気持ちが悪いです、喉が焼けるように痛みます。
吐き気がします、胃がねじ切れそうです。
え、何この状況。
ちゃんと地面に足付いてる?目の前が真っ白で見えないんですが。
熱中症でぶっ倒れた時ってこんな感じだったな、そういや。
でも妙に頭は冷静で、「ああこりゃ駄目かもしれないなー」なんて思ってしまうのでした。
あのよく分からんおっさんと戦ってからずっとこうだ。
もう十分位過ぎたのかそれよりもっと過ぎたのか分からないけど、とにかくずっとこうだ。
どうしよう、医者もいないし。
船長を探さないと。
探してどうにかなるって訳じゃないけど、とにかく探さなきゃ。
探さなきゃ、誰か。
誰かを。
誰を?
誰もいないのに。
吐き気がする。
誰か。
白い。
視界が白い。
真っ白な壁が目の前にあるみたいだ。
真っ白な。
誰もいない。
誰も。
そのまま地面に倒れこんだ痛みがまるで他人事のように感じた。
痛いけど、なんだか楽になるような気がして。
何から楽になるんだろう、この気持ち悪さからかな。
このまま少しだけ寝てしまおうか、ちょっとだけ楽になるかもしれない。
ちょっとだけ目を閉じるだけ――
「おい!アヤッ!?」
――ひゅい!?
耳元で大声出すんじゃありません!ビビるだろうが!
なんなんだよ、ちょっと寝るだけだって大丈夫大丈夫五時から起きて準備するって。
だから少しだけ寝かせて揺らすな揺らすな揺らすな!
気持ち悪いわ、てか仮にもぶっ倒れてるおなごの肩持ってガックンガックン揺らすってどういう頭の回路してんじゃコラ。
もしかして殺す気ですか?気に入らないって言ってたし。
「ああ――」
結局口から出たのは漏れるような声、一緒に吐瀉物噴出さなかっただけ良好。
んで誰ぞって思って半目開けたら、緑の短髪が目に入ったのですぐに分かった。
ゾロ君、心配してくれるのはいいが君は少し女性の体の気遣い方を覚えたほうがいい。
てか覚えてください現在進行形で死にそうですその肩揺するのを止めてください。
吐いて欲しいのか?吐いてやろうかコラ。
「大丈夫ですので、手を止めてください。吐いて欲しいなら別ですが」
「…無事か」
「微妙な線です、吐いたら女としては無事ではいられませんがね」
ふぅ、やっとガックン地獄から開放されたよ。
死ぬかと思った、二つの意味で。
あ――うん体のほうも楽になってきた、吐き気もおさまったし。
なんだったんだ一体全体、熱中症?
ああそうかもしれん、そういや船の上で食料食べるの自重してたら自然に水も飲む量少なくなってたからな。
海の上で熱中症、いや別にありえない話じゃないんだろうけどシュール。
「てっきりあのヘンテコなヤローにやられたのかと思ったぜ」
「失礼な、あんなしょぼいモブにやられるほど落ちぶれていません」
あんな雑魚にやられてたら先が思いやられるね。
ゲームにも出陣させてもらえなかったような雑魚には出番を作ってやることすらおこがましいのだよ、ハハハ!
じゃなくて、あれ?何するんだっけ。
「あ、そうだ船長」
ルフィの存在すっかり忘れてた。
ゾロもすっかりあの一輪車と戦うのに夢中になってたのかあ、とか言ってるし。
まずいなーまだ処刑されてないよね?
まぁそんな簡単に死ぬタマじゃないですよね。
なんせあの幸運Exのルフィだしね。
でも急がないと万が一ってこともありえるし。
鴉は海に夢を馳せる
第七話 暴走(意味深)と航海士、まぁまだ重要じゃないけどね
そんなこんなで再びやってまいりました屋根の上。
いや堂々といる訳ではございませんよ?屋根の縁から頭だけで覗いてる状態です。
俺は飛んでいる状態、ゾロは屋根縁の鉄柵に掴まって宙ぶらりん。
あ、あの帽子(赤いお茶碗ひっくり返したようなやつ)は外してあるよ、ばれない様に。
見るとなんか皆でお祭りやってるし、さっき飯食ってただろお前ら。
んで見回すと1.5立方メートル位の檻に捕まってるルフィ発見、雁字搦め。
ゾロが片手だけ離して頭抱えてるよ、すごいなその体制。
「なにやってんだあの馬鹿船長は」
「ばかゆえしかたなしです?」
そういう星の下に生まれたような男ですぜ、割と本気で。
某幻想殺しさん並みに波乱に巻き込まれる体質、いや戦争とかに巻き込まれてる所見るとルフィのほうが。
いや上条さんも戦争に巻き込まれてるわそういや、海賊と死線を超えた数が等しい一般学生ってすごいな!
その分いい思いもしてるけどね、死ね。
「さてどうやって助けましょうかね」
原作じゃあの変なおっさんのライオンがルフィの檻壊したんだっけ?
もう再起不能にしちゃった(・ω<)^☆
まぁいざとなったら妖怪パワーであの程度の檻ぶち壊してくれるわ。
今思うとまともじゃないね、まぁ上司は太陽を砕くようなお方だしね。
そんなこと考えてたら息を切らしたあの変なおっさん登場、手に一輪車の奴を抱えてる。
そういや逃がしたんだっけ、すっかり忘れてました。
ざわつきだす脇役共、顔真っ赤にする赤っ鼻。
どうしよう、宴会にまぎれて動こうと思ったけど動き辛くなっちゃった。
墓穴掘ったかね、まぁどうとでもしようはある。
叫びだす赤っ鼻、走って屋根から去っていく雑魚面々。
恐らく俺たちを探すために追っ手として総動員したんだろうが、いやー好都合好都合。
「いきますよゾロさん」
「あいよ」
全員が出てったところで屋根の上に飛び出す、屋根の上にいるのは檻の中のルフィとなんか戸惑ってるナミと赤っ鼻のみ。
飛び出した瞬間赤っ鼻の顔が十面相みたいに変わっていく、もうサーカスやれよ。
「てめェ、鳥野郎!それにロロノアァ!!」
「Yes,I am!チッチッチ♪」
ヤッテミタカッタダケー、うんちょっとだけすっきりした。
吐き気ももう完全になくなった、完全復活パーフェクトあややだぜ。
「アヤァ~!!それにゾロォ!!」
うちの船長も無事みたいだね、ならちょっとやりたいことがある。
とりあえず無言でルフィの檻の方まで近づく。
「よいしょ」
「うえ?」
ルフィの檻を肩に担ぐ、おお軽い軽い。
そのまま屋根の上からポーイ、うっしすっきりした。
ガシャーンといい音が下のほうから聞こえたので檻もついでに壊れてくれたんじゃないかな、原作でルフィがかじったりしてたから脆くなってる筈。
その程度で壊れるはずない?うちの船長の歯をなめるなよ。
骨付き肉の骨を噛み砕いて食ってたのはいささかびびったぞ。
てか二人くらいの悲鳴が聞こえたな、一人ルフィで後誰だろ。
大方そこらのバギー一味Aが巻き込まれたのかね、南無三。
「「だから何やってんだてめェはァ!!」」
再び被るゾロとバギーの声、だからお前らは友達かなんかか?
与えられたミッションもこなせず帰還も失敗するような船長にはお仕置きが必要なのだよ。
とりあえず口には出さすサムズアップしておく事にする。
とか思ったら腕伸ばして屋根の上に登ってくるルフィ、ケロッとしてやがる。
ロープまで解いたのか、ロープつかんで振り回してやろうと思ったのに。
「なんで落としたんだ?」
「ノリです」
「ノリか」
よし弁明完了、まぁする気なんかさらさらないんだけどね。
さて船長の封印が解けられた、これでかつる。
さぁ船長、町が破壊されないうちにさっさとあの赤鼻ぶっ飛ばしちゃってください。
「まさかてめェから殺されに来てくれるとはなァ!!鳥野郎ォ!」
野郎じゃないっちゅーのに。
心は野郎そのものなんですけどね、今は乙女ですぜ。
「船長ー、あのデカっ鼻が私の事殺すとか言ってきて怖いですー」
「…この女狐」
よしお前ら喧嘩しろ。
案の定バギーは『デカっ鼻』に反応してぶち切れ状態。
てかあれには何が詰まってるんだ、夢と希望?
そんなものお前にはないがな!
というかゾロ君人聞きの悪いことを言わないでくれたまえ、君の前にいるのはか弱き乙女なのだよ?
おそらくこの体人間の君より力強いだろうけどね。
「派手に死ねェ!!」
おおナイフと手がこちらに襲い掛かってくるよぅ。
だが反省しないなピエロ野郎、俺の前にはルフィがいる。
「お前の相手は俺だ」
手ごとナイフを叩き落とした、一歩間違えば手ェ切るぞあれ。
ワンピースの奴らはどうしてそこまで無茶をするのか、自信からかね。
なにはともあれ船長がんばれー。
「邪魔するんじゃねェ麦わら野郎!!」
「いやだ」
なにはともあれこの二人はぶつけておかないといけないしね。
だから決して俺が外道なんて事はないんDA☆
まぁグランドラインを目指す二人同士仲良くやっていてください。
どうせルフィが勝つけどね。
というわけで俺は一時退散。
いろいろとやることがあるんでね、まぁ分かると思うけど。
うっし大量大量。
やることっていうのはもちろんバギーの船から片っ端から食料と財宝を取ってくること。
どうせ盗んだか奪い取ったものだしね!盗っていいのは盗られていい覚悟のある奴だけだ。
うん俺いいこと言った、だからもらっていきますそうします。
…いかんなまた頭が痛い、そろそろ勝負も付いてるころだと思うしさっさと戻ろう。
しかしこれだけあると『重いな』、落としたら食料も財宝もパーだし気をつけないと。
てかバギー海賊団の海賊旗って鼻でかく書いてあるよね、自覚してんじゃねぇか。
まぁどうでもいいけどね、いいなーこの船でかいなー。
さっさとメリー号欲しいよ、でもその前にコックが欲しいよ。
まぁまだまだ苦戦はしないレベルの奴らばかりだろうし、どんどん進めてくかね。
でも無双したら原作壊れるし、今も結構な勢いで原作壊してるけどね。
原作にいないキャラ仲間にしてみるってのも面白そうかなー。
いや無理だろうけど、でもできたら面白いね。
ボス軍団で海賊団、あ駄目だ仲間割れすんのが目に見えてるわ。
外道ばっかりだしね、俺が言えた事でもないけど。
いや外道ってのは人の道を外れることだから俺はセーフ。
どう考えても人外だしね、精神も転生者だし。
さてくだらないこと考えてないで戻りますか。
バギーはお星様になったのだ…ド派手にね。
飛んでいったら少し横を小さくなったバギーが吹っ飛んでいきました、南無三。
それでも死なないんだよな、バギー。
ここの人間って本当におかしいよ(※←人外です)。
「ただいま戻りましたー」
「ん?お前どこいってたんだ?」
「この荷物を見てお察しください」
首をかしげながらいう船長、殴りたくなってくるね、効かないけど。
まぁあんだけ反省させたから次はないよね、多分。
んでそこらに大量にばら撒かれてる財宝といくつかの壊れた家、そこそこいい勝負だった様子。
ルフィ顔切れてるし…あ、抱えてる麦藁帽子に穴開いてる。
「船長、それ」
「ん?ああこれか、かぶれるからいいや」
「いや後で縫ってあげますよ」
「そうか?たのむ」
まぁルフィにとっては宝物だしね、その帽子。
さすがにそのままってのは忍びない。
裁縫は結構得意だった気がするから多分直せるはず。
いや記憶便りになるけどね、いざとなったらナミによろしくする。
…そういやナミは?
あ、散らばった財宝集めてるわ。
とりあえず手伝うか、この荷物は置いて、と。
「お手伝いしますよ」
「え?え、ええありがとう」
ありゃ、警戒されてる?
そういや最初ナミって海賊嫌いだったんだっけ。
ベルメールさんの話は昔読んでアニメで見て二回泣いたな、ナミさん…。
鬱イベントはなるべく回避したいけど、過去の話になるとどうしようもない。
過去変えちゃったら仲間になる人も仲間にならなくなるかもしれないし。
仕方ないことだとは思うんだけどね…。
「あなたも、海賊なの?」
「?ええ、そうですよ」
やっぱ聞いてきたか、まぁ海賊なんてろくでもないものだって思ってるだろうし。
この体だと結構若く見えるし、十代後半くらいか。
「…なんで海賊なんかやってるの?」
「…んーそうですねー」
そういえば結構勢いでなっちゃったけど、これといった目標ないんだよね俺。
自由に生きたいってのがあるけど、それも目標でも夢でもないし。
…まぁ今の所は
「今の船長に惹かれたから、ですかね?」
惚れたとかそういうんじゃないけど、命助けられてなんとなく?
んーもっとなんかある気がするけど、なぜか頭から出てこない。
まぁでも言葉にするならこんな感じかな。
「…そう」
「ええ、ルフィ船長はそこらの外道な海賊とは違いますし。なにより命を助けてもらった恩もありますので」
まともな海賊って赤髪海賊団と白髭海賊団と麦わら海賊団とって数えるくらいにしかいないよね。
いやこっちが普通じゃないんだけどね、恐怖で集めるかカリスマで集めるかっていったら恐怖で集めるほうが断然楽だし。
てかナミさん黙っちゃった、地雷だったかな。
でも本当のことしか言ってないし、いいよね?
とりあえず、財宝は集め終わった。
ナミさんの持ってる財宝が恐らく一千万ベリー、俺の持ってきた財宝が約二千万ベリーって所らしい(ナミさん計算で)。
あんまり盗らなかったんだねとか言ったら、そこまで踏み込めなかったしそんなにもってたら絶対捕まってたとの事だ。
いや一千万盗んでグランドラインの海図盗んだってだけで凄いけどね。
一歩間違えれば死ぬレベルだし。
「これであらためて仲間になるんだよな!」
「手を組むだけよ、あんた達といると儲かりそうだし」
チラッとこっち見たのばればれですぜナミさん、隙見て俺の財宝盗るつもりだな。
だがそうはい神埼、盗られるくらいなら交渉に使います。
どこの誰の交渉にかは決めてないけど、まぁナミさんに渡しちゃってもいいと思うけどね。
結局は取り返すし。
「で、ゾロさんは何故寝てらっしゃるので?」
「暇、寝る、って言って寝たわ」
まぁバギーはルフィと戦ってるし、ゾロはやることないわな。
肩に担いでいってやりたいが、あいにく食料と財宝で満員だぜ。
「…というか、あなたすごいわね。背中の羽根から見るにあなたも悪魔の実の能力者でしょ?」
「え、ええまぁ」
「…昨日まで、というかさっきまで悪魔の実なんて御伽噺だと思ってたのに」
まぁ物理学生物学科学とありとあらゆる法則に喧嘩売ってますしね。
漫画ゆえ仕方なしっていうのはあるけど、その世界に入ると理不尽この上ないのは否定できない。
まぁそんなこといったら東方なんて概念まで捻じ曲げちゃうしね、あややなんかやさしい方だよ。
運命を、生と死を、境界を操りありとあらゆるものを壊し、奇跡を起こす。
このうちのどれかのキャラになった瞬間無双どころの騒ぎじゃないからね?
一歩間違えれば分単位とかからずこの世界の住人皆殺しだよ。
バランスブレイカーどころの話じゃないよ。
さて、まぁそんなことはさておいてさっさとこの島出ちゃいますか。
感動的なこともなかったしね、欝なこともなかったけど。
まぁ気にしない気にしない。
悪いこと起きなかっただけましってもんよ。
「では、あらためてよろしくお願いしますね?航海士さん」
「ええ、よろしく」
二人目、といってもまだ本当に仲間になったわけじゃないけど。
賑やかになるのはいいことだね。