はじめまして かわいいわたしのおともだち
「ヒョ…ヒヨヒヨ」
つぶらな瞳は愛らしくて、金色に輝く羽毛は柔らかかった。メスだ!
柔らかに光を跳ね返すその姿は、日に透かした蜂蜜のようだった。
くるくるとスプーンでビンをかき回し、泡を抱いた蜂蜜を日に透かしたようだった。
こんにちは、ナナです。
実は前回のプレゼントより 一年 が過ぎました。え?展開が速い?アーアーキコエナーイナーンニモキコエナイナー。
っちゅー、わ・け・で!便宜上ナナちゃん4歳です。おめでとう自分!ありがとう青春!さようなら去年の服!
(この年齢は服着れなくなるの早いよね。実家にある幼稚園の制服なんて、里帰りしたときに見て「小人?」とか言っちゃうもん)
まあ、実際と出会った方々との親密度がホンノリとアップしたり、お勉強したりしてたぐらいなんだけどね?
勉強っていっても、4歳だから幼稚園では「たしざんひきざん」くらいだし…こっそり家政婦さんにお買い物のときに
買い足してもらう学術本だけが私の知識を足してくれる。
もう初心者の館でクラウド以上に説明できちゃうわよ!?・・・ふふふ、俺も分裂気味だ(うろ覚え)
さてさてさて、ここ一年ダイジェストで出来事を語ろうかと思ったんだけど…特に動きがないんだよねぇ…。
時々自分が現実世界に帰るの忘れるくらい何事もないんだもん、マイッタマイッタ!
とりあえず「宝条先生美形変化(ちょっとやつれ気味の黒髪セフィロス)」とか「パパ、親馬鹿に磨きがかかる」
「家政婦さん、放火未遂(3件)」以上三本でお送りしました!、ジャン・ケン・ポン!ウッフフフフ!
そう、そうなんだよね、あのスットボケ具合でその場にパパと私がいるのにボヤ騒ぎになったことがここ一年で三回も…。
ある意味尊敬するなぁ。家政婦さん。しかもパパも家政婦さんも気にしてないし、や、気にしようよ!
…ってそんな風に考えていた時期が俺にもありました…。二回目あたりで 「ああ、気にしちゃだめなんだな」って悟りました。
・・・・・・・・・・・・・・・は!?やばいやばい、黄昏てた…。
で、以上がここ一年で起きてた事柄なんだけど…私が起こしたことは説明してないんだよねぇ~…。
まぁ、説明すると…称号(あだ名)もらっちゃいました、神羅のOLさんたちから。たしか「プティ・ソルシエール」ってやつだったかな?
フランス語?かなんかで「ちいさな魔女さん」って意味らしいよ。
称号もらったきっかけは、パパの親馬鹿振りでした…。
-再現映像-
「さあ、ナナ!さすがに攻撃魔法は自宅では訓練ができないからな!ここでおもいっきりブチかましなさいっ!」
「はい!パパ!」
広がる研修グラウンド、目前には練習用人形がぽつんと立っている。
おいおいおいおい、娘の魔法練習のために神羅施設個人使用ですか、凄いな大佐。は、早く上達して出て行くから!
うちのパパが迷惑かけてすいません!すいません!
心の中で滂沱の涙を流しつつ土下座をする、マジ…や、ホントすんません…。
けれど、そこはホラ!新兵なみの精神キャパがあるといわれた私!上達なんて早いことよ!?なーんて嘯いてたらさー
マジで上達はえぇの。
素でビビったよ。だってその日のうちにファイラに行けたよ…。人形相手ってAP高いのかしら…。
まあ、上達早いのには理由があったみたい。元々、魔法っていうのは一般の人たちには本当にめずらしいものみたいだった。
実際道具屋で売ってたりはするんだけれども、大抵皆さんは魔法なんか使わないところ、イワユル平和な地域でしか行動を
していないみたいです。平和つーても暴力程度でなんやかや解決できるくらい?
そういやゲーム中でも、頻繁に町を行き来する一般人はかなり少ないみたいだったしねー。乗用車なんてあまりなかったし、
存在しても舗装した道路を走るのを前提。あとはACとかゲームのムービーで出てきたトラックとかそういう貨物輸送タイプ。
それと、傭兵(ガードマン)が乗りこなすデイトナのようなごっつい単車か、装備も載せれるバギーみたいなの。
・軍
・輸送業者
・傭兵
ぐらいしか頻繁に都市間を移動してない様子。一般の方が移動する際はそれらにくっついていく、見たいな感じみたいだ。
一部乗り合いバスがあるらしいけど…それも護衛されてるみたいだしね。
イコール、魔法を携える必要のある一般人は少ない。という結論に達したわけで。
ゲームを中継して魔法に親しんでいた私は「このマテリアを発動させれば、この結果が出る」という意識を持つのが
マテリアに慣れていない新兵よりはカンタンだった。というわけです。多分そのうち追い越されるけどな!
幼女ナメンナ!
そうして、私は着々と「ちいさな魔女さん」のあだ名がついていくわけでした。
と、もう一つのあだ名も。
Song dedicated to you
FF7:名無しのNANA- 蜂蜜色のお友達
「ちょこぼ」
「クェー」
目の前で左右に行き交う黄色く巨大な鳥を見上げる。柵に上った私の倍はありそうだ。
「あて(痛)」
「クェッ」
求愛ダンスを踊られ、その拍子にチョコボから飛び出たマテリアが額に当たる。
「しょうかんちょこぼてにいれたー」 いてぇよ。
「いいなおねえちゃん」
「いいなー」
横三本に組まれた柵の真ん中に上り、しがみつき、召喚マテリアを日に透かして眺めていた私の足元から、幼い声が聞こえる。
「グリングリン、クリン」
小さなまんまるの目がふたそろい、私を見上げていた。勢いをつけて柵から降り、ワンピースにうっすらと移った
柵の塗料を手ではたく。
「おねえちゃん、このマテリア育てるからさ。育ってこどもマテリアができたら送ってあげるよ」
「ほんとー?」
「おんとー?」
左右対称に首をかしげるちびっこたちはナマラかわゆい。思わず撫で回す。ういやつめういやつめっ!
そうしてチビたちとほのぼのと親交を深めているとき、太い声が厩舎横の民家から聞こえてきた。
「ライゼンのお嬢さん!用意できましたよ!」
「はぁい!グリンおじさまありがとぉ~!」
用意、それは。
「じゃっよろしくね!」
「はいはい、お嬢さん。今度は何匹ほど?」
「10ぴき。おれいはちゃーんとするからね!」
「期待してますよ」
ミッドガルと外をつなぐ軍用道路の一角、そこに私と数人の兵士がいる。私が彼らに手渡したもの。グリンが用意してくれたもの。
-チョコボよせ-
魔法を扱うことが楽しくて、毎日毎日練習場の隅を借りて魔法修行に明け暮れた。
当初はジャマ扱いされたりしたけれど、「可愛い幼女の応援+懐き」に勝てるヤツはいないね…。
「おにいちゃんたちすごいね!」「がんばれぇ!」「・・・。(尊敬のまなざし)」「ナナちゃんもっとまほううまければ
おにいちゃんのおけが、なおせるのかなぁ…」などなどなど…えぇ、がんばりました。ぶりっこを。
そしてパパの人柄の良さも乗算して、人心掌握完了。
新兵統括から「お嬢さんが来てから統率具合がいい」とか言われたらしいですよ?パパ有頂天。ちょっと最近ウザい。
ま、完璧に掌握ってわけでもないけれど。(そりゃ万民から好かれるのは無理でゴンス)かなりの兵隊さんと仲良くなったわけで。
プティ・ソルシエールの名前を戴いて、さらに次のあだ名。
「最年少チョコボブリーダー」
…ポケモンっぽいって思った。
最初は単なる冗談だった。遠征に行く兵士さんの一人に、お守り代わりとしてチョコボよせを渡して、さらに冗談として
「チョコボ捕まえたら牧場に送ってよ」と笑っていたら。
本当に送ってきた。素ビビリ。
人間の姿に興味を示したチョコボが、遠巻きにこちらを伺うことは良くあることらしい。で、さらに近づかせるためにはマテリアが必要。
ってことなんだそうだけれども…。で、丁度戦闘していると、チョコボが興味津々でよって来るそうだ。
で、戦闘終了ついでにサックリとチョコボを送る。以上。
初めてのチョコボに私は大喜び、その姿見て兵隊さんが大喜び(デッレデレ)。そして無駄知識「海チョコボ」を持つナナちゃんとしては…。
「育成しなきゃFFユーザーじゃないっしょ!」
現在着々とカップリング成功。通販にて温室栽培の実を購入しつつ(なんかね、販売元がアイシクルエリアなんだけど…)がんばっております。
電話と手紙とインターネットで繋がれる厩舎と通販店と私。大佐の娘という最大のコネの利用。
ちなみに兵隊さんへの「おれい」とは「マテリア育成メモ」を渡すこと。まあコレにもちょっとした話があるけどそれは割愛。
ツテにツテを辿りまくって手に入れたカラブの実で、やっと山川チョコボを育成、通販で買いあさったシルキスの野菜を与え続けたチョコボを
ゴールデンソーサーに貸し出ししてお金を稼いで野菜を買って…。おお、ナイスサイクルじゃないですか!
さらにちなみに、ゴールデンソーサー側は私が子供であることを知らない。まあ、メールと手紙だけのやりとりだからね。
そして、私が今求めているのはゼイオの実とAランクチョコボ。そして私が見送った兵士はアイシクルエリアへ…。
あとはニューフェイス「ツテ」であるゴールドソーサーのディオ園長に「ゼイオの実」をお願いしている。まあ、実がある場所は教えてあるし
そんなに遅くもなく手に入るだろうね。今貸し出ししてるメス山川チョコボ、ゼイオの実を規定数送ってくれたらレンタル料永久半額って
条件つけたし。あの人金にがめついし。
「くっくっく、黒マテリア。細工は流々仕上げを御覧じろ、待ってなさい海チョコボ」
アーッハッハッハッハッハッハッハッハ!!
いつの間にかゲンドウポーズを取っていた私は高らかに笑う。
きっと居間で家政婦さんが「今日もナナちゃんは元気ねぇ」って言ってるだろう。多分、いや。きっと。
「これはこれはナナお嬢さん!ようこそいらっしゃいました!」
「ごきげんようグリンおじさま。わたしのチョコボたちのかげん(加減)はどうかしら?」
「とてもいい具合でございますよ!…それで、お電話で伺った件ですが…」
「あらおじさま、ナナがうそをいうこにみえるの?」
「い、いえいえまったく!ですが以前よりごひいきにしていただいておりますが…之ほどまでとは…いやはや」
恐縮しきって子供に頭を下げ続ける大人。私をここまで連れてきてくれた運転手(新しく雇ってもらった、結構腕もたつと噂)が目を剥いている。
目線を彼に向けて微笑みながら「ナナ、これからきゅうしゃ(厩舎)にいってきますね。うんてんしゅさんつかれてるでしょうから、くるまでまっていて
くださいますか?」と告げる。私を「大のチョコボ好き」と認識している大多数の大人のうちの一人である彼はさっさと車へと戻っていく。
厩舎にひしめくチョコボたち、そのほとんどが私の持ちチョコボ。しかも高ランク。アイシクルエリアはダテじゃなくてよ!
そしてチョコボたちの奥まったところにいるツガイのチョコボ。美しい漆黒の羽を持つ雄チョコボと、どこか流線的なすらりとした雌チョコボ。
さらに私の手提げに入ってるのはゼイオの実。しかも5個。完璧だ。
「じゃあグリンおじさま、あとはよろしくたのみますわ」
「はいはい、よろこんで!」
手提げを手渡すと、オジサマさらにびっくり。
「こ、こりゃゼイオの実じゃないですか!…こんなものを何処で…」
「じゃのみちはへび(蛇の道は蛇)ともうしますでしょう?…うふふ」
まあ、子供がここまで怪しく笑えば、勝手に大人は勘違いしてくれるから、これ以上の追求はないだろう。
それに…。
「いっぴきでも“せいこう”すれば、ナナのすべてのチョコボをおゆずりする…そうやくそくしましたわね?」
グリンがここまで腰が低いのはこの条件のおかげだ。
私は最強の足となる海チョコボが生まれれば、あとのチョコボはどうでもいいかな、とか考えている。
…最近の私の動きにパパが不振がってるからなぁ…いや、私の挙動はとくに咎めないんだけど、流石にこの年齢での
金額の多用は流石に良くは思ってないようで…。
一匹でも海チョコボが生まれれば、その子だけを所有しよう、ということで…。
私はグリンおじさまに実を預け、宿も兼ねている彼らの家で一晩を明かすことにした。
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パンを焼く匂いと、チョコボの鳴き声とは違うかすかに高い小鳥の声。差し込む朝日。
ちょうどカーテンの隙間から射す朝日が、私の下瞼辺りに当たり、明るさで目を覚ます。
いやに胸の鼓動が早くて、目覚めがいい。
「ん…」
寝返りを打つと、隣に静かに眠る運転手さんが。うふふ、ちょっとムキムキ目のおじさんなんだよね…可愛い(ゴクリ
私が起きた気配に気づいたのか、静かに体を上げる運転手さんに、互いに頭をカクリと下げて挨拶。
「「おはようございます」」
互いに衝立に隠れて着替え終わると、私は自分でも分からない衝動に突き動かされて、せわしなく部屋から飛び出す。
「お嬢様!」って声が聞こえるけど無視無視!
「なんだろう、…胸がドキドキする」
誰もいない家から厩舎へ向かうと、ちょうど駆け足で出てくるグリンおじさまと鉢合わせになった。
二人してその場で足踏みをして少しのけぞる。
「おお、ナナお嬢さん。ちょうど呼びにいこうと思っていたんですよ」
「じゃあ…」
「ええ、カップリングは成功です、しかも2つも卵が!」
いつもの腰の低い態度は消え去り、出産という事実に浮き立った仕草で私に状況を説明していく。
「まあ、ここではなんですし、さあ。いらっしゃってください」
「ええ」
私の心も酷く浮き立ち、厩舎の奥で静かにうずくまるチョコボに近づく。私の接近に近づいたチョコボは少し神経質な目を送るけれど、
隣のグリンおじ様を見て、フイと視線を外した。
目の前の藁に埋まる、すこしざらついた、ダチョウの卵より一回り小さ目の卵と、それより二回りは大きい卵。
「おじさま、ふかするのはどのくらいかしら?」
外側からは見えない、魂が蠢く卵を見つめながら後ろに立つグリンおじさまに聞く。少しうなるような声がしたあと、「一週間くらい…」
と返された。
流石に一週間もこちらにいるわけにもいかず、「割れる兆候があったら直ぐに連絡してほしい」と告げて、私は家路についた。
何故だか分からないけれど、きっとあの卵のどちらかが私が求めていた海チョコボだということが分かる。
さっきの有名ジ○リ発言(胸が~)にもツッコミをいれないほどに、本当に胸が高鳴って、どうしようもなくなった。
綺麗とはいえない舗装された荒野の道路を進み、景色を流していく窓にはりついて、私は遠のく牧場を見つめ続ける。
さびしい
こいしい
まるで心の中に閉じ込めた郷愁のような気持ちが、牧場が小さくなっていくのと比例して大きくなっていく。
黙って牧場を見つめている私を鏡越しに見た運転手さんが、複雑な顔をしてどもりながら慰めてくれる。やさしい人が多くてよかったな。私の周り。
そう心の中でつぶやいて、フロントガラス越しに見える巨大な都市へと視線を向けた。
試験管が目の前で揺れている、タプタプと揺さぶられる液体の動きは少しずつ小さくなって、やがて止まる。
フッと意識が遠く、草原へと向かう。金色に輝く小さな生き物と、私が歩く夢。
きっと楽しい…と思い込みたいのだが、その夢の中で私たちはなにやら不穏な話をしている。
話?チョコボと?
「ナナ?ナナ?」
「へぁ!?」
「どうかしたのかね」
小さな白衣を着た私の目の前で、液体を二分し沈殿させていく試験管。
隣に、少しくたびれた中年の色男。
「あ、ああああああ!!」
「混和しなおし、だな」
「うへぇぇぇぇぇ…」
この薬品は短時間で混和させて凝固材を入れないとだめなんだよぅぅぅ…。
しかもこの液体は、数種類の薬品をさらに混合させたもの、それらに種類をさらに混合させたもの。
さらに「失敗なんてするわけない」とタカをくくって、この試験管一本分しか作ってない。
「つくりなおしぃぃぃぃ~」
「ご愁傷様、だ」
「ほうじょうのおじさまぁ~」
「甘えてもダメ」
「ちぇー」
メモが貼り付けられた液体を数種、試験管立てから取り出し、ゆっくりと混和させていく。
普段と同じ、幼稚園に通い、本を読み、宝条の小父様の下へいき、実験を手伝う(ジェノバ小母様と話しながら)。
一日過ぎ
二日過ぎ
「どうかしたの?ナナちゃん」
「あら、どうもいたしませんわ。ごしんぱいしてくださいましたの?うれしい!ありがとう」
「う、う、ううん!ナナちゃんがげんきないから…どうしたのかなって」
「それは しんぱいしてくれた ってことですわ。とてもうれしくかんじます」
「えへへ…」
「うふふ」
はい、偽者ご光臨。私はどっかの「さ○らちゃん最高ですわぁ!」のお嬢様かYO!
ちなみに幼稚園ではずーっとこんな感じ。幼稚園の子たちに心配されるほどの「魂抜けっぷり」、ちびっこにバレるってことは
大人にもバレてるってことで…まあチョコボファームから帰ってきてからの私の変調に特にビビリ入ってるのはパパだけどね!
まあ最近は…。
「ナナ!ナナ!チョコボにでもいじめられたのかい!?よし、早速ファームに圧力をかけt」
「落ち着いてパパ、パパ落ち着いて!」
ナナの こうげき! ひっさつわざ「フライパンアタック」
ライゼンたいさに クリティカル!!
クワーン
「おおおおおおおう!?」
「まあ、ナナちゃんたくましくなって…」
悶絶するパパをほうっておいて、私の成長に涙する家政婦さん。もう慣れた。
人生って諦めと絶望と、ほんの少しの幸福と希望でできているんだよ。皆、知ってた?
そんなこんなで五日目の朝、私に買い与えられたPHSが早朝を示しながら明るく輝いた。
「グリンおじさま!?」
『ナナお嬢さん!大きいほうの卵が割れる気配がでてきましたよ!』
「えっ…そんな、間に合わないんじゃ…!」
時計を見上げると、明るい笑い声が電話から漏れる。
『大丈夫、卵が割れて親を認識するのはあと五時間ほどになります…十分間に合うでしょう』
「ええ、ええ間に合うわね、直ぐ参ります。朝食は取らずに参りますから、軽食を用意していただいても宜しいかしら?」
『ハハハ、もちろん。おいしいハムをたっぷり挟んだサンドイッチを用意してますよ』
「まあ…ふふふ、期待していますわ。それでは」
『はい、お待ちしております』
ピッ
「はぁー…」
やっべ、ロリ口調忘れてた。超漢字つかってたよ。向こうは気づいてないみたいだけどヤッバイヤバイ。
PHSをポシェットに詰め込み、私のトレード衣装(マーク)であるワンピースを着てシュッパツ。
メモ用紙に「チョコボがうまれそうだとききました、きょうは、わがままをいわせてくださいね ナナ」と左手で書いてきた。
利き手だとどうしても普通の『大人の字』になっちゃうからなぁ…。
そうして運転手さんを呼びつけ(超ゴメン)牧場へと飛ばしてもらう。あちらに着くのは二時間後になりそうだ。
・
・
・
厩舎にサンドイッチが詰められたバスケットとアルミのマグカップ。注がれたココアを飲みつつおいしいサンドイッチを頬張りながら、
私はひび割れ、パキパキと細かな音を立てる卵を見つめていた。
けれども、あのドキドキ感はそこそこにあるのだけれど、私が気になっているのは割れる気配を見せない、小さな卵。
「キュウ」
大きな卵からくちばしが現れた、いまだ黄色さを残すくちばしの先端は、黒い。
「山川チョコボね」
「クウ」
「おお、良い目をした子ですな」
「ええ、…ではやくそくどおりに」
「本当によろしいので?」
「ナナ、うそはいわなくてよ?」
「はい、そうでしたな。申し訳ありません…ですが、お名前はナナお嬢さんがお付けください」
「ナナが?」
「ええ」
殻から這い出た、まだ少々グロテスクさを残す雛を抱き上げたグリン小父様を見上げる。
「…そうね、カカオでいいんじゃないかしら?」
カカオ99%ってさ、思考が真っ黒になるような味だよね。
短絡的な思考が子供らしいと思ったのか、小父様が笑顔で頷いた。
「ええ、ええ、可愛い名前ですね。この子にぴったりだ!」
「クウ!」
「まあ、ふふふふふ」
いまだ生まれる予兆がない、小さな卵。まだ安心だろう、と小父様はヒナを育成室に連れて行ってしまった。
取り残された私は、いまだ胸を騒がせる小さな卵に釘付けだった。
ピチ
「!」
ええええええええええ 生まれる予兆がないってさっきいってたやん!小父様!カンバックプリーズ!プリーィィィズ!!
心の中で私が暴れるが、なぜか体は動かず、瞳も卵に釘付けになっている。
パキパキ ピキ 「クゥ」 ペキ
さっきの黒チョコボのヒナよりも卵の割れが早い。心臓の動きは激しさを増していく。
「クァ!」
卵の中で首を振ったのか、勢いよくカリメロのような卵の上半分が飛んでいく。
やはりグロテスクまじりの小さなヒナ。肉色の地肌をチョボチョボと覆う、金色の羽に、普通のチョコボよりも白っぽいくちばし。
「…生まれた」
私の、私だけの、チョコボ!
胸の高鳴りはすでに息を潜め、私は穏やかな表情で、周囲を見回すヒナを眺める。
ふふっ、他の大きなチョコボを見て、のけぞりすぎて後ろに転がってる。かわいいなぁ。
そうして眺めていると、のんびりと歩いてきた小父様が私の前を覗き込んで大騒ぎ。彼らにとっても海チョコボは貴重らしい。
また育てたいと思うでしょうけれども、私が渡したゼイオの実はすべて使い切らせたし、入手ルートも私自身分からない。
ま、クラウドがいつか育てにくるだろうから、そのときまでガマンってとこね、小父様?
指を伸ばして、ヒナの毛づくろいをする。卵の中の水気が去り、ふわっとした羽毛が肌を覆っていく。
うわぁ、可愛い。
「クウ!ヒヨ!」
「まだクエッって鳴けないのね。可愛い…」
子猫ほどの重さのヒナを抱き上げ、フカフカの藁の上に乗せる。
その真正面に私もうつぶせになって、頬杖を着いた。
グリン小父様はこのファームのチョコ房を解約する手続きのために家に戻っていて、ここにはチョコボとヒナと私だけ。
やさしい時間が流れる。
だがやさしい時間をそのまま流す私じゃない。
「ウホッ いいチョコボ」
☆台☆無☆し☆
「クァ!」(乗らないか)
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
なんか幻聴が聞こえたような。
ハハ、疲れてるのかしら、このまま寝ちゃおうかな。「クウ!」はいはい、寝ませんよーウフフ可愛いなぁチョコボは、もー可愛いn
「クェ」(そんなことよりこの羽毛を見てくれ、こいつをどう思う?)
「すごく…海チョコボです…」
「ククゥ!」(うれしいこと言ってくれるじゃないの)
げんじつとうひしても、ぜったいおこられないじしんがあるの。
「クェー」(とりあえずここどこだ)
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あとがき:
(ノ∀`)アチャー