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[36425] 【ネタ】レジアス「儂の部下が最強過ぎて困るんだが」(魔法少女リリカルなのは)
Name: ころん◆4e7837e0 ID:6050ab35
Date: 2013/01/07 01:24
もしもレジアスの部下にこんな最強な魔法少女が居たらどうだろう、
とか考えていたら出来た駄文です。

この作品には以下の要素が含まれます。
以下の要素が苦手な方はブラウザバックするか、
もしくは覚悟して進んでいただきますようお願い致します。

・女主人公が最強過ぎて困る。
・主人公という割には地味。
・なのは達が殆ど出て来ない。
・ラーメンうめぇ。

※当作品はハーメルンにも投稿させていただいています。



[36425] 【ネタ】レジアス「儂の部下が最強過ぎて困るんだが」 Part.01
Name: ころん◆4e7837e0 ID:6050ab35
Date: 2013/01/07 20:22
【00.最強伝説の幕開けなんです?】

 此処はミッドチルダの首都クラナガン。
 沢山の人々が日々平和を謳歌する平和な都市です。
 しかし、やはり人の住むところ、悪は生まれるもの。
 決してそのサイクルからは逃れられないようです。
 今もほら、とある銀行から悲鳴が。

「クハハハ!さっさと身代金と逃走用の車、転送ポートを用意しやがれ!」
「た、助けて……!」

 凄まじいまでにマッスルな男が女性銀行員を人質に立て籠もっているようですね。
 実にありふれた光景です。

「ひ、人質を離すんだ!せめて私が代わりになるから彼女を離して――」
「うるせぇ!」
「グァアアアアッ!!?」

 男が銀行内から腕を一振りすると銀行を取り囲んでいた制服姿の面々が空を舞います。
 おやおや、どうやら男は只者ではないようです。
 男はニヤリとワイルドに笑うと、金の短髪をサッと一撫で。とてもうざい仕草ですね。

「ククク、このレアスキル『衝撃操作』を持つ俺に敵はいねぇ。さっさと言う通りにしなぁ!」

 男は豪快に笑います。
 対する包囲網の制服姿の方々はとても苦々しい顔をしています。
 まさに打つ手なしと言った感じですね。

「クッ!魔法弾すらも消し飛ばす衝撃……これでは迂闊に近づけん!」
「応援もまだ来れないそうです!隊長……ここは一旦奴の要求を呑むしか……」
「栄誉ある時空管理局として、そんな事は出来ん!」

 ナイスミドルな制服姿のおっさんが街灯を叩きながら叫びます。
 犯人には聞こえない位置なので結構大きな声を出しても安心ですね。
 そんなどうにも出来ない状況に陥った時でした。

「隊長!地上本部のレジアス中将より入電です!」
「なんだ!?増援か!?」
「はい!たった今地上本部を出発したようです!」
「遅い!どれくらいで着く!?」
「あと10秒だそうです!」
「今出発したばかりなのに!?」

 思わず目玉が飛び出しそうになるナイスミドルです。
 ですがそこはナイスミドル的紳士力で我慢します。紳士の鏡ですね。

「ああ?なにそこでこそこそ話してんだ?とっとと諦めて要求を呑んだらどうだァ!?」
「ひっ!?」
「それとも何か?この女がどうなっても良いってかァ?」

 犯人が女性の喉元に指を突きつけます。
 きっと『衝撃操作』というからにはスパッと切れるような衝撃も出せるのでしょう。
 女性銀行員、まさに絶体絶命のピンチです。

「まずは見せしめにスパッと逝っておくかァ!?ヒャッハァ!」
「や、やめて!」

 犯人の高笑いが木霊し、女性銀行員が涙を流して懇願します。
 この場に神は居ないのでしょうか。そんな風に思われたその時でした。

「ねぇねぇ。これ幾らくらい入ってんの?カップラーメン幾つ買える?」
「あ?」

 犯人の背後で声がしました。
 犯人が振り向くとそこに居たのは盗んだ札束を突っ込んだ鞄を突く小柄な少女でした。
 銀行を取り囲む人達と同じような制服を着ているからきっとお仲間なのでしょう。
 それを見た犯人は思わず目を見開きます。

「テメェ、どっから入ったァ!?」
「え?正面からだよ。当たり前じゃん」

 小柄な少女は何言ってんの?とばかりに首を傾げます。とても可愛らしいです。
 くりくりとした黒い瞳に黒い肩程まで伸びた髪が特徴的ですね。
 それくらいしか特徴的と表せないぐらい特徴がない方が特徴的です。
 というか、ぶっちゃけるとどこにでも居そうな少女ですね。

「ハッ!正面からか!嘘吐いてもいいけどよぉ……不意打ちならもうちょっと上手くすべきだったなァ」
「へ?」
「そこは既に俺の"絶殺射程圏内"って事だよォ!!!」

 瞬間、男の身体から凄まじい衝撃波が発せられます。
 しかもさっきまでの四方にばらまくような衝撃ではありません。
 ピンポイントに集中させたそれは銀行内の一点――小柄の少女が居る場所だけを抉ります。
 その凄まじさというと、衝撃のあまりの密度に空気が歪み、一瞬で小柄な少女の姿が見えなくなる程です。
 喰らって生きてられるのは化物クラスの魔道師くらいでしょうか。
 ちなみに小柄な少女は魔道師ではありません。

「クカカカ!どうよ、お仲間が粉微塵になっちまったぜぇ、管理局の皆さんよォ!」
「あ……あ……」

 犯人が声高々に包囲網へと頭を振って、大仰に叫びます。
 女性銀行員は目の前で起こった惨劇に言葉も出ないようです。本当に散々ですね。

「ねぇ」
「え?」

 犯人がまた背後から聞こえた声に振り向きます。
 今度は小柄な少女はいませんでした。

 代わりに拳がありました。

「へぶぅウウウウウウウウウウ!?」

 男が吹っ飛びます。そりゃあ盛大に吹っ飛びます。
 どれくらい盛大かというと銀行のガラス扉を突き破り、包囲網の車に体当たりして跳ね上がり、
 そのまま向かい側のビルに錐揉み回転しながら突っ込んでそれでもなんか生きているくらい盛大でした。
 白目剥いて泡吹いて四肢が変な方向に曲がっていますが生きています。人体の神秘ですね。

「服に埃ついたじゃん。クリーニング代を要求する」
「え?え???」

 銀行内には小柄な少女とその腕に抱かれた女性銀行員が居ました。
 なお、小柄な少女には傷1つありません。
 凄い衝撃波を喰らったのに無傷とは不思議な少女です。人体の神秘ですね。
 そんな神秘的な少女は女性銀行員に向かってニッカリと笑うと一言放ちます。

「この辺で美味しいラーメン屋さん知らない?」
「え?あ、その……そこの角を曲がったところにあるラーメン五郎がオススメです……」
「あ。そう。じゃあ、後は適当に助けて貰ってね」

 小柄な少女は女性局員を地面に下ろすと割れたガラス扉をくぐって銀行の外に出て行きました。
 そのまま小柄な少女は片手を上げて、去っていきます。
 後に残されるのは訳の分からない顔の女性銀行員と包囲網を敷いていた人達でした。

 どうでもいいけど誰か犯人を助けてあげた方が良いんじゃないでしょうか。


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【01.お説教中将なんです?】

「またお前は仕事を放り出してラーメンを食べに行っていたのか!?」
「いやぁ。美味しいラーメン屋があると聞いちゃいまして」
「それで仕事をすっぽかす奴があるかァ―――!!!」

 次元世界を股に掛ける時空管理局が地上本部の一室に怒声が鳴り響きます。
 室内にいるのは大量の髭を生やしたちょっと太り気味のおっさんと小柄な少女です。
 てへへと笑う小柄な少女と額に青筋を立てたおっさんのコンビはどことなくアンバランスでした。

「いやぁでもちゃんと犯人ぶっ飛ばしてビルの一部として埋め込んでおきましたよ?」
「生きてたからが良いが、病院側から生きてるのが不思議過ぎて恐いとか言われたぞ」
「流石の手加減力ですね、私!」
「馬鹿モンがァ―――!!!」

 スパーンとおっさんが丸めた書類で少女の頭を叩きます。良い音出ますね。

「はぁぁぁ……お前のせいで地上本部はやり過ぎだと何度言われた事か……」
「犯人の逮捕率が高いのは良い事じゃないですかぁ。ほぼ100%ですよ。100%」
「その犯人のほぼ100%が意識不明の重体と少女恐怖症になるんだが?」
「軟弱ですねぇ」
「どの口が言うかァ―――!!!」

 スパーンとおっさんが机に置かれた文鎮で少女の頭を叩きます。文鎮が砕け散りました。

「というか、儂言ったよな?今回は犯人の四肢骨折させるくらいにしておけって?」
「大丈夫です。四肢はしっかりボッキリやっときました!」

 拳を握って私の任務達成率は100%なんだ!とでも言いたげにドヤ顔する小柄な少女でした。

「大丈夫じゃないわァ―――!!!」

 対するおっさんは今度は机を持ち上げて少女の頭に叩きつけました。
 机は見事に爆発四散しました。ショギョムッジョですね。

「えぇー……?しっかり言われた通りにしましたよぉ」

 少女は両手の拳を握り締めながら、涙目になります。
 どうやらおっさんに怒られたのが相当効いたみたいですね。
 ちなみに痛みの方は全く感じてないみたいでした。人体の神秘ですね。

「む、ぐ……いや、まぁ、うむ。人質に被害もなく、犯人を逮捕出来たのも確かだな」

 おっさんは涙目の少女の姿に心を痛めたのかコホンと咳払いをします。
 それから視線を僅かに逸らしてこんな風に言います。

「以後、気を付ける様に。次は許さんぞ」
「え!じゃあ、許してくれるんですか!?」
「今回だけだぞ」

 おっさんは吐き捨てるように言いますが、頬がちょっと赤いです。
 ツンデレですね。おっさんの貴重なツンデレシーンです。
 心が温まる光景ですね。

「やった!ありがとう御座いますレジアス中将!」

 ぺこりと少女はヒマワリのような暖かな笑顔を浮かべるとお辞儀を1つします。
 それから頭を上げて、拳を握ると機嫌の良さそうな声でおっさんに提案します。

「それじゃあ、ラーメン食べにいきましょう、中将!」
「行かんわァ!!!仕事をしろォ―――!!!」

 壁からおっさん数人分はありそうな絵画が引っぺがされて少女に叩きつけられました。
 本日も地上本部は平和でした。


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【02.機動六課設立なんです?】

「機動六課ですか?」
「正式名称は『古代遺物管理部機動六課』だ。フン。"海"の連中が遂に地上にまで手を伸ばしてきたようだ」

 またまた地上本部の一室におっさんことレジアスと小柄な少女は居ました。
 今日は眼鏡をかけた凛々しい女性となんだか武人っぽいおっさんも一緒でした。
 皆同じような制服を着ている事から同じ機関に属しているのが解りますね。

「ゼスト。お前はどう見る?」
「ふむ……何か裏がありそうだな」

 レジアスが武人めいたおっさん――ゼストに話を振ると彼は顎に手を当てて目を細めます。
 彼の思案に乗っかるようにして口を開いたのは凛々しい女性です。

「『レリックの対策、独立性の高い少数精鋭の部隊の実験のため』と謳っていますが」
「それが建前かもしれないって事ですかー?」

 凛々しい女性の言葉に続いて小柄な少女が首を傾げます。
 難しい大人の会話に少女はまるでついていけていないようです。

「うむ。それは建前でこれを機に地上の有力な局員を引き抜くつもりかもしれん」
「流石にそれは無いだろうが……いや。クイントが『最近娘が教導官に誘いを受けた』等と言っていたな」
「それでは、やはり……」
「おぉ、解りました!つまりスカウトが目的って事ですかね!?」
「恐らく、だがな」

 時空管理局の中でも地上本部というのは慢性的な人員不足に悩まされています。
 これ以上引っこ抜かれたらもうお尻の産毛も残ってねぇ!という有様ですね。
 少女を除いた皆の表情が硬くなります。
 そんな中、少女は1人だけ溌剌とした様子で手を上げます。何か考えがあるようですね。

「よし、私に良い考えがあります!」
「……」
「……」
「……」

 全員が無視しました。
 全員の顔の陰影が濃くなってるようにも見えます。
 全員嫌な予感に襲われたようですね。
 でも構わず少女は太陽のような笑みでシャドーボクシングをしながら続けます。

「今から私が行って隊長格を全員戦闘不能に――」
「「「やめて!!!」」」

 嫌な予感的中だったようです。


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【03.無限の欲望は無能なんです?】

 とあるラボに1人の男が引き籠っていました。
 よれよれの白衣を着た紫色の髪の男の人です。
 目がギラギラとしていてまるで獲物を目の前にした捕食者のようです。恐いですね。
 そんな男は実は研究者なのです。
 ここ数年、彼はずっと1つの研究を続けていました。

「一体どういう原理であのパワーが発揮されているんだ……」

 男の目の前には1枚のウィンドウがありました。
 空間投影型のとっても高級な代物です。お金持ちですね。

「身体構造は普通の人間と差異はない……彼女は特に特殊な事はやっていないと言っていたが……」

 ウィンドウには1人の小柄な少女が映っていました。
 横には彼女のデータが乗っています。身長とか体重とか握力とかですね。
 身長と体重はちょっと低目だけどそれなりに普通でした。
 握力は測定器が粉微塵になったので測定不能だそうです。人体の神秘ですね。

「リンカーコアも無いし、魔力ではない……むう。彼女のクローンでも作ってみるか?」

 どこからか「やめて!!!」という声が聞こえた気がします。
 そんな事されたら地上本部の某中将の胃がマッハになりそうな気もします。
 男は腰に手を当てて仰け反ります。だいぶ体が凝っているようです。

「ドクター。あまり根を詰め過ぎないでくださいね」

 男の後ろで扉が開き、女性の声が聞こえてきます。
 声と一緒に入ってくるのは紫の髪をセミロングくらいまで伸ばした女性でした。
 どことなく男の人と顔立ちが似ています。

「おや、ウーノ……あぁ、食事かい?」
「はい。今日もドクターご注文の特製ラーメンですよ」
「いやはや、ありがとう。ウーノのラーメンは毎日の楽しみだよ」
「ふふ……こちらこそありがとう御座います」

 女性は両手に持ったトレイから持ち上げ、ラーメンを男の前のデスクに置きました。
 見るからに美味しそうな醤油味のラーメンです。
 チャーシューの香ばしい匂いが食欲を刺激する逸品ですね。

「それで、どうです?研究の方は?」
「いやぁ。まったく駄目だね。理解不能だよ。そろそろ彼女のクローンでも作ってみるかなぁ」
「でもそれだと何か負けた気がする、と仰っていたのはドクターでは?」
「もう負けでも良い気がしてきたよ」

 ははは、と笑いドクターと呼ばれた男はウーノという女性に手を振る。
 そしてデスクに置かれたラーメンを器用に箸を使って啜ります。

「新暦67年のゼスト隊全滅事件からずっと彼女の身体の謎を追っているが……」

 ドクターはラーメンを食べながら片手で空中投影型ウィンドウを操作します。行儀が悪いですね。

「この通り、身体の構造は普通の人間と同じ」

 続けて更に操作を行うと映像が映し出されます。
 画面の中にはゼストと青い髪の女性と紫色の髪の女性を中心に多くの人が映っていました。
 その中央に突っ込むのは本当に小さな女の子でした。
 ゼストの半分も身長がない女の子は、何もない空中を踏みしめて走り出します。
 それから彼女は笑顔でゼスト達をちぎっては投げ、ちぎっては投げてました。
 でも何故か死人は出ていません。人体の神秘ですね。

「彼女はゼスト隊から我々を守ってくれた恩人とすべきなんだろうが……」

 ウィンドウ内に映る紫色の髪の女性が壁際に追い詰められ、恐怖に幼児退行を起こして、
 「来ないでぇ!」と小柄な少女に石を投げる姿が涙を誘います。

「いや。ゼスト隊が不憫に見えるね?」
「圧倒的過ぎるのも問題ですね」
「だからこそ解析したいんだがなぁ……どうなっているんだろうねぇ、彼女は」
「まるで解らないですね。データだけ見ると」
「ふーむ。もう一度彼女に会ってデータを取り直させて貰うか」
「レジアス中将に連絡を取りますか?」
「いや、まずは解析用の機材を集めておこうか。話はそれからだよ」

 ふう、とドクターは溜息を吐きながらラーメンに手をつけようと箸を伸ばします。
 空振りしました。

「おや?」
「あら?」
「おお。このラーメン美味しいじゃん」
「……」
「……」

 小柄な少女がドクターとウーノの視線の先でラーメンを啜っていました。
 ちなみに使っているのはちゃんと自前の箸です。ドクターと間接キスはしてません。

「わ……」

 ドクターが口を開き、震えます。
 そしてそのまま項垂れると彼は絶望した感じでこう言いました。

「私のラーメン……!」
「ドクター、また作ってあげますから、気を落とさずに!」
「うめぇうめぇ」

 なお、この後駆けつけたウーノの妹達が小柄な少女に飛びかかりましたが返り討ちにあいました。
 研究所の壁に人がめり込む様はとても不思議なものだったとか。人体の神秘ですね。



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【04.出会いはこんなんなんです?】

 その出会いはほんの偶然でした。
 まだ若いレジアスがミッドチルダに幾つもある廃棄都市区画をどうにか再利用出来ないかと
 部下と一緒に視察に来ていた時でした。

「子ども?」
「……」

 廃棄されたビルの壁によりかかるようにして身体を丸める少女が居ました。
 服もボロボロで元は綺麗だったであろう肌も髪も汚れてしまっています。
 まだ年齢1桁しか見えない少女がこんなところに居るのは、違和感しかありません。

「どうしてこんなところに子どもが居る?」
「……きっと親に捨てられたのではないでしょうか?」
「ここはそういう場にはもってこいですからね……」

 部下達は苦虫を噛み潰したような顔で苦しそうに応えます。
 なるほど、とレジアスは眉を立てた怒りの表情で頷きました。

「君」
「?」

 レジアスが足を進めて少女の目の前に膝を立てた体勢で座り込みます。
 対して少女は光の無い瞳でレジアスを見上げました。

「親は?」
「……居ないです」
「帰る場所は?」
「ない、です……」
「一緒に来るか?」
「ぇ……?」

 後ろから部下達の焦る声が聞こえるがレジアスは気にしません。

「帰るところがないなら、親が居ないなら、儂のところに来い。悪いようにはせん」
「あ、の……」
「それにお前はこの廃棄都市で"こんな事があった"という生き証人だ」
「ぅ……?」
「ククク、この区画を放置している連中にお前を見せれば、連中も煩い口を閉じるだろう」
「「おぉ……」」

 悪い笑みをレジアスは浮かべます。
 部下もそんな考えがあったとは、と納得します。
 精一杯「慈善の意志だけではない」と主張しようとしてますが、
 普通にお人好しっぽいですね。

「遠慮はいらんぞ」
「でも……」
「でもも何もない。儂はお前を利用しようとしてるんだ。代わりに飯と寝床を用意してやる」

 だから来い、とレジアスは続けます。
 少女は震えながらも恐る恐るレジアスの差し伸べた手を取りました。

「お願い、します……」
「うむ」

 そのままレジアスの手を握り締めました。
 瞬間、ゴギャアと変な音を立ててレジアスの手が握り潰されました。
 凄い有様だったけど、全治2か月で済んだそうです。人体の神秘ですね。


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【05.今日もミッドチルダは平和なんです?】

「中将。またレアスキル持ちの凶悪犯が北部で暴れているようです」
「またか……」

 地上本部の一室で凛々しい女性からレジアスは椅子に座りながら報告を受けて頭を抱えます。
 最近ミッドチルダではやたらレアスキル持ちの凶悪犯が暴れていました。
 転生がなんちゃら言ってますが、どうでもいいですね。

「ゼスト隊は?」
「ゼスト隊長はあの子とうっかり訓練して入院中。クイント准陸尉は家族旅行中ですね」
「メガーヌ准陸尉は?」
「あの子が呼びに行ったら全速力で召喚術を使って逃げました。現在、捜索中です」
「他の隊員は?」
「他の仕事があります」
「選択肢がないではないか……」

 更にレジアスの頭が痛くなります。
 仕方がないですね。やっぱり主人公たるもの出番はやってくるものなのです。

「じゃあ、あの子を呼びますね」
「頼む……ハァァ……またお偉方に小言を喰らいそうだな」
「頑張って下さい。お父さん」

 凛々しい女性がそんな呼称と共に硬い表情を崩してレジアスに笑いかけます。
 レジアスはそれに対して肩を竦めて、両肘をデスクにつきました。
 そして両手を顔の前で組むと真面目な顔を作ります。気分はすっかりお仕事モードです。
 用意が出来ると同時に部屋の扉が開きました。
 そこから入ってくるのは小柄な少女でした。
 あの時、廃棄都市区画で出会った頃からだいぶ大きくなった少女でした。

「呼ばれて来ました、レジアス中将!!!」
「うむ。それでは今回の任務を伝える。事件の発生場所は――」

 笑顔で少女はレジアスの声に応えます。
 それから数分後、凶悪犯の悲痛な叫びがミッドチルダに木霊しますが、どうでも良い事ですね。
 今日も、ミッドチルダは平和でした。









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【ex.機動六課に遊びにいくんです?】

「え?地上本部から査察?」
『そや。ついでに機動六課の面々と演習もしたいとの事やな』
「ふぅん……この時期に、かぁ」

 白くてヒラヒラとした少女趣味な服を着込んだ女性が杖を片手に宙を浮かびながら首を傾げます。
 彼女の目の前には空中投影型のウィンドウが浮いてて、その中にはショートヘアの女性が映っていました。
 なんだか子狸とか呼ばれていそうな女性でした。

「ところで相手のメンバーはどんな構成なのか、はやてちゃん、聞いてる?」
『もちのロンや』

 にっこりとウィンドウ内で子狸めいた女性――はやてが親指を立てます。

『といっても、もうそのメンバーの1人と査察官さんは来とるらしいけどな』
「もう?唐突過ぎないかな……上の許可とかは?」
『今日はさっと見学するだけ、との事や。先方も結構必死なんやろなぁ』

 私ら何も悪い事してないでー、とはやてが眉尻を下げながら両手を振ります。

「それじゃあ、今日は……」
『あ。ちょいまち。それでその演習のメンバーの子がな。フォワード陣と戦ってみたいって言うんよ』
「え?フォワード陣の子達と?」

 白い服の女性は眉を顰めます。
 そりゃあそうでしょう。いきなり教え子と戦わせろとは不可解にも程があります。
 もしやこれは新人潰しに来たのでは?と彼女の脳裏を嫌な考えが過ぎります。

『まぁ、大丈夫だと思うで?見た感じ、スバル達よりもちっこい子やったし』
「地上本部の新人の子、かな?」
『多分なぁ……もうそろそろそっちに着くと思うから、まぁ、適当によろしくなぁ』
「て、適当って、はやてちゃん、そんなアバウトな……」
『まぁまぁ、私はなのはちゃんを信用してるんよ』
「それは嬉しいけど……」
『そのちっこい子、元気一杯で悪い子には見えんかったし、まぁ悪い事にはならんやろ』

 はやては腕を組みながら笑います。
 そんな様子に白い服の女性こと、なのはは溜息を吐きます。

「仕方ないなぁ。それじゃあ、その子の事は私の方で対応しておくね」
『ん。よろしゅう頼んます。ほな』

 さいならー、と軽い挨拶と共にウィンドウが閉じられます。
 多分これから査察官と腹の探り合いでも開始するのでしょう。
 そっちもそっちで大変そうなので、私も頑張らねばとなのはも気合を入れます。
 その直後でした。

「あっ、ここか!すいませーん!高町一等空尉ですかー!?」
「ん?」

 振り向くと、隊舎の方から土煙を上げて凄い勢いで走ってくる少女がいました。
 少女は黒い髪を整えながら、なのはの少し手前で止まります。
 もう来たんだ、と思いながらも念話で教え子達を招集するのは忘れません。
 なのはは出来る女なのでした。

「すいません。いきなり押しかけちゃって!」

 びしっと少女は敬礼します。
 なのはは少女の様子に苦笑しながらも地上に降り立ち、少女と向かい合いました。

「高町なのは一等空尉です。いらっしゃい。今日はよろしくね」
「こちらこそよろしくお願いします!えと、私は――」

 笑顔で少女はなのはへと挨拶をします。
 数分後、なのはの教え子達の悲痛な叫びが機動六課に木霊しますが、どうでも良い事ですね。
 今日も、ミッドチルダは平和でした。




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あとがき

スバル達は犠牲になったのだ……。
無邪気な最強の、その犠牲にな……。

ここまで読んでくださった方々に最大限の感謝を。
そしてなんかなのは成分が凄まじく薄くてすいません。
ついカッとなってやりました。(清々しい笑顔)



[36425] 【ネタ】レジアス「儂の部下が最強過ぎて困るんだが」 Part.02
Name: ころん◆4e7837e0 ID:6050ab35
Date: 2013/01/09 13:12
【00.今日も世界は平和に回るんです?】

 さて、今日も今日とて舞台は第1管理世界であるミッドチルダ。
 最近は連日、雲も少なく太陽燦々。
 ぽかぽかとした暖かな陽気に包まれていました。
 今日も地上の人々を祝福するかのような良い天気です。

「平和だねぇ」
「にゃー」

 そんな太陽の光の下に幸せそうな声を響きます。
 声の発生源は、黒髪を肩程までの長さに伸ばしたそれなりに可愛らしい少女でした。
 彼女の傍らには1匹の小柄な猫が居り、ゆらりゆらりと尻尾を揺らします。
 どうやら日向ぼっこ中のようですね。

「そういえば聞いてよ、ウチのお父さんがさ」
「にゃあ?」

 不意に放たれた少女の言葉に猫が首を傾げます。
 少女は肩程までに伸ばした髪を首の後ろで括っている髪留めに手を伸ばし、
 喜の色を含んだ声で猫に問いかけます。

「私の誕生日プレゼントに髪留め買ってくれたんだ。似合うかな?」
「にゃーん」

 猫は少女の唐突な自慢にキョトンとしてしまいます。
 しかしそこは一瞬の判断ミスが命取りとなる野生の世界の住人。
 すぐさま少女の言葉を理解すると、彼女の肩に飛び乗りました。
 そして片手を伸ばし、ぺちぺちとヒマワリの形をした髪留めを叩きました。
 似合ってると言わんばかりの猫の仕草に少女は嬉しそうに微笑を浮かべます。

「うん。ありがと」
「にゃぉーん」

 肩に乗った猫の頭を少女はこれでもかとばかりに撫でくりします。
 猫も満更ではないとばかりにゴロゴロと鳴きます。
 いやしかし、これでは少女が一方的に話しかけているようにしか見えませんね。
 傍から見ている方は置いてけぼり確定でしょう。
 実際ほら、先程から少女の周りにいる人達は困惑の色を表情に浮かべていますし。

「あの……」
「んー?」
「にゃーん?」
「そろそろ始めたいのですが……良いですかね?」
「あ。ごめんごめん。それじゃあ、前口上どうぞ」
「あ、ご丁寧にどうも。それでは」

 少女の言葉に少女を取り囲んでいた大勢の全身黒タイツの男達が頭を下げます。
 そして少女に確認を取った全身黒タイツが定位置に戻ると、

「時は新暦75年!世界は密かに悪の魔の手に脅かされていた!」

 いきなり全身黒タイツが叫びます。
 同時に全員が素早く各々特徴的なポーズを取りました。
 なんとか特選隊とか呼ばれそうな、実に前衛的なポージングです。
 一瞬の間。
 全員のポージングが終わった事を確認すると、中央の全身黒タイツは頷きを1つ。
 そして、再び全身黒タイツは口を開きます。

「ミッドチルダに迫る影!」

 ばばっと全身黒タイツ達が独楽のように回転しながら更にポージングを変化させます。
 同時に行われる腰のグラインドがなんともセクシーですね。

「影を払うは、正義の光!」

 びしぃっと天を指すポージングを全員が決めます。

「そう!その光の使者こそ我等!その名も!」

 ざざーっと大勢の全身黒タイツが腰をスウィングしながら移動します。
 全身タイツ大移動とか嫌な響きですね。
 そして彼らは再び少女の周囲を取り囲むと声高々に叫びました。

『ミッドチルダスクウンジャー!!!』

 全方位から全身黒タイツ達の声が響きます。
 ついでに彼らの背後では色取り取りの爆発が発生しました。
 その色取り取りっぷりはというと、多色過ぎて猛毒ガスにしか見えないくらい色取り取りでした。
 そんな毒々しい煙を背景とする彼らの表情は顔まで覆う全身黒タイツのせいで解りませんが、
 なんだかやりきった顔をしてるようにも見えました。
 そして再び中央の全身黒タイツが口を開きます。

「どうですか、この圧倒的正義っぽさ!?管理局でも是非採用を!!!」
「うん」

 どうやら全身黒タイツ達は自分達の存在を時空管理局に売り込みに来ていたようです。
 どう見ても変質者の集団が編隊を組んで襲撃に来たようにしか見えませんね。
 そんな編隊行動を座りながら見ていた小柄な少女は拍手をしてから、満面の笑みで頷きます。

「連日の騒音出しまくりの馬鹿騒ぎ、あと卑猥な格好をしてる罪で逮捕するね?」
「眩いばかりの笑顔で親指を下に向けた!?」

 ギャーと全身タイツ達が青空に舞います。
 血沸き肉踊り、吐き気を催す美しくもおぞましい光景ですね。
 SAN値がゴリゴリ削れそうです。

「ふぅ……お仕事終わり」
「にゃふー」

 数分後、惨劇の跡として残るのは全身黒タイツの屍の山でした。
 積み上げられた山の上で、小柄な少女と小柄な猫は空を見上げます。

「平和だねぇ」
「にゃー」

 今日もミッドチルダは平和でした。


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【01.野望の果てを目指す者に生贄を、なんです?】

 此処はミッドチルダの中央区画にある機動六課の隊舎。
 その隊舎の食堂には現在、機動六課のメンバー全員が集まっていました。
 全員が緊張した表情を浮かべており、中には泣き出しそうな顔の人まで居ます。
 彼らの中央にはテーブルがあり、その上には小さな箱が置かれていました。
 その表面にはこう書かれています。

『対地上本部部隊演習メンバー選出箱』

 世界中の怨念を取り込んだかのような邪悪な気配を纏う箱でした。
 そんな箱を中央に据えた誰もが言葉を放たぬ空間。
 しかしいつか均衡とは崩れ去るもの。
 それを体現せんと、1人の女性が箱へと歩み寄ります。

「それじゃあ、引くで……」

 全員の喉が鳴ります。
 一拍の間を置き、箱に女性の細い指が突き込まれました。

「1人目……」

 ゆっくりと、全てがスローモーションになったかのような世界の中で指が引き抜かれました。
 人差し指と薬指に挟まれているのは1枚のピンク色の紙です。
 紙を引き抜いたのは、子狸的女性――はやてでした。
 彼女は額に汗を浮かばせながら、震える身体をどうにか押さえつけ、紙を開きます。
 ざわ……と周囲のメンバーが戦慄します。
 はやてはまるで断腸の思いとばかりに苦悶の表情を浮かべながら、宣告します。

「ヴァイス・グランセニック――」

 はやての声が発せられると同時に輪の中から1人の男が逃げ出そうとしました。
 捕獲されました。

「やめろー!!!俺はまだ死にたくなーい!!!死にたくなーい!!!」
「連れてき」
「はっ!!!」

 逃げ出そうとした男の両脇をマッシブな男達が固めます。
 捕縛された男はまるでこの世の終わりのような悲鳴を上げますが、
 誰も救いの手を差し伸べる事は出来ません。
 絶叫の尾を引きながら犠牲者――ヴァイスは部屋の外へとフェードアウトしました。
 皆が涙を拭います。
 されど彼の犠牲を悲しんでいる暇はありません。
 無情なるロシアンルーレットは続きます。

「続いて2枚目や」

 全員がはやての声に視線を戻した時には既に彼女は青色の紙を両手で広げていました。

「ユーノ・スクライア」

 え?と輪の一角から声が上がります。
 声の主はまるで女性のような顔立ちを持った金髪の男性でした。

「あの、ちょっと待って?今日は見学しに来ただけで、僕は機動六課のメンバーじゃ――」
「連れてき」
「はっ!!!」
「いや、どういうことなの!?って、なのは!?なんで目を逸らしているの!?」

 ねぇってばー!と男性にしては高い声が廊下へと消えていきます。
 彼の声が聞こえなくなった瞬間、1人の女性がその場に座り込みました。
 彼女は両手で顔を覆い、嗚咽を漏らしているようでした。

「ううっ、ユーノ君。ごめんね……!!!」
「なのは……ユーノは、私達の代わりに……」

 金の長髪を持った女性が崩れ落ちた女性――なのはの肩を抱きます。
 彼女達の頬を一筋の涙が流れ落ちます。
 共に幼少の頃から知る友を失った者同士。
 胸が締め付けられる思いなのは同じのようです。

「更に3枚目……」

 悲しみにくれる女性達をはやては鬼となって視界から除外しました。
 生半可な覚悟ではこの場を乗り切る事は出来ないのです。
 故に幼馴染達と同様に胸を痛めるはやてはあくまで表面上は冷静を装っていました。
 彼女は誓います。
 犠牲となった彼らの為にも何があっても、この大任をやりきってみせると。
 覚悟を胸に彼女は赤い紙を広げると、紙に綴られた名前を淡々と読み上げます。

「八神はや――ザフィーラ」
「おいちょっとマテや」

 覚悟は数秒で投げ捨てられました。
 なのはがドスの効いた声を上げますが、はやては無視しました。
 そんなはやての残虐非道なる行いになのはがレッツゴーOHANASHIをしかけようとしますが、

「ザフィーラ!?」
「お前、何を!?」
「待って、ザフィーラ!まさか!?」
「あぁ。往ってくる」

 唐突に今まで椅子に座っていた浅黒い肌を持った筋骨隆々の白髪の男性が立ち上がります。
 そして彼は背を見つめる仲間達に短い言葉をかけ、扉へと歩を進め始めました。

「ザフィーラ……」
「主よ。良いのです。我は盾の守護獣……御身の盾になれる事、光栄に思います」

 では、とはやての数億倍はありそうな覚悟を背負った益荒男は扉の向こうへと消えて行きました。
 扉が閉じると同時に人々の輪の中で3人の女性が崩れ落ちます。

「シグナム。シャマル。ヴィータ……」

 嘆きの表情を浮かべる3人の女性をはやてはその腕に抱きます。
 彼女が浮かべる表情はまるで子どもを失った母の様に悲痛なものでした。
 されどその顔を見た面々は揃ってこう思いました。誰のせいだよ、と。

「さて、気を取り直して、4枚目や」

 10秒で復帰したはやてはマジ冷徹な顔で総員の冷めた視線を無視しました。外道ですね。
 素早い動きで彼女は箱から4枚目の紙を引っ張り出します。
 自分がもう当たらないと解っているからか、やたらと動きが軽快です。外道ですね。
 食堂内に紙を開く音が響きます。
 これが最後の1枚。
 そこに刻まれた名を読み上げんとするはやての様子を見守る全員の緊張は遂に最大に達します。

「最後の1人は……」

 外道にしては珍しい暫しの逡巡でした。
 されどもはやては己の責務を果たそうと言葉を続けます。

「フェイト・T・ハラオウン……」

 宣告された名に人々の輪が激震します。

「フェ、フェイトさん!?」
「フェイトさん、いっちゃやです!」

 今までなのはの肩を抱いていた金髪の女性――フェイトが立ち上がります。
 彼女は己に抱きついてきた赤毛の少年と桃色の髪の少女の頭を撫でると、こう言いました。

「大丈夫だよ、エリオ。キャロ。私はきっと、大丈夫だから。ね?」

 宥めるような柔らかな口調。
 彼女は驚くほど穏やかな慈母の微笑みを持って、彼らを自分の身体から引き離しました。
 それから今まで肩を抱いていたなのはへと向き直り、更に異なる種の笑みを見せます。
 それは幸せそうな、ですがどこか儚い印象を受ける笑みでした。

「大丈夫だよ。私とユーノの相性の良さは、なのはも知ってるでしょ?」
「フェイトちゃん……」
「ふふ。心配性だなぁ、なのはは……じゃあ、私のお願い、聞いてくれる?」
「おね、がい?」
「うん。お願い。帰って来たら――なのはの作ったケーキ、食べたいな」

 勿論ユーノも一緒にね?とフェイトはウィンクをなのはに投げかけます。
 その仕草になのはの涙腺は崩壊寸前です。

「それじゃあね、なのは、エリオ、キャロ――往ってきます」
「……う、うぅぅぅ」
「フェイトさん……クゥッ」
「やだよぅ……フェイトさぁん……」

 崩れ落ちる彼女達にフェイトは背を向けます。
 瞬間、彼女の表情は一変し、戦士のものとなっていました。
 視線は鋭く、整った形の眉は立てられ、その顔からは先程の儚げな雰囲気はまるで感じられません。
 彼女の往く先の輪を作っていた人々が道を開け、左右に並びます。
 立ち並ぶ人々は挙手の敬礼を戦地へ赴くフェイトの背へと投げかけました。

 そして地獄への門は開きます。
 最後の戦士が戦地へと消えて行きました。

 後に残るのは沈黙。
 重苦しい空気が、食堂を満たします。
 皆の意思は同じでした。
 誰もが言わぬ――否。言えぬ思い。
 それをはやてはフェイトの笑顔を思い浮かべながら代弁します。

「フェイトちゃん……」

 彼女は目尻に浮かんだ涙を拭って一言。

「それ、死亡フラグやん……」


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【02.迷い無き覚悟に粉砕玉砕大喝采なんです?】

 機動六課隊舎に隣接する形である海に浮かぶ島としてその特別訓練施設はありました。
 その施設の上でヴァイスはライフルを肩に乗せながら、溜息を吐きます。

「旦那。調子はどうだい?」
「悪くはないな」

 ザフィーラはヴァイスの問いに応えると、手甲同士をぶつけ、火花を散らさせます。
 その表情はいつも通りの無表情ながらも、緊張を帯びたものでした。

「ユーノ、ごめんね。こんな事に巻き込んで……」
「ううん。良いんだ。なんだかよく解らないけど、フェイトと一緒なら不安はないよ」
「そう?」
「そうだよ」

 久しぶりにバリアジャケットに身を包んだユーノがフェイトへと柔らかな笑顔を向けます。
 その無邪気な信頼にフェイトは自分の頬が熱くなるのを感じました。

「あー、お熱いですなぁ」
「フッ、若いというのは良いものだ……」
「あ、いや、ち、ちが、違いますよ!?」
「?」

 茶化すヴァイスとザフィーラに顔を真っ赤にして食って掛かるフェイト。
 ユーノは良く解らないようで首を傾げ、疑問符を頭の上に浮かべるばかりでした。

「ッ!?」
「……来たか」
「何だ、この圧倒的な存在感は……!?」
「ユーノ、解るんだね……来たよ。今回の私達が戦うべき相手――」

 4人の背後で地面を踏みしめる音が鳴ります。
 彼らが振り向くと、そこに居たのは――、

「ふむ……聞いていたメンバーとはだいぶ違うようだな、油断するなよクイント」
「勿論ですよ、ゼスト隊長。でも、本当に全然違いますね。スバルも居ないようだし……」

 両腕を組んで目の前の4人を見て目を細めるのは、武人然とした男でした。
 茶色いコートに身を包むのは、苦労人レジアスの親友ゼストです。
 そしてゼストの言葉に相槌を打つのは青い長髪の女性でした。
 名前をクイントというようです。
 ちなみに以前我らが主人公の犠牲となった娘のお母さんに当たります。
 きわどい衣装がとても特徴的なお母さんです。
 子持ちなのにピッチリと肌に吸い付く様な衣装はいかがなものなのでしょうか。

「今日はお母さんの代わりに来ました!精一杯やらせて貰いますね!」

 そして、元気よく挨拶するのはどこかで見た事のある紫色の髪を持ったデコ出し娘でした。
 またも脱兎の如く逃げ出した某母の代打としてやってきたとの由。
 母親思いの健気な娘ですね。

「どうも、お久しぶりです!今日は手加減無用ですよ、皆さん!」

 そしてシャドーボクシングしながら笑顔を見せるのは我らが主人公。
 振った拳の先で海が弾け、雲が吹き飛びました。
 周囲の面々に比べると、相変わらずパッとしない地味さ加減です。
 ヒマワリの髪留めが太陽の光にキラリと輝きました。
 フェイトはそんな彼女の仕草や背丈を見てエリオ達と同年齢くらいかなぁ、と思いました。

「テスタロッサ、油断するな。奴はあの高町をも叩き落とした強者だ」
「あ。うん……解ってる……解ってるよ」
「彼女があのなのはを撃墜した……?」
「そういう事です。スクライアの旦那。気を抜いたらすぐに落とされますぜ」

 解った、とユーノは気持ちを切り替え、真剣な面持ちを見せます。
 目の前の少女が幼馴染である高町なのはを倒したという衝撃的な発言は
 彼の意識を改めさせるには十分なものだったようです。
 もはや機動六課が誇る面々に油断はありません。

「往くぞ。テスタロッサ、ユーノ。手筈通りな」
「ん。了解だよ」
「解りました。では、開始直後に――」
「?」

 ヴァイスは良く解らない皆の発言に首を傾げます。
 が、何やら彼らには作戦があるようでした。これは心強いです。

「では、そろそろ始めるか」
「えぇ。それじゃあ張り切っていきましょう」
「えぇっと、まずは1on1でぶつかって、ですよね!」
「うん。その筈だよ、ルーちゃん」

 全員が構え、向かい合います。
 始まりのゴングは間もなく鳴り響こうとしていました。
 冷ややかな空気に緊張が走ります、そして――、

『演習開始!』

「「「ヴァイス陸曹!あの子は任せた!!!」」」
「ちょっと待てェエエエエエエエエエエエ!!?」

 全速力で各々の相手に向かって走る機動六課メンバーと無限書庫の司書長。
 ヴァイスを光りの速さで黒髪の小柄な少女の前に突き出すとそのまま戦闘を開始しました。
 部隊長が外道なら部下も外道だったようですね。

「お兄さんが私の相手?」
「いや俺は通りすがりのスナイパーさ」
「そっかぁ。じゃあ、いっくよー」
「話を聞いてくださいお願いしまウボァ」

 瞬間、ヴァイス・グランセニックは地上を駆け抜ける星となったのでした。


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【03.二次被害って怖いんです?】

 地上本部の一室にてレジアスと凛々しい女性がテーブルを挟んで向かい合っていました。

「そろそろ演習が始まった頃か」
「見に行かなくて良かったんですか、レジアス中将?」
「アイツが行ったのだから結果は目に見えているだろう」
「まぁ、それはそうですけど……」

 Sランク相当の集束砲の中を笑顔で直進する少女の姿が彼女の脳裏に浮かび上がりました。

「フッ、まあ、これで海の連中に一泡吹かせて――」
「え?」

 瞬間、レジアスの姿が女性の前から消えました。
 ついでにテーブルもなんかの衝撃波で吹き飛びました。

「……え?」

 何事かと視線を横にやると、壁に2人分の人型の穴が綺麗に開いていました。
 なんか直前、レジアスに黒いジャケット姿のイケメンが直撃していたような気がしたのですが、

「気のせいかしら……うん」

 女性はなかった事にしてお茶を啜りました。
 今日も地上本部は平和でした。







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【ex.それも全部レリックって奴の仕業なんです?】

 とあるラボの奥深くに1組の男女が居ました。
 ラボと言えば、ドクターとウーノですね。
 今日も蛇のような目が凛々しい2人組でした。

「このレリックを使ったタイムマシンを見てくれ。コイツをどう思う?」
「凄く……傑作です……」

 ドクターが青いツナギに身を包みながらウーノに問います。
 ウーノはノンケっぽい顔をして答えました。実際傑作らしいです。

「いやぁ、といってもまだ稼働実験も出来てないから本当に動くか解らんのだけどね」
「ご謙遜を。データの上では何の問題もないではないですか。やはりドクターは天才です」
「ふふふ。しかしやはり稼動させてみないと何が起こるか解らない」

 彼は四方にレリックと呼ばれた赤い宝石を埋め込んだ巨大な装置を見て頷きます。
 その中央で出来栄えは完璧だ、とばかりに彼は両手を大仰に広げます。
 だがしかし、と彼は前置きをして言葉を続けます。

「未知と言うのは思わぬところに転がっているものだ。故に実験が必要となるのだよ」
「被検体はどうします?」
「先程アジトの入口に転がっていたズタボロの男でも使うか……」

 ふむ、とドクターは顎に手を当てて思案を始めます。
 実験材料として使うのは先程拾った黒いジャケット姿のイケメンで良いでしょう。
 イケメンは犠牲になるのが、世の必定なのです。

「ねぇねぇ。ドクター。このボタンって何?」
「ん?あぁ、それはこの装置の稼働ボタンだよ」

 ってあれ?ここってウーノと私以外誰か居たっけ?という疑問がドクターの脳裏を過ぎります。

「へぇ。ポチっと」
「「あ」」
「え?」

 振り向くと、目を丸くした小柄な少女が装置の上に居ました。
 彼女の指が押し込むのは装置の内側に設置された起動用ボタンです。
 ちなみにドクターとウーノが居るのは装置の中央。十分に装置の射程圏内でした。
 脱出不可能よォ―――ッ!!!という奴です。

「逃げるんだよォ―――ッ!!!」
「ドクター!私を置いていかないでください!!」
「ちょっ、ウーノ――嗚呼!!?」

 腰に愛娘の裏切りタックルを喰らったドクターが倒れ込みます。
 次の瞬間、空間を圧迫する程の光が3人を包みました。
 その後に残るのは、静寂だけでした。

「ドクター。ウーノ姉様、御飯の用意が……あら?」

 眼鏡をかけた女性が扉を開けて、室内に入ってきます。
 だけどそこには目当ての人物はいません。
 はてどこに行ったのでしょう?と眼鏡をかけた女性は部屋を後にしました。
 まさか己の創造主が過去に飛ばされるとかいうえらい目に合っているとは知らずに。

 その後、10年くらい前の地球とかでドクターとかウーノとか小柄な少女が
 ジュエルシードとかいう石を砕いたり、それを使ってとある大魔道師の娘を甦らせたり、
 闇の書とか呼ばれる厚い本に向かって破ァ!したりして無双を繰り広げたらしいですが、
 どうでもいい事ですね。

 兎にも角にも暫くミッドチルダでは平和が続きそうなのでした。


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あとがき

闇の書の防衛機構は消え去る前に思ったそうです。
ミッドチルダ生まれはスゴイ……と。

ここまで見てくださった方々に最大限の感謝を。
一発ネタのつもりだったのですが、かなりの感想数に驚きました。
普通のリリカル転生話を書いている途中で、
ふと思いついたネタだったのですが……よもやこんなに反響を頂けるとは。
感謝感激です。

ははは、でももう続きませんよ。多分恐らくきっと。
それでは皆さん。また。



[36425] 【ネタ】レジアス「儂の部下が最強過ぎて困るんだが」 Part.03
Name: ころん◆4e7837e0 ID:6050ab35
Date: 2013/01/15 01:03
【00.世界は今日もまたゆるりと回るんです?】

 さて。今日も物語の開始地点となるのは相も変わらず平和なミッドチルダ。
 天気の移り変わりによる雨の跡も何のその。
 今日も人々は逞しく新しい1日を謳歌していました。
 そんな清々しい空気に満ちた空の下にある集団がいました。
 全身黒タイツの集団が密集隊形を組んでいました。
 とても規則正しく並んでいました。
 全身を包む黒タイツには一縷のたるみすらありません。
 表面の光沢が眩い太陽の光を反射して僅かに輝きました。パッと見、悪夢ですね。
 道を行くご老人が天からの迎えが来たのかと空に向かって拝み始めるレベルです。

「……」
「嗚呼!待って!無言で手を振り上げないで!?」

 そんな変態集団の前には我らが主人公が居ました。
 今日も首の後ろで黒髪を纏めるヒマワリの髪留めがキラリと光ります。
 相変わらずそれくらいしか特徴がありませんでした。

「で、何?これからは真面目に生きるっていうから釈放された筈だよね、君達?」
「凄いジト目で見られている……イイ……」
「……」
「嗚呼!待って!無言で両手に覇気を溜めないで!?」

 はあ、と小柄な少女が珍しく疲れたように溜息を吐きます。
 何時も親代わりの某中将に溜息を吐かせまくっている少女が溜息を吐いたのです。
 ここに某中将<全身黒タイツの構図が成り立ちました。全身黒タイツも侮れませんね。

「もっかい聞くよ?いきなり私を呼び止めた上、路上に猥褻物を陳列しているのは何故かな?」
「我々卑猥物扱い!?」
「あなた達は大切なものを傷つけました」
「え?我々まだ何もしてないんですが……?」
「私が見る世界の景観をです」
「カリオストロ!?」

 マイガッ!と頭を抱えて叫ぶ全身黒タイツを小柄な少女は無視しました。

「で、そろそろラーメン食べに行っていい?」
「ま、待って!待ってください!この前はすいませんでした!」

 歩き出そうとした少女の目の前に数十人の全身黒タイツが集団スライディング土下座をかまします。
 そして中央の全身黒タイツが顔を上げ、少女へとこう叫びました。

「我々も反省したのです!その成果を見て頂きたいと、今日はこうして参上した次第なのです!」
「……反省?」
「ええ!見ていて下さい!我々に足りないもの、それを補った完璧なるスクウンジャーを!」
「足りないものって何?羞恥心?」

 全身黒タイツは少女の辛辣な言葉を華麗にスルーしました。
 そして両手を上げて、全身黒タイツ達は高らかに声を上げます。

「ビルドアップ!!!」
『ビルドアップ!!!』

 先頭の全身黒タイツの号令に続いて、全全身黒タイツが咆哮しました。
 彼らが思い思いに取るのはボディビルめいたポージングの数々でした。
 次の瞬間、変化は起きました。
 なんという事でしょうか。全身黒タイツ達の全身の筋肉が異常な盛り上がりを見せ始めました。
 そのまま彼らの筋肉は己の存在を主張し、遂には全身黒タイツを引き千切りその姿を外界へと表します。
 半身黒タイツの誕生でした。
 残っている布が顔と下半身という徹底ぶりです。実際キモいです。

「どうですか!この溢れ出る筋肉的正義感!?これならパワフルな正義執行間違いなしですよ!?」
「あ。うん」

 少女は頷きました。

「一身上の都合により処刑します」
「逮捕ですらなくなった!?」

 ギャーと筋肉半身黒タイツ軍団がミッドチルダの清らかな空に舞いました。
 心温まる冒涜的な光景ですね。
 惨劇を直視した人のSAN値が一撃でマイナス超過しそうなくらい心が温まる光景です。
 そして、その後に残るのは高々と積み上げられた筋肉まみれの真に汗臭い山でした。

「……」

 流石にこの山には小柄な少女も登りたくなかったのか、いかんともし難い顔をして目を逸らしました。

「今日も、平和なのかなぁ……」
「にゃぁ……」

 ゲロ以下の匂いがプンプンするぜぇ、と彼女の足元で猫も鳴きました。
 そんなこんなな騒ぎがあるものの、今日もミッドチルダはそれなりに平和なのでした。


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※注意:ここから先はPart.02のexにて発生したタイムスリップ後のお話となります。
    誠に遺憾ながら世界のアイドルレジアス中将の出番は皆無の為、ご注意ください。

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【01.魔法の呪文はリリカルマジカル唱える必要もねぇんです?】

 平凡な小学3年生である高町なのははある日、怪我をした可愛らしい小動物を道端でゲットしました。
 その後、小動物から何やらテレパシーめいたレスキュー要請を受けた彼女はその持前の優しさから
 小動物が心配になり、こっそり夜外出したら化物に襲われました。不憫ですね。

「我、使命を受けし者なり……契約のもと、その力を解き放て……」

 ですがその程度でめげていては物語の主人公は張れません。
 彼女は小動物ことユーノを助けると彼から謎の赤玉を貰い受け、言葉を紡ぎ始めました。
 ユーノの声に続いて彼女は己の相棒となる杖を起動させる為の呪文を復唱します。

「風は空に、星は天に、そして不屈の魂はこの胸に」

 その間も化物である黒い毛玉さんは律儀にも、オォ……とかなのはの放つ光を眺めて待機しています。
 知性の知の字も見えない姿でありながら、中々の紳士っぷりです。
 きっと彼はヒーローの変身はしっかりと最後まで見守り、番組終盤で爆殺されるタイプなのでしょう。
 実際フラグがビンビンと目の前で立ちつつあります。不憫ですね。

「この手に魔法を!」

 なのはを中心として立ち上がる桃色の光の柱がその伸びる勢いを増していきます。
 そしてそれが極限に達した時、なのはとユーノは叫びました。

「レイジングハート!セーットア―――」
「イヤーッ!!!」
「グワーッ!!!」
「ええ――――――――――――――ッ!!?」

 化物が小柄な黒髪の少女に足蹴にされて吹き飛びました。
 なのはの変身を待ち侘びていた化物。
 己の終焉は此処かとばかりに覚悟を決めていた化物。
 正義の魔法少女に打倒される事を望んだ化物。
 スローモーションの世界の中、なのはは吹き飛ぶ化物と目が合いました。

……毛玉さん!!?
……少女よ、強く優しく、そして気高く生きよ……!!!

 毛玉は音速を突破し、破壊と己の身を撒き散らしながら壁に激突しました。
 その勢いで彼はアワレ砕け散り、その身を宙に霧散させていきました。
 紳士的な化物の最期でした。実に不憫ですね。

「ふぅ」
「あ、えっと、ど、どうしよう?」
「えぇっと、僕も何がなんだか……」

 額に浮いた汗を拭う小柄な少女の背中を見ながらなのはとユーノは困惑します。
 というか驚きのあまり変身がキャンセルされてしまったようです。
 あらあら早速タイムパラドックスですね。

「大丈夫?君達?」
「アッハイ」
「だ、大丈夫ですけど……って、あ!それはジュエルシード!?」

 こちらへとてとてと歩いてくるなのはと同年代くらいに見える小柄な少女の手には青い宝石が在りました。
 それを見たユーノが目を見開きます。

「あ。これ?さっきの毛玉から引っこ抜いといたんだけど、高く売れるかな?」

 守銭奴根性丸出しですね、この少女。
 しかしそんなマネー思考な少女に対してユーノが慌てて叫びます。

「それは危険物なんです!ふ、封印するから今すぐ手放して下さい!」
「え?危険物?マジで?」
「そ、そうです!首傾げてないで早く離して―――ッ!?」
「えいっ」
「「えっ」」

 グシャッと音を立てて彼女は手の中の宝石を握り潰しました。
 瞬間、断末魔として放たれた青色の極光が世界を道連れに滅ぼさんとしますが一緒に握り潰されました。
 ジュエルシードが末席、シリアル21の地味な最期でした。不憫ですね。

「はい。これで処理完了で良いかな?」
「「えっ?」」
「良いね?」
「「アッハイ」」

 よし、ラーメン食べに行こうという少女の背中姿を見守る事しか彼女達には出来ませんでした。


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【02.わんわんおにレクイエムをなんです?】

「ギャオオオオオオオオオオオン!!!」

 神社の境内に悲鳴が響き渡りました。
 救いを求めるが如き叫びに駆け付けたなのはが見たのは蹴り飛ばされ、宙を舞うワンコでした。
 化物めいた姿をしていますが、それでも四足歩行のワンコでした。

「ダ、ダニィイイイイイイイイイイ!?」
「なのは落ち着いて!ダニーって何!?」

 シリアル16も勿論キッチリ小柄な少女に破壊されました。ユーノ涙目でした。


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【03.気になるあの子は金髪の死神なんです?】

 巨大な猫が居ました。
 とても巨大な猫でした。
 どれくらい巨大かというと小柄な少女がその腹に埋まってしまうぐらい巨大でした。

「にゃー」
「んー、もふもふ……」
「うわぁ―――!?出たぁあああああああああ!?」
「なのは、落ち着いて!多分きっと恐らく彼女は危険人物じゃないから!」
「アイエエエエ!アイエエエ!!!」

 なのはは元子猫の腹の上でごろ寝する少女の姿を見た瞬間、恐慌状態に陥りました。
 少女にあるまじき絶叫を上げるなのはの脳裏に今までの数々のトラウマが甦ります。
 初めての魔法で格好良く決めようとしたら夢と一緒にジュエルシードが砕かれました。
 今度こそと意気込んだら、ワンコが蹴りあげられる瞬間を目撃した上、ジュエルシードが砕かれました。
 プールに潜っていた少女と目が合ったと思ったら、ジュエルシードが砕かれました。
 学校に不法侵入していた少女を見つけたら、ジュエルシードが砕かれました。
 サッカーの応援をしていたらいきなり飛び込み参加して来たと思ったら、ゴールが爆砕された上、
 目の前でジュエルシードが砕かれました。

「もうやめて!私のジュエルシード所持数は0個なの!?」
「ジュエルシードの粉末ならいっぱいあるよ、なのは……」
「そんな死んだ魚みたいな目で言わないでユーノ君!?」

 思わず肩の上で呟いたユーノに突っ込みを入れてしまいます。

「でも……こ、これはチャンスなの」
「うん……だね……」

 そう彼女達にも遂に活躍する機会が巡ってきたのです。
 何故なら彼女はまだ今回はジュエルシードを破壊していないのです。
 これは大きい事です。何故なら今まで彼女を目にした時には既にジュエルシードは粉微塵。
 もしくはその寸前という場合が多かったのですから。
 なのはの杖を握る拳に自然と力が入り、目がギラつくのも仕方がない事でしょう。
 そしていざ猫ごと小柄な少女を吹き飛ばさんと杖を構えた瞬間でした。

「ニ゙ャ――――――――――――!!?」

 雷撃の直撃と共に猫が悲鳴を上げました。
 ちなみに直撃したのは小柄な少女も一緒でした。
 思わずなのはは「やったか!?」と歓喜の声を上げてしまいます。外道ですね。
 純粋無垢だった頃のなのはは既に過去の人となっていました。

「ね、猫ぉおおお!?何をするだァ――!!!許さん!!!」

 鬼神が起きてしまいました。言わずもがな無傷です。

「よし、明日から本気出すの」
「なのは!?え!?どこに向かうの!?猫は!?」
「命あっての物種っていう言葉が日本にはあるの、ユーノ君!!!」

 なのはは後ろ向きに走り出しました。
 お姉ちゃん、明日って明日さ。

「ジュエルシード、渡してもらうぎゅっ」
「フェ、フェイト!?この野郎何をひぎぃ」
「この――容赦せんッッッ!!!」

 背後から金髪の少女が助けを求める声が聞こえましたが、なのはは無視しました。
 ごめんねごめんね、と呟く表情はとても虚ろでした。不憫ですね。


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【04.決戦――黒髪のあの子なんです?】

 海鳴市にある喫茶翠屋の隅の席には現在、4人の少年少女+女性が居ました。

「ねぇ、フェイトちゃん……どうやったらあの子仕留められるかな……」
「そうだね、なのは……後ろからザックリとかどうかな……」
「なのは……」
「フェイト……」

 うふふ……と笑う少女2人の表情は陰鬱としたもので邪悪なオーラを放ちまくっていました。
 それを見たユーノと破廉恥な格好をした女性――アルフはあまりの少女達の変化に滂沱の涙を流しました。
 世界は何時だってこんな筈じゃなかった事ばかりだ、とどっかの執務官が空の向こうで親指を立てました。

「ジュエルシード、未だに1個も確保出来てないなんて……母さんに怒られるよぅ……」
「フェイトちゃん、泣いちゃ駄目なの……」

 えっぐえっぐと涙を流す金髪の少女――フェイトの背中をなのはは撫でます。
 ちなみにこの2人は、あの傍若無人で神出鬼没な少女をなんとかしようと同盟を組んだようです。
 敵は強大です。だから、それぞれ2人ずつで挑むよりも4人で一緒に行こう、との事でした。
 小さい子ながら、とても賢明な判断ですね。
 無駄な努力という言葉も世界にはあるのですが。

「あ。店員さん、このケーキくださーい」
「あ。はーい」
「……」
「……」

 なのはとフェイトの汚泥の如く濁った瞳がショーケースの方から聞こえた声に向けられました。
 そこには怨敵である小柄な少女の姿がありました。
 瞬間、ぱぁっと2人の少女の顔に花が咲いたような笑顔が浮かびました。
 いきなりの変化に彼女達の前に並んで座っていたユーノ達もビックリです。
 そして、次に瞬いた時には既に彼女達の姿が席から消えていました。

「「覚悟ォ――――――――――――――!!!」」
「ん?」

 それはレジを打っていた御神の剣士も驚愕する程の速度でした。
 魔法少女の衣装に身を包んだ2人のぎらついた目の少女達が小柄な少女の背後に現れ、武器を振り被りました。
 勿論返り討ちに遭いました。諸行無常ですね。


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【05.これにて一路大団円へなんです?】

「調理方法は実に簡単」

 白衣を着込んだ紫色の髪の男性が円柱型のカプセルの目の前で大仰に腕を広げました。

「わー、パチパチー」

 男性と同色のセミロングの髪を靡かせながらスーツ姿の女性が拍手します。棒読みですね。
 声の主達は小柄な少女のせいで過去に飛ばされた我らがドクターとウーノでした。
 最近はずっと一緒でしたが、今は少女と別行動中のようです。

「まずこのジュエルシードの粉末をカプセルに流し込む」
「サラサラーっとですね」
「そして混ぜる」
「適当な棒が無いのでプレシア様の杖を使わせていただきましょう」

 うむ、とドクターは頷きます。

「後は特殊な加工をしたジュエルシードの粉末が彼女の体に馴染むまでかき回すだけだね」
「本当に簡単ですね」

 カプセルの中で全裸の金髪少女がぐるぐると杖の動きに合わせて回転します。
 時折杖がぶつかって「痛い!」とか「やめて!」とか聞こえますがウーノは動きを止めませんでした。

「おやおや、ドクター。まだ起きない様です。お寝坊さんですね」
「いやぁ、お寝坊さんなら仕方ないね。もうちょっと掻き混ぜてみようか」
「はい。ドクター」

 彼らは満面の嗜虐的な色を含んだ笑みでカプセルの中に浮かんだ少女を見下ろします。
 少女がそんな2人を見て、悪魔だ……と呟いたその瞬間でした。

「おや、プレシア女史。起きたのかね。ははは、ちょっとお邪魔しているよ」
「どうも。お久しぶりです、プレシア様」

 黒髪の女性が部屋の入口に現れ、瞬間、硬直してしまいました。
 その女性に見た瞬間、金髪の少女はカプセルの内壁に張り付いて叫びます。

『お母さん、助けて!』

 壁に阻まれて声は聞こえませんでしたが、黒髪の女性は光の速さでドクターとウーノを
 天井まで殴り飛ばして愉快なオブジェにするとカプセルを片手で粉砕して少女を救出しました。
 死にかけの女性とは思えないパワフルな行動でした。愛は偉大ですね。

「お母さん!!!」
「ア、アリシア……嗚呼、アリシアぁ!!!」

 砕けたカプセルの中から飛び出た子を母が抱き留めます。
 お互いの目からは涙が流れ出していました。実に感動に胸が震え、心温まる光景ですね。
 天井にぶらさがる2つのオブジェが無ければもっと良いのですが。


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【06.これが本当の大団円なんです!】


 目の前の人は誰なんだろう、とフェイトは思いながら自分の母親を見ました。

「遅かったわね、フェイト……怪我はしてない?大丈夫?」
「え、あ、はい、だだだ、大丈夫です。ももも、問題ないです」

 気恥ずかしそうに笑う母親の姿はとても懐かしいながらも、不気味でもありました。
 久しぶりにフェイトが報告に帰ってきたら、この異常な変貌を遂げていたのです。
 鋭い刃の如きクール系母はどこに行ってしまったのだろうか、と彼女は困惑します。
 確かに昔のように笑って欲しいとフェイトは思っていましたが変化が唐突過ぎたようですね。
 なお、アルフは初めて見る母親の笑顔に本能が警告を上げたのか既に全速力で逃走済みです。

「えと、母さん……その子は……?」
「あぁ、この子?この子はね――」

 母親――プレシアはフェイトの疑問に己の背に隠れる金髪の少女を自分の前へと立たせました。
 髪も目も顔立ちもフェイトと瓜二つの女の子です。唯一違うのは背丈くらいでしょうか。
 その少女は先程救出されたばかりの少女こと、アリシアでした。

「この子はね……」
「大丈夫、お母さん。私、1人でも挨拶出来るよ」

 プレシアの言葉を遮って、アリシアは前に出ます。
 対して"お母さん"という言葉にフェイトは思わず首を傾げました。

「はじめまして、フェイト」

 されどアリシアはそんなフェイトの様子も気にせず、彼女の眼前に立ちました。
 そして、彼女ははにかんだ笑みをフェイトへと見せながら、

「私が、あなたのお姉ちゃんだよ」

 ずっと、ずっとカプセルの中で、伝えたかった事を言葉にしました。

「……は?」

 思わず停止するフェイト。
 ですがアリシアはそんな事などお構いなしに硬直する彼女へと抱きつきました。
 えへへと無邪気に擦り寄る姿を見ると姉と妹の立場は逆のように見えますね。

「え?」

 その様子を見て微笑むプレシアに楽しげに笑うアリシア、そして呆然とするフェイト。
 時の庭園の中央には、そんな3人のそれぞれの感情を籠めた声が響くのでした。
 まぁこの後、色々話して打ち解け、幸せに暮らしたそうですが、それはまた別の話ですね。



  ●



「あんたら誰さ……」
「フフフ、私はプレシア女史の友人の通りすがりのドクターさ……」
「その娘です」
「あっそ……あーあー、入り辛いなぁ、ウチのご主人様も幸せそうにしちゃってさー」
「いいじゃないかね。遠慮せずに行きたまえ。君も彼女の家族なのだろう?」
「そりゃそうだけどさ……」
「だったら遠慮は失礼というものだ。それに彼女も君抜きでは少々寂しいだろうさ」
「……解ったよ。行ってくるよ」
「嗚呼。彼女達によろしく言っておいてくれたまえ」
「あんた、見かけによらず良い奴だね……全裸の変質者だけど」
「はっはっは」

 プレシア怒りの雷撃によって服が消し飛んだドクターなのでした。
 あ。ちなみにちゃんと局部はウーノが守護しているので心配はご無用です。


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【ex.闇の書事件(未発生)終結なんです?】

 とある住居の一室でミニミニ狸めいた少女がうーんと唸っていました。
 目の前には鎖でぎっちり固められた本があります。

「あかん……やっぱり全く開く気がせえへん……」

 ミニミニ狸少女が鎖を引っ張りますが、ビクともしません。
 今日こそはと色々工具まで用意して試してみたのですが、焼いても斬っても傷1つ付きません。

「どないしよ……あー。中身が気になるわぁ……」
「うわ、なにこれ……凄い中身ゴッチャゴッチャになってるじゃん」
「ほんまか……うわ。言われたら余計に開けたくなるやんか、やめてぇなぁ……」

 中途半端に内容を言われると気になるのがミニミニ狸少女――はやての性分なのでした。
 故に彼女は興味の増大を助長した者に抗議の声を上げたのですが、

「って、え?」

 ふと気づきます。
 あれ?この家、今私しか居らんよなぁ、という事実に。

「あ。お邪魔してるよ」

 慌てて振り向くと、そこにははやてと同年代くらいの黒髪の小柄な女の子が居ました。
 彼女は片手を上げて挨拶するとはやての目の前に置いてある本に手を置きます。
 その上で、突然過ぎる彼女の登場に呆然とするはやてを余所に少女は息を吸うと、

「破ァ!!!」

 と万の怪奇現象を解決させてしまいそうな勢いで吼え、本の鎖を砕きました。
 ついでになんか本から得体の知れない黒い煙が出ました。

「よし、これでオッケー……じゃっ」
「あ。うん。お疲れ様です?」

 小柄な少女ははやてに背を向けてヒマワリの髪留めを左右に揺らしながら去って行きました。
 なんだったんや……と混乱の極みの中、はやては首を傾げます。
 その瞬間でした。

『夜天の書、正常動作を確認――封印を解除します』
「え゙っ」

 手に取った本が合成音声のような響きで言葉を紡ぎ、

「うおっまぶしっ」

 不健康そうな暗い闇色の光を放ち始めました。
 その勢いは油断すれば本を手放してしまいそうな程です。

「さ、さっきから一体、なんなんやぁ―――!!?」

 アッー!という叫びを最後に光ははやてを飲み込みました。



  ●



 その後、赤毛の少女、桃色の髪の女性、金髪の女性、青毛の狼、白い長髪の女性、
 はやてそっくりの少女となのはそっくりの少女とフェイトそっくりの少女と金髪の幼女を連れた
 子狸っぽい少女が度々翠屋まで"走って"訪れていたようですが、それもまた別のお話。
 梅雨が明け、暖かい初夏の日光が降り注ぐ海鳴市は、今日も平和な1日を迎えるのでした。












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※注意:以降、スーパーレジアスタイム。

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【ex02.最強の帰還なんです?】

 地上本部の一室にて、優雅に紅茶を嗜む髭ダルマのおっさんの姿がありました。
 我等のアイドルである彼の名前はレジアス・ゲイズ。
 魔力はないものの指揮関連等においては凄腕の管理局員であり、例の最強の父親代わりでもあります。
 そんな彼は数日前に行方不明となった娘の事を心配しつつも、紅茶の香りを大いに楽しんでいました。
 本日のセレクトはとっておきのアールグレイです。
 白いティーカップの横に置かれたチョコレートケーキも合わさり食欲がそそられる構成となっていました。
 そして彼は静かな、己以外に立ち入る者の居ない世界で幸せの吐息を漏らします。

「片時の平和……なんと甘美な事か……」

 瞬間、地上本部が揺れました。
 レジアスは振動が治まると同時に緩慢な動きで頭を抱えました。
 もうなんとなく解ったようですね。
 その予感を確定させるように扉が開き、凛々しい女性が入室して来ました。

「レジアス中将、妹が帰ってきました」
「不肖、私!帰って来ました!」

 ビシッと女性に続いて入室し、挙手の敬礼をしてみせるのは小柄な少女でした。
 そう。レジアスにとっては見慣れた彼の娘の姿がそこには在りました。

「はぁ……」
「レジアス中将!お久しぶりです!お元気でしたか!?体調を崩してませんか!?」

 一瞬でデスクを挟んだ向こう側に少女は現れると矢継ぎ早に質問を投げかけて来ます。
 その瞳には喜と心配の色がありありと浮かんでいました。
 本当に、無邪気な娘です。
 ふぅ、とレジアスはそんな彼女の声音に顔を上げ、背を椅子に預けました。
 体勢を整える終えると、彼は小さく呟きます。

「また、忙しくなりそうだな……」

 放たれる言葉の響きは心底嫌そうなものでした。
 が、されど自分に会えて心底嬉しそうな娘の姿を見る彼の表情は満更そうでもありません。
 まぁ、詰まる所、彼はやっぱり素直じゃないのです。
 楽しげに笑う己の娘達に見せるのは、相変わらずのツンデレっぷりなのでした。



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あとがき

以上、スーパーレジアスタイム(37行)でした。
いやあ、楽しい過去編でしたね……。

まずはここまで見てくださった方々に最大限の感謝を。
ふふふ、これでももうネタは出し尽くした筈……燃え尽きたぜ、とっつぁんよ……。
なお、詳細は語りませんでしたが、少女を含んだ物語はこのような感じで進んだイメージです。


<<無印編の流れ>>
・ユーノとなのはが出会う。
    ↓
・フェイトと遭遇するまでジュエルシードが破壊され続ける。
    ↓
・フェイトと温泉で出会い、またもジュエルシードが破壊され同盟を組む。
    ↓
・なのはとフェイトが病む。
    ↓
・結局1個もジュエルシードを手に入れる事が出来ないままフェイトは時の庭園へ帰還。
    ↓
・なのは、フェイトに母親とアリシアを紹介される。
    ↓
・時空管理局に連絡してジュエルシードと"紫色の髪の男女"を引き取りに来てもらう。
    ↓
・1個だけユーノが所持していたジュエルシードを時空管理局に渡し、事件は終わりを告げる。
 男達はいつの間にか逃げていた。
    ↓
・その後、フェイトが近くに引っ越してきて、同じ学校に通い始める。
    ↓
・ユーノもジュエルシードを提出し、帰ってきた後は同じ学校に通ったとかなんとか。

<>
・そんなものはなかった。
 ただ、6月頃から髪の色取り取りの大家族が翠屋を訪れるようになったとか。


よし、これで1段落ですね。
ViVidとかForceはまたいずれ。
というか、この主人公ぶち込んだらどっちも無双に成り過ぎる気が……。
格闘系ェ……。

まぁ、これで漸く眠れ――あ。ハーメルンにて魔法少女リリカルオリヴィエSacredという作品を連載開始しました。
良ければそちらもご覧になっていただけると嬉しいです。(ゲス顔で露骨な宣伝)

それでは、皆さん、また。



[36425] 【ネタ】レジアス「儂の部下が最強過ぎて困るんだが」 Part.04
Name: ころん◆a32330e1 ID:40cf5100
Date: 2013/02/22 07:57
【00.師弟関係の始まりなんです?】

 此処は相も変わらず平和な第1管理世界ことミッドチルダ。
 その首都クラナガンに我らが主人公の住居はありました。
 部屋に備え付けられた大きめの窓の外では今、雨がしとしとと降っていました。
 そんな雨模様を見ながら、我らが主人公たる地味で小柄な黒髪の少女はごろりと一回転。
 現在、彼女は休暇中だったりします。
 彼女はソファーの上で仰向けで寝そべり、だらけながら漫画を一冊広げていました。

「あははは、やっぱりこの漫画家さんのギャグは面白いなぁ」
「そうですか」
「……」

 視線を横に。
 彼女はページを捲り、漫画へとゆっくりと視線を戻します。

「あははは。あ、お菓子がもう切れちゃった。さぁて買いにでかけ――」
「買っておきました」
「……」

 視線を横に。
 少女は彼女は最後のページを捲り、漫画へと視線を戻します。

「あははは、おっと、漫画読み終わっちゃった。あー、続き気になるなぁ」
「そんな事もあろうかと、全巻揃えておきました」
「……」

 耐えきれずに少女は振り向きました。
 小柄な少女は額に一筋の汗を流してとても嫌そうな顔を浮かべます。
 彼女の視線の先には正座の姿勢で少女をガン見している長身の女性が居ました。
 微動だにしない紫色ショートヘアの背が高い女性です。凛々しさ満点でした。
 なお、彼女の服装はピッチリ肌に吸い付くタイプのボディスーツの模様。実に扇情的ですね。

「……なんで貴方はここにずっと居るのかな?」
「弟子にしていただきたい」
「……ワンモア」
「弟子にしていただきたいと言っているのです、師匠」
「既に師匠になってる!?」

 オーマイガッと少女は仰け反りました。
 反動で姿勢を戻しながら、彼女は両手を勢いよく振りました。

「却下だよ、却下!?ていうか、なんで此処が解ったの!?」
「ドクターがアナタの家は此処だと教えてくれました」
「よし解った。ドクターを殴り飛ばせば良いんだね、理解した」

 きゅっと小柄な少女が笑顔のまま拳を握りました。
 いけません、このままではあの愉快奇怪な科学者が更に愉快奇怪な肉塊へと進化してしまいます。
 されども紫色ショートヘアガールがその行動を予見していない訳がありませんでした。
 彼女はどこからか解らないですが、四角い箱を取り出しテーブルの上に置きました。

「ちなみに土産としてこちらのラーメンセットを持って行けとドクターが……」
「仕方ないなぁ、ドクターは」

 籠絡までたったの1手でした。
 ご機嫌な様子で少女は台所へラーメンセットを持って退散していきます。
 なんとも安い。実に安い買われ方でした。
 地上本部の最高戦力が今まさにラーメンで買収されようとしています。
 ていうか、こんなんが最高戦力で良いのでしょうか、地上本部。

 ちなみに紫色ショートヘアガールは計画通りといった笑顔を浮かべていました。黒いですね。


  ●


 此処は時空管理局が地上本部の一室。
 幼い字で"レジアス中将のお部屋"と書かれた名札が入口にぶらさがった部屋でした。

「ぶえーっくしょい!」

 そこそこ広い室内にふとましいおっさんことレジアスの凄まじい声量を伴ったくしゃみが吹き荒れました。
 書類の束が宙を舞いますが、それを眼鏡をかけた凛々しい女性は残像を遺しながら素早い動きで全キャッチ。
 匠の技でした。
 それから女性はテーブルの上にまとめた紙束の底を何度かぶつけて紙の高さを整えながら、

「あら、中将、風邪ですか?」
「ふぅむ……誰かがワシの噂でもしているのかもしれんな……」
「ふふ、中将の武勇伝でも話しているのでしょうか?」
「ふん、どうせ嫌味だろう。まぁ、ワシの鋼の心臓は他人にどう言われようとも揺るぎはせんさ」

 ふふん、と胸を張るヒゲモジャおっさんことレジアスに苦笑する眼鏡をかけた凛々しい女性は苦笑します。

「それは頼もしいですね。あ、ちなみに中将、この前あの子が解決した事件の報告書が……」
「胃が……!」

 鋼の心臓なんてありませんでした。


  ●


 小柄な少女と紫髪の女性は正座しながらテーブルを挟んで向かい合っていました。
 テーブルの上にはラーメンの入ったどんぶりが2つ置かれています。
 早速貰ったラーメンに手を出す少女でした。遠慮なんて無かった。
 彼女は箸を器用に使ってラーメンを啜りながら、視線を紫髪の女性へ向けます。

「で、なんでいきなり弟子入りしたいとか言い始めたの?」
「あの時アナタに殴られた感覚が忘れられず……」

 ブボォッと少女が吹き出しました。汚ぇ。

「おまわりさーん!ここに変質者がいますゥ――!?」

 なお、叫ぶ小柄な少女の職業もおまわりさんみたいなものです。自分でなんとかすべきですね。
 ちなみに近隣住人達は『またあの家で騒ぎか』と無視しました。日頃の行いの結果でした。

「いえ、別段深い意味はありません。その強さに感銘を受けた、というだけです」
「え?あぁ、そういう意味だったの?」

 少女はホッと一安心。

「一方的に蹂躙されるというのも新鮮で、中々の快感でしたが」
「おまわりさーん!!!」

 閑話休題。
 暫く騒いで落ち着いた後、少女はどんぶりを片付けながら紫髪の女性に向かって言います。

「それで弟子入りしたいって?私、人に何かを教えた事なんてないよ?」

 対する女性は相変わらずの無表情のまま、そんな言葉に頷きを1つ返しました。

「ではせめて強さの秘密を教えていただきたい」
「そんなものないよ?」

 少女の眉尻を下げた否定の言葉に女性はサムズアップしながら言い返します。

「秘密と言う事ですね。解っています。そう簡単に強さの秘密を漏らす訳にはいかないと」
「いや、だから、そんなものないってば」

 少女の呆れた様な声に女性はやれやれと肩まで両手を上げてポーズを取りながら、

「仕方がありませんね。盗んでみろという事ですか」
「あのね、私は生まれつきこんなんだよ?」
「ハハハ、冗談を」
「こやつめ、ハハハ」

 コイツ全く話を聞いちゃいねぇと少女は頭を抱えました。
 ちなみに女性は全く表情を変えてないので『ハハハ』とか言っている間も無表情のままです。クールですね。

「では暫く同居して観察させていただきます」
「いや帰れよ」

 先程まで食べていたラーメンセットがテーブルの上に投げ捨てられました。
 紫髪の女性は無表情のまま、呆然とする少女へ一言。

「今同居させてくれれば、この特上ラーメンセットをもう10箱程」
「歯ブラシは持ってきた!?」

 少女は笑顔で同居する事を快諾しました。凄まじく安上がりですね。
 やっぱりこんなんが最高戦力で良いのでしょうか、地上本部。


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【01.私の弟子は戦闘機人なんです?】


 少女と女性が同居してから10日が経ちました。
 ちなみに同居する旨を報告に行ったらレジアス中将の胃に穴が開きました。
 日々の不摂生がたたったのでしょうね。(無関心)
 父親代わりのおっさんのお見舞いを済ませた帰り道で黒髪の少女と紫髪の女性はラーメンを啜りながら、

「うーん、レジアス中将。どうしたんだろうね、いきなり倒れるとか」
「お疲れだったのではないでしょうか?最近は謎のレアスキル持ちが暴れまわっていると聞きます」
「あれかー……」

 ずぞぞぞと小柄な少女はラーメンをどんぶりから吸い上げ、咀嚼を開始します。行儀が悪いですね。
 対する女性はエレガントめいた動作でフォークとナイフを操り、麺を口に運んでいました。
 なんだあれ、という視線が周囲から突き刺さりますが2人は気にしませんでした。

「で、トーレ。私の強さの秘密は見つかった?」
「いえ、まだですね。ドクターにも解析を手伝って貰っているのですが……」
「あれあれ?私何時の間にか研究者に解析されるモルモットになってない?」
「ハハハ、もう八年ほど前からずっと解析され続けていますよ」
「初耳だよ!?」

 トーレと呼ばれた紫髪の女性は『ハハハ』と少女の目を剥いた叫びをスルーしました。

「そんな事よりも」
「私にとっては私生活のピンチだからそんな事じゃないんだけど!?」
「極上ラーメンセット1つで手を打ってください」
「仕方ないなぁ」

 やっぱり笑顔で快諾。安上がり万歳でした。
 この瞬間、病院で某おっさんの胃が謎の痛みに悲鳴を上げたのは言うまでもありませんね。

「それじゃあとりあえず帰ろうか」
「そうですね。あぁ、帰りに『爆死戦隊ミッドチルダー』の最新話DVDを借りて行きましょう」
「あー、そういえばこの前借りたヤツだとレジアス中将似のおっちゃんが『良いから自爆だ!』とか言いながら基地ごと爆発四散するシーンで終わったんだっけ。確かに続き気になるよね」
「えぇ、次回予告での締めが主役達の『俺達ゃ家なき子!』ですからね。まさか味方のリーダー格がゴキブリ退治の為に味方の基地ごと爆発するとは誰も想像していなかったでしょう」
「毎回戦闘後に自爆するオチがあの時は無かったから、なんかあると思ったんだけど、まさかねぇ」
「そのせいで毎回乗り込むロボが違っているのも売りですよね」
「ロボが出過ぎて玩具コーナーに置き切れないって商店街のおっちゃんが嘆いてたよ」

 あはは、と少女は笑ってラーメン屋から出て、一歩進みます。
 少女の足元が爆発しました。

「え?」
「えっ」

 少女とトーレの疑問符を置き去りに爆発は連鎖しました。
 爆発は少女の足元から段々と前方に向かって加速して行き、視線の先に在る高層ビルに行き着きました。
 高層ビルが派手に爆発四散してビルの方から悲鳴が上がります。

「……さぁ、師匠。大人しく出頭しましょう」
「えぇぇぇぇ!?私のせい!?私のせいなの、今の!?」

 トーレがこんな時だけ神妙な顔で少女の両肩に手を置きます。
 少女は全力で否定しますが、少女の足元から続いている爆発痕が動かぬ証拠。少女の命運もまさにこれまで。
 そんな風に思われた時でした。

「ワハハハハ!ミッドチルダの住民よ!怯え竦むが良い!」

 今しがた砕け散ったばかりの高層ビルの瓦礫の上に誰かが立って叫んでいました。
 おお、あれこそが救世主か!?否、悪魔か!?

「我こそは『爆弾生成』の能力を持ちし最強の男!触れた物を爆弾とする俺の無敵のほべら!?」

 悪魔だったので少女は近づいて殴りました。男は瓦礫の海に沈みました。
 少女は良い汗かいたとばかりに額を拭うと男を駆けつけてきた管理局に引き渡してトーレの下に戻りました。
 その際、管理局員のナイスミドルがまたお前かよ、という顔をしましたが少女は無視しました。

「うーん、確かに最近多いねぇ、こういう性質が悪い犯罪者」
「あの男の能力もドクターに解析して貰いますか?妹が似たような能力を既に持っていますが」
「そだね。なんかあの手の犯罪者の増加原因が解るかもしれないし」
「人造魔道師、等でしょうか?」
「あ、それならフェイトさんが詳しいかもね。その手の事件には必ず喰いついてるらしいし」
「成程。では後日フェイトお嬢様に何か情報を持っていないか聞きに行ってみましょうか」
「うん、そうしようか」


  ●


 金髪の美女がいきなりビルの窓を開けて飛び出そうとしました。
 母親代わりの女性の奇行に目玉飛び出そうになった赤毛の少年が腰に飛びついて止めました。

「ちょぉぉぉぉ!?フェイトさん、落ち着いて!?いきなり何をしてるんですかァ――!?」
「エリオ!止めないで!私は遠くに逃げなきゃいけないの!?」
「電波!?電波でも受信したんですか、フェイトさん!?ま、まずは話し合いを……」

 プシューッと背後で扉が開く音が鳴りました。
 フェイトとエリオが振り向けばそこには桃色の頭髪を持った少女が死んだ魚の目で佇んでいました。

「フェイトさん、エリオ君……何やってるんです?」
「え?どうしたの、キャロ?なんだか怖いよ?」
「何ってフェイトさんを行かせない様に抱きついて止めて……」

 傍から見れば窓枠に手をかけたフェイトに後ろからエリオが抱きついている様に見えました。
 一見すればただの親子の戯れですが、キャロと呼ばれた少女には異なる状況に見えたようですね。
 ぶっちゃけ修羅場でした。

「行かせないってどこに!?百合の世界には俺が行かせねぇよベイベーって意味!?」
「百合の世界!?どこなの、そこ!?」
「スバルさんとティアナさんを見てれば解るよ」
「「あっ……(察し)」」

 全員が沈黙しました。
 沈黙は鎮静剤となり、そのまま全員の気持ちは優しい何かに包まれました。
 そして思考の方向性は今さっき出て来た女性2人へと向きました。
 それから全員は優しさに満ちた目から光の消えた笑顔で顔を合わせて頷きを1つ。

 >そっとしておこう。


  ●


 なお、フェイト・T・ハラオウンはこの後、小柄な少女と紫髪の女性に普通に玄関から入って来られるという
 強襲を受け、錯乱しながら悲鳴を上げて窓を飛び出し、空を駆け抜け、大地を走破し、謎の研究所に辿り着いて、

「いいいやぁあああああああああああああああああああ!!!」
「グワーッ!?」

 ニンジャめいた雄叫びと共に助走付きで謎のドクターを殴り飛ばし、それで漸く正気を取り戻したとの事でした。
 すわ殺人罪に問われるかと思い、涙目でドクターを連れ帰ったら何故か同僚にとても褒められたらしいです。
 いやはや人生は何が起こるか解りませんね。


  ●


 トーレは少女の住居のポストに投げ込まれた手紙を開きながら一言。

「ドクターが捕まったそうです」
「えっ」

 ずぞぞぞぞ、とラーメンを啜る音だけが室内に響きました。


-------------------------------------------------------------------------------------------------------

【02.最終決戦なんです?】


 暗雲が空に立ち込めます。
 まるで終末を迎えた世界の如き光景を見ながら、小柄な少女とトーレは巨大な建物の前に立っていました。
 巨大な建物は材質不明の赤い石壁で造られた古めかしいデザインの城でした。
 実にラストダンジョンくさい外見をしていました。

「此処が敵組織のハウスね」
「えぇ、此処がフェイトお嬢様が言っていた敵組織の本拠地ですね」
「ここまで早急に調べてくれるだなんてね。今度お礼しにいかなきゃね」
「えぇ、その時はラーメンセットでも持っていきましょうか」

 少女の脳裏に『こっち来ないでぇぇぇ!』と泣き叫ぶ金髪の執務官が浮かびましたが無視しました。

「じゃ、乗り込もうか」
「はい。しかしなんでしょうね、この『転生の城』という看板は……」
「この城の名前じゃないかな?」
「転生……どういう意味でしょうか?」

 トーレの言葉に小柄な少女は『そんなの決まってるじゃん』と眩いばかりの笑顔を見せました。

「転生……そう輪廻転生。つまり、『ここが俺らの墓場だ!』って言ってるんだよ」
「成程。凄まじいマゾヒスト集団なのですね」

 少女の言葉にトーレは納得の頷きを1つ。
 違ぇよ!と中からなんか否定の叫びが聞こえましたが2人は無視して乗り込みました。


  ●


 少女達が雑談していた城の扉の内側には1人の男が立っていました。

「ククク、この『物質硬質化』の能力を持つ俺の固めた扉は誰にも破壊する事など出来ぬ!」
「ていやー」
「グワ―――ッ!?」

 扉をぶち抜いて来た蹴りに粉砕されました。


  ●


 城の中に3人の男女が威風堂々といった佇まいで存在していました。

「ククク、『物質硬質化』のヤツがやられたようだな……」
「だがアイツは我等の中でも最弱……」
「管理局員如きに負けるとは転生者四天王の面汚しよ……」
「ていやー」
「「「グワ―――ッ!?」」」

 まとめてパンチで吹き飛ばされました。
 己の能力を披露する暇すらありませんでした。哀れですね。


  ●


 城の最奥に1人の髭を生やしたダンディズム溢れる親父が豪奢な椅子に座っていました。
 彼は着込んだ漆黒の鎧に付いたマントを靡かせながらダンディズムに立ち上がりました。
 そのまま彼はダンディズム溢れる笑みを浮かべると眼前の小柄な少女と紫髪の女性を見据えました。

「よくぞ来た、管理局の者よ。貴様らが我が配下の四天王を倒したという猛者だな」
「え?四天王なんか居たっけ?」
「さっき下の方で師匠が轢いたなんか雑談してた連中ではないでしょうか」

 男はダンディズムに少女達の囁きを無視して己の言葉を続けました。
 彼は両手を広げながら、何もない空間からダンディズムな大剣を取り出し構え、吼えます。

「だが奴らなど所詮ザコ。我には到底及ばぬ!真の王者の格というものを見せて」
「ていやー」
「グワ―――ッ!?」

 錐もみ回転しながらダンディズムに男は頭から壁にめり込んでビヨンビヨンし始めました。
 実にダンディズムに溢れた光景ですね。


  ●


「ククク、よくぞキングを倒した。私こそが真の首領メリクリウ――」
「ていやー」
「グワ―――ッ!?」


  ●


 崩れ落ちる城を背景として少女とトーレは荒野を歩いていました。
 その手には先に大量のボロ雑巾と化した犯罪者を括り付けた縄がありました。引き摺られる音が痛そうですね。
 真の首領が『私だけ地の文無し…』等と嘆いていましたが少女達にとっては知った事ではありませんでした。
 少女は天を仰ぎながら、溜息を1つ。

「長く苦しい戦いだった……」
「ふむ。これなら『誘爆戦隊クラナガン』の放送に間に合いそうですね」
「あ。マジで?急いだかいがあったねぇ」
「えぇ、朝御飯中に、『あ、そうだ悪の組織を滅ぼそう』等と言いだすものですから焦りましたよ」
「いやぁ、思い立ったら吉日っていうじゃん?」

 あはは、と朗らかに笑う気紛れで悪の組織を滅ぼした少女。
 相対していた縄の先の方々が涙を流しますが現実は無情です。慈悲はない。

「じゃ、帰ろうか」
「では転送ポート起動します」

 転送ポートに鮨詰めにされた四天王とかキングが悲鳴を上げますが、トーレは蹴飛ばして押し込みました。
 そしてポート横に備え付けられたパネルを操作して、起動。
 そのまま犯罪者達を収容所に直接シュート!超エキサイティン!しました。豪快ですね。

「では私達も帰りましょう」
「うん。さーて、今週の『誘爆戦隊クラナガン』は誰が爆発に巻き込まれるんだろうねぇ」
「先週の次回予告から予想すると恐らくはまた司令官が基地ごと爆発するのでは?」
「あぁ、今度は次回予告で入院中の司令官が『良いから発破手術だ!』とか言ってたんだっけ」
「えぇ、その後病室が爆発したシーンも入りましたし、間違いないかと」

 楽しみだねぇ、と少女とトーレは転送ポートに乗り込み、起動しました。
 転送は一瞬です、そして転送を終えて窓の外を見ると、なんかでっかい船が浮いていました。

「……さぁて、帰って『誘爆戦隊クラナガン』見ようか」
「いえ、師匠。事件です。多分原因は妹ですが」
「貴方の妹が原因かよっ!?止めてよ!?私早く帰りたいよ!」

 はいはい、とトーレは抗議してくる少女を宥めながら耳に手を当てます。
 念話を目の前でふよふよしてる船に居ると思われる妹に飛ばしているのですが、返って来たのは雑音でした。

「……駄目ですね、連絡が取れません」
「あぁもう。とりあえずアレ何?」
「『ゆりかご』ですね。過去聖王が使っていたと言われるトンデモ戦艦との事です」

 トンデモと聞いた瞬間少女が目をパチクリとさせました。
 それからトーレに向かって前のめりになりながら、瞳を輝かせて問いを投げかけて来ます。

「凄いの?」
「そりゃあもう」
「硬いの?」
「そりゃあもう」
「殴っても壊れない?」
「そりゃあも――え?」
「マジで!?じゃあ、ちょっと行ってくる!」

 窓のガラスをぶち破り、一瞬で少女は視界から消えて行きました。
 とりあえずトーレは『やっちまったわい』と心の中で思いながら、目の前に1枚のウィンドウを展開。
 多分あの『ゆりかご』の中に居るであろう妹へメールを送っておきました。妹想いですね。
 ちなみに内容は、

『骨は拾ってやる』

 でした。えぇ実に妹想いですね。クールですね。



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【03.Sts完!大団円!勝利の未来へレディーゴー!なんです?】


 『ゆりかご』内部では現在、戦いが佳境に入っていました。
 相対するのは管理局のエース、高町なのはと聖王の写し身たるヴィヴィオと呼ばれる少女でした。
 彼女達は幾度と交差し、ぶつかり合い、そして遂に決着の時を迎えます。

「助けて、ママ……!」
「助けるよ、いつだって、どんな時だって!」

 救いの願いを込めた桜色の極光がヴィヴィオを撃ち抜き、その身を縛っていた枷を打ち砕きます。
 するとなんという事でしょうか。
 大人の姿をとっていたヴィヴィオの姿がみるみる内に縮んでいくではありませんか。
 子どもの姿となったヴィヴィオは己の力で立ち上がり、なのはへと歩み寄ろうとします。
 そんな姿に胸を打たれたのか、なのはは涙を流しながら、ヴィヴィオを抱きしめました。
 おお、まさに感動のエンディング。これで終わりならば誰もがハッピーエンドです。
 然れどもそれを許さぬのが悪。
 それを阻止するのが悪の本懐。
 そんな悪が今、『ゆりかご』の下層部にて両手を振って慌てていました。

「ディ、ディエチちゃん!陛下がやられちゃったわどうしましょう!?」
「落ち着いて、クアットロ。ほら、まだ色々策が残ってるでしょ。頑張って、お姉ちゃん」
「ハッ!?そ、そうよね!お姉ちゃんなんだから私!頑張らないと!うん、頑張るわ、ディエチちゃん!」

 眼鏡をかけたおさげの姉――クアットロの言葉にディエチと呼ばれた少女は額に手を当てて溜息を1つ。

「ドクターとウーノ、トーレが居なくなってから心労でこれだもんなぁ……」
「どうかしたの、ディエチちゃん?お姉ちゃん頑張ってるわよ!ほら、頑張った!」

 ガションガションと音を立てて機械の兵隊達が聖王とその保護者を始末せんと王座へ向かい始めます。
 このままではハッピーエンドどころかバッドエンド確実です。クアットロは心の中で拳を握りました。

「フフフ、これで私達の勝利は確定!どうかしら、ディエチちゃん!?」
「はいはい。頑張った頑張った」
「やふん」

 頭を撫でて上げるとクアットロの表情が崩れて姉の威厳ゼロになりました。それでいいのでしょうか。

「あーもう、前はもっと冷徹策士キャラだったはずなのにどうしてこんな事に……」
「何か言ったかしら、ディエチちゃん?お姉ちゃんは今でも策士よ!バリバリよ!」
「そうだねー、バリバリ」
「マジックテーブを耳元でバリバリさせるのは止めて!」

 耳を塞いでイヤイヤと顔を左右に振る姿からはどう見ても姉オーラを感じられません。
 そんな頼りない姉を半目で見ながら、なんだかんだで見捨てられないディエチはまた溜息を1つ。
 そしてマジックテープの残響に悶えるクアットロから視線を外して、船の状態を映すモニターを見ると、

「ねぇ、クアットロ。なんか『ゆりかご』上空に高速で接近する物体があるんだけど」
「うう、耳が……え?何?接近?フフフ、大丈夫よ!この『ゆりかご』が外部からの攻撃でなんとかなるわけ――」

 ズドーンと音と衝撃が体を震わせると真横に馬鹿でかい穴が開きました。
 えぇー、と2人して開いた穴から上空を覗くとそこには笑顔の小柄な少女の姿がありました。

「どうも、私です」
「「ゲェ―――ッ!?地上本部のォ――!?」」

 彼女はヒマワリの髪留めに陽光を反射させながら、笑顔で、

「やー、本当に殴っても一発じゃ壊れなかったね!頑丈だね!素敵だね!次は本気で行って良いよね!?」
「やめてェ―――!?」

 少女の『今のはメラゾーマではない。メラだ』的な発言に悪2人は戦慄します。
 ちなみにそんなやりとりの間になのはと内部に潜り込んでいたはやて達は少女の開けた穴から脱出していました。
 抜け目ありませんでした。
 そして少女が笑顔で拳を振りかぶったのを見て、クアットロはその場に崩れ落ちます。

「うう、ごめんなさい、ディエチちゃん。あの子が居ない内に作戦を完遂する予定だったのに……」
「仕方ないよ、クアットロ……大丈夫、最後まで私が一緒にいてあげるからね……」

 言いながらもディエチはその両手に巨大な砲を構えました。
 なんと彼女はあの理不尽の塊である少女を迎撃するつもりなのです。
 ただ家族を守る為に。己が身を危険に晒してでも。
 なんという姉妹愛なのでしょうか。まあ無駄な努力なのですが。

「いっくよー」
「クアットロ、逃げて!」
「ディエチちゃん!?」
「ウオオオオオオオオオオオオオオ!!!」

 瞬間、世界に光が満ちました。


  ●


 言うまでもなく『ゆりかご』は見事轟沈。
 己の舟が一撃で真っ二つに折られて粉微塵になる様を見てヴィヴィオは『悪魔だ……』と呟いたそうな。
 なお、クアットロとディエチ両名は瓦礫に頭から突っ込み、天地逆さまに下半身だけ出して犬神家しているところを救出されたとの事でした。
 ボロボロでしたが命に別状はなく、彼女達はその後、

「もう二度とあんな事はしないよ」

 と目から光を失った笑顔で誓い、管理局に下ったそうです。トラウマって怖いですね。
 ちなみに他の妹は『ゆりかご』浮上前にチンクと名乗る少女達と共に既に投降済みでした。
 クアットロが心配で残ったディエチの姉思いっぷりが伺えますね。
 その後、ヴィヴィオがなのはの養子になったり、祝勝パーティに小柄な少女とトーレが乱入してフェイトが発狂したり、はやてが少女を『海側』に誘おうとしたりして六課全員から集中砲火を喰らった挙句病院送りになったのはまた別の話である。


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【04.そんなこんなで後日談なんです?】

 ヒゲモジャーなおっさんことレジアスは事の顛末が記載された書類を片手に溜息を吐きました。
 彼はとある大病院の個室に置かれたベッドの上で、隣に立つ眼鏡をかけた凛々しい女性へと目を向けながら、

「で、これで終わりなのか」
「えぇ、これで戦闘機人事件は終わり、ですね。スカリエッティも随分前に『海』に捕まっていますし」
「これ以上、何かが起こる事もない、か……最高評議会は?」
「相変わらず『ゲイズちゃんマジ天使』とか言いながらファンクラブの運営にのめり込んでいるようです」
「あの三馬鹿どもはアテにせん方が良いな……地上の復興の目途は?」
「それはもう。あの子も張り切って瓦礫撤去等をしてくれていますよ。今回はなかなか楽しめたそうで」
「そうか……アイツの殴った射線上にガイアの大穴みたいな物が出来たと聞いた時は胃に穴が増えたが……」
「今後はそこも観光名所として使えると、考えています」

 そうか、とレジアスは天井を仰いだ。

「ゼスト達は?」
「彼等も今は復興の手伝いですね。犯罪者集団もまとめて退治されたせいで、暫くを息を潜めていそうですし」
「ふむ……アイツの気紛れな行動もたまには役に立ったという事か」
「素直に褒めてあげれば良いのでは?」
「ツケ上がるからしてやらん」
「お父さんらしい」

 クスクスと凛々しい女性が楽しげに笑いを零しました。時折見せる柔らかい表情が実に可愛らしいですね。

「オーリス。今は仕事中だ」
「はいはい。それじゃあ、次は今後の予定ですが――まぁ、まずはさっさと体を治してください」
「む……うむ。そうだな……」
「それと、そろそろ来ますよ?」
「何がだ?」

 オーリスと呼ばれた凛々しい女性はウィンクしながら片手の人差し指を立ててみせると、

「愛娘がですよ」
「レジアス中将、お見舞いに来ました―――ッ!」
「失礼します」

 ガシャーン!と派手な音を立てて個室のドアが粉砕玉砕大喝采されました。粉微塵ですね。

「Oh...」
「中将、どうですか、調子は!?あ、フルーツ沢山買ってきましたよ!今剥きますからね、トーレが!」
「はい。お任せを、師匠」
「というわけで、私は仕事がまだ残っていますのでごゆっくり」

 ちょっと待て、という言葉すら出す暇もなくそそくさとオーリスは病室を後にしました。
 後に残るのはベッドに横たわるレジアスとその横に椅子を持って来て陣取る小柄な少女とトーレだけでした。

「レジアス中将、治ったらラーメン食べに行きましょうね!美味しいラーメン屋さん見つけたんですよ!」
「私も同伴しましたが、なかなかのものです」
「そうか……」

 はぁと諦めた様にレジアスはまたもや溜息を吐き、しかし口元に小さく笑みを浮かべながら、

「まぁ、片時の平穏だ……少しぐらいならば良いだろう」

 と、ほんの少しですが平和になったミッドチルダの空を眺め、呟くのでした。
 わぁい、と後ろで笑顔の少女と無表情なトーレが両腕を上げて喜びます。
 その声にレジアスは更に苦笑。
 今日もミッドチルダは幸せな日々を送っていました。









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【ex.主人公がワンパンマンの世界に行ったら、なんです?】


 小柄な少女とハゲた普通の感じの男性という地味な2人組がちゃぶ台を挟んで向き合っていました。
 それぞれの後方には紫髪の女性と金の短髪を持ったイケメンサイボーグが控えていました。
 少女とハゲた男性は苦虫を潰したような表情で同時に卓袱台を叩きます。
 手加減したつもりが相乗効果のせいで卓袱台が木端微塵に砕け散りました。卓袱台は犠牲になったのだ……。
 そして彼女達は表情を変えずに、そのまま悶絶するが如く声を零しました。

「「キャラが被ってる……!!!」」
「「ねーよ」」

 なんか心で通じ合った2人組達でした。




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あとがき

まずはここまで読んでくださった方々に最大限の感謝を。

なんか終わる予定だったのにふと脳裏に浮かんだネタを思わず書き綴ってしまいました。
これにてSts編完!これでスッキリ完結出来るね!やったね、ころちゃん!

というわけで今度こそ完結ですとも。多分恐らくきっと。えぇきっと。(白目)

最後のはついカッとなってやりました。
なんだか似ているという意見があったので……つい……。
いや、確かに元ネタはあれなんですけどねっ。

もう一作、ハーメルンで投稿しているなのはネタをアルカディアにも投稿しようか悩み中であります……。
うぅむ。もしかしたらそちらを今後は習作として投稿させてもらうかも?

なにはともあれ、それでは皆さん、また次回がありましたら、またいずれ。


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