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[37] EVANGELION~BlueBlue GlassMoon 手直し版
Name: Torah
Date: 2003/11/06 22:13
―――――――気が付くと、ツギハギだらけの部屋だった。




―――――――カーテンがゆらゆらとゆれてる。




―――――――外はとてもいい天気だった。















「おはよう少年。…確か、錨シンジ君だったね。」




「…おはようございます。錨、じゃなくて碇です。」




どこかの部屋で目が醒めた僕に、眼鏡をかけたお姉さんが逢いに来た。

燈色のアクセサリーを身につけたそのお姉さんは、優しい笑顔を浮かべている。




「そうそう、そうだったわね。ごめんなさいね。」




お姉さんはそう言うと、掛けていた眼鏡をゆっくりと外す。




「…貴様はどこまで覚えている?」




突然、お姉さんの目つきと口調が変わった。




温厚そうな先ほどの表情とは変わって、威圧的、とも思える口調。




僕はその変貌振りに思わず驚いて、脅えてしまった。




バタンッ!






「…姉貴、あんたこんなイタイケな少年を驚かせてどうするんだっ!」






「…お前がこいつを持ち込んだんだろうが。助けてやったのは私だ。私の好きにさせて貰う。」






突然、部屋のドアが開いたかと思ったら、紅い髪の女の人が怒鳴り込んできた。

その後ろには、僕より少し年上の男の子がいる。






「先生、燈子さんを怒っちゃダメですよ。…巻き込んだのは先生が」






「ほぉ~、志貴は私より燈子のほうを支持するのぉ」






紅い髪の女の人―――青子って呼ばれてたから青子さんだろう―――は、後ろの少年を蛇のように睨む。髪の毛が蛇のようにうねっていた。






その様子を、呆れた顔で見ている眼鏡のお姉さん――多分、燈子さん――は、何事も無かったかのように眼鏡をかけなおした。






「うふふ、ごめんなさいね。ちょっと驚かせちゃったカナ?」






また、口調が変わった。






また、僕は驚いてしまった。






「それで、君はどこまで覚えているのかな? できればお姉さんに教えてくれないかな?」






燈子さんは、温厚そうな口調と笑顔で、僕に語りかける。






その言葉を聞いて、少しずつ、僕は思い出した。






確か、母さんが『じっけん』でいなくなって、父さんが『しんせき』の所に僕を預ける事にして、僕はそのおじさんの家に向かっている途中で………






「……すいません、おじさんの家まで行く途中だったんですけど…。」






僕の言葉に、部屋でぎゃぁぎゃぁ騒いでいた青子さんと少年、燈子さんはピタリと止まった。






「…まずいわね、もしかしたら捜索願とか出てるかも……」






「…その状況にしたのは先生でしょう……」






「二人とも、今はそんな事言っている場合じゃないわよ?」






青子さんと少年の言葉に、燈子さんは温厚そうな笑顔を湛えながら、明らかに怒っていた。





[37] Re:EVANGELION~BlueBlue GlassMoon 手直し版
Name: Torah
Date: 2003/11/06 22:14
第一話あとがき。

初めまして、どっかでSS書いてるTorahと申します。

なんとなく書いてみました。

自分のHPに載せてもよかったんですけど、イロイロとアレなもので。

という訳で、今後よろしくです。




という訳で、手直ししました。

青子の髪蒼かったのを黒くしたり、超伝導のムチを超振動に変えたり。

ほんと些細な所ですが、どうも大事なようなので変えました。

そういうわけで、また。




さらに変更。青子の髪、赤くしました。

設定集とか読んでない人もこれで安心!



[37] Re[2]:EVANGELION~BlueBlue GlassMoon
Name: Torah
Date: 2003/09/16 23:10
………そこからの説明が、僕には意味が判らなかった。
僕は、おじさんの家に行く途中で、何かの事故(ここで何故か青子さんと少年がぎゃあぎゃあ騒ぎ出した)に巻き込まれちゃったらしい。

そこで、偶然(ここでは燈子さんが青子さんと少年を睨んでいた)に通りがかった青子さんと少年――志貴さん、と言うらしい――に助けてもらって、ここに連れて来て貰ったみたいだ。


「…それでね、君、凄く死んじゃってたのよ」


…突然、そんな事言われても、僕は今生きてるし……。


「だからね、君の『魂』を君の肉体と再構成させた身体に入れ替えたんだけど、まるっきり血が足りなくってね。そこのお兄さんの血を分けてもらったの」


『魂』とかはよく判らないけど、輸血って事かな? とにかく僕は志貴さんに助けて貰ったらしい。


「…あの、ありがとうございます」


「えっ……、う、うん…。ま、まぁ、助かってよかったかな? ハハハ…」


最後の笑い声が、わざとらしかったの感じたのは気のせいかな?


「それで、君、どこかおかしな所ない?」


燈子さんは、優しい笑顔で僕に語りかけてくる。

確かに変な所はあるけど…、言ったら怒られないかな?

でも、訊かれた事には素直に答えなさいって、母さんもいってたもんね。


「…あの、なんだかお姉さん達の身体に、その、黒いラクガキが…」


…僕の一言で、部屋の空気が凄く重くなった気がする。

僕は、なんとなく自分の言った事がいけない事のような気がして、言葉をまくし立てる。


「あ、でもでも、その、お姉さん達だけじゃなくって、カーテンとか、部屋の壁とかも……。このラクガキ、なんですか?」


……それからは、凄く大変だった。
「…という訳で、碇シンジ君。君にはこの遠野志貴くんと一緒に生活して貰います。でも基本的には志貴くんのお友達のお姉さんと一緒だけどね」


なんだかよく判らないけれど、僕はおじさんの家に行かなくても良くなったみたいだ。


僕の目がおかしくなったのは、志貴さんのせいらしいんだけど、志貴さんのせいじゃないらしい。よく判らない。


「先生、僕学校があるし、有間の家もあるし、協会の事も…」


「志貴、これも修行よ。人助け人助け」


「……ふぅ、まぁいいですけどね。なんだかそういう訳らしいんだけどさ、よろしくな、シンジ君」


志貴さんは、僕に爽やかな笑顔を向けてくる。


そういえば、今僕がかけている眼鏡も、志貴さんから貰ったものだ。

なんだか、迷惑をいっぱいかけてる気がする。

「…その眼鏡の事なら気にしないでもいいんだぞ? まぁ、今後俺みたいに眼鏡は必要なくなるだろうけどな。」

再び、志貴さんは爽やかな笑顔を僕に向けてきた。

「……よろしく、お願いします。えっと…、遠野、さん」

「…志貴、でいいよ。シンジ君」

「………はい、志貴さん」

僕は志貴さんと、握手を交わした。



[37] Re[3]:EVANGELION~BlueBlue GlassMoon
Name: Torah
Date: 2003/09/16 23:57
「志貴さ~ん、お手紙が来ていますよぉ~」

玄関から、琥珀さんの声が聴こえてきた。

僕は志貴さんと秋葉さん、翡翠さんと一緒に優雅に昼食後のリラックス・タイムを楽しんでいた。

ぱたぱたぱた。

琥珀さんが玄関から居間に近づいてくる足音が聞こえてくる。

「はい、志貴さんへお手紙です。燈子さまからですね~」

「あぁ、ありがとう琥珀さん」

「姉さん、紅茶はいりますか?」

「うん、ストレートでお願いね、翡翠ちゃん」

琥珀さんは笑顔で志貴さんに手紙を渡してから、僕の正面に座った。

「多分シンジさんへのお手紙なんでしょうねぇ」

琥珀さんはチラリ、と志貴さんの顔を見てから僕に向き直った。

それからすぐ、志貴さんがこめかみをピクピクさせて無言で僕に手紙を差し出してきた。

こんな志貴さんは久し振りに見た気がする。

この前見たのは、『アカシャの蛇』と戦っていた時だったかな…。

「兄さん、そんなに不機嫌になるなんて、何が書いてあったんですか?」

「…シンジ、とりあえず読んでみろ」

秋葉さんの言葉に『読めば判る』という形で返事をした志貴さんから、僕は手紙を受け取った。

「えぇ~っと…『木偶人形の所に手紙が届いた。そのまま記載する。

【来い    碇ゲンドウ】

一緒に第三新東京市への片道切符も同封されていた。
どうするかはお前の自由だ。好きにしろ。
切符の日付は明後日になっていた。』

………らしいです」

僕の朗読に、居間でお茶を楽しんでいた面々が、志貴さんと同じようにこめかみをヒクつかせていた。

秋葉さんのヒクつき方は志貴さんよりさらに凄い。

こんな状況はやっぱり一年前の『アカシャの蛇』以来だ。

志貴さんの高校の屋上でシエルさんやアルクさん達と一緒に今ここにいる面々と『アカシャの蛇』が対峙していた時だったなぁ。

突然『アカシャの蛇』が「ふふふ、お前達の兄の欲望、心地よいぞ」
とかのたまったあと、突然

「秋葉ぁぁぁ~~~! お前の身体は俺のものぉぉぉ~~~!!」

とか叫んだ後みたいだ。
その後みんなで袋だたきにして、『アカシャの蛇』の魂を消滅させたんだっけ。

多分致命傷は秋葉さんの金的だったんだろうな…。何度もヤクザキックしてたし、アソコに…。



「…シンジ、お前どうする?」

くだらない回想に浸っていた時、志貴さんから声をかけられた。

「…とりあえず、行ってみようと思います。碇ゲンドウが何かを企んでるのは明らかだし。NERVやSEELEが絡んでくるのは当然でしょう。
なんて言いましたっけ、『人類補完改革』?」

「『人類保安計画』じゃなかったか?」

「あぁ、まぁどっちでもいいですけど。多分それが絡んでくるんでしょう。
丁度、『協会』でもちょっと話に出てましたからね。それを探ってみようかな~、なんて。何しろ全世界が巻き込まれる計画みたいですから」

「……そうか」

志貴さんはそう言って少し思案したあと、顔を上げた。

「…俺も行こう。家族が巻き込まれるのを黙って見ていられる訳がないからな」

「そうですわね、これは既に遠野家の問題にもなりました。私達も参りましょう」

志貴さんと秋葉さんは、当然と言った勢いでそう僕に告げた。

「えぇっ、でも、呼ばれたのは僕で…」

「大丈夫ですよ、シンジさん。秋葉さま、志貴さん、とりあえず学校は転校するように手配しておきますね?」

「えぇ、頼んだわよ。それと、第三新東京市での住居も手配しておいて。
 もしいい所がなければ当分はホテルでもかまわないわ」

「秋葉、それだと琥珀さんとシンジの料理が食べれないぞ…」

「あらっ! そうですね…。それは忌々しき事態です…」

「いやっ、あのっ…」

「とりあえず、アルクェイド様やシエル様にもご連絡しておきますか?」

「そうだね、頼むよ翡翠」

「かしこまりました」

「いやっ、ちょ、ま、まって…」

「そういう訳だから、今からすぐ荷造りするぞ」

「えっ、えぇ~~~~っ!?」

僕は志貴さんに引き摺られながら、そんな叫び声を挙げてしまった。



[37] Re[4]:EVANGELION~BlueBlue GlassMoon
Name: Torah
Date: 2003/09/17 00:58
ぱらりぱらぱらぱららりら~~~♪

「いえ~いっ、夏の風が涼しいぜべいべ~♪」

ぱらりぱらぱらぱららりら~~~♪

「…琥珀さん、このぱらぱら言ってるのはナンデスカ?」

「へぇ~? オプションパーツですよ~」

琥珀さんは車を運転しながら、くるっと後部座席に振り向いた。

「わぁ~っ!? 前っ! 前見て下さい!?」

「もう、ちょっとぐらいなら大丈夫ですよ~」

琥珀さんは少しむくれた顔で助手席に座る僕を睨む。

時速100キロ前後で走ってるのに大丈夫な訳ないんですけど…。

「そういえば、アルクさんやシエルさんはどうしたんですか?」

「あぁ、先回りしてNERVの近辺を調べとくっていってたよ」

僕の何気ない質問に、志貴さんが答えた。

通りで、秋葉さんが志貴さんにくっついている訳だ。

あ、あと翡翠さんもか。

「シンジさん、あ~いうのを『爛れた関係』って言うんですよ~」

琥珀さんの子悪魔的笑顔から発した一言に、志貴さんは乾いた笑いを浮かべるしかできなかった。





ぱらりぱらぱらぱららりら~~~♪

『―――海地方を中心とした――常事態宣――やかに指定のシェ――』

ぱらりぱらぱらぱららりら~~~♪

「あの~、さっきから外で放送みたいなのが流れているんですけど……」

「そうですか~? 気のせいですよ~」

僕の言葉を気にする風でもなく、琥珀さんは車を運転している。

すると、前方から『何か』が飛んできた。

キィィィィィィィ

「……戦闘機?」

僕は一人そう呟いた瞬間、

ドカァァァァァッ

「うわっ!?」

「な、なんなの琥珀っ!?」

「どうやら何かが爆発した模様です」

「シンジっ!? この気配何だと思うっ!?」

爆発で揺れる車内で、志貴さんが僕に問い掛ける。

突然近づいてきた大きな気配に、僕もすぐに気が付いた。

「琥珀っ! スピードを上げて!」

「わっかりました~!?」

爆風から逃れるために、琥珀さんは車についている謎のボタンを『ぽちっ』と押した。

どこか嬉しそうな気がする。

「いっきますよぉ~!?」

ドンッ

車は琥珀さんの掛け声と共に、急加速。

その勢いで秋葉さんと翡翠さんが意識を手放したようだ。

もの凄いスピードの中、僕と志貴さんが窓から外を眺めていると、気配の主とおぼしき物体が姿を表した。

「……なんだあれ」

「…アルクェイド達も非常識だけど、アレも非常識だな」

そこには、怪獣が静かに佇んでいた。



[37] Re[5]:EVANGELION~BlueBlue GlassMoon
Name: Torah
Date: 2003/09/17 02:08
暗い、どこかの会議室で、複数の人物が会話をしていた。

「その後の目標は?」

『電波障害のため、確認できません』

「あの爆発だ、ケリは付いている」

『センサー回復します』

『爆心地にエネルギー反応!!』

「なんだと!!」

『映像回復します』

そこに映ったモノをみた時、人々からどよめきがおこった。

「我々の切り札が…」

「なんてことだ…」

「化け物め!!」

皆の口調が絶望したソレになっていた。

そこに映っていたモノは、キズは負いながらも、しっかりと地に足をつけ、そこに佇んでいた。





「う、うぅ~~~~~」

僕達が駅近くでねっ転がっている所を保護した女性が、小さなうめき声と共に目を醒ました。

「…こ…こは……」

「姉さん、お気づきになられましたよ」

「あは~、そうですか~」

「貴女、あんな所に寝転がって、何をしてたんですか?」

目が醒めた女性に、秋葉さんが当然の質問をする。

「え…、寝転がっていた?」

「えぇ、貴女は駅前で土砂にまみれて寝転がっていたんですよ~」

車を運転しながら、女性の質問ににこやかに琥珀さんは答えた。

「そう…、私、確かアルビーヌちゃんで駅に…、って!」

女性は何かに気付くと、ガバ、と身体を起こしてた。

ワンボックスの最後部座席に寝転がっていた為、頭を天井などにぶつける事は無かったようだ。

「ちょ、ちょっと貴女達っ!? 今すぐ元の場所に戻しなさい!?」

女性は、突然命令口調でムチャクチャな事を言う。

「…貴女、礼儀という物を知らないのですか?」

女性の言葉に、秋葉さんはおかんむりだ。

「第一、私達があの時貴女を助けなければ、貴女は土砂に生き埋めどころか、崩れてきたビルに押しつぶされて圧死していたんですよ。
それを私達が助けたというのに、事もあろうに突然騒ぎ出して見ず知らずの、命の恩人である私達に命令ですか。
貴女、一度脳味噌を検査しに病院に入院したほうがよろしんじゃないんですか?」

秋葉さんの痛烈な批判に、女性はぐぅの音も出ない。

さらに、秋葉さんの言葉は続く。

「ただでさえあの状況で私達は急いでいたんです。
 それを兄さんやシンジが『あのままでは死んでしまうから』と強く助けるように求められたから助けたんですよ。
本来なら貴女は既に死んでいて、こうして私達と会話を交わす事無く生涯を終えていたんですから、感謝というものをしなさい。
いい年した大人が、私のような学生でもわかる一般道徳を知らないなんて言わせませんよ。礼には礼を尽くす、それが人の当然の行動です。わかりましたか?」

「……はい、ごめんなさい」

秋葉さんの余りの剣幕に、その女性はすっかり萎縮して小さく謝罪した。

だが、まだ秋葉さんは止まらない。

「はぁ…、あのですね、私のお話をキチンと聞いていましたか?私は別に謝れなどとは言っていません。礼には礼を尽くせ、つまり礼をしろという事ですよ。それを貴女はどこでどう履き違えたのか知りませんけど…」

「あ~、秋葉。それぐらいで許してあげたら……」

女性の余りの萎縮っぷりに、志貴さんが助け舟を出した。

既にその女性は涙目になって俯いていた。

あいでんてぃてぃ~の崩壊ってやつかな?

秋葉さんは女性を冷めた目で一瞥して、問い掛けた。

「…それで、貴女、お名前は?」

「あ…、はい。私はこういう者です」

先ほどの秋葉さんの剣幕を見せられたからだろうか、女性は少し脅えながら恐る恐る言葉を返すと懐からIDカードを取り出した。

「…へぇ、丁度いいわね。NERVの葛城さんですか。私は遠野秋葉と申します」

「あ、はい。NERVの葛城ミサトです」

丁寧に頭を下げる秋葉さんを見て、葛城さんは慌てて自分も頭を下げた。

「それで、貴女はあそこで何を?」

「えぇ、実はあそこで私は総司令のお子さんを迎えに行ったんですけど、どうもNERVのほうでそのお子さんをロストしてしまって、探し回っていた所国連軍のNN地雷が発動して…」

葛城さんはそう言うと、顔が青ざめてしまった。

「…あぁ、シンジ君があの爆発に巻き込まれてたらどうしよぅ…」

そう一言言って、頭を抱え込んでしまった。

その一言で、この人がなぜあそこにいたのかを、葛城さん以外の面々は把握してしまった。



[37] Re[6]:EVANGELION~BlueBlue GlassMoon
Name: Torah
Date: 2003/09/17 03:01
「あは~、偶然というか、何と言うか、ですね~」

琥珀さんはそう言うと、カートレインで運搬される車の中で優雅に紅茶を楽しんでいた。

「あの~、それで、なんですけど…」

葛城さんがそう言うと、葛城さんの横の座席に座っている秋葉さんがギロッ
と睨んだ(ように見えた)。

「ヒッ」

一瞬、葛城さんが悲鳴を上げる。

まぁ、秋葉さんの不機嫌な状況が怖いのは当然の事だろう…。




(…30分前)

「し~きぃ~!!」

「ア、アルク!? いきなり飛び込んでくるな!?」

ワンボックスカーのドアを開けた途端、先行してNERV本部前で待ち構えていたアルクェイドさんが飛び込んできた。

「こぉのあーぱーっ!? 遠野くんとじゃれてないでそこをどきなさいっ!?」

「ぶぅ~、わ~かったわよ。ほらほら、そこの女邪魔。私達座るからとっとと前の座席に動きなさい」

「えっ!? わ、私ぃ!?」

「あんた以外誰いんのよ。いいからちゃっちゃとどきなさいって」

見ず知らずの女性を女呼ばわりしてから、その女性をヒョイと持ち上げて前の座席に座らせると、アルクさんは今度は志貴さんを持ち上げて自分共々最後部座席に座らせた。

「この人外女…、兄さんは貴女のモノじゃないんですよっ!?」

「むぅ~、相変わらず妹うるさ~い」

「秋葉さん、いいから私を車に入れてくれませんか?」

「カレー教は黙っててくださいっ!?」

「ちょ、ちょっと三人とも…」

「カレー教とはなんですかっ!? カレーをバカにするんじゃありませんっ!?」

「でか尻エルうるさ~い」

「いいからそこのあーぱーは早く兄さんから離れなさいっ!?」

「誰がでか尻なんですか誰がっ!?」

「志貴さま、お紅茶です」

「あ…、あぁ、ありがとう翡翠」

「ちょ、翡翠! 貴女いつの間に兄さんの隣を確保しているんですかっ!?」

「むぅ、翡翠は相変わらず気配を消すのが上手いにゃ~」

「翡翠さんっ!? その席は私が狙っていた場所ですよっ!?」

「どうぞ、志貴さま」

「あ、あぁ……」



という感じの押し問答を15分ぐらいやっていて、結局座席は秋葉さん・葛城さん・シエルさん。

最後部座席はアルクさん・志貴さん・翡翠さんで決まったんだよね」

「ふぇ、シンジさん独り言ですか?」

その争いの中、ずっと我関せずだった琥珀さんが不思議そうな顔で僕を見る。

「いやぁ、さっきの争いがね…。15分間も車の中で押し問答して、よく壊れなかったなぁ、と思ったので」

「そうですねぇ。まぁ遠野家技術部門の力作ですから、アルクさんの攻撃の一、二発は耐えられるようになってますよ」

…ダイヤモンドより硬いんですか、この車のボディは。

「それで、葛城さん。どうかしたんですか?」

僕はいまだに秋葉さんに睨まれてビクビクしていた葛城さんに問い掛けた。

「あ、シンジ君…。あの、貴方とこの人達って、どういう関係なのかな~って、ね。あはは…」

葛城さんの問いかけに、僕は少し困ってしまった。

多分NERVが認識している『碇シンジ』という人物は、燈子さんが用意した木偶人形の事なんだろう。

事実、木偶人形宛に手紙とかは全部届いていた訳だし。

話によるとおじさんの家の近辺には黒服の男たち――恐らくNERVの諜報部――がよく見かけられていたようだ。

僕がそんな思案をしていると、横にいる琥珀さんがニンマリと子悪魔の微笑みを浮かべた。

「…葛城さん、私はですね~、シンジさんとは『男と女』な訳なんですよ~」

琥珀さんはその微笑で、ポロッと核爆弾を投下した。

葛城さんは一瞬その言葉の意味を理解しかねたが、次第にその顔は大きく驚愕を表していった。

「えぇぇぇ~~~~~っ!!!」

「あは~、そんなに驚かれると照れちゃいますねぇ~」

「いやっ、ちょ、琥珀さんっ!?」

僕が一人狼狽していると、今度は琥珀さんが上目遣いで睨んできた。

「…シンジさん、あの初めての夜の事を無かった事にするんですか~」

「…初めての夜って、僕が突然襲われた日の事ですか。確かに女性に襲われたのが初体験なんて情けなくて無かった事にしたいですよね」

「……てへっ☆」

琥珀さんはそう言うと、コツンと自分のこめかみを叩いて猫かぶりモードに突入した。

残された葛城さんは、唖然とした表情で僕達を眺めるだけだった。



[37] Re[7]:EVANGELION~BlueBlue GlassMoon
Name: Torah
Date: 2003/09/17 04:31
「あ~、そういえば先ほど、ジオフロントがありましたね~」

後ろを歩いているシエルさんが、ふとそんな言葉を呟いた。

「まぁ、それぐらいの場所なんてどこにでもあるし、めずらしくも何ともないわね」

嬉々としてシエルさんの言葉に反応した葛城さんが、アルクさんの一言でしょぼ~んと落ち込んでしまった。



とある会議室。

「……そうか、わかった」

カチャ。

顎に髯を蓄え、暗がりの中サングラスをかけている中年男性が、電話を置いた。

「…碇、どうした」

「…サードチルドレンが到着した」

「…そうか」

「では、後をお願いします」

顎髯の男は、そう言うと暗い会議室から出て行った。

「……ふっ、三年ぶりの親子の対面か」

三年ぶりなのは、父親だけだという事実をまだ知らない。





「おっかしいな~。確かこの道のはずなんだけど…」

「…葛城さん、先ほどもこちらは通りましたが?」

秋葉さんの物言いに、葛城さんはビクッ、と身体を震わせる。

「あ、あはは…。シ、システムはこんな時の為にあるんですよねっ!?」

なぜか秋葉さんに敬語で語りながら、葛城さんは傍らにある非常用と思われる内線の受話器を取り上げた。



近くにあったエレベータで葛城さんが行きたがっている地下まで下り、目的の階に付くと、扉の前には不思議な人がいた。

金髪、黒眉毛、水着の上に白衣。

「……随分と変わったご趣味の方ですね」

怖いもの知らずの琥珀さんが決して小さくない声で喋った。

金髪黒眉毛のお姉さんは頬をヒクつかせてこちらを見ている。

「…ミサト、そちらの子達は?」

「あはは、実は私、この子達に助けて貰っちゃって」

葛城さんが気まずそうに話をしていると、秋葉さんが一歩前に出た。

「はぁ、葛城さん共々、こちらの方は礼儀というものを知らない無礼者の集団なんですね、NERVという所は。
 人に物を尋ねる時は、まずご自分の素性を明かしてからというのが当然ではありませんか?」

秋葉さんの言葉に、黒眉毛の女性は葛城さんを見るが、葛城さんは『逆らうな』という鬼気迫る視線を投げかけていた。

「…私は、NERV技術部の技術部長、赤木リツコよ」

「私は遠野秋葉と申します」

赤木さんの自己紹介に、秋葉さんは丁寧なお辞儀で返した。

「…それで、そっちの子がサードチルドレンね?」

「そう、マルドゥックの報告書によるサードチルドレン」

赤木さんは秋葉さんから視線を外して、僕を確めるような視線を向けてきた。

「…マルドゥークですか…。趣味悪い機関の名前ですね」

「終末と再生、秩序と混沌を司る闘争の神の名を持つ機関名か。
 悪趣味も悪趣味、正常な人間だったらそんな名前つけないわね」

二人の会話から出てきた名前を、シエルさんとアルクさんが涼しい顔で批判した。

葛城さんはそれに驚き、赤木さんはそれに苦い顔をしていた。

……赤木さん、要注意人物一号に決定。

「…貴方が碇シンジ君ね?」

先ほどの批判など何処吹く風、と言いたいのであろう赤木さんが、僕に向かって訊いてきた。

「サードチルドレンだかなんだか知りませんが、一応僕が今の所碇シンジです」

僕の言葉に、赤木さんは『何言ってるの?』という表情を浮かべる。

が、それも一瞬の事、すぐに現実問題と向き合うようだ。

「…それで、ここから先は一般人は立ち入り禁止なので、貴女達は他の者に控え室まで送らせるわ」

赤木さんはそう言うと、僕に向き直る。

が、琥珀さんのほうが速かった。

「あら~、そうなんですか。それでは葛城さん、本部の案内、ありがとう御座いました。
 さ、いきましょうかシンジさん」

「はい、それでは葛城さん。またお会いできましたら」

僕たちはそう言って、エレベータまで戻ろうとする。

だが、それを引き止める声が後ろから挙がった。

「ちょ、ちょっと待ってシンジ君っ!? 貴方は私達と一緒に…」

「あら? 一般人は立ち入り禁止なのでは?」

葛城さんの言葉に、秋葉さんが正論で返す。

ざっつ・葛城キラー。



[37] Re[8]:EVANGELION~BlueBlue GlassMoon
Name: Torah
Date: 2003/09/17 04:57
「…シンジ君は、お父さんからNERVのIDカードを貰っているでしょう?
 だからシンジ君はNERVの関係者なのよ。シンジ君、IDカードを出して」

赤木さんの言葉に、僕は平然と答えた。

「そんなもの貰ってませんよ?」





二人の顔は、それはそれは大変な事に…。





『総員第一種戦闘配置、繰り返す、総員第一種戦闘配置。対地迎激戦用意』

「ですって」

「これは一大事ね」

「で、初号機はどうなの?」

「B型装備のまま、現在冷却中」

「それホントに動くの?まだ一度も動いた事ないんでしょ?」

「起動確率は0,000000001%、オーナインシステムとはよくいったものだわ」

「それって動かないってこと?」

「あら、失礼ね。零ではなくってよ」

「数字の上ではね、ま、どのみち動きませんでしたではもうすまされないわ」

僕達を除け者にした会話がようやく終わった。

結局あの後、僕が来ないと困る、という話になり、じゃぁ他のみんなも、という話になり、計10人で水の張っている地下ドームをゴムボートで渡る事になった。

「…なぁんか、怪しい会話してますねぇ」

僕がそう言うと、琥珀さんがニヤリを笑みを浮かべる。

「なんとな~く思わせぶりな会話をして、そちらの内容や今自分の置かれている状況などに疑惑や興味を引かせようと、そういった魂胆なんですよ。
 でなければ、わざわざ私達に聴こえるようにあんな『いかにも』な会話はしません」

琥珀さんの説明に、会話をしていた二人はぐぅの音も出なかった。

さすがは遠野家影の黒幕、人外相手に数々の陰謀を展開してきただけの事はある。

「…シンジさん、なんとな~く変な事考えてません」

「いえ、ぜんっぜん」

…こういう感の鋭い所も、流石です。

ちなみに志貴さん達は、アルクさん、シエルさん、秋葉さん、翡翠さんがそれぞれ後ろで陰謀を展開している模様。

途中、シエルさんが水に落ちるというアクシデントがあったものの、無事這い上がってきたようだ。

志貴さんはただただ、哀愁漂う乾いた笑みを浮かべている。

「…志貴さん、背中が煤けてますねぇ~」

琥珀さん、その言い方はあんまりです。





僕たちの乗るボムボートは、どこかへ向かっているらしい。
その目的地らしい所に近づくにつれ、僕たちは次第に静かに、周囲を警戒するようなった。

(…志貴さん、この気配って)

(あぁ…、さっき外で視た怪獣と、似たような気配だ)

(あぁ、あの首がない緑のやつ? 確かに似てるわね)

(えぇ、ですがここ、二つ感じますよ)

(…もしかしたら、似たようなものがあるのかもしれませんわね)

(あぁ…、こんな所で変なのが出てきたら困るからな、警戒しとこう)

(でもさっきの、そんな強そうな気配しなかったけど?)

(念には念を、だ。判ったなアルクェイド)

(はぁ~い)

僕たちが小声でそんな会話をしていると、ゴムボートが停止した。

僕らはゴムボートを降り、どこかの部屋に入った。

その部屋の中心に、先ほどから感じる気配の元がある。

僕らは警戒しながら真っ暗な部屋に入り、その気配の元と対面した。

(…顔、ですね)

(あぁ、顔だな)

(顔だね~)

(顔ですか…)

(顔ね…)

(顔でしょう)

(顔ですね~)

暗闇も、僕達には全くの役立たずだったようだ。

僕達が小声で話をしていると、パッと天井のライトがついた。

「……演出?」

僕の一言に、赤木さんの黒眉毛が大きくヒクついた。

「人の造り出した究極の汎用人型決戦兵器人造人間エヴァンゲリオン、その初号機、建造は極秘裏に行われた、我々人類最後の切り札よ」

なんだか大層な説明をしてくれる赤木さん。

でも、これって……。

「…紫なんて、趣味悪いですね。赤木さんのカラーリングですか?」

琥珀さんの痛烈な言葉に、赤木さん、更に眉をヒクつかせる。

多分、赤木さんは「これが…、父さんの仕事ですか?」という僕の一言が欲しかったんだろう。

『…そうだ』

突然、頭上から低い声が響いた。

上を見上げると、顎髯、赤いサングラス、黒ずくめのオッサンが僕達を見下ろしていた。

「…なるほど、やはり赤木さんのカラーリングなんですね」

僕達は、琥珀さんの一言に納得して大きく頷いた。



[37] Re[9]:EVANGELION~BlueBlue GlassMoon
Name: Torah
Date: 2003/09/17 05:59
突然、頭上から発する声の主に、僕は語りかけられた。

『…久し振りだな、シンジ』

「……えーっと、初めまして。碇シンジです」

遠野家での躾通り、僕はしずしずと初対面のそのオッサンに頭を下げる。

「な、何を言ってるのっ!? あの人がシンジ君のお父さんでしょ!?」

「……あ、そうだったんですか? すいません葛城さん」

突然振って沸いた新事実に、僕は葛城さんに頭を下げた。

「…アレがシンジの父親なの?」

アルクェイドさんの一言にみんな顔を見合わせる。

そして一言。

「「「「「「似てなさすぎ」」」」」」

僕もそう思います。

そんな会話も何処吹く風、凶悪そうな僕の父上は言葉を発した。

『ふっ…、出撃』

その一言に、葛城さんは大きく狼狽する。

「出撃!?零号機は凍結中でしょ?…まさか初号機を使うつもりなの!?」

「他に方法はないわ」

「ちょっと、レイはまだ動かせないでしょ!?パイロットがいないわよ!?」

「さっき届いたわ」

「…マジなの?」

「碇シンジ君、あなたの言った通り、あなたがパイロットよ」

「……は?」

「綾波レイでさえエヴァとシンクロするのに七ヶ月もかかったんでしょ?今来たばかりのこの子にはとても無理よ!!」

『座っていればいい、それ以上は望まん』

「しかし!!」

「現在は使徒撃退が最優先事項です、その為には誰であれエヴァとわずかにもシンクロ可能と思われる人間を乗せるしか方法はないの。
解っているはずよ葛城一尉」

「…そうね…」

なんか、あれよあれよという間に話が進んでいるようだ。

「あ~、ちょっといいですカ~?」

なんとなくシニカルさを強調しつつ、僕は目前の討論に割って入る。

「…父さん、なぜ僕を呼んだの?」

『お前の考えている通りだ』

「…これに乗って僕にあの怪獣と戦えって?」

『そうだ』

「何故、僕なの?」

『他の人間には無理だからだ』

「…乗り方なんて知らないよ」

『説明を受けろ』

「…父さんは、僕に死ねって言うの?」

『お前がやらなければ人類全てが死ぬ事になる』

「…人類の為なら僕は死んでもいいの?」

『乗るなら早くしろ、でなければ帰れ』

「…無理だよっ!? そんな事僕にできる訳ないよっ!?」

僕が叫ぶと、凄い振動が僕らを襲った。

『…奴め、ここに気付いたか!』

その振動は断続的に襲ってくる。

横にある水が、大きく波打っていた。

「シンジ君、時間がないの」

「乗りなさい、シンジ君。何のために此処に来たの?」

僕は無言で答える。

「だめよ、逃げちゃ。お父さんから、何よりも自分から」

「……」

「あなた以外には乗れないの、世界中全ての人とあなたは違うわ」

「………」

『もういい。…冬月、レイを起こせ』

僕の無言に業を煮やしたのか、ゲンドウが受話器を取りどこかに居る人物と会話をする。

『…かまわん、死んでいる訳ではない』

相手の声は聴こえないが、ゲンドウの声ははっきりと聴こえてくる。

『…レイ』

『予備が使えなくなった、もう一度だ』

ゲンドウはそう言うと、受話器を置いた。



[37] Re[10]:EVANGELION~BlueBlue GlassMoon
Name: Torah
Date: 2003/09/17 06:32
『初号機のシステムをレイに書き直して、再起動!!』

『了解、全作業中断、再起動に入ります』

ゲンドウがそう号令すると、僕達の周りが慌しく動き出した。

作業員のような人達が動き、こちらを眺める。

その顔には、侮蔑、といった類のものが浮かんでいた。

すると、そこにストレッチャーに載せられた少女が、数名の医者と思われる人間に運ばれてきた。

―――自然ではありえない、青い髪と紅い目をした少女。

その少女は、包帯を体中に巻いて、一目見て重傷と判る姿をしていた。

「シンジ君、貴方が乗らないと…」

葛城さんの声を無視し、起き上がろうとする少女の側へ駆け寄る。

僕の後ろにはシエルさん、翡翠さん、琥珀さんが着いてくる。

僕がいち早く少女に駆け寄ると、起きようとする少女を押し止めた。

「き、君っ!? 患者に手を…」

「何を言ってるんですか貴方はっ!? こんな所に彼女を連れてきておいて、今更医者のような事を言わないで下さいっ!?」

すぐに駆け寄ってきた琥珀さんの剣幕に押され、その医者は押し黙った。

「……くっ…、はな…して」

少女は押える僕の腕を振り払おうと、手を上げる。

そこに、琥珀さんが注射器で薬品を注射した。

「……あ」

少女は声を漏らすと、ストレッチャーの上でぐったりとする。

そこへ、一際大きな振動が僕らを襲った。

「きゃっ」

琥珀さんと翡翠は何とかストレッチャーにしがみついて振動をやり過ごす。

シエルさんは微動だにせず佇んでいた。

僕はストレッチャーの上の少女を抱き上げ、その振動で落ちないようにした。

振動をやり過ごして少女をストレッチャーへ寝かせて、僕はシエルさんと入れ替わるように少女の側を離れた。

「翡翠ちゃん! 新しい包帯とガーゼをっ!?」

「はいっ! 姉さん!」

「琥珀さん、私は治癒に全力を出しますので、傷口の止血は任せます!」

「判りました!」

後ろからそんな声が聴こえる。

僕はヨロヨロと志貴さん達の所へ歩きながら、自分の手についた紅い液体を眺めた。

恐らく、抱き上げた時についたものだろう、彼女の血だった。

「…まいった、本当にまいった」

僕は一言そう言うと、懐から黒い銃身を取り出す。

「…碇ゲンドウ」

僕は黒い銃身を空へ向け、ゲンドウを睨む。

志貴さん達は、もの凄く怒っているが、一番ショックの大きいと思われる僕の為に、その怒りを表に出さず、ただただアイツを睨む。

「……お前、死にたいか?」

僕は、怒りを前面に出した表情で、ゲンドウを睨んだ。

『…ふっ、貴様に何ができる』

ゲンドウは僕の言葉を鼻で笑うと、その場で支持を出す。

すると、僕たちのいる部屋に、黒服の男が拳銃を携えて駆け込んできた。

「……………くっ、くっ、くっ……」

その笑い声は、志貴さんから聞こえてきた。

「……シンジ、俺はもう、抑えられない。だが、あの男はお前のだ。俺はあの黒服のバカどもを貰う。」

「…そうですわね、私も参加させて頂きますわ」

「殺しはしないけどさ……、動けないぐらいの怪我は許してくれるわよね? 志貴」

「あぁ…、お前が前から興味のあった『拳銃』ってやつだ。楽しんで来い」

三人はそう互いに言うと、臨戦態勢に入る。

その最悪の状況を引き起こしたバカを見て、僕は思わず大声で笑った。

「あはははははっ! バカだなぁ~、碇ゲンドウ。お前、死ぬぞ?」

『…何が可笑しい』

そのバカは、現状を把握できていない苛立ちからか、威圧的、と表現するであろう声で僕に聞いてくる。

僕はその声を無視して、黒い銃身に力を込めた。

「…ブラック・バレル・レプリカ…。フルトランス」

僕が述べ、引き金を引くと、天に向けた銃身から紅い巨大な光が放たれる。

……ドォォォォォォォッ

一拍措いて、衝撃が天井を突き抜けた。

天井からは、地下なのに僕を中心にして太陽の光が降りてきた。

「……こういう事だ、馬鹿」

僕はそう言うと、その光景に呆気に取られている馬鹿に向けて銃口を向けた。

その瞬間、三人は姿を消し、あっという間に黒服の男を再起不能にする。

『戦闘不能』では無く、『再起不能』だ。

命は取らないが、五体満足で動く事は難しい。

ある者は片腕を失い、ある者は足を焼け爛らせ、またある者はありえないほどの切り口を残して体の一部を失う。

途端、場に静寂が訪れる。

「…シンジさん、とりあえず止血と治療は終わりました。安心してください」

黒い銃身を構える僕に、琥珀さんが笑顔で近づいてきた。

僕はホッと胸を撫で下ろし、銃を降ろして懐に閉まった。

「…彼女は?」

「えぇ、今連れてきた藪医者に連れて帰らせました」

「そっか…。良かった~」

僕は笑顔を琥珀さんに向けてから、ゲンドウに再び向き直る。

「……彼女は助かった。僕は、彼女の変わりにアレに乗ってやろう」



[37] Re[11]:EVANGELION~BlueBlue GlassMoon
Name: Torah
Date: 2003/09/17 07:16
『冷却終了』

『右腕の再固定完了』

『ケージ内全てドッキング位置』

「了解、停止信号プラグ排出終了」

『パイロット、エントリープラグ内コックピット位置に着きました』

『了解、エントリープラグ挿入』

『脊髄伝動システムを開放、接続準備』

『プラグ固定終了』

『第一次接続開始』

『エントリープラグ注水』

アナウンスが流れて、足元から水が競り上がってきた。

「…なんですか? これ」

『それはLCL。肺がそれで満たされれば直接酸素を血液に取り込んでくれるわ。すぐ慣れるわよ』

「…どういう仕組みなのか、よく判りませんね」

僕はとりあえずなすがまま、満たされるLCLを吸い込む。

途端、口の中に鉄の味と血の臭いが広がってくる。

「…これは、ヤバイなぁ」

『我慢しなさい、男の子でしょ!?』

こちらの事情を把握していない葛城さんが喚きだす。

『葛城さん、少し黙って頂けますか?』

『はっ、はい…』

秋葉さんの一言で、葛城さんは押し黙った。

もう調教は終わっているみたいだ。

『…シンジ、何かヤバイんだ?』

志貴さんの声がスピーカーから聴こえてくる。

「いえ…、これ、血の味と臭いがするんで…。『七夜』が暴れちゃいそうで…」

『…そうか、まぁ、相手は人外だ、七夜の血が暴れたって大丈夫だろう』

「…そうですねぇ。まぁ思い切りやりますよ」

僕が志貴さんとほのぼのトークをしている間も、作業工程は続く。

『主電源接続』

『全回路動力伝達問題なし』

『第二次コンタクト入ります』

そうアナウンスが聴こえると、周りの水が透明になり、周囲にいろいろな模様を浮かばせる。

「…呪術? いや、ナノ・プログラムか?」

『呪術だったら気配でわかるわよ。多分呪術の類ではないわね』

優雅に紅茶を飲んでいるアルクェイドさんが答えた。

その場で作業をしている見知らぬ方々は、頭にハテナマークを沢山浮かべていた。

『A10神経接続異常なし』

「…愛情を司る神経に接続? 意味が判りませんね」

『思考形態は日本語を基礎原則としてフィックス、…初期コンタクト全て問題なし』

『まぁ、あのバカが指令している所ですからね~。私達には理解しかねる事柄だらけですよ』

『双方向回線開きます』

「…もう開いてるんじゃないんですか?」

僕の問いかけに、問い掛けられた方々は無言で返してきた。

「……無言は肯定とみなします」

なんとなく、勝った気分だ。

『シンクロ率…えっ……』

若い女性の驚いた声が聴こえる。

『マヤ? どうかしたの?』

『いえ…、シンクロ率0.81%、初号機起動しません…』

途端、画面の向こう側が静かになった。

「…あの~」

僕はいたたまれなくなり、つい声を出す。

『…シ、シンジ君! お願いだから真面目にっ!?』

赤木さんが、切羽詰った声で喚きたてる。

「あの、真面目にったって…。とにかくシンクロ率ってなんですか?」

『シ、シンクロ、つまり同調という事よ。さっきも少し教えたけど、エヴァは貴方の思考と同調して動くの』

「…あ、なるほど~。だから魂を感じるんですね~」

僕の一言に、再び画面の向こう側は静かになった。

『…あの、シンジ君? どういう事?』

赤木さんは、頭にハテナマークを一杯浮かべて僕に語りかける。

「いえ、先ほどからこちらに干渉しようと頑張ってる魂が二つ…、二つですね。
一つはおずおず、って感じなんですが、もう一つは強引で、なんだか嫌な感じなんですよ。そっちの強引なほうの魂の力のほうが小さいんですけど、邪魔してくれるんで、おずおずとした、大きな力の魂に干渉できないんですよ」

僕がそう告げると、赤木さんの顔が思いっきり青ざめていく。

『…志貴、とりあえずそっちの強引なほうを先に何とかすればいいんじゃないのか? 急がば回れだ』

なんとなく悠長な事を言っている志貴さんの言葉に従い、僕は強引な魂に干渉を始める。

途端、画面の向こうが慌てだした。

『シ、シンクロ率急上昇! 40…60…80…99.89%で固定! ハーモニクス正常値! ですが、初号機起動していません!』

『ちょ、ど、どういう事!? そんだけの高シンクロでなぜっ!?』

赤木さん達の問答を他所に、僕は強引な魂との押し問答を終了した。

すると、再び画面の向こうは慌しくなる。

『シ、シンクロ率急降下! 80…50…20…シ、シンクロ率0%…初号機、起動しました…』

画面の向こうは、てんやわんやの大騒ぎだ。

正面の一角を除いて。

「ふぅ~、とりあえず動くんですよね?」

『…そうなんじゃないんですか? ところで、さっきの強引な魂って何だったんですか?』

優雅に紅茶を飲み、クッキーの争奪戦をアルクさんと繰り広げていたシエルさんが訊いてきた。

「あぁ、どうやら母さんだったみたいです。僕の記憶通り、この人造人間、ですか? その中に魂を内包していたようですよ」

『ふぅ~ん…、なんでそんな事してたの?』

「えぇ、自分から入って来たみたいです。『私を仲介しないとこれは動かせないのよ~』って言ってました。まぁ今仲介してなくても動いてますから、大丈夫でしょ」

僕の言葉に、再び画面の向こうは静かになった。



[37] Re[12]:EVANGELION~BlueBlue GlassMoon
Name: Torah
Date: 2003/09/17 08:45
『ハ、ハーモニクス全て正常値、暴走…な、ないのかしら?』

『…マヤ、私に訊かないで』

赤木さんはアナウンスを先ほどからしてくれる女性に向けて困った顔をした。

『…シ、シンジ君、いける?』

葛城さんが、僕に問い掛けてくる。

「あ~、イケると思いますよ。なんとなく身体が重い感じしますけど」

『エ、エヴァンゲリオン発進準備』

葛城さんが僕の返事を聞いてから、号令をかけた。

『第一ロックボルト解除』

『解除確認、アンビリカルブリッジ移動開始』

『第二ロックボルト解除』

『第一、第二拘束具除去』

『一番から十五番までの安全装置を解除』

『内部電源、充電完了』

『外部電源接続、異常なし』

『了解、エヴァンゲリオン初号機射出口へ』

『進路クリア、オールグリーン』

『発射準備完了』

『…かまいませんね?』

『えぇ…、シンジが決めた事ですから』

…なんで秋葉さんに訊くんだろう、葛城さんは。

『了解、エヴァンゲリオン初号機、発射!』

グンッ!

急激なGが、僕の身体を押し込む。

たった一秒から二秒の間だけど、僕はずっと考えていた。

…葛城さん、秋葉さんの下僕決定?
Gの負荷から逃れて、僕の目の前には非常識の塊が立っていた。

「…まぁ非常識で行ったら、アルクさん達には敵わないんだろうけど」

『…シンジ、それを言っちゃダメだ』

志貴さんに怒られた。

『最終安全装置解除、エヴァンゲリオン初号機リフトオフ!』

肩が縛られている感覚が無くなった。

とりあえずもう自由に動けるらしい。

『シンジ君っ!? 歩く事をかんが…』

葛城さんが何か言ってるけど無視。

とりあえずあの非常識の後ろに回りこんで、そのまま…。

「でぇ~いっ!」

後ろからおもいっきり蹴りをお見舞いした。

「見たかっ!? 秋葉さん直伝の『お嬢・ヤクザキック!?』」

『…シンジ、後でゆっくりとお話をしましょうね』

「…ゴ、ゴメンナサイ」

元祖の方を怒らせてしまったようだ。

蹴り飛ばした非常識は起き上がり、僕に向き直ってから目を光らせる。

ゾクッ

僕は自分の感覚に従い、身体を横にそらせた。

瞬間、光が僕の真横を通り過ぎ、後方で大爆発を起こす。

『なっ、あ、アレを避けた…』

「…避けちゃマズかったですか? 赤木さん」

僕は画面に映る赤木さんをジト目で睨んでみる。

そんな事を意に介さず、目の前の非常識はどんどんとビームを打ち込んでくる。

「ふっ、こんな飛び道具っ! 琥珀さんの『注射器あたっく☆』の速度に比べたらっ!?」

『…シンジさん、後でお話しましょうね~』

…また怒らせてしまったらしい。

そんな事をしながらも、次から次へと飛んでくるビームを避けていると、非常識は手から光の槍を打ち込んできた。

ザッ

それもまたもや避ける。

「…パイルバンカー?」

僕が一人呟いていると、非常識はまたもや連続でパイルバンカーを打ち込んできた。

「ふふふっ、こんなものぉ! シエルさんの『ななこちゃん乱れ突き』に比べたらっ!?」

『…明日からのお勉強が楽しみですねぇ~、シンジ君』

「…知得留先生、ゴメンナサイ」

宿題(就寝前のトラップ)はやめてください。

とにかく、華麗に敵の攻撃を避けつづけるが、攻撃手段が無い。

「あの~、なにか武器って無いんですか?」

僕は攻撃を避けつつ、画面の向こうへ訊いてみた。

『肩にプログレッシヴ・ナイフが装備してあるわ』

「…ナイフかぁ~。まぁ、しょうがないか…」

赤木さんの説明に、僕は一人呟きながら非常識から距離を取り、肩に装備してあるというナイフを取り出した。

――――ドクン

「…………くっ」

『…シンジ、スイッチONか?』

軽い調子で志貴さんが問い掛けてくる。

『別に、いいんじゃないのか?』

やはり軽い調子で、志貴さんは僕を促した。

僕は静かにナイフを構え、顔を上げる。

途端、非常識の身体に、黒いラクガキを見止める。

『……蒼い、目?』

『嘘…、さっきまで、黒かったはず…』

スピーカーから、そんな声が聴こえる。

だが、僕は唯、目の前の黒いラクガキを見つめるだけ。


「…吾は面影糸を巣と張る蜘蛛。
 ようこそ、このすばらしき惨殺空間へ」


僕はそう口にして、ニヤリと自分の顔が歪むのが判った。

『…………』

スピーカーからは、何の声も聴こえない。

目の前の非常識は、こちらの気配がわかるのか、動こうとしない。

近づく素振りすら、見せなかった。



―――――ドクン

心臓が、早鐘を打つ。

―――――ドクン

もう、我慢できない。

―――――ドクン



「―――さぁ、殺しあおうぜ」



僕はそう言うと、非常識の目前に飛び込む。

だが、それが赤い壁に阻まれた。

『あ…、し、使徒からA・T・フィールドの発生を確認』

スピーカーから、そんなアナウンスが聴こえてきた。

「…くくくっ、お前、使徒っていうのか。…俺達が普段相手してるのも、『死徒』って言うんだよ。皮肉だなぁ」

僕は更に高揚する気分を押えながら、ナイフを逆手に持ち替えた。

『あっ!? しょ、初号機からA・T・フィールドの発生を確認! ナイフ周辺に高出力の反応! 強度…、ふ、不明ですっ!?』

『…不明って、どういう事!? マヤ! データの計測を続行!』

スピーカーからの声に返事もせず、僕は目の前に広がる赤い壁を切りつけた。

サッ

そんな音が聞こえそうなほど、赤い壁は綺麗に切れる。

『しょ、初号機、使徒のA・T・フィールドを…、しょ、消滅させましたっ!?』

『…消滅って、中和や侵食ではないのっ!?』

『いえ…、しょ、消滅です!?』

「さて、赤い壁も消えたし、お前は…」

僕はポツリ呟くと、一気に非常識の懐にもぐりこむ。



「―――極彩と散れ」



一言告げ、非常識の身体中に走る『線』に、すれ違いざまナイフを走らせた。

……少し経ち、非常識の身体は17個に分断され、地面へと散らばった。

「…で、これを吸収、か」

僕は崩れた非常識の身体から赤い球をくり貫くと、それを手に持つ。

すると、その赤い球は初号機の身体へと入って来た。

『…パ、パターン青、消滅…。使徒、殲滅しました…』

そんな声だけが、響いてくる。



[37] Re[13]:EVANGELION~BlueBlue GlassMoon
Name: Torah
Date: 2003/09/17 09:49
僕は出てきた射出口から地下へと戻り、格納庫へと収納された。

「…やっぱ、ナイフ持つとアレですね。志貴さんの影響が大きく出ますね」

『あのな…、人をアブナイ人間みたいに言うなよ…』

「…人間かどうかも怪しいもんじゃないですか、『師匠』」

僕の一言に、画面内の知らない方々が志貴さんから距離を取るのが見えた。

『…シンジィ~、お前の所為で危険人物みたいな扱いされたぞっ!?』

「…それは僕の師匠だからなんですかね? 志貴さんの元々の危なさから来てるんですかね?」

僕は更に言葉を続ける。

だが、画面内の方々は、僕と志貴さんの顔を見比べて、各自仕事へ戻った。

「…良かったですね、人として認められましたよ」

『…その子悪魔っぷりは琥珀さんに似てるよな、お前』

「…誉めてる?」

『あぁ…、十分な』

僕は志貴さんの後ろで、目を光らせている琥珀さんを視た。





『シンジ君、降りてきて貰えるかしら?』

赤木さんの言葉に、僕はちょっと考えてから返事を返す。

「あ~、ちょっと母さんをひねり出すので、ちょっと待ってて下さい」

僕はそう言うと返事も訊かず、目を閉じて精神集中に入った。



まず、母さんの魂に干渉…

母さんが送るイメージを頭に描く

形を創る…

はっきりとイメージできた所で、初号機に同時干渉…

初号機が取り込んだ力を使い、形にする…




スッ…

全ての工程が終わり、目を開ける。

すると、LCLに浮かぶ若い女性の姿が目に入った。

『エ、エントリープラグ内に、生命反応が二つ!?』

『そ、そんな…、碇、ユイ…』

愕然とした表情で、赤木さんは母さんの姿を眺めていた。

「それじゃ、母さん抱えて出ますから。どうせ検査とかするんでしょうからストレッチャーを用意しておいてください」

僕はそう言うと、着ているカッターシャツを脱いで、母さんに着せてからエントリープラグを排出した。





コツ、コツ、コツ…。

クルッ

コツ、コツ、コツ…。

「…赤木さん、入っちゃいますよ?」

ストレッチャーで運ばれてから、母さんの意識が戻ったという連絡を受け、僕達は赤木さん、葛城さんと一緒に母さんの病室の前に来ていた。

「…そ、そうね…。早く入らないと…」

そうは言うが、赤木さんは一向に入ろうとしない。

いい加減じれたので、僕は病室のドアを叩いた。

トントン

「…はぁい」

中から、欠伸をかみ殺したような返事が聞こえる。

その返事を確めてから、僕は病室へと入った。

ガラララッ

「…失礼しま~す」

僕達はゾロゾロと母さんの寝るベットへと近づく。

「…いらっしゃい、シンジ」

「…おはよう、母さん。といっても今は夜だけどね」

僕達は軽く挨拶を交わすと、病室の個室に備え付けてあるソファーに腰を降ろした。

「…シンジ、そちらの方々を、紹介してくれない?」

母さんはそう言うと、僕の横に座っている人達を一瞥した。

「…ん~と、今、僕と一緒に生活してる遠野一家」

「…シンジ、説明短すぎ」

アルクさんに突っ込まれてしまった。

「どうも、初めまして。遠野志貴です」

「私は義妹の遠野秋葉です」

「…遠野家使用人の翡翠と申します」

「同じく、遠野家で家政婦やってます琥珀です~」

「もう一人、遠野四季っていうのもいるんだけど、今はお留守番してもらってるんだ」

今頃さつきさんと仲良くお風呂でも入ってるんだろうな~。

「どうも、ご丁寧に。シンジの母親の、碇ユイです」

遠野家一同のご挨拶に、母さんは頭を下げた。

「それで、こっちの人が…」

「ん~、私も? 私はアルクェイド・ブリュンスタッド」

「私は知得留=エレイシアです」

…シエルさん、その偽名はやっぱ辞めたほうがいいと思う。

「こちらの二人も、遠野家で一緒にお世話になってたりならなかったり…」

「うぅ~ん、ちょっと母さん、意味わかんないかな?」

なんとなく、軽いノリで母さんとの会話がスタートした。



[37] Re[14]:EVANGELION~BlueBlue GlassMoon
Name: Torah
Date: 2003/09/17 14:24
「…それで、こっちのお二方は……」

僕は横に立っている葛城さんと赤木さんを見て言葉を続けようとするが、母さんは笑顔で言葉を続けた。

「…ナオコさんの娘さんのリッちゃんと、葛城博士の娘さんのミッちゃんでしょ?」

…リッちゃん、ミッちゃん、か。

「…そんな年でもないでしょ」

「うるっさいわねっ!?」

小声で呟いた僕のセリフに、ミッちゃんが噛み付いてきた。

「…エヴァの中で眠ってて、起きた時にね、シンジと会話しているのを聞いてたのよ」

「…なるほどね」

僕は母さんの言葉に納得して、一人頷いた。

「…それで、シンジ」

「……ん? なに?」

「どうして…、私を仲介しないでエヴァを動かせたの?」

そういって、母さんは僕をジト目で睨む。

なんとなく、だだっ子のような、邪険に扱われた人みたいな目で僕を睨む。

「…ん~、それはよく判んない。だってあんなの初めて乗ったもん」

「そう…、そりゃそうよねぇ~」

僕の言葉に、母さんはともかく、赤木さんも一緒に肩をがっくり落とした。

「…それで、シンジ。貴方、遠野さんの所にお世話になっているって言っていたけど、どういう事?」

「そ…そういえば、私達の報告書にはそんな報告は来ていないわ…」

母さんの質問に、赤木さんも一緒になって訊いてきた。

その横では、葛城さんも興味深々と言った感じで目を輝かせる。

僕はそこで軽く溜息をつくと、事情を頭で整理して、母さんに話す事にした。

事実を包み隠さずに。

「…僕は、母さんの起動実験が失敗…、まぁ母さんからすると魂の内包に成功した後、父さん…、碇ゲンドウに親戚のおじさんの所へ行くように言われたんだ。
 それで、行く途中で志貴さんと、志貴さんの先生の猛特訓中の場面に遭遇しちゃって…、なんか一回肉体が死んじゃったんだって」

「はっ…?」

葛城さん、赤木さん、母さんはそれぞれ『何言ってるの?』という顔をしている。

そんな事に構わずに、僕は話を続けた。

「それで、その特訓に巻き込まれて肉体が死んじゃったんだけど、志貴さんの先生、青子さんて言うんだけどね、その人の仲悪いお姉さん、燈子さんに肉体を再構成して貰って、志貴さんの血を分けてもらって、生きながらえたんだってさ。
 それで、まぁその影響でイロイロあって、僕の保護を志貴さんがする事になって、そのまま遠野家で今まで生活してたって訳」

ここまで、自分や志貴さん、遠野家のトップシークレットには触れていないはず。

「…シンジ、その、ゲンドウさんは…」

僕は、少し青い顔をした母さんの含んだ言葉に、首を縦に振った。

「…父さんは、母さんがいなくなってすぐ僕を自分から離した。
 まぁ簡単に言っちゃうと僕を捨てたんだよ。自分じゃ育てられないと思って」

「…そう…、そんな事が…。ごめん、なさい…」

母さんはそう言ったきり、俯いて黙り込んでしまった。

「…母さん、僕達今日はとりあえず帰るよ。…明日、また来るね」

「……えぇ、気持ちの整理をつけて、待ってるわ…」

「じゃぁ、おやすみ」

僕がそう言うと、ソファーに座っていた面々が立ち上がり、それぞれ好きに挨拶をして部屋を出て行く。

扉を閉めて、一息ついてから、僕達と別れようとする葛城さんと赤木さんを志貴さんが引きとめた。

「…イロイロ、お話があるんで、お食事にでも行きましょう」







ちょっと高そうな中華のお店の個室に通され、僕達9人は思い思いの座席で、食事を楽しんだ。

ひとしきり、食事を楽しんだ後、葛城さんから声がかかる。

「…それで、私達にお話というのは?」

葛城さんは、志貴さんを確めるように見つつ、秋葉さんの機嫌に細心の注意を払っていた。

……かなり秋葉さんが怖いらしい。

「…貴女達が知っている碇シンジと、ここにいる碇シンジの違いを、まず教えようと思います」

…唐突に、志貴さんは手札を一枚切った。



[37] Re[15]:EVANGELION~BlueBlue GlassMoon
Name: Torah
Date: 2003/09/17 15:53
「…簡単に言うと、ここにいるシンジは貴女方の調べた碇シンジとは別人ですが、正真正銘貴女方が知っている碇シンジです」

「「………はっ?」」

『ワッカリマセ~ン』て感じで目の前の二人は呆けた顔をしている。

そんな事に構わず、志貴さんは言葉を続ける。

「ここにいる碇シンジは幼少の頃からずっと僕と一緒に生活をしてきました。
 ですが、貴女方の知っている碇シンジは幼少の頃からずっと碇ゲンドウが当てたおじさんの所で生活をしていた、そうでしょう?」

「……えぇ、そうよ」

いち早く立ち直った赤木さんが、志貴さんの言葉に返事をする。

「つまり、そういう事です。
 貴女方の知っている、というか調べた碇シンジはおじさんの家で生活をしていた碇シンジで、遠野で生活していた碇シンジではない。
 だが、ここにいる遠野で生活していた碇シンジが正真正銘碇ゲンドウの息子である碇シンジ。
 …ここまで言えば、意味はわかるでしょ?」

「…つまり、NERVが知っている碇シンジは、真っ赤なニセモノ…?」

「厳密に言えば、碇ゲンドウが三年前まで年に一回逢っていた碇シンジも、ですね」

志貴さんの言葉に、二人は絶句していた。

「…まぁ、NERVの諜報部が悪い訳ではないんですけどね。
 遺伝子的には100%同一人物なんですから」

「……ありえないじゃない。100%遺伝子的に同一のニセモノなんて」

志貴さんの言葉に、赤木さんが再び絶句する。

「…病院での会話、覚えていますか? シンジが一回死んだという」

「………えぇ、一回死んで、『肉体』を再構成…、あ、まさか…」

シエルさんの言葉に、赤木さんが的を得たように返事をする。

シエルさんはその返事に嬉しそうにうんうん、と頷く。

「正解です。再構成できるなら、新しく創造する事も可能。
 つまり、同じ人間の肉体をもう一つ造って、擬態の魂をあてがう。
 それを行く予定だったおじさんの家に持っていけば碇シンジの真っ赤なニセモノの完成、です」

シエルさんはそう言うと、説明した事に満足したのか、ずずずっ、と中国緑茶を啜る。

「…そんな、そんな技術、ありえない……」

「どういった技術かは知らないですが、実際できちゃったんですよね…」

「……確かに、そういう事なら報告書との違いを説明できるわ。
 …おじさんの家に居た碇シンジには、遠野さんとの関係は一切認められないもの」

絶句している赤木さんを他所に、志貴さんの言葉を葛城さんは納得した面持ちで受け止めた。

「…さて、そういう事なので、こちらも少し聞かせて頂いていいですか?」

未だに止まっている赤木さんを放っておいて、志貴さんは葛城さんに問い掛ける。

「…えぇ、私で答えられる範囲なら」

葛城さんが神妙な面持ちで返事をすると、志貴さんは僕を促す。

僕はそれに無言で頷くと、葛城さんに向き直った。

「……『人類保安計画』ってなんですか?」

ガタッ

「いや、『人類補完改革』じゃなかったか?」

ガタタッ

「お二人とも、『人類補完計画』ですよ」

ガタタタッ

僕達の言葉に、目の前で赤木さんが思いっきり椅子を揺らして狼狽していた。

一方の葛城さんは『何ソレ?』って顔でこちらを見ている。

………さすが要注意人物NO.1

「…どうやら、赤木さんは知っているようですね」

僕はニンマリと笑うと、赤木さんを見つめる。

その顔は、酷く青ざめていた。

「…あっ、貴女達! ど、どこでそんな情報を……」

「…まぁ、話せば長くなるんですけどねぇ」

「ふっ、そんな情報、遠野グループの本家である遠野家にかかれば、簡単なものですわ」

……確かこの情報は『協会』からだったと思うんですが、秋葉さん。

「……と、遠野グループ? ってあの日本経済の中心と、世界経済の柱って言われてる…、大財閥?」

秋葉さんの発言に、葛城さんは思いっきり反応した。

「えぇ、そうですわよ。私は今代遠野家当主、遠野秋葉。言うなれば遠野グループの総長、って所ですか?」

さらりと出た爆弾発言に、二人揃って被弾した。

「あっ、そ、そそ、そうちょうぅぅぅ~~!!」

「………な、なんて事…」

「…ちなみに、シンジは遠野家より影響力は下ですが、碇財団という所の次期総帥、という事になっていますが? まぁ公式なものではありませんがね」

またまた投げ込まれた爆弾に、またもやお二人は被弾、大変な事になってます。

……爆弾投げすぎです、秋葉さん。

「…まぁ、そんな事はどうでもいいんですけど。…それで、どこまで知ってるんですか?」

僕の『どうでもいい』発言がちょっと癇に障ったのか、不愉快そうな秋葉さんにビクビクしながら僕は赤木さんに聴いてみた。

「…わ、私は何も………」

「…そんなに動揺してる人間が、何も知らない訳ないですよね」

爆弾でボロボロになったんだろう、取り繕う事も無く赤木さんは動揺を前面に押し出していた。

だが、赤木さんは一向に口を割ろうとしない。

「……赤木さん、こちらとしては、別に力づくでもいいんですよ?」

僕がそう言うと、琥珀さんが着物の袖から二つの注射器を取り出した。

「うふふっ…、赤いのとぉ~、青いの、どっちがいいですかぁ~?」

………怖いよ、琥珀さん。

「大丈夫ですよぉ~、ちょ~っと痛くなった後、すっきりとしますから~」

………何が大丈夫なのか判りません。

目の前に赤いのと青いのを突きつけられ、赤木さんは観念したのか、大人しくなって言葉を発した。

「………その計画は…」





「……という訳よ」
僕達は赤木さんの説明を受けてから、とりあえずお互いの顔を見合わせて言った。

「…法王庁勤務のシエルさん、ご感想は?」

「非常に不愉快ですね」

ばっさりと斬り捨てました。

「大体、何故あんな化け物が天使の名前を冠するんですか?
 まずそれが意味判りません。
 加えてあの化け物が人類の出来そこないとは…。
 本当に、地球という生命はロクなモノを造りませんね」

シエルさんはそう言って、地球の触手であるアルクェイドさんを見て溜息を尽いた。

「…な~んか、バカにされた? 私」

アルクさん、なんとなく不機嫌そうだ。

「…とりあえず、全てはセカンド・インパクトがきっかけ、か」

志貴さんがそう呟くと、葛城さんの肩がビクッ、と震えた。

「…確か、葛城さんのお父さんは、スーパー・ソルノイド理論に基づく研究をされていたんですね。…南極で」

「………えぇ、そうよ。…その研究している所に、大きな羽根が…。
 その羽根は使徒のものだという事を教えて貰ったわ。
 …私はその時の南極で唯一人の生き残り。
 だから…、ううん、私は、使徒への復讐の為に今NERVで働いている」

葛城さんは俯き、拳を握り締めながら語る。

だが、その内容は、いささか問題があった。

とりあえずその問題は置いておく事にする。

「…そして、そのセカンド・インパクトで目覚めた使徒が、今ここに向かってくる。全てはサード・インパクトを示す裏・死海文書の記述のままに、か」

「それを利用して呪術を行い、地球の生命を群体から固体へ還元、つまり一度一つにしてからSEELEの用意した心の壊れた依り代を使い、SEELEの思うままの世界を創造。まさに神に欺く行為、って所ですか」

志貴さんと僕の言葉に、赤木さんと葛城さんは、大きく動いた。

ガタッ

パシッ

「…あんたっ! そんな事に手を貸そうとしてた訳っ!?」

葛城さんは赤木さんの頬を張り、彼女を罵る。

赤木さんはされて当然とばかりに俯き、微動だにしなかった。

「…何とか言ったらどうなのよっ!? あんたっ!?」

「葛城さん、赤木さんは唯利用されていただけなんです…。貴女が復讐心を利用されていたように…」

シエルさんがそう言うと、葛城さんは俯き、震える拳を押さえつけて椅子に座った。

「…葛城さん、貴女は本当の事を知りたいですか?」

「…………どういう事?」

僕の問いかけに、葛城さんは顔を上げて反応した。

「…僕達に協力してくれるなら、教えましょう。『真実』を」



[37] Re[16]:EVANGELION~BlueBlue GlassMoon
Name: Torah
Date: 2003/09/17 17:07
「………するわ。何だってする。だから、真実を教えて」

葛城さんは決意を持った視線を僕に向けて、言い放った。

僕はその視線を受け、一息つく。

「…約束してください。恨むな、とは言いません。ですが復讐しよう、などとは考えないでください」

「…………判ったわ」

「……では、話しましょう。セカンド・インパクトの真実を」





「まず、きっかけは南極での第一使徒アダムと呼ばれるモノの発見でした。
 続いて第二使徒リリス。
 恐らく、これは裏・死海文書の記述を元に捜索した結果でしょう。
 裏・死海文書の解読者は、碇ユイ。僕の母さんです」

「…………ユイさんが、解読者…」

葛城さんの声を聴き、僕は先を続けた。

「文書の通りに解読して、アダム・リリスを発見。
 その内容を知っているSEELEは『人類補完計画』をこの頃から開始したんでしょう。
 …先ほどの赤木さんの話から行くと、この仮説は恐らく的を得ていると思います。」

「……そうね、多分その頃からだと思うわ」

赤木さんの言葉に頷いてから、僕は先を続けた。

「…そして、まず計画の第一歩となるセカンド・インパクトの発動。
 これに利用されたのが、アダム発見の報を聞き、夢の無限エネルギー、スーパー・ソレノイド理論を研究していた葛城博士率いる葛城調査隊のメンバーです」

「……父、さん…」

葛城さんは胸に下がるネックレスを握り締めて、静かに僕の話を聞く。

「そして、当時碇ユイのコネにより、SEELEの駒使いをしていた現、碇ゲンドウが南極に行き、密かに第二使徒・リリスを南極から持ち帰る。
 そして、葛城博士の指示の元、S2機関の実験が始まり、暴走。
 博士はその被害を最小限に止めようと奮闘するが、アダム覚醒。
 一旦目覚め、インパクトを起こすも、葛城博士の身を削る尽力によりアダムは冬眠、恐らくSEELEで言う『ロンギヌスの槍』で魂の還元をされ、インパクトの被害を最小限に押し止めた。
 ……この話は、先ほど赤木さんから聞いた真実、『協会』の報告に上がった真実、そして僕の両親に関する真実で固めた話です。
 恐らくここまでの話は、赤木さんも知らないでしょう」

「………えぇ、知らなかったわ」

僕の言葉に赤木さんは返事を返す。

ここまでの話で、葛城さんは幾らかショックを受け、幾らか真実に癒されたはずだ。

だが、話はまだ終わらない。

「……葛城さん」

「………まだ、話は続くの?」

僕は葛城さんの言葉に無言で頷く。

「……エヴァンゲリオン初号機、アレは恐らく、第一使徒アダムの模造品…、つまりコピーです」

僕の言葉に、葛城さんは今後こそ大きなショックを受けた。

…まさか自分が復讐に利用しようとしていた道具が、父を殺した使徒のコピーだとは思わなかっただろう。

「………な、んで…、そこまで判るの?」

赤木さんは、葛城さんと同じように、だが違うショックを受けていた。

「…魂の干渉です。その時に初号機が語ってくれました」

「……そう、人造人間だものね…」

赤木さんはそう言うと、ぐったりと頭を垂れる。

葛城さんに至っては、目的、目標を見失ったショックで、自己の確立が上手くいっていないようだ。

「……葛城さん、ここまで全て、真実です」

「…………そう、判ったわ」

葛城さんはそう言うと、深く沈んだ顔を上げた。

「…葛城さん、先ほど約束しました。僕達に協力してください」

「………えぇ、何をするの?」

葛城さんは自分を見失い、茫然自失状態。

だが、話を続ける。

決定的な一言を。

「…『人類補完計画』、その為に葛城博士を利用し、セカンド・インパクトを起こし、今また葛城さんを利用しようとしたSEELEに『制裁』を加える手伝いを」

この一言で、葛城さんの目は大きく見開かれ、僕達に向き直った。

「………するわよ、やらせてっ!?」

葛城さんは大きく頭を振り、僕達の協力者になる事を了承した。

「……貴女達、SEELEと争うつもり?」

一人、赤木さんが冷めた視線で僕達を見やる。

それに葛城さんが食って掛かろうとするが、秋葉さんが視線で押し止めた。

「…今、私達は実質上遠野家、碇家で世界経済の1/3は押えていると思いますが?」

「…経済力では張り合えるかもしれないけれど、力で来られたらどうするのよ? 今日の一連の騒動で貴女達個々が強いのは判ったけれど、軍隊に攻め込まれたらおしまいでしょう?」

赤木さんの『一般的』な意見を、アルクさんが鼻で笑った。

「…人間なんて、いくら来たって私に敵う訳ないし~。
 まぁ最も、軍事力とかいう面だったら逆にこっちのほうが圧倒的に上なんじゃない?」

「そうですねぇ。時計台と法王庁を巻き込んでしまえば、各国のキリスト教集団や軍、加えて魔術士や志貴さん達の師匠である魔法使いのお二方も引っ張ると、SEELEなんて秘密になってない秘密結社なんてあっという間に消えてなくなるでしょうね」

「遠野家の人間も加えるともっと早くなりますわね」

「…使徒を相手にするより遥かに厄介なヤツをゴロゴロ敵に回してるなぁ、SEELE」

「でも力でねじ伏せるだけだったらこれからすぐにでもできるんでしょうけど、それだけじゃダメなんですよね~」

「はい、姉さんの調べた所、SEELEという組織はセカンド・インパクトで甚大な被害に遭われた国に経済援助をしていますから、その国々が崩壊してしまう恐れがあります」

「…自立できていない小国に援助をして、ある意味人質に利用している訳か」

「そちらのほうは、遠野家と碇家両家で一度会談を開き、なんとかする事にしましょう」

「SEELEっていう組織は、投資家や資産家の集まりなの?」

「えぇ、最も老い先短いご老人ですけれど、人体改造なぞをして存命しているようですよ」

「…金持ちの道楽か」

「そこまでして、神とか言うのになりたいのかにゃ~?」

「だから下らない計画を立てているんじゃないのでしょうか?」

「NERVという組織の事を考えると、国連にも手を回しているんだろうね」

「そうですわね、最もそちらはすぐに手を打てますが、まだ泳がせておく事にしましょう」

「じゃぁ明日にでも協会と教会、家にいる四季と碇家に連絡するか」

「そうですね~。とりあえず両『きょうかい』のほうには現状維持、遠野、碇両家は、経済活動と小国に対する経済支援をするようにしましょう」

「という訳なので、NERV内部に関しては葛城さんと赤木さんに協力して頂きたいんですが」

「………私も?」

今まで議論の蚊帳の外だった二人に声をかけると、赤木さんが驚いた声を上げる。

「えぇ…。今まで利用されてきたツケ、払ってもらわないと、でしょう?」

「………それは、そうだけど」

「赤木さん…、貴女はポイ捨てされるような女性ではないでしょう」

「……知ってたの?」

「いえ…、母さんの病室に入る前の行動、計画の概要と事の真実をある程度認識していた事を踏まえて考えた結果です…。
 赤木さん、父さんと関係を持っていたんでしょう?」

「…道具として、だけどね」

赤木さんは自嘲的な笑みを浮かべると、一つ、溜息を尽いた。

「………判ったわ。今更だけど、鎖を断ち切ろうと思う。…手伝ってくれる? シンジ君」

「えぇ…、喜んで」

僕は笑みを浮かべると、赤木さんと握手を交わした。



[37] Re[17]:EVANGELION~BlueBlue GlassMoon
Name: Torah
Date: 2003/09/18 02:04
コン、コン

「…どうぞ」

カチャ…。

「おはよう、母さん」

「おはよう、シンジ。…あら、遠野さん達は?」

病室に迎え入れてくれた母さんは、昨日より来客が少ないのを不思議に思ったようだ。

「秋葉さんと志貴さん、シエルさんと翡翠さんは用事でお出かけ。
 アルクェイドさんと琥珀さんはホテルで連絡待ちだってさ」

「そう…。わざわざありがとうね、シンジ。リッちゃんとミッちゃんも」

「いえ…、お気になさらずに」

やはり、気まずいのか、赤木さんはしどろもどろな返事を返す。

「そういえば…、母さんに聞きたいんだけど」

「…なにかしら?」

突然の僕の言葉に、母さんは少し怪訝な顔をして返事をした。

「中に入っている間、どんな感じだったの?」

「…寝てたからわかんないわ」

あっさりとした意見でした。

なんとなく、母さんと赤木さん、二人して悔しそうです。

とりあえず、次の質問に行こう。

「そういえばさ、なんで昨日の非常識は『使徒』なんて呼ばれてるの?」

「…それは、私には判らないわね」

母さんは知らない。

という事は死海文書にはそういった名前などは記載されていないという事か。

「……私も、その経緯については知らないわ。ただ…」

赤木さんの言葉の続きに、僕は興味を引かざるを得なかった。

「……昨日の『使徒』は、『第三使徒・サキエル』と名づけられたわ」

「…サキエル、ねぇ。という事は最低でも後6体は来るわけか」

「いえ、14体のようよ。…でも、なんで6体だと思ったの?」

「だって、サキエル、ですよ。ユダヤ文書では唯天使の人の一にしか数えられませんが、エッセネ派の信仰体系では大天使の一に数えられる、木曜日の水の天使です。
ユダヤ文書で数えるなら相当な数が来ますが、エッセネ派で数えると七体。
それでサキエルが消えたから残り6体、という訳です」

「…私にはさっぱりだわ………」

僕の言葉に、葛城さんが額を押えてうめいた。

まぁ興味が無い人にはとことんわからない事だ。

「でもそうすると、次のはどんな名前が付くんですかねぇ…」

「…それは、『上』が決める事でしょうね」

「『上』ねぇ…。ま、僕には関係ないか」

僕はそう言うと、ソファーにストンと座った。

それに続き、赤木さんと葛城さんもソファーへ座る。

丁度その時、病室のドアが開かれた。

「……おや、君達」

「あら、冬月副指令…」

「僕が呼んだんですよ。最も、呼ばなくても来る予定だったんでしょう? 冬月先生」

「…おや、シンジ君には全てお見通しか」

副指令は頭をポリポリ掻きながら対面のソファーに座った。

そこに、ベットから起き上がった母さんも座る。

「……さて、お話とは何かな? 碇達の今後に関わる重大な話だと聞いているが」

「…えぇ、とりあえずは、これは貴方方にとってはとても重大な話です
……」

僕はそう言って、昨日赤木さん達に話した事を包み隠さず説明した。



[37] Re[18]:EVANGELION~BlueBlue GlassMoon
Name: Torah
Date: 2003/09/18 06:56
「……冬月さん、魔術士協会という組織が、世界にはあるんです」

「………それが、どうかしたのかね?」

僕の唐突な言葉に、冬月さんは少し言い淀んでから返事をした。

「そこでは、魔術士と呼ばれる、呪術や神秘、秘宝、奇跡の類に加え、現存する科学力を駆使する、一般的に言えば天才、と呼ばれる人達が日々、自身の命題の為に研究を繰り返しているんだ」

「………そんな話、聞いた事が無いぞ」

「それはそうでしょう。何千という魔術士は、自身の研究を世界に出す事を嫌う、言わば自己満足の為に自分達協会の人間を互いに隠匿させながら研究しているんです。
 そして、その魔術士達の上には、呪術、神秘、奇跡や秘宝、科学力に置いて世間ではオーヴァーテクノロジーと騒がれる技術を平然と使いこなす魔術師たちよりも、更に上のオーヴァーテクノロジーを駆使する人達がいる。
 …その人達は、協会では『封印指定の魔法使い』と呼ばれています」

「…………それで?」

「……僕と志貴さんの師匠は、その『封印指定の魔法使い』の一人、蒼崎青子さん。そして、僕の命を救ってくれたのは、『封印指定の魔法使い』の一人で、蒼崎青子さんの姉の、蒼崎燈子さんと言うんです」

「……その、魔法使いとやらが、どうかしたのかね?」

「いえ、少し話が逸れました。
 …先ほど言った協会に居る魔術士達は、自身の命題、つまり個々の考えるアプローチによって、たった一つの事柄を研究しています」

「………それは?」

「…………世界の破滅を防ぐ方法、です」

僕の一言で、冬月さん、母さんと赤木さんはゴクリと唾を飲む。

「…彼らはその研究の為に生涯を捧げる…。
 最も、彼らは個々で延命措置をして、もう何百年と生きている人達がゴロゴロしていますが。
 …その人達に、貴方達NERV、しいてはSEELEの画策している『人類補完計画』という群体から固体にヒトを纏める、なんていう計画が知れたらどうなるんでしょう?」

「……………どう、なるのかね」

かすれた声で、冬月さんが問い掛けてきた。

僕はその問いかけを聞いて、懐から黒い銃身を取り出す。

「これは、ブラック・バレルという、恐らく世の中ではオーヴァーテクノロジーの塊、と呼ばれるシロモノです。
 …エヴァンゲリオンが入っているケイジの天井、見ました?
 あの穴は僕がこの銃で空けたものです」

「………本当かね? 赤木君」

「えぇ…、その現場は見ましたわ」

冬月さんの問いかけに、赤木さんは肯定を示す。

そこで、冬月さんの顔色は青くなった。

「…ですが、これはレプリカなんですよ」

「……レプリカ?」

「えぇ、レプリカ、模造品です。
 だからこんなものを研究なんてしていない僕が持っているんです。
 ……そして、このレプリカは、大量にあります」

「………そうか、レプリカ、だしな」

「えぇ。そして、レプリカだから…、オリジナルには、到底及ばない」

「……………」

冬月さんは、僕の言葉の意味を理解したのか、顔が真っ青になっている。

「ですが、このブラック・バレルのオリジナルの技術も、『封印指定の魔法使い』の魔法には到底、及びません」

「…何が、言いたいんだね」

「いえ、別に…。ただ、僕の師匠のお二人は、自意識過剰かもしれませんが、大変僕に対して好意的です。
 そして、僕の敵にはもの凄い敵意を持っています。
 …例えば、僕を幼い頃捨てた人間、とか、その周辺にいる組織、とか。
 この間、来た手紙、アレにはNERVのIDカードが入っていましたね? 
 …運が悪い事に、その手紙は僕より先に師匠達に読まれてしまったんですよ」

「……………そ、その師匠達は、一体どうしたのかね?」

「いえ、別に心配しなくても大丈夫です。
 僕と遠野志貴さんから『今の所』は手を出さないでくれ、とお願いしてありますから。
 …最も、『今の所』ですけれどね」

「…………要求、は?」

「そんな、要求なんてものはありませんよ、『お願い』です。
 …一つ、碇ゲンドウに碇ユイ帰還を今のまま知らせない事。
 一つ、僕達の行動の邪魔を一切しない事。
 一つ、人類補完計画の破棄。
 一つ、SEELE、及び碇ゲンドウに僕達の事を知らせない事。
 一つ、僕達の意向を、冬月さんの出来る所まででいいですから汲み取る事。
 …最後に、『背徳は死也、潔く逝くものはまた速やかに逝く』
 ……このお願い、聞いて頂けますか?」

「………判った、しかし、何故ユイ君の帰還を碇に知らせてはいかんのだ?」

「そうですね…、今の段階で母さんの帰還を知らせると、あの人の事だから
 後はどうでもよくなると思うんです。
 …母さんの為に、他人を利用する人間ですからね。
 それに、母さんの精神衛生上、あの人が側にいると良くありません」

「……シンジ、私は、なにかできる事ないの?」

ここで、初めて母さんが口を開いた。

「う~ん…、母さんにしか出来ない事って一杯あるんだよね。
 どこから手をつければ…」

僕の言葉を聞いて、母さんは凄く喜んでいた。

「…そうだなぁ、まず初めは、おじいちゃんに顔を見せにいってあげてくれないかな?
 …おじいちゃん、僕と年にニ、三回ぐらいしか会えないんだけどさ、会った時は凄く喜んでくれるんだけど、帰る時、凄く寂しそうなんだ…。
 だから、月に一回でもいいから会ってあげて欲しい。
 …母さんを碇家から出した事、母さんが居なくなった事、自分のせいだって未だに苦しんでるんだ」

「…そう、なの…。
 ありがとう、シンジ。教えてくれて」

母さんは、僕の言葉に、ポロポロと涙を溢しながらお礼を言った。

恐らく、寂しがっているおじいちゃんの事や、自分のした事の影響なんかを考えているんだろう…。

「…それからさ、僕の母さんだし、今後は一緒に生活しよう…。
 最も、遠野の人たちも一緒に、だけどね」

「…………そうね、そうしましょうね、シンジ」



[37] Re[19]:EVANGELION~BlueBlue GlassMoon
Name: Torah
Date: 2003/09/18 07:29
「………それから、冬月さん」

「ん…? なんだね?」

母さんが泣き止んで、一息ついた所で僕は再び冬月さんに話を振った。

「あのですね、僕は『魔術士協会』という場所の人間なんですが、今第三に来ている僕達の知り合いには、基督教…、つまり、法王庁、法王直結の機関に所属している方がいるんです。
 それに加え、僕と同じ師匠に師事している、『魔術士協会』の先輩で、僕の格闘技の師匠は、遠野グループの総長のお兄さんで、その妹さん達と一緒に僕は暮らしてきました。
 …加えて、僕は次期碇財団の次期総帥というポジションだったりします。
 ついでに言うと、一緒に第三に来た人達は、多分生身で使徒を倒せると思いますよ。僕もそうですけれどね」

「……あ~、つまり、君達を敵に回すイコール世界を敵に回すって事かね?
 それで、今後使徒を生身で対処する事があるかもしれんと」

「……まぁ、そういう事ですね。純粋なパワー、という部分では使徒に勝てるのは、多分一人か二人だと思うんですが、技や能力で言えば僕達が負けるという事は有りえないと思いますね」

「ふむ…、それは世の中に知れたら大変だな。
 …判った、NERV内部にそういった事が起こったら緘口令を布いて、情報操作の類をするよう手筈を整えておこう。
 …無論、SEELEにも知れる事の無いようにな」

「有難う御座います」

「いや、こうなったら最後まで付き合うしかないんだろう?」

「あはは…、まぁ、そうですけれどね」

「そういう事だ。…さて、SEELEからそろそろ招集がかかる。
 …老い先短い老人達の相手は任せておけ。
 最も、その相手をするのも碇が復帰するまでだがな」

「頑張ってください、冬月さん」

「あぁ…、それでは、またな。赤木君、シンジ君達に司令室と君の執務室以外のフリーパス、MAGIのSSSランクのIDを渡しておきたまえ。
 …MAGIのハッキングで徹夜など嫌だからな」

「…わかりました、副指令」

「うむ…。では、またなユイ君」

「はい、冬月先生」

冬月さんはそう言うと立ち上がり、病室を出て行った。

「……とりあえず、第一段階『説得』は成功かな?」

「……アレは、『脅迫』というのよ?」

まさか、葛城さんに突っ込まれるとは思わなかった。








『使徒再来か』

『余りに唐突だな』

『十五年前と同じだよ、災いは何の前触れもなく訪れるもの』

『幸いとも言える。我々の先行投資が無駄にならなかった点においてはな』

『そいつはまだ解らんよ、役に立たなければ無駄と同じ』

『さよう、今や周知の事実となってしまった使徒の処置、情報操作、ネルフの運用は全て適切かつ迅速に処理してもらわんと困るよ』

「その件に関しては既に対処済みです、ご安心を」

『しかし冬月君、ネルフとエヴァ、もう少しうまく使えんのかね』

『零号機に引き続き、君らが初陣で壊した兵装ビルの修理代、小国には影響するよ』

『聞けばあのオモチャは碇の息子に与えたそうではないか』

『人、時間、そして金、親子そろっていくら使ったら気が済むのだね』

『それに君達の仕事はこれだけではあるまい』

『人類補完計画、これこそが君達の急務だ』

『さよう、その計画こそがこの絶望的状況下における唯一の希望なのだ、我々のね』

それまで黙って聞いていた、バイザーをつけた老人が、ゆっくりと口を開いた。

『いずれにせよ、使徒再来における計画スケジュールの遅延は認められん。予算については一考しよう』

『では、あとは委員会の仕事だ』

『冬月君、ごくろうだったな』

その言葉を最後にバイザーをつけている老人と冬月コウゾウ以外の全てが消え失せた。

『碇に伝えておいてくれ、後戻りはできんぞ、とな』

その言葉を吐いたあと、バイザーの老人も消え失せた。

「…時間が無いのは、お前達だけだろう」





爆発の中心地付近にあるテントの中で、葛城ミサトはテレビを見ていた。

チャンネルを変えるがどのチャンネルも同じニュースしかやっていなかった。

「発表はシナリオB-22か、事実は闇の中、か」

「広報部は喜んでたわよ、やっと仕事ができたって」

「ウチもお気楽なもんね~」

「どうかしら、本当はみんな恐いんじゃない?」

「あったりまえでしょ」

「…でも、知らない方と知っている方、貴女はどちらが怖かった?」

「……そうね、知らない事って、怖いわね…。」





僕は病室をでて、廊下を歩いている。

外には、沢山の緑が生い茂っていた。

「……遠野の森は、もっと暗い感じだよな」

そんな事を考えながら歩いていると、目的の病室に辿り着いた。





『綾波 レイ』





それだけ書かれていた。

コン、コン

病室のドアを叩く。

…返事がない。

コン、コン、コン

再び叩く。

…やはり返事が返ってこない。

とりあえず、もう一度叩いてみようと思った時、

「…はい」

なんだか、鈴を鳴らしたような声が聴こえた。

「失礼ぶっこきます」

…みんなは、こんな言葉使っちゃダメだぞ?



[37] Re[20]:EVANGELION~BlueBlue GlassMoon
Name: Torah
Date: 2003/11/06 21:43
病室の中は、木漏れ日が差して白かった。

ていうか、壁が白すぎ。

まぁ病院だからしょうがないんだろうけど。

そして、その病室で寝ている彼女も白かった。

肌が真っ白で、日の光を受けて白く輝いている。シエルさん以上の白さ。

髪の毛は青い。

そして、目が赤かった。

アルクェイドさんは紅って感じだけど、この子の場合はうさぎの目みたいな赤だなぁ、とか一人で考えていた。

「…何?」

なんとなく無愛想だけど、この子が言うと神秘的な感じがする。

「あぁ~、怪我、どう? 昨日傷口開いていたけど…。
 腕のギブスとかは取れてるんだね。
 じゃぁ内臓も問題ないかな?」

「…問題ないわ」

「そっか~、僕も治癒に手を貸しても良かったんだけど、さ。
 イロイロあってね」

僕の何気ない言葉に、彼女は首を傾げた。

「まぁ、どうでもいいか、そんな事。
 …とりあえず自己紹介。
 僕はシンジ、碇シンジ。ヨロシク」

「……碇?」

「そ、碇。碇ゲンドウと同じ苗字の碇。一応親子」

「……碇司令?」

「んだよ。NERV総司令碇ゲンドウの今の所息子って事になってる。
 …とまぁそういう訳なんだけど、さ」

「……何?」

僕はそう言うと、訝しげに見つめてくる綾波の横に立ち、未だに包帯が巻かれている上半身のパジャマを脱がす。

パサッ

「………」

彼女は何も言わない。

まぁ何か言われても無視だけど。

「フンフフ~ン♪」

僕は鼻歌を口ずさみながらポケットから塗り薬を取り出し、巻かれている包帯を同じくポケットから取り出した蒼崎燈子製作、碇シンジ専用の特製刃物『万能君三号』(魔刀・眞)でさっくりと切断。

ハラリ

そんな音が聴こえそうなほど軽やかな切れ味。

流石燈子さん。
「たびぃ~ゆけぇ~ばぁ~♪」

何となく短歌を口ずさんで傷の上に塗り薬を塗る。

ヌルヌル

ヌルヌル

「…っと、これで、あ・と・はぁ~♪」

そう言って、今度は薬を塗った所の抜糸をして、上に手を翳して精神集中。

薬にはなんだか知らないけれど局部麻酔の効果があるっぽい。

掌に力が集まるのを感じて、じんわりと垂れ流す。

じわじわ

じわじわ

じわじわ

「…こんなもんかな?」

目を開けて、傷口が塞がってるのを確認してから、彼女が着ている病人服って感じのモノを着せる。

「よし、おしまい。これですぐにでも動けるっしょ」

「………何故?」

「…なにが?」

「………痛くない……何故?」

「う~ん、なぜでしょう~?」

僕はそう言いながら塗り薬と万能君をポケットにしまう。

「とりあえず、さ。立ってみて」

僕はそう言って、彼女の身体を起こした。

そしてそのままベットの脇に降ろす。

トンッ

「…さ、歩いてみて」

僕がそう言いながら彼女の背中を押すと、とてとてとニ、三歩歩いてから、彼女が振り向いた。

「……問題ないわ」

「…そ。じゃぁ服に着替えて、退院しよう」

「……わかったわ」

う~ん、なんか翡翠さんと話してるみたいだ。

…普段は無感情って感じ。

でもアレで実は感情の起伏は激しいしねぇ。

そんな事考えてたら、綾波が目の前で服を脱ぎ始める。

とりあえず、紳士的に、自分の目の前のカーテンを閉めてみた。

「……乙女の柔肌は刺激が強い」

…こういう言い回し、琥珀さん好きだよなぁ…。

「………何?」

意味を判ってくれませんでした。

「…とりあえずちゃっちゃと着替えちゃってください」

「…判ったわ」

僕は服が擦れる音を聞きながら、考える。

………家って、NERVに用意させればいいんじゃないのかな?



[37] Re[21]:EVANGELION~BlueBlue GlassMoon
Name: Torah
Date: 2003/09/18 09:22
なんとなく、綾波と二人で、病院の中庭に用意あsれたベンチでご休憩。

ゴソゴソ

「…おっ、はっけ~そ」

なんとなくウザったかった黒服の人をノして懐を探ると、黒いアレを発見。

「…Glock 17、9Mね…。この人が特殊部隊なのか、僕がテロリストなのか…。
 多分、後者?」

僕は一人呟くとバラバラに分解してみた。

「ま、こんな銃一杯あろうんだろうけど」

そう言って、同じく黒っぽい人の懐から取り出した煙草を口に咥えて、ベンジに座っている綾波の横に腰掛けた。

ジュッ

…ジジジジッ

「……プッハァ~、って、親父臭いなぁ、僕」

一服吸って、自分に感じた感想を述べてみる。

「………何をしているの」

「ん? …とりあえず、お迎えを待ってる、のかな?」

実はお迎えはとっくに来てたんだけど、あそこで寝てるし。

「まぁ、後30分も経てば来るでしょ」

そう言って、煙草を一息。

「…ふぅ~、あ、僕がこれ吸ってたの、秘密ね」

「………そう」

「うん、そゆこと」

僕は吸い終わった煙草を捨てて、残っている煙草を全て握りつぶした。

「……身体に良くないねぇ、煙草は」

「…………そう」

「綾波ってさ、一人暮らしなんだって?」

「……えぇ」

「なんで一人暮らししてるの?」

「………命令だから」

「誰の?」

「………碇司令」

「ふ~ん、大変じゃない?」

「………わからないわ」

「そっ。………貴女ハ神ヲ、信ジマスカ~?」

「………わからないわ」

…………何考えてるんだろう、碇ゲンドウは。

「綾波、今一人暮らしなんだよね。…その前はどこに住んでたの?」

「………NERVよ」

「……旧ゲヒルン、いや、人工進化研究所、かな?」

「………えぇ、そうよ」

一瞬怪訝そうな顔をして、綾波は再び元の無表情に戻った。

「う~ん…、綾波、携帯貸して?」

「……何故?」

「えっと…、必要だから」

「………判ったわ」

綾波はそう言うと、恐らく通っている学校の制服であろうスカートから携帯を取り出した。

それを受け取り、僕はメモリに入っていた赤木さん直通の回線にかける。

プルルルルッ

プルルルルッ

カチャ

『…レイ? どうしたの?』

「………妊娠してました」

ガチャ

プー、プー、プー

「…………」

「…………」

ピッ

プルルルッ

プルルルッ

カチャ

『……シンジ君?』

「よく判りましたね、エスパーですか?」

『…ふぅ、それで、用件は?』

「……この携帯、ちょっと叩き壊しますので」

『……判ったわ、15分で多分そちらに諜報部が行くと思うから、その間に済ませてね』

「この会話は?」

『…やっとくわ』

「それでは」

『えぇ』

ピッ

「…って事で、コレ、壊すね」

綾波に一言告げてから、返事を待たずに携帯を握りつぶす。

圧壊した所で、綾波に聞いてみた。

「…NERV本部の地下にあるのは、第二使徒リリスだな」

僕の言葉に、綾波は大きく動揺した。

「…過去、ゲヒルン時代に碇ユイによる起動実験に失敗した碇ゲンドウ以下研究員は、現在の初号機から碇ユイをサルベージするべく計画を立案、即時実行するも失敗。
 だが、その時にアルビノ・青い髪・赤い目の碇ユイに酷似した少女が現・初号機からサルベージされた。
 …それが君だろう? 綾波レイ」

「…………」

綾波は何も言わず、ただ俯いている。

「…そして何度もサルベージを計画、システムの改善を繰り返すがことごとく失敗、だが毎回綾波レイと思われる少女の肉体がサルベージされるが、その肉体には魂は内包されていなかった。
 …魂が内包されていたのは、初めに生まれた綾波レイのみ。
 そして、幼少の頃、碇ゲンドウの歪んだ教育を受けた綾波レイは赤木ナオコ、当時ゲヒルン技術部長にしてスーパーコンピューターMAGIの開発者により殺害。当赤木ナオコ技術部長はその場で自殺。
 だが、君の魂はゲヒルン地下に保管してあった初号機からサルベージされた肉体の一つに、いくらかの記憶を引き継ぎ転移、その事実を知る碇ゲンドウが自身の道具にするべく再び教育し、現在に至る。
 ……地下にある第二使徒リリスは、その際初号機、リリスからすればアダムから生まれた君の魂を護るべくその力により新たな肉体に転移させた。
 魂と肉体がアダムから作られた君は、リリスがある限り魂の消滅は有りえない。
 そして、リリスの力を幾らか使役できる事になった。
 ……最も、本人はその事実を知らないがね」

「…………」

綾波は僕の言葉に何も反応せず、俯くだけだった。

「…さて、お迎えが来た。
 君の言う碇司令は只今昏眠中だ、僕の所為でね。
 …………また明日逢おう、綾波レイ」

僕はそう言うと、ベンチから離れ、病院内へと戻る。

ちょっと後ろを振り返ってみると、数人の黒服の男が、俯いている綾波を取り囲んでいた。

「…憎まれっ子世に憚るってか…。
 まぁ、辛いものは辛いんだけどね………」



[37] Re[22]:EVANGELION~BlueBlue GlassMoon
Name: Torah
Date: 2003/09/18 10:30
「……それで、どうしたの?」

「別に、そのままお別れですよ」

「……酷いのね」

「まぁ、綾波に関してはシビアに行かないと。
 碇司令崇拝者ですからね」

「…それって、皮肉?」

「それはないですよ」

病院を出てから、そのまま黒服の車に乗って、NERVまで連れてきて貰った。

で、赤木さんの執務室でコーヒーブレイク。

「…それで、なんでそこまで詳しく知っているのかしら?
 そんな10年も前の事を」

「…昨日ホテルに戻ったら燈子さんから手紙が来てましてね。
 僕と燈子さんに繋がりが出来てから五年間ぐらいはゲヒルン、人工進化研究所、NERVの事は調べていたようですよ。
 それで、綾波に関する事は教えて貰いました」

「………地下の、第二使徒は?」

「あれは、力を感じるからです。地下から。
 初号機、そして零号機からもちゃんと力を感じますが、地下から感じる力は、それらとはまた異なるんですよね。
 まぁ、力の大きさって事になると初号機のほうが上ですけれど、地下のほうは異質なので」

「……そういう能力、どうやって身につけるわけ?」

「…一回死んで、それからも何度も死にかけながら戦ったりしてれば、自然と身につきますよ。
 …赤木さんもやってみます?
 使徒よりも異常な力を持っている化け物との戦闘」

「……遠慮しておくわ。まだ死にたくないもの」

「懸命な判断です」

僕はそう言うと、コーヒーを一口飲む。

「…それで、ご用件は?」

コーヒーを飲んでから、僕は赤木さんに聞いてみた。

「えぇ…、先日の使徒戦で、シンジ君、目が蒼くなったじゃない?
 …アレはどういう事?」

「あぁ、アレは、魔眼や浄眼と呼ばれるものです。
 僕の能力の一つって感じですかね。
 …ついでに言うと志貴さんも同じ能力を保有してますけれど」

「…その、魔眼? それになると、どうなるの?」

「う~ん…、簡単に言うと、『死』が視えるんです」

「……死?」

余りにも漠然とした言い方に、赤木さんは首を傾げた。

だけど、他に言い方が無い気がするけど…。

「うぅ~ん、モノの『死』ですね。
 視えるものを言うと、『線』と『点』です。
 アルクェイドさんが言うにはそれは『モノの死に易い線』と『その死』らしいんですけれど。
 とりあえず触れられるものならなんでも、在るモノなら何にでも見えますね」

「…なんだか、漠然としているけれど、何となく判ったわ」

「そうですか…。
 アルクェイドさんに言わせると化け物らしいですね。
 全く、本物の化け物に化け物って言われたらどうしようもないじゃないですかねぇ」

「………その、アルクェイドさんて、金髪の方よね?
 あの人が本物の化け物って、どういう事?」

「…あぁ、アルクェイドさんはですねぇ~。
 まぁ、簡単に言うと『使徒』と似ているけれど異なるモノですか?
 使徒と同じように地球から作られたんですけれど、その役割と力は異質です。
 使徒、とりあえず今の時点でそれをエヴァに置き換えますけど、
エヴァは人間との遺伝子と99.89%酷似しているんですよね?
 それは使徒も同じでしょう。
 …でも、アルクェイドさんの場合はそれが一桁から良くても30%ぐらいした同じ部分はないんじゃないですかね?」

「……えっと、使徒よりも人間から離れているという事?」

「そうです。
 そして、アルクェイドさんの役割は、地球という生命の触覚、触手という機能ですね。
 最も、それがどういう事なのかはいまいち本人も判ってないみたいですけれど。
 そういう訳なので、その力の源は地球という生命全て、って事です。
 昔はアルクェイドさんと同じような真祖という超越種がもっといたらしいんですけれど、アルクェイドさんが人間の男に唆されて、当時その超越種の中で最高の力を誇っていましたから、全員殺しちゃって、今はアルクェイドさん唯一人だけらしいです。
 あ、でももう一人真祖と死徒のハーフのアルトルージュさん、ていう人も居たから、二人かな?」

「………ごめんなさい、よく、判らないわ」

「うぅ~ん、まぁ簡単に言っちゃうと、アルクェイドさんは使徒以上の化け物って事です。
 …あ、でもそのアルクェイドさんを殺せるのは、僕か志貴さんだけっていってたしな、そうなると僕達のほうが…、でも純粋な力で言うと絶対アルクェイドさんには勝てないし…。
 あ、それでも二人がかりだったら絶対に僕達が勝てるしな…」

「………と、とりあえず、もういいわ…」

赤木さんは疲れたような顔をして机に座り込んだ。

「…一応聞くけれど、他にそういった人って、いないわよね?」

「…そうですねぇ~、青子さんや燈子さんは、アルクェイドさんを怖がらせるだけの能力を持ってるし、秋葉さんも魔物、まぁアルクェイドさんのような超越種との混血だし、シエルさんも何だかんだで蛇の呪縛を逃れたけど地球の影響受けてるし…、まぁ第三に来てる僕の『家族』で比較的人間なのは翡翠さんや琥珀さんぐらいですかねぇ」

「……あの双子の二人も、何かあるの?」

「まぁ、僕達に比べたら大した事はないと思いますよ。
 契約した相手の力を増長させたりとか、自分の体力とかを分け与える事が出来たりとか、そんぐらいです」

「……そ、そう。良かったわ…」

それだけ言って、赤木さんは机に突っ伏してしまった。



[37] Re[23]:EVANGELION~BlueBlue GlassMoon
Name: Torah
Date: 2003/09/18 11:31
「…学校、ですか?」

「そ、学校。前の所でもちゃんと通ってたでしょ?
 いくら現実離れした私生活を送ってても、ちゃんと学校は行かないとダメよん」

「…一応、通信教育で大学は卒業してるんですけれどね」

「…ま、まぁそれは予想の範囲内。
 一応ホラ、日本って義務教育じゃない? だからさ…」

「…まぁ、いいんですけど。
 確かにこちらで生活する以上、世間との交流は大切ですからね」

「まっ、そういう事で納得して頂戴」

「へいへい」

「返事はいっかいっ!」

「へ~い」

「…本当、普段のノリは突き抜けてるわね」

「よく裏表がありすぎるって言われますよ」

「…遠野志貴君もそうなの?」

「……あちらのほうが、酷いんじゃないですかね」

「…納得」

ケイジでブチ切れた志貴さんを思い出したのか、葛城さんは納得してくれた。

あの「七夜モード」を観たら、誰だって納得するよなぁ…。

「それで…、いつからですか?」

「ん、一週間後よ。こちらで用意はちゃんとしておくわ。
 ……それで、ね。モノは相談なんだけど…」

「…なんですか?」





「……教師? アルクェイドとシエル先輩が?」

「えぇ、どうにも人手不足らしいんですよ、ここらへんの学校」

「…まぁ、無理もありませんけれど」

ホテルの豪華スイートルームで、一週間後から学校に通う事になっている僕、志貴さん、秋葉さんの三人で作戦会議。

「それで、何て言うか、碇ゲンドウ直属の諜報部の意見もあって、監視対象はできるだけ纏めたほうがいいだろうって事で」

「まぁ、そこで下手に抵抗して何か勘付かれても面倒なのは確かだな」

「…確かに、それは面倒ですわね」

決して困る訳ではない所がミソだな。

「で~、ですね。とりあえずアルクさんとシエルさんのお二人は、志貴さん達の通う第一高校に行って貰って…」

「…シンジ、それは学校が大変な事にならないか?」

「…確かにそうですわね。…けれどシンジの中学校に行かせても…」

「…勝手に高校に乗り込みそうでしょう?」

「…………十二分に有り得るな」

「ですから、ここは初めからそういう風にセッティングすれば…」

「…そうすると、翡翠と琥珀が文句を言いそうですね」

「あ……、確かに。でも二人には家の掃除とか、そういう仕事が……」

「問題ありません」

「問題ないですよ~」

……どこから飛び出てきたのか、翡翠さんと琥珀さんが部屋に入って来ていた。

「……で、なにが問題ないの? 二人とも」

長年の慣れなのか、さして驚いた素振りも見せず、秋葉さんが二人に聞いた。

「えぇ、実はですね。今日四季さんから電話がかかってきた時に、こんな事もあろうかと、こ~んな事もあろうかとっ!
 メカ翡翠ちゃんを2体ほどこちらへ送ってもらうように手配しておいたんですよ~」

「………随分と戦力増強しましたね」

「えぇ、備えあれば憂い無しですっ!」

志貴さんの唖然とした言葉に、自信満々な感じで琥珀さんは答えた。

「そういう事なのでぇ~、お家の掃除や洗濯、まぁ料理は私とシンジさんでやりますが、防犯や夜のお供は万全ですよっ!」

「…夜のお供は余計じゃないかしら?」

「……僕もそう思います」

「そういう訳なので、よろしくお願いいたします、志貴さま」

「……って、翡翠は、生徒として通うんだよな」

「はい、私は姉さんのように通信教育で大学などの学歴は持ち合わせておりませんので、高校に編入となります」

「………琥珀はどうするの?」

「わ・た・し・はぁ~、シンジさんの学校で先生をして差し上げますよぅ」

「…………マジデ?」

「えぇ、大マジです」

「………ちなみに、教科は?」

「そうですねぇ~、出来れば保健体育なんかがベストなんですけれどねぇ~」

「…………教科はっ!?」

「う~ん、オールラウンダーなので、何でもいい気がします。
 頼まれれば体育以外なら何でもしますって感じで」

「……まぁ、学校の職員編成に因るって感じですか?」

「そういう事です」

「…わかりました、明日葛城さんに話をしておきますね」

「よろしくおねがいしますねぇ~」



[37] Re[24]:EVANGELION~BlueBlue GlassMoon
Name: Torah
Date: 2003/09/19 06:02
「………っていう風に、お願いします」

「……なんで貴方が直接私に伝えるのかしら?」

翌日、赤木さんの執務室でまたコーヒーブレイク。

「えぇ、こちらに来る前に葛城さんの所へ先に行ったんですが、書類の山に埋もれて『どうせそういう作業はリツコの仕事だから、直接伝えて貰えるかな~? 私忙しいの~』って言ってエビチュ飲んでました」

「…………呆れた」

ハァ、と溜息を尽いて、赤木さんはコーヒーを一口。

「…まぁ判ったわ。そういう風に登録しておきます。
 最も、記録の改竄は三人だけで済みそうね。
 琥珀さん、戸籍とかイロイロいじってるみたいだし」

「あぁ、あの人は、ねぇ…。
 遠野家の力ってやつで、幼い頃に薬剤師の資格取ってますしねぇ」

「そういう事。
 …あの年で薬剤師、医師、心理カウンセラー、機械工学の博士号、弁護士資格、教員資格…。
 本当、世の中に天才ってものはいるのねぇ」

「そうですねぇ~」

「貴方が言っても説得力無いけれどね」

「それは赤木さんも同じでしょう。
 そのお年でMAGIやE計画の実質上責任者になっているんですから」

「………まぁ、一般的にはそのようね」

一般的って、どういう事を言うんだろうなぁ~……。

「とりあえず、そういう事でお願いします」

「えぇ、判ったわ。
 ……あら、ふぅ~ん…」

赤木さんがカタカタとパソコンをイジってる手を一旦止め、じとぉ~っと、僕の顔を見る。

「………なんでしょう?」

「貴方も持ってるのね、機械工学の博士号。
 ……琥珀さんと同じ学校のようだけど、去年の事みたいね」

「えぇ、二人で一緒に通ってたんです。
 ……琥珀さんが遠野家の技術部門を使って『万能決戦メイドロボ』を造りたいって言って、じゃぁついでに僕も、と思いまして」

「…『万能決戦メイドロボ』?」

「はい。それで開発されたのが『試作型メカ翡翠ちゃん』て言うんですけど。
 …その試作機は成功のような失敗のようなって感じで……」

「………なにかあったの?」

「えぇ、まぁこれは琥珀さんのせいなんですけれどね。
 ……メカ翡翠ちゃんが自分の損傷度を調べて、その損傷度がある一定を超えると自爆するようにプログラムしてたんです、琥珀さん。
 ……で、その自爆の際に巻き込む人間をデフォルトで秋葉さんに設定してたり」

「………危険ね、あの娘」

「そう、思います」







『……ハーモニクス正常、誤差ありません』

『了解…、シンジ君、どう?』

「問題無いっすよ…。まぁしいて言うなら、この血の味と臭いをどうにかしてくれって感じですけど」

『まぁ、ちょっちそこは我慢して頂けるかな~って感じで』

「ふぁ~い」

僕の謎シンクロの解明の為、僕は現在モルモットをやっている。

『それじゃぁシンジ君。これからコアのデータをこちらで抜いて、そこからシンクロ率を計算するから。
 何か異常があったら呼んでね』

「は~い」

『それじゃぁ、先輩。
 コアのデータ抽出開始します』

『わかったわ。
 こっちはMAGIでシンクロ率の計算、及び計測プログラムを組むわよ』

伊吹さんと赤木さんがそう会話していると、なんだか胸の所がムズ痒くなってきた感じがする。

「…あ~、赤木さん。なんかムズがゆい」

『そう…、抽出プログラムのせいかしら?
 物理的な接触はコアへ繋げている回線しかないんだけれど』

「う~ん…、なんか外じゃなくって、中からかな? ムズムズしてます」

そんな会話をしていると、フッと胸のムズムズが消えた。

『先輩、データ抽出終了しました』

「こっちもムズムズが消えました」

『へぇ、抽出の際のプログラムが原因だったの。
 まぁいいわ、それじゃぁ計算式はもう組んだから、MAGIに表示させて、マヤ』

『はい、初号機シンクロ率表示…、す、凄い…』

「…どうしたんですか?」

『なに? マヤ』

『あ、はい…。しょ、初号機シンクロ率、ひゃ、100%。シンクロ率、及びハーモニクス±0、誤差、全くありません』

「……それって、凄いの?」

『えぇ…、シンジ君、今初号機の魂は、どうなっているの?』

「あぁ、僕に全てを明渡して今は仮死状態です。
 なんでも僕の魂が入るとこの体は僕のものになるらしいです」

『…どういう事? EVAの魂は、他の魂が入ると眠りにつくの?』

「そうみたいですよ。かわりに、他の魂が抜けた状態の時はEVAの魂が起きて、その魂で自身の容れ物を満たすらしいです」

『…容れ物って、コアよね?』

「でしょうね。
 今のコアは僕の力で満たされている状態のようですよ」

『…力、というのは具体的には?』

「そうですねぇ~、そのまま『力』じゃないでしょうか?
 一応ホラ、僕って『ワケアリ』な人間な訳で、そういった力を持っているのは知っていますよね?」

『それは知っているけれど…、申し訳ないけれど、もう少し具体的にお願いできないかしら?』

「…まぁ、ログに残さないでくださいね。
 残しても赤木さんのデータの中だけって事にしといてください」

『…約束するわ』

「では…。
 僕の力、とりあえずこれは『魔術回路』と呼ばれるものの制御だと思います」

『…魔術回路?』

「はい。
 人間だれしも持っているんですが、僕は一応特異能力者な訳で、そういった回路の強さや数が莫大に多いらしいんです。
 で、その力の強弱を自在に操れる。
 まぁ操れないと自分の力に押しつぶされて死んじゃうので、頑張って操れるようになったって所ですけれどね」

『……続けてくれるかしら?』

「はい。それでですね、その『魔術回路』から『魔力』を生産して、『貯蔵魔力』として自分の身体が勝手に保存してくれるんです。
 僕の場合、普通の人より多いから生み出される魔力は多いんですよ。
 それに加え、自然界から『マナ』と呼ばれる自然界の『魔力』も『魔術回路』を使って自在に取り込んだり放出したりできる。
 結果として、僕の『魔力』がEVAのコアを満たし、『魔術回路』の制御によって、安定したシンクロ率を叩き出す、という事じゃないですかね?」

『……なるほど、じゃぁユイさんが取り込まれたのは』

「えぇ、自身の『魔術回路』を制御できなかったからだと思われます。
 それで、人の魂が入ったコアに入って他の人間が取り込まれないのは、コアに入った魂で既にコアが満たされているからでしょう」

『……流石ね、碇博士』

「いえいえ、赤木博士には敵いません」

『ふふっ…、シンクロテストはこれで終了します。
 …お疲れ様、シンジ君。帰りにまた私の執務室へ来て貰えるかしら?』

「はい、わかりました~」

『……私の出番、全く無かったわね』

「…使徒が来たらありますよ、葛城さん」

『………普段は?』

「……さ、さてっ、プラグ排出~」

『………シクシクシク』

『………………無様ね』

何となく、勝ち誇ってますね、赤木さん。





シャワーを浴びて、再び赤木さんとコーヒーブレイク。

今度は葛城さんも一緒だったり。

「それで、どうかしたんですか?」

「えぇ、一応聞いておく事があってね」

「シンジ君、遠野さん達は非常勤でNERVに登録しちゃって良いの?」

「………まぁ使徒が来て、僕が出る事になったら保安部員殴り倒してでも来るでしょうから、いいんじゃないでしょうか?」

「…オッケー、そりゃ大変だわ。てわけで、リツコ、よろしく」

「えぇ、一週間もあれば、IDカードは作成できるわ」

「よろしくお願いしますね」

僕がそうコーヒーを飲んで言うと、何の前触れも無く、執務室のドアが開いた。

プシュ~

「赤木はか………」

「………やぁ、綾波レイ。昨日の言葉通り、逢えたね」

ドアの向こうから僕を見つけて棒立ちになっている綾波を見て、多少の皮肉を込め、挨拶した。

「……何故、貴方がいるの」

「レイ、とりあえず中に入りなさい」

「…………わかりました」

僕の顔を見て、出て行けと言わんばかりに言ってくれたが、赤木さんの言葉に従い、綾波は執務室へと入って来た。

「………随分と巧く嫌われたもんだねぇ、僕」

「あのレイが感情を表に出すとはねぇ…。
 これもシンジ君の力ってやつ~?」

「どうなんでしょねぇ~」

葛城さんの言葉に、僕は軽い口調で返した。



[37] Re[25]:EVANGELION~BlueBlue GlassMoon
Name: Torah
Date: 2003/09/19 08:06
「……レイ、昨日シンジ君から、聞いたわね」

「……………は、い」

赤木さんの言葉に、綾波はゆっくりと返事をする。

…ていうか、とりあえず………。

「赤木さん、なんか威圧的っすよ…」

「あら…、ごめんなさい。
 ………嫌だわ、刷り込みかしら」

どっかのゲンドウを思い起こさせるその口調に、僕は思わず待ったをかけてしまった。

「あぁ~、とりあえず~。
 ……結論から言うと、綾波は、人類補完計画、実行するのかい?」

「…………それが私の役目だもの」

「それってさ…、誰に言われたの?」

「………碇司令よ」

「ふぅ~ん…、そ。
 …じゃぁ僕は、君を殺すよ」

僕はそう言って、万能君をポケットから取り出す。

だが、綾波はなんの反応も示さない。

「………私には、代わりがいるから」

…なんだ、そういう事か。

「……残念、そいつぁ無理な相談なんだなぁ~」

僕はそう言うと立ち上がり、自分の座っていた椅子を『視る』。

ちょっとこめかみが痛むが、それを無視して椅子にある『点』を、万能君で一刺し。

トン

………椅子は、塵に還った。

これには、赤木さんや葛城さんも驚いたようだ。

「僕は今、椅子という『存在』を『殺した』。
 ………僕のこの力なら、君という『存在』を『殺す』事ができるんだよ」

僕は綾波に向き直ると、一歩近づく。

「…過去、君と同じように魂を他の身体に転移させて生きながらえる敵と戦った事がある」

また一歩、僕は近づく。

「……そいつは、どうなったと思う?」

一歩近づく。

綾波は椅子から立ち上がり、一歩壁際へ後退する。

「…………わから、ない」

何とか振り絞った声を出した綾波は、ただ、そう言った。

「……そいつは、そいつの『存在』と共に、『魂』ごと消滅させられたよ」

そう言って、また一歩、近づく。

「…………来ないで」

拒絶の言葉と共に、目の前に赤い壁が発生した。

「…A・T・フィールド」

「ふぅん…、あぶそりゅーと・てらー・ふぃーるど。
 絶対恐怖場とは良く言ったものだ。
 ……………でも、無駄なんだよね」

僕はそう言うと、赤い壁を凝視し、『線』を視る。

……かなり、頭が痛むけれど、『在る』んだから殺せない事は無い。

スッ

壁に走る『線』に、刃を走らせ壁を『殺した』。

「あ………」

「……僕の力は、漠然とした言い方をすれば、『在る』モノは全て『殺せる』んだ。
 たとえそれが、霧や、炎、風、幽霊や人の想い、想念などでもね。
 ……………僕の力は、世界だって『殺せる』んだ」

実際、過去に志貴さんが殺ったけどね、とは言わなかった。



綾波の後ろには、壁。

僕の目の前には、綾波。

「………さぁ、どうする?」

手で弄んでいる刃を寝かせ、僕は綾波の目前に晒す。

「……………い、や…」

「………僕は、少なくとも善人じゃない。
 だから…、僕に害を及ぼす存在を、生かしておく事はしない」

「………いや…、いや」

「…………だから、僕は君を」

晒していた刃を逆手に握り、大きく振りかぶる。



「――――――殺す」



刃が、走る。



「……いっ、いやぁぁぁぁぁっ!!」



絶叫。

ピタッ

刃は、彼女の目前で停止した。



「………うん、それでいい」

僕は万能君三号をポケットに仕舞い、しゃがみこんで頭を抱えている綾波に向かって言い放った。

「…………え」

無感情な表情の中、大きく動揺を示す目を上げ、綾波は僕を見た。

「……綾波の、心。
 初めて見せて貰ったよ」

僕はそのまま後ろへ振り返り、ドアへと歩いていく。

「赤木さん、葛城さん。
 ……後、よろしく~」

僕はそれだけ言って、執務室の扉を潜る。



「……やるだけやって、逃げたって感じがしないでもないわね」

「ミサト、彼ってそういう所が多分にあるでしょ?」

「……確かにねぇ~」

シンジの居ない執務室で、コーヒーを啜る二人。

その傍らには、要領を得ない顔をした綾波が座っている。

「……レイ、彼はね、貴方の心が見たかったのよ」

ミサトの言葉に、綾波は『意味がわからない』と無言で答える。

「……貴女、あれだけ大きな声で叫んだ事なんて無かったでしょ? 今まで」

「……………はい」

リツコの言葉は、綾波にも理解できた。

「そういう叫びを、彼は貴女から聞きたかったのよ。
 ………まぁ、彼の言葉で言うなら、『魂』の叫びってやつかしら?」

「リツコ、座布団あげよっか?」

「いらないわよ」

ミサトの言葉をばっさり斬り捨てる。

「…………魂の、叫び…」

「そう、魂の、よ。
 …貴女がさっき叫んだのは、彼の行為に対する拒絶。
 ………それは、貴女が望んだ事よ」

「…………私の、望んだ事…?」

「そういう事。だから彼は貴女の望みを叶えた。
 …………命令じゃない、貴女の純粋な望みをね」

「で~もさっ、さっきのアレは、ちょっち怖かったわよねぇ~」

「…確かにね。
 人の感情を揺さぶるには、善意よりも悪意のほうが速いのは判るんだけれどね。
 ……ちょっとあの時はレイが可哀相だったわ」

「……とことん、面倒臭がりなのかしら、彼」

「てっとり早く済ませたかっただけじゃないの?」

「………それを、面倒臭がりって言うでしょう?」

「まぁ、ね。
 ………人にフォローを押し付けて帰るなんて、相当の面倒臭がりかもしれないわね」

「………厄介な子と知り合っちゃったなぁ、私」

「あら、今なら引き返せると思うわよ? 多分彼もそれを受け入れるわ」

「じょ~っだん。自分から踏み込んだんだもの、最後まで見届けるわよ」

「……まだ知り合って三日足らずでこれじゃぁ、先が心配ね」

「ま、ね。でも、その先にある『世界』は非常に魅力的よん」

「…ふふっ、世界を変えようとする少年、か。
 ………『愚者』になるか、『英雄』になるかはこれからに懸かっている訳ね」

「………ねぇ、レイ。
 彼は世界を変えようとしてる。
 …私と、リツコと、貴女も取り巻く世界をね。
 ………貴女はその時、どうするのかしら?」

「………貴女の、命令から来るものではない、そう、『魂』から来る望みを聞かせてくれないかしら?」





「………………私……私…は………」



それは、新しい一歩となり得るのか、未だ『世界』はそれを知らない。



[37] Re[26]:EVANGELION~BlueBlue GlassMoon
Name: Torah
Date: 2003/09/19 11:02
「………なんだこりゃ」

とりあえず、驚いてみる。

「…マンションの縦、横四部屋をぶち抜いて、電気配線やガス、部屋の間取りを図面通りにいじくってから、エレベータつけて、回線を通して、あとはまぁ細々と…。
 …とりあえず、図面にあった地下室は却下させて貰ったわ」

「…………こりゃ、一戸建て建てたほうが速いんじゃないのか?」

「そうでもないわ。狭くするなら手間もかかるけど、広くする分にはぶち抜けばいいんだもの」

「……簡単に言いますねぇ~」

「私じゃないもの、作業したの」

そりゃそうだ。



とにかく、新居が完成したようだ。

場所はコンフォート17マンション。

その縦、横合わせて16部屋をどぶぁ~っとブチ抜いていじくったらしい。

なんでも、NERVの所有するマンションで、一般の住人は居ないらしい。

あ、あと葛城さんとリツコさん、伊吹マヤさんにロン毛な人とメガネな人が住んでるらしい。

…なんでも、僕達が引っ越す事に決まった日にここに強制送還されたそうだ。

「それじゃ、各階の説明をするわね」

赤木さんはそう言うと、一階部分と呼んだほうがいい場所にあるリビングに備え付けてあるテーブルに図面を広げた。

「…まず一階。ここは個室を一つだけ残して、後は全てリビング、ダイニングスペースにしたわ。
 当然キッチンはダイニング使用。
 これだけは譲れないって事だったようだし。
 ついでに、バス、トイレも一応置いてあるわ。
 まぁこっちのは小さいけれどね」

赤木さんはそう言うと、ペラリと図面をめくる。

「次は二階。
 ここは個室が二部屋と、エレベータ、それにトイレ部分を排除した大きな浴室を置いたわ。
 どうやら、お風呂が大きいのも要望の一つだったようだし」

「えぇ、やはり浴室は大きくなければいけませんわ」

これは秋葉さんか…。

「それで、浴室の隣の小さなスペースには全自動クリーニングが二つ。
 …申し訳ないけれど、水道管や電気配線、ガス配線の関係上ここしかスペースがなかったの」

「まぁ、しょうがないですねぇ~」

琥珀さんは、少し残念そうに言った。

赤木さんはそれを聞いてからペラリと図面をめくる。

「これは三階ね。
 ここは個室が5つ。トイレを置いて、あとは全て個室スペースよ。
 エレベータを挟んで二つずつという感じね」

続いて、赤木さんはペラリと図面をめくった。

「ここが、一番上になる四階。
 ここには個室が3つと、大きな、まぁ簡単に言うとトレーニング・ルームね。
 それを置きました。
 当然、トイレも備え付け、ついでに簡単なシャワールームも取り付けたわ」

「……これで、説明はお仕舞い?」

「いえ、まだあるわよ」

アルクさんが赤木さんに聞くと、赤木さんは再び図面をめくる。

「…これは、一応このマンションの屋上ね。
 今回、要望にあがったからこの四階から直接屋上に上がれるように階段をつけたわ。
 屋上にはフェンスと一応の雨避けをつけた通路を設けたわ。
 ちなみにこの屋上には、この部屋と、このマンションのエレベータを動かしてる動力部があるから、故障か何かした時には業者の人が来るので、洗濯などはしないほうがいいわね。
 それで、要望により、メカ翡翠のバッテリー充電をする、太陽光、風、熱の三つの発電機による充電施設も置いたわ。
 ここで蓄電された電力は、メカ翡翠のバッテリーの他、各階の電力供給にも使用されます。
 本当、エコロジーなシステムね、これは」

「いえいえ~、そうでもないですよぉ~」

琥珀さんが、ちょっと照れた感じで返事を返す。

「琥珀さん、太陽光、風はわかるんですけど、熱ってもしかして…」

僕はその発電システムにちょっと思い当たる所があり、聞いてみた。

「はい、熱はですねぇ、このマンションで発生した生、ビン、カン、プラスチックなどのゴミを発酵させながら微生物の生み出す熱エネルギーや、摩擦熱、その微生物の死骸が生み出すまた違う熱エネルギーを電気変換して電力に変えるシステムですよぉ~。
 最近の研究で、生ゴミはもちろん、ビンやカンなどのものまで分解するバクテリアが生まれましたからね~」

「………それって、危なくない?」

志貴さんが、当然の質問をする。

「いえいえ、この微生物はですね、窒素に触れてしまうと簡単に死んでしまうんですよ。
 ですから普段大気にある程度の窒素でも一瞬で死んじゃいますから、ご安心ください」

「なるほどぉ、きちんと安全なように造られているんですか」

シエルさんが、そこで感心する。

まぁ、そうだよなぁ……。

「という所で、この家の説明は終了よ。
 ………何か聞きたい事はあるかしら?」

赤木さんは、一旦その場を纏めて質問タイムを設けた。

「…この部屋になる前の、各階の出入口というのはどうなっているんでしょうか?」

翡翠さんがとりあえず質問1を提示。

「それは、一階の場合は大きな出入口を一つつけたけれど、他の階の場合、それぞれ一つずつ残して全て潰してあるわ」

「そうですか」

翡翠さんはそう言うと、しずしずと後ろに下がる。

「隣人などは、どうなっているんでしょうか?」

次はシエルさんだった。

「そうね、まず一階は青葉君。
 二階は私とマヤがこの部屋を挟んでいるわ。
 三階はミサト。
 四階は日向君よ」

「…申し訳ありません、日向さんと青葉さんてどなたですか?」

「………メガネ君が日向君、ロン毛君が青葉君よ」

「……なるほど」

秋葉さんの質問から、初めて明かされた新事実。

「そうそう、このマンションで発生したゴミは全て各部屋に置かれているダストシューターで屋上の熱発電機に汲み取られる事になっているから」

「へぇ~、便利ねぇ」

アルクさんが感心を示す。

やはり地球の触覚だからエコロジーにはうるさいのかな?

「それで、最後なんだけれど…」

赤木さんが何か言おうとした時、

ピンポーン

と、軽い音が聞こえてきた。

「あら、丁度来たみたいね」

来た? 来たってナンデスカ?

キュウィーン

「…オキャクサマヲオツレシマシタ」

順調に稼動しているメカ翡翠ちゃんが、来客を告げてくれた。

………っていうか。

「………綾波?」

「…………こんにちわ」

「あ、あぁ…。コンニチワ」

とりあえず、突然の綾波の訪問に吃驚。

「彼女は、エヴァンゲリオン零号機のパイロットで、…この間少し見たとは思うけど。
 名前は綾波レイよ」

「……あぁ~、シンジの代わりにあの人形に乗ろうとしてたバカな女」

……その言い草は酷すぎるっすよ、アルクさん。

「それで、彼女、とりあえず預かってくれないかしら?」

……………ナンデスト?
 



[37] Re[27]:EVANGELION~BlueBlue GlassMoon
Name: Torah
Date: 2003/09/20 00:25
「……レイ、一人暮らしなのよね。
 それで…、今まで人間らしい生活をしてこなかったから、一般常識とか、全く知らないのよ。
 ……それで、できればそういった所の勉強も含めて、預かって貰えないかと思って」

「……赤木さんは、お仕事が忙しいから、そういった所に手は回らない。
 他の方もそれは同じ、という訳で、私達にお鉢が回ってきた訳ですか」

「えぇ…。
 それに、貴女達だったら、ちょっと人と違うくらい、別にどうって事ないでしょう?」

「…そうですね、全く人と違う人が一人、人と人と違うモノの境目が一人、人っぽいけど、なんだかんだで人じゃない人が一人、人だけど人じゃない人に化け物って言われるような人が二人いますからね~」

「……琥珀さん、キツすぎ」

「………あながち、間違ってない所が悔しいわね」

真の支配者には勝てませんか、秋葉さん。

確かに間違ってないんだけれどさ…。

「そういう訳で、お願いできるかしら?
 当然、生活費や維持費は全てNERV持ちよ」

「まぁ、金銭の話はどうでもいいんですけれど…、遠野君、どうですか?」

「………シンジ、お前はどう思う?」

………志貴さんに、真剣な顔で問い掛けられた。

とりあえず、確認する事があるけど…。

「ねぇ…、綾波」

「…………何?」

綾波は返事をすると、飲んでいた紅茶を置いて、僕に向く。

「綾波は、それでいいの?
 ……僕と一緒に居ると、多分『碇司令』に怒られる事になるよ。
 …………最悪、嫌われる事になる」

「…………それ、は…」

「…それが嫌だったら、僕達の側に居ちゃダメだ」

「……………何故?」

「…なにが?」

「…………何故、そういう事を言うの?」

………真剣に、見つめ返してくる。

「だってさ…、綾波は、『碇司令』の命令に従うのは役割なんだろ?
 ……僕達と一緒に居るってのは、多分『碇司令』は望まないよ」

「………………私、は」

綾波は一瞬俯いた後、顔を上げた。

「……私は、私の『魂』の望みがある。
 ……それは、碇君が教えてくれた事だから。
 私は、…人形じゃないもの」

「………だから、ここに来たの?」

コクン

一つ、小さく頷く。

「…今のままだと人形のまま。
 だから…、生活から、考えかたから、変えなさい。
 そうすれば、魂の望みが聴けるから。
 …そう、赤木博士が教えてくれたわ。
 私は、人形じゃないから。
 だから、私はここに居るの…」

「…………そういう事で、お願いね」

綾波の言葉に、赤木さんは念を押すように言った。

「………まぁ、そういう事なら、いいんじゃないのかな?」

「じゃぁ、決まりだな。
 ……いいよな、秋葉」

「えぇ、私も別によろしいですわ」

「…そういう事で、よろしくね、綾波」

「………えぇ、よろしく」

……なんとなく、そんな感じで綾波の同居が決定した。




「…………どうかしました?」

「……まぁ、感慨に耽っていたって所です」

「…………何を?」

「そうですね…、人形だと言われて、否定する人と、自分を人形だと思い込んでいた人。
 ………どっちが人形なんだろうな~、と思いまして」

「………どっちかはわかりませんけど、結局考えかた一つじゃないですか?
 大事なのは今、人形かどうか、だと思いますよ、僕は」

「……私って、後ろ向きなんですかね?」

「そうですか? かなり前向きだと思いますけど」

「ふふっ、そう言われるとそんな気がします」

「そういう事です」

「はい。
 …気を使わせてしまってすいませんでした」

「……そんなつもりないんで、気にしないでください」

「ふふふっ…、わかりました、そうしときますね、シンジさん」



[37] Re[28]:EVANGELION~BlueBlue GlassMoon
Name: Torah
Date: 2003/09/20 05:35
で、中学校への転校初日。

こっちの家に引っ越してからいろいろ問題あったけど、ここニ~三日でそれも消化されたようだ。

ちなみに部屋割は、

一階………メカ翡翠格納庫&整備室。

二階………翡翠さん、琥珀さん。

三階………シエルさん、アルクェイドさん、秋葉さん、綾波。(一室空き)

四階………僕、志貴さん。(一室空き)

三階の空いている部屋には退院して、おじいちゃんの所に顔を出しに言った母さんがそのまま入る予定だから、とりあえずゲストルームは一室空いている事になる。

「……じゃぁ、学校まで道案内、お願いね、綾波」

「…………わかったわ」

今日から高校組み&教師組みも学校に行く事になっていて、高校は少しここから離れていて、教師組みは他の職員への挨拶や学校の説明なんかもあるらしいので僕達より先に出て行った。

そんな訳で、僕は綾波と一緒に登校だ。

そして、最終チェック。

琥珀印弁当………よし。

ハンカチ&ちり紙………よし。

万能君………よし。

琥珀印の『かもぉ~ん、ひっすぃ~ちゃ~ん!スイッチ』………なんだかわからないけど、OK。

教科書………問題ない。

制服………着ているので大丈夫。

…………よし、準備はOK。

「じゃぁ、留守番よろしくね、メカ翡翠ちゃん」

「「イッテラッシャイマセ、シンジサマ…」」

「…………いってきます」

「「イッテラッシャイマセ、レイサマ……」」

メカ翡翠ちゃんに見送られながら、僕は初めての登校となる中学校へ思いを走らせ、少しワクワクして綾波の道案内の元、通学路を歩いた。





「というわけでぇ~、これからよろしくお願いしますねぇ~」

「………謀ったな、シャア…」

僕の目の前では、琥珀さんが嬉しそうにニコニコしていた。

あぁ…、ご都合主義、万歳。

「遠野の財力にかかれば、こんなものです」

…また他人の力を利用して裏から操ったんですか…。

「そういう訳で、私達の教室となるコード707な場所へれっつらごぉ~です」

……なんとなく機密が出てる気がする。





「では、私が先に教室へ入って自己紹介をさせて頂きますので、それが終わったら呼びますから廊下で待っていてくださいね」

「…は~い」

シンジの返事を聞いて、琥珀は無言で頷いてから教室へと入る。

ガララッ

「「「「……うぉぉぉ~!!」」」」

教室へ入り、教卓へと近づく間、琥珀は男子生徒の歓声を一身に浴びてニコニコと歩いていた。

そして黒板に向き直り、キレイな文字で何かを書く。

カカッ、カッカンッ!

「…新担任の、巫浄琥珀です。よろしくおねがいしますね~」

琥珀はそう挨拶して、向日葵のような笑顔を浮かべる。

「「「「……う、うおぉぉぉぉ~!!」」」」

「う、売れる~! こ~れは売れるぞぉ~!」

その笑顔に、男子はとにかく歓声を上げ、女子は羨望と嫉妬の入り混じった目で琥珀を見つめていた。

学校での琥珀は普段の和服姿ではなく、きっちりとしたスーツ姿である。

この格好が、和服を着ている普段より幾分幼く見せていた。

白のパイピングジャケット、インナーには明るいブルーのニット、スカートは濃いピンクをしたフレアスカート。

目を向けるなというほうが無理な話だった。

パンパンッ

「はいは~い、みなさんお静かに~」

琥珀はそう言って静粛を促す。

途端、教室の野獣の咆哮は収まり、元の静寂を取り戻した。

「…それでは、新担任の初仕事という事で、転校生を紹介しちゃいま~す」

その言葉に、再び教室は色めき立つ。

それを無視し、琥珀は廊下を見つめた。

「は~い、それでは入ってくださ~い」

琥珀がそう言うと、教室の喧騒がピタリと止み、なんとなくピリピリした空気を醸し出していた。

ガラッ

教室のドアが開き、少年が入ってくる。

教室はシ~ンと音を立てて静まり返っている。

そのまま少年は、琥珀の傍らまで近づき、笑顔を振り撒いて自己紹介を始めた。

「……えっと、碇シンジです。家族の仕事の都合で転校してきました。
 …………よろしくお願いします」

ペコリ。

その瞬間、何かが弾ける。

「「「「きっ…、きゃぁぁぁぁ~~~♪」」」」

「う~れる~っ! ま~たこれはうれるぞぉ~!」

……彼らの学校生活は、こうして幕を開けた。





『おはよう、シンジ君。調子どう?』

「う~ん、80点、て所ですかね。
 少しおなかが空きました」

『いや、そうじゃなくって…、学校はどう?』

「学校ですか、まぁそれなりにやってますよ」

事実、なんとな~くという感じでやっている。

……別に男子の視線が痛々しいとか、女子の視線がどこかうすら寒く感じたりとかあり、加えて変にあのクラスはテンションが高いので、なかなか溶け込みにくい。

ていうか、あのクラステンション高すぎ。

『そう…、ならいいんだけど。エヴァにはもう慣れた?』

「エヴァ自体には慣れたけど、LCLはいくらやっても慣れませんね、やっぱ」

『それは、やっぱり我慢してもらうしかないのよね』

「うい、わかってますよ、赤木さん。
 ………ジュースとか混ぜたらどうですかね?」

『…肺にジュースが入ったら、どうなるか判ってるわよね?』

「……そういやそうでしたね」

LCLはおなかじゃなくて肺に入るんだったね。

『ふぅ…。じゃあ、今日もいくわよ。エヴァの出現位置、非常用電源、兵装ビルの配置、回収スポット、全部頭に入ってるわね?』

「まぁ、それはまたおいおい、という事で」

『……入ってるわよね?』

「うい…」

赤木さんは怒らせるとマズイ。

『では昨日の続き、インダクションモード始めるわよ』

コンピューターの誘導による射撃モード、か。

遠距離攻撃っていうのはあまり得意じゃないんだよなぁ…。

ブラック・バレルぐらいの火力の武器なら別なんだけどさ。

「目標をセンターに入れてスイッチ。目標をセンターに入れてスイッチ。目標を…」

第三使徒サキエルがビルの隙間から出てくる。

それをライフルで三点射。

爆発して、再びサキエル襲来。

また射撃。

また…。

また…。

「…スイッチを目標に入れてセンター。スイッチを目標に入れてセンター。スイッチを…」

『……飽きるの早いわよ、シンジ君』

「…単純作業には向かないんです。複雑な思考回路してますから」

『…一度見せて貰いたいわね』

「………ゴメンナサイ」





「しかし、よく乗る気になってくれましたね、シンジ君」

「ま、彼にはやる事があるからねぇ~」

「……やる事、ですか?」

「そ、こぉ~んなに大量にね」

両手を大きく広げて、『こぉ~んなに』を表現するミサト。

「……嫌じゃないんでしょうか? まだ中学生なのに、彼」

「…まぁ、それを言われたら私達が初対面で彼にやった事、後悔して自殺でもしなきゃならなくなっちゃうわね」

「………本当、よく私達あんな事出来たわね」

「……あの時は、しょうがなかったんじゃないでしょうか?」

ミサト、リツコの苦い顔に、マヤがおずおずと自分の意見を言った。

「…『しょうがない』、か…。そうやって自分を追い詰めて、他人を追い詰めて…。
 もし彼が普通の中学生だったら、あの後彼を待っていたのは精神崩壊ね」

「……彼のお陰で、こうして後悔もできるのね。
 彼が彼じゃなかったら、後悔なんてする事も無く、ただの中学生を追い詰めて破滅を迎えさせていた訳か」

「………足向けて寝れないわね」

「……彼の部屋に頭向けると、北枕になっちゃうわ、ウチ」





プシュー

「ただいまぁ~」

「オカエリナサイマセ、シンジサマ」

「ただいま、メカ翡翠ちゃん」

「お帰りなさいませ、シンジ様」

「ただいま、翡翠ちゃん」

「ほぉ~、翡翠ちゃんに『ちゃん』付けですかぁ~」

…………また、謀られた。

「……やりました、姉さん」

なんか僕を『してやった』事が嬉しかったらしい。

翡翠さんは拳を握って天井を見上げていた。

「……翡翠さん、もう一体のメカ翡翠ちゃんはどうしたんですか?」

「……シンジ様、別に『翡翠ちゃん』でもよろしいのですが」

「それはムリっす」

翡翠さんの提案を速攻で却下。

「…メカ翡翠はちゃん付けですが?」

「それとこれとは別ですよ。
 ……というか、何故メイド服を?」

最近は、メカ翡翠のお陰で掃除やらなにやらをしなくて済んでいるので、余り翡翠さんのメイド姿は見ていなかったら、今日は何故かメイド服だ。

「週に一回はこうしなければ、私の気が治まらないのです」

……………よく、わからない。

「そういう訳ですので、本日はメイドデーです」

……………本当に、よくわからない。

「それでは、お部屋をお連れします」

「………本当にメイドモードなんですね」

「えぇ…」

その言葉遣いはわざとなんですか?





転校して二週間、未だ教室のテンションに馴染めない僕は、学校から帰るとかなりぐったりしてしまう。

琥珀さんは授業やHRの時しか居ないのでテンションについていけない事はないそうだ。

学校から帰宅して食事、入浴とこなしてからアルクさんと琥珀さんに付き合ってゲーム、秋葉さんと翡翠さんから愚痴を聞き、シエルさんにおいしいカレーの食べ方を教授して貰い、なんとなく溜まった鬱憤を志貴さんとの実戦さながらの組み手をこなして寝る。

だが、夜中に時たま琥珀さんの襲来や、綾波の秋葉さん達による『男と女の為のステップ・アップ術』を用いた不法侵入などがあり、寝るのは日付が変わってからだったりする。

ちなみに、綾波とはいたしておりません。

そんな一日を過ごしてから、僕はいつもの朝を迎える…。



[37] Re[29]:EVANGELION~BlueBlue GlassMoon
Name: Torah
Date: 2003/09/20 08:07
『あさ~、あさだ』

ガバチョ

「オハヨウゴザイマス、シンジサマ」

「……おはよう、メカ翡翠ちゃん」

…新機能ですか、琥珀さん。

「ソレデハ、レイサマ、ヲオキシテマイリマスノデ」

「……いってらっさい」

メカ翡翠ちゃんはキュイーンと動きながら部屋を出て行く。

「…さて、着替えるか」



『起きてよぉ~、浩之ちゃ~…』

音でかいよ、メカ翡翠ちゃん…。

下るエレベータの中で、そんな事を考えていた。





メガネをかけた、金髪の少年が戦闘機の模型を手に暴れていた。

「キュイィィィ~ン」

……危ないな、あの人。

しかもそれを自分のハンディカムで取っている。

何が面白いのかがわからない。

「……春って、今の時代来ないハズなんだけどな」





ガラララッ

「なんや、随分へったみたいやなぁ」

「鈴原…」

「トウジ…」

教室の中に入って来たジャージの少年に、2-Aでクラス委員長をしている少女と、模型で遊んでいた少年が声をかける。

「疎開だよ、疎開。あんんだけ街中でドンパチされたらねぇ」

「喜んどるんはお前だけやろなぁ、ナマのドンパチ見れるよってに」

「まあね、トウジはどうしてたの?こんなに休んじゃってさ、此の間の騒ぎで巻き添えでもくったの?」

トウジと呼ばれたジャージの少年は、事実、シンジが転校してから二週間ほどの間、学校に姿を表さなかった。

「妹のやつがなぁ…。この間の戦闘で怪我してもうてな。
 うちんとこ、おとんもおじいも研究所勤めやろ、今職場を離れるわけにはいかんしなぁ。俺がおらんとあいつ家で一人になってまうからなぁ。
しっかし、あのロボットのパイロットはほんまにヘボやなぁ、無茶苦茶腹たつわ!味方が暴れてどないするっちゅうんじゃ!」

「それなんだけど聞いた?転校生の噂」

「転校生?」

「ほらっ、あいつ、トウジが休んでる間に転入してきたやつなんだけど、あの事件の後にだぜ?変だと思わない?」

そういって、メガネの少年はシンジを指差し、トウジはその先にいるシンジをいぶかしげに見る。

当のシンジは、席が後ろのレイに話し掛け、レイはそれに「…そう」「…よかったわね」と返すだけの会話とは言えないモノを楽しんでいた。





「…20世紀最後の年、宇宙より飛来した大質量隕石が南極に衝突……その頃私は…」

…授業しようよ、おじいちゃん。

国語担当のハズである老教師が、自身のセカンド・インパクト体験を語っている。

僕はそれをそんな風に見つめていると、端末に通信が入った。

『ねぇ、碇君があのロボットのパイロットって言う噂、本当? YES/NO』

おやおや、こりゃ大変だ…。

機密情報だだ漏れ?

まぁ、ここは大人しく…。

『NO』

そう返事を返すと、再び通信。

『嘘、知ってるよ。この間の戦闘で乗ってたのって碇君なんでしょ?』

……人の意見を全く聞き入れないタイプ?

まぁ、こんな時はアレだな…。

『助けて~、まじかる☆アンバー!』

そうやって返信。

…どうやら回線は教室中の人間に見られていたみたいだ。

ピピピッ

一拍置いて、教室中の端末からコールが鳴る。

『相田ケンスケ君、以下数名。
 校内のメインサーバハッキングの疑いがあるので授業後、職員室まで来るように。
 
 From.ほうき少女まじかる☆アンバー』

…仕事早いっすね、琥珀さん。

なんだか、数名端末を睨んでガタガタ震えてる人がいるけど、放置しておこう。



[37] Re[30]:EVANGELION~BlueBlue GlassMoon
Name: Torah
Date: 2003/09/20 12:34
初対面となる上下ジャージ君が、僕の机に近づいてきて、

バンッ

と机を叩く。

「転校生、ちょっと顔貸してくれや」

「ヤ」

……速攻拒否った。





という訳で、休み時間。

教室で僕VSジャージメンの戦いが始まろうとしている。

「すまんなぁ転校生。わしはお前を殴らないかん。殴っとかな気がすまへんのや」

「悪いね、この間の騒ぎであいつの妹さん怪我しちゃってさ、まっ、そういうことだから殴られてやってくれよ」

……まぁ、それは殴りたくなる気持ちも判らないではないんだが。

「…妹さんの怪我って、どういうの?」

とりあえず、これから殴られようとするんだから、これぐらい聴いてもいいよね?

「そういや俺も聞いてないな。トウジ、妹さん、重症なのか?」

ジャージメンの後ろにいたメガネメンが、ジャージメンに問い掛ける。

「あぁ…。重症も重症や。
 あの混乱でな、シェルターにわしらは避難したんや。
 …………そん時にのう」

そう言ってジャージメンは拳を握る。

ジャージメンの言葉に、教室で僕達の様子を見ている教室中の視線が集まる。

…そして、言葉が紡がれる。

「『あらあらどうしましょう』なんて言いながら歩いてた近所のオバンにわしがぶつかってもうて、そのわしのケツに妹がぶつかって、妹がコケて、その時中指をつき指したんじゃ!」

『…はぁ?』

なんて、教室全体で声があがる。

だが、ジャージメン、ヒートアップ。

「そのお陰でつき指が治った今日まで掃除、洗濯からメシの支度までわしがやらされたんじゃ!
 …みんな、みんなお前がわるいんじゃぁ!!」

「………バカでしょ、君」

つい、言ってしまった。

ジャージメン、驚愕。

教室の生徒はみな、僕の言葉に首を縦に振った。

「な、なんやとぉ! なんでわしがバカなんじゃ!」

「…だって、バカじゃん」

「バカだな」

「バカだと思うよ」

「絶対バカ」

教室中の総意。

『ジャージ=バカ』

決定。

「…あのさ、妹さんがつき指したのって、君のお尻がぶつかったのが悪いんだろ」

「…そうや」

「じゃぁ君が悪い」

「なんでやっ!? あん時お前がよう足元みとればなぁ」

「…足元見てればそのお尻は妹さんにぶつからなかったのかい?」

「…………ぐぅ」

ジャージメン、沈黙。

「…バカだバカだとは思ってたけど」

「ほんと、だからジャージって…」

「ジャージニズムってやつか?…」

教室からそんなヒソヒソ声が聴こえてくる。

彼の後ろに控えていたメガネメンですら、彼を白い目で見ていた。

「…悪いな、転校生。あいつ、見た通りバカだからさ」

「まぁいいよ。バカなのはわかったから」

「そうか。俺は相田ケンスケ、よろしくな」

「僕は碇シンジ、よろしく」

メガネ=ケンスケと、ほのぼのトークの後握手を交わした。

そんながっちり『僕と握手!』をしていると、NERV支給の携帯が鳴った。

『ニゲロニゲロ ドアヲアケ』

ピッ

「……非常召集、か」

着メロを途中で止め、携帯の液晶に浮かぶ文字を読む。

教室では、なぜか僕から距離を取ってみんなに見られている。

「………碇君、非常招集」

綾波が、僕に近づいてそう声をかけてきた。

「うん、わかって…」

ガララッ

「シンジさ~ん、連絡きましたか~?」

僕が綾波に返事をする前に、琥珀さんが教室に入って…。

「……まじかる☆アンバー?」

「違います!『ホウキ少女まじかる☆アンバー』ですっ!」

黒装束を身につけたまじかる☆アンバーが教室に入って来た。

…きっちりとホウキを手に。

「ささっ、いきましょうか、シンジさん」

周りの痛いほどの視線を気にする風でもなく、まじかる☆アンバーは僕に近づいてくる。

「…え、えぇ。いきましょうか、こは「まじかる☆アンバーです」…アンバーさん」

「えぇ、ではでは…」

琥珀さんはそう言うと、何故か僕の鞄をまさぐりはじめる。

ゴソゴソ

「ちょ、こは「アンバーです」…アンバーさんっ!」

「あ、ありましたぁ~♪」

僕の鞄をまさぐって取り出したのは、『かもぉ~ん、ひっすぃ~ちゃ~ん!スイッチ』だった。

「ではでは、ぽちっとな♪」

そう言って、『ぽちっ』とボタンを押す。

…………何も、起こらない。

「…な、なんですか? アンバーさん」

「まぁまぁ、いいからいいから♪」

アンバーさんはなんだか楽しそうだ。

アンバーさんの様子を見ていた綾波も、自分の鞄をゴソゴソとまさぐってから、スイッチを取り出す。

「………押すの?」

スイッチを持って、僕に問い掛ける。

……僕に聞かないでよ。

「あは~、大丈夫ですよ~。もう来ますから~」

そう言って、アンバーさんは『ほら♪』と窓の外を指差す。

「…? 何もないですけ…」

………ゴゴッ

いや、何か近づいてくる。

……ゴゴゴゴッ

どんどんどんどん近づいてくる。

…ゴゴゴゴゴゴッ

「……あ、アレは…っ!?」

ゴゴゴゴゴゴゴゴッ!!!

「はい~、メカひっすぃ~ちゃんですよぉ~」

バシュゥ~

「…NERVヲ、オツレシマス」

空駆けるメカ翡翠ちゃんが二体、窓から教室に侵入してきた。

「…ジェ、ジェットスク○ンダー」

「はい~、標準パーツですから~」

アンバーさんがそう言うと、メカ翡翠ちゃんの一体が、僕を小脇に抱える。

「どわぁ! ま、まさか…」

「さぁさ、いっちゃってくださ~い」

アンバーさんはもう一体のメカ翡翠に綾波と共に小脇に抱えられていた。

「「…NERVヲ、オツレシマス」」

「いや…、ちょ、まっ…」

ゴゴゴゴゴゴゴゴッ

人の話も聞かず、ジェットス○ランダーの火力を上げるメカ翡翠。

「ご~です」

アンバーさんの掛け声と共に、

ドンッ

と音を出して、メカ翡翠は飛び立った。

「ぎょえぇぇぇぇぇぇっ!?!?!?」

「………そう、これが、怖いという事なのね」

「あはははは~っ♪」

……僕達が去った教室には、飛び立つ衝撃で粉々に粉砕された窓ガラスだけが残った。


 



[37] Re[31]:EVANGELION~BlueBlue GlassMoon
Name: Torah
Date: 2003/11/06 21:48
『目標光学で補足、領海内に侵入しました』

「総員第一種戦闘配置!」

『了解、対空迎激戦用意』

『第三新東京市戦闘形態に移行します』

『現在対空迎撃システム稼働率48%』

「非戦闘員及び民間人は?」

「既に退避完了との報告が入っております」

「それにしても、第四の使徒襲来、思ったより早かったわね」

ミサトは、そう言って不敵な笑みを浮かべる。

「前は十五年のブランク、今回はたったの三週間ですからね」

「こっちの都合はお構いなしか、女性に嫌われるタイプね」

「……誰もあなたに好かれようとは思ってないわよ」

リツコの毒に、ミサト撃沈。







「くそっ、まただ」

ビデオカメラを持ったケンスケが画面を覗き込みながらぼやいた。

「まぁた文字だけなんか?」

トウジも、画面を覗き込む。

「報道管制ってやつだよ、僕ら民間人には見せてくれないんだ。こんなビックイベントだっていうのに」







山が割れ、そこから大量のミサイルが怪物に打ち込まれる。

それが怪物に当たり凄まじい爆発が起こる。

しかし怪物は気にしたそぶりもなく、NERVを目指して移動を続ける。




「税金の無駄遣いだな」

「委員会から再び、エヴァンゲリオンの出動要請がきています」

「煩い奴らね、言われなくても出撃させるわよ」




『シンジ君、用意はいい?』

「……」

『聞こえているの!?シンジ君!!』

「…あ~、まだちょっとクラクラしてます」

二回目の使徒戦、だがベストコンディションには程遠い。

……もうあのスイッチは使わないようにしよう。







「なあ、ちょっと二人で話があるんだけど…」

「なんや?」

「ちょっと…」

「しゃあないな~、委員長、わしら二人便所や」

「もう、ちゃんとすませときなさいよ」




「で、なんや?」

「死ぬまでに一度だけでも見たいんだよ」

「上のドンパチか?」

「今度いつまた敵が来るかわかんないし…」

「ケンスケ、お前なぁ…」

「このときを逃してはあるいは永久に!!なあ頼むよ、ロック外すの手伝ってくれ」

「外に出たら死んでまうで!」

「ここにいたってわかんないよ、どうせ死ぬなら見てからがいい」

「アホ、何の為にネルフがおるんじゃ」

「そのネルフの決戦兵器って何だよ?あの転校生の乗ってるロボットだよ、多分。この前もあいつが俺達を守ったんだ、多分。
それをあんなふうに殴りかかったりして、トウジにはあいつの戦いを見守る義務があるんじゃないのか?」

「…えらい『多分』が多いのぉ」

「だって、明確な答えを貰ってないじゃないか」

「…まぁ、そういやそうやのぉ」

「なぁ、だからさ、頼むよ」

「……しゃぁないなぁ~」




『シンジ君、今回はパレットガンの弾が間に合わなかったから、接近戦になるわ』

「…あぁ、劣化ウランはやめたんですね」

『えぇ、流石にちょっと、ね』

そう言って赤木さんはバツの悪そうな顔をする。

いくら安いからって、放射能を撒き散らすのはマズイと判ってくれたようだ。

『それでは、いいですね』

『えぇ、発進させてください』

…だから、なんで秋葉さんなんだよ、葛城さん。

ていうか、冬月さん、秋葉さんの横に立って首を縦に振ってるだけじゃん。

『エヴァ初号機、発進!!』

「キ○・ヤマ○、初号機出るっ!」

グンッ

『……流行りだからって、それはダメだ』

………志貴さん、そこは流す所です。







「はあっ、はあっ、はあっ」

「お、おい待てやケンスケ!早すぎるで!」

ケンスケは神社に続く長い階段を駆け上り、その高台でカメラを構える。

使徒はちょうど彼らの視界に入る場所に現れ、体を縦に起こした。

「き、来た!す、すごい、苦労してきた甲斐があったぁ!」

「あれが敵かいな、気色悪う…」

「おっ、待ってました!!」

ひとつのビルが縦に開き、その中から初号機が出てくる。




『シンジ君、状況判断は任せるわ、頑張って』

「はい」

僕が発射口から出ると、縦になったイカがいた。

とりあえず距離を取り、肩からナイフを取り出そうとする。

シュルン

すると、イカの腕っぽい所から光るフニャフニャしたものが出て、周りのビル一面を切り裂く。

「くっ!」

ザンッ

間一髪、それを後ろに飛びのいてかわす。

「…対接近戦用か。考えてるじゃないか」

僕はそう呟き、肩からナイフを抜き出した。




――――ドクン

「――――いいだろう、殺しあおうぜ」




ヤツの鞭がしなる。

ゾクッ

バックステップで下がり、その鞭をかわす。

「…早い、な」

かなりのスピードでその鞭は襲ってくる。

変幻自在に動き回るソレに、僕は距離を置いて後ろに下がるしかなかった。

ザンッ

気がつくと、鞭にケーブルが切られた。

『アンビリカルケーブル断線』

『エヴァ、内臓電源に切り替わりました』

『活動限界まであと4分53秒!!』

「……チッ」

早い所ケリをつけなければいけなくなった。

鞭は再び襲ってくる。

「そこっ!」

僕は飛び上がり、身を翻し、ヤツの頭上を飛び越える際、ナイフを振るった。

ザンッ

「チッ、浅いっ!」

身体を反転、着地する。

ヤツの頭には縦に細い切れ込みが入った。

ズンッ

着地と共に、鞭が襲う。

「クッ」

後ろに飛びのいてかわす。

ピー、ピー

「っ! なんだ!」

突然、プラグ内に警報が響く。

見ると、足元に二人の少年が見えた。

「…ジャージとメガネ」

『シンジ君のクラスメイト!?』

『何故こんなところに…』

まずいな、身動きが取れない…。

そんな事はおかまいなしに、ヤツは近づいてくる。

外部スピーカーに切り替えて、警告。

「おいっ! とっととそこから離れろっ! 死にたいのかっ!」

僕の警告に、二人はただ身体を震わせるだけだった。

「チッ! 絶体絶命かよっ!」

僕がそう一人ごちると、琥珀さんから通信が入る。

『シンジさん! 今メカ翡翠ちゃんをそちらに送りました! 20秒もたせてください!』

「……20秒、か。了解」

少し長いが、どうにかするしかないだろう。

ビュルン

その時、ヤツの鞭が動く。

「くそっ!」

僕は咄嗟に左手で片方の鞭を押え、右手のナイフで鞭を弾く。

「……グッ。なんだこの鞭」

『接触面に融解!!』

…超振動の鞭、か?

なんにしろ左手が熱い、右手で捌く鞭のスピードが速い。

「クソッ、やばい!」

なんとか凌いでいると、画面に二つの光を見た。

『シンジ! 回収できたぞ!』

「了解!」

その報告を受けて、僕は左手で掴んだ鞭を引っ張り、近づいてきたヤツの身体を蹴り飛ばす。

ズゥン

音を立て、ヤツは地面に衝突した。

その隙に立ち上がり、体勢を整える。

ヤツも起き上がり、再びムチを振り回す。

僕は、ヤツの身体を凝視する。

「………クッ」

こめかみの頭痛を堪えながら、ヤツに走る『線』と『点』を見る。

………『点』は、赤い球、正面から少し右。

ヤツが鞭を伸ばしてきた。

ビュルン

「おぉぉ!」

今度は、引かない。

その鞭をかわし、ヤツの懐に斜めに入る。

ザンッ

「クッ」

少し肩をやられたが、問題ない。




「――――殺す」




ヤツの懐で小さく横に回転。

そのまま、逆手に持ったナイフでヤツの球にある『点』に、ナイフを突き立てる。

トン




「―――その魂、極彩と散るがいい。毒々しい輝きならば、誘蛾の役割は果たせるだろう」




その言葉と共に、赤い球は砂となり、消えた。

『目標は完全に沈黙しました』

「………あっぶなかったぁ~」

赤い球だけ消えた使徒の身体を近くにねかせ、一人ごちた。

『お疲れ様、ちょっとヤバかったな』

「えぇ…、あの二人がいなきゃ、もっと楽でしたね」

『NERVにつき次第、たぁ~っぷりとお説教してさしあげますわ』

「ははは…、任せますよ、秋葉さん」

……死ぬなよ、ジャージ&メガネ。



[37] Re[32]:EVANGELION~BlueBlue GlassMoon
Name: Torah
Date: 2003/09/20 23:00
あとがき。

第四死徒、シャムシエル戦まで終わらせてみました。

……なげぇ。

ここまで来るのにすげぇ時間かかったっすね。

まぁ、今後もこんな調子で書いていこうかと思ってます。

でわでわ。



[37] Re[33]:EVANGELION~BlueBlue GlassMoon
Name: Torah
Date: 2003/09/20 23:59
「今日でもう三日か…」

「俺達がこってりと叱られてから?」

「ちゃうわ、阿呆…」

ジャージの少年はそう言って、窓越しに雨の降っている外を見つめる。

「…わしらがここに閉じ込められてからや」

「……ここ、どこなんだろうな」

「………知らんわ、阿呆」

「……………」

「……………」

「ゴメンナサイ、モウシマセン、ダシテクダサイ」

「スイマセン、スイマセン、スイマセン…」

ニゲロニゲロ~♪ ドアヲアケロ~♪

このBGMを背に、彼らは三日間、反省を促されていた。





EVANGELION~BlueBlue GlassMoon





『シンジ様、お加減はいかがですかな?』

「トモユキさん、僕は別に病気だった訳じゃないですよ」

『まぁ、お伺いの挨拶、というものですよ』

「そういうの、苦手なんですよね僕。
 まぁ多分分かっててやられてるんでしょうけど」

『はははっ、察しがいいですなぁ相変わらず』

「おじいちゃんは、お元気ですか?」

『えぇ、ユイ様が帰ってから、見る見る若返りまして、こちらが逆に胆を冷やされるくらいですよ』

「そうですか、良かったです」

『それで、ユイ様とリョウゾウ様からのご希望により、後半月ほど、そちらに行かれるのが遅れるのですが…』

「あぁ~、わざわざすいません。
 …親子水入らず、仲良くゆっくりして下さいと伝えてください」

『…ほんに、良い男子に育ちましたなぁ、シンジ様は』

「いえ、おじいちゃんにはお世話になってますし、あ、もちろんトモユキさんにもですね。
 …それに、娘を持った男親っていうのは大変だと聞きますからねぇ」

『ははははっ、確かにそうですなぁ』

「ですから、おじいちゃんには今の内に娘孝行しておくよう言っておいて下さい。
 それと、母さんには僕の事は気にせず、今まで出来なかった親孝行をしてくれって」

『承りました。
 …それで、本当によろしいのですかな?』

「へ? 何がですか?」

『…碇財団という大きな力を自分の好きなように出きるチャンスを、ユイ様にお譲りするという事、ですよ』

「元々、僕は母さんがいなかったからその位置に立っていたんですよ?
 それが元に戻っただけです。…それに、僕の性に合わないですよ、そういうの」

『…違います、な』

「違う?」

『えぇ…、違いますよ。
 シンジ様に、碇財団はただの鎖にしかならない、と私は今回の事で感じまして』

「……買いかぶりすぎですよ。
 僕だって力は欲しい。物欲なんてものは一杯あるんですから」

『ふむ…、シンジ様の物欲と、我々の物欲という物には、大きな差があるようですなぁ』

「僕にはその差が分かりませんけれどねぇ。
 とりあえず、そういう事で、お願いしますね」

『えぇ、承知しました。
 遠野様方に、くれぐれもよろしくお伝えくださいと、リョウゾウ様からの言伝です』

「はい、承りました。
 それでは、また半月後に」

『えぇ、くれぐれも、お体を大事、心健やかに』

「はい、それではまた」

ピッ

僕は携帯を切り、充電器に差し込む。

「リョウゾウ様、どのような調子なの?」

「えぇ、若返ったって言ってました。
 遠野の方々に、くれぐれもよろしくと」

「そう…。近いうちにまたご挨拶に行かなくてはね」

「えぇ、その時はこちらで一席設ける事に致しましょう」

僕の言葉に、秋葉さんと琥珀さんが紅茶を飲みながらにこやかに返事を返す。

僕はそれを聞きながら、リビングのソファーに座って雑誌を読む。

雑誌と言っても、月刊で出ているクラシックのスコアだ。

一冊150円程度で、2~3曲の楽譜が載っている。

バタバタバタッ

それを眺めていると、エレベータのほうから、少し乱暴な足音が聞こえてきた。

ガチャ

「全く、あんの力バカは…」

なにやらぶつぶつ言いながら、シエルさんがリビングへ入ってきた。

「…まぁた負けたんですか、シエルさん」

「うっ…、そ、そうですよ!」

シエルさんは、またゲームでアルクさんに負けたらしい。

最近出た、新作格闘ゲーム「Melty Bread」にハマッてるらしい。

世界各国のパン職人が世界一を決める為、最高のパンを作る食材探しをして、その為、各国のパン職人と熱いバトルになるというのがメインストーリーだ。

ちなみにシエルさんはフランスパンを武器に戦うキャラがマイキャラだ。

アルクさんは確かサンドイッチ使い。

その四角いサンドイッチでバシバシ力押しをするのが基本的な使用法だった。

一方のシエルさんはフランスパンを飛び道具にして遠距離から攻撃するなかなかテクニカルなキャラ。

いつもアルクさんのゴリ押しに負けていた気がする。

そして、今回も負けたんだろう。

「全く、なんでカレーパン使いは相撲取りな日本人なんですかね…」

……カレーパンは日本生まれなのは分かるが、相撲取りがカレーパン使って攻撃するのは頂けないよな………。

「今は誰が楽しんでいるんですか?」

「えっと、今は遠野君が翡翠さんと戦っているんじゃないですかね?」

琥珀さんの問いかけに、シエルさんが答える。

志貴さんは、食パンを使うキャラだったな。

様々なジャムで多彩な攻撃を展開するトリッキーなキャラだった。

超必殺技は一瞬で全身の急所にバターナイフでバターを塗りたくる「17塗り込み」、考えただけでも恐ろしい必殺技だ」

翡翠さんは、フレンチトーストを全自動で焼くロボットだったよな。

超必殺技は、その身体に内臓しているマイクロウェーブで敵を前後不覚にする「洗脳ウェーブ」。

……まぁ、どっかで聞いた事が一杯あるけど、気にしない。

「全く、あのあーぱーは力押ししか知らないんですから…」

未だにグチを吐いているシエルさんに付き合って笑顔で聞いている琥珀さん。

そして、その様子を冷めた目で見つめる秋葉さん。

………なんだか。

「……平和だねぇ」





僕のセリフじゃないよね、これって。



[37] Re[34]:EVANGELION~BlueBlue GlassMoon
Name: Torah
Date: 2003/09/21 08:24
「シンジ君、碇総司令、先日目を醒ませたわよ」

「そうですかぁ、それじゃぁこれから上からの面倒は全て勝手に処理して貰えますね」

僕はそう言いながら、コーヒーを飲む。

「それで、碇司令、シンジ君達が来て、自分が意識を失う間の事、覚えてないようよ」

「………自分に都合の悪い所は覚えてないのか。
 らしいと言えばらしいですね」

「そうね…。でも、お陰でこちらとしてもやりやすかったわ。
 ……あの後から第四使徒戦までの事、適当にデータを改竄して見せたわ」

「……向こうの反応は?」

「『ふっ…、全てシナリオ通りだ』ですって」

「なるほど…。まぁそれでいいんじゃないですかね?
 それで、遠野家の事とかは何て?」

「『邪魔になるようなら排除すればいい。それまでは好きにさせておけ』
 って言ってたわよ」

「…本当に、自分の都合の悪い事は覚えてないんだなぁ」

「えぇ…、副指令も呆れてたわよ。醜悪だな、なんて言って」

「それは、赤木さんもじゃないですか?今までの口ぶりだと」

「まぁ、ね…。こうして見てみると、なんであんなに拘ってたのかがわからないわ」

「それは、視点が変わったからですよ。
 主観的な見解と客観的な見解には大きな差が生まれますから」

「そうねぇ、今は客観的な観点からしか見れないわね」

「そういう事です」

そう言って、お互いコーヒーを飲む。

赤木さんは、口をつけてからカップを机に戻し、煙草を咥えて火をつけた。

シュボ

「……ふぅ~、ん? どうかした? シンジ君」

「えっ? あ…、いや、なんでもないですよ」

なんていうか、目の前で煙草を吸われると、無性に吸いたくなってくる。

赤木さんはそれに気付いたのか、ニヤリと唇の端を吊り上げた。

「……一本、吸う?」

そう言って、スッと煙草の箱を差し出してくる。

「いえ、別にそんな…」

「ふふっ、大丈夫よ。…この間検査した時に、ニコチンが検出されたから、知ってるわよ」

「なんだ…、バレてたんだ」

僕はそう言って、照れ隠しに頭をポリポリと掻いた。

「えぇ、まぁたまに吸う分にはとやかく言わないけれど、一日に何本も吸うのは、もう少し成長してからね」

「…あい」

そう言って、差し出された煙草を咥え、火をつける。

「………ふぅ~」

ユラユラと揺れる煙草の煙に巻かれ、今後、どう動くか、考えていた。





「オシエテクレ イッタイナニヲスレバイイ」

「……やめい。もう聴きたないわ、そんなん」

「………長かった、な」

「………一週間ぶりやね」

「…………あぁ、シャバだ」

とぼとぼと人通りの無い道を、少年二人が歩いている。

一人は、黒の暑そうなジャージ。

もう一人は、金髪で小脇に鞄を抱えたメガネの少年。

「………家帰って眠るわ」

「………俺も、そうする」

二人はそう言うと、住宅街へと姿を消す。

彼らを見送る姿は、ただ一つ。

「もう来るんじゃないですよぉ~」

黒装束に身を包んだ、ホウキ少女だけだった。



[37] Re[35]:EVANGELION~BlueBlue GlassMoon
Name: Torah
Date: 2003/09/22 05:06
「…父さん、調子はどうですか?」

「…初号機へ、乗ったそうだな」

…人の話完璧にスルーですか、あんた。

「乗ったよ…。他に、できる人がいなかったんだろ」

「ふっ…、そういう事だ。
 今後も乗って貰う。そのつもりでお前を呼んだのだからな」

「……分かってるよ、父さん」

……なぁ~んか、自分で言っててアレだけど、『父さん』て言うのが白々しいねぇ。

「話は終わりだ、帰れ」

「…分かったよ、またね、父さん」

僕はそう言って、司令室を出た。



「…あれでよかったのか? 碇」

「ふっ…、どうせアレには居場所はここしかない」

「…なるほど、な」

「それに、初号機にはアレが必要だ」

「それは、そうだが…」

「所詮は子供だ、どうにでもなる」

(…どうにもならんのだよ、彼はな)

「冬月、零号機の起動実験は?」

「…あ、あぁ、もうそろそろだ。だが…」

「ふっ…、全ては順調だ、問題無い」

(…私も、こうだったのかもしれんな)





司令室を出て、赤木さんの執務室へ向かう途中、見知った顔に出くわした。

「…やぁ、綾波。碇司令に呼ばれたのかい?」

「……えぇ」

「そう…。まぁ、頑張って」

「…………なに?」

「いや、なんでもないさ」

僕はそう言うと、綾波の脇を通り過ぎる。

「あぁ、そうそう」

僕は脇を通り過ぎてから、後ろへ振り返る。

綾波は立ち止まり、こちらを見ていた。

「……コレ、渡しておくよ」

そう言い、ポケットから万能君を取り出し、綾波に握らせる。

「碇司令と話をして、僕達の所へ戻れなくなったら使えばいい。
 これは、よく研がれているから。
 ……君の力でも、自分を刺しても深く刺せるはずだ」

「………私は、人形じゃない」

「それは、関係無い。
 …君は、まだ碇司令の側から離れていない。
 彼の命令で、僕を殺せと言われたら、今の君なら殺すだろう」

「………何故、そう思うの?」

「…君は未だに操り人形だからさ。
 碇ゲンドウに忠実な、操り人形」

「………私は……人形じゃない」

「そう思うなら…、それを見せてくれ」

「…………こんなもの、使わないわ」

綾波はそう言うと、踵を返して司令室へと向かう。

…途中、一度こちらへ振り返り、握り締めている魔刀・眞を一度強く両手で握り、再び司令室へ歩き始めた。

「……それでいい。君の心、少しずつだけど、見えるようになったよ」

彼女に聴こえぬよう、小さく呟いた。





「まぁたシンちゃんってば、キッツいわねぇ~」

「自分でもそう思いますよ、かなり性格悪い事やってるなぁ~って」

赤木さんの執務室で、何故か葛城さんとコーヒーブレイク。

赤木さんは近々行われる零号機の起動実験準備で大忙しのようだ。

「部屋でコーヒーでも飲んでいるといいわ。
 …私も休憩が取れ次第、部屋へ戻るから」

という訳で、コーヒーを一人で啜っている所、葛城さん乱入、そのまま談笑していた訳だ。

………最も、笑える話は少ないけれど。

「それで、やっぱそのまま放っておいた訳、フォロー無しで」

「……フォローしたら意味ないじゃないですか」

「ま、ね。そりゃそうなんだけどさ。
 女の子っていうのは、デリケートなもんなのよぉ~」

「それでも、あぁする以外僕は思いつかなかったし」

「…レイの心に任せるというのは賛成だけどねぇ……」

分かってはいるけど、そんな感じで葛城さんは言って、コーヒーを飲む。

「だぁってシンちゃん、マジになると怖いし」

「ん~、自分では怖がらせるつもりはないんですが…」

僕がそう一人呟くと、執務室へ赤木さんが帰ってきた。

「…あら、ミサト。貴女暇なの?」

開口一番、とっても皮肉っぽく言った。

「いやぁ~、作戦部って戦闘ないと…」

「書類整理や兵装ビルの展開、その他作戦後の事後処理とか、いろいろあるわよ」

……そりゃそうだ。

「あ、あははは~、そ、そういえばそうだったわねぇ~。
 …じゃぁシンちゃん、またねぇ~」

「あい、頑張ってください」

プシュー

葛城さんはそう言い残し、そそくさと逃げ出した。

「………荒れてますねぇ」

「…まぁ、ね。
 大変よ、こっちの事なんか考えてない人の相手をするのって」

どっかりとソファーに座り、大きく溜息を溢した。

「はぁ…、父さんですか?」

「正解。…『今夜、食事へ行こう』ですって」

……凄いな、それは。

「……それ、どうしたんですか?」

「もちろん断わったわよ。
 『零号機の起動実験準備が大詰めなので、申し訳ありませんが』
 って言ってね。
 最も、こんな手は何度も使えないでしょうけど…」

はぁ~、とまた溜息を溢し、赤木さんは煙草を咥える。

「どうするんですか?今後」

「…どうしようかしらねぇ。
 自分の手駒だと思わせといて、かつ関係を求められないようにするには…」

「………相手、作ればいいんじゃないですかね?」

「それは一番早いわよね。
 ……でも、そんな相手いないし」

「いるじゃないですか、同性ですけど…」

僕のその言葉に、ピク、と赤木さんは反応し、ギギギギッと首をこちらへ向ける。

「………そう、見えるの?やっぱり」

「…いやぁ、まぁ、あれだけ懐いていると、ねぇ……」

「…あの子、やっぱそうなのかしら」

「……どうなんでしょうねぇ」

「…そうではない事を、願うしかないわね」

「……心中お察しします」

そうだった場合は、かなりアレがソレなもんで。赤木さん、大変だなぁ~。

そんな事考えてると、赤木さんがこっち見てニヤリと笑う。

「そうね…、相手を作るっていうのは、いい案かもね…」

そう言うと僕を見て、再びニヤリと笑う。

「…………ジョ~ダン、ですよね…」

ジリ…。

「あら…、言い出しっぺの癖に、逃げるの?」

ジリジリ…。

「……僕、子供ですよ」

ジリ…。

「嘘…、経験、あるでしょ?」

ジリジリ…。

「な……、なんで、そんな事わかるんですか」

ジ…、トン。

「貴方の身体検査したの、私よ?
 ……それに、私だって一応女だしね」

ジリジリ…。

「……でも、やっぱり僕子供ですから」

……か、壁が…。

「私はそうは思わないわよ…?」

ジリジリ…。

「……絶対すぐにバレるし」

「隠さなければいいのよ…。
 彼女なら、多分、大丈夫よ。
 だって、実例がすぐ側にいるんでしょう?
 しかも現在進行形で」

「……鍵、かけて下さいね」

「ふふっ…、分かってるわよ」

………志貴さん、やっぱり貴方の影響なんでしょうか…。







[37] Re[36]:EVANGELION~BlueBlue GlassMoon
Name: Torah
Date: 2003/09/22 06:24
「……随分と、引き締まった身体してるのね」

「必要でしたからね。それに、驚いたでしょ?」

「えぇ、まぁね。
 聞いてはいたけど、痕跡を見せられるとね…」

そう言って、二人で煙草を吸う。

身体の傷を隠すよう、僕は制服のYシャツを羽織った。

「……本当、男の子、とは言えないわね、貴方」

「……年齢的には十分子供で通用するはずですけどね」

「年だけならね。
 ……全く、見た目に騙されるなって言ういい実例よね、貴方達」

「…誰と誰を指してるんでしょう?」

「貴方と遠野志貴君。
 見た目、少し頼りなさそうで呆っとしてる所あるけど、実体はどうだか…」

白衣の皺を気にしつつ、赤木さんは話をしていた。

そこへ、執務室に取り付けられた来客用の呼び出し音が鳴る。

「…ちょっと待っててね。…はい、どなた?」

赤木さんは一言二言話すと、受話器を置いてソファーへ戻る。

すると、プシューという音と共に、綾波が部屋へ入って来た。

「…………なに?」

唐突に、主語を欠いたわけわからない言葉を発する。

…こういう所は、父さんの教育の所為かと思われるな。

「なにって…、なにが?」

僕はコーヒーに口をつけながら、綾波に聞く。

「………この臭い、なに?」

ブフゥー!

…思いっきり、噴出してしまった。

「に、に、臭い? そ、そんなものしないわよ?レイ」

…赤木さん、メチャメチャ動揺してますよ。

「赤木博士…、確かに、この部屋には臭いが充満して」

「…あぁ~っと、そうそう、今日は夕食早いんだったね。
 そういう訳で、赤木さん、また明日っ!」

綾波の言葉を遮り、そそくさとソファーを立つと、僕は綾波の肩に手を置く。

すると、突然綾波がグイッ、と肩に置いた手を自分の鼻に近づけた。

「……ここからも、似た匂いがする。
 でも、違う。
 …………………これは、なに?」

…人の指の臭いを………。

「じゃ、じゃあまた明日いらっしゃい、二人とも。
 わ、私は仕事があるから、申し訳ないけどこれで」

「は、は~い、では失礼しま~す!」

「………? …失礼します」

そう言って、とにかく、赤木さんの執務室から飛び出した。

……知らぬは本人ばかりなり、ってか。





「ただいま~」

僕はそう言うと、猛スピードでエレベータへ駆け込む。

目指すは二階! 浴場へ!

ピンッ

ツゥー

バタバタバタバタッ

ガチャ

「……誰も居ないな」

更衣室へ入り、急いで制服を脱ぐ。

バサッ

脱いだ制服を持って、そのままクリーニング…。

ガチャ

「!!!!!!」

「あら~、シンジさんお帰りなさいませ~」

…クリーニングしようとした所、琥珀さんが同じくクリーニングするのであろう洗濯物を持って入って来た。

……ちなみに僕、丸裸。

「あ、わわわわっ! た、ただいまですっ!」

とりあえず、頑張って股間を隠す努力をする。

パサッ

その際、Yシャツを落としてしまった。

(…マッ、マズイ!)

Yシャツ落す→琥珀さん拾う→臭いをかぐ→ぎゃーす。

もしくは、

Yシャツ落す→自分で拾う→琥珀さん怪しむ→やっぱり臭いをかぐ→ぎゃーす。

という方程式が成立してしまった!

ど、どどどど、どうすれぶぁ!

「あら、洗濯ですか? 一緒に洗ってしまいましょうね~」

琥珀さんはそう言うと、Yシャツを拾った。

……1番、ケテーイ。

だが、予想に反して…。

「それでは、他の洗濯物をそこに置いていってくださいね。
 …って言いましても、隠さないとダメですね~」

琥珀さんはそう言うと、更衣室脇にある戸棚から一枚のタオルを出すと、僕に手渡す。

「はい、それを使って隠しちゃってください」

「あ…あ、はい。どうもすいません」

「いえいえ~」

僕はそう言うと腰にタオルを当て、股間を隠して洗濯物を脇に置いてからそそくさと浴場へ駆け込んだ。




「……寿命が、縮んだ」

湯船に浸かり、一人ごちる。

「…でも、あの勘の良い琥珀さんが、ねぇ」

まさか気付かないとは思わなかった。

「……いや、もしかしたら」

気付いてて、わざと知らない振りをしたのか…。

「……傷つけた、かな…」

……あからさまに、隠してた事になるもんな。

「………最低だ、僕」

「傷つきはしませんが、嫉妬しちゃいました」

「そっか…、そりゃそうだ…って、琥珀さんっ!?」

ザバッ

僕は勢い良く立ち上がり、声のした方を見る。

「えぇ、琥珀です」

さも当然、という風に琥珀さんは僕のすぐ横で湯船に浸かっていた。

「………いつの間に」

僕は湯船に浸かり直して聞いてみる。

「そうですね~、「…でも、あの勘の良い琥珀さんが、ねぇ」あたりからです」

ほとんど最初からジャン!

「……声ぐらい、かけてくださいよ」

「あら、声かけましたよ? はいりますよぉ~って」

「………気付かなかった」

「そのようですね。
 なんだか一生懸命考え事していたようですから…」

琥珀さんはそう言うと、ピッタリと肌を僕につけ、鼻先を首筋に当てる。

「…ん~、臭い、消えてますね」

「……やっぱり、初めから気付いてた?」

僕がそう言うと、子悪魔な笑みを浮かべた。

「えぇ、初めはわからなかったんですが、部屋にちょっと、シンジさんのとは違う匂いがしましたからね」

「はぁ…、そっか。
 …隠してごめんなさい」

僕はそう言うと、素直に謝った。

「いえいえ、もう十分反省の言葉は聞きましたので、万事OKですよ~」

「………怒らないんですか?」

「はい、別にそれならそれでいいんです。
 男の方っていうのは、複数の女性を同時に愛せるようですから」

……良い実例がいるもんな、同じ家に。

「でも、嫉妬はしちゃうんですよ…? ほんの少しですけど」

琥珀さんはそう言うと、ピッタリとムニムニするナニカを僕の腕にくっつける。

「……誰か、聞かないんですか?」

「いえ、もちろん教えて頂きますよ? でも…」

「………でも?」

僕は抗いもせず、首に回された腕を受け入れ、僕も同じく背中に手を回す。

「……とりあえず、終わってから、です…」

…………志貴さんって、いつもこんな感じなのかな…?





僕は琥珀さんとバスルームを出て、リビングへと向かう。

「はぁ…、赤木さんが、ねぇ…」

「……まぁ、そうですね」

…なんとなく、シビアな会話をしながら。

そんな会話をしつつ、リビングへの扉を開けると同時に、思いっきりでかい声が響いた。

「レェェェェェーーーーーーーーーーンッ!!!」

キィーン

「……ぐぁ、新手の攻撃かっ!?」

「………ど、どんな音波兵器を使っているんでしょう」

「しっかりしろぉ~!! レン! 大丈夫かぁ~!」

…リビングで元気なのは、志貴さんだけっぽい。

あながち、耳が良すぎるアルクさんやシエルさんは泡吹いて倒れてるし、秋葉さんや翡翠さんまで、力尽きている。

メカ翡翠に至っては、身体のそこかしこから電気が漏れてる。

「…ど、どうしたんですか? 志貴さん」

琥珀さんが、とりあえず聞いてみた。

「こっ、琥珀さんっ! レンがっ! レンがっ!」

志貴さんはそう言うと、猛ダッシュで琥珀さんへ近づき、両手に持つ黒っぽい物体を見せる。

「…あれ? レンだ」

そう、こちらに来る時、遠野の家に置いてきた遠野家お抱えの使い魔、レンだった。

志貴さんと契約していて、実は僕とも仮契約なんかを交わしていたレン。

遠野の家でさつきさんがお世話していたはずなんだけどな…。

「レンがっ! レンが大変なんだよっ!?」

志貴さんはそう言うと、ホレホレと言った感じで猫モードなレンを見せつける。

それに従いよく見ると、目を瞑って、なんか手足、ていうか身体中ピクピク震えてる感じが…。

「あの、あの四季のヴァカがレンをこんな風にぃ~!!」

もう涙よ出ろといわんばかりに騒ぎ立て、慌てふためく志貴さん。

そのお陰で、こっちは冷静になって見れる。

「…それで、一体どのような事でこんな状況に?」

琥珀さんがそう言うと、志貴さんは後ろを指差す。

「アレッ! アレの所為なんだよっ!」

志貴さんが指差す先には、リビングの机の上に

『クール宅○便』

と書かれたダンボール箱が置いてあった。

「…クールはまずいだろ、クールは」

僕は一人そう呟き、ダンボールに近づく。

ダンボールの上蓋の部分には、

『ナマモノ』

にチェックがつけられていた。

「……ナマモノって…」

後ろから覗き込んできた琥珀さんも、冷や汗を垂らす。

…ナマモノじゃなくて、イキモノだろう。

「――――こ、殺す」

後ろでは、暴走臨界点ギリギリの志貴さんが、蒼い瞳をギラギラ光らせ愛刀・七夜を構えていた。

「こ、殺すのはマズいですよコロスのはっ!」

「うるさい! どうせあいつは首だけでも数秒なら生きていられるんだから、心臓無くたって生きていけるだろっ!」

「ムチャクチャな事言ってないで七夜を仕舞ってくださいっ!」

「レンちゃんを助けるのが先ですからっ!」

「っ!? そ、そうだっ! 琥珀さん、レンを助けてくれっ!?」

なんとか我に返った志貴さんは、七夜をギラつかせながら琥珀さんにレンを手渡した。

琥珀さんは一瞬悩んだ後、

「――とりあえず、えい♪」

そんな事言って、リビングに置いてある湯沸し機の蓋を開けて、そのままドボーン。

「んなっ、なにやってんですか琥珀さぁ~んっ!?」

「ふえ、凍ってるっぽかったので、解凍しようかと…」

「…そ、それはある意味合ってるけど、ある意味間違っているのでは…」

「ふぇ~、そうですかぁ~?」

……なんか、違うキャラになってないか?

「と、とりあえずレンは水の中で呼吸できないのでわ」

「あっ、そういえばそうですね~。
 じゃぁ上からかけたほうが良かったですかねぇ~」

……狙ってるのか? わざとなのか? 琥珀さん。

ガタガタガタッ

僕がそんな事考えてると、机の上にある湯沸し機がガタガタ揺れ、横倒しになった。

ガション

「……グケッ、ゲッ、ケホッ」

……猫モードでも、生命の危機になると人語喋るのか。

なんだか咳き込みながら、レンが湯沸し機から這い出てきた。

「ほら、やっぱり解凍すれば一発なんですよ」

「………そ、そうっすね」

なんかもぉ、どぉ~でもいいや。

そんな事考えていると、リビングの入り口のドアが開いた。

「………お腹空いた」

綾波だ。



[37] Re[37]:EVANGELION~BlueBlue GlassMoon
Name: Torah
Date: 2003/09/22 07:37
「………ま、マスタ~~~~~っ!」

「れぇ~~~~~~~~んっ!」

だきっ

「ぐすっ、ぐすっ…、マスター、辛かったです…」

「そうか、そうか…。もう大丈夫だ、レン。
 お前をいぢめるヤツは、俺が全員やっつけてやるからな…」

ぎゅぅぅ

「ま、マスター、く、くるし…」

「大丈夫だ、レン。 すぐによくな」

「それはイケませんっ!!」

とりあえず、危険な事おっ始めそうな志貴さんにリモンチョウチュウ。

メゴッ

「がっ…、は、謀ったな…」

「はいはい、使いまわしはしないで下さい」

「…ぐぅ」

ドサッ

こうして、遠野家の汚点になりそうな青年は眠りについた。

「……欲求不満だったんですかね?」

「それはないでしょ、みんな居るんですし」

「………お腹空いたわ」

とりあえず、綾波だけが、この部屋へ普通な人格の持ち主だった。





「…という訳で、レンです」

「……綾波レイ、よろしく」

寝ている志貴さんをどかして、未だ昏倒している秋葉さん達四人を漏電してたっぽいメカ翡翠に部屋まで運ばせ、僕達は四人で夕食タイムにした。

今夜は綾波が肉好きじゃないという事で、湯豆腐。

……夏なのに、湯豆腐。

「シンジさん、マスターは大丈夫ですかねぇ?」

「…違う意味でアブないと思うよ」

「………そうですね」

なんとなく納得して、レンは湯豆腐の中にあったウィンナーをはむはむと食べる。

………ウィンナー?

「……おでんっぽい中身ですね、そう言えば」

「ふぇ、湯豆腐っておでんの汁無しの豆腐入れたやつじゃないんですか?」

「…まぁ、大根とか入ってないから別に大丈夫でしょう」

「大根、入れます?」

「いえ、結構ですよ…」

そんな調子で、食事は淡々と進んだ。

「…………熱いわ」





「それで、なんでレンはこっち来たんだ?」

なんとな~く復活した志貴さんが、レンに聞く。

「…それより先に、ご飯食べないと無くなりますよ?」

文字通り、テーブルでは死闘が繰り広げられていた。

「あはは…、まぁお腹空いたらなにか食べるさ」

そう言って、レンに話の続きを目で促す。

「あぁ…、あのですね、飽きたんです、あの二人の夢」

「……飽きた?」

「はい。
 …毎日毎日、似たようなイチャイチャラブラブな夢しか見ないんです、あの二人」

「………なるほど、ねぇ」

「という訳で、こちらに来ちゃいましたので、よろしくです」

そう言って、ペコリと頭を下げた。



[37] Re[38]:EVANGELION~BlueBlue GlassMoon
Name: Torah
Date: 2003/09/22 22:37
「綾波レイ、十四歳、マルドゥックの報告書によって選ばれた最初の被験者、ファーストチルドレン。エヴァンゲリオン試作零号機専属操縦士。
過去の経歴は白紙、全て抹消済み」

「で、さきの実験の事故原因はどうだったの?」

「未だ不明。但し、推定では操縦者の精神的不安定が第一原因と考えられるわ」

「精神的に不安定?あのレイが?」

「ええ、彼女にしては信じられないくらい、乱れたの」

「何があったの?」

「解らないわ、…でも、推測ならできる」

「…心当たりがあるの?」

「…実験当日、私は司令から待機していた救護班の待機解除を指示されたわ」

「それって、どういう事?」

「あの時、零号機は暴走、レイの乗るエントリープラグはハッチに不安定な固定をされ、オートエジェクションにより室内を飛び回り、落下。
 レイを助ける為、司令は落下地点へいち早く駆けつけ、手に火傷を負いながら救出。
 …よく出来た美談だと思わない?」

「…不安定に固定されたハッチと言うのは?」

「整備班の話だと、司令から装置には触れるなと言われていたそうよ」

「……用意されていた事故だった訳?」

「あの事故のお陰で、最近までレイは司令に固執していたわ。
 …碇司令にしれみれば、それだけの価値はあったんでしょ?
 最も、副産物かどうかは分からないけれど、あの失敗のお陰でレイを人類初の使徒戦で出撃させない理由になった」

「…シンジ君には、この事教えたほうがいいのかしら」

(彼なら…、あの手の火傷と零号機の起動実験の事を聞いたらすぐわかっちゃうわよ。
 細かい事情は把握していなくてもね)





……あっつぃ~。

本当、セミは五月蝿いし、すんごい熱いし。

ムサ苦しい格好したネルフの職員がバタバタ動いてるし。

汗だくだよ、あの人達。

「…こんなもん、この間見たっての」

「……随分と不機嫌ね、彼」

「都会は熱い、っていってたわ」

僕がイカの残骸を見上げていると、後ろで葛城さんとリツコさんが話をしていた。

「…それで、僕を呼んだ理由ってなんですか?」

「えぇ、先の戦闘で第四使徒の損害はコアのみ。
 理想的なサンプルを提供してくれたお礼にご招待しただけよ」

「…熱いっすよ、ここ」

僕がそうぶ~たれると、葛城さんが割り込んでくる。

「それで、何か分かったの?」

「…こっちよ、付いて来て」

リツコさんはそう言うと席を立ち、僕らをどこかへ案内した。



…こんな所で大型パソコンなんか起動させて、大丈夫かよ。

そう思ったけど、そこは『ねるふのぎじゅつりょく』って事で自己完結しといた。

リツコさんは、恐らく調べたのであろう結果を、ディスプレイに表示させた。

「…なにこれ?」

「解析不能を示すコードナンバー」

「…それで、他には?」

601と表示されたディスプレイを横目で見て、リツコさんはまた違う画像を表示する。

「…二重螺旋、ねぇ」

「そ。結局ここまでしか分からなかったわ。
 使徒の固有波形パターンが構成素材の違いはあっても、人間の遺伝子と酷似しているってこと、それが99.89%の一致だって事ぐらい。
 …こんな事、分かってる事よ。
 S2機関への接続回路や、そういったものも見当たらない。
 結局、どういう構造で、どういう進化を遂げているのかもさっぱり」

そう言って、リツコさんは傍らに置いてあったクーラーボックスからアイスコーヒーを取り出して飲んだ。

「結局、わからない事だらけなのね」

葛城さんはそう言って、パイプ椅子に座った。

僕もそれを見て横にあるパイプ椅子に座り、外を眺める。

すると、復帰していた碇ゲンドウが冬月さんと並んで何か見ていた。



「ここがコアのあった場所…、痕跡はどうだ?」

「はい、残念ながら見当たりません。
 ここだけが、そっくりそのまま焼失しています」

「…そうか」



…ん?

あの父さんが、怪我か?

「…葛城さん」

「ん~? あによ」

「父さんの掌、怪我か何かの痕があるんですけど」

「あぁ~、あれは…」

「あなたがここに来る前、起動実験中に零号機が暴走したの、聞いてるでしょ?」

葛城さんが言おうとした時、リツコさんが割って入った。

「…まあ、一応」

「その時、レイがエジェクトされたプラグに閉じ込められたのよ」

「…綾波が」

「えぇ、その時碇司令が助け出したのよ。
 …加熱したハッチをムリヤリこじ開けてね」

「…へぇ」

「その時に、掌に火傷を負ったのよ」

………これはこれは。

「なんとも良く出来た救出劇だ。
 一体救護班はどうしていたんですか?」

「引き上げさせられていたわ、碇司令の指示でね」

「……作為的過ぎて、笑っちゃいますね」

「レイも、こっちもいい迷惑よ」

「…今だから言える、ですか?」

「……それ、皮肉?」

とりあえず、無言で答えてみた。

当然、リツコさんには睨まれたけど。





あっちぃ~。

マジであちぃ。

なんでこんな暑いのに男子はグラウンドなんだ…。

女子はプールできゃ~きゃ~言ってるってのに。

……涼しそうだなぁ、羨ましい。

ん、一瞬、綾波と目が合ったな。

…彼女、相変わらず学校では一人なんだな。

「みんなエエ乳しとんなぁ~」

「おっ、センセ、なに熱心な目で見てんねん」

…この間まで廃人みたいだったのに、復活早いなぁ。

「綾波か、ひょっとして」

「…別に、そんなんじゃないけど」

「またまた、怪しいな」

「「ああ、綾波の胸、綾波のふともも、綾波のふくらはぎ~」」

「…暑苦しい! くっつくなお前等!」

ほっぺとほっぺをくっつけるなっ!



[37] Re[39]:EVANGELION~BlueBlue GlassMoon
Name: Torah
Date: 2003/09/23 02:59
…シンクロテスト、ね。

暑くてバテたので、やる気ないっすよ。

『…シンちゃん、お疲れ?』

「えぇ…、全く、なんで暑い中、サッカーなんかしなきゃいけないんですかね」

『うへぇ、このクソ暑い中、サッカーなんてしてたの?』

「えぇ、熱血らしいですよ。
 全く、これ以上暑くなってどうするんだって…」

ん?

父さんと、綾波か。

おやおや父さん、嬉しそうっすねぇ。

綾波は…、無表情。

前は父さんに笑顔を見せてたのかな…。

今は、見せられないって事?

あっ、父さんが帰った…。

『…ンジ君! ちょっと聴いてるの!?』

「えっ?あぁ、なんですか?葛城さん」

『…折角私が高校時代の淡い思い出を…』

あっ、綾波こっち向いてる。

どうかしたのか?

あれ、どっか走っていっちゃった。

『シンジ君、首なんか傾げてどうしたのよ?』

「えっ?そんな事してました?」

『えぇ、エヴァがね』

「…あぁ、なるほど」

首傾げたエヴァ見てどっか行ったのかな、綾波。

……確かに、可愛くはないよな。





「葛城さん、カレーできましたけど」

「じゃあ、ここに入れてぇ」

そう言って、葛城さんはカップ麺を差し出す。

…怖いもの知らずとは、この事だな。

あ、葛城さんはシエルさんの正体知らなかったんだ。

「カ、カ、カレーに対する冒涜ですかぁぁぁぁぁぁ!!!!」

ガッチャーーーンッ!!

…カレー教のカレー狂、シエルさんが暴れだした。

「冒涜ですっ! 不浄ですっ! 即刻殲滅しますっ!」

ジャキーーン

「シ、シエル先輩っ! 黒鍵なんか持ち出しちゃダメだってば!」

「遠野君、離してくださいっ!!」

「か、葛城さんっ! は、早く謝って!!」

ガチャーン!

「鉄甲作用の投擲なんてするじゃないわよでか尻エル!」

「ムッハァーーーーー!! カレーに対する冒涜は即時殲滅ですよぉー!」

「ぎゃぁぁーー! ご、ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんな…」

……当分、カレーはおあずけだな。




「そっ、そうだシンジ君。これ、本チャンのセキュリティーカード。
 あと、レイとみなさんの分も」

「……いいから手伝ってくださいよ」

「……ごめんなさい」

カレーだらけのリビングを、葛城さん、僕と翡翠さん、メカ翡翠と綾波で掃除をする事になった。

犯人であるシエルさんは、御仕置き部屋へ層々たるメンバーで閉じこもったままだ。

…たまぁ~に、嫌な音とか、凄い声とか、いろいろ聞こえてくるけど、スルーしておこう。





ガチャ

「…あぁ、綾波。これから本部?」

「……そうよ」

リビングを出ると、手ぶらの綾波が玄関へ向かう途中だった。

「そう。一緒に行こうか」

「………好きにすれば」

素っ気無い言い方だけど、綾波は僕が靴を履き終わるのを待ってくれていた。



……どこまで下がるんだ、これ。

確か、第二実験室とかなんとか言ってたな。

…再起動実験、か。

「今日これから再起動実験だよね?」

「ええ」

「今度は、上手く行くさ」

「…そう」

「綾波は、怖くない? エヴァに乗るの」

「…貴方は怖いの?」

少し、怪訝そうな顔で僕を見る。

「怖いに決まってるさ。
 どんな戦いであれ、怖いよ」

「あんなに強いのに」

「強い、弱いは関係無いよ。
 …僕は元々、臆病だからね」

「そうは思えないわ」

「それは僕の強い所しか見ていないからだよ。
 …僕だってヒトだからね、弱い部分もあるさ」

「…貴方は、弱いの?」

「そうだな…、強い、弱いをどういう基準で表すかによるかな?
 元々僕は臆病だから、そう言った面では弱いんじゃないかな。
 それに僕、自分で強いなんて自覚はあまりないし。
 他の人とは違う力を持っているって事は分かってるけど、それだけだよ」

「…人と違う力を持っていても、人なの?」

「そうだね…。
 そういう面では、僕達は同じだね。
 普通の人は持っていない、不思議な力を持っているっていう所がさ」

「……私も、同じ?」

「そう…。同じだ」

「……そう、同じなのね」





『レイ、聞こえるか』

「はい」

『これより零号機の再起動実験を行う。第一次接続開始』

『主電源コンタクト』

『稼動電圧臨界点を突破』

起動実験は、淡々と進む。

…最初の一声をかける辺り、父さんもマメだねぇ。

実際、心配だから声をかけているのか?

…それはないだろうな、わざと大怪我させるような相手だ。

結局…、綾波も道具だって事だろう。

『ボーダーラインクリア。零号機起動しました。引き続き連動実験に入ります』

やっぱり成功したか…。

不自然すぎるんだよ、やってる事が。

「碇、未確認飛行物体が接近中だ。おそらく第五の使徒だな」

冬月さんが受話器を置いて司令に声をかける。

…死海文書には、詳しいスケジュールが書いてあるのか?

起動実験成功後に丁度来るなんて、不自然すぎるぞ。

「テスト中断、総員第一種警戒態勢」

「零号機はこのまま使わないのか?」

「まだ戦闘には耐えん。初号機を」

『このまま出ます』

…綾波が、自分から意見を言った。

これには、発令所に居た面々も驚いている。

「ダメだ、戦闘できる状態ではない。 今は休め、レイ」

『…了解しました』

…あぁ~、何て言うか、理屈が合ってないっつ~の。

本当、いい加減だなアンタ。

「初号機、三百八十秒で準備できます」

「出撃だ」

「はい」

「レイ、再起動は成功した。戻れ」

『…了解、しました』

…そんなに不安そうな目をしないでくれ。

「じゃぁ、行きますか」

「えぇ、そうね」

(………碇、君)





『初号機発進準備に入ります』

『第一ロックボルトを外せ』

「解除確認」

『了解、第二拘束具外せ』

『了解』

『司令、不用意な発進は危険だと思われます』

葛城さんが、ゲンドウに意見を出した。

『何故だ、葛城一尉』

『はい、この第五使徒は今までの使徒とは形状が今までのような手、胴、頭のあるタイプとは違い、そして攻撃方法が全くの不明です。
 ここは一度兵装ビル、及びバルーンダミーでの陽動で…』

『敵の様子を伺った所で、倒さなければならん。
 時間が無いのだ』

『しかし司令っ!』

『…越権行為だ、葛城君』

…冬月さん、表情には出さないけど、結構キてるかも。

「葛城さん、出して下さい」

『…分かったわ、日向君、目標は?』

『目標は芦ノ湖上空を進入』

『エヴァ初号機発進準備よし』

『…エヴァ初号機、発進!』

グンッ

…アイツの事だ、何か知っててやったんだろう、な。





『目標内部に高エネルギー反応!!』

『なんですって!?』

『円周部が加速、エネルギー収束していきます!!』

『まさか!?』

「…荷電粒子加速装置っ! ロックボルトを外せっ!」

『マヤッ! 早く外してっ!』

『はっ、はいっ!』

ガクンッ

『シンジ君、避けてっ!』

「うおぉぉぉぉっ!!」

射出エレベータが地上に出た勢いで、ロックボルトを外された初号機を、そのまま上に飛び上がらせる。

ジュゥン

刹那、足の下を光の束がビルに穴を開けて通り過ぎた。

『遠距離兵器!』

「くそっ! 一旦引くっ!」

僕はそう言うと自分が飛び上がったエレベータの上に身を屈めて着地した。

「早く降ろせっ! すぐに粒子ビームが来る!」

『は、はいっ! ガントリーリフト下げます!』

ガクンッ

くそっ! このスピードじゃ頭が下がるまで時間が…。

『再び目標内部に高エネルギー反応!! 先ほどと同等です!』

『円周部が加速!』

「チッ! エレベータ壊すぞっ!」

僕はそう言うやいなや、肩からナイフを取り、足元を凝視。

そのまま、底板に走る『線』を引いた。

ガコンッ

底板はキレイに切れ、足の前に穴が開いた。

『エネルギー、収束していきます!』

「どりゃぁ!」

足元にあった底板の切れ端を使徒へ向けて投げ、僕はそのまま開いた穴へ飛び込んだ。

ジュゥワ

上から何かが融ける音を確認しながら、元エレベータ、現ただの穴を自由落下していた。



[37] Re[40]:EVANGELION~BlueBlue GlassMoon
Name: Torah
Date: 2003/09/23 08:56
初号機の姿をしたバルーンダミーが使徒の前に用意される。

ダミーの初号機が使徒に近づくと、使徒が光り、ダミーが蒸発した。

『敵、加粒子砲命中。ダミー蒸発』

「次!」

声と共に、機械制御の移動砲台が発砲。

だが、使徒のフィールドに阻まれ、逆に狙い撃ちされた。

『12式自走臼砲消滅』

「…なるほどね」





「これまで採取したデータによりますと、目標は使徒を中心とする円周、一定距離内の外敵を自動排除するものと推測されます」

「エリア侵入と同時に加粒子砲で狙い打ち。
 エヴァによる近接戦闘は危険すぎます」

「敵のフィールドはどう?」

「健在です。
 相転移空間を肉眼で確認できるほど強力なものが展開されています」

「誘導火砲、爆撃などの生半可な攻撃では泣きをみるだけですね、これは」

「攻守ともにほぼパーペキ。まさに難攻不落の空中要塞ね。
 で、問題のシールドは?」

「現在目標は我々の直上、第三新東京市0エリアに侵入。
 直径17.5Mの巨大シールドがジオフロント内ネルフ本部に向かい穿孔中です」

「敵はここネルフ本部に直接攻撃を仕掛けるつもりですね」

「しゃらくさいわね。
 で、到達予想時刻は?」

「明朝午前0時6分54秒、その時刻には22層全ての装甲防御を貫通して、ネルフ本部へ到達するものと思われます」

(あと十時間足らずか…)



『敵シールド第一装甲板に接触!』

「で、こちらの初号機の状況は?」

「いけます。先程の戦闘では、見事に無傷で帰還していますから」

「了解。零号機は使えるの?」

「再起動自体に問題はありませんが、フィードバックにまだ誤差が残っています」

「実戦はまだ無理か…、初号機専属パイロットの状態は?」

「そうですね……」

「ん? どしたの? 日向君」

「いえ…、あえて言うなら『絶対近づきたくない』ですかね…」

『敵シールド到達まであと9時間55分』

「状況は芳しくないわね…」

「白旗でも揚げますか?」

「そりゃ名案。でも、ちょっちやってみたい事があるのよ。
 後悔するのはあの世じゃ遅いからね」



「目標のレンジ外、超長距離からの直接射撃か…」

「そうです、目標のATフィールドを中和せず、高エネルギー収束帯による一点突破しか方法はありません」

「MAGIはどういっている」

「スーパーコンピュータMAGIによる解答は、賛成2、条件付賛成が1でした」

「勝算は8.7%か…」

「もっとも高い数値です」

「反対する理由はない、やりたまえ葛城一尉」

「はい!」



「しかしまた無茶な作戦を立てたものね、葛城作戦部長さん」

「無茶とは失礼ね、残り9時間以内に実現可能、おまけにもっとも確実なものよ」

「うちのポジトロンライフルじゃそんな大出力耐えられないわよ、どうするの?」

「決まってるでしょ、借りるのよ」

「借りるって…、まさか…」

「選択肢は二つ、その内一つはNERV内部の協力者が必要よ」





「…超ロングレンジからの一斉射撃ですか」

「そういう事で、シンジ君の銃と、みなさんの力、貸して欲しいのよ」

「……嫌だ、と言ったら?」

「その時は、日本中を停電に追い込んで戦自研から徴収してあるポジトロンライフルで勝率8.7%の賭けに乗るしかないわね」

「…秋葉さん、どうですかね?」

「…仕方ありませんわ。
 あの髯には、私達が助力する事は…」

「もちろん、言ってないわよ」

「では…、どのような作戦でいきますか?」

リツコさんの執務室にみんな集まり、作戦会議が開かれた。





「やぁ、綾波」

「…なに?」

「作戦だよ、零号機で出撃だ」

「…スケジュールは?」

「え~っと…」

葛城さんから預かったメモをポケットから取り出し、綾波に手渡す。

「…碇、綾波の両パイロットは本日17:30ケイジに集合。
 18:00初号機及び零号機起動。
 18:05発進。
 同30二子山仮設基地に到着。
 以降は別命あるまで待機。
 明朝日付変更と同時に作戦行動開始」

「そういう事。
 作戦名は源平合戦の那須与一にあやかって『屋島作戦』だってさ」

「…そう」

「あ、ご飯一緒に食べない? 琥珀さんが準備して待ってる」

「…いくわ」

僕達は、とりあえず腹ごしらえをしに、食堂へ向かった。

「腹が減っては戦は出来ぬ、ってね~」





学校の屋上に数人の生徒が集まっていた。

「えらい遅いなぁ~、もう避難せなあかん時間やで」

「パパのデータをちょろまかして見たんだ。この時間に間違いないよ」

「せやけど、出てけぇへんな~」

鳥が一斉に飛び立つ。

屋上にいた生徒達は一斉にそちらを向いた。

そこは山が割れ、紫とオレンジのエヴァが出てくるところだった。

「きたきたきたぁ~~~!!」

「おぉ~い、がんばれよぉ~!!」

「いてこましたれぇ~!」

初号機は人影に気付き、学校の屋上へ振り向く。

「うぉっ、こっち向いたっ!?」

『…ったく、早く避難しろよな、ケンスケ、トウジ』

外部ウピーカーから、初号機のシンジの声が聴こえてきた。

「わかっとるわ~! せやかて、センセが勝たんとなぁ~!!」

『へぇへぇ、ま、負けないさ』

初号機はそう言って、親指と立て、屋上へ向ける。

屋上の面々が揃って親指を向けて返したのを確認してから、初号機は山へ向かって歩き出した。

「…すげぇ、パイロットと友達だったのか、お前達」

「2-Aの人間はみんな仲いいけど、俺達はいつも一緒に飯食う仲さっ!」

…先の御仕置きの事など忘れ、ケンスケは自慢気にそう言った。



[37] Re[41]:EVANGELION~BlueBlue GlassMoon
Name: Torah
Date: 2003/09/23 10:12
『敵シールド第十七装甲板を突破。本部到達まであと3時間55分』

『四国及び九州エリアの通電完了』

『各冷却システムは試運転に入ってください』



…なんていうか、でかい銃だ。

これ、本当に使うのか?

「こんな野戦向きじゃない兵器、本当に役に立つんですか?」

「これは、上の目を誤魔化すカモフラージュ。
 ま、一応ちゃんと撃って貰うけれどね」

「大丈夫ですよね?」

「理論上はね。けど銃身や加速器がもつかどうかは撃ってみないとわからないわ。こんな大出力で試射したこと、一度も無いから」

「…まぁ、なんとかなるでしょ」



「本作戦における各担当を伝達します。シンジ君、初号機で防御を担当」

「はい」

「レイは零号機で砲手を担当して」

「はい」

「は~い、それではここからはこの琥珀が説明させて頂きま~す」

ヒョッコリとテントに琥珀さんと翡翠さんが入って来た。

「耳と目は完全に潰しましたので、ここから先は大丈夫です」

「という訳で、説明しますね~。
 シンジさんはとにかく零号機の盾を担当いて頂きます。
 そしてレイさん、零号機の肩あたりには志貴さんとアルクェイドさんが乗っかっちゃいますので、くれぐれも安全運転でお願いしますね~」

「…了解」

「そして、零号機がポジトロン・ライフルを撃ったと同時に、志貴さんがブラック・バレル・レプリカを発射。
 そしてそして、同時にアルクェイドさんが空想具現化で二つの砲撃を混ぜ込んで、威力を増幅、陽電子の特徴である地球の磁場、自転、重力や敵の砲撃の影響を全く受けない空間の道を作って敵目掛けてどか~ん、です」

「…琥珀さん、アルクェイドさんのリミットは?」

「そうですね、一回だったら大丈夫のようですが、二回目になると流石にアレっぽいです」

「…アレになって直接攻撃して貰った方が早いかもしれませんね」

「それはそうですが、碇司令を誤魔化せないです」

「…なるほど。
 それで、当の碇司令は?」

「はい、司令室にいらっしゃいますよ」

なるほど、と僕は頷いて、もう一つ、質問をする。

「ポジトロン・ライフルの電力は?」

「それは、日本中からチビチビと徴収、それとメカ翡翠のバッテリーに加え、シエルさんが今頑張って蓄電してます」

「…蓄電って?」

「……自転車、よ」

「…………じてんしゃぁ~!?」

「あのスタミナの塊のシエル様ですから、後三時間、一生懸命漕いで頂きます」

…何気に失礼だね、翡翠さん。

「それにより、まぁ日本中から電力を掻き集めるよりは出力は低いですが、それでも相当の威力は確保されています」

「…頼みはブラック・バレル、か」

「シンジ君の使うSSTOの盾で、計算上敵の加粒子砲を17秒防御できるわ」

「MAGIでの計算ではこの作戦での成功率、出なかったわ。
 …それだけ、あの銃と外的要因の力が不安定なのよ。
 そういう訳だから、安全とも、危険とも言い切れないわ」

「…結局やらなきゃ生き残れないんだから、やるしかない、か」

「…もう時間ね。
 ……二人とも、お願いね」

さてさて、頑張りますか。

―――やらなきゃ殺られるだけだからな。





…こんな所で着替えるのかい、屋外だぞおい。

薄いカーテンの向こうでは、綾波が着替えている。

とにかく、明かりの所為で影がカーテンに映って、丸分かりだ。

…昔の古い映画で、こんなシーンの後、そのシルエットの人物は良く死んでたなぁ。

「……うわ、不謹慎すぎ、僕」

とりあえず自己嫌悪。

「………何?」

「あぁ~、いや、何でもない何でもない」

「………? わかったわ」

大丈夫、綾波は死なない。

……僕が、護るんだからな。



虫の鳴き声と、山、そして僕と綾波、零号機の肩の上には志貴さんとアルクェイドさんがいる『はず』。

…二人が何やっちゃってるかは知らないけど、さ。

と、とにかく、夜風が冷たくて気持ち良い。

……き、気持ち良いねぇ~、夜風。

『……ぁ……こ…えが……』

『………だ……うぶ、聴こえな………』

…聴こえてるっつぅ~の、バカァ~~~~~!!

「あぁ~! あ、あ、綾波は、何故これに乗るの?」

とりあえず居た堪れなくなり、僕は綾波に声をかける。

「……絆、だったから」

「…今は違うの?」

「……私は、エヴァに乗る事が出来るから」

「だから…、乗るのかい?」

「……ええ」

「綾波は…、戦わなくても、いいんじゃないかな?」

「………でも、私は戦えるわ」

綾波は、赤い目を僕に向ける。

「……戦って、みんなを、碇君を守れるもの。
 それが…、私の、魂の望みだから」

「…みんなを戦って、守る事が?」

「……そうよ。
 …何もしないのは、死んでる事と同じ。
 それは、碇君が教えてくれたわ」

「……そんな危険な事、教えたつもりないんだけどなぁ」

「………時間よ、行きましょう」

綾波はそう言って立ち上がり、エントリープラグへと向かう。

「綾波、…また、後でな」

「………えぇ、また後で」

僕は綾波にそう挨拶して、プラグに向かう。

「……碇、君」

「…ん? なに?」

僕が綾波の声に振り返ると、綾波がなんとなく困った目をしていた。

「………どうすれば、いいの?」

そう言って、零号機の肩の上を指差す。

「………起動させれば、いいと思うよ」

僕はそれだけ言って、エントリープラグに乗り込んだ。





『只今より、0時0分0秒をお伝えします』

移動指揮車の中でカウントダウンが終わり0時丁度になる。

『作戦スタートです』

『…シンジ、失敗は許さないわよ』

「……分かってますよ、秋葉さん」



『第一次接続開始』

『第1から第803管区まで接続開始』

機械が重厚な作動音を上げ、稼動した。

『全冷却システム、出力最大へ!』

『陽電子流入、順調』

『第二次接続』

『全加速器運転開始!』

『強制収束機作動!』

『全電力二子山増設変電所へ』

『第三次接続問題なし』

『最終安全装置解除!』

『撃鉄起こせ!』

そう言われ、零号機が動く。

それにしても、あの八面体、パーフェクトだな。

あそこまで見事に八面体だと、とても生物だとは思えない。

宇宙人の侵略兵器か何かじゃないのか?

『第七次最終接続』

『全エネルギーポジトロンライフルへ』

『発射まであと10秒』

『9.8.7.6』

『目標に高エネルギー反応!! 前回より高くなっています!!』

『何ですって!?』

チッ、事態が動いた。

『3.2.1』

『発射!!』

ドンッ

僕の脇を、黄色と蒼白い光が混ざった一本の線が飛び出す。

僕の目の前には、赤い光が迫ってきた。

「耐えろぉぉぉぉぉぉ!!!」

バチバチバチバチバチバチッ

『敵シールドジオフロントに侵入!!』

目の前に掲げた盾が、みるみる融解していく。

張ってあったA・T・フィールドが、あっという間に貫通された。

多分、盾があるからと、心に余裕があったからだろう、迂闊すぎた。

その余熱で、エヴァの装甲も少しずつ融解する。

「まだかぁぁぁぁ!!!」

そう叫んだ途端、プッツリと目の前の光はかき消えた。

『…目標、完全に沈黙しました』

その声と共に、目の前で沈んでいく八面体が見えた。

「……助かった、かな」

…どう考えても、今の砲撃は僕を狙って来た。

僕はセッティングされた場所から、一歩も動いていない。

「………学習能力ってやつか…、厄介だな」

攻撃してくる奴より、自分に攻撃手段を持たない奴を狙ったのか。

姑息だな…、なんて、そんな余裕ないさね。

「生き残るので精一杯だもんな、俺達も…、お前達も」

そうだ…、これは戦争。

種の保存を賭けた、生存競争の上に成り立つ、魂のぶつかり合いだ。

「熱いのは僕には似合わないんだけどな…」

そんな事考えてると、ブービー音が響く。

「どわっ! なんだっ!」

ガクン、と自分の座っている椅子が動く。

…動いてるのは椅子だけじゃない。

『…君! 碇君っ!』

「…あ、綾波? どうかした?」

ガクン、という音と共に、僕は何となく周りの空間が横倒しになった気がした。

「…おいおい、なんだなんだ?」

とりあえず、エントリープラグを出てみる。

ブシュー

そんな音と共に、プラグのハッチが開いた。

そこから出てみると。目の前には零号機が。

「……なにしてんの?」

「な~んかね、この子、急いでたみたいだから降ろしてやったのよ」

その前には、襟首掴まれた志貴さんと綾波をぶら下げるアルクェイドさんがいた。

「……碇、君」

「よぅ、シンジ、大丈夫か?」

地面に降ろされた綾波がこちらへ向かってくる。

「えぇ、砲撃も途中で消えましたから、だいじょ」

ドンッ

……綾波が、そのまま僕に衝突してきた。

「あ~、シンジ泣かせた。
 女は泣かせちゃいけないって、TVでこの間やってたよ」

「…僕の所為じゃないですよ」

「とりあえず、どうにかするべきだろう」

志貴さんのニヤニヤした笑顔の先には、僕の胸に顔を埋めて泣いてる綾波がいる。

「……っぐ、碇、君。 ……良かっ、た」

「…あぁ、心配させちゃったのか、ごめんごめん」

「お前、軽すぎるぞ、それ」

「志貴さんのほうが軽いでしょうが」

「……お、俺は別にだな…」

「否定、するんですか?」

「……………ぐぅ」

泣いてる綾波をあやしながら、軽い掛け合いをして、僕達はみんなの待つテントへと戻っていった。



[37] Re[42]:EVANGELION~BlueBlue GlassMoon
Name: Torah
Date: 2003/09/23 14:52
外は夕暮れを過ぎ、夜の帷が降りていた。

それはジオフロント内でも例外ではなく、僅かな灯りだけが灯っていた。

「また君に借りが出来たな…」

暗い司令室の中で、碇ゲンドウは何者かと電話をしている。

『返すつもりはないんでしょ? 彼らが情報公開を盾に迫っていた資料ですが、ダミーを混ぜてあしらっておきました。
で、どうです?
例の計画の方もこっちで手を打ちましょうか?』

「いや、君の資料を見る限り、問題は無かろう」

その資料には、人型のロボットが印刷されている。

ゲンドウはそれを見て、ニヤリと唇を歪め、笑みを浮かべる。

『ではシナリオ通りに』





「は~い、それでは頂きましょう~」

『頂きます』

その掛け声と共に、朝食大戦争が始まる。

本日の目玉はスクランブル・エッグ、ミニウィンナー入り。

9人分とあって、大皿3枚分はあろうソレは、見事にカラになる。

とりあえず僕は、毎朝の事である為、近所の早朝からやっているパン屋さんの今朝焼きたてのフランスパンのガーリックトーストを食べる。

これは綾波の好物の一つで、何かと食欲の減退しやすい朝食にピッタリだという事で、四日に一度は出てくる。

…まぁ、全員分買うと、フランスパン五本分にはなるんだが。

「そう言えば、今日でしたわね、シンジの進路相談」

秋葉さんがナプキンで口を拭きながら訊いてくる。

「えぇ、最も、琥珀さんが担任なのでどうにでもなります」

「そうですわね…、そう言えばシンジは高校、進学するのよね?」

「もちろんそのつもりですけど、今はとりあえず全部終わらせるのが先ですし、ね」

そう言いながら、コーヒーでパンを流し込む。

「なぁ…、お前、大学出てるんだから、いいんじゃないのか? 進学しなくて」

「それはそうなんですけどね、青春、したいじゃないですか」

「……かなり不純な動機だな」

僕の答えに、志貴さんは呆れ顔でスクランブル・エッグを口に運んだ。






ピンポ~ン。

キュゥイーン

呼び鈴に、メカ翡翠ちゃんが動く。

『…………』

『……………………』

キュゥイーン

メカ翡翠ちゃんが、リビングに戻ってきた。

「オキャクサマガ、オマチデス」

「…はぁ、あの二人、また来たのか」

家を出るにはまだ早い時間に、ジャージ&メガネは最近よく来る。

「それでは、学校へ向かいましょうか?」

「はい、秋葉様」

「まぁ、ちょっと待て待て」

秋葉さんと翡翠さんの言葉を、志貴さんが遮る。

「…シンジ、今日こそはアレだ」

「…分かりました」

僕と志貴さんは立ち上がり、リビングを出て行った。



ブシュー、と、ドアが開く。

「「おはよう! 碇く…」」

そこには、七夜モード寸前の志貴さんと、僕が立っていた。

「…お前等、朝早く来過ぎなんだよ」

「…俺の高校でも、この時間じゃ定時の30分前には着いちまうんだよ」

…志貴さん、かなりおかんむりだ。

「………じゃ、じゃぁ、僕達先に行ってますから、お兄さん、お気をつけて」

「…せ、せや、センセ、遅刻せんようにな」

「……お前等」

「……今度同じ事したら」

「「―――殺す」」

「「………はい」」

涙を流し、二人は帰って行った。

「…志貴さん、大人気ないですね」

「…どうせ、秋葉達目当てなんだろ、彼ら」

「ま、そうなんですけどね」

「じゃぁ、問題はないだろう」

……………それもそうだなぁ。





本当、セミって夏は元気いいよなぁ~。

…夏しかないんだけどさ、今の時代。

「そういや、レンってどこで寝てるんですかね?」

ずずぅ~、と紅茶を飲みながら僕は聞いてみる。

「それはもちろん、志貴さんのお部屋ですよ」

琥珀さんは、目の前でおいしそうにケーキをパクついていた。

「…そのケーキ、どしたんですか?」

「あぁ~、食べたいですかぁ~?」

琥珀さんはそう言って、フォークにケーキを刺して『あ~ん』と差し出す。

……いただきます。

パクッ

「やっぱりケーキはショートケーキですよね~」

「…僕はレアチーズケーキなんか好きですね、…じゃなくてですね」

「ふぇ、なんでしょうかぁ~?」

………また、キャラ違うぞ。

「このケーキ、どうしたんですか? って聞いたんですけど」

「…あぁ~、先ほど、父兄の方に頂いたんですよ、『息子をよろしくお願いします』って」

「………賄賂って言うんですかね?」

「まぁ、問題はないと思いますよ? 証拠がありませんから」

………そりゃ、全部食べちゃったもんなぁ、証拠なんかないよ。

琥珀さんはケーキを食べ終え、まったりと紅茶を飲んでいる。

「…ふぅ~、でわでわ、次の父兄さんのお時間ですので、呼んで来てくださいね~」

「……じゃぁ、失礼しました」

「あっ、今夜の夕食は鶏肉のステーキにしようと思うんですが」

「…綾波には、聞いておきますね」

「よろしくお願いしますね~」

僕はその声を背に受けて、教室のドアを開けた。

…………進路の相談、したっけ?





「エヴァンゲリオン…か」

いつも通りシンクロテストを終えた後、先日の戦闘を思い出し、一人呟く。

「…なに、何か考え事?」

片手に持つコーヒーを差し出しながら、リツコさんが訊いてくる。

「いや、ちょっと…。
 …何故、エヴァンゲリオン、なんて名前なんですかね?」

「それは知らないわ…。
 元々、人工進化研究所、ゲヒルン時代から決まっていたから」

「Evangelion…、ギリシャ語のeuangelion、ラテン語のevangeliumとも違う、でも限りなく『福音』に近い名前。
 略称がエヴァ、アダム、リリス、そしてエヴァ……。
 僕達はアダムとエヴァの子供なのか、それともリリスの子供なのか…」

「…エヴァ、イブね。
 まるで言葉遊び、こんな事でいいのかしらね?」

「そんな事言ったら、ネルフもゼーレも、ゲヒルンも、全て言葉遊びによって生まれたものですよ」

「神経、魂、脳…、ドイツ語で統一されている所が、ある意味マヌケね」

「…自分達はドイツに居るって教えているようなもんですね」

赤木さんは、無言で煙草を一本差し出す。

僕はそれを受け取って、灯された火で煙草をつけた。

「知ってる? Nervのロゴマーク。
 イチジクの葉に、NERVの刻印、その下には『God is in his heaven, all right with the world』の文章」

「…その文章の意味は?」

「『神は天に有り、世は全て事も無し』、19世紀の詩人の詩句よ」

「…自分の周り、自分で考える事柄に他人の、ましてや神なんて曖昧なモノが介入する余地なんてない。
 ………前に、僕達の師匠がそう言ってました」

「…何故、そんな事を言ったの?」

「昔…、志貴さんが幼い時、僕が幼い時、言ったんです。
 『神様は、余分な力を分け与えない。
  きっと、君の力は何か意味があるから与えられたのよ』
 って。
 ……師匠は、それ、後悔してたらしいんです」

「…それで、さっきの言葉を?」

「あの言葉には続きがあるんです。
 『君達にはきっと今後、人並みな幸せは訪れない。
  きっと、その力の所為で、今より苦しくなるかもしれない。
  …君達は、普通の…君達に相応しい所に居ても良かったんだなって、後悔してる。
  君達の目は、厄災を引きつける。
  …だから、君達は少しぐらい曲がって育ったほうが楽だった。
  でも、君達はまっすぐに育ってくれた。
  けれどそれは、とても辛い事よ。
  誰よりも卓越した殺人鬼が、他の誰より、殺人を嫌っているなんて…。
  君達はその目を否定して、普通に暮らすか、心まで逸脱してしまえば、楽だったのよ。
  今までも、これからも、そんなに苦しむ事はないの』」

僕はここまで言って、コーヒーを一口飲む。

「…師匠の言う事は最もかもしれない。
 でも、違うんですよね。
 それは楽かもしれないけど、幸せじゃない。
 僕達は師匠にそう言った後、改めてお礼を言ったんです。
 『まっすぐ育ったのは師匠のお陰です、ありがとう』って。
 ……そしたら、師匠泣いちゃって…、鬼の目にも涙ってやつですね」

僕はそう言って、吸いかけの煙草を口に咥えた。

「…その師匠さんの言う事も最もね。
 現に、今こんな厄介な事に関わってる。
 …神、魂、そんな言葉が飛び交う異常とも思える状況よ」

「…ここに来る前も、そんな言葉は一杯聞かされましたよ。
 ただ、今回は今までとは勝手が違いますけどね。
 本当に、世界を、地球を巻き込んだ事に首突っ込んじゃって、大変ですねぇ」

「本当、大変ね…」

なんとなく、コーヒーを啜る。

「…次は、『奇跡』が起きるそうよ」

「『奇跡』…、ですか?」

「えぇ、この間、『奇跡』の『下準備』をさせられたわ」

「…本当、神、魂、奇跡。
 不確かなものに頼りすぎです」

「それは、直接言って頂戴」

「後々、ですね」

そうしてゆっくりした後、僕達はNERV本部内にある居住区画の一室を出た。





ドアが開き一人の男が入ってくる。

「失礼、便乗ついでにここ、よろしいですか?」

男は返事を待たずに隣に座った。

「サンプル回収の修正予算、あっさり通りましたね」

「委員会も自分が生き残ることを最優先に考えている。
 その為の金は惜しむまい」

「使徒はもう現れないというのが彼らの論拠でしたからね。
 ああ、もう一つ報告です。
 米国を除く、全ての理事国がエヴァ六号機の予算を承認しました。
 まっ、米国も時間の問題でしょう。
 あの国は失業者アレルギーですからね」

「君の国は?」

「八号機から建造に参加します。
 第二次整備計画はまだ生きてますから。
 ただパイロットが見つかっていないという問題はありますが」

「使徒は再び現れた。
 我々の道は彼らを倒すしかあるまい」

「私も、セカンドインパクトの二の舞はごめんですからね」

空を飛ぶシャトルの中で、男とゲンドウは密談を交わす。



[37] Re[43]:EVANGELION~BlueBlue GlassMoon
Name: Torah
Date: 2003/09/23 22:58
「…明日、ですか?」

「そうよ。
 明日、旧東京で開かれる日本重化学工業共同体という所のパーティーに出席する事になっているの。
 招待状はあります。
 …もちろん拒否は認めません」

秋葉さんはそう言うと、招待状を僕に手渡した。

「…でも、なんでこんなもの送られてくるんだ?」

「日本重化学工業共同体、久我峰が出資していたそうですよ。
 最も、明日発表されるモノの事を知ってから、出資を止めたそうですが。
 …大方今回の招待は、モノを見せて再び出資して貰おうという魂胆なのでしょう」

「で、そのモノってなんだ?」

「聞いてる? 翡翠」

「いえ…、行ってからのお楽しみに、と言われまして」

「…斗波さんらしいと言えば、らしいね」

「久我峰さんは来ないんですか?」

「久我峰さまは当日、お忙しいようですよ」

「大方、どこぞの高校で行われる学園祭などで忙しいんでしょう?」

「………有り得るだけに、怖いな」

「…………えぇ」

志貴さんと二人で、あまりにもリアルすぎる想像に溜息を吐くしかなかった。

あの変態っぷりは、感心してしまう程だし。





翌朝、アルクさん、シエルさんは学校へ先生のお仕事。

綾波は学校、レンはメカ翡翠ちゃんとお留守番

…琥珀さんも仕事なんだから学校行かないでいいのだろうか。

そんな訳で、遠野一家+僕という構成で旧東京へ行く事になった。

玄関を出て、全員でエレベータを待っていると、エレベータが下ってくる。

シュー

「あら、おはようみんな」

「おはようございます、赤木様、葛城様」

「みなさんお揃いでどしたの?」

エレベータに乗り込みながら、降りてきたエレベータに乗っていた赤木さんと葛城さんに挨拶をする。

二人とも、今日はNERV支給の制服だ。

「えぇ、これから旧東京の三鷹で行われるパーティーに出席をする事になりまして」

「…偶然、私達もなのよね」

「………マジですか」

「えぇ、申し訳ないけど…」

「……久我峰、今度会ったら御仕置きね」

下がるエレベータの中で、秋葉さんはなにやら物騒な事を考えていた。



NERV専用移送機と化したVTOL重戦闘機で、7人で旧東京の上空を飛ぶ。

目的地が同じだから、という事で赤木さん達が同乗を許可してくれたのだ。

「ここがかつて花の都と呼ばれていた大都会とはね」

「ついたわよ」

「何もこんな所でやらなくてもいいのに」

「…こんな所だからこそ、なんじゃないですか?」

「…で、その計画戦自は絡んでるの?」

「戦略自衛隊?いえ、介入は認められずよ」

「どうりで好きにやっているわけね」

「全く、こんな所で行うパーティーなんてたかが知れてますわね」

「遠野グループは、今回の計画に出資していたの?」

「遠野グループは出資しておりません。
 過去、久我峰家が出資していた事があるようで、今回の招待は再出資の要請も兼ねたものかと思われます」

「お金を持っている所にはへつらう、俗物の考えそうな事ですわ」

「そう考えられるのは、それだけの力を持っている場所に居るからよ」

「当然、遠野家はそれだけの力を持っていますもの」

「……凄いわね、秋葉さん」

「遠野家当主として必要な心構えですわ」

……秋葉さんをそんな輝いた目で見つめるなよ、葛城さん。





『本日はご多忙の所、我が日本重化学工業共同体の実演会にお越し頂き、まことにありがとうございます』

「…なんですか? アレは」

「………農協さんは、随分昔から存在しているハズですがねぇ」

司会っぽい人が話している舞台の上に下がってる『JA完成披露記念会』と書かれた垂れ幕を指差して聞く。

「あれは農協という意味ではなくて、Jet Alone…日本重化学工業共同体が開発した、自称、巨大人型自走兵器の事を指しているのよ」

コーヒーを飲みながら、赤木さんが説明してくれた。

「ところで…、本当にいいんですか? 割り当てられた席に居なくて」

「NERVの方が良いと言っているんですから、問題はありませんよね?」

「えぇ…、最も、ミサトはもうあの席には戻る気無さそうよ」

そう言って、チラリと横を見る。

その視線の先には、ブランデーを飲む秋葉さんと、瓶ビールをラッパ飲みする葛城さんに挟まれてチビチビ茶色い何かを飲んでいる志貴さんがいた。

「…秋葉さんまで呑み出す事ないのに」

「飲まなければこんなパーティーやってられない、とおっしゃってました」

「………翡翠さん、止めようよ」

「私には、あのお二人を止める事は無理です」

……あっさりと拒否。

「まぁよろしいじゃないですか~。
 折角のパーティーなんですから~」

「そうね…、折角のパーティーで割り当てられたあの席にはミサトは居られないでしょ」

リツコさんはそう言って、その席を見る。

そこには、『ネルフ御一行様』と書かれた簡素な紙で書かれたポール、そして嫌がらせのようにただでかいだけのテーブル。

そのテーブルの中心、男が手を伸ばしてやっと掴めるかどうかという位置に嫌がらせのように置いてあるビール瓶が三本。

そして、他のテーブルと違い、料理が全く運ばれていない。

「………なんか、小学生のいじめみたいですね」

余りにも僕達、『遠野グループ御一行様』とは扱いが違う。

「その為に招待されたんですか…、大変ですねぇ~NERVも」

「…NERVは、好き放題やっている超法規組織、て事になっているもの。
 少なくとも、否定はできないけれどね」

いつの間にか、運ばれてきた剥き海老の揚げ物を食べて、リツコさんが答える。

『皆様には後ほど、管制室の方にて、試運転をごらん頂きますが、ご質問のある方はこの場にてどうぞ』

…あぁ、試運転するのか。

質問…、どうするんだろう?

「…赤木さん? ご質問なさらないのですか?」

琥珀さんが海老を食べてるリツコさんに訊いた。

「…そうね、その為に呼ばれたんでしょうね、私達は」

海老を食べる手を止め、リツコさんはチラリと舞台の上に立つ男性を見る。

その男性は、ネルフ御一行様の居るハズの席をチラチラ見ていた。

「しょうがないわね…、はい」

リツコさんが手を挙げた。

正確には、手を挙げてあげた、って感じだな。

『これはご高名な赤木リツコ博士。
 お越し頂き光栄の至りです、ですが…』

「質問を、よろしいでしょうか?」

向こうが何か言おうとする所で、リツコさんが言葉を遮る。

『…ええ、ご遠慮なくどうぞ』

「先程のご説明ですと、内燃機関を内蔵とありますが」

『ええ、本機の大きな特徴です。連続150日間の作戦行動が保障されております』

…150日って、何するんだろう?

「しかし格闘戦を前提とした陸戦兵器に、リアクターを内蔵する事は安全性の点から見てもリスクが大きすぎると思われますが」

…そりゃそうだ。

しかし、リクスの大きさだったら僕が初めてエヴァに乗った時のほうがリクスは大きかったよなぁ…、動くかどうかも判らなかったらしいし。

『五分も動かない決戦兵器より役に立つと思いますけど』

まぁ、そりゃそうだ。

でも、一応初号機は初戦でS2機関であろう使徒の核を吸収してるから、半永久的に稼動するんだよね、知ってる人はほとんど居ないけど。

う~ん…、五分がダメなのはわかるけど、150日は無駄だろう、やっぱ。

「遠隔操縦では緊急対処に問題が残ります」

『パイロットに負担をかけ、精神汚染をかけるよりは、より人道的だと思います』

精神汚染はアレとして、パイロットに負担がかかるって言うのは普通の戦闘機とかに乗ってる人達と変わらないと思うんだが…。

「うぅ~ん、やっぱパーティーにはビールよねぇ~」

「アルコールの置かれていないパーティーなど、味気なくて楽しくありませんわ」

……声でかいよ、葛城さん、秋葉さん。

「人的制御の問題もあります」

『制御不能に陥り、暴走を許す危険極まりない兵器よりは安全だと思いますがね?制御できない兵器などまったくのナンセンスです。
ヒステリーを起こした女性と同じですよ』

…あぁ、そういや初戦の事は暴走って事にしてあるんだっけ。

初めてなのにあんな戦い方したからだって言ってたけど。

ていうか、言い方がなんか嫌な感じだな。

まるでリツコさんがヒステリー起こしてるみたいな言い方だ。

………端から見たら、そうかも知れない。

『本当、手に負えません』

「その為のパイロットとテクノロジーです」

『まさか、科学と人の心があの化け物を押さえるとでも?本気ですか?』

「なんと仰られようと、ネルフの主力兵器以外あの敵生体は倒せません」

『ATフィールドですか?それも今では時間の問題に過ぎません。
 いつまでもネルフの時代ではありませんよ』

そう言って、彼が笑みを浮かべると同時に、会場から拍手が挙がる。

…NERV、嫌われてるねぇ~。

「は~い、質問させてくださ~い」

ここで、拍手を遮るように琥珀さんが手を挙げる。

『はい、それでは…、申し訳ございませんが、どなたですかな?』

赤木さんと同じ机に居るからか、少し小馬鹿にした態度で彼は訊いてくる。

「はい、遠野グループ技術部門、機械開発・研究室専任顧問、及び遠野グループ総帥、遠野家当主遠野秋葉様秘書、遠野家使用人巫浄琥珀です」

遠野家の一言で、場の空気があからさまに変わった。

『こ…、これはこれは、わざわざこのような場へ起こし頂き、真に有難う御座います』

「ご質問、よろしいでしょうか?」

『はい、出来うる限り、答えさせて頂きます』

そう相手が言った途端、『キュピーン』と琥珀さんの目が光った。

「はい、まず稼働時間についてですが、150日間という長時間での活動、これは一体なにをする為のものでしょうか?」

『それは、敵生体を殲滅する為、必要な時間を割り出し…』

「敵生体を一体倒すのに、150日間も連続稼動しなければいけないのですか?」

『…そのような事はありませんが、しかし』

「それでは、何故150日間なのでしょうか?
 『長ければ長いほうがいい』などという理由ではないとは思いますが」

『…も、もちろん、そのような事は』

「それでは、お答え頂けますか?」

『…………』

…何にも考えずに稼働時間設定してたのか?

そんな訳ないよな…。

何か大っぴらに出来ない理由が…、NERV進攻を想定しての活動時間か?

………なんとなぁ~く、有り得るっぽい。

兵装ビルの破壊、ジオフロント進入、各エヴァとの対決、全て終わった後の復興作業。

そんなのを考えての150日間かな?

まぁ予測は予測でしかないけれどね。

「…どうも明確なお答えが頂けないので、次の質問とさせて頂きます」

琥珀さん、少し呆れた感じで次の質問へ。

「先ほど赤木博士がおっしゃっていた、格闘戦を前提とした兵器へのリアクター内臓に関する問題、あのご意見には私も賛成です。
 何らかの処置はされているとは思いますが、リアクターの暴走、制御不能、反応炉の融解などが起こった場合、どのような対処をするのでしょうか?」

『そ、そのような事は決して…』

「有り得ない、とは言い切れません。
 敵生体がどのような攻撃方法を用いるのかは全く不明です。
 その状況で、有り得ない、などと断言できうる事柄は一つもありませんよ」

『…そ、そのような場合、緊急停止コードが』

「暴走状態の精密機械が、そのようなコードを受け付けなかったら?」

『そ、その場合は直接乗り込み…』

「反応炉の中に人を飛び込ませ、停止コードを入力させるんですか?
 それこそ、非人道的なのではないでしょうか?」

………琥珀さん、きっついなぁ。

「そして、遠隔操作による作業、パイロットを必要としない点に置いては賛同させて頂きますが、作業の正確性、緊急対処による問題、人的制御による問題など、様々な問題点が挙がると思いますが、そちらについては?」

『……そ、そのような問題点など、NERVのパイロットに比べたら…』

…あぁ~、なんかぶっちゃけちゃったよ。

まぁ確かに、パイロットが子供っていうのは、何かと問題があるんだろうねぇ。

「NERVのパイロットの問題点のほうが、それらの問題よりも甚大である、と?」

『…そ、そう思っておりますが』

「では…、そのパイロットにお話を伺ってみましょうか?」

琥珀さんはそう言って、僕のほうへ向けてニヤリと笑みを浮かべた。

そして、僕の腕を掴んでムリヤリ立たせてマイクを握らせる。

「……ども、パイロットの碇シンジっす」

とりあえず、自己紹介………。



[37] Re[44]:EVANGELION~BlueBlue GlassMoon
Name: Torah
Date: 2003/09/24 03:57
『…君が、あのロボットのパイロットなのかね』

「一応、そういう事になってますけど」

『碇、シンジ君。
 君はあのロボットで戦う事をNERVから強要されていないかい?』

いきなりトンでもない事を…。

「初めはそんな感じだったけれど、今は違いますよ」

『…どういう事だね』

「えぇ…、初めは僕しか適格者が現在は居ないから乗ってくれ、という事でした。
 ですがその次からは、自分しか出来ない、自分が出来る事だから自分から乗っているんです」

『…怖くないのかね?』

「怖いに決まってますよ。
 戦うのが怖くない人間なんて、どっか頭がオカしいだけでしょう?
 僕はこれでもごく普通の中学生なんですから、怖いものは怖い。
 でも、僕には戦う事が出来る、だからエヴァに乗っているんです」

『私達の開発したJAがあれば、君があのロボットへ乗る必要は無くなるとは思わないかね?』

「思いませんねぇ、申し訳ありませんが。
 …JA、でしたっけ。
 恐らく敵と戦うには役不足です。
 まだ、第三新東京にある兵装ビルのほうが効果的だ」

『なっ…、何故、そう思う?』

「まず、咄嗟の判断が出来ない。
 遠隔操作では操作している人間の危機感がどうしても希薄になってしまう。
 自分が安全な所に居ますから、無理もないんですけれど。
 ですがパイロットがいらないという所は良心的で好意が持てます。
 それと、反応炉ですね。
 リアクターを敵が直接攻撃してくる可能性がある。
 事実、先日の使徒は敵のエネルギー反応を、自分のセンサー内に敵が入ると感知するタイプでした。
 このようなタイプが、今後再び現れるかもしれない。
 その時、反応炉を搭載しているコイツでは一瞬で破壊、その後放射能を撒き散らし、さらに被害を甚大にしてしまうでしょう」

『………』

「それと、A・T・フィールドです。
 Absolute Terror Field 、直訳すると絶対恐怖場ですね。
 こいつの解明が時間の問題だとは思えません。
 解明出来るのであれば、とっくにNERVが解明しているはずです。
 だってそうですよね?A・T・フィールドを扱えるエヴァを所有、何年も研究している機関なんですから」

『………そ、それはそうだがこれまでの敵生体との戦いでこちらもデータが…』

「それだって、何年も研究してきたNERVからすれば、微々たるものでしょう。
 …それぐらい、本当は気付いているはずですよね?」

『……くっ』

「……僕からのお話は以上です、失礼しました」

僕はそう言って、マイクを琥珀さんに渡して着席した。

「……貴重な本物のパイロットのご意見、参考になりましたでしょうか?」

『…………』

……ちょぉ~っと、やりすぎたかもしんない。



『只今よりJAの起動テストを始めます』

『なんら危険は伴いません。そちらの窓から安心してご覧下さい』

「さて、そろそろね…、シンジ君、先日の言葉、覚えてる?」

今度はカニを食べていたリツコさんが、その手を止めて僕に聞いてきた。

「…えぇ、奇跡が起きる、でしたっけ?」

「そう…、起こるわよ、この場でね。
 詳細は知らないけれど、私の組んだプログラムの対象はJAよ」

そう言って、リツコさんは大きなお皿に残っている料理を集め始めた。

「……あの~、なにしてるんですか?」

「勿体無いじゃない、避難して、食べるのよ」

………なるほど、そっか~。



『テスト開始』

『全動力開放』

『圧力正常』

『冷却器の循環、異常なし』

着々と準備が進む。

…いや、JAもそうなんだけど、僕達の避難する準備がね。

『歩行開始』

「歩行、前進微速。
 右脚、前へ」

「了解。
 歩行、前進微速。
 右脚、前へ」

「…あんな確認作業いちいちやってたら、使徒倒す前に年が明けそうですねぇ~」

どこからか取り出したタッパーに琥珀さんがエビのムニエルを詰める。

「使徒と戦う時は、もう少し簡易化するのではないでしょうか」

同じく、翡翠さんがサーモンのカルパッチョを詰める。

「確かに、歩いてはいるけれどねぇ」

葛城さんが、スモークチキンを詰める、詰める、詰める。

その時、ピーピーと向こうにあるJAの計器が音を立てる。

「どうした?」

「変です。リアクターの内圧が上昇していきます」

『冷却水の温度も上昇中』

『バルブ開放。減速剤を注入』

「駄目です、ポンプの出力が上がりません」

「さて、そろそろね…」

一通り詰め終え、残りはアルコール類だけになった。

…いや、JAの暴走もそろそろなんだけどね。

「いかん、動力閉鎖。
 緊急停止」

さっきのおじさんが指示を出す。

『緊急停止信号、発進を確認』

『受信されず』

『無線回路が不通です』

『制御不能!!』

「そんな…、馬鹿な…」

作業員が逃げる中、おじさん、呆然。

すると、JAの足が屋根を踏み潰し、思いっきり床を凹ませて前進していく。

「…ここを踏むとは、予想外ね」

リツコさんがブランデーの瓶を二本持ちながら一人ごちた。



ビービーと一際デカイ音が鳴る。

「制御棒作動しません!」

「このままでは、炉心融解の危険もあります」

「信じられん。
 JAはあらゆるミスを想定し、全てに対処すべく、プログラムは組まれているのに…、こんな事態はありえないはずだ」

「だけど今、現に炉心融解の危機が迫っているわ」

「こうなっては、自然に停止するのを待つしか方法は…」

「自動停止の確立は?」

「0.0002%、まさに奇跡です」

「…奇跡、ね。
 作為的なものは奇跡とは呼ばないんですよねぇ」

逃げていないおじさんに付き合って、僕達は話をする。

「…碇シンジ君、一体何が言いたいのかね?」

「この騒ぎは、作為的なものだという事です」

「………どういう事だね?」

「貴方達の開発したJAを、快く思わない人間が上に居るのよ」

赤木さんはそう言って、アイスコーヒーの入ったコップに口をつける。

「……そこまでやるのか、NERVは」

「これは、NERVの仕業ですが、もっと個人的な思惑が働いているんですよ」

「…どういう事だね?」

「……司令には表向き絶対服従でないと、NERVには居られないという事です」

「哀しい事に、それがNERVの現実よ」

「……碇ゲンドウ、か。
 確か君の父親だったね」

「えぇ、恥ずかしながら…」

「…奇跡は起きるそうだな、では、それを見ていこう」

おじさんはそう言うと、パーティー会場の、動くJAが良く見える場所にどっかりと腰を降ろした。

「いいんですか? 信用出来ないNERVの仕業ですよ?
 もしかしたら奇跡は起きないかも」

「なに…、NERVの技術力は悔しいが本物だ、プログラムを簡単に改竄できるほどにな。
 私はNERVは信用しないが、その技術は信用しよう」

おじさんの言葉に、僕達はその机の周辺に椅子を持ち寄り、腰掛けた。

「それじゃぁ、ゆっくりと見物させて頂きましょう」

そう言って、みんなで掻き集めたタッパーやら大皿を机に広げ、再びパーティーを開始する。



「時田博士」

「…なんだね? シンジ君」

「プログラム消去のパスワード、希望ですか…」

「あぁ…、私の想い、JAに託したつもりだったんだがな…」

「…その想いは、まだこれから必要です、僕達には。
 その時…、NERVではなく、僕達に力を貸してくれませんか?」

「…私のほうが、力を貸して欲しいんだがな」

「…ギヴ・アンド・テイク、でいかがでしょう?」

「………希望、か。
 どうやら私にとっての希望、JAはきっかけに過ぎなかったようだな…」

夕暮れに、停止して佇むJAを見つめながら、僕達は言葉を交わした。





「本日の事、すべてシナリオ通りです」

「ご苦労」

「それでは、失礼させて頂きます」

「…ご苦労だったな、赤木博士」

「…いえ」

(シナリオ、ね…。真実は、そう思い通りに進まないものよ…)



[37] Re[45]:EVANGELION~BlueBlue GlassMoon
Name: Torah
Date: 2003/09/24 09:58
「そうだ、その問題はすでに委員会に話をつけてある。
荷物は昨日佐世保を出航し、今は太平洋上だ」

言い終わると、ゲンドウは手に持っていた受話器を置いた。

「いよいよか…」

「ああ…」

「よかったのか?使徒が現れるかもしれんのに、私も同行して…」

「その為のシンジですよ」

「ふむ…、ま、それでいいのなら何も言わんよ」





…なんていうか、また空だよ。

何とかと煙は高い所は好きだと言うけど、僕はどっちでもいい感じだな。

「MiL-55D輸送ヘリ、こんなものでどこへ行くんですか?」

琥珀さんが、葛城さんに訊いてみる。

「毎日同じ山の中じゃ息苦しいと思ってね。
 たまの日曜だからデートに誘ったんじゃないのよ」

「嘘ですね」

「嘘臭いですよね~」

「あぁ、嘘だよ」

……そこで肯定しちゃいますか、冬月さん。

しかも、栗羊羹食べながらですか。

「今回来て貰ったのは、今度新しくNERVに配属となったエヴァンゲリオン二号機と、そのパイロットの引渡し、と同時に非常用電源ソケットの輸送、考えられる使徒侵攻の為のシンジ君、という訳だ」

「…使徒が来るんですか?」

「あぁ、間違いなく来るだろう、アレには使徒の目的が運ばれているからな」

冬月さんはそう言うと、お茶をずずずっ、と啜った。

葛城さんは、明かされる事実に目を見開いて驚いていた。

「アレ、とはなんでしょうか?」

「船だよ、国連軍の正規空母、オーバー・ザ・レインボウを中心とする大艦隊だ」

「…船で運ぶという意味は?」

「恐らく、死海文書の記述通りに事を運ぶ為だろう。
 次の使徒は水中から襲って来て貰わなければ記述通りにならんからな」

「…水中戦ですか、エヴァで水中戦なんて、厳しいですね」

「そして、その使徒が目指すもの、それを受け取るほうが重要だ」

「…使徒が目指すもの、ですか。
 ……今までの使徒は全て第三新東京市の地下に居る第二使徒リリスをアダムと勘違いして目指して来た。
 そして、次の使徒はそのリリスと同等、或いはそれ以上に使徒にとっては重要なもの…。
 使徒はアダムと一つになろうとする為、襲ってくる。
 …という事は、NERVにリリスがある以上、今運んでいる船には」

「その通り、卵に還元された第一使徒アダムだよ」

「なっ、なんですってぇ!?」

僕と冬月さんの掛け合いに、葛城さんが大きな声で割って入って来た。

「…葛城君、その直情的な性格、どうにかならんかね?」

「…はっ、も、申し訳ありません」

「それで、冬月さん…、今回アダムをNERV本部に輸送する目的は?」

「老人達の計画の為の餌、そして使徒を第三新東京市へおびき寄せる為の餌、という訳だ」

「…それが、碇ゲンドウの目的ですか」

「そういう事だ、判って貰えたかな? 葛城君」

「…は、はぁ、了解しました」

……本当に、判ってるんかね?





「国連軍が誇る正規空母。
 オーバーザレインボウ、その大艦隊、か」

「空母が5つ、戦艦が4つらしい。
 これだけあっても、使徒相手には持つまいな」

「でっかいですねぇ~」

「あんな老朽艦、よく浮いていられるわよね」

「セカンド・インパクト前から存在する船だからな、古くても仕方がないだろう」

「さて、それではご挨拶といきますかねぇ~」

葛城さんがそう言うと、ヘリは空母の一つへ向けて降下を始めた。



「はっ、いい気なもんだ。
 玩具のソケットを運んできよったぞ。
 ガキの使いが!」

オーバー・ザ・レインボウのブリッジで、ヘリを見ながら艦長が荒い言葉を吐く。

甲板の上では、少女が降りてくるヘリを眺めていた。





「はぁ~、すごいですねぇ~」

琥珀さんがヘリから降り、辺りを埋め尽くす戦闘機を見て驚く。

周りの軍人さん達は、その様子をなんだかアレな目で見ていた。

……思わず睨んでしまったり。

「っ、たたた、シ、シンジ君、申し訳無いが肩を貸してくれんか?」

「あっ、はい。
 …大丈夫ですか? 冬月さん」

「何、ちょっと椅子が硬くてな、腰に負担がかかってしまっただけだよ」

僕は冬月さんに肩を貸しながら立ち上がり、ヘリを降りた。

「Hellow!ミサト、元気してた?」

ヘリから降りると、唐突に女の子のでかい声が聴こえてきた。

……その女の子は、髪は茶髪っぽい。

顔立ちは日本人の血が多分に混ざっているのであろう、美少女だ。

……でも、目が青い。

遺伝子の神秘ってやつかねぇ~。

「まぁね、あなたも背伸びたんじゃない?」

「そっ、他の所もちゃんと女らしくなってるわよ」

葛城あsんが返すと、彼女は胸を大きく逸らせる。

………秋葉さんよりゃ、でかいかもしれん、な。

「紹介するわ、エヴァンゲリオン弐号機の専属パイロット、セカンドチルドレン、惣流・アスカ・ラングレーよ」

惣流さん、アスカさん、ラングレーさん?

なんて呼べば簡単かな。

とりあえず、フルネームは却下。

長いし。

と、そんな事考えてると、ビューと強い風が吹く。

惣流さんのスカートが…、

「きゃぁっ!」

イカンッ!

今日は琥珀さんも淡いブルーのワンピースだった!

クルッと振り返り、すかさず琥珀さんの巻き上がりそうなスカートを手で押さえる。

琥珀さんは後ろを自分の両手で押さえていた。

「うぅ…、危なかったです」

「まぁ、見えなくて良かった良かった」

風が吹き止み、琥珀さんのスカートから手を離す。

すると、後ろから何かが飛んでくる気配が。

ザッ

ヒュン

飛んできた何かを身を捩り避けた。

「ちょっと! あんた何避けてるのよっ!」

「…いや、危ないから」

目の前に立つ惣流さんに、至極当然の答えを返す。

「あんたもあんたよっ! あに大人しく足触らせてるわけぇ!」

…今度は琥珀さんに噛み付いた。

「あら、いけませんでしたか?」

「と、当然じゃない! そんな男、とっちめてやればいいのよっ!」

「そうなんですかぁ~、…でわでわシンジさん、今夜ゆぅ~っくりと、御仕置きさせて頂きますねぇ~♪」

「…こ、今夜って、今朝したばっかり……」

「あら~、そちらがお望みでしたら、そちらでも結構ですよぉ~♪」

「…ア、ア、あんた達、そ、そういう関係なわけぇ~!?」

僕達の掛け合いを聞いて、惣流さんが思いっきり驚く。

「ふむ…、さすがに若いな、シンジ君」

「……変な所で感心しないでください」

「はははっ、いやぁスマンな」

後ろから声をかけてきた冬月さんに、少しげんなりした声で返した。

「…紹介するわ、アスカ。
 サード・チルドレンの碇シンジ君と、NERV副指令、冬月コウゾウ氏よ」

僕達の紹介に、今度は目を丸くする。

「うそっ! コイツがサードなのっ!?」

「…冬月さん、どう思います?」

「ふむ…、惣流・アスカ・ラングレー君」

「…っ! はっ! なんでありましょうか!?」

…いきなり軍人みたいな敬礼をする惣流さん。

裏表、激しいタイプだな、こりゃ。

「…君は少し、礼儀というものに欠けているようだな。
 初対面で彼をコイツ呼ばわりなど、失礼だとは思わないかね?」

「…で、ですがっ!」

「何だね…? 言ってみたまえ」

「…いえ、何でもないです」

「そうか…、ふむ、君には少し礼儀を勉強して貰ったほうがいいかもしれんな。
 シンジ君、君達の住む家、まだ部屋は開いているかね?」

「………マジですか? 冬月さん」

「あぁ、君達の家ほど、礼に厳しい家は知らんからな。
 それに、あの遠野グループの住む家だ、文句はないだろう」

「ふっ、副指令! 失礼ですがご質問がっ!」

「ん? どうかしたかね?」

「はっ! 遠野グループとは、『あの』遠野グループの事で?」

「あぁ、そうだが? 何か問題あるかね?」

「いえ、ですが、NERV関係に遠野グループは無かったと思いますが…」

「あぁ、それは、彼、シンジ君が個人的な付き合いなのだよ。
 最も、家族、と言ったほうがいいのだろうかな?」

「か、家族、ですか…」

「そしてこちらの彼女、琥珀さんは、遠野グループ総帥の秘書でもあるからな」

「ひっ、秘書、ですか」

「そういう事で、日本に来た際の住居は、彼ら遠野家と一緒に住み、礼節をキチンと勉強して貰おう、いいかな? シンジ君」

「……どうでしょう、琥珀さん、どうですか?」

「そうですね、大丈夫じゃないでしょうか?
 流石に、普通の人を怒りに任せて殺したりはしないでしょうし、みなさん」

「…こ、殺すって、あんた」

「ま、そういう事らしいので、OKみたいですよ、冬月さん」

「では、そういう事だ、頑張ってくれたまえ、惣流君」

「…は、はっ! 了解しましたっ!」

……冬月さん、結構強引な人なんだね。





「おやおや、ボーイスカウト引率のお姉さんかと思っていたが、どうやらこちらの勘違いだったようだな」

案内されたブリッジで、いきなり痛烈な批判を浴びせられる。

「ご理解頂けて幸いですわ、艦長」

葛城さん、めげないねぇ~。

「いやいや、私のほうも久振りに子供達のお守りができて幸せだよ」

またまた、皮肉たっぷりに艦長が返す。

冬月さんは一足先に食堂へ行ってるそうだ。

どうやら少し腰の調子が悪いらしい。

「この度はエヴァ弐号機の輸送援助ありがとうございます。
 こちらが非常用電源ソケットの仕様書です」

「ふん、だいたいこの海の上であの人形を動かす要請なんぞ聞いちゃおらん」

「万一の事態に対する備えと理解して頂けますか?」

「その万一に備えて、我々太平洋艦隊が護衛しておる。
 いつから国連軍は宅配屋に転職したのかな?」

「某組織が結成された後だと記憶しておりますが」

「玩具一つ運ぶのにたいそうな護衛だよ。
 太平洋艦隊勢揃いだからな」

「エヴァの重要度を考えると足りない位ですが。
 では、この書類にサインを」

「まだだ、エヴァ弐号機及び同操縦者はドイツの第三支部より本艦隊が預っている。
 君らの勝手は許さん!」

「では、いつ引渡しを?」

「新横須賀に陸揚げしてからになります」

「海の上は我々の管轄だ。
 黙って従ってもらおう」

「解りました。
 但し、有事の際は我々NERVの指揮権が最優先である事をお忘れなく」

売り言葉に買い言葉だねぇ。

まぁ、あぁいう軍人一色な艦長じゃしょうがないかもな。

「相変わらず、凛々しいねぇ~」

険悪な雰囲気の中、軽い口調で男が一人入って来た。

「加持先ぱ~い!」

…急に猫なで声を出す、惣流さん。

「どうも~」

男は軽く手を挙げると、葛城さんを見る。

「げぇっ! かぁじぃ~?」

どうやら葛城さんは、加持と呼ばれた男を知っているようだな。

「加持君、君をブリッジに招待した覚えはないぞ!」

「それは失礼」

艦長の言葉を受け、加持は肩を竦めた。





僕達は食堂へ向かうべく、エレベータに乗り込む。

冬月さんが居なくても、この狭いエレベータじゃ密着してしまう。

「なんであんたがここにいるのよ!」

「彼女の随伴でね。ドイツから出張さ」

「迂闊だったわ、十分考えられる事態だったのに」

「「ちょっと触らないでよ!!」」

「仕方ないだろ~」

「…少なくとも僕は触れる場所には居ないよ、惣流さん」

「…じゃ、じゃぁ誰が触ったって言うのよっ!」

「……加持さんじゃないの?」

「…位置的に、そうだな」





と、無事に食堂に到着。

待っていた冬月さんを交え、お茶会っぽくなった。

「今、付き合ってる奴いるの?」

「それがあなたに関係あるわけ?」

「あれ、つれないなぁ」

加持はそう言うと視線を僕に移す。

なにか探るような、職業独特の視線で僕を見る。

「君は葛城の部屋の隣に住んでるんだって?」

「…ええ」

「…彼女の寝相、治ってるかい?」

「えぇぇ~!」

…惣流さん、騒ぎすぎ。

「なっ、何言ってるのよ!!」

葛城さんは、そう叫んでバンッ、とテーブルを叩く。

「…葛城君、君は本当にその直情的な性格をどうにかできんかね?」

机を揺らされ、冬月さんが少し不機嫌になった。

「…も、申し訳ございません」

「まぁ、とりあえず僕は葛城さんとはそういう関係ではないので、寝相とかは知りませんよ」

僕は紅茶を一口飲んで、そう答えた。

「それはそうだな、碇シンジ君」

…とりあえずは、僕の事を調べたのかな?

「ええ、でもどうして僕の名前を?」

「そりゃ知ってるさ、この世界じゃ君は有名だからね。
 何の訓練も無しにエヴァを実戦で動かしたサードチルドレン」

「そんな世界で有名になったって、嬉しくも何ともないですね」

「だが、君は使徒を三回も倒している」

「偶然ですよ、そんなの」

「偶然も才能の一つさ」

「そんな才能いりませんよ、よかったら差し上げますけど?」

「はははっ、だが、事実は事実さ」

「…事実と真実は違いますよ。
 その言葉の間には、深い溝が広がっています」

僕の言葉に、加持は一瞬目を鋭くさせる。

「…ふむ、なるほどな。
 おっと、時間だ。
 それじゃまた後でな、シンジ君」

そう言って、加持は食堂を出て行った。

「ふむ、では私も行こうかな」

「えぇ、頑張ってください」

僕は出て行く冬月さんにそう言ってから、紅茶を一口飲んだ。



「どうだ、碇シンジ君は?」

「最低ぇ~、あんなのが選ばれたサードチルドレンだなんて幻滅」

「しかし、いきなりの実戦で彼のシンクロ率は0~99.89%までをマークしたぞ?」

「うそっ!」

「まっ、それが真実かどうかは、判らないけれど、な」



「サードチルドレン!」

長い長いエスカレーターを昇っていると、上から声をかけられた。

「…惣流さん、パンツ見えるよ?」

「きゃぁっ! な、何見てるのよっ!」

「…見える前に忠告してあげたんじゃないか」

「くっ! …とにかく! ちょっと付き合ってもらうわよっ!」

「はぁ…、やっぱり君には、礼儀の勉強が必要のようだね」

「まぁ、一度秋葉さまとお話させれば判ると思いますよ」

「何ごちゃごちゃ言ってるのよっ! 早く来なさいっ!」

「………とりあえず、行ってきます」

「はい、お早いお帰りを」





「赤いんだ、弐号機って」

「違うのはカラーリングだけじゃないわ、所詮零号機と初号機は開発過程のプロトタイプとテストタイプ。
 訓練無しのあなたなんかにいきなりシンクロするのがそのいい証拠よ」

…この場でエヴァのなんたるかについてレクチャーしてやろうか。

「けど、この弐号機は違うわ。
 これこそ実戦用に造られた世界初の本物のエヴァンゲリオンなのよ。
 制式タイプのね」

…そんな事、どうでもいいんだけどな。

「とりあえず、パンツ見えてるよ」

白いのがチラチラとね。

「なっ! は、早く言いなさいよこのヘンタイっ!」

「君が長々と喋ってるからだろ」

そんな事していると、ドォーン、と船が揺れた。

「きゃぁぁ!」

二号機の上に乗っていた惣流さんが落ちる。

「はぁ…」

僕はとりあえず落下中の惣流さんを受け止め、下に降りた。

お姫様だっこって感じだな、本当に。

「全く、あんな所に乗ってるから落ちるんだよ」

「…あ、なによっ! あんた何してる」

「とりあえず黙って、今の衝撃波の正体を確める」

…微かに遠くに、アイツラを感じる。

僕はそのまま甲板に出て、遠くの艦隊を見る。

その時、遠くの艦隊の一隻が爆発。

「…チッ、使徒だ」

「あれが、本物の?」

「あぁ…、そうだ」

「…チャ~ンス」

……何がチャンスなんだか。





『各艦、艦隊距離に注意しつつ回避運動』

「状況報告はどうした!」

『戦艦沈黙、目標確認できません!』

「くっそぉ! 何が起こってるんだ!」

艦長が、双眼鏡で爆発を起こす船を見ながら一人ぼやく。

「ちわ~、ネルフですけど、見えない敵の情報と的確な対処はいかがっすか~?」

「戦闘中だ、見学者の立ち入りは許可できない!」

「これは私見ですがどう見ても使徒の攻撃ですねぇ」

「全艦、任意に追撃!」

「…頭が固すぎるわね、どうしたらいいかしら?」

「この場合、シンジさんに期待するしかないでしょうねぇ~」





艦隊から次々に魚雷が発射される。

魚雷は命中はするが、使徒の勢いを弱めるには至らない。

使徒は前方にあった戦艦一隻を貫いた。
「この程度じゃATフィールドは破れないか…」

加持は戦艦が爆発するのを見ながらぼやく。

「当然だ、アレを破れるのは現状ではEVAだけだからな」





「何処行くのさ?」

「ちょっとここで待ってなさいよ」

そう言って、惣流さんは階段を降りていく。

どうやらあの様子だと、出撃準備かな。

「アスカ、いくわよ」

聴こえてきた呟きには、決意が滲み出ていた。





僕の方に女性物のプラグスーツが投げられる。

「さぁ、行くわよ」

「…はっ?」

「あんたも来るのよ?」

…まいったな、どうするかな。

「いや、ちょっと待って」

「早くしなさいよ!」

「乗るのはいいとしても、これは僕には着れないだろ」

「大丈夫でしょ、サイズは自動調節なんだから」

「とにかく、僕はこれを着ないで乗る。
 別に問題は無いだろ? メインでシンクロするのは君なんだから」

その時、ドォーンと衝撃が来る。

「ちっ、しょうがないわね、出るわよ!」

「はいはい、わかってるよ」

「さぁ、あたしの見事な操縦、目の前で見せてあげるわ」

…別にそんな必要ないだろ。

「ただし、邪魔はしないでね」

「…君、よく我が儘だって言われないか?」

……沈黙は肯定とみなします。





[37] Re[46]:EVANGELION~BlueBlue GlassMoon
Name: Torah
Date: 2003/09/24 12:40
加持は自室で、ゲンドウと電話をしていた。

「こんな所で使徒襲来とはちょっと話が違いませんか?」

『その為の弐号機だ、予備のパイロットも追加している。
 最悪の場合、君と冬月だけでも脱出したまえ』

「解ってます」





「L.C.L Fullung. Anfang der Bewegung. Anfang des…」

「はい、ストーップ」

ドイツ語で起動させようとする惣流さんの呟きに、僕が待ったをかける。

「なっ、なによっ! 邪魔しないでって」

「別にドイツ語でもいいんだけどさ、葛城さんから多分通信が入ると思うんだ。
 その時日本語で返事するでしょ?
 その時ドイツ語ベーシックだと思考ノイズになっちゃうよ?」

「…ちっ、思考言語切り替え。
 日本語をベーシックに…エヴァンゲリオン弐号機起動!」

…さぁ、上手くいってくれよ、弐号機。





『オセローより入電。エヴァ弐号機起動』

「なんだと!」

「ナイスッ!アスカ!」

「しかし、本気ですか? 弐号機はB装備のままです」

「…えっ?」



「…惣流さん、海に落ちたらかなりマズイ。
 それと、時間がかかって戦艦を全て沈められてもダメだ。
 そうなった場合、僕達は死ぬだけだからね」

「…わ、判ってるわよっ!」

…本当に判ってるんだろうな。



『アスカッ! 大丈夫っ!』

「当然よっ! 今からそっちに行くわっ!」

『えっ、シンジ君っ!』

「えぇ、ムリヤリ乗せられました」

『…シンクロできる?』

「まぁ、やってみますよ」

『判ったわ』

『起動を中止しろっ!』

「起動を中止したら沈められるだけです。
 僕は少なくともまだ死にたくはないので」

『…くっ、仕方ない、許可する!』

『アスカ、出して!』



使徒のものであろう、巨大な水しぶきがこちらへ向かって来る。

「来たぞ」

「いきますっ!」

弐号機は飛び上がり、使徒の突撃を避ける。

そのまま使徒は、弐号機の乗っていた戦艦に激突、真っ二つにする。

「戦艦の乗員はっ!」

『そこらへんの船の乗員は全て引き上げさせた!』

「感謝する、艦長!」

近くにあった戦艦に、弐号機が着陸する。

「何処に行けばいいのっ!」

「あの船だっ! 残り58秒!」

「ミサト!非常用の外部電源はっ!」

『用意してあるわっ!』

「了解! いくわよっ!」

弐号機は、沈んでいく戦艦を飛び移り、オーバー・ザーレインボウを目指す。



「エヴァ弐号機、着艦しま~す!」

ズドーン、とエヴァが音を立て、オーバー・ザ・レインボウに着艦する。

その衝撃で、滑走路に出ていた戦闘機が次々と沈んでいった。

『目標、本艦に急速接近中!!』

「来るぞ!」

「外部電源に切り替え!」

非常用のソケットを差し込み、エヴァの電源が確保された。

「武装はあるのか」

「プログナイフで十分よっ!」

弐号機は肩からナイフを抜き、構える。

水しぶきの中、使徒が半身を表した。

「…チッ、でかいな」

「思った通りよ」

使徒は目前で加速、弐号機目掛けて飛び掛ってきた。

「でぇぇぇいっ!」

飛び掛ってきた使徒の腹をナイフで裂く。

使徒は体液をばらまいて海に落ちた。

「どんなもんよ!」

「隙を見せるな! 死にたいのかっ!」

「ちょっと、あんた…」

「チッ! 構えろバカ!」

「えっ…、きゃぁぁ!!」

弐号機は飛んできた使徒に巻き込まれ、海に落下した。

『アスカ!B型装備じゃ水中戦闘は無理よ!』

「そんなのやってみなくちゃ判んないでしょ!」

「…クソッ、本気でヤバイな」

とりあえず、現状をどうにかしないとな。



「ケーブルの長さは?」

「残り1200」

「どうするんだね!」

「なんとかなります」



『ケーブルが無くなるわ!衝撃に備えて!』

はぁっ? マジでか?

ガクンッ

衝撃と共に、エヴァが使徒から離れる。

『エヴァ、目標を喪失!』

「…当然だろうが」



『おーい、葛城~』

甲板から戦闘機が一機上がってくる。

「加持~!」

『届け物があるんで、俺先に行くわ』

「はぁ?」

そう言うと、戦闘機が上空へ浮かび上がる。

『葛城一尉、後は頼んだぞ』

冬月の声と共に、戦闘機は飛び立っていった。

「まぁま、冬月さんのご用事も大切ですから」

『目標、再びエヴァに接近中!』

琥珀の言葉を遮るように、通信が入る。



「来たぞっ!」

「今度こそ仕留めてやる! …何よ! 動かないじゃない!」

「チッ、B型装備だと動かないのか」

「どうすんのよ!」

「うるさい、今考えてる」

使徒の外側にコアは見当たらなかった。

という事は、中か?

僕が動かすわけにもいかないし、困ったな。

「…とりあえず、それしかないか」

「ちょっと、何なのよ!」

「来たぞっ! 意識を向けろ!」

使徒は水中を猛スピードでこちらへ向かってくる。

ヤツは、目の前で大きく口を開けた。

「くちぃ~!」

「今だっ! 飛び込むぞっ!」

使徒が口を開いた途端、僕は惣流さんの手の上からレバーを握り、来る衝撃に構える。

口の中を見ると、やはりコアは中にあった。

「きゃああ!」

「……グッ」

『エヴァ弐号機目標体内に侵入!』

腹部を襲う激痛を耐えながら、目の前を見る。

「あ、あんたなにしてんのよっ! ちょっと! 離れなさいよっ!」

「…うるさい、死にたくなければ黙っててくれ」

「な、なによあん…」

「惣流さん…、目の前、見えるだろ?」

「はっ? あの赤い球がどうしたってのよ」

「あれが使徒の弱点だ…、エヴァの腕、届くか?」

「なっ…、ちょ、ちょっと待ちなさい!」

弐号機は持っていたナイフをコアに伸ばす。

だが、ナイフは僅かに先端が刺さるだけだった。

「ちっ! 刺せないじゃない!」

「ぎゃあぎゃあ騒ぐな…、くそっ、初めからこうすりゃ良かったかもな」

僕はそう言うと、魔眼で使徒の内部を見る。

こめかみの僅かな痛みに耐えながら、口の中の『線』と『点』を視た。

…コアの中心に点、そこから伸びるように線が口の中を走っている。

「…あ、あんた目が…」

「…惣流さん」

僕は惣流さんの言葉を遮り、声をかける。

「な、なによ…」

「とりあえず、ナイフで口の中を切りつけてくれ」

「…わ、わかったわよっ!」

弐号機は片手でナイフを逆手に持ち替え、口の中へそのまま突き刺す。

ドスッ

途端、そこから体液が大量に出ると共に、身体を締め付けていた使徒の口が緩む。

「…グゥ! コアを刺すぞっ!」

「いっけぇぇぇ!!」

口が緩んだ瞬間を利用して、胴に刺さる使徒の歯を気にせず口の中を手で前進、刺さっているナイフを抜いて、コアの中心を刺した。

バチバチバチバチッ

水の中で火花が発生するが、それも数秒で消えた。

それを確認すると、使徒の口の力が緩んでいるのを確認してから口の中から弐号機が抜け出した。





「…ふぅ、疲れた………」

身体に走る蚯蚓腫れをさすりながら、シャワーの中で一人ごちた。

「……あれは、惣流さんの母親の魂、か」

プラグの中で感じた魂は、やはり二つ。

一つは弐号機、もうひとつは、僕と同じなんだろう…。

「…全てが終わる頃、出せればいいんだけどな」

まだ痛む身体を動かしながら、シャワー室を出た。





シャワー室から出た僕は、まだ少し血の臭いのする服を着てオーバー・ザ・レインボウを降りる。

「ねぇ、加持さんは?」

「先にとんずら、もう本部に着いてるわよ!あのぶぁか!」

…て事は、冬月さんも一緒だな。

「シンジ君、どうだった?」

オーバー・ザ・レインボウから降りると、待機していたであろうリツコさん達がいた。

「えぇ…、大変でしたよ」

「そう…、身体のほうは? アスカの話だと噛み付かれたのに痛みを感じなかったって言ってたから」

「…まぁ、蚯蚓腫れになってます。
 すぐに治るとは思いますけれどね」

「そう…、貴方が大丈夫って言うなら大丈夫なんだろうけれど。
 もう少し、自分の身体を労わってあげないとダメよ?」

「自分ではそうしているつもりなんですけどねぇ」

僕が赤木さんと話をしていると、志貴さん達がこちらへ向かって歩いてきた。

「…シンジ、えらい疲れてるな」

志貴さんが肩を叩いて僕に言う。

「えぇ…、水中で、初めての戦闘ですからね」

「シンジ」

志貴さんに答えていると、秋葉さんに声をかけられた。

「なんですか? 秋葉さん」

「えぇ、冬月さまから連絡を頂いたの。
 今日から一人、同居する娘が増えると言われてね」

「あぁ…、彼女ですよ」

僕はそう言って、後方を見やる。

そこには、葛城さんと話をしている惣流さんと琥珀さんがいた。

「そう、では挨拶へ行きましょうか」

「かしこまりました、秋葉さま」

「やれやれ、行くか、シンジ」

「……なんか、大変な事にならなきゃいいけど」



「葛城さん、少しよろしいですか?」

「あっ、秋葉さん…、はい、なんでしょうか?」

…やっぱり敬語だな、葛城さん。

「そちらの方、本日から我が家で暮らすと冬月さまから伺っていますが」

「あ、はい。そうです、この子が惣流・アスカ・ラングレーです」

葛城さんはそう言うと、未だ戸惑っている惣流さんをずずずいっ、と秋葉さんの前に差し出す。

「そう、私は、遠野家当主、遠野秋葉です。
 こちらは使用人の翡翠と、私の義兄、遠野志貴です」

「…翡翠と申します、以後、お見知り置きを」

「ぁ~、遠野志貴です。まぁ、よろしく」

「えっ…、あ、そ、惣流・アスカ・ラングレーです、よ、よろしく…」

「秋葉さま、アルクェイド様とシエル様はいかがなされたんですか?」

「あら、琥珀。
 あの二人は自宅で今頃ゲームでもやっているんでしょう?
 気が向いたらすぐに来るわよ」

…確かに、気が向かないと絶対来ないんだろうな、あの二人。

「そうですか~、あ、こちら、冬月さまから本日頂いた和菓子です」

琥珀さんはそう言って、『銘菓 芋羊羹』と書かれた細長い箱を差し出す。

「あら、そう。
 今度こちらからお返しをしなくてはね。
 琥珀、第三周辺にある和菓子屋を選んでおいてね。
 くれぐれも、評判の良い店でなくてはダメよ」

「かしこまりました」

「そうそうシンジ」

「はい? なんですか?」

「先ほど碇家から電話があったそうよ」

「はい、先ほどシンジ様がお忘れになった携帯電話へお電話がありまして、
 本日、ユイ様がご帰宅なされるそうです」

「そっか…、ありがとうございます、翡翠さん」

「いえ、私の仕事ですから」

……こりゃぁ、賑やかになるなぁ今日から。

「さて、それでは挨拶も済んだ所で、戻りましょうか」

「そういえば秋葉さん、何で来たんですか?」

「NERVの車よ」

横から、リツコさんが答えてくれた。

「私とミサトはまだ仕事があるから、少し遅れるわ」

「そうですか、今夜の御夕飯はご一緒できますか?」

「えぇ、それまでには帰れるはずよ。
 毎日すまないわね」

「それは、成果で返して頂ければ結構ですわ」

「えぇ、そのつもりよ。では、また後で」

「それでは、また今夜お邪魔しますね、秋葉さん」

「えぇ、また後ほど、葛城さん」

そう挨拶をして、葛城さんはリツコさんと同じジープに乗り込む。

「…ねぇ、なんでミサト、あの女に敬語なの?」

小声で、惣流さんが僕に聞いてくる。

「…とりあえず、死にたくなかったら『あの女』はやめるんだね」

僕はそれだけ言って、秋葉さん達の待つ車へ歩いていった。



[37] Re[47]:EVANGELION~BlueBlue GlassMoon
Name: Torah
Date: 2003/09/25 00:19
「………これ、どうなってるの?」

「縦、横四階分を全てぶち抜いたんだよ」

玄関に入って早々、惣流さんが驚く。

まぁ確かに、外観からは全く見当もつかないだろうな。

「当座の荷物はNERVの黒服から受け取ってあります。
 部屋のほうはご自分で決めて結構よ。
 まぁ、残っている部屋は二つしかないのだけれど」

秋葉さんはそう言うと、惣流さんをリビングへと促した。

……さてさて、どうなるんだろうねぇ。



EVANGELION~BlueBlue GlassMoon
閑話 アスカ、来日~その後~




カチャ

「あら、おかえりなさい、みなさん」

「………もう帰ってたの? 母さん」

「えぇ、帰ったらメカ翡翠ちゃん達が出迎えてくれたわよ」

「……そう言えば、メカ翡翠ちゃんは?」

「今ね、私の部屋の荷物を整理してくれてる所なの」

………という事は、残ってる部屋は一つって事か。

「ユイ様、ご実家はどうでしたか?」

「えぇ、今度お父様が秋葉さま達も逗留しにいらしてくれ、と言っていたわよ」

「そうですか、その際は、どうぞよろしくとお伝え下さい」

秋葉さんはそう言うと、リビングのソファーに座る。

その横に、当然志貴さんも座る。

「……で、この荷物は?」

リビングに置かれているダンボール箱を見て、呟いた。

ダンボールには”Nicht sturzen !”の文字。

「…こんなに一杯あるの、惣流さん」

「なっ、なんで私だって…」

「ドイツ語は、読めるんだよ」

ちなみに”Nicht sturzen !”は、”落すな!”て感じの意味。

「そうですねぇ、その荷物を運ぶ前に、ユイ様がどちらのお部屋にしたのかを訊かなければいけませんね」

そういう事で、母さんに視線を向ける。

「えっ? 私は三階の部屋にしたけれど」

……惣流さん、お隣ケテーイ。



「という訳で、惣流さんは四階のシンジの部屋の隣を使用して頂きます。
 尚、拒否は認めません」

強い口調で秋葉さんが言う。

惣流さんは、なぜか正座だ。

「そして、この家で暮らす為の、最低限のルールがあります」

「…最低限のルール、ですか?」

「…まず、門限は夜7時まで。
 夜10時以降は部屋の移動も禁止します」

「…部屋の移動も、ですか」

「えぇ…、最も、最近は奔放になってきているので、あまり気にしなくても結構です」

…そりゃ、秋葉さんだって夜中に志貴さんの部屋に行ったりしてるもんな。

「そして次に、朝食と夕食。
 まず朝食は、こちらに住んでいる方全員で食事を摂ります。
 …これは、兄さんとシンジの朝寝坊防止の為の処置です」

「…最近は、寝坊なんて全くしてないだろ」

「昔からの習慣、というやつですよ。
 そして夕食は、全員で摂るのはもちろん、時間が合う場合は葛城さん、赤木さん、伊吹さんのお三方も参りますので、その方々も含めたみなさんで食事をします」

……その為に、あんなバカでかいテーブルがあるんだもんなぁ。

「そして入浴、二階の浴場の場合、こちらは最高一人一時間です。
 それ以上は許しません。
 他の浴場でよろしければ、一階に小さな浴場が一つ、一応こちらにもバスタブはあります。
 そして四階にはシャワールームがトレーニング・ルームに備え付けてあります」

………惣流さんは、大人しく話を聞いている。

「そして、最後に…」

秋葉さんはそう言うと、一息ついて、目を紅く輝かせる。

「兄さんに色目を使うような事があった場合…、問答無用で殺しますので」

ぶわぁっ!

紅いっ! 紅いよ秋葉さんっ!

本気と書いてマジだよこの人っ!

「よろしいですね…?」

カクカクカク

惣流さんは目の前の現実に、首をカクカク縦に振る。

「ま、シンジでしたら私はかまいませんけれど」

すぐに髪を黒く戻して、秋葉さんがそう言った。

「……なんか、僕どうでもいいって感じの言われ方されてる気がする」

「あら、そんな事はないわよ。
 シンジの相手としては、合格と言ったまでよ」

「…なぁ~んか、巧く丸め込まれた気がします」

「ほ、ほら、私達は兄弟みたいなものでしょう?
 弟の行く末を案じるのは姉の勤めなのよ」

「……秋葉さんが姉ですかぁ。
 凄いリアルですよね、それ」

「そうだなぁ、俺からしてもシンジは弟だしな。
 シンジは今まで遠野家の末っ子なポジションだったもんな」

「…僕、我が儘には育ってないですよね」

「どうでしょうねぇ~、志貴さんにそっくりに育ってしまったから、変な所で我が儘なんでしょうねぇ~」

………なんか、リアルすぎるよ琥珀さん。

「そういう事で、何か質問など、あるかしら?」

秋葉さんがそう訊くと、惣流さんはしばし考える。

「…あの、こちらにはファーストチルドレンも一緒に住んでいると訊いたんですが」

惣流さんから出た質問に、僕達は首を傾げる。

「…ファーストチルドレンて、誰だっけ?」

「さぁ、少なくとも私の知り合いにそのような方は居ないんですが」

「私も知りませんねぇ~」

「私も同じです」

「…確か僕、惣流さんに『サードチルドレン』て呼ばれてた気がする」

僕の言葉に、琥珀さんがポンと手を叩く。

「でしたら、綾波様の事ではないでしょうか?」

「…あぁ、そっか。
 エヴァのパイロットは全部なんかそんな風に呼ばれてた気がする」

「なるほど…、そんなの、名前で呼んだほうが早いと思うのに」

「そうですね…、それになんとなく、感じ悪いですよね、その呼び方」

「では、今後そのような呼び方は禁止しましょう」

秋葉さん、即決。

「よろしいですね、惣流さん」

「…で、ですけど」

「拒否は認めません。
 今後、そのような呼び方をした場合、相応の罰を与えますので、そのつもりで」

……御仕置きか。

まぁ、言わなきゃいいんだもんな、大丈夫だろ。

「…わ、わかりました」

惣流さん、なんとなぁ~く納得って感じ。

御仕置きの恐ろしさを知らないからそんな態度でいられるのさ…。

なんか薄暗い事を考えてると、リビングのドアがガチャリと開いた。

「あっ、志貴おかえり~。
 あれ、そこにいるのシンジの母親ってやつじゃん、どしたの?」

アルクェイドさんの目には、惣流さんは入っていないようで。

「アルクェイド、ユイさんは今日から一緒に住むんだよ」

志貴さんも、何気に惣流さん無視?

「そ~にゃのか~、だから隣の部屋ごそごそ五月蝿かったんだね」

「そういう事で、よろしくお願いしますね、アルクェイドさん」

母さんはそう言って恭しくお辞儀。

アルクさんはそれに手を挙げて答えると、翡翠さんと志貴さんの間に当然のように割り込む。

「…アルクェイド様、少し強引なのではないでしょうか」

当然、翡翠さん抗議、でもなんとなく柔らかい口調なのはいつもの事だからだろう。

「んにゃ、悪いね翡翠。ここは私のしていせき~」

「………では、紅茶をご用意いたいます」

なんとな~くうらめしそうにアルクさんを見てから、翡翠さんは紅茶の用意を始めた。

………ここまで、完全に惣流さんはスルーされている。

「あ~、あの、母さんと一緒にこの娘も今日から住む事になったんですけど」

見るに見かねて、僕が惣流さんを指して声をかける。

「ん? 誰その女」

………女って、まぁ女は女なんですけど。

「あっ、え~っと、そ、惣流さん、自己紹介して」

僕はプルプル小刻みに震えている惣流さんに声をかける。

「……そ、惣流・アスカ・ラングレーです」

「長い名前だね、人間てそういう名前の奴昔からいるよね~」

………そういう感想はどうかと思いますよ。

「あぁ~、えぇ~っと、りゃ、略称でいいよね、略称で」

「………あ、アスカでいいです」

「ふ~ん、まぁ、私の邪魔しなければど~でもいいや」

……あぁ、本当に先行きが不安すぎる。





「全く! なんで私がアンタみたいな男の隣の部屋なのよっ!」

………本当、裏表激しいっすね、この子。

「大体なんなのよあの女達はっ! こっちが下手に出てれば」

「惣流さん、それ以上言わないほうがいいよ」

「なっ、なによっ! 私の事脅す気っ!?」

僕は騒ぐ惣流さんを無視して、部屋の中にあるコンセントの一つに近づく。

「…ちょっとアンタ、なにしてんの?」

僕はやっぱり無視して、コンセントのカバーをポケットから出した万能君で外す。

パカッ

「………やっぱりあった」

そこには、複数の配線に繋がれた、小さな黒い箱があった。

「………ちょっと、なによそれ…」

「一応、防犯用って事になってる、隠しカメラ。
 ホラここ、よぉ~く見ると、小さな穴が開いてるんだ」

そう言って、繋がれている黒い箱を指差す。

惣流さんは僕の肩越しに屈み込んでそのカメラを見る。

「……こんなの、誰がつけるの?」

「これは、NERVの人がつけたのを、そのまま電波帯を変換してこの家にある防犯カメラの周波数に合わせてあると思う。
 琥珀さんも取り付けてるけど、彼女はもっと巧妙に取り付けてるから、どこに仕掛けられているかは全く判らないよ」

僕はそこまで言って、コンセントのカバーを元に戻した。

「この映像や音声は、メカ翡翠ちゃんと、メカ翡翠ちゃんのモニターのログが保存されてるサーバに保存されるんだ。
 普段は誰も見れないけど、侵入者やこの家の中で事件が起きた時には閲覧できるようになってる」

僕はそう言って、くるりと惣流さんに向き直る。

「だから、余り悪意のある行動や発言をしないほうがいい、わかったかい?」

コクコクと頷く惣流さんを見て、僕は彼女の部屋から出る。

「後でメカ翡翠ちゃんが荷物整理に来るから、細々とした物だけ自分でやっときなよ」

そう言って、僕は廊下へ出た。



[37] Re[48]:EVANGELION~BlueBlue GlassMoon
Name: Torah
Date: 2003/09/25 11:02
緊急時マニュアルカード

sとnキーが逝きました。

ちょっとおやすみです。

…コピペきつい。

という訳で、途中までですが、良ければどうぞ。





リビングでゆっくりと紅茶を飲む。

「………はぁ」

やっぱり、溜息が出てしまう…。

「今日からそんなにお疲れですと、これから先もちませんよ?」

「でもですねぇ…、不安って言うか、心配って言うか…」

日暮れが近づき、晩御飯の仕込みが一段落ついた琥珀さんが、新しい紅茶を注いでくれる。

「彼女みたいに、なんていうかな~、人によってあそこまであからさまに態度を変える子って初めてだし…」

「いわゆる八方美人というものではないですけれど、状況によって自分を相手に良く見せようと頑張ってらっしゃる所はありますよね」

「あぁいう子、今まで会った事ないから接したらいいのかちょっとわかりませんよね…」

「いつも通りでいいんじゃないでしょうか?
 これから一緒に住むんですから、気負う事も、気を使う事もありませんよ」

「…………まぁ、そうっすよねぇ~」

そう言って、カップに残る紅茶を全て飲み干した。





EVANGELION~BlueBlue GlassMoon
閑話 アスカ、来日~その後~




カチャッ

「姉さん、休憩ですか?」

リビングのドアを開け、翡翠さんが入って来た。

「えぇ、翡翠ちゃんは洗濯物取り込み終わったの?」

「はい、それで休憩を、と思って」

翡翠さんはそう言いながら、ソファーへと近づいてくる。

「シンジ様、お隣失礼します」

「えぇ、どうぞ」

律儀にこちらに言ってから、翡翠さんはソファーへ腰掛けた。

カチャ

「はい、どうぞ~」

「ありがとう、姉さん」

琥珀さんから差し出された紅茶を受け取り、翡翠さんはそれを一口。

「……ところで姉さん、メカ翡翠の事なんですが…」

カップを置いた所で、翡翠さんが琥珀さんへ話し掛ける。

「ふぇ、なんですか~?」

「えぇ、メカ翡翠、もうニ、三体は必要ではないでしょうか?
 本日でこの屋敷に住を置く方が私達を含めて9人となります。
 学校などの無い休日でしたら私達も洗濯や掃除は出来ますが、平日となると流石に他にも細々とした仕事も有り、少し二体では心許ない気がします」

「なるほどぉ~、言われてみればそうですねぇ~」

「えぇ、それに碇ユイ様の存在は、NERVに秘密にしなければならないのでしょう?
 平日はこちらの家に居るか、恐らくは出歩かれたりするでしょうから、その際メカ翡翠を一体ユイ様専属に回してしまわれたほうが安心です」

「そっか……、碇家の屋敷だったら大きいし、防犯面も人が大勢いて安心してたけど、この家だと平日に居るのはレンとメカ翡翠ちゃんだけなんだよなぁ」

「えぇ、そういった点を考慮して、増員した方がよろしいかと思われます」

「…なるほどぉ~、最もですねぇ~。 さっすがひっすぃ~ちゃ~ん。
 でわでわ、これからちょっと屋敷に居る四季様達にお電話してきますねぇ~」

決まったら即実行、という感じで琥珀さんはその場を立ち、電話へと向かっていった。

「そういや、今メカ翡翠ちゃんはどうしてるんですか?」

「はい、二体とも惣流様のお部屋へ向かわれました。
 あの荷物の量ですから、もうしばらくはかかるでしょう」

紅茶をゆっくりと飲みながら、翡翠さんは小さ目のテーブルに置いてある皿の上からクッキーを一枚取る。

カチャッ

「おっ、翡翠。
 そのクッキーどうしたんだ?」

翡翠さんがクッキーを『あ~ん』と食べる寸前、志貴さんがリビングへやって来た。

パクッ

「……………」

モグモグ

「俺も一枚頂くよ」

「えぇ、別に問題ないですよ」

モグモグ

「…おっ、チョコチップが入ってる」

「えぇ、この間琥珀さんと二人で作ったんです。
 結構いけるでしょう?」

モグモグ

「…相変わらず、男なのに料理上手いなお前」

「志貴さんだって、料理上手いじゃないですか」

カチャ

「う~ん、でも簡単なものしか俺は作れないし」

コクッ

「でも結構味付けとかこだわりありますよね、和食に関して」

カチャ

「あぁ、まぁそれはなぁ…」

「このクッキーは、私がこちらに来た時から既にこちらにありました」

「「………遅いし!」」





「…という事ですので、明日にはメカ翡翠ちゃんが三体届くと思われますよ~」

「そう、相変わらず仕事が早いわね、琥珀」

「いえいえ、志貴さんの手の早さに比べたら」

ブフゥー

「な、な、な、なんでそうなるんですかっ!」

「志貴さん、思い当たる節が多いにある証拠ですよ~」

紅茶を噴出して吼える志貴さんを、あっさりと撃沈した。

………さすがだ、琥珀さん。

「それでですね、本日はご夕食に葛城様、赤木様、伊吹様と冬月様がいらっしゃるそうです」

「これはまた、大勢集まるなぁ」

「はい、日向様と青葉様は本日は残業らしいのでみなさまによろしく、とおっしゃっておりました」

…大方、また葛城さんに仕事押し付けられたんだろ、あの二人。

「そういう訳で、本日はユイ様と惣流様の歓迎会という事になりまして、仕込みもどど~んと一片にしてあります」

「うぇ~、また妹酒飲むのぉ~?」

「あら、別によろいいでしょう?
 嗜みというものですよ。
 最も、そのような事には全く無縁な人外には関係ないでしょうけど」

「あ、あの~、秋葉さん…」

「なにかしら? シンジ」

「あ~っと、一応、ここの家庭環境を惣流さんに説明しておいたほうが良いと思うんですけど」

「あら、すっかり忘れていましたわ」

「秋葉さん、とうとうアレですか?」

「それでしたら、シエルさんのほうが早く来るはずでしょう?
 最も、人から外れた人には関係ないかもしれませんが」

「それは秋葉さんでしょう。
 私はれっきとした人間ですから、どっかの蚊みたいに人の血を嗜好で飲んでいた外道な一族の方には言われたくありませんね」

あ、あわわわわ…、は、始まるよ…。

「そ、惣流さん、とりあえず離れて」

「はっ? な、なんなのよ一体」

僕は惣流さんの腕を掴んで引っ張り、リビングの端まで連れて行く。

他の面々も避難を終え、リビングのソファー周辺にはシエルさん、秋葉さん、アルクさんのいつもの面子だけが残った。

「その外道と言うのは、そちらの脳味噌へ行く栄養が胸に行っている外人の事でしょう?」

「むっ…、なによ妹、バカにした? 今の」

「まぁその意見には大方賛成ですが、そこには胸にすら栄養が行っていない混血の一族の方も含まれる事をお忘れなく」

「……エセ女子高生を去年までしていた年増のくせに、大きく出たわね」

「なによシエル、あんたもバカにしたでしょ」

「脳味噌が入ってないバカ吸血鬼は黙ってなさい。
 私は目の前のナイチチと話をしているんです」

「す、少し自分が大きいからって…、そ、それも長年積み重ねてきた年齢の
賜物ですかね?」

「と、年は関係ないでしょう年はっ! それだったらそこのアーパー吸血鬼なんか600年以上のくそおばぁさんじゃないですかっ!」

「おばぁさんて…、シエル、あんた喧嘩売ってるわよね」

「妙齢600歳のおばあ様は大人しくゆりかごに座って黙ってなさい」

「…妹、ちょ~っと頭にキたかな、それ」

「…いい機会です、ここらへんでキチンと決着をつけましょう、元々、私は吸血鬼を排除する人間ですから、何ら問題はありません」

「そう…、やる気なの。
 いいわよ、私も元々あんたは敵だもんね」

「ふふっ…、お二人とも、まとめて奪い尽くして差し上げますわ。
 カラカラにひからびたミイラになって、その醜態を兄さんに見せて差し上げなさい」

「あぁ~、はじまるはじまる…」

「志貴さん、止めないんですか?」

「……無理だろ、あれじゃぁ」

僕達が話しをしていると、とうとう事態が動いた。

どか~ん

「いい加減大人しく封印されてしまいなさい!」

「シエルこそ大人しくヴァチカンへ戻りなさいよっ!」

「お二人ともいい加減兄さんから離れなさいっ!」

「貴女こそ妹の癖に遠野君と関係するのをやめなさい!」

「そうよ、志貴は私のなんだからっ!」

「「誰が貴女のなんですかぁ~!」」

どか~ん

「…結局、こうなるんですよね、いつも」

「…ほんと、リビングで暴れないでくれ」

「…な、なんなのあれ………」

「ん? …まぁ、いつもの事だよ」

「…話には聞いていたけど、凄いわね、彼女達」

「まぁ……、人間じゃないし」

「……とりあえず、メカ翡翠を呼んでこないと」

志貴さんはそう言って、とぼとぼと玄関を出る。

……リビングでは、未だに激戦が続いていた。

どか~ん





「………毎回さ、喧嘩の原因と発端が限りなく離れてるのはどうしてなんだろう?」

「結局、ただ腹が立ったって感じですよねぇ、毎回」

「きちんとした原因らしい原因は見受けられません」

「う~ん、そういやそうだなぁ…」

メカ翡翠ちゃんと翡翠さん、琥珀さんと共にリビングの片付けをする。

母さんと惣流さんにはとりあえずソファーで休んで貰う。

…………問題の三人は、志貴さんのお説教中だ。

「まぁ何にせよ、お夕飯までに終わって良かったです」





ここまで! 続きは来月まで待っていてくれると嬉しいでふ。



[37] Re[49]:EVANGELION~BlueBlue GlassMoon
Name: Torah
Date: 2003/10/11 16:20
復活しました。

ッてことで、続きをど~ぞ。

EVANGELION~BlueBlue GlassMoon
アスカ、来日~その後~





ぴ~んぽ~ん

プシュー

『………………』

『………………………』

『………』

プシュー

「綾波様とレン様がご帰宅なさいました。
 それとご一緒に、葛城様、赤木様、伊吹様がご到着です」

プシュープシュー言ってたメカ翡翠ちゃんは何だったんだ…。



玄関から帰ってきた翡翠さんの後ろを、綾波達がゾロゾロと歩いてきた。

「こ~んば~んわぁ~」

「貴女、もう出来上がってるの?」

「せ、先輩…。あ、わわ、こ、こんばんわ…。」

やたらとテンション高い葛城さんを筆頭に、リツコさん、伊吹さんがそれぞれリビングに入ってくる。

「……………ただいま」

「普通、綾波が先導して入ってくるもんじゃないかな?」

「……………そう? 知らないもの」

学校の制服の綾波は、そのまま着替えもせずリビングのソファーに腰掛けた。

「レイ、本日はパーティーですから、一旦部屋へ戻って着替えてきなさい。
 普段着で結構ですから」

「……わかりました」

秋葉さんの言葉を受けて、綾波が腰掛けたソファーから立ち上がり、そのままエレベータホールへと出て行った。

「あら~、今日はまた一段と豪華な…」

「ミサト、その前に挨拶するべき人が居るでしょう?」

テーブルに並べられたパーティー用の豪華な食事に手を伸ばそうとした所、葛城さんはリツコさんに後頭部をひっぱたかれていた。

「んもう、ちょっとしたジョ~クよジョーク。
 お久しぶりです、ユイさん」

「貴女のはジョークにならないのよ…。
 お久しぶりです」

「えぇ、ミッちゃんもリッちゃんもお元気そうで何よりね」

ソファーに座っている母さんに、葛城さん達は頭を下げて挨拶をした。

………どう見ても、母さんのほうが年下に見える。

「あ、あ、あの…、お、お久しぶりですぅ~」

「あ、あら…、え~っと…………、どなたでしたっけ?」

思い切って元気よく挨拶した伊吹さんは、母さんのカウンターパンチを受けてマットに沈んだ。

「しくしくしく…」

「ちょ、ちょっとマヤ…。この子、何度か入院中に私の代わりにユイさんのお見舞いをしてくれた、伊吹マヤって言うんですけど…」

傍らで膝抱えて泣き出したマヤさんをあやしながら、リツコさんが説明する。

「あらあら、そうだったの。ごめんなさいね、伊吹さん」

「しくしく…」

「…はぁ、こりゃほっとくしかないわね。それよりエビチュは~?」

……泣いてるマヤさんよりエビチュを優先した葛城さん、流石だ。

「チョットあんたっ!?」

でかい声に反応して横を見てみると、ソファーに座ってレンを抱いている私服姿の綾波と、その真正面に仁王立ちしている赤鬼がいた。

「…………なに?」

「な、なにって…、あ、アンタこそなんなのよっ!」

「………何が?」

綾波、僕もわかんないから、こっち見ないでくれ……。

「ちょっと! このアタシを無視するんじゃ…」

「……碇君」

やはりというか何と言うか、綾波VS惣流に巻き込まれてしまった。

僕は一つ溜息をついて、綾波の横に腰掛けた。

「な、なによ…。アンタは呼んでないわよっ」

「あのさ、何をいきり立ってるのかわかんないけど、とりあえず落ち着いたら?」

僕はそう言って持参したティーカップに口をつける。

綾波もレンを膝に乗せながら、テーブルに置いてある紅茶を一口飲んだ。

「アンタねぇ! 何を落ち着いて紅茶なんか飲んでるのよっ!」

「………おいしい」

「無視するなぁっ!」

「いいからほら、座りなって。綾波も、無視しちゃダメだろ?」

「………ごめんなさい」

「…フ、フンッ! 何よっ!」

そう吐き捨てると、惣流さんはドカッとソファーに座った。

……どうも、大人達が見てない所では態度が横暴になる傾向があるな。

「それで、一体なにを怒ってるの?」

「……そこのファー…、綾波レイが、私がわざわざ自己紹介したってのに『…そう』なんて返事を返すからよっ!」

「………ちゃんと返事したわ」

「何て返事したの?」

「……綾波レイ、よろしく」

………それ以上を求めるのは、我が儘だろうか。

「そんなもん、自己紹介って言わないわよっ!」

「………他に何を言えばいいの?」

「趣味、とか?」

「読書」

「特技」

「エヴァの操縦」

「好きな食べ物」

「碇君と琥珀さんの食事、ニンニクラーメンチャーシュー抜き、ニンニク」

「嫌いな食べ物」

「…血の臭いのする肉」

「では~好きな異性は?」

「碇君」

「…ほほぅ、よかったですねぇ~シンジさん」

………いつの間に居やがりましたか琥珀さん。

「……そこで頬を染めないでくれ、綾波」

「………こうするのが普通だと、本に書いてあったわ」

どんな本読んでるんだよ、普段。

「これで満足ですか? 惣流さん」

「…は、はい」

突然登場した琥珀さんにチョット引き気味に返事をする惣流さん。

……登場した所を見たのかな?

「ではでは、そろそろパーティーを開始しますので、みなさん食堂へ集まってくださいね~」

「あれ、冬月先生はどうしたんですか?」

「冬月様は、チョット野暮用とかで、少し遅れるそうなので、先に始めてしまう事にしたんです」

「そっか…。わかりました、じゃぁ二人とも、食堂へいこう」

「えぇ」

「…わかったわよ」

なんとな~く惣流さんが不満そうだけど、とりあえすみんなでパーティー会場へ向かう。

……隣の部屋なんだけどね。


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