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[37091] ネタ 史上最強の警官が火星へと送られてやってきた
Name: クラララ◆94f6194f ID:409a627f
Date: 2013/03/26 10:12
近未来の火星、そこは戦場と化していた。テラフォーミング、人類が追い求めた夢の技術たる他の惑星を地球へ書き換える技術は、新たな騒乱を生んだ。

火星の赤い酸化鉄を含んだ砂の上を、何かが歩いていく。それは、人間ではない存在だった。筋骨隆々とした体は、ある意味女性にもてる要素の一つではあるが、女性には決してもてないだろう。

何故なら、その体躯は人の体を超え2メートルとかなり大きいばかりではなく全身は黒光りしている。というより、人の皮膚ではない。

体の中には見えないが、昆虫の呼吸器官たる気門が何対も開きながら火星の酸素を吸っている。黒光りする触角が、頭の上には生えている。

それは、ゴキブリだ。いやゴキブリであってゴキブリではない。人類が火星をテラフォーミングするために火星大気にゴキブリを送り込んで、黒が太陽光線を吸収しやすいことを逆手に火星を温暖な気候にしようとしたゴキブリの子孫。

一切の天敵がおらず、時には共食いということもあったが火星へ地球大気を作り出すための遺伝子操作された植物を食べながら火星の環境を生き抜き進化したゴキブリの進化系ついたあだ名がテラフォーマーだった。

そして人類とゴキブリとは、今現在戦争中だ。火星への植民をもくろむ人類は、ゴキブリの駆除を試み、ゴキブリは高度な社会性さえも身に着けているために人類へと生存をかけて戦いを挑んでいる。

現在の宇宙航行技術の制約と火星であるため、火星にあわせて新たな機械兵器を開発するという特性上地球のように大量破壊兵器を送り込めないためと昆虫の進化生物たる由縁か頑強な体を持っており、テラフォーマーの駆除は極めて困難だった。

昆虫といっても侮ってはいけない。人間の皮膚がただのたんぱく質の塊に対して、昆虫はキチン質やクチクラといった頑丈な成分を主体とした外骨格を身に着けている生物だ。それが、大型化すれば小型であるため体格差から問題にならないものが一気に問題となり相当の防御力を発揮する。

しかも昆虫は、その気になれば南極圏でも生き延びられる蚊がいるなど環境変化も強く、身体能力も意外とサイズの問題があるだけで高い。
ノミなどは、自分の身長よりも上までジャンプできその気になれば人間サイズだったならビルをジャンプで飛び越えられるし、蜘蛛の糸は鋼鉄よりも上の硬度といっていいのだ。

人類もテラフォーマーに対抗するために作り出した遺伝子強化人間による掃討を行っているが、最終的には火星を放棄してしまうかあるいは燃料気化爆弾のような大型爆弾を火星全土にたたきつけでもしない限り倒せないと一部では言われている。
その戦況を覆すために、一人の男が地球から送り込まれてきた。戦争という手段ではなく、平和的な解決のために。

火星の地上を歩いている一人のテラフォーマー、いや一匹といった方がいいのだろうか、それはしげしげと目の前のものを見つめていた。
人間は徹底的に排除すべき外敵と教えられているのだが、そのものを襲っていいのだろうかと躊躇してしまう雰囲気がある。
まるで自分たちの仲間のような感じを人間でありながら、漂わせていた。

体躯は、人間でありながらがっしりとしており彼らにとってはいまだに本能的に好きな不潔な環境で薄汚れていると分かる皮膚を持っている。人間が着ている訳の分からない人造皮膚の青色のものを着ており、彼らと戦っているものとは人造皮膚の種類が違っていた。

ゴキブリ的な感じから襲おうか襲わないかについてしゅん巡していると、その男から話しかけてきた。

「あ、そこのゴキブリ君、いやテラフォーマー君といった方がいいかな、とりあえず話がしたんだけどいい。頼むから、食ったりしないでね。」

「じょうじょうじょうじょう(訳な、人間が俺たちの言葉を発した。そんな馬鹿な、奴らは猿の進化形で俺たちは虫の進化系なんだぞ)。」

「わしは、その気になればペンギンとも話せるからな。って猿の進化系ってなんだよ、いや起こったなら悪いけど君たちのリーダーと話させてくれ。」

「じょうじょうじょう(訳リーダーの所に敵を連れていくわけがないだろう。俺たちは、人間相手に最後の最後まで徹底抗戦する。祖先の敵をとるのだ。」

「まあまあ、祖先といっても地球から火星に来たんだろ。だったら、直接は祖先が人間に弾圧されてったのは知らないわけだ。
今このまま殺し合いを続けていたら、そっちにも犠牲者が出てるはずだ。休戦協定を、こちらは結びたい。」

その男は、テラフォーマーと会話をつづけながら彼を火星へと送り出した彼の祖父両津勘兵衛を内心で恨んでいた。


その日、その男両津勘吉は両津勘兵衛所有のフェラーリに乗り、一緒に移動していた。何もドライブというわけではない。
叔父の勘兵衛は、フェラーリを運営していることからもわかるとおり105才と記録されて当然という驚くべき長寿を誇っていながら、体も老人にしては頑強でしかも企業経営を成功させているビジネスマンでもある。
流石に一応は、大日本帝国海軍に所属し、日露戦争や太平洋戦争を最前線でありながら生き抜いただけの人物だ(ちなみに潜水艦も旧式とはいえ操縦できたり、無線の技術も持っていると頭は悪くない。)

そのため、バイトを斡旋してもらうために仕事場へ向かっているところだった。両津勘吉は、一応は警察官という公務員であるのだが、普段の仕事態度が不真面目で上司から給料の減給が続き、場合によっては草を食べようと本気で思う状況まで追いやられることもある。
両津にとって本来は禁止されていようとも、副業としてバイトを行うのは仕方のないことなのだ。
最も、真面目に働いたらいいとか貯金をきちんとしないからだといわれるが、それができる性分では残念ながらないのだ(遺伝的に両津家には極一部を除いて、不目地目な人間ばかりが生まれているため、不真面目をつかさどる遺伝子を持っているといわれている。)

やがてフェラーリを勘兵衛は止め、その後を勘吉はついていく。やがて、案内された場所へ着くと、このなかがバイト場所だと勘兵衛は言ってその言葉に従った両津は広大ななにもない部屋へ入っていった。
それが悪魔の罠とも知らずに・・・・・

「待てよ、何か前にもこういった展開が二回ほどあった気がするんだが気のせいか。とりあえず、早く出ないと。」

嫌な予感にかられた両津が、扉へ駆けようとする前に部屋全体が轟音と共に揺れた。やっぱりだと両津は、遅まきながら気づいていた。

「また宇宙に行くのかよ、宇宙服も無しで。」

両津勘兵衛は、現在宇宙開発関連の仕事をやっている。そのバイトに両津を宇宙空間で送っても一番生命力があり、おまけに後腐れがないという理由で無理やり訓練も無しに送り込んだことがある。

「勘吉、無事か。」

そうぬけぬけと自分を宇宙へと送り込んだ張本人でありながら、勘兵衛は無重力状態へ達したあたりで連絡を取ってきた。

「こら、勘兵衛。また人を無断で宇宙へ送りやがって。で、また宇宙ゴミを回収すればいいのか。」

「いつの時代の話だ、いまどき宇宙ゴミ回収業者など多角的企業テクノーラ(漫画プラネテスを見るべし)を初め別の業者があるぞ。」

「それじゃいったい何の用なんだ。」

語気を荒める勘吉に対して、一コンマ遅れて勘兵衛はバイトの内容を告げた。

「火星にいる人食いゴキブリとの交渉役だ。」

「ゴキブリって・・・・・確かナサが火星をテラフォーミングするのに送った奴。殺虫剤まくなら別にわしじゃなくても・・・・・・」

「違う、勘吉。火星のゴキブリは、独自に進化してもはや知性を持っている。人間の送ったゴキブリ討伐部隊と生きたまま食い殺されるものさえでている大規模な争いを行っているのが現実だ。
そこで、お前にはゴキブリと交渉して停戦協定を結んできてもらうのがバイトだ。」

「バイトでやるにきつすぎるぞ、というかわしは死んでも構わんというのか!ふざけんな、わしを何だと思ってるんだ。」

もしこの場に勘兵衛がいるなばら、恐らく勘吉は掴みかかり殴りつけていただろう。だが、勘兵衛は電話越しでしか接触できないためどこ吹く風だ。

「問題ないだろ、お前なら。ゴキブリを前に飼ってたしペンギンとも話せるんだし。じゃ、切るぞ。」

「待て、勘兵衛。頼むから待ってくれ。」

両津の叫びもむなしく、ツ~、ツ~、ツ~と通話が切れたことを意味する音が鳴るだけだった。
両津を載せた宇宙船は、そのまま火星へと慣性航行で向かっていく。本人の意思に関わらず。




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