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[36072] 【習作】転生者のお母さんはTS転生者(守銭奴)【ラブコメ】みさりつの短編集 短編追加
Name: みさりつ◆2781aa24 ID:36037864
Date: 2013/10/12 03:21
「うん、君、アレだよね、所謂、転生者ってやつだよね………真逆、神様にあったこととかあったりする?」

目の前で30から20代の妙齢の女性は苦々しく笑った。
泣きボクロが特徴的な、ぼったりと眠そうな目元をした肌艶が瑞々しい肉感的な女性だった。
まるでその笑みは泣いているように見える。
うん、凄く色っぽい、エロスを感じる女性である。
胸も大きく、突き出ている胸はEとかDとかそんな感じ、ぱっつんぱっつん。
どうやら胸が大きいことを気にしているようで、今の春風が気持ち良い季節に似合わず、厚着で押さえつけているが。

逆にそれが強調させられる。

顔も、うん好み。

薄化粧なのだが、顔の作りが良いせいか、アクセントの黒縁の眼鏡が逆に知性的で清楚と思わされる好感度をバリバリ上げる。
今時珍しい眼鏡美人なのだ。
後ろにまとめられ、うす茶色いウェーブがかった髪が白い首元に掛かり、印象的で綺麗だな、と思う。
こういうのイイネ!
図書館とかにいる理想的な美人司書とかそんな感じ。
図書館で本を整理している後ろ姿に。

思わず抱きついてむしゃぶりつく、とかそういうレイプ物AVとかありそう。

妄想してしまいますね。


しょうがない、だって綺麗な人なんだから。

そういう女性とそういうプレイしてみたいな、とか思っていた過去あるし。


まだまだ精通を迎えていない少年の体を持つのだが、記憶が疼く。

そのおっぱい触ってみたいなぁとか思います、うん。



一緒にこれからお風呂はいったりできんのかなぁ、とか思っちゃいます。
絶対、濡れた髪とか、解かれて湿った髪がその肉感的な白いむっちりとした肌に張り付いたところとか、よだれがでます、ぐへへとか、思います。




「いや、ないよ?」


「そうなの?ああ良かった。こんな現実で神様とか言われたら、なんだか悲しくなるよ」


ふう、と落とすようなため息。

なんだか今にも泣きそうな表情で女性は笑った。

うわ、いいなぁ美人だなー。
惚れそうですよ。



こんな人生でやっといいことあったなぁと思う。

引き取ってくれるって約束してくれたのだから。
つうか両親もう逃げたし。




俺は気味が悪いと捨てられた、子供。


まぁ5才でこの思考、うん本能に忠実すぎて、気味悪いよそりゃ、と俺は苦笑する。

生まれて数年で自我と記憶を持つに至り、異常な異物を産んだ母は子を気持ち悪いと言い始めた。

父も大層気味悪がった。



5才で俺は捨てられた。

いや、親戚の女性に引き取られることになる。

その親戚の女性は養子に取ることは出来なかったそうで、籍はそのままに生活を共にする、という形をとったのだ。
俺は引き取る女性のところまで送り届けられ、そこから、もうこの人と生活する。
最後まで、気味悪がられたまま、俺は捨てられた。
まぁ、しょうがない。
何処かの施設に送られるよりもマシだ。
ちなみに俺を家に入れてくれると名乗りでたのが唯一、目の前の彼女だった。






「君、目が……ああ、それは捨てられるよ」

色目で見られているのを気づいたのか、女性はくすりと笑う。
おっぱい余裕でガン見です。
視線誘導されまくりですよ。

それでも、不快な気持ちを浮かべず、笑った。
包容力のある、母性的な表情とも言っていい、綺麗な微笑みだった。
まるで、どんなことがあろうと、その落ち着いた雰囲気が消えることがないだろう、と思う。


「何か変なパワーとか持ってる、とかある?そもそも、ココは何かのお話の世界だったりするのかな?
私は22年間生きてきたけど、今のところ、そういうの知らないんだ。
それも気になって、君にあってみたんだ」

末馬妙子という女性は俺を眼にする前から、大方予想はついていたそうだ。
そういう人間が自分のほかにいるのかもって。



22か……22には見えない色っぽさなのだけれど。

年齢不詳の美人のおねいさん。


「うん知ってる」

「そう、教えてくれるかな?」

「魔法少女リリカルなのはの世界」

俺は知っていた。

これから住む場所の名前で。

海鳴っていう地名。

ちなみに今二人で会話している、場所は翠屋なのでした。
シュークリーム美味しいです。
生クリームのキメが細かくて甘さも絶妙、生地もふんわりさっくさく、もの凄く美味しいのだ。
一応、席は心得ていたのだろう、カウンターから一番遠い場所で、末馬妙子は静かな声で、話をする。



「魔法少女、リリカルなのは……って何?日曜日のアニメ?おジャ魔女とか?そういうシリーズ?
私あんまり、そういうの知らないんだ。
好きだったアニメとかってガンダムとかボトムズだったし、ちなみに特に物凄いこだわりとか信仰もないよ。
あと転生者とかっての、SSを友達でちらりと聞いただけでよく知らないのだけれど、ええと、私みたいなの」



「TS転生者っていうんだっけ?」


「マジ?」


「うんマジ」


「処女だったりする?男性キモイとか思う?あとレズ?」



しょっぱなから失礼なことを聞いてしまった。





「………馬鹿か」

ピシリとするような、冷たい目で俺を見た。


ぞくりとする。


うわ、ご褒美です、それ。

エロいなーいいなー。









とある転生者の母親はTS転生者(守銭奴)。






末馬妙子は思った。

この子供は既にもう、独立した確固とした男の精神なんだな、と思った。
少し羨ましい、と思った。

突然、気づいたら6歳の女の子でしたー。



ええええええええええ!?



なになに、どういうこと!?



あっれぇ、おっかしいな、さっきまで25歳の男性だったけど、え?え?


今はでも6歳の女の子?

末馬妙子で妹の美里が生まれたばかりで、ちょっとお母さんとお父さんが最近構ってくれなくて寂しいなぁ。


うん?

へ?


的な感じでそれから16年間、困惑しながら生きてきた身としては、その男性的な自分に失われたモノを持っている所は羨ましいと思う。

もうそんな風になれない体だし。


しょうがない、と思いながら、ある程度金銭を得てから自由に好きに生きる方法を模索し、女性とか男性とかそういうのを気にしない方向で生きてきたのだ。

無い物はない、しょうがない。で頑張って生きてきたのだ。

下手に、ヘタレな性分か開き直って生きることも出来ず。
困惑したまま生きてきた。

お金はそれなりに稼いだし、資産も手に入れた。

そのせいで、今の家族からは「根っからの守銭奴、お金に取り付かれた女」と言われるような状態。


14ぐらいから、貯めたお年玉とお小遣いで、もっとお金を増やすぜ、とノリノリでそれを趣味にしてました。

こつこつと、着実にお金お金お金、と荒稼ぎしながらケチに生きてきた。

そのナマ臭ささか、呆れられて、気味が悪いと思われる前に

「ああ、この子お金が生まれた時から好きなんだな」とか思われたせいで、上手くするりと、生きてきた。








元の25年の男性として人生の間、勉強もスポーツも必死にやって頑張ってきたので、また1から、なんてやる気がない。



強くてニューゲーム?

1からもう一度レベル上げとか、もう嫌だ。

世間様に騒がれる天才をやるにも荷が思い。
そこまでの気力はない。
そこまで頭も良いと思えない。
前世とやらの記憶を生かしているのは金儲けのみ。
まぁ財テクは現在の世で学んだことの方が多いくらいだが。
時代の移り変わりは利用させてもらった。


小中高まで進み、そこからは進学もしていない。




現在22。

この海鳴市でアパルトメントとかマンションをいくつか経営して、職業は所謂大家さん。

ある程度もう大丈夫なくらい稼いでいる。

それでも働かないと人間が腐ると思うのでアルバイトとかしつつ、軽くいきている。
世間体は気にしつつ、女性として最低限のお洒落などをしながら、慎ましく生きているのだ私は。

今日もほら、ヤケに美味しいと思うようになったスイーツ類を楽しみ。
ヤケに好きになった料理とか掃除とか、大好きになってしまった編み物とかしながら、穏やかに生きています。

これから新しい家族の少年の為に用意する家具とか考えながら、模様替えを楽しみにしている。
絨毯とか布団とかどんな柄がいいかな、とか。

そういう日常を楽しみながら生きてきた。


でも寂しかった。


自分の生きる場は完成されているのだ。
あとは、寂しさを埋めるだけ。そうこの頃考えていた。



でも結婚も嫌だし、この違和感しか感じない精神と女の体に合う、男性女性を探すのも嫌悪しか起きない。


私には男性も女性もどちらも愛する自信などない。



どちらも想像するだけで気持ち悪い。

レズビアンかホモ。

別に差別はしないが、私にはそういうことが出来るような性質はない。


ああ、中途半端なニセモノなのだ。

女性のフリをして生きているだけの男だ。


そして世間体を気にする小市民。







恋人も夫もいらない、でも寂しい。


ペットでも飼うか、と思ったことがあるが、生き物を育てるのは楽しいのだろうけど疲れるし、彼等は何十年も生きない。

結局寂しい思いをするだけだ。

ペットロスは悲しい。

過去に犬を飼っていたことがあって、ペットロスはトラウマにもなっている。


そうか、と思った。

子供だ。

子供が欲しい、と思った。

子育てに尽くして、人生をより良いものとする。
人一人を立派に成長させ見守る奉仕の楽しみを見出したいと考えた。

看護とか保育とかではなく、生活内での張りが欲しいのだ。



家事も大好きだし、細々と何かを作るのも大好きだ。
自分の為だけだと物足りないと思っていた。




でも、それも無理だ、と知っている。
妊娠して子供を産むだなんて無理だ、結局中途半端な精神しか持てないのだ。
男の精子をこの身に入れて、命を育むとか、無理。
想像しただけで、吐き気がする。
この体が若き少女だったころ、変質者に性的な悪戯を受けたトラウマもある。
他人にこの身を許すなんて怖気が走る。
代理母出産、とかあるそうだが、そもそもあれは結婚がいるし、産める体があるから出来ないし。
種をどっから持ってくるか、とかそれも嫌だし。

私の今の両親もそのことがあるせいか、私の守銭奴という名の人生の目標を認めていたのだ。

何度か過去にカウセリングを受けて、男性嫌いを直して男性とお付き合い出来るようになったほうが良いと、親戚の方たちから勧められてはいる。
家族、血が繋がっているなら大丈夫だろ、ウチの息子とかどうだ、とか。

同時に資産狙われ始めた。

それさえもあしらって、金儲けに生きた。

そもそも、お前の息子、過去私に性的な行為をしようとしただろ、絶対イヤだ。
何故か私の両親も知らない謎の親戚増えるし。
両親と兄妹以外の血縁者は気味が悪い。


そしてある日実家に帰った時。

妹ととあるお高めなレストランで喋っていた時の話だ。
一人で暇だったので、妹を誘って、美味しいご飯を食べていた時の話だ。

「妙ねえさん、もてもてだね」


「うん、お金持ちって大変だよね」

「22で一生食うに困らないだけ稼ぎだすとか、ありえないからね、それはモテるでしょ、美人だし、将来私も妙ねえさんみたいになれる?」


「うーん、やめたほうがいいよ、金儲けとか」

「うん、姉さんみてるといっつも思う、お金と美貌って怖いって」

「あははは……ま、愚痴に付き合ってくれてありがとう」


「で、此処のお食事幾らするの?」

「16の高校生が気にすることじゃないよ、勿論奢って上げる。22の姉が高校生の妹にワリカンとかいいません。」

「いや、そーいうところ、危険だよ姉さん。お金の魔力だよ、やばいよ、ていうか姉さん実質フリーターでしょ、セレブなフリーター。」

「セレブやってません、月16万以内で生活してるよ?それ以外全額資産運営――――それに家族に使うならいいでしょう?
それに限度は知ってるし、絶対突然現れた親戚にお金なんか使わないよ。」

「ほんと昔から守銭奴だよね、あ、そういえば、突然現れた親戚の中に変な子供がいるんだって」

「変な子供?」

「確か再従姉妹のまた従兄弟の義理の叔父の家の子らしいけど……うん全然親戚じゃないよね」

「変な子供ね、それって私みたいな子?」

「いやいや妙ねえさんみたいな、根っから守銭奴じゃないよ?純粋に気持ちが悪い子供だって」

「映画のダミアンみたいな子?」

「まぁ、そんな感じだって、とにかく気味が悪いんだってさ」


「ふーん」


「あ、そういえばこの前、姉さんがくれた、株主優待で友達と旅行行ったわ、楽しかったよ。ありがとう」

「一人でペア旅行券使う気にならないからいいよ。ていうか美里、それ彼氏じゃないよね?」


「そんなことしたら姉さんの方に男の興味がいっちゃうから、絶対しない。姉さんは秘密にしたい秘密兵器なのだ」

「いや、秘密兵器って……あ、そういえばハウスクリーニングそろそろ頼む時期かな、金沢の別荘。今年の夏も行こうね?」

「相変わらず思うけど、姉さん、おかしいよ?22で金沢の別荘とか」

「20の時に買ったやつだよ?今年は石垣に買ったから、冬みんなで行こうね?一人で正月過ごすの寂しいし。」

「おかしいって」

「ん?海外の別荘まではないよ?日本以外は怖いし、面倒そうだし、47都道府県までにしとく」

「だーっ!なんでそんな金あるの!?」

「だってこれまでの一分一秒全ての人生使って稼いだし、それぐらいになるよ?普通でしょ?」

「22でそれって普通?今、実家を全額負担でリフォームするのが普通?」

「親孝行だよ?」

「お父さん泣いてたよ?まだまだ働き盛りなのに……とか」

「いやだって、あんまり使い道ないし、今も私の資産運営してる人達優秀でどんどん増えてくし」

「働く気失せるんですけど…姉さん、私を一生飼ってくれない?」

「やだ」

「そこをなんとか」

「人間腐るよ?ていうか気持ち悪いアホになるよ?だからフリーターやってるし、私。汗水流して働かないと、人間ダメになるよ」

「うっ……それは嫌だ………そうだね、大人しく……看護士目指します」

「あ、そろそろ、お父さん達も、老後のこと考えないと」

「いやいや、考えるのは本人たちだから!」

「北海道の畑とかどうかな?父さんの退職祝い。父さんガーデニング好きだし」

「ダメだ、この姉。つうかあんた男見つけて結婚しろよ」

「やだ」

「モテるのに」

「嫌だ……そういうのいらないの私は」

「じゃあ、寂しいからって毎年毎年、家族旅行でシーズン過ごすのは何さ。あと今年の夏は私たち行かないから」

「えっ…?」

「私は部活の合宿、母さん達は今年はお盆はゆっくり家で過ごしたいんだって」

「美里はいいけど、金沢でゆっくり過ごすんだよ、なんでお母さん達も……」

「そんなに寂しいなら、男といけ、ここの隣はバーもあるから、そのまま私が帰れば、その日に相手出来るよ?」

「嫌」

「はぁ、ほんと男嫌いだよね……そんなに美人なのに、イヤミに感じるぐらい。じゃあ、女の子は?
ウチの高校で、そういう子いるよ、姉さんの写真見せたら「会わせて」とか言ってたよ?」

「そういうのも嫌、つうか姉の写真勝手に人に見せるな」

「レズでもいいから、相手見つけろって。ほんとに一生このまま一人とか嫌でしょ?」

「まだ22だよ?まだまだ若いよ?」

「その若さで正真正銘一人なのが心配だよ、姉さん、恋愛とかしたことないでしょ?」


「だからそれが嫌なんだって」


「じゃあどうするのよ!?クリスマス、正月、GWとか全部!」

「だから……美里とか、お母さんとかとあと兄さんの「はいはい、そういうのなしで」

「う……だって嫌」


「ああもう!姉さん変!いっくら痴漢されてそれがトラウマとか知らないけど、いい加減直せ、何か既にもう終わってるよ。
アンタは独身のアラフォーか!?そんなまだまだピチピチのエロい体してる癖に!ああ妬ましい!金あって美貌あってそれとか!」

「エロくないよそういうの絶対しないし――――金はあるけど!」

「ならペットでも飼って寂しさを和ませろ!」

「ペットは長生きしないし、こういう風にしゃべれません!余計寂しいよ!絶対!」

「なら子供でも育てろ!エロいことして今すぐ作れよ!今夜一晩の間違い犯してシングルマザーになってこい!」

「いやだ!」


「ああ?いやだ?はぁ?」

「嫌だ」

「キレるよ、私」

「はは、キレてもいいよ別に」


「ほんと?」


「キレても変わらないし、どうせ」


「わかった、じゃあキレるわ」


「ふふ、可愛いな美里は。キレてどうにかなるもんでもないよ?」

「えーそーですか?」

「そうだよ」

わかった、と妹は言いながら突然立ち上がり――。

















「だれかー!うちの姉さんと今から子作りしてくれる方いませんかー!まだ初モノですよー!」


何か馬鹿なこと叫びだした。

夜景の見える、指輪とかプロポーズとかするような、そういう高級レストランで。


「やめろ!つうか美里、何言ってんの!?馬鹿!?此処!男女のカップルしかいないし!?」


「はいはい誰か手を上げてください!未だにカップルしかこないところに妹誘うような馬鹿ですよ――――「やめぃ!」




「ほらほら、食べごろですよー!」


私の胸とか、顔とか指をさして妹は叫ぶ。






「だから―――「じゃあ今から5秒数えるから今いるカップルさん達で男性の方は手を上げてください!そして姉さんと!
ああ!女性でもいいですよ――数えマース!「やめろ!」1ぃ!「ちょっと!」


もうあまりにも馬鹿なことし始めるので、口を封じ込めようと、抱きつくが。


「2ぃいいいいいいいい!おっぱいはEですよ!スリーサイズは!上か「やーめーてー!やーめてー!」ですよ邪魔すんな!」


「さああああああん!美人でお金持ちですよ!なんと資産は「ちょっおおおおおおお!」です!だから邪魔!」



「よおおおおおおおおおん!未だにオナ「やめて!やめて!やめて!」もしたことがないですよ!超レアですよ!」



そして



「ご、んぐうう!ごぶうう!ぼど!「あ御免、喉に指入った」ォオオオオ「止まらない!?止まれえええええ!」」





いい加減妹の暴走を止めるために腹パンしつつ。

なんとか阻止したところで―――









「お客様」



怒られた。





「う、あ、すいま―――」

「うわ恥ずかしい!姉さん出よう!出よう!」

「うん!すいませんお会計――――美里のせいだかんね!」

「姉さんのせいだろ!」
















「あのお客様―――――私とか」

「嫌だ!」

「あ、マジ?結構イケメン――――姉さん?」

「やだっつってんの!帰るよ、馬鹿美里!」



私たちは逃げた。
あの場全てに衝撃を与えた姉妹でのテロ行為。
おい、私の電話番号渡そうとすんな。




「ああ、もう勿体ない!」

「私を勿体ぶれよ!あと何!?さっきの私の叩き売り!?それに、あそこ、ご飯美味しいのに二度と行けない!」

「あれであそこにいたカップル、全部消滅したよね、男ども全員手を挙げたそうにしてたし。さっすが姉さん」

「最悪だよ!?」






ということがあったのだが。

この少年の話が後にまた持ち上がった。

気味が悪いから捨てられる5歳児の話。


誰もが気味が悪いと、施設に放り込んで忘れようと決められた幼児。

私はついつい、その話を聞いて、育てる、と手を上げた。

両親からの反対もあったが、それは家族会議でなんとかした。

逆に恩を売れるし、相手に引け目を感じさせられる、連日のお見合い話も避けられるよ、それに子持ちになってガードも固くなるよ、とか。

「どうせ一生結婚しないし」

「ああ、もう好きにしなさい」

「うん」

「だね」

という感じで。




そして、なんと幸運なことに、その子はお仲間だったのだ。



興味と親近感が湧いたその少年は――まぁ5歳児というサイズ、まだ幼稚園児。


エロそうな目で私を見てきても、ま、クレヨンしんちゃんよりもマシだな、と思わせる少年だった。

流石にこのエロ目線でいきなりケツだけ星人とかし始めたら、逃げる自信はある。
ダミアンくんみたいな、悪魔とか呼びそうな不気味な子だったら逃げる自信がある。


それとは違い、まだまだ5歳児のハナタレの年でありながら、前世の記憶とやらで精神年齢がそれなりにあるせいで落ち着いている。
雰囲気もそこらへんの大人しい子供にしか見えない。

うん、確かに不気味だが、それは私のように知らないからこその不気味さだろう。

ちゃんと人の話を聞いて、キャッチボール出来るようだ。
うん大丈夫かも、まだまだ、女の子とか男の子とかそう言う次元の年じゃないし。
家族として触れ合ってれば、男の子になっても大丈夫になるだろうし。


過去に一度読んだ二次小説に出てくるような、女と見れば、ズカズカとその精神に殴り込みをかけてさも相手のことを知っているかのように、説教をしてきて。

洗脳に近い恋心を無理矢理つくるような人間ではなさそうだ。

今のところ少年の苦笑を見ても何も感情の変化もないし、ニコぽとかいう、笑み一つで洗脳する、意味のわからない特殊な超能力もないようだ。

私が読んだ話では、それをされると女性は、赤面して恋に落ちるという、恐ろしいものらしい。

まぁ物凄い失礼なことを言われたが、許そう、私も変なテンションになりそうなぐらい聞きたいことがいっぱいあるし、今はそれが一周してヤケに落ち着いている。

そもそも見た目5歳児の保護欲がわくような存在に怒りなんて湧きはしない。

ちょっと、やっぱり、違和感がありまくりだが。




だが、と私ははっとする。

まさか、そういうような能力とか持ってるかもしれん。
洗脳能力でナデポとかいうのも、あった筈だ。
いまのところ可笑しいところはないが、触られると、惚れるとかそういうのもあると耳にしている。

読ませてくれた友人からは、「まぁこれが所謂テンプレ転生者だ」とか教えてもらいながら読んだのだ、二次創作というものを。

若干警戒もしなければならない。

このような、幼児に警戒するのもアレだが。

バカバカしいかもしれない。


でみやっぱり、特殊な才能とかあるか聞いてみようと私は思った。

背中に翼が生えたり、目が金色とかカラフルになったりとか、、右手に黒い炎が宿ったり、するのかもしれない。

先ほど、魔法少女といったから、ピーリカピリララとかいえば魔法が使えてバレたらカエルになったりとかドラクエみたいに手から炎がでるかも。

何か物凄いアホらしいけど、聞かずにはいられない。


銀の龍を召喚してその背に乗ったりできたりしたら、なんだか面白そうだし。










「ねえ、えーとさっきも言ったけど何か不思議なわざとか使えるの?」

「すいません、失礼なこといって…ん、えーとああ小説にありがちな特殊能力ですか?ああ、特にはないような」

「特には?じゃあ少し――――あるの?」

どうやら先ほどの失礼な言葉は水に流してくれたようだ。滅茶苦茶真剣目で、顔を近づけて、小声で伺ってくる。
マジ、うわ美人やで、惚れてまうやろ、状態になりそうだ。
顔近い、顔近い、とつうか、その唇とか生々しい。
絶対この人エロいぞ。
声も落ち着いた、艶かしい色っペえ声だし。

TSすると大抵、美少女、美人。


なんていうテンプレな人だ。

よくよくみると、超絶美人だぞ。
わざと野暮ったい眼鏡でごまかして、やっとこさ眼鏡美人だ。

これは相当なうむ、厚着の下は絶対数100万人に一人の超絶ボディだろ、絶対。
不二子ちゃんばりにスリーサイズがゾロ目でアンビリーバボーだったりするんだろ、多分。


「えーと、うんありますよ」


「なに!?」














「手から和菓子が出せます」








「何それ」


顔を離し、末馬さんは「えー」とがっかりそうにする。

ほんと残念そうにこちらを見てくる。

何か可愛いぞ、この人。



でもがっかりしないで欲しい。
このダカーポな能力は親と食事をとるのが気まずい時に便利である。
例えば両親から冷たい、「気持ち悪い」という眼差しで食事が進まないあととか、お腹が減った時に一人、トイレで食事を食べなおす時とか便利なのだ。
カロリーはプラマイゼロの能力であるが、モノを食べるという行為を楽しむのに最高である。
なにげに和がつくものなら、本家と違い、せんべえとかおかきとか出せたりもするし、大変凄い能力である。

偶然、一人きり、泣きそうになりそうな時とか。
よく太らないやけ食いである。
或る意味、街一つ滅ぼせる、危なさすぎて使えない能力とかより断然よいと思うが。
ラノベのブギーポップが愛読書だったので、フォルテッシモとかイナズマとかああいうのも憧れるが。
ひとり、誰もいないところで、「無限の剣製」とかやってみたりしたい、と思ったこともある。

「武器の貯蔵は十分か――――英雄王」とかカッコ良い。

まぁ詠唱暗記なんてしてもいない、そもそもありえんし。


どうせこの能力と、あと―――。



「まだあります」



「あるの?」

末馬さんは目を輝かせた。
キラキラしとる。
え、なになに、と再び顔を近づかせる。

だから、美人だから下心でるって。

あれか、あれなのか、元男だから無防備とかそういうテンプレ地でいってるのかこの人。

「ねえ何?なに?どんなの!?」

まぁ隠す必要ないし、さっさと教えて、このキスしそうな近さをやめて貰おう。















「幼稚園児なのに、1メートルぐらい垂直飛びできます、あと重いもの持てます」

50キロくらいならイケル。
危ないから垂直飛びしないけど。
この体は軽すぎて強風吹いたら、危ないし。

多分大人の体になったら、もっと凄くなるのではないか?

まぁこれも気持ち悪い原因だが。

素で前世と同じぐらいの身体能力なので、前世と同じように生活して、バレてますます気味悪がられた。

ま、そこで見世物にされないだけマシかもしれんが。


「そういうのです」



そうして再び末馬さんは顔を離し。


「んー、んーと……」





1メートルかぁー。

と言いながら考え込む。

と言って俺を見回すと。


「凄い……?」


「いやいや、自分の身長並みに飛べるんですよ!?すごくないですか!?」


「凄いけど、んーあれだよ。」

「あれって?」

「音速で移動するとか、加速装置みたいなの、ないの?」

「奥歯……今、両方生え変わり中です」

「そっか、じゃあ、ここのマスターの士郎さんよりもすごくないね。
前さ、一回車に轢かれそうになったとき、物凄い速さで抱えられて助けてもらったことあるんだ。
古武術の達人って凄いね、テレビに出れるよあの人。
じゃあ、君、バレーボール選手みたいなもの?
確かに凄いけど、あ、今日帰ったら私の家でやってよ、和菓子だすのと垂直飛び……実際見てから凄いと思うかもしれない」

いやいや、こに人翠屋の知り合いかよ。
高町家のこと知ってるのかよ!?
てか神速かよ!?

つうか馬鹿にされてる気がする。

そして末馬さんは「んー」と唸り、手をポンと叩き。

「すごいすごい、その体ならすごい」

いや違うだろうな、と俺は思った。
きっとこの人は天然だ。

馬鹿にはしていなけど。

なんだろう。

「ごめんごめん、不貞腐れないで」

「なんですか」

「うん、いいかも……重いものもてるんでしょ?」

「はい、50キロまで」


「そっか、じゃあ、これから買い物いこう」


「へ?」


「いっぱい、いろんなもの買おうね、ふふ………くくっ顔」

「あ、クリームついてた」

「くくっ……ああ、普通の子供ちゃんだよ、いいよ、なんだ―――気味なんて悪くないじゃない、うん、これからよろしくね、佐藤達馬くん」


「――――ああ、よろしくお願いします、末馬妙子さん」


すっげえ、暖かい。
俺を見る目が優しいのだ。

ただの子供として見てくれる。
転生者とかそういう風に言ってるのに、そんなの気にしてない、と。

なんて優しいんだ。

なんてエロいんじゃなくて偉大な人だ。





この世界に生まれ始めて、人に良くされた。

ああ、嬉しい。
凄いラッキーだ俺。

「桃子さん!私この子育てるよ、うん結構良い子そうで気に入ったよ!」

「あらよかったわね、妙子さん。落ち着いたら、なのはと一緒に遊ばせましょうね」

「うんうん、いいね、そういうのいいね、やっと近所の婦人会でも子供の話題が私も出来る……嬉しいなぁ」

「でも22ぐらいで婦人会入ってるの、妙子さんだけよ?」





なにげにマジで何か、翠屋の桃子さんと親しげだ。



ちゅうかこの人22で婦人会って何者。
そもそもTS転生者…?
なんか普通のお姉さんだろ、滅茶苦茶美人の。
まぁ22年も女として生きてきたら、こういう風になっても可笑しくないが。
ううむ、不思議な人である。
そもそも子供一人気軽に引き取ると言うのだ。
両親の内緒話を耳にしたが。
忌々しそうに。

「守銭奴」

「逆に恩を売られるか。まぁ養育費はださないと、ダメか?」

「なんとかしないと駄目だわ」




とか言っていたので、成金のおばさんをイメージしていた。
タエ子とか、今時名前古臭いし。
それに男性嫌いとか聞いていたし。






「ああ、ごめんすっかり盛り上がってた」

「いいですけど……本当に僕を育てるんですか、いっときますけど、体の良い、引き取り先ですよ?末馬さんは。そもそも親戚でもなんでもないし」

「いいよ別に、逆に恩売って、引け目を与えられたし、それにお金あるし。一生遊べるだけ人生をかけて稼ぎましたし。」

「マジ?」

「でも君にお小遣いはありません、まだ5歳だし、一人で買い物する年齢じゃないしね」

「それはそうでしょ」

「ふふ、普通の常識あるね」

「いやこれでも20年生きた常識ありますし」

「5歳で常識とか言われると、うん、確かに不気味に映るよ?」

「はぁ、結局養育費はどうなってんですか?」

「うーんと……正直に言うと私が全額負担、これで謎の親戚軍団である彼等の資産狙いも落ち着かせる、あれだけ気味の悪い子供やってた君を無償で引き取るし」

あとは、私の子にするのは無理だから、お父さんとお母さんの所の養子にして、保護者は私にするかな。

裁判でも負けないように色々、しないと。

戸籍とかどうなってるか調べないと、私の資産運営相談の人とか弁護士も交えて、お話しないとなぁ。


「いつでも彼らを悪者にする準備はしとかないと」




とか暢気そうに言う末馬さん。

ああ、守銭奴だな、この人。
それだけは分かる。


あと寂しがり屋、誰か傍に居て欲しいけど、恋人とか無理だから、子供が欲しかったそうである。






うん、まぁそんなものだよな。














あとがき。







リリカルでもなくても良いお話ですな。


で一言で終わる短編。






末馬妙子 TS転生者





潜在魔力Sランク。

桃子さんとかリンディさん系の老けない美人。


50でもこんまんま。

お金持ち。

平成のIT革命やら戦争やら時代の移り変わりを利用し、抜け目なく、億万長者に上り詰めた。
この世界の最近の世界情勢のイラク関係の時には石油系の株で物凄い稼いだ。

現在は資産が山ほどあるので、運営は沢山のプロの人に任せている。


海鳴に一人現れた、富豪美女と名高い、とかなんとか。
個人での純資産は海鳴にいる人間では1番。
流石にバニングスさんとかには全体では負けるが、可笑しいぐらい荒稼ぎしている。

プロの人に使え使えとせっつかれ、しょうがないから、別荘やら家やら土地を買い、マンション立てたりして賃貸を行い、その間取りとかを見て楽しむ。

うわぁこういうとこに住んでみたいなぁ、とか言いつつ、住んでいる家はセキリティだけが凄い3LDK。



金儲けは女である現実逃避という趣味でやっているので、現実の生活に影響していない、

500億円あっても月16万で生活するという謎。

セレブの仲間入りしてるが、フリーターが本職で、コンビニ店員とかやったり某喫茶店のウェイトレス。


「なのはちゃん可愛いなぁ、私のところの子供にならない?」

「うーん、わたしは高町なのはだから、駄目なの」

「そっかぁ、残念」


「妙子さん、貴方が言うとシャレにならないわ。冗談でも言わない方がいいわよ。ウチは別にいいけどね、」

「…そうですか?」

「そうよ、そもそもなんでウチで働くかわからないもの」

「日々の労働です、人間は働かないと腐ります」


「うん、そういう人よね。じゃあ、2番席にこれお願いします」

「あ、はい」

「うーん、真面目に働いていてくれるし、美人だし、客も増えるけど……不思議だわ、まだ22で遊んでる気配もないし、男の人とお付き合いもしないし」


てな感じ。



両親兄妹は別次元扱いしてるので、家族仲は悪くない。
でもただ、守銭奴すぎるので、呆れる他ないらしい。


寂しがり屋だが、体は寂しいとかない。
そういうのに拒否反応。




趣味は通販番組を32型のテレビで見ること。


でも滅多に買わない。

大きな買い物をするとストレスになるらしい。

スチーム系の掃除道具のシリーズを集めている。
万能スポンジとかが大好き。


眼鏡は伊達めがね。
男避け。





大魔道士になれるぐらい魔法の才能がある。

勝手に巻き込まれていく型主人公。








本人は知らないレアスキル 黄金率B(いろんな意味で)


普段の生活がサンレッドのヴァンプさまに近い。











佐藤達馬 5歳



潜在魔力 A


そこらへんのちょっとサブカルに詳しい、男の人の魂が宿った、5歳児。
レアスキルで「和菓子を手から出す」「全魔力で肉体強化」が使える。
魔力はあるが魔法の才能なし、封神演義の天然道士的なタイプ。





4歳で既に夜中一人でトイレ飯が趣味になっていた。


「和菓子を手から出して、食べるって、吐いたもの食べるのと変わらないのかも……」


とか悩んでいる。

でもあんまり不憫ではないと思っている。

捨てられてもしゃあないよなぁ、むしろ両親に対して悪いなぁ、とか思っている、20の精神を持つ少年。




素人童貞。




純愛?モノAVとレイプもののAVを見つつ、右手の上下運動が趣味だった普通の20代。


これから美人のお姉さんとの背徳の生活……とか期待しちゃう。

おっぱい、おっぱい。

くそ、でも罪悪感が、がんばれ、俺、そういう目で見ちゃダメだ、な感じ


何れ、なのは達の同級生。

天然で巻き込まれる末馬さんを助けるために奮闘する。
特にヴォルケンズとか。

自分の新しい保護者と一人ラブコメ気分を味わうハメになる。









とかどうですか。

私こういうの大好きかな、とか思いつつ書いた。
反省はしていない。







[36072] 妙子さんは一生困惑してるけど正直どうでもいい俺、おっぱい 妙子さんUSO追加
Name: みさりつ◆2781aa24 ID:36037864
Date: 2012/12/09 08:19
【注】ちょっと暴力シーンの回想あり。








新しく家族になった佐藤達馬には

残念なところが一つある。

それは





「転生オリ主――――やってもいいんだよ?」

「やですよ」


末馬妙子の期待から逃げる。







【もう一発、続いた。】 2話 完





「ハーレムは?男の浪曼でしょう?」

「いや無理ですって、実際修羅場でしょう、胃がおかしくなりますって」

「えー?可愛い女の子達が将を射るならなんとやらで私の所に来てさ、「お義母様」とかやってくれたら面白いのに、ツンデレとか素直クールな子とか
ウチの子?いいよーあげるあげるっていう感じの大らかなお母さん役やるよ私は」

「いやいいですよ」

「あとラノベ主人公の親のごとく長期出張するよ?となりのマンションに(自分の)」

完全っに他人事なので、面白そうであると妙子は言う。


「つうか、妙子さん何か最近それ系詳しくなってません?」

「うん、最近こっちの世界の二次創作読むのが趣味だし、私みたいなTS転生者の話とか面白いね」

「おい」

「あるある、わかるよ、その恥ずかしさ……とか共感出来るやつとかが好き、女子トイレとかスカートの話とか」


妙子の新しい趣味、それは二次創作であった。
自分がTSしたので、同じような苦労をしているTS転生者の二次創作を探す。
そして、原作がわからないので、原作の話がどんなものか調べる、といった逆順の楽しみかたをしている。
既に妙子のパソコンのブックマークがそれ系で埋まり、最早アンテナ作れるぐらいだ。


「転生したあとにハマるってなにさ!?」

「でも精神的ホモな話を読むと欝になるね、んな気軽に男に惚れるとか無理だろ、とか百合?とか非生産的で親が泣くぞとか女はそんなに綺麗なもんじゃないぞ。
実際TSすると気持ち悪くなるぞ、TSする前から同性愛趣味でもないと無理だぞとか。
悩まないお前はちん○んないだけの男だ妬ましい、もしくは吹っ切れたのか妬ましい。
もっと悩めよとか―――私は今も悩んでいるぞとか」

「それはそうですね現実そんなもんですよね」

「男なのにスカート履いて電車で痴漢にあった時の情けなさとか、わかってよ!現実すぎて死にたくなるよ!」

「いや俺に言われても!」



「うーんでも、あんまり女性の友人関係の陰鬱な場面を取り上げた話とかがないから残念。
こう、美人だから調子にのんじゃねえと髪引っ張ったり、とかそういうの。
嫌いな友達のプリクラをこっそりメッタ斬りにする女の子の話とか。
嫌いなやつの髪にガムをこっそり着けたりする女の子の話とか。
バリカンで―――」


「そんな話書く奴いねえ!え!?それ実話!?」


「ないとは言わない」

とある女性を勝手に取り合った女子高生達の熾烈な争いの一部分である。
友人と思っていた彼女達が実は水面下で、とかそういうのである。



「……大変だったんですね、妙子さん、何がとは言いませんけど」

「うん、中学で完全に男嫌いになってから女子高に進学して不登校になったことあるんだ私」

「リアルすぎる、てかやっぱりモテたんですね色々」

「女性も嫌いになって、一時期ついに人間不信になった」

ある日の朝、学校の通学路を歩いている途中に友人が帽子をかぶって着たのを見て、妙子は何かに気づいた。
そして、友人の一人が顔に青タン作っているし笑顔が怖い、それを見て、恐ろしくなった。

よく見ると制服に若干、黒い染みがある。


それらを統合し。


すぐさま


華麗に校門の前でバックターンしてそのまま不登校になった。


「普通に暮らしてるのに―――何故!?」


と家に篭って現実逃避の金儲けに走った。


「………」


妙子の苦労話を聞いている達馬はいつも思う。


この人本当にテンプレTS転生者なんだよなぁ、と。




全ては


下手に男性として女性に優しくする紳士的な気持ちが仇になったわけである。
女性が重いものを持っていたら、自然に持ってあげる。
女性が髪を切ったら、褒めるし、服装、化粧も気づいて褒める。
些細なところでもキチンとお礼を言う。
といった、末馬妙子が当たり前だと思うことをしていたわけだ。

そして大人としての意識があるせいか、基本的に前世の年齢より下の人間に対し誰にでも優しい、年上を敬う。

男らしく雄々しく物事に立ち向かう精神もあるし、暴力を嫌う。

結構、他人の為に奔走したりする。

元社会人なわけで大人の事情も理解出来るし、物事をスマートに解決する。

その割にいきなりポンと子供引き取ったりする大胆さ。

若干22で婦人会のリーダーでボランティア活動とかを推進し、子供を一人を引き取るまで毎朝小学校の通学路で旗を振っていた。

土日は街の清掃活動、もしくは公民館で得意な手芸を生かした手芸サークルの先生である。

何故か未婚なのにPTAに顔が効く。

子供が好きなのか、この前は小学校で読み聞かせをしていた。

別名「海鳴の鉄人」

性欲やら物欲やらが失せ、賢者のごとく生きている。

女になってから少食なので食欲もあまりないらしい。

雨ニモマケズを地で行くのだ末馬妙子という女は。



守銭奴だけど。






とかが悪いんだろうなぁ、と達馬は思った。

美貌、金、性格とか。
その代わりなのか異常なほど不運の持ち主(生まれが)
てか、22で数百億稼ぐとか何者だよ。
ていうか、それだけ金あるのに月16万で生活出来る精神が謎。(現在22万円)

全てに置いて完璧とは言わないが、此処まで出来た人間は見たことがない。

多分この人、俺と立場逆だったらなのはとかフェイトと一緒に砲撃とかしてるんだろうなーと思う。


そもそも時代の移り変わりを利用して金儲けなど確かに思い浮かぶが。

一言。

で、どうやんの?



俺には無理だと思う。






できてしまう彼女に、それを言うと落ち込むので言わないが。

まぁ魔法少女などこの人がやらされたら、本人は手首切りかねない。

末馬妙子はガチで自己嫌悪とストレスの塊である。

ある日夜中に突然目覚めてトイレに駆け込みゲロゲロしているのを見たことがある。

どうやら、男に性的行為をされそうになった記憶を夢で思い出して吐いていたらしい。
その時の吐いている様子が「色っぽくて変な趣味に目覚めそう」とか思ったのは達馬の秘密である。



「昔は大変だったんだよー?」


今も大変そうですけどね、貴女。


「そうすか」


「いっておくけど、同性同士の擬似恋愛も修羅場になるからね、男のストーカーも怖いけど、女のストーカーも怖いからね、てか粘着力凄いよ、思いつめた女の子って」

「俺の場合BLですからホモですから妙子さん……てかストーカーって」

「朝…ある日、私の家のゴミ捨て場で謎の男が私の生「それ以上いけない」

「あと、ある日家の新聞ポストを開けると謎の透明な瓶があって、その中に白「ケフィアか!?人にトラウマ感染させないでください!」」

「バレンタインデーで女の子から貰ったチョコレートを食べたら口に、ん、なんか糸「魔法じゃなくて呪術か!」そのあとトイレに駆け込んで喉に指「そうするね普通!」」

「今もあるんですか、ストーカーは」

其処は達馬としては一番気になる。
これだけ金あるし、綺麗だし、危険な目にあわないのか。

「海鳴市に来てからなくなった、そもそも無駄に治安いいから此処住んでるし、下着ドロもないしゴミ袋漁りとか夜道一人で歩いても、突然後ろからとかないしね。
ここ来る前とか、一人で夜街を出歩いたりとか出来なかったんだよ?」

「そうなん…ですか?ていうかよく今まで無事でしたね」

末馬妙子は知らないが、海鳴市は人外魔境である。
それを言わないほうがいいかな、と達馬は思った。




「ん、スタンガンも持ち歩かなくていいし―――ていうことで、これからの人生、苦しみを分かち合おうね―――私の分も頑張って?」

「俺普通に生きますから、てか俺男だからそういうのまずないし、それに妙子さんはまだ22でしょ?」

「ジェネレーション・ギャップでどうせ苦しむよ?普通にしてても小学校とかで真面目でしっかりした子とか言われて生徒会長させられるよ?……あと私はもういい」

「じゃあネクラに生きますよ、妙子さんはまだ若いんだから、これからを生きましょうよ」

「私の気持ちを分かる同類がいるから、もういいんだ………たっくんが居るし、我が運命の人!」

「うわぁ…てか、妙子さんはあんまりそういう冗談言わないほうがいいですよ」

「いいの、たっくんラブ。あ……ラブはラブでも兄弟愛みたいな友愛だから、気味悪がらないでね?」

「ダメだこの人……自分がどれだけかわかっていない」



「ん?取り敢えず、幼稚園、がんばってね」

「入園させないでください」

「そこは世間体があるからね、人様の子の保護者やってるし、そういうの大事」



「なんて夢がない人なんだ」

「寝ても覚めても人生羞恥プレイだからね」




完。




蛇足




末馬妙子の日常。


末馬妙子の朝は早い。


「おはよう、恭也くん」

「おはようございます、末馬さん」

「今日も修行?」

「ええ」

「頑張ってるね?」

「末馬さんも」

「私の場合、ただの健康の為のランニングですよ?」

「でも10キロは走ってますよね、毎朝、中々続けられるものじゃないですよ?」

「うーん、まぁ音楽プレイヤーのお気に入りファイル一つ分走るっていうマイルールだから、それくらい行くのかな?
恭也くんとかは音楽プレイヤーとか聴いたりして走ったりしないの?暇じゃない?」

「いえ、体の調律をこなしながら走っているので、暇はしないですよ?」

「アレですか、呼吸法とか、内気とかそういうの?」

「まぁそのようなものです」

「それは凄いですね、じゃあ、私そろそろ残り一曲なのでクールダウンしながら帰ります」

「お疲れ様です」

「お疲れ様です」

と走り去る女性を見送り恭也は思う。

「相変わらず、鉄人だな……末馬さんは」


今日も普通に並走されていた。
10キロ間14秒ペースの速度維持。
実はマラソン選手とかではないのだろうか?



と伺ったことがあるが

「え、そういうのやったことないよ」

と言われたが、確かにフォームはそれほど綺麗じゃない。

では、フォームを直せば、もっと早くなるということではないのか?


と恭也は思ったが、何か、げに恐ろしいので指摘はしなかった。










などと、高町の恭也くんに疑問を残しつつ、朝の4時には起床して、ランニングなどをしてシャワーを浴びて、化粧して、それから朝ごはんの準備である。




「ふんふんふんーぼんばへっ」



末馬妙子の生活は目論見通りハリが出ている。

所詮、自分一人食わせるなんてなんとかなるもので、自堕落に生きようとすればいくらでも好きに生きられる。

だが、最近では料理や掃除も余計楽しくなったし。バリエーションが出る。

例を言うなれば、朝ごはんだって前はトースト焼いて、野菜ジュースで済ませるとかそういう方向へ逃げていた。
台所に置いてある、ホワイトボードを見る。

今日は和食の日か、と妙子は昨日の夕飯の片付けを終えたあと自分で書き記した水性マジックの文字を見る。


「朝は鮭を焼いて、卵のダシ巻き、白菜のおひたし、豆腐とわかめの味噌汁と雑穀米……うん、バランスいいかな?」




息子のおべんとうも作らないと。

SUEMAと書かれた(手縫い)エプロンを身にまとい、彼女は頭にワーキングキャップをかぶる。
これが彼女の料理スタイルである。

髪をゴムで巻いて、頭髪が料理に入らないようにするのは基本である。
理想的な手洗いうがいは基本。

女に生まれてから、この当たりは大変気を使うようになったものである。
彼女のトラウマの中には料理に髪の毛というものがあるのだ。



それから朝の献立と息子5歳(+20)の幼稚園に持っていく弁当を同時にこなしていく。

塩を入れて沸騰させた鍋の中に白菜を入れ「これは人に食べさせるものっ」などニコリとつぶやいて、茹で加減に気を付けながら
鮭の焼き加減を見たり、汁の味付けをしたり、卵ダシ巻きを作ったりする。


お弁当も大分完成したあたりで、朝ごはんを作る。



「ううむ、油でよく馴染んだ―――いきました!妙子選手今卵投入!お砂糖少なめです!これはよく固まるぞー」

とか言いながら、楽しそうに料理を行っていく。

どう考えても、元25歳男性には見えない。
どう見ても家庭的な女性にしか見えない。

がそれを指摘されると彼女は落ち込み、一人黙り込み手縫いで絨毯などを作り始めるので達馬は言わない。



22歳でダシ巻きを上手に作れる人はあまりいないのだが、焦げ目をつけずに、卵を上手に何層にも重ねていく。

「フィニッシュ!」

とか言いながら、最後の一枚を巻く。

「ああっ!」

崩れた。

だが。

「太くなるけど、継ぎ足し継ぎ足し」

と新しい卵を割り、卵液を作り最後の一枚を追加する。

理想的な手のスナップ。

煽るさいのハシの力加減はまさに熟練の技。

ダシ巻き専用の四角のフライパンの上でダシ巻き卵は綺麗に回転し巻かれる。





そして竹巻きで巻いて、固定し。

白菜を見る。

「冷水冷水」とボウルにいっぱいの水に茹で上がった白菜を放り込み、何度も水洗いし余熱をとっていく。
冷えたら、しぼり、重ね、横に4等分し、細く包丁を入れる。
それらをクッキングペーパーでしぼり、白だしを加え、鰹節を加え混ぜ合わせる。

そして鮭を取り出し焼き魚用の皿に載せる。

巻いていたダシ巻き卵をカットし、小皿に載せる。
小鉢に白菜のおひたしを載せる。

あとは具材の入った汁に味噌を入れ、味を見て「よし」とか言いつつ、炊き上がった雑穀米をしゃもじで切るように混ぜ。

朝ごはんの完成である。



これまでは、ひとり寂しくニュースをBGMにマーマレードジャムトーストをもさもさと食べ、野菜ジュースを一気飲みするような朝だった。






末馬妙子の人生上ここまで楽しいと思う日々は初めてだった。

ここ最近の生活は一瞬一瞬でさえ、一時間で30億円稼いだ時よりも楽しいなぁと末馬妙子はウキウキしている。

最近バイト先の友人である桃子さんからは

「なんだか益々笑顔が輝いているわね……お客が増えたわ」

と言われるくらいである。





弁当も揚げ物を仕上げたところだ、息子の幼稚園出発間近に弁当箱への盛り付けは行う。

今日の弁当は同じ世界の出身じゃないとわからない、某有名モンスターのピカとかそういうキャラのキャラ弁である。





エプロンを取り外し、息子を起こすことにする。

息子は昨晩も、家で契約しているスカパーでやっている(未だに32型テレビ)この世界のアニメに夢中らしく
結構夜ふかししたりしているので、寝起きが悪い。

なんでもアニメも目新しいがこの世界の特撮が面白いそうである。

夜は夕食後妙子が経済新聞を熟読している横でゴジラに当たる怪獣映画に突っ込みを入れながらよく鑑賞している。

妙子としてはもっとアウトドアな子になって欲しいと思う。

家の壁に落書きしたりとかそういうのをやってみて欲しい。

嬉々として躾とかしてみたい、とか思うわけだ。

後ろから5歳児のほっぺたをつねって寝かせるのも楽しいが、ちょいとやはりそれなりに大人の精神のせいか気遣いが出来る子なので


「そろそろ寝なさい」で寝てくれるので残念だ。

一回しかまだ頬をつねって寝かしたことがない。

取り敢えず「本気で怖い本当の話し」とか夕飯中に見せたりしても「夜一人で寝られないよー」とかがないので残念だと常々思っている。

人に世話をするのが好きな性分で際限なく人を甘やかせるタイプの妙子にとって達馬は或る意味理想的な息子である。


子供にはありえない自制心があるのだ。

そりゃそうだ。




そこらへん、もっと開放して自由に生きるべきだ、と妙子は思う。

己と違い、女性であるという抑圧がないのだ。

せっかく羨ましい体があるんだから、自分とは違い小さくまとまらないで欲しい。
彼の強くてニューゲームに付き合って上げてもよい。

現在の産みの親に捨てられたことが、何処か響いているのだろうか。

気遣いが多くて疲れそうな子だ。

一緒のお風呂も避けるし、一緒の布団で寝るのも避けられる。

既に反抗期の息子を持つ母親並みにそういうスキンシップから逃げられるので、寂しい。
5歳児なんだから気にせずそういうのを受け入れて欲しい。


「俺は大人だー」とかコナンくんが叫んでも無駄なのに。


まぁ擬似家族ごっこだけれど妙子としては満足している。

女性の体という人生羞恥プレイのせいで起こる鬱々とした部分も最近は形を潜めている。

この人生はずーっと困惑して生きていた。

だが

最近では日課である経済新聞もそろそろ購読やめようかしら、と思い始めていた。

新しい趣味もできたし。

予想以上に達馬は人生を歩む中で一番の理解者になりそうである。
将来的にはどうなるかわからないが、今のところ、妙子に対しては時たま色のある視線を送るが
不快までも行かない程度だ、つい目が行くのは普通だ。

精神を性欲の塊にする15、14になったらどうなるかわからないが。


まぁ10年後には私も老けてるだろうし、おばさんだ。
見たくもなくなるだろこんなエセ女なんて。



そうおばさんだ。





おばさんなのだ。


「ぐううう………おばさん…嫌だ…転生TSでおばさんとかもう完全にアウトだ……気持ち悪い」


32でおばさん認定を自分にするあたり、自己評価が厳しい末馬妙子である。
未だに女装しながら生きているような気が抜けず、私は嘘を吐きながら生きている、そう思っている。





32のいい年した男が女装して生きているような未来図を思い浮かべ

「まぁいいか――――たっくんを起こそう」

危ないところだった。

また鬱々とし始め、朝から絨毯などの手縫いを行い、現実逃避をするところだった。




それまではしょうがないから現実逃避でお金という数字の世界に飲めり込んでいた。

もし、財テクの才能がなかったら、今頃、身を売る前に首を吊っていたかもしれない。

だから自分は引退してプロに任せて悠々自適に、だ。

それからはコツコツと黙々と現実逃避出来る手縫いなどの手芸が好きになったので
それを趣味にし、レースのハンカチを作ったりして講師の資格の取得まで至った。

暇な時間全てを使い、パソコンの前に座り、数字と睨みあっこするのはもうやめたのだ。

金銭感覚が可笑しくなりそうになりながら、億単位でバンバン画面上の何かに投入する世界は懲り懲りである。

5億飛んでも、次で20億稼げばいいぜ、とか、そういう世界。




ゲームでこつこつレベル上げするように金を増やすのはもういい。

非常識すぎる。












そんな末馬妙子22歳である。

これから先の人生を達馬には楽しんで欲しいので
色々アドバイスしてるつもりらしいが、あまりにも生々しいため、達馬はあまり聞こうとしない。


末馬妙子は一時期には本当に自殺しようかなーとか思い詰めたこともあったのだ。

日常の相談相手と信用していた従兄弟のお兄さんが牙を剥いた時。

末馬家の兄妹達は知らない、両親しか知らない事件。

体を縛られ、着ていた服を剥かれ、ガムテで口に封をされ、いただかれるギリギリまでいった中学生の少女時代。

末馬妙子が昨晩も夜中に思い出す、自分の体が男に舌を這わせられた感触。

従兄弟の家で食べていた自分の食事に汚物をぶちまけられていたと聞いたあの絶望。


ビデオカメラでRECまでする気満々だったあの変質的な瞳。

結局は脱出できたが、その後の被害者が胸糞悪くなるような解決方法。


その金で金儲けに走った記憶。

捨てた金が戻ってきて嫌な気分になりつつドンドン増えていった思い出。



「はぁ……絶対いつか裁判にまで持ち込んでやる」

あの男はまだ私を見ている。


今朝もあの男から、手紙が届いていたし。


「ま、他にもいっぱいいるけどね、そういう奴」


慣れたわ、と笑いながら、歩く。


そこまでは達馬にも教えない。

突っ込み上手の合いの手上手の達馬は妙子の苦労話を笑い話にしてくれるので、大分救いになっている。

それに気味が悪いと捨てられる境遇にありながら、「しょうがない」で納めることが出来る強さがあるのだ。


別にお互い悪くはない、と妙子は思う。

生まれてきたものは生まれてきた、そこに作為はないのだ。
無垢な赤ん坊に記憶が混ざっていただけの話だ。



生まれてきて悪い。

なんて、妙子は言うつもりはない。

それに達馬の両親はどうしようもなくて達馬を捨てた。

お互い運が悪かったとしか言いようがない。

それをしょうがない、と言い切るか言い切らないか、それだけ。

達馬の場合は即座に切り替えれた。

私と同じく、しょうがない人生。

しかし私のように運の悪さに嘆いたりしていない。

しょうがないで十分生きられる子だ。


私には出来ない。



達馬だったら、多分、女に生まれていたら、私と違い本当の女をやっていたと思う。

すごいと思う。


そういう良い子は私の子にしようと思った。

同類として助けたいと思った。

それだけで良い。


私が勝手に優しくしてお世話するだけだ、達馬は好きに生きて欲しい。

金ならいっぱいある、好きなだけ与えても良い。

彼が私の家から出るとき、欲しいなら全財産やっても良い。

それが彼の為になるのなら。

彼が楽しく生きてくれれば、私も仲間として嬉しいだけだ。

私はどこだって生きていけるし。


達馬に対して、まるで本当にお腹を痛めた子のように愛情を注ぐのはそういう彼女の歪さだろう。
どこかしら自分を諦めている節がある。

だがそういう部分も踏まえて末馬妙子は生きている。







妙子は泣きそうなぐらい嬉しそうに微笑みながら、達馬の部屋に向かう。



「くくく。今日はどうやって起こそうかなー」

「起きてますよ妙子さん……」

新しい家族、佐藤達馬が眠気眼でそう言う。
今日も妙子が悪戯する前に起きていた。

見た目可愛い5歳児なので、ほっぺたつついて起こしたいのに、と妙子は残念そうな声を上げる。


「ええー?」

「この人……まぁいいか、おはようございます」

「おっはー!」

勿論あのポーズ付きで末馬妙子は言う。

「……」

「おっはー!」

「おっはー……はぁ」

「元気ないぞ、たっくん」

「此処一ヶ月暮らしてて思うんですけど」

「なに?」

「俺が中身元成人なの忘れてません?」

「忘れてないけど?」

「ならいいですけど、扱いが本気で5歳児なんですが」

「私としては家でも5歳児演じた方がいいと思って、そういう扱いしてるんだけど」

「そういうのいいですって」

「肉体にあった生き方しないと社会は辛いぞー?私はそうだった、未だに出来ないし」

「じゃあ押し付けんといてください」

「じゃあいっか、実感のある先輩のアドバイスなんだけどなぁ、そういうことなら合わせるよ?」

「そうしてください」

「今日の朝は鮭だよ」

「毎朝ありがとうございます」

「ふふ、どういたしまして、ほら歯を磨いて、顔あらって」

「はいはい」

「ハイは一回だよ」

「うぐ……」



最近人生楽しいです by 妙子




fin











あとがき



完全に終了。







みさりつです。

なんか短編に目覚めた今日この頃。

桜さん、恋愛比翼はもうすこしお待ちください。





設定。





末馬妙子 22 マリョクSランク





案外闇が深い。


沢山の人に裏切られたりしている。




だからこそ強く優しく親愛と誠実を胸に生きようと生きている。

人に対し12国記の慶国女王、漫画版ナウシカ並みに悟っている、カリスマ。

宿命や運命を乗り越えた人で平等に人を愛せる大らかな包容力がある。



他人は良いけど自分はダメで乗り越えられない壁がまだ色々残っている。




割り切るとアイデンティティが崩壊する。

正真正銘の転生TS主人公。





そして18ぐらいで人としての成長が終わっている人で、余生を暮らしているので、主人公降板している。


でも天然で勘違いもよくする人恋しい人。
一人で何もしていないとすぐ鬱々とする。


最近は同類を見守って生きようと思い始め、生活が楽しい。



人生一生羞恥プレイ、ノーガード戦法。


過去に自分の喋り方で苦心したりしてた。




6歳の頃の妙子


「「僕?」んーおかしいね、てかキモイ?元々「僕」とか言わないし、私。
俺?変だね世間体あるし、やっぱり私だろうね。
社会人やってたら私なんて普段使うものだしおかしくないよね
人間見た目だからなぁ、人を不快にさせない言葉遣いにするべきだね」

「あ」

「前世でも22超えたら私だったよ私あはははははっ……はぁ」



「何してんだタエ」

「あ、兄さん」

「一人称に悩んでた」


「いちにんしょう?」

「ん、なんでもない」





佐藤達馬 たっくん 5歳。


人生なぁなぁで生きている。
めんどくさがりが一周回り諦観の人生を歩むところで、末馬妙子に拾われる。
ほんとの子供だったら、妙子さんの為になったんじゃないかなぁと思っている。
俺が俺じゃなかったら、ほんとのお母さんになれたのに……とか悩んでいる。


それをいつかポロリと言って妙子を泣かせる。

「君が過去にどんな記憶やどんな人生を歩んでいようと関係ない!今、君は私の息子なんだ!」

とかカリスマたっぷりに言われる。


(うわー)


自分に言えよ、その言葉。


とか言いたいことも言えないポイズン気分を味わうハメになる。


「ごめんなさい!お母さん(しょうがない)」

「いいんだよ、私が悪かったんだ、君をもっと息子として愛せなかったから」




というのを周囲に感動しながら見られる。


「ねえ今日は一緒にお風呂入ろう?たっくん」

「え」


あんた何を言ってるんだ。








一人ラブコメ気分の結構可哀想な普通の少年。

ただやる気のない小僧なのに妙子に強いとか勘違いされている。


人生長いものに巻かれろ、ことなかれ主義。





十年後ぐらいは躾直され立派な青年になれるけど

末馬妙子について色々悩む人生を送る。



「俺、綺麗だったらニューハーフ余裕ですよ」


「そういうこと、じゃない、んだよ?――――――親子の縁切ろう」


「マジすいませんアホなこと言いました」







とかどうですかね。



すげえ、なのはじゃなくてもいいだろ?



続かない。



×××版はない。

まぁ妙子を吹っ切れさせるには×××版しかないんですけどね。



妙子さんUSO

AS編 ネタ


ある日のこと。


「済まないが貴殿達の魔力をいただく」

「え?魔力、何それ何その格好どちら様?……長い包丁!?けけけ警察!アレ電話がつながらない!?」

「あ、俺魔力あったのか?変な筋力だけかと思ってた、あと和菓子」

そういえばそういう時期かと、突然現れた騎士装束の美人に俺は驚きつつも、手に持った緑茶を離さなかった。
ふむ、アニメではあんな顔だったのが現実だとこうなるのか、感慨深いな、と思った。

胸は妙子さんより少し、あるかないかぐらい?
ふむ、妙子さんの方が形もいいし、勝ちだな、さっすが妙子さん。

別にほっとけばいいかと全くこういう事態を気にしてなかった。

それよりもほっとけない人が隣で震えているし。

ま、リンカー・コア抜かれても体調崩すぐらいのもんだし、一生の怪我でもなんでもない、精々2、3日寝込むぐらいだろ?
余計なことして余計なことになって世界滅んだりしたりしたらやだし、大人しくしておこう。

大人しく魔力上げて、この後、お風呂に入って、妙子さんが作ったプリンでも食べよ、あ、寝込むならプリンを冷凍した方がいいかも。

「あわわわわ」

とか言ってびっくりしている妙子さん。

一応大丈夫だよ妙子さん。
放っておけば勝手に終わるって、とか言う前に

シグナム?は余計なことをしてくれた。

「じっとしていれば、すぐ終わる、其処のご子息も」

「あ」

「それって何する気なのかな?―――それに、ウチのたっくんも?」

じっとしていたらすぐ終わるとかいう言葉が妙子さんの何かの琴線に触れた。

何かってトラウマスイッチである。

別名、妙子さんジェノサイドスイッチ。

「ああもう、なんでそうなるかな?」

と俺は食べていたお菓子を避難させる。

妙子は手に持っていた新聞紙を丸め、目の前の暴漢に挑む。

「そんなもので―――?何ぃ!?」

そして末馬妙子は床に穴が空くほどの踏み込みで一気にシグナムを丸めた新聞紙でなぎ払う。

「あーもうやだやだ、加減してよ、家壊れるじゃん」

窓枠ごと家の一部が消えた。


そしてまるで風に紙くずが舞うようにシグナムがどっかに飛んでいく。
某ザンバーを受けてブッ飛んだスカリエッティのごとく。

家の中に外の空気が入ってくる。

「寒……寒い!」


俺はこたつに潜り込み、顔だけ出す。
あ、結界内だから電化製品使えんのか、寒い!
風邪ひくだろ、こんな真冬の夜にぃ!

外で襲われていたら凍死するよさ、さむ!

妙子さんは器用に新聞紙ブレード(今俺命名)を手でくるくる回し肩に載せ。

「そんなもの―――で?」

とシグナムが飛んでった方向にそう言う。
見えてんだろうな、この人。

「妙子さんおかしいって!?丸めた新聞紙で斬り合いできるとか意味わからないって!」

とかいうのは大分昔に終わったことだと思っている。

なにせ妙子さんは

「お母さんが絶対守ってあげるからね、今あの人追い払うから」

纏っていた俺が去年プレゼントしたエプロンを脱ぎ。
椅子にかけてあったカーディガンを羽織ると

「いってくる。寒いから風邪ひかないように布団に入ってて、あと警察に電話しといて」

「正直人生悩む必要ないだろ妙子さん」

「へ?」

末馬妙子さんは曲がりにもなりにこの世界最強。

まぁこの世界がSSの世界だったらだけど。

TS転生最強物の主人公である。

神様――作者も何を考えているのか、こんな人主人公にしても面白くないだろ。

この人未だにフェイトちゃんと一言も喋ったことないんだぞ。
ちなみに俺もない。

そういえば、妙子さんのマンション管理してる人が半年前何か言っていたような――忘れた。

とかくだらないことを思いつつ、今日の夜は何時に寝られるのだろうか、と夜の10時を指したまま止った時計を見る。

「あー映画の途中だったのに」

テレビも消えていた(未だに32型)。

セガールが逆襲し始めたあたりなのに。
セガール……妙子さんと戦ったらどっち強いかな?
正直セガールが新聞紙で妙子さんに負けられると、俺のアイデンティティが崩壊する。


「続き今度DVD借りてくるから。あ、お財布持っていって、このままあの人交番に置いてから近所のTUTAYAでDVD借りてくるね?」

「うん頼みました、いってらっしゃい」

「頼まれましたーうん、行ってきます」

「帰ってくるのが遅くなるようだったら何かで連絡して?」

「うん?わかった……でもすぐ帰るから、そんなのいらないと思うよ?」

「そういう意味じゃないけど、ま、風邪引かないでね?」

「わかったー」

財布を片手に丸めた新聞紙を片手に妙子さんはシグナムがブッ飛んだ方向に神速じゃないけど神速の速度で出かけて行った。

えーと、と俺は取り敢えず布団に入って暖まろう、と思った。
妙子さんが淹れてくれた緑茶を一気飲みし、2階に上がっていく。

ま、2、3日で帰ってくるかな、適当に場を収めて。

あの人天然だから、余計なこと教えない方がいいんだよなぁ、と既に始まった原作ブレイクにどうなるか予測するが

どーせ無意味なので

「どうせ俺多分主人公じゃないし」

あれだ主人公が引き取った息子1とかだし。

とかくだらないこと言いながら布団の中でジャンプを読む。

あと妙子さんは本当にいい加減開き直ってくれればいいなぁと思う。

なんで未だにくよくよイジイジしてるのか。


自分のやってることわからないのかなぁ。

そこが可愛いんだけど。

あ、結界とけた。

家も勝手に治っただろうから映画続きみよっと。

「あ、多分TUTAYAでマジであの人DVD借りてくるから、みんのやめよう」

妙子さんマジ鉄人。
顕在魔力Sだけど潜在魔力EXとかだろきっと。

あの人巻き込まれ型主人公だし、そのあと色々そのカリスマやらなんやらで困ってる人ハッピーにして帰ってくるから心配いらない。
敵になるとアンラッキーにされるけど。

そのあとまた変なトラウマ作って鬱々と帰ってくるからそれを慰めるのが俺の仕事です。


「めでたしめでたし」


完全ネタなので気にしないでください。
これはこの話のフィクションです。


みさりつでした。









とある海鳴交番。


「三田巡査ー」

「末馬さんじゃないですか、こんな夜分にどうしたんですか?今日も夜のランニングですか?相変わらず鉄人ですね?」

「えーと不審者捕まえたんですけどー。鎧と剣装備のドラクエっぽい人です」


「不審者扱いか……」









「末馬さんも冗談上手いなぁ!うはははっそんな馬鹿な――――え?」



「この人です」






「えーと夜の仮装パーティーで酔っ払ってる……とかではないでしょうか、末馬さん?」

「えーと新聞紙で捕まえたんですけど」

「いやそうではなくて……って新聞紙?」




シグナムは思った。

私はゴキブリか何かか、と。

それに時空管理局ではなく、まさかこの世界の国家権力の所に引き渡されるとは思わなかった。

想定外すぎる。

「末馬、とか言ったか?」

「酔っ払って人様ん家に刃物で押し入るとか、もうすぐクリスマスなのに……今日は……えーと海鳴警察本部の拘置所だね、あとで私の家の家具とか弁償してね?
あれニ○リの4万円のソファーだから、えーと今度レシート持ってくるから」

クリスマスはあんまり関係ないのではないか?確かにもうすぐクリスマスだが。とシグナムは思った。
しかし、実際に人の物を壊して、弁償とは。

「う……主に何て言ったらいいか……いやそういうことではなくてだな!」

「じゃあどういうことですか?」

「ううむ、何て説明したらいいか……」


「えーと三田さん、取り敢えず、私帰っていいですか?」


「いや末馬さん帰らないでください丸投げしないでください、貴女の悪い癖ですよ!」

「息子が待ってるんですよ?海鳴のTUTAYAは11時までで借りたいDVDあるのに!
今日の日曜洋画劇場の続きが見れないじゃないですかっ!」

「え、そういうことですか?あ、私そのDVD持ってますよ、丁度、宿直室にあったような…」

「え、本当ですか?貸してくれませんか?この前女の子を誘拐犯から助けた誼で」

「いいえ、それぐらい構いませんよ。差し上げても良いぐらいです。
何時も海鳴で奉仕活動、交通安全活動を行なって頂いて、私ども警察官達もいつも貴方には感謝してるぐらいですし。
なんなら、家までこのままお送りしますよ、ミニパトですけどね、あ、末馬さんパトカー乗ったことありますか?」

「パトカーですか、ううん悪いことしてないのに乗るのは……ちょっと嫌かな、近所で噂になったりしたらやだし」

「そうですかワハハハ」

あははっと笑い合う警官と末馬妙子。
その隙にシグナムは逃げよう――――「逃げるな、罪が重くなるよ」

妙子さんからは逃げられない!



[36072] 初恋ハンター妙子幼稚園編 ちょっとした小話集
Name: みさりつ◆2781aa24 ID:36037864
Date: 2012/12/13 23:02
達馬の幼稚園の思い出。



「幼稚園ストレス貯まるわー余裕で貯まるわー」

「あはは……えーと今日はどうだった?私って記憶幼稚園後だし、どういうのか気になるんだけど」

「ひたすら砂場で光る泥団子作りましたよ、蟻の巣ほじくり返したり、歌うたったり、お遊戯会の練習とか」

「ふふ、5歳児やってるね、そろそろお遊戯会かぁ―――デジカメとビデオカメラ買わないと」

「笑い事じゃないですよ、よく分からない理由で5歳児に喧嘩売られるんですよ」

「どんな?」

「えーとユリ組のえーといいやB君にしときましょう、そのB君が―――やめときましょう、マジ俺5歳児になる」

「なになに?教えてよー」

「やですよ恥ずかしい」

「えーズルイよー」


言えない、気まずくなるし。


Bくんは妙子さんに初恋を抱いて、「妙子さんと結婚したい」とか言い出した。
俺が死んでも言えない台詞をクソガキがのうのうと。

ふっ、まぁいい。

俺は妙子さんの分まで根暗に生きるのだ。
相手なんかしないぞ。

「おれが今日からおとうさんだ」

ああ、すげえイラっとした。

しかも何勝手に決めてんだ!?

いやいや5歳児の言うことだ、気にするなーって言ってる時点で気にしてるけど気にすんなー俺。


「おとうさんだぞー」


ハァ?

ママゴトならあっちの砂場でやれクソガキが。


「あの人は一生誰とも結婚しないよ」

ああ、言ってて悲しくなる発言。

末馬妙子生涯独身を息子の俺が認定。

何故か俺が一番ダメージを受ける。

「知ってるぞ、しんぐるまーといういうやつのせいだろ」

「シングルマザーね、はいはい」

「お前のせいだろ!」

「は?」

「妙子さんが結婚できないのおまえのせいだろーおにもつ」

ああ、どっかで俺の話聞いたかね、ガキ。

「ははっ……お荷物だって?」

B君のBは豚って意味だぜガキ。
あ、それならPか。

「しってるよおまえも妙子さんと結婚したいんだろーでもむーりー。おにもつだから」

あのモッピーをリアルにしたらコイツみたいな奴だな!?うぜえ!


「はぁ?黙れよこのクソガキ!俺と同じ肉体年齢だからって調子のんじゃねぇぞ!」



とかいう喧嘩なんて言えませんって。

ああ、超大人気なかったよ俺。。
20になってなにやってんだか。
アホくさ。
うわああああああああああっ不登園児になりたい!
まさか精神が肉体に負けているのか!?



俺と同じ肉体年齢だからって調子のんじゃねぇぞ!(笑)とかイミフだろ。



「なにゴロゴロしてるの?…まぁいっか、喧嘩したの?」

「ええと、はい勿論叩いたりはしていない平和的な口喧嘩ですよ」

「ふふっ本当5歳児やってるんだね?何か可愛いね―――勝った?」

「そりゃあ5歳児に口で負ける20歳とかいませんよ」

実際はゴラァボケガオラアとか声変わりもしてないこの口で罵って泣かしただけですね、はい俺最低です。
いや、おかしくはない、俺は今5歳児だし、いやそれはおかしいぞ、あ、そうだ人として言ってはいけないことって
あるじゃないのか?俺前世の時、小学校で麻原○晃のモノマネして学級会で叩かれたことあるし。
そうそうブスには黙れメス豚とか言っちゃいけませんよとか、そういう基本的な人としてのルールですからね、うん俺正しい。

「何か……悔しそうな顔してるけど?」

「俺は負け犬ですよ!学級会でよく叩かれてましたし!女子軍団に口喧嘩勝てた記憶ないです!達馬くんが泣かせましたー!」

「多分それ日曜の弁護士最強軍団より強敵だよ…………まさか、負けたの?口喧嘩」

「負けてはいないです、でもですね、そもそも5歳児と」

「よしよし」

「うわ恥ずかし……何やってんだか俺、5歳のガキに喧嘩なんて」

「それはしょうがないよ、誰だってどんな人だって怒るときは怒るよ、たまたまそんな日だったんだって、てか君も5歳だし」

相変わらず自分棚上げしますね妙子さん。

「じゃあもういいですよ…5歳児っぽく振る舞いますよ、今日は」

「えーほんと?一緒にお風呂入る?」


あ、いいかも……駄目駄目だ、変な趣味だろそれは、今のいいかもは赤ちゃんプレイだぞ俺。


それよりも言ってみたいことが。



「…ぼ、ぼくはおかあさんと将来けっこんするんだー」


「駄目」


すげえ、そこらへんは鉄壁だ。
普段は水漏れもいいところなのに。


「ふざけてるのかなぁ」

「ごめんなぁさい、おかあさんー」

「はぁ……あざとすぎ」

「すいませんねマジで」

「ま、今日は許してあげるよ、情けない子ですねーたっくんは」

「ありがとうございます」

「何か落ち込んでる見たいだし、今日は君が好きな食べ物作ってあげるよ?」



貴女はあざとくなくてそうなんですね。
その完璧な良妻賢母っぷりは。

しかも最後にたっくんじゃなくて君だ。
子供としてじゃなくて達馬(20)としての君だ。



ちぃ、いつか出直そう。

純粋に嫌がられただけでマシだな、「結婚して」

これで「お母さんは嬉しいなぁこんな息子持って」とか返されてたら余計落ち込むし。

つうかこの人と結婚出来る人間なんていないだろ、多分。
あー無理だね、絶対無理だわ。
正真正銘の鉄人だし。

「なにその目」

「いいえーなんでもー俺は今日レバニラ食いたいです」

「………レバニラって」

「ダメですか?」

「好きな物作ってあげるっていったんだから、もう少し手の込んだもの言いなよ?5分で作れるよレバニラ」

「あ」

「そんなんだと、たっくん将来女の子にモテないぞー」

「ま、モテモテの貴女が言うならそうなんでしょうね、じゃあ、親子丼で」

「親子丼とレバニラかーちょっとクドいかな、ま、焼肉とか言われるよりましかーじゃあ、胸肉で親子丼ね」

「卵トロトロお願いします」

「いいよ」





あとがき


短編集にします、時系列無視

2話で完結ですが小話いれます

次回は引き取られた初日編

お風呂に入った話

妙子のマッチポンプ女子高時代とか書いていきます。



万能プロローグなんですけど、彼ら二人はシリアスな世界観を生きると
妙子がガチでカリスマTS転生オリ主し始め暴走するので
なのはぐらいが丁度良いと思われます。


小話1小学校
 
俺はすずかにとって煩い蠅のようなもの。



「ダーヤマ聞きたいことあるんだけど、俺なんかすずかにやった?いっつもドッジボールですずか俺の顔面狙って剛速球で投げてくるんだけど?」

まぁ全て「フハハハハハ我が完璧なガードは崩れぬわー」とか言って無駄に存在する最後の能力で受け止めてるし。
ヒゲダンスしながらボール回避して遊ぶし
最後の一人になったあとに「ここで奇跡が起こる!」って逆転勝利無理矢理しようとするし。

「たっくん反則だから消えろ、外野以外すんな」って敵チームに言われます。
そのくせ自分のチームに入れたがるという矛盾を作り出している。

無駄な身体能力を発揮し、無駄に動体視力を向上させ小学生のボールなどまるで
ピタゴラスイッチの鉄の玉初速以下の速度に感じることができるのだ。

俺はダーヤマと読んでる山田というクラスで一応一番喋ってる女子に聞いてみる。
彼女お口が達者で俺よりも頭いいんじゃないか?と思わせるぐらい物事に気がつく女である。
本人に聞いてもシカトされそうな気がするし、アリサだとめんどい感じになるし。
なのは?多分鈍感だから聞かない。

「気づかないアンタが馬鹿」

「え?どういうこと?」

「あんたが馬鹿でいっつも煩くしてるからすずか凄い迷惑してるのよ、ほらすずかって静かでゆったりとしてるじゃない?
本とか静かにいつも読んでるし、でもアンタいっつもそこらへんをフラフラと馬鹿ばっかりやって埃たてたり騒音だしてるもん。
一回見たけどアンタ追いかけてた男子どもが本を読んでいたすずかに掠って、すずかの本、多分新書だとおもうけど速効で折れ曲がったからね。
滅茶苦茶怒ったと思う。」


「あーあーそういうこと、じゃあしょうがないわ、それは普通キレる、誰でも怒る。
俺も集めてた漫画処版発行の本全巻友達に貸してポテチの油ついててブチ切れて喧嘩したことあるし」


「いつの話よ、はいはい前世前世アンタ将来ノストラダムスになれるわね」

取り敢えず今度謝ろう。
悪いことをしたら誠意を持て責任持てとか何時も妙子さんに言われてるし。
俺って本当に子供やなぁ。
しかも好きな人に言われてるから、少しずつ直ってきた。
このままだと聖人の弟子とかになりそうだ。



小話2

もしこんな能力があったらいいな



「ね、たっくんは結局どんな能力が欲しかったの?私はドラえもんのポケットとか万能な奴」


「んー何か最強系とか持ってても持て余しそうだし、人間やめたら人生でもなんでもないし」

「なんでもいいけど、人に迷惑かからないのだったらいいよね、ニュータイプも捨てがたいけどピキーン!やってみたい」


妙子さんは凄いカンと黄金率あるじゃないですか。

「あ、わかった」


「へ?」

「~のスレッドに帰れ!的な特殊能力欲しい、例えば滅茶苦茶強そうな宇宙クラスの怪物とかいたら、最強スレに帰れ!ハイ終了みたいな?」

「うわー自分で戦ったりとかしないの?」

「めんどい、超めんどい、これが一番楽そう、家に帰れで犯罪者追い払えたら最高ですよ?
ムショに帰れ、ハイ終わり。あとロック機能つきで一生自分の目の前に現れないとかいいですね」

「場所かわってるよ?」

とかいう話をしているが何時も思う。
俺の身体能力一生バトルで使わない気がする。
どうしてこんな無駄な物あるんだろ。

和菓子とか。



[36072] 【伝説の鉄人の伝説】息子は嘘つきです、これは全部嘘です 妙子さんUSO追加
Name: みさりつ◆2781aa24 ID:36037864
Date: 2012/12/18 15:31
伝説の鉄人の伝説



今日も普通の毎日を色んな母上の天然テロ行為で心折れそうな日々を送っていますけれど俺は元気です。

母は今日も朝から日の出ぐらいに10キロ爆走し、ご飯を作り車(黒のフィット)があるのに様式美と言って俺をママチャリで幼稚園に送り届け。
そのあと可笑しいぐらい様々な地域の奉仕活動を行い家事をこなし、バリバリです。
つうか寝るまで俺の横にいます。
俺を育てるためにバイトもやめました


ある日の翠屋

「てことで」

「ちょ妙子さんっタイムカード切って!」

「現物支給でいいですよー?冷凍生クリームとかロングライフ牛乳とかで。忙しそうだからホール入るね、閉店まで」

「労働基準法に喧嘩売らないで妙子さん!――――達馬くん!」

「了解、常識考えて妙子さん、親の背中を見て子は育つんですよ」

「いいことじゃん」

「ダメだこの人」

「達馬くんが止めないで誰が止めるの!?」

「士郎さんは」

「怖いから近づきたくないな、触れるとか無理だ、一度末馬さんが車に轢かれそうになって助けるために抱えた時、殺気と共に末馬さんの服の裾から瞬時に「アサシンか!」

「本当に達馬くんが子供になってくれて助かってるわ、最近大人しくなっているし………噂には聞いていたけれど、妙子さんは」

「はい最早、人をやめてますよね」



ということがあった。



所持金に∞マーク付くような人であり。
ていうか株主優待の商品券だけで生きれるような人なのに。
俺を引き取る前は奉仕活動バイトを含めて一日17時間労働だったらしいです。
14から睡眠時間はナポレオンだったらしいですが、むしろそれに現実逃避の財テクやら手芸が侵食していたそうである。

てか自分の時間睡眠以外全部4時間って頭可笑しいだろ家事して風呂入って飯食べるだけで上手くやらないと全然残らんぞ!

お前いつ経済新聞熟読すんだよ!?

てかあなたその美貌の維持の為の化粧とか色々な処理とかにかける時間は?

「生々しいけど、私は無駄な物生えたりしないし化粧は髪を整えリップ塗るのが化粧だよ?美容室いかないし髪も伸びたら適当にハサミでチョキンとするだけ」

「え?マジで……どこの神話の女神だよ!?あんた!生々しいどころか神々しい!」

「あ、これ秘密だった、たっくん秘密にしてね、一度女友達にバレて殴られたから」

「殴るよそりゃ!服とかは!?」

「企業の貰い物」

「ダメすぎる!」


しかもこれが365日数年間やっていたそうだ、唯一の休みは人との行事的な交遊と家族と食事や旅行行事だけ。
それすらもこの人殆ど全て仕切ってやがる!

そりゃずっとそんなことしてたらリーダーになるわ!PTAに顔効くわ!

だからか、海鳴で末馬妙子の名前を知らないやつがいないのは!?
ああ、よく地域新聞に載ってるしね、テレビのオファーもくるしね。

その上で365日毎朝の健康の為の雨の日も嵐の日もやっているランニングとか不健康きわまりないぞ!

精神と時の部屋の化身か!?



「海鳴の鉄人」

超ハードである引越し業者系もやっていたこともあるらしい20時間連続稼働余裕らしいです。


おいそれで、生活の張りとやらに不満持ってやがったのか。



「最早病気だって!?末期の!」

「え、そう?」

「てか妙子さんあなた本当に本当に人間に生まれ変わったんですか?背中に翼生えてたり、手首にスティグマあったりしません?」

「ないない、普通の女性だよ」

「だうと」

「嘘じゃないって」

「そんなに一人で何もしないのに耐えられないのか」

「だって余計なこと考えちゃうし、夢を見ないぐらいが人間丁度良いよ?」

「ああ、毎日無駄に精巧なキャラ弁と勝手に増えていく俺の服はそこにあったのか」



正直この人マジ鉄人です。

職業スーパーロボット名乗った方がいいと思います。
精神はリアル系の脆さ。

脆い?

こんなこともありました

ある日俺の最近の根暗な趣味である幼稚園の砂場でのお城造りの途中、幼稚園の傍を歩いていた妙子さんらしき人を見かけたのですが。

一人で車押してました。
しかもトラック。
あの転生者と因縁深いあの乗り物。
てか、なんでトラックなんだ?
ロードローラーとかの方がカッコよくないか?


それはいい。


「なんだ妙子さんか」

と思い、放って置いたのですが。

あとで絶叫しました。
まぁ絶叫は盛り過ぎか、普通に「え……なにあれ?」とかそういう気分で何か言いました。
ありえないモノをみたとかそういう感じです。



サイドブレーキ引き忘れたトラックが坂道を一人でにそのまま走り出したそうです。
それを見つけた妙子さんはそれを追いかけ、追いつき、そのトラックのサイドウィンドゥをアクション映画のように蹴破りながら飛び込み、サイドブレーキを引いたそうです。
そんなことしてもう一度転生したらどうするんだよ、とか突っ込みたくなりましたが、結果オーライです。
結局トラックは止ったそうですが、道の排水路に落ち、引っかったそうです。

彼女は「どうしよう私が犯人みたい」とか思ったかはよく知りませんが取り敢えず警察に電話しようと思ったわけですね。
まぁそこらへんは常識的ですね、業者のトラックで業務上なんたら系の罪があるものなので。
ですが彼女は携帯電話を今日は忘れていたわけです。
そこで何を思ったかしりませんが天然暴走始めました。


「これ交番まで押していこう」




普通そこは別の手段とるでしょという突っ込みがなかったし
混乱していたそうで

「いけそうかな?」

とか言いつつ5tのトラック押し始めました。
途中で5tトラックを押しながら歩いている鉄人に地域住民が気づいたらしく、通報し色々あったわけですが。
末馬妙子22歳は50mぐらいは確実に5tトラックを押していたそうです。

今日はお礼にお菓子をいっぱいそのトラック業者から貰ったそうです。


意味わからん。

「妙子さん怪物ですか」

「いやー混乱してて、つい、押せるかな、とか思って押してみた。美味しいねこの羊羹」

「おい!排水路引っかかったいうたよな!あんた!」

「え、持ち上げて押した、無理だと思ってたけど、何故か行けました」

ドン引きです。

「えマジ作り話じゃないの?」

「昔からたまにこういう日あるんだよね精神的に好調な日とか、ていうかみたんでしょ?」

「おい、おかしいだろ」



「手から和菓子出せる人に言われても、あと5歳で120cm垂直飛び」

「そんなもの手品だよ!」


これが転生TSオリ主最強系が実物になった姿か。

多分この人無意識に魔力とか絶対使ってる。
愛と正義と奉仕と労働の心が燃えたときとかしか発動しないっぽいが。
自分の為には使えないとか。
鬱々としてると使えないとか



おかしい。


でもよくよく考えるとあのなのはさん9歳で街一つ粉々に出来るくらいのビームが出せる訳だから

おかしくないのか。



「うん」




「なんだこの世界、妙子さんが7日間休まず作ったのか」

あと妙子さん和菓子だけにおかしいとかくだらなすぎですって。

今日から添い寝してください。
リハビリです。

「え、本当?やったー」

子守唄俺が寝るまで歌わないでください。
俺より先に寝てください。


そして

すうすうと寝始めた妙子さんを見て俺は思う。

3ヶ月この日まで俺は何をしていたんだ、と思った。
彼女を一人にしてはいけないと。



「この人救うのが俺の使命……なのか?」


人はそれを共依存という。



「とか思うぐらい、なんか地雷のような、でも嫌じゃないような……マジ面倒な人だな」

どんだけ孤独な人間か。


精通はじまったらどうしよう。
つうかこの人マジ、ダメ人間製造機だぞ。

開き直りかたにも気をつけないと危ないぞ、主に俺が




おわり



母の日のプレゼントで

俺はお母さんという題名の作文を読み上げた


おわりの上の

「そんなもの手品だよ!」

これが転生TSオリ主最強系が実物になった姿か。

までを文にした作文だ。



「そこまでじゃないって、嘘書いちゃだめだよ」

「大体そんな感じでしょう」




あとがき


どこまでが嘘か誠か……。


妙子さんUSOその2

As編2

なんだかんだシグナムが警察に引き渡されそうになり、事情を聞いた妙子さんがなんとかしてしまったあとから数年後。


「はーガキどもめー、中学生にもなってないくせにマセてんなー卒業前に告白とか、つうかそのまま中学校男女別になるだけなのに」

「また告られたの?達馬君」

「うーむ、少女の初恋とかハンティングする趣味はないんだけどなぁ、別に俺、顔とか普通だし、彫りは深いけどさー。
あシャマルさん、お醤油は最後ね、風味飛ぶから」

「家のはやてちゃんはそういうの興味ないみたいで、逆に達馬君がそういう話をしてくれて楽しいわ」

「我が主は立派です、かの末馬妙子様のように将来は立派な女性になられるでしょう」

「リインフォースさん、あんまりほうれん草は絞り過ぎない方がいいよ、繊維崩れるから」

「達馬、私なにすればいいんだよ」

「それ攪拌してください、アイスクリームの舌触りをよくしますから」

「はやて達が家に帰ってくる前に仕上がるのかこれ?」

俺は今、次元世界に何か手続きとかしてるっぽい八神はやてが帰ってくる前に彼ら三人の主に対するプレゼントな料理の手伝いをしている。
何故ヴィータに敬語?それは事実俺の何十倍も長生きしているからだ。
俺は英雄超人の息子としてただの知り合いとして彼等の力添えをしている。

肉じゃがとほうれん草の胡麻和えと焼き魚と味噌汁とごはんとデザートのアイス。
彼ら初心者なので、これぐらいでいい、人数がそれなりだし手間がかかるし、すっごい御馳走なんて、時間がかかりすぎる。

「猫の手?ニャーと泣けばいいのか?」とかそういうレベルだから三人は。
シャマルさんはもっと酷いけど。


結構はやても妙子さん系統である、車椅子で御馳走つくれたし。

リインフォース?うん、何か妙子さんパワーで生き残った。
なんだかんだいいながら、妙子さんは転生TS最強オリ主やってた、というよりも、恐ろしい程有能な親切なお姉さんキャラをやっていた。
闇の書を「ちょっと貸してね?こことここ変みたい、直していい?」とか自転車のパンクを直す気分で闇の書を夜天の書に改修してしまった。
なんでも、パソコンの増設する時、ネジ穴がナメてしまった時よりも簡単だったという。

うははは……何それ?

「………え?」

と原作メンバー諸々が妙子さんの追加の「PGゼータのプラを説明書なしで作るより苦戦しなかった」とか言う発言に呆然としていた。

魔法の知識ゼロで「多分こうやれば治るんじゃない?」とズバッと解決。
なんと生まれて初めてのロストギア級のモノを瞬時に理解し直した。
本当にチートコード入ってるよなーと思う、絶対アンサートーカー内蔵されてるぞ。
インテル入ってるとかそういうレベルじゃない

色んな思惑とか一切無視、そう妙子さんは唯の親切で5分で全てを解決しました。
何時もどおり他人に親切したぐらいの気持ちで。

最早みんな喜ぶよりも呆然とするしかない。

そこで俺の突っ込みが皆を救ったかもしれない。


「バグですからこの人。素直に喜んだ方が気が楽ですよ、ほらほら」

闇の書の主から夜天の書の主にジョグレス進化した八神はやてはいち早く復活した。


「妙子さんってなんなの……?」

「あーあーそういう人だから……この世界が産んだ奇跡のバグキャラ」

「そんなんで納得できるかい!?」

「そんなんで納得しろ!俺はもう諦めた!」



ということがあってから数年。

俺は彼等の苦情を聞きながらいつの間にか彼らと妙子さんのパイプ役をやっていた。
色んな苦労とかを親切で解決されてしまった彼等の愚痴を聞く係りである。

なんか未だに素直に喜べないらしい。

まぁ「環境問題に苦しんでいたら、気づくと地球の隣に新しい地球が出来ていた」とかそんなレベルだからなぁ。



シリアスに泣いたり悲しんだりしていたのに、5分で解決。

某猫姉妹とかはしばらく、混乱したまま部屋に篭ったらしい。


末馬妙子という人は転生TS最強オリ主で原作キャラ救済の結果を引き出してるだけなんだろう。
何かそんな感じ。
何十話も掛けてやることを一発ギャグで終わらせるからな。





[36072] 俺の人生の大体のスタンスが二日で決まった人生気疲れベリーハード 小話追加
Name: みさりつ◆2781aa24 ID:36037864
Date: 2012/12/10 07:30
初日の話。


翠屋でそのままおしゃべりして高町さんのご好意で歓迎会を兼ね夕飯を頂いた。


ヴィヴィオが大好きキャラメルホットミルクの元祖、マジで美味い。
これ飲めただけで、この世に生まれてよかったとか安っぽいこと考えてしまう歓迎会だった。

主人公のなのはちゃんは
何か普通の女の子でカリスマとか孤独感もなく、普通にお母さんに甘えられる少女であった。
俺がちょっと試しで高町家にあった対戦型シューティングゲーム、フォックスで勝負したのだが。

田村ボイス幼女版で可愛くキャッキャと笑う子だった。

滅茶苦茶強かったけど。

タメ攻撃の異常な命中性に末恐ろしさを若干感じざる負えなかった。
がそこは大人。
クセを見極め、大人気なく三連勝利すると

負けたら悔しそうにしてお母さんに抱きつく子だった。

なんだ現実か。



確か過去孤独でそういう人に甘えられることが出来なかったからこそ、強く優しいとかそういう感じの筈だったらしいが。

ま、こんな現実に設定とかこ言うのもあれだ。そんなものこの人生でタンスに足の小指ぶつけたら簡単にブッ飛ぶし。
別に特に興味もでなかったので、普通のお兄さん気分で一緒に遊んだ。



「はい楽しかったわ」

「妙子さんたっくん、またねー」





末馬さんの運転でこれから住む家に向かう。


「車、一生分稼いでるって聞きましたけど普通なんですね」

「そうだね、高い車乗るとぶつかったりすること想像するだけで苦痛だし、でも一応新車だよ」

「いつ買ったんですか……なんか走行距離短いんですけど」

「あんま運転しないし、知り合いの送迎用みたいなもんだし」

「あと俺の為にチャイルドシートっすか、5歳にチャイルドいらんすよ」

「うん、何かテンション上がって、無駄なお金だったね…」

「そういえば稼いだ一生分って幾らぐらいなんですか」

「――――ぐらい」

「いやそれ人の一生分違う、どっかの市の予算ですよ何十年分かわかりませんけど」

スケールがデカすぎる。
てか何故にFIT、この人からすればそこらへんの車なんて食玩買うようなもんだろ、コーヒーについてるやつ。




「はい着いたよ」

「おお、マジで22で3LDKの一軒家……前世の俺だと「ホームレス、家を買う」とかそういうぐらい無理なのに」

前世の俺だとホームセンターで買ったダンボールでダンボールハウス作るぐらいが限界なのに。
月末700円で生活していた俺に謝って欲しい。
前世の俺は普通のインターネットが娯楽の普通の大学生だったし。
毎日の楽しみが風呂上がりのアイスという小市民だ。
あ、ちなみに札幌出身。

「はは、私も変だと思うけど、セキュリティがしっかりした所に住みたくて、建てたんだ」


見上げると其処は、なんか庭とか砂利で敷き詰められた温かみのない白い家だった。
窓とか扉とか壁とか頑丈そうで――――「ねえ末馬さん」

「なに」

「モデルハウスのまんまですよこれ、あと封印されし我が家って感じです」

「何それ?」

「ドアがごつい」

「うんオートロックに改造してもらった、お金いっぱい使ってセキュリティたっぷり」

「セコム入ってますか?」

「それより凄いやつ」


ま、これだけ美人で金あったらそりゃそうか。




玄関を末馬さんが色々な鍵を開けると

速効

ん、不自然なロッカーがあるな。

「開けていいですか、ちょっと気になって…」

「あ、うん」

開けた。


「え、釘バット?」

違うこれ金属釘バットや釘バットちゃう。


まるで金属バットに対する拷問のようにグサグサと釘がうわあああああああああああ。

こわー!?

何この釘バットアイアンメイデン!?


「ここここここななななな」


「ははははは……防犯用」

金属釘バットが普通に専用ロッカーに!?

「素人でも相当強いんだって、一人暮らしする時、妹と兄さんが作ってくれたんだ、正当防衛のためだって。変でしょ?」

「…ひ、はははははは」

こんなものフルスイングされたら、いや掠っただけで顔面に激痛が走るだろう。
リアルに歯とか肉とか血が舞う。
苦いものを飲んだような気分になった。

「しかも軽いやつでさ、なんでも打撃武器だから適当に振ればいいらしいよ、素人は刀が使えなくても金属バットフルスイングする力はあるとか言ってた」

「さわってもいいですか」

「怪我しないでね」

「はい」


うーんと

これ、絶対、多分この人の兄が設計図から起こして作ってるな。
釘バットの適当さがない。
なんかの専用工具で作っている。
釘の打たれている間隔も長さも完璧。
殴ったとき武器が持っていかれないように工夫がされてる。
普通のバットよりもグリップもゴムテープじゃなくて何かで加工されてる、で粘りをだす仕組み。
ゴルフバットのグリップとかテニスラケットのグリップも参考にしてる。
末馬さんの手の大きさに合わしている。
芯もなんか入ってるな。

重さも22歳の女性が振るのに最適にカスタマイズされてる。

まさに末馬妙子専用金属釘バット。

これ拳銃よりも銃刀法違反だぞ、存在が。

「お兄さんの職業は?」

「警察官」

「逆に怖い!?」

傘立てにロッド刺さってるし、どことなく靴用の防水スプレーだと思いきや其れを偽装した催涙スプレーだ、

お兄さんは変質者が家に入ってきたら、これで相手を麻痺させて、金属釘バットでタコ殴りにしろ、と?

アドバイスしてるんだろうなぁ。

あ、スタンガン靴箱にみっけ。


「へんでしょ?」


「ま、そのくらいでいいんじゃないでしょうか」

「そうかな?」




何か帰りたくなった。


ま、他に帰る場所ないけどさ。


「てことでただいまー!!」

俺はまるで前世の家に帰ったように靴を揃えてガキのように家に末馬さんより先に入り。


「おかえりー!」

と笑った、ちょっと口元がヒクつくが。

うんヤケクソ。
だって怖かったし。



「あ、なんか……超嬉しい……ただいまー!」




家の中はうん、普通だった。

寂しい感じがするけど。
寝て起きるだけのような飾りしかないような。
無駄に手作りの刺繍とかぬいぐるみとかいっぱいあるけど。

どれもこれも綺麗で汚れていない。
そしてどれもこれも大切にされている。

ゴテゴテしていない。


末馬さんの精神がよく現れている。

でも家族の写真とかがあって、ま、普通の女性の家かな、と思うことが出来る。
どことなくシンプルイズベストな家具類が目立つが。
幾何学的なシャープさがありました。


とか思っていると。

そのあとに待ち構えていたのが今日最大の試練であった。

お母さんとハジメテのお風呂。


「ねえ末馬さん、お風呂ぐらい一人で入れるよ」

俺は自らの尊厳を守ろうとしている。


「いや、駄目。私ん家始めてでしょ?結構浴槽広めだし、溺れたりしたら困るし、達馬くん背がまだ小さいし。」

あのね、子供が浴槽で溺れて死ぬってことはたまにあるんだよ?
保護者としてそういう放任はしませんよ、と末馬さんは言う。

「じゃ慣れたら一人で」


なんて正論だ。確かに、浴槽ではまだ立っていなければ溺れる身長である。

え、正論か、精神20のクソ生意気な5歳児と精神25+22の謎の妖精が一緒にお風呂入る理由として的確か?


「目の前で着替えるのはやめてください、バスタオルとかつけてください」


「もと男の体だよ、そんな見ても気持ちの良いものじゃないから、大丈夫だって、それに家のお風呂にバスタオルとか洗濯モノ増えるでしょう
そもそも5歳児にそんな警戒するとかどれだけ自意識過剰?って話でしょう?」


過去よりも未来だろ、末馬さん、いつだってこの世界は勝者の歴史だぞ、敗北者は忘れ去られるんだぞ。
意味わからないけどそういう格式張ったこと言って誤魔化して逃げたいぞ、脱衣所に一緒にいるだけで。
俺の過去の体験である、歓楽街でお風呂に入れるという体験が蘇ってくる。
取り敢えず、それだけ綺麗なんだからこの人それ言うと逆に嫌味だが、完全にそう思ってるのかそういう嫌らしさを感じない。
真の貴族が一般市民の前で裸になっても気にしないとか、そういう感じである。
むしろ一般市民である、俺は此処から逃げ出したい訳だ。



「ほら、さっさと脱いでお風呂入ろう、今日もまだ寒かったんだから」


するりと、末馬さんはまず、ジャミラになる。
ようは厚手のセーターを捲り上げ脱ぎ払いました。
うわ、めっさ、お腹白、細。
俺的に準々に捲り上げられるシーンとか好きですね、ほんと。
綺麗だなぁと思うわけですよ、花の蕾が咲き誇るような、蝶の羽化のような美しさ。


おへそ、おへそ、理想的なおへそですよ本当
窄みの部分が擦り切れがない完全なる臍。


まろやか白とへその窄みの芸術品。

何かこれ写真にとって、そのまま写真のコンテだしたら優勝するのではないか?
とか口にだしたら

「そんなことないってーというか変態臭いよー」

「す、すいません!」

「いいよ別に、あと大げさだよ」



胸。

俺別におっぱいマイスターでもなんでもないから特に説明出来ないが
黒い色気のないブラだったが、彼女の体に余計な装飾のブラはいらないな、と俺は思った。




そして黒のパンティを脱ぎ払う。
彼女が脱ぐ時、思わず目をつぶった。
破壊力高いので。
足に柔らかな布切れが通った場面とか。




「あんびりーばぼー」


なんだこれ。





「あはは、その目……でも不思議な視線だね?」

「すいません、つい癖で」

「ま、しょうがないか…こんな体だし。まぁいいから親らしいことさせてよ、折角家族になったんだから」


これ以上の言葉は不要、黄金率である。

不二子ちゃんボディは確かカップはHだったが3カップ少なめのEカップぐらい。
てかそんなもん誤差だし。

ま、ブラのタグ見ればわかるんだけど、そんな変態行為は流石にしない。


エロいというよりも未開の聖地だ。

新雪の肌。

曇りなく白く美しい、陶器のようで、吐息をかけたとしても曇らない汚れぬ美しさ。
人の熱があるための生命を感じる。
乳輪が小さく桜色なので、新雪に桜の花びらが落ちたような美しさ。


ヒュラスとニンフの絵のニンフみたいだな、と拙い美術の知識を思い出す。

淫らさがなく妖艶であるという奇跡である。

透き通る布持って水辺で踊ってくれないかな、とか思ってしまう。


そのままついてって神隠しに遭っても誰も文句言わんぞ。

まぁ俺としてはもう少し、肉つけた方がいいよ、と思う。
エロさあんまり出てない。まぁ矛盾だな、と思う。


という敢えて脳内描写を情緒的にし、俺の20年の過去の穢を封印して頑張っているのだ。
これに脳内に自分に「貴方は将来何をしたいですか」とか考え始めると多分最低な人間をやり始めます、僕。
お腹を空かせた近所のバカ犬みたいに顔が非理性的な感じになります。
ま、現在の体は5歳だから、下腹部の女体ジャイロセンサーが働かない訳だが。



「ほら目が変だよ」

「う、すいません綺麗過ぎてつい」

気にしてないのか、くすくすと笑って、しょうがないなぁ。と風呂場に入っていく。

末馬妙子は堂々としてる「これが私の生き様だ」とか言うカリスマ出しながら。

「足元気をつけてね、ほら、かけ湯かけるから」

そうして、浴槽に洗面機を入れ、ほら、こっち。

手招きでこちらを呼び寄せる。
その指示に従う。

「うんお湯40度だけど、大丈夫、熱くない?」

白い入浴剤で染まったお湯を俺の足元からゆっくりかけ湯をかける。

こころへん心臓の弱い老人が即死するぐらいにドバーっと冷水ぶっかけて欲しいもんである。
丁寧すぎる、普通に総面積少ないんだからダイナミックに頭から洗面機をひっくり返すだけでいいぞ、そっちの方が精神男とお風呂入ってるような気がするし

「ウハハハコイツー俺もー」とか言いながら、あ、ダメだ。


「ん、丁度よいです……ていうか自分でやりますよ」

「なんか楽しくって、ダメかな?
甥っ子と入る時も最近までこうしてあげてたし」

その甥っ子はかけがえのない経験しましたね、逆に一生のトラウマだと思います。
初めて彼女とか出来た時に濡れ場突入しょっぱな彼女の裸みた瞬間「妙子さんと違う」とか思っちゃいますよ、多分。

「いや、ダメとかではないですけど」

「ならいいでしょう。お世話させてよ」


俺が20のままだったらナンテコレ風俗?

ソープもこんな感じだよ


「お湯どうですかー」

「丁度良い」

「はいうがいしてください」

「ガラガラ」


的な光景だが末馬さんそう言って、俺にゆっくりと洗面器でかけ湯をかけてくれる。
まるで母のように、優しく。


「そうか、母体回帰こそ、ソープの真髄なのか」

「うん?ボディソープ?まだ体あったまってないから体洗うの早くない?」

「いえいえ、ちょっと昔のこと思い出して、そうそう母とボディソープ」

「そうだね、お母さんとお風呂なんて子供の時ぐらいだよね、懐かしいよね」

「そうですね、お母さんと同じくらいの人が来ると、一気にテンション下がりますよね」

「へ?」

「あ―――――なんでもないです!末馬さんはチェンジしませんよ!」

「へんなこというね君、ふふ意味わかんない」




あぶねえ。
一気にこの人の好感度下げるとこした。

つうかこの人、人間に初めてあった妖精か!?
普通今の言葉で気づくだろ!?




それはいいや、もう、忘れないと危険だ。


お金持ちの割にあんまり浴槽は大きくない。
いや、ちょっとは広いけど、常識の範囲内だ。
普通の3LDKの家のお風呂だ。
檜とか、予想していたのだが。
温泉引いてるとかさ。

そういう貧弱なお金持ちイメージですが、と聞いてみると。

「お掃除大変だからね、そこまでしないよ。ま、別荘とかは業者入れてるから、別だけど。
自分の家でそんなことしないって。別に私はセレブでもなんでもないよ、ただ持ってるだけ、だから守銭奴。
実家は普通の家だよ、年二回の家族旅行が大きな贅沢な」


別荘もってるのがセレブなのだけれど、この人の言い方ただあるだけだよ?の発言は可笑しい。

それが逆にセレブなんですよね。


「そうなんですか?」

「うん」



「だから私は住む家はま、一人には広すぎるくらいだし」


「なんで月16万で生活してるんですか?リッチには」

「うーんと、RPGでさぁ、よく改造セーブデータあるでしょ?」

「はい」

「お金に対してそんな気分。愛着ないんだ」


ま、その気分はわかりますけどね、初代モンスターファームでいきなりトロカチンEXあると楽しくなくなりますからね。
ポケモンで最初から預けボックスにレベル100のポケモン全種はいっていたらゲンナリしますもんね。



え?


よくよく考えるとおかしくないか、そんな簡単に人間欲を捨てられるか?
普通宝くじあたって一生遊んで暮らしたいとか思うし。
俺だったら改造セーブデータで嬉々として最強プレイします。
チートコード使って遊ぶだろ?人生という長いRPGを楽しむだろ。


「末馬さん」

「はい?」

「遊んで暮らしたことあります、自堕落に」

「そんなことしても楽しくないでしょう?人は生きている限り苦労しながら汗かいて、喉が渇いたら水を飲んで一息つくぐらいでちょうど良いと私は思う。」

あ、この人、聖人認定。

その表現、働いてサウナ入って涼しいビアガーデンでみんなでワイワイ飲むぐらいにしといて欲しい。


そういいながら、自分にかけ湯をかけて。
俺を抱きかかえて。

「はい、入ろう、寒いし」

ちょっ完全に子供扱いかこの人、躊躇が0だぞ。
普通に素肌密着なのに、まるで5歳児をお風呂に入れてあげるお姉さんやってるぞ。


「ふっう、今日は入浴剤は登別の濁り湯にして見ました、ね?結構深いでしょ、ウチの家の」

「色々つっこみたいけれど、ま、いい湯ですね」

「やっぱり、まだまだちっこくて、いいな子供って、よし体もしっかり洗ってあげる」

「いや、だから」

「ね、達馬くん、私はね、子供がずっと欲しかったみたい。前世でもいなかったしね。
なんか凄い、うきうきするんだ、こうしてこれから君の母親になってお世話出来るのが凄い楽しいんだ。
ごめんね、強引なことして。我が儘だけど、お世話させて?」


あんたホントはTSでも何でもないだろ。
なんだその母性的発言。




「嫌ではないんですけど、なんか変な感じです」

マジで風俗みたいな気分になるだけで。
こうして妙齢の女性に抱きかかえられて湯に浸かるのは悪くないぞ。
ていうか、ヘヴンである。

羞恥心と罪悪感が爆発するだけで。
胸の所が頭にあたって、人類最高の湯まくらになってるし。
後頭部にあたるポッチが気になるだけで。
なにもおかしいところはない。
ないのだ。

「うんありがとう、達馬くん。そうだ10歳ぐらいまで一緒にはいろっか?」

「それは勘弁」


流石にそれは肉体的に不味いぜ。
小学5年性だったら生えはじめるし。
欲望だせるようになるし。

「えー」

「ぎゅっと抱きつかないでください」

「うわ、頭ちいさいし、肌すべすべしてるね、髪も細いし、うわー和むなぁ、始めて見たときから小さくて可愛いなって思ってたんだよね
知り合いの子とか甥っ子姪っ子とか見る気分じゃなくて、この子を私が育てるんだって思った瞬間、ぽわって胸が暖かくなる感じかな?」

「首元に息が掛かって、変な気分になります」

「恥ずかしがるなよー。我が息子ー」

「あんた初日でこれとかどんだけガード甘いんだ」

「ん、変?新しく出来た5歳の子供を可愛がる親として変かな?」

「変ではないですけど」

「じゃあいいでしょう?」

自分をぎゅうと抱きかかえて、くすくす、と笑う。

うむ、なんか複雑である。

俺が俺じゃなくてもこの人ならどんな子供でも引き取っただろうな。と思って若干ジェラシーを感じる。

はぁ、この人心配になるぐらい、愛情に溢れてるな。
初対面のクソガキをそういう風に思う。
いちいち全てに置いて優しい感じがするぞ。
生粋の面倒見の良いお姉さんな感じである。
俺がもしのび太くんだったら、ジャイアンにいじめられたら。ドラえもんじゃなくてこの人の胸に飛び込むぞ。




「どうしたの?」

「ほんとに俺で良かったんですか?中身20ですよ俺」

「お風呂まで入って今更?あんま気にならないし、別に20の男性の体ってわけじゃないでしょ?
自分が5歳の体って本当に分かってる?私は君の大先輩なのだよ?そういうなら、肉体は女でも君は中身40越えの男を母親にしてるんだよ?」



「確かに!?―――いや違いますよ」


「違わないよ、仲間だよ、同じ境遇のかけがえのない。ほら姉弟みたいなもんでしょ?」

「そうですか?」

「そうだって」



「俺昔綺麗なら大抵エロイ気分になれました」


とは言わなかった。

それ言うと、多分この人怒るし。
うん、いっちゃだめ。






ちゅうかこの人、俺が某掲示板投稿サイトの×××版の催淫能力持ちの性欲凛々のボキッボキ5歳児だったら真っ先に食われてるぞ。

ま、そんなことされたら孤独感に悩んでいたこの人は―――完膚なきまでに壊れるな。



「はーい上がるよ」

「あ、ありがとうございます」

「まずは体洗うよー、はい、両手を上げてー」

「はい」




依存のような愛情ではなく、包み込むような圧倒的な母性での包容力。
今日から君のお母さんね、でいきなり此処まで俺を子供扱いするとか、すごすぎる。


コショコショとタオルで俺の体を洗いながら、妙子さんは言う。
アカスリじゃなくて、タオル、分かる?

綺麗なおねいさんに柔らかいタオルでじっくり優しく洗われる、うん王様気分。

「あれだ、人間やっぱり見た目だよね?」

「え?」

「君がハゲでデブで鼻から口から液体垂れ流しの悪臭がするおっさんみたいな5歳児だったら引き取らなかったよ?―――流石にそれは身の危険を感じるし」

「そんな5歳児いてたまるか」


そして彼女は俺の体を丁寧に洗いながら言うのだ。


「まぁ君がもし、変質者、痴漢とかするゲス野郎みたいな奴だったらそれなりの対応を取るぐらいは……私はまともだよ?
んーとね、大体は君の為人を見て――気に入ったから引き取ったわけだ、例えば、そう、気に入ったのは、最初から自分が気持ち悪い存在だと思っているところとか」




「ん?」

そりゃ不自然だろ?


「一切、君は自分のこの世界の両親を恨んでいない、見た限りだと少しは悲しいとか思ってるだけでしょ?」


「ま、そうですね」

「捨てられたのに?」

「そうです」

「私が君の親だったら捨てないよ?」

聖人ですから貴方は。

「しょうがないでしょう、気持ち悪いものは気持ち悪い、誰だってそうです。しょうがないですよ」

普通の赤ちゃんである無垢な生命が、汚れてたんだぞ俺という存在で。

だってそうだろ、俺が親の立場だったら嫌だし。
むしろ5歳まで最低限度面倒みてくれただけで彼等は良い人達だと思う。
彼等の人生に一生気分が悪くなる、傷をのこしたんだから。

俺は―――彼らにゴミ箱に捨てられても良かった。

この生は罪悪感だけで生きてきた。

ま、運が悪いとしかいいようがないけど。
俺は転生者なんてやるつもりで生まれてきた訳でもないし。

悲しいだけだ、そういう不幸が。

末馬さんぐらい聖人だったら別な話だ。

でも俺は俺だからなぁ、そういうの無理だしなぁ


「素直にそう言う、そういうところが気に入ったんだ―――このお人好し。君見たいな人は誰だって好きになるよ?」



うんうん、と末馬さんは笑顔を浮かべ頷く。

そう、なのだろうか?




「ね、家族ごっこと思えばいいんじゃないかな?」


「そうですかね?」

「私はそれなりに人に対する警戒心は強いよ?……だって、誰よりも嘘つきな人生を今生きてるんだから、他人の嘘なんて簡単に見破れる。
なんていうのかな、私は私に対する悪意に敏感だしね、だから、こうして自分で自分の舌を噛んで死なずに生きてこれたんだ」


「舌?」


「ああ、それはそうでしょう?誰かに私が女としてレイプされれば、舌噛んで死ぬよ、私は、絶対死ぬ自信がある。
その場で出来なくてもそうなったら、もう生きる自信ないね、もう瞬時に突発的に自分の喉を裂くぐらいはやるよ」

「………」

「脅しすぎた?」

「怖いです」


「あはは、ごめんね、マジで私はね、男とか女とかそういうのが無理なんだよ?……ああ、反吐が出る」


「う…わ」

反吐が出ると言った瞬間、ここから逃げ出したいと思った。
足先から全身に悪寒が走った。


「だから、君は私の息子としてお世話されてね?ムスコがお世話になりました、とかやめてね?」


「下ネタかっ!」


「うわ、突っ込みうまいね、元芸人?じゃないよね?」

「なわけないでしょう」

「よかったー君が良い子で」

「こええ。この人」

「ごめんね怖がらせて」

「恐怖体験でした」


なんという闇だろうか。
ストレスの塊である。

「そりゃ怖くもなるさ、ずっと一人きりだったし、だから必死に生きてた」

そう泣きそうな表情で笑う姿は純粋にああ、綺麗だった。

「必死って?」

「私は誰よりも正しくないからこそ、正しくあるってね……まぁなるべく、無理なものは無理だけど」


惚れそうなほど。

そして気づいた。

俺だけは彼女の「男」を否定してはいけないな、と思った。
それは彼女の存在の全否定だ。
此処まで現在進行形で苦しんでいる彼女に言ってはいけないことだ。



てかめんどいね。

人間ついてないかついてるかとかもうどうでもいいじゃん。
気持ち良くて楽しけりゃ、その日その日を生きれれば、いうことなし。

誠実にそこまで真剣に生きなくてもいいだろう。




とか思ってるとタオルが俺の股下に入った直後。


「そういえばおちん○んちっさいねぇ。まだ剥けてないね?」

おい!?

「いや、タンマ!それセクハラ!」

「わはは、そのポークビッツをその股の下に挟んだら?女の子になるよね、前世子供の時よくやったよ。フハハ!もう!私はできない!」


何を思ったか、凄い羨ましそうな、目で俺の局部を見て、イジり始める。

痴女か、この人。

TSして女で。

凄いそれが嫌で、俺が羨ましいのがわかるが。

そんな、なんてハレンチな。

ポークビッツて

「やめろおおおおおお!」

「くくっ。よく見るの久しぶり、相変わらず間抜けな物体だね、あと心臓が生えてるみたいに無防備。
どれどれ、我が息子のムスコさんは……ウチの甥っ子(7歳)よりもちっさいね。」

やっぱり下ネタ言うときは普通に下品ですね。
その透明ボイスで言われると普通に屈辱です。

ちっさい言うな。
男に言ってはいけないNGワードで男の誇りを埃にするぞその言葉。

何故か逃げれない。
それなりにパワーあるのに。
くそ、重さがないから、純粋に押し負ける。

「タンマ!タンマ!」

「あはは、タマタマだけにタンマ?達馬くんはワハハハっ馬鹿だなー!」

「馬鹿あんただろ!?」

「人に向かって馬鹿とはなんだ馬鹿とはうははは」

「なんだこのハイテンション!?」

「楽しみにしてたんだもん!子供!子供だけが信用できるんすわー」

「ちょやめてー!羞恥プレイだよこれ!?つうか末馬さんその見た目で言うと破壊力!?」

「はははっ見た目がなにさ、人は所詮見た目だよ!」

「そのまんまじゃん!?」

洒落にならんぞこの人。

「お姉さんが教えてア・ゲ・ル?」

とかそういう名言がクリティカルで出せる人間だぞこの人は。
あざといぜ、眼鏡を外して、素顔。
湯気でその肢体にしっとりと垂れていて色っぽさ、ドン。


「5歳児が何を言ってるの、くく、ほらしっかり座りなさい、うんしょと、しっかり洗わないと皮膚病になるよ「やーめてゆびぃ!」


「あ」











「あ、ああ……」







うわ、俺最低だ、俺悪くないのに。

涙出てくる。


「きゃああああああああああ!」

「悲鳴女らしっ!?」


そのあと、俺が「屈辱だ……」とグズついたので「ごめんごめんごめん!」と謝罪された。


「5歳でも大きくなるんだね―――え、そうだっけ?」

「うん……」

「スグちっさくなったけど、大丈夫?折れたりしてない?洗っただけで勃つものだっけ?うわ、すごいね昔コレ私にも付いてたんだ」

「全てあんたの所為だ!折れるいうな!身の毛がよだつわ!」

「え、ごめん」

この人素でやってんのかマジで?
あざとい、あざとすぎる。


「それ、素……?ですか?」


と聞いてみます、俺をからかってんのか。と。


「え?なになに?ソレスタルビーイング?」


「この天然エロテロリスト!」



そういえばガンダム好きだったって言ってたな!?

それ素?
からのソレスタルビーイングとか

末馬さんはマジで天然である。

この人は裏表がない。


別に産んだわけでもないし、血も繋がってない子どもを無償で育てるとか。

この人こそ正真正銘のお人好しだろう。


俺みたいな偽物のガキに愛情をくれるんだ。
丁寧に今も、髪を洗ってくれている。
凄い優しい手つきで

「はーい、目を閉じてね、流すよー」

「あ、はい」

大体ずっとこんな感じだし。







「この浴槽に快入だ。」

「つまんないですよ、それ」

「これは戦争を浴槽と「いいですから」介入だ!「いいですから」えー」





単純そうで物凄く複雑な人だ。




うん、好きになった。
それが親愛か情愛かわからんが。


だって精通してないし。




この人を俺は死んでも裏切らない、そして悲しませたくないな。


「ねえ一緒に寝よう」

「えーやですよ」

「私は気にしないよ?」

「俺が気にするんですって」

「ま、布団ひと組しかないから私が君を抱いて寝るしかないんだけど」

「チャイルドシート買うとき買っとけ!」

「え、そういうのは君の好みも大事だし」

「なんで最初から一緒に寝る方向に落ち着くの……え、俺がおかしいの?」

「うん」


という先日寝るまで気まずい思いをしたことがあったが。



末馬さんの子供になった俺はそのまま彼女の手を引かれ、某家具屋に向かった。

まぁ気まずいのは俺だけ。

俺を落ち込ませたのも謝ってくれた

セクハラ禁止令も約束してくれた。

ちなみに、甥っ子にも似たようなことをやって、今のお兄さんに怒られたことがあるらしい。
悪意の無い純粋な興味、というよりも、懐かしさで人の局部を触ったわけだ。

「何それ怖い」

と口に出しても変わらない、それは事実。
ヘタをすると、普通のエッチなお姉さんだ。
あれ、全然おかしくないよ、むしろ男の理想だよ。
で、末馬さんは全く気にしていないのが腹が立つ。

この人完全に5歳のミニマムサイズを見て、見た目で判断している。
女の子の赤ちゃんの裸なんて見ても興奮はしない。
とかそんな感じなのだろう。
オムツを変えたような気分だったのだろう。
だが、あれはほぼボディソープを使った手――――やめよう。






なんか女性の買い物に付き合ったような疲れを感じる、長い買い物だった。
まぁそうなんだけども。

「全部水玉でいいよ、末馬さん」

「駄目、えーと達馬くんは白い部屋だから、これとかいいね」

布団、カーテン、枕カバーとかバスタオルとか、布系を今日は揃えたいそうで、1時間ぐらい二○リを歩かさせられた。
ベッドとか学習机はキチンとしたものを考えているらしく、帰ったら、パソコンで見ようね、と大変楽しそうである。


それはいいのだが。
自分のことじゃないのに、本当に楽しそうだな。
案外この人、保育士とか向いてるだろ。
いちいち、お腹はすいてる?喉渇いた?おんぶしようか?とかうん、俺じゃなかったら、甘えまくりですよ?


「手ぇつながなくていいよ、末馬さん」

「次はコップ、うん、達馬くんは赤かな、私は真っ黒だし、洗面所のコントラスト的にこれかな?
はいはい逃げちゃダメ、店員さんが困るよ、一人で5歳児がふらふらしてると迷子扱いだよ?」

「でも手」

「お母さんみたいなことさせてよー」


どうせ……私じゃ本物は無理なんだから

とか思ってるよ、この人。

ああ、こういうところ鬱々としてるんだな。

人間は見た目だとか言う割に、自分の内面で苦しんでいる。
他人に誰よりも優しく自分に誰よりも厳しい。
俺の場合見た目100の扱いをするし。



ああ、そうか、違うか、結局俺が本当の5歳児だったら、彼女は救われていたかもしれない。
普通の子供一人をお母さんとして立派に育てられたら、多分女の自分を許せるようになったのかもしれん。
もしくわ、俺がTS転生者だったら、イケたかもしれん。
女から男の方のTS転生者だったら。


この人聖女なんだから開き直れないというか、そもそも黙ってれば一生バレないだろうに。
アホみたいに金持ってるくせに、ドバドバ使わないのもそういうところがあるか。

ずるしてるから、使わない、とか。

お金さえも信用していない。


「なに、その目?」

「いやあ。めんどい人だなーと思って、妙子さんはめんどいですね」

「そうかなー?」

「いやそうだって」

「妙子さんって呼んでくれるんだ?お母さんは?」

「俺はたっくんでいいですよ、ちょっとまだハズいのでお母さん呼びは待ってください」

「いいよ……ん、じゃあたっくんね」


俺は思う。

この人を救う。


つうか惚れたし。


人間見た目なんだろ、なら可愛くて、綺麗なおねえさんだ、絶対惚れるわ。


「てか普通俺が黒「はい?」

「それ小学校、赤ランドセル「はいはい俺赤にしますよ」


トラウマ多いっ!




あとがき



しばらく、とらは版移動見合わせ


たっくん


聖女というか鉄人の息子という苦難を背負うが若干Mなのでむしろ楽しんでいる節がある。

和菓子能力はどうでもいい人に和菓子を上げて、末馬妙子の料理を最大に味わうために使う。
末馬家の番犬、聖人にはなれないので、騎士になるために成長していく。


ま、親が親なら子も子。

末馬妙子に乱立するフラグブレイカーをやる。

そのせいでヒーローになっていく。
どんな悪党や正義の味方の横に立っても問題がない。

適当なこといっても殺されないタイプ。

なぁなぁ系に物事を納める感じ。

バカキャラ。


「めんどくさい人間は一人十分」とフラグ臭を感じ取ると逃げる。

アリサあたりにマザコンと言われるが

「あんな人間好かない人間いないぞ多分、好かないのは心に悪意があるぞひねくれているぞ」

「そうね、そうよね。私も助けてもらった時、ヒーローが来たと思ったし、鉄人だったけど」




「鉄人だよなー」

「アンタも似てきてるけどね、その鉄人具合、毎朝一緒に走ってるんでしょ?10キロ」


故に一般的にモテる青年になる。

余裕がない妙子と違い余裕がある。

でも学業の面で妙子に怒られる事多し。

「もう少し真面目にやりなよー」

「えー小学校の夏休みの日記なんて適当でいいですよ、怒られない程度で」

「工作ももっといい物作れるでしょう?協力するからもっといい物作ろうよ」

「妙子さんに協力されると、売り物できるからやです、紙粘土で俺はペン立て作ります普通の絵の具で色塗ります」

「えーえーえー」

「なんですか」

「折角色々買ってきたのに」

「いや、HARDER&STEENBECKの最高級エアブラシとか小学生の工作に使いませんから、それアートですから。
そんな大きな木材とかいらないですから、小学校に家具作って持ってくとか大変ですから胡桃材とかいらないですから」

「えー」

「じゃあ俺が横で作ってる間それ使って俺に何か適当に作ってください」

「よし!」

「あ」

変なやる気にスイッチを入れてしまった。

なんか凄い本棚とか作られるな、これ。


もう十分いっぱいあるんだよな。

妙子さん説得してなんとかしてヤフオクに出品しよう。

でもなぁ売っても結局妙子さんのお金が無意味に増えるだけだなぁ、人にあげるの癪だし。

また俺が本来いくはずだった施設とかに寄付するか。

うん。



末馬妙子

モンスターペアレントにはならない親バカ。

よく暴走しまくり見境なく事件を解決して老若男女に対しフラグを立てる。

実は原作キャラの不幸を吸い取っている。

だが憧れを背負う。

だからなのはちゃんは歪なく誰かに何かを重ねた優しさを持たない
憧れが源泉の優しさ。

とかそういう風に仲良くいきていきます。

一生母と息子エンドやりかねないですが達馬は一生を掛けていつか妙子を救うでしょう。

いつでもどこでも希望エンドが出来る話。

原作キャラの誰かが妙子に対し粘着とかない。
達馬がいるので。
原作キャラにモテモテの転生TSオリ主にはならない

ただのバグキャラやるだけ。

みさりつでした。


小学校の話追加



「ねえたっくん、将来の夢って授業あったでしょ?アリサちゃんが言ってたよ適当すぎるってあと学校の放課後の掃除真面目にやらないって」

「あ、アリバの奴相変わらず逐一妙子さんに俺の悪行を報告してやがる」

「アリバって……また蹴られるよ」

「次はスネにダンボールの切れ端いれときます」

「おなかに雑誌入れるヤクザじゃないんだから」


たっくんまっくんの「ま」はマザコンの「ま」みたいな感じのこと言われたような言われてないような反撃に
アリサ・バニングス略してアリバ。

最初文句言われたから「アラビアの貴族、そして貴婦人のような渾名だ」と言って

普通に蹴られた。

故に、蹴られた脛に青タンが出来たので逆恨みで時たまアリバと呼称している。
あいつなんか「男子も真面目に歌いなさいよー」とか思い出されるのでついついからかってしまうのだ。
そしてよく俺の母にアリサが報告し俺が怒られる。

100%俺が悪い。

てか俺非常連絡用の携帯持ってるけどアリバのアドも番号も入っていないが妙子さんの方には入っている。
俺の携帯は翠屋とか妙子さんの職場と妙子さんしか入っていない。
鉄人暴走モード封印用もしくはヒーローを呼ぶ万能ガジェットとなっている。

「アリサちゃんから聞いたんだけど、夢適当すぎない?」

「一日8時間労働週休二日有給あり残業なし残業手当ありボーナス年二回の雇用保険毎年昇給退職金ありで生涯働ける場所あと天下り先ありの職業で当てはまるのが多い職場」

「大卒の直後じゃないんだから、もっと夢もってよ、折角若返ったんだから」

「下手なこというと妙子さんに全力バックアップされ叶ってしまうのが恐ろしいのである」

「口に出てるよ、あと私は自分の力で叶うなら自分で叶えて欲しいと思うよ、だからさ、好きな夢を言っても良いよ、応援はするけど、背中を押すぐらい」

その応援が大したことがなくても
クリティカルで神を切っちゃうチェンソーみたいなところがありますけどね。

ロケットブースター妙子に背中押されて宇宙に飛び出してしまうしなぁ

えーと夢ねぇ

正直言うと妙子さんのヒモになってしまう。
一生妙子さんとラブラブしつつ平和に幸せを生きるとかね。

「あ」

「なに?」

「最後に幸せだったなぁーって死ぬ、それでいいわ、ぐだぐだ考えるの性に合わないし」

前回途中で終わったし。
ちぃ下手に前世の記憶なんて残ってるからやり残しも残ってる。
てかかなりそれって難しいよなぁと思う。
孫に囲まれて大往生とか、そういう系。


「たっくん………」

え、妙子さんの目から滂沱の涙がっ!?

ええ俺が悪いの!?





[36072] IFもしも彼女と彼が逆だったら(15禁)大変下品なメタギャグ 小話追加
Name: みさりつ◆2781aa24 ID:36037864
Date: 2012/12/12 06:25
もしも彼らが逆だったら【メタギャグ】

残念脳筋美女編。









「達子さんの初恋って誰なんですか?」

「タカくん……それを此処で聞かないでくれ、あとで教えるから、ストップ―――気まずい」

あれは正真正銘の黒歴史だからやめてくれ。
タカくん相変わらず空気読めないというか空気を知らずに別次元に叩き込むのな!?
一気にブワという汗腺が開き、冷や汗が出てくるのが止まらない。

翠屋も閉店で、従業員とタダ飯食らいに来た末馬達子以外居ない空気が

ピシリ


と確かに切り替わった気がする。



「なんでですか?」

「だから、あとで話すからやめてくれ!」

桃子さんの視線がキツいからやめてくれマジで!

「ひぃ――――おいタカくんちょっとお姉さんと今からラブホテル往こうか!」

「は?」

「え?」


優しそうなのに、こえぇ。
菩薩様がブチ切れたとかそういうの。
蜘蛛の糸を伝って登る私の精神を容赦なく地獄に叩き落とすようなそんな感じである。
おい、高町士郎、最初に人のモノなら顔に「桃子さんの」とかマジックで書いておいてくれ。
100%私が悪いんですけどね。
てか私のハジメテ(敗北)を奪って置きながら、もの凄いカッコ良いこと言って、敗北と一緒に恋心植え付けたのお前だろが!
例の原作の大怪我もしくは死因の原因を私が代わりに全部受け止めたんだから、助けてくれ。
お前は悪くない、ハイソウデス悪くないけども、少女(笑)の初恋ハンティングしたなら責任とってくれ!
所詮TSしてパワーが巡洋艦な馬鹿なんですけど!

まあ私が悪いんですけどね!?

人の旦那に手を出そうとしたのだからしょうがないが、寒気がするから此処から逃げたい、外は雪だけど。

と達子は心底思った。


海鳴の翠屋でウェイトレスをしている末馬達子25歳はある日、同じ転生者であり
高町家に引き取られた少年、高町高雄8歳にそんな疑問を掛けられて戸惑った。


そして戸惑い過ぎて意味が相当酷いことを言った。



「達子さんタカくんは8歳ですよ?」


「ハハハハハハハスイマセンジョウダンデス」


「僕は構いませんよ?」


うもう、天然坊主タカくんめぇらめぇひぎぃ!?
惚れたよ惚れた!
はいはいだから君も便乗して冗談言わないで―――原作知識なし転生オリ主くん!?
よし君が最強だっ!
来年ジェルシード探索一日で終わらせる権利をあげるからっ!
何げにテンプレで高町家にナチュラルで原作知識なしで拾って貰うファンタジスタだしね!

ファンタジーじゃなくて私はリアルに今死にそうだからっ!



「達子さん?」


「あ、あああああああもう土下座した方がいいですか!?私!」


私の事を友達とは言ってくれるけど未だに過去にやった夫を寝取ろうとした私の18の時の罪をまだ未だに許してくれない。

でも桃子さんのオムライス美味しいなぁっもう!?

「ぶっちゃけ男でも女でも私イケますから!じゃあ桃子さん私とラブホ行きましょう!私見た目よければ大抵エロい気分になれますし!」

「おい、なに、を言ってるのかな、末馬―――ころすぞ」

今度は士郎に睨まれた。
正真正銘人殺せる眼で。

「ハハハハハすいやせんでしたっ!」

私は席を立ち、すみやかに土下座した―――床が冷たかった。
涙が出そうだった、混乱して両刀淫乱女(処女)であることを告白してしまうとは。
しかも小太刀二刀流とかワロスな元初恋兼元仕事仲間とタカくん8歳にバレるとは。


ていうか泣いた。





二人に説教されている末馬達子、それを高町高雄は見て思った。


「この人、本当に残念な人だな」と。

容姿と言動が揃って異世界に泣き別れしてる。


でも自分に正直で楽しい人だな、と両親に捨てられ、施設に入れられ施設から逃げ出し彷徨った挙句高町家に引き取って貰った少年は笑った。
こういう人って誰からも好かれるし、いいな。
ちょっと嫉妬さえも思ってしまうと心の底で思った。



高町高雄8歳は転生者のテンプレを見事に原作を知らずに踏んでいた。
そして14で31歳の達子に酔っ払って逆レイプされる未来が待っている少年だった。


あれ、逆にしても相当美味しい気がする。






もしも彼らが逆だったら。


ある日達子は妹を一人で焼肉行くのが虚しいという理由で誘い肉を焼いていた。

若干セコイので肉の消費量ワリカンを敢行している。

「達姉さんの奢りよね勿論、ていうか一人で焼肉行きたくなかったら家で一人で肉焼いて食べればいいじゃない」

「勿論ワリカンだ、あと肉焼くと部屋臭くなるからヤダ。レオパああいうのうるさいし、ていうかたまには奢れ」

「やですよ姉さん、ていうかなんで高校生が22の姉に奢らないといけないのよ。あ、いつもの変な手品やってよ箸休めで」

「はいどうぞ。ていうか美里が食べたら私のお腹がへるだろ。折角、肉一割米九割で腹いっぱいにしてんのに」

「私誘われ側だし、奢られるに決まってるじゃない、あ、スイマセーン冷麺ください」

「やめてまじで今金ないんだから」

「そもそも金がないのに焼肉誘うな」

末馬達子22歳は今現在、戦闘屋という特殊な職業をやっていた。
馬鹿なんだから大学入ってもっと勉強しろと言われ、両親のご好意で私大を通わせて貰える筈だったのに、高校中退し、縁を切られかけた正真正銘の馬鹿である。

現在は海鳴で手元にある程度金がなくなるまでその日暮らし、なくなったらとある剣士の紹介で海外で出稼ぎするつもりだった。

住居はマンスリーマンションのいつでも引き払える所に構えている。

だが最近、面白い友人が出来たので、しばらく引越しのアルバイトと翠屋のウェイトレスでもやって海鳴での生活を続けようと考えていた。

完全人力和菓子工場だよなぁ、と思いながら、今日も自分の右手から和菓子であるおはぎを出して焼肉のタレ用の小皿に載せる。

「いつ見ても魔法よねーなんでこんな面白いの黙ってたのよ、こんな面白能力、ていうか和菓子職人でもやれば?」

もごもぐと私の手から出された和菓子を食べていく妹、美里。

「味が私の貧相な味覚のせいかスーパーに売っている和菓子の域を越えないから無理」

「本当に金困ったとき便利って言ってたよね」

「うん海外の路上で腹ヘリで死にそうになりながらよくこれ販売してる。ぶっちゃけイタチごっこに近い」

ある日、私が無意味に暇つぶしでこの能力で和菓子を出してもぐもぐやっているのが妹に目撃された。

しょうがないから妹限定に全てをバラした、いやバラさざるを得なかった。

私の過去の悪行を警察官である兄(超厳しい)にバラされたくなかったら全て吐けと。

ちなみに謎の身体能力は元々家族全員にバレていた。
私馬鹿だから隠すとかそういうのできないし。


その時


「なんか前世の記憶が6歳の時に蘇ってそして」

「おい嘘つくなよ馬鹿姉」


妹は全く信じてくれなかった。


「嘘じゃないって、ほんとだって。ほらほら和菓子手からポンポンでてくるだろ?こんなの出来るならおかしくないだろ」

と説得するハメになった。

その時の妹の発言が耳に痛かった。

前回20年間生きているのになんでそんなに人間出来てないというか馬鹿なの?と言われる始末。
ていうか前世の記憶がなかったらもっと馬鹿だったんじゃないかとまで言われ、私は落ち込んだ。


「残念美女よね姉さんは、でも容姿に釣られて来る男多いよねそういえば達姉まだ初体験やってないの?」

「うるさいなーまだだよ、てか顔とかスタイルだけ見て性欲処理目的の野郎とかにこの純潔散らすつもりはない」

「まぁ姉さんの容姿には惚れるけど、バカっぽい性格に惚れる強者はいないからね」

処女膜はないけど性体験0の末馬達子である。

興味本位で弄りすぎて破ってしまったという恥ずかしい過去があるのだ。

達子の処女を奪った相手はエログッズ専門店で買った模型。


どうなのかな、と試したら破れた。

「しまったぁああああああ!?調子に乗りすぎたぁあああ!?」

間抜けである。

その後数日凹んだという。


「ふーんでも実際どうなの男と比べてその……」

「でるもんでないから前回より自慰は長く果てしない、と言っておく。てか16の癖にそんなこと聞くな18禁だよ」

「はいはい自家発電大好きだもんね、存在が18禁の淫乱な姉さん?」

「何故知っている!?」

「姉さん声デカいもん……ちなみに兄貴にも聞こえたと思うよ」

「え、は……え…マジで!?」

取り敢えずみさくら語とか言ったりして「らめぇえええ」とか遊んだし。
さーっと血の気が引いた。

「うっそー、だって達姉が二階の子供部屋にそういう音漏らし始めたの
兄さんが警察学校行ってそのまま実家に帰らず一人暮らし始めた時でしょ?」

でもコイツに私の変態ボイス丸聞こえか!?
自分で録音してみたりとかやったし。

「妹にオ「姉さんお下品」バレるとは……情けな、前世で母ちゃんにエロ本と使用済みティッシュ入ったゴミ箱並べて置かれたぐらい情けない」

ていうか相変わらず発情期のサルのような姉だな。
まぁ一応初体験にはロマンを求めているみたいだが。
そこが逆に男らしい。
女なんて正直そんなにこだわりないのに。
多分前世で処女信仰してたな、こいつ、と美里は思った。

「恋とかしないの?」

「はぁ?」

「だから恋愛はどうなのよ?」

「そんな腹膨れないものより、私は生活が気になるし。てかどいつもこいつも欲望透けて見えんの、まじで、あのクソ野郎みたいに」

「ああ、従兄弟のアレね、正直、襲われたのが姉さんで良かった。私だったら姉さんみたいに出来ないもの」

「そうだね、私みたいに二度と種でないようにするなんて、美里に出来ないもんな。
ほんと美里が襲われなくて良かった。知ってる?あのクソ野郎、私が口にする食物に「だから下品だって」混入させてたんだよ?
そりゃあ、そんなに種が大好きなハムスター野郎はその薄汚い「下品だって」割るべきだね、自分で食えよという話」

「だから姉さんお下品だって……食欲なくなる」

「そういう話を持ってくるから悪い、むしろ食欲なくなって金浮かせ」


達子はカルビ一枚でご飯茶碗半分を減らした。

この姉は肉一枚でどんだけご飯食べるのか、と美里はイラっと来た。

「あと襲おうとして来た瞬間ボコボコにしてズボン脱がして写真撮って靴であれ踏みながら、今まで何してきたか吐かせたんだけど、マジでぶっ殺したくなったね。
マジで。美里も、もう少し育ってたらあいつの射せ、もとい射程範囲内だったぞ」

「うわ、ぞっとした、ていうか下手したら姉さんそれご褒美だよ?」

「そのままアレ食わされたと聞いて踏み潰したから、現実問題ご褒美にはならん」

ふふははは、と達子は笑った。
相当残酷な笑みである。


でも達子の妹である美里は思う、だが姉はそのあとその男、ゲスな従兄弟を親戚類近所の人間に従兄弟が大変なんだと言って呼び出して、みんなが集まったところで
従兄弟のズボン、パンツを脱がしたまんま引きずり凡ゆる悪行の証拠類をさらけ出したという鬼だったと。

しかも警察とかに通報していた。

そのままそのゲスは病院に救急車で搬送され二度と末馬の家に戻れなかった。
一人の男の人生を色んな意味で終わらせた女傑として近所周辺に知らしめたのだ。

それまではなんとか化粧とかお洒落をして女っぽく振舞おうと頑張っていたようだが、そこから達子の人生が可笑しくなった。

それから達子はイライラする日が続いた。

男の無意味な2億の遺伝子殺傷趣味のカスを食わされ、生理的嫌悪よりも、それが入ったモノを美味しそうに食べていた自分が許せなかったのだ。




「イライラとしてそのまま都市伝説になるなんてアホよね、なんだっけ「バカボンのお面女」だっけ、もう少しマシな覆面なかったの?」

「あれは爽快だった、むしろ、一生ああいうのでお金稼ぎたいと思うぐらい」

「実際今そういう仕事なんだっけ?」

「うん、人殴ってナンボの商売やってる、でも士郎さんが持ってくる仕事、護衛ばっかりでつまんない」

わらわらと犯罪者こないから、めんどい。


と言う姉に妹は次の疑問を投げかける。

「そんな面倒臭がりの脳筋姉さんは負けたことあるんでしょ?喧嘩」

「高町士郎っていう妻子持ちの人に負けたよ、完敗だった」

多分人類最強の身体能力を持ち、私は火鉈とか平和島静雄とか哀川潤ぐらい強いと達子は思っていた。

だが。

「士郎さんねぇ、そういえば姉さんの女の初恋って士郎さんっていう人だよね、どんな人?あと妻子持ちって」

「男が惚れる男、この私を瞬殺した小太刀二刀流の達人、まじ強かった、あれだ、表面硬くしていても、装甲抜かれたら終わりだね」

衝撃を中に通すとかマジであの頃調子にノリに乗っていた達子の天敵だった。
その時、内蔵の痛みと共に悟った「私、九鬼流の人とかにも勝てないな」とかどうでもいいことを。
そして努力せず、己の性能だけで好き勝手やっていた。
真面目じゃなかった、と。
ていうか真面目にやったらもっと馬鹿だし。
まぁただ殴っているのにさも特殊な拳法使えるかのように振舞ったこともあったが。


「そんなに強い人なの?」

「ま、次は油断しないから負けないけどね」

初動のギアチェンジミスで負けたのだ、次は最初から肉体を強化すれば負けない筈だ、と思う。
神速にだって追従できるし。

「姉さんそれ敗北フラグだよ?」

「今思った、まぁ…あの人との出会いは18だったな、あの人の御蔭でこうして毎日楽しいし人生の恩人だね」


14の時から何処か女の人生がしょっぱなから汚れた気がして達子はイライラしていた。
しょうがないから女として生きよう。
とそれまで一生懸命努力していたのに滅茶苦茶にされた、とか考えたわけだ。

達子は結構精神的に安定しなかった。


そして運命の女神は悪戯である。

そんな時期にある暴走族の大集会が達子の住んでいた街で夜中に行われたのだ。
精神が安定していないせいか、身体能力強化の能力のギアチェンジが上手く出来ず暴走し困っていた。
そのせいで聴覚が強化され、大音量で外の騒音が響き、イラっとした。
丁度、生理も始まり「私は女でしかない」と知らされ、イラっとしていた。


「寝れるかぁっ!」

そして思ったのだ。

マジうぜえ迷惑だからアイツ等ボコりに行こうと。

おもむろに夜中布団から抜け出すと、達子は適当に動きやすい服に着替え、手に「うわこれDAIGOの手袋そっくり、安い、お、買っとこう」と買った手袋をつけ
丁度夏祭りで買ったバカボンのお面を顔にかぶり。

家族にバレぬように抜き足差し足、ドアも慎重に開け閉めして。

夜中一人外に飛び出した。

現実逃避気味のストレス発散行為として暴力という手段が芽生えた。


ああいう奴らってどうせ女レイプしてビデオ撮ったりすんだろ?
じゃあ、私みたいな最悪気分を味わった被害者の変わりに私が天罰食らわせてやる、とか自分勝手な正義という名の暴力を発動した。


うん、どう見ても完璧に八つ当たりです本当にありがとうございました。

ある暴走族の全国集会が一人の馬鹿によって粉砕された大事件である。

「ウハハハハハハ無双ごっこ楽しいぜ!」


折角態々今時珍走団とか呼ばれ始め、それでもめげすに15の夜とかやっていた盗んだバイクで走り出したりする少年たちが一掃された。

「え……何あのバカボンのお面の、女?え、え……バイクとか空に舞ってんですけどウケる……ええええええええ!?」

とかそんな感じになった。
ていうかあんまり反抗する人間は少なく、むしろ蜘蛛の子散らすようにみんな逃げていくのを追いかけてくる竜巻みたいな感じだった。

下手に小市民に拳銃とか重火器持たせるとこうなるよ、という一例である。

無意識に非殺傷設定という拷問能力を「こいつ殺さずにボコりたい」と従兄弟をボコボコにした時身につけていたので
死者は運が良く出なかったのが幸いだった。

「必殺えーなんだっけ、取り敢えずメガトンパンチ!」

とかやって嬉々として遊んだ、そしてそれが彼女のライフワークとなってしまった。

「うははは楽しすぎる、楽しすぎるぞ、マジで気持ち良いぞなんか正義の味方(笑)やってるみたいだ、霧間凪みたいだ私」

ちなみに彼の愛読書はブギーポップである。
ちなみに好きなキャラは霧間凪。

そうです、馬鹿なんですこの人。

自分を投影したりして、楽しみ始めました。

前世で終わらせた中2病が再発したのだ。


口調とか好きだった両義式の真似とかし始めた。
声も若干似てるし、私一応容姿もスタイルいいし、イケルっ!

と謎に自分のキャラ設定を付け始め、暴走した。

バカボンのお面で言動が両義式。
とてつもなく濃いキャラ設定だった。

あとその日にみた映画とかでキャラをコロコロ替えたりしていた。

それ以降リリカルとはほぼ遠い彼女の人生が始まった。

でも、そこでまだそういう犯罪などを行う人間に矛先が向かいまくったのが彼女の魂が持つ人徳である。

街の平和の為にという大義、正義を好きなだけ振りかざし、確かに街の治安は良くした。
18の時にはそういう人たちが皆病院入ったり、更生したりしてしまったので。

そうこうしてるとやがて暇になってくる、獲物が居なくなった肉食動物のように狩りに飢えはじめる。

近辺の県や街さえも全て居なくなったのだ。
休みの日となれば図書館で勉強してくるなど言いながら
そんなことを繰り返したせいである。

ある夏の日。

「自分探しの旅行ってくる」と様式美な書置きを残し、それまでこの人生で貯めていたお年玉全てを下ろし、全国行脚、犯罪者滅殺の旅に出かけた。

「どうせ高校生最後の夏休みだし、休み全部使って遊んでこよう」という感じのノリで。

高校三年の夏休みは普通受験に使う最後の準備期間。

馬鹿である。

ていうかコイツそのまま日数間隔おかしくなって休み明けでも帰ってこなくて怒られたし、まぁ両親とかは「ああ馬鹿だな帰ったらどうしてやろうか」とか思って
心配しなかった。

後の全国区に広まった伝説の始まりである。


その時、高町士郎に出会ったのだ。

まだ御神剣士としてバリバリだった彼と彼女は戦った。

彼女は行脚途中に海鳴に寄ったのだ。
そして何時もどおりに暴走族や街の不良に喧嘩を売りまくった。

昼も夜も血と肉を探し彷徨い、喰らう一匹の馬鹿として。

そのうちなんかバカボンが夜に暴れている、と士郎は噂を聞いた。

「バカ…ボン?」


そして街の平和を乱しまくりの彼女と守りの剣士御神との戦いが幕を開けた


この生涯初の敗北を刻みつけられた瞬間だった。

自分の性能に完全に胡座をかき、好き勝手絶頂に生きてきた唐突な敗北。
うん、よくそういうキャラいるよね、と言った具合に調子に乗りまくり油断して負けた。


「え………腹が凄い痛い、え、どうなってんのこれ、え?」


達子はその時思った、なにコイツ何、私が悪いの?ちょっと正義の味方ごっこして遊んでいただけなのに……途中で自分でも馬鹿だと気づき始めたけど。

でも負けるなんて、たかが腹を軽く木刀で叩かれただけなのに、え、マジで?
一発目はお前に譲るぜ、とかそんなもん効かねえよ、と自分から当たりに行くとかやったけど、まじで何?


「何故、こんな……」


「確かに君は強い」


「え……」


「君は自分より弱い人としか戦ってこなかった、だから自分より強い人間に勝てるわけがない」


とかなんとかありがちなことを言われた。

流石である。


ここまでテンプレ踏む馬鹿は末馬達子ぐらいしかSSの転生TSオリ主にいないと思うぐらい。

「ああ、私馬鹿だった、戦いを舐めていた…こんなにも人に殴られるのが痛いなんて忘れていた」

と今更なことを思い以降テンプレ。

そしてやっとこさ、現実に思考が帰り。


彼女は高町士郎に惚れた。

自分の間抜けさを気がつかせてくれた人生の恩人として一人の男として、そして女として、惚れた。

そして

「あの」

「なんだい?このまま家に連れてってコーヒーでも飲ませてあげるから、それ飲んで家に帰りなさい、俺眠いし」

「好きです!結婚してください!」

「―――――え?」

「好きです!今からラブホ行きましょう抱いてください!顔もスタイルいいから勃ちますよねこんな私でも!」

うん、こういう人間なのだ彼女は。

「ごめん妻子持ちなんだ」


「え……」


「あとバカボンのお面、外しなさい」

という感じの高町士郎との出会いだった。



というのが話の顛末である。



「という話があってだな、それ以降私は真面目にそういう職業の世界に入ったわけでさ、高町さん達もいい人でさ
実はこの世界リリカルかとらはだったのかぁと今更気付いたり、そのあと処女貰って貰おうとしつこく迫って
もう一回殴られて怒られたりしたり―――」


「姉さん――――バカじゃないの?」


「……うん」



でも人生楽しいです by達子






おわり



という話を酔っ払った達子に逆レイプされたあと14の少年は快く容姿とスタイルだけは良くて、具合も良かったので達子を快く賢者のように
許してあげて寝物語で裸で並んで聞いた。

「処女だったんですね」

「うん、そういうのずっと縁がなくて31にもなって………戦闘職のヤツ等って
どいつもこいつもハードボイルドだから咽る感じで浪曼とかほぼ遠いから。
結局今までセックス未体験の自家発電女ですよ、私は無駄にそういうグッズが家に山ほどありまずよ……ふぇうえん!」


「いや、落ち込まないでください、誰だって酔っ払ったりしてそういうことありますから」

この人本当に残念な人だな、と高雄は思った。
馬鹿な子ほど可愛いかもしれないが、この人ほど馬鹿は滅多にいない。

故に滅茶苦茶可愛いかも、とか思ったかもしれない。

「ごめんタカくん、ほんとこんなババアで童貞散らさせて、御免ねぇ」

「いいですよもう(前世でとっくに終わってるし)、ところで避妊もクソもなかったけれどその――――――大丈夫なんですか周期とか」


「あ――――」

「あって……おい」

「うーんと、どうだっけかな、あ、バリバリ危険日だったわアハハハハハハハハ」

「おい」

「マジでごめんなさい」







おわり


なんか美味しいかなとか思って書いてしまった。


末馬達子 魔力S

腹ペコ騎士王バリに食費がかかる女
身体能力普段から内蔵内部を上昇させ、防犯し続けている故に
実は和菓子能力は気休めのためにある。

うん馬鹿。

最初は真面目に生きていたところ人生が狂った。

そしてそれから一直線。

何げに士郎の大怪我フラグを潰している。

「プラ爆弾目の前で爆発して何で生きてる?」

「アハハ余裕ですよ」

ああ、次勝負したら負けるなこれ、と士郎は思った。
何げに敗北したあと自らを鍛え始め、そのまま正真正銘の次元世界最強になる。


高雄くん 魔力AA
 
やっぱり不幸なのか、そのせいか聖人。
立派に転生オリ主をやる。

でも途中でリタイア。

バカのせい。

15で父というこれまた不幸。

役にたたない奥さんを見てやっぱり財テクにはまりはじめる


「バカボンのお面のまんまずっと通したんですか」

「うーんとね、最初は気にした、でも第一回目で伝説になって、バカボンのお面女として週刊誌に掲載されてから、思ったんだ」

「何を」

「仮面変えたら、伝説が二つになるんじゃないかな、とかライバルキャラか?とかそういうの真剣に考えた、あとお面って高いんだよね、1000円くらいするしだから買い換えるの勿体無いかなとか考えた。最後の旅も寝袋持って行って野宿だったんだけど食物と風呂だけで結構金なくなるもんだよね、折角だからグルメの旅もやったし、色々思い出が増えていってお面にも愛着沸いたし」

「愛着って」

「一緒に血飛沫を浴びてきたし、将来妖刀みたいになんじゃないかなとか思ってた」

「今お面は?」

「久しぶりに装着して、遊んで放置して風呂上りに脱衣所で踏んで壊した、正直泣いた」

私の青春の思い出が。
あ、いいのかむしろ黒歴史だからとか思ったそうな。

「そうなんですか、あともし子供できたらどうするんですか?」

「そ」

「そ?」

「そりゃ産む、絶対産む」

「今結構悩みましたよね」

「いやさーこの前堕ろすのってどんなのかテレビでみてさ、あれちょっと私には無理とか思った」

「そうなんですか?」

「タカくん見たいな良い子生まれてくるかもしれないのに、殺したくない」

「……結婚しましょう」

「いいけど、やっぱり息子さんください、ていうか未成年に淫行しました許してちょ、とか無理だからやめておこう、シングルの方が精神的に楽かもしれない」

「いやあなたに一人で子育て無理ではないでしょうか、ほぼ毎日高町家
にご飯食べにきてるし、誰一人として迷惑とは思ってませんけど」

「え、迷惑かなぁと思いつつ罪悪感が蓄積していった私、今許された?」

「それいったらみんなキレますよ、しょうがないから本当にほっといたら死にそうだから食べさせてあげたんだから」

「あ、私そこまで意地汚い?」

「ていうかセコいです」

「そっか、まぁ事実だからしょうがないか、じゃあ私この後、高町家大家裁受けてくる」

「がんばってください、一番の強敵はなのはですから」

「一番強いもんね、私勝負したけど私陸上専門で空飛べないから建物投げるだけしか出来ないし、確実に砲撃されて終わりだしそのあと戦いが長引いてお腹すいて負ける」

「それだけで魔力取りに来た近接系の八神家騎士軍団全滅させましたけどね、あとリンディさんが逢いたがってましたよ」

「あの人、人を和菓子を出す機械としか思ってない、まぁご飯奢ってくれるなら会うけど、マヨネーズ渡されて和菓子作るのだけ嫌」

「あれは……」

「ま、取り敢えず高町家いきましょうか、てかお腹減ってきた散々怒られた後お腹鳴るわ多分」

「懲りない人ですね」

くすりと高雄は笑った。

小話

末馬達子さんとアリサ

「アリアリアリアリーお腹空いたワン」

「またお腹空いたんですか、きゃっもう抱きつかないでくださいエヘヘ」

「アリ、うーんワンワンっていうかスマンマジでお腹空いて死にそうご飯奢ってください桃子さんに罰として飯抜きくらってるから」

とかやりだす20代の女性がたまにいるらしい。

「毎日来てもいいんですよ、何か命の恩人の癖に要求がしょぼいし」

ご飯と海苔佃煮と味噌汁でいいから何か食べさせて。
とか言うそんな感じの要求。

「えーアリアリ、私何かお金持ちのヒモみたいじゃん、つうかこの海鳴で私雇っても唯の穀潰し家に置いておくとかそんな感じだよ?」

アリサのことを変な渾名で呼んでも良い権利が貰えていた。

殆どデカイ大型犬扱いされていた。
アリサがある日誘拐に遭いそのまま誘拐された場所である廃ビルを倒壊させながらヒーローが現れた。

「やっべ、また借金増えるかも、やっとこの前返済終わったのに」

酷いことされそうになったらビルが廃墟になっていた。
そんな感じで突然助けられていた。

ちなみに一番末馬達子にあった投影キャラは哀川潤らしい。


「ほんじゃまぁまた来週ー」

普通に去ろうとしたので、色々泣き叫んだりしてしばらくバニングスの家で彼女を飼ったことがあるのだ。

何かお礼をと言うバニングス家に

「ご飯食べたい、2日ぐらい食べてないから」


とか何かとてつもない不憫な貧乏人のような感じでバニングス家にご飯を食べに来ても良い権利を貰った。

一週間ぐらいずっとバニングス家でもしゃもしゃポテチ食べてビデオみていた。
ちなみに高い料理は口に合わないとかで普通の物食べてた。

「じゃあそろそろ迷惑だし罪悪感芽生えたから家に帰る」

その時

娘の護衛とかどうですか?
などと言われたらしいが。

「ああ、私前に護衛の時、お金持ちの家の壺割ったりしたから住み込みはちょっとキツい、精神的に。でもたまにならいいよ」

と確約した。

戦闘で調子こきすぎてそういうの未だにやるし。
精神が擦り切れるので専属はやらない。

リンディさんと達子。

「オクレ兄さんとかなんとか言った方が良いくらい酷使しないで」

「すみません、末馬さん…ウチの母がなんて言ったらいいか」

「うん知ってる、クロノ君、謝罪はいらないからマヨネーズ以外の食物もってこい。あとオリーブオイルとかやめろ最早油とか本当に工場か私は」

「うふふ、この安っぽい味が逆にいいのよねぇ」

「おい泣くぞ私は、ていうか巨大な龍とかと折角バトル出来ると思ったのに嘘の依頼はやめて欲しい」

だから別の次元行くの嫌なんだ、と達子は思った。

私を常にあの変な和室に置いておこうとするし。
みんな一生懸命働いているのにあそこで寝そべって漫画読んでポテチもしゃもしゃ食ってるの気まずいし。

「私のポケットマネーで依頼料渡したからいいじゃない?」

「苦痛です」






[36072] たっくんの通信簿は賞賛か小言に満ち溢れているby妙子
Name: みさりつ◆2781aa24 ID:36037864
Date: 2012/12/12 01:19
死因後頭部にショック。



ああ、俺の死因、えーと雪かきしてて屋根から落ちたからだと思う。
死ぬ間際、ざっざと屋根の雪下ろしをやるために梯子登ったはず。


「これ近所全部やんないとダメ?そろそろ終わるから今更だけど……最初に普通、雪下ろしすんのに間違って最初に道かいたから二度手間だった」

落ちた雪かかないとダメじゃん。

はしご使って屋根を登っていると誰も居ない。
終わったらカップラーメン持ってきてくれるとか言ってたのに、あいつら日の出見にどっか行ったな。

「疲れた」

と言いながら、ふらふらになりながら登っていく。


年末、達馬の前世である青年が友人達とドンジャラをやっていた。
もうお前家族で年越しとかいらないだろ、どーせ、こたつの中いるだけだし、と何故か家から追い出されていたのだ。
年末年始もう少し素早く生きろ、とかそういうのである。

最下位が罰ゲームとして年末最後の善行として
近所中の民家の雪かき一人で全部やる休みなしで寝ないでやるというアホなのを誰か決めたのだ。
そして青年が最下位になった時―――――本当に誰も手伝ってくれなかった。
ほぼ地獄の強制労働だった、そして最後の雪下ろしする屋根に上がる瞬間に滑って――――――。


落ちた。

衝撃が全身に伝わった、そして青年は思った。

ああ、俺死ぬのか、でも疲れたし―――そうだ寝よう、眠いし。

もう地獄から解き放たれたし、でもまだ超寒い。

ああ、寒い。


うわっ寒、寒。

ラーメン


「食いたいという感じだった、くっそ!誰かひとりでも手伝ってくれれば俺は死ななかったんだ!疲れて足が滑って死ぬなんてなかった」

「へー」

何かおまぬけだな、と妙子は思った。

何か結構幸せなバカっぽい死に方というかなんというか、暢気な死に方である。

「まぁ企画立てたの俺なんですけど絶対最下位一人でやるとかね、ちなみに死んだ日は1月1日、日の出前、あと1時間屋根の上で生き延びたかった。日の出みれたし」


最初は最下位と最上位の2名の大吉と大凶メンバーでやろうとか言っていたのを
とある青年がていうか達馬が文句ぶーぶー言ったのでそうなった。
「お前今勝ちまくってるからそうなんだろボケ!」とみんなの集中砲火を食らい最下位に転落した。



「何それ―――じゃあ今日の夕飯ラーメンね」

「アーメン」

「それ相当酷いよブラック過ぎる!?」

「あ、突っ込まれた、いつも俺の役目なのに」







小学校3年生の通信簿、どんどん肉体に精神が引きずられている編



「ねえ、たっくん」

「相変わらず通信簿ひどいでしょ、テストの点数はいいけど何かいっつも低いんですよ、前世から」

まぁあんまり学習態度良くないからな昔から。

「ねえ前世あるのに毎回先生のお話を訊かないって何?あと調子に乗りすぎて問題になるとかもう少し落ち着きましょうとか」

「毎回ヤツ等め!ていうか今回俺の担任、俺の総合年齢より年下の癖にっ!?」

「人間年齢性別じゃないけどね」

今日も微妙に自分を棚上げしています、それ。

「いっつも思うけど普通転生者って学業優秀とかじゃないの?私はそれなりに真面目にやったよ?たっくんおかしいよ」

「所詮人間ですよ、目の前に楽しそうなことあるとそっちに釣られて行って迷子になります、てか妙子さんは別」

最初は真面目にとかそう思ったよ?

だんだん化けの皮が剥がれついに限界がきました。

今年で完全に剥がれてしまったのです。

ていうかよく今まで持った俺凄い。

もう俺には無理、てか下手すると小卒とか小学校中退とかになりそう、6年とかキツい。
原作の中卒のなのはさんより酷いことになりそうです。
ていうかあっちミッドで防衛大でたようなもんなんだろ?教導隊とか。


コナン君みたいに10数年小学一年生やったら気が狂うな普通。
よかったコナンの同級生とかに転生しなくて、マジで、それに転生したとしても絶対少年探偵団入らない。


黙って小学校の勉強もう一度するとか俺には出来ないんだ、苦痛すぎてサボり始めます。

まあこの学校私立だから低学年はいいけど高学年になったら苦戦するかも、俺馬鹿だし。

しかも通信簿前世と全く同じこと書かれたし今世でも。

人間成長出来ないもんですね、本当に。


そして今回の通信簿が来るまでの期間、俺はついにやってしまった。

俺と同じく、黙って勉強出来ないヤツ等を見つけると暇つぶしのペン回ししながら、俺下手なんだよなぁペン回しと思いつつ。

「ああ、こいつらそんなサボり方するとバレバレだぞ」

「携帯授業中弄るの下手っぴすぎ、あと小学生3年が携帯学校に持ってくんな、俺は置いていくぞ、あ、今時それダメか?」

とムズムズしてきます。

ついに爆発。


もっと上手くやれよ、どうせ将来の自業自得系の自爆行為なんだから、それを他人に怒られるとかされたら余計虚しいだろ?
周囲に迷惑かけたら自爆テロだろそれ?俺なんかずっと後悔してるし小学校で好きな女の子に振られ続けたの理由それだし。
とか思い立ったら吉日即決即断あとなんだっけ、ああ即実行だ。

そんなこんなで、ポストマン達馬名人とか消しゴムのカス飛ばし戦争の達馬名人とか先生の後頭部に筆箱の光沢使ってこっそり光当てる達馬名人とか
そういうのプロだから遊び方バレないように教えたのに、やっぱり小学生エスカレートしますそのまま集団テロになってきます。


やべぇ、これそろそろ問題になるわ……なんとか止めたけど、下手するとあとで親呼ばれて家帰ったら外に放置プレイされるパターン入ってしまう。

今時、学級裁判ないから、小学生司法じゃなくて親と教師の方で裁判されるし。

責任問題的に悪化させたの俺だし、どうしよう、集団自決に巻き込まれる。

どうせバレたら達馬くんがやり始めましたーとか言うに違いない。

俺は教えただけなのに!?

バレるなって、教えただけなのに!?
お前らヤクザだったら小指ぐらいじゃ訊かないぞ!?

一つの事件なのに18件ぐらい一気に大検挙されるだろうし。

正義感の強い女子というか取り敢えず楽しいから言っとけなんかとか思う子が「そういえばー」とか言い出すだろ絶対。


特にアリサとか俺をニマニマとみながら、そういうこと言うし、俺は自分が悪いから泣き寝入りするしかないし。


くそ、このままだと学校で肝試し勝手にやったのとか、理科室の人体模型のパーツ分解してそれ学校中に隠してみんなで宝探しやったとかバレてしまう。
殆どクラス男子全員でやったからクラスの半数死亡ですね。

そういうの小学生だから許されて反省文書いて、意味もなくドリルをやらされるとかそういうパターンにも命中する。

しかも全員でやったから被害は大きくなるか小さくなるかもわからん。
まだまだどいつもこいつも若造め、わかってるのか?事の大きさが。
毎年クラス替えで絶対俺に付属する、参加しなかったアリサとか嬉々として俺を主犯として縛り首にしてジャングルのワニに食わせるそ。


未だに俺アリバ呼びしてるから、毎日蹴られているし。

アリバの母上殿はあんなに俺を面白いと褒めるのに、あいつはずっとデレないし。
まぁいいけど、妙子さん以外興味ないし。

いや違うか、俺がアリサに付属するのか確か。去年とかのクラス替えだと俺だけがあいつのとこに移送させられている。

アリバ俺のストッパー?

やっべー、今更超大人気ないことしまっくてる。

いや違う、大人だからこそ酸いも甘いも知っている、人間何度も繰り返す、歴史は繰り返される。


うん俺悪くない。



100%悪気の俺ですね。

ていうか殆どの悪事が主犯俺のような気さえもする……何故だ?

うん悪い、どうしよう妙子さんに軽蔑はされないけど、またしょうもないなーって顔されてまう。

今年からはしゃぎすぎた。

ついにその美しい海鳴全土に知れ渡った顔、その名誉に傷がつく。
そういえば最近海鳴のPTAの新しいカリスマリーダーとまで言われているのに。

様々な学校の問題にも果敢なく立ち向かい、海鳴という教育界に降り立った教師達の救世主とまで言われているのに。
沢山の理不尽なモンスター・ペアレンツ軍団を討伐し、希望と勇気を教育界に与えて来た勇者だぞ。

全国紙に多分これ妙子さんだなっていう実際にあった良い話とか投稿されてんのみるし。

また一つ新しい鉄人の伝説が俺が小学校に入ってからバンバン打ち立てられていくのに。
どっかの学校の給食費未払問題とか解決したばっかだぞ。その無駄に溢れるカリスマで。
ていうか、妙子さんに真剣にお願いされて断れるヤツなんかいない。

頑な、ムカつくヤツ等、自分の悪さを認めないやつだって最終的にはただのツンデレにしてしまう慈悲深き大天使だぞ。

本当転生TS最強やってますね、妙子さん。

ていうか何でそんな問題解決するんですか、そんな話、学校が個人に普通持ってこないでしょ。


そしてそんな妙子さんが我慢が出来ない俺のせいであることないこと言われてしまう。

「海鳴の鉄人もついに地に堕ちたな」「ふん、所詮シングルマザーよ、グランドマザーとグランドファザーそして、我が愛するハズバンドと私会わせて四天王には勝てないようだな」
とかはまだいい、いや良くないけど。

一番言われて欲しくないのが「子供一人まともに育てられないの?母親に向いてないんじゃないの?」


あ、ああああああああああああああああああああああ
ああああああああああああああああああああああああ
ああああああああああああああああああああああああ
あああああああああああああああああああああああああ!!
あああああああああああああああああああああああああああああああああ
あああああああああああああああああああああああああああああああ
あああああああああああああああああああああああああああああああ
あああああああああああああああああああああああああああああああああ
あああああああああああああああああああああああああああああああああ
あああああああああああああああああああああああああああああああああ
ああああああああああああああああああああああ

「うあー」


死のう、這いずって這いずって苦しみながら死んでいこう。

この人に謂れもないのに傷がつくのだけは嫌だ。

想像しただけで死にたくなる。


寂しい顔されて悲しい顔される。
悲しませないって初めてあった時、救うって決意しときながらこれかよ。
ゴミだな、やっぱり俺は、俺が率先して傷つけてどうするよ。


最低だろ。

いやだ、悲しんで欲しくない、ていうか俺本当に20だったけ?

転生者として記憶覚醒してない俺より酷いんじゃないか俺。

我慢しろよ6年くらい。
元20に6年はつらいけど、もっと頑張れよ!俺!?

「ごめんなさい、妙子さん!もうしませんからあなた最高のお母さんですから!
これから品行方正転生オリ主として生きていきますから泣かないで!」

「何時も通り良い事も書いてる、へぇ、やるじゃん!―――何で泣いてるの?」」

俺の誠心誠意の謝罪が通信簿熟読に負けた…だと?

「へ?」

「やるじゃん!」

「へ?」

「やるじゃん、たっくんカッコ良いー!流石私の息子!ほんと毎回通信簿楽しみなんだよね!」

ほっぺたにキスされました。
てかアンタどんだけいい女なんですか?
ていうか最高です。
メロメロになります。

毎回通信簿くるとこうです。

それだけが僕の救い。

小学校通っててよかったー。

「え?」

今年から何かしたっけ、良い事。むしろ帳消しするぐらい悪いことしまくったし。

俺、海鳴の悪童とか渾名つきそうなんですけど、そろそろ。

全く普段使わない特殊能力が押入れに忘れさられないように
身体能力生かして勝手にフリーランニングごっことかしますし、パルクールごっこしてるし、たまに市民に見つかり唖然とした表情で見られます。
妙子さんの妹から貰ったプロレスラーの覆面つけてやってるからバレてないけど。

一回派手にぶっこけて坂道転がり落ちて「だいじょうぶかい!?」とかなったことあるけどね。
あまりにも凄いこけ方したので救急車呼ばれかけたし。

たまに高いとこ登りすぎて怖くなって、降りられなくなったりとかして結局最後ズルズルと降りますし、それで擦り傷つくりますし。

やべえ警察呼ばれる可能性もあった。

初めて面白そうだから電柱登った時とか、翠屋の恭也さんに華麗に助けてもらいましたし。
グリリバボイスで「大丈夫だったか」と聞かれて


「あ……はい」とか何か乙女っぽくなったし。

つうか俺は猫か。

そろそろやめないとやばい。
でもたまに使わないと勿体無いだろ?
和菓子能力はもういいわ、妙子さんの手作りのお菓子の方が兆倍うまいし。

「うふふふふふふふ」

「な、なんですか?その可愛い笑いは、今度から日曜日のサザエさんの代わりにジャンケンやってください」

「えっとね、読み上げます「毎年達馬くんがいるクラスでは絶対にイジメやケンカが起きません。
達馬くんがクラスのリーダーとして正しく物事を判断し解決し、時には先生の指示を仰ぎ大きな怪我や事故を防いだりしてくれます。
みんなの頼もしいムードメーカーです、今年からは特に皆を引っ張りました、皆を一つにし多くの物事を成し遂げました。
人間的に成長したのかな?
クラスだけではなく学年ごと引っ張るような頼もしさがあります。
先生もいつも助かっています、ありがとう。
クラスの生徒のお母さん達も達馬君がいれば、何かあっても大丈夫だろうと思っています。
そして力持ちで先生が重い物を持っていたら必ず助けてくれる良い子です」ってすごいじゃん!?今年も!しかもなんかレベルアップしてる!」




そうだっけ?

なーんもしてないぞ、俺。



今年もどうせふざけるからって学級委員長誰も推薦してくれなかったし、ていうか書記やってる。

レクについての議題で


英文で皆の意見書いたりとかやって、クラスメイトを「え?」ってさせたりして
担任に「無駄な努力しないで、あとここの文法おかしいよ達馬君」
とかなって凹んだりしてアリサに「馬鹿丸出しね!あはははっ!」と笑われたり。なのはにクスっと笑われたりすずかに「ないわー」という顔されたり。
学級会で勝手に自分のやりたいこと書くし。
投票数こっそり弄るし。
実現不可能な事勝手に弾こうとしたりするし「んーむずかしいなぁーんー」とか言いながら書くし。

しかもわざわざ書いたあとに

「ああ、これ無理無理、てか食べ物のお店子供だけでやんの無理、結局、親が9割やることなんぞ?(妙子さんがまた無駄に頑張る)
そして放置プレイ食らわされるぞマジで。
俺ら作りたくもない券とか飾りとか作らされるぞ黙々とそして隣のクラスのヤツのがいいなぁって1日中ていう事で却下ー!」

その書いた文字に大きなバッテンをダイナミックに書いて遊びました。

これこそ、学級会の醍醐味。


まじで気持ち良い爽快感。
俺これやるためにもう一度小学生になったのか、とか思うような馬鹿な感動。


でも横に立ってる学級長の女の子に頬つねられますけどね。副学級委員長に頭スコーンってやられます。

「おい、副学級長、叩いてもいいけど、そのデカ定規痛いんだよ危ないし怪我するだろ?せめて横にしろっ」

とかなってその直後。

「あんたなによー」とか学級会紛糾させます。

「家帰れー」とかね、つうかさっさと家帰って妙子さんに逢いたいよ。

それでアリバにキレられるし。
なのはにぷんぷんされるし。
すずかに「うるさーまた?」って顔されるし。


じゃあ達馬が決めろよ的な感じになります。
良い意見言ってみろやとかそんな感じ。

書記辞めさせられました。

とかそんな感じだぞ。

なんでか知りませんが何故か俺が議題終了後一番働くことになります。
クラスの総意で「お前がやれ」的な。

そうか俺がみんなにイジメられているから喧嘩売られているからか、そういうことか。

俺生贄や。



「ハハハガキどもめー!」

「ふむ、悪戯とかいいけどさ、怪我とか事故にならないやつだから親御さん達もむしろ楽しくていいわね、とか言ってくれるし。
でも――――ねえ、ちゃんとする必要がある時は真面目にやんなよ?」

そして怒られた。
これが妙子さんのカリスマな怒り。
体が震えます。

「は、はい!?」

「えーと「学級会で議題の前に多分面白いからという理由で学級会の進行方法についての意見を言い始め
議題の進行を遅らせられて困った時のようなことが度々ありました」って書いてあったよ?」

「あ、多分それ先月か先々月の学級会か何かです」

「自分より年下の担任だっけ?それ言うなら、困らせちゃ駄目だ―――わかった?」

「あ……はい!」

「年齢を盾に物を言うのなら、その年齢の分大人にならなくては駄目だよ?……それが責任じゃないかな?」

「う………すいません、つい調子に乗って楽しくて全力出し始めました」

「くくく、まだまだ子供だね、君。ていうか小学生楽しみすぎ、しかも今まで本気ださなかったとか」

「まぁ馬鹿な大学生が小学生になったような感じですもん俺」

「ふふふふ」


本当に面白いなー君は、と微笑みを貰った。



よし頑張るぞー。


とりあえず、算数のドリルとか休みでどっさどさの大人でも結構時間がかかるやつやるぞー!
漢字の書き取りとかどんな大人でも時間かかるぞー。

最低二つは明日の学校の先生との釣りの約束までに終わらせてやる。
取り敢えず、釣りがてら妙子さんのお土産として俺は山キジでもパチンコで捕まえてくるか、あれめっちゃ美味いらしいし。

そういうプレゼントしかできないんだよなぁ。
金がかかる系とか無意味だし。




はぁ……さっさと大人に戻りたい。

ていうか、俺妙子さんと結婚できないと一生シングルマザーにパラサイトシングルしそう。









達馬くん 


不良でも何でもない正真正銘の馬鹿な大学生やってた子。

バカ遊びに定評があり、大体手加減を知ってるのであんまり怒られない。
ていうかむしろ微笑ましいと思われている。
勝手に校区外に出ても文句を言われない男。


でもいつか調子に乗りすぎて妙子さんを母親としてキレさせる。



何げに妙子の背中を見て立派になっていく。

すこしずつ別な方向のカリスマを取得しつつある。

人を煽るのが上手になってきた。



[36072] キボウ エンド 
Name: みさりつ◆2781aa24 ID:36037864
Date: 2012/12/12 06:01
俺は妙子さんに引き取って貰うまで、ため息を吐く第二の生を送っていた。

「あんたは気持ち悪い、本当に家からいなくなって欲しい」

俺もさっさと出たい、お互いその方がいいよ、マジで。

「何その目………ふ、……さっさとご飯食べて二階に上がってよ!私の目の前からいなくなって!」

俺はコクりと頷いて、ご飯を胃の中に詰め込み二階に上がる。

そして何もない布団しかない部屋で一人ゴロンとなって天井を眺めた、体が軽くて、疲れない。
前はもっと体は重くて、足を伸ばしたら狭いベッドに足先がついてソレが嫌だった。

「はー、家出すっかなー、でも野垂れ死にする前に大人とかに捕まって家に戻されるしな、そっちの方が迷惑になるし」

下手したら今の俺の産みの親は、一気に点火して俺を虐待するだろう。
まぁヒス起こして顔面にお湯かけられたことあるけど。

ま、結構きつかった。

そのときは速効風呂場に逃げた。

こんまんまだと本当に酷い暴力が始まる。


「マジでそれは後味悪い、どうにかならんかね本当に……可愛そうだろう、あんなにまだ若い人なのに、早く捨てて欲しい」

下の階から泣き声が聞こえる。

そして今の父が帰宅したのか、父は結構短気な男で、たまに唐突に俺を叩くことがある。
妻を守るために、心を憎悪の黒い色に染めて。

本当なら、もっと幸せが彼らにあった筈なのに。

それだけが俺の胸をいっぱいにする。


それが悲しい。

だから殺せばいいなんて絶対に俺は言わない。

そんなもっと酷い人生を俺が作ってどうする?

好きに憎んでも貰っても構わない、それで気が楽になるなら、社会で彼らが酷い目に合わない程度で俺に暴力を振るってくれても構わない。

これ以上不幸にならないで欲しい。


それだけを願って今を生きている。


「転生ね……もし最強に生まれても、幸せじゃなきゃ俺は嫌だね、あと何の世界だかしらんけど」

記憶なんてどうだっていいだろ?

俺は馬鹿だから楽しく幸せに生きていければ、俺が俺であり、毎日夜寝る前にソファーで野球みながらウトウト出来ればいい。

寒くもなく暑くもなく涼しい布団に入っておやすみして起きて飯食うぐらいで十分。

そういう安らぎが毎日必ずあるように、それを守るために大学入って、その糧を得るために、バカばっかやって一生懸命じゃないけど、それなりに生きてたんだ。

馬鹿やりまくったけど、誰からも愛されない、なんてことはなかった。

そうだろう?

誰だって誰かがいないと成長してそういう風になれないんだから。

死ぬ前までそういう風に毎日毎日笑えるように――――


「くそっ……情けないな、現実逃避ばかりしたくなる、これがあるから、ああだってのに」

これがあるから、こういう現実が生まれたんだ。


「しょうがないけどなぁ、あるからさー」

其れを踏まえて生きるしかない。

「はてどうっすかねー神様に会えたら良かったのに、今ならいうね、最初から転生なんぞせんでそのまま消滅した方が気が楽だって」

そんな先のことなんてどうだっていいし、死ぬ為に生まれてきたわけじゃないし、死んでいくために生まれてきたわけじゃない。


「生きるために生きて、はーあれだなんだっけ?とあるんーと。そうそうイカちゃんじゃなかったそげぶだそげぶ」

意味のわからない思考になったので中断した。

俺は手から和菓子を出してそれを口に運びむしゃむしゃとおはぎを食べる。

「ふう、取り敢えず、捨ててくださいって土下座でもなんでもした方がいいかも」


正直お互い共倒れしそうだし。

「それこそ不幸だーっ!って―――――――やべえ下に響かせ得ちまった」

うん馬鹿ですから、ゴロゴロしたまま3歩く前に昨日嫌なことぶっ飛びます。

うわー何か物壊れる音した。

ガラス割れたな、なんか。

かーちゃんとーちゃん怪我してねえといいけど

バカバカしいしそんなで怪我しても、無駄だしな。

「こえー………まじで実際やけどした顔いてー。現実だよ、ポエミーやって黒歴史作ってる暇あったらどうにかせねば。
いつか誰か好きな人できてこんなこと5歳で思ってました、なんて言ったらドン引きされてしまう、うん俺が女なら本当にそれこそ気持ち悪くて逃げるわ」



という話を妙子さんにしてしまった。

だって話してお願い?とか言われたからしゃべりました。

ドン引きされたらやだなぁーと思いながら。


「ああ、だから言ったでしょう?欝になる話だって、あんま貴女も人の悲しみ背負わん方がいいですよ?
そういう風になるし他人の過去バナで不幸になってどうすんですか」

妙子はベッドの上で声を押し殺して枕に顔を突っ込み、しくしくと泣いていた。

「別に今はこんなに妙子さんに良くして貰って幸せなんだから、気にしなくていいでしょう?」

「だって、ひどいじゃん!なんで!?」

「いやえ?なんで?……てかそんなの気にしてたら、疲れるじゃないですか、流石に妙子さんでもタイムワープできないだろうし」

「え?私がこうして悲しむの変なの?」

「ははははっ変じゃないですよ、気にするなって話でほらほら寝ましょう」


「たっくんが虐める、私を泣かせる、悲しませる――――タイムワープして今からたっくん助けてくる」

「はいはい、すいませんでしたーてか妙子さんの口からそれでるとマジでやりかねないし怖いっす!ドキっとするからやめてください!?もう二度と口にしないでください!」

てか俺が二人になるだろ!?嫌だよそれ!?


別の意味でドキドキしてますけどね?



「ほら寝ましょう、あーもうじゃあ前の人生で一番爆笑した話聞かせてあげますから」

悲しんでくれてありがとうございます。

でも貴女の御蔭で今は幸せです

悲しくありません。


今は楽しいです。



だから


いつか俺が貴方にそう思わせてやる。

終わったこと終わったって言って
今を本当に楽しく生きれるようにしてやる。


絶対に。

それが

それが何よりもかけがえのない貴方に贈りたい俺の愛だから。





end



「ところがどっこいそれが大変難易度高過ぎる!」



あとがき


これがいつでもどこでも希望エンド。









[36072] いつまでたってもはじまりません!魔法少女リリカルなのは無理
Name: みさりつ◆2781aa24 ID:36037864
Date: 2012/12/12 12:06
本気を出して面倒になってなぁなぁで馬車馬のごとく働く俺。




「え、何?魔法?好きだなーなのはも。日曜日のアニメ見すぎてどうにかなったか――――あ」

「うん、手伝って?」

「え、なのはええええええええええ!?ちょちょちょちょ魔法バラしちゃダメだよ!?」

あれだ9歳で発掘しちゃうスーパーなことしちゃうフェレット少年ユーノくん。
俺にはそんな風になれんユーノ君の兄弟として生まれたらすぐ比較されたりする自信がある。
俺は一生スクライアで子供の面倒見て髪とか引っ張られ続ける人生を送る自信がある。

俺、動物好きだけど小動物苦手なんだよな、踏み潰して殺しそうで。

昔飼ってたハムスター踏んづけたことあるし。

可愛いけどなぁー苦手なんだよなぁ、だから苦手だから俺の顔面を封印するな。
覆うな、なのはの学校の制服姿のパチモンみたいな格好見せないために覆うな。

「まじで………?」

俺はユーノ君に視界を封印されながら思った。


「うお!ちょいお前落ちるなよ、落ちて怪我すんなよ!?俺が殺ったみたいで後味悪くなるから!」

俺は必死に俺の顔面から落ちそうになるユーノを手で顔に押し付けて態勢を維持する。

「獣くせぇー!?犬小屋の臭いだこれ!リアルにくせぇ!早くどっかのキツネリスみたいに俺の肩のれ馬鹿野郎!」


「臭くないよっ!?」


正直言っておく、転生オリ主なんて絶対やりたくない。
俺はジェルシードなんてウランの原石以上に危険な物なんて見たくもないし触りたくない。
ウラルバートルまで泳いで行ったほうがまだ気が楽。


映画とかアニメであるだろう?

馬鹿な大学生とかが変な祠とか馬鹿遊びで壊して何か封印解いちゃって何か起きるとか。
俺、馬鹿遊びで間違って世界滅ぼすそういうヤツ等のメンバーに混じってるタイプだからね?

何回か肝試しやって酷い目にもあったことあるし。


ジェルシード見つけて。

間違って心の底で「妙子さん」とか思ってそのまま歪んだ願い叶えられて
鬱エンドまっしぐらな酷い目にあったりするからな?

まじで俺本当の小市民だからないとは言えないんだ。
俺はただの男だから、だからやめて欲しい、

すっかり生活に馴染みすぎてカンペキに魔法少女なんか忘れていた。
ていうか俺にとって所詮昔馴染みの近所の女の子にしか過ぎなかったのだ。


高町なのはという少女は



全身がすーっと青ざめそうだ、赤いザリガニが青くなるように。

「勘弁してよ……俺毎日忙しすぎて死にそうなんだぞ?」

「でも手伝って?言ってたでしょ何か困ったら俺に頼れとか」

「言ったか…そんなこと?」

「学校でみんなに毎日言ってるでしょ?知ってるよ?たっくん魔法使えるの知ってるんだからね?」


「へ?」


「私みてたの、たっくんが手から――――」


「和菓子ですね!?」


「うん」

可愛く首をかしげても駄目だ、やめてまじでやめて俺そういうの平和とか世界とかマジでどうでもいいから。
俺、世界のどっかの株価が最悪になっても関係ないタイプだから。
普通に大事件発生しても家でゴロゴロしてて、ニュースで見て「そんなことがあったのかー」とかそう言う感じの人間だから。
大事件起きてる時そういうこと考えてると死ぬけど。


え?

夢?



「夢じゃないよな?」

此処で「奇跡も魔法もうんちゃらなんちゃら契約してよ」

このなんの変哲もない喋るフェレットに言われたら、俺ここで「クロス!?」って叫んで気絶するからな。
心臓止まるからな、マジで引きこもって

「妙子さーん!もうどっか逃げましょう!?宇宙船作って逃げましょう!あ、120億で宇宙旅行しましょう!」

とか言うからな。

「夢じゃないよ、奇跡も魔法もあるんだよ!」

「やめてくりゃああ!」




どーしたのーうなされたの?大丈夫たっくーん

「っは………は、ハ、ひふへほー」

「どうしたの、滅茶苦茶うなされてたよ?」


達馬は夢を見ていたのだ。
恐ろしい夢を。

そんな息子を見て母は優しく汗で濡れた達馬の額を手で冷やしてくれる。
彼女の手は冷たく、まるで冷えピタの箱の絵のように子供が楽そうな表情を浮かべる。


なんだ……夢か。


「悪夢みてました……精神的に滅茶苦茶疲れそうなやつ」


「私はそういえば、なんか空から降ってくる夢みたんだけど?キラキラ光るやつ」


「え、まじすか」



はじまりません。



という朝も鬱々と不安たっぷりにたっぷりパンにバター塗って朝飯食ってバスに乗って小学校に行きました。


楽しそうに小学校を通ってると思うか?

一言言っておく、正直めんどい。




俺、鉄人やらされ始めてるし。


「たっくん今日は俺んちで遊べよ、対戦のやつ面白いのあるからさー」

「パスパス俺は今日も帰宅部やらないとダメなの妙子さんの暴走を止めるために。
家でピコピコとか結局時間の無駄だぞ?やっぱり小学生は小学生らしくしとけー小学生なら犯罪にならない遊びやっとけ。
将来みんなで思い出話した時愕然としたりするぞー俺なんかみんなに電気のスイッチの紐ボクシング滅茶苦茶馬鹿にされたし」

「たっくんそれいつの話だよー」

「前世の話か遠く先の未来の話しさ……ふはは」

未だにていうか、前世より運動能力上がったから楽しいし。
妙子さんに見られて大変恥ずかしい思いをしました。



「またそれ?達馬いっつもそれだよね、大体命中するしーお前未来予測の特殊能力もってんの?もってたら教えて」


「遊べー!」

「たっくん今日も帰んのかよ、秘密基地つくんの手伝ってよ、いいとこ教えてくれたんだからさぁー」


ああもう、小学男子のガキ共にモテモテになっても嬉しくない。
てか熱い、ガキどもが飴玉に群がる蟻のように俺を囲んで熱い。。

俺はミツバチの巣に侵入した大スズメバチか?


うわもう、首絞めるなよ。

そして毎日小学女子どもに何かと細々なこと手伝わさせられるし、めんでー。
毎年のバレンタインとかどうでもいいんよ、むしろいらん。
ていうかチロルチョコはやめれ、お前ら妙子さん謹製が食いたいだけだろ。
そんなセコイ奴らには妙子さんの手料理なんて食わせん。


ってことで。


一ヶ月後一日中お菓子つくらなきゃならんし。


「モテモテー。好きな女の子いないの?」

とか妙子さんのからかいが始まるしあ、一つカレー粉入れよっと。

俺が好きなのはアンタなんだって。
そういうの出さずにいるの大変なんだぞ?
そもそも毛も生えとらん乳臭いガキなんか裸で誘惑されても勃たんわ。
俺にロリ趣味はないのだ、チーチチオッパーイとかそんな感じだ。

首絞めに関しては俺のせいだが。

一回そういう遊び流行って危ないから

「そういうのやるなら俺にかけてみろ締めてみろ、はん、それからプロレスごっこ解禁してやる」

などと、青ざめるような、もし絞められ、死にそうになった場合の苦痛の話とかを教えてやったりして大体が止まるが
止まらない馬鹿はまず「俺を倒してみろハハハハハハ」とかやって毎日毎日ガキどもにチョークかけられたりするし。
まぁ肉体強化してるから全然蚊に刺されるようなもんなんだが、たまにフライイング系やってくるから自ら飛び込んで怪我させないように技受けたりしないとダメとか
まじでめんどい、はぁそろそろ大人になってくれよ小学生、俺は忙しいんだよ!?


「なんか夏場の夜の電灯だから問題起きたら其処に放り込め、一挙に物事が解決するから」


とか教師に思われたりしてめんどくささがバリバリなんですけど。
俺がタツマソリューションとか変な能力もってたりしたら誰かパッシブスキルから外してくれないかな。


「あそこにいってきて末馬君」

「またすかー先生いい加減疲れるんですよー」

「お願いだ!末馬君ならアレ止まるから、また校長室でお茶会開くから、校長も許可してるから、こっそり先生の奥さんの弁当食べさせてあげるから」

「え、マジで!?…ん、それ賄賂じゃね?あと先生の奥さんの卵焼きいつもひどくね?カラ一つは必ず入ってるし、あと全体的に美味しくないし。
先生なんでいっつも俺に弁当食わせようとすんの?そしていつも出前かカップ麺先生だけ何で食ってんの?そっちが食いたい俺的に」

食べれないこともないし、でも絶対なんかハズレあるんだよな、「うもぐっ!?……え?」ってなるやつ。
マリオ64に持ち上げられた大きい爆弾のやつみたいな声でんの。

あと奥さんのメシマズ弁当こっそり俺で処分しようとすんな。
確かに誰かの胃の中に入ったほうが捨てるより罪悪感は全然ないけど。
バレてもお腹を空かせた子に食べさせてあげたんだ、とかいえばいいしね。
おい、俺の名前がでたら、「貴方はお子さんにちゃんと食べさせてないんですか?」とかなるじゃん!?


「いいから!」


「了解ーまぁ腹ヘリよりもましか…あと奥さんにバレても俺の名前ださんでくださいね」


くそう、いざとなったらマジで海鳴全土に轟かすフードファイター刃牙じゃなくて飢鬼になるぜ俺。
あ、なんか自分で思っておいて、なんか強そう。

「フードファイター飢鬼、いいかも。今度そう名乗って食べきったら無料チャレンジしてみよう、そして沢山の店の壁に名前を残す、うん絶対やろう」

それ見て「くだらねぇっ!?」って言ってる奴とか見るのを楽しみにしたい。
うわーちょちょ忘れないように次の授業で使うノートにメモしておこう、こういうバカ話格好良い俺ってなる、メチャ自己満足。
よし休みの外食の時妙子さんに進言しよう、でもあの人少食だからドン引きされそう。

「わかったから早くいってきて」

うもう、忘れたどうすんの?折角面白そうなのに。



「あーもうーお前らくっだらねぇぜ!ならこうすりゃいいだろ!?貸せい!俺がこんなもんこうしてやるー」


「「「あーたっくん!てめぇ!?」」」


「アハハハハハ俺は捕まんねぇぞ!」


とかやらされるし。


毎日こんな。

マジでこのまま小学校中退してー。

本気なんて出すんじゃなかった。
前世でも俺が本気を出すのは期末テスト始まる5分前だけだったのに。
なんで俺の数少ない本気を毎日惜しみなくださせようとすんの?


出前こっそり食わせてくれる先生もいるからいいけどさー。
いいのか校長公認って?


妙子さんに褒められるしいいけどさー。


毎日余力残らんぐらい学校での争いごとを解決させられるようになってきた、なんで小学三年生がこんなことしなきゃならんのよ。
最近滅茶苦茶腹減るようになってきたし。
妙子さんの弁当うまいからいいけどさ、ハードな部活やってる高校生並みに最近作ってくれるし。


最近なんかしらんが妙子さん&俺で何故か色々な子供が集まる行事に駆り出され始めている。
あの人真面目だから、あの人の傍にいる俺は適度に空気を抜いたりして大変なんだよマジで!?
そこらにいる大人の男性バリバリ狙いにくるから俺は母を奪おうとする男に対してのガードマン状態。


気疲れ半端ねぇ、あーあーもうどっか妙子さんと二人で旅行してー。

この前なんて妙子さんと夫婦原喧嘩解決しにいったんだぜ?



とかやったりとか色々だよ。


そろそろ首回んなくなってきた。



「ねぇ」

「ん………なのはじゃんどした?また誰かアホなことやり始めた?お前も視野ひろっ!?て感じだからなんか見つけた?」

「あの例の手伝ってくれない?」

「じゃあ、俺んちの前に来て、放課後」

言っておく夢の続きじゃないからな?







[36072] それは過大評価すぎる、そのまま俺が過大な重力の輪に取り込まれるからやめて!?だって軽いですもん僕by達馬
Name: みさりつ◆2781aa24 ID:36037864
Date: 2012/12/12 20:34
末馬達馬はしょっぱいリアル系ボスボロットみたいな感じ。




高町家にとって末馬妙子と末馬達馬は素晴らしい親子だった。

末馬妙子は凡ゆる人間を見てきた士郎でさえ時たまこの人は
何処か紛争地帯で活躍するワンマン・アーミーにしてカリスマ指導者のような女性だった。
こういう人間が英雄と呼ばれるのだろうな、と思わせる超人性を持ち万能な機械の神様のようだった。
鉄人、その名の通り、何度も何度も打たれながら鍛えられあげられた、精神性。
本当にこんな普通の街にいるような人間でもない筈なのに、誰にでも好かれていながら、誰よりも孤高だった。
まるでありえない平等性と正当性を獲得している。
人ではなく王のような存在だった。
彼女がもし士郎がいた世界に入れば、比類なき存在になれたのではなかろうか?


「確か請負人だったか」

達馬が言っていた言葉で「あんた、どこの人類最強の請負人ですか!?」

だったか。

確かに彼女はそんな感じだ。


人間なのか?と思うような女性だった、暖かい人でありながら芯は鋭利だったように感じる。
美しい鞘に守られた禍々しい妖刀。


ある時彼女が引き取った少年達馬という少年。
彼も彼で、人のようで人ではないような気がした、初めて翠屋で見たときは
消えてしまいそうな儚い痩せっぽちの少年で誰よりも孤独。
しかし、彼は士郎が見てきたどんな人間よりも人間らしい人間。
その清浄さは或る意味悟った僧のような少年だった、たかが5年どんな経験を積めばそのように確固たる己を形成出来るのか。
彼はきっと人間じゃない人間の末馬妙子の息子になるために生まれてきたような気がする。
そして彼も10代に満たずに異能なほどの身体能力を持っていた。

そして数年、彼等はどんどんと姿形を変えていく。

末馬妙子からは人間味が生まれてきた少しずつ人の余裕さが出てきたのだ。
末馬達馬には人間として更なる飛躍、人としての強さが芽生えてきた。



血が繋がっていないそうだが、心がしっかりと絆で結ばれていた。


「本当に君たちが海鳴に来てくれてよかった」


高町士郎の娘は何処か歪さを幼年の頃持っていたかもしれない、と今更ながら思い至った時がある。
己が御神として使命の守護する人間を庇って大きな怪我を負って全ての家族全員がバラバラになったような状況に現れた末馬妙子
彼女はなのはの孤独を防ぎ、なのはの堅い部分を解してくれたのだ。



そして達馬という少年はなのはのまるで兄のように接しなのはに様々な世界を見せ可能性を広げてくれる。
高町士郎はこの少年に対し、御神の才能を見出し始めていた。
守るというのは人の成長を促す意味もあると気づかされたのだ。






おい




「なんで、なのはに逆上がり教えて出来るようにさせただけで、俺士郎さんに御神を習わないかって言われるんだ!?」


勘違い系にどうあってもならんぞ俺、言動がバカっぽいから無理。

俺あの後なのはに放課後逆上がり教えたんだ。
厳しくするとアリバにぶっ叩かれた、なにこれ全く俺楽しくない。
なのはの練習する鉄棒の横の鉄棒で大車輪やってたら、すずかに鼻で笑われたし。



あと高町士郎。

そんなに嬉しかったのかバカ親めっ!
ハンディカム嬉々として構えていたし。
出来るようになった瞬間の喜びっぷり半端なかった。
まるで赤ちゃんが大地に立つ、とかそういうレベル、「なのは逆上がりが出来た」とかビデオ30分一本つくりそうな感じ。
でもなのはが機械系強いからあいつが自分で編集するのかな?何か笑けてくる、俺横でぐるんぐるん回ってるし、空中で小島よし○の真似したし。
やっぱりすずかに「くだらねぇ」って顔されたし。いいよその顔がいいぜ、くだらねぇが俺のエネルギー。

俺は妙子さん力作の夕食のビーフシチューを食べながらそんなことを思った。


「チェチェチェーンキュー!とかそんな感じのテロップ音入りそうな勢いで作って欲しいな、そしたら爆笑してやる」

「あ、ファーストだ、そういえば私ジージェネで0が最高だと思う」

「Fでしょ?フィン買いましたよ俺」

「ガンダムファイター載ってる機体の武器じゃなくて技にEN消費多めとかやったんだよ?意味わからないでしょ」

「まぁ、あなたガンダムファイターぐらい体力ありますからねEN∞ですしね、多分超熱血のまんまずっと戦い続けますね、きっと」

俺無駄に戦車とか鍛えまくった記憶あるわ。
なんだっけな、Ex-Sガンダム強かったなビーム4回攻撃。
あれでコロニー落としよく防いだな。
逆上がりも出来ない魔法少女リリカルなのはともし俺の育てた戦車が勝負しておとされたら俺、多分一週間ぐらい泣くわ。



それはいい、もういい。

なのはのことだ。

まぁあいつ俺が自転車の乗り方教えなかったら一生自転車乗れなかったと思うぐらい運動音痴だったしなぁ。
ていうかよく将来あれで教導隊に入れたな。
なのは5歳幼年期からの19歳の究極完全体までの進化は一体何があったんだよ!?
ああ、わかったやっぱり勝率とかだよね、戦いまくって強くなっていったんですね、はいわかります。
だってあいつの体の柔軟性のなさ、中年並だし、どういうこと?
あずまんがの大阪ばりに体が曲がらない奴なんて初めてみたし。

「いいーちにーさんし―――――――――――――――」

「ばばばばばばばばたっくんやめてやめてやめて痛い痛い痛いのっ!?早く5!5!」

「どんだけ体動かさなかったんだお前、よし今日も泥だらけになってクタクタになるまで引張り回して少し鍛えてやろう」


俺がこうやって過去体伸ばしてやらなかったら、こいつ人間尺取虫になったんじゃないか?と思うぐらい硬かった。


結構逃げられたけど、微笑ましいそうで、桃子さんに捕まえて貰ってハイと渡された。
チャンバラごっことか握力ないせいか良く手からクッション性の棒がすっぽ抜けたりしていたし。

しょうがないから俺は悪党としてしょうもないなのはの殺陣で倒れたりしてた。
という遊び友達やってたなぁ

多分思春期になったら一生遊ばなくなるタイプの異性の友人だな俺。

人はそれをいじめっこという。

「へー習い事する年になって来たんだね、私いっぱいサポートするよ」

「いや断りましたよ、だってベリィハードですもん日常生活で神速する必要あんのか、和菓子と変な身体能力強化でいいよもう――今日能力レベルアップしたし」

なんと身体能力強化の能力ではなく今日俺の和菓子能力がついに成長したのだ。

「最早和菓子を手からだす能力じゃなくなった……逆につまらなくなった気がする」

洋菓子、翠屋のシュークリームより格段に次元世界が違う
スーパーの売れ残りの賞味期限ギリギリで半額以下のような不味いシュークリーム。

一回目のおかわりも食い終わったし、箸休めに出してみる。

まだ出したことはなかった。


なんか出来るという確信があるだけだ。

まるで固有結界に剣が登録されたように

「トレース・オン」

「何それ?シューも出せたの?」

俺は手からシュークリームを出して食べる。

うん不味い。
何かカスタードががっちりして不味い、生地とクリームが揃って喧嘩して別居している。
そして全てに置いてしょぼい。



26円かな、払うとしたら。
甘いのにしょっぱくなってくる。

何か俺みたい。

「あ、思い出した、これ俺がよくスーパーでアルバイトしてた時、店長からタダで貰っていたヤツだ。
そして家に持って帰ってそのまま冷蔵庫で腐らせた―――――あ」

思い出した瞬間に腹が痛くなってきた。

「え?俺バカじゃない!?マジでバカじゃない!?なにこれ!?本当にひどすぎる!?なんという自爆能力かっ!死ねばいい!!」



「え?」


「すいません夕食の途中、ちょっとトイレ行ってきます」


まだガキだから胃袋よえんだよ、牛乳に負けるから朝飲まないし。



本当に泣けてきた、多分俺の能力の源泉は俺の貧相な味覚が起源だったのだ。
だって和菓子の味全部仏壇に放置されたような味だし。
サザエのおはぎ好きだったからおはぎが一番美味い。
俺の体はしょうもない味覚を作り出した飯によって生命維持活動されてきたのだ。
実家のかーちゃんの飯まずかったし。
給食がお袋の味だったし。

そうそれは、まさしく――――この体は無碍な粗食で出来ていた。

「とか言いたいよ!もう腹痛!最悪だ!」

俺は和菓子能力を封印することになる。

体から剣が生えてくるのではなく、腹痛が起きるからだ。

ヴォルケンズに襲われて投石がわりにこのシュークリーム投げても逆上させるだけだし。


精々嫌な奴に食わせるぐらいか。

そうだ、妙子さんに近づく不埒なヤツに食わせればいいんだ!

いいよ!


使えるよ。


でも腹痛い。


俺と同じ目に………させてやる!


「う」











次の日学校休みました。

食中毒です。

一応皆勤賞目指してたのに。



直って学校行ったら色んな人たちに「さぼり?」と聞かれて悲しかった。



なんで俺の能力ってこんなにしょっぱいの?
普通もっといい奴あるだろ?
アクセラレーターとかさ。

まぁどうせ馬鹿だから、自分で独りでに首折れ曲がって死にそうだけど。


学校1週間休んだ後。

「なんか、なのはとアリバがフェレットの話してる。動物オッケーだっけか、翠屋って―――――あ」

あ、はじまったのね。







あとがき



設定

末馬達馬 魔力AA


レアスキル 身体強化ギア たっくん的に可変ギア付き天然道士

魔力で起こせる破壊や防御を肉体能力の強化のみでの結果で起こせる。

ビルを粉砕する砲撃がビルを粉砕するパワーになるとかそんな感じ
ムラが多く調子に乗りすぎると自爆する。

だから油断して下手に近づいて来た奴をその全開で最大の一撃必殺する
タイプ、防犯的な意味で。

市民と軍人で市民を舐めきった軍人をいきなり拳銃で撃つとかそういう
戦法ゲリラ攻撃、外して軍人の認識を改させると絶対負ける。

戦いの経験が0ですから。

それに市民ですので美味いタイミングを失敗して負ける。
あと人を傷つけるのが嫌という基本的なところが身にしみているので

非殺傷設定が戦闘を始めると身につく。


あと経験地1でこの技覚えるとかそんな感じ

一生掛けて鍛え続ければ物凄いアルティメットなことになるが
そもそも一生地獄を見てでも鍛え続ける理由がないので3日坊主になる
から結局宝の持ち腐れ、こいつ多分そんなことしてる暇あったら妙子さんの所に甘えに行くし。

妙子さんがジェイルスカリエッティに捕われて行方不明になったりとかそういう限りそんなことしない。

そもそも妙子さんでなんとかできるから意味なし。

カロリーも結構消耗するので食費がかかる。
正直本当は少食の燃費が良い末馬ボディじゃないと真価を発揮出来ない。

いくらフジリュー版封神演義の黄飛虎もしくは武吉の体に一般市民が入ってるだけだし、最終戦聞仲みたいなおっかない人が来たら逃げるしかない。

もし妙子さんとたっくんがシリアスな世界観で生きれないのはそういうこと。
ただの武闘物の一貫してシリアス最強系やるし、あと途中でお金たまったらやめて毎日二人で仲良く暮らし始めるし。

ハンターハンターの世界とか行ったらこいつら一番安全な場所さがして
そこに住んで毎日イチャイチャしながら日常の問題解決するだけ。

多分ゾルディック家がある街とかに住む。

IF版がそんな感じの逆にギャグで行った馬鹿。

一発一発ハンターハンターのウヴォーギンのビックバンインパクト非殺傷状態。

陰獣戦のウヴォーみたいに暴走族に無双してた。


実はこの日に魔力の数値が増大した。

修行フラグをバキ折ったせいで、不幸な目にあった。

そして士郎の過大評価は案外的中している

なのはに色んな子供らしい遊び教えて或る意味兄貴キャラ。
結構なのはの体育が苦手なところを克服させている。
頑張れば小学生の範囲ないなら大抵出来るよ普通ということを教えたし。
フラグは立たない。

どっちかというと近所の面白いお兄さん。

こいつの隠された第三の能力は基本的に妙子さんが絡まないと一般市民
という話。

男になるのは好きな女の前だけ。
だから妙子さんが居ないところだとホントのバカガキやってる。

数年間気持ち悪いと言われ暴力や罵声を受けながら生きていたので
自分を過小評価しやすい癖が身についてしまった。

毎日ガキの体で「どうなんだよゴラァ」とか言われながら生活
してたし「お前なんか生まれてこなかったらよかった」
とか言われ続けて5歳までヘロヘロしながら「さっさと捨ててー」
と思いながらなぁなぁに生きていた。

こいつ精神的に強いとかなんじゃなくて正真正銘馬鹿だから余裕で凹んで回復凹んで回復してただけ、あと自分で勝手に折り合いつけることができるし、まぁ受験勉強に落ちても死ぬまで落ち込まない、落ちて5分くらいしたあとに「あーまた社会のゴミとかかーちゃんに言われるのかー」とかそんな感じ。あ

でもコイツ生涯末馬妙子の守護者目指してるから修行してる暇あったら
妙子さんの傍に1分1秒たりとも離れない方が良いと知っている。

脳内メーカーやったら多分妙子90食べ物10ぐらいの割合を弾き出す。

和菓子能力を本気で封印した。

「もう妙子さんの美味しいご飯あるからいらんこんな馬鹿能力」

「大丈夫?正露丸飲む?」

多分目の前で飢えて死にそうな人間いないかぎりもう使わない。
とかいいながら、また無駄に暇つぶしで使って後悔する。

「うわー俺煙草やめれない人みたい」



[36072] ねぇ妙子さん取り敢えず今から海外旅行行きましょう。 プロローグ
Name: みさりつ◆2781aa24 ID:36037864
Date: 2012/12/12 22:58
プロローグ。

「ねぇ妙子さん変な夢はもう見たけどここ一週間で「誰か助けて……」とか声変わり前の少年っぽい女性の声優の幻聴とか聞こえなかった?」

「へ?」

「ど、どうですか?」

「聞いてないよ?だってたっくんの苦しむ姿を自分に重ね合わせて私も昔のこと思い出してぐったりしてたし」

「あーまじで1週間妙子さん吐いたりしたり俺は下痢したりしましたからね、何か美味しいもの食いたいですね」

そうだった妙子スーパーモードはメンタル面が超弱気になると全く発動しないのだ。
おおう、なんという俺ファンタジスタ!?
まさかシュークリームはこう言う偶然を必然を作るために
俺を何度もトイレに行ったり来たりさせ、ケツの穴の回りを傷つけ血さえも出させ続けたのか。
ガキの肌やわいから、スゲー痛いんだぜ?
ウォシュレットでお湯をかける度何度悶えたか。

「ふおおおお…」

とか間抜けな声ついつい出したし。
あとトイレ家に二つ有ってよかった。

上の階で妙子さんがまた色っぽくなってたし、まぁ滅茶苦茶気持ち悪そうでしたけど

そんなことやってる間にあの高町なのははリリカルっ!マジカル!ってやってたのか。

凄い、これ現実感ありあり。
本当何かあーあーあーあーとしか言いようがない。

やっぱそういうもんですね、世の中。

やった。

本当に嬉しい。

そうだ、俺はオリ主なんて精神的に病みそうな胃がハラハラするような生活なんてしなくていいんだ!

顔に80キロの野球ボール掠るだけで全然特殊能力で痛くないのに「ひぃいいい!」と目をつぶってしまう僕なんて向いていですもんね!

うんマジで俺普通の小学生続けます。

あとさ、俺さ大体の流れ深夜アニメ流し見してなのはしってるけどさ。
本当に大まかな流れしかしらんのよね、こういう逃げよう系な俺たちに重要な知識が全然足りない、。

それが


何時何処で?

「何か街中に殺人犯練り歩いていて外に出られないような気分……それでも学校は行かなければならない、それが学生」

それよりも妙子さんだ、確かに彼女の世紀末勇者っぷりには感服しているが現実問題どうなるかが怖い。

ジュエルシードで末馬妙子の歪んだ願い叶えられたら―――どうしよう。

前に

彼女に今もしも男に戻れるならどうする?とかそういうIFの話を話し合ったとき。

例えば今この瞬間テンプレな感じで神様に人生やり直させて上げるって感じで男の6歳になれたらとかなったらどうする?

とかお互い話し合ったんだ。


その時の恐ろしさ半端なかった。


俺は滅茶苦茶アホなこと言ったって後で一人で自殺しようかなとか思ったし。
ていうかお互いに自爆し合ったような気がする。
そんなこと言ったて神様なんて降りてくるわけないし、降りてきたら、今更か!?ってキレるし


その時。

妙子さんは言った。

「え、今さら男にされたら、多分本気で気が狂うよ?
なにそれって感じ?想像するだけで気持ち悪い、何私の苦しみを馬鹿にしてんの?って狂う」


うわー洒落になんない。





あんた絶対に過去は変えない衛宮士郎見たいなところありますからね。
どんなに目の前で悲惨な現実起きようと、悲しむ前にその現実に正面向かって走り出す所ありますし(他人のためなら)

俺だったら悲惨な現実から走り去るのに。

あとから後悔しないし、全力でやろうとやり遂げる正真正銘の英雄ですからね、微塵も気にせず。

人事尽くして天命を待つ人ですからね。

本当高校時代の妙子さんの話聞いたけど俺、感動して泣いたし。
若干現実逃避しすぎじゃね?
とかなんでそうなるの?
とか逆に悪化させとる。
とかそういうの多かったけど。

自分の場合だと途端に苦しみ続けますけど。

俺なら無理

「え、まじで、まじで?」とか喜んで騙されて聖杯使いそう。

俺zeroだと間桐雁夜好きだし。

あ。

ジュエルシードで酷いことになったら。

末馬妙子が完全に狂いラスボスになるかもしれん。

下手したら、本当になりかねない。

この人スケール半端ないから。

「全て滅せよ」

とかやって次元世界ポンポン消滅してくかもしれん。

だって彼女転生TS最強オリ主だぞ。

どーしよ、そうなったらマジで世界滅亡するぞ、究極の聖人から究極の悪になったりしそう。
ヒーローから一気にラスボスだ、

やばい

誰も勝てる気がしない。

まじで。

人の為ならあるはずのない才能に目覚めるような奇跡のような人間だ。

逆方向にいったらネオ・グランゾン一万体とか召喚しても俺は驚かない。


血の気が引いてくる。

俺はその時多分妙子さんの協力するかもしれんけど。
それで彼女の為になるなら。

なのは達に「なんで貴方も!?どうして!」とか言ってきた時

「彼女が望んでいる、なら俺はただ彼女為に―――――言葉は不要だ」

とか似合わないキャラやりそう。

実際はすげえ卑怯な手とか下劣な手とかしまくりそう。
そのあとなんだかんだあって負けて「彼女を救ってくれ頼む」とかテンプレやりそう。

やめようやめようやめようこれアカンってアカンもっとましな方向方向方向


よし。

こう考えよう。

妙子さんが本当に本気でこの世界で男の人生をリスタートしたいってなら協力するけど。
そしたら俺が女になればいいし、むしろそっちの方が楽そうだし、てか9歳で夜、ロリっぽくエロく迫る自身があるし。
狂いそうなら「なら代わりに私を滅茶苦茶にして!」とか余裕。

嬉々として女の快楽ってどうなの5倍とか言うし、マジで試してみたいとか考えるアホですから。

妙子さんの前では絶対に口にする前に舌を噛んで死ぬ発言だけどな。

余裕でOKちょちょいのちょいです。余裕で魂が妙子さんのアレなら喜んでイケルし咥えることも全然出来る。

アブノマールも全て受け入れるぜ!?

むしろニューハーフってテク凄いらしいから俺もそんな感じになるね絶対。
まじで、俺下手したらホモになる才能がある、妙子さん限定で。
別にマジで好きだったら切り替え、部屋の電気のスイッチみたいにONOFパチパチできるし。

よくよく考えると俺って―――――サルだよね。




魔法少女リリカルなのは 勝手に始まりました。



「さってーどうすっかなー。1番いい手一つあるけど」

俺がなんとかして説得して1ヶ月ぐらい妙子さんと旅行に行く。

海鳴温泉以外。

正直、本当に自分良ければ全てよしな最低系素でやってるなぁと。

と末馬達馬は微笑んだ。


「でもそれでいいや」

その顔は全力な少年の顔だった。

ヒーローでも悪でもない、ただの人間の顔だった。

そして唯ひとりの為の守護者の顔だった、戦士の顔だった。

そう、これが高町士郎がこの少年に見出した御神の才能でもあった。

そして一人の男の顔だった。

戦うと決意と覚悟に満ちあふれた顔だった。

彼は彼としてただの一人の人間として一生懸命になるだけだ。

この話は魔法少女のお話ではない、ただの一人の馬鹿野郎のお話だ。

どんな馬鹿でもやるときゃやるのだ。



つづく?


あとがき

末馬達馬。

この話の主人公。

取り敢えず、逃げると思う。
覚醒なんかしていない唯、恋をしているだけ。

世界とか平和とかどうでも良くて好きな人が良ければそれでいいタイプ

これで妙子さんになんとかしよう、って言われたら

頑張る。

多分原作キャラに惚れてた場合、そいつの為に一生懸命頑張るただの男になってた。




[36072] 世の中こんなもんでしょう、ちょっズボン!?脱ぐな!完結
Name: みさりつ◆2781aa24 ID:36037864
Date: 2013/03/03 16:12
今回だけなんとしてでも逃げよう、規模の酷さは確かAsらしいがAsは転移魔法というものがあり
海外に高飛びしても、ルパンの匂いを嗅ぎつけてくる銭形さんばりに魔力の臭いを嗅ぎつけてくるだろうから。
どこ逃げたって一緒だろうし、ふむAsは闇の書のなんちゃらで妙子さんが取り込まれてしまわなければ大丈夫だろう。
それ以外は大人しく魔力なんてポイポイあげよう。





「妙子さん、お願いします!僕とけ―――今から海外旅行行ってください一ヶ月くらい!」


決意やらなんやら気持ち篭もりすぎて結婚してくださいとか言いそうになった。

この人また趣味である、二次創作をパソコンで見てる。
最近何か頼まれごとない限り俺がいると結構こうしてゆっくりしているなぁ。
しかしモノ凄いスクロールの速さだ、流し読み?
多分全部読んでるんだろうなぁ。
マジで超人。


「ん?パスポート作らなきゃならないから、今からは無理だと思うよ?」

「――――――あ」

そうやった。
色々面倒な手続きがありますもんね、そっか、そうだ海外に逃げるためにはビザ申請がいるのだ。
なんてこったい

そもそも妙子さんが俺が学校を一ヶ月サボるのなんて認めるわけがないし。

「あと旅行はいいよ?」

小学校通え、とか勉強しろとかそう言う感じに叱られて
なんとか説得してダメだったら床に寝転がって体をフリフリして降参ポーズし続けるつもりだ。
まるで間抜けな顔をした雑種犬のように。
あー前世にいた近所の柴犬のメスによく飼い主の許可得て骨っこ買って食べさせたなー。
あいつどうしてるだろうか、病気にはなっていないだろうか、あんなに懐いてくれたし
唯一俺がある雪の日に家にお腹が痛くてダッシュで帰ろうとしてそのままガラスの防寒用の外玄関に突っ込み、ハリウッドの血糊いらずで血だらけになった時
俺を笑わなかったいい女だったのに、みんな「くすっ――――えええええええええ!?」って感じだったし。
俺を助けるために首輪切って真っ先に傷を舐めてくれたし。

雑菌入りそうなぐらい。
そんな血だらけの俺の15針の赤い花を咲かせた艶姿を写メで撮影し、ブログに上げた外道な友人よ「悪魔よ去れ!」という有名な台詞を――。

え?





「まじで!?」

「だって、たっくんは大人だし、自分で判断出来る人間でしょ?じゃあ、自分で好きな選択をしてもいいんだよ、「幸せだったなぁ」って死ぬのが夢だっけ?」

「はい実は……今回の旅行、そのために必要なんですよ」

「じゃあ協力する、私は君には自由に本当の幸せを掴んで欲しい……私の子供として、でも君は大人。
うん、だから親として道を間違わないように教えるんじゃなくて…ただ、その道に協力するだけ、そう思ってる、君の母として同じ兄弟として友人として」

本当に私は母親ではないんだけどね、私の今の両親の養子だし君は。
戸籍上は義兄弟だし、と妙子さんは言った。

「ね、私はもういいんだ……もう十分幸せだし、君がやりたいことは絶対に協力したい」

末馬妙子は思うのだ、いつだって目の前にいる少年は全力で楽しく幸せであるために生きる人。

本当にずるい、私だったら君のようになれない、そんなに素直に生きれない。
いつだっていつだって、私は間違ったまま生きているような気がしている。
自分が今まで感じた後悔、私は後悔しているから、誰かに「鬱々モード入ってきてません?」

「へ?」

「もーなに考えこんでんですか?旅行オッケーなんですよね?本当に?」

「うん、いいけど」

「うっしゃあ!楽しみだなぁっえーとえーえーえー石垣行きましょう!」


また妙子さんの水着見たい、超見たいし。
あの妙子さんの恥じらう姿とか、もう大好き。あれ、欝じゃない自分のナイスバディを恥じらってた顔だし、もう大和撫子ぉ!
もう一度脳内HDに焼き付け、永久保存して脳内DVDで海賊版つくって脳内メディアケース満杯にしたいし。





ね?今、君がやりたいことに絶対協力するんだって言ったよね?
これ、俺プロポーズしたらいけるんじゃね?
だって俺が幸せだったなぁって死ぬには妙子さんとの結婚と子―――子供作って孫も出来て生涯妙子さんの横に居たいな、という理想な未来が必要なのだ。
結局の所根本的なところが解決してないから無理だけど。



「で、君――――何か隠していることあるでしょ?最近周囲で謎の事件あった見たいだし」


やはり、気づかれるか、原作とやらの下手にあると変な偏見が生まれそうな知識は俺は彼女には教えていない。
魔法少女リリカルなのは、という題名を教えてあとは全部忘れましたー、だ。
この人に教えたら、また余計なもん背負いこもうとするし。



「ええ、だから隠していていいですか?」

「え?」

「あのですね、知っていることが可笑しいんですよ、そんな可笑しな気違いに貴方もなることはありません。
仮にですよ俺たちが知っているからって何かして助けてやろうなんて傲慢もいいところです。
助けてやろう?ああ、なんて上から目線、それは当事者ではないから出来る傲慢だ。
今この瞬間に助けて欲しい誰かに沢山の人たちに対する傲慢だ」

もし、全人類最強でこのキャラが可愛いから助けるとか最早、神だ、自分の教義に当て嵌らない者を助けない神様だ。

俺は知っているから、知らないそんなもの―――俺は唯ひとり救えればいいんだ。

知っているから――――そんなこと言ったら数百万人飢餓者、今この瞬間も死んでいっているこの地球で争い続けている、その巻き込まれた誰かも助けなきゃいけない。

そんな善意を背負うなんてできない、持つ者の責任?――――知るか!?

とかあることないこと言って、打算的なことを言って。
我が身可愛いよ俺はというところを誠心誠意伝えて逃げさせて貰おう。
可愛い妹分のなのはがもし知っている未来と違い、酷い目にあって見捨てることになっても――――痛っ。

「あ……」

ぱしり、と俺の頬はうたれていた。

初めて俺は妙子さんに叩かれていた。


ああ、そうだよな、この人は「裏切られるから、だから優しくしてはいけないのか?善意でなくては人を信じれないのか」とかまるで某十二国の陽子さんばりに
ありえない覚悟もってるからな、だから俺は背負わせない、どうせまたトラウマ増やすし、フェイトちゃんとかああいうの見たら英雄しだすし、多分。
この人の力ならプレシアも救うだろう、そういう才能があると思う、そういう希望を見いだせる人だ。
俺は「――――そんなに嫌なやつにならなくていいんだよ?」

「………そんなに俺わかりやすいですか?」

「そもそも私だって自分は可愛いし、お金もいっぱいあるのに人の為には使わない、キリがないし、愛着はないけど捨てたくはない、守銭奴だよ?」


嫌そうな顔してるよー。このお人好し、と頬をぐにぐにされる。


「あーまぁそうですね、もういいかー旅行を楽しみますか、なんかあったら何かしましょうか……そうしましょう」


今一番後悔しないのは多分これだしなぁ、と達馬は思った。


片手を掴まれ、隣に座らせられる一緒にあーでもないこーでもないと旅行プランを考える。

片手に伝わる彼女の暖かさを感じながら強張っていた頬が緩む。
どんなことがあってもどんな悲惨な現実がこれから先生まれようとも、この手だけは離さない、そう誓っている。

ぐだぐだ悩まないのが俺の信条、何かあったらそん時はそん時。
ああもう、こんな知識いらねーまじで。
なんだかくだらなねぇ罪悪感も感じてしまうし。

本当にポエミィな夢見る乙女ちゃん見たいなやつ。










無印 無事に終了。






「取り敢えず、明日から那覇で国際通りとちゅら海水族館でいいかな」

私レンタカー借りるよ、と妙子さんがいいます。
俺も車運転したいなーとか思う、一応前世で車の免許持ってたし。
今回の人生でもしかしたら免許とるの苦戦するかも―――変な癖ついてるし。

那覇にその日の内に飛行機でびゅーんと那覇空港にたどり着きました。
今日は適当なホテルに泊まることにします。
てか熱い、本当に南国。


全日空ホテルで二人でお菓子とか夕飯買って、だらだらとします、移動疲れです。


「何たべてるの?」

「砂肝ジャーキーです、おお!これ100円でコンビニで売ってる割にこれご飯のおかずになるぞ、ケンタッキーをご飯のおかずにするぐらい合いそう!」

はい、と黄色い袋を渡して一つ食べてもらいます。

綺麗な指が砂肝ジャーキーのスパイスで汚れます。

ぱくっと食べると

「………うーんしょっぱいけどなぁ、梅酒には合わなそう」


おお、手についたスパイスを舐める感じ、いただきです。
エロいぞ、エロ過ぎる。


「泡盛とかどうですかー、妙子さんチョーヤの梅酒かビールしか飲まないですね、しかも一杯ぐらい、今日は珍しく沢山飲んでますね」


開けられた紙パックの数が半端ない。
牛乳を一気飲みするようにゴクゴク飲まれると何か嫌な予感するんですけど。


「まぁこうしてゆっくりお酒飲むのこの人生初めてだし、一人で飲んだら、狂いそうな悪酔い始まるしー」

「うわー」

「うーん、付き合い以外で飲まないしねー寒い日に梅酒をホットにして飲むぐらいだなぁ私は昔から、で、貧乏な学生やってた割になんで君高い酒しってるの?
ジャックダニエルの年代物とか、あんなもの常飲しないでしょ、大学生?」

「其処は鏡月コーラ割りとかいつもそれ系ですけど、やっぱり仲間内で集まるとみんなタガが外れて色んな酒飲もうぜワッショイ!ってなります」

一晩で一ヶ月分の金がブッ飛ぶことが多々ありました。
馬鹿だし、殆どその日暮らしが身についていました。


うわー折角離島にも行くのに、未成年とか勿体無さすぎる。
泡盛も色々あるのにー、泡波の古酒飲みたいよー本州じゃ手に入らないのに。

「で、取り敢えず石垣に暫くまで那覇で遊んで、離島とかダイビングとかでいいの?」

「うーむ、この世界のドクターコトーに当たるドラマの撮影場所のロケ地観光したいです」

「なんだっけ、どんな題名と話だっけ」

「確か「ドクタークトー」話はブラックジャック離島版、無免許医師がその天才的な医療技術で老い先短い人たちを救っていく謎のドラマ。
故郷を捨てた若者たちが彼の元に向かい、じいさん、ばあさんの延命の為に大金を支払うという展開が基本です。
あまりにも生々しい家族関係とお金関係、視聴率が酷くて5話で月9降板しました。」

孤島じゃなくて苦島。

「何それ?」

「涙を流す展開はなく、何故こんな話が……もうやだ、あの手作りの草鞋のエピとか改悪されすぎ!」

「別に改悪も何もないけどー」

「そう、彼は警察がいない離島に逃げ隠れた無免許医師、もう漫画版とか見てられない!村八分にされてるコトーが!あの絵柄で!」

「みなきゃいいのにーみなきゃいいのにー」

「ラストは患者の家族に夜の海を突き落とされた医者、そして残された人々はその医師が貯めた金を見つけ出して喜ぶという生々しい最後。
そして皆で共同して罪を隠すというリアル、胸糞悪くなる残酷展開。続編は深夜ドラマに「面白いの?」」


「つまんないです、あ、今テレビで再放送してるみたいです」


「欝になりそうだからみないよー何か村八分とか……トラウマが蘇る、小学校とか中学校とか高校とか」

「全部じゃないですか!?」

「もう、好きとか嫌いとかやめて欲しい、私はただ生活してるのに……突然後ろから女子の「はいやめましょう」


ダウナー入りました、はい。

「なんで勝手に告白されただけなのにあんな酷い学校の机「だからやめましょう」

「リコーダーが「そいつの名前教えてください」



うわー何か、また気疲れしそう。

この人労働と奉仕活動とかしてないと鬱々モード入るし。
ジェルシードなければ、適当に放り込んであげるのに。

「たっくーん、はーい脱ぎ脱ぎしましょうねーお母さんにどれぐらい成長したか見してねーふへへ今まで私がされたセクハラされた分ー取り返してやるー
たっくんの肌とかなら触っても大丈夫そうだしーウェヘヘ」


うわっ


ちょちょちょちょ




















おわり。



メインエピソードはこれにて終了。



完。



どんなことがあったかはご想像ください。
どんな展開になろうと、どうせこいつらは一生こんなもんで終わります。

ゆっくりと時間を掛けて達馬は妙子さんを癒していくでしょう、他に方法がないし。

短編もの軽く気が向いたら更新していく感じです。

XXX版書くか……精神的ホモ、オネショタ。


キツいかも。

この話数に沖縄観光短編が追加パッチのごとく入っていきます。



「あ、なんか体痛いんだけど、ウェ……気持ち悪い」

「妙子さん……まじで犯罪です」


「え?」




隠し追加パッチ


IF もうひとり転生者がいたら。



「被告人ヨクササクレ・リリリリバン・バウムクウウェン・オルカパッパラ・マンゴスチンⅢ世(一部省略)に対し
管理局は常識と奉仕の精神を尊ばせるために管理局員として働き、秩序の為に生きることを望みます」

「やめて、それ私の本当の名前だけどフルネームで読むのやめて!?」

「アタマコネッタ・ヒネッタ・イエカエリ・タイゾー」とかなんともまぁ酷い名前を偽名として使い次元犯罪者として管理局に迷惑掛けまくり、あとで賞金やらついてるのに気づき、出頭した御蔭で掛けられた裁判は緩やかに収束したが、やめて欲しい、一々本名を大きな声で読み上げるのは本当にやめて欲しい。

中二病ネームとかキラキラとかそういうレベルの名前じゃないのだ、俺の名前はむしろ最新型の呪文ネームである。

前世の名前がしょうもない感じの南原泰造と言う何か人生しょっぱな損しそうな名前の現在15歳の少女は残念だった。

「こんな少女があの謎の組織「精神とトキの会」ナンバー3、アタマコネッタだと……」

くそう!と少女は涙を流していた。
長い黒髪をマフラーがわりにして顔に巻いて「うごごご、恥ずかしい、死にたい」と唸る少女。

「あとちなみに、本当にあなた一人でナンバー1とか2とか100とかいないでしょうね?」


「私一人でやりました、うん。それは本当は、寂しいから……一人で秘密組織っぽく密売人やってました」


そう言うと、裁判に参加している者共全員残念そうに少女を見る。

最速で、ありとあらゆる次元世界を航行可能とする無限魔力炉を搭載している
「最強龍」と呼ばれる幻のアルハザード謹製、全長5キロの最強戦闘艦を個人で所有していた怪物がこんな残念すぎるとは。

アタマコネッタ・ヒネッタ・イエカエリ・タイゾーという次元世界を震撼させた伝説的な次元犯罪者が、だ。


彼女は密売人としてロストロギアを次元世界のありとあらゆる遺跡から盗掘を行い、様々な所に売り払い、莫大な金銭を得ていた怪物だ。

恐ろしいところはたかだか、Fランクの魔力保持という拙い魔法の才能でだ。
SSランクの大魔道士を単独で打倒したとさえ噂に聞く怪物だ。

本人は相手が脳溢血で突然死んだだけだよ、と言うが、本当みたいだ。


「で、あなたの今まで密売で稼ぎ出した金銭はどこに、あるんでしょうか?あなたの個人所有していたあのリヴァアサン・テラムート5世…という船の中には何もなかったのですが」

こたつと布団と漫画雑誌くらいしかなかったのですが…どういうことですか?

という皆の疑問。

惑星一個買えるぐらいの莫大な資産は得ていた筈だ、それが一切見つからなかったのだ。

そして少女は素直に答えた。

「えーと、恵まれない子供に全額寄付してました」

「嘘つくなよ」

「本当ですって、そう、私が4歳で親にお金とか食べ物ないから間引きされ荒野に捨てられたあの時、立川在住の神様が降りてきて私にメロンパンとぶどうジュースをくれて「嘘つけ」

良い事をすると男に戻れると信じていたTS転生者がいたよ(リリなの短編)


「同類発見ですね……妙子さん」

「同じTS転生者だよね……」

「沖縄在住です、石垣でスローライフしてます、刑期が去年終わったので、毎日ダラダラしています」

佐々木璃々と自らを名乗った黒髪の少女は偶然街中で妙子と達馬がかりゆしのアロハシャツを購入していた時にタイムリーな歌を歌っていた謎の人物を発見して声を掛けたら
なんと同類だった。

銀の龍のなんちゃらはこの世界にないのだ。
目ざとく達馬が声を掛けたら、そのまま今三人でタコライスを食べている。

現在46歳のTS転生者であり、元管理局員である、あと原作知識皆無。
見た目はまるで雛人形のような少女であり、中々見目麗しいのだが、所作がなんとも緩やかで、まるでパンダのような愛嬌があり可愛らしいが、正直可愛いだけの少女である。
46歳なのだが、ある世界の幻の秘宝を手に入れた時から見た目が年を取らなくなったらしい。

あれだ幼女系だ、幼女系のTS転生者だ。


「うーむTSの苦労といえばハァハァされるところだね?部下にロリコン多くてさー、スク水とか着せられたりとか飲み会でランドセルとかさー別にいいけどさー、何か変態臭いけど」


「……それでいいんですか?」

「私に手を出そうとする間抜けなんて絶対に居ないから、呪われるらしいし」

「呪い?」

「うん、何か不幸になっていく感じ?」

「羨ましい!」

「妙子さん!?」

なんでも管理世界で常識を知らずにお金儲けをしていたら管理局にとっつかまり、何十年もの刑期をかけられ、去年でやっと自由になったらしい。

チート具合では末馬妙子に匹敵する怪物なのだが、彼女は何故か、そういう恐ろしさを感じない。
だけれど、多分この人、ラッキーマン的な能力を所持しているっぽいなと遠目で仲良く妙子さんと同じTS転生者の苦労を分かち合っている。

ような気がしても全然していないのを見る。


「私さー生理とかないから気持ち悪いとかないのよねー」

「ずるいずるい」

「正直ちんこついてないお子さんだし私ー二次成長の苦しみとか無縁ですし、正直悩みない、あ、買い物とかで背が届かないのが悩みだね」

「ずるいずるい」



ちなみにタコライスは3人ともタダで食べている。
なんでも店側のミスで3人分多く作ってしまったものらしく、余るのもなんだし、と店側がくれた。

普通はそんなのない。
どんなに余ろうが、タダで提供するとかない。
だけど、この佐々木璃々は店の店主の姪っ子にそっくりらしく、何かくれた。

この佐々木璃々という少女は元勘違いモノ最強TS転生オリ主(ロリババァ)。

「三人の中で一番濃いかな」

「そうですね」

「どう考えても」

管理局では三佐まで幸運だけで上り詰めたというチートである。
適当に指揮すると、基本的に凡ゆる作戦が幸運で成功するらしい。
なんでも相手側がミスを連発するらしい。

あまりにも幸運値がカンストしている人だから、妙子さんと違って精神的に安定している。
同時にデスブログ的な能力を保持してるっぽいので、敵なしである。

この人いるだけで世界とか凄い大丈夫そう。

「ねえ、達馬君?」

「ん?なんですか46歳反則系さん」

「私少年とか好きなんだけど、女装しないかい?似合わない女装少年を快楽漬けとかやってみたい、そういうの今までやってなかったし、昔は月間わぁいとか買ってたし、流石になんか一度くらいセックスしてみたいかな、とか思ったし。」

「しないよ」

「じゃあ精通したら筆おろ「俺にも選ぶ権利ぐらいありますから、あと精通は昨日しましたし」

「え――?」

「あ」

「もしかして昨日私く「やめときましょう忘れましょう忘れましょう」


アタマコネッタ

多分もう出ない。


妙子さん

上の粘膜

達馬


不覚



[36072] 未解決未来編 1
Name: みさりつ◆2781aa24 ID:4563c076
Date: 2013/02/21 12:24
末馬妙子という少女が居た、とアラキは思った。
弱くそして誰よりも傷つきやすいガラスのような少女だった。
パコリと刺身が盛り付けられていた発砲スチロールを折り曲げ、アラキはゴミ箱に投げ入れる。
だが、そうではないのかもしれない、とアラキは思う。
こんな風に折れたりもしないし、砕けたりもしない、だが傷つく。
曲がることもない鉄のような少女だった。

そうだ、金剛石だ。

ダイヤモンド。

「末馬……」

夕飯の片付けを終え、アラキはワンルームにでん、と構えるベッドに潜り込み、身にまとった衣服を脱ぎ払い、しばしの
性の欲求の高まりを満たす諸作業を行うことにする。

「末馬、末馬、末馬、末馬」

下の名前で呼ばないのはアラキなりの欲求を高め解消する手段だった。
彼女に最も不要なあの下の名前は、言葉にすると、まるで叱られるような気分になる。


自らを辱めるアラキは、その自分の体ではなく、あの末馬妙子を辱めていた。
同じ女性の体を利用したダッチワイフがわりに自分を犯すのだ。
倒錯した熱情がパチパチと燃え盛り、体が熱を持ち、熟れた果実からその汁が漏れるように、潤と、「末馬」とアラキは名前を囁き続けた。


あの宝石を諦めない、とアラキは決意していた。
そして過去にあの宝石のような想い人に壊された、あるものをまた手にすることを決めた。


唐突にやっと十数年かけて思いつき、決めた。


なに簡単だ。

末馬妙子がかつてその圧倒的な才覚で何も知らず破壊したあの匣はまだアラキの手に欠片が残っている。
これでも十分、遠い場所に行き、恐ろしいあの魔法の杖のようなものを手にいれることが出来るのだ。

あの醜い、決定的な末馬妙子の弱さの源泉となる小男も協力してくれるだろう。

醜悪だが。あれでも―――使ってやろう、分け前は体と言うだろうが、私は構わない。


器なんてどうでもいい、あの宝石の中身が欲しいのだから私は。

匣は確か器と中身を選別する。
匣に納めるものこそが真の宝だ。
















達馬の難しい年頃、忍び寄る何か 1





此処数年で自分の息子になった少年、達馬はとても当初見たときよりも
何処か鋭く、遠い何かを見ているような深い眼差しを得たような気がする。

大人になった?

そんなことを思うのは達馬にとって失礼であろう。
元々は20歳の青年だった彼は今はまた14歳の中学生になった。
肉体年齢と精神年齢の大きな差は広がる一方だ。
だけれど、小学生だった時の彼は、のびのびと人生を楽しんで居た、そこがつくづく羨ましいと思っていた。

でも最近は。


「母さん、今日の休みは少し出かけて山田と遊んでくる」

中学に入学してから、妙子さん、とではなく母と達馬が自分を呼び始めるようになった。


まるで戒めるような風にそう呼ぶのを妙子は知らない。

「え、デート?たっくん、山田ちゃんと?最近多いよね?」

最近自分とよそよそしくなった気がしていたが、そうか、そういうことか、と妙子は思った。
お母さん子である男の子の旅立ちの一歩であろう。
山田ちゃんか、と妙子は思った。
喧嘩友達のアリサちゃん、そしていつのまにか仲直りしたすずかちゃんや、昔からお兄さんのように妹扱いしていたなのはちゃん。
大人しいフェイトちゃん、いつもたっくんに驚かされる、可愛い子
いっつも二人で面白い悪戯を企てていたはやてちゃんでもなく、山田ちゃんと言う、仲良く雑談を交わし合う女の子。
息子の恋の行き先は山田ちゃんなのか、と妙子は思った。
みな、凄い美少女になってきたけれど、そうかそうか、と妙子は想い含む。

「デート?なんで?」

「女の子と二人きりなんでしょ、デートだよ?」

「あ……え、そうなるのか―――そっか、そういう歳だっけか」


酷く驚いたような顔をした。
そして深く頷く。

息子ながら、中々、その顔は精悍で真剣な表情。
近所の母友達の中でカッコ良い子になったわね、と褒められるほどは見栄えの良い表情だった、顔の作りは少し彫りが深いぐらいで、他は平凡で、美とか醜とか付くような顔ではないはずだが。

だけど、話に聞くと人を惹き付け魅了させられる顔だと、こっそりとこの前、達馬が居ないときに突然来た名前も知らない女の子が自分にわざわざ言いに来た。
その子は達馬のことが好きで、でも絶対に振られると言う。
大きなモノを背負ったような彼は見向きもされない、だからどうにか向くようになるために一番知っている人に聞くのが一番ということで母である私のところにきたのだ。

なんだか、過去の自分が虚しくなってくる瞬間だった。
自分はストーカーが来ていたのに、たっくんの場合は想いを秘めた可愛らしい少女が真剣に恥をかいてまでその想い人の母のところに
くるのだ。
私には全く感じ取れない、たっくんの悩みとか決意のような何かを探し当てるために。
多分あれだろう、たっくんは勘違い系転生者タイプなのだ。


ため息がでてくる。
同じ転生者なのにこうまで違うと嫉妬とかしてしまう。
たっくんずるい、ほんとずるい。よく人のことをチートとか言うくせに、こういうところは元男として反則的だ。
最近覚えた言葉で「もげろ」という言葉。
それを息子に贈りたい。

それでも救いなのが達馬の幼馴染達の反応だ。

彼女達はそんなたっくんの反則惑わし行為に何も感じないそうである。



「雰囲気イケメンですよ、所詮。私たちにはその雰囲気とか、1000円の加湿器ぐらいにしか感じないから大丈夫です」

とアリサちゃんは言う。

「それは噴霧器」

「そんな感じですから」

「でもモテるよね」

「そうですね」


アリサちゃんは我がことのように、うんうんと頷いて誇らしげだ。

その時のアリサちゃんを見て何か複雑な気持ちになった。
私も、たっくんと学校いきたい、とかそんな親バカの気持ち。

とりあえず何かと迷惑掛けていたことに妙子は感謝をアリサに捧げる。
未だにアリバと呼ばれ達馬を蹴るのも大変だろう、最近は全部よけられる、と文句を言われた。

「妙子さんが代わりに蹴ってください、あの男、ウチの中等部の敵ですから」

うちの息子はどうやら女の敵らしい。

妙子が耳にする評価では、達馬という少年は中々海鳴では有名な好青年として名を馳せているそうだ。
過去に予言した、真面目にやっていると生徒会長にさせられるよ、という言葉通り、末馬達馬は中学に上がり、早いうちに学校の生徒会運営に駆り出され、なんと、誇らしいことに、私立の頭の良い、学生達が集まる清祥学園男子中等部の生徒会長として日々を忙しく過ごしている。

彼の小学校の担任だった女性でいつも達馬に面倒を掛けられていた彼女は、ガキ大将のまま大きくなったと言う。
ちょっと真面目になったのかな、と微笑み、将来楽しみだとうれしそうに言う。


何故か、妙子はどう、反応したのか思い出せなかった。




そして昔から今でもそうであるように同学年の少年たちにとって達馬は人気があるそうで、何かと催し物ではど真ん中に立たされるそうだ。

身長が伸び、既に息子は母である自分の隣に並ぶと、頭が抜き出る。
本当に大きくなった、手は、最初のプニプニとしそうな柔らかさを失い、鋼のように硬く、そして男らしい鍛えあがった手だった。
特殊な力である、身体能力の強化を極限まで引き出すように尖らせた肉体を達馬は獲得し始めた。
妙子が夜に風呂に入る時間ぐらいにはいつも腹筋をしていた記憶がある。
どうやらいつのまにか体を鍛えるのが趣味になったみたいだ。
9歳の時二人で行った沖縄旅行を過ぎてからの気がする。

何かあったのか、と思うが、特に何もないような気がするが。

まあ、健康でいいことだね、と妙子は微笑む。


「デート楽しんできてね」


達馬はそう言った妙子の微笑みを見て、冷や汗をかいていたのを妙子は気づかなかった。






達馬は最近とみにキツイと感じている。
でるもんでるようになった、ようは精通を確認した沖縄の夜、あの永遠に黙したいあの夜だ。
下半身にもう一人の獣の僕とかそんな感じに暴れ馬の人格が生まれた。
もう、もうキツい、キツイ、と叫んで走り出したい14歳。
己の母である、末馬妙子がお風呂に入るたびに腹筋を鍛える日々。

「一緒に入る?」

とか言われるとさらに夜のロードワークである。
街を疾走してその欲望から逃げるのだ。
海鳴り交番のおまわりさんには

「流石鉄人2号だね、達馬くん、将来警察入ってくれないかい、絶対君ならいいよ、君たちどっちか街にいるだけで私は凄い気が楽なんだよね、だからさ、犯罪見つけてしょっぴいたあとの処理もして欲しいんだよね、お願いだよ海鳴の鉄人2号。
絶対おすすめ、ていうかウチら全員欲しがってるよ君のこと、真面目だし、正義感もあって優しいし、この前なんか、君に助けて貰った人が僕にお礼の品を持ってきて「あの人に渡してください」とかなるんだよ、女性とか女の子とか、わざわざだよ?わざわざ?君絶対なるべきだよ警察官、じゃないと凄い悪党になるからね、君。」

と勧められる。



違うんだ、と達馬は叫びたい。

最近、好青年とか立派とか言われるたびに達馬はつらい。
賢者になるしかないから賢者になるのだと、現実と壊してはならないものが訴えるのだ。
まさか、好青年をやめて下衆にはなれないのだ――――決して。

心と体が欲しがるものを抑えるための反動でしかない、こんなのは。
グレることが出来れば楽なのだが、そうすると悲しむものがあるのだ。
真面目真面目と成長する表面の中はドロドロにマグマのように蠢く欲望がある。

やべえ、やべえ、と達馬はもうあっぷあっぷで欲を捨てるために走るしかないのだ。

そりゃあ走れば走るほど鍛えられるというものだ。


「そういえばエロ本とかないの?たっくん買う年でしょ?」

とかもう言われた日とか最悪だった。
右手の上下運動する気分になる瞬間には一人の女性しか浮かばない、で、結局その浮かぶ女性を心の中でさえ汚さないように別の運動をするしかいないのだ。
筋トレだ、体を疲れさせ、夢に見ないように泥のように眠り、己を責め立てるのだ。
難しい勉強をして脳をそれいっぱいにしてその汚れた思考を防ぐ。

今では逃げるために己を鍛え上げる機械になっている。
達馬は彼女を傷を付けないために血反吐を吐くのもためらわないのだ。
過去に見たあの脳裏にまざまざと浮かぶ女神の裸の姿とか絶対に見ないように。

だって白い血ださないためだもん。




既にこの時過去、妙子がナポレオンの睡眠時間であったように達馬もそうなっていた。
周囲の評価はカエルの子はカエルだ。
海鳴の鉄人は代替わりをしたのだと、街の人々は口々に言う。
今まで妙子の行ってきた奉仕活動が達馬の方にシフトし始めている。


そして現実逃避手段。

達馬の場合金儲けではなく現実逃避手段が筋トレとかそういう方向に向いていた。
シグナムのレヴァンテインに拳を合わせ、弾き、防ぐぐらいはやってのけるくらい達馬は自らを鍛えた。
なのはのシューターを回避、鼻先を掠ろうとも、眉一つ動かさない精神。
最強の恐怖が身に宿っている故に、体が痛いと思うものでもそれは恐怖ではなくなっていた。


時にはあの甘味大魔神の所に身を売り、和菓子を作り、極限まで己を飢えさせ、魔法使い達の仮想標的役というアルバイトをする。

人間ガジェットとヴィータは命名したアルバイトである。

ちなみになのははこの仮想標的との訓練で多くを学び、戦いとは耐えることと深く学び、目の前の機械のようにならないように
休みをとることの大事さを学び、なんと撃墜事件が起きず、また一つ不幸なお話は明後日に消えた。


なんでも、ああいう非人間的な人間は怖いのだ、となのはは思ったのだ。
人間ゆっくりとした呼吸で生きないといつか倒れるのだ、と思ったのだ。

案外、未来という奴は、良い方向に向かっているのかもしれない。




だが達馬は不幸だった。


己をとことん鍛える達馬は、今日はその悩みをぶちまけるために、よく相談にのってくれる友人のところに逃げるつもりだった。
休みの日でも達馬の心と体は油断できないのだ。
此処9年で妙子さんは大分、落ち着いてきたようで、あまり日々をボランティアに自らをすりつぶさないようになり
今は大体休みの日は家にいて、ゆっくりとしている。

伊達めがねを外し、惜しげもなく封印したようで封印されていない美貌をさらけだしながら。
ソファーで寝っころがり、映画を観るという、昔にはありえない休みの仕方。
リラックスだ、そう女神のリラックス。

なんかアホみたいだけれど、達馬にとってそのソファーの隣に座って、それを見て、冷や汗をかきながら2時間過ごすのは地獄なのだ。
ときたま、息子に微笑ましいちょっかいをかけてくるのだが――それがいけない。
ノーブラジャーのまま、抱きつくな!

と叫びたいが叫べない地獄。

やめてやめてやめてやめてやめて、まじで死ぬ、俺が死ぬ。
俺はもう、耐えられない、と悩んでいる。


人から言わせれば贅沢な悩みだろうが、それはそれ、達馬にとって贅沢病は死に至る病なのだ。


本格的に男として末馬妙子という女性を愛している達馬は――その中で絶対防衛ラインを越えないように此処数年頑張っていた。
触れれば溶けて失くなってしまう雪を守るために、決して自分でそれを壊さないために、耐え忍ぶ。




ぶっちゃけ、もうマジで押し倒して滅茶苦茶にしたいとか、そういうレベル。

ぴたりと脳にその思考が浮かぶと


「よーし80キロくらい走ってくっかなーそれとも早すぎる大学受験勉強するかなー」

「えー、一緒に映画みようよー。だーめー」

ギュッと抱きつかれ。
ギョッとする。

今日もまた、妙子さんが創りだす天国地獄から抜け出し、達馬は真剣に街のマックで昔からの友人に相談する。
これが達馬にとってに人生の休憩だった。
真面目に聞いてくれる人間が一人しかいないという絶望を感じる瞬間であるが。

他の奴はこんな感じ。

アリサは「ハイハイ頑張って、頑張って」と流され
すずか「そういうの現実にあるって夢みたい」と自分の好きな小説の事(禁断の愛系の小説)の話をし始め相談にならない。
なのは「たっくん、昔からでしょそんなこと、それよりも新しいシューターのバリエーションがっ」役に立たない。
ユーノ「羨ましい、もげればいいのに…てゆうか僕の方がむしろ忙しいんだから」睨まれる
リンディさん「そんなことよりも和菓子、あの安っぽい味をお願い、まずそれから考えましょう」殺される。
はやて「ええなぁ、甘酸っぱいなぁ――――」ババアかお前は
クロノさん「苦労しているね、そうだよね僕も―――」俺よりもこの人の方が大変そう。
フェイトにはちょっとナイーブな話なのでやめておいた、だって天然キャラだし、まずバトルだ。


原作キャラ(笑)の癖に、超人どものくせにどいつもこいつも――――恋愛系じゃなくてバトル系だから参考にならない。
ヴォルケンズはそんなことよりも体鍛えろ派なので相談しても無駄。
シャマルさんとか面白がり余計なことをするだろうからやめておいた。
ヴィータさんは顔真っ赤にして殴るし。
ザフィーラさんは格闘技術の先生として守護の技―――それかっちょいい、男の男だぜ、心に秘めて鍛えるとか――変な方向に行く。
シグナム、ああ、決闘だ。

「ダーヤマ、どうしよ、まじでどうしよ」

「別に血とかつながってないんでしょ?戸籍上も義姉弟―――――ヤレば?もうそんな鈍い羊なんか狼に食われて当然でしょ?」

ずずっと


バニラシェイク(全部俺のおごりで相談料)を飲み干し
次に紅茶を飲み始める目の前の友人に俺はそんな身も蓋もない発言に呆然とする。

「それできないから、ていうかそんなこと適当に口に出すなよ――――殺すぞ」

「うわ……マジで人殺せる眼になってるわよ、達馬?
でもそれ良くないかな、べっつに14でも子供さえ出来なきゃ「おい!」ってもいいんだし。
ちゅうか、アンタの性欲事情なんか聞かせられる私の身になってよ、まぁ面白いからいいけどさ。
ま、私から見ても妙子さんって同じ性別でも誘われたらうんとしか言わないぐらい綺麗だし、可愛いものね。
そんな人の血の繋がらない息子になってしまった不幸は同情に値するわよ、でも、結局そんな悩み私にふっても意味ないと思うわよ?
一言。アタって砕けろ、とかそんな言葉しか、言えないわよ―――ていうかもう一つセット頼んでいい?」

「……別にいいけどさ、太るぞ?、ちょっと足ふと―――「え!?本当!?」いてっ!」

どうせ小遣いなんてもんはコイツに悩みを聞いて貰うときのおごり代でしか使わないのだ。
朝から夜まで映画とかカラオケとか奢って付き合って貰って悩みを聞いて貰うのが使い道だ。

あれ、なんかおかしくないか、俺悩み聞いてくれるホステスとかに貢いでるような―――とか考えながら顔面痛くなってきた


山田という少女、まるである女性の真似をするかのように伊達めがねを掛け、ある女性を真似るかのように肩まで掛かる髪を持つ少女は豹変した。
そして目の前に座る少年の顔面に張り手を行なった。

「なにすんだ――――ユーカリ!」

「あんたが変なこと―――馬鹿っ!」

山田ゆかり、という名前でもっぱら、達馬にダーヤマ・ユーカリと呼ばれるのがそろそろ嫌気がさして来た少女はもう一度、次は拳を握り締め少年の顔面を殴った。
カエルの子はカエル。

どこまでも、末馬の親と子はニブチン大魔王であるのだ。
はやて、なのは、フェイトなど、どこか隔絶した人間性を持っている彼らは己の運命に沿って生きていた。
それが原作という何処かのお話なのではなく、彼等の意志がそうさせていた。
その意志に達馬という一人の少年の個人的な決意はまったくもって介在せず、普通の友人関係となっている。
むしろ、彼女たちにとって妙子の方が影響している。
妙子の横にいるバカはバカのままなのだから。
だがしかし、山田ゆかりは違った、ずーっと横にいる馬鹿が、モノ凄い馬鹿であり、モノ凄いヤツになっているのを見てきたのだ。
馬鹿な奴は、馬鹿でいることを妙子という女の前以外やめて、真面目になった。


山田ゆかりは普通に恋をしていた。
馬鹿なお調子者だと思っていた幼馴染のような少年の成長にギャップを感じ、気になってしまって大分のめり込んでいた。
大人になってきた達馬は学校や外では大人として振舞うようになり、いい加減馬鹿な大学生のつもりをやめている。
母を尊敬していた、どんなに現実逃避手段でも人に優しく誠実に振舞った妙子の真似をして、うん、聖人やりはじめてるのだ。
根のところは、相応しい男とか、そういうのが源にありそうだが。


思春期に入った周りの少年少女の反応も変わった。
仲が良かった、達馬にまとわりついていた少年たちも、何処か、そのままで居るものもいないものもいる。
何処かその生まれ持つ前からあるアドバンテージを感じ取り嫉妬する者も出始めた。

そしてキッチリ妙子とは違い、自分は鈍感ではないと思っている達馬は時には殴り合ったりとかして良い方向に納めるのだ。

むかつくんなら、バトれよ、何度でも喧嘩してやるよ、という空気を出す、変なカリスマが出ている。


シグナムとかフェイトと「ディエル!」一言で戦闘を始めるカリスマの取得。


すごいがすごくないし羨ましくもないカリスマだろう。



運動能力チートだが、頭は元々良くない少年であり、私立の難しい勉強もひぃひぃ言いながらこなしていく。
ひぃひぃいいながら学校一位の成績を残すあたりとか、俺も頑張れば出来るは絶対とか思われるので好感が持たれる。
馬鹿でも出来る、という言葉の体現者故。

「馬鹿で頑張って出来る男、清祥の鉄人番長」が今の彼の渾名だった。


生徒会の仕事とかヒィヒィ言いながらこなす姿が見たくて圧倒的な投票数を獲得する。

前世でちゃらんぽらんやっていたから何事も初めてだから最初はヒーコラと苦しむ。
そして頭がおかしいと言われるほどの現実逃避的な努力が花を結ぶ。


天然ではなく、後天的な努力によって積み上げ鍛えたせいか、酷くそれが気持ちよく、人を魅せることが出来ていた。
絶対に届かない頂きに登り始めるヤツは応援したくなるという気持ち。

素で軽くなんでもこなしてしまう妙子の学生時代の時は、基本的に周囲の反応は応援ではなく粘着だった。

妙子と達馬は二人は対照的であり、もし同性であり同年代であったなら死闘を繰り広げる運命のライバルとかになっていたかもしれない。






そんな彼は結局、日常生活が鬼のように忙しく、「原作、ナニソレ?」といった風に暮らしている。
決定した未来であり、それは生涯変わらないだろう。
変な余裕が出てきた妙子が「次元世界旅行しよう、折角だから」とか言わなければそうなる筈だった。


本来のこの話の主役は妙子なのだから。
トラブルは全てこいつから始まる。
トラベルが重なるならなおさら。




過去に起きた妙子が軽く解決してきた事件が再び紛糾するのも時間の問題だった。










つづく?




Arcadia祝復活。



ここで終わりとか思ってもいいですよ?


末馬妙子 

元鉄人になってきた。
実は過去に原作の世界観に関係する事件を解決していた。
全くの素で。

末馬達馬 2代目。

モテる男

そろそろ性欲がヤバイ時。
凡庸だが、努力家。
前世でしてこなかったことをすることで、完全に転生者としてではなく
別人の一人の人間になっていく。

原作の人たち。

基本友人。
村人Aと戦う勇者はいない。



山田ゆかり

本作の新ヒロイン
ただの頭が良い少女。
虎視眈々と優良物件を狙う。

甘酸っぱいキャラ






[36072] 未解決未来編 2
Name: みさりつ◆2781aa24 ID:4563c076
Date: 2013/02/21 19:03
グレート生徒会長末馬達馬

学生の楽しみは放課後のカラオケとか買い物、ゲーセン、マックとかでの飲み食いだ。
達馬はタダで翠屋の厨房で何か食べれるから行かない。
厨房で女神の鼻歌を聞きながらシュークリーム食べれるし。


それはいいとして。

部活動も楽しいが、帰宅しない帰宅部なんてのも楽しいものだ。
前世の頃はいっつも校則を突き抜けて法律ギリギリの遊びをしていたものだと、昔を懐かしむ。
過去は部活動に入らず、密かに花火の会とか理科部とか作って、気の良い仲間たちと夜の学校の設備やグラウンドでの――――おっとこれ以上は危ない。

とりあえず、今はそういうことはせず真面目にやっている。

積み重ねた悪事から身を引いて、一気に優秀にして内申が良い生徒になると教師の信頼は厚いのだ。
不良が雨の日に子犬を――とかそういう効果で。
何故か土日はよく教師の家とか校長の家とかでビ―――――じゃなくて麦茶をごちそうになるくら信用されていた。

「俺、魂は20ですから」

「まぁいいけど、14は早くないかい?」

「好きにアルコールの分解を自由自在に出来る体質ですから――嘘じゃないですよ?」

「え、アルコールチェッカー持ってくるからやってみせてよ」

「いいですよ」


「あ、本当だ、君――――人間なの?ターミネーターとかじゃないよね?」

「できるからやってまーす、わかりません」

「何か凄い狡いね君、あっはっはっは。飲んでもいいけど、帰る時それやってね」


「あなた今時なにやってるの?子供に―――」


「こ、こここいつなら大丈夫、あの鉄人2号だよ?噂の」

「あ、君があの――」


と昨晩は楽しかった。



妙子さんに怒られたからもうやらないが。




転勤引越しの手伝いとか無駄な身体能力を生かして働いていると、教師の推薦。
未だに卵の殻入り弁当は不味い。

凄いやりたくなかった生徒会長、結局ネクラとか無理だった。

断るとその無駄な丈夫さ生かして海外への交換留学とか打診された(妙子さんのハンコつきの書類有り)。

なんだそれ。


就任時ヤケクソになり学校に喧嘩売った。
全校集会での第一声達馬は本気で学校の校則を一つ破壊した。
どうせあってないようなものだけど、明言したのが問題になる筈だった。




「はい、長ったらしい話めんどいから省略、俺おめでとう、イケニエだね、覚えてろお前ら。あと取り敢えず校則変えたから。
男子中等部は帰り道に飲み食い寄り道は校則で原則禁止だけど、まぁ道行く人々とかに不快な気持ちにさせるみっともない言動さえなきゃ全面オッケーにするわ。
代わりにそういうのやったらしばく、絶対俺がしばく――――以上、生徒会長の挨拶終了です」



という今期生徒会長のありがたいお言葉。

凄い掴みはおっけーだったらしく、何故か番長とか呼ばれるはめになった。


道行く生徒達に、今日も

ばんちょー今日も待機中?

とか聞かれる。

「街に遊びに行くのいいけどさぁ、帰宅時間守れよ、問題起こしたらシメるからなオッケー?」

「うわ、独裁」

「圧政だね、シメるとか古臭い」

「問題起こしたらお仕置き部屋な、教師がやったら体罰問題でも俺なら問題ないからな―――マジで」

「帰宅時間ギリギリまで正座とか勘弁だな、たっくん」

「たっくんキモイ、何か偉い人たちのひたすら説教をCDに録音したやつをヘッドフォンで大音量垂れ流し正座とか
あと親に手紙とか電話―――「あん?」いやまじでもう問題起こなさないです、この前の件は本当助かりました」

「取り敢えず、お前ら財布に金入れすぎんなよ、あると余計なことしたくなるし余計なトラブルできんだから」

「あの変な新しい校則なんだよたっくん―――「買い食いオッケーだが、基本奢るのも奢られるのもなし、財布は欲しいもん買う時とか事情がある場合以外は3000円までしか入れるな」とか」

「賭け事も禁止な―――この前のトランプ大富豪賭博とか、高等部のやつとやった煙草飲酒とかデカイ騒ぎにならんように一応隠蔽してやったけど。
次は下手すると―――「わかったって!」

「あ、忙しいからそれあとでたっくん!」

「逃げろ!」

「いっとけどこの学校の親御さんとかPTAからも認可降りてるからな俺!逃げてもいいけど覚えておけ!虚偽の申告しても無駄だぞ!」

モンスターなペアレントなぞ、既にこの学区全て改心済みだ、女神の手によって。


「なんであんなやつ生徒会長なのよ!」

「ふざけんな!とことん俺たちを地獄に叩き落しやがって自分は彼女には奢るくせに、あといつも財布に万札数枚はいってるし」

「走んなボケ!老人ホームで休みの日に強制労働させるぞ!?走ることの恐怖を教えてやるぞ!あと山田は彼女じゃねえ!あとそれ家の生活費だし!」

と怒声を発するが逃げられる。

どいつもきゃあきゃあとそろそろ野太くなってきた声でうるさい。
最近はつきまとってうるさかった少年達も達馬の手から離れ、自分から自分の好きなことを見出している。

でっかくなったなぁ、時は残酷だ―――俺より早く玄人を知る前に脱童貞したやつとか出始める時期だし。


まるで親戚の独身のおっさんのような気持ちになり、俺ももう、精神は34かぁと思うが、取り敢えずそこは無視している。
最近はこやつらに父性愛を感じてきているが、そこも無視。


男子学生こそ性の暴走がある、ということで、全校集会でコンドーム配ったりとかやって教師達を唖然とさせた生徒会長は今日も生徒会の仕事に向かう。
学校の体育館用のスクリーンで全校集会で欧米の性教育ビデオを垂れ流し(全音声達馬翻訳、萎えると大評判)とかやっても首にさせてもらえないから仕方なく仕事をする。

こんなアホなことをしてもそれなりに正しいことを選択し、他人に信用される圧倒的な才能が達馬にはあった。
それが達馬という人間の本来生まれ持つ潜在的な才覚にして非凡な部分であった。

あいつならしょうがない、という才能が。

それは前世では無駄なバカ騒ぎに生かされていたが、この世では違った。
ちょっとは真面目な方向に進んでいる、確かに間抜けっぽいことだが、結局みんなの為になるようなものだ。
みんな全校集会が一種の楽しく学べる行事になってきている。




「首にするのはいいけど――――正直あれいると楽だよね?皆さん?」という職員会議により高等部に上がった場合、最初から生徒会参加が勝手に達馬の知らないところで決定した。



学校始まって以来の名生徒会長と昼のどうでもいい時間に放送するつもりのテレビ取材とかが来た。
テキトーなことを言ってテキトーに乗り切ることでよくわからないが他県の学区の交流会の仕切りとかやらされ始めた。

何故か問題が全く発生しない不思議な男子中等部の生徒会長として、同じ生徒会長達に問題のスマートなもみ消しかたとかを教えている。
大抵皆「普通じゃ無理」というもので不人気だが。

基本粛清シベリア送り的な恐怖政治はダメらしい。

学校とは関係ない、達馬個人で人脈がある幼稚園への強制労働とか老人ホームでの強制労働とかああいうの罰として一番楽なのに、何故だと達馬は不思議に思う。
不真面目な彼等の気恥ずかしい真面目な仕事の様子とかを記録しそれを弱みにするのもダメなのだ――何故だ。

次やったら、その真面目な活動を学校新聞として張り出す、教師や親に見せる、あと全校集会で褒めるとか言えば大抵反省するのに。


闇討ちされそうな圧政だが、全校集会で毎回一発芸でコーラ瓶などを手刀で切断するとかやって見せつける示威行為が功を奏していた。
その圧倒的なその人外身体能力は男子中等部全校生徒の記憶に刻まれているからこそできる独裁である。
目の上のたんこぶの男子高等部さえも寄せ付けないパワーである。


男ってのは強いのが基本好きという当たり前の話。


そう――――清祥学園男子中等部に漫画のような生徒会独裁時代が幕を開けたのだ。

2年後が恐ろしいと今の清祥男子高等部一年は戦々恐々しているらしい。
なにせこの生徒会長はバリバリだった

現高等部生徒会長が

「うわ、俺も真面目にそういうのやるべきなの?アレ真面目にバカやってるけど」

と感じるくらい。








とぼとぼと生徒会役員室に入ると達馬はぐっと息を吐き出す。




「白ランとか俺似合わんよなぁマジで」

清祥の中等部の男子の制服は白だった。
しかも無駄にカッコ良い白ラン。


爆笑ものである。


結構値段が張るものであり、ガチャガチャしている男子共を封印するには便利なものである、シワとか目立ちやすく不便なところとか。
取り敢えず、入学当初は何故か、俺がよく破ってしまったヤツの制服を女子中等部のミシンがある家庭科室を借りて繕った記憶があるような気がする。


それはいい。

白ランってのは取り敢えず眉目秀麗キャラの服なのだ、そして大体生徒会長。

そして俺は生徒会長。






フム、と達馬は己の額に筋を張る、ぴくぴくとさせ――――そして取り敢えず、上着を脱ぎ、ぶん投げた――――ではなく折り目正しく綺麗に畳んだ。
ほんとは「似合わないーマジでウケル」とぶん投げたいがコレ人のお金で買って貰ったものだし、それはやらない。

そして折りたたみ椅子の上に置き、自分は白く長い折りたたみ机の前に座る

「苦痛だ」



唸るようにそういい、ため息をつく、そしてもさもさとアンケートの集計プリントの整理を始める。
一人で机にプリントを幾つか配置してぐるぐる机の周囲を廻ることもある諸作業だ。
所詮生徒会ってのは学校の備品である。
教師よりも使いやすい賃金がかからない小間使いであり細々とした仕事が日々あるのだ。
俺は本来こんな頭が良い学校に入る男じゃないんだ、とつくづく思う。
そんな中に馬鹿としているからこうなるのだと己を呪った。

中学校のべんきょうってこんなに難しいの、へ?と思わされる毎日である。

でも何故か生徒会会長であるのが不思議でならないと。これって現実かな、と魔法を初めに目にした時よりも周囲をきょろきょろと見渡す。


「生徒会役員室だよまじで、生徒指導室の方が馴染みあったのに」

中学高校で三年になるとギリギリで「まだ進路きまってませーん」とか言って迷惑かけてたし。

それでもここは生徒会役員室だった、別名はカタパルトとかお仕置き部屋である。


今日は生徒会がない日だったので誰もいないが、達馬は必ず仕事を行う。

実態的には他の役員たちは好きにさせている。


めんどーだから帰っていいよーと快く帰らせている。

「そして一人働く男に対し、みんなの罪悪感を煽る、ふふはは独特な大人の嫌らしさだぜこれが、小僧ども、帰れないだろう」


とか思っていた。


でも普通に――――みんな帰る、来なかった。

昔の死因を思い出す虚しさだった。

「―――本当にめんどい時全力投球してやる」

で。


凄いめんどーならいつでもどこでも暇そうなやつに対して緊急全校集会開いてやらせればいいのだと思いついた。
どいつもこいつも頭いいし。

教師にぐちぐち言われても生徒に「部活動あんだよふざけんなボケ」とか「今昼休みだぞ!?」とか言われても知らん。

必要なら高等部の生徒会だろうがひっぱって使う。


その代わり、何かあると大体の中等部男子生徒達のアドレスが入った専用携帯に緊急の連絡が入ると学校を飛び出し、問題解決をしにいく。
なに、これは善意ではなく、俺の平和のため、妙子さんが出張ると余計なトラウマ発症してしまうからしょうがなくだ、しょうがなく。

24時間対応可能という謎の鉄人2号である。
その代わり、「今妙子さん中」だと使えないのがタマにキズ。



誰も彼もそこそこ真面目に手伝ってくれるのはそこにあった。

こいつ地味にまた無駄に霧間凪とかああいうの――――生徒会の名簿はあるが実質として生徒会は会長のみの生徒会となっているが本当のトコロ。

内申点が入らない生徒会である。
超級バカ認定生徒会と教師から信用されている。

まぁこの学校の生徒たちはどいつもこいつも育ちがよく頭がよいので、そんなに生徒個人での問題は起きない。

が、それでも世の中因縁というものが働き、問題が発生するものだ。
たまには達馬の人外の腕っ節によりインネンつけて喧嘩したがる子供を優しく抑えたり、隣の県の親の元まで家出少年を背中に暴れても落となさないまま背負って走って持っていったこともある。
そして発覚した荒んだ光景に、中学生が行政に物申したり最終兵器母を召喚したり。


ある日周囲に「お前存在が中二病」と言われた日には大変落ち込んだ。

ふざけて目安箱設置したら周囲に言われた。

どうでもいいことを大量に書かれるので―――仕返しにマジで実行したのがいけなかった。

そしてある日、目安箱は達馬の知らないうちに消えていた。

「許さん」

いつか絶対やめてやる――こんなの。



書いている文字が毎回変わる扇子でも持ってやろうか、とよく母に愚痴る日々である。




ちなみに中に着ていたインナーはメイドイン妙子のTシャツ。
赤色であり、何かと己は黒、たっくんは赤と勧める妙子の趣味だろう、案外長い間続いている妙子さんらしい可愛い嫌がらせだった。

私の気持ちがわかる息子になって欲しいという願いが篭った、達馬が契約しているピンクの携帯電話と生徒会用のキ○ィちゃん携帯などなど。


達馬としては男がそういうもの、女がそういうもんってのは安直だろう、と微笑みが溢れるほど可愛らしいものだった。

それに結局其処には好意が見え隠れしてて嬉しいものだ、どれもこれも達馬が恥をかくものではない程度あたり。

お茶目程度で、むしろ、抱きしめたい。

前世で走るお馬さんが好きだった達馬の為に、制服など名前が必要な衣服の裏地に小さな糸で繊細な馬の刺繍までいれてくれているなどの細やかな配慮。

「名前略するとウマウマだから二頭入れてあげる」と

そこらへんの製品なんか裸足で逃げ出すぐらいの、洗練されたデザインの――――。



毎日肌に通す時嬉しすぎてにやける。

中学の専用ジャージに胸の所に堂々とこれ入れてもらった、マジでセンスいいし見せなきゃ勿体無いとやってもらった。

俺の服は全て「妙子さんの」って入ってんだぜケケケと達馬は笑う。

この前見せびらかしたとき何かダーヤマに一着奪われたけど、それほどデザインがいいのだと誇らしい気持ちになった。

学校ジャージはちょっと躊躇したそうだが。

「いいのこれ、見えるけど、やっぱり糸抜こうか?」

「大丈夫ですよ、許可とります」

実はそれが生徒会加入する際の達馬が教師に出した条件だった。

せっかく妙子さんが―――わざわざと無駄にできるか。

というくだらない理由。

「いいのかなー?」

とか言われたけど。

権力は使う為にあるのだ。

前世では破滅的に家事ができない母に繕いは基本的「自分でやって?」とか言われ続けた俺にここまでしてくれるその愛情に惚れる。

「うわーまじで俺。妙子さん好きすぎる、最近妙子さんなら男でもいいかとか思い始めてるし」

仕事を終え、達馬はこっそり持ってきた漫画の文庫版「天使は小生意気」を読んでダラダラと教師たちが差し入れにくれたコアラのマーチをつまむ。
一人の時は妙子さんと名前を堂々言える自由な時間。

しかし、正直山田のアドバイスで母と呼び始めたのは失敗だったのかもしれないと、達馬は思い始めている。

背徳感とかやばい。


萎えるから良い、という策だったらしいが失敗だし、本来の目的から遠ざかった気がする。
何か息子認識が深まってるし。

「今日も妙子さん翠屋だから、よって帰るかー」

と自分の中で決めた帰宅時間がすぎるとそう言って生徒会役員室に鍵を掛け、鍵をカバンの中に入れて学校を抜ける。




案外こいつも大概立派なオリ主やっていた。

変な方向に。



すずかから「ライトノベルの主人公みたい――――何かバカっぽくて軽いし、生徒会で内政チート(笑)」とか大変悪し様に言われる。

ちなみに女子中等部は山田ゆかりが生徒会長をやっている。




末馬達馬。

一般視点だと本当に怪物。
肉体強化で寝なくても大丈夫で腹減りさえなければずっと活動出来る。

肉体がいつでも回復し疲れないので基本常時やる気がなくならない。
腕とかちぎれても生えてくるタイプ。

将来土方の肉体仕事で普通にサラリーマン収入の数倍たたき出すチート。

現在、追い詰められていた妙子の時代のリピートをやっている。


とてもフリーダムな学生だが、代わりにストライクとして出撃している。

小遣い月3000円。





妙子さん

最近は落ち着いた。

30突入した瞬間、鉄人引退気味。
やっと人生を穏やかに楽しみ始めているそうな。

翠屋正社員。



山田ゆかり


ジャージくんくん。



シリアス前のお話。




「センスいいわよねーこれ、でもこれ女子中等部とジャージ自体違うから着てったら……まぁいいか」

競争率へらしてあげるわ、と山田は含みを持たせる示威行為の為にこれを次の体育の授業で着ることを決意した。
狙った獲物は大きい、あんなバカみたいな凄いやつなんて二度と出会えないのだ。

誰よりも優しくてお人好しなおバカ
普通の顔だけど優しそうな顔をしていつも笑うバカ。
悪びれないし、媚びないし、怯まない、自由に飄々と、ただそこに居る。



そしていざとなると、モノ凄い格好良くなる。

昔、「大丈夫」と笑って助けて貰った時なんて、すごいカッコよかった。

絶対カッコ良い。

見た目はお世辞にもカッコ良いとはいいきれない、何かいっつも眠そうなやる気のない顔だけれど。

それが私には大きな強く優しいドラゴンに見える。
よく漫画とかに出てくる、年を召したそういう動物。

過去に虐待され、気味悪がれ、捨てられた少年というのは知っている。

昔、無神経に聞いたとき、凄い悲しくなった。
自分を罵りたくなった、馬鹿だと。

笑って許してくれた。
あの眼で、優しい眼で。

そして全く、恨んでないのだ、あいつは、本当に―――。

強く優しい。

この世の誰よりもだ―――きっとこの世界に一人しか、いや妙子さんがいるか、でも異性だからノーカン。


そう思った瞬間から

絶対に譲れない乙女の絶対の守備ラインに達馬は入っていた。



実は母と呼ぶことを策として与えたのはアドバイスでもあるが。目的は別にある。
確かに妙子さんは良い人だけれど、私の恋とは別の話、世の中弱肉強食なのだ。
達馬の相談役やってるのも正直、情報収集だし。
あとデート。

若干あまりにも、遊びスポット知っている風なので、ちょっと不安になるときがある。

私以外遊んでる子いるのかな、とか。
でも今のところ、いないようで安心する。

でもUFOキャッチャーで「ドサドサドサドサ」
メダルゲームの競馬のやつとかで一気にメダル枚数「ゴバー」

とか当たり前にやってしまうし。

案外普段昔口にしていた前世説も嘘ではないのかもしれない。

あれは暇人の無駄な無駄使いの果てに可能とする匠の技だし。


でも前世があろうとなかろうと関係ない、いつだって。

「若い方がいいに決まって――あれ?妙子さんって―――まだ20代よね?あれ?」

あれ?あれ?

あ、そういえば確か今年で三十路だった――シミ一つない肌――下手すると十代。

何か怖くなってきたゆかりである。


ちなみに達馬は根っからのお姉さん系好きである。




「それはいいとして」

山田ゆかりはジャージをつい何故か、顔に寄せ――――。


嗅いでいた。



「変態みたいね、私―――」

あの馬鹿よりもましだけどね、と山田は思う。
どこにコンドームを学生に配る生徒会長がいるのか―――馬鹿め、馬鹿め、馬鹿め、と山田は顔を赤くして一人罵った。
正しいのだろうけど、あんな馬鹿やるなんて―――絶対バカすぎる。
顔面にジャージを当てながらゆかりはそう思った。

「頭ワル……でも良いに「なにやってんのゆかり?」あ―――姉さん!?」

末馬家は柔軟剤はダウニーなので洗濯モノは良い匂いがする。
達馬は基本的に自分の肉体を調節し、無臭である。
妙子さんに男臭いと気持ち悪くなって吐かれたくないために無駄なことやってる。



「ふーん、噂の子のか、口は達者だと思いきや鼻まで達者だったのか「ちが――」ま、あの男ギライの末馬が自ら引き取った男の子だからしょうがないか。絶対何か持ってる子なんだろ




あれの周りは面白いからね、長く近くにいる人間は大抵バケモノ級なのだと、ゆかりと大きく歳が離れた姉は笑う。
いつのまに、実家に里帰りしていたのか?
普段は南米で何か怪しいオカルトの研究をしていて、滅多に日本に帰ってこない姉が。


「え?」

そして滅茶苦茶聞き耳立ててまんがな、とゆかりは思った、そして腑につかない言葉。

「いやさ、めんどっちぃ方の末馬と私友達なんだ、学生時代からの、今もメールでやりとりしてるよ、たまに、めんどっちぃから実家に帰っていてもメールですませるけどな」

あと海鳴に住むこと勧めたの私だしね、という姉。

「え?本当に」

「言ってなかったけ、か……何か聞くことあるか?」

「何…妙子さんのこと?」

「どうやらアレだろ末馬息子に惚れたけど最大の敵があいつだろ、変態っぽいがあのアラキ達と違ってまぁ、まともそうな恋心だから応援するよ」

「いや変態って」

「変態性癖で好きな男のジャージくんくんするのはいいけど、性別逆だったら普通にもっとへんたいだぞ、まじで」

「………わかった私ヘンタイでイイから役に立つ話あるなら聞かせて姉さん」

「その変わり身の良さ、あのめんどっちぃヤツにも見習って欲しいねそれ。まーうん、でも全然役にたたないかも、スマンくくくくくくくくっ」

「はい?」

「まーまず顔面からジャージはなせ、話はそれからだ、な」

山田ハナミというゆかりの姉は度入り眼鏡の奥にある眼を細めた。
それは妙子が普段掛けている伊達眼鏡と全く一緒のフレームだった。

「それ―――」

「ああ、これまだ一緒だったのか、相変わらずそういうのは無駄に大事にする女だな、30にもなって正直ちょっと重いほど、めんどっちぃ―――」

「それよりさっさと人の部屋からでてけ、バカ姉――――――あとで聞かせてね」

「なに?オナニーでもしたくなったのか?ハイハイ退散しますよ」

「違う!今は恥ずかしいから落ち着くまで出ていけといってんの!?」

「そんなので恥ずかしがるんてガキだなぁ、あいわかったよ」


妹の部屋を退出し、昔の自分の部屋に向かいながら。

ハナミは手の中にある木片のようなものを遊ばせた。
そろそろかな、と思っていたのでそろそろもう一度あのバカをわざわざ助けに日本に舞い戻ってきたのだが、面倒そうだとハナミは思った。

まるで生きたように脈動する木片のようなものは酷く生々しく、まるで心臓のようだった。
十数年ぶりにこれが蠢きはじめた。


「アラキのクソ野郎め、また使う気か……」

完全に使用するための片割れは自分が持っているが、どうにも落ち着かない。

ロストロギア「地獄の生き物」の半分。

これは問答無用でなんでも喰らう危険物なのだから。

ほれ、と言い、脈動を停止させる。
これがずっと、死んだままでいてくれれば良かったのだが、いちいち管理者権限で止めるのが面倒でしょうがない。


まだまだ新人なのに無理を言って、仕事を休み、ミッドチルダから帰ってくればこれだ。
無重力な夢の空間からわざわざ帰ってきてのいきなりの面倒事。


こいつで記憶を奪ったけれど、やはり、戻ったか、アラキ。
もう半分は見つからなかったけれど、やはり持っていたか。


アラキめ、あの頭が良い異常犯罪者のような末馬の従兄弟と手を組んで何する気だ。
今度は前みたいに済まない、人が沢山死ぬぞ、とハナミは恐ろしくなった。


『恐怖を感じます、これは、初めてみるものです、いつも貴女が私に見せてくれない、貴女の金庫にあったと思われる掃除道具「ジゴちゃん」がこれですか?』

眼鏡が囁く。

ある女性のそっくりな声で。

ハナミのデバイスの待機状態である。

「ああ、怖いよ、怖いものだぞ―――――でも、あいつはこれが完全だったとき、なんで意図も簡単に真っ二つにできたんだ?」

定規で真っ二つだぞ、Sランクの砲撃魔法も容易く食べてしまうこれを、と少し笑ってしまう。

『管理局に通報しましょうか?現在日本の海鳴に滞在する魔導師は多く。あのハラオウンなど誰も彼も精強です、中には噂のユ―――「ああ、ダメ」』

『何故でしょうか?』

「こんなもん持ってたんなんて言ったら捕まるぞ、私が。あとこれごみ捨てに便利だから勿体無い」

『貴方はいつもクレイジーですね』

「ああ、なんとしてでもあいつを巻き込まないと人が死ぬ、沢山死ぬ、地球が無くなってもおかしくない、それに」

『それに?』

「本当にこれの片割れを破壊出来る魔導師なんてどんな世界にいない、下手につつけば、どかん、だ、末馬以外でこれをなんとか出来る人間なんかいないんだ、多分。
管理局の少年少女には荷が重すぎる、しかも上司の知り合い死なせるわけにはいかないだろう、これ高ランク魔導師とか大好きだぞ、絶対犠牲者が出る。
周囲20メートルの術式の発動が対魔導モードの発動条件。
ましてや今通報したらその最初に来る人間が絶対死ぬ、それは駄目だ、初見殺しなんだこいつは、管理局で働いているような優秀なデバイスマイスターでもダメだ。
こいつは管理者以外となると勝手に人間の意識誘導だってやる、管理局員の好奇心を動かして術式を無意識に使わせるぐらいは自動でやってしまう。
まさしく「地獄の生き物」だ。
基本的に殺戮が大好きなんだよ。
あの時は魔導師がいないからこそ出来た平和な解決だ、それでも集団催眠事件になったんだぞ?そしてあの末馬がいなければもっと酷いことになっただろうな
あの学校の生徒全員が殺し合いを始めるくらいの、な。」

『…貴方は大丈夫なのですか?よくそんなものを十数年掃除道具として愛用してきましたね』

「前、私は昔はAランクの魔力保持者だったと話をしただろう?
管理者の私でさえ解析中にごっそりと魔力を食われて、生涯に使うだろう魔力の半分が喪失して、今はDランク。
完全に破壊出来れば、もしかしたら、元に戻るのかもしれないな、あとジゴちゃんは便利だぞ」

『貴方はやはり変です、ゴミ捨てより、そっちの方が大事では?』

「私、捨てれない女だから、これないと部屋がすぐに腐海になるんだよ、そっちの方が生活に関わるしな。
これあれば「部屋綺麗にして」で一発なんだぞ?私の家宝だ」

『それはクレイジーですね、貴女がそう言う人間だとは知ってましたが』

「なら言うな」

本当にクレイジーだ、とハナミは笑った。あの時は、全くそういうものではなく、あの学校で噂になってそのまま消えた
ただの「不思議な生きた箱」という怪談の小道具だとアラキも私も思っていた。

特に私は「これはかの有名な―――コトリバコだ」とか思っていた。

末馬?

あいつ普通に「集団催眠の原因がこれ?バカみたい、こんなの……えい!」だし。

まさかこれがアルハザード製の対魔導師兼次元災害事象発生用の生物兵器とは思わなかった。


「それをまぁ、なんとも簡単に――――ただの学校の教材用のデカイ定規ですっぱりと切断したからなぁ、「えい」で」

今度はキチンと壊して貰わなければ。

次は「やぁ!」とか言いながら壊してくれるだろう、見事に。

なんでそんなありえないことが出来るのか不思議だ。

あと私のは壊さなくてもいいけど。

「なあジゴちゃん」

お前を胃の中に飲み込んだ間抜けはどうすればいいのかな?

そもそもあの間抜けはこれのことをなんなのか知ってるのか?本当の使い道知ったら、気違いが発狂するな、ワハハ。

「さっさとお前の力であいつの腹からウンコになって出てきてくれないかね?いや、既に出てきて使われているかも、ああ、めんどっちぃ」

早く帰らねば、あの若くて可愛い司書長様が過労で死んでしまう。
欠員ひとりはでかいんだぞ、あそこ。

それかノイローゼーだ。

めんどっちぃことになってきたぞ、おいおい、あの可愛いユーノ様のノイローゼーとか超みたいぞ。
ノイローゼーで膝丈が普段よりも、もっと短い短パン履いてくれるかもだぞ、おいおい。

それはいいとして。


「末馬め」

お前が息子と最近ミッドチルダに遊びにいかなければ、こんなことにならなかったのだ。
なんでお土産に、こいつらを復活させる餌を買ってきた。

「わー綺麗な、宝石だね、うんハナミこういうの好きだし、買って帰ろう」

「へぇ、中で虹色がくるくる回転してますね、面白いですね……でも本当にこれでいいんですか、なんか不気味ですよ?例のハナミさんっていう海外に居る友達、喜びますか?」

「ハナミ、オカルト好きだし、昔もね、変なただのちっちゃい箱で騒いだもんだよ、「これはコトリバコだ」とか言って、ふふ。
あと今は南米でそういうのを研究してるんだ、面白い友人だよ、でも極端に掃除が出来ない人でさ、いっつも私が寮の部屋掃除してあげてたんだ」

まぁ南米じゃなくて異世界だってのを黙っていたのは悪かった。

だがお前いつの間に魔法とかそういうの知った、誰だ、余計なこと教えたの。

あとお前みたいな災害レベルの怪物が魔法の世界に来るな、混ぜるな危険すぎる。

「まぁこの世界なら何買ってきてもオカルトですから、いいんじゃないですか?そこのテーブルだって異世界のテーブルですよ?」

「カイゼルファルベの血石だって、文章は『かの物の血こそ…あ、掠れてて読めない」

「ふーん(なんかどっかで聞いたことあるような)あと多分古代ベルカ語っぽいの読めるんですね?あとエイジャの赤石みたいな名前ですね」

「大学とかでドイツ語ちょっと齧ってれば、MS明朝か楷書体かって感じの差で普通に読めるよ。あとジョジョ、日本に帰って読みたくなってきた」

「へー……(もう突っ込まない)母さんは何部が好き?」

「私は一部、昔(前世)子供のころ、波紋練習したし」

「俺はズームパンチ練習しましたね、今はできるけど痛いからやりませんね、関節って外すと癖になるし。あと多分母さんも今なら出来ますよ、波紋」

「帰ったらやってみるかな?」

「とりあえず、真に受けて、出来てしまっても、無駄に長生きしないでくださいね?ただでさえ若作りなんですから。
流石に俺でもテロメアとか弄るの難しいんですよ?あとレベル30くらいの経験値必要なんですよ?」

「爪は好きに伸ばせるのにね、ゾルディックみたいに」

「黒板ひっかくと凄い音でるんですよ、あれ」

「うわーやだやだ、想像するだけで苦しいからその話はやめにしよう、あとレベルって?」

「レベルじゃなくて熟練度的な感じ?かも、使いこめば結構色々出来るようになってきました、静電気好きに出したり、体に溜まった乳酸減らしたりとか、イルカみたいに半分寝て半分起きるとか色々です」

「へー相変わらず面白いよね、ちょっと羨ましい」

「学校の勉強できた方が便利ですよやっぱ、使うとお腹減って食費かかるし」

「私がいつでもいっぱい作るから大丈夫だよ、あとそういうの気にしないで」

「………(この人と早く結婚してぇ)」

とか言いながら息子と一緒に選んで買ったらしいが。


どんな確率で骨董品屋で、そんなもの見つけてお土産にするんだ、お前は。
前に石垣で買ってきてくれた沖縄の古民家の屋根の上にあったらしきシーサーよりもレアだぞこれ。

届いた瞬間にカービィみたいに吸い込まれて復活したんだぞ、どうしてくれる。
今までは休眠状態でよかったものを、共鳴してアラキの方も復活しただろ。
あれの中に魔導師の知識が入ってるから、犯罪に使われそうだぞ。

基本的になんでもお前のせいなんだ、全て。

「さて、末馬妙子、これはお前の出番だぞ?」

お前ならこの虚数空間にでさえ、投げ込んでも戻ってくるこいつを倒せるだろう。

どんな物理現象、魔法現象にも耐えうる、怪物を。


多分。


で。

あとお前の息子はどんな生き物なんだ。
近況のメールだと、すごいことになってるぞ、イメージだと超人ハルクみたいだぞ。




つづく?



金属釘バットがアップを開始しました。

チートキャラにはチート問題。



[36072] 小話 末馬達馬の覚醒 暴走編 
Name: みさりつ◆2781aa24 ID:4563c076
Date: 2013/02/20 18:46

「いやあ、たまに自分の肉体年齢忘れちゃいますね、言葉遣いとか俺の方が本当は年上だけど、年下の年上の人とかにタメ口してしまったりとか」

「もう、気を付けないとダメだよ?」

「ええ、他人を推し量るのはまず外見ですからね、そして何よりも言葉、物事を多く伝えますし、どんな良い人間でも出任せを言うと嫌われたりしますしね……本当に気をつけないとなぁ」

「…なんか、真面目っぽくなったね最近」

「いや、取り敢えず、真面目に言いました」


来週から此処で働く、と、転勤場所を下見をかね、挨拶に周り、その帰り道しゃべりすぎて疲れたな、と思い、ジュースが飲みたくなったある日のこと。






目の前で少年は軽やかにステップを踏むように、とん、と一気に空を飛翔した。
その息を飲むほどの恐ろしくしなやかな躍動は鷲が飛び立つような姿に似ていた。

私が自販機でジュースを買おうと千円札を財布から出した瞬間手から紙幣を取り落とした。
取り落とした紙幣は風に流され空を舞い

数メートル地上高くある。


それを

「よっと」

と一言、一息で、見事に少年は手で捕まえたのだ。
最低でも3メートルは少年が空を飛んだのだ、いとも簡単に、当たり前のように。

そして当たり前のように、すたりと、降り立つ。

それはただ普通に飛び跳ねたあとの着地の様子、雨の日に水たまりを飛び越える時よりも無造作なものだった。

そして少年は

「落としましたよ――――あ、やべ」

唖然としているだろう、私を見て、そう言った。


そしてすぐに「あー」と言いながらバツが悪そうに、頭に手をやり、ぐしゃぐしゃと短めに、額にまでなんとか届く、短い髪をかきまぜる。
髪はまっすぐなようで、一通り頭をかくと、さらりと髪が動く。
その様子はひどく少年らしく、でも大人びたように感じる。

これから教師として転勤してきた学校の男子中等部の制服を身に纏った少年は「うん」と喉のあたりに手をやり、咳払いをする。

そして。


「あー、一割いらんから、見たことを忘れてくれるとありがたい……まぁ結構バレバレだけどな、余力あるだろうなっていうのは。
でもこれは不味い、ま、誰も信じないだろうけれど……あと俺は危ない人物じゃないから、ほらきちんと拾ったお金は君に返します」

落としたのではなく、飛んでいったのが正解だろうに。
あと絶対に年上の女性である私に、君、なんていえる少年に生まれて初めて出会った。

手に持った1000円札をこちらに手渡してくれた、どう受け取ったのかは思い出せない。
唖然としたまま口を開いているだろう私は、驚愕したまま、何故かこう言ってしまった。

「お礼に、ジュースでも……」

「ん、まじで!?」

そう言った瞬間少年は花が咲くように、まるで散歩、と言われた飼い犬のように喜色満面になった。
1割り、すなわち100円はいらない、という割に120円のジュースに対しては遠慮はないようだった。
でもそれが不快でもなんでもなく、思わず自分の発した言葉が混乱ではなく、自分の純粋な好意だと信じてしまうほど嬉しそうに少年は笑った。

「昔はそうでもなかったけど、やっぱり妙子さんの金だし、俺は38円のスーパーで買うようになったから、自販機で買うのひっさしぶり。なんか新鮮だな」

と言う、そしてタエコという名前。

その誰かの名前が出た瞬間の少年の微笑みが私の眼に焼き付いてしまった。
もの凄く、不思議な瞳で、思わずびっくりしてしまい、手の平の中にある1000円をまた取り落としそうになってしまった。

そしてモノ凄い、優しそうな顔だったのだ、これはまた驚くほど。
そして私は先ほどの少年の大ジャンプを忘れてしまった。


「な、なにがいいんですか?」

声が思わず震えた。
それでも言い切れた私が偉い、と褒め称えたいほどそして自分より10は年下の少年に思わず敬語を使ってしまった。
するりと手の中の1000円は自販機に投入されていた、いつの間にか私は自販機の前に近づき、自販機のボタンに赤いランプを点灯させていたのだ。

「コーラ、せっかくだし」

何がせっかくなのか、わからないけれども、私は勢いよくコーラのところのボタンをおしていた。
そして取り出し口に落ちたコーラ、それは私が取ろうと「あ、自分で取る」と私の足元ふきんに手が伸びた、そしてコーラを何気もなく取ってしまった
少年に私はびっくりしてしまったのだ。
それは当たり前なのだけど、近づかれて緊張してしまった。
コーラを握った手は酷く男性を感じさせる、力強くまるで鉄のように硬そうで鍛えられている。
手を繋いだら、きっと安心してしまいそうな手、鉄みたいだけど、暖かいのかもしれない。
そこに視線が思わず長く届けすぎ固まってしまった私に、少年は「ほらほら、元々君のジュースを買うための1000円だろ?買わないの?」
と言うので私ははっとした。

今日はまだ寒く、春には程遠い時期だった。
だからコーンポタージュをひとつ買った。
手に持った缶は温かく、でも少しがっかりした気がする。

そういえば、私は喉が渇いていたのだ、なんでこんな塩気があるものを――と思いながら少年を見ると。


少年はしくった、という顔をしていた。
せっかくなら寒いし、暖かいものにすりゃ良かった、という顔をしてコーラを眺めていた。

私はそれを静かに眺めていると
少年も、それに気づき、私を眺めた。

互いに眼が合った、と私が思うと少年の瞳は私の手にあるコーンポタージュに向かっていた。

少年が私を見た。

私も少年を見た。


「あ……うん!それって偶に飲みたくなるよな、いやさ、別に催促してるつもりはないんだ、ほんと。
うん、自販機=コーラ見たいな方程式が俺にはあってさ、、まぁ今はコーラを飲む気分なんだ」

少年は慌ててそういうのだ。

その様子が可愛いく見えて、凄く魅力的で笑みが溢れた。
そして私は思わず、お腹を抱えて笑ってしまった。

こんなに笑うなんて久しぶりだろう。

「あははははっ」

後に、互いに交換すれば良かった、という大失敗は私の記憶に残り、いつまでも人生の大きな失敗として刻まれた。

「あー、なんだろう、俺って間抜けかね」

「何か面白くてっふふ、ご、ごめんなさい……君、ここの学校の生徒よね?制服着てるし」

「ん、そうだけど?」

「私、来週から此処の学校の数学教師になるのよね、よろしくね?」

私が本当にこの少年に挨拶するつもりだけでそう言った瞬間。

少年は自分が少年であることを忘れていたように、「あ」と言った。

そして

「先生、大変失礼な言葉使いで話してしまい、申し訳ありませんでした。」

ピタリと佇まいを姿勢よく正した。
驚くほど立派な真面目そうな姿に、先ほどの不思議な、誰とでも仲良くなれるような、とても少年らしい、少年の大人は幻となった。
今は、とても大人らしい、大人の少年に様変わりした、

己の過ちに気づくと、少年は本当に素直に謝罪を私に行なった。
思わずこちらが謝りたくなるような、真心が篭った、真剣な謝罪だった。
私は思わず、「わぁ」と感嘆してしまった。
感動してしまうほど。

悪いことをした、許して欲しい、という誠意にあふれた、素晴らしく綺麗な謝罪だったのだ。

思わず


「いやっ!いいわよ!?」

と怒鳴るような言葉が私の口から出ていた。
これもきっと失敗、ここで、優しく言えればよかったのに。

私はしまった、と思ったけれど。
少年はその言葉を聞くと。

「ありがとうございます」

と生真面目にそう、言った。


私はまたびっくりした、そして目の前の少年を顔をやっとまじまじと眺めることにした。
特に美も醜もない平凡な顔、でも少し、眠そうな眼をした少年だった。
本当に不思議な、でも心地よい気持ちになった。



ありがとう、ごめんなさい、感謝と謝罪、誠心誠意をこめ、自由に言える気持ちよさを持っている少年だった。
それがなんともたまらないほど、格好良く見えてしまった。
それは美しさ、醜さではなく、格好の良い気持ちが見えた気がする。
なんて不思議な男の人だろう。

今時の若者、いや今時の若者なんて言うと私が年をとっているような気分になるが、いや、私の学生、この少年の同年代の頃にも見なかっただろう気持ちの良い少年だった。
男の子ではなく立派な男性に見えてしまって、なんとも気恥ずかしい。
私の眼を見ている少年の眼差しは嫌らしさが全くない深い眼差し、ただ真っ直ぐ人を見る眼差し。
特別強い、特別綺麗、とかそういうのではなく、ただ深い眼差しだった。
まるで長く生きた象のような、大きい動物の眠そうな瞳だといえば、わかりやすいのだろうか。

そう、そんな眼差し。


きっと、あなたは優しい人なのね、などと知ったかぶってしまいそうになる眼だったのだ。

「え、と、貴方はえーとその……その制服は中等部の男子のものよね、何年生?」

私の顔は熱かった、まるで私自身が、中学生に戻って知らない男子生徒に話しかけるような気分になってしまった。
この時既に少年の跳躍よりも少年が気になってしまった。

「2年A組、末馬達馬です、先生」

末馬、達馬

スエマ、タツマ

すえま、たつま

そう頭の中でその名前を何度も何度も胸にしまいこんだ。
大事な宝物をもらったように。

もう一度、校舎に戻って女子中等部の職員室にいこう、そして同じ同僚になるだろう人にこの名前を訪ねてみよう、そう思った。
こんな少年はどこにいても、どんな空のしたでも、誰でも知っているような気がした。
絶対に末馬達馬という少年がこの学校の生徒であるかぎり、この学校に関係する人は全員彼が誰か知っているのだ。

そんな確信があった。

そして私も

「私の名前は大月美沙、来週から此処の女子中等部の数学教師になるの、よろしくね?末馬君」

「はい、よろしくお願いします、あと初めまして」

「ええ、まぁ校舎別だけど、仲良くしましょうね」

何を仲良くする気だ私。

「え?」

眼をまんまる、にして少年は不思議そうな顔をした。
そして、ああ、と言って。

「そうですね、仲良くしましょう」

少年は笑った。

社交辞令だと思ったのか、それとも?

いや違う。

少年の笑顔は
純粋に誰とでも仲良くする、優しい笑顔だった。

ちょっとがくり、と来た。
私はよく男性に綺麗だとか、言われる、そして欲を含んだ、眼差しを受ける。
ええ、そこらへん自信がある、胸も大きいし、結構注視される。

でも末馬達馬という14歳の少年は一度も今まで、全くそういう視線を私に寄越さなかったのだ。

もう話すことはないのかな、と思った少年は。

「ジュースごちそうさまです、外は寒いので暖かい場所で飲もうと思います、ありがとうございました」

そう言って、じゃあ、私は校舎の方に用事がありますので、とペコリと頭を下げ


「あと色素が薄い髪が綺麗ですね(妙子さんの髪に似てるな)」



そう言って立ち去った。



その後ろ姿は鍛え上げた男性の背中だった、広く、頑丈そうで、頼りがいのある背中に見えた。
私は、気づいた。


とても胸がバクバクと高鳴っていることに。


「え?」

10以上年下の少年だ、まさか!

悪びれず、媚びず、怯まず、飄々とした少年だった。
そしてただ当たり前のことを当たり前にする少年だった。

どこをさがしてもいないほど、非現実的なほど、見事にやってのける。

まぁあとで、気づくと3メートル飛ぶのは当たり前じゃなかったな、と思ったものだ。


そしてその時私はこれからのことを思い、酷く動揺した
認めよう、そんなことはないと思っても現実は非情なのだ。
一目惚れってやつが本当に世の中に存在することを私は実感したのだ。

そして大学生時代の自由なことを言える時に私は戻り、独り言で

「うわー、惚れちゃったかも、年下の子っ――――――ていうか犯罪!?」






たかが数分の嵐のような出来事だった。
私は盗まれてしまった、まるで稲妻が落ちるように、素早く、強く、少年に心を奪われた。

大月美沙26歳(独身)は大変な恋をしてしまったのだ――――。




アリサが最近疲れること。


なのは達が高校に上がらず、異世界に旅立つのが寂しい悩みだけれど
もう一つ大きな悩みがあった。

「ねえ少しいいかな、バニングスさん」

「はい?」

「えーと、えーと別に他意はないのだけれど、男子中等部の生徒会長の末馬達馬君の幼馴染なんだって?」

アリサは

ま た か

と思った。

思わず今すぐ、あの男に飛び蹴りをかましたくなった。
此処数年、このような案件が発生することが多くなり、正直腹が立ってしょうがない。
瞳が潤んでいる、ようは恋する瞳をした目の前の女性を見て、あいつめ、と思った。
今度は女性教師か、先週まだ転勤してきたばかりのだ。

アリサは面倒でしょうがない、ここで受け答えの会話に「昔から――」とかフレーズ入れたり、「本当にうるさいやつで」とか「しょうがないやつ」とか入れると。
何故か敵を見る眼差しで目の前のような女性に見られる。

普通にしゃべっているのに、何故、と思う。


1ミクロンもそういう感情が含まれない言葉なのに、あのバカなんて男として見ていないのに、何故?

山田曰く「あなたの否定って、すべてが素直じゃなく見えるような気がする」というヤツのせい!?

いや私は悪くない、全てやつが悪いのだ。

末馬達馬というバカが一人いる。

そいつは昔から妙子さん妙子さんと、いや今も五月蝿い。
馬鹿でお調子者で間抜けなわりに悪知恵が恐ろしく働く、もう生まれた時の第一声は「妙子さん」じゃないかと思うようなバカ。

「えーとそれでね、髪が綺麗とか言われて――――」


ああ、もう、うるさい。

本当に此処数年あのバカは可笑しな方向に全速力で走り続けている。
確か小学校高学年の時ぐらいからか、あの男は妙子さんへの圧倒的片思いをひた隠しにし始めた。
そして中学を上がる直前に母と妙子さんを呼ぶようになった。

多分そこらへんの時か。

あのバカは大変バカな方向に進んでしまった。

「俺はもう俺からはいかない、俺はもう散々惚れてるんだ、次は惚れさせる方向で行く、押してもダメなら―――引っ張ってみせる!?」

と自分の恋路の舵取りを可笑しな方向に向かわせた。
全ての元凶は末馬達馬だが、ある一言が余計だったのだ。

山田ゆかり、あの女、本当に余計なこと言った。
達馬に惚れているという奇特、いや危篤な病に侵されているあの女が

「好きだと言えない、なら好きだと言わせればいいのよ」


その時アリサはホトトギスじゃないんだから、と思った気がする。
そんな無理があり過ぎる、適当なアドバイスを受けて、末馬達馬は



「そ れ だ」


眼を輝かせた。

謎の覚醒しやがった。

やめろ、とそこで言えなかったのがアリサの後悔だった。
馬鹿は一直線、一途な恋の為に。
とんでもないくらい一途、そこはなんか尊敬してしまう。

そんなやつにそんなヒントというか、プルトニウム与えれば、火を見るよりも明らか。


即ち「老若男女が皆惚れる妙子さんが惚れる男に俺はなる!」

あんたその言っている言葉の意味わかってんの?

それって「僕は新世界の神になる」とかそういうレベルの狂気的な発言よ?

と思ったけれども、その時は「まーがんばんなさい。骨は拾ってあげるわ」とか言って流してしまったのだ。

流してしまった。

その時やつは叫んだ。

「そうだ、それしかない!もうこれ、うん考えるの疲れたからそれにしよう!もうそれに賭けるしかねぇ!?こっちは手が出せないんだ!もう、それに人生賭けてやる!?」

と、吠えた。

「人生決めるの早すぎなの」とか、なのはがやんわりと言ったのだが無駄である。

馬鹿は覚醒したまま、現在に至る。

強ちそれが一番の手だと思ったのか、末馬達馬という人間は、ホップステップジャンプというかのごとく一足飛び二足飛び。

とんでとんでとんでとんでとんでとんで――――と己を磨き始めた。
それほどでもない頭を、限界まで酷使し、一気に学年トップクラスの成績に乗り上げ、座礁せず、今もなお、学年1位を維持しているらしい。

あの男に点数で負けた皆の顔が忘れられない。

常に5科目あれば、500点499点498点とか、そういうレベルに達した


そして、よくわからない、何かを目指して今も疾走していると思う。

でも「いや、やっぱ無理だろそれ」とか言っていたので今はどうなのか知らないし知りたくもないが、とりあえず、そんなことがあってから。

いやそのせいか結局はわからないが。


でも今。



末馬達馬は所謂、女の敵になった。




「聞いてる?バニングスさん、それで――――」


「えーとアイツによろしく言っておきますから、ハイハイ、取り敢えず次私教室移動あるんで、また―――「絶対ね」……はい」


あいつに惚れたってどーせ無駄なのになぁ、とアリサは思った。


「もうさっさと、どうにかなれ」



[36072] 末馬達馬の覚醒 バトル編
Name: みさりつ◆2781aa24 ID:4563c076
Date: 2013/02/21 21:11
「5歳の子供をやってもいいし、20の大人でもいい、私の子なんだから、それは変わらないよ」

そう育ててくれた人は本当に俺の女神だった。


それでもさ

「もう少し、自分を許せるようになって欲しいね」


俺は今日はファミレスで山田に相談に乗ってもらっていた。
ドリンクバーでコーラ腹いっぱい飲んだから、コップを返して、山田の分のカルピスを入れて歩きながらうつらうつらとそう思う。



席に戻る時に口に出ていたのだろう。

「なんのこと?」

ああ、他愛のないことだ、可愛いことだ。
ま、そこは濁すしかない、相談出来ないとこだ。

「ああ、妙子さんのこと、最近は習い事教室行かなくなったなーってあと、ほれ」

「ありがと、一条の母が来て欲しいって言ってるらしいわよ」

「一条って誰?」

「あー私の喧嘩友達、あんた自分の分は?コップは?」

「もー飲まんから、返してきた」

「え、そうなの?」

ああ、山田の分がなくなりそうだったし、ついで。

「で、この前な、柴おばあちゃん先生から手紙で連絡きてさ、すごいぜ、手紙と一緒に大きなラベンダーの綺麗な絵が、もう妙子さん大喜び、それから居間に飾ってるんだよなー。
なぁ、柴おばあちゃん先生が喜びそうなものって何か知らないか山田?
あれ、凄い手間が掛かってる大作だしさ、何かお返ししたいな、本当にさ、取りあえず手紙だけはすぐ返したんだけどな。
んーやっぱり国語の先生らしく「真心を」っていう綺麗な感じの達筆な文章で、妙子さん翻訳だと

「この絵がもし、貴方が気に入って喜んでくれたのなら私も喜ばしいです、よければそちらも、私を喜ばしてくれませんか?」

っていう、こうお茶目な感じの謎解きが入ってて、絶対何か喜ぶもの上げたいんだよね、何かないかな?
それで何故か、妙子さんに「たっくん本当に……」とか言われて何か手伝ってくれないんだよ、普段なら手伝ってくれるのに、こういうの」


「………「どした?」なんでもないわよオタンチン」

山田は思った。

本当にカエルの子はカエルだと。





末馬達馬の修練。



「準備運動終了!」



人間ガジェットという、鬼ごっこ見たいな俺が唯一、その人外能力を好きに使って良い楽しいアルバイトの報酬ということで。

軽く、達人に護身術を教わることにする。

まずは怪我をしないように準備運動だ。

海鳴の魔導師達の面々がお菓子をつまみながらジュースを飲みながら眺めている。
普段忙しく働いている彼女達のひと時の癒しだろう。
どいつもこいつも見目麗しい美少女というやつで、色々超人なのだが、やっぱりまだまだ中学生、他愛のない雑談をしている。
部活動やったあとのひと時の楽しみ、という姿と変わりはしない。

楽しそうで、華やかで、思わず笑みがこぼれる。

だが人の体操に「気持ち悪っ!?」ってなんだ。

そんなに人間の体が曲がるのが不思議か、テレビでみてるだろ、そういうの。

いや、関節外したり、海老反りでエクソシストの悪魔の真似したりするのがダメなのか。

「もらうね、たっくん、開けていいよね?この高そうなやつ―――これゴディバ!?」

「え?」

「本当?」

「あら」

おお、持ってきたかいがあったな、やっぱ甘いもん好きだな、お前ら。

そこにリンディさんがススススっと混ざるあたり、流石だ。

俺が持ってきたお菓子だ、去年のヴァレンタインデーの残りで、高そうなチョコ。
高そうだから手を付けなかったやつ。

確かそれは、えーと、国語の柴おばあちゃん先生のか、去年退職する前に引越し手伝ったら「ヴァレンタインデーだから、私からもね、ふふ」とか言ってもらったやつだ。

あんまりにも高そうだから、部屋に飾っておいたんだよな。

元気かなぁ、あの人。

退職したら富良野で一人、絵を描いて暮らすとか言っていたけど。

昔は美人だったな絶対って感じの人だったな。

作文の書き方教えてくださいって頼んだら、サルでも書ける作文の書き方っていうくらい上手に教えてくれた人だし。


「いいけど、1コだけは絶対残しておいてくれ、それ恩人からの貰い物だし」

「わかった」

「あとポテチのかたあげのヤツは絶対とっといてくれ、ジュースはコーラな」

「炭酸なんて、私との模擬戦後果たして飲めるのだろうか達馬。そのような喉がしゅわしゅわと痛くなるものを」


目の前に今日の相手。

シグナムだ。



「胸を借りるつもりで、お手合せお願いします――――シグナムあと俺はコーラが大好きなんです、一気飲みとかマラソンのあとでもイケます」

「コーラには毒があって歯が溶けるらしいぞ?ポカリにしておけ」

「それは迷信です―――ではお願いします」


俺は構える、いかに身体能力が優れていても、使う人間が普通な人間な故、その構えは何処までもシンプル。
正眼、そして拳ではなく掌を相手に構える。
大地に繋がる足をリラックスさせ、そして芯がはいったように硬く、柳のように柔軟に、常に変化を加える。
決まりのないリズムを与えることで、わざとらしくも、それでいて、臨機応変な構えだと自分では思っている。

ステップは踏まない、ただ、リズムを踏むのだ。

いつだって大雑把に適当に。

シグナムもレヴァンティンを構える、それがどんな技術的な意味があるのかは素人の俺にはわからないが。
最初に掌を狙うべき場所がわからなくなるほど、隙がない。

狙うべきは基本正中線だとはいうが、難しいなと達馬はいつも思う。



「胸を借りてどうするん?まさか「そこ、おふざけしない、人がせっかく真面目になって格好つけてるのに」」

俺は妙子さん以外興味ないのだ、馬鹿者。


「格好つけても無駄や、普段が普段や」

「男の子だから、たまには格好つけてもいいじゃないか、はやて」

「あんまりカッコよくない」

だって普段おふざけしすぎ。

と口々に言われ、達馬は落ち込んだ。
まぁ生まれてこの方、あと前世でも誰かに格好良いと、言われたことはない。


うけることは多いのだが、ま、うけた方が嬉しい気もする。

格好良いと言われるだけよりも喜んで貰ったほうが嬉しいだろう。

それに、格好良いと言われたら気恥ずかしくなる。



複雑だな、と達馬は思う。



「いえ、主はやて、達馬は技術は荒削りですが、中々のものです、特に揺らぎしかない特異な構え、面白いです、」

無為の構えには至らない、稚拙な構えだ、リズムを崩されれば、あっけなく倒れるような構え。


折角の正眼のまっすぐな構えがブレブレで、足払いなどの奇襲に弱い。
小刻みなリズムの間隙に攻撃を加えれば、簡単に全弾命中する。



だが。

あっけなく倒れないように我慢する。
倒れても攻撃を受け続けてもやめない、動くのをやめない、酷く落ち着きのない。

でも達馬の中では達馬の臨機応変の構え。

いっつも、ざわざわとバカみたいに動き回る、全部バカをみる、構え。
だがそれでいい、いつだって、俺は真面目に馬鹿をやる、そういう人間だ。


「攻守も全てを捨てた、ただ耐えることが前提の構え、面白い。
せっかくザフィーラの教えたストライク・アーツの攻防一体が身に入ってないが、まぁそれぐらいでいいだろうな」

はやては思った、それってただ面白いだけじゃないのか、と。

「本当にザフィーラさんすみません、おバカな生徒で」

「構わないぞ、お前はそれでいい、とても新鮮だった」

「どうもです」


捨て身の構え、その場で決める、その場で乗り切る、でも楽しそうで面白いと思ってしまう、変な遊びの構えだ。

ムラが酷く、その日のテンションで全然違うのだ。


「びょーんって感じだもんね?日によって」

「たっくんはマゾなん?わざわざ縛りゲーするって真面目にザフィーラから習わんの?」

「はやて、達馬はきっとそうなんだよ、なんだかんだいって、人に叩かれて楽しそうにしてるし」

同級生にプロレス技かけられても、いたいいたいやめろよなーとかいっつも笑ってるし。
で、くすぐられ続けて「あーもー!」と怒るよね、とくすりとフェイトは笑った。

「人をマゾ扱いしないでくれ、俺はただ怒首領蜂とか避けて攻撃するゲー苦手なんだよ、本当に、途中でごちゃごちゃしてて泣きたくなってくるし」

敵の攻撃発射されてる目の前で無敵モードでずーっと、攻撃していたいので、裏技使います。

それ、楽しいの?と色々な人に言われます。

「チートコード禁止したらうわうわ言いながらクリアしてたねそういえば、だったら腰だめに構えて「でん」と待っていたほうがいいんじゃないの?」

「いや、それやると、逆に落ち着かない、これがいい、「でん」は集中力なくなるし、ようは何が何でも死ねばもろとも戦法だ」

「ヤケクソすぎるやん」

「なんかたっくん、面倒になるとボンバーマンでもそうだよね、無造作にボム置きながらみんなを巻き込みながら自爆して顰蹙を買うやつ」

なのはがいつも怒る達馬の悪癖だった。
あとドクロ見つけるとニヤニヤし始める。

滅茶苦茶楽しそうにしながら、たまにそういうことをやって「おいぃぃ!?」とヴィータに肩を掴まれて揺すられる。

自分が負けたあとのスタートボタン連打とか

遊びが入ると、ふざける、バカをやる。

「二度とお前とはやらない」

とかまで行かない微妙なあたりを飛行する、おバカ。

妙子さんのお菓子を賭けてやると、眼が瞬きしなくなって、機械になる。

妙子さんを呼んで見てもらえばいいのになぁ、となのはは何時も思う。
99,999999%妙子さんおばかなんだから、と。

このもう一人の兄のような少年は好きな人に努力を見せることを恥ずかしがるから、多分その前に逃げちゃうな、となのはは思う。

外では適当にやって内側では努力している。

妙子さんの前で、いや他人の前でどんな時でも本当に辛い姿は絶対に見せず、笑ってやせ我慢をし続けていると知っている。

出会ったとき、必死に自分をつなぎとめる為に強がって、笑っていた少年。



痩せぎすの少年、まるで透明な少年、どこにもいて、どこにもいない。

自分は いないと、いなくなれ、と思っていた少年。

でも


悲しくなりたくないから悲しくないようにする、楽しくなりたいなら楽しくなりたいようにする、そういう一生懸命な少年。

守りたい人間がいるから守れるようになろうとしている人間。

今は善く生きるのに真剣な少年。

眠そうな少年、いつだって、大好きな人がいてその人のことばかり。



「そういう人が私にも見つかるのかな」


「フェイトちゃんがいるやろ」

「口に出てた?」

「なのは」

見つける必要はなかった、となのはは笑った。


私はばかだなぁ、と。

うん、今のは気の迷い、ちょっと恋をしてみたい、という女の子の気の迷い。

「フェイトちゃん」

「一緒に強くなろうね?」

「うん」

「青春やなぁ――――」

「はやても」

「はやてちゃんも」

「おお………ありがとうな!」



「一緒にみんなで」



私たちは顔を見合わせ、笑いあった。







となんか、空気が、エアーが、メイプルに感じたら不純な人間確定の空気がががががががが。

「うわー、ちょっとおじさんの俺には眩しすぎる友情だ」

いきなり俺パリングされた。
やっぱり、俺にはああいう心の綺麗さはないから弾かれます。
本当に子供のころでもああいう綺麗な心はなかったと俺は思う。


今も14年間子供をやってきたが、俺みたいにひねくれた人間にはキツいものがある。




だって、誰かひとりでも雪かき手伝ってくれれば――――結局私のせいだからっ別に恨んでなんかいないんだからねっ!


やめよう。


そういうの。

俺には妙子さんがいるし。


妙子さんは大人なんだから、俺は馬鹿な小賢しい大人でいい。

あとそれを微笑ましそうに見れる大人なあなたたちが凄い。


「おい、タツマ今日はどんな面白い必殺技考えてきたんだ?」

「ん?ヴィータさんそれは秘密に決まってます、あと今日は絶招です」

「今日は何読んできたんだ?」

「えーと中国武術のバトル漫画です」

「面白いのか?」

「燃えます、なんかK1観たあとの独特な自分も強くなってくるような感じが出てくる熱い漫画です―――そろそろ始めていいですか?そろそろ」

「今度貸してくれ」

「いいですけど「私にも貸してくれ」――――「ハイハイ皆あんまり口出しちゃダメよ?達馬君のアルバイト代なんだから」

リンディさんが場を鎮めるためにパンパンと手を叩く。

「いやー本当にありがとうございます、機材ぶっ壊しても、弁償なしとかまじですいません」

「まぁ私のお金じゃないから、いいのだけれど、月間業務運営目標で予定が空いてる時、便利で助かってるし、正直ガジェットよりや――はい始めて」



達馬は思う。

貴方は本当にそういう感じの行動似合いますよね、あと――――とりあえずよし。

「アルバイト料金貰いに行きます」

管理局の人たちから貸してもらっている、防護服のポケットから、グローブを取り出す。

耐熱防寒防弾防刃の手袋、魔法の世界からやってきたグローブ。

地球にはなさそうな特殊な物質か何かで作成された。

天才的なデバイスマイスター手作りのお気に入りだ。
誂えたようにという、言葉が似合う、手になじむ、もうこれを付けるだけで、強くなった気がする。


律儀にもマリエルさんがわざわざ去年の俺の誕生日に作ってくれたものだ。



これつけて家に帰ると、妙子さんが驚いた顔で

「それ他の彼女がくれたの?山田ちゃんは高そうなボールペンだったし、いやーたっくんはモテるなぁ」


とか聞かれて死ぬほど焦った。


あと

他の彼女って

なんか疑われている!?

それは親バカ発揮しすぎだろ!?

しかも何か皮肉られた!?



あれは自分は前世から今の今まで彼女がいない虚しい人間だという説明をしなくてはいけなかった、悲しい時間だった。




とか思いながら。


それを手に嵌める。

(強化)

達馬は一気に全身の肉体を強化する。

筋肉、皮膚、神経、末端までどこまでも強くする。
まるで焚き火にロケット花火をブチ込むような、急激な暴力的な変化だ。

ああ、これはいつもファンタジーだな、と達馬は苦笑する。

空中で体をクルクルと回転させ飛び跳ねるのは視点が目まぐるしく、模擬戦で使えないのは現実だった。
あとあまり肉体の変化は戻らなくなったらどうしようという恐怖があるので

ただ。

(もっと強化する)

意識的に心の奥底で囁くことで、明確にする。
自らで口にすることで、ファンタジーを現実に近づける。


違うか、現実をファンタジーで強化する。


やる、と言えば出来る。

そう信じることが力になる。

何かあったときでは遅い――死んでからは遅い、やりのこしたことがないように、悔いがないように笑って死にたい。


日の出が見たかった、もっと生きたいと思っていた。

でもいまなら、落ちたぐらいじゃ死なない。

でも、もっと別の何かで死ぬかもしれない。


こんな訓練は無駄になるかもしれない、無駄じゃないかもしれない。

あの時は一人で死ねた。

でも今度は死ねない、絶対に。

せっかく周りには強い人たちがいる。

ヒーローが居て欲しいような現実にヒーローが周りに居ないとき、俺がヒーローになれれば、と思う。

きっと良いと思う。

妙子さんのように、優しく助けてくれるヒーローがいてくれれば、誰でも嬉しいし、幸せだと思う。


だから。


ああ。


今は夢がある。






学ばせて貰う。

俺はそんなに強くない、普通の男だから。

積み上げて見せる。


最後まで逃げずに諦めず、届いてみせる。


もし



いや、いいか。



さて真面目にやるか。


隣に並べるように、追いかけてやる。

あーいつか「ついてこい」とか言えるようになってみたいなぁ。


やっぱ誰だって、強くなってみたいだろう?






目の前の少年の眠そうな瞳は深く。


貪欲そうで、強欲で、なんでもかんでも一生懸命な。

夢を追う若い騎士のような眼だ、ワクワクしてしまう、とシグナムは微笑む。

そして

シグナムは苦笑する。

本当の本気が見てみたいと思ってしまった。


なりふり構わない、本当の本気を。


その時は多分、この少年は怪物となる。


その時がこなければ良いな、と思うが、やはり己の性か少し楽しみなのだ。





「やっとか?無駄話が長くないか?」

「貴女が勝ったら漫画貸してあげますよ」

「言ったな――――空戦にするか?」

「デカイ口叩いてすいません!」

「まぁいい、始めるぞ」

「ええ、お願いします、行きます」



そうだ面白い、こいつは面白い、なにせ、面白いほど強いのだ。




「来い」



のーないのテンションあげそうな物質、あがれ、と達馬は強化する。


「よし!いくぜええええええええええええええええええええええ!」


一気にテンションを上げて、上げて上げて上げまくる
思考が早くハイになるのだこれは、今日は短期決戦でいく!

一撃必殺ならなんだって絶招だ!

存在が中二病とかまたみんなに言われるような、爆笑モノの「意味あるのそれ!?」とかいうすげぇやつ見せて―――テンション下がった。


バトルもたまには編。



「やっぱり私よりも速い、小回りは私の方が速いけど」

「どっかの漫画みたいに柱を投げて、それに乗って飛べんじゃねぇの?そしたら空戦もできるんじゃないか、なぁ?」

「そこまで出来るのなら自分で飛んだ方がいいんよ?」

「夢こわしちゃダメだよ、はやて」

「じゃあさ、反動デカイ銃持って、撃って空を飛ぶとか!空気を踏んで―――」

「ヴィータさん!無理だから!水ならできるけど!前やって出来たけど、調子に乗って立ち止まって、俺は犬かきとカエル泳ぎ以外泳げない!なんでこんなところまで走った、俺!?」

「馬鹿だろ」

「できたらやるでしょ!?みんな絶対!」

「よそ見するなぁ!」


「すいません」





「凄いわねぇ、ウチに来てくれればいいのに、陸士としてなら登録出来るのにね」

「餓死するくらい、食い扶持に本気で困ったらって言ってました」

「あらあら日本じゃ無理ね」

「妙子さんちなら大丈夫なんじゃないかな?働かなくても」

「達馬君も男の子だからやっぱり、ね」

「うん、ニートとか言い出すよりも全然いいよね、安心した」


「そこ!人がそういう人間だとか思ってるのか、一応学年一位だぞ!?」

「英語しゃべれる?今数学の問題言われて解ける?」

「紙のテストの答えなら書ける!あと俺はオーフェンか!?所詮応用が出来ないペーパー用だ俺の頭脳は!基本反復作業の暗記だぞ!?昔の問題が出ると――――」

「よそ見するなぁああ!」

「すんません」




「達馬くんが穏やかで真面目な子で良かったわ」

「おだやかで、まじめ?」



リンディは目の前の少年とシグナムの模擬戦を眺めながら、そう思う。

目の前の少年はシグナムの流麗な斬撃を慌てながら掌で弾く。

なんと、剣の腹に手のひらをぶつけて弾くのだ。
武器は体と一体化していないから、感覚が掴めないそうで素手でやるしかないそうだ。

武器を持つと武器に振り回されて弱くなる。

それでも十分脅威的な戦闘能力だ。

「発射された銃弾を指でつまめそうね、相変わらず」

人格的に末馬達馬も末馬妙子も問題があったならば、管理下に置かなければならないという絶対がある、戦闘能力。

技術的な問題、タクティカルスキルが磨かれれば、末馬達馬は陸戦ならば、指おりの存在になれるのだ。

仕事上、欲しい、と思ってしまう。


元来の性能だけで、陸戦A級以上、末馬妙子に至っては不明。

管理局に入局したならば「人の形をした竜」とか魔法生物的な扱いになりそうな二人。

達馬君の場合「亀のような兎、兎のような亀」かなとリンディは思い、自分ながら、いい表現かも、と微笑む。

特に末馬達馬はレアスキルと一応認定された肉体強化だが、今イチ全貌がわからない。

己の攻撃に魔法の非殺傷設定らしきものだけを載せることが出来る。

リンカーコアは確認されているが、そのリンカーコアは独自な非殺傷とその強化の調節を行う程度の働きしかしていない。

魔力自体はリンカーコアではなく末端の神経まで全身に行き渡っている。


過去に肉体のなんらかの変化があった後天的なものか、それとも先天的なのかは検査してもわからなかった。

「原因として幼児期の多大なストレスによる可能性が高いのかもしれないわね」


あのお菓子を作る能力も。

ある程度の自己のイメージにより励起させる原始的な魔法の才能なのかしら。

自分の限界を神がかり的な何かで、超える才能。


一種の超能力のような。



精神的なものに影響されすぎるあたり。


いえ。


結局わからないわね。

レアスキルが魔力によるのなら、あんなに空腹を感じるわけがないのだけれど。

まぁまだ聖王教会の予言とかよりも、わかりやすいレアスキルね、と思う。


「いつから使えたのか、わかりません、出来るからやってます」って言うのが気になるのよね。

妙子さんも「何か出来るからやってる」ですし。

あなたたちは本当に人間なのかしら、あと妙子さんはもう、諦めたわ、とリンディはふてくされるような気持ちになった。

末馬親子は不思議すぎる。


レアスキル名が二人とも「不思議なパワー」

ミスティック・パワーだもの。



突然少年の移動速度が上がる、「2速!」と叫び、さらに肉体強化を行ったようだ。

先週は「ギア2!」とか言いながら速度を上げていたが、その前に「ギア4!」とか言っていたので、絶対に適当だ。

最初の頃はあれをやる達馬君に思わずフェイトが瞬きするほど、驚いていた。


「遅くなるかと思ったら、早くなった、フェイント!?」

「言い間違ったの!ごめんね!ギア5!」

という感じで。


「ふふ…あら、音速超えたわね」


衝撃音。

空気を引き裂く瞬間が見えた、その瞬間少年の姿が見えなくなる。

まるで人間大の質量兵器ね。

脳や血管や臓器が破裂したりしないのかと思って、最初はこれを見て訓練を中止して管理局の病院に運んだが、「なんで?」とピンシャンとしていた。

人間の肉体の形状のまま、特に変化のない、爆発的な運動能力の強化。

管理局の記録上、彼を超える速度を生身で出せる人間はこの世にいない。
どんな魔導師でも魔法による後押しではなく純粋な肉体の変化であの速度は出せるわけがない。

音速で走る新幹線があったとしてその上で、生身で立てるわけがないのだ。


人間ではないシグナム以上に人間をやめた速度、それでもシグナムは的確に斬撃を狙う。

「―――――!」とさらに速度を上昇した後に響く置き去りになった声。

末馬達馬の質量が移動するたびに衝撃波が発生し、空間を爆発させた音を響かせる。
防護服は何故か一切破けたりしない。

本当に不思議だわ。

「あら、今日はそういう訓練なのね」

周囲に衝撃の強さが増してくる。

此処までいくと最早、ただの嵐だ。
そこから――――と思ってるみたいだけど、どうやら、無理みたいね。

「そっちか」と周囲が防御魔法の強さを上げつつそれを見る。

それがみんなのちょっとした訓練にもなっているからお得よね。


この状態になると、1か0の戦闘になる。

即ち。

「そろそろね」

もう終わりか、とリンディは思った。


燃料切れ。




「腹減った……たんまです」

ああ、調子に乗りすぎた。

「達馬、もう少し我慢できないの?」

そうフェイトが赤い瞳をぱちくりとさせながら言うが。

「我慢したらお腹が空いて目が回って力が出ない、本当だよ?」

うん、本当、顔が濡れたアンパンマンの気持ち、パンが投げれれれば、俺の場合はぱくりと食べて元気凛々である。

「そ、そうなんだ……」

「だからお腹いっぱいになればまた動ける」

「そ、そう」

何かドン引きされた……何この単純な生き物、とかそんな感じで、いや、どう反応すればいいかわからなくて滅茶苦茶困っているだけか、フェイトなら。

「食べてすぐに回復って、人間技じゃないよね?」

なのはがフェイトを後ろに隠しながらそう言う、何、その感染防止的な、あれだ、バリアとかえんがちょとかそういうの。

「人間の俺が出来るなら、人間技だろ、なのは?」

「人間?いきなり「ばぁ」とか言いながら自分の体を気持ち悪くして人を絶叫させることばかりするのが人間?」

お前に言われたくない。

お前だけには言われたくない!

面制圧で俺をいっつも瞬殺するくせに

前なんか

「もー!すばしっこい!」

「制空権とるのいいけど、下から滅茶苦茶パンツみえてんぞ、はしたな「ディバイン・バスターぁああああ!」―――あれ―――光が――――お前その色―――大人になったな」

「たぁああああああああああ!たぁああああああああああ!たぁああああああああああ!たぁあああああああああああ!」


「セクハラ!セクハラなの!?ディ、バインバス「土下座しますから許してください」もうたっくん、見えててもそこは見ないようにするのがマナーだよ?」

「ふ、ふざけるなよ、空飛んでズ「ディ」やめてください、全くもって全然怪我とかしないけれど、心折れます」

「妙子さんに言いつけるよ?いっつもそういうことするって」

「お前、それ反則だろ、孫悟空の金環並だぞ、それ。あとハーパンぐらい履け、俺はピクリともこないけど凄い見ぐ「言いつけるよ?」ごめんなさい」


おいそこの小娘ども、「イイこと聞いた」って顔するな。





とか


体が震える。

あれこそが魔王の恐怖。


「消化を強化ー!って消化速度や効率上げてエネルギーに変換してんの!多分!それもエネルギー食うけど!」


そこらへん適当。


「燃費悪っ!?」

妙子さんには悪いなぁ、と思うくらいな。

「何か食べて休め、次は段階を下げて強化を行え、攻撃に移れないまま終わるしな……今日は私が握ったおにぎりがあるが、食うか?」

「おお、食べます、いただきます、ところで三角上手に出来るようになりました?」

「シグナムは上手になったよ、この前一緒に模擬戦した後くれた梅おにぎり、美味しかった、あと次は私がやっていい?」

「お褒めに預かり光栄だ、テスタロッサ、あと駄目だ、私はさっき、ただ立って素振りしかしていないからな」

「すいませんね、素振りさせて。前はなんていうか3Dおにぎりだったな、あれ、まぁ塩加減は丁度良いから
別に味は普通だけど、あと、隣でまさか砂糖で握る人なんてのが居るのにびっくりしました、面白いから止めませんでしたけど(俺も昔やったし)」

「あれは、おはぎがあるならとか思っての実験なの」

「まぁ食べれるけど、その中にアーモンドチョコが入ってるのがファッキンショッキンポイントですよシャマルさん」

「穀物なら一緒って思って試したのよね、ほらゴパンがあるし」

「それは……んー菓子パンではなく、菓子ごはんっていう新規開拓ですか、悍ましい発想ですね、もう、感心しちゃいます」

「あれ、美味しくなかった?前、無言で黙々と食べてたから、美味しかったのかな、とか思ったのだけれど」

「今度はせめて、チョコやめた方がいいですよ?中で溶けてドロドロで食べづらいです、焼きチョコとかならいいかもしれません」

「えー美味しそうにたべてたんじゃないの、達馬君?……あと焼きチョコかぁ」

「えーと別に発がん性物質とかじゃないし、食べれることは食べれるなって感じでした」

「え、なんなん?また生物兵器作ってるんシャマル?あとたっくんはなんなん?」

「き、聞かないではやてちゃん!?」

「はやてーまたシャマルが生ゴミ作ってたぜ、唯一、逃げないでオモシロソーって顔しているタツマをゴミ箱にして」

「ヴィータちゃん!」

「なんでにげないの?」

「毒じゃなければ、食えると思うけど?まぁ俺、味覚貧相だし、俺も色々やったなぁ、そう言うのってという生暖かい気持ちになれるし」

ポーションでおでん作ってみたりとか、よくやったし、まだシャマルさんの方が真面目にやってる分、救いがある。

いや、訂正。


シャマルさんの方が救いようがない。




「妙子さんの料理で大きくなったのに?」

「うん、俺まじで貧相なんだ、たまに「どこら辺が美味しい?」って聞かれて、「とにかく美味しい」としか言えない自分の感性を何時も呪う」

もう言葉で表現出来ないから、リアクションで表現してる。

妙子さんが「もう、そんなに美味しいはずないでしょ?ふふ」

と微笑んでくれるだけで、もうお腹一杯です。

「感性なん?」

「んー多分」

「音楽美術とか読書感想文とか駄目駄目だもんね、馬描いて、犬とか言われるレベルの」

俺は絵が下手だ。

モシャモシャは一応、出来るけれどそれは「設計図」を書く気持ちでかくのだ。

とにかく「絵を書く」と思うともう、ボロボロ。

色んな定規とか使って、「え?」という顔をされながら書く、下に元の絵を描いて写す。

「それでも、成績は5だ!」

「なんで?」

「えーと、人格的に優れてる――ハイハイ真面目に労働力になってますから俺」

「うわーそれってどうなん?」

「人間誰しも限界はある、そこを成績にするなんて可笑しい話じゃないか、人間誰しも5を取るチャンスが必要なんだぞ?」


「ちょっといいかしら?」


「なんでしょうか?」



「燃料もっと積めないのかしら?」

はちきれんばかりお腹いっぱいで戦え、そういうことかリンディさん。


勿論

「普通に吐きます、吹き出します」

「試したの?」

「ええ、山田とケーキバイキング行ったあとに夕方別れたあと一人山の中で―――わかりますよね?」

同じく山の中にたまたまいた高町兄妹と「あ、たっくんじゃん」「今日も修行ですか?」「ああ」などと雑談したあと。


「みててください、これが俺の―――」

「すまん、今帰るところなんだ夕飯の時間が―――「帰っていいですよ?」」




一人で山ん中でやったよ!

暴発したよ!


そのあと、一人しくしくと上着を脱いで、上半身裸でユニクロで罪悪感たっぷり、店員に嫌な顔されて服買って、コインランドリーの店を探しにいった。

「――――うわぁ(すご、体すごっ)」

「すんませんジロジロ見ないでください、情けを、武士の情けで、なんでもいいからレジ早くお願いします、あとタグ外して貰っていいですか?」

「私女ですよ?」

「いいですから、レジ、さっさとレジ、手を動かしてくださいね?」

「あ、はい」


滅茶苦茶ぎょっとされてたし、あのお姉さん、何か考え込んでたし。

絶対捕まる一歩手前だったぞアレ。


「おかえりー遅かったね、ん、あれ?今日一応おめかしの格好、私が用意して出かけるの見届けたんだけど、なんで別の服になって―――――――え?」

「違います、それだけは言っておきます、正直いいます、遊んでてゲロまみれになって汚れて、服買って、コインランドリー行ってきました」

俺は必死に涙が出てきそうになりながら、証拠物を見せた。

もう、空気が凍ったね、妙子さんの顔が見れなかったね、疑われた瞬間に。

山田と遊ぶの控えようかな、何かやばいし、絶対やばいし。


でもなぁ、相談に乗ってくれる人が――――。





「そこらへんは、何故か貴方の服が燃えない理由みたくはならないの?」

「うーん、やっぱムラっ気の塊なんですよね、未だに原理がわかりません、超能力より物理現象無視したり出来る時ありますし」

「ええ、「魔法」っぽいわね、人を驚かせる、タネが破れない手品みたいな」


「なー達馬、いい考えがあるんだけど、聞くか?」

「なんですか?」

「じゃあさ、カロリーが滅茶苦茶あるアメリカ産の変な味のお菓子をミキサーでジュースと混ぜて液状にしてペットボトルに詰めてさ。
リュックで背中に背負ってチューブで口に運ばれるように――「絶対嫌です、本気で嫌です」」

無邪気そうに言う、ヴィータに達馬が眉を顰める、何かしら口元をヒクつかせ。
それを見て皆、「ああ、一度は考えたんだ、似たようなことやってみたんだ」とすぐにわかった。

リンディは思った。

この子「誰もがやった、通る道」をレアスキルでもする子なのね、と。






末馬達馬

波紋が出来なくても、メメタァが出来る、不思議存在。


腹が立つぐらい、何かモテるように成長。




基本お姉さんキラー。



レアスキル「ミスティック・パワー。」


「妙子さんの場合、ゴッデス・パワーの方がいいのでは?妙子さんとかマジで何でも出来ちゃうし」

「一緒のほうが親子って感じでしょ?」

「ところで、貴方たちはなんて呼んでるの?その力を普段は」

「なんとなく出来るからやった、反省はしていない!」

「なんか出来るかな、そしたら出来たってやつ」

「もしかして貴方たちってモノ凄い天才なのかもしれないわね、理解が及ばないタイプの」





末馬妙子。

いろいろ複雑になってきたお年頃の30歳。



[36072] 末馬達馬の覚醒
Name: みさりつ◆2781aa24 ID:4563c076
Date: 2013/02/23 02:15
時間軸は未解決未来編前だと思うよ。











末馬美里の危ない日



「どうぞー」

「お、たつぼーおひさ、遊びにきた、タエ姉さんは?」

「あ、習い事教室行ってます、電話かメールしときます?すぐに帰ってくると思いますけど」

「いいわ、ただ寄っただけだし、休みだから海鳴でドライブして、その寄り道気分で突然きただけだし、はい土産、あ」

「あー見苦しい格好ですみません、ちょっと着替えてきますから、それまで居間で寛いでてください」

「お風呂?」

「はいちょっと、筋トレしてたんで、汗流してました」


達馬は暇になると、妖しい気持ちになるので何時も通り、自分の肉体を極限まで虐めていた。

そんな達馬を見て、末馬妙子はある日

達馬が学校に行ってる日、翠屋が休みの日を見計らい。


床を丈夫にしたり、壁を張り替えたり、ペンキ塗ったりあるだけ大手のスポーツショップで買ったマット引いたりインターネットで色々買ったりして。





「来週にはマシーン届くから、たっくんは全くおねだりしない子だから、私からのプレゼント」

「え?」

いい女ぶりを発揮していた。



3LDKは二人では広いので、いくつか部屋が余っている、そのうち一つを達馬専用に妙子がトレーニングルームに一日で改装した。







そこで基本的に休みの日は筋トレに励むようになったが、悩みが尽きない複雑な気持ちになるが取り敢えず鍛えていた。


今日も今日とて、鍛え、かーっとコーラを飲んで風呂入ってかーっとコーラを上半身裸で飲んでいると。

思わぬお客様が来てしまい、なにとなく、郵便かな、まあいっか、と思い首にタオルを掛け、玄関に向かった。


というのが話の始まり。


「看護婦やってるけど、君みたいな体の人初めてみたわ」

「そうですか、あんま肉つかないんですよね、ちょっと悩んでます、背は一応高いんですけど、やっぱガタイがないとなーって感じで」

と達馬が苦笑する、
それを見て美里はすぐさま。

「そのままでいいんじゃない?てか、そのままでいいよ」

と言って、思う。

これは

シャープだ。

日本刀とか、錬られた鋼だ。


実用性が極まり、美しく、とかいうそういう物だ。


凄い、どれだけ鍛えれば、どうやったらこうなるの?
ムキムキとかそういう感じじゃない、ギチギチだ。


過去に


「たつぼー風呂入ってる、よーしお姉さんが流してあげよう」

「きゃああああああああああああ!」

「きゃーって、きゃーって……面白いねほんと、たつぼーは」


などと風呂に乱入して一緒に入ってお風呂での遊び方教えようかな、とか思ってたら、普通に遊びの上手さで負けたりした子供。

かわいそうなくらい痩せてるなーでも何か丈夫そうだなーとか思って見てたものだ。


今は違う


別に痩せているわけではない。


密度が半端ない

爆弾の爆発を押し込めて固めたような肉体だ。

絶対この子、注射針刺さりづらい、ていうか刺さるの?と美里は思った。

「凄いね、どうやったらそんな体になるの?」

「日々のトレーニングですけど?」

「崖から落ちたりする、トレーニング?」

「(音の壁、熱の壁とぶつかる超音速で走るための体作りのトレーニングですとか言えない)まぁ普通のやつです」

「妙姉さんの子だから、普通じゃないんだろうね、きっと」

「普通のですよ、あはははは、普通ですって(医療関係者だごまかさんと、やばい)」


「ガタイは多分それ以上にはならないね」

「やっぱり………」

「幼児の頃の栄養状態が結構大きいからね、別に絶対ってわけではないけど、やっぱりね」

「そうですか」

遠くを見るように少年が苦笑した。

眠たそうな眼をしている少年。

でも何かを思い馳せるように、複雑そうに、苦笑する。


いいかな今なら。





「―――――姉さんもいないし、突然の話!」

「え、なんですか?」











「君の産みの親、今どうしてるか私知ってるんだけど、聞きたい?」


偶然知ったこと。


聞きたくのないのなら、言わない。
教えて欲しいなら教える。

ただそれだけの話。


妙姉さんは、あの人は、本当に子を持った母親らしく




「文字通り完全に縁切った、もう私の子だから、これから関係ないから貴方たち、そのお金で十分でしょ、もう会わないから、会わせないから、ばいばい。
あと、子供一人置いて、貴方たち何を考えてるの?そんな人と友達になる気もないから、一生さようなら」

恐ろしい厳しさを発揮したので、口に出す気も起きない。

妙姉さんはそういうとこ本当に怒る人だし。
そういう人間見つけると全力で戦争する人だし。


で負けたこと見たことがない。





でも、達馬はどうだろうか、と思った。



そろそろ大人になったし、いいかな、と思って、大人として扱うことにする。




「聞かせてください」


悩まず、末馬達馬はそう言った。

男の顔だった。

それしか言うしかないくらいの男の顔。

覚悟が見える真剣な表情。


自分のことなのだから。

受け止めると背負うと逃げないと



そんな顔だった。



もったいないことしたな、あの夫婦は、と美里は思った。

こんなに立派に育った我が子を見る前に捨てたのだから。

気味が悪い?

ああ?

ふざけるなよ、どいつもこいつも、と世界を呪いたくなった。

こんな男の子捨てて―――――優しい妙姉さんからいっぱいお金貰って、そのあとから幸せそうに――――やめた、私が怒ることではない、な、と冷静になる。

私は関係ない人間だ。

素知らぬ顔で

「気味が悪いって捨てられる子がいるんだって」

と言った他人でしかない。

怒っていいのは、妙姉さんだけだ、どんな子でもいいから、育ててみる、と言った妙姉さんだけだ。



ああ、いいや、うん。

いや、十分か、彼らはこんな少年を生むことで。

十分だったのかもしれない。

「あと、ちょっと服来て来るので――――」

「あ、うん、ごめん」

「いいですよ」




「――――――」

「―――――――――」



「――――――――――」












「おひさ姉さん、上がってた」

「久しぶりーたっくんは?」

「たつぼー、いやもう、達馬君だな、あの子凄い良い子に育ったよねていうか、良い男になった、イケメンじゃないけど、こうなんか―――濡れる、潤とする、やばい」


「いきなり何!?」



「すげーすげー、何なの本当に、駄目だ―――もう達馬君一人の時この家これないわ、私」


「なんで!?」

「じゃあ、もらっていい?あの子」

「なんで!?」

「欲しい、あれは欲しい、やばい、逆光源氏する前に出来上がった子だよ、あれ」

「だから何!?」

「今日は私のアパートに泊まるって」

「はああああああああ!?」

「で、今日は私は此処に泊まる」

「え――――意味わかんない」


「あー勿体無いことしたなぁもう!」
















その頬には涙が流れていた。

とめどなく、遮るものもなく。

一言も言わず、ただ、聞いて、何も言えず。

泣いていた少年。

涙だけで、彼は己の心の裡で密やかに、どんな世界の誰にも知られないように、ただ、涙だけ流す。

言葉に出来ない感情を涙で流していた。


「大丈夫?」

「ん、大丈夫っす」

ふっと涙を拭わず、私を心配させないために笑った。



うん、だめだ。


私の胸で泣いて欲しい、とかそういう感じ






あぶねえ、つい、お姉さんとほにゃららとか犯罪発言でるとこだった。

押し倒しても、おっけーじゃないか雰囲気的に。どーせ血繋がってないんだし。


ああ、惜しい!

あ、犯罪か。





「何処で泣いてるのかな」


「え?なんのこと」


「姉さんには教えない」


達馬君嫌がりそうだし。













達馬は泣きながら一人山の中に居た。


「嗚呼…ああああああああ!」




あの人たちが幸せになってくれた―――――。


やっと。



やっと。


忘れていない。

ずっと、忘れなかった。

幸せになって欲しいと、願っていた。


俺が願うのはおこがましいかもしれない。

俺が願えば彼等は不幸になるかもしれない。

俺がいれば、不幸なままかもしれない。

ああ、俺さえいなければ―――――彼等は




「―――――――うあああああああああああああああああああああああああああああああ
ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」



本当はよかった、と言う権利は俺にはないのだ、でも幸せになった、それだけで。


なんて言えばいいのか、俺は馬鹿だから、何も言葉に出来ない。

嬉しいと、思っていいのか?


俺が

わからない、でも―――――。


今日はただずっと泣いていようと思う。


涙だけ、言葉にならない声だけが、出る。


だから今日はずっと泣いておこう。

一人で、このわからない感情を噛み締めておこう。






その日はお腹も空かず、いっぱい泣くことが出来た。


























気づくと次の日の朝だった。



俺は顔を袖で拭き、あまりにも顔が汚れているのに気づき、苦笑する。

どろどろ、ぐずぐず、パリパリと塩っけが顔から落ちるのを見える。
よく脱水症状で、ダウンしなかったな、と思うぐらい。

確か、川あったなこの近く、よく高町兄妹が修行している秘密スポットで、自足時給っぽいことが出来るいい場所だ。

喉渇いた腹減った、取り敢えず何か飲んで食いたいな、と思った。

しかも喉がガラガラで、

あー単純でいいな、と思った、こんなふうにいっぱい泣いて、腹減るって。

何が良いとは言えないけど、何か良い、と思う。


ぐるるるるるる、とまるで動物が唸るような音が響く、出処は決まっている。

これはキツい、今なら、白米と塩だけでもご馳走に感じるだろう。

取り敢えず川に向かってみる。

5感は今日はとても優れている気がして、多分こっちだな、と川の方向を告げる。
水をゴブゴブと飲みたくなってきた。

さわさわ、川の流れを感じる。

周囲は昨晩はずっと自分一人だと思っていたが、違うように感じる。


木々が揺れ音を立てる。

凄い気持ちがいい、自然を感じるとはこういうことか、と思う。

草をかきわけ、進む、小さい虫が手の甲に伝っている感触を感じ、ふと、見る。


食えるかな?

蛋白源だと言うし、高品質の完全食とか言うし。


と思う当たり、俺は良い性格をしていると自画自賛する。

一匹の蝶が逃げずに止まっていた。

あー泣いてた時、手の甲で涙を拭い、そこに留まり涙が固まって、くっついて逃げれなかったみたいだ。

不味そうなので離してやる。

綺麗な羽をした黒茶と美しい青藍色――――――ルーミスシジミィ!?



絶滅危惧種、激レア!

海鳴にいたのか――凄い、え、まじで本物か――昔図鑑で見たことがある、国でも指定され保全が決められた、まず普通にはお目にかかれない幻の蝶だ。

紀伊半島にしかもう生き残ってないと言われた、たまたま見たことあるだけの特に思いれもない蝶なんだけど。



多分本物。




流石海鳴。


ツチノコ探せばいるかもしれん。

俺の手を離れ、ひらひら、じゃなくて結構素早くと飛んでいく姿は感動的だった。


うわーいくらになるんだろうか、とかゲットしたら、犯罪になんのかなーとか、そういうこと思いつつ、その美しさに驚く。

多分珍しいから感動してるだけだが、まー幸運な気持ちになった。




「何を見ているんだい」


横に男がたっていた、飄々と、いつの間にか。



「え、ルーミスシジミ――「何処にいった!」あっちっす」



俺がルーミスシジミが飛んでった方向に指を指すと。


「きょうや!ルーミスシジミ!あっちだ!追いかけろ!」

「なんだ父さ、え?本当か!今行く!」

「え、ルーミスシジミ?本当?」




一人目は高町士郎さんだった、横を神速で通って消えていった。
二人目は高町恭也さんだった、また俺の横を神速で通っていった。
三人目は高町置いてかれたようで、なんか周囲を見回して。

俺の顔を見て、「あー」という笑顔をしてどっか消えた。



知ってる人なら紀伊半島以外にいるとか知れば――新聞の一面レベルだから、そりゃいくな、でも此処修行所として使えなくなるかもしれないぞ、士郎さん。

あんたたち紀伊半島の山篭ったことあんな絶対、で、過去に情操教育で士郎さんが教えたとか、そういう感じか?

弱い奴は絶滅する、それが弱肉強食だ、とか?

多分違うと思うけど。



ん、何か魚が美味しく焼けているような匂いが―――――




「まさか―――――あの人ら」





なんだか、もう恥ずかしい気持ちでいっぱいになったぞ、俺。




このお人好しどもめ。




あれだろ「何を見ているんだい?」から始まる大人トークだろ。


ちょっとこう何か深そうな会話して、「余ってるけど食べるか、とか」


くくっはははははははははははははははははははは!

はははははっあはははははははっははあはっははははっはは!

ハハハハハハハハハヒーっハハハハハハハハハハハ



「はは…………」


喉の痛みが気づくと取れていた。


ひとしきり末馬達馬は笑ったお腹を抱えて笑った。


「すごいな―――すごい」




格好良いな、思わず、泣けてくるほど格好良い。









食べていいのか?

香ばしい、かぐわしき、プリンじゃなくて魚。

パチパチとか聞こえそうな、この匂い、この匂いだけでご飯食える。


という餓死しそうなくらい腹減ってんだけど。

「食べていいのかなー勝手に食べてもいいかなー絶対俺の分とかありそうだしー」


「いいけど」

「うわ!美由希さん!?」

気配とかどうせわからんが、気配0だぞ、お主ら!忍者でござるか!?


という感じのハイレベル達人が一人、ばつの悪そうな顔で横にいた。

「置いてかれた………一緒に食べよっか?焦げるし」

「二人のは保温しときますか、ちょっと火から離して置き火でじわじわと、水分抜けますけど」

「アルミホイルあるから大丈夫だよ」

何か夢が壊れた気がする。

アルミホイルって………何か複雑。

「そう、で、すか」

「父さんが釣ったばっかのやつだから美味しいよ?」

「まじすか!?え、何の魚!?」

「ニジマスとヤマメ」

「うわ御馳走………」


じゅるり、と口につばがたまってくる。

あれだろ、木の枝で刺したやつ。

置き火でじっくりのもう最高なやつ、口に入れたらうますぎて笑ってしまうやつ。

塩もぱさーっとがっつりな、身がホカホカの柔らかいのなんのって


「メチャメチャ腹減っとります、どんぐらい食べていいですか!?」



「あーうん、私の分あげるよ、いっつも食べてるし、おにぎりだけでいいや、あ、おにぎりもいる?」

「まじすか!?いただきます」


おにぎり、え、勿論、塩おにぎりだよね?


「塩おにぎりですか?」

「色々あるけど、じゃあたっくんは塩おにぎりね、あんま人気のない様式美だけどね、父さんの絶対一つはいれろ、とかそういうの」

「味噌汁とかついちゃったり?」

「うん、勿論、山菜とれたから山菜の味噌汁」

「山菜―――嬉しすぎる、これは夢、何その最高の朝飯、贅沢すぎる」

「そうかなー結構あきてきたけど」


うわあマジでラッキー!


「ご馳走になります」


「うん、今日は私が味噌汁担当なんだけ「大丈夫です、俺今なんでも食えます」たっくんこのやろー!」

「いたいっす、頬つねらんでください――「うん元気になったね」


「勿論、焼き魚、おにぎり………みゆき味噌汁」


「たっくん―――――お姉さんと全力で戦ってみる?」

あーすんません、でも貴方シャマルさんクラスなんで。


「すんまそーん」

「絶対反省してないね、あと冗談じゃなくて、本当に手合わせしてみる?なんか此処数年凄い鍛えてるし、喧嘩用にしては実践的な感じの」


「貴方たちとは戦って勝てる気がしないんですけど、正直天敵ですから、貴方たちは」


なのは達よりも勝てる気がしないメンバーだぞ。

九鬼流系の人とか絶対俺の天敵、あと比古清十郎とか。


どんなにパワーやスピードが優っても絶対に勝てない系ですから貴方たち。

一番戦いたくない人たちだ。

この人たちはマジで強い。

刀もって目の前を歩かれると怖すぎてびびる。


本当に天敵目の前にした気がするんだよ、この人たち。

超音速でもひょいって避けられる気がする。


「そう?今なら君―――相当強いよ?」

んな馬鹿な。

一日中泣いてコンディション最悪だぞ?

「じゃあ、ご飯くったあと、ちょっとバトってみます?こう昔やってくれたみたいにチャンバラ」


「手加減しないから、あと、君、無手でしょ?私木刀使うけどいい?」

「いいですよ、無手って」

「無手でしょ?」

「あー手の平でやりますね、空の境界で素人はそれがいいって両義式さんが言ってましたから。え、手加減なし!?俺を殺すの山中に埋めるの、なんで!?なのはのパンツ見たから!」

「ほんとーに君、面白いね、なのはのパンツみたの?どうだった?」

「あー面白いと思うのなら、爆笑してくださいよ、微笑ましい感じで見られると本当に恥ずかしいですから――あとなのはに戦闘用ハーフパンツ買って上げてください、まじで」

たっくんのエッチスケッチワンタッチドカーンされたし。

「戦闘用ハーフパンツって……」

よくわからんが、ご飯食べて、体を動かすのは健康的だな、と達馬は思った。






末馬達馬





どこの主人公だお前、という感じになっている。


一生会わない弟がいる。



[36072] 未解決未来編 了 ヘルクライマー事件 開幕
Name: みさりつ◆2781aa24 ID:4563c076
Date: 2013/02/25 19:12
未解決未来編 了

蠢きの男女。









「はい、これで、力の譲渡は完了したわ、これで箱を貴方も使えるわ」

「私には感じ取れない、これで」

末馬喜一郎は思う、このような木っ端に恐ろしい力が宿っているのが理解出来ない。
物事は全てカタチにある。
刃物は人を怖がらせ、その形が人を恐ろしがらせるほど形状ほど、切れ味は良い。
銃も無骨で得体の知れない形状、そう、殺戮の形があるほど、人を殺せる。
「思いの力」「器物100年」は喜一郎にとって何を馬鹿な、というものだ。
素晴らしいものにそのような汚物が混じるなど不快だ。
かの世界で最も人を不幸にしたというサファイアの例をみれば分かる、美しいものは美しくただあればいい。
そこらへんで買った「思い出」が篭った品、反吐が出る、そのような、いとも周囲で見繕える安価なモノを大切そうにする人間の心理が理解できない。
宝石なら分かるだが幼い子供が作ったような子供騙しの「思い出」のカタチを見るとカッと胸が苦いもので満たされる。

それはこの類だ、悍ましい力があるのなら、もっともっと、悍ましい形であれ。

そして思い出す。

あの最も今まで見てきた人間の中で最も優れた、美しかった少女、妙子。


笑う顔は美しく
怒り顔は綺麗で。
泣き顔さえも胸を打つ。

完璧だ。



心に影響しない、美しさがあるのだ。




極限まで人間の美を追求したような美貌と肉体。

私はあの少女に恋をしていた。



思わず、自分の精をその少女に食わせて、混ぜ合わせてみたように。

少女の美しい血と肉を己の命、生命を創りだす液体で活動させる、ああ、それはなんとも、楽しいだろうか。

体を縛り、極限まで追い詰めた時でさえあの美しさは崩れない、思わず、映像に残しておきたいほど。



恐ろしく、美しく、まるで宝石の箱を乱雑にひっくり返したような、凶悪的な美しさ。
目がくらみ、それしか思えない美しさ。


「ああ、ああ、あああ、タエ、お前は何を悩む何であんなに辛そうにしている、お前にはそんな要素はいらない、そんなくだらない。
お前には「心」なんてものはいらない、ただ、ただ美しいままであれ、綺麗なままであれ。
あんなにも美しい姿を持って、なんであんなに醜い「殺すわよ、その言葉を口にした瞬間、私は協力関係をやめて貴方を殺す」ふん、お前はそうだったな、そういう女だ」


「私にはね、美醜なんてものはいらない、貴方はただダッチワイフが欲しいだけ、最高に綺麗な人間の人形が欲しい変態よね。
なぜ、そんな形が、いつか壊れるものを大切にするのかしらね、私が欲しいのは末馬の中身だけよ、外見なんてのはね、人間、モノは言うに及ばず、なんでも誤魔化しが効くものよ、くだらない、綺麗な女の顔なんて一度地面に叩きつけて崩れれば、その価値は崩壊する。
そして人は見向きもしなくなる、そして朽ちれば、忘れる、そんなものは私はイラナイ。私は思うのよ、「思い」「意志が」世界を支配している、人間がこの地上で謳歌するのでさえ、その人間の意志が、他の生物よりも高次だからよ、そう、動物に神様はいない、人間には神様がいる、人間は高次、だからこそ人間は強く美しい。
容姿なんてのは心を育む一つの要素にしか過ぎないのよ。」

荒木夕美は思うのだ、あれほどの高次な精神が素晴らしい。

この男のような外見重視の男に傷をつけられ、それでも立ち上がり、前を歩こうと、己から逃げず、努力する心。
どんなに自分が苦しくても忘れない、誰かに優しくする心、思いやれる精神。

ああ、恋をした、あの少女に。

だから傷をつけた、そんなものに傷をつけれた圧倒的な優越感に恍惚を覚えるのだ。


「ああ、お前の持論は耳が腐る、そんな無意味なものを求めるなど」

「本当に貴方は異常ね、よく普通の人間として社会生活が送れるわね、しかもそれなりの外資系の会社でしょ?」

「当たり前だろう、普通の人間の形があるのだから、普通の人間の社会で生きれるのは当然だ。
出来ないものは屑、そう、生まれてはならないゴミだ、全て死ねばいい、そういうクズは己の本来のカタチを無視した存在だ。
カァカカカカカカカカカカカカカカ!僕はそう、性能がある、立派な形があるんだ、何故だ、何故タエ、僕がお前に最も適したカタチだ
何故だ何故、あの時逃げた、ああ怖かったか、恐ろしかったか、悲しかったか、苦しかったか、辛かったか、あああ、そんなモノはいらないだろうに。
なければ今ごろ僕との新しいカタチを沢山作っていたのだぞ、ああ、妙」


「それは、私が彼女の心を奪った時にして頂戴、貴方に心を壊された人間なんて欲しくないから」


「ああだから」


「貴方の力はその心を奪う力、世界を動かす意志を奪い取る力よ」

「お前の力はその形を奪う力、世界を動かす機能を奪い取る力だ」


「そういえば知っている?末馬はまだ、全く変わらない、容姿もその「思い」を何よりも大切にする精神さえも。
だけれどね、彼女には息子がいるようね、大事な大事な男の子が―――――」

「私はタエの親戚だ、当たり前に知っている、子を一人まともに育てることも出来ない社会のゴミクズに捨てられたゴミだ。
それでもあいつはそんなゴミを宝のように大事にしているそうじゃないか、壊す、壊す、その思いを消し去ってやる」

「ああ、大事な子を失った、彼女はどれだけ美しい悲しみを浮かべるのか、楽しみだわ」


男と女はまぐわいを重ねながら男は溢れ出す性欲の処理、女は情欲の解消を行う。


「まずは末馬達馬を殺そう、あいつにゴミなんていらないだろう、あいつの価値を下げた、許さない。」

「そうね、まずは末馬達馬を殺しましょう、そうすれば彼女の精神に決定的な罅を入れ、奪うことができる、そういえば、魔法は使えるようになった?努力した?」

「当たり前だ、私には元々その機能が、性質があった、ではその機能は簡単に引き出せる、魔法などと言うな、所詮これは兵器だ。
銃は誰でも使えるように、これはその機能がある人間なら努力なんていらない、ただ習熟する期間さえあればいい。」

「努力してこその才能だと思うけどね、貴方は驕り高ぶっているし、少し不安よね」

「大丈夫だ、こんな曖昧な力なんて盾程度でいいだろう、これがある」

「銃。へえ、一体どうやったらこんなもの手に入るの?」

「形を銃の形じゃないようにわからないようにして海外から手に入れてきた、銃弾は56発ある、機能的に56人殺せるぞ、お前も使うか?」

「そんなもの普通の人間に使えるわけがないでしょう、私には匣がある。」

「私のは程度が低いようだな、それから悍ましい怪物を呼び出すことができない」

「ええ、あなたのは生きていないけれど、それだけで十分、もし管理局の魔導師にぶつかったとしても容易に勝利できる」

「起動方法は?」

「簡単よ、言葉にして願えばいい、意志を奪えってね」

「言葉で起動するのか。便利だな、自己が想起するイメージと言葉で、素晴らしいな」

「ええ、これは神様からの贈り物よ」

「所詮兵器だろうに」



後に管理局によってヘルクライマー事件と名付けられる次元災害級の大事件の幕が開けようとしていた。




末馬達馬
末馬妙子


二人がその本来の物語とは違う、もう一つの物語の主役としてついに舞台に出ることになる。




おまけ










小話

かつてない悪夢





末馬妙子、末馬達馬の二人は並んでごそごそとどっさりとコタツの上に並べられた折りたたまれた紙くずを二人で開いては
正の字を一枚の紙に書いたり、文字を書き加えたりしながら、アンケートを集計していく地道な作業を行っていた。

「ごめんなさい、わざわざ、手伝ってもらって」

素直にこの鬼のように時間が掛かる作業――――いや妙子の作業スピードに

「この人内職やればどれだけ稼ぐのか」

という戦慄を感じながら、謝る。




「別にいいけど、たっくんの為だし、でもさぁ―――――――自分の進路くじ引きで決めるってなに?」


中学校の進路相談

エスカレーター式だがやっぱりそういうものはあるらしい

進路希望調査用紙を配られ。

はっとした。

「なんか俺にあってそうな仕事をアンケートにして知り合いに配って抽選で決めてかくのがいいかも、と思い立ったら吉日です」

生徒会はまだ続いている、どうせエスカレーターだし、という理由で延長戦だ。
中学校最後のくだらないイベントやってみるか、と思い阿呆なアンケートを生徒全員、各教師に配り、勿論近所の人間にも配りまくった。

「末馬、やめろ!人生をまるで紙飛行機で適当に飛ばすようなものだぞ!?
進学じゃなくて、変な職業を何時もどおりの悪ふざけで書かれ、それが過半数を占めたらどうする気だ!?」


教師にガチギレされた。
色々な教師陣に囲まれ、ひたすら説教され続けた。
お前せっかく成績もいいし、運動も出来る良い生徒だ――――変なことをしなければ。

何が不満なんだ。

まるで突然会社やめて世界旅行始めるぐらいの暴挙だぞ、やめろ。
その世界旅行先が中東の紛争地域とかそういうレベルだぞ!?

10年に一度まるで不発弾が見つかるように、そういう生徒はたまにいる
頭が良い癖に、突然学校をやめて、突飛なことをするやつは。
だけどな、中学生でする奴はこの学園史上初だ、なんだ、お前、馬鹿なのか。

と皆の不安や怒りを煽りに煽った。


末馬達馬は素直に言った。

「勉強飽きました本当に――――――飽きました」


末馬達馬の脳みそがもういいんだ、もうやめてよ、と言っていた。
いくら体が無敵でも、脳みそは、もうやだ、と叫んでいるのだ。

カリカリとシャーペンを夜中ずっと走らせ、頭をひねられ続けた弊害である。

「案外楽しいもんだな、勉強―――――――あ、あ、なんか駄目、そういうの駄目」


となる。

このままだと、なんか危ない方向に進んでしまう、勉強が好きになりすぎて、やばい。

「あー勉強してどうする、やりたいこと、目標もないのに。これではただ勉強するだけの勉強廃人になってしまう!?」

お前初期目標忘れてんぞ、というか、すでに達成しただろ、やめろ、もういいんだ。

「ということで、もう学校も進学したとしてもテキトーにやりますわ。
高校行ったら学年一位から最下位に転落してそのまま退学になります、絶対」


「は?」


「末馬お、お前、自分の可能性を「広げてもなぁ」広げろよ!?」

「やりたいことみつ「あー多分見つかりません」多分!多分で!?」

「え、は、すえま………ちょっとまて、お前、親御さん呼ぶから――――」

「ウチの母、いえ、妙子さんは許可しましたよ」


「な、にぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!?」


「高橋教頭!緊急会議が女子中等部でも「な、なんだこの忙しい時に!?」

「女子中等部卒業予定の高町、八神、テスタロッサの三名が――――学園をやめるそうです」

空気が凍った。

「お前まさか三人を―――に「それはない!好みじゃない!絶対勃たん!悍ましい!」ないのか、よかった……良くない!?」

お前みんなにぶっ殺されるぞ、本気で。

と自分に後悔した発言である。

「え、お前あの子達の何が、3人とも「なんか話ずれとりますよーその発言はちょっぴり危険ですよー」
まぁいい―――まずは私たちの整理がつくまでまってくれ、イッパイイッパイだ、勘弁してくれ、本当に勘弁してくれ、頭が壊れそうだ、あとアンケートを差し止めろ」


「いや、昨日、もう生徒分は集計終わりました「貴様ああああああああああ!」え、なんで怒られんの!?」


「おい末馬」

「ふざけるなよ」

「なんで怒るのか、だと、ふざけんなぁ!」

「そうだ冗談にも程があ「冗談じゃないっすよ」冗談だろ!?」

「いやあーふざけてないんですよねーこれが、知ってますよね、俺がこういう時―――――いつだって本気でやることを」

「そうか!俺たち教師陣がお前を今まで生徒会長としてこき使った仕返しだな―――ああ分かった、そういうことか、あー」

教師陣が喜んで喝采する「末馬は4月1日の先払いを行ったのかーあーそういうことか!」などと


「楽しかったですよ、生徒会長、恨んでないです――――だからマジです」


また空気が凍った。


「であえ!」

教頭が吼えた!

「は、教頭何を――」

「各中等部、高等部、小等部もだ!教師全員であえ!であえ!であえ!あと学園長呼んで来い!
俺たちの手にはおえん!こいつは本気だ!本気で中卒で今の不況社会の大時化の荒波にダイヴする気だ!しかも救命胴衣なしで!」

生徒指導室にある不発弾が暴発した。

「滅茶苦茶怒られました、で、なのは達は何かダミーがあるけれど、俺は本当に何にもないから、もうこってりと」


「そうなるよ、普通」


「そうなのかー」

「で、何が一位なの?」



でました




――――――です。


あーなるほど、でもそれって。



「えーとついてきてくれますか?」


「いいよあとさ――――――妊娠した」

「え」

妙子はのほほんと「うーんあんまり私たちってそういうの気にしなかったよね」と言った。

たっくん、ほんとえっちだもん。

こどもはいつでもほしいって

だからこづくりしましょたくさんって



私本当に一生厚手の服以外着れないよ、と恥ずかしそうにしゅんと赤くなっている。




「まじで、妙子さんと俺の子」

達馬は気絶した。





という夢をみた。


「夢オチかよぉおおおおおおおおおおおおおお!?」

「うわ、たっくん!?どうしたの!?」


あ、でもアンケート

「おもろそう」






追加


末馬達馬の成長1




「いやーさっきまで殴りあったので滅茶苦茶気まずいっすね」

「お前、そこもう少しなんかないのかていうか、お前一回も殴ってねえし、俺らは一回も――本気でムカつくぞこの野郎!」

「理不尽すぎる!?」


といって少年は笑う。

なんだこいつまじで馬鹿なのか。

と高校生たちは思った、


「ねえねえセンパーイ全然知らない他校の先輩、喉か乾きませんか?」

セコイこの男は奢ってもらう気マンマンである。

「そりゃあ――――」

「買ってきますから、うーんとひぃふぅみぃ――大体1000円みんなで出してください」

「お前が、ださないのかよ」

「月の小遣い3000円だし」


「ていうか俺らの人数1000円で足りんのか、お前馬鹿だろ、真面目な学校に通ってる割に掛け算も出来ないのか20人だぞ」


「え、ちょっくら40円のジュース、スーパーまで買ってくるんですけど、200円余りますよ?」

「そこは自販機にしとけ!近くのスーパーって走って10分だぞ」

「え、ドヒューンって行ってきますから、すぐですよ」

「ドヒューンって……」


彼らはぐったりしていた。

もう何もいう気にならなかった。


彼らからジュースを奢って貰ってグビグビ飲んでいる少年、末馬達馬だ。


「ぷはーっコーラ最高!ゴチになります!」

実はお酒よりもコーラが昔から好きだった、男である。酒は気合で飲むものである。
もう自らパシリを買って出て、彼等の分のジュースが開けられていないのを尻目に一人だけ嬉しそうに笑う。

「飲んでからいうな!?そもそもお前の奢ってやるとか誰一人言ってねえ!?」

「セコい、40円ですよ」

「セコイのはお前だ!?」




未だにゼイゼイ言っている彼等は海鳴市でも頭が悪い高校の人たちである。

あの野郎、中学生のくせに生意気だシメル的な感じで

「おう兄ちゃんワレちょっと付き合ってくれないか」的な。

なんというテンプレ。

実際あるからね、何時の時代も。

ある日何時もどおり達馬が夜のロードワークでまるで人参から逃げなくてはならない可哀想な馬のように走っていると
囲まれた、ごつい兄ちゃんたちに。


しかもみんないやらしい視線で見てくるのだ。

ゲヘヘ、人通りのないところに押し込んで、みたいな。

ぞっとした


「やだよ!?男!?しかもいきなり多人数プレイ!?やだよ!死んでもやだよ!あ、妙子さんの気持ちが分かった気がする、うんこれは男性不信になるわ」

「ちげえぇえええええええええええええ!」

囲んでいた男たちもぞっとして叫んだ。


「え、違う、だって初対面ですよね、今日の獲物はウヒヒヒヒって顔してましたよ皆さん、女性に話しかけたら即逮捕みたいな。
今時大変ですよね、女子高生に話かけただけで通報とか」

「おいなにコイツ、普通に生意気だ」

「普通にな、つうか腹立つ」


ああなるほど、これが絡まれる中学生か、なるほど、と達馬は思った。



「うわーこういうのってマジで初めて……なんかドキドキする」

あまりにも面白いことが現実に起きたので末馬達馬は緊張していた。
こう芸能人に出会ったとかそういう感じで。


「きもっ!?」

とか言われながら、達馬はえ本気で、ドッキリとかじゃないよね、こういうのええ、あんの、すげえ、すげえと喜んでいた。
普段の日常でガチで街一つ火の海に変えられる人間たちと遊んでいた弊害である。

こいつ恐怖心ゼロである。

ヒグマとかに襲われたら、悲鳴を上げて腰を抜かしながら逃げるけど。



「あー空からラピュタみたいに妙子さんが落ちてきて、それを受け止めて―――偶然の偶然、他意がない状況でこう太ももとか触れたらなぁ」

あとで「妙子さんの太もも偶然触ったけど、いいなぁ」とかいうパターンにならないと、駄目という達馬のルールである。

「すごい爽やかにアホなこといっとる!?ピュアかエロかどっちかにせい!」

「そういう浪曼が欲しい、感動的だな―――もう泣いちゃうよ、想像するだけで、二人で「バルス」って感じが。るるるーるーるーるー」

「なぁなぁ」

「ん?」

そしてはやてが茶目っ気でこんなことを聞いてみた。

「私が落ちてきたらどうするん?」

「受け止めたあと、素直にムスカ大佐に引き渡す」

「ひど!?」

「おいタツマ、ジブリを昨日見た私たちの前でいい度胸だな」

「達馬――――貴様、覚悟は出来ているのか」

「すいません、男らしくカッコ良い土下座しますので、そこまで真剣に取られなくても―――」

「男らしいのかそれって?」


などと冗談言って生真面目に殺気混じりでシグナムとかヴィータに怒られているので、全然怖くないのだ。






「えーで、皆さん帰りましょう、夜遊びは楽しいんですけど、ウチの母が心配するので、そろそろ」

「あーあーもういい、もういい、帰れ、帰れ」


絡んだ男たちは訳がわからなかった、囲んで殴ろうとしたのに一回も殴ることが出来ず、この目の前の生意気で不思議な少年はひたすら

「当たらなければ、どうということ――ないげふふふふふふふひはははははは」

とかそういう感じで自分達が体力尽きるまで避けた、避けた、避けた。

いっさい反抗せず。

意味不明である。

だが虚しい敗北感を植えつけられ、リベンジの日々である。

「今日もっすかー今日はマックがいいです割引クーポンいっぱい持ってきましたし」

「あーあーもう、いい、もういいや、うんマックいこうぜ」

「よっしゃあああ!」

「遠慮しろよ少しは」

「何個食べていいですか?100円マック」

「うーん4コだなぁ」

「えーもうちょいもうちょい」

他校の先輩なら問題なし、と生徒会長末馬達馬はあとで教師に怒られる。

だがこういう諍いが市内で無くなりつつあるので、結局は問題なしである。

アリサにボスザルと呼ばれている、

「あーお前、末馬の知り合い?」

「あーそうだけど、お前もか、あいつ待ちなんだけど」

「あーそういうことね、じゃあワリいな」

「いいっていいってこっちから絡んだんだし」

「またあんたらくだんないことでバトってんすか、ちょい、おもろーなことあんですけど、皆でやりませんか」

「やる」

「やる」


そういうヤツ等と末馬達馬は性質が似てるためか、馬鹿友になりつつある、で、きっちり人様の迷惑を掛けない、人を傷つけるのは絶対やらせないというかそういう空気にさせない。
騒音被害とか法律スレスレに触れても、まぁ交番の人たちに「静かなとこでやってね」と近所の人たちに「まぁ今日も?あらあら、ねぇたっくん上がってよ、美味しいお茶あるんだけど」微笑ましく見られる遊びを楽しくやるので、問題ない、わざわざ、高校から許可とって夜中グラウンド借りたり出来る謎の人脈があるゆえ、至って平和に安全に遊ぶのである。

市内のイベントで雪合戦を町内会で若者を集って実行するくらい。

馬鹿達のカリスマである。

あとそういう人間をちょっとだけ、新しい発見をさせたりして、真面目な道に進ませ、みんなで「火のよーじん」とかやってしまう。

基本誰でも男なら、友達になったのである。

高校生たちは

「今日あいつくんのー?」

「何かロケット花火で戦争しよってさ、何かすげえ張り切ってた、やな予感するぞ、まじで」

「あいつ洒落にならないことするからなマジでぱねぇ」

「この前なんてさー肝試しで、一人だけ姿消してさ――あーまじで怖かったあれ」

「ウヒャハハハ、あれ爆笑、お前まじでビビリすぎ!」

「うっせえ、海老反りでズズズズズズだぞ、マジで絶叫もんだぞ、写メで撮ったから、ほら」

「うわこえぇ!」

「あーお待たせしましたー、達馬製、改造ロケット花火でーす」

「おお、おい――――全部しっぽの部分折ってあるけど」

「はいこれがいい、互いに投げ合って、ハラハラドキドキが」

「うおバカじゃねバカじゃね、動画取るわ俺」

「逃げんなてめえ!」


とかやって


「たっくんは?」

「あ、たっくん家の母ちゃん、おーいたっくーん、いつも滅茶苦茶綺麗なカーチャンきたぞー」

「すいません母さん、まじですいません、近所の迷惑にならないように静かにやりますから――――」

「事故になったらどうするの」

「そんな事故から皆を護って見せる!」

本当に出来るから結構安全である。

「ちょっとお説教、帰らせていいですかー」

「最近コイツエスカレートしてますから叱ってくださいお姉さん」

「この前なんか―――「たっくん」

こういうことばっかりやっている末馬達馬の中学生生活である。





[36072] 学校の帰り道 なのは編
Name: みさりつ◆2781aa24 ID:4563c076
Date: 2013/02/27 16:42
これは山ちゃんに怒られるかな、となのはは思った。

学校の帰り道。

隣にいるのはいつの間にか背が大きくなったあの自分が常識人だと思っているようだけれど
大分非常識な方向に傾いているもう一人の兄のような少年である。
眠そうな羊とか牛とか馬とかそんな感じの瞳をした末馬達馬。
横に並んで今日も今日とて翠屋にいる妙子さんのウェイトレス姿を眺めて「イイ…」とかぽややーとするために向かっている。

所謂「一緒に帰ろうぜ」というやつだ

中学校に入学してからこういう事はちょっと避けてきたかな、となのなは自分の複雑な事情を思い出す。

私は誰かの悲しみを涙を見たくないから、色々な人々を護る為に管理局の魔導師として地球から出る、あと一年程度で。
多くの仲間たちと、一緒に、ずっと一緒に。
ちょっぴりこの横で妙子さん、と言っている少年にも仲間、自分も含めて勧誘したのだがばっさり断られた。
はやてちゃんが何か妙子さんとたっくん二人にリンディさんのアドバイス「こういうのは将来大事な勉強よ」とパワーポイントでスライドショーを作り管理局や次元世界についてのプレゼンをした後に。

普通に楽しまれて終わった。

恐ろしい程人間離れしたら彼らにも少しは興味を持ってもらい、良ければ――との事だったが。

「うわぁはやて凄、凄、俺とかそういうわかりやすいの無理、すげー、やっぱり面白いな、別の国の文化って(一応文系の大学だったし、馬鹿だったけど)」

「へぇー、案外地球で騒がれている宇宙人とかって次元世界の人を勘違いしてるだけかもね、あとたっくん、別の国じゃなくて世界だよ?
あと道路交通法規則が何か似てるのが、すごいね、やっぱり人間って同じこと考えるのかな、結構類似してるし、確かに異世界っていうよりも海外っぽいね」

「お前らそんなところで魔法でCSIマイヤミ&24&攻殻機動隊みたいな、感じだろ?何か不思議、将来はやてがアラマキか」

「お褒めに預かり光栄や、でも私は荒巻さんよりも素子さんみたいなバリバリ――「関西弁の素子さんは違和感あるだろ」

「次元世界は広大だわ――――」

「おお――おい、はやてそれお前の決め台詞にいいんじゃないか?関西弁風味が半端ないから誰もパクリとか思わない」

「なんか複雑や…」

何を当たり前のことを、って皆に突っ込まれそうや。
この人ら、基本二人揃うと天然爆発するから無理、とかそんな感じでただ喜ばれて終わったらしい。
リンディさんは「そこでもっと働きたくなるような空気に……」人手不足な管理局の偉い人としてがっくりしていた。

確かに彼らなら心強い、恐ろしい程だけれど。


「やっぱり嫌かな?」

「なのはは日本以外でも生活できんの?大丈夫か?欧米っぽいだろミッドって。
何か俺とか所謂水が合わない気がするね、そういう世界って。
硬水なんだろ?基本、ミッドチルダ。俺は軟水じゃないとお腹壊すし、最近は何か畳とか好きになってきたんだよな、あ、だけどヒグマいないんだろ?」

妙子さんとたっくんは郷土愛が強いので無理だなぁ、となのはが何時も思う言葉である。

基本的に二人は恋愛はしていないが、生活は一緒だ。

一生こんな感じなんだろうな、と思う。

色々普通じゃないのに普通に生きて普通に楽しそうに生きる。


ちょっと複雑な気分になる。
自分自身の迷いではない、なんだかなーっていう感じの気分。


「海鳴にもヒグマなんていないよ………?」

「日本にいるだろ、北海道に」


末馬達馬は何故かヒグマがこの世で一番怖いモノだと思っている。
女の子がよく持っているテディベアでさえ、ちょっとイヤーな顔をするのだ。
大抵茶色なのがテディベア。なのでヒグマを想起するそうだ。
大嫌いなのだ本気で。

「なんでそんなにクマ嫌いなの?普通に今なら勝てるでしょ、たっくんなら」

「昔―――まぁいいか、ああいうの何か「ぐわああああああ」って言うのが滅茶苦茶に怖い。
人間よりも、生きるってことに一生懸命だからな動物は。それが怖いんだ、いくら俺が強くても、片手でぬいぐるみのように放り投げられるとしても、怖い」


まるでお父さん―――高町士郎が言いそうなことを達馬が言って、なのはは驚いた。

まぁいまなら、400キロくらい出して2時間は逃げれるから大丈夫だな、と末馬達馬は笑う。
その笑顔さえも、どこか悟った大人の笑顔だった。

「そうなの?」

「あの一生懸命な1時間の地獄を受けた、俺が言うなら間違いなしだ、あれは怖かった」

ある日、森の中、くまさんに食われそうになったことがあるのだ末馬達馬は。


前世

大学生になるまでの春休み期間を使い、ちょっと雪が残る寒い中一人、ローンで買った初めてのマイカーで北海道一周ドライブ旅行をした末馬達馬。
勿論、安いテントを積んで、北海道に沢山あるキャンプ場で寝泊りする貧乏旅行だ。

「寝袋はマイナス15度までおっけーだから凍死はせんよな、多分」

インスタントラーメンを家庭用のカセットコンロで作って食べ(キャンプ用は高い)
今日の寝る場所どこにすっかなーと寂れた無料の誰もいないキャンプ地で一人揺れる熊鈴をBGMにしてテントを組み立ててる時に

「あ、何か視線感じる、これ――――やばい」

組み立てるのを辞め、逃げ「まずい、動いたら食われる」と動けなかった。

棒立ちで、その捕食視線にさらされ、1時間棒立ちになった瞬間である。

体が震えないように、隙を見せないように、ただ棒立ち。
手には伸縮タイプのテントの骨組み。
今時のテントの骨組みは軽く、それが心細い。

(新世代タイプの羆か、人間を恐れなくなった、音を立てると近づいてくる奴か―――――ああ、死ぬかも)

脳裏に生き埋めにされる自分の末路が思い浮かんだ。
羆はある程度パクパクしてから殺さず新鮮なまま土を掛けて獲物を保管する習性があるのだ。

で、たまに忘れる。

「死にたくないっていうか、半殺しで生き埋めやだ、リアルに半端なく苦しそう」

皆さん気をつけましょう。

絶対に人が沢山いて安全なところでキャンプしましょうね?
本当にそういうことありますので、ご注意。

1時間。


姿を見せず、ひたすらジロジロと獲物か、それとも、という感じで眺められ舌なめずりされたのだ。


近くにいないのに。

「ハァハァハァ」

その吐息さえも聞こえる気がする。

「クチャクチャ」

(実は後ろとかにいるっぽいな、うん、ていうかすぐ後ろにいるね、俺の食料食ってるし――――――パニックして動くなよ、俺、ワニワニパニック――――)

末馬達馬がこの世で一番嫌いなのはヒグマとなった瞬間である。

くだらないことを考えて恐怖から現実逃避した1時間であった。

その気配がなくなり。

「あー助かったーにげよーにげよーにげよー」


心臓がはちきれそうな恐怖の後に、一人キャンプ道具を置いて、ダッシュでキャンプ地から抜け、車にエンジンをつけ、脱出――――最後にバックミラーで道路を見た。


道路の真ん中にヤツがいた。


じゃじゃーん、という感じで、走り去る車をじーっと見るデカイ羆が。


「バイバイ、ハム美味しかったよ、ありがとう」

みたいな感じで。

いつも加害者は被害者のことを深く考えないのだ。

「ヒ―――――――だめだ、いますぐ札幌帰ろうそうしよう!」

その帰り、「人がいるんだ、ここに人がいるんだ」と手が震えて車をサービスエリアに駐車する際に縁石にぶつけた。

「あーもう!最悪だ!帰りたい!ん?今からもどって―――アイツに車で勝負――やめよう帰ろう、俺の軽だから負ける!」

という嫌な記憶である。

生まれ変わっても覚えていた、忘れたかった記憶である。


「とまぁこんな感じの前世の記憶が蘇るわけだ、うん、悪夢だね、俺、本当に肉食動物全般ちょっと好きじゃない。まだ犯罪者とかの方が大丈夫」

どっちかというと俺が彼ら側にとって大型怪獣だし、と思う達馬であった。


この前、刃物持ったコンビニ強盗取り押さえたし。




末馬達馬の事件簿1




深夜のコンビニ。


「よっと」

ぐいっと、手で刃物を握り込む少年。
コンビニ強盗が持っていた刃渡り20cmのアマゾンなどで購入したそれを。


握りこんで砕いた。

グニュウウウウウウウ、ガギっと。

「え……?」

34歳無職の男は、目の前の光景に眼を見張った。

なんだこれ、と。


「うん、あと聞くけど、犯罪者だから、ぶっ飛ばしていいよね?ドカーンって」

(強化)

と口元を動かすコンビニ強盗現場に偶然居合わしていた中学生くらいの少年。


その少年に男は、とてつもない恐ろしさを感じた。

「あ、すいません自首しますからやめてください、何かそういう無敵オーラだすのやめて」

男は素直にそう言った。

「そうした方がいいですよ、あと此処のコンビニ流行ってないから犯した犯罪の割に合わないですよー?」

ふっと、その恐ろしさをやめる少年。


「うるせぇ!人の店に文句垂れるな!?売れ残りの弁当やらんぞ!末馬さんにチクるぞ!」

夜のロードワークのあとに寄ったコンビニで、腹ごしらえするのが末馬達馬の日課である。


「お前家で食ってないの?」

「いやー燃費悪すぎるから夜中走ったあと腹鳴らして帰ってきて、その音で起きる妙子さんに夜食作ってもらうのが罪悪感半端なくて」

「お前、ほんとーに凄い音なるよなお腹、俺の嫁のいびきよりも五月蝿い」

いつも安くて量がある菓子パンや食パンを食ってるのをみて、なんか餌をあげたくなったのかわからないが。
燃費が悪すぎる達馬はいつもご好意で「小遣い足りんだろ、余ったの食え食え」と店長から毎晩廃棄する弁当を頂いているのだ。


「あーすいません、あと未遂って形で収めて立件なしでどうすかね」

「え?」

「え?」

「悪を憎んで人を憎まず――――みんなで肉まんでも食いましょうや」

「上手い事いったつもりか、もう並んでないし、作らないと駄目だし、あと売りもんだから駄目だ、お前が食いたいだけだろ」

「妙子さんの元バイト先のテンチョサン。ダメですか?何か滅茶苦茶イイこといったのに――――――あとオニーサン?」

「な、何?」


「俺んちの近くですし、そういうのはちょっと、海鳴以外のところでやって捕まってください」

「別なところならいいのかよ!?」

「テンチョサン、テンチョサン。人間そんなもんですって」

「大人だなぁ、たっくんも大人になったな「将来の夢の作文、正義のヒーローとかでいいじゃないか!まだ小学1年だぞ!?なんでやり直し!?」とか言っていた、たっくんも大人にな

ったな」

「昔から大人ですって!?」

「まだ14だろお前、子供のくせに大人ぶるな、あとなんでお前、お兄さんと店長の部分フィリピンパブの客引きみたいな発音なんだ?」

「様式美です。あと海鳴界隈ならヒーローやりますよ、この街好きですし―――――ねえオニーサン?」

「何ですか――――わ」

「これで叩かれたくないですよね?」



空間を引き裂く手の平が閃いて、男の首元にいつの間にか添えられていた。
その手は硬質なまるで建設重機のような暴力的な――――ビルとか倒壊させそうな見事な手の平だった。

禍々しいその手刀。

まるで妖刀のように、妖しく、恐ろしい。

「人様にメーワクかけんな――――――ぶっとばすぞ」

そう、少年が言った。

少年の昔からの知り合いである、コンビニ店長をやっている的場さんが「流石末馬さんの子供だなぁ」としみじみ思う謎のパワーと性格である。

「すいません!」

「冗談ですってアハハハハハハHAHAHAHAHAHA」

「お前まじだったろ。今の、いいから、お前帰れ、こいつ気が変わったらまじで何故か怪我をしない凄い痛いチョップするぞ」

「手刀じゃない!?」

「難しいですよね、いっつも失敗してただ痛いだけの首元を狙ったチョップになるんすよね―――いつか成功して漫画みたいに気絶とかしないかな」

いっつも失敗するんだよなぁ、と少年は微笑んだ。

「やめてください警察呼んでもいいからやめてください」

真面目に働こう、そう思った男であった。
自分の住む市からわざわざ隣の市である海鳴まで犯罪しにきた男はそう思った。

海鳴は魔の都だ。




「それは、怖い……?」

「―――――新車だったのに、あとローン―――別にいっかな無効だろ、俺の保険金で」

なのはにディバインバスター撃たれるより羆が怖いと達馬は言う。

「……たっくんの前世の話って本当っぽいよね、あと本当に人間なのたっくんって?」


なのはは山田からも聞いた、あることを思い出した。

休みの日、隣の市まで山田と二人、動物園を山田相談所を開きながら二人で歩いてると、末馬達馬はいきなり言った。

「俺帰るわ」

「え、いきなり何!?」

「俺はいつでも妙子さんの所に帰りたいから――――おい山田ァ!羆がなんでいるんだよ!いないって言っただろ!?」

「これはグリズリーよ」

「そっか、ああ何か俺が見たのと違う―――もっと怖いわぁ!?帰る帰る!檻の中に居てもヤダ!見るのも嫌だ!あとこっち何で見るクマ!?……やめろみるなぁ!」

「気にしすぎよ、それにあんたじゃなくて、あんたの右手にある焼き鳥あ――――手でも握ってあげよっか?怖いなら?」

山田は積極的に達馬の手を取ろうとしたが。


「―――――俺は妙子さんの所に帰るんだぁあああああああ!あと何でグリズリーが動物園にいるんだよ!?」

ブルブルと震え、すぐさま動物園の壁を軽く飛び越えて、末馬達馬は逃げ出した。
車の法定速度ぐらいをしっかり守って。

「ほら私が………いない!?………………え?」

末馬達馬は本当に走って帰ったとさ、焼き鳥を最後まで離さず、風圧で手にタレがつこうとも。

「俺マジで帰るから今日の相談終了!後日埋め合わせすっから!休み潰してゴメンな!」と電話しながら。


そんな山田のかわいそうなお話。


「山ちゃん怒ってたよ?」


「あいつ俺に「怖いモノある?」って聞いて教えたら彼処つれてくんだもん、お互い様だろ、ていうかアイツ鬼だろ、まぁ可愛い悪戯だからいいけどさー」

「山ちゃんは可愛くないの?」

「ん?どういうこと?見た目がってこと?んー多分お前の女子中等部中でも1位2位を争えるって誰かいってたな、何か俺を睨みながら」

この男は………となのはは思う、本当に妙子さんに似てきている。

本人がこの鈍さを直さないと、絶対に妙子さんは振り向かない、そう思うほど腹の立つ鈍さである。

末馬達馬は自分を過小評価する癖がある、普通じゃないくせに俺は普通、妙子さんは女神、という変な常識があるのだ。


「はぁ」

なのははため息をつく。
大きくなってどんどん男の子から立派な男になってきているのは良く知っている。
悪乗りしなくなったし、キチンと締めるとこはビシッと決める。
成績は男子中等部で常に一位、運動神経は人外、性格、面白いし、困ってる人がいれば絶対に助けるお人好し。
でも顔はいつも眠そうで、見てるとこっちも眠くなりそうな顔だけが、ちょっとした欠点。

よく小学校の時は先生に「寝るな末馬!」「寝てません!?起きてます!」という顔である。

私は別に昔から妙子さんおバカなところを見てきているので、逆にそれがいい、と言われてもピンとこない。

まぁこれで顔とか美形だったら、凄いよね、とくすりとなのはは思う。

ここまで立派になったのは妙子さんの御蔭だけどすごいなぁと思う。

よく周囲から、「幼馴染、いいなー」とか言われるけれど、なのははそういう気になったことなど一度もない。

精々近所の同い年の面白いお兄さんだ。



「あー私も恋とかしてみたいなぁー」

ちょっと自分のこれから先にある未来になのはは全く不満はないが、もったいないかな、と思う日々である。


ユーノも大変だな

と末馬達馬も片思い同盟の友人のユーノの苦労を思い偲びため息を吐いた。


「ま、いっか、良くないけど、あとさ、妙子さんに絶対に俺が男として好きとしてみてるとかバラすなよ?」

「うん、わかったよたっくん、あと告らないんだ?そろそろいいでしょ?」

「そろそろ?そろそろ?そろそろが来るのか、俺に?」

ああ、鈍いなコイツやっぱり鈍い。


知らないのか、となのはは思わず叩きたくなったのは悪くないと思う。


男の人が苦手な妙子さん。末馬達馬こそ世界中の誰よりも信頼している唯一人の男の子。

それは確信を持っていえること。



未だに一緒にお風呂入ろうとか言うくらいは。


「優しく迫れば?とんって感じに」

したとしても、全然許しそうな感じなんだけどなぁ、と思う。

それはみんなが思っていることだ。

ヴィータなど、「ヘタレめ」と言う感じに。


「お前の口からそんな言葉が!?やめろ、やめろ、やばいんだから、やめろ、我慢するので精一杯なんだからやめろ」

ちなみに末馬達馬は昔と違い、妙子さん以外全く女性に興味がなく、どんなAVを見てもぴくりともこない怪物になった。

レイプモノをみると、胸糞悪すぎてゲロを吐いて自分の家じゃない綺麗な知り合いのお姉さんとかの家にその日は夜までお邪魔して
寝込む奇病持ちというのが男子中等部の有名な話である。


ウブな男子中等部の男子に頼まれ、そういうモノを何処かで買ってくるくせに、そういうものが本人は駄目になって来ている。

「昨日はあのあと何処行ったんだ?」

「ああ、美里さんのアパート、看護師の人んとこ、隣の県の」

それから男子からはこう呼ばれる。


「病人」


と。



「たっくんはヘタレだなぁ」

「ん、そうかもな――――だけど、俺は傷つけたくないし、泣かせたくないし、悲しませたくないし、苦しませたくない。
どんなにそれが良い結果につながろうとも、絶対にそういう風な目には会わせないと誓っているんだ。
ほら前教えただろ、俺さ、そういうの大嫌いって、5年間だ、5年間、俺ずっと人を泣かせたり、苦しませたりしてた、あれだけは見たくない。
それに、まだ妙子さんも、最近落ち着いてきたけれど、ダメなんだ、まだ乗り越えてないんだ、ってかまだ?とか思うこともないとは言わない」

「思ってるんだ………」

「いや、自分の都合の良いように、そういう未来を思い浮かべるのは誰だってあるだろ?
でもそれは駄目だ、それはただの自分勝手な我が儘。自分がこうだからって人に要求するのは残酷だ。
どんなに好きで好きでたまんない人でも、そういう風に思ったら、駄目、ていうか犯罪です。まぁ思いやりが大事」

「たっくん」

「ん?」

「大人になったねぇ」

「なーにいってんの、妙子さんに関しては出会って二日目からだ」

「すごいたっくん凄い!」

「ハハハハハハハハ」

「一日目は?」

「滅茶苦茶無礼なこと言いました思いました」





[36072] 主人公たちはついにデバイスを手に入れた 妙子の悩み追加
Name: みさりつ◆2781aa24 ID:4563c076
Date: 2013/03/03 14:18
「たっくんはこのゲームの主人公みたいに忙しいよね」

熟れる前に永遠にこのような未熟で清楚なお姉さんな美しさを保ち続けんのかな?

とか達馬が馬鹿なことを思ってしまうほど美しい母は32型のテレビでプレステ2をピコピコやっている。

画面には日にちと主人公の少年の元気度的なステータスとキャラの姿が浮かんでおり、これは確か――――――

「PERUSONA3?え、もう出てたっけ?」

「ううん、マスク3っていうゲーム」

妙子が見せるDVDケースっぽいものにはマスク3と確かにロゴが入っている。

「それは……世界の歪みなんですかね……ゲームシステムとかは?」

「RPGで365日システム。キャラの話が多くて面白いよ?主人公に恋人出来ると好感度とかで他のキャラが豹変したりするし、いつの間にか居なくなってたりする」

「な ん だ そ れ」

「修羅場シーン豊富」

「………まさか、それで」

「あそーれ、二股三股四股五股六股でデートの予定を全部ドッキング開始ーふふふ、修羅場だね修羅場、私と同じ目にあってね?キタロー君、私は勝手に修羅場になるんだから」


思わずどっと冷や汗が出てきた。

たっくんはこのゲームの主人公に似てるよね、からのゲーム内で修羅場発生って何か怖い。


凄い怖い。

マヤの太陰暦の世界滅亡予言説よりも怖い。

あれってどうなったんだ?

その前に死んだし。

「怖いからやめてください!?変な余裕出てきてるからって、やっと欝にならずこういうの余裕で遊べるからって遊ばないでください!」

最近何か変な余裕が出てきた母の大雑把な行動に達馬は怖くなる、もう「えーい」とか可愛くいいながら。軽く、もうそのままふて寝したくなるぐらい人を滅茶苦茶びっくりさせることをするのだ。

ミッドチルダへの次元世界旅行もそんな感じのことがあった。

何気に記念とか言いながら虹色の宝石を買った店で日本円で2000万円くらいする謎のデバイスを自分達のお土産に買ったりした衝動買いには達馬は恐ろしくなった。


一生待機状態のまま、放置が決定した謎のデバイス。



この「多分、喋らない」タイプのやつってなんていうんだっけ、とか思いながら、貴女が買うとそういうのが必要な場面が来そうで怖い、そう達馬は思ってしまう。

そして気づくのだ。


「ナウシカの乗り物と同じ名前の宝石だね?買っちゃわない?せっかくだし記念にいいよね?」

「宝石じゃなくてデバイスらしいですよ?え、これ買うの?」

「デバイスって、なのはちゃん達が使う魔法の杖だよね」

「そうですよ」

「じゃあ、ご利益ありそうだね、ハナミがよく川原で拾ってきた気持ち悪い石とかよりも全然いいね、お守りにしようね?二人の」

「すげー値段なんすけど、逃げたくなりそうな、手に取るだけで気絶しそうな」

「異世界に来たんだし、折角だし、そういう物買わないと、買っちゃえ買っちゃえ」

「俺の今までで最大の買い物はローン組んだ100万の車なんですけど――――いいんですか、逃げていいですか?そんな高いもの貰えないから逃げていいですか?」

「気にしなくていいから、現物だと私も結構震える金額だけど、折角だし買おう?」

「あ、震えますよね」

「うん震える」

「か、買うんですか、記念に―――ハナミさんのやつより安かったですけど」

「ハナミのより安いけど、何か自分に買うとなると―」

「怖い―――っていうか母さんは何が怖いんだ!?」

「え、アクセサリーとかでそんな値段のもの買ったことないし」

「アクセサリー扱いか、うん、そうですよね(怖いからあんまり教えてないしなー魔法が使えるアイテムだよ、ぐらいしか)」

多分妙子さんの中ではゲームに出てくる、魔法の武器とかアクセサリのコマンドアイテムとかそういうの物が現実にある気分なのだろう。

まぁ自分も同じ風に感じている。

レヴァンティンさん格好良いとか、ミッドチルダのヴァンガードヴィレッジ的な雑貨店に売ってないかな、プラスチックのもっと安全なやつ。とか思ってしまうぐらいは。

「じゃあ、男気ジャンケンでもする?」

「いきなり俺の4000万円の借金が掛かった男気ジャンケン!?」

「え?」

「えってなんですか?」

「私たちのお金で買うんだよ?どっちが手にとって買うか決めるジャンケンだよ?」

「え――――」


恐ろしい事実発覚に。


恐ろしくなった。

この人大丈夫か?と。


「私たちのお金」ってなんだ?


もう天然勘弁して。と。


いっつも罪悪感たっぷりなんだぞ?


俺は妙子さんのお金で生活してるんだぞ?

リンディさんのアルバイトとかで稼いだお金をこっそり生活費入れて怒られたりしたし。

何か複雑すぎる。

だって、俺の産みの親を幸せにしてくれたのは妙子さんだし。

あとで美里さんに問い詰めて聞いて、また「ありがとうございまず」とか山の中で泣いてしまったし。

ああ、もう子じゃなくて従者になりたい、執事でもいい。

忠義を誓いたい。

シグナムから騎士のなり方聞くかな。
とか思う、妙子さんの天然爆発だった。

勘弁してほしい、返せないものばかり俺にポンとくれる女神だ。
泣きそうな、すごい泣きそうな気分になった。
頑張っていつか返そうとしても、多分怒られるんだろうけども、自分の恋心とか関係なく、恩義に報いたい。
俺にくれた幸せの分だけ幸せになって欲しいと思う。
妙子さんがくれたお小遣いや妙子さん親類がくれるお年玉を自分の物を買う気にならないし。
自分の欲しい物とかは色々伝を使って違法な14のバイトで稼いでいだ金で買う、末馬達馬和菓子工場勤務とかで。
そしてあとでこっそり妙子さんに内緒で妙子さんの実家にお歳暮送ったりして「いいのにー」とか注意されてしまう。

俺の間食の食物も基本バイト代から賄ってる。

宙に浮いた小遣いは基本、人の為に使うことにしている。

たまに学校帰り一緒にサッカーとか野球する小学生とかにお菓子とか、ジュースとか、体育館借りたりとか、あと山田。

ちなみに俺の部屋にある俺の私物は妙子さんの身に余るご好意で買って頂いた品ばかりである。

漫画全巻セット、ずどーん。

高いハードカバー本、どさどさ。

「これ読みたそうにしてたよね?たっくんの部屋の本棚に置いておくよー?私からのプレゼント。いっつも大変なところの掃除ありがとう」

「え…」

「私が読みたくなったら借りるけどいいよね?」

「ありがとうございます、嬉しいです」

「はい、どういたしまして」



正直言っていいか?



くそー、ずるいよずるいよ、その無限の財力ずるいよー。

俺なんか、妙子さんにプレゼントはもう筋力で手に入る物ばっかなのに、素手で獲った美味しい食材ばかりだぞ?
士郎さんに肉の解体の仕方教えて貰ったやつとか、素手で掬った魚とか。
嗅覚使って見つけた天然の松茸とか自然薯とか。
妙子さん少食だから大半俺が結局食べるし。
俺は下界のお姫様が好きになった何処かの山に住まう野人か?とか思ってしまうプレゼントしかできないんだぞ?

「母さんはずるい人ですね」

もう、本当に人をとことん、ぼっこぼこに惚れさせてくれる。
最強すぎる、もう無敵に素敵です。

「え、何が?」

この人は多分ゲーム内でアイテム買う気分だったろうけど。
もう少しお金に頓着して欲しい。
だってすげー値段だし。
2000万円。
思い出はプライスレスとか言えない気分のものだ。
見えない鎖が俺をがんじがらめにするような、気さえする。


結局、末馬親子が所有するデバイス『メーヴェ』は一回も起動されず「喋らないから、多分人格ないよね?人格?ごめんね?」と思う扱いをされている。
青空を詰めたような珠のまま、どっちも箱に入れっぱなし、もう本当に記念品扱いだ。
眠る財宝としてしか扱うことしか出来ない記念品として二人に大切に押入れとかに保管されている。
取り敢えず、保留にしておきたい思い出の品である。



そして達馬は思うのだ
いつも思うのだが、魔導師は喋る意志のある武器持ってて怖くないのか、と?
メーヴェに意志あったらどうしよ?
使わないから怒るよね?普通?
大切なものしまう棚にしまって置いても怒るよね?
お守り扱いだし。
怪談とかでもあるだろ?
そういう喋る系おもちゃとかが『しねしねしねしね』とか言い出す怪談。
こういうことされたデバイス達の無念の嘆きとか、怨念的な怪談とかないよな?
人と会話出来る高度な知性だろ?
それって生きてるじゃん、そういう機械生物だよ?普通に魂あるだろ、絶対。
メーヴェは一応、埃が付かないように、磨いたりしてるけど、妙子さんとの思い出の品だし。
多分意志とかあっても怒らないよな?



怖いんですけど、日本円にして2000万円の謎の品だし。
一応リンディさんに好きに何でも買ってもいいわよ、とは言われたけれど、どうなんだ法律とか?
あっちの法は全くしらない。
デバイス所持法違反?とかにはならなさそうだが、何か登録料とかいるのか?


そこらへんリンディさんが何かしてくれてると思うけど。
妙子さんは「じゃじゃーん」とか楽しそうにリンディさんに見せて「随分と年季の入った凄そうなの買ったわね」とか微笑まれて終わったし。
あー俺だけでもマリエルさんとかに聞いてみよう。

それで


デバイスに意志があり。
人格があり、悲しみや喜びの心がある、それは知っている。
よくレヴァンティンをシグナムとの訓練で殴ったり、蹴り飛ばして『よくも……』な感じに見られている気がするのだ。
それはあとで謝ってるからいい。



もしそういう人格を尊重しない奴とかいたら、どうなるんだ?
怪談じゃなくて現実問題、ストライキとかされたらやだし。

妙子さんとの思い出の品に「使うヤツのとこ行きたいんですけどー君なんて大嫌い」とか言われたらやだし。
などと、なのはに聞いて

「何でたっくんそういうこと言うの?」

「そういうことあるんじゃないか?」

「そんなこと言われる人は絶対いないんだよ普通?」

「そ、そうなのか?」

「そうだ、騎士の志なのだ、大切にしない者は騎士ではない、居たとすれば成敗だ、達馬は使えなくとも大事にとっておけば良い、しっかりとメーヴェもそれに応えてくれるだろう」

「もう達馬は何言ってるの?達馬が大事にしてるならいいんじゃないかな?」

「そうだぜタツマ、そういう奴がいたら私が見つけてアイゼンでぶっ飛ばしてやるから、気にすんな、お前は大事にしとけばいーじゃん」


とデバイス所持者達に言われたのは記憶に新しい。


わかってた。
もう貴方たちはそのままでいてください。


「たっくん、どうしたの?」

はっとする。

今日はしっかりと月の光とかに当てて、パワーストーン浄化とかみたいなことをメーヴェにやってあげないと、とか思ってると
テレビが……ゲームが。
「あ、いえ、……うん、これ怖くないですか?」

テレビゲームは気づくとひどいことになっていた。
気まずい感じのBGMが流れていた。



「えーこういうの楽しいよ?一応女の子同士で鼻血が出るような殴り合いシーンとかないし、怒鳴り合ったりするぐらい?
そしてキャラが減ってクリアの難易度が上がる。BADも豊富、睡眠させて次の日に何か画面が突然真っ赤になる」


幻想水滸伝とかそんな感じか?と達馬は思った。

死亡イベントが多いのか。

いやいやいや

「最近母さん、黒くなってません?ていうかそれは凄惨すぎる!?」

「現実じゃないからいいんだよ、現実にあると最悪なんだよ?」

「もしや、殴り合いとか?見たこと……あと鳥肌立ってきたんですけど。」

全身が冷水に浸かっている気分に達馬はなっている。

あれだ、妙子さんの恐ろしい、むかーしむかしのままにしておきたい昔話が始まる。

「あるからね、ていうか、本当に互いに手加減ないからね、ピカソもこれ見たからゲルニカ描けたんだ、とか思うくらい。あと私は黒くなってないよ、みんなが黒かったんだ」

「………まじすか、そんなスクライド最終話とかクウガ最終話が女の子同士で……?」

「えーと」

妙子は思い出す。

不登校をやめ、史上初の一年での生徒会長就任を担任の先生に私に決まり、と打診され、断らず己を敢えて激流に置いて「忙しい」と逃げるために受けてからの日々。

なんでも私だけウィジャ盤くじ引きで決まったらしい。

学校の放課後、寮に帰るかそれともわざわざ自宅に帰る生徒がいる、森とか山のなかにあるちょっとお嬢様学校っぽい我が母校での高校生活を思い出す。

今日も生徒会は大変だった。

生徒会は学園長の「この人なら大丈夫そう」という独断で決められたキワモノな変わった人間と基本不真面目な人しかいないので、忙しくなりたい私がいつも一人働いていた。


大丈夫そうじゃない人間が間違って生徒会に入ると、何か不吉なことがあるとかバカバカしい怪談があるのだ。


「まぁホントーかもしれないけどさー仕事はして欲しいなぁ」


プリント類を抱えて忙しそうに廊下を歩いていると。

「あ、国見先輩と尾崎先輩―――――あ」


見てしまった。
通りかかった教室のドアから見えてしまった。

「末馬のを勝手にィイイイ!」

「痛い、痛い、痛い痛い――――痛いって言ってんだろぉ!この糞が!」

夕焼けの中、仲良くもなんともなく殴り合う二人の先輩達を――――まるで戦争、地獄の黙示録を見ているような気分。
人間の悲哀と争いの虚しさ、なんてゲルニカ。
机は「がごん」と倒れ、椅子も「ばしり」と倒れ、お互いに憎しみあって、「ごすごす」と殴り合っている。

人間ってこわいなぁ。

帰って、数字で遊ぼうかな。

あと昨日失くしたと思っていた私の筆箱盗んだの先輩か。

この人たち、すごく私に良くしてくれた先輩たちだった。

「末馬ちゃん、オネーサンたちとご飯食べましょ?」

とか言いながら、食堂でご飯おごってくれたりしてくれた優しい人たちだったのに。

「あ、はいありがとうございます」

「ふふ、頑張ってね?可愛くて綺麗な生徒会長さん、応援してるからね」

「ありがとうございます!」

「今度私たちの部屋に泊まりにきてね、3人でパジャマパーティーしようね」

「はい、楽しみにしてます!」


とか言う微笑ましい思い出が………砕けた。

私の筆箱が砕けてる。
奪い合った形跡がアリアリ。
買い直したばっかりなのに。
誰だ、筆箱で恋占いとか流行らせたの。
なんで私ってそんな風なモテ方されるんだろ?
ドロドロしててぐちゃぐちゃな陰惨な感じの……人が嫌がるエロいことばっかしようとする男から逃げて、女の園にせっかく色々複雑な思いをしながら入った。

そして女の園でさらに複雑な目にあって不登校して復帰してこれだ。


ああ、見てて心が死にそう。


取り敢えず


「気づかれないように逃げよう」


生徒会室に逃げ込んだ15の夏。

私の唯一の逃げ場所、そこは誰も近寄らない、夕方は絶対に誰も近づかない有名な怪談がある生徒会室。

相変わらず、そこだけは何故かいつも冷たい部屋で、鳥肌が立つような気がするが、生きてる人間の方が怖いので全然怖くない。

夕方にそこにいると、不吉なことになるとか知らん。
私が就任するまで別の会議室を使っていて封印されてたとか知らん、過去に殺人事件とか知らん。


ここなら安全である。

誰も近寄らないからね、本当に、怖すぎて。
唯一私以外で此処の不吉な感じに耐えられる友人が放課後はいつもいて、泣きつくじゃなくて相談をするのには丁度良い場所なのだ。

「ハナミどうしよう?」

「私が極度のジャニオタで極度のオカルト好きで有名な人間で良かったと思う話だな―――末馬生徒会長、おい、眼が死んでるぞお前」

この部屋で一人で噂の時刻、のんべんだらりとジャニーズな写真集を会議用の机に広げている友人。
山田ハナミ、私の唯一人のこの人生初の友人らしい友人。
はっきり言おう、コイツは結構キワモノである。

この生徒会室で寝泊りして「噂まじかな?何か起きないかな?」とか笑って出来てしまう、怪物である。

本当にオカルトなことが出来ると有名な生徒であり、皆に怖がられている変人だ。

「……止める?私が止めるの?止めた方がいいの………また不登校していい?」

あんな鼻血とか垂らしながら二人に迫られたら、多分気絶する。
互を憎み合う眼が怖かったし。

「やめたほうがいいぞ、末馬、もっと途轍もないことになるぞ、ワハハハハハ、勝手にやらしとけ、アハハハハマジで面白い。バカみたいだなクククク」

度入りの眼鏡をしていて、古風な三つ編みを垂らした友人、まるで文学少女を額縁にしまったような綺麗な女の子だ。

だが、その性格が容姿と釣り合いが取れない。

超絶愉快犯で有名な変人。
何でも面白ければいい、とかそういうタイプの友人だ。

「……ハナミ」

「他人事だしな、面白いだけだ」

すっぱりと私の悲しい現実を切り捨てられた。
爽快感さえも感じられる。

「ハナミ……ダミーな同性の恋人になってもらおうか?手を繋ごうか?」

もういっそ、この人でなしなハナミを犠牲にしててでも―――――。

「許してくれ、マジでやめてくれ、今度ジャニの写真集あげるから、私の家宝のやつ、ギリギリでキュートなやつ、こう吸い付きたくなる感じの」

「いらん……母さん…助けて」

「お前の母さんド天然だから無理だろ、それから、あとで私の部屋掃除手伝ってくれ、同室の奴ついにブチ切れて私ついに三人部屋から今一人部屋だから」

「いいけどさ、顔、腫れてるよ?」

人の靴跡がハナミの白い顔にくっきりと残っている。

「同室のヤツに本気で蹴られた、明日には治しておくから気にしない、ヒーリングとか私使えるし―――空想じゃないぞ?
手の平からな、体のチャクラを通してパワーを送るんだ、練習すれば誰でも出来るやつなんだ、マジだぞ、妄想じゃなくて本気で効くんだこれが」

「わかったから、掃除したあとそこで泣いていい?まだ暴力の原因がハナミの方がマシだよ………本当に、あと同室だった大村さん可哀想」

大村さんいい人だったのに、観音様のような穏やかな人だったのに、こいつブチ切れさせたのか。

部屋を滅茶苦茶、不快な腐海にして。

昨日掃除行ったばかりなのにどうやったら部屋が汚くなるのか。
まぁ多分また学校周辺の森とかで、呪いとかかかってそうな、お地蔵さんの頭とか拾ってきたんだろうな。
観音さまのように穏やかでも普通の女子高生はそういうもの拾って部屋に置くやつには飛び蹴りもするよね、それは。

「そうかワハハハハハ」

笑う人でなし。

私はもう、嫌だ。
これが唯一人、安心出来る友人って。
色々不登校前に問題になってみんなから、モノ凄い避けられてる。
人間極限まで追い詰められると、どんな周囲のこしょこしょ話でも自分を噂しているような気がしてしまうのだ。


ス行の名前が聞こえたら、まず私だ、とか。
二股なんてしてないよー。
あっちが何か言いふらして付き合ったって事にしたんだよ?
誰かわかってよ。
それが二人出てきただけなんだよ。
痴情の縺れなんてないんだよ。
二人共ただ一緒に学校帰る友達だったんだよ
悲しい、誰も信じてくれない。

あれか、男性が怖くて女子高に入学しました、とかああいう発言が噂を――――――
あと不登校。

もしかして停学とかみんな――――

「しのうかな、自分の顔とか引き裂いてしのうかな」

もう容姿がいいからって何?
同性でも構わないって何?
筆箱なんかよりも結局どっちが明日誘うパジャマパーティーで先に末馬に手を出すのかを決める争いって何?

人間って何?

自分が降りかかったおぞましい記憶が蘇り、死にたくなってくる。
数字を見たい、無機的に現実を告げるあの数字が。
今日はまたいっぱい数字を動かして一人エキサイティングしたい。

「あと2年以上だぞ、まだまだこれからだワハハハハハハおもしろすぎる!最高だよ!お前と友達になって良かった!ちょっと現場見てくるウハハハハ!」

ハナミの「面白ー」という大爆笑に何か落ち着いた。

冷静に

「お前を道連れにしてやるぞ、このアホタレ」

冗談が言えるくらいは。

「こ、怖いこと言うなよな、この学校でお前の唯一人の友人に、あと口調が…………」

「ま、ハナミがいないと、正直この学校で生きていけないからやめとこっと、なんだかんだ言って助けてくれるし、あとハナミも友達いないじゃん、私以外」

「私はこの学校の怪談目的で入学しただけだし、普通の青春とか興味ないし、私が楽しければそれでいいんだよ、この生徒会室で一人隠れんぼとかが私の青春だ」

「この生徒会室が楽しいの?」

「すっごい楽しいぞ、マジで出るぞ此処!もう写真を撮るとだなオーブがうようよと、夜中はずっと耳元で唸り声とかさ寝てて足引っ張られたりとかワハハハハハハラップ音すごいだろ此処クククク」

うんなってるね、一日中この生徒会室。


パン!


とかね、うん。

「お、鳴った鳴った、ここの奴らは聞こえたりすんのかね、こっちの会話――――おい、聞こえてるならラップ音2回、聞こえてないならラップ音一回とかどうだ?」

どういう神経してるんだろ、この人。
一人でラップ音が鳴った場所に向って話しかけている。
馬鹿なのかな?

「やめたほうがいいんじゃない?」

「いーだろ?面白いだろ?べっつに今のところ私の周りでここ以外変なこと起きたりしないし末馬なんか全然気にならんだろ?どうせ人間関係以外運気最強とかなんだしお前」

正直どんな怖いことでも本気で面白そうに「マジでっ!?アハハハハ!」とか笑ってくれるので助かる。
本当に助かっている、愉快犯で残念な人でなしだけど。
私は一応、線香あげてるんだけどね、妙に新しい床の部分とかに。

「まぁ生きてる人間の方が怖いよね、うん怖い、すごい怖い」

「あ、今、相当キてるだろ?お前がそういう口調になるときってキテる時だな」

「当たり前だよ、あー不登校しよっかな」

「家に帰って飯食って風呂入って寝れば大丈夫だって、人間そんなもんだって、朝にはスッキリだ」

「そうかなー私いくら頑張っても3時間くらいしか寝れないんだけど」

「そうだ、母に部屋ごと燃やされそうになった私が言うんだから間違いない、「早く掃除しないとこの灯油に火をつけるぞこのバカ娘、お前ごと家なんて建て替えればいいし」
とかそんな感じになった時も大丈夫だったぞ、泣きながら掃除して出来なくて死にたくなっても次の日もまた怒られたけど今生きてるぞ、めんどっちぃことに」

「ホントーに掃除できないよねハナミ。それはもう病気だよ?将来テレビにお部屋紹介されるよ?」

「めんどっちぃことにここ、入学して寮に入れると知ると家族全員から追い出されたからな、嬉々として。あと一回本当に病院連れて行かれた。
医者に「もうそういう人間ですね」と言われたな。正直お前がいないと大問題になるので頑張ってくれ」

「ハイハイ、どーせ私はハナミの部屋が心配で学校来てしまいますよーだ」

あの部屋は掃除しないと、誰か病気とかになってしまう、それは確かだ。
だから防疫の気分で私は学校帰り今日もハナミの部屋掃除だ。
現実逃避に現実にはありえないくらい毎日汚れていく女子寮の一室を掃除する。

うん、悲しい。

「ああ、よろしくな、本当にお前にあの時「部屋掃除手伝って」と電話して良かった、今頃路頭に迷ってたからな私は、これからも頼むぞ、末馬」

「よかったの?私にとって良かったのそれ?」


「パン」

「パン」


「あ、ハナミ、聞こえてるって、すごい、会話成立だ」

「お、本当だ今日も泊まるかな此処、過去の色んな噂の資料と読み合わせして実際かどうか聞いてみよう、まずは一番くだらない噂から」

「怒りそうじゃない?」

「大丈夫じゃないか?今のところ布団敷いて横になってジーザスクライストとかデスメタルを流してジャニーズの写真集見ながらくつろいでいて後ろからいきなり軽く首を絞められたけど、殺されなかったし、あーもっと何かしてこないかな、面白いやつ」

ちなみに二人が通っている高校は元ミッション系である。

「大丈夫なの?本物だったら殺されるよハナミ」

「レイキっていう胸のところから流れる気のパワーを込め、全身に流して、こうパシッとやれば、大丈夫なんだよ、お前も練習してみるか?」

「いいよ別に、あんまりそういうの興味ないし」

「面白いけどなーそういうの」

「あと此処に泊まって布団敷いて寝るのはいいけど汚くしないでね、あといつも鼻水風邪なの?何か朝、丸めたティッシュとか転がってるよ、それぐらいは捨てれるでしょ?ペットボトルの空とかお菓子のゴミ」

「あースマン、ゴミ箱に捨てるの忘れてた、私の使用済みのやつまで掃除させて悪いな」

「なんでハナミがゴミ箱にゴミ投げるといつも基本的に外れるの?あと風邪薬いる?」

「末馬は本当に天然だよなぁ」

「なにが?」


という思い出。


あの時はまだ、まだ私も若かったなぁ。

うん。

今なら絶対無意味な争いなんて止めてるのに。
あと今思うと恋占い流行らせたのハナミだね、本当にしょうがないなぁハナミも。
まぁハナミの御蔭で卒業できたんだけど、あの汚れた変なものですぐにいっぱいになる部屋の御蔭で。
よく石とか拾ってくるし、付喪神ついてそうとか言って汚い気持ち悪い物とか山ほど拾ってくるし。
絶対未だにやってるな、絶対に。
南米までは面倒見切れなかったけど。
あと生徒会室は最近リフォームされて埋められたらしいね。

「うん、あるよ、女の子でも拳は握れるんだよ?たっくんも気をつけてね?女の子が殴り合う場面に遭遇すると、本当に欝になるからね」

「気をつけるって何を!?」

「まぁたっくんは何か微笑ましいのでズルい。腹立つくらい。白の章とかそんな感じだから嫉妬しちゃう」


可愛くて思いやりに溢れた幸せな恋愛をしたがる女の子に惚れられているたっくんはズルい。
たっくんに惚れている子って大抵正々堂々を往く、いい子ばっかり。
たっくんと幸せになりたいからって感じの子たち。
私の事を「お義母さんって呼んでいいですか?」とか言う山田ちゃんは結構外堀タイプだけど。
でも私と違って人の母に――――やめておこう。

「ホントーに黒の章だったんですね」

「うん、今の幸せが怖い………」

「大丈夫です」

「何が?」

「た、母さんは俺が護りますから!」

「たっくん……それフラグだよ?死亡フラグ」

「ハハハハハ冗談でも母さんはそういうこと言うの禁止ね、あと、そういう知識深まってますね確実に」


メーヴェ

二人のデバイス。

二つで一つの両翼揃うとほにゃららとか、そういう系
一回も起動されてすらいない。

山田ハナミ

魔法の才能があり、オカルト趣味な独学で次元世界に到達した鬼才。
妙子の心の支えになった友人。










末馬妙子の悩み。


今日も今日と海鳴の鉄人は小学校の通学路で旗を振っている。
翠屋に出勤するまでの時間を使ってギリギリまで。
最近は色んな暇がある海鳴の大人たちが、感化されたのか街中で見られる光景である。

末馬妙子を慕うママ友達が一緒に旗を振るう。
苦労の果てにやっと余裕が出てきたのほほんとした妙子の神々しいオーラにより、皆のほほんと朗らかに会話を行なう。


そんなある日、妙子は何故かママ友の一人に泣きながらお礼を言われた。
小学校低学年のお子さん二人を持つお母さんだ。

「妙子さん、達馬君に人見知りするウチの子達と遊んでもらったのよね、本当に達兄ちゃんって懐いてね、そうしたらその日から何故か友達もいっぱい出来たのよ。
本当に嬉しいの、本当にありがとうございます」

「いえいえ、それはウチの子に………」

妙子は胸の内で思うのだ、我が子の恐ろしさを。


ああ、たっくん、また、またか。

学校帰りにサッカーとかやってる少年少女に「おにーさんもやりましょう!」とか誘われて、遊び始めて、子供たちに達兄とか呼ばれるアレなんだね。
一人ぼっちの男の子とか女の子とか仲間に入れて「みんな仲良く」をやってしまうんだね。
やっぱり凄い。
うん知ってる、そういう奇跡の才能があることは。
夜中に子供たちの肝試しに付き合って、お化け役をそこらへんにいっぱい居る、知り合いの大人とか高校生達にさせるくらい。
子供たちに「ありがとう!お兄さん達!」親御さん達に「本当に有難うございます」とか言われて。
ガラのあんまり良くない高校生達に「何かこういうのっていいな、もっと俺たちにもこういうことできないかな、楽しいし」
とか言わせてしまう奇跡の才能、特に運動能力以外は普通なのだが、こういう非凡さがある、なんというのか、雰囲気を楽しくさせる才能というか。

当たり前のように人を楽しく幸せにさせる偉大な力がある。
何処にいてもどんなことがあろうと自分をなくさない、確固たる鋼鉄の精神。
強く優しく、思いやりの心を忘れない。
本当にオリ主でもやれば良かったんじゃないかなぁ、とか思う。
私より早く生まれてきて、傍に居てくれれば……なんてことを思ってしまう程。

よく小さいおマセな可愛らしい女の子とか「たっくんちょうだい」とか言いにくるし。

確かこの前休みの日

「いらっしゃーい」

「おーミカちゃんか、どうした?」

「好きです!たっくんつきあって」

「は?」

「男女のお付き合いだよ勿論」

「え、俺そういう趣味ないんだけど本当に無理なんだけど、こどもは可愛いけどさ」

「こどもじゃない!もう8歳!」

「ハハハ勘弁して…うわっ泣くな泣くな泣くな………うん、ミカちゃんが大きくなった時にだね
大きくなっても俺のことが好きだったら、もう一回そう言ってね―――とかそういうのでいいか?」

「本当……?」

「ははははおにーさん嘘つかない、その時にまた考えてあげましょう!10年後ぐらい!」

「うん―――――――ねぇ、考えるって何?」

「げ………」

「げって何?……何かユウちゃんの時もそうだったって聞いたけど」

「元気だしてホラホラ美味しいお菓子いっぱいあるぞーほらぁ、ミカちゃん好きだって言ってただろ、ホワイトロリ――――――お兄さん逃げていいか?本気で」

「駄目」

「アハハハハハハダメか、ダメかダメなのか、女ってこわいなぁ、マジで怖いぞ本気で!目が!目が!怖い!?こどもの目じゃねぇ、俺を見る羆の眼だ!」

「ヒグマー?たっくんヒグマ怖いの?」

「怖いけど?」

「じゃあ、10年後、もう一回ね?断ったら私ヒグマになるね」

「ちょちょちょ!?そういう怖いこと言うなマジで!……で今日は何しに来たんだ?」

「遊びにきたー、ねぇ、一緒に二人で面白い遊びしよう?」

「何の?」

「一緒にお風呂に入ってね、そのあとお布団でエロエロなグチュグチュ!」

「何処で覚えてきたそれ?何処で覚えてきた!?」

「テレビとかパソコンとか」

「ああうん、そうだね、クソ!放送会社の野郎インターネットの野郎!そういう番組とか放映するな!サイト出すな!こどもに悪影響だろ俺に悪影響だろ!?」

「駄目?」

「駄目だ、絶対ダメ、約束だ。ミカちゃんそういうこと平気でいっちゃダメだぞ?
世の中にはな変態さんがいてな、そういうこと言ってると変態さんに嫌な目に合わされるからな、本当だぞ?絶対約束だそ?」

「たっくんならイヤじゃないよ?あとたっくんにしか言わないよ?」

「もう嫌、ほんとうにキツい………何この俺は悪くないけど、俺が悪いということで捕まりそうな会話、まじで胃に穴じゃくて……腹減ってきた」

「だめ?」

「うんそれも10年後で………考えとくから、うん、考えるだけだぞ」

「そっか、これぐらいで勘弁してやるか」

「俺、何か騙されてる気がするんだが、お前ら子供だから許される系手段があくどいぞ、分かって言ってるよな?ユウちゃんも似たような手使ってきたし」

「知らないけど、抱っこして、取り敢えずゲームやろうね、たっくん」

「ハイハイ、あーあーあー逃げたい、超逃げたい、あと今日から抱っこ禁「将来は外国でユウちゃんと私とアカリちゃんで重婚ね?」異世界に逃げるぞ、俺」

「だって好きなんだもん」

「あー俺の意志は?あとアカリちゃんもか、俺のどこがいいんだか、眠い顔だぞ俺、あとお兄さんお菓子食べていいか?現実逃避でお菓子食べていいか?」

「大きくなったら私たちを食べてね、その頃にはたっくんはもう離れなれないよー?」

「ひぃ――――」

「待っててね?10年後3人で押しかけるから、リボンとか巻いてくるからね?」

「本当にお前ら8歳か?肉食すぎるぞ?」


という感じのことが、3回。


すごいねたっくんモテモテだね。
捕まらないでね。


「俺にそういう趣味はない!」

「たっくん……また、ホントーにモテモテだよね、前世で使わなかったモテ期も使ってるんじゃない?」

「取り敢えずこの10年後系パターンで乗り切るしかないです下手すると捕まる!あと考えるだけ!本当ですから!あと俺に優しくしてください、まじで胃が痛い、お腹すいた」

「このラノベに出てきそうなハーレム野郎って言っていい?あと今日はペペロンチーノです」

「うわぁ、母さん何かひどいです、ただ普通に真面目に生きてるだけなのに………ていうか昔は貴女がそうだったじゃないですか!?」

「私の場合、君みたいな微笑ましいの全くなかったんだけど、あと皆、本気度MAXだよ?10年後どうするの?24と18なら有りなんだよ?」

「あー貝になりたい。眼を閉じ、口を噤んで、耳を塞いで、貝になりたい、私は貝になりたい、社会に不満はないから貝になりたい……取り敢えず保留で」

「とりあえず保留だね、しょうがないなーたっくんは………攻殻でも一緒に観る?」

「DVDこの前焼きましたから丁度いいですね、母さんはキャラで誰が好きですか?俺はトグサさん」

「素子さん、せめてああいう風になりたかったなぁ」

「無理、なられても毎週日本にミサイル飛んでくるからやめてください」

「タチコマ泣けるよね」

「アイドゥーアイドゥーほにゃらららって誰かきーた、誰だー誰だー俺の癒しタイムを奪うやつはー最近俺マジでこういう時間少ないんだぞーまじでー」

「そこ無理矢理リズム載せなくても、合ってないし」

「お邪魔しまーす、たっくん今日いるー?一緒に野球したいんだけどー遊べるー?」


次の客さんは野球少年達だった。


「あーうちの母さんもいいか?」

「勿論いいよ、二人はピッチャーやってください」

「お、ピッチャーか、よし」

「うん、勝負だね、たっくん」

「何か賭けます?」

「勝ったら何してくれるの?」

「えーと母さんが大好きな俺の過去会得した男の料理作ります」

「いいよね、あれ、私にはもう何か作れなくなってさーたまに食べたくなるんだよね、作るとき濃い味系何か躊躇するんだよね」

「アンタ負ける気ないんかい」

「ない、絶対に平和なハーレム築ける君には負けない、ところで彼女何人いるの?」

「あーやっと最近余裕出てきてますね、何か見てて嬉しいです―――――あと本当に言っておくけど、俺には彼女は居 な い」

「そうなの?」

「山田のねーちゃんは?たっくん」」

「カイ君、あれは友達だ、ていうか何故知っている」

「当たり前だろ、だってたっくんだぞ?伝説のたっくんだぞ?」

「何が当たり前なんだ?あと俺、何の伝説なの?」

「伝説されてるよ、結構」

「あーお前頭いいな、こう文字の意味をしっかり辞書で調べるタイプなんだな、よし、絶対俺は負けないぜ!」

「あとたっくん、上に乗っていい?」

「ほいさ」

「よっこらせ!」

「ずる!カイずれぇ!俺も俺も」

「じゃあ交代制な!ホップ!ステップ!ジャンプ!」

「うわーおもしれー」


「私の背中に乗る?」

「いえ、お姉さんは綺麗な人なので遠慮します」

「え、なにそれ乗ろうよ、普通に乗ろうよ?」






楽しかったなーアレ。

子供達でそのあと、親御さん達に許可とって鍋とかやって楽しかったな。

ていうかたっくん。


カリスマ好青年だよ、本当に。

その頃は色んな人にエロい目で見られた私との差が半端なくて、何か悲しくなってくるんだけど。
これが嫉妬か、と私を思わせるくらい。


最近の婦人会の話題で多いのがこういうのだし。
基本中心には奴がいる、とかそういう感じの。
ひとり寂しい老人とかに子供を連れていったりするし。
将来何になる気なの?と恐ろしい戦慄を感じるんだけど。


「お礼に沢山お菓子持って行くから、今度達馬君が空いてる日に伺ってもいいかしら」

ウチの家のお客さん用のお菓子がまた一つ山になるんだね、それで。
たっくん甘いものはそんなに入らないし、私もそんなに食べれないし。


「いいですよ、日曜ならウチの子も一日中筋トレか勉強くらいなので」


「本当にいい子に育ったわよね、たっくん」

「はい、ありがとうございます、至らない母ですが、そう言ってくださると、それだけで幸せな気持ちになります」

自分で言っていて。

はっとする。


あんまり育てた記憶がない。

朝一緒に走って、一緒にお風呂入ろうって言っても断られるし、せっかくお背中流してアカスリとかマッサージとかしてあげようと思うのに。

弁当と3食ご飯作ったり、掃除、洗濯、裁縫、などのことしかやってないけどなぁ。
それもたっくんは気遣いする子だから、掃除とか洗濯は別にいいのに、勝手にやってくれるし。
私が居ないうちにピカピカにされてしまうし、ちょっと困るなぁ、私罪悪感貯まるし、うーん止めようかな、ていうかいつの間にかだしなー

「風呂掃除、玄関掃除、トイレ掃除は譲りませんよ」

とか言われちゃうし。
裁縫が一番たっくんにやって上げていることなのかな。
マフラーとか手袋とかセーターとか。
えーとあと、なんだろう、あ、勉強見たりとか?でも最近聞いてこないし。
深夜の運動に帰ってきたあとの夜食も

「母さん、やっと最近、今まで人生で摂らなかった睡眠をやっと摂り始めてるんですから寝ててください」

と止められてしまうし、別にいいのになぁ。
おやつの時間も学校が長くなってきているから、最近は焼きたてのアップルパイとか作ってあげれてないし。
うーん今日は夕食後に生ロールケーキでも作るかなぁ、と考える。
翠屋直伝のお菓子もいいかな、とか思う。




あれ?


勝手に立派になっていった気がする。

タケノコのようにぎゅーんっと。


たまに一緒に軽くキャッチボールするけど、悩みとかないの?と聞いても、「ないですけど(目の前)」と一点張りだし。
親としてこう、もう少し、何かないのかな、平穏過ぎて、平穏が一番だけど―――――物足りない気が。
最近ギクリとするお褒めの数々に妙子は悩まされる。
たっくんがこう、真面目に大きくなったのって私が言ったからではないからだ。
勉強しろ、なんてことは一言も言ったことないし、各ボランティアとか私の後を継いでしまうのも気づいたらだし、生徒会長になれとか言ってもないし。

むしろ、お金はあるから、好き勝手に生きていいよーっと言っても断られるし、逆に私が怒られるし。


昔はおバカなことをして色々叱ったりしたが、最近もたまにするが、メリハリが利いていて止めるのも躊躇するぐらい完璧なおバカをやる。
私がたっくんを怒るのって無意味な悪ふさげした時だけくらい。
あと「使ったらトイレの便座下げてね?」とかそれぐらい。

なんか足りないな、何か焦燥感さえも感じる物足りなさ、なんだろう?


わかった。


学校とかでたっくんが忙しくなったからだ。



取り敢えず抱きしめて、一緒に映画とか見てたい。
今すぐたっくんと一緒に一日中居たいな、とかそんな感じ。



「達馬君と私の家の紗耶と婚約とかどう妙子さん?紗耶も達馬君に首ったけですし、あと4年もあれば籍も入れれますしね」

私にそう不穏なことを言うのは。
セレブお母さん、一条さん。
華道の家元の有名な一族の人で、何故か海鳴に去年引っ越してきた方だ。
海鳴の小規模な習い事教室で、華道を教えていることが、有名。
おしとやかな大和撫子を固めて作ったような人で一般人の私とは隔絶したオーラを身に纏ってるような気がする。
凄い、私をじっと見る、ちょっと怖い人である。

この人何か怖いから、ちょっと昔の友人、大木遥のバリカン事件とか思い出すし、習い事教室から遠ざかる原因の人である。
何か華道の講習行くと、凄い色んな、何か偉そうな人とか沢山来るし、凄い緊張するし、いきなり花を適当に活けていると
「我が家に来い!」とか「我が家全員の家人をよべぇ!」とかそんな感じに初対面で叫ばれたし。

こ、婚約?

たっくんが婚約?


「あ、こここっこんやく?たっくんと誰?」

「妙子さんも、華道の講習に来てくださると嬉しいのですが、恐ろしい程才気活発なのでウチの家に入って家の一人として――うぐ」

「え?」

「おーっと手が滑りました、ごめんなさい、妙子ちゃんオハヨウ?」

「あ、ハナミのお母さん、お早う御座います」

「ねぇ、ウチのバカ娘帰ってきてるんだけど」

「え、聞いてないです」



[36072] 末馬達馬の流儀
Name: みさりつ◆2781aa24 ID:4563c076
Date: 2013/03/18 03:01





時系列は末馬達馬の覚醒後。














「ごめんね、来週のクリスマスイブ、今年は翠屋でサンタさんやるから、遅くなるね?ケーキの販売の方だし」

「売上すごそうな話ですね、じゃあ来週は風邪ひかないように気をつけて―――まぁ俺も遅くなりますし」


「ん?」


「ええ、貴女がいてくれて、周りにいっぱい良い人がいるから気づけるようになった出来事がありまして、俺もその日は遅くなりますから」


「え、なになに?真面目な顔してどうしたの?」


「翠屋のサンタ服って余ってますか?」


「えーとね、これ私手作りだから、お店のじゃないんだ、で、どうしたの?」


「そうですか、よし、とりあえずよし」

「えーなにがよしなの?たっくん」

「あーちょっと今から百均とか行ってきます、あとでミシン借りますね」

「いいけれど、何をするの?」

「俺もサンタの服作ろうかな」


「へえ、たっくんもサンタさんやるの?」


「まぁ、ちょっと大人になってきます」


「え?クリスマスの夜に大人に「そっちじゃないですよ?」」


「山田ちゃんに着せて「そういう発想どこから?」ゲームから」


「おれに昔からそういう予定はないんですって。もうほんとーに自分の息子モテてるとか、親バカですよね母さんは」



「そうかな?」


「そうですって」







聖なる日の伝説。




白百合児童養育院の院長、霞百合子は昔出会った少年が9年の時を経てまたここに来るとアポイントメントがある日設けられた。

眠そうなサンタの格好をして背中に本当に大きな白い袋が背負ってやってきたのだ。
14の少年が一人、堂々と生真面目に挨拶にやってきた。


「霞さん、メリークリスマス!おひさしぶりです」

「メリークリスマス、達馬君、9年ぶりね、わざわざ本当に来てくれたのね、たった一週間しか此処にいなかったのに、あとどうやって来たのその格好で」

「走ってきました、トナカイは俺の足です」

「走って………電車とか」

「達馬サンタは財政が切迫してるので、あと電車に乗ると知り合いに写メで取られたりするのが嫌なので交通機関は使いませんでした
ていうか袋が大きいので人の邪魔になりますし」

「そうなの?」

「えーうちの学校のやつとかにみつかったら五月蝿いですからね「俺んちなんでこなかった!?」とか本気でうるさいですから」


街中の噂にならないように達馬は静かに山を越えていった。
木々を足場にし、忍者のごとく。


「あと数年したらうちの施設の職員にならない?立派になったわ、本当に」


佐藤達馬、ではなく末馬達馬として14の立派な男の子になった子だ。
児童相談所で一度連れられてきた子供、気味が悪いという理由で両親に虐待を受けていたと思推され、両親の感情が落ち着くまでの期間、院長である霞百合子の好意で一週間白百合院で寝泊りしていた児童。

長期のネグレクトの疑い、栄養失調気味、両目の目元に僅かな火傷あり。

全身に打撲等の痕はなし。

頭髪がない部分があるので、過去に頭を強く鈍器で殴られた形跡あり。

痩せていて、見ているだけで、悲しくなってくる幼児だった。

だけれど、霞百合子はその一週間の中、その幼児の生まれながらにして持っていた、強さ、優しさに驚いてしまった。

何処かびくびくと恐る様子もなく出される食事を見て一言

私や職員を見て確認を込めてこういった。

理知的な光を宿した目の光は、不思議だった。
悲しみや恐れが全くない、食事という振る舞いに対しての単純な疑問を浮かべた瞳。

小声で「鮭だ、俺の好物だ」とぼそりと言っていたような気がする。
そして職員の私たちに。

「これってタダで食べてもいいんですか?」

そう訪ねた、道を尋ねるような、礼儀を含ませる落ち着いた様子の声で、やはりそこには怯えが含まれない、普通の声だった。
いいのかな、という単純な疑問しか含まれない声の大きさ。


「え?……そういうの気にしなくていいのよ」

そう言った瞬間のモノ凄く嬉しそうに喜んでいた姿は目に焼きついている。


後に聞くと此処で生活していた児童達は、達馬君が配膳の手伝いに普通に参加していたことにびっくりしていたそうだ。
院で生活する年齢の期限がそろそろな少女の一人は

「今まで此処に始めてきた子って大体が怯えた感じがあって動けない子とか多いのだけれど、達馬君はみたことがない感じ、普通すぎ、なんか不思議」

普段は一緒にやろうね、とか手伝ってくれる?などとこちら側で頼み、やってくれたら感謝する、という歩み寄りで自分が此処に居てもいいと思わせる手法を使って
児童を落ち着かせるという賢い少女さえも達馬君はどうしてそんな風なのか疑問に思ったのだ。

まさか虐待とかないんじゃないかな、でも、モノ凄い痩せてるし、変だよね、と驚いたらしい。

その不思議さは食事の時にやってきた私にも発揮されていたのだ。


「ありがとうございます、おかわりしてもいいですかね、ご飯とか」

「……やめておいたほうがいいかもね、まだそこまでじゃないけれど、栄養失調気味だからね、まずはゆっくりと噛んで食べること。
それを考えながら美味しく食べて、おなかが減っていたらおかわりをしてもいいわ」

「やった、ありがとうございます」

「おいたつくん、おれの鮭も半分食べていいよ、あんまりおれさかな好きじゃないし、いっつも焼き魚のままだと醤油味だし」

「れおん君、違うぞ、鮭の可能性を見くびっているぞ、鮭は普通の焼き魚とは違う存在なんだぞ、醤油をかけただけじゃまだまだ鮭マイスターとしてのレベルが知れるぞ」

「なにそれ?」

「この食卓にある調味料のマヨと七味をその醤油浸し鮭を解したあと、ほかほかのご飯に載せたあとだな、それらを掛けて、食べるんだ、うまいぞ?」

「ごはんにマヨかけるの?」

「うまいからやってみ、それでもおれにくれるなら頂戴、もしくはこの皿に幸運にも存在する筋子と厚焼き玉子もばらして乗せて親子丼もいいぞ」

「ねーたつくんとれおん君なにやってるの、そのまま食べなさい、そういうのじゃどーっていうんだよ」

「みーちゃんもやってみ、みーちゃん嫌いなほうれん草のおひたしを最初にご飯に乗せてやってみても全然いけるぞ?」

「ほんとーかなぁ、親子丼?」

「筋子を分解したらイクラだよ、ほら鮭とイクラで親子ってやつ、あとワサビのチューブ、これを使うとだな、本格的だぞ」

「え、やってみる!」

「確かに、そうかも」

「あ、ギンコさん、味噌とかないですか?此処の施設の冷蔵庫監理してますよね」

「味噌?あるけど―――あと何故それを」

「味噌マヨ鮭丼とかいいですよ、ワサビマヨ鮭丼もいいし、味の種類が広がります、味噌と鮭だけだったら最後にお茶漬けにすると、うまいですよ、きっと、あとギンコさんこっそり蜜柑とか皮をむいて冷凍蜜柑作ってますよね?このおれにはお見通しです、冷凍庫部分を俺が間違って開けたとき慌てて「ここはいらないからいいんだよ?」とか言いながらアイスノンの下に隠してましたよね」

「へー、ここって結構食事のメニュー飽きやすいけれどこういうのやれば皆しっかり食べてくれるかもね、たつくん頭いいね、あとみんなに黙っててね、ウチの冷蔵庫スペースないからみんなやりはじめたら困るし」

「これはですね、応用力すごいんですよ、例えば一味とポン酢を使ってからあげに掛けてみたら、なんちゃって南蛮漬けとか色々です、あと隠しているバナナの方をあとで少し―――」

「いいよ、あと君みたいなの今まで考えつかなかった、一週間はいるんでしょ?だったらそういうアイデア見つけたら教えてよ、明日の夕食は味気ないポークステーキなんだけど」

「キャベツつきます?付け合せは?」

「え、ちょっとあとで今月の献立表もってくるから―――――あ、文字よめる?私よみあげるから」

「えんぴつも貸してください、ひらがなかけます(下手くそに書こう)」

という切っ掛けで、結局施設の子供達が真似をし始めて、たっくんナイスアイデアとみんなが楽しそうにしている。

明日はー?

明後日はー?

明々後日は?




施設の予算上で作る白百合院の食事は飽きやすいのは知っていて改善したいな、と常々思っていた。
食事時がルーチンワークのような感覚に陥りやすく、明るい食事ではなかった。

連れられてきたばかりの初日、来てから約2時間。
初対面の院内の少年少女たちと名前を呼び合い、既に渾名さえもつけあって本当に仲が良さそうにしている姿に驚愕した。


この子―――――何者。

親はなくとも子は育つという言葉があるが、それは子一人で立派に大きく育つという意味ではない、と霞百合子は知っている。
双蝶々曲輪日記という浄瑠璃のひとつに記された言葉であり、本来はそうではないのだ。

親を失った子供の例え話であり、人の人情が必ず世間にはあり、そういう子でも周りが助けてくれるのでなんとかなるもの、という意味だ。
そこに子供ひとりの力というのは少なからず含まれるのだが、それは大きくなっていく過程の育まれていく子供個人の個性の現れと霞百合子は思っている。

だが本当に不思議なもので、達馬君は。

なんか逞しすぎて、周囲に誰もいなくても一人で生きていけそうな気さえもして、面白い子。

初めて感じる気持ちだった。

ウチの施設に欲しいなんて思わせるほどの天真爛漫さ。
いままでは別の意味での来て欲しいという感情が占めていた。

達馬君がいるといつも食事の時間を嫌っていた児童さえも、この達馬君が作り出した光景に楽しそうに意見を言い始めた。

「これは?」

「山椒に目をつけるとは、いい発想だ、これは大人風味になるんだぞ?敢えて此処は鮭と食卓塩と山椒だけでいく――――それがいいかもヨダレ出そう」

「おいしいかな?」

「大人の味かも、あとちなみに小瓶の調味料で山椒が一番値段が高いもので、そして使用頻度が低い、この施設前にうなぎっていつやった?」

「えーとこの前土曜丑の日って時に百合子先生が頑張って初めてみんなにだしてくれたんだ」

「今は9月だから購入された日がまだ近い、ということは」

「え、なに?」

「山椒の香りがまだ芳醇だぞーほうじゅん」

「それやってみる」

「まかせたぞ、後藤隊員!」

「うん!」

「えーおれも隊員いれてー、なんかかっこいいし」


冷却期後の一週間が過ぎ、両親の元に戻っていくのをみんなが泣きはらして別れを惜しんだ子だった。

そして次の年の春にひとりの女性に引き取られていったそうであり、皆、残念そうにしたものだ。

「そうおもっちゃ悪いけど、達馬君は来て欲しいよね、誰だってそう思ってた――――本当に格好良い子だったもの」

その年に海鳴市、市役所に努め先が決まった施設の少女はまるで、その少年に会いたくて海鳴市役所を希望した気さえもする、と霞百合子は思った。

そんな人を惹き付ける素質があった少年は今

「メリークリスマス!クリマスプレゼントあるぞ!!」

そう声を張り上げ、袋を院内で開放すると、その中にはサンタの靴というお菓子が詰まったものが大量に入っていた。
子供たちに配り歩いてみんなを喜ばせる。

霞百合子は達馬のプレゼントのチョイスにセンスの良さを感じた。

安易な好みが別れるおもちゃではなく、施設ではあまり食べれない市販のお菓子類を選択するあたり、14歳としては十分すぎる考えだ。
施設では児童に小遣いを支給しているが、彼等は基本的に買い食いなどはしない、本当に欲しいものを買うことが多い。
ボランティアから貰ったりするぐらいで、基本的にあまり菓子類の支給は行わないのだ。

何がいいか調べたりしたようだ。

クリスマスのお菓子入りの靴は値段のランクで中身が大きく変化する、喜んで食べている少年たちが開けているのは有名なチョコ類。
どこでもありふれたものだが、安いスナック菓子やマイナーなお菓子でスペースを増やす商法のものではない。

一つ200円の箱のお菓子が多いし、珍しいサンタブーツだ。
季節限定品が多い、市販の製品の売り出しが最近のものが特に多い。


包装も綺麗で、市販でもみたことがない。

はっとする。


まさか、特注したのか?

そこまで難しいことじゃないが、気が利いている、そして児童の人気のお菓子が多い。
バランスも中々に良い、案外忘れがちなガム類、飴類も入っていて長く楽しめるように工夫がされている。
しかも一つ一つ、チョコも包装されたものが多いので小分けにして食べれるという気遣いもある。

ふふと、霞百合子は笑う、しばらく子供たちの枕元にお菓子が隠れるようになるわね、達馬君は悪党だわ。

「ちっさいモンダミンなんで入ってんの?」

「夜こっそり食ったあとにお口クチュクチュ用」

「あったまいいね、これならあとで虫歯にならないね」


うん、本当に気が利いている。


だが


今、施設には13人の子を預かっている、金額的にも中々高額。

一人2500円分相当のなかなかの高級品。
最低でも3万円くらいは掛かっている筈。

施設の管理者としてそこらへんにはすぐに気づく。

「ねえ達馬君、これはどうやって?」

ちょっと耳打ちする。

引取り先の保護者のお金なのか、そこらへんが気になった。

達馬君だと絶対自分で用意するだろう、そういう期待を込めた質問。


「えーとですね、これ内緒話ですけどね」

「なになに?」

「中に新商品が多いでしょう?季節限定物が8割」

「ええ」

「実はお菓子会社のサンプルのやつを譲ってもらいました、ここはオフレコで」

「へえ、そんなことができるの?」

「案外出来るもんですよ、お菓子会社の知り合いいますし、あれです、コンビニの店に無料でタバコの新製品配るような気軽さで箱でどさっとくれたりとかそういうのです」

「どんな人脈なのそれ?」

「えーと地元の話なんですけど自分ちの近所の田宮さんちってお菓子会社の人で、奥さんがよくそういうのくれるんで、ちょっと奥さんに事情話したら、お菓子の中身を手伝ってくれました、今度田宮さんちの奥さんと知り合いの奥様方のボディガード兼荷物持ち兼スキー指導員として日帰りのスキーに付き合うのが代金、それと靴と包装は商店街のツリーの組立てとアーケードの飾りとかそういう労働を対価に小売商店の店長さんと花屋さんにやってもらいました、うん、実は飴とガムしか俺、買ってないんです―――――あまりにもセコイので秘密にしてください、あとモンダミンは薬局で大判の買うと横にくっついてるやつを剥がして貰ったやつです、個人経営の薬屋のおっちゃん腰が悪いんで、年末前の在庫整理の手伝いしたらもらいました」

「凄い話ね」

アルバイトが出来ない金銭を得ることが出来ない年齢でありながら、此処までのことを簡単にやってのけてしまう


多くの人と親密な人間関係を築けるこの少年の実力というやつだ。


海鳴市職員のあの子からきいていたが、噂通りだな、と霞百合子は思う。

ほぼ海鳴市内の人間にこの少年を知らない人はいないというのは本当らしい。
保護者も似たような人間だ。

下心が一切ない、純粋なお人好し、ボランティア親子として有名だ。


ひっきりなしに地方新聞を飾るこの親子はそろそろテレビ出演とか決まりそうなくらいなもの。

人に優しく、なんでも地道な親切を繰り返し続けた少年は、何処までも気のいい少年として沢山の人に愛されるようになってきている。


そんな思考をよそに、少年はぴったり、施設にいる全員分、私の分さえもお菓子の数をきっかり個数を用意してるあたり、恐ろしいと思う。
行政で児童の保護のため、施設の人員は普通の人間では簡単に調べられないようになっている筈なのだ。

もしかしたら顔の効き具合は地方政治家並かもしれない。

子供の人員は伝えたが、まさか職員の分も用意するとは、今日休日の職員の分さえも。


あの子にその活躍は聞いたり、彼が乗る海鳴市新聞の切り抜きをもらったりしたが、傑物すぎる。


思わず冷や汗さえも出てきそうな気がする。

カリスマ。


そういう言葉が似合うが基本的に何処にでもいる少年だ。
いや違うか、何処にでも居れる少年というべきか、施設の少年たちを肩に載せたりする姿はまるで彼等の本当の兄のように見える。

海鳴市では早すぎる考えだが、彼を何れ市長になってほしい、という構想さえも始まっているそうだ。
性格上政治家には向いてなさそうなので、なったらどうなるのかという職員たちの妄想で終わるそうだが。


海鳴の役場、地元警察、消防などは将来欲しがっているのは確かな情報である。
NGO職員も一度噂を聞きつけスカウト気分で見に来たという情報もある。

さらに

あの知る人が知る他県から人が来るほどの海鳴市にあるスイーツ店「翠屋」のシュークリームが別個に全員分に用意されていて、女性職員は喜びの悲鳴を上げてびっくりする。
クリスマスケーキを販売で忙しい期間にどうやってこれを……え、あなた何者ですか?という混乱さえも起きる。



あの時達馬君と喋った子達は皆、末馬妙子という女性の手で良い引取り先に恵まれて幸せに暮らしていて私しか知り合いが今は居ないのだが、初めて出会う少年少女たちに一切警戒されずただ喜ばれてヒゲを引っ張られたりしている姿のあまりにもな頼もしさに涙が出そうだった。

そして今は施設にいる一番年齢が上の女の子にプレゼントを渡している姿を見てさらに驚きが生まれる。


「え……私16……なんだけど…君より…年上」

「勿論おっけーです!サンタさんはそんなケチケチしませんよ!」

末馬達馬は豪快に笑った、周囲を一気に華やかにさせる、明るい表情。

それは正の感情しか含まれない、純度が高い、笑いだった。
こんなにもバカ正直に人に笑みを渡せることが出来る人間は滅多にいないと思わせるほど純朴。
最上級に優しげな天真爛漫な微笑みだった。



「あ、ありがとう……君って此処の施設にいた人なの?私……君を知らないのだけれど」

「昔ここで一週間お世話になったのできちゃいました、鶴のように恩返しって感じで飛んできました」

「ええと……私……大島未華子っていうのだけれど………あと一週間?」

「俺は末馬達馬、よろしくです!一週間でも昔良くして貰いましたから、プレゼントです、一週間の美味いご飯のお礼にクリスマスということで取り敢えずプレゼントしに来ました」

「……………」

「どうしました?」

「ううんありがとう………よければ…少しこれから一緒におしゃべり…して…くれないかな、とっても楽しいから」


「勿論です、取り敢えず友達になりましょうミカさん」


「うん」



大島未華子はアルビノで神秘的で綺麗な子であり、まるでエヴァンゲリオンに出てくる綾波レイのような子だ。
その容姿からか父親から性的な虐待を受けて此処に来た。

酷い男性恐怖症のあの未華子ちゃんが、なんと積極的に逆ナンを開始したのでびっくりした。


すごいぞ、一目惚れさせたのか、達馬君。

あの男性を恐れ、怯えるこの子を撃ち落とした。

あの子は真っ赤に白い肌を染めている、すごくわかりやすい。

今この瞬間に、たった一言二言、すごすぎる。



「とりあえず、おれ友人には携帯の電話番号教えるんですよ、施設の電話から俺の携帯に何か困ったことがあったら連絡してください、いつでも駆けつけますのでえーと080の―――」

「ありがとう……」


「嘘じゃないですからね、行きますから」


「わたしは」

「そういう時になったらお礼に冷凍みかん頂戴致します、ぐらいでいいですよ、それが一番嬉しいし、あと重い友情とか思わないでください、これが俺の流儀です」

「………ナンパ?」

「違います!」



末馬達馬は本当に来る、例え引っ越して北海道で暮らしている人の下でも連絡すればその日にいくのだ。


件の柴おばあちゃん先生の謎解きを取り敢えず美味しいお菓子を送ることで解決した達馬は電話越しで


「ふふ私が此処のお菓子好きって知ってたの?ありがとう、でもやっぱり君の元気な声がそばで聞ければこれから長生きできそうね」

「え、じゃあ、今から行きますか?そっちに」

「え?」


一時間後


「きましたぜ、俺の作文の師匠!最近授業で難しい漢文あったので教えてください」

「本当に来たの………富良野よ?内地よ、どうやっても本州から一時間で来れるわけが……」

「これが師匠に贈る、謎です!」

「あらあら、難しいわね――――実は電話していた場所は富良野の近辺」

「……………………………………………残念!俺は確かに先程まで海鳴に居たというアリバイがあるんですよこのレシート、海鳴ストアで購入した肉まんのレシートが証拠です、残念ですなぁ、次回またの挑戦を」

「私ミリオネア嫌いって言ったでしょ前に、みのさんは好きだけど、そこは嫌いなのよね」

「すみません、つい」

「あっはっはっは、本当に面白い子ね、なんというかベタというか、末馬くんはピン芸人大好きでしょう?」

「あの人たちは一つの芸に己の人生を掛けている、という感じが最高です」

「あんまりおばあちゃんをいじめないでね、で、答えはなんなのかしら」

「一時間で自力で走ってきました」

「嘘でしょう?それは」

「実はできるんです、秘密にするなら教えますよ、俺の隠された能力を!」

「いいわ、謎にしましょう」

「えー」

「なんか聞きたくないのよ、女子中等部の高町さんが空を飛んでいるのを見て、一人富良野で絵を書こうと決めたのだし。私もそろそろ年だなぁって心底思ったのよ。
人の為に物事を教えることでより人に必要とされる良い人生を、と思ってきたけれど、結局一人でいるのもやっぱりさみしいからこうして達馬くんを私は呼んだのかしら?
此処にいる達馬くんは幻覚じゃないわよね?」

「え、まじすか?あいつなにやってんの?結界とか張れよ」

「一人だれもいない街の中、八神さんやテスタロッサさんも加わって空を羽が生えたように飛んでるのを一時間眺めたわ、彼女たち物理法則を無視してすいすい飛んでいたわ」

「――――あ、師匠」

「なんでしょう」

「魔法使いなりません?才能あるんですよ魔法の」

「………正気なのかしら達馬くんは」

「セカンドライフは魔法使いとかいい感じですよね」

「そうかしら、本当にそう思う?あと私がおばあちゃんだからって変な詐欺とかにかけないでね」

「師匠は結構強そうな感じがします、どうですか?結構面白い場所いったり見たりできますよ、魔法の国とか。昔師匠は一人で世界旅行したって聞きましたし、暇つぶしにはなりますよ」

「あら本当?それは刺激的だわ」

「では、師匠、俺の背にどうぞ、ちょっと揺れますけど、何故か人を後ろに乗せて音速で走っても大丈夫なんですよ、俺のレアスキル」

「では真実を見極めましょうか、あなたが嘘を言っていないのはわかるけど」

「百聞は一見に如かず」

「ふふ、そうね、若返りの薬でもさがそうかしらね」

「楽しそうならなによりです、いきますよ」

末馬達馬は己の恵まれた力を使って、誰かに手を貸すのを厭わない、きっと命だって平気で賭けてしまう、そんな存在になっていた。

それは自分がひとりの女性から始まり様々な人間に幸せにしてもらったせいだ、だから自分もその嬉しさを誰かに手渡して行きたいと願うようになった。

それはきっといいことなんだ、おせっかいでも、いいかもしれない。

あの日の妙子さんのように
この前の高町さんたちのように。



優しくしてもらって嬉しいだろうなそれは。
嬉しくて仕方がない、だから、きっと何にでも耐えられるように強く立ち上がらせて貰える。



それは絶対だ。

邪魔と言われたら帰ればいい。

利用されても構わない、それに利用するやつぐらい見破ってみせる、裏切られたら怒ればいい、そう気軽に末馬達馬は考えている。

ようするにやっぱり妙子さんが好きでしょうがない末馬達馬であった。












「やっぱり、あの人に育てられた子なのね」

本当にあの眼を見張るほど美しく強く優しく聖女のような女性。

あの末馬妙子に息子として選ばれた少年。

彼女とは一度だけあったことがある。


あの女性はこの少年を引き取ってから数年後現れた。

今のように沢山子供たちにお菓子を持ってきてこういったのだ。


「こんにちわ、えーとたっくんが此処でモノ凄いお世話になったって聞いたからきました」


「貴女が……達馬君の」

「戸籍上は姉ですけど、母親として一緒にくらしています、私はお礼と謝罪の為に此処にきました」

「え?」


「此処の施設の子たちはみんなたっくんを待っていたのに、ごめんなさい私が引き取りました、そしてありがとう」

「え」

もーたっくんも昔のこと言わないから、今までお礼言えなかったし、でも言えて良かったなぁ。

子供がお世話になったら息子の代わりにお礼するのが母親だよねーと




子供たちも沢山いる前でそう謝ってお礼を言った。

素直に真心を込めて、恥ずかしがらず、そう丁寧に微笑んで言った。

なんていう人なんだろう、とびっくりした。


女神だ。


達馬君は菩薩さまに拾われたんだ。



そう思っても不思議はないくらいの人物だこの人は。
目の前にいるだけで、なんだか、心が浮きだってしまう。

殺人犯の容疑者も彼女の目の前にいれば罪を告解しそうなくらい、慈悲深いオーラをまとっている気がする。



私たちはとっても嬉しくなってしまった。

こんなにも本当に綺麗な人に拾われた幸運に達馬を知っている子供たちは素直に祝福した。
この人なら、いいな、寂しいけれど、待っていたけど、この人なら、嬉しくなってしまう。
みんなそう思った、まるでそれが一番のいい事なのだとめでたい気持ち、誇らしい気持ちにあふれた。
そしてその年の聖なる日、施設は何処からか大量の寄付金が送られ、施設の食事は改善された。



そうして施設で皆が代々語る児童福祉施設白百合院の伝説が生まれた。



ちなみに末馬妙子に引き取られた達馬を羨ましいと思う子は誰一人いなかった。


「なんか自分が引き取られたら大変な人生になりそうで怖いし」

「どうしたの黎音君?」

「いや、俺たち結構たつくんを心配していたけれど、これからは心配ないね」

「もちろん、たっくんは私が責任を持って立派な子に育てるから大丈夫だよ」


末馬妙子の言葉には絶対の意志が宿っていた。
それはまるで神託。

よくわからない、恐ろしい気持ちになって思わず黎音は


「うわぁ」


と声を漏らす。
そしてあの普通の面白い友人を思う。


「ん?」

たつくん頑張れ、超頑張れ、俺は施設でのんびり大人になっていくから御免、本当に御免、見捨てたわけじゃない、許して、運が良すぎたんだ、たつくんは。

俺の親はいんちき宗教に嵌りすぎてヘンテコな修行という名の虐待を俺にしてきた。
俺はいんちき宗教の洗脳教育されそうになって周囲の普通と自分の普通を見比べて本能的に自分で児童相談所に逃げてきたからわかる。

様々な宗教的見地からいえば、どこの宗教だって同じ話があるものだ。

それは変な宗教でもあるわけだ。

常識的に菩薩様とか女神に拾われる人間は、苦難連続の人生に待ち受けるのは確実という例が。

下手に運が良くても悪くても、一生気の休まることのない、試練が迫りつづけるという教訓。


この人の息子。




絶対に嫌だ。
想像しただけで疲れる。
それってもしかして何よりも苦しいかもしれない。
末馬達馬はまさに恐ろしい運命に放り込まれた一匹の羊だ。


末馬妙子の第一印象は


凄すぎる。

それに尽きるのだ。
こんなお姉さんに優しくしてもらうのはたまたま知り合った男の子としてだけで十分すぎる。
息子とかになりたくない。
本気でそう思う。
荒谷黎音は心底此処にいられるだけ幸せになってきた。


「ゴットスピード(神のご加護を)達馬」

黎音は過去に捨てた祈りの言葉をいんちきの方じゃない、スラングで贈った。

「ん、神のご加護を?大丈夫、神様の前にお姉さんが護るから」

「そーいう意味じゃないんだけどね」



そして今日もクリスマスなので奇跡が起こる。


「あーギンコさんじゃなくて今はミカさんが冷蔵庫の管理人やってるんですねやっぱり冷凍みかんとか作ってますよね?」

「え……どうして」

「うん?ミカさんから指先、ちょっぴり蜜柑の香りがする、えーと確か……そう二日前の献立が変更されてなきゃ夕食のデザートに蜜柑がついていた筈、俺過去一年分の献立の改修作業させられたから覚えてます、ギンコさんに過去学生寮で生活していた貧乏人の工夫をひたすら書かされた―――あれまじできつかった、ギンコさん鬼だったなぁ。
今日は確かクリスマスなのでデザートはミニケーキ、メインは鳥肉のグリル、ポテト、スープはクラムチャウダーですね」

「え、意味わからないわ、どういうこと?お風呂だってはいってるのに、匂いは取れるはずでしょ、達馬君は名探偵なの?あと過去の献立てって9年前なのに―――え?学生寮?」

「ふふふ、出来具合の確認を今日の朝か昼にしたでしょう?最後に調味料を閉まったあと貴女はアイスノンの下から蜜柑を取り出して、確認し、そしてまた隠した!
そして俺は無駄な事に関しては記憶力が異常に働くんです、20年以上前にやったゲームのパスワードとかそういうのずっと覚えているタイプなので、あと学生寮は例えです」

「すごい……でも私は別に隠してないよ、何年か前から冷蔵庫おっきくなったらしいから、みんな冷凍庫は好きにバナナを凍らせたりしてるからハズレだよ?
献立も大分変わったそうだし、偶然だと思うよ?今日のメインは鳥肉のグリルじゃなくてフライドチキンなの、あとミニケーキじゃなくてちゃんとしたケーキ、あとスープはオニオンパイスープ………うん、でも凄い、出来具合は朝確認したの、あと達馬君、ずるいよね、朝と昼って。今は夕方だから、どっちかしかないし、うーん30点、ワトスンくらいかな」

「ワトスンは医者だから頭がいいということで、俺の場合宮崎駿のホームズに出てくる警察犬クラスだなぁ、判断材料が五感に頼り気味すぎてますね」

「でも蜜柑がわかったのは凄いね、鼻がいいのかな?ふふ、私本が好きでね、ミステリーとか大好きなの、ねぇ、この前ね――――」

とぎれとぎれしか男性と喋れない筈女の子が流暢にすらすらと男の子と楽しそうに会話し始め、周りは唖然とする。

「って感じで、何か隠しているの。ウチの施設の男の子たち」

「それはですね、多分えっちな本隠してるんですよ、男の子にとって拾ったそういう本って宝物として、慎重に保存しますから、どきどきする憧れグッズです」

「へーそうなんだ、だから男の子たちみんな変な顔を―――あ」

未華子は恥ずかしそうに顔を隠して、彼の顔がみれなくなってしまった。

男の子と下ネタを喋っているのに気づいて恥ずかしいのだろう。

うわー微笑ましい。

でも危ない、方向に―――止めないと欝展開になりそう、と霞百合子(独身57歳)は思った。

その瞬間周囲が達馬君を蹴ったり叩き始める。

「ちょーたっくんさん、ミカさんはピュアなんだからエロい話しないでよ、もうサイテーだね」

「なんでバラした!?本没収されるじゃん!?」

「え、俺が悪いの?おれだってピュアだぞ、そういうの一切持ってない男だぞ、10を超えたあたりから、そういうエロい話とかノーセンキューなんだぞ?妄想さえもしない男だぞ?
妄想しないためにな、こう筋トレを繰り返して、ほれ、こんなにも自らを鍛え上げて、腹筋とか」


ぺろりとサンタ服をめくると、爆肉鋼体が。

あら、すごい。


「うわ!なにその筋肉!?」


「え、スリムな戸愚呂弟なのたっくんって!?」

「きもい!無理矢理そのお腹に凝縮したみたい」

「え、きもくないだろ、結構周囲から写メとか撮影されるんだぞ、珍しいだろ?」

「だって……人間?」

「おい!?人間だろ、頑張ればだれでもできるって、まずはな、極限まで己を虐めるためにな、こう―――こういう柱とかに足を絡めて、重い石を持ってだな、腹筋とかな?
逆立ちして指立てするとか、色々頑張るんだ、あちょーってな、ブルースリーの真似とかしながらするとな不思議とそういう邪念が消えていくんだ、ときたま知り合いの人から内部破壊攻撃受けたりして徹底的にやると自然とできていくぞ、ちなみに鉄製のヌンチャクで遊ぶのは危険だ、下手すると死ぬ」


「たっくんって本当に中学生だよね?」

「そうだけど?」

「少林寺とかに拾われたの?実は」

「いや、普通じゃない人が住んでる普通の家」

「そ、そうなんだ」

「ねー指立て倒立やってみて!漫画でしか見たことないし!」

「いいよ、サンタクロースはな、日々暗殺に備えてこうやって鍛えてるんだぞ、KGBとかCIAとかに狙われても「まだサンタのつもりなの?」

サンタクロースが大道芸を開始し始めた。
少年が片手で倒立し、指の数を減らしていく姿に皆が興奮する。

肉体を支える指さえも、硬質的な鉄筋のように頼もしく、コンクリートの地面さえも突き破りそうな力強さに溢れている。

どこかのこういう雑技団いたわよね、肉体だけでの、と霞百合子はどんどん下にめくり上がっていく肉体美に感動する、大島未華子のことさえも忘れ、見入ってしまった。


「よっと」

指を支点にくるくると回ったりするその肉体駆動、これは一つの芸術だ。
筋肉が一斉に脈動し、綺麗な円を描いて回転している。

「フィニッシュっと」


そのまま指の力だけで、体を宙に浮かべ、空中をくるくるとコマのように縦に三回転。

着地し、体操選手のように胸を張り、一人点数を叫んで、微笑む。

「これだけで欽ちゃん仮装大賞でれるよな、多分」

「オリンピックでたら?優勝できそうだわ」

「ああいう真面目なの向いてないから無理なんです」

「そうなの?」

「ええ、緊張からか、一気にこういうのができなくなる、あと科学的検証されて解剖とかされたりするかもしれないからヤダ」

「まぁ孫悟空みたいだったわね、あと達馬君は本当に人間なのかしら?」

「渾名の一つでサルとかありますからね、俊敏なナマケモノとか、そういうの、ちなみに俺は普通の人間ですよ?」

「世界的に数少ないかもしれない人間かもね、マトリックス出来る?」

「出来ますよ?」

「やってくれる?」

「いいですよ、ネオの方でいいですか」

「スミスできるの?」


「うわ――(達馬君凄い、男の人の体って努力すればこんなに綺麗に?お父さんの汚い体と全然違う……)」


そして大島未華子もその姿に驚きと感動を覚え―――――ぱちっと自分のスイッチが入れ替わったような気がした。

今までの嫌な記憶、父に犯され、母に嫉妬され、いびられた日々の記憶が、ひどく自分の重心から消えてそっくり別なものに入れ替わった。

なんかそんなことでクヨクヨしていた自分がバカバカしくさえも思ってしまったのだ。

私は汚れて穢れている、そう思って、遠慮するのは勿体無い、ここで入れ替わったものを逃したら一生後悔するのだ。


うん、と未華子はうなづいた。


「達馬君」

「なんですか、ミカさんもなんかオーダーしマッスル?」

マッスルマッスルと腰を振ってみんなに「古い!」と文句を言われながらのほほんと聞く少年に未華子は意を決して言うのだ。
もうこの人みたいな凄い人はきっと二度と現れないのだ、此処で、もう決めるしかないと。

「ね、私だったらエロくなったりできる?達馬君。今日夜空いてる?私って凄い具「ミカちゃん!?」」

いきなり過去乗り切った、いやぶった切って、自分の体験を最大限利用しようとし始めている、と皆はビビる。

大島未華子はたかだか10分で別人になった。

妖艶さを振りまきながら一目惚れをした好きな男の子を誘惑しようと画策しはじめた。

達馬君はその瞬間、男の子の一人に耳を塞がれ、それが切っ掛けで男の子達に一斉に群がられてそれどころじゃないので一部聞かれなかったのでセーフだろう。

大島未華子は施設でも特に綺麗な女の子で隠れた人気があるが近づけない高値の花。

施設の殆どの子が憧れている。

でも話かけるのも戸惑ってきた。


突然サンタがやってきて、そのサンタがお菓子の代わりに未華子とトリックオアトリートできちゃうのだ。

男の子たちはもう、そりゃあ怒る、怒る。

「突然なに!?おれがあげたお菓子に何かはいってたのか!?今回はそういうおふざけしてないぞ俺!?」

「くっそう!たっくんの馬鹿野郎!」

「サンタが大泥棒とか!もう!」

「え、なんなの、まじでなんなの?わけわからん、なんもしてないのに、あと善行積みに来たのに!?」

「これからのしてもらえる幸運なやつが何を言うの!?」

「このクリスマス野郎!!」

「はぁ!?俺あと家かえってお風呂入って妙子さんとご飯食べてケーキ食べて、コーラ飲んで幸せ気分だと思いきやなんもないんだぞ!?なんもできないんだぞ!?酔っ払った妙子さんの逆セクハラから耐えて妙子さんが眠ったら外に飛び出して筋トレして家に戻って勉強する、それが毎年恒例の俺のクリスマスだ!―――――大体最近俺30分くらいしか寝てないぞ!?そんな可哀想な俺を虐めるのか、お前たちは――――くそ俺たちはお互いそういうの嫌な人間だろ!?なんでだ!人間は分かり合えない動物とかそういう気持ちになってきたというか
別の動物に襲われるよう気分だ、お前ら!サンタさんを虐めるな!」

「うっせ!?親の過去の虐待とか今はどうでもいいわ!!そんなの今起こった事態の方が兆倍腹立つんだよ!」

「そうだ!今日はそういうのどうでもいい日だ!」

「お菓子返せ!そういう悪い子には俺はなまはげになってやる!俺結構途中で食べたくてしょうがなかったんだぞ!?全員分の一種類くらいとか!よこせ!」

「うわ最低」

「セコっ」

「悪いのはお前だ!!」

「え、なにが悪いの?ちゅうかお前ら擽るなやめろ、殴られるのはいい!それだけは!」

「そうだろう!そうだろう!」

「拷問にかけろ!非暴力的な最悪なやつ!」

「電気あんまするな、鈴木刹那君!」

「俺をその名で呼ぶな!」

「ガンダムみたいでかっこいいじゃん!」

「だからやなんだよボケ!」

「おれ達馬よりもそっちの名前のほうが「ぶっ殺すぞ」


小さい男の子から達馬の同年代の男の子たちが達馬を囲んで一斉にくすぐり地獄を開始した。




「……どういうこと?」


あっけにとられた。


此処は暗くなったり、シリアスになる筈なのに、霞百合子は予想がハズレほっとする。
趣味のサブカルチャーの見過ぎだわ、実際は現実ってこんなにも奇跡に溢れ――――え?


子供達にとってナイーブな話が飛び交う喧嘩に発展しているのに皆笑って見ている。

楽しそうにしているのだ。




そんな馬鹿な。

そんな非現実的すぎる。

そういうめでたしめでたしで終わるお話だって、完結まで長々とかけるぞ普通。

職員たちは最初恐ろしい大事件が起きると戦々恐々していたのに、なんなのか、この状態は。
周囲の場が本当に愉快なことになっている。



「コンドームは必要、達馬君は14だし、私は結婚できるけど、できたら困るかな」

くすくすと笑いながらそれを見て不穏なことを口ずさんでいる女の子に現実逃避気味に霞百合子は話しかける。


「あのねぇ、未華子さん」

「はい?なんですか院長さん」

「そういうの早いわよ、達馬君は14だし、あなた16よ」

「え、ヤレるときやんないと、ダメじゃないですか?こういうのって。きっと達馬君って凄いモテるから、この出会いを逃したら……一生後悔しそう」

「あれだけそういうのに拒否反応起こして暴れたり自傷行為とかしていて要カウンセリングだったのに………まさか、治ったの?」

「なんかピタリと、まるでしゃっくりが突然止ったような気持ちです」

「あら」

「達馬君とおしゃべりしてたら「ああ、この人に出会うために今日この日の為に私は今まで」とか思うくらい、幸運な気持ちでいっぱいなんです、凄いですね」

「そこで本気でそう思ってたら別の心の病よ?」

「やーですね、さっきまでずっとメンヘル気味でしたけど、そういうメンヘルじゃないですよ、私」


自分を軽くそう言える強さがいつの間にか未華子には宿っていた。

奇跡だ。


人間がこうも簡単に立ち上がって笑える日が突然舞い降りた。

周囲にいる子供たちにもその奇跡が起こっているのだ。


「でも心の病よね、今」

「はい、最高のクリスマスプレゼントですね、サンタさんが本当に来たみたい」

「ロマンチックね」

「ということで今から外泊届けって出せますか?ロマンチックな夜過ごしたいんですけど」

「ダメ、許可申請は一週間前からの受付となってます」

「脱走は?」

「ダメだってもっと自分を大切に…」

「うまくいけば、凄く幸せになれるかもしれないですよ、大切にしてくれそう」

「あ、そっか………じゃあ、達馬君が帰る前までに口説き落としなさい」

「うーんもう無理っぽい気がしますから、とりあえず今日はデートの約束まで取り付けるくらいにします」

「なんでかしら?」

「達馬君ってモノ凄い恋を誰かにしてる気がします、だって私の容姿を見ても、全く気にしてない。
話す時の目線が一切ずれないんです、おっぱいも結構おっきいのに私。ちょっと悔しいです」

「そうなの?達馬君が?」

「はい、恋をして生き生きしている男の子なんです達馬君は、私も恋をしているから分かりました」

「いいわねぇ青春、でも達馬君は大変そうね、生き急いでる感じに見えるのはたしかね」

「はい、だから母性本能くすぐっちゃう人なんですよ」

「なんか不思議ね、たかだか10分程度で貴女がそんなに明るい女の子になるなんて、恋ってそんなに凄いのかしら?夫は過去に居たけれどすぐに離婚したし」

「恋はいいですよ」







次回のお話はマグロ事件編です



すいませんヘルクライマー編が中々進みません。



ということで


伏線を貼り忘れた作者による伏線ラッシュが今始まる。

目指せ、外伝、山田ゆかりのSTS編



[36072] IF2彼と彼女が逆だったら、暗黒編1話【15禁】
Name: みさりつ◆2781aa24 ID:4563c076
Date: 2013/03/20 10:28
注意。酷く不快なシーンが多いです、暴力、虐待、性的なシーンがあります。


今回は性別だけ入れ替わった場合の話です。

妙子 男の転生者
達馬 TS転生者





























末馬高雄が暇つぶしに携帯電話で株の情報を集めて森林公園でゆったりとしながら歩いていると

「あ、ごめんなさい、ぶつかっちゃいました」

小さい、女の子にぶつかった。

足元にぶつかり、女の子は転んでしまった。


高雄は慌てて助け起こすと

「な…………」

薄汚れてて、可哀想なほど痩せていた女の子だった。
髪もボサボサで、一度も切ったことがないような状態で痛々しい、目の下は殴られたように腫れている。
頬はこけ、表情はどこか熱に浮かされた様に見える。
隠すように今は夏だというのに厚着の服を着させられている。
その服さえ適当なサイズを着せられたようでダボダボだった。


大丈夫?


と言う前に、高雄はそれよりも先に謝った。

「あ、御免な、足元を見てなかった」

「お兄さん、大きいんだからしっかり地面見て歩いたほうがいいですよ?」

ありがとうございます、と言い、微笑んで、こちらを覗く5歳程度は特に何も感じていないかのようだった。


「早く来なさい!」

前の方から聞こえてくるヒステリックな怒鳴り声、母親なのだろうか、子供が転んで倒れたというのに全く心配さえもしていない。
まるで家畜を呼ぶような声で叫んでいる憎々しく表情を浮かべている。
中々豪勢なブランドものを全身に身につけた女性だった。



「……はい!」


少女はそれを聞いて焦った顔をする。
だがその顔には恐怖も苦しみも何もない、ただ焦りだけを浮かべている。

「もういくね?」

体に土がついているので払おうとしたら、躱された。
高雄の手が汚れることを避けたようだった。





「あれはお母さん?」




「これからお出かけなの」


嘘のような事実を少女は述べ立ち去ろうとするが、なんとか高雄は止めようとする


「それにしては随分格好が………それに君はケガが多くないかい?」

「私が悪いことして転んじゃったのばいばい」

高雄の言葉に表情を変え、焦りから悲鳴をあげそうな顔をする。

「早く!!」

「はい!」


「あ、ああ………バイバイ」


ふらふらと少女は母親のあとを追いかけた。

どうやら録にモノを食べていない、貧血で倒れかけている。


末馬高雄はその親子の様子をじっと眺めた。



「殴った?」


確かに今、母親が娘の顔に思いっきりげんこつを落とした。

粛々とその拳を顔に受ける少女は鼻から血がでているというのに、抑えもしなかった。


末馬高雄はしばらく、数字の世界で遊ぶことができなくなってしまった。




IF2彼と彼女が逆だったら、暗黒編1話【15禁】


















人間の売買は犯罪だ、ましてはこのような親にわざわざタダ同然に売られて来た女児に性行為を及ぶなど、邪悪だろう。
俺は地獄に落ちるな、そう思う。
非合法な活動を行う密売組織に入った男はそんな仕事を普通の社会人のようにこなす自分に愕然としてしまった。

今日で10回目のビデオ撮影、これらは全て変態性癖者に高値で売られていくだろう。


「今日はもう終わりだ、最後に手をふれ」


「ばいばーい」



裸のままで女児を抱き上げる。
子供の体温だ、抱きしめてみる、幼児特有のお腹が先にぶつかり、内蔵の脈動を感じるほど痛々しい気持ちになる。

佐藤龍姫という名前らしい、厳かな名前の女児であり、眼はいつも眠そうな表情で、一番似合う服装はパジャマのような女の子だった。


「本当に、いつも下手くそな耳かきのようですね、相変わらず、痛いだけ、こんなものに興奮できるなんて私の映像を買う人はよっぽどに変態に違いないですねー」

女児はのほほんとそして何処までも不敵に笑う、眠そうな目尻をそのままに小さな唇についた白い液体を手で拭う。

「まずかった」


全く行われた行為に対して動じていないようだ。

この女児は徹底的に強い動物の子供、獅子の仔のように見える気がする。
一切何も見にまとわず、裸のまま、男の腕から抜け出し、ごろりと寝転がる。

シーツを引き寄せ、天井を眺めている。
その上には変わらず太陽が登っていることを知っているかのように、伸びをしてシーツの感触に頬を緩ませる。

男は怖気が立つような気がした、あれだけ口から反吐が出るような行為を何度も受けたあとにゆるゆると横になって寛ぐ姿はまるで名前通り龍の子供のようだ。


全く痛痒さも感じていないかのように振舞っている。
酷く暴力的な撮影ですら、微笑んで余裕綽々に耐え切ってしまう。



この子供を直視するのを男はなるべく避けている。


理知的で希望に溢れた強く優しげな光を放っている眼は見ているだけで吸い込まれそうだ。
でも、普段は眠そうに細目になっていて滅多に見えないことが、どこか救われる気になってしまう。
顔は恐ろしいほど整っていて、日本人の子、というよりも欧米諸国の子どものように他者にコンプレックスを抱かせるほどパーツがメリハリよくしっかり整っている。


体は男の半分もない、手は小さく、まるで紅葉のようであり、肌は白く、雪のように光さえ反射するような艶やかさ。
切り揃えられたボブカットが動くたびに黒髪がさらりと揺れる。

足を閉じても太ももがぶつからず、付け根からはソレが見える。


佐藤龍姫はとても綺麗な女の子だった。


羊のようにふわふわとゆるゆると薄く微笑んでいる表情を常に浮かべている。

何処か間延びして落ち着いた声音は、まるで陵辱を受け入れながら、痛みや苦痛の音がない。


事実このこどもは本当に気さくに「気持ちよさそうな演技しますかー?」と言ってしまうほど何処かおかしい。

頭が軽いように見えるが、まぬけそうにも見える、なにがあろうとゆるゆるとしている。


まるで全てのマイナスの感情を捨てたようなこどもだった。



「5歳児のポルノだ、変態しか買わないさ」

「そうですね、しかしその5歳児でも高く売れるだけの需要があるということですか、薄暗いですねー」

「お前のような利発な子供がなんでこんな場所で俺のような屑に犯されているんだ?」


「わたしは両親に死ぬよりも辛い目にあって欲しい、そう望まれ此処に来た子供です、だけど来てみると案外そうでもない子供です」


「死ぬよりも辛い目に合っているだろう、お前は大人の男に無理矢理何度も犯されて一生残る映像を撮られている」

「そうですか?ご飯がしっかり食べれる、お風呂も入れる、よく眠れるのに、変な話ですねー」

「変な子供だなお前は、確かに、今のお前の方が最初の頃より元気そうだ」


組織系列の会社から借りている、物置としてしか使用されない倉庫にぽつりと様々な撮影機材、パイプベッドが置かれている
この女児は両親に本当にでタダで組織に渡された女児でひと月は此処で生活をしている。

ひと月前まではまるで紛争地帯に居る餓鬼さながらのように醜くく痩せていた。
哀れにも思った、髪も伸び放題でところどころ、適当にそこらへんにあるハサミでジャキジャキと切られたあとが無残にさらされている。
体中至るところに青や黒の内出血が見られた、首には爪のあと、酷いことに顔に焼き痕があった。

渡されたときには酷い熱で、このまま殺して臓器に変えた方がいいだろうと判断されそうになった程だ。


恐ろしい暴力の傷跡、俺たちは利益がなければ暴力は行わない人間たちの集まり。
普通のカタギの人間の憎悪によって生み出された姿。


生きていても死んでいても辛そうな少女に哀れみを感じ、生かした。

決め手となったのは、誰かが水分補給させるため口元にオレンジジュースを運んだ時だった。


「ありがとうございます」


そう、本当に嬉しそうに女児は微笑んだのだ。






そして全てをたかだか一週間でこいつは完治した。

早く治らなければ殺されて臓器になるのを理解したような回復力だった。





「ええ、元気になりました、まるで不幸になったように見えますが、あまり不幸に感じません、ですから貴方はあまり罪悪の心を胸に抱く必要はありません。
私が此処にいるのはその為なのですから、それに貴方に僅かな優しさが見えました、その御蔭で私は信じることが出来ます」


俺を許す、そういっているような気さえもする。

事実一度も俺に負の感情を向けたことはない、殴って犯す映像の撮影のあとも変わらない、真摯な姿に胸を打たれる。


「何をだ」

「ただしょうがないだけ、なのだと」

男はこの少女を欲しいと思った。

必要最低限の食事などの生命維持活動以外全ての時間、何かを祈り続ける少女、手を組み、まるで希うように延々と。


この一ヶ月間ずっとだ。


神様にでも祈っているのか、と聞けば。

いえ神様にはあったことはないですよ?別に宗教もやっていませんし、ただ祈ってるだけです。




何を。


私を産んだ母と父の幸せを祈っています。

私が彼らを不幸にしてしまった、不幸そうな人生を送らせてしまいました。





あんな、どこにでもいるような、お前を捨てた、弱い両親がまだ好きなのか?


いいえ、好きでも嫌いでもありません。

ただ悲しいだけです。


憎んでいないのか。


私が憎むのはただ一つ、あんなに両親を苦しめた不幸な現実と理不尽だけです。

そう言って、微笑んだ。

両親を恨まずそう言った姿に男は恐ろしく、まるで地獄を眺めるような気分になった。

その時見てしまったのだ、目が大きく見開いたその一瞬を。

その瞳は何処までも優しく穏やかだが、業火よりも熱く燃えているような気がした。
凡ゆる悲喜交々を受け止め否定も肯定もせず、ただありのまま前を見つめている少女。


見ているだけで、掴まれるような気がした。


誰なんだこの女の子は、あの最低な親から生まれた子なのか?

まるで聖女だ。


「本当にあの神経質そうな親から生まれた子なのか、いつも何処から来たのかわからない気がしてしまうな」

「そうですか。で、そろそろ私はどうなるか教えてくださいか?このままずっと此処で育てられて成長記録を撮られて、売れなくなる年になったら臓器に変わるのか、それとも風呂にでも沈められるのか」

「なんで風呂とか知ってるんだお前」

「それぐらい5歳でも知ることは出来ますよ、テレビは大抵の家庭にありますし」

「お前は家庭という家庭にはいなかっただろう「2歳には何もない部屋で捨てられた犬をやっていました、わんわん」とか言ってただろ」

「あーそう言いましたっけわたし」

「本当なら言葉もまともに喋れない筈なのに、学のある言葉を流暢に喋っている……不思議だ」

「そうですか?ちなみにわたしは此処に来るまで会話という会話は一言二言しか喋ってきてませんでした、だから言葉に飢えていましてね。
だからこそ、こんなにも喋れるんですよ?あとお腹空きました」

煙に巻かれた、そう感じた。


「ああ、不思議なだなお前は、飯なら食わせてやる、今日はカップ麺と菓子パンと野菜ジュース」

「今日もですか、いい加減飽きましたね、それコンビニ過ぎて――――まぁ好きですから全部食べますけど」

「明日は俺がいいものを食わせてやるよ」

「え、そういうの初めてじゃないですか、何かいい事でもあったんですか?」

「ああ、お前のこれからの話だ、気になってたんだろう?教えてやる。お前は外国に売られる」

「なんか普通ですね、それって本体ごとですか?パーツで?あと本体のまま外国で暮らせますか?」

「本体ごと外国で暮らせる、お前の映像を見た変態が欲しいってさ、結構な額だ、いいことだろう?」

「安かったらパーツになってるわけですね、セーフです、良かった………私を好む変態が居て、確かにいい事ですね」

「なあ」

「ん?」

「俺の子にならないか?立派な悪党になれるぞお前は」

「嫌です、犯罪者の子供にはなりたくありません、あとそこで俺の将来の嫁としてこないか、とかだったら少しは心が動いたかもしれませんね?
真面目にこれから働くから責任とらせてくださいとかそういうの。
そもそも散々私とヤったあとにそんなコト言う人の娘にはなりたくないです、あなた普通に悪人ですからね?
5歳の女の子を犯して、あまつさえ中を楽しそうに撮影とかしてしまう真性の悪人にですよ?そんな貴方に育てられる気はない―――――ただの変態の方がまし、ってそいつも悪人ですね。じゃあ、誰の子供にもなりたくないです、まだ飼われた方が気が楽です、よく言うでしょう?親の責任は子の責任と、ペットのままでいいですよ私は」

「それは借金、普通逆だろ」

「わたしの責任はわたしが自分でとりますよ?」


フラレた。

そう思ってしまった。
ものすごいショックを受けて思わず泣きそうになってしまった。
すごく情が移っていた、気にしていたのに、軽く断られた。

愕然とする。



「どうする気だ!?これから!」

そのまま何処かの外国に売られて変態の慰みものになり続け、可哀想なまま死んでいくんだぞお前は。
だから俺が――――――助けてやろうと。

「俺が「取り敢えずこれからは日本じゃなくて良かったです」


「な」


「私はどうするか?決まっています、自由になりますよ―――ようは逃げるってことです、日本で逃げたら、一応あと2年は生きていると判断され籍が残ってるので下手をすると、行方不明だった女の子が見つかった女の子になってテレビに出演して親に迷惑を掛けてしまいますので、逃げれませんでした」


「今までいつでも逃げれたという口ぶりだな…………なめてんのか?」


「さて」




女児は気づくと俺の首元に右手を水平にして添えていた。

そしてすっと産毛を撫ぜるように横に引いた。
まるで首を狩るような強烈なイメージを引き起こす。

総毛立った、思わず、自分の首に手をやり、冷や汗を流す。
いま――――――この女児が死神に見えた気がしたのだ。
自分が首から血を流し、苦しさで声にならない、声を出せない絶叫を上げながら死んでいくイメージが脳裏に湧いてしまったのだ

ほっそりと柔らかく、俺の口で全部入りそうな小さな手がまるで小太刀か何かのように見えた。



「外国いったら、好き勝手逃げれますね、私みたいなの何処にでもいる筈なので」

「お……お前は絶対に何処にでも居ない」

「ええ、此処にいますよ、まだ、今はね。今逃げたら私の面倒を見てくれたあなたが死んじゃいますし、それは嫌ですね、」


俺は言外に雑魚と言われ、それを素直に受け入れてしまった気がしてしょうがない。

そして敗北を口にした。

「俺はまだ下っ端だからな5歳児に逃げられたら殺されるな、そりゃ」

最後までどんなに傷つけても泣きもしなかった。
自分は最悪のクズなのは知っていたが、まさか俺は此処まで屑だったとは。

5歳の女児にも勝てない、なんて。




「幹部になれますかね、あなた、昔はお人好しだったみたいですから、無理そうですよ?気を入れ替えて真面目に働いた方がいいですよ?」



女の子はふっと微笑む。

何処までも優しげでありながらやはり、とてつもなく不敵な微笑みだった。

一人で全世界を相手取っても勝利してみせる、というような表情だった。





欲しい、なんて怖気がでるほど、震えるほど強い女だ。

股間が隆起する、いつかこいつを孕ませてやりたい、そう思う。

こんなにも幼い癖に恐ろしいほど、美しい。

間違いない、将来はこいつは絶対に目も眩むような女性に育つだろう。



「転職考えるわ、で外国でいいんだな?本当に」

「物心がついてから毎日修羅場を潜った私ならきっと外国でも楽しく暮らせる筈です」

「逃げれると思ってるのか、そんな小さな体で」

「窮鼠猫を噛むという言葉があるじゃないですか、わたしは強いネズミになってやりますよー?」


「そうか、じゃあチーズでもとってくる、大人しくしてろよ?」


「ついでにお風呂も持ってきてください」

「あーあのガキ用のビニールプールな、あれめんどいだよなぁ本当にスタッフ三人だけとか人手足りないし、もう、まじでめんどくせぇ、交代まだかな」


「職務怠慢しすぎると逃げますから、色んなところパリパリしてきて、イカ臭いし、最悪ですから、あともう二人みたことないんですけど」

「あーお前と同じ年頃の娘いんだとさ、二人共、基本的に担当俺で、身の回りのもの買うのがそいつら、あと基本的に鍵かけてれば逃げれないからってお前を見に来ない」


「あーなんか聞きたくない、そういう事情、その二人精神的に大丈夫ですか?ご家庭に不和とか起きたりしませんか?」

「そいつらを罵った方がいいぞ、俺より悪人だろそいつら」

「わたしを犯すのはあなたでしょうに」

「あいつら、勃たないから無理って突っぱねるんだよ「娘の顔が」とか言いやがってよ」

「へーほーへーあなたは?ロリな趣味あるんですか?そういえば今まで聞いたことなかったですけど」

「超絶気持ちいい電動オナホールだしお前、あと別の女犯してるのを想像しながらやる」

「で、でんどう……………そうですか、じゃあしっかり洗ってくださいね、何度も使用できるんですから――――――あとあなたは本気で最低です」

女児は一瞬少し傷ついた顔をした、初めて見たと男は思った、いくら傷つけても傷ついた顔をしたことなど一度もなかったのに。

それに気づき、僅かに暗い喜びを感じた。


「ああ俺は最低なやつだよ、心を入れ替えて坊主にでもなるかね」


そう言うと、彼女は微笑みを強くした。


「そうしなさい、そうすれば子供の件、考えてあげましょう、そして残りあと二人に言っておいてください」

「なにを」


「女の子向けの変なキャラクターのパンツやめてください屈辱です」


物凄く嫌そうな顔で女児は言う。
これだけは許せない、それには本気で傷ついていたという表情を堂々と見せる。


「は?」


「パパ、わたし別のパンツがいい――――ってわたしが言ってたと伝えておいてください」


「恐ろしいやつだなお前は」


「私にとっては貴方たちのような人間全てが恐ろしいです――――正直頭が可笑しくなりそうでたまらなかったですよ」

そう最後に龍姫は言った。


ああ、それでも、この女児は最後まで屈しなかった。









とことん落ちるとこまで落ちた、5歳でここまでの落下具合とは思わず爆笑しそうになる。

さて、外国か、これからどうしよっかな、と龍姫は笑う。

これからは取り敢えず名を替えてリュウと名乗ろう、そう龍姫は思った。

タツキだとよく噛んでしまって言いづらい、それに龍姫なんて名前はあまりにも厳かで名前負けしてしまいそうだ。

あと十二国記で景王陽子を裏切った、たっきというキャラクターの名前を思いだしてしまうのでなんとなく嫌だ。

しかも苗字は佐藤だ、正直似合わない。

カタカナでいいな、懐古復活だ、70年ぐらい前の昔の流行りに遡ってそう名乗ることにする。
大きくなったころにはまたブームが到来するかもしれないし、あと昔やったスーファミでいた格闘ゲームのキャラクター、そやつはわたしよりも早く外国に飛び出していた。

俺は俺よりも強いやつに会いにいく――――――格好良い、この言葉本当に大好きで一生に一度は言ってみたい言葉自分の中でベスト1位。

だからわたしの名前は格好良くリュウだ。

ふふと口元から笑みが溢れる。

まぁ別にあいにく、会いに行きたい人間なんて誰一人いないけどね、わたし。

取り敢えずまた男に生まれなくて良かったとリュウは思う。

わたし、と自分を言うのもまだまだ違和感がつきまとう、本当だったらまた男が良かった。




男だったらバラバラのパーツになってお肉屋さんに並ばないで、病院で誰かの体の中に入れられていた。


とてもぞっとしない話だ。


本当に女で良かった。


そんなことを思ってしまったので大人しく女のフリをしよう、あの時女の子として命を助けて貰わなかったら死んでいたし。

女は得だ、と思う。

5歳でも需要があるらしいし、食うには困らないだろう。

あ、今は女の子なんだから、リュウはないか、リュウは、ではどうするかな。

龍に姫だし。

リュウキ?

仮面ライダー龍騎?


ああもうめんどい、リュウヒメでいいや。


リュウヒメ、決めた。


わたしの名はリュウヒメとしておこう、正直名前なんてどうでもいい。
取り敢えず両親から頂いた名前を捨てることにする。

タツキと誰かに名乗ったことなど一度もないし。


そんなことよりもすぐに私にはとてもやりたいことがあった。



それは


私はもう、絶対に誰かを不幸を見ないようにしよう。


見なくてもいい人間になる。



強くなりたいな、誰よりも、と今はそう思う。













倉庫生活最終日、生まれて初めて私は己の名を世界に名乗った。




「私の名はリュウヒメ、そういえば貴方の名前は知りませんでした」

「たつき、じゃないのか」

「カタカナでリュウヒメです、私はもう余分なものは必要ないので」

龍でも姫でもどちらにもなれはしない、佐藤なんて勿論余分だ。

「ただのリュウヒメ―――――それがわたしの名です、覚えておけば何れまた会えるでしょう、そのときは貴方が少しでも真面目に働いていてくれれば私は幸せです」

「俺の名前は………村寺才覚」

「お坊さんのような名前ですね」

「沙弥で終わったがな」

「しゃみ?」

「坊主の卵って意味だ」

「なるほど、一つ勉強になりました――くしゃみっ」

少女は可愛らしいくしゃみを一つする。


「は?」

「すいませんくしゃみが出てしまって――――くしゃみっ」

くしゃみをくしゃみとするとはやはり変わっている。

「はぁ?お前くしゃみをくしゃみって言うのか?」

「いや、ダジャレです」

「くだらねぇ」

「破戒僧がそのままヤクザなんて、精々お釈迦師様に謝り続けるんですね」


「俺が坊主に戻るなんて信じているのか、お前は」


「さぁ、そうだったらいいなぁと思いますよ、その前に刑務所に入って罪を償うのがベスト―――ではさようなら」

最後に車で目隠しをして、俺は少女を何処かに連れて行った。
俺は最後まで悪人のまま、少女を何処かに引き渡して別れた。


「おいこれから本当にどうするきだ」


「取り敢えず、すごいとこいってみたいと思います」

「すごいところ?」




そして―――――俺は。















その帰り道に恐ろしい男に出会った。





一人の青年が才覚の前に立っていた。
容姿端麗という言葉が似合う優男だった。
背は高く、185cmはあるだろう、値段の張るスーツを身にまとった姿は何処かの一流企業の商社マンといった具合だ。



「さとうたつき、という女の子を探している、お前たちが親から買取り、いかがわしい行為をさせていたことは知っている――ー警察に出頭しろ」

「てめぇは誰だ…………サツか」

「ただのフリーターだけれど、犯罪者を捕まえるぐらいは許される一般人だ」

「てめえなんて名前だ」

「末馬高雄………どうせ覚える必要もない、二度とお前とは合わないしな」

「そのたつき?っていう女の子なんて知らねえな、他のいい女とは再会の約束をして別れたばかりだ、てひどく振られてな。
そして帰り道によくわからんガキに俺はぶん殴られて、警察に捕まんのか…………最悪の一日だ」


「嘘は十分だ、先ほどまで一緒に居たんだろう、どこへやった?」


「はぁだから「何処だ」知らねえって言ってるだろう!女にしかあってねえぞ、クソガキがぁ!」


才覚が優男に殴りかかろうとすると、いともかんたんに放り投げられた。


勝てるわけがない、こいつは――化物だ。

素手で、大型のボックスカーの前に飛び出して粉砕しやがった。

じゃり、と才覚の目の前に男の靴元が見える。

「その女は」

「リュウヒメって名前の女だ、全然ベストじゃねぇぞこれは………」


くそ、馬鹿か俺は、素直にあの小娘を強引にでもひっぱって俺の宝物にしてしまえば良かった。

この世界で最も誇り高き龍のお姫様なんだ、あの子は。

なんだあの将来の夢―――取り敢えず、世のため人のために生きてみます、ってなんだんだ。

うまく逃げ出せたらイラクとかいってみます、とかなんだ。


紛争でも終わらせるつもりか?



「ああ、勿体無いことしたもう少し味わっておけばよかった」


「リュウヒメ?」











続く。





完全オリジナルじゃないですかやだー。

お遊びです。

3話完結予定

龍姫

TS版達馬の究極形体。


達馬STS 一番の不幸を見てきた場合の達馬。

最初から主人公として覚醒している。

己が傷つくことよりも他者が傷つくことを何よりも恐れる聖女。


男性の欲望さえも時にはその人の為になるのならば受け入れる。



少し先の未来



誰かに私の家にはキモデブピザニートが居て困っていると聞けば
彼女はそんな悩み言われても……と思いながらなんとかする。


「あなたがそうですね、真面目に働いてニート脱却して親を安心させる立派な男の人になったのならえっちなことさせてあげますよ?」

「まじ?」

「私は嘘はつきません、12歳の少女のカラダが欲しければ頑張りなさい―――約束のキスです」


嘘はいってないようだった目の前の女の子は俺に容易に唇を許す。
女の子の唇、初めてだった、醜くぶちゅうとフハフハと鼻を鳴らしながら吸い込もうとする。



それさえもゆるゆると少女は微笑んでいる。

「初モノ……?」

「あ、私処女じゃないですから、ちなみに5歳の時にはもう膜ないです」

「中古!?ならすぐやらせろよ!信じられねぇ!」

「ああ、まじでクズですねあなた――――ちょっとお説教です」


リュウヒメは流石にそういうやつには容赦はしない。

「貴方が気軽に吐き出す言葉の痛みの虚しさと同じぐらいの痛みを体で感じさせてあげますよ」


仏のような少女であってもブチギレる時はある。

自分がそう言われたことに対してではない。
そういうことを平気に口ずさむ、この目の前の自分を大切にしない男の性根に腹を立てた、この男はこのままではいけない、変わらないといけない、ああ、お前、そのまま親を泣かせるな、12の少女の元に助けを求めさせるような辱めをお前の親は受けたのだぞ。

お前のために。

それでも醜い言葉を貴様は吐くというのか。

見たら親が泣くぞ?

貴方はずうっと泣かせて来た。


さらに泣かせるのか?


これ以上は許さない。

「一回――――ぶっ飛ばしますね、引きずり回して何度も何度も教えてあげますよ、その痛みを苦しみを、さぁ数えなさい。そのような言葉を吐いた回数を、その数だけあなたを私は痛めつけましょう」

「ひぃ」

「ふふふ素直に努力すれば、本当にやらせてあげたのに」

どうせこんなもん軽く耳かきされるようなもんだし、と少女は己の貞操なんて全く気にしない。

どうせいくらやっても妊娠もしないし、性病にもならない。
人外の免疫力は常に体内の異物を綺麗さっぱり除去する。

しかも、己を変革しすぎてもう殆ど苦痛がない人間になってしまった。
後戻り出来ない状態だ、幼い時逸り過ぎて変化させすぎた。

子を生むことも出来ないようになってしまった。

たった一匹の龍にはこの世に番がいなかった。


男の部屋に散らばるそういうグッズを眺める。

「あ、Fateだ、これインストールさせて」







「リュウヒメ、あんた何やってるのよ!?馬鹿なの!?身も知らないあんなだらしない男に―――――!!」

「山田さん、なぜそれを」

「馬鹿なやつが掲示板にそういうスレッド立てたの見つけたのよ!約束の口づけってなによ、あんな汚い男に、あなた許したの!?」


「あ、あの人は………馬鹿すぎる、すぐに通報されて捕まりますね。
あそこは他者の不幸を喜び、他者の幸運を妬む人が多いですから。
まぁ結構メシウマですね、正直ムカつきましたし、ちなみに私はいつでもご飯が美味いと思える幸運な人間ですけどね。
わたしの名前でたらどうしようあーあーあの人の親可哀想、でも刑務所ダイエットができて丁度いいかもしれません、あのままだと肉体労働さえも雇い場所なさそうですし」


「唇を許したのね?掲示板では姫様って書かれてたわよ?ていうか「12歳の少女に調教された件」ってなによあのスレッド」

「減るもんじゃないですからね、それで彼のやる気が出れば上々でしょう?何か調教しちゃったらしく、目覚めてマゾになりましたね、豚と呼んでくださいとか言われました、あれなら努力も苦ではないでしょう、マゾなのだから。また一つ私はいい事をしたかも知れない―――――姫様とお呼び!」


「優しいのもほどほどにして!他人を助けるためにホイホイ自分を捨てないでよぉおお!また貴方のお兄さんまた泣いちゃうわよ、私も泣くわよぉお」

「ごめんなさい、私はそういう人間でどうしようもないんです、しかしこれが一番いい手でしたので」

「知ってる、リュウヒメはそういうことが簡単に出来る最強の女の子だって」

「まぁときたま中古とか言われますけどね」

「それ………まぁいいわ、眼をつむりなさい」

ちゅっと山田ゆかりは目の前の少女にキスをする。

「は?今……」

「口直し、よ」

「レズではないですよ、私は」

「私もよ、でもいいじゃない、これぐらい海外なら問題ないわ
私のはじめてぐらいはあげるわ、たまにはいいでしょう?」

「私の初めては「やめなさい」

「ごめんなさい」

「でもリュウヒメは誰よりも綺麗で強くて優しいわ」

「そんなたいした人間じゃないですよ、ただそういうのが趣味なだけです」


目標は取り敢えず、自らを鍛えて自己満足で誰かの力になってあげたい、と願っている。
放っておくと7歳で国際テロリストとして全世界に名を轟かせる。



このままだと池○彰のよくわかる国際テロリストとかテレビにでちゃう子。


5歳で既に大抵のプレイは経験済み。


不感症。





末馬高雄 海鳴には住んでいない。

一度高町士郎に護衛を頼むくらいは金を持っている。
女に生まれなかったので精神的に安定している。


故に普通の少し正義感の強い男性として成長。

普通に異性愛者だが若干女性恐怖症。



やっぱり守銭奴。

このスレッドは短編集ですから、いいですよね?



次回はマグロ事件完成させたいね。








[36072] IF2彼と彼女が逆だったら、暗黒編2話【15禁】
Name: みさりつ◆2781aa24 ID:4563c076
Date: 2013/03/21 04:07
またまた不快な表現のオンパレードです。

注意。






ありえない嘘の未来


それは不思議なひどい出会いなの編




16歳の末馬達馬の元に、もし自分が仮面ライダー龍騎のお面を作れと言われて作ったら、こんな仮面になるだろうと思わせる
異形の仮面をつけた少女が目の前に、空間を引き裂いて突然現れた。


「様々な世界を旅している16歳です、愚兄から平行世界に逃げてきました、こんにちわ、私」

「ねぇたっくん、この子………」

「ええ、スケールでかいですね、次元を引き裂くとかどうやんのよ?あと平行世界から?」

「FATEを参考にしました、あの、突然ですが、お手わせ願ってもいいですか……末馬達馬君」

「バトルマニア?君はシグナムとかフェイトみたいだな、雰囲気がなんとなく」

「バトルマニアです、人生の大半が戦場でしたから」

「まじで怖いな君、すっげえ血の匂い――――まじで逃げていいか?」

「でもきっと貴方は私よりも強いですね。16であの達子様や私よりも遥かに低い性能の能力でそこまで見ただけでわかるほど強いとは」

「そっかなー素人だけど?あとブギーポップ好き?」

「たっくんみたいな素人はいないと思うよ?」

「いつかの日、絶叫するほど悍ましい濃密な努力の時間を過ごされましたね?
あとブギーポップ、大好きです。過去、パブリックエナミーナンバーワンと世界の敵を目指しました―――――――まぁどちらも現れませんでしたが」

「へ?五日?」

「ふふ」


「そっか、君、高町家の誰かと戦ったことあるだろ?」

「ええ、わかります?」


「天敵ですよね?」

「まーそーだなー」


「なんか君たちずるいよ、わかりあっちゃって」


妙子はそういいながら、一人ゲームに没頭する、少女がお土産に持ってきてくれたドラゴンプリンセスというプロトタイプに似た洋ゲーをパソコンにインストールして始める。

「あ、凄いリアル」

「リアルでやりましたから」

「え?」


なんとなく、彼女の言葉を無意識に理解した達馬は彼女の暗黒物質のようなお話を避けるために少女に話を振る。

「ブギーポップの好きなキャラだれ?」

「ピートビート」

「フォルテッシモは?」

「ああいうのもいいですけど飽きました、やっぱりビートですね、ああいうバトルが出来る人間になりたかった」

「(突っ込まないぞ俺は)………こっちないのが残念なんだよなぁ、久しぶりに読みたい」

「ですね」









リュウヒメ11歳の誕生日。




「昨日D・Pがアメリカに出現したとしてホワイトハウスや様々な各政府機関への攻撃が懸念されました」




国際テロリストD・Pへの単独取材が行われた。
D・Pが堂々とアメリカのニューヨークで一人ハンバーガーをテイクアウトしにきたという通報があった。



その姿は異様だった、周囲には様々な特殊部隊が詰めかけ、彼女の動向を伺っている。

一人店内で肉汁滴る、ハンバーガーを手に持っている、

「あー仮面外してバレないように来れば良かった……でも一張羅ですし、11歳の誕生日だし、何か有名なものを、ときたのですけど」

失敗したなぁ、と仮面の下でくすくすと笑う少女に誰しも怖気を感じ、逃げたくなる。


D・Pに勇敢な記者が取材を申し込み問掛けた言葉にD・Pはこう言ったという

観光ですか?


「観光です」

そう言って彼女はあっという間に音も立てずに消え去った。

律儀にお金をきちんと置いて。

全世界に発信されたその国際テロリストの映像。
異形の仮面をつけたD・Pと呼ばれる少女に世界は慄いた。

いつでもどこでも、彼女は世界の主要人物を殺害できるのだと。





「最後の足取りはニューヨークか……いや無音の超音速だから関係ないか、今はどこにいるんだ?――――高町さん」

「あの子と戦うのか、俺は」

「護衛で十分です、それだけでいいです、彼女は私を憎んでいますから、取り敢えず、リンディさん」

「構わないわよ、私たちも協力します。魔力反応を調べれば行方を追跡出来ます」

「私たちは」

「やめた方がいい、君たち全員なら勝つことが出来るかもしれない、だが、危険すぎる、あの子は直接はないが、既に沢山の人間を間接的に殺している現代の伝説だ」

「それでも」

「駄目だ」


偶然見つけた可能性、魔法という世界を教えてくれた少女たちを末馬高雄は追い出し、大人たちで話し合う。

「捕まえてどうするのかしら?」

「私の妹として引き取ります、彼女をああした責任の一端を私は担っていますから、異世界に連れていき生活させます、早くしなければ、あのまま狂い、最後の一線を超えてしまう」

「本人は逆恨みだと言っているそうね」

「ええ、だけど俺は彼女の願いを踏みにじった男です、責任は取らなければなりません、才覚」

末馬高雄は彼女の来ているだけで目の前の男をもう一度刑務所に放り込みたくなる悍ましい行為を聞くハメになった。
彼女の未成熟な悲しみしか起きないあの映像を確認もした。

思わず世界を焼き払いたくなる陰惨な光景を見続けるのは、必要があったからだ。


「よくもまぁあの女をああいう怪物にしたな、なにしたんだ?わざわざ俺を莫大な金でムショから呼び出してまでプロファイリングだかを行う必要まで出来るとはなぁ。
この世ってのは不思議なもんだ、あとあの綺麗なお嬢ちゃんたちはなんだ、あれは高く売れるぞ?」


「ええ、あなた何をしたの?一度出会ったことがあるけど普通の女の子よ?おはぎを嬉しそうにくれたわ、私たちのことをコスプレイヤーだと勘違いして」


「え、普通に泣きながら抱いてと言われ、未成年に淫行は出来ないから断りました、それからああいう風に―――あと才覚、お前はもう一度絶対刑務所に入れてやる」


「はい、君のせいね」

「そうだな」

「お前のせいだな」

「え、私が悪いんですか!?」

「お前男か?」

「私は男ですが?まぁ女性は苦手ですね、別に同性愛の趣味もないですけど、金儲けしてる途中、ありとあらゆるハニートラップにさらされてちょっと」

「さっさととりあえずあの子捕まえないと、下手すると地球が滅ぶわよ?」

「あの子を殺せる兵器が国連で作られているそうですからね」

「なんで知ってるんだそんなこと」

「私は経済界の魔王ですから」


彼女はドラゴンプリンセス


今日は9歳の誕生日だった。


「あの赤い服、レイディドラゴンだ!!――――――レイディドラゴンがきたぞ!?」

「火線を集中させろ!」

「本部から入電、D・Pが接近中、避難せよ、とのことです!」

「単体で超音速で接近する化物からどうやって逃げろというんだ!?」

「逃げることが出来ないなら戦うまでだ、ガンホー!!」


紛争地帯、多くの人々の血が流れ、ここでは多くの悲しみや憎しみ苦しみ不幸、全てが日常と化している。

故に私は往こう。

悲しまないように
苦しまないように
泣かないように
不幸にならないように

そうする為に私は生きたい。

全てを掬うことを出来ない女の子の手を眺める。
何度も取りこぼし、まるで何処かの錬鉄の英霊さんのような気持ちになったこととか結構ある。

だが微笑んでいこう。

私が悲しんでも何も変わらない、そう考える暇があるなら手を動かそう。

一つ一つゆっくりと丁寧に私に助けられるその人々の命の息吹を感じるために。
凡ゆる全てを使い、私は私のしたいことをし続ける。



というのは嘘だ。


そんなもの、もう4年前の黒歴史だ。
薄曇りの空の下に広がる戦場にひとり――――少女が舞い降りる。
紅い外套を身にまとい、異形の面をつけた女の子が一人風を切って戦場の風に口元をほころばせる。

乾くこともなく、潤うこともなく、それでも口を笑わせる。

ただ、リュウヒメはそこにいる。

味方につけば恐ろしく、敵になればさらに悍ましいほどに恐ろしい。
この世の全てのパワーゲームを盤上からひっくり返す。
彼女にとってチェス盤の上に乗っている駒達は全て美味しいチョコレートだ。

そんな少女を見て一斉に少女の後ろにつく人間たちは、安堵する。

「少し遅刻しました、この区画で最後です」


義勇軍のリーダーは彼女を見る。
空気が電気を持ったようにパチパチとするような感覚。
圧倒的な頼もしさだ、これから我々はまた伝説を目にすることができる。

彼女は現代の伝説。
凡ゆる暗黒を喰らう、邪悪な暗黒龍。


そして誰よりも優しい一人の女の子だとリーダーは思っている。

「――――我々はどうやら助かるようだな」

リーダーは思う、また妻たちにどやされるな、と。
アッラーよりも女性たちに信仰される彼女をまた呼び出してしまった。
助かるのだが、一抹の情けなさを感じて髭を思わず、掴み、ひっぱってしまう。
これが彼の癖だった。

こうして力を借り続けていくうちに自分の髭を全てなくしてしまう、そう思った。

だが、我々は縋る、それが人間だ。

たとえどんなに傷ついていく女がいても、戦えるなら、前にだしてしまう。

「いいえ、ただ私は蹂躙するのみですよ、では戦争を始めましょう、これからはアメリカのハリウッドです」

本能寺の中で、敵は本能寺です、というような言葉を気にせず吐き出す少女が一人いる。
誰一人としてそれを責めたりはしない、彼女の傍にいる人間で彼女を責めるなんてこの世の誰一人として出来ない。

例え、戦意を失った人間を決して傷つけない、直接誰一人殺せない弱さを持とうとも。

生きている人間が二人いてそのうち一人が必ず死ななければならない戦争の中でも
殺人の空気を切り裂いて彼女は前に進む、殺す、殺される、殺し合う、それでも前を歩く、ただ一人己の最後の大切な何かを胸に秘め。

それだけは捨てない。


「全員下がれ!ハファザが我々を助けてくださるそうだ!」

「ハファザ?それ貴方たちの神様の一人ですか?私にそんな名前つけるなんて偶像崇拝じゃないですか?」

私は破滅の売れないアイドルにしかなれないですよ、歌が下手だし、と笑う。

仮面なので見えないが綺麗に笑っている気がする。

「守護霊だから問題ない」

ハファザはイスラムでは悪い精霊から人間を守るとされ、誰でも4人のハファザに守護されているという。

だが少女は一人で往く。

昼夜交替で、2人ずつのハファザが守護してるという。

ご飯を食べていて少し遅刻した、その間に死んだ人間が沢山いる。



善い行いと悪い行いを記録するとされている。

一々覚えない、そういうの。

ハファザが交替する夜明け時と夕暮れ時が危ないとされた。

一人だから交代してくれる方募集中。

「なるほど―――じゃあ行ってきます!」

「お前の戦いこそジハド、そう俺は思う」

しかし、お前のような幼子はこういう場所にいるべきではない、そう言いたかった。
否定も肯定も出来ないまま、前に飛び出すことしか考えない女に、何が出来る、帰れ、と言いたい、だが。

だけれど彼女はやってしまう、出来てしまう。

「絶対気のせいですよ――――あとはまかせろ!!貴方たちは後ろへ逃げなさい!」

戦いの音楽が近くになり、声を張り上げないと会話が出来ない、小さな体を一人前に差し出す姿はまるで生贄のような気さえもしてしまう。
だが、この幼子は目の前の生贄を見て優しく微笑み、全てを崩壊させる。

「貴方が俺たち側についてくれた理由はなんだ!!聞いたことがなかったが!」

「ご飯が美味しい方につきました!!」

「俺たちの平均一ドル以下の貧しい食事に!?」

「貴方の12人の奥さんたちの愛情を沢山篭った料理の方が好きなので!美味しいから!12人分の愛情いただきました!!」

「美味しいだけでか!」

「基本それだけで人を殺してしまったり出来る悪魔ですよ!私は!」

「そうか!だが我々は助かる!!聞くがお前はウチの息子なんてどうだ!?嫁にこないか!?」

「スエマタカオ」

「なに」

「私の子を成せるのは彼ぐらいです――だが絶対嫌」

未だに逆恨みしています。
あいつだけは絶対に許さない。
私は唯一あの男だけを憎悪し続ける。
お前は悪くなないだろう、だけど、お前のせいで、ウチの両親とっ捕まっただろ。
せっかく何年もそうならないようにしてきた努力が水の泡だ。

ぐれる、それはぐれる。

まるで組み立てるのに頑張っていたボトルシップを粉々に砕かれた気分だ。

あいつは正しいだろう。

だが正しいから私は救われるわけでなし。
あの人たち神経質な人たちだったから己が子を売った犯罪者になったと周囲に知られた瞬間首つって死んでしまったし。


「現実ってファンタジーじゃないですから」

そういうふうに物事を言えるほど私は怪物になった。
だからちょっくらファンタジーを起こしてこよう。
まあくだらない現実逃避だが、しょうがないだろう、人間、ダメでもダメなままで居たい時もある。

善悪など知らない、知らないまましたいことをやり続ける。

最早夢も希望もない。

末馬高雄という男が奪い去ったのだ。

私は邪悪に祈る。

人に恐れられるのが大好きだ。
人に褒められるのが大好きだ。
人を殴るのが大好きだ。
人を傷つけるのが大好きだ。

人の不幸を眺めたい。 
人の苦しみを味わいたい。    
人の涙を飲み続けたい。     
人の悲しみを喰らいつづけたい。 

私は狭量な醜い人間だ、味方をした人間の周りにそれがなければ、別のところで何人死のうが構わない

だがそうするしか、それ以外何もしたいことなんてない!!

自己満足で生きているだけだ。

私はそれでも此処に生きている。

だから

「止められるもんなら誰か止めてみせろ」

ふふはははははははははははっははははっはっははっはははっははっはははっはは
ははっはははははははははははははははははははははははははははははははははは
ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!
ハハハハハハハハハハっ!!

お腹を抱えて、仮面の下で笑う、笑う、笑う。

その声は周囲を混乱させ恐怖に陥れる毒声だった。
彼女の目に立ちふさがらなくてはいけない人間達は一瞬恐慌しかけるほどの大音量の嘲笑。

「さぁ、かかってきなさい、こないならこちらから――――いきます!!」


乱れた戦線を立て直した相手の姿が瞑さに見える。
対戦車兵器を中心に武器を選択する物が多い、だがそのようなもの命中しない。
世界を蹂躙し始める混沌とした化物が今日も往く、お腹いっぱい食事をし、水を浴び、すやすやと眠るためだけに暴れ始める。

毎分500発以上の機関銃の掃射が行われ始める
鉛と鉛が触れ合うような弾丸の雨の中を気にせず駆け抜ける少女が一人、己の身を極限まで強化する。
肉体が心を感じ、心が肉体を感じる。
恐ろしいほどの完全なる己に生まれる全能感を手にする―――最早弾丸なぞ、ゆったりと空気の中を泳ぐ金魚でしかない。
宙を空間を引き裂きながらキュルキュルと回転している弾丸の内、退却を開始した人間を狙う銃弾が多い、弾痕が穿たれる前よりも何倍も速くそれを素手で粉砕する。
弾丸の向きは変わり、地面に全て落とす、まるでつかみ取り放題だ、じゃらじゃらとコインを弄るような気さえもおきてしまう。
一度上にベクトルを替えて、全部あとで降ってきて酷い目にあったことがあるので今度は下に。

その中でひときわ大きいロケット弾を見つけると、それを手で掴んで、上に向ける。


それがひゅるひゅるとゆったり飛んでいくのを尻目に、まっすぐにまずは相手の装甲車の砲台を破壊する。
これが一番当たれば一番痛い、ブルルルルルと携帯のバイブ着信のような鈍い音を響きわたらせ、人をいとも簡単に千切れさせる空の戦車の次にこれが嫌いだ。
戦車は砲身をぐにゃりと片結びにしてやればいいがコイツは小さいのだ細かいのは嫌いだ。

発射中に粉々にしたので、逸れた弾丸が射手を傷つけ、殺害する前にそれを手で撫ぜ取る。

舌打ちする、人は脆すぎる、相手の表情がゆっくりと死を見て恐れる表情になるのを見て取れた、だからお前は死なないぞ、と笑いかける。

相手からは一瞬だけ私の異形の仮面がただ、前に見えたように映るだろう。


下手に兵器を壊しすぎて、足を止めさせると、逃げ遅れた人間はリンチにされ、石打にされ殺されたりする。

これからの今日は誰ひとりも死なせない。
今からの今日は誰ひとりも殺させない。

それが私の今日の課題目標。

「さぁ遊びましょう、問答無用でパーフェクトゲームです」

自己採点総合得点SSランクを目指して。

「おォォオオォォォ!!」

命そのものを燃やすように声を張り上げ前を突き進む、紅い風となってまずは小五月蝿いものを破壊する。
全てを粉砕しつくして精々人々の恐怖を一身に全てを受け入れ、勝利の咆哮を上げてやる。

「私の名はリュウヒメ!!そこをどけ!!」




それがドラゴンの生き方だろう。




一匹のまま最後に滅びるまで。


―――――――――

――退却しろ!!―――――

―――――――――――――

そう相手側に命令がくだされるのは数分も経たなかった。

「疲れました、もう腹ペコですね」


また私がモデルのゲームのミッションが増える、そういう確信が持てる、いい仕事をした気がした。
一度日本をわたり、ネットカフェでクリアしたが、あのゲーム、あまりにも自分の体力ゲージが低すぎる。
クリア後の無敵モードこそが私に一番近いというのに。

題名は確かレッドドラグーン。

それになんだ、あのビュアーモードは、人になんてものを着せるのだ。
予想される私に似た顔の女の子が水着やメイド服を着て戦場を駆けるのだ、くくくくくくくくくく!!

なんてそれは平和な話だ。

流石日本。

キリストやアッラーをゲームに登場させちゃう平和な人間たちだ。
擬人化してえっちなこともさせてしまうという平和具合。

あんなものこの今いる場所に持ってきたら、石打で死刑だというのに。


ちなみにあれ、撃滅ミッション難しすぎる、本人はいとも簡単に現実でクリアできたのに、私が操作するゲームの中の私は中々クリア出来なかった。

弾丸を撃ち落とせないと誰が言った。
弾丸を回避すると誰が言った。
炎に弱いと誰が言った。
毒ガス攻撃に誰が弱いと言った、玉ねぎで涙目になる程度だ。
地雷でこけると誰が言った。


私は躱さない、全て真正面から粉砕する、それが私だ。

あと履いてるパンツは基本黒だと誰が言った!?

くっそ、スリーサイズも全てバレバレとか辱めだ、某掲示板テレビゲーム関係スレッドで囁かれる言葉に怒りが湧いた。

哀れ、だと?まだ9歳だ、成長の余地全然あるだろうが。

改造された画像みてブチギレそうになったわ。

回復アイテムがお菓子なのが、なんかむかつく、滅多に食えないお菓子をゲームの中の私は好き放題食っている、ズルい。


「ははははははははははははっ!」


最高だ。


馬鹿な人生すぎる、私は全世界に恥をさらして生きている究極の愚かモノだ。


ここまで阿呆な状態になったらもうメタルギアの裏ボスとしていつか登場してみたいものである。
赤外線だって視認するこの私の目から、数キロ範囲の心音だって見分ける私にあの偉大なる蛇さんはどうやって隠れるのか、楽しみすぎる。

ダンボールで案外、気づかない可能性があるので、そこらへん恐ろしい。



「お前がスネークか、戦場の赤き龍が貴様の命―――食わせてもらうぞ、凡ゆる老若男女、人間は私の胃の中に入ると決まっている」

「なるほど、チューニビョーってヤツか、酷いセンスだ」

「まずはその煙草を吸えなく全てを燃やしてやろう、このレッドドラゴンの炎の息吹で!!」


とかそんな感じかな、多分。

前やったゲームもそんな感じの発言多かったし。

取り敢えず、クリアまでそこらへんの男を捕まえてゲーム機種があるネカフェにタダで入れてもらうのが大変だった。
耳かき一回やらせるだけで良かったのだが。
あんな狭い個室を汚してしまったことに店員に詫びたくなった。

去り際に私に投げかける殺意の視線よりも、きっと店員の迷惑そうな視線に私は堪えるだろう。
あのスズムラという男は捕まらないことを祈るばかりだ、悪の道に誘惑してしまった。

ペドの道へ。

あと次回もまた頼みたい。

ネカフェのお菓子をたんまり買ってくれる中々ケチくさくない男だったし。
しかも態々行く途中でスペシャルエディションの方のソフトを買ってくれたし。

台湾の買春窟にいくよりも安上がり提供だったので、そうでもないか。

ちなみに自分のゲームについてきた自分フュギュアを持ってこっちに帰ると、気づくと「偶像崇拝はだめよ?」と奥さんたちに捨てられてしまった。


「捨てられるのが私の運命なの?」


とか結構落ち込んだ。

「もう一回買ってください」

「え、どうしたのヒメちゃん?」

「もう一回しましょう?ね」

「ああもう、元々ロリじゃないのに、君ずるい、本当にずるい、何か仕草が全てずるい」

行為自体、本当にどうでもいいのでマグロだったので、そこまで楽しくないかもしれない。
アンチマテリアルライフルくらいの砲身でなければ、私に痛みを与えないのだから、しょうがない。
この前見かけた奴は装弾数が10なのであまり降ってこないので今度は軽く連射出来るようになってこないかな、と思う。

全員がそれを持ってきてくれれば、難易度は少し上がるだろう。



そう考えながら、誰もいない火薬臭い廃墟を歩いていると、彼らが私を迎えにきた。


「礼を言う、恐ろしき戦神よ、我々に出来ることならなんでも言うがいい、とにかくお礼をしたい」

男たちが笑って話しかけてくる。
空に弾丸を放ち、快活に笑う暴力の微笑みは私の凱歌である。

うん、すごいうるさい。

腹に響く音だから空腹がひどくなるだろ。


「ならば、そんなことやってないで周囲の生きている人間を探して助けなさい、それが私の薄暗い欲望をみたせる行動です―――――っ!」

偽善を嘯く途中、徐にまだ10歳に満たない少女は地面に転がった石をいくつか拾い上げ、それを空に向って投げる。
空で大きな爆音がいくつも響き、びりびりと大気を揺るがせる。
そのゆらぎのなか、少女は一人、悪びれず、怯えず、媚まず飄々とそれを眺める。
油断なく、次の攻撃に備えて、石を手にする。
最新兵器に投石で挑む。
現代のダビデと言われる彼女の伝説の一つだ。

「アインシュタインが言うには第三次世界大戦は石を投げ合う戦争になるそうです、故に――――貴方たちは古い」

私こそ、最新なのだと嘯く少女は圧倒的強者として高らかに傲慢にそう言う。
いくつもの自分を見る軍事衛生に向け、口元を震わせ

「it is visible if it ranks next and does, since it will shoot down there 」

次やったらそっちをぶっ飛ばす。

丁寧に英語で発音する。

リュウヒメは既に10各国語を余裕で話せるバイリンガルである。
海外に渡たった時から、言葉を肉体の一部とイメージし、全ての言語を数日でマスター出来るようになった。

「いやそうか?10以上の爆撃だったが?あれなら古いも糞もないだろう、普通なら」

「なにいってんですか、私は普通じゃないのですよ?」

「今回も賞金が釣り上がるな」

「私の寝てる時にふんじばって持っていかれないように気をつけてくださいね、一回、普通の人間なら100回は死ぬ滅茶苦茶な量の麻酔を注射されたことありましたし。
起きますからいいんですけど」

「君の寝る場所は今日も我々が死守しよう」



D・P

と国連に記される国際テロリストのリストの中でトップに名を連ねるその少女こそ。

リュウヒメと自らを名乗る顔を異形の面で顔を隠した少女だ。
アメリカではレイディ・ドラゴンと渾名される、怪物だ。
擦り切れたマフラーを首元に、服装はいつも紅く(やっぱトライガンとかそういうの――――)

レッドドラゴンとも呼ばれる。

うん、この子中二病本気で現実にしようと――――全力でグレて疾走している。


体を売り、薬にも手をだし、悪い遊びを繰り返しても。


どれもこれも感じない。


これぐらいしか面白いことが見つからないので全力で趣味としてやるだけだ。

「次にいつ会えますか、末馬高雄!!」

今度こそ、その気に入らないイケメンを私の口づけで汚してやる。

「何が、「え、俺はそういう趣味はないよ」だ――――――死ね!」


とかいいつつ、いつかの日、末馬高雄に雇われた高町士郎にあっさり敗北してしまう。

平行世界の同一存在である末馬達馬や末馬達子と違い、リュウヒメは己を鍛えるのを4年前からやめていた。
研鑽を馬鹿にしきり舐めきった彼女は、人として圧倒的な研鑽を積んだ人間にいとも簡単に敗北してしまう。


いくら力が強く早くとも、大雑把すぎるのだ。


努力する人間に勝つのは出来ない。

「所詮、獣だよ――――君は」

「くっそおおおおおおおおお!!」

「これで満足した?」

「まだです、まだまだまだまだまだ今のは油断しただけだ、もっと速く、もっと力強く」

本質が読めず、また敗北フラグを容赦なく積み立てていく姿は哀れみさえも浮かべたくなる。
圧倒される美しい研鑽の刃こそ彼女のイメージを全て破壊することができる。

リュウヒメは謎の男に一撃も届かせることが出来ない。

「こんな銃弾がモノ言う世界で、剣!?カタナ!?私よりも!!アハハハハハハハいい年して勘違い――――ぐえ」

「何か君弱いな―――――薄っぺらい」

「な、なにぃ!?たかが鉄の棒っきれ二本で、私を何故だ!?何故だ!!殴られた傷が治らない!?痛い、痛い、痛い」

「その痛みが君の弱さだ」

「そんな深いこと言われても私わかんない!!馬鹿だから!」


という感じで瞬殺されてしまう。

「君は普通の女の子でしかないんだよタツキちゃん」

「おまえがぁ!その名で呼ぶのか、私の親を殺したお前が!!しかしお前が正しい!!誰が見てもそう言うだろう!!だから私だけは!!」

「ごめん、本当にごめん、だけど――――」

「謝って欲しいわけじゃない!!私が馬鹿で逆恨みしているだけなのは知っている!!お前は悪くない!だから謝るな!!腹が立つ!!」

「え、どうすればいいのさ、それ」

「取り敢えず、私の前から姿を消せ!」

「きみ暴れると経済の予測しづらくなるからどうやっても止めたいんだけど」

「守銭奴が!!」

「そうだけど、それがどうかした?世の中金でしょ?俺いろんなやつに裏切られて人間嫌いだし」

「ああ、その顔で沢山の女に跨がれそうになった奴はいうことが違うね!!イケメンは死ね!金持ちは死ね!犯してやる!」

「あ―――やってみろよメスガキが、お前の貧相な体じゃ勃たねえよ」

「―― ――――殺す」

「直接、誰ひとりも殺せないくせに、いい気になるなよ小娘」

「は、じゃあ、これから日本に戻ってお前の家族全員皆殺しにしてやる、あと結構間違って人殺しまくってるよ!!」

「ほんっとうに強情だな、やらないくせに―――――非殺傷設定だっけ?取れないんだよな、本当に不思議だよ、ビルを倒壊させても誰一人運良く死なないとかミラクルだ」

「あ、やるよ!やってやるよ!!今から宇宙加速でやってきてやるよ、包丁なら私は人を刺せるし!あと非殺傷設定ってなんだ!?」

「ああ、ちょっと伝で君の力を検証した、あと武器を持つと一気に弱くなるくせに、あと今兄さんに新しい子供生まれたばかりでその子可愛いんだよね。
こどもはいいよね、無垢で、ほら写メ」


「ぐ……………」


男という前世の記憶を無視し、恐怖を受け入れ、初めて生理が来た瞬間、身を売り、何度も性的な行為を繰り返した。

こどもがとにかく欲しかった。

でも全くできないことを知った。

本気で様々な男性を受け入れ、真剣に子を作ろうとした彼女にとって、こどもは絶対に守らなければいけない存在だった。

目の前に映る、可愛い赤ん坊の姿に、自分が今発言した言葉の罪深さに敗北しかけている。

口を縫い付けて死にたいほど苦しむ。


「本当はいっぱい人を助けたいんでしょ?だけど無理だったんだ、君には―――4年前のあの時の君だったら少しは可能性があったのにね」

「違う!!」

「違わないよ、だって君はいつも「さて、負けそうな気持ちになるからいい加減、逃げよっと」

「あ」


「ばいびー」


これは


いつかこないかもしれない未来、経済界の魔王が龍に跨り、世界を席巻することになるまでの痴話喧嘩かもしれない。

「おかえりなさい、リュウヒメ―――今日もありがとう」

「只今帰りました、いえ、ただ私は好きに暴れているだけですから」

「それでも私たち貴女を待っていたのよ、ほらほら座って座って今ご飯を用意するから」

「リュウヒメいっぱい食べなさい、大きくなりなさい」

「ほらわたしの分もたべなさい」

「それぐらいじゃ足りないわよ、となりの家の人たちからもらってきましょう、もっと」

「ええ、絶対くれるもの」

「わたしはとってくるね」

「ほらリュウヒメ、その変なお面とりなさいよ」

「最初にカッコ良いの作ろうとして、そんな気持ち悪いお面になったやつなんて捨てたら?」

「私たちみたいにブルカで顔を隠しなさい、こうするのよ?」

「そうそう、ここでは貴方は遠慮なく外しちゃうから、男達には刺激的すぎるのよ?あなたは本当に綺麗な女の子だし」

「ありがとうございます、貴方たちが飢えない程度で構いません」

「あ、あなた血が出てるわよ?足から」

「へ?そんなことないはずですよ、腕が裂けようとも勝手に治るようにしているし、燃やされても凍らされても耐える私に血なんて―――――「子供が産めるようになったのね」」

「え」

「こういうときってウドゥー?」

「わたしたち世俗派だから知らないわよ、お清めなんていらないんじゃない?お酒とか用意してお祝いしましょう」

「禁止されたものはリュウヒメに捧げる、いいわね、アッラーも喜ぶはずよ」

「むむむむむむ」

「む?」

「なんであの男と遭うと止めた月経が再び勝手に始まるんだ…………死にたい、あと初経じゃないんで、はぁ、私の子達に会いにいくかな」

また一週間ぐらいしないと止めれないとリュウヒメは厭な顔をした。



実は彼女は既に自分と同じような境遇の子を拾い、育てる場所を隠しもっていた。

中には自分よりも年上、または同年代もいる12人の子どもたち。
なんとかなるべく汚い金じゃない金で育てられる子の数の限界が12人だった。
何処かの誰かみたいに食べずに、高く売れる動物を捕まえて売買して育てていたそうである。

龍の子

ドラゴンチャイルドと呼ばれるその子達は何れ、彼女の引退後、世界をまた震撼させる予定かもしれない。

「偉大なるマザーの為に、我々が世界を変える」


とか言い出すかもしれない。



そう。


この女はスケールだけは誰よりも巨大である。




でも


実際そうなりはせず。


その子達はちなみに末馬高雄に「君が育てていた子供たち命を狙われていたよ?」とか奪われ、どっかの裕福な家に引き取られていくことなり。

また彼女が激怒することとなる。


「そうだけど!?また!?また!?ふざけるなぁあ!!」

「え、なんで怒るの!?あと数日遅れていたら君への人質になってかもしれないんだよ!?」

「自分の子供くらい、自分で助けてみせるわぁ!!」

「あの君に対する大規模作戦の裏で行われたんだよ?土台無理だよ?」

「…………お前がいつも基本的に正しい、だが」

「だが?」


「キレるぞ―――本当に厭な男」

「え?」



我が子を奪われた龍はまた暴走する。


そうだ。


末馬高雄は良かれと思ってやることなすこと、大抵、彼女が一番やって欲しくないことをクリティカルで直撃する才能を持っていた。
救いようのない天然である。


下手に常識があるからタチが悪い。


「なに、山田ちゃん?俺がどうしたって?」


「リュウヒメが自分を大切にしないのは貴方のせいかもしれないわ」


「え?」






IF2 彼と彼女が逆だったら 暗黒編2


「ヒメちゃん」

「なんでしょう?」

私の名はリュウヒメと申します、かつて馬鹿な大学生の男でした。
所謂前世というものを記憶しています。
記憶しているだけで、女で良かった、とか思った瞬間、女になることを決めたので大体女のつもりです。
今のところ、女になって困ったことは一人でトイレトレーニングが大変でした。
下手に漏らすと、ボコボコにされてしまう生活を送っていたので、やっぱりホースが欲しかったと思うことが多いです。
これから大きくなって子供産めるのか、とか鼻から西瓜の痛みとか無理とかその前に生理とか絶対嫌だ、とか色々あります。

今のところは棒がない子供の気分で、周囲が大きく見えてまるでアリスインワンダーランド。でも実際はアリスインナイトメアです。

大きくなれる薬が飲みたい、今すぐ飲みたい、そう思います。

気味悪がれ、両親に捨てられ、ヤクザに売られました。

今はコンテナに大体似たような境遇の子達24人と一緒にすし詰めにされて売られて行きます。
私は踊り食いの部類の12人で、残り12人は裁かれて回転寿司のように病院を回ります。

早いか遅いか、ぐらいの差なので対して変わりません。

そう、結局はみんな全員売り物というわけです。

売られた瞬間から、私たちの命は私たちのものではなく、一枚のコインとして周囲の人間のチップとなりましたとさ。


そして皆不幸になっておし――――私は



それでおしまいにする気はない。

リュウヒメは思わず己の手を抑える、怒りでたまらなくなっている手を、まだ、まだだと暴れる獣を抑えるように。

そして今はリュウヒメは明るく言うのだ。
自分の言葉で誰かが明るくなってくれると嬉しいと。
誰かがちょっとでも耳にいれて、くすぐったく笑ってくれるだけで泣きたくなるほど嬉しい。

「世の中って結構薄暗いものですね、本当に、日本ってこういう暗黒世界がまだあったのかとびっくりしません?凛璃さん」

リュウヒメは自分より年上の女の子と話し合うことにする、彼女だけ周囲で一人、まだ落ち着いている。

お互いを名乗り合い、わずかな期間で二人は仲が良くなった。
この時、佐々木凛璃(ササキリリ)という少女は16歳、リュウヒメは5歳、時を超えた友情だった。


実際は暗黒の中で話しかけてきたリュウヒメのことを凛璃という少女は同年代と勘違いしているだけで、自分よりもヤケに落ち着いているリュウヒメにこれからを尋ねる。

彼女はリュウヒメと違いその容姿を見込まれ人身売買組織に夜道を歩いていたところを突然強引に連れ去られた少女で何も知らない。

薬か何かを嗅がされ、今目覚めたばかりの被害者だった。

気づいたら暗黒の中にいる、そして何処かから響く潮風の音に混乱していたところをリュウヒメに話掛けられ、なんとか精神を保っていられた。

最初の何かのどっきりじゃないですかーとかいい加減なことを言うリュウヒメに助けられ、しばらく会話をしているうちに、ん?でも、そんなドッキリなんてないだろ、私たちは芸能人

じゃないんだから、と気づいたあたりで。

ここでネタばらし。

「ねぇ、私たちって」

「これから外国に売られて臓器抜かれるかどっかの変態の相手をすることになりますね――私と貴女は変態の方ですね」

「っ!?「静かに」」

リュウヒメは叫びそうになった凛璃口を手の平で抑える。

「私たち以外には実は24人も此処にいます、多くの息遣い、そして涙を流しきり疲れ果てた人たちの荒い呼吸を感じませんか?」


凛璃は一気に恐ろしくなった。

潮風?

ああ、確かに潮風はする、だけれど、私は気づかないフリをしていた、こんなにも人の荒い呼吸がそこらじゅうから響いて、まるでこれは

痛みで喘いでいる。

ひゅうひゅうとまるで人が出す、苦しみの潮騒だ。


「貴女が一番最後に目覚めた人です、此処は一度大パニックに陥り、すぐに来た改造スタンロッド集団の電撃で皆さんお休み中なので静かに。
あとどうやら売り物は半々に分けるはずだったらしいですが混成メンバーらしいですよ私たち。
あと大人はいませんけどね、全員少年少女だけしかいません。
扱いが悪いのでご注意を―――――外国に到着する前に傷つきすぎると下手すると臓器メンバーになりますよ?
此処狭いから、走ると人を踏んだり大怪我しますから、骨とか歯が折れたりした人もいるので気をつけて―――ふぁう」

あくびを一つ、眠そうにリュウヒメはそう言う。
声音は酷くゆったりとしていて凛璃は不思議な気分になってしまった。
まるでここがただの電気を消された部屋でベッドの上だというような、寝物語を話すような落ち着きに。


「な、なんでそんなに……ヒメちゃんは冷静なの?あと眠いの?」

「夢をいつだって見てるから眠いんです」

「なにをいってるのヒメちゃん、私たちこのままだと「これを」


暗黒の中で凛璃の下に甘さが広がるのに驚く。

リュウヒメが凛璃の開いた何かを口に放り込んだ、見事にこの暗闇中でまるで見えるかのように。

「粉っぽい………飴?」

「ええ、ポケットにあったのでひとつどうぞ、滅茶苦茶甘いらくがんの塊で、飴ではありませんが」

「え?ありがとう?あとらくがん?」

「ほら仏壇の飾りの砂糖の塊です、私は仏様からこれを盗んだのでこんなところにいるっぽいんですよね?」

「ふふなにいってるのよ、ヒメちゃん、ありがとう―――――でもなんか湿気ってる」

「なぜ私は冷静か、湿気っているらくがん、そこにヒントがあります、わかりますか?」

「………え?」

「クイズです、なぜ?ちっちっちっちっちっちっちっちっちっち」

「え?ええ?えー?」

「ぶっぶー」

「え?」

「早押しなので、不正解――――――答えは、私の代わりに泣いてくれたから湿気っています」

「なにそれぇ?」

リュウヒメは思う。



周囲には子供たちがコンテナに押し込まれ、泣いたり、悲しんだりしていた、そしてすぐに泣くことも悲しむことも暴力によって奪われた。
精一杯現実に抗う彼らの声と涙をいとも簡単に奪い取る理不尽な現実に怒りが湧いた。

手を思わず握り込む、相変わらず収納すると指が自分ながらに細い、弱そうだ、そう思ってしまう。

私は冷静だった。

恐れたり悲しんだり苦しんだり泣いたりする暇などないからだ。

怒りを抑えるのに必死で、そんな暇がない。

もう私は誰かの不幸など見飽きて嫌気がさしている。
私は絶叫したいほどそういうものが大嫌いになってしまった。
見てるだけで、腹が立ってくる、これはもう病気だ、精神に異常をきたしているかもしれない、そう思うほどに。
体が熱くなり、拳がギリギリと握りこまれ、泣きたくなってくる。


脳裏に浮かぶ、己をこの世に産んでくれた二人の苦しみがフラッシュバックしてしまう。


泣かないで。
悲しまないで。
苦しまないで。
不幸にならないで。

そう心が鈍くなっていく、泥のようにそれが降り積もり、山になりそうなほど。


リュウヒメはそんな時はいつもあることをしてソレを抑える。

両手を組み、静かに眼を閉じ、祈り始める。

泣かないように
悲しまないように
苦しまないように
不幸にならないように
笑えるように
喜べるように
楽しくなるように
幸せになるように

黙々とそれを繰り返し祈る、それが彼女の癖だった。
一人で何もしない時の時間は殆ど、祈りの時間だった。


誰にも祈らない、祈り。


きっと誰にも届かない祈りだ。





元々宗教の神様はあんまり知らない、お経もよく知らない、ではそんな体たらくでは祈っても無意味と思ったのだ。


過去死んだとき、神様には会えなかった。

だから自分は自分の心の中にしかいないかもしれない何かに祈る。

だからただ黙々と祈ることだけで止める。



そしてやめるときはこうする。


ギュッと握しめる手を解き、再び個別にリュウヒメは両手を握る込むのだ。

拳を二つ作る。
そして手のひらを開く、すると、心が透き通る気がする、とリュウヒメは思う。
思考は恐ろしく冷静だった、頭に風穴が空いたようにすっとし、なんでも出来る気がしてくる。


一種のトランス状態に陥ってるのか、これは、と不安になるほどだ。

これを行うと、物覚えが良くなり、馬鹿だと思っていた自分でも驚くほど聞いて見て感じたことを冷静に判断することが出来るようになる。


そうだ、私は夢を見続ける。


誰もいないし、誰にも届かない祈りを現実にする、それがリュウヒメの夢だ。



「さて、どうやってみんなで脱出しますか」

軽くそれを口ずさむ、やりたいことを好き勝手に自由に口にする。
それだけで嬉しい、私はまだこんなにも生きているのだと誇らしくなる。


そして祈って言ったことは絶対にやり遂げる、それが彼女の誓い。

年齢も性別も関係ない、人間やりたいことをやって好きに生きればいい、誰かに迷惑をかけて不幸にしない限り、自由だ。





だから私の自由に全力を尽くす。


まずは準備運転を始めよう。



「饕餮」


自らの名前をそう名乗りを化物の名前に変える、それがたった一つの呪文だった。
怒りに震える獣に名前をつけてやる、それだけで獣たちは現実に顔をだす。


私には異形の力がある。

まだ幼すぎる故に、成人男性一人となんとか同じ程度の身体能力しかない。
全身で作られた、肉体を強化する特殊な異能的な力は回路となって体を廻っている。

胸にある謎の器官から汲み上げられるエネルギーを全身の血管や神経で構成された回路に通すことで奇跡を起こす能力。
体の容積が小さく、まだまだ脆弱な異能だ。
なにとなく、虐待の暴力に耐え両親を子殺しにしないように創り上げたもの。
あとついでにお腹が減りすぎた時、なんでも食いたいからなんかないのか、と思っていると手から和菓子が出せるようになっていた。

ああ、なにこれ――――わたしってなに?

MPLS?


そう疑問に思う謎の力に今も驚いたまま使っているが、大体二つだと把握している。

しかしながら、そんなことよりも私は無意識に変なものを顔に作ってしまった。

「この眠そうな顔………眠くなりそう」

リュウヒメは己の顔を指で触り、表情筋の動きを確かめる。
人の、いや動物の最も無防備な姿は睡眠時、故に私は敢えて他者に無防備な状態を模造した表情を作った。
独り言をつぶやく声音は穏やかで他者に不快感を与えないように計算づくされているだろう。
肉体の外から見える全挙動は、自動コンフィグされ、今の私は5歳の女の子として、大抵大人などに微笑ましく思わせる仕草を無意識にとってしまう。

なんとなく気づくとこうなっていた。


最初は母が私を少し気味が悪いと不安そうにしていた時、気づくと私は己を勝手に改造していたのだ――――――勝手に改造、ふふ。

あの漫画が読みたくなってきた、と笑いそうになる、あの漫画面白かったなぁと一人笑う。


それはリュウヒメの虐待の日々、能力とは関係なしに研鑽によって磨かれた対人能力だ。
両親を傷つけないように、彼らが幸せになれるようにと、無意識に作り上げたものだ。
それが悪循環だったのだ、彼女不快にさせないように、無意識に変化を始めたのだが、それで余計気味が悪くなっていく。
そしてますます彼女を恐れさせ、リュウヒメはまた失敗を重ね続ける。

そしてこの暗黒にたどり着いた。

彼女は恨んでいなかった。

むしろここまで憎悪されるとは、私はなんていう失敗をしてしまったんだと、後悔している。

彼らを酷い人間にさせてしまった。

自分の子をヤクザなどに売ってしまう、犯罪行為をさせてしまった。


彼らが願わくば、私などすぐに忘れ、楽しく暮らし、悩まれぬようにとリュウヒメは祈る。


「どうかお幸せにお母さん、お父さん」

「え、諦めたの、ヒメちゃんは?」

「いいえ、私はいつでもどこでも祈っています、彼らの幸せを、ほら、家族が幸せに暮らしていると思えば、きっと私たちも幸せになれると思えるでしょう?」

「そうだね」


そして今、私は此処にいるみんなを助けてみよう、諦めず、逃げ出さないで。


一生懸命頑張ってダメだったらそれはしょうがない。


だから、己を恥じないように、往こう。


「よし、とりあえずよし」

その決意は聖なる誓いだった。










末馬高雄は目の前の現実を受け入れる。

たつきという一度だけすれ違った女の子の両親は警察に捕まる直前に首を吊って、自殺していた。

凄惨な光景を受け入れる、若き青年はそれでもその現実に屈することなく、前に進む。

「すまない、たつきちゃん、俺は、君の両親を殺してしまった、だけど……君だけはなんとしてでも助けてみせる」

初めて本当に自分の手で助けたい人を見つけた。

前世の知識を使い、生き易いように金儲けを繰り返した、だが楽をしようとすればするほど多くの醜い人間しか周りにはいなかった。

だから。

私は正しく生きよう、現実に歯向かうためにさらに力、金を手に入れていこう。
そうして生きてきた。
その中で、一人の少女を見つけた。


「ああ、俺は誰かを助けてみたい」


純粋に助けたいと青年は思い、奔走する。

両親に頼み込み、妹として引き取る準備も始めた。


それが悲劇の始まりだった。

あまつさえ、捕まえた原因の本人が後日、彼女にそうやって会いに行ったことが悲劇だった。

もしこの時、彼女を青年が見咎めなければ多くの人々を救い、多くの人々のために生きる、最高の女性になれるはずだった。
勤勉で真面目で、ずるをせず、諦めず、少しずつ研鑽を詰み、成長していく。

そういう普通の女の子として。

世界を見て周り、様々な冒険を繰り返し、傷つきながらも多くの人々と触れ合い、沢山のことを知り、最後は日本でまだ生活している両親の元にもう一度、顔をだし、本当の別れを告げ、また新しく歩きだす立派な女の子へ成長するはずだった。

そして小さなところからゆっくりと暴力ではなく対話で人を救う女性。いざとなればしょうがなく正義のヒーローをやる。


正真正銘の聖女になれるはずだった。



両親が誰かのままでいる情報で捕まった場合、その墓にでも泣きながら挨拶でもしてまた歩き出せた。

だがその本人が現れたことにより。
彼女が捨てた負の感情を一気に呼び起こした。
白に染まっていた彼女は一気にどす黒く変色する。

野生の花は野生のまま育てるべきだった。



リュウヒメ


堕ちっぱなし。

心はぐちゃぐちゃ。


末馬高雄。

空気、というか運命が読めない男。
下手に正義感があったため、大失敗する。

鉄人だったら完全に救ってみせた筈。

女心なんて全然わからない男。

基本的にいい人だけど、こういう失敗が多い。



あとがき

大体こんな感じ。



[36072] IF2彼と彼女が逆だったら、暗黒編 閑話 アンサイクロペディア編3/26追加【15禁】
Name: みさりつ◆2781aa24 ID:4563c076
Date: 2013/03/26 18:11
それは不思議な酷い出会いなの編 続き


妙子がゲームに夢中になっているあいだ

二人が5分間程度お手合せしたあとの話。

達馬が無駄に赤い服などを吟味していた。

「コスプレ?」

「私の仕事服です」

リュウヒメLV99

装備品 聖骸布の赤い外套※無駄に格好良い
    聖骸布の赤い長いマフラー※無駄に格好良い
    ヒヒイロカネの異形の面※無駄に異形
    しんようの毛で作られた赤い手袋※無駄に格好良い
    ダマスカス鋼で作られた赤いバトルブーツ※無駄に格好良い


が5千円のスポルディングのバックに入ってました。
ゲームを入れてきたバッグに気になった時、リュウヒメという少女は快く見せてくれた。
青っぽいスポルディングのスポーツバッグとは、よくわかっていらっしゃる。
ブギーポップが好きなものとしてはわかるよ、それ。

いざとなったら普段着の上にだろ?

でもな。    

マジでやることないでしょ。

どっちかというとグレートサイヤマンですか、貴方は。

しかも全部

「まっかっかっかっか、もーえてるぜ?」

「達馬君、ドン引きしないでください、メダロットじゃないです、そこまで装飾はメタリックじゃないです」

まぁ頭部破壊されても大丈夫そうだな。
それ着用してたらそもそも頭部は破壊されない気がする。
どんな必殺の攻撃食らっても、仮面の目の部分だけ壊れる感じ。

かっこいい。

メタナイトぐらい格好良いぞリュウヒメ!

「あ、ごめん、その外套ってトライガンとブギーポップの混合パクリだよな?」

「いいえ、デザインはパクリじゃないです、ちゃんとしたオリジナルですよ」

「え?」

「えーと前、自分の世界の漫画家で私を格好よく描いていたイラストみつけて「これを私の衣装にしよう」って決めましたし」


リュウヒメ第2期フォームチェンジバージョンである。

映画化決定したら、格好良くなってエンドレスワルツ始まりそうな感じ。


「地獄への道連れはここにある兵器と戦争だけにしようぜ!!」

「なにいってるんですか達馬君、Wガンダムでも観てたんですか?あとあなた直感で私が普段何やってるか命中させましたね」

「あ、妙子さんと昨日DVD版見てた」

「あれヒイロがウイング・ゼロ・カスタム乗るとき、トゥーミックス掛かりませんよね」

「こっちのはちゃんと歌が流れるよ?」

「え、DVDコピーさせてください!」

「いいよー」


妙子さんが大変お怒りでした。

「なんでそういうことするかなぁ………よし!サン○イズに電話しよう!これだけはファンとしての我が儘!いくら金積んでもいい!」

この世界で最近発売しなおした奴はちゃんと音楽がオプションで選択できます。

ちなみにこの衣装。

能力自体イメージ主義なので、これを着てから実際の戦闘能力が向上した。
謎の剣士に負けたあとに編み出した第二形態である。
仮面だけはそのまま、これが一番デザインが異形なので。
最初の頃はボロを纏って自分でチクチクやって直し直し使っていたが、一新された新装備である。


その漫画家、売れないマイナー漫画家だったのだが、それをやられて、気絶したそうだ。

廃刊になった漫画に落書きで一回載せた国際テロリストのイラスト。

ピンポーンと言わずにいつの間にかD・Pが隣に立っていた。
丁度玄関の近くにあるワンルーム使用の台所でインスタントラーメン作っていた時であった。

「え?」

「いいですか?使って――――っていうかもう作っちゃいました。あとマルちゃんの味噌ラーメンですか、気が合いますね、出身は北海道ですか?あなた」

「え、コスプレ」

「本物ですけど?」


男の麺をかき混ぜていたラーメンはもうそろそろ丼に移す頃合だったのだが気づくと、水溶き片栗粉であんかけみそラーメンにされていた。
恐ろしい、種も仕掛けもない、人力手品である。

「まままままっまままじでD・P!?―――――俺の漫画読んだのかよ!?そういえば日本の漫画は欠かさず読んでるとか取材――」

ぼくのかいたかっこいい国際テロリストのイラストのまま本人が、栃木県のこの何も変哲もないレオパレスに普通にいるよ。

神出鬼没ってまじなのか。


「ゆ、ゆめーだろあははははははあっははは―――――「たんまです」

「ちょっと、気絶する前に許可してくださいよ、ちゃんと色んな職人さんが貴方の絵の通り作ってくれたんですから」


どんな材料で作ったか一々説明してくれた。
気絶しそうになると、股間を掴まれ「元気、元気、小さくとも元気」と刺激された。

勘弁して。


許可しないと俺殺されるじゃん、世界に。






達馬はその話を聞いて、「こ、こくさいてろりすと?」とか思うがまず、このような綺麗な少女に股間を握られ「元気、元気、小さくとも元気」と言われた同性を同情することから始めた。

「か、かわいそうな話だな、それあと材料本物だったりしないよな?」

なんかどっかのエロゲに出てきそうなアイテムだ、しかもアチャ子版トライガン&ブギーポップ外套って感じ?

取り敢えずデザイン主義、実用性なし。

まさかこんな

「そうですけど?――――――――全部本物ですよ?聖骸布きっちり使ってますよマフラーと、外套に」

「はぁああああああ!?歴史的文化遺産!?歴史的文化遺産を材料にっ!?それでオリジナルコスプレ作ったの!?聖骸布にミシン入れたの?あのボロ布にっ!?」

今の俺は百均の赤い布切れにミシン入れるのが精一杯だぞ?
2年前のクリスマスの時、足りなくなって、妙子さんから少し頂いたんだぞ、高い講習用の布、あれさえなければ完全に自費負担だったのに、くそう。

「違います、皆がくれたんです!……あとボロ布って、ミシンって、これはトリノのやつじゃありませんよ」

「もしかしてそのお面――――何の金属で出来てる?俺、壊せる気しないんだけど」

「ヒヒイロカネらしいですよ?手袋はしんようという動物の毛を織り込んで作っているそうです」

「おい、本当に何してきたの君――――レプリカだよね?勿論、アキバで買ったんだろ?」

「まぁなんか壊れないんで便利ですね、魔力通すと成長に合わせてサイズも変わりますし、あと私の世界の日本ではアキバに私のやつ売ってますよ偽物」


中二病の格好が全部本物で作られとる。

すげえ!

かっけええ!!

中二病マスターだ。

ていうか本物じゃね?


そこまでいくと。





「スケールでかいな、世界の命運握ってる?」

「握らせられました」

「俺も、気をつけよう………ずすかんの家によく怒られてるし「また青函トンネル潜って北海道にこっそりスープカレー食べにいったでしょ!?達馬君!」とか怒られるし」

俺だと、どうやっても「珍獣かUMA」にしかならないと思うけどなぁ、と達馬は笑う。

「達馬君はやることなすこと――――――言っていいですか?怒らないでくださいね?」

「しょぼいんだよなぁ」

「ええ、全力の私を貴方は能力を殆ど使わず軽く片手で倒せる癖に、なんで――――いいです、もう、いいですカウンターの一撃で負けたし、私は……」

「いいじゃん別に。5分勝負だったし。だから長期戦入ると絶対俺負けるぞ?ちゅうか全開であれだから、超腹減った」

「ですが」

「リュウヒメとは二度と手合わせしたくない、怖いし」

「ありがとうございます」


全然負けて悔しくない。


だから。


この少年は何処でどんな努力をしたのだ?とリュウヒメは思う。

見た感じだと数年前、2年前に?

何があった?



手も足もでなかったのだ。

同じ己の可能性の中で最弱な筈なのに、。
見たところ、これ以上能力は生涯上昇しないだろう。

無意味なリミッターをいくつも設けている。


私が能力では平行世界最強なのに。

いまのところ平行世界移動できるの私だけだし。




■■型レアスキル。


私の方ではそのまま「D・P」と呼ばれた究極の能力。

「なぁこれからスープカレー食いにいかない?」

目の前の自分は笑って言う。
己とは違う天然の眠そうな表情。

眼だけは見ているだけで「天敵」ということがわかってしまう眼だ。


恐ろしい、同じ自分なのに。


「え、いいんですか?」

「海鳴にも店出来てさ、そこさ、一切水を使わず、野菜だけで水分を出して作るスープカレー、マジでうまいぞ?妙子さーん」

「えー丁度お昼に「そっちにしましょう!妙子さんの普通のカレーが世界一好きですから俺!」

「どっちにしろやったあ…」

「俺も超やったー!!YATTA!!何杯おかわりしていいの!?」

「好きなだけしていいよ」

「YATTA!YATTA!」




でも。

うんこいつ、絶対何も考えてない。






昔の「俺」のままだ。


いや、此処までではないだろう、いや、どうなのか、もう少し、昔の「俺」は面倒くさがりだった筈。

あんなに自らを鍛えることなんてしない、本当の普通の人間だった。


阿鼻叫喚する地獄の修練を乗り切る人間ではないはずだ。

2年前には今の私と同じ修行廃人やってたぞこいつ。

能力の上昇がそこで完全に止ってるし。

修行廃人になると能力上昇ストップするのだ。

能力が上昇すると修行や鍛錬の効果が下がるからだ。
新しいスキルを覚えると、熟練度がなくなる、とかそういう感じに。

例えば、いつも100キロで運転する車の腕に慣れたあと、いつも1000キロで走る新しい車に乗る、というような無意味な感じに。

性能にあった訓練を身に施さないと私たちは逆に固定観念によって弱体化する。

達子さまはそれを知っているのか、どちらかというとタクティカルスキルを学習したそうだが。

肉体を業としてではなく、武器として鍛え上げた。

こいつの場合は心技体の一体化。

なんというかやりくりが物凄い上手。

強化をここぞという時に使ってそれを一撃必殺にするタイプ。

「さっきバトルして超腹減った!」

「何歳になってもわんぱくだなぁたっくんは」


分類すると

私は怪獣、達馬君は武術家、末馬達子様はプロの傭兵という感じか。

回復役と魔法使いが欲しいパーティーだ。

カレーをいただきながら、そういう妄想を膨らませる。


でも取り敢えず。

末馬達馬はきっと。



きっと脊髄反射の馬鹿なのだ。

だから私たちのようなやつらは脊髄反射で負けてしまうのだ。

末馬達子様でさえも見た感じ此処まででは……うーん。

「あなたずるいですね」

「おかわりは自由だろ?リュウヒメもいっぱいおかわりしようぜ」


自分との100人バトル修行、最後の最後で異性の自分に負けてしまった。

末馬達子はイレギュラー。

末馬家に生まれたし。


しかもあの人、二人目妊娠してたから、戦えなかったし。

「今日でタカくん16歳だしケコーンできるね!!実は二人目…」

「男は18からですよ」

「あ」

「あって――おい、二人目って―――――おい」

「ごめんなさい」


「今度ばっかりは許しませんよ!また無計画に!最初の時もそうでした!そういう感じでした!」

「マジでスマンってかタカくんも一つの原因ですよ?しかもあれ事故だし、許されるだろ」

「17には2児の父とか、普通ありえないじゃないですかぁ!!日本で!飲酒逆レイプが許されるなら飲酒運転での事故だって許されちゃいますよ!?」

「え、結構いるんじゃない?不良の子とか」

「そーですかーそーですかー僕は不良なんですね」

「タカくんは良い子だよ、うん私が良く知ってるから、大丈夫―――――ごめん、だから、○○○だけは、あれ元男として超屈辱なんだよね」

「もー!今から高町家にいきますよ!あと人の居る前で人の性癖暴露しない!!あと避妊対策だし!その割には凄い悦んでるじゃないですか!」

長い髪を口に一本加えて久悦と恥辱に頬を染めるイメージが浮かぶからやめて欲しい。
末馬達子は物凄い美人さんなのだから。

そういうこと言われると想像するじゃないか苦労しているからマシな高雄め。


「そっちも結構ノリノリじゃん!?――――ああ、また桃子さんに「達子さんって人の盗るの好きよね?」とか言われるーあの時の高町家大家裁以来の地獄が……。
無駄に健康的な味気ない食物ばっかり食べ出せられる日々が……」


「あれは………きついですよね……って!今度は僕もでしょ!?僕も悪いとかなるでしょ!?やだ、絶対ヤダ!」

「ハハハハタカくんも恐れる健康毎日料理だぞ!365日もろみなんちゃらとかそういうのばっかりだぞ!
ああ、よしよし、おなかすいたのねーママのミルク――でも二人目だよ、こんなにいい子―――私も歳だし、毎年行こう!このまま野球チームつくろうぜ!」

「達子さん………いいんですか?」

凄いこいつらの周りにいたくない。
なんというバカップル。

「……あ、全然お相手出来なくて、すいませんヒメリュウさん」

「あ、ごめんなヒメリンリン、こっちで騒いで」

「い、いえ……おめでとうございます」

とか滅茶苦茶気まずい感じだったし。



それはいい。


そもそも、自分の平行世界の男の自分は皆、9年前に行方不明から死亡扱いで戸籍から抹消されているか5歳で抹消。


皆、臓器として売りに出されているか、その前に虐待で死んでいる。

彼一人しか生き残ってないのだ。

平行世界の可能性からも消えた男の唯一16の自分。

末馬達馬。

これから先どんな「妙子さんのカレー!カレー!辛いぜ!辛くしてくれる、妙子さんは辛いもの苦手なのに俺のために………幸せの味です!ヒーハー!」

「おおげさだなぁ」

そういうのないと思う。

あと

「カレー超美味しい、これはお母さんの味」

「だろ!?」

「お母さんの味って………お母さんの味って…」

末馬妙子様をみてると思う。

高雄、お前はやっぱり女で生まれてくるべきだった。

少しはTSでもして自分に悩め。

天然のままだとただ鼻につくだけなのだ、お前は。

「妙子様」

「ん?」

「結構苦労してきました?」

「うんわかる?……あなたもTS転生者だよね、ああ、アタマコネッタさんよりも何かTSの苦労を分かち合える気がする」

「今も苦労してるよこの人、よくトイレとか便座下ろすの忘れて一人で嵌ったりするし」

「ちょ、たっくん!それたっくんがちゃんとあとで便座さげないからだよ!」

「あ、俺のせい!?すいません!まじで!」

「使ったあと便座さげないのはいけませんよ達馬君、あれ迷惑ですから、よく間違えるんですから私たちって。
小で便座が上がってるのが当たり前なのと、座るのが当たり前なものがぶつかりあって」

「矛盾発生で思考停止するよね」

「はい、よく今でも私でさえやって洋式トイレの便器に落ちます」


今回家出の原因それだし。


なにが「うわ、国際テロリストなのに――――ははっ間抜け―――あ、ごめんつい」だ。


マジで腹立つ。

本気でぶっ殺したい。

あと達馬君連れて帰っていいかな?

「なんか不穏なこと考えてない?」

「いいえ?」

決まったぞ、私の真の方向性が。
私は龍の戦い方を学ぼう。

「元の世界に帰ったらアルザスに行こう」

「なにそれ?」

「どこそれ?」

そこで私は最強になる。

そして、その時は再戦だ―――――高町士郎!

私の場合だと桃子さんは許してくれてよかった。

知らないって幸せ。






ここまでいくと、止めたくても、もう止まれない件byリュウヒメ



やりすぎ龍姫伝説。


大盟約が行われた。
日本各省庁にも秘密裏にされ、総理大臣にも秘密にされた伝説である。
日本の神職関連の重要人物のみ、その契約を知っている。

「皇室に会えるとは私も出世しましたね――――――どうしよう?もう後戻り出来ない感じがして気絶しそう」

「リュウヒメ様、今更ですよ?」

「凛璃、昔みたいにヒメちゃんでいいよ?」

「紀弥が横にいなければそう言いたいのですが」

「一応こういうの大事、今時忍者なんて流行らないんだから、せめて格好だけは、ね?」


私の事を様と呼ぶのは鉱凛璃(アラガネ リリ)

自称私に仕える忍者。
過去に一度あの黒歴史時代に助けた時、私のことをずっと覚えていたそうであり、私に勝手に忠誠を誓っているらしい。

自称忍者って。

もうそれは自傷行為なのでは?

と思うが、この人は日本にたまに訪れるさい、ズズムラの次に出会う頻度が多い日本人だ。

ガチで忍者の子孫らしく、夢を見ていた時の私に惚れたらしく、普通の家庭から、親戚の忍者の技を伝える家の子になってまで、私を待っていたそうである。

忍者の子孫の癖に昔、簡単に人攫いにあっていたが、それなりに実力はある。
情報戦専門らしい。

私の対末馬高雄戦の秘密兵器である。

彼女は末馬高雄の情報収集能力にさえ引っかからない、隠密である。

此度、私がお見えさせていたただける方とのパイプを繋いだ人である。
日本での私の身の回りを勝手にやってくれるお手伝いさんだ。

ちなみに鉱紀弥(アラガネ キミ)には「どうせならでっかい主君に使えてみたいねD・Pなら丁度いい」と忠誠を誓われた。

不思議な話だ。

私は戦国時代にでもいるのだろうか?

銃弾の世界で――――ああ、私を瞬殺するサムライ生き残ってるから不思議じゃないか。

「どきどきしてきました(昔、旗振ったことがある御方に会えるとは―――――皇室料理食べさせてくれるかな?」

羆に襲われたときよりも心臓がバクバク行きました。

そして

あっちゃった。

「主上――――――正しくお力添えが必要な時、私は雷鳴よりも速く出て、大海よりも広く御国を守護することをお誓いしましょう、しかしながら私はどの地平線にも属さぬ一匹の龍でごさいます、この盟約を交わすことは悪でしょうか?それでも―――――それでも私はやっぱり日本が好きなのです」

とかマジで言ってしまったあと、これ現実なのか、と首を捻って、恐ろしすぎてその日はご飯も喉に通らなくなり。
少女はそのあとタジキスタンのとある夫婦の家でバタバタと布団に顔を突っ込んで「うーうーうー」とうなり続けた日であった。

「どうしたリュウヒメ」

「現人神にあっちゃいました」


やってしまった。

やってしまった。

やってしまった。

ヤバイデス。

鷹揚にこう仰られて、死にそうになった。

「貴女のなされたいことをしなさい、人の形をした龍よ。龍を人に止める権利はありません」

「私のことはリュウヒメとお呼びください神の末裔よ」

「好きに飛び立つといいでしょう、いつでもまたおいでなさい」


とか言っちゃった。

言われちゃった。

なんか周りにすごい神官さんとか陰陽師っぽい感じの人に囲まながら、約束しちゃいました。

日本がやばいとき力貸しますって。

中二病が――――――――やばい。

私って、あほでしょ?

契約の証として、なんかもらっちゃいました。

仮面をリュニューアルしましょうか?と私の下手くそな気持ち悪い仮面を頑張って作り直してもらいました、何か不思議な金属だそうです。

日本の世界遺産系神社とかからのご提供でした。

この前、ほ――――様から、新しい赤い服作ってもらいました。
ダーズなんちゃらっぽい方に冗談で「赤い聖骸布とか現実にあるんですか?赤い聖骸布コートとか格好良いですよね?」とか聞いたら、本物を見せて頂いて楽しかったです。

たまげました。

私が手に持って、つい赤をイメージしたら、綺麗な赤色になったのには相手方もたまげたそうですね。

私もびっくりしました。

何か布地も増えたそうです。

それ使って、私の服を作ってくれるそうです。

私はどこの英霊だ?


いいの?


どエライ枢機卿全員からの賛成を受け、作成をして戴きました。

ちなみに埋葬機関はなかったです。

いたら戦ってみたかったのに。


「これエレナの聖釘?ヘルシング読んだあと調べたグーグルの画像検索で見たことあるやつとは違いますね、本物?――――――心臓に刺したら全身が茨になります?」

「なりませんよ、それはこちらの外套の一番上のボタン止めになっております、一度煮溶かして使用されています」

「本当ですか?」

「ええ、現代の新しい伝説には伝説を、とのことです」

約2000年前の釘4本使っちゃったの!?

「あと三本あるので構いませんよ?」

「え、いいんですか?――――――よくないでしょそれ!!1本でも!」

「布もトリノとは別の方を使用されておりますので、気にしないでください」

「気にする!!絶対気にする!!」




どうしよう?




私、世界の命運とか握らなきゃだめ?




色々期待され過ぎて怖いとです。
全員に極秘であっています、でもたまに恩を仇で返します。
社会情勢とか気にしないで戦ってるので結構その伝の方に被害いったりしてます。


最悪すぎる。
バチカン、チベット、日本は絶対攻撃しません。
怖すぎて。
次、アメリカ牧場の牛さんとかに生まれ変わったらやだし。



※ニューヨークでの件の放送後、高町士郎に敗北したあとです。



それもこれも。




全部元々、ふらふらしている時に凄惨な虐殺現場を見つけて、腹が立ってぶっ飛ばしての繰り返しを行ってきたら、こうなりました。

世界を焼き尽くしたくなるような目から火が付きそうな様々な場所で起こる悲劇を見てしまったからには止まらないのだ。




私はもう、そうするのが当たり前だった。
どんなにそのあと行なったことによりさらに悲劇が起きようとも、さらにその悲劇を粉砕する。


最初のころは結構きつかった、今はもう慣れしたしみすぎて、当たり前のことだけれど。


「ぱんぱんぱらら、ね、こんな音が本当に聞けるとは――――随分平和から遠くへ来たもんですね私も」

血と肉と骨、こどもの泣く声がどんどん小さくなっていく。
人々の死の絶叫。
弾丸の渇いた音。
身を炎に焦がし、己の意志を世界に訴える人。
燃え尽きる匂い、人が焼けていく匂い。
自分と同年齢の腕を失った少女の花が開いたような優しい笑顔が萎れていく。
縛り付けられ、悲鳴を上げながら、のこぎりで切断され、それを見て笑う人々。
すがりつく者、すがりつかれる死んだ者。
ばらばらと逃げ惑う人々にバラララララと容赦なく放たれる、やすっちい鉛玉。


そういうものをみると後先考えず私は名乗る。

そうするしか出来ない。

前世では知識で知っていたことを、見て聞いて嗅いで感じて行く。


さぁ私は誰になる?

現実の風を受けて、涙を流しながら、嗚咽を出すのか?

膝を折って、震えている?

反吐を吐き出しえずいている?

違うだろう?


邪悪に祈れ。


人に恐れられるのが大好きだ。
人に褒められるのが大好きだ。
人を殴るのが大好きだ。
人を傷つけるのが大好きだ。

人の不幸を眺めたい。 
人の苦しみを味わいたい。    
人の涙を飲み続けたい。     
人の悲しみを喰らいつづけたい。 


全ての絶望をおなかいっぱい食べてしまえ。


さあさあさあさあさあさあさあさあさあさあさあさあさあさあさあさあ
さあさあさあさあさあさあさあさあさあさあさあさあさあさあさあさあ
さあさあさあさあさあさあさあさあさあさあさあさあさあさあさあさあ
さあさあさあさあさあさあさあさあさあさあさあさあさあさあさあさあ
さあさあさあさあさあさあさあさあさあさあさあさあさあさあさあさあ
さあさあさあさあさあさあさあさあさあさあさあさあさあさあさあさあ
さあさあさあさあさあさあさあさあさあさあさあさあさあさあさあさあ


どうしたい?


決まってる。

さぁ、立ち上がろう、拳を握り、強く強く声高らかに叫べ。

「私の名は―――――リュウヒメ!!そこをどけぇええええええええ!!」

「D・P!?」

「D・P………嘘だろ!?」

「に、にげろ」

「さぁ、これから私は貴方たちを喰らう――――逃がさないぞ?」

私は前に往こう、脳漿が頭から流れ、虚ろな眼窩で己を眺めるこどもたちを忘れない。
裸に剥かれ、いたるところから白い粘液で汚れた女性の全てを絶望した眼。
腹からとめどなくぼろりぼろりと落ちていくブニュブニュなものを抑えたまま私を見る太った男。
血を喉から垂れ流し、ふらふらと虚空を見つめるやせ細った野良犬のようにただ、ただ動く男。

ひゅうひゅうとぎょろぎょろとこちらをみる眼差し。
沢山の眼差したち、私には何度も何度もまるでビデオの巻き戻しの繰り返し、ああ焼き直しだ。


忘れない、私の記憶から


あああああああああああああああああああああああああああああああ
あああああああああああああああああああああああああああああああ
あああああああああああああああああああああああああああああああ
ああああああああああああああああああああああああああああああ
ああああああああああああああああああああああああああああああああ

あああああああああああああああああああああああああ

あああああああああああああああああああああああああ

あああああああああああああああああああああああああ




「ああ、逃がしてなるものか」

全てを喰らう。

中には「D・P」と言って死んだ人間もいる。

私の足を掴んだまま、「助けてと」死んだ子供も居る。

私に向かってきたチャイルドソルジャーが私に助けを求めようとして後ろから撃たれ殺されたのも見たことがある。

私は馬鹿でも無駄なことを覚えているタイプだ、ひとりひとり記憶しよう。

ごめんね、助けれなくて。

ああ、だけど、知らない。

所詮私は人間だから。


結構あなたたちはどうでもいい。

いくら死んでも気にしないのだ。

死体を踏まないように走り、たまに踏んで砕き、弾丸の雨に向って突進していく。
生ぬるい風、血臭を帯びた風を受けながら、まっすぐに私は走る。


「それが私の選んだ道――――――だから前に進もう!!それが私なのだから!!」


ほんとうに前に進むのをやめたときこそ私の死。

だから末馬高雄――――――お前は邪魔だ。

お前は確かに正しい、私は間違ったまま此処まで走り抜けてきた。

私は誰かに助けて欲しいなんて思ったことはない。

私は助けてという声を聞くが、私は死んでも助けてとは口にしない!!

私は絶対に言わない、それが私の守り抜かなくてはいけない魂だ!

それが私の信念。


逃げない、引かない、媚びない、悪びれない、怯えない、まっすぐに――――永遠に進み続ける。


「ただ未来永劫戦い続けよう」

それが私の誇り、私の全て。

私が泣いたり苦しんだり悲しんだりする場所は墓の下にさえ最早ない。


それでも


雨を避けれても雨に打たれたい時はある。

「オォオォォォォォォオオオ!!」

弾丸の雨を受けながら私は咆哮する。

女も男も捨てて叫び、拳を振るう、

まずはそのくだらない、黒光りする鉄の弾丸発射機を破壊する――――――銃は大嫌いだ!!
人はさっさと殴りあうといい、そっちの方がよく分かるだろう、人を傷つける痛みが。
さぁ人間の原点の武器、拳から始めろ―――――それが最強だ。

「貴方たちは、指ひとつで楽しすぎだ―――――――全て私が没収する」

弾丸を撃つ努力をするもの達を容赦なく打ち砕く、そんなもの努力とは認めないと傲慢に何処までも傲慢に。


そしてやはり最新兵器の銃よりも多くの人々は昔ながらの大量に製造された50年以上経った銃を使うことが多いと気づく。


金の問題なのだろうか、いやなんだか違う気がする、どっかの国から多量に資金を提供されててもあんまり最新兵器を使う人間が少ないような気がするのだ。
最新すぎて、結構皆さん使いこなせないパターンが多い。


私にそういうの使ってくるのは三角部隊とかそういう系の人たちばっかり。
なんでも専門で極めないと、録に使えないそうである。


長年使われた信頼性と安定性、そして―――――――それが人間の限界だと錯覚してくる。


私の為に作られた前の世界にもなかった最新型の銃はすぐに廃れてしまったそうだ。

こんなもの、普通の人間に使えない、と。

簡単に使えて人が簡単に殺せる銃が一番だそうだ。
それよりもロボット作って搭載した方がいいと言う。


国連で可決したことで凄いことが一つある。


D・Pには南極条約で禁止された武器を使うことを許可するものとする。


天衣無縫すぎる条例です。

「使えるように努力してくださいよ、皆様、私は一切努力しませんから」

揺れる炎の中で私は壊れたものを睥睨する。
諦め、座り込んでいる殺戮者たちが力なく座って、目の前に起きた現実に壊れかけている。

「そ、そんな馬鹿な、ことが………」

馬鹿め。

どうせならトライガンに出てくるパニッシャーでも使えるように努力しろ。

だからこんな薄っぺらい私が有名になってしまった。

あの謎の剣士のように、極限まで己を鍛えてから、私に挑戦しろ、特殊部隊の兵士たち。


銃弾に「何か」が篭っていない。

私はヴッシュ・ザ・スタンピードの「ただのガンマン」に勝てる気がしないのだぞ?
裕福なものは綺麗に塗装された成金銃を、貧乏なものは日本円で1000円で買えてしまうAKを。


そんなものが


名銃?


最高の銃?


そんなもの全部噛み砕いてやる。

ある程度撃てるぐらいで私の前に立ちふさがるな。


数メートル先の音速移動する薄っぺらい私に全弾命中してやるハンデなしで、今度は当てて見せろ。
すれば、後ろにいる私の後ろに居る人々なんて撃たなくてはいいだろう。


あとな、そんな馬鹿な、というやつが大抵雑魚だ。

「ある程度いくともう、銃なんか使うよりも肉体で戦った方が手っ取り早いぐらいになれますよ?」

とぶっ倒した人間達にアドバイスする。

「それは……D・Pだけだ!」

「いや違います――――――私よりも強い人間は居ます」

「そんな馬鹿な………それよりも死にたくない……助けてください」

「さっきそれ、貴方達が殺してきた人間が心底思っていたことですよ?」



そして周囲には怒りの視線。

赤い匂い。

むせ返るような憎しみの香りを感じる。

「D・Pその人たちは私の親を!!殺せ!」

「子供を殺した!殺せ!」


殺せ
殺せ

ころせ!
ころせ!
ころせ!

憎しみのコーラスが始まる。

己が弱者から一点姿を変えた瞬間に発生する人間の変貌。
争いを憎む悲哀の心を失い、暴力を望む心に染まる人々の声。


復讐のコーラス。

私たちがそうなったからお前もそうなれ。

大切な人間を失った悲しみを忘れ、憎しみだけでその声は生まれる。
悲しみにくれるものの多くは、私よりも死者の元に走っていく。
残るものは、殆どが何も失っていないものたちが多い。


思わず―――――大地に大穴を開ける。

そのコーラスを私はいつも拳で止めるのだ。

黙れ。


「五月蝿いぞ!」


「ひ……」


人は弱い。

だからこそ、私が怪物になってやる。

その弱さを喰らってやる。


「貴方たち…………そこまで私に頼るな、その言葉を吐けば、お前たちも私の敵となるぞ?
私の前ではそれは許さない、私が消えたところで好きなだけやるがいい――そうすれば私はまた此処に現れる」


王者のようにリュウヒメはそう言って、全てを薙ぎ払い姿を消した。
仮面の下に眠そうな微笑みを浮かべたまま。

「きょーも、変なテンションで暴れましたね、また変なこと言われるんですかね?テレビとかで」

帰って結局しょうがないからリュウヒメは一人もぐもぐとパンでも食べてふて寝する。
365日基本的にそんな感じの生活を送っているのだ

ただ、ただリュウヒメは思う。

私はどうしようもないほど、うすっぺらい12歳の女の子だった。




それは不思議な出会いなの。







「ダメと言われたら行きたくなるの!!」

「そうや!」

「うん!」

「私もついていっていーか?テレビで北○鮮って国なくした、すげえやつだろ?レッドドラグーン面白いし」

D・Pに手によって彼処は全ての軍備を粉砕され、今まで甘い蜜を吸っていたものたちは何処かに散り散りに逃げていった。
今ではアジア難民を受け入れる自治区となっており、様々な人種が共存する場所になっていた。

抑圧されてきた国はゆっくりと平和の息吹を取り戻し始めたという。

どの国もD・Pの守護により手が出せない、アジアの第二のソマリアとも言われる場所だ。
ブラックホークが龍に食われるのを誰もが恐れている、


本当に怖い実際にあった話。

伝説になったのはリュウヒメ当時8歳である。

「昔から目についていました、だからやりました、取り敢えず」


そう言い切って他は答えない。


これが代表的なD・Pの一番大きな伝説だ、この世界でD・Pを知らぬものをは居ない。
現代歴史の教科書にでかでかと記載されている。
D・Pは魔力があるが、闇の書事件では守護騎士達はあまりにも危険と手を出さなかった人物である。

噂に聞くと結構日本びいきらしく、それだけで結構国連から日本が睨まれているが、それでも誰も文句は言わない。
常に様々な国の新聞を暇つぶしに眺めているドラゴンの逆鱗には誰も触れたくはないからだ。

いつも、次の私の戦いの場所はどこかなーとか言っている、怪物なのだから。
この世界、チベットに普通にダ○○ラマがいる、滅茶苦茶ヘンテコな世界になってきている。


D・P抑止力と普通に教科書に載っている。
第97管理外世界は無音の神出鬼没の超音速の怪物が毎日暴れまわっている世界なのだ。
末馬達馬と違い基本の速度がソレだ、勝てるものはまずいない世界。



週一回はテレビの特集があるという怪物具合。


ハリウッドは映画化に踏み出そうか迷ってるが「リアルよりリアルに作成できんだろ」と諦めている。
Youtubeで見れば十分な活躍なのだ。


「それ聞くと怖くなってくるからやめて欲しいの、前にニュースで空母沈めたのとか見たし」


「取り敢えずレムリアァアアアア!!インパクト!!」と巨大空母が甲鈑上を豆粒大に映る人間に蹴りを入れられ破壊された映像をなのはは思い出す。

ちなみにこの世界デモンベインはなく、そして本人は「アトランティス・ストライク」を忘れている。


現在D・Pによる世界での被害総額○○○兆円越え。
世界では軍事縮小が始まってさえきている。
海外では軍事行為を完全に周囲からシャットダウンしようと頑張っている、

見つかると、全部破壊されてしまうからだ。



特に大量殺戮兵器関連は秘匿されている。



スケールがもう可笑しなことになりすぎて本人も結構現実逃避してしまうほど。

いつも「私のせいで世界大戦起きたらどうしよう?」とかスケールのデカイ悩みを抱えているそうだ。

「寝てる場所に核落ちてきたらどうしようかな?」とか、そういう可笑しな悩み。

本人は油断を防ぐため、イルカ睡眠を常としている。

ちなみに核を落とされないのは、一言「もし耐えられたらどうしよう?仕返しされたら怖い」だ。




「直撃連続3発まで耐えられますよ、なんとなく。あと普通に爆発する瞬間に逃げてしまいますからやめたほうがいいですよ――――本気でキレますから」


戦争経済から人々は遠ざかり始めていた。


なにせ、どんな最新兵器を作っても軽く投石で粉砕されるのだ、兵器関連関係者は頭を抱えている。

「どうせ、高い兵器買ったってD・Pが来たら終わりでしょ?」

と購入者に言われ、ウンともスンとも言えなくなってしまう。
世界では細々とした兵器のニーズが高まっている。


トリプルブレイカーともいえども、その所業を成した者に怖くなってくる。


現代の伝説だ。


今もなお、この世を暴れまわる究極の破壊者だ。

一部からは信仰を抱かれる、破壊の救世主扱いだ。
そういうリュウヒメを勘違いして信仰する教団は本人に「恥ずかしいからやめてください」と滅茶苦茶に事務所とかを破壊されてるので、宗教にする馬鹿は居ない。

「それに私はクトゥルフ神話が好きですから(デモンベインで知っていて好きなだけで他は知りませんけど)」

世界ではコズミックホラーが流行っている。

ファンには「まさか……ラヴクラフトは………本当に?」とかなんとか。

ムー系の本がバカ売れしてます。

世界はリュウヒメの手で結構平和だった。


そしてはやてが暢気そうにこう言う。

「私らも空母くらいなら壊すことならできるんよ?」

「………できるね」

「……ヨユーだなそれ、なのはのディバインバスターで一発だな」

「できるけど!そんなことしないの普通!!」


なのは、フェイト、はやて、ヴィータは空を舞い上がり、風を切りながら、D・Pという少女に会いにいくことを決めた。
トリプルブレイカーの三人と騎士の一人は正しく正義のヒーロー。
彼等は人々の幸いのために戦い続ける者たち。

今日は彼女のお友達になりに行くため飛んで行きます。
彼女が好きだと言うお菓子をいっぱい持って、特に決めては翠屋スイーツ。

なのはは「保冷剤持つといいなぁ」とか考えながらバスケットを見つめながら飛行する。


「サイン欲しいわー私。D・Pの色んな書籍集めてるんよ?ああ、どんな人なんかなぁ?」

芸能人に会いに行くような気分のはやてに皆、苦笑する。
どんなゴシップ雑誌にも必ず彼女は姿を現す人物なのだ、D・P変身セットとか玩具屋に販売されるくらいメジャーだ。


「私の名はリュウヒメ!!逃げも隠れもしない―――――来い!」とかかっこええなぁ、」

いっつも逃げたり隠れたりしてます。

「私の名はリュウヒメ!貴方たちを護るために人類70億全て敵に回しても勝利してみせる!」とかな、シグナムがもう大絶賛してるぞ」

一回ひとりの人間に負けてます。




話した言葉も逐一新聞に載ったりして
本人にとっていつも切腹したくなるぐらいの恥辱プレイらしい。

もう常に格好つけなきゃいけない状態である。

世界的黒歴史生産人物である。

本人は中身のないスケールのでかさに慄く毎日だそうです。




「魔力反応ではここだよ?」

「ここ?」

「案外普通だな、古民家ってやつか?」


彼女ら眼下に見るのは沖縄の古民家でシーサーがしっかりと屋根に載っかている、瓦屋根のような赤い屋根の家。
魔除けのため道の直線上を避け建てられた家。
赤いハイビスカスが綺麗に咲いていた。
4人とも、どこか「麦茶」が飲みたくなってくるような、懐かしさ、落ち着きを感じる佇まいの家だった。

「魔王城みたいやないの?100人くらいの「違いますよ」」



なのはたちが海を渡って着いたのは沖縄県、竹富島。

水不足に悩んでいる沖縄の離島である。
青々とした美しい砂浜が空から見える、美しいこの世の楽園に思える場所だ。

4人をとても平和な気持ちにさせるニライカナイ。


「13人で暮らしていました―――――こんにちは、不思議な客人達」

少女が一人待っていた。

冷徹な瞳、でも少し眠そうな眼をした少女が数百メートル先上空に向け大気を振動させ、まるで耳元で話しかけるように声を飛ばしてきたのだ。

彼女こそ世界で一番平和ではない人物。

4人は次元世界でも類を見ない最強のレアスキルに驚愕した。

「さあ降りてきて―――いらっしゃいませ、我が家へどうぞ」

そう本気を出せば、この人間は音だけで人を皆殺しにできるのだ。


やらないけど。


音よりも本人の方が速いし。




それは不思議な出会いなの リュウヒメ編




「どうぞお上がりください」


そう言ってさんぴん茶をコップに出してくれたのを見ながら4人は少しあまりにもな平凡さに不思議な気持ちになってしまった。

今日は五月五日、それが彼女にとって大切な日だった。



家族達で様々な言語でみんなで彼女が通訳しながら会話をする賑やかな祝いの席がこの前中止されていた。


家族構成


拾った順で言うなら。

ユー・Dという男の子7歳、ミー・Dという女の子7歳の二人の完全に人種不明の青色の髪の双子、名付け親はリュウヒメ
シブシソ・Dという人種不明の多分アフリカ系の男の子5歳
アニューゼ・Dというイタリア系の女の子13歳
セレン・Dというフランス系の女の子5歳
アイヤーシュ・Dというアラブ系の男の子3歳
アースィム・Dというアラブ系の男の子11歳
アル・ワドゥード・Dというアラブ系の女の子10歳
サミーラ・アル・タヌイーン・イブラーヒーム・Dという3歳のアラブ系の女の子
アンヌンツィアータ・Dという地中海系の女の子8歳
ヴァレリー・Dというロシア系の男の子4歳

と中東系で大きく構成された大家族だった。

龍の子と皆、己に誇りを持ち、偉大なる母に大きな無償の愛を授かり幸せに僅かな間共に暮らしていた。

皆、最後にDの名を自らに全員であやかって「ワンピースじゃないんだから、もう」と母に苦笑されながら皆きちんとした発音で名前を呼ばれ、楽しい日々を暮らしていた。

皆生活習慣は違えども、互い互いに尊重しあい、母の庇護の元、立派な養育と「馬鹿でも元大学生だし、かてきょのアルバイトしたことあるし」と教養も授かって幸せだった。

中東系の子達は特に自らを「私たちは偉大なる龍の氏族の子………なんという幸運です、神々に感謝を」とかよく口ずさまれる好かれようだった。

中東で彼女は最も信仰される新しき神々の一人なのだ。

少女のような母はこの世の誰よりも誇り高く強い一匹の龍なのだ、子供たちは誇らしく「あんま周囲に言いふらしちゃダメだよ?竹富島の人は隠してくれるけど観光客くるんだから」と

言われながらもいつか、それを自ら母のように、世界に堂々と名乗りたいと願っていた。

小さく可憐な母は「そんなにいいもんじゃないよ?」と可憐に微笑む。


「でも、それでもいいなら、大きくなったら、私の力をみんなに少し分けてあげよう、世界の醜さに負けないくらいの力を(多分できるっぽい、こどもは私の体の一部とイメージすれば)」


とか言われて皆やる気マンマンだった。


紳士淑女を目指したいい子ばっかりだった。

ドラゴンチルドレンたちはリュウヒメの絶大な力によって目覚めの時を待っていた。

去年、今日は彼女が拾った子供たちと「来年はこどもの日はみんなで祝おうね。そのあとに……」と言っていた日、彼女は今一人で過ごしていた。

末馬高雄の所為である。

ドラゴンチルドレンは丁度12人。

あと一人はいけるかな?とか言っているのは誰も知らないが。


様々な国の政府では


これは恐ろしいことになる。
円卓伝説の復古、もしくはキリスト伝説の復古。

神話がまた始ってしまう、と畏れた。

白人主義の国にとってそれだけは防ぎたかった。

中東系で構成されたあの龍の子供たちは未だ根強くのこる、白人主義を崩壊させるきっかけになる、絶対なる。


恐ろしき子供たち、DCとして狙われ始めた。


その時。


「たつきちゃんの子だねここから逃げよう、怖い人たちが君たちを攫いにくるよ」

「たつき………っ!!我が母を侮辱する気か!?我らは母の帰りを待ち、此処を守り通す!我ら12人、命を賭けてでもこの愛する母屋を守りぬく!」

「危険だ、早く!此処を英国特殊部隊が嗅ぎつけている!高町さん」

「何か凄い気が進まないんだが………御神としては、彼等の意志を尊重したい気がするが?」

「でもこのままだと」

「ああ、まずは命を守らないと………はぁ、タイミング悪いな本当に」

「たつきちゃんは別のところで今多くの人たちを守っている時で数日は此処に戻ってこれないんです!8つの同時人質作戦なんです!」

とか言われて防がれました。


彼がもの凄い悪人に思えてしまうのは気のせいではないかもしれない。

子供たちも物凄い彼を憎んでいます。
本人は本気で善意の発言です。
若き正義感が空回りしてます。

誰も悪くないのだが、だが、ちょっとあとで、大体の人に「うわー間違ってないけど。タ イ ミ ン グ」とか言われる系です。
ここで、「私が一緒に守ろう」とか言えば、リュウヒメも諦めて投降する気になる筈なのに。

ことごとく、こういうパターンに陥る天然である。


共闘ルートフラグを何度も叩き割る珍しい男なのだ。

まぁここで子供たち助けとかないと、ギャグ成分0の真暗黒編が始まるからしょうがないが。

全世界同時多発ジェノサイドが始まっていた「リュウヒメ人類種の天敵モード」に入っていた。

そこだけは抑える程度は有能だった。


彼が末馬妙子であるなら「よし、じゃあお姉さんがお母さんが帰って来るまでここをカンペキに護ってあげる!」とかなって皆幸せルート入るのに。
ていうか元々暗黒編はなかった。



ツインエンジェルとかそんな感じで世界を席巻できた二人になってます。


ようは末馬高雄はサンタクロースが世界で一番似合わない人間である。
感受性豊かな子供にすぐバレてしまうタイプである。
どっかの男のように大道芸とかしないタイプの普通の男なのだ。

ちなみにそのあと「竹富島に手をだしたら、世界滅ぼします、核とか全部に一斉に火をつけてやります」と各国首脳は全員、寝ているとき侵入され、脅されてます。

この世界で一番安全な場所、それは沖縄県竹富島です。
迷惑が大変かかった場所なので、誰かさんの資金提供で水不足は解消されています。


「末馬高雄……め、やつだけは、やつだけは許さないっていうかもう会いたくない、あと最初からああすれば良かった」

「まぁしょうがない、これが一番よかった………子どもたちは安息に平和に過ごせるし……だけど本当に余計なことを!腹立つ!っていうかまた私の夢を奪ったな!!」

そしてさらに末馬高雄は子を失って失意に沈んだ人達に新しい希望も与えているので、また奪い取りにもいけない。
皆母の幼い時の最初の夢を継ぐ、良い子だったので「まずは周囲の人々から、すみません母よ、逃げれば母の後悔をまた私が」と逃げてリュウヒメの元に帰れない完全封鎖である。

「本当に鼻につくイケメンだ、ああいう奴前世でも大嫌いだった。おバカなことすると「くだらない」とも言わずに「学校に連絡しておいたから、君たちの行動」とか教師に深刻そうにちくって、私たちを真の地獄に叩き落とすタイプだ、あれやられると、普通に見つかるより普通に現実的に怒られるし……いっつもうまくやって怒られないで済むのに……くそ」

とグチグチ言っていた時に空から4人の子?が飛んできてるのに気づき慌てて

「ついに私と似たような能力者が……?――――――早く来賓の方をお出迎えしなければ!」

と用意された彼女が普段飲んでいる美味しいさんぴん茶である。


なのはたちは出されたそれを「ありがとうございます」といただく。

「ふぅ」

「爽やかだね」

「うまい」

「帰り買っていかへん?」


とまぁ4人は普通の女の子に戻ってしまった、あとやはり主人公達らしく図太い。

誰一人として躊躇せず飲んでいく。

それを見ていた少女は慈しむような目線をこちらに向けてくるのになのはは驚いた。
仮面が外れた姿は本当にハイビスカスの花のように、雪の結晶のように美しくも消えてしまいそうな可憐な女の子だった。


「ちょっと待っててくださいね」

と何処かへ消えた、と思うと、今度はアイスを4つ持ってきてくれた。

「ブルーシール?」

「沖縄の有名なアイスです、召し上がってください」


「あ、私もそちらにお土産持ってきました」

「いえ、敬語は構いません、好きにおしゃべりください、老若男女全人類、私の前では何も飾る必要はありません、私の名はリュウヒメ、貴方たちは?」


なのは達はそう言われて「滅茶苦茶こわいの」と全員冷や汗を流した。
眼が恐ろしい程透き通っている、まるで機械のレンズのようにすっと睥睨されるだけで、胸がきゅうと掴まれるような気持ちにさらされる。
現代の伝説、リュウヒメ、やはり怪物なのだ。


世界最強の国際テロリストD・P


ドラゴンプリンセス。

龍姫。

リュウヒメ

人として何か間違っているから、人とは隔絶した精神を宿した者の独特な存在感。
敵意も殺意もないはずなのに気圧されてしまう、ヴィータだけは結構平気そうに面白そうに「本物だなこれ」と笑を浮かべる。
肌でぴりぴりと感じてしまう、混沌の気配、飲み込まれるか、拒絶するかの二つしか許さない、というような冷たい空気に押し流されるような気がしてならない。

だが、彼女たちもまた、自己に根付く強き魂がある。
故に、飲まれない、拒絶しない。

ほう、とリュウヒメ

「正々堂々としていますね、まずはそこの二つ髪を括ったお嬢さんの名前から教えてください」

四人はなのは、フェイト、はやて、ヴィータの順に対面でテーブルに座っていた。
ヴィータはブルーシールのアイス(紫芋味)をモリモリ食べて喜んでいる、だからそれを止めるのもあれだろうからなのはから、ということみたいだ。

「私の名前は高町なのは、よろしくね」

「私の名前はフェイト・T・ハラウオン、よろしく」

「八神はやてや、よろしくなあ」

「ん、私か、ヴィータだ」

「ふむ………ん?…まぁよろしいか、此度はようこそ我が家へ、なんの要件で参られましたか?不思議な力の使い手たちよ、どうやら私の力の源を体系的に、まるで技術として使用しているような気がします」

「魔法っていうんやで」

「私たちは魔導師」

「わたしは騎士だけどな」

「そうなの」

「なるほど、魔法ですか………(ん何かこの子たち何処かで、本当に何処かで……ま、いいか)」

リュウヒメは長きに平和から離れ、戦い続け、多くの平和だった時の記憶を摩耗させていった存在だった。
アニメやら漫画やらは、こちらの世界のものの記憶を多く占めるようになったのだった。

まさか、こんな救いようのない争いの連鎖を繰り返し見てきた世界が魔法少女の世界だなんて、気づかなかったのだ。


「では要件を拝聴しましょう、戦いの匂いがしませんので、少し鼻が聞きません、教えてください」

「みたらわかるだろ、遊びにきたんだ」

ヴィータ、ストップストップ、と誰も何もいえずヴィータは堂々とそう言った。
古戦場から長らく時を過ごした彼女こそ、一番落ち着いている。

流石歴戦のヴォルケンリッターである。

ヴィータちゃん本当に格好良いなぁと、なのはとはやてはちょっと羨ましくなる。

フェイトは何か一人ウズウズしている。




「え、遊びにきたの?私のところに―――――――え?」

始めて少女は全ての背負ってきたものを取り外し、ただの普通の人間として驚いた顔をした。
そこでなのはたちは畳み掛ける。


「そうなの、友達になりにきたの!」

「そうや!」

「うん!(模擬戦したいなぁ)」

「アイスサンキュー」

「友達………ふふ、ありがとう、そんな純粋に友達になろうって、そう簡単に言われるなんて凛璃ちゃん以来7年ぶりだ―――――私のことを好きに呼んでいいから、そちらも好きに呼ぶよ?」

なのはは「本当にお姫様みたいなの」と微笑みを称えているリュウヒメを見てそう思う。


「なのはと呼んでなの」

「はやてでかまへんわー」

「フェイトって」

「ヴィータだ」

「なのは、はやて、フェイト、ヴィータ、ああ、よろしく、皆いい人だな、なんか特にヴィータは私の好みだ、私の子にならない?」

「やーなこった私はやての騎士だし」

「そうか、ふふ」


なのはという子は純粋で優しい、まるでシブシソのようだ。
はやてという子は穏やかで包容力がある、まるでアンヌンツィアータのようだ。
フェイトという子は素朴で怜悧なアニューゼのようだ
ヴィータこそ中東の部族戦士に共通する、誇りの高さがある、中東系の我が子だった皆の大部分に当てはまる。


そして皆、強い。



ああ、もう寂しいなぁ。


くそ高雄め。

よくも我が子を奪いとったな、絶対に許さん。



「あー」


なのは達は見た。

正座から、ごろりと姿勢を崩し、あぐらをかく姿は凄絶に鮮烈な、ああ、まるで何処かの父親であるかのような気軽さだった。
空気が一気に、緩んだ。

「取り敢えず、酒でも飲む?つまみならいっぱいあるよ?」

龍は酒が好きだった。
特にアルコール100%が大好きなのだ。
飲みたい気分になったのだ。

「未成年!!」

「お、いいのか」

何が取り敢えずなのか、彼女たちにはわからなかった。

「んーんー……ダメ?」

リュウヒメは「えー」という顔をした、まるで自分の常識が空回りしたような目になる。
こういう時は出会い頭に吐くまでお互いに酒を酌み交わし交友を深める。

この子たちも立派に何度か既に大きな戦いを繰り広げた子たちなのになんで?

リュウヒメは既に本物だった。

12の時には戦いと子育てと酒と食事こそが人生の楽しみだった。

遊びってこれだろ?ジャパニーズSAKEだろ普通?

とかそんな常識が見事に出来上がっていた。

「ダメなの!」

「そっか、じゃあ」

リュウヒメは何かおかしなこといったかなーと、思いつつ、子供たちとよくやっていたスマブラでも出してくるか、と無駄に自分の物理法則を無視する肉体能力を駆使し
居間のテレビに端子を接続する。

「じゃあ、遊びますか?スマブラ」

「え、今までついてなかったよなロクヨン」

「一応、世界最速なのでな」

「無駄なところで!?」

夕方まで彼女たちは、スマブラをやった。
交代制で最下位からチェンジ方式で。

リュウヒメは戦う家長モードのお父さん気分でみんなと楽しく遊んだ。

「いいのコレ?」

「構わないよ」

リュウヒメはみんなに帰り際沢山のお土産を持たせる。
龍らしく金銀財宝を。

「これ、もらえへんよ?本当に」

「うん」

「これは……」

「お宝だな本気で」

「あ、普通の食物とかの方がいいの?これネオナチのやつらから奪ったやつで、全部本物だよ?換金めんどくさいからあげるよ」

大粒のダイヤモンド、ルビー、サファイヤ、エメラルドの豪奢なお宝である。

「綺麗だけど……」

「あーやっぱり本物や、リュウヒメちゃんはまじで本物や」

「ラピュタで見たことあるこういうの」

「お前、本気で昔の戦士だな、懐かしいぞ、シグナムに会わせたら喜びそうだ」

「そうかなぁ?あれ、魔法使いだからこういうのがいいと思ったんだけど」


「ねえ」

「なにかな、なのは」


「私たちと来ないかな?」

なのはからすれば一緒に来てくれると嬉しいと思った。
カッコ良い伝説の人だし、可愛い女の子だし。

親友として一緒に居たいと思ったのだ。

「僅かに末馬高雄の匂いがするからやだ、数日前にあったでしょ?あいつに会った人間のことはわかるんだ私」

リュウヒメは物凄い厭そうな顔をしていた。
巨大なゴキブリを見つけたような気分の顔、言葉は不要。

生理的に無理というのがアリアリである。

「あー」

「あー」

「ん?どうしたのみんな?」

「あー」

3人は決めた。

取り敢えず、末馬高雄さんからなんとかしないと、無理。

「いい人なんだけどね、うん」

「そうなの?」

「フェイトちゃんにはわからんかぁ、あのな、あの人、結構天然で敵つくりまくる人やで?イケメンで金持ちやし、あれや、貧乏人のことがわからない大金持ちタイプや恵まれ過ぎてんのや」

しかもこの世界では経済界の魔王を自称する自信家だ。
男の場合、苦労をしないと天然のままなのだ、末馬高雄という人間の魂は。
それに特殊な力は成人男性の8倍程度の力しかもたないが、元のスペックが高いのでなんでも簡単にこなしてしまう。

人があっぷあっぷと努力してる横ですいすいと泳いでいっちゃいます。

いい人だけど、やなやつです。

ベジータの気持ちがよくわかるタイプです。

苦労して悩まない限り、一生そんな感じの人間。

そういう奴が本当に正しい論理的な正義感だされても正直困ります。

泥臭く生きあがいた人間にとって最悪なのだ。

「あーいうやつって長生きすんだよなぁー恨まれながら」

「わかってくれる?すっごい嫌なの………正しいが滅茶苦茶腹立つ、合理的すぎてもうやだ正直「お前が言っても説得力ないんだ」って感じなの」

かつて彼女は自分が「もーいい、もうめんどい」と身を任せたくなるほど、ようは完膚なきまでに夢を壊されたのだ。

「怖かったよね、たつきちゃん」「怖くない、私は悲しいだけだ!!私を抱け、私を抱いてお前の所有物にしろ!!私はそれなら、ただの可哀想な女の子になれる!」

とかそんな感じの時に。

普通に法律と常識的にダメという一般論で断られたのだ。

「大人になったら、ね?」とかそういうの無しで。

全く末馬高雄は夢を持たせることさえしなかった。

うん、そりゃあ、キレる。

ぐれる。


ちなみに、リュウヒメは一切彼に対し、愛情なんて一生湧かないと確信している。

勝手に邪魔してくるストーカー気分です。


むしろ彼女は高町士郎が気になって気になってしょうがないのだ。

案外惚れっぽいので始めて気になった男性がすぐ好きになってしまうのだ。

「あの人の子なら普通に欲しい」

とかなのはが聞いたら気絶しそうなことを思っている12歳リュウヒメであった。

「また会いましょう、そして何かあったら遠慮なくいってください、いつでも駆けつけます。その時世界中が敵だとしても、必ず助けに行きます」



義に熱い12歳である。


つづく。

リュウヒメ


古代の戦士とかそういう性格。

中東歴が長く言葉も結構、謳う言葉が多い。

好みの男性はランサーとか九鬼とかああいう兄貴系、師匠系。

ねぎまで言うなら、ナギとか?

男が惚れる英雄系が好み。

ルルーシュのスザクとか王子様系は死んでも無理。


「お前はこうなんだろ?」

とか言われるとあってても一生反発したくなる。

ましてやFateプロトタイプのセイバーとかみると声と顔だけで悲鳴を上げて逃げたくなる。

じんましんできそうになる。



同年だと相性的に末馬達馬が一番ヒットする。

将来は師匠系だし。



末馬高雄

出来る子。

末馬妙子みたいに苦痛を抱いて胃の中の胃液がなくなるまで毎日吐きながら成長していないから精神的に一生超人覚醒しない。

まぁ常識人なので、リュウヒメが16ぐらいになったら諦める。


そう

リュウヒメは「可哀想な子供」なのだ。


まぁ一応自分以外の周りが不幸になったことがあったので、正義感があるのだけど。

従兄弟の射程範囲の妹とか直前で助けたりしたし。


王子様タイプ、救いようのない。



ちなみに


末馬妙子は完全に成長が終わってるから、出しづらいのが影が薄い原因です。



聖遺物はロストロギア。

ロストロギアって便利な言葉です。



あとIF編はあと一話で終了します。





追加 家臣編






リュウヒメは己の自称忍者達の実家である鉱家にお邪魔し、歓待を受けていた。
武家屋敷っぽい農家の親戚の家のところで、一番の畳作りの大広間で宴会だ。

サマーウォーズに出てきそうな立派な家である。

直系の子孫達がわいわい集まり、料理や酒を振舞って楽しく野球を見たり麻雀をやったりしている。
リュウヒメはそこで出前のピザやお寿司をもぐもぐと食べていた。
工業用アルコールを飲みつつ、その光景を見て温かい気分になる。
本当に彼等は私を家族のように扱ってくれ、胸がほんわかとして、楽しくて口元がついつい綻んでしまう。


工業用アルコールコーラ割りがとても美味しいとリュウヒメは笑う。

鉱家たちは酒を飲んで盛り上がっている。

「本当に貴方たちD・Pの家臣になったのねぇ、すごいわ、家系的に今まで一番有名なご主人様よ!しかも皇室にも認定された龍神様よ!?」

「いやはや、めでたいなぁ、一族総出でもういっそ、リュウヒメ様の忍者になろう!!」

「やめた方がいいわよ、私たち普通に皆仕事あるし、生活できなくなるでしょう?」

「えーと」

「うん、私らって風魔とかそういうメジャーじゃない一族だったから嬉しいのよ?
どっちかというとそれよりも下級の存在で火付け盗賊だし、お庭番とかもない、ずっとそういう汚れ仕事をしてきて、一族としては有名な歴史が一切ないらしいのよね?
技術はあったけど、隠密性が異常に高すぎて、誰一人気づかれず有名にならなかったという悲しい一族なのよね」

鉱家忍者の現当主の陽子さんは品の良い方で―――吉永○百合とかに似ている方である。


「本当に忍者ですね」

「忍者マスターなのよ?影の無い」

「そうなんですか?」

「影が無いから――――ということは忍者という影だから誰にも見つからないという話よ?」

「それは凄いですね言葉遊びで言うなら――――存在してないんですね」

「それが失敗だったらしいわ」

「うん」

一族で集まった人々は己の有能な先祖を恨んでいた。

有能過ぎて、全然有名じゃないので。

有名な一族は有名になるくらい失敗して捕まったりしてきたという話である。

リュウヒメは苦笑する。

そっか、それが忍者としてはベストなのか。

一族の歴史で誰一人姿形も気づかれずお仕事を成功させ続けた、隠密専門の一族。

完璧すぎて無名。

他のそういう業者にさえ、隠密していたという影の薄さ、忍者を影というのなら、影の薄い鉱家の忍者は最高の忍者だろう。
隠れ里攻め滅ぼされる一族とか、そういうのって可笑しな話だろうな、彼らにとっては。


若手の人たちに私は尋ねる。

「忍者漫画のNARUTO好きですか?」

「あれ忍者?後半忍んでないし、敵と正面から戦ってますし、変じゃないですか?あれはバトル忍者漫画ですよ」

「やっぱカムイ伝、外伝とかかなぁ、あと基本見つからないまま終始一貫してそのまま完結するのが真の忍者漫画だろ」

「影からマモルがいいなぁ私は」

「誰にも気づかれず全く売れない忍者漫画こそ、真の忍者漫画だ!」

「ダメじゃね?それっぽいけどダメだろそれ」

「天誅もなんでボス暗殺出来ないのかなぁ?」

「メタギアもボス戦めんどくさいよね?」

「スネークさんはいいけど忍者ものって見つかって熱いバトルとか、なんですんだろうね?お仕事で無駄な仕事してどうすんのかな?
私事を含めちゃだめだろ、仕事に――――多分あれやったら普通に首だぞ?」

「ヒロインとかに気づかれて、それで人質にされるとか下の下だよなぁ忍者としては」

「あれで熱いバトルして武器とか無駄に使ったら、領収書貰えないよね?労災降りないよね?」

「あはははは、うわーありそう………はははっ」

「ありがちな外国人も日本に忍者はいるのか?とか思ってどうするんだろうね?」

「いないから忍者だろう?」

だよねーワハハハハハハ

とその話題で盛り上がり笑う鉱一族。

こういう人たちが忍者なんだろうな、真の。

確かに、スネークさんも有名だから、無駄に強敵用意されて戦ったりしてるしな。

スネークさんと同じ侵入能力がある無名の男が侵入すれば、そういう戦闘はないのだと思う。
サイコマンティスとかそういう色物系とは戦わなくて済みそう。

まぁスネークみたいに世界の危機は防げないで世界は滅亡するけど。

うん、私、結構3だと時間弄って、ジエンド倒してたな、めんどいから。

彼等はそういうことしたり言ったりする人たちの集まりなんだ。

なるほど。

「ということで現代でやっと有名になれるのよ?」

「貴方たち隠密性が自称日本最強なんでしょう?いままでの話の流れから言って一生有名にならないまま終わると思いますけど?」

「あ」

「あ」

「あ」

「あ」

「あ」

「あ」

「うん、ごめんなさい、あんまり喜んでも意味ないかもしれないです」

「でも!皇室とかに唯一認められたからいくね!?あ、それも誰も知らないかそういえば―――まぁ100年後くらいになったら、本当に有名になれるだろ、ワハハハハハ」

「パイプ繋ぎっていうか、親戚にただ皇室関係者いただけだしなぁ、実は忍者らしいことは一人もしてないしな」

「そうそう、情報収集だって、私たちって子孫が山ほど大抵の場所や職種にいて、その人たちと伝言ゲームするだけで情報が揃うっていう話だけだし」

「そうそう親戚に口が軽くて他人には口が固い性格の親戚達にほいほい訪ねただけだしなぁ今まで」

「男は頭が良くて運動神経が良く優秀、女は美人が多い一族だしね、何処にでもいるんだよなぁ」

「紀弥も凛璃もニートだしな本当のところ」

「給料って私たち親戚から集めたお小遣いだもの」

「そういう扱い!?せっかく物凄い主人見つけてきたのに!?」

「あー何故か私の本当の実家に親戚からの貰い物が多いのはそういうことですか、あれが給料ですか………」

「凛璃ちゃん家は兄弟全員良い就職先見つかったでしょう?」

「そういえば親戚のコネ………なるほどそういうことでしたか」

彼らの直系以外は佐々木とか鈴木とか佐藤とかそういう名前だった。

ありふれた苗字だ。

此処にいる皆は凛璃と紀弥と一番上のお爺さん以外、基本的に代々親戚達は医者や国家公務員やマスコミ関係者が多いらしい。

彼等は基本全員普通に働いている。

ようは社会との関わりが多い一般人である。

そんな彼等の直系の鉱家は


仕えた主人の為にある異能を発揮する。


直系の親族の上から末端の親族の下へ伝言ゲームを何度も繰り返し、誰にも最後に情報を気づかないように手に入れ、また下から上へ伝言ゲームを繰り返す。
それが繰り返して行われ、ついには届く。
なぜかしら、直系が知りたい情報を何故か、親戚筋は同じ親戚に情報をついつい漏らすという癖があるらしい。
それが恐ろしいほど正確で速いという。

ねずみ講的な情報収集能力なのだ。

反則だ。

そういう遺伝子が宿っているのだろうきっと。

チートです。


私が今、たとえば、「この漫画の展開って来週どうなるのかな?」と問いかければ、漫画の雑誌が発売する前には展開が分かるというチートが出来てしまう。
アシスタントもしくは奥さんや漫画家本人、担当さんなどの様々な人というオンライン情報を駆け巡り情報を手に入れる。
オフラインな人間なんて滅多にいないのだから、完全にオフラインで個人で隠している情報でない限り手に入るという異能である。


人力インターネット検索能力です。

うわー日本にいる限り私って情報戦も最強じゃないか?

「貴方たちは存在していないから有名になれないのですね―――性質上」

有名になったら社会が混乱してしまう系です。

「そうね。私たちはどっちかというと、有名になることよりも、有名な主のサポートを出来たっていう事実だけで十分嬉しいわ、あと仕えたという事実のためリュウヒメちゃん何か証拠になりそうなもの頂戴?本当はこういうのさえ禁止なのだけれど、貴女で最初で最後の最高の主だと思うし、我ら鉱家一同のお願いです、それで我ら一族は解放されるわ」

陽子さんはそう佇まいを直し、そう言った。

「じゃあ、私の外套の一部ちぎってあげますよ、世界に一つしかないし」

私は外套の一部をちぎって彼女に渡した、どうせ私の体の取り外し可能な肉体みたいなものだし。
ちぎれても治せるのだ。

「やったわ!一族の悲願達成だわ!私たちも今まで仕えた主人が誰か全然知らなかったし、歴代で正式な主人を持ったのは紀弥と凛璃だけなのよ!」

これはめでたい!

という感じに皆さん盛り上がってます。

この人たち変だ。

何か怖くなってくる。

集団無意識を操るとかして日本国民の思想誘導とかできそう。

日本では私が凛璃と紀弥を家臣にしてから、私は日本で何故か悪感情を持たれず、ヒーロー扱いが多い。
マスコミ各社も流れが変化したように、あまり叩かれない。
ネタにされることはあれども、大抵の日本人はリュウヒメのファンだとはやてやヴィータから教えられた。
竹富島に暮らせてるのも、特に私のファンが多いからだ。

まさか。

それさえも。

「ねーねーリュウヒメさまー」

「ん、なにちーちゃん?」

「私も大きくなったらリュウヒメさまの忍者になりたいの、すごいかっこいいし、私の周りの友達って皆リュウヒメ様のことが好きなのよ?みんなには黙ってるけど
ゆーえつ感ばりばりだしならせてー」


うん、考えるのやめよう。

「そういえばウチの親戚で末馬高雄の資産運営に携わってる人居たわよ?」

「え?」

「でも本人が勝手に動くから、あんまり意味ないわね」

「ですよね………」

「暗殺させましょうか?」

本気を出せばその血が流れている人間の中に警察関係者が居て、証拠を無意識に気づかないとかするようにできるから、普通に見つからないようにやれば行けるわよ?

とか言われた。

「そこまではいいです」

正直あいつが或る意味正しいのでそれをやると私は負けを認めることになる。

私はあいつを憎んでいるが、そういうことをしたい憎しみではない。

あとこの人たち怖すぎ。

正直、敵に回せば、日本で私を素顔で歩けなくなるようにできるぞ。

影も形もない最強の忍者集団だ。

つうかこの人たちが自分で有名になればいいのに。

「自分で私と同じくらい有名に―――――――なれませんね」

「ええ、無意識に力を発揮するのが私たち、しかもそういうことを考える人間は鉱家の忍者にはなれない、そしてこの瞬間から凛璃と紀弥で最後、我らは潰えることになります」

「リュウヒメ様、この恩義、身命を持って我ら一同尽くさせて頂きます」

小さな子供から、年を召した老人まで、全て正座でリュウヒメに礼をする。

リュウヒメはそれを睥睨する。
まるで今ただの親戚で行われる身内の宴会が、粛々とまるで儀礼的な雰囲気を漂わせ始めた。

「しかと受け取った、貴方達は私の影として生きるがいい―――これでいいですか」

「ええ、嬉しいわ、リュウヒメ様―――私たちはずっとこの時を望んでいたのよ?真に私たちを使いこなせることが出来る主に恵まれることを」

最高の主に仕えることが鉱家の夢。
代々伝わる、夢だった。

そして現代の伝説に仕えることで、彼等は伝説になれるのだ。

「何処までも羽ばたいてください、龍よ」

「我ら一同その翼を羽ばたかせる空気として力を尽くしましょう」

鉱紀弥は一人だけ、おふざけで笑ってこう言う。
猫のような女性で小顔でチシャ猫のような表情で軽く言うのだ。

「日本で独裁者とかやる?」

「やりたくないです」

「えーダメ?一族の能力フルに使えばできるよ?私たちは主人の力に合わせて実力を発揮できるんだから」

「そうそう主人がそれなりじゃないと意味ないのよねぇ」

「リュウヒメ様のネームバリューならいけますよ、多分」


「い や で す」





リュウヒメ

本気で世界征服でも始めればいいと思うよ。


あと正史版では実は妙子さんが知らないうちに彼らは働いているという後付け設定。

そうです、どうやっても妙子さんは大丈夫なんです。

超人覚醒したあたりから大丈夫になるのです。

妙子さんは自分自身救われないとしても、どうやっても平穏に生きれます。

アンサイクロペディア編



リュウヒメ「手伝ってやろうか――――ただし拳だがな」

「どんな願いも一つ叶えてやろう、拳一つ分」

「破壊しちゃうぞ♪」

注:アンサイクロペディアは、嘘と出鱈目にまみれています。
こんな宇宙最強異形仮面美少女厨二病キャラがいるラノベなんか売れる訳ねえだr……え、マジ?



でもこれ悲しけど本当なのよね?

現実なの?

今も現実?

とりあえずみんなでほっぺたをつねろう。

D・P 


自称 リュウヒメ


称号

D・P

ドラゴンプリンセス


現代の伝説

現代の神話

デストロイヤープリンセス


レイディドラゴン

レッドドラゴン

龍姫

世界最強の国際テロリスト

世界最悪の怪物

最終戦争

アポカリプスウーマン

地球検閲官

ヒューマノイドタイフーンっていうかそのまま災害です。

国墜龍

宇宙からとかそういうところとかからきた異形の神。

アル・クヌイーン。

ひょっとすると何処かの神様が復活したやつ
ひょっとするとルーデルの隠し孫?
ひょっとするとシモヘイヘの隠し孫?
もしくは舩坂軍曹の孫?

それらを配合して生まれた子?

日本びいきする子

中東びいきする子

魔王

巨神兵娘

実写版バスターマシン7号

第四世代極超音速大型航空機技術の粋を結集して作られた生物兵器

巨大化しないで戦うウルトラガール。

可愛いかもしれない子
可愛くないかもしれない子

人類種の天敵
一人インフレ崩壊

女の子?
男の娘?

とりあえず気持ち悪いお面外せよD・P

ノストラダムスの予言の日に生まれたかもしれない子

一人で勝手にCG

デスノートに名前を書いても死なない子。


私は人間DETH。


戦場なう。

第六世代型恒星間航行決戦兵器に将来進化する女の子


とか色々あります。





格言

リュウヒメ「私の名はリュウヒメ――――」

とか始まる言葉が多い、それを言わせると、大体おしまいです。

ハンニバル「彼女が名乗る、負けた」

「取り敢えずレムリア・インパクト」

まさか過去に大陸一つ?類義語で「今度はハイパーボリア・ゼロドライブ」とか言い出してるので、本当かもしれない。

「アインシュタインが言うには第三次世界大戦は石を投げ合う戦争になるそうです―――――故に貴方たちは古い」

大惨事世界大戦を起こされそうです。

アインシュタインもびっくり。

「武器を捨てろ―――――まぁ壊すけど」

今世界規模でやってる途中。

本当に世界規模で実現しかねないから恐ろしい。


一人オペレーション・メテオ。


国連「対D・P兵器がもうすぐ―――」

どうせ無理だろ。

アメ○カ「色々もうやだ」

一番被害あるもんね。

日本「取り敢えず、フュギュアの出来が必ずいい、黒いぱんつ最高」

オタク文化に優しい女神様です。

一度邪神像を造られおキレになりました。


「――――――正気ですか?」

またわざと造って怒られたいです。
エロゲに登場させられても怒りません。

イギ○ス「そこまで料理が不味くないと言われた」

たぶんそこまでなんだよ、そこまで。


中○「三国志の世界に後戻りするので頑張らないで欲しい」

なりそうなのが怖い

ロ○ア「実は我が国が開発した超能力戦士」

ありそうなのがおそろしあ。

○○「ウチの国民」

なんか腹立つで一番攻撃されてるだろ!?
この前空母沈められたし。

リュウヒメ 年齢不詳の女の子? 1995~くらい?アストラギウス銀河とかか出身?所属は地球帝国宇宙軍太陽系直掩部隊直属とかか?

365日世界中をヒャッハー!と暴れまわっている女の子(多分)。

朝おきて朝ごはん食べて戦場を一つなくしてお昼ご飯を食べて戦場を一つなくして夜ご飯たべて戦場を一つなくしての繰り返しの生活を行っていたら


何時の間にか世界最強の国際テロリスト。



あたりまえだろ。


絶対に人外



コカ・コーラが好きらしい。

スピリタスとか好きらしい。

とりあえず美味しければなんでも食べ物は好きらしい。


「サリンジャーのライ麦畑で捕まえてを愛読するタイプの美形の優男は大嫌い――――札束畑ごと燃えろ」

だそうです、イケメンが嫌いなのか?

葵ちゃんはいいそうです。
リンコちゃんもいいそうです。


容姿「D・Pちゃんprprしたい別名drpr」

異形の面、赤い外套をなびかせ、やけに長い赤いマフラーと赤い軍靴、黒いフィンガーレスグローブを基本装備しています
前は各地の民族衣装などバリエーションは様々、結構適当にボロい服でも着る。
ラブ&ピースの服を着て、戦車をひっくり返したりするので本当に適当。
最近はミニスカートにワイシャツが多い。
PS2レッドドラグーンの容姿が一番いいと思う。

年に似合わぬ黒いぱんつが至高。
噂によると、相当な美少女だろうと皆夢見ています。



http○○○【俺の絵が】マイナー漫画家の俺の家にD.P.が来た件【公式に】をお読みください。


マルちゃんの味噌ラーメンが好きだそうです。

おいお前、羨ま死ね。

一緒にのびたのを食べたとか―――あとどんな美少女か教えろ。

「それは書いたら殺される」

しょうがないのか。

あと股間触られたってなんだ―――まじで裏山でしね。


世界的に股間が小さいと言われている男になれたから可哀想だけど。

「そんなに小さくねぇ!!」

スレ立てしたから自業自得だろ。

「彼に危害を加えたら―――――わかりますよね?」

世界一安全な人物になっていいね。

あと有名になって漫画売れてよかったね、面白くなくても買われるし。


羨ま(゚Д゚)<死ね


でも結局。

気持ち悪いお面が邪魔、本当に邪魔――もしかして素顔を見たら普通の人間は死ぬかもしれない。


髪は黒く長く、龍髪と言われ、大変しとやかで美しいです。

肌も雪のように白いです。

足も細い、腕も細い、どこにそんな無限のパワーがあるのか。

こどもが大好きでしょうがないらしい。

過去、何度か高いところから落ちそうになったこどもを助けている。

「私も子が欲しいなぁ」

とか言っているそうだ。

お前も子供だろ見た目。


同人誌界で一番登場する3次元のロリな女の子。

息子がよくお世話になります。

子作りよくさせられてます。
ご本人、一番酷いの見たらキレるんじゃないか、と思うものも多いです。
ゲームのレッドドラゴンの同人がよく売れます。

ドラゴン系の女の子。

声は沢○みゆきや坂本○綾系である

おしとやかなお言葉を話されますが、キレると男の子みたいな言葉遣いをなされます。

両義式から紅の紅真九郎崩月モードとか様々です。

そこらへんで怒り度をチェックしましょう。

キレると映像で見ても鳥肌が立ちます、夏でも部屋が寒くなります。

とりあえず世界に何かがあると、とんでくるというか跳躍して飛んでくる。

最高時速6万4000キロ(NASA試算)―――――なんと音速の50倍である。

隕石か?


周囲の物理法則を無視して移動するので横を掠めて飛んできても、ビルが倒壊しない。
何故か人が死なない破壊攻撃を行う。
核ミサイル3発直撃しても大丈夫だそうだ、おいおいハルマゲドンの隕石よりも丈夫だろ。

10各語以上を軽く使い分ける。

軍事衛生を投石で落としたことがある。


「取り敢えず強ければ――物理法則なんてどうでもいい」とか言い出す感じ。

空想科学読本を燃料にしているような怪物。

凡ゆる世界中の兵器が通用しない、マスタードガスを食らっても「辛くないね――――けむい」で済ませます。

クトゥフ神話のファンらしいが、実はそんなに知らないみたい。


「アル・アジフは女の子でしょ?」

とか意味のわからないことを言い出したことがある。

―――――まじで?


誰か原典を見つけたら売ってくれ。


「何故現実の私より弱いのでしょうか、このゲーム」

とゲーム会社にクリア出来なくて文句を言ったという噂がある。

ゲーマー

メガテンに生きたまま登場するのも遅くはないのかもしれない。

スパロボでジェガンを沈めそう。

レッドドラグーンを作った会社は資産的倒産か物理的倒壊か迷って発売したそうだ。

お払いしても来るからな、D・Pはマジで。
漫画を欠かさず読むというが、実のところ立ち読みで暇を潰しているそうだ。

「すいません東京タワーのてっぺん壊したのわたしです」

結構ドジ

神出鬼没なので、注意。


「D・P出没注意」のステッカーがよく売れる

ローソンではコカコーラのおまけによくストラップがついてきます。

南極条約解除して攻撃OK




Youtube視聴一位は大体彼女。

横のリストに地球が終わる日とか並ぶのが流石。





総合戦績


北○鮮がなくなった。
チベット解放
中東での一部地域の紛争終了
色々革命とか起きてます。

気を付けよう、世界の独裁者とか。

と色々ありますが書くと膨大なのでやめた方がいいです



[36072] 短編ネタ 機巧少女は傷つかない二次創作
Name: みさりつ◆dacc3cd9 ID:605fb95a
Date: 2013/10/13 20:22
「先生、またあの子に会いにいくんですか?言っときますけど、えっちなこととかしないでくださいね、私、先生にまだこの職場にいて貰いたいですから」



病院のリノリウムの廊下を私が空の紙袋を持って歩いていると、私を看護師のひとりが呼び止める。
まるで狐のようなつり上がった眼を持っている看護師の女性で、いつも口元に微笑みを浮かべる蠱惑的な表情が患者の男性諸君に大人気な女である。
今日もわざと、彼女はナース服の下に黒い下着を着て、若干私を目眩を起こさせる。
あまりにもそれが浮かび上がる。
いつも皆が「セクハラされるよ、それ」と注意しても気にしない人間で、患者にセクハラ、欲情の瞳を向けられても一切気にしない。
そんな彼女は今日は黒い、蜘蛛のようなレースだった。


「透けてるぞ」

「わざとです」

「ならいい。だが、あの子って……彼は16だぞ?」

「2年前からこっちの病院に移ってきたとき、私勘違いしちゃいましたもん、もうあの子はあの子です……私、男に生まれてくればよかった、なんて思うくらい」

「彼は男だ」

「しってますよ?」

「意味がわからないぞ」

「女性として迫っても、負けそうな気がしますので」


「じゃあ、私は君と話していると大変常識を失いそうなので彼に会いに行ってくる」



こんな職場の仲間たちに囲まれている私の日々の楽しみといえば、さる個室、特別な患者の病室の一室にいる、さる特別な患者との会話だった。
彼は私が人生で見てきた誰よりも美しく、綺麗な少年だった。
まるで野生の青い薔薇が落とす影のように優美であり、繊細な、そう、青い薔薇は野生ではありえない。
故に奇跡のように美しいのだ、と誰しも色めきたつ、賑わうくらいの少年だ。
誰しも潮に引き寄せられるように眼をその美しさに離せなくなり、溺れてしまう。

性別を越えた美しさなのだ、本当に。
そのような趣味を持ち得ぬ私でさえ、少しだけ気まずい気持ちになる。
検診を行うさいに肌着をまくった時などいつもドキリ、とさせられる。

普段女性患者の裸をみても、業務なので何も思わないと慣れきった私にさえ、眼線を逸らしたくなる気まずさを与える。
こちらが青ざめるほど白い体、まるで夏に降る雪のような体は、本当に触れたら溶けてしまいそうだ、と思ってしまうのだ。

そして何よりも、私は彼の在り方、心が好きだった。

空白の綺麗とは違う、めいいっぱい多くの隙間を埋め、何度も何度も泥の中でもがいた白鳥のようであり、いつか羽ばたくことを願いつつも、羽ばたけないことを知っていながら。
その事実から逃げず、ただ、ただ生きる。

「あの子、いつか治るといいですよね…」

「治っても、彼には行く場所がないそうだが、ね、一応立派なお金持ちの子で、立派な子供じゃないを望まれる家庭だそうだ、彼のことを両親は「私たちの傷モノ」と皮肉を籠めて笑っていた。彼は、回復しても、ここの病室にいると変わりないのだとも、記憶から無くなるように静かに生きろと、望まれている、」

彼は彼の血の繋がった人間からは生きることをもう諦められている。

彼の親類からすれば生にしがみついている、と思うそうだが、私はそう思いはしない。

生きているだけで君は十分、その人生は楽しいのだ、と私は胸を張って言ってやることができる。


「じゃあ、退院したら私がそのまま家に持って帰って養っちゃいますよ、もうね、そこに居てくれるだけで良い、それだけで十分大好き。夜にですね、ちゃんと寝てるかなぁ、と見回りにいくんですよ? もう、寝てる姿がまるでお姫様みたいで、可憐でたまらなくなります、本当に私この仕事やってて良かったと思うんですよ。
そのあと、他の病室で夜中にシコシコやってる患者みてやめたくなるんですけど、ね」

「生々しいぞ、君」

「ティッシュ捨てるの私ですから―――――ゴミ箱妊娠させる気ですか、といってやりました、そしたらそのあと、そいつ携帯で掲示板に書き込みしてました、スレ立てしましたね絶対あれ、安価とって変なことしてきたら―――――陰毛全部剃ってやる。」

そういうわりには病院の年配の方に尻触られても、気にしないのが彼女である。
曰く、老い先短いし、それくらいはボランティアというらしい。
どっかのエロ本に出てくるナースみたいな女だな、と私は思う。



「人間、我慢できないものだ、我慢はよくないのだ、きっと」

「ええ私は我慢しないタチなので、すぐ反撃で嫌がらせします。そういえば先生は我慢する方ですか?まぁ先生ゴリラっぽいから我慢強そうですね?」





「君、ゴリラはああ見えて繊細な動物だぞ?神経性の下痢にかかりやすいし、ストレスに弱いのだぞ?」

「先生、ストレス性の下痢なんですか?いいお薬ありますよ?勿論、病院のじゃなくて市販のですけど」

「君、いい度胸してるな、一応、私結構偉いんだが」

「ナースは戦場で生まれたんですよ?」

「君優秀だから、私は怒らないんだが――――で、市販の何がいいのかね?正露丸か?」

「トマトです」

「トマト、効くのかね?」

「医者いらず、ですから」

「君、私のこと嫌いか?」

「だって先生があの子に一番好かれてるじゃないですか、もう悔しくて悔しくて、先生が来たときと私が尿瓶とりにきたときじゃあ反応大分違いますよ」

「そりゃあ違う」

「私、君のなら飲めます!ってくらい好きなのになぁ――容姿がもう、見た目だけで私の股開いてあげるよ、みたいな」

「おい、何をいっている?」

「勿論、あの子のおしっ「言うな」



そんな彼がみんな大好きだった。















「先生次の本持ってきてください」

「ん、どうしたんだい……この前持ってきた本、つまらなかったかな?」

「いや、面白かったのすぐ読み終えちゃったんです、え、と……中々心温まるお話で、でも私に10万回死んだ猫は結構アウトですよ?」

「そうか、それは良かった」

「いいんですか?」

「面白いと思う本に読み手の実状は関係ないからね、面白い本はただ面白いのだ」

「なるほど………ですけど、わざわざ私に毎回こうして本を持ってきてくれるんですか?先生もお忙しいのに」

「君が面白いと思うのは、それは君がまだまだ元気な証拠なんだ」

「全然元気じゃないですよ?」

「君の面白い、という言葉を私が聞いて、君の体がどんなに死に傾いでも、君の心はまだ元気で生きることを諦めていないと私が安心できる、という一種の検診なのだよ」

「なんか感動できそうな感じのセリフですね、先生」

「感動してくれたまえ」

「感動します、感動、感動―――――――で、なんで持ってきてくれるんですか?」


「いやね……私の趣味は中々あまり周囲の人間に何かしら良い顔をされなくてね、周りにも私の趣味を話しても喜んで聞いてくれる人もいないんだ。
私の趣味の本は基本的にマイナー、いや子供向けでね、児童文学が趣味というのもね。

正直、私みたいなおっさんがミヒャエルエンデが愛読書とか言ったら周囲ドン引きだろう?
池波とか大河で我慢しろよおっさん、とかなるだろう?
ムーミンが好きで好きでたまんない、スヌーピーも好きだ、とかドン引きだろ。
休みの日はムーミンを見て、ロッキーチャックを観る、なんてダメなおっさんだ。
キモイとか職場の若い看護婦さんに言われたら、ショックで寝込んでしまう。
ましてや「可愛いですね先生」と、小馬鹿にされても辛いのだ。
お前らは45のおっさんを可愛いという失礼をわからんのか、と少し厭な気分になってしまう。
今時はネットやらSNSでそういう趣味を語り合うってのもできるのだけれどね、結局のところ人は傍にいる誰かと会話してこそ、相手と楽しめる。
一人で、パソコンの前で座っていても……ぼうっと、それは結局のところ誰も傍にいないと気づくわけなんだよ」

「先生」

「それにネットは平気に私の大好きな作品の悪口をいったりするから嫌いなのだ、物語を簡単にキーボードで叩くから嫌だ」

「ハリポッターでおしゃべりすればいいのでは?ギリギリいけそうですよ?」

「ハリーポッターは好きだけれどね、私は。あとハリーポッターはおっさん的にアウトなのだ」




目の前のクマのような先生を見て、確かに、と思う。
若いピチピチとした看護婦さんに「ハリーポッター」の話題を嬉々としてこの先生が盛り上がっても残念さが消えはしないだろう。
私が、「将来はサッカー選手になる」とかそういうレベルの発言だ。
それでプロのサッカー選手を連れてこられて、感動的なドキュメンタリーにされたら嫌だな、なんて思う。
アンビリバボーとかああいう番組は苦手なのだ、少し嫉妬してしまうから。


「無理にされたくないんですね」

「ああ、無理にされたくはない、何事もね」



無理に会話についてこられても、無理に優しくされても、つらいものだ。
確かにその好意は嬉しいものだ、ありがとう、と思う。

だが

「結構ほっといてほしいのだ」


「ええ、それでも、やっぱり仲間欲しいんですね、だから私を仲間に入れようと」


それでも結構すがってしまったり、一人寂しくなって誰かにかまって欲しくなることもある。
昔先生にそう、己の心疚しい胸の裡を話したことがある。

「そうだ、人間、一貫性で生きれんからなぁ、私もこうして本を集めるのに苦労したものだ。
ネットで買えばいいものを、やはり現物をみると手が伸びる、そして店員の目が気になる。
だから週刊雑誌の下に独身で子供もいないくせにあたかも、自分の子供のお土産に――――――」


別におかしくない、と今のように笑ってくれる。
目の前の彼は私にとって父であった。
だから少しおねだりをしてみようと思う。


「今度から、私の為に買ってきてくれてもいいんですよ?」

「それもいいかもしれない、が、独身で私みたいなおっさんがね、君みたいな子に毎回本を買ってあげてるとね、周囲が――――あとそういう言葉は君は危険だ」

「これから沢山貢いでください」

「だから危険だ、危ういぞ、だがこれからそうしようか、ん………だが君とあんまり趣味あわんだろ私の趣味、私結構損をするんだが」

「まぁ乙女趣味ですから、先生は」

「君、男らしい話好きだからなぁ、」

「男の子ですし、まぁこんな体じゃあ、区別つかないそうですけど………」

「君まだ二次性徴きてないからなぁ、この病棟の十代の患者さんでマスターベーションしないのは君だけだと看護婦さんの間で有名だぞ」

「?マスターベーションってなんですか?なんかのゲームの必殺技の名前ですか」

「………君そういうの無縁だったか……」

多分それなりに神話などを読んでいるんで、自慰は知らなくとも性交は知っているだろう、と思う。
この前ギリシャ神話を貸してしばらく「これって神様?……不良ですよね」と唸っていたし。


「私には無縁?私には無縁なマスターベーションって、なんですか?」

「なんか危ない展開になりそうなので、今度中学校の教材保険体育の教科書もってくるよ私は――――あ、あとそれまでマスターベーションとは何かを誰かに訪ねんでくれ、切実に」

「別にいいですけど?」

「では、そろそろ私はお暇するよ、良い眠りを、神崎瑞稀君」

「はい、ちょっと眠くなってました、おやすみです」

「で、次は何の本を持っていたらいいかね?」

「ローズマリー・サトクリフの炎の戦士クーフリンをお願いします、先生、また読みたくなりました」

「ああ、持ってくるよ」

きぃ、とゆっくり先生が神崎瑞稀の部屋から出ていくのを見ると、神崎瑞稀はため息を付いた。


「……我が儘いいすぎたかな?」





生まれたからには何かを成さねばならぬ、そんな風に思ってずっと生きていた。
笑ってしまう話だが何処かしらそのような急迫観念が胸に残っている。
消えぬ燃えさしのように、パチパチと絶えぬ火がきっと消えはしない。

だけれど、私は生まれてこの方、病弱で一歩も生まれたところから歩いて出たこともない。
白い病室、消毒薬の匂い、繋がれた管の無機質なプラスチックの感触、腕に刺さる鉄の針。
喉は何時も、苦しく詰まったようで此処に穴が開けばどんなに楽になれるだろうか、そんな開放感を待ち望んでいる。
腕も病院で決まって出される食事が盛られた皿を持ち上げるだけで酷く億劫になってしまい、疲れてしまって、虚しくなる。

春の穏やかな透き通るような太陽の香りがする青々とした風さえも、私を痛ませる。
こんな脆く本当に吹けば飛ぶような弱い体で何を成せるのか、そう思う。

生まれながらにして、私の体は元々全体が弱く、唯一丈夫だったといえば、その火が燃えているような錯覚を起こしている心臓のみ。
20をすぎる前に私はきっと、もたないと言われた、ああそうだろうな、そう知っている。
骸骨の如く痩せぎすで、幽霊のように軽い、まだ怪談に出てくるお化けの方が生き生きとしているだろうなと考えてしまうくらいだ。

そして、私はもう一日6時間以上、この躰を私が知る目の前の病室に居させることができなくなってきた。
唯一の楽しみは両親も親類も諦めた私にいつも先生が持ってきてくれる本だけだった。
もしくは看護婦さんが持ってきてくれるゲームも。
でもゲームは疲れるのであまりできない。





そして、この日の晩、私は先生の持ってきてくれる本を読むことも出来ずに体の限界が来てしまい、死んでしまうことになる。










そしてその日、私はついに病室からやっと外に出れたのだ。








機巧メイドは挫けない


機巧少女は傷つかないの二次創作、思いつき。
多分原作知らないと内容わからないかも。







私は病に果て、生まれ変わった。
好きに歩き回れる足、走ることができる心臓。
まるで飛べる気さえ起こる、だけれど、毎日が不満だらけだった、今回の人生は読書家の私にとって予想がつくほど己のこれからの未来がわかってしまった、

飢えて飢えて飢えて飢えてしょうがない、古びた時代背景らしき寒村の農家の12人家族の6女として生まれた私は、当たり前のことに労働力、資本として扱われて育った。
かじかんで震えながら、一日中冷水の中で二人の赤ん坊の兄妹を背負いながら洗濯をし、あかぎれの手の痛みに耐え、農作物を奴隷のように運ぶ、それが毎日続く。
食べ物も粗末でじゃがいもとかぼちゃが主食だった。
前世の知識――――?
そんなもの生かすなんてある程度恵まれた場所でなければ使えない、ひとりになって自由に何かをしようとすると鬼女のような母親に竹の棒でで容赦なく顔を叩かれ、寒空の下に夜、立たされる。

産みの親はその寒村の貧しさが身も心も染み渡ったような貧しい人間だった。
子供を犬猫のように何人も産み落とし、犬猫のように扱う、愛しながら育てるためではない、労働力の為に子供を生む、そんな女。

朝日が登れば起き出し、暗くなれば泥のように眠る。
私はその家族の中で最も冷遇されており、勿論布団なんてものはなく、藁を編んで作った襤褸をまとって眠る。
ノミやダニが全身を這い回り、毎晩寝苦しい家畜小屋。

私は生まれ変わる前と同じ姿で生まれたのだ。
英語圏の寒村に生まれた黒髪の黄色い肌の少女はどうやら周囲のにとって大変奇異に映るらしく、いやそもそも親にとって私は異物だった。
黄疸の病を受けた子供だと思われ、忌避され続けていた。


そして10にみたない頃、私は売られ――――そして



「痛くないのかしら――――――昔のことでも思い返しているのかしら?まるで氷漬けの鰯のような顔をしているわよ?」


私ははっとする。
鉄道に乗って窓辺の景色を見ていたら思わず過去のことを思い出していたようだ。
私の主人が話しかけているのも無視して思いふけっていたようで、頬をつねられていたのも気づかなかった。

「相変わらず、思い込むと私が折角悪戯して上げてるのに反応しないわ、つまらない……で、何を思い出していたの?」


「はい、間引きされ、自動人形のメイドとして日本に輸出されるまでのことを思い返しておりました、しかしながらライトノベルという小説は知っておりましたが、本当にこの世界がそのライトノベル、機巧少女は傷つかない、でしたか?その小説の世界なのでしょうか?私の生まれ育ったアイルランドはあまりライトでありませんでしたが?」

「ふふ、中々重い過去よね、男の子だった時は病気で死んで?そして生まれ変わって売られて解体されてお人形にされて、私に買われたのだもの、まぁ私も前に今の年には年上の兄に殺されているけど、アナタは極めつけに不幸な生き物よね、ほら、そんなハシタナイ格好して、恥ずかしいでしょう、もっと苦しそうな顔をしていいのよ?
ねぇ、昔オトコの子だったんだから、もっと嫌そうな恥ずかしそうな顔をして、私をゾクゾクさせなさい!ほら、脱がせるわよ」

私の胸元ははだけられ、下着の肩紐が半分宙にぶら下がっていた。

周りの視線が気づくと全て私の胸元に集まっていた。

「…………此処は公共機関なのでおやめください」


「人形には人権なんてものはないわよっ!いつだってアナタは私のお人形さんなのっ!文句は言っちゃダメ!ほら足を開きなさい!」

そそくさと私は胸元を正そうとするが―――――止めようとしたボタンがそう言って怒る主に素早く着衣の上からちぎり取られる。

「……いやです」

「あっそう、じゃあ閉じたままでいいわ、あ、そっちの方がイヤラシイわ」


禁忌の技術、人間の死骸を持って作られた自動人形である私の主である、京 有栖 (かなどり ありす)は嗜虐性的な顔を浮かべながら私の顔を見ながら私の身につけている

侍女服のスカートをめくっては顔を上気させ赤くし、唇を歪ませる。
どうやら過去に男性だった私に女性ものガーター下着を履かせ、侍女服―――ヴィクトリアンメイド服を着せ、それを剥いて露出させ辱めることに夢中なようだ。

鉄道の中で乗り合わせた人々が赤いドレスをまとった見目麗しい少女が行う行為に何かしら思うところがあるのか、眼を伏せ、別の車両に消えていく。
流石英国の紳士淑女だ。


どうせなら、私があなたたちの視線に気づく前に消えていただくとありがたかった。


「誰もいなくなったわよ、ほら私だけしかみないから、脱ぎなさい」

「お人形の着せ替えですか、お嬢様、微笑ましいですね……………私が殆ど自動人形と人間の見分けがつかなければの話ですが」

私は顔のひくつきが止まらないまま、主に文句の一つを溜息と共に吐いた。
人間の死体を利用し、いや殆どサイボーグのような私は人間との差異がない。
勿論自動人形として使い手の魔力がなければ活動することができないのだが、姿形は立派な女性である。



「あら、今日は黒のレースなのね、いやらしいわね、元々男だった癖に、本当に貴方って変態だわ、そんな清楚な顔をして、沢山の男を欲情させて興奮するのね、本当に変態っ!」


「確かにそういう機能ありますが、私自身何も思いません」



ぺろり、と私のロングスカートをめくりあげたままギラギラと青い眼を輝かせる少女。


此処で一瞬、元人として女性らしい悲鳴を上げるべきか私は迷う。
しかし、この少女の前でそんな声を出せばますます興奮し、下手をすると彼女が腰にいつもぶら下げている大きな鋏でスカートにスリットを入れられかねないのでよしておいた。

黒い髪に青色の瞳を持つ少女、所謂ハーフの少女は長く肩まで伸ばした結ばれたリボンを揺らして楽しんでいる。


傍からみれば純粋無垢な天使のような容姿の少女だが、何時も通り表情はまるで鼠を甚振って遊ぶ猫のような顔をしている。


なんでだれもこんなふうになるのを止めなかったのか。


まぁ昔かららしいが。

同じく前世を持つものとして私が古典文学の読書好きであったに対して彼女の場合はどちらかというと漫画やゲームの最新の娯楽が好みで、特にゲームが好きだったらしい。
此処2年共に過ごしていてこの妹のような主人の趣味趣向は伺ったことがある。

様々なゲームのキャラクターが戦闘などでダメージを受けた時の悲鳴を抽出し、mp3に変換し、一日中音楽プレイヤーで再生するのが趣味だったらしいのだ。

8歳の頃には始めていたというから、大変高次元な趣味を持った少女である。


生粋の嗜虐性を持った少女はこれでもまだ12歳の子供だというから驚きだ、それを指摘すると、「本当ならこれで24歳よ」と顔を膨れさせ自分が大人の女性だといつも文句を言う。
これでも可愛らしいところもある、とはわかっているのだが。
この子は「可愛く恥ずかしそうに苦しそうにしている他人」を見るのが大好きなので、全て帳消しだ。



「あのですね、この下着もそうですけど、私の服は全てお嬢様がデザインしているではありませんか?しかも私に縫わせてるし……」

「大昔の日本に売ってないからしょうがないでしょ?この天才の私のデザインに文句を言うの?今度からアナタの普段の正装はもっとスカートが短くてパンツだってみえちゃうような秋葉原メイドさんの」

「ああ、わかりましたから………本当におやめください、なんでもいうこと聞きま「なんでも!?」

「しまっ「じゃあ、首輪つけていい!?勿論私がいつでも紐で引っ張ってあげるわ!ふふふふ、私用意してきたのよ、一日中四つん這いで歩かせて、その顔に私が飲む朝の牛乳をアナタの顔に掛けるの、それでアナタは真っ白に濡れた顔のまま恥ずかしそうに「世界中の誰にも見られたくない」って泣いちゃうの―――――どう?」

少女はあらんがきりに己の欲望と嗜好を楽しそうに、本当に楽しそうに蠱惑的に笑いながらそう言う。
こちらが驚愕するような高度な内容の発言である。
過去において16だった男性の私よりも遥かに前衛的な性知識が混沌と含まれている。

「どうって………なにがですか?」

「興奮しない?」

「しませんよ、お好きになさったらいいでしょう、私は自動人形ですので自動人形らしく、主人が汚した衣服を静かに洗うだけです」

つとめて私はなるべくヒクつく顔を無視して冷たくそう言った。
まるで人形のように、いや人形なのだが、そういう気分で、無機物のような感情でそう発言することに全力を尽くした。
ここで厭な顔をすればますます彼女は本気になってしまうだろう。



すると、少し残念そうに「私はするけど、アナタがそういう風に冷静になると楽しくないわ」と幼くむちむちとしていながら細く長い足をぶらぶらとさせ、興味をなくした、と窓の景色を眺め始める。どうやら彼女の渾身の発想をなんとか切り払うことに私は成功した


よし


「というとでも思ったかしら?―――――安心なんてしないで?」

うわぁ、ご主人様がドSすぎてツライ。


私が一瞬ほっとした瞬間にニヤリと輝くように笑ってこちらをみて、とろけるような顔で微笑み始めた。

「私のモノになったときから、アナタは私の手で永遠に恥ずかしそうに生きなきゃダメなのよ?だって折角可愛くて綺麗な顔に生まれたんだもの」

「これがあとからの作り物だとは思いませんか?」


「は――――?」

私が思わずそう言うと。
彼女はまるで大きな命題とぶち当たった時の英雄の顔をした。
己の限界を知らされ、なお、刃向かう、戦士の表情。
私の発言に心底彼女は怒り始めた。


思わず、震え上がってしまう。
私の体温は死人の体温だが、ますます体が冷え込んでいく気がしてしまう。


失敗したな、と私は思った。
唯一私の体でそのままの弄られなかった部位を私が作り物だろう、と言うと、彼女はこの世界に今にも火をつけそうな顔をするのだ。


「はっそんな神様が一生懸命に悩んで作ったような顔が人の手に作れるわけないでしょう?――――私を馬鹿にしているのかしら、本当に腹がたつわよ、そんなことを言うと、私がその顔を引き裂いてグチャグチャにするわよ?………昔のことを思い出しているのもそうだし、そんなことを言い出すのもそう、私に喧嘩を売っているのかしら、私たちはどこにいるのよ?
英国でしょ?私はね、戦いにきたのよ、古臭い占いごっこの陰陽道とかいうお遊びをいつまでも続け、権力にしがみつく古臭いおじいちゃんたちを此処で手に入れる力で過去の異物に叩き落とし、さらにアナタという世界にたった一人しかいなかった私の過去の証明を汚してくれた誰かを滅茶苦茶にして、そして貴方を人間に戻す為に今此処にいるのよ?わかる?少しはもっと怒りなさいよ、復讐なのよ?私とあなたのね」





私の主、アリス。


彼女の母は私の出身と同じ――現在英国で植民地化されたアイルランドから日本に売られた女性の魔術師だったらしい。
売られた先は陰陽師という特殊な家系であり。
海外の魔術の血を取り入れるためだけに生かされ、アリスを生み、数年で死んだ。

そしてアリスは前世の記憶を持つが故の早熟さ、そこに期待され2歳になったときから虐待のような研鑽をつまされ、将来を嘱望された。


一応本家筋とのことらしいが、後継としてではなく彼女は戦いの道具という目的の為に生まれたらしい。
予見されたこれから起きるとされる大きな争いのための兵器として期待されていた。


しかし、彼女には陰陽道の才能がなかった。
どうやら海外の血の方が強く、一切日本の呪術の才能がなかったらしい。
そして才能がある、海外の魔術を学ぶにも学ぶ場所もなく、すぐに必要とされなくなり、酷く冷遇されたらしい。

しかし、現在世界で流行している自動人形という技術に眼をつけ、彼女の父はあるものを与えた。


英国から輸入された魔術の道具。

それが私。

アイルランドの人間の肉を使って作り出された禁忌の技術で生み出された自動人形。
その私という武器を使いこなすために彼女は一人、英国という日本から遠く離れた場所に放り投げられた。

それが彼女の今の立ち位置だった。


そして


「くー」

「はい」


「あなたと違って、私はね、機巧少女っていう小説を読んでいたわ、しっかりとね。
12巻は読めなかったけれど――――そしてこの現実で主人公にあったことがあるわ。
知っているでしょう、あの赤羽の生き残りよ、ええ、すごい私が知っている通り、お人好しそうな可愛いくて虐めたら楽しそうな人間だったわ――――だけどね私はね、わかる?
誰でも当たり前のようにヒロインの女の子だけはご都合主義に助けてしまうだろう彼に会ってどう思ったと思う?

私もヒロインになれるかしら――――なんて思ってしまったのよ。

なんてくっだらないことでしょうね、情けないと思ったわ、まるで売女だわ、屑の発想よ、その時から私は誇りを失ったのよ、自分で見て聞いて感じて決める人生をたかだか本に書いて

あるという未来っていう事前情報で安く売ってしまうところだったの、そんなことを考えた瞬間たまらなくなったわ、それって人生放棄だもの、動物以下の考えだったと思うわ
私はね、過去も未来も将来の夢は好きなオトコの子と結婚するっていう夢を持っていたの、その夢を自分で汚したのよ?

此処が現実なのにその本という夢さえも汚したの。

だからこそ―――――情けないと思ったから、私は決めたの」



「私が魔王になる、主役を目指すわ」

支離滅裂だろう。
聞いている私には理解できない言葉だ。
きっと彼女自身も理解できないことだろう、ただ其処には怒りがある。






純粋な怒りだ。





私は彼女の言う物語は知らない、それ故にあの気の良い少年のこともただの他人でしか過ぎない。
だがアリスにとって過去憧れた物語の主人公なのだろう。

彼女は彼に出会うまできっと自分の人生を12年此処で苦痛にまみれて生きたのだろう、必死に、この現実を。

いつか知ったのだろう、ここが物語の世界だと。


そして――――――自分が物語の人物になってみよう、そんなことを思った瞬間に、怒ったのだ。

己に。

彼女は誇り高い人間だ。
己の現実も夢も希望も自らドブに捨てたような気分になり、それゆえ、自ら誇りを失ったと知った瞬間から、それを取り戻す人生を始めたのだ。


「取り敢えず今まで出会ってきたムカつくやつを片っ端からぶん殴ってストレス解消する」


というような目標らしいが。



12歳の少女でありながら、心底尊敬してしまう。

普段はついていけない変態さんであるのだが、嫌いになれないのはそういうところが私は大好きだからである。



そんな風に思える人間なんてそれこそ――――――いや、いいか。
そんなことを思ってしまえば益々彼女を激怒させてしまう。



「ああもう!いっつもよ!あなたみたいに児童文学だけ素直に読んでいれば良かったわ!グダグダと悩んでしまうもの!あなたみたいに平気に自分で自分の名前をクー・フランだなんて名乗る間抜けな神経が欲しいわ!あなた武器槍じゃないでしょ!」


「ゲーボルグありますよ」

「薙刀でしょ、それ」


私の名前はクー・フラン。
死ぬ前に読んだ児童文学の英雄の名前を自ら名乗る自動人形。

魔術回路【鮭飛び】を持つ、薙刀を使うくー・ふーりんである。



「まぁいいわ、ところで、くー」

「なんですか」

「原作だと今私たちが乗っている鉄道ってなんだかこれから止まらなくなるそうよ、なんでかは知らないけれど、私がヴァルプルギス王立機巧学院に入学するのって彼と一緒なのよね?さっき彼が寝ていたのを見つけたし」

「え?」

「折角だから私たちで止めましょう?」

「折角だから………という意味がわかりません、あとこの鉄道が止まらなくなる?――――そんな馬鹿な」

私は思わず外の景色を車窓から覗いた、特段何か起きる気はしないが。




「アニメ1話みたけど―――――あれって客車両ぐねぐねになったのよね」

滅茶苦茶脱輪していたけど、普通脱輪したら中の人間って大怪我するわよね?












つづく?




京 有栖


12歳のドS美少女 

過去オタクの兄を持つ12歳の少女であり、同じドSの兄と本気の喧嘩を行い、殺しあい死んでしまった転生者。
兄の本棚の本を勝手に借りパクしていくジャイアンのような妹である。



クー・フラン

禁忌の自動人形。

一応過去の記憶を持つが記憶は記憶でしかなく、自動人形であるという現在が優っているため、特段己の境遇を不幸に思っていない。
それが有栖を怒らせる。

見た目はホライゾンの武蔵さんである。
一時期主の趣味で語尾に以上をつけることを強要され、結局性格上全然似つかないため諦められた。



あとがき


筆回復中のため支離滅裂の文かもしれません。

俺こういうの大好き。






[36072] 末馬達馬の事件簿2 幽霊編 小話さらに追加 226 さらに追加
Name: みさりつ◆dacc3cd9 ID:0efe3bb5
Date: 2014/02/26 02:50
ヘルクライマー編の前にちょいとしたお話。











夜、部屋の電気を消して、瞼を閉じれば、音がする。
こぽこぽと、こぽこぽと、水に何かが沈む音だ。
そして、朝方になり顔を洗おうとすると必ず、排水口に沢山の知らない誰かの髪の毛が溢れ返っている。

ああ、こんなふうな話はよく聞く。








ホラー映画とかで。



やばい、と思った。






「で、私はわざわざ遠くまで中学生に頼りにきたわけ、だ、ねぇ曜子、あんたこそどっかおかしくなったわけじゃないわよね」

3時間も車を運転してガソリン代3000円を払ってきたわけだが、わざわざ深刻な悩みを相談しに行く場所が中学校とは、私は相談した人間を間違えたようだ。
ある日、私はコンクリートで舗装された橋を歩いていたところ、隣スレスレで大型トラックが通り過ぎ、びっくりしてしまい、その時握っていた携帯電話を橋の下に落としてしまったのだ。
ぽちゃん、なんて感じに橋から落ちた携帯は下に流れる川に沈んだ。
それなりに愛着があったSONYのスライド式音楽携帯で普段音楽プレイヤーとして愛用していたやつだ。
どちらかというと、一緒に落ちた数万円したガナル式のイヤホンの方が大きな痛手だった。


そして私は川に携帯を落としてからというもの、心霊現象に悩まされている。
一笑に伏されるような話だけれど、自分は結構、そろそろ恐怖心に押しつぶされそうで、此処一週間は友達の家を渡り歩いて一人で眠らないようにしていた。
そして友人のひとり、同じ学部に通う石塚曜子が私に解決策を教えてくれた。

何か本当に困ったことがあれば、○県、海鳴市に住まう、一人の少年に頼れば良い、と。


なんだそれは。



「いや大丈夫だって、たっくんならなんとかしてくれるよ?」

ふわふわのウェーブがかった茶色に染めた髪の毛を揺らしながら、首を縦に振る友人をジト目で私は見る。
目つきが悪く、口も辛辣だと周りから言われ、少し気にはしているが、相手を恫喝するときは大変重宝している私の迫力で友人の真偽を問うた。


あんたそれ、まじでいってんの?

という「気の弱い人間なら眼を逸らして逃げる」と付き合って間もないのにセックスを迫った元彼を拳と共にフった時に言われた目線で聞いても、友人は「大丈夫」と笑う。


「えっとね、ヴィレッジ・バンガードで買った、ペルー産のコーラと、狼の絵が書いてある一本400円のコーラ、それを2、3本用意します、それを持っていて、「これあげるから助けてー」っていけば大体なんとかしてくれるんだ、あと30円のブラックサンダーの箱一つとかあればさらに頑張ってくれる」

石塚曜子は機嫌が大変良さそうに、それらが入ったビニール袋を揺らす。
周りの少年たちが、私たちのような学校関係者ではない大人の女性が歩いているのを見て、物珍しそうに見てきても全く気にしていない。


わざわざ行く道の途中でイオンに寄ったのはそのためか、随分安い依頼料だ。
これ、たっくんも使ってるんだー、とニコニコしながら曜子はその依頼料を「ワオンカードってどこでも色んな県の買えるんだよ」と私に自慢しながらで北海道バージョンのワオンカードで購入していた。
私はその依頼料の事実にイライラしてきたわけだが。

私はこちらの足やら、お尻やらをこっそりと見るそろそろ97%は自慰を覚え始める年頃の子供たちの視線に嫌気がさしてきた。
健全だが、無遠慮にこちらの容姿を女として含む視線で見られるのは疲れる。
まるで飲みサーの合コンに参加して男達に囲まれたサークル選びに失敗した初々しい女子大生1年の気分、というか去年の私の嫌な思い出を思い出す。



「そんなわけあるか、だってたかが、中学生でしょう?その子がテレビに出てくる下ヨシ子先生みたいに、霊能力使えるとか、そういわけじゃないんでしょ?
なんで態々、その子供の所にいくわけ?……だって普通のガキでしょ?」

海鳴清祥学園、男子中等部の門を潜ってから、少しばかりあった、その「頼れる男子中学生」とやらの期待感が一気に失せてくる。
私立のお金持ちが通う学校らしく、センスの良い、近代的な作りの校舎には物珍しさを感じ、過去自分が女子中学生だった時の懐かしさを感じることだけが今現在のモチベーションを維持してくれる。




その前に見た。離れた場所にある女子中等部の門から出ていく、仲の良さげにきゃいきゃいと笑い合ってる5人の女の子とか見ていて青春を思い出せたし。
まぁ、その5人は見ていてうっとりするくらい綺麗な女の子達で2人も金髪美少女が居て
この学校は何処かの4コマ漫画に出てきそう、とか、ああ、「けいおん」みたいだ、なんて思ったり。


あー人生やり直したら、そういう高校生活送ってみたいなぁ、とか、そんなことを思い馳せてみたり。



というゲージが残っているので、まだ帰らなくても大丈夫。
だから、さっさと目的は果たしたい。


「で、その子供んとこ来るのはいいけどさ、部外者が来てもいいの?」

正直その女子中等部の方に行きたかった。
中学の時吹奏楽部だった私にはこの私立の学校の楽器などを見て、羨ましがったりしてみたかったのだ。
スタンウェイのピアノとか置いてそうだし。


「たっくんには話を通してるから大丈夫だよ」

学校の敷地内、横を教員が通り過ぎるが、特に何もこちらに対して、訝しんだりせず、「ああ、末馬に用事の人か」なんて感じにつぶやくぐらいで問題はないらしい。
若干、聞こえた「また美人かよ、あの野郎、しかもふたり」と吐き捨てるように、走って横を通り過ぎた野球少年軍団に奇妙な気分になる。

「で、そのたっくんとやらは何処にいるわけ?どうやら放課後だけど?」

「この学校の三階にある生徒会室にいるよ?前回来たときは、「おやつの時間」って言ってひとりでカセットコンロでインスタントラーメン作ってたから、今日もなんか作ってるんじゃないかな、その前来たときは七輪でさんま焼いてたかな、だから、この時間なら生徒会室でなんか食べてると思う」


曜子は右手の手首の反対側に向けて付けているベビーGの文字盤を見てそう言って、うんうん、絶対またなんか作ってる、私もご相伴に与ろう、間接キスだ、とかそんなことを小声でぼそりと。

「は?」

校舎内に入り、最初から来客用のスリッパが二つ用意してあり、それを片方曜子は当たり前とでも言うかのように履き、校舎内に入っていく。
ペタペタと校内に入っていく、姿は手馴れていて、彼女が何度か此処に訪れていることに、少しだけ驚きを感じる。

この女、しょっちゅうその男子中学生に会いに行ってるのか!?


「おい、その子供あんたのなによ」

「私の好きな男の子。片思い中なの、桐子がちょうどよく困り事があってよかった、此処にくる用ができたんだもん」

「あんたショタコンなの?ていうか私の深刻な悩みがちょうど良かったって何!?」

階段を上がる途中も、未成年に手を出しかけている、成年になりたての友人の可笑しさに色々突っ込んだことを聞きながら、三階にあがり、目的地に歩いていく。


生徒会室、と銀盤に掘られた黒文字が掲げられた一室の前に立つと、何処か胡散臭い気分がいっぱいだが、取り敢えず。


「ねえ曜子」

「ん?」

「ラム肉が美味しく焼けている匂いがするんですけど?」


独特の匂い、嫌いな人は嫌いな匂いだ。
私と曜子は北海道出身なので、GWやらの行事でよく嗅いだ匂い。


そしてその生徒会室の文字盤の所に白い制服がハンガーで掛けてある。





「はなとゆめの「動物のお医者さん」って漫画の4巻でさ、カラスにジンギスカンが奪われる話あったけど、本当に一味唐辛子でカラスって咽んのかなー、どう思うよ、山田」

「その漫画知らない。で、あんた……どこまで生徒会室を私物化する気よ、しかも、なんでもやしとピーマンとラム肉が生徒会室にあるのよ?しかもなんで東芝の冷蔵庫とかあるのよ?」


「ジンギスカンするためだけど?あと動物のお医者さん面白いぞ、俺は昔それで北大獣医学部目指したし―――無理だったが」



「だから、こういうのなんで持ってきてんのよ?学校に見つかったらめちゃめちゃ怒られんじゃないの?あと「もやしもん」見て農大行くタイプね、アンタ」


「この東芝の冷蔵庫は前の数学教師が転勤のときおいてったやつでさ、もらったの、ちょうど、ロッカーにぴったり入る一人暮らし用でさ、ロッカーにドリルで穴開けて、電源通して隠してるから見つからんぞ、此処一部物置部屋になってるし」


「そうじゃなくて………なんでわざわざ、そういうことするの?家でやりなさいよそーいうこと」

「こういうことするの夢だったんだ、俺。理科室のビーカーでアルコールランプ使ってコーヒー淹れたりとか、そういうの」

「夢って……じゃあコーヒーで我慢しなさいよ」

「結局山田も文句言いながら、付き合ってくれてんじゃん、流石になぁ、他の此処の学生にバレたらみんなやりたがるしなぁ、真似されたら困るし、みんなでやったら悪い遊びになるし
でも、ひとりで此処までやると寂しくなるし」


「生徒会室でジンギスカンやること悪い遊びじゃないの?生徒会室にある電子レンジで温めたサトウのごはんと一緒に肉を食うことが?」

「これは本気で真面目にやってる、俺、燃費悪くてさー、水泳選手ばりにカロリーとらんと学校生活がもたんのよ。
これ以上妙子さんにお弁当作ってもらうわけ行かんし、遊びじゃないんだな、これが。
あと末馬家であんまり鍋とかこういうのやんないんだよ。すぐお腹いっぱいになった妙子さんが沢山食べる俺のために肉を延々と焼き続けるという罪悪感が溜まる食事になるし、いや別にあの人は嬉しそうに綺麗に美味しく焼いてくれるんだけど、こう、あれだ、とにかくなんか凄い悪いことしてる気がするんだ」


「なんか想像できるわね、その光景……で、なのはとかは誘わないの?私だけよね、これ」

「あいつら、こーいうことに案外厳しい。下手したら、俺の食事事情が改悪される、あとあいつらがこの学校に来ると、多分バレる、山田は一応あっちの生徒会長で、俺と一緒に仕事してる体を装えるけどさ、あいつら、あんま学校行事とか参加しないからなぁ、周りの生徒たちが「何の用事だよ!」ってなる」

「男子一人しかいない生徒会室に綺麗な女の子呼んで、焼肉パーティー………ハーレムね、達馬、あとビール飲 む な」

「だろ?絶対疑われる、別にそーいうのサラサラないんだが、ちなみにこれはノンアルコール、麦茶と変わらん。本当の酒飲んだら妙子さんに怒られたからもう二十まで飲まない。あ、そーいや、来年の春の修学旅行だけどさ、折角だから、男女混合で回れるようにしてやんないか?場所一緒だろ?」

「一緒に回れないように場所と時間ずらしてるわよねウチの学校、あれ、不純異性交遊防止ってやつよ」

「えっとなぁ……体験教室ってあってさ、そこの部分で合同でやるって学校に進言してみるわ」

「ふーん、色々考えてんのね、じゃあ私の方もそっちに合わせるわよ、思い出作りは大事よね」

「あー頼むわ、山田。この前の体育祭の合同練習とか、そっちの男子側の実力がどうたらこうたら、女子の実力アップがどうたらこうたら、とか言って上手く先生側に認めさせてくれたしな、どっちかというと女子側のイエスが重要なんだよなぁ、あと体験教室が一番つまらないところだから、案外通りそうだし、去年講習側の方でちょっと文句でたらしいし「あんまやる気ねえ」って」


「うちの方はそうでもないけど?……あ、この肉焼けてるわよ、食べなさい」


「さんきゅ、で、女子いたら「いいとこ見せよう」というやる気アップ効果が狙えそうなんだよ、こう、牛の乳とかガンガン絞ったりとか、ぐるんぐるん陶芸したりとか」

「そう?で、ちょっと気が早いけど、アンタ、牧場体験と陶芸教室とガラス工房体験とかあるけど、どれ希望するの?」

「ガラスは昔男だけで虚しく小樽でやったしなぁ、牧場は親戚んちでよく夏休み中働かせられたりしたから………陶芸だな」

「陶芸ね、わかったわ」


「お前はどうすんの?」


「私も陶芸、偶然ね」

「おお、俺ら気が早い、早い、いやー楽しみだなぁ」

「ふふ」

「あ、このいい感じに焼けたピーマンもらうぞ」


なんて、声も聞こえてくる。
女の子もいるらしく、女の子側の言葉の節々になんだか甘酸っぱい香りを感じる。

ような気分を感じるが、ジンギスカンの匂いで大分それがかき消されている。




「あ、この匂い、松尾ジンギスカンだね」

と曜子が嬉しそうな声を出す。


確かにこの匂いは、生後1年未満の仔羊の肩肉のスジを丁寧に取り除きながらも適度に脂身を残し
松尾ジンギスカン秘伝のタレに漬け込んでいるため羊肉独特の香りが少なくジューシーな口当たりが後をひく、味付けラムだ。


そんなものを中学校の校舎でごはんとビールで頂くなんて。


「………たっくんとやらが、相当普通じゃない子供ということはよくわかったわ、じゃあ入るわよ」


私もなんだか食べたくなってきたし。


「ちょっと、待って私、今身だしなみチェックするから」

「あんたそんなに、真剣なの?」



で、この扉の奥にいる、少年はどんな人間なのだろうか。
ちょっと、期待する。
横で必死に髪型やら化粧やらを手鏡でチェックしている曜子を見て「きっと超中学生、絶対美形で、なんか特殊な少年がいるんだ」とか期待が溢れてきた。
話し声も聞いてみれば、穏やかで、何処か大人びた様子だし、声も中々良い声をしている。
漫画とかに出てきそうな人物を予想して生徒会室を開けると











「やべっ!」


と、最初に羊のような、眠そうな眼をした少年が必死に物凄いスピードでカセットコンロとジンギスカン鍋を隠し始める様子をみることが出来た。
教員が来たのかと、本気で焦ったらしい。

でも手に持ったノンアルコールビール「サントリー・オールフリー」が手に握られたままだった。


しかも大きな声でやばい、と言ってるので言い訳のしようがない。
あとオールフリーは飲んだあとの余韻がないので、あんまり私は好きじゃない。


それに対してしれっとした顔で小顔で可愛らしい女の子が箸や皿をさっと隠し、まるで忍者のように近くの机を静かに倒して其処に身を隠した。
こちらが結構さっと扉を横に引いたのでその様子が見れたのだが、もっとゆっくり引かれていれば、扉の後ろ側に居た女の子は案外見つからないで済むかもしれないな、と思うくらいの身の変わりようだった。
しかも女の子はさらに扉がある壁の死角方向に隠れていったので、少年が怒られている隙に逃げ出せることも出来るかもしれない。
教員ではないといち早く女の子は気づいたらしく、「なんでもないですよ」なんて顔をして立ち上がり、体についた埃をぱっぱと制服から払って立ち上がる。
手には三ツ矢サイダーが握られていた。

すぐさま綺麗な顔でこちらを警戒心がこもった冷たい目で私たち、いや曜子を見据えた。


「邪魔すんな」

なんて言葉がありありと書いてある表情だった。
そしてすぐさま私の方を――――胸を見て、フッと笑いやがった。

「私の敵じゃないわ」なんて表情だった。


ちょっと、あなた――――中学生の癖に発育がいいようだけれど、おい。

私は睨む。
すると、睨まれた女の子は負けじとこちらを睨んでくる。

大人気なく、私が女の子を睨んでいると。


眠そうな眼をした少年は「あ、曜子さんだ。先生じゃない、よかった。よかった」と焦って隠したせいで床に少し溢れたタレなどをキッチンペーパーで拭き始めていた。
その横にすすすっと曜子は移動し「うん私も、手伝うよー」と甘えたような声をだしながら点数稼ぎを開始した。

「うわー結構こぼしたねぇ、ふふ、たっくんっていっつもこんなことやってるの?前はさんまだったよね?」

「たまにやってます、今日は金曜日、花金ってやつなので、盛大にやってたところです」

「じゃあ、今度私と一緒にさぁ美味しい焼肉屋さんいかない?」




曜子の声音は雌の声だった。
媚びるような声であり、そして獲物を逃がさない蜘蛛のような絡みとるような声だ。

なにが「じゃあ」なんだ。

その声を聞いて、女の子は嫌そうな顔をして、無言でしゃがんで床を拭いている二人の間にファブリーズを持ってきて「タレこぼれたからニオイとりねーしゅっしゅっ」と地味な攻撃を行い始めた。
女の子の口元から「女子大生だったらこんなところ来ないで、大人しく合コンでも行って別の男とくっつけよ………」とか小声で聞こえて、ちょっと怖い。






末馬達馬の事件簿2





色々場を正して、私はやっと本題に入ることとなった。



「あ、末馬達馬と申します、一応この学校の中等部の生徒会長をやってます」

礼儀正しく、ぺこりと頭を下げて自己紹介する少年、これが件の少年なのか、とちょっと観察する。
ジンギスカンを食べるために制服の上を脱いでいたので、赤いTシャツ姿で体にうっすらと、いや物凄い鍛え上げられた筋肉がよくみえた。

腹筋のあたりが、ちょっと触りたくなるくらい。


横で曜子が「じゅるり」と唾液を吸うかのようにエロそうな顔をしているのにちょっと冷や汗が出てくるので、私はあんまり見ないようにした。
目線を上げ、少年の顔をみてみることにする。
顔の方は、彫りが深く、鼻筋などがはっきりとしたパーツなのに、なんだか途轍もなく眠そうな眼をしていて特段イケメンとは呼べない顔。
眠そうな顔、眩しそうにしている顔、とかそういう印象が強く、特に好みでもなかった。
まぁ40、50あたりになったら案外シブくなるかもしれない、なんて感想の顔。
頑張って褒めようとすれば、外人顔ってやつだろうか、それか沖縄系。


その割にオリーブ色の肌でもない、普通の肌なので、まっちょな感じはしない。
「夜かと思ったら、松崎しげるだった」みたいなぐらい日に焼ければどうかわからないが。



期待したほどではなかったな、と思う。
まぁこれで美形でも先ほどのジンギスカンを必死に隠す姿は滑稽だったので、期待のハズレ感はあんまり変わらないだろう。


「私は山田ゆかり、達馬と一緒で女子中等部の方の生徒会長をやっています」

すっと紙エプロンを外し、制服から黒いメガネを取り出して装着してから、そう名乗る女の子。

一緒、というあたりを強調して山田という恋する14才の女の子は少年に並ぶように言った。

どう考えても少年のことが好きなのだろう。
さきほど少し生意気に感じたが、気になる男の子に用があってくる女子大生に警戒するのは当然で、なんだか可愛らしい。
ちょっと背が小さくて、細く綺麗に真っ直ぐ伸びた髪の毛が艶々としていて、白い肌、小顔、そしてふくよかで、それでいて品の良さそうな形の良い胸と私が欲しかったパーツを持っている女の子だった。
この白い制服のまま、しっとりとした苔むした渓流の岩場で足をぶらぶらさせてるだけで、ふらふらと男が寄ってきそうな儚い綺麗さを持っている。
ソレを台無しにする真面目そうな黒縁メガネが掛けると印象が変わり、気が強そうな眼が目立ち、逆にそこに好感が湧いた。
しっかりしていて意志が強そうで、年齢よりも大人びて見える。
これは同性にモテるタイプだろう、生徒会長と言われて「ああなるほど」なんて思った。

昔、こんな感じの子みたことがある。


バレンタインデーで同性からのチョコで両手に紙袋持つタイプだな、この子。
さっきの忍者みたいな動きとか無駄に格好良かったし。



「で、わざわざご足労頂いたのですが、何かごようですか?」

お茶どうぞ、と草加せんべいと玄米茶を出してくれた末馬達馬君は眠そうな眼でこちらを伺う。
可才なく、なんていうような雰囲気ではなく、上手く言えないのだが、突然訪れた孫にお茶菓子を出すような穏やかな雰囲気か日曜日に鳩に餌をやってるおじさんの雰囲気。
14才という割には歳食った感がある。
元から落ち着いている、というよりも、昔やんちゃな悪ガキだったけど、今は落ち着いた、なんて感じだ。


「私の名前は片桐桐子、よくキリキリとか言われるけど、片桐って呼んで。で、ちょっとした悩み事あるんだけどね、言うか言わまいか、ってところよね。
はっきり言ってダメ元できたわけ、周りにその悩み事を解決してくれそうな知り合いがいなくてさ……で横の曜子に頼ったの、前なんか君に助けてもらったことでもあったのかな、それで君になら頼れる、なんて言い出してさ、まぁまず聞くんだけど、どうやって曜子と知り合ったの?」


横で恋する眼で末馬達馬君のことを見ている曜子。
元々少し男性不信気味で、それでいて初対面の女に好かれないタイプの可愛い容姿で、いつも大学でひっそりと過ごしていたところを気になって話しかけたところ、なんか懐いてきた友人だ。
散々私と同性愛疑惑が出そうなくらいひっついてきた割に、私のことなんぞ過去のことだ、なんて言わんばかりに目の前の少年にひっつきたがってる様子に少々驚いているのだ。
別にそのことに関しては不快ではないのだが、むしろ、そういうなし崩しな依存はされていなかった、とか安心するし。


「えっとですね……」


いっていいですか?

という眼線を末馬達馬君が曜子に送る。
すると、曜子は益々とろけるような顔をして末馬達馬君に頷いた。


「たっくん達が助けてくれたお陰で未遂だったし、全然いいよ」





石塚曜子はある日、いやこの日も一人だった。
大学に入ったはいいが、デビューに失敗した、というありふれた状態に苦しんでいた。
ありふれたというのは所詮ネットの話だけれど、曜子みたいな人間は多数いるらしい。

しかし、全然慰めにならない。


一人暮らしを始めたが、予想と違い、大学生同士で酒飲んで雑魚寝、とかそんな感じの青春が送れることを期待していたのだが、全然それは夢でしかなった。

仕送りは少なめでバイトをしっかりとこなさねば、生活はできない。

そこらへんに原因があるのかな、なんて思ったりもしたが、結局のところ、自分のコミュニケーション能力低いせいだとわかりきっていたので、文句は言わずにバイトをこなしていた。
バイト先はコンビニで深夜帯、若い女性は避けるところだが、時給の多さに目がくらんでいつもギリギリ終電に乗れる時間まで働くことにしていた。
だがその日は次の時間帯のバイトの子が急病で休んでしまい、少し落ち込み気味だった曜子は店長の無理を断れなかった「バイト代増やすから」という言葉に目がくらんだ。

そして夜中の2時まで働いた。

あー明日朝早くから講義だよ、どーしよ、絶対寝てしまう。
あの教授寝る人に厳しいって隣に座ってた人がさらに隣の人と仲良さそうに情報共有してたよね…と悲しくなってきた。


北海道に帰りたい、都会はつらい。

とか考えながら、ネットカフェでも探して休むとしよう、と決めていたのだが。
ふらふらと眠そうにあくび混じりで歩いていた、ネカフェの看板を探して上を向いていた。


そして。


とん、と人にぶつかった。



「あ?」

うわ、ちょーこわそーな人にぶつかった。
アロハシャツ、白いズボン、そして額にある刺青。
刺青は格闘家などがいれていることが多い文様で、ちょっとその人物の威喝さを強調していた。
大きな体、多分曜子よりは頭4つ分は大きのではないのだろうか、肩を怒らせて歩いている姿は、そっち系、ってやつだろう。
取り敢えず、曜子はすぐさま必死に謝った、因縁つけられて絡まれたらやだな、という恐怖で必死に。

だが、その姿が逆にいけなかったのだろうか、あまりにも、か弱そうで、少しばかし乱暴にしても訴え出てこないようにでも見えたのか。
男は曜子が懸念した通り、絡んできた。

手をいきなり掴まれ「ちょっとこい」と突然引っ張られた。


え?


という思考しか思い浮かばない、都会って怖いところ、っていうのはよく聞く話で、彼女の出身の北海道でも札幌市では女性の連れ去りなどが起きるという話は聞いたことがある。
弱そうで、抵抗しなさそうな女性を好んで車に引きずり込んで、いやらしい行為を強引に及んでビデオを撮影し、女性一人の人生をボロボロにするような悪魔のような存在がいると。


そしてその予想があたった。
少し引っ張られ、その恐怖で歩かされるままにつれられて、そして曜子は一気に絶望した。
黒いボックスカーの周りに3人居て、私を連れてきた男はにやにやと笑いながら「こいつ連れてきた」というのだ。

ああ、やばい。


そして一人こちらにきた男に肩に無理矢理腕を乗せられ、曜子は車の中に乗せられた。
此処で抵抗できればよかったのだが、バイトで疲れていて、眼をとじたらすぐさま眠りこけそうなくらいの状態で、きっと反抗しても逃げられない、と恐怖に震えることしか出来なかっ

た。


そして4人の男が乗る中に、一人ぼっちの曜子はそのまま真ん中に乗せられ、胸や、足を触られた。
乗ってすぐナイフをかざされ、本当に恐怖で動けず、悲鳴を上げることすらできない


「う………く…ううううう」

曜子はぼろぼろと泣いていた。
車は走り出し、向かう方向はどうやら、人が少ない、山道方面の国道なのだ、ゆっくりと、車を走らせながら男たちは曜子の服を脱がせようと、ナイフでゆっくりと服を刻んでいった。



ははははははははは

ははははははははは

ははははははははは


ははははははははは

と男たちのイヤラシイ笑い声にもう曜子は怖さで壊れそうだった。
そして、山道に入ってからは、ますます暴力的に髪を掴まれ、車のシートに寝かされた。

「ねえ着く前にやっちゃおう」

「全然反抗しねーし」

「こっちまで暴れて事故んねーよーにしろよ」


「そうだ、つくまでの間から撮影しようぜ、俺らのやつって、最中ばっかだから、シナリオがなくてつまんね、あんま抜けねえぇんだよな」

「へへへそうだな」



もういやだ


いやだ



いやだ


いやだ




「お母さん……」


最初にやっと出せた声が母に助けを求める声だった。
そして男たちは益々哂った。

「うわ興奮する」


そして


もう、ほとんど服はナイフでさかれ、裸だった。
男たちのナイフさばきが下手くそなせいで、肩の方に少しだけ血が滲んでいた。
曜子はもう、いっそのこともう眠ろうか、なんて思った、そして眼をとじようとして。

髪を引っ張られ

目の前にナイフを突き出され

「もっと助け、呼んでみろよ」

なぁ

ハハハハアハハハハアハハアハハハ

ぼそりと、曜子の口から断末魔のような、絞り出すような最後の言葉が出る。

「助け…て…」

























よし――――――とりあえず、よし。














そして―――――――曜子は聞いた。



とん、という音と。



伸びやかな、まるで、朝に太陽をみて嬉しそうに「今日は晴れだ」なんて感じに喜ぶような声。
穏やかでこの場にそぐわない、平和な声だった。
男たちの笑い声を掻き消すような、穏やかで、優しげな声。
その言葉には一切の負の感情が籠っていなかった。



温かい声だった。



その時、曜子の胸に安心さえも、浮かびあがった。
こんなにも怖い思いをしているのに、突然胸の内に温かいものが流れたような気さえした。


その声の持ち主はこの曜子が乗っている車の上から聞こえたのだ。
一瞬―――――自分はおかしくなったのかと思った。



そして突然―――――ボックスカーの上から何かが下に向かって生えてきた。

ぎゅる、とまるでボックスカーと天井を抉るようにそれは素早く回転しながら動いた、曜子は一瞬、まるで白鳥の頭の輪郭のようにさえ、みえた。

それは人間の腕だった。
人間の腕が走行中の車の天井から下に生えてきたのだ。
手の形が山道のライトに車窓を映し、はっきりとみえた、それは指を綺麗に整え、少しだけくの字に曲げた、まるで掬い上げる手の形。
それが一気にそぎ落とすかのようにボックスカーの天井を引き裂いた。

がごん、とボックスカーの天上の一部は慣性の法則に従い火花を散らしながら、道路にべこんべこんと転がっていったのを運転していた男がはっきりとみた。

「うえ!うえ!」

運転していた男は顔を真っ青にして恐怖に震えながら、指を震わせて指す。
ぽっかりと、いやまるで螺子でぐるりとむりやり穴を開けられた車の天井を。


そして男たちも、曜子も突然の事に驚きながら上を見上げた。

その日はちょうど満月だった、煌々と輝く真珠のような月。

優しげな白いひかり。

それを背負うかのように、少年が車の上に腕を伸ばし、こちらをみていた。
ただ半裸になった曜子を見て、ほっとしたように、泣くように微笑んで、優しく曜子を見つめていた。


そして男達を視界にさえ入れずに、ただひたすら曜子を見ていてくれた。

男たちは驚愕した、子供が天井に乗っていることでもなく、それよりも少年の突き出された腕――――――それが車の天井を抉ったのだ。


ん、あ、妙子さんだ――――あの人くんのはえーな

そしてそんな驚愕している車内の人間を気にせず、少年は前を一瞬見て、何かを言って。

すっと曜子に手を伸ばした。


「しっかり捕まって」


曜子は勇気を振り絞って、その何処までも、今までどんな人からも与えられたこともない優しげな声と表情でこちらに手を伸ばす少年の手を取った。


あ、すごい硬い手だ。

なんて握り合った瞬間そんなことを曜子が思うと。


ぐいっとこちらを引っ張り、一気に曜子を少年は抱きかかえた。


勿論お姫様だっこだった。

なんか今日は引っ張られてばっかりだな、なんて思ったのだが、この目の前の不思議な夢のような少年の胸に抱かれたとき、一気に曜子は安心感に包まれた。
まるで鋼に抱かれたような気分の少年の胸だけれど、とても温かく、耳にぶつかった胸からは少年の鼓動が聞こえた。
そして曜子は空を舞った、いや少年が一気に跳躍したのだ、下から山々の木々が見え、吹き荒む風が聞こえた。
あまりにも現実感がなかったが、確かに飛んでいる。

すた、と一瞬の広大な光景が終わると、元の何も変哲もない道路の上に立つ少年に抱きかかえられていた状態だった。





「よっしゃああああああああ!!妙子さん!!」

地面に降り立ち、少年は抱きかかえた曜子を見て、直ぐさま吠えた。
大きな信頼を載せた声、その先には、ふらふらと混乱で一気に加速して走るボックスカー。

そしてその先に――――――――月明かりに照らされ、瞬いて輝く金色の棒を持った何者かが立っていた。

この少年が孫悟空で、先にいるのはベジータ?
でも如意棒は悟空のだよねっ!?
とか意味不明なことを思ったが。

から……から、という鉄を引きずる音。
金色の何かを車の先に立っているものが引きずっているのだ、そしてその何者か、シルエットはどうやら女性らしき人影だった。
その人影は金色を高く、高く、掲げ、走りくるボックスカーに向けて。


「たっくん?これバラバラにしてもいいよね?」



女性の声。

柔和で透明感があり、そしてイントネーションは中性的で曜子を抱きかかえる少年よりも年齢の低い声変わりをしていない男の子の声さえにも聞こえた。


そしてその響きはあまりにも透明で綺麗なためこちらに届いた。
そして少年はその声にこう、答える。


「イエス!!妙子さんGOぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」





そしてよく見ると、その人影に掲げ上げられた
金色には沢山のブツブツがあった。

あれは―――――――え?


「釘、ばっと?」

曜子がそう言うと。


「いいえ――――あれは金属釘バットです」

こわや、こわや、あれがマジギレした妙子さん、やべえ、と少年が言った。





「じゃあ――――ぶっ散れ?」


透明な声が聞こえた。


人影はまるでホームランを狙う打者のようにギロチンスイングでボール、いやボックスカーに向け金色の閃光を振り下ろす。

まるで男達に対する断罪の刃のごとく。

絶対処断のギロチン。

金色――――金色が車を


するり、と




静かだった、振り下ろす音さえも聞こず、ただ世界が静寂に叩き落された。


ボックスカーがくるりと、一回転し、人影を通り過ぎた。

ふわり、とまるで空気に浮かんだように、まるで羽のようにゆっくりと。
そして上と下が逆さまになって、車が地面に引きずられながら落ちる、と思った瞬間。




全てが―――まるでシュレッダーに掛けられた紙くずのように裁断された。



がらがらがらがらがらがら
がらがらがらがらがらがら
がらがらがらがらがらがら
がらがらがらがらがらがら
がらがらがらがらがらがら
がらがらがらがらがらがら
がらがらがらがらがらがら
がらがらがらがらがらがら


精密ネジ一つさえも全て切断されたように粉みじんになって真下に落ちていく。
車だったものは一瞬にして鉄の屑となって、車ではなくなった。


ただの鉄くずになったのだ。

それを見て、曜子を抱きかかえた少年は、酷く呆れた顔をした。

「うわ、まじでバラバラ真下に?え?真下?慣性さえも切ったの?―――――母さん?」


「えっと、適当に?」



そして、車の中にいた男たちは、全員衣服だけ全て粉みじんにされ、「うげえぇええええ」と口から泡を吹きながら苦しそうに地面に投げ出され倒れていた。
まさに繊維喪失といった具合。




「いっつも私吐かされてるから――――――――沢山吐いてね?」

「え、生きてんですかこの人たち――――?」

「うん手加減した」

「加減ってなんですか……?」

「竿ごと金○えぐりとってやろうかと思ったけど、やめといた」

「うわ」

「うん、たっくんにそういうの見せたらトラウマになりそうだから、私の感情ではレイプ犯は死刑とか思ってるんだけど、ね?」

「警察呼びますか?――――あと世のため人のためなら――マジで最強なんですね、貴女」

「救急車かな、徹底的に本気で刻んだから、しばらく、何も食べれないし――――救急車は明日の朝あたり一応電話しておこう、こんな夜だし、救急隊員の人も寝たいだろうしね、はい穴空けた毛布、この人に着せて上げてね」

「はい、毛布です、頭からかぶってください」

女性から薄い、それでも温かくて高そうな毛布を少年は私にかぶせて私の涙の痕をを優しく指で拭った。


「じゃあ帰ろっか!」

「はい!」




そう頷きあってフッと笑って、颯爽と歩き出す、少年と女性。


「なーんかお腹すきましたね、俺、猿みたいに木々を越えて腹へりました」

「そうだね、じゃあ夜食にひき割り粥つくってみよっかな、豊臣秀吉が好きだったとかいうやつ、ね、貴女も食べる?」

そしてにっこりとこちらをみて優しげに微笑む女性の顔を見て、私は、一気に顔が熱くなるのを感じた。

すっごい美人!

目の覚める美人とはこの人のことをいうのか、と曜子は思い。

「はい」

曜子は一気に体に力が戻るのを感じた、うわーこんな綺麗な人初めて見た、という、ひどい目にあったあと感動的な絵画とか音楽を見たり聴いたりしたような気分になったのだ。


「あ、元気になった、震えとまったね、うん、もう大丈夫だよ?」


そして曜子は次に自分を抱きかかえてニコニコしているどこにでもいそうな眠そうな顔をした少年の眼を見た。


「ところで月綺麗ですね。あー腹減った、あれ月見団子に見えてきません?」


「もう食いしん坊だなぁ、たっくんは、でも今日のご褒美に月見団子も作ってあげるよ、むしろ、もう何だって作って上げる」


「まじで!」

そして細め気味だった眼が少し大きく開かれた。


凄い、眼が綺麗―――――。

人間の眼ってこんなにも深くて綺麗なのだろうかと
その瞳の美しさは、曜子の胸に焼き付くように燻った。

そして曜子は思った。



あ、これは惚れる。



ピンチのときに助けてもらったし、
私の白馬の王子様だったりするのかな、この子、とか考える。




「あ、そういえば俺抱きかかえてるんですけど、男の俺より、母さんの方とチェンジしますか?」

「チェンジは――――――なしで!!」


曜子そう言って、少年の頬にチュウをした。














という話を、曜子は現実的に少し変えて喋った。
すると、隣にいる山田ゆかりちゃんがとても嬉しそうに微笑んで誇らしげに達馬君を見る。
口をなんだかもにょもにょ動かして、すぐさま顔を少し、目元あたりを紅潮させる。

何度か会ったことがあるし、達馬君のことが好きな人間の一人かな、なんて思っていたが、


ふーん、と曜子は自分の顔がにやけてくるのが止まらない。
曜子は山田ゆかりに共感していた。
そして思わず、こういった。


「わかってるね、ゆかりちゃん」

「はい、なにがですか」




やっぱかっこいい……って言ったよね、今。



わかってんじゃん。




山田ゆかりに曜子は親近感を抱き。


そして曜子はすぐに言ってはならぬことをいった。


「でも――――妙子さん」

「っ……はい、妙子さん」

うん、この子もわかってるのか……。





あのあと、私が住んでいる県を二県跨いだ所にある妙子さんちに連れられ、夜食をいただいて、その晩は末馬さんちでゆっくりと休ませてもらった。



そして。



「おかーさんも、かっこいい子にちゅー、もう!たっくん最高!もう!大好き!」

どうやら私をギリギリで助けてくれた達馬君の格好良い男の子っぷりに妙子さんは大感動したらしく、何度も達馬君をハグしてゴロゴロしたり、ほっぺたを何度もキスしていた。

「そういえばあの時「妙子さーん」って久しぶりだね、えいえい、おかーさんじゃないんだ、えいえい」

「ぐええ、かーさん、勘弁、そんなにくっつかないで、心臓が吹き飛びます」

「今日は一緒に寝ようねー!曜子ちゃんは私の部屋だし」

「え、は、え、まじで?えええ!?」

「嫌なの?」

「いやうれしい……「うれしいの?」はっ!」

「嬉しいんだ!じゃあ今晩はお風呂も一緒に入ろうか!背中ごしごしこすって上げる!」

「それは絶対無理」

「もう私、たっくんを物凄い甘やかしたいのに~ダメ?えー?」

「うわ、だからそんなにくっつないでください、心臓破裂する―――ちょ!」





はい、勝てそうにありません。








「でも頑張ろうね」

「はい」


「なんか通じ合ってますね」


「そう、ね……ね、私の話聞いてもらえるかな?」


桐子は確かにこの少年が信用に足る所以を聞いたが、なんだか疲れた。
結局この子、ただ腕っ節が強いだけじゃないのか、とか思うが。
もう外は夜になっていたので、そろそろ怖くなってきた。


まぁ、ダメもとで、という感じで、自分の身の回りを話していく。










末馬達馬


夕方、ちょうど都心に出て、「妙子さんが食べたそうにしてた」という銀座のお菓子を買いに行ってる時、犯罪者発見、めっさつ。




末馬妙子

家で「たっくん、銀座のお菓子の紹介番組の途中でどこいったんだろ、まさかまた買いにいったの?」

その時、達馬から電話があり――――「え、どこにいんの、え―――――うんバット持ってくよ」 めっさつ。

達馬がひどい目に会いそうになった女性を助け出したのを見て、少しだけ、トラウマが解消された。





末馬達馬の正月事件 小話。










1月3日

今年は回転寿司チェーン店で有名なほっかり亭が今年一番の初マグロ、時価2億円ともなる大ぶりの新鮮なマグロの解体ショーを行い、客に振舞っていましたね。
今年一番の粋な、恒例化された或る意味行事ですね、福男なんてよりも、こっちの方が福がつきそうなもんですよねぇ。



というラジオを聞きながら的場慶一郎は個人経営のコンビニ店の店長として、人件費を節約の為に一人ででもいいから正月でも働く。
正直、正月なんて関係ない、こちとら24時間働くのが当たり前なのだ、むしろ地元商店が長々とお休みする時期であるこの一週間程度が儲かりどき。
客のニーズに応える為、正月に必要なものは当たり前に揃えてやる、と鏡餅の在庫を店内の棚に載せていく。


その作業中、ひとりの少年を思い浮かべる。


遅いな、あいつのためにコンビニおでんの中に一つお餅浮かべてやってるんだが、まだか?毎日の夜のランニング終了時間に合わせて作ってやったのに、まだ来ないな。
究極のお雑煮とか面白そうに言っていた割に遅いぞ?
まさか二日前に年賀状を自力で持ってきた時に風邪でも引いたのか?


自力で、年賀状を運ぶ行為。




海鳴市で様々なボランティア活動を推進し、年末には振り込め詐欺や様々な犯罪が起きる、その防止策として、老人たちが集まる場所、個人病院、公民館、ゲートボール場等々を歩き回り「俺さーマジで感性0だし、なぁー管理局員っておまわりさんみたいなお仕事だし、こういうの作ってみるのも勉強になるよなぁ」と上手くだまくらかし、ではなく、提案のもと某三人娘作のわかりやすい防犯資料(原稿はやて、デジタル編集なのは、資料作成フェイト)を手に持って街中を練り歩き廻って講習を開いて地域貢献する気のいいお兄さんにいつの間にかなってしまった末馬達馬。


そういうことをするのが最早日常である男は、恐ろしい程、知り合いが多い。





故に




年賀状出す人間半端なくいるから、年賀葉書のお金が掛かる、から始まった、末馬達馬の節約術である。

北海道から沖縄まで全国の陸地、海面を走って渡しに行くという前代未聞の節約術。
除夜の鐘がつき終わった瞬間、末馬達馬は爆走した。



「誰よりも早く新鮮な年賀状を皆様に――――今年こそ素早く生きようグッドアイデア賞受賞を目指します、福男よりも速く俺は走る。
高校生の郵便アルバイトを自分の分を自分でやると思えば余裕です、あけましておめでとうございます!!いってきます!」

「そーゆーセコイところぉおおおお!!ばかぁあああああああああ!!それぐらい私がだすのにぃいいいいい!!」


という妙子の悲鳴のような絶叫を振り切って奴は走る。

中学生でありながら、年賀状代数万円を軽く超える男になってしまったのだ、本当にそれしかない。




クリスマスのせいで色々お金がない。
本来自分が行くはずだった施設の子供とかに気前よくお菓子が入ったサンタ靴をプレゼントをしまくったり、山田に日々の感謝を込めアクセサリーをプレゼント。
流石に自分ちのケーキじゃなくて他所の店ですよね、士郎さん、この前の魚のお礼です&妙子さんがお世話になってますのケーキをプレゼント。
とか諸々。


さら

日々の感謝を沢山の人々に捧げていった、そこらへん妙子から学んだ悪影響である。






となると財布は空になるものである。




そして


「あ、年賀状はがき買うの忘れたわ。そして買う金残すの忘れた。あはっこれから数百枚寝ないで書く筈なのに―――――――や ば い」




年賀状ぐらい、妙子さんに頼らず自己負担するのが当たり前だ。


それだけは譲れないのだ、男として、なんとか好きな人の隣に立とうと努力する者として。

人に送るものくらい、自分で出す、出来なきゃヒモじゃね?


と。


一方的片思い相手に対する一方的ヒモ行為。

私事での負担金一万円を超えた場合、完全犯罪、よって三年の拘束または―――とかそんな感じ。


情けなさすぎる。

きっと天体戦士サンレッドだって、きっとこれぐらい自分で捻出するだろ、出す相手がいなくても、そこはきっと最低限やる、うん。
こういう行事でもヒモにはなりたくない。


俺は職歴が白い恋人にはなりたくないのだ。
まぁ学生だけど。



薬指に赤い糸を繋げる努力だけは怠らない。


「俺は自分の吐いた血で染まってやる!!赤く!紅く!朱く!緋く!赫く!」

白い血は夢精でも流せない男の決意。


一応昔成人だったのだ。
ここはもうプライドの問題だ、セコイと言われようが、もう知らない、末馬達馬急いで文房具屋ではがきっぽい材質の紙を安く大量購入し、学校の資機材を使って年賀状はがきサイズの型紙を山ほど作り、学校のパソコン内のフリー素材で学校のカラープリンターのインクを山ほど使って印刷、手作りの切手部分がない年賀葉書を完成させた。

妙子さんにバレないように、密かに。


「勝手に使ったインク代は俺の来年のお年玉(年始めのリンディさん専用和菓子工場アルバイト代)で払いますからどうか!年始まで横領させてください!!」

末馬達馬は教師たちに頭を下げた、というか土下座した。
年末の土下座だ、本気で切実な。

「年末だし贋札でも作るんじゃないか心配したがそういう理由なら特別許してやる、お前は男だ。セコイかもしれんが親孝行息子だ、偉いぞ!――――ん?切手は!?年賀葉書は切手代含んでこそ年賀葉書だろ!?ただ来年の干支が書かれたハガキサイズのイラスト用紙山ほど作っただけだろお前!?」


教師たちはそこで、こいつたまにそういう無意味な馬鹿やるよな!?


皆恐れた、馬鹿すぎると。


だが末馬達馬は予想以上に馬鹿だ。

彼らの予想を超えた。

「―――――――俺の名前には馬が二つも入ってるんですよ?なら馬2頭分ぐらいの速度で自分で走って届ければいい、そうでしょう?ならば切手はいらないのですよ」


不敵に末馬達馬は土下座姿勢のまま笑う。

不思議となんかカッコ良い気がしてくるほど、珍しくキメ顔で末馬達馬は笑う。





「市内限定だよな?流石に」

まぁ高校生とか臨時でこういう郵便のアルバイトするし、これは結構、頭がいいかもしれん普通、思いつかないぞ、と末馬達馬のおバカな合理性に関心した珍事であった。

こういう実行力だけは誰よりもある。



うん馬鹿なのだろう。

末馬達馬。

馬が二匹入っていて、どっかに鹿がいるんだろう。

そして末馬達馬はその質問に目線を教師たちに合わせないように言ったのだった。


「勿論、市内限定です(今年最後の嘘です、すいません―――――俺は全部を走ります、年始の駅伝よりも距離走ります)」



とりあえず北海道からだ、そして沖縄まで、一気に海面走って南下すれば、もしかしたら日の出まで日本の位置的にいけるかもしれん、沖縄は西側だし。
ついにテンションに任せ、末馬達馬は完全自力年賀葉書節約術を編み出した。

彼の人外能力を知る者たちは、一言。


ドン引きして「へー」「そうなのね」

流石に北海道と沖縄くらい、郵便局に頼めばいいのに


「セコすぎる……」

という反応だったらしい。







たっくんのお年玉の額。



「たっくん、それどうするの」

分厚い札束――――それは末馬達馬という少年に用意されたお年玉であった。
海鳴の多くの大人たちから御好意で渡されたのだが、断ったら相手の気分を悪くさせるような雰囲気だったので、取り敢えず頂いたのだが。


「まさか、海鳴の知り合いの人たちから貰ったお年玉だけで50万円…………どうしよう」


人数が人数だ、はっきり言って莫大な金額になる。
人の人生を左右するような物事さえも解決しているので、実は報酬としては少ないぐらいかもしれないが。
末馬達馬にとってお礼はその人たちから戴いたまんじゅうやらポテトチップスやらを胃袋に入れているのでこのお年玉は、突然降ってきた謎の金である。


「それだけ貰えるくらい働いてるからいいんじゃないかな?―――――とか思えないね、どうしよっか、私も困るわそれ」

母親の妙子としては、自分のお歳暮として届いた沢山の鮭やらの方が困りものだ。
習い事教室で講師をやっていた頃の生徒さんたちから、山ほどそういうものが届いているのだ。

「まぁ私は一番困ってるのは、鮟鱇とかどうやって捌いたらいいんだろうってことだけど」

過去に居た生徒達は100人近く、それら全員が未だに送ってくれるのだ。


「どうしよう、どうしよう、どうしよう、額がやばすぎて正直なんか悪いことしてる気がする」

「そうだね」

末馬妙子からすれば、其処まで怖い額でもない、が、人からの御好意だけで得られたそれは、末馬達馬の恐ろしさを再確認する。

「この子、本当に将来何になるんだろ?」

などと思うが、本人はポテチとコカ・コーラとTSUTAYAで借りたDVDで一日幸せに過ごせる人間なので、本当に過分な御好意なのだろう。


「ぐす…………怖い……お金怖い………正直大学生活家賃光熱費引いて食費込みで生活費3万円程度でセコく生きてきた俺にとって50万は重すぎる」


俺、5千円札財布に入ってるだけで、自信持てる人なのに……。



「車でも買えば?ほら新春初売りセールのチラシに載ってた中古のステップワゴンとか」



「免許とれねぇー!まだ14!ていうか、毎年正月になると妙子さんおかしくなりますよね!?」



「頭おかしくなりそうなくらい物が届くからね、まぁたっくんはどうしよっか」


悩んであげてみる、はっきりいって素直に貰って貯金でもすればよいと思うのだが。
ひとりあたりの額は大したこともないのだ。
お歳暮で油の詰め合わせセットを買うよりも安いくらいの額が積もっただけだ。


はっきりいえば、素直に喜んでおけばいいのである。


素直に喜べないものばかり山ほど節句に貰う妙子と違って、達馬は好意だけで戴いてるのだから。

と妙子は冷静にどこかからの企業から送られてきた、福袋の山の中から現れた宝石類に嫌な顔をする。
これテレビでやってた、200万円福袋だ………どうしよう、誰かにあげたら卒倒されるよね、美里にあげたら多分ブチ切れられるし。

「あーまた、こんなにいらない……仏像セットって……」





あーもう、うちに何年分のキャノーラ油あるんだろ、まだ2年前の残ってるし……と妙子は妙子で悩む。
人から頂いた食料の為だけに実は業務用冷蔵庫が末馬家にはあるくらい人から物をもらえる人間であるのだ。



全国有数の個人資産家である。
このようなことが毎年である。

もう入りきらないし……。


コンテナでも借りるかな。
また何処かに寄付でもするかな、と考え。






『今年も回転寿司店舗で――――』

「む?」

「あ、こっちでもそういうのあるんだね」


「なるほど―――よし、とりあえずよし!!」



「へ?」


「ちょっくらインド洋まで行ってきます」


「はい?」


「美味しいの獲ってきますわ」


「ええ?」


「いってきまーす」


「たっくん、漫画みたいな力の有効活用とかいってるけど、其処までいくと全国に実名報道されるよ?」






そして達馬は新春、インド洋を走っていた。




たん、たんと海面を走る感覚はまるでエリマキトカゲのような気分である。
どこを見渡しても海というのは、不思議な感覚で、下手をするとパニックになりそうなぐらいの絶景で、形を変える波達を蹴って走るのは正直疲れる。

「フォルテッシモって海歩いて怖くなかったのかな……」

日本から約数千キロの海洋を走っていると、人間の小ささがはっきりわかるようなわからないような気がするなぁ、と言いつつ、携帯電話を見やる。


内蔵されたGPSで緯度と経度をみると。


「ここらへんかな?」


走るのをやめて、そのまま末馬達馬はダイヴした。





「とったどー!!」








そしてその日のうちに。



高町家にぴんぽーんと年始に近所の子供がやってきた。

そして第一声。



「謹賀新年!あけましておめでとうございます!士郎さん!―――――そして士郎さん!!マグロの解体ってどうやるか知ってますか!?」


鳥とかの締め方は教えたけど、まさかドデカイ鮪を持ってこられるとは思わなかった。

「あけましておめでとう、達馬君――――それと、あのね、達馬君、俺をなんでも出来る大人とか勘違いしてないかい?」


「あ、たっくん、それどうしたの?その巨大なマグロ、時価200万円くらいの………え?」


ちょうどそろそろみんなと、初詣いこーっと着物姿で玄関になのはが向かった先には。



「インド洋あたりで潜って捕まえてきた、ぎりぎりまだ生きてるぜ?」


びちびちびち、と元気よく末馬達馬に大きなゴミ袋に包まれ、しっぽを持たれ、死にかけているマグロ。

業務用の大きなゴミ袋の中で必死にもがいている。

透明な袋らしく、生々しいシルエットがなんとも不気味で。

本当に生きが良さそうだった。


「ひっ!!動いてる!!?たっくん怖い!!そういうことする人だってしってるけど、バカすぎて怖い!!」

なのはは――――ぞっとした。

実際できるけど、やらないシリーズを真面目にやっている。
俺らってマグロ漁師になれば一生食うに困らんよなー、なのはだったら、空飛べるから、スピード配達業者とか。


そういうこと言ってるけど、本気でやるとは誰も思わない。

「生きのよさなら河○寿司にも負けないぜ、商店街に持ってて、そこで解体ショーやろうと思う」

「達馬君――――君本当に凄い人だな、うん……………」

「いやーお年玉代わりに、皆様を楽しませる!!とかで今年そうそうと乗り切ることにしました」


「そのマグロどうしたのって聞かれたらどうするの?」

「正月の寒中稽古海でしていたら突っ込んできたとか嘘つく」


「うん、それ、無理だから、海鳴にどうやっても出現しないからな、そのサイズのマグロ」




結局どうしようもないので、近所のお魚屋さんに持って行って、お客さんに無料で配るように頼み込んだという。
たまにこういうことをやって周囲の人間を困らせるのが末馬達馬の欠点であった。











達馬の初夢



末馬達馬は夢をみていた。




「あいつ、死んだの?」

「ああ……正月特番の赤穂浪士たちよりも先に死んだ」

ある男が死んだ、その男は大馬鹿野郎であり今死を嘆くその男たちにとってのムード、ハプニング、トラブルを共にメイキングしてきたその中心に居た男だった。

音楽のおの字も出来ない癖に学校の文化祭でステージにバンドメンバーとして立ってトライアングルを鳴らした究極の馬鹿が。
本気で「帰れ」とブーイングされて、すぐさま帰った、あの男が。

雪降る元旦の日、日輪の眩さを見る前に亡くなった。


通夜や葬式は粛々と行われる。


「シャーマンキングの曲でも流すか」

「幸せなら手を叩こうだろ?」

「それスレネタだろ?」

「お前は笑犬か」


とか言い出すやつが混じっていた、結構混じってた。


だけど言おう、ヤツはこういう時にこそ、黄泉がえりを果たし「自分で墓に歩いて入るわ」とか言い出す奴だった。
しかし、生涯墓穴を掘り続けた大馬鹿は本当に自分で雪を排除した地面に落下し頭を破砕した。


「最初に屋根の雪から雪かきすれば死ななかったのに」

積もった雪がクッションになり首の骨が少し傷つく程度で済んだかもしれないのだ。


「手伝ってやれば良かったか?」

「んー自業自得だからなぁ、死んだのは悲しいが、死ぬ原因が全然悲しくないのが虚しい」

「ましな死に方なかったのか?逆に物凄い寂しいぞ?」


最近一人の友人を失くした男たち、そんな会話を繰り返しながら、寂しい気持ちだけを抱えている。
虚しすぎる死に様、笑いもせず、心底楽になった表情で雪かきをし終えたようなそのあと一服でもするかのように口元を僅かに開いて、茶色い雪かきをし終えた汚い道で死んだ男を始めに見つけたドンジャラメンバーである。


葬式を終え、そのメンバーが顔を合わせ頷き合う。






「よし、とりあえずみんな――――あいつに最後の借りを返すか」

エロゲ(姉汁)

すすきの風俗情報雑誌(お姉さん系のところに付箋あり)

AV(OL系)


「あいつの妹さんに返しに行こう!前々から死ぬ前は互いにHDは消しあおうぜ!とか言ってたけど、それはやってあげたが、借りたものは返しにいかんと!」

「あ、おれあいつに貸してる3万返して貰ってないわ、形見にアイツが後生大事にしていた、代わりにラノベ全巻貰いにいくかな――ブックオフに売られる前絶対もらおう。
あいつ全部で三万くらいラノベに使ったって言ってたし―――全部100円になるまで待った中古だっていうし」


「あいつが過去あいつが惚れきた女の子たち全員に電話してあいつの代わりに告白してやる、未練なくあの世にいけるぞ、これで」


「取り敢えずあいつの命より大切とか言っていたコカコーラ100周年記念店頭用限定ボトル2本セット貰いにいこっと、命なくなったらいらんだろ、あれ」


「いやそれオークションに出そうぜ、普通に6万からスタートだからなそれ」










俺の初夢は悪夢だった。


「お前らやっぱり悪魔だろ!?」

なすとか富士山とか鷹の前に禿鷹共が俺の死骸に群がる夢だった。

確かに互いにもし死んだら、笑って送り会おうなとか言っていたけど!!

「くそ、化けて出てやるううう!!」









小話 妙子の初夢








IF3 もし二人が同年齢で女の子だったら。




○○県○○市、市立「南北東西どれか」中学校。

その二人が並ぶと絵になるとその学校では有名だった。
小学校からの親友だそうで何をするのも一緒であり、二人はまるで妖精のような「CGで合成してもこんなに綺麗にならんだろ」というくらい可憐な少女達だった。
しっとりとした憂いが漂うような何処か影のある雰囲気を背負った末馬妙子。
悪戯っ子な妖精のようであり、明るい日差しのような雰囲気を持った有栖川達姫。
二人は対照的で妙子の方は静静と学生鞄を重そうに帰り道を歩き。
達姫は気楽そうに学生鞄をぶんぶんと犬の尻尾のように振り回し元気に道を歩く。

おしとやかな子と元気いっぱいの子、どっちがいい?

みたいなことを男子生徒はいつも思うと学校では有名だ。






「今日は3枚貰ったわ、恋文」


学校の帰り道、嬉しそうに貰ったラブレターを学生鞄から出して「どうだ」なんて見せてきた同類に妙子はびっくりする。
自分も沢山貰っているが誰にも言わずこっそり読まずにゴミ箱に捨てているので、こうやって誇るように見せられて驚いた。
自分と同じく女性に生まれたことについて精神的に齟齬を感じて苦しんでいる、と言っていた筈だ。
流石にそこは元同性に恋愛対象として見られることに嫌悪する場面ではないか?なんて思った。


「え、嫌じゃないの?」

自分がすげぇ嫌なので妙子はそう尋ねる。

しかし達姫はホントーに「家帰って母さんと父ちゃんに見せよーしっかり読んで文章に点数とかつけよー」と楽しそうにしていた。
きっと「結果発表」とか言ってラブレターをくれた男子を後日わざとらしく恥ずかしそうに呼び出して突然「貴方のラブレターは34点!!敬語が下手!」とか言うに違いない。

そんな友人を見て妙子は溜息を吐く。

「相変わらず私よりも波乱万丈な癖に……軽い、ていうか私が悩み過ぎなの?何か負けてる感が……」

「まぁ一生懸命人生悩むことに勝ち負けないぞ、妙子、むしろオマエを見て、悩まない自分を見て、「私って馬鹿なのか?」とかこっちも何か負けてる感バリバリだから」


「そっちの方が楽そう、いーなーその性格」

「そっちの方が生理軽くていいよなぁ、体交換したい、私、なんか重いんだぞ、学校休むレベルで」

「私だけ損するじゃん。達姫よりも私、世渡り下手だし、お前みたいに親拾ってこれないから」


「拾ってきたって………いや有栖川になったのはそんな感じだけどさぁ」




有栖川達姫。




元は両親に捨てられ、孤児となり施設で育っていた佐藤達姫。


「最初に捨てられるのが前提の人生な気がする」



とか考えながら。

その元から持つその天真爛漫さで自由に飄々と過ごしていたら、とある子供がいない老夫婦に7歳の頃引き取られた。
小学校の帰り、まるで世間知らずのお姫様のような顔をして、日課である市内で一番試食が多いスーパーで試食コーナー廻りを行ってプレートで試食を焼いているおば様方に


「あ、今日もきたの?姫ちゃん、はいコレ」

と爪楊枝を差したウィンナーを貰って食べ「お い すぃー!」と他の客の衆目を集めるくらい大きな声でわざとらしく可愛らしく叫び。


「今日も売上貢献ありがとうね、姫ちゃんいると売上違うんだよ」


「いえいえ(こうすれば嫌な顔をされず試食が好きなだけできる)」

「あ、姫ちゃん、こっちにもきてもらっていい?」

「ご飯だ、しかも魚沼産ですね、お米立ってて美味そうですね」

「味ないけど大丈夫?」

「ウィンナーあるから大丈夫です」






とか自由気ままに過ごしているうちに、今の両親に出会ったそうだ。
やっぱり女の体になると脂っこいものより甘いモノが美味いそうで、試食コーナーにも食い飽きて和菓子コーナーでいちご大福などをじっくり眺め「うーん俺の手から出るやつよりもうまそう」と悩む日課をこなしていたところでその本人曰くその「人生楽そうな愛らしさ」で見知らぬ「食べたそうだから、ご馳走してあげる」という大人に声を掛けられ、よくわからないけど、そのままその他人のところで「何時でも来ていいよ」とおやつを戴いたりをすることが多かった幼い日々。

そんな中で偶然とても仲良くなったとある老夫婦にディ○ニーランドに連れて行ってもらったりしてかなり良くしてもらったそうだ。
ランドでミ○ーの帽子を被りながら売店でチュロスを沢山食べたりしているうちに「ハッ」とし。



「あ、施設に怒られる、滅茶苦茶勝手にどっか行ってますね、私」

「施設に連絡してるから大丈夫よ」


「あ、ならいいんですか?大人判断?」


「ええ」




そんな「もうちょっと何か考えろ」という日々、ある日その老夫婦の家にお邪魔していて、たまたま置いてあった古いピアノで「ねこふんじゃった」とか「キラキラ星」を弾いて遊んでいたとき。


「ピアノ好きなの?姫ちゃん」


「暇なとき、施設に置いてある鍵盤ハーモニカで遊んでるくらいでピアノは全然です、でもピアノ弾けそうな顔してますよね?私」


「ええ」


「でも弾けないんですね、これが、学校行事の合唱で「弾けそうな顔してる」とか言われてピアノ担当にさせられそうになって困ります」


「悩みといえば、あと給食のお替り――何かしづらい、とかそれくらい?」という悩みのない人生を送っている達姫である。

あと、これからの人生「エロ追求」か「女子力追求」どっちにしようか?


「実際現実問題、エロ追求したら、枯れたらおしまいだし何かそれは疲れそう」とか夜布団の中で妄想するくらいで、本当に悩みがない人生である。

そして結局のところ寝る前にいつもこの人生について

「将来は毎日美味しいごはん食べて、お風呂入って、気持ちよく寝れればいいやー、あと適当でいいね」で考えを終わらせるような人間であった。







「そうね、姫ちゃんみたいな子が弾けたらなんだか見栄えするわね、そうだわ、住んでるところに新しいの買って送ってあげる、こっちで教えるから、施設で練習したらいいわ、そうい

うの置ける場所あったわよね、あの施設」


そんな達姫に人生最大のピンチが訪れた。



老夫婦達に「いつ、また遊びに来てくれるのかなあの子」とか毎日楽しみにさせていたレベルが大変なことになっていたのだ。
彼らにグランドピアノとか買わしてしまいそうになったらしい。

「TS転生者って大抵綺麗だけど………ていうか今までブスのTS転生者って見たことない、でも俺にも適用しないで、まじで、遺伝子的におかしいから、コレ」
という生まれつきの容姿で両親に「絶対これ私たちの子じゃない!!気持ち悪い!!」と捨てられて以来の大ピンチ。


「え、え、駄目、そういうの駄目です!たまに遊びにくるガキにそういうの買っちゃダメです!あと見栄えするだけです!」

「いいのよ、気にしなくて、私たちなんてこの歳で子供いないから、お金なんて有り余ってるし、これぐらい全然気にしないで」


「こっちの好意なんだから、いいのよ姫ちゃん」

「そうだぞ、全然気にしなくていいんだ」


そして


「あ、俺、子供の居ないらしい、寂しいかどうか知らない、けどそんな感じの夫婦を騙して金絞りとってるみたい、うわ、やばい……」

「これは責任とらねば………」という思考になったそうだ。

しかし……責任と言っても、どうすればいいのか。

「しかもYAMAHAじゃなくてスタンウェイ。買わせたら音楽家になれなくても真面目に練習しないと地獄に落ちるぞこれ」


「もう逃げたい、凄い逃げたい、このままだと俺すげえ悪人になる、でもランドも連れてもらったりしたし……あ、もう十分あかん」


と恐ろしくなったそうだ。



だが自分は何も持っていない幼女の身。


桃缶も買う金を持っていないオーフェンのような自分にどうすればいいのか、「精々、チュッパチャップスぐらいしか持ってない」と思い。
ならば「この身で責任を取るしかない」とか思ったらしく。

「じゃあ、そちらに私みたいな娘、いります?そうすれば新しいピアノいらないし」と訪ねたらしい。

「娘になってくれるの!?」

「本当に!?」

「え―――――いるの?リコールとかクーリングオフきかないですよ?」

「それでも構わないわ」

「ああ」

「では、これからよろしくお願いします、お父さん、お母さん」

「やった!」

「やったぞ!」

大喜びで拾われた。
なんでも老夫婦は「よかった、姫ちゃん欲しがってるところ多かったから……」とかそんな感じだった。

結構下心満載だったらしい。



そのすいすいと勝手に養子に行く姿は達姫が過ごす施設の院長である霞百合子は「勝手に犬とか猫とか拾ってくる子のように親拾ってきた」と言わせる程であったという。




で、そんな達姫を見て妙子は訪ねる。



「で、達姫って本当に女の子楽しんでるね?ええ?」

若干睨んで聞いた。
納得がいかないというか「これと私は別の人間だから、まぁ感じ方は違うけど、それにしても………気楽そうで腹立つ」という理不尽な怒りである。
大親友なのだが、その悩みのなさにちょっとムカつく、という妙子である。


「こうしてお前とふたりっきりで俺っていうけど、それ以外じゃあ「私」だし、こう、たまには男に戻りたいとかそういうホームシックのような気分はしっかりあるよ?
トイレとかめんどいし、セーラー服のスカートスースーするし、座った時しっかり股閉じないとダメだから疲れるし、うん」

「それってただ女性らしくするのめんどいだけでしょ?それに対して精神的ストレスないでしょう?」

「あーお前女装して生きてる羞恥プレイとかそんな感じのストレスだっけか?」

「ああ、で、お前はそれ厭ではないんでしょ?」

「うん」


「あ、ということで女性認定します、君それ最早TSじゃないから、これから、たまたま前世覚えてたアンビリバボーな子としてみるから」

「いやおんなじだから、それ、あと俺が嫌だっつーのはなぁ、えっと、なぁ――――」

「ん?」

「いやー俺、やっぱり――――どんな自分よりも末馬達馬の方がいい」










という夢を末馬妙子は見た。



「えーと変な夢だったね」

なんか若干嬉しい気分だった。

そして

「ねぇたっくん」

「はい」

「勝手に親とか拾って来ないでね?」

「はい?」


つづかない




[36072] 末馬達馬の事件簿2 幽霊編 閑話 末馬家の最近の晩ごはん
Name: みさりつ◆dacc3cd9 ID:0efe3bb5
Date: 2014/02/06 06:16
なのはたちと別のクラスになった小学生の頃、私は彼に助けられた。

クラス別だと他のクラスの子と遊びづらくなる。
なのはたちとは別にクラスの友達を作ったのだが。

ある日、ある遊びを行なった。

その時、私はちょっぴり最悪の気分を味わった。


その遊びで五円玉から指をクラスの女子の友達が勝手に外して、私だけを置いて、一斉に逃げていったのだ。
その時、私はそいつらに裏切られたのだ。
単純な意地悪だったのだろう。
でも私にとってそれは物凄い恐ろしいことだった。

放課後の教室、夕日が差していて、どんどん暗くなっていく。

指は離せなかった。
離すと恐ろしいことがあると信じていたからだ。

死ぬほど怖かった。


だけど。


いっつも五月蝿いと私が文句を言っていた「あ、まだ帰ってねーのかダーヤマ」とあのホラ吹き少年が現れ、私の怖がってる様子を見て。

「あ、なるほど」という顔をして。


それから微笑んで。

「大丈夫」


と、私が指していた紙と5円玉を、私の手から奪い取って、紙をマジックで落書きをしてビリビリに破り捨て、5円玉を窓から放り投げた。



その行動に私は一瞬呆然として。

「何がそぉい!よ、ふざけんな」

と激怒したが、「いや、なんかノリで、わははは」とそいつは飄々と私の強ばった手を握って、優しく家まで私を送り届けてくれた。

そしてそれからしばらく、その日あったことを私が気にしなくなるまで、毎日私を家まで送って帰ってくれた。




その手の温もりは私に永遠に残る温かい嬉しさ。


そんな初恋。

















「それは怖い」



片桐桐子の話をまとめると一言につきる。


現在1月、2月に差し掛かる冬である。
暗くなった夜空の中「あ、今日俺んち泊まってください、ホテル代もったいないでしょう、最近ちょうど来客用の布団とか買いましたから」という達馬の勧めで遠くからやってきた二人は泊まるそうだ。今は末馬家に4人で歩いて向かっている。
少しながら暗闇に桐子さんが怯えている様子に心配そうな顔をしている達馬に

「ほんとーに、お人好しだわ、こいつ」

とみながらオカルト関係か、まぁウチの愚姉が好きそうな話だな、なんて思いながら歩く。

「仄暗い水の底から」などの短編ホラーを書く、鈴木晃司のファンだった姉ならこの話にめいいっぱい鼻を突っ込んできそうだ。
ちょうど南米から日本に帰ってきていたのだが、またまたよせばいいのに、変なものをまた集め始めたので、母親にブチ切れられ「なら適当に日本ふらふらする」なんて言って日光東照宮やら青森県の恐山やらに出かけていて帰ってこない、まぁ面白半分で何でも首を突っ込んで他人に迷惑をかけまくる悪魔のような姉なので、別に今回の件に関しては相談はいらないだろう。

「え、本当!?―――私も今から携帯その川に捨ててくる!」

とかむしろ悪化する方向に持って行きたがると思うし。
というか、オカルトが好きなだけであって、あの姉はそういうもの解き明かしたりすることは絶対しない。

リングを見ながら「あれ、情報共有ソフトに垂れ流したら面白そうだな」


とか言うド外道である。

過去、この海鳴市の小中学校に「こっくりさん」などを広め、ブームにし、色々問題を発生させた海鳴の超問題児である。
オカルトの伝道師やら超迷惑師と渾名されたクソ姉なのだ。
私が小学校の時、一番怖かった思い出の原因でもある。

まぁ、横で何を思ったのか装甲騎兵ボトムズ「炎のさだめ」を歌いながら私たちを連れて歩く達馬のお陰で助かったんだけど。



「で、大丈夫なの?」

と私は達馬を横目で見る。

そして私の眼線に気づくと、歌を歌うのをやめ、首をかしげながらこう、言う。

「うーん、おばけね……3本の毛と、足、目、口だけあって服の中を見られることは「オバケの国での御法度だ」と言って頑なに嫌うやつだったら犬でも連れてくればいいんですけどね」

「―――おばけのQ太郎……君、随分古いアニメ知ってるわね……まぁソレだったら家で飼ってもいいんだけど、O次郎だったら可愛いし」

達馬の調子っぱずれな言動に怖がるのがくだらなくなったのか桐子さんは調子を取り戻したようだ夜に怯えた顔を明るくする。


「バカラッタ!……じゃなくて滅茶苦茶「着信アリ」とかそっち系ですもんね、まぁ取り敢えず、明日その携帯落とした場所まで行きましょう、ちょうど土曜日だし」

「いいの?」

「ヒントそこですからね、取り敢えず「ほちょー」って言いに行きましょう」


14にしては背が低めで、なのは達と歩いていて隠れてしまう私にとって、高身長でなんとも羨ましい美脚の持ち主、片桐桐子さんは「お化けのホーリー……君背中にファスナーでもついてないよね?中からおじさんがでてきたりして、ホーリーとか私が本当に小さい頃のアニメよ?」なんてクスクス笑って達馬の背中をバシバシ叩く。

すぱっとした性格の女性で、好き嫌いがはっきりしているタイプの性格の女性のようだが、どうやら達馬のことを気に入ったらしい。
安易に「バケラッタ」じゃなくて、別のバリエーションを叫んだ達馬の無駄記憶に感動したらしい。

「いや、君面白いね、そういえば学校でジンギスカンやってること自体、相当面白いことだし、なんか、ウチの学部のアホ学生みたいね、学部の資料の動物焼いて食べたりしそう」

「スーファミ持ってきたり?」

「そんな感じね」



そして「ロックマンXのパスワード、全部2にして最後1」とかそんな話で盛り上がっている。

それを見て、曜子さんは複雑そうな顔をする。
「全然わからない」「話に入れない」とかそんな顔。

まぁ普通知りませんから、まぁ話三割くらいでスルーして聞けばいいですよ、こいつの無駄話は、とか教えておく。

いつもくだらないことを言うのは場の暗い空気をくだらなくするのが目的っぽいし。
鬱々としやすい妙子さん対策として「シリアスにはギャグで」とかそんな感じの癖である、と私は思っている。




それよりもこいつの真価は「無言実行、というよりも勝手に一人でなんかやり始める」という時の迷わない行動力なのだ。
ときたま有り得ないほどの馬鹿な行動も発揮されるが。




とことん名探偵には向いていない男なので「どうせなら、理論詰めで綺麗に物事解決しろ、大雑把に「なんとなく?」でやるな!」とか思うときがある行動が欠点だが。
そこらへんは可愛い部分である。


「今日は私も泊まるから、明日行く時ついていくわ、いいわよね達馬?」

そこらへんは私がサポートしてやろう。
学年1の成績があっても、頭はよくないし、こいつ。
これでもサンタさんを信じていた小さい子供の時、「人の好みを全く気にしない」姉から貰った誕生日のプレゼントが「市松人形」とか「チャッキー人形」だったりして、泣かされたりして育ち、それなりにそういうオカルトは詳しいし。

「べっつにいいけどおばさんに連絡しといてなー。あー明日長距離ドライブだ、楽しみだなぁ、パーキングエリアとか俺、本当に大好き」

とか言いながら楽しそうにしている達馬に桐子は呆れて。

「君、そーいうノリなの?はっきり言うけど、本当にやばいよ?曜子以外の泊めてくれた友人とかも私を泊めたら何か怖い感じが滅茶苦茶するって、もう泊めてくれなくなったくらいだよ?」

巻き込んだらどうしよう、という顔をして桐子は言う。

「古今東西、こーいうことで真面目に悩んだりしてると、そういう雰囲気に押し流されます、だから楽しむくらいのノリで行きましょう、冬だけどその川でバーベキューしましょう、俺、海パンとか持っていきます」

嫌な予感とか、嫌な気分とか、ますます暗くなるだけ、と達馬は笑う。
達馬は過去にとことんそういう場面、しかも逃げられない桎梏に囚われていた。
そんな中ですら明るく生きようとする姿勢の良さは天性の強さであり、その強さは温和な空気を桐子に齎していた。


「ははっ……風邪ひくわよ達馬君?」

「俺生まれてこの方風邪引いたことないんですよねーわはははは、ダレカ!オレニ風邪ヲ引カセテミロ!」

「無双の魏延の真似?」

「ハイ、ソウデス」

「ただの片言の外国人よ?それ」

そんな姿に山田ゆかりは何度目かわからない感心。
そして笑が溢れる。


そして言っておく。

「ハリウッドだったら真っ先に怪物に食われる行動だけどね――――それ」


「あ」



「調子に乗って腐ったもの食べて食中毒に掛かった」と言って学校を一週間休んだことがある達馬である、そこは注意しておく。



そして、ぼそりとよくわからんことを言った。




「あ、そういや、マジでこの世界そういうの居るんだった………妙子さん持ってないかな――――霊剣とか」







末馬達馬の事件簿2 幽霊編 閑話



私たちが末馬家に入ると、温かく妙子さんが嫌な顔一つせず、というかむしろ嬉しそうにご馳走を作って待っていてくれた。
「育ち盛りに食べさせないのは悪」とかそんな考えを持っているらしく、量も沢山用意されていた。
「大学生ふたりに中学生ふたり」とたまに妙子さんも変な空回りするのか、育ち盛りの大学生と中学生の男が食べる量を作ってしまったらしく。
「あ、女の子なのにいっぱい作りすぎちゃった………遠慮しないで残してね」と言って食べさせてくれた。

もの凄いご馳走だった。

「アン肝」やら「上海蟹」やらがゴロゴロと味噌汁に入っていたりして皆びっくりする。

「滅茶苦茶美味しいけど………これってアリ?」とかそんな気分で私たちはイベリコ豚の酢豚などを食べる。

きくらげの代わりにトリュフが入ってる酢豚である。

並べられた料理は何か高級食材使ってるけど、普通の家庭料理という、妙子さんという存在みたいな夕食だった。

残すのが物凄い勿体無い感じである。



そんな私たちの戦慄の気分が伝わったのか、達馬と妙子さんはげっそりと「高級食材に合った料理にすぐ飽きたらこうなった」という。
あとで聞くことなのだが、超お金持ちの妙子さん、そしてその息子の達馬が食い意地が張ってることがここ数年何処からか伝わったせいで今まで装飾品などがどっかから送られてくる妙子さんの正月のお歳暮が高級な食べ物が割を占めるようになり、最近その調理方法に苦しんでるそうである。
どうやら妙子さんに忠誠を誓っている資産運営の代理人達が、好意で運営を食品関係に回して融通を聞かせまくってこうなったっぽい。

過去「未来を予測する、天才的な個人投資家」と噂された伝説の女、末馬妙子さんである。


「妙子様の息子さんには良いものを食べて欲しい」とかそんな好意である。

18の頃、日本のある経済危機に対して知らずに――――――うんやめておこう。



「あ、気にせず残していいよ」

「どーせ残ったら俺が全部食べるから大丈夫」


朝、洋食の日は食パンにキャビアとマーガリン塗って食べてるそうだ。

傍から見ればやってることが真のセレブである。


「フォアグラの唐揚げって……まぁ居酒屋で食べる豚レバーの唐揚げみたいなもの…?えっと達馬君の家ってお金持ちなの?」

桐子さんが、奇妙な動物を見つけたように達馬を見て、曜子さんに小声で聞く。
「こいつ……漫画にでてくるような超絶おぼっちゃま……?」と。


「そうらしいけど、なんか普通な生活が幸せという生活をしてる変な母子家庭」と曜子さんが言っている。


それが聞こえたのか、妙子さんはがっくり、と肩を下げ、こういった。

「幸せって……うん……お金じゃ買えないの……でも――――あるならあった方がいいけど……」


ふう、という妙子さんの溜息。

それが、食卓に響き渡った。



皆、沈痛な面持ちで押し黙る。


そんな滅茶苦茶深い溜息だった。


「……重いぜ、重すぎるぜ、母さん……元ビンボー人の俺が「それって金持ちだから言える」という僻みを感じないくらい重すぎます」



達馬は顔を引きつらせながらそう言う。

達馬曰く、妙子さんがお金という大体絶対的なパワーを集めたのは、ある種の自己防衛であると前に自分に教えてくれたのを思い出す。
幼い頃から、その恵まれた容姿が原因で受難が度々降りかかり、時には金銭的な面で攻撃してくる輩もいたらしく、それに対抗するために若いうちから金稼ぎに急いだとかなんとか。
十代の頃は本当に大変な思いをしていたらしく、その頃の過去話はあの桃子さんでさえドン引きするくらいらしい。
桃子さんは妙子さんに「学生時代の卒業アルバム見せ合いっこしましょう」と二度と言わないと決めているそうだ。

まぁ姉さんから私もきいてるけどね、妙子さんの苦労話。


姉曰く。


「高校の修学旅行?ああ、私、実家から送られた積立金使って妙子のために二人で別の旅行行ったよ?あの時期超修羅場だったし、荒木とか松原とか村木とか」

「やっべ、修学旅行に妙子参加したら空港でウチの学生凶器見つかって捕まるかも―――とかそんな雰囲気だったので妙子を逃がした」

「そのあとがやばかった、逃がした私も結構危ない目にあったぞ、ワハハハハハ」


小学校は修学旅行途中帰宅。
中学校は修学旅行辞退。
高校は姉と学校の修学旅行中、行かないでその期間姉と別の旅行をしたとかいう話だ。

あのどんな残酷な悲劇な見て欝になる映画でも「うわこいつらワハハハ」とか笑って見続ける姉が避けたほどの事態であったのだ。


そんな妙子さんの卒業アルバム、ああ、怖い。

だが若干、興味が出たので、隣に座る達馬にぼそっと聞く。

「ね、妙子さんの学生アルバムって「見ないほうがいいいぞ、まじで」

達馬は鳥肌が立ったらしく、肩をさすりながらそう言う。


「あ、そこまで?」


「え、私の卒業アルバム?大抵私の写真は丸いよ?あはははは」

ぼそっと聞いたつもりだが妙子さん本人に聞こえ、妙子さんは力なく悲しそうに笑う。


「そういうことだから、やめとけ」

桐子さんと曜子さんは絶句していた。
「うわー美人に生まれるのも大変だ」とかそんな感じ。

妙子さんが被害にあった、過去の様々な人間から受けた嫉妬や羨望や憎悪や狂愛や執着やらの片鱗に皆ビビっている。



皆それから静かに食事を終え、妙子さんをお風呂に行かせ皆で片付けを静かに協力して行なった。




妙子さんがお風呂に入ってる間達馬に聞いたが、そんな妙子さんの学生の卒業アルバムの中でも一番ヤバイのは高校の演劇祭の写真らしい。
妙子さんの母校では演劇祭というものがあって、毎年演劇を各付属の学部で小中高で実施するという行事があり
妙子さんはその演劇祭の高校の部の主演を張ったという。

舞台「ロミオとジュリエット」のロミオ役。

そのステージ側から観客を撮った写真が超ヤバイ、らしい。


「あれ、観客の眼がジュリエット100回くらい殺してるぞ―――――最初みたとき心霊写真かコラ写真だと思った」

あれ、やばい、ほんとにやばい、と達馬がソファーに顔を埋めて震えるくらいのものらしい。



そして。



「あと卒業文集とか―――まじでぞっとする」


あれ絶対に妙子さんに向けて書いたポエムだ、とかなんとか

今度姉さんに見せてもらおう、と私は思った。






そして夜、皆お風呂に入った夜の10時、私たち女性陣はよくわからないけど、居間で布団敷いて4人で川の字で寝ることとなった。


「「こんなところにいられるか、おれは一人で部屋にこもる!」というパターンを実行してみるわ」

達馬がそんなことを言いだしたのだ。
どうやら、桐子さんが泊まった部屋の住人にも被害があった、という話を聞いて、そうしてみよう、と面白がって言った。
わざと1階に人を集めて2階に達馬が一人で寝ることにするという。
そして水場から音がして気配が来るそうなので2階のトイレのドアを開けたままにしている。

「ハナミだったら、さらにひとりかくれんぼ始めるシュチュエーションだね、それ」と妙子さんが苦笑する。

「え、だいじょうぶなの?達馬君」

桐子さんはびっくりしていた。
「まじでやばいっていってんのに、本当にノリで?」
とバカをみる眼で達馬を見る。


「ええ」

そして達馬は深く頷き、指をピストルの形にして笑った。
それを見て、妙子さんが「ああ、あれね」という顔をする。

「多分余裕です―――――ダテにあの世は見て「見てないよね」」

すかさず妙子さんが突っ込んだ。

「ハハハハハハ」

「ハハハハハハハハ」

そして二人でなんだかものすごく楽しそうに笑う。
これぞ、末馬家限定二人だけしかわからない渾身の母子漫才である。


達馬と一緒に寝たがった曜子さんは言う。

「たっくん、突然幽遊白書の次回予告の真似してどうしたの?」

私も曜子さんも桐子さんも意味不明と楽しそうに笑う二人をみることしかできなかった。


その変な親子の妙な絆は私たちには全くわからないのだ。






曜子さんと私は「うーん」と首を捻った。

桐子さんは純粋に心配そうに達馬をみているが。

取り敢えず、私たちで、大丈夫だと教えておいた。




「なにが大丈夫なの?」

桐子さんは疑念は解けなかった。


「科学ノ発展ニ犠牲ハツキモノデース」





そして達馬はまた余計なことをぼそりと言って2階の階段を上がっていく。
その顔はめちゃめちゃ期待感に満ち溢れた顔だった。


うまいこといったぜ、俺。

という顔もしたのでわたしはイラついたので取り敢えず顔面に枕を投げておいた。
前にエクソシストの真似をして私の腰を抜かせた顔だったので。

そして枕をぶつけられて楽しそうに「おやすみー」と2階に消えた。

「変な子………」


その姿を見て、桐子さんは心のそこからの言葉をぽつりと漏らす。




「でも、良い子でしょ?」

妙子さんは苦笑してそう言った。







[36072] 末馬達馬の事件簿2 幽霊編 閑話2 沢山食べる君が好き by山田ゆかり
Name: みさりつ◆dacc3cd9 ID:0efe3bb5
Date: 2014/02/06 11:43
末馬達馬の部屋を見た人間は大抵「え、滅茶苦茶綺麗、オマエが掃除してんの?」という疑問視される部屋である。
全てが「妙子さんが自分にくれたもの」なので大切に扱っているだけである。
しかも家具、本棚やパソコンデスクは中々センスがあるメタリックなモノが多く。
年頃の憧れの部屋、とか雑誌に乗りそうなレベルである。

一番値を張るのが勉強机だった。書斎家具屋の天然高級素材のオーダメイドもので妙子が「何十年も使えるものを一回買った方がお得だよ」と用意したものである。
しかし、机こそ立派だが、勉強道具は少なかった。

男子学生が「どんなとこで勉強してるの、みせてくれないか」と学年1位の秘訣を探りに遊びに来たとき、思わず
「あれ問題集とかないけど、どうやって勉強すんの?」というレベルに問題集とかがない。



「問題集とは買うまでが楽しいものでやるものではない」




とか達馬の口から名言っぽいことを飛び出すぐらい本当にない。

達馬は前世で「問題集買うから小遣い頂戴」で大抵安いのを買って残りは遊びに使ってしまう男だった。

だから、そういうものは妙子さんが親になった瞬間から一生買わない、と決めている。

基本達馬の勉強方式は「ひたすら教科書を音読して読む」という方式をとっている。

それはどんなに気が向かなくても無理矢理肉体に刻み込むように行う訓練のような方式である。
これをやると、邪念が消えていいな、と発見した勉強方法だった。


そして所詮受験と違い学校のテストは学校の教科書通りしか出さないもので、きっちり教科書だけで勉強する。
故に、別に将来国立大学を目指しているわけでもないので、それ以上はやらない。
一応、高等部の教科書だけは先に卒業生からもらっておいて、予習は実施するが、そこらへんで応用能力の無さがはっきりする。


あとは必要になったら人から借りてコピー機で印刷するくらいだ。

それは傍から見れば家計に優しい頭が良い子である。
結構同じ学年の生徒の親からそういう子だと思われている。






そんな頭が良い子である末馬達馬は日課である電気の紐ボクシングで幕の内一歩みたいにデンプシーロールごっこをやってから部屋の電気を消す。
何度も妙子さんに見られているので、最早一片の羞恥心もない見事なゴッコ遊びである。

電気が消えた真っ暗な部屋になると。

「次回につづく……」

とかモノローグを入れて、ベッドに入り込んで仰向きで寝る。

そして達馬は思う。


天井の暗闇を見ながら、あのリングの例の人とか始球式に立つあの映像を思い出してにやにやしてしまった。

「ついに俺の手からお菓子を出す能力をスタンドバトルみたいに使う日がくるとは……なんかワクワクしてきたとか」アホなことを思い始める。

なんだかやっぱりさっぱり興奮して眠れない。
寝ようと思えばなんとか寝れるが、この時間帯は寝るには早すぎる、寝たら逆に疲れそうだ。
性格的に昔から保育園でお昼寝の時間が始まると一人だけでどっかに飛び出していく子供だったので、「じゃあ明日も早いし、よし、みんな寝よう」とかなると途端に寝る気をなくす。

という訳で。

無意味なひとり遊びに没頭する。
ベッドに入ったまま手をぐにゃっとクロスさせて頬につけて。

「俺の手からァ!和菓子だけしかっ!――ではないっ!!洋菓子も出るっ!のだ!!油断したなァ!ジョジョォオオオ!」

とか一人で小声で言いながらルドマンクッキーを手から出して食べてみる。
何時も通り、カッサカサになった忘れられ放置され消費期限が切れかけたような食感だった。
チョコがドロっドロっだった。


手から出した瞬間に溶けて、手にチョコが付いた。
それをティッシュで拭いて

そして。

「あ、もういっかい歯磨きしないとダメだ………やっぱ封印しよ、この能力」

取り敢えず、達馬は洗面所に向かうことにする。




こういう馬鹿な100年の恋も覚めるような行為を何度も目にしているのにそれでも

「そこが良い……可愛い」

とか思っている、山田ゆかりはやはり奇特な少女である。




末馬達馬の事件簿2 幽霊編 閑話2 山田の恋



山田ゆかりは目が覚めた。隣にいた石塚曜子さんがおもむろに、がばりと布団から身を突然起こしたからだ。

「え、どうしたんですか」

「あ………起こしちゃった?」

「トイレですか?」

「うーんとねぇ、たっくんの部屋行こうかな、とか、思って………ゆかちゃんも行く?」


「あ、この人、すっげー積極的だ」なんて思う。
女性の肉食化が叫ばれている昨今、これが肉食か……とか戦慄を抱く。

なんか隠しもってると思っていれば、案の定妙に露出が多い勝負用のパジャマのポケットからコンドームが三枚ほど手から出してゆかりに見せる。
なんかこの人取り出し方手馴れている。
まるでマジシャンみたいに三枚開いてだした。
こう、「えっちなもの」という恥ずかしさが1欠片もない。
完全に「道具」としてソレを見せてきた。


「一枚どうぞ、開けたときゴム弱そうだったら言ってね、キャリーの方にまだひと箱あるから」

とか言いながらゆかりの手に一枚載せる。


「え……まじですか、ちょっとこっち来てください」


「作戦会議?私経験あるから上手に誘導するよ……たっくんだって中学生だし一番サルの時期だから、きっと3Pとかうれしいと思うよ」


うわぁ生っ生々しい。

と頭が痛くなってくる。


取り敢えず、なんだか物凄いエロい感じに曜子さんが眼を潤ませているので、残り二人が眠る場所から離れることにする。


女神のように眠る妙子さんの寝顔をみるほうが、あいつに夜這いに駆けにいくよりも有意義なんではないか?

とか山田ゆかりは思った。



私の場合、そこまで「最初っからクライマックス」な行動はしない、と頭を抱えたくなる。
そういや、この人桐子さんのお悩み相談を達馬に会いにいく手段として変換した人だった。

一石二鳥とか、そんな感じでなの?

とか思いつつ、止めることにする。


流石女子大生……いや全員がそうじゃないと思うけど。

「経験アルンデスカ」

「うん高校の時くらい……そういえば桐子は処女らしいよ、ゆかちゃんは?」


「処女ですがなにか?」

「あ、そうなの?じゃあ私が見本みせるから」

「いいですから、こっちきてください」








とりあえず末馬家のトレーニングルームに連れて行く。


「あ、此処防音っぽいね、ああ、此処に……達馬君を?」

「違います」




それなりに色んな妄想で年頃の少女らしく、それなりに好きな男でオナニーをしたりもする。
ちゃんと保険体育の教科書を呼んだりしているので、適度にそういう行為を美容目的の一つとして全然罪悪感なくやっている。

でも私はまだ中学生なのだ、せっかくだからもっと甘酸っぱい感じにいきたいのだ。
別に処女とか非処女とか純潔とか不純とかそういうのではなく、折角の初恋、しかも一生続けられそうなやつなのだ。

そういうのはきっちりと美しく段階を踏んでいきたいのだ。
そういうの大事だと思う。

別に曜子さんに文句は言うつもりはない、まぁソレが人間である。

好きな男とはえっちしてみたい、とか思うのは当然、男だってそういうことはきっと思ってる、というか男の方がどちらかというと頻度は多いだろう。


セックスするのは別に構わない。

だがセックスは達成じゃない。

ただの生殖行為だ。



恋とは幻想とか性欲の勘違いとか体内の化学反応とかよく言うが。
それがどんなに、本能の誤魔化しでしかなくとも




「恋は良い、人生の彩である」



取り敢えず最初に感じた胸に宿った嬉しさ、想うだけでドキドキする心臓。
見ているだけで、傍にいるだけで毎日が幸せになるこの感情。
毎日ちょっとしたことで落ち込んだり、ちょっとしたことで怒りそうになったり、悲しくなったり、うわ妙子さんに勝てないとか思ったりとか。
でもそれが物凄いパワーなのだ。
美容の原動力になったり、勉強も真面目にやれたり、負けないようにアイツが好きなライバルを蹴落とす実力をつけたりする、凄い力だ。



それが私には何よりも掛け替えのない一輪の花の種である。



それをゆっくりと綺麗に大輪の花として開かせていきたい、と思う。


いつかの将来どんな結果になろうと、微笑んで楽しそうに胸を張って「恋」だと言えるようにしたいのだ。






とか思う。


そして


今曜子さんがやろうとしていることは本当の最終手段にしておきたい。

いや、別にエロいことはエロいことで大事だけど、気持ちいいし。

ようは手段と目的を入れ替えちゃだめ、というわけなのだ。

好きだからシタイではなくシタイから好きとか

わけがわかんなくなる可能性が高い。

所詮人間、いつだって本能に負けてしまう――――今日はいっぱい食べすぎたし、明日あんまり食べないようにしないと駄目だし。


だから、そういう風なことをすると私の恋がぼろぼろになりそうな気がするだけだ。


「まぁ取り敢えず恥ずかしくなるような恋バナして、その性欲消しましょう、あと14歳の私にはそれは大人すぎます、年相応ではないです」

というか初体験3Pとか絶対やだし!!


「なんだ、ゆかちゃんはいいのか、じゃあ私一人だけでも――――「普通に妙子さん起こします」


お宅の息子さんとセックスしようとする20の女がいます、とか言って起こす、絶対起こす。
で、「たっくんは14で責任能力ないからダメです」と怒らせる。

そしてそこで食い下がった者がいれば。


妙子さんによる。

恐ろしい失恋裁判が始まる。





去年一条紗耶が手段として家の力、ようは母親の勧めという婚約になんとか持ち込もうとした時。

達馬に「たっくん、一条紗弥さんと将来結婚する?」


一条家の人間を踏まえた公式の場に置いて、達馬本人に聞くという最強の一撃で一条紗弥を失恋させたからな、あの人。


勿論、達馬はあの優柔不断さがない一切ない実直一途だ、絶対に即答する。

悩みもせず。



「しません」


はい終了。

そもそも妙子さんの前で悩むわけがない。

まぁそこで食い下がられ「じゃあ誰と結婚したいんですか!」とか言われると途端に苦しみだすけど。

そしてさらに食い下がれると「ならはっきり言おうか――――好きじゃない人とは絶対結婚しない」


「そして誰が好きとは、誰にも教えない」

という恐ろしい厳しさを発揮する。

感動するレベルで一途である。
ちなみに結構の人に誰か教えている。


その後

「え、たっくん好きな人いるの?お母さんに教えてー」で死にそうな顔するけど。


「誰にも教えないの?もしかして男の子?二次元だったり?」とか言われて泣くし。

周囲がハーレムとからかっても、正直なところ達馬をよく知る人間がただからかってるだけである。

達馬を知る人間はそういうことは絶対しないとわかっている。
だからこそ。男からも女性からも信頼が厚く信用され、私も好きに達馬のところで二人きりでジンギスカンパーティーができるのだ。



だから教師陣だって、わざわざ生徒会室に監視に訪れないし、この家に生徒会室の鍵が普通に置いてあるのだ。

因みに達馬は1回鍵なくしてるが、未だに学校に鍵戻せとは言われない。



そう、あいつは学年一位の成績を文武両道にして人格面も優れ、老若男女誰にでも公平にして優しい清祥学園史上、最高の男子中等部の生徒会長なのだ。


ということになってる。


去年のテレビの取材でそういう風に撮られて、なのはたちとかでみんなで見て大爆笑したけど。


そしてそこがモテるのだ。


普段はおちゃらけていたりしてくだらないことをいったりする。
それでも、びしっとやるべきところは真面目にこなす。
生徒会の仕事だって、全部の部活動が終わってもひとりで働いている。
そして心の深いところでどんなときだって悪びれず、媚びず、怯まず、飄々としていて―――気高く、邪気がない。

一貫している、幻想や理想は背負わず、いつだって末馬達馬という、ありのまま、ただそこにいる。

誰にだって態度を変えず、底抜けに優しく明るくなお人好し。


眠そうな容姿さえクリアすれば、簡単にこちらがくらっとくることをしょっちゅうやらかして惚れさせてくれる。

ちなみに妙子さんが近くにいない時、限定。


そして

「妙子さんの世界で一番大事な大事な大切な宝物なんですよ、達馬は―――――そういう勝手なことできません」



「えー」

物凄い残念そうな声をだす曜子さん。



確かに妙子さんに勝てない同盟だが。

だからといって「譲る」とは一言も言ってない


「で、ここで恋バナしますか?」

はっきり言うと、末馬達馬を題材にすると凄い不毛なことになる、いつだって「で、妙子さんに勝つ方法あるの?」で終わる。


そうなのだ、私の恋を成就は「私に惚れてもらう」しかないのだ。



だから明日に備えて寝よう。
いいところ見せてやろうじゃないか、あいつに。



などと気分は颯爽と格好良く、ただ寝るために私が居間に戻ると




「今日そういえばたっくん夜のランニングしてなかったね」

「すいません、夜食………まじですいません」

「お腹すごいなってるし、いいんだよ?育ち盛りなんだから、あと桐子さん起きちゃうから、遠慮せずしっかり食べてね」


桐子さんが寝てる居間から少し離れた台所で、妙子さんのおにぎりをこそこそと達馬が頬張っていた。




ああ、そーいう感じだよね……こいつ、と山田ゆかりはなんだか虚しくなった。



まぁせっかくだし。


「あ、私も食べたい」

「やっぱ、この時間帯の夜食美味しいよな」


うん、明日あんまり食べないようにしよう。



そーいえば、こいつの傍にいると太りやすくなるんだよな、私、と本当に美味しそうにもの食べる好きな男の子にがっくりとする。



いや、そこも好きな部分なんだけどね。

小学校の時、私の家庭科で初めて作ったあんまり美味しくない生焼けのお好み焼き嬉しそうに食べてくれたし。





つづく。







ちなみに曜子さんは私が居間に戻ろうとした隙にいつの間にか2階に上がっていて、「たっくんがいない!」とびっくりしましたとさ。


私、曜子さんにブチキレていいかな?



結局三人で妙子さんの夜食を沢山食べて、私と曜子さんは体重計に乗るのが怖くなりましたとさ。



「妙子さんは食べないんですか?」


「うーんあんまり食べなくてもいいからなぁ、少食なんだよね私、食べ過ぎると気持ち悪くなるんだ、だから、みんなが美味しく食べている姿で十分私はお腹いっぱいで嬉しいよ」




うわ、マジでずるいこの人!


本気でそう思って言ってるこの人。




そしてなんだかこっちもそういうこと言われると嬉しくなるし
ナチュラルで無敵超人。


あと


「じゃあ俺が妙子さんのために沢山食べる」みたいな顔すんな!



末馬達馬!!






あとがき










末馬達馬


もげろ馬鹿


末馬妙子


最強。






山田ゆかり


甘酸っぱいキャラ。


石塚曜子

超肉食。



片桐桐子

不眠症気味、爆睡。



というコンセプトでお送りしました。


あと山田ゆかりの達馬評は所詮、恋のマジックです。





[36072] 末馬達馬の事件簿2 幽霊編 悪夢と悪夢のような事実
Name: みさりつ◆dacc3cd9 ID:0efe3bb5
Date: 2014/02/08 03:19
末馬達馬の事件簿2 幽霊編 悪夢と悪夢のような事実






夜腹いっぱい食ってぐっすり寝ました、そして



悪夢みました。


憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い
憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い
憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い

憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い
憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い
憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い

憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い


達馬が聞いたのはそんな言葉、何度も何度も、まるで世界が滅びてもその言葉を永遠に言い続けるのか、なんて思うほどの寂しい深い孤独の音。
そんな声と共に達馬もこぽこぽとこぽこぽと落ちていく、沈んでいく、水の中にも酸素はあり、魚たちが生きて泳いでいる、上を向いて手を伸ばせば、青空に手が届きそうだ。
それなのに、達馬の横で、ひたすら「憎い」と呪詛を吐く者がいる。

何がそんなに憎いのか、イマイチ末馬達馬にはよくわからなかった。

見つめられたら、凍ってカチンコチンになってしまいそうな程の視線を感じた、まるで海藻に人間の眼球をつけたような、でも、どうやら女性のようだ。
泥そのもののような、黒い手、それでも細く、女性だとわかった。
声は低く、まるで青空を引き裂くような黒い夜のような声だったが、かろうじてソレが女性の声だったので、そう決め付けていた。
そして当然と末馬達馬当たり前のように生きようと、自分を沈める場所から浮上するために、水を掴むよう片手と両足を使って泳ぐ。

恐ろしく冷静に末馬達馬はそうしていた。

あー結構、怖いなぁ、と末馬達馬は震える。
びりびりとノイズのような音が末馬達馬が繋がれた手から流れ込んでくる。
死人の温度とでもいうのか、全身に右手から寒さが、さぁああああああっと入り込んできて、体が重くなってくる。

ついつい、末馬達馬はその海藻お化けに手を突っ込んで、引っ張りあげようとしていたのだ。


「あーこういうことしたらアカン系か、助けたら成仏じゃないのか、うわーミスったぁ」


とかそれでも末馬達馬は己の体の冷たさよりも冷静にそう思う。





さぁ胸を張ろう、諦めるな、と己を鼓舞する。

まぁなんとかしてみるさ、ま、こういうのって諦めたら人生終了だろ、多分。



「物凄い怖い、超怖い、涙とか多分でてる、おしっこ漏れそう、インド洋ひとりで走るよりこエエェ!!」とか思うけれど。


頑張ろう、頑張ろう、頑張ろう、とただ一つ、それだけを思って、泳ぎ続ける。
つないだ手は離さない、いやいっそ、この海藻の人、殴ればいいじゃね?とか思うが、何か罰当たりだし、とか思って泳ぐ。

離すのも、なんか心のない人間になりそうだ悪いよなぁそれって―――――とかそんな気分。


末馬達馬は別に手を差し伸べたことに対し、悪意を持ってこれから取り殺されそうになっていることに対しては怒りはなかった。

ああ、そういうやつか、という程度だ。



「ええ!?なんで助けようとしたのにそういうことすんの!?」とか結構思ったけど。


それでいながら、末馬達馬は手を離そうとはしなかった。




結局のところ、予想していたよりも持ち込まれた問題はどうやら解決は難しいかもしれない、なんて先のことを思う。


そんな其処までの恐怖の中でも陽気なままの末馬達馬の様子にそいつはひたすら「憎い憎い」と言い続ける。








そうだ、この存在は末馬達馬のような人間こそ、憎んでいる。


理不尽な憎しみだった。
末馬達馬のような人間には全く理解できない発想の邪悪な思考。


『私は苦しい、だから、誰かを苦しめたい』


『幸せな人間を見ると呪わずにはいられない』


『他人の不幸を喜びたい』


だから、それは桐子よりも先に目に付いた存在を殺したがった。

最後まで、人間の根深いところにある善性を信じきって、傷つきながらも笑って立ち上がり前向きに生きる。

そういう風に生きられる末馬達馬を憎んでいる。





そんな強さを憎み、嫉妬する。



そしてそういう人間を殺すことに対し喜びを見出す、裏切って、絶望させ、その人間の上辺の優しさを取り払う。
その他者さえも犠牲にしながら醜く生き足掻く様子を見て、その醜さを嘲笑う、そんな怪異であった。


そんな者ですら、助けようとする男が許せなかった。


『何故、じゃあどうして助けてくれないの』



という、矛盾した物凄い理不尽を発揮して末馬達馬を殺そうとする。

末馬達馬がもし、そういう風なことを言われたら

「え、イミフ、助けて欲しいなら―――――お前も泳げ、ボケェ!!」


と怒るレベルである。

そして未だにそういう風に最後まで諦めないだろう、人間をとことん苦しめたがる。




どんな人間にも救えない、正真正銘の化物である。







最早、人とは呼べない。

ただの化物だ。


この世界に存在する浄化専門の霊能者でさえ、すぐさま匙を放り投げて無視するタイプの怪異だ。







そして達馬の呼吸が辛くなってきたあたりで海藻のような人間のくちが開かれた。


いや人間の口じゃない。

人間の口はこんなにも大きくないと達馬は眼を剥く。


それから発せられた声。


それは哄笑だった。

憎悪の哄笑。


ヒョオォオオオオオオオオオオオオ!!


まるで鳶の鳴き声のような高い笑いの音だった。


そして生きているかのように沢山の泥が川底から溢れ、達馬の視界を奪っていく、青空に繋がる達馬の前を塞いでいく。



微笑みさえも末馬達馬は浮かべる。



そして口元を動かして、水の中で、唇で言葉を横で拗ねている存在に優しく語る。


「なぁ、どうしてそういうことすんの?」



優しく、哀れんでいた。


一番やっちゃいけないことである。






そして、末馬達馬は上を見るのをやめ、川底を見る。


そしてギリギリ限界、そろそろ酸素がたりなくなって、意識が朦朧とし始め、水を飲み始めたあたりでやっと悟るのだ。






あ―――――――こいつ俺の常識通用せん!?





と横で「しね、しねしね」とか言い始めてる存在に


「えー、まじですか、イミフですね、アンタ」



と最初から最後まで態度を変えないまま。







そして末馬達馬は思う――――ああ。   




うん。





やっと死にかけている状態で。




――――やっとこさ自分が馬鹿であることを気づき始めるのだ。





うわ、超やべえ!!


死ぬ!?



もう冷静ぶったりできない、なぜだか知らないがパニックになり、脳裏にピン芸人ゴー☆ジャスの

「君のハートにレボリューション」

という言葉が廻る。



俺の心臓が限界です。






ちょっ!?


やべえええええええええええ






流石に限界だった。
正直呼吸が限界であり、恐怖によって体が動かせない。
道頓堀に叩き落されたカーネル・サンダースの気持ちがよくわかる状態である。


阪神タイガースのリーグ優勝時に

「なんで儂を沈めるの?めでたいから?儂が堀に沈むのがめでたいの?」

とかそういう理不尽で不条理な思い。



全身に海藻口お化けがグニャグニャと這い回り、パジャマの裾からにゅるにゅると海藻、いや川藻が侵入してくる。




ヒィイイイ!!


ひひひひひひひひっ!!


と口元が横に伸びて裂けそうなくらい引き攣る。



そして最後の最後で、やっと末馬達馬は「助けて」と他人に縋ることが出来た。






妙子さんっ!!


助けてぇええええええええええええええええええええええええ!!

















夜食を散々食べて眠ったあと、眼を開けたら気持ちいい朝だった。

そして


山田ゆかりは末馬達馬は魘されて居たのを見つけた。

最初、こっそり静かに達馬の部屋に入り「わ!」などを言って、驚かせて起こそうと思って、あと達馬の寝顔を見に来たのだが。

眠っている達馬の口から「死ぬ………」という言葉が漏れているのに驚いてパニックに陥った。



そしてその達馬の表情はこちらが見ていて青ざめるほど怖かった。



どんな時も何があっても平気で笑う達馬の顔が悲鳴に染まっていたのだ。


まるで絶叫するような顔だった。


人が苦しんで苦しんで死んでいくような顔だった。



そして体が全身青白く染まりかけていて、見るからに凍え死にそうだった。



さぁあああああああああっと血色の良い肌が、青白さに染まっていく。


あ、達馬が死ぬ。



私はそう、はっきりと理解した。



そして急いで、達馬を触れて、叩き起こそうとするよりも早く――――女のなせるカンの技か、私は妙子さんを呼んだ。



妙子さぁああああああああん!!



自分の耳がキーンとするほど全力で叫んでいた、叫んで、そして達馬の部屋を開けて、妙子さんを呼びに出ようとすると。




うせろォおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!



私の顔に風が吹いた。

妙子さんがすぐさま半開きの部屋のドアを勢い蹴り開いて現れ、思いっきり達馬の方に「失せろ」と叫んだ。
恐ろしい怒りに満ちあふれた声だった
その時の妙子さんの表情は鬼気迫るものだった。

あの美しい顔が怒り一面に染まっていた。


そして叫んだまま彼女は手に持っていた小さな箱を思いっきり、よく投げた。

ぶん、と飛んでいったそれは

宙で塩をまき散らしながら飛んでいき、「ばす」っと達馬の顔に命中した。

朝ごはんの準備中でどうやら塩の補充をしていたらしく、りんごぐらいの大きさの調味料箱の中には塩が満載されており、重い音をたて、達馬の鼻の血管をぶちっと。

「いっっ!!でえぇぇぇぇええええ!!!しょっぺえええええええええ!!」



達馬は塩だらけの顔で鼻血をごぽり、と垂らしながら、飛び上がって起きた。








山田ゆかりは怪談であるところの所謂「親の愛による子の受難を逃れる場面」を眼にして感動した。
そして其処で、あの妙子さんのことだ、達馬の生還にめいいっぱい泣いたり喜んだりすると思っていた。




でも違った。


私も一緒に抱き合って達馬の無事を喜ぶつもりだった。



でも違う。



妙子さんも泣きそうになって、起き上がった達馬に震えながら近づいていったあたりで違った。



達馬の目覚めた第一声は


「セーフ………しくった、あ、鼻から……ティッシュ、ティッシュ」



布団に血をつけないように、ティッシュで紙縒りを作り始める慌てた様子でそう言った。



そして次に漏れ出た言葉



「あー。ああいうやつって命賭けで助けようとしたらダメなんだなぁ、命取られそうだった、わはははは!!失敗、失敗―――あ、おはようございます」




そして




私たちは一瞬にしてこいつが何をやらかしたのか悟った。

もし夢に出てきた場合とか夜食を一緒に食べたとき教えておいたのに、やらかしやがった。


「まず、現実には有り得ない感動する映画の話」の方を実践したのだ、きっと。

助けてあげたのに、殺される話とか理不尽系教えてあげたのに、ハリウッドでさらに犠牲者が出る2が上映されそうな感じの話もしたのに。


「オマエ、多分ほっといたらマジで死にかけてたぞ、ふざけてんのかこの野郎」


「馬鹿なの、死ぬの?」


という気分に私たちは陥った。


私たちは以心伝心だった。


すっと「よかったぁあああ!!」と泣きそうになった涙が引っ込んでいった。

人間って涙腺引っ込めれるんだ、と感動するレベルで涙がすっと引いた気がした。

女二人して横で並んで、涙をすすっと瞳の中に戻す光景は多分珍妙だっただろう。




そんなことよりも

妙子さんが私を横目で見て私は頷いた。
妙子さんも頷いた。


怒りが湧いた。



誰かを疑って自分の身を守るより、信じて裏切られた方が清々しいとか、そんなことを嘯く、大馬鹿野郎にである。

妙子さんだって、確かにそういう風なことを言っていたがが、まずは自分の身を考えた上で基本そんな無防備ではない。


困ってる人間を見つけても、初めて出会う人間にちゃんと警戒心を持って対応する。


裾に護身用としてボールペン仕込んでたり、スタンガンを持っていたり、催涙スプレーを完備している人である。
命が掛かる場面身に危険がある場面では普通の人間としてまずは身を守ることを優先する、しっかりと弁えている。

自分の純粋な親切心を勘違いしてセクハラしてくる男性は結構容赦なく冷たく対応するのは市内でも有名だ。

自分がまず弱い人間であることを認めた上で、それでも誰かに手を差し伸べ、己の弱さに屈しないため、己に恥じないように生きている、そんな人だ。

沢山の失敗と後悔を重ねて、苦しみながら己を練り上げた、だからこその聖女のごとき万能超美人、鉄のような人―――鉄人なのだ。


私たちが尊敬する。

鍛えられた美しい日本刀のような素晴らしい女性。

沢山のセクハラする男性を切られたと思わせず斬る、という技も持っていたりもするのだ。

あの他人をホイホイ裏切って友達が全く居ないあのド外道の姉ハナミですら「絶対に裏切らん――――怖いし」と称した女性なのだ。


誰よりも優しく、誰よりも厳しい、を実践し続ける、鉄の聖処女である。

それにくらべて、末馬達馬は。



こいつは、弁えていない、全然弁えていない。


根深いところで――――末馬達馬は強すぎる。

一言で言えば。



そうだ、馬鹿なのだ。



川で溺れているっぽい人がいたら、躊躇せず「いまいくぞぉおおおおおお!!」とざっぱーん、と川に飛び込んでしまう。

それで、一回、過去、人とマネキンを勘違いしてマネキンを助けたことがある大馬鹿なのだ。

その様子はまるで、馬鹿犬。

散歩していたら、リードが切れたので取り敢えず、どっかに走って消えてしまうバカ犬を連想させる光景である。

しばらく周囲の大爆笑ネタとして街に面白い話題を提供してくれる馬鹿である。



そういう実直さが、多くの他人に好かれ、誰よりも愛されることは知っている。


それが夏休み、別の家庭の家族旅行に誘われ、タダで海外に連れて行ってもらえるという意味不明な人望を発揮するレベルであることは知っている。

沢山の老若男女に好かれ、特に年上の母性本能が強い女性に好かれる生粋の「お姉さんキラー」であることも知っている。



8歳の女の子たちに早すぎる母性を抱かせたりするのも知っている。




だが。





「お説教ですね、妙子さん」

「うん、たっくん――――――――そこに正座、ステイ」


「え?」


「うわ、シーツに鼻血が、漂白剤――――」とか言って、部屋から慌てて出ようとするバカを私たちは全力で捕獲した。


死にかけていておいてそれか!?

普通そこで、ホッとして、妙子さんに抱きついていい場面だぞオマエ!?



流石にこれは「馬鹿で可愛い」とか思ってられない。


「お母さん怒るよ………本気で」と慈悲深く、滅多に怒らない、仏よりも怒りの許容回数が多いと呼ばれる、あの妙子さんをキレさせていた。







末馬達馬の事件簿2 幽霊編 悪夢と悪夢のような事実。












末馬妙子は怒っていた。





本当に酷い目にあって、最後の最後でやっと私のところに、たった一人ぼっちのまま、現れた子。


達馬君。

たっくん。






そして妙子は上辺の部分を全てとっぱらって事実を思い出す。


忘れたふりをした。











最初の出会いを。






具体的に言うと6時、まだ肌寒い風が吹く、夜、気温5度。

小さな5歳児がTシャツ一枚、短パン一枚、なんの防寒着も来ていない、まるでソーシャル・ネットゲームとかの初期アバター状態。


寒そうに小さな体を震わせながら、ひとり立っていた。


「まだかなーその妙子さんって人まだかなー、超寒い」



と一人ぼっちでいた。




初めてあったとき、思わず抱きしめてあげたいと思ったほど、悲しいほど痩せていて、本当にひとりだった。


なんでこんなに小さい子が―――はぁ!?

とか思って、思わず、携帯電話で、その実の両親を警察に突き出してやりたいぐらいの光景だった。


翠屋に二人で入った瞬間、桃子さんが暖房を全開にしてくれたのに感謝しつつ。
結構初対面で失礼なことを言われても笑って許せた、許せない人間はいないと思うくらい寒そうだった。





私でさえ、優しい親、信じられる兄妹がいるのに。

本当に何も持たず、誰からも見向きもされぬまま、誰からも愛されぬまま。



「じゃあな、ゴミ」

「………もう二度と見たくない」


と両親に車で置き去りにされ捨てられてて、走りさったのを「ああ、よかった」と微笑んで見送った子。



高町家にまっすぐ翠屋からお邪魔して。




桃子さんがなのはちゃんをすぐに向かわせてたっくんが「おお、久しぶりのテレビ、あ、スタフォだ」とか喜んで仲良く遊んでいる尻目に桃子さんに任せて

これからどういう栄養のある食べ物を出せばいいかなどをサバイバル知識が豊富な士郎さんと相談していた。

チャイルドシートだって、あれは高町家のものだ、大丈夫かな、と心配して借りたものだ。
いざとなったらあれに縛り付けて全力で病院に駆け込むために用意したのだ。

まぁ相談中、桃子さんがその様子をじっくりみていたら「あの子………凄い、はじめてみるあんな子供」とびっくりするぐらいの精神力を思っていたそうだ。




私たちが深刻になってる間、なんでも―――――なのはちゃんをゲームでボコボコにして泣かせてたらしい。

人生で初めてお邪魔した家で普通に楽しんで

「あ、大人気ないな俺、ごめんごめん」

と泣いたなのはちゃんを気遣って、なのはちゃんを面白おかしく挑発して遊びに再開させたりできるくらい、理知的だったそうだ。



本当は誰が見ていても「体も心も死にかけている」のに、それでいて、他人を気遣っていた。





思わずその時のことを思い返すと、いつも腸が煮えくり返る。


達馬の血の繋がった遺伝子上の親だけじゃない


自分にだってだ。




最初の頃、なのはちゃんよりずっと小さくて痩せていた。


お風呂に入って健康状態を調べたとき、その浮き出た肋骨を見て、見て見ぬふりをするのが、どんなに辛かったか。

でも一番つらいのはこの子だ、優しく、普通に接しよう、と頑張った。




最初に出会った頃はしゃいでいたのだって、全部演技。






注意して入ったお風呂、


一緒に寝るように冗談混じりで誘導して布団に一緒に入った、心配だらけの夜。

小さな体。



桃子さんが出したキャラメルホットミルクをシュークリームと一緒に夜中に吐いた。


そこまで弱っていたなんて誰も気づかなかった。


夜中、安心して泥のように疲れて、眠ったまま口元から、吐瀉物を吐き出した。





そして呼吸に問題がないことを見て、安心して。




さっと私は青褪めた。



最初に


「ああ…………それは捨てられるよ」


なんて冗談を言った自分を殺したくなった。


一睡も私は出来なかった。

自分が失敗したことに震えながら夜中に高町家に電話し、何をしてあげたらいいのか、と聞いた。

桃子さんが「まずは、いっぱい何かあげた方がいいわ、なんでもいい、目に見える形でわかるように沢山」


そのアドバイスで、私がたっくんが生活するものを全て揃えてやろうと連れて行った次の日の買い物だってずっと、体調を確認しつつ、不安な買い物を行なった。







それから落ち着いて。




日常生活では精々

食事で

「床に落ちた箸はちゃんと洗って使おうね、そのまま食事続行しないでね」

とか

秋ハイキングを一緒にしていて、栗を見つけて

「拾い食いしちゃダメだよ、というかなんで生栗そのまま食べようとか思うの!?私びっくりした!家で茹でてあげるから、ちょっと待とうよ!」


とか

そういうセコイ部分しか怒らないですむくらい、出来た子であり、根っからの部分では本当に大人だった。




私に全然、「怖かった、苦しかった」と甘えてくれなかった。


なんて、強い。

強すぎる。


鋼の如き、決して自分を見失わない、圧倒的な超人的な精神力。


その魂。



本当は謝りたかった、そんなことを平気で言えた、あの愚かな自分を謝ろうか、と何度思ったか。



だけど。



達馬は強い。



誰よりも強く――――――死すら恐れない。


ただ、何も持たず、寒いまま、一人ぼっちなまま捨てられていてさえ――――――――決して希望だけは抱きしめて離さない。





「なんで……なんで……」


「え、どうしたんですか、俺なんか不味いことを………」

先ほど死にかけていたというのに、もし、誰かに「助けて」といえる、人にはなくてはならない大事な弱さを見せなければ、死んでいたというのに。

助けてという声が、突然上の階の方からテレパシーのように耳の中に響いたのは奇跡だった。

あれはなんだったのだろうか、と奇跡だ、と驚いたものである。

それなのに今も鼻血ばっかり気にして正座したままティッシュで紙縒りを量産する達馬に、腹が立った。



誰よりも強いまま死んでいったというのに。



この子は。




「なんでそこまで………なんでそこまでッ!!馬鹿なの!?」




なんでそんなに、馬鹿なの?



というどうしようもない、部分に妙子は怒った。

わかっていた、わかっていた。


馬鹿なことは。




そして妙子はなんで、そんなに馬鹿なのか、わからないまま怒った。

結構自分でも理不尽だと思うけれど、それでもこれにはムカついた。

こういう理不尽な怒りは人としてどうだろうか、なんて思っていても止まらなかった。


どうせこの子、はこの男は、私が死ぬほど後悔した最初の出会いの言葉ですら

「あ、セクハラしちゃった、めんご、めんご、眼線エロかった、ごめんなさい」


とかそんな程度でしか受け止めていないと知っていた。


だから。


「たっくん、対等の大人として叱ります」

「はい………」

「もう少し、馬鹿なの、やめなさい」

「どうやれば、頭が良くなれるんですか?」



思わず、山田ちゃんが新聞紙で作っていたハリセンでたっくんの頭をスパーンと叩いた。


「いや、男の人とお付き合いして、私女だから無理だから」


と交際をお断りし続けた、私に執着し、何度も、何度も、何度も、追い詰めてくれた地獄の猟犬みたいな

「男は精神力が弱いから嫌い」とかいいながら私を追いかけてきたレズのストーカー女、荒木が私のことを

「ダイヤモンドの精神」


とか意味のわからないことを言っていたが。


未だに、誕生日にダイヤモンドを送ってくるが。



今なら言える。


この子みたら、腰抜かすよ―――絶対。


と過ぎ去った過去に妙子は微笑んだ。







うん、絶対に合わせないようにしておこう。


いや、半径数キロに来れないように、ハナミに呪いとか頼んだら本当に来なくなったんだけど。


多分この子、今のところ運が良く、そういうのはいないが。


私よりも山ほどストーカー量産する。



誰かが一生見ていてあげないと、まずい。









あと


「良かった……」



私と山田ちゃんは一緒に達馬を抱きしめて泣いてしまった。


その大音量に起きだしてきた桐子さんや曜子ちゃんが「え、何が起きたの!?」とびっくりしたのは、次のお話。













つづく。



























あとがき







そろそろ、妙子さんも女として覚醒させていく所存であります。

最近妙子影薄い、というか、超人すぎてやべえ。


人間らしさ書かねえと。


とかいう


正直いうと、後付けの肉付けもいいところ、そういう話です。


え、ここ、おかしい、とかありますでしょう。


書きたい部分を書く、それだけで構成された、お話です。

TS転生者に対して、意味を持たせる。

女として、男が好きになっていく、という展開を書きたい。

友情や家族愛、そして恋愛がテーマかもしれなかったり、そうだったりしなかったり。

ヘルクライマー編は、グランドフィナーレなのですが「ちょっと足りねえな」と思ったので


今回の話を用意してました。


ちなみに今回の話、ヘルクライマー編のラスボスをちょっぴり登場させて、達馬が格好良く(笑)乗り切って女たちを散々心配させると

いう展開だったのですが。



やめました。





どうも、みさりつでした。


あと「逞しい桜さん」

もうちょっとお待ちください。




次回、更新送れます。



[36072] 末馬達馬の事件簿2 幽霊編 達馬の新能力
Name: みさりつ◆dacc3cd9 ID:d46c572e
Date: 2014/02/10 06:15
特段、特別な主張などいらない、正義感念。

そんなものは無価値であり、無意味であることは良く知っている。
この瞬間にそんなものは不毛でしかなく
刃物で斬られかけているときに「ペンは剣よりも強し」なんて言う様なものだ。

耳障りの良い言葉も格好の良い言葉も、悟ったような言葉も、悲観したような言葉も。

何の役に立つというのか。



誰かに手を差し伸べ助けることは尊い。
それでも助けることはそう言葉など言葉に過ぎず、簡単ではない。
言葉にする、そのひと呼吸分さえ、省いた方がマシであろう。

差し伸べた手は時には切り傷を負ったり、火傷することもある。
誰かに恨まれたり、泣かれたり、軽蔑されたり、憎まれ嫌われたりすることもある。

誰しも純粋な好意に対して、正しく受け取ることなんてなく、卑屈になる人だっている。
そして一度たりとも同じシュチュエーションなんて有り得ない。
その人種も性別も年齢も種々雑多。
心もそうだ、考え方も違う。


いつだって上手くいくことは絶対にない。

100%の最善なんてない。

失敗は数知れず、助けられないまま、終わることも、中途半端で終わることも、幾度もある。

だからこそ、いつだって後悔に溢れかえったまま、後悔しないように

たとえ卑屈に見える手を使っても、卑屈にならず、不屈であれ。

卑怯な手を使っても、卑怯なまま終わらず、正々堂々とあれ。

常に自己の全力を引き出し、さらに最善に導き結果を出し続けるように怠らぬようにせねばならない。

そして決して諦めない。


それが出来なければ、自己満足甚だしい。


他者を助けるということは決して自己満足で終わってはいけない。

まずは私心を捨てなければならない。

己が報われたいなんて思うな。

名誉心、虚栄心、自己陶酔、なんてものは、以ての外。

挫折だってする、折れもするだろう。


後味も悪いだろう。

そんなの当然だ、それが手を差し伸べた者の責任だ。


それが嫌ならやめろ。

やめてしまえ。


失敗するのが嫌なら、憎まれ嫌われ、軽蔑されるのが嫌なら。
助けるな、最初から手を出すな。

上辺だけの親切だけで済ませればいい。

耳障りの良い言葉を吐いて、消えろ。

その方が、まだ互いに傷つけあわず、すむ。

謝って「無理だからごめんね」で逃げればいい。

「ご愁傷様です」で、それ以上は醜い思いはしなくて済む、己が汚れなくて、穢れなくてすむだろう。



それでも―――――。


―――――それでも手を伸ばすというのならば。






傷ついて、汚れ、穢れ、後味が悪いままで、全てを抱えて、いつだってせめて、己に恥じず、誇りを捨てず、後悔しても後悔しないように前に進む、それしかない。


そして一番冴えたやり方を探して、研鑽を続ける。

臨機応変であることを忘れない、そして慣れないこと。

そして。

何があろうと、悪びれず、怯まず、媚びず、飄々とあれ。



そして希望せよ。

絶望を絶望させるほど、希望せよ。


そしてそれらを全て忘れ、それら全てが――――。

ただの衝動でしかなく。

脊髄反射でしかなく。

我武者羅でしかなく、

結局それは、ただの馬鹿であれ。

それが出来る馬鹿となれ。



それが出来る馬鹿は

「やるべきこと」

「やりたいこと」

が重なれば。



ただ、ただ、面白おかしく、なんとかしてしまうだろう。


そうだ。

なんとかなってしまうものだろう。








という信念があるわけでもない本当の馬鹿の子、末馬達馬を見て、妙子は溜息を吐く。
別に頭が悪いわけではない、ただ「天才的な馬鹿、紙一重というよりもむしろ彼岸にある」少年は正座したまま、お腹に手を当てている。

あのあと二人で抱きついて、泣いて、すぐ、また

「そんな大したことじゃないですから泣かないでください」

とかそんなまた余計な感じになったので、またすぐ正座のお説教が再開された。

そして。

達馬はお腹がすいたのだ。


『ぐるるるるるるるる……』

という、大型肉食動物の唸り声のような腹の音が部屋に鳴り響く。




ああ。




叱っても物凄い不毛である気がする。

そして、その怒りもまた不毛である。


ああ、これが、所謂、言うところの「どうしようもない、馬鹿」なのか、と
妙子とその隣で壊れたハリセンをセロハンテープで補修している山田ゆかりは深く、納得と理解をした。

涙はすすっとまた戻していた。


だが、だからと言って、許せるもんでもないわけで。



「で、その夢に出てきたの、助けてあげようとか思ったの?」


「いや、「本当につい……」とかそんな感じです、あの幽霊さん、絶対無理ですよ、常識通用せんですもん」





ああいう感じで、ひとり、堕ちていった捻くれ者を助けてあげよう。


なんて

そんなことはどうやっても無理。

そもそもあの幽霊は自分が永遠に助かろうとしないのだから。

ちょっと可哀想だと思うけれど、哀れだとは思うが。




俺は普通の人間だ。




助ける?―――無理。




現実的に言うと。




多分あれを助けたいのなら、助けるためだけに今の自分の人生を、ぽいっと放り投げて、捨てて。
どっかの有名なお寺にでも弟子入りして80年くらい?修行しなきゃ無理。

正直、あんなすげー「超ド級の捻くれ者」を助けようとするなんて、過信や傲慢もいいところ、つうかただの無謀である。
今、あれに何をどうやっても、あれに対しては全てが通用せず、結局は上辺だけの薄っぺらい、益々アレに憎まれる余計な親切にしかならない。



それは、散々殺されかけてわかった。

アレを助けちゃうとか、感動系ライトノベルじゃないんだから、無理です。



むしろ


あの幽霊は正統派ホラー小説系である。

下手をすると、モンスター映画級。

ライトノベルはライトノベルでも「missing」とかに出てきそう。



「恐怖はまだまだ続く、永遠に終わらない………END」系だ、アレ。



だから、ほっといてあげるだけ、むしろこないでください、まじで。


それしかできん。

それ以上にやる気も起きません。


あれを殴って追い払う?

無理。


かくとうタイプ(格闘技)のみでゲンガーに挑むようなもんだ。


なんだか、スターライト・ブレイカーさえも効きそうにない、そもそも当たるような場所にいないだろう、アレ。


そういうタイプです。

つうかアレは大事故です。

俺はただ、信号を渡ってて、車に轢かれかけただけなんです。


自分で赤信号に走って突っ込んでったけど。

俺が慎重に青信号を渡ってても、きっとホーミングしてきます、あの幽霊。


もう、迫力が殺人ダンプ・カーです。


ポケモンのエンカウントの音楽が勝手になるようなもんです。

早くポケモンセンターいきたいのに「にげられなかった」とかそんな感じ。


そして、これは散々殺されかけてやっとわかった、感想でしかない。

あのときは


そもそもそんなことを考えてないし―――――――そもそも本当に手を引っ張ったのも。


本当に偶然も偶然。

「なんとなく?」やっただけなのだ。

なんとなく「かめはめ波」の練習をおもむろにし始める子供のような行為である。

失敗したと思ったときの感覚も、ゴミ箱に紙くず投げて捨てた時の「あ、外れた」である。



「本当に――――――何も考えてませんでした」


そんなことを考えつつ、末馬達馬は謝った。

土下座した。

本当に「その場のノリ?」で生きてます。

だからごめんなさい、馬鹿で。

でもどうやっても直らないんです。

気をつけていても、「呼吸をするな」といわれるくらい難しいんです。

つうか無理です。


ですが。


「反省してます」




末馬達馬がそう心の内を正直に話して、反省しているのを見て妙子は言った。

すげえ理不尽に。


「猿でも反省はできるよ?――――――――直せって言ってるの」


「はい………」





いや、だから、どうやったらいいの?






という顔を心底浮かべて、無理、無理と青ざめている達馬。

下手をするとさっきより青ざめているかもしれない。

さらにそんな達馬に横から山田ゆかりが言う。

「で――――――直せるの?」


「許してください、本当にそこは―――――どうしようもないんです」


二人はその言葉に「うん、わかってる」という顔をした。


【第一回、末馬達馬はどうしてそんなに馬鹿であるかを考える会】


それは不毛に幕を閉じた。




「本当に何も考えてないって凄いよね」

妙子はしょうがないなぁ、という顔をして、小さくまるまっている、大きな息子を見る。


「はい、すいません今度から、なんか考えて置きます」

「無理なんでしょ?」


「はい…………あ」



【第二回、末馬達馬はどうしてそんなに馬鹿であるかを考える会】



それは不毛に幕を開けた。


スパーンと、また末馬達馬は妙子に新聞紙(昨日の夕刊)ハリセンで叩かれた、山田に風船ハンマーで叩かれた。


風船ハンマー(おしりかじり虫模様)

去年の夏祭りの紐くじ引き300円で達馬が買ってほっといたものを、山田ゆかりがいつの間にか膨らませておいたものである。
目敏く山田がみつけ、間接キスを喜びながら膨らませたものである。


ばし、ばふ、と叩かれ。


「すいませんでしたあぁああああああああ!!」


自棄糞になって達馬は謝り叫んだ。

理不尽すぎてワケがわからなくて、最早泣きそうである。
寝ても起きても、そんな目にあうなんて、踏んだり蹴ったりである。




「なんであんなにたっくん怒られてるの?」

「さぁ?」


二階から女ふたりの泣いている声が聞こえて上がってきてみればこれだ。

曜子と桐子はワケがわからなかった。

「あ、おはようございます――――――え、曜子さん、実はそんな顔だったんですね」

「私も叩くの参加していい?」

お風呂に入っても、好きな男の子を食べるために化粧は最後の最後寝るまで取らなかった曜子はムカっとした。


とことん余計なことをしてしまう空回りな一日が幕を開ける。



「いやいや、すっぴんの方が可愛いってことですよ!?」

「なら許すよー」

曜子は上機嫌になった。


「化粧下手ってことでしょ、それって」

桐子はすかさず、達馬を追い詰めた。









そして「これぐらいにしておくか、どうせ何を言っても無駄だし」と妙子と山田ゆかりと曜子が説教をやめたとき。

「無駄と思うなら、最初から怒らないで!」と思ったことを顔に出さない程度には今日朝一番で達馬は賢くなった。





そして






そして、達馬がどんな夢をみたのか、どんなレベルの幽霊か、皆で相談し合う。


結局何があったのかを理解した片桐桐子は大きな後悔をしていた。




「ただの普通のちょっと面白い14歳の男の子を巻き込んだ」

「自分のせいでもしかしたら達馬君は死んでいた」


自分が末馬達馬よりも年上の女性だと自覚し、大人として達馬の冗談に付き合っていた片桐桐子にとって、それは許せない行為だ。

本当にただ巻き込んだとしか、思えない。


「死ぬなら、自分だ」とさえ、悲愴な決意を浮かべ。

「こんなお母さんがちょっと不幸せっぽい母子家庭を巻き込んで、息子を殺しかけたなんて自分はなにを……」

と、今にも泣きそうになり、「そんな、私のせいで……」と謝りかけた瞬間に







末馬妙子が微笑んで、その唇にすっと、優しく指を添え口を閉じさせた。


「しー」っと喋らないようにし。

そして優しく微笑んで


「だって、そういう風に思える人をなんで見捨てられるのかな?……私はすぐに助けたくなるよ?」


達馬はその綺麗で透明な声の中性的なイントネーションに身震いする。


「そして―――――絶対に助けてみせるよ、だから、そんな悲しいこと言わないで」


流石、妙子さんだ、仕草が超絶美人、というか美人の癖に超カリスマイケメン「そりゃあ、この人、女にもモテるわ」と達馬が呆れる行動だった。

桐子さんが一気に悲愴な顔をやめて、顔を赤らめ呆然と妙子さんを見つめ始める。


「まかせて?」



そして、妙子は片桐桐子の唇から指を離し、ふっと滅茶苦茶格好良く笑う。


「はい…」


片桐桐子は顔を真っ赤にしてこくこくとキツツキみたいに首を縦に動かしていた。



あ、また罪なことしてるこの人。



「この人、本当に何処の王子様だよ、前世殆ど忘れてるらしいけど、前は王侯貴族とかだったのかな」と思いつつ。

あーやっぱり、元の男らしすぎる部分は未だに消えず…と達馬はがっくりとし、「いやそこは逆にこっちが乙女気分になってメロメロになるんだけどね」と思い。


「もともと、はじめっからこういうパターン狙いましたから、ていうか、夜寝る前にそういう話しましたよね?」と笑って末馬達馬はそう言った。


「こんなところにいられるか、俺は一人で部屋に篭る」というパターンを正しく利用したのだ。

面白い冗談と片桐桐子たちは笑ってすませたが、違う。
馬鹿の発想かもしれないが、結構真剣な手段だった。



ようは、殺人的な幽霊のために、被害者を用意し、もう殆ど限界の片桐桐子から眼を逸らさせること、それを実行した。

片桐桐子は一週間安心して寝れていなかった。
昨日、夜9時には爆睡だった。

だから。


「みんなの中で一番明るく元気で幸せそうな馬鹿な末馬達馬君」という超目に付く餌をぽいぽいと用意したのだ。

夜の無意味な一人遊びさえ、なんだか意味がありそうな気がしてくる。


末馬妙子は論外、かつて過去「あの山田ハナミがわざわざ入学するほどの超絶やばい生徒会室」で、全然夜まで一人で働いていても全く大丈夫だったという実績がある。


そう。

妙子は山田ゆかりや石塚曜子、片桐桐子、その彼女達の「聖なる妙子ミラーフォース」という伏せカードだったのだ。


達馬は「タツボー」である。



そのことをこっそり、達馬は妙子と話し合って決めていた。

一応、末馬達馬は確かに感性が鈍感であるが、危険に敏感だ、他人の悪意に目聡い。

危機感も人一倍優れている。




そして、伊達に2年間もの長い虐待を耐えたわけではないのだ。

人間の残虐さや害意、悪意などに対し、感覚能力が優れている。


人に慣れない獣並だ。


フレンドリーさは馬鹿犬クラスの。


2年間両親の行為を社会から公にせず、隠し通し、両親を守りきったのだ。


最後まで「ただの気持ち悪い子」として捨てられたのは伊達じゃない。



流石に陽気さだけで、精神力だけで乗り切れるものでもなかったのだ。

じわじわと真綿で絞められるように苦しんでいた。

しかし一気に暴虐な虐待を行わせないように、周囲にわかるほど明確に表に出させないように、苦心した、上手に避けた。

それは今の成長した達馬にとっては「どーせなら最初っからとことん嫌われて捨てられればよかった、もっと上手くやれれば良かった」だったのだが。

だからこそ、困っている他人を直ぐさま助けにいくし、そして自分に悪意を持っていた高校生のお兄さんたちを一回も殴らず殴らせず、仲良くもなれた。
物事をなぁなぁですませ、くだらなくし、楽しくする、そんな才能を獲得した。

この自分が生きている現実に起きた「原作の物語」を楽観視せず、客観視せず、主観的にみて、本当に危険だと逃げたのはそのためだ。


それを無意識で行っている。





「ストーカー被害者になりやすい母」も居て、危機感を養わなければいけない9年間を過ごしている。
そして意識して「妙子さんが鬱々してくる」のを止めるのが得意である。

誰とでも仲良くなれるのは、そういうことだ。

だから他人に不快な思いをさせない「微笑ましい」馬鹿を発揮できる。


そして、ちゃんと自分が一歩間違えれば、簡単に死ぬ人間だと知っている。






その凄さを信用していたから、妙子だってGOサインを出したのだ。



馬鹿だから死にかけたけど。









そう、ただの親子じゃない。

元々は擬似親子でしかない。

信じ合い、信頼し、生活を共にしていくうちに何か知らないけど本当に母と子になってしまったことに達馬が最近焦り始めているが。

元々は血の繋がりよりも濃い、「同じ境遇」の唯一無二の同胞、仲間であるのだ。


どんな悲しみも喜びも分かち合おう、助け合おうという親愛を大切にし、強固な絆を作り上げた家族。





そのコンビネーションは卓越している。

この二人は様々な日常のトラブルを二人で解決してきたトラブル・ブレイカーでもあるのだ。

まぁただの「ボランティア親子」なのだが。



「周囲の日常の、世のため、人のため」が当たり前でそれが楽しい日常なのだ。






9年間の付き合いであり、純粋に親切を街に振りまく海鳴市の名物コンビ。



その役割はこうだ。


末馬達馬「馬鹿だから」実働専門にして「妙子さんの鬱々を止める」回復魔法担当

末馬妙子「たっくんが勝手に馬鹿なことをするから、私が考えなきゃいけない」万能なんだけど大体頭脳を専門にしなきゃいけない羽目になる「落ち込む」担当






その上で―――――達馬が大馬鹿なことをしたことに大激怒したのだ。


ちなみに



現段階、女としては目覚めてないけど、父性やら母性は目覚め、妙子の達馬の扱いは殆ど「頼れる可愛い息子兼人間精神安定剤」である。












「あんた、桐子さんの言う、「マジでヤバイ」って、嘗めてたわけじゃないでしょ?」




まさかそこまで考えてたの?

冗談も本気でやるのか…この二人―――と戦慄し。

「この二人、二人揃うと天然爆発するんよ?」という八神はやての言葉を思い出し。


二人が突然なんだか、途轍もなく名探偵コンビオーラというか「不思議なボランティア親子」の空気を出し始め、「妙子さんが羨ましい」と出遅れた感を感じつつも山田ゆかりも発言す

る。


そして「あと妙子さんやばい、私もどきっとした」とかも考えながら。

山田ゆかりは問い詰め、思う。

寝る前におちゃらけたのは、こいつらしい理由があると。

暗くなる雰囲気が近づけば、くだらないことを言い始める癖、と山田ゆかりがそう理解している言動だ。

多分、本当に馬鹿なだけかもしれないが、多分こいつは本能でやっていると知っている。


「9年間妙子さんの鬱々を止め続け、手に入れた、暗い予感や、暗い気配、暗い雰囲気を読む才能」の直感能力がその危険を感じ取ったのかを問い詰める。



「ああ……まぁ、あそこまでヤバイとは思わなかったけど」


鼻血が止まり、ティッシュなどを片付けながら「妙子さんの鬱々100個分くらいは感じてた」と達馬はそう言った。


妙子さんは「ハンバーガーみたいな言い方しないでよ……」と言いながら嫌そうな顔をする。

「東京ドーム7杯分くらい解りづらい」と山田ゆかりは思った。



シリアスなムードはそこには全くなかった。


普通は此処で、映画だったら達馬役の子役あたりが、みっともなく、喚いて、「おまえのせいで……」と絶望する状況である。

母親役が「なんでウチの子が……」とか、そんな感じである筈なのに。






桐子さんは「なんなのこの人たち、この、わけわかんない感じ、でもなんだか大丈夫そうな気がしてくる」と不思議な気分に陥り、首を傾げ「うん?」という顔をする。


大抵の人間が末馬親子に助けられるとこんな顔をするという顔をする。


曜子さんは「こういう人たちだよなぁ、だから相談持ち込んだんだけど」とうんうんと頷く。



「あんたねぇ………人よりちょっとばかし特殊だからってよくもまぁ―――――」

「あれ知ってたの?」

どんだけアンタのことが好きで好きで、何時も見てるのか知らないのか、と山田ゆかりは思った。


「で、なんとかなるの?」



そして末馬達馬が此処で、問題発言をする。


そしてその言葉を吐く、末馬達馬の顔には怒りがあった。



「俺、滅茶苦茶ロックオンされたわ、最後に目覚める瞬間、舌打ちされた感じ、「次こそは……」みたいな空気バリバリ最強出してた。

桐子さんとか最早、あれ眼中にないわ。

もう、俺が大好きで大好きでしょうがないって感じ。

あれがストーカーに合う被害者の気持ちか、とか思った。

うん。


どうやっても逃げきれる自信ないね、あれ。

さらにいうと、そもそも桐子さんは罪悪感感じる必要もないかも。

元々桐子さんが最後に頼った家族とかを皆殺しにして喜ぶために、あんなにじわじわ1週間かけてたっぽい。

あいつは最後に頼れる人間がいる人間全てが許せない超ひねくれた奴。

最後に頼れる人間がいなかったのか、それとも、元々そういう頼れる人間も居なかったか、それはわからんが。

そういう最後を送ったんだろうな」



「大型トラック、スレスレでしたよね?で、携帯落としたんですよね?」

「そ、そうだけど」

「携帯で済んでよかったです」




右手をグーパーしながら達馬はそう言った、珍しく眠そうな眼を見開いていた。



「あいつ、既にあの橋を通った人間を事故とか誘発させて殺してるわ、結構沢山」


桐子さんがぞっとし、自分の肩をさわさわと抱く。


そして末馬達馬のその眼の奥は深く、ただ深く、飲まれるほど、深い。




ああ、こいつ………怒ってるのね。


こんな顔初めてみた、そう思い。

続く言葉は。



「ああ―――――許せん」






あ、なんか、え、なんか特殊な展開、と桐子さんが顔をワクワクさせ。
曜子さんが「惚れ直した、たっくんかっこいい」みたいに顔をとろけさせる。
妙子さんは一緒に「許せない」という顔をする。


「でもなぁ」



「でも?」


「ぶっちゃけ、言うと、俺やばい、超やばい」


「は?」


瞳を「しゅん」と眠そうな眼に元に戻した


皆、え?という顔をする。



そして


「うあー困った、困った、困った」と連呼し。


「朝ごはん食べたあと」


「うん?」


「今日は和食だよ?」



妙子さんが天然ボケをかます。


達馬は悲壮感や、絶望感もなく、ただ「やっべぇ」と宿題を忘れた中学生のような顔をして。


「ハナミさんと電話させて?」



両手をパシッと合わせて私に拝んだ。












大変だ。





みんな、一気に顔を青ざめ始めた。



そして、妙子さんが顔を引きつらせながら言う。



「そんなに……やばかったの?」


「俺今、霊感ないんだけどさ、前、あったんだ、つっても霊能力とかじゃなくてただ時たま見える程度」


「うん」


「前世の頃、ばーちゃんが死んだときとかじーちゃんが死んだとき、ちょっと、通夜の夜、みるくらいね?」


「よく聞くね、そういう話」


「妙子さんそういうのあった?」



「ううん、私霊感とか全くない」



「それで、俺、前世で昔、肝試しで酷い目にあったことある、そんとき、死ぬ思いした、でちょっと霊感鍛えささったんですよ」


「うん、それで?」



「今回、その霊感「しゅっぱっ!!」って復活したくらいヤバイ」



「それってどれだけヤバイの?」


「あのですね、俺の霊感ってですね、ヤバイ状態を感じ取ってその場所から超絶ダッシュで逃げる程度の霊感なんです」


「うん」


「その超絶ヤバイ状態が最早スーパーサイヤ人になりそうなくらい、やばい」


「1?」


「4」


「大変だ!!―――え、どうしよう!どうしたらいいの!?」


「とりあえず朝ごはん食べたいです」


「今すぐつくる!!」



妙子さんが大混乱して、台所に走っていった。



皆沈痛な面持ちで、立っていた。

俺の横に、ソイツが立っている。





「憎い」







そして末馬達馬は思う。






起きてから、妙子さんの説教が終わってから、様々な残虐な光景が脳裏に染み込んできた。

はっきりいって、滅茶苦茶胸糞悪かった。

人間の五体バラバラ映像がごろごろ脳裏に見え、それを笑う声が耳を這った。

一瞬戦争映画でも見ているのか、と勘違いしたくらいの残酷映像だった。



やばい、つうか此処までシリアス気分人生初だわ、とか思っていたが。

それは、おいといて。

『ぐるるるるるるるるるるる』



その前にとにかくお腹がすいていた。


取り敢えず、今日の白いごはんに載せるものを悩み始める。

納豆か、玉子か、それとも、なめ茸か――――――それが問題だ。

現実逃避してんのかな、これって、お腹が空いてる方が優先順位高いって、なんだろな。






「憎い」


こういう感じで、どんなに離れても「居る」のを知覚してしまう。


朝だから、まだまだ声しか聞こえない。


夜になると……えーっとストレッチパワーが高まって、じゃなくて陰気だかなんだかが高まって、やばくなる。


今のところは大丈夫だけど。

妙子さんあの人すげーな、まじで「聖なる人」だわ妙子さんの傍にいる間は大丈夫だ、まじで。


しかし。

こいつらに質量はないから「死んでいる」と自覚しているやつは瞬間移動だって出来る。

意識ごと、飛んでくる。


水道管とか電話回線とかインターネットとか、すいすい、電源だって使って移動します。

どうやら、桐子さんの携帯電話から「縁」とかそういうものを手繰り寄せてきたのが、今回の問題になったのだ。


そこまで、俺みたいなやつが大好きか。


わざわざ、その「縁」で俺を見つけて大喜びですか?





「うんうん、その気持ちよくわかるよ?自分のショボさが憎いもん俺も」


「憎い」


取り敢えず、無視をすることにする。




それが一番!









ああ、長い一日が始まるな、こりゃ。






うわーん、また、すげえいらねえ能力目覚めた。


見えるだけの霊感とかクソ使えないのは前世で知っていた。


霊能力って凡人はまず使えない。


これはただセルフで怖がるための能力である。



だから、一応、大学もそっち系の本が置いてある文系馬鹿大学に行った。
もしかしたら、霊能力者になれるかも、とかアホなこと思って、知り合いのモノホンに「一生そんまんまだから」とすぐ言われて落ち込んで勉強しなかった。


「あとな、オマエ、一生同情せんからな俺――――」







妙子さんが「どんがらがっしゃーん」と混乱して皿とか割って、みんな「妙子さぁああああん!?」と言って台所に向かっていったのを尻目に。



俺は、そうつぶやき。





「妙子さぁああああああああああん!!」


と取り敢えず、一番放っておけない人のところに向かう。




心配かけちゃうじゃん。


どーしてくれんだよ、マジで。

さっきみたいにまた泣かれたらどうするんだ?



そもそもお前助けるためなんかじゃないんだよ、桐子さんのためなんだよ、今回の問題は。






「甘えるな」


結局のところ、こいつ、世の中舐めてんだよな。
舐め腐ってやがる。

わざわざ、孤独な声、悲しそうなフリさえもしやがって。

ちょっと可哀想?哀れだとは思う?

そんなことを思った自分が恥ずかしくなった。

そこまで目が覚めてなかった自分の馬鹿さ加減に腹が立った。


「憎い」


だからどうした。

だからどうしたんだよ。


「黙れよ―――――死んでても、死なすぞ、てめえ」



ああ、許せない。



12人も殺してやがる。


そして、自分の腹の中に入れて苦しめて楽しんでる。

今日1日くらいは、ちょっくら馬鹿をやめてみるか、そう思った。





沢山怒られたし、ちょっと泣かれて焦ってまた怒られた。

だから。

末馬達馬の眠そうな眼蓋の下には



今は、まだ




続く。














末馬達馬


リーチ掛かった、人生第2ラウンド 


末馬妙子


霊感ない子なので、全然怖さがわからない。でもすごいヤバイと思って大混乱。


山田ゆかり

泣きながら、姉に電話。



桐子


最早パニックで皿を片付ける。


曜子


あまりのことで、ショックで寝込みそうなまま皿を片付ける。





あとがき。


次回の更新は遅くなります、まじで。

次回山田ハナミ登場するかも?


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