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[34581] 【一発ネタ】武ちゃんの出身世界はちーとだったようです【習作】
Name: 流離いのパン屋◆191509f4 ID:1105a9cf
Date: 2012/08/23 02:58
 ※注意※
 ・某ニコニコする動画の『トータル・イクリプスの自衛隊がチート過ぎる件』に影響されて書きました。
 ・なので、先に『トータル・イクリプスの自衛隊がチート過ぎる件』を見てくるとより楽しめる(かも)しれません。
 ・重複する部分もありますがそこはスルーで。
 ・短いです。




―――――――――――――――――――――――――――――





「先生、俺がその因果導体というやつだってことは分かりました。それってつまり、俺を基点として双方に因果がやり取りされるって言うことですよね」

 それで先生は次元転送装置を開発したはずだ。

『ええ、そうよ。それがどうかしたの? 転送する前に変な事を言って』

「いえ、なんでもありません」

『そう、それならいいわ。じゃあ転送を始めるから、そこの台に横になって』

 もし俺の予測が間違っていないのならば、この世界を救えるはずだ。






 目が覚めると、そこは見慣れた俺の部屋。純夏がいて冥夜も居て、みんながいる日常。あの世界の惨状を一刻も早くこの世界の先生に知らせなければ。逸る気持ちを抑え、物理準備室へと足を運ぶ。
 そこにはいつもと同じ香月先生の姿があった。俺は因果導体としての俺のことを話し、数式の準備を頼む。そして、俺が考えたある計画についても話した。
これがもし実現可能ならば、世界は変わるはずだ。そして因果がやりとりされる以上、こちらの世界にも影響が及ぶ。ならばあの組織も動くのではないかと考えたのだ。

『なるほどね。いいわ、伝手を辿って何とかしてみるわ。それにしてもあんた、よくこんなことを思いつくわね』

「伊達にこの世界(・・・・)で生きてませんよ」

 3時間ほどの滞在を終え、俺は再びあの光(パラポジトロニウム光)に包まれ、BETAの居る現実へと帰還した。





○●○●○●○●○●





一週間後―――――

 数式を受け取りにいく刻限の時となった。あちらの先生がうまくやってくれたのなら、こちらの世界も救われるだろう。光となって消え行く自分を見て儚い希望を抱く。
目が覚めると、そこは果たして自分の部屋だった。尤も、こちらの世界の自分と純夏や冥夜、それに先生も一緒であると付け加えなければならないが。

「お久しぶりですね、先生」

『久しぶりね、もう一人の白銀』

 この世界の俺は目の前に自分が現れたことに驚愕を隠せないのか、目を白黒させている。それはそうだろう。

『で、御剣。私の言っていたことは信じてもらえたかしら?』

『ああ。香月教諭の言葉を信じ切れなかったこと、許すがよい』

『た、武ちゃんが二人ーー!!』

 冥夜はいつもの冥夜で、純夏はやっぱりいつもの純夏だった。

『御剣冥夜の名において、最大限に後押しさせていただく』

 そして俺は数式と、既に根回しは終わっていたであろう彼の組織と共に、先生がこの数日で作り上げていた、次元転送装置を使い俺の現実へと帰還した。





○●○●○●○●○●





「先生、ただいま戻りました。これが件の数式です」

 そういって、数式を差し出すと先生は受け取るや否や、それに目を走らせる。

『そうだったの、そういうことだったの。これで00ユニットは完成するわ』

 興奮を隠しきれない様子の先生に、俺はもう一つの隠し玉を披露する。

「先生、俺の世界から援軍を呼んできました」

『は? あんた何を言っているの』

「そろそろ横浜基地の周辺に、彼らが到着するはずです」

 俺の言葉と共に、基地副司令である彼女へと通信が入る。それは俺の言葉を裏付けるかのように、アンノウン出現の報だった。

「先生、それが俺の世界から呼んできた援軍、『Gフォース』そして『自衛隊』です」





 いきなり出現した巨大な兵器郡に横浜基地はあわや戦闘かという雰囲気に包まれたが、副司令のオルタネイティヴ計画の成果という言葉によって鎮静化した。
翌日、新世代OSのトライアルテスト中に研究用に捕獲されていたBETAが逃げ出すという事件があったものの、Gフォースと自衛隊の活躍により、ほぼ損害が0で終わるという結果となった。
それを受け、甲21号作戦にGフォースの戦力を投入することが決定された。

『ねえ、あんたの居た世界って滅茶苦茶だったのね』

 確かに、光線級のレーザーを真正面から受け止めてもほぼ損傷が無い装甲やら、レーザーを1万倍にして反射するファイヤーミラーや重光線級のレーザーをまとめて受けてもかすり傷すら受けない超装甲など
こちらの世界ではありえないのだろう。ゴジラとの戦いでは120万度に達する熱線に耐える必要があるのだから、その程度のレーザーなど『少し眩しいな』ぐらいの感覚でないと役に立たないのだ。
さらにメカゴジラはゴジラと正面切って戦うことを想定して建造された機体だ。戦車級が齧った程度で損傷していてはお話しにならない。結果として、この世界のBETAでは傷付けることさえ難しい機体となっていた。





○●○●○●○●○●





 佐渡島まで20キロ、先陣を切るのはスーパーX2。その後にスーパーX3、スーパーXと続く。轟天号は地上のBETAが片付いたところでハイヴへと吶喊する手筈となっている。地球の丸みによる防御が無くなり、
重レーザー級の一斉射撃が襲い掛かるが、それはファイヤーミラーによって反射・増幅されBETAを焼き尽くした。

『佐渡島地表のBETA、その6割の消滅を確認』

 その報告に、指揮を執る発令所が静まり返る。ありえないというのがその内にあるのだろう。だが現実は待ってくれない。レーザー第二射も反射しBETAは地表からその姿を消す。
其処を好機と、轟天号が垂直にハイヴを粉砕して地下へと到達する。勿論のこと戦車級や要撃級が排除にかかるが、そもそもそんなもので粉砕できるほどやわらかい装甲ではない。
あっという間に反応炉へと到達すると絶対零度冷凍砲によって反応炉は塵と化した。

『反応炉の破壊を確認』

 その報告に基地内が沸き立つ。この戦闘での戦死者は0。ありえない戦果に自分の頬を殴っている者も居るほどである。だが忘れてはならないのはハイヴ内のBETAがこの基地を目指して進軍してくるということである。
それに対し、国連軍・帝国軍はGフォース及び自衛隊と連携しこれの撃退に成功。続く桜花作戦では、全対G兵器が導入された。ここでもスーパーX2によって光線属種が無意味と化し、轟天号によってオリジナルハイヴがガリガリと削られ、
メカゴジラのメガ・バスターによって突如として出現した超大型の新種のBETAが一瞬で蒸発する。もはやどちらが侵略者なのか分からない状況の中、あ号標的と呼ばれるオリジナルハイヴの反応炉を轟天号搭載のプロトンミサイルを使い一瞬で破壊、
ここにオリジナルハイヴの攻略は成功した。その後も各地のハイヴを同様の方法で破壊し続け、地球上のハイヴ全ての攻略が完了した。





○●○●○●○●○●





 地球を救ったことで、俺の因果導体としての役目は終わったのだろう。あのパラポジトロニウム光に包まれる。どうやらGフォースと自衛隊の面々も俺の因果導体としての縛りが無くなった為か次々に光となって消えていく。

『あんたのおかげで地球は救われたわ。でもね、ひとつ聞いておきたいの。あんなので戦わないといけない敵が居るの?』

「ああ、そのことですか。あの兵器群はある生命体との戦いのために開発されたんです。その名は、ゴジラ。日本はそれにしょっちゅう襲われてましたから、BETAぐらいなんてこと無いんですよ」

 消え行く俺の視界には、衝撃の発言に固まった先生の姿が残っていた。そして目が覚め、元の世界に帰還した俺がテレビで目にしたのは、件の怪獣王の姿だった。

「まあ、これに比べればBETAなんて可愛いものだよな」

 そこには、BETAを瞬く間に撃滅したGフォースと自衛隊がたった一匹の怪獣(ゴジラ)にいいようにやられている様子が映し出されていた。





                                                                                                                 おわり



[34581] ちーとなfateプロローグ
Name: 流離いのパン屋◆191509f4 ID:1105a9cf
Date: 2012/08/23 02:56





 ―――その杯を手にした者は、あらゆる願いを実現させる。

 聖杯戦争。
 
 最高位の聖遺物、聖杯を実現させるための大儀式。
 
 儀式への参加条件は二つ。
 
 魔術師であることと、聖杯に選ばれた寄り代である事。

 選ばれるマスターは七人、与えられるサーヴァントも七クラス。


 聖杯は一つきり。
 
 奇跡を欲するのなら、汝。
 
 自らの力を以って、最強を証明せよ。



 しかし、聖杯のシステム作成に携わったある魔法使いは後にこう述懐している。



『我が人生においての最大の失敗、それは日本で聖杯戦争を行ったことだ……キシュア・ゼルレッチ・シュバインオーグ』


 『日本』そう呼ばれる弓状列島から成る島国は、魔術の本場である欧州から見れば極東に当たり、また聖堂教会の影響力も極めて限定的であるため、こういった大規模な魔術儀式を行うには理想的な環境……かと思われた。惜しむらくは、彼等魔術師が俗世の事情や科学技術に疎いということである。
 もしも彼等がそれらの事に精通していたのなら、日本をその舞台に選ぶことは無かっただろう。彼等がそれを知らなかったがために起こった悲劇をいくつか御覧頂こう。







[34581] ちーとなfate――ケース1――(Fate×鷹音市ヒーロー騒動録)
Name: 流離いのパン屋◆191509f4 ID:1105a9cf
Date: 2012/08/23 13:09

  ケース1





「なんだって、加藤先生も入院した!?」

「はい。昨夜自宅から程近くの路上で倒れているところを発見されたそうで、先程警察から電話がありました。幸い命に別状は無いようですが、一ヶ月ほどの療養が必要だと医師の診断がありまして、現在冬木市民病院に入院しています」

 ここは穂群原学園の教員室。正確にはその奥にある学園長室である。そこでは2人の男が頭を抱えていた。1人はこの部屋の主である学園長、もう一人は教頭である。

「それにしても森先生に続いて加藤先生まで入院とは、葛木先生と和泉先生だけでは授業が回せないな。そもそも葛木先生は倫理担当であるし、和泉先生も担当は地理だ。歴史担当の2人共が1月居ないとなるとな」

「はい、学園長。それについてですが、姉妹校から1人臨時で教員を派遣してもらえないか打診しましたところ、1月なら何とかなると返答をいただきました。その方向で進めてよろしいでしょうか」

 その言葉に学園長の顔に笑みが浮かぶ。

「うむ。任せる。さて次にだが……」


 こういった経緯である男が穂群原学園へと出向することになった。それがとんでもない事態をもたらすことを、今は誰も知らない。



○●○●○●○●○●



「それでは今月から一ヶ月間ですが、この学園で歴史を教えてくださることになった先生を紹介します。足立先生、こちらへ」

「はじめまして、唯今ご紹介に預かりました足立乙市です。一ヶ月間と短い間ですがよろしくお願いします」

 舞台の上に立つのは針金のように痩せた風采の上がらない子男。頭髪は疎らでいわゆるバーコードヘアと呼ばれる状態である。気の弱そうな印象を誰しもが受ける、そんな人物だった。



○●○●○●○●○●



 数日後、衛宮士郎と呼ばれる青年は弓道部の部室の掃除を終えて帰宅の徒につこうとしていた。掃除だけでなく久しぶりに弓を引いていたので遅くなったのだろう。そんな彼の耳に金属が打ち合う音が聞こえてきた。学園の敷地内で一体何が起こっているのか、それが彼を突き動かしたのか、音のする方向へと歩を進める。
 そこで彼の目の前に広がっていた光景は、赤い槍を持った男と二振りの小剣を持った男が争っている様子だった。圧倒的な速度で突き出される槍を二本の剣を使って巧みにいなす男。時々その手に持った二本の剣が槍の勢いに負けて飛ばされるのだが、次の瞬間には何事も無かったかのようにその手にあの剣が戻っている、不思議な光景だ。
 青い男が見ているだけのこちらが引くほどに魔力を槍へと注ぎ込む。その光景に彼は無意識のうちに足を一歩後ろへと踏み出した。間の悪いことに其処には小枝が落ちていて、音をたててしまった。

「其処にいるのはだれた!」

 青い男からの誰何の声。このままでは彼は殺されるそう誰もが思ったとき、ある人物が彼の元へとやってきた。そう、この時間まで教員室に残って作業を行っていた、新任の足立教諭だ。

「君はたしか、衛宮君だったね。大丈夫かい」

「先生、そんなことよりも早く逃げて。殺される!」

 彼の叫びに教諭は其処に男が居たことを思い出したのか、彼に向き直る。

「何があったのかわからないが、物騒じゃないか。まずは落ち着いて話し合おう」

 その台詞が青い男に癇に障ったのだろうか。

「ああ、たっぷりと話を聞いてやるよ。あの世でな」

 そう言って、赤い槍を教諭の心臓めがけて突き立てた……はずだった。

「変身、アダッチマン!」

 其処には小男の姿はなく、身長は185センチ以上の逞しい肉体に鎧とマント、ブーツを纏った大男の姿があった。そして槍は彼の胸に突き立つことは無く、その男によって捕まれていた。

「え、え、え!?」

「大丈夫だったかい、衛宮君」

 しかしその声は紛れもなく、先程まで居た足立教諭のものだった。つまり、目の前の大男はあの足立教諭ということになる。

「あ、はい。怪我はありません。でもそれは一体」

 そこで槍を捕まれていた青い男が痺れを切らす。

「てめえ、何者だ」

「私か。私はアダッチマン。俗に言うセイギノミカタだよ」

 彼は槍を放しマントの下から刃のない剣のような物を取り出した。

「そうかい。随分となめた野郎だが、その心臓貰い受ける!」

 青い男はそういって先程と同じように大量の魔力を槍へと注ぎ込む。

刺し穿つ死棘の槍!(ゲイ・ボルグ)

 その言葉と共に突き出された必殺の刺突は、彼の鎧を貫くことなく止まっていた。

「馬鹿な、なぜゲイボルグを受けて生きていられる!?」

 たまらず叫んだのは先程まで青い男と切り結んでいた銀髪の男だ。

「ふむ、どうやらその槍は相当危険なもののようだ。そんな危ないものはこうしてしまおう」

 そういって刃の無い剣を振りかぶるアダッチマン。その金属板からは緑色の光が生まれ、槍を二つに叩き切った。青い男も銀髪の男も呆然としている。

「そんな馬鹿な……あの剣らしきもの、俺でさえ解析できないだと」

 そこに黒髪をなびかせて、一人の少女が登場した。

「おや君は、遠坂君だったね。どうしたんだい、こんなところで。ここは危険だ、早く家に帰りなさい」

「ええ、私もそうしたいのは山々なのですが、それは一体なんでしょうか」

 そういって指差すのは彼のスーツ。

「ああ、これかい。これは銀河連合から支給されたパワードスーツだよ。実は少し前に宇宙人にアブダクションされてインプラントされてしまってね。彼等が言うにはこの力で平和のために戦って欲しいということだったんだ」

「へえ、宇宙人に銀河連合……って、信じられるかーーーー!」

 絶叫が冬木の響き渡った。



○●○●○●○●○●



 後日、足立教諭の言ったとおり、鷹音市で騒動が起こっていないか調べたところ、一般にはTVの撮影か何らかのアトラクションと思われている怪事件が相次いでいることが分かり、彼女が科学やその産物に目を向けることになったことが大きな変化だろう。

 衛宮士郎と呼ばれる青年はセイギノミカタになるべく、日々の鍛錬を加速させ実際に戦地では力なきものの盾となり、一部では信仰の対象となり正しく英霊と成った。



 日本。それは魔境。日本、それは理不尽の権化。魔術師たちよ日本に関わることなかれ。


      
                               

                                 


                おわり



[34581] ちーとなfate――ケース2――(Fate/Zero×ふるこんたくと!)
Name: 流離いのパン屋◆191509f4 ID:1105a9cf
Date: 2012/08/25 14:16
ケース2






「ははは、はははははは!」

 ジャンヌ・ダルクを求め狂気に取り付かれた哀れな男、ジル・ド・レェ。彼が目論むのは聖杯戦争という儀式そのものの破壊。そのために制御すら捨て去り巨大な海魔を召喚した。対となるマスターは雨生龍之介、彼は海浜公園でその光景を見つめていた。自らが殺人の師と仰ぐキャスター最大の作品を。

「神は人間賛歌も絶望も等しく愛す。故にこそ礼賛も冒涜も等しく信仰として受け止める。ああ、なんとこの世界は愛に満ちているのだろう」

 そして彼は魔術師殺しとして恐れられた一人の男によってその生を終えた。生涯を通して求め続けた『死』を理解できた悦びと共に。そんな彼を見つめる一対の瞳の持ち主はこう呟く。

「貴方は愛を理解していない」

と。







 キャスターは巨大な海魔と一体となり、周囲に破壊を振りまく。上空では英雄王と黒き騎士が夫々ヴィーマナとF15‐Jを駆り壮絶な空中戦を繰り広げている。

 なにを思ったのか、川岸に居るランサーが黄色い槍をその手でへし折った。自らの象徴とも言える宝具を己の手で破壊する、そしてそれは彼の槍によって傷つけられていた彼女の左腕の復活を意味していた。この場において彼は彼女に自らの誇りを託したのだ。あの巨悪の権化を討つことこそが、自らの騎士道に適うと信じて。
 しかしことはそう容易には運ばない。上空から川岸に居る騎士王を目ざとく見つけたバーサーカーは機銃掃射によって彼女を狙い撃ち、セイバーがそれを交わし続ける。ランサーの行為に報いる為にも、この場で己の宝具である約束された勝利の剣を使いあれを破却せねばならない。

「くっ、これではエクスカリバーが使えない。漸く左腕を取り戻した矢先に……」

 苦戦するセイバーの援護にランサーが入る。イーグルの上に降り立ち、もう一つの槍でそれを突く。するとどうだろう、ただ槍で突いただけだというのにそれはあっさりと崩壊を迎える。天空を駆け回る戦車は雷を降らせ彼の敵を足止めする。そしてついに、あの名高き剣がその黄金の刀身を顕した。彼女がその剣を大上段に構えると大地から、光がそれに収束する。

「輝ける彼の剣こそは、過去・現在・未来を通じ戦場に散ってゆく全ての兵たちが、今際の際に懐く、哀しくも尊き夢」

 岸辺に佇む銀髪の女性がその剣の来歴を謳いあげる。

「その意志を誇りと掲げ、その信義を貫けと糾し、今常勝の王は高らかに手にとる奇跡の真名を謳う。其は――――」

 黄金の刀身から放たれる光が一気に増大し、爆発的な輝きを見せる。

約束された勝利の剣(エクスカリバーー)!!」

 光の大斬撃が海魔を飲み込み、中に居たキャスター諸共滅ぼした。しかしその剣の威力はその程度で到底収まるものではなく、その先にあった客船と川岸を直撃……しなかった。
 光の斬撃は何者かに阻まれたかのように、そこで止まったのだ。当初の目的である海魔とキャスターの討伐を成し遂げることが出来たことは喜ばしいのであるが、それを打ち消して尚あまり在る出来事に呆然とするセイバー達。光が消え去ったその先に居たのは、ただ頭を垂れる少女一人であったが、彼女たちからその少女を見ることはできなかった。そして、彼女とその少女の再びの邂逅は時をしばらく置いてからとなる。





○●○●○●○●○●




 冬木中央公園にそれは出現した。ただ人から悪であれと望まれた哀れな青年、それを核として聖杯の中に生まれた邪悪。この世全ての悪が今まさに現世へと生まれ落ちようとしていた。

「そんな、あれは聖杯などではない。私がやってきたことは無駄だったのか……」

「素晴らしい、素晴らしいぞ。これがこの世全ての悪」

 絶望に打ちひしがれる男と、歓喜に咽ぶ男対極の図が其処にはあった。だが彼はまだ望みを捨てていなかった。

「セイバー、令呪を以って命ずる。聖杯を破壊しろ!」

 令呪の強制力によって否応無く最大出力で放たれたエクスカリバーは聖杯を破壊した。だが、それは聖杯の中を満たしていた呪いの泥を現世に溢れさせるという結末を与えることになる。その泥は冬木の町へと落下し大惨事を招くことになる、そうこのままでは。だがこの場には一人のイレギュラーが存在した。本来ならばこの場には居ないはずの人物がこの後の運命を大きく左右することになった。

「まあ、大変なことになりそうですわね」

 そういうと彼女はゆっくりと自らの胸の前に両手を寄せ、その口から言の葉が紡ぐ。


「右手を合わせて母心」


右の手がその胸の前に真っ直ぐに寄せられる。


「左手を合わせて(たなごころ)……」


 左手も同じく胸の前に寄せられ、二つの掌が合わさる。仏教において合掌と呼ばれるそのかたちを彼女がとると同じくして彼女の背に光が溢れる。

「これが、愛!」

そして彼女は迫り来る泥に向かいこう叫んだ。



「シャイニング感謝ぁぁぁぁ――――――――――――ッ!!」



 膨大な光の奔流が泥を掻き消し浄化してゆく。その姿は宛ら地上に化身した阿弥陀如来の如く。

「あの穴が全ての元凶のようですわね」

そして先程と同じように胸の前で合掌する。


「真・シャイニング感謝ぁぁぁぁ――――――――――――ッ!!」


先程を上回る凄まじい力が穴に収束し、そして穴を消滅させた。

「貴女は一体何者だ、穴を消滅させるようなことが只人の身で出来るわけが!」

それに対し彼女は唯一言こう応えた。

「愛です」と。



 彼女こそが『天上天下唯我独尊感謝拳』、通称『天々感謝拳』の使い手の一人。名を純情可憐という。彼女は生まれたとき既に両手を合わせており、わずか三歳にして悟りを開いた人物である。彼の仏陀さえ彼女の前では弟子に過ぎないとさえ言われる。
 なんでもこの世に遍くすべてのものに対する感謝によって、ただ呼吸することだけでさえ深く感謝できるようになったとき、その精神と魂は感謝から変わった愛情によって地球と一体と化し、そのときに生じる超絶自我空間『天然自在の境地』の中で可憐自身の内から溢れ出た愛を壮絶な力へと変換して炸裂させる『拳法』である。もう一度言うが『拳法』である。
 過去、さまざまな科学者たちが感謝と破壊力の関連性について研究を重ねたが、そのいずれもが無残な討ち死にを遂げていった。





○●○●○●○●○●





 十数年後、ある2人の人物が悟りを開き人類を救済することになる。だが、彼らは特別に修行をしたわけでもなかった。ただ彼等は『全てに感謝を』と語るだけであったと言う。






                                 おわり


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