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[365] FF7:名無しのNANA-
Name: M◆e006eb86
Date: 2009/05/07 09:38
目を覚ませば


そこには


広々と広がる


鈍色の青空





ここ、どこだろう。
身体を起こし、辺りを見回す。
荒れ果てた遠い地に、見覚えのある巨大都市。
同じく遠い場所に小さな街が見える。
なんだか…。





「視線、低くない?」


じっと手を見る…って…。


「手ぇ小っさ!! つか身体ちっさ!」


ぐるりと回転し、身体を見下ろす。幼女?もしかしなくても私幼女ですね!?
あと、アソコにおわす(?)は…。















「ミッドガル様ですかーーー!?」


Oh My God!











Song dedicated to you
 FF7 -貴方に捧ぐ詩・名無しのNANA- 始めこんにちは+新しい創傷治療こんにちは















「奇蹟、なんてもんじゃねぇ…!」


何と、モンスターに逢わずにカームにつけました、お母様。幼い体にはまだ長距離過ぎた草原を踏破し、出入り口の門に
もたれかかる。




エンカウント無しだから、思わず「てきよけ」のマテリアを装備してないか探したりしちゃいました。…結果は無し。


そして、何故カームかというと、ミッドガルなんかに行ったらこんな小さな子供はスラムでいろんな意味で食べられそうなので、
もうちょっと治安の良さそうなカームがいいと思ったわけです。



「さて…これからどうしようか」
中身はともかく、外ヅラはまさしく幼女であるはず…。しかも戸籍がなくて両親もいない…。




確かゲーム中では、クラウドたちはIDで電車に乗ってたよね。ID作るには多分、というか必須事項として戸籍のはず。


いつかミッドガルにいくとしたら、必ず戸籍が必要になる。


けれども、こんな小さな身体の女で、両親もいない…、圧倒的に社会に対して不利だ。




それでも、何とか生きていかければならない。


幸いここはFF7の世界っぽい。イコール、力が全てという風潮。ある程度成長して、ある程度の力があれば…
この辺りのモンスター退治でお金が稼げるはず…。ならば、まずは…。





「レベルアップと先立つもののゲットよね!」


















取り合えず、カームへと入る。時間的に夕方から少し過ぎた辺りくらいらしい、茜色の空が少しずつ藍色になっていっている。
歩く人々の影は多いけれど、若い人はそんなに多くない。


「確か、ミッドガルに出稼ぎに行ったり。アメリカンドリームならぬミッドガルドリーム夢見て出て行っちゃう人が多かったんだっけ?」


ううん、記憶がとっても怪しい。無駄なことは一杯覚えてる脳みそなのになぁ。肝心なところで役立たずだ。いや、ゲームの内容を
しっかり覚えてる時点で常識範囲では役立たずだよネ・・・。





辺りを見回すと、見覚えのある町並みだった。けれども、やはりゲームとはちがう大きさと、民家の多さ。


「ちょっと…不安、かな?」


町の中心ともいえる、大きなオブジェのようなタンク。たしか魔晄タンクだったっけ…。


それを中心に、ぐるりと回る。やっぱり見覚えがあるようで違う景色。ちょっとの不安どころじゃないな。




それでもなんとか目立つ場所に位置しているショップらしき並びを見つける、確かレンガ階段か何かの上に何件か続きになってたような記憶がある。


記憶にあてはまるようなそれらの位置条件に、少しの安堵感を覚えながら私は高台の上に並ぶショップへと足を勧めていった。











「うっ…」
お酒くさい。



高台への階段を上ろうと近づくと、むわぁんと篭ったアルコール臭が辺りに立ち込めていた。
見上げるとそこには【BAR】の文字。ちょうどショップ並びの高台のしたが酒場のようだ。…ここ、酒場なんてあったっけ?全然覚えてないな。





あまりにも強いアルコール臭は、打ち水のように周囲にぶちまけられた液体、お酒から出ているらしい。


よくよく見れば、通路の隅に割れた洋酒ビンが転がっていた。ついでに足から血をだらだら流しているおっちゃんも。


「って!凄い量でてない!?」


一般生活では見ることのない、(といっても、死に至るほどではないほどの)血だまりがおっちゃんの足元に広がっている。


慌てて周囲を見回しても、見事なほどに人通りはない。


素人判断でも、割れたビンで足を薄く大きく切ってしまったようなのはズボンのきれっぱしからも見て取れる。


「しょうがないなぁ」


ため息を付いて、私は酒場の入り口へと足を向けた。





そこそこ見栄えのいい、栗色につやびかりする木の扉。


満を持して扉を開けば、そこは酒精の匂いが充満する「大人の空間」だった。




おじゃまします。と小さく呟き、当たりを見回す。丁度近くに座っていたオッサンが居るので、無防備っぽく近づく。
オッサンはビックリしたように此方を見たけれど、すぐさま相好を崩して笑いかけてきた。


「お嬢ちゃん、パパでも探しにきたのかい?」


オッ?アタリのオッサン引いた?


「あのね、お外でおじさんが怪我してたの。だからお水もらいにきたの。だれからもらえばいいですか?」


首を傾げ、気の良さそうなオッサンを見上げると、さらにそのオッサンの笑みは深くなって私の頭をワシワシと撫でてきた。
おおう!撫でられるなんて何年ぶりだろ。


「なんだ!お嬢ちゃんはやっさしィ子だなぁ!ウチのかかぁにもその優しさ分けてくれよ!…あー、水ならマスターにもらいな。
ほれ、奥のテーブルで酒瓶片付けてるやついるだろ?あいつがここのテンチョーさんだから」


オッサンが親指で挿した先には、なるほど。確かにマスターっぽいヒゲをつけたナイスミドラーなオジサマが酒瓶を棚へと
片付けている。


「おじちゃん、ありがとう。お水もらってくるね」

ちょっと作りすぎかなぁと思いつつ、子供らしい笑顔を浮かべてオッサンにお礼を言う。お礼は大事です。うん。
気のいいオッサンは「あんまり絡まれるなよ」と少し心配そうに手を振ってくれた。いい人だなぁ。
こっちも手を振り替えしたら、目じりがデロデロになった。






















「おじさん。おじさんがますたーさんですか?」


スツールの間からちょこんと顔を出した幼女にかなりびっくりしているらしく、マスターさんもさっきのオッサンのように
目を丸くしている。けれども、直ぐにびっくりした顔をひっこめ、穏かに笑いかけてきた。


「あ、ああそうだよ。お嬢ちゃんはお父さんでも探しに来たのかな?」


「ううん、ちがうの。お外でね、お酒のビンもったおじさんが怪我してたの。だからお水もらえませんか?」


「へ?」


またマスターの顔がきょとんとしている。結構かわいいなこのマスター。















バッシャ。




ボトルに湛えられた生理食塩水モドキを豪快に、寝こけているおっちゃんの足にぶっかける。靴も靴下も脱がせてない。
足って意外と重たい。幼女の力じゃ持ち上げられませんでした。


じわじわと血が滲む傷口に、特にガラスの欠片も砂粒もはいっていないようで、ほっと安心して、簡単に濡れた足を拭う。


私がもらってきたのはボトル一本なみなみと入った水と少量の塩。そしてラップと包帯とティッシュ。


ボトルの中に塩を入れ、よーくまぜる。生理食塩水モドキの出来上がり。マスター曰く「お水は浄水器を通してるからきれいだよ」といわれたけれど
こっちの世界って水道水に薬とかそういうの入れてるのか分からない。なのでこのモドキで我慢するとしよう。


ちなみに日本の水道水は意外と傷口の洗浄にピッタリ。塩素とか、色々な消毒薬品が混ざってるんだよね。モチロン、水道からの流水での
洗浄じゃないと駄目だけど。


生理食塩水モドキに潤ったままの傷口を、覆うようにラップで巻いていく。そしてその上から少しきつめに包帯も巻いていく、


包帯止めはないので、ジャマにならなそうな位置で包帯をリボン結びしておいた。


「これでいいかな?」


この世界に来る少し前に私が知った傷の直し方。まだ受け入れられきっていない治療法だから、大きな病院ではやってない。
(良いこの皆は責任なしにやっちゃだめだZO☆やるなら自分相手でね)


本当は毎日清潔なラップ(湿潤フィルム)にしたりしないといけないんだけど、多分目を覚ましたらラップを剥がして消毒しちゃうんだろうな、
このおっちゃん。


勝手な自己満足に頷きながら、私はその場を後にした。


それはもう、武器屋道具屋のことをすっかり忘れて。








「あっ!?武器屋と道具屋は!?」








やっとそれを思い出したのは、ぶらぶらと路地をうろつきはじめて五分くらいたったときだった。




orz


---------------------------------------------------
:あとがき:
どうも、Mです、いきなり小説を消すというトンでもマヌケミスを犯しました。
読んでくださっている方をとても驚かせてしまったと思います。
再度投稿しなおしという形ですが、またどうかお付き合いの程をよろしくお願いします。


それと、第一話がまだ5kb制限入る前に投稿したものだったので
苦肉の策(w として 二話連続(接続)でつっこませていただきました。ご了承下さい。



:前回後書き:
初めまして、Mです(読みは「えむ」)
ネタとしては「反則的主人公(ヒロイン)」と「しない善よりする偽善、しかし場合による」という
利己的精神当社比50%UPでご都合主義なドリームなお話しです。
ある程度作品がたまりましたら、所有しているHP上でもUPする予定です。
どうぞ、これからもお付き合いお願いします。


:前回後書きそのに:
追記:文中の創傷処理はあくまでフィクションとしてあげてあります。
詳しいことを知りたいなと思った方は、調べてみてくださいね。

(リンクは削除しました、コメントでのご指摘ありがとうございます)

※某少年雑誌の漫画で見たことあるネタだなぁと思った方。ビンゴですよ~。




[365] Re:FF7:名無しのNANA-パニック幼女こんにちは+初めてのFF7関係者こんにちは
Name: M
Date: 2007/03/17 06:51


路地を見上げれば


ガタガタといびつに切り取られた


藍色の空


星が控えめに瞬いている




やっぱりこんな幼女がこの時間歩き回っているのは見咎められちゃうので、裏路地にやってきています。


…いや、本当は道端にアイテムボックスとか落ちてないかなーとか思ったわけなんです。




先立つものはお金って言うじゃない?ねぇ?と、脳内で誰かに語りかける。誰だ。




でも落ちてるわけないよね。だってゲームでこんなエリアなかったし。
むしろリアルで考えて、アイテムぽろぽろ落ちてるほうがおかしいよね、あ。それを言っちゃオシマイか。
むしろDQの路上に落ちてる宝箱とかあからさまにおかしいから!





Song dedicated to you
FF7:名無しのNANA-パニック幼女こんにちは+初めてのFF7関係者こんにちは





裏路地といっても、店や民家の零れた明かりが地面や壁を照らしているので、なかなか明るい。


先ほど広場で見た通り、意外と立派な魔晄タンクは、こんな裏路地からもその大きな姿を見せていた。これならこの辺りで迷っても
あのタンクを目印にすればどうにか通りには出られそう。


しかし、これ以上路地を巡ってもアイテムなんか転がってない…。私の直感がそう脳内で囁く。


さて…ほんとどうしよう。


正直この幼女の姿は本当に困る。地面とすぐにお友達になりそうな幼い平衡感覚、柔らかすぎる身体、そして最大のネック。




「何をしても何を言っても信頼されないっていうこと」




さっきのオジさんの治療のために頂いた水のボトルも、結構いっぱいいっぱいになりながら運んだし、運良く銃を手に入れたとしても
反動で吹っ飛ぶのが関の山。


圧倒的に弱者。身を守る術を完璧に持っていない。




「こまったなぁ…」
ぐぅぅ。




「はぅ…おなか空いてる」
スリスリ、と腹部を撫でていると。なぜかヒクッと喉が痙攣する。
あ、なんか。おかしい。キモチがおかしい。不安定。そういえばさっきからテンションが高くなりっぱなし。




なんでお腹空かなきゃいけないの?なんで私こんなところに居るの?なんでこんな目にあってるの?
なんで なんで なんで なんで



ああ。だめだめ、考えちゃだめ。ネガティブ思考にはいっちゃだめ。憧れの世界にこれたことを喜ばなくちゃ。
だめよだめよだめよだめよだめよ。考えちゃダメ。


-どうして?-



そうは言っても、見る見るうちに私の下瞼に水分が集まりだす。思考の奥で、ハイテンションで多い隠していた
感情が水分と一緒にあふれてくる。


考えちゃだめ、考えちゃだめ、だめ。だめ。だめ。だめ。





ふつり、と私の意識を結ぶ紐がほつれた。そして零れる私の感情。


-どうして


-どうして


-なんでこんなめにあってるの


-どうして


-なんで


-おうちにかえしてよ


-かぞくにあいたい


-ともだちにあいたい


-こわいよ


-たすけてよ


わたし。ひとりぼっち。








「えっ…あ…?え…?…いやああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」






甲高い泣き声が路地裏に響いていく。心が錯乱して、自分自身を止められなかった。


「うるさいなぁ」
そんな冷静な思考が、乱れた私の心を見下ろしているのを感じていた。












「くすん…おとうさん、おかあさぁん…」


狭い路地を駆けるこの耳に、小さな子供の泣き声が聞こえた。既に仕事も終わり、あとは社に戻るだけ。(本来は直帰で構わないのだが)
つい、気が向きその路地のガラクタからかすかに響く、子供の、声を探っていく。


時折混ざる啜り声に導かれるように路地を進み、積み上げられた粗大ゴミとガラクタの塊のなかを覗く。




「すんっ…すんっ…」
小さな子供が、その小さな身体をぎりぎり隠せるガラクタの隙間でうずくまり、泣きながら眠っていた。
なぜか居ても立っても居られなくなり、その少女を抱き上げ、自分はその路地を後にした。






少女を抱き上げた男の名前はルード、強面だが小さい子供と小動物が大好きな内面ナイスガイである。




------------------------------------------------------------



目を覚ませば目の前に、肌色に燦然と輝く






たこちゅー だがグラサン付き。







…怖っ!
少し硬めで、スプリングの利いたベッドの上。私は目を覚ました。
そして目の前にはステキスキンヘッドWithサングラスメンが居るんですが、私攫われたんでしょうか。
攫われたんですか?ねえ!!








「ふぇっ…」


「!?」


-怖い


「ふぇぇっ…」


「お、おい」


「わぁああああああああああああああああああん!!」


怖ぇえええええええ!!ハゲ 超怖えー!


「ああッ!待て!泣くな!ほらアメだ!」


「むぐー…あむあむ」



ちょ、アメって。







アメを頂いてしまい、つい泣き止んでしまいました。精神年齢も肉体年齢に引きずられているようです。
もごもごと口の中でアメを食みながら、目の前のタコチューをしげしげと眺める。このペロキャン結構おいしいな。



ツヤッツヤのスキンヘッドに、グラサンからはみ出る強面、そして特徴的なグラサン。



え?   アレ?



ルード?







目前の少女は、今だ潤んだ瞳で此方を見つめている。くすんくすんと時折鼻をすすりながら、アメを舐めている様はとても可愛らしかった。


「おじ…、おにいたん、だぁれ?」




『おにいたん』…おにいたん!? 「お兄ちゃん」って言いたかったのか?
可愛い。可愛すぎる。もうだめだ。萌える。




ぽふん。と頭に手を乗せられ、ちょっと不器用な動きで頭を撫でてくる。
彼(ルード)は私に危害を加えたり、社に不審幼女として突き出す気積りはないようだ。ちょっとホッとする。
ちょっとおじさんっていいそうになったけど、特に気にしてはないようだ。
辺りを見回すと、質素…というより実用性重視の家具・調度品。それに似合わぬ可愛いぬいぐるみやマスコットがぽつぽつと置かれている。
…彼女でもいるのかな?




その中でも特に目を引く、やたら毛並みの良さそうなチョコボのぬいぐるみ。それをじっと見つめていると、その視線に気がついたルードが
私の膝の上にそのぬいぐるみを乗せてくれた。柔らかい…。
「やらんぞ。俺のだからな」





ちょ



            お前のかよ。












「おにいたんの?」
きょとんと此方を見上げる少女。小さな紅葉のような手が、ぬいぐるみのふかふかの毛皮に埋もれている。…かわいいなぁ。この丸く見開かれた目がまた…。
って、もしかして俺のようなやつがこんなぬいぐるみを持っているのがキモいのか?そうなのか?キモいんだな?そうか!そうなのか!
でも俺は好きなんだ!このフカフカの柔らかい感触とか、ウサギとか小動物のつぶらな目が!愛くるしいその仕草が…ブツブツ








聞こえてるよ。お兄さん超口に出てるから。落ち着いて




つーか何。この カワイイ生き物
ルードってこんなに可愛かったっけ。
もうやだ。萌える。ああ、身体が元の女の姿だったら今にでも押し倒しtくぁwせdrftgyふじこlp って私も落ち着け!








その後、「そんなことないよー、可愛いの大好きなのヘンじゃないよ」とひたすら慰めていました。
あー、あと。自分でも言うけど。男の趣味そんなに良くない。











それと自分が舌ったらずだったことが判明。


「お兄ちゃんっていってごらん」


「おにいたん」


「か…。(可愛い…!!)」
「うゅ?(顔真っ赤ァ!愛しいィィィ!!鼻血でそうd)」




追記:「バカ二人」






-------------------------------------------------
:あとがき:
ちょろちょろっと書き足し、書き直しを加えました。といっても本当に些細なところなんですが。



:前回のあとがき:
ボクルードダイスキー(゚Д゚)


:前回のあとがきそのに:
ヒロインの名前がまだ出てきません。すみませんごめんなさい。


ヒロインの男の趣味は「自分が可愛いと思ってしまった男性」全てに適用されてしまうので
どんなにブサイクでも可愛い仕草や萌える行動をとられるとLikeやLoveに発展してしまいます。
そう、いかに顔が美形であっても、萌えなければ彼女の(ある意味)広大なクリティカルポイントに
かすりもしないのです。




[365] Re[2]:FF7:名無しのNANA-BCキャラたちこんにちは+優しい人との別れこんにちは
Name: M
Date: 2007/03/17 07:13
ガラス越しに見下ろせば


180度広がる


芳醇に腐敗しつづける


腐った都市(ピザ)






高い!超高い!
こんにちは、現在神羅ビルです。そして私は高いところが好きで嫌いです。だって自殺したくならない!?こうフーって地面が呼んで…。
まあ、それはともかく。なんで私神羅ビルに居るんでしょうか。
あと、入る前に洋服着替えさせられたり、ヘンな試着室みたいなので身体とおされたし。


手を握ったまま離してくれないルードを見上げると、不安そうな顔に見えたのか。


「大丈夫だ、ちょっと上司に休みをもらいにいくだけだから」


と教えてくれました。上司?ホクロからビームマン(ツォン)のことかしら?




つか、なんで休み?


-ポーン-と、エレベーターが止まった音が響き、扉が開く。


「ほら、行くぞ」


「まってぇ」


「……」


「ふぁ?…わぁ!」


抱っこされました。オトナになってからはこんな風にされたことないから、やたら嬉しい気分。






Song dedicated to you
FF7:名無しのNANA-BCキャラたちこんにちは




「…と、言うわけで。…二日ほどお休みを頂きたいのですが…」


「あなた、今何歳?」


まだ不器用な自分の手を折り曲げて三本指を立ててみる。


「あら!三歳なのにしっかりしてるのねぇ」


「…(もじもじ)えへへ」


「う、かわいい」


「かわいい…」


わぁ、かわいいおんなのこたちがいっぱーい、おばちゃん涎でちゃうよ!ンハァンハァ!
私を率先して構ってきているのはポニーテールがフワフワしたお嬢様っぽい女の子とショートカットの女の子。
どっちも可愛い!
(※ショットガン娘と短銃娘)


そんなことよりも、ルードがたっている前のデスクに座っている美味しそうなナイスミドr…おじ様は誰なんだろ?
なんかその脇に立ってるお兄さんはツォンっぽいし…。


なんだか現在の状況に良く似た…というかそのままのゲームがあったような…。
確か、ビフォアクライシス(通称BC)とかなんとか。関係ないけど、ツォン、FF11のエルヴァーン♂のフェイス3黒髪っぽい…。
そうなると…アレ(ナイスミd(ry)が「ヴェルド主任」だかそんな名前の人だったっけ?携帯アプリはやったことないから
わっかんないや。








「その子が危険人物、及び危険物所持をしている可能性は?」


主任が目を細め、俺の後ろで女性職員にイジられている少女を鋭く見つめる。


「洋服を着替えさせた際に、着衣をチェックしたところ発信機、爆発物の所持・内蔵は確認されませんでした。
簡易捜索機で体内も捜索(スキャン)しましたが、特に金属反応もなく。ウィルスも陰性です」


「フム…」


「…それに元々、今年度ももう終りですし。…「溜まっていた有給を消化しろ」と経理部が…」


「ハハハ、確かそうだったな。…私は取れそうもないね、またアチラ(経理)にネチネチ言われそうだよ」


「ハッ、申し訳ありません!」


確かに、自分たちの年休はたまりにたまりまくっている。しかし我々総務部調査課<通称:タークス>に決まった休みが
取れるわけでもない。
…その上自分たちを統括するヴェルド主任の休みが殆どないのは当たり前だろう。
少々気が利かなかったな…。




「るーど、るーど」


思考の海に沈みかけたところに、保護した少女が両手を胸の前で握り締めながら走り寄って来た。ああ、可愛いなぁ。


「どうした?」


「あのね、おねーたんたちに、アメもらったの。食べていい?」


その両手を開いてみせたのは、なるほど。女子供が好むカラフルな飴玉が二つ転がっていた。


「こっちがいちごで、こっちがぱいなっぷるだって。るーどはどっちがすき?」



?…なんだ?何で聞いてくるんだろうか?


「…苺だが」


「はい。じゃあいちごちゃんは、るーどのね」


少女はそういうと、苺の包み紙を俺のポケットにつめ、再び女性職員たちのほうに駆けて行った。


「…随分、いい子のようだね」


「………はい」






「お嬢ちゃん、ルード先輩にもアメあげてきたの?」


「うん!るーどだいすき(つか超愛しい)!だから、はんぶんこしたの」


「はぁ~…エライわねぇ」


「あ、そういえば」


「お嬢ちゃんのお名前は?」




あ。


まずい。本名言ってヘンにデータに引っかかったらマズくない?というかマズイ。
一気に不審幼女にランクダウンの危機。






「わかんない」




「へっ?」


「おなまえ、しらないよ」


あああああああああ、なに口走ってるんだ私はああああああああ!!
もういいや!記憶喪失で通しちゃえ!それであと一週間くらいしたら記憶戻ったとかカマしとけばOKだ。
きっと!そうよきっと!
あ、ヤケって言うな。




「き、記憶喪失…?」




『何ぃぃぃっ!?』


うーわー、此方を伺っていたタークスの皆さんが周りに勢ぞろい。圧巻。つか、怖。



-怖い


「…あ」


「やべっ」


「あー!まって!まって!泣かないでぇ!」




「わあああああああああああああああああああああああああああああああああん!!!」


「ギャーッ!!耳が!耳がァ!!」


「ほら!アメたくさんあるよー!泣き止んでー!!」


「テメーがヘンなこと聞くから!」


「なによ!名前聞くのがヘンなことだって言うの!?」


「…しっちゃかめっちゃかだな」


「…ですね」


デスクに座る男と、その脇に控えた男はさり気なく指を耳に差込み、耳栓をしていた。
意外とちゃっかりしているようだ。


そういえば、結局なんでルードが休みをもらいに来たのかまだ分からない。


なんでだろ?





-----------------------------------------------------------



涙目で頭上を見上げれば


おろおろと此方をうかがい


右往左往する


大人たち






こんにちは僕あんpンマン!…チッ…今回はスベったな…。


前回、ビックリ&恐怖でウッカリ泣いてしまったわけですが、二分程度でアッサリ泣き止めてしまいました。
意外とピタッと泣き止んだのですが、なんですかコレは。アメやらお菓子やらぬいぐるみやら…。


私の周りに「泣き止んでください」の貢物がどっさりあるわけですが、…誰だよダムダム弾のケース丸ごと供えてるの…。


※ダムダム弾:殺傷能力が高い弾丸の一つ。弾頭に十字の切れ込みが入っており、ぶっちゃけ普通の銃弾よりも
 メタクソ強い。(現在では条約によって戦争での使用が禁止されている)


…まあ、もらっておくか。






そしてルードはなにやらナイスミドルTheヴェルドさんからお休みをもぎ取っていたようです。


「るーど、なんでお休みするのー?」


「…お前の親を探そうと思ったんだがな…、先に病院…だな。気にするな、…もともと休まなければいけなかったんだ」


おま、どんだけ人がいいんだよ。タークスでやっていけるのかな…。




とか思ってたけど、親を探すってのがただセントラルセンターとか言うところ?…多分市役所みたいな扱いの所かな…に、
迷子・誘拐のたぐいで私を登録検索するだけだった。


…登録しても、親は迎えに来ないんだけどね…。きたらすごいって。








Song dedicated to you
FF7:名無しのNANA-優しい人との別れこんにちは





「ふむ…」


「どうだ?」


「ちょっと喉が腫れてたな、風邪を引きかけなのと…疲労があるぐらいで、特に健康に問題はないな。
ただ…全生活健忘。心に大きなショックとかを受けて、『自分の生活してきた記録(史)』を忘れちまうもモンなんだが、
頭部損傷でなる場合もある…だがまあ、ちょっと見た限りでは頭にコブもないし、怪我もない。
何らかの精神的ショックで記憶を失くしちまってるだけだろ」


「……そうか…」


まだタダのヤンチャ坊主だったころからの行きつけの医者(オヤジ)が言葉を並べていく。


「あと、こっちでもガキどもに聞いてみたが。あんな女の子を攫ったやつ、見かけたやつすらいねぇな。
見つけたのはカームなんだろ?流石にそっちまでは俺も手がまわんねぇよ」


「そうか…すまない、無理を言って」


「いいってことよ、…それにしても人懐っこい子だな」


そう言われ、外を伺うと看護婦がわりのオバちゃんたちの笑い声と、少女の笑い声が聞こえてくる。


「ナナちゃん、こっちおいで。クッキーがあるよ」


「クッキーよりもウータイのモナカがいいよ、こっちこっち」


「うぅ~」


「ほらほら、あんたたちナナちゃんいじめてない!」


「いじめられるの、やー!」


「ああ、ごめんごめん。ほら、美味しいお菓子だよー」


「…もぐもぐ…」


「「「…アッハハハハハ!!」」」


…ナナ?








「るーど!るーど!」


コンコンと小さなゲンコツがドアを叩く音。それにオヤジ先生が笑って立ち上がりドアを開ける。


ポケットがパンパンになるほどお菓子をつめこまれ、尚且つ片手に食べかけのクッキーを持って此方に駆け寄ってくる。


「あのね、わたしのおなまえ、もらったよ!」


嬉しそうに、鮮やかに笑う少女がこちらを見上げた。




「ナナちゃんだって!かわいいねぇ」




オバちゃんたちが言うには、「名無しだからナナちゃん」って呼んでいたら彼女がそれをとても気に入ったようで。
「ナナちゃん」と呼ぶと子犬のように笑顔ですっとんでくるので、呼び続けていたとのこと。


「お前は、ナナでいいのか?」


「うん、ナナちゃんは、ナナちゃんがいいよ?」


「…そうか」


頭を撫でると、嬉しそうに笑う。…まだ名前が分からないのなら、この気に入っている『ナナ』という名前でいいだろう。




ナーイスネーミング、オバチャンズ!


「名無しだからナナちゃん」って結構アレな感じもするけど、ナナって響きは可愛くない?
それにウッカリ自分の名前とか漏らしそうでやばかったしね!
でもこの名前を頂いたからには、歌手デビューしないといけないのかしら。そしてゆくゆくはルームメイトだった同じ名前の子と
ムニャムニャ。(詳しく覚えてない)


「ねえ、るーど。ナナちゃんは 「こじいん」に いかなきゃいけないの?」


「…!?」


誰だ、こんなことを教えたヤツは、オバちゃんたちか!?


…しかし、いくら子供が好きだからと言って、少女…いや、もうナナか。ナナをずっと傍に置いておくわけにはいかない。
俺はタークスだ。もし、タークスである俺に不利な状況を作るためテロリストに人質としてとられたとしても、
デメリットにしかならないナナを取り戻すために尽力するなんてことは、まず…ない。
冷たいようだが、これは予想がつくことだ。


…ならば、直ぐにでも非関係者として孤児院に入れるのがナナにとって一番安全だ。






あ、考え込んでる考え込んでる。でもま、孤児院に入るのもべつに辛くないしな。中身大人だし。
…いや、なまじっか回りがピチピチボーイガールズだから違う意味で辛いかッ…!ちくしょう若さめ!
若さってなんだ!?躊躇わないこーとーさぁぁぁぁ!(ヤケクソ)


気楽に笑顔を浮かべて見上げると、辛そうに顔をゆがめたルードが此方を見ている。普通の子供だったらこの顔みて泣くな…。


ま、…大丈夫だよー、ルード。私は貴方が何を考えているのか分かってるよ。きっと私が危険なことに巻き込まれちゃうかもって考えてるんでしょ?
ルードはタークスだもんね。足手まといの私を傍になんておけないでしょ?


…きっとこの優しい人は、姿は見えなくても見守ってくれるだろう。形に見えるもの見えないもので。
でもほんとうに、この人こんなに優しい人でタークスやっていけるのかなぁ…。






私はルードを見上げたまま、笑顔で告げる。


「ナナちゃん、こじいんいきたいな。ナナちゃんおともだちいっぱいできる?」

「…あ、ああ。できる。できるぞ。きっとナナなら一杯できるさ」


「じゃあ」


「?」


「るーどが、ナナちゃんの いちばんさいしょ のおともだちになってくれる?」


「!…ああ、友達だ。一番最初のお友達になろう」


「やくそくだよ?」


「ああ、約束だ」




ルード、関わらせちゃってごめんね。
私よりも少し体温の低い大きな掌を握りながら私は俯いた。
ゲームの中でただ「カッコカワイイ」と萌えていただけの彼は、今この場に生きていて、私を気に掛けてくれて、
本気で心配してくれている。
なんて、
優しい人。






「またね、るーど」


「ああ、さようなら」


「さようならちがうよ。またね」


「ああ、また…」




優しい人。だったな。
孤児院の門から去っていくルードを見て、顔をゆがめた私を孤児院の先生が覗き込んだ。


「さびしいの?」


「…ううん。やさしいひとがいてくれてうれしかったの」


「…?そう」


流石にゲームを知っている私でも、この後のことは分からなかった。
こんなことになるなんて。


まさか、たった一週間で孤児院を出る事になるなんて。






…炎に揉まれる通りと、私の後ろで荒く息を付きうずくまる偉そうな軍服っぽいものを着たオジさん。


「き、君は誰…だい?」


「…ナナだよ、おじちゃん」


私の手には、ボロボロで、小石や鉄クズなどの中身入った、二枚重ねにした靴下。


目の前には、ナイフを持ち、足を押さえて呻く青年が二人。


炎に煽られ、私の髪が靡く。


「ナナ…ちゃん?」


朦朧とした意識で、私の名前を呟くオジさんを尻目に、私は駆けつけてきた神羅兵のお兄さんたちに泣きついた。
もちろんずたぼろの靴下をこっそり捨ててから。




「そこのオジさんがこのおにいちゃんたちにいじめられてたの!たすけてあげて!」





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:あとがき:
宇宙刑事ネタをこっそり追加。



:前回の後書き:
神羅ビルに潜入です。またヒロインの名前が出てきません。というか出す気がないって言うのが本当なんでs(ry

BCキャラをちょぼちょぼ出してみました。携帯がauなので主任の喋り方や短銃娘たちの喋り方が全然わかりません。
捏造バンザイ。誰かBCの攻略やストーリーを載せているサイト教えてください…。

:前回の後書きそのに:ルードとお別れし、新たな人と出合ったようです。
ミリタリー知識というか、ヘンな知識と実践術に長けているヒロイン。
そしてやっと題名にもつかわれている「ナナ」という名前が出てきました。
これからも見守っててください。

追記:日曜早朝出勤テラツラス(ノД`)ファー って明日もだよコンチキショウ
あと、感想掲示板にしたほうが良いとコメントを頂きましたが、感想掲示板が凍結されているようなのと、
   ほかの方も後書きのほうで返答なさっていたようなので、前回のような返答をさせていただきました。
   ご了承下さい。

   とりあえず、今回は簡易感想掲示板にて返答させていただきます。




[365] FF7:名無しのNANA-知らないイノチこんにちは+急展開が続く日々よこんにちは
Name: M
Date: 2007/03/18 07:12
まなこをひらけば


すすけた木目の天井と


騒ぐ子供たちの声


そして、新しい私の家






「知らない天井だ…」


EVAネタ分かるやつがこの世界にいたら凄い。
はい、こんにちは。孤児院デビューを先日華々しく行いましたナナちゃんです。のっけからEVAネタですみません。生きててごめんなさい。
逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ。
それはトモカク、昨日この孤児院に入所したわけですが、治安は良さそうだし、周りの地域の人もかなり優しいようです。ラッキー。






で、だ。
「冒頭は孤児院だったのに、何故今またここにいるのか問いたい訳です・ガ!」
神羅ビルの中心で理不尽を叫ぶ。シラチュー?






それは置いておいて、まー、何て見晴らし良いのかしら。この間のタークスの部署よりもあからさまに上の階。
・・・自殺したくなる。
などと素敵妄想まっしぐらしていたら、後ろの自動ドアが開く音。顔を幼女っぽく笑顔に!笑顔に!
そしてふり向き、白衣を着たメガネメンに首を傾げる。
「だぁれ?」




扉を開けた先には、すすけた服を着た少女が窓ガラスに張り付いていたのが見えた。「だぁれ?」と振り返る様はとても愛らしくて
思わず頬が緩む。


「申し訳ないね、お嬢ちゃん。もうちょっとあのおじさんの検査が済むまで待ってもらえるかな?」


「うん。…ねえ、おにいたん。あのおじたんいたそうにしてたよ?うんうんいってたよ?だいじょうぶ?だいじょうぶ?」


舌足らずの唇から出るのは、見も知らぬ場所につれてこられた恐怖の言葉よりも、この子が見つけた人の心配だけ。
優しい子だな。




この少女がこの神羅に連れてこられたのには訳がある、この子が見つけた人物は、神羅軍大佐アゴス・ライゼン。
珍しく市民受けのいい軍人と噂の恰幅の良い軍人だった。








Song dedicated to you
FF7:名無しのNANA-知らないイノチこんにちは





――昨日未明、神羅軍の車両が2番街でテロリストに襲撃されました、
其の場でテロリストたちは逮捕され、とくに死傷者はないとの事です。では、次のニュースで・・・――


お兄さんからもらったモーニングプレートをもぐもぐと食みながら、備え付けのテレビを見つめる。
報道規制掛かってるだろうから分からないけれど、多分けが人はいないっぽいなぁ、昨日見てた時点でもいなかったし。ヨカッタヨカッタ。


先ほどお兄さんが説明してくれた経緯はこうだった。


2番街で神羅の官僚たちが乗った車がテロリスト(アバランチじゃないらしい)に襲撃される。
なんとか官僚達は逃げたけれど、追撃していた神羅兵と、その上司であるアゴスって人が路地で不意打ちを掛けられてピンチに。
そして正義の味方ナナ仮面が颯爽と登場。・・・ごめんなさいウソです。私が乱入し、なんとか助かった。
ということらしい。


流石に普通だったら幼女が靴下脱いで、落ちてる鉄くずや小石つめて振りかぶって攻撃してくるなんて思わないヨネ☆!


テヘ!といい笑顔を浮かべたら、後ろでなにやらノートパソコンをカタカタしてたメガネメンことお兄さんが「?」と怪訝そうに見てきた。
乙女の笑顔は高くてヨ?








ふいに顔を上げると、窓ガラスに此方が見惚れるような、鮮やかな愛らしい笑顔を浮かべた少女が写り、それに笑みを浮かべて返す。
にこにこ にこにこ にこにこ


そうこうしているうちに、軽い圧縮音と共に自動ドアが開き、頭と首に包帯を巻いた恰幅のいい軍人、アゴス・ライゼン大佐がやってきた。


「君が、あの夜のときの子だね?」


「うゅ?」


ほっぺたにケチャップとスクランブルエッグをつけたままの少女が大佐を見上げる。


「・・・」


ああ、可愛い。…大佐、ちょっと頬がユルユルピクピクしてますよ。




「あっ!ゆうべのおじたんだ!おけがだいじょうぶ?だいじょうぶ?いたくない?」


見覚えのあるおじさんが部屋へと入ってきた。多分昨夜のおじさんだ。
思わず駆け寄り、下から顔を見上げていると、おもむろにほっぺたに手を伸ばされグイグイと拭かれた。


「スクランブルエッグがついていたよ。…私が夕べ君に助けられたラゴス・ライゼンだ。助かったよ。ありがとう」


おじさんは私の前に跪き、わざわざ目線を下げて頭を下げてくれた。…って軍人ってこんなに腰低いモンですか!?


「いいの!えっとね、たすけたかったからたすけただけなの。おけがいたくないなら、ナナちゃんそれでいい」


かぶりをふって、おじさんの手にそっと手を添える。むぅ、おっきいなぁ。






こげ茶の瞳をした少女が、何の打算もなく、いや、この年齢ならば打算など存在しないだろう。
この無骨な手を握り締め、此方を見つめる小さな瞳がきらきらと蛍光灯を写していた。


「それにしても・・・君は凄いな。どうやってあんな攻撃ほうh むぐっ」


「・・・・・・・・・・・・・・・・・っ」


此方を心配そうにみていた少女は一転して動揺し、此方の口を塞いできた。




「…言っちゃメっ!」




「ナナちゃん、おんなのこなのに、おしとやかさんしてなかったから。おてんばしてたのひみつなの!」


あぶねぇー、またしてもアヤシイ幼女にランクダウンの危機でしたよ?今も十分ピンチっぽいけど!
それよりも…、孤児院の先生達心配してるだろうなぁ。どうしよ。


「ふむ…」


そんなことに思考を割かれていた私は、面白そうに顎を撫でて私を見下ろすアゴスのおじさんの目線には気付いていなかった。




-----------------------------------------------------------




手をふった先には


涙目になって走りよってくる


出来たばかりのルームメイトと


孤児院の先生






「しんぱいかけて、ごめんなさい。ただいまぁ~!」


アゴス大佐と手をつなぎながら孤児院に帰宅です。
あと、何人かの神羅兵さんたちも一緒です。皆話しかけると意外と気さくで楽しい人たちでしたよ!


おかしくれたし。(餌付け…!)






「まぁまぁ…そんなことが」


院長先生と担当の先生が、私の肩を抱いて頭を撫でてくれている。怖い思いをしたんだと思われてるのかな?


ぜんぜんしてないけどな!


大佐とテーブルを向かい合わせで挟んでソファに座り、先生達の間に挟まって大人たちの会話を聞く。
子供には難しい話だとおもわれているのだろうけれど、それはそれ。中身が良い年したおねいちゃんですからね!
ばっちりわかりますよ?








Song dedicated to you
FF7:名無しのNANA-急展開が続く日々よこんにちは





まず、前回はとくに説明をださなかったけれども、何故私が「例の事件」に居合わせたのか。


それは「はじめてのおつかい」をしていたからだ。
孤児院のものと分かるバッジをつけ、トコトコとカゴをもって歩いていれば近所のおばさんやおじさんは
「おつかいがんばってね」と声をかけてくれる。これが心の豊かさか!と感動していたら、帰り道に路地に逃げ込んだ
大佐たちとテロリストに遭遇ってとこだ。


あー、そういえば買い物カゴ煤だらけだよ。さっき先生にカゴを渡したけど、中身煤まみれになってないといいなー、
中身はパック詰めの小麦粉だから大丈夫だろうけどね。


「それで、ご相談が少々ありまして…」


「はい?」


説明と感謝の言葉、そして「感謝の気持ち」として数十万ギルの受け渡し。それが終り、ふっと無言の時が通り過ぎて
それをきっかけに大佐が切り出した。なんだろう?


院長先生たちに向けていた視線が私に降りて、私を見つめ、微笑みながら大佐は言った。


「ナナちゃん、ナナちゃんがよければ。私の娘にならないかい?」


「ふぁゅ!?」






いきなりの発言に、先生達も流石に目を丸くして、私と大佐を見比べている。


「け、けれどもアゴスさん。ナナちゃんはまだ孤児院に来て一週間も経っていません。それに…」


「ナナちゃんは記憶喪失なんです」


「記憶喪失、それはまた…」


「詳しいことは今は言えませんが、精神にショックを受けた。そう伺っております…」


院長先生の暖かい掌が、やさしく私の肩を抱いた。優しい先生だなぁ、ほんとに。








「ですので、いくらアゴスさんが出来たお方としても。今不安定なこの子の親とするのは少々、こちらとしても不安があります…」


実際、ああやってオジさんが襲われていることもあって、無事といえる日常を送ることはあまり無いかもしれない。
けれど、このアゴスさんについていけば、ちょっと卑怯だけれども「大佐の娘」という一定の権力は持てる。
私の脳裏に、そんな考えがいくつも駆け巡っていく。


ただの孤児と、権力ある軍人の養子。そのどちらかに発言権があるのかといえば、明らかに後者が有利。
それに正直言って、まだあまり慣れきっていないこの孤児院を去ったとしても。私は特に心が痛むことも、寂しさを覚えることもない。


「オジたん」


ずっと黙っていた私が声を出したことに、三人がその視線を私へと向ける。


「オジたん、オジたんがパパになるなら。ママは?」


三人の瞳が見開かれ、私の両端を固める院長先生たちがどうしたのかと見下ろしてきた。


「お恥ずかしながら、所謂バツイチと言われるものでね。妻は病で10年ほど前に亡くなったよ」


「…ごめんなさい」


聞かされた事実に、思わず俯く。


「いや、いいんだ。あれが残した日々は私の中に残っている。孤独でもないし、悲しみもない。ただあの暖かな日が思い出されるだけだ」


そういって、アゴスさんは少し強面の瞳を細め、私の「むこう」にある過去を眺めていた。




きめた。




「せんせ、いんちょーせんせ。ナナちゃん、アゴスオジたんの子になりたい」


権力も財力もコネも魅力的だけれども。


ゲームの中に存在しなかった、今ココに存在するあなたの魂と瞳が、私を誘(いざな)った。


「この人を義父として、共に歩んで生きたい」と唐突に思った。




「いいのかね?」


「オジたんこそ、ナナちゃんがむすめでいいの?」


そう聞くと、アゴスさんは無骨な手を伸ばし、私の頭を撫でてくれた。


「いや、とてもうれしいよ。君となら、私はまた歩けるかもしれない」





ああ、この人はひとりぼっちだったんだ。


奥さんに先立たれて。


ひとりきりになって。


そして。


私に興味を持って。


私の中の孤独を見つけてしまった。


立場は違えども、私たちは孤独で。そしてお互い支えあうことができるのかもしれない、そう思った。



不思議と微笑が浮かんできて、ほっぺたがゆるゆるしているのがわかる。
うれしいのかかなしいのかよくわからなくて、ほそまった自分の目が水分で揺らぐ。


「パパ」


本当のお父さんは「お父さん」
そして、この世界の私の本当のお父さんは「パパ」


「なんだい、ナナ」


「パパ」


「ナナ」


笑いながら泣いて、テーブルごしに手をのばす私を見て。先生と院長先生は、ちょっと複雑そうに笑っていた。




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後書き:ハイテンションに磨きが掛かった主人公でした。
初のオリジナルキャラクター(名前あり)の「ラゴス・ライゼン」さんです。今後ナナにとっての○○になるわけですが
それはまたのおたのしみ~ということで。


追記:かゆ・・・うま・・・


後書き:お久しぶりでごんす。(わぁ、台無し)
あれ?新人教育に、五ヶ月かかってるよ?空ろな眼差しになっちゃうよ?
というわけで、久しぶりの投稿です、覚えてらっしゃる方はいるのかしららら。


急展開、アゴスおじたんはナナの○○=養父となりました。
これから神羅のメンバーとの親睦を深めていくことになりますが、一番の仲良しが
宝条博士になりそうな予定ってどうでしょうね!
それでは、またそのうちお会いしましょう。




[365] FF7:名無しのNANA-濃厚な一日よこんにちは-1-
Name: M
Date: 2007/03/19 09:05
憧れと羨望が篭った眼差しを



体一杯に受け止め



燦然と高らかに笑う



赤いおねーさま










「キャハハハハハハハハハハ!あなた、見所あるわよ?」


「ほんとう!?すかーれっとお姉ちゃま!」


「ウソは言わないわよウソは。キャハハハハッ」






はい、今日は神羅ビルの中心でキャハハを叫んでおります。あ、叫んでる…っつか笑ってるのはスカーレットお姉さまだけか。


まさしく新展開ともいえる義父イベントをこなしたワタクシことナナちゃん。パパの職場である神羅ビルへと再び舞い戻って
きました。そして新しき出会い…。そのお方の名前は…






ス カ ー レ ッ ト お 姉 さ ま !






正直ちょっとオバさんはいりかけてるよな、って思っちゃったのは秘密!(言ったら殺され…もといビンタだろうし)でも十分。
「びじんなおねえさん」なんだよねぇ…。






まず、このスカーレットお姉さまとの私の麗しき出会いを語らなければならないでしょう!














Song dedicated to you
FF7:名無しのNANA-濃厚な一日よこんにちは-1-







アゴス大佐改め、パパとの暮らしが始まって早二週間。パパはどうやら上にかけあって、できる限り私との時間が作れるように
してくれているらしい。感謝です。






ぶきっちょなりに、一生懸命朝ごはん(ベーコンエッグ)を作ってくれるパパはそれはもう愛しくて。思わず小さい頃を思い出して、ダイニングの
椅子をキッチンに引きずり、椅子の上に立って隣でお手伝いをしちゃうくらいでしたよ?


「エヘー」って笑いかけると、そりゃもうあのコワモテが「デロロローン」って緩む様はもうね、部下に見せちゃいけないと思う。
そんな穏かな日常が、そう。二週間ほど続いたある日…。






「ナナ、今日私は仕事で遅れそうなんだ。家政婦さんに、今夜の夕飯は作ってもらうようにいってあるから
初めての夜のお留守番だけれども…できるかい?」


黒いケースに金の印字がされた「Eyes Only」ファイルを携えたパパが、しゃがんで私の頭を撫でてくる。
今朝は一緒に玉ネギサラダを作ったので、少しタマネギの青臭いニオイがする手だ。






「ナナ。だいじょうぶだよ。パパがかってくれたチョコボさん(ぬいぐるみ)もあるし。かせーふさんも、ちょっとだけいてくれるって」


そういうと、脇に控えていた家政婦のおばさんが「シーッ」と指を立てた。秘密だったらしい。


『すみません、ご迷惑おかけして』『いえいえ、ナナちゃんはとってもいい子ですし。最近治安も不安ですからねぇ』と大人同士の
謙遜と遠慮の会話がしばし続く。





1
「んん…ゴホン。それなら、大丈夫だろう。パパも出来る限り連絡をいれるようにするが…
いいか?神羅兵が迎えに来たとしても絶対に外に出てはいけないよ」


「うん。パパ」


「迎えがいくとしたら、前に話した ぜろ さん ・・・・ の番号から 神羅の受付のお姉さんから連絡がはいるからな
その連絡をうけて、その受付番号を知ってる兵隊さんなら付いていって大丈夫だからな」


「うん、パパ」


でもパパ、普通の三歳児だったら、今の説明理解できないよ。パパ。






あ、家政婦さんがメモしてくれている。多分私にあとでもっと優しく教えてくれるつもりなのかもしれない。


そうして、私のおるすばんの日の朝が過ぎていった。














高層マンションの上部に位置する、我が家ライゼン家。その家の中の殆どは、私の遊び場だ。


そう。もちろんパパの部屋すらも。


実際、何度かパパが仕事をしてるときにもぐりこんでいたりしたけれど、いい子にすごしていたので(この年になって
重要書類にラクガキなんてできないっつの。怖くて)私はどの部屋で何をして遊んでいても、叱られることは無かったのだ。






そして、何故か読めるこの世界の冊子をパパの部屋で読み漁っていたお昼前。


「あれ?」


リサイクルなんてしらねえぜ!と男らしさ?満点に色鮮やかに神羅のロゴが印刷されている書類二枚を、パパの机の上で
発見した。なにこれ。箔押しなんて…リサイクルしづらい書類だなぁ。上質紙A4でカラー印刷くらいで良くネ?


あと責任者の所に印かサインで…なんて考え込みつつ、その書類にざっと目を通す。





「…これなんて重要書類?」


ちょ、ちょ、ちょっwwwwwwwwwまwwwwwwww


軍事機密とか書かれてるんですけどッ、今後の遠征隊編成とか!まずくね?まずくね?


今日遅くなるのって、多分軍事会議だよね?なんかアイズオンリーとかあったし、超まずいって!



しかし、届けるにしても家政婦さんに「パパの忘れ物」って見せるわけにもいかず、パパの机をガサゴソと
漁りながら(荒らしてないからね!?)書類が入りそうな封筒を探す。やっぱりこれ、折り曲げて小さい封筒に入れちゃ
まずいだろうしね…。






直ぐにA4がちょうどよく入りそうな封筒を見つけ、書類を丁寧に中に入れていく。そして、その書類を持って家政婦さんのところへ。




「おばたん!パパがきょうのかいぎでつかうおてがみわすれてった!」


書類が折れない程度にピラピラと封筒を振り回し、お昼ご飯の支度をしている家政婦さんの横でぴょいこらぴょいこらと撥ねる。


「あ、あらあらあらまぁ、大変!」


慌ててフライパンの火を消し、エプロンで手をはたく家政婦さんに封筒を手渡しながら、


「パパね、これ「みちゃメッ」のおてがみだからたいせつなの。っていってたの。きょうはかいぎなんでしょ?
パパにとどけなきゃ!」


「そうね、ナナちゃん。すぐにパパのお仕事先に連絡を入れるから、待って…うーん、何かあったらダメだから
一緒に行きましょう」


「うん!」


エプロンを脱ぎつつ、テキパキとキッチンの後片づけをする家政婦さんを見つめながら、その後ろにある時計を見る。


「…。(11時30分かぁ)」


正直お腹が空きはじめている。


「あゅーぅ…。(また、ランチセットみたいなやつ食べれるかな~…)」






そして、きゅう~と可愛らしく鳴く私のお腹のために、家政婦さんはフルーツサンドを一枚だけ作ってくれて、


神羅ビルへと向かうタクシーの中でご相伴に預かった。具はモモとマンゴーでした。うまうま。





「はい、お話は伺っております、先程ご連絡下さいましたライゼン大佐のご家族様…」


「はい、はい、…そうです。」


巨大な神羅ビルの中、数度通り過ぎた覚えのあるカウンターで、私たちは引っかかっていた。





「それでは、ご本人確認のために免許証もしくはIDカードなどを見せていただいても宜しいでしょうか」


「あ、ちょっとまって下さいね…はい。これです。それと…」


家政婦さんが、案内カウンターに隠れてしまっていた私を抱き上げ、カウンターのお姉さんに見せる。


「ライゼン大佐の娘さんなんです、一人で留守番させるのも心配なので連れて来たのですが…」


「そうですか…」


カウンターに隠れた端末がピピッと鳴り、お姉さんがモニターに目を移すと、私に向かってにっこりと微笑んだ。


「ただ今大佐と連絡が取れました、直ぐ此方に来られるそうです。それと…娘さんと家政婦さんでしたね
ゲスト入社カードの発行が認められましたので、お渡し致します」


そうして渡されたのが「Guest card -  Limitation at half a day For 69」というシールが貼られた透明で
磁気ラインが一筋入ったカード。


私と家政婦さんは、そのカードを首から下げて、パパが降りてくるだろう大きなエレベーターが開くのを待った。






-----------------------------------------------------------

後書き:やったー!二日で二本も投稿できたよ!犬がお座りおぼえたよ!おりこうさんだ!(バカ)

悠々自適の家政婦さんとの幼女ライフを愉しみ始めたナナちゃんですが、

やっと神羅を代表する濃い方々と仲良くなるタイミングが振ってきた来たようです。

これからも、このハチャメチャ小説をみてやってください~。




[365] FF7:名無しのNANA-濃厚な一日よこんにちは-2-
Name: M
Date: 2007/03/19 09:16
息を切らせ走り



背後に部下をしたがえ



此方へと手を振る



優しくてすこしおっちょこちょいなパパ










「ああ!…やっぱりこれだ」


「たたたたた、大佐ぁ。勘弁して下さいよ~」


「よ、よかった…」




私から受け取った封筒を覗き込み、ほっとしたようにうんうんと頷くパパ。やっぱり必要な書類だったらしい。
その脇を固めるように、金髪と黒髪の軍服を着たお兄さん達がちょっぴり脱力していた。部下のヒトだろうか?うーむ、パパがお世話かけてます。


私はパパの大きな手でワッシワッシと頭を撫でられ、そのまま抱き上げられた。


「ありがとうナナ。それに君も」


「どういたしましてだよー」


「いえいえ」


『君も』、と声をかけられた家政婦さんもホッと息をついている。重要書類渡せてよかったな~。






「私はいつもどおりお部屋へは入ってはいませんが、ナナちゃんがちょうど旦那様のお部屋で見つけたらしくて…」


多分分かるとおもうけれど、家政婦さんはパパの部屋に入れないし、入らない。重要機密なんて見られたら困るしね。
(まあ、家政婦派遣所も神羅の息がかかってるみたいだし。…この間支給品のお掃除道具みたらぜーんぶ神羅製でやんの)




「ほう、じゃあナナが見つけてくれたのか。えらいぞ」


まだ乗っかっていた掌がさらにぐーりぐーりと頭をかき回す。頭がぐしゃぐしゃになるけれど気持ちがいい。


「パパが、かいぎでおそくなるっていってたから。かいぎでつかうおてがみだとおもったの。ナナちゃんえらいの?」


そんな会話をしてると、パパの後ろで控えている兵隊さんふたりが、もう目じりがデロデロになっている。幼女の魅力にKUGIZUKEですか?


この性犯罪者予備軍☆   …ごめん、ちょっと酷かったね。





「二人ともまだ食事はとっていないのだろう?食堂のほうに話しはつけておいたから、上で食事をとりなさい」




ワーイ パパ ダイスキー。








Song dedicated to you
FF7:名無しのNANA-濃厚な一日よこんにちは -2-








「美味しいわねぇ、ナナちゃん」


「おいしいねぇ」






現実世界からの私の大好物、卵料理。特に半熟をちょっと過ぎた辺りのギリギリでフルッフルのスクランブルエッグなんてたまらない。


あぁ!なんて美味しいの!食堂の人に後で会いにいこう。そしてこの火加減をおしえてもらおう。うん、きっとそうしよう。


私は大好物は残して後で食べる派、なのでちょっとずつ掬い取ってはウマウマとしているのを見て、家政婦さんが笑っている。





「明日はスクランブルエッグのほうがいいのかしら?」なーんて言ってくれましたよ!素敵!最高!愛してる!ポカホンタス!(?)


「ほんと!?ナナちゃんプルプルすくらんぶるえっぐだーいすきなの!おばたんだいすきー!!」


あとでしょくどーのひとに、すくらんぶるえっぐのつくりかたおしえてっていったら。おしえてくれるかなぁ。 うふふ、きっとおしえてくれますよ。
なーんて会話を続ける。バタートーストに塩を軽く振りかけたスクランブルエッグを載せてサックリ頂く。





うーまーいーぞー。




そうそう、私たちは今居るところは神羅ビルの上のほう…、なんか、下のほうにいたためしがないな。


気づいた方もいらっしゃるだろうが、パパを助けたときにつれてこられたあのリフレッシュルーム(待合室?)だ。
さっきまでは此方をうかがっていた神羅社員の方もお弁当を広げてたりしてたけど、休憩時間が終わったのかもう誰もいない。
時計見たら13:10あたりでした。平均的に社員としての休憩なら、このくらいだともう仕事時間だしね~。いなくて当然か。





あ、そうそう。防犯のために、パパと一緒に帰ることになりました。









そして、家政婦のおばさんに手を振って、さようならのご挨拶。時は既に夕方の6時、さすがに家政婦さんも
自分の家庭があるから、と帰っていった。





今日はお疲れ様でした~。あー、外真っ暗。


リフレッシュルーム備え付けのテレビは神羅系列の番組ばかりだし、この時間帯だと簡単なショボいアニメとかニュースばかり。正直退屈。





ああ、そういえばこの時間帯は昔ニューな世紀でチルドレンッ子たちが巨大ロボもどきに乗って、ふらーい・み・とぅ・ざ・むー♪だったなぁ…。


チャンネルを切り替えてみる。うむ。あんな奇抜アニメ(褒め言葉)あるわけないな。




その後も数度ポチポチと切り替えても面白いものない、なのでとりあえずニュースで固定にし、垂れ流されるキャスターの報告を
右から左へと聞き流していった。








「らーらー、ららららーらーらーらーら、かたまりだまっしー」




夜景美しいミッドガル、脳内でははじけんばかりの大絶叫をバックコーラスに摩天楼をカタマリにする某王子の姿が。脳汁溢れちゃうよ?


むしろ脳内魂できちゃうくらい暇なんですがどうすればいいですか、放課後ラブラブデート妄想して暴走中です。


時計を見上げると、まだ7時。ほんと針の進みが遅い、小学校のときの算数の時間並みに遅い。
脳内塊はすでに神羅ビルを飲み込み、ついに海を越えてコスタデルソルを巻き込み始め、阿鼻叫喚。





はぁー、と窓ガラスに息を吹きかけ、キュキューっとバ○ボ○のパパとか書いてみる。そしてゴシゴシ消す。
 はー。キュキュー。(サ○エさん)ゴシゴシ。









「もー、やってらんないわ!!」


「主任そう言わずに・・・」


「あンの日和見たち見てると腹立ってくるわね!…紅茶、飲みたいから買ってきて頂戴」


「はっ、はいっ!」


駆け出していくヒョロ長い部下を一瞥し、金糸の髪を豊かに結い上げた真紅の女性は、掌で軋むファイルボードをさらに歪ませた。


猛る女性。スカーレット。つい先ほどまでアゴス大佐たちとは別の会議に出ていたようだ。
酷く憤っているのは、自分の考えた兵器開発予算案でも通らなかったのか…。


とにもかくにも、彼女はその高ぶったままの精神でナナのいるリフレッシュルームまで高らかにヒールを鳴らし、歩む。





やたらカッツンカッツンとカン高い音が近寄ってくる。ピンヒールかなー?


なけなしの小銭で、パックジュースを購入。濃縮還元数パーセントのオレンジジュース、このくらいの果汁のほうが好きです。


それにしてもすごくイライラした感じの足音、アッハッハもしかしてキャハハのスカーレtt





「ったく、ムカつくったら」


わーきんぱつへきがんのおねーさんで 赤ァーいなぁって


おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおぅ!!?






問1:手元のパックジュースの中に思わず息を大量に吹き込んだ場合どうなるか答えよ。
答え:紙パックが空気圧によって膨張、そして周囲の圧力とパックの圧力によって復元しようとする力。
    そして一度に大量の空気が入ったことによる限界突破。

    結論的には。



「オブブブッブブゴボッ!?」


*・゜超*:.。..。.絶:*・゜(n‘∀‘)η゜・逆*:.。..。.:流*・゜゜・*



鼻に!鼻に!鼻が!鼻が!フルーティ!フルーティ!超ツーンって来た!来た!


口と鼻からなんていうか盛大に体液+果汁スプラッシュon theナナちゃん。


ウェーゲホゲホ!



「ちょ、ちょっとアナタ大丈夫なの?」


ああ、目の前の白くて美しいマニキュアの指先が、さらに白いハンカチを差し出してくる。
ああ天女!ああ女神!その名は スカーレット様! …落ち着け自分。






そして私たちは向かい合わせに座り、自己紹介を交わした。




「ふぅん、オジョーちゃんがあのアゴス大佐の養女なのね」


「そうだよ。おねえちゃま」




「おねっ…ねえ、もう一回いってくれる?」


「おねえちゃま!」



実はスカーレット、一人っ子。(このSDUの設定上)年下に好かれるのが弱かった。


しかもナナは中身は怪しい成人女性。しかも女性にも萌えれる腐女子属性。しかも刷り込み状態でスカーレットに好意的。


だが、外見は「おねえちゃまだいすきなちっちゃいこ」なのである。
まあ大抵の大人は…ノックアウトだろう。













「へーき?」
「平気じゃないの。兵器よ」


「ぶき?」


「そうそう、こうドバババーッとかシュンシュンシュンとかボシューッって」


マットに彩られた赤い指先が擬音とともに踊る。暇つぶしにちょうどいいと思ったのか、彼女は私に兵器について講義している。


上の話でも思ったけど、神羅の人たちってこっちの年齢考えないのかな。






「パパのへいたいさんたちがもってる、あのこわくていたいの?」


「そうそう」


「あれ、ひとにあたるとしんじゃったりするんだよね。すかーれっとおねえちゃまはそういうのをつくってるの?」


「…まあね、こう、ドバーっといくのは結構スカっとするわよ?人の生死は別として」






さすがに小さな子供に生死の話題に関するのはマズイと感じ、言葉を濁す。


けれど、自分自身が大威力の兵器製造が趣味で、最高の仕事と信じているからこそ、少女に対しても自分の主張は崩さなかった。






「でも」


目の前のうつむいた少女が顔を上げる、ニッコリ、とまではいかないかすかな微笑が浮かんでいる。


どこか歳相応ではないな、という考えを持ちつつも、スカーレットはその微笑を見つめていた。


「ナナ、すかーれっとおねえちゃまがぶきをつくってくれてるから。パパやパパのへいたいさんがテロリストのこわいひとたちに
ころされたりしないの。しってるよ。


だからありがとうね。おねえちゃま」






それは紛れもない自分の意見。


自分の世界で生きてきたときも、忌まわしい兵器と呼ばれるものが人々を守り、命を刈り取ってきたことは知っている。


テレビ画面越しに伝わる凄惨な事件には、必ずといっていいほど武器が絡みつく。


しかし、その反面。助かった人々の命を絡めとり、救いあげるのもまた武器だった。


一長一短。その言葉が似合う「モノ」だと考えたこともある。


だから、私は静かに彼女に告げた。







くしゃっと頭が白魚のような指につかまれる。


怒鳴られるかな。ちびっこが生意気いうなってたたかれるかな。






けれども、次の感触は強引な抱擁とやわらかい感触だった。


胸に抱かれている。










「ありがと、おじょーちゃん」


「おじょーちゃんじゃないもん。ナナだもん」










「ぷっ。…くくくっ。キャハハハハハハハハ!!!」


「えへっ…あははははは!」


数秒の沈黙ののち、私たちの間に笑いが走った。なんだかとても楽しくてうれしい気持ちになった。




「キャハハハハハハハハハハ!あなた、見所あるわよ?」




「ほんとう!?すかーれっとおねえちゃま!(何の見所なのか突っ込まないでおこう)」




「ウソは言わないわよウソは。キャハハハハッ」




追記:そのうち、私専用の護身銃を作ってくれると約束してもらえました。やったぁ。って子供に持たせる銃ってどんなの。







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後書き:超☆難☆産

こんばんはMですyp。今回は知ってたらニヤッとするネタとか多めに入れてみましたヨと。

まずはスカーレットを落とし(?)ました。現在落とす予定の人は

あと三人ほど…序章で落としきれるか…!!!!




そんなことは関係ないのですが、PSUを物欲に負けて購入してしまいました。

…覗き見モーションがあるなんて、SEGA…侮れない(ゴクリッ




[365] FF7:名無しのNANA-マテリア四粒こんにちは
Name: M
Date: 2007/04/01 04:47
手のひらに転がされた


色とりどりの


星の力のかたまり


三色の輝きは光を照り返す






「パパ?」


「これをお前にあげよう。家に帰ったら“それ用”のブレスレットをあげるから、いつも身に着けていなさい」


眠気まなこで目をごしごしとこすっても、手のひらに乗せられた小さなビー球の存在は変わらない。
これって。


マテリア?




あの後、ティーセットを抱えて入ってきたひょろ長いお兄さんをスカーレットは蹴り飛ばし。
「またね、ナナちゃん」と投げキッスを送りつつ去っていった。あんなポーズが似合うなんて、羨まs…。スカーレット、恐ろしい子…!


あとなんか、けられたお兄さんがすごいうれしそうだったのが気がかりです。
アレか、Mか。Mですか。Mなんですね。(性癖にマッチした)いい職場でよかったね! おもわずやたらいい笑顔浮かんじゃうよ?




Song dedicated to you
FF7:名無しのNANA- マテリア四粒こんにちは





「パクッ…あむあむ」


「ナナァああああああああ!?」


ごめんねパパ。ナナ素で寝ぼけてたの。飴じゃないのわかってたのに口にいれちゃった。ごめんねパパ。あと驚いた顔面白いねパパ。


ぐぅ。


さて!早朝の4時に目が覚めたナナちゃんです!あとそういえば中の人の年齢公表してなかったような気がするので言っとくよ!
ねんれい:23さい
しょくぎょう:もうすぐみんえいかになるこうきょうじぎょうのこうむいん。定形外は120円から!




さてさてさて、そして朝っぱらから部屋の中をうろちょろしてる私なのでありますが、手に握り締めたハンカチ巾着の中にはマテリアが。
うん、やっぱり四粒。「かいふく」「いかずち」の魔法マテリアと「HPアップ」の独立マテリアに「なげる」のコマンド。
緑二つに赤と黄色一つ。…初期の信号機かyp!


そして新発見、マテリアって触ってると中身がなんだかわかるのね。回復はなんだか触ってて気持ちがいいし、いかずちはなんだか雰囲気が
ぴりぴりする。HPアップは「うぶるるるぁぁあー!みなぎるぅぁぁあああ!」って感じだ。ちょっとだけね。
なげるは…なんか、tossって内部に薄っすら浮かんでるんだけど。なげるでいいのかn…表記が日本語に変化したァァァ!!!?


すごいよマテリア、マテリアすごいよ。もう突っ込みどころがわからないくらいすごいよ。
二度寝していいですか。現実逃避したい。夢が壊れました。(あのね、実はこうね?心に使い方が浮かび上がってくるとかそういうファンタジーを
とっても夢見てたわけで)


そんなこんなで、ナナちゃんの日常はまた始まるわけでございます。




「用意はいいか?ナナ」


「おっけーなの!パパ!」


びしっと陸軍系敬礼をしたら目じりが下がるパパ。威厳ないよ。


「ゴホン…さて、昨日渡したマテリアだが…持っているね?」


そう言われ、ポケットからゴソゴソとハンカチ巾着を取り出し、掲げてみせる。


「ちゃんと持ってるよ」


「よろしい」


鷹揚に頷いたパパは、まず茎が折れ、萎れきった花の鉢植えを指差した。わざわざ売り物にならないものをもらってきたそうだ。


「この花にケアルをかけて元気にしてあげるのが、今日午前中のクリアすべき事項だ」


「はい!パパ!」


部屋の中では、家政婦さんが「しょうがないわねぇ」といった苦笑いを浮かべてお掃除をしている。
今居る場所はマンションにしては大きなベランダの一角、人工芝が植えられた一部。
つか、マテリア訓練ってどれだけブルジョアなんだよ。ナメてたね、大佐クラス。


そんなことを考えていると、冷たい金属のリングを手のひらに載せられた。きょとんと見つめると、私の腕を覆うようなリストバンドのような太さの
腕輪、いくつか半円に近い深さの穴が開いていて、マテリアをここにぶち込む仕様らしい。


「まずマテリアを装備、…あー、その穴にマテリアを入れなさい」


言われたとおりにマテリアをぐいぐいと穴に押し付けると、意外とすんなり穴に収まる。ぶんぶん腕輪を振っても取れない。やるな腕輪。


振り回したその腕輪を半分に分割するように割ると、丸いダブリュー(W)のようになった。ふむふむ、腕に通すんじゃなくて、腕にハメる形なのね。
腕に当て、パチンと音をさせ、嵌めてから腕を振ってみる。うん、外れない外れない。そしてパパを見上げると、再び頷いて私の後ろに回った。


「いいかナナ。まず意識。まあ簡単に言うと心だ。心をこの「かいふく」のマテリアに向けるんだ」


「うん…じゃない。はい」


人にモノを教えてもらうときは出来るだけ真面目にしてよう。しかしやっぱりパパの説明は三歳児には難しすぎるヨ。


ほら、家政婦さんがわざわざメモとってくれてるよ。ありがたいね…でも家政婦さん、手から掃除機が離れて掃除機があばれて あああああ!


「ナナ、ちゃんと話を聞きなさい」


無理、無理だよパパ。掃除機が花瓶に!見た目からしてバカラの花瓶的高級感あふれる花瓶に!ああああああああ!!あ、家政婦さん気づいた。


花瓶に生けられたお花さんの運命はまだ天が味方していたようです。大急ぎで掃除を仕上げてくれた家政婦さんも一緒になって、私の訓練に参加
してくれるようです。書記として



「マテリアに心を近づける、意識をそばに置くんだ」


「いしきをしゅーちゅう。こころをマテリアにちかづけて…」


「そうだ、筋がいいぞ。そして対象をターゲットするんだ、ターゲットを揺らがすな。暴発の原因になる」


「あいてをたーげっと。さだめる」


「そして放つ」


「けある!」


ポシン。という軽い空気の破裂音が鉢植えの一部から聞こえた。
近づいて見ると、一枚の葉っぱだけがやけにツヤツヤしている。…これは…。


「成功だ!ナナ!」


よくやったぞーぅ!と脇から抱き上げられグルグル回される。ちょ、恥ずかしい!でも純粋にうれしいよ!?魔法使えちゃった、使えちゃったー!!!


「やったー!パパ!ナナいいこ?ナナいいこ?」


「いい子だぞーぅ!」


「パパ下ろして~、ナナもっとがんばる!」


アレだね、数学とかも最初つまずくとそこから動かないっていうけど、最初つまずかないでいくととっても面白いってよく言うよね?
同じだ、すごいうれしい。もっとやりたい。うまくなりたい。うう、単純だなぁ自分。でも嬉しい~!


「…精神にいいお昼ご飯ってなにかしら…、ウータイ地方のショウジンリョウリとかいうやつかしら…?」


家政婦さん、今気づいたけど。あなたちょっぴりズレてるのね、いつものご飯でいいですよ。







「ケアル!」


「ウム、いいぞ」


小さな破裂音もすることも、幾度も詠唱を繰り返す内になくなり、しゃらしゃらと空気が涼やかに震える音のみになっていく。
幾度か無性に心がへこみ、ぐったりしてしまったけど、きっとあれが俗に言う「MP切れ」なんだとおもう。謎の飲み物もらったら元気になったし。
…FF7エーテルってすげぇ高かったような気がするけど…やっぱり神羅勤務割引とか箱買い割引とかあるのかな…。


そして数時間が経過した。


「ケアルぅ」


きらきらと光の粒が植木鉢を覆い、ピンシャンと背筋を伸ばした鉢植えが現れる。随分上達したみたい。
ふいに空を見上げると、もうお日様は頭の天辺。朝の青白い日差しはもう無くなって、真っ白な明るい光が私たちを照らしていた。


「さすが我が義娘。筋がいいな、しかし…」


「お花さんに効いてるくらいだから…擦り傷くらいしか治せないね」


顎に手を当てて考え込むパパの横で、お日様のまぶしさに目を細めながら見上げた。


「そうだなぁ…さすがにこれ以上の上達はまだお前には早いだろう」


精神力の器が足りないだろう、まだ三歳だしな。と大きな手が私の頭をワシワシとなでてくる。


「三歳で魔法が使える時点で、とってもすごいと思うんですけどねぇ。しかも連続で」



「ふぇ?」


そうなの!?


「そうなのか?」


「そうですよ」




「うちの新年仕官兵並みなんだがなぁ」


「大人と子供比べてる時点で違いますよ」


「ナナよくわかんない」


…中の人がトシとってるからかなぁ。




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後書き: こんにちはMですyp。
イソガシス




[365] FF7:名無しのNANA-ほーじょーせんせ、こんにちは
Name: M
Date: 2007/04/01 05:12
目の前の機械に満たされた


薄桃色のひかり


星の命に満たされた


人に切り刻まれた旅人






「じぇーのーば」


幼い少女がドーム状の機械に印字された文字を読み取り、その声に猫背の男が振り返る。


「ああ、それが気になるのか?よい感覚をしている、…それは人類が見つけた宝だよ」


「たらかもの?」


少女は舌が回らないようだ、即座に男がゆっくりと訂正する。


「たからもの」


「たからもの!」


「ウム」


男は鷹揚に頷いた。


宝物じゃなくて、アンタたちは災厄って呼んでるじゃんかYO!(ラップ的ポージング付で)と突っ込みたくなるのを、少女は我慢していた。






Song dedicated to you
FF7:名無しのNANA- ほーじょーせんせ、こんにちは





「パパ!」


勢いよく駆け寄り、ちょっと脂肪に包まれて柔らかなおなかにジャンピング飛込み。そして即座に抱き上げられる。


「ナナ、もう幼稚園は終わったのかい?」


「うん!あのね、せんせぇがね?「ナナちゃんは飲み込みがはやいね」ってほめてなでてくれた!」


正直通うのが苦痛だけどな!


「そうかそうか」


大きな手が帽子越しに小さな頭をなでる。


「えへ、えへへへへへ」


黒いワンピースに、ちっちゃなベレー帽を頭に載せて。胸に赤いチューリップのバッヂは忘れずに。
つやつやのストラップブーツで、とんとん、と地面を突付く。
毎日繰り返されるそのほのぼのとした軍人と子供のやりとりは、最近では神羅の時計代わりになっていた。


「それじゃあ、ナナおうちにかえるね。パパ、きょうはね?おばちゃんとね、ポテトサラダつくるから。たのしみにしててね!」


「それはおいしそうだ、でもパパにんじんが苦手だなぁ」


「だーめ!すききらいはいけませんっ!だよー?たくさんいれちゃうんだから」


「わかったわかった、残さず食べるよ。…じゃあ、気をつけて帰りなさい」


「はぁい!」


愛らしいやり取りに、慣れっこになっている受付のお姉さんが、そらもう穏やかなまなざしで見つめてくる。めろめろですか?私に!






かわいいなんてそんなこと、言っちゃダメです。 こんにちはナナです。
幼稚園に通うことになりました。つか、もう通ってます。




苦痛。


だって周りちびっこなんだもんついていけないんだもん演技力が高いけど流石にねぇ・・・誰か助けて下さい!(人形を抱いて)
あと一番苦労してるのは「お絵かき」とか「もじ」とかペンを使うやつね。うっかり綺麗に書きそうになるから、利き腕じゃない左手で
行動しております。苦痛


にこにことこちらを眺めていたお迎えに来てくれている家政婦さんに手をふる、帰ろうよ~と声をかけようとすると、
人とすれ違いざまにカチャッと落下音がして、丈夫そうな布袋が足元に落ちていた。中に硬いものでも入ってるのかな?


拾い上げた袋を抱いていると、こちらに近づいていた家政婦さんがしゃがみこんで袋を見つめている。


「あら、ナナちゃんそれは?」


「わかんない~。だれかおとしてった」


袋越しに中身に触れると、ガラスや金属の塊がカチャカチャと揺れる。ひっくり返すと、そこに印字されているのは「実験未処理サンプル
第24期プレート 宝条グループ」宝条…宝条…宝条!?





「え、子供?」


「おとどけものなのねー」


広域利用のできるカードキー。それを首から提げた子供が、見覚えのある袋を掲げている。


「えっと、ほーじょーはかせさんに、落し物のおとどけなの」


はいっていーい?と首を傾げられ、思わず頷くと満面の笑顔を浮かべて子供は研究室の中に入っていく。そして振り返り。


「けんきゅーいんのおにーさん、ほーじょーはかせさんは、どこですか?」


はじめてくるところだから、わかんないよ~。とつぶやき、薬品でささくれ立った自分の手を握った。

-研究一辺倒だった最近、小さく暖かなその体温に。家に帰れず、実験はうまくいかず、すさみきった自分が
ちょっと癒されて泣きそうだったのは秘密である。-
 -ある青年研究員の日記より抜粋-





-青年視点-


「何で子供が」「かわいい!」「あいつの親戚?」などと仲間たちがさざめく。自分の手を握り、決して狭くは無い研究室を練り歩く少女に
異様な雰囲気があたりを満たしている。


「宝条博士なら、奥の主任室に居るはずだから。そこまで一緒に行こうか」


「うん!」


興味深そうに研究室の棚に並ぶ薬品実験物ホルマリン漬け。
しかも少女はホルマリン漬けを指差して、鼻高々に「ほるまるんづけ、しってるよ!」と笑った。


「ぼーふしょり、こてーしょり?なんだよね!」


えらいでしょ!と胸を張る。


「あとねーあとね、きか?くうきになるとホルムアルデヒドになっちゃうんだよね?」


「本当によく知ってるんだねぇ…大きくなったらウチ(研究課)にくるかい?」


「んー、かんがえとく!」


大人びた、顎に指を当てる仕草が“おしゃま”で、とても可愛い。そんなこんなで、少女の歩みに合わせてゆっくりと、主任室の扉へと
近づいていった。


「ここが、ほーじょーはかせさんのおへや?」


「そうだよ、確か昨日大きな実験は終わったから…今は何も実験の予定が入ってないはずだよ」


少女が少し不安そうにこちらを見上げる。


「おじゃまじゃないかなぁ」


「大丈夫だよ」


僕も居るから、ね?と肩を叩き、扉をノックする。


「僕です、少々よろしいですか?主任」


数秒の間ののち、人が動く気配。そして。


『ああ、君か。かまわん、入りなさい』


「失礼します。ほら、君も」


「えと、失礼します」


ドアを開けた先にいた主任が、その胡乱な目を大きく見開いて、僕のとなりに存在する小さな女の子を見つめていた。
しかし、直ぐにその目は戻り、ゆるゆるとこちらを見直した。


「そこの子供は…アゴス大佐の娘さんじゃないかね…?」


「えっ!?ええっ!?き、君そうなの?」


思わず身構えて少女を見下ろす。そして「うん」と頷いて、片手に抱いていた袋を頭の前に差し出した。


「ほーじょーはかせさん。おとしものです、とどけにきました」


その袋の下から顔を覗かせ、「えらい?」と上目遣いで見つめる少女はとんでもなく可愛かった。ああ、妹欲しいなぁ。






おおお、宝条さんですよ!マッドですよ!魔晄ジュース!!ですよ!?
目の前にある意味憧れの存在がッ!
あのヌルリツルリとした戦闘体型に惚れてます。ああいうスレンダーなモンスターに弱いんですよ。かっこいいよねアレ。
あと鬼畜ぶりも大好きですよ?イヤッハー!
もちろんコレは心の中での叫びですよ?ですよ?ですよッ!




-宝条-


「ふむ、ありがとう。……まあ、急ぐわけでもないだろう?すこし、ゆっくりしていきなさい」


「え?でも…」


「ああ、君。確か誰かココアを持ってきてただろう、入れてあげてやりなさい」


うろたえる少女を無視し、この場につなぎとめる。
目の前の幼い少女が、アゴス大佐を救い、ゲリラを撃退したという噂。それを本物なのか知って見たかった。


(なあ?ジェノバよ)


こんな幼い少女が、ソルジャーになれたら。いや、なれずとも近しい存在に慣れたら
それはとても おもしろくないか?


「くっくっくっくっ・・・クァックァックァッ」


「……。(おお、生クァックァックァッだ)」


「おお、これは失敬。クックック…」


「いいえー」


いいもん見させてもらいました。(生笑い)




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後書き: 顔文字がすべて吹っ飛んだ。




[365] FF7:名無しのNANA-マジジェノバさんこんにちは
Name: M
Date: 2007/04/04 15:40
響きあう星のこえ


薄緑色のひかりが


私をやさしく包み込む


この星は何よりもやさしかった






目の前に出されたホカホカココア。それを見つめたまま口を開く。
「ナナちゃんじっけんだい?」
「うむ」
あっさり頷く目の前の宝条先生。
「え、ちょwww」
やべ、思わずつっこんじゃった。
「なにかね?早くココアをのみなさい」
「ナナちゃん、そのマイペースさに。せんせぇにこいごころをいだきそうです」
「…コッ!?…申し訳ないが、想定の範囲外の反応にこちらはどうやって反応すればいいのかわからないな」
「ようじょのいうことを、まにうけちゃだめですよ」
「それもそうだな」
「そうですよ」
「そうだな」
「うん」
「ウム」
「…。(なんなのこの空気。)」
青年研究員は、空気を吸っているだけでげっそりとした顔をしていた。


じゃ、ココアでもいただきましょうかね。
カップを持ち上げると、隣の研究員のお兄さんが驚愕のまなざしでこちらを見ていた。
「飲むの!?」
はい。小さく頷く。
「想定の範囲外だ」
予想外?…宝条そふとばんくもb(禁則事項です)ぜろえーん!(実質0円じゃなかったみたいね、アレ)






Song dedicated to you
FF7:名無しのNANA- マジジェノバさんこんにちは




ぽてぽてとおなかを叩く。おいしいココアでございました。
「おなかがぽかぽかします」
「フム、興奮剤の類は普通に効くようだな」
「主任ッ子供に何飲ませてんですかァ!?」
私と宝条先生が首だけ研究員に向ける。
「興奮剤」
「いかりみなぎるのね~」
「君も!そんなあっさりしてないで少しは嫌がってよ!」
「だって、ちょっとげんきになってきただけだもん」
ここあおいしかったのー!のごきげんそうにしていれば、お兄さんは「ああもう!」と叫びながら頭を撫でてきた。








-宝条-
賢い子供。一を聞けば十を知る、なんてものを初めて目の前で見た気分だった。それほどまでに、少女は賢かった。
何故自分を実験対象にするのか。そして、理由を聞き頷く。
幼い外見とその仕草、そして時折深く考え込む姿、とても既視感があるその行動。
ああ、彼女は。  あれに似ている。


勝手に細まる自分の目をこっけいだと笑いながら、顎を摘みうつむき思考に落ちる少女を眺めていると、衝動的な熱が昇る。
「このいきものを」「このいきものを」「このいきものを」


「 つ く り か え て し ま え 」






「…グッ…」
「宝条のおじちゃま、どぉしたの?」
白衣の胸元を硬く握り締め、さらに猫背を丸めた宝条先生を見上げる。その視線の先の先生には、びっしりと脂汗が浮かんでいて
瞼を硬く閉じている。
「ねえ、どうしたの?おじちゃま」
彼は、近寄ろうとした私を制するように、掌を私の前に突きつけた。
「申し訳…ないね、少々研究の疲れが出たようだ。……後日お父上経由で何らかの連絡はさせていただこう。君、彼女を
送って生きたまえ…」
「え、あ。ハイ!…さあナナちゃん、主任もそういってるし、帰ろうか。大丈夫、直ぐに主任はよくなるから」
研究員のお兄さんも、どこか不安そうな顔で宝条先生を一瞥すると、直ぐに頷いて私の手を取った。


なにか、おかしい…?


漠然とした違和感を持ち、青年と手をつなぐ。主任室を出ようとし、振り向いた瞬間。体を硬くしていた男が、むくりと背を伸ばした。


「少々、待ちなさい…是非君に見せたいものがある」
なんだろう、なんだろう。違和感がさらに心の中で膨らんでいく。
ちょっとマッドなまなざし見えていた眼鏡ごしのおちゃめな目元は、蛍光灯の照り返しで白く反射して見えない。
いつの間にか緩んでいた青年との手を、細ばった男の手に奪われ、私はふらふらと彼の後をついていった。


まるで、どろどろに溶けた鏡の中を歩いているようだった。
自分の手を取り歩く男が、本当に今まで話していた宝条先生だとは思えなかった。
私の視覚は、猫背ですたすたと歩き、私に歩調を合わせる男の姿を捉えている。
しかし、私の心は。揺らぎ、ぶれ、霞みを繰り返す、謎の生き物-宝条-を想像し、捉えていた。
これは本当に宝条博士なんだろうか。




少し歩き、研究室の一角へとやってくる。視線の先には半球体に似た丸いドーム。
その扉の上部に取り付けられた窓から、薄桃紫のような不思議な輝きがもれている。
これは、もしかすると。もしかするかもしれない。
これは           JENOVA


「主任、申し訳ありません。出向している第2セクターの班長から連絡です」
そのとき、人差し指と親指だけを立てた「電話」のジェスチャーをした研究員が後ろから声を掛けてきた。
顔を少し歪めた宝条先生は、直ぐに振り向いて声を掛ける。
「…わかった、直ぐ行く。 すまないね、少々待っていてくれたまえ。ここから動かないように」
「はぁーい」
私は良い子な返事を返すと、向き直ってジェノバが収まっているであろうドームを見上げた。


「JENOVA(じぇーのーば)」


その声に反応したのか、呼び出した研究員と去ろうとしていた宝条先生が振り返る。
「ああ、それが気になるのか?よい感覚をしている、…それは人類が見つけた宝だよ」
にたり、と顔を歪めて笑い、頷くと、そのまま研究員と壁の向こうに去っていった。
やっぱり、違和感を感じる。漠然とした違和感。ぽこぽことウィルスのように私の心を疑心で満たしていく。


そんなことを知らずに、私のはるか頭上に位置するジェノバの丸い窓は、薄桃紫色の光をこぼしていた。
小さな自分の手をドームに当てる。瞬間、ピリッとした静電気のような、不思議な衝撃が体を満たしていく。


え?


なに?


さびしいの?
そっか。


うん。…え、ちょ。それなんてエロゲ?あ、ごめんエロゲなんてわからないよね。
簡単にいうとね、人間の男性、一部女性もいるけど。の性欲と精神を擬似的に満たせる娯楽。


OK、把握した。トニーひでぇ。


そりゃさ、坊主憎けりゃ袈裟まで憎いっていうけど…私のその生き物のうち一つなんだけど。
いや、マジマジ。超マジ。そう。


やっぱりかー、あの違和感。




「少々遅れてしまった、すまないね。あと、ロビーにいる君の保護者にも連絡を取ったが…ナナ君?」
「ん、んにゃ?」
早足でこちらへ戻ってきた宝条先生の声に、覚醒する。
私はジェノバのドームに寄りかかるように、半分うとうとしていた状態だった。
体を離そうとすると、再びぱりぱりとした衝撃が体を覆う。
宝条先生から見えないようにうつむき、小さく笑い、ドアの丸窓を見上げる。
「ひゃ!?」
いつの間にか近づいてきた宝条先生は、私を抱き上げた。細く筋張った腕からは想像できないほどの力で、
軽々と私を抱き上げる。そして、桃紫色の光が湛える窓の向こうには。
いびつな人の形を模した、首の無い生き物の体が収まっていた。


「彼女が、ジェノバだ」
「じぇのばおばちゃま?」
「おば…そうだな」
「おくびがないのね、いたい?」
「さあな、彼女に痛覚はあるのだろうがね…」
「いたそうだねぇ、なおしてあげられないの?」
「こいつの息子が首を持っていってしまったんだよ、直せないな」
「かわいそうね」
「…かわいそう、か」
強化ガラスらしい丸窓に掌を当てると、先ほどよりも強い衝撃が体に走る。宝条先生にはわからないらしい。


大丈夫、きっとまた来るから。
さびしいなんていわないで。
ねえ、ほら、呼んであげる。
だから泣かないで、痛みに負けないで、寂しさに負けないで。
貴方は    存在を       んだから。それはきっと   。
ね?ジェノバ叔母様?




「もう!遅いですよナナちゃん!宝条先生さんも、もう外が真っ暗じゃないですか!!」
「ご、ごめんなさぁい~」
「む、申し訳ない…」
天然家政婦さんは、宝条先生にも強かったです。 まる。
こころのかぞくが、ふえました。




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後書き: ほんのちょっぴりシリアス交じり、でもふいんk(何故k(ry)が持続しないのがナナちゃんクオリティ。
     ジェノバとリンクするって凄く珍しい設定だと自分でも思いつつも、このままいきますよ。Mです。(挨拶の長さに磨きが
     掛かってきました)

     ここから、いえ、このジェノバ、宝条との邂逅にて、物語は本来のFF7から外れていきます。
     後々の章の冒頭で説明する予定でしたが、こちらでもちょろりと説明を。

     原初のワルモノさんはガスト博士になっています。あとネタバレギリギリですが「元々宝条はマッド志向だけれど
     人非人ではなかった」という設定をカマせていただきます。
      これからもSDU:名無しのNANAをヨロシクお願いします。




[365] FF7:名無しのNANA-強い人こんにちは
Name: M
Date: 2007/04/04 15:46
夢を追い続けて


勇気(つよさ)をなくして


誰よりも愚かになることを


自分に科した強くて弱い男(ひと)






航空力学の本に、重力の本。子供が見るような星座神話の絵本から、こちらの世界の遠い遠い遥か彼方に霞む
星雲達の写真集。天(そら)の先への夢が凝縮したような空間が目の前に広がっていた。
「おや、お嬢ちゃんは何処の子かな?ここにこれるって事は、結構上の子だろう?お父さんは?」
「……」


目の前の、知性あふれる笑顔に私は絶句するしかなくて。
私を見つめる眼差しは、酷く憔悴していた。思慮深そうな瞳は眼鏡の奥で静かに揺らぐ。
小さな小さな資料室の隅で、申し訳程度に資料を載せられる小さな背の高い机に本を積み上げ。
ハードカバーの本を画板代わりに、書類の裏を計算用紙にして、なんらかの数式とメモを書きなぐっていた。
巨大な花弁のように足元に散乱するその書類の裏には、数式と数字と。ロケットと燃料などと走り書きされた文字。


私を伺っていた人は、小さく苦笑すると掌に飴玉を二粒乗せて、もう一方を口に含んだ。
「美味しいキャンディがあるんだ、少々一休みしようと思ったところでね。いっしょにキャンディでおやつの時間を
付き合ってくれるかね」
私は握らされた飴玉を、さらにつよくつよく握って。
目の前の男性に頷いた。


「むむ、これは私の好きなチョコバナナキャンディだ。…こんなおじさんがキャンディ大好きなのは、おかしいかな?」
照れたようにこめかみを掻く人に、私は首を振って否定した。「ありがとう」と彼は小さく笑って、唐突に掌を打つ。


「私としたことが、小さなレディにご挨拶がまだだったね。 私の名前は、パルマー」






Song dedicated to you
FF7:名無しのNANA- 強い人こんにちは




互いに口の中で飴玉を転がして、口を動かすたびにカチカチと飴玉が歯を鳴らす音がする。
床に散らばった書類と、決して少なくは無い天(そら)の本。私はパルマー小父様(さっきの雰囲気は本当に「小父様」だった)
の片づけを手伝っていた。大抵ハードカバーなのでメチャ重い。
「どうしても、諦め切れなくてね。自分でも女々しいとは思っているのだよ」
「そんなことない、ナナちゃんもお空大好き!」
「おや、そういってくれるとうれしいね。ナナちゃんが大きくなるころには私はいないだろうけど
ロケット村のアイツが…。私の志よりも高いところを見つめている人がいるから、きっと彼がやり遂げてくれるだろう」
狭い狭い資料室の中で、パルマー小父様の視線は遠い遠い空を見つめていた。









今日も元気だ薬が美味い。こんにちはナナです。
先日ジェノバ小母様とうっかりリンクしてしまいました、イワユル テレパッスィー というヤツです。


あれな、トニーひでぇ。


ごめんごめん、トニーって言われてもだれだか判んないよね?あのね、トニーってね。まだジェノバが地上で活動してたときの
小母様ブチのめしてくれた元夫だって。


理由が「浮気したときの喧嘩で浮いたこめかみの青筋が尋常じゃないからこいつ人間じゃねぇ」だって。こいつバカだ。
小母様泣いてるぞ。


それもあるし、掘り返されて、「モウヤダー!ホカノオホシサマノトコロイク! こんなDV種族やってらんね」ってなってたら、
掘り起こしたときにドリル使われてたみたいでハラワタぶちまけるわ背面の残りのボディは引きちぎられるわ
速攻体刻まれるわ問答無用で培養液に浸されるわ魔晄に浸されるわ勝手に息子は出来るわ息子は勘違い電波系
に進化してクビチョンパしてくれるわ今はマジマッパ(裸)だわ。ウッカリ起きようもんならさらに身の危険を感じたそうです。
ふんだりけったり、人間マジ罪深ぇ。


そりゃ人間(古代種含)恨むわな!
や、うらんでいいです。人間代表として土下座します。
宝条先生のところに、先日以降ちょくちょくお邪魔してる際に、その理由聞いてマジ土下座したら研究員に見つかって
アタマがおかしくなったのかと真剣に検査された。


元々、私は元の世界にいるときから彼女に憐憫の情を抱いていた。
隕石みたいに落ちてきた。まあ、これによってライフストリームドバドバだったんだよね?でも、それって
普通の隕石だったとしてもドバドバしちゃうよね?
まあこれはしょうがない。星が「マジいてぇ」って泣いちゃうのもしょうがない。
あと、隕石落ちてきたんだからウカツに近づくなよ。宇宙からウィルス運んでくるんだぞ、隕石は。
だから滅びるんだよセトラ、バーカバーカ!! カッ!(親指を勢いよく下に向けた効果音)


このあたりで私は他の人と考え方が違うらしい。

で、だ。小母様が言うには「勝手に自分の身内と勘違いして、セトラの里に連れてかれた」らしい。
オイオイオイオイ、本編のイファルナさんのビデオとまったく違うな!
そして勝手に病気になって、勝手に勘違いして怒って、封印されたと。
しかもこの星に落ちてきたのは不慮の事故だそうで。


本編と違ェェエエエエ!!
【空に帰りたい…人は嫌い…】
まじほんとごめんなさい。
【でも、貴方は…好き?】
疑問系?でも嬉しい!





そんなこんなで、今日も小母様と親交を深めるために神羅ビルへ参ったわけですが。
持ち前の猫かぶりが発動。「ナナちゃんいつもあそびにきてるから、なにかごようじない?ナナができることなら
なんでもするよ。じっけんいがい」(最後の言葉いったら先生チッって言った、チッって言った!)と言ったら、
容赦なく、本がどっさり載った大きなカートと脚立を渡されました。…ホント、容赦ねぇ。






そして開けた資料室のドア。そこに、その人がいた。
ゲームの中では常に笑えて、愚かな存在でしかなかった人が。
「ぱるまーのおじちゃまは、おそらがすきなの?」
「ああ、だーいすきだよ!このミッドガルでは星空はあまり見えないんだけれどね。少し郊外に出れば満点の星空
が見渡せるんだ。そんな星の海に行ってみたいと、ずーっとずーっと小さいころから思っていたんだ」
パルマー小父様の書類を片付けたあと、私の仕事に取り掛かっていく。脚立に昇らなければ届かないものは、
変わりに小父様が担当。
きらきらとした眼差しで空への思いを語る小父様は、ゲームで見た姿とはまったく別方向の性格だった。


会話が無くなって、静かに本を差し込む音だけが部屋に満ちた。
静かな空間を切り裂いて、パルマー小父様が口を開く。
「…君は、いま。なにか夢があるかね?」
「ゆめ?」
「ああ、大きな大きな。夢」
「…ゆめ…」


…ある、あるよ。         帰りたい。
もう寂しさとか、そういうもんじゃなくて、私の生きていた場所に帰りたい。
こっちのパパや家政婦さんを殺したら帰れるよ、って言われたら流石に怒るけど、悩んで悩んで悩みきって
私は彼らを手に掛けるだろうね。
悲しみに満ちた私の顔を見て、パルマー小父様が慌てて手を振った。


「な、無くたっていいんだよ? きっと見つかるさ。お嫁さんや、ケーキやさんや、お花屋さんとか…」
私の表情を、「夢が無くて泣きそうになっている子供」と勘違いしたみたいだ。やさしい人だなぁ。
「君には無限の可能性がある、…だが、私はダメだね。すぐに諦めてしまおうとする…」
肩を竦め、直ぐに落とす。その仕草が本当に落ち込んでいて、思わず顔を覗き込む。
「どうしたの?」
「…私はね、かつての仲間にとんでもなく深い絶望を与えてしまったのだよ。
…愚かでいること。そしてその絶望に対する嘲笑と侮蔑を受け止めていこうと。
彼らがまた夢を見て、あの場所へ行けるように。くだらない価値観や、罵詈雑言は私が受ければいい。
再び彼らが羽ばたけるように。それが私が今実行し続けている夢なのだよ。…でも、やはり…
いろいろ言われると堪えるね」
傾き始めた夕日が小さな窓から差し込んで、床に一筋、オレンジ色の光の柱が出来る。
寂しさを感じさせる表情で、笑って。私もちょっとこまった笑顔を浮かべて、二人で本をしまい続けた。



不器用だから、こういう夢しかないし。こういう行動しかとれないのさ。 そう笑っていたパルマー。
何日かして、私は再び彼を見る機会があった。けれど、その場にいた彼は不器用で聡明なあの
資料室の彼ではなかった。


「うひょひょひょ!今日の紅茶に入れる高級蜂蜜が手に入ったんだよ!」

愚かな彼と、ゲームでは存在しない、聡明な彼。私は再度、この世界に「生きている人々」が
存在していることを感じた。

-----------------------------------------------------------
後書き: どうも、Mです。(今回は短い挨拶)
電源が逝ったり、電源を自力で付け替えたりして大変でした。
さて、今回はパルマー中心(若干ジェノバ)という形でお送りさせていただきました。
ジェノバとパルマーの変わりよう…というか、主人公サイドからは「まったく見ることはないだろう」
話となっていきました。

ゲームでの彼らとのギャップは激しくなり、ナナもその認識を新たにしていきます。
さて、次はあの人に会わせようかしらウフフ




[365] FF7:名無しのNANA-副社長こんにちは
Name: M
Date: 2007/04/04 16:46
振り向かぬ背中と


冷たい視線を抱いて


ただその足跡を辿る


さびしい瞳を隠した子






休日の神羅ビルまでの道のり、
目の前で、左の二の腕を押さえて座り込んでいる金髪の青年がいる。
上品なオフホワイトのコートごしからにじみ出ているのは、紛れも無く、血だった。


「ねえ、おにいたんどうしたの?おけがしてるの?」
そう声をかけたら、ものすごくビックリした顔で顔を上げて、こちらを見つめてきた。
アイスブルーの瞳が綺麗で、鼻筋は通っている美青年。わお。


「君は…どこかで…」
彼は私を見たことがあるようだ。神羅の関係者かしらん?
よく見ると、彼の袖内からは既に血がポタポタと垂れ始めていて、傷口はコートから見えるものよりも
大きい様子。関係者うんぬんは関係なく、私は家政婦さんに持たされたポシェットからハンドタオル
を取り出し、差し出す。


「ナナちゃんっていうんだよ。はい、タオル。かしてあげるね」
小さく「ありがとう」と囁き、青年は痛みに顔をゆがめながらコートから左腕を抜き、またもお上品な
色の血に染まった二の腕をタオルで押さえた。
「ナナちゃんしってるひとは、しんらのひと?」
「ああ、神羅の者だ」
「じゃあ、ナナちゃんおとなのひとをよんでくるね。ナナちゃんのおうちのかせーふさんなんだよ」
「ちょ、…」
「まっててね?」
何でも入ってるポシェットから小さなPHSを取り出し、左手で持ち、右手の人差し指で番号を押す。
「あ、ナナです。 うん。うん。あのね、しんらのひとがけがをしてるのをみつけたの。えーと…
いちばんがいの、うん。おとこのひとのおようふくやさんと、バイクやさんのあいだのみちのおく!
おねがいね?うん。わかった。ナナちゃんいいこだもん。まってるね?」
小さな電子音と共に通話を終わらせると、こちらを見ている青年に向き直る。
「もうすぐしんらのひとと、かせいふさんがくるからね。ナナちゃんもいたいのきらいだけど
おにいたんはナナよりもおにいたんだから、がまんがんばってね?」


ナナおうえんするよ、と言ったら、ツボを付いたらしく頭を撫でられました。
おういぇー。もっててよかった PパーティHへんせいSシステム。仲間がいないから通信手段にしか使えません。






Song dedicated to you
FF7:名無しのNANA- 副社長こんにちは




いやー、ロイ・マスタング大佐でしたか。いや、ルーファウス副社長でした。ごめん、声優ネタです。ナイス美青年。
なんとなーく「多分そうだろうな、金髪だし、白いし」と思ってたんですが…ビンゴ!
だけどなんでミッドガルなんかにいたんだろう?当初はミッドガルじゃなくて他の場所に
いたはずなんだけどなー。


あと額からビームマンことツォンがそばにいなかったしな。
何しにきたのかしら、あのBoyは。


家政婦さんが連絡を取ったのは、パパの部隊の一人らしくて、部隊の人がルーファウス見て
マジ驚いてた。「うふぉっ!?ルーファウス様!?」って叫んでたよ。ウフォッてなんだ、ウフォッって…。









暖かな日差しがガラス窓越しに差し込んできて思わず眠気を誘われます。こんにちはナナです。
ちなみに、こっち季節冬ですよ。


なんか、私が出会う人って怪我してるひと多いな。パパも、結構前に酒場の前にいた人も。そして今度は副社長ですか。


神羅ビルに付いてから、ガードマンのなかでも偉そうな人に「お父様経由で、ごほうびをあげようね」と撫でてもらった。
横目でちらりと連れて行かれるルーファウスを見ていると、眦を上げたタークスの数人がお説教体制で待機してるし、
よし、存分に叱られて来い、青少年よ。骨は拾わないけど。


生あったかい瞳でその後姿を見守っていると、振り向いたルーファウスと目線が絡む。
思わず猫を被り、いつもの笑顔を浮かべて手を振った。少し目を見開くと、ルーファウスは薄く微笑んで、小さく指先を振り
返してきた。むむう、気障な行動が似合うやつめ。…こやつめ、ハハハ!





「ナナちゃん、しんらビルにくるためにおでかけしてたからいいよ」
私を送り届けようとしたSSさんたちに手を振って断り、そのまま通常のエレベーターから研究階へ。
さー、今日もジェノバ小母様と楽しい語らいヨ!ちなみに昨日「いちじく・にんじん・さんしょに・しいたけ・ごぼう(略)という
数え歌を教えておいた。今日はどんなことになってるかしら。ドキワク。




【いちじく にんじん さんしょに しいたけ ごぼうに むかご ななくさ はったけ きゅうりに とうかん。いちじく にんじん さん
しょに しいたけ ごぼうに むかご ななくさ はったけ きゅうりに とうかん。いちじく にんじん さんしょに しいたけ ごb】


ごめん。
もうちょっと違うの教えてればよかったね、なんか怖いよ小母様ァァァ!


「ナナちゃん、いらっしゃい」「あらナナちゃんこんにちは」
通り過ぎる研究員たちに愛想を振りまきながら、私はジェノバのそばに寄り添う。
暫く無言で会話をしていると、目の前に人影が立った。顔を上に向けると見知った人。


「ほうじょうのおじちゃま」
「やあ、ナナ君」
目の前に立つその人は、すこしハダツヤがよくなっていて、穏やかな表情になっている。
まあ、それらの理由については次回にまわそう。
今はジェノバ小母様とのかたらいYO!


そうそう、小母様には私の正体を話しておいた。とてもおどろいていたけれど「めずらしい」としか言わなかった。
…あまりにも広大な宇宙の一事象としてはとても珍しいことだけれども、「決してありえないことではない」ことらしい。
ヤバイ宇宙ヤバイ。(略)もっとがんばれ。超がんばれ。



そこそこ浅めの思考の海でたゆたう私を掬い上げたのは、甲高い電子音だった。
高らかに鳴り続ける受信音と、受話器をとる音。小父様と一緒に目線をその音がする方向に向けると
研究員の一人が内線を耳に当て、なにやら頷いていた。そして私のほうを向き直り。
「ナナちゃん、えっと…ルーファウス副社長が呼んでるそうだよ」



「へっ?」
えー、なんかフラグ立てた?




SSのおじさんたちにサンドイッチ状態で廊下を歩く私、まれに通りがかる警備兵がめずらしそうにこちらを見ている。
だがしかし。私を見ているわけではないのだ!
「そうか、苺ぱんか」
「そうそう、「苺ぱん」なの。「ぱん」のぶぶんはウータイかなね?」
「うまいのかい?」
「いちごよりもいちごのあじがこくってね?とってもおいしいよ。 あまいけど」
「甘いのか…コーヒーとは合うか?」
「ナナちゃんコーヒーのめないから、わかんない。たぶんだいじょぶ!」


彼らがめずらしそうに眺めているのは、私ではなくSSさんたちのほう。
私がSSさんに話しかけたら、いつの間にか「娘へのお土産に出来るおいしいお菓子」の話になってしまっていた。
ちなみに「苺ぱん」というのは子供向けに開発された「フルーツの栄養価そのままに、おいしさをお子様へ」という
コンセプトの「菓子パン」シリーズのうち一つ。マジうまい、現実世界でも売ってくれてたらよかったのになー。


ほがらかに会話を繰り返すSSのおじさんたち。ふと会話がとまれば、目の前には銀色の扉。
「ああ、着いたよ。ミス・ナナ」
「えへへ・・・おとなあつかいされたー」
「ははは、多分さっきの副社長の救助のことで褒められるくらいだろう。…また、お菓子の話をおしえておくれ」
「うん!」
ガタイのいいおじさんふたりにワッシワッシと頭を容赦なく撫でられる。ああ、セットが…つーてもただのロングヘア
なんだけどな!まあ、気づいた片方のおじさんが直してくれたけど。


そして開いたドアの先にいたのは、やっぱり上品な白っぽいスーツを着た若社長。片腕は吊ってるらしくて
袖がぺったんこ。胸の部分が腕の形にふくらんでいる。とりあえず、無事でナニヨリ。


「あ!がまんのおにいたんだ!おにいたーん!」





-ルーファウス-
満面の笑顔を浮かべて、こちらに危なげな足取りで走ってくる少女。
巨大な机越しに立つと、ピョンピョンと跳ねてこちらを見ている。…背が机に足りないか。
「こっちにおいで」
机の脇のほうを指差すと、小さな足音が机を回ってこちらへと近づいてくる。そして机の陰から顔だけ出して
また少女は笑う。
「おにいたん」
なにがそんなに嬉しいのだろうか?ニコニコとこちらをみて笑う少女に、自分自身の表情が緩み、微笑んでいる
ことに気がつかなかった。


机の影から頭を出す。ひっこめる。頭を出す。ひっこめる。くすくすと柔らかな黒髪を揺らして笑う子供に、その動きにあわせて
体を傾け、戻す。という行為を繰り返す。


久しぶりに、とても穏やかな気持ちになっている自分がいた。





そのあとは、まあお決まりのホメ言葉とお礼の言葉、あとナデナデ。
「コスタに来ることがあれば、連絡をしなさい。…部屋くらい取ってあげよう。むしろ今使ってない神羅のコテージがあるから
譲ろうか」
だとさ!すげーなブルジョア。というか、それはもともとうちのパパに譲られるべきものだったようで、神羅の上官は皆どこか
しらに、休暇用の別荘を持っているようだった。パパは真面目だから、近場の農村でゆったりバカンスで十分だったそうで、
そういう高級ドコロの別荘を買ったはいいがまったく利用してないそうだった。
で、維持がめんどくさくなったパパが神羅に権利を渡しちゃった、と。…堂々巡りってやつか、とりあえずパパに報告しとこ。


「またおいで」


部屋に入ってきたときよりも数倍すっきりした顔の、まだ幼さが残るルーファウス。
彼に手を振り、ドアを閉め、私は再びジェノバ小母様の元へと向かった。


-----------------------------------------------------------
後書き: どうも、Mです。(今回も短い挨拶)
ものを覚えることが好きなようなジェノバ、ちょっとしたことだけ教えておくと、ずっと連呼するようです。コワス

そして、ナナの神羅側との出会いが終わりました。
社長にもハイデッガーにも出会いませんでしたが、これで神羅側との出会い編は終了です。
このあとは小話と「変わっていくもの・変わったもの」を中心としたものになっていく予定です。

追記:こちらのストーリーの相談役となってくださる方はいるかしr…_| ̄|○




[365] FF7:名無しのNANA-変わり往くモノへのプレゼント:J
Name: M
Date: 2007/04/04 16:59






ゆめをみていたの


あのときのゆめを


こどもができないわたしを あなたはだきしめてくれた


からだのそこから みたされて わたしは あなたから「こうふく」をしったわ


あのまま ときがとまっていればよかったのに









「め」がさめる、あのこがよんでいるわ。わたしをうけいれてくれる、あのこが。


「おはよう、ジェノバおばちゃま。ごきげんはいかが?」
【とてもいいわ、ナナ】
「きょうのおそとは、いいてんきだよ。おせんたくものもすぐかわいちゃうの」
【そう、早く外が見たいわ】
「きっとみれるよ、ううん。見れる。だからおばちゃま、いたいおもいしちゃうかもだけど、もうちょっとがんばってね」
-あの銀ゴキはしっかりしばくから、あんしんしてね…-
【? ええ】
「えへへ」


Song dedicated to you
FF7:名無しのNANA- 変わり往くモノへのプレゼント:J




遥か彼方の天(そら)の先。私の故郷はそこにあるのだろう。もう遠い記憶すぎてわからない。
私は誰?ここはどこなの?故郷って?私はどうして旅をしているの?寒い、さびしい。


さびしいって…なんだっけ。


それからさらに暫く経って、私はおいしそうな星に落ちた。
落ちたというよりも叩き落された、星の引力に引かれた氷彗星に見事に張り飛ばされた。
痛かった。


そこはとてもおいしかった。
星から溢れる「恩恵」をだれも啜っていなかった。
だから私一人が「恩恵」を啜っていても、あとからあとから「恩恵」は溢れてくる。
その星には原住民がいた、「恩恵」をそのまま得ず、他生物を経由して「恩恵」を得るものたちだった。
暖かな彼らは、私に「食事」を教えてくれた。
命を刈り取るという罪深い行為だったけれども、命を循環させることはとても大事なことというのは知っている。
星のすべてに感謝を。
そして、彼に出会えた感謝を。


トニー


すこしおっちょこちょいで、浮気者。わたしが子孫を残せないことを知ってもそばにいてくれた。
春の畑仕事で疲れ果てた私をおぶさってくれた。
夏の日差しに負けた私を介抱してくれた。
秋の物寂しい日々に抱きしめてくれた。
冬の水仕事にあかぎれた手を包んでくれた。
幸せだった。
「笑う」という顔面の筋肉の動きを思い出した。
私に心というものがあることを思い出させてくれた。




ある日、トニーから女の匂いがしていた。少しの浮気なら花束やケンカで許していたけれど。
深く染み付いたその女の匂いには我慢が出来なかった。すごくすごく怒った、悲しかった。
あんなに深く染み付いたということは、きっと体を重ねたのだろう。
怒り狂った私はとても怖かったのだと思う。だって


トニーは言った。 私を化け物と。


それからのことは思い出したくない。痛くて暗くて寂しくて、人間は身勝手だと知った。
彼の手で深く埋められてしまうのならいいとも思った。あと、二本以上腕を出してはいけないことを知った。


そして再び目覚めれば、体は切り刻まれ、体細胞は愚かな人間の胚芽に埋め込まれ…。今に至る。



愚か者たちよ愚か者たちよ愚か者たちよ、姿かたち違うものを意思あるものと見れぬ愚か者たちよ。
私が受けた痛みを思い知るといい、ゆっくりゆっくり、お前たちを駆逐してあげよう。
この星はお前たちにもったいなさ過ぎる、私が保護しなければ、再び育てなければ。
愚かなる毒虫よ。滅するがいい。









激しい意思が流れ込んでくる、「目」が覚めた私によりそうのは、幼い姿の女。メスの毒虫。
毒虫から意思が伝わる、違う、違う。これは毒虫?違う。私を知っている?知識として?でも深い、深い場所にあって
見えない。お前は何?何?何?ナナ、お前の名前。でも違う名前。教えて、知りたい、全て、見せて。


「知りたいの?全てを?いいよ、今教えて上げられないものもあるけれど、いっぱいいっぱい見せてあげる。
 でも、汚いところがあるのは許してね」


あけすけ、きもちいい、きたないところもある、どうしようもなくきれいなところも。それがおまえ。にんげん。
心が動く、意志が働く。JENOVA(わたし)が動き出す。私は私を思い出す。
心が乱れる、激しく動く。嘔吐しそうなほどの流動、衝撃、閃光が私を乱す。


うまく表現が出来ないけれど、私は彼女によって、再びこの「星」に落ちたのだ。


ええと。これはなんという気分なんだろう。どきどきする、ナナがくるのが待ち遠しい。ナナの話が聞きたい。
トニーとちがう愛しさ。   …とも、だち?







私の中のイメージのジェノバ小母様だいはっぴょー、白銀のロングに前髪を全てカチューシャで後ろに流した美人のお姉さん。
というかんじ。ハダは色白…というよりも日に当たってない色白で、瞳は薄桃紫かな。
まあそれはおいといて、こんちゃっす、ナナです。現在は自分の部屋から生中継でお送りしております、ちぇけら。


私の目の前にあるのは一冊のノート。「らくがきちょう」と書かれた画用紙の集まり。
開けば、ぐちゃぐちゃにクレヨンでお絵かきがされた紙が何枚も。そして、一枚一枚めくっていってもそれは変わらない。
けれど、その裏には薄い鉛筆書きで何かがびっしりと書かれている。それは、私がこの世界に、この部屋を与えられてから
書き続けてきた日記のようなもの。
私がゲームをやっていた上での記憶と、今現在の事実の擦り合わせをしてみた。
大幅に違うものは三つ。私の存在と、ジェノバと、宝条。


ジェノバの小母様にいたっては、ゲーム内の事実がまるっきり摩り替わることになってしまっている。
愚かな人が織り成した罪と、愛情のすれ違いでここまで来てしまっている。
それと、宝条の小父様。ゲーム本編やCCとはまったく違う。もしかしてここは…。


「ゲーム本編と似た平行世界?」
子供用学習机の椅子の背もたれによりかかると、キッときしむ音がかかる。


窓にかかるカーテンを小さくめくると、光り輝くピザが眼下に広がっている。そして街を取り囲むように聳え立つ
魔晄炉を、指で作った輪に収める。


「エゴだと思う?私、とっても帰りたいの。でも…帰り方が分からない。
 ジェノバ小母様とリンクしても、帰り方が分からない」


エアリス、古代種の少女。彼女も私のリンクに巻き込めば、彼女を媒介として星の知識に接触できるかもしれない。
それが私の出したたった一つの答え。流石にセフィロス側につくのはヤバい。あ、それだと答え二つでてる。


「んー、…ともかく」


カーテンを開き、冷えたガラスに手をついて世界を見下ろす。




「動いて見ようか」


見事なまでに私の進む道はうまく開いているようだ。まだアバランチは本物みたいだし。
金髪の美人の元ソルジャーがスラムに出没してるわけでもないみたいだし。


「さてと、覚悟決めちゃおうか。…好きなように動いて好きなようにする。どんな結末がまってたって
気にしない。だって帰りたいんだもの。こんなヤツを受け止めた星が悪いの。そうよね?小母様」





あの子の声が聞こえる。傲慢になることを決めたあの子の声が聞こえる。
【そうね、ナナ。帰りたい気持ちは、とても強いものだから】
けれど、やさしい子だから。傲慢によって生み出された後悔もあの小さな胸に仕舞い込むのだろう。
私は、こんなドームのなかに閉じ込められているけれど…あの子の支えになれるだろうか。
【いいえ、なれるのか。ではないのね…。 なるんだわ】
ありがとう、ナナ。私に心を思い出させてくれて。
ありがとう、ナナ。貴方は私への、星からのプレゼント。



-----------------------------------------------------------
後書き: どうも、Mです。(今回も短い挨拶)
ジェノバが随分と饒舌+大人になっていきました。いや、戻ったというべきか。




[365] FF7:名無しのNANA-変わり往くモノへのプレゼント:H
Name: M
Date: 2007/04/07 16:54






ゆめか?


なつかしいゆめだった


なつかしいなんて そんなことをおもうのは いつぶりだろうか


あいつにせなかをたたかれて こづかれて めのまえに おまえがいた


だきしめてわらった あのときのゆめ









昨晩久しぶりに深く飲んだ酒が残っているようで、私の体は深くベッドに沈んでいた。
半覚醒とでも言おうか、心地良くもわずらわしい二日酔いが脳を浸している。
寝るだけの部屋。ただ白い。
視線を巡らせば、アルミで出来たワイヤーラックが壁際にぽつんと立っていて、枯れ果てた花がひとたば、のせてある。

「…ドライフラワーとかいうやつだったか…」


そうだったな、お前は花が好きで、ああいうものを作るのが得意だったな。
花を贈ると約束した結婚記念日は訪れず、私はただ高い食事を二人でとることしかしなかった。
これは後悔という感情なのだろうか、グチャグチャに乱れた自意識がわずらわしくて、薄く開いていた目を閉じる。
デスクの上に散らばる書類と研究書を思い出すが、手をつける気にもならず子供のように毛布を頭まで被った。


ずきり、と痛む一瞬の疼きに。幸せな三人家族という映像が浮かぶ。愚かな自分が捨て去った「ありえたかもしれぬ」
その未来をただうらやんだ。


涙が少しばかりにじむ。これはきっと、酷い二日酔いのせいだ。


Song dedicated to you
FF7:名無しのNANA- 変わり往くモノへのプレゼント:H




「おい、ユージ。お前の論文通ったらしいぜ」
試験管を軽快に洗っていると、背後から同僚の声。
通ったのか?この間出したあの論文が通ったのだろうか?
慌てて振り返ろうとするも、洗い場に積み重なった試験管やビーカーを見て、手伝う気でも起こったのか。
隣に立ち、同じように試験管を磨き始めた。
あまりにも普通なその仕草に、一瞬呆けてしまい、しばしボーっとしてから、思わず叫ぶ。
「…え?本当…って ええええ!?マジか!」
「マジだマジ」
「ちょ、まって。ああああっ!」
ガシャッパリッガシャーン
ああ、せっかく洗ったビーカーが…。無残に床に叩きつけられ、割れたガラスを見下ろし手近なホウキとチリトリで
かき集める。ちくしょう、後ろから聞こえる笑い声がうらめしい。
「くっくっく…。落ち着けユージ、お前ほんとそそっかしいなぁ」
「言うなよ…。で、それ本当なのか?」
「あー?あれだろ、こないだお前が泣きながら仕上げてたヤツ。アレよアレ。アレが通ったの」
「泣いてたっていうな、終わらない論文に 男の~心の汗ぇ~♪ を流してただけだ」
「古いなオマエ!それ何年前の歌だよ!」
うひゃひゃ!と互いに笑う。


凄い昔だ…まだ大学を出たばかりで…ああそうだ、あいつと、あいつと…あいつ。よく四人でつるんで、教授の飲み会に
参加していた。楽しかった。


「オマエが、宝条…か」
「お前さんが、ヴィンセントねぇ…」
…随分と色男じゃないか。
みしり、と手に持ったファイルがゆがむ。ああ、気に入りのアルミファイルだったのだが、買いなおそう。
「ルクレツィア女史は…知っているな?」
「ああ、それが、何か?」
ぴしりと空気が固まる、後ろで美男子登場に沸いていた女性職員の声すら止まる。
「彼女から手を引け」
「悲しいことに、手を引いてもらうのは彼女のほうだと思うのだが…どうかね?」
いやー、この間植物園めぐりをさせられて疲れた疲れた~ァ。アーハーン?(興味ないね的仕草)
わざと片眉をクイッと上げ、せせら笑うように鼻息を漏らす。おお、すばらしい鬼形相にメタモルフォーゼだな色男。
「っ…こっのヒョロ男!研究一辺倒のオタクめ!」
「ハッ!ニヒルと根暗を履き違えた男が何を抜かす!」
わー、ぎゃー、ひー、しけんかんがー、けんきゅうしざいがー。
そんな叫び声を応援に、社会の底辺にまで陥った幼稚なケンカが始まった。口ゲンカからキャットファイトにシフト。
あちらは体力・腕力に部があるが…この分厚い研究資料のカドとアルミファイルの硬度は ダ テ じ ゃ な い。
幼稚なケンカは…ルクレツィアの「注入されたらヤバくなりそうな色の薬品が充填された注射器」の登場により、収束した。






くっくっくっ…と肩が揺れる。あのときの自分たちの顔は見事に恐怖で真っ青で。お互い体中に引っかき傷と打撲傷が残り
あいつにいたっては鼻血まで出していた。互いに面白い顔になっていたのは、…覚えている。ああ、彼女の笑顔の下、
数時間に渡る正座はつらかった。
ああ、笑ったせいで頭が揺れて、また二日酔いがぶり返してきた。


羨望と嫉妬の対象だったあの人。ガスト博士。


彼の元で働けることの幸福と、彼の元で働くことの不快感。そしていつか追い越してやるという、青臭い夢。
あの人は良くも悪くも日和見だった。
あの人が出来ない実験は、私が率先して行った。…あの研究チームに所属してから、自分のマッド振りに
磨きがかっていったように思う。元々少々マッド気味であるという自覚はあったのだ。
そしてあの日。


「じゃあ、実験対象になる人がいないなら。私がやりましょう」
「宝条君!?」
「ユージ!?貴方、自分が何を言っているのか分かってるの!?」


「分かっているさ、だから私がやるんだ」
仕方ないだろう?と、シャーレに切り分けられた肉片をピンセットでつまみあげる。


そして



古代種と呼ばれた「もの」の肉片を自らの身のうちに沈めたあの日から、変わっていった。
数ヶ月はまだマシだったように思う、しかしそれを過ぎてからというもの、自分が代わっていったようだった。


ルクレツィアに、彼女に。私との間に子が出来た。
あの報告を聞いたときは、きっと二メートルはジャンプできていたんじゃないかと思う。
あのアホ色男(と書いてヴィンセントと読む)は血の涙をながさんばかりに睨んでいたが黙殺した。
後日ブスくれたあいつが「おめでとう」と不本意そうに「はじめてのちちおや」という雑誌を押し付けていったのには、
なんというか、正直照れくさくて笑ってしまった。
笑顔の記憶はそこまでだった。



「本気なのか、貴様…!」
「本気も本気だ、彼女も承諾している。それにガスト博士も止めはしなかったしな。大丈夫だろう」
「だがしかし…っ」
「ヴィンセント…私は見たいんだよ。私たち二人の間から生まれ、そして人を導く水先案内人となる子を」


<うふふ。私(ジェノバ)を導く水先案内人を、愚かな毒虫たちを破滅へ導く水先案内人を。>



まだ、未来を思う心をもっていたのはそこまでで、それからは…それからは…ど うな  っ  た?



ジェノバが古代種でないと知り、逃げ出した日和見を手にかけ。
(幸せな家庭だと?ならばお前が放り出しておしつけた我々の不幸はどこにゆく?ああそうだった、貴方はそういう人だった)


我らに似つつも似ない子供を遠ざけ。
(我々は既に狂気に満たされていて、彼女すらあの子を抱く勇気をもたず)


ただ本能の感じるままに、興味ゆくままに。彼女すら忘れはて。
(心のそこで呼ぶ なにか の声に誘われるままに)


ああ、今に至っている。







アルコールの取りすぎによる脱水症状でもない、体の震え。
目を見開き、ここではないどこかを見る。
骨と皮ばかりになった自分を抱きしめながら、ただガチガチと震えていた。


私は何をした?(人をじっけんだいにした)私は何をした?(疲れ果てた彼女すらじっけんだいにした)
私は何をした?(友人と呼べるまでになった彼をじっけんだいにした)
私は な に      を  s   た?



まるで二十数年前の自分の思考が戻ってきたようだった。
自らの行いを「思い出し」恐怖した。


酷く泣いた、ないた。ルクレツィアと呼んだ、ヴィンセントと呼んだ。セフィロスと呼んだ。
彼女が褒めてくれた髪をかき乱し、ベッドへと沈んだ。
「愛していたんだ、そうだ。愛していたんだ」
恥ずかしそうに笑う彼女を抱き上げて研究所を走り回り、いいふらし。(そして恥ずかしい!と殴られ)
ムスくれた友人を引きずりまわし酒を飲み(ガスト博士も引きずりまわしてたような気もする)
世界のすべてに感謝した。
「すべて愛せていたのに」
罪は消えない。







「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
こんにちは、ナナです。信じられないものを見ています。
宝条の小父様がモリモリと分厚いサンドイッチと野菜ジュースを食べ飲んでいます。
私が見ている間でも固形栄養食と栄養飲料しか取ってないあの小父様が!


「…な、何があったんだろう」
近くにいた研究員さんたちも、頷いている。
ふと、脳裏に声が響く。わーい小母様~。
【彼の支配を解いてみたの…夕べ】
「それでか…」
【見る…?彼を】
「野次馬根性でお願いします」




唐突に、がつんと脳みそに叩き込まれるように小母様から送られ、再生される彼の記憶と思念。正直嘔吐しそうになった。(解剖とかキツイ)
なみだ目をこすりながら小父様を見上げると、ほんのりと色味がよくなった顔がゆがんだ。
すこしぎこちない“笑顔”だった。



「…思うところがあってね、少し、がんばってみようと思ったのだよ」
ズズ、と決して小さくはない野菜ジュースのパックをすすり、ゴミを潰してゴミ箱へ放り投げた。
その仕草が少し子供っぽくて、笑ってしまって少し睨まれたのはまあ、ご愛嬌ということで。



【ナナ、私は貴方が今の状況を見てどう思っているのか、私にはわからないけれど。
 貴方が来てくれて、そして貴方が知る「先」が、こういうふうに変わっていくのは。…私はイイコトだと思うの】
「そうかな…」
【きっとそう】
「そうなの?」
【絶対そう】
「そっか!」
【ええ】





「じゃあナナ、おじちゃまをおうえんするね!」


あの子の声が聞こえる。応援してくれると手を握ってくれたあの子の声が聞こえる
「恐怖に押しつぶされても、君の声が支えになっているよ」
けれど君はまだ幼いし、そんなことをルクレツィアに知られたらフライパンあたりで叩かれそうだ。(アレは痛い、しかも二刀流だ)
彼女を呼びにいこう、そして、ずっといってやれなかった言葉を言いにいこう。…殺されないといいが。
「虎穴に入らずんば虎子を得ず、だな」
ありがとう、小さな子よ。君が訪れたときから私は「戻り・変わり」はじめた。
ありがとう、小さな子よ。君は私たちの、小さな水先案内人。



…だが、あのヤバい色の注射で襲い掛かられたら、…泣く自身があるな。うん。
-----------------------------------------------------------
後書き: どうも、Mです。(今回も短い挨拶)
宝条をかんっぺきに変えました。むしろパーティメンバーに宝条が入りそうな勢いです(そんな小説見たことないよ)
ついでに宝条のフルネームを勝手に捏造して「宝条祐治(ホウジョウユウジ)」とさせていただきました。

そして、これによってナナが入り込んだこの世界がFF7に似つつもまた違う世界だということが決定しました。
けれども、ナナが介入しなかったらきっとこの世界はあのストーリーとまったく似た展開になっていたでしょうね~。
さてさて、次回の「あるもの」が完結すれば序章は終了となります。そしてまた長ったらしい私の駄文が
さらに続いていくわけなのですが…これからも懲りずにSDUをヨロシクお願いいたします。!




[365] FF7:名無しのNANA-蜂蜜色のお友達
Name: M
Date: 2007/04/07 17:08






はじめまして かわいいわたしのおともだち


「ヒョ…ヒヨヒヨ」


つぶらな瞳は愛らしくて、金色に輝く羽毛は柔らかかった。メスだ!


柔らかに光を跳ね返すその姿は、日に透かした蜂蜜のようだった。


くるくるとスプーンでビンをかき回し、泡を抱いた蜂蜜を日に透かしたようだった。









こんにちは、ナナです。
実は前回のプレゼントより 一年 が過ぎました。え?展開が速い?アーアーキコエナーイナーンニモキコエナイナー。
っちゅー、わ・け・で!便宜上ナナちゃん4歳です。おめでとう自分!ありがとう青春!さようなら去年の服!
(この年齢は服着れなくなるの早いよね。実家にある幼稚園の制服なんて、里帰りしたときに見て「小人?」とか言っちゃうもん)

まあ、実際と出会った方々との親密度がホンノリとアップしたり、お勉強したりしてたぐらいなんだけどね?
勉強っていっても、4歳だから幼稚園では「たしざんひきざん」くらいだし…こっそり家政婦さんにお買い物のときに
買い足してもらう学術本だけが私の知識を足してくれる。


もう初心者の館でクラウド以上に説明できちゃうわよ!?・・・ふふふ、俺も分裂気味だ(うろ覚え)


さてさてさて、ここ一年ダイジェストで出来事を語ろうかと思ったんだけど…特に動きがないんだよねぇ…。
時々自分が現実世界に帰るの忘れるくらい何事もないんだもん、マイッタマイッタ!
とりあえず「宝条先生美形変化(ちょっとやつれ気味の黒髪セフィロス)」とか「パパ、親馬鹿に磨きがかかる」
「家政婦さん、放火未遂(3件)」以上三本でお送りしました!、ジャン・ケン・ポン!ウッフフフフ!



そう、そうなんだよね、あのスットボケ具合でその場にパパと私がいるのにボヤ騒ぎになったことがここ一年で三回も…。
ある意味尊敬するなぁ。家政婦さん。しかもパパも家政婦さんも気にしてないし、や、気にしようよ!
…ってそんな風に考えていた時期が俺にもありました…。二回目あたりで 「ああ、気にしちゃだめなんだな」って悟りました。





・・・・・・・・・・・・・・・は!?やばいやばい、黄昏てた…。
で、以上がここ一年で起きてた事柄なんだけど…私が起こしたことは説明してないんだよねぇ~…。
まぁ、説明すると…称号(あだ名)もらっちゃいました、神羅のOLさんたちから。たしか「プティ・ソルシエール」ってやつだったかな?
フランス語?かなんかで「ちいさな魔女さん」って意味らしいよ。
称号もらったきっかけは、パパの親馬鹿振りでした…。

-再現映像-
「さあ、ナナ!さすがに攻撃魔法は自宅では訓練ができないからな!ここでおもいっきりブチかましなさいっ!」
「はい!パパ!」
広がる研修グラウンド、目前には練習用人形がぽつんと立っている。
おいおいおいおい、娘の魔法練習のために神羅施設個人使用ですか、凄いな大佐。は、早く上達して出て行くから!
うちのパパが迷惑かけてすいません!すいません!


心の中で滂沱の涙を流しつつ土下座をする、マジ…や、ホントすんません…。
けれど、そこはホラ!新兵なみの精神キャパがあるといわれた私!上達なんて早いことよ!?なーんて嘯いてたらさー




マジで上達はえぇの。



素でビビったよ。だってその日のうちにファイラに行けたよ…。人形相手ってAP高いのかしら…。


まあ、上達早いのには理由があったみたい。元々、魔法っていうのは一般の人たちには本当にめずらしいものみたいだった。


実際道具屋で売ってたりはするんだけれども、大抵皆さんは魔法なんか使わないところ、イワユル平和な地域でしか行動を
していないみたいです。平和つーても暴力程度でなんやかや解決できるくらい?
そういやゲーム中でも、頻繁に町を行き来する一般人はかなり少ないみたいだったしねー。乗用車なんてあまりなかったし、
存在しても舗装した道路を走るのを前提。あとはACとかゲームのムービーで出てきたトラックとかそういう貨物輸送タイプ。
それと、傭兵(ガードマン)が乗りこなすデイトナのようなごっつい単車か、装備も載せれるバギーみたいなの。
・軍
・輸送業者
・傭兵
ぐらいしか頻繁に都市間を移動してない様子。一般の方が移動する際はそれらにくっついていく、見たいな感じみたいだ。
一部乗り合いバスがあるらしいけど…それも護衛されてるみたいだしね。


イコール、魔法を携える必要のある一般人は少ない。という結論に達したわけで。
ゲームを中継して魔法に親しんでいた私は「このマテリアを発動させれば、この結果が出る」という意識を持つのが
マテリアに慣れていない新兵よりはカンタンだった。というわけです。多分そのうち追い越されるけどな!
幼女ナメンナ!




そうして、私は着々と「ちいさな魔女さん」のあだ名がついていくわけでした。
と、もう一つのあだ名も。


Song dedicated to you
FF7:名無しのNANA- 蜂蜜色のお友達




「ちょこぼ」
「クェー」
目の前で左右に行き交う黄色く巨大な鳥を見上げる。柵に上った私の倍はありそうだ。
「あて(痛)」
「クェッ」
求愛ダンスを踊られ、その拍子にチョコボから飛び出たマテリアが額に当たる。
「しょうかんちょこぼてにいれたー」 いてぇよ。


「いいなおねえちゃん」
「いいなー」
横三本に組まれた柵の真ん中に上り、しがみつき、召喚マテリアを日に透かして眺めていた私の足元から、幼い声が聞こえる。
「グリングリン、クリン」
小さなまんまるの目がふたそろい、私を見上げていた。勢いをつけて柵から降り、ワンピースにうっすらと移った
柵の塗料を手ではたく。
「おねえちゃん、このマテリア育てるからさ。育ってこどもマテリアができたら送ってあげるよ」
「ほんとー?」
「おんとー?」
左右対称に首をかしげるちびっこたちはナマラかわゆい。思わず撫で回す。ういやつめういやつめっ!
そうしてチビたちとほのぼのと親交を深めているとき、太い声が厩舎横の民家から聞こえてきた。




「ライゼンのお嬢さん!用意できましたよ!」
「はぁい!グリンおじさまありがとぉ~!」
用意、それは。





「じゃっよろしくね!」
「はいはい、お嬢さん。今度は何匹ほど?」
「10ぴき。おれいはちゃーんとするからね!」
「期待してますよ」
ミッドガルと外をつなぐ軍用道路の一角、そこに私と数人の兵士がいる。私が彼らに手渡したもの。グリンが用意してくれたもの。
-チョコボよせ-


魔法を扱うことが楽しくて、毎日毎日練習場の隅を借りて魔法修行に明け暮れた。
当初はジャマ扱いされたりしたけれど、「可愛い幼女の応援+懐き」に勝てるヤツはいないね…。
「おにいちゃんたちすごいね!」「がんばれぇ!」「・・・。(尊敬のまなざし)」「ナナちゃんもっとまほううまければ
おにいちゃんのおけが、なおせるのかなぁ…」などなどなど…えぇ、がんばりました。ぶりっこを。
そしてパパの人柄の良さも乗算して、人心掌握完了。
新兵統括から「お嬢さんが来てから統率具合がいい」とか言われたらしいですよ?パパ有頂天。ちょっと最近ウザい。


ま、完璧に掌握ってわけでもないけれど。(そりゃ万民から好かれるのは無理でゴンス)かなりの兵隊さんと仲良くなったわけで。



プティ・ソルシエールの名前を戴いて、さらに次のあだ名。
「最年少チョコボブリーダー」
…ポケモンっぽいって思った。










最初は単なる冗談だった。遠征に行く兵士さんの一人に、お守り代わりとしてチョコボよせを渡して、さらに冗談として
「チョコボ捕まえたら牧場に送ってよ」と笑っていたら。
本当に送ってきた。素ビビリ。


人間の姿に興味を示したチョコボが、遠巻きにこちらを伺うことは良くあることらしい。で、さらに近づかせるためにはマテリアが必要。
ってことなんだそうだけれども…。で、丁度戦闘していると、チョコボが興味津々でよって来るそうだ。
で、戦闘終了ついでにサックリとチョコボを送る。以上。


初めてのチョコボに私は大喜び、その姿見て兵隊さんが大喜び(デッレデレ)。そして無駄知識「海チョコボ」を持つナナちゃんとしては…。


「育成しなきゃFFユーザーじゃないっしょ!」



現在着々とカップリング成功。通販にて温室栽培の実を購入しつつ(なんかね、販売元がアイシクルエリアなんだけど…)がんばっております。
電話と手紙とインターネットで繋がれる厩舎と通販店と私。大佐の娘という最大のコネの利用。
ちなみに兵隊さんへの「おれい」とは「マテリア育成メモ」を渡すこと。まあコレにもちょっとした話があるけどそれは割愛。
ツテにツテを辿りまくって手に入れたカラブの実で、やっと山川チョコボを育成、通販で買いあさったシルキスの野菜を与え続けたチョコボを
ゴールデンソーサーに貸し出ししてお金を稼いで野菜を買って…。おお、ナイスサイクルじゃないですか!
さらにちなみに、ゴールデンソーサー側は私が子供であることを知らない。まあ、メールと手紙だけのやりとりだからね。
そして、私が今求めているのはゼイオの実とAランクチョコボ。そして私が見送った兵士はアイシクルエリアへ…。
あとはニューフェイス「ツテ」であるゴールドソーサーのディオ園長に「ゼイオの実」をお願いしている。まあ、実がある場所は教えてあるし
そんなに遅くもなく手に入るだろうね。今貸し出ししてるメス山川チョコボ、ゼイオの実を規定数送ってくれたらレンタル料永久半額って
条件つけたし。あの人金にがめついし。


「くっくっく、黒マテリア。細工は流々仕上げを御覧じろ、待ってなさい海チョコボ」


アーッハッハッハッハッハッハッハッハ!!


いつの間にかゲンドウポーズを取っていた私は高らかに笑う。
きっと居間で家政婦さんが「今日もナナちゃんは元気ねぇ」って言ってるだろう。多分、いや。きっと。








「これはこれはナナお嬢さん!ようこそいらっしゃいました!」
「ごきげんようグリンおじさま。わたしのチョコボたちのかげん(加減)はどうかしら?」
「とてもいい具合でございますよ!…それで、お電話で伺った件ですが…」
「あらおじさま、ナナがうそをいうこにみえるの?」
「い、いえいえまったく!ですが以前よりごひいきにしていただいておりますが…之ほどまでとは…いやはや」
恐縮しきって子供に頭を下げ続ける大人。私をここまで連れてきてくれた運転手(新しく雇ってもらった、結構腕もたつと噂)が目を剥いている。
目線を彼に向けて微笑みながら「ナナ、これからきゅうしゃ(厩舎)にいってきますね。うんてんしゅさんつかれてるでしょうから、くるまでまっていて
くださいますか?」と告げる。私を「大のチョコボ好き」と認識している大多数の大人のうちの一人である彼はさっさと車へと戻っていく。


厩舎にひしめくチョコボたち、そのほとんどが私の持ちチョコボ。しかも高ランク。アイシクルエリアはダテじゃなくてよ!
そしてチョコボたちの奥まったところにいるツガイのチョコボ。美しい漆黒の羽を持つ雄チョコボと、どこか流線的なすらりとした雌チョコボ。
さらに私の手提げに入ってるのはゼイオの実。しかも5個。完璧だ。
「じゃあグリンおじさま、あとはよろしくたのみますわ」
「はいはい、よろこんで!」
手提げを手渡すと、オジサマさらにびっくり。
「こ、こりゃゼイオの実じゃないですか!…こんなものを何処で…」
「じゃのみちはへび(蛇の道は蛇)ともうしますでしょう?…うふふ」
まあ、子供がここまで怪しく笑えば、勝手に大人は勘違いしてくれるから、これ以上の追求はないだろう。
それに…。
「いっぴきでも“せいこう”すれば、ナナのすべてのチョコボをおゆずりする…そうやくそくしましたわね?」
グリンがここまで腰が低いのはこの条件のおかげだ。
私は最強の足となる海チョコボが生まれれば、あとのチョコボはどうでもいいかな、とか考えている。
…最近の私の動きにパパが不振がってるからなぁ…いや、私の挙動はとくに咎めないんだけど、流石にこの年齢での
金額の多用は流石に良くは思ってないようで…。
一匹でも海チョコボが生まれれば、その子だけを所有しよう、ということで…。
私はグリンおじさまに実を預け、宿も兼ねている彼らの家で一晩を明かすことにした。




-------



パンを焼く匂いと、チョコボの鳴き声とは違うかすかに高い小鳥の声。差し込む朝日。
ちょうどカーテンの隙間から射す朝日が、私の下瞼辺りに当たり、明るさで目を覚ます。
いやに胸の鼓動が早くて、目覚めがいい。
「ん…」
寝返りを打つと、隣に静かに眠る運転手さんが。うふふ、ちょっとムキムキ目のおじさんなんだよね…可愛い(ゴクリ
私が起きた気配に気づいたのか、静かに体を上げる運転手さんに、互いに頭をカクリと下げて挨拶。
「「おはようございます」」


互いに衝立に隠れて着替え終わると、私は自分でも分からない衝動に突き動かされて、せわしなく部屋から飛び出す。
「お嬢様!」って声が聞こえるけど無視無視!
「なんだろう、…胸がドキドキする」
誰もいない家から厩舎へ向かうと、ちょうど駆け足で出てくるグリンおじさまと鉢合わせになった。
二人してその場で足踏みをして少しのけぞる。
「おお、ナナお嬢さん。ちょうど呼びにいこうと思っていたんですよ」
「じゃあ…」
「ええ、カップリングは成功です、しかも2つも卵が!」
いつもの腰の低い態度は消え去り、出産という事実に浮き立った仕草で私に状況を説明していく。
「まあ、ここではなんですし、さあ。いらっしゃってください」
「ええ」
私の心も酷く浮き立ち、厩舎の奥で静かにうずくまるチョコボに近づく。私の接近に近づいたチョコボは少し神経質な目を送るけれど、
隣のグリンおじ様を見て、フイと視線を外した。

目の前の藁に埋まる、すこしざらついた、ダチョウの卵より一回り小さ目の卵と、それより二回りは大きい卵。
「おじさま、ふかするのはどのくらいかしら?」
外側からは見えない、魂が蠢く卵を見つめながら後ろに立つグリンおじさまに聞く。少しうなるような声がしたあと、「一週間くらい…」
と返された。
流石に一週間もこちらにいるわけにもいかず、「割れる兆候があったら直ぐに連絡してほしい」と告げて、私は家路についた。





何故だか分からないけれど、きっとあの卵のどちらかが私が求めていた海チョコボだということが分かる。
さっきの有名ジ○リ発言(胸が~)にもツッコミをいれないほどに、本当に胸が高鳴って、どうしようもなくなった。
綺麗とはいえない舗装された荒野の道路を進み、景色を流していく窓にはりついて、私は遠のく牧場を見つめ続ける。


さびしい
こいしい
まるで心の中に閉じ込めた郷愁のような気持ちが、牧場が小さくなっていくのと比例して大きくなっていく。
黙って牧場を見つめている私を鏡越しに見た運転手さんが、複雑な顔をしてどもりながら慰めてくれる。やさしい人が多くてよかったな。私の周り。
そう心の中でつぶやいて、フロントガラス越しに見える巨大な都市へと視線を向けた。




試験管が目の前で揺れている、タプタプと揺さぶられる液体の動きは少しずつ小さくなって、やがて止まる。


フッと意識が遠く、草原へと向かう。金色に輝く小さな生き物と、私が歩く夢。
きっと楽しい…と思い込みたいのだが、その夢の中で私たちはなにやら不穏な話をしている。
話?チョコボと?


「ナナ?ナナ?」
「へぁ!?」
「どうかしたのかね」
小さな白衣を着た私の目の前で、液体を二分し沈殿させていく試験管。
隣に、少しくたびれた中年の色男。
「あ、ああああああ!!」
「混和しなおし、だな」
「うへぇぇぇぇぇ…」
この薬品は短時間で混和させて凝固材を入れないとだめなんだよぅぅぅ…。
しかもこの液体は、数種類の薬品をさらに混合させたもの、それらに種類をさらに混合させたもの。
さらに「失敗なんてするわけない」とタカをくくって、この試験管一本分しか作ってない。
「つくりなおしぃぃぃぃ~」
「ご愁傷様、だ」
「ほうじょうのおじさまぁ~」
「甘えてもダメ」
「ちぇー」
メモが貼り付けられた液体を数種、試験管立てから取り出し、ゆっくりと混和させていく。
普段と同じ、幼稚園に通い、本を読み、宝条の小父様の下へいき、実験を手伝う(ジェノバ小母様と話しながら)。


一日過ぎ


二日過ぎ


「どうかしたの?ナナちゃん」
「あら、どうもいたしませんわ。ごしんぱいしてくださいましたの?うれしい!ありがとう」
「う、う、ううん!ナナちゃんがげんきないから…どうしたのかなって」
「それは しんぱいしてくれた ってことですわ。とてもうれしくかんじます」
「えへへ…」
「うふふ」
はい、偽者ご光臨。私はどっかの「さ○らちゃん最高ですわぁ!」のお嬢様かYO!
ちなみに幼稚園ではずーっとこんな感じ。幼稚園の子たちに心配されるほどの「魂抜けっぷり」、ちびっこにバレるってことは
大人にもバレてるってことで…まあチョコボファームから帰ってきてからの私の変調に特にビビリ入ってるのはパパだけどね!
まあ最近は…。


「ナナ!ナナ!チョコボにでもいじめられたのかい!?よし、早速ファームに圧力をかけt」
「落ち着いてパパ、パパ落ち着いて!」


ナナの こうげき! ひっさつわざ「フライパンアタック」
ライゼンたいさに クリティカル!!


クワーン
「おおおおおおおう!?」
「まあ、ナナちゃんたくましくなって…」
悶絶するパパをほうっておいて、私の成長に涙する家政婦さん。もう慣れた。
人生って諦めと絶望と、ほんの少しの幸福と希望でできているんだよ。皆、知ってた?

そんなこんなで五日目の朝、私に買い与えられたPHSが早朝を示しながら明るく輝いた。
「グリンおじさま!?」
『ナナお嬢さん!大きいほうの卵が割れる気配がでてきましたよ!』
「えっ…そんな、間に合わないんじゃ…!」
時計を見上げると、明るい笑い声が電話から漏れる。
『大丈夫、卵が割れて親を認識するのはあと五時間ほどになります…十分間に合うでしょう』
「ええ、ええ間に合うわね、直ぐ参ります。朝食は取らずに参りますから、軽食を用意していただいても宜しいかしら?」
『ハハハ、もちろん。おいしいハムをたっぷり挟んだサンドイッチを用意してますよ』
「まあ…ふふふ、期待していますわ。それでは」
『はい、お待ちしております』


ピッ
「はぁー…」
やっべ、ロリ口調忘れてた。超漢字つかってたよ。向こうは気づいてないみたいだけどヤッバイヤバイ。
PHSをポシェットに詰め込み、私のトレード衣装(マーク)であるワンピースを着てシュッパツ。
メモ用紙に「チョコボがうまれそうだとききました、きょうは、わがままをいわせてくださいね ナナ」と左手で書いてきた。
利き手だとどうしても普通の『大人の字』になっちゃうからなぁ…。
そうして運転手さんを呼びつけ(超ゴメン)牧場へと飛ばしてもらう。あちらに着くのは二時間後になりそうだ。









厩舎にサンドイッチが詰められたバスケットとアルミのマグカップ。注がれたココアを飲みつつおいしいサンドイッチを頬張りながら、
私はひび割れ、パキパキと細かな音を立てる卵を見つめていた。
けれども、あのドキドキ感はそこそこにあるのだけれど、私が気になっているのは割れる気配を見せない、小さな卵。
「キュウ」
大きな卵からくちばしが現れた、いまだ黄色さを残すくちばしの先端は、黒い。
「山川チョコボね」
「クウ」
「おお、良い目をした子ですな」
「ええ、…ではやくそくどおりに」
「本当によろしいので?」
「ナナ、うそはいわなくてよ?」
「はい、そうでしたな。申し訳ありません…ですが、お名前はナナお嬢さんがお付けください」
「ナナが?」
「ええ」
殻から這い出た、まだ少々グロテスクさを残す雛を抱き上げたグリン小父様を見上げる。
「…そうね、カカオでいいんじゃないかしら?」
カカオ99%ってさ、思考が真っ黒になるような味だよね。
短絡的な思考が子供らしいと思ったのか、小父様が笑顔で頷いた。
「ええ、ええ、可愛い名前ですね。この子にぴったりだ!」
「クウ!」
「まあ、ふふふふふ」




いまだ生まれる予兆がない、小さな卵。まだ安心だろう、と小父様はヒナを育成室に連れて行ってしまった。
取り残された私は、いまだ胸を騒がせる小さな卵に釘付けだった。



ピチ



「!」
ええええええええええ 生まれる予兆がないってさっきいってたやん!小父様!カンバックプリーズ!プリーィィィズ!!
心の中で私が暴れるが、なぜか体は動かず、瞳も卵に釘付けになっている。
パキパキ ピキ 「クゥ」 ペキ
さっきの黒チョコボのヒナよりも卵の割れが早い。心臓の動きは激しさを増していく。
「クァ!」
卵の中で首を振ったのか、勢いよくカリメロのような卵の上半分が飛んでいく。
やはりグロテスクまじりの小さなヒナ。肉色の地肌をチョボチョボと覆う、金色の羽に、普通のチョコボよりも白っぽいくちばし。
「…生まれた」




私の、私だけの、チョコボ!
胸の高鳴りはすでに息を潜め、私は穏やかな表情で、周囲を見回すヒナを眺める。
ふふっ、他の大きなチョコボを見て、のけぞりすぎて後ろに転がってる。かわいいなぁ。
そうして眺めていると、のんびりと歩いてきた小父様が私の前を覗き込んで大騒ぎ。彼らにとっても海チョコボは貴重らしい。
また育てたいと思うでしょうけれども、私が渡したゼイオの実はすべて使い切らせたし、入手ルートも私自身分からない。
ま、クラウドがいつか育てにくるだろうから、そのときまでガマンってとこね、小父様?


指を伸ばして、ヒナの毛づくろいをする。卵の中の水気が去り、ふわっとした羽毛が肌を覆っていく。
うわぁ、可愛い。
「クウ!ヒヨ!」
「まだクエッって鳴けないのね。可愛い…」
子猫ほどの重さのヒナを抱き上げ、フカフカの藁の上に乗せる。
その真正面に私もうつぶせになって、頬杖を着いた。
グリン小父様はこのファームのチョコ房を解約する手続きのために家に戻っていて、ここにはチョコボとヒナと私だけ。
やさしい時間が流れる。










だがやさしい時間をそのまま流す私じゃない。



「ウホッ いいチョコボ」




☆台☆無☆し☆




「クァ!」(乗らないか)




「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
なんか幻聴が聞こえたような。
ハハ、疲れてるのかしら、このまま寝ちゃおうかな。「クウ!」はいはい、寝ませんよーウフフ可愛いなぁチョコボは、もー可愛いn



「クェ」(そんなことよりこの羽毛を見てくれ、こいつをどう思う?)
「すごく…海チョコボです…」
「ククゥ!」(うれしいこと言ってくれるじゃないの)





げんじつとうひしても、ぜったいおこられないじしんがあるの。






「クェー」(とりあえずここどこだ)
-----------------------------------------------------------
あとがき:






(ノ∀`)アチャー




[365] FF7:名無しのNANA-はじまるまえの、おわり
Name: M
Date: 2007/04/07 17:30






「クエッ、クェー!クェー!」(( ^ω^)ブーン)
「うざいだまれうごきをとめろ」
「ク…」(ハイ…)



やあみんな!世界のアイドルナナちゃんだよ!元気してる?ナナちゃんはとぉっても元気!
新しいお友達、チョコボが生まれたんだけど…とっても変わり者さんだったんだ!これからどうなるのかなぁ…?


「キュー」(なんで魔女ッ娘のOP的モノローグを…現実逃避はやめて、現実と向き合おうじゃまいか)
「自分がメスであることに混乱して、ブーンしまくってるカマチョコボに言われたくねぇ」
「クゥ」(きつ…だがそれがいい)











見た目だけは最強に愛らしい、この目前でウロチョロするヒナチョコボ。
いきなりヤマジュンネタを呟いた私に、即座に返してくるとは…やるな、こいつ。


とりあえず紹介しておこう。
元・現実世界の人間の成人男性であり、あちらの世界では病魔にて昇天した男のチョコボ。だそうです。
そうなると、私もあっちの世界ではお亡くなりになっちゃったんだろうか…。でも死んだ記憶がないんだよね…。


「クェ、クゥクゥ…ヒヨ!」(まあ、ちょっとしたとこのボンボンやってたんだがね、白血病だったわけだ。で、ドナー適合も
上手くいかずにアボーンてとこかなー。まあ未練ないし、いいけどね。)
「ふぅん…」
「キュー、ヒヨ」(あと、何でだが知らんが。自分がチョコボとして生まれた自覚っていうの?そういうのがあるんだよな…。)
「あー、だからそんなに混乱してないんだ?私だったら家畜として生まれてたらすごい挙動不審になる自信があるよ。
『すごい落ち着いたヤツだなぁ』とは思ってたけど…なるほど。やっぱり最初から『生まれる』ってことはいろいろ
精神的にも影響あるのかね」
「ヒヨ。クェ!」(多分なぁ。)
「ふーん…」
「キュー」




Song dedicated to you
FF7:名無しのNANA-はじまるまえの、おわり




藁の上に座って、話す私たち。
凄く落ち着く。
同じ世界に住んでいて、違う世界に来て。同じ話題で、同じ口調で、「わたしのまま」で会話ができる。


「うれしいな」
「クェ?」
「だって、今までずっと一人…ううん、周りにやさしい人は一杯いたけれど、この幼女姿じゃない?普通に話せないわけよ。
でも、貴方とだったらこんな風に話せる…うれしいよ」
「キュー」
「うん。そうなの」
「クゥ」
「へへ、ありがと」
「ナナお嬢さん?車の準備ができたそうですよ」
「え?ああ、ありがとうグリンおじさま! さ、ハニー、いきましょ」
「ク、…グェッ」
チョコボが私の影に隠れる、…「さっきのこと」でグリン小父様が凄い苦手になったようだ。



<おお、かわいいヒナですね。どれどれ…>
<おじさま?>
小父様はチョコボを両手で抱き上げると、くるりと逆さまに抱いた。
<キュー!キュキュゥー!?>(血が上る!気持ち悪い!ハナシテー!)
<ふむふむ…>
<キューウ!?キュキュ!クェー!クェー!クェ キュッ!>(ちょ、何処触ってんの!ヤメテヨシテサワラナイデ!まじやめてそこはおしr アッー!?)
<ホホウ、メスですなぁ。可愛い名前を付けてあげてくださいね>
<え、ええ。もちろんですわ!グフッ…>(ブヒャヒャヒャヒャヒャ!!!)
<…>(ぐったり)



まあ、ヒヨコだってお尻でオスメス鑑定するしね。チョコボに生まれた自分の身を恨んでください。
【俺、ノンケやってん…お尻見られてドキドキなんてしてへんもん…心は男やもん。僕つよいこだもん】 キュゥ、クゥクゥ、ヒヨ…。
「現実逃避してるチョコボも面白いよね」
【薄情モノ!助けろよ!】クェー!クェー!
「次に貞操のピンチになってたらね。…だが断る」
【最高に「ロウ!」ってやつだァァァ!】ギョゲー!!
「やれやれだぜ」(ポージング付き)


ナナちゃんリミットブレイク。ネタ会話が止まりません。自分自身に対するノリ突っ込みに比べたら、何よこの楽しさは!充足感は!!
現実世界でも「隠れネタオタク」だったから、もう本当に大暴走。チョコボ相手に独り言言い続ける幼女の完成です。 怪しい。


ま、それはおいといて、膝の上にハニーを乗せて帰宅です。
ハニーっていうのはチョコボの名前。メスに男の名前付けるわけにもいかないし…この金色の羽を見ていると蜂蜜を思い出すから。
本人?も【別にかまわんよー、ハニーでも】とアッサリしてたのでハニーに決定。
これからよろしくね。ハニー。
【こちらこそ、ナナ】
ってテレパスィー!?
【っぽいぞ】
超べんりやん。
【マジ便利】
「【いやっほう!】」
「お嬢様?」
「え?あら、うふふふっなんでもありませんわっ☆」


まあ、まずは現状整理と報告。で、これから私が「なにをしたいのか」を説明しないと…。
「やりたいことも、やらなきゃいけないことも、たくさんありますわね。がんばりましょうね、ハニーv」
【おうともさ!アンタは俺の女王様!んで、説明ヨロ】クェー!
オッケー。だけど女王様て聞き捨てならなんなぁ、ア?
【すいませんすいませんごめんなさいだからひっくりかえさないで ほんとにやめてそこは アッー!】
「うふふふふふふふ…あらあら、つかれちゃったの?すこしねてていいのよ。ハニー」
「グ…グェェェェ…」



-----------------------------------------------------------
あとがき:
最強の友&足である海チョコボ、ハニーの登場です。
ですが序章はここでおしまい。
このあと2年間、ナナたちは暗躍に暗躍を続けます。影響が出てもそれすら乗り越えていくでしょう。
ストーリーを知っていることで出る弊害、そして狂い始める未来。そして… とシリアスにいってみましたが
そこはそれ。ナナとハニーの珍道中なわけでして…え?ナイツオブラウンド?取りに行くよ?子供生ませて
子供マテリア置いとくけどそれが何か? という最強ぶり。

追記:ナナが世界におっこちてきたのが本編開始三年前。なので、現在あと二年ほど余裕があるということです。
   :チョコボ成長はやくね?と思われるかもしれませんが、ご都合主義でいかせていただきます。(土下座)

ちゅーわけで、序章終了。次からやっと一章に入ります。
これからもSong dedicated to you FF7:名無しのNANA をよろしくお願いします!




[365] FF7:名無しのNANA-はじまり
Name: M
Date: 2007/04/07 18:47






「逃げろ!クラウド!」
黒い髪が風に靡く。揺らめく水色の瞳をした金色の少年は、ただ虚ろに空を見ていた。
軍靴が丘を踏みしめる音が近づく。風は強く吹いている。


                                              強い風に黒髪は勢いをつけて舞い上がる。


「クラウド!クラウド!!!!」
豆がはじけるような、乾いた破裂音が幾度も繰り返される。そして一拍置いてまた数度。




「こいつはどうする?」
「どうせ中毒だ、ほっといてもモンスターがおいしく処分してくれるだろうさ」
「ハッ!ちげぇねぇ」
「何をしている、さっさと帰投するぞ」
「了解」
「うぃっす」


兵たちが踏みしめる丘は、赤い血溜りで染まっている。
いまだ自らの体液に濡れぬ黒髪は、静かに、そして激しい風に揺らいでいた。


                                              まっすぐ前を見ていた瞳は、ただ亡羊としたまなざしで
                                              黒々とした空を映す。


頭に何発も打ち込まれた弾丸から、奇跡的に左目だけが無事だった。
悲しみも苦しみも映さない、唯ひたすらに未来(きぼう)をを見つめていた瞳。
数刻前までは、生き生きと蒼く輝いていた、その虹彩(ひとみ)を空へ向けていた。


じわり、と音がしそうなほどにゆっくりと。濁りかけた蒼い瞳から涙がこぼれる。


丘に滴るどんな液体よりも透明な雫が、埃をまとってざらついた肌をぬらして、地面に沁みていった。
風はいまだ強く吹きつけ、一滴だけの水分は直ぐに大地にしみこんで、強く吹き付けるそれによって乾いていく。



ぼんやりとその光景を眺めていた金色の少年は、わけも分からず涙を零し、黒髪の青年が携えていた武器を持ち上げる。
その拍子に黒髪の青年の体にぶつかり、青年の瞳は偶然、静かに瞼を下ろし、眠るような表情となった。


「あ…ぅ…う?」
自分に持たされていた道具袋と、青年の武器を引きずり、丘から見える巨大な都市へと足を進めていった。
取り残された青年は、静かに横たわっている。



                                              黒髪が静かに靡く。風も弱まってきた。
                                              閉じた瞼に、小さな砂粒がぴちりと当たる。
                                              ミッドガルを望む、草原と荒地が混ざる丘に
                                              黒髪が揺らいだ。











Song dedicated to you
FF7:名無しのNANA- はじまり






賑々しく輝く、夜のミッドガル。「腐ったピザ」と蔑称される鋼で作り上げられた大地を行き交う人々。
そんな街を見下ろす高層ビルの屋上に人影があった。


「確認確認っと。ふふ、がんばってしがみついちゃって…」


轟音を立てて、町の隙間を疾走する列車。その列車を双眼鏡で眺めているものがいた。
双眼鏡を目に当てた人影は、随分と幼い。


「キュルルル!」
人影の後ろに控えていた、若いチョコボが啼く。

「…そうね、もう用意をしたほうがいいかも」
「クェ!」
「まあ待ちなさいって、ちょっと根回ししておきましょ?」

人影がポケットから機械を取り出し、操作する。ピ、ピ、ピ…。と甲高い電子音。数度機械から呼び出し音が漏れ、
成人した男性の声が続いて聞こえる。
その機械、PHSを耳に当てた人影は微笑を浮かべた唇を開いた。

「ああ、ロジャーン隊長を出してくださるかしら?ライゼンですわ。…ええ、よろしく」



「ロジャーンおじさま、ご無沙汰しております。うふふ、分かりました?そう、わたくしですわ!」


『・・・・・・・・?・・・・・・・・・・・・・。・・・・・・・』
少し年嵩のある男性の声の返答、簡単な挨拶と他愛も無い雑談を交わす。


「ええ、ええ。…で、ものは相談と報告なのですが…。あら、「アレ」については伺っておりましたの?
 …まあ…おじさまの慧眼には驚くばかりですわ!民草を守ろうとする、それが軍ですものね!おじさまはやっぱり
頼りになりますのね!そうそう、あちらのスラムにはわたくしがお世話になったお医者様とおともだちがおりますの。
是非助けてさしあげてくださいまし。おじさまの勇者のごとき活躍を期待しておりますわ。うふふ、あらいけない
呼ばれてしまいましたわ。それでは失礼いたします」


即座に親指が終了ボタンを押下した。
ピッ


【畳み掛けたな】
「炉が落とされることは聞いてたみたい、手出しはしないように言われてたらしいけどね。」
【ロジャーンだっけか?ツラいな。自分を屈託なく信頼する女の子からのお願いと命令との揺らめき…ってか?】
「あら、言い方が悪いわよ。 私は 軍人でありながらも人として成熟なさっているおじさまを尊敬してるだけですわ」
【酷い女だなぁ、相変わらず】
「あら、素敵な褒め言葉どうもありがとう」
地表の光が届かぬビルの上では、表情の変化がよくわからない。けれども少女は皮肉にしか聞こえぬ言葉を聴き、微笑んだ。
【フォローはいれとけよ】
「わかってるって、あとでパパのほうに私がおねだりしたっていうのをほのめかした連絡でも入れておくよ。
…多分人気が上がるからシャチョーさんも深くは攻めないデショ」
【たぶんな】


「じゃ、いきましょうか」
【おう】
歩き出す影。


「小母様が何か察知して怯えてるみたいだから…。銀ゴキが来る前に落ち着かせないと」


【じゃ、俺は駐車場の隅っこにでもいるか】
「ん、お願いね。なんかあったら『呼ぶ』から」
【了解】


ビルの屋上出入り口のドアノブに手が触れた瞬間。こちりと音がするほど静かに大気が硬直した。
そして光が背後からあふれ、美しくも狂った緑色の光が空へと散っていく。


【堕ちたな】
「ええ、おばかさんたち…腐ったピザの生地を壊したところで、ピザの具は皿にへばりつくだけ。…自分に帰ってくるのにね」


膨大な魔晄の光と風が体に衝突し、三つ編みが激しく揺れる。耳の上辺りに手を当て、暴れる髪を押さえながら振り返った。


【分からないのさ、大義に目が曇ってる】
「しかも拭っても落ちづらい、まるで脂の曇りのようね」


肩をすくめ、向き直った少女はドアノブを捻る。
そうして、何かに気がついたように空いた手でポケットを探り、再びPHSを取り出して高い操作音を立てて電話をつなぐ。

「小父様?ナナです。わたくしの赤いお友達はどうかしら?……まあ、大食漢ですこと。そうそう、これからそちらに参りますわ。
ええ、ええ。判りました。ではまた後で…」


ピッ


【神羅行った後はどうすんだ?】
「どうせあと二日は時間があるわ。暫くここを離れるんだし…親孝行でもしてくる」
【乙】
「おー」


屋上の人影はビルの中へと去り、屋上はさざめく喧騒がかすかに響く、本来の空間へと戻っていった。




「助けられるくらいなら、全部助けてあげたいけれど」
【ムリだもんな】
「まったく、やるせないったらないよ」
【ほれ、さっさと乗れよ。ナナ】
「あんがと、ハニー。じゃあ飛ばして頂戴」
【よろこんで!】








人気の失せた丘に、黒髪を靡かせる姿。



                                              風に遊ぶ、艶やかな長い髪を鬱陶しく撫で付けると
                                              月の光を跳ね返すほどに磨かれたストラップシューズで
                                              青年を蹴り上げる。



「いい加減、シリアスしてないで起きたら?」
「ってぇ…まだ傷口ふさがってないトコを態々蹴るなよ!」
「あら、ごめんあそばせ?ハリネズミ語は習得しておりませんの。理解ができませんわ」
ホホホ、と黒髪を靡かせた少女は高く笑った。
「ってゆーかぁ、ファイナルアタックと「そせい」返してくれない?」
「えっ!?くれたんじゃないのか!?」
「何いってんのこの黒ハリネズミ。きっちょーな(貴重な)マテリアあげるわけないじゃん。さっさと返して
 特にファイナルなんてゴールドソーサーにいくら寄付したとおもってんの」
「わーってるよ、でも。なんでだ?」
「なんでって?」
「なんでって…そりゃ…俺のことだよ」
アイツのこともあるけどさ。


「簡単よ。アンタ助けておけば、あとでの覚えもいい、ってもんよ」
「はぁ?」
「判んなくていいのよ。私の事情だもの」



さてと、大いに大番狂わせを序章からしてみたけれど、これからどうなっちゃうのかしらねぇ~?


「おい、ちゃんと答えろよ~ナナぁ」
「OK、じゃあできるだけ簡潔にいってやろう」
「お、おう」
「せつめいするのがめんどい。終わり」
「このクソガキィィィ!!!」
「ハッ!このゴンガガ猿め!いいから行くよ!」
「ちょっ、まだ腹の傷がちゃんとふさがってな…イテテテテ!!」


にぎやかな二人組み、その二人を丘の麓で眺めていたチョコボが高く「クエー!」と鳴いた。
それは、悲劇が起こるはずだったある夜のこと。


-----------------------------------------------------------




[365] FF7:名無しのNANA-私の主人公は私。
Name: M
Date: 2007/04/07 19:10






「おねえさん、おねえさん」
「あら、なあに?」
「おはなをいただけますか?おばさまにかっていきますの。えぇと、むらさきっぽいものか…うすピンクのおはな。ございませんか?」
「ちょうど、コスモスがあるわよ、綺麗な桃紫色の。フィルムとリボンで束にして。100ギルだけど…」
「ほんとう?じゃあ、ひとつくださいまし」
「はい、ありがとう」
「“またね”おねえさん!」
「ばいばーい」



「うふふ、かーわいい」
ピンク色の上品なワンピースを翻して走っていく小さな女の子。ほっぺたはリンゴみたいに赤くって、この辺りでもめずらしいくらい
深い深い真っ黒な髪の毛。
その子がすれ違う人たちが振り返っていく。コスモスを、抱いて走る女の子なんて、可愛くてたまらないものね?
「今日のお客さん、いいひとばっかりな気がするなぁ」
あんな可愛い子が、一人目のお客様だもの。きっとそう。







「…仲間一人つれて歩かずに、一人でどうにかできるって暴走する人。私、好きじゃないな」
少女は胸に抱いた花束をそっと顔によせ、その足をさらに急がせた。「彼ら」の動向を親友と眺めるために。
「嫌いじゃないけど…うん、好きじゃない。誰かを頼ったっていいのに」


それは、魔晄炉が輝きはじける一時間前のこと。













Song dedicated to you
FF7:名無しのNANA- 私の主人公は私。













「クラウド」


呼び止める声に振り返る。
「ねえ、約束…忘れちゃったんだ?」
鈍色にさび付いた記憶が、掘り返されてゆく。
星空のしたの語らい。もう、遠い過去のこと。



だが、冷たい瞳の青年はただ。目の前の幼馴染を見つめるだけだった。
魔晄炉から放出された、熱風に晒された頬は張っていて、窓から流れ込む少し淀んだ夜の風が心地良く撫でる。
ほのかに華やぐ小さな花が、ゆらりとその首を揺らしていた。




空気が圧縮される音と、同時にドアが開く。常にオフホワイトやグレー、メタリックという味気ないその研究室。
最近は「女性職員から逆セクハラに遭うんだがどうすればいい…?」と幼女相手に切々と愚痴を言う主任がいる。
…いいじゃん、されるうちが華だよ?随分とナイスミドルになったね、小父様。だけど隈が取れないのはどういうことだ。


「おお、来たか」
「おっじさま!こーんにちは♪」
「あら、ちっちゃな魔女さんじゃないの」
小父様と向かい合い、私に麗しい真珠色の背中を向けていた真っ赤なドレスの女性が振り返る。
「わ!スカーレットおねえちゃま!どうしたの?ひさしぶりぃ~!」

本当に久しぶりだ、前に会ったのは三ヶ月くらい前。とりあえずお疲れ様の意味で胸に抱いたコスモスを一輪、
束から抜き取ってスカーレットお姉さまに手渡す。お、ちょっとほっぺたが赤くなったぞ?なんだか可愛いなコノッ!

「うふふ、コスモスなんて何年ぶりかしら…」
「おねえちゃまはコスモス、好き?」
「可憐そうにみえて強かに増えまくるところとか」
「いえてるぅ!」

小学校のころ、理科?かなんかで種もらって花壇に植えたんだよねー。あんまりにも綺麗だからウチに種持ち帰ったらさ。
年毎に庭がコスモスだらけになってくの。抜いても抜いても減りゃしねぇ。
奥さん。コスモスは意外と強いですよ!これが噂の種割れですね!?しかし種も種運命も見たことがありません!
えーと、ブルーコスモスって何。


「ま、それはともかくとしてぇ。…おねえちゃまとしては、かんわいーい妹分にプレゼントを持ってきただけだったり?」

え!?プレゼント!?何!?何!?

「ッジャーン!」

お姉さまがラメラメのポーチから取り出したのは…クリームピンク色に塗装された2インチリボルバー。しかも二丁。
うっわ…。

「かっわいい~!!」
「でっしょでしょ~ぉ?でもSAはまだ早いと思って、DAにしてみたのよ」
「…?でぃーえー?」
「ああ、ごめんなさい?ダブルアクションって言ってね…ほら、カートゥーン(アニメ)でよくあるやつよ。
撃鉄引かなくても打てるヤツ」
「あー、あー」

アレか。パム、と両手を胸の前で合わせる。

「ま、それについての講義はまたおいおい…ってことで。はい。プレゼント」
「ありがとうおねえちゃま!…あれ?」

手渡された二丁の銃。そして私の疑問の声。目の前のお姉さまの顔がニッタァ~と緩む。おお、会話からおいてきぼりの小父様が引いてる。

「軽い…でしょ?」
「うん、ずっしりはするけど…拳銃ってこんなに軽いの?」
「ンなわけないじゃなーい? それはね、プティ・ソルシエールさんのための銃なの」
「…私のため?」
「ここ、良く見て御覧なさい」
「?」

流石に銃を自分に向けるのは怖い。なので銃口を自分から背けて、前方向から銃を見る。れんこんさんこんにちは。

「あれ?」
ん…?んー…?ん?
「おねえちゃま、これって…」
「ンッフフフーv そうでーす弾が入ってるように見せかけてるだけでーす」


ええええええええええええええええええええええ だめじゃん。






ただ、小走りするだけでフワフワと翻るスカートの中に、二丁のリボルバーを収めた少女が、研究所の中の小さなドームへと駆け寄る。
「小母様!」
【ああ、ナナ、ナナ。どうしましょう、怖い、怖いわ…怖いの…】
「大丈夫、大丈夫だよ。小母様。ナナが助けてあげるから」
【あの子が、あの子が来るわ…私を切り刻んでゆく…!】
「小母様、落ち着いて!私絶対小母様を追いかけるから、小母様を外に解放してあげるから」
【ナナ、ナナ…。怖い、もう、怖くて痛いのはいや…】
「おばさま…」
しかし。テラモエス。喩えるならば上品なお姉さんが恐怖に震えてさめざめと泣いている…こんな感じ。正直萌える。
ナナ…?
「あわわわ…ごめんなさい」
慌ててそっぽを向くと、くすり、と静かに笑う声がした。
【…だいぶ、落ち着きました。ありがとう…「このできごと」は私が外に出るための…ものなのね?】
「そうだよ。だから、少しだけがまんしてね」
そっとドームのガラス窓を撫でて、心の中で微笑む。小母様が安心できるように。
「ね、小母様。私、レッドちゃんに会って来るね。きっとおなかすかせてるかも!」
【そうね、いってらっしゃい。ナナ】
「いってきます。小母様。あ、そうだ。見えるところにこれ、置いとくよ」
口が欠けて、廃棄予定だったメスシリンダーにコスモスを活け、小母様のガラス窓から見えるところに置く。
少しは心が癒されるといいんだけど。
【…? まぁ!綺麗…「おはな」ね?】
「そうだよ、コスモスっていうの。小母様色のお花を買ってきたんだ~」
【ありがとう、ナナ…もう大丈夫…】


その言葉に頷いて、私は研究室を後にする。さてと、上に居るワンワンなのかよくわからないナマモノに会いにいくかね~。


軽快に階段をタムタムと上がっていくと、「この大食らい!」「俺の給料分の肉が!」「うわっ白衣こげる!こげる!」などの
白衣のユカイな仲間たちの歓声?が聞こえてくる。


「こんにちはー、レッドちゃんにあいにきましたー」
「お?おおナナちゃん。いらっしゃい。アイツなら今食事中だよ」
その場に居た研究員の人がめそめそと「俺の給料が吹っ飛ぶ値段だ…」「グルメ野郎め…」「いつか実験体にしてやる」とか
妖しく笑っていらっしゃる。…レッド、いくらの肉を食べてるんだ…?松坂牛系か?だったら奪って焼いて食べてやる!
ゴクリ。と生唾を飲み込みつつ、円筒状のガラス檻に近づいた。

-そこには元気に走り回るトニーの姿が!-

もとい、おいしくお肉をいただいてるレッド。なんか霜降りなんですけど。視界の端っこに移るお肉屋さんのパッケージ、あれって
高級肉しか扱わないブランド店のじゃん…誰だ贅沢覚えさせたヤツ!責任者でてこーい!あ、小父様か。


私がそちらに目線を向けていると、「ご飯大歓迎」に巻き込まれ、顔をよだれだらけにされた研究員さんが近づいてきた。
「ええ、そうなんスよ。ミキちゃんたちの発案でして。いくらなんでも未確認生物だといっても美味しい食べ物くらい上げなきゃ虐待だ。ということで…」 
「ほら…この間寿退職した子ですよ。それ以来嵌っちゃったらしくて…アレ以外食べないんですよ。…ハァ」
「ほへー…」
「まったく…経費で2/3は落ちるものの、残りを皆で出し合ってるんですよ…。あっこの!ちゃんと骨まで食べないとカルシウムの摂取に
ならんだろうが!食べなさい!」


振り返ると、満足げにうずくまり、尻尾を上下に振る赤いいきもの。お皿の上には綺麗に肉が舐め取られた骨が。
「…ミルクゼリーに粉薬でも混ぜればいいじゃないか」
「そうすりゃお前は食わないだろうが!ったくもう!」
赤い生き物はのっそりと顔を上げると、ぶつくさと研究員さんに言い返す。仕方なさそうに骨をポリポリ齧ってるのは…。


「なんかかわいいな」 犬が前足で骨っこ抱えてアグアグしてるみたいで。


「! ナナ、ナナか!」
「ナナだよう レッドちゃん」
「良く来たな、…どうかしたのか?」
「ううん、どうもしないよ。こっちにきたから、ごあいさつ~」
「そうか」
ガラス越しに笑いあう。
「もう治療検査は終わったらしいじゃないか、早く帰りたいのだが…」
「ちりょうはおわったけど、じっけんきょうりょく(実験協力)はおわってないでしょー?」
「…注射は嫌いだ」
「だいじょうぶ、ナナもきらい」


レッドはゲームとは違い、神羅兵がモンスターと間違えて射殺しかけたところを保護したみたい。
その後、人語をあやつることと、他種の動物には見られないほどの長寿である、ってことから「実験協力」と「治療検査」を受けてる
形になる。らしい。毎日おいしいお肉もらって、適度な運動(屋上で黒ヒョウと遊んでるし)できるし、故郷にはない文献が読める。
注射ぐらいでガタガタ抜かすなっつーの!私と代われ!お肉大好き



ある程度、きゃらきゃらと笑いあいながら話をした。ふと、研究室のモニターに黒煙を上げる魔晄炉を見つける。
「…あした、ここをでなきゃなぁ…」
「どこかいくのか?」
「うん、ちょっとねようじがあるの」
人を雇って、7番街から人を出さなきゃ。…神羅の工事ミスで空気よりも重いガスのガス管が腐食して、ガスが漏れ出してる。
とでも流してもらおうかな…。そしたら家の中に居ても無駄だし、外に出るよね?まあそれ聞いても出て行かない人は知らない
ってことで。


全員を助けることができる。なんてありえないもんなぁ…あー、気分が沈む。
人が死ぬのはやだねぇ…。ホント。



「はぁ~…」とため息をついた私を、レッドがふしぎそうに首をかしげて見ていた。…可愛い。



-----------------------------------------------------------
あとがき:とりあえず本編に入りましたが、ナナちゃんのみ暗躍でございます。

黒い猪突猛進ハリネズミと金色のパートナーも 次回登場予定です。
あと、もう皆さんお気づきでしょうが「ナナの気に入った人たち」以外にはナナはお嬢様口調です。




[365] FF7:名無しのNANA-ロマンは男だけのものじゃない
Name: M
Date: 2007/04/07 19:27






パイプが這いずり回る中空、そこに腰掛ける少女とチョコボ。眼下には慌てて街から出て行く人々。
「おーおー、逃げてる逃げてるぅ」
ピリリリリ ピリリリリ ピリ ピッ
手に握り締めていたPHSが光り、甲高い音が響く。通話ボタンを押して耳に当て、最近聞きなれてきた男の声に
耳を傾ける。


「んー?何々?」
『こっちから見ても退避完了ってカンジだ、やっこさんたちに不審に思われないようにちょっと小細工もしてみたぜ』

「どんな?」

『丁度襲い掛かってきたバケモンがいてな。それが複数だったもんで苦労したんだが…。
 そいつらの爪とかが鋭くてな?それでほんとにガス管削って孔空けてきた。そばに同士討ちっぽく放置してきた』

「アホか!そこで大爆発起こしたらどうすんのさ!?」

『ってー…いきなり叫ぶなよ!鼓膜がジンジンする…』

「もー、ホント小細工にしても力技だよねーアンタは」

『うっせ!今から集合場所にいくからな!…怪我すんじゃねーぞ』

「…もう、そういうときばっかり色男モードねぇ…。分かってるって、アリガト」


ピッ



ピリ ピッ
「はい」
切った途端に成るPHSを即座に通話モードにし、耳に当てる。

『あらかたの退避は完了した模様です、これからどうすれば?』
「わたくしがお渡しした変装道具で変装したのち、7番街外の公園で待機。その後災害があるはずですので
 それらの救助に当たってください」
『ハッ! …ですが、一人見当たらない者がいまして…』
「ああ、黒髪のツンツンした男でしょう?彼はかまいません。わたくしの子飼いですから。それよりも、貴方たちも気をつけて」
『了解しました。では』
ピッ




「ぅはっふー…」
ずるり、と音がしそうなほどに、自分の体を支えるパイプにもたれかかる。PHSはすでにポシェットの中。
【随分暗躍が馴染んできたみたいじゃんか】
「はー…、つっかれたー。幼稚園はまだしも、学校が通信制に出来たのはありがたいわ~」
こんなことばっかしてたら、小学校ダブるっちゅーねん。義務教育が無くてよかった。
ビバ赤ペン先生。こっちにも居たよ似たのが。…付いて来る実験セットが凄い楽しい。子供め、うらやましい…!
「アイスクリームをつくろう」セットがとってもたのしかったです。販売元はもちろん神羅。
















Song dedicated to you
FF7:名無しのNANA- ロマンは男だけのものじゃない

















【ていうか帰らねぇ?正直まじ怖えぇ】


「大丈夫、私も怖い」


頑強に組まれたパイプの上を這う、点検用の通路の上に私たちは居る。大人五人ほどが横に通れるほどの広さだけれども、流石に
中空30メートル以上はガチな場所に長々と居たくは無い。




「そういえば、「ガチ」っていうと「ガチホモ」って言葉しかおもいうかばな」
やらないか




【ほんっとうにお前はネタ脳な!】
泣きたくなってくる!


失敬な。

「ま、それはおいといて~。さっさと帰って用意しよ、用意」

【シルキスご飯よろ】

「ざけんな家畜。いくらすると思ってんだ。で、何本もってく?」

【ま、ステ(ータス)は打ち止めっぽいし。途中途中で買い足せばよくね?3束くらいでいこう】

「うぃ」



そんな会話をしつつ、通路を戻っていく私たちの足元で、黒髪のボインを乗せたチョコボ馬車がウォールマーケットへと向かっていった。
気付いたがメンドクサイしあんまりかかわりたくないので無視して帰った。








「クラウドの女装姿、ちょっとはみたかったなぁ…」

【幼女がうろうろしてたら売り払われるぞ】

「だぁよね~」
うむ、至極残念である。


さて、用意が終わったら…神羅ビルのロビーで民間人にでも混ざってようかしら?運がよければクラウドたちから逃げ惑う
NPCになれるかもしれないし?ウププ。

【俺は?】

「神羅ビルの駐車場で待っててヨ」

カツカツと通路を歩きながら、今後の予定と持っていく荷物の相談。チョコボで稼いだお金はダテじゃない。








さあさあ世界がはじまってゆくよ。

テントに食糧、そして水。お金とアイテム、ハニーに載せて、冒険の旅に出発しよう。

そして数時間後、スラムは潰れた。落下物に当たって大怪我をした人はいたが、奇跡的に死者は出なかった。
私の頬が、これ以上ないって言うほど、ニンマリと持ち上がった。






「よっ…と。これでいいかな?」

【ん。まだまだイケる。全速力でも走れそうだ】

「おお、頼りになるゥ」

デパートのアウトドアショップの店員さんに、ゴールドカード+現ナマをちらつかせて用意させたキャンプ道具を
手際よくハニーの鞍の後ろと、両横にくくりつけていく。

この日のために何回か練習したしね!

ちなみに鞍はウェスタンタイプ。でも鐙の部分は金属と合皮で作ってある。二人(一人と一匹?)して
「どんな鞍が互いに負担がかからないか」ってグリングリン牧場で頭ひねりあって作った自信作だ。…いや、私が
作ったわけじゃないけどさ!ちなみにウェスタンタイプ、っちゅのは股の前の辺りにグリップがあるんだよ。

【いいなぁ、ナナ。俺もアウトドアショップ行きたかった…】

「ムッフッフ、羨ましかろう!私はアウトドアグッズ大好きだからな!水の濾過装置も作っちゃうぞ?」

【いや、それはやりすぎだろ。…?なにそれ】

エマージェンシーブランケットや折りたためるホボクッカー。「無くしたらマジピンチ」の類を最終チェックしている
私を、黄色い口ばしがつつく。私が手に持っているのは、そこそこに嫌な色合いのカサカサした棒が繋がった板。

重量感のないそれを放り投げ、幾度か一人キャッチボール。

「これは着火材。耐水性があって、濡れてても火を近づければボッといっちゃうのさ」


【・・・ファイアでよくね?】












































ヒュボッ!と私の手のひらから火の玉がハニーをかすって地面に当たる。




「きゃっ☆いやですわ! ナナったらうっかりやさん!チョコボさんのシルキスのお野菜を
 あ や う く フ ァ イ ガ で 消 し 炭 に す る と こ ろ で し た わ !」

お 前 ご と な

万感の思いを込めた視線でハニーを見つめる。ごくり、と彼の(性別上は彼女だけれど)喉が動く。

【ごめんなさい、そうですよね。アウトドアはロマンが大切ですよね。魔法なんかの火よりもマッチや着火具での
炎が最高ですよね!ごめんなさい!】

「うふふ、チョコボさんたら。ロマンがわかるなんて、素敵ですわ☆うっふふふふふふふふ」

【アッハハハハハ】

「うっふふふふふ」

【アッハハハハハ】・・・・・・・・・・・




そんな楽しい(?)時間も過ぎ、ネオンが輝く夜へと空が染まってゆく。






彼と、彼らが交差する時が近づいていた。




-----------------------------------------------------------
あとがき:とりあえずここまでが削除前のものです。ではでは~




[365] FF7:名無しのNANA-戦略的撤退という名の勝ち戦 そのいち
Name: M◆143919d1 ID:c729522d
Date: 2007/05/18 18:21






罪深い男は言った。
「あの時は、つらく悲しい過去という夢を見続けていたんだ」

罪深い女は言った。
「自分自身を可哀想だと思い込んで、ただ悲劇に浸るヒロインになっていたの」

罪を背負った男は言った。
「友と自分に降りかかった災難を、ただ認めずにうつむくばかりだった」




「そこから逃げ出したいなら助けてあげる。
 けれど、貴方達は逃げたいの?それとも」

「勝ちたいの?」









Song dedicated to you
FF7:名無しのNANA- 戦略的撤退という名の勝ち戦 そのいち

              「いわゆる、スキマ話とか補足話。閑話なのね~」
              【身もフタもねー!】






彼女この家に来てから一年経ち、彼女が引き起こすハラハラするような行動にも義父と家政婦がなれたころ。
喧嘩の「け」の字もなかったような家に、低音と高音の怒鳴り声が交差する日が一日だけあった。

彼女が初めて家を空け、一人で - と言っても、保護者代わりのガードマンつきだったが - ゴールドソーサーへと向かってしまったのだ。
義父も、付き人付きで出かけるならば、同じ大陸ならばまだ安心は出来る。
しかし彼女はその年齢にしては達者すぎる置手紙を残して海を渡ってしまった。

心配していたからこその怒声。しかし、義父が知るはずもない彼女の真の年齢は、高い。成人女性の心が幼い体の中に収まっている。
彼女も、悪いとは思いつつも自分の身の回りを囲む過剰な保護から逃げたかった。外見はともかく、中身は大人なのだから。
すまないと思っているからこその怒声を上げた。

その後、二人の仲は急速に冷え切ったが、彼女はあきらめなかった。

置手紙をして大陸のどこかに出かけても、その手紙を一瞥するだけの義父に毎日手紙を書き続け、強情な義父を折れさせたのだ。
軽く半年の攻防だった。

「負けたよ」

そうあきらめたように笑う義父に。

「ナナはライゼン大佐の娘だもん!【流石は大佐の娘さんだ】って言われちゃうくらいなんだから」

彼女は鮮やかに笑い、舌足らずの口調を初めて、義父の前で改めた。
アゴス・ライゼン。
再び自分の娘に陥落し、目じりが垂れ下がる親馬鹿になった瞬間である。

そして、彼女が義父から全幅の信頼を置かれた瞬間でもあった。

それはまだ「はじまり」よりも前のできごと。









「よし、情況説明はついたナ」

爽やか、というよりも寒風と表現したほうがいい温度の風が吹きすさぶ高所で、少女は高らかにのたまった。
額にフライトゴーグルと、長く二つにおろした三つ編み。腰まである暖かそうなコートにミトンを嵌めた完全防御な姿。

【いや、まったく付いてないよ!?】

分厚い金属を叩いたかのようなショック音が幻聴できそうなほど、傍らでモコモコと座り込んでいたチョコボが、
唐突にしゃべりだした少女に突っ込んだ。

「黙れ」

【…ヒーン!】

今、彼女とチョコボが仁王立ちしているのはニブルヘイムを遥か遠くに望む山の上。大陸のど真ん中に近い山。
そして爆音が頭上を裂き、もう一方の眼下の目的物である円形の湖に降りていく。
まるで操縦者の思考をトレースするかのように、おっかなびっくり下っていくヘリコプターを見下ろし、思わず苦笑が浮かぶ。

「がんばれ~、おっじさま~」

ほんのりと「顔中ボコボコにされた彼の人との再会」を期待しながら、再び視線をニブルヘイムへと向け、既に自分の身長を越し
出したチョコボを見上げる。

「じゃ、ウチらは小父様たちが来るまで鉄板ドアでも叩いてますか」

【了解~】

まるで、父親に「ちょっと角のコンビニでおつまみ買って来てくれない?」と頼まれ「いいよー!」と頷く位の気軽さで、チョコボの脇を叩く。
今だモコモコの黄色い羽毛布団になっていたチョコボは、更に羽をモコモコと動かし、乗りやすいように鞍を下げた。
鐙(あぶみ)に足を掛け、軽やかに鞍の上にまたがると、少女は額に乗っていたゴーグルを引き下げて目を覆う。

「クェエエッ!!」

普段の会話ではない「単なる鳴き声」を高らかに上げて、チョコボは今だ幼さを残す巨体で立ち上がり、一気に険しい山を疾走していく。
寒暖の激しさ故に、地面にへばりつくようにして生息する植物達を出来るだけ避けながら下る様は、まるで灰色の山を滑り落ちる
金色の流星のようだった。

ずんずんと近づいてくる小さな村。既にかつての住民は一人もいない、神羅に造り上げられた「罪隠しの村」。そしてその
村をじっと見つめる少女は、しばらく考え込み、カッと目を見開き叫ぶ。

「えーと…”嘘だっ!”?」

【まあ、罪隠しとか言われたら雛見な沢な村を思い浮かべるけどさ…。言っとくけど、ナタ振り回すなよ】

「えー、チョコボのなく頃に-罪隠し編-とかダメ?」

【ダメー!すっごい怖いからダメ!「【ごめんなさい】」シーンで脱落した俺を舐めるな!】

「うっわ脱落早っ!富竹さんしか死んでねー!」

地面に這い蹲る草の背が高くなり、そして風景は森へと変わってゆく。
騒ぎ立てる二人(一人と一匹)に目を見開いて動きを止める熊の目の前を通り過ぎ。
襲い掛かろうと前に立ちふさがった狼を知らないうちに踏みつけ蹴り飛ばし。

「お持ち帰りィー!」と笑いながら少女が冗談で振り回した釘廃材(釘バットにあらず)がチョコボのスピード+ナナの振り回し。
さらに脳天にクリティカルヒットという奇跡を起こし、ドラゴンをぶちのめした。いつの間にかレベルが一つ上がっていた。

なんやかやで、二人は偽物のニブルヘイムへと到着したのであった。

「あれ?レベル上がってる」

【まじで?ラッキーじゃん】

そして二人は、その足をまっすぐに神羅屋敷へと向けて歩き出す。



------------------------------------
あとがき:どうもお久しぶりです、Mです。
尋常じゃないまでのスランプに陥り、もうどうしていいかわかんなくなって、楽しい行為のはずの創作行為が苦痛にしか
感じられずにないちゃったりしました。こんにちは、情緒不安定!

そしてなんとなく復活。

気まぐれにこっそり一本投稿しちゃったりしましたが、流石に二本も投稿はやっぱりアレだよね、ということで削除しました。
いつか全部終わったら、また投稿したいなぁ。




[365] FF7:名無しのNANA-戦略的撤退という名の勝ち戦 そのに
Name: M◆143919d1 ID:c729522d
Date: 2007/05/19 08:29






男は言った。
「すいませんほんとうにすいませんだから前髪を、前髪を握り締めないで下さい」

女は言った。
「今更?いい度胸ね。その前髪さらに後退させてやるから覚悟なさい」

男は寝ていた。
「スピー」




「奥さんにフルボッコされて戻ってくるに1ペリカ」

【意表をついてラブラブモードで戻ってくるのに1ペリカ】









Song dedicated to you
FF7:名無しのNANA- 戦略的撤退という名の勝ち戦 そのに

              「いわゆる、スキマ話とか補足話。閑話なのね~」
              【身もフタもねー!】






「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
【・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。】

しまってるし。

神羅屋敷のドアは固く閉ざされている。

「まあ当たり前だよね」
【閉鎖されてるもんな】

雑草を軽やかに踏みしめながら、人が少なすぎて、こちらに気づくこともない村人たちから、さらに隠れるようにして屋敷の裏手へと回っていく。
丸くでっぱるように配置された壁の、更に裏側に回り、その小さな背丈をうんと伸ばして窓を覗き込もうとするが、如何せんやはり慎重が足りない。
仕方なげにハニーとアイコンタクトを取り、その背中に乗って再び中を覗き込んだ。

寒暖の差で生まれるかすかな気流に乗って、きらきらと埃が舞い踊っている静かな空間がそこにはあった。

人の気配の全くない、不思議な空間。
しかし彼女は普通の子供ではない。むしろ普通の感性の持ち主ではない。




カシャ




かすかにガラスが割れる音が静謐な空間に満ち、そして溶けてゆく。

外では…。




「もうちょっと!もうちょっと!がーんばれ!まけーんな!」

【ナナ!やばいやばいやばいやばい!ガラスが刺さる!やばいって!はいんないって!】

静謐さとは全く無縁の騒々しい舞台が繰り広げられていた。

-あ。
   グサッ
-クエエエエエエエエエエエ…!
 (いてえええええええええええええええええええええ!!)







「で?何で今更?」

「いや…迎えに、ですね。ハイ…」

「なーんーでーいーまーさーらっ?」

「ス、スイマセン…」

青と紫に輝く不思議な空洞に、二つの人影があった。
片方はクリスタルの上に足を組みながらもう一人を見下ろし、もう片方は、その相手に服従するかのように正座している。

「人がシクシク泣いてるのをここに押し込めて!定期的に保存食を上からヘリで放り投げてくだけ!
 そんなことばっかりやってた貴方がなんで今更来るわけ!?」

しかも、研究に没頭するまえの私好みの体格とツラ構えに戻ってるのよ!

ルクレツィアは憤っていた。

かつて自らの胎を捧げた研究、そしてそこから生まれた化け物に等しい我が子。そしてジェノバ。
そして、最愛でもあった夫。宝条。

弱く卑怯だった自分は恐怖から逃げて逃げて逃げて、そしてこの目の前の男は私を追い詰めて追い詰めて追い詰めた。

疲れ果てた研究と生活の果てに待ち構えていたのはこの孤独で美しい洞窟。
自分はここで星が朽ちていくまでずっと生き続けるのだと、そしてその孤独が自らの罪だと己に言い聞かせてただひたすら
生きてきた。

なのに、なのにどうして今更!?

胸から躍り出るほどの幸福感はある。だがそれを上回るほどの怒りが彼女を満たしていた。
「愛する夫に裏切られ追い詰められた悲しみと怒り」。もっともジェノバの原初、「負の感情」とシンクロしているが故の苛立ち。

「馬鹿」

「はい」

「馬鹿っ!」

「ああ」

「馬鹿、馬鹿、馬鹿…! なんでもっと、なんでもっと…っ!」

「ルクレツィア」

宝条の手が伸び、首を振って拒否するルクレツィアの肩を引き寄せ、その腕に抱いた。

宝条の指がルクレツィアに触れたその瞬間、ルクレツィアの脳裏に写ったのはさびしそうな横顔の女性。

唐突にその目の前に、コスモスと、それを差し出す手が現れる。
そのコスモスを差し出す腕の先は見えないが、その手はとても小さく、そして幼い。
寂しそうに、ただ虚ろを見つめていた女性は、目の前に現れた小さな手と花に、その銀色の睫に彩られた桃色の瞳を瞬かせ、
コスモスを差し出す小さな手の持ち主に微笑んだ。

唐突に、何もかも許されたかのような感情が心のそこからあふれ出し、幸福感も苛立ちも、すべて一切合財押し流していく。

「ごめ、ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!!」

「ああ、判ってる、判ってるから…」

「ごめんなさい!!」

-ああ、こんな激情に身を任せて泣き叫ぶなんていつぶりなんだろう。

そっと脳裏に浮かぶ自分の言葉に、静かに女性の声がかぶさる。

-いいわ、もう。 許してあげる。でも、次は許してあげないからね?

ルクレツィアは何故か、その静かな女性の声が「銀色の女性」だと確信し、猛烈な疲れと涙でその意識を手放した。









「テラ乙」

【テラ乙。じゃねえよこの幼女!思いっきり脚にガラス刺しやがって!】

グランドピアノが置かれた部屋に、にぎやかな話し声。しかし、片方は唯チョコボに話しかける子供の声と、
それに反応して激しく鳴くチョコボの声にしかきこえない。

その賑々しい雰囲気と声に誘われるように、すこしずつ、すこしずつ。この屋敷を徘徊するモンスターたちが集まりだす。

「さっきから謝ってるじゃないのよう!」

【「テラメンゴ☆」のどこが謝罪だゴラアアアアアアアアアアア!!】

「この軽やかな星の部分がね?」

【言葉ですらねぇ!!】

「あっはっはっは!やっちゃったZE!」

わざと後ろを向き、軽やかかつ力強く立てた親指と素敵な笑顔で振り向く。

【「やっちゃったZE!」じゃねえよ!どこのソードマスタートマトさんだよ!】

「…お前が…トマトか」

【俺はポテトだ!】

「俺の肉しみは消えないんだ! OK、じゃ、仕事おわらせよっかー」

【まそっぷ! ん。…あれ?なんか誤魔化された?】

「ナイナイ。なんでもなーい、なんでもなーいきーみのえっがおーがー」

【ちょ、あ○きちゃん】

「ま、そんなことよりもね」

【ウム、ピンチだな】

既に3メートルほどの距離を置いて、二人に肉薄しているモンスターの群れ。
しかしナナはけろりとした顔で、自分の襟元をモンスターへ見せ付けるように押し出す。

【あ、忘れてたわ】 

チョコボも同じく、首から下がるチョーカーを見せ付けるようにのけぞる。
その仕草と、二人が装着している「なにか」を見つめたモンスター達は、迫ってきたときと同じように、静かに去っていった。

「そりゃ、神羅関係者が襲われてたら本末転倒だしねぇ」

二人が身に着けていたのは「神羅」の社章。

【水戸黄門になった気分~】

「判る判る」

ケラケラと笑いながら、モンスター達の足跡が残る屋敷を二人は堂々と闊歩していく。
少女はその手に、鈍く日の光を反射させる鍵を弄りながら、まっすぐ二階の隠し扉がある部屋へと進んでいった。
その背後に、興味しんしんで付いて来るモンスターを連れながら。



------------------------------------
あとがき:
連続投稿っす。っす。 イン&ヤンって地下だけだったっけなぁ…あいつら微妙に好きなんだよなぁ。




[365] FF7:名無しのNANA-戦略的撤退という名の勝ち戦 そのさん
Name: M◆143919d1 ID:c729522d
Date: 2007/05/30 18:57






男は叩き起こされた。
「私を悪夢から呼び起こす者は誰d……誰?」




「寝てるだけを罪の償いとか抜かしてる色男はいねがー」

「クエックェエ!」
(801本では大抵宝条に掘られたという扱いをされた色男の棺おけはここですか?)









Song dedicated to you
FF7:名無しのNANA- 戦略的撤退という名の勝ち戦 そのさん

              「いわゆる、スキマ話とか補足話。閑話なのね~」
              【身もフタもねー!】






「…あ、お。うう」

【なぁ】

「何よぅ」

少女は隣を歩くチョコボを“見下ろし”唇を尖らせた。

「絶対降りないからね!あいたっ!」

【ランプがアタマに当たるぞって、遅かったか。ケケケケ】

「っっキィー!イン&ヤン!ハニー殴っちゃえ!」

「おー、おおー」

少女が乗っていたのは、代表的な神羅屋敷モンスター「イン&ヤン」の肩。…の、内側。ちょうど顔と顔の間にすっぽりと
収まるように座っている状態だった。

命じられるままに、どこか楽しそうにペチペチと平手で軽くチョコボを叩くイン&ヤン。

【あっ!あっ!やめて!アタマ叩かないで!首が長いからすぐ揺れるんだよコノヤロウ!こうしてやる!こうしてやる!】

ハニーも負けじと百烈突付きで応戦し、じめっとした地下はにぎやかな声とペチペチカカカという音に支配されていく。

「あー…」

「ん?なに、イン&ヤン。呼んd –ガッ- ほぉわっ痛(つ)ー!!」

ペチペチと(比較的楽しそうな表情で)ハニーとの攻防戦を楽しんでいたイン&ヤンが、自分達に乗っている少女を見上げ、うめく。
その呼ぶような声と仕草に、首を回して見下ろすと、その「見下ろすという動作」に近づいていたランプという力も加わり、盛大に
おでこをブチ当てた。

「うぉ…」

盛大にぶち当たったランプは、わんわんと金属が揺らぐ不思議な音を響かせている。
額を押さえ激痛をやり過ごす姿に、イン&ヤンも顔をゆがめて痛そうに見上げた。

「おほわー…ハンパ無く痛ぇー」

【大丈夫か?】

「何とかへいきー…って、もう着いたか」

顔を上げて前を見ると、丁度地下道の終わり。実験室のドアが目の前にあり、横を向くとさび付いた鉄板のドアがあった。

「さあて、ご開帳と参りますか?」

イン&ヤンの肩から降りて、ポケットの鍵を鍵穴へと差し込む。錆付いているように見えた鍵は、まるで油を注したかのように軽く回り、
小さな金属音を立ててその役目を実行した。

「確か真ん中だよね?」

振り返り、チョコボを見上げて確認を取る。チョコボはその言葉に頷き、首を動かして先へと促す。
ナナはテクテクと小さな足で中央の比較的綺麗な棺おけと近づいた。

【ん。他のは死体だかんな、気をつけれ】

「オッケーっす、あ、その前にね?」

ゴソゴソゴソ…カポッ。

【何してんだ? …ちょ!wwwみwwなwwぎwwっwwwてwwwきwwwたwwwぜえええwwww
俺も!俺も!てか、良く用意出来たな】

「大丈夫、用意してある。いやー、ゴールドソーサーのツテでね。
よし!TP300%!伝説の突き技www【パワースラッシュ】wwwwいwくwぜwえwぇw!!w」

急激に盛り上がる棺おけ部屋。そして中央の棺おけが、低い木摺り音を立てて開いていく。

「私の眠りを覚ますものは…」









-眠る、眠る、眠る。
 そして訪れる悪夢に魘され、飛び起きることすら許されず、この小さな棺おけの中で私は眠り続ける。

悪夢よ、訪れよ。
悲劇よ、わが身を苛め。
悪友と、憧れた女を守りきれなかったこと。止め切れなかったこと。そしてそれから悪夢へと逃げ込んだこと。

私が今のうのうと苦しみの中に生きていくこと。

それが私の罪。

…ほぉわっつー…
…クエ?クエェ…キュー…
…おぅ…おおおお…

人の声?いや、チョコボの鳴き声も…、それにこの館を徘徊するモンスターのうめきも聞こえてくる。
フッ、我が悪夢も新しい方向か?
少女をモンスターがズタズタに引き裂く猟奇ショーの悪夢でも見せるつもりなのか。
…我が夢で殺される少女よ、夢想の中の激痛と叫びに彩られた悲劇も、私の罪なのだ。

ガチャッ キィ

しかしおかしい、施錠された扉が開く音がする。声が鮮明になっていく。
うるさい うるさい うるさい。 私の罪を、悪夢を、邪魔するな。

…確か…なかだよ…?
…クェ、クェェ、クエッ…
…オッケーっす、そのまえにね?…
…ギョワッ!?グエックエエエックェェッ!クエックエックエッ!キュルルルー!…
…大丈夫、用意してある。てぃーぴー300%!伝説のつきわざ、ぱわーすらっしゅぅ!…

うるさい!

私は棺おけの蓋を押し開き、我が身のすぐ側で聞こえた会話の主をにらみつけ、叫んだ。いや、叫ぼうとした。

「私を悪夢から呼び起こす者は誰d……誰?」

私の眼下にいるのは、斧を片手に持った小さなウサギの着ぐるみ。その着ぐるみが顔を上げ、私を見つめる。
どんよりとした半目の、プラスティックで出来た目が、私を。

その着ぐるみは、とぼけた笑顔のウサギで、その首と腹が赤かった。特に…そう、何かを喰らい尽くしたかのように、口周りが赤く。
赤く。赤く。赤く。

「寝てるだけを罪の償いとか抜かしてる色男はいねがー?」

その小さな身長にあわせた、とても愛らしい声が着ぐるみの中からくぐもって聞こえてくる。

「クエックェエ!」

チョコボの鳴き声に目を向けると、そちらには鉄板をいびつな三角形にしたものを頭にかぶったチョコボ。

ぶぉん。という空気を切る音に、思わずジャンプし、棺おけの後ろへと飛びのく。
自分がいた場所には、赤く錆付いた斧があった。

「ちぇ、外れちゃった。まあ外れて当然かな?…えへへ」

かわいらしい笑い声をくぐもらせ、大事なもののようにウサギの着ぐるみは斧に頬を寄せ、抱きしめた。

これは一体何なのだ?私に何が起きている?これも私の罪なのか?久しく訪れなかった「怖い」という気持ちが湧き上がる。

「ねえねえ、おっかけっこしようよ。私が鬼でいいからさ」

ねえねえ、いいでしょう?
本当にこのウサギは子供なのか?女の子なのか?それとも他の何かなのか?
思考の海に溺れかけるが、ウサギはそれを許さない。

「逃げないの?逃げないの?逃げないの?逃げないの?逃げないの?逃げないの?逃げないの?にげ にげ にげにににに
 にににににににに゛に゛に゛nnn あはっあははっ あーっはははははははははっはははhっきゃはははは!!!」

怖い。

「あはっあはははっあはっあはっきゃはっきゃはは キャキャキャキャキャ!!」

笑い声が部屋いっぱいに響く、地下道まで漏れ出し、湾曲した笑い声が再び部屋へと戻ってくる。
ウサギは着ぐるみの頭だけを激しく震わせ、笑う。

「追いかけっこだよ!追いかけっこだよ!」

激しい笑い声とは裏腹に、ゆっくりとした動きでこちらへと近づいてくる。

原初の恐怖というのは、このことを言うのだろうか?
実を言うところ、私はこの後のことをほとんど覚えていないのだ。
覚えているのは、そう。必死に屋敷を逃げ回るが、先回りしているウサギや、チョコボ。追いかけられる私。そして最後の記憶。





あら、久しぶりね。ヴィンセント。赤い目なんて、ウサギのつもりかしら?

懐かしい彼女の声と、明るい屋敷の外。
そして目の前に迫るフライパンに、懐かしい風貌の、少し老いた悪友の「かわいそうなものをみる」顔。
激痛。









-おまけ-

「貴方が、ナナちゃんね?」

「そうだよ、はじめまして。ほーじょーせんせいのおくさん」

「あら、礼儀正しい子ね。それにしても、ずいぶんホラーな格好ね、なあに?それ」

「静岡!」

「…シズオカ?」

「うん」

「ふぅん…」

「あの、…ヴィンセント、ヘリに運ばないか?」

「そうねぇ。じゃ、アナタ、よろしくね」

「…ハイ…」


------------------------------------
あとがき:
gdgdになってもキニシナイ!だってそれがMクオリティ。
また間が開きました、こんにちは!

SDU内では屈指の悲劇ぶりを見せ付ける色男をゲットしました。
FF7でも悲劇だったけど、なんというかSDUでは「ナナにこき使われてるザックスといい友人関係築いちゃう」ような
悲劇っぷりでいくはずです。きっと。

これからもSDU:名無しのNANAをヨロシクお願いします!

追記:静岡サイトを巡ってきました。ロビー君いかす。
   でもMさんは怖いものが大嫌いなので(自分が怖いものになるのは大好き)
   おトイレに早めにいこうとおもいます。ぶるぶる。




[365] FF7:名無しのNANA-戦勝そのよん+(ぷらすっ!) 苦労人のばらっど
Name: M◆11994b80 ID:060212b9
Date: 2008/03/01 22:59






「悪夢だけが罪の償いなんて、貴方に割がありすぎるでしょ?
もうちょっとさ、自分に厳しく生きてみない?協力してあげる」



少女のささやきは、悪魔の声か天使の声か




【悪魔に決まってるゥー☆】





Song dedicated to you
FF7:名無しのNANA- 戦略的撤退という名の勝ち戦 そのよん

「ぷらすっ!」

「クエッ!?」【プラス!?】

「本編再開なのねー!」

あ、正しくはこっちね(↓)

Song dedicated to you
FF7:名無しのNANA- 戦勝そのよん+ 苦労人のばらっど





目が覚めた。夢を見ずに眠ったのはいつ振りだろうか?
ひたすら鼻が痛いが、気のせいだろう。
いつも目の前をふさいでいた棺おけではない天井が、目の前に広がっていた。
どこか無機質でいて、潔癖で。まるで研究所のような天井が。

「あ、起きた!」

「クゥェ!」

どこかで聞いた様な声に、ぼんやりと視線を投げると、そこには水差しとグラスを載せたトレイをもった少女が居た。
その横には、見たことも無いほどに美しい毛並みの若いチョコボ。

「おはよう!…っていっても夕方なんだけど。喉渇いてない?お腹すいてたらパン粥作ってくるけど…」

「いや、水だけ貰おう…キミは?…………      !」

―キャーハハハハキャーハハハハキャーハハハハ 逃がさないよ!逃がさないよ!―
―グエックエエエッ キュウッ!―

「うわああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」

「きゃっ!?」

「ギュエッ!?」

あの記憶が蘇り、思わず少女を振り払う。すまないと思う気持ちすら無く、ガクガクと情けなく震える自分の体を抱きしめることしか出来なかった。
それよりも。 ううううううううううううううううううさぎこわいうさぎこわいうさぎこわいうさぎこわいうさぎこわいうさがlうぃうgじょあ

<<ヴィンセントに「うさぎがこわい」トラウマが付随しました>>

「うさぎこわいうさぎこわいうさぎこわい」

「あー…トラウマ植えつけちゃった☆」

「クエッ?」(当たり前のことだとおもうがな?)

「マアネー」

チョコボと意思疎通が出来ている少女が肩をすくめると、空気が圧縮される音と共に人影が部屋へと姿を現した。

「あら、起きたのねヴィンセント」

「寝汚さは相変わらずか」

ああ、これはまだ夢なのか。美しい彼女がいて、顔と頭が良くてがり勉の悪友が笑っている。こんな悪夢は初めてだ。
きっと彼らが再び狂って行く様をゆっくりと私は再現していくのだろうか。

「とか、考えてそーですよねっ!」

少女が笑顔で二人を見上げている。

「多分絶対大当たりね」

「ウむ」

「夢じゃないですよ?本当だよー?」

「ああ」

「そうよ~ヴィンセント。私達、ここにいるわよ」

大いに年を経た悪友の苦笑いと、少し年を経た憧れの女性の笑顔。悪友が、頬をつねってきた。ああ、痛い。目が覚めない。

「ルクッ…宝っじょ…!」

どんな悪夢にも流れなかった涙が、ひっきりなしに頬を伝っていった。






また、「おまえたち」にあえるなんて、おもってもいやしなかったんだ。
全てが狂う前の。おまえたちに。










「…寒い」

叩き付けるようなビル風がスーツを激しく嬲っていく。軽く後ろに結びつけるほどの短めの髪が強い風に煽られ、散りじりに舞い上がる。
リズムのない平坦な呼び出し音がポケットから響き、男は吹き付ける風に顔をしかめつつPHSを耳に当てた。

「はい」

『おっす!俺』

「私には俺という名前の知人は居ませんさようなら」

『ちょっ!まっ! 待てって!判ってるくせに切ろうとすんなよ!あー、用件だけ言うわ。カームに着いたぜ。駐屯基地のほうにちょいと寄らせてもらってるわ』

「ああ、判った。彼女と合流したのち、そちらに向かおう。宿は?」

『もう予約でとってある。前いってた通り、アンタの苗字で取ってあるから』

「了解した、では。また後でな、ザックス。ヘマはするなよ」

『わぁかってるって!じゃーなヴィンセント!』

PHSをポケットに差込み、金色のチョコボが近づくのを、「ヴィンセント」と呼ばれた男が見つめる。
その背中に乗った自分の「雇い主」の少女が手を振り、それに右手を軽く上げ、答えた。

「ナナ」





------------------------------------
あとがき:
凄い久しぶりです。Mです。でも性格は結構Sです。(サンタさんを信じる子供のような眼差し)
ブログのほうに夢中になってました。ごめんなさい、生きててごめんなさい。でも明日のご飯が楽しみなので生きてます。
ヴィンセントがナナチームに正式加入しました。「旧友」と書いてパシリと読むルクレツィアさんに引き回されたり、流石に落ち着いた宝条に同情されたりして
結構幸せライフを送ってるような気もします。ウカツなことをするとフライパン二刀流が出てきますが、原作よりは幸せだと思う。うん。そう思おう。

あと、展開的にハリネズミと寝男がタッグとか随分珍しいような気もしてきました。

そして、これからもSDU:名無しのNANAをヨロシクお願いします!



[365] FF7:名無しのNANA-スタートダッシュは二個目のランプ点灯直後で
Name: M◆11994b80 ID:9f628bf0
Date: 2008/06/09 17:56






「いびつな、わたしのたましいのかけら。もどっていらっしゃい。
 さあ、リユニオンしましょう」

もうさびしくなんてないの。わたしのかけらたち。きっとわたしたち、またこのほしで、しあわせになれるのよ。



首の無い淑女が、恐怖の中小さくささやいた。
そっと、心の中で、小さな少女からもらった花を一輪だいて。









Song dedicated to you
FF7:名無しのNANA- スタートダッシュは二個目のランプ点灯直後で





「変だな…」

「何がだよ、ソルジャーさんよ」

「…静かすぎる」

不思議な青い瞳の青年が、ラボ階を見渡す。

「本来なら研究者たちがいなくてはいけない。こんなに静かだなんて、おかしすぎるとは思わないか?」

「ヘッ!俺達アバランチ様に恐れをなして避難したんだろ!」

たくましい肉体の男が、鋼の片腕をなで上げた。

「………」

そんなこと、あるわけが無い。そう言い返そうとしたその瞬間、辺りを見回し続けていた黒髪の女性が声を上げて、離れた場所の床を
指差した。

「ねえっ!見て!あそこ!!」

開きっぱなしになっているラボの奥から、上へ向かう階段に向けて「何かを引きずった跡」が続いていた。かすかに血液らしきものが「跡」には
滲み、その「跡」は薄桃紫色の液体だった。

「…これは…っ!?」

訝しげに、ラボの中を伺う青年。人気が無いことを確認し「跡」をたどると、奥には半円状のドームと無理やりこじ開けられたドア。そこから溢れる
薄桃紫色の液体。
唐突に青年の脳裏に、同じ色の液体に浸された異形の女性がフラッシュバックする。

「グッ…!」

―図に、乗るな―

ぎんいろの、だれか。ははとしたう、だれか。ばけもののような、だれかのはは。

「クラウド?クラウド大丈夫?」

「あ、ああ。大丈夫だティファ。…ジェノバ…ここに…」

いびつにゆがめられた記憶が、本当のクラウドを押し隠していた。






『ああ、間違いない。セフィロスだ』

キッと事務椅子を軋ませて、中階層の監視室で仰け反る少女と、スーツ姿の男性と白衣の女性。
トランシーバーからの音声と、監視カメラの映像を刷り合わせる。耳に響く、低音の宝条の声に、傍らにいたルクレツィアがかすかに微笑み、震えた。

「でも、本当のあの子じゃあない」

『そう、あれはリユニオンによって「現状で最適である」と認識されたジェノバ因子を持つ成れの果てに過ぎない』

ナナの傍らで腕を組み、似合わぬサングラスをかけたルクレツィアが搾り出すようにささやき、遅れてトランシーバーから宝条の声が返る。
当のルクレツィアは、似合わないサングラスに濃い目の化粧。少々露出の高いボディコンシャスなスーツの上に白衣を纏った姿をしており、
いわゆる「変装」をしていた。

「でも小父様、危ないことはしないでね?」

ナナがどこかわざとらしく両手を組み、願うように呟くと、宝条の押し殺したような笑いが帰ってきた。

『大丈夫だ。とりあえずコイツをどうにか…うわっ』

『ナナ、一体どうしたのだ?この緊迫した空気は…』

『レッドよさないか、備品ではなくて実費で購入したのだからな!ああああツメで引っかくな!』

緊迫感をぶち壊すみみっちい会話がトランシーバーから賑やかに漏れ出てくる。
かすかに吐息を漏らす音に、ナナが振り返れば。ヴィンセントが顔を伏せつつ、掌を口元に押し当てて肩を震わせていた。
耳を赤く染めて震えるヴィンセントを靴でつつき、ナナは椅子から飛び降りた。

「じゃ、後は小母様と小父様に任せて私たちは出ましょ?ルートはカーム、ミスリルマインを経由してジュノン」

「了解した。そういえばお父上はどうするんだ?ライゼン大佐には何も知らせてないんだろう?」

「そこんところはヘーキ。小父様のおかげで、アイシクルエリアに長期任務になったから。お出かけも、随分許してくれるようになったしね。
針鼠を拾ってきてからは「上に立つ者の貫禄が着いてきたな!さすが娘!」ってなんか方向違う褒められかたされて、アイツがいれば
ある程度許してくれるの。元ソルジャー様々ってとこだよねー」

「お前にとってはソルジャーもお出かけの手駒、というわけか。末恐ろしいな」

「すてきな褒め言葉どうもありがと☆」

子供らしい笑顔を浮かべたナナが言い放ったのは子供らしくない言葉。「かなわないな」と肩をすくめ、ヴィンセントはルクレツィアと視線を交わす。

「後は任せてちょうだい。あの人と合流したら、ジェノバを連れて行くわ」

「頼む」

ハードボイルドで大人なムードを醸し出す会話を尻目に、ナナはさっさと監視室から立ち去っていく。
未だ無事に動き続けるエレベーターに乗り込み、背後から駆けてくるヴィンセントを乗せ、地下の駐輪場へと向かっていった。

「はやくハニーと合流しないと」

「車でなくて良いのか?」

「車なんて小回りが効かないじゃない、バイクは手足が届かないし。それに 海 渡 れ な い で し ょ ?」

「…納得したよ」

-クェップシ! …クェ?- だれか噂でもしてんのかな。

その頃、ブルル、と頭を振った金色のチョコボは、ウロウロと地下駐車場を右往左往していた。



「……」

ふと、エレベーターの向かいのビルに自分が乗ったエレベーターが映る。その視線を上に辿れば、神羅ビルの最上階も映っていた。

-あそこで、プレジデントが。死ぬ。-
一度も会ったことがない、神羅の頂点。見殺しにするのかと微かにココロのそこで誰かが嘲るが、所詮微かなささやき。伊達に隣の住民が死んでも
三ヶ月も気づかなかったりする現代日本人ではない。そう自嘲すると、ナナはその視線をミッドガルの地上へと降ろす。

「そう思えば、私の人殺し(見殺し)被害者第一号なのかしら」

「ナナ、何か言ったか?」

エレベーターの機械音に消されると思っていた呟きは意外に大きくて、ヴィンセントの耳に微かに届いたようだ。
呼ばれたのかと思ったらしいヴィンセントがナナを見下ろしてくるが、表情を特に変えず、ナナは首を振る。

「ちょっと今後のことを一人言ってただけ」

「そうか」

「そうそう」

チン。と目的階に着いたことをエレベーターが知らせる。扉を開いた先には、退屈過ぎて丸まった金色羽毛玉になったハニーが居た。



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あとがき:
ちょっとシリアス!お久しぶりですMです。
TOA二次創作を最近みています。なんていうかツッコミどころ満載な原作とか開発陣とかおもしろいですよね!(褒め言葉のつもり)




[365] FF7:名無しのNANA-( )<オリキャラ最強話ですね、わかります
Name: M◆e006eb86 ID:79998ff6
Date: 2009/03/10 21:19






利己的なまでに偽善的。
しない善より、する偽善。
人は何でも自分が良ければそれでいい。
私が人に優しくするのも、優しい自分が好きだから。
私が人のために動いたりするのも、そんな自分が好きだから。

人が悲しい顔をしてるのを見るのは、私が嫌な気分になるから。
人が喜んだ顔をしてるのを見るのは、私が良い気分になるから。

だから、気にしなくて良いのよ。だって私は自己中だもの。あなたにかけられる迷惑よりも、あなたの嫌な顔を見てるより、
あなたの笑顔を見てる方が、私の気分が良いんだもの。

だから、私の好きなようにやらせてもらうね!

【…それを人は「思いやり」って言うんだぜ?】









Song dedicated to you
FF7:名無しのNANA- ( <●><●>)<オリキャラ最強話ですね、わかります






「uzeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeee!!」

ゴワン、と巨大な炎が、これまた巨大な蛇にまとわりつく。

「うぜえ、が詠唱かよ…」

「ハハハ流石ボス」

「ヴィンスの旦那、棒読みになってんぞ」

「クエー」

『ピギィイイイイイイイイイイイイイイイイ!!』

喉を鳴らしてのたうち回るミドガルズオルムに、さらに氷の槍が突き刺さっていく。朝焼けと炎に照らされた少女の瞳は、ひどく静かに凪いでいて、炎で
引き攣れた皮を、黒髪の青年が斬りつけ、さらに弱くなった皮を見定めて氷の刃を打ち込んでいった。

ぐらりと巨大な蛇の目玉が揺れたその瞬間、黒いスーツ姿の男の手に収められた銃が、見事にモンスターの眉間を穿ち貫き。最後の力を振り絞って
振り回さんとした太い尾を、黒髪の青年が巨大な剣で叩き斬る。

泥を含んだ水飛沫を上げて倒れ伏すモンスターに、少女はサンダーを唱え、その体を細胞単位で死滅させる。
夜明けになり、西空に残る闇の濃さを増した草原を赤い炎光が照らし、その光景に銃を見事に掌で回転させた黒服の男は嘆息してホルスターに銃を納め、少々長めの黒髪
を持った青年は、蛇の体液をまぶされたバスターソードをぼろ布でぬぐい上げる。

「用心深いことだな」

黒服の男性が、蛇を見つめ続けている少女に声をかける。

「そう?ヴィンス。…んー、まあそうかも。私はもともと臆病者だしね。命のやりとりするなら最後まで、ってね」

「…臆病者だったら、プレートの欄干までいかないんじゃn なんでもないです」

「判ればヨロシイ、ゴンガガ猿」

「ちょ、おま!!猿って!」

少女は「土に還るエコティッシュ」と印刷されたティッシュを取り出し、顔に付いた泥をなで擦る。背後から「猿っていうな!」と叫ばれても気にしない。
見据えた先には、ミスリルマインが雄々しくもどこか寂しげにそそり立っていた。

沼の中にミドガルズオルムの死体を押し込み、順調に三人と一匹は鉱山へと進んでいく。
本来ならばクラウド達を待ち伏せるべく、配置されているはずのタークスも、まだ到着はしていないようだった。




「おおおお、コンドルフォート。俺任務でこっちの近くくるときはまだあんなにデッカくなかったぜ。鳥」

上下の動きが厳しかったミスリルマインをそれなりの苦労で抜け出した先には、平原と道。そして斜め前方向にコンドルフォートが姿を見せた。
巨大な卵と、巨大な鳥が、巨大な岩に乗っているのは、かなりシュールだった。

「卵おっきーねー」

「あれだけでかいと随分大味だろうな」

「え」

「味って」

「…なあ、ヴィンスの旦那って狙ってるのかな」

「いや、あン人のは天然っしょ」

思わず肩を寄せ合って囁きあう二人に、まったく気にもとめないヴィンセントが声を掛ける。

「何をしている、さっさとジュノンまで急ぐぞ」

「天然だなぁ」

「天然だねぇ」

「クエー」

天然、と揶揄された黒服の彼は、その天然さを発揮して、まったく二人と一匹に意識を向けずにジュノンへと視線を飛ばしている。
その姿に肩をすくめ、二人と一匹もジュノンへの道を辿り始めた。


はてさて、なかなかラクな行軍でございました。途中の森でユフィと出会うというハプニング、そしてコンドルフォート付近で私とハニー以外のマテリア全部
カっさらわれていくということもございましたが、本気で追いかけて黄金水ちょちょぎらせたので今後関わってこないとおもいます。ニコッ☆

「静岡ってラクチンだよネー」



精神的に疲れ果てた男二人(一人、兎過敏症を発症)をホテルへとたたき込み、ナナはハニーを連れて消耗品の補充のため、ジュノンの歩道を歩いていた。

「たーんたららったったったったっ! たーんたららったったったった! 
 たららたーんたーたたったっ たーんたーたたったっ たーんたたたーん たたたーん」

「キュールルッ クェック キュキュキュルルー クルルルーキュルルークェークェー」

愛らしい少女のスキャットと、それに続くチョコボの鳴き声。見事な音程を奏でるその鳴き声に、何人もの通行人が振り返る。その中に「ルーファウス社長
歓迎式典」のパレード音楽担当係が居たのは余談であった。

まだクラウドたちは来ない、ルーファウスとかも来ない!これで勝つる!等々気楽ムードで歩いていた二人。しかし、その二人の目をかするように“黒い外套
を着た銀髪の男”という影が現れる。

まるで最初から何も居なかったかのように、路傍の石のような気配で建物の隙間へと消えていったその影。思わず走り、二人がその建物の隙間を
のぞき込んでしまうほどにそれは“例の相手”だった。






銀髪をなびかせ、路地の空気を切り裂いていくその姿。セフィロス。ナナとハニーはその後ろ姿を認めた後、互いに頷き合うと同時に、片方はしゃがみ、片方
はその背中に乗った。道行く人々のキャッという叫び声も気にせず、背にナナを乗せたハニーはその脚力で、建物の窓枠を蹴り上げながら垂直に登っていく。

建物と建物の屋上を飛び交い、その銀色の影を追い続ける二人の目の前に、恐ろしくも醜い行為が繰り広げられようとしていた。




-ずるり-

セフィロスコピーであったものの左頬が、ゼリーのように崩れ落ちた。とろけた皮下脂肪と筋肉、そして歯茎が覗く。だがそれに気づいていないのか、
歩みを止めることはない。
三本ほど細い路地を通り抜けたあたりで、セフィロスコピーの目の前に黒マントが現れた。微かなうめきとともに、薄汚れた指先をセフィロスコピーへと
伸ばす。

「クックックック…」

狂気じみた笑い声を漏らし、セフィロスコピーがその手に触れる。まるでナメクジが這うような動きで、セフィロスコピーの皮下から「なにか」が指先へと移動していき、黒マントと触れ合った指先から「なにか」がズルズルと黒マントへと流れ込んでいく。

「うげあっ! あっ! がぁっ! あっ! あは! はぁぁぁぁーー…!! おぶっ ぐぶっ…! ごっ…」

「クックックックック…クックック… ブグッ グッグッグッグッグ…ゴブッ」

「なにか」がセフィロスコピーから黒マントへ移動していくたびに、低く不快な叫びが黒マントから漏れ、その体が膨れあがっていく。そして、
対照的にセフィロスコピーはその身をどんどん細らせ、頬の崩れが広がっていった。響きの良い声も、喉が熔けているのか嗚咽混じりになっている。

「うわぁ…これはひどい」

【蓮コラが大丈夫な俺には遠目でクリック余裕でした】

「すごいなハニー…。だけど私は耳掻き動画が平気だよ」

【あ、俺逆にそっちダメだわ】

どうしても緊張感というものが完全にしみこまぬ二人、しかしひそひそと会話を交わしつつも、ナナはポケットからメモ帳を取り出し、現在のセフィロスコピーと
黒マントの行動を逐一メモに記していた。

そして、「なにか」が完全に黒マントへと溶けてゆくその最中、ナナの脳裏に声が響く。

【ナナ…!たす け】

「小母様っ!?」

【ばかっ!ナナ!気づかれる!】

脳みそに直接響くような、かすかに残るジェノバの声。酷く怯え、酷く苦しそうにその声はナナへと助けを求めていた。
その声に、ナナが思わず声を上げ、声の大きさにハニーが羽で口を押さえる。

「クックックッグッグッグ…おやおや、ドちらざま、がな?」

二人しかいなかったビルの屋上に、銀髪の頭皮をとろかせ、その美麗な顔立ちを崩した「ナレノハテ」がたたずんでいた。
逞しい胸板も見るも無惨に熔け、肋骨の向こうに臓腑が覗く、中央から左よりのそこには、人とは違う「薄桃紫色」の心臓を納めて。

【たすけて…】



------------------------------------
あとがき:
ものすごい勢いでお久しぶりです。Mです。無職になりましたウフ。
日本のみんな!オラに職を分けてくれ!

あと、トリップ忘れた。あってるといいなぁ




[365] FF7:名無しのNANA-「成れの果て」 ナレノハテ
Name: M◆e006eb86 ID:79998ff6
Date: 2009/03/10 23:19





セフィロスコピーって、元々はニンゲンなんでしょう?
モンスターの一部は、元々ニンゲンなんでしょう?
でもごめんなさいね、私に攻撃するものはぜんぶ。 敵だから。



【それって死ねってことッスよね】









Song dedicated to you
FF7:名無しのNANA- 「成れの果て」 ナレノハテ






「見つかっちゃった☆」

【おま、「奪っちゃった☆」みたいに可愛くいっても相手は手加減してくんねーぞ!?】

「わかってるわよぅ」

「なにを、ばなじているのガ…な?」

あらすじ
セフィロスコピーおっかけてたらアヤシイ行動してたので、眺めてたらジェノバが\(^o^)/タスケテーって言ってるのにビックリして声出したら
見つかっちゃったんだZE

専門の医者が、目の前のセフィロスを見たら一言で「思考能力欠如」と口走りそうな、揺れるまなざし。熔けた体、なまじ全てが良かった美丈夫の
成れの果ては何よりも壮絶な不快感をかき立てる。

ジェノバ細胞とライフストリームのなせる技か、身につけた装備品も「コピー」だったらしく、刃こぼれし始めた正宗を、セフィロスコピーがゆっくりと持ち上げた。

【ナナ!逃げろ!】

「ムリ!」

振り上げられた正宗が、振り下ろされる。

端から見ていれば、どうしてあんなゆっくりな動きなのだろうか、とも思えるその速度。だが決してそれは遅いワケではない。遅く、見えているだけの、
恐ろしい斬戟。

タダの子供、タダの人ならば、脳漿を垂らして縦に二つ別れにされそうなその一撃。しかしナナはタダの子供ではない。
すい、と体を捻り、バレエの決めのように回転して見せた。

「逃げれはしないけど、避けるわよ」

「ほう…」

「…私の知ってる名言に『当たらなければどうということはない』っていう言葉があるの。戦闘って、そういうこと、よね?」

セフィロス、さん?

呼びかけと同時に、ナナがその小さな足で、屋上のコンクリにクラックをいれて沈み込んだ正宗コピーを片足で踏み付けた。その行動に眉をぴくりと(そして
その動きのおかげで、また顔から肉が熔け落ちた)跳ね上げたセフィロスは、再び片手で正宗を持ち上げる。

その勢いを利用し、ナナは足のバネを思いっきり使い、路地の隙間へと体を踊らせた。ぱっと見ても落下すれば即死レベルの高さを持ったビル、その行動に
セフィロスコピーは感心したような声を上げる。

「クエッ!!」

ナナの後を追い、ハニーも路地へと飛び降りる。むしろ、壁に取り付けてあるサッシをしっかりと蹄で掴み、地面へと向かって壁を走り降りていく。
柔らかい音を立て、その背中にナナを受け止めると、ハニーはそっとナナを下ろした。

「ありがと、ハニー」

【…ヤんだろ?】

「もち☆ だって…」

二人を追い、ふわりと地表へと降り立つセフィロスコピーの成れの果て。すでに顔の大部分はそげ落ち、瞳だけがらんらんと輝いている。
ナナは首の後ろに右手を差し込み、さらりと髪を書き上げ、L字型にした親指と人差し指で、こめかみから後頭部へと乱れた髪をなでつけた。
左手でスカートの後ろをはたき、探った。

「私、あれに勝てそうだもの」

限りなく不敵な笑顔が、ナナの表情を彩った。

「グォア オラウラ グブ デォデォ オディオギ が グ ひヅおおあ デ」(おや、 おやおや  少々 お仕置きが 必要だね)

「なんて言ってるのか分かんないわよ。ミジンコからやり直してちょうだい?私人外の言葉は基本会得してませんの。ごめんあそばせ」

言うが早いか、軽やかなステップでナナはセフィロスコピーの成れの果て…いや、すでにセフィロスの面影をほとんど無くした「ナレノハテ」への
懐へと潜り込む。

「ッは!」

ステップと、回転による遠心力。いつの間にかナナの左手に握られていたブラックジャックが、ナレノハテの横っ面をしたたかに打ち付けた。

「グガッ!?」

「ちぇいっ!」

本来の利き手、右手へとブラックジャックを持ち替え、ナウシカの虫笛の如く前回転させ、ぶれる顎へと再びブラックジャックをたたき込む。
瞳が揺れ、ナレノハテはぴたりと攻撃された姿勢のまま動きを止めた。ぐるりと目玉がナナをとらえる。ガクガクとその体は震え、醜い声が熔け落ち始めた
喉を揺らした。

「ガァッ! …グ、ガ…  が ァア あああああああああああああっ!」

「ハイティーンにも満たない子供の攻撃に逆上するなんて、コピーであっても、英雄のなさることじゃなくてよ!」

細い路地の中、器用に下段から正宗を振り上げるナレノハテ。

ジャンプしても、避けきれない。避けたとしても、すぐに返されて打ち据えられるだろう。

その攻撃にも、ナナは微笑みを浮かべて見せた。

「ジャンプがダメなら、壁を登ればいいじゃない」

ふわり。とスカートを翻すナナ。その太ももには、可愛らしくクリームピンクに塗られた、ミニリボルバーが二丁収まっていた。それを即座に両手に納め、
スカートの中にブラックジャックをしまい込む。そして、まるでおもちゃのような音を立てて二発リボルバーを打ち込む。
ナレノハテの右横に着弾した二発の弾丸。その弾道にナレノハテは筋肉で笑って見せた。

「ドゴぼ ぶっででぃるど がな゛?」(どこを撃っているのかな?)

「貴方じゃないことは確か」

振り上げられた初戟を避け、その振り下ろしに入る直前、ナナはナレノハテの右横へと移動し、ナレノハテが振り上げた腕よりも奥へと“壁を登っていった”。

「がっ!?」(なっ!?)

ナレノハテが正宗を振り上げきったその手元よりも奥。降り下げへと向かう力によって手首は返せず、彼女へと向けることが出来ない。
彼女が踏みしめたモノはもちろん壁ではない。壁から生えた、2カ所の「氷の柱」だった。

まず一段目へと飛び乗り、二段目へと飛び乗る。壁に取り付けられた「単なる氷の階段」がそこにはあった。

「さようなら、ナレノハテ」

瞼すら熔け落とした目玉が見上げたのは、二つの銃口から放たれる水の弾。ファンシーに見えるその愛らしい弾は、驚異的な衝撃力で
ナレノハテを撃ち据える。

「クエエエエッ!!」

今まで空気と化していたハニーが猛然と突進し、ナレノハテの背中を蹴り上げ、その臓物を宙へと跳ね上げた。

「はらわたを、ブチ撒けろッ!」

少女の声が、愉快そうに路地に響く。







すでにぶちまけられているよ。

ナレノハテは懐かしい声を聞いた気がした。

ああ、このこえは。

「俺の声じゃないか」

かすむ視界、少女を通り越して、路地の隙間から見える夕焼け色の空を見る。

「かえりたいな」

ミッドガルにいる両親は健康に過ごしてるだろうか?無理を言って神羅のソルジャーになったけれど、心配していなければいい。
そうだ、ミッションが終わったら、彼女にプロポーズするんだった、まっていてくれているかな   それと     あれも    そして         。





宙へとぶちまけられた臓物のうち、目立って「ニンゲンの色」ではない心臓を、ナナは抵抗もなく受け止めた。しっかりと他の内臓は避けている。

「…小母様の記憶が聞こえる…。これ、小母様のかけらだ…。じゃあ、さっき「移っていった」ものって…」

すでに、どこぞへと消えてしまった黒マントを視線で探すが、二人の視界にはすでに居ない。たぶんコスタへと移動しはじめているのだろう。
新しい「セフィロスコピー」として。

【十中八九、セフィロスコピーであるためのコアの部分。そしてジェノバさん、だろうな…】

「そうだね…でも、心臓なんてどうやって持ち歩けば…おおっ?」

掌でもてあました心臓を転がすと、心臓はどんどん細く捻れていき、細い茎と儚い花弁をいくつも湛え、フンワリと膨らんだ、薄紫色の「一本の花」
へと変わっていった。

「綺麗…でも、原作でもジェノバのかけらはそのまま「腕」だかだったのに…何で花?」

【…アレだろ、お前にもらったのが随分嬉しかったんだろうよ】

「…………」

欠けたシリンダーに生けたコスモスの花。それを思い出し、ナナは優しく花を握る。
ふと、視線を下ろすと、人であったとは思えないほどに崩れた「なにか」が路地の地面をぬらしている。余りにもヒトとはかけ離れた対象だった故か、
ナナには「かつてヒトであったもの」を殺した罪悪感が芽生えなかった。

「きもちわる…小母様?」

手の中の花が、一枚だけ「ナレノハテ」へとこぼれ落ちた。花弁が触れた瞬間、薄桃紫色の波紋が広がり、ナレノハテの体はゼリーが熔けるように
とろとろとその体を地面へと溶かしていった。












「…ごめん」

全てが消え去って初めて、ナナは静かに「かつてひとであったもの」へと言葉をこぼした。




2時間後、事後報告をしたらザックスとヴィンセント。あとこっちに向かってる小父様と小母様にゲッチョゲチョに叱られた。

「「「「なんで後先考えずに行動するの!!!!」」」」


サーセン。
------------------------------------
あとがき:
感想見てたらモチベあがったw


というかガンガン書き進めちゃったので、日本語おかしいところはカンベンな!




[365] FF7:名無しのNANA- 南国少女p…ナナちゃん
Name: M◆e006eb86 ID:79998ff6
Date: 2009/04/24 19:30






「んばば!なんて言いません!」


【タイトル全否定!?】

『んばばって何語なの?』









Song dedicated to you
FF7:名無しのNANA- 南国少女p…ナナちゃん






ルーファウス歓迎式典が始まる前に「言われなくてもスタコラさっさだぜい」したかったナナとハニーは、ゲッチョゲチョに大人
組に叱られた後一休みだけしてジュノンを後にした。
ファンシーショップで「こどものおこづかい」で買える程度のメッセージカードで、しっかりとルーファウスにメッセージをしたためて。
もちろん護衛二人はコスタ・デル・ソル行きの船へおいてきぼり。ナナは優雅にハニーとの水上ドライブを楽しんでいた。

「凪いでるから、中々の眺めだねー。あ。サメ」

【いやあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!】

楽しんでいたのはナナだけだったが。









【サメを何度けり殺した事か…】

「よかったね、ハニー。今度から「てゐ」って呼んであげよう」

【毛皮むしられること前提じゃねーか!つーか足の裏あちい】

白い砂混じりの街道を歩くチョコボ、その背に乗るナナ。熱い太陽を受けて、軽く目玉焼きつくれるかもと思えそうな砂を踏みし
めたハニーがプルプルと足を振る。

「爪以外を保護できるような靴でも作ってもらおうか、幸いにも逗留先はコスタだし。趣味人御用達の職人ならいるっしょ」

【是非是非頼むわ。いくら皮が丈夫でも、ちょっと腫れてきそう】

「それならダッシュしちゃって、周りに注目されてもいいから」

言外に、「注目されて、身動きが取りずらくなるよりも、ハニーのほうが大事」と伝え、それにハニーも目を細めて頷く。

【よっしゃ、まかせとき。フルスロットルでいってやんぜ!】「クエエエエエエエエエエーッ!!」

「お、おお、おおお! おーっ!!」

高らかにハニーが鳴き声を上げ、グングンとスピードを上げていく。その加速に、ナナの声がドップラー効果を起こして流れていった。





「と、いうわけで。随分前に若社長から言われた別荘に来ました」

やる夫的な「キリッとした顔」で「こちら」を見るナナ、ふっかふかのソファーにその体を沈ませている。
そのすぐ側には、丈夫な革張りで出来ている丸くて大きなクッションが。その上にハニーがモコモコと鎮座していた。

【俺も靴を作ってもらってます。二日で出来るらしいから、うっかりするとメインメンバーと鉢合わせしそうです】

同じく「キリッ」と「こちら」を見るハニー。こっちみんな。

「でもまあ、途中で遠回りして追い越せばいいし。しばらくゆっくりしましょう」

ね、小母様。とナナが笑いかけた先には、枯れもしない薄紫色の一輪の花が試験管のなかに納められ、テーブルに立っていた。

『そうね、身動きできないのはもうなれてるけれど…南国ってこんなに彩りが豊かなところなのね』

ゆらり、と試験管の中の花が、開け放たれた窓へと向く。そこからは白い砂浜と青い海、別荘の周りに植えられた、彩り豊かな花
たちが競って咲き誇っていた。

試験管の縁には、パステルバイオレットのボールペンで書かれたタグ。

“JENOVA HEART”

『ちなみにこの花はスカビオサ、和名では松虫草と呼ばれているの。花言葉は…私は全てを失った』

「でも、私達が居ますし。全て失ったのだから…」

【これから全部ゲッツってことですね】

『わかります。うふふ』

【ウワァン最後のセリフ取られた!というかジェノバさんが開放的!】

「『南国だからじゃない?(かしら?)』」

【ワー、ナンゴクッテスゴーイ】

その後、別荘を管理してる(【俺の悲痛な棒読みスルーされた!?】)会社に連絡して、日雇いでメイドさんを呼びました。まる。




ヘリの強風にあおられ、舞い上がる砂を思わず腕でカバーする。そこから降り立ったのは金髪を揺らした女性と、黒髪を後ろで縛った…。

「セフィロス…!?…いや、違う…だが…」

似ている…。少し老いを感じさせた男性が、金髪の女性に手を取られ、そのまま立ち去っていく。
コスタの街並みに消えていく二人をちらちらと見ながら、俺たちも砂混じりの甲板からコスタへと入った。

途中、ミスリルマイン付近の森で出会った、新しい仲間「ユフィ」。彼女が生まれたての子鹿のような足取りでフラついていたのと、長時間
の緊張におかれていたことを考えて、一晩コスタの宿屋に世話になることとなった。

「むぅ、肉球がつらいな」

「レッド、大丈夫か?」

神羅ビルにて、しゃべる犬のような種族。レッドXIIIも仲間に入った。特に実験動物としての虐待を受けていたわけでは無いようだが、
本人曰く「知人が居なくなったから、居る必要もなくなった、途中まで一緒にいこう」ということだった。

「クラウド、バレットもう行っちゃったよ?エアリスたちも疲れてるみたいだし、いこ?」

「ああ」

クラウドは、照りつける太陽を掌で遮り、ここまでのことを思い返しながら、仲間達の後に続き、宿屋へと向っていった。




「きゃっ!」

甲高いティファの悲鳴と、固くて重いモノが床に落ち、割れる音。それにクラウド達が振り返ると、ティファが愛想笑いを浮かべて、両手に
二個に割れたレンガ状の砥石を持っていた。

「あはは…ごめんなさい。キャンプナイフの手入れをしようとおもったら落としちゃって…あ、新しいの買ってくるわね!」

慌てて立ち上がり、個人管理をしている財布を鞄の中からさぐりだし、ティファはその勢いのまま部屋を出て行こうとする。しかし、目を輝か
せたエアリスがクラウドの背を強引に叩き、クラウドはティファのすぐ側へと押し出されてしまった。

「あっ、え?クラウド?」

「…エアリス…?」

「うふふ~」

ビッと親指を立てて見せたイイエガオのエアリスに、クラウドはため息を吐いてティファに向き直り、財布をもった手を取る。

「コスタは開放的になりすぎたヤツラが多い、付き合う」

「ありがとう、クラウド」

「いってらっしゃぁぁ~い♪」

「あ、クラウド…なんか酸っぱくてさっぱりするもの買ってきて…ウプ」

「俺ゃ別になんもなくていいぜー」

「やけど用の傷薬」

イイエガオで見送るエアリスと、未だベッドに沈み込むユフィ、それに見かねて頭に氷嚢を乗せてあげているバレットの声が続く。レッドは
どこか不機嫌そうに自分の肉球を舐めている。あきれたようにすこし肩をすくめたクラウドは、何故か俯いているティファの肩を叩いて部屋
の外へと促した。

「(クラウドとちょこっとデート…!?)」

「まったく…人を小間使いみたいに…、ティファ?どうかしたのか」

「ふぁえあ!?ななな なんでもないわよ!?」

「そ、そうか…」









「ふむ…コレがジェノバかね?」

「ユーj…じゃない。あなた?「これ」だなんて物扱いはジェノバさんに失礼でしょう」

『あら、いいのよ。見た目はただの花だもの』

試験管の中の儚げな花は、さらっと軽く言葉を返す。それに二人は目を瞬かせ、感嘆のため息を漏らした。

「セフィロス・コピーが外を出歩いた影響なのか…随分と人間らしい受け答えになったな、ジェノバ」

「そうね、ビルから出る前はまだカタコトがすこし混じっていたのに…」

『うふふ…そういえば、ルクレツィア。貴方髪の毛の色金色だったかしら?』

「ああ、これ?変装用のかつらよ、かつら」

すこし照れ混じりの笑い声を上げたジェノバ(花)に、宝条とルクレツィアが続けて笑う。そして、いつの間にか合流していたヴィンセントとザックスが
買い物袋を携えて部屋へと入ってきた。

「よっと…。くっはー!流石は天下のコスタ・デル・ソル!もー食いモンから雑貨までたけーったらありゃしねえ」

「同感だ。まったく…ボスが家に関係なく資産持ちなのが幸いだな」

あきれた顔をしながら、テーブルの上に買い物袋を乗せ、どっかとソファーに沈み込む二人に、ルクレツィアが主婦の興味なのか身を乗り出して
買い物袋を覗こうとする。ザックスは、それに気づいて体を袋に寄せ、「はいよ」とオレンジを一個ルクレツィアの手に乗せた。

「へぇ…なかなか良い形…って50!?ミッドガルでもそんなにしないわよぉ?」

「ッスよね!ッスよね!俺、ヘタクソだけどミッドガルでも自炊ちょこっとしててー、それで少しは物の値段わかるんすけど…これたっかいっすよね!」

主婦と貧乏性の会話が弾み、置いてきぼりにされた男二人がコーヒーをすすり、久しぶりの会話を交わしていた。

「そういえば、お前の銃なんだが」

「ん?」

「麻酔弾が欲しいといっとったろう、あれは注射器型と、対象に当たって粉末、もしくはガスが撒かれる物、どちらにする?」

「コストと維持の手間が決めてだな。…どうだ?」

さらに残りの二人に置いてきぼりにされたナナとハニーは立ち上がり、「お散歩いこうか」などと話している。テーブルの上で所在
なさげにふわふわと揺れていたジェノバを掴み上げ、散歩に誘う。

「小母様もいく?」

『あら、いいの?是非お願い』

「ああ、ナナ」

ザックスと共に、「昨今のレタス値上がりについて」白熱したグチを言い合っていたルクレツィアが、ポケットから何かを取り出し
ながら、立ち上がった。

「これにジェノバさんをつけてあげて」

綺麗な薄緑色をしたビーズをチューブの中に沢山埋め込んだ輪が、ナナの手の上に乗せられる。「これは?」という視線で
見上げるナナに、ルクレツィアが胸を張って宝条を指さす。

「ユージと一緒に、ヘリに乗ってる間に作ったの。名付けて「お出かけジェノバさん」よ!」

「……………」

黙りこくったナナに、宝条の追い打ちがかかった。

「…名付けたのはルクレツィアだ」

「へぇー……」

「…何か…?…で、このビーズも穴が開いてるから、この隙間にこうやって…」

試験管から、スカビオサ・ジェノバを取り出し、ルクレツィアがそっとチューブの中に茎を押し込む。ぱっと見「花モチーフ付きの髪飾り」となった。
そして、その輪をナナのボンボン飾りの奥へとくくりつける。

「どう?ボンボン飾りで抜けることはないし…手に試験管を持って歩くより安全でしょう?その内部のビーズは超純粋なマテリアよ。魔晄のエネルギー
をものすごく凝縮してみたの。どうかしら?」

『大丈夫よ。こんなに高濃度のマテリアなら、数週間はイケるかも』

ナナも首を勢いよく振って見るも、しっかりとゴムチューブと魔晄ビーズで固定されたスカビオサ・ジェノバは抜けることなく、ナナの髪飾りの一部として
鎮座ましましていた。

「うん、私も大丈夫だよ、小母様。じゃあいってきまーす!」

『いってきまぁす』

「クエー」

「はい、いってらっしゃい」

別荘の扉から、ナナとハニーが飛び出ていくのを、ルクレツィアは優しい微笑みを浮かべながら、手を振って見送った。照り返しから生まれた陽炎に
紛れていくその影が、ふっと銀色の子供の幻覚へと変わる。

「…私、こうやってあの子を見送ることを、捨てて逃げていたのね」

脳裏に残るナナの笑顔が、銀色の子供へとすり替わる。「いってきます」と「ただいま」を繰り返し、自分にしがみついてくる小さな子供が、幾度も幾度も
優しくルクレツィアを苛んだ。


-母さん、父さんをしばくの、やめてやったらどうだ?

-あらいいのよ、セフィロス。この宿六(やどろく)ったら、大切な結婚記念日忘れて研究所にこもってたんだから。

-…がんばれ、父さん。

-…少しはこちらの味方をせんか、息子よ。

ソルジャー服ではない、大人しい私服に身を包み、ボコボコの父親を苦笑いで見下ろす息子の夢が、見えた気がした。

「謝って許されることじゃないけれど…私は…」

「ルクレツィア?どうした」

開きっぱなしのドアを、ずっと見つめていたルクレツィアの後ろに、いつの間にか宝条が訝しげに立っていた。
振り向く前に、微かに滲んでいた涙を指でぬぐい、笑顔を浮かべて振り返る。

「ちょっとね、ハイスクール時代を思い出してただけよ」








『すごいわナナ、コスタ・デル・ソルの海はこんなに青いのね!』

「きれーだねぇ、ぜーんぶ終わったら、みんなで泳ぎにこようね」

「クエー」

キョロキョロと辺りを見回しながら歩く幼女に、幾人かの大人の優しい視線が集中する。たまに一緒のチョコボが甘えるようにすりつくのも
大人達の心をほっこり癒す光景になっているようだ。
そして、注意散漫になったナナが角にさしかかった時。角の向こうから現れた人影に、ナナの顔が埋まる。

「にゃぶっ?」

「ああ、すまない」

「ううん、わたしのほうこそごめんなさい」

ナナは慌てて後ずさり、笑顔を浮かべて「相手」を見上げると。つんつん頭の金髪に、冷たい青い目。クラウドだった。
思わず目を丸くし、びっくりした顔を浮かべてしまうが、すぐに表情を切り替えて頭を下げる。

「(やべぇ、すぐ離脱せんとあかんな)」





-このこは、おれの、みかた。

-このこは、わたしの、みかた。

クラウドの中で、ジェノバのかけらがうごめく。

-このこの手は、やさしく俺を受け止めてくれる。

-このこの手は、やさしく私を受け止めてくれた。

-ひとでない私を。

-…ではない俺を…。 何ではない?俺は、何ではない?

「クラウド?ねえクラウド、どうしたの?ねえってば」

「あの、おねえさんごめんなさい、わたしいきますね。ぶつかっちゃってごめんなさい!」

「あっ、待って!…行っちゃった…、ねえ、クラウド、本当にどうしちゃったの?」

「………え?」

暖かい暗闇の中で、女と向かい合ってつぶやいていたような気がする。ん?暗闇?女?いや、今俺は何を見ていた?何も見ていない。
そういえば、ぶつかってきた女の子がいない。…あの ヤ さ し イ コ が イ ナ い。誰が?誰が優しい?いや、そんなことよりも買い物だ。

「…すまない、ティファ。ぼうっとしてたみたいだ…早く買い物を済ませて宿で休もう」

「そうね、こんなに日が照ってるものね。そうしましょ」

「そうだな。…あの子に、もう一度会えるといいな」

「クラウド、何か言った?」

「ん?そうだな、といったが?」

「そう?」





「っっやっっべ!超接触しちゃったよー!顔覚えられてたらどうしよう!!」

ばっちり印象に残っていたこともつゆ知らず、ナナは両手でムンク状態を作り、路地の隅っこで悶えていた。

『ナナ』

「なぁに小母様」

『あの子ね、クラウドって』

「そうだよ、クラウド・ストライフ。私の記憶にあった「カギの子」だよ」

『……ジェノバ因子が、私に感応したみたいなの、強制的に貴方に対する好意がすり込まれちゃったみたい…。
自我意識を持つ、ジェノバ細胞の塊である私が側に居たから、あの…勝手にシンクロしちゃって…ごめんね、ばっちり
好印象のお嬢さんだったみたい…』




「ちょ」

「クエ」【mjsk】
------------------------------------
あとがき:
クラウドの精神に寄生するトリップ女主人公も美味しいなって思えてきた。
だけど貴腐人のMさんはセフィクラ派なんだ。
だけどMさんにとっては、全員受けにみえるようになってきたよ。フジョシをこじらせすぎたかしらん。




[365] FF7:名無しのNANA- ゴールドソーサーの大株主
Name: M◆e006eb86 ID:79998ff6
Date: 2009/05/07 09:38






「ディオ園長はマジで男前やで」


【そんな、嫌悪の表情で言われても】

『ガチムチってああいうのを言うのね』

【ジェノバさんに変な言葉教えたの誰―!?】









Song dedicated to you
FF7:名無しのNANA- ゴールドソーサーの大株主






「やあやあ、リトル・レディ!ようこそゴールドソーサーへ!」

「おひさしぶり、ディオ園長。おかわりなさそうね」

ゴールドソーサー筆頭株主 ナナ・ライゼン。幼いながらも株、チョコボ主として成功した少女である。幾度か神羅ニュースにも出たことがあるほどの
辣腕少女だ。

というのが、経済的に知られているナナの現状。ディオはその裏表なさそうで実はバリバリという心持ちでナナを出迎えていた。

「リトル・レディ。今日はどういった用向きだい?普通に遊びに来たのなら、直接私の所に連絡をよこさないだろう?」

革張りのソファに身を沈め、ディオがワイングラスを傾ける。ちなみにナナに出されているのはアイスティー。ナナはにっこりと微笑むと、手元に置いた
ピンク色のエナメルポーチから、ベルベットの宝石ケースを取り出し、それを開いて頷いた。

「以前頂いたアレ。ファイナルアタック、子供が出来たから持ってきましたの。どうぞお持ちになっていって」

以前は、無骨に手渡されたマテリア。今は銀の蔓草装飾を施され、丁寧に宝石ケースに収められた物が、ガラステーブルにのせられた。

「…い、いいのかい?リトル・レディ…これは私が言うのもなんだが、とても貴重な…」

「お気になさらず。それに、園長とはこれからも懇意にしていきたいですもの」

にっこり。

まさに裏がありそうな笑顔で、ナナはディオにほほえみかける。ひくっとディオの顔が引きつるが、ナナはお構いなしに、紅茶をすする。

「リトル・レディにはかなわないね…」



その頃、大人組はルクレツィア・ザックスの「主婦主夫コンビ」を筆頭に、スピードコースターを乗り倒していた。

「メガネ、メガネが飛ぶッ…!」

「これも…私の罪ッ…!というか」

「「何故私達も一緒に乗らなくてはいけないのだァァァっ!!」」

「右、右よザックス君!」

「うおおおおお高得点イエァアアアアアアアアアア!!!」

そして同時刻、星を救うメインキャラたちは、コレルの鉄道をてくてくと進んでいた。

「そういえば、ご存じかしら。ディオ園長は?」

「なにをかね?」

特に株やゴールドソーサー運営に関わらぬ、日々の会話を楽しみはじめていたディオに、ナナの声が被さる。
訝しげに、ティーカップをティーソーサーに戻し、そして指をくいくいと曲げて控えていた部下に紅茶を注がせ、ミルクを混ぜながら聞き返した。

「キーストーンという、石があるそうですわ。伝説が附随してるそうです」

「ほう!どのような?」

「古代種の神殿、といわれるものの扉を開くカギとなるものだそうですわ。わたくし、あいにくと石は半輝石からしか興味ありませんから。もしかしたら園長は趣味人で
 いらっしゃるから、こういうお話は好きかと思いましたの」

子供のように、目を輝かせて興味を示す園長に、ナナは心のそこからの「これだから趣味に走った人は」といった苦笑いを浮かべて、話を続ける。

「わたくしも、噂でしか聞いたことはございませんの。でもたしか…この辺りに持ってる人がいるのかもしれませんわね。この辺り、神羅の手が伸びてないでしょう?」

言外に、神羅が探しているということをダダ漏れに滲ませ、からからと紅茶をスプーンでかき回す。

「ふぅむ…いい話を聞いたな。探してみるか」

「ふふ、頑張ってくださいね。そうね、この話のお返しに…」

おかえし、という言葉にぴくりと震えるディオに、ナナは朗らかに笑った。

「この紅茶のお茶葉、下さいな」




-おまけ☆-

「素晴らしい…」

「君となら僕は何処へでも行けるよ」

「その瞳、そしてその体…何もかもが僕を魅了する…」

「おいで、僕のカワイイ小鳥ちゃん。僕と一緒に高みへと登ろうじゃないか」

「ク」

「く?」

「クエエエエエエエエエエエエエエエエッ!!」【寄るな変態~~~~~~!!】

「おぶっ!?」

トウホウフハイジョッキー、ジョニーに、ハニー熱烈求愛を受けたでござるの巻。
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あとがき:
次はアリエナスな展開の中でも一番アリエナスな感じの、「ザックス里帰り」の一本です。ジャンケンpン!ウッフフフフフ!




[365] FF7:名無しのNANA-ゴンガガ猿の里帰り
Name: M◆e006eb86 ID:79998ff6
Date: 2009/05/08 16:51






意気消沈したバレットを乗せ、クラウド達はディオ園長からもらい受けたバギーを使って、ゴールドソーサーからさらに南下していく。
途中、分かれ道に突き立てられた「←ゴンガガ村 Inn&Shop」と書かれた看板を発見し、一行は補給もかねてゴンガガ村へと向った。
そこで、一行は

「あらあら、坊やもソルジャーかい?」

「じゃあ、ウチの息子をしらんかね、ザックスって言うんじゃがのう」

エアリスとティファの動きがぴたりと止まり、その顔色を真っ白に染め、ケットシーは何かを考えるようにしっぽをゆらめかせた。
クラウドは少し思案し、脳の中を探るが、その名前にひっかかりをおぼえるものの、その名をもつ人物の顔が思い浮かぶことはなく、首を横に振る。

そんな一行に、二人の老人は頷き、何通もの口が開いた封筒と、その横に置かれた写真立てを眺めて朗らかに笑って見せた。

「きっと、部署が違うからでしょうねぇ」

「まあいいじゃろ、あのドラ息子も四日前に一度帰ってきたしのう」

「上司の人にせっつかれて、最近はよく手紙も出すようになりましたしねぇ」

「「え?」」

エアリスとティファが、どこか抜けた声を上げた。











Song dedicated to you
FF7:名無しのNANA-ゴンガガ猿の里帰り






「お袋、親父ただいぶぁっ!?」

「この親不孝もんがぁぁ!!」

Fantastic!ザックスの父親のリミットブレイク「カプ○ンキャラ並のアッパーカット」が綺麗にザックスの顎に決まった。

「あらあら、あなたったら」

「ザック、なさけなくてよ」

母親のノンビリした声と、上司である幼女の冷ややかな声が、タッチミーの干物のように大の字に転がったザックスへと投げかけられる。

「こ、この親不孝、もんが…いくら親に心配を掛けたと…」

男泣きをし始めた親に、目を回していたザックスが慌てて起き上がり、駆け寄ってその背中を撫でる。「悪い、悪かったよ」と殊勝に体を丸めて謝るその姿に、ナナは
どこかうらやましそうに眺めていた。

「私も、本当のお父さんお母さんに会いたいな…」

そうつぶやくと、ナナは開きっぱなしのドアから外に出て行った。





ぼうっと森を見て、たまにこちらに近寄ってくるタッチミーに、お菓子の欠片を上げたりしながら、ナナはザックスの家の側で時間をつぶしていた。

「ケロロ」

「もっと?しょうがないな…」

ありがとう、と言わんばかりに目を細め、やたらひとなつこいタッチミーがナナの手から直接グミを受け取り、ぱくりとひとのみにする。

「ケロ」

ぽっこりと出た腹を撫で回し、満足そうに座り込んだ人臭いタッチミーの姿に、ナナの顔に笑顔が浮かぶ。
その背後に迫る影。素早くナナの脇に両手を回すと、ひょいっと持ち上げた。

「ふわあ!?」

「ケロケロッ」

持ち上げられたナナの靴に、タッチミーがしがみつき、そのまま一緒に連れ去られていく。
すぐに下ろされたのは、ナナの側にあったザックスの家。ナナを持ち上げていたのはもちろんザックスだった。

「で、こいつが上司かつ護衛対象のナナ・ライゼン。ちっこいくせに俺よりも口が達者で頭が回るんだぜ」

「ザック!んもう…。あらためて、ごしょうかいにあずかります。ナナ・ライゼンともうします。ザックスさんにはよくおせわになっておりますわ」

スカートの端をはたき、整えると足をそろえ、丁寧に頭を下げる。その姿に、ザックスの両親が感心したようにため息を吐く。

「これは、しつけの良いお嬢さんだ」

「うちの小猿とは大違いね、うちの子が小さかった頃なんて、今よりも大騒ぎだったもの」

「ふぅー」とため息を深く吐きながら、二人のまなざしがザックスへと突き刺さる。その視線にぶーたれながら、ザックスは「どうせしつけがしみこまねえ猿ですよ」と
悪態を吐いた。

そこにナナのフォローが入る。

「でも、あかるくて、いつもたびのあいだにはげまされていますわ。そういうところは、とてもたすかっています」

「…………おぅ」

小さな肩を下ろし、微笑むナナに、思わず照れくささからの反論も出来ず、ザックスは後ろ頭をぼりぼりとかきむしった。
その姿に、両手を腰に手を当て、ナナがザックスを見上げる。

「あら、ほんとうにそう思ってるのよ?」

ペロッと舌を出し、靴にタッチミーをひっつかせたまま、ナナは自らも照れくささを感じ、顔を少し上気させながら家の外へと出て行ってしまった。
また、どこか居心地悪そうにするザックスに、両親の声がかかる。

「しっかりした娘さんだねぇ、まだ五歳くらいだろう?」

「もうちょっと大きかったら、結婚を勧めたいくらいだねぇ」

「おいおいおいおい…」

こいつら、あいつが俺の上司だっての忘れてねぇか…?と思いつつ、パンパンと手を叩いてザックスは両親の意識を自分へと向けさせた。

「んで、あいつの行き先の途中でこっちに寄っただけで、また行かなくちゃなんねーんだ。悪ィ」

「なんじゃ…また寂しくなるのぅ」

「だから悪いって、仕事ぜーんぶ終わったらさ、長期休みくれるって言ってるし…そんときまた来るよ。むしろ、俺が呼んでもいいしさ」

「そうか、じゃあまた連絡よこしなさいよ、あんたはただでさえ筆無精なんだから…」

その言葉に安心したのか、母親の表情から不安の色が消え、すぐさま母親らしいお仕置きタイムへと移行する。そのまなざしが指す物は、自分たちと
目の前の息子が写った写真。そして、その横に置かれた数通の手紙。

「“上司に言われて…”って書いてあったわよね、まったく。あのこに言われるまでほとんど手紙を出さないなんてどういうつもりなの!?」

「えー、いきなり説教かよぉ」






「ねえ、タッチミー」

「ケロ?」

「本当はね、こんなコト、あるはず無かったの」

「ケロ?」

「本当は、あの丘であの人は死んで、ここで主人公達が初めてあの人の名前を聞くの」

「ケロ…」

振り返り、窓から騒がしい叫び声が聞こえる民家をまぶしそうに眺め、足下のタッチミーを見下ろし、しゃがみ込んだ。

「でも、ああいうのみると…“変えて”よかったなって思うよ」

「ケロッ!」

『ナナ…』

ずっと黙っていたスカビオサ・ジェノバがいたわるように囁く。本来なら、ジェノバ因子が無い、もしくはジェノバが聞かそうとしなければ聞こえないハズの声。けれど、
足下のタッチミーがきょろきょろと辺りを見回す。

「大丈夫、小母様。…このタッチミー、小母様の声が聞こえるみたいですね」

ナナはタッチミーを掌の上に乗せ、左の髪飾りへとタッチミーを近づける。

『ナナ、怖がっちゃうでしょう?ダメよ』

「ケロロ」

しかし、タッチミーは恐れも抱かず、不思議そうにスカビオサ・ジェノバの花弁をつついた。

『あ…』

「怖がらないみたいですね。らんぼうじゃない人が判るんですよ、きっと」

「ケロッ」

“花が喋っている”ことを確認したタッチミーは、ナナの掌からひらりと飛び降り、興味なさげに森の中へと潜っていってしまう。

「あら、仲良くなれたとおもったんだけどねぇ」

『残念だこと』

「まあ、お友達はハニーだけでいいですよ」

苦笑いを浮かべ、肩をすくめて森を眺めるナナの後ろに、金色の羽毛が近づく。

「クェ?」【俺がなんだって?】

「なんでもないよ、ハニー」

「ボス、補給が終わったぞ」

「ありがとうヴィンス、今日はこちらでお世話になろ?」

宿屋もあることだし、と笑い、頷くヴィンセントを連れて歩き出す。ルクレツィアと宝条の二人は、村から見える魔晄炉を眺めながら、なにやら議論中だった。

「ふたりともー!きょうはもうここでやすもー!!」

ナナの声が、静かな村の中に響き渡った。
------------------------------------
あとがき:
アリエナス筆頭 ザックスの里帰り。…あれ、ザックスの親ってあれでいいんだよね?祖母だっけ?祖父だっけ?まあいいや!(ダメっこ
マテリアは、ヴィンセントとザックスに装備させて「子供出来てくるまで帰ってクンナ」でアイシクルエリア行きチケット握らせてるよ!鬼だね!




[365] FF7:名無しのNANA-PTメンバーは三人まで?何言ってるんすかwフルボッコっすよ?wwww
Name: M◆11994b80 ID:b88916c6
Date: 2010/02/04 22:21






「イン、ヤン!」

「ウギャアアアアアアッ」

抜かった。
ナナはそう心の中で自分自身に悪態を吐いた。ただ、あらかじめ子供を作っておいたイフリートを金庫に入れ直すだけ。そう思ってナナは一人で神羅屋敷へとやってきた。
目の前で不敵に笑う「二人目のナレノハテ」をにらみつけながら、倒れ付したイン&ヤンを背中にかばい、ナナはきつい視線をナレノハテへと送る。

「…貴方、随分とぶしつけですのね」

『ナナ、一度引きましょう。一人じゃ危ないわ、ナナ!』

ふつふつとナナの中に怒りがにじむ。神羅バッヂをしていたから懐いてくれた、ちょっと気持ちの悪いモンスター。だけど今、神羅バッヂをしてない私を見つけ出して、攻撃も
せず懐かしげに触れてきたモンスター。

信じられないことに、彼(彼女?)はナレノハテからナナをかばったのだ。

いまやスカビオサ・ジェノバの声すらナナには届かない。怒りで声が聞こえていない。

義には義を。不逞には不逞を…。ポケットの中から神羅バッヂをぶら下げたヒモを取り出し、首に掛ける。
「神羅バッヂをしている人物の敵対者」=「敵」と、様子をうかがっていたモンスターたちに気炎が上がる。

「わたくし、許しませんわ」

指を高らかに上げたナナが、勢いよく振り下ろす。その仕草に眉をしかめて訝しげにしたセフィロスに、赤い熱風が襲いかかった。

次の瞬間、神羅屋敷の左側の棟。金庫が置いてある部屋の窓が、紅蓮の炎によって全てはじけ飛び、その音でニブルヘイムの住人達は飛び出してきた。続けて激しく雷光が迸る神羅屋敷を、
宿屋から住人達と飛び出してきたヴィンセントと宝条が呆然と見上げ、数度屋敷とお互いを見つめ合うと、顔を真っ青にして屋敷へと走り出す。

「何が!?」

「判らん、だがあの火力はボス以外あり得ん!」

「うええっ!?何!?」

「ナナちゃん!?」

車で荷物のチェックを行っていたルクレツィアとザックス、村の出入り口で金色綿毛になっていたハニーも合流し、激しく振動する神羅屋敷のドアを開けた。











Song dedicated to you
FF7:名無しのNANA-PTメンバーは三人まで?何言ってるんすかwフルボッコっすよ?wwww






「グアアアアアアアアアッ」

「サンダガ!ファイガ!」

マニキュアのエナメルによって隠されたマテリア。市販の物よりも小さいそれは、ナナによってピンク色に塗られ、金メッキを施されたワイヤーで囲まれてゴムにくくりつけられている。
そのゴムがさらにくくっているものは、ナナの髪。頭の両脇を可愛く彩るピンク色のボンボン飾りが、エナメルの内側でこんこんと魔法の知識をナナに与えていた。

「ゲーム…いいえ、本来の貴方ならば、戦わず去っているはずだった。それはそうですわよね、だって、そんな物干し竿で狭い屋敷の中行動できませんもの」

いくら、広めの部屋だとしてもセフィロスが持っていた正宗を再現しているナレノハテには不利。ナナの言葉の通り、いくつもの刀傷が部屋の天井や壁、調度品に刻まれている。

「ウ、ルサイ」

セフィロスらしく、正宗を構えたナレノハテが顔を歪めてナナへと迫る。正宗の切っ先がナナへと届くか届かないかのその刹那、大きな振り子が正宗の上にいくつも降り注いだ。
金属が擦れ合う嫌な音が響き、互いに顔をしかめた二人が飛び退き再び距離を取る。

降り注いだ振り子はするすると天井へと持ち上げられ、その鎖を握りしめたモンスターたちが「キッヒヒヒヒ」と含み笑いを漏らす。

「グッジョブですわ、ギロフェルゴ。でもムリはしないでもう下がってくださいまし」

「ケッヒヒヒヒ」

「モンスター、ス、ら、手玉にトルか。スエオソロシイ…」

そう嘲られるも、ナナは髪を指で梳き整えて、視線を転がった調度品へ辿らせる。

「あら、せっかく協力してくれたのですから、そのお気持ちを最大限使わせて頂いただけですわ。それに…」

激しい音を立てて、ロビーの扉が開かれる。「ナナ!(ボス!)」と叫ぶ声に、振り向かずにゆっくりと瞬きをしてナレノハテへと視線を向け直した。

「とっても頼もしい仲間が来て下さったみたいですから♪」

ナナが、見惚れるような微笑みを浮かべた瞬間、その後ろから金色の羽毛玉が飛び出し、固いくちばしが一直線にナレノハテへと向う。

「グエエエエッ!!」【俺参上-!!】

「ナニ!?」

そのままくちばしで貫きに来たのかと思えば、床に蹄を立てて横へと飛びのく。そして、チッチッとハニーの尾羽を削り取りながら幾つもの銃弾がナレノハテへと
降り注いだ。

「グウウウゥッ!」

「ボス、無事か!」

「ナナ、無理はするなと言っただろう!」

サブマシンガンを構えたヴィンセントと、拳銃を構えた宝条がナナをひっつかまえて自分たちの背後へと引きずる。

「ごめんなさい、まさかここにいるとは思いませんでしたの」

「…あれ、なんかナナ。怒ってる?」

「ええ、怒ってますわ」

さらにヴィンセント達の前に立ちふさがったのは、ザックスとルクレツィア。手にはバスタードソードと三節棍が握られていた。ルクレツィアは三節棍をくるりと手の中で回すと、
ノンビリと頬に手を当ててため息を吐いた。

「あら、私とユージの良いところだけ取って出てきたみたいな顔ねえ。ねえナナ、顔以外攻撃じゃだめかしら」

「だめです、ボッコボコにしてやってくださいまし。どうせあれは貴方たちの息子ではありませんし」

「残念。判ったわ~」

「クエェェ」

グリグリと羽毛をナナに押しつけるハニーに、顔をゆるめながらもナナはじっとナレノハテを見つめている。砂利とホコリを含んだ靴底で、床をしっかりと踏み締める音と共に
ルクレツィアとザックスがナレノハテへと躍りかかる。

「「っつぇあああああああああああああッ!」」

ナレノハテの意識が二人へと向っている間に、ナナは部屋の外へとモンスターたちに連れ出されたイン&ヤンへと駆け寄った。だいぶ血が流れてしまっているようだけれども
まだ暖かさをしっかりと伝える身体に、ナナはほっとため息を吐いてイン&ヤンへとケアルガを掛けた。

「大丈夫…?イン、ヤン」

「う、うあぁ…」

ぶっきらぼうに、頭に乗せられたいびつな手。それにちょっとつぶされながらもナナは笑って答える。

「私は大丈夫。イン、ヤンも無事で良かった」

ゆっくりと立ち上がるイン&ヤンを支え、ナナは背中を押して隠し階段がある部屋の廊下へと踏み出した。

「早く地下に戻ってね、後は任せて!」

「あうぅ」

名残惜しげに、けれど怯えたように振り返りながらイン&ヤンはそそくさと隠し階段へと潜っていく。それをみて肩を下ろしたナナは、すまなそうに眉をゆがめて、ボンボン飾りに
差し込まれたスカビオサ・ジェノバに触れた。

「ごめんなさい、小母様…。つい逆上しちゃって…」

『いいのよ、ナナ。ナナの心が私にも伝わってきたもの…』

そうして、二人の意識は今四人の猛攻に押されている「ナレノハテ」へと向う。

「『さあ、本気出していきましょう』」

ナナとジェノバはそう呟き、ナナはついついと人差し指で天井に張り付いていたギロフェルゴを呼ぶ。そして降りてきたギロフェルゴの振り子にハニーが乗り、数人がかりでギロフェルゴ
たちがハニーを天井へと持ち上げていった。

「小母様っ!ザック!」

ナナは仕舞っておいたデリンジャーを両手に構え、そのまま撃ちはなった。
至近距離でナレノハテと鍔迫り合いをしていたルクレツィアとザックスは心得たように左右へと散開し、魔法弾<いかずち>が二つナレノハテの胸元へと深く沈む。
さらに散開した正面から、宝条の拳銃が脳天に、ヴィンセントのマシンガンが袈裟懸けをするように、左肩から右腰へと肉体をミンチへと変えた。

「あんま得意じゃねーんだけどなっ!」

「文句言わずに行きましょう!」

散開したルクレツィアとザックスは両手をナレノハテへと向けて、魔法を放つ。

「「ファイガ!」」

「ぐがああああああああああああああああああああああ!!!!!」

皮膚の劣化が少なく、その美貌を湛えたままだったナレノハテはナナたちの猛攻とその紅蓮の炎に焼かれ、赤い光の中でぐずぐずと崩れていく。
核である「ジェノバ細胞」を守るために、ナレノハテの身体は崩壊を続け、小さく小さくなっていった。

「……」

誰もが、炎に包まれ収縮と痙攣を繰り返す肉塊を見つめ警戒していたそのとき。天井でまだギロフェルゴの振り子の上にいたナナの耳元でめらり、と乾いた音がした。

「?」

ちりっ

飛び火したファイガの炎が、天井の梁の一部を弱火であぶり続けていた。

「…わ、ア゛―――――――――――!!!消火!消火!ハニーはナレノハテ見張ってて!」

「うわああああああああああああああ!!!」

「クエッ!クエエエエエ!!!」

大人達は一斉にブリザドで天井や壁を覆い始め、ナナは協力してくれたモンスターたちを慌てて天井から下ろし、廊下へと押し出していく。

「…クゥ」

大人組と一緒に騒いでいたハニーも、ナナに言われて渋々1人だけ(一匹だけ)で燻る肉塊を見下ろす。既に煙をか細く上げるだけになった肉塊、足をしっかりと
覆うチョコボ用靴の先で肉をつつくと、はらはらと黒こげがそげ落ちてドス紫色の掌大の内臓器官が見えた。

周囲が氷で覆われると、大人達とナナもほっとため息を吐きながら肩を下ろし、ハニーが見つめるジェノバ細胞の塊らしい「それ」に視線を向ける。

「レバー(肝臓)だな」

「そうね、どう見てもレバーね」

「どこからどう見ても見事にレバーっすね」

「…ジェノバの内臓器官に、あんな常人サイズと形のものは無かったような…?」

ナナが近寄り、まだ暖かさを残す内臓器官を手に取ろうとすると、ふわりとスカビオサ・ジェノバが声を掛けた。

『ナナ、ちょっと待って。私を一度外して、その塊に乗せてちょうだい』

「え?うん、判った」

ビーズチューブからスカビオサ・ジェノバを取り出し、そっと内臓器官の上に乗せる。瞬く間にスカビオサは枯れ果て、それに続くように肉塊は捩れ曲がり、細くなっていく。

「ほう」

宝条がどこからか小型カメラを取り出し、撮影を始める。細い捩れは薄く広がり、儚い花弁へと姿を変えていった。

「あら、可愛い」

薄桃紫色の花弁を爽やかに広げた花、それをルクレツィアが優しく拾い上げる。

「うーん…これはデイジーね」

「うん?デイジーにしては随分花弁が寂しいが…」

宝条が、拳銃を懐へ仕舞ながらルクレツィアの肩越しにデイジーを見下ろし、呟いた。

「ああ、チアガールのポンポンみたいなやつのことね?あれもデイジーよ。これは…ブルーデイジーとか、ちょっとコスモスに似た花弁の配置をしてるのよ。
それにしても、あなた花なんて覚えてたのね」

「なんだその意外そうな顔は」

「別に~?」

目を細め、意地悪く笑いながらルクレツィアはデイジー・ジェノバをナナへと預け、宝条をからかいに行こうとするも、何かを思い出したようで立ち止まりナナの
頭を軽く小突いた。

「ふゃん!」

「付いていかなかった私達も悪いけど、ナナ。心配したのよ?」

「…うん、すっごく悪いと思ってる。今度から出来るだけ一人で行動しないようにするね?…ごめんなさい!」

優しくこちらを見る五対の瞳に、ナナは深く頭を下げた。

「クエェー」

「ボス、今度は俺かザックスを必ず連れて行くように」

「おう、何かあったらちゃんと俺等連れて行けよ?」

「余り心配はかけないようにな」

「うん!」

『ん…うぅ…?』

仲間達と笑い会う中、ナナがデイジー・ジェノバをまたビーズの中に通そうとすると、微かに反応があった。どこか眠気を帯びたようなジェノバの声が響く。

『私…また変わってるのね…。綺麗な花だわ』

「それ、デイジーっていうんだって。かわいいよね。小母様」

『そうね、可愛い花。いつか、自分の手で触れてみたい…』

意識と微笑みあう二人、しかし大人組とナナとハニー達は、この神羅屋敷の惨状をどう住民に説明するかに頭がフル回転していた。

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あとがき:
( ゚д゚)えいかおんらいん。ようじょがうざくてたまらない。むらさき。ちょっとお祈りを。



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