ふと思いついて、書いてみました。TINAMI、ハーメルンでも投稿しています。元ネタは覇者の剣ですが、ほとんどオリジナルの設定によって作られた話ばかりです。それでも読んでもいいというのでしたら、どうぞ…………
かつて人と竜が暮らしていたというエレブ大陸。。両者は互いの領域を侵すことなく平和に共存していた。しかし、人の突然の侵攻によってその均衡は破られる。
後に「人竜戦役」とよばれる戦いがあり、互いの存亡をかけた争いはエレブ全土を荒廃させた。長く続いた戦いの末、人は「神将器」を駆る「八神将」の力で竜を滅ぼし、遂に大陸の覇権を手に入れた。それからおよそ千年の後、「人竜戦役の”英雄”ハルトムートが建国した国ベルン王国の王、ゼフィール率いるベルン王国により長くの平和は崩れ、再び大陸全土を巻き込んだ戦いが繰り広げられていた。戦いは数々の悲劇や出会いを生み、ベルン王ゼフィールはリキア同盟国の侯爵家の一つ、フェレ侯爵家の跡継ぎであり、後に「若き獅子」と称えられ、そして「美しき盟主」と称えられたリキア同盟の盟主の一人娘、リリーナを妻に迎える事になるロイと同じくリキア同盟の土地の一つを収めるタニア家の姫、ティーナの仲間、アルと共にゼフィールを討った。今まで共に戦ってきた仲間達は諸悪の根源を倒した事により喜んでいたが、なんと激しい戦いの間にティーナは”骸黒の民”と呼ばれるかつて竜を受け入れようとしたため地上を追放された種族の首領、アウダモーゼによって攫われ、アルは今までの苦楽を共にしたティーナに絶対の忠誠を捧げる重武将(ジェネラル)ガントと剣豪(ソードマスター)キルマーと共に救出に向かった。そしてアウダモーゼ率いる”骸黒の民”と激しい戦いの末、勝利したが、アルは崩壊を始めた始祖竜と化したアウダモーゼと一つになり消滅した。そしてどこかへと消えたアルは謎の空間を進んで行き、途中に現れた”絶望”を自分の母、始祖竜ミリィザの死によって出来た自分にとって形見でもある剣、”覇者の剣”で”絶望”を滅した後、巨大な竜の形の姿をした骨と出会った。
~???~
「お前が始祖竜………これを………返しに来たんだ………」
骨を見たアルは静かに呟いた後、”覇者の剣”を手放した。すると剣は竜の骨に吸い込まれて行って消滅した。
(ありがとう………)
するとどこからともなく何かの声が聞こえてきた。
(さようなら、母さん………約束するよ。二度と絶望を生み出さない事を………二度と力を奪い合わない事を………だから………眠ってくれ………)
光に包まれて行く竜の骨をアルは優しげな微笑みを浮かべて見守っていたその時
「アル…………」
なんと光からアルの母、ミリィザが姿を現した!
「母さん……!?」
ミリィザの姿を見たアルは目を見開いた。
「本当によく………やってくれました………」
「………母さんのお蔭さ。これでみんな、平和に暮らしていけるんだ。ありがとう。」
「………………………」
アルの言葉を聞いたミリィザは暗そうな表情をした。
「?どうしたんだよ、母さん。」
「アル………まだ平和は訪れていないわ……あなたの友人達なら”魔竜”も何とかするでしょうけど………それとは別に………近い未来、再び争いは起こってしまうわ…………”彼ら”を封印していた純血の始祖竜が消えた事で………」
「なっ!?どういう事だよ、それ!?」
ミリィザの説明を聞いたアルは血相を変えて尋ねた。そしてミリィザはアルにその説明をした。
「…………………………そんな事が…………クソ!!」
ミリィザの話を聞いたアルは悔しそうな表情をした後、決意の表情でミリィザを見つめて言った。
「母さん!そいつを再び封印する方法は!?頼む、教えてくれ!」
「………………わかったわ…………………」
アルに頼まれたミリィザは説明した。
「………………そっか…………それだけでいいんだな…………にしても、まだ”骸黒の民”が残っていた上、そんなふざけた存在まで作っていたなんてな………けど、俺にも妹がいたんだな………へへ………」
「………彼女は普通の”モルフ”とは違い、感情があるわ。………貴方の力になってくれるかどうかわからないけど………できれば彼女を助けてあげて。彼女は彼らに従ってはいるけど、心の中では逃げたいと思っているわ。」
「ああ!絶対助けてやる!」
ミリィザの言葉を聞いたアルは力強く頷いた。
「…………………そろそろ時間ね……………」
するとその時ミリィザの身体は光を放ち始めた。
「アル、私の力を全て受け取って………」
そしてミリィザが手をかざすとアルの髪は腰まで届くほどの長髪になった!
「げっ!また女みてーな髪になっちまったよ。しかも羽まで生えちまった………けど、竜石使った時みたいに力が湧いて来た!」
「フフ………以前と違い、貴方には完全な始祖竜の力を受け継いでいるから、常に力を解放していても、以前みたいに命を燃やし尽くす事もないし、竜石に頼る必要はないわ。それに魔道書がなくても貴方に備わっている属性………”業火の理”を含めた炎の魔法なら全て使えるわ。………ただ、その代り竜化はできないわ。それとその羽は自分の意思で仕舞えるわ。」
「えーと………翼よ、消えろ~。………あ、ホントだ。後は………試しに………エルファイアー!!………できた!へへっ………魔法まで使えるようになるなんて、前より凄く強くなったぜ!ありがとう、母さん!」
ミリィザの説明を聞いたアルは自分の背中に生えていた一対の翼を仕舞うように念じて、翼を仕舞ったり、さらに魔法を試し撃ちした後、無邪気な笑顔をミリィザに見せた。
「後はこれを………」
さらにミリィザがもう一度手をかざすとある2本の剣がアルの頭上に現れた後、アルの手に収まった。
「………なんかすっげー力を感じるけど、何なんだ、この剣は?」
「”ラグネル”と”エタルド”。遥か昔”蒼炎の勇者”と呼ばれた勇者と彼の妻となった女性が使っていた愛剣よ。……とある国に保管されていたんだけど、永い時を得て私達始祖竜の手に渡り、今まで封印されていた剣よ。………その剣は”神将器”をも超える究極の剣。女神の加護も受けているから、決して壊れる事はないわ。」
「へ~………俺はこの”ラグネル”を使うとして、”エタルド”は………(ロイ達には頼めねえな………これは俺だけの問題だし。)……今はいねえから、いつか仲間になった誰かに使わせるか!」
ミリィザの説明を聞いたアルは共に戦った戦友達を思い出したが、何故か寂しげな笑みを浮かべ、いつもの笑顔で呟いた。
「………………ねえ、アル。ティーナさんなら貴方の”眷属”になってくれると思うわ。………そうしたら貴方だって貴方のお友達と一緒に生きて平和な世界を………それに私と違って、永遠に愛する人と一緒に………」
その様子を見ていたミリィザは静かな表情で尋ねたが
「駄目だ。そんな事、できねえよ。………確かに俺はあいつの事は好きだけど、俺だけの理由で人間やめさせる訳にはいかねーし、第一好き合っている訳でもないのにそんな事できねーよ。」
「アル………………フフ………本当に優しい子に育ったのね…………」
決意の表情のアルの答えを聞いて、微笑んだ。するとミリィザの身体は消えようとした。
「それじゃあ………本当のお別れね、アル………」
「ああ…………ま、そう遠くない内母さんに会いに行く事になるだろうけどな………」
「………できれば、そのような事がない事を心から祈っているわ………さようなら、アル………どうか幸せに生きて………」
そしてミリィザは消えた。すると周り全体を光が包み込み、アルは光に呑み込まれた。
~ベルン城~
「………?ここは………ベルン王宮か。」
目を閉じていたアルが目を開けると、そこは先程まで戦っていた戦場―――ベルン王宮だった。
「アル!どうして消えたんだよ………!」
「うっ、うっ、うっ………!約束………したじゃない………!一緒にタニアの再建をするって……!どうしていつもあんたは約束を破るのよっ……!」
「「…………………」」
(!この声は………!)
聞き覚えのある声を聞いたアルは近くの柱に隠れると、王宮内を悲しみにくれたガントとティーナが歩いていて、キルマーとアルの育ての親であり”骸黒の民”の末裔であったマグゥが沈痛な表情で歩いていた。
(………ティーナ………ガント………キルマー………親父…………わりぃ。多分俺はもう………お前等と会わない。…………約束………破って悪いな、ティーナ…………その代り、お前やロイ達が願っていた平和………絶対守ってやるぜ!)
ティーナ達の様子を辛そうな表情で見つめていたアルは決意の表情になった後、人知れずどこかに去って行った。
その後、ロイ達と合流したティーナ達はアルや今までの事を伝え、さらに新たなる戦い―――ベルンの”三竜将”の最後の一人であるブルーニャ率いるベルン残党軍との戦いに勝利し、さらには魔竜との戦いも勝利という形で収めた。そしてティーナ達はそれぞれの故郷に帰り、荒れ果てた故郷の再建を始めた。2年後、ようやくタニアの再建を終わらせたティーナは今でも心から愛し続け、苦楽を共にした仲間であり、”碧き覇者”と称されるアルの壮大な墓を建てた。そしてアルの墓が建てられてちょうど2年。
~4年後・タニア城・城門~
「ようやくついた………ここがタニア城ね………」
腰に鞘に収めた剣を装着した海のような蒼い瞳と髪を持つ女性はタニア城を見て溜息を吐いた。
「よし………!使用人試験に合格して、頑張ってティーナ様御付の侍女を目指さないと………!」
女性は自分自身を叱咤し、そして城門を守る兵達に近づいた。
「すみません。こちらで今、新しい使用人を募集していると城下町の張り紙を見て、参ったのですが……」
「使用人試験を受けたい者か。こちらに名前と出身地を書いてくれ。」
「わかりました。」
城門の兵に受験者の名前が並んでいる表を渡された女性は自分の名前や出身地を書いた後、兵に返した。
「名はミリーナで出身地はベルン………だと?」
「はい。ティーナ様の御高名を聞き、是非仕えたいと思いましてはるばるやって来たのですが………何か問題が?」
「……いや。………姫様はお優しく、例えご両親の仇であるベルンの者といえど分け隔てなく接しているお方だ。合格できるように励むといい。」
「はい!ありがとうございます!」
兵士の言葉に女性――ミリーナは笑顔を見せて頷いた。
「………それと一つ気になったんだが、何故帯剣している?」
「あ、はい。護身用に帯剣しているんです。身を守る程度でしたら剣を振るえます。」
「ほう………変わった娘だ。しかもあまり見た事のない珍しい剣だな………」
ミリーナの説明を聞いた兵士は興味深そうな様子でミリーナやミリーナの剣を見た。
「えっと……………そういえば、ここに来るときに気になったんですけど………あそこにある大きな石碑は一体何なのですか?」
兵士に見られたミリーナは話を変えるかのように、遠くに見える巨大な石碑に視線を向けて兵士に尋ねた。
「あれは姫様の戦友であると同時に恩人、”碧き覇者”の墓だ。」
「(………兄さんの…………)えっと………”碧き覇者”は確かロイ様と共にゼフィール王を討ち取ったというあの方ですか………?」
兵士の話を聞いたミリーナは心の中で驚いていたが顔に出さずに、不思議そうな表情で尋ねた。
「そうだ。”碧き覇者”は姫様を助ける為に戦死し、姫様は彼の為にあれほどの壮大な墓を建てられた。今日は彼が死んでちょうど4年。姫様と彼の友であった隊長は今、墓参りをしている所だ。」
「………そうだったのですか。だからあの辺りにたくさんの兵士の方達がいらっしゃったのですね………(兄さん………生きているのに自分の墓があると知ったらどんな顔をするのかしら?)」
兵士の説明を聞いたミリーナは遠くに見える石碑を見つめ続けた。
「………今、受付は済んだ。速やかに中に入って待合室で待つように。」
「あ、はい。」
兵士の言葉に我に返ったミリーナは頷いた後、振り返って石碑を決意の表情で見つめ続けた。
(兄さんに”骸黒の民”から救い出してもらった恩をようやく返せる時が来たわ……………兄さん、ティーナ様達に会えない兄さんに代わって絶対ティーナ様達を守って見せます………!だから兄さんも頑張って………!)
そしてミリーナは城の中へと入って行った。一方その頃、ティーナはガントと共に”碧き覇者”アルの墓参りをしていた……………
後書き 続きを期待している方達が多ければ、続けようかなとも思っています。(まあ、勿論他に連載している話を優先して書いてしまうと思いますが………)………感想お待ちしております。