから何度でも言ってやった。

あとでパンツみせてって令呪使おう。ミクたんの縞パン生で見るとか、胸熱すぎてヤバイな。

ドラムのようにドコドコと、いつまでも続くビートを頭に乗せて、俺はゆっくりと意識を手放した。





後書き
一人称の練習で書いただけだから続かないれす。



[34197] 第二話 馬鹿共を利用するお
Name: 黄桜◆c2b8c7bf ID:de4d39bc
Date: 2012/07/24 07:38


”あのー神様。俺どうやって死んだんですかね? よく憶えてないんですけど”

”原因はトラック”

”トラック……? トラックに轢かれたんすか、テンプレっすね”

”否定。トラックには一切接触していない”

”は? え、どういう事?”

”死体発見現場は、公園の公衆トイレ”

”……あーなんとなく思い出してきました。たしか猛烈にウンコしたくなって便所に駆け込んだ気がします”

”肯定。和式便器にまたがった瞬間、10tトラックが公衆トイレに激突”

”エエエェェェェ!? ウンコしてる時に跳ね飛ばされたんすかあ!?”

”否定。トラックには一切接触していない”

”どういう事ぉぉぉぉぉ!?”

”トラックは5cm目前を横切った。被害は奇跡的に壁や給水タンクのみ。肉体は無傷”

”なんという幸運!? スゲェェェェェェ!!”

”否定。即死”

”はぁぁぁぁぁ!? 意味がわからんぞ!?”

”怒涛の排便と共に、轟音と破壊を撒き散らすトラックが目の前を通過。結果、ショック死”

”なんじゃそりゃぁぁぁぁぁぁ!!”

”事故後、様々な要因により発見が遅れた事が不幸の極み”

”なんすか!? まだなんかあるんすか!?”

”死後硬直により発見時、肉体は便意の姿勢で微動だにせず”

”ウソだろぉぉぉぉぉぉぉぉ!?”

”死出の面は歯を食いしばりし益荒男化粧。見事な眼光であった”

”それフン張ってただけだろうが!!”

”遺体搬送時、救助隊員達を爆笑の渦に叩き落とし、さらに医者、親、親族、葬儀屋すらも笑死させかけた”

”そら笑うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!”

”人類初の珍死。死してなお人の子等の悲しみを和らげるは階梯を突破する鍵。便意により成し遂げたは人類史上初”

”もう殺せよぉぉぉぉぉぉぉぉ!!”

”否定。史上稀にみる珍妙な事象ゆえ、再度の生が与えられる”

”はああああああ!? 転生って事!?”

”肯定。対象の希少性を正確に観測する為、記憶と人格を保存したまま歪曲点の高い世界へと生まれ直す”

”意味がわからん!! せめてウンコ座りで死亡した記憶は消して下さい!!”

”否定。対象の希少性を正確に観測する為、記憶と人格を保存したまま歪曲点の高い世界へと生まれ直す”

”聞いてよぉぉぉぉぉぉぉ!! そんな死に方憶えていたくないぃぃぃぃぃぃぃ!!”

”一つだけ赦しを与える。願うがいい”







……ん……夢?

……いや、思い出しちゃいけない。俺はトラックに轢かれて死んだんだ。それ以外の死因はありえない。

このまま優しい微睡みに身を任せてしまおう。きっと何もかも忘れられる。

死の安寧には遠く及ばずとも、それは救いに違いないのだから。

さあ旅立とう……水槽の中の何も知らぬ魚達のように──って、なんか寝苦しいな。つーか妙に硬いんだけど。

体の感覚はフワフワしてるのに、体表面に感じるこの不快感はなんだ?

しかも、この鼻孔をくすぐる汗の匂いは……?


「んん……?」


どうも意識がハッキリしない。この頭の鈍痛はどうした事か。

目もよく見えない……いや、これは周りが暗いのか?

どうやら俺は、誰かに夜道で背負われているみたいだ。


「あ、やっと起きたのか? ならそろそろ降りてくれ、オマエ重すぎるぞ」

「ッ!?」


恐ろしく近い位置から聞こえてきた男の声。

オイ、信じられるか?

抱き枕だと思ってギュッと抱きしめてスリスリしていたら、それなんと男の首筋だったんだぜ。

何を言ってるのかわからねーと思うが、間違いなく新手のスタンド攻撃に違いない。


「ケェェェッ!!」

「ゴハァ!?」


俺は目の前の後頭部に全力で肘鉄を叩き込み、転がるように男の背中から脱出した。


「き、貴様あぁぁぁ!!」


混乱している俺の目の前に、雨合羽姿の少女が躍り出る。


「ヌググ……!? だ、駄目だ! やめろセイバー!」

「シ、シロウ! なぜ……ッ!」

「言っただろ! 野々宮は学校の同級生なんだ!」

「し、しかし……」

「ごめんなさい! 起きたばかりだからきっと混乱してるんです! マスターを許してあげて下さい!」

「クッ、シンガー……」


まったく状況が分からん。

雨合羽の少女(状況的に間違いなくセイバー)が躍り出たと思ったら、俺を庇うようにさらに雨合羽が飛び込んできた



そのまま、座り込んだ俺の前でペコペコと頭を下げている。

なんだこりゃ。なんで俺は衛宮に背負われていたんだ?

目の前でパーフェクトな尻をフリフリさせながら頭を下げまくっている雨合羽は誰だ?

いや待て、尻? ”完璧な尻”、だと?

……………………。

…………フヒッ。

フヒヒヒヒ……。

ブヒヒヒヒヒーーーーーーン!!

謎は、全て、解けた……ッ!

そう、目の前に突き出された尻は、俺のたどり着いた奇跡。

俺の理想が形になった一にして全。

最高にして最強にして最愛にして最萌の乙女。

初!! 音!! ミク!! フオォォォォォォォォォォォォォォォォ!! 

おおお、落ち着けッ! 俺、落ち着け! ま、まだ慌てる時間じゃない!

もしかしたらこれは、人生で二度あるチャンスの内の一回目かもしれないんだぞ!

いや馬鹿、冷静になれ。

こんな奇跡はもう二度と起こり得ない。たとえ何度転生しようともだ。

幸い俺は彼女のマスター。誰よりも強固な絆を作る事が可能な位置に居る。

まずは信頼だ。

主従などというゴミのような絆など糞喰らえ。その先を手に入れる。

互いの心が通じていなければ、そこに何の意味も無いのだから。

思い出せ、俺は紳士。(ぐふふ……)

それもよく訓練された紳士だったはず。(でゅふふふ……)

そこらのSSに描かれている最低オリ主とはモノが違うのだ! (俺の!俺の!丸ごと俺のもの……ッ!)

さあ、彼女に教えてやれ。

これから共に歩いていく男の名を。

誰よりも『初音ミク』を愛している男の名を。

俺は、ありったけの勇気で、一歩、踏み出す。


「すぅーーーーーーーーーー」


眼前に突き出された雨合羽の裾をペロンとめくり、現れた尻に顔を埋めて胸一杯に深呼吸した。


「キャーーーーーーーーーー!!」

「ガンド」

「グハァッ!?」


直後、俺は吹っ飛んだ。

が、なんの!

2m程ブッ飛ばされた俺は即座に足を跳ね上げ、その反動と上半身のバネを使い瞬時に体勢を整える。


「うおっ!? い、意外に身軽なんだな……」


この自慢の素晴らしい運動神経に見とれている凡才は無視し、俺は赤い悪魔を睨みつけた。


「いきなりなにするんだお! この残念胸──さ、寒い……なんかすっごい寒いお!?」


なんじゃこりゃ!?

まるで風邪をひいたみたいに体がだるい。手足に力が入らない。

悪寒が止まらん!


「この豚……今なんて言おうとしたのかしら?」


恐ろしく冷たい視線を向けてくる遠坂凛。

学園の高根の花と呼ばれる超美少女。性格と胸が残念なのが本当に残念な少女である。(ミクたんのちっぱいはあれで

完成型だから例外)

つーか誰が豚だ。

俺はポッチャリ系ですぅ。平均体重の30キロ増しですけどデブじゃないですぅ。

たしかに生凛たん脳に焼き付けて何回もバキュンったけど、天使に出会ったからもう用済みなんですぅ。

ってそれどころじゃねえよ!


「これ……ガンド? 呪いの弾丸……」


クソッ信じられねえ! この女、一般人に魔術使いやがった!

美少女だからって何しても許されるとでも思ってんのか!?

……いや許されたっけ? 美少女なら人を殺してもシッペで済むってどっかで聞いたような……俺の記憶違いか?


「フン、やっぱりね。これで確定。一般人が魔術の名称なんて知ってるはずないもの」


アホか! この赤い悪魔はどこまで残念なの!?

北欧神話知ってる人達みんな魔術師かい!

俺も含めて全員バリバリの一般人だっつーの!


「……たとえそうだとしても、いきなり攻撃するのはやりすぎなんじゃないのか?」


猛烈な悪寒に震えていると、遠坂を非難する声が聞こえてきた。

セイバーを宥めつつも俺の一撃に悶絶していた衛宮志郎だ。

同じ学校の生徒だろとか、まずは話し合うって約束したじゃないかとか、表面上は非のうち所がない好青年である。

さすがは正義の味方。遠坂の暴挙を窘めてくれるのはすごくありがたい。

けどな、衛宮。おまえは魔術の練習する前に頭の練習しろ。

なんでもかんでも鵜呑みにして頷いちゃうんじゃねーよ。

さっきのはどう考えても暴挙の上に暴論だっただろーが。

赤い悪魔の言う事は聞いちゃいけません。いつのまにか遠坂専用のATMにされてても知らんぞ。


「こんな変態、殺さなかっただけありがたいと思いなさい」

「だれが変態だお!」

「アンタに決まってるでしょ」


このうっかり魔術師はどういうつもりなの? さっきから豚だの変態だのさあ!

酷い侮辱だ!

ほとんど知らない相手に人格攻撃とか、恥ずかしくないの?


「断固抗議するお! 謂れの無い誹謗中傷には戦争だって辞さないんだぜ! 弁護士の準備は万全か?」


あ~あ。失望した。失望したぜ。

Fateでセイバーたんと双璧を為す程のヒロインだと思ってたのに。

あん? なんだよその目は?

そんな冷めた目を向けてきても無駄無駄。

どれほど素晴らしいヒロインも、やっぱ三次元になった瞬間劣化すんのな。

ヤレヤレだぜ。

ん~? なんですか、劣化リンたん? あさっての方向にガンド構えちゃって。

アレですか? 示威行為ですか? 

みんながみんな暴力行為に屈するとでも?

なめんなやコラァァァ!! 一般人見下してんじゃねえぞ!?

俺は、テロには、絶対に屈さん!! 

たとえ中学生にカツアゲされようともっ、こんな俺を愛してくれる両親の為に誇り高く生きてやる!!


「──それが俺の忍道だ」


ヤベエ、決まったな。決まり過ぎるくらい決まったわ。

ミクたん見てるかな?

おっと、ここでミクたんをチラ見するなんてお約束は犯さないぜ?

敵のマスターと、不敵な笑みを浮かべながら睨みあう己のマスター。

見ないでも分かる。ミクたんの乙女回路は爆発寸前、ってな!

ムッフフフフフ……ん? 遠坂のやつなんで溜息なんか吐いてるんだ? 場の空気も読めないほどのうっかりなの?

んんん? ガンドの指先で何か突っついてる仕草はなんかの儀式か?

やめろよ! 呪いとか卑怯だぞ!

え? 指の先見ろ? 

なんだよ、最初から口で言えよ。紛らわしい。

ついっと遠坂の指の先に目を向ける俺。

そこには、お尻を両手で抑えるミクたんがいた。

しかもその目は、間違いなく豚を見る目だ。


「……マスターは、変態です」


……え? なんで?







「──というわけで、一端衛宮さんの家に行ったんですけど、また皆で教会に出発したんです」


ほうほう。さすがは天使の声。

可愛うぃぃぃぃぃぃぃぃ!!


「あ、あのマスター、聞いてます?」

「もちろん聞いてるんだお! ミクたんとのお喋りは一秒だって無駄に出来ん!」

「そ、そうですか……」


もー、心配性だなミクたんは。

あれだろ?

 アーチャー、セイバー、ミクたん VS タイツアニキ

 ちょっww サーヴァント三体とかマジ無理ww あばよとっつぁ~ん

 ランサーが逃げた後、オマエ今頃何しに来たのよ? ってタイミングで遠坂到着

 時代の流れに取り残されまくりの衛宮と、ランサーとの激闘で気絶した俺。そして冬木の管理人遠坂

 とりあえず衛宮邸で状況確認

 情弱の衛宮に説明した後、なんちゃって監督者の腐れ神父に報告いくところ

 つまり、無駄に親切なスキップ機能が働いた

 現実だと混乱の元だからスキップOFFにしようぜ


「つまりこういう事っしょ?」

「す、すごいですね、マスター。最後の方がよく分からなかったけど、だいたい合ってます」


うほっ。天使にすごいって言われた。

いやー、出来る男ってのがさっそくバレちゃったか。

もしかしてもう片乳くらい揉んでも大丈夫なんじゃね?

いや、さすがにまだか。まあ片乳首つつくぐらいの信頼関係は結べたと思うんだけど……いってみるか?


「そろそろいいかしら、野々宮君?」


さりげなくゴミを取るフリしてつつけばいけるだろ。


「……そのあからさまに怪しい指、なんですか?」

「え? い、いや、ミクたんのお胸にゴミが付いてたから取ってあげようかと……」

「いりません! 触らないでください!」

「オウフ……」

「……ちょっと、野々宮君」


くっ、さすが天使。まだ好感度が足りなかったか。

こうなったら多少強引でもナデポを──。


「無視すんな! この豚が!」

「ブゴッ!?」


い、痛い……。

なに? なんでいきなり鼻パンされたの?

あまりの痛みに顔上げられないんだけど!?

ふざけんなよこの売女!

恋人達の甘い語らいに暴力で割って入るとか、どこまでDQNまっしぐらなんだよ!


「な、なにすんだお、遠坂さんブギャッ」


信じられん。文句言おうとしたらまた鼻パンされた。

鼻血まで出てきちゃったよ。

え? なに? 俺と戦争したいの?


「お、おい遠坂、やりすぎだぞ」

「こいつウザすぎる」


上等だよ。

テメエのパンツひんむいてヤフオクに流してやらあ。


「だ、大丈夫ですかマスター! これで鼻抑えて下さい!」


……っと、命拾いしたな赤い悪魔。

天使がハンカチ差し出してくれた以上、お前の黄ばんだパンツなんぞに関わってる場合じゃねえ。

ありがとうねミクたん。喜んで使わせてもらうよ。


「……ミクたん? なんでそんな目一杯腕伸ばしてんの?」

「マスターにあまり近づきたくないんです」

「……ミクたん? なんで摘まみながらハンカチ渡そうとするの?」

「なるべくマスターに触りたくなくて」


ふむ。ミクたんは奥ゆかしい上に恥ずかしがり屋さんなんだな。

俺としてはもっとベタベタしたいんだけど……もしかして男に免疫がない? 

まあアイドルだしな。

うん、徐々に慣れてくれればいいよ。


「それでなんか用かお、遠坂さん? 俺の顔に嫉妬したってわけじゃないんだお?」


とりあえず、衛宮に宥められてるDQN女に話を戻す。

この女、まだ俺を殴ろうとしてやがったからな。しゃーねー。


「……嫉妬?」


何訝しげな顔してんだこの女。

つーか、隣の衛宮とその後ろで待機してるセイバーたんも同じ様な顔してるな。

……あれ? ミクたんも?


「ん? 俺とミクたんの、美男美女カップルのイチャラブトークに壁パンしたくなったんじゃないの?」

「プッ……。笑わせないでよ。シンガーが美少女なのは認めるけど、アンタはまんま豚でしょうが」

「お、おい遠坂。いくらなんでも言い過ぎだろ?」


と言ってる衛宮も苦笑いしてやがる。

セイバーたんは溜息か。結構コイツ等ヒドイな。

ま、別に分かってくれなくていいよ。俺自身努力なんてしてないし。


「マスターを馬鹿にしないでください!」


ふと目を向けた先には、当然天使が。


「わ、私のマスターを馬鹿にしたら許さないです。マスターはおデブさんですけど、痩せたらカッコ良くなります」

「…………」

「ほ、本当ですよ? すっごい美少年になって、後でほえ面かいても知らないんですから……」


最初から分かってた事だけど、ミクたんは間違いなく愛天使。

ヤベエ、顔のニヤケが止まらねえ。

俺は全世界に言えるね。初音ミクは理想の女の子なんだってさ。


「ぶひぶひぶひぶひぶひ」


ハハハ(ぶひぶひ)と笑みを浮かべ、俺はミクたんの頭を撫でまわす。


「あ、あのマスター。気持ち悪いから触らないで欲しいんですけど?」

「衛宮君、どうだお? 俺のミクたんは?」

「あーうん。いいやつだな」


うれしくって仕方ない。

俺のニヤケ顔に、エセ正義の味方も表情を緩めて肯定する。

でも残念。

”初音ミク”を知らないお前に、この目の前の少女の良さは一割すらも理解できまいよ。


「そんなんじゃ足りねえお。本物の天使だってミクたんに敵うわけない」

「い、言い過ぎです、マスター……」


うほっ! 照れたミクたんきゃわい~ん!

コレもしかしてナデポってんじゃね?

よし、ミクたんの頭から煙が出るまで撫でまくったる。


「悪いけど、宣言しとく。この戦争、俺とミクたんが勝つお」


あ、ミクたん安心して。

神様に俺の容姿小池徹平クラスにしてって頼んであるからww

ミクたんの為にちゃんと痩せるよ。我が嫁に恥はかかさん(キリッ

ちなみに神様への願いは、『願いを叶えても飛んでいかないドラゴンボール下さい』って言った。

でもそれだとチートすぎるってんで、代わりに三つ叶えてやるからそれで我慢しなさいだって。

まったく、ヤレヤレだぜ。







冬木教会に向かう間、俺と遠坂の間に不穏な空気が流れていた。

でも俺が悪いんじゃないぜ?

俺はただ単に、俺自身の事を話さなかっただけだ。

大体、信じるわけねえよ。

俺だって信じたくない事なわけだし。

ウンコしながら死んだら転生しますたなんて、どう考えても頭がイカレてるだろ?

しかも、こっちを魔術師だと決めつけてるのはいかがなもんよ?


「衛宮君も同罪だけど、冬木の管理者(セカンドオーナー)である”遠坂”に魔術師が話を通さないのは困るわ」


ショバ代払えって事ですね、わかります。

でも残念。俺は魔術師じゃないんで。


「俺、魔術師じゃないお?」

「ふざけないで。サーヴァントを召喚して魔術の事も知ってる。そんないいわけ通らないわ」


言葉使いは普通だけど、土地代払わなきゃタダじゃすまさねえって本音が駄々漏れだ。

さすが赤い悪魔。ヤクザと変わらん。


「魔術ってアレだお? たしか科学を使わずに、現代科学と同等の事象を起こせる技術形態の総称」

「……ええ」

「んでもって、現代科学では解明されていない事象を操る事を魔法と定義し、魔術師は魔法に至るのが目標だっけ?」

「……? そう、だけど……なんでそんな言い方すんのよ?」

「全部2chの知識だお」

「はあ? に、ちゃん……?」


おいおい、何困惑してんだよ。

この情報化社会で事件の完全な隠蔽なんて出来るわけないだろ?

俺も疑問に思ったから、ソッコーWEBで調べたよ。

そしたら出るわ出るわ。

そらそうだよ。魔術師や死徒の被害で村単位でも人が死ねば、そりゃ当然噂になる。

現代国家の治安機構は中世とは比べ物にならないんだから、それを隠蔽しようとすれば国の中枢を抑えるしかない。

でも、それをやろうとすれば膨大な一般人の協力が必要になる。

そんなの”神秘の秘匿”を掲げる魔術師達の理念に反するわけだから、当然対処は場当たり的になるわけだ。

個人の記憶の改竄が出来た所で、現代で完璧な隠蔽工作なんて出来るわけないだろ?

気付いてる奴は気付いてるし、知ってる奴は知ってるさ。

完全な神秘の秘匿なんて、現代では物理的に不可能に決まってるだろ。


「ッ!? ッ!? ッ!?」


2chを知らなかったみたいだけど、そう説明したらいきなりファビョりだした。

あー、言っとくけどこれ本当の事だからね。

”【魔術】魔術師をみたんだけど【師ww】”とか”俺にも魔術おしえろください”とか、20スレくらいあったもん。

携帯電話が普及した時点で、人類総カメラマンだと理解できないのはまじつ師の皆さんだけじゃないの?

多分国家の上層部はみんな知ってるんじゃね?

you tubeに化物を叩き潰すアルクェイド・ブリュンスタッドの動画とかあったし。


「正直CGかと思ってたけど、今回の出来事で魔術が実際にあるってのは理解したお」


ミクたんを受肉させる為には、俺が持ってる前世の情報は全て隠さなければならない。

当たり前だ。

遠坂や衛宮で勘違いしがちだけど、魔術師ってのは相当エグイ生き物だ。

俺の事がバレた瞬間、脳髄を引きずり出されて全ての情報を吸い出される可能性が高すぎる。

一般人の俺には戦闘力なんてない。

なら、俺はどこまでも一般人である事を表に出したまま、一般人であり続けなければならない。

取るに足らない存在なら油断を突ける。

それが俺の唯一にして最大の強み。

ミクたんの為、そして俺自身の為に、このアドバンテージは軽々しく手放すわけにはいかない。


「……それが事実だとしても、野々宮君が魔術師ではない事にはならないわ」


うお!? す、すげえ……。

今俺が言った事が話のすり替えだって事に気が付きやがった……!


「は? なに言ってんだよ遠坂? 野々宮は巻き込まれただけだろ?」


衛宮君、ちょっと黙っててくれる? 今俺の命がマッハだからね?

たしかに一般人が裏の世界を知っててもおかしくない情勢を説明しただけで、俺自身が潔白である事とは関係ない。

クソッ! 遠坂が衛宮ほど頭の可哀相な子だったら楽だったのに!


「俺は本当に一般人なんだお? 魔術なんて使えないのは確定的にあきらか」


こんな悪魔の証明を提示した所で、赤い悪魔は納得しないんだろうな。


「あなたは嘘を吐いているわ」

「そんな事無いお? 言いがかりは止めて欲しいんだお!」

「いいえ、たとえ嘘じゃなくても、本当の事を全て話していない」


チッ鋭い。

これがから補正の掛かったヒロインは……。


「今は思い出せないかもしれないけど、思い出したら全部言うお!」

「……………」

「信じてくれお! 俺は魔術なんかつかえねえお!」


俺は心から命乞いをした。

言った事は間違いなく真実だしな。

言える時が来たら言うし、魔術に関してはド素人でも言い過ぎだ。

でも、遠坂はまるで納得していない様子。

俺は冷や汗ダラダラだったけど、それでも勝算がないわけじゃない。

”遠坂凛”とは、甘い人物。

そして自分流の美学を持っている。

自身が優秀だと理解しているからこそ、確証も無しに切り捨てる事を無様と断ずる気概の持ち主。

それは魔術師としての誇りをも上回るはず。


「アーチャー」


遠坂凛が合図した途端、その隣にアーチャーが姿を現した。姿が見えないと思ったらどうやら霊体化していたらしい。

しかも、なぜか既に構え終わっている。矢発射0.5秒前って感じ。

ちょっ……!?


「待って下さい!」

「オイ遠坂!」


ヤベッ死ぬ! と思った瞬間、目の前に飛び込んできた二つの影。

一人はマイラブリー天使ミクたん。

もう一人は衛宮君。


「なっ!? アーチャ──」


赤い悪魔が何やら慌てた声を出したが、言いきる前に矢は発射された。

直後、夜の帳にギインと響く甲高い音。

いつのまに現れたのか、衛宮の前でセイバーが剣を切り上げた体勢で微動だにしない。(刀身自体は勿論見えないのだ

が)

アーチャーが放った閃光は、真上に跳ね上げられていた。

ドッドッドッと、心臓の音がうるさい。

今、俺は間違いなく殺されかけた。

セイバーが割って入らなければ、確実に目の前の衛宮諸共死んでいた。多分ミクたんもやばかった。


「どういうつもりです、アーチャー?」

「ふむ。いきなり射線に飛び込んできたのは君のマスターなのだが?」

「ぬけぬけと……!」

「マ、マスター! 大丈夫ですか! 痛いとこありませんか!?」


ヒュウー、さすが天使。

その体の半分は優しさで出来てるんだろうな。

もう半分が俺への愛で満たされていれば文句ないんだが。

……ゴメン、やっぱダメだわ。今の俺に強がりを言う余裕なんてまったくない。

ミクたんが隣で気遣ってくれているというのに体の震えが止まらんもん。

主人公も尻もちをついて呆然となってんぞ。

だれか、ウンコ漏らさなかった俺を褒めてくれ。

なにこれ? なんでこんな事になってんのよ……?

い、いくらなんでも問答無用で殺すとか遠坂さん短絡的過ぎないですか?

ちくしょう! 命の尊さを忘れてしまったんですか!?

も、もしかして、ハードモードってやつなのか!?


「アーチャー! 誰が攻撃しろって言った──」

「おおお落ち着いてくれお、遠坂さん……いえっ、遠坂様!」


そうだ、落ち着け。

この俺の原作知識を持ってすればこの程度、危機ですら無い。

ところどころ忘れてるんだけど大丈夫かな? とか俺は全然思っちゃいないぜ。

クーーールにいけ。

原作知識なんて鬼札持ってる俺に、いったい誰が勝てるっていうんだ?

しかもサーヴァントは初音ミク。

俺とミクたんのコンビならもう勝ったも同然じゃないか。いや、既に聖杯戦争終わったといってもいいだろう。

オワタじゃなく終わったな? そこ間違うと意味合いが変わってきちゃうからね。

でもさすがに言い過ぎか? 

んーそうだな、九割五分は勝ったな。間違いねえよ。

だって衛宮志郎と遠坂凛のコンビでも勝てちゃうんだぜ? たしか途中でサーヴァントいなくなってたのにだよ?

その時の二人がした事ってセックルしただけじゃないか。

衛宮の足りない魔力をセックルして補っただけっしょ?

そう、セックルしただけで勝者になれたんだよ。あの二人。

はあ、セックルしただけで勝てるとかもうね。

セックル。

セックルか……。

…………セックルだもんなぁ。

そりゃ勝っちゃうわな。セックルだもん。

セックルしたけど敗者ですって、どう考えても日本語オカシイもんな。

ヤバイ事に気がついた。

逆に言えば、これセックルしないと勝てないんじゃねえ?

もしくはセックルするとイージーモードに切り替わるとか。

そういや衛宮っていつもセックルしてたわ。セックルしない時は毎回死んでた気がする。

なんだよこのルール……。

セックルしないと聖杯戦争に勝てないとか、なんて残酷なルールだよ。

はあ……セックルかぁ……、セックルしてえ。

セックルしてみてえ。

令呪で命令したらミクたん怒るかなあ。

令呪での強制ってレイプになるのか……? んー、多分ギリギリレイプではないと思う。

あーでも、ミクたんに嫌われる可能性が少しでもある方法をためすってのもなあ。

じゃあこういうのどうだ?

『セックル祭りじゃぁぁぁぁぁ!!』

『今日も元気にセックルセックル♪』

『朝から晩までセックルセックル♪』

って歌い出したら、ミクたんテンション上がってセックルさせてくれるんじゃね?

女の気持ちとかよくわかんねえけど、これが一番確率高い気がする。

よし、今度衛宮に試してもらおう。赤い悪魔相手で。

セックルすりゃ、おいつらもちゃんと生き残るだろ。

別にあの二人に死んでほしいわけじゃないし、同じ条件ならセックルした俺とミクたんの方が強いはずだもんな。

よーし、大分脱線しちまったがなんとか落ち着いた。

情報を整理しよう。

まずセックル。これは生き残るためにも絶対条件だ。

次に、原作知識を持ってる以上、俺の頭脳はコナン君とタメ張るレベル。

ミクたんを受肉させるには赤い悪魔と正義の味方、この二人の協力は必要不可欠。

戦闘に自信がないので、ぶっちゃけ二人を利用しようと思います。

セイバーとアーチャーとミクたんがいれば流石に無双できんだろ。

ミクたんを嫁にする為ならば、俺は”この世全ての悪(アンリ・マユ)”すら超えてみせる。

遠坂凛は心の贅肉がたっぷり。つまりちょろい。心がデブだからな。

ちなみに俺の心はかなりマッチョ。まあ見た目も生き方もタフガイだから当然なんだけどね。

衛宮志郎は困ってる人を見捨てられない。多分100円落としたって泣きついたらワニ園の沼に飛び込んでくれるくらい

のちょろさ。つーか、衛宮は社会に出た瞬間詐欺師に喰い殺されそうだな。

結論。下手に出ればなんとかなるんじゃね?

よし、ここは俺が大人になって、彼女が忘れてしまった人としての大事な事を思い出させてあげよう。

下手に出て下手に出て、ギリギリまで下手に出て、それで最後に美味しい所を持っていく。

おおう、なんという悪辣さ。これ夜神ライト超えとるぞ……!


「お、俺、遠坂様に誠意をみせるお!」

「……はあ? 誠意?」

「だから、同盟組んでほしいんだお!」

「ああ取引ね。でも、私は誰とも手を組むつもりはないわ」

「そ、そこをなんとか!」

「……んー、とりあえずその誠意とやらを聞いてからなら考えてもいいけど」

「まちたまえリン、私は反対だ。必要があるとは思えん」


ちょっ、お前なにサーヴァントがマスターに意見してんだよ。

つか、オイこの腐れアーチャー。

オマエもしかしてブレイドワークスルートのエミヤシロウじゃねえのか?

衛宮を殺す為に俺を巻き込んだんじゃねえだろうな?


「別にいいじゃないか。戦わなくてすむならその方がいい」

「死にたくなければ黙っていろ、小僧。貴様には関係ない」

「我がマスターに敵意を向けた瞬間、死ぬのは貴方ですよアーチャー」


なにドヤ顔できめてんのよ、このハラペコ騎士。

お前宝具一回使ったら消える可能性あるんでしょ? どんだけ燃費悪いねん。

弱兵が調子に乗って刺激するんじゃねえよ。

もし遠坂がこのバカアーチャーの声に耳を傾けたらどうするわけ?

俺間違いなくお前のマスターの後ろに隠れるからな?

せめてアーチャーだけは道連れにしろよ?


「とりあえず聞くだけよ、アーチャー。わざわざ手札を見せてくれるってんなら損にはならないわ」

「……私は反対したぞ」

「それで野々宮君? 対価はなにかしら?」


セェェェェェフっ!

さすが遠坂。その強欲さに賭けた甲斐があった。

安心しろよ。遠坂にも悪い話じゃねえ。

今の俺に出来る精一杯の対価だ。


「し、尻を舐めるんだお……」

「……は?」

「遠坂様の尻の穴を舐めるから同盟組んでください!!」


事実上の奴隷宣言。


「「「「…………」」」」

「マ、マスター……」


人権を放棄するかのような発言に、皆の驚愕の目が俺に集中した。

ミクたんですら驚愕に目を見開いている。

くっ、許してくれミクたん。こんな情けないマスターで申し訳ない。

けど、これもミクたんと一緒に勝者になるために必要な事なんだ。


「セイバーたんの尻の穴だって舐めるんだお!! だから仲間になって下さい!!」


たとえこの身をどれほど乏しめようとも、俺の心は君と共に……。


「……悪かったわね、アーチャー。貴方の判断は間違って無かったわ」

「申し訳ありません、アーチャー。どうやら我がマスターの勇み足だったようです」


アレ? 女性陣が虫けらを見る目を俺に向けてきたんだけど?


「マスター、さいてーです……」


なんでミクたんもそんな目をしながら俺から離れるんだい?

おーい、衛宮君とアーチャーはどこに行くつもりなの? まだ話終わってないんですけどー?

ここでなぜか意識が飛んだ。

次に目が覚めた時は、言峰綺礼の教会飛ばして何故かバーサーカー戦だった。

だから現実でスキップ機能いらねーっての。




後書き
重っ……。
ようやく繋がったけど重すぎる。
投稿すんのも迷惑っぽいな。



[34197] 第三話 バーサーカーぶっ殺すお
Name: 黄桜◆485a52b7 ID:5b439066
Date: 2014/07/20 22:56
例によって例の如く、目を覚ましたら場面が飛んでいた。

俺達の眼前を塞ぐ二人組。

一人は白い少女。ロリブルマの愛称で慕われる、イリヤスフィール・フォン・アインツベルン。

生で見るとえらい美幼女だわ。

けどやっぱりあと五年は必要だと感じてしまう。

まあ、これが三次元の限界だな。

二次元のロリは恐ろしい程の戦闘力(萌え)を秘めているのに、現実世界だと著しく戦闘力が下がる。

たしかに目の前のイリヤは可愛いが、やはりロリではなくガキだと認識してしまう。

もう少し育ってくれないと、相手するのも面倒だわ。

だから会話は衛宮と遠坂に丸投げ。

よく二人は相手出来るよな? ガキなんてうるさいわジッとしてないわで、ただ煩わしいだけじゃん。

……スマン、嘘だ。

俺も会話に参加したい。

現実の子供に興味が無かったとしても、イリヤはお気に入りのロリだった。

俺も超話してみたい。

でも無理。今の俺はそんな事ができる精神状態じゃねえ。

イリヤの隣に居るアレなんだよ……。

人が見ていいモノなの?

一目見ただけで体のガクブルが止まらねえぞ。

駄目だよ。アレは駄目。

アレは存在してるだけで逮捕しなきゃ駄目なモンだ。

早く来てお巡りさん……。いますぐタイーホしてあげて……。

あ……もうだめ、おしっこでちゃう……。


「ひ、ひえええええ!? なな、なんですかあの大っきい人!? こ、恐いーーーー!!」


ハッ!? イカン! 

俺の天使が生まれたての仔鹿みたいに震えてやがる!

ションベンちびりそうになってる場合じゃねえ!

天使の声で呪縛が解けた。

多分ミクたんもビックリして固まってたんだろうね。

そりゃあんなバケモンみたらお股も緩むよ。

あとでちゃんとパンツ履きかえさせてあげるからね、俺が。

ってそうじゃねえ!

好感度を上げるチャンスktk……ミクたんを護らなきゃ!

ビビるんじゃねえよ、くそったれが!!(うっひょーーーー!!)

俺がミクたんを護るんだ!!(ピンチがチャンスに早変わり!!)

ミクたんはやらせねえぜ!!(ナイスバーサーカー!!)


「ミクたん! 早く俺の後ろに隠れるんだお! 大丈夫、キミはオレがマモル(キリッ」

「え……、マ、マスター……」


お、お、お?

あれあれあれ~?

キタねこれ。うん、間違いない。ちょっと顔赤くなってるもん。

ブヒッ。ここで手を緩めるのはただのバカ。


「ほらミクたん、こっちだ!」


俺はミクたんの手をとって駆け出した。

ほらね。恥ずかしがり屋さんなのに、手を握っても嫌がらないよ。

コレものすげー勢いで好感度上がってやがるわ。ふひひ。


「よーし、もう安心だお」

「……え?」


俺はミクたんと一緒に、衛宮達の背中に隠れた。


「盾ならいくらでもあるお。ミクたんは俺の手をしっかり握ってるんだお」

「…………」

「「「「…………」」」」


無言で手を振りほどかれた。WHY?


「やっちゃえバーサーカー!」

「くっ……! シロウ、離れていてください!」


俺が疑問を抱いた瞬間、戦闘が始まった。

バーサーカーを近づけまいと、セイバーたんが単身斬り込む。

描写は割愛。

アニメみりゃわかる通り、人智を超えた戦闘してるだけだ。


「セ、セイバー!!」


うん、衛宮が叫ぶの分かるわ。

セイバーたんかなり押されてるもん。

速過ぎて何が何だか分からないけど、たまに力負けして吹き飛ばされてるし。


「アーチャー! チャンスがあったら狙いなさい!」

「わかっている」


うー恐ぇ……。

万が一セイバーたんがやられちゃったら、俺達全員バッドエンドか?

アニメ基準の世界なら大丈夫だとは思うけど、そんな保証無いんだよな。

というか、俺とミクたんがいる時点で、ゲームのどのルートからも外れてる気がする。

それに、原作通りだと衛宮が大怪我しちゃうんだが……。

ま、まあ、主人公なんだから、死ぬ確率は低いよね?

それに別に友達でもなんでもないわけだし、元々利用する気マンマンだったわけだし?

どうせ不思議な力ですぐ直っちゃうんだから、怪我くらいで皆が助かるなら本望っしょ。

正義の味方なんだからさ……。


「くそっ、このままじゃセイバーが……ッ」

「馬鹿な事考えないでよ、衛宮君。貴方が行った所で死ぬだけなんだから」

「くっ……」


スゲーな。あんなミキサーみたいな所に突っ込もうとするとか、正真正銘の馬鹿にしか出来んぞ。

……………………。

……はあ、やっぱ主人公はカッケーよなあ。

それに比べて、同級生にむかって「はよ怪我して来いよ」とかマジ俺クズすぎw

……………………。

でも俺一般人だもん……。

いや、俺だって戦えるもんなら戦うよ?

厨二乙wwとか言われたって、力があるならやりたい放題するさ。

最低系だろうがなんだろうが、実際に転生するなら最強オリ主になってブイブイ言わしたいに決まってんじゃん。

……………………。

……なんで神様、最後のお願い叶えてくれなかったんだろうね?

本当なら、「ここからは俺が相手だ、バーサーカー」とか言ってたのにな。

あーあ、一般人は辛ぇーぜ。

まあ、ちょっとだけ考えてみるか?

どうせ何も出来ないわけだし?

考えるくらいなら一般人にもできる事だしな。

あ、そういや俺原作知識持ってんじゃん。すっかり忘れてたわw

よーし、唸れ! 俺の脳細胞ぉぉぉぉぉぉ!! 


「ティンときた!!」


嘘だろ!? あっという間に思いついちゃったんだけど!?

え? なにこれ? この危機的状況下で俺の潜在能力がヘブンったの?

ヤベェ、やっぱ俺がコナン君かもしれない。


「コレだ! コレしかないお!」

「ど、どうした野々宮?」


うん、イケル。

そうだよ。原作知識持ってるんだから、俺は最初から答えを知ってるのと同じなんだ。

バーサーカーの倒し方だって、俺は既に知ってるわけだ。

全サーヴァントの特性どころか倒し方すら分かってるんだから、最初から慌てる事はなかったな。

テヘ、失敗失敗。ちょっとパニクっちゃった。

さて、化物退治といきますか。


「衛宮君! 遠坂さん! バカアーチャー! アレを確実に倒せる作戦があるお!」

「ホントか!?」


あのバケモン殺すには、物量による力押しか、一撃で複数回殺せるくらいの圧倒的火力による力押ししかない。

ってーか、どうやっても力押ししかねえのな。

スゲーなヘラクレス。この天才がいなかったら間違いなくお前が最強だったよ。


「貴様、今私をなんと呼んだ? そんなに死にたいのか?」


おっと、浮かれてつい口が滑った。

つーか今はそんな事どうでもいいんだよ。ちょっと黙ってろ。


「期待していいのか不安なんだけど……、ヘラクレスっていったらギリシャの大英雄よ? 化物と言ってもいいわ」


遠坂に言われるまでもない。んな事わかってんだよ。

原作知識持ちの俺からしてみたら、攻略本見ながらプレイしてるのとなんら変わらん。

バーサーカーの厄介な所は、あの削岩機みたいな超暴力じゃねえ。

宝具、『十二の試練(ゴッドハンド)』だ。

他のサーヴァントは残機1でヒーコラしてるってのに、奴だけ残機12。コンティニューおいしいれす、って馬鹿か。

一人だけヌルゲーとか、汚いなさすがバーサーカー汚い。

しかし残念。

俺がコナン君だ!

ここにコナン君がいた事が、アインツベルンの最大の誤算だろうよ。


「作戦はこうだお。まず、いま足止めしてるセイバーたんの役割を、アーチャーが代わりに受け持つ」

「馬鹿言わないで。アーチャーは弓兵なのよ? 剣の英霊がギリギリ持たせてるってのに、出来るわけないでしょ」

「それは聞き捨てならないな、リン。君は己のサーヴァントを過小評価している」


アーチャーが不機嫌そうに顔をしかめた。

そりゃそうだな。セイバーより弱いなんて言われたら英霊として、なにより男としてのプライドがズタズタだ。

ホント、赤い悪魔は女としてミクたんの足元にも及ばないわ。


「出来るの?」

「足止め程度なら問題は無い」


力強く頷いたバカアーチャーに安心したのか、遠坂も納得したようだ。


「キーマンは衛宮君だお」

「お、俺か!?」

「いけるかお?」

「あ、ああ、大丈夫だ! まかせてくれ! でも俺、強化くらいしか使えないぜ?」

「大丈夫だお。この作戦は衛宮君のスタミナに掛かってるお」

「スタミナか……。分かった、体力には自信がある」


おおう、さすが主人公。

やる気になったら凛々しさが違うな。

そりゃいろんな女が惚れちゃうわけだ。

でも気をつけろよ、衛宮クン? うっかりミクたんを惚れさせた瞬間、キミのチンコがさよならバイバイだからネ?


「時間が無いから手短に言うお。まずアーチャーがセイバーたんと交代。バーサーカーの注意を惹きつけてほしい」

「……まあいいだろう。たしかに時間も無い」

「次に、いったん後退したセイバーたんと、衛宮君・遠坂さんが合流。三人はそのままさらに後退してくれお」

「後退って……、私達三人とも遠距離からの攻撃手段なんてほとんど無いわよ?」

「大丈夫だお。作戦が決まれば、セイバーたんがバーサーカーを倒すはずなんだお」

「セイバーが? ホントかしら」

「九割方倒せるお。悪くても撃退は確実」

「どういう計算で九割なのよ?」


カーー。もう面倒くせぇ女だな、この赤い悪魔は。

大体だよ大体。俺の頭脳が、タブン九割クライ勝チマスタってはじき出したの!

まったく、こっちには原作知識があんだよ。

お前の思いつき作戦なんぞより遥かに高度な戦術だっつーの。


「俺の命も掛かってるんだお。信じてほしいお」

「遠坂、時間が無い。俺はセイバーを助けたい」

「うっ……、わ、わかってるわよ。別に信じてないわけじゃ……」


ツンデレ乙。

でももう俺には天使がいるから結構です。

そこのオレンジ頭がお前のヒンヌーをモミポするだろうから、俺の事は諦めてください。

ブヒッ。ヤベエな俺。今、遠坂凛フったったわww

もしかしてSS界始まって以来の快挙じゃね?

これがリア充の余裕というものか……。


「ちょっと、何気持ち悪い顔してんのよ?」


おっといかん。思考が逸れた。


「後退したら俺達は何をすればいいんだ?」


よく聞いてくれた、衛宮士郎。

この局面だけじゃなく、聖杯戦争の勝者になる為には、俺自身が有利になる筋道を作らなければならない。

間違いなくここがその最初の岐路。

俺はここで、原作を、ブレェェェクする!!


「アーチャーが時間を稼いでる間に、衛宮君と遠坂さんとセイバーたんで3Pするんだお!」

「「「……ハ?」」」


セイバールートでは、バーサーカーと二度対峙する事になる。

が、構図がほとんど変わらん。

ただ単に、衛宮がアインツベルン城に攫われるという要素が加わっただけだ。

衛宮・セイバー、遠坂・アーチャーVSイリヤ・バーサーカーという図式自体に変化は無い。

というか逆に、セイバーたんが魔力の使い過ぎで超弱ってた気がする。

なら、セイバールートで行うはずのイベントを前倒ししようぜ?

どっちみちセックルしないと生き残れないんだ。どうせする事になるなら序盤ですればいいじゃない。

さらにブレイドワークスルートでの要素も混ぜちまったら、もう恐いもの無しだろ?

我ながら恐ろしい頭脳だぜ。

つまりこうだ。

バーサーカーを倒すには宝具(火力)の連打が一番手っ取り早い。

”約束された勝利の剣(エクスカリバー)”なら、うまくいけば二撃で殺せる。

”無限の剣製(アンリミテッド・ブレイドワークス)”でもいいが、ここはセイバーの強化も視野に入れよう。

アーチャーが足止めしてる隙に、衛宮とセイバーたんがセックル。

これで繋がっていなかった魔力のパスがちゃんと繋がるはずだ。

セイバーの低下しているステータスが本来の物になれば、衛宮だけじゃなく、きっと俺の利益にも繋がってくる。

しかし、衛宮の貧弱な魔力じゃあセイバーたんはそう何度も宝具を使えない。

そこでさらに、衛宮と遠坂がズッコンバッコン。

魔力だけはバカみたいにある遠坂を外部電源にする事で、セイバーたんが無双状態へと変身するわけだ。

しかも! 衛宮が”無限の剣製”を使う為の下準備がほぼ完了するというオマケ付き!

主人公補正あんだからいきなり使えるようになるか、遠坂とのライン通じてアーチャーの心象風景ぐらいコピるだろ。

まさに一石二鳥、三鳥、倍率ドンだ。

問題は、衛宮が連続でドピュれるだけのスタミナがあるかどうか。

でもまあ、心配はいらないかな。

エロゲ主人公は絶倫だと昔から相場は決まってる。下手すりゃ軽く五、六発ぶち込むかもしれん。

俺の頭脳ヤバイな。

この見事な名軍師っぷりに、きっと孔明だって裸足で逃げだすに違いない。

よくよく考えてみれば、いつの時代だって知略に優れた軍師達が戦場をコントロールしてきたのだ。

やはり知という物こそを、人は最優先に磨くべきだろう。

ここにいる面子に知性を期待するのは酷。

俺はただのしがない一般人にすぎないが、知力には少々自信がある。

魔術師達には悪いが……、ここからの指揮は俺が取る!


「アーチャーはすぐにセイバーたんとスイッチ! 二人は早く服を脱いでセックルの準備だお! よし、作戦開始!」

「バカ」

「死ね」

「消えろ」


……え?


「いったい何考えてんだよ……」

「真面目に聞いた私が馬鹿だったわ」

「少しは自重しろ、この変態が」


はあ……?

え? 何? なんで俺罵倒されたの? 意味わかんない。


「アーチャーはセイバーの援護よ。私もサポートするわ。衛宮君は私の隣。戦闘の邪魔にならないようにしなさい」


しかも赤い悪魔が勝手に指揮を取りだしましたよ? 俺から高速で離れながら。


「ちょ、ちょっと待つお! 俺は真剣にブヒンッ!?」


無言で俺の顔面にガンド撃ってきやがった。

なにコレ?

いったい何が不満なのよ?

だれが聞いたって、俺の作戦の方が遠坂のより優秀なんじゃないの……?

クソがッ! 俺という天才に時代がまるで追いついてこない! まさか俺が速すぎるとでもいうのか……ッ。

悔しくて涙が出てきやがる。

もう駄目だ。このボンクラ共はまるで当てに出来ねえ。

どうする? 下手に衛宮が死んだりしたらマズすぎるぞ。

衛宮の中に”全て遠き 理想郷 ( アヴァロン )”があるからって安心なんぞ出来ねえ。即死したら終わりだ。

あのバカタレは地雷原でバスケのドリブル練習するくらいの馬鹿なんだぞ?

たしかアイツの魔術の練習方法がそんな感じだった。

北斗百裂拳の練習するはずが、何を勘違いしたのか南斗列車砲の練習してたくらいのイカレっぷり。

オ゛メーがやってんの魔術の練習じゃねーがら!! って遠坂に怒られたの知ってんだぞ、クソッタレ。

ちくしょう! 衛宮なんぞの心配して損した!

お前等が死ぬのは勝手だけど、俺まで巻き込むんじゃねえよ!

衛宮がリタイヤした瞬間、俺が持ってる原作知識はゴミと化す。

主人公が死んだ後のシナリオなんて知らんから当然だ。

なにか……、なにかないのか?

この役立たず共に頼らずに状況を打開できるナニカッ!?


「マスター。危ないですから、もっと後ろに下がりましょう?」


あったーーーーーーーーーーー!!


「ミク……たん……」


そうだ。なんで俺は忘れていたんだ。

俺には宇宙最高のサーヴァントがいたじゃないか!


「ほら、もう泣かないでください。こんな時にあんな事言ったら誰だって怒──」

「ミクたん!!」

「ひゃ!? な、なんですか、マスター?」

「ミクたんの能力ってなに!? もしかして歌による対象の一時的なステータス上昇じゃないかお!?」

「そ、そうですけど、よくわかりましたね」

「キタァァァァァァァァァ!!」


キャッホーーイ!

これで勝つる。バーサーカーオワタww

ミクたんの能力。これはなんとなく分かってた。

初音ミクの熱狂的ファンである俺にとって、彼女の全てを推察する事など赤子の手を捻るようなもの。

天使である彼女の歌に、『奇跡』が宿らぬはずがない。

愛の歌姫(ディーバ)たる彼女は、その想いで他者に恩恵を与える存在なのだ。

初音ミクの生歌とか、もう間違いなく五ランクはアップするに決まってる。

十二の試練(ゴッドハンド)?

Bランク以下の攻撃を全て無効化? 

十二回殺されない限り死なない?

たわけが! なんというチンカス能力!

所詮は半神半人だったな。まあ、奇跡を紡ぐ本物の天使と比べるのはちと酷か。

ミクたんが歌い出した瞬間、セイバーとアーチャーの攻撃は全てAランク以上ですからね?

『約束された勝利の剣』なんて使った日にゃおまえ、たとえ命が100個あっても一瞬で消し飛ぶっつーのw

つーかコレ、通常攻撃どころか下手するとシッペやデコピン、にらめっこまでもがAランク攻撃になりうるぞ。

 セイバーたん「あ? テメーなにメンチ切ってんだ? やんのかコラ」メンチガエシ

 バーサーカー「ギャーーーーーーーー!!」シボウ

 セイバーたん「なにその腰ミノ? オシャレのつもりすかw」バカニスル

 バーサーカー「ギャーーーーーーーー!!」シボウ

 セイバーたん「シロウ。ご飯は大盛りにしてください」オカワリ

 バーサーカー「ギャーーーーーーーー!!」シボウ

きっとこんな感じだな。

さすが俺のミクたん、マジでパネェェェェェェェェ!!

あえてもう一度言おう。

バーサーカーオワタwwww

もういいよ。休みたまえ。

君の冒険はここまでだ。

俺とミクたんを敵に回した君が愚かだったのだよ。

怨むなら、天才と天使を同時に相手してしまった己のアホさ加減を怨むんだな。


「よく聞けえ! ヘラクレスよ!」


もうテンションあげあげだわ。

俺の魂が歓喜に震えて止まらんよ。

さあ一緒に狼煙を上げよう、ミクたん。


「おまえはすでに──」


俺達こそが最強なのだと、このクソのような世界に宣言するのだ!


「死んでいる」


劇画顔でバーサーカーを指さすと、戦場の空気が一瞬固まった。


「お、おい遠坂。野々宮の奴大丈夫か?」

「最初から手遅れよ」

「ねー、お兄ちゃーん。あのデブ、お兄ちゃんの友達ー?」

「いや違うぞイリヤー。ただの同級生だー」


バカマスター共が。

このシリアスな場面で何考えてんの?

殺し合いの最中に敵と慣れ合ってんじゃねえよ。

和気藹々で殺し合うぞ~ってか? 

だからお前ら魔術師は頭がイカレてるってんだ! キチガイ共が!

もういい。こいつらタコマスター共には何も期待せん。


「ミクたん、歌うんだお!」

「え? い、いいんですか?」

「もちろんだお! 『初音ミク』の歌をたっぷり聞かせてやれお!」

「ハイ!」


うおっ、なんて嬉しそうな顔だよ。超可愛いんですけど?

まあそうだよな。歌姫なのに召喚されてから全然歌ってないもんな。

ゴメンなミクたん。こんな血生臭い世界に喚び出しちまって。

俺が絶対護るから、許してほしい。

ミクたんの邪魔にならないように精一杯頑張るよ。

俺が決意を再度固めた時、世界がミクたんの祝福に覆われた。


「ぬ!?」

「こ、これは!?」

「なにこれ!?」

「なにか聴こえてくる……」

「メロディ? それもすごい清浄な魔力……」


上から順にアーチャー、セイバー、遠坂、衛宮、イリヤ。

奇跡に触れたアホウ共が驚愕してやがる。

どこからともなく聴こえてくる、深く、美しく、神聖な曲が戦場を支配した。

理性の無いバーサーカーですら動きを止めている。

まあどんなバケモンだろうが、これだけの奇跡を浴びちまったらそりゃ驚くわな。

だが、おれの驚愕は、アホウ共の遥か上だった。


「ッ!! ッ!! ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ッ!!」


イントロが流れてきた瞬間、俺の鼻とケツの穴から何か出た。

ああ、安心してくれ。別に汚物的なモノじゃない。

こう……電流的な?

つーかスピリチュアル的な?

というか、出産的な何かだった可能性もたしかにあるわ。

なぜって、これは……。

この曲はさ……。

んーなんて言えばいいのかな……?

これは……。

これはッ!

これはこれはこれはこれはこれはぁぁぁぁぁッ!! 

俺の──


『みくみくにしてあげる♪』


──原点ッッッ!!!!


「科学のげ「ブヒィーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」」


ミクたんが歌い出した瞬間、俺の魂は爆発した。

大丈夫かコレ? チンコも爆発しちゃったかもわからんね。

俺に出来たのは、獣の様な絶叫を上げる事だけだった。

俺の体内で暴れまくるコレは一体何ですか?

いまなら俺、ブロリーにも勝てるような気がす……桃白白にも勝てるような気がする。

アホみたいに体が軽い。

力とかそういうのだけじゃなくて、もう何もかもから解放されたかのような全能感。

大丈夫? 俺、もしかして死んじゃってね?

ちゃんと息してる?

あ、ちゃんと生きてるわ。わけの分からん超パウァが全身に、タマタマにまで流れてるのがハッキリと分かるもん。

この超パウァ、どうやら知覚力もアップさせちゃってるみたいだ。

何か知らんが戦場の全てが把握できちゃうし。

ミクたんから目が離せないのに衛宮と遠坂の表情、セイバーアーチャーの動き、ロリブルマの立ち位置だって分かる。

まあ、バーサーカーが纏う圧倒的な死の気配すら見通せてしまうのは、完全に無駄機能だと言わざるを得ないが。

なんかもう膨らみ過ぎた風船みたいに、このままじっとしてたらパーンってなっちゃいそう。

だから俺は力を解放した。


「昇龍拳ッッッ!!」

  ∧∧ ∩
 ( ゚∀゚ )/  ショーリューケン!
⊂   ノ
 (つ ノ  
 ( ノ




魂がメルトダウンしちゃった俺は、その場で昇龍拳を繰り出した。

『初音ミク』が与えてくれたミラクルパウァ。

それを全開にした俺は、この戦場でもっとも適切な己の位置を割り出し、跳ぶ。

前世で習得した昇龍拳は、完璧な軌跡を描きながら夜の闇を切り裂いた。

が、なんだこりゃ?

俺は間違いなく昇龍拳を繰り出した。完璧すぎる程に完璧な昇龍拳だったはずだ。

なのに、その昇龍拳は、俺の本来の技量を遥かに超えていた。


「ウオォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!」


        _ ∩
      ⊂/  ノ )   ウォォォォ!
      /   /ノV  ミ
      し'⌒∪   ミ  
           ミ


俺の身に宿った爆発的な力は、昇龍拳の上昇限界を容易に突破。

荒ぶる力を抑えきれず、俺はエビ反りになりながら天を舞う。


「ケェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェ!!」


r'⌒X⌒X⌒X⌒X⌒X⌒ヽ ⊂゙⌒゙、∩
ヽ__乂__乂__乂__乂__乂 ⊂(。Д。) ケェェェェ!


もはや何が何だか分からない。

上下左右も分からない。

この全身を駆け抜ける不思議パウァが、俺の体をやたらめったらグルグルと回転させる。

おそらく、最も近い感覚は飛翔ではないだろうか。

そう、俺は今、宙を翔けているのだ。

──ここだ!

r'⌒X⌒ヽ ∩゙⌒゙、⊃
ヽ__乂_ノ (。Д。)⊃ ピキーン!


俺のコメカミを、閃きが右から左に突き抜けた。

この瞬間、俺の直感力はアムロ・レイに並んだ事を意味する。

ニュータイプと同等の直感力を手に入れた以上、もはやビーム兵器でもなければこの俺を捉える事など出来はしない。

そんな傲慢を抱きながら、俺は残像を起こす程の抱え込み前転に移行。

全力で巻き上げられるトイレットペーパーの気持ちを理解した俺は、きっとどんなお尻にも優しくできるに違いない。


「墳ッ!!」


   ∧_∧  フンッ!
   (  ・ω・ )   。
  / ヽ!i! ヽl!i /
  と_)⊃_) ⊃ バンッ!
   ・⌒Y´⌒Y⌒ 、


超人の着地。

本来なら間違いなく潰れたトマト確定だが、ミクたんのミクミクパウァに護られてる俺には何の問題も無い。

両手両足を使い、トン単位の衝撃を見事に吸収した。

そして咆哮。


「みっくみっくにしてあげるぅぅぅぅぅぅ!!」


間に合った。

ミクたんの真正面。その距離およそ10メートル。これ以内だと警備員に連行される恐れがあるからな。

ミクたんの歌を邪魔せず、且つライブで最高の一体感を得られる最適の距離にして位置。

ミクたんのパンチラに目を奪われながらも、俺は完璧な振り付けと共に完璧な合いの手を入れる事に成功した。

唯一の難点はバーサーカーに背を向ける形になってしまう事だが……、まあ仕方あるまい。

生ミクたんと一緒に『みくみくにしてあげる♪』を歌い踊る機会。これを逃す奴はミク豚を名乗る資格が無い。

ここでは間違いなく最優先事項だ。

ちなみに全員の立ち位置はこんな感じ。



        ○イリヤ                        ○イリヤ
        ●バーサーカー                     ●バーサーカー
                                    ◎オレ
  セイバー○                       セイバー○   
                          

                   ⇒

                         
   アーチャー●                       アーチャー●   
        ミク○◎オレ                       ミク○    
リン○                        リン○      
 シロウ●                       シロウ●
                                       ※立ち位置イメージ



バーサーカーとの距離は1メートル。

少々バーサーカーに近い気もするが、ミクたんライブの前にはやはり些細な事と言えるだろう。


「実際に飛べるブタっているんだね。頭はおかしいみたいだけど……」

「ちょッ!? 死にたいの!?」

「危ない!! 野々宮!!」


なにやら雑音がするが、訓練されたミク豚である俺の集中を奪う事は誰にも出来ん。例外は『初音ミク』本人だけだ。

いまはただ、十八年ぶりの聖歌に酔いしれるのみ。


「キャーーーーーーーー!! マスターーーーーーーーー!!」


む? 天使の悲鳴。どうしたミクたん!!


「後ろ後ろーーーーーーーーー!!」


ピキーン。

こ、このプレッシャーは!?


「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!?????」


俺は直感に従い、身を捻りつつ全力でダイブ。

直後、俺は爆心地から吹き飛ばされた。


「プギャッ!?」


地面に叩きつけられた俺は、ようやく正気に戻った。

あ、あぶねぇ……ッ! 危うくひき肉になるところだったんすけど!?


「何を考えているのです!!」


セイバーたんがバーサーカーと打ち合いながら怒鳴ってきた。

どうやら追撃を防いでくれたらしい。

つーか俺が聞きてえよ。

何を考えてたんだよ、俺。テンションって怖い……。


「貴方を護りながらでは持ちません! 早く下がりなさい!」

「お、おう」


本当なら腰が抜けてるとこなんだろうけど、どうやらミクたんの加護は持続型のようだ。

でも、どんどん力が抜けていってるのも感じる。

当然俺は慌てて逃げようとした。

しかし、ここで違和感。


「……?」


俺は振り返り、セイバーとバーサーカーの戦闘を見る。


「ッ!?」


そして気がついた。


「なにしてんだ!! 早くそこから逃げろ!!」

「この馬鹿!! とっとと逃げなさい!!」


衛宮と遠坂がひどく慌てた声で叫ぶ。

いまにも駆けつけようとする正義の味方と、それを押しとどめている赤い悪魔。

あいつら魔術師のくせして妙に善良だよな。


「マママ、マスター!! はやくこっち!! こっちーーー!!」


おほっ。慌てる天使可愛ゆす。

飛び跳ねながらブンブカ手を振ってるよ。

……あーミクたんと結婚してぇ。

俺は、覚悟を決めた。


「ミクたーん! もっかい歌ってくれおー!」

「え? えええ!?」

「なっ!? バ、バカ! いいから戻れ!」

「なに考えてんのよ! この豚は!」

「あ、危ないですよー! マスター!」


悪いな、衛宮。ミクたんもごめんよ。

けど遠坂。おまえのパンツはオークション行きが決定したわ。


「お願いだお! ミクたんが歌ってくれないと俺死んじゃうお!」


そう言って、俺はバーサーカーに向かって走りだす。

逃げた勝算を引き戻す為に。

ここがFate/stay nightの世界だって事は分かってる。

似た世界だとか、もう俺にとって現実だとか、そんな事はどうでもいい。

どっちにした所で、ちゃんとバッドエンドが存在する世界だって事だ。

最悪でも死だけは避けたい。ミクたんが死ぬなんて考えたくないし、衛宮達が死ぬのも見たくない。

もちろん必ず勝者になるつもりだ。その目途も立ったと思った。

でも違った。

悪くても衛宮とは同盟が組めると考えたのは甘いだろうか?

アーチャーが敵になったとしても、ミクたんの歌で強化されたセイバーがいればどうとでもなる。

取らぬ狸のなんとやらだが、上手くいくと思ってた。

でも、その前提が崩れた。

さっき、ミクたんが歌った後も、セイバーはバーサーカーに押されていた。

つまり、ミクたんの歌が届いていない。

かなりマズイ。

原作でも、セイバーは衛宮のお守りだけでギリギリだ。

強化でもされない限り、俺とミクたんまで護る余裕はないだろう。

セイバーの抗魔力のせいなのか、それともミクたんの能力がマスターである俺だけを強化するのかはまだ分からない。

それでも使えない勝算になり下がったのはたしかだ。

だから、新しい勝算を手に入れなければならない。

元々聖杯戦争は殺し合いなわけだし、ミクたんの為なら多少の無茶はする。


「わ、わかりました! でも無茶しちゃだめですよー!」

「ええ!? 認めるのか!?」

「な、なに考えてんのよ、アンタ達二人とも……」


さすが宇宙最高のサーヴァント。マスターへの忠誠は天を突くな。

間を置かず、すぐに聞こえてくるメロディー。

瞬時に漲るミクミクパウァ。

よし、ミクたんが護ってくれてる。

これで恐い物は何もない。


「いくぜ──」


お約束。というんだろうな。

実は、俺には武術の心得がある。

統計をとると、転生者、トリップ者の武術経験率は恐ろしく高い。

この俺もご多聞にもれず、前世ではよく鍛錬に励んだものだ。

あまりにテンプレ過ぎて申し訳ない気持ちでいっぱいだが、こればっかりは仕方が無い。本当の事だからな。

前に戦闘力の無い一般人だと言ったが、それは魔術や英霊に対して無力という意味ね?

まあ、今世ではたまに型を確かめるくらいだから多少鈍ってるだろうが、それでも中々の武術家だと自負している。

でも勘違いしないでくれ。

平和主義の俺は、鍛えた技を使って他者を傷つけた事なんかない。

前世でも今世でも、例えやんちゃボーイ達に囲まれても使わずに逃げていた。

おまえらなんぞ五秒で殺せるぞ! と心の中で思いながらね。

実際あまりに威力が高すぎて、そこらのチンピラには使えねえんだよ。

それでもいつか必要になる日が来ると、前世で厨二病をこじらせた俺は必死で鍛錬したわけだ。

ホント、人生何が幸いするかわからんぜ。

技とは肉体に刻まれる物。故に、行った事のない動作は酷くぎこちない物となる。

才能の差により錬度と習得速度は違ってくるが、それでも万人共通の摂理である。

しかしこの俺は例外だ。

転生などというイカサマのせいで、前世の経験すら己の物としているのだ。

多少サビついているかもしれんが、そこはミクたんの愛で補えるだろう。

力や速さ、はては動体視力や直感にいたるまでが全て爆発的に底上げされている。

ならば少々無茶をしても問題はあるまい。

勿論、英霊という存在を侮っているわけじゃない。

バーサーカーと一対一でガチンコなんか出来るわけないし、するつもりもない。

俺がするのはあくまでセイバーの援護。

そして、『剣』と『弓』を届かせる為の撹乱だ。

俺とミクたんの未来の為、ここでバーサーカーは撃退せねばならない。

それも、万が一にも衛宮と遠坂がリタイヤしてはならないのだ。

故に俺は勇気を振り絞る。

この頭脳が導き出した勝算を信じて、ちっぽけな勇気を振り絞るのだ。

さあいけ、野々宮一平。

このバーサーカー戦はおまえの試金石だ。

吼えろ、勝者になる為に!


「ヤムチャ!! 技を借りるぜェ!!」


ありったけの勇気を出して、俺は吼えた。


「くらえ!! 狼牙風風拳!!」


嵐の如き剣戟を交わす闘争の渦。

その中心へと飛び込む!


「ハイハイハイハイブッゴォォッ!?」


バーサーカーの蹴りをモロに食らった俺はぶっ飛び、街路樹に叩きつけられた。

クソッ、痛ぇ……、ものすごく痛ぇ……。

……え、なに? メッチャ痛いんですけど!?

痛っっったーーーーーーーーーい!! 全身が痛すぎるぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!

そらそうだ。

叩きつけられた衝撃で街路樹が軽く砕けてるもん。そら痛いわな。

みくみくパウァに護られてなかったら即死してたね、これ。


「の、野々宮ーーー!!」

「マスターーーーー!!」

「あたりまえでしょ……」


つーか嘘だろ? 両手を使った高速連撃の間に、蹴りが割り込んできやがっただと……!?

クソッたれが! 理性を失っても百戦錬磨の武は体に染みついてるってことか!

さすがヘラクレス……、少し甘く見たぜ。

けどどうするよ?

前世で馬鹿みたいに練習した狼牙風風拳が通用しないとなると、後は排球拳くらいしか思いつかねぇ。

だが、ヤツのあの巨体をバレーボールに見立てる事なんて出来んのか……?

ちくしょう、無理だ! レシーブした瞬間、間違いなく腰やっちまう!

かといって昇龍拳はタメがでか過ぎる。

昇龍拳千本制覇の俺の功夫を持ってしても、それはキメ技と想定して行った鍛錬だ。

小足見てから昇竜余裕でしたww なんて言える程モノにしてるわけじゃねえ。

相手は大英雄ヘラクレス。とてもじゃねえが喰らってなんてくれないだろう。

クソッ! こんな事なら繋ぎ技として練習してればよかった!

俺にウメハラさんくらいの才能があれば……ッ。

無い物ねだりしても始まらない。あと残るのは……未完成のアレしかねえな。


「だ、大丈夫だお! 歌いつづけてくれ、ミクたん!」


俺は痛みを堪え、力を振り絞って立ち上がった。

……だが、俺に出来るのか?

前世で夏休みに二万本練習したのに習得できなかった、あの技を……ッ。

いや、やるしかない!!

あの時とは違う! 今の俺には守るものがある!

ミクたんの加護を受けてるいのに、出来ないわけがない!!

タイミングを間違うな。

バーサーカーがセイバーを攻撃した瞬間を狙え。

いかに英雄とはいえ、攻撃と防御を同時に行う事なんか出来ないッ!

…………いまだッ!


「新・狼牙風風拳!! グッハァッ!!??」


またブッ飛ばされた……。

超絶に痛い……。

なんだよコレ? 駄目じゃねーかよ……。

全然駄目だよ! なんだよ狼牙風風拳って!? まったく使えねーじゃねえか!!

鍛錬に使った俺の中学三年間を返せ!!

だめだコリャ。多分俺が世界で一番の狼牙風風拳の使い手のはずなのに、まったく通用する気がしない。

これ俺のせいっていうよりヤムチャのせいだろ?

ヤムチャじゃ駄目だわ。やっぱアイツ駄目だわ。

俺もう二度と狼牙風風拳使わねぇ。


「オイ、大丈夫か野々宮! しっかりしろ!」

「……アンタ、いったい何がしたいのよ?」


いかにミクミクパウァでも、さすがに二度も喰らったら動けなくなった。

もはやピクリとも出来ない俺に、慌てて正義の味方が駆け寄ってきてくれる。ついでに赤い悪魔も。


「え、衛宮君……遠坂さん……すごく、痛いんだお……」

「ちょ、血だらけだぞ!? 遠坂、直してやれないか!?」

「どれだけ足を引っ張るわけ、この豚は……」

「早く癒してやってくれ! このままじゃ……!」

「わかってるわよ。というか、バーサーカーの攻撃喰らってなんでまだ生きてんの……」


それはミクたんの愛の力です。

つーか、やっぱこいつらにもミクたんパウァが届いてないみたいね。

意識が飛びそうな俺に、遠坂が宝石をかざす。

体中があったかくなってきた。

あれー? 赤い悪魔のくせしてなんかすげー癒される。

回復魔術ってこういうもん?

やっぱ遠坂はホイミ要員として必要だな。

パンツ盗むのは勘弁してやるか。


──マスター! 大丈夫ですか!?──


む? 頭の中でミクたんの声が響く。どういう事?


──無茶しちゃ駄目って言ったじゃないですか!──


うひょー! 遂に俺達の愛が心まで繋げちまったのか!?


──全然違います。歌ってる時は心を込めてますので、私の歌が届く人にはちゃんと想いが伝わるんです──


スッゲェェェェェ! さすが俺の愛天使!


──もうっ……。いいですか? マスターの治癒力も上げてますから、私はこのまま歌い続けます──


なんと! やはりこの癒され感は遠坂の手柄ではなかったのか!?

やっぱりな。おかしいと思ったんだ。

俺を騙した罪は重い。テメエのパンツは三枚ヤフオク行きが確定したぞ、赤い悪魔。


──マスター、エッチなのは駄目です。嫌いになっちゃいますよ?──


ひぃぃぃ!? すんませんすんません! お尻の穴舐めるので許して下さい! 嫌いにならないでぇぇぇぇ!!


──舐めなくていいです! とにかくマスターは休んでて下さい。私がバーサーカーさんに帰ってもらいます──


ちょっ!? ダメダメダメダメ!! ミクたんは危ない事しちゃ駄目ぇぇぇぇ!!


──私だってサーヴァントなんです。マスターは私が護ります──


いいのいいの! 戦闘なんてバカ共に任しとけばいいんだって!

ミクたんは天使なんだから後ろで歌ってくれるだけで十分!

殺し合いなんてミクたんがやる必要無い!


──近づかないから大丈夫ですよ。それに、狙うのはあの大っきな武器です──


は? 武器?


「オイ野々宮! しっかりしろ! 意識をしっかりもて!」

「う──」


うるせえな! 今忙しいから黙ってろボケッ!

空気の読めない衛宮にそう怒鳴ろうとしたら、目の前が急に暗くなりだした。

ヤバイ。血流し過ぎて貧血になってるわ。


──バーサーカーさんも武器が無くなったら帰ってくれますよね? じゃあいきますよぉ──


俺は力を振り絞ってミクたんに目を向ける。

あ、俺あの表情とポーズ知ってるわ。

気絶する直前に、俺の脳裏に浮かんだ映像。

それは、職人が作った『みくみくにしてあげる♪』のMAD、3DPV。

そういやミクたん、数十基のネギミサイル一撃で破壊してたわ……。

もー、この天使はどこまで俺の希望であり続けるの?

可能性が無限大過ぎて生きるのが辛いんですけど?

目が覚めたらさっそく『Nyanyanyanyanyanyanya!』踊ってもらわなくちゃ。

『ワールドイズマイン【PV】』のエロイミクたん見たすぎる。

頼めばアリスバージョンの『裏表ラバーズ』踊ってくれるかな……? さすがに結婚するまでは無理だろうか?

MMD杯のは全部やってもらわなきゃね。

ヤベェ……。俺の人生、残り5、60年なんかじゃ全然足らんぞ。

永遠の命を願わなかった俺は生粋のアホウだったわ。

くそう……フヒヒ。

嬉しすぎるのに、俺は歯噛みしながら意識を失った。

あ、ちなみに目が覚めた時に、衛宮がイリヤの伝言預かってた。

「飛んだところで豚は豚だぜ」だと。

あいつも大概頭がイカレていやがる。

とにかく、あのロリのブルマもオークション行きが決定したわ。





一日で三回も気絶するとか、やっぱ聖杯戦争とんでもねえな。

まあ、俺には宇宙最高の天使が傍にいる。きっとなんとかなるだろ。

明日からのミクたんとの生活が楽しみだ。

このまま二人三脚で聖杯戦争突っ走るぜ。

俺はまだ登り始めたばかりだからな。この果てしないミク坂を──。


ミクマスターNONOMIYA 完





後書き

もう書けない……。
自分みたいな真人間に、こんな変態主人公とかもう書けないよ。(涙)


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